○
政府委員(
平田敬一郎君)
税法の
改正各案につきまして、
只今の
提案理由の
説明を補足いたしまして御
説明申上げます。
お手許に
昭和二十六
年度補正予算に伴う
税制改正の
要綱という書類がお配りいたしてありますので、これに基きまして御
説明申上げたいと思います。
改正の
趣旨等はすでに先ほど
政務次官から御
説明願いましたので、特に申上げる必要はないかと思いますが、要点は、最近会社の業績が非常によく
なつておりますので、それに対応いたしまして
法人税について若干の増税を図る、その
半面所得税につきましては、従来とも
我が国の
所得税は
相当重いほうでございましたので、これを軽くするということが私どもの念願であ
つたのでございますが、更に
前回の
改正以後
物価等が少し上りまして、一層の
調整を必要とする事情が生じましたので、今回できる限り
所得税につきまして
減税を行うという
趣旨で立案いたしているのでございます。
先ず
所得税につきまして申上げますが、
所得税につきましては、すでに御
承知の
通り基礎控除を三万円から五万円に
引上げ、これが一番
歳入に大きく響く大きな
改正でございます。それから次は
扶養控除を
扶養親族三人まで、つまり奥さんと子供二人の世帯に当りますが、そこまで現在一万五千円を二万円に
引上げる。それから
税率につきましては、現在
課税所得の
刻みは大分小幅に
なつております。これは
前回の
改正と、前々回の
改正で前と比較いたしますると、よほど改善されていると思うのでございますが、まだ併し
中堅所得者のところまでの取り方が非常に激しいので、これを若干大股に飛ぶことにいたしまして、
改正を加えようとするのでございます。即ち今まで十万円という
刻みがございましたのが、この辺を抜きまして、一番下が今まで五万円以下が百分の二十でありましたが、今度八万円以下百分の二十に、八万円を超えて二十五、十二万円で三十、二十万円のところは今まで四十でございましたのを三十五にいたしました。以下順次ずらしまして、
最高今まで百万円を超える分は百分の五十五でございましたのを二百万円を超えて初めて百分の五十五にする。こういう
改正を行おうとするのでございます。なおこの
所得金額は御
承知の
通り課税所得というのは
所得金額から
給與所得でございますと一割五分の例の
勤労控除、
一般の
所得でございますと、このほかに
基礎控除、
扶養親族の
控除、これらの
控除を引いた
残りの
所得でございます。従いまして普通の
世帶でございますと、後ほど申上げますように、十二、三万円
控除になりますので、家族が三人乃至四人の
世帶でございますと、今回は例えば二十万円のものが四十でありましたのが、約三十五、六万円から四十万円くらいの
所得を超えて初めて今度は今まで四十
適用に
なつておりますのが三十五、こういうことになるわけでございまして、
中産階級の下のほうに属するかと思いますが、そこら辺のところの
税率が今までよりよほど
緩和になることになろうかと考えております。
所得税の
改正の主な点は基本がこのような点でございます。ただこの
改正を八月からおおむね遡つて実行するという
趣旨で
改正を加えておるのでございます。従いましで
給與所得についてどうなるかと申しますと、
改正法律を十一月一日以後
支拂を受ける分からこの今まで申上げました
控除なり
税額を
計算しました
簡易税額表で
課税する
見込でございます。つまり
軽減するそれは、普通の月給でございますと、それぞれ
月額表がございますが、
月額表はすべて今申上げました五万円、二万円、それから新らしい
税率で
計算しました
月額表を
適用いたします。そういたしましてこの八月から十月までのこの三月の分の
減税額は遡
つて減税をやるというのでございますが、これはすべて年末
調整の際に
計算する。従いまして年末
調整の際におおむね
賞與等がございまして、
賞與に対する
税金で、
税額を
計算する際に
減税額が差引かれるという
意味になりまして、
低額所得者の場合は
賞與がフルにもらえるというということになると思います。併し
賞與が多い、或いは
所得が比較的多いところは
賞與に対する
税額が
相当多うございますので、三月分の
減税額を差引きましてもなお若干
税額が残るかと思いますが、普通の場合でございましたならば大体今申上げましたように
賞與に対する
税額で
調整を行う。勿論
賞與がございません場合は十二月の分の最後の
給與でありまして、それで
調整し切れぬものは翌年の初めに受ける
給與から順次
