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1951-11-05 第12回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月五日(月曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 有田 二郎君 理事 橘  直治君    理事 苫米地英俊君 理事 西村 久之君    理事 中曽根康弘君 理事 川島 金次君    理事 風早八十二君       麻生太賀吉君    天野 公義君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       小淵 光平君    角田 幸吉君       甲木  保君    川端 佳夫君       北澤 直吉君    坂田 道太君       島村 一郎君    鈴木 正文君       玉置  實君    永井 要造君       中村  清君    中村 幸八君       松本 一郎君    南  好雄君       今井  耕君    川崎 秀二君       竹山祐太郎君    早川  崇君       藤田 義光君    森山 欽司君       戸叶 里子君    西村 榮一君       水谷長三郎君    勝間田清一君       成田 知巳君    横田甚太郎君       石野 久男君    小林  進君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         国 務 大 臣 橋本 龍伍君         農 林 大 臣 根本龍太郎君         通商産業大臣  高橋龍太郎君         国 務 大 臣 岡野 清豪君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         地方自治庁次長 鈴木 俊一君         外務事務官         (条約局長)  西村 熊雄君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主計局次長) 石原 周夫君         食糧庁長官   安孫子藤吉君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十一月五日  委員井出一太郎君辞任につき、その補欠として  竹山祐太郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十六年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十六年度政府関係機関予算補正(機第2  号)     —————————————
  2. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 これより会議を開きます。  前会に引続きまして質疑を継続いたします。その前にちよつとお願いしたいことがありまするが、根本農林大臣がきようは午後二時より漁業条約関係議長を勤めることになつておりまして、どうしてもそのときにははずさなければならぬ用がありますので、農林大臣に対する御質疑をこの際できるだけまとめてやつていただきたいと思います。これはお願いであります。川島金次君。
  3. 川島金次

    川島委員 まず農林大臣に先般の質疑に続いてお尋ねを申し上げたいと思います。  まず最初にお尋ね申し上げますが、先日来問題の焦点となつております主食統制全廃の問題について、ざつくばらんに申し上げますと、政府の閣僚内における意見がまとまつていないのではないかという感じが次第に強くなつて来ておりますということと、もう一つは司令部方面との折衝において、重大な支障があるかのようにも世間には伝えられておりますが、そのことについてまずお伺いします。農林大臣はこの主食統制撤廃の問題についてできるだけこの問題の早急な解決を期するために、先般も私はお尋ねしたのですが、一合配給程度を存置して、その上でこの問題の処理に当ることの方が、現状の事務的な難局の打開にもなるし、その問題の解決に都合がいいのではないかという考え方大臣は持つておる。これに対して大蔵大臣はそういういわゆる弱気なものではなくして、初めから当初の方針による、いわゆる統制全廃目途として、これを貫くことに強い主張を持つておる、こういう事柄がいわれておるのですが、一体閣内においてはどれを目途として目下進んでおるのか、この事柄は重要な事柄でありますので、一応お尋ねしておきたいと思うのであります。
  4. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答えいたします。御質問の第一点は統制撤廃に関して、閣内において意見不一致があるではないか、かようなことでありますが、意見不一致というものはございません。ただこの大綱をきめた場合、これの具体的な措置についてはいろいろと検討されておるのでありまして、その意味におきましては各般意見が出ておるということは事実でございます。しかし本質的な意見対立のために難航しておるということはございません。  その次には総司令部当局がこの撤廃の問題に対して、非常に強い難色を示したために、相当困却しておるではないかというような御質問でありますが、これは現在政府といたしましては、統制撤廃に関する措置の要綱を申入れいたしまして、これに対する具体的な資料の要求を受けた次第でございます。これは米の需給のみならず、全体の主食の今後の見通し、さらにこれに伴うところの輸入数量、それに伴うところの外貨の問題あるいは輸入補給金の問題、物価に及ぼす影響等諸般の問題について資料を提出し、それから本折衝に入るのでございます。現在ようよう各般資料もこの一両日にまとまる予定でございますので、この資料検討の上、総括的な対策をつくりまして、本折衝に入りたい、かよう思つておる次第でございます。その意味におきましては、向うの方から何も具体的な反対とか賛成というよう意思表示は現在ございません。  その次に統制廃止後の善後措置について、四月以降も一合配給を続けるかどうかということでございますが、これはただいま申し上げましたように、総合的な資料を整えて、司今部当局折衝した後初めて起る問題でございますので、現在のところ、それについてはいまだ具体的にどうこうするという段階には至つておりません。従いましてこの問題について大蔵大臣と私と強い意見対立などということはございません。
  5. 川島金次

    川島委員 われわれの了解しおるところによりますれば、この問題に対する政府の基本的な方針は、配給供出等についてのいわゆる統制撤廃実施するということであろうと了解し、またそのよう政府国民に向つて公式、非公式の間に声明をいたして来ておることは事実であります。そこでお伺いするのですが、政府はわれわれが了解しておるこの既定の方針で、あくまでもこれが実現の貫徹を期するという所信で今日でもおるか、またその所定の方針を断じて実現できるという強い見通しを今日でも持つておるのかどうか、それについての所信を明らかにしてもらいたいと思います。
  6. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これはししばお答えを申し上げましたように、政府といたしましては、すみやかに統制撤廃いたしたい、こういう方針は明示いたしました。しかしながらこの問題は、農業政策として非常に重大であるのみならず、日本一般産業経済に及ぼす影響が非常に甚大でありますので、諸般の事実を分析検討の上、生産者にも消費者にも不安なく実施するということに目下検討いたしておるのであります。その検討の結果成案を得たときに上程するという態度でございます。この方針にはかわりはございません。今川島さんの御質問は、明年のいつからはつきりと統制撤廃するかということをお聞きになるための御質問と思いますので、これにつきましては、ただいま申し上げましたように、諸般データ検討の上、具体的に成案を得たときに、初めてその時期方法を明示して御審議を願いたい、かよう思つておる次第であります。これは当初総理が施政方針演説におきまして申し上げました基本方針であります。それについてはかわりはございません。
  7. 川島金次

    川島委員 数日前の委員会等で発言された大臣の気合いと今日とでは、大分ずれが生じておるよう印象を受けるかのように今の答えをわれわれは受取つたのですが、そうしますと率直にわれわれ国民立場から申し上げますれば、この問題に対してはこういうふうに了解してよろしいかどうか、ひとつお尋ねしたいのです。先ほども申し上げましたように、われわれ国民立場では、政府は少くとも四月一日を期し、しかも供出配給画面にわたる従来の統制撤廃いたしまして、いわゆる自由販売とするということにわれわれは理解をして参つた。この問題についての本質的な賛否の態度は、われわれとしましてはいずれ明らかにするつもりでありますが、いずれにいたしましても、そのようなことであろうとわれわれは理解し、国民もまたさよう了解して来たのでありまするが、今日の段階に入つて政府はそういう事柄を必ずしもそのまま実行するとは限らない、すなわち時期においても若干の違いが来るであろう、あるいはその実施方法についても、従来われわれ国民了解しておつた内容とは違つたものが場合によつては生れて来るであろう、こういうふうに了解してよろしいかどうか。
  8. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答えいたします。これはしばしば申し上げましたように、政府といたしましては、時期、方法についてはまだ明示いたしておりません。この問題は現在政府部内において研究するのみならず、関係方面との了解も得なければならぬ問題でございますので、その点の了解とこちらの方の意図とが一致した場合に、初めてこれが成案を見るのでありまして、そのときにおいて御審議を願うという方針でありまして、この点は全然かわりはない。川島さんが御了解になつているという四月一日ということを現在政府は固執しておるわけではありません。方法についても、すなわち現在の諸般情勢を考えまして、十分生産者消費者にも安定を与え、かつ経済安定の基本政策においてこれをきめられるべき問題でありますので、その点を目下検討中であるということであります。
  9. 川島金次

    川島委員 大分答弁が晦渋で、私にはちよつとすなおにのみ込めない言葉ように受取れるのですが、手取り早く申し上げると、こういうことになるんじやないですか。四月一日からの統制廃止は不可能である。そしてまた政府がしばしば言明し、農林大臣自身言明されて来た通り、これは配給もあるいは供出撤廃するというのがこの問題の本旨、原則であつた。その本旨であつた内容も変更される場合がいよいよあるであろうということが、きわめて明らかになつて来たとわれわれは了解しておるのですが、そういうことになつたんだと農林大臣言明がこの場合においてできないのですが。
  10. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいまのところ、そういうあなたの観測に対して裏づけするよう言明をする段階ではございません。
  11. 川島金次

    川島委員 この問題は、農林大臣がもうすでに農林大臣就任直後において新聞記者団に発表された問題で、爾来与党内においても、政府内においても、当面の講和条約を除いた重大な内政問題として、両者間に非常な検討が加えられて来た。従つてまたその及ぼす国民的な経済的な影響も非常に甚大でありまするがために、内政問題としても当面のきわめて重大な問題としてこれが取扱われて来ておるということは、言うまでもないことであります。従つてこの問題の成否は、国民の向うところに重大な影響がある。今日においてすらも、政府態度はあるいは右に傾き、あるいはときに左に傾くよう実情でありまして、国民が非常に困惑をいたしておることも事実であるのであります。従つてわれわれはこの問題の帰趨のいかなるところにおちつくのであろうかということについて、国民とともに重大な関心を持つておりますので、繰返してくどいようでありますがお尋ねしたのであります。しかしこれ以上お尋ねしましても無益と思いますし、大体農林大臣考え方あるいは今日の立場も、本日のお答えで若干明らかになつよう印象をわれわれは受けましたので、これ以上お尋ねすることをやめまして、次に具体的な内容について、この機会に簡単に二、三お尋ねしたいと思うのであります。  政府は、今度の統制撤廃の時期、方法をめぐつて、いろいろその筋に対して資料も提供されておるように承つております。そこで私は農林大臣にお伺いいたすのでありますが、私の手元に入りました資料、これは戦前における米の消費量についての資料であります。それによりますと、酒類に使います米及びその他の菓子類等に使いまする米、これを事務当局では個別的用途とかいうよう言葉をもつて総称しておるらしいのでありますが、このいわゆる個別的用途に充てられました米が、昭和九年—十一年の基準年度平均が、実に驚くなかれ九百万石以上に達しておる事実があるという資料をわれわれは手にいたしておるのであります。こういう事柄も当時私ども全然詳しい数字を知つておりませんので、いまさらこのようにあつたのかと思つて、目を見開いて見ておるような始末でありますが、農林大臣は、この平年における個別用途に充てられました米の消費高御存じであるかどうか、御存じであればどのくらいであつたか、この点について明らかにされたい。
  12. 根本龍太郎

    根本国務大臣 今の川島さんの御指摘は、個別でなくて固有用途であります。現在詳しい資料を私手元に持つておりませんが、いずれ食糧庁関係事務当局から御説明いたさせたいと思います。戦前固有用途のうち、非常に大きなウエートを占めておりましたのは酒造米でございます。多いときには四百万石近く消費しておつたという事実があります。しかし現在は、御承知のように六十万石、あるいはそれ以下という状況でございまして、これが自由になつたということで急激にふえるということは考えておりません。これは造石高において大蔵省で許可制になつておりますので、その点の調整ができると考えております。  それから菓子用とか、こういうものは、現在相当程度いわゆるやみに依存しているようでありますけれども、これが自由になりましたために、非常に急激に増加するとも考えておりません。具体的な戦前における固有用途の種別並びに数量、現在における情勢についても詳しいデータはただいま持つておりませんが、いずれ事務当局から調べた上御報告申し上げます。
  13. 川島金次

    川島委員 では大蔵大臣ちよつとお尋ねします。ただいま農林大臣お話で明らかになりましたように、戦前昭和九年—十一年の平均固有用途の中で、酒造米が、私の手元に入りました資料によりますと三百八十六万石に及んでおります。農林大臣お話によると、ときには四百万石にも及んだということですが、それならば大体この資料と違いないのです。今農林大臣お話によりますと、主食統制撤廃をいたしましたあかつきにおいて、酒造米の方の使用は制限するかのごときお言葉でありますが、政府といたしましては、関係方面への提供資料としても、また政府方針としても、統制撤廃いたしましても、酒造米使用制限は今後ともやるという方針であるかどうか、またやるとするならば、どういう形でこれを行つて行くか、その点の方針をひとつ示してもらいたい。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 農林大臣お答えになつた通りでございまして、酒造米の方で十分統制をして行きたいと思います。
  15. 川島金次

    川島委員 かりに酒造米消費統制をやるといたしましても、私の手元に入りました資料によりますと、固有用途消費が、戦前において平均にいたしまして九百五十九万石に及んでおります。従つてその年次のいかんによりましては、一千万石を突破した年次もあるのではないかと想像されております。かりにこの中で酒造米が四百万石といたしましても、残る六百万石が今日の制限されておりますところのわくからはずれまして、この六百万石に達しようとするいわゆる酒造米以外の方途に流れます米というものが、そこに需要を現わして来るのではないかと私は思うのでありますが、こういうことを一体政府計算に入れて今度の統制撤廃を考えているのかどうか。こういう方面に対するところの急激な需要増消費増というものを計算に明白に入れておいた上での計画であるかどうか。この点について農林大臣はどう考えておられるのか、明らかにしておきたいと思います。
  16. 根本龍太郎

    根本国務大臣 統制撤廃の場合において、固有用途需要が若干増すということは考えております。しかしただいま申し上げましたように、現在の固有用途のうちで一番大きなウエートを占めているのは酒造米であります。その次に加工用、特に菓子類でありまして、この点については、現在の経済状況からすれば、そうにわかにはふえない、大体一割から二割程度ではないかというような見込みをつけております。これにつきましてはいろいろの見方がございますけれども、従前、この固有用途は米でなければならぬものと、米でなくとも澱粉質であればいいものもありますけれども、当時日本におきましては、特に朝鮮、台湾から相当数量の米が入つて来ておる。価格にしてもその方が安かつたということで、工業用原料として米が使われておつたが、現在のよう状況から見れば、相当高い値段を考えなければなりません。そうした場合には、麦あるいはその他の澱粉に移行する場合も多い。こういう諸般の事情も考えまして、統制撤廃の後、ただちに戦前におけるがごとく固有用途における需要が急激に増大するということは、今のところないと思います。
  17. 川島金次

    川島委員 農林大臣は若干われわれの見解と違つて、いわゆる俗にいう甘い見通しのもとに立つておるようにわれわれは感じます。こういう点についても、今はなるほどいろいろ制限されておるにもかかわらず、やみ米でそういつた制限外のものがつくられておることも事実です。それはちまたに出ておりますので、否定のできない事実であることは言うまでもない。しかしそれといいましても、陰に陽に制限された中で、やはり業者制限外のことをやつておるのでありますから、公々然としてこれをやつておるというものではない。なるほどちまたにはあつても、やはり内心には何かの脅威を受けながら、そういうものをつくつたり売つたりしておるということである。ところが統制撤廃されれば、これは公然としてできるのでありますから、それの方面に対する需要が今日よりも一層増大するということは、これは当然の現象でなければならぬと思うのであります。しかもその急激に増大いたします米の需要というものは、戦前のこの実績が事実だといたしますならば、実に莫大な石数にもなります。そして国内におけるところの生産石数というものは限界がある。その限界がある一面に、こういうものが急激に増大するということは、一般国民の米食の上にどういう影響が来るか、あるいは価格の上にもどういう影響がもたらされるかということは、自明の理でありまして、農林大臣の今の見通しは、私どもから見ますれば、まことに甘い見通しだと感じます。しかしこれはあと農林当局から、さらにこまかい数字を持つておりましたならば、この席で公表してもらいたいと思います。  そこで次に私はお伺いいたします。これはこの間も触れたのですが、そのときにはたしか農林大臣がおりませんので、農林大臣に聞くことを逸したのでありますが、農林大臣は先般から、この統制撤廃を行いましても、米価というものは今日の実効価格程度従つてまあせいぜい百円内外であろうというような楽観的な価格見通しを持つておるようでありまするが、安本計算いたしたと称せられておりますところの価格によりますと、統制撤廃後における米の価格は、おそらく百四十何円にも上るであろうというようなことを言われておる。しかもこの百四十何円に上るであろうということには条件がついておる。その条件には、今の二合七勺配給をやめて米だけ一合配給をする。こういうことを前提としてでもなおかつ百四十何円かになるであろうということが、安本事務当局では試算をされまして、その結果が新聞に出ておるわけでありますが、こういうことになることは、国民の生活、ことに勤労者にとつて重大な事柄であります。なるほど大蔵大臣の言うように、金が足らなかつたらば、月給が少かつたならば、そいつは米を食わないで麦を食つてつたらいいだろう。こういうことになつてしまえば何をか言わんやでありますが、日本国民における伝統的な食生活の上から見ましても、いかに米が高くなり、いかに月給袋が少いからといつて一体米を全然やめて麦だけで働けるかどうか。ことに鉱山に働く労働者や、あるいはその他の重労働に携わつておりまするところの労働階級に、今日では国民に対する一定の配給のほかに加配米をいたしまして、辛うじて食生活の確保を期し、そして生産増強に当つておるという実情であります。ところがそれが廃止されて、安本のいうがごとき価格になるといたしますれば、これはそれらの人たちに対する重大な生計の脅威であり、しかもそれが生産増強にも、直接に重大な影響を与えるということになるのであります、この問題について、安本ではこういう指数を出しておりまするが、大蔵大臣は、米の統制を廃止した場合に、米価は一体どのくらいになるのかということについての見通しを持たれておると思いますが、大蔵大臣見通しをこの際聞かせておいてもらいたいと思います。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 今見通しを発表する段階に至つておりません。
  19. 川島金次

    川島委員 農林大臣は先般大体の見通しをここで言明しておるのですが、ことにこの問題の推進力ともいうべき池田大蔵大臣が、その見通しを持つておらないということは、奇怪千万な話であります。そういう確信のない、責任のない答弁であつてはならないと私は思う。少くとも世間では、あなたがこの問題の推進力であつて農林大臣あとからくつついて行くというようなことさえいわれておる。農林大臣にはまことに残念な話だけれども、その通りにいつておる。その当面の一・五内閣を背負つて立つ池田さんが、しかもこの問題の責任者内外ともに認められているよう立場の人が、統制撤廃後におけるところの米価見通しがほとんどついてない。あるいはまた言うべき段階ではないというがごときことでは、私は非常にその確信のほどを疑わざるを得ない。元来が国民に重大な反響を与えている問題であります。こういう問題について、統制撤廃した場合には、米の値段はこれくらいになるであろうということを確信し、それに対するあらゆる方途を——これこれというよう具体的措置というものを、やはり国民に発表すべきが私は政府責任だと思う。従つて一番の問題は米の価格です。この価格見通しさえも発表できないということは、一体政府国民とともに政治をやるつもりなのか、その心境さえもわれわれは疑いを持たざるを得るないことになるのであります。しかしながら池田大蔵大臣といえども、二、三日前は別として、今日の段階においては、もはや統制撤廃後の米の価格がどのくらいになるかさえも、言明ができないというような苦しい立場に追い込められて来ておる。そういうことについてはある程度御同情を申し上げますので、これ以上私は追究をいたしたくはないと思うのであります。  そこでさらに農林大臣にもう一言お伺いしておきたいのは、今日の米の問題ですが、今日の米麦というものはいわゆる計画的な形において行われておる。従つて国内輸送などにおいても、計画的にそれが実施に移されておる。それが計画通り実施されるかされないかは別として、とにもかくにも計画の上に乗せて米麦等が動いておることは、まぎれもない事柄である。しかるに今度統制撤廃になりますれば、国内輸送は一体どういう形になつて行くか。われわれのしろうと的な立場で想像してみますと、今では生産地から消費地へ、いわゆるある所からない所へ、これが常道で、またそれが計画的に流れておる。しかし統制撤廃になりますと、国内輸送がまた自由になる。そして商人の、あらゆる卸売業者の自由な形において流されて行くということを考えなければならない。そういつた場合に、ない所からある所へ流れる場合も往々にして起つて来るであろうということと、それからまた今日では計画的に輸送されておりますから、その月々の輸送計画量は大体においてめどがつく。そのめどに従つて運輸当局とあるいはその他の機関と協調しながらその計画実施に移される。ところが統制撤廃になりますと、そういう計画がほとんど行われない実情になつて来る。そういうことになつた場合に、そういう輸送方面において放任しておいた形で、万全な国内輸送がはたしてできるかどうかということについて、私は非常に大きな疑念を持ち、同時にまた非常に恐るべき結果にあるいはならぬとも限らないのではないかというような感じがいたしておるのでありますが、その点について、農林大臣は一体どのよう計画と、どのよう見通しを持つておられるか。その点について間違いがないのか、また間違いがないようにするにはどういう措置をしようと考えておるのか、それらの点について明らかにしていただきたい。
  20. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答えいたします。御指摘の通り、現在は輸送計画は全部計画的にやつておるのでありますが、自由になりますれば、その点が現在と違うことも事実であります。しかしやはり戦前における自由取引においても、著しい混乱はほとんどなく、スムーズに行つておりました。ただ過渡期においては若干その間に混乱が来る可能性もありますが、それについては運輸当局並びに国鉄が全面的に協力いたします。特にここで問題になりますのは、米の出まわり期の問題であります。一旦各消費地に相当ずつストツクされますと、それほどの問題はございませんが、問題は米の出まわり時期の問題だと思いますので、これにつきましては国鉄並びに運輸当局と、さらには生産地における協同組合その他の出荷機関との連絡を十分緊密にあつせんをいたしまして、万遺憾なきを期する。こういう方針で運輸当局並びに国鉄当局も了解して、これに協力するという前提に立つておるのであります。
  21. 川島金次

    川島委員 それはなるほど戦前においては、そういう輸送の問題については、そうさしたる支障があつたということも——全然なかつたとは言えませんが、きわめてまれであつたということも承知いたしております。しかし戦前日本輸送力と今日の輸送力には大きな違いがあります。それでなくてさえも、今日何百万トンに上るところの滞貨を見ておるというのが日本輸送の現状であることは、農林大臣といえども少くとも御承知であろうと思う。そういう輸送力のきわめて逼迫しておりますところの現状において米の統制撤廃される。しかもその輸送が、政府の手を離れて、民間の自由な輸送にまかさなければならぬということになるといたしますれば、そこに必ずや混乱が起るということは、これはもうきわめて明白な事実ではないかと思うのであります。そういう事柄について、いずれ私は運輸大臣にもお尋ねしてみたいと思うのですが、今の農林大臣の御答弁ように、戦前においてはこうであつた、しかし今後といえども過渡期においてはこうするのだというようお話、その程度のことでありましては、出まわり期におけるところの満足な輸送というものは実現できない。こういうふうに私どもは考えて、この統制撤廃後におけるところの国鉄の国内輸送の問題にさえも、国民とともに大きな疑念と大きな不安とを抱いておるものであります。しかしながら、この問題でさらにお尋ねをいたしますことは、議論にわたるきらいがあると思いますので、この程度でとめておきたいと思います。  そこでさらに問題をかえて、この機会に農林大臣にお伺いしておきたいのですが、今度の行政整理、定員法の改正によつて、かなり多数の人員整理が政府の手によつて実施されようといたしておるのであります。その中でも、農林省の管轄に属する人員整理の数は、全体の中で最も大きな比率を示しております。その人数は、農林省全体で二万数千人にわたろうという。今度の整理の中で、各省別にいたしますれば圧倒的に多数を占めております。この圧倒的に多数を占めておりまする一つの要素といたしましては、ただいま問題になつておりまする食糧統制撤廃に伴うところの整理と称せられるものも入つております。ことに食糧庁のごときは、現在三万何がしであると承つておりますが、そのうちの一万六千、すなわち五〇%以上の即時人員整理が断行されようといたしておるわけであります。私はしろうとでありますけれども、この食糧庁に属するところの職員の中には、米麦食糧の検査に当つておりまするところの現地職員の数が、かなり多数を占めておるのではないかと信じておるのであります。そこで農林大臣に伺うのですが、かりに一歩をしりぞいて、食糧統制撤廃が実現いたすような場合があるといたしましても、この主食食糧の検査員というものが、撤廃後において、少い人員で、そう急に満足な検査がはたして行われて行くものであるか。この検査職員というものは、実務上においても、また米麦生産の指導等の面におきましても、これほど整理をいたすほどに過剰人員を今日においてかかえておると農林大臣自身は認めておるのかどうか。この点についての農林大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  22. 根本龍太郎

    根本国務大臣 現在の食管特別会計の人員は、御指摘の通り一番多いのでございます。大体の内訳は、管理事務に充当する人員と、それから現場の検査、並びに現場における管理事務と検査事務を兼ねているものがございます。そのうち一番多くを占めているのは、現場における検査並びに管理事務を担当するものであります。これが約二万三千幾らございます。今回の行政整理にあたりましては、統制撤廃をいたすことによつて、管理事務は大体六割の整理をする、それから検査事務については五割の整理、こういう原則に立つて整理案ができておるのでございます。つきましては、検査事務が、統制撤廃によつてそんなに人間を減らして、はたしてできるかどうかということの問題だと思うのであります。これは現行法に基いて、食糧検査はやはり国営検査で行くという立場をとつておるのであります。これは検査にあたつて、技術上非常に万全を期すということになりますれば、現在の定員をそのまま置きたいという気持は、われわれ農政当局としては持つておるわけでありますが、国家全体が非常に経済的に弱体のとき、できるだけ最小限度の人間で、行政的効果を維持して行くという原則に立つのが、行政整理の立場であります。そういう点からいろいろと勘案いたしました結果、検査事務が一番多いのは供出時期で、これは時期的に非常に仕事が集中いたしまして、日常業務においてはかなりその点が緩和されており、その繁閑の非常に著しい業務でございます。それで非常に忙しいときに、何ら支障なくするという立場をとりますれば、人員は非常に多くなるのであります。それを平均してみた場合にはうんと減らせるという議論が立つのでございます。今回の整理にあたりましては、非常に忙しいときには臨時的に業務費でその仕事をまかなつて行き、経営的な人員はできるだけ減らす、こういう観点から整理案ができたことは一つの考え方でございます。  それからもう一つ、従来は供出をやつている場合におきましては、実は検査員の人々が供出の一つの推進力でございましたことは事実であります。そうしてでき得れば庭先検査までして行く、そうしてまず第一に検査で収穫の実態をつかむ、それから供出を強行する、こういうふうな関係からいたしまして、非常に多くの人員をかかえておつたことは事実でございます。しかしこれが統制撤廃になりますれば、検査員がそうしたところの供出推進の任務はもうやらなくてもよろしい、庭先検査などはほとんどやらなくてよろしいのでありまして、これは共同倉庫あたりに持つて来た場合にそれを検査する、これは戦前にもあつたことでありまするが、よく一俵々々見るわけでなく、実は全部格付して、十俵のうち一俵とるとか、そういうふうな簡素化をして検査しておつたということもありまするので、そうしたいろいろな検査技術におけるところの簡素化ということをも考えまして、現在の整理案になつておる次第でございます。
  23. 川島金次

