運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-10-20 第12回国会 参議院 厚生委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十日(土曜日)    午前十時二十八分開会   —————————————   委員異動 十月十八日委員植竹春彦君辞任につ き、その補欠として上原正吉君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梅津 錦一君    理事            長島 銀藏君            井上なつゑ君            有馬 英二君    委員            上原 正吉君            中山 壽彦君            藤原 道子君            山下 義信君            常岡 一郎君            藤森 眞治君            谷口弥三郎君            松原 一彦君   事務局側    常任委員会專門    員       草間 弘司君   証人    日本学術会議会   員九州大学教授  戸田 忠雄君    元厚生省予防局    長       浜野規矩雄君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○社会保障制度に関する調査の件  (BCG有害無害に関する件)  (右件に関し証人証言あり)   —————————————
  2. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) それでは厚生委員会を開きます。  委員異動がございますので申上げます。植竹春彦君が辞任いたしましたので、新たに上原正吉君が指名せられました。  本日の委員会に際しまして一言ご挨拶申上げたいと存じます。本日は結核予防に関する問題中、特に最近の新聞紙上に取上げられ、国民に多大の不安を抱かせておりますところのBCG予防接種について証人のかたの御出席を頂いた次第であります。参議院厚生委員会では結核予防重要性に鑑みまして、特に小委員会を設けて結核予防の徹底を期するため、各方面から調査をいたしておつたのであります。たまたま日本学術会議有志のかたから厚生大臣にだされましたBCG強制接種に関する意見書が発表せられ、又厚生大臣談として二三の有力新聞に、学術会議学者からの意見書もあり、結核予防の一部について一時停止、即ちBCG予防接種は一時中止するかも知れない、又有害であれば法の一部改正をも考慮するというような意味の記事が御存じのように発表されまして、国民は少からず不安を増大するに至つたと思われるのであります。御承知のごとく昭和二十三年六月予防接種法が初めて制定せられ、それによりましてBCG強制接種が実施せられたのであります。更に本年三月結核予防法が新たに公布されるに至りました際、BCG予防接種のほうは、本予防法に移されて今日に至つております、この際にも本委員会といたしましては、予防接種の問題について慎重審議を重ねた結果、現行通り規定が設けられたのであります。以上の事実によりまして、厚生委員会は本問題について重大関心を持つております関係上、結核予防の小委員長の提議に基きまして、意見書をお出しになりました学術会議かたがた及び斯界の専門家に学術的な証言を得た後、適当な措置を講じたいと思つておるのであります。  これより社会保障制度に関する調査の一環として、BCG有害無害について証言を頂くのでありますが、その前に規定によりまして証人のかたに順次宣誓をお願いいたしたいと思います。宣誓書の朗読を願います。証人のかた、御起立をお願いいたします。全員、傍聴のかたも御起立をお願いいたします。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた]    宣誓書   良心従つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。          証人 戸田 忠雄    宣誓書   良心従つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。          証人 浜野規矩雄
  3. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 御着席を願います。  本日証人として御出席願つたかた日本学術会議有志として意見書をお出しになりましたお一人は九州大学教授戸田忠雄氏、なお当時、厚生省予防局長として予防接種法案をおまとめになられました浜野規矩雄氏の御両人でございます。御証言については戸田博士には、提出せられました意見書に対するあなたとしての御意見がありましたらその御意見、なお昨日、学術会議意見書が追認されたそうでございますが、その模様等をお聞かせ願いたいと存ずるのであります。そのほかBCGに対するあなたの御研究調査等によりましての御見解及びBCG効果副作用強制接種BCG改善等に関する御意見についてお伺いいたしたいと思うのであります。又浜野証人については、特に予防接種法においてBCGを強制的に規定した理由等を含めまして、前証人に求めましたような項目についてお伺いいたしたいと思います。証人戸田忠雄先生
  4. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) 只今委員長からの御要求によりまして、最初総論的に私ども厚生大臣に提出いたしました意見書に対しまして、私がどういう考えを持つてつたかということを述べまして、又昨日までの学術会議における七部会模様につきまして、私の感じておるところを申上げたいと思います。なお、効果の問題その他ここに列記しておりますることにつきましては、必要に応じまして詳しく後に説明したいと思うのであります。  BCG我が国予防接種法に取上げられましたことは、多年に亘る我が国BCG研究団成績が国家的に認められたからであるということは私深く信じております。又実際に、私もその強制接種賛成した一人であるのであります。併しBCGの問題につきましては、私もときどき論文で雑誌に発表しておりますけれども、そのすべてが解決が付いているというわけではないのであります。併しこのBCGのすべての問題が解決されないというそのことが、私どもが平生使つております言葉と、政治家のかたがそれを感じられる場合と、少し感じ方が違うのじやないかということを今度私は初めて認識したのであります。それで私は七月の初めでありましたか、文部省科学研究費による総合結核研究委員会予防接種会議におきまして、BCGが有効無害である、そうして又現在の段階においてBCG強制接種は必要であるといういわゆるBCG白書というのに署名したのであります。併しこれが学術会議決議といつたようなふうに誤解されたことはその後氷解されまして、これは委員会のやはり署名の形のものであるということがわかりましたのですが、それであるのに又、このたびの白書署名をしたということはどういうわけだ、これは私といたしましては非常に愼重にかんがえたわけだつたのでありますけれども、多少誤解を招いた点がありますから、これからその点を説明したいと思います。で、十月の初めに日本学術会議有志という形で塩田部長から日本医師会に集まれ、国家試験問題決定会議あとでありましたが、その時に参りまして、厚生大臣に出されたようなBCG強制接種に関する件というのを見まして、これについて私としてはいろいろ議論をしたのであります。併し結局、私はほかの人々とは形が、意味が、違つておりまして、予防法BCG接種方法改良という点で愼重に考慮して欲しいという意味つたのであります。それだけであつたのでありますが、実はそのことを意見書として附けようかという話が、その時あつたのであります。併し私は、例えばその中にも、この申入れをした私どもBCG接種は無効であるなどとは毛頭考えていない、こういうのが付けてありますから、その意見書を付けなくても世間の人を惑わすようなことはないだろう、こういうふうに思いました。そうして十月十二日、これは私帰りましてからすぐであるのですが、五十一回の九州医学会総会で、私が「BCGに関する意見の問題をめぐつて」という特別講演をいたしますから、その原稿が出ればそれで厚生大臣或いはそのほかのかたにも了解してもらえるのだ、こう思つてつたのであります。ところが、あに図らんや、私のその考えは全然出ずに、又不幸にも十二日の厚生大臣との会見のときも、私が受取りました通知が少し遅かつたために、どうしても汽車が間に合わなかつた。それでその晩出られなかつたのであります。それで私の考えが、そのときに多少厚生大臣に通じているかと思つてつたところが、それが余り通じていなかつたらしくて、むしろ専門でないかたがた意見だけが厚生大臣に通じたのではないかという感じがいたしました。それで私は局長にもこちらへ参りましてから、多分十五日だつたかと思いますが、日は間違つてつたあとで訂正いたします。厚生大臣に私個人で面会の機会を得まして、厚生大臣に会いまして、そうしてその際に、自分はこういう考えでこれに署名したのであるといろいろ説明いたしました。その際に厚生大臣に、若しもあなたはこういう発言をされたけれども、中止するかも知れないというような発言をされたようであるけれども、こういうことによつて一時的にやまるようなことがあつて、そうして接種が跡絶えて、そのために結核が増すといつたようなことが出て来たら誰が責任を持つか、それは持てないんじやないかということも申しました。勿論その意味は、私は強制接種賛成であるという意味であります。それから有効無害であるということを申しましたところが、これに対して大臣BCGをさして結核を誘発するとか、或いはそのほかにそういつたような意味の害が人に與えられるということはないか、確信があるかということを言われましたから、それは私の現在の細菌学或いは結核病学の知識においては全く深い自信を持つておるということをお答えして置きました。なお厚生大臣にそのときも、若しもこういう問題を取扱われるならば、愼重に取扱つて頂きたいと申しましたところが、学術会議の資料によつて大いに考慮したい、こう言われたのであります。そういうようなことがこの学術会議の七部会が始まるまでの経緯だと思います。七部会が始まりましてから、十三人の中で私一人が、ほかのかたがた、中には意見を発表されないかたもありますから、そのすべての人、ほかのすべてということは言えないんじやないかと思うのですが、とにかく強制接種は無理だということを言われる人が多いのであります。私一人は方法改良するという点でやはり署名をしたのであるからして、是非その意味がわかるような形に、何かの形で声明書に対してそれを付記するか、或いは変えて欲しいということをたびたび申しました。結局昨日になりまして、最後にいろいろ話をした結果、あの申入れをしたということを、全員はとにかく認める。あれは取消せとは言わない、認める。そうしてその中には私や井上善十郎君のように現行のままでBCG接種を続けるということが必要であるという意見のものと、それからはつきりしませんけれども、とにかく強制接種はどうも無理だ、併しBCG効果は疑わないといつたようなふたつの意味を含めて、とにかく追認する、こういう意味だと思います。学術会議決議の仕方というのは、七部会なら七部会におきましては、この問題を決議するかということを提案して、そうして全員賛成のとき、それが決議であります。昨日の形は決議の形ではない、こういうふうに私は考えております。それから学術会議総会決議といいますと、七部なら七部で出した案を総会出しまして、出席会員投票によりまして、或いは挙手にでも……とにかく投票によりまして過半数、多数を得たほうに、結局そうして……いや、まあ投票によつて決議がきまるわけであります。それですから私は、昨日のものは七部の決議だとは考えておりません。前の申入れをそういつたような意味で認める、そういうふうに……、だからあのことをしたことが惡いということはない、こういうふうに私は解釈しているのであります。これにつきましては又あと証人から二十四日、二十五日にお話をされるかも知れません。私はそういうふうに考えております。それだけが最初の問題でございます。あとBCG効果の問題、これを続けてよろしうございますか。
