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1951-10-26 第12回国会 参議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十六日(金曜日)    午後一時五十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    理事            大矢半次郎君            伊藤 保平君    委員            愛知 揆一君            岡崎 真一君            黒田 英雄君            菊川 孝夫君            成瀬 幡治君            野溝  勝君            松永 義雄君            小宮山常吉君            田村 文吉君            菊田 七平君            櫻内 辰郎君            森 八三一君   政府委員    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    大蔵省管財局長 内田 常雄君   事務局側    常任委員会專門    員       木村常次郎君    常任委員会專門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省主計局法    規課長     佐藤 一郎君    大蔵省管財局外    国財産課長   佐々木庸一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員会設置の件 ○小委員選任の件 ○所得税法臨時特例に関する法律案  (内閣送付) ○財産税法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○一般会計歳出財源に充てるため  の資金運用部特別会計からする繰入  金に関する法律案内閣送付) ○連合国財産補償法案内閣送付)   —————————————
  2. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) これより第三回の大蔵委員会を開会いたします。  先ず請願及び陳情に関する小委員設置につきましてお諮りいたします。本委員会におきましては従来毎国会請願陳情審査を便ならしめるため、小委員を設け審査いたして参りましたが、本国会におきましてもこの小委員を設けて審査の迅速を期したいと思いますが、御異議ございませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 御異議ないものと認めます。よつて請願及び陳情に関する小委員設置することに決定いたしました。   —————————————
  4. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 次にこの小委員の数並びに小委員の選定及び小委員長選任方法についてでありまするが、いずれも従前の例によりまして、小委員の数は六名とし、委員長において小委員及び小委員長を指名することに御一任を願いたいと思いますが、御異議ございませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松永義雄

    松永義雄君 ちよつとその前に速記をとめて……。
  6. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  7. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 速記開始。御異議ないものと認めます。それでは小委員岡崎君、成瀬君、小林君、菊田君、森君を、それから小委員長伊藤君を御指名申上げます。   —————————————
  8. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 次に法案審査に入りたいと思います。所得税法臨時特例に関する法律案財産税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び一般会計歳出財源に充てるための資金運用部特別会計からする繰入金に関する法律案、以上四件に関し提案理由の御説明を願います。
  9. 西川甚五郎

    政府委員西川甚五郎君) 只今議題となりました所得税法臨時特例に関する法律案外三法律案につきまして、提案理由を御説明申上げます。  政府は、すでに昨年及び本年の二度に亘り減税を断行し、国民租税負担軽減合理化に努めて参つたのでありますが、我が国経済は昨年勃発した朝鮮動乱と変転する国際情勢との影響を極めて強く受けるに至り、一方において、生計費増嵩を通じて国民生活影響を及ぼすと共に、他方において、法人収益の異常な上昇を来たす等、租税負担の配分上考慮すべき問題を生ずることとなつたのであります。  而して、本年度租税その他の歳入におきましては、当初予算に比し相当多額に達する自然増収見込まれ、又昭和二十七年度におきましても、本年度以上の收入見込むことができ、今後における歳出の増加を考慮しても、なお相当減税を実行し得る見通しを得ましたので、政府は、国民生活の安定に資するため所得税軽減合理化を行うと共に、法人収益状況に鑑みて法人税につき若干の増徴を行うこととし、ここに関係法律案提出することといたしたのであります。  先ず所得税法臨時特例に関する法律案についてその大要を申上げます。  所得税につきましては、最近における物価の動向と国民租税負担の現状に鑑み、その負担の一層の軽減合理化、特に低額所得者負担軽減を図ることといたしました。  即ち先ず基礎控除につきましては、現行三万円を五万円に引上げ扶養控除につきましては、現在扶養親族一人につき一律に一万五千円となつておりますのを、扶養親族三人までは一人につき二万円に引上げると共に税率に、つきましては、現行課税所得五万円以下百分の二十に始まり百万円を超える金額に対する百分の五十五に至る税率適用上の階級区分刻みをゆるやかにし、八万円以下百分の二十、八万円を超え十二万円以下の金額百分の二十五、以下順次逓増して最高二百万円を超える金額百分の五十五と改めることといたしました。以上の改正は、先に行われました主食価格の引上等を考慮して、おおむね本年八月に遡つて実施することとしたのであります。  而して、給與所得者に対する源泉徴収については、本年十一月一日以降支給される給與から改正後の控除税率によることとし、八月から十月までの間の源泉徴収税額の過納額は本年の年末調整において調整することとしております。又申告納税所得者については、右の改正を本年八月に遡つて実施する結果、本年分の基礎控除を三万八千円に、扶養親族三人まで一人につき一万七千円に、それぞれ引上げると共に、税額計算は本年八月に遡つて改正税率適用したものとして作成した簡易税額表によるものといたしております。  なお、不具者控除老年者控除寡婦控除及び勤労学生控除につきましては、現在一万五千円を所得から控除することとしているのでありますが、今回その性質及び税額計算上の便宜を考慮して、これを税額控除に改め、年四千円を税額から控除することといたしました。この結果、低額所得者については現在の所得控除よりも若干有利となるのであります。  次に退職所得につきましては、昭和二十五年度における改正により、収入金額から十分の一・五を控除した上変動所得として平均課税を選択し得ることとしているのでありますが、今回その税負担軽減課税簡素化を図ることといたしました。即ち、昭和二十七年一月一日以後支給される退職所得については、他の所得と総合せず分別して課税し、その収入金額から十五万円を控除した後の金額半額課税所得として一般税率適用することとしているのであります。これにより退職所得に対する税負担は、相当大幅に軽減されることとなるのであります。なお、本年中に支給される退職所得に対しては、平均課税方式はそのままといたしますが、控除金額は十分の一・五から十分の三に引上げ、経過的に負担緩和を図ることとしているのであります。  次に、昭和二十七年一月一日以後支拂確定する配当所得に対しては、新たに、百分の二十の税率により源泉徴収を行うこととし、以てその課税の適正を期することとしております。この配当所得につき源泉徴収した税額は、申告の際現在の配当控除のほかに総税額から控除することとしているのであります。  次に、法人税法の一部を改正する法律案について申上げます。  法人税につきましては、最近における法人収益状況、個人の負担との関係等を考慮して、若干の増徴を図ると共に、法人税の円滑な納付に資するために徴収猶予制度を設ける等所要の改正を行うことといたしたのであります。  先ず、税率につきましては、普通法人について、現行百分の三十五を二割かた引上げて百分の四十二とし、昭和二十七年一月一日以後終了する事業年度分法人税から適用することといたしております。なお、協同組合等特殊法人及び公益法人収益事業に対する税率につきましては、その実情に鑑み、現行税率通りに据置くこととしております。  次に、法人税については新たに徴収猶予制度を設けることとしました。即ち、現在法人税納期限は、事業年度終了後二月以内となつているのを、最近の金融及び取引の実情に鑑み、法人税額半額につき、現行納期限から更に三月以内を限つて、申請によりその徴収を猶予することといたしております。  このほか法人税に関しましては、別途退職手当引当金について一定の基準の下にこれを損金に算入することを認め、又重要産業設備近代化を一層促進するために、緊急に設備合理化を必要とする事業機械等についてその取得の年に取得価額半額を特別償却することができる等の措置を講ずる見込みであります。  次に、財産税法の一部を改正する法律案について申上げます。財産税法昭和二十一年十一月二十日施行されたことは御承知通りでありまして、本年十一月十九日後は財産税については課税を行うことができないことになつているのであります。然るに財産税課税財産のうち賠償指定施設等については、今日まで課税を延期して参つたのでありますが、今日においてもなおその帰属確定しませんので、これらの財産に限り更に今後三ヵ年間においてその帰属が明らかになつた際に課税し得ることとしているのであります。  以上三法律案につきましてその大要を申上げましたが、これらの改正措置により、所得税においては、源泉徴収所得税で三百六億八千三百万円、申告納税所得税で百億八千九百万円、合計四百七億七千二百万円の減収を生ずる見込であり、法人税においては二億六千二百万円増収となる見込でありまして、差引き四百五億一千万円の減税となるのであります。  次に一般会計歳出財源に充てるための資金運用部特別会計からする繰入金に関する法律案につきまして、その提出理由を御説明申上げます。  資金運用部特別会計は、資金運用部特別会計法の規定により毎年度決算剰余を生じました場合には、当分の間その全額を一般会計に繰入れることとなつております。而してこの会計が旧大蔵省預金部特別会計から引継いだ積立金につきましては、現在これを一般会計に繰入れることとなつておりませんが、右の積立金額は現在八億八千八百四十万円余あり、今回この金額本年度一般会計歳出補正予算財源に充てる必要がありますので、この積立金一般会計に繰入れることができることといたしたいのであります。  以上が四法律案提出をいたしました理由でございます。  何とぞ御審議の上速かに御賛成あらんことをお願い申上げます。