    川島委員 私は現地方面における声を直接聞くために、一昨日からの休みを利用しまして、二、三あちらこちらをまわつて見て参つたのであります。そうして現地の人たちにも会つて参りました。これは卑近な例で恐縮ですが、たとえば埼王県のことですが、今日の埼王県の食糧事務所においては、現在の人員でさえも、統制が継続いたすとすれば、なかなか容易でない、多くの仕事をしておる。しかしかりに統制撤廃されましても、ただちに人員を整理するに足るだけ仕事がひまになるということは、まつたく考えられない。ことに埼王県にはそういう事柄があまりなかつたようでありますけれども、全国的に戦後における供出の困難な事態にあたりまして、食糧を確保するための第一線に立つておられました食糧検査事務所の職員の人たち、中には供出の問題をめぐつて殺傷を受けたり、あるいは一命をそがれたり、あるいは自殺をしたりという、いろいろの事件をさえもあえて見られた事柄が、過去二、三年の間にはずいぶんあつたのであります。そういう食糧の確保のことについて、長い間血と汗をしぼりながら、第一線で奮闘いたして来たこの職員が、統制撤廃だからといつてこれを機会にばつさりと生首を切られてしまう。しかもその首の切り方たるや、実に半分以上にも及ぶというようなことであつては——しかも目先には供出の問題が控えておる。しかもその供出の問題で、全国の知事会議政府との間に食い違いがあり、また当局と政府との間にも、今日は若干の食い違いがあるというようなことで、供出数量すらも目下では最終的決定をなかなか見ようとしておらない実態であつて、戦後長い間汗をしぼり、血をしぼり、中には一命を捨ててまでも、国内の食糧確保のために闘つて来たまじめな職員が、ここで行政整理という問題にぶつかつて、あえなくも、容赦なくその血刀の犠牲にならなければならない、こういうことを目の前にして、一体この状態ではたして今年度の供出がうまく行くのか、こういう問題も生じて来るのではないかと思うのです。これは現地の声といたしまして、私はまことに同情すべき、また理解してよろしい声ではなかつたかと思うのであります。お前たちは近くお払箱だ、しかし今年の供出が結局二千七百万石なら二千七百万石にきまつたとき、それは大いに実行しなければならぬ、そういつた問題にぶつかつて、はたして職員が、従来のように忠実に真剣に、その供出の問題と闘つて行けるかどうか。農林大臣はそういう職員たちに、強く、自信をもつて、闘つて行けということがはたして言えるものかどうかということも、われわれは一応この際考えてみなければならぬと思うのでありますが、そういう事柄についても、農林大臣はさだめし考えたこともあろうと思いますけれども、あらためてそういう事柄について、一体しやにむにこの行政整理の既定方針を断行するという腹でおるのか、あるいはまた今後いろいろ事情を勘案して、これを何らか、最小限度に食いとめるという熱意をもつて農林大臣としては親心を持つて進んで行くという気持もあるのかどうか、この点についてのあなたの見解をひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  24. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘の通り、現在の食糧検査員あるいは作報の職員は、戦時中並びに戦後の食糧事情の非常に困難なとき、一方は農民から非常な恨みを受け、一方は政府の施策に協力するために、非常に苦しい立場にありながら、その使命を達成したことについては、私、満腔の誠意をもつて感激しておるのであります。先般、全国の食糧事務所長会議並びに作報の所長会議があつたとき、これらの代表者の諸君が切々として訴えるその言葉には、私はまつたく胸を打たれておるのであります。しかしながら先ほど申し上げましたように、政府といたしましては、その今までの功績については満腔の謝意は表するけれども、この独立後における日本経済の再建のために、国家事務において簡素化し得るものはできるだけこれを簡素化し、そうして国の永遠の再建のためにやむなく行政整理をいたすという方針であります。そのために、でき得るだけ、退職金に対し、あるいはまた整理後におきます転職その他につきましては、万全の措置を講じたいと思つておる次第でございます。何もこの問題は、われわれ何らの感情なく、ただ切ればいいんだというような、そういう態度では臨んでいないのであります。幸いにして現地の所長の諸君も、非常な苦衷を訴えながらも、政府方針に沿つて非常に困難な立場に立つて、整理さるべき部下を督励しつつ、しかも供出事務あるいは管理事務については、現在何らの不穏な行動なく、協力していただいております。それだけ私はまことに感謝しつつも、胸の引きしまる思いをしておるのでありますが、これが善後措置をできるだけ講ずることによつて、これら多年にわたる、特に食糧検査員のごときは、長い人は二十年あるいはそれ以上もやつてつて、相当の家族をかかえておるということで、非常にこの人たちの今後の職業転換については考慮しなければならぬと思つております。そのためには、あるいは統制撤廃後になりますれば、これらの仕事が共同出荷とかあるいは共同販売というよう方面に問題が展開して参りまして、そうした業務に携わる人が、どうしても農業協同組合の単協あるいはまた連合会に必要になつて参りまするので、これらの方面にこうした専門的な人々をとつていただいて、そうして今後において食糧の需給における新たなる任務を持つところの農業協同組合における中核的な人物として活用してもらう、こういうよう方法も考え、いろいろと方策をめぐらしておる次第でございます。
  25. 川島金次

    川島委員 今私の申し上げておりまする食糧検査員の問題は、私はかりに首を切つても切らぬでも、人員の減少という数字的な減少の目的は達成できますが、政府の予算上の節約にはあまりなつてくれないのではないかと思う。というのは、検査員には検査をやります場合に検査手数料を払う。こういつた問題を考えますと、必ずしも食糧検査員というものは、全部が全部国費で負担しなければならぬという実情ではなくて、大ざつぱに見ましても、その検査手数料とその人件費とは大体において見合うのではないかというふうにもわれわれは見ておりますので、そういう問題と、もう一つは、かりに統制撤廃が実現をされましても、今までは何はともあれ、食糧は量的に確保すればよかつた。しかしながら、今後は統制撤廃のいかんにかかわらず、質的な問題が重要な事柄になつて取上げられなければならぬ。そういうことになりますれば、一層検査員というものの任務も非常に広くなり、また深くなる、こういうことになるのではないかと私は思つております。そういうことを勘案いたしましても、私は地方の現地におけるところの食糧検査員の生首を、しかも半分以上にわたつてばつさりやらなければならぬという根拠が、一体明白でない、こう私は感じておるのであります。しかしこの問題では農林大臣は、やむを得ない、涙をのんで馬謖を切るのだというようお話でありますので、これ以上追究いたそうとは思わないのでありますが、しかし何らかの形において、この問題を最小限度の犠牲において食いとめるという努力を、農林大臣は払つてしかるべきではないかということを私は強く要望しておく次第であります。  次に大蔵大臣がおりますので、大蔵大臣に二、三お尋ねしたいと思います。  大蔵大臣は先般の財政演説の中でも、その政策の基本として、安定と能率と発展、こういうことをいみじくも掲げまして、基本態度を明らかにしたわけでありますが、一体この経済の安定、能率あるいは発展という言葉意味するものは、どういう内容を持つものであるかということについて、私は大蔵大臣に二、三、この際尋ねておきたいと思うのであります。なるほど大蔵大臣は、今日の日本の財政の面においては、むしろインヴエントリー・フアイナンスなどを考えた場合には、黒字的な財政というものを打立てて来た。このよしあしは別といたしまして、事実そこに持つて来たことはわれわれも認めるものである。しかしながら日本の経済の安定、そして能率と発展という問題を考えた場合に、私は財政上におけるところのつじつまの合つたこと、均衡がとれたことをもつて、それで安定とは必ずしも言えるものではないと思うのであります。今日、昨年の朝鮮事件以来、なるほど一小部分においては、企業の面において黒字を出すものもかなりある。しかし一方中小企業方面においては、必ずしもそういうところにまだ行つておらないし、むしろ今日なおかつ資金に困り、あるいはまた税金の重圧にあえいでいるところの、いわゆる困難な歩みを続けておりまするところの企業がかなり多くあることも否定はできない。なお、さらに下へ行つて国民生活は一体どうか。こういうことになりますれば、ことに朝鮮事件のインフレ的な景気に直接触れたものは別といたしまして、勤労大衆の生計は今もつて戦前の状態に比べれば、実にみじめな生計を続けており、中には今もつて大きな赤字生計を続けておるという国民生活の実情が、今日目の前にあるのであります。こういうことを考えた場合に、私は経済の安定というものは、手取り早く申しますれば、なるほど財政上の均衡もはかる、同時にまた日本国内の産業を構成する企業の実体も安定する、そして均衡がとれて来て、なおかつ勤労大衆の生計が基本的に確保されてこそ、私は真の財政経済の安定ということが言えるのではないかと思うのですが、大蔵大臣の今日までやつて来たところをずつとながめてみますと、大蔵大臣のやり方というものは、財政のしやにむに的な均衡をはかることが第一、第二には特殊的な企業体の利益を守るということ、しかもそのしわとして寄せられるものは、勤労大衆の生計の圧迫、こういう形になつておるのが、いわゆる池田財政の一貫した一つの性格ではないかとさえわれわれは感じておるのでありまして、大蔵大臣は、財政演説で言われました安定と能率と発展、こういう三つの原則について、一体今の日本の勤労大衆の生計の実情を目の前にいたしましたときに、はたして大蔵大臣の言うがごとき経済の安定というものの糸口に入つたかどうか、こういうことについての大蔵大臣の明快な見解をひとつもう一ぺんこの機会に承つておきたい。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 安定ということも度合いの問題でありまして、相対的にも考えなければなりません。この相対を戦前に比べて言つておられますが、こういうひどい敗戦の目にあつたのでありますから、ただちに戦前の状態にまで行かないことはやむを得ないのであります。しかし国の経済の安定をはかるのには、まず第一にやはり財政の安定をはからなければならぬことは、だれも認めると思うのであります。次に金融その他につきましても、できだけ合理化し、産業の復興に資するようにしなければなりません。従いまして生産その他も過去一、二年の間に非常に伸びたということは、御承知の通りであります。国の安定をはかるには、まず第一に為替相場をきめなければいかぬというので、就任早々為替相場をきめて、そうして国際経済に持つて行くようにいたして、今では大体正常なと申しますか、それは朝鮮事変その他特殊な点もありますが、自立し得る態勢になつて来たのであります。  最後に、勤労大衆の生活の安定ができたか、これは先般のあなたの質問に答えましたように、消費水準を戦前に比べますると、それは六五—六あるいは七〇前後へ行つておりますが、あなたの今おつしやる賃金ベースということをやつてみますと、朝鮮事変後は安定いたしております。すなわち名目賃金から税金を引きました実質賃金をCPIで割つた場合、いわゆる実質賃金指数というものは、これは戦前に比べて、東京におきましては劣らない程度になつているという表もあるのであります。私は勤労大衆の生活が戦前に返つたと即断はいたしませんが、数字のとりようによつてはそういうところもある。少くとも朝鮮事変前からここ二年間くらいは、勤労大衆の生活も、終戦後二、三年に比べて、よほど安定したと言い得ると思うのであります。
  27. 川島金次

    川島委員 私は何も勤労大衆の生活が戦争前の水準に達しておらないからという立場でお尋ねをしておるのではないのです。問題は、財政の超均衡をはかる、それがまず第一。そして産業構造の主要部分である企業の特殊的な形態の安定はなるほど得つつあります。しかし一方においては、その財政の均衡や企業的な安定に追いつかないほど、はなはだしき遠いところに置かれておるところの勤労大衆の生活というものが、現実にはあるのであります。これはやはり財政の均衡もとりながら、企業の安定もはかりながら、それと並行して、働く者の生活の安定の度合い、水準というものを、やはりそれと並行して行かなければならないものである。ところが大蔵大臣の財政政策を見ておると、そうでなくして、財政均衡はなるほどとれた。むしろ国家の財政的には黒字的な要素さえも見えておる。しかしながら一方において国民の生活は、財政の均衡との水準に隔たること遠いような形において放置されておるということが、言えるのではないかと私は思うのです。すなわちこれを言いかえれば、池田財政は、財政の均衡をはかるために、勤労大衆の生計をはなはだしく犠牲にしておる。そうして財政の均衡と、産業構造の主要な部分である企業の安定ということに力を注いでおる。そのために勤労大衆の生計は大いに犠牲にされておる。こういう一貫した財政政策をとつておるのではないかということを感じながら、今のお尋ねをいたしておる。しかも今日大蔵大臣が口にしておりまする安定ということは、私はもう一歩進んでいいますならば、それは見せかけの安定である。通貨と物価の見せかけの安定だと思う。なるほど通貨の膨脹する度合いというものは、若干は今日は横ばいみたいなものである。そして物価も一応これで安定させようという動きがある。しかしながら一方におけるところの勤労大衆の実態の生活というものは、大蔵大臣が自慢するほど改善はされておらないということであります。そうであつてはならない。やはり財政の均衡もはかられ、企業の安定もはかられると同時に、もつと根本的な要件は、働く者の生計というものが真に確保されるということが、第一要件でなければならない。そういうことをするために、いわゆる池田経済の自由放任主義であつてはならない。やはり勤労大衆の生計を確保することを第一の要件とし、財政の均衡もはかるべし、企業の安定もはかるべし、発展もはかるべし、生産増強もはかるべしというところに行かなければ、私は経済のほんとうのものではないという考え方を持つておるがゆえに、私はあえてそういうことをお尋ねしたのであります。  そこでさらにお尋ねをいたすのですが、大蔵大臣は先ほど、勤労者の実質賃金も若干ふえたじやないか、従つて大いに改善されたじやないかと言われましたが、今日の補正予算においても、公務員の給与は千五百円も上げなければならない。この事実はやはり勤労大衆の生計というものが、いかに犠牲にされておつたかという一つの証拠である。政府みずからがそれを示しておる。政府の言うがごとく、財政も安定し、そして企業も生産も増大したということであれば、当然に勤労大衆の生計というものが安定されていなければならない。しかるにこの今日の補正予算において公務員の給与ベースすらも千五百円という大幅な引上げを、最小限度ではあるけれども、これは上げなければならぬ。こういう状態に立ち至つたということは、繰返していいますが、勤労者の生計が大いに犠牲にされて来たということの何よりの証拠だと思う。しかもその上にお尋ねしたいのは、この給与ベースはなるほど今度千五百円上げます。またこれに右へならえをして、民間の給与も若干上つて行くのではないかと私は期待をいたすのです。そうして実質的に賃金ベースの改善ということも、若干は期待できるのではないかと思うのでありますが、その一面においては、なるほど今度の減税によつて、その物価高は吸収されるのだと政府はいつておるけれども、八月一日からは米の二割以上の引上げがあつた。さらに運賃も二割五分とか三割の引上げが行われた。さらにその前には電力料金がすでに上つてつて、さらに来年早々電気料金は上げなければならないということがうわさされております。さらにまた郵便料金も上げました。こういう形において勤労者の給与の改善が若干行われましても、それがまた池田大蔵大臣のやつておりますいわゆる物価政策が糸口となつて、さらに物価騰貴を誘発いたしまして、せつかく千五百円の給与引上げをいたしましても、さらにまた減税をいたしましても、その減税の中に吸収しきれない物価騰貴というものが現われて来るのではないかというおそれを、国民勤労大衆は持つておるのであります。この間この問題について周東安本長官にも若干お尋ねをしたのでありますが、この当面の責任者である池田大蔵大臣の今後の物価政策、今後の物価に対するところの見通し確信というものを、どの程度つておられるか、この機会に明らかにわれわれの納得するような形においての説明をお願いしたいと思います。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 私が大蔵大臣になりましたときの日本の財政経済状況は、御存じ通りでございます。ほとんどむちやくちやであつたのであります。これではいけないというので、財政の建直しをやりまして、健全財政主義で赤字を克服し、また金融その他産業の方面にもできるだけ力を尽しましたから、先ほど申し上げたよう状況になつて来たのであります。日本の経済は安定か不安定か、ここで議論してもこれは水かけ論でございますが、世界の人から日本の経済状態を見た批評を聞けば、よほどよくなつている、安定していると言つておるのであります。日本の経済はよほどよくなつたというのは世界の通念であります。私は水かけ論はいたしません。ただ私は今お話になつております実質賃金指数——東京都でございますが、昭和九年から十一年を一〇〇にいたしますと、二十二年は一〇〇に対して二九だつた、二十三年は四七であります。二十四年の吉田第三次内閣でこれを六三に上げました。二十五年は平均八六、二十六年になりますと一月が九六、八〇にもなりましたが、六月が一〇一であつた。七月が一〇四であります。八月が九二とこういうふうに実質賃金は来ておるのであります。終戦後川島さんなどがおやりになりましたときは、二九、四七という状態であつた。それが八六となり、一〇〇という月も出るようなつた、これはよほどよくなつていると言い得ると思います。そういう社会情勢、経済情勢にしたのは、安定と能率と、発展を考えて経済政策をやつたたまものと私は確信をいたしております。  次に今後の物価の問題でありますが、お話通りに八月に主食を十八コンマ何パーセント上げました。電気料金あるいはガス料金あるいは鉄道、逓信の方も上つて参りましたが、今回の減税によつて、これは大体吸収し得るのであります。なお階級によつて違いがありますが、吸収して相当余りあるのであります。それに千五百円の給与の引上げをいたしますので、公務員はよほどよくなつたと思います。しからばそういうふうに上げざるを得ぬようなつたのは、いかなる理由か、それだけ遅れているだろう、こういうお話でございました。それはその通りであります。財政経済政策でありまして、いろいろな電力料金が上がつて、俸給所得者はあとから来るのは、これは経済の原則であります。しかしながら物価が非常に下つて来ますと、これは俸給所得者が得をすることは、昭和六年ごろのあの官吏の俸給を削つたときでもおわかりの通りであります。ですからわれわれは勤労大衆が遅れないように、できるだけ物価の値上りを押えて行かなければならぬという考えで進んでおります。しかし日本の物価は鎖国経済とは違いまして、世界の物価に非常に影響されるのであります。日本の経済が非常に強ければ、世界の物価に影響される、その影響の度合いは少いのでありますが、いかにせん、まだ敗戦後の状態で、安定の度は回復いたしましたが、これが外国の物価が上ることに対して、対抗し得るだけの相当の力をまだ持つておりません。ことに世界が軍拡の状態になつて来ますと、日本ように原材料をよそから入れている国は、非常に変動しやすいのです。ですから私は世界の物価の変動にたてつくわけには行きませんが、どうしてもそれを見ながら、世界の物価が上つて行くほど日本の物価は上げない、こういうふうに努力して行かなければいかぬ。そこに財政金融政策のもとがある。極力物価の上りに対して、勤労大衆に迷惑をかけないように努力を続けて行く、こういうように考えております。
  29. 川島金次

    川島委員 なるほど大蔵大臣が今の数字で示したことを私は否定するものではない。ただ全体的な立場において、池田財政がややもすれば勤労大衆の生計の犠牲の上に立つて財政経済政策を強行して行く、こういう姿にあるということにわれわれは非常に憤懣を感じているのです。そこで今のようなお尋ねをしているような始末です。しかも今大蔵大臣の話によれば、なるべく国際物価の値上りと隔たらない形に日本の物価というものを置きたい、これは当然のことである。日本の安定と自立、そして経済の発展を期するためには、やはり国際貿易がまず重点となるわけであります。その重点となる貿易を推進するためには、やはり日本の物価というものは、ただちに国際物価にさや寄せしつつその国際貿易の発展を期さなければならぬ。これは当然なことでありますが、そうだといたしますれば、今日のようにいろいろの物価を上げて行き、しかもその上に最近においては大蔵大臣が大いなる主張者の一人だといわれておるようなこの主食統制撤廃をすれば、従来の公定の米とやみの米との混合された計数による実効価格以上にあるいは上るであろうということが定説であります。また国民もそれを非常に脅威としておるのであります。そういうことになりますれば、これはやがてやはり工業の生産コストにも直接に響いて参ります。勤労者の生計を脅威する。そういうことになれば、やはりそれがすぐに一般諸物価の高騰を誘発するということも、きわめて私は自明の筋道ではないかと思うのです。そういうことを考えてみますときに、大蔵大臣が常に口に言つておるところの国際物価の問題、国内の物価安定の問題と主食統制撤廃ようないわゆる米の値上り必至であろうという問題を、ことさらにここに取上げてやつておるということは、その大蔵大臣の従来の主張や方針に矛盾するのではないかとさえ私は感じているのですが、その点はどういうふうに感じておりますか。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 川島さんはどうも苦しくなるということを前提にして議論を立てているようであります。私は主食統制撤廃を自由党の一人として主張するものであります。その撤廃の仕方につきまして、先ほど米の値段が幾らになるか、大蔵大臣は腹案があるだろう、もちろん腹案は持つております。しかし大蔵大臣として米の値段を今ここで申し上げる階段でない。昨日も検討はいたしました。これは米の値段が幾らになるかという前に、麦の値段をどういうふうにしようか、こういう問題と兼ね合せなければなりません。しこうして外米の値段をどうするかというのであります。こういう点から考えますると、いろいろな見方もあります。しかしいずれにいたしましても、主食の出費——今八月の値上げを織り込みまして、米と麦との比較で参りますと、三千二百二十円になりますが、統制撤廃後三千二百二十円でくぎづける計算方法で行くか、あるいはまた賃金がこのごろのような状態で、月に二百円あるいは百五十円平均賃金が上る場合は、その三千二百二十円の出費をどう考えるかという問題があるのであります。従いまして米の値段を云云する前におきましては、麦あるいは外米の値段をどう持つて行くか、しこうして補給金がどれだけになるだろうか、こういう各般の事情を考えてでないと断定しにくいのであります。そこで私は自分としてはいろいろの前提のもとに腹案は持つておりますが、申し上げないというのです。計画も何もなしに統制撤廃論なんかするような軽はずみのことは私はいたしません。そこで統制撤廃した場合において、米が非常に上るではないか、生活が苦しくなる、こういう前提でございますが、生活を苦しくして物価をどんどん上げて行つて日本の経済をこわすようなことになるのであつたならば、何ぼ自由党員でも反対いたしますが、私は大体の見通しがついて、今のような暗やみの生活といいますか、陰鬱なやみをやつて過すというようなことは、経済が安定して、しかも非常に能率化し発展している日本におきましては、できるだけ早く正常な経済の姿にしなければならぬというのが私の念願であります。大蔵大臣になりましてからあらゆる統制撤廃して参りまして、今ほとんど残つているおもなるものは、主食と石油でございます。私は石油についてもはずしたらどうか、こういう考えを持つております。これがいわゆる自由経済の姿になつて来る最後の段階であります。ほかの場合にもよく言いましたが、仏はつくりました、しかし主食や何かを統制しているうちは眼は入つておりません。日本の経済を早く眼を入れたりつぱな仏にしたいというのが私の念願で、あらゆる努力をして結論を見出すように持つて行こう、理想は自由経済であります。やみをなくすることが私の理想であります。
  31. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣の言うように、りつぱな経済ができ上るならまことにけつこうなのですが、この主食統制の問題は、かんじんかなめの生産者方面も鋭い反対ののろしを上げております。消費者は米が上るのではないか、生活が苦しくなるのではないかという脅威を感じて、これまた反対であります。というのは、政府主食統制撤廃を口にしながら、いまだに国民に納得行くだけのものを説明されておらない。それだけの責任あるところの計画を立てて、国民に納得させるだけの熱意と責任に欠けておる。そういうところに消費者生産者脅威を感じて、反対しておるという始末です。こういう状態に対して、政府としても政治家としても責任の一半を感ぜざるを得ない立場ではないかとさえ私は思うのでありますが、そういう事柄について議論をいたしてもはてしがありませんから、これでとりやめましてさらにお伺いいたします。  先ほど大蔵大臣は、なるほど諸物価を上げた、上げたが一方において減税をしたではないか、減税をしてしかもその減税で物価高は吸収したと言う。これについて私はこの間も周東安本長官にお尋ねしたのですが、安本長官はよく知らないから、答えがありましたけれども、私は追究しなかつた。そこで大蔵大臣にお伺いいたしますが、なるほど減税はされました、しかし減税に浴さない階級があります。税金を納めていない貧困な階級が、日本国内にはたくさんあります。人数を調べればまだ二千万ないし一千万以上あるのではないかと私と思います。これらの人たちは一体どうなるのですか。物価は上つて減税はされておらない、それで貧困だ、こういう数が、しかも国民の八千万人の中に一千万人以上もおるのです。こういう人たちの生活の脅威、物価高によるところの生計の脅威というものは、一体どこで確保してやるのか。こういう問題も私は考えに置かなければならぬと思う。安本長官は大蔵省のだれかのさしがね、耳打ちで、それは生活保護費を上げたというが、生活保護費は上つておりません。安本長官は知らぬから私は追究しなかつたりですが、今度の補正予算に何も出ておりません。こういう貧困階級に対する物価高の影響をどこで防いでやるか。これは私は重大な事柄ではないかと思うのですが、その点について大蔵大臣の見解をお尋ねする。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 ずつと以前から論議があるところで、政府としてもこの問題については困つている問題であります。そこでお話ように、納税しないところの貧困者につきましては、先ほどお話申し上げましたように、できるだけ物価を上げないように——こういうように補助金を出すという問題になりますが、これはなかなかやりにくい問題であります。だから物価は上げないようにするのが主なんでございます。政府というものは大きい目で、一人の犠牲者もないようにすることが理想でございますが、今税金を納めていないような人々につきましては、今の政治体制では手がございません。生活保護費というのはそういう問題ではないので、生活保護費というものは、所得も何もないような人の分であります。今の体系といたしましては、税金を納めていない人の物価高による苦しみは、賃金を上げるよりほかはない。これは日本ばかりではございませんで、各国いつの時代でもそうです。
  33. 川島金次