  5. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) どうぞ。
  6. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) それではBCG効果につきまして。BCG効果ということは、私は細菌学者でありますが、元来が細菌学者最初研究というものは、BCGというのは牛の結核菌カルメツト方法として身体に害を與えないという形になつたものでありますから、私どもは順序といたしまして動物実験で、その人間に使う菌が動物に先ず害がないか、それからもう一つは、その菌が元の危ない結核菌に返らないかということを必ずいたします。私は昭和六年にベルリンから自分が種を持つて帰りまして、それを人にやるまで約二年半動物実験をいたしました。猿にもさしました。それでもなお不安を持つて人に頼んでさしたのでありますけれども、我々は常にそういう基礎を以てやつているのでありまして、それから効果ということになりますと、動物実験効果があるかないかということを実験いたします。これはすべてのワクチンの研究というものはBCGに限らない、動物実験をやつて、そうして動物実験の結果を見て人に移すのでありまして、今までの常識といたしまして、大体動物実験でこの程度の結果があるならこれは結局効果があるのだ、こういうことが推論される。それからいろいろ研究をしておりましてから、御承知学術振興会の第八小委員会というのが昭和十三年以来長興先生、現在の熊谷先生委員長になられてあの結果が出た。あの結果が発病率を二分の一に減らし、死亡率を七分の一から十分の一に減らしたあの成績は、当時の若い青年、若い子女を相手に主としてできた成績でありまして、これを私どもは深く信じております。併しこの予防接種というようなものを行う場合に、研究目的でこれだけやつたから、その成績を私たちが信じているから、信じているということは認めて頂けるのですが、今度それを使つて、その通りにいつも行かないからといつて、その成績はどうだということを言つて頂くのは、これは学問的でないと思います。これはすべての予防接種といつたようなものは、甲の土地でやつた成績が乙の土地と一致するというようなことはないことがあります。例えば多くの人が、種痘効果が絶対的であるということを信じておられるようでありますが、種痘においてすら非常に濃厚感染場所に行きますというと、接種した人が天然痘にかかる。これは満州であるとか、或いは内地でも非常に濃厚な流行が起つて来ますというと、天然痘にかかります。併し天然痘BCGなどに比べればその効力は遥かに大きいからして、その点を比較するわけには行きませんけれどもBCGはとにかく二分の一程度、この二分の一ということに対して二分の一ぐらいの効力強制接種に移すのは無理じやないかというようなことを言う人があります。私もときに聞くこともありますが、これは結核というものを、結核の実態を余り知らない人の言われることだと思うのであります。二分の一が嘘か本当かということであれば、これは疑いを出してもいいと思うのですが、二分の一だけ出してもいいということは、これは場所によつては、二分の一も減らなかつたろうということがあつても差支えない、こういう意味で、それがきかないかというのじやないですが、二分の一ぐらい、これは大変なものです。一年間に結核患者が何百万人出るか、それが二分の一に仮に減つた考えてみたら、どんなに国民はそのときに幸いであるか、これはもうすぐわかることなんであります。ほかのコレラ、チブス、そういつたものとは少し違いますからして、二分の一減るということだけで、それだけでBCGは十分に強制的に今の現行法接種する価値があると私は信じているのであります。それが効果の問題であります。  それから次は副作用の問題であります。BCG副作用というのに二つ考え方があります。その一つBCGの本来的の意味、それはBCGが場合によりますと、元の牛の結核菌に戻つて本当結核を起しはしないかといつたような意味副作用、それからもう一つBCGをさしたために結核が誘発されはしないか。こういう意味のことを副作用とは、これは言えないかも知れませんが、とにかくそういうことが一つと、それからもう一つ潰瘍の問題、こういう二つに分れると思うのであります。或いは潰瘍に伴うところのいろいろな障害、こういう意味であります。それで前に申しましたことにつきましては、私は動物実験BCGを元に戻そうという実験を随分やつたのであります。これは純学問的に研究しますというと、弱くなつた菌を元に戻すということも非常に興味があるのであります。それでありますから、BCG本当に元に戻れば人に使うのは危ないと思うのでありますが、逆に弱い菌を強くする実験もやるわけでありますから、これは学問的に興味があるのであります。ところが私の経験したところでは、どうしてもこれを戻すことはできなかつたのであります。先ず細菌学の今の常識で、現在のようにカルメツト培養器に植えて置いて、そうしてソウトンで培養して植付けて、そうしてそれが元に戻るというようなことは、やはり細菌学常識からいうと、あり得ないというように思います。それからBCGをさせば結核が誘発するといつたようなこと、これは私自身臨床家でありませんから、その詳しい観察をいたしませんけれども曾つてフランスで、BCGというものは、やはり治療にきかないかということを誰でも考えますが、私どもでもそういうことを考えるのであります。予防に使えるならば治療に使えないか。それで治療目的で以て人に相当大量の菌をさしたところの論文があります。私は、それの名前をちよつと忘れて詳細は言えないのですけれども、それは私の本には書いてあります。それでそういうことがあつて、その場合に治療目的BCG使つたところが、よくもならない、惡くもならないというのがその人の結果でありまして、私どもはそれを信じ、それから動物実験で、やはりBCGをさしたら結核が惡くなるかという実験をいたしました。そういたしますと、どうも惡くならない。それであるからして、積極的にBCGをさしたために結核が誘発されたとか、或いは結核が惡くなつたとかいうようなことは証明できないというふうに考えております。従つてそういつたような意味のことも心配ないというふうにかんがえておるのであります。  それから潰瘍の問題でありますが、これは接種方法と連関を以ちまして、私自身としては非常にこれを重大に思つております。潰瘍というものができて、非常に癒りにくい人が仮にあつた、一年も二年も癒らない人があつたといたしますと、これは誠に気の毒だという感じがいたします。それから特に小さい人であれば、見ておつて気の毒であります。併し結核免疫学のほうから行きますと、潰瘍があるということは、免疫の立場から行くと惡くはない。コツホという人が初め免疫の学説を証明したときに、やはり変化があればあるほど、あと感染に対して抵抗力がある。或いは変化が……、抵抗力がつかんというのは大きな結核免疫のあれでありますから、そこに反応のあるということは、絶えずそこが免疫力を與える原動力があるのだということを、私は信じておるのであります。それですから、潰瘍があればあるほど免疫効力は持続するのであるといつて説明しております。そうして九州などで私が今まで……もう何年になりますか、九州に来ましてから十五年になるのでありますが、実際に接種を始めたのは昭和十三年以後ですけれども、その説明に対して、私の耳に、潰瘍ができたために私に文句を言つて来た人は一人もないのであります。そういう意味でありますから、私は潰瘍があつてもいいだろう、自分の家族に結核患者が出たときにどんなに辛いかということで、いつもそれはよくわかるはずだ、潰瘍ぐらい問題じやない、自分の所の誰が自分子供結核にかからないという自信を持てるか、東京にしても、どこにしても、自分子供自分が護るからそんなものは要らない。こう言われても、いつその子供映画館に行かないか、いつ電車に乘らないか、その前に結核患者がいないかということは言えないと思うのであります。それでありますからして、潰瘍ぐらいは問題じやないということを、いつも私は言つておるのであります。併し我々は人でありますから、やはり傷ができるということは、好ましくないとは考えております。それが私が、BCG改良に対してやはり昭和七年から、初めて看護婦に私がさしたときから、その考えを、工夫しております。それで私は動物実験皮下注射をやる、静脈注射をやる、目からやる方法考えて見ました、或いは皮内注射に移す、乱切乱刺と言いますか、表皮実験をした、昭和十二年頃でありますが、そういうような実験は絶えずしておるのであります。現在のところでは皮内注射法がいいということで、委員会決議いたしておりますから、現在の状態では皮内法でいいというふうに私も思つております。併し準備ができて、審議会でそれが認められたならば、一刻も早く改良方法に移つてもらいたいというような考えを持つております。それから身体に及ぼす障害も一緒に説明しましたが、強制接種に対する意見というものはたびたび言葉の中に出て来ている通りであります。  それからBCG接種のほうの改善に関する意見、これにつきましては、具体的に申しますと、私自身ツベルクリンを先ずもう少しいいものにする必要があると、これは固く信じております。私は文部省科学研究費による総合結核委員会の中の細菌科会長をしておりますが、その中の一つのテーマのツベルクリンの問題というものを扱つて、私現にそれをやつております。これはもつといいツベルクリン、そうしていつも値の変らない立派なアメリカのツベルクリン以上のものを作ろうということで、或る程度までできているのでありますが、まだ製品化するところまでいきませんが、それはできておりますが、そういつたような問題のほかに、現在実際に私が希望しておりますのは、この意見書の中にそれが含まれているのは、現在は二千倍液が市販に出ている。これを百倍液を出して欲しい、こういうのであります。で、百倍液が臨床的に必要なことがあるのであります。これは予防注射の場合ではないのであります。併しやはり場合によりますと、二千倍液でなくても百倍液で出る場合があるのじやないかということを知りたがる臨床家が非常に多い。私どもはずつと前に自分の教室で、現在でも勿論やつておりますけれども、百倍液が欲しいといえば百倍液を出し原液が欲しいといえば原液出しておりました。ところが予防接種法ができてからは市販に出ているのは二千倍液だけでありますから、百倍液を若し出すと、百倍液で若し治療した場合に恐らく治療費が取れない。私のところの百倍液を持つてつたらそれが治療の中から外れるのじやないか。やはり研究目的ですけれども、我々はそれはそうじやない。研究目的でなく実際百倍液を欲しがる人があるから送つてやる。これは意見の中に含まれております。それからあとの詳しい注射法のほうは先ほど言いました通り表皮法、その中に乱切と乱刺を含むということで、それがいいということになれば成るべくそうして欲しい。私はそれがいいと思つております。こういう意味のことであります。  それで結論といたしまして、結局私は現在の結核予防法で行われておるところのBCG接種は一日も休んではいけない、必要である。一日も休んではいけない、或る時期に改良のことができたならばそれに移り変つて欲しい、私としては厚生大臣意見書出した。その中に我田引水といえばいわれるかも知れませんが、一日も早く表皮法のほうに変つて欲しいという意味意見書出したのであります。大体このくらいにして、あとは質問にお答えします。