  10. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) お諮りいたします。この一般会計歳出財源に充てるための資金運用部特別会計からする繰入金に関する法律案について只今提案理由の御説明がありましたが、なおその内容について若しも詳しい説明を受けたいといたしますれば、主計局法規課長佐藤君が見えておりますからやつて頂きたいと思いますが、如何でございましようか。
  11. 野溝勝

    野溝勝君 今四案の説明があつたのでしよう。
  12. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 提案理由説明があつたのですが、そのほかなお一層詳しい内容説明を願おうと思うのですが……。
  13. 野溝勝

    野溝勝君 四案の説明があつたのですが、これだけに対するもつと詳しい説明を聞こうというのですか。今四案の説明があつたのですが……。
  14. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 今お諮りしたのは、その中の一般会計歳出財源に充てるための法律案について取りあえず聞く。それから、これは簡單ですからこれを先にやつて頂いて、そうしてあとの三案は相当長いのですからあとでやつて頂きたい、こういう意味です。
  15. 野溝勝

    野溝勝君 それならばわかります。
  16. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 速記をとめて。    〔速記中止
  17. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 速記を始めて。
  18. 佐藤一郎

    説明員佐藤一郎君) 余り簡単なものですから御説明することは大してございませんが、御承知のように、従来大蔵省預金部特別会計というのがございまして、それが昭和二十六年から資金運用部特別会計というふうにドツジ書簡によりまして構成が変つたのでございます。その昔の大蔵省預金部特別会計、その時代の積立金が八億余つてあります。これにつきましては、その八億をどう処理するかということについて法律上何ら措置がいたしてございません。で、今回補正予算提案いたします際に、この八億円を財源の一部といたしまして補正予算を組んでおりますので、特にこの法律提案いたしまして組入の権限を得たいと、こういう意味法律でございます。昭和二十五年の剰余金でございましたので、極く最近にその決算が明らかになりまして、今回初めて財源に組み入れることができるようになりまして、今回提案しております補正予算の中の一部としてこの分が入つております。
  19. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 次に所得税法臨時特例に関する法律案財産税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案につきまして、主税局長からなおその内容の詳細を御説明願います。
  20. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 税法改正各案につきまして、只今提案理由説明を補足いたしまして御説明申上げます。  お手許に昭和二十六年度補正予算に伴う税制改正要綱という書類がお配りいたしてありますので、これに基きまして御説明申上げたいと思います。改正趣旨等はすでに先ほど政務次官から御説明願いましたので、特に申上げる必要はないかと思いますが、要点は、最近会社の業績が非常によくなつておりますので、それに対応いたしまして法人税について若干の増税を図る、その半面所得税につきましては、従来とも我が国所得税相当重いほうでございましたので、これを軽くするということが私どもの念願であつたのでございますが、更に前回改正以後物価等が少し上りまして、一層の調整を必要とする事情が生じましたので、今回できる限り所得税につきまして減税を行うという趣旨で立案いたしているのでございます。  先ず所得税につきまして申上げますが、所得税につきましては、すでに御承知通り基礎控除を三万円から五万円に引上げ、これが一番歳入に大きく響く大きな改正でございます。それから次は扶養控除扶養親族三人まで、つまり奥さんと子供二人の世帯に当りますが、そこまで現在一万五千円を二万円に引上げる。それから税率につきましては、現在課税所得刻みは大分小幅になつております。これは前回改正と、前々回の改正で前と比較いたしますると、よほど改善されていると思うのでございますが、まだ併し中堅所得者のところまでの取り方が非常に激しいので、これを若干大股に飛ぶことにいたしまして、改正を加えようとするのでございます。即ち今まで十万円という刻みがございましたのが、この辺を抜きまして、一番下が今まで五万円以下が百分の二十でありましたが、今度八万円以下百分の二十に、八万円を超えて二十五、十二万円で三十、二十万円のところは今まで四十でございましたのを三十五にいたしました。以下順次ずらしまして、最高今まで百万円を超える分は百分の五十五でございましたのを二百万円を超えて初めて百分の五十五にする。こういう改正を行おうとするのでございます。なおこの所得金額は御承知通り課税所得というのは所得金額から給與所得でございますと一割五分の例の勤労控除一般所得でございますと、このほかに基礎控除扶養親族控除、これらの控除を引いた残り所得でございます。従いまして普通の世帶でございますと、後ほど申上げますように、十二、三万円控除になりますので、家族が三人乃至四人の世帶でございますと、今回は例えば二十万円のものが四十でありましたのが、約三十五、六万円から四十万円くらいの所得を超えて初めて今度は今まで四十適用なつておりますのが三十五、こういうことになるわけでございまして、中産階級の下のほうに属するかと思いますが、そこら辺のところの税率が今までよりよほど緩和になることになろうかと考えております。所得税改正の主な点は基本がこのような点でございます。ただこの改正を八月からおおむね遡つて実行するという趣旨改正を加えておるのでございます。従いましで給與所得についてどうなるかと申しますと、改正法律を十一月一日以後支拂を受ける分からこの今まで申上げました控除なり税額計算しました簡易税額表課税する見込でございます。つまり軽減するそれは、普通の月給でございますと、それぞれ月額表がございますが、月額表はすべて今申上げました五万円、二万円、それから新らしい税率計算しました月額表適用いたします。そういたしましてこの八月から十月までのこの三月の分の減税額は遡つて減税をやるというのでございますが、これはすべて年末調整の際に計算する。従いまして年末調整の際におおむね賞與等がございまして、賞與に対する税金で、税額計算する際に減税額が差引かれるという意味になりまして、低額所得者の場合は賞與がフルにもらえるというということになると思います。併し賞與が多い、或いは所得が比較的多いところは賞與に対する税額相当多うございますので、三月分の減税額を差引きましてもなお若干税額が残るかと思いますが、普通の場合でございましたならば大体今申上げましたように賞與に対する税額調整を行う。勿論賞與がございません場合は十二月の分の最後の給與でありまして、それで調整し切れぬものは翌年の初めに受ける給與から順次調整して行くこういうことに相成るのでございます。そういう方法によりましてこの勤労所得への減税を行うということになるわけでございます。  それから申告所得税の場合はこれは十一月に予定申告の二回目が参りますが、この際は新らしい改正適用いたしません。と申しますのは予定申告は昨年の実績を基にしておりまして、比較的低いものになつておりますので、ここで新らしい改正を実行する必要はないと考えておるのでございます。それから来年の二月に確定申告をいたします際にこの改正案を実行する。で実行する際におきましては今年は八月に遡りますので、八月から十二月までの五カ月分につきましては、例えば基礎控除でございますと五万円、月五万円の割合で計算をしております。それから一月から七月までの七カ月分につきましては改正前の三万円の控除額を基にして計算する。そういたしまして月割で計算いたしまして年額を算定いたしまするとこの要綱に書いておりますように、五万円の基礎控除が二十六年分一年を通じますると三万八千円になるわけでございます、若干端数がつきますが……。申告簡素化等を考えまして端数を削りまして三万八千円にいたしております。同じく扶養親族につきましても同様な方法計算いたしまして二万円になるところは一万七千円になります。税率のほうは同様な趣旨計算いたしまして、それを税額表で算定するということにいたしております。従いまして昭和二十六年分の申告所得税といたしましてはこの要綱の二に書いてありまするような金額で、それぞれ最終税額表を算定いたしましてそれによつて納税してもらうことに相成る次第でございます、それが所得税の基本的な事項の主なる点でございます。