○
津田説明員 私
国有鉄道の
営業局長の
津田でございます。今回
国会に
国鉄の
運賃の
改正につきまして、御
審議をお願いいたしますにつきまして、ただいま
総裁から申し上げました
運賃の
値上げを要しまする
原因、これは主として
物価騰貴でございますが、その他
運賃を
値上げさしていただきたい背景につきまして、若干時間を
ちようだいして御
説明を申し上げたいと思います。お手元に「
国鉄運賃の
改正について」というパンフレツトを差上げてございますが、大体これに基きまして御
説明申し上げたいと思います。この
冊子を作成いたしました当時におきましては、
国鉄として
旅客、
貨物ともに三割五分の
値上げをいたしたいというような
希望に基きまして、
運輸省に申請いたしますころに作成いたしたものでございます。資料といたしまして、これに基いて要点だけを御
説明申し上げたいと思うのでございます。
先般来
運輸大臣の
諮問機関である
運輸審議会におきましても、この
運賃改正の件がかけられまして、
公聴会があ
つたのでございますが、その
公聴会に反映されましたところの
国民の輿論は、ある
程度の
運賃の
値上げはやむを得ないが、その
運賃値上げの
前提として、
国鉄はサービスの
改善、それから
経営の
徹底的合理化をはかれ、こういう非常にごもつともな御意向が支配的に多か
つたのであります。そこでこの
経営の
合理化について、あるいはサービズの
改善の面についても、
国鉄が数年来どのような手を打
つて来たか、
経営合理化のたど
つて来た道はどういうものであつたかというような点につきまして、二、三例を示してお話をいたしたいと思うのであります。この点が
運賃改正をお願いする前に、まず
国鉄自体が打たなければならない
前提の問題でございますので、多少
運賃改正の
問題そのものではございませんけれ
ども、これに触れてみたいと思うのでございます。
冊子の二ページ目をお開きいただきますと、
国鉄経営の諸
指数の表がございます。これはわれわれが
経済の平
年度として
基準に
とつております
昭和十一年と比較いたしまして、
国鉄のいろいろな面がどういうような
趨勢をたど
つて来たかという点につきまして、二、三例示してあるのでございますが、まず第一には、
職員の数でございます。
国鉄は非常に人が多いじやないかということがよく世上いわれるのでございますが、それがどういうふうに
なつて来たかという点を、
従事員の数についてごらんいただきますと、
昭和十一年には
国鉄全体で二十二万八千人でありました。それが
昭和二十一年には、
終戰直後でございますが、五十七万三千人、二十二年には六十一万一千人、それから二十四年に例の
行政整理に伴うところの
国鉄における
人員の
縮減もございまして、このときに一挙に十万人を落しまして四十九万人になりました。それが二十五年におきましては、四十七万三千人、これを
指数についてみますと、
昭和十一年を一〇〇といたしますと二〇八、
職員の数の絶対数におきましてこういうような経過をたど
つて来ております。つまり
終戰直後に六十一万あつたものが、今日におきましては四十七万まで減らして参つた。これは人間の
頭数でございますが、それでは
一体仕事の量に対しまして
職員の数がどう
なつているか、
職員の
能率が上
つているかどうかという点につきまして、その次に
鉄道の列車の
運転キロ一万
キロ走るのにどれだけの
職員が従事しているかというと、
昭和十一年には八・八人でありましたものが、やはり二十一年、二十二年のころには、二十七人、二十九人というようにふえて参
つて来たのであります。それが二十五
年度、最近におきましては十七人まで
縮減をして参
つたのであります。これを
指数で表わしますと、
昭和十一年の一〇〇に対して、一時は三四〇というところまで上りましたものを、一九五まで減らして参
つて来ております。なおさらに、
国鉄では
輸送の
量——ヴオリユームをはかります場合に、
人トンキロという單位を使
つておるのでございますが、百万人
トンキロ当りの
従業員の数が、十一年には五・四人でありましたものが、二十五年におきましてはさらにそれを下まわ
つて四・七人、一〇〇に対して八七というところまで
縮減をして参
つたのでございます。特にここで御注意願いたいことは、
終戰後の特異の
