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1951-10-26 第12回国会 衆議院 本会議 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十六日(金曜日)  議事日程 第七号     午後一時開議  第一 平和条約締結について承認を求めるの件  第二 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約締結について承認を求めるの件     ————————————— ●本日の会議に付した事件  日程第一 平和条約締結について承認を求めるの件  日程第二 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約について承認を求めるの件     午後一時四十二分開議
  2. 林讓治

    議長林讓治君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 林讓治

    議長林讓治君) さきに院議をもつて平和会議に派遣された議員代表して山口喜久一郎君から発言を求められております。これを許します。山口喜久一郎君。(拍手)     〔山口喜久一郎登壇
  4. 山口喜久一郎

    山口喜久一郎君 去る八月十八日本院の議決によりましてサンフランシスコ講和会議に派遣されました議員一同代表して、ごあいさつを申し述べたいと存じます。  一行は幸いにもつつがなく大任を終えて帰ることを得た次第でありまするが、これはひとえに皆さん方の御支援のたまものと感謝しておる次第であります。一同の旅程、また会議詳細等にわたりましては、目下集録印刷中でありますので、不日お手元にこれをお届けいたしまして御報告にかえたいと存じます。この際とりあえず御礼かたがたごあいさつ申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  5. 林讓治

    議長林讓治君) 日程第一、平和条約締結について承認を求めるの件、日程第二、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。平和条約及び日米安全保障条約特別委員長田中萬逸君。     〔田中萬逸登壇
  6. 田中萬逸