  7. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 元厚生省予防局長浜野規短雄氏にお願いいたします。
  8. 浜野規矩雄

    証人浜野規矩雄君) 私は今般証人としてお招きにあずかりました者の中で学者にあらざる者の一人であります。私に対しまする証言は、先ほど委員長からお話のありましたように、BCG予防接種法に載りましたときのいきさつその他をお話申上げ、あと只今ありましたような私の意見を述べて見たいと思うのであります。  私が結核に関係をいたしましたのは昭和七年であります。二カ年間の国際連盟の交換留学生で欧米に行つておりまして、つぶさに結核を調べて参りました。この期間におきましては、有名なリユーベツクのツベルクリンのあの事件を真近に見ておつた一人でありますが、日本に帰りまして、図らずも結核のほうの担当主任を命ぜられまして日本の結核の実情を見ておるときに、全く暗夜に灯を見るがごとき実情であつたのであります。これに対しましては、何とかして結核を治さなければならんということで、国際連盟が、国民一人に対して一円の結核予防費用が必要だという実情におきまして、にほんでは僅かに国民一人に対して使つてつた費用が五銭三厘九毛、これは私の頭から死んでも抜けない数字であります。この金で結核が如何にして防げるかということでありますが、そのときにおきまして、日本で早くとつた結核予防治療というものは、石油を飲むと結核が治る、この石油が実に猛烈に出まして、石油の株が上つたくらい石油を飲んだものであります。私のおりましたときに、或る会社から石油をすでに一石飲んだ、まだ飲んで差支えないか、衛生当局の意見を問う。これがその時分の結核の実情であります。昭和十年に初めて結核予防宣伝をいたしまして、津々浦々に結核予防の教育をしたのでありますが、なかなか今の実情とは違つたものであります。その頃昭和十二年長興先生結核予防のためにBCGをやつたという話がありまして、そのときの予防課長高野六郎先生がそれに出席されましたので、私は若き内務省の衛生技官といたしましてこれに列席いたしました。あちこちの国でBCGが失敗しておるときに、ましてリユーベツク事件のあつた後にBCGを再び取上げられることは困るというので、反対意見をすつかりいろいろな方面からまとめまして、若さの至り、これに臨んだのであります。そのときは早速反対を述べましたときに、長興先生がちよつと待て、この会はBCGをどうこうでなくて、何とかして、これらの立派な菌をどうかして立派にして、日本の結核予防に役立たせたいんだ。これがこの会の趣旨であるというお話をいたされましたので、若気の至り、非常に恥ずかしく思いまして、引下つたものであります。その後、学術振興会が鋭意研究されておりますが、これを傍らでときどき出席し、又委員各位のお話を聞いておりますと、本当結核に取組んで、今戸田証人からお話のありましたように、ツベルクリンの見方、やり方、それから始められまして、みんなが結核に取組んで研究されたものであります。こういう研究をして、私は若き衛生技術官の中におきまして、未だ曾つて見ざる真剣なる研究でありまして。えて学者の一人の人が何かすると、片方でけちを付けたがるのが常であるとジヤーナリストその他の人から聞くのでありますが、この研究の全部が集められまして、お互いに研究を持ち寄り、お互いの議論を戦わし、そうして一歩々々みんなが同じ顔になり、結局伝染病研究所のツベルクリンをスタンダードにして、この研究がみんなで行われたのであります。その結果が、この厚生委員会の書類に書いてあります報告となつて出たものであります。その頃私は、結核の主任技師から軍事保護院の医療課長になりまして、傷痍軍人の結核患者治療に当つてつたものであります。ここには若き女性が看護婦として傷痍軍人のためにたくさん出ておりました。これが殆んどツベルクリン陰性であります。この看護婦さんたちをどうかして結核から護りたいというのが私たちの一番の念願でありますが、たまたま長興先生と雑談をしておりましたときに、先生は如何にも言いにくい顔をして、希望する病人にはBCGをさし、余り乘気でない者には黙つて見送つて、君、調べて見てくれないか、こういうことで私も黙つて調べて見た。その数字はやはりワクチンで取上げられまして、発病を二分の一に抑制し、死亡を八分の一にした、その数字はぴつたり合つておるのであります。丁度現在の報告は十八年の報告であります。戦争がますます盛んになつたのであります。終戦後私は図らずも予防局長の重責に就いたのでありますが、その時分の日本の衛生状態というものは何とも言えない状態でありました。小さな部屋の中にたくさん住み込んでおります。また急性伝染病、特に日本では私はその時分まで大正十三年から昭和二十年までかれこれ二十何年になりましようが、この間一遍でも日本国内で発疹チフスなんかを見たことがないのであります。コレラとペストは私自身手がけたことはありませんし、発疹チフスは日本で手がけたことがないのであります。これが国内に蔓延をいたしまして、如何にしてこれを防いだらいいか、このときに発疹チフスのワクチンによりまして、戦後はDDTによつて風を退治しまして、現在においては極めて少数の流行があるだけになつたのであります。同時にチフスその他のワクチンをいたしまして、伝染病は急激に減りました。日本始まつて以来一番少ない時代になりましたことは、お手許に差上げました表を御覧頂きましても如何に減少したか、明治始まつて以来の伝染病をこの予防接種によつて防ぎ得たのであります。一方、結核は依然として蔓延をいたします。ただこのほうは唯一の予防方策を講ずるよりほか構ずべき方法がなかつたのでございます。同時に各家庭におかれましても御推察になればわかるのでありますけれども、小さな部屋に五・六人、七・八人乃至は十何人、何家族というものが、その家の中に入りまして、そうしてこの伝染の機会が実に憂うべきものがあつたのであります。かたわら結核予防会におきましては、その後学術振興会におかれましてもどしどしBCGに対する研究をいたして、これによつて日本の結核を何とかして予防し、国の療養に関する資料を整備して努力したい。これが学者の務めであるという意味におきまして、極力これにつきましては日夜を分かたず研究されました成果が、お手許に配られてあることと私は確信するものであります。そのような関係で、私たちは急性伝染病にとつ組むかたわら、結核にもとつ組んでおつたのでありますが、急性伝染病の予防接種法を立案いたしております最中におきまして、議員方面、国会方面より結核の対策にはこの予防接種BCG以外に方法はないじやないかという意味の、たびたびの御注意を非公式に頂戴をいたしまして、そうして私たちはこれに対してより以上又研究をいたしまして、予防接種法として提出いたしまして、御可決を願つたのであります。その項の結核と申しますものは、お手許に上げましたように日本始つて以来の猛烈なものでありまして、人口一万に対して二八・三という推定数を出しております。私たちが一番考えましたのは、衛生技術官として国家のために一番考えるのは国民一人といえども病気にかけないで、それをお治しすることであります。お手許に配りました各国の結核の表がありますが、第一次欧洲戦争のときにおいてドイツが要するに国民のこの力が欠けまして屈服したときの、ドイツの結核の死亡というものと、その時分におきます日本の結核死亡を比べてみますと、日本のほうが遥かに多い。ところがドイツは僅か五年足らずして結核を撲滅し得ております。ドイツ人は偉大な国民であるということを、私たち衛生関係者並びに各国人はこれを認めるのであります。今度日本が第二次欧洲戦争におきまして各国から注目され、加うるに日本の結核は世界に冠たるものがあるのでありますが、これが数年足らずして結核を防ぎ得るならば、結核死亡率を減少させ得るならば、日本の復興に寄與すること極めて大なるものがあるのであります。日本人に対する信頼感、日本人に対するいろいろなものに対しましては、極めてこれを考え得られるのであります。こういう意味におきまして、衛生秘術官は、結核に対しましては、血みどろになつて、これに向つておるわけです。これは御承知通りぐんぐん減りまして、日本始まつて以来、人口一万に十の数字を割ることになりました。この十の数を割つたというのは、僅か五年乃至六年に割つたものである。これは何が原因したか。これを静かに考えてみればいいのでありますが、こういう数字をもたらします。私たちは何とかして早く結核を少くし、そうしてこの各家庭から、混み合つていて、とても家なんかできないのでありますからして、そういうところから防ぎたい。これには長年の学術振興会のあの真摯なる態度においておやりになつた接種、並びに私自身が体験をいたしましたこの接種等を相顧みまして、これを議会に提出し、これを縷々皆さんがたの御質問に応じましてお答え申上げたのであります。そうして御可決を願つたものであります。この間のBCGに対します反対は、私のところにはどこからも一つもございませんでした。公式には一つもございません。ときどき二三、学者にあらざる人のいやがらせ式と申しますか、取るに足らないといつては失礼でありますが、そのかたは熱心にやつておられるのでありましようが、学者としては一つも私のところにおきましてはございませんでした。私は、一昨日、そのときの予防課長でありました金井埼玉県衛生部長に特に来て頂きまして、君のところはどうかといつて私は聞きましたが、金井部長も同様に、こういうBCGに対しての反対の意見はなかつたということを確言しております。こういうような関係で皆様方によく御説明を申上げ、又議会の答弁書にもございますように、予防接種をいたしますと、これを以て結核予防し得ること、同時にそれに対しては細心の注意をする、並びに心配はないということを申上げまして、これを可決いたして今日に至つたものであります。私はその予防接種法の中に制定せられましてジフテリヤの予防接種のため、京都で八十有三人の尊い子供さんを亡くしましたことに対しまして責任を感じ、職を退きましたが、退くや同時に、私は自分が作りました法律その他に対しましては絶対の責任を未だに感じます。かるが故に直ちに臨床家の群に入りまして、極力その行方を見ておつたものでございます。私が奇異に感じましたものは、自分で聴診器をとつて一人一人来る結核患者に向つて、町の隅で見て参りますというと、驚くべきことには、これら来ます青年が実に結核に対する知識の非常に豊富なことであります。同時に私の口からは言いにくいのでございますが、開業医のほうがどつちかというと、時代に遅れておるのじやないかというような感じを持つたのであります。同時にこの頃になりましてストレプトマイシンというものが盛んに使えるようになりまして、ツベルクリン反応をせずして、熱があれば直ちにストレプトマイシンを注射するような時代であります。