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1951-11-21 第12回国会 衆議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十一日(水曜曜日)     午後二時六分開議  出席委員    委員長代理理事 押谷 富三君    理事 田嶋 好文君    鍛冶 良作君       角田 幸吉君    金原 舜二君       佐瀬 昌三君    高橋 英吉君       松木  弘君    山口 好一君       田万 廣文君    梨木作次郎君       佐竹 晴記君    世耕 弘一君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         刑 政 長 官 草鹿淺之介君  委員外出席者         最高裁判所            事務総長  王鬼上堅磐君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      内藤 頼博君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      鈴木 忠一君         参  考  人         (京都大学学         長)      服部峻治郎君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十一月十六日  委員牧野寛索辞任につき、その補欠として池  田勇人君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員池田勇人君及び井上良二辞任につき、そ  の補欠として牧野寛索君及び石井繁丸君が議長  の指名委員に選任された。 同月二十一日  委員今村長太郎君及び北川定務辞任につき、  その補欠として角田幸吉君及び金原舜二君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案(  内閣提出第四二号)  法務行政に関する件  検察行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 押谷富三

    押谷委員長代理 これより会議を開きます。  裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案について質疑を行います。  この際お諮りをいたします。国会法第七十二條によりまして、最高裁判所の五鬼上事務総長内藤総務局長及び鈴本人事局長出席説明を承認いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 押谷富三

    押谷委員長代理 異議がなければこれを許します。  次に田万委員より質疑の通告がありますからこれを許します。田万廣文君。
  4. 田万廣文

    ○田万委員 裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案について五鬼上事務総長に二、三点お伺いいたします。  提案理由を私どもよく拝見しますると、法の目的としておる八百九十九名の定員を減少するという根拠がきわめて薄弱であろうと思うのであります。と申しますのは、提案自身に大きな矛盾を含んでおると思うのであります。その説明によれば「裁判所に提起される各種事件は全般的に依然増加傾向にあり、しかも訴訟促進が叫ばれて居りますこと等を考慮いたしますと裁判所職員の現在の定員は決して多きに失するものではないと考えられるのでありますが、」という言葉からいたしますと、八百九十九名というような多数の職員整理することによつて、むしろ裁判促進がきわめて澁滞を来す危険性があるということも提案理由自身においてうたつておると思う。なお次に、「この際極力事務簡易化能率化促進することにより、人員整理を行うことといたし、」という説明もあるのでありまするが、今申し上げたこの二点から考えて、このたびの裁判所職員定員改正なさつて、八百九十九名を減少するということは、事件促進をはかる意味からいつて明らかに時代逆行的な現象を多分に含んでおると思うのであります。その点どうしてこういうようなことをなさるのかその説明を承りたい。
  5. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 ごもつともな御質問でありまして、裁判所事務が非常にふえて参りまして、必ずしも人員が十分とは申されないのでありますが、しかし何を申しましても、予算の面、国家財政の面という方面から政府において行政整理をいたしており、裁判所もその協力を求められておりまして、種々大蔵省予算的の折衝をいたしまして、結局八百九十九人の定員を減少するという結論になつたのであります。実際はそうなのでありますが、もとより裁判官等については適用はいたしませんばかりでなく、裁判所職員につきましても、裁判機関補佐をしているところの書記官あるいはその他補佐機関については努めてその整理を避けまして、できるだけ司法行政事務方面からこの八百九十九人を生み出したいと思うのであります。なおこの整理にあたりましては、人員の非常に少数な裁判所等については特段の考慮を払いまして、できるだけ人員の多数なところから、なるべくこの人員を生み出すというように考えております。いろいろ考究いたすと同時に、司法行政事務能率化及びその機構簡素化というようなことを考えまして、たとい八百九十九人の定員整理をいたしましても、現在の裁判所事務能率を落すというようなことのないように、万々の処置は講じて行くつもりでおります。
  6. 田万廣文

    ○田万委員 なかなか苦しい立場と思ううのでありますが、最高裁事務総長五鬼上さんとしての率直な御見解を承りたいと思います。と申しますのは、今のお話では、大蔵省との予算関係で、やむなくこれをのまなければいけない、ほんとうはのみたくないというような気持の表われが私はあつたように思う。八百九十九人の人間整理して、従来通り能率を上げ、事務促進して行くということに多大の自信を持つておられるようなお言葉でもあるが、面きわめて何か悲壯なものを感ずるのであります。ほんとうの腹は、最高裁としては八百九十九人というのは、やはり現在通り存置する、首を切らないで置いておく、これがほんとう司法を維持して行くために必要だというふうに考えておられるのではないですか、率直に承りたいと思います。「
  7. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 もとより先ほど来申し上げましたように、事務上からいつて、この行政整理というのは相当困難なことは予想しておつたのであります。しかしながら、やはり先ほど申しましたように、国家財政という方面に対してもできるだけの協力はして、その収縮をはからなければならぬ、こういう考えのもとに、結局折衝の結果、八百九十九人ならば、現在の職員業務能率と同様に裁判事務がとれるというところの結論において、政府との間の折衝がなされたのであります。
  8. 田万廣文

    ○田万委員 少しひねくれたような質問ですが、反対に考えたら、八百九十九人を今日整理をしても今まで通り能率を上げて行き得るということになれば、今までそれを整理しなかつたということは、どういう意味でございますか。並びにその予算的な関係において、大蔵省から今度の行政整理の話があつて、これに対応してやらざるを得なくなつたという御説明ですが、どうなりますか。
  9. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 もとより予算の面とマッチいたしまして整理に応じたわけであります。従つて率直に申しますと、もちろん事務運営において職員の多いことは望むところでありますけれども、全国の裁判所からこの程度のことをしても、ほかの方法能率化をはかれば現状は維持できるのではないか、このように考えております。
  10. 田万廣文

    ○田万委員 私ども考えから言うと、行政整理歩調を合せて、そうして最高裁大蔵省の御説ごもつともとして、今度の八百九十九名の整理にイエスを与えたというふうに考えざるを得ない。八百九十九名の定員を減らすことによつて大蔵省予算関係におきましてどれだけのプラスになるというお考えですか。
  11. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 はなはだ不用意なのでありますが、ただいま数字資料を持ち合しておりませんので、金額についてはまた追つてお答えいたします。
  12. 田万廣文

    ○田万委員 八百九十九人の首切り考えておる最高裁事務総長さんが、どれだけの減額になるという、大蔵省からつらい腹を切らされたこの金額がわからぬということでは、私ははなはだ不満である。
  13. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 お答え申し上げます。大体一千五十万円の減額になると思います。
  14. 田万廣文

    ○田万委員 一千五十万円で間違いございませんか。
  15. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 間違いございません。
  16. 田万廣文

    ○田万委員 一千五十万円の節約のために、八百九十九人の首を切り、そして事務総長さんのお話では、従来通り事務支障を来さないというが、事件はますく多くなつておる傾向にある。そういう際に、もし澁滞を来したならば、一千五十万円のプラスよりもさらに大きなマイナス国民大衆に与えると私は思う。この点について重ねてお尋ねしたいのでありますが、裁判所は申すまでもなく人権財産保護をする唯一の機関であります。そこにもし大きな手落ちがあるならば、一千五十万円のマイナスではないと思うのであつて、この点について八百九十九人の整理をやつて、なおかつ従来通り事務がうまく行くという御確信があると思われるのでございますか。
  17. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 率直に申し上げますと、政府から最初に行政整理協力を求められたときの員数は相当数字の大きなものでして、大蔵省折衝したときも、二千人程度の御要求がなかなか強かつたのでありますが、結局裁判所側としては、先ほど申し上げましたように、裁判官はもとよりでありますが、裁判を補助する機関等についてはどうしても整理できないという建前から、いろいろ苦心をいたしまして、結局行政面に携わつておるところでこれだけの人間整理しても、裁判事務運営支障がないという結論を得ましたので、結局政府と話合いをつけたというのが率直な話なんであります。
  18. 田万廣文

    ○田万委員 これら整理された方々の生活についてはどういうふうにお取扱いになるのか、この点を伺つておきたいと思います。
  19. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 整理された人々には、もとより定員法によつて退職手当も普通の退職手当よりも増額するという政府職員と同じようなことは、裁判所も実施いたしまするが、なおなるべくこの実員を減らすということについては、自然退職その他等も見込みまして、この程度ならばそう退職をした者に迷惑をかけないのではないかというような検討をいたしまして、この数字が出たのであります。
  20. 田万廣文

    ○田万委員 整理にあうところの八百九十九人の方々をいろいろ選考なさつたその方法、内容というものは、どういうところに基礎を持つてやられておるのでありますか。
  21. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 大体この八百九十九人の数字というものは、一年間における自然退職とにらみ合せまして、この程度ならばというところに常識的におちついたわけであります。
  22. 田万廣文

    ○田万委員 最後に一点だけお伺いいたしたいのでありますが、私ども裁判実務にも関係しておるのでありますが、今日の裁判の実態からいつて民事訴訟法刑事訴訟法もかわりまして、事件がきわめて促進されておるのであります。事件促進されており、法律ができて、なおかつ事件のふえる方が多いのでありまして、どうしても判決までには相当な日にちがかかる。これは極端な場合でありますけれども判決言い渡しを、たとえば七月の七日なら七月七日にするということになつてつたものが、それから一年あまりたつて判決がなされないというような場合もなきにしもあらずと私は考える、最高裁判所の方ではそういうことはほとんどない。おそらく判決言い渡しがきまつて、それから二月、三月もすれば、おそくとも判決があると思うが、判事のからだの都合もあるし、事務の煩雑な点もあつて、相当判決言い渡しが遅れておるような事実はなきにしもあらずと私は考える。そういうような時代において、どうしても、私ども実務に携わつておる者から見れば、現在の、首を切らないところの定員というものは事務を円満に遂行して行く上においては必要だと私は考えておる。先ほど提案理由の中にも申されておりますように、やはり事件増加傾向にある、事件促進が常に叫ばれておる、そういう立場に置かれておる裁判所が、みずからの考えにおいて、裁判所職員の現在の定員は決して多きに失するものではないというお考えを持つておられるという際に、私ども実務に携わる人間、あるいは一般にこれを利用するところの国民大衆というものは、今度の定員法の一部改正によつて、われわれの権利が、われわれの財産が完全に保護されるかどうかということに多大の関心を持つておる。これはまぎれもない事実だ。そういう点からいつて、なるほど一千五十万円は相当な金かもしれないが、八百九十九人の首切りで一千五十万円あまりのプラスがあるというけれども、それらに比べたら、どうしても裁判澁滞というもののマイナスが大きいように思う。これはよくなお事務総長並びに最高裁の有能な人々の御研究を願い、事務澁滞を来さないようにする必要がある。私どもはこの八百九十九入の首切りについては納得ができないのであります。どうかその意味におきまして、最高裁におきましても、行政整理に便乗したような今度の整理に対しては、あくまでも反対してもらいたいことを私は最後に申し上げておきます。
  23. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 御質疑の御趣旨もつともでございます。ことに御意思に対しては、十分今後の整理後の事態に対処するために、万全の策を講じて行きたいと存じております。御質問趣旨は今後の定員等についても、十分考慮いたしたいと思つておる次第であります。
  24. 押谷富三

    押谷委員長代理 ちよつとお尋ねいたしますが、先ほど田万委員の御質問に対して、事務総長の御答弁の中に、これによつて節約される金額が一千五十数万円であるというお話がありましたが、その一千五十数万円は年度内ですか。
  25. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 今年度内です。
  26. 押谷富三

    押谷委員長代理 すると年間を通じてどのくらいになりますか。
  27. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 大体の数字でありますが、大体一億円ぐらいになると思います。
  28. 梨木作次郎

    梨木委員 この定員法の一部改正を見ますと、第二條で裁判官以外の裁判所職員を二万四百三十五人にするということになつております。ところが現在の裁判所職員定員法によると、私の計算では定員が九千百三十三人になるはずであります。そういたしますると、この定員法の一部改正で一万一千三百二人の増加になる計算になります。裁判所表面では八百九十九人の定員を減少すると称しながら、一面におきましては、一万一千三百二人の増員を計画しているということになりはしないかと思うのでありますが、その辺の疑問に対して答弁してもらいたいと思います。
  29. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 この点については、数字的に詳しく総務局長から答弁させたいと思います。
  30. 内藤頼博

    内藤最高裁判所説明員 ただいまのお尋ねごもつともな御質疑と存じますが、従来実は裁判所職員定員法におきましては、特殊な規定の仕方をいたしておりまして、官の種類別定員数が掲げてございます。従いまして、それだけをごらんいただきまして合計いたしますと、ただいま梨木委員が御指摘になりましたような数字になるわけでございます。ところが一般各庁におきましては、こういう規定の仕方をしておりません。従来も職員全部の数をまとめて掲げてございます。従いまして、裁判所関係におきましても、今回の定員法改正におきましては、この官の別を廃しまして、全部の職員を一まとめに二万何千という数を規定したわけでございます。従いまして、いわゆる事務官あるいは書記官というような官にある人の数ばかりでなくて、今回の定員法におきましては雇員用人、そういつた職員の数も含めまして、今回の数字を出しているわけでございます。従つて数字の上におきましては、ただいまの御指摘のような数の増加がございますけれども、実質におきましては、先ほど事務総長から申し上げましたように、八百九十九人の減員になつているわけであります。
  31. 梨木作次郎

    梨木委員 それだけの説明では私にはわからないのであります。これでは実際は、政府の方が定員法の一部改正によつて整理をする、それに歩調を合せなければならぬから、表面は八百九十九人整理するのだといつておいて、実際は従来この定員法以外にいろいろ人件費を出しており、また人を使つてつたということになり、私はそこから予算のいろいろな流用の不正が出て来る危険性があるということを心配するのであります。そこで一体今雇員用人というようなものはどれだけおるのか。これをまず伺つておきたいと思います。
  32. 内藤頼博