時代といたしまして、
労働関係のいろいろな法規ができまして、
労働基準法に基きまするところの
人員の増でございますとか、あるいは
進駐軍関係の
職員が相当いる。そういつたような点を勘案いたしまするとその絶対数におきましても、あるいは
仕事量に対する
職員の
頭数にいたしましても、非常に
合理化と申しまするか、
職員が
能率を上げ、
労働の
生産性を高めているということが言えるのではないかと思うのであります。
次に
国鉄に使いまする
石炭、これは大体一年間に、本年におきましても五百万トン以上を使
つておるのでございまして、国全体の
生産量のうち、
国鉄の使いまする
石炭というものは少からぬ量を占めております。
終戰直後の非常に
石炭飢饉でございました当時には、三分の一ないし四分の一を
鉄道が食
つていたのであります。最近におきましては五百万トンで、
生産量は四千万トン以上でございますからその
割合は減
つて来たのでありますが、いずれにいたしましても、
国鉄の
経営の上におきましそ、
石炭というものは非常に大きな要素をなしておるのであります。それが
消費量だけで見ますると、
昭和十一年には三百五十二万トン、二十五年には五百二十二万トン、一〇〇に対して一四八というような
状況に相
なつております。これは絶対の量でございますが、これを單位
当りの
消費量について見ますると、ここに
客貨車百
キロ当りとございますが、
客車なり
貨車なりを百
キロ走らせるに必要な——必要と申しますか消費する
石炭の量が、
昭和十一年には四十一
キログラムでございましたものが、二十年から二十一年、そのころは
石炭の質も悪か
つたのでありますが、百
キロ走るのに六十八とか六十七
キログラムの
石炭をたいていた。それが
昭和二十五年におきましては四十三
キログラムまで減らすことができた。これは
石炭が良質に
なつて参りましたと同時に、
職員の
石炭をくべる技術が向上して参りましたり、また
節約の意識が徹底して参つた
一つの現われであると思うのであります。また
国鉄全体の
経費の中に占める
石炭費の
割合が次に出ておりますが、これも最近逐年減
つて来ております。
次に
貨車の
運用効率、
国鉄では現在十万両ほどの
貨車を持
つておりますが、なお
輸送が非常に逼迫しておるのであります。
少い貨車直できるだけ
効率よく
回転をするということ添必要な要請でありまするが、それも最近数年の
趨勢を見ていただきますと、非常に率がよく
なつて来ております。つまりこの十一年に三七%と
なつておりまするのは、大体
一つ貨車が三日に一ぺん
回転をするということであります。二四・八と申しますると、大体これは四日半と申しまするか、
貨車の
回転率がここに
数字で現われておるのであります。それが今日におきましては、いろいろと
物資の
運送される
距離が長く
なつて来ているというような
関係からいたしまして、
貨車足を修正いたしますと、その次のところに出ておりまするように、やはり最近非常に
効率がよく
なつて来ている。また
機関車にいたしましても、あるいは
客車、電車、
貨車にいたしましても、これはできるだけ稼働をよくして、休んでいる期間をできるだけ少くする。それによ
つて増送ができるわけであります。こういつた
休車率というのが
車種別に出ておりまするが、これも逐年
休車の率が少く
なつて来ているという
状況でございます。
以上は
国鉄の
経営合理化につきまして、われわれが及ばずながら努力をいたしておりまする
二つ三つの例をここに掲げたのでございます。
ところで今回の
運賃値上げをお願をいたしまする主たる
原因は、
物価の
騰貴でございますが、最近における
物価の
趨勢がどういうような
傾向をたど
つて来ておるかという点につきまして、四ページの末尾に第三表といたしまして、東京の
卸売物価指数、
小売励価指数を掲げてございまするが、二十五年の四月、つまり
朝鮮動乱以前の四月を一〇〇といたしますると、ここにございまするような足取りをたどりまして、二十六年の六月には、
卸売物価指数が一八三、
小売が二二九というような
物価指数に
なつておるのでございます。
国鉄の使いまするところの
資材は、何と申しますか、非常に時局に
関係のある
資材と常にかち合いまするので、その
物価騰貴の
趨勢が非常に著しいという例をこの五ページに掲げてございます。これは