結核に対しまする正しき観念というものが、このBCGをするためのツベルクリンのこの注射によりまして、小さな連中が本当結核を理解した。いわゆる衛生思想に目覚めた子供であり、青年であり、大人になつてくれつつあるのであります。この意味におきまして、私たちが予防接種法を制定し、ツベルクリンを以て結核の有無を調べ、そうしてその人に向つてBCGをやつて来たことにおいては、私は何ら今日までこれに対して皆さんに頭を下げてお詫びしなければならないというようなことを一つ感じないのもであります。それでBCG効果におきましては、逐次これが伸びておるということも、死亡数の減少においてはつきりと見るものであります。伝染病を取上げて言うならば、お手許に配りましたように、予防接種した者はすべて皆下り坂であります。予防接種していない者が常態においては上へ上がつております。そういうような関係でありますが、この伝染病もまあ世間から言うならば、隠蔽があるのじやないかというようなことが考えられますが、私自身患者をみまして、チフスの減つたことは物すごいものであります。この話を私が或る日、ずつと前から……進駐軍関係者と本当に何年振りかで会いまして、全く安心したということを申しましたときに、進駐軍関係者は私に手を伸べて、本当にそんなに減つていますかと言う。減つておりますよと申しましたが、まだまだ何か隠しておるのじやないかというような感じを持つてつたのじやないかと……、このこと自体、私は非常に不愉快に思つてつたのでございます。我々が公明正大に伝染病と闘い、そうして私たち衛生技術官はこれに向つて血みどろに取組んで今日までやつて来たのであります。その結果何ものにありや。予防接種そのものによつてできたものと、私は確信し得ると思うのであります。同時にBCGによりまして、結核がぐんぐん下りました。日本初まつて以来下りました。ドイツの下り方よりもまだ日本のほうが下つておる。ドイツは賠償金の中から結核のために費用を割いてもらつた。日本は割いてもらつておりません。日本独自の金でこのBCGを取上げようということは国会方面から出た声であります。又そうして、それを見事に国民が遵奉してくれました。そうしてこれがよい成績を挙げておるのであります。これに対しましては、国民は信頼してBCGをされ、そうして一日も早く国から結核をなくすことは、即ちそれは日本の国民が衛生に目覚め、優秀なる民族となるということを裏書きする大きなものであると、私は確信するものであります。石油で結核が治ると言われていた昭和七、八年頃と、現在の日本の状態を見ますと、うたた感慨無量なるものがあります。それだけ科学的になつた。でありますからして本当に科学に立脈して作られたBCGである。それに向つて本当に真剣に取組んでおる日本学術振興会のお歴々に私は深く感謝するのでございます。そういう意味におきましてBCG効果につきましては、あらゆるものを見ましても、私はこれに対して何ら疑いの余地を持たぬ。又法律を制定いたしました責任者としまして、私は未だに心安らかに思うものであります。これが私が法律制定に当りましたときの気持であり、現在になりましての気持であります。各項目について二三申上げて見たいと存じますが、BCG効果については只今申上げました通りであつて、何ら私は疑いを持ちません。ただ巷間伝えられますところによりますれば、BCGがきいたのでなく……金沢でありますとか、札幌でありますとか、栃木でありますとかというものの資料を議会に出しまして、そこの青壮年に減つたことを私たちが申上げましたが、それは工場が閉鎖されたり、あらゆるもの、みんなが疎開したから減つたのであるという言葉をよく聞くのでありますが、日本全体が決して疎開したものではありません。まして小さな家の中にうようよ住んでおつたことは、それはよく体験しておることでありますが、こういう意味におきまして、青壮年の山がぐんぐん減つた。そうして欧米の結核を減らした国と同じようなカーヴになりつつあるということは、この図面を見ただけで日本が一歩一歩復興しつつあるのであります。この復興に一番貢献したものはBCGであり、同時にそれを作られた学者並びに衛生技術官に敬意を表するものであります。  BCG副作用については、昭和十三年本当に始められましてから、いろいろ聞かされましたし、又私が在官中にもいろいろ人から話されましたが、私の在官中に大半それを調べさせました。又現在も公衆衛生局や何かでお調べになりつつあると思うのでありますが、これに対しましては、何らいわゆる世間の言うような誘発されるとか何とかという問題は、一人もないことを、私ははつきり申上げておきます。これは専門の医者が本当に行つて見ますれば、その疑いは一つもない、要するに研究中でありますので、そういう事例がありますれば、必ず専門家に行つてもらうのでありますが、それは言われている言葉と大変な隔たりがあるのであります。いずれ各専門家をお呼びでありましようが、そういう事例にお触れになるかも知れませんが、私が机の上で事務をとり、そういう専門家にお願いしたものには、そういうものは一人もありません。まして誘発されるということについては一人もないことをはつきり申上げておきます。BCG身体に及ぼす影響、障害の有無については、今の潰瘍でありますとか、或いは膿瘍という以外にはございません。  BCG強制接種に対する意見でありますが、私は先ほど申上げましたが、ジフテリア予防接種で大変な間違つたことをいたしまして、お詫びをいたしまして、その後、退いて現在も謹愼しておるものでございますが、昨年アメリカに病院の視察に派遣せられました。そこで初めて医学の神髄なるものを見たのであります。十何年前に行つたときには、アメリカに対して何ら敬意を表さなかつた。併し今度行つて見たときに、医学の神髄に触れた気がしたのです。それはシカゴ市は人口三百五十万ですが、衛生当局者に会つたときに、シカゴは三百五十万の人口のうち、一九五〇年のジフテリアの患者は僅かに九名であります。一人も死んでおりません。東京の旧都内と同じものであります。それで僅かに九名で、一人も死んでおりません。それを私がどうして少いのかというと、九六%注射している。それは強制注射か。強制じやない、自発的だ。それで私は病院を視察いたしました。病院をぐるぐる視察いたしましたが、私の癖で細かい所を見るのでありますが、冷蔵庫を片端から見たのであります。実に迷惑だつたと思いますが、冷蔵庫の中を見れば大概わたるのであります。開けてもらつて見ますと、シカゴの病院二十幾つを見たのでありますが、どうもシカゴの衛生局長はやかまし屋で困る、併しながら我々の衛生はよくなつているということでした。冷蔵庫の中を開けて見ると、ジフテリアのワクチン、破傷風のワクチン、そのほか若干の血清が大きな冷蔵庫の中に数本だけ入つている。その冷蔵庫の中にきちんと検定してあるワクチンがある。一方、見ておりますと、お母さん連中が保健所に行つたり、病院に行つたりして、みんな子供を抱えて予防接種をするのです。それはジフテリアや破傷風の予防接種であります。強制ではありません。それが徹底して九六%正しき検定をし、正しく保存をして、これを正しく九六%接種するならば、あの大きなシカゴ市におきましても僅かに九名、これが医学の神髄であると思うのであります。ロスアンゼルスに行つて見ますと、二百万の人口、これに対して五十数名のジフテリア患者のうち、八名か九名死んでおりました。何%かと衛生局長に聞きますと、おれの所で自分の手でやつているのは一〇%、開業医で七五・六%、この開業医の冷蔵庫は私は開けて見ませんでしたし、又訪問いたしませんでしたが、要するに、一方は二百万人のうち八、九人、正確にやるならば片方は三百五十万で一名も死んでおらん、これが衛生行政の神髄である。こういう問題に対しましては、保健所その他が真剣に取組んでおる。どうか議会におかれましても、強制接種という問題につきましては、日本が強制接種をしなければいけない状態であるというこの実情を、とくとお考えを願いたいと思うのであります。今日チフスが急激に減つて、伝染病院が結核病棟になつているという現状であります。これは、この注射を以て初めてできたものであります。私たちは、どうか一日も早く皆さんが挙つて理解されて、注射をされましたならば、すべての人が救われて行く、これが衛生技術官に課せられた仕事であり、医師会に課せられた仕事であり、あらゆる関係者の仕事と私は思うのであります。かくしてこそ、日本は復興し得たものと思うのであります。  BCG接種改善に関する意見ということでございますが、これは御承知通り若干腫物ができるということは事実であります。私の子供にも腫物ができております。子供に腫物ができて「赤チン」をときどき塗つてやるときに、私はにこにこ笑つてつてやります。これができておれば、肺病にかからなくなる。私の所にも肺病のことについて相談に来ますが……、私は喜んで月に何回か子供に塗つてやる。そのときに思うのに、御医者さんがうまくうつたならば、こういうものはできなかつた。要するに専門家がおうちになりますと、腫物は殆どできません。これはお医者が慣れることであります。これは私が議会の答弁でも申しましたが、速かに慣らしてもらうようにお願いをいたします。ですから法律を作る前に、日本医師会に参りましてお願いをいたしましたし、そうして又いろいろ御協力を願つたものであります。このBCGに対しましては、先般いろいろ波瀾を来たして問題が起きたようでありますが、私若干ブランクの間に何人かの人々が尊き生命を亡くすこともありましたし、又そういうことが原因で死ぬ人ができるのじやないかと思うのですが、自分が軍事保護院の若干名の看護婦さんに注射をして亡くした、この人たちの霊を考えるときに、感慨極めて無量なるものがあるのであります。私たちの仕事は、一番いいものを科学に立脚して、それを取上げて、これを国民にお願いして、そうして国民が病魔から救われるということについて、私たちは努力して参りました。現在の衛生関係者全部、私と同様であることを私は確信を持つて申上げるものであります。  以上であります。
  9. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 以上で御両名の御意見並びに御説明が終りましたが、これより質疑に移りたいと思います。
  10. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 委員長に前以てちよつとお断り申上げておきますが、お許しを得たいのですが、少々項目がありますので、暫らく一問一答の形で進行を続けて行くようにお願いいたします。  先ず証人戸田先生に伺いたいのですが、只今浜野証人からもありましたように、曾つていろいろな惡い例も聞いたことがない、又副作用についても云々された事例もないということをおつしやつておりますが、又私どももこの予防接種法が実施されてこのかた、これについてかれこれいう噂を聞いたように思つておりません。而も突然学術会議BCGをここに事新らしく取上げられたのは、どういう理由で取上げられたのか一つ様子を承りたいと思います。
