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1951-11-15 第12回国会 衆議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十五日(木曜日)     午前十一時三十八分開議  出席委員    委員長代理 理事 押谷 富三君    理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君    理事 中村 又一君       高橋 英吉君    牧野 寛索君       松木  弘君    眞鍋  勝君       山口 好一君    田万 廣文君       梨木作次郎君    佐竹 晴記君       世耕 弘一君  出席政府委員         法務政務次官  高木 松吉君         法制意見長官  佐藤 達夫君         検     事         (法制意見参事         官)      位野木益雄君  委員外出席者         検     事         (法務総裁官房         人事課長)   宮下 明義君         最高裁判所事務         総長      五鬼上堅磐君         判     事         (最高裁判所事         務総局事務次         長)      石田 和外君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      鈴木 忠一君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十一月十五日  法務局出張所渡切費増額に関する請願山本利  壽君紹介)(第一二八一号)  長崎地方法務局湯江出張所存置請願岡西明  貞君紹介)(第一三五二号)  軍事裁判受刑者釈放に関する請願岡田春夫  君外二名紹介)(第一三五三号)  岡山地方法務局加茂出張所存置請願(逢澤  寛君紹介)(第一三五四号)  長崎地方法務局蚊燒出張所存置請願岡西明  貞君紹介)(第一三五五号)  長崎地方法務局時津出張所存置請願岡西明  貞君紹介)(第一三五六号)  長崎地方法務局三重出張所存置請願岡西明  貞君紹介)(第一三五七号)  名古屋法務局福江出張所存置請願福井勇君  紹介)(第一三五八号)  亀岳登記所存置請願岡西明貞紹介)(第  一三五九号)  千葉地方法務局片貝出張所存置請願片岡伊  三郎君紹介)(第一三六〇号) の審査を本委員会に付託された。 同日  長崎地方法務局管内出張所存続に関する陳情書  外四件  (第七四一号)  簡易交通裁判所設置に関する陳情書外一件  (第七四二号)  比島戰犯者救命に関する陳情書  (第七四三  号)  登記事務澁滯防止に関する陳情書  (第七四四号)  戰犯者釈放に関する陳情書  (第七四六号)  戰犯者追放解除等に関する陳情書  (第七四七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第三九号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四〇号)  請 願  一 揖斐町に簡易裁判所設置請願武藤嘉一    君紹介)(第一九号)  二 大聖寺町に簡易裁判所設置請願坂田英    一君外一名紹介)(第二〇号)  三 田尻登記所存置請願庄司一郎紹介)    (第五六号)  四 仙台法務局小野出張所存置請願庄司一    郎君紹介)(第五七号)  五 仙台法務局広瀬出張所廃止反対請願(庄    司一郎紹介)(第五八号)  六 仙台法務局大川出張所存置請願庄司一    郎君紹介)(第五九号)  七 七ケ宿登記所存置請願庄司一郎君紹    介)(第六〇号)  八 仙台法務局金田出張所存置請願庄司一    郎君紹介)(第六一号)  九 金田登記所存置請願庄司一郎紹介)    (第六二号) 一〇 石川町に簡易裁判所及び区検察庁設置の請    願(圓谷光衞紹介)(第六三号) 一一 北区簡易裁判所及び検察庁移転請願(鈴    木仙八君外一名紹介)(第一四五号) 一二 高須町に簡易裁判所設置並び岐阜法務局    高須出張所廃止反対請願武藤嘉一君紹    介)(第一四六号) 一三 鷹巣町に簡易裁判所設置請願石田博英    君紹介)(第一四七号) 一四 鷹巣町に検察庁設置請願石田博英君紹    介)(第一四八号) 一五 福岡法務局大淵出張所存置請願龍野喜    一郎紹介)(第一四九号) 一六 津地方法務局五ケ所出張所存置請願(石    原圓吉紹介)(第一五〇号) 一七 金沢地方法務局南大海出張所存置請願(    南好雄紹介)(第一五一号) 一八 神戸地方法務局家島出張所存置請願(木    下榮君紹介)(第二二五号) 一九 福島地方法務局本宮出張所存置請願(大    内一郎紹介)(第二二六号) 二〇 戰争犯罪者釈放に関する請願藤枝泉介    君紹介)(第二五一号) 二一 同(増田甲子七君外一名紹介)(第二五二    号) 二二 浦和地方法務局菖蒲出張所存置請願(佐    瀬昌三紹介)(第二八二号) 