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1951-11-10 第12回国会 参議院 外務・労働連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十日(土曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  委員氏名   外務委員    委員長     大隈 信幸君    理事      徳川 頼貞君    理事      曾祢  益君            團  伊能君            杉原 荒太君            加藤シヅエ君            金子 洋文君            伊達源一郎君            野田 俊作君            西園寺公一君   労働委員    委員長     中村 正雄君    理事      一松 政二君    理事      原  虎一君    理事      波多野林一君            大屋 晋三君            宮田 重文君            赤松 常子君            重盛 壽治君            椿  繁夫君            高橋龍太郎君            高田  寛君            岩男 仁藏君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   —————————————  出席者は左の通り。   外務委員    理事            徳川 頼貞君            曾祢  益君    委員            團  伊能君            杉原 荒太君            金子 洋文君            野田 俊作君   労働委員    理事            一松 政二君            原  虎一君    委員            宮田 重文君            赤松 常子君            重盛 壽治君            椿  繁夫君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   国務大臣    労 働 大 臣 保利  茂君   政府委員    外務政務次官  草葉 隆圓君    労働大臣官房国    際労働課長   橘 善四郎君    労働省労働基準    局長      亀井  光君    労働省職業安定    局長      齋藤 邦吉君   事務局側    常任委員会専門    員      久保田貫一郎君    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    外務省条約局国    際協力課長   須山 達夫君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○国際労働機関憲章受諾について承  認を求めるの件(内閣送付)   —————————————    〔外務委員会理事徳川頼貞委員長席に着く〕
  2. 徳川頼貞

    委員長代理徳川頼貞君) それでは只今から外務労働連合委員会を開会いたします。  国際労働機関憲章受諾について承認を求めるの件を議題といたします。先ず政府から提案理由説明を求めます。
  3. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 只今議題となりました国際労働機関憲章につきまして承認を求めまする件についての提案理由説明をいたします。  国際労働機関は、今次大戦までは国際連盟の一機関として活動して参りましたが、大戦後、連盟の解消と前後してその憲章改正して独立の国際機関となり、且つ国際連合とも協定して、その専門機関となつている国際機関であります。  政府は、この機関加盟することの利益に鑑みまして、機会あるごとに総司令部を通じて、この機関への加盟努力して参りましたが、容易に成功するに至りませんでした。併し幸いに去る六月六日からジユネーヴで開催されました第三十四回の労働総会直前に至り漸くこの総会加盟申請書を提出し得る見通しが付きましたので、直ちに申請書を提出し、同月二十一日に賛成投票百十七、反対投票十一を以ちまして総会承認を得ることができました。  現在国際労働機関は、六十四ヵ国が参加している大規模な国際機関でありまして、世界の恒久平和は、ただ社会的正義の上にのみ樹立され得るという立場から多数の人民に対する不正、困苦、窮乏を伴う諸種の労働条件国際的協力によつて改善して行くことをその目的としております。そのために必要な条約を提案し、勧告を行うと共に、この目的の達成が完全雇用と不断に向上する生産力との下においてのみ可能であるという見地に立ちまして、世界生産資源のより完全且つ広範な利用、生産消費の増強及び極端な景気変動の防止を目的とする国際的、国内的施策後進国の経済的、社会的発展国際的原料品の価格安定、国際貿易量の増加と安定に関し、他の諸機関と協力することをその主なる任務といたしております。我が国のこの機関への加盟実現いたしますれば、これによつて我が国労働者福祉が増進されるばかりでなく、更に進んで労使間の関係円滑化産業高度化が促進され、以て我が国発展に寄与するところは、甚だ大なるものがあると考えます。更にこれによりまして、日本労働条件が法制上完全に国際的水準に達していることを示すことが可能となり、日本が決して低い労働賃金によりいわゆるソーシヤル・ダンピングを行うものではないという事実を広く世界に理解せしめることができるでありましよう。これは従来製品の輸出に当つて日本がこうむつていたこの種のとかくの非難なり、疑惑を一掃することになり、我が国経済の公正な発展を初めて可能ならしめるものであると言わなければなりません。  この機関への加盟に伴い、戦前我が国が未払であつた分担金の問題が起つて参りますが、事務局よりの通報によりますと、一九三八年より一九四〇年に至る三カ年の我が国分担金未払額は、現在の邦貨に換算して約一億二千九百八十六万円でありますが、その金額及び支払方法については、今後毎年負担すべき分担金と共に、国際労働機関との将来の協議により、できる限り、我が国の負担を軽減するよう努力する所存であります。  以上の次第でありますから、何とぞ慎重御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いいたします。
  4. 徳川頼貞

    委員長代理徳川頼貞君) 只今説明になりました本件について御質疑のあるかたは御質疑を願います。
  5. 金子洋文

    金子洋文君 只今説明になりました中に、ジユネーヴで開催された第三十四回の労働総会直前に至り、漸くこの総会への加盟申請書を提出し得る見通しがつきました。同月二十一日に賛成投票百十七、反対投票十一を以ちまして総会承認を得ることができました。反対投票十一というのはどういう国々で、どういう理由ですか。それをお尋ねしたいと思います。
  6. 橘善四郎

    政府委員橘善四郎君) お答え申上げます。我が国ILO加盟承認につき賛成は百十七、反対が十一票ということになつております。反対したところの国はチエツコフロヴアキアの四代表ポーランドの四代表、それからフイリピン政府代表ニ名、それからグアテマラの労働者代表一票という工合で、合計十一票が反対ということになつております。
  7. 金子洋文

    金子洋文君 その理由を聞いておるのです。
  8. 橘善四郎

    政府委員橘善四郎君) 失礼いたしました。全部の十一票に対するところの反対理由が那辺にあつたかということにつきましては、本会議場において反対発言をなさつた国々ポーランド政府代表と、それからチエツコスロヴアキア政府代表であつたわけでございます。で、フイリピン代表演説はなかつたので、如何なる理由でるかということは私どもはただ御想像するよりほかに方法がないということでございます。チエツコスロヴアキアポーランド政府代表反対は、主として我が国日本は現在昔のごとく再軍備をするような態勢ではないかということと、依然として我が国進駐政治下に置かれておる。独立していないのであつて、国際的な条約を締結する権限はないのではないだろうかというような意味の論旨の演説があつて、それを我々は聞いて来ておる次第でございます。
  9. 團伊能

