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1951-10-30 第12回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月三十日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 有田 二郎君 理事 橘  直治君    理事 苫米地英俊君 理事 西村 久之君    理事 中曽根康弘君 理事 川島 金次君    理事 風早八十二君       天野 公義君    江花  靜君      岡村利右衞門君    小淵 光平君      小野瀬忠兵衞君    角田 幸吉君       甲木  保君    川端 佳夫君       上林榮吉君    北澤 直吉君       島村 一郎君    庄司 一郎君       鈴木 正文君    玉置  實君       本間 俊一君    松本 一郎君       南  好雄君    宮幡  靖君       井出一太郎君    今井  耕君       平川 篤雄君    藤田 義光君       勝間田清一君    横田甚太郎君       小平  忠君    小林  進君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         農 林 大 臣 根本龍太郎君         運 輸 大 臣 山崎  猛君         建 設 大 臣 野田 卯一君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         地方財政委員会         委員      菊山 嘉男君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         国税庁長官   高橋  衞君         文部事務官         (管理局長)  久保田藤麿君         水産庁長官   藤田  巖君         農林事務官         (水産庁次長) 山本  豐君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君  委員外出席者         運 輸 技 官         (港湾局長)  黒田 靜夫君         航空庁長官   大庭 哲夫君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十月三十日  委員久野忠治君、永井英修君及び川島金次君辞  任につき、その補欠として永井要造君、淺利三  朗君及び前田種男君が議長の指名で委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十六年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十六年度政府関係機関予算補正(機第2  号)     —————————————
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  質疑を継続いたします。上林榮吉君。
  3. 上林山榮吉

    上林委員 まず大蔵大臣に対しまして質疑を試みてみたいのであります。  本補正予算に対しましては、概略われわれ賛成の意を表しておるのであります。ドツジ氏の来訪によりまして、本補正予算には大した変更はないであろうと私ども考えておるのでありまするが、これに対しまして、財政当局としては、いかなる考えを持つておるのでありまするか。ことに本補正予算を離れまして、二十七年度予算構想に、ドツジ氏の来訪によつて、何らか変化をもたらすのではなかろうかという、一部の批評が行われておるのでありまするが、これについて財政当局としては、どういう見解を持つておるのであるか。御承知通り、いまだ賠償額賠償支拂い具体的方法もきまつておりませんし、外債あるいは連合国財産の返還、あるいは防衛分担金などの義務的経費の支出もいまだ交渉の過程にあるわけでありますから、こういう問題はただちに構想変化のある問題でありますので、政府とても現段階においては二十七年度構想については、確然たるお話はあるいはできないかもわかりませんけれども、われわれ補正予算を、二十七年度予算前提であるという意味において見ておる者にとつては、一応の重要な参考としてこの点を承つておきたいと考えるのであります。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 御審議願つておりまする補正予算案は、司令部の承認を得て出しておるのであります。従いまして、これが変更になることはないと思います。ただ国会の方で変更なされば別でございます。政府の方から変更する考えはございません。  それから昭和二十七年度歳出の大体のことにつきましては、財政演説で申し上げた通りでございます。内容に至つてはまだ十分練つておりません。私は今年度と大差のないスケールでやつて行きたいという考えでございます。ドツジ氏が来られまして、いろいろなことが新聞に載つておるようでありますが、私はまだ財政金融問題につきまして一度も話をいたしておりません。いずれ最近の日本財政経済事情を検討されましたら、ゆつくり会つて話してみたいと思います。
  5. 上林山榮吉

    上林委員 大蔵大臣答弁によりまして、補正予算はもちろんのこと、二十七年度予算構想についても、ほとんど本年度と同じ程度スケールで編成できる方針である。いわゆる八千億円程度予算規模に納まり、論議の中心でありまする減税の問題も本年度四百億円はもちろんのこと減税をなし、来年度の八百億円の減税も差引できる、こういうふうに私ども了解したのであります。  そこでドツジ氏の来訪によつて、本予算関係があり、さらに二十七年度予算関係のある問題を具体的に一、二申し上げてみまするならば、まず第一減税方針であります。私どもは世界的な水準において日本税金考えると、まだ高いと考えております。こういう意味合いにおいて、政府が二年引続いて減税をやり、本年度も来年度減税をやるという方針に対しては、これを支持しておるのでありますが、この程度減税——一部の説がありますけれども、私どもインフレにはならない、こういうふうに考えておるのでありますが、あらためて大蔵大臣所信をこの際承つておきたいと思います。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 私が新聞を読んでみますと、ちよつと奇異に感ずる点があるのでありまして、明らかにいたしたいと思いますが、私が来年度財政規模は八千億円台でとどめたい、こういうことを申し上げるのは、今回行いました四百五億円の減税が、来年度も行われることを前提にして言つておるのであります。減税云々の問題が今あるようでございますが、私は来年度は今年度減税が当然引続くのであつて、もしやらなかつたら、来年度は増税ということになりますので、私は既定方針通りにこの減税で行きたい。従つてお話通り、来年度は八百億円程度減税が実現し得ると考えておるのであります。  次に減税によつてインフレが起らないか、こういうお話でございますが、これは減税をいたしましても、貯蓄の増強その他生産の増強をやつて行けば、インフレを起さないようにできると確信を持つておるのであります。ただ問題はたびたび申し上げますように、インフレというものの定義、限度でございますが、これはドツジ氏も言われましたように、それ以前に私がある記者団に話をいたしましたように、今は相当の物価高を来し、賃金も上つて来ておる。これはやむを得ない程度にとどめておかないと、悪い意味インフレの懸念がなきにしもあらずというので、あらゆる財政施策を講じておるわけでございます。減税いたしましたり、公務員給与を上げましても、私は悪い意味インフレは起らないようにできると考えております。
  7. 上林山榮吉

    上林委員 減税をしても、公務員給与ベースを引上げても、悪い意味インフレにならない、この政府所信を明らかにされましたので、これ以上この問題については質問をいたしません。  さらに、特に問題になるのではないかと懸念されるのは、米麦統制撤廃——いわゆる主食の統制撤廃ないしは緩和、こういうような問題が、ドツジ氏の来訪によつて相当懸念されるのではないかというような考えが、一部に説をなしておるようであります。私はこの問題に対する是非の問題は別として、これに対するところ影響があるかどうか、この一点だけを承つてきたいと思います。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題について、私は深くドツジ氏の考え方を聞いておりません。先般の新聞記者との会見におきまして、この問題に触れられたのでありますが、私はこういう重大問題については、ゆつくり日本の実情を申し上げ、われわれの考え方を話して、とくと懇談してみたい、こう思つております。しこうしてこの問題につきましてはドツジ氏とまだ話をしておりませんが、私の考え方は、従来から申し上げておりますように、正常なる経済に持つて行くためには、やはり米麦統制は撤廃すべきであるという考え方をいたしております。ただその考え方に立つて、どういうふうな手を打つて、支障のないようにするかという問題は、今後研究しなければならぬ問題だと思います。
  9. 上林山榮吉

    上林委員 その問題は慎重に研究した上でなければ、政府答弁できなかろうと思いますので、その程度にいたしておきます。  さらにお尋ねいたしたいことは、今大蔵大臣答弁を最初から最後まで承つておりますと、二十七年度予算にはある程度影響を受けるけれども構想に大きな影響は受けないと思う、ひいて補正予算に対しては、ドツジ氏の来訪によつて全然影響は受けないものと思う。こういうふうに了解したわけでありますが、それでいいのであるかどうか。そこでドツジ氏との話合いによつて、二十七年度予算構想ができなければならぬと思うのでありますが、その時期は大体いつごろになるか。この時期いかんということは、言うまでもなく、日本財政経済に非常に微妙な影響を及ぼすと思いますので、大体二十七年度予算構想のまとまる時期は一体いつであるか、この点について答弁を求めたいと思います。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 私はまだドツジ氏と会つて財政経済の問題を話しておりませんので、今のところは、今国会において申し上げましたような私の基本的観念変化はございません。  それから来年度予算のまとまるのはいつごろかという御質問でありますが、私は十二月の上旬までにはまとめたいと考えております。
  11. 上林山榮吉

    上林委員 二十七年度予算構想のまとまる時期がわかりまして、非常に参考になつたわけであります。そこで私はこの問題についてはこの程度にいたしまして、大蔵大臣に特に要望を兼ねて質問をいたしたい点は、専売公社裁定の問題であります。  御承知通り政府としては、他の公共企業体とにらみ合して、慎重に考慮しなければならぬのでありますけれども専売公社は独立採算的に見てもほとんど一千億円以上の増收を上げておる。こういう点から考えて、もう政府としても裁定をのんでもよい時期ではなかろうか。またこれからの関係者の熱心なる要望もあるわけでありまするが、この際思い切つてこの裁定をのんだらどうか。こういうふうに考えるのでありますが、大蔵大臣並びに政府関係者は、これに対してどういうお考えを持つておるか、この点をただしておきたいと思います。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 先般の専売関係裁定は一万四百何十円だつたと記憶しております。しこうして別に年末におきまして〇・八箇月分の賞与があるということになつておるのであります。そうして同じ公共企業体でありまする国鉄の方は、裁定が一万八百二十四円、これには〇・八箇月分の賞与がございません。そこで比較検討いたしてみまして、しかも二、三年前からの賃金状況、職員の構成等考えまして、私は裁定予算総額五十二億何ぼというものはのむわけに行かないというので、予算総則に載つておりまする四十一億数千万円で、労働関係法の第十六條によりまして、御審議を願うことにいたしておるのであります。しこうして今回御審議願うことになつております予算が通過いたしますれば、四十一億の予算総則というものは四十七億程度に相なつて参ります。そのときは四十七億でまた出す考えでおるのであります。従いまして専売公社は千数十億の増收を上げておりますけれども、これは税に相当するものであります。こういうように独立採算制を趣えて非常な収益があるといつても、これは専売公社の独自の事情に基くものでありますから、今ただちに一万四百何ぼの裁定を承認するというわけには私の立場から行かない結論になつておるのであります。従いまして労働関係法第十六條によりまして御審議を願つている状懸であるのであります。
  13. 上林山榮吉

    上林委員 専売公社裁定をのむわけには行かないけれども、ほとんどこれに近いような線で政府としては考え予算を編成し、いろいろと処置をするつもりであるという答弁に対しましては、私も一応了といたしますけれども相当の赤字を出している企業体と、相当の黒字を出している企業体との待遇の改善というものは、私はある程度考慮していいものではなかろうか、こういうふうに考えますので、他の企業体ともにらみ合せなければなりませんけれども、その他の方法によつて実質的な賃金を上げるようなくふうをしてもらいたい。これは私の要望であります。そういうような意味において専売公社裁定に対しては、政府は誠意をもつて努力していただきたいということを要望いたしておきたいと思います。  次に申し上げたいことは、地方に対する平衡交付金起債増額の問題であります。この問題はわれわれ与党においても政府に熱心にこれを要望して来たのでありますけれども、あたかも知事政府に強硬に談判をし、居すわり戰術をもつて交渉をしたがために平衡交付金の百億円、起債わくの百億円が増額されたかのごとき印象を一部国民に与えている。これは私は政治をば国民全体のために、ないしは公平にやつて行かなければならぬという立場からしてこういう一部の説が行われているということは、まことに残念に考えているのであります。そこでこれはどういう事情にあつたのか、さらには私はこの平衡交付金及び起債増額わくの中には、市町村の分も含んでいるべきものであるとこういうふうに考えるが、この点はどうか。これをまずお尋ねいたします。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 上林山君のおつしやる通りでございまして、知事が居すわり戰術をやつたから、平衡交付金並びに地方起債をふやしたということは全然ございません。私はああいうふうなことはお話のようにまことに遺憾だと思います。当初の要求は五百何十億円でございました。私はこういう要求は聞いてはおりまするが、問題がありますので、関係閣僚が特に地方財政を検討せられまして、二百七億円ということを申し出られたのであります。私は二百七億円につきましても相当の異議を申しました。相当まだ検討すべき点があるというので、今回の〇・八箇月分の賞与すなわち〇・五箇月を〇・八箇月分にする増額なんかを入れまして二百億円とし、そのうち百億円を平衡交付金の方から増額することにいたしたのであります。決してそういう居すわり戰術にあつたから出したというのではございません。私はああいうものはきらいでございます。あるなしにかかわらず、地方財政を検討してやつたわけでございます。しかして平衡交付金の百億円、地方債の百億円の合計二百億円は、地方財政全体を考えてやつているのでございます。府県だけに限るという気持はございません。
  15. 上林山榮吉