まあ私ども昭和二十七年度におきましても、まあ基礎控除扶養控除税率は最初の頁に掲げておりますような案を所得税法改正案としまして通常国会提案いたしたいと思つておりますが、これはまだ確定ではございません。差当り臨時国会におきましては臨時特例として提出した次第でございます。  それから次は三頁目の控除でございますが、三でございますが、不具者控除老年者控除寡婦控除勤労学生控除、こういう比較的担税力の低い階層に対しまする特別控除を先般新たに認めたのでございますが、これも現在は所得金額から一万五千円控除することにいたしておりますが、今回先ほど申上げましたように、扶養親族控除を三人まで二万円に引上げる、残余は一万五千円に据置くということにいたしました関係上、所得控除にいたしますると簡易税額表の作成は非常に技術的にむずかしいところがございまして困難でありますのと、それからいま一つはもともとこの種の控除は一種の担税力の低いクラスに対しまする所得税の特別の軽減という趣旨が多分に織込んでありまするので、税額で同じ金額軽減するというのもこの税率に顧みまして妥当じやないかということを考えまして、年四千円を税額から控除するということにいたしたわけでございます。従いまして例えば所得金額が八万円、課税所得金額から扶養控除等を引きました残り所得の八万円以下の場合でございますと、今までは一万五千円の所得から引きますので、その税率百分の二十を適用いたしまして、三千円税額から引いたわけでございます。で今回は四千円になりますので、そこのところは現在よりも一層大幅な軽減と申しますか、ということに相成るのでございます。二十五のところにおきましても大幅な軽減になりますが、所得税率の三十以上の適用を受ける階級になりますと、現在では一万五千円に三十を乗じまして、税額では四千五百円ほど軽減なつておりますのでこの辺からはむしろ現在よりも若干不利になるのでございますが、この趣旨はもともと低額担税力の低い階層に対する特別の考慮という点に出ておりますので、今回の改正趣旨におきましても妥当じやないか、そういう意味も含みまして年四千円を税額から控除する、こういうことにいたしたのであります。  その次は退職所得でございますが、退職所得につきましては、相当大幅な負担軽減を図るという趣旨におきまして、先ず今までは普通の所得と総合いたしまして平均課税方法課税することにいたしているのでございまして、これは退職所得課税といたしましては税率の理論から申しますと、私ども相当立派なシステムだと考えておるのでございますが、なおやはり所得が増減にある場合、或いは退職の時期等によりまして若干負担が違いますのと、手続がかなり複雑でございますので、簡素化するという意味と、退職所得担税力におきましては特に考慮する点が多いのじやないかということを考えまして、今回相当大幅な軽減を図るという趣旨改正をいたそうというのでございます。即ちほかの所得退職所得を全然分けまして課税するというのが一つ退職所得金額から十五万円の基礎控除を全面的にする。従いまして十五万円以下の所得には税金は全然かからなくなる。十五万円以上でありましても、十五万円控除いたしまして、控除した残り金額半額課税所得にいたしまして、それに先ほど示しました税率適用しましたものを税額にするということにいたしたのでございます。例えば二十万円の退職所得でございますと、二十万円から十五万円を引きまして、五万円になります。その五万円を更に半分にいたしまして、二万五千円に対しまして百分の二十、二万五千円は課税所得八万円以下でございますから非常に低い適用を受ける。二万五千円に百分の二十を乘じました五千円、これが退職金二十万円の場合の税額になるというので、ございまして、相当大幅な軽減になるのでございます。負担軽減は後ほど更に申上げます。これは昭和二十七年一月一日以後支給される分から適用するのでございますが、最近までは変動所得としまして五分五乘の方式課税をすることにいたしておりましたが、現在に比べますと課税はよほど軽減になります。従いまして昭和二十六年中にやめた人との間に、やめた人が若干不利じやないかという点が考えられますので、現在退職所得につきましては一割五分を控除しまして、平均課税いたしておりますのを、三割控除いたしまして平均課税にする、こういうことに経過的には措置したいと思つております。従いましてすでに課税になつた人も或いは若干返さなければならない人も出て来るかと思いまするので、ほかの所得と全部通算いたしまして、これを確定申告の際に清算することにいたしてある次第でございます。  それからその次は配当所得につきましては現在は源泉課税はいたしていないのでございますが、どうも配当所得の総合と申しますか、申告と申しますか、それが十分行われていない憾みがございますので、今回ひと先ず源泉として百分の二十だけは徴税して置きまして、ただこれは徴税の便宜上の問題でありますから、申告の際に配当を総合して計算したいという意味から二十だけは控除して課税する、こういう制度を採用することにいたしたのでございます。これは主として配当所得に対する適正な課税をしたいという趣旨でございます。実質の負担には影響ございません。ただ今まで名義書換等を行わないでいる人の場合におきましては課税漏れになつておりますのが、二〇%は少くとも課税するという結果に相成るかと思います。なおその他所得税につきましては、若干法文では細目改正いたしている点もございますが、それは又別途の機会に御説明申上げることにいたしまして、主な点は以上の点でございます。  次は法人税でございますが、法人税につきましては税率を百分の三十五から四十二に引上げることにいたしたのでございます。ただこの農業協同組合とか或いは公益法人収益事業を営んでいるというものにつきましては、昨年の改正一般税率と同じようにいたしたのでございますが、どうもやはりこういう組合等の最近の実状からいたしますると、若干下廻つた課税をするのがこの際としては適当ではなかろうかと考えられましたので、この分は現行通り据置くことにいたしたのでございます。法人税を増税しました趣旨は皆さん御承知通り、最近法人の業績が非常に成績がよくなつておりますので、この程度の引上げは妥当じやないかと考えた次第でございます。なお業績等につきましては、後ほど歳入のところで若干補足しまして申上げたいと思います。この一年間で我が国の法人企業は非常な回復と申しますか、業績を上げているように見受けられるのでございます。それからその次は法人税の増税に関連しまして、更に合理化する部分は合理化しようという趣旨からいたしまして、第一は法人税の納期につきまして、徴収猶予の特例を認めた点でございます。即ち現在は御承知通り事業年度ごとにその事業年度分税金事業年度終了後二月以内に全部納めることになつておりますのを、その半額だけ、各事業年度の分の税金半額だけは三月延ばすことができるということにいたしております。但しこの場合におきましては四銭の利子税を納めてもらう、こういう考えでございます。四銭の利子税を納めるということでありますれば、税務署に申請をしてもらいますと機械的に三月、半額だけは延ばせる、こういう趣旨でございます。現在法人で相当三月——九月の決算が片寄つておりまして、一時に納税資金の需要が殺到する等の事情もございますので、このような制度を設けますとその辺がよほど緩和できるのじやないかという考えでございます。ただ納税資金にそれほど困つていない法人の場合におきましては、まあやはり各事業年度ごとに納めて頂くのがいいのじやないか。納税資金の調達に若干困難を感じられるような向きも四銭利子を拂つて延ばす、こういう趣旨で四銭の利子税を徴したほうが妥当じやないかということでこのようなことにいたしておるのでございます。  それから次は退職手当積立金でございますが、青色申告提出しまする法人の退職手当積立金につきましては、その積立てた年度の損金に算入しよう。現在は御承知通り現実に退職金を拂つた事業年度の損金にはいたしておりますが、積立てた事業年度におきましては損金にいたしておりません。それを積立てた事業年度の損金にしようというのでございます。ただ無條件に認めますと非常に乱に流れまして当を得ませんので一定の條件を付する考えでございます。條件といたしましては、一つは労働協約などによりまして退職金の支給が雇主に義務付けられているということが一つ、それからいま一つはその退職手当積立金半額程度を預金その他の形で資金としまして確保して置く。こういうような條件を備えた場合におきまして損金に算入するということにいたす考えでございます。  その次は重要産業の近代化を促進いたしますために特定の重要産業の取得する機械等につきまして一時償却を認めよう。御承知通り昨年改正いたしまして近代化のための機械を取得しました場合におきましては普通の償却のほかに三年間五割かたの特別償却ができることになつておるのでございますが、又これは相当広汎な産業の範囲に亘りまして一定の機械等取得した場合におきましては一般的に適用いたしておるのでございますけれども、更に各種の産業の中で近代化の必要、合理化の必要顯著な重要産業につきましては機械等取得しました年に半額特別償却ができるという制度を採用したらどうかと考えるのでございます。但しこのほうは別途産業合理化法で、又は企業の近代化法、まあそういつたような法案との関係も非常に緊密でございますのでこの改正はそういう法案と一緒に提案いたしまして御審議を仰ぐ考えでございます。或いは衆議院の提案になることになるかも知れないと思つておりますが、まあ大体政府といたしましてもこういうことをいたしたいという考えでございます。  法人税改正の主な点は以上の点でございますが、なお税法といたしましては財産税改正は先ほどの提案理由説明で明らかでございまするので特に補足して申上げることはございません。このほかに租税特別措置法の改正を目下立案いたしておりますが、なお最終的には確定的になつていない部面もございますので、若干遅れるかと思います。  今回提出いたしまする法案の主な事項はそのような点でございます。  なお條文の個々につきましては若干の改正がございますが、その詳細も又別途の機会にいたしたいと思います。それから所得税の中で現在扶養親族控除は納期までに申請するということを條件にいたしておるのでございますが、控除によりて所得税が、納税義務がなくなるような人、このような人の場合におきましては必ずしも納期限までの申請ということを條件にする必要はなかろう。