    田中萬逸君 ただいま議題となりました平和条約締結について承認を求めるの件及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約締結について承認を求めるの件の両案について、本委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。  顧みますれば、昭和二十年八月、ポツダム宣言の受諾による無條件降伏によつてわが国開闢以来かつて経験したことのない敗戰という冷嚴な事実をもつて戰争の終局を見ましてからまさに六年有余、その間国民は、忍びがたきを忍んで日夜降伏條件の忠実なる履行に努めるとともに、その苦難を通して精神的再生を人間の自覚に求め、人類普遍の原理に基いた人権尊重民主憲法を実施して、ひたすらに完全主権の回復と国際社会への復帰を約束される日の来ることを一日千秋の思いで待ち続けて参つたのでありまするが、去る九月八日、サンフランシスコにおいて平和條約の調印が終り、近き将来にその輝かしい実現が望み得る運びと相なりましたことは、国民のひとしく喜びとするところであり、かつまたこれまでに至る連合国、ことに米国政府の熱心なる援助と好意に対して感謝するものであります。(拍手)  申し上ぐるまでもなく、平和條約は、和解信頼精神基調とするものでありまして、過去の戰争状態に終止符を打ち、調印諸国との間に国連憲章精神にのつとつて新らしい平和的国交を回復するとともに、さらに進んで世界の平和と安全のために、主権を有する対等の国家として協調と善隣友好原則基調として参ることを約束する、新しい時代を画する條約であります。しかして、それは何人も満足させる條約であるかといえば、必ずしもそうではなく、サンフランシスコ会議において、ダレス代表すら、平和條約は完全なるものではない、何人も完全に満足しているものではないが、しかし最もよき條約であると述べているから、この平和條約は各国和解互讓の結果成立したものであり、戰勝国側においても不満があるのであるから、戰敗国である日本から見れば、必ずしもすべての点に満足の行かないところがあるのは当然であります。しかしながら、本條約は日本として現段階において望み得る最善のものであることは疑いのないところであります。(拍手従つて政府の申すがごとく、もしわが国がこの機会を逸しては、またいつの日か世界各国との国交を回復し得るや、まつたくその見通しが困難となつて、これがために生ずるわが国の不利益、ひいては世界の損失ははかり知るべからざるものがあると存ぜられるのであります。のみならず、日本が今後復帰せんとする社会は、世界的な規模においてきびしい対立のもとにあり、また隣邦朝鮮の動乱はいまだ終熄いたさず、しかもソ連中国等との国交調整は将来にかかり、極東の暗雲なお低迷しておるときにあたつて、何らの防衛力を持たないわが国は、わが国土の安全とその独立を確保し、極東の平和、ひいては世界平和のためにも、日米安全保障條約を締結して集団的保障方法による以外に道はないものと思われるのであります。(拍手)  かくのごとき見地に立つて結ばれた両條約は、現在の複雑なる世界情勢のもとにあつてわが国家と国民の新しい将来の運命をかけたる重大な案件であります。されば、委員会における審議もまた従つて真劍かつ愼重をきわめ、終始愛国の至情が吐露されました結果、まことに傾聽に値すべき論議が行われたのであります。(拍手)すなわち本委員会は、去る十日に両條約の付託を受け、十七日に総理大臣及び政府委員の詳細なる説明を聽取いたし、十八、十九の両日にわたつて両條約に対する総括的質疑を行い、引続き昨日の午後に及ぶまで、各條約の逐條的質疑によつて精細なる審議を逐げ、国民の両條約に対する疑点を一掃いたして、日米両国友好関係と、わが国民の世界平和に貢献せんとする用意と覚悟を新たにすることができましたことは、まことに邦家のため御同慶の至りにたえません。(拍手)  両條約の内容については、過般の総理大臣の本会議における御演説によつてすでに諸君の承知せらるるところでありますから、私は再びこれを繰返すことをとりやめまして、ここには委員会質疑応答で明らかにせられた、この両條約に関する若干の基本的なる重要問題について、以下項目をわかつて順次に申し上げることといたします。  まず平和條約についての第一の問題は、條約の発効によつて占領統治から脱する場合におけるわが国と諸外国、ことに非調印国との関係についてであります。すなわち平和條約は、サンフランシスコにおいてわが国と四十八箇国によつて調印せられたものでありますが、ソ連等のごとく、会議に参加はしたが調印しなかつた三箇国、あるいはインドビルマ等のごとく、招請を受けて会議に参加しなかつた三箇国、さらにこの会議に招請せられなかつた中国のごとく、この條約に調印していない諸国との関係について、平和條約第二十六條は、これらの諸国との間における二国間平和條締結に関する規定を設けておるのでありますけれども、サンフランシスコ会議における経緯、ないし現在の国際情勢のもとにおきましては、條約発効後の日本と、これらの非調印諸国との関係がどうなるかということは、実際問題として国民のきわめて重大なる関心事であります。しかして、この点に関する問題のうち、まず平和條約の発効後におけるポツダム宣言効力はどうなるのか、非調印国たるソ連または中国との間における戰争状態はどうなるのか、またこれらの諸国が條約発効後單独に日本を占領することができるかいなやの点につきましては、政府においては、この平和條約の発効によりポツダム宣言はその効力を失うことに相なり、非調印国たるソ連中国との間には法律上または技術上戰争状態が継続すると言い得るけれども、だからといつて、政治的に見てただちに戰争になることはない、さらに日本占領権利連合国の共同して有する権利であるから、一ないし数個の非調印国が單独に日本を占領することは不可能であり、ポツダム宣言、またはモスクワ協定の違反となる旨の答弁がありました。なおこの問題に関連いたしまして、政府から、現在日本に置かれてある中国代表部連合国最高司令官に対して派遣されたものであり、またソ連代表部は対日理事会に派遣されたものであり、條約の発効によつて最高司令部が消滅すれば、対日理事会各国代表団も当然解消するものであると考える、しかしソ連等との間に講和條約ができない以上は、大公使の交換ということはあり得ないとの見解が表明されたのであります。  次に中国との関係については、国民政府中共政府のいずれと條約を締結するか、米国安全保障條約を締結する以上、米国承認している国民政府を選ぶことは常識と思われるし、また米国の一般の空気から、すでにわが国国民政府講和條約を締結することを内約しているものと考えられるがいかがであるかとの質問に対しては、政府は、現在米国中共承認せず、また英国は国府を承認せず、いずれを中国正統政府とするかは連合国側でも議がととのはなかつたために、日本にその選択をゆだぬる結果となつたものであるが、わが国としては、列国との関係を考慮し、今後の推移をまつて決定したいと思うが、いずれにしても、米国から国府との條約締結交渉を受けたことも、またそれに対する内諾を與えたことも全然ないとのことでありました。  またインドとの関係については、インドの対日講和不参加は、日本のこれに対する努力が欠けていたこと、またインドがこの條約をもつてアジア諸問題の解決を困難にし、日本独立を不安ならしめるものと見たことによるものではないかとの意見に対しては、インドの対日講和不参加は一に国際情勢によるものであつて日本努力のいかんによるものではなかつたが、インド日本に対して好意的であり、日本独立を支持しておるからこの條約を理解すると思うし、日印間の戰争状態も、條約発効と同時にその終了宣言が発せられることになつているということを明らかにされました。これに関連して、アジアにおける日本の将来の地位にかんがみ、アジア、ことに東南アジア諸国との善隣友好関係を急速に樹立し、同じ民主主義陣営にある西欧諸国アジア諸国とを結ぶ紐帶となることを日本外交政策基調とすべきであると思うが、その具体的方法があるかという意見に対して、政府は大体同感であるが、具体的方法については外交権の回復までに十分研究したいとの見解を披瀝されたのであります。  次に、平和條約は日本国連加入を予想しているが、はたして国連加入可能性が現在あるかどうかにつきましては、ソ連の非調印と、安全保障理事会における拒否権関係から、正式加入については困難であろうが、国連加入は、日本だけではなく、米英その他の国も希望するところであるから、正式加入の前に何らかの便法が講ぜられるものと思うとのことであり、その便法とは、国連総会の決議により加盟国に準ずる地位を與えようとする方策のごときものであろうとの答弁でありました。  また、わが同胞三十数万の未帰還者に対しては、今後も、單に日本の問題であるばかりではなく、仏、独等の連合国数箇国の共同の問題として、国連あるいは赤十字等の盡力によつて日本の希望が達成せられるよう一層努力するとの答弁がありましたが、この問題については、條約草案作成最終段階において、第六條のb項として未引揚軍隊復帰に関する規定が挿入されたことは、政府努力締結諸国の理解ある態度に深く感謝するとともに、国民のひとしく喜びとするところでありますが、非調印国たるソ連中共等に抑留されている人たち引揚げについて、ソ連中共はなおポツダム宣言第九項の日本軍隊復帰に関する規定の拘束を受けるものであるかどうか、またこの條約の引揚げに関する規定は單なる好意であるのか、それとも調印国に対する義務として解してよいのか等の質問については、ソ連に対して引揚げ問題についてのポツダム宣言第九項はなお効力を持つものと信ずること、及びこの條約の規定は署名した連合国が当然相互の関係においてこれを守るべき重要條文であり、この実現に努力すべき立場にあると思う、これらは漁業問題と同様に、実際問題としてもソ連と話し合う方法考えられるから、今後ともあらゆる機関、あらゆる方法を盡して引揚げの促進に努力したい旨の言明があつたのであります。  次に、平和條約に関する第二の問題は領土の問題であります。申すまでもなく、領土問題は、すでに條約調印の前から、国会においてはもちろん、国民の間においても、最大関心事の一つとして論議されて来たものであります。またその大原則は、つとにポツダム宣言の受諾によつて承認されたところではありまするが、その中には、千島南西諸島小笠原群島等のごとく、ひとしくわれわれ日本民族先住の地として、国民的感情からいつてもまことに忍びがたき切実な問題を包蔵しているのでありまして、委員会においても最も論議の集中された問題の一つでありました。  領土問題に関して特に論議されたのは、まず千島の帰属についてであります。平和條約第二條は、日本千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄することを明らかにしているのでありますが、これについて、千島割讓を最初に定めましたヤルタ協定がはたして日本を拘束するものであるかどうか、また千島は歴史的に見ても昔よりわが日本領土であり、決して侵略戰争の結果獲得したものではないのであるから、その放棄ははなはだ遺憾であり、樺太とともにその返還を要求するため国際司法裁判所に提起する用はないか、またいわゆるクリル・アイランドとはいかなる範囲であるか等の質問に対しましては、政府は、ヤルタ協定英米ソ三国間の協定であつて、その協定自身はもとより日本を拘束するものではなく、また千島が正統な日本領土であることは、吉田首席全権サンフランシスコ会議においても特に強調せられたところであるが、遺憾ながら條約第二條によつて明らかに千島、樺太の主権を放棄した以上、これらに対しては何らの権限もなくなるわけであつて国際司法裁判所に提起する道は存しておらない、またクリル・アイランド範囲は、いわゆる北千島、南千島を含むものであるが、歯舞、色丹の両島が千島に入らず、その最終的帰属国際司法裁判所において決定されるとダレス氏もサンフランシスコ会議で述べておられ、両島に対する主権について米国日本政府の主張を支持していたが、それは條約調印前のことであつてソ連が條約に調印しなかつた現在においては、條約第二十二條の紛争解決手続規定によつてハーグ国際司法裁判所に提訴する方途はないのである、今後は結局国際紛争の一つの問題として残るであろうが、これをどうするかは実際上の関係であり、双方がそれぞれその主張を堅持いたすとすれば衝突するほかはないが、なるべく円満な方法によつて問題を解決し、国民に満足を與えるように努力したいとの言明がありました。  次は南西諸島小笠原群島等南方諸島及び沖の島、南鳥島に対する信託統治制度に関する問題であります。これらの地域は、いうまでもなくわれわれと血を同じくする同胞の現に居住する地域であり、ことに奄美大島のごときは鹿児島県の一郡部であり、その地理的、歴史的事情より見ても、また国民感情の上からいつても、信託統治制度のもとに、たとい一時的にもせよ、日本と離れることはまことに忍びがたいものがあるのでありまして、従つてこの地域に対する信託統治制度の問題をめぐつて相当詳細な質疑が行われたのであります。すなわち、これらの地域を特に信託統治制度のもとに置かねばならぬ理由は何であるか、日本本土に基地を持つ以上、これらの諸島が特に台湾、フイリピン等のごとく共産勢力に対抗する基地として重要性があるとは思えず、何らかの意義があるとすれば、米国日本を監視するポストとしてのみであろうと考えられるが、これは和解信頼精神とするこの條約の趣旨にも、また国連憲章信託統治制度本来の趣旨とも必ずしも一致しないのではないか、また信託統治に付される地域に対する主権の所在については、たといわが国潜在的主権が存するとしても、それはまつたくの名目的なものにとどまる。この点は国連憲章第七十七條の規定から見ても問題があり、実は領土割讓と何ら異なるところがないのではないかとの意見が開陳せられ、さらにはこれらの地域日本復帰の将来の見通し、及び信託統治実施の場合におけるこれら地域住民の国籍の問題、参政権交通往来教育等に関する諸問題がそれぞれ取上げられたのであります。  これらの諸点につきましては、政府から、米国は琉球、小笠原等諸島領土を求める考えはなく、軍事上重要なこれらの諸島が他国の占領するところとなつて日本の安全を脅かすことになつてはならぬとの考えから信託統治を行うことになつたものであり、その主権日本に残ることは、平和会議においてダレス、ヤンガー両代表も言明しておらるるところであり、また文書による確約ではないが、ダレス大使その他米国当局者との話合いの結論として、軍事上の必要がなくなつた場合には、これら地域日本に返還されることを確信するとの答弁がなされたのであります。また信託統治は條約でその可能性があることを定めておるのであつて、その形式、内容は国連米国との信託統治協定によつて定まるべきものであり、それまでは、米国がこれら地域住民に対して行政、立法及び司法上の一切の権力を行使することになつておることは、平和條約第三條の規定するところであります。この点について、政府は、主権そのもの日本にあり、住民日本国民であることに変更はないが、主権から発生する管理権を行使するものは米国である。しかし必ずしもその全部を行使する義務があるわけではなく、一方的に日本に委讓し、放棄することもできるから、米国の善意によつて、なるべく管理に必要な最小限度にとどめてもらいたいと思う。また住民日本国籍の維持、教育、文化、経済等についても、従来の関係を断ち切らぬよう希望を申し入れており、また統治の期限についても、米国の善意を信頼してよいものと思うとの見解が披瀝されましたことは、せめてものわれわれの喜びとするところであります。  次に平和條約についての第三の問題は、いわゆる賠償の問題であります。賠償の問題は、外債の支拂い、対日援助資金及び在外資産処理等と関連して、條約発効後におけるわが国経済に至大の影響を及ぼすものであることはいうまでもありせん。まず本條約の規定した賠償原則としての範囲につきまして、米国は第一次大戰の際にウイルソンの無併合、無賠償原則を主張したにもかかわらず、和解信頼の條約と称せられるこのたびの條約が賠償支拂い義務を課した根本の理由は何であるかとの質問について、政府は、ダレス氏も、日本経済の現状から当初は無賠償考えを持つていたと思われるが、アジア諸国、ことにフイリピンその他の国の戰禍の程度を見た結果、この復興を助ける意味からも、アジアにおける経済力の上から見ても、またさらに日本善隣関係を得るためにも、日本の国力の許す限りで賠償をし、援助をすることとし、原則としては日本賠償義務を認め、その限度は日本の国力の許す限度で、日本経済も破壊せず、同時に相手国の復興を助け、また将来通商その他の関係を打立てるために日本としてできるだけのことをしてはとの考えなつたものと思われる、われわれとしても、損害を與えた国に対して、善隣関係からいつでも、また他国にかけた迷惑に対していくらかの償いをするということは、日本国民の道徳心からいつてみても承認できるものであるから、これに同意するに至つたものであるとの答弁があり、いわゆる、善隣友好精神本條約を貫く大なる精神であることが明らかにされたのであります。また賠償範囲については、存立可能な経済を維持すべき範囲においてこれを行うことを根本原則とし、他の連合国追加負担をかけず、またわが国の為替上の負担をも増大しない見地から、いわゆる役務賠償技術賠償ということを賠償の基本的な形態としており、従つて條約の精神たる和解信頼共存共栄の立場から、賠償要求各国と誠意をもつて話し合つて行けば、おのずから通ずる道があると思うとのことであり、また平和條約第十四條にいわゆる存立可能な経済の意味は、日本経済全体として見るべきであつて、單に国民所得比較等から定めるべきものではなく、あくまでわが経済を発展させて、世界の平和に貢献するような態勢に持つて行きながら賠償すべきものであるという気持であつてわが国一人当りの国民所得をおのおのの被賠償国国民所得まで切り下げて賠償をなす考えは持つていないとの見解を明瞭にされたのであります。  次に、対日援助資金賠償債務とはどちらが優先するかとの問題につきましては、これは各国にもいろいろの説があり、アメリカでは援助費が優先するという考え方が多いと聞いているが、これについては賠償請求国援助資金債権を持つアメリカ及び外債の債権を持つ英仏等との間の非常に複雑な関係もあり、全体的に考えて行きたい旨の答弁がありました。  また在外資産の沒収、特に中立国にある個人財産の処分の問題については、中立国にある私有財産平和條約によつて戰勝国に提供することは前例のないことであり、これは国連憲章基本的人権尊重原則から見ても、個人財産の沒収ははなはだ納得しがたいと思われるがどうか、またこれらの沒収財産を補償し、ないしは国の負担による等価賠償を選択する考えはないかとの意見に対しましては、その意見はもつともであり、政府としてもまたそう考え交渉に当つて来たのであるが、連合国側から、今度の戰争中捕虜として日本のために精神的並びに物質的に非常な苦痛をこうむつた人たちの強い賠償要求の声は、日本として無視すべきものではないことを懇々と説かれ、またこれらに対して補償をなすことが日本政府各国友好提携関係に立つ第一歩であることを説明されたため、わが国としてもこれを承諾することになつたものであり、個人財産の補償は、現在の日本財政状態としてはなかなか困難な問題であるので、研究中であるとの答弁でありました。  