    上林委員 二百億円の平衡交付金及び起債増額わくは、地方財政全般考えてのわくである、こういう明確な答弁を得ましたので了とするのでありますが、それならば府県市町村との配分の割合は、平衡交付金についてはどの程度考えておられるのであるか、この点をお尋ねいたします。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 これは所管地方財政委員会並びに自治庁の方の関係でございますので、全体として考えて出しましたが、割振り等につきましては、地方財政委員会等所管のお答えを願つた方が適当だと考えております。
  17. 上林山榮吉

    上林委員 平衡交付金の問題については、ことに配分の問題については所管が違うからということでありますので、その方面でさらに配分の率をお尋ねしてみたいと思つております。  そこで私は大蔵大臣に、時間がないようでありますから、おもな問題の二、三をさらにお尋ねしてみたいのであります。御承知通りに、ルース台風が起りまして、例年の風水害に比較しましても、今までの風水害で一番大きかつたといわれているキジア台風に比較いたしましても、その被害はまことに甚大であります。これを鹿兒島県一県だけ見てみましても三百三十三億円、九州全体で六百五十億円、これに山口、広島、愛媛県等を加えますと、一千億円以上の大きな被害であります。でありますから、この被害について政府は緊急なる調査と緊急なる対策をなしつつありますので、私ども了としているのでありますけれども、これに対しまして、そういう趣旨からして、補正予算をただちに組んで政府としての積極的な対策を決してもらいたい、こういうふうに私ども考えているのでありますが、補正予算の提出についてどういう考えを持つておられるか。さらにその補正予算の額については、今までのような災害対策に対する態度ではなくて、もう少し思い切つた根本的な対策をするという意味において、私は相当補正額予算額を希望したいのであります。これにつきまして大蔵大臣考えを伺つておきたいのであります。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 今回のルース台風によりまして、九州並びに中国、四国の一部が非常な被害を受けられたことは、まことに御同情にたえないところであります。政府といたしましてはその調査に万全を期しまして、建設大臣に行つていただきまして、実はけさ帰つて来たようであります。被害総額はまだはつきりいたしませんが、とりあえず緊急の融資をせんだつてきめて配付いたしました。御承知通り今年の台風によります新たなる災害につきましては、当初八十億円を見込んでおつたのであります。幸いに一回しかございませんので、二十五億円だけ使いまして、あと残つてつたのであります。しかるところもう台風はないだろうというので、過年度分を入れまして残りを使う計画をして、八十億円のうち十億円余りしか残つていなかつたと思うのであります。そこへ不幸にして今回起つて参りましたので、そのうち本年度災害に向けられた分をやりくりして、そうしてまた緊急融資その他で、被害額の判明するまでを泳いで行きたいというので今やつておるわけであります。最近の被害状況によりまして補正予算を組むか組まないか、また組むとすればどれだけやるか、しかもその補正予算は今国会に出すか、次の通常国会劈頭に出すか、こういう問題は、額その他によつてきめたいと考えております。
  19. 上林山榮吉

    上林委員 今度の会期中に出すか、通常国会劈頭に出すか、額のいかんによつてきめたい、こういうのでありまして、今までの災害よりもあまりにも大きいということにおいて、政府が慎重に、しかも積極的な意図を持つてやられるということでありますならば、われわれは通常国会劈頭補正予算を出されてもやむを得ないと考えるのであります。そういう意味合いにおいて私は了といたしますが、私ども考えをもつてすれば、過去の災害復旧は單に復旧だけであつた。しかしこれからの災害復旧は單なる復旧だけではなくして、これに改良を思い切つて加えたものでなければ、それこそさいの河原式処置にすぎない、こういうふうに経験上考えますので、たとえば各省からこれらに対するところ要求が出た場合は、財務当局におかれては、そういうような考えを持たれて、單に復旧だけでなく、改良を含んだものでなければ国費濫費になるのだというような考えから、災害復旧予算に対しては相当の考慮を願いたいと私は考えるのであります。  さらに第二点といたしましては、災害対策の大きな問題として、今まで災害がたくさん起つたが、二十三年度災害処置もまだ十分にできていない。そこで災害が起るとその額が非常に大きくなつてしまう。こういう例に徴しまして、今まで五年間くらいかかつてつた災害復旧のやり方を、せめて三年くらいでこれを処置して行かなければ、実効が上らないと考えますので、財務当局といたしましては、現業省からいろいろと要求があつた場合は、この二つの点については相当勘案を願いたいと考えるのでありますが、これについて大蔵当局のお考えを伺い、さらに要望をいたしておきたいと考えます。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 ごもつともな御意見で、われわれも賛意を表する次第でありますが、何分にも国の財政はそう思うように公共事業費、ことに災害復旧にたくさんまわすわけにも行かない状況であるのであります。そういう考えのもとに年々公共事業費をふやし、そして災害対策を講じておりますが、五年の計画を三年にするとか、あるいは災害があつた場合に、復旧でなしに擴張改良まで行くということになりますと、かなりの経費を要するのであります。念願はそういう念願でいたしておりますが、片一方で国の歳出相当かかりますので、その間を調節しながら、そういう方向で進みたいとは考えております。
  21. 小坂善太郎

    小坂委員長 ちよつと……。実ははなはだ申しにくいのですが、上林山君の質問に大いに敬意を表するのでありますが、御承知のように約束しておりますので、午後も大蔵大臣に出てもらいますから、午後にまわしていただけないでしようか。
  22. 上林山榮吉

    上林委員 一言だけ……。
  23. 小坂善太郎

    小坂委員長 約束だけはひとつぴつちりお守り願いたい。
  24. 上林山榮吉

    上林委員 わかつております。大蔵大臣財政当局として慎重なる態度をとられるということは私も了承いたしますが、私の言う意味災害復旧は、單なる災害復旧であつては、また災害を受けた場合に非常にこわれやすい。それでは国費濫費になるのであるから、改良を含む程度、これを財務当局としても相当考えてくださることが国費濫費にならないのだ、こういう意味であります。災害を利用いたしまして、はなはだしく擴大強化した改良をやろうというわけではないのでありますから、この点はたとえば建設省や農林省などとよく御相談の上、ぜひとも今回のこういうあまりにも大きな災害に対しましては、格段の御努力をお願いしたい。  委員長との約束もありますから、この程度で一応私の大蔵大臣に対する質問を終つておきたいと思います。
  25. 有田二郎

    有田(二)委員 ちよつと……。
  26. 小坂善太郎

    小坂委員長 約束がありますから……。
  27. 有田二郎

    有田(二)委員 一言だけ……。私のお尋ねしたい点は、ドツジさんがお越しになつて減税に対して反対である意思表示をなさつたのありますが、私はこれは減税ではない、税制の均衡をはかるための施策であつて、今度の大蔵大臣方針に、われわれ満腔の敬意を表しておるのであります。ドツジさんはまた別の立場から反対をなさつておられると思うのでありますけれども日本国内事情とアメリカの国内事情とは、おのずから私は違うと思うのであります。私は池田大蔵大臣所信賛成であると同時に、ぜひともこの税金のいわゆる平均化、不権衡にならないようにするための今度の税制改革を通していだきたいと思うのでありますが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。     〔「減税でないなら何だ」と呼ぶ者あり〕
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど上林山君のお尋ねに対して答えた通りでありまして、今回の分は減税でございます。私はこの減税を来年度も続けて行くべきだという信念を持つております。これは昨年の今ごろ、十一月でありましたか、ドツジ氏が来られまして、減税はなかなかむずかしいようなことを言つておられましたが、昨年もやつたのであります。私は主義方針としてはドツジさんの言われることもわかりますが、有田君のおつしやられるように、国情に沿つたような政治をして行かなければなりませんので、今回の減税は来年度も行うつもりであります。
  29. 有田二郎

    有田(二)委員 主計局長ちよつと伺いたい。タバコの益金が四十五億円今度の補正予算に組まれておりますが、どうして四十五億円というものが出たのか御説明願いたい。
  30. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。当初予算におきましては八百二十億本の販売計画でございましたが、補正予算で八百三十四億本の販売を見ておりますので、さよう御承知を願いたいのであります。
  31. 有田二郎

    有田(二)委員 タバコの小売業者の利益は光が八分、ピースが七分五厘、ゴールデンバツト、その他が六分、かように承つておるのであります。非常にタバコ小売の利益が少い。戰前でありますならば別でありますが、今日の経済情勢で考えますと、タバコ小売店の経費もいろいろいる、かように考えられますので、光八分、ピース七分五厘、ゴールデンバツト、その他が六分ということに対して、政府としてさらに増額の御計画があるかどうか、この点主計局長の御意見をお伺いしたい。
  32. 河野一之

    河野(一)政府委員 有田委員の御質問まことにごもつともであります。最近における諸物価の騰貴その他によりまして、多少手数料の引上げをいたさねばならぬと考えております。光はすえ置き、ピースの七分五厘を八分、ゴールデンバツトの六分を七分にいたしまして、大体十二月から実行いたしたいと考えております。予算におきましても、大体その程度のことを予定いたしております。
  33. 上林山榮吉

    上林委員 農林大臣からお尋ねしておきたいと思います。私の質問は主としてルース台風に関連する農政関係の問題であります。  第一に政府方針について伺いたいのは、供出割当量をいかに調整したか、あるいはいかに調整する考えであるか、この点であります。私九州地方被害地を視察したのでありまするが、それによりますと、農作物はほとんど被害を受けでおります。ことに陸稲などは八割も減收しているところがある。あるいはそばとか、あわとかいうような雑穀に至つては、もう無一物であるという地方も南九州にはあるのであります。こういうような状態から考えまして、普通の調整をする程度では、今日は実情に合わないと考えられますので、どうしてもこの点について農林当局に適切なる手を打つてもらいたい、こう考えるのであります。この問題は非常に大きな問題でありますので、責任のある答弁を伺つておきたいのであります。
  34. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答えいたします。今回のルース台風の公共施設に及ぼした影響が非常に甚大であるのみならず、ただいま御指摘のように、農作物に対する被害も非常に多いもののようであります。現在まで数回の報告がありまするけれども、農地が散在しておることと、通信機関その他の関係から、まだ正確な数字は出て参りません。この問題につきましては、御指摘のように、農村の明年度の生活並びに営農にも甚大な影響がございまするので、現地機関の報告のみならず、政府からも直接調査員を派遣いたしておるわけでございます。この調査の結果に基いて、実情に即応する割当をいたしたいと思つておるのでございます。これは一県別でなく、相当こまかい調査が必要ではなかろうかと思いますので、農業統計調査事務所の報告を十分に検討し、現地県の意見をもそんたくいたしまして、これについて適切な措置をしたい、かように考えている次第であります。
  35. 上林山榮吉

    上林委員 河野主計局長に一問ただしておきたいのでありますが、災害対策は常に具体的であり、緊急でなければなりませんので、私順次具体的に簡單に質問をして、確実なる答弁を得たい、そう考えておるのであります。例のつなぎ資金が、第一回分が大蔵省の査定によつて出された。これはわれわれの要望により、あるいは政府考えによつて緊急な処置をとられた点は私も了とするのでありますが、いまだ災害の額が各県とも最後的でないという点はありますけれども、大体において建設大臣を初め各省の次官、政務次官、こういうような人々が多数実地を見られたのでありますから、こういう点から考えればどこの県が一番多く、その次はどこであるという目安くらいはすぐつくはずだ、それにもかかわらず、どういう間違いをしたのかわかりませんが——地方のことをこの会議場で申し上げてまことに心苦しいのであるけれども、今度のルース台風で一番質においても量においてもひどいといわれている鹿兒島県が一億八千万円で、山口県が三億三千万円というやり方は、何を基礎にしてやられたのか、私はこの是正を今政府あるいは党方面にも強く要望している一人でありますが、何を基礎にこういう査定をされたか、その基準をこの際一言つておきたいのであります。
  36. 河野一之

    河野(一)政府委員 ルース台風被害復旧額をずつと調査をいたしておつたのですが、なかなか報告がまとまらなかつたのでございます。最後まで調査をいたし、確定の数字を出しまして、その上で配分をいたすということが望ましいのでございますが、しかし今回の災害状況にかんがみまして、できるだけ早く出したいというところから、今まで報告の入りましたものを基礎にいたしまして出しました関係上、あるいは上林委員のおつしやつたように、多少の不公平のあつた点もあるかと思われるのであります。ことに九州地方におきましては、離島その他がございまして、被害の報告がなかなか集まらなかつた県が相当あるのであります。こういう県につきましては、今後の報告を待ちまして是正して参りたいと思つております。ただいま預金部資金の融通を決定いたしておりますのは、十二億五千万円、山口、広島、鹿兒島、福岡、大分等でありますが、これは決して最後的の数字ではございません。今後報告を得まして、さらに増額をいたしたいと考えておる次第でございますので御了承願いたいと存じます。
  37. 上林山榮吉