調整して行くこういうことに相成るのでございます。そういう
方法によりましてこの
勤労所得への
減税を行うということになるわけでございます。
それから
申告所得税の場合はこれは十一月に
予定申告の二回目が参りますが、この際は新らしい
改正は
適用いたしません。と申しますのは
予定申告は昨年の実績を基にしておりまして、比較的低いものに
なつておりますので、ここで新らしい
改正を実行する必要はないと考えておるのでございます。それから来年の二月に
確定申告をいたします際にこの
改正案を実行する。で実行する際におきましては今年は八月に遡りますので、八月から十二月までの五カ月分につきましては、例えば
基礎控除でございますと五万円、月五万円の割合で
計算をしております。それから一月から七月までの七カ月分につきましては
改正前の三万円の
控除額を基にして
計算する。そういたしまして月割で
計算いたしまして年額を算定いたしまするとこの
要綱に書いておりますように、五万円の
基礎控除が二十六年分一年を通じますると三万八千円になるわけでございます、若干
端数がつきますが……。
申告の
簡素化等を考えまして
端数を削りまして三万八千円にいたしております。同じく
扶養親族につきましても同様な
方法で
計算いたしまして二万円になるところは一万七千円になります。
税率のほうは同様な
趣旨で
計算いたしまして、それを
税額表で算定するということにいたしております。従いまして
昭和二十六年分の
申告所得税といたしましてはこの
要綱の二に書いてありまするような
金額で、それぞれ
最終税額表を算定いたしましてそれによつて納税してもらうことに相成る次第でございます、それが
所得税の基本的な事項の主なる点でございます。まあ私ども
昭和二十七
年度におきましても、まあ
基礎控除、
扶養控除、
税率は最初の頁に掲げておりますような案を
所得税法の
改正案としまして
通常国会に
提案いたしたいと思つておりますが、これはまだ
確定ではございません。
差当り臨時国会におきましては
臨時特例として
提出した次第でございます。
それから次は三頁目の
控除でございますが、三でございますが、
不具者控除、
老年者控除、
寡婦控除、
勤労学生控除、こういう比較的
担税力の低い
階層に対しまする
特別控除を先般新たに認めたのでございますが、これも現在は
所得金額から一万五千円
控除することにいたしておりますが、今回先ほど申上げましたように、
扶養親族の
控除を三人まで二万円に
引上げる、残余は一万五千円に据置くということにいたしました
関係上、
所得控除にいたしますると
簡易税額表の作成は非常に技術的にむずかしいところがございまして困難でありますのと、それからいま
一つはもともとこの種の
控除は一種の
担税力の低いクラスに対しまする
所得税の特別の
軽減という
趣旨が多分に織込んでありまするので、
税額で同じ
金額を
軽減するというのもこの
税率に顧みまして妥当じやないかということを考えまして、年四千円を
税額から
控除するということにいたしたわけでございます。従いまして例えば
所得金額が八万円、
課税所得金額から
扶養控除等を引きました
残りの
所得の八万円以下の場合でございますと、今までは一万五千円の
所得から引きますので、その
税率百分の二十を
適用いたしまして、三千円
税額から引いたわけでございます。で今回は四千円になりますので、そこのところは現在よりも一層大幅な
軽減と申しますか、ということに相成るのでございます。二十五のところにおきましても大幅な
軽減になりますが、
所得税率の三十以上の
適用を受ける
階級になりますと、現在では一万五千円に三十を乗じまして、
税額では四千五百円ほど
軽減に
なつておりますのでこの辺からはむしろ現在よりも若干不利になるのでございますが、この
趣旨はもともと
低額の
担税力の低い
階層に対する特別の考慮という点に出ておりますので、今回の
改正の
趣旨におきましても妥当じやないか、そういう
意味も含みまして年四千円を
税額から
控除する、こういうことにいたしたのであります。
その次は
退職所得でございますが、
退職所得につきましては、
相当大幅な
負担の
軽減を図るという
趣旨におきまして、先ず今までは普通の
所得と総合いたしまして
平均課税の
方法で
課税することにいたしているのでございまして、これは
退職所得の
課税といたしましては
税率の理論から申しますと、私ども
相当立派なシステムだと考えておるのでございますが、なおやはり
所得が増減にある場合、或いは
