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1951-10-26 第12回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十六日(金曜日)     午前十一時二十七分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 有田 二郎君 理事 橘  直治君    理事 苫米地英俊君 理事 西村 久之君    理事 中曽根康弘君 理事 川島 金次君    理事 風早八十二君       天野 公義君    江花  靜君       小淵 光平君    角田 幸吉君       川端 佳夫君    北澤 直吉君       坂田 道太君    島村 一郎君       庄司 一郎君    田口長治郎君       玉置  實君    中村  清君       中村 幸八君    本間 俊一君       南  好雄君    宮幡  靖君       平川 篤雄君    藤田 義光君       小林  進君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         通商産業大臣  高橋龍太郎君         運 輸 大 臣 山崎  猛君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  石井 昭正君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十六年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十六年度政府関係機関予算補正(機第2  号)     —————————————
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  先般委員長に御一任を願いました参考人の入選につきましては、次の通りに定めましたから御了承を願いたいと存じます。朝日新聞論説委員土屋清君、経済団体連合会理事日本化薬社長原安三郎君、全国銀行協会連合会会長千代田銀行頭取金良宗三郎君、東京大学名誉教授農村更生協会会長那須浩君、日本労働組合総評議長炭労委員長武藤武雄君、以上五名の諸君にお願いをいたしました。なお日取りにつきましては、来る二十九日月曜日午前十時より意見を聽取することといたしますから、御了承を願います。  昨日に引続きまして質疑継続いたします。宮幡靖君。
  3. 宮幡靖

    宮幡委員 予算委員会におきましては、まず大蔵大臣財政金融政策等につきまして基本的な方針をおただししたいわけであります。そのことはくどく申し上げるまでもなく、平和條約の委員会等におきまして、講和後の財政経済問題の輪郭もだんだんとはつきりして参つたわけでありますが、この際当委員会の当然の責務といたしまして、基本的な政策について靖所見を伺いたいわけであります。会議の進行の都合上、順序はいかがかと思いますが、運輸大臣に対しまして各論的な、しかも基本的な政策とはあまり関連のないと思われる部面について、一、二お伺いをいたしたいと思うのであります。  まず日本独立後に取上げられます諸般の問題の中に、海運協定ということは大きな一つの話題であろうと思つております。占領下あるいは独立以前においてさえも、これに対しまして適切な措置が持たれるということを国民はひとしく待望しており、産業人もまた経済人も、これに多くの期待を持つておるわけであります。ただいま各国との海運協定はしばらく別といたしまするが、対米の協定はどの程度までお進めになつておるのか。もちろん講和條約発効以前のことでありますので、微に入り細に入る点につきましては、御発表できない点もあろうと思いますが、おさしつかえない程度におきまして、運輸大臣から計画及び御所見を伺いたいわけであります。ことにマグナソン米国上院議員等は、日米貿易につきましては、相互の五〇%の貨物の運送をすることについては基本的に異議がないものである、また日本商船隊に対して、トン数制限等は主張したくない、少くとも日本国日本は二百万トンくらいの船腹の保有者はぜひ必要であろう、しかるのに現在は八十万トン程度であり、年間造船計画も三十五万トン程度であつては、はなはだ心もとないように思う。これは日米経済協力の一環として好意ある御意見だろうと思つておりまするが、さらに重大なことには、もし海運協定が円満に成立しないというような場合におきましては、あるいはこれが遅れるというような場合におきましては、講和條約の批准にも若干の影響があるではなかろうか等の国際情報も伺つておりますので、これらを総合いたしまして、運輸大臣の御意見を承りたいと存じます。
  4. 山崎猛