なお賠償については、未調印国との賠償問題、ソ連賠償請求権ソ連が接収した日本財産の処理問題、在外資産賠償要求債権との関係等の複雑な諸問題があり、さらに賠償等の支拂い、米軍駐留費分担等によつて考えられるわが国今後の経済、財政上の諸問題として、今後の国民生活見通し税負担の問題、来年度予算の規模、物価問題、インフレ問題等が論議せられ、また條約発効後における国際経済わが国経済との関係について、一般関税貿易協定参加見通し経済自立のための国際収支の均衡、貿易の伸張、外資導入の諸問題、漁業協定の問題、最惠国待遇海外移民問題等がそれぞれ論議せられたのでありまするが、それらの詳細につきましては速記録によつて御承知願うことといたし、ただ漁業協定につきましては、従来の国際慣行、條約等を考慮に入れて決定すべく準備中であるが、アメリカカナダ両国とは本年度内に交渉が開始されるものと思われるという点、及び日本漁業権を実質的に制限しているマツカーサー・ラインは條約発効とともに消滅することとなり、未調印国ソ連との間には事実上の関係となつて将来の事態に待つほかはないが、ソ連といえどもあえて事を構えることはないであろうし、また日本との戰争状態をなるべく早く終らせたいと言つているのであるし、隣国の関係として、漁業問題ばかりでなく、いろいろ調整を要する必要が生じて来るのであるから、隣国関係問題処理のために何らかの方法が講ぜられるであろうし、また日本としても講じたいと思うとの答弁がありました。  次に日米安全保障條約について申し上げます。この條約は、政府の説明によれば、国際の現状は無責任な侵略主義がなお跡を絶たず、これに対しては集団的防衛の手段をとることが今日国際間の通念であり、平和條約の発効により独立と自由を回復したあかつきにおいて、軍備を有しない状態にあるわが国といたして、自己の防衛、ひいては極東の平和、また世界の平和のために何らかの集団的防衛方法を講ずることの必要から締結されたものであり、この條約によつて、武備なきわが国独立回復後における安全について一応の安心が得られるものとされているのであります。  申すまでもなく、平和條約によつて独立と自由を回復して国際社会復帰するわが国が、きびしい国際的対立のもとにあつて武備を持たない今日、いかなる方法で国の安全を保つて行くべきかの問題は、まさに新しい出発点に立つたわが国の将来の運命を左右する最も重要な問題であります。このときにおいて、その方向を誤らんか、国家と国民の悲運また避くべくもないことは当然の帰結であります。しかしてこの條約は、複雑な国際的対立の中に新生の第一歩を踏み出さんとする、わが国の安全確保に対する方向を決定しようとするものであります。従いまして、その内容は、平和條約に比してきわめて簡單なものではありまするが、この問題について委員会諸君が真劍な論議を盡されたことはいうまでもありません。この條約の審議に際して委員会に現われました空気の特徴は、この條約によつて保障せんとするわが国の安全に対する危惧が、まつたく相反する二つの立場から論議された点であります。すなわち、何人もわが国の今後の安全を希求する点においては同じではありましても、一つは、この條約による安全保障の方向を認めつつ、はたして條約の内容とする方法によつて真の安全が保障され得るものであろうかという危惧であり、他は、この條約による安全保障の方向は、かえつて日本アジアの動乱に巻き込む原因となり、反対に新しい戰争を準備する結果となるのではないかという疑惑であります。今ここに本條約についてなされた質疑の大要を申し上げたいと思います。  まず第一には、この條約は平和條約と異なり、日米両国が対等の資格で締結するものであり、また平和條発効後一定期間は連合軍の駐留が認められておるにかかわらず、何ゆえ平和條調印の日に急いで本條約を調印しなければならなかつたか、與えられた期間内に何ゆえ十分研究した上で調印することにしなかつたのであるか、また平和條約と日米安全保障條約は不可分のものとして提案されたものであるかどうか、この質疑に対しましては、政府から、本條約は決してにわかに調印されたものではなく、ダレス氏が本年二月に来訪されて以来絶えず研究していた結論がこの條約となつたものであり、條約の形にまとまるまでに相当時間をとつたが、講和会議の際に條約の形にすることに間に合つたので、便宜一緒に調印したものである、ただ行政協定については時間がなかつたので、その原則を定めるにとどまつた、しかしてこの條約は、いかにして日本の安全を守るかについて、中立によるか、あるいは軍備によつて守るか等いろいろの原則はあろうが、政府としては安全保障條約による集団的防衛方法が一番いいと考えてこの條約に調印したものであり、またわが国としては中立によつてその独立を守ろうとすることは不可能であり、両陣営の対立しておる現情勢下において洞ヶ峠におることはできないとの信念に基いて、自由主義国家と一緒になつて自由の世界と平和を守ることは国連の趣旨でもあり、また日米安全保障條約の趣旨であるとの見解が述べられ、また平和條約との関係につきましては、両者は形式においてはまつたく別個のものであつて安全保障條約は対等の形で締結するものであり、平和條約は戰争終了の跡始末として起つて来るものであつて、各別個の提案ではあるが、その内容からいえば、平和約発効独立した日本が力の真室状態のままで放任されるだけでは日本の真の独立は困難であるとの大前提のもとに、安全保障條約が当然の形において現われて来ておるから、最も密接なる関係があるものといわねばならぬとの答弁でありました。  第二は、この條約の基本的な性格についてであります。この点については、この條約は單に米国に駐兵権を與える片務條約ではないか、また本来の安全保障條約ではなく、いわば保護條約に類するものではないかという点が一つの論点でありました。すなわちこの條約が、徹頭徹尾日本アメリカに懇請した形ででき上つており、従つて日本には権利がなくて義務のみがあり、アメリカには権利があつて義務がないように見えるが、これは單にアメリカの駐兵権を認めるための片務的條約ではないのか、またこれに関連して、この條約第四條にある効力の期限については、それが明らかにされていないことは、永久的に駐留するという解釈もできると同時に、また米国側の都合で即時に軍隊を引揚げることができるという解釈にも相なるが、一応期限をつけて、必要があればそれを更新するというとりきめもできるのではないかという意見に対しましては、政府は、日本の平和が脅かされたとか、あるいは日本の治安が第三国の進出威嚇によつて脅かされた場合には、日本としては当然米国軍の出動を要求する権利があり、アメリカにはこれに応ずべき義務がある、また本條約において希望と応諾の関係がある以上、日本両国間の親善協力関係から見て、日本が要望した原因となる外部からの攻撃が具体的に発生した場合には、日本における駐屯軍が必ずこれを阻止するために立ち上つてくれるという確信を持つてよいと思うとのことであり、またこの條約は、いわゆる暫定的なとりきめであつて独立国の自負心からいつても、早くこのとりきめを終了させたいという趣旨であつて、期限は書いていないが、両国において安心できる状態になつたならば終了すべきものであるし、また米国政府が一方的に引揚げることは條約の趣旨と異なるものであつて、條約によつて合意されたものを一方的行為によつて廃棄したり、この條約の一部分を無効にするようなことは、條約上の観念からあり得ないことである、との見解が述べられたのでありました。  また本條約は、その第一條に、アメリカ駐屯軍は、日本における大規模の内乱及び騒擾を鎭圧するため、日本国政府の要請に応じて行動することになつているが、国内治安の維持のために外国軍隊によらねばならないということは、実質的に見て保護国の地位にもひとしいことではないか、また自助の力も相互援助の力もない状態でかかる軍事的條約を締結すれば、その條約の性格は、権利がなくて義務のみあるような條約になるのは当然であり、この條約は、あたかもかつての日韓保護條約に類似していて、わが国を保護国の地位に落すことになるのではないかとの意見に対しては、第三国の教唆または干渉に基く大規模の内乱または騒擾の際に駐屯軍の援助を受けるという規定は、北大西洋條約第五條に、一締約国に対する武力攻撃を全締約国に対するそれとみなすとあつて、この武力攻撃は第三国の干渉または教唆に基く大規模の内乱または騒擾を含むという有権的解釈があり、その解釈に従つたものであつて、ひいて当然保護條約的なものではないこと、並びに日韓保護條約当時の情勢と今日の場合はまつたく異なつており、この條約によつてわれわれの将来が日韓併合と同じことになるとは、日米の友好関係からいつて決して考えられないところであるとの力強い答弁がありました。(拍手)  なおこの條約は、現在の国際情勢、ことにアジアの情勢から見て、アジアの動乱を日本に及ぼすことにならないか、また中ソ両国との間に法律上、技術上戰争状態が続く場合において、この安全保障條約は軍事同盟の性質を帶びることに相なり、戰争を誘発することにならないか、さらにこの條約は、国連の大国協調の建前に反して、国連分裂の方向に向うものではないかとの質疑につきましては、この條約は、国連憲章の目的と原則従つて行動しない国が一部にあり、世界平和に対する危險があるので、この危險に対処するものであり、また国連の線に沿つて極東の平和のため、日本の安全のために締結されたものであるとの答弁がありました。  第三は、この條約に関連して、わが国の自衛権及び再軍備に関する問題であります。この問題も、すでに過般の本会議における質疑応答を通じて大体の論議がなされ、また政府見解も披瀝されたところでありまするが、委員会におきましても、軍備なき自衛権というのは明らかに無意味であつて独立国として、その安全の保障を、またその国内治安の問題までも、長期間他国の軍隊に依存するがごときはとうてい許されず、国民の自負心に対する影響も至大である、のみならず、この條約の前文においても、日本国が自衛のため漸進的にみずから責任を負うことを期待する旨が明記されており、諸外国もみな、むしろ日本の軍備に期待しており、サンフランシスコ会議におけるアチソン代表等の言葉は日本の再軍備を前提としているのであるから、日本としてはこの際再軍備に着手すべきではないか、また吉田首相はすでにダレス氏と軍事協力の話をしているとの報があるが、すでに再軍備の意思を持つているのではないか、また現に警察予備隊は、その装備及び訓練において実質上何ら軍隊と異なるところはないが、かような方法で日蔭者の軍隊を持つよりは、堂々と、もし必要ならば憲法を改正して再軍備をなす方がよいではないか、さらに軍備はいつになれば持ち得ると考えるか等等の質疑がたびたび繰返され、また一方、同じ再軍備の問題について、まつたく別個の観点から、この條約は再軍備を必至とすると思われるが、再軍備は憲法上不可能であつて、自衛権はあつても、兵力を持つことは許されないと思うがどうであるか、また再軍備は、必ず戰前における日本の軍国主義の復活を見るものであつて、きわめて危險であると思われるがどうか、さらに現在日本の再軍備の問題は、あたかも西ドイツにおける再軍備の問題と非常に近似しており、国民の素朴なる愛国心から出て来る自衛力保持の気持から来るものとはおよそ異なつたものであり、かつてダレス氏が、條約最終草案が決定された当時、日本の再軍備について、その軍隊は統一軍が望ましいと述べたと報道されているが、将校のいらない兵隊だけを要求するような再軍備はわれわれの最も懸念するところであるがどうであるか、また国連憲章規定やヴアンデンバーグ決議の趣旨からいつても、この條約は日本に再軍備を義務づけていないと解していいのか等々の質疑がなされたのであります。しかして、これらの相異なる立場からなされた再軍備に対するそれぞれの質問に対して、政府が披瀝した見解は、一貫した線を堅持していたものと思われたのでありまして、すなわち政府見解によりますれば、再軍備の問題は、第一に、現在国民が重税に苦しんでいるときに、再軍備のためにさらに課税することは国民の耐え得るところではないこと、第二に、過去において戰争は結局何人にも得にならぬことを印象づけるために、つまり国家主義を拂拭するために、軍人に対する年金の停止、負傷者救済の中止、遺家族手当の中止等の処罰的意味の処置をしておきながら再軍備をしようとしても、そこには大なる矛盾のあること、第三に、諸外国には、とかく日本の軍国主義または国家主義の復活等について今でも一つの疑惑を持つていること、これらの点から今日軽々しく再軍備を論ずべきではない、しかし独立を回復した日本が他国の保護を受けることは国民の自負心が許さないところでありまするから、国民の間に、日本は再軍備が可能であり、かつみずからの力で独立を維持すべきものであるという真意がよく了解され、また戰争犠牲者に対する関係等が明らかになつて初めて再軍備のことを考えるべきである、また日本の憲法は戰争の放棄を規定しているが、この條項はいろいろの考慮のもとに達した結論であり、軽々しく憲法の精神に反し、またこれを放棄すべきものではないから、日本の国力の許す場合には、日本独立は自力で保護しなければならないが、これもなるべく憲法の精神を遵守して行きたいという考えであるとのことでめりました。なお再軍備のことは、日本国民がみずからきめるべきものであつて、外国からこれを指示さるべき性質のものではなく、また條約自身は日本の再軍備を義務づけたものではなく、日本平和條約によつて完全な主権を回復しているのであるから、アメリカの要求がかりにあつたとしても、国力がこれに耐えなければ、これに応ずるわけには行かないとのことを言明されたのであります。  次に、これに関連いたしまして、平和條約第三章第五條にしるされてありまする、今後日本が負うべき国連憲章第二條所定の義務のうち、国際連合に與えらるべき「あらゆる援助」、この「あらゆる援助」とは一体いかなる範囲であるか、それは無制限なものでなく、わが憲法の範囲内または財政状態によつて一定のわくがあると見てよいのかという問題につきましては、これは一般論としては、各場合に国連の総会、安全保障理事会の決議によつて要請された内容によつてきまるものではあるが、常識的に考えて、結局日本の国力、日本の法律制度が許す範囲内においてということになると思うとのことであり、万一国際連合からわが国の警察予備隊の海外派遣を要求された場合はどうするかとの質問に対しましては、国連日本に対して憲法違反になるような要求をすることは断じてないと信ずるが、万一かかる要求があつた場合には、総理大臣としてこれを拒絶いたしますとの答弁があり、(拍手)さらにこの援助の発動の時期並びに條件というものは、わが国の自主的判断によつてこれがきめられるものかどうかとの質疑に対しましては、そのように解せられる旨の答弁がありました。なおこれらの問題とも関連して、国際條約と日本国憲法といずれが優位にあるかとの質疑については、これは具体的な問題が生じた場合に検討するが、憲法はあくまで政府として尊重するから、憲法に違反するような條約はできないとの答弁があつたことも申し添えておきます。(拍手)  最後に、行政協定の問題について申し上げます。この條約は日米安全保障の大綱を規定するにとどまり、現実にアメリカの軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する條件は、同條約第三條の規定によつて、あげて両国政府間の行政協定にゆだねられているのであります。従いまして、この点については、この行政協定の性質及びその内容について質疑が行われたのでありまするが、まずこの行政協定の性質については、もしこれが條約ならば別に国会の承認を経べきではないかとの意見については、政府から、この協定安全保障條約の実施細目を定めることに関して、両国政府が文書による合意をすることを前提とし、この合意によつてその法的な効力が完全に成立し、また確定するという意味を持つものである、しかしてこれは両国政府間において締結される国家間のとりきめであるが、それはあくまでも内閣が国を代表して締結する正式の国際協定であり、その意味によつて、憲法第七十三條の條約に含まれると考えるが、ある條約において一定の事項を締結政府間の協定にゆだねていることが明らかに定められている場合には、国会は、その條約の承認において、あわせて当該條約に基いて両政府間の文書による合意によつてその成立が完全に確定する協定締結をあらかじめ承認しているものと解する、従つて憲法第七十三條第三号但書の要件をすでに満たしているのであるから、この行政協定について国会の承認を求める必要はないと考える、またこの協定は、條約で規定された原則の実施細目を内容とし、相手国が特定されていること、協定事項が限定されている点などから、この程度に内容を限定されている協定締結をあらかじめ国会が承認することをもつて国会の條約承認権の放棄とは考えないとの見解が述べられました。さらに将来この行政協定は一般に公表されるものであるか、あるいは全部これを秘密にしておくものであるかとの質問に対しましては、行政協定をしてみなければわからないが、一般的にいえば公表するつもりであるし、またこの協定の実施にあたり予算または法律の措置を必要とする場合には、当然国会によつてこれらに関する審議が行われるものであろうと思うとの答弁がありました。  次に、本協定の内容はすべて今後の両国間の交渉の結果としてきめるべきものであるとされてありまするが、質疑の最後の段階において、民主党の三木武夫君が、この協定の内容たるべき問題の数項目について、今後の交渉に際しての政府の心構えをただしたのに対し、吉田総理大臣答弁によつて明らかにされた点を簡單に申し上げますれば、第一に、将来この條約により駐留軍が国外に行動する場合の基準として、極東平和が脅かされたとする判定はいかにしてされるか、第二に、日本が外国から直接侵略を受けた場合に、国警、警察予備隊等が米軍の指揮下に属するのか、あるいはかかる場合の相互的措置はどうか、第三点に、国内治安の維持については日本の責任によつてやることが原則であろうと思うが、この場合に米軍の援助を要請するのは外国の教唆によるクーデターのごとき場合に限ると思うがどうであるか、また共産党が関與する直接行動についてはどうするのか等々の質問については、極東の平和が脅かされたとする判定は結局日米両国の話合いによつてきまるものであると思うし、国内治安の維持は日本みずからその責めを負うべきが原則であり、従つて共産党の直接行動の場合等に限らず、日本の警察等によつて力の及ばないほどの重大な事態において考えるべきことであるとのことでありました。第四として、費用の分担は最小限にとどめて、みずからの自衛力強化に振り向けるよう了解を求むべきではないかとの意見に対しては、日本の安全保障のために米軍の駐留を希望しているものであるから、それ相応の分担をすべきものと思うが、それ以上には話が及んでいないとのことであり、また第五として、基地は少くとも六大都市は避けるべきであり、また駐留の地域と治外法権との関係等はどうなるかとの質問には、いわゆる基地という観念ではなく、軍の配備地域という考え方であつて従つて一定地域を限つて治外法権を認めることはないとのことでありました。第六、さらに演習地の問題については、永続的に一定地域を定めることは好ましくなく、できるだけ数少く、必要な場合だけに限るよう交渉すべきものと思うとのことであり、第七には、米軍の国内における特権は、軍人にしてしかも公務執行中に限るべく、日本人に與えた損害についての賠償請求権は被害者にあると思うがどうであるかという質疑については、多分そのようになるものと思うし、またそうしたいと思うとのことであり、その他予想さるべきいわゆる合同委員会の構成、権限人事等について、日米対等にいたしたいとの意向が表明せられたのでありますが、なおその他の諸点については、あるいは協定の結果にまつものもあり、また全然話合いの済まない点もあるとのことでありました。  以上が安全保障條約についての質疑応答の大要であります。これらの詳細については速記録によつて御承知願いたいと存じます。  かくして委員会は、昨二十五日質疑終局の後、討論に入り、自由党の守島伍郎君、民主党の小川半次君、農民協同党の中村寅太君、社会民主党の佐竹晴記君よりおのおの両條約に賛成の意見が述べられ、社会党の西村榮一君からは平和條約に賛成、日米安全保障條約に反対の意見が述べられ、また共産党の田島ひで君及び労働者農民党の黒田寿男君よりはおのおの両條約に反対の意見が開陳されました。  かくて討論を終局し、採決の結果、両件とも多数をもつていずれもこれを承認すべきものと議決して、歴史的な本委員会の任務を終了したのであります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  7. 林讓治