それによりまして納税者も、それから税務署のほうも手数の簡略化を図ろうという趣旨からいたしまして扶養親族控除をいたしますれば、納税義務がなくなるような人の場合におきましては申請がなくても控除の効果を與えることにいたしまして納税義務がないように確定いたしたいという改正を織込んでおります。なおその他若干技術的な細目の改正がございますが、これは別の機会に城りたいと思います。そこで以上申上げました改正負担がどうなるかという問題でございますが、その点につきましては今の要綱の六頁に負担の移動の計算をいたしております。これを若干御説明申上げますが、先ず給與所得の場合でございますが、給與所得は月額で示してあります。で、この月額が、大体八月以降遡つて適用になるわけでございますが、独身者の所得はまあ八千円前後、六千円から八千円の所得者が多いようでございます。先ず八千円の場合でございますと、現在八百六十七円負担いたしておりますのが、改正後は五百二十六円になりまして三割九分三厘の減、まあ五千円ぐらいの、地方には若干相当あるかと思いますが、五千円ぐらいの独身でございますと現在三百五十円負担しておりますのが十六円の負担になる、こういうことになります。それから夫婦者の場合におきましては一万円前後の所得者が比較的多いかと思いますが、一万円の場合でございますと現在九百七十九円負担しておりますのが五百三十三円になりまして、四割五分五厘の減少ということになるのでございます。それから一万五千円で夫婦及び子供二人この辺が、四人世帶の場合は一万五千円前後が多いかと思いますが、この辺のところでございますと現在千四百十七円負担しておりますのが、改正後は七百十六円になりまして丁度半分ぐらいになる。四割九分四厘の減。同じく二万円で夫婦及び子供二人の場合でございますと三割六分三厘の減。同じく二万円でありましても子供の四人という大きな世帶でございますと、現在二千円の負担改正後は千百六十六円になりまして四割一分七厘の減、こういうことになるのでございます。従いまして今度の改正低額勤労所得者にとりましては相当な現在に比べまして負担の減少を生ずると考えておるのでございます。その下に課税最低限がどうなるかという表を示しておりますが、御承知通り幾らから課税になるかということは基礎控除扶養控除と、勤労所得税の場合でございますと、例の勤労控除できまるわけでございまして、その三つの関係で一番下に示しておりますような関係になります。即ち独身者の場合でございますと現在は勤労控除がありますので、基礎控除が三万円にプラス勤労控除五千円、三万五千二百九十五円が課税の最低限であつて、改正後は五万八千八百二十四円から独身者の場合は課税されるのでございます。これは年額でございます。それからこれは奥さんと子供三人の世帶でありますと、つまり扶養親族四人ですと現在は十万五千八百八十三円からかかつておるのでございます。改正後は十四万七千五十九円までかからなくなる、こういうことに相成るのでございます。相当今回の改正で、大都市のほうは比較的所得が高いのでそれほどじやないかと思いますが、地方におきましては新たに失格する人が相当増加する見込でございます。  それから事業所得でございますが、事業所得につきましてはその次の七頁の表を御覧になつて頂きたいのでございますが、農業所得は大体今年十六万九千円、納税失格者を除きまして納税しました農業所得が十六万九千円程度予算を見積つておりますが、平均いたしまして十五万円から二十万円前後の所得者が多いようでございます。でその辺を見て頂きますと農業所得者がどうなるかがわかるのでございますが、年額十五万円の農業所得者で夫婦及び子供二人、つまり本人のほかに扶養親族の三人の場合におきましては現在一万六千二百五十円負担しておりますのが、改正後は八千円になりまして丁度半分に減るのでございます。なお農業所得者の場合は扶養親族相当多いのでございますが、仮に本人のほかに五人扶養親族がおるという場合でございますと、十五万円の所得の場合で現在九千円負担しておりますのが、改正後は二千円になりまして三分の二以上、七割七分減少すると、こういうことになります。二十万円の場合は同じく夫婦及び子供二人の場合三割八分三厘の減、子供四人ですと四割三分減る、こういうことになります。  それから営業の所得者のほうは農業所得者よりも平均所得がより上のほうに行つておりまして、今年の所得見込では二十七万一千円という数十字になつておりますが、二十万から三十万程度の所得者が多い。二十万の場合でございますと今申上げました通りでございます。三十万円の場合でございますと子供二人の場合には二割七分六厘の減、こういうことに相成るのでございます。免税点のほうは給與所得と違いまして勤労控除がございませんのでそれだけ現在も高くなつておりますが、改正後もそれだけ高くなります。世帶主と扶養親族四人、つまり五人世帶の場合でございますと現在九万円になつておりますのが、改正後は十二万五千円。農家の場合はもうちよつと多い場合がございますが、五人でございますと現在十万五千円からかかつているのが、十四万円までかからなくなつて来る、こういうことに相成るのでございます。ただこれは先ほど申上げました控除の平年度分と申しますか、でございますので、二十六年の分は基礎控除五万円の代りに三万八千円、扶養親族控除が二万円の代りに一万七千円になります関係上、八頁の表に示しております通り前に申上げましたのよりも負担の減少額は少くなつております。  それから退職所得につきまして最後に負担の表を掲げて置きましたが、現在は退職所得をいつ受取つたかということと、それから退職後の所得が減つたか殖えたか同じか、それによりまして負担が違うことになつております。それが或る意味におきましては合理的だというふうにも考えるのでありますが、若干不合理な面もございますので、先ほど申上げましたように分類課税をすることにいたしました。従いまして改正後におきましてはすべてほかの所得の如何にかかわらず退職金に対する所得税はこの九頁の一番下の改正案という欄に示しました表の通りになるのでございます。即ち二十万円の場合は先ほど申上げましたように五千円の負担、十五万円以下はかかりません。十五万円以下の場合は現在かかつておりますが、二十万円の場合に五千円、三十万円の場合に一万五千円、五十万円の場合に四万二千五百円程度でございまして相当負担軽減なつております。ここに上に現行として計算いたしておりますのは退職の年の給與金額が例えば十万円であつた人退職金を十万円もらつた場合、そしてその以後、これは十万円というのは丁度六月に退職いたしまして半分所得をもらつておるということを予定して計算いたしております。従いまして今までの所得から見ますと二十万円の所得のあつた人が十万円もらつた場合ということになるのでありますが、そういう設例を設けまして計算して見ますとここに書いてありますような負担になるわけでございます。例えば三十万円で退職後十八万円でございますから、今まで三十六万円の年所得があつて三十万円の退職金をもらつた人の場合は現在では五ヵ年間を通じまして五万四千七百円、最初の年には六万二千八百六十円でございますが、通算いたしまして五万四千七百円になる。ところが改正後は一万五千円と相成る次第でございます。ただ現在は今申しましたように所得が減つたか殖えたか、それによつて大分違つて参りますので、いろいろな場合がございますが、これは先ず年の丁度真中頃におきましてそれ以後退職する前の所得の半分ぐらいになつた場合でございますが、所得が、これよりも所得の多い場合はこれより高い負担なつております。反対に所得がなくなつてしまつた人の場合にはこの表で示したよりも低い負担になるのでありますが、一つ計算例として示したわけでございます。大体所得税に関しまする負担の変更はそのくらいな点でございます。  それから法人のほうも税率を四二に引上げておるのでございますが、よく世間で法人税の地方税を含めました総負担が六〇になるという声があるのでございますが、これは機械的に計算いたしますと、成るほど六〇近くになる。即ち法人税が四二、それから今の法人税に対する市町村民税が所得に対しまして現在五・二五%かかつております。それに事業税一二%、その三つを加えますと五九・二五%になる。御承知通り事業税は実は所得計算上経費として差引きますので、事業税込みの所得に対しましては六三%強になるのでございまして、六〇%よりも大分低いのでございます。その点を補足しまして申上げておきたいと思います。  それから以上が改正に関する負担の概要でございますが、改正税額がどうなるかという問題につきましては、更に別途に租税及び印紙收入補正予算説明表という横書にしました説明をお配りいたしておりますが、それによりまして若干御説明を申上げます。最初の一頁に当初の予算額と現行法による收入見込額、つまり改正を行わない場合の收入見込額、その差引が自然増減額になります。それとそれから改正案を実行した場合の見込額、差引減税額を表で示しておりますが、当初予算額の四千四百四十五億に対しまして現行法による收入収入見込額は六千十三億一千九百万、差引千五百六十八億千五百万の自然増収に相成るのでございます。この一番大きいのは法人税でございまして、法人税が八百五十四億九千八百万程度の自然増収でございます。その次が源泉徴収所得税でございまして、五百七十九億一千八百万、あと酒税が九十億六百万、その他間接税の増収がございますが、申告所得税におきましては若干の五十三億八千万程度の減、富裕税が十三億五千万程度の減ということに相成つておるのでございます。改正の結果所得税におきまして四百七億七千二百万の所得税の減になりますが、そのうち三百六億八千三百万は勤労所得税の減でございます。申告の減が百億八千九百万ほどになります。で法人税は来年の一月一日から以後開始する事業年度から適用します関係上本年度の収入は僅かでございます。来年の三月分は、二月、三月以後の分はこれは来年度收入になりまして本年の收入になりませんので、本年度分は僅少でございます。その裏の、次の四頁の裏に少し細かいことがございますが、右の減税額のうち基礎控除引上げによりまして、所得税が二百四十二億八千八百万減るのでございます。扶養控除引上げによりまして百億八百万、税率改正で六十二億九千百万、合せましてこの三つの改正で四百五億八千七百万、配当所得は源泉課税をいたしますので、本年度としまして約三億円程度の増、その他のさつき申しましたいろいろな小さい改正で四億八千五百万ほど減りまして、所得税で差引四百七億七千二百万の減でございますが、御覧になればわかります通り大部分は基礎控除引上げが一番大きい、その次は扶養控除引上げでございます。