    山崎国務大臣 日本海運政策国策の重大なる一項目であろうと考えております。ただいまお尋ねの海運協定の点でありますが、将来の独立後における日本あり方としては、わが国海運国一つとして活動しなければならないのでありますから、ひとり日米間のみならず、広くその他の国々との間においても、当然協定があつてしかるべきだと考えているような次第であります。ただ、ただいまの状態におきましては、ここに日米間だけのことをお考えてみますると、御指摘のように、アメリカ上院議員マグナソン君が先般日本に参つた際にも私ども数回親しく会談をいたしておるのであります。さらにまたマグナソン君が帰米後における意見等も、ただいま宮幡君がお話のような意見をあちらで公の席上において述べているのであります。私どもはそのように進めることについてのいろいろな期待とあわせて希望を持つのでありますけれども、現在の段階におきましては、まだ具体的にアメリカ側からのさような働きかけはない実情なのであります。私が申し上げるまでもなく、海運の問題は船の保有トン数造船の点までわたりまして、海運国の間においては、日本が将来どうなるかということについて、重大な関心を持つていることは今御指摘通りであるのみならず、單なる関心にあらずして、よき意味か悪い意味か、あるいは過大評価かもしれないのでありますが、ややもすれば、日本が何か海運界に新たなる強き一国として進み出て来るというような予想のもとに、今日の日本海運の実力から申しては、はなはだありがた迷惑なのでありますけれども警戒気味が非常に多いのであります。でありますので、これらの状況をも十分に考慮しつつ、無用恐怖無用の疑惑を受けないようにして、新しい日本海運をすなおに国際的に打立てて参りませんと、日本海運の将来の円満なる発達の上において障害となろうというので、私どもはこの点については十分注意をしつつ、誤解なきようにという態度でいろいろな施策をやつておるような次第であります。従いまして講和批准も済み、諸外国批准等も順次進んで来て、自然の協調がかもし出されるにつれて、積極的にアメリカなり英国なりその他海運関係国々から出て来るであろうと考えているような次第であります。それらの模様を見つつ、日本あり方を最もいい姿に浮び上らせなければならないというので、世界各国海運のあらゆる情勢について深く研究調査しつつある次第であります。現在におきましては、日米海運協定が具体的に近い機会に実現するようなことには、まだ相なつていない次第でありますから、さよう御承知を願いたいと思います。
  5. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの御説明は、現下の情勢としてはしごくごもつともなことであり、またその言葉の中には、将来に対する御構想、御抱負等も含まれておりまして、現段階におきましては満足の意を表するのにやぶさかでございません。  けれどもさらにこの機会におきましてもう一点お伺いいたしたいと思うのでありますが、あるいはただいまの状況におきましては、いささか言い過ぎといいますか、取越苦労と申しますか、さようなきらいもあろうかと思います。従いまして速記にとどめてぐあいの悪いというような点がありといたしますならば、あとから委員長のおとりはからいで、しかるべく御訂正あるいは削除等を願うといたしまして、一つの将来に対しまするお考えをこの際お伺いいたしたいと思います。  日本貿易は、戰前日本のいわゆる平常経済の当時、ただいまで申すと大正の年を少し出て参ります昭和七年とか十一年というような年間の国の国際收支中心といたしました経済力を見ますると、当時の日本円貨標準におきまして、おおむね一年間に十億円程度のいわゆる輸入超過国際收支状況であつた。この十億円の輸入超過国際收支を調整して参りまして、いわゆる貿易じりのバランスのとれましたのは、一に海運の力であつたように記憶いたしております。あるいは数字は違うかもしれませんが、当時六百五十万トンに上りまする優秀商船隊、これに乗り組みまする優秀なる日本の海員、並びに船足も各国商船に比べまして、おおむね一ノツトくらい早かつたはずであります。従いまして、これらの六百五十万トンの商船隊世界七つの海に活躍いたしまして、円勘定をもつて受取りました運賃が、おおむね貿易外收入として八億五千万円くらいあつたと思います。他に観光收入として一億五千万円、合せまして十億円、これで日本国際收支バランスを得ておつたの戰前平常経済のように、ただいま正確な資料は持つておりませんが、記憶いたしているわけであります。従いまして現在の日本経済自立の態勢は、正常なる貿易、いわゆる原料を輸入し加工しあるいは製品といたしましてこれを輸出して外貨を獲得する、こういうような方向にのみ重点が置かれて経済自立が考えられているのでありますが、御承知通り手持ち外貨の異常なる増大ということは、これに見合います国内円資金の膨脹になります。この点については後刻また大蔵大臣にお尋ねいたしまするが、これは主眼点ではありません。さような体形におきまして、貿易もいたずらに輸出超過のみを謳歌しまして、国内経済がみずから崩壊する過程は嚴に警戒すべき段階であります。従つて海運活動等におきまして貿易じりを調整するというような、戰前平常日本経済に立ち返る機運がどこから生れて来るか、これは神でなければ予測はできないかもしれませんが、さような状態がむしろ日本の正しい経済状態ではなかろうかと思います。そういう意味から参りまして、ただいま二百万トン程度必要であろうといわれておりまする日本の船を、もし独立後に自由に造船が許されるといたしますれば、もちろん許されるでありましようが、さような場合におきましては、運輸大臣といたしましては、どの程度の目標をもちまして造船計画を御推進になりますか、この点をもしおさしかえがあれば速記等委員長のおとりはからいで適当に処理していただきます。
  6. 山崎猛