    團伊能君 これを見ますると、滞納になつておる分担金云々のことがございますが、この最後の場合に、これは脱退したのでありますか、或いはその権利をただ中止されていたよう状態でございますか。分担金と申しますと、再加盟ということは少しおかしいように思いますが、そ辺のいきさつを伺いたい。
  10. 橘善四郎

    政府委員橘善四郎君) 我が国は一九三ハ年協力終止通告をいたしたのでございます。ところがILOのほうといたしましては、連盟規約によりまして、二カ年の脱退予告通告というのをしなければならないということになつておりまして、従つて払分担金関係につきましては、協力終止通告をいたしました一九三八年のその年の分と、それから三九年、四〇年ということに一応形式上なつておるということが申上げられるのでございます。
  11. 原虎一

    原虎一君 先ほどどなたかが質問ありましたですが、それに関連しまして、加盟に至るまでの経過について今少しく詳細御説明を願いたいと思います。まあ賛成投票百十七票、反対投票十一票という票数の問題は、いずれにいたしましても、我々国際機関復帰するということが占領下においてなされる、これを国際労働総会表決によつて認めるというのは相当の理由原因があろうと思うのであります。その点についての情勢をお伺いしたいので、従つて加盟に至るまでの経過とその加盟表決に、よつて決定されるというこの事態に如何なる理由と要因があるか。これを御説明願いたいと思います。
  12. 須山達夫

    説明員須山達夫君) 国際労働機関に再加盟するという問題は、大分終戦後、前のほうから起きております。それは国際労働機関のほうで、我が国の再加盟問題が初めて論議されましたのはILOアジア地域予備会議、これは一九四七年十一月の頃にインドのニユーデリーで行われましたが、そのときに日本労働基準に関する決議というものが採択されまして、この決議の中で、日本国際労働機関加入が望ましいかどうかを適当な時期に考慮すべきことということが述べられまして、その後民間の輿論と相待ちまして、政府におきましても、ILO復帰するという必要性を認めまして、昭和二十三年五月の十四日と五月の二十五日の二回に亘りまして、国際労働機関復帰について閣議の決定が行われまして、前の閣議におきましては、我が国講和条約の締結の前ではあるけれども、速かに国際労働機関への復帰を希望し、これが実現のために、先ず労使双方との内協議を開始するということが決定されまして、あと閣議におきましては、先ず使用者側といたしましては、日本経営者団体連盟及び商工会議所でありますが、そういう方面はこれに復帰するということに全面的に賛成である。労働者側、これはおおむね組合員数五万以上の全国的組合でありますが、これはその日までに調査いたしましたところでは、すでに参加賛成見込確実なものが約六五%ありまして、即ち我が国労使の大勢は参加を希望するものと認められますので、速かに連合国最高司令官司令部に対しまして、本件実現に関して援助方懇請するなど所要の手続きを講ずることということを決定いたしたのであります。なお一九四八年四月から六月までサンフランシスコで開催されました第三十一回総会におきまして、総会のほうから最高司令官に対しまして、今次の国際労働総会日本人のオブザーバー代表を派遣せられんことを要請するという決議並びに特に日本労働基準関係のある将来の総会及び産業委員会に同様のオブザーバー代表を派遣せられんことを最高司令官に要請するのが望ましいかどうかを理事会審議することを要請するという決議が採択されまして、この決議は直ちに連合国最高司令官通告されました。これに対しまして、連合国最高司令官から国際労働機関に対しまして、この招請に謝意を表しますと同時に、もう時日が不足であるから、今回は出席はできないけれども、将来は国際労働機関事業に参画することを希望するという旨の回答を発せられました。その第三十一回総会決議の後に、我が国からはいろいろな国際労働機関会議オブザーバー代表を派遣いたしました。ところで本年の二月三十一日に至りまして、連合国司令部から日本政府国際労働機関加盟の意思の有無、それから未払分担金負債承認するかどうかという点についての問合せがありました。これに対しまして、日本政府国際労働機関への加盟を希望しておること、それから未払分担金負債についてはこれを承認する用意があるということを回答いたしました。その後政府は第三十四回の国際労働総会出席いたしまして、日本政府オブザーバー代表国際労働機関への再加盟申請を携行させまして、持つて行かせまして、国際労働機関への加盟に関しまして、労働総会承認を得られることが確実になつた場合には加盟申請を行うという方針を決定いたしまして、司令部の了解を求めました。これに対しまして、連合国最高司令官から、日本の再加盟を積極的に支持するという回答があつたわけであります。そこで総会開催地でございますジユネーヴにおきましては、連合国最高司令官代理日本国オブザーバー代表とによりまして、各国代表の意向がどういうふうであるかということを打診したり、又成るべく日本申請を支持してくれるようにという努力が行われたわけでありますが、その結果総会全体といたしまして、再加盟承認することがほぼ確実となりましたりで、本年の六月八日、我が国代表事務局に対しまして、正式に日本国際労働機関への加盟申請書を提出いたしました。その後労働機関選考委員会総会審議を経まして、先ほどから説明いたしておりますように、賛成投票百十一、反対十一を以て総会によつて日本の再加入承認されたわけでございます。
  13. 原虎一