    内藤最高裁判所説明員 今回の定員内訳は、お手元資料が配付いたしてございますので、それをごらんいただきたいと存じますが、合計二万四百三十五人という定員になつておりまして、そのうちただいま御質問のございました雇いが六千六百七十一名でございます。それから用人が四千七百六十七名でございます。ただいま、従来定員法に載つていないこういつた雇員用人の数が法律上不明であつて従つて予算支出において不明確な点があるような御質問がございましたが、定員法の上におきましては、雇い、用人の数は従来出ておりませんでした。しかし予算の面におきましては、その人員ははつきりきまつているわけでございます。従いまして予算支出は、も、つばら国会で御決定になります予算に基きまして、この雇い、用人の給与の支出がなされているわけでございます。その点定員法の上で数がきまつておりませんでも、実質的には予算通り押えられているわけでございます。
  33. 梨木作次郎

    梨木委員 そういたしますと、このたびの八百九十九人の整理というのは、どういう人たち整理対象にしようとしておるのでありますか。
  34. 内藤頼博

    内藤最高裁判所説明員 今回減員になつております対象は、先ほど事務総長から申し上げましたように、裁判官書記官等裁判事務に直接関係しております職員は、一切含んでおりません。司法研修所の教官が一名でございます。それから事務官が二百名でございます。それから事務雇いが三百九十三名であります。それからタイピストが八十八名でございます。それから用人が二百十七名でございます。これを合計いたしまして八百九十九名になります。各裁判所ごと内訳がございますが、これはお手元に配付いたしましたので、ごらんいただきたいと思います。
  35. 梨木作次郎

    梨木委員 この提案理由を見ますと、極力事務簡易化能率化促進するということになつておりますが、具体的にどういうような方法簡易化能率化をはかられる考えですか。
  36. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 この事務簡易化につきましては、司法行政事務機構改革がまず第一に考えられております。次に統計事務等に従事する職員から、統計を機械化することによつて、相当の人数の整理ができると思います。そのほかについては、実際の配置面において交流をいたしまして、人員支障のないような方法を目下考えつつあります。
  37. 梨木作次郎

    梨木委員 機構改革というと、どういうことを考えておるのか。この問題に関連いたしまして聞きたいのでありますが、現在最高裁判所裁判官は十五名であります。従来の大審院というのは、たしか三十名か四十名裁判官がおつたはずであります。その仕事を十五名でやるということになつておりまして、今非常に最高裁判所事務が停滞しておるはずであります。私どももそれを経験しております。この点について何か構想を持つておられるかどうか聞きたいと思います。
  38. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 先ほど機構改革と申しましたのは、あるいは私の言葉が足らなかつたかもしれませんが、主として司法行政に携わる方面人員整理するがゆえに、司法行政事務方面機構改革考えておるのでありまして、裁判機関に関する機構改革は、ただいまのところ研究中という程度で、具体的にはちよつと申し上げる資料を今持ち合せいたしておりません。
  39. 梨木作次郎

    梨木委員 事務簡易化能率化と申しましても、結局やはり今の裁判事務は非常に停滞しておりまして、特に最高裁判所はその極なるものであろうと思います。ところが最高裁判所におきましても、裁判官は十五名であるが、その下部機構は非常に厖大なものを持つております。従来になかつた情報係までもつつております。そうして刑事課民事課というようなものもたくさんあります。ところがわずか十五名の裁判官でやつておる。ここで聞きたいのでありますが、一体今最高裁判所では、受理した事件をどういうように処理しているか、事件受理、受付けたものと、これを処理した計数との最近の統計的なものをお示しを願いたいと思います。
  40. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 最高裁判所事件が非常に多くなつておることは、昨年来主として旧刑訴旧法事件迅速処理ということに非常に重点を置きまして、いろいろ下級裁判所訴訟促進をはかつた結果、下級裁判所において処理された事件の多いことが、最高裁判所の方の事件増加の幾分かの原因になつておると思います。受理の状況は、最近におきましては、この十月一箇月として、これははつきりした正確な数字ではございませんが、民事が大体百二十件前後と思います。刑事の方は大体五百件、あるいは五百件を多少オーバーするかもしれません。処理の方も、十月に処理した事件が大体五百二、三十件、刑事の方はややこの処理の方が黒字になつて、減りつつある状態であります。
  41. 梨木作次郎

    梨木委員 民事刑事を含めて、未処理で残つているものはどれくらいありますか。
  42. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 民事刑事を含めまして、大体六千件くらいだと思います。
  43. 梨木作次郎

    梨木委員 昨年訴訟事務促進ということを最高裁判所でお始めになりましたが、私ども裁判事務を経験いたしまして、人員をこのままにしておいて、機構をこのままにしておいて、いくらそんなことを命令してもだめですよ、と私は当時もはつきりこの委員会指摘したと思つておるのであります。そして現状は、私の知つている限りでは、やはり同じであります。しかしながらこれは私が経験したところだけでありますが、一体裁判の弁論の集中審理とかなんとか言われましたが、裁判事務促進は現在どのように運んでおりますか。
  44. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 昨年この訴訟促進、特に旧刑訴事件処理について重点を置きましたことは、ただいまお話のあつた通りであります。昨年十一月当時一万六千件くらいの未済事件が残つておりましたが、現在において下級裁判所全体を通じて、約二千件程度でありまして、これはいろいろ被告人が逃亡したとかいう事由で迅速に処理することができない事件でありますが、相当訴訟促進いたしましたその結果といたしまして、現在では下級裁判所においては、大体既済が未済を上まわるような傾向であります。
  45. 梨木作次郎

    梨木委員 一体裁判所職員をそのままにしておいて、事件が片づいたことだけを外形的に一つの実績として誇るようなやり方は、裁判の本来的な任務からいつて、喜んでいいことか悲しんでいいことか、私は非常に問題だと思います。特に最高裁判所があのようなことを指示した結果、下部におきましては、いたずらにこの訴訟事務促進させることに急なるのあまり、人権保護、個人の財産権保護というような面においては、まことに遺憾な点が多いのであります。そしてこの定員法改正に当りましても、現状をもつてするならば、特に下級裁判官あるいは書記官の手不足から来るところの労働強化は非常にひどいものであります。特にわれわれの経験では、裁判官書記官を比較してみた場合に、書記官の給料というものは非常に低い。そういうところへ持つて来まして、訴訟事務促進が上の方から言われて来ておるために、公判が定時を越えて五時、六時、七時までもかかつてつておる。そういうように公判がおそくなりますと、従つてそれに伴う書記官事務のあとの整理というものは、さらにそれを倍加したひどいものになつて来ておるのであります。こういう実情から見ましても、今度の定員法の一部改正によつて裁判所職員減員をはかるということは、人権あるいは財産権保護という面からも、非常に憂慮すべき事態が出て来ると私は考えるのであります。そこでこの点について聞きたいのでありますが、一体今裁判所職員超過勤務手当というものは、どういうように支給されておるのかという点について聞きたいと思います。
  46. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 訴訟事務促進の結果、人権擁護に欠くるようなところがあるやに仰せられたようでありますが、われわれとしては、極力さような点のないようにし訴訟促進をはかるという方針をとつてつたのであります。もとより事務の堆積しておる場合において、一定の勤務時間のみによつて処理することのできないことは、仰せられる通りでありまして、相当おそくまで勤務いたします。その勤務に対しましては、裁判官に対しては法律によつて超過勤務というものは支給されておりません。たとえば夜十二時までやつても、超過勤務というものはございません。一般職員に対しては、政府職員と同じように、超過勤務手当予算の範囲内で支払つております。あるいは場合によると、その勤務に対して必ずしもそれにマッチする予算がない場合もあるのでありますが、現在までのところでは、大体超過勤務を命じた者に対しては、超過勤務手当を支給して参つておるのであります。
  47. 梨木作次郎

    梨木委員 私どもはよく聞くのでありますが、ほとんど超過勤務手当をもらつておらないと地方の裁判所職員が言つておるのであります。そこで一体超過勤務に対して、平均どのくらいお出しになつておるか。今の御説明だと、全部出しておるようにも聞えるのでありますが、そうだとすれば、最高裁判所では超過勤務をした者には全部出しておると言われるのに、下級では出しておらないということになると、非常に問題だと思うのでありますから、これはひとつはつきりお伺いしておきたいと思います。
  48. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 大体この予算の面では、平均七時間程度の超過勤務の予算がございます。これはむろん各庁によつて異なりますし、その事務の量によつても異なりますが、大体この超過勤務は、居残りを命じたような者に対して支払いをいたしておるのでありまして、従つて予算の面と事務の面と両方をにらみ合せて運用いたしておる結果、ただ任意に残られた職員に対してはあるいは支払いができなかつたところがあるかもしれませんが、そういう点においては運営上種々考慮いたしておるような次第であります。
  49. 角田幸吉

    角田委員 ちよつと関連して……。超過勤務手当の問題でありますが、超過勤務をしないところに超過勤務手当というものがあり得ないということは当然でありますけれども、各官庁によつて非常な差があるのであります。御承知の通り大蔵省の主計局というものはべらぼうに多く、全部の官庁について見ますと、かなりの開きがあるのでありますが、私の感想としては、裁判所予算的の方面が比較的少いのではないかと考えておりますが、この点についての事務総長の御見解をこの機会に承つておきたいと思います。
  50. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 ただいまも申し上げましたように、予算では裁判所は平均一箇月七時間程度の超過勤務の予算がございます。これは各省によつて異なるとおつしやいましたが、私の方では他省と比較した資料がございませんので、いずれ研究いたしまして…。
  51. 角田幸吉

    角田委員 それではこの資料を一ぺん御調査になりまして、先般私は予算委員会で大体調べてみたものがありますが、これもひとつ調べて御参考にせられんことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  52. 梨木作次郎

    梨木委員 今居残りを命じた場合に支払うのだという。ところが公判は五時ごろからずつと続行することがある。そういう場合には大体裁判長が指揮します。裁判長が指揮した場合には、行政面ではどうなるのか、よく私はわかりませんが、裁判長が時間を経過して引続き公判を開いた場合には、居残りを命じたことになるのですか、ならないのですか。
  53. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 実際公判廷で五時が過ぎて、さらに引続いてやつておるというような場合には、もちろんこれは超過勤務になります。そしてその場合には事後の処理として起動を命じた簡単な命令書をつくりまして、それに裁判長が捺印をして超過勤務したことを証明されておるわけです。
  54. 梨木作次郎

    梨木委員 どうもこういう点が、わずか七時間の予算しかないというが、実際は非常な労働の強化になつておるというのが実情であります。  次にこの問題に関連して、先ほどいろいろ事務の機械化という問題がありましたが、今法廷で録音機を使うことがあります。大体これは政治的な事件だけでありますが、ところがこの録音機を使うときには書記官のほかに録音の係が二人くらいついておるのであります。こうなつて来ると、これは機械化どころかかえつて労力がますます加重され増大して来るという結果になつてまことにおかしな結果になつておるのでありますが、これはどうお考えでありますか。
  55. 内藤頼博

    内藤最高裁判所説明員 ただいま録音機のお話が出ましたが、実は書記官の法廷における調書をとる仕事であります。その機械化ということにつきましては、従来裁判所におきましてもいろいろ研究いたしております。ただいまのところは結局ステノ・タイプでありますが、タイプライターによる速記によりまして、書記官の調書作成の仕事をそれにかえまして、そして正確なしかも能率的な記録を残すという方法考えて、ただいま研究しまた同時に実習も始めているわけであります。速記のほかにもう一つ考えられましたのは録音機でございます。しかし録音をもつて将来まつたく調書にかえるかどうかということは、さらにまた問題でございまして、御承知のように録音機になりますと、紙の上に書いた文字でもつて読むようなわけに参りません。いろいろな長所もございますが短所も考えられるわけでございまして、ただいまのところ録音機は試験に用いている程度というふうに御了承願いたいと思います。
  56. 梨木作次郎

    梨木委員 そこで録音機の問題でありますが、私どもはああいう録音機を使われると法廷におけると、ころの自由なる発言というものが非常に制限される危険を感ずるのであります。特にこれを裁判所侮辱制裁法の参考にするためにこれをどこここへ持つて行くとか、あるいはその録音をとつておいて、それが結局あとの裁判官の法廷指揮の問題の判断の材料にするとか、そういうことに利用されるということになりますならば、これは非常に裁判官にとつても、またその他の訴訟関係人にとつてもまことに迷惑なものであります。たとえばそのときの録音をあとで法廷の現状から全然切り離された環境において聞くのと、そのときの法廷の環境というものはやはり異なる。裁判官の態度なり何かいろいろなことで被告人なりあるいは弁護人なり傍聽者の態度というものはかわつて来るわけです。そういうものを全然抜きにいたしまして、そうして録音機を單に環境とは別にいたしましてこれを聞いた場合に、いかにも法廷が喧騒をきわめているじやないか、これはどうも裁判官訴訟指揮が悪いのだというようなことになるようなことになりますれば、ますます裁判官自身も法廷において非民主的な態度をとらざるを得ないということに相なりますから、私はこういう録音機というような訴訟上何ら法的根拠のないものを利用するということは、これは裁判の権威と民主化のためにも、害があつて利というものは一つもないと考えるのでありますが、どういうぐあいにお考えになつておりますか。
  57. 内藤頼博

    内藤最高裁判所説明員 法廷は御承知のように公開されております。そこにおいて述べられました事柄あるいは裁判所の処分なり何なりが記録に正確に残るということは望ましいわけであります。理想を申せば、法廷で行われたこと並びに言われたことがすべて最も正確な記録に残ることが望ましいわけであります。従いまして速記であるとかあるいは録音機の利用ということが今後考えられるわけであります。ただただいまお話のございましたように、それをどう利用するかということは、これはもちろん別の問題でございまして、法廷におきまするそういつた記録はできるだけ正確に残さるべきものだと考えます。なお録音機の使用について法的根拠がないという御指摘でございますが、刑事訴訟規則の第四十條におきまして、録音装置を使用して、証人、鑑定人、通訳人または翻訳人の尋問を録取させることができるという規則がございます。
  58. 世耕弘一

    世耕委員 ちよつと関連して……。録音機の話が出ましたが、私は裁判所で録音機を使うことは最も文化的だと主張した一人であります。最も進歩的である梨木君が録音機の使用に反対するということは何かの間違いじやないかと思いますが…。
  59. 梨木作次郎