二三 津地方法務局尾呂志出張所存置請願(中    村清紹介)(第二八三号) 二四 津地方法務局萩原出張所存置請願中村    清君紹介)(第二八四号) 二五 津地方法務局城田出張所存置請願中村    清君紹介)(第二八五号) 二六 千葉地方法務局二川出張所存置請願(竹    尾弌君紹介)(第四一一号) 二七 千葉地方法務局中川出張所存置請願(小    高熹郎君紹介)(第四一二号) 二八 千葉地方法務局佐貫出張所存置請願(小    高熹郎君紹介)(第四一三号) 二九 宇都宮地方法務局岩舟出張所存置請願(    小平久雄紹介)(第四一四号) 三〇 鹿兒島地方法務局佐多出張所存置請願(    前田郁紹介)(第四一五号) 三一 仙台法務局村田出張所存置請願庄司一    郎君紹介)(第四一六号) 三二 千葉地方法務局八街出張所存置請願(竹    尾弌君紹介)(第四一七号) 三三 土地家屋調査士法の一部改正に関する請願    (江花靜紹介)(第五〇一号) 三四 福島地方法務局松川出張所存置請願(大    内一郎紹介)(第五三九号) 三五 高知地方法務局三瀬出張所存置請願(長    野長廣紹介)(第五九一号) 三六 佐川町に簡易裁判所等設置請願長野長    廣君紹介)(第五九二号) 三七 名古屋法務局葉栗出張所存置請願(江崎    真澄君紹介)(第六二三号) 三八 津地方法務局鵜方出張所存置請願中村    清君紹介)(第六九二号) 四〇 仙台法務局津谷出張所存置請願大石武    一君紹介)(第七三二号) 四一 大阪拘置所移築反対請願押谷富三君外    一名紹介)(第七七三号) 四二 同(石井繁丸君外三名紹介)(第七七四    号) 四三 同(大西正男君外四名紹介)(第七七五    号) 四四 浦和地方法務局野上出張所存置請願(川    島金次紹介)(第八三〇号) 四五 宮崎地方法務局神門出張所存置請願(渕    通義君紹介)(第八七九号) 四六 戰争犯罪者減刑等に関する請願高橋權    六君紹介)(第八八〇号) 四七 名古屋法務局藤岡出張所存置請願(三宅    則義紹介)(第九三六号) 四八 芦別町に簡易裁判所及び区検察庁設置の請    願(篠田弘作紹介)(第九九三号) 四九 新潟地方法務局松代出張所存置請願(塚    田十一郎紹介)(第一〇三六号) 五〇 長崎地方法務局豆酘出張所存置請願(岡    西明貞紹介)(第一〇三七号) 五一 長崎地方法務局島原支部口之津出張所存置    の請願岡西明貞紹介)(第一〇三八    号) 五二 鷄知登記所存置請願岡西明貞紹介)    (第一一〇五号) 五三 長崎地方法務局田結出張所存置請願(岡    西明貞紹介)(第一一〇六号) 五四 長崎地方法務局仁位出張所存置請願(岡    西明貞紹介)(第一一〇七号) 五五 安芸郡下の登記所存置請願大西正男君    紹介)(第一一八一号) 五六 弘見、宿毛両登記所存置請願大西正男    君紹介)(第一一八二号) 五七 幡多郡下の登記所存置請願大西正男君    紹介)(第一一八三号) 五八 久礼登記所存置請願大西正男紹介)    (第一一八四号) 五九 高知地方法務局大栃出張所存置請願(大    西正男紹介)(第一一八五号) 六〇 高知地方法務局久礼田出張所存置請願(    大西正男紹介)(第一一八六号) 六一 高知地方法務局池川出張所存置請願(大    西正男紹介)(第一一八七号) 六二 簡易交通裁判所設置等に関する請願岡西    明貞君紹介)(第一一八八号) 六三 戰争犯罪者釈放に関する請願木下榮君    紹介)(第一二四七号)     ―――――――――――――
  2. 押谷富三

    押谷委員長代理 これより会議を開きます。  まず裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括議題として、質疑に入ります。  質疑の通告がありますから、これを許します。田嶋好文君。
  3. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それでは私から、この両法案につきまして、政府に二、三点お尋ねをいた、しておきます。  一般公務員に対しまして、べース・アップがこの国会において審議せられておりまする今日、裁判官検察官に対しまして、わが委員会におきまして同様な法案が提出され、審議されるということは、まことに時宜に適した措置だと考えておりまして、私たちこれを観迎するものであります。特に世の中がこういうようにとかく治安問題等に対しまして騒々しく議論をかわされる今日におきましては、私たち国民といたしまして、人権擁護立場並びに治安上の立場から、一般公務員よりも日本司法権最高をつかさどる裁判官に対する優遇、またこれと表裏一体をなしますところの検察事務に携わります検察官優遇問題等は、格段の関心と格段の好意とを持ちまして、これに対処する必要があるものと考えております。できればいま少しく大きく優遇してもいいのじやないかというような気持すら持つておるものでありますが、国家財政立場から、これもこの程度になるもやむを得ないと考えて、ここでやむを得ずあきらめる気持にもなるのであります。