退職の時期等によりまして若干
負担が違いますのと、手続がかなり複雑でございますので、
簡素化するという
意味と、
退職所得は
担税力におきましては特に考慮する点が多いのじやないかということを考えまして、今回
相当大幅な
軽減を図るという
趣旨で
改正をいたそうというのでございます。即ちほかの
所得と
退職所得を全然分けまして
課税するというのが
一つ、
退職所得の
金額から十五万円の
基礎控除を全面的にする。従いまして十五万円以下の
所得には
税金は全然かからなくなる。十五万円以上でありましても、十五万円
控除いたしまして、
控除した
残りの
金額の
半額を
課税所得にいたしまして、それに先ほど示しました
税率を
適用しましたものを
税額にするということにいたしたのでございます。例えば二十万円の
退職所得でございますと、二十万円から十五万円を引きまして、五万円になります。その五万円を更に半分にいたしまして、二万五千円に対しまして百分の二十、二万五千円は
課税所得八万円以下でございますから非常に低い
適用を受ける。二万五千円に百分の二十を乘じました五千円、これが
退職金二十万円の場合の
税額になるというので、ございまして、
相当大幅な
軽減になるのでございます。
負担の
軽減は後ほど更に申上げます。これは
昭和二十七年一月一日以後支給される分から
適用するのでございますが、最近までは
変動所得としまして五分五乘の
方式で
課税をすることにいたしておりましたが、現在に比べますと
課税はよほど
軽減になります。従いまして
昭和二十六年中にやめた人との間に、やめた人が若干不利じやないかという点が考えられますので、現在
退職所得につきましては一割五分を
控除しまして、
平均課税いたしておりますのを、三割
控除いたしまして
平均課税にする、こういうことに経過的には
措置したいと思つております。従いましてすでに
課税にな
つた人も或いは若干返さなければならない人も出て来るかと思いまするので、ほかの
所得と全部通算いたしまして、これを
確定申告の際に清算することにいたしてある次第でございます。
それからその次は
配当所得につきましては現在は源泉
課税はいたしていないのでございますが、どうも
配当所得の総合と申しますか、
申告と申しますか、それが十分行われていない憾みがございますので、今回ひと先ず源泉として百分の二十だけは徴税して置きまして、ただこれは徴税の便宜上の問題でありますから、
申告の際に配当を総合して
計算したいという
意味から二十だけは
控除して
課税する、こういう
制度を採用することにいたしたのでございます。これは主として
配当所得に対する適正な
課税をしたいという
趣旨でございます。実質の
負担には
影響ございません。ただ今まで名義書換等を行わないでいる人の場合におきましては
課税漏れに
なつておりますのが、二〇%は少くとも
課税するという結果に相成るかと思います。なおその他
所得税につきましては、若干法文では細目
改正いたしている点もございますが、それは又別途の機会に御
説明申上げることにいたしまして、主な点は以上の点でございます。
次は
法人税でございますが、
法人税につきましては
税率を百分の三十五から四十二に
引上げることにいたしたのでございます。ただこの農業協同組合とか或いは
公益法人で
収益事業を営んでいるというものにつきましては、昨年の
改正で
一般の
税率と同じようにいたしたのでございますが、どうもやはりこういう組合等の最近の実状からいたしますると、若干下廻つた
課税をするのがこの際としては適当ではなかろうかと考えられましたので、この分は
現行通り据置くことにいたしたのでございます。
法人税を増税しました
趣旨は皆さん御
承知の
通り、最近法人の業績が非常に成績がよく
なつておりますので、この程度の
引上げは妥当じやないかと考えた次第でございます。なお業績等につきましては、後ほど
歳入のところで若干補足しまして申上げたいと思います。この一年間で
我が国の法人企業は非常な回復と申しますか、業績を上げているように見受けられるのでございます。それからその次は
法人税の増税に関連しまして、更に
合理化する部分は
合理化しようという
趣旨からいたしまして、第一は
法人税の納期につきまして、
徴収猶予の特例を認めた点でございます。即ち現在は御
承知の
通り事業年度ごとにその
事業年度分の
税金を
事業年度終了後二月以内に全部納めることに
なつておりますのを、その
半額だけ、各
事業年度の分の
税金の