    梨木委員 今世耕さんからお話がありましたが、抽象的にそうおつしやるのは無理がないと思う。ところが今一体録音機はどういう事件に使われておるかといいますと、政令三百二十五号違反とか、それから被疑者が共産党員であるとか、そういう事件に限られてこれが使われておる。文明の利器といえども――原子力はまことに科学の最高の粹でありますが、これが人殺しの武器に使われるのと、それからわれわれの社会の文化的、平和的発展のために使われるのとでは、これは違うのでありまして、私はその点でこれを非常に問題にしたのであります。決してこれを一般的に問題にしておるわけではないのであります。  その次に簡単に伺いますが、実は逮捕状、捜索状の発付の仕方であります。これは去る十月の九日には全国八百六十一箇所にわたつて一人の被疑者の問題について家宅捜索が行われておる。こういうような家宅捜索状を裁判官が出しておるところに、非常に家宅捜索令状というものが、軽率に愼重を欠いて出されておるということを疑わざるを得ないのであります。ところが私は逮捕状や捜索状が出た場合に、これは非常に不当だということで当該裁判官の責任を追及しようという場合に、もう記録も何にもないというのであります。そこで裁判官のその責任を追及するにも非常に不便を感ずるのであります。そこで逮捕状や捜索状を出してしまつたら、裁判所にはもう何も記録はないようなことを裁判官は言うのでありますが、裁判手続上どうなつておるのでありますか、伺いたいと思います。
  60. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 逮捕状の発付の点でありますが、受付とかその令状の発布に関する帳簿は各裁判所にあると思います。どれだけ逮捕状を発付したかということはそれによつてわかると思います。
  61. 梨木作次郎

    梨木委員 逮捕状はその請求をしなければなりません。請求書には刑事訴訟規定の被疑事実とかそれから氏名とかいろいろ要件があります。そういうものを全部書いて請求するわけであります。請求した場合にそれをそのまま全部発行請求者に返しておりまして、その控えが裁判所にないというのです。裁判所に記録を保管しておかないでは、これは非常に不便だと思うのでありますが、この点を伺いたいのであります。つまり逮捕状や家宅捜索の令状を請求した場合に、裁判官はそれを許可しますと、その記録は全部警察官や検察官にもどしまして、裁判所には何ら記録がないというのであります。これでは非常に不便だし、責任の所在を追及するのにも、今のように八百六十一箇所にわたつて一人の被疑者について令状を出したということになりますと、これはきわめて問題でありまして、こういう点責任の所在を明確にするために記録を保存するような方法を講ずべきだと思いますが、御所見を伺いたいのであります。
  62. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 今の手続といたしましては、大体逮捕状、捜索令状を求めて来ると、その受付簿と、それから令状を発付した事件の当事者の名前を書いた令状発付簿が裁判所にございます。おつしやるような内容自体と同じような謄本のようなものは現在裁判所に保管してないと思います。
  63. 梨木作次郎

    梨木委員 ですからこれはぜひとも裁判所に――少くとも裁判官が人を逮捕するんですよ、人の居宅を捜索するんですよ。こういう重大な裁判をして、その裁判の記録が裁判所に保管されておらないということでは、これは一体責任の所在がどうなりますか。こういうことでは、私は非常に今後人権の問題について重大な問題が出て来ると思いますから、これは裁判所といたしましても、どうしても逮捕状なり捜索令状、裁判をなした資料一切は裁判所に保管するという処置をとるべきであると思いますが、どういうように今後おとりになるつもりでありますか、御所見をお聞きしたい。
  64. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 ただいまの御意見は十分拝聽いたしまして今後考究いたしたいと思います。
  65. 押谷富三

    押谷委員長代理 他に御質疑はございませんか。――他に質疑がなければ、これより討論に入ります、討論の通告がありますからこれを許します。田万廣文君。
  66. 田万廣文

    ○田万委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になつておりまする裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案に対しまして反対の討論をいたします。  その理由といたしましては二つございまして、大体法治国家としては、裁判所の職能が遺憾なく発揮されるということが一番望ましい状態でもあり、またそうなくてはならないと思うのであります。この点から言いまして、事件が非常に激増いたしたために裁判所事務澁滞しておるという実情でもあり、今日本法案が通過した場合においては、さらに裁判所事務澁滞澁滞を重ねるという危険性を予見することができるのであります。その点につきまして、提案理由説明にその片鱗を見ることができるのでありまして、先ほど私から事務総長の五鬼上さんに御質問いたした際にも申し上げた通り提案理由自身においてこういうことが書かれてございます。「裁判所に提起される各種事件は、全般的に依然増加傾向にあり、しかも訴訟促進が叫ばれておりますごとなどを考慮いたしますと、裁判所職員の現在の定員は決して多きに失するものではない」、言いかえるならば、手一ぱいであるぎりぎり一ぱいのところに行つておるのだ、切ることはできないのだという切実な意味がここにはつきり出ておるのであります。その次に「この際極力事務簡易化能率化促進する」ということが書いてありますが、これは蛇足的な文句でありまして、おそらく事務簡易化とか能率化ということを促進すると言うが、これはなかなか容易ならぬことと思うのでありまして、かような点から言つて、私はまず本法案に反対をいたさなければならぬと思うのであります。  それから次にもう一点の反対理由は、本法案は、行政整理に便乗したような感じを多分に受けるのであります。裁判所は、大蔵省予算的措置に対して、人権財産権保護に欠くるところありとして断固その大蔵省の案に対して反対すべきであつたと思うのでありますが、遺憾ながら先ほど事務総長お話を聞きますと、どうも大蔵省の案に歩調を合せたというふうに思われる点があるのでありまして、この点私は裁判所に対して非常に惜しむ。のみならず本法案が実施せられますと、八百九十九人の職員方々の首が切られ、その家族のためにも、また裁判所事務運営をスムーズにやるという意味からいつても、本法案は適当でないと思うので、私は以上の点で反対をいたしたいと思います。
  67. 押谷富三

    押谷委員長代理 田嶋好文君。
  68. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 私は自由党を代表いたしまして本法案に対して賛成の討論を簡単にいたしたいと思います。  ただいま社会党の田万君から反対の御趣旨が述べられたのでございますが、私たちも、実はこれに対しましては田万君のお考えのような考えを持たないものでもございません。就職をして、それによつて一家をささえております人間が、そのかてを失うような條件のもとに置かれなければならないということは、共同国民生活を営むわれわれ一人といたしまして、まことに忍びないのであります。忍びないのではございますが、しかしわれわれが国家生活というものを考えて、われわれの国家生活に必要なる施策、それが国家の求めるものであるといたしますならば、これはやむを得ないものだと思うのであります。裁判所事務の円滑なる運営ということは、ほかの国家機関よりも最も私たちが関心を持つ点でございます。今回の行政整理によりまして、その関心を持たなければならない裁判所運営支障を来すといたしますれば、私たちは断固反対せなければならないものでございますが、国家の要望に応じてやると同時に、今回の行政整理が、裁判所当局のお答えのように、簡素化簡易化によりまして事務運営には支障を来さない、そうしてそれがよりよき能率化をはかる一段階になるということになりますれば、私はあえてこの行政整理に反対する必要はないと思います。そうした意味で、私は今回の行政整理に対しましては、しかもそれが最小限度にとどめられたという意味におきましても、この法案に対しまして賛成の意思の表示をいたすのであります。
  69. 押谷富三

  70. 梨木作次郎

    梨木委員 私は日本共産党を代表いたしましてこの法案に反対するものでございます。  反対の理由を簡単に申し上げます。第一は、この法案の提案理由によりますと、事務簡易化能率化をはかるんだということをあげております。しかしただいまの質問によつても明らかなように、それでは一体裁判事務をどういうように簡易化し、どのように能率化するかということの具体案は、ほとんど裁判所は持ち合せておらないのであります。この簡易化能率化ということが具体的に準備され、これが遂行され、これと並行して、だから余つた人たち減員するというのならば話がわかるのでありますが、いまだこれは構想の過程にあるのであります。しかも現在の裁判所機構というものは、実際は非常によけいな、われわれから見まして何か不必要なように思われる機構がたくさんある。またそういう人がいる。これを少しも整理し、減員するというような措置をとらないでおいて、そうして突如としてこういうものが出て来た。しかも私が最初指摘しましたように、定員は二万四百三十五人にふやすのであります。従来の九千百三十三人に一万一千三百二人ふやすのであります。これを私が指摘しましたところ、実は従来の雇員、用員を定員の中に加えたんだ、こういうことを言つております。だからこの定員法改正は、どこにねらいがあり、どこに目的があるのか、さつぱりその根拠が明白になつておらないのであります。これは今田万廣文君が指摘したように、一般行政官吏の整理に便乗して、そうしてやらなければならぬから仕方なく、形式だけ、体裁だけやるというように、やつて来たものと思わざるを得ないのであります。しかもこの点、それでは一体この減員をしないかと申しますと、やはり八百九十九人は首を切るというのであります。しかもその首切りたるや、法案も指摘しているように、不利益な処分をした場合の不服を申し立てる方法は、一切これは許しておりません。これは切り捨てごめんであります。こういうものをつくりますと一体どうなるかと申しまするならば、実際は首を切らないのだ――これは大体いろいろな資料から見ますとそうらしいのです。しかしながら、一面やはり首を切ろうと思えば切れるのだ、八百九十九人だけは切れるのだということを用意しておいて、しかも不利益な処分をした場合の不服申立ての方法をさえ認めておらない。これは何に使うかと申しまするならば、お前達は、いろいろ組合運動をやつたり、上の方に文句を言うと、いつでも大なたを振うぞ、これに使用するのであります。こういうところに、裁判所職員の民主的な諸運動というものを弾圧し、そうして一切は上の人の命令に奴隷的に盲従しなければ勤まらないような、そういう官僚的な、奴隷的な裁判所機構をつくり上げようとするのに利用される危険性があるということを、私は指摘しなければならぬと思うのであります。  大体以上の観点から、私はこの法案に反対するものであります。
  71. 押谷富三

    押谷委員長代理 討論はこれにて終局いたしました。これより採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  72. 押谷富三