    上林委員 主計局長を追究しても何もならないと思いますので、これ以上追究はいたしません。およそこの問題は、安本と大蔵省と常に緊密な連絡をとつて査定をせらるべきものと私は考えておるのでありますけれども、聞くところによれば、急ぐという意味で大蔵省だけにおいてこれが査定をしたと聞いておるが、それは事実かどうか。これは最後的数字ではないから、多少の不公平は免れない、あとで是正をするということでありまするが、おつしやるように多少であるならば、われわれも了解するにやぶさかではないのでありますけれども、あまりにもはなはだしい。私どもはその点から考えまして、最後でやるということではなしに、第一回分としての是正をしてもらいたいということを要望してやみません。これについて明瞭にお答え願いたい。
  38. 河野一之

    河野(一)政府委員 今回の預金部資金の融通の目安といたしましたのは、公共災害土木費なのでございます。つまり主として建設省関係におきまする災害復旧事業でありますので、これも全部はまだ集まつておりませんので、一応それを目安にして配当いたしたものでありまするから、そういつたような事情もあつたかと存じております。この是正につきましては逐次やつておりまして、たとえば長崎県につきましては、先般の決定の際に漏れたのでございますが、これは離島その他の報告がその後集まりましたので、そういつた点につきまして早急是正をいたしております。あるいは鹿兒島県につきましても、上林委員のおつしやるような事情もあるかと思いますが、そういつた点につきましては、早急に是正をいたす考えでおるわけでございます。
  39. 上林山榮吉

    上林委員 引続いて農林大臣にお尋ねいたしたいと思います。今までの災害の経験から申し上げますと、農業共済保険金の支拂いが非常に遅れておる。これは部分的な災害である場合は、それでもやむを得ないという点もあるかもわかりませんが、こんなに極端なるところ被害を受けておる場合は、農民に対して元気を与える必要があると私は考えますので、急速に農業共済保険金の支拂いを願いたい、こういうふうに考えておるが、これに対して政府はどんな処置をとつたか、あるいはとりつつあるか、これを伺つておきたいと思います。
  40. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。農業共済の支拂いの問題でございますが、これはかなり技術的な手続がございまして、若干遅れた傾向があるのであります。これはでき得るだけすみやかに査定をいたしまして支拂いたいと思つております。特に御指摘のように、今回のルース台風につきましては、非常に広汎でありまして、農民のこれに対する要望もまた切なるものがありますので、そこでこれもまた、共済組合の資料の提出、さらにまた統計調査事務所の報告のまとまり次第、政府の現在なし得る最大の措置を講じてすみやかに拂いたい、かように思つております。  なお御承知のように、この共済組合は実は政府の方でお世話するのみならず、自体においてこれをなすのが本体でございますので、共済組合の支拂いの組織、これが全部まとまつて来てから後、政府はこれに対する最後のお世話をするということでありますので、共済組合連合会の方にも連絡をいたしまして、できるだけすみやかに事務的措置ができるように、今督励いたしておる状態でございます。
  41. 上林山榮吉

    上林委員 次にお尋ねと要望を兼ねて申し上げたいことは、営農資金の問題であります。この問題は、農林中央金庫より融資をしてもらわなければならぬのでありまするが、私どもが今度のルース台風被害から概算して、どれだけいるかいうとふうに営農資金を見てみますと、約五十億円程度のものがいる、こういうふうに計算をしております。私ども鹿兒島県一県だけを見ましても十二億円、これはどうしてもいる。こういうふうに考えておるのであるが、政府が農林中金と話し合つてできる最高の融資額はどれくらいと見ておるか、これが一点。  さらに第二点は、干拓その他耕地の復旧に伴うところの資金、これがまた相当にいるのでありますが、農林漁業融資特別会計の方からこれにどれくらいの最高額の融資をしてもらえるものであるか。これはおざなりの答弁ではなしに、私ども災害地を代表する議員にとつては真劍な要望でありますから、そういう意味合いにおいて、私ども政府の率直な答弁要望しておきたいと思います。
  42. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。営農資金に農林中金からどの程度の最高の額を貸し出し得るかということの非常に具体的な問題でございます。この問題は、実は農林中金の全体の資金計画その他を調べなければ、責任あるお答えはできませんので、いずれこの点は農林中金とも農林省で打合せの上、御報告申し上げたいと思います。同様に、農林漁業融資特別会計から干拓あるいは耕地復旧に対して、どの程度出し得るかということでございまするが、御承知のように、農林漁業融資特別会計の本旨とするところは、特に土地関係におきましては土地改良、あるいはこれに伴うところの諸般の施設、いわゆる共同施設というものを重点として、これが計画をいたしてをるのであります。従いまして災害復旧に対しまして、農林漁業融資特別会計から政府融資をするという建前ではございません。但し、土地改良関係してはなし得るのでありまして、これにつきましても、そのような状況でありまするので、今回の災害復旧のために農林漁業融資特別会計から最高限度どれだけ出し得るかについては、いまだ結論は出ていない次第であります。いずれ研究の上御報告申し上げたいと存じます。
  43. 上林山榮吉

    上林委員 ただいま根本君から率直な御答弁がありましたが、私どもはそれによつて満足はできないのであります。でありまするから、営農資金の問題について、今お話通り、折衝の結果、これだけの数字を政府は用意できた、こういうことを当委員会を通じて、国民に知らしてもらうというほどの熱意を示してもらいたいと私は考えます。さらに農林漁業融資特別会計の性質は、われわれも知つておる。しかしながら、干拓とか耕地復旧というものは、これはもう改良と同じ性質と見てよろしい。ただ基礎的な工事がある。その一定の区切られたる範囲内におけるところの土地の改良というようなことに限定してもらわずに、少くとも干拓と耕地復旧ということは、基礎工事であると同時に、改良工事を加えた工事です。こういう性格のものであからして、この問題に対しても私は政府として、農林大臣としてもう少し研究されて、あるいは連絡をされて、最後的な答弁を当委員会で拝聽したいと考えます。  次に農林大臣もしくは水産庁長官にお尋ねと要望をしたいのでありますが、今度の台風の性格は、洪水の出た所もありますけれども、川よりも、海からの高潮によるところ災害が非常に大きい。これがルース台風の性格であります。そういう意味からして、沿岸の漁業者に対しては、これまた非常なる災害を与えた。こういう点から考えまして、漁民は船を失い、あるいは漁具を失い、家を失い、中には命を失い、大けがをした。こういう状態で、沿岸地帯の被害は、私ども見聞いたしまして、まことに同情の極に達したのであります。でありますから、水産業に対するところ政府対策として、いかなる措置を考えておるか。なおまた私がこれから要望する問題に対して、どういう処置をとられんとするのであるか。私はここに箇條的に、時間の関係で申し上げてみようと思います。  まず第一に、農林漁業特別会計に、政府資金による漁船資材等の災害復旧わくを特別に設けることができるか。ぜひそうしてもらいたいと思うが、それができるかできないか、これが第一点。  第二点は、漁業権証券の全面的買上げ償還の方法を早急に講じてもらいたいと思うが、これができるかどうか。  さらに第三点といたしましては、漁船建造資材として国有林の拂下げをぜひともお願いをしたい、こういうふうに考えるが、これに対する処置をどういうふうにやろうとするか、あるいはできるかできないか、この点。  第四点といたしまして、無動力漁船の企業合同による動力船化のためのわくの拡大、鹿兒島県のごときは、あるいは南九州のごときは、これは日本の特徴でもありますけれども、無動力の漁船によつて漁業をしておつた。それがわが鹿兒島県だけでも三千八百隻くらいの漁船を失つた。ある漁港におきましては、百八十隻のうち、わずか一隻だけ残つて、あとは全部破壊をされた。こういうような状態で、やられたところは九〇%ないしは九九%やられておる。これが無動力の漁船の多いところ相当にあるわけであります。もちろん動力船も相当にございますけれども、大きな漁港においては、動力船も相当やられておる。少さな漁港においては、無動力船をたくさんやられておる。これが今度の災害状況です。そういう意味から考えまして、無動力船ではいけないから、企業合同をして、そうして動力船をつくろうとする場合に対しては、政府が立ち上るための資金を相当考えてやつてよろしいと私は思う。これに対してどういう考えを持つておるか。なかんずく雰細漁民の更生生業資金の問題をどういうふうに取扱おうとしておるか。  私は重要なしかも緊急な問題だけについて申し上げましたが、これについて農林大臣及び水産庁長官答弁を求めたいと思います。
  44. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。今回のルース台風は、ただいま御指摘のように、かつてない水産業に対する甚大な被害を与えておるのであります。これは公共施設に対する被害はもとよりのことでありますが、それ以上に大きいのは、漁船の喪失であり、また人命の損失でございます。従いまして農林省はもとより、政府といたしましても、今度のルース台風に対する漁業救済対策は、すみやかにこれを樹立しなければならない。従来のような方法では、御承知のように災害復旧は公共施設に対する政府の助成だけでありまして、いわゆる個人の財産であるところの船というものに対しては、ほとんど漁業保険にゆだねる以外に方法はなかつたのであります。しかし今回の災害状況は、そのような状況のままに放置しておくということは、まことにこれは気の毒であり、何とかこれは措置したいと思いまして、必要とあらばこれに関する立法措置を講じても、何かの措置をもつて救済しなければならないと思いまして、今具体的な法案並びにその具体策について検討中でございます。その構想につきましては、後ほどあるいは水産庁長官から申し上げることができるかと思います。  その次に具体的な問題といたしまして、漁船の復旧に対して政府が助成をすることが考えられないかということでありますが、この立法措置の中にはこの程度まで入れることができるかどうか、これは今検討中でございます。  その次には、漁業権証券の全面的政府による買上げ償還をただちに実施する意思ありやいなやということでございますが、これは以前から検討いたしておりまして、できるだけすみやかにこの漁業権証券を政府買上げによる現金化によつて漁業復興をはかりたい、こういうことで検討を進めております。これは金額はちよつと忘れました。水産庁長官からお答えいたさせますが、本年中に、いわゆる本会計年度において、相当程度の買上げ償還を実施いたしたいと思います。農林省といたしましては、大体三年ないし四年中に全額買上げ償還をいたしたい、かように考えておるのであります。これは政府の償還計画と相関連いたしておりまして、できるだけその中でも漁業権証券の買上げはすみやかに実施するということで、大蔵当局と今折衝中でございます。  その次に、漁船の新造に対しまして、必要な木材の国有林の拂下げの問題でございますが、従来は災害の非常に甚大なところにつきましては、復興資材として公共団体に拂下げしたことはございます。しかし船の個々の新造のために拂下げしたことはございません。しかし今回は非常に広汎な範囲にわたりまして、非常に厖大な損失のようでございますので、これはその御方針に従つて検討いたさせます。個人個人にやることはかなり困難でございますので、でき得ますれば公共団体あるいは漁業協同組合等、適当な責任ある団体に対して拂下げをするということも、私は考うべきであると存じております。その具体的の問題につきましては、御趣旨に沿つてもう少し検討いたしたいと思います。  その次には、無免許による無動力漁船が相当やられた。この災害によつて、一面においてはこれらのものが自然減船整理されたというような結果になるわけでありますが、他面におきまして、これらの人々に堅実な漁業権を設定してやるべきであるとの御意見は、これはまことに正しい御意見だと思います。この点はわくにおいてはどの程度になるか存じませんが、その方針によつてこれは企業整備と漁業再建という観点から検討してみたいと思います。  それから雰細漁業者に対する資金の融資の問題でございますが、これは先ほど問題になりました農林中金の融資なり、あるいはまた先ほど申したようないろいろな施策で、検討しなければならないと思います。これも至急に検討いたして善処いたしたいと思います。なお詳細にわたつて水産庁長官からお答えいたさせます。
  45. 藤田巖