    川島委員 その賃金を上げてもなお助からない階層もあります。賃金をとりたくてもとれない階層があります。いわゆる失業者、その失業者に失業保険があるが、その失業保険をもらつていない失業者もある。それから半失業者もある。それから生活保護者もある。これらの数が大体私の目見当約一千万だと思います。これらの人々は、手がないと言つてしまえばそれでおしまいです。いやしくも責任ある政治家としてあるいは政府として、そういう方面に対して、今の日本では手がないということは、無責任きわまると思います。最も困難をきわめた、その日の生活に困つているこの連中が、汽車賃も上れば米代も上る、さらに電気代も上れば、すぐに翌日から生計が困つて来る。こういうよう方面に対するところの数も、八千万人のうちに百人か二百人ならいざ知らず、およそ人数にしては一千万人を突破するだろうと想像される、この厖大な階層があるということを、私は政治家としては忘れてはならないと思う。それを忘れて今のように手がないから、その方面月給を上げてやると言つても、月給を上げるにも上げる方法のない階級がおる、それはどうなりますか。そういうことに対する手厚い細心な政治を行うということが、私は政治だと思う。八千万国民の中で八百人か千人ならまだしも、一千万人という厖大な数字の人が、この物価高の影響を直接受ける。そういう問題に対するいわゆる心やり、政策というものがあつてしかるべきだと私は思う。こういう点について、今後政府はどういうふうな処置をとつて行く方針でありますか。ほつておくのですか。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 いつの世のどこの国でも、こういう難問題があるのであります。そこで先ほど来申し上げましたような、できるだけ物価の上りを押えるように、しこうしてできるだけ一般の産業がよくなるように、いわゆる賃金を上げ得るような政策をとつて行かなければならぬのが第一でございます。しこうしてそれでもなお足りないという場合におきましては、極端な例でいえば、生活保護費とかあるいは失業対策費とか、あるいは社会保障費で、その救われない人を救つて行く方法をとらざるを得ません。そこで社会保障費をどういうふうにやるかというと、その実態々々に沿つて適当な措置を考える。それでわれわれは社会保障費につきましても、毎年これをふやして行つていることは、川島御存じ通りであります。
  35. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 川島君に申し上げますが、けさほど申し上げたように、農林大臣には都合がございますので、一応大蔵大臣に対する御質問は御留保願いたいと思います。  次は風早八十二君でありますが、農林大臣に御通告がありませんので、次の勝間田清一君に農林大臣に対する部分だけをお願いして、なおその次に横田甚太郎君より、農林大臣を御希望されておりますから、そういう順序で続けていただきたいと思います。勝間田清一君。
  36. 勝間田清一

    ○勝間田委員 農林大臣に御質問したいと思いますが、まず第一は、統制撤廃の問題については、実は誤解があるのじやないかと私は思うのであります。先ほど来あるいは数日来から、いろいろ撤廃したらどうなる、こうなるという問題があるようでありますが、しかし現に政府供出を二千数百万石させようというわけでありますので、政府やみ米以外はほとんど独占するわけであります。従つて配給をどうするかといえば、当然政府配給しなければならぬことになるのでありまして、何かすぐにでも撤廃になるような議論が非常に多いようでありますが、私はこれはあまり適当でないと考えておるわけであります。従つて私はここで今まで内閣できまつておる事柄、話し合つている事柄のアウトラインでもお話つて、その誤解を一掃したらいかがかと存ずるのでありますが、ひとつ根本農林大臣の構想で、問題点はどこにあるかということのお考えをお聞きしたいと思います。
  37. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答えいたします。ただいま勝間田さんから言われた通りでございまして、現行の食管法に基いて、来年の三月三十一日までは現行通りにやるという建前でございます。なお麦については、すでに先般の国会において衆議院は通過し、参議院においては、これは通過いたしませんでしたけれども、麦についての統制解除は、現在政府もその通り実施したいと考えております。来年の四月以降につきましては、すでに本会議その他で申し上げましたように、これは全然の自由放任ではなく、食管法にかわりまして、需給調整法を考慮しておるのであります。その根幹は、今後の日本の食糧の絶対の量がどうしても足らないのでありまするので、相当部分輸入食糧に依存しなければなりません。この輸入食糧の管理が結局需給の調整と価格に対する最も大きな役割を演じまするので、これにつきましては従前通り、国家がこれを管理するという建前をとる構想でございます。この外国食糧の操作によつて需給並びに価格の調整をいたすという考えでありまするので、従いまして現在の国際物価の状況から見ますれば、小麦協定の部分については大分安値になりますけれども、外米並びに外麦については、やはり依然として補給金をつけて行くということが前提でございます。     〔委員長退席、苫米地(英)委員長代理着席〕 この補給金に裏づけされたところの外国食糧の量と放出価格によつて日本の内地産米並びに日本産の麦の値段並びに数量の需給を調整する、これが構想であります。  そうした場合に一面において農村で心配しておるのは、あるいは国際情勢の変化、特に急激なる外米の増産あるいはまた外麦の増産によつて、安い食糧が日本にどんどん流れて来るということによつて、あるいは農業恐慌に襲われはせぬか、こういう心配がありますので、これに対しましては、われわれの見通しは、当分そういうことはないとは思いまするけれども、万全の措置として、また農村の心配をなくする意味において、これについては価格支持政策を実施する、すなわち再生産を可能にする程度価格を算定し、これに近い線で政府が無制限買上げすることによつて農村の不安をなくして行く、こういう考え方でございます。  そういう一応の措置はできましても、結局生産者としては、他の工業生産品と違いまして、時期的に非常に集中して出て来る、そうした場合に、国全体としては一年を通じては足らないけれども、一時需給の面が実際の購買力と供給力との間においてアンバランスになるために、結局非常に安値で買いたたかれはせぬか、この心配が出て来ます。これにつきましては、構想といたしまして農林中金を通じまして、政府の財政資金等もこれを通じて流すことによつて、農業協同組合に共同集荷、共同販売ができるような集荷資金を融通する、こういう考え方であります。また一面におきましては、現在農林中金がございまするけれども、これによる生産資金の供与は必ずしも十分ではない。そこで現在は供出制度におきまする供出量を担保としたような形において農業手形を出しておるのでありますが、これがもし統制撤廃になるならば、その条件がなくなり、農業手形がだめになるだろう、この心配があるのでありまするが、これにつきましては農業協同組合と生産者との間に売買契約等を締結した場合、しかもそれが共同責任で保証するという場合に限つて、これに対しては農業手形を改良して存続せしめる、こういうことによつて生産者に対しては安定感を与える。それから消費者につきましても、これまた十数年にわたる政府の国家管理でありまするために、米穀商というものの資金の裏づけがございません。卸売についても小売についても、現在のところは、政府の管理米を借りて売つてその口銭をとつておるという現状でありますので、現実の売買力は都市にありまするけれども、それを仲介する商業機関が整備していないために、生産地にはたくさん品物があり、これを持つて来ることもできるのであるけれども、現実に消費者の手に入るところの中間機関がない。それがたといあつたにしても、それを確保するところの資金の裏づけがない。ここに不安があるのではないかと思います。そこでそのためには、この農業協同組合に融資したと同じく、買取販売業者につきましても融資の裏づけをする。これについて今その数量並びに具体的な信用供与の方法検討いたしておるのであります。こういうふうになりますれば、生産者消費者の間の不安がなくなつて来る。  そこで問題になつて来るのは、先ほど以来すでに問題になりました価格の問題になると思います。この価格の問題は、結局生産者よりも主として消費者の問題で出て来るのでありますが、その観点からいたしますれば、これは非常に複雑な要素がたくさんございまして、これをどの程度の目安で価格操作をするかということが、先般から問題になつたのでありまするが、統制撤廃が究極において生産者に対しても不安なく、消費者にも不安なからしめて、全体の安定経済を確保して行くという前提に立ちますれば、どうしても目安は現在の実効価格を目安にしなければならぬというのが私の構想であり、政府の構想であります。これに持つて行くためには、しからばどういう条件が必要であるかというならば、先ほど来川島さんその他から問題になりました外国輸入数量をどの程度つて来るか、それに対してどの程度の補給金をつけることによつて可能であるか、あるいはまた二重価格制度、いわば内地産の麦についても補給金を出す必要があるかどうか、この問題も出て来るのであります。そうして一応の価格操作ができるという前提においてのみ、初めて具体的にわが党が言うところの撤廃ということが総合的な判断として可能であり、またこれが善であるという結論が出て来るのであります。ところがこれは非常に複雑な要素が今出て来ておりまするので、構想はできておりまするけれども、その裏づけとなるところの前提条件について、まだ関係筋との完全なる一致を見ないというところが現状なのでございます。従いましてわれわれは決して単なる思いつきによつてつておることでもなく、また非常に早くやれやれというよう意見もございまするけれども、この問題は実にわが国の財政経済並びに国民経済に及ぼす影響が非常に重大でありまするので、これはある意味では多少早まつたと言われるかもしれませんけれども、やはりこういう問題については、あらゆる方面意見が大衆的に論議されることが必要であろうと存じますので、すでに方針だけは示しておりますが、しかしたとい実施するにしても、一番早く実施しても来年の四月で、まだ半年の時間があるのであります。その間十分にわれわれは政府としての施策も講ずるとともに、国民の批判をも聞き、そうして最善の道を実現したい、かように考えておる次第でございます。ただいまその方針についてのみ議論されておるわけでございます。具体的な問題については、しばしば申し上げましたように、われわれとしましてはあらゆるデータと、われわれの結論いたしたところの前提条件についても十分に資料を整えて、それに基くところの行政措置あるいは立法措置について提案し、そして御審議を願いたい、こう思つておる現状でございます。
  38. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今根本農林大臣がかなり構想を明らかにしたわけでありますが、結局統制撤廃という問題を扱つて行く場合においては、統制撤廃言葉では一言にいいますけれども、供出制度をどうするか、あるいは配給制度をどうするか、あるいは運輸交通というか、そういう制度をどうするか、価格をどうして行くか、将来万一の場合において需給調整が完全にできるかどうか、こういう問題に結局要約されるわけでありまして、そういう問題について一つ一つ、こういう問題が解決すればこうなるという議論でないと、私は食糧問題は扱えないのではないだろうかと思うのであります。そこで私が解明するために政府の所見を聞きたいのでありますが、一つは供出制度をどうするかという問題であります。この問題は今度まだ政府が発表していないようでありますが、もしきまつておれば別でございますけれども、供出量をどの程度にするか、その供出後の、いわゆる従来やみ米に走つてつた分を、この際撤廃をしてそれを自由な市場に出して来るか、これが少くとも二十七年度の新しい米がどういう集荷になつて行くかというまでの間の過程の問題として、この問題が出て来ると私は思うのでありまして、この供出後の自由販売の問題をどうするか、これがまずきまつて来ますれば、今度はそれならば集荷方面をほんとうに自由にするという時期はいつであるかといえば、麦が撤廃されるならば米は来年の新産からということになるということに実はなつて来るわけでありまして、この間に対する政府のお考えをひとつまず聞かせていただきたいと思います。
  39. 根本龍太郎

    根本国務大臣 今の勝間田さんの御質問は、まことに筋の通つた質問でございます。現在その点について検討しておるのであります。いわゆる供出後の自由販売ということを自由党はすでに前から言つておるのでありまして、この問題と関連するのでございますが、これをやるということによつて、しからば供出の制度は実質上は二十七米穀年度からでなければ、切りかえができないではないかということは、理論的にはそういうことになるだろうと思います。しかし本年度の供出量の問題とからみ合いまして、そこにもう一つの問題が関連して今検討いたしておるのでありまして、少くともわれわれとしましては、供出後の自由販売については実行いたしたい、こういうふうに考えておりまするけれども、これは先ほど申されたように、供出量が現行法で行きますと、農村の保有米を除いたものは全量供出されるという前提に立つて、従来やつておるわけであります。そうしますれば、結局において供出後の自由販売と申しますと、農家保有米を、みずからが自分の雑穀もしくは麦類を食うことによつて市場に出した。それが公的に認められて何らの処罰を受けない。そこであるいは従前農村においては価格の関係、それから飼料の関係からして、実は東北あたりではむしろ飼料を買うよりも、麦類を食わした方が安いということで、家畜に相当食わしたことも事実あるようでありますし、それからまたどうせ東北地方ではやみ米はずつと安いから、むしろ麦を食うよりも自分の生産した米を食つた方がいいというので、従来相当程度雑穀あるいは麦に依存したものが、自分の作つた米を食つておる。それが市場に流れるという意味もあるだろうと思いますが、その意味からすれば、たとい全量供出後の自由販売をやつても、農村に実質的な影響と同時に精神的な明朗さを与えるということはあるだろうと考えます。
  40. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それで結局農家の保有米あるいは保有米を節約して、それを市場に出して来る。先ほど大蔵大臣はグルーミイと申されましたが、グルーミイな面をなくして行く。そうしてそれを市場操作によつて切りかえて行くという面でやつて、本質的には政府が二千数百万石というものを独占するわけであります。そこに区別がなかなか今までの議論の結果ではついていなかつた。それからもう一つの大きい問題としては、結局二千数百万石というものがやがてきまるでありましようが、きまつたものが結局今度はこれを流して行くという場合が考えられなければならぬ。しかし農家は保有米というものを相当切り詰めて、ことに今年のような凶作のような事態においては相当苦しい状態が予想されるので、農家は将来そう多量なものが市場へ出せるものとは考えられない。それから政府がほとんど独占しておるものでありますから、どうしたつて都市、大都市、消費者というものについては何らかの形で配給しなければならぬ。その配給をしなければならぬというのは、これは十一月一日から当然起ることであり、来年四月一日以降でも起ることであつて、これをどのルートを通じて流すか、いわゆる一定の一合なら一合という形でやはり配給をして行くということになるのか、あるいはまたそれを早く申せば、一般の、普通の米屋さんに政府が放出するのかということに結局はなつて行くわけでありまして、この独占した政府の食糧を、もし自由党がある政策を持つておるとすれば、それまでの過程においてどういう形でこれを解決して行こうとするのか、これをひとつ私はお伺いするということが順序だと思うのでありまして、それをひとつ御解明をお願いしたい。
  41. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これはまだ政府としては確定しておりませんが、御指摘のように切りかえどきが非常に問題でございます。なおまた政府が独占的と言われるほどほとんど全量についてとつておるという形でありますが、それが直接消費者にどういうふうな径路で行くか、その間におけるところの、いわば手数料あるいはそれ以上の出し方によつて、大きな利益を販売者に与えてしまうという危険性があるという点も確かにあると思います。そこで現在いろいろ考慮されておるうちの一つには、四月に撤廃いたしましても、一つの構想としてでありますが、現行の配給店を通じて政府が委託販売して行くという構想もございます。それは現行の組織を通じて、大体現在の米食率に基く米の配給量に相当するものを、政府が直接売る市場を持つていないので、その事業を現在の登録配給店に委託するという場合になりますれば、ほとんどその間現行とかわらないという形になるわけであります。その場合に、今度全部政府統制撤廃をするという形になつて参りますので、その価格については現行通りにやるか、あるいはまた若干そこに委託の手数料なども必要とするから、それをも加算したものになる場合が考えられます。あるいは時価に近いものになるかということも考慮の点になると思います。もし現行通り価格であるとすれば、農村の生産者に対してはバツク・ぺーの問題が出て来ますので、もし政府が委託販売等の形式によつてつた場合においては、利益があるならば当然生産者政府の利益となつたところを返すべきである、かような考えも持つております。それから砂糖やその他のもののように、いわゆるビツドによつて相当多量なものを、いわば競売市場を通じてあるいは指名入札なんかによつて放出するということもありまするけれども、これは現在非常に危険性が多いので、これについてはあまり強い関心は示しておりません。当分の間、特に消費地、都市、大都市については、現行の配給組織をできるだけ活用して行き、現行の相当一般消費者が安心しておる形において、政府の手持米を放出するということが、一番実際的であるというような考えで現在検討しております。
  42. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうすると、結局もし完全にいわゆる統制撤廃供出配給ルートにわたつて撤廃ということになれば、これは結局来年の新穀年度から考えて行くことであつて、その前の過渡的措置としては、今農林大臣が仰せられたことが行われる、かように解釈してよろしゆうございますか。
  43. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは厳密にいつてどういうことになるか知りませんが、今の現状の通りであるならばそういう形になるか、経過措置は基本的には全面的に撤廃する、但しこれを経過的措置として現行の配給ルートを活用して政府が委託販売をする、こういう観点になりますれば、これは四月から全面撤廃ということになります。それをそういうルートを使つたということは、それ自身一つの名前をかえた配給ではないかという観点からすれば、勝間田さんの言つたよう考え方になるかもしれません。いずれにいたしましても経過措置を講ずることなく、大よそのことができたら、あとはおつぱなすのだ、こういうような考えは持つておりません。解釈はいろいろと解釈されましようけれども、実際措置としてはそういうふうな経過措置をもつて生産者にも消費者にも安定感を与えつつ、しかも統制撤廃の実をあげて行きたい、こういうことが現在の私どもの構想でございますが、これについてまだ完全なホール・ピクチユアができておらないために、またそれを裏づけするところの幾多の諸条件にまだ検討を要すべきものがあり、また関係当局との間の了解を得なければならぬ問題がありまするので、いまだ成案として申し上げる段階になつていないのを遺憾とするものであります。
  44. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私もこれ以上申し上げませんが、今の統制撤廃状況というものは、結局統制撤廃というのは、新聞からいえば統制撤廃というふうになるかもしれぬけれども、実際上の運営されておる姿というものは、統制撤廃という姿ではないのだというようにむしろ解釈しておいた方が、国民生活の実際には合うのじやないか、私はさように実は考えるわけでありまして、またそういう形を通つて撤廃するという条件が備わるか備わらないか、ペンデイングの問題がたくさん残されており、そこにホール・ピクチユアができていないということが、私は言われたのだろうと思います。これはいずれにいたしましてもこの程度で話を打切りたいと思うのであります。  私はしかし自由党がどういう政策をとろうとしているかということは、その間で大よそ方向がつけられると思うのでありますが、そういつた問題の政策をとられて行く場合に、一体日本の農地制度というものがどうなるか。これは前にしばしば言われた問題であるけれども、たとえば不動産金融といつたような金融制度を設けて行かなければならぬ、こういうふうな担保金融を復活しなければいかぬというような問題が当然出て来ると思うのであります、そこで現在の農地制度とはかわつた、すなわち生産手段としての土地が売買されるという形に当然導かれて行くのではないかと私は思いますが、もしそうでない、あくまでも現在の農地制度というものを確立し、その上に商品経済というものを築き上げて行く。こういうのであれば、また私はこの問題についての解明をこの際与えておいていただきたいと思うのであります。
  45. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいまの勝間田さんの質問は、非常に本質的な問題であります。すなわち農業生産品が、現在のところは商品といいながら、実は完全なる商品ではない。いわばこれは政府の管理に基くところの物の操作である。ところが、もしこれが完全な商品になつた場合においては、従つてその生産の基盤である農地においても、おのずからこれが一つの商品の形において、完全な不動産として流通されるということに行きはしないか。またそういうふうな構想で自由党は考えているのじやないか。こういうところに追究して来るあれだと思います。しかし、われわれといたしましては、現在の農地改革の成果というものは、非常に高く評価しております。これは直接の答弁にはならないかもしれませんけれども、私は戦後に行われた政策のうち、非常に議論はありましたけれども、日本の政治的安定、また同時に経済的な復興の一番の基盤をなしたのは、農地改革が一番大きなグルントになつておると考えます。従つて現在の農地制度というものは、私は尊重すべきものであると信じております。ところが現在の農地制度において、これだけの措置をとられておるにもかかわらず、現在においては他の商品物資はすべて自由になり、従いまして国際流通過程に入つた限りにおいては、先ほど大蔵大臣も申されたごとくに、すべてのものは国際価格にさや寄せされ、あるいはそれ以上になりつつあります。ところが農村生産品に限つて、これが統制下におきましては、どうしても低米価、低麦価にならざるを得ません。従いまして本来の需給の面からするならば、絶対量の足らないところの日本の米へ麦が少くとも現状で高くなるのは当然であります。また品質的に見ましても、外米並びに外麦と比べれば、よりよい、より国民の嗜好に合うものが、現在の国際価格よりはるかに低いということは、それ自身大きな農業政策上の矛盾ではないかと私は考えます。これが自由になることによつて、少くとも国際価格にさや寄せされて行く。そうして従来農民の窮乏と耐乏の上に日本の一応の経済の安定がなされておつたのが、今度は農民自身も、やはり当然の自然の経済のごとく、流通の過程において得らるべき立場は獲得されるということが、統制撤廃の後に起るところの私は明るい面だと思うのであります。その面において、おそらく問題になりますのは、勝間田さんが指摘した、今の金融との関係においてだろう。そういう場合において、従来は不動産金融がなされたから、これによつて生産資金なり、あるいはまた土地改良その他の経営改善のあれを得ていたのであるが、自由になつた場合においては、動産だけでは非常に不自由ではないか。いわゆる青田売買をするだけでは金融がつけられない。それでは農村金融が非常に梗塞するために、金融面において今の農地改革が逆に切りくずされて行きはしないか。実質上、法制上立つておいても、現実に生産手段の改良ができない、経営資金すら困るということによつて青田売買をするということによつて、実は農地制度そのものを確保することが困難だろうというところに、質問の要点があると私は感ずるのでありますが、それにつきましては、先ほど申したように、われわれといたしましては、農手は改良して存続して行く。それから農業協同組合と生産者との間における売買契約を条件とする集荷資金は、政府が財政資金をできるだけこれにつぎ込み、農林中金を通じ、系統機関を通じて集荷資金を与える。集荷資金を与えるということは、いわば不動産担保の金融以上に実は確実になつて行くだろう、不動産を担保としなくても、それ以上の効果がある。しかもそれが連帯責任になつて来る。そうしてまた同時に、それが個々の農民の経済の安定のみならず、農民によつて自発的に、民主的につくられたるところの農業協同組合の実は強化になる。従つて、ある意味におきましては、政府が直接米麦を管理しておつたのが、今後は農民の米麦の管理というほどまでは行かなくても、それに近い形が出て来る。そうして従来農産物市場における価格決定において、何らの発言権のなかつたところの農業生産団体が、初めてここに市場における価格決定の指導権を持ち得る、こういうふうにならうと思います。そういう関連からいたしまして、われわれといたしましては、農地改革は米麦の統制撤廃においてくずれない、むしろそれを確保することができるというくらいに考えております。  その次に問題になるのは、私は実質上の農地改革の効果を維持するかいなかということの一番の基盤の問題は、農業資産の遺産相続の問題にこれが関連して来るだろうと思つておるのでございます。現在いかに農地制度を法律上考えておりましても、民法上における諸子均分ということが実際に行われるということになりますと、現在の一町歩あるいは二町歩持つてつたところの農村が、おそらく三代目くらいになりますと、完全に細分されてしまう。フランスにおけるパルツエルレンウイルトシヤフト以上の非常な細分になつてしまう。そうすれば農地改革などということは、ほとんど本質的に抹殺されてしまうのではないか、こういう観点からいたしまして、どうしても農業資産の相続については、特例の立法が必要ではないかとすら考えておる状態でございます。
  46. 勝間田清一

    ○勝間田委員 農林大臣の抱負をお尋ねしたわけでありますが、そこで今の農地の世襲、農地の細分問題について、特に遺産相続の問題について所見を承つたわけでありますが、実は私はそれを聞きたかつたわけであります。すなわち今農地制度は細分されております。この前の農地法によつてかなり細分をされておるわけであります。これが自由党の諸君の政府のやられるように、その上につくられた米というものを商品にして自由市場に出して行くという関係であれば、これは当然そこに利潤というものが追求されて行つて、土地に対する投資というものが生れて来て、そこで経営集中というものが行われて、細分というものが一定の大きさの経営にまで発展をする。これが私は自由主義経済の本筋だと思う。ところがそういう形はとられないで、土地だけは現在の細分形式をとつておこうということになつて来ると、細分された経営を集中して行つて生産力を高めて行く要素というものは何であるかということになつて来ますと、その場合において、一つは世襲農地、この遺産相続の問題に対する細分禁止という法的措置も講ぜられるか、同時に経済的、社会的な方策というというものがそれに伴つて行かなければ、五反歩百姓が一町歩の百姓になることはできないわけである。ここに私は自由党の政策の一番の根本があると思う。そこで土地制度の農業生産力を発展させて、経営集中を起さして行こうという場合、われわれは社会化された経営集中ということを主張するのでありますが、自由党の現在の政策を行つて行くのだつたら、私はそこに生産力の限度というものが出て来ると思う。土地細分に対する解決の道が出て来ない。土地細分に対する解決の道というものを、自由に不動産金融を行つてつて行くというならば論理が合つておるが、そうではないのだ。それではどうするのだ。それは世襲制度をある意味において復活するというだけでいいのか、ということになつて来ると思う。そこで従来交換分合、いろいろな問題があつたが、私はこの細分化された農地というものを、どういうふうに今後解決して発展さして行くかという政策をこの際農林省は考えて行かないと、私は零細化された農業が、世界的な商品の競争の中においてやつて行かなければならぬという苦境に陥ると思う。この問題についてはなお農林大臣の御研究を煩わすことにいたしまして、時間もございませんから、御質問はいたさぬことにいたしたいと思います。  それからもう一つ簡単な問題でありますから、お尋ねしたいと思いますが、今度の食糧問題を農林大臣審議される場合、逆に肥料政策というものを同時に——需給調整の問題を立てられておつたと思う。ところがいつの間にか、新聞では、農林大臣はこの面をやらないということにきめられた。しかし現在の状況は、電力不足で非常に困つておる。また従来の経過から見ても、たとえば台湾や朝鮮に対する輸出の問題と内地需要の問題との間に競合があり、いろいろ問題が起きおる。この肥料価格をどうするか、肥料の生産をどうするか、それから将来の需給調整をどうするかという問題を真剣に考えて行かないと、何か世間統制撤廃というような問題に集中されておつて、逆に生産手段の議論の方が少いように私は思う。そこで農林大臣は肥料政策をどうされるか、ひとつお考えを承りたいと思います。
  47. 根本龍太郎