    原虎一君 国際労働機関復帰に対しては、吉田内閣以前の内閣から努力を続けているということが説明になつていると思いますが、その説明中にありました日本労働基準に対して非常に国際労働機関関心を持つているわけであります。で、この説明書にもありまするが、加盟することによつて日本労働条件国際水準と同様になつて、そうしてダンピング問題等が起るということもなくなるであろう、そういうための効果を現わすというためにも加盟するという理由書の中に説明がありまするが、これは加盟することそれ自体がそういうことを示すものでなくて、国内労働法というものが国際水準に達しているや否や、それが又十分に理解せられて実施されて、実行せられているや否やということが問題だと思います。そこで先般国際労働会議出席された政府委員は、そういう問題に対する国際労働機関関心というものが非常に強い。日本労働基準日本労働者団結権というものに対して、国際労働機関が終始関心を持つているという点から、イギリス代表等から、日本労働基準法並び労働法改悪、いわゆる後退的な改正を行うのではないかという質問を受けている。これに対して如何なる答弁を与えているか。この点を先ず一つお聞きしたいのであります。
  14. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 私からお答え申上げます。私は今回の三十四回総会政府側代表として出席いたしました関係上御答弁申上げたいと思います。  去る六月の八日の日に、日本ILO加入申請書事務総長代理のゼンクス氏に提出いたしまして、ゼソクス氏も事務総長に代りまして、正式にこれを受諾いたしたのでありますが、その後六月の十三日の日に、セレクシヨン・コミツテイの小委員会が設けられましたので、小委員会政府側代表二人が喚問せられまして、各国代表のかたがたからいろいろな質問が出ました。これに対して回答するようにということであつたりであります。その審査委員会の最初に、イギリス代表のかたから先ず第一に質問が出ましたのは、最近のイギリスその他に参る新聞紙上におきましては、日本において労働基準法改正の問題が新聞紙上に伝えられているが、政府はこの問題についてどう考えているのか、こういうお尋ねがありました。私はその答といたしまして、政府といたしましては、労働基準法改正については目下のところ成案を得ていないという回答をいたしました。それはそれだけで済みまして、その次に只今お尋ね労働者集会結社労働者団結権の問題の質問がありまして、日本憲法集会結社言論の自由を保障していると聞いているが、さようかという質問がありましたので、日本憲法第二十一条はさように保障しているということを答えました。更に労働者団結及び団体交渉権利憲法によつて保障せられておるか。憲法第二十八条によつて保障せられておると回答をいたしました。次いで質問が出ましたのは、然るにさよう憲法は保障しているということであるが、国家公務員法、更に最近においては地方公務員法によつて、こうした団結団体交渉権利国家公務員地方公務員について一部制限が行われていると聞いているが、さようか。その通りであるというふうに答えましたところ、国家公務員法制限憲法第二十八条の労働者団結団体交渉権利の保障のこの規定と矛盾していないかという質問がありました。これに対しまして、私は公務員は全体の奉仕者であるという憲法条章並びに権利は濫用すべきでなくして、公共の福祉のために行使すべきものであるという憲法条章に照らし、憲法違反でないと解釈していると答えたのであります。大体それだけの質疑応答があつただけでありまして、従つてセレクシヨン・コミツテイ審査報告書によりますると、かように書いてございます。「労使両者権利に関し、小委員会労使側委員質問に答えて、日本政府代表は、小委員会に対し、一九四六年十一月三日の日本国憲法第二十一条は、集会結社及び言論出版その他一切の表現の自由を保障している旨、また、同憲法第二十八条において、労働者団結及び団体交渉権利が保障せられている旨を述べた。労使側委員は、かかる規定重要性を置くべきことを強調した。」、これだけが審査報告書に出ておるのでございまして、改悪云々、その他の条件につきましては、何ら条件な附せられておりません。
  15. 原虎一

    原虎一君 労働大臣出席されましたか。
  16. 徳川頼貞

    委員長代理徳川頼貞君) 今内閣連合委員会に出ておりますので、今呼びにやつて、来て頂くように申しておりますが、まだ参らないのでありますが。
  17. 原虎一

    原虎一君 間違いないですか。私の聞いているときに登院中だという……。
  18. 徳川頼貞

    委員長代理徳川頼貞君) 間違いございません。
  19. 原虎一

    原虎一君 すぐ出て来られるかどうかお調べ願いたい。  その前にお聞きしたいのでございますが、いよいよ加盟するということになりますと、加盟復帰ということになりますと、第三十一回までに条約が約九十採択されております。日本はこれに対して批准をすでにしたものもある、そうして今後批准をしなければならないというものを一応九十の中の重要な問題、と申しましては語弊があるかも知れませんが、御説明を願いたい。どういうよう態度に出られるつもりでありますか、どういう御方針であるか、その点を承わりたいと思います。
  20. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 私からお答え申上げますが、日本脱退いたしましたあとILOで採択いたしました条約につきましては、できるだけ研究の上批准をお願いするという基本的な態度で進んで参りたいと考えておりますが、一度にたくさんのものをするということはできませんので、そのうち特に基本的な条約、例えば職業安定組織に関する一九四八年の条約並びに職業安定事業組織に関する条約並びに団結且つ団体交渉権利の原則の適用に関する条約、こういつたふうな基本的なものはできるだけ速かに批准をお願いしたい。そうして逐次できるだけ遠かに批准をお願いするようなことが適当ではないだろうか、かように考えている次第でございます。
  21. 原虎一

    原虎一君 過去において日本幾つ批准をしているかということが一つも御答弁がない。それから安定局長は自分の職掌柄安定方面のことのみと団結権のことだけをおつしやつておりますが、労働基準方面はどういうふうになつておりますか。そうしてこの加盟と同時に批准手続をいつ頃なさるのか、この点をお伺いしたい。
  22. 橘善四郎

    政府委員橘善四郎君) 基準局長がお見えになつておりまするので、基準関係のほうは基準局長のほうにお願いいたしたいと思つておりますが、我が国脱退以前に批准いたしましたところの条約は全部で十四条約になつております。
  23. 亀井光

    政府委員亀井光君) 基準局関係につきましては、只今申上げました批准しました十四のうち、七つを含んでおるわけでありますが、その他のものにつきましても、先ほど斎藤安定局長からお話がございましたように、先ず基本的なものから逐次検討を加えまして、できるだけ早い機会に批准をして行きたいと思つている次第でございます。
  24. 原虎一