    藤田政府委員 ただいまの農林大臣の御答弁に対しまして、若干補足をいたしたいと考えております。  今回のルース台風被害につきましては、私直接二十五日及び二十七日の現地の会議に出席をいたし、さらに水産の被害の甚大でございます串木野、枕崎にも親しく参りましたので、十分事情承知をいたしております。水産に対する被害が予想以上に甚大であつたということも十分承知いたしております。それで水産の対策は、結局災害でこわれました漁港を早急に復旧するという問題と、それからやはり漁船、漁具その他の水産施設を復旧する、この二つが重要問題である。ことに今回は漁船、漁具が非常にいためられております。この問題は私どものこれまで集まつておる資料では、全体で約三十六億円見当の数字が集まつておりますが、その後だんだん現地の調査がはつきりいたしまして、私どもの予想ではあるいは五十億円を越えるのではないかというふうに考えております。従いましてこの問題は、災害に対する漁船、漁具その他の復旧に関する特別の資金わくというものを新しく設定をして、それを農林中金その他の機関を通じて、長期低利の融資をするということが、やはり根本の対策であろうと思つております。その具体的なやり方につきましては、現在至急検討をいたしております。早急に成案を得まして、実施いたしたいと考えております。  それから漁業権証券の全面的買上げの問題でありますが、これは漁業権証券全体、約百八十億円のうちで、本年度に償還いたします分が、約五十五円億でございます。それで本来この漁業権証券は、これは制度切りかえに伴う再生産ということのために、私どもといたしましては、特別な計画を持つておりますので、実は災害をこれで救済するということは、とうていできない、また別途の目的のものだと思つております。やはり災害に対する資金というものは、いわゆる漁業権証券の出ないものもたくさんあるわけでありますからして、別途にやはり特別のわくを設定するということが第一だと考えております。しかしながらこの漁業権証券の資金化の問題につきましても、特に災害のひどいところについては、できるだけ優先に別わくをこしらえまして、優先買上げの計画を進めて参りたい。現在の五十五億円のわく内におきましても、まだ余裕がございますからして、それを十分考えてみたい、かように考えております。  それから無動力漁船の動力化の問題でありますが、私どもも現地の事情をいろいろ聞きまして、必ずしも従来通りの漁船をそのままつくつて行くことがいいとは考えておりません。やはり新しい漁場計画に基いて、新しい将来の漁場計画というものを立てて、それに応ずるところの漁船建造その他の問題を考えて行くべきだと思つております。従つて、あるいは漁業の動力化の問題、あるいは大型船への転換の問題も、当然私ども考えてしかるべき問題だと思つております。しかし指定漁業等については、法律上一定のきまつておりますわくがございます。従つてかような具体的の漁業につきましては、難点のものもあると思います。極力できる限りのことをいたして参りたい、かように思つております。
  46. 小坂善太郎

    小坂委員長 ちよつと小林君に申し上げますが、安本長官、建設大臣、農林大臣は十二時十分からよんどころない用事のために、退席さしてもらいたいという申出がございますから、ここに出席しております方にお話をしていただいたらどうかと思います。なお文部大臣はその後に残られますから、そういうつもりでお願いします。
  47. 上林山榮吉

    上林委員 緊急の重要な要件だと思いますので了承いたしますが、午後から適当な時間に出席願つて続行したいと思います。  そこでわずか残されたる時間内において質問を続けたいと思います。ただいま農林大臣及び水産庁長官から——ことに長官は現地を見聞してのなまなましい報告を兼ねての対策を強調せられまして、私ども意を強くするのでありますが、ただいまの漁船の問題は、主としてこれは補助の対象になつていない。この点をひとつよくお考えになつて、これを立法化してこれが対象になるような方法を一面講ずる。ただいま政府が用意しつつあるところの法案にこの問題を取入れる。さらに一方においては緊急な方法として、新しい金融のわくを講じてもらう。この点を特に私は強調したいと思います。  さらに第二点としては、水産庁長官答弁された通り、漁港の修築というものが、今までのような考えだけではもう行かない。單なる復旧ではなくして、もう少し改良を加えた漁港、こうしたようなものをつくらないと、それこそまた波が来ると單なる復旧ではすぐこわれるのだ、こういう点を技術的にももう少しつつ込んで研究されて、財政当局財政一般の立場からこれを拒否しましても、少くとも技術的な点から考え、あるいはかえつて国費濫費しないことになるという点から考えられまして、私は財政当局に強く御折衝を願いたいと思う。大蔵大臣がいないのでこの点も調子が悪いのでありますが、幸い事務当局である河野主計局長がここに出席している。大蔵大臣はある程度は了解できたと思うのでありますが、事務当局において、ことに主計局長である河野局長は、この点をもう少し技術的にもひとつアウトラインだけでも研究する、こうしたような気持で進んでいただきたい。まして安本長官もここに出席しているのであるが、この点は安本長官としては漁港の問題については相当関心を持つておられる人だと私は信じている。だからそういう点から行きまして、この漁港の修築は單なる復旧にとどまつてはならぬという熱意をひとつこの際強調して、農林大臣及び水産庁長官に対する質疑を終りたいと思います。  農林大臣国会開会中で現地を見ていないので、実感が伴わないかもわかりませんが、幸い建設大臣ほか各省の政務次官が大挙して実地にこれを見られておりますから、ひとつ真劍にこの問題と取組んでもらいたいということを私は要望いたしまして、時間の関係があるということでありますから、農林大臣は後刻また承ることにいたしたいと思います。  続いて問題の性質上建設大臣に、主として実地を見てもらつたのであるから、また所管の事務も多いのであるから、特に私は要望を兼ねて強く質問をしたいと考えておつたのでありますが、午後から建設大臣に対しては総まとめに質問をすることにして、文部大臣に私は質問要望を申し上げてみたいのであります。  まず文部省が教育に非常に熱心である。しかしながら中央においては財政当局にいじめられがちである。かつまた地方においては、今日教育委員会が教育の行政をとつてつて、県知事は従的関係にある。所管が別であるともいえる。こういうような状態に置かれておりますので、とかく教育事業に対するところの一般的な問題、特にこの災害復旧のごとき問題に対しては、具体的な意味において、私は結果において熱意が足らぬ、こういうことになるように従来から経験を持つております。そこで今度の台風による被害の総額はおわかりだと思いますが、今までの災害の数倍である。そうしたような大きな災害を学校が受けておりますが、全壊したもの、あるいは半壊したもの、大破したも、こういうように相当被害を持つておりますが、これに対しては文部大臣は一段と積極的に努力をして、そうして学校を奪われておる児童あるいは学校に收容しておるところ被害者、罹災者、あるいは財政貧困なるところ市町村、こうしたような点もよくお考えになつて、それこそ一段も二段も御奮闘願いたいということをまず要望申し上げます。  そこで私はまず災害に対する要望を申上げますが、これに対するところの明確な答弁を求めたいと思います。まず私は学校災害に対する国庫補助の対象の範囲をば広げる必要があると思う。今までの補助の対象は全壊と半壊と大破、これだけが補助の対象になつておりますが、今度のような大きな災害を受けて、市町村財政が貧困なるときにおいては、そういうようなやり方では十分ではないと思う。そこで補助の対象に入つていないところの中破、小破、校地の流失あるいは実験室のごとき設備、こうしたような問題についても、私は補助の範囲を広げる必要があると思う。むしろこういうような方面の被害が、数字によつてはかえつて全壊などよりも多い場合も、今日の災害の性格として現われております。こういう点からこれに対してどういう考えを持つておるか、あるいはまた政府部内において、いかなる活動を文部大臣としてはされておるか、この点をまず伺つておきたい。補助の対象を広げる必要が絶対にあると私は思うが、これに対しての御答弁を伺いたいのであります。
  48. 天野貞祐

    天野国務大臣 このたびの台風が非常なさんたんたるものであるということを聞きまして、私どもも強く心痛いたしております。文部省からは政務次官と省内の者をさつそく派遣して調べてもらつております。今までは四十億円くらいの数字が出ておりますが、しかしなお今日帰るはずでございますから、正確な数字を出したいと思つております。  それからただいま申されましたような広げるという点につきましては、老朽校舎との関係もありますので、そういう点もよく研究をいたして、一段も二段も努力をして、関係各省と話合いをいたしたいという考えでございます。
  49. 上林山榮吉

    上林委員 現在の段階においては確答はできない、そういう方向に向つて努力をする、こういう御答弁であつたかと思いますが、これも一応現段階においてはやむを得ない点もあると想像せられますけれども、結論において、私の今申し上げた対象がどの程度拡大されるかは、文部当局とあるいは国全体の考えによることでありますけれども、この点はひとつ私は相当わくの拡大を要望して、御答弁も無理でありますので、この程度でおきたいと思います。  次に申し上げたいことは、建築單価の引上げと建築耐用年数についての是正を私は要望したいと考えます。その要点は台風地帯と高温高湿による白ありなどの害によりまして、建築單価を二五%くらい引上げてもらわないと非常に困る方面があるわけであります。こういう問題については、実情に沿うたような改正を願いたいと思うが、どうか。さらに耐用年数の問題については、今申し上げたような理由によつて、非常に耐用年数が短かくなつて来るわけであります。それを文部省は老朽校舎の年数を大体五十年と見積つておるのではないかと思うのでありますが、われわれはこれを三十年くらいに見積つてもらわないと、台風の非常に起るようなところ、あるいは白ありなどの非常に繁殖するようなところ、こういうような意味で困つておるところの年数の計算としては実情に合わぬ、こう思いますので、この点の是正を願いたいと思うが、これに対して何か研究を進めておるかどうか、この点であります。
  50. 天野貞祐

    天野国務大臣 上林山さん、事務当局からお答えさせていただきます。
  51. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 御指摘の通りに、單価が地域的にある程度の差を持たなければならぬとおつしやることは当然でございまして、現在私どもが行つております予算の配賦のやり方も、それは文部省だけの立場でなく、厚生省なり、住宅の関係なり、そうしたものと一応バランスを持ちながら、そうした考え方でやつております。  年限の問題でございますが、ただいまのところ、まだ老朽校舎に対する直接の手当ができておりませんので、何年に一応切つておるのかという御質問に対しては、私どもとしては、大体四十年見当に切るのが妥当ではあるまいかというふうに見ております。現在危險校舎として問題になつておりますのが大体百六十万坪ほどございますが、そのうちの四十四万坪は、年限から申しまして五十年を越えているものがございますし、また年限としては割合に短かいが、先ほどの御説明のような白ありの関係とか、気温の関係とか、そういうようなことのためにひどくいたんでいるものもあります。それらの経験から見まして、大体四十年見当に押えて、新しく改築計画を立てて行くのが、妥当ではないかというように考えております。
  52. 上林山榮吉

    上林委員 私は妥当でないと思いますから、そういうような四十年でよろしいというお考えもあるかと思いますけれども、この点は特に研究を願つて、老朽校舎をどうするという問題と並行して勘案願いたいと、要望だけをいたしておきたいと思います。  次に学校災害に対する起債わくの擴大であります。この問題は地方財政委員会の責任者も見えておられるようでありますので、あわせて文部省当局と同時にお答えを願いたいと思います。  現在学校災害については国庫補助のその二分の一程度しか許可されておらない。地方財政が今いかに貧困であるかということは、地方財政当局はもちろんのこと、文部省においてもおわかりのことでありますので、この点をわずか国庫補助の二分の一程度しか許可されないというのでは、これは実情に合わないのじやないか。ことに災害の学校の問題であるからなおさらである。次に学校災害については、御承知通りに周辺の住民もまた非常な災害を受けておるわけです。学校と同様以上に、学校を構成している周辺の住民が災害を受けておる。だからひいて負担の能力がないのでありますから、起債にたよる以外に方法がない、こういう点も考えて、わくの擴大を考えなければならない。さらに学校災害に対する復旧費は、国庫補助と起債とをもつて私は全額支弁するようにするのがほんとうじやないか、こう考えておりますが、これに対する両当局の答弁を求めたいと思います。
  53. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 起債わくが全体として小さいために、本年度の六・三関係のものも四十一億円に対して、大体六五%ということにまで圧縮されたのでありますが、事実これを今日の計算で行きますと、大体七〇から八〇見当になつております。なお補正予算の九億五千万円に対しまする分が、今のところ未解決になつておりますが、一応全体の起債わくが百億円確立されたことでありますから、それらの関連において前の六五%に対する分も、あとの九億五千万円に対する関係のものも、相当額の起債が裏づけされるように、目下地財委、大蔵省と協議いたしております。なお災害関係につきましては、御指摘の通りにありたいもの、こういうように考えまして、今度それらの予算予算化されますと同時に、こうした点にぜひ持つて行きたいものだ、かように努力いたすつもりであります。
  54. 菊山嘉男

    ○菊山政府委員 ただいまの学校の建築に関する起債の問題でありますが、起債は御承知のごとくに、総わくが非常にきゆうくつでありますがために、学校の建築のごとき、非常に必要なものに対しても、きゆうくつなる制限をいたしておりますることは、私ども非常に遺憾に存じております。しかしながら、これらのわくも他の方面との関係上、いろいろ考慮をいたしまして、多少の増額をはかる見込みがつきましたので、将来はほとんど九二—三%程度起債を認めることができるかと考えております。  なおまた災害復旧等につきましても、できるだけの起債を認めたいと考えまして、いろいろとわくの増大等について考慮をしておる状態でありまするから、御了承願いたいと思います。
  55. 上林山榮吉