    山崎国務大臣 戰前における日本貿易状態はただいまお話通りで、私も御同感の意を表するものであります。戰後日本復興自立のかぎは貿易立国策というような論が、政界、財界、むしろ国論として起つておるのであります。貿易立国策の根幹をなしているものは、産業復興生産増強でありまするけれども船舶なくしてはなし得ざるところであります。私ども海運主管者として、それに大きな義務と使命とを感じておるような次第であります。今日御承知のように安本の数字によると、日本の海外からの輸入数量年間一億五千万トンと大づかみにつかみまして、現在の日本外航に就航し得る船の数字から、申せば、その半ばを自国船によるというようなことは、ねらいではありまするけれども、これはトン数関係で非常な隔たりがあるわけで、今後ある程度計画造船を数年にわたつて続行するにあらざれば、達し得ざるような状態にあるのであります。詳しくはここに海運局長がおりますから、こまかい数字等は御必要があれば事務的にお話申し上げるのでありますが、私が大づかみに申し上げておる状況から申し上げますならば、現在日本は支那海が封鎖されて、日本工業にあるいは国民生活に必要な物資輸入する面で、遠く太平洋を隔ててアメリカ西岸あるいはパナマを経て大西洋まで遠出をして輸送せざるを得ざるような、戰前とは異なつ情勢に置かれておるのであります。従つてそれらの遠距離に出て行つて貿易をするような優秀船の必要を、非常に痛感しておるようなわけでありますが、現在において、これからの目的を果しますためには、どれくらいの力を持つておるかと申しますると、定期航路に充て得るような優秀なものはまず二十万トン余りであります。不定期的に航海すべきような程度のものは数十万トン、合せて百万トンに及ばない程度の船がどうやら動いておるような現状なのであります。将来のねらいとしては、どうしても二百万トン——というよりは二百五十万トンくらいのものを日本が持つのでなければならないのみならず、不定期的に運航する船を、定期的に動くような優秀船にかえて行かなければならないような姿にあるのであります。もし日本輸入する物資の半ばを自国船によつて運ぶとしまして、現在の日本の船の力では、さらに百万トン近い船が足りないのであります。どうしても日本計画的に船をふやす方法を講じなければ、高い船賃によつて日本原材料が支配される。従つて日本生産工業のコストが高くなるというのでありますから、貿易国策見地からいえば、どうしても自国船によつて、安い船賃原材料を運ぶということでなければならない状態にあるのであります。われわれは今日どうかして半分の荷物を自力によりたいという悲願を持つているが、なおかつ数十万トンの不定を感じておるのであります。戰前は御承知通りに、大体そういうような物の七〇%以上を自国船で運ぶような海運力を持つてつたのでありますが、今日は今申し上げたようにその逆で、やつと二、三十パセントのところを自国船で運ぶというような現状にあるのであります。現在でも英国はあの貿易国でありながら、もうすでに六十何パーセントというものを自国船によつてつているのであります。戰前の姿に英国はしんしんとして近づきつつ、復旧しつつあるというような現状にあるのであります。これに比べてみますると、わが日本現状は前途きわめて遼遠なのであります。こういう状態であるのでありますから、日本が少しくらいの船をつくつたからといつて、決して世界海運界に脅威を與えるような心配はないはずでありますけれども、いずれにしても、戰前における日本商艦隊七つの海における活躍が、いろいろな意味において、むしろ悪い意味において恐怖の材料となつて、今なおその恐怖が現存している。再び日本がさような状態になつて世界の海を荒らすのではなかろうかというようなことが、今日平和的の講和会議が取結ばれつつある際にもかかわらず、なおかつ、こういう危惧の念が国際海運界に拂拭されずにあるということは、まことに残念なことであります。しかし、今日の日本造船に投じ得る資金やりくりから考えて行くと、それは日本の力に対してあまりに過大評価をされているものでありまして、十万トン、二十万トン、あるいは三十万トンくらいの船を年間につくることさえ、なかなか容易ならざる資金やりくりをせざるを得ず、四苦八苦の状態であるような次第であります。ただいま申し上げましたようなことについて、これをもし具体的に数字によつて説明を必要とされるというような御要求でありましたならば、事務当局より数字をあげてお答えを申し上げることにいたします。
  7. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまのお話で大体の方針がわかつたわけであります。具体的の数字等につきましては、また運輸委員会等におきまして、特に発言を求めてお尋ねすることにいたしまして、本日は省略いたします。大蔵大臣もお見えになりましたので、全般的なことをお伺いいたしたいと思いますが、せつかく質問を始めましたので、ひとつさらにお伺いいたしたいと思います。  日本造船といいますか、船舶運営業者といいますか、そういう方面については、見返り資金の融通、あるいは市中銀行との協調融資と、あらゆる点におきまして、船舶増強施策が講ぜられておるわけであります。従いまして、この温床の中にこれらの業者が甘んずることは、日本経済自立段階におきましては、とうてい国民として納得ができないわけであります。将来伸びんがための犠牲を拂うということでありますならば格別でありますが、さもない以上、ただ現地の船舶トン数のきわめて少い段階に、政府資金その他の産業資金特別待遇を受けて順次伸びて行こうとする段階におきまして、最近海運不正競争ということか暗黙裡にもくろまれておる。私ども保守系の人間でありますから、さような過激な言葉を用いませんが、もしもわれわれと志を異にする方々がありといたしますならば、誇大に申せば、国賊とでもいうようなことになるでなかろうかと心配いたしております。そう意味におきまして、この海運不正競争が、今のような小さな海運の業界の姿において仕組まれるなどということは、まことに残念にたえません。もつとこれを具体的に申しますと、現在の海上運送法第三十條にきめております禁止規定がありますが、これらに対する違反行為が、現に海運業者の間で仕組まれておることを残念ながらぼつぼつ聞いておるわけであります。公正取引委員会につきまして——おせつかいだというおしかりがあるかもしれませんが、調べてみますと、これは相当事実に近いような状況になつております。これに対しまして、日本海運が伸びて行くという前提に立ちまして、大乗的見地から、運輸大臣としては何か御施策をお持ちでございましようか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  8. 山崎猛