半額だけは三月延ばすことができるということにいたしております。但しこの場合におきましては四銭の利子税を納めてもらう、こういう考えでございます。四銭の利子税を納めるということでありますれば、税務署に申請をしてもらいますと機械的に三月、
半額だけは延ばせる、こういう
趣旨でございます。現在法人で
相当三月——九月の
決算が片寄つておりまして、一時に納税資金の需要が殺到する等の事情もございますので、このような
制度を設けますとその辺がよほど
緩和できるのじやないかという考えでございます。ただ納税資金にそれほど困つていない法人の場合におきましては、まあやはり各
事業年度ごとに納めて頂くのがいいのじやないか。納税資金の調達に若干困難を感じられるような向きも四銭利子を拂つて延ばす、こういう
趣旨で四銭の利子税を徴したほうが妥当じやないかということでこのようなことにいたしておるのでございます。
それから次は
退職手当
積立金でございますが、青色
申告を
提出しまする法人の
退職手当
積立金につきましては、その積立てた
年度の損金に算入しよう。現在は御
承知の
通り現実に
退職金を拂つた
事業年度の損金にはいたしておりますが、積立てた
事業年度におきましては損金にいたしておりません。それを積立てた
事業年度の損金にしようというのでございます。ただ無條件に認めますと非常に乱に流れまして当を得ませんので一定の條件を付する考えでございます。條件といたしましては、
一つは労働協約などによりまして
退職金の支給が雇主に義務付けられているということが
一つ、それからいま
一つはその
退職手当
積立金の
半額程度を預金その他の形で資金としまして確保して置く。こういうような條件を備えた場合におきまして損金に算入するということにいたす考えでございます。
その次は重要産業の
近代化を促進いたしますために特定の重要産業の
取得する
機械等につきまして一時償却を認めよう。御
承知の
通り昨年
改正いたしまして
近代化のための機械を
取得しました場合におきましては普通の償却のほかに三年間五割かたの特別償却ができることに
なつておるのでございますが、又これは
相当広汎な産業の範囲に亘りまして一定の
機械等を
取得した場合におきましては
一般的に
適用いたしておるのでございますけれども、更に各種の産業の中で
近代化の必要、
合理化の必要顯著な重要産業につきましては
機械等を
取得しました年に
半額特別償却ができるという
制度を採用したらどうかと考えるのでございます。但しこのほうは別途産業
合理化法で、又は企業の
近代化法、まあそういつたような
法案との
関係も非常に緊密でございますのでこの
改正はそういう
法案と一緒に
提案いたしまして御審議を仰ぐ考えでございます。或いは衆議院の
提案になることになるかも知れないと思つておりますが、まあ大体
政府といたしましてもこういうことをいたしたいという考えでございます。
法人税の
改正の主な点は以上の点でございますが、なお
税法といたしましては
財産税の
改正は先ほどの
提案理由の
説明で明らかでございまするので特に補足して申上げることはございません。このほかに
租税特別
措置法の
改正を目下立案いたしておりますが、なお最終的には
確定的に
なつていない部面もございますので、若干遅れるかと思います。
今回
提出いたしまする
法案の主な事項はそのような点でございます。
なお條文の個々につきましては若干の
改正がございますが、その詳細も又別途の機会にいたしたいと思います。それから
所得税の中で現在
扶養親族の
控除は納期までに申請するということを條件にいたしておるのでございますが、
控除によりて
所得税が、納税義務がなくなるような人、このような人の場合におきましては必ずしも
納期限までの申請ということを條件にする必要はなかろう。それによりまして納税者も、それから税務署のほうも手数の簡略化を図ろうという
趣旨からいたしまして
扶養親族の
控除をいたしますれば、納税義務がなくなるような人の場合におきましては申請がなくても
控除の効果を與えることにいたしまして納税義務がないように
確定いたしたいという
改正を織込んでおります。なおその他若干技術的な細目の
改正がございますが、これは別の機会に城りたいと思います。そこで以上申上げました
改正で
負担がどうなるかという問題でございますが、その点につきましては今の
要綱の六頁に
負担の移動の
計算をいたしております。これを若干御
説明申上げますが、先ず
給與所得の場合でございますが、
給與所得は月額で示してあります。で、この月額が、大体八月以降遡つて