  11. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) そのことは簡単に申上げたつもりでありますが、もう少し詳しく申上げます。塩田部長にこの間、なぜこれを取上げたかと言つておる人があるから、先生の考えはどういうふうにこれを答弁するつもりかということを聞いたことがあります。それはずつと四月の終りの総会であつたと思いますが、   [委員長退席、理事有馬英二君委員長席に着く] 学術会議の会員の都留会員からいろいろな話をされておる間に、BCGの問題が出たそうであります。それは恐らくBCG潰瘍問題だつたのじやないかと思います。丁度私はそのとき文部省のほうに用事がありまして暫く座席を外しておつたのですが、そのときに、あとでこういう話が出たが君はどう思うかという話を聞かれまして、私は大体今申したようなことを簡単に、それは心配ないというようなことで説明しておきました。塩田部長はその時分にまあBCGに対する関心を少し持出したのだろうと思います。それから次は、もう一度七部会というのが北海道でこの夏ありました。そのときに又BCGの話が出たそうであります。ところが不幸にも、私は又そのときに学校の用事のために北海道の七部会に出られなかつたのであります。そういうような話があるときに私がいつもいないために、先生は私以外の人からいろいろな話を聞かれたのだろうと思います。だんだんBCGが心配になつて来たらしいのであります。そうしてこの間やはりBCGに対して、STACというのがありますが、日本訳は非常に長いので私忘れましたのですが、内閣にSTACというものがあります。そこで又BCGの話をSTACの委員から持出されたのだそうであります。それで先生としては、ますますこれはBCGの問題を取上げる必要があるというので、在京の阿部慶応の学部長、或いは兒玉学部長、内村教授などと御相談になつて、何とか愼重に考慮して欲しいというようなことを出す必要があるということを感じられたのではないかと思います。そうして丁度私が国家試験委員会出席したので、私も呼ばれたのですが、私は自分自身で以てこういう話が出る前に、九州学会で十月二十七日にこの問題を取上げようと自分思つておりましたものですから、ついそれに署名したわけですけれども、そのほかのことにつきましては、私ははつきりしたことを知りませんです。いろいろ新聞に出ておりますけれども、はつきりしたことは知りません。
  12. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 そうしますると、これを取上げられたのは学術会議の七部の会長である塩田先生が取上げられたのですか。
  13. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) そうです。
  14. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 そこで取上げられたが、何かこれには基礎付けの資料を持つて、これを根拠として取上げられたのかどうかということについては、御事情はわかりませんか。
  15. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) それは私はそのときに、先生は資料を持つておられるかということを申しました。そうしたところが、阿部会員もそれから塩田部長も、いろいろな資料があるということを言つておられました。それでは私は……私というのは自分でございますが、私はこういう資料を持つてこうやるのだから、これはどこへ行つても説明ができる。併し先生がたも若しもそうであれば、その資料を持つていつも準備しておいて頂きたいということを申して、その日はそれで終つたわけであります。二十四日、二十五日には資料を持つて来られるだろうと思います。その意味でいいのでしようか。
  16. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 それではその塩田先生の資料については、あなたは御覧になつておられないわけでございますね。
  17. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) それは聞いただけであります。見てはおりません。書類にしてはありません。話は聞きました。
  18. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 第七部会有志として厚生大臣申入れがしてありまするBCG予防接種に関する件の中に、現段階において世上いろいろ問題があるという一項と、医界にも疑惑を抱く者があるということ、なお研究の余地があるように思われるという、この三つの重要な点があるのでございますが、世上いろいろ問題があるということにつきましては、どういう問題がございますのでしようか。先生もこれには御署名なさつておりまして、世上いろいろの問題についての先ず御解釈を承わりたい。
  19. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) 私自身といたしましては、世上にいろいろな問題があるというのは、深く自分では余り考えておりません。自分自身がこういうことを思つておることも一つの問題になるといつたような程度で、私はこの点には証拠を持つておりません。併し、これをそれでは消して署名をしろというような話があつたのですけれども、まあその点はほかの会員からはつきりした資料を出してもらうと、こういうことになつたものですから、それで私はいろいろな問題というのに余り深い関心を……いろいろな問題というものは余り知らないわけです。
  20. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 次の医界にも疑惑を抱く者があるとありますが、医界にも疑惑があるということになりますと、先生がたはこれは専門の御研究家であらせられるので、どういうところで医界において疑問があるのか、又疑問を抱いておる学者はどういうかたであるかということを承りたい。
  21. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) これのほうなら多少私も知つております。例えば日本医師会の中にも、御承知通り予防接種法が取入れられる場合の論議だつたのではないかと思いますが、武見さんのようなふうにいろいろな意見を持つておられる人もあります。又外国にもBCGが余り効かないというような、マイヤースといつたような人の論文もあります。それからデユボスという学者が、BCGの培養をしておりますというと少し毒力が戻るような実験をしている、こういつたようなものは私が知つている医界の疑義といつたようなものじやないかと思います。併しそのことに対しての説明は先ほど私は大体したつもりでありますが、そんなこともあります。私はそういうのも一つの疑義と言えば疑義だと思います。
  22. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 只今のことでわかりましたが、それに対して専門研究者であらつしやる先生のお考えは、そういう人の根拠が正しいか、或いはそういう人の基礎があるのかないのかということを先生の学問的な立場からお考えになつての御判断は如何でしよう。
  23. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) それはデユボスの考えというのは、デユボスというのは、これはアメリカの結核で有名な学者でありますが、デユボスは培養基の中に、自分の発見した培養基の中に、専門語はなりますが、ツウイーン八十というのですが、この薬を入れますと少し病原性がある程度元に戻るというようなことを言われております。これに対しまして私の考えは、詳しい成績をよく読んでおりませんけれども、それは極く僅かの病原性の回復であつて、恐らく潰瘍が少し出るといつた程度だろうと思います。そのことでもとの牛の結核菌BCGが戻るといつたことは、私の細菌学の知識ではあり得ないと私は思つております。それで而もそういうことがあつても、我々はそういう培養基を使つてずつとBCGの培養をしておるのではありませんから、そういうことはないと私は思うのですが、若しもそういうことで少しぐらい戻つたということが本当としても、実際BCGのワクチンを作つておるのはカルメツトの培養基からソートンの培養基に移して、而も限定してワクチンをさすのですから、その点はやはり心配がないと、こういうふうに思つております。それからマイヤースという人の論文は、対照の取り方がどうも少し不正確で、あの人の成績は余り信用できないといつたような感じ、それから武見さんに対する私の考えというのは、ここで述べる必要はないんじやないかと思いますが、あとのいろいろな、そのことだけに若し何か具体的な案があればとにかく、一つの問題が出ているという例に申上げましたのです。それを具体的にどう思うかということであればお答えいたしましたが、ちよつとお答えできかねます。
  24. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 先ほどの先生の御意見では、BCG強制接種をやつていい、強制接種賛成だという御意見のように拝承したのですが、そうすると只今疑問がある云々の意見がありますが、これは強制予防接種ということについては全然考慮しなくてもいい、こういうものは問題に取上げないでもいいのだという御解釈と拝承していいのですか。
  25. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) そうでございます。そこで、ここで先ほどちよつと私が触れたと思いますが、私どもがなお研究の余地がある、こういうような言葉を、これは学問の場合にはいつも使うのですが、政治家かたがた研究の余地があると、こういうふうに言われる場合にどうも私ども考え方と違つた考え方をされるのが常識であるかのように考えられる点があるのであります。それかた研究の余地があるというのは、非常に惡いのだといつた意味研究の余地がある、こういうふうに言う、勿論私どももそういうふうに言う場合もありますが、研究の余地があるというのは、これをもつと改良する必要があるという場合に研究の余地があるという言葉も使いますので、この点に対しては自分では、自分でそういう考えであるから使つても間違いじやない、ただ説明が足りなかつたというだけで……、それでおわかりでございましよう。
  26. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 先ほど武見太郎君だろうと考えますが、武見太郎君といたしまして申上げるのですが、この人の意見云々とございましたが、実は先般の社会保障制度審議会総会におきまして、武見君からは九州戸田教授はBCG接種に対して反対意見を持つておられる、こういうふうな御発言がございました。私の記憶に間違いがなければ、私はそういうふうに受取つております。まだこれは速記を調べておりませんので、正しい論旨は申上げかねますが、今速記を調べる用意はしておりますが、そういうふうな御発言がありましたので、我々も非常にどういうわけでそういう御発言があつたのかということに疑問を抱いたわけなんであります。勿論只今の先生の御意見を承れば、反対であるというふうには全然とれませんので、併し社会保障制度審議会というような、こういう重大な会議において先生の意見が反対意見であるというように誤り伝えられることがあるとこれは非常に重大なことだと存じます。こういう発言に対しては、先生はどういうふうな御態度をおとりになるおつもりでしようか。なおこれは正確な言葉はいずれ速記を調べましてから、或いは御連絡を申上げるような機会があるかも知れんと存じますが、これに対する御証言一つ承わりたいと思います。
