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国立国会図書館長(
金森徳次郎君)
国立国会図書館の経過の大要はかねがね御
説明を申し上げようと思
つておりましたが、いろいろな事情で遅れました。丁度過去一年分、つまり
昭和二十五年の十月から
昭和二十六年の九月に至りますまでのことを大略御報告申上げたいと存じております。お手許に出して置きました
印刷物がいろいろございまして、そのうちの二色は
昭和二十五年十月からの分にな
つておりますし、他の二色は
昭和二十六年四月からの分にな
つております。おのおのの組が報告要綱とそれの基礎にな
つておりまする
統計資料と二つからできております。先ず古いほう、
昭和二十五年十月からの分の
経過報告要綱につきまして、そのうちの特に顯著なところの御
説明を申上げますると、
経過報告要綱の第一頁一、組織とありまするところにアラビヤ数字の1に出て来まするところの大倉山分室を設置したということが出ております。これはかねがね懸案にな
つておりました神奈川県の大倉山にありまするところの財団法人所属の
図書館、建物と
書物とを合せまして
国会図書館において管理をする、こういう話がついておりました。丁度この頃はまだ正式な
予算も取れておりませんので軽い処置をいたしまして、大倉山分室という名前で管理しておりました。これが半年のちになりまして翌年の四月におきましては、正式に大倉山
図書館という
支部図書館に
なつたわけであります。
それからまあその辺のところいろいろ細かいことが書いてございますけれ
ども、その紙の裏のところに参
つて行きますと、数字の三というところに
国会への奉仕という項目がございます。そこの中に
調査立法考査局の考査件数が二百四件とな
つております。簡易な考査は除かれております。それから又そこで出しておりまする
調査資料、二十六件という数が出ておりまする。この数は實は非常に少い感じのする数でありまして、調立の
職員といたしましてはもつともつと活溌な活動をなしたいと思
つております。爾後
職員を充實してその方向に進んでおり、次第に次の時期には相当
分量も増しておるような状況であります。
それから更に次の紙へ行きまして、数字の四というところで行政、司法各部門への奉仕という項目がございますが、支部の
図書館が各行政、司法の部門に二十幾つもできまして、その實際運営の結果というものは案外調子よく
行つておりまして、初め法律に出ておりまするときには正直なところ少し軽い
気持で扱われる問題と思
つておりましたが、實際は非常に緊密な
関係を生じまして私
ども図書館のかなり重要なる発展部門がこの行政、司法の
関係のことであるということを自覚して来ておる次第であります。
それから先のところもいろいろ細かいことばかり列んでおりまして、例えば数字の五のところにいろいろのこの
図書館利用の数字等が出ておりまするが、これは次第々々に数が殖えて行くということを示すところに
意味があるのであ
つて、そのほかに特に顯著なものはございません。その同じく数字の五の中の算用数字の8というところがございます。総合目録編さん状況という点がございまして、これは御承知のように我々の
図書館かできました当時から日本にありまするところの目ぼしい
図書館の持
つている
書物の目録を一手に集め、誰でも本を探したい人はそのカードを繰ればどこにどういう
書物があるか、これが非常によくわかる、こういう
趣旨から来ておりまするが、なかなかこれは経済的な負担が大きい
ためにそう早くも
行つておりませんけれ
ども、併しカードの作製が累計いたしまして十五万二千ばかりにな
つております。理想から申しまするとこれが百万ぐらいのカードが
一つの箱の中に納ま
つて来ますると、相当利用価値が出て来ると思いますけれ
ども、まだまだこの
程度でございまして今後努力しなければならんと思
つております。それからその並びの印刷カードというところがございまするが、これも比較的新らしく始めただけございましてまだ十分の効果を挙げておりませんが、ただ日本で新しくできまする出版につきまして
原則としてすべてこの印刷カードを作り、そうしてそれを或る條件の下に
一般に売り出すという
方針をと