    押谷委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なお本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議がなければさようとりはからいます。     ―――――――――――――
  74. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に、法務行政に関する件について発言の通告がありますから、これを許します。田嶋好父君。
  75. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 私は、最近いろいろと世上で問題になつておりまするところの裁判所に対する脅迫、裁判を行つた判事に対する圧迫的行動等々の事柄につきまして、御出席の裁判所並びに政府に対して質問をいたしたいと思うのであります。  私たちは、いよいよ講和條約の批准も完ういたしまして、やがて関係国の批准を終了した上で、新しく平和なる独立国家がここに生れることになるのでありますが、その平和なる国家の独立と、特に民主的な平和を維持するためには、どうしても国家機構の中におきまして司法権の独立と司法権の権威というものは、国民の絶対的信念として守り通さなければならない問題だと考えております。そうでありますのに、最近治安に関係があります犯罪の裁判にあたりまして、その裁判所を集団的な力をもつて誹謗し、かつその裁判に当りました判事の自由意思を、集団的、策謀的行動によりまして圧迫をし、そうしてその裁判の結果に対して、一つの独断的な方向を考えようとする傾向が見られておりますことを、非常に遺憾とするのであります。こうした傾向が強くなり、これを放置しておくということになりますと、最も公正であるべき裁判官の公正が根本的にくつがえされ、われわれが守り拔かなければならぬ司法権の独立と威信は地に落ちてしまいまして、われわれの平和なる国家、われわれの独立国家は、ここにおいて破滅を見なければならぬと思うのであります。最近治安に関係した事件といたしまして、有名な三鷹事件、松川事件、人民電車事件、武生事件等々、われわれが数え上げることのできないほどの事件を体験いたしたのでありますが、特に松川事件につきましては、その事件裁判長を勤めました長尾判事に対しまして、共産党の組織党員である共産党員、並びにこれと関連を持つと考えられるところの諸団体及びこれと関連を持つて動いていると考えるべき諸外国より、いろいろと、その判事の自由意思に対する弾圧、またこの裁判長の下した判決に対する独断的な一定の方向を与えようとする悪辣なる行動が展開しておりますことは、あまりにも事実のことでございます。この長尾判事に対しましては、私の調査によりますと、裁判が開始されましてから今日に至るまで、三百通になんなんとするところの脅迫状が舞い込んでおります。また諸外国より、特に中国、満洲あたりの地に住むところの人々から、長尾判事に対して同様な脅迫状が舞い込んでおるのであります。またソビエト国家と同一の思想に基く政治をやつている国として私たちが想像をいたしておりますチュニス、アルバニャ、ブルガリヤといつた国家等々からも、この裁判の結果に対しまして同様な方向を持つところの書面が届いているのであります。こうしたことに対しまして、私たちは大きな関心を持たなければならぬと思うのでありますが、特に、この長尾判事に対するところの書面の内容――三百通になんなんという書面でございますから、一々これを読み上げることはできないのでありますが、ほとんどの書面というものは、内容は同一にいたしておりまして、一つの指導機関のもとに指導的方法が与えられて、その指導的方法に基きまして、この書面が書かれたと考えられるような、ほとんど同一と申し上げてもはばからないところの文書が構成されている。たとえば判決の取消しを一様に要求している。それから自分たちは愛国少年、愛国青年、愛国人民と言つている。そして裁判をした裁判官に対しては、売国奴、反動の手先、ウォール街の金融資本家の走狗、良心を売つた者、こういうような同一的な言葉が使われまして、書面が出されております。してみると、これはどうしても先ほど申し上げましたように、各人が自由意思によつて行動したものではない。書面の同一内容からいたしますと、どうしてもこれは何かの機関によつて指導方針が確立され、その指導方針が各地区に指令され、その指令のもとに文書が発送されて、故意にこの裁判の結果に対して彈圧を与え、そして先ほど私が申し上げましたように、独断的な意思によつて、その独断的な意思に方向づけようとする努力が見られる。そうして公正であるべき裁判が、公正でないというような結果に陷らしめようとする行動であるとしか、われわれは考えることができない。こうしたことにつきましてまず伺いたいと思いますことは、第一に、この長尾判事の事件はあまりに公知でございますから、これは今私が申し上げたことでわかりましたが、こうした同類の事実が、治安関係として裁判されました他の事件においても、実例があつたかどうか、あつたとすればどんなような実例が具体的にあつたか、これを裁判所の当局にお伺いをいたしたいと思います。
  76. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 ただいま田嶋委員からの御質問に対して、事実をお答えいたします。この長尾判事に対する脅迫状は、田嶋委員も申されたような次第でありますが、なおこの長尾判事を罷免せよ、あるいは長尾判事の判決を取消せというようなことは、最高裁判所の方にも、先ほど来田嶋委員が言われたようなかつこうで、たとえば中共とかあるいは満洲方面から、電報、書面等で参つておる事実がございます。このような集団的の事件は各地にありまして、いろいろ大勢で裁判所に対して保釈を要求するとか、それから法廷闘争と称して、いろいろな方法をもつて集団的に裁判所の方へ要請をする事実は、各地にございます。ただいま遺憾ながら他の事件資料を私は持合せがないので、具体的には申し上げられませんが、さような事実はございます。
  77. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 それでは私は具体的に一つ一つお伺いをいたしますが、三鷹事件につきましては、三鷹事件裁判中に、松川事件の長尾裁判長に対すると同じようなこうした行動が、外部団体並びに個人からとられたことがあつたかどうか。それからこれも同様でありますが、横浜の人民電車の裁判、これに対してはどうであつたか。それから福井県の武生の事件に対してはどうであつたか。これらを具体的に承りたい。具体的な内容を知らなくても、あつたかないか、どの程度のものがあつたか、その程度のことでけつこうであります。
  78. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 ただいまの御質問に対しては、ただいま資料を持合せいたしておりませんからして、具体的に申しあげることはできないのでありますが、後刻調査いたしまして、お答えいたしたいと思います。
  79. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そのこまかいことはどうでもよろしいのでありますが、あつたと聞いておるか、あつたと聞いてないか、この程度のお答えでけつこうです。
  80. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 三鷹事件に対しましては、これは私の記憶でありますが、さような各方面からの集団的の脅迫的書面が来たということは、聞いておりません。
  81. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 第二に、私は長尾裁判長に対するこうした行動によりまして、長尾裁判長はすつかり心身疲労いたしまして、病気になつたと承つておるのでありますが、こうした行動に対して裁判所はどういうような対策をおとりになつておりましようか。それをひとつ承りたい。
  82. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 事は裁判に関することになりますので、十分御質問に満足するようなお答えはできるかどうかわかりませんが、大体かような事件に対しましては、その治安の方面の検察庁あるいは警察とも連絡をとることもございます。そのほか警備要員を配置するというようなことをして、大体取扱つておりますが、何と申しましても、いろいろな新しいいわゆるる法廷戦術というようなものが出て参りますので、非常に大きな事件においては相当審理が長引き、従つて他の事件のためにも影響を及ぼすというような事態が、発生いたしておることがございます。
  83. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 五鬼上事務総長のお答えまことに抽象的で遺憾な点がありますが、実は私もつと詳しく申し上げると、御存じの通り長尾裁判長に対しましては、絞首台上で裁くとか、断頭台が待つているとか、その人に対しては心身ともに疲労するような文面が、脅迫に用いられておる。これはあとで法務当局にも聞くのでありますが、これに対しまして裁判所はあまりにも冷淡で、何ら対策を講じてない。こんなことでは国家の公正であるべき裁判が守れるはずがない。裁判に対する非難が世間ではごうごうと沸いておる。そういうことがお耳に入つてないことはないと思うのでありますが、もう少し裁判所は真劍にこうしたものに対しましては、そうした関係者と強力な連絡をとつて、具体的に裁判官の身の保護考えるという措置をとつてやらなければ、今後の非難なり治安問題に対しましては、安心して裁判官がその職につくことはできないと思う。いま少しく具体的な対策が考えられたものがないかどうか、承れますればまことにけつこうだと思います。
  84. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 私どもの聞いております範囲では、長尾判事に対しましては、各地から電報、書面等で、田嶋委員の申されるような脅迫的な文書が、たくさん参つておる事実は承つております。これに対してどういう対策を講じておるかということになりますと、事は裁判の問題と関連いたしますが、裁判所の方としては、その警備方法を講ずる、あるいはその他治安方面の官庁と連絡をとつて遺憾なきを期しております。ただ長尾判事は名誉毀損で、これは個人としてでありますが、検察当局に告訴をいたしておるという報告は受けております。
  85. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 現在の対策といたしましては、私はまだ不十分だと思う。もう少ししつかりした対策をお立てになる必要があると思うのです。そこでお聞きいたしますが、こうした問題に対して、今後はやはり国際情勢の変化とにらみ合せますときに、私たちはこうした問題がたくさん起きて来る、こういうように想像いたすのでありますが、こうした問題に対して、今後はいかなる対策を講ずればいいか、どういうように裁判所は対策を講ずれば、こうした問題に対して、うまく安心して裁判官裁判できるようになるか、このお考えを承りたいと思います。
  86. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 事は運営の問題と立法の問題になると思いますが、運営方面では、法廷の警備、法廷の設備等について、いろいろくふうをして行く必要があると思いますが、何といたしましても、法廷において大勢の事件の審理にあたつては、いろいろ騒ぐことがあります。かようなものに対しわれわれとしては、司法行政の面から考えましても、やはり法廷侮辱罪というようなものが必要であるということを痛感いたしておるような次第であります。
  87. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 裁判所といたしては、これはその程度でやむを得ないと思いますが、今後の対策は法務府と御連絡の上、十分なる対策を講じていただきたい。これはあとで法務府にもお伺いいたす点でありますが、そうしていただきたいと思います。  次に長尾判事は、こうしたたくさんの脅追状によりまして、心身ともに疲労いたして、松川事件判決後は、その職につくことができなかつた、こういうように私たちは聞いておるのでありますが、これらの状況がおわかりになつておりますれば、少しくこまかくお話を願いたいと思います。なお長尾判事の心身のこうした疲労、神経衰弱とでも申しますか、これはある人に言わせますと、特に共産党あたりからでありますが、長尾判事はそうした脅迫によるものでなくて、自分の判決が良心的でなかつたために、非常に自分の良心の呵責に悩まされて、こうした病気になつたというようなデマが飛んでいる時期でありますので、この点をひとつお話を願いたいと思います。
  88. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 長尾判事は、松川事件の終了後健康を害しましたので、そしてただいま田嶋委員から御発言がありました通り、多数の脅追状が内国のみならず外国からも参つたようなわけでありますので、健康のことと、実は裁判所の方としては、万一長尾判事に危害が加えられるようなことがあつてはならないということを考えまして、多分ことしの三月だつたと思いますが、名古屋に長尾判事は転任したのであります。そして名古屋で静養しておつて、その結果心身が回復しまして、六月の末ごろか七月の初めごろから、名古屋の高等裁判所で執務をしており、現在はきわめて健康で、元気はつらつとしておるわけです。それで今度名古屋へ参りましても、再び脅迫状が当人のもとに集まつており、毎晩一時間おきに電報が来て、夜も眠られないような脅迫にあつておるのでありますけれども、本人はきわめて元気でありまして、周囲の者が、何なら家庭裁判所あたりの事務にでもかわつたらどうだというようなことも言われているのに対して、いや今そういうことをすると、こういう一部の者の脅迫が効を奏したというような印象を与えることが、裁判運営上きわめておもしろくないから、自分は現在のポストでけつこうだと言つておるくらいで、きわめて元気旺盛で現在はやつております。
  89. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 裁判所に対しましてはこの程度にいたしまして、次は政府に対して同様な内容におきましてお伺いいたしたいと思います。きようは法務総裁がおいでくださいませんようでございますから、その他の政府委員でけつこうでございます。実はこうした問題は、先ほども申したように、今後頻々と起ることが想像されるのであります。実を申しますと私自体にも、長尾判事ほどではございませんが、最近脅迫が参つております。私には参りませんが、私の家族に対して、お前のうちを焼打ちしてしまう、田嶋好文だけを殺すのではない、田嶋好文の家族を皆殺しにする、こういうようなことを言つて盛んに電話での脅迫が参るのであります。そこで私自体もあまり気持はよくございません。こういうようなことでありますと、これはその当事者はけつこうなんでございますが、なかなか最近共産党は戰術をうまく使いわけまして、決してわれわれごとき者はおどしません。かよわい妻子をおとして、そして夫の行動を牽制するというような(「共産党とは何だ」と呼ぶ者あり)共産党で悪ければ、共産党員と申しましよう。こういうようなことになつております。これは梨木君に申し上げますが、共産党と名乗つて私のうちに電話をかけておりますので、ここにはつきりと速記録に残しておきます。そういうようなことでありますので、この点につきましては、われわれはそうした治安関係に今後携わる国家の人関すべてが体験しなければならぬことと思う。それでこれに対しては、相当国家も大きな関心を持つて対策を立ててもらわなければ、今後の治安維持の確保は非常に困難になる、こういうように思うのであります。従いましてこの長尾判事の事件を中心にしてお聞かせ願えればけつこうでございますが、このような悪辣な集団的脅迫に対しまして、長尾判事の場合、法務府はいかなる処置をおとりになりますか、これについて具体的な実例を示してお答えを願いたいと思つております。
  90. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 公正なるべき裁判の結果を左右する目的をもちまして、ただいま仰せになりましたような集団的な威力で、あるいはその他の弾圧もしくは不当な行動、脅迫、こういつたようなことをやるということは、申すまでもなくまことにふらちなことでございます。私はただ現在の日本の裁判官は、こういうようなことで裁判の結果を左右されるというような人は、おそらくないだろうと思いますが、われわれ検察の面から考えますと、裁判官は大丈夫であるからといつて、これをこのまま放置するわけには行かないのであります。ただ先ほど御指摘になりました、チュニスとかその他の外国からの脅迫状につきましては、これはわれわれ法務府といたしまして、何ともいたし方がございませんが、日本国内におきますこれらの事柄につきまして、いやしくもそれが名誉毀損あるいは暴行もしくは脅迫、こういつたような犯罪を構成する嫌疑があります限り、嚴重に検挙を励行して行きたいと考えております。裁判官のみならず、一般の人民の方々におきましても、このような不法行為があるおそれがございますれば、いつでもこれは関係官庁に御連絡くださいますれば、万全の警備をやつて行きたい、こう考えております。先ほどから具体的な問題になりました、長尾判事につきましては、先ほど来お話が出ました通りの脅迫のような事実があるようでございます。これに対しまして検察当局といたしましてはよりより捜査を進めていたのでありまするが、今月の六日に長尾判事から名誉毀損の事実について告訴状が提出されまして、同日名古屋の検察庁から裁判所に令状を求めまして、七日に被疑者の逮捕及び押収捜索をやつたという報告を受けております。被疑者は現在のところ四名逮捕したという報告を受けております。
  91. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 名古屋におきまして、四名の被疑者が逮捕せられたことは私も聞きました。この名古屋に来る前に福島におきまして――福島におつたはずでございますが、福島におつた当時は、名古屋よりももつとはげしく脅迫を受けたように私どもつておりますが、その当時はどういうような対策を講じておりましたでしようか、これは検挙されておらないようですが、それを承つておきたいと思います。
  92. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 福島におります間の事柄については検挙の事実はございません。
  93. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 捜査はいたしておつたのでしようか。
  94. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 もちろん捜査はやつておりました。
  95. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 実を申しますと、これは御存じでございましようが、こうしたことは検挙されないんだ、こうした行き方で今まで検挙されたことはないんだということを言いふらしている。彼らはこうしたことがお茶の子さいさいで日本の政府を、こうした方法についてはもう検挙されないというので、なめ切つているような形がわれわれには見られるのであります。今度はたまたま名古屋におきまして、総力を結集したために、四名の人を検挙することができたのでありますが、こうしたものが先例上あまり検挙されていないということに対して、われわれ非常に対策の不十分なる不安を感ずるものでございますが、これに対しまして何か特殊な考えを持ち、また特殊な対策を立ててやらなければいかないのじやないか、こうわれわれは考えております。政府はこうした問題に対する検挙の実例からいたしまして、どういうような対策を立てようといたしておりますか、また立てたらいいという構想をお持ちになつておれば、その構想でもけつこうでありますが、これを承りたい。さもないともう彼らの行動を跋扈さすだけでありまして、決して言葉の上で表わしてみたり、新聞紙上に載せてみる程度では、これはとても根を断つことができない。また彼らはそれをよく知つて、これが一番いい方法で効果的だ、これは穴だ、これをねらつてつておる、これははつきりいたしております。どうかひとつお答えを願いたい
  96. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 まことにごもつともなことでございます。この種の事件につきまして、最近において検挙の段階まで参りましたのは、今度の名古屋の先ほど申しました事件だけでございます。われわれといたしましては、この名古屋の具体的な事件の急速な捜査と、これの処置を通じまして、今後予想されるべきこの種の事件について、急速に万全なる具体的な対策を立てたい、こう考えております。
  97. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 名古屋の事件による検挙者は私が承つたところによりますと、淺野晃盛、これは青年共産党の枇杷島班の責任者、それから穏岐尚一、これは正式の共産党員ではないのでございますが、まあ共産党員と見るべき部類の人である。それから加藤正一、これは党員でございまして、相当労働関係で活躍している人だと承つております。それから三輪清これは届出の党員ではないようでありますが、やはり相当共産党の分子として活動しているように承つておりますが、これは事実こうでございましようか、承りたいと思います。
  98. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 その通りでございます。
  99. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 名古屋で検挙された事件は、今どういう段階にありましようか。起訴されましたでしようか、不起訴になりましたでしようか。どういうようなお見込みを立てておりましようか。
  100. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 現在までの報告によりますと、四名の被疑者を検挙して、名古屋市内におきまして数箇所押収捜索をやつただけでございまして、その後の処理につきまして、起訴したかどうかということにつきましては、まだ報告に接しておりません。
  101. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 私は名古屋でございますので、実際調査をいたしたのでありますが、この事件に対しましては十分なる証拠がある。鑑定の結果文書も一致しておる。起訴は絶対なものであるが、まだ起訴されていない、こう承つております。しかしまだ確実にお知りにならなければやむを得ないのでありますが、私たちの承つたところでは、そうなつておるのであります。そこで私はこの長尾判事の事件を通じましたこうした一連の行き方を持つ事件の背後関係というようなものを一応考えてみなければならぬ――考えてみなければならぬではない。考えてみないことには対策が立たない、こう思いまして、お聞きするのでありますが、この長尾判事を中心とした一連の事件、これに類似する事件というものは、背後にはどのような者がおつてつておると政府はお考えになりましようか。私の考えといたしましては、今名古屋で検挙されました実例が示しますように、そうした行動に出る者はすべて共産党員である。またこの脅迫文が示しておりますように、文書の中には必ず共産党であるということを陰に陽に示して脅迫文が書かれておる。また外国から参りましたものについて、その国の政情を見ましても、ソビエトその他と関連を持つ国のみから現在の手紙が来ておる。こういうように総合資料をもつて見ますと、これは背後に共産党が存在し、しかもこれが一つの指導権を握つてこうした行動に対して指針を与え、行動をとらしておる。私はこの意味で、この問題を重視しなければならぬと考えておるのでありますが、政府はいかようにお考えになりましようか。伺いたい。
  102. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 一般の犯罪捜査といたしましても、もちろんでありますが、ことにこの種の事件におきましては、この犯罪のよつて来りますところの、いわゆる背後関係と申しますか、その点まで捜査を進めて明瞭にするということは犯罪捜査の常道でございますので、おそらく名古屋の検察担当者におきましてもその点に十分考えを用いて捜査を進めておる、こう存じます。ただ今日までわれわれ報告を受けております限りにおきましては、はたしてその背後にどういう団体、もしくは力があるかといつたことはまだ明確にはわかつておりません。今までにわかつておりますのは、先ほどお述べになりました通り、被疑者の一人の加藤正一が昭和二十三年に日本共産党に入党して、名古屋市委員会に所属している、この事実と、他の三名がこの加藤の同調者であるという事実は判明しております。他の点につきましては目下捜査中でございますので、今日お話する段階には至つておりません。
  103. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 この具体的な事案につきましては、捜査中でございますからお答えができないと思いますが、私が今申し上げましたように、参つておる手紙がすべて共産党を中心としたものであるということだけははつきりした動かすことのできない事実だと思う。共産党に関係を持たない者、共産党外の人から手紙が来てないということも事実なのでありまするそのことにつきましては御確認いたすのでございましようか、いたさないのでごさいましようか。
  104. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 目下捜査中でございますので、今日ここで申し上げかねます。
  105. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 この種の事件は今後ひんひんとして起こるものと思います。政府の答弁といたしましては今の答弁でやむを得ないと思いますが、事実がすべて示しております。これは共産党と離して考えることのできない行動である、こう断ぜざるを得ないのであります。物的証拠があり、その者がすべてそうした機関と関連を持つということが現われております以上は、十分御注意をくださいまして、この種の事件の根絶をはかり、国家治安の確立に、政府においても万遺漏なきを期してもらいたいと思います。特に司法権の独立が傷つけられ、司法権の威信が失墜するということをわれわれは非常なおそれをもつてながめるのであります。どうかよろしく御対策をお立てくださるようお願いいたします。
  106. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 関連してちよつとお聞きしたいのですが、先ほどの刑政長官のお話を聞いておりますと、告訴があつたので初めて捜査に当つたように聞えますが、そうじやないのか、そうじやなかつたら前からどういうことをやつておられたか、その点をまずお聞きいたします。
  107. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 最初から検察庁独自の立場におきまして捜査を進めておりましたのが、たまたまこの捜査を進めております途中において、今月の六日に名誉毀損の事実についてだけ長尾判事から告訴状が出た、こういう関係になつております。
  108. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほど田嶋委員から質問もありました通り、われわれが特に重視したいのは、裁判の威信を阻害せんとしておるということでありますが、どういう犯罪ありとして捜査に着手せられたか、その点をお聞きしたいと思います。
  109. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 脅迫罪並びに名挙毀損罪の被疑事件として捜査を進めたと聞いております。
  110. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 裁判の威信を害するという犯罪に対して、いわゆる法益を守るためにほかに何か考えつきませんですか何か方法はありますか。
  111. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 現行法上はちよつと考えつきませんです。
  112. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はこれは前提としてお聞きしたのですが、私最も重視すべきものは外国からの脅迫だと思う。およそ司法権の独立及び裁判の独立ということは、世界の法治国にある大原則であろうと思われます。しかるに外国から日本の裁判に対する批判をし、もしくは裁判の結果を動かそうとするようなものが来ることは、国際法上重大なことだと考えるのであります。先ほど長官は外国のことはやむを得ないと言われたのですが、これはやるやれぬはあとにして、かようなことが外国から来るということははなはだけしからぬことだと考えておられるかどうか、まずそのことをお聞きしたい。
  113. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 外国のことはよくわかりませんが、現行法上考えられますのは、これはまことにりくつのようなことになつて申訳ないのですが、場合によりましては、間接正犯というようなことが考えられるのじやないかと思われます。しかしこれは單に法学上の理論だけでございます。
  114. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は外国人に何の犯罪ということよりは、世界全体が裁判というものは尊厳なものであり、威厳を保つべきものであるということは法治国の原則だと思う。これに対して外国だからといつてつていいものだということはないと思うのだが、かようなことが外国から来るということははなはだけしからぬと思つておるのか、外国だからやむを得ないと思つておるのか、お聞きしたいのはそれです。
  115. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 私がやむを得ないと申しましたのは、法律上取締りの観点からしてやむを得ないと申し上げたのであります。
  116. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは検察庁側としてはそうかもしれませんが、裁判所側では今私の質問したようなことに対してどういうお考えをお持ちになつておりますか。
  117. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 かような脅迫的なものが外国から来るということに対しては、裁判所としては直接にどうするということは考えておりませんが、検察当局やその他捜査取締り当局に連絡をするという処置を現在のところではとつております。
  118. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 捜査権上それは相当問題があろうと思います。それから現在まだほんとうに独立になつておらぬからということもありましようが、それなら独立になるのを待つてからでもいいが、こういうほかのことと違う裁判に対して何らかの措置を講じてしかるべきものだ、私は国際法上から考えてもそうあるべきものだと思うが、これらの点は実際国際法上何もないと思つておられるのか、現在では独立してないからやれぬというのか、これは重大なことだと思う。
  119. 五鬼上堅磐