  27. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) 私は東京に参りまして、武見氏が或る席上で以て私の名前を何回も引用をして、戸田教授がこう言つた戸田教授がこう言つたということを言われたそうであります。内容はよくわかりませんのですが、どうも戸田教授が現在の強制接種に反対しておるということを言われたらしい。それで私は非常にびつくりいたしまして、自分発言がどうしてそういうふうに伝えられたろうかということを考えまして、実は速記の抜き書を拝見したのでございますが、それはいいかどうかは存じませんが、若しこれが違法であつたとすればお許し願いたいのですが、とにかくはつきりするために、どなたが速記されたか、或いはメモされたかわかりませんが、こういうようなことを言われたらしいという資料を持つております。これについて一々私は説明したいと思うのであります。これが私の今回における一番大事な発言じやないかと思いますので、その点を一つ申上げたいと思います。  その第一に、こういう言葉があります。「戸田先生は、最初決議においては理想的なBCGの強制には賛成をしておられる。現在市販されておるBCGについては賛成できないと言つておられる。これについて研究されていないと明言されている。」私は武見氏に会つておりません。そして武見氏が見たとすれば、この申入書であるはずなのであります。私も勿論座談の席上で何を言つたかわからないこともありますけれども、武見氏と私が直接会つておりませんし、どうしてこういう言葉が出たかわかりませんが、武見氏はこの申入書を自分で解釈されているのか、或いは武見氏はどなかたの会員の中に知つてつた人があつて言われたのか、私はよくわかりませんが、この言葉だけについて私の考えを申述べて見たいと思います。私は勿論初めからBCG賛成でありますが、理想的なBCGの強制に賛成するという、こういう言葉は、私はあれですが、液体ワクチンのBCG成績を調べて、そうして現在乾燥ワクチンにしているからして、そうして今の乾燥ワクチンに改良の余地のないものではないと、こう思つております。それが今度の意見書にも同意した一つのあれですが、この点を専門的に一つ説明して見たいと思うのでありますが、武見さんも多少私の言葉を誤解されて伝えられていはしないかという感じがいたします。それはよく私も言われるのですが、あなたがたは液体ワクチンでこれだけの証拠を出したじやないか、これが乾燥ワクチンになつているのにどうしてそういうことが言えるか、こういうことを聞かれます。これが一番大事な所なんでありますが、これは是非皆さんがたにもよく理解して頂きたいのですが、これは乾燥ワクチンの製造法というものがどういうものか、乾燥ワクチン或いは凍結乾燥物、これは或る微生物、細菌でなくてもそのほかの微生物でも生の、例えば血清ですね、乾燥輸血というような、乾燥輸血剤というのがありますが、ああいうようなもの、これは植物でも同じだと思いますが、植物は死にますけれども、現在のそのままの状態でそれを凍らして、そうしてそれを乾燥しますと何年もそのままの状態で菌が生きているのであります。性質が全く変らない、これが一番大事な所なんであります。それですから液体ワクチンでやつた成績というものは乾燥ワクチンになつても同じだろうと、これは細菌学的にそう思わざるを得ない、例えばチフスのワクチンを作るのに種をしまつて置くのですが、それを凍結乾燥でしまつて置く、毒力を落さないためにそうするのですが、私はデング熱の病原体を保存したことがありますが、六年間私の所の冷蔵庫でしまつて置いてもちつとも初めの性質と変らない性質を持つている、こういつたのが凍結乾燥のいいところなんであり、それですから凍結乾燥した菌と、それから乾燥前の液体ワクチンの菌とは生物学的に同じだと、こういうふうに私たちはそれを考えております。それでもまだもう一つあれがあるのでありますが、性質は同じだけれども、併し乾燥する途中で菌が死んでしまうじやないか、菌が非常に減ると、これを非常に誤解されるのじやないかと思うのであります。このことは曾つてここで証言されたのじやないかと思いますが、乾燥するというと菌が三分の一ぐらい減つてしまう、それだからしてどうも陽性転化率が惡くなるのだ、こういうことがありますけれども、これは量の問題であつて質の問題じやないのであります。それですからよく改良の余地があると言いますと、それは惡いと、こういうふうにどうも思われるのじやないか、そこが惡いのじやなくて、惡いというのは使えないというような意味の惡いという意味ですが、要するに性質は同じだが少し菌量が少い、併しそれはやはり使用に堪える、こういうふうに私たちは考えている、これに対して研究されていない、これは今まで自分たちがやはり九州で乾燥ワクチンの研究をいたしておりますけれども予防接種法……去年あたりから乾燥ワクチンを自分自身でやつていないと、こういう意味であります。九州ではたくさんやつております。ただ私自身がやつていないと、人にやつていないというだけのことでありまして、私は門鉄のほうの顧問をしておりますが、門鉄なら門鉄、私は現在九州結核予防会の支部長をしておりますから、その関係でもどこで乾燥ワクチンをどのくらい使つているということは想像がつくのですが、これは私がやつていない、そういうようなことを言つたのが武見さんに誤り伝えられたのじやないかと思います。そうであるとすれば、武見さんのあれは別に誤りではなくて、考え方が間違つているというのじやなくて、私の言つているのを誤り伝えられたのじやないかとそういうことであります。  その次に戸田教授が言われるように、理想的なBCGが大量に生産されていないとはつきり明言したこと、これはですね、やはり私はもう少し菌が生きているBCGワクチンができるように成るべくしたほうがいい、それは試験的に、サンプルに極く少量の菌製剤を丁寧に作りますと、今市販のものよりも菌が生きているようなものができるからして、オーバー・ワークになるようなことがあるというと、やはり菌の死に方が少し多いのじやないかというようなことですね、従つて製造所が拡充ができて、研究は勿論当然でありますが、拡充ができて、そこでオーバー・ワークにならないような形で十分に生産ができればもつといい、いいというと、又惡いと、こう思われては困るのですが、もつと菌の生きているワクチンができる。ここで熊ヶ谷先生のあれを読んで見ますと、私は現在のワクチンでもいいと思うのです。今の段階においていいと思うのです。併し現在の段階においては止むを得ないのだからいいのであります。併しそれだからしてこれをやめろとは私は言つておりません。これはもつといいものを造れ、そういう意味であります。ですからそれが少し思い違いがあつて発言されたのじやないかと思います。その後で、大量生産ではまだ完全に行つていない、これは今言つたわけであります。これは市販になつている乾燥ワクチンはいろいろな方法でやつておりますから、そのツベルクリンの陽転は大体少くも七十多くて八十から九十常に陽転するようなワクチンがいいようになつているのに比べますと、少し陽転率の高いものにしなければいけない。それですからこのことは私がどこで言つたか、私の言つたことをどこで聞かれたか知りませんが、それは不思議でありますけれども、私は論文にも書いてありますから、或いは論文を見られたものかも知りませんが、それでまだおわかりにならなければもうちつと聞いて頂いて……。
  28. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 丁度私も乾燥ワクチンのことについてその効果を次に伺いたいと思つておりました。現在の乾燥ワクチンは国家検定が行われて、大体その効力というものが一定されておるはずであります。これについて国家検定の済んだものの効力がいいとか惡いとかいうことは、これはどうして判定いたしますでしようか。いわゆる陽転率において判定するということになりますでしようか。又国家検定というものの基礎に何か疑問があるというようなことが考えられるのでありましようか。
  29. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) 現在の状態では国家検定のいたし方というものには規格がありまして、どの程度に乾燥ができているか、そうしてどの程度までに菌が含まれているか、それから病原性があるかないか、無害か。それから免疫実験というのをやつてその規格に通つているのであります。これは動物実験と試験管の比較なのでありますが、その規格を通つているものが市販において低い高いということがある場合には、これはもう少し菌の数を数えるところをもつと深く下のほうまで下すか、もつとたくさん菌を含んでいるものをしたほうがいいかということもありますけれども、そのことがどうして三〇%になるものがあり、八〇%になるものがあるかと言われると、あるからあれしているのでございますけれども、国家検定というものがそれでは不備かというと、私たちが考えてそう細菌学的に現在の国家検定のやり方が不備であるとは思われない。併し実際に聞きますと、そういうことがあるのはまあ保存のし方といつたようなことにかかつているかも知れませんし、そこは私は検定に携つておりませんから、一つ柳澤氏があとで出られますから、詳しく聞いて頂きたいと思います。ただ私は自分考えをここでちよつと申しますと、乱切法、乱刺法のワクチンにすれば非常に濃いものができる、ああいう操作をする場合に、菌液を濃くすれば濃くするほど、やはり生き残る菌も多いという経験がありますので、そういう点でやはり改良の余地があるのじやないかと思います。
  30. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 よくわかりましたが、併し只今の御発言でもよくわかつたのですが、現在の乾燥ワクチンを使つて強制予防接種をやつて差支えない、こういう先生の御意見と拝承してよろしうございますか。
  31. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) ええ、そうでございます。これも少し補足しておきます。現在のワクチンでよろしい、よく問題になるのですが、併し効力の低いようなものをやらないほうがよかろう、こんなのはやらないほうがよかろうと、こういう人もあるのですが、結核に関する限りそういうことを、これはよりよいものが勿論いいんだけれども、とにかく或る程度以上の効果があるというものをやめてそこに空白を作るということは困る、こういうことで現在のワクチンで、而も現在のワクチンはだんだんよくなりつつありますから、その点で実際現状としていいと、こう思つておる。ですからそれは武見さんのこの証言とは全く反対な考え方になつておるのですが、どうしてこうなつたかということが私にわからないのです。
  32. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 話があとに戻るのですが、昨年の第七部会できまりましたのが決議ではなかつたというふうにおつしやつたと思うのですが、決議でないが、それでは前に出したのはどういう形で扱うか。これは決議でないが、日本学術会議第七部会としては一応これを認めようということなんでございましようか。そこの意味はどういうふうに取りましたらよろしうございましようか。
  33. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) やはり一番初めに申しました通り、これを決議として採択をするというようなことは言われなかつたわけですが、とにかく十三人の人が大臣出したというその行動ですね、その行動に対して内容的にもこれを認めようというのです。ですから人によつては、それでは全会一致でそれを追認したのだなというふうに解釈するかも知れませんが、私は決議じやない、こう思つておるのです。