そこで私はこの今回の改正案につきまして、表の中で一、二点承り、なお今後の方針についても承りたいと思います。  まず裁判所の点でございますが、最高裁判所長官、それから最高裁判所判事高等裁判所長官、これらの方々人数が限定されておりますので、私たちにもただちにわかるのでありまするが、その他の判事につきましては、われわれはどれだけの人数があるかということにつきまして、一定の認識を欠いております。そこで二、三点特殊な点について、お尋ねいたしますが、判事の一号というところ、これは今回の改正によりまして、結局五万円ということになつておりますが、これも率から申しますと、三割五分一厘という高率に属するのであります。この判事の一号は現在どういう人たちに支給しているのか、この人数が幾らぐらいおありになるのか、それをひとつお答え願いたい。
  4. 押谷富三

    押谷委員長代理 この際お諮りいたします。国会法第七十二條により、最高裁判所事務総長、及び人事局長より出席説明の要求がありますので、これを認めたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議がなければさようとりはからいます。五鬼上最高裁判所説明員
  6. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 数字のこまかいことは人事局長から御説明申し上げたいと思います。ただ先ほど来田嶋委員の御質問のうちにありました、どういうような人を一号にするかという御質問でございますが、これは大体裁判所所長級をもつて一号にあてまして、その他に高等裁判所判事の、所長と同じくらいのところが一号であります。こまかい数字については人事局長からお答えいたします。
  7. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 ただいまの数字でございますが、大体判事の一号が百名ちよつと越えまして、百十名ぐらいかと思います。それでこの一号になる判事と申しますと、ただいま事務総長からも触れました通りに、地方裁判所所長、それから家庭裁判所所長、これは例外なく一号になつております。二号の所長というのは一人もありません。二号の判事所長になるときには、例外なく一号にしております。所長以外の判事としては、たいてい三十年前後、少くとも二十五年以上、初めから判事をやつておるような人と、それから同じ年数ぐらい経験のある弁護士からなつた人と、そういう年齢人たちが一号になつております。
  8. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 次にこの判事補特号というのがありますが、三万九百円と二万八千二百円、この部類でありますが、これはどういうような方々に支給しておるのか、これも伺いたいと思います。
  9. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 判事補特号が今度二つ設けられたのでありますが、これは判事補十年を終えまして、判事にすぐに切りかえのできない場合が近い将来に予想されるのであります。そうしますと十年以上たつて判事になれないで、そこで足踏みをしておらなければならないような人たちができることが予想されますので、それの対応策として新たに今度二つ特号の欄を設けたのでございます。  それからもう一つは、それに関連しまして、簡易裁判所判事の方が、同じく二つの欄がふえるわけなのですが、これは従来弁護士を長くやつてつて、本来は判事になれるのだけれども、ちよつと事務になれない関係から、一時簡易裁判所判事をなさつてつて、そして半年なり一年なり経験を積まれて判事にしてもらいたいと、そういう申出のある場合もあります。そういう場合にも備えて、この方法が活用できるようにというので、今度設けられたのであります。
  10. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 その点はよくわかりました。次に判事でも勤務地によりまして、都会判事、それからいなか判事いなかにおきましても、特に生活のやりよいところ、やりにくいところと、こういうふうにあるわけですが、そうした面におきまして、裁判所は、この判事俸給支給の点も考えられておりましようか。それとも現在の行き方としては、年数のみによつてそうしたことを考慮せずに、おやりになつておりましようか、この点も承りたい。
  11. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 お答えいたします。勤務地手当の差があるために、都会に勤務しておる裁判官地方転任してもらう場合には、勤務地手当のために、実収入が非常に減るのであります。ですから実際問題といたしましては、その面からして裁判官転任ということが非常に制約をされておる実情にあります。最高裁判所の方としては、その勤務地手当の二割五分から五分の間の差を、できるならばなくしていただきたいというのは希望でありまするけれども、現在裁判官についてのみなくするというわけにも参らない実情にあると思いますので、実際は非常に困つておるのであります。ただそういう場合に、転任を承諾してもらつた場合には若干進級方法を、上る年数を縮めて、早く昇級させるというようなことはやつておりますけれども、これはむしろ例外的でありまして、地方転任をすれば必ず俸給を上げるというような條件では実行しておらないのであります。それからもう一つは、勤務地手当とも関係をいたしますけれども、北海道とか、ことに寒い方におる判事の場合には、若干進級を早くするというような点は、実際に行つておるのであります。以上であります。