国鉄で使う凡百の
物資の一部分でございまするが、たとえば軌條について申しますと、
予算編成当時には二万二千円であつたものが、二十六年の四月には四万九千円に
なつている。これが最近におきましては、たしか五万円を
ちよつと越えていたかと思うのでございます。また
レールと
レールをつなぎ合せるところの
継目板につきましても、ここにございまするように、二万九千五百円のものが二十五年十二月には三万七千八百円、二十六年の四月には六万二千四百円、二十六年の五月には六万五千八百円というような、非常な
奔騰ぶりを示しておるのであります。
かような次第でございまして。主としてこの
物価騰貴に基きまして、
国鉄の
牧支の
関係がどうなるかという点を、三ページの表で見ていただきますると、こまかい
数字の御
説明は省きまして、この計のところで申し上げますると、二十六
年度といたしまして、
ちようどまん中より少し下のところに、
差引不足額四百十五億というのがことしの
不足の額でございます。ことしは
年度の途中でございまするので、これを平
年度に換算いたしますると、その次に五百三十三億の
不足ということに相
なつております。この五百三十三億円の
不足をカバーするためには、
運賃の
値上げをどうするかという点でございますが、大体
国鉄の
收入が平
年度におきまして、最近の
増収傾向も見込みまして千五百三億ございます。従いまして、この
不足の五百三十三億と
収入の千五百億とを比べましてこれを割りますると、三割五分という率が出るわけでございます。従いまして先ほど来申し上げましたように、
経営の
合理化を一方におきましては進めると同時に、この
運賃の
收入の
欠陷は、
運賃の
値上げによ
つてまかないたい。これは
鉄道の
建設予定線を敷設するとか、あるいは車両を増備するとか、こういつた新しい資本の投下でありまするのと違いまして、この五百三十億円余りの
收入の
欠陷というものは、今後毎年予想せられるものでありまするので、これはやはり借入金というような方法によらずに、
鉄道の
利用者であるところの
お客さんなりあるいは
貨物に
負担してもらうことが、妥当であろうという結論に到達をいたしたような次第であります。ところでわれわれが
運賃の
値上げを
希望いたしまする際に、申すまでもなく、この
運賃というものは
国民の
経済生活、
社会生活に非常に密接な影響のあるものでありまするので、
国鉄といたしましても各面から愼重に
検討をいたしたのであります。まず第一には、
運賃の
値上げがはたして
運送の
原価から見て、妥当なものであるかどうかという点につきまして反省をいたしたのであります。その次には
運賃の
値上げをいたしましても、それがあまりに高率に失しまするときには、結局
お客さんが乗らなくなる。
利用の減によりまして、
収入が相対的に少くなるということがあります。
貨物につきましてもまた同様なことが言えまするので、このわれわれが
引上げようという
運賃で、はたして
旅客なりあるいは
貨物なりが、その
負担にたえるかどうかという
負担力の面からも
検討いたしたのであります。三番目には、
物資が運ばれるルートが
鉄道、船、機帆船、自動車というようにいろいろあるわけでありますが、こういつた各
運輸機関の間の
運送の
調整という点から見てどうであるか。なかんずく海と陸との
調整の面から見てどうであるかという点につきまして
検討を加えたのであります。まず第一番目の
運送の
原価から見てどうであるかという点につきまして申し上げますると、八ページの終りの方と九ページの初めのところに
原価から見た
考察があります。まず第一に
旅客について申しますると、そこに一人
キロ当りの
原価、一人
キロ当りの
収入というのがあります。われわれ
輩位として考えまする場合に、一人の
お客さんを一
キロ運んだならば、それに要するところの
経費がどれくらいいるかというのが一
キロ当りの
原価、また一
キロの
距離を一人の
お客さんを運んで得らるべきところの
收入を一
キロ当りの
収入、こう申しておるのであります。これを二十五
年度について申し上げますると、一
キロ当りの
原価が七十八銭かか
つております。これに対しまするところの
收入が九十四銭でありまして、ここに係数が八四とございまするが、これでごらんになりますと、