    上林委員 地方財政委員会の学校災害に対する起債わくの擴大についての答弁のうちに、多少増額の見込みがついたという答弁でございまして、一歩前進したという意味においで私ども了承するのでありますが、先ほど私が質問した趣旨によりまして、一段とこの問題について、文部当局とあわせて御努力を願いたいと考えます。  この際私は、地方財政委員会の当局に伺いたいことは、先ほど大蔵大臣質問したのでありますが、その質問の要旨は、この前きまつた平衡交付金増額の百億円は、あれは府県だけに配分されるべきものではなくして、市町村も含むのである、こういう意味かという質問をしたところ、その通りであると大蔵大臣答弁されたのであります。それならば府県市町村配分の比率はどうなつておるか、こういう質問をしたところが、これは所管違いであるから、地方財政委員会等にお尋ねを願いたいという話であります。  そこで私が伺いたいのは、今度増額された平衡交付金ないし起債は、これは市町村府県配分の率はどうなつておるか、これを伺いたいわけであります。なお私の要望をこれに加えますと、府県は学校の教員の俸給の関係どもありますので、相当比率が多くなければならぬと思いますが、町村の財政も非常に困つておる、行き詰まつておると言つてよろしい、こういう状態でありますから、この比率は府県六十億、市町村四十億ぐらいが妥当ではないかという説も、非常に強い状態であります。でありますから私この要望を含めて質問を申し上げます。
  56. 菊山嘉男

    ○菊山政府委員 ただいまの御質問でございますが、平衡交付金府県市町村とにいかなる歩合をもつてわけるかということは、御承知のごとくに平衡交付金法によりまして、基準財政需要額と基準財政收入額との差額に比例をいたしましてわけることに、原則はいたしております。従いまして、府県に何割であるとか、市町村に何割であるとかいう原則は、立てていないのであります。これは計算の結果出て来ることでございまして、そのときの必要に応じて、財政委員会において配分をいたすことになつておりますることを、御了承を願いたいのであります。ただいまの学校の教員が府県支弁でありましたり。あるいは公共事業費の遂行の高が府県に多いというような原因のために、数字から申しますと、府県側に相当の額が行つておりまして、市町村側は、数字の上から申しますると、歩合が低くなつておりますのは事実でございますけれども、これは先申しましたような原則で配分をいたしておりまするので、この点は御了承を願いたいと思います。
  57. 上林山榮吉

    上林委員 原則としてそうなつているという点は了解をいたしました。そこでこれは私の希望ももちろん入つておるわけですが、市町村財政が非常に困つておるという点、それから原則としてはそうなつておるけれども、ある程度処置ができる余地がある、こういうようなふうに受取つたのでありまするが、そういう点から考えると、現在その基準率によつて配分した場合は、府県は今幾らぐらいになり、市町村は幾らぐらいになるのであるか。額を持つておるならば一応お示しが願いたい。なければあとからでもけつこうであります。
  58. 菊山嘉男

    ○菊山政府委員 財政の窮乏をいたしておりまする程度は、府県市町村を通じて、ある特別の団体を除きまするほかは、非常に窮乏をいたしていることは、御承知通りでございます。それでこれをわけますことは、先ほど申しましたような原則によつてつているのでありますが、結果から見ますると、大体府県に参ります分が六割三、四分のところでありまして、町村に参ります分は三割七、八分の程度になつていると考えております。これは結果論であります。御了承を願います。
  59. 上林山榮吉

    上林委員 最後に、文部関係で一点申し上げたいのは、現行法の国庫補助の状態は何ら法律化されておらない、そのために財源の都合によりまして、予算処置が左右されているというのが現状でありますが、こういう点から考えまして、国庫補助をやるという根拠をはつきりとさせる意味において、これの立法化が必要である、こういうことを考えておるが、文部大臣はこういうような重要な点について何か手を打つておられるかどうか。劈頭に文部大臣に申し上げた通り、中央においては中央の財政当局地方においては府県当局に教育事業がまま子扱いを受けがちである、こういう点から考えまして、こういうような問題に対しまして、文部大臣はいかなる処置をとつておられるか、この一点を伺つて、文部大臣に対する質疑を終りたいと思います。
  60. 天野貞祐

    天野国務大臣 文部省の計画したことは、まず第一に御承知のような標準義務教育費の確保というようなことでございましたが、しかしこれにも難点があつて、要するに中央が地方に干渉をする、地方の自治の独立ということが、原理的に阻害されるというようなことで、どうしてもそれが成り立ちませんでした。従つて平衡交付金に入つている金も、必ずしも教育に使われないで、他に使われるというようなこともあり得ると思うのです。そういう点を研究いたしまして、国家と地方と両方でもつて分担するような一つの新しい方法を現に研究し、それができ上りまして、諸方面とそれをもつて折衝いたしておるのが現状でございます。
  61. 上林山榮吉

    上林委員 次にルース台風災害関係で、国税庁長官要望を兼ねて質問をいたしたいと思います。  御承知通りに、今度のルース台風は、今までの台風よりも災害が非常に大きい、この点はもうおわかりのことだと考えます。建設大臣ども見に参りましたから、その点は直接お聞きを願いたいと思う。そこでわれわれが今までの災害に対する国税の減免の状態を見て見ますと、中央の親心が地方末端に徹底せずに、とかく一升ますではかつたような減税、免税の方法をやつておるようであります、私はこれではいかぬと思う。だから今度の災害は非常に大きいのでありますから、国税庁当局としましては、地方の国税局あるいは出先の税務署に、この災害に基くところの国税の減免の法律の趣旨並びにその親切丁寧なる取扱いについて、緊急なる処置をしてもらわなければならぬ、こういうふうに考えますが、もうすでにこの処置はどの程度つたか。それから第二段といたしましては、私ども災害のないものを災害があつたようにせよとは申し上げません。申し上げませんが、先ほど申し上げた通りに、單にしやくし定規でやられますと結果が、非常な重い負担になつて来るのでありますから、この点はひとつ部分的な災害でなく、全般的な災害であるという今度のルース台風の性格にかんがみて、国税当局はそれぞれの具体的な、親切な処置をお願いしたい、こう考えますが、一応国税庁官のお考えと、とつた処置をこの際念のために伺つておきたいのであります。
  62. 高橋衞

    ○高橋政府委員 災害被害者に対する租税の減免に関しましては、減免に関する法律によりまして、住宅または家財に甚大な被害のありました場合におきましては、年所得十万円以下の場合においては全免、また十万円以上三十万円未満の場合におきましては、これを半減するという建前になつております。なおそのほかの所得税法におきまして、資産に損失のありました場合に、その損失が所得金額の十分の一を越えるという場合におきましては、これを雑損として所得金額から控除するという建前に相なつております。また過去の滞納金額につきましては、今春改正を見ました国税徴收法の趣旨に基きまして、執行停止の処分をいたすことに相なつておりますが、これらの問題は、いずれも納税者の損失申告書でありますとか、その他の申請手続を必要とするのであります。しかもそういうことにつきましては不なれの場合が非常に多いと考えますので、災害のありました直後、それぞれ関係の局に指示をいたしまして、周知徹底方並びに申告書の提出について、十分にお手伝いをするようにということを言つてつておる次第であります。
  63. 上林山榮吉

    上林委員 国税庁長官一言希望を申し上げまして、私の質問は午後続行したいと思います。  そこでただいまの答弁を伺つてみますと、こういう法律があるのだ、だからこの法律を知らせることに努めているのだ、これで能事足れりというような感を受ける。私は親切が足らぬと思う。少くともこういう災害が起つているときは、周章狼狽して、自分は一体自分の生活権を確保するのにどうすればいいかと迷つておる。そういうところに持つて来て、申請があつたならば、それを受付けて減税処置をするという官僚行政的なやり方は、少し是正されたらどうかと思う。もう少し街頭に出て、こういうものには減税しますとか、この問題はこうできる、手続のできない人は私どもがかわつてつてあげましよう、あるいはまた市町村当局と力を合せて、市町村にもかわつてつてもらつておりますから、こうしなさい、こういうふうに手をとつて教えてこそ、私は生きた政治であり、生きた行政だと考えておるのです。ただこちらから通牒を一本やつて、しかも受けた方でもそれをそのままやつておるというような状態では遺憾にたえません。私ども災害があまりにも大きい実情を見聞して、そういうなまぬるいやり方には承服できない。もう少し御検討になつて積極的にひとつ善処を私は心からお願い申し上げます。これをもちまして私の午前中の質疑を終りたいと思います。
  64. 小坂善太郎

    小坂委員長 午前中の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時半より委員会を再開し、質疑を継続することといたします。  これにて暫時休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後二時五分開議
  65. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。  午前中上林山君が建設大臣に対する質疑を留保せられて質疑を終られましたので、次は民主党の早川崇君でありまするが、御都合によりまして延期をせられるようでありまするから、角田幸吉君より質疑を継続願いたいと思います。角田幸吉君。
  66. 角田幸吉

    ○角田委員 過般同僚の宮幡君から、運輸大臣に対しまして、講和後における通商協定について、いろいろただされたのであります。その際におきましては、船舶の建造、航行の関係だけにとどまつておりましたので、私はもう少しく進みまして、港湾関係などにつきまして、これから運輸大臣にお尋ねを申し上げたいのであります。  昨日の新聞によりますと、日米通商航海條約の原案が政府から発表されまして、来月から予備交渉に入る、こういう段階に入つて参りました。このことはわれわれの非常に喜ぶところなのであります。そこでお尋ね申し上げたいのは、通商関係は單に船舶だけをいかに建造いたしましても、その目的は十分に達せられない、それに伴うところの港湾設備が最も重大であるということは、大臣も十分御承知のことであろうと思うのであります。港湾学者のたれであつたかの言葉の一節に、一国の貿易量は、その国の港湾の設備能力を越えることはないものだということがあつたと私は記憶するのであります。そこでこの港湾の設備が十分であるかどうかということをお尋ね申し上げたいのでありますが、私が今日まで見て参りました調査によりますると、東京・横浜・清水・名古屋・四日市・大阪・神戸・関門・博多の九つの大きな要港は、日本の貨物取扱量の半ばを占めております。ところがここで取扱われておりまするものが、昭和二十六年度におきましては三千九百七十万トン程度の能力のようでありますが、現在接收その他におきましてこの九つの港において取扱うことのできる能力は、二千六百二十四万トンにとどまる、こういうことであります。そういたしますと、先ほどたれであつたか港湾学者の言葉がそのままに当てはまるものといたしますと、昭和二十六年度に取扱う貨物量というものは、現在においては約六割くらいしか取扱う能力がない、こういう状態にあるのではないかと推定しておるのでありますが、この点につきまして、まず運輸大臣の御見解を承りたいと存じます。
  67. 山崎猛

    ○山崎国務大臣 お答えいたします。ただいまお尋ねの通り、貿易が港湾施設の強弱によつて支配せられることは、学説をまつまでもなく、現実の事実がその通りであります。私は主管大臣といたしまして、御指摘になつたごとき東京・横浜あるいは神戸・関門・博多というような港が、今日の日本の国情から余儀なく接收下に置かれまして、十分なる港湾の機能を発揮し得ず、おしならして七割くらいまではわが用に供することができないような状態にあることを非常に遺憾に考えまして、何をおいてもこれは日本の貿易立国策の見地からいつて、今日はもとより、将来ますますその機能発揮のために、準備をしなければならないということを考えまして、関係筋にできるだけ解除方を強力に懇請し、交渉を継続しておるようなのが現状なのであります。先方におきましても、この問題については虚心坦懐にわが方の要求の当然であることを認めて、きわめて理解ある態度で、今日においてはどこまで接收解除の幅を広げることが可能であるかということを現地に確めるために、特に現地調査をされて、せつかくその取調べを進めておるような現状にあるのであります。こういう状況にありますから、ただいまお話のありました講和後における通商航海條約の締結実施に相伴うて、この面に相当の光明を期待し得るのではないか。ぜひ期待しなければならないというつもりで、交渉を継続しておるような次第であります。
  68. 角田幸吉

    ○角田委員 ただいま接收されておりまするのが横浜と神戸と関門と東京と博多であると思うのでありますが、このうちに一旦接收が解除になりまして、そして朝鮮動乱のために再び接收になつた場所もあるのではないかと考えておるのでありますが、この点の消息を承りたいのであります。
  69. 山崎猛

    ○山崎国務大臣 できるだけ事務的に詳細にお答えをいたしたいと思いますから、港湾局長にその点だけ答弁いたさせます。
  70. 黒田靜夫

    ○黒田説明員 港湾の接收状況でございますが、先ほどお話のありましたように東京・神戸・横浜・関門・博多の接收を受けておるのでございます。このうち神戸における一部の突堤が朝鮮事変前に解除になつたのでございますが、これが再度先方の占有使用ということになつております。この一部の埠頭につきましては契約によつて先方が使用しておる。それから関門と博多におきましては、朝鮮動乱以後占領軍の相当広範囲な使用の状態にあります。
  71. 角田幸吉