    王鬼最高裁判所説明員 独立しておるから、してないからということでなく、かような事件が最近に起つて来たのは事実でありまして、この点についてはわれわれ最高の事務当局としてそれについて何らかの対策をしようということで目下考究中でありますが、具体的に立案をいたしておりません。
  120. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 考究中ならけつこうですが、これは何か言わずにはおれぬと思いますから、検察当局においても御研究を願いたいし、裁判所はなおさら御研究の上、日本の国威に関することでありますから、しかるべき手段を講ぜられんことを希望して私の質問を終ります。
  121. 押谷富三

    押谷委員長代理 田嶋委員質問に関連して梨木委員から発言の通告がありますが、ただいま京大事件について京都大学学長がお見えになつて、その時間が四時半までと限られておりますので、梨木君の質疑は後刻にお願いをいたしまして、京大事件につきまして調査を進めたいと存じます。梨木君よろしゆうございますね。
  122. 梨木作次郎

    梨木委員 後刻というのは今日ですね。     ―――――――――――――
  123. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に検察行政に関する件について調査を進めたいと存じます。京大事件につき、この際お諮りをいたしたいと存じます。服部京都大学学長を参考人といたし、参考意見を聞き取りたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 押谷富三

    押谷委員長代理 異議なければさよう決定いたします。京都大学事件につきまして、佐瀬委員より質疑の通告があります。佐瀬昌三君。
  125. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 過般の京大事件については、国会においても重大な関心を持つておる次第であります。先般文部大臣からも一応調査の上に報告を承るよう  になつてつたのでありますが、幸いに服部学長が当法務委員会にお見えになつたので、その後の調査の結果の況をあらかじめこの際お伺いしておきたいと思うのであります。
  126. 服部峻治郎

    ○服部参考人 お答えいたします。その後とおつしやる範囲はどこでございましよう。
  127. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 あるいは時間的に限ることが事件の性質上無理であると思いますから、概況として初めから今日までの経過を大要お伺いいたしたいと思います。
  128. 服部峻治郎

    ○服部参考人 御承知の通り十二日に陛下の行幸を仰ぐことになりまして、その御通路の整備につきましては、でき得る限り全力をあげて大学当局の者がやる。しかし手不足のおそれがあればというので、警察から十数名の応援を得て整備に当つておりました。その少し前に何がしかの不穏の形勢は看取できないではありませんでしたけれども、われわれ教育者としては、あくまで学生を信用するという立場を生命としておりますので、ことに日本人である以上は、幾らがさがさ言うておつても、いざとなれば、これは陛下に対する適当な敬意を表するのとかたく信じておつたわけでありますが。しかし警察当局としましては、万一の場合をおもんぱかつて数回打合せをいたしました結果、今申したような現場の警備はその程度でありましたが、万一をおもんぱかつてごく近い距離のところに、一定の警官の準備をしてもらつておりまして、万一のとき大学から要請すれば時を移さず応援に行くという建前でお迎えしておつたのであります。  ちようど予定の通り午後一時二十分、お車は無事に玄関先にお着きになりまして私が御案内申し上げて所定のところへ御安着になりまして、引続いて各学部から一名ずつ代表者が出まして、専門的の研究の一端を御説明申し上げました。大学御滞在の時間は、予定は四十分でありましたけれども、陛下の御興味をお引き申したと見えまして、いろいろな熱心な適切な御下問もありましたし、説明に時間がやや延びまして、終りましたのは予定の時間を十一分超過しまして、結局お帰りに玄関に出られましたのは二時十二分でありました。そのままお車は支障なくお帰りになつたのでありますが、そのとき、私御先導申し上げて玄関へ出たときにふつと私が気づきましたことは、整列は非常に整然としておる。しかし第一線の人がきは警官隊がつくつてつた。これが非常な初めと終りとの違いでありますが、結局陛下にはつつがなくお着きになつて無事に御出門になつたのであります。  あとでその警官隊の入りました様子を現場におつた者からいろいろ報告を受けましたが、その実情は次の通りであります。お車が着いて、陛下がお出ましになりますと、聞もなく一隊の者が列を離れて押し出して参つて、からのお車をとり巻いて、平和を守れとか、私はよく知りませんが、そういう歌を歌つてちよつと気勢を上げておつたのであります。その人数は、的確な数字はわかりません。またそれに参加しておる学生は、本学の学生もおりまするし、ほかの学校の学生もおつたと聞いております。なお学生だけでなしに、子供まで入つてつたというようなことでありまして、はたしてそこへ集つた者が、みな何がしかの共通の意図を持つてつた者ばかりとも思えない。群衆心理に引かれて来た者もあつただろうと思います。しかしその人数は的確なことは申し上げ得ないのであります。そういう実情でかなり混雑しておつた。そのうち定刻二時も近寄つて来たし、このままおれば、あるいはお車が進まれるにも支障を来すおそれを感じましたので、大学当局から市警の方へ応援を頼むということを要請したのであります。そうすると、用意しておりました一隊の警官が入つて参りまして、初め申したような人がきをつくつて、通路は完全に整理されたという状態であります。  これにつきまして、善後処置を連日連夜各学部長が集まりまして協議して、大体の方針としましては、当日に限らず、こういうふうな気風をかもして来た一部の責任として、かねて京都大学の学生の自治会として認めておりました同学会なるものがあるのでありますが、まずこれを解散すること、これの組織の責任者を処罰すること、それから大学としましては、将来ますます学生の補導を完全にするために、補導機構改革する、拡張する、充実する、もう一つは、時を移さずに学生にもつと健全なる本来の趣旨に沿うた自治団体の結成を促しております。今日までのところで、学生の動きとしましては、この同学会解散、それから責任者の処罰ということについて、ぶつぶつ小言は言うておりますが、正面切つて特にこうという働きはしておりません。それよりももつと顯著な学生の現われとしましては、かなり自粛の情が現われております。その一、二の例をとりますと、この同学会なる団体の事務所が学内に貸し与えてあるのですが、それを一定の日までに明け渡すようにということを申したのでありますが、それに従つてその通りきれいに清淨をして渡しております。それから十七日の日に、以前から企てておつたものでありますが、平和学生大会を催すということを執拗に十二日以後も申し出ておりましたけれども、この際そういう会を持つことは穏やかでない、もつと自省するがよかろうと指導いたしましたら、その通り従つてその大会は不法には開いておりません。なおもう一つ原爆展なるもの、これも大分以前から十二日の事件前から申しておつたものでありまして、十五日から十九日の間に開きたいと言うておりましたが、ただ彼らが希望しておりました会場がやや不適当である、授業があるのに――一定の講堂でありますが、そこを借りたいということを申しておりまして、これは授業のさしつかえになるから、また外部からも人が入つて騒がしくなるから、この会場はおもしろくない、それよりもほかの学生集会所がありますので、そこでやるのが至当であろうというように指導しておつたのですが、十二日の事件以前はどうしても会場変更ということは承服しない、執拗にやはりその会場で開くことを申しておりましたが、あの事件以後この原爆展はやらないという状態になつております。これらは一、二でありますが、各自の気持はおそらく自粛しておるものと思います。また一般学生――善良という言葉を使つたら語弊があるかもしれませんが、一般の学生も、あれはどうも一部の学生の行き過ぎである。けしからぬというような空気はみなぎつて来ておる状態であります。  引続き当日のことにつきましての調査、これは現在進行中であります。なおそのほか補導機構の拡充ということにつきましても、私の不在中も皆に依頼して進めております。また現に今日やつておる大学長会議の議題の一つにこれは以前から組まれておつたものでありますが、学生厚生補導の機構問題ということについてただいまも熱心にやはり研究しつつある状態であります。将来再びこういう不祥事のないことを希望します。  結論といたしまして、今回こういう事件を引起しましたことについては、国民全体に対してまことに相済まないと衷心遺憾の意を表する次第であります。
  129. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 結局京大事件の実体は、一部の学生運動であるというふうに承知してしかるべきものか、あるいはまた外部と何らかの連絡のもとに行われた、一種の政治的意図を持うた暴動であるというふうに考えべきものであるかどうか、その点についての総長の御感想も承つておきたいと思います。
  130. 服部峻治郎