それで而も源泉のほうが基礎控除引上げによりまして一番大きく影響いたしておるのでございます。でこの表によりましてもわかりまするように、低額勤労所得のこの基礎控除扶養控除は下のほうに一番強く響くわけでございますが、所得者負担減が全体として一番大きくなつておるということが言い得るかと思うのであります。  それから法人税自然増収を生じました法人税状況を若干申上げておきたいと思います。歳入の積算の基礎につきましては相当詳細にここに説明いたしておきましたので、その内容を御説明申上げるのは省略いたしたいと思いますが、一番收入の大きな法人税につきましては、最近の会社の事業の成績を十分に調べまして実は算定いたしたのでございます。それで大体主な法人百四十社につきまして最近の状況及び下期の見通しを計算いたして見たのでございますが、百四十社の分の昨年の下期の利益が二百九十七億、それに対しまして今年の上期の実績が七百一億、従いまして約二倍三割五分になつておる。つまり二三五%の増、二倍半まで行きませんが、二倍三割五分に増加しております。そのほかこの各社につきまして大体九月の決算見込をとりましたところが、少くとも上期の九〇%程度の決算になるだろう、そういうのを元にしまして調査課所管と申しますか、資本金二百万円以上の法人の利益を推計しております。それから小法人の分はこれはちよつとこの率で伸びるということは望めませんので、生産物価等の動向からいたしまして、昨年度から七割程度利益を挙げておる、こういう前提で計算いたしまして法人税自然増収見込んだのでございます。法人税はすでに予算も当初予算を九月末で一五%ほどオーバーしておる、予算以上に入つておる。この点は先般の国会でも大分もつと殖えるのじやないかという御意見もございましたが、まさにその通りにこれはなりまして、非常に成績が挙つておるようでございます。これは経済指標が雄弁に物語つておると思いますが、その辺は省略をすることにいたしまして、法人につきまして大体全法人の利益状況がどうなつておるのかということを推計いたして見たわけでございますが、それによりますと減価償却を差引きまする前の利益、これが昭和二十五年度が二千、この資料はまだ整理する暇がございませんでしたから印刷にはしておりません。後ほど印刷いたしましてお配りいたしたいと思いますが、申上げますと、償却前の会社の利益が二十五年度は二千六百八十五億でございましたのが、二十六年度は六千七十九億円程度と見ております。で、もう一つ前の二十四年度は千百九十四億円程度でございます。これはもう実績で二十四年度のところは千百九十四億、従いまして償却前の利益は昨年は一昨年の倍以上になり、本年も更に倍以上になる、こういうふうに非常に顯著な改善でございます。それに償却金額も大幅に増加いたしたのでございます。これは再評価によりまして殖えましたのと、耐用年数の合理化によりまして殖えましたのと、近代化等の特例償却をやりましたために殖えましたのといろいろな事情がございますが、その金額昭和二十五年度が五百五十九億円程度でございましたのが、二十六年度は千百十五億円程度と見ております。もう一つ前の二十四年度は再評価がいたしておりませんので僅か百五十九億、つまり一昨々年は百五十九億程度の償却であつたのが、本年は千百十五億程度の億却になつて、その償却を差引きました課税所得の利益でありまするが、その利益が昨年は二千百二十五億に対しまして、今年は四千九百六十四億円程度に増加いたしました。それから法人税や市町村民税を差引きました税金を拂つた残りの利益も相当増加いたしました。配当金も昭和二十五年度は百八十四億でございましたのが、本年は五百七十五億円程度に増加すると見ておりますが、配当、それから賞與、その他の社外に出す分を差引きまして、会社の積立金になる部分が、昨年は九百四十二億程度でございましたのが、今年は二千四百七十七億円程度に増加するだろう。従いましてさつきの償却と社内の積立金と合せますと、昨年は千二百二億円程度の広い意味の社内留保ができましたのが、今年は三千五百九十二億円程度の会社の自己資金の蓄積ができる、こういうことに大体なるものと見ております。而もこれは今申上げましたように、下期の決算も上期の決算も大体九割程度押えまして計算いたしておるような次第でございますので、先ずいろいろ事情もございますが、十分なところではないがまあ妥当なところではないかというふうに考えておるのでございまして、朝鮮動乱後、法人の我が国の企業の状態も著しく改善されつつあるということは言い得るかと存ずるのでございます。なおこういう点に対しまして、詳細な分析はあとで表によりましてお配りするつもりでございますが、概要その通りでございます。こういうように担税力相当増加いたしておりまするので、この際といたしましては、法人について若干の増税を行い、個人所得税をできる限り軽減するというのが、租税政策として妥当ではないかと実は考えたような次第でございます。  それから所得税納税人員のことですが、これは補正予算説明に出ているのでございますが、わかりにくいのでかいつまんで申上げますと、給與所得の納税者は現行法で行きますれば、本年度九百七十八万六千人になる。ところが改正法によりますと八百八十八万人ほどになります。つまり九十万六千人減る。申告所得税のほうは現行法で行きますと四百八十九万三千人になる。ところが改正法で行きますと三百八十万三千人程度になる。差引きして百九万人程度の減少、合計いたしまして、申告給與と合計いたしまして、現行法で千四百六十七万九千人になる。ところが改正法によりますと千二百六十八万三千人になりまして百九十九万六千人ほど減る。この一番所得税の重かつたの昭和二十四年度で、これは均衡財政で所得税軽減ができなかつたので一番重い年でございます。この年の給與所得の納税者が千百六十万人、申告所得税の納税者が七百五十一万八千人、合せまして千九百十一万九千人でございました。その当時と比較いたしますというと、改正後は六百四十三万六千人ほど納税者が減少する。一番減少するのは農業所得者でございまして、申告所得税昭和二十四年度七百五十一万八千人から、申告所得税全体でございますが、改正後は三百八十万三千人になります。約三百七十一万五千人減ります。この減る中に営業所得者等も若干ございますが、大部分は農業所得者の納税義務者の減少でございます。なお詳細な点につきましては、営業者、農業者の内訳につきましては、別途資料を作成して御説明申上げたいと思います。大体以上でございます。  それから直接税、間接税の問題がよく問題になりますが、これはお手許に配りましたものの、又元に戻りますが、租税及び印紙収入補正予算説明という横書の資料の一番後にその表をつけてございます。これによりますと、昭和二十五年度が五五%の直接税がございましたが、当初予算におきましては五三・七彩に減つたのでございます。補正予算現行法の場合も法人税勤労所得税の自然増収を含めましたので、六一%に増加するのでございます。それが改正の結果、今度所得税減税を図りましたので、若干下りまして五八・七%ということになります。税制としましては所得税相当減税して参りましたので、直接税の自然増収が間接税よりも多いために、殊に法人の自然増収が多いために、このような結果になつた次第でございます。これも御参考までに申上げておきます。  なおその他細目の点いろいろ御説明することもございますが、今日はこの辺でとどめておきたいと思います。
  21. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 次に連合国財産補償法案につきまして内容説明をお願いいたします。
  22. 松永義雄

    松永義雄君 その前にちよつと資料を主税局長に請求いたしたい。
  23. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) どうぞ。
  24. 松永義雄

    松永義雄君 先ほど法人のことで御説明がございましたが、そのうち若しできますなら法人の営業費と申しますか、会社の総利益金、総収入から営業費はどれくらい使われておるか。それからもう一つ、自己資本と称するものは融通資金と建設資金と称されると思いますが、大体その目度がつきましたら数字及びその割合を一つお願いいたしたい。それからこれは主税局の御関係でないかも知れませんが、産業合理化にどれくらい自己資本が使用されているか、新らしい人員の整理とかという意味でなく、機械の設備とか工場設備増築といつたような積極的なそういう産業合理化にどれだけ自己資金が向けられているか、その点数字の資料を御提出願いたいと思います。
  25. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 只今の数字はいずれもなかなかむずかしい数字でございまして、全法人について調べたものはありませんが、主な法人につきまして調べましたものをできるだけ御希望に副うように調整いたしたいと思います。
  26. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 ちよつとそれに関連して……。いずれ御提出願えると思うのでありますが、今度の税制の基礎になつ国民所得の見方が一つ、それからいま一つは主として個人の生計費関係する問題でありますが、賃金、物価、料金それと生計費関係について資料を頂戴いたしたいと思います。
  27. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 国民所得につきましては一応概数は出しておりますが、なお経済安定本部で確定的なものを目下整理中でございますので、間もなくできますからお出しできるかと思います。  それから賃金、物価生計費との関係につきましても資料を作成いたしまして提出いたしたいと思います。
  28. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 今の問題に関連いたしまして、およそ出ております国民所得の総額は幾らくらいにお踏みになつ計算が出ておりますか。