    原虎一君 労働大臣がお見えにならんのですが、実は大臣がお見えになるのを今か今かと思つてつているのですが、私のお聞きしたい点は、批准を、今労働課長から御説明がありましたそういう条約批准手続をとるに、日本国内法を見まして直ちに批准をとれる、遠かに批准をなし得るというよう状態にあるのか。あるとするならば、その批准をいつ頃手続をなさろうとお考えであるのか。これをお聞きしたいのです。
  25. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 私から安定関係のことについて御説明申上げますと、すでに職業安定関係では失業に関する条約ということですでに批准した条約もありますが、その後の一九四八年の職業安定の組織に関する条約、これは非常に基本的な条約でありますので、私ども事務当局のものといたしましては、次の通常国会批准をお願いしたい、こういうふうに考えております。なお一九四八年の職業安定行政組織に関する条約と、現在の職業安定法との関係につきましては、職業安定法制定の際に、実はこの条約の草案みたいなものがすでに発表されておつたのでもありますし、それからILOから脱退しておりましても、その間にできておりました条約等も頭に入れながら、事務当局といたしましては立案をいたしておりましたので、一九四八年の職業安定行政組織に関する条約批准いたしましても、現在の安定法改正しなくちやならんといつたふうなところはないと、私ども事務当局としては考えておる次第でございます。
  26. 亀井光

    政府委員亀井光君) 基準局関係の問題につきましては、組織機構に関しまする条約につきましては、これは直ちに批准できる状態にあると思います。そのほかの条約につきましては、脱退後の条約は三件しかございませんで、これらの内容につましても、検討を加えておるのでございまするが、非常にその条約内容労働条件に関しまするものは複雑でございまして、すぐそれをそのまま受入れるかどうか、更に検討を加えて参り、その後の判断に資したいと思います。
  27. 原虎一

    原虎一君 あと労政局長関係であり、総括的には労働大臣にお聞きしたいと思いますが、その両氏の見えるまで私の質問を留保しておきたいと思います。
  28. 椿繁夫

    椿繁夫君 只今の原委員の御質問に関連してでありますが、安定局長賛成投票百十七、反対投票十一、特にその中で賛成をいたしましたイギリス代表日本復帰賛成をするに当つて日本憲法労働組合言論集会出版結社の自由を認めておるか、或いは団体交渉権罷業権などを保障しておるかという、ただ日本国憲法条文について単純な質問イギリス代表がなされて、そうして憲法でこういうふうに保障しておりますと答えただけで、他に何らの質問もこちらの答弁もなかつた、こういう御答弁でありましたが、私は日本ILO復帰を許すべきかどうかということを審査いたしまするその委員会において、憲法条文の中でそういうことが書いてあるかどうかということだけを私は質問するイギリス代表ではないと思うのです。それは明らかに現在の日本吉田内閣の下において労働組合の政治的自由と言いますか、憲法集会出版結社の自由を抑圧するような傾向がイギリスなどに来ておる情報によると看取せられるが、このことについて政府代表の意見はどうか、更に続いて労働基準に関する問題でありますが、労働法を最近改悪する意図があるように伝えられるが、今のところは持つていないというお答えをされたように聞きましたが、そんなら今後についてはどうかというようなことをイギリス代表は私は聞きたかつたのではないかと思うのであります。又斎藤局長もそういうことをイギリス代表は聞いておるというつもりでお答えになつているものと私は推察するのでありますが、今簡単な報告書を朗読された。ただそれだけでは私はイギリスが本当に聞いている意図は十分に尽されていないと思う。こういう国際機関我が国復帰ようとするに当つて本案を審査いたしているのでありますから、もつと十分に本当にあつたことを私はお聞きしたいのであります。憲法条文に書いてあるか、ぐらいのことで、国際会議の一国の代表が一国の代表に聞く、それを答えただけだ、こういうことではちよつと私は了解ができないのですが、もつと一つ本当のことをお聞かせ願いたいと思います。
  29. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 私お答え申上げましたことが本当の実際その通りのことでございまして、(笑声)実はこの審査委員会が始まる前に、事務局次長のゼンクスというかたでございますが、このかたがやはり小委員会におきまして、委員長の傍わらに坐つておつたかたでございますが、このかたが審査委員会の始まる前に私を呼びまして、各国から実はいろいろ不愉快な質問もあるかも知れんけれども、そう実体的な質問じやないと、非常に技術的な、法律的な問題を質問するから、できるだけ答えてやつてくれという注意があつた。それで入りましたところが、委員会から、審査委員会が始まるに当りまして、各国からいろいろ質問があると思うから、できるだけ答弁をして下さいという前置きで、初つばなに実は只今申上げましたようイギリス質問があつたわけでございます。向うの委員長から、答弁は成るべく簡単にしてくれという注文までありまして、先ず初つばなにありましたのが、只今申しましたようイギリス代表から、最近のイギリスその他に来ている新聞によると、基準法の改正という問題が新聞に伝えられているが、政府はどう考えているのかと、こういう質問。それでこれは先ほど申上げましたように、目下のところ基準法改正については何ら、成案を得てないということを申上げて、それはそれで済んだのであります。それから団結言論集会結社の問題は、今申上げましたように、国家公務員法地方公務員法の問題まで引きまして、憲法違反じやないかといつたよう質問が、今申上げました通り質問がありました。それで私は、それはこういう条障に基いて憲法違反じやないという解釈をしているのだという説明をしただけでイギリスのほうは済みました。そうしたら今度は次にフランスの事業代表でありましたが、言論集会結社の自由というものを労働者側だけに与えられているのか。日本憲法事業主のほうにもそれを与えているのかと、ちよつと私どうも甚だ受取れないよう質問があつた。そういうふうな質問だけでありまして、あとは非常に純法律的な、脱退前に批准した条約の効果はそのまま続いているのかといつたふうな、極めて法律的な、技術的な質問だけでございました。これは向うがそういうことを気持の中で考えておられたかも知れませんけれども、少くとも向うの質問にはそういう問題は全然ございませんでした。極めて事務的な質問、法律的な質問、それだけに終始いたしております。私何も隠しているわけではございませんで、その他の政府側代表も行つておりますし、国際労働課長の橘君に英語で通訳して頂いております。私は一つも隠しておりません。そのままを申上げている次第でございます。
  30. 椿繁夫