    ○服部参考人 お答えいたします。これはなかなか難問でありまして、実は私も判断がつきかねておるところであります。外部からの働きがあつたでもあろうかということは、皆さん同様に私も想像はできますが、実体はまだ今日のところではつかみ得ない状態であります。
  131. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 同学会が解散され、また同時に何人かの学生が検察当局に検挙されたというように承知しておるのでありますが、その点はいかに現在相なつておりますか。
  132. 服部峻治郎

    ○服部参考人 この件につきまして学生が検挙されたということはまだ聞いておりません。私はきのう立つてこちらへ参りましたが、それまでにはそういうことを聞いておりませず、また京都からも通知は受けておりません。実は今晩の五時に京都と打合せをし、善後処置について懇談するつもりで準備しておるのでありますが、そのときにあるいはそういう報告があるかもしれませんが、聞いておりません。
  133. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 ちよつと関連して……。外部との関係があつたかどうかということについて、確信がないというお答えでございますが、私たちの承るところによりますと、京都大学の記念祭――天皇陛下の行幸になられます日にちよりも前に開催すべきであつた例年の記念祭を中止して、天皇陛下の行幸される日に開催することを大学当局に申し込んだ。そこで大学当局と申し込んだ学生との間にいざこざが絶えなかつた。それからいま一つは、行幸前におきまして、例の水谷代議士宅の襲撃事件が京都で起きている。外部との連絡のもとに、同じ学生が、関連あるべきと認められるところの行動に出ておるのであります。こうした点から考えますと、あなたが大学の学長といたしまして、当然にこれは外部との関係考えられることだと思うのでございますが、そうした点をお認めになられ、お知りになられておるかどうか、お知りになられておるとすれば、当然に外部との関係考えて、対処しなければならぬものだと考えるのでありますが、いかようにお考えになつておるか、お尋ねいたします。
  134. 服部峻治郎

    ○服部参考人 お答えいたします。話が長うなりますから、そのことは抜きましたが、実は例年われわれの大学では十一月の一日から四日までを大学の催す文化祭といたしまして、この間は授業を中止して、学生がいろいろな文、化活動をすることを奨励し指導して来ておつたのであります。ところが今度学生は、一日から四日ではどうも準備ができないということで、もつと延期してほしい、つまり日をずらしてほしいということは、前から申しておつたことは事実であります。その理由としましては、ある程度もつともなところもあるのであります。すなわち今度は学校制度がかわりまして、新制の学生が半分ほどおりますが、これらは一年の授業の期間を二つにわけまして、前期後期というようにわけて、ちようど前期の終りで、前期の試験の期間が十月の中ほどまであつたわけであります。それでいろいろな、たとえ演劇をやるとか、運動競技、クラス・マッチをやるとかいうようなことにつきまして、どうもこの間準備の期間が短かいから、延期してほしいということを申しておりまして、これは特別の意図があつたかどうかということは、私は確信が持てません。一つそういうはつきりした理由を申しておりますので、あるいは明年からはそういうことをしんしやくしまして、記念祭の期日も協議の結果変更するのが妥当かもしれぬということを、現在は私自身は考えておるくらいであります。  それから水谷氏の邸宅に投石をして乱暴を働いたということも事実であります。だれがしたかわかりませんが、事実であります。これは十一月七日の午後三時ごろのことでありますが、京都の全官公ですか、それが市内行進をやる、それに学生も参加したいというので、公安委員会に申し出ておつたのでありますが、結局のところこういう許可になりました。京都大学の学生は、京都大学から立命館大学まではよかろう、立命館大学の学生に対しては、立命館大学から労働会館まで行つてよい、ということが公安委員から許可になつております。だからわれわれの方の補導部の者があとについて行きまして、とにかく労働会館までは学生団体として入ることが認められておる。この間無作法のないようにということを指導し、ついて行つております。それからあと、労働会館から円山公園までは、全官公の行動範囲でありまして、それは学生に対して許可されてないものであります。だからわれわれといたしましても、これは学生団体として行つたものでなしに、二、三、あるいは二、三十かもしれませんが、個人として参加したものと認めるよりしかたがないのであります。労働会館から円山公園へ行くまでの途中で、一部の者が――新聞報道によれば主として学生隊といわれておりますが、それが列を離れて、水谷氏の宅を急襲した、こういうふうなことを新聞で見ております。しかしこれの指導者は、われわれの方ではむろん調べるべくもありませんし、その後数日たつてから、京大の学生の一人が、これに関連して検挙されたということは、これも事実であります。
  135. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 学長さんでありますので、どうもわれわれの治安対策の考え方と違うと思うのですが、そんな考え方でおりますと、まるで学校だけが治外法権――国家の中に治外法権が存在するようなことで、国の治安対策と一致しないようなことになる。今のあなたの御説明からしましても、知らぬ存ぜぬ、想像ができないというような簡単なものではなくて、常識ある人間は当然に想像ができる問題だと思う。記念祭の新入生の問題ですが、新入生はいつお入りになるのでございますか。
  136. 服部峻治郎

    ○服部参考人 ことしで三回になつております。
  137. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 新入生の入学の時期はいつでございますか。
  138. 服部峻治郎

    ○服部参考人 四月一日でございます。
  139. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 四月一日から今日まで、毎年当然行われる、そうした文化祭の準備をしないでおるというようなこと、あなたはこれをもつともと聞かれますか。四月一日に入れば、京都大学の文化祭というものが何日にあるということはきまつているのですから、四月、五月、六月、七月、八月、九月、十月と、七月もの間に、準備ができないで期間を延ばすなんて、ちよつと常識はずれた人でなければ想像がつかぬと思うのですが、学長は真実に準備ができなかつた、こうお考えになつておるのですか。
  140. 服部峻治郎

    ○服部参考人 はなはだごもつともな御質問でありまして、実はこの文化祭なるものは春秋二回許可しております。現に五月にも一回やらしたのであります。そのときに学生は、四月に入つて五月にこういう会を催しても準備がしにくいからというので、いろいろな文句を言うて来ましたけれども、その通り実施さしたのであります。そしてそれが済んだ晩にすぐ委員全部を集めまして、お前たちはこれだけのことをやるのに何日間かかるか、いずれ当然出て来る十一月の文化祭に対しては、今晩から準備をせよということを厳格に申し渡しておつたのであります。しかし彼らは事実上学生の身分、試験というものに惑わされてこういう問題が起つて来たわけであります。決して手放しでほうつておいて、学生の言うことだけを聞いておるというわけではないのであります。
  141. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 事件の実体あるいはそれに対する法的措置は、いずれ他の当局者が当られることと思うのでありまして、その点はあえてこれ以上大学総長にはお伺いいたしませんが、警察官があらかじめ警戒のため配置されておつたという、先ほどの説明に基いて私の感ずることは、大学の自主性と申しましようか、あるいは学園の自由というような――これは学府として最も尊重すべきことでありますが、そのためにあるいはかような場合に、大学総長として警戒の措置を講ずることがきわめて不自由であるというようなことが、やはりこういう事態の惹起の一つの原因をなしておるじやないかというふうにわれわれは観察するのでありますが、その点は大学総長の地位とかあるいは権限とかいうものと関連して、いかように今回の経験によつて考えなつたか、その点をお伺いしておきたいのであります。
  142. 服部峻治郎

    ○服部参考人 ごもつともな御質問であります。初めにも申しました通りに、いくらどういう気持を持つておるにしても、日本人である以上、ことに学生である以上は、よもやこういう行為に及ぶまいということをあくまでも信じておつたために、あれだけの警備で十分であろうと認定して実施したわけであります。むろんこれにつきましては警察の方の御意見も聞き、協議の結果そういうように運んだわけであります。
  143. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 われわれも、一部の学生の単なる突発的な事柄であるというふうに理解したいのでありますが、かなりこの問題については複雑な内容があるのではないかということをおそれる次第であります。大体学園の出来事というものは、ひとり京都大学に限らず、そちこちの大学に最近見受けるのでありますが、そういう事柄を助成する一つの気風というものが、最近各大学の学園内にあるのではないかというふうにも懸念されるのであります。学問の自由あるいは学内の自治とかいうものに藉口して、かなり行き過ぎの行動がとられるような向きが見受けられるのであります。そこで私は、やはり大学自体がこれに対処して、相当学風とかあるいは学生の気風というものについて、積極的な補導をなさなければならぬではないか。ただいま総長のお話で、補導部かの拡充強化がはかられるということはまことにけつこうでありますが、どうもその程度では、事態が間に合わないところへ来ておるのではないかというふうに心配されるのであります。私は大学の総長が、一々教授の内容に干渉することはもちろんできない立場もよく了解しておるのでありますが、学生と教授というものはもう少し一体となつて、真の教学の刷新をしなければならぬじやないか。問題の解決は、ただ学園内の制度というより以上に、ただいま申し上げたような点に解決点があるのではないかと考えるのであります。この点に対する総長の将来の御抱負なりを承れば仕合せだと考えます。
  144. 服部峻治郎

    ○服部参考人 ありがとうございました。たしかに御意見同感でありまして、できるだけその線に沿つて将来努力をいたします。  それから、先ほどのお答えのうちにちよつと漏れましたが、むろん大学が決して治外法権でないことは、重々心得えております。
  145. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 もう一点お伺いいたしておきたいのでありますが、今回の事柄は、不幸天皇陛下に対してであります。新憲法の上に立つて見れば、天皇の地位は、もちろん主権の主体でないというふうに明確にされております。しかしてまた他方憲法は、法の前にはすべてが平等であるとされております。そこに差別ということをいれる法律も思想もあつてはならないのであります。しかしながら、われわれ日本国のよい伝統と、しかして民族の確信に基くならば、やはり天皇の地位というものは、法以前のものとして国家的な確固たるものが存在されておるのであります。従つて憲法もまた第一條において、天皇は国の象徴である、また日本国民統合の象徴でもある、これは日本国民の総意に基くものであるとさえ、厳粛に規定されておるのであります。私はここに思いをいたすならば、やはり教学の上においても、天皇に対しては、あるいは憲法学その他の学問の指導なり研究なりにおいて、その点に十分思いをいたして行かなければならぬと思うのでありますが、最近の学問というものにおいて、また学生の受入れ方において、いかにこれが取扱われておるかということは、大学学長としても十分関心を持つていただかなければならない点であろうと、私自身は考える次第であります。服部学長は全国の国立大学の代表的な学長であらせられるのでありますから、この点についても、今回の事件を通じて十分御認識を賜わつて、将来の教学上の抱負を私は確立していただきたいということを念願といたしまして、なお学長のこの点に対する御所見を最後に承つておきたいと存ずる次第であります。
  146. 服部峻治郎

    ○服部参考人 ありがとうございます。重々その通りでございます。これはお答え外になつてはなはだ恐縮ですが、実は私が就任しましたのは、十一月の一日であります。そうして事件が起つたのはその十二日目でありまして、準備その他その後の処置について、実は相当に混乱状態にありますので、あるいは今日お答えしたことが正鵠を得なかつた点があるかもしれませんが、その点はどうぞ御寛容願いたいと思います。皆さん方の御意見も、われわれが思うところも同じ線でありますから、十分将来を戒しめて、一層教育に励みたいと思います。御了承を願います。
  147. 世耕弘一

    世耕委員 私は要所々々を簡単に服部学長にお尋ねいたしたいと思うのであります。この間文部大臣にお尋ねしたのだが、文部大臣はお答えにならなかつた。このたびの天皇陛下の京都大学行幸は、京都大学から天皇の行幸を要請されて行幸になつたのか、それとも京都に行くついでに、陛下が京都大学を御見学したいというおぼしめしで京都大学にお寄りになつたのか、その点をお聞きしたのだがわからなかつた。その点はいかがですか。
  148. 服部峻治郎

    ○服部参考人 お答えいたします。いずれにいたしましても、われわれのお迎えする気持には二つとないわけでありまするが、実態はこうであります。これは十月の末でありましたが、京都府の方から係の人がこちらの者を呼んで、今度陛下が御巡幸になる、その予定のうちに京都大学が入つておるがよろしいか、日はこれ、時間はかくのことし、こういうふうな相談があつたのです。それで大学として首脳が集まりまして、それはお受けいたしますという返答をしたのが実態であります。
  149. 世耕弘一

    世耕委員 先ほど同僚委員から大学の自治という問題が取上げられたようでありますが、服部学長は大学の自治ということに対してどういうお考えでございますか。
  150. 服部峻治郎

    ○服部参考人 これは非常にむずかしい問題で、先ほども申しましたように、新参者でありまして、あるいはお答えがはずれるかとも思いますが、やはり大学の自治は名のごとく大学の自治であります。但し警察権というようなものまで含んだ自治とは考えておりません。
  151. 世耕弘一

    世耕委員 常に大学の自治というものが問題になるのです。おそらく服部学長も、学長として御就任になる以上、大学の自治の何たるかは御了承になつておられるものと私は考える。しかしそれはこの際お尋ねしようと思いません。次にお尋ねいたしたいのは、特審局並びに法務府、その他国警、自治警等の連絡網をもつて報告を求めておつたところによりますると、今度の事件はすでに数日前にわかつてつたものである、しかもそれは思想的な背景、政治性を持つており、計画的であつたということを、はつきりこの委員会で答弁しておるのであります。ところが今お話を聞いてみると、学長はあまり御存じなかつたようなお話のように承るのですが、もし御存じがなかつたとするならば、大学の人たちだけが御存じなかつたのじやないか、こうも考えられるのでありますが、この点はいかがですか。実はこういうことをお尋ねするのは、前の委員言葉のうちにもあつたと思いますが、私は責任を追究するという意味で言うているのではない。この真相を明らかにし、疑惑を解いて、将来大学の自治並びに学問の確立、そうして大学の権威といつたことを実は考えて、ほんとうの腹の底を割つたあなたのお考えを聞きたいのです。だからそのつもりでざつくばらんに、決して私はあげ足をとつて、あなたをどこまでも追究するというような考えで言うていないということをどうぞ御了承の上で、お話を願いたいと思います。あまりいいかげんなことをおつしやると、いきおいこちらもそんなつもりになりまして、あるいはあなたに責任の追究まで申し上げるかもわからないが、私は最初からそういう意図でお尋しているのじやないということをお含みの上で、いかにしたら今後大学の自治が確立できるか、いかにすれば国家の最高学府の学生を指導し得るかということの根本に触れてお話を承りたいと思うのであります。
  152. 服部峻治郎