適用になるわけでございますが、独身者の
所得はまあ八千円前後、六千円から八千円の
所得者が多いようでございます。先ず八千円の場合でございますと、現在八百六十七円
負担いたしておりますのが、
改正後は五百二十六円になりまして三割九分三厘の減、まあ五千円ぐらいの、地方には若干
相当あるかと思いますが、五千円ぐらいの独身でございますと現在三百五十円
負担しておりますのが十六円の
負担になる、こういうことになります。それから夫婦者の場合におきましては一万円前後の
所得者が比較的多いかと思いますが、一万円の場合でございますと現在九百七十九円
負担しておりますのが五百三十三円になりまして、四割五分五厘の減少ということになるのでございます。それから一万五千円で夫婦及び子供二人この辺が、四人
世帶の場合は一万五千円前後が多いかと思いますが、この辺のところでございますと現在千四百十七円
負担しておりますのが、
改正後は七百十六円になりまして丁度半分ぐらいになる。四割九分四厘の減。同じく二万円で夫婦及び子供二人の場合でございますと三割六分三厘の減。同じく二万円でありましても子供の四人という大きな
世帶でございますと、現在二千円の
負担が
改正後は千百六十六円になりまして四割一分七厘の減、こういうことになるのでございます。従いまして今度の
改正は
低額の
勤労所得者にとりましては
相当な現在に比べまして
負担の減少を生ずると考えておるのでございます。その下に
課税最低限がどうなるかという表を示しておりますが、御
承知の
通り幾らから
課税になるかということは
基礎控除と
扶養控除と、
勤労所得税の場合でございますと、例の
勤労控除できまるわけでございまして、その三つの
関係で一番下に示しておりますような
関係になります。即ち独身者の場合でございますと現在は
勤労控除がありますので、
基礎控除が三万円にプラス
勤労控除五千円、三万五千二百九十五円が
課税の最低限であつて、
改正後は五万八千八百二十四円から独身者の場合は
課税されるのでございます。これは年額でございます。それからこれは奥さんと子供三人の
世帶でありますと、つまり
扶養親族四人ですと現在は十万五千八百八十三円からかかつておるのでございます。
改正後は十四万七千五十九円までかからなくなる、こういうことに相成るのでございます。
相当今回の
改正で、大都市のほうは比較的
所得が高いのでそれほどじやないかと思いますが、地方におきましては新たに失格する人が
相当増加する
見込でございます。
それから
事業所得でございますが、
事業所得につきましてはその次の七頁の表を御覧に
なつて頂きたいのでございますが、農業
所得は大体今年十六万九千円、納税失格者を除きまして納税しました農業
所得が十六万九千円程度
予算を見積つておりますが、平均いたしまして十五万円から二十万円前後の
所得者が多いようでございます。でその辺を見て頂きますと農業
所得者がどうなるかがわかるのでございますが、年額十五万円の農業
所得者で夫婦及び子供二人、つまり本人のほかに
扶養親族の三人の場合におきましては現在一万六千二百五十円
負担しておりますのが、
改正後は八千円になりまして丁度半分に減るのでございます。なお農業
所得者の場合は
扶養親族が
相当多いのでございますが、仮に本人のほかに五人
扶養親族がおるという場合でございますと、十五万円の
所得の場合で現在九千円
負担しておりますのが、
改正後は二千円になりまして三分の二以上、七割七分減少すると、こういうことになります。二十万円の場合は同じく夫婦及び子供二人の場合三割八分三厘の減、子供四人ですと四割三分減る、こういうことになります。
それから営業の
所得者のほうは農業
所得者よりも平均
所得がより上のほうに行つておりまして、今年の
所得の
見込では二十七万一千円という数十字に
なつておりますが、二十万から三十万程度の
所得者が多い。二十万の場合でございますと今申上げました
通りでございます。三十万円の場合でございますと子供二人の場合には二割七分六厘の減、こういうことに相成るのでございます。免税点のほうは
給與所得と違いまして
勤労控除がございませんのでそれだけ現在も高く
なつておりますが、
改正後もそれだけ高くなります。
世帶主と
扶養親族四人、つまり五人
世帶の場合でございますと現在九万円に
なつておりますのが、
改正後は十二万五千円。農家の場合はもうちよつと多い場合がございますが、五人でございますと現在十万五千円からかかつているのが、十四万円までかからなく