    議長林讓治君) これより討論に入ります。三宅正一君。     〔三宅正一君登壇
  8. 三宅正一

    ○三宅正一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、対日平和條約に賛成し、日米安全保障條約に反対するものであります。  まず対日平和條約でありますが、元来講和條約は、過去の戰争の終結を法律的に確認し、交戰国間の国交回復とその條件を規定するものであります。しかしながら、今般の講和の特色は、このような一般的な講和という通念のほかに、無條件降伏に伴う連合国による軍事占領とその管理から解放されて、日本が自主独立回復し、再び対等の主権国家として国際社会復帰するという点にあるのであります。日本が、ミズーリ艦上、無條件降伏調印して以来、星霜実に六年有余、わが国連合国管理と指導のもと、平和憲法の制定を初め、政治、経済社会、労働、農村、教育等の全部面にわたり、画期的なる民主的改革を断行し、ポツダム宣言に予定された民主主義国としての基盤を確立いたしたのであります。しかも民主主義の成熟には、当然に完全なる人格の自由と独立並びにみずから責任をになうの地位が必要であるとは言をまたないところであります。今やわが国民は、自主独立を強く要望しておるのであります。従つて、われわれは、この民族独立の契機をつかんで真の民主主義を完成するために、平和條約の締結という段階を肯定するものであります。  しかしながら、いかに国民待望の独立の契機とはいえ、今度のサンフランシスコ條約には多くの重大な欠陥があることは、疑う余地のないところであります。すなわち、この平和條約は、その名称にふさわしくない險悪な国際情勢の影響を受けており、独立日本の前途には幾多の困難が横たわつておるのであります。講和は、元来すべての交戰国との間になされなければならないものであります。しかるに政府は、この講和問題の処理にあたつて、まつたく他力本願的な安易な道を選んだのであります。そこには、国民の念願である全面講和への自主的な努力のあとは全然見られなかつたのであります。(拍手)かような関係から、サンフランシスコ平和條約には、インド、ビルマの不参加と、中間問題のたな上げ、さらにはソビエト圏諸国の脱落という重大な欠陷が伴うに至つたのであります。従つてわが国といたしましては、独立後すみやかにこれら不参加国、未調印国、未批准国との講和ないし国交回復に対して真劍な自主的外交の展開を必要とすることは言をまたないところでありまして、かかる難事業は、固陋な保守主義にたてこもり、安易な対米一辺倒の立場に安んずる吉田内閣に断じて期待するわけにはいかないものであります(拍手)同時に、いたずらに観念的な立場を固執して、現実の国際情勢を無視し、あたかも講和條約の締結それ自体が戰争と平和とのわかれ道であるかのごとき議論を立てて、対日平和條約の不完全性を指摘するに急なるあまり、この講和が戰争への道であるかのアジテーシヨンをなすがごときは、われわれのとらざるところであります。(拍手)いかに險悪にして変転きわまりなき国際情勢とはいえ、われわれは第三次世界戰争が不可避とは考えられないのであります。  国際共産陣営の軍事的侵略の段階から割出されたる局地戰争に対抗して平和を守る道は、内にあつては勤労大衆の生活の安定と向上を目途とする社会主義を断行し、外にあつては、自由世界の団結を強化して民主主義と自由を防衛し、国際連合との協定のもと、進んで国際社会主義を実現し、もつて貧困と隷属に悩むアジアの政治的独立経済的解放を実行する以外には断じてその方途はないのであります。(拍手)かかる見地からいたしまして、日本独立は正義に基いた国際平和の確保のため不可欠の條件であり、われわれはいたずらに占領下にあつて奴隷の平和をむさぼるべきではなく、民主的日本の歴史的使命を自覚し、独立を獲得して、積極的に平和確立への役割を演ぜんことを念願するものであります。  以上の見地から、われわれはこの平和條約を肯定せんとするものでありますが、サンフランシスコ條約の内容は、いかに政府が宣伝するも、とうてい日本国民満足すべきものではないのであります。なるほどこの平和條約は、敗戰国、ことに無條件降伏国に課する講和條件としては、報復的要素が比較的に薄いことは事実であります。しかしながら、いわゆる公正なる講和とは断じて受取れない幾多の條件があるのであります。なかんずく領土條項と賠償及び補償條項については、われわれははなはだしくこれを不満とするものがあるのであります。すなわち領土條項については、われわれも降伏文書の調印ポツダム宣言受諾の建前をくつがえさんとするものではありません。しかしながら、連合国が、本州、四国、九州、北海道の四大島のほか、その他の小島嶼の帰属をきめるにあたつて連合国みずからが定めた連合国共同宣言の精神に基いて、領土の不変更と住民の自由意思を尊重する原則が守られることを要望し、これを期待したのでありますが、南樺太千島並びに北緯二十九度以南の小笠原、沖繩等についての第二條及び第三條の規定は、われわれの要請をまつたく無視するものといわねばなりません。われわれは、千島、南樺太についてはヤルタ秘密協定に拘束されないことを明確に宣言するとともに、小笠原、沖縄については日本の完全なる主権承認を要求するものであります。(拍手)  さらに賠償については、敗戰国の責任論は別として、條約第十四條の規定のごとく、役務賠償に関して何らの金額的な限界を定めない。従つて無制限、無期限にわが国民の生活水準のくぎづけを招くおそれのある義務を定めることは、はなはだ不当であると信ずるものであります。われわれは、東南アジア諸国に対しては、賠償義務履行という見地からでなく、同じアジア民族の相互援助見地から、経済的、技術的、文化的の提携をはかるべきであると信ずるものであります。同時に同條のの規定に基く在外私有財産の無償沒収のごときも、国際公法に反することはあまりにも明瞭であります。  以上申し述べましたことく、本條約は、その形式において全面講和の理想に遠く、その内容において多くの不満を内包するものでありまして、政府の言うがごとく、欣然これに批准すべき性質のものではなく、敗戰冷嚴なる現実の前に、真に涙をのんでこれを受入れるべきものであると存ずるのであります。(拍手)  翻つて思うに、民主陣営に属する四十八箇国がすでに調印し、インドもまた近く調印せんと報ぜられておるとき、共産主義ソ連の不参加と、二つに分立した不幸なる事情より調印の運びに至らぬ中国が残つたからというてこれを拒否し、占領状態をみずから好んで長引かせんとするがごときは、われらの断じてとらざるところであります。また、條約内容の不満な点を強調して本條約の批准を拒み、條約反対運動の形において独立の契機を失うのみならず、結果において国際共産党の反米運動と日本撹乱の運動に利用せられ、また今後最も警戒すべき極端なる民族主義運動を激発してフアシズムの抬頭の危險を誘致するの愚を避くべきであると信ずるものであります。(拍手)われわれは、この際本條約に賛成するとともに、第一にわれらみずから日本の民主化の徹底に努力し、世界の信用を回復するとともに、特に近隣諸国日本の軍国主義復活に対する危惧を拂拭して、その上に立つて勇敢に條約改正運動を展開して不満なる條項を修正せしむべきことが、祖国日本に忠なるゆえんであるとともに、賢明なる日本民族の進路であると信ずるものでございます。(拍手)  次に日米安全保障條約でありますが、われわれは、独立日本は、特に非武装の現実と、現下の国際情勢にかんがみ、講和直後の空白期間を含めて安全保障が必要と信ずるものであります。しかして、その形態は、社会党が終始一貫主張して参つた通り、第二次世界大戰後生れた最も進歩した平和保障の形式として、国際連合憲章に基いた集団安全保障であるべきであると信ずるものであります。われわれは、他面、独立日本が好んで国際紛争に介入すべきでなく、また外交には当然に自主性がなければならないと確信するものであります。しかしながら、国際情勢から見て実現不可能な中立不可侵條約に望みを嘱したり、凶暴な直接間接の侵略に対して無防衛、無抵抗主義をとるべしとする論者とは所見を異にするものであります。(拍手)かかる見地から講和に賛成するわれわれは、講和によつてまず国の独立を獲得し、その上に、あくまで自主平等の立場に立つて、暫定的な安全保障の道を国連憲章のわく内におい解決すべきことを主張するものであります。  しかるに、このたびの日米安全保障條約は、政府がこの原則をほしいままに蹂躙して、何ら事前にその大綱を国会にはかることなく、かつ平和條約第六條の規定によつて平和條約の効力発生後九十日の期間中に、独立国として締結する時間の余裕あるにかかわらず、急遽、平和條調印の翌日、完全なる秘密独善外交のもとに調印されたことについては、まずわれわれは根本的にこれに反対するものであります。(拍手)われわれは、独立を獲得して後、あらためて自国の安全保障について、自主外交の建前から、とるべきはとり、捨てるべきは捨てるのが当然であると確信し、いわゆる講和、安保両條約の不可分論に断固反対するものであります。  さらに日米安全保障條約は、政府の他力本願的な立場と、国会軽視の独裁主義に端を発したために、その内容において著しく不当であります。特に條約第三條の行政協定に重要なる内容ことごとくを委任した点については、政府がいかに陳弁これ努むるも、アメリカ合衆国の憲法の運営ならばいざ知らず、わが日本国憲法第七十三條にいわゆる、すべての国際條約は、事前に、時宜によつては事後に国会の承認を受けなければならないという大原則に対する重大なる挑戰であることは、明白なる事実でございます。(拍手)ことに行政協定内容が、当然に外国軍隊の駐留に伴う軍事基地の容認、その裁判管轄権と日本国民の裁判管轄権との関係、外国軍隊に対する課税上の特権の供與、演習権及び交通運輸上の特権、さらには駐屯軍費の分担等の、いわば日本主権に関する問題や、国民権利義務に関する事項にわたることが常識上当然であることを思うとき、一層政府に対する白紙委任は不法であるといわなければならぬと存ずるのであります。(拍手)なおまた、本條約に有効期限がない点や、対等の立場でない点、さらに内乱に際する援助規定等は、いずれも独立日本の基本的性格について疑点を抱かしむるものとして、われわれは吉田外交の失態を糾彈することが当然の責務なりと信ずるものであります。(拍手)  以上の見地から、社会党は、講和條約に條件つきで賛成し、日米安全保障條約に対しては明確に反対の意思を表明するものであります。(拍手
  9. 林讓治

    議長林讓治君) 山口喜久一郎君。     〔山口喜久一郎登壇〕     〔議長退席、副議長着席〕
  10. 山口喜久一郎

    山口喜久一郎君 自由党を代表して平和條約及び日米安全保障條約に賛意を表するにあたりまして、われわれはまず敗戰の事実と、昭和二十年九月二日ミズーリ艦上において調印された降伏文書の冷嚴内容を想起しなければなりません。しかしてまた、敗戰国の立場がいかに悲惨なるものであるかは過去の歴史の教えることも承知しなければなりません。第一次大戰後、ヴエルサイユ会議におけるドイツの立場や、今次大戰におけるイタリアの苦痛のごときは、これまでの敗戰国が受けなければならぬ必然の運命でありました。しかるに、今回サンフランシスコ調印された平和條約及び日米安全保障條約は、いわゆる和解信頼根本精神とし、二十五世紀の昔、哲学者プラトンが、戰争を絶滅する方法は、戰勝国が自制して、戰敗国にも戰勝国と同様な公正な條件をつくることだと喝破した、その千古不磨の哲理に基いてつずられたのであると、ダレス顧問が特に條約締結までの苦心を述べられた通り、この條約は、日本主権を拘束するような永続的な制限を加えない、きわめて公正寛大なる條約であると信じて疑いません。(拍手)  諸君、わが国ポツダム宣言受諾し、ミズーリ艦上において降伏文書に調印のとき、たれかこの寛大なる講和を予期したでございましよう。しかるに、終戰六年、ともすれば連合国好意と温情になれ、ややもすれば敗戰という嚴然たる事実を忘れんとし、この寛大なる條約にさえ不満を訴えるがごときは、まさに隴を得て蜀を望むおろか者といわなければなりません。(拍手)われわれは、まずこの公正寛大にして世界平和維持に大きな意義をもたらす條約の締結になみなみならぬ苦心と努力を拂われた米英両国を初め、連合諸国ダレス氏に対して深甚の謝意を表するとともに、この條約を成立せしむるために最善を盡された現内閣の功績及び全権団の奮闘に対しては満腔の敬意を表するものであります。(拍手)国会を代表して親しく会議に参列した私としても、九月七日午後八時、老躯をひつさげて八千万国民の言わんとするところを忌憚なく言い盡された吉田首席全権の、あの力強い言論と堂堂たる態度には、思わず目がしらの熱くなるのを覚えたのであります。(拍手)このとき、———————のごときは、涙を流しておつた一人であります。吉田全権は、その際、平等なる主権国家として列国の間に処し、相ともに世界のデモクラシーと自由を前進させんことを世界に宣言されたのであります。これはとりもなおさず、八千万国民の列国に対する約束であり、われわれは嚴粛にこの言葉を守らなければならないのであります。幸いにも、共産党及びこれと気脈を通ずるきわめて僅少な人々を除く絶対多数の国民諸君と各政党がこの講和條約を支持されることはまた当然であります。(拍手)  この講和條約と表裏一体をなす日米安全保障條約に対し、とかくの論議が残されておることは、きわめて遺憾にたえません。しかしながら、そもそも平和條約と日米安全保障條約は、これを一貫して世界の平和と繁栄を確保し、かつまたわが国独立と安全を保障することを目的とするものでありまして、現下の国際情勢下においてなし得る最善の手段であらねばなりません。ニュージーランドのペレンドセン代表が喝破した通り、共産帝国主義の侵略の脅威さえなくんば、何を苦しんで、かかる安全保障條約などを考える必要があろうか。(拍手)この恐るべき赤色侵略の野望を阻止するためには、自由主義国家群が強く団結して、その集団的安全保障の機能を強固にする以外に方法は断じてございません。(拍手)  しかるに、わが国の一部には、この両條約、ことに安全保障條約が、自由主義陣営と共産主義陣営の対立を深め、東亜の不安を招き、戰争を誘発する危險を伴うものであるとの説をなすものがありまするが、かかる言説は、共産帝国主義の手先の謀略的宣伝か、あるいはその宣伝に欺瞞された人々の杞憂にすぎないのであります。この考え方は、全面講和、永世中立の観念論と表裏をなすものであつて、この観念論がいかに空虚なものであるかということは、サンフランシスコにおけるソ連の提案を一読すればきわめて明瞭であります。(拍手)  すなわち、ソ連わが国に対する態度は、和解信頼の対角線にある——と——であります。わが国に破滅的な賠償義務を課し、わが国を無力化せんとするものであります。(拍手)その意図は、一つには、ソ連の欲するとき、いつでもわが国を————地位を保とうとしており、また一つには、アジアにおける自由主義国家間の——をねらう以外の何ものでもなかつたはずであります。グロムイコ・ソ連代表は、領土権の放棄については、満洲、台湾、澎湖島、それらは中共帰属し、また南樺太千島ソ連領土として中共と自国の利益を確保すると同時に、日本連合国に対する軍事行動により生じた損害の補償を求めました。絶対無條件で多額の金銭賠償をさえも要求したではありませんか。その真意は、中共側のかねて主張する通り、五百億ドルの金銭賠償を強く支持しようというのでありましよう。かかる無法な賠償を約束されたならば、減税や賃金のベース・アップどころの騒ぎでは断じてありません。労働者、農民大衆を含む国民個々の生活は破壊され、今後百五十年ぐらいは再建復興などとうてい思いも及ばぬことを知るべきであります。(拍手)グロムイコ・ソ連代表は、また一方には、宗谷、津軽、根室、対馬、これらの海峡はソ連の軍艦のみが通航する権利を有する項目を設けたじやないか。日本列島を——しようというのではないか。その日本列島を——するために、前提條件としてかかる苛酷なる提案をしたのではないか。これが——の対日政策の魂胆であり実体である。(拍手)全面講和とは、この——にして——なる構想を支持する者のみが使用するところの売国的暴論であると言うもあえて過言ではありません。(拍手)  回顧すれば、ソ連は、日ソ中立條約の有効期間中であつた昭和二十年八月九日、突如として参戰し、一兵を損せずして戰勝国となりました。しかして、講和條締結に先だつて、莫大なる日本の在満資産を沒収したではないか。あまつさえ百万の抑留者を数年にわたつて酷使した。今なお三十数万の未帰還の同胞を抑留または————————ではないか。あるいはまた、民族的にも歴史的にもわれわれの領土であるべきところの歯舞や色丹島を初め、千島、南樺太を占領しておる上に、さらにわれらに苛酷なる懲罰的講和を—————とする態度は、日本国民として断じてこれを容認することはできません。(拍手)かかる意図を持つソ連及びその支配下にある国と、真に平和を愛好する自由主義国家とが同時に全面講和を締結することのできないことは、これ理の当然でなければならぬはずであります。しかるに、この自明の理を承知しながら、なおかつ全面講和や永世中立の観念論が一部にあることは、まことに奇怪千万なりといわざるを得ません。(拍手)  平和條約と安全保障條約とを一貫してこそ、わが国独立と安全が保障され、世界平和に寄與することができるということは、今や心ある国民の常識でなければならぬはずである。もしかりに万が一にも一部に論議されておるように両條約の可分論が勝利を占めて、講和條約は承認されたが、安全保障條約がわが国会において否決されるようなことがありましたならば、せつかく今日までわが国の再建復興に力を盡し、かつまた條約締結後も友愛と信義をもつてともにともにわれわれと手を携えようとする連合各国が、これを心から歓迎するでありましようか。いわんや、講和條約を承認し、安全保障條約が否決されることあらんか、日本国の自由と安全を何によつて保障しようというのでありましよう。  これに対して、また一部においては再軍備をしきりにとなえる人もありまするが、現在のわが国経済状態をもつてしては、その負担の過重に耐え得ぬことはあまりにも明白であります。かつまた賠償問題がデリケートな関係にあり、いまだに日本軍国主義の擡頭に敏感であり、日本国民に対する不信と憎悪の念が完全に拂拭されてない今日、軽々にこれを口にすべきではないとわれわれは考えております。この意味において講和條調印後の日本の安全に対する空白を埋めるためにも、日米安全保障條約は絶対不可欠のものでなければなりません。重ねて申しますが、連合諸国と血縁の関係を結ぶ強き紐帶であるところの安全保障條約を無視して講和條約だけを批准するような甘い相手でもなかろうと、私はかように考えております。このことは強く銘記すべきであります。すなわち、両條約の可分論のごときは、ぬえ的な自己の性格をしいて理論づけようとするところの一部の人々や曲学阿世の徒が、過去の無責任な放言の逃避所に——逃げ場所にしようとしておるのではないか。(拍手)  ただいま三宅君の議論を聞いても、承認した講和條約に対して、またこれが緩和運動をするというがごときも、大きな理論の矛盾があることを知らなければなりません。(拍手)かかることは、苦しい自己弁護以外の何ものでもないじやないか。今からでも決して遅くはありません。翻然として、この両條約を一貫して真の平和と自由が確立さるることに思いをいたし、われわれとともにこぞつて賛成されんことを希望してやみません。(拍手)  ただこの際、われわれの希望の二、三を付言しておきまするが、安全保障條約の実質的内容が行政協定に讓られておる関係上、その内容について多くの質疑や議論が繰返されたことはやむを得ないことであります。われわれもまた深い関心をこれに持つ次第であります。行政協定がいまだ折衝の段階にあり、政府にこれが説明を求むることは無理ではありまするが、この協定が日米対等の立場に立ち、相互の信頼と共同の目的の上に結ばれ、国民の期待と希望に沿うよう、今後さらに一段の御努力希望してやまないのであります。  また国民関心の焦点である琉球、奄美大島等、二十九度以南の信託統治に関する領土問題が、会議におけるダレス米国全権及びヤンガー英国全権の言明の線に沿うて、一日もすみやかに、名実ともに完全にわが国に返還される日の近いことを祈る次第であります。(拍手)  また役務賠償の問題は、今後残されたる重要にして困難なる課題でありましよう。これがためにわが国経済の発展を阻害し、国民負担に大きな重圧を加うることになれば、平和條約の意義も滅却されるのでありまするがゆえに、今後具体的折衝にあたつては、十分相互の理解のもとに、妥当公正な役務賠償のとりきめを善隣友好関係の確立とともに促進せられんことを希望してやまないのであります。  なおまた懸案の漁業問題その他戰後処理の問題等につきましても、われわれの意のあるところを十分くみとられて政府が善処せられんことを希望してやみません。  また会議に不参加インド、ビルマ及び戰争関係のなかつたタイ国、韓国等との国際関係回復には政府に一段の努力を要望し、最後に国際関係の複雑性や政情の不安定のために今回の講和会議に招請されなかつた中国についても、その支配者のいかんを問わず、中国民衆それ自体はわれわれのよき隣人であります。古き歴史のつながりのもとに、平和的に経済的な友好関係の復活に努められんことを希望してやまないのであります。  以上申し述べた観点から、われわれ自由党としては、ただいま提案された平和條約並びに安全保障條約こそはわが国独立と再建の出発点であり、両條約の効力発生により、名誉と誇りを持つて国際社会復帰する日のすみやかならんことを念願して、委員長報告に絶大なる賛意を表する次第であります。(拍手
  11. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 林百郎君。     〔林百郎君登壇
  12. 林百郎