    椿繁夫君 私の伺つておりますのは、最初インドの代表から、日本ILOへの復帰について発議があつて、そこでイギリス代表から、そう簡単にこの賛成をすぐにするというわけには参らん。この委員会日本政府代表を招致して、そうして疑点になる三点を確めた上でないとイギリスとしての態度はきめにくいという経過がその以前にあつて、その上で政府代表がその委員会に招致されたように伺つておりますので、そういう経過から考えますると、今御説明ようなことで私は済みそうにないと考えまするので、そういう経過もあつたのかどうか、重ねてお伺いをいたしたいと思います。
  31. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 六月八日に加入申請書を提出いたしました際に、事務局次長から、この問題は極めて大きな問題であるので、すでに西ドイツがその前に出しておりまして、その前例に倣つて選考委員会で直ちに取上げないで小委員会で審査するということになると思うかということだけでありまして、只今お尋ねのありましたような、そういう点は私ゼンクスからも聞いておりませんのでございましたし、司令官代理として行つておりましたエーミスからもそういう話は私は聞いておりませんのでございます。
  32. 原虎一

    原虎一君 大臣がお見えになりましたから、一点お伺いいたしたいと思うのですが、今までにすでにこの国際労働機関復帰加盟いたしますれば、直ちに国際労働条約批准のなし得るものには批准手続をおとりになることが、国際関係においては日本が非常によき立場に立ち得ると思うのであります。それだけの誠意と熱意がなければ、この理由書にあります日本のダンピングに対して外国の疑惑を招くようなことを取除く役割をするということにはならなくなると思うのであります。そこで私は大臣にお聞きしたい点は、今も安定局長から第三十四回国際労働総会における日本加盟申請書を出した当時の報告がなされておりましたが、この各国日本労働基準団結権に対して終始いたした。殊に戦前における日本労働組合法がなかりし時代のことを国際労働機関はよく知つております。我々は微力でありましたけれども機関に臨むたびに日本労働者団結権の自由を日本政府は認めない、争えないということを国際機関に訴えて来ておる。そういう関係もありまして、日本労働者団結権が自由に与えられているかどうかということは非常に疑問を持たれるところだと思うのです。一九二五年頃のイギリスにおきましては、一時団結に対する禁止制限等もやつておりましたが、今日の世界労働事情というものは隔世の感があるのでありますから、日本が如何に敗戦国といえども、経済に非常に窮乏いたしておるといえども、この団結権利労働基準をできるだけ国際水準に上げるということを政府が、国が努力しなければならない、そういう時代に加盟をいたすのであります。殊に日本は今公共企業体の労働関係法或いは教員、地方公務員法におきますこの団結権罷業権というものを極度に禁止制限いたしておるわけであります。これは国際労働機関の精神に去ることが遠いのであります。こういう状態加盟ようというときに当つて、又いわゆるゼネスト禁止法なるものを政府が新たに作ろう、こういうことが企図されておりますが、こういう状態加盟されるということは、いわゆるますます国際労働情勢に逆行して行くのではないか。こういう点について労働大臣は如何に善処されるか、如何に善処されて加盟と同時に、これを世界各国に、国際労働機関の精神に副うべく政府努力するという実を何を以て示されるか、この点をお伺いいたしたいのであります。
  33. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) ILOに参加いたしまして、ILO目的といたしておる方向に一歩々々前進をいたして行かなければならんことは、もう当然のことと存じております。団結権の自由に対して公務員等の或る程度の制限を考慮いたしておるわけでございますが、これは国際労働条約におきましても、公務員団結権については除外をいたしておるように私は聞き及んでおるわけであります。公務員について公務員のその占めておりまするところの社会的任務から、或いは国民的任務から申しましても、これによつて云々ということは私は生じない。ただ今後日本の労働政策として、自由なる労働運動を抑制するというような方向は、これはもう断じてとるべきものではないということは、もうしばしば申上げている通りでございまして、又日本における労働諸制度、諸立法が正しく世界の認識を頂けますれば、私はさような懸念はなかろうかと、ただそういう点が今日まで非常にまあ立遅れておるということは、これは見逃し得ないわけでありますから、今後はそういう方面努力をいたして行かなければならん、こう考えております。
  34. 原虎一

    原虎一君 重要なもう一点。いわゆるゼネスト禁止法のごときものを意図されるということは、これは非常に国際労働機関には異様に響く法律案であります。そういうものを意図されるという状況では、折角加盟するのに遺憾ではないか、残念ではないかということを申上げて政府の所見を伺つて、その御答弁がないのと、この公務員罷業権の禁止は当然だという御説明でありますが、それは国々によつて違います点もありますから、一律一体では申しませんが、いわゆる人事院の勧告が政府によつて実施される状態でもないのに、一方には団体交渉権が剥奪されておるというよう状態で、国際労働機関復帰して日本は言われないということを私は申上げておるのであります。こういう点につくところのいわゆる国際法が、忠実に団結権団体交渉権罷業権というものが認められて、それが実施されているという実を挙げなければ、ダンピングの問題は国際労働機関復帰したから、それで何か事足りるのだというよう理由書を私は見まして、甚だ遺憾に考えるから御質問申上げておるのであります。
  35. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 公務員団結権団体交渉権等における或る程度の制限は当然だというようには実は私は考えないのでございますけれども、今日の事情としては、けだし止むを得ないのではないかと、こう思つております。ゼネスト禁止ということで、まあ一般にそういうふうな用語を使われておりますから、その表現を以てしますと、全くお説のような感じがありますわけでございますが、単に無論法務府で如何ような構想を固めつつあるか、まだ私はつまびらかにいたしませんけれども、そうではなしに、方法といたしましては、とにかくまあその事態によつて国民経済が再び立上る能わざるほどの大きな打撃を受ける、或いは市民の生活が著しく不安に脅やかされて、そうして極端な社会不安を醸成する、さような事態についての対処措置を講じたいというのが、ゼネスト禁止というような言葉で用いられておるように私は思つております。これはまあもう少し成案の固まつたものを見ないと、今日ではゼネスト禁止という当らざる、私は当らざると思つておりますが、それを前提としてかれこれは言えない、併し若し前段のように申上げましたことに対する対処措置を講じまして、それで労働者の自由なる労働運動を弾圧したというような国際的に誤解を招くようなことは私はなかろうと、こう考えております。
  36. 赤松常子