    根本国務大臣 肥料の需給調整法につきましては、すでに予算措置まで大蔵大臣と連絡をとつてつたのでありますが、その後関係方面との間に完全な了解を得ることができなくなつて、今回これを上程し得ない状況になりました。しかし私としては、肥料の需給調整については、いまだ同じ構想を持つておるのであります。引続き関係方面並びに関係各省との間の意見の調整をはかつてこれを実施したいと考えております。  その次に、肥料の完全な需給調整の一番の基本となるものは、何といつて国内増産だと思います。肥料の絶対量を多くするということが前提条件でありますので、そこで先般の閣議におきましても、電力、石炭、その他のものを集中的にこの肥料の増産に動員するという前提のもとに、十五万トンの増産、それに基くところの十万トンの輸出計画を立てたのでありますけれども、不幸にして最近の電力事情、かつてなき渇水のために、その計画がほとんど挫折しておるよう状況であります。しかし基本的な政策とし、自由党並びに現内閣は、電力の画期的な開発計画を立てておるのでありまして、この電力の全面的な集中的開発が裏づけされたときに、肥料の増産が急速に進むのではないか。これによつて国内の需給を満たすのみならず、われわれに近接しておるところの東南アジア社会が一番要求しておるのは肥料でございますので、この肥料を日本が供給することによつて、経済的にわれわれが必要とするところの原材料を獲得する以外に、やはり東南アジアのわれわれと血脈の相通ずる諸国との間の精神的な連携もはかりたい、かように今考えておるのでございます。過渡的には先般農林委員会で非常に問題になりましたけれども、実は今年の夏において大体話のついておつたところもあるし、どうしても国際関係から見てやむを得ずというので、実は台湾とフイリピンにおのおの一万トン、計二万トンを出しました。(「朝鮮には」と呼ぶ者あり)朝鮮には出していません。そういう関係になつておる。出すことになつておりますので、増産ができない限りは、今後は国内価格をつり上げる大きな原因になりますので、これはいたさないという前提のもとに、この二国だけは出した次第であります。なお当分の間におきましては、先ほど申し上げましたように、肥料の需給操作については、何らかの方策をとらなければならない。それには肥料の需給調整法というものをわれわれは考えたのでありまするが、これはぜひ貫きたいものだと思つて、私は現在もなおその構想を続けておる次第でございます。
  48. 勝間田清一

    ○勝間田委員 需給関係の法律には、メーカーの方もかなり議論のあることを私は承知いたしておりますけれども、ここ半年来の肥料状況をずつと見ておりますると、まことに浮動してそのところを知らずというよう状況で、価格も硫安についてみましても、七百円台から九百円に届こうとするよう状況、こういうような不安定な条件のもとに、安定した農業というものは、とてもできるはずがないと私は思う。先ほど農林大臣からのお話によると、関係方面折衝はできなかつたということでありますけれども、私はきわめて遺憾でありまして、これはどうかひとつ農民のために、肥料政策の確立を要望いたすものであります。ただ現在の状況からいつて、外安その他のものを相当輸入する考えがあるかどうか。私はこの麦作から来年の春肥についての心配をいたしておるものですが、この問題について御計画がありましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  49. 根本龍太郎

    根本国務大臣 昨年までは、相当国内の増産があつたにもかかわらず輸入した。従つて今年もこういう電力事情だから輸入すべきだという議論も一部にあります。今検討中でありますが、外貨との関係において、実はまだ安本、大蔵との間の外貨計画において問題があります。それからアメリカ自身も、最近の情勢からいたしまして、従来輸出しておつたのがほとんど出なくなつた、こういう関係で、実は供給地と外貨と、この両方の面からして、われわれとしては計画しておるけれども、実現性が非常に困難である。むしろこれよりもさらにまた高くなるので、かえつて価格をつり上げる、昨年と違つた状況にあるということで、諸般の事情を今検討しておるのであります。
  50. 勝間田清一

    ○勝間田委員 米価なり麦の値段をどうするかという問題は、農林大臣大蔵大臣も非常に議論をされて、先ほど来その議論を聞いておつたのでありますが、その基本になる肥料政策というものがなされていないということでありますれば、これは何もならないことでありまして、大蔵大臣農林大臣も、肥料の需給政策あるいは肥料の価格政策というものと並行して、米価その他の問題を今後考えていただきたいと私は思うのであります。  それからもう一つ、私は増産政策の中で若干お聞きしたがつたのでありますが、時間もないようでありますから、増産政策についてのうちで特に大事だと思うのは、今度の積雪寒冷地に対する臨時措置の問題で、境界線の問題がなかなか重大な問題になつておる。隣の村は入るけれども、こつちの村は入らないという状態になつておる。これはなかなか精細に言うことはむずかしいと私は思うけれども、私はそんなこまかいことを言わなくても、まだ修正の余地はかなりあると思う。この問題について農林大臣はどう考えておるかということと同時に、私はこれらの政府の食糧政策を見ておると、畑作政策というものは実はどうなるかということが心配になります。特にこの畑作政策をどうするかということをお尋ねしたい。  それからもう一つは、今の寒冷地の問題と比べて私は要望いたしたいと思うのでありますが、折衷苗代に対する補助金は、私は実際自分の郷里でもやつてみました。実は冨士山麓ではありますけれども、成績がよろしい。ある農民は、政府のやつた政策の中でこれが一番よかつたと言つておる。それほどこの問題は、自分がつくつてみて実際確かによろしい、しかも歴史的にも証明されておると私は思うのですが、この折衷苗代に対する補助金の問題が打切られるのではないかという心配の声を今方々で私は聞くのでありますが、これに対する——これはお金を握つておる大蔵大臣が承知せられないと、なかなかできないことでありますから、大蔵大臣も同時に御答弁願いたいと思うのです。これら三点につきまして、ひとつ政府側の御答弁を承りたいと思います。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 折衷苗代のことは、多分温床苗代と私は承知しております。一昨年から北海道を中心として寒冷地の方へやりました。多分二億くらいだつたと思います。昨年も一億か、それ以上だつたと思います。今年も大分要望は来ておるようでありますが、まだ農林省からまわつて来て、主計局でどういうふうに査定しておるか知りませんが、結果はよいということを私も承知しておりますので、できるだけのことはいたしたいと思いますが、何分来年度は相当経費がかかりますので、今まで通つたからといつて、それだけで行くわけにも行きません。いろいろな諸事情から善処いたしたいと思います。
  52. 根本龍太郎

    根本国務大臣 勝間田さんから、統制撤廃の裏づけになるところの増産計画についてあまり触れていないというお話でありましたが、これは実は農林委員会その他でも御説明を若干いたしております。本質的には、やはり日本の食糧を増産して自給度を高めるということが、究極において農林政策の根幹であるのみならず、日本の今後の経済再建の一番根幹だ、かよう思つております。その意味におきまして、何としても相当の外貨を使う、また現状の推定からしますと、やはり外国食糧を輸入すれば、それだけ補給金がいる。二重に経済負担を増すのでありまして、一面においてはその補給金が逆に農村の生産意欲を減退させ、むしろ増産をセーブするという、こういう見方も成り立つくらいであります。これは増産に重点を置いて行きたいと思います。そこで問題になりますのは、今後の増産の一番の対象となるのはどこかというと、やはり北海道、東北、これが一番集団として多いのであります。その次には御指摘の畑地であります。全国におきまして今後可能な土地改良並びに土地造成の一番大きい部分が、水田におけるより以上に畑地に多いのでございます。その意味からしまして、すでに政府としましては、従来割合に閑却されておりました畑地政策を強く取上げるという方針をとりまして、一つのテスト・ケースとして、実は火山灰の多い畑地灌漑を実施いたしてみたのであります。この成果は非常によろしいのであります。これは経費もそれほどかからないし、これが増産に及ぼす影響は非常に大きく、経営安定のためにも非常に大きな影響を与えるということで、畑地灌漑の政策はあらためて検討の上実施いたしたいと考えておるわけであります。  それからもう一つは、土地造成と直接には相関連いたしませんが、病虫害の予防駆除の影響が多いことです。まさにこれから収穫に入ろうとするときに、いもち並びにうんか、あるいは螟虫等によるところの被害はどう考えてみても一割以上であろうと思います。これを防止することにおいて一割増産ということはただちにできる。しかも経費はそれほどかからないという観点からこの点も考えております。  最後にお尋ねになりました単作地帯に関する問題については、お説の通りでありまして、実は予算上非常に制約されておりますために、一定の標準のもとに押えておるのでありますが、実際の状況からするならば、これは町村別の指定ということが一番合理的である。このために相当経費がかかりますので、実は大蔵大臣にも大いにふところを開いていただくために、目下折衝中であります。  それから折衷苗代については、これは御指摘のように非常に成果が上つておりますので、本年度当初予算において三億二千二百五十万円計上しております。そのうち単作地帯、いわゆる寒冷地帯について実は二億六千九百万円計上しておりますので、今回の単作地帯に対する補正予算には特にこれは計上いたしておりません。すでに一般会計においてこれをやつておるわけであります。これにつきましても、今大蔵大臣から御答弁もありましたが、これは増産の意味におきましても、あるいはまた非常に疲弊している寒冷地帯の経営安定のためにもなりますので、ぜひこの制度は続け、また増額をいたしたいと思つて、実は大蔵省の好意ある了解を求めつつある次第であります。
  53. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ちようどきよう農林大臣大蔵大臣両方おそろいでありますから、特に大蔵大臣に、農業政策に対する財政的支出についての御熱心な積極的支援を、農民のためにしていただくことを最後にお願いいたしまして、私の質問を終る次第であります。
  54. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員長代理 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後二時より委員会を再開して、質疑を継続することといたします。  これにて暫時休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後二時二十三分開議
  55. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。川島金次君。
  56. 川島金次

    川島委員 私はこの機会に岡野国務相に若干お尋ねを申し上げたいと思います。岡野国務相もさだめし苦労をされて来たと思うのですが、地方財政の逼迫、ことに本年に入りましての物価の高騰等が要素となりまして、地方財政の窮迫の状況は、本年当初予算編成当時と比較にならぬほど窮迫の度を加えております。当初予算の当時においてすらも、政府の交付金に対して二百億近くの開きが、地方の要求とはあつたわけです。しかもその後において物価の高騰があり、それに反して地方財政の歳入はこれに伴わない。国税は、幸いにして池田大蔵大臣見通しでは、相当額の収入増が見込まれておりまするが、地方の財政上の自然増収というものは、ほとんどないにひとしい状態でありますので、一層地方財政の困難を加えておるということは、大臣御存じ通りであります。今回政府ようやく交付金百億円の増額を補正予算において提案いたしておりますが、この程度の増額をもつていたしましては、今日の現実における地方財政の困難を、根本的に解決するということにはならないと私は考えております。聞くところによりますれば、国務相はこの百億円の増額では、とうてい地方財政の今日の窮状を打開することができないとの認識から、何か短期公債の形において、さらに五十億ですか、百億程度短期公債のわくを拡げて、地方にこれを許して当面を糊塗するというよう意見をいずれかに漏らされたという話も、今朝来承つておるのでありまするが、こうした地方財政の困難な実情に対しまして、国務相はいかなるこれに対する具体的な打開策を持たれておるか、この点についての国務相の見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  57. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。川島さんのお説の通りに、地方財政は中央財政と同じようにやはり非常にきゆうくつでございまして、ことに地方の行政を特に私は担当いたしております立場から考えますと、身びいきになるかもしれませんが、地方が非常にきゆうくつになつているということは事実でございます。地方財政委員会からも、三百五十億の補正予算を増してもらいたいという意見書が出ておりますこともよく承知しておりますし、その点も私は了承しているのでありますが、しかし御承知の通りに、中央地方を通じまして、非常に財政が逼迫しおります際でございますので、平衡交付金百億増、起債のわく百億増ということで、中央財政の立場からは、これをがまんをしなければならぬという立場になつているわけであります。しかしながら地方の情勢を見ますると、これは御承知の通りに、一万数百ある団体でありますから、中には非常に裕福な府県、市町村もございますし、また非常に困つておるところもございますので、その点はよく調節しまして、地方財政委員会を督励して、公正妥当な平衡交付金並びに起債のわくの配分に努力させております。しかしながら、もしかりにそれでもどうしてもこの際しのぎ得ないというようなところがありますれば、短期の融資を一方にいたしまして、これをもつて地方財政を救つて行きたいということを考えております。これは大蔵大臣ともよく相談いたしまして、もし地方財政委員会においてぎりぎり一ぱい、これではどうしてもいかぬというようなことが具体的に例が出て来ますれば、その個々団体に対して適当な措置をとりたい、こう考えております。
  58. 川島金次

    川島委員 そこで重ねてお尋ねかたがた、これはお願いにもなることでありますが、まだ予算審議の時間的な余裕もありますし、国務大臣、さらに積極的な熱意を示されて、補正予算百億の交付金を、さらに百億を増額する、そうして当面十分ではないにいたしましても、これをもつて地方財政の困難なる実情打開の一助にするというこの積極的な方針大臣におありかどうか、そういうことを考える余地はないか、この点をひとつ承つておきます。
  59. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます、百億の平衡交付金を、なお一層この補正予算審議中に増加するかどうかという、こういうお尋ねと承りますが、私どもといたしましては、この補正予算をつくりますについては、数箇月の間閣内においていろいろ検討した結果、ぎりぎり一ぱい百億の平衡交付金しかこの際は出ない、こういうことにきまつたわけでございますから、ただいま地方財政委員会から意見書が出ましても、むろんその出ました当時閣内において、また大蔵大臣ともよく研究しましたけれども、ただいまのところでは、これ以上は出ません。でございますから、ほかの方法を考えるよりほかない、こう私は考えております。
  60. 川島金次

    川島委員 伝えるところによりますと、大臣は非常に良心的なまじめな方である。先般アメリカに出かけますときにも、留守中の内閣改造を円滑ならしめるために、みずから自発的に辞表を預けて行つたという、非常に仁義、責任の志にも厚いと承つて、敬意を表しております。しかも大臣直接担当の地方財政の現実というものは、物価騰貴による財政の不足だけでも、全体的には二百億に達し、その他を合せますと三百数十億にもなろうといわれておる。しかも地方財政のまかないの中には、大部分地方の公共団体に奉職しております職員の人件費を含んでおります。もし一歩誤りまして、この財政の困難を放擲いたしておきますならば、全般的ではないでしようが、部分的には職員の給与の支給にも事欠き、あるいは市町村役場におけるところの人件費の支払いにも事欠くような事態が起るのではないかという点を、われわれは懸念いたしておるような始末であります。大臣のせつかくの人柄からいいましても、当面の困窮をきわめた地方財政の打開のために、もう一ぺん辞表を出す覚悟で、この窮状を打開するという大臣の決意を示されるならば、いかに強硬な池田大蔵大臣といえども、これはまた考えることがあり得るのではないか、私はこういうように信じて疑いません。大臣はもう一ぺん決意を新たにいたしまして、地方の財政窮状打開のために蹶起されることを、私は心から要求したいと思うのですが、この点について繰返してあなたの御決意を承りたい。
  61. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。実は百億もらうために決意をしておりまして、そうして百億でおちついたのでございます。ただいま私がやめますと、むしろ地方財政は困るようになつて来はせぬかと思つております。むしろ私が隠忍自重して、そうして将来ます来ます努力し行つた方が、やはりお国のためにもなるし、地方財政のためにもなると考えておる次第であります。
  62. 川島金次

    川島委員 池田さんのようなことを言あれておるようですが、その点についてこれ以上議論をいたしたくないのですが、もう一つお尋ねいたします。さきに大臣お答えの中で、短期公債の話が出ました。これは一体どの程度のわくを考えておられるか、そしてまた短期公債というからには、時期的にも相当短かいものに違いありませんが、どの程度の期間の地方債というものを許すおつもりであるか、この点について具体案があつたならば明らかにしていただきたい。
  63. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方財政委員会から御承知の通り出ております意見書と食い違いますが、百億の平衡交付金と百億の起債のわくで一応この際とりまとめまして、あれは大量観察でございますから、個個別々の地方団体を当つてみませんと、はつきりした数字はわかりません。でございますからもしこの予算をお通しくださいまして、確実に百億の平衡交付金を国会で御決定くださり、また百億の起債のわくを御決定くださる。そういたしますれば、地方財政委員会といたしましては二百億完全にいただけたことになります。ただいま審議中でございますから、これをどうするということもできませんが、きまりました上は、各個々の団体を精密に研究いたしまして、そうしてどうしてもただいまおつしやつたような給与の支払いもできないというようなところがありますれば、そういう方面を第一次的に考えましてやつて行きますから、個々別々の事態に即しましてやる次第でございますので、ただいまどのくらいのわくをやつたらいいかどうかということは、ちよつと明言いたしかねる次第でございます。しかしながら私どもといたしましては、大体五十億か百億くらいの程度まで行かなければならぬものではないかと思つておる次第でございます。
  64. 川島金次

    川島委員 それでは次に問題をかえてお尋ねをしますが、最近新聞紙一部の伝えるところによりますれば、地方税制のかなり大幅の改正を政府は考えられて、来るべき通常国会に提出するやに伝えられております。もしその地方税の改正の基本的な要綱なりとも大体内定をいたしておりますれば、その中のおもなる問題について、この機会に予算委員会を通じて明らかにしていただきたいと思います。
  65. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方税の改革につきましては、先般来非公式な委員会ではございますが、税制懇談会というものをつくりまして、民間から相当の権威者に集まつていただきまして、いろいろ協議しておるわけでございます。大体結論に到達しかかつておりますけれども、まだはつきりした結論を出す段階まで至つておりません。それが出ましたならば、それを参考にいたしまして過去約一年半ばかりになりますあの地方税法に対して、手直し、並びに実情に沿うたような改正をいたしたいと存じております。今そういうことで検討中でございますし、税制懇談会の正式のほんとうの結論がまだ手元に参らぬ段階でございますから、はつきりしたことは申せませんけれども、まず非常に高いと思われるような税、すなわち、たとえて申しますれば、十割というような高率であるところの入場税なんかは、ひとつ下げて行きたい。もう一つは固定資産税でございます。船舶とか軌道とかと申しますのは、これは非常に複雑で、また大きなものでございます。そういうものも、やはり船舶税とか電柱税とか軌道税というようなものをつくつて、適当に是正したらどうかということも考えております。それからまだほかにたとえて申しますれば、国税できのう調べに来た。そうすると、同じようなことを府県でまた調べに来る。また三日目には市町村で調べに来る。こういうふうに課税標準が別々になつておりますと、これは国民の非常な迷惑でございます。またその間に税の公平というものもはかれないと存じます。そういう点も直して行きたいと考えております。また附加価値税につきましても、非常な議論がございますし、これをいかに調整するかということも問題でございまして、これについては事業税をそのままに存続して行くか、あるいは附加価値税をどうするかというようなことも考えておりますが、しかしまだほんとうの検討中でございまして、私の考えといたしましては、そういうものに重点を置きまして、税法の改正を国会に出して御審議つたらどうか、こういうふうに考えております。
  66. 川島金次

    川島委員 それでは具体的にちよつと簡単にお伺いします。問題は、入場税あるいは遊興飲食税などでありますが、入場税は実際今日でもなお十割であります。しかもたいへん大衆の負担となるものでございます。入場税が一〇〇%とられますために、演劇あるいは映画等の製作費と見合わない形で、優秀な演劇や優秀な映画を提供することに非常な支障をなしております。それがために、日本の大衆文化の向上等にもいろいろ支障があるということは明白なことであります。この入場税を、伝えられるところによれば、今の一〇〇%を五割にするという説もあるのでありますが、政府はそのくらいにする腹構えがあるかどうか。  それから遊興飲食税も、遊興に伴う飲食税はもちろん別でありますが、一般の飲食にもかかつております。この点についてどのくらいの軽減をはかろうとされておるか。  それからもう一つ、ついでに伺いますが、一説には、酒の消費税を府県ごとにその消費量従つて設定をするという説も、これはかなり前からもありますが、今日もまたさらにあらためて論議の中心になつておるようであります。そういつた府県の酒の消費税なども政府は腹案としてお持ちかどうか、その点をひとつお伺いいたします。
  67. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。これは政府の腹案ではございませんで、私どもがこういうふうに考えたらどうかというわれわれの考え方えを申し上げる次第でございます。政府としてはまだ腹案の程度まで至つておりませんから、御了承願いたいと思ういます。入場税はやはりお説の通り半額くらいに下げたらどうか、また遊興飲食税も半額くらいの程度に下げたらどうか、こういうことも考えております。それから酒、タバコの消費税を地方へ配付するということも一応考えのうちには入つておりますけれども、これは平衡交付金と相関連する立場において実現したらどうか、こういうことも考えております。しかしこれはただほんとの私が考えておる程度のものでございまして、決して政府が考えておる次第ではございませんから、御了承願いたいと思います。
  68. 川島金次

    川島委員 それでは大蔵大臣ちよつとお伺いしますが、地方財政の自主的な態勢の確立という問題を中心として、でき得べくんば財政平衡交付金を廃止するという方向が私は一応理想的な形だと思います。そういう考え方が大蔵省にあり、それと即応して地方財政の主体的な確立をはかるための税制の根本的な改正、こういう問題も一連として考えます場合にあり得ることであるし、またそういう形も一応われわれの承認したいところでありますが、大蔵大臣はこの平衡交付金を存続することがよろしいか、それとも平衡交付金をやめて、一方において地方財政の自主的な確立をはかることによつて地方財政の運営をはかり、地方の財源の確立をはかることの方が望ましいか、こういう問題について、大蔵大臣も何かお考えがあるやにわれわれは聞いておるのでありますが、その点についての御見解を明らかにしていただきたいと思います。
  69. 池田勇人

    池田国務大臣 地方自治の確立という点から申しましたら、平衡交付金はないに越したことはございません。しかし、これは昔義務教育費の問題がありましたころから、もう二十年くらい前から財政調整交付金というような制度がありまして、各府県、各市町村の財源が非常にまちまちでございますので、何ぼ理想は平衡交付金をなくしたいといつても、事実問題としてはなくし得ない問題だと思います。しかしつまみ金というような気持があつてはいけませんので、できるだけその内容を洗つて参りまして、地方でできるものは地方でやり、できないところだけを名の示すごとく平衡交付金で行きたい。今タバコあるいは酒の一部地方委譲という問題があります。これは昔やつてつたような附加税制度ではないのでありまして、現地還付制度すなわち府県に還付するか、あるいはまたその一部を市町村にも還付するか、こういう還付制度として考えられたようであります。これも一に平衡交付金の総額を減らして、実質は市町村あるいは府県の方に減らないようにしよう、つまりつまみ金ということはなるべく少くして、はつきりしたものにしたいという気持から、要するに平衡交付金は理想としてはうんと少くしたいと思いますが、なかなかなくするわけには行かぬ、こういうことであります。
  70. 川島金次

    川島委員 それでは岡野国務大臣にさらにお伺いします。前回の通常国会のときにもちよつとお伺いしたのですが、徹底いたしませんで遺憾に思つているのですが、今度政府は来年度において行政機構の徹底的な改組を考えられており、伝えられるところによれば、一府八省制度にまでも持つてつて、これを断行したいというよう考え方政府部内で持つ者もあるやに聞いておる。それと相呼応して、伝えるところによれば、何か国内の行政地域の大改編といいますか、そういつた根本的な問題も考えている向きもある。端的にいえば、府県の統合という問題であります。そうして地方自治の確立、地方民負担の軽減にも資するという面からいたしまして、府県の統合問題も一つの問題となつているというふうに聞いておりますが、そういう事柄について国務相は何か研究あるいは考えられたことがあるかどうかということと、市町村の併合の問題が各地に今日起つておりますが、市町村の合併問題についての実績がわかつてつたら、この機会に発表してもらいたいということと、なお逆に、かつて市町村の合併をしたが、今度は合併の弊害があつて、あべこべに分離の運動が各所にもあるやに聞いておる、そういつた事柄等についての何か実績上の数字でもありましたならば、示してもらいたいということと、この市町村の併合に関する国務大臣としての将来の方針なり、考え方なりがあれば、これもあわせてひつくるめてこの機会に明らかにしてもらいたい、こういうふうに思います。
  71. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。  まず最後の問題から申し上げますが、市町村の合併は私はできるだけしていただきたい、こういう理想を持つています。と申しますことは、文化国家といたしましていろいろな施設をいたしますのに、現在の町村のあり方と申しますのは、非常に小さくて、どうも資力にたえない。ですから、私たちの理想といたしますれば、最低八千から一万くらいの人口の程度のものに町村を合併さして、そして必要なる文化施設ができる能力を与えて行きたいと考えまして、それに向つては奨励もいたしますし、世話もしているわけであります。  それからそれにつきまして、今までどのくらい合併をしたかどうか、またそれを分離するところも出て来ているじやないかということでありますが、この辺のことは詳しい資料を持つておりませんから、後刻当局から詳しい資料を申し上げたいと存じます。  それから府県の統合の問題でございますが、これは新聞紙にもいろいろ一府八省とかいつて、中央の機構がどうなるとかこうなるとかいうことが伝えられておりますが、政府としてはそういうことはまだ考えておりません。いずれは考えなければならぬ時期が出て来るかと思いますし、同時に府県のあり方、すなわち府県の性格は私は当然考えなければならぬ問題として頭に置いております。しかしながら御承知の通り、地方行政調査委員会議の報告が出まして、国と府県と市町村という三段階における事務を、いかに整理して行くかという結論が出ておりませんものですから、そこでその結論が出ました際に、初めて府県の性格が明らかになり、明らかになれば、府県がいかようにあるべきかという結論が出て来るかと思います。御承知の通り、経済社会の情勢が終戦後非常にかわつておりますから、明治以来の府県の地域的のあり方というものは、これは相当分合、廃合しなければならぬ必要に迫られておると思います。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕 しかし長年の伝統を持つておる府県を、そうやすやすと簡単にかえるわけにも参りません。何か聞くところによれば、明治四年に廃藩置県が行われまして、その当時府県が三百あつた。それが今日の情勢におちつきますまでには二十年間かかりまして、明治二十三年に初めて今日の府県制度ができておるというよう情勢でございますから、ちようど明治にかわるもつと大きな百八十度の転回をする革命時期でありますから、相当な変革が来されなければならぬと思いますけれども、それだけにまた最も実情に合つたように、これをやつて行かなければならぬと思いますから、私は拙速は慎んで、よく考えて、また最もおちつきやすいところにおちつく方向に行かなければならぬ。しかしお説の通りに、府県というものをいかにしなければならぬかということは、当然出て来る問題だと思います。
  72. 川島金次