    ○林百郎君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題になつておる平和條約並びに日米安全保障條約の二つの條約に対し反対するものであります。  反対理由の第一は、この條約が戰争を終結させないのみか、新しい戰争を準備する條約であり、国連憲章ポツダム宣言、憲法にことごとく違反し、平和を求むる国民の意思をまつたく蹂躪しておるからであります。この條約は、五大国のうちソ同盟と中国を除外し、この二国とは戰争状態を終了させていないのであります。この條約は、中ソ友好同盟において明らかに示されている——中ソ両国は互いに合意の上で、第二次世界戰争のときの他の同盟国とともに、できるだけ短期間内に対日講和を実現することを保証するとの中ソ両国の好意をまつたく蹂躪するのみか、かえつてこれらを仮想敵としておる明らかな軍事同盟であります。(拍手)だからこそ、この條約に対し、中国は、中ソ両国を除外した講和は中国に対して戰いを宣するものであると、重大な警告を発しておるのであります。真に平和の條約を結ぶためには、われわれはこの中国の意思を絶対に無視することはできないのであります。(拍手日本講和條約の起草と調印にあたり、日本との参戰最大国であり、かつ一千万の死傷者と、五百億米ドルに及ぶ最大の犠牲を拂つた中華人民共和国を参加させることなくして、どうして戰争を終結させる講和と言うことができるでありましようか。だからこそ、ソ同盟は調印をせず、インドもまた、この條約が極東の平和を維持するものでないとして反対し、ビルマもこの調印を拒否しておるのであります。  この條約は、それのみではなく、さらに進んで極東において日本を新たな競争に巻き込ませる、戰争準備の條約であります。現に委員会における政府見解によれば、中国、朝鮮はもとより、ヴエトナム、マレーにおける民族独立の運動すらこれを共産主義の侵路とみなし、これに対し日本は、国連の名のもとにアメリカが行う一切の————に対しあらゆる援助を與え、協力する義務があることを認めておるのであります。このことは、日本国民と国土をあげてアメリカアジアにおける————政策に提供することとなるのであります。(拍手)だからこそ、吉田首相の、再軍備はしないとのしらじらしい強弁にもかかわらず、憲法を無視し、大量の軍人が追放を解除せられ、天皇制は建軍の道徳的支柱として——されておる。警察予備隊は、厖大な予算のもとにますます増強され、重火器による武装のもとに————の演習すら実施しているのであります。(拍手)現に官庁においては、行政整理に名をかりて予備隊に行けとおどかし、警察予備隊員の———募集すら行われておるのであります。このことは官庁労働者の間に大きな不安を呼び起しておるのであります。  かくのごとく、本條約は戰争を終結させないのみか、新たな戰争日本を介入させるための條約であるが、このことは平和を求むる日本国民のひとしく反対するところであつて、わが党はこの国民の意思を代表し、本條約にまず反対するものであります。  反対の第二点は、この條約は、わが民族の主権独立をまつたくアメリカに———してしまう点であります。(拍手平和條約第六條並びに安全保障條約によれば、アメリカの占領軍は、防衛軍と名をかえたのみで、依然として無期限に日本に駐屯することがきめられておるのであります。吉田政府は、この條約を和解信頼の條約と言うが、占領軍の武力のもとに強要されたこの條約のどこに和解信頼と対等の立場があり得ましようか。(拍手)  諸君、エジプトの国民は、今日われわれに何を訴えておるか。過去五十年間、イギリス駐屯軍のために内政に——され、主権を——され、圧政に苦しんで来たエジプト国民は、今や自由と独立のために決然として立ち上り、日本国民に対してエジプトの例にならうなと警告しておるのであります。しかるに吉田政府は、アメリカ軍が日本に無期限に駐屯することを進んで希望しておるのであります。このことは、明らかに吉田政府は、エジプト国民が五十年の長きにわたり苦しんで来た植民地の奴隷状態日本国民を今日新たに突き落すこを希望するのであつて、これこそ売国の徒といわずして何でありましようか。(拍手)  しかも吉田政府は、アメリカ軍の日本駐屯に関する事項を一切行政協定にゆだねた上、協定はまだとりきめてないとの理由をもつて、その内容国民の前にひたすら隠蔽しておるのであります。このことは、吉田首相の国会における態度に見ても明らかであります。政府がもしアメリカと対等の立場協定するというならば、何ゆえに当然持つべき自己の方針を説明できないのであるか。事実は協定がないのではなく、国民の前に発表できないのであります。(拍手)何とならば、もしこれを発表するときは、吉田政府アメリカとの間にいかに売国的とりきめをしたか、その正体を国民の前に暴露し、必ずや国民の憤激の的となり、自己政権の危うくなることをおそれておるからであります。(拍手)  内外の新聞は、この屈辱的協定内容を次のごとく発表しておる。すなわち、日本国内の至るところに、アメリカ陸海空軍の基地をほしいままに設けることができること、一朝有事の場合には、日本の警察予備隊を初め、必要なときは国家警察をも米軍の指揮下に置くこと、アメリカの軍人がいかなる行為をしても日本の裁判権は及ばないこと、すなわち完全なる治外法権であります。さらに日米合同委員会を設け、その議長アメリカ側より選出すること等であります。これは表現の差異は多少あつても、事の真相を伝えて間違いないことは、アメリカフイリピン協定にかんがみて明らかであります。(拍手)かくて、アメリカ軍が日本に駐留し、日本の国土があげてその軍事基地になつておる限り、日本軍事、警察、司法、財政、金融の一切の権限は、日米合同委員会を通じて、実質的にはアメリカの掌握するところとなり、日本は完全にその主権独立を—————、アメリカの保護国とならざるを得ないことは、歴史の明らかに示すところであります。(拍手)  この條約は、かくのごとく秘密のうちに国民の意思を無視し、日本主権を外国に売り渡す屈辱的條件であつて、これわが党が本條約に反対する第二の点であります。(拍手)  われわれがこの條約に反対する第三の点は、この條約は、日本国民アメリカの支配のもとに徹底的に収奪し、国民の生活をまつたく破綻させる点であります。今日、占領下における日本経済の実情はどうでありましようか。日本の産業は九割までがアメリカの支配に握られ、アメリカの了解なくしては国家予算すら組むことができないのであります。(拍手)いわんや、日本経済は、日本経済協力の名のもとに、あげてアメリカの軍拡経済の下請になり下つておるのであります。アメリカの百万長者の莫大な利益の裏に、日本国民は電力、石炭の不足に、苦しんでおり、物価の高騰にあえぎ、重い税金を取立てられ、植民地的な低賃金をしいられておるのであります。他方、日本経済の繁栄を保障する中国との貿易は、         ————— の政治的意図のために禁止され、その再開は、この條約によつてますます困難となつて行くのであります。占領下の日本経済の実情は、アメリカ軍が駐留し、日本の国土があげてアメリカ軍事基地となつておる限り何ら改善されないのみか、ますます深刻となることは、一点の疑いの余地もないことであります。  その上、アメリカは自国の旧外債援助資金を優先的債務と主張し、さらにアメリカ駐屯軍の莫大な費用を日本国民に支拂わせようとしておるのであります。アメリカは、他国に対しては、日本賠償能力がないとして、いかにも日本に————がごとく言いくるめ、その上、日本の労働者のみにその犠牲を転嫁させる役務賠償主張しておるのでありますが、これはアメリカ一国が日本経済をあまりにも——————からであります。(拍手アメリカは、今後もなお自国のみで日本を—————ようとしておる。このためにこそ、賠償を要求するアジア諸国日本国民との間の——を激化させ、わが国アジアにおける立場をいよいよ困難にしておるのであります。(拍手)これで何が和解信頼でありますか。この條約のどこに日本経済独立と発展、国民生活安定を見出すことができますか。これがわが党の本條約に反対する第三の点であります。  以上の内容を持つこの屈辱條約に対し、日本国民が真の平和と独立を要求し、人間らしい生活を求めて、売国的な吉田政府に反抗し立ち上ることは、国民の当然の権利であります。(拍手)しかるに政府は、今やその——政権を維持するために、安全の保障に名をかりて、かくのごとき愛国運動を内乱・騒擾の名のもとに外国の軍隊によつて彈圧しようとしておるのであります。(拍手)これこそ安全保障條約のねらいであります。  一体吉田政府のいう安全保障とは、だれのための安全の保障であるのか、吉田政府のいう自衛とは、だれのための自衛であるのか、重い税金と失業に反対し、占領軍の即時撤退と民族の独立のために闘う愛国者をアメリカの軍隊の手によつて彈圧すること、これが吉田政府のいう安全保障であり、自衛権の行使であるのであります。(拍手)これこそ、世界のほんの一握りの戰争と、これによつて莫大なもうけをするアメリカの百万長者と、さらには————吉田政府とその一味のための安全保障であり、自衛権なのであります。(拍手)  わが国民にとつての真の安全保障とは何であるか。すべての国と全面講和を結び、世界の平和を守り、あらゆる国との自由で公平な貿易によつて日本の平和産業を発展させ、国民生活を安定させることであり、このために戰争と———吉田政府を倒して日本に平和と独立政府を打立てるこそ、これこそが国民の唯一の安全の保障なのであります。(拍手)かくて平和を愛し、民族の誇りを持つ国民が、この屈辱條約の実相を知るにつれて熾烈な反対運動に立ち上ることは当然であります。吉田政府による愛国者の追放、投獄、一日千箇所にも及ぶ無謀きわまる家宅捜索、武装警官による集会の彈圧等、東條すら行い得なかつた残虐きわまる彈圧にもかかわらず、今や日本の労働者、農民、国を愛する資本家の諸君までがこの亡国的屈辱條約に対し、激烈に反対しているのであります。(拍手)もしかりに、——吉田政府が自党の多数をもつてこれを押し切り、国会を通過させても、この條約がはたして自由党の言うがごとく和解信頼の條約であるか、それともわれわれの主張する売国と戰争の條約であるかは、将来必ずや国民がこれを審判するでありましよう。(拍手)このことは、歴史が明らかに示すところであります。国民の抵抗は、必ずやこの屈辱條約を実力によつて粉砕することを確信しつつ、私の反対討論を終るものであります。
  13. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 笹森順造君。     〔笹森順造君登壇
  14. 笹森順造