    ○角田委員 通商貿易は港湾だけでは足らないのでありまして、港湾には倉庫も必要である。それからはしけも必要であります。ところでこの倉庫の方にもなお接收の部分があると聞いておるのでありますが、これも私の調査でありまして十分なものでありませんので、違つておりましたら訂正してくださつて、そうしてその状況の御報告を願いたいのでありますが、京浜・名古屋・神戸・関門の接收倉庫は約十三万坪以上に及び、そしてその余を日本で使つておる。これらの所において使つておるものが四十六万坪にとどまつておる。こういうところから倉庫が非常に不足して、荷物の取扱い上非常に困つておる、こういうことを聞き及んでおるのでありますが、この点についての御報告をお願いいたしたいのであります。     〔委員長退席、苫米地(英)委員長   代理着席〕
  72. 山崎猛

    ○山崎国務大臣 御説の通りであります。倉庫荷役の設備が欠如いたしておりましては、港湾としての機能は十分に発揮できないのであります。私は今御指摘になつたような数字を詳細にそらんじておりませんけれども、倉庫荷役の施設を充実する意味において、見返り資金をもこれに充当して、せつかくその整備を進めておるような次第であります。さらに詳細なことにつきましては、事務当局よりお答えいたします。
  73. 黒田靜夫

    ○黒田説明員 先ほど申しました港湾におきまする倉庫の接收は、およそ全体の倉庫坪数の二三%程度接收されておるのでございます。はしけにつきましては、約一割程度のはしけが先方の占有使用になつておるのでございますが、これらの倉庫につきましては、戰災を受けた復旧をも兼ねまして、見返り資金から融資が一部行われておるような現状でありまして、最近開発銀行を通じまして横浜・名古屋・神戸等に融資が行われておるような現状でございます。はしけにつきましても、はしけは戰災と風水害相当被害を受けまして、およそ戰前の三分の一程度に激減しておるのでございます。これらにつきましても、見返り資金の融資が現に開発銀行の方から行われておりますし、これからもその融資わくを増大することに、折衝を進めておるような次第であります。  なお一言付言申し上げておきたいことがあるのでございますが、公共施設の接收が、先ほどお話のありましたように、全体の施設の七割程度に及んでおるのでございまして、これに対しまして、解除のことを懇請しておるのでございますが、一部の解除は可能でございますが、大部分は現下の情勢においては、引続き先方の使用になることが予想いたされますので、港湾施設の公共事業の緊急整備をやりたいと思いまして、先般の閣議決定の要綱に基きまして、来年度予算として、この五つの港につきまして、およそ三十六億円の港湾施設の緊急整備費を要求いたして、おるような次第でございます。
  74. 角田幸吉

    ○角田委員 私がお尋ねを申し上げない前にお答えがあつて了承したのでありますが、今年の三月の三日に、主要港湾荷役力の緊急増強について予算を計上する。なぜ一体今年度補正予算でやつておらないか。というのが、ちようど来月から日米通商航海條約の予備交渉に入る、こういうときでありますから、来年にかかりますると、おそらくはその金が実際にまわつてつて工事にかかるのは、来年の暮れあたりにしかならないということになるおそれがあるのでありますが、なぜ一体今年度補正予算において、このことを計上されておらなかつたのであるか、このことをひとつ大臣に伺います。
  75. 山崎猛

    ○山崎国務大臣 本年度補正予算要求の原則で、公共事業に向つては、見返り資金を織り込んで行かないという建前から、補正予算限りで編成いたしたような関係上、要求の段取りに参らなかつた次第であります。
  76. 角田幸吉

    ○角田委員 そこでもう少しお尋ねを申し上げたいのでありますが、港湾施設は、国のものと公共のものと私有のものとが、今現に接收されておるようであります。そして国のものが無償で、これは先ほどの朝鮮動乱後に接收されましたものが、契約によるドル拂い、こういうことになつておりますが、前に接收されました国のものが無償でやつておる、そうして公共のものと私有のものというものが、有償になつておるようであります。ところが今度の講和條約を読んでみますと、第六條の(C)項でありましたか、占領軍の使用に供され、かつ、この條約の効力の発生のとき占領軍が占有しておるすべての日本の財産で、まだ補償金が支拂われていないものは、相互の合意によつて別段のとりきめが行われない限り、同じく九十日以内にこれを返還しなければならない、こういうふうに書いてあります。そこで私は、この点からこういうことを懸念するのであります。この九十日が過ぎますと、国のものは、これは無償で使われておるから返される。公共のものと私有のものは、これは有償でやつておりますので返されない。こういうふうなことになりはしないかと、考えておるのでありますが、この点についての御見解を伺いたい。
  77. 山崎猛

    ○山崎国務大臣 ただいま御指摘の点は、これは相手方との交渉によつて決定するものであろうと考えております。従いまして十分それに至る前に当方の腹案をつくつておいて折衝に応じなければならないであろうと考えております。
  78. 角田幸吉

    ○角田委員 それからもう一つは、船の接收も相当あるようであります。日本の民有の船舶が約三百二十隻、十九万トンというものが同じく接收されておるようでありますが、これらのことにつきましては、今どういうふうな折衝をなさつておるのか、その点をひとつお伺いしたい。
  79. 山崎猛

    ○山崎国務大臣 終戰当時海外において接收されました船舶が三百十七隻、十八万総トン余に上つておるのであります。これらの船舶は一般在外資産と同様に処理せられまして、その国内補償もきわめて困難であると考えております。しかし船舶はその性質上普通の在外資産とは、ややその性質を異にいたしておりまする点もありますので、在外資産とまつたく同一という意味合には参らない、同様に取扱うということは、いささか酷に失するとも考えておりますので、何らかこれが緩和の策はないものかというので、せつかく研究中であるのであります。
  80. 角田幸吉

    ○角田委員 港湾の接收、倉庫の接收、船舶の接收につきまして、その解除方について、運輸大臣はきわめて熱心に御交渉いただいておりますので、これ以上私から御質問申し上げません。どうか日米通商航海條約ができるころには、はなばなしい海運業ができ上るように、これは船舶の建造だけではなしに、港湾等についても特段の御配慮を願いたいのであります。そこで私はついでに港湾行政の一部でありましようが、お尋ねを最後に申し上げておきたい点は、第十国会におきまして港湾法が改正になつた。そして商港と漁港との二重指定ができるようになつた。結局港湾法の第三條であつたと私は記憶しておる。それと漁港法の十七條と二十七條であつたのじやないのかと今思うのでありますが、一つの港湾につきまして商港として漁港として二重指定がありますと、一方におきましてはその管理者としての港湾管理に、一方におきましては漁港管理に、その整備計画の上においてこれは摩擦が起つて来るのじやないか。その辺について一体運輸大臣はどういうふうに調整されて行くお考えであるか。第十国会においてあの二重指定ができるようになりました結末についての御処理をどういうふうになさるお考えであるか、この機会に承つておきたいのであります。
  81. 黒田靜夫

    ○黒田説明員 港湾法と漁港法との調整に関しましては、まず第一に一般港湾と漁港とを明確にわかち得るものは、港湾法並びに漁港法によつて、それぞれ一般港湾あるいは漁港として定められたことは言うまでもございませんので、現在漁港として指定されておるものは六百くらいございますし、また協議がととのいまして、近く漁港として指定されるものが相当数に上る見込みでございます。しかしながら港湾によりましては、漁港と一般港湾とを分離しがたい場合がございますので、かような場合には、先ほど御指摘になりましたように、港湾法の一部改正によりまして第三條の但書で、漁港と商港とを重複して指定するようなことに改正になりまして、現在十一の港が港湾法施行令によつて指定されたのでございます。このような重複適用港湾につきましては、漁港法と港湾法との具体的の適用にあたりまして調整を要する事項があるのであります。この点につきましては、具体的に一つ一つその港によつて地方事情を十分調査いたしまして、農林省と協議の上、両法の適用に関して事務的な協定をもつて進んで行きたい、かように考えておりまして、いずれかの法律を廃止するというようなことは、今の段階では考えておりません。
  82. 角田幸吉

    ○角田委員 運輸大臣に対する質疑はこの程度で時間の関係もありますので……。
  83. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員長代理 北澤直吉君。
  84. 北澤直吉

    ○北澤委員 御承知のように海運の問題が、日本の将来の経済自立の面から申しまして最も大であります。日本の貿易の進展をはかるために、また日本の国際收支の改善をはかるためにも、日本の海運業の発達ということが、非常に大事であることはいまさら多言を要しません。戰争前におきましては、日本の海運業というものは世界でも一、二を争うような、非常に有力な商船隊を持つておまりした。これが世界の七つの海に活躍しまして、日本の貿易の発展を助け、また日本の国際收支の上に非常な大きな利益を与えておつたことは御承知通りでございます。結局貿易というものは旗に従う、従いまして海運の発達のないところにその国の貿易は発達しないのであります。そういう点からいたしまして、われわれは今後の日本経済自立の点から考えまして、この海運業の画期的の発展を希望するわけでございますが、残念ながら、戰争によりまして日本の船腹は非常な影響を受けまして、今日日本の船腹増強という問題が最も大きな問題になつているわけでございます。幸いにしまして今回の講和條約におきましては、日本の海運業に対しまして制限を加えるような條項はないのでありますけれども新聞などの報道によりますると、あるいはイギリスその他の国におきまして、日本に対して造船に対する原材料の供給を制限することによつて、事実上日本の造船あるいは海運というものにつきまして、制限を加えるやの報道があるのでございますが、この点につきまして、政府はどういうふうな情報を持つておられますか、もしそれが單なる杞憂に終りまして、日本の海運につきまして、條約上も、それから事実上も完全な自由が日本に認められている。こういうふうに理解していいのでありましようか、これについて大臣のお考えを伺いたい。
  85. 山崎猛

    ○山崎国務大臣 御説の通りに、貿易が船腹の強弱いかんによる、しかして貿易立国策へ日本が出発せんとする現状において、日本の国策のうちで海運政策が、太い線をなすものであるということは御同感であるのであります。このときにあたつて、戰争中に壊滅に瀕した日本の海運は、どうしても全力をあげてこの復興をはからなければならないはずであります。しかし幸いにこのたびの講和條約の調印を了したる全文を通じて、われわれはしばしば新聞報道等によつて伝えられたる船腹量あるいは造船量に対する制限の文字が明記されていないということは、将来の貿易日本のために、まことに御同慶にたえないと考えている次第であります。しかしながら、ややともすれば、それにもかかわらず日本の造船能力の制限、船腹制限というようなことが、あるいは思い設けざる辺より出て来るかもしれないじやないか、これらに対する情報いかんということでありますが、最近までの状態においては、公式にそういう動きに入るであろうというような情報には接しておりません。ただ新聞の論評等においては、講和條約調印後の昨今において一、二あるかのようにも聞いておりますが、前申したように、公式にそういう動きが出て来るかのごとき情報に接していないのが現状であります。
  86. 北澤直吉

    ○北澤委員 日本の海運の問題につきまして、諸外国におきましては、戰争前の日本の海運の発展は、いかにも日本の海運が不当の競争をしておる、不当に運賃を下げて世界のよその国の海運を圧迫している、こういうような非難があつたのであります。もちろん一部にはそういうふうな事情もあつたかもしれぬのでありますけれども、戰前におきまする日本の海運業の発展というものは、何と申しましても、結局日本の海運の実力のしからしめておつたところであります。ところがこれに対しまして、日本との海運の競争に負けるような国々が、盛んに不当競争というようなことを言いまして、日本の海運に対して当らざる非難をしておつたのでありますが、講和締結後におきましても、よその国の一部には、日本の海運の不当競争というような問題につきまして、いろいろの言説をなしておるものがあるのであります。もちろん、今後日本が世界に立つて貿易及び海運におきまして、大いに発展をしようというようなときにおきましては、不当競争を排しまして、公正な競争をすべきでありますけれども、しかしながら、公正な競争をしておりましても、この競争に負けておる国が、また日本の海運に対しましていろいろな非難をすると思うのであります。従いまして、われわれとしましては、もちろん不当競争はいかぬのでありますが、正当な競争の場合におきましては、堂々と世界に向つて日本の海運の実力によつて日本の海運の発展をはかるように、当らざる非難につきましては堂々とこれをよく説明しまして、その当らざることをはつきり世界に説明するようにしたいと思うのでありますが、これにつきまして大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  87. 山崎猛