  29. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この租税収入の見込国民所得の算定とも緊密な関係を持つております。課税所得を元にいたしまして、それぞれ生産物価状況を引伸ばしておりますので、国民所得に乗つかつておるわけではございません。両方並行いたしまして算定いたしまして誤りなきよう期しておる次第でございます。その数字によりますと大体四兆四千億か或いは四兆五千億程度ではないかと思いますが、これは安定本部で最後の計数を整理いたしておりますので、その際に申上げたほうがよろしかろうと思います。
  30. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) それでは連合国財産補償法案内容を御説明願います。
  31. 内田常雄

    政府委員(内田常雄君) この法律案は過般政府委員より提案趣旨の御説明がありましたように、今回の平和條約の第十五條の規定に基きまして国内法として制定することと相成つたのであります。すでに御承知通り、平和條約の第十五條の(a)項によりまして、日本に所在する連合国人財産の返還のことが先ず規定いたしてあります。その返還の義務を日本国が負うのでありますが、これらの連合国人財産が返還できないか、又は戦争の結果損傷若しくは損害を受けておるときには日本国政府がこれを補償する。その補償の仕方につきましてその規定を特に日本の国内法できめる。こういう仕組が平和條約の十五條に書かれておるのであります。この連合国人財産の補償に関する義務は、第一次大戦後のヴエルサイユ條約以来第二次大戦後にできましたイタリーの平和條約或いはブルガリア、ルーマニア、フィンランド等の平和條約におきましても、これは敗戦国の義務として規定されておるところでありまして、而もこれらの補償の義務が前に申述べましたように従来出ました條約におきましてはすべて條約自体の中に非常に詳しい規定が置かれております。イタリーの平和條約の七十八條、それからブルガリアの平和條約の二十三條、ルーマニアの平和條約の二十四條、或いは遠く遡つたヴエルサイユの平和條約の百七十九條というようなところに、一條にはなつておりますけれども、各項を分かちまして相当詳細な規定が置かれておるのであります。従いまして特にそれぞれの国が国内法でそういうことをきめる必要はないことになつております。ところが日本の場合におきましても初めの條約の構想、私ども承知いたしておりますところでは、やはり前例に倣いましてこの補償義務に関して相当詳しいものをこの條約自体の中に、或いは條約の附属書として規定するような恰好になつておりました。然るところ、日本の條約の場合には急速にできるだけ多くの連合国の足並を揃え、條約を成立せしめる必要が生じましたので、余り補償のことにつきまして細かしいものを條約の中に織込むと、却つて細かい議論が生じて條約の早期成立ということに支障を及ぼすことにもなろうというので、條約のうちにおきましては現在十五條に規定せられておりますように、極く簡單に、ただ日本国政府は連合国の財産について損失の補償の義務がある、併しこの補償する際には、その財産は開戰時にあつたものに限るというような極く大綱原則だけを掲げまして、その詳細のことを国内法に譲る。こういうような新らしい企てが行われたように承わるわけであります。併しこの法律自体は次に述べますように條約の規定として織込むべきものでありまして、日本国側が内閣と国会の協力によつて自由に法律内容を規定できるというわけには行かないのでありまして、先ず内閣側が條約に織込むべき内容の構想を受けまして補償法案というものを作りまして、それを連合国と打合せをいたしまして連合国の承認を経たものを本年の七月十三日閣議決定をいたしまして連合国に示しまして、その示された閣議決定法案というものをこの條約のうちに取入れまして、條約文にもありますように補償の原則の後を受けて、日本国の政府は一九五一年の七月十三日に閣議で決定した連合国財産補償法案よりも不利でない條件を以て連合国人に補償を與える。こういう規定の形になつておるわけであります。そういう情勢の下にこの法律が出ておるのでありまして、これは全部で二十五條になつておりまして比較的簡單なものでございます。  大体内容といたしておりますところを大きく三つに分けまして、第一は、條約の補償の原則を受けまして、それを敷衍、或いは制限をいたしまして補償の実施上の原則をきめております。第二には補償するための各種の財産についての損害額の算定方法相当詳しく数量を用いましてきめてございます。財産の種類を申しますと、日本国内にあつた一切の連合国人の財産、権利というものに損害、損失があつた場合補償する。有体物から始まりまして、ものの所有権、株式であるとか、地上権、地役権等の権利等に至るまで各項を分ちまして、この物理的、経済的の損害額の算定の仕方をきめたのでございます。それから第三に規定しております事項は、第二の損害の算定額を受けまして、それに対する補償金の支拂方法、請求方法等の手続などの細かいことをきめております。なおそれに関連して若干の雑則を設けております。以上三つの部分に分かれております。  そこで初めに戻りまして、第一の補償の実施原則についてでありますが、この法律案におきましては第三條と第四條でこの補償の実施原則につきまして定めてございます。第一條はこの法律が今回の平和條約と関係があるということを間接的な表現で謳つてあり、第二條はいろいろな定義が掲げてあるのでありまして、実体的なものはございませんが、第三條、第四條が一番実質的なところになります。そこでこの補償の原則でありますが、この條約及びこの條約を受ける法律を通じまして、この補償の原則を立てております。大原則としては、読んで字のごとく連合国人の財産の損失について補償するのでありますが、連合国人をとらえるに当りましても、又その財産をとらえるに当りましても、いろいろな制限と言いますか、限定を第三條と第四條できめました。この限定はいろいろございます。これは主として補償をしたければならない。日本側の利益の問題につきまして、連合国財産に補償するといつても、できるだけ限定された範囲で補償し、講和後の日本の財政のかなり苦しいであろう状態をできるだけそれに調和せしめるという趣旨でこの限定をいたし七おるのでありますが、限定の第一は人に関する限定であります。相手方は連合国及び連合国人でありますから、この連合国及び連合国人というものは講和條約の二十三條における連合国及び連合国人と全く同じでありまして、日本と戰争をしておつた国、或いはそれから分離した国であつて今回の平和條約に署名をし、且つ今後批准する国に限られることは勿論でありまして、中立国とか或いは日本と共同して戰つた枢軸国の日本における財産の損失は補償しないことは勿論であります。而もこの連合国人も第三條で限定をいたしまして、それらの連合国人の中で今後補償を受け得る者は次の三つに限るということが第三條に書いてあります。その三つと申しますと、大体財産を押収したり、損失を生じた元の原因を作つたのは、御承知の敵産管理法、或いは工業所有権につきましては、工業所有権戰時法というような法令に基きまして、軍側が強権を以つて、連合国側の財産なり権利なりを管理、処分したということに基くものでありますから、そこで連合国人の中においても、この補償の適用を受ける者は、敵産管理法によつて法令上敵国として大蔵大臣が告示した国に限る。連合国は今度平和條約に調印した国も四十数カ国あるわけでありますが、大蔵大臣が敵国として告示した、当時敵国として告示した国は英米蘭の三カ国、及びこれらの属領に限るのでありまして、先ずさような限定を與える。その次に敵産管理法により告示された国だけでは余りに狭過ぎるから、それ以外の国でありましても、日本の政府なり或いは政府の権力を代表する者が、日本人には加えないけれども、敵国だけの人間を対象として特に加えたいわゆる戰時特別措置によつて、その者の身体を逮捕、監禁、拘留したとか、或いはその者の財産について管理処分をしたとか、そういう戰時特別措置を加えた国に限るという限定をいたしまして、最後にこの敵国としての告示も受けず、又具体的に身体又は財産について逮捕、監禁、処分等を受けた者だけに限つても、これ又連合国の範囲とは非常に開きがあるものですから、以上申上げました二つの要素のほかに戰争中を通じて日本国内におらなかつた、そのために自分では財産の管理のしようがなかつたという連合国人については、或る限定した範囲で損失の補償をする。こういうことにいたしまして、最後のものにつきましては第三條の二項を設けまして限定的に書いてございます。つまり繰返して申しますと、連合国人に対して補償するのであるけれども、その連合国人の中で更に限定をして、特に狭い範囲にその補償を受ける主体を限つたということでございます。  それから限定の第二は原因の限定でございまして、今回の平和條約の第十五條におきましても、戰争の結果損失又は損傷を受けたということになつておりますし、イタリーその他の従来の講和條約におきましても、大体同じような表現を用いまして、戰争の結果の損害というものが一体どの範囲でとらえるかということは必ずしも明瞭でありません。従いまして我が国の場合にも、戰争の結果という字の読み方によつて補償の範囲が広く持つて来られるということになつては、これ又日本側の負担が増大いたしますから、戰争の結果という、その損害の原因を第四條におきまして、具体的に制限的に列挙いたすことにいたしまして、五つの項目を立てたのでございます。大きく五つ並べてはございまするが、これ又一まとめに申しますと大体三つでございまして、その一つは直接の戰鬪行為によつて損害を受けた場合に限る。つまり空襲等で損害を受けたということになつております。ただ御不審に思われるのは、補償いたします場合の戰鬪行為、或いは空襲というのが日本軍の戰鬪行為、空襲等によるばかりでなしに、敵国、即ち連合国側の空襲等によつて、連合国側、連合国人の財産が損害を受けた場合でも補償しなければならないというふうに規定されております。この場合日本軍の行動によつて日本軍の戰鬪行為によつて損害を與えたものだけに限るというふうには振り切れなかつたわけでございますが、これは各国の例を見ましても、又補償をするからには、日本国内において損失を受けたものの中で、連合国側の軍行動によつて損失を受けたものは補償しないというふうには講和條約上の義務としてはそれで振り切れなかつたわけでございます。