    ○笹森順造君 ただいま上程されました日本国との平和条約並びに日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約承認を求むる件に対し、私は国民民主党を代表し、要望を付して賛成の意を表するものであります。(拍手)  まず私は、国民民主党の主張する平和條締結の方式を明らかにしたいと思います。われらは全面講和を最終目標とするも、それに固執して、可能なる国々との多数講和の実現を妨げ、日本独立を遅延させる非現実的な方式には反対であります。また多数講和の現実主義にのみとらわれ、未講和の国との平和を妨げ、わが国を新たな困難に低迷せしむるような方式にも反対であります。われらの主張は、わが国に対して真に和解信頼の手を差延ぶる四十八箇国とこの際平和條約を結び、独立回復いたすべきでありますが、しかして、そのことによりて未講和国に対し無用の敵愾心を示すがごときことを避け、一段と善隣の誠意を披瀝し、逐次單独講和追加締結の機会を促進し、最終目的に達し、完全なる平和克復に至る方途を講ずべきであると信ずるのであります。たとい共産主義国の代表者が桑港平和会議の方式内容に反対しておつても、彼らもまた平和を口にしておるのであります。あるいはそれは外面如菩薩、内心如夜叉であつたにしろ、彼らもまた平和主義を自称しているのであります。日本は高踏的外交手段によつて平和友好の国際関係を釀成することに努力すべきであります。しかしながらこれは暴虐独裁の共産主義の理念を肯定するものでは決してありません。むしろその彈圧下に呻吟しておりまするアジアの人民大衆を再び自由世界復帰せしめて、世界の平和愛好の諸民族とともに新しき時代を建設せんとすることにこの目的があるのであります。かくしてこそ初めて世界は二つでなく、一つになる新しい世紀が開かれるに至るでありましよう。  前国会において、平和條約に対する首相の説明が不十分で、不明瞭に残されました数点は、過般の桑港の平和会議においてなされましたトルーマン米大統領、ダレス米全権、ヤンガー英全権等の演説で、ほぼ明らかにせられたのであります。しかしてまた、わが党が主張し、ダレス氏に希望を述べました点が、ある程度可能となつたのであります。しかしながら、この條約は、その適用を将来に残しておる点がありますので、以下数点に触れて論及したいと思います。  一、領域條項。北緯二十九度以南の奄美大島、沖縄、小笠原島等の保有は、わが党の主張である、究極の主権日本に残ることが明らかになりました。これを手がかりとして、カイロ宣言、大西洋憲章の無併呑、民族自決の原則にのつとつて、われらは国民の名において、あくまでも完全返還をその住民とともに叫び続けるでありましよう。東洋安全保障のためには、日米安全保障條約の適用をもつて足れりとするのであります。千島列島及び南樺太割讓ヤルタ協定に基くものとするならば、われらはこれに反対せざるを得ない。ヤルタ協定は無効であると信ずるのであります。日ソ中立條約成立中、不戰、不可侵の原則を犯して、ひそかに盗取を企てたるがごときは、国際道義蹂躙もこれよりはなはだしきはないのであります。ソ連は武力をもつて侵略、併呑を続けるでありましよう。しかしながら、われらは、国際信義の名において、その帰属が定められておらない以上、失地回復を永久に叫び続けなければならないのであります。歯舞、色丹諸島の北海道直属の島たることは言を要しません。  一、安全條項。国際連合加入と、集団安全保障と、そのための基底をなす自衛力の確立とは、つとにわが党の主張して来たところでありますが、本條項の前文で、日本国連加盟申請の意思を明らかにし、第五條において、連合国日本に対し同憲章第二條原則を指針として義務を負うことを確認しておるのであります。また、日本が集団安全保障とりきめを自発的に締結し得るとの規定は活用さるべきであります。  一、未帰還者復帰條項。わが党は、ソ連中共、北鮮地区の捕虜及び抑留者の即時帰還を強く主張して来たのでありますが、本條約第六條に、その完全実施のなさるべきことが規定せられましたので、残余の全員即時帰還を要求するものであります。われらは、今、ポツダム宣言に違反して、同胞をシベリアに拉致し、重労働と飢餓と流行病のために、ソ連地区において無念の最期を遂げたる十数万の生霊のうめきを聞き、悲憤の涙をその遺族とともに注ぐものであります。その悲惨なる報いは、これを—————ソ連とその同調者の頭に返るべきでありましよう。  一、政治経済條項。われらは、国内政治については、日本の自主的見解に基く措置に対して一切の自由を認め、政治活動、科学研究等の無制限を主張して来たのでありまするが、本條約において、国内産業における生産量、海運活動、船舶保有量と速力の制限を撤廃し、民間航空の復活、漁業区域の制限撤廃等に対して規定がなされたのであります。国際政治その他の関係については、あらゆる国際団体会議並びに協定参加する機会均等の原則がここに示されたことでありました。対外経済活動の自主的にして平等の関係確立の原則は、本條約に規定されておるのであります。すなわち、日本諸国との諸條約の存続または復活については相手国が選択権を持ち、日本相手国人に内国民待遇と最恵国待遇を與えることになつておりますることは、これは相互主義であると思います。また日本人の国際市場における公正競争の機会均等が與えられ、海外における日本人の経済活動の機会均等が予想せられることになつたのであります。  一、請求権及び財産の條項。在外資産の公正なる処理をわれらは主張して来たのであります。特に在外の個人資産を賠償に引当てることに対しては、国民の財産権はこれを侵してはならないという憲法の精神が尊重せられなければならないと思います。ゆえに、この損害は、国家財政の可能な範囲において、また他の国民負担転嫁の度合いを勘案して、公平に補償されなければなりません。特に第十六條に規定する中立国内にある私有財産賠償の引当てにすることは、国際私法上の通念に反しております。よつて、この損害については特別な配慮がなされなければならないのであります。かくして、巨額の対日援助金と国債と賠償との支拂い方法に、政府がもしも適切ならざる施策をするならば、おそらくは国民は苛酷な重税に苦しみ、インフレは高進し、国民生活水準は極度に切り下げられ、国民に自暴自棄的な悪風潮が勃発して、せつかく立ち直りつつある日本の存立可能の経済根本よりゆらぎ、日本民主化の安定に重大なる危機を投ずることになるでありましよう。従つて政府はここに十分なる戒心をしながら、特に賠償に関しては、無体財産と技術の提供によりその国々の復興開発に寄與すべきであると思うのであります。  かくて論じて参りますれば、われらは、吉田首相のごとくこの平和條約を欣然として受ける態度にならうものではないのであります。むしろ沈痛なる思いを民族の魂に深く刻みつけて、今は失われたる四割五分の領域をながめながら、そこに復帰運動の血の叫びをあげる同胞の熱情にこたえつつ、しかもまた賠償と重税の危惧に脅かされつつある国民とともに、いかにしてこの受難に耐えて行くか。わが民族にして真に不撓の生命力あり、新国際意識に燃えるものがあるならば、かくしてこそ初めて苛酷なるこの苦難をも受けることができるでありましよう。この覚悟においてのみ、われらはこの平和條約を受くべきであると思うのであります。(拍手)  次に日米安全保障條約について述べたいと思います。トルーマン大統領がサンフランシスコ会議に述べましたように、わが国はその後着々として民主化の一路をたどり、ここにようやく平和のとびらがわれらの前に開かれんとしているのであります。しかるに、わが国の姿を内に顧るならば、復興途上にありとはいえ、戰争の創痍いまだいえず、また周辺をながむれば、無責任なる軍国主義侵略の暴力が猖獗をきわめ、武装解除の日本の周辺にいまだ戰火が治まらないのであります。しからば、平和條発効の後に、いかにして日本固有の自衛権を全うし得るか。ダレス氏が指摘しておりますように、防衛のできない主権は、からのさやのようなものである。かかる主権は全然主権でない。ゆえに日本国は、この現状にかんがみ、自衛力確立に至るまで、暫定的に安全保障の措置を自発的なる選択によつて決定しなければならない実情になつたのであります。  これを意図せるものは、すなわちアメリカ合衆国との安全保障條約の締結であります。日本の国としては、これによつて自国と極東の安全を確保せんと欲し、米国としては、自国を含む自由国家群の平和を維持せんとの決意に出たものでありました。われらは、米国世界制覇の野心ありとの非難を信じません。米国が外国援助を惜しまないのは、米国民世界各国民の子孫であり、諸外国は彼らにとつて相先墳墓の地だからであります。本條約に対する米国の真意を高く評価せんとするゆえんのものは、この日米利害の相関関係の認識と期待に基くものであります。  東洋安定の一大礎石であつた日本国が一たび完敗するや、アジア諸国間の力の均衡がくずれ去り、余震いまだ治まらず、周辺の諸民族に惨劇が続発することは、まことに遺憾にたえないところであります。これを救うの道は、決して劣勢民族とその地帶を一方勢力のために併呑抹殺することではありません。また憎悪と刑罰をもつて戰後処理をすることは、進歩した近代史の思想に逆行するものであります。日本国のごとき、長い歴史と独自の文化の中にたくましく生きて来た民族は、たとい一たびあやまちを犯したる敗戰国と判定せられても、将来はこれを健全に育成し、公正にして強力なるアジア諸国の力の均衡の上に立つて、さらに高き信頼をもつてあたたかく包まれたる一大要素として国際社会に迎え入れられなければならないのであります。(拍手)ゆえに、ダレス氏は、桑港の会議において、ここに集まつた代表団の三分の二は、米国を含む集団安全保障とりきめに進んで加入し、これら代表団は、日本国民もまた自由愛好国民と同様にこの集団安全保障に入ることを欲しておる、と述べておるのであります。  しかるに、桑港平和会議の席上、日本安全保障の実現に反対の急先鋒となつたものはソ連代表であり、ポーランドとチエコスロヴアキアはこれに続く陣営でありました。ソ連の反対は、その名目のいかんにかかわらず、日本より米軍をば戰わずして撃退し、日本に対し外部からの——を容易ならしめ、内部——を好都合にし、ひいては極東         ————— 達成に利せんとする、陰險きわまる——に出たる底意が看破せられ、一蹴し去られたのであります。  しかるに、またそれと趣を異にして、他の観点より安全保障に異議をさしはさむものはアジア・アラブ諸国でありました。彼らは、植民地的彈圧から世紀の戰いをかちとつて、ようやく完全主権国へと進んで来ておるのであります。この若い独立諸国苦難の経験に照して、この條約がはたして日本完全主権に合するやいなや、深刻なる批判がなされたのでありました。われらは彼らの信條に共感しながら、彼らの懸念するがごとき危險なる意図の伏在しあらざるよき範例をこの條約の実行において明示せんがために、わが党は行政協定に細心の注意を拂つて来たのであります。われらは、信頼を米人の腹心に與えることによつて、十分なる協力を彼らより受け得ることができると信ずるものであります。  またインドも、安保條約には反対の立場をとり、この條約は、日本完全主権国となつて後に、條約第五條のとりきめをなすことには異存はないが、この條約で、現在の占領軍がそのままこの防衛とりきめの一部として日本に駐留するとの印象を與えることには反対をしておるのであります。  顧みるに、安保條約調印のことは、首相が桑港着後も、はたして九月の八日に行えるかどうか、一両日前まで見通しがつかず、伝えられる世界報道もすこぶる不確実であつたのであります。かくして、占領中に首相一人これに調印したのでありました。この態度は、外国に向つてはすこぶる臆病に、国内に向つてはすこぶる勇敢であつたのであります。平和條約が効力を発し、対等の主権国となり、九十日以内にこれを締結せよとの議論は、米国人の中にも多分にあつたのであります。かくしたならば、国民に検討と理解と責任感と自主性とを十分明確にし、かつまた米国としても日本を真に対等に処遇し、公正に取扱つたことが鮮明にせられたと思うのであります。しかし、その論議の機会の去りました今は、この條約の中味について国民希望を十分に盛ることが必要であります。  ただ、この際注意しておかなければならない点は、オーストラリア、ニュージーランド及びフイリピンの南太平洋諸国の態度であります。彼らは、日本の軍備制限が無規定であることに危惧を抱き、米・濠・新三国太平洋安全保障條約を結び、米比安全保障條約もまたできておるのであります。しかしながら、日本もまた平和太平洋社会構成に協力して、現在の日米安全保條障約より脱皮して、やがて全太平洋の地域的集団安全保障の理想的な成立へとその努力を進めて行かなければならぬと思うのであります。  次に私は、本條約の第三條の行政協定に触れて若干述べたいと思います。吉田首相は、行政協定は未交渉のものであり、重要なものではないと言つておりますが、駐屯軍の配備を規律する條件の一切を定めるのが行政協定であり、この條約の正体を明らかにするものでありますから、最も重大なものといわなければならないのであります。全国民の知らんと欲する点は実にここにあるのであります。ゆえに、われらは、この條約審議にあたつて、その協定内容説明を熱心に求めたのでありまするが、政府はその準備がまだできておらない。昨年よりダレス氏と交渉したとは申しておりますが、しかもまだその中味の準備が全然なしに本條約の承認を求めることは、まさに怠慢といわなければならぬのであります。(拍手)おもちの入つておらない、からの重箱を持つて来て、今においしいもちを入れるから、まず重箱だけを受取る承諾をしておいてくれというのが吉田さんの態度であります。(拍手)そこで、われらは、その中身次第であると言つておるところであります。  行政協定内容は、あくまでも日本主権を尊重し、日本の法規や社会慣習を重んじ、かつ相互主義によつて、よき理解と協力とを得て、円満に遂行されるものでなければなりません。交渉の余地がある機会におきまして、わが国民民主党は、この要望の点を明確にしておきたいと思うのであります。  一、行政協定の諸條件実施運営の機関たるべき日米合同委員会は平等同数の原則に立ち、その議まとまらざるときは両国政府交渉によつて解決せられなければならない。  一、駐屯軍の使用につき、日本以外の外国に出動する場合は、両国政府の完全なる合意によらなければならない。日本国防のための出動についても同様である。国内治安維持のための出動を要請する基準は、あらかじめ行政協定によつて定めなければならない。  一、駐屯軍費用の分担については、わが国力の現状並びに自国防衛の漸増的責任の期待に応ずるため、米国政府の了解を得て、わが負担最小限度にとどめ、これを自衛力強化に振り向けなければならない。  一、国民権利義務及び予算に関する事項は必ず憲法に従い、法律案として国会の審議を経、その他外交に関する事項は国会の議決に従わなければならない。  一、駐屯軍の配備のために使用し便宜を許可する兵舎、軍事施設、演習地等の所在は六大都市等を避け、その区域は局限され、個別的に明示されなければならない。その兵舎、軍事施設等は米軍が警備に当ることに同意をする。  一、地域的治外法権は全然設定してはならない。  一、公務事故等により、やむなく日本側に損害を及ぼした場合は、双方の調停委員により補償の道を講ぜられなければならない。  一、駐屯軍人軍属及びその家族は、すべて日本の法律を尊重し、とりきめに従い、特に日本の政治に関與せぬように、米国は必要な措置をとるべきである。  一、その他北大西洋同盟間の條約に準じて、一層日本の国情に合し、また米人の希望を取入れて、相互主義によつてこれが決定せられなければならない。最後に一言いたしたいことは、政府が長い間占領下にあり、忠実にその命令に服従して来たことは当然であります。しかしながら、これが現政府の習い性となり、ただただ外国の意をのみ迎え、安全保障條約、行政協定交渉の行われる場合においては、いやしくも独立後の日本にふさわしからざる結果をもたらすことのなきよう十分に戒飭を與えなければならぬと思うのであります。なぜならば、この條約は完全独立後に効力を発生するからであります。日本は單に一方的に恩恵を受けることのみ念とすることなく、持続的にして効果的なる自助及び相互援助の道を目がけて敢然として立ち上らなければならないときであります。日本は、みずからの力によつて独立を完成して安全を確保し、この安全保障條約の効力をすみやかに失わしめ、対等の日米相互防衛條約に切りかえる時期を来さしめるべきであります。ゆえに、客観的情勢の推移に応じて、たとい両條約が成立しても、できるだけすみやかにわが党はこの両條約の改正に努力することを誓うものであります。(拍手)  私は、この討論を終るにあたりまして、日本アメリカ合衆国アジア世界の平和安全のために、第二次世界大戰において失われたる広島、長崎を初め、内外にわたる数百万の精霊に万解の涙をたむけつつ、断腸の思いをもつてこの両條約に承諾を與えることに賛成するものであります。(拍手
  15. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 勝間田清一  君。     〔勝間田清一君登壇
  16. 勝間田清一