なつて来る、こういうことに相成るのでございます。ただこれは先ほど申上げました
控除の平
年度分と申しますか、でございますので、二十六年の分は
基礎控除五万円の代りに三万八千円、
扶養親族の
控除が二万円の代りに一万七千円になります
関係上、八頁の表に示しております
通り前に申上げましたのよりも
負担の減少額は少く
なつております。
それから
退職所得につきまして最後に
負担の表を掲げて置きましたが、現在は
退職所得をいつ受取つたかということと、それから
退職後の
所得が減つたか殖えたか同じか、それによりまして
負担が違うことに
なつております。それが或る
意味におきましては合理的だというふうにも考えるのでありますが、若干不合理な面もございますので、先ほど申上げましたように分類
課税をすることにいたしました。従いまして
改正後におきましてはすべてほかの
所得の如何にかかわらず
退職金に対する
所得税はこの九頁の一番下の
改正案という欄に示しました表の
通りになるのでございます。即ち二十万円の場合は先ほど申上げましたように五千円の
負担、十五万円以下はかかりません。十五万円以下の場合は現在かかつておりますが、二十万円の場合に五千円、三十万円の場合に一万五千円、五十万円の場合に四万二千五百円程度でございまして
相当な
負担の
軽減に
なつております。ここに上に
現行として
計算いたしておりますのは
退職の年の
給與の
金額が例えば十万円であ
つた人が
退職金を十万円もらつた場合、そしてその以後、これは十万円というのは丁度六月に
退職いたしまして半分
所得をもらつておるということを予定して
計算いたしております。従いまして今までの
所得から見ますと二十万円の
所得のあ
つた人が十万円もらつた場合ということになるのでありますが、そういう設例を設けまして
計算して見ますとここに書いてありますような
負担になるわけでございます。例えば三十万円で
退職後十八万円でございますから、今まで三十六万円の年
所得があつて三十万円の
退職金をもら
つた人の場合は現在では五ヵ年間を通じまして五万四千七百円、最初の年には六万二千八百六十円でございますが、通算いたしまして五万四千七百円になる。ところが
改正後は一万五千円と相成る次第でございます。ただ現在は今申しましたように
所得が減つたか殖えたか、それによつて大分違つて参りますので、いろいろな場合がございますが、これは先ず年の丁度真中頃におきましてそれ以後
退職する前の
所得の半分ぐらいに
なつた場合でございますが、
所得が、これよりも
所得の多い場合はこれより高い
負担に
なつております。反対に
所得がなく
なつてしま
つた人の場合にはこの表で示したよりも低い
負担になるのでありますが、
一つの
計算例として示したわけでございます。大体
所得税に関しまする
負担の変更はそのくらいな点でございます。
それから法人のほうも
税率を四二に
引上げておるのでございますが、よく世間で
法人税の地方税を含めました総
負担が六〇になるという声があるのでございますが、これは機械的に
計算いたしますと、成るほど六〇近くになる。即ち
法人税が四二、それから今の
法人税に対する市町村民税が
所得に対しまして現在五・二五%かかつております。それに
事業税一二%、その三つを加えますと五九・二五%になる。御
承知の
通り事業税は実は
所得の
計算上経費として差引きますので、
事業税込みの
所得に対しましては六三%強になるのでございまして、六〇%よりも大分低いのでございます。その点を補足しまして申上げておきたいと思います。
それから以上が
改正に関する
負担の概要でございますが、
改正後
税額がどうなるかという問題につきましては、更に別途に
租税及び印紙
收入補正予算の
説明表という横書にしました
説明をお配りいたしておりますが、それによりまして若干御
説明を申上げます。最初の一頁に当初の
予算額と
現行法による
收入見込額、つまり
改正を行わない場合の
收入見込額、その差引が自然増減額になります。それとそれから
改正案を実行した場合の
見込額、差引
減税額を表で示しておりますが、当初
予算額の四千四百四十五億に対しまして
現行法による
收入収入
見込額は六千十三億一千九百万、差引千五百六十八億千五百万の
自然増収に相成るのでございます。この一番大きいのは
法人税でございまして、
法人税が八百五十四億九千八百万程度の
自然増収でございます。その次が
源泉徴収の
所得税でございまして、五百七十九億一千八百万、
あと酒税が九十億六百万、その他間接税の