旅客におきましては若干の
利益を上げているということがいえるわけであります。もちろんこの中におきましても、
定期乗車券のごときは非常に高率な割引をいたしておりますので、大いに
原価を割
つておるのでありますが、そういつた
定期と
定期外の
お客さんとをひつくるめて見ますと、二十五
年度におきましては若干の
利益が出ている。それがこの二十六
年度になりまして、ただいま申し上げましたように、主として
物価の
騰貴に基きまして、非常な費用の
増高を見るのであります。そういつた
経費の
増高を考えますると、一
キロ当りの
原価が一円十二銭かかる。それに対しまするところの
収入が現在のままでほ
つておくならば、九十二銭ということで、二割二分欠損に相なるのであります。それから
貨物につきましては、ここに
トンキロ当りの
原価と
トンキロ当りの
収入がでございますが、これも
お客さんの場合と同様に、一トンの
貨物を一
キロ運ぶに要するところの
原価、並びにそれに見合うところの
収入をいうのでありまして、それは二十五
年度におきましては、
トンキロ当りの
原価が一円九十八銭、それに見合うところの
収入が一円九十四銭ということで、まあとんとん、
ちよつと赤というような
状況でございまするが、それが二十六年になりますると、今申し上げましたような
経費の
増高に伴いまして、
トンキロ当りの
原価が二円六十六銭、それに見合うところの
収入が一円八十七銭、非常に
採算割れで、
採算割れの
程度が四割二分ということに相なるわけであります。従いまして、もしこの
原価の面から見まして、収支を合せるということから申しますと、
旅客におきましては二割二分、
貨物におきましては四割二分の
値上げをお願いしなくてはならぬという次第に相なりますが、従来とも
国鉄といたしましては、低
物価政策に相応じて
運賃の体系を立て、
貨物の
不足は
旅客で補うというような方針を
とつておりますので、今回もこういつた
旅客、
貨物別々の
値上率によらずに、
旅客、
貨物両方一律に三割五分の
値上げをお願いしたい、こういうことを考えたような次第でございます。
次に
負担力の面から見て一、二
考察をしてみたいと思うのであります。十一ページをごらんいただきますと、
勤労者が毎月とるところの
賃金の中で、その
賃金と
国鉄に拂う
運賃との
比率がどう
なつているかという点につきまして、十一ページには
官公吏と
工業勤労者とわけて例示してあるのでございますが、たとえば
工業勤労者の例につきまして申し上げますと、下の方から四行目ほどのところに、二十四年に
工業勤労者の
平均賃金が六千九百二十一円であ
つたのでありますが、その当時この
勤労者が一回の
鉄道乗車に対して拂うところの
運賃が三十七円十四銭、その
比率が千分比にいたしまして、千分の五・三七ということに相
なつております。この三十七円十四銭というのは、この当時の
定期の
お客さんの普通乗られまする
距離、足にその当時の
賃率と申しますか、一
キロ当りの
収入をかけたのであります。その
勤労者が今日におきましては一万九百七十円の
賃金にベース・アツプしている。その
勤労者が一回の
乗車に対しまして拂う
運賃が三十七円九十七銭、
ちよつと違いますのは、やはり
キロの
関係などのずれで違
つております。そういたしますると、その
比率が千分の三・四六ということに相なりまして、この二十四年の千分の五・三七と今日の三・四六とを比較いたしますると、右の方に算式が出ておりますが、これを割りまして一五五%、つまり五割五分
程度の
定期外の
運賃の
値上げをいたしましても、
昭和二十四年当時の
比率をくずさないどいうことが言えるのであります。その次の十二ページ、今度はこの
賃金と
定期旅客運賃との
関係につきまして、同じような例を申し上げてみたいと思うのであります。やはりこれを
官公吏、
工業勤労者とわけておりまするが、
工業勤労者の二十四年の
賃金が先ほど申し上げましたように六千九百二十一円、下から四番目ほどのところにございまするが、その当時この
勤労者が一月の
定期を
買つた場合に拂うところの
運賃が四百六十円でございまして、その
比率が今度は百分の六・六五ということに相
なつております。その
勤労者が今日におきましては一万九百七十円の
賃金にベース・アツプしておりまするが、彼が拂う