    山崎国務大臣 御指摘の不公正な海運業者海上運輸競争というようなことは、ひとり国内海運界を乱すことになるばかりではなく、国際的の信用を落すこと非常なものでありますから、これに対しましては、日本が新しく国際場裡に浮び上つて行く、頭を出して行かなければならないという場合には、特に関心を向けて十分監督して行かなければならないことだろうと考えるのであります。さらにまた今御指摘の点について、少しばかり事務当局から申し上げることにいたしたいと思います。
  9. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 ただいま御質疑になりました海上運送法における不正競争でありますが、海上運送法独占禁止法規定も排除いたしまして、海上運送については協定行為ができる、こういうことになつております。その場合に不正競争疑いがある場合には、その協定を許しておるにもかかわらず、公正取引委員会でこれを取上げて禁止することができる、こういうことになつております。従いまして現在問題に相なつておりますのは、外国船会社も加盟しておりまする海運同盟において、いわゆる海上運送法規定しておる禁止條項に該当するのではないかという疑いをもちまして、ある外国船会社公正取引委員会に提訴いたしたのでございます。それを公正取引委員会において、いかに取扱うかということを目下考慮中のようでございます。そのことがいわゆる不公正行為として流布されておるのじやないかと、かように考えます。  それからもう一つ海上運送法でやはり禁止行為として幾つかの事項を列挙しておりますが、それと同様な事項公正取引委員会で不公正行為の基準として取上げて、これを目下公聽会にかけて、各方面意見を聽取されておるような状況であります。そういうようなことが誤り伝えられているのではないかと思います。
  10. 小坂善太郎

    小坂委員長 宮幡委員ちよつと御相談したいのでございますが、運輸大臣は、運輸委員会におきまして、運賃値上げ法案の採決をいたしまする関係上、そちらへ出席したいというお申出でありますが、いかがでありましようか。
  11. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまこちらの方からお願いいたしまして、もしこの委員会審議に余裕がありました場合には、運輸大臣に御質問をさせていただくことにいたしまして、本日はこれで保留させていただきたいと、こちらからお願いするつもりでおりました。
  12. 小坂善太郎

    小坂委員長 けつこうです。
  13. 宮幡靖

    宮幡委員 それでは予算中心といたしました本委員会審議に、総括的な質問をいたしたいと思うのであります。もちろん時間等の関係もありますので、なるべく簡單にいたしまして各論につきましてはおもな点、一、二お伺いいたす程度にいたしたいと思うのであります。すでに財政経済の大体の輪郭大蔵大臣財政演説、その他の機会においてはつきりいたして参りました。この際どうしても日本の将来に対する財政金融上の対策というものが重点的になつて来ることは必然であります。そこでわが国の今後の存立可能の経済を維持すると申しましようか、それに対する基本的な問題を取上げてみますると、ますます生産を増大しなければならないことはもちろんである。輸出を振興させることももちろんである。国民生活の水準の低下を防いで行く、講和後予想せられる財政支出の増加をこれらによつてまかなつて行こうというような考え方中心になろうと思います。これは大蔵大臣の御構想は過日の財政演説において、安定と能率と発展、こういうような建前で大いに希望ある御所見が表明されて、国民ひとしく力強く思つておるわけでありますが、しかしこの根本となるのは、何と申しましても、来る二十八日来朝を予想されますドツジ氏のいわゆる御指導にあります。昭和二十四年来、現大蔵大臣がとつて参りましたいわゆるドツジ・ライン継続政策である。こういうことがうかがい知れるのでありますが、巷間あるいはドツジ・ラインをこの際独立とともに変更した方がよいではないかというような意向も相当ないわけではございません。さような意味におきまして、高踏的な財政演説によりまして、広く大衆に認識をさせ得ない点がある。ことにインフレを徹底的に抑圧するとか、健全財政を引続き維持するのであるとか、そうして国民の負担はあくまで調整して参ろう等基本方針につきましては、どうも独立というものの安易感から参りまして、考え方にゆるみがあるような気持がありますが、この機会におきまして、大蔵大臣としてのドツジ・ライン継続、及び不動の信念について、御所見をまず承りたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 財政演説で申し上げました通り、今までの基本観念講和後においても持続するのに間違いはございません。今までの政策わが国再建自立にぜひ必要なことでありまして、ああいう経済状態のときに今までとつた方策は、どこの世のどこの国にも通じて誤りないことであります。まだまだ日本経済は脆弱でございますので、今までの方針をずつと続けて参ります。しかし経済規模がずつと拡大して、経済の力がふえて参りましたならば、積極政策というふうな方向に転ずる場合もありましよう。それはまだまだ先のことであると考えます。
  15. 宮幡靖