増収がございますが、
申告所得税におきましては若干の五十三億八千万程度の減、富裕税が十三億五千万程度の減ということに相成つておるのでございます。
改正の結果
所得税におきまして四百七億七千二百万の
所得税の減になりますが、そのうち三百六億八千三百万は
勤労所得税の減でございます。
申告の減が百億八千九百万ほどになります。で
法人税は来年の一月一日から以後開始する
事業年度から
適用します
関係上本
年度の収入は僅かでございます。来年の三月分は、二月、三月以後の分はこれは来
年度の
收入になりまして本年の
收入になりませんので、本
年度分は僅少でございます。その裏の、次の四頁の裏に少し細かいことがございますが、右の
減税額のうち
基礎控除の
引上げによりまして、
所得税が二百四十二億八千八百万減るのでございます。
扶養控除の
引上げによりまして百億八百万、
税率の
改正で六十二億九千百万、合せましてこの三つの
改正で四百五億八千七百万、
配当所得は源泉
課税をいたしますので、本
年度としまして約三億円程度の増、その他のさつき申しましたいろいろな小さい
改正で四億八千五百万ほど減りまして、
所得税で差引四百七億七千二百万の減でございますが、御覧になればわかります
通り大部分は
基礎控除の
引上げが一番大きい、その次は
扶養控除の
引上げでございます。それで而も源泉のほうが
基礎控除の
引上げによりまして一番大きく
影響いたしておるのでございます。でこの表によりましてもわかりまするように、
低額の
勤労所得のこの
基礎控除と
扶養控除は下のほうに一番強く響くわけでございますが、
所得者の
負担減が全体として一番大きく
なつておるということが言い得るかと思うのであります。
それから
法人税、
自然増収を生じました
法人税の
状況を若干申上げておきたいと思います。
歳入の積算の基礎につきましては
相当詳細にここに
説明いたしておきましたので、その
内容を御
説明申上げるのは省略いたしたいと思いますが、一番
收入の大きな
法人税につきましては、最近の会社の
事業の成績を十分に調べまして実は算定いたしたのでございます。それで大体主な法人百四十社につきまして最近の
状況及び下期の見通しを
計算いたして見たのでございますが、百四十社の分の昨年の下期の利益が二百九十七億、それに対しまして今年の上期の実績が七百一億、従いまして約二倍三割五分に
なつておる。つまり二三五%の増、二倍半まで行きませんが、二倍三割五分に増加しております。そのほかこの各社につきまして大体九月の
決算の
見込をとりましたところが、少くとも上期の九〇%程度の
決算になるだろう、そういうのを元にしまして調査課所管と申しますか、資本金二百万円以上の法人の利益を推計しております。それから小法人の分はこれはちよつとこの率で伸びるということは望めませんので、生産
物価等の動向からいたしまして、昨
年度から七割程度利益を挙げておる、こういう前提で
計算いたしまして
法人税の
自然増収を
見込んだのでございます。
法人税はすでに
予算も当初
予算を九月末で一五%ほどオーバーしておる、
予算以上に入つておる。この点は先般の
国会でも大分もつと殖えるのじやないかという御意見もございましたが、まさにその
通りにこれはなりまして、非常に成績が挙つておるようでございます。これは経済指標が雄弁に物語つておると思いますが、その辺は省略をすることにいたしまして、法人につきまして大体全法人の利益
状況がどう
なつておるのかということを推計いたして見たわけでございますが、それによりますと減価償却を差引きまする前の利益、これが
昭和二十五
年度が二千、この資料はまだ整理する暇がございませんでしたから印刷にはしておりません。後ほど印刷いたしましてお配りいたしたいと思いますが、申上げますと、償却前の会社の利益が二十五
年度は二千六百八十五億でございましたのが、二十六
年度は六千七十九億円程度と見ております。で、もう
一つ前の二十四
年度は千百九十四億円程度でございます。これはもう実績で二十四
年度のところは千百九十四億、従いまして償却前の利益は昨年は一昨年の倍以上になり、本年も更に倍以上になる、こういうふうに非常に顯著な改善でございます。それに償却
金額も大幅に増加いたしたのでございます。これは再評価によりまして殖えましたのと、耐用年数の
合理化によりまして殖えましたのと、
近代化等の特例償却をやりましたために殖えましたのといろいろな事情がございますが、その
金額が
昭和二十五
年度が五百五十九億円程度でございましたのが、二十六