    ○勝間田清一君 私は、ただいま上程されました講和條約並びに日米安全保障条約について承認を求めるの件に対して、日本社会党第三十三控室を代表し、民主的平和勢力と、今日まで独立と平和を心から希求し、ポツダム宣言を忠実に実行して参りました全勤労階級の名において、本條約に反対するものであります。(拍手)     〔副議長退席、議長着席〕 われわれは、両條約を密接不可分と見て、次の理由によつて反対をいたすものであります。  第一は、両條約は日本の平和を回復することなく、安全を確保するものでもなく、むしろ日本をして新たなる戰争に介入せしめる危険を蔵するものと信じて疑わないのであります。(拍手)われわれは、四年前、すでに平和憲法を国是として確立いたし、国際紛争に武力を用いることを永久に放棄して参つたのであります。しかるに今日、日本のこの理想が吉田内閣によつて蹂躙されんといたしておることを、われわれはきわめて遺憾にたえないと存ずるのであります。(拍手)  はたして今日日本が現に受けつつある脅威は何であろうか。連合国の軍隊が日本から撤退することによつて生ずる日本の真空状態では断じてないと存ずるものであります。日本基地として戰争状態にあるところの朝鮮の動乱が、いまだ平和的解決の保障を見出し得ざるそのこと自体にあると考えるものでありまして、さらに万一朝鮮の動乱が拡大して、日本がその渦中に巻き込まれることなきやという重大なる問題と存ずるものであります。(拍手)今日の世界の問題は、戰争に勝つか負けるかということが問題ではないのであつて戰争そのものが人類の破滅になることをわれわれは考えなければならぬと存ずるのであります。(拍手)  今回アジアにおける共産主義勢力の脅威がありといたしまするならば、数世紀にわたる西欧諸国の植民地政策から独立を奪われ、内政が干渉せられ、未曽有の窮乏と貧困のあることを忘れてはならぬのでございます。さらにアジアにおきましては、台湾の帰属の問題、仏印の動乱、中共承認等の幾多の重大課題がアジアの危機の原因となつておることを忘れてはならぬのであります。このたびの対日講和が、これらアジアの危機を平和的に解決するために役立たざるのみか、かえつてこれを助長するものとして、アジアの平和の見地からこれに反対して、サンフランシスコ会議参加しなかつたインド立場に深く傾聽するものであります。  しかるに、吉田内閣は、何ゆえに国連憲章二條、なかんずく武力行為支援の義務を——しかも国連参加せざるままにおいて一方的にこれが義務を負い、しかも特定国と、軍事基地の提供を含むところの軍事同盟を締結し、あまつさえ朝鮮動乱に介入するの義務をみずから負わんとするのであるか、私の了解に苦しむところであります。(拍手)同時に、かの日独伊の軍事同盟に参加して祖国を悲惨のどん底に陥れられた日本国民のひとしく憂うるところであると信ずるものであります。  第二の理由は、このたびの講和は日本独立への第一歩ではなくして、従属化への一歩を踏み出さんとするものである点であります。諸君も御存じの通り、安政年間に締結された、いわゆる安政條約におきましては、治外法権が存在し、関税自主権がなく、これらを撤廃して日本の完全独立を獲得するために、われわれの先輩は実に半世紀にわたる苦闘を続けて参つたのであります。しかして、アジアにおける唯一の完全独立国家を獲得いたしたのであります。さればこそ、今日敗戰国たる日本人は、敗戰国たるきびしい現実を認めつつも、ポツダム宣言と、連合国の友愛と好意を唯一の希望といたし、今日まで六年間、未曽有の長期の占領政策にもかかわらず、営々として協力をいたして参つたのであります。  しかしながら、吉田内閣の締結した講和は、心ある日本国民に対して悲歎と失望とを與えておることは、間違いのない事実でありましよう。なかんずく條約第五條、第六條但書を根拠として、外国軍隊が日本領土に無期限に駐屯することになつたことは、日本主権を事実上著しく制限するものであると信ずるのであります。さればこそ、今日エジプト及びインドが、日本の完全独立のためにこれに反対し、少くとも第六條但書を削除すべきであると主張せられたことは、自由を持たないわれわれ日本人の終生忘るることのでき得ない感銘であるのであります。(拍手)また、もし何らかの意味において日本アメリカとの間に安全保障とりきめがなされねばならぬといたしましても、それは少くとも日本国が、講和條約の効力発生後、自由かつ対等の立場において締結さるべきであつたにもかかわらず、これが被占領下のままにおいて調印せられたことは、安全保障條約の主要内容がすべて行政協定にゆだねられ、しかも何ら内容が国会に示されずして審議せられざるを得なかつたことと相まちまして、われわれの最も不満とするところでございます。(拍手)しかして、さらにわれわれの注目するものは、日本に駐屯する軍隊が内乱・騒擾の鎮圧に使用されることであつて、ここに日本が対外的にも対内的にも特定国家に従属する結果となることを憂えざるを得ないのであります。(拍手)  第三の反対の理由は、領土及び賠償條項がきわめて苛酷なことであります。千島、沖縄、小笠原の諸島日本の先租伝来の領土であり、何ら貪欲なる軍国主義によつて奪い取つたものでないことは、正義を主張する諸国の当然これを認むべきものであつて日本人が心から期待しておつたところのものでございます。しかるに、これが期待に反し、一九四一年一月、連合国間の宣言たる領土の不割讓、不併合の精神が何ら顧みられなかつたのであります。しかも、日米安全保障條約によつて日本国に駐屯権を持たんとするアメリカが、あえて戰略的目的に従つて小笠原、琉球等の諸島信託統治を要求せられたことは、今日まで日本の再建に努力され、なお日本信頼を寄せられて和解の講和を締結せられんとしたアメリカに対して、私の深く了解に苦しむところであります。(拍手賠償はわれわれが当然に支拂うべきものであることは明らかでありましようが、領土割讓、債務の返済等と総括的にこれを見るときに、廃墟と化した日本国民のとうてい耐え得ざることであつて、なかんずく中立国にある日本国及び日本国民の財産が沒収せられることに対しては、とうていわれわれの承服し得ざるところであります。  最後にわれわれが反対する理由は、本両條約によつてアジア諸国日本との講和を締結することに対して著しく困難を発生せしむるという点であります。インド及びビルマは、やがて日本と無條件の單独講和を締結する意思あることが明白にされたことに対しては、われわれのきわめて喜びにたえないところであります。しかしながら、これら二国、あるいは批准困難を伝えられておるところのインドネシアが、サンフランシスコ会議参加せず、あるいは米英原案に対して反対いたしておることをわれわれは忘れてはならないと存ずるものであります。またソ連調印しなかつたことと同時に中国が本講和から除外され、中共政府をして本誌和は無効である、日本の新たなる宣戰布告であると言わしめたのは、今後におけるアジア外交をして日本政府はみずからこれを放棄せしめたものというべきでありましよう。(拍手アジアの繁栄の中に日本の自立を完成し、アジアの平和の中に日本の安全を見出して行立うとしておつた全日本人の、とうてい承服し得ざるところであると存じます。  私は、かくして今後における條約の改正をなし、アジア諸国との友好を回復して全面講和を完成し、日本の真の独立と平和を獲得せんと希求しておるところの全日本の民主的平和勢力の発言権を断固留保するために、両條約に対して反対するものであります。(拍手
  17. 林讓治

    議長林讓治君) これにて討論は終局いたしました。  まず平和条約締結について承認を求めるの件につき採決いたします。この採決は記名投票をもつて行います。本件は委員長報告の通り承認するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  18. 林讓治

    議長林讓治君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  19. 林讓治

    議長林讓治君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数三百五十四   可とする者(白票)   三百七     〔拍手〕   否とする者(青票)   四十七     〔拍手
  20. 林讓治