    宮幡委員 そこで財政演説の中に、現在六億ドル程度外貨を保有する、本年一億七千四百万ドルの受取り超過の見込みであつてガリオアによる援助がなくても、一億二百万ドルの黒字になると見込まれる、こういう趣旨のお話がありました。ちようど大蔵大臣サンフランシスコ平和会議に御出席になりまする八月下旬におきまして予想されました外貨関係は、二十六年度輸入計画としまして、ドル地域は十億ドル、ポンド地域が五億ドル、オープンアカウント地域が四億ドル、これに貿易外收入が、ドル地域が一億五千万ドル、ポンド地域が三千万ドル、オープンアカウント地域が一千万ドルという仕組みになつております。これをドル地域に限定して話してみますると、十一億五千万ドルの輸入のための外貨がある。これに対してドル地域正常輸出は三億ドルの見込み、進駐軍関係のドル拂い、いわゆる朝鮮事変等の特需これが五億ドル、これには大体貿易外收入も見込まれておるようでありまするが、これを大ざつぱに八億ドルといたしましても、三億五千万ドルの不足があります。こういう状態において、ガリオア資金の一億九千五百万ドルが打切りになりまして、特に日英支拂協定関係で、ドル・クローズの制度が廃止になりまして、もちろん日本の手持ちポンドは五千万ポンドを限度とするように輸出入を調整するという協定はできてはおりまするが、ドル・クローズの撤廃、結局スワツプすることなどもある程度困難を感ぜられる事態におきまして、ガリオアが停止になりましても、一億二百万ドルの黒字が出るということは、その後の状況変化だと私ども推察いたしますが、この機会におきまして、概要の数字でけつこうでありますが、かような貿易收支になりますことを、大蔵大臣から内容について御説明を伺いたいと思います。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 大体今お話なつたような数字でございますが、ちよつと違いますことは、特需関係が三億ドル余りでございます。それから特需以外の貿易外收入が四億数千万ドルございます。そこでドル地域のところだけでは、とんとんか超過するかと思いますが、オープン・アカウントの方でドル勘定で行くことを考えることと、それから最近ポンドが非常に平持ちが多くなつて来て、これは季節的な関係でございまして、十一月、十二月から来年の二、三月にかけて、濠州の羊毛の輸入が伸びて参りますので、八月はちよと不振でありましたが、大体予定通り行くのではないかと考えております。
  17. 宮幡靖

    宮幡委員 その点はそれではつきりいたしました。ところで大蔵大臣の御説明のように、手持ちの外貨が増加する、年来の最終におきましても、一億ドル以上の黒字になる、こういう予想になりますと、ドルに見合います国内の円資金は、当然増加せざるを得ない。従いまして円資金の増加を来しますことは、インフレと解釈してよろしいか。昨日か有田委員のお尋ねに対しまして、大蔵大臣はこれはいい意味のインフレだという言葉を使われた。この言葉は非常に含みの多い言葉で、私も傾聽いたしたわけであります。もちろん私はインフレは悪性だと断ずる何らの根拠を持たないのでありますが、いい意味のインフレにいたしましても、結局は習い性となる、習性となるおそれが多分にあるわけであります。従いましてドツジ・ラインから申しますと、インフレの徹底的抑圧という面につきましては、これらの外貨をインフレ抑止の方向に使つて参らなければならないことは当然であろうと思います。もちろん大蔵大臣も考えられておることと思いますが、輸入を大いに促進する、同時にしばしば考えられております外資導入の問題につきましても、これをもし外貨で入れますと手持ち外貨がふえたと同じような状況になる。物資で入れますと、インフレの即原因にはならない、こういうような関係になると思いますが、大蔵大臣といたしまして、手持ち外貨の増大に対しまするインフレ抑止に対しまする御対策で伺いたいと思うのであります。なおできましたら通産大臣からもこの点についての御所見を承りたいと思います。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 輸出輸入に比べまして、うんと伸びて参りますと、いわゆる輸出インフレを起すのであります。輸出インフレの対策といたしましては、ずつと昨年来とつて参りました輸出インフレによる通貨の膨脹を財政資金でまかなうというのが輸出インフレ対策であるのであります。従いまして当初の見込みよりもドルの收入が多くなつて参りますので、外為会計へ五百億円入れる、インヴエントリー・フアイナンスを三百億円追加することとし、また国際通貨基金加入への二百億円は、外為にたまりましたドルを買つて来るのでありますから、私は当初の五百億にさらに三百億プラス二百億で、この輸出インフレの資金増大によるインフレ懸念を防止しようといたしておるのであります。もちろんドルが多くなることは、貿易規模の拡大に伴つて当然考えなければならない。それによりまして国内の通貨膨脹によるインフレを防止するためには、今までの策を今後も続けて行く考えであります。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  19. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 インフレの問題は、ただいまの大蔵大臣の御答弁で盡きておるように思いますが、産業から見まして、今御指摘のような心配もあると私ども思います。しかし産業方面から見まして、輸入が相当計画——八月、九月はちよつと停頓はしておりましたけれども、年度の予定といたしましては、一向狂いはないので、相当輸入ができております。生産方面もただいま電力事情で非常に心配しておりますが、これさえなければ予定通り、あるいは予定以上に行つておるので、産業方面からはまだそうインフレを心配する状態になつていないかと私は考えております。