つておりまする。この半年の間に六千七百冊分のカードを作り、総数において約七十万枚できておる極く初歩的な立上りでございまするけれ
ども、これが今後発達いたしましたら日本のいろいろな面に
利益を及ぼすことができようとこう思
つております。
それから紙をはぐりまして数字の六のところ、国際交換業務という項目が掲げておりまするが、これはこの
図書館が世界の諸国との間に図書交流の重要な施設になろうという
考えからだんだんと門戸を拡張しております。ここにありますように、国際交換の
ために、外国に送りました
資料は半年の間に三万二千に及び、カードはやはり同じく半年の間に三万余に及んでいるという調子をと
つております。これがもつと広く各種の国に及んで行くというわけでありまするが、そう一足飛びにも行きませんが、だんだんと間口を拡げることに努力をしております。
それからそのほうはそのくらいにしまして、次に別の
昭和二十六年四月から九月に至ります
経過報告の要綱について申上げますると、この期間には組織の面では
調査立法考査局が大きく拡張したということが非常な顯著な事柄であります。
調査立法考査局の
ために六十人の
人員のお許しを願つた
ために、従来の三課四室を、三課十三室に拡充するという方向をと
つております。だんだん必要なる
職員が充実されますれば、もとより理想には遠いこととは思いまするけれ
ども、相当顯著に業績を挙げることができよう、こう
考えております。
大倉山
図書館ができましたことは先に述べたところでありまするが、次の紙のところに出ておりまするが、大倉山文化科学
図書館というものは、今日のところは実は非常に小さい規模のものであります。
書物は十三万冊ばかり持
つておりまするし、建物も充実しておりますけれ
ども、何しろまだ我々がそこに多くの
経費を注ぎ込むことができません
ために、いわば古い
書物がそれだけで封鎖されたような状況でありまして、新らしい
書物を供給するにもまだ十分手が及んでおりませんが、漸次拡張してその価値を高めたいと思います。現在利用者は相当殖えて来ております。
それから表紙を飛んで、二枚目の裏のところ、三、
国会への奉仕というところに参りまして、
立法考査局の考査件数が二百五十六件に殖えているということは誠に喜ばしいことと思
つておりますが、その後の趨勢から見れば、遙かにこれから殖えなければならんものと
考えております。
あと大体のほかの
一般的な面の拡大強化ということは、自然の速度に
従つて伸び行くといふ形にな
つておりまして、印刷カードとか写真複製
事業というようなことも漸進的に動いておる状況であります。なお、私
どもの
図書館といたしましては一遍に手を拡げることはできませんので、少しずつ毎日の新らしい門戸を開いて行くという
考えを持
つておりますが、最近の方向といたしましては
一つは貸出しということをやろうという
気持であります。それは何しろ
書物を読みまする
ためには、貸出を受けたいということは人の思うところでありますが、ただへたにやりますると、直接の利用者を妨げることにもなりますので、本年の一月八日から貸出業務を始めまして、複本があるとかその他の事情によ
つて貸出してもよろしいと思いますものは、無料で相当の期間、外に貸出す。ただ保証金だけは積立てさせて置く、こういう
方法でや
つておりますが、成績は悪くないと判断しております。
いま
一つは、
図書館というものの、いわば中央
研究所とでも言えば、少し話が大きくなりますけれ
ども、日本の
図書館には実際技術的な面の中心点がございませんので、そこで私
どものほうの
図書館で、
図書館資料とでも申しますか、
図書館の知識を得ようとするときに、その部屋に集ま
つて来て、そこの中にあるところの
資料を利用するというと大体の情勢がわかるというような
一つの施設を作ろうと思いまして、現在はまだ試験的でありまするけれ
ども、次第に外国からも
図書館資料に関する
書物などを受取りまするし、又国内の各
図書館の特色を調べるとかというような方向で、いわば図書知識の中心点を供給しようというようなふうに計画をしております。
細かいことは、たくさんございますけれ
ども、大体のところはそんなふうでございまして、なお御
質問等によりまして申上げたいと思います。