    議長林讓治君) 右の結果、平和条約締結について承認を求めるの件は委員長報告の通り承認するに決しました。(拍手)     —————————————     〔参照〕  平和条約締結について承認を求め  るの件を委員長報告の通り承認する  を可とする議員の氏名    阿左美廣治君  逢澤  寛君    足立 篤郎君  青木 孝義君    青木  正君  青柳 一郎君    淺香 忠雄君  淺利 三朗君    天野 公義君  有田 二郎君    伊藤 郷一君  飯塚 定輔君    生田 和平君  池田 勇人君    池見 茂隆君  石田 博英君    石原 圓吉君  稻田 直道君    今泉 貞雄君  今村 忠助君    岩本 信行君  岩川 與助君    宇田  恒君  宇野秀次郎君    植原悦二郎君  内海 安吉君    江崎 真澄君  江花  靜君    遠藤 三郎君 小笠原八十美君    小川 平二君  小川原政信君    小澤佐重喜君  小高 熹郎君    小淵 光平君  尾関 義一君    越智  茂君  大泉 寛三君    大内 一郎君  大上  司君    大澤嘉平治君  大西 禎夫君    大野 伴睦君  大橋 武夫君    岡延右エ門君  岡崎 勝男君    岡田 五郎君  岡西 明貞君    岡野 清豪君 岡村利右衞門君    奧村又十郎君  押谷 富三君    鹿野 彦吉君  鍛冶 良作君    角田 幸吉君  風間 啓吉君    片岡伊三郎君  甲木  保君    門脇勝太郎君  金光 義邦君    川西  清君  川野 芳滿君    川端 佳夫君  川村善八郎君    川本 末治君  河原伊三郎君    菅家 喜六君  木村 公平君    菊池 義郎君  北川 定務君    北澤 直吉君  金原 舜二君    久野 忠治君  栗山長次郎君    小金 義照君  小坂善太郎君    小平 久雄君  小玉 治行君    小西 寅松君  小西 英雄君    小山 長規君  五島 秀次君    河野 謙三君  佐久間 徹君    佐々木秀世君  佐瀬 昌三君    佐藤 榮作君  佐藤 重遠君    佐藤 親弘君  坂田 英一君    坂田 道太君  坂本  實君    清水 逸平君  塩田賀四郎君    篠田 弘作君  島田 末信君    澁谷雄太郎君  島村 一郎君    庄司 一郎君  周東 英雄君    鈴木 明良君  鈴木 仙八君    鈴木 正文君  瀬戸山三男君    關内 正一君  關谷 勝利君    田口長治郎君  田嶋 好文君    田中伊三次君  田中 角榮君    田中 重彌君  田中不破三君    田中 萬逸君  田中  豊君    田渕 光一君  多田  勇君    多武良哲三君  高木  章君    高木吉之助君  高木 松吉君    高塩 三郎君  高田 弥市君    高橋 英吉君  高橋 權六君    高橋  等君  高間 松吉君    竹尾  弌君  橘  直治君    玉置  實君  圖司 安正君    塚田十一郎君  塚原 俊郎君    土倉 宗明君  辻  寛一君    圓谷 光衞君  坪川 信三君    寺島隆太郎君  寺本  齋君    飛嶋  繁君  苫米地英俊君    奈良 治二君  内藤  隆君    中垣 國男君  中野 武雄君    中村  清君  中村 幸八君    中村 純一君  中山 マサ君    仲内 憲治君  永井 英修君    永井 要造君  長野 長廣君    夏堀源三郎君  二階堂 進君    西村 英一君  西村 直己君    野原 正勝君  野村專太郎君   橋本登美三郎君  橋本 龍伍君    畠山 鶴吉君  原 健三郎君    原田 雪松君  平井 義一君    平島 良一君  平野 三郎君    廣川 弘禪君  福井  勇君    福田 篤泰君  福田 喜東君    福永 一臣君  福永 健司君    藤井 平治君  藤枝 泉介君    渕  通義君  淵上房太郎君    船越  弘君  古島 義英君    降旗 徳弥君  保利  茂君    星島 二郎君  細田 榮藏君    本多 市郎君  本間 俊一君    眞鍋  勝君  牧野 寛索君    増田甲子七君  益谷 秀次君    松浦 東介君  松木  弘君    松田 鐵藏君  松永 佛骨君    松野 頼三君  松本 一郎君    松本 善壽君  丸山 直友君    三池  信君  三浦寅之助君    三宅 則義君  南  好雄君    宮幡  靖君  宮原幸三郎君    武藤 嘉一君  守島 伍郎君    森 幸太郎君  森   曉君    八木 一郎君 藥師神岩太郎君   山口喜久一郎君  山口 好一君    山口六郎次君  山崎 岩男君    山崎  猛君  山本 猛夫君    山本 久雄君  吉田  茂君    吉田吉太郎君  吉武 惠市君    龍野喜一郎君  若林 義孝君    渡邊 良夫君  亘  四郎君    芦田  均君  荒木萬壽夫君    有田 貴一君  井出一太郎君    稻葉  修君  今井  耕君    小川 半次君  小野  孝君    岡田 勢一君  金子與重郎君    川崎 秀二君  木下  榮君    木村 俊夫君  吉川 久衛君    小松 勇次君  坂口 主税君    笹森 順造君  笹山茂太郎君    志賀健次郎君  椎熊 三郎君    鈴木 幹雄君  高橋清治郎君    竹山祐太郎君  千葉 三郎君    苫米地義三君  丙藤 友明君    中島 茂喜君  中曽根康弘君    中村 又一君  並木 芳雄君    橋本 金一君  長谷川四郎君    畠山 重勇君  早川  崇君    林  好次君  原   彪君    平川 篤雄君  福田 繁芳君    増田 連也君  三木 武夫君    水野彦治郎君  村瀬 宣親君    森山 欽司君  柳原 三郎君    山手 滿男君  山本 利壽君   吉田  安君 早稻田柳右エ門君    淺沼稻次郎君  井上 良二君    石井 繁丸君  石川金次郎君    今澄  勇君  大矢 省三君    岡  良一君  加藤 鐐造君    川島 金次君  佐竹 新市君    鈴木 義男君  戸叶 里子君    土井 直作君  中崎  敏君    西村 榮一君  前田榮之助君    松井 政吉君  松尾トシ子君    松岡 駒吉君  松澤 兼人君    松本 七郎君  三宅 正一君    水谷長三郎君  門司  亮君    飯田 義茂君  小平  忠君    高倉 定助君  寺崎  覺君    中村 寅太君  羽田野次郎君    松本六太郎君  衞藤  速君    大石ヨシエ君  佐竹 晴記君    浦口 鉄男君  尾崎 行雄君    中野 四郎君  否とする議員の氏名    石田 一松君  小林 信一君    園田  直君  足鹿  覺君    青野 武一君  赤松  勇君    猪俣 浩三君  稻村 順三君    勝間田清一君  上林與市郎君    久保田鶴松君  佐々木更三君    坂本 泰良君  鈴木茂三郎君    田中織之進君  田万 廣文君    成田 知巳君  福田 昌子君    八百板 正君  井之口政雄君    池田 峯雄君  江崎 一治君    加藤  充君  風早八十二君    柄澤登志子君  苅田アサノ君    木村  榮君  今野 武雄君    田島 ひで君  田代 文久君    高田 富之君  竹村奈良一君    立花 敏男君  中西伊之助君    梨木作次郎君  林  百郎君    深澤 義守君  山口 武秀君    横田甚太郎君  米原  昶君    渡部 義通君  石野 久男君    岡田 春夫君  黒田 寿男君    中原 健次君  足立 梅市君    松谷天光光君     —————————————
  21. 林讓治

    議長林讓治君) 次に日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約締結について承認を求めるの件につき採決いたします。この採決は記名投票をもつて行います。本件は委員長報告の通り承認するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  22. 林讓治

    議長林讓治君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  23. 林讓治

    議長林讓治君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 三百六十   可とする者(白票) 二百八十九     〔拍手〕   否とする者(青票)   七十一     〔拍手
  24. 林讓治

    議長林讓治君) 右の結果、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約締結について承認を求めるの件は委員長報告の通り承認するに決しました。(拍手)     —————————————     〔参照〕  日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障条約の締結について承認を求  めるの件を委員長報告の通り承認す  るを可とする議員の氏名    阿左美廣治君  逢澤  寛君    足立 篤郎君  青木 孝義君    青木  正君  青柳 一郎君    淺香 忠雄君  淺利 三朗君    天野 公義君  有田 二郎君    伊藤 郷一君  飯塚 定輔君    生田 和平君  池田 勇人君    池見 茂隆君  石田 博英君    石原 圓吉君  石原  登君    稻田 直道君  今泉 貞雄君    今村 忠助君  岩本 信行君    岩川 與助君  宇田  恒君    宇野秀次郎君  植原悦二郎君    内海 安吉君  江崎 真澄君    江花  靜君  遠藤 三郎君   小笠原八十美君  小川 平二君    小川原政信君  小澤佐重喜君    小高 熹郎君  小淵 光平君    尾関 義一君  越智  茂君    大石 武一君  大泉 寛三君    大内 一郎君  大上  司君    大澤嘉平治君  大西 禎夫君    大野 伴睦君  大橋 武夫君    岡延右エ門君  岡崎 勝男君    岡田 五郎君  岡西 明貞君    岡野 清豪君 岡村利右衞門君    奧村又十郎君  押谷 富三君    鹿野 彦吉君  鍛冶 良作君    角田 幸吉君  風間 啓吉君    片岡伊三郎君  甲木  保君    門脇勝太郎君  金光 義邦君    神田  博君  川西  清君    川野 芳滿君  川端 佳夫君    川村善八郎君  川本 末治君    河原伊三郎君  菅家 喜六君    木村 公平君  菊池 義郎君    北川 定務君  北澤 直吉君    金原 舜二君  久野 忠治君    倉石 忠雄君  栗山長次郎君    黒澤富次郎君  小金 義照君    小坂善太郎君  小平 久雄君    小玉 治行君  小西 寅松君    小西 英雄君  小山 長規君    五島 秀次君  河野 謙三君    近藤 鶴代君  佐久間 徹君    佐々木秀世君  佐瀬 昌三君    佐藤 榮作君  佐藤 重遠君    佐藤 親弘君  坂田 英一君    坂田 道太君  坂本  實君    清水 逸平君  塩田賀四郎君    篠田 弘作君  島田 末信君    澁谷雄太郎君  島村 一郎君    庄司 一郎君  周東 英雄君    鈴木 明良君  鈴木 仙八君    鈴木 正文君  瀬戸山三男君    關内 正一君  關谷 勝利君    千賀 康治君  田口長治郎君    田嶋 好文君  田中伊三次君    田中 角榮君  田中 啓一君    田中 重彌君  田中  元君    田中不破三君  田中 萬逸君    田中  豊君  田渕 光一君    多田  勇君  多武良哲三君    高木  章君  高木吉之助君    高木 松吉君  高塩 三郎君    高田 弥市君  高橋 英吉君    高橋 權六君  高橋  等君    高間 松吉君  竹尾  弌君    橘  直治君  玉置  實君    圓司 安正君  塚田十一郎君    塚原 俊郎君  土倉 宗明君    辻  寛一君  圓谷 光衞君    坪川 信三君  寺島隆太郎君    寺本  齋君  飛嶋  繁君    苫米地英俊君  奈良 治二君    内藤  隆君  中垣 國男君    中野 武雄君  中村  清君    中村 幸八君  中村 純一君    中山 マサ君  仲内 憲治君    永井 英修君  永井 要造君    長野 長廣君  夏堀源三郎君    二階堂 進君  西村 英一君    西村 直己君  西村 久之君    野原 正勝君  野村專太郎君   橋本登美三郎君  橋本 龍伍君    畠山 鶴吉君  原 健三郎君    原田 雪松君  平井 義一君    平島 良一君  平野 三郎君    廣川 弘禪君  福井  勇君    福田 篤泰君  福田 喜東君    福永 一臣君  福永 健司君    藤井 平治君  藤枝 泉介君    渕  通義君  淵上房太郎君    船越  弘君  古島 義英君    降旗 徳弥君  保利  茂君    星島 二郎君  細田 榮藏君    本多 市郎君  本間 俊一君    眞鍋  勝君  牧野 寛索君    増田甲子七君  益谷 秀次君    松浦 東介君  松木  弘君    松田 鐵藏君  松永 佛骨君    松野 頼三君  松本 一郎君    松本 善壽君  丸山 直友君    三池  信君  三浦寅之助君    三宅 則義君  南  好雄君    宮幡  靖君  宮原幸三郎君    武藤 嘉一君  村上  勇君    守島 伍郎君  森 幸太郎君    森   曉君  八木 一郎君   藥師神岩太郎君 山口喜久一郎君    山口 好一君  山口六郎次君    山崎 岩男君  山崎  猛君    山村新治郎君  山本 猛夫君    山本 久雄君  吉田  茂君    吉田吉太郎君  吉武 惠市君    龍野喜一郎君  若林 義孝君    渡邊 良夫君  亘  四郎君    芦田  均君  荒木萬壽夫君    有田 喜一君  井出一太郎君    今井  耕君  小川 半次君    小野  孝君  岡田 勢一君    金子與重郎君  川崎 秀二君    木下  榮君  木村 俊夫君    吉川 久衛君  小松 勇次君    坂口 主税君  笹森 順造君    笹山茂太郎君  志賀健次郎君    椎熊 三郎君  鈴木 幹雄君    高橋清治郎君  竹山祐太郎君    千葉 三郎君  苫米地義三君    内藤 友明君  中島 茂喜君    中村 又一君  並木 芳雄君    橋本 金一君  長谷川四郎君    畠山 重勇君  早川  崇君    林  好次君  原   彪君    平川 篤雄君  福田 繁芳君    増田 連也君  三木 武夫君    水野彦治郎君  村瀬 宣親君    柳原 三郎君  山本 利壽君   吉田  安君 早稻田柳右エ門君    飯田 義茂君  小平  忠君    高倉 定助君  弄崎  覺君    中村 寅太君  羽田野次郎君    松本六太郎君  衞藤  速君    佐竹 晴記君  尾崎 行雄君    中野 四郎君  否とする議員の氏名    石田 一松君  稻葉  修君    小林 信一君  園田  直君    足鹿  覺君  青野 武一君    赤松  勇君  淺沼稻次郎君    井上 良二君  猪俣 浩三君    石井 繁丸君  石井金次郎君    稻村 順三君  今澄  勇君    大矢 省三君  岡  良一君    加藤 鐐造君  勝間田清一君    上林與市郎君  川島 金次君    久保田鶴松君  佐々木更三君    佐竹 新市君  坂本 泰良君    鈴木茂三郎君  鈴木 義男君    田中織之進君  田万 廣文君    戸叶 里子君  土井 直作君    中崎  敏君  成田 知巳君    西村 榮一君  福田 昌子君    前田榮之助君  松井 政吉君    松尾トシ子君  松岡 駒吉君    松澤 兼人君  三宅 正一君    水谷長三郎君  門司  亮君    八百板 正君  井之口政雄君    池田 峯雄君  江崎 一治君    加藤  充君  風早八十二君    柄澤登志子君  苅田アサノ君    木村  榮君  今野 武雄君    田島 ひで君  田代 文久君    高田 富之君  竹村奈良一君    立花 敏男君  中西伊之助君    梨木作次郎君  林  百郎君    深澤 義守君  山口 武秀君    横田甚太郎君  米原  昶君    渡部 義通君  石野 久男君    岡田 春夫君  黒田 寿男君    中原 健次君  足立 梅吉君    松谷天光光君     —————————————
  25. 林讓治

    議長林讓治君) 明二十七日は定刻より本会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時十九分散会