    赤松常子君 私は労働大臣にちよつとお伺いしたいのであります。今度我が国国際労働機関復帰いたしますと、申上げるまでもございませんが、そこで取上げられました、採択されましたいろいろな条約や勧告は誠意を持つて忠実にそれの実現努力いたさなければならないと思つております。併しながら以前、国際連盟時代に日本労働機関加盟いたしておりました時代のことを顧みましても、常に日本の特殊事情という隠れ簔に隠れて、こういう採択されました条約、勧告を忠実に実行し、実現する努力政府並びに経営者側に全然ないと言つてもいいくらいな状態でございました。例えば今私思い出すのでございますが、幼年労働者及び婦人労働者の深夜業禁止をめぐりまして、どんなに深刻な闘争が国内で闘わされて来たか、けれどもそれに対していつも政府並びに経営者側は一顧だに争えなかつたのでございまして、これが国際労働機関に持ち出され、而もそれがイギリス代表から持ち出されて、ソーシアル・ダンピングの原因であるというような非難を浴せかけられて、やつとこれが問題となつて、そうして而もなお五年以後でなければ実現できないというような附帯条件で以て、まあこれをようよう認めたというような過去の歴史を顧みましても、私は今後復帰いたしましても、又この例に倣つて日本の特殊事情をいつも振り廻されて、そうしてその誠意と熱意に欠けるうらみがあるように考えられるわけでございます。そういう点に対しまして、労働大臣復帰いたしました以上積極的にその実現努力して頂きたいのでございます。又経営者側の抵抗をもそれを恐れず正しく善処して頂きたいのでございますが、この辺に関する労働大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  37. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) これは根本の自覚反省の問題であろうと存じますが、新憲法を制定いたしました今後の日本の政治、経済、労働、社会といつた各般の考え方が、旧憲法治下における考え方とはもう一変しなければならんことはこれは当然だ。そこでまあよく言われますが、戦争前に相当充実しておつた国力の中において、片ちんばな状態を呈した、労働条件等に非常に恵まれざる労働条件があつた。それと、ともかくも実態が、実態と申しますのは主として賃金でございましようが、実態はこれは全体の国民、国の経済力を離れての賃金というものは考えられないわけでございますが、そういつた以外の各種の労働条件というものは、戦後と戦前と全く一変した下において行われておる、無論これは金のかかるもの、施設を要するもの等につきましては、十分至つていないことは、これはもう申すまでもないわけでございますけれども、併し今日の考えなければならないことは、当然今後強力に改善して行くべきことでございまして、例えば労働婦人の諸施設等につきましても、私はもう経営者におきましても、或いは国におきまして、その力の及ぶ限りは、これが改善を目指して行くという方向を今後強くとつて行かなければならん。これはILOに参加したから、参加しないからという問題ではないと、こういうふうに考えております。
  38. 赤松常子

    赤松常子君 もう一点お伺いいたしたいのでございます。只今労働大臣が特に婦人の問題に言及なさいましたこと、私嬉しく思つておりますが、どうぞそれをお忘れなくお願いしたいと思うのでございますが、この憲章の中にもその目的一つに取上げられております問題に、同一賃金の実現、この同一賃金実現の原則が謳われておるのでございます。ところが現在労働基準法の中の同一賃金の条文の削除というようなことが経営者側から放送されておりますし、又その他労働基準法の中でさまざま逆行するような傾向に今押流されているのでございます。こういう点に対しまして、強くここにわ謳れております以上、それを実現して頂けるようにしたいと思うのでございますが、これは一つの例でございますけれども、この憲章の中のいろいろな掲げております目的と、今後日本が辿つて行こうというこの方向との間に非常に以前よりもむしろギヤツプが生れるような、危惧される動きが非常に多いのでございます。こういう点について、その掲げております目的を強く支持して頂けることには非常なる決意を私は要すると思うのでございますが、そういう点誠意を持つてつて頂けるでございましようか。その辺のところをはつきりとお伺いしたいと存じます。
  39. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 同一賃金に関する条約も最近採択せられておりまして、全体の世界の流れとしても、この方向に向つて努力を払われておるわけでございますから、私どももそういう方向に努力をいたしたいと考えております。
  40. 赤松常子

    赤松常子君 もう一つちよつとお尋ねしたいのでございますけれども、はつきりと憲章目的の中に人身売買の問題は禁止されなければならないし、これは採択されているのでございますか。最近人身売買によつて年少労働者の移動が行われている事実があちこちにございます。又これは労働関係ではございませんけれども、売淫行為をめぐつて人身売買の方法がむしろ、法律はございますけれども、その裏をくぐつてさまざま行われているような実情でございます。こういう人身売買というような実に国辱的なそういう姿というものは、私どもは一日も早くなくするようにしたいと思うのでございますけれども、殊にこの労働関係において、そういう点の取締或いは監督というものについて、どういうふうにこれと睨み合わせてお取計らい頂くのでございましようか。
  41. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 人身売買がまだ跡を絶たないという御指摘は、これは全部否定するというわけには参らんだろうと思います。無論社会状態が如何ようでありましようとも、社会生活の実際が如何ようでありましようとも、人身売買というようなことは、これは厳に取締り、禁止いたさなければならないわけでございまして、その点では力を入れているのでございますが、今後ともこの方針は変えず、強行して参りたい。もう一点の御指摘の点は、これは根本としては無論我が国の社会状態、社会生活に基因いたしておることではございますけれども、同時に道義と申しますか、道徳と申しますか、戦後失われました道徳の、或いは道義の再建復興ということが何をおいても私は大事なものではないかというように考えておるわけでございます。人身売買の点につきましては、十分注意をいたして参りたいと思います。
  42. 曾禰益