    川島委員 それでは岡野国務大臣に対するお尋ねは、時間がありませんから、これで打切つておきます。  次に大蔵大臣に、私も他の人に譲らなければならぬ関係もございますので、端折つて最後に二、三お尋ねをして、私としての一応の質問を終りたいと思います。  午前中の質問大臣答弁で、物価騰貴に伴う生計費へのはね返りは、減税で大体の吸収がされるからというお話であります。一歩しりぞきまして、それはそれといたしまして、減税をいたしましても、なおかつ減税の対象外の多くの貧困者に対する、物価騰貴のはね返りによる生計費の増大についての政府の処置といものは、なかなか手がまわりかねるというような、何かほうり出した、半ばあきらめて放置してしまうというよう答弁ぶりであつたのです。これは非常に重大な問題でありまして、そういう階層が少ければともかく、繰返して言うようで恐縮ですが、かなり多い。その多い貧困者に対して、政府としては責任のある立場で、手厚い、血の通つた処置をとるということが、政治の本来の任務でなければならない。金持ちに対する保護はいらない。要するに食えない人たち、食うことのできない困難な、貧困な国民の生活の一部分をどうして救済して行くか、そうして社会生活の維持、秩序を保ちながら、日本の経済の安定と自立に邁進するかという事柄になつて来るのであろうと私は信ずるのであります。そういうことについて、午前中の質問はしり切れとんぼになつてしまつたのですが、何か政府としても積極的な熱意のある方途を講ずべきだと私は信じておるのであります。それとあわせて問題となりますのは、社会保障の問題であります。広汎な社会保障の問題について論議をいたしますることはさておきましても、当面の物価の上昇に伴いまして、減税の措置があるけれども、それの恩恵に浴せない貧困な階層に対する、何らかの積極的な具体的措置を急速に講ずべきが、政府当路の重大な責任ではないかと私は信ずるのでありますが、この点について、もう一ぺんひとつ池田大蔵大臣の血の通つた、具体的な熱意のあるお考えを私は承つておきたいと思います。
  73. 池田勇人

    池田国務大臣 午前中お答えした通りでありまして、やはります経済規模の拡大、安定が第一の手段でございます。それから一千万人以上もというようお話でございますが、それは家族を入れてのお話でしようが、私は今納税者は相当あると思います。それで今回の減税によつて国民のほとんど大部分の人が、これに浴し得ると思います。しかし浴し得ない者につきましては——これは地方税もかかつておりますから、今後地方税の問題についてもそういう点は考えなければならぬと思います。特に住民税等については、国税は納めていないけれども地方住民税を納めているという方についての考慮をめぐらさなければなりません。従つて積極的にあらゆる経済復興、生活水準の引上げということに努めますが、それでもなお漏れた方につきましては、それが今の御質問の趣旨ですが、どういう手段をとるかということになると、その程度によつて違いますが、生活困難な方には生活保護費、あるいは失業者に対しては失業対策費、またそういう特殊なものでなしに、全般的に生活不如意な人に対する対策としては、社会保障制度全般の問題でございますが、これにつきましても、今までの社会保障制度というものは、結核対策等が中心になつておりますが、物価の変動によつてつている人をどうするかということは、なかなかやつかいな問題であります。できるだけそういうことをなくするのが第一でありますが、あつた場合につきましては、個々に手を打つよりほかには、ただいまのところ名案がございません。しかし政治としては、そういう人を少からしめ、またそう人が出た場合におきましては、あらゆる手を尽してやらなければならぬ、こう思うのでありますが、これは各省所管で、私はそういう場合についての金は惜しみなく出すつもりでおります。各省でそういう人を救うための方策を考えていただきますと同時に、自分自身としても全般的の生活引上げを根本方針として進んで行きたい、こう考えております。
  74. 川島金次

    川島委員 それでは具体的にお尋ねしますが、生活保護を受けておる人たちへの支給標準額といいますか、その給与額を引上げる、あるいは未復員家族の給与額の引上げ等々が、具体的にはあろうと思いますが、そういう具体的な問題に対して、政府はどういうふうに考えておりますか、その具体的な方針を承りたい。
  75. 池田勇人

    池田国務大臣 未復員者の問題、あるいは生活保護費の支給額の引上げの問題は、事務当局からお答えいたさせます。
  76. 石原周夫

    ○石原政府委員 生活保護費につきましては、先般八月の米価改訂の機会におきまして、米価改訂に相応いたしますところの程度において基準の更正を考えております。それ以外におきましては、本年度の最初に基準を改訂いたします際に、主食費以外の経費についても若干引上げを行つておりますので、おおむねその程度でよろしかろうと考えております。
  77. 川島金次

    川島委員 しかしその当時における値上げは、八月の主食値上げを織り込んでの引上げでありますが、その後にさらに電力料金あるいはまた最近では国鉄運賃、これに伴う地方交通機関の運賃の引上げ、あるいは郵便料金の引上げ、この一連の物価の値上げがありまして、これに伴つて若干ずつの一般消費物価の値上りが見られておるのであります。従つて八月の米価の引上げを中心としての給与額の改訂では、すでに今日においては不足しておるということは明らかな事柄であります。その問題に対して今後政府はどういう処置をとるか、こういうこともきわめて私は大切な事柄であろうと思いますので、そういう今後の処置に対する具体的な腹案があるか、それを何とか処置する方針があるのかないのか、そのことについて承つておりますので、それをもう一ぺん聞かしてもらいたい。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 今後の状況によつて適当な額を算定し、支給することにいたしたいと思います。
  79. 川島金次

    川島委員 そのことは貧困者にとつては重大な事柄でありますので、政府はよろしくそういう方面にも眼を開きまして、積極的な熱意のある対策を早急に講ずべきであるということを、強く要望しておきます。  次に、もう一、二点にとどめておきますが、大蔵大臣は先般来当委員会におきましても、本会議等におきましても、為替レート三百六十円は一応維持して行く、そういう方針であるという事柄が、繰返し述べられておつたのであります。一体この為替レートの基準をきめました当時の対米平価といいますか、これは私の記憶によりますれば、多分三百三、四十円のときではなかつたかと思いますが、その後日本の物価は対米物価に比較いたしまして、大幅な値上りのやむなきに至つて今日に及んでおります。ことに当面におきましては賠償の問題もあり、あるいは外債の支払いの問題もあり、あるいはさらに通貨基金への加入等の問題が具体的に差迫つております。しかも国内物価はアメリカの物価水準に比較して相当の開きのある高いところに来てしまつておる。こういう一連のことを考え合せまして、はたしてこの三百六十円の為替レートを堅持できるのか。ことに通貨基金への加入の場合においても、少くとも物価の国内の引下げか、あるいは為替レートの引上げという事柄か、どつちかにせなければ、つじつまの合わない筋合いに追い込められて行くのではないか。こういうふうな感じがわれわれはいたすのでありますが、大蔵大臣はこの日本国内の物価の事情、また対外国際物価の事情、国際通貨基金への加入等といつたような一連のことを考えても、なおかつ確信を持つてこの三百六十円のレートが貫き通せるという十分の根拠ある方針を持つておられるのかどうか。そのことについて若干私どもには疑念がありますので、この機会にわれわれの納得行くような根拠によりましての御説明を一応承つておきたいと思うのであります。
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 一昨年の四月二十五日だつたと思いまするが、一ドル三百六十円と決定した当時は、あなたのおつしやる対米購買力の平価説による三百三十円とは私思つておりません。これは御承知の通り、複数為替制度と申しますか、紡績その他は二百六、七十円、あるいは薬品、造船の方は五百円を越え、生糸は四百二、三十円、こういうふうな状態にありまして、何も購買力平価説から三百三十円にするか三百六十円にするかということをドツジ氏と話合つたのではない。たまたま最近に至りまして、購買力平価説をある銀行の理事が言つたというので問題になつておるようでありますが、私は為替管理をやつておるときに、為替レートを購買力平価説できめるなんということは問題にならぬと思う。理論上も実際上も問題になりません。購買力平価説というものは、為替管理をやつていない場合のレートを見る単なる一つの要素です。しかも購買力平価説をとるにいたしましても、向うにもアメリカにも公定価格とグレイ・マーケツトがある。早い話が鉄鋼でもイギリスの国内鉄鋼価格は八十五ドルです。     〔西村(久)委員長代理退席、委員   長着席〕 しかし今は百四十ドルで、日本の鉄鋼を買いに来ておるので、引上げることも新聞に出ておる、こういうものであります。為替レートが問題になりますのは、その国の持つておるドルがふえるか減るか、こういう問題であるのであります。問題はそこが中心をなすのであります。従いまして、私の見るところでは、財政演説で申し上げましたように、ドルはふえて行つておる。その原因はいずれにありやという原因は探究しなければなりませんが、ドルがふえておる、しからばといつて為替レートをどうこう言うことはない。ただ日本のドルがふえておるのは、朝鮮関係の特需か、あるいは進駐軍の使用しまするドルが相当量なつて来ておりますからで、永久的にこれらが入るのではないから、為替相場は心配じやないかということは、三年先、五年先の問題であります。だから私は今ドルがふえているのに為替相場を云々するということは、これは意味をなさぬことだと思います。昨年の今ごろから今年の初めにかけて、一部に円の切上げ説が相当あつたのであります。そうして輸入がふえて来て物価が上つて来た、今度はまた円の切下げ説があるようでありまするが、私はこういうことは早計なことだと思う。円の引下げとか、引上げは半年や一年でなかなかきまるものではない。日本の経済は、午前中から言つておりますように、安定と発展をしておるのであります。ただいま何ら心配ありません。ただドルの入つて来る原因が、朝鮮関係によること等から考えて、将来うんとドルをかせぐように、東南アジア開発あるいはドル地域への輸出、こういうことをやつて行かなければなりませんが、今のところレートを云々することはない。イギリスなどは一・四半期に六億ドルも減つたから向うで問題にしておるようでありますが、それにしても一昨年の切下げ当時よりは倍以上持つておるのであります。日本の円が切下げとかどうとかいうことは、私は国際的にも聞いておりません。国内のごく一部の人はどういう考えか知らぬけれども、議論して雑誌などに載せておるくらいで、私はそんなことは問題にしておりません。しかも購買力平価説をどつかで言つた銀行の総裁が、口をきわめて円を変更しないということを言つておるじやありませんか。だからああいう一部のちよつとしたえせ経済学者の言うことは、あまり御信用にならない方がよろしゆうございます。日本の経済はドルを切下げないように十分固めて行かなければなりません。しかも国際通貨基金に入りますときに、あなたも御承知の通り、国際通貨基金に入つたならば、円の切上げ、切下げにつきましてはある程度制肘を受けるのであります。イギリスはまあ制肘を受けずにやつておりますが、日本が国際通貨基金に入れるよう情勢なつたことは、日本の円が強くて安心であるという証拠であります。決して御心配はいりません。
  81. 川島金次

    川島委員 レートの問題はこれ以上は議論の段階になりますからやめておきます。それで最後に一言承つておきたいのでありますが、大臣は先般来からいろいろ諸般の基準物価の引上げを行つたが、これを中心としてさらに物価の値上りを誘発するようなことはないだろう、こういうふうに言われております。国民はそうであることを希望いたしますが、実際はそうではないだろうという不安が大きいのです。ことにどうでしようか、大分最近通貨の問題にいたしましても、いろいろとりどりな批評が行われておる。このままで行きますならば、本年年末の通貨の発行量というものは、おそらく五千億を突破するのではないか。もしこういうよう事柄がうわさ通りになりますことは、年末はそうでなくとも、物価の割合に引上るときであります。そのときに通貨量がかりに五千億にもなるということになれば、この通貨と物との振合いによつて、当然に物価の不当な騰貴が誘発されるおそれがあるのではないか。大蔵大臣はこの年末の発券を一体どの程度に見込まれており、そうして年度末までにはどの程度の収縮が行われるという対策をもつて臨んでおられるか、この通貨の問題についての見通し方針について一応承つておきたい。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 年末通貨が五千億越えるか、越えないか、非常に御心配のようでありますが、私は越えても心配しておりません。御承知の通り、大体年末通貨というものは九月末の通貨の三割増しだ、こういつております。昨年も大体三千二、三百億のが四千二百億になりました。きようくらいが四千二百億以上でございまして、九月末が四千百億程度でございまするから、五千二百億あるいは五千百億くらいになりましよう。これは私は心配いらないと思う。そして四月にはまた四、五百億減つて来るのであります。これは生産が伸びて行つておるから通貨のふえるのは当然であります。これを五千億越えてはいかぬといつて、通貨を引締めるというような考えは私は持つておりません。
  83. 川島金次

    川島委員 ちよつとおかしいですね。今までの通貨量の、例年九月に比較して三割くらいふえて行くのだ、ふえて行つたつて年末に大して心配はない。そういつてしまえばそれまでなんですが、今度の通貨量というのは従来と量はまた違う。二千、三千億の当時と基本的な量が違う。しかも今四千億を越えておる。それが大臣の予定のように、かりに三割として五千億突破という事態が来ても、従来のような形で心配がないのだという考え方には、われわれはちよつと納得が行かない。その通貨の量が流通されるわくというものはちつともかわつておらない。その同じわく内で通貨量が増大する、量がふえて行く。そのふえ方が従来と比較して非常に飛躍的なのであります。そうなつたときに何ら不安がない、物価騰貴を誘発するような現象は起らないだろうという、この考え方というものは、ちよつと見通しが誤るのではないかと私は思うのですが、大臣はそれでも少くも従来とかわりないという確信を持たれておるのかどうか。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたの御質問が年末の通貨とかなんとかおつしやるから、そういつておるのであります。もちろん通貨というものは物価に関係はございます。ないとは申しません。しかし今インフレとかなんとかいう問題で通貨量をお聞きになるならば、お答え申し上げますよ。通貨量というものは、大体どのくらいが適正かということは議論のあるところでありますが、日本の戦争前の状況を見ましても、国民所得の大体一割一分程度であつたのであります。アメリカやイギリスの通貨量を見ましても、大体国民所得の一割程度であるのであります。日本国民所得は、御承知の通り昭和二十六年度は四兆五千七十億円といつておるじやありませんか。その場合において、通常なる通貨が四千二、三百億ということは当然なことであります。まだ低過ぎるという議論が強い。私はどつちかというと、その方に賛成したいと思うのであります。通常の通貨は四千五、六百億円が通常なんです。英米に比べましても、あるいは日本の昔からいつても……。ドイツやフランスだつた国民所得の一割三、四分でございます。そうすると通貨は、四兆五千七十億円の国民所得なら、六千億くらいになるということになります。従つて全体としての通貨の問題を論ずる場合におきましては、そういう見方もあるかと思うのであります。しかしあなたの御質問は、年末の通貨はどんなになるか、三月の年度末にどんなになるかとおつしやるから、大体年末の通貨というものは九月末の通貨の三割見当をみな見ております。それはどういう原因でそうなるかと申しますと、これは供米が相当出て参ります。すなわち米に払う金、それからまた年末におきましては、日本の商取引の状況からいつて、特別にふえるということはあなたの御承知の通りであります。それで私は、今の見通しといたしましては、五千億越える気持でおります。しかし越えてもその原因がわかつておる。しかもこれは一時的の現象であつて三月末には四、五百億減るのだ、こういう考えでいつておる。何も年末の通貨で日本のインフレ醸成とかなんとかいう気持は持つておりません。
  85. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 川島君、大体結論をつけてください。
  86. 川島金次

    川島委員 どうも池田大蔵大臣考え方は、前の大蔵大臣石橋さんと違うのだと思つたけれども、意外なことを私は聞いた。生産が上つておるから通貨の量がふえてもよろしい、これは石橋財政の考え方と同じになるのです。それと違つた方向で来ておるのが池田財政だ。どうも今の話を聞くと、何か対蹠的な立場にあつた石橋湛山の財政の考え方と大体同じようなことになつちまう。どこに池田大蔵大臣の特色があるのだか、その面においてはちよつと見当のつかないような御答弁を承つて、まことに奇異に感じておる。いずれにいたしましても、時間がなくなりましたので、この程度で私の質問を終りますが、またさらにわが党の他の委員から、時間が許されますれば、明日補正予算をめぐつての財政経済に関する質問があろうと思いますので、残念ではありますが、私はこの程度で私の質問を終了いたします。
  87. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 風早八十二君。
  88. 風早八十二

    ○風早委員 一般的な質問に入ります前に、岡野大臣に、先ほどから問題になつております地方財政平衡交付金の問題について一問だけただしたいと思います。  この問題について、周知のように、この予算では百億を組んでおる。しかしながら地方財政委員会におきましては、その委員会設置法の第十三条に基いて、意見書を出しておる。それは御承知のように二百億、これはたいへんな食い違いです。この食い違いというものは、しかもどちらもいわば政府部内の意見でありまして、きわめて有力な意見であります。これに対して池田大蔵大臣にその所信をただしてもしようがない問題である。この問題の解決の唯一のかぎはあなたにあると思うのでありまするで、主管大臣としまして、いわばこの日本の地方自治体をあずかつておられるあなたとして、この問題に対して最終的に結局どう調整せられる腹であるか、この点をまずお尋ねしたいと思います。
  89. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。地方財政委員会から出ましたのは、御承知の通りに三百五十億この際なければ、地方財政が立つて行かぬという意見でございます。それに対して政府といたしましては、中央地方の状況を勘案し、同時に中央財政の立場から、平衡交付金百億、起債のわく百億、これ以上は出ない、こういうことに決定いたしました。あとは地方財政委員会において、いかに地方団体がうまく財政をやつて行けるかということを勘案して善処したい、こう考えておる次第であります。
  90. 風早八十二

    ○風早委員 毎会期この問題は出るのでありますが、その都度結局地方財政委員会というもの、また地方財政委員会法というものは一体どういう立場に置かれるのか。これもやはりわれわれ国会が一応通したものでありますが、これを一体どう考えられるか。あなたはこの法律に従つてすべてやつておられるはずでありますが、この法律に従つて正当な意見が出ておる。しかもこれは今日市町村、市町村長の非常に騒いでおる問題であります。これに対して今のような無責任な御答弁では、現在も起りつつありますが、またまた今後も起つて来る地方と中央、あるいはまた知事と市町村長のいろいろなトラブルに対して、あなたは全面的に責任を負わなければならないということを十分に覚悟していただきたいと思う。  そこで私は大蔵大臣に対して久しぶりにいろいろ御教示を仰ぎたいと思うのであります。まず予算編成の過程につきまして、これはもうあるいは今までにも問題になつたかと思いますが、渡米の前にはあなたは歳出四百五十億と言つて行かれたのであります。ところがしばらく渡米されて帰つて来られると、知らぬ間に千三百六十二億にふくれておる。こういう九百億以上の大きな国民負担増のおみやげを持つて帰られたのでありますが、その間の事情はどういうことであるか、なぜこういうふうにふくらまねばならなかつたか、これについてお答えを願いたいと思います。
  91. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 一応御答弁申し上げたいと思いますが、地方財政委員会と内閣とかわつた意見が出まして、そうしてこういうふうになつたことは、これは昨年の補正予算の時代から毎回で、風早さんのお説の通りなのであります。しかしこれが今日の政治機構であると同時に、法制上の規定であります。地方財政委員会は政府の機関でありますけれども、政府と独立して地方財政を特に綿密に見ておる。しかしその要求をいれるかいれぬかということは、結当同じ国民のふところから出しておるところの納税資金をもつて中央財政がこれを切り盛りしなければなりませんから、中央財政の立場からどうしてもそういう要求は聞けぬということになれば、これはある程度まで縮減するという以外に方法はない。そうしてそれをちやんと予想してあればこそ、両方の意見を国会に提出しまして、国家の最高機関であるところの国会の御裁定をまつということになつておるのであります。でありますから、あなた方から私をお責めになるより、国家の最高機関であるあなた方がその御裁定を下されれば、それに承服いたしまして、政府として、また地方財政としてもその通り遵奉いたすつもりであります。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカから千三百億円も持つてつたのじやありません。帰つてみたところがそういうふうな支出増をしてもいいというように経済事情がなつてつたのでございます。御承知の通り、私は七、八月ごろは八、九百億円の自然増収と考えておつたのであります。しかるところ千五百億円になりました。この原因を申し上げますと、まず一番増収を多く見積つております法人税につきましては、九月の決算が三月の決算を相当下まわるものと私は考えておつたのであります。それは一—三月の輸入で高いものをつかんだのが非常に低くなるというので、貿易商社その他において赤字を出すのじやないか、あるいはまた一時一梱二十二、三万円もした綿糸が十万円を割るというふうな状態でありますと、一番税金を納めておる紡績会社の方が相当減収になるのじやないか、こう見込んで七、八月ころかたく見積つてつたのであります。しかるところ九月の決算期に入つてみますと、九月の決算は三月に比べてあまり悪くない、こういう結果がはつきり出現して来たので、実情に沿つたようにやつたのであります。またそのときに勤労所得税の自然増収につきましては、三月の決算があのいい状況を見まして六、七月ころ給与の相当の引上げ増加がございました。大体毎月百五億から百十億とれる源泉徴収の所得税が、七、八月ころからは百四十億以上もとれるようなつたのであります。非常な賃金の引上げであります。こういうことから見まして二百億余りを見込んでおりました源泉徴収が五百八十億、倍以上の増収ができるようになりました関係、その他今までにおきまして不用額の計上あるいは節約等をいたしまして、極力財政収入の確保をはかつて、そうして平和を迎える予算をしつかりつくろう、こういう努力の結果であるのであります。
  93. 風早八十二

    ○風早委員 まず岡野さんにお尋ねしたいのですが、国会の方にきめる権限があるのたから、国会できめろ——それは国会できめます。その通り、あたりまえの話です。しかしいやしくも所管大臣として自分の所管である地方財政委員会が要求しておるところが、大蔵省の見解と違つた場合においては、あなたは自己の責任において、また自己の権限において、どうして大蔵大臣にもつと要求しないのか。そのことをサボつておきながら、それは国会に責任を転嫁しようとするものだ。とんでもない話だ。そういう態度であれば何も大臣なんかいらないわけです。それは国会にまかしておけば、国会はもつとうまくやります。そういう無責任なことは、岡野さんとも考えられないどうもはなはだ遺憾なお答えであると考えます。  次に池田大蔵大臣でありますが、どうも黙つてつておりますと、最近は池田大蔵大臣はなかなかたいへんなあれがありまして、この問題についても、こんなわずかばかりの期間に、しかもそのふえ方が、四百五十億が千三百六十二億、こういうふうなめちやくちやなふえ方であります。帰つてみたら事情が違つてつたと言うけれども、あなたはその事情をなぜ初めから見通すことができなかつたのか、先見の不明をみずから暴露されたものとしか考えられない。いずれにしましても、だんだんにその内容についてこれからお尋ねいたしますから、この問題はそれくらいにしておきまして、一体ドツジ氏が来朝しておられますが、この二十六年度の補正予算がまたまた修正を加えられる、この会期中にまた影響される、こういうことは万々ないと思いますが、そういうことはどうでしようか。また再検討をしに来られたというようなことはないでしようか。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたは四百五十億が千三百六十億、こうおつしやいますが、そうじやないのです。八、九百億が千五百億でございます。よろしゆうございますか。数字のもとをお間違いにならぬようにお願いいたします。ドツジ氏が来られて補正予算を修正になるかならぬか、これはドツジ氏にお聞きになればいいでしよう。私はならぬと確信しております。
  95. 風早八十二

    ○風早委員 ところが二十七年度の予算に関連してドツジ氏が来られたということは、池田大蔵大臣が他の箇所で言つておられるようでありますが、これはほんとうですか。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 二十七年度の予算ばかりではございますまい。最高司令官の経済顧問として、トルーマンの特使として来られたのであります。
  97. 風早八十二

    ○風早委員 今まわれわれ国会でつくづく感じたことは、結局国会というものは予算の審議権をほんとうは持つていない。結局予算編成権というもの自身が、政府自身の編成によるものではない。これが与党によつて結局うのみにされるというところにこの国会の実際の審議のからくりがあつたわけです。そこでわれわれは何とかしていわゆるオーケー予算なるものを排除したい。これがわれわれの念願であつたわけでありますが、今後このオーケー予算というものはいつ排除せられる見通しを持つておられるか、こういう点について今その場限りでない池田大蔵大臣の御答弁を願います。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 風早君は日本が占領されているということをお忘れになつたのではございませんか。占領されている間は予算につきましては編成権は政府にありまするが、向うの承認を受けることになつております。しこうして審議は終戦後の速記録をごらんになりましても、もう山をなすほど審議されておるのじやありませんか。十分審議して憲法の条章に従つて決定いたしておるのであります。
  99. 風早八十二

    ○風早委員 私の質問に対してまだお答えがないのでありますが、オーケー予算というものは一体いつまで続くつもりであるか。もちろんあなたは講和が完了すればこれで終る、こう言われるかもしれません、がなかなかそうは行かない。その点も十分に考慮した上でどういう手順を経て、これが実際に日本の自主的な運営になるかという点について所信を伺いたいのです。
  100. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど答えた通りで、占領治下にありますので、承認を受けることになつております。占領治下でなくなつてわれわれが独立すれば、われわれの考え通りにやつて行けるのであります。
  101. 風早八十二