運賃が四百七十円、これも
ちよつと十円ほど違いがありますが、これも
平均乗車キロの
ちよつとの違いでございます。その
比率が百分の四・二八ということに
なつておりまして、これまた一番下のすみをごらんいただきますと、この
二つを割りますと、一五五%、つまり
定期におきまして五割五分の
値上げをいたしましても、二十四年当時の率をくずさないという次第でございますが、今回
国鉄といたしましては、五五%ではなしに、三割五分の
値上げを申請したという次第でございます。
その次に
貨物について例を申し上げたいと思うのでありますが、十五ページと十四ページをごらんいただきますと、ここに「
主要貨物の
価格に占める
運賃の
割合」というのがございます。まずその中で
一つの例といだしまして、お米について申し上げますと、
昭和十一年当時にはお米の値段がいつ
ぱい貨車に乗せましたその
貨車の一トン
当りの
価格が二百七円であ
つたのであります。その当時の
運賃が、
貨車一トン
当りの
運賃として二円二十八銭でありまして、この
貨車一トン
当りの
価格と
貨車一トン
当りの
運賃とを比較いたしますと、
価格の中に占めるところの
運賃の
割合は一・一%ということになるのであります。そのお米が今日においてはどう
なつておるか、また
運賃はどう
なつておるかということを申し上げますと、二十六年の四月、十四ぺ一ジの上の方をごらんいただきますと、
貨車一トン
当りの
価格が今日におきましては四万三千七百四十六円、それに対する
運賃が三百十七円ということでございまして、
価格の中に占めるところの
運賃の
割合が、十一年当時よりは下りまして、〇・七ということに相
なつております。この一・一と〇・七とを比べますと、四割から五割
程度の
値上げをしても、十一年当時の
比率をくずさないということになるわけであります。ここにいろいろな二十六品目ほどの
貨物、
国鉄で
輸送されるおもなる
貨物でございますが、それにつきまして
考察をいたしました結果を、この一番下の欄で見ていただきますると、この
比率のところだけで結論的に見ていただきますと、
昭和十一年当時に、これらの
物資の
価格とその
運賃との
比率が、マルAというところがございますが、百分の四・六一であつた。それがこの二十六年の四月には、マルCのところで百分の二・六八ということで下
つております。ここで
ちよつと御注意願いたいことは、このお米の場合のごときは
運送距離がかわ
つておりませんが、ほかの
物資につきましては非常に
運送距離が長く
なつているものがございますので、これらを
昭和十一年当時の
運送距離に引直してみるとどうなるか。そういたしますると、「十一
年度平均
輸送キロによる
運賃の現在
価格に対する
割合」というところで、マルDのところに百分の二・〇九ということに相
なつております。かような点から申しまして、マルA、マルC、マルDとをお比べいただきますると、この
数字からだけ見ますると、
運賃を倍
程度にいたしましても、この十一年当時と
比率は違わないということに相なるわけであります。この
改正案は三割五分の
値上げにいたしました場合にどうなるかというところで、現在の
運送距離によりますると、百分の三・六三、もしこれを
昭和十一年当時の
輸送キロに換算いたしますると百分の二・八四ということで、三割五分の
値上げをいたしましても、はるかにこの十一年当時の
比率に及ばぬということが言えるのでございます。
その次には、ただいま
負担力の点から
旅客と
貨物について申し上げましたが、次に海陸
輸送調整という点からの
考察につきまして申し上げたいと思うのであります。十六ページに
鉄道と船舶と自動車
運賃との変遷の模様が、絶対額とそれから
指数によ
つて出ておりまするが、
鉄道の場合には、車扱い五級、二百
キロとございますが、これは
鉄道の
貨物を
運送いたしまする場合に、
貨物分類によりまして、現在十一等級にわけております。そのまん中辺の車扱い五級の分類に
当りまする品物が、二百
キロ運送される場合を予想いたしてこの
賃率をはじいてみますと、
昭和十一年には三円十五銭であつた。それが二十六年四月には四百十二円で、
指数にいたしまして、ここでごらんになりますように約百三十倍に
鉄道の
運賃は
なつた。それに対して汽船はどうであるか。これを若松・横浜間の