    ○服部参考人 世耕さんのお心持は十分存じておりまして、私もその線に沿うてお答えしているので、おざなりの返事をしているわけではございません。私の信ずるところを申し上げておる次第であります。  さて数日前あるいはもつと以前に、こういうことの起ることが予期されたのじやないかということでありますが、これは私として率直に申し上げて、こういうことがあるとはどうしても思えなかつたのであります。先ほども申しました通り、日本人である学生、われわれの教育している学生が、こういう底の状態、混乱に陷るとは、ゆめ思わなかつた。おそらく事後から考えてみると、これこれのことを総合すれば、あれくらいのことはあつたのじやなかろうかということもできるかと思います。これはあるいは水かけ論になるかと思いますが、それには私は何も異議は唱えませんけれども、私自身その日のその瞬間まで、その自信は持つてつたのです。
  153. 世耕弘一

    世耕委員 就任早々で、私がお尋ねすることは、あるいは無理かもわかりませんけれども、大学の学長としてのあなたの責任上、実は掘り下げてお尋ねしなければならない。ただいまのお説によりますと、あんな事件が起ろうとは思わなかつた……。
  154. 服部峻治郎

    ○服部参考人 あれほどの事件は起らなんだということです。
  155. 世耕弘一

    世耕委員 あれほどの事件は起らなんだ、こうおつしやつておられるが、京都大学には前の学長がカン詰になつ事件は御存じでございましよう。
  156. 服部峻治郎

    ○服部参考人 存じております。
  157. 世耕弘一

    世耕委員 なおまたそれを救済するために、警察隊が出て行つて、その警察隊のトラックの前に生徒が寝た事件もつい耳新しいことで、本委員会は特別に調査班を派遣した事実がある。そのほかに円山事件というのがある。いろいろ取立ててみまするならば、十分の警戒あつてしかるべきだ、ところがしてないじやありませんか。これをどうするかというのです。言いのがれは許しませんよ。知りませんでは済まないはずです。あなたは先ほど他の委員お話なつたように、まことに国民に対して申訳ないということをおつしやつた。それはあなた腹の底から言うておられますか。あなたはいいかげんなあいさつをなさつておる。こういうような激烈な言葉を私が申し上げなければならないようなことを、あなたは発言なさつているじやありませんか。私は責任の追究をしているのじやありません。こういう真相であつた、この真相をお互いにつかんで、今後の教育の方針を確立しようじやないかということを相談しようとしている。あなたは言いのがれをなさろうとしている。はなはだ遺憾です。もう一ぺん出直してください。
  158. 服部峻治郎

    ○服部参考人 話がこじれて参りましたが、あるいは私の言葉が足らなかつたかもしれませんけれども、なるほど先年病院にああいう事件が起りました。そのとき私は一時病院長もやりまして、つぶさに味わいました。引続いて学長をカン詰にしたという事件も目撃しておりまして、痛恨事であるということは存じております。ごく最近には水谷氏の家へ投石したというようなにとも、これも事実であつてつております。がしかし、繰返し申しますように、事天皇陛下ということにつきましては、日本人である以上は、そういうことはあり得ないと、実際言いのがれじやないのです、そういうふうに信じておつたわけであります。この点はどうぞ十分御賢察願います。
  159. 世耕弘一

    世耕委員 気持はよくわかります。日本人だからまさか天皇を迎えてああいうような騒動は引起すまいとあなたはお考えになつていることは、よく了承いたしております。しかしながら天皇を迎えて労働歌というか、革命歌を歌つているじやありませんか。これは急に練習したつてできるものじやありませんよ。京都大学が今日どんな思想系統にあるかというくらいのことは、あなた御存じにならなくても、たいていの者はわかつているのです。あなたは運の悪いときに大学の学長に就任なさつた。それをあなたは知らぬ、そんなことはなかつたということは、言いたくないことだけれども、あなたの無能を暴露することだ。もしそういうことをほんとうにおつしやるのであつたならば、私ははなはだ遺憾で、ほんとうとは受取れません。ここで私は言いたい。言いのがれでなしに、こうこういうわけであつたという、ほんとうのことをなぜおつしやつてくれないのか。もう一つお尋ねいたしましよう。同学会のメンバーはどんなメンバーでありますか。それをまず聞いてみましよう。
  160. 服部峻治郎

    ○服部参考人 ただいまの最後の御質問、メンバーとは姓名でございますか。
  161. 世耕弘一

    世耕委員 同学会を組織している中の人員は、どういう顔ぶれであるかということであります。
  162. 服部峻治郎

    ○服部参考人 これはあるいは京大何とか細胞に属しているかどうかというお尋ねかと思いますが、細胞なるものはわれわれの方では認めておりませんし、また彼らもああいう委員に出るには推薦団体ということを申しておりますが、そういうものに触れた届出は出していないのであります。
  163. 世耕弘一

    世耕委員 服部学長は学内のことを御存じない。お気の毒です。そのお気の毒な服部学長をつかまえてこまかい質問をすることは、意地の悪いことだけれども、一応聞いていただかなければならぬ。聞いて帰つていただきたい。この間特審局長を呼んでここで聞いたときにば、京都大学の中にちやんと公認の細胞組織ができておるじやありませんか。届け出ているじやありませんか。あなたはそれを御存じないのでしよう。あなたはお医者さんとしての権威者でありますけれども、思想的な問題については、いささか私は御準備が足らないように思われる。そこまで実は私の手元ではわかつているのです。そういうところをあなたに問いただして責めようとするのではない。あなたの御認識がなければ、この認識を新たにしていただくように、御調査がなければ、将来お帰りになつてその調査をしていただくための、準備的な質問を私はしているのです。生れつき声が少し妙な声を出すので、あなたの神経を刺激するかもしれませんが、それはおちついてどうぞお聞きください。決して意地の悪い質問じやありません。あなたの立場をむしろよく理解し、また同情してこの質問をしているのです。ただ遺憾ながら本委員として、国家の大きな治安の問題から、ただ単に、このままほつておくわけにはいかぬから、実は掘り下げてお尋ねするのですから、どうぞそういうところを気持をやわらかに持つて御返答願いたい。
  164. 服部峻治郎

    ○服部参考人 御好意は重々ありがたく承りますが、ただ京大共産党細胞とかいうものが、公然と認められているかのごとく御理解になつておりまするが、これは間違いでありまして、絶対にそういうものは認めておりません。
  165. 世耕弘一

    世耕委員 なお学長にお尋ねいたします。念のためにこの機会にお尋ねしておきますが、国家の象徴天皇ということを、どういうふうにお考えでございますか、この見解をひとつ示していただきたい。それはなぜかと申しますと、私の手元に京都大学同学会の名による公開質問状のビラがありますが、この中に天皇に退位を要求しております。同時に天皇制廃止を唱えておる。こういうような文句の出ておるところから見て、大学の同学会の中に、私は天皇の国家の象徴ということに対して解釈が違つているのじやないか、かように疑われるのですが、服部学長はどうお考えでおありになるか、御見解を承つておきたい。
  166. 服部峻治郎

    ○服部参考人 その公開状なるものに学生が書いておりますことは、まことに非常識なもので、ほとんど取上げるに足らぬような、はたしてそれが学問をしておる者の考えかとお笑いになるのはごもつともであります。私といたしましては、新憲法に定められました日本国の象徴ということは、次のように理解しております。すなわち日本国国民、国土、及び歴史を背景とした総体的の中心である。ごく観念的な考えでありますが、これについてお教え願えればけつこうでございます。
  167. 世耕弘一

    世耕委員 長くなりますから、私は省略して、次の質問に移ります。学生を処分なさつたということが新聞に出ておりますが、御処分なさつたかどうか。なおまた第二次学生処分をしようと思つたところ、いろいろ意見が出て、かえつて学生を刺激するから見合せたということが、新聞に出ております。これの真相はどうか。私はこの機会に申し上げたいのは、時間を省略する意味で重ねてお伺いしておきますか、赤い卵を産むのは赤い鶏が生むのであります。学生が騒ぐという背面に、教授職員がいるということは、必ずしもひが目見るべきではないと私は思う。そういうことが考えられますか、あなたはどうお考えになつておられるか。ただ学生だけ処分してこれで治まつたのだということをお考えですか、あるいはさような学生を生み出した教授、講師に何らかの落度があつたのではないか、あるいはあなたの意を体して京都大学としての使命を果していなかつたのか、その根本がどこにあつたかということは、非常に今後の教学の上に重大な問題だと私は思うのであります。これはひとりあなたの大学の問題ではございません。全国の大学教育の上に大きく影響するところがあるのでありますから、ただいま御用意があればこの際お考えを承つておきたいと思います。
  168. 服部峻治郎

    ○服部参考人 ごく一部分のお答えになつて恐縮でありますが、学生を処分した、あるいは同学会を解散したということは、事実であります。それは新聞の通りでありますが、これ以後処分があるかどうかというようなことは、それは新聞が間違つて書いておるのでありまして、まだ実態の調査が今進行中でありますから、これからどういうふうな結果が出ますか、これはただいまただちに予想も申し上げられないことであります。現にきよう今も、大学ではそれぞれの者が集まつて、相談を続けておるのでありまして、五時に私は宿からの電話で、その様子も聞き、また東京における皆様方の御意見も参酌いたしまして、できるだけ善処したい、こういう信念でおります。
  169. 世耕弘一

    世耕委員 それではお急ぎのようですから、まとめてお尋ねしておきます。第一次学生処分をしたときに、教授の中で反対者はございませんでしたか、全会一致で処分に同意なさいましたか、異論が出ませんでしたか。
  170. 服部峻治郎

    ○服部参考人 簡単に申し上げますが、処分のようなことを議しまするのは、そう全体の教授が寄つてやるのではありません。数名の限られた者が、大学の規定上寄つて相談しておるのであります。それは全部その意見には賛成でございました。
  171. 世耕弘一

    世耕委員 今度の問題について、全学園の教授職員が会合して、前後処置について御協議なさいませんでしたか。部分的な教授だけの御会合でございますか。
  172. 服部峻治郎

    ○服部参考人 これは個々の学部におきまして、教授会なり教官会議を開いて、そこの意見を総合して来て、学部長の集団によつて最後の断を下したわけです。まつたく全部の人の意見をそこのところへ盛つたという形にはなつしおります。
  173. 世耕弘一

    世耕委員 急ぎますから、なるべく省略して行きますが、学生の行動に対して、かえつて警察官を学内に入れることは、学生の気分を刺激するから、遠慮してもらつた、だから学内において十分の警戒ができなかつたということは、特審局、国警その他の報告によつて、承知いたしておるのであります。この点はどうですか。かような重大な事件があるということは、およそ想像ができたと思うのですが、学長さんはそうは思わなかつたというのですから、それはまあ考えの違いといたしまして、こういうような事態のときほど愼重を期すべきではないか。私この間も一つの例を申しましたが、私がこの間大阪からこちらへ帰るときに、途中で陛下の列車とすれ違いました。ところが国鉄では沿線を従業員をみな出して非常警戒をしておる。おそらく脱線するなどということは常識ではありません。万一をおもんぱかつて、あの非常警戒をなされたのだと私は思う。あなたがもし万一をおもんばかつたならば、かくのごとき不祥事はできなかつたろうと私は思います。この間に手落ちがあつたのではないか。しかもその手落ちはいいといたしましても、ただ学生の気持を刺激するから警察官を学内に入れるのをやめてくれ、あるいは学生に妙な感じを持たすからというような、常に学生に迎合主義の教育を、あなた方がなさつているのではないかということを言いたいのであります。学校の中で労働歌をうたつたり、聞きなれぬような歌をうたわせるような教育を、あなた方国立大学でやらしていらつしやるのかということを、私は言いたい。東京の新聞はいろいろ論じております。今の公立大学の学生は月謝を納めておるけれども、その月謝はほんの一部分である。大部分は国民の血税によつてまかなわれている。それがあのざまは何だ。もう一文も出す必要はないじやないかということを、りつぱな東京の新聞が社説に揚げているような実情であります。笑いごとじやないのです。せつかくあなた方が苦心して教育されているその教育が、根本的に国民と相離れて行くという状態になつた場合、どうなさるか。重大な問題であります。学生の気分はともかくとして、あなたの方針をなぜ確立しなかつたか。警察その他においては、全力をあげてあなたの方の万一を警戒したにもかかわらず、拒否されたから協力ができなかつた、だからああいう事件を起したのだ、こういうことを言つております、そうすると、むしろあなた方は協力してああいう事件を起したという結論が出て来る。はなはだ私は遺憾である。京都大学と言えばそうそうたる国立大学であります。服部学長と言えばそうそうたる学長ではありませんか。国家最高の地位にあられる。その指導される学校が、天皇陛下を迎えて、労働歌やわけのわからぬ歌をうたつて、騒ぎまわる。しかもその中には、シヤベルを持つた労働者が入つて来た。まだそのほかには、プラカードまでもかついで飛びまわつている。何たる醜態であるか。こういうような状態は、おそらく陛下は御存じなくして、ずつとお帰りになつたはずはないと思いますが、何か御下問がございましたか。私の聞くところによると、みんな生徒が出迎えに来たのだと思つて、喜んで帽子をこの辺まであげてからただちにひつ込めたという情報まで聞いておるのです。あの状態はどういうことなのかという御下聞が必ずあつたはずなんです。国民は心配していますよ。その点はいかがでございますか、さしつかえなかつたらおつしやつていただきます。なお念のために申し上げますが、私はあなたを責めるために質問しているのじやない、国家の教育の確立、今後の指導方針をこの事件を契機にしてあなた方から聞いておきたい。赤い卵を産む、処分しなければならぬ生徒があるとすれば、そういう処分するような生徒を指導した教授の責任をなぜ問わないのですか、そこなんです。そこまで行つていただいて初めて私は服部学長の存在の意義が明らかになると思う。なお最後に一点だけお尋ねいたしますが、大学の管理権はどなたに属しますか、文部大臣ですか、それとも大学の学長、あなた御自身が管理権をお持ちですか、念のためにこれを聞いておきます。
  174. 服部峻治郎