    ○風早委員 ここで私は第五国会以来しばしば池田大蔵大臣と論争をしましたいわゆる見返り資金の問題、つまりその根底をなすところの援助費の問題であります。この点について若干質問をしてみたい。われわれはいわゆる外算導入あるいはまた援助懇請主義、こういうものに対して、これは将来恐るべき結果になるから、これだけはやめた方がよろしいというので、やはり国民経済の立場からこれに反対し続けて来たわけです。しかしながら池田大蔵大臣の財政政策は、一貫して今まで援助資金を懇請し懇請して今日に至つておるのであります。ところでこの援助資金というものがすでに現在に至るまで二十二億ドル、これは政府資料によりましても決算でも二十億ドルに達しておるわけであります。これについてはいろいろさまざまな害悪がここから生れ出ておるのでありますが、それは一応あとまわしにして、とにかくこういう援助資金に対して、これが債務であるということを今国会においても答えておられる。債務であるとするならば、その支払いに対する態度はどうであるか、またその具体的な方針はどういう方針であるか、これについてお答えを願いたいと思う。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど私が答えました一番あとの分に、誤解を招いちやいけません。今でも私の考え通り予算をつくつております。平和条約が批准されまして独立国家になりましたら、相談をせず、自分の考え通りにつくれる、こういう意味であります。  それからあなたは見返り資金の問題からお話になりましたけれども、そうして債務と心得ておるというあれでございますが、見返資金というものは、いわゆる援助資金とは違うのでございます。そこであなたの債務と心得ておるかと言われるのは、見返り資金じやなしに、援助に対するものを債務であると心得てお答えいたします。そこでわれわれは、終戦後アメリカから実体援助を受けました場合におきましては、これを債務と心得ておるのであります。とにかく援助を受けたのでありまするから、私は人の援助をもらつても、それを踏みにじるんだというようなことは、言いたくございません。債務と心得ておるのであります。しこうして債務と心得ておるものの支払い方法をどうするかということになりますと、それはこれからのアメリカ政府との折衝であるのであります。
  103. 風早八十二

    ○風早委員 この厖大な債務の支払い方法というものは、これからの折衝もさることながら、私の聞いているのは折衝に対してあなたはどういう方針を持つておられるかということなのです。そこで一方すでに日本国民は占領当局に対して莫大な負担を年々負つて参りました。終戦処理費というものがそれです。この終戦処理費は今までのものを全部見積ると五十億ドルに達している。(「そんなにはならぬぞ」と呼ぶ者あり)いやなる。政府の決算によつても四十五億ドルになつている。これは本来四十九億ドルと何がしでありますが、決算で四十五億ドルになつた。つまりわれわれは援助資金を受けたかもしれないが、その倍以上のものを終戦処理費としてすでに負担している。この両者の関係において、援助資金というものをこれで棒引にしてもらう、こういうような意思があるかどうかということを、これは具体的な今後の折衝方針としてお尋ねしているわけです。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 終戦処理費と援助資金とは根本から違つているということは、たびたび前から申し存おるのであります。従いまして終戦処理費を負担したから援助費を棒引にしてくれとは、私は言わぬつもりであります。
  105. 風早八十二

    ○風早委員 そうなると、いよいよお尋ねしなければならないのは、それでは一体どういう方針をもつてその折衝に臨まれるのか。これは実に今これを円に直したら莫大なものだ、これが来年度の予算から年々われわれの負担にかかつて来やしないか、当然かかつて来るでしよう。あなたが債務と認めてこれを支払うと言う限りは、それについて大体の見通しがあると思う。その点をわかるようにあなたとしては説明される必要があると思う。
  106. 池田勇人

    池田国務大臣 相手の考えもあることでございます。私がこうやるのだと言つてもその通りに行かぬ場合もありましよう。だから私はそういう話合いをまだせぬ前に、こうしてもらうのだ、ああしてもらうのだということは言いたくないので、それは講和条約が成立いたしまして、イタリアにおいてはアメリカの請求権をアメリカ自身が放棄したのであります。イタリアから言つたか言わぬか私は知りませんが、アメリカが一方的に放棄いたしたのであります。私は債務と心得て払う覚悟でおりまするが、先方が負けてくれるものならこれは何も断るものでございません。そういうものは先方の考えでありますから、われわれは日本の経済が自立できるように、国民生活が危殆に瀕しないように、適当な方法で払つて行くということを考えておるのであります。
  107. 風早八十二

    ○風早委員 池田大蔵大臣は先般サンフランシスコからワシントンに行かれて、この見返り資金を講和後のいわゆる防衛分担金、あるいは再軍備費というようなものに使うような指示を受けて帰られたことがありますか。
  108. 池田勇人

    池田国務大臣 私は昨年はサンフランシスコからワシントンに行きましたが、今回はサンフランシスコからワシントンに参りません。まあそういうことは行つても行かなくても、私は問題にならぬと思います。もちろん聞いておりません。
  109. 風早八十二

    ○風早委員 この援助資金を開発銀行に繰入れてもらいたいというような財界のいろいろな要望があるようですが、こういう点については今お考えはありますか。
  110. 池田勇人

    池田国務大臣 援助資金のどこを開発銀行に繰入れるというのですか。私はまだそういうことははつきりと聞いおりません。
  111. 風早八十二

    ○風早委員 今までの援助資金を裏づけにして見返資金特別会計ができてもう相当になりますが、その間に、この見返り資金でもつて日本の鉄道、造船、電力、石炭、鉄鋼、電信、こういうあらゆる日本の基幹産業、重要な産業の面に対して、ほとんど支配力を握られてしまつておる。見返り資金をてこにして、それにひもをつけて、そうしてこれらの産業を龍断しておる。これは国鉄の場合にしましても、その量は全体の割合は少くても、実際問題としてこれで非常に国鉄が撹乱されておる。そのほか各産業について見返り資金が演じて来た役割は、これはわれわれがしばしば今まで実際の資料で申したから今日は省きたいと思いますが、そのほかにまだ日本の為替管理、さらにドル資金というものを実際の運営において向うが握つておる。為替については、その許可の実権を占領当局が握つておる。こういうことによつて今まで日本の貿易、ひいては産業に実に致命的な大きな影響を与えておる。この点について、まずドル資金の蓄積の状況、そうして外貨の割当、これを一応大蔵大臣からお示しを願いたいと思う。
  112. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金の使い方の問題で、今貸さずにありまする金は、見返資金特別会計から今後も続けて出すつもりであります。しこうしてすでに投資したものの元利の回収金をどうするかという問題につきまして陳情は一、二ありましたが、これは私はまだ結論を出しておりません。今お言葉に、為替を管理しているというよう言葉がありましたが、風早君も為替の管理という意味じやないと思います。前は為替は管理しておりましたが、今はスキヤツプ勘定としてごく少い部分が残つておりますのは、貿易を司令部でやつてつた場合のしりでございまして、為替の方は外国為替特別会計でやつておるのであります。問題は外貨予算の問題だと思います。外貨予算の問題につきましては、われわれが輸出入の状況見通しを考えまして、こちらで四半期ごとにつくりまして、そうして向うと話をしてきめることになつておるのであります。外貨の支払い、収入は四半期ごとにもちろん違つておりますが、ずれの関係がございますので、正確な数字は今記憶しておりませんが、一・四半期ごとに一応算定いたします。しかしその四半期のうちにおきましても、輸出入の状況によりましてかわつておるのでございます。詳しくは政府委員より説明いたさせます。
  113. 風早八十二

    ○風早委員 外貨割当の四半期ごとのあれを出してください。
  114. 池田勇人

    池田国務大臣 資料でお渡しした方がよろしゆうございましよう。口頭で申し上げましてもなかなかおわかりにくいと思いますから……。
  115. 風早八十二

    ○風早委員 私の方で調べたものもありますけれども、政府から一応責任ある御答弁を得たいと思つたわけであります。というのは、これは資料あとから出すというのでは実際質問にならない。この実際の四半期ごとの割当方に問題がある。一九五〇年、つまり二十五年の一月から三月までの外貨割当は五千九百五十万ドルという非常にわずかなものです。四月から六月までも一億三千九百十万ドル、これも比較的少い。ところがこの一九五〇年の一月から六月というのは、比較的国際物価が割安で、日本の貿易業者としても、このごろにはどんどんと原料も買いつけたりした、そういう時期であつたのでありますが、この外貨の割当が非常に少い。ところが昨年の七月から九月には、一挙にして三億七千六百十万ドル、十月から十二月は四億一千万ドル、今年の一—三月は六億四千万ドル余りであります。こういうふうに昨年の七月からにわかにどんどんふえておりますが、このときにはすでに国際価格は、朝鮮事変を機として非常に上つておる。もうどんどんと上つておる。その奔騰をきわめたときに外貨割当がどんとあつた。これは、政府はわれわれ通産委員会で聞きましても、何も政府が勧めたわけじやないと言われますが、どんどんと輸入が行われた。高いものをたくさんつかんだわけです。それがこの春以来の大暴落でひどい目にあつておるわけです。その根本を左右しておるのはこの外貨の割当なんです。こういう点について、この外貨割当をもし日本政府が今池田大蔵大臣が言われたようにやつたとすれば、あまりに不見識きわまる。われわれが今まで聞いておるところでは、この外貨の割当は、日本政府の独自の見解でやつているとは考えられない。これは少くも承認を受けておる。そうしてその承認の場合には、これは向うさんの意思が十分に入つておる。その背後における国際独占資本の意思が入つておる。それによりこういう国際的な収奪——日本全体を、大きな物価の変動を利用して、そうして根本的には占領状態というものを利用してこれを引揚げて行く。われわれ日本国民が血とあぶら汗を流してためた、飢餓輸出でもつてためたドル資金、これをこういう大きな国際的な収奪でもつてしぼり上げられておる。これは多数の資本家自身もその選を免れておらない。そういつた大事な関係を向うに握られておるということは、どれほど日本がひどい目にあつておるかということを示す著しい例なんです。これはことしの春以来の皮革や油脂やゴムの大暴落、原料高の製品安といいますけれども、これはとてもそんななまやさしいものではない。こういう大暴落によつて、まんまと一ぱい食わされたようなことになつておるのです。絶えずこれをやられておる。そういつたようなわけで、われわれは貿易やあるいは為替管理はやつておらないと言われるけれども、実際においてこの為替はやはり為替銀行、外銀の支店、本店、結局はスキヤツプに左右されておるわけです。そういつたような根本的な隷属関係というものをこの際にほんとうに払拭しなければ、日本はこれから浮ばれつこない。そういう点について、私はもう少し政府日本国民立場から真剣にこの問題をひとつ扱つていただきたいと思うのです。  私はこの際、高橋通産大臣にわざわざおいで願つたのでお尋ねしますが、自由党政府にいろいろ統制廃止、自由経済主義というようなものがありまして、常にこれが問題になるのでありますが、そういう場合に、貿易制限、貿易の許可制、こういうふうなものに対してどういう態度を一体とられるのか、これは所管大臣として、ぜひ高橋さんにお答え願いたいと思う。
  116. 周東英雄

    ○周東国務大臣 その前に、今の輸入外貨の問題について、あなたの誤りをひとつ正しておかなければいかぬ。もう少し真剣に議論されれば私も真剣に答えますが、物事を悪く悪く考えるということは、私はとらないのであります。今あなたは去年の一—三、四—六の問題を御指摘になつた。七—九以後において外貨割当が非常に急激に増加したことは、故意に高く買わせたのだろうというようなお考えでありますが、私は、それは少しひど過ぎると思う。もう少し御勉強になつて、一—三、四—六における日本輸入外貨の割当というものが、どういうふうになつていたかということをよくごらんにならなければならぬ。その当時までは各四半期ごとにおける輸出によつての受取りの見込額しか許さなかつた。しかもどの国から何を幾らというところまで非常な制限がついていた。そういうことはいけないというのが政府考え方で、非常に折衝をいたしました結果、七—九の予算からは、むしろ国民が希望しておりましたように、輸出輸入の関係は、将来への見込みについて考えつつ早く契約を結ぶということでなければならぬ、ただ四—六の輸出の受取り関係だけの範囲で買うということはいけないということについて、ようやく政府の自主性によつて認めてもらつた。しこうしてそれに伴つて同時に自動許可制といいますか、自動承認制といいますか、ある程度の金額の幅においては、できるだけ早くどこの国から買つてもよいという制度を開いたことは、あなたも御承知だと思う。こういうことから、もう少し将来を見通しての受取り勘定を考えて、急ぐための輸入外貨資金の割当を出してもらつて来た。とつて来た。そういうことは何ぼ共産党でもこれは認めつつどうか批判をしてもらいたいと思う。私はあなたが学者であるだけに、そういういい面も考えたのです。私はまじめに議論する。しかし今あなたは悪い面悪い面とおつしやるけれども、あなた方は何です。ことに共産党は去年の十月ころにはとても輸入はできはせぬと言つてえらく攻撃されたでしよう政府の見込みは甘過ぎると。私どもはそういうふうな輸入の形態について大きく考えて自動許可制をとつた。そこにはいろいろ何もありますが、よけい入つて来たということは、これは国民の採算からは非常にいいのです。ところが輸入業者のある程度の訓練がないために、むしろ将来の先高を予想して思惑輸入をしたことは事実です。外貨の予算以上に契約を進めることは非常に悪いことです。一万トンの輸入の商品と考えているときに、向うには三万トン出て来たということは、日本人が値を高くしているということで、あなたが共産党であつても、そういう悪いことは批判されなければならない。そういうことからある程度よけいに入つた。一部には彼らの日本の内部においても欠陥があつて、さあ入れてみたところがこつちも入つている、あつちも入つている、これはたいへんだということで売つて出た。そういうことから値が下つて来たこともありますが、国としては予想以上のものが入つて来たということは一時的の現象だと見て心配しない。むしろそういうことからして大豆でも、油脂でも、綿糸でも、あるいは皮革、ゴムというものが下つて来たということは、国民全体として私はいいと思う。その間において思惑で輸入してもうけそこなつたということは、少しおきゆうをすえた方がいいと私は思う。
  117. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 お答えいたします。日本の国際貿易が輸入の面につきましても輸出の面につきましても、ますます盛んになることを私は熱望しているのであります。ただ今の国際情勢日本政府は国連に協力するということが基本方針でありますから、この範囲を逸脱してはいけないと考えております。
  118. 風早八十二

    ○風早委員 周東安本長官に新しい質問をしたいと思うのですが、一体安本長官としてこういう具体的な数字にまず即して問題を出してもらいたい。ただ自由党の立場から都合のいい政策的なものを抽象的に言われるということでははなはだ困る。私は数字をまず出し、実際の結果をそこに裏づけとして問題を出しているわけです。先ほども申したように、実際にあなたがどう言われようと、去年の一月から六月まで、それから七月以降、これは四半期ごとにわければなおはつきりするのでありますが、こういう大きな国際価格の波の変動があるわけです。この変動に実にぴつたりとこの逆を行つている。これは冷静に考えて、実にたちの悪い外貨の割当になつている。その証拠は輸入に現われている。七月からそんなにたくさんの外貨の割当があつても、実際に輸入というものは非常に少い。一月から六月まで各四半期ごとに二億二千六百万ドルあるいは二億五千八百六十万ドル、こういうふうに出て来るにかかわらず、七月から急に減つて一億九千九百万ドルになり、さらに次の十—十二月は二億八千六百四十万ドル、そうしてこの一—三月にやつと五億一千百七十万ドルでありますが、そのときには外貨割当は六億四千五十万ドルです。むろん外貨の割当即輸入の問題はそれぞれ多少のずれがありますから、円資金の問題もありますが、実際にこういうような関係で出て来ているこの数字をごまかすわけに行かない。しかも実際においてどうですか。実際において業界はこの春以来あんな打撃を受けた。こういうような具体的な数字と具体的な事実とに基いてわれわれの出している質問に対しては、それがはなはだ痛いところに当つたゆえに、ただ自由党の立場から抽象的にいくら反駁したところでしかたがない。  私は高橋通産大臣にさらに質問を続けたいのですが、高橋さんはたいへん日本の産業が栄えるように、これはまことに御同感の至りでありまして、われわれもまたいかにして日本の産業の勃興の方法をどこに見出すかということを考えているのであります。そこで今までの貿易制限あるいは許可制というようなものによつて、さしずめだれも明らかなことは、いわゆる中日貿易の禁止の問題です。だれが何といつても、これは一番日本にとつて痛手なんです。日本の産業の栄えるようにということを考えられる限り、これくらい矛盾した話はないでしよう。実際強粘結炭にしましても、中国から十一ドルで入るやつがアメリカから三十一ドルで入つている。塩が八ドルで入るやつを紅海から二十ドルで入つている。鉄鉱石が七ドルで入るというのをアメリカから十八ドルで入つている。こういうまつたくむだなコスト高をやつている。これはすべて中日貿易に対して、強引に禁止的な制限を加えているからなんです。どうしてこのことについてもつと政府は真剣に、この中日貿易の打開について考えてくれないか。われわれはそれを念願するだけです。何もイデオロギーの問題をここで出しているのじやない。実際日本の産業のことを考えるならば、これくらい明々白々たることはないのです。これについて、この間も吉田総理はただ単に中国が希望したら何とかする、こういうような、まことにこれは身のほどを知らない御答弁であるわけです。向うから望んだらじやないのです。どうしてこれを打開するかということについて、高橋通産大臣は真剣に考えられたことがあるか。どこにその隘路があるのか、もう少しこの点についてお尋ねしたいと思います。
  119. 周東英雄

    ○周東国務大臣 風早さんに申しますが、もうちよつと先を勉強していただきたい。去年の九月ごろまでは輸入が下つて、十月からあとはずんずん上つて来たから、あなたの御指摘のようにことしに入つてから輸入が、減り過ぎるということが起つたのです。あなたの今のお言葉は、数字をもつて具体的に議論をしろというなら、私は数字をもつて議論をいたします。去年の十二月以後における輸入の実態に触れて御議論を願いたい。
  120. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 中共貿易につきましては、二回ほどこの委員会でも御質問に御答弁いたしましたが、中共貿易が盛んになることは、私は非常にこれまた望んでおるのです。また政府はこれを阻害しておるというよう方針は少しもとつていない。ただ先刻申しましたように、戦略物資は輸出ができぬことになつております。今の粘結炭であるとか塩とかいうようなものを輸入するので、バーターで日本から禁止されていない繊維品そのほかのものを輸出することは、私は申請があればいつでも許可するようにいたしておるのであります。ただ最近の実情を私が耳にしておりますところでは、中共の方で輸入先行形式を強硬に主張しておられるので、それであまり盛んにならぬであろうと思つております。
  121. 風早八十二

    ○風早委員 その点もう少しつつ込んで考えていただきたい。結局今東南アジア貿易へ切りかえるということになつておるわけでありますが、実際東南アジアの事情と、そして中国の事情あるいはソビエトの事情、こういうふうなものをどの程度はつきり比較してごらんになつたでしようか。その点で、まず今の中国の建設状況について、まさか戦前の中国と同じよう考え方を持つておられるとは思いません。しかしながら、今日はわれわれの想像以上に中国の建設は進んでおるのです。これは私もここに資料を持つておりますけれども、あなたの方からむしろどの程度これについてはつきりしておられるか伺いたいのであります。さらに穀物と綿花にしましても、これは戦前の最高水準をはるかに突破しておるわけです。ことに穀物は、絶対量でいいますと、前年度から一千万トンも増加しておる。今、日本の年間輸入が二百五十万トンですが、しかし向うではすでに一千万トンも穀物の増産がある。これについては今中ソ通商協定のようなものができておつて、ソビエトヘも送られているでしよう。しかしながら余力は十分あるのです。どうして今食糧問題についても、また大豆や何かの飼料についても考えられないか。そのほか今高橋通産大臣は、原則としてはやはりその方向を考えておられるようで、私どももはなはだけつこうだと考えるのでありますが、しかしながら、戦略物資だからしかたがないということで、結局その戦略物資なるものの幅はだんだんと広がつて来るのですから、そういつた原則をここで固執しておつたのでは、こちらから誠意を示すということにはならぬわけです。そこをどうして突破するか。また今後来るべき独自の話合いあるいは折衝をアメリカと——あえて占領当局とは言わなくても、これに対して試みるつもりであるか。関西の財界からも関東からも、具体的に今いろいろな要望がせられておるわけです。そういう具体的な問題をすぐ一つ一つ解決して行くという努力をどういうふうにしておられるか聞いておるわけです。こういうものを積み重ねて行けば、自然やはり問題の根本的な解決を助ける。これは日ソの貿易についても同様であります。日ソの貿易なんかもう最近ではほとんどとまつてしまつている。しかるにこの日ソの貿易についても、今相当広汎に要望があるわけです。現に最近もソビエトの通商代表ダムニツキ氏が議会にやりて来て、そのときも自由党の諸君の中の若干名がこれに出席されて、忌憚のない意見が述べられている。そういう基礎の上に立つて一つ一つ今後の国交調整もまた可能になると考えるのでありますが、あなたは通産大臣として非常によいかぎを握つておるので、日本の通商関係から、日本の産業関係から、これをこうやらなくちや日本がやつて行けないということを、あなたが具体的な方法をもつて強く示されれば、そこからやはりほぐれて行くわけです。そういう意味で、もう少しつつ込んだ方向と方針について所信をここでひとつ披瀝していただきたい。
  122. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 中共の現在の経済事情につきましては、私は非常に遺憾でありますがあまり知ることができないのです。そういう連絡もないのです。いろいろなことを聞きますが、非常に矛盾した話が耳に入ります。要するに、私には実情がはなはだわからない、そういうわけでありますから、根本的な対策をお尋ねになれば、私は中共貿易もますます盛んになることを希望する、またそういうふうに指導して行きたいと思つております。
  123. 風早八十二

    ○風早委員 ただ一般的に通商を希望すると言われているが、実際には事がはかどらないのです。たとえば、この間台湾に日本の通商部のようなものを、通商代表のようなものを出すとかいうような話が——在外事務所ですか、そういうこともこの間総理から出ておりましたが、上海というのは誤伝であるというようなことでありましたが、たとえば上海であるとか北京であるとか、そういうところへ一つ置いてくれないか、こういうことはあなたが言つてちつとも遠慮はいらないですよ。そういうことをやれば、あなたが今わからないと言われる資料なんかももちろん入るわけです。われわれは勉強して、実際できるだけの資料はやはりあれしております。今日本に専門の雑誌も研究所もある。しかしながら、そういうことでなくても、直接にでもあなたはそういう方法がある。いやしくも政府機関というものを持つていて、何でもできるのです。ただやる方針を持たないで、努力しないということなんです。そういう点でははなはだ遺憾でありまして、この点についてはひとつ十分に、まず中国の建設状況、その貿易状況日本にとつての価値というものを再認識してもらいたいと考えます。そうしてさらに進んで、今日この資本主義の矛盾、資本主義の危機、こういうものが、これは日本に限らない、その本尊のアメリカ自身、非常に深刻になつているのではないか。こういうものを含めて、これらと今の社会主義諸国と、これらが平和的に経済関係を取結ぶという一つの道を発見しようとして、努力が今国際的に行われているわけです。それを自由党の人は平和攻勢ということをいいます。これは平和攻勢ならけつこうでしよう。こちらも平和攻勢をやればいい。これはモスクワで国際経済会議が提唱されておる。その準備として、最近ヨーロツパでその準備会が開かれ、これに対して西ヨーロッパでは資本家たちが皆こぞつて参加しておるのです。こういうものに対して、広く日本の財界も注目しております。その証拠には、相当いろいろな一般の雑誌にも出ておる。こういうものに対してあなたは考えてみられたことがあるか、またあるならばこれに対してどういう態度をとろうと考えておられるが、それをお尋ねしたいわけです。これに関連してさらにエカツフエのアジア経済会議というものがありまして、これに対してやはりまたソビエツトからもいろいろな提案が出ておることは御承知と思います。こういうものに対して日本は、それは向う側だからそんなものはちよつとさわれないというふうなのじやなく、門戸は開かれています。それに対してやはり考えてみられたことがあるかどうか、高橋通産大臣の御見解を伺います。
  124. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 伝えられておりますモスクワの経済会議というものについては、私も関心を持つておりますが、私は現在それに参加すべしだという考えは持つておりません。これは日本政府方針が一向きまつておりません。また従つて私が日本政府の意思をここでお話する立場にないことを遺憾に存じます。
  125. 風早八十二

    ○風早委員 その程度の御認識ならばいたし方ありません。私の希望として、そういう国際経済が今非常に動いている、その実情をひとつもう少し御検討あらんことを希望しておきます、  それでは、日本の貿易業者の地位についてどう考えておられるか、これは今日はなはだ情ない地位に陥れられている。なるほど国内的に見ますと、貿易業者は比較的景気のいい部類に属するかもしれない。しかし外商の非常に法外な中間搾取にあつてつて、ことに向うではかつてなキャンセルを武器にしてやつております。こちらはそういう価格変動の損失をどうすることもできない。これはみんな日本側に転嫁される。こういうことではなはだ情ない状態にあるわけです。このキヤンセル、クレームなんかの理由別の統計については、私は資料を要求したのでありますが、まだ今日は手元に届きません。それはさておいて、とにかく今まで通産その他で実際に討議されたこのキャンセルの問題は、相かわらず非常に問題なんです。こういう日本の貿易業者の地位の改善、向上、これについて具体的に一体どういう方策を持つておられるか。
  126. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 今の御質問のクレームの問題ですが、これはあなたのお考えになるような大したことではない。クレームが起ることは私は非常に遺憾に思うし、そのうちには日本業者責任の問題もありましよう。貿易開始以来、本年九月末日までに解決された、通産省で扱いましたクレームの累計は千六百五十六件で、この金額は大体概算が二百万ドルであるのであります。なお契約解除の問題でありますが、これは現在のところでは、政府で把握すべき手段がありませんので、よくわかつておりません。そのうち繊維製品だけはわかつております。もつともこのキヤンセルとうものは、正常のときにも相当の数がある。これは輸出をしますれば、それは免れません。輸出が非常に順調に行つておりました一月、二月ごろもあります。ただ七月ごろになつてキャンセルが非常にふえたことは遺憾に存じますが、その後輸出の引合いもずんずん増加しおりますので、この繊維品につきましても、本年の予定額が、輸出の金額で三億六千四百万ドルということになつておるのでありますが、私は本年度内に大体これを下まわることはないと存じます。
  127. 風早八十二