  12. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 これは非常に私は大切なことだと考えておるのでありまして、これをよろしくすることによつて、やはり地方にもいい裁判官がまわる。いい裁判官がまわれば、地方によき裁判が生れ、司法権の権威も保つことができ、また司法に対する民衆の信頼というものもそれだけ高まると思うのであります。とかく現在はどうもいなか裁判所判事というものは、都会裁判所判事よりも見劣りがする。またその判決の上にもとかく信頼し切れないような判決がある。またそれが事実として上級審行つた場合に敗れる率が多いというようなことで、とかく地方判事というものがしつかりしないために司法権の独立、司法権威信の確保ということがむずかしいような線も現われております。司法権都会であろうといなかであろうと、それがどこへ行つて日本司法権は厳としておるというところに、われわれの信頼があるのでありますが、この点は遠慮せずに、思い切つてそうした面で考慮が願えますれば御考慮願つて、そうして優秀な判事地方の方へも分配できますように、そうして司法権威信を確保することができますように、お願いしたいと思います。これに対し何か対策でも講じたことがありましようか、お考えを願つたことがありましようか、もう一度伺いたい。
  13. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 ただいまの御質問最高裁判所といたしましてもしごくごもつともと存じます。全国裁判官が平均をして、どこの裁判所行つて国民信頼に十分にこたえ得るような裁判官を配置しておくというのが、これが申すまでもなく理想でありますけれども、現実は必ずしも理想通りに行りておるとは私どもも申し上げられない点があるように存じます。これについては在野の方からも一般国民の方からも、ただいま御発言のような希望があることも存じておりますが、最高裁判所としてもこの点については前々から意を用いておつたのでありますけれども、最近いわゆる第一線強化ということについて計画をしておるのであります。第一線強化というのは、おもに地方裁判所家庭裁判所でありますが、この裁判所判事高等裁判所判事と比べますと、どうもきさいぜん申し上げた一号の報酬をとつておる判事高等裁判所に偏在をするような傾向が特に強いわけであります。一号をとつておる判事は、原則として全部例外なく優秀で、二号とつておる地方裁判所におる判事がそれに劣るというわけではございませんけれども、年齢というようなこともやはり裁判をする上において、裁判を受ける方から言えば、一つ信頼感を與え得る要素になるものでありますから、多年の経験というのは、裁判官については学識とともに一つ要素でございますから、そういう面からいたしまして、高等裁判所と一審の裁判所の人員をできるだけ入れかえをする。しかも高等裁判所が第二審の裁判所であり、上訴裁判所であるという実際的な機能を減退させないように、しかも一審の裁判所強化する。ことに都会地の一審裁判所のみでなく、地方の一審裁判所支部をも含めまして、そういう方面裁判官をも強化するという意味で、ただいま高等裁判所が主になりまして、全国裁判所のその点についての実際上の計画をいたしておるわけで、ありますが、これが今年中もしくは来年早々には具体的な形になつて実現をいたすだろうと思つております。
  14. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 最後にもう一つ。これは弁護士から判事になつた者、従来判事でおる人、このことでございますが、実はわれわれ国会といたしましては、判事、検事、弁護士と、この司法関係いたしますところの法律専門的な部類を、差別なく同一の立場において考え、そうして司法の一体化に邁進したい、こういうふうに考えて日夜努力をいたして来ておるのでありますが、地方に参りまして、私たちが承りますと、それがどうも名のみであつて実がないというようなことを承るのであります。これは今お尋ねいたしました地方判事都会判事優遇問題からも来ると思うのでありますが、弁護士からなつた者と、一般の従来子飼いでいたといいますか、そうした判事との間に優遇差別がある。これはまあ一般の常識のように言われておるのでありますが、実際上はこれはどういうことになつておりましようか、この点をひとつ明らかにしおいていただきたいと思います。