それから原因の二番目は第四條の二号、三号、四号の中に分けて書いてあるものでありますが、これは戰鬪行為ではなしに、先ほども触れました戰争中日本人には課せなかつたけれども敵国だけを相手にして特に課した敵産管理法その他の戰時特別措置、その措置自体によつて加えられた損害、その損害を補償する、こういうのが第二の原因として掲げてございます。これは例えば敵産管理人自身が管理の仕方が悪くて損害を與えたとか、或いは工業所有権戰時法というような法律で、連合国人の特許権をどんどん取消したり、或いは或る人に限つて特許の使用権を認めておつたのを、日本政府が構わずに不特定の多数に專用権を認めて、又どしどし連合国人の特許を使わしたというような特別措置、更にこの敵産管理の結果第三者に売拂われた、その第三者が乱暴な取扱をしたために連合国人の財産をなくしてしまつたという形になると思います。原因の第三番目はこの四條の五号に掲げてあるもので少しずれているような感じもいたしますが、結局は同じでございまして連合国人の財産が日本人に処分されて、それが更に平和條約ができるまでの間に連合国の占領軍によつて接収された、接収された結果特定の損害を受けた、その損害に対する救済はその財産のタイトルが、名義が日本人になつているために日本人だけは補償を受ける。例えば日本人が接収に対する反対給付をもらつて、それに保險をかけて、それが火事で燒けて保險金は日本人がもらつた、その本当の持主である連合国人に対しては先ず現在まで如何なる救済の方法もないというような形になるわけでありまして、これもおかしい話で、連合国軍の財産を補償するとすれば、日本人が保險金をもらつたり、或いは接収の対価をもらうのは、日本人としてもともと敵産管理人に金を拂つて、それで自分の本当の所有権に今日までしておるわけでありますから、それはそれで正当でしようが、連合国人に対して何らかの救済をしなければならんということにもなるわけでありまして、且つ又平和條約の十九條の(a)項とか、(d)項とかいう、日本人は連合国人に対しては一切の戰争請求権を放棄するとか、或いは占領中占領国軍の日本国民等に與えた損害等につきましては、裁判上の請求や何かをしないというような事項があります。そういうのと裏腹の関係になりまして、第五号の占領軍による特定の損害というものが加えられておるのであります。  以上申上げました第三條と四條が補償の原則と申しますか、補償の範囲を、條約を更に碎いて限定いたしてありまして先ほど述べましたように三條、四條を設けるにつきましては、日本側の負担を軽くするためにこの法律案を連合国側と折衝いたします際に、日本側の立場や苦衷を述べまして、できるだけ絞つてもらいたいという趣旨でここまで限定し得たような次第でございます。必ずしも十分に限定し得なかつた、更にもつと小さく限定すればそれに越したことはなかつたかと存じますが、ここまで絞るというのもやつとであつたような状態でございます。  それからその次の規定事項になります損害額の算定方法ですが、これは先ほどから申上げましたように、各財産ごとに規定してあるのであります。いろいろ書いてございますが、結局は原理は同じでありまして、要するに開戰時にあつた連合国人の財産を開戰時と同じ状態に返す。返せん場合にはその差損を補填する。こういう趣旨でございますから、連合国人の財産を返すことが先ず第一で、返したものが開戰時よりも状態が惡くなつた場合に、返還した際における状態を開戰当時の状態に戻す。その戻すために必要な金額というものを補償時の物価等計算して損害を算出する、こういう趣旨でございます。又返せなくなつてしまつたものについては返還時というものがございませんから、返還時の状態を開戰時の状態に戻すということができませんから、かような返還できないようなものにつきましては、現実に補償する際において開戰時と同じような状態のものを新たに取得する分の補償でございます。又特別の場合において連合国人の財産そのものは戰時中管理、処分をしなかつた、ただ連合国人の身体について特別の拘束を加えたというような場合には、これは先ほど申上げましたように補償の範囲に入つて行きます。その場合には財産は返す必要はない。日本側でこれをセクウエスターしておらないのでありますから、返す必要はないが、損害だけ補填するという場合も出て参ります。かような場合には講和條約の発効時というのをとらえまして、その発効時の状態をとらえまして、開戰時と同じような状態にして返すために必要な金額を補償額とする。こういうような建前になつてございます。ただ株式等につきましては特別の規定がございます。連合国人の株式は何百万株かございまして、戰時中おおむねこれを敵産管理に付しまして処分したわけであります。今日すでに行われております連合国人財産の返還に関する政令によりまして、この株式についても返還はいたしております。一株額面五十円の株式を返還すれば、一応株式自体については完全な返還が行われたわけで、損失補償はないようでありますけれども、この返還された際の株式を以て代表する会社の状態が開戰時と非常に違つておる。開戰時に会社が所有しておつた財産が戰争の結果非常な損害を受けておれば、それを代表する株式というものはそれだけ中身の価値が下つている、こういう趣旨の下に、株式についてはたとえ株式そのものを返還しても、会社そのものの損失を一遍洗つて見て、その会社の損失を連合国人の持つておる株数といいますか、拂込金額にプロラートで割り掛けて見て、その分を旧株式の所有者たる連合国人に補償するという仕組になつております。あとでも申しますが、それらの場合無條件にそうするのではなくて第十二條等におきまして、会社の損失を計算する際に、いろいろなものを差引いて決して補償のし過ぎにならないようにいろいろな工夫をいたしてございます。それから第三の補償金の支拂、或いは請求の手続に関する事項でありますが、ここで先ず申上げねばならないのは、第二として申上げましたこの連合国財産について算定した損害額というものと、日本政府が補償する補償額というのは観念上違えてございます。損害額というのは算定しました上、それからいろいろな金額控除してその残を補償する、こういう仕組をとつております。例えば具体的に損害額がありましても、同じ連合国人が他の場合において財産上の利益をすでに受けておるという場合には、受けたものを差引いて残だけを補償するというような仕組がとつてありまして、この点につきましても、他の講和條約等において実施の際に非常に問題があると思われる事項をあらかじめ打合せの上取入れまして、損害額というものは必ずしも補償額ではない。補償額というものは損害査定額マイナスアルフアというものが補償額になるのだということを誤解のないように謳つてあるのであります。さようにして補償金の額がきまるのでありますが、補償金を補償するにつきましては連合国人側の補償金の請求を待つて、初めて日本政府は補償するという建前をとつておるのでありまして、この補償金の請求期限は條約の効力が発生しました後十八カ月に限る、十八カ月以内に、補償金の支拂請求をしない場合には、請求権を放棄したものとみなして、日本側は補償をしないという規定を十五條等に置いてございます。これは返還の場合でも同じでありまして、返還のほうは條約にその規定がございますが、條約が効力を発効して後九カ月以内に限つて連合国人は返還の請求ができる。日本政府がその返還の請求を受けた後に六カ月以内に返還を実行する。九カ月以内に返還の請求がない場合には、残つておつた連合国人財産については日本政府において自由な処理方法をきめるということが條約十五條にあるのでございますが、補償についても同じ趣旨の規定を設けております。この点はイタリー條約における補償の規定、或いは返還の規定とはかなり違つておりまして、日本との平和條約のほうが進んで、おると申しますが、日本側にとつて利益に規定されておるのでありまして、イタリーの條約におきましては、返還の義務、或いは補償の義務というものはイタリー政府の当然の義務とされまして、相手側の請求がなくても、イタリー政府自身が進んで返還しなければならない、自分で損害を査定して補償しなければならない、一定の期間までにイタリー政府のほうが返還なり補償なりを履行しない場合には、今度は更に期限を付けて連合国人はイタリー政府のほうに請求を持出せる、こういうふうな規定になつておりますが、我がほうの法律案及び條約におきましては、初めから相手側の請求を待つて、請求期限の到来を待つて打切る、こういうような仕組になつております。なお補償の原則のところで申し忘れましたが、返還と補償との関係におきましては、仮に財産に損失があつた場合に、日本側が請求に応じて何でも補償することをしないで、先ず返還の請求をさせる、そうして例えば損失を受けたものでもそれを連合国に引取つてもらう、損害を受けた部分だけ補償するという趣旨の下に、返還の請求をしない場合には補償の実行は日本側はしない。必ず先ず返還、裏から言いますと、返還の請求をしない場合には補償請求権を放棄したものと考えるというような規定を第三條に織込んでございます。  それから補償の支拂でございますが、これは第十七條あたりが主なる内容に相成りますが、すべて円貨で日本国内において支拂う、それを海外にいる連合国人等が送金を受ける場合には、無條件送金を無論認めるわけではないので、すべて日本人の送金と同じように、外国為替管理法の適用を受けて送金の申請をして、日本の為替状態が許すならば認める、一応は国内における円貨支拂を以てすべて解決するということにいたしております。尤もこの十七條にも第二項がございまして、元来連合国人の財産自体が外貨であるもの、言葉を換えますと、外貨表示による金銭債権とか、或いは外貨表示の公社債というようなものを持つておつて、それを敵産管理その他で日本側が処分して、その分を補償しなければならんというような場合には、財産そのものがつまり外貨でありますから、これに対しては原則として日本政府がやはり財産の実体である同一外貨を以て補償しなければならんということを承認いたすことになつております。これは他の條約の側においても同じであります。ただその場合にも、無條件で直ちに外貨を以て補償するのではなしに、外貨を以て補償することを承認はするが、併しその支拂方は日本の為替状態の許す最も速かな時期において外国為替に関する法令の規定に従い請求権者が補償金の外貨による支拂を受けることができるようにする、こういうことにいたしておりまして、結局は円貨で支拂を受けたものと余り違わない。