    ○山崎国務大臣 戰前における日本海運の目ざましき活動が、世界の海運に、日本よりも一歩進んでおつた国々を脅かし、日本に及ばざる国々に非常な圧力を加えたということは、御説の通り事実であります。あるいは大きくいえば、世界の日本に対する反感は、この日本から見ればよき活動が相手国には手痛く響いて、戰争の際に必要以上の反日感情をあおつた原因になつておると考えられる節なきにしもあらずと考えるのであります。しかし、一たび植えつけられたるこの感情は、なかなか容易に拂拭されるものではないのでありまして、われわれは、先般のサンフランシスコの会合における状況が、日本のために非常に喜ばしき状況であつたということを喜ぶと同時に、甘い気持で将来の日本の対世界態度というものはあるべきではない、かように考えております。ことにその第一線である海運のごときは、出れば必ず国際的に接触するのでありますから、正当に闘つてもなおかつ、そこに努力と怠慢との差は恨みとなり、反感となつて来る場合もあるのであります。こういう点は新しい日本の世界進出にあたつて、特に海運の場合に心すべき点であろうと考えておるのであります。政府としましては、海運、造船、こういう面において、もちろん合理、合法的に仕事はするのでありますけれども、誤解感情は恐るべき結果をもたらすのでありますから、合理、合法であると同時に、受身の態度でなく、積極的に了解を進めるような方法をとらなければならないし、また海運界のそれぞれの協定というようなものには進んでこれに加入して、世界共通の水平線の上に立つて、自由潤達な活動のできるように一切を進めて行きたい、こう考えておるのであります。それらのことにつきましては、ちようどここに海運局長が出席しておりますので、この点については海運局長より少しこまかに申し上げたいと考えるのであります。
  88. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 ただいま北澤委員の御指摘になられましたように、少しのデマといいまするか、日本の海運業者が、事実はそれほどのことではないのでございまするが、不当に運賃を切り下げておるというふうな、少し誇張したような、事柄を大きく取上げて、日本海運の不当競争がまた始まつたというふうに誇大に取上げて、これに心理的圧迫を加えようという傾向が、現になきにしもあらずでございます。まあ戰前どういう事実があつたかわかりませんが、日本の海運業者は不当なる競争によつて海運をしておつたということが、非常に強くこびりついておりまして、戰後の日本海運もまたそのような手でやつて来るではないかというように非常に警戒的であり、また恐れをなしておりまして、ただいま御指摘になりましたような事実も現にあるわけであります。私どもといたしましては、そういううわさがありますと、十分その出どころの根拠を突きとめまして、関係者に説明いたしまするとともに、また日本の海運業者に対しましては、いやしくもそういううわさを立てられることのないように、十分自戒するようにと強く警告いたしておる次第であります。また先般制定いたしました海上運送法におきましても、日本の海運業者は、いやしくも不当なる競争をすることのないようにという規定をもいたしまして、関係諸国に対しまして、日本海運業の今後のあり方に対する日本政府としての誠意のほどを見せておるような次第でありまして、この点関係諸国におきましても、十分日本側の誠意を了解してくれている、かように考えておる次第であります。
  89. 北澤直吉

    ○北澤委員 先ほど大臣お話もありました通り、船腹の増強ということが、日本国家の最も大きな問題であるのでありますが、この船腹の増強の中で新しい造船の問題でございます。この問題につきましては、山崎運輸大臣初め政府当局におかれましても、非常に奮闘をいたしておるようでございますが、さしあたり問題になつておりまする第七次の造船の問題につきまして、資金手当が必ずしも十分でないというふうにわれわれは見ておるのであります。従来は見返り資金というものがありまして、この見返り資金から造船の方に相当程度の資金が出たのでありますが、将来この見返り資金というものは、だんだん先細りになつてしまうというふうなことでありますので、こういう方面に対する資金の源も、従来に比べて貧弱になるというな状況もあるのであります。しかし何と申しましても、この船腹の増強が、現在の日本にとりまして最も大きな問題であり、しかしてそのためにはどうしても新造船を大幅にしなければいかぬ。そのためにはどうしても資金がいる。この資金の問題が解決されないと、この新造船の問題もなかなかうまく参らぬと思うのでありますが、さしあたりの第七次の造船に対する資金の手当の問題につきまして、政府はせつかく御努力のようでありますが、その経過について伺いたいと思います。
  90. 山崎猛

    ○山崎国務大臣 海運の増強は船腹の増強にあり、船腹の増強はまず第一に今後の場合は新船の建造を取上げなければなりません。もちろん船を買うという方法もありますし、沈んだ船を引揚げるという場合もありまするし、あるいは他国船によつて船賃を拂つて行くという方法もありますけれども、先刻来申し上げるような貿易立国策、船腹によつて国力を復興自立させて行かなければならないという日本の場合においては、何をおいても自分みずからの船の建造によつて日本の海運の根拠を築き上げて行くということが、第一義でなければならないと考えております。そういう観点から、引続いて年次計画造船を継続して参る。御承知通りにことしの前半において、七次前期で二十万トンを了し、昨今は御指摘の七次後期の建造計画の問題で資金難に突き当つて、今困難をいたしておるような次第であります。もし船主に自己資金によつて建造し得るような段階に入り得ておれば、何らの苦労もないのでありますけれども、今日はそれまで船主の財力が回復できずに、しかも海運界の船腹要請は非常なる勢いをもつてこれを要請しておるのであります。今日まで見返り資金を当てにして、民間の自己資金をフイフテイ・フイフテイの比率において進めて参つたのでありますが、これはもう明年とも相なれば、多く期待し得ざる状況になつておることは御承知通りであります。明年といわず、今年すでに見返り資金の資金計画あんばいの点から申して、どうしても現在は大蔵当局においては、三十五億円——トン数に直せば十万トン、この程度以上は見返り資金のやりくりはできないという強い主張を述べているような次第であります。私ども海運を主管する運輸大臣立場としては、一万トンでも多くつくりたいのが海運の要請なのでありますので、当初の前期二十万トン、後期二十万トンという計画でおりましたが、その前期の二十万トンが済みましたので、後期もぜひかねて考えておつたような二十万トンほしい、そして近き将来に日本の海運の充実を期したい。こういう一貫せる計画のもとに二十万トンを要求いたしておるような次第でありますが、今その資金難の折衝でもつぱら努力をいたしておるのが現状であります。
  91. 北澤直吉

    ○北澤委員 次にお伺いしたい点は、日本の海運が第三国間の海運に進出する問題でございます。御承知のように海運の発達をはかるためには、どうしても第三国間の海運にまで日本の船が出て行くことが必要であります。従来のように日本からアメリカ、日本からイギリスというだけでなくて、イギリスからアメリカもあり、イギリスからフランスもある、こういうふうに第三国間の海運に出て行かなければ、海運の発展を期し得ないということは、いまさら申し上げるまでもないのであります。そうでないと、船が非常に片荷になりまして、行くときには荷物があるが、帰りは荷物がないということは非常に不経済であります。もし第三国間の海運に日本の船が出て行くということになりますと、そういう片荷の損害が大分救われると思いますので、どうしても日本の海運、日本の貿易全体から申しましても、第三国間の海運に日本の船が出れば、日本の貿易も第三国間に出て行くということになりまして、日本の貿易、海運の発展には、ぜひ第三国間の貿易及び海運に入つて行くことが必要だと思うのであります。従来は残念ながら第三国間の海運には、日本の船は出て行けないような状態にあつたようにわれわれは了解するのでありますが、いよいよ講和條約が効力を発生したあかつきにおきましては、日本は大体において世界各国に対しまして、船あるいはその他につきましても最惠国の待遇を受け得る状態になつたわけでありますので、少くとも講和條約の効力発生後におきましては、最惠国待遇によつて日本の船が、第三国間の海運にも出て行けるというふうにぜひしたいと思うのでありますが、この点に対しまして運輸大臣のお見通しを伺いたいと思います。
  92. 山崎猛

    ○山崎国務大臣 ただいま御指摘の通りに、今日現在は一つの制約のもとにありますけれども、当然さようにならなければならないはずであります。しかしこれは少しく技術的の御説明を要すると考えますので、海運局長より突き進んだ御説明を申し上げたいと考えます。
  93. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 講和條約発効後におきましては、当然日本船が條約調印国の港に自由に入り得ると考えるのでございます。そのあかつきにおきましては、戰前のように日本船の第三国間輸送に十分なる活躍をいたすようにしなければならない、かように期待しておるわけでございます。現在におきましても、まず英領地域を除きまして、大部分の港が日本船のほとんど自由なる入港を認められております。いわゆるブランケツト・クリアランスを得ておるわけであります。また英領地域におきましても、その都度の申請によつて許可をされておるような状況でございまして、従いまして外国諸港間の輸送というものも、部分的なら行われている次第であります。たとえば北米へ参ります船がフイリピンから砂糖を積んでアメリカ東岸に参る、あるいは南米方面に参る、あるいは北米西海岸の穀物をインドに運ぶ、あるいはタイの米をインドに持つて行くというような輸送を現にやつております。たとえば八月の輸送実績を見ますと、約九万トンの貨物を第三国間で運んでおる次第でございます。ただいまも申しましたように、講和條約発効後におきましては、当然この第三国間の輸送というものが相当大きな部分を占めて参ります。わが国の外貨收入に非常なる貢献をいたすものと期待しておる次第であります。     〔苫米地(英)委員長代理退席、委員   長着席〕
  94. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまの大臣及び海運局長の御説明によりまして、第三国間の海運に対する日本の船の進出につきまして、事情が明らかになりましたので了承いたします。  次にお伺いいたしたい点は、これも日本の船の問題でございますが、戰争中に日本の捕獲審検所において判決を下して、敵国船あるいは準敵国船を日本が捕獲した、こういうことになつておるのであります。今回の條約によりますると、戰争中に日本の捕獲審検所で不当に判決を下したような場合におきましては再審査をする、再審査の結果、前の判決を拒否するというふうになつた場合には、日本が捕獲した船及び積荷を、関係の国に返還をするというようになつているわけでございますが、もし日本が捕獲したたくさんの船を、捕獲審検所の判決の再審査によつて外国に返されるということになりますと、これは相当大きな問題になると思うのでありますが、戰争中に政府が捕獲審検所の判決によつて捕獲した船が一体どのくらいあるか、それからまたこの捕獲審検所の判決の修正によりまして一体どのくらいまた返さねばならぬのか、そういう問題につきまして、具体的な数字がありましたら伺いたいと思います。
  95. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 捕獲審検の結果、没收検定をいたしましたものが千六十七隻ございます。これがどの程度今後その審検の不当を唱えて再審査を要求して来まするか、ちよつと今のところ見当がつかない次第であります。しかし講和條約の規定に基きまして、当然この再審査の請求が相当数やつて来るものと、かように期待いたしまして、政府といたしましては、その捕獲審検の再審査をいたす機構を目下整備中でございます。近くそれに関する法案を国会に提出したい、今寄り寄り関係者と協議中でございます。
  96. 北澤直吉

    ○北澤委員 では次の問題に移りまして、前の朝鮮船籍の船の問題で伺いたいと思います。朝鮮船籍の船は、司令部の覚書か何かによりまして、日本から朝鮮に返すということになつたと思うのでありますが、今回の講和條約によりますと、朝鮮にあつた日本国及び日本人の財産については、講和條約後日本と朝鮮との間に相談をしてきめるということになつておるわけであります。朝鮮の船籍のものであつても、所有者が日本人である場合、私は日本の、日本人の財産と思うのでありますが、この朝鮮船籍で日本人の所有であつた船は、講和條約後は、この講和條約の規定に従つて日本と朝鮮との間の交渉によつて決定せられる、こういうふうに了解していいのであるかどうか、あるいは司令部の命令によつて朝鮮の方に返し切りになつてしまつて日本としてはこれに対して何にも言えないというふうなことになるのであるか、この点をお伺いしたいと思います。
  97. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 朝鮮籍の船につきましては、今までたびたび司令部の指令によりまして、朝鮮側に引渡しておるのでございます。その船は現在まで三十八隻であります。大体今まで関係方面がとつて来ました方針を通観いたしますると、大体朝鮮籍で終戰当時朝鮮にあつた船を朝鮮側に引渡す、こういう方針でやつておるように了解しておつたのであります。残念なことでございまするが、講和條約が調印されましたその翌日の九月十一日に司令部から指令が出まして、朝鮮籍で今日本にある船を全部朝鮮に引渡せ、こういう指令が出たわけでございます。これは日本側にとりましては非常に大きな問題でございまして、すでにそれらの船舶は司令部の許可を得て他に転売しておるものもありましようし、また朝鮮の船会社ですでに司令部の許可を得て、その再建整備計画を立てて、新会社を設立してやつておるものもあるわけであります。こういう権利義務の関係がすつかり根底からくつがえされるわけでございまして、私どもとしてはこれをいかに取扱うかということについて、実は方途に迷つておる次第でございます。ちようど今日本と朝鮮との間におけるいろいろな問題を取上げまして、日韓の協議会が開かれておるわけでございまして、その一分科としてこの船舶の問題も取扱おうというので、日韓両方の委員会を設けて、その委員会で何らか適当なる解決方法を見出したいというので、本日からその協議会を始めておるような次第であります。これを今引渡すかどうか、どういう方針で行くかということは、ただいまここで申し上げかねる次第でございます。朝鮮側のこの要求をいたしてありまする根拠となりますのは、いわゆるコーリヤン・ヴエステイング・デイグリーと称しております終戰当時朝鮮にあつた財産は全部朝鮮軍に引渡すという指令に基いておるのであります。この船舶につきまして、はたして終戰当時一時朝鮮にタツチしたような船まで、朝鮮に在籍したものとして考え得るのであるかどうか、という基本的な疑念もありますし、今後その折衝が結末に至りまするまで、いろいろ疑問の点を解決しなければならぬものがあるわけであります。今ここではつきり申し上げる段階にはありません。
  98. 北澤直吉