  34. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 これは非常にまあむずかしいことになるのですが、併しどこまでも日本学術会議第七部会という名を付けてお認めになつたということなんでございましようか。ただ塩田さん以下のこういう、たまたま学術会議のメンバーである人が、いわゆる本当の個人的の立場で発表したという意味に取つたらよろしいでしようか。
  35. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) いいえ、それは昨日の形は個人的のあれではありません。やはりそれは七部会の追認ということになります。ですから普通ならば全部出して、そうしてこれを決議出して異議はないか、こういうお話になると思うのですけれども、そういう何と言いますか、本当の形に入らなかつたのですけれども、これは内村スポークスマンが新聞記者に説明されておりましたから、その点はスポークスマンからあとでお聞き願いたいと思うのであります。二十四日か二十五日に皆さん見えますから、私はそういうように考えておるのですけれども、その点を確かめて頂きたいと思うのであります。
  36. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 次に浜野証人に伺いたいのですが、予防接種法ができましてから今日まで、先ほどの御証言のように、何も事故がなかつた、それにもかかわらず今こういう問題が起きて参りましたが、こういう問題が起きたのにつきましては、今何かここに現在の制度を改めなければならんというふうのお考えは、大体先ほどの御証言でわかつてはおるのですけれども、なおもう一度承わりたいのです。
  37. 浜野規矩雄

    証人浜野規矩雄君) 先ほど申上げました通りでございますが、BCGが終戦後アメリカが参りまして、日本の医学をつぶさに調べました中で、一番日本の医学の中で感心して帰つたものがBCGと紅波という薬の二つのものを挙げておりまして、このBCGを持ち帰りまして、直ちにアメリカがやりました。これは翌一九四六年九月にWHOのほうが取上げて実施し、又十月にはアメリカ政府が地方庁へ移牒しておることを私たちは聞いておるのであります。同時に二千何百人の人を学術振興会がお調べになつた成績その他から見まして、私どもは今の制度を一切変える必要はない、ただ何とかしてできもののできませんことを、うまい人がやればできません。余り経験のない人がやるとできるのでありますから、やはりそういう方面に一層学術的その他におきまして改善されるようにご努力願えば私はいいのじやないか、こう見ておるのであります。勿論BCGに対しましていろいろ研究をされて改善のありましたことは、これは間違いありません。誰でも望むことでありますが、そういう意味改善は希望いたしますが、今の制度を変えることには賛意を表しません。
  38. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 たまたま日本学術会議からこういうようなことが出ましたので、御承知のように今非常にBCGに対する疑惑が起つておりますので、これの実施方面においても若干の支障が起つて来る、若干どころではない、相当の支障が起るのじやないかと考えておりますが、なぜこういうふうな問題が起つたかということにつきましては、只今戸田先生から承われば、塩田先生が云々というような、どうも大きな根拠がない、こういうことについて、従つて世間ではいろいろな噂をしております。殊に予防接種法はあなたのときに立法された法律である。とかくこういうような噂が出るのは、何か私は伏在したものがあるのじやないかというような疑惑を持つておりますから、そういうものについて何かあつたか、御自身としてそういうお考えはお浮びになりませんか。勿論これは噂その他があつて、あなたが直接こういうところに起因しておるというようなことをお感じになる点はありませんか。
  39. 浜野規矩雄

    証人浜野規矩雄君) こういう騒ぎができたことについて何か感じないかというお話でございますが、BCG研究が、先ほど申上げましたように、極めて真剣に多数の学者がお互いに自分たちの学問を披瀝し合つて、スタンダードをきめ、そうして愼重な態度で御研究をなされたものであります。その御研究は私たちの長い生活におきまして、日本で初めてではないかと思うのであります。これは日本だけではありません、外国でも、世界中でもこれだけの研究は初めてである。BCGを作つたフランスにおいてすら、これだけの真剣な、たくさんの学者が集まつてこういう研究をしたことはないのであります。その研究に対しまして、BCGが日本の結核予防のために非常に貢献されつつありまする折に、こういう問題が起つたということについては、私は割り切れない幾つかのものを持つのであります。これは学者においてもいろいろとお調べを願いまして、私としては自分考えておることをここで率直に申上げてもよろしうございますが、人に関係する問題が多分にございます。ただ私としては非常に不愉快に思いますことは、この科学に立脚した立派な法律を、又科学する人からとやかく批判される、ここでお話になつておられまして反対する人々の名前の中に武見太郎さんという人の名前が出ております。私はよく知つております。この人は私と同じように学者じやありませんが、臨床家であります。私は臨床家という言葉は当らないと思いますが、行政官であります。でありますから、私たちは行政官としまして長い間責任を以てこれを見て参りました。その者が今申しましたように皆さんがたに会い、しつかりした意見を聞いてこの法律を作つたのであります。武見さんの名前はここに出ておりますが、武見さんも先般ここに来られてBCGについて御証言なすつたことがあるんでございますが、こういういわゆる本当に学問をやつたことのない人の言われることについては、もう少しく本当にお聞き下さいまして御疑惑のないようにして頂きたい。同時に科学に立脚しましたこういう行政をいじられますときには、どうかその専門家意見を十分聴取してやつて頂きますことが行政する者の、乃至は政治する者の私は責務と思うのであります。民主主義と申しますが、民主主義はよくものを理解して、そうして意見をとつてやるのが民主主義である、みんなのはつきりした本当意見を聞き、これを責任を以ていたします者が衛生技術官でありますこの連中が地方において困つておるような状態が私は瞼に浮かぶのであります。そういうことは日本の遅れておる衛生行政の非常な退歩である。こういう意味におきまして、何かしら割り切れないものがあるということは誰人も抱くものであります。新聞の伝えるところによりますれば、学閥であるとか、派閥であるとか何かの怨みであるとか、又何かの忠言が出ておりますが、これに対しては私たち実に不愉快に思うのであります。BCGに対しては学閥も何もございません。又予防接種の問題でありますが、これは参議院で慶松薬務局長が問題はないと言つております。私がおりましたときに、このBCGを作りますときにおきまして、そのときは液ワクであります。これは液体であります。これは間違つてはなりませんので、一番熟練しております予防会にお願いしたものであります。今日では乾燥ができ、これは誰人がやつても差支えないものであります。こういう意味におきまして私どもはいろいろ割り切れないものがあります。特に日本の科学、サイエンスを一部の者が迫害した、乃至は科学を一部の者が非常に圧迫した、その圧迫された連中が非常な憂き目を見たというようなことまでいろいろ流布されております今日において、私たちは国際信義、あらゆる問題といたしまして非常に不愉快であるということをここに申上げまして、噂の根源をもつとあらゆる方面で突き進んで頂きたいと思うものであります。
  40. 有馬英二

    ○理事(有馬英二君) ちよつと申上げますが、大分時間がたつておりますが、まだほかに御質問の方があると思いますので……
  41. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 もう一つだけ承わりたいのです。それで浜野さんに対する私の質問を終るようにします。先ほども申上げましたように、今度のこの問題が、BCG接種に対して非常な影響を與え、而もこれが少しあと戻りするのじやないかということを考えておるのであります。又事実私はあと戻りすると思います。先だつても承わりますと、もうすでにBCGを返送して来たものもあつたというふうな噂もございます。而も一方においては今年の上半期においては結核死亡率が非常に減つた、こういういい実例が出ております。この際にこれを押し進めてこそ結核対策というものは確立すると思うのですが、これに妨げられたということになりますと、大変なことなんで、併しこういう事実は事実として出たんでありますから、この事実を挽回するためには何かこれは我々は挽回策をとらなくちやならんと考えますが、殊にこの面に御造詣の深いあなたとしては、この挽回策にはどういうことをやつたらいいというお考えがありましたら、一つ
  42. 浜野規矩雄

    証人浜野規矩雄君) 私は率直に申上げます。大臣が再びBCGはきくということをご説明になれば、それでおしまいであります。
  43. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 それでは私はこれでよろしうございます。
  44. 有馬英二

    ○理事(有馬英二君) それでは井上委員、若し御質問ございましたら……。
  45. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 私は小さいことを一つ二つ伺いたいのでございますが、先ず戸田先生に乾燥ワクチンのことを伺いたいのです。先ほど乾燥ワクチンの量ですが、大変菌が少いときかないことがあるとおつしやいましたが、これは子供BCGの注射をして頂きますと、殊に東京都内に住んで、結核感染の危険があると思われるかたが二度も三度もBCGをして頂いても陽転しないということがございます。これは結局ワクチンの量と申しますか、何か体質によるものじやないでしようか、その点を一つ……。
  46. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) これはどこでもそういう問題が出るのでありますが、私はそれはワクチンが惡いからではないと思います。三回もやればワクチンが惡いからでなくて、やはりそのかたが体質的にツベルクリン反応の出ない体質のかただろうと思います。併し先ほど申しました通り百倍のツベルクリンで調べてどうだろうかという、これは私はやはりしなくちやいけないと思います。ただ二千倍で陰性だからと言つて、それは二千倍で陰性なのでございますから、百倍ならそれは出るかも知れません。併し結核にかかつてつて百倍でも出ない人もあります。これは反応というものはすべてそういうものであります。例を取りますと、ワツセルマン反応が陰性ならば必ず梅毒にかかつていないかということをお聞きになつたことがおありだろうと思います。それはワツセルマン反応というその反応の出ない体質であります。或いはチフスの反応、御存じかどうか知りませんが、ウイダル反応というものがございますが、ウイダル反応が出なくてもやはりチフスの患者があります。それと同じようにあれは反応でありますから、要するに免疫体と抗原との反応ですから、それがくつついておつても反応の出にくい人で、それは私いつもそう言つているのです。それがみんな出るようだつたらこれは人間じやない。生物反応というものは例外がある。これがありますから、今学問で一番むずかしいのは、ツベルクリン反応がいつまでも陰性であるような体質の家系があるかどうかということを調べている、そういう人は実際抵抗力が強い家系か、或いは弱い家系か、こういうことは非常に研究費を頂いて研究しなくちやならない問題、非常にむずかしい問題です。