やはり日本の外貨ポジシヨン次第によつては外貨になるけれども、状況によつては補償金の外貨支拂を保留するということにいたしております。この場合、十七條に第三項を設けまして、さように面倒臭いことになるならば、円貨で支拂を受けて結構だという話合いがついた場合には、外貨表示の財産でも円貨で支拂つて補償を打切るという規定が置いてございます。なお十九條という規定を設けまして、支拂金額の一会計年度に制限をいたしております。又後に申述べますが、大体補償金の要支拂額というものは、今日の状態において推測して見ますと、先ほど期限内の請求の問題がありますが、期限内にすべての連合国人が請求して来たとしまして、それに対して誠実な補償をしたとした場合に、大体その金額は二百億乃至三百億の範囲じやなかろうか。一応我々の机の上の試算では細かい数字を出して二百六十二億というような数字を出しておるのでありますが、大体二百億乃至三百億くらいだろう、大体そう大きい金額にはならないのでありますが、それにいたしましも、そう一遍に拂うのではなしに、一会計年度百億以内ということで支拂をする、そういうことにずらして参る、こういう規定を置くことを連合国側と打合せの上規定が置かれたことになつております。その他の事項につきましては、細かい手続的の事項、或いは日本側の損失補償決定通知額に対して異議がある場合の救済規定がございますが、おおむね事務的の規定でございますので特に説明を省略いたします。  次に補償に関するいろいろな数字でございますが、補償総額は只今申上げましたような金額になるのでありますが、大体この中で補償を受ける大口の国は、米国が一番多くて、その次が英国、あとはよほど細かいようであります。又先ほどの十七條の二項によりまして、仮に外貨で支拂う分が出たとしましても、その金額はおおむね全体の二百億乃至三百億の金額としまして、その二割程度以内じやなかろうかと想像いたしております。これらの数字の詳細につきましては、かなり大ざつぱなものでございますが、お手許に先ほど配付をして頂くようにお願いいたしておきましたが、続いて外国財産課長の佐々木君から数字について説明いたしたいと思います。
  32. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) お手許に御配付いたしました「連合国財産補償法案参考資料」について概略御説明申上げます。補償の対象になり得る財産といたしまして計数的に掴み得ますものは、資料の揃つております敵産管理に付された連合国財産でございます。敵産管理に付されましたものにつきましては、敵産管理人が管理財産目録というものを作つておりましたので、これを集計して作成いたしました。敵産管理に付されなかつた財産も補償の対象になるわけでございますけれども、身体の自由を拘束せられたか、乃至は財産について特別に敵国人として不当な処分がなされたかということは、申請を待たなければなおはつきりしないという状態におきまして、この表からは一応省いてございます。敵産管理せられました連合国財産といたしましては、当時の十七年頃の評価といたしまして、総数は一番上の欄の一と書いてあります「敵産管理に付された連合国財産」の計の一番下を御覧願いますと、四億三千七百万円という数字になつておるようであります。これを国別に見ますというと、米国二億二千二百万円、イギリスが一億九千百万円、オランダが千三百万円ということになるのでございます。その他とありますのは、敵産管理法上敵国として告示せられました国は、米英蘭及びその属領でございますが、米英蘭の国に属する人の管理に入つておりました保管財産も、又敵産管理法によりまして管理の対象となつておりますので、本来の所有者が英米蘭以外のものに属しますものをその他として書いてございます。この中にはフランス人等も入つておるわけでございます。種類別に申しまして、土地が百二十二万坪、当時の価格にして四千万円、建物が十三万九千坪余り、当時の価格にして二千六百万円、動産が四千八百万円に上つております。株式は二百七十万株余り、当時の評価で、額面額ではございませんけれども、評価で一億一千万、公社債が三千七百万、その他でございます。これがこの補償法案によりまして補償の対象となり得る財産の主なるものだろうと考えております。そのほかに連合国人個人の財産以外に連合国の国が持つておりました財産も補償の対象になるわけでございますが、このものの数量を連合国公館として挙げてございます。連合国が日本において有しておりました大公使館、領事館がそれでございます。但しこの公館につきましては外交特権に基きまして、建物の登記というものがございません。ございませんために坪数でお示しすることはできませんでした。総計では百十カ所あつたことになつておりますが、まだ調査の行届かぬ不明なものもございます。この百十ありましたもののうちで、連合国が所有権そのものを持つておりましたものは更に少うございまして、二十三カ所が連合国の所有に属したものであつたということになつております。借家が七十七ございまして、これについては補償すべきものは中の動産だけであるというふうに考えられます。この二十三ございました連合国の持つておりました公館のうちで、全焼したものは九、一部戰災を負いましたものは五というふうな数字が出ております。三番目に補償の対象となります財産の特殊なものは、連合国人の持つておりました工業所有権でございます。工業所有権につきましては、開戰時の連合国人が持つておりましたものとして、特許庁の調査いたされましたものを挙げてございます。特許権では約三千件ございました。その三千件のうち工業所有権戰時法に上りまして、取消され、自由に使用し得るように開放されましたものは、千三百件余りございます。そのほか一定の範囲に限りまして、日本政府が所有者と関係なく使用を認めましたものが九十二件ございます。なおこのほか連合国人の側から言わせますと、連合国人の承諾を得ないで、勝手に移転せられたものがあるという主張がございまして、この特許権につきまして補償をすべきものは、この数よりも更に殖えるかも知れないというふうに言われております。実用新案権につきましては、七百五十七件あつたわけでございますが、これのうち戰時中料金を納めませんでしたため、その他の理由により消えましたものは四百七十三件あるのでございます。意匠権は六十六件ございました。これは殆んど全部が戰争中料金を納めなかつたこと、或いは期間が満了したことによりまして消滅しておるのでございます。なお商標権は開戦時一万余ございました。このうち取消されましたものは五十四件あるという数字になつております。  以上が開戰時にあつた連合国財産といたしまして補償の対象となりますものの主要なものを掲げたのでございます。そうしてこのうちすでに残つておりましたもので返されたものが約六割ほどございます。ここに掲げました数字は大蔵省のほうで所管しております物品についてだけ資料を集めまして、挙げてございます。土地については七十七坪、建物については六万三千坪というふうになつております。大体この返還は、返還可能な財産については、約六割程度は終つておるものと考えております。この返還が終つたものにつきまして財産の損失があります。更に返還を今後すべきもので返還が不可能なものにつきまして損失が出るわけでございますが、これらを推算いたしまして補償額の見込を推定いたしました。土地につきましては、おおむね返せないという事態は起きないものと考えまして計算からは一応除外してあるのでございます。建物につきましてはサンプル調査をいたしました結果、おおむね三分の一程度の損害があると見られましたので、これを全体に及ぼしまして、三分の一坪数に価格を乗じまして、管理時価格を乘じまして、それに建築材料指数によりまして物価騰貴率を見込んで計算いたしました。それが五に書いてあります建物の十六億でございます。動産につきましては大体八割程度がサンプル調査の結果損害をこうむつておるように見られますので、この率を掛け、更に物価指数によつて百八十倍余りの騰貴率を見込みまして計算してございます。  株式につきましては先ほど局長から御説明がありました通り、株は返しますけれども、株を発行しました会社の実体財産の損害を計算し、それの比較率を掛けて補償することになつておりますので、そのような計算をいたしまして、百十四億という数字を出したのでございます。預金につきましては、預金の円価値の下落に基く補償というものはいたすことになつておりません。円表示の預金につきましては、預金額の表示額そのものを返せば足りるものとなつておりますけれども、市中銀行にありましたものは、現在のところ日銀に集中するような形をとり、更にそのうちから管理人の諸費用等を支出しておりますので、これを補償すれば約一億円ぐらいになるのではなかろうかと計算しております。債権につきましては、外貨建、主に外貨建の債権につきまして為替相場のリスクを当該債務者である日本人の肩から外しますために特定の勘定に拂込みましたならば、債務者の債務は消滅ずるという措置をとりました。円価拂を戰前のレートでいたしまして負担を外すという措置をとりました。併しながら戰後これは先ほど外貨債債務についての外貨建の財産についての補償の御説明をいたしました通り、その外貨額で連合国人の財産を補償されなければならんという原則が立てられておりますので、為替差損というものを政府で負わなければならないことになる次第でございます。そういう金額計算してございます。工業所有権につきましては、その中身の複雑さから適当な評価はなかなか得られなかつたのでございますけれども、開戰時におきましてできていました工業権の実施契約に基く実施料から推算いたしまして、約五十億と見ております。合計が二百六十九億になる次第でございます。
  33. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) この際お諮りをいたします。あとで御懇談いたすべき事項もありますので、本日は各法案に関する質疑は留保いたしまして次回に譲りたいと思います。次回は月曜の午前、主として租税法案について質疑をいたしたいと思います。御異議ございませんでしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 只今通り決します。  本日はこれを以て散会いたします。    午後四時一分散会