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委員外議員(兼
岩傳一君) 私は
暫らく時間を頂戴いたしまして、先般来、この歴史的な十二回
国会の
二條約
審議ついての言論の自由の問題につきまして、
委員各位に私が
議院運営委員であつた当時から問題を提起いたしまして、
各位の御
審議を受け、且つその問題を留保して頂いておるのでございますが、その後私は條約
委員会のほうへ代りまして、更にこの問題を展開させざるを得ない
立場にな
つて参つたのであります。と申しますのは、先般の三十分にも足りない、私の
総理大臣に対する
代表質問において、十一カ所が
削除いたされました。又数日前の
総理大臣に対する
総括質問、これは約一時間でございましたが、やはり二カ所の
削除を受けたのでございます。それで単に私が自分の
発言に対して、
削除を受けたということを、何ら個人的な
意味で自尊心を傷つけられるとか、或いは何か意地を
張つて皆さんに申上げるという
考えは毫もないのでありまして、そうでなくて、この十二回
国会が
日本的なものでなくて、まさに全世界の注視の的において行われておるということであります。すでに
サンフランシスコ会議ではエジプトの全権がこの
二條約に対して、こういう
国民の意思に反して、
自国の領土を
外国軍隊によ
つて占領されておる間は、選択の自由のための
條件が十分でないと判断するに最もよい
資格を持つというようなことを言
つておられますし、又
ネール首相はその後
インドの議会でこういうことを言
つております。「
インド政府は
日本が
主権国として條約第五條に定めてあるような
自国防衛の取極を行う
権利を持つことを
承認する。併しこの
権利は
日本が真に
主権国家に
なつたときに、
日本政府によ
つて行使さるべきものである。條約の
條項中現在の
占領軍が
防衛協定に定めた兵力の一部として残留することを示唆しておるが、この
防衛協定は
独立国家としてその自由を十分に享受する
日本が行な
つた決定ではないという印象を起さずにはいないだろう。」、こういうふうに公正な第三の
立場に立つ国々においても、今回の
二條約について大きな
関心と危惧の念を寄せられております。事実私はこれに対して、我々のみならず、我々の
国民も又危惧の念を持
つておるのであります。併しながらすでにそれが調印され、批准
国会に参つた以上は、我々が論議を盡し、その盡した論議を全
国民に明らか
にして、そうして将来の百年の
日本国民、及び
日本民族の大きな運命をきめるべき
二條約の
審議は、如何に我々は條理を盡しておるかということを明らかにすることは、如何なる会派によらず、無所属であろうと、政党に所属するであろうと、これは重大な責任で、若しこの責任を果さないで、うやむやのうちに不十分な
審議をいたして可否を決定したとするならば、その責任は将来政治的に我々がとらなければならない大きな欠陥として、過失として、私は残るであろうと
考えるものであります。そこでサンフランシスコで調印されました講和條約を見ましても、二十三條のd項に「この條約は
日本国を含めて、これに署名する国によ
つて批准されなければならない。」と、明確に批准の権限を
日本国民に与えております。
従つて日本国民並びにこれを代表する
国会におきましては、何ものにも抑圧されないで、自由に
発言し、自由に論議され、その上で採決されて、少数が多数に服従するという形に進まなければならないと私は
考えます。まして吉田総理以下が事実再々、これは和解と信頼である、主権を有する対等の
立場に立つものであるということを、繰返して述べられておるのであります。然りといたしますれば、私は
日本国憲法第二十一條に基きますところの、保障されております一切の言論、その表現の自由が守られなければならないと
考えるのであります。これはことに問題でありまするのは、我々は被占領国である、被占領国であるから、一九四六年の一月にきめられましたプレス・コード並びに貴族院宛のこれは官庁出版物にも適用されるのだという通知、こういうものに基いて
事務局が、先ほど私が申上げましたように、十一カ所或いは二カ所、こういうものを
削除いたしておる、事務的に
削除いたしておるという点ですが、現に行な
つておるのであります。そこで私はこの十二
国会の劈頭に、そういうことであ
つては困るので、これは
委員長の問題でもなく、又
議長の名前において行われる
にしろ、これは
議長の問題ではない、正に
国会の
運営、そうして参
議院の
運営、ハウスの
運営の問題であるから、この
議院運営委員会において十分この問題を討議し、処理して頂きたいということを、私はお願いした
理由はこの点であります。即ち我々が若し我々の
発言が対等でない、被占領国であるというために、和解と信頼、或いは
日本国の希望によるより、
日本国が
主権国として締結する安保條約について自由な論議が制限されるということになるならば、それは私は非常に重大なことだと
考えます。つまり両條約に賛成するものは無制限に
発言ができ、自由である。然るに反対するとその反対の
理由が非常に制限され、我々の論議が
国民に対して達することができないというようなことになりましては、これは私はこの論議が如何に和解と信頼だとか、
日本国の希望だとか、或いは
日本国が
主権国としてとらわれざる真に自由な
立場だなどという美辞麗句を用いましても、この條約の
審議は明らかに抑圧されたものだと断定せざるを得ないのであります。然りとすれば、これは私どもの会派のみが遺憾とすることではなく、全会派、全参
議院議員の
各位がそういう抑圧された状態において
審議されたということは不名誉なことになると私は
考えます。
従つてこの議運の御決定に基かれまして、
委員長、
議長がGHQに赴かれまして、以上私の述べましたような
趣旨を全会派が御賛成下さいまして、私の以上申上げました。この歴史的な十二回
国会の
運営に関する、言論の自由に関する、疑問を氷解されて、そうしてこの点を
委員長なり、
議長なりから全
議員に通達されまして、そうして十二回
国会運営について、
二條約の
審議について万全の措置が講ぜられたいというのが私のお願いの筋でございます。以上でございます。若しこれにつきまして、なお御
質疑がございますならば、私はなお
考えているところを申上げたいと存じます。