  15. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 ただいまの御質問のことですが、弁護士の方から入られた裁判官と、従来からの裁判官との間に待遇において差があるんじやないかというようなことは、従来しばしば在野法曹方面からそういうお声があつたわけです。しかし裁判所といたしましては、弁護士をやられた年数裁判官になられた年数というもの、そに標準を置きまして差等はつけてない。たとえば何年たてば二号になるということで、大体同じような扱いをして、弁護士をやられた年数をそれに加算してやつておる次第であります。なおそういう点について一層考慮いたしまして、できるだけひとつ在野法曹方面から裁判官に適任な方が入れるように、われわれとしては希望いたしておるような次第であります。
  16. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 もう一つだけ。これは私の質問ちよつと漏れておりましたので伺いたい。われわれ国会議員及び弁護士をいたしておる者といたしまして、実はおはずかしい次第でありますが、どうも弁護士から判事になつた人が、とかく世間から見て欠点があるように言われる。全部言われているわけじやないのでございますが、言われている人がある。現実に私の知つている人なんかでも、たとえば弁護士時代に高利貸しをして、そうしてあまり弁護士として芳ばしくなかつたような人が判事になつて、しかもこれは相当な市の責任判事になつておるが、その人の裁判があまり歓迎されてない。とかくどうも色めがねをもつて見られているというように思われる。その人を私は現実に知つているわけですが、こうしたことはわれわれ弁護士立場から言いまして、実は言いにくいことですが、あまり芳ばしくないことだと思うのです。そうしたことから、弁護士からなつた判事に対する信用を世間の人が持たないという原因もかもされるものだと、実は心配しているわけですが、実は弁護士からも優秀な判事をとることができる方法はあるだろうと思つております。また持つて行きようによつては、どんどん優秀な人もなろうかと思いますが、現在弁護士から判事を採用する場合には、どういうような形でこれをおやりになつておりましようか。これは都合によつて速記をやめてもらつてよろしゆうございますが、できるだけこの内容について御説明が願えますればけつこうだと思います。
  17. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 弁護士から判事に任官する場合の実際上の手続といたしましては、原則として各地の弁護士会から、弁護士推薦委員会というのがありまして、推薦委員会で一応本人の御希望がむれぼ選考をし、ある場合には推薦委員会がむしろ積極的に判事に勧誘してくださつたりして、各下級裁判所を通して最高の方に推薦があるわけです。最高ではその推薦に基きまして、原則として各方面にわたつて調査をいたします。あるいはその本人友人関係であるとか、知己の関係だとか、所属の弁護士会であるとか、あるいはその地の地方裁判所であるとかいうような各方面調査をお願いをして、その調査の結果面接をいたしまして、そして最後長官会議にかけて採用いたすことになつております。それ以外には弁護士会を通さないで御本人が直接最高の方なりあるいは裁判所の方なりに申出をして、そして調査というような形になつて採用になる場合もあるわけであります。
  18. 北川定務

    北川委員 田嶋委員質問に関連いたしまして、最高裁判所説明員の方に二、三質疑をいたしたいと思います。ただいまの御説明判事上級の号俸を受けております者は、一号の分につきましては大体わかつたのでありますが、二号、三号の俸給を受けておられる方の数、その地位並びに一、二、三号を受けておられる方の年齢、一番多いのは幾つで一番若いのはどのくらいであるかということを御説明願いたいと思います。
  19. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 御説明申し上げます。二号の俸給を受けておる判事の数は大体五百人であります。その年齢は若くて四十五くらいです。大体四十五以上はなつております。それから三号の俸給を受けておるのが約三百名であります。これは大体四十歳以上になつております。多いところは五十八歳というようになつております。それから二号の方も四十五歳以上、やはり五十五歳、六十歳を越えておる者もあるわけであります。
  20. 北川定務

    北川委員 判事の一、二、三号俸を受けておられる方で、大学を出られまして試験に合格して、最も早くその号俸を受けられるようになつた方を、一、二、三号別に御説明をいただきたいと思います。
  21. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 三号の一番早いのは十五年、二号の一番早いのは学校を出てから大体二十年くらいであります。
  22. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 判事の方を大体聞きましたので検察官の方を聞きますが、まず検察官の新俸給を見ますと号数がふえております。検事の場合は十二号までが十八号になつておる。副検事の場合は八号までが十四号になつておるこういう形で現われておりますが、こういうふうにしたわけはどういうところにありましようか。