  47. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 それから今度は浜野先生に伺いたいのでございますけれども、只今の御回答では、橋本厚生大臣が、BCGはきくと一言おつしやつて頂けばそれでいいとおつしやつておられますけれども、御証言の中で技術の点で疑義を持つていらつしやるように拝聴したのですけれどもBCG、これが結局行政面の方で改良すればいいというようなお話でございましたが、これはお医者さんの問題だと思うのですが、お医者さんの教育とか、BCGをなさるかたを、指定医というようなものを作つたほうがいいというお考えをお持ちになりませんか。
  48. 浜野規矩雄

    証人浜野規矩雄君) 私、今大臣が言えばいいということを率直に申上げましたが、これをもつとそれでは大臣専門の科学者とよく膝を交えて、そうしてその科学者の言をよく玩味されて、そうして確信を以てこれをおつしやつて頂く。又ほかのことを発表されることにおきましても、その専門の科学者を中心にして御諮問されるなり、それをされますことが大臣として一番望ましい点であります。私は歴代そういう大臣に仕えて参りました。何らこういう非難を感じたことはありません。今度はこういうことについて実にどうも簡単にしておられます。まして知らないことをしておられます。こういうことは行政官は全部私はできんと思うのであります。これが結局いろいろと問題を釀しておる点であると私は思うのであります。こういう意味で、私は大臣が心配要らんと言われたことは、結核の人を愛すると申しますか、何とかして守つて上げたいというために一生を捧げておる人間であります。こういう意味におきまして私は大臣に多少失礼でありますが、卒直にそういう言を洩らしたのであります。従つて今の指定医その他の問題でありますが、これは私が立法しますときにも、ときによれば保健所、そういう所で専門にさしたほうがいいだろうということを申上げたこともありますが、全部のお医者様が全部結核をよく理解して、どの人も間違えずにさして頂きますことが一番望ましいことであります。そこまでレベルが上りますならば、こういう問題は金輪際起らん問題であります。お医者さんの中でとやかく変なことを言う人があつて、それでそれをこちらの行政官、その他専門家が調べに行くとそれはえらい間違いである、新聞に載つておるのを調べると間違いである、これは新聞その他で出るのでありますが、そのままで終るのでありますが、こういうことは速かに全部まとめられて発表される。要するに疑惑の点はどんどんとかたわらから保健所を通じてやつて行く、保健所におる者は、先ほど申上げましたように結核と取つ組んでおる、公衆衛生と取つ組んでおる、看護婦さんも全部そういうことだと思います。こういう問題になりますので、行政の問題になりますので、これを局長に進言するのでありますが、できれば衛生行政の本当の中枢は全部の医者さん、看護婦さんがよく理解して国民を教育して頂くこと、その過程としてそういう指定医その他を置くことも局長が判断して主管大臣の許可を得るならば、それをしてもいいのではないかと思います。
  49. 藤原道子

    ○藤原道子君 私いろいろ御質疑いたしたいと思つておりましたが、すでに専門家の藤森さんから御質疑もございましたし、まだあとに公聴会が二日に亘つてございますので、今日は時間の関係もございますので、質問は省略いたしたいと存じます。ただこの際一言戸田証人にお願い申し上げたいと存じますことは、私は昭和二十三年の予防接種法が制定されますときに、今日問題になつておる点は十分に質疑、審議いたしたわけでございます。そのときにもあらゆる学者の御意見も聞き、又当局者としてその衝に当られました浜野当時の予防局長とも一問一答のように、今日問題になつております潰瘍という点が将来問題に残らないかというような点で、これ又応答した者の一人でございます。併し私は今日敗戦日本が誇り得るものは、外国に対して誇り得るものは科学の力である、結核に対してBCGが今日の効果を挙げ得るまでによくも科学者研究して下さつたことは常々感謝して参りました。できるならば戦争によりまして外国に與えました損害、文化を破壊し、人類を不幸に陥れたその責任としても、東亜諸地域の不幸な結核患者に対しては、日本の科学者が挙げましたこの成果を以て全人類の幸福のために貢献して行きたい。結核撲滅のこのBCGを以て賠償に充てられたならば、どんなにか幸いであろう、こう言うくらいに私に今日まで念願して来た一人でございます。又立法に参加した一人といたしまして、私は各所を遊説をいたします場合にも、このBCG効果を力説いたしまして、そうして少しも早くこの結核患者の撲滅を図りたいと信念を持つてつております。ところがたまたま今回の問題が起りましたために社会に不安と動搖と疑惑を與えましたことは取返しのつかない痛恨事だと私は考えております。これに対しましてはこの結核予防法の中には法で規定された審議会ができておるにもかかわらず、そこへも諮問されないで七部会有志のかたが申出をしたということだけで、軽卒にも大臣が取上げましたことに対しましては、この責任を飽くまで追及したいと私は思つております。と同時に戸田証人にお願いいたしたいことは、今度の反対の申出をされましたかたの多くは専門のかたでない外科のお医者さんである、解剖のお医者さんであるというような人たちが頭を並べております中に一人戸田証人のお名前がございましたことが、どれほど大きな波紋を與えたことかということを私は非常に遺憾に思つておるわけでございますが、今日の戸田証人の御意見を伺いまして、私はあなたの立場がよくわかりました。この問題がここまで紛糾するに至りましたことには、私も蔭の或る力を感じるものの一人でございます。従いまして立法に当りましてそれが滑り出しておるときに、こういう問題が起るたびに、私ども学者の人たち、いわゆる経験者等をお呼びいたしましてこうした公聴会を開かなければならないというようなことは、もうふるふる私はいやでございますので、今後どうぞこういうことのございませんように一つ御考慮を願いたい。で私の質問は次の機会に譲りまして、今日は時間も遅うございますのでこの程度で終りたいと思いますが、戸田証人学者の立場からどうかこの疑惑を與えたことの一翼を担つたという責任におきましても、どうぞこの疑いの払拭に御盡力願いたい。
  50. 戸田忠雄

    証人戸田忠雄君) 藤原さんから誠に御尤もな御言葉を頂きまして、私は今まで長い間いろいろの問題、と申しましても私は学部長の問題、或いは大学の行政問題、学術会議のいろいろな問題、この程度以上の政治的なものを取扱つたことがないのでありますが、誠に私自身としても何とも言えない思い違いをしたとその点で十分責任を感じております。その思い違いは、私は内閣の省というものの内容を余りよく知らなかつたのであります。それは私自身結核審議会委員でありますから、或る問題が大臣に出ましたならば、大臣という性格は、これは例えば私の大学の例を取りましても、私の所へ或る所から非常に重大な問題が来たときには、私はやはり教授会に諮ります。少くもそれに代るものに諮つて必ず或る発言をすると思うのです。自分の学校に殊に関係が深いような場合にはいたしますが、或いはそれが全国の大学に関係のあるような場合には自分発言をするようなことはありません。やはり日本の民主的の……、これは申しますまい。要するに現在の内閣の省のあり方というものは、やはり或る問題が出たときには、少くも自分が頼んだ審議会委員の所に一先ずそれが来る、それから或いはそれが若しできなければ次官、或いは局長乃至は結核課長、それぐらいの所にその話が来て、そうして少くもそこで一週間や二週間ぐらいは揉んで、そうしてそれからどういうふうにしようかということを発表されるもんだろうと思つてつたのであります。この点に対して私が先ほど申しました通り意見書をつけなかつたのが私としては誠に申訳がなかつた。私は何と言つてBCGに疑いを持つた国民の皆さんにお詫びしていいかわからないと思つておるのでありますが、九州に帰りましても、若しも九州のほうで東京におけるような混乱が起つておるのだとすれば、私は自分が廻つて歩いてでもそういうことはなかつたんだと、私は、要するに世の中のことを少し思い違いしておつたために、こういうことが起つて誠に済まなかつたということを言つて歩くつもりでございます。今後はそういう間違いをしないつもりでありますから、どうぞよろしく御了承願いたいと思うのであります。それから一言だけ……、このことをどうぞ覚えておいて頂きたいのですが、大臣は私にこういうことを言われましたから、学術会議の正確な資料によつて自分は考慮したいと、こう言われましたから、今後何かの形で、しないのが正しかつたとか、或いはあのときも自分ではつきりと中止するということを言われたのじやないように私には言われましたから、若いも事情が判明したから自分はこう考えるんだというようなふうになつてくれれば、先ほど浜野さんが卒直に言われたことも生きて来るというふうに思つておりますが、私は何とかしてこの私の思い違いによる罪をあがないたいと思つておりますが、どうぞ御了承願います。
  51. 浜野規矩雄

    証人浜野規矩雄君) 簡問に……、先ほどちよつと触れたのでございますが、京都のジフテリア事件でありますが、私その当時の責任者でありますが、これは特に検事にお願いいたしまして、克明に調べて見たら、火事やなんかでありますれば、失火でありますれば、相当の理解がありますが、こういうものは全然理解がないのであります。このBCG問題におきましても、こうやつて揉めることのあるうちは成功の一つだと考えるのでありますが、成功ではありませんが、そういう気がするのでありますが、要するにジフテリア問題は非常に子を持つ親にシヨツクを與えたのであります。と同時に我々としてもどうしても子供さんの不安を除くことができないのでありまして、検事におきまして、どうか本人を、山口君を起訴して頂いて、克明にお調べ願いたいと思いますということで、山口君には気の毒でありますが、起訴されまして、二年に亘りまして、いろいろ調べがありました。私も証人台に立ちました。併しながら先般判決で山口君は無罪になりましたから……、予防接種法におきましては何ら疑問はないのであります。又各地区に働いておる衛生技術官におきましては、何ら罪がないことははつきりいたしておりますが、山口君にはかわいそうでありましたがなにしてもらつたのであります。製造過程、検定過程におきまして、当初私たちが強調した通りに改造をして頂きました。もう予防接種につきましては、金輪際十分に注意してやつて頂くならば何ら心配はない。そうして国民全体を守れる立派な文化的な法律であるということを重ねてここでお詫びと同時に、こういう機会に私が証人として出ることの光栄を担いましたので、これを申上げまして、私長い間のお詫びをしたいと思います。
  52. 有馬英二

    ○理事(有馬英二君) ほかに御発言もないようでございますから、本日の厚生委員会はこれを以て終りにいたしまして、散会いたします。    午後零時三十四分散会