    ○風早委員 高橋さん、私がお尋ねした点にお答えがないのですが、日本の貿易業者のキヤンセルに対してはけつこうですが、その地位を改善する具体的な方策を伺いたい。
  128. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 その点答弁を忘れましたが、日本の貿易業者が非常に弱体である。それは私も痛感しておりますが、これを改善するのには具体的な方策といつても、やはり一つ一つ小さな問題を取上げて解決するよりほかしかたがないのです。大体にいつて日本の貿易業者の実力は、速度ははなはだおそいので遺憾でありますが、私は年年改善していると思うのです。ただわが国の立場として、輸出貿易を増進して行く。これは非常にむずかしいことですけれども、どうしても増進しなくちやいかぬ。けれども、わが国だけでなくで、世界の各国が輸出を増進しようと争うておるわけですから、いろいろなつらいことも難問題も起きて来ることは避けられない、また避けるべきでないと思います。
  129. 風早八十二

    ○風早委員 次に池田大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。いろいろ軍用地あるいは工業地、宅地等の名目で、米軍によりまして不動産の賃貸借が行われているわけでありますが、これに関して大体こういう土地収用なり建物の収用なり、そういうものの実情をどういうふうに考えられるか。なおこれに対して、一九五〇年五月二十九日付で、ウオーカー中将の指令というのがあるように聞いておりますが、実際において、この接収なりあるいはまた賃貸借関係の問題は、これはもうほとんど全国的に非常に広汎な問題になつておりまして、またそれぞれの地域では、非常に深刻な土地取上げの問題にもなつております。これに対してやはり政府のはつきりした態度なり方針なりを、この際示してもらいたいと思うのです。
  130. 池田勇人

    池田国務大臣 今連合軍に接収されている物件、財産がどうなるかという御質問でございましたが、これは講和条約成立後に返つて来ると存じます。しかし、御承知の安全保障条約によりまして、行政協定で返らないものもあります。また新たに設けられるようになるものもあるかもわかりません。
  131. 風早八十二

    ○風早委員 方針はどうですか。
  132. 池田勇人

    池田国務大臣 方針と申しますと、平和条約が成立すれば日本に返つて来るのは当然であります。返らない分につきましては、行政協定できまります。
  133. 風早八十二

    ○風早委員 これはそういう簡単な問題ではないと思う。今まで賃貸借の名において実際行われておるこの実情というものは、実に言語道断なものでありまして、これはいわば経済外的収奪と言つていいと思うのでありますが、実際の市価の何十分の一、何百分の一という、ほとんど値段にならない値段で土地を取上げておる。近い話があそこの立川の飛行基地の周辺でも、広汎な土地が坪わずか十五銭で売られておる。また三沢の飛行基地を中心にして、あの八戸から舘岡の方面の海岸地帯一体に、これもやはり坪十三銭五厘ですか、十銭五厘ですか、まことに話にならない値段で実際に土地取上げが行われておる。こういつたようなことがまた至るところで、演習の名において、演習地として、ほとんど永久立入り禁止というようなことが行われておるわけであります。これはもう今日隠れもない事実なんです。こういうことは、ただ占領が完了したら何とかなるだろうというようななまやさしい問題じやないと思います。大体こういうものに対して、その補償というものは一体どういう基準でこれを行つておるか。これは実際に行つておるところを見ると、ほとんど基準なんというものは考えられない。実際の耕地に対して坪十五銭なんというのは、どこから割出してそういうことが出るか。でありますから、現にあの八戸の近辺でも、農民が決死隊をつくつてその立入り禁止区域に入つて、そうして稲をまいたというようなこともあるのです。これに対して、ただそんな一片の、講和が終つたらそれでどうかなるというふうなことでは、これは国民に対して済まされないと思うのですが、池田大蔵大臣はもう少し具体的にその方針を出してもらいたいと思います。
  134. 池田勇人

    池田国務大臣 具体的に出せと申しても、実情を知らない点も多いのであります。それは接収された場合におきまして、たとえば日本人の住んでおつた建物などを特に洋風にするために損害を受けた場合もありましよう。またここでいつか質問がありましたが、特に非常に財産価値を増加した場合もありましよう。こういうことは、平和条約成立後実態を調べて善処するという気持を政府としては持つております。平和条約が成立いたしましたならば解除になります。解除になつた場合におきましては、実情に即して適当な措置をとる考えであります。
  135. 風早八十二

    ○風早委員 こういう実情をよく御承知なければ、具体的に一、二実例をあげますから、それをよく調べてもらいたいと思う。今の問題は土地取上げですが、その他にもいろいろな形でひどいことが行われているのです。非常な不正が行われているのです。たとえばパルプの部門でも、一九五〇年以来、増産計画との見合いで硫黄鉱山の育成ということを非常に奨励されたのです。ところが今度は、御承知のようにアメリカ側の国防計画に基いて、アルミと銅と硫黄というものは絶対だ、これはこぞろもぞろアメリカあるいは東南へ送れということになつて来た。そうしてこの硫黄というものを全面的にアメリカに輸出させるということになつて来て、パルプ部門では非常な打撃を受けておるわけです。こういう問題もある。あるいはまた、今年の五月ですか、白金十一万オンスというものをわずか一千ドルで買い上げてしまつた。これがやはり市価の半額以下です。そういうふうなことが至るところにあるわけです。まだまだそのほかにこれよりもつとひどいいろいろな事実もありますが、こういうことはすべて政府において御存じないとは言われないと思う。こういう点についてひとつ実情をよく調べて、これに対するはつきりした責任をとつてもらいたいと思うのです。政府がこれに対して何らかまいつけない。ただ講和になつたら自然に解決するというふうな態度であるということは、これはおそらく、その被害者が実力でこれを防止するというところへ追い込むことになると思う。これは当然見通されるところであります。こういう点についても大蔵大臣は一向に今まで無関心で、どれだけひどい収奪がこの占領状態を利用し、あるいはこれに便乗して行われておつたかということについて、今日無関心であるということだけを私は確認して次に進みたいと思う。  そこでこの予算の中で今度ふくらんだ大きなものは、言うまでもなく、いわゆるレザーヴ、フアンドといわれるもので、つまりこれはいつ使うかわからない、おそらく今年度内には使うかもしらぬが、使わないかもしらぬ。これはこの前の予算委員会の公聴会でも、千代田銀行の頭取の千金良さんもはつきりそれを確認して、そういうものが約七百億くらいも今度の予算の中に計上されておる、これをどうして金融にまわしてくれないかというようなことを言つていたのでありますが、こういうレザーヴ・フアンドの一つとして、外為特別会計への繰入れの問題があると思う。私はちよつとわからないのは、当初の補正としては二百億が計上されておつたと思いますが、三百億になつたのはどういうわけであるか、この内訳をひとつ示してもらいたいと思います。
  136. 池田勇人

    池田国務大臣 接収その他によりまする被害につきまして無関心であるわけではございません。その都度々々問題が起つた場合には適当な措置を講じております。  次に外為会計の当初の二百億繰入れというのは私は存じませんが、今の輸出入の状況並びに外為会計のやりくりから申しまして、大体外貨の三百億円程度入れなければ、この三月までの年度越しがむずかしいので、こういうふうにいたしておるわけであります。詳しい数字につきましては、先般お答えしたところで尽きると思いまするが、もしたつてのあれならば事務当局より繰返して御説明いたさせます。
  137. 風早八十二

    ○風早委員 時間がありませんから、その数字は一応省くことにして、最後の数字として、これは大体予算関係で見ますと、外為は百十六億余る勘定になると思う。それは池田大蔵大臣はおわかりだと思いますが、そういう点で私は最初二百億を聞いてあつたが、それが三百億になつておる。そういう必要はなかろうと思うのですが、それにつけて外為のドル資金というものが、何に使われておるのかということがわれわれにはよくわからないので、実はそれについてお聞きしたがつたわけです。それについて少し例をあげてどういうものに使われておるか、これをお尋ねしたいと思う。  それから時間を省くためついでに関連してお聞きしたいのですが、警察予備隊の補正が百五十億計上せられておる。これについてはすでに車両であるとか宿舎であるとかあるいは給与改善であるとか、いろいろ言われておりますが、装備については何も言われておらない。この装備関係は今のままなのであるか、これについての新しい費用はどういうふうにされるのか、これもやはり池田大蔵大臣にお伺いいたします。
  138. 池田勇人

    池田国務大臣 では申し上げまするが、外為会計の事の起りは、風早君もよくおわかりで、いまさらここで御講義申し上げることはどうかと思いますが、六億ドルに対しまする円資金というものが必要である。そのために日本銀行へ六億ドルの相当部分を売りつけておりますが、売りつけていないものについて円資金が必要であるのであります。それで日本銀行から全部借りるわけに行きませんので、当初予算では五百億円を一般会計から繰入れ、あと五百億円を日銀から借入れることにして予算を組んでおつたのであります。この五百億円を繰入れる場合には、七十億円程度の予備費を持つてつたのであります。しかるところ一千億円の繰入れと借入金とを合せまして、九月までには及び切れないほどドルがだんだんとたまつて参りましたので、そこで今後の貿易を見通しまして、大体五百億円程度の繰入れが必要であるのでありますが、国際通貨基金へ加入のドル資金として二百億円を一般会計から繰入れることにいたしたので三百億円ということにいたしたのであります。しかして三百億円にした場合には百十六億円の予備費がございます。これは今言うように四月から始めて一千億のものをもつてしても足りなくて困るという状態でありますので、予備費百十六億円を計上いたしておるのであります。こういう貿易が伸びて来るという場合におきましては、私はこの程度は最小限度の予備費として持たざるを得ないと思います。  次に警察予備隊の経費百五十億の増は、装備というと問題になりますが、これは設備費あるいは通信関係の費用が主でございます。もちろん給与の引上げに十億入つております。装備——鉄砲等につきましては、この百五十億円には入つておりません。これは向うから借りてやつておるわけであります。
  139. 風早八十二

    ○風早委員 私のお聞きしたいのは、装備をアメリカから借りてやれば、やはり相当の費用がかかると思うのです。そういう費用はどこの費目から出されるのですか。これが外為の方から出るようなことはないか、それを私は聞いておるわけです。
  140. 池田勇人

    池田国務大臣 外為の金を警察予備隊へ持つて行くようなことは、あなたも御承知なさいますまい。そういうことは財政法違反です。そういうことはいたしておりません。それから鉄砲なんか借りておるのですが、借りておるときの費用でございましようか。——被服費その他給与に出しておるのでありまして、鉄砲を借りておる費用、借代はもちろん払つていません。
  141. 風早八十二

    ○風早委員 まだこの経費に対してはお伺いしたいことはあるのですが、時間がありませんので、次に池田大蔵大臣の水増し増税の問題に入つて行きたいと思います。その前にちよつと周東安本長官にお伺いしたいのですが、国民所得は今度は昨年よりも一兆一千億以上もふくらまつておるのであります。ところが実際にそれだけ国民所得がふえたのかどうかということは、どうも納得が行かないわけであります。そういう点でいろいろ内訳を私は検討してみたのでありますが、そうしますと、これは結局勤労所得、個人業種所得あるいは法人所得とわけてみて、法人所得だけが実質価値を増しておる。勤労所得も個人業種も非常な減り方であるというようなことがわかつたわけでありますが、これは間違いない点でありますか。この点ひとつ安本長官からまずお答え願いたいと思います。
  142. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えします。国民所得の増加につきましては、当初予算をつくつたときと今日と比べまして、生産、賃金、雇用、物価と各方面から見まして、著しい増加であります。その結果が国民所得の増を来しておるゆえんであります。なかんずく生産指数なるものが、当初一一四というようなものを予想しておりましたが、実際上一三六というよう程度にまで鉱工業生産指数が上つております。そういうことからいたしまして、おのずから一番多くなつておる点が法人所得に来ておるとは思いますが、そういうふうな生産指数の増加に伴いまして、全産業の平均賃金もまた当初の見込みよりも一四%増加しておる。こういうふうな事柄が加わりまして、国民所得の増になつております。
  143. 風早八十二

    ○風早委員 私がお尋ねしたいのは、実質価値なのです。つまり安本統計によりますと、それは一応ふえておるけれども、結局は卸売物価指数を見ましても、四八%もふえておる。こういうことになりますと、実質価値をとつてみると、私は今言つたように、法人所得ばかりは昨年よりも一〇%ふえています。しかし個人業種は九〇%減り、勤労所得者もやはり九二%減るこういうことになつておるわけであります。その点を確認されればそれでいいわけでありまして、この点について周東安本長官にもう一度お答え願いたいと思います。これはみな安本の設備資金計画について、われわれが調べてみたものであります。
  144. 周東英雄

    ○周東国務大臣 大体お話の点もわかりましたが、先ほど申しましたように、鉱工業の生産指数というものが非常に上つておる、従つてまた全産業に対する賃金指数も一四%上つておる、こういうことでありますから、一番出て来るのは、法人所得の方がふえて来る、これは当然でございましよう。しかしこれは単にあなたの御指摘の賃金、物価の問題だけでふえているとは考えません。これは全価値計算の上では物価の問題も上りますが、実質的にはやはり生産増強ということ、それに伴う賃金指数の増ということは、はつきり認めなければならぬと思います。
  145. 風早八十二

    ○風早委員 時間がありませんから、これ以上この問題にとどまつておるわけには行きませんが、私の言つておるのは、実質価値であります。これは安本のおすきな概念ですが、実質価値からいつて、私は今のような結論を出しておるわけであります。その点では実は法人所得しかふえておらない。個人所得も、また個人業者もふえておらない。非常に減つておる。ほとんど半分くらいに減つておるわけであります。そういう点を私はまず確認した上で、池田大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。これは一々いわゆる水増し増税あるいは減税なるものの内容に今触れて行く時間がなくなりましたから、これには触れませんが、ただこのうちで一つだけ法人税について触れておきたいと思います。法人税は今度上つたと言われておりますが、それを実際に見てみるというと、結局二百万円以上の大きな法人は非常にもうけておるわけです。ところが二百万円以下の法人つまり中小法人になりますと、必ずしもそうじやない。そこに非常に根本的な違いがあるという点を私は注目するのでありますが、こういう点からこんどの法人税の増徴というものが、その実際においては、主として中小の企業者の肩に、そのふくらまつた点がかかつて来る。増税がかかつて来る。大きい所ではかえつて軽くさえなるというような、そういう珍現象を実際に呈しておると考えるのでありますが、そういうことは池田大蔵大臣は十分に認められますか。
  146. 池田勇人

    池田国務大臣 水増しということをおつしやいますが、私が大蔵大臣になつてから、予算上税金がとれなかつた場合がございましようか。私は常にあらゆる点を検討いたしましてやつておるので、決して今までも水増しをしたことはございません。今回もいたしておりません。法人税の増収の実体ということでありますが、これは法人所得税が上つておるとおつしやいますが、源泉徴収の方と申告納税と比べたら総体として上つておるのであります。法人が非常に多い原因は、個人企業が法人企業にかわる場合が相当あるのでございまして、最近は非常に法人ができておるのであります。個人企業が法人になると、法人税がふえ、またそれは個人の所得が申告納税の事業所得でなく、源泉の勤労所得になりますから、こういう実体も御研究願わないといけないと思います。  それから二百万円云々というのはどういうことをおつしやるのかわかりませんが、今の程度の税率ならば、私は個人との関係から申しまして、小法人を特に安くするという必要はないと思います。しかし非常に税率が高かつたり、超過所得ということになりますと、資本金が物をいいますので、これは特別の措置をとらなければならぬことは、わが国におきましても昔その例を見ておるのであります。ただいまのよう状況では、法人税に差等を設ける必要はないと考えております。
  147. 風早八十二

    ○風早委員 もう一点で終りでありますが、これは大事な点だと思います。今大蔵大臣は中小法人に相当増税をしても、大した無理はないというようお答えでありますが、実際中小の企業者の場合には——もちろん二百万円以下と言つたのは資本金ですが、これに対しては税務署が認定決定や更生決定をやるわけです。二百万円以上のものは、御承知のように国税庁です。それが非常に違うのです。片方の小さい方には、今こういう場合が日本橋あたりで軒並に起つておる。一万円の給与を出すという場合に、その給与に対して二千円の源泉所得税を払う。そうした場合に、一万円プラス二千円、つまり一万二千円というものが給料になつて、これに対して税金をとられる。こういうことが今軒並に実際行われておる、こういうことが非常に実際の負担を加重しているということは、見のがすことができぬと思うのです。これに反して大きな法人、これはまあ典型的な大きな企業として、日本鋼管をあげてみますと、日本鋼管の財務諸表から推算してみますと、二十五年度の十月一日から二十六年度の三月三十一日、この事業年度についての貸借対照表上の利益は七億一千五百七万五千円です。それに対してプラス法人税引当金として、三億九千二百万円、合計十一億七百七万五千円というものが出るわけです。これに今までの税率三五%をかけますと、三億八千万幾らです。今度は税率が四二%に上つたのであるから、税額は増加しそうなものなんです。ところがかえつて少くなるという珍現象が出て来る。なぜかといいますと、いわゆる退職積立金の控除が四千万円もあります。それから価格変動準備金が一億四千八百七十二万円もある。つまりたなおろし資産の評価減、これはしかし二・五%の場合にそうであつて、これは二・五%から最高一〇%まで増すことができるわけであつて、一〇%にすると五億九千五百万円ばかりです。それだけがつまり控除せられることになる。それを利益から引きますと、この課税所得は、二・五%の場合には九億一千万幾らになる、それが一〇%の最高をとりますと、四億七千万というものに減つて来るわけです。これに四二%の税をかけますと、二・五%の場合で三億八千万幾ら、それから一〇%の場合には一億九千万、こういうふうに減つてしまうのです。これは非常に妙なからくりだと思うのです。それにまた特別償却の制度というものが今度の予算の説明を見ましてもありますが、それをさらに計算に入れるというと、べらぼうに減つてしまうのです。これは日本鋼管の例をとりますと、たとえば高炉をかりに二億円で建設したとして三十年の償却として六百万円、ところが今度の改正によりますと、それは九千万円まで償却費にすることができるわけです。こうなつて来ると、まるでおつりが来るような勘定になるのです。そういうわけで、大企業というものは、もつともつととれるにかかわらず、これは実際税金をとつてない。ですから今度の増税というものは、どうしても小さいところへ非常に重くかかつて来るということは、当然に出て来ると思うのです。そういう点があつて、これは今度の税金の大きな一つのインチキなからくりであるとわれわれは考えざるを得ない。これに対して、水増し増税をやつたというけれども、一ぺんでもとれなかつたことがあるかと、こういうお話、これは池田式の答弁です。どうしてとつたか、これは私は最近中野、杉並あたりの業者がたくさん国会へやつて来て訴えられた。その後新聞にも「税務署の調査に非難」として出ている。これは荻窪税務署のことでありますが、この中に、女湯をうしろからのぞいて、そうして髪洗いの数を調べている、そうしてこれに気がついて、びつくりしてみな飛び出した、こういうようなことが実際にあるのです。そういうむちやなことをやつている。それに対して税務署員はどういうことを言つているか。これは有田二郎君も私と一緒にその陳情団に面会してよく知つているはずですが、小倉という事務官が、この方法が浴客の実態を調べるのに一番確実な方法だからやつたまでだ、こう言つているのです。こういう人権蹂躙的な、出歯かめ的なことをやらせて、そうしてあなたは水増し増税でない、これは遺憾なくとれていると言つているわけです。これが実際徴税のからくりなんだ、われわれはこういつたような予算案のからくりに対して、非常な疑惑を持つと同時に、まだまだいろいろな問題を持つておりますけれども、時間も制限のあることでありますし、農林大臣がまたわざわざ来られましたし、同僚横田君がこれからやる予定になつておりますから、一応これで打切りたいと思います。
  148. 池田勇人

    池田国務大臣 風早君の法人の計算につきまして、どうもはつきり私には数字がのみ込めませんので、いずれ速記を見ましてからお答えいたします。
  149. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 今横田君というお話がありましたが、その前に、先般竹山祐太郎君の農林大臣に対する質疑が残つておりますから、この際これを行いたいと思います。竹山祐太郎君。
  150. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 この前三大臣列席のときに、私は重大な主食質問をしましたが、農林大臣は途中退席をされましたので、かんじんなところが全然抜けておりますので、きよう全部とまでは行きますまいが、そのうちの一、二の点をひとつ伺つておきたい。  第一は、この間農林大臣は、二千五百万石の供出量というものは、閣議において前回の予想収穫高を基準にして、しかも統制撤廃を前提とせずしてきめたということを、数回私は念を押しましたが、それを確認をされております。そのときにこの次の収穫予想は数日後には出すということを言われましたが、それはいつ出されますか。
  151. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答え申し上げます。先般お尋ねの点は、放穫予想高については、大体従来からしますと、十月二十日に第二回予想発表を出すはずになつております。しかるに今日まで出ていないのはどういう理由か、政治的な考慮に基くものではないか、こういう御質問でございましたが、そうではございません。御承知のように本年の第一回予想収穫高の問題につきましても、これは東北地方における冷害の危惧その他がありまして、その予想をする条件を備えていなかつたために遅れたのであります。今回また十月二十日ごろ出す予定のところ、これはまた竹山さんも御承知のように、近畿、中国地区においても秋の気候が非常に遅れております。またルース台風、その他の影響が十分に把握できなかつたので遅れておりますので、これが最近になりまして、計数がずつとわかつて来ましたので、一、二日のうちに発表をいたす予定でございます。
  152. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 今の御説明の中でもわかりますように、ルース台風その他病虫害等その後の悪条件が重なつて来ておるのでありますから、おそらくこの次の発表が前のようにふえることは、どんなことがあつても、天地がひつくりかえつてもふえることはないと思いますが、この点念のために見込みをひとつ農林大臣に伺つておきたい。
  153. 根本龍太郎

    根本国務大臣 第一回の予想収穫高が六千二百数十万石でありましたが、それを上まわることはないと存じます。
  154. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 そうしますと、まあこれは新聞に漏れたのかどうかしりませんが、少くとも六千万石というのは、われわれは大体了承している数字でありますが、これは今おつしやいますまいが、そうすると減ることは事実だというのであります。この一両日新聞を通じて見ますと、政府は三相会議において二千五百五十万石でありますか、あるいは二千六百万石という前回閣議決定の数字を上まわる供出量というものをきめようとされておる。しかも統制撤廃はこんとんとしてなおきまらない。こういう数字が所管大臣としてどういうところから出たのか、一応承つておきたい。
  155. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答え申し上げます。御承知のように現行の食管法の建前からいいますれば、予想収穫高を根拠とし、それに農家の保有米を除いて全量供出という建前になつておるのであります。従いまして今回供出量を決定する場合におきましては、この二つの要素を勘案して考えなければならない。但し一面におきましては、例年問題になりまするが、この予想収穫高に発表しておる数字は、規格以上の米の問題です。規格というのは御承知のように四等米であります。しかし本年のような天候の悪い場合におきましては、どうしても規格が下る場合があります。しかし一面におきましては、国内の操作米、あるいはまた配給量を確保するという段階になりますれば、でき得るだけ規格を落して供出をさせてくれというような要請が出て参ります。最近特にこれが災害地であるところの九州、四国、さらには近畿地方にもあります。なおまた北海道にもありますので、そうした場合においては絶対量を多く確保するという場合になりますれば、この五等米を算入しますれば、四等米において計画した以上に出ることはあり得ることであります。
  156. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私の伺つておるのは、この前の閣議で決定をした二千五百万石の数字を上まわる数字をどうして考えたのかということであつて、あなたの後段の説明のごときは逆のことになるのだ。災害で物がとれないので、悪いものを割当てられた数字の中からでもがまんをしてとつて来るということの例は今まであるのですけれども、災害でしいながふえたから供出量を増してもいいというような理由などは、常識的に考えたつて出るはずはありません。少くとも二千五百万石と一旦閣議で決定した、とこの席で農林大臣が述べられた二の数字を上まわる理由をひとつ伺いたい。
  157. 根本龍太郎

    根本国務大臣 この前私が申したのは、おおむね二千五百万石程度を考えるということを申したので、正式に二千五百万石を供出割当量として閣議で決定したとは申しておりません。なおまた政府措置要綱を決定する場合におきましては、御承知のように全面的に来年の四月一日からはずすというような構想を基礎としておつたのでございます。従いまして、これはあなたのお聞き違いと存じますが、統制撤廃をしないという前提のもとに、二千五百万石を決定したとは私申しておりません。
  158. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 それは重大な点であります。そういうことを言われるかもしれぬと思うから、速記録をお調べを願いたい。私は二度ないし三度このことについては念を押してあなたに答弁を求めておる、統制撤廃を前提としないで、二千五百万石をきめたということは、はつきりと申しております。それからもう一つの点について、二千五百万石を、なるほど数字をどういう言いまわしをしたか、この点については私どもあとで速記録を調べてもう一回質問をしますが、そういう言いのがれでは済まないと私は思う。これは私に答弁をごまかしても、知事会議でもう一回やられます。だからむしろはつきりと——あなたがそういうことを事務的におきめになるのなら、何か理由があるはずだ、その理由をお述べにならないか、もう一度念のために伺つておきます。
  159. 根本龍太郎