  23. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 御指摘の点は、一般の公務員の給與表と比べました場合において、実は一般の公務員の給與の段階は非常にこまかく刻んで多くなつております。このことは結局人事管理上、その期間が来さえすれば次々と上に上げてやるという点で非常に便宜を持つておりますので、その点を勘案いたしまして、今回こちらの法律の方にも、そこまでこまかくはなつていないとは思いますけれども、若干その趣旨を取入れた次第でございます。
  24. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 旧俸の十二号、新しい俸給の十八号というのは、どういう年齢の、どういうふうに採用された方方がなりましようか、それをお尋ねいたします。
  25. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 検事の十八号は現在のところ適用するに至つておりませんが、将来副検事から検事に試験を受けまして、転換するという場合等におきましては、これを用いることがあるというのでこの号俸を設けた次第であります。
  26. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 この表によりますと、結局検事の十八号というのは副検事の十二号に当つておるわけですが、この副検事の十二号くらいの人で試験を受けて検事になるというような方方、これは現在ありましようか。
  27. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 副検事から検事になりますには御承知のように三年の経験を要しますので、すでにこの段階にあります者は、現在の昇給の速度で行きますと検事の十二号より上になる場合が多いと思いますが、将来昇給の速度なんかの関係で十二号へんに切りかわるという場合もあるかというふうに想像しているわけであります。
  28. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 そういたしますと、この人数は、やはり予算において組んでおかなければいかぬと思うのですが、どのくらい予想して予算に組まれることになりましようか。
  29. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 予算につきましては、現在の検察官の号俸に応じまして計上いたしておりまするので、十二号に該当する検察官は予算としては計上しておりません。
  30. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 前後いたましたが、この修習を経て検事になつた人、これは何号で採用することになりますか。
  31. 宮下明義

    ○宮下説明員 従来は現在の検事の号俸九号、切りかえになりまして十四号を初任給として使つて参りました。しかしながらこの点については今後さらに大蔵当局と協議をいたしまして若干の変更はあろうかと思つております。
  32. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 そうすると十四号でなしに、もつと上の方で採用したい希望を持つている、こういうことに解釈してよろしゆうございますか。
  33. 宮下明義

    ○宮下説明員 一般職の職員の給與との関係で、上と申しますよりもむしろ下の方になろうかと思います。
  34. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 いろいろこれは一般職との関係もあると思うのですが、やはり検事というものは判事と同じような立場で、弁護士と同じような立場で考えてやることが、先ほども申しましたように、治安の維持上、司法権威信の確保に私は必要なのではないかと思う。だから私たち希望としては、大蔵当局に交渉する場合はわれわれも努力をいたしますが、それから下まわるというのでなしに、むしろ上の方へまわるように御努力を願いたい。それが委員会としての希望なんですが、そういう線でひとつ努力してやつていただきたい。最近は判事よりも検事の方が給料が安いところから、とかく何か資格の点においても下じやないかというように見られるような風があるので、私たちとしては非常に遺憾に考えております。ぜひともこの点はそうならないように政府においても御努力を願いたいと思います。  それから次に副検事でございますが、副検事の今度の十四号、前の七号、これはどういう人がなつておりましようか。現在どれくらいおりましようか。お尋ねいたします。
  35. 宮下明義

    ○宮下説明員 副検事の号俸は、従来副検事選考委員会を経て副検事になります以前にその者が受けておりました俸給と勘案いたしましてそれぞれきめまするので、たとえば検察事務官でかなり下の方の級を受けておつた者が副検事として採用されるような場合には下の検事の号俸で採用いたしますし、かなり上の方の俸給を受けておつた者はずつと上の三号、四号等を使うようにいたしております。