年度は千百十五億円程度と見ております。もう
一つ前の二十四
年度は再評価がいたしておりませんので僅か百五十九億、つまり一昨々年は百五十九億程度の償却であ
つたのが、本年は千百十五億程度の億却に
なつて、その償却を差引きました
課税所得の利益でありまするが、その利益が昨年は二千百二十五億に対しまして、今年は四千九百六十四億円程度に増加いたしました。それから
法人税や市町村民税を差引きました
税金を拂つた
残りの利益も
相当増加いたしました。配当金も
昭和二十五
年度は百八十四億でございましたのが、本年は五百七十五億円程度に増加すると見ておりますが、配当、それから
賞與、その他の社外に出す分を差引きまして、会社の
積立金になる部分が、昨年は九百四十二億程度でございましたのが、今年は二千四百七十七億円程度に増加するだろう。従いましてさつきの償却と社内の
積立金と合せますと、昨年は千二百二億円程度の広い
意味の社内留保ができましたのが、今年は三千五百九十二億円程度の会社の自己資金の蓄積ができる、こういうことに大体なるものと見ております。而もこれは今申上げましたように、下期の
決算も上期の
決算も大体九割程度押えまして
計算いたしておるような次第でございますので、先ずいろいろ事情もございますが、十分なところではないがまあ妥当なところではないかというふうに考えておるのでございまして、
朝鮮動乱後、法人の
我が国の企業の状態も著しく改善されつつあるということは言い得るかと存ずるのでございます。なおこういう点に対しまして、詳細な分析は
あとで表によりましてお配りするつもりでございますが、概要その
通りでございます。こういうように
担税力も
相当増加いたしておりまするので、この際といたしましては、法人について若干の増税を行い、個人
所得税をできる限り
軽減するというのが、
租税政策として妥当ではないかと実は考えたような次第でございます。
それから
所得税納税人員のことですが、これは
補正予算の
説明に出ているのでございますが、わかりにくいのでかいつまんで申上げますと、
給與所得の納税者は
現行法で行きますれば、本
年度九百七十八万六千人になる。ところが
改正法によりますと八百八十八万人ほどになります。つまり九十万六千人減る。
申告所得税のほうは
現行法で行きますと四百八十九万三千人になる。ところが
改正法で行きますと三百八十万三千人程度になる。差引きして百九万人程度の減少、合計いたしまして、
申告と
給與と合計いたしまして、
現行法で千四百六十七万九千人になる。ところが
改正法によりますと千二百六十八万三千人になりまして百九十九万六千人ほど減る。この一番
所得税の重か
つたのは
昭和二十四
年度で、これは均衡財政で
所得税の
軽減ができなか
つたので一番重い年でございます。この年の
給與所得の納税者が千百六十万人、
申告所得税の納税者が七百五十一万八千人、合せまして千九百十一万九千人でございました。その当時と比較いたしますというと、
改正後は六百四十三万六千人ほど納税者が減少する。一番減少するのは農業
所得者でございまして、
申告の
所得税で
昭和二十四
年度七百五十一万八千人から、
申告所得税全体でございますが、
改正後は三百八十万三千人になります。約三百七十一万五千人減ります。この減る中に営業
所得者等も若干ございますが、大部分は農業
所得者の納税義務者の減少でございます。なお詳細な点につきましては、営業者、農業者の内訳につきましては、別途資料を作成して御
説明申上げたいと思います。大体以上でございます。
それから直接税、間接税の問題がよく問題になりますが、これはお手許に配りましたものの、又元に戻りますが、
租税及び印紙収入
補正予算説明という横書の資料の一番後にその表をつけてございます。これによりますと、
昭和二十五
年度が五五%の直接税がございましたが、当初
予算におきましては五三・七彩に減
つたのでございます。
補正予算の
現行法の場合も
法人税、
勤労所得税の
自然増収を含めましたので、六一%に増加するのでございます。それが
改正の結果、今度
所得税の
減税を図りましたので、若干下りまして五八・七%ということになります。税制としましては
所得税を
相当減税して参りましたので、直接税の
自然増収が間接税よりも多いために、殊に法人の
自然増収が多いために、このような結果に
なつた次第でございます。これも御参考までに申上げておきます。
なおその他細目の点いろいろ御
説明することもございますが、今日はこの辺でとどめておきたいと思います。