    曾祢益君 すでに同僚原委員或いは赤松委員から述べられましたことと重複する点もあるかも知れませんが、私はこの政府説明書に盛られておる気持がどうも非常に甘いのではないかと、かような感じを持つのであります。で、字句にとらわれるわけではございませんが、この二ページの終りから書いておりまする、この加盟実現した場合にはどうかということの評価におきまする政府の考え方は、これによつて我が国労働者福祉が増進されるばかりでなくて、労働者福祉の増進のほうは極く簡単に一行にして尽されているのであります。更に進んで労使間の関係円滑化産業高度化が促進され、以て我が国発展に寄与するところは甚だ大である。まあ非常に産業発展、国家の発展は勿論結構なことでありますが、それに非常に重点を置いておられる。更に又続けまして、先ほど来しばしば指摘されたところでありますが、日本労働条件が法制上国際的水準に達していることを示すことが可能となり、更に又決してソーシアル・ダンピングをやつているわけではないという事実を広く世界に理解せしめることができ、その結びとして、要するに輸出の振興と国の発展に寄与するであろう、かようなことが書かれているのであります。これは別にその趣旨に反対ではございませんが、実は過去におきまして、我々が苦い経験をしているごとく、ILOに入つたがためにその国内における労働の劣悪なる条件が海の外に出たわけではないのであります。ILOに入ることについては、政府としても重大なる国際的信用の保持、これはよほど考えておかないと、却つて今や反動期に入つたと言われる今日、労働三法の改悪も伝えられるような今日、非常に私は重大な責任があるのでないかと思うのでございます。我々は片山内閣時代から、このILO加盟について実現に努めて参つたものでございますが、この加盟につきましては、たしかに国内におきましてこのフイラデルフイア宣言にあるように、例えば完全雇用と生活水準の向上とか、或いは雇用及び定住を目的とする移民を含む労働者の移動のための便宜、或いは要するに労働の成果であるところの公正な配分を保障する、更に又最低賃金による補用者に対する賃金の保障、申すまでもなく団体交渉権の実効的な保障、なおこれは労働大臣の御管轄ばかりでないような非常に広汎な社会保障制度、或いは母子の保護、更にリクレエーシヨン、教育及び職業の機会均等の保障、かように立派なフイラデルフイア宣言を真実に国内におきましては十分にやつて行かれるところのその確固たる自信と措置が伴わないと、却つてここに目的とされているよう日本の輸出の発展等に禍いするようなことが起る、これは私が申すまでもないところであるわけであります。従いまして私が労働大臣に伺いたいところは、これを機会といたしまして、例えば先ほど来指摘されているような、占領下において今日まで公務員法問題は我々の賛成しないところでありまするが、止むを得ざる事情もあつたと思いますが、とにかく世界に相当立派と言われているようなこの労働三法、これを十分に確保して行くお考えであるか、更に又完全雇用については一体どういうようにお考えになつているのか、これらの問題についての十分なるお覚悟と御準備があるかといことを伺いたいと存ずるのであります。
  43. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 曾祢さんのような国際政治の見識の高いかたに私が申上げるのは、これは釈迦に説法かと思いますが、考え方が或いは違うかと思いますので申上げたいと思います。完全雇用にいたしましても、生活条件の改善向上にいたしましても、今日の日本の実際の実情から申しますれば、結局煎じ詰めて、完全雇用への基盤を如何にして持つかということが大きな課題であろうと思います。まあ完全雇用という用語につきましても、学者の間でいろいろ意見もあるようでございますが、ともかくも世に失業者なき状態を作ることができるならば、これは人類の理想でなければならん。それに到達して行く道として、日本の現状からいたしますれば、どうしてもこれはもう貿易の拡大を期し、日本産業の規模を拡充して、以て一人でもより多くの労働力を産業に吸収するということ以外には、これはもうあるべきはずはない。そういう上からいたしまして、貿易の拡大、産業発展ということも何によつてそれでは期待できるか。今日の日本の置かれております立場から申しまして、かかつて日本に対する国際信用がどうであるか、国際信用を得ずして貿易の拡大、産業発展ということは望まれない。従つて完全雇用への道も、生活条件の引上げもかかつて国際信用の如何ということになつて来ると存じます。その国際信用を勝ち取つて参ります上に、又より高めて参りますためにも、この憲章の定めるところの理想に向つて日本は、乃至政府努力を払つて行かなければならんことは、これはもう当然であるということを私は考えているわけでございます。従いましていろいろ世上労働法改悪ということが喧伝せられておりまするけれども、かような考え方の上に立ちまして、労働三法の各法を見直して行きたいという態度に立つているわけでございます。
  44. 曾禰益