    ○服部参考人 いろいろ御忠告でありますが、かなり鋭い御質問で、実は返答に窮することが多々ありますが、なるほど赤い卵を産むのは、赤い鶏であるということもよくわかります。また一面われわれは多数の学生を預つております関係上、赤い鶏ばかりを対象とすることも、これまた不可能でありまして、これはその赤い鶏の数十倍と申しますか、数百倍あるいは数千倍の者がおりますので、これらのことも相当に考慮いたします。なお当日の警備のことは、大学のいかにも落度で、拒否したというような話が出ましたけれども、決して拒否という形でありませんで、協定の上あれがよろしかろうということになつて、しかし万一の場合はこういう手を打とうという準備はしておりまして、幸いに御巡幸の通路には、支障はなかつたことはせめてものことと思つております。しかしそんなことではいけないとおしかりを受けるかもしれませんが、その点は申訳が立つと思つておる次第であります。このくらいでひとつごかんべん願います。
  175. 世耕弘一

    世耕委員 御下問があつたかどうかということは……。
  176. 服部峻治郎

    ○服部参考人 これは私耳にしておりません。
  177. 世耕弘一

    世耕委員 では最後にもう一つお尋ねしておきますが、私がさつき言つたのは、赤い卵を切つて出せというのではない、赤い卵も白い卵もあるところに大学の意義がある。今度の騒動を起した種は、むしろ赤い鶏が種を起したということは、資料が上つて来ておるのです。これはお調べになつたらわかる、私から資料を提供しなくてもわかるはずです。同学会のメンバーの中に共産党系が入つておる。共産党では日本の共産党ではないと言われるかもしれませんが、あれは外国の共産党系の流れを組んでいる者がりつぱに党に入つている。それが指導してやはり大学の中に事務所を持つている。それでそういう連中がちやんと政治団体として、団体等規正令に適合した手続を特審局へ出しているではないか、どうですか、これはあなた方なぜ御存じなかつたのですか。私は聞き間違えたことは言わぬはずです。かようなわけだから、どうぞもう一ぺんゆつくりお考え直しを願いまして、そうして大学の確立を、ぜひあなたの力でやつていただきたい。あなたの御人格、あなたの気持は、私よくわかつている。だからこういうふうに食い下つている。しつかりやつていただかなければならぬ。どうです、自信を持つてひとつ改革をやつていただけますか。
  178. 服部峻治郎

    ○服部参考人 御忠告まことにありがとうございます。十分努力をいたします。
  179. 押谷富三

  180. 梨木作次郎

    梨木委員 大分他の諸君が四時半までということで私もがまんしておつたのですけれども、五時になりましたので、私を五分に制限するそうでありますが、そこのところは理解のある委員長ですから適当に……。  まず第一に伺いたいのは、天皇が大学に見える前に、学生の方からせつかく天皇がお見えになるのならば、大学の中が非常に荒廃しておる。講義をお聞きになるのもけつこうだが、この荒廃の実情をぜひとも天皇に見てもらつて、そうして日本の教育の実情に対する知識を正確につかんでもらいたいという熱心な希望があり、どうかそういうとりはからいをしてもらいたいという要求が、学生会から学長にあつたと聞いておりますが、この点いかがですか。
  181. 服部峻治郎

    ○服部参考人 これは先ほどどなたかの御質問のときにもお答えした通りに、実は形式は整わなかつたかもしれませんが、質問の形で出て来ております。しかしそれも先ほど申しました通りに、その内容を見ますると、お取次すべき筋合いのものでない。すなわち政治に関係したことがありましたから、こういうことは学生から、また陛下の今日の御身分について問いただすべき筋合いのものでなかろうと思いまするし。また学生の最も望んでおりまするところは、学生の研究方面において、相当に支障を来しておる現状、このことについてつぶさに見ていただき、かつ自分らからも直接言いたいという希望も持つておりますが、これは学生から申し入れる以前から、すでに陛下のお聞きに達する私の大学学事一般の御進言の中へ織り込んでおりましたから、これも学生の意思には沿い得るものと思つております。
  182. 梨木作次郎

    梨木委員 私の聞きたいのは、今あなたが答えられましたが、公開質問状、このことをさしておられるようでありますが、私が聞きたいという事実は、そうではなくして、幸い天皇が見えるのならば、ぜひ私どもの方も学園の荒廃の実情をお目にかかつてお話したいという申入れをしたが、あなたの方で断つたので、それではしかたがないから、公開質問状の形でお尋ねしようということになつたのじやありませんか。
  183. 服部峻治郎

    ○服部参考人 そうとは承つておりませんです。
  184. 梨木作次郎

    梨木委員 この点はあとでまた明確にいたしますが、その次に伺いますが、京都大学では天皇が見えるというので、お通りになるところだけは廊下は非常にきれいに修繕されたそうでありますが、お通りにならない教室なんかは、荒廃のままに現在もなつておるということでありますが、この点いかがですか。
  185. 服部峻治郎

    ○服部参考人 それは見方によるものと思います。現在の日本の国情がそうでありまして、どの部分も手入れをせなければならぬ状態になつております。だから逐年計画を立てて、修理すべきところは逐次修理しておりまして、今度陛下のお通り願いました部屋は二十年以上手入れをしていないところでありまして、もうせなければならぬ時期に到達しておつたのがちようど一緒になつたという事情でございます。
  186. 梨木作次郎

    梨木委員 次に伺いますが、天皇がおいでになるときに行列しておつた、その列の中には一般の市民も入つてつたというじやありませんか。特に具体的には、吉田分校の方には一般の市民も中に入つてつたと聞いておるのでありますが、これはいかがですか。
  187. 服部峻治郎

    ○服部参考人 何分狭い場所でありますから、できるだけ本学の学生並びに教官、職員ということを主体としてお迎えするという建前ではありまするけれども、外部から入る人を絶体に制限した形ではありませんでした。だから外部の人も、ことに子供が入つてつたところを見ると、外部の人も入つております。
  188. 梨木作次郎

    梨木委員 ところで正面の前にはつき山がありますね。何かつき山がある。
  189. 服部峻治郎

    ○服部参考人 あります。
  190. 梨木作次郎

    梨木委員 その両側に学生並びに職員が列をつくつてつたというように聞いておるのであります。ところが向つて右の方から天皇がお入りになられた。そこで右の方から入られるということになつたから、左の方におつた人たちは見えないので、それを見るために列がくずれた、こういうように聞いておるのでありますが、その点いかがですか。
  191. 服部峻治郎

    ○服部参考人 それは一番初め実態を報告します中に、そのことにちよつと触れましたが、私はそういうふうに理解をしておりました。初めずつと狭まつて参りましたのは、これは人情としまして、なるべく陛下に近寄つて、弄むということはいかぬかもしれませんが、近寄りたいという気持は国民全体が持つておるもので、それが現われてああいうふうな形になつたものと初めは思いまして、そのときは学内の者だけで整理して、御通路はおつしやる通り支障なく通れたのであります。だからそういうように理解すべきかと思います。
  192. 梨木作次郎

    梨木委員 同じくそれはつき山の正面の問題でありますが、この間京都市警の警備課長という人の話では、吉田分校の前にも学生がおつた。この点も私が聞いたところによると、学生並びに一般市民がおつた。この人たちもこの吉田分校の前のところでは見にくいので、学校の中に入つた方が見やすいというので動き初めたというように聞いております。そういうところから列がくずれたというように見受けられたのではないか、かようにも聞いておるのでありますが、この点いかがですか。
  193. 服部峻治郎

    ○服部参考人 それも一因になつたかと思います。
  194. 押谷富三

    押谷委員長代理 先ほどおつしやつた中に、陛下がお着きになる直前に列がくずれたのは、陛下をお迎えする、お近くで拝みたいという気持でくずれたとおつしやつたですね。
  195. 服部峻治郎

    ○服部参考人 それも含まれておると思います。
  196. 押谷富三

    押谷委員長代理 そのほかに何か原因があるのですか。
  197. 服部峻治郎

    ○服部参考人 それは、想像するよりほか仕方がございません。
  198. 押谷富三

    押谷委員長代理 それは京都の方で、今梨木君が言いました警備課長が言つたのは、吉田分校の方から学生がひんぱんに来て、特にそういうくずすような処置があつたからくずれたように言つておるのですが、そのことをお聞きになり、あるいはお調べになつたのではありませんか。
  199. 服部峻治郎

    ○服部参考人 聞いておりますが、実情はこうであります。吉田分校の方から学生の一隊が入りまして、西側の列のうしろ側にまわつたのであります。東側のくずれて来た反対の側であります。
  200. 押谷富三

    押谷委員長代理 われわれが聞いておるのは、両方前に来たものだから、それでどつと出て来たように聞いたのです。向つて左側の方に出て来たように警備課長が言つておりましたが、そうではありませんか。陛下は左側に……。
  201. 服部峻治郎

    ○服部参考人 そうでございます。
  202. 押谷富三

    押谷委員長代理 それで両側から出て来て、自動車が通るだけの道が明いて、そして全部ふさがつてしまつたというように言つておりましたが、そうではありませんか、その原因も実態も……。
  203. 服部峻治郎

    ○服部参考人 実態はそうでございますが原因の真意というところは、たびたび申し上げるように想像の域であります。
  204. 押谷富三

    押谷委員長代理 警察ではそういうように言つております。
  205. 梨木作次郎

    梨木委員 それでは次に伺いますが、列が少しくずれかけたときに、スピーカーをかけた警察の自動車がかけ込んで来たという事実は御承知ですか
  206. 服部峻治郎

    ○服部参考人 こちらからの要請によつてそれ以後入つて来たのであります。
  207. 梨木作次郎

    梨木委員 その自動車が入つて来るときに君が代を放送しながら入り込んだという事実は御承知ですか。
  208. 服部峻治郎

    ○服部参考人 それは聞いてもおりませんし、想像もできぬでしようが、警察のそういう君が代なんということは、ちよつと考えられません。道路の一般のほかの者がやつてつたかもしれませんが、警察は無関係でしよう。
  209. 梨木作次郎

    梨木委員 それは私は学生から聞いておるのであります。ラジオ・カーと申しますか、何か自動車から放送できるのがある。それが君が代を放送しながら入つて来たという事実があるわけです。そういう事実に対しまして、学生の方からやはり君が代か何か押しつけがましく入つて来たので、そこでその場の空気としてはどうしても君が代を合唱できないような空気の中で自然発生的に平和の声が合唱されたというように聞いておるのでありますが、その点いかがですか。
  210. 服部峻治郎

    ○服部参考人 それは普通の道路でそういうことがあつたかもしれませんが、門内にそういうものが入つたことは聞いておりません。
  211. 押谷富三

    押谷委員長代理 梨木君簡単に願います。
  212. 梨木作次郎

    梨木委員 それではまとめます。次に伺いますが、公開質問状というのはこの前委員からも指摘されまして、現在天皇というものは憲法上、国民の象徴ということになつている。その象徴に向つていろいろ政治的な要求がましいことをするということは、少くとも知性を持つた学生にはおかしいということで公開質問状が非常に非難攻撃されておるのでありますが、私が見たところでは、ここにはこう書いてあるのであります。「少くとも一人の人間として憲法によつて貴方に象徴されている人間達の叫びに耳をかたむけ、私たちの質問人間として答えていただくことを希望するのです。」こうなつておるのでありまして、この点から見ますと、そんなに学生が知性をわきまえておらない、学生らしくないということにはならぬと思うのでありますが、あなたはこの公開質問状はやはりそういうぐあいにお考えですか。
  213. 服部峻治郎

    ○服部参考人 その通りであります。
  214. 梨木作次郎

    梨木委員 これ以上は議論になりますから申し上げませんが、私はこの公開質問状の中には現在の日本の国民の感情、知性、良心、そういつたものがやはり若い学生の純真な気持の発露として、ここに傾聴されるものを非常にたくさん含んでいると思うのであります。学生の教育なりをあなたが非常に無価値なものとしてこれを取扱われるということになると、私は非常に問題だと思うのでありますが、これは意見にわたりますから申し上げませんが、今までの委員諸君の質問に対してのあなたの御答弁、それからあなたが今までおとりになつた今度の問題についての取扱いのやり方を見ておりますと、これはどうもこの天皇問題を機会に再び天皇神権説的なものに天皇をまつり上げてしまつて、そして学内におけるところのいろいろな学問の自由に対する大きな制限圧迫という形となつて出て来ることを非常に心配しているのであります。特に先ほど今後の行動は不退の行動だというような評価をされるに至りましては、純真な学生の天皇に対する一つの心持の表現を、さように断定的に表現されるということは、非常に私は問題だと思うし、特に御承知のように、学生運動というものは、国が独立を失つた場合には、最も感じ易い学生の運動の形の中に端的に表明されて来る。あなた方は今度の学生の問題を、單に強圧一方でこれを処理されようといたしましても、これは現在の日本国民の持つている感情が、学生の面を通じて端的に表明されて来ている。これは日本の国の端的の現われである。これを單に学生を処分すること、弾圧することだけで処理されようとするのは、これは非常に問題だろうと思いますから、この点については、先ほど来の自由党の諸君や世耕さんから、盛んにあなたを、反動的な方法でこの問題を処理されたことを激励されるかのごとく言われておりますが、そしてあなたは肯定されるような態度をとつておりますが、この点は非常に遺憾でありますから、どうか愼重に学問の自由を守る形においてこれを処理されんことを希望いたします。
  215. 服部峻治郎

    ○服部参考人 あくまで中道を歩みます。
  216. 押谷富三

    押谷委員長代理 本日はこの程度にいたし、明日は午後一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十二分散会