  20. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁は、きわめて力強いものがありましたし、また通産大臣からも産業方面からインフレを心配する段階にはまだなつていないというお話でありました。これも見方でありますから了承いたしまするが、要は外貨が増高して参りました場合においては、インフレ抑止の方策としましては、生産の拡大ということが一番の要件でございます。外貨を獲得し、これで輸入を増大いたしまして、手持ち物資をふやし、そうして物の生産をふやす、これを実行する期間が短縮されればされるほどインフレは抑圧されるそういう考えから通産大臣の御所見をあわせ伺つたわけでありますが、おおむねそれに近い御答弁をいただきましたので、この点はこれで打切ります。  さてかような状況から外貨を獲得いたしますと、それに見合う円資金の膨脹によりまして、過渡的なインフレが起る、これが国民の習性となつてはいかぬというような一つの見方に対しまして、逆に今度は外貨導入によらず、あるいは貿易の規模の拡大による外貨獲得のみによらずいたしまして、国の経済いわゆる自力をもちまして、何らか国内の産業の振興をはかろうというような構想が巷間に考えられて参りました。日本の現在の経済力のように底の浅いものにおいては、これを考えることは私個人としましては、無謀の至りと思うのでありますが、たとえて申しますと、公債の間接発行、日銀引受、これは現在財政法第五條で禁止されておるのでありまして、だれがやりたくても、法律も改正しないとできないのでありますが、その不可能を可能のごとく申しまして、まず日本の公債発行によります財政資金の調達、これを散布することによつて国内産業の開発、振興等を期する、その場合において担保力ができるからこれを見返りとして帳消しにする、そして外貨等を獲得する手段が適切であろうなどと、まことしやかに言われるのでありまして、私どもはこの議論につきましては一笑に付したいというような個人的な気持を持つておるわけであります。けれどもこれが一つの輿論となつて参りました場合には、一応政府としても、これに対しまする対策とまでは行かないでも、一貫した方針のもとに、これに適切なる反省を促す措置はとられてしかるべきものだと私は考える。ことに日米経済協力の面におきましては、あくまでも商業採算を無視したものは取上げられない、そういうものは成立するものでない。輸出振興の面においても商業採算を無視することはまかりならぬ、それでは決して日米経済協力の提携はできぬだろう。あえて司令部の御示達をまつまでもなく、あらゆる面においてこれが示されておるわけです。すなわち国内の低物価政策を推進すること、国際経済へさや寄せどころか、国際経済へまつたく一致する、ないしは日本品が良質で廉価であるというような状況にまでこぎ着けなければならぬのでありまして、従いまして輸入の促進、生産の増大、低物価政策、こういうことが一連の構想となつて参りますが、この低物価政策の推進のためには、あとからも伺いますが、金融の引締めというような監視をするような政策も打たれておるわけでありますが、大蔵大臣といたしましては、この低物価政策を今後も引続き御実行になるお考えでありますかどうか、この点を明らかにしていただきいと思います。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りに、日本の物価事情は、外国に比べまして高位にあるとも低位にあるとは言えぬと思うのであります。しかし脆弱な日本経済といたしましては、相当外国の市場に影響を受けることもやむを得ません。従いまして私は低物価政策すなわち外国の物価よりもできるだけ安く持つて行こうという方針にはかわりはありませんが、しからば今の物価を下げて行くかどうかということになりますと、これは低物価政策で下げたいと思いますが、そうは行かない、とにかく上りを押えて行く、上ることをできるだけ少くする、そうして外国市場物価が下つて来れば、もちろん日本の物価も下つて参りますし、今割高と考えられておる物価が多々ありますので、外国の物価が上る傾向にある状態において、それほど上げずに、上げ方を少くして行く、できれば下るに越したことはありません。しかし現在よりも全体的にそう下るということは、外国物価からいつてむずかしいのではないか、こういう考えを持つております。
  22. 宮幡靖