    根本国務大臣 いずれ速記録を調べてみまするが、私はあなたが御質問なつた場合において、供出量の割当につきましては、正確に二千五百万石とは申しておりません。おおむね二千五百万石を目標とする、こう申しております。そこで二千五百万石を算定したところの基礎について説明せよということのようでありますが、これは先ほど申しましたように、われわれは措置要綱を作成する場合におきましては、供出後の自由販売ということ、さらに農家保有米をできるだけたくさん保有せしめて、そうして供出後の自由販売における、自由流通市場における量を確保したい、こういう考えが前提になつているということは、あなたも御承知のようでございます。従いましてわれわれは政府の考えとしては、当時おおむね二千五百万石を目途として供出を考えるということを申したわけであります。
  160. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 それ以上御答弁ができないと想像するよりしようがないのですが、おおむねと言われたところで、先ほど私が申すように、二回目の収穫予想が減るということを大臣が言われておる以上は、たれが常識で考えても、第一回にきめた決定数量よりも上まわる数字というものをきめるには、何か新たなる条件がそこに起つて来ない限り、これは答弁にならない。率直に司令部から言われたなら言われた、あるいは何かほかの条件が出て来たということをおつしやらない限り、私は理由にならぬと思いますが、これ以上やつてつてもほかの諸君に御迷惑ですから、この問題は結末をつけないで、後日もう一度速記録を調べた上で伺うことにいたします。  第二の点は、これがかんじんなところで、私がはなはだ遺憾だと言つたのは、この前の質問のときに、米価をあなたの九十四円の基準に押える手段方法について御答弁がなかつた。それを引続いて私が質問をしようとしたときにあなたが退席された。そこで残念でありますけれども、大蔵大臣答弁してくださつたから、大蔵大臣答弁で半分補充をしかけたのですが、その御答弁の中で、要するに米を押えるには麦を下げなければならぬという原則については大蔵大臣は了承をされた。私はおそらく今政府はその線に沿つて進むのではないかと考えるが、この問題がきわめて重大なのです。われわれは食糧の操作だけからいうならば、米を押えるには麦以外には方法はない、だから二重価格制度をおとりになるのかどうかという点について質問をしたが、大蔵大臣はこれに対してはもちろん明確な答弁はしていない。この段階としては無理はありません。しかし私はこの段階として、まずここ数日の最高の山において大蔵大臣にこのことを言つてみたところで、大蔵大臣は所管大臣じやない。一番私が心配をするのは麦の値段を下げて米の価格を操作しようとする内閣考え方に対して、農林大臣は一体どういう基本的な考えを持つてこれに当つておられるか、問題はすでに私が申すまでもなく、今年の肥料価格その他の条件よりするならば、国内産麦は著しく減少をするということは、当然たれでも考えておるところであります。その麦を、農民を農民でたたく、すなわち内地の麦を生産する農民をだしにして、それをもつて内地の米価をたたいて行くという政策をこれからとるかという重大な段階にある。そこで農林大臣はこういう考え方の今あるであろうと想像する問題に対して、基本的な考え方をどこに置いておられるかということをひとつ伺いたい。
  161. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答えいたします。御質問の要点は、需給並びに価格操作、そのうち特に価格の操作においては、日本の内地米の価格を、自由になつた場合に抑制するには、麦の価格で押えるより方法がないじやないか、従つて外国輸入麦を非常に安く放出することによつて価格を操作するということになりますれば、従つてそれだけ日本の麦作地の農民を圧迫する。そういうことになりますれば、結局さらに麦作地をして減産せしめる。そういうことになると、結局において食糧の絶対量が足らなくなるから、さらに外国食糧を多く入れなければならない。それには補給金がいる。こういうことになるというような想定のもとの御質問だと思います。これについてはわれわれも非常に重大な注意を払つておるのでありまして、小麦粉あるいは外麦を現在の生産者価格を非常に割つて、そうしてそれによつて価格を操作するというところまでは考えておりません。われわれの構想によりますれば、比較的安い外麦を放出する構想は持つておりますけれども、これによつて内地の麦作を著しく圧迫するということは考えておりません。すなわち内地の麦作については、価格支持政策をとつて行く。その価格支持の線について農民が希望する場合においては、政府がこれを買い入れる。こういうふうな構想は持つておりますけれども、麦の操作によつて日本の麦作を減少せしめるというような構想はただいま持つておりません。
  162. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 大体私の伺つた二重価格のにおいがあるのでありますが、まだはなはだ不徹底であります。現在においても減る傾向にある麦作を、積極的にふやすというお考えはありませんか。今の状態のまま行くならば必ず減るのでありますが、それをもつとふやすというお考えはありませんか。
  163. 根本龍太郎

    根本国務大臣 全体としましては、麦作も、それから陸稲も水稲も、ふやす方針でございます。但し一番ここに問題になりまするのは、漸次内地の農産物も国際価格にさや寄せするという必要が出て来るだろうと思います。そうしますれば、現在のところ、小麦協定によるところの輸入食糧の方は、内地よりは安いのでありまするけれども、その他のものについては比較的高いのであります。こういう観点からしますれば、われわれは漸次国際価格にさや寄せするという状況のもとに、麦の減産はない、こう思われます。但し小麦粉については、国際価格の関係で、特に小麦協定による輸入食糧がふえて来るということがありますれば、圧迫感が出て来るのじやないか。但しこの麦の問題は、主食としての問題のほかに、飼料としての役割も相当多いのでございまして、ある程度まで値段が下りますと、むしろ飼料によるところの新たなる購買力となつて出て参りますもので、麦の減産は行われない、かように考えております。
  164. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 飼料の問題は少し余分な点でありますが、飼料もいるだけのものはいる。飼料にいるだけのものは食糧が足りなくなる。従つてそれだけ輸入量をふやさなければならぬというだけのことであつて、これは私は議論にならぬと思う。そこで今私が伺わんとしておつた、国際小麦協定による小麦がもうすでに安いということを、農林大臣はお認めになつておりますが、この安い協定の小麦価格を基準に、今後国内産麦をいわゆる国際価格にさや寄せをして行こうというお考えでありますか、もう一度念のために伺いたい。
  165. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御承知のように、現在は外国食糧は全部国で管理いたしております。またわれわれは統制撤廃後におきましても、輸入食糧については、政府がすべて管理するという方針を堅持しておるのでありまして、プール計算いたします。その意味におきましては、国際価格が総体として現在の日本の米麦より安くなるとは、当分の間考えられないと存じます。
  166. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 これは非常に問題で、麦も米も高かつたときだから、世間は割合議論がなかつたのですが、今あなたのお話ように、麦を国際価格にさや寄せをするというならば、米も国際価格にさや寄せをしろという議論が当然起つて参ります。政府は今米の消費者価格を下げよう下げようとしておりますが、今の百五十ドルないし二百ドルの外麦、しかも内地麦に対してはおそらく六割くらいの経済価値、消費価値しかない外麦と、相対的に内地麦も上げるお考えが、一貫してあるのかどうか、念のために伺つておきます。
  167. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは前提がございますので、統制が完全に撤廃されていた場合には、今の御説のように、全体の国際価格にさや寄せされると存じます。しかしそういうことでなく、輸入食糧につきましては政府が管理し、そして現在のところにおいては総体として日本の産麦よりは高いので、そのために輸入補給金をつけておるのでございます。これから食糧事情がだんだん緩和して参りまして、また国民生活も安定して、所得もふえて来ることになりまして、だんだん補給金を少くすることによつて、経済の安定もなし得るという前提でありますれば、価格差補給金がだんだん減つて来る、かように思います。
  168. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 非常に私には議論が一貫していないと思う。いわゆる自由経済で、補給金もはずす方向で、国際価格に米麦をさや寄せして行くというならば、自由党らしい一貫した考え方である。ところが米についても麦についても、補給金を出して内地産米麦を押えて来ておる今までの行きがかりを、今後どうするのかという点についてもはつきりしない。私はここが農林政策のあやふやな点であると思う。こういう重大な切りかえの段階において、確固たる考え方を持ちませんならば——なるほど大蔵大臣ように、金をなるべく出さないように、そうして食いものの量、輸入を幾ら入れてもかまわない、そういう考え方のもとに、単なる食糧政策の大臣であるならば、それでよろしい。だけれどもこの厖大な農村人口を収容しておる日本の農村人口を、どうして食わして行くかという大きな農業政策を、背負わされておる農林大臣の見解としては、一向趣旨が一貫しない。この点は今日は委員長立場もありますから、私はこれ以上追究はいたしませんが、この次に質問をいたすときに、もう少し一貫した農林政策というものを伺つておきたい。要するに結論を申せば、今あなたのやつて行こうとされるところは、米の価格をなるべく下げて、麦の価格も下げて行つて、そうして農家を困らせるだけになる。自由党あるいは政府は、農民におせじを使わんがために統制撤廃をしようとしたその本旨とは、まつたく逆な方向に行こうとしておることを、私は農林大臣責任について強く申さざるを得ないから、この点を申しておるのでありまして、この次の質問の機会にあとの問題は譲ります。
  169. 根本龍太郎

    根本国務大臣 今の竹山さんの議論は、はなはだどうも一つのあなた自身の独断に基くところの議論のように聞えます。われわれは御承知のように、食糧の統制撤廃して行くことによつて——現在完全なる統制をしておるときにおきましては、どうしても低麦価、低米価になりやすい。そこでできるだけ自然の流通の過程において構成される公正なる価格をもつて、農民の所得を増したいということが、根本の念願でございます。しかしこの方法だけを貫きますと、消費者にすべてが転嫁されて来るわけであります。従いましてわれわれは農村に対する所得を増強せしめ、それによつて生産意欲を増させて、いわゆる限界生産費をふやすということによつて、増産すなわち食糧の自給度を高めるという方法をとりつつ、他面におきましては、長年にわたる統制になれ、なおまた比較的低米価の上に立てられておる日本消費者の生活を、経過的にこれはずつと円満に遂行するという観点からいたしまして、今の輸入補給金をもつけて行く線を出しているのであります。政治は一つの階級、一つの階層の利益のために他を犠牲にすることはできません。総合的な利益の上に政策が立てられなければなりませんので、農民だけの立場からして考えるわけには参らないのであります。その意味において、われわれは統制撤廃と同時に需給調整と価格調整を考えるというのでありまして、竹山さんの議論からすれば、非常に御不満がありましようけれども、政府としてまた農林当局としてそれが妥当なる考え方であると私は存じております。
  170. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私の議論が非常に悪いということでありますから、もう一度だけ申しておきますが、私は何も農民の立場で言つているのではないので、今問題は、米の統制撤廃に一番心配しているのは消費者のためです。私らは農村は多少困つても、この際乱暴な用意のない統制撤廃に反対せざるを得ないおもな点は、消費者立場である。だけれども消費者のために、消費者のためにと言つているうちに、農林大臣がしつかりしていないと、大事な農村の問題がくずれてしまうということを私は言つているのであつて農林大臣から消費者のためのお説教なんかを私は夢にも聞こうと考えておらなかつた農林大臣はほかのことを御心配にならないで、農林大臣らしい農業政策をしつかりやつてもらいたい。大蔵大臣から引きずりまわされるような農林政策は、農民のために私は御注意を申し上げておきたい。私に対して反対だとおつしやるから、私も私の感じを申し上げておきます。
  171. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 成田知巳君。
  172. 成田知巳

    ○成田委員 西村条約局長がお見えになつておりますが、岡崎官房長官がお見えになつておりますので、でき得れば岡崎官房長官に御答弁願います。  講和条約の第三条でございますが、「日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島」「並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。」この「国際連合」の意味なんですが、具体的にどういうものをさしておるのか。吉田首相が本会議答弁されたところを見ましても、この沖繩、琉球はアメリカの戦略的な立場から信託統治に置く、こういう御答弁があつたので、当然戦略的な信託統治だと私たちは解釈しておる、一般的な信託統治ではないと思つております。といたしますと、この「国際連合」というものを具体的に考えました場合、当然これは国際連合の安保理事会に提案するというように解釈すべきだと思うのでありますが、どうですか。
  173. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 吉田総理はたしか戦略的信託統治という言葉は使わなかつたので、戦略上の必要から信託統治こう言つたのだと思います。なおその条文にあります通り、アメリカ側が提案する案はまだわれわれも承知しておりません。おそらくできていないのだろうと思います。そこでわれわれの方では、「いかなる提案にも」と書いてありまして、これが戦略的信託統治になるのか、普通の信託統治になるのか、これは今後きまる問題だと思います。
  174. 成田知巳

    ○成田委員 戦略的という言葉を使わないで、戦略上の必要から信託統治にすると言われても、実質的には同じだと思います。そこでこういう重要な講和条約に調印される場合には、この「国際連合」というものは、大体今後いかなるものになつて来るか、いかなるものをさしておるかということは、周囲の情勢から当然了承された上で調印されたと思うのです。従つて戦略上の必要からするところの信託統治だとしたならば、当然これは安保理事会にかけるという意味で調印されたと解釈していいと思いますが……。
  175. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 それはただいま申し上げた通りでありまして、きまつておりません。実質的には同じだと今成田君が言われましたけれども、戦略的信託統治と普通の信託統治では実質的にも違いますし、手続も違います。しかしそれはどちらにするのかきまつておりませんから、ただいまわれわれそれに対して御説明をするわけに行かない。私どもはアメリカが提案する案に同意する、こういうことを言つでおるのであります。
  176. 成田知巳

    ○成田委員 そうしますと、日本政府の解釈として、戦略的信託統治と考えても、アメリカ側で一般的な信託統治として提案した場合には、自分の解釈と違つても、それに同意しなければならないのですか。
  177. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 われわれは別に戦略的信託統治になるのだというふうには考えておりません。どちらになるかまだわからないと考えております。
  178. 成田知巳

    ○成田委員 次に大蔵大臣に御質問したいのであります。平和条約の請求権及び財産の問題であります。十四条の2の(1)でありますが、連合国の管轄下にあるところの日本国民の財産は、差押えし、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利を連合国が持つと書いてありますが、これは当然清算賠償に充当される、こう解釈してよろしゆうございますか。
  179. 池田勇人

    池田国務大臣 当然清算賠償になるとは考えておりません。これは別個に十四条で日本は放棄する、こう言つておるのであります。
  180. 成田知巳

    ○成田委員 そうしますと、賠償に充当されるかどうかもわからないのでございますか。ただ放棄するというだけを規定したのでございますか。
  181. 池田勇人

    池田国務大臣 それは連合国の考えるところであります。
  182. 成田知巳

    ○成田委員 これは普通の常識から行きましても、今までの条約から行きましても、当然これは賠償に充当されると私たちは解釈しております。特にイタリアの講和会議を見ましても、これらのものは賠償に充当されている。もし賠償に充当された場合、日本政府としてそれだけの私有財産に対して、在外邦人に対する補償をする意思があるかどうか。
  183. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題はこの委員会でも、本会議でも、参議院でもたびたび答えたところであります。これは講和条約十四条に示してある通りに、当然賠償になるとは考えておりません。サンフランシスコの会議でも、サルヴアドルは憲法上はこういうものはとらぬということを言つておるのであります。しかしわれわれとしては、原則として賠償の一部としてとられるということは予期しなければなりますまい。そうしてとられた場合に国内で補償するかという問題につきましても、たびたび答えおるので、今の御質問に対しましては、財政上なかなか困難でございまするが、研究はいたしております。
  184. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 成田君はこの委員会にずつと御出席になつていませんから、あるいは御無理かもしれませんが、なるべく重複しているところは御注意しますから……。
  185. 成田知巳

    ○成田委員 次に専売裁定の問題ですが、仲裁裁定が出て一万四百円ということが裁定書に記載してございますが、裁定書の理由書を見ましても現在の専売公社の経理内容からいつて、四億円ばかり増加すれば専売裁定は満足されるのであります。従つてこの程度のものは、専売益金に関係なくとも予備費等からでも支出できると、こういう裁定書の理由書があるわけですが、これに対して大蔵大臣はいかにお考えになりますか。
  186. 池田勇人

    池田国務大臣 これまたたびたび答えた通りでございます。予備費がありましても、給与は予算総則できめられた金額に限られておりますので、他に何十億予備費がありましても、私は出すわけには行かないと思います。
  187. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 それは民主党の森山欽司君が土曜日に質問されたと思いますので、橋本君にひとつ……。
  188. 成田知巳

    ○成田委員 橋本長官に行政整理の問題についてお尋ねしたいと思いますが、政府は大体十二万の行政整理を考えておられるようでありますが、実質的に自然退職だとか、希望退職があると思いますが、大体何万くらいになる御予定でありますか。
  189. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 ただいまのお尋ねの点でございますが、先般来労働省等から出された数字は七万とか八方とかいうておる数字があるのです。ところがこの欠員につきましても、たとえば厚生省所管の国立病院の医者の欠員数がずいぶん多いので、千何百名かありますが、これがありましても、ほかの事務官と差引することはできません。そういうわけで、ちようどただいま各項目別にほんとうに定員より差引できるものを検討いたさせております。それから病気で長期欠勤の者は二年間ばかり猶予できることになつております。これもその場所々々によりまして差引できるものとできないものがありますので、もう二、三日たちましたら、およそ正確な目途が立ち得るかと思います。おそらく予想からいいまして、諸般の点を見まして、これは私の勘ですけれども、実整理者は十二万の中で八万くらいかと思います。しかしこれは今言いましたように、総体的なもので、差引できるものとできないものがありますので、正確なところはもう少し待つていただきたいと思います。
  190. 成田知巳

    ○成田委員 一昨年の行政整理のときには、国鉄、専売については定員法の附則で定員を規定する、そうして意思に反して降職、免職できる、こういう規定があつたと思います。今度の定員法にはその規定がないのですが、国鉄、専売はいかなる根拠で行政整理をやるのでありますか。
  191. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 一昨年の行政整理の際——法案が国会にかかつていた時分には、まだ公社ができておりませんで、国鉄、専売も実は一般公務員であつたわけです。従いまして、国鉄、専売の人に対して、つまり公社の職員に対して、定員法で異議の申立てができないという規定はないので、国鉄、専売については、行政整理が完了しない間に身分の変更があつても、なお公務員の例によるとかなんとかいう規定であつたと私は記憶いたしております。今回はまつたく事情が違いまして、公社になりまして、公共企業体労働関係法の適用を受けるわけです。従いまして、たつて整理に対して異議の申立てができないというふうにいたしますれば、一つは整理をする場合に団体交渉を行わないでよろしいという規定を置き、なお団体交渉の上でさらに具体的な問題について、不当な処分であるという提訴が委員会に対してできないという二箇条を置かなければならない問題であるのであります。いろいろ討議をいたしました結果、今日のこういう状態から見て、国鉄、専売の経営改善という面は、これは経営者の側としましても考えなければならない問題であることはもちろんでありますが、労働者の側としても、当然考えてくれる問題であると思いますので、無理な規定を置きまするよりも、これは一般の事情をよく話して、団体交渉を行い、その上で整理をするつもりでおります。
  192. 成田知巳

    ○成田委員 その点よくわかりました。  整理基準の問題ですが、たとえば長期欠勤者を整理する、あるいは希望退職者をまず整理する、こういういろいろな整理基準があると思いますが、特に私たちが問題にしたいのは——この前の行政整理もそうでありますが、行政整理をやるときに、政府の好ましからざる人物という名目で、相当多数進歩的な労働者が整理されました。今度もそういうよう方針をおとりになるのかどうか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  193. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 今回は特別な整理基準というものをまつたく設けておりません。各省庁の事情によりまして、一切まかせてありまして、今日まで閣議でも次官会議でも特に整理基準を設けるというふうなことは全然いたしておりません。
  194. 成田知巳

    ○成田委員 退職手当の問題ですが、聞くところによりますと、大体普通の八割増しということを聞いておりますが、その内容をできれば数字をあげまして御説明願いたいと思います。
  195. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 退職金に関しましては、今日法律が出ておりますが、それの中に一般的行政整理の場合とか、依願退職の場合とかいろいろありまして、一般的行政整理の場合には、勤続一箇年に対して三十日で計算するという計算に相なつております。これに対しまして、今回の場合には一月から三月までに退職する人はその八割増し、それから四月から六月までに退職する人は四割増しというふうになつております。それから実際的には今日すでに行政整理があることを見越して、事情によつて今退職した方が便利だからやめたいという人がございますので、そういう人をわざわざ一月まで待たすのも気の毒でございますので、扱いといたしましては、十月五日に閣議決定がありまして、あれ以後の退職者に対しましては、この八割増しを適用し得るように退職金の法律で規定するつもりであります。
  196. 成田知巳

    ○成田委員 八割増しなんですが、共済組合の退職一時金だとか、七日分だとかいうのがございますが、そうしますと、一応三十日として計算する場合に、三十日からこの七日分を差引いてそれを一・八倍されるのか、それとも三十日に八割増しの一・八といたしまして、それから七日分を控除するのか、どちらの計算をとるのですか。
  197. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 これはあくまでも現行法の方式に対して八割増しをするということでありますから、三十日から差引きまして、それに八割増しをするわけであります。
  198. 成田知巳

    ○成田委員 現行の法式ということになりますと、もし四年未満でこの退職一時金がない場合、たとえば三十日に一・八をかけるということになつておるわけですから、四年未満と四年以上の間に取扱いのアンバランスが出るという感じがするのですが、どうですか。
  199. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 今御指摘のことについては十分研究しておりませんから、はつきりしたお答えを申しかねますが、段階の区分に関しまして、あるいは御指摘のように妙な損得が起る場合があり得るかと思います。そうしてその境目のところについては今回立案を考えておりまして、これは私の所管でなくて大蔵大臣の所管でございますが、退職金の法律において適宜の調整をする必要があるかもしれないと思つております。しかし具体的にあまり詳しく研究いたしておりませんし、所管も大蔵大臣の所管でありますから、私はむしろ側面から希望を言いつつ、一般国務大臣として意見を述べるという立場にございます。詳しい点については所管大臣の方にお尋ねを願いたいと思います。
  200. 成田知巳

    ○成田委員 行政整理の退職手当なんですが、橋本長官が一般の原則に従つて一年三十日分として、それから退職一時金を差引いたものを八割増しする、こういう御説明なんですが、たとえば退職一時金のない四年未満の人なんかは、当然三十日の一・八倍ということになるわけです。そうしますと、四年未満と四年以上というものについて計算の方式が違つて来ると思いますが、この点についてはどうですか。
  201. 池田勇人

    池田国務大臣 一昨年の退職金の計算のときにそういう問題がございまして、失業手当金との関係もございますので、あのときに方式をきめております。その方式によつて八割増しといたしたと私は了承しております。
  202. 成田知巳

    ○成田委員 農林大臣が来られましたので、最後にひとつ橋本長官と両方にお尋ねしておきます。これは当然内閣委員会で問題になると思いますが、米麦の統制撤廃を前提にして、食糧庁並びに統計調査事務所の職員については、閣議決定はそうだつたと思いますが、大幅の行政整理をお考えになつている。最近統制撤廃の問題が難航しておりますから、もし統制撤廃が行われないときには、食糧庁関係は七千九百六十一名の採用する、こういう附則で法案をお出しになつたのであります。といたしますと、食糧庁関係はまだそれでよいとしましても、統計調査事務所の職員、これも統制撤廃を前提にして大幅の行政整理をお考えになつたのですから、こういう情勢になりましたならば、食糧庁関係と同様に少くともその半数以上は、もし統制撤廃できない場合には採用する、こういう附則を設けるべきだと思うのですが、この点はどうでしよう
  203. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘の統計調査事務所の定員問題につきましては、前提があるのでございます。それは従来は統制撤廃をするという前提になりますれば、結局個人割当あるいは町村別の統計がそれほど正確でなくてもいい、全体として県単位あるいは郡単位程度資料がまとまればいいというようなことが問題になつたことは事実でございます。しかし一面におきましては、統計調査の技術も大分進歩して参りましたし、特になわ延びとか、こういうような問題については例年やつておりますので、相当の資料が固まつて来ている。そういう関係から今度の統計調査事務のうち、整理の一番大きな問題になつたのは、この面積の方を簡素化する、これが前提になつておるのであります。従いましてその分については統制撤廃のいかんにかかわらず、これは相当整理してよろしいと存じます。しかし統制撤廃がもしできないという場合においては、若干現在考えておるよりは、少し人員をふやさなければならぬ事態も起るかと存じます。しかし今の統制撤廃の具体的な問題がはつきりきまつておりませんので、今修正を申し出る段階ではないと思つておる次第であります。
  204. 成田知巳

    ○成田委員 食糧庁関係は附則で一つの修正をお出しになつた。同じような前提で行政整理を考えられた統計調査事務所関係については、修正を申し出る段階ではないということはわからないのですが、その点もう一度……。
  205. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 これはむしろ率直に、あの附則のできた経緯を申し上げて御了解つた方がいいのじやないかと思います。実は定員法に関しまして、これの提案の了解を得るために総司令部に案を出したわけでありますが、これにつきましては経済科学局の方面において、主食統制撤廃の問題がまだきまつておらない。麦の統制撤廃については何ら異論はないけれども、米の統制撤廃についてはもう少し検討を要する。自分の方ではこれといつて反対するわけではないが、まだ意見がきまつておらない。従つて万が一にも統制撤廃に対する意見が若干食い違つたならば、これの調整の問題があとで起つて来るかもしれないが、それはそのときに処理すればいいから、とにかく食糧庁関係の面についてだけは、統制撤廃しない場合には整理しないという附則を入れておいてもらいたい、こういうことでした。また統計調査事務関係の問題に関しては、ただいま農林大臣からお話がありましたように、食糧統制に全然関係のない部分もあるのであります。要するに、統制撤廃するとして、その統制撤廃に至るまでの過渡期の配給を、どこまでやるかということが問題になつておるわけでありますし、さらに来年度供出を続けるかどうかということも問題になつておるのであります。このように、統制撤廃問題について、まだ意見の決定を見ないのでありまするが、とにかくこの定員法を早く国会に提出しなければならないという私どもの主張に対しまして、定員法を提案するということは要望するところだけれども、その意見がまとまるまでは、食糧庁関係について附則をつけるということで一応の了解ができたのであります。率直に申し上げますと、そういうふうな経緯で定員法を立案したものでありますが、責任者の私といたしましては、これを御審議つておりますうちに、本来の政府統制撤廃基本方針了解を得まして、大体あの附則が必要がないようなことを期待しているわけです。
  206. 成田知巳

    ○成田委員 附則が必要な場合が出た場合には、今根本農林大臣が言われたように、明文には規定してないが、食糧統制関係の必要な統計調査事務要員は再採用その他の便宜的な処置を講じたい、こういうように了承してよろしいですか。
  207. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 再採用というのはどういう意味かわかりませんが、この人員整理の問題は、一月から六月までの間に解決するが、仕事の都合によつて六月までに終らないものがあるのであります。従つて再採用というようなことでなしに、政府といたしましては、事務が残つて、その事務を遂行するに必要な人員だけは人員を確保しなくてはならぬ、そのための法制的な整備は当然行わなければならぬというのであります。
  208. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 本日はこの程度にとどめまして、明六日は午前十時委員会を開会して、質疑を継続することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十九分散会