    ○北澤委員 もう一点で終りますが、この問題は機微の関係がありますのでこの程度にして、最後の点に移ります。  最後の問題は、民間航空の問題でございます。今度の講和條約によりますと、日本はなるべく早く国際民間航空條約に入りたい、それに入るまでの間は、日本は諸外国の民間飛行機に対しまして現在と同じような待遇を与えよう、こういうようなことになつております。しからば日本の民間飛行機が外国に出る場合は、民間航空條約に入らぬでも、講和條約の効力発生後は、日本の飛行機も外国へ出られるのか、こういう問題があるのであります。條約の面ではその点はつきりしてないのでありますが、講和條約発効後、国際民間航空條約に入らなくても日本の飛行機は外国に出て行けるのかどうか、この点を確かめたいと思います。これについて大臣の御意見を承りまして私の質問を終ります。
  99. 大庭哲夫

    ○大庭説明員 お答えいたします。その問題につきましては御説の通りでありますが、先方の四年間という問題は、現在乗り込んでいる会社、現在九つの会社が乗り込んでおりますが、これに対して、それから今後乗り入れて来るであらう会社に対しまして、まず四年間を取得権益として認めようというわけでありますが、日本が先方へ乗り込んで行く場合は双務協定を結びまして、その双務協定によりまして、日本は自由に向うへ乗り込んで行くことができるようになる。従いまして、双務協定をつくつたあとでないと、先方へ乗り込めないということになります。
  100. 小坂善太郎

    小坂委員長 上林山君。
  101. 上林山榮吉

    上林委員 今回のルース台風に対する質問でありますが、午前中この問題についていろいろ質問したわけであありまするが、ただいま私が特にこの機会に発言を要求したのは、港湾と漁港に関する復旧について諸般の関係から、大蔵当局が今までと同じような査定の方針で進むということになれば、これはさいの河原式結果になりまして、いくら復旧をしても何にもならない。結局国費濫費するにすぎない。こういうふうに考えられますので、私ども今度の台風をながめて、しかも漁港と港湾をつぶさに調べたのでありまするが、それによりますと、相当強いといわれておる防波堤がほとんどなくなつてしまつておる。だから普通の考え方では、今後復旧をやつても何にもならない。そこで運輸省の技術的な方面の考え、あるいは水産庁の技術的な方面の考えをもつてして、どういう計算のもとに技術的な改良を加えようとするのであるか。私はこの際特に注意を喚起し、しかも注意を喚起するばかりでなく、これに積極的に取組んでもらいたい。こういうわけでただいま両大臣及び両当局の関係者にこの意見を求めておるわけであります。簡單にいいますと、單なる復旧ではなくして、改良を含む復旧を今度はやらなければならないという点が一点。  それから港湾の計算、あるいは漁港の修築、あるいは漁港をつくるときの計算は、風速はどの程度まで大丈夫である、あるいは高潮はどの程度くらいまでは大丈夫であるという一つの技術的な基準によつてこれが計算され、これが修築あるいは新築をしたはずでありまするが、この辺の事情を單にわれわれは予算をもらうという意味だけではなしに、もう少しくこういう技術的な改良改革ということが今日必要になるのではないかという点。それにさらに加えて申し上げたいことは、その確実であるという計画のもとに工事を進めた場合、この工事は予算通り計画通り行われておるかという点。私どもが実地に港湾や漁港を、あるいはその他の道路もそうでありまするが、緻密に今回調査をしてみますと、しろうとが少し注意をしただけでもわかるように、技術的良心によつてこれがなされておらない、拔け穴が多い、監督が不十分である、こういう点を痛切に感じたわけであります。これに対してこの際私は両当局の注意を喚起するばかりでなく、これに対する方針を承りたい。そして財政当局に対して、相当積極的な責任を果す要求をしてもらいたい、こう考えまして、ここに機会を得まして発言をしたわけであります。
  102. 山崎猛

    ○山崎国務大臣 ただいまの、御意見を加えたるお尋ねは、国家が国費をもつて公共の工事施設をなす場合における基本線に触れたるお尋ねであると考えるものであります。もちろん技術当局者としては、現在持つておる科学的知識と経験とをもつて、最善を期して、その標準を定めて工事の施行をするということは、当然の話でありますけれども、このたびのルース台風の場合ばかりでなしに、かつて神戸を中心として、今から十数年以前のことでありますが、非常な暴風雨の災害をこうむつたときにも、至るところの河川、堤防、橋梁、ことにセメントの橋梁等の場合に、ただいま上林委員のお尋ねになつた趣意と同じような結果が出ておつて、安全線以上の災害が出て来た場合には、その上を越えて新たな安全線の標準を立て直さなければならないような場合が出る。その当時の土木当局——内務省でありましようか、においては、この研究をやつたはずなのであります。今回またルース台風九州の大部分をなめ去つた場合に、ことに鹿兒島の沿岸において、御指摘のような事情があつたということを承つて、ごもつともだと私ども考えるのであります。もちろん、これまでもいいかげんにやるというようなことはあり得ざることで、科学的なよりどころある何年かの平均安全率をもつて工事は施行されたに違いないのでありますけれども災害自体がその線を越えて来た場合には、これはいかんともすべからざる状態に相なるのであります。今私は技術的にそれを申し上げる知識、材料を持つておりませんが、しかし国家の国幣を費して設けた公共の工事施設が、安物買いの銭失いのようなことになつて、少しばかり儉約して工事の幅を数多く広げるというような、軽薄な功名心にかられて国幣をむだにするというようなことは、国民に対する重大なる責任でなくちやならないのでありますから、御指摘までもなく、今後もそれらの地帶を十分調査して、そうして今後の工事施行にあつては十分注意をいたすように、それぞれ主管責任者において担当官に十分な指導と命令を与えることにいたしたい、かように考える次第であります。詳細な計数上の点は技術当局者からお答えしなければ、私からは持合せありません。
  103. 山本豐

    ○山本(豐)政府委員 ただいまお尋ねの点でありますが、もとより漁港につきましても、ただいま山崎運輸大臣から申されましたように、要するに多く予算らをとりまして重要な漁港について、できるだけ早く整備をするということは必要でありますが、それと同時に、とりましたこの予算の実施につきましては、最も技術を生かしまして、慎重にやらなければならぬということはお説の通りであります。水産庁といたしましても、技術方面は私しろうとでありますが、府県府県営でやる場合を仮定いたしますと、その設計等につきましては、水産庁に申請がありまして、それはいろいろな角度から十分検討を加えておるわけであります。しかし実際の工事の段になりますと、一々水産庁が出張つて参るわけではありませんので、府県自体でいろいろと指導してやつておるわけであります。またその府県のやり方について、水産庁としても十分監督の責任があるわけでありますが、工事を開始するにあたりましては、たとえば風速であるとか、あるいは高潮であるとか、一応の点は十分考慮を拂つておるわけでありますが、今回のルース台風のようなああいう異常の場合には、必ずしも十分ではないということが実証されたわけであります。今後これらの点については、十分技術面におきましても検討いたしまして、支障のないように運んで参りたいと考えております。御承知のように、一つには漁港につきましては、水産庁の人員、また府県その他の監督におきましても、その漁港の実態なり技術面のほんとうのエキスパートが非常に少いのであります。これは今後の漁港行政をやる上におきまして、非常に考えなければならぬと思つておるのであります。しかし目下の行政整理というような事情のもとにありましては、なかなかそういう方面の人員というものも、簡單には得られない事情もあるのでありますから、完全なる漁港行政をするというためには、そういう面にもさらにわれわれとしましては努力をいたしまして、内容を充実して参る必要があろう、かように考えておるわけであります。今回の経験を十分生かしまして、できるだけそれらにも考慮を拂いまして、今後の監督その他に対しましては考えて参りたい、かように思つております。
  104. 上林山榮吉

    上林委員 運輸大臣及び港湾局長等にもう少しつつ込んでこの問題について注意を喚起し、並びにお尋ねをしておきたいと思つたのでありますが、この点は遺憾でありますので、いずれ機会を得てさらにお尋ねを続行してみたいと考えております。  ただいま漁港の関係について水産庁次長からいろいろ話がありましたが、その中で、運輸大臣もそうでありましたが、一応今までの経験に徴して、技術的な検討を加えて修築あるいは新築をしたのであるけれども、それよりも高い基準の災害であつたので、やむを得なかつたのであるという結論をお話になつたようであります。私も一応それを了といたしますが、先ほどから申し上げている通り、私は実地に見聞いたしまして、技術者ではないけれども、私もから見てでさえ、これでは普通の災害の場合でも、必ず被害を受ける状態にあるということを直感したのであります。その観点から、技術的にいろいろ地方の技術者、中央の技術者について検討を加えてみますと、われわれの直感通りであります。今度のルース台風が今までの台風より大きかつたことは事実であるが、何も大きかつただけでそういう災害をこうむつたとは私ども思いません。この点は私は今後慎重に検討される必要があると考えます。  第二点は、それならば技術的に検討を加えて、今後の復旧の善処したというお話でありますが、これについては私が先ほどから申し上げている通り、單なる復旧にとどまらず、改良を含めて思い切つた復旧をやる、私どもはこういう強い要望を持つております。これに対しまして水産庁当局ではどういう考えを持つておられるか、單にその場限りの質疑応答のやりとりだけでは、もう今日はだめです。どうしてもこの際根本的に技術的に考えていただかなければならぬと思うのでありますから、もしあなたが事務当局として技術者と十分の打合せがないとするならば、適当な機会でもよろしいし、あるいは今漁港担当官も見えておるようでありますから、特別に委員長の発言の許可を得て、この際私どもはもう少し良心的な検討を加えておきたい、こう考えるのであります。いずれでもけつこうでありますから、所信の一端をこの際承つておきたいと思います。
  105. 山本豐

    ○山本(豐)政府委員 ただいまの御説はしごくごもつともなことであると思うのであります。ただ従来もそういう気持はあつたのであります。これは実際問題としまして、財政当局から予算が幾ら出してもらえるかという問題ともからみ合つておりますので、少数重点的に、いわゆる改良を含めて、徹底した改修をやり、復旧をやるということは、むろん理想としてけつこうでありますし、またわれわれも事情の許す限り、そうありたいと念願するものでありますが、問題は予算関係もございますので、われわれとしましては、そういうつもりで極力とれる範囲の最大限の予算を獲得いたしまして、そういう方向に持つて参りたいと考えておるのであります。技術の点等につきましては私しろうとでありますので、それらのことをはたしてどういうふうに内容的に考慮を拂い得るかという点につきましては、技術者、専門家等とよく相談いたしまして、またの機会にお答え申し上げたい、かように思います。
  106. 上林山榮吉

    上林委員 ただいま水産庁次長からきわめて熱心なお答えがありましたが、その中で予算の面において常に制約を受けるから、思うような工事ができないということでありますけれども、私はまず現業当局に要望したいことは、何といつても技術の面についてはあなた方は権威者でありますから、技術の上から行くと、どうしてもこれだけなければ、これくらいの台風でもこわれるのだという強いもう少し良心的な御研究と、しかもその御研究の上に強く財政当局にこれを要望するところの勇気がほしいと私は思います。その勇気がなくして、どうして漁港の行政をうまくやつて行くことができましようか。ここで私は、先ほどから大蔵大臣に対しても、あるいは河野主計局長に対しても、單なる復旧ではだめである、どうしても改良をある程度は含んだ復旧でないと、今後の災害を防除することはできぬ、ひいて被害が起るばかりでなく、国費濫費にもなるのであるということを強調したわけでありまして、こういう災害を利用して、心要以上に予算を消費せよ、こう言うのではないのでありますから、あえて私は河野主計局長をここに呼び出してさらに要望はいたしませんが、どうぞ單に傍聽しておるという意味ではなしに、私どものこの真劍な、しかも被害地の真劍な要望に一歩前進して御協力を願うように、私は財政当局にもあわせてこの機会に要望いたします。  建設大臣は見えませんから、建設大臣等に対する質疑を留保いたしまして、これで質疑を終りたいと思います。
  107. 小坂善太郎

    小坂委員長 本日はこの程度にいたしまして、明日は午前十時より開会、質疑を継続することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十九分散会