    曾祢益君 まあ余り抽象的な問題で論議することも適当でございませんので、只今労働大臣の言われた点については私の納得する点もございます。従つて国際的な信用が極めて必要であるから、いわゆる平和条約によりましても、公正な商習慣を守るということと、又それの更に基盤であるところの公正な労働雇用条件或いは賃金その他の団結権団体交渉権等の基盤を十分守つて行きたいことを本質としてお考えになつているらしく感じましたので、その点は了解いたしますが、なお又大臣が来られる前にも、同僚委員からいろいろ御質問がありましたが、国際労働機関加盟に伴いまして、いろいろな労働に関する国際条約、これの加盟の問題或いは批准の問題等が起つて参りまするから、それらの問題についても十分に、今労働大臣が言われたように、日本の真の社会福祉、社会正義の伸張のために必要である対外的の貿易の発展、その又基盤をなすところの、信用の基礎をなすところのこの労働条件の問題については、真に十分なる準備と覚悟を持つてつて頂きたいことを希望として申上げておきます。
  45. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私はもう労働大臣とはしばしば顔を合せていますから、あまり細かいことは申しませんが、結局労働大臣のお考え方の一番基調をなしておることは、やはり日本の国の富が多くならなくちや労働政策がうまくいかんのだ、だから富の増大が元だと、こう言われるのですが、私はその点は違うのでございます。日本が貧困であればこそ労働大臣がおやりになることがたくさんあるわけなんで、それ故にこそ労働大臣に進歩的な労働法規を守つて頂かなければならん、こういうふうに考えるのでありますが、その立場の相違は別にいたしまして、実はそれ以外の点についていろいろ進歩的なことをおつしやいますので、私は労働大臣の誠意は疑わないのです。併し実際に行われていること自身が、おつしやつておりますことの事実を裏付けているかどうかということが問題になつて来るのです。率直に言えば、例を挙げて申しますれば、国家公務員についても、これはもう同僚の委員が申上げたように、団体交渉権を奪うこと、ああいう法制的に、恒久的に奪うことについてはキレンさんが非常に反対しておつたことは事実なんです。それでキレンさんがやめて帰るようなことになつたということも事実なんです。で、この一つの大きな問題ですが、その問題を別にいたしましても、国家公務員法で少くともその団体交渉権を奪つているのに、生活権を確保しようという矛盾した制度そのものも実施されない、はつきり言いますれば、今度の国家公務員でも人事院の勧告が事実認められていないわけです。それからあなたが折角、あなたの所管になる公共企業体労働関係法で、専売裁定というものが行われて、そしてそれを実施するについても大蔵大臣は拒否していられる。これは関係大臣としては労働大臣関係大臣のわけであります。而も実施するのについて、実際あなたがおつしやるように、国の財政上どうしてもそれが許されないような情勢にあるかということになりますると、これはもう本年度の予算をお調べになつても、又専売公社の予算をお調べになつても事実できることなんです。だからどうしてもこれは労働大臣としてお守りにならなければならん立場だと思います。そういう点の細かいことは、この際ここで申上げる場所でないと思いますから遠慮いたします。そういう点が守られていないことは、実は何とおつしやつても事実であります。非常に保利さんを私は尊敬し、信頼しようと思うのでありますが、どうも労働者諸君がそういうふうにならないこともたしかなんです。これは現実の事実なんでございますね。だから今度のILOに、先にフイラデルフイヤ憲章曾祢君が引いてお話になつたわけでありますが、そういう事態がありますこと自体がどうも方向的に違うのじやないか、だから労働三法の改正についても疑惑が出て来る。又ゼネラル・ストライキの処置についても、それは内容的には私は法務総裁その他からいろいろお聞きしておりますから、或る程度わかつておりますが、併しともかくもそういうふうな行政の方向が事実違つた方向に参りますと、非常に問題になつて来る。例えば今度のILO加入されるに当りましては、労働基準局の整備ということは御必要なはずであります。それから少年労働局もそうであります。それから労働統計のごときも、保利さんに申上げまするが、労働統計は内閣の遅い統計よりまだ一カ月遅れているのです、実際のところを言うと……。だから労働統計のスピードを御覧になるとわかるのです。そうしてあなたは首を振るかも知れませんが、私が本年度予算のときに指摘した、あなたもそれは御承認になつて一カ月遅れをお認めになつた、私はそういうふうな労働統計だつて整備されなければいけない。婦人少年局だつてそうであります。ところが事実はやはり一律の行政整理にかかつておるのですね。あの労働基準局が事実ほかの整備した機構みたいに発達されておるかというと、事実制度といたしましては、問題は中小企業に対しては事実手が及ばないわけです。婦人少年労働局も婦人少年の労働条件については今の状態で若し任務を果し得ると考えておる人は、私は労働省に労働大臣があえて任務を果しておるとおつしやるならば、私は恐らく誰も非常に不十分だ、こういうふう考えられるのであります。無論その間に立つて労働大臣として御努力されておることは、私はしよつちゆぅ附合つておるから、附合つておるからというより、お説を承わつておるからよくわかるのですが、やはり内閣全体の性格として、そこに参らないと、先ほど言いましたように全体がうまく行かない。是非この際に重ねて申上げたいと思いますが、労働政策というものについて、労働大臣内閣の全般の施策について支配をされるような労働政策、そういうものを十分樹立して頂いて、そうしてILOに参加の機会にそういう御決心をなすつて頂き、そうしてこの際にはああいう、今私が例に挙げましたようなことに、我々の期待に副うような政策をおとり頂きたいのです。こういうことを特にお願いする次第であります。
  46. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) その都度、その都度御意見を伺つて一々教えられる点が非常に多うございますので、私も啓発を受け、微力ではございますけれども、そのつもりでやつておるわけでございます。全体につきましては、そういう心がけを持つてつて参りたい。一、二の問題について申上げますと、公務員のこの関係を人事院の勧告通りにやらんでおつて、そうして一方において国家公務員法で縛つておる、現状はまさにその通りになつておる、その面からいたしますれば……。ところが一体給与の関係を人事院の勧告通りにする、今回の措置にいたしましても、政府としてはできるだけ公務員諸君の待遇改善をやつて、そうして能率的な公務員本来の仕事をやつて頂くようにしなければならんという基本的な考えを持つておるわけであります。そこでこれは無論勧告通りに行つておりませんけれども、待遇改善の措置もとり、一方において減税措置もとつておるわであります。成るほど人事院の勧告通りには行つておりませんけれども、仮に税関係からいたしまして、税はそのままであつて勧告通りの給与をやつた場合はどうなるかということも併せて考えて行かなければならんのじやないか、決してそれでどうこうといつて言葉を返すわけじやございませんけれども、そういう気持を以て、御注意頂きましたような気持を以ちまして、できるだけ努力いたしたい。専売裁定の問題につきましても、大蔵大臣の言う通りにやつているじやないか、決してそうではございません。我々としてできるだけ努力を払いまして、裁定の趣旨に副うように行かなければならないと、今日も依然として考えております。
  47. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 もう私は労働大臣とはその点は予算委員会でお目にかけようと思つておりますから、この会では期待しません。予算的に支払う能力があるかないかということをお目にかけます。それから物価の点から見て、減税の点から見まして、労働者がどうなつているかも、これは予算委員会でお目にかけるつもりでおりますから、今準備をして、ここに持つておりますが、ここでは申上げません。ですからどうぞ御用意を願いたいと思います。
  48. 赤松常子

    赤松常子君 最後にちよつと希望を申上げて置きたいのでございますが、これにもございますように、これに加盟いたしますと、日本労働条件が法制上完全に国際的水準になつていることを示すことが可能であるのでございますが、今いろいろおつしやつたように、これと反対な面も随分あるのでございますわけです。こういう国際機関加盟いたしますと、日本の誠に醜い、国辱的な問題も向うに、世界に知らされる機会ともなるわけでございますので、どうぞそういう点、強くお考え下さいまして、日本の威信を世界に知らさなければならない、その御努力を切に希望をいたして置きます。直すようにお願いいたします。
  49. 原虎一

    原虎一君 直しちやいかんよ。
  50. 徳川頼貞

    委員長代理徳川頼貞君) 他に御質疑はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 徳川頼貞

    委員長代理徳川頼貞君) 他に御質疑もないようでございますから、この程度で連合委員会を閉じたいと存じます。連合委員会はこれにて終了いたし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十三分散会