    宮幡委員 これでまことにはつきりしたわけでありますが、財政演説等にうかがわれます低物価政策なるものは、現在の物価をいたずらに引下げるという意味ではない。国際経済と見合つて上らないような段階でやつて行こう、こういう御所信であることがうかがわれまして、まことに当を得たものだと存じます。これであつてこそ冒頭にお尋ねしておきましたドツジ・ライン継続ということが、はつきり認識されるわけでありまして、すでに御承知のことと思いますが、九月十八日の読売新聞で報道されております、これはワシントン特派員の報道であります。あえて名前は申しませんが、対日政策某担当官が申しますのには、日本は今後十箇年間にインフレを再発させると破滅する、インフレ抑制は至上命令であると指摘しておる。従つて外貨の導入によつて外国為替特別会計を通じて、インフレにならないようにすることを注意して、次に日本がドルを使わなくてできる電源開発のために、ドル借款を行おうとしておるのは、ドル借款を見返りとして円資金で電源開発を行い、一万ドル借款で獲得したドル資金は、ドル国圏か円輸入した物資を加工して、ポンド圏に輸出するために生ずるドル不足を補充するのに資しようとするもののようであるが、かかるドル不足を借款で埋めて行くことは、ドツジ・ラインに反する。ドツジ・ラインとしては、ドル圏貿易一つの特別採算制をとり、その不足はドル圏への輸出であがなうか、あるいはドル圏内から輸入する物資の一部をポンド圏から輸入するようにして、そのドル使用節約によつてあがなうようにすべきである、こういう趣旨が書かれております。これは特派員の報道でありまするから、あるいはこうおつしやられたのかどうかは存じませんが、こういう警告があるのにもかかわらず、先刻申しました巷間の輿論におきましては——ただいま信用の膨脹、通貨の膨脹等で物価が高くなるのを、ある程度押えて行こうという。一つの低物価政策のもとにおいて、これは有効な引締めをやつていることをわれわれは知つておるわけであります。この低物価政策の問題を解決するのには、金融の引締めだけではこれは解決しないのである。逆の効果である。従つてどこが逆効果だというと、経済の非能率を来す。この読売の特派員の報道いたしました警告に対しましても、また反駁をいたしております。かようなことをするならば、経済の非能率を招来する、こういうことを強く言つておりますが、大蔵大臣財政演説において、安定と能率と発展とをお題目に掲げられておるわけでありまして、いやしくもこれに対して非能率などと批判を下すに至りましては、現在の池田財政とはまつこうから反対のものである。かようなものは、私といたしましては先般来申し上げますように、決して肯定すべきものではございません。けれども低物価政策についてもあいまい模糊とした点があり、あるいは外貨の導入についても、インフレ抑止の問題につきましても、はつきりとした線を出さないというと、かようなところに意外なる国内的な伏兵がありまして、日本財政経済を撹乱しようとするようなことになりはしないか、かように考えるのでありますが、この点についての御所見がもし伺えたら伺いたいと思います。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 読売新聞の特派員の記事は実は私読んでいないのであります。今お読みになつたところを見ますと、理論的に整然としておる。しかしその通りにはなかなか行かないのであります。その通りに行つて、ドル圏への輸出がふえて行つて、そうして外資導入をしなくてもやつて行けるような方向へ行くべきだということは理想でありますが、今の状態といたしますと、えてしてポンド圏の方がふえやすい、こういうことがありますので、特派員の言つたような方向で一応努力しなければなりませんが、しかしそれは言うべくして、日本の脆弱なる経済では行けません。急に産業復興はできません。従つてドルの借入れは必要でございますが、ドルの借入れをする前に日本の円資金を有効に使つて生産拡大の規模をつくらなければならぬ。宮幡さんと意見の違いかもわかりませんが、今たとえばドルを二億ドル借りて来ても、ドルを借りて来たのでは意味をなさない、物を借りて来なければ……。たとえば問題になつております水力発電にいたしましても、これは動力もいりますが、鉄材、セメント、銅、木材、こうなつております。アメリカから持つて来ますのに、鉄やセメントや銅はとうてい来ない。木材は来るかもしれませんが、これは全額としては少い。そうすれば私の想像としては、セメントが輸出されておる、鉄も輸出されておる、銅もある程度出ておるというときに、この出るもので、水力発電に必要なものをこちらで使う、そうして発電をする。そのとき外貨の獲得が減るわけでございまして、それを補つて行く方法を一応とるべきである、こういう考えで私はおるのであります。アメリカの要路の人の言つたことが理想で、そうあるべきだと思いますが、そうあるためには、やはり日本産業の合理化、規模の発展をやらなければいかぬ。金融を引締めると申しましても、私は何も全体の金融の引締めじやありません。不要不急の方を引締めまして、そうして余つたものを重点的に使つて行こうというので、何も通貨を減らそうとか、引締め方策はとらぬ、不要不急のものだけを引締めて行く。今までのように経済全体を見ずに、産業家が自分のことばかり考えて設備を拡張する、そうして後には電気がなくて動かない、こういうのは非能率的でありますので、全体的に考えて有効に金を使うようにやつて行こう。それには不要不急の方を引締めなければならないということで、全体として引締めるという考えは持つておりません。
  24. 宮幡靖