石炭の一トン
当りについて申しますると、絶対額の方は省きまして、
指数だけで申し上げますると、
昭和十一年を一〇〇といたしますると、二十六年の四月には、四一二四六、四百十三倍に
なつている。それから機帆船はどう
なつているか。これは若松と阪神間の
石炭のトン
当りについて見ますると、一〇〇に対して二三二〇〇、二百三十二倍に
なつている。トラつクにおいてはどうか。これは一日一車の専属制で見ますと、やはり十一年に対しましては二百六十倍に
なつている。かように船においては四百十三倍、機帆船においては二百三十二倍、トラツクにおいては二百六十倍に対して、
鉄道の
貨物運賃は、百三十倍の倍率にすぎないというようなことに相
なつておるのであります。これを具体的に
貨物について
一つ、
二つ申し上げますると、十九ページ、十八ページに海陸
運送費の比較が出ておるのであります。最も典型的な
鉄道貨物といたしまして、
石炭の例を申し上げます。この
石炭の三番目のところに、飯塚から大阪に行く
石炭の
運賃と諸掛とが書いてございますが、この
鉄道という欄のところに、
運賃と諸掛を合せて千三十八円、それに対して海上の
運賃は、これは諸掛が非常に高いのでありますが、千五百五十四円、船の
運賃の方が五百十六円高い。
鉄道の
運賃を一〇〇といたしますると、
指数にいたしまして船の方は一五〇という
指数に相
なつております。かりに
鉄道の方が三割五分の
値上げをいたしまして船の方がすえ置きというような状態を考えてみますと、一番右の端の方に
鉄道を一〇〇といたしまして船が一一五、まだ三割五分の
値上げをいたしましても、この飯塚・大阪の例によりますると、船の方が高い、さらにもう
一つの例を飯塚・東京という例について申しますと、
鉄道の場合は現行が千六百六十五円、船の方が千八百三十三円、差額が百六十八円で、
鉄道を一〇〇として、船の方が一一〇、これを
鉄道が三割五分の
値上げをいたしますと、やつと船の方が安くなる、一番右の端に船の方が八五%に下るということでありまして、その以外の木材につきましても、鉱石につきましても、いろいろな例が、また機帆船につきましても出ておるのでありますが、こういつた海陸
運送調整というような面から見ましても、三割五分の
値上げは高過ぎるということはない。
以上三つの点から
検討いたしました結果、
国鉄といたしましては、八月の末に
運輸大臣に対しまして
旅客、
貨物三割五分の
値上げを申請いたしたのであります。それに対しまして、
運輸大臣といたしましては、
運輸審議会に諮問をせられ、いろいろ
検討せられました結果、
国鉄の考えておりましたところと若干——たとえば
物価騰貴の
趨勢と申しますか、率につきまして、さらにもう少し低目にすることができるのであろう、あるいは増収等の部分につきましても、若干さらに増収が見込まれるであろう等々の観点からいたしまして、
運輸大臣といたしましては、
旅客につきまして
値上げが平均二割五分、
貨物につきましては、
国鉄の三割五分の要求に対しまして三割というような査定をされまして、それに基いて先日の閣議にかけられまして、
政府案を決定されまして、今回
旅客二割五分、
貨物平均三割というような案で
国会に提出される。具体的には
国有鉄道運賃法の
改正というような法案の形式において提出をされるということに相
なつております。なお
運輸省で査定をせられました結果は、先ほど五百三十三億の
欠陷、収支のアンバランスということを申し上げたのでありますが、それが平
年度におきまして百億ほど減らして、四百三十三億でございましたかの収支のアンバランス、従
つて四百三十三億ならば
旅客二割五分、
貨物三割というような線、さらに若干足りないのでございますが、それは
経営合理化を推進せよというようなことで、今回の
運賃値上案が日本
政府としては大体決定せられ、
国会に提出される運びに相
なつたように承
つております。なおその間
政府の問題になりましてから以後の問題につきましては、
運輸省からも
関係官が出席しておられますので、そちらからお話を願つたらいいのじやないかというように考えております。以上、たいへんごたごたいたしおりましたが、
運賃改正をお願いするその背景と申しまするか、それらの点につきまして、
国鉄の側といたしまして以上御
説明申し上げたような次第でございます。