    宮幡委員 低物価政策もまた金融の引締めにも、幅もあり彈力もある大蔵大臣お話で、私は一応これで納得するにやぶさかでありません。そこでひとつきわめて事務的なことを伺つておきますが、公債の間接発行、すなわち財政法第五條の禁止規定を解くお気持は持つておりませんか。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 公債の間接発行というのは、ちよつと言葉がわかりませんが、日銀引受によります公債発行は、全然考えておりません。従いまして、ただいまの財政金融状況から申しまして、設備拡充、ことに水力等を民間資金でやるということは、なかなか困難であります。今でも本年度見返り資金から二百五十億円を予定しておりますが、見返り資金もなくなつて来るというそうした場合に、民間の資金でできない点は、国の財政資金でやつてはどうかという考えを持つております。その場合に、貯蓄債券の発行によつて民間の資金を吸收して、水力等に重点的にまわしたらどうかという考えをもつて今検訂いたしております。
  26. 宮幡靖

    宮幡委員 その点はその程度にいたしまして、ただいまの池田大蔵大臣の仰せられる低物価政策、これは物の上ることを押えて行くので、いたずらに物を安くするのではない、こういうことを基本として考えまして、しばらくこの通貨増発を抑止するという面も考えなくてはならない。また日銀の信用の膨脹を調節するという、この二つのものがただいま考えられるわけでありまして、この点について二、三お尋ねをいたしたいのであります。  九月の二十九日、これは三十日が日曜でありますから、月末でありますが、四千百六十三億の通貨を発行いたしております。ドツジ・ラインによります超均衡予算を実施せられまして以来、二十四年、二十五年の通貨の足取りを見ますと、大体九月末の発行高の三割増しというのが、これが十二月末、具体的にいえば十二月三十日午後現在、三十一日は別とします。ことしはそれに対して見合いますと、日銀の貸出しの足取りをちよつと調べてみますと、五月末が一千四百五十六億、六月末が千九百十三億、七月末が二千三十三億、八月末が二千三百七十八億、九月末が二千四百六十三億、十月二十日現在をちよつととつてみましたが、これは若干引きもとしておりまして二千三百四十三億、こういうことであります。こういうことで、日銀の貸出しが一千五百億円を越えたということは、たしか私の記憶でありますが、昨年朝鮮事変の影響を受けた十月あたりのことではないかと思います。かくのごとく信用の膨脹いたして参りますことは、即通貨の増発、年末通貨が五千二、三百億になるということも、従来の通貨発行量の統計的な基礎によりましても五千二、三百億、またこの日銀の信用膨脹の過程から比べましても、やはり同様のことが言えますが、この場合におきまして、これはもちろん悪性ではありませんけれども、私どもまじめな財政金融の小さい論者として考えますと、やはり過渡的なインフレであるという心配があるのでありますが、これらに対しまして、日銀の信用膨脹、通貨発行限界を三千九百億から四千九百億程度に引上げようということをお考えになつております関係におきまして、これ以上のいわゆる通貨増発というものが予想されないかどうか。もしされるとしたならば、どういう手が打たれるのか。また、現在の財政資金の引揚げ等の方策を通じまして、通貨並びに日銀信用の膨脹等を抑圧して行く方策はどんなふうに打たれておるか、この点を御説明していただきたいと思うのであります。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 通貨がお話通りに四千百億円台を持続いたしております。これは昨年のそれに比べまして、八、九百億円あるいは千億円の膨脹になつておりますが、これは生産の増加も、大体昨年の今ごろよりも三割余りの増加になつておりますので、生産状況、物価の状況から申しますと、四千百億円は、そうふえ過ぎるという程度のものではございません。私はこの通貨の増加ということは、何も心配はないと思います。この程度で適当だと思つております。  しこうしてお話の貸出しの増加が、昨年に比べて千二、三百億円ふえている。千二、三百億円ふえているということは、これはユーザンスの関係でありまして、昨年の十一月ごろから今年の三月くらいまでに、ユーザンス関係で甲種、乙種を加えまして、二千八百億円程度に相なる。当時日本銀行の貸出しが一千一、二百億円で、この日本銀行の貸出し並びにユーザンスによる信用供與が四千一、二百億円であつたのであります。しかるところユーザンスの期限が切れて、貿手その他の取引等で貸出しがどんどんふえて参りまして、今では貸出しが二千四百四十億円になりますが、二千八百億円あつたユーザンスが、千三百億円に減りまして、信用供與はこの四、五月ごろ四千一、二百億円の信用供與があつて、ただいまでは三千七、八百億円の信用供與に相なつております。五、六月よりは日銀信用供與は三、四百億円減つておるのであります。そういう理由に基くものでありまして、このユーザンス制度で政府が外貨予算を組んだ場合におきましては、商社がそれによつて金融信用状の発行を市中銀行に求める。市中銀行はその後の金繰りを考えずに、すぐ信用状を発行し、そして日銀に持つて来る。こういう制度はいかにも他力本願、見通しのつかぬことであるというので、十一月一日から乙種ユーザンス制度をやめまして、そして為替手形、貿易手形にかえようといたしております。そういたしますと、今ユーザンスの千三百億円余りの中の、大体千百億円ぐらいが乙種ユーザンスに相なる。これが行く行くは、四、五箇月のうちに貿手にかわつて参ります。そうすると、日本銀行の取引、すなわち貸付額が、今の二千四百億円から三千三、四百億円にかわる。これは貸出しが大きくなりましたが、片一方ではユーザンスがなくなるので、私は今、日本銀行が信用を供與し過ぎておるとも考えておりません。従いまして通貨の点、日本銀行の貸出しの点は、大体今の状態としてはやむを得ないのじやないか、そう心配する程度のものではないと思います。  年末の通貨につきましては、九月末の三割増ということは、お話通り、従来そういう傾向をたどつておりましたが、今後の方針といたしまして、先ほど申し上げましたように、なるべく水力、造船、鉄鋼、石炭以外のものは、原則として設備資金の供與は引きとめよう、こういうことになつておりますから、金融がある程度設備の方から商業短期金融の方になりましようし、また先ほど申し上げました重点産業の方に行くようになりまして、今までのように三割増加ということはいかがかと思います。また米の供出につきましても、これはまだはつきりきまりませんが、従来のように二千七八百万石あるいは三千万石の割当になるとすれば、これによる年末通貨発行もある程度押えられるのではないか、こういう関係もあります。また租税收入も相当やはりふえて行くつもりでおりますので、私は三割以内くらいで収まるのではないかという気持を持つております。
  28. 小坂善太郎

    小坂委員長 宮幡委員に申し上げます。非常にけつこうな御質問でありますが、時間が大体こんなふうな時間になつておりますので、この次の機会にまたお続けを願うようにひとつ願いたいと思いますが、いかがでしようか。
  29. 宮幡靖

    宮幡委員 それでは大蔵大臣その他の大臣に対する質問は保留いたしまして、一応これで終ります。
  30. 小坂善太郎

    小坂委員長 午後は本会議におきまして、平和條約及び日米安全保障條約の締結につきまして承認を求むる件が上程せられるのでありまするが、重要な議事でありまするから、当委員会は午後は休むことにいたしまして、明日午前十時より委員会を開会いたしまして質疑継続することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十三分散会