  36. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 実はこの副検事の行き方についてわれわれ委員会としても相当関心を持つたわけです。また私たちだけでなしに、世間でも関心を持つております。実のところ検察当局内部におきましても、私たちが意見を聞きますと、副検事に対しては相当批判的に見ているようであります。最近人権問題それから内部のいろいろないまわしい風評の立つ問題、これはすべて副検事が中心になつておりまして、検察事務の失態、検察の威信の失墜ということが世間にありといたしますれば、私はこの副検事制度の欠陷、副検事制度というものがこれをもたらしているんじやないかとまで考えている。だからむしろ副検事におきましては、そうであるといたしますれば、私たちの考えではこれは全面的に廃止してもいい機関じやないかというくらいに考えております。その考えと、副検事の表を見ますとまつたくわれわれとしてこれでいいかなというように見られるふしがあるのであります。というのは、副検事に十四号まで設けて、しかも今御説明によりますと、それを非常に給料待遇の低い事務官がなつた場合に充てている、こういうふうにとられるのでありますが、事務官が副検事になりましても、一応副検事としての職務を執行するわけでありまして、非常に待遇の低い事務官ではたして副検事の仕事をさしていいかどうか。こういう点を考えますと、どうもあぶなげなような気がいたしますが、むしろ副検事の点に対しましては私たちは十四号十三号十二号なんかなしにして、特号からせめて三、四号までの点でりつぱな人を副検事にして、先ほど申し上げましたような世間の風評にこたえるという態勢を整えるべきだと考えているのでありますが、それらの点について政府当局はいかようにお考えになつておられましようか。
  37. 宮下明義

    ○宮下説明員 検察部内におきまして、副検事の素質あるいは教養がとかく欠けておりますためにいろいろ批判を受けていることは、法務府といたしましても十分に考慮をいたし、屡次の検察官会同におきましても、副検事をいかに研修を強めてその素質を向上して行くべきかということが、常に議題になつているわけであります。検察部内におきまする傾向といたしましては、終戦後の犯罪件数の急激な増加等に対応いたしまするために、やむを得ず副検事制度を採用いたしたわけでありまするが、だんだんに事態が治まつて参りまするし、また新しい検事を次次に採用する余地が出て参りましたので、本来の検察庁を検事中心に引きもとして行くべきではないかということを考えまして、その方向に研究を続けておるわけでございます。
  38. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 非常にありがたい御説明を受けたのでありますが、私たちもそうあつてほしいと思うのです。従いまして副検事の採用におきましては、事務上の問題でございますから、こうして十四号まで設けたのはやむを得ないと思うのでありますが、できますならば、今の趣旨に沿う意味からいたしましても、十四号、十三号というような下つぱの副検事をつくらないで、採用される場合にはやはり検事に匹敵するりつぱな人を、副検事としての職務をりつぱに行うことができるような号数で——従つて優遇もできるわけでありますから、そういう号数で御採用願いますよう実際上の取扱いに御留意を願いたいことをつけ加えまして私の質問を終ります。
  39. 押谷富三

    押谷委員長代理 梨木委員から質疑の通告があります。これを許します。梨木作次郎君。
  40. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今度の裁判官報酬の引上げの表を見ますと、判事補二つ特号を設けております。それからさらに、従来六号まであつたものを十一号にふやしておりますが、この特号二つ設けた理由、それから号数をさらにふやした理由、これを御説明願いたい。
  41. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 今梨木委員が御指摘になりましたように、従来判事補の号俸の数は六つでございました十年の間に六つ、六つ段階を経るということは、昇級年限がかなりその間に置かれるということでございます。そして大学を出、二年の研修を終えた者と、そういう経歴を持つ者と比較し得る一般公務員の給與の欄が非常に数多くなつているのと比べますと、人事行政の面からいつてもう少し数が多い方が望ましいということ。それから特号を設けましたのは、十年たつてもなお判事に任官のできない場合が予想をされますので、そういう場合に備えるために特号を設けたわけであります。たとえば十一年になつたけれどもなお判事の定員がないために判事になれないという場合に備えるために特号を設けたわけであります。
  42. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そういたしますと、この判事補の中に、特三万九百円と特二万八千二百円の二つありますが、これに該当するような、この支給を受けるような判事補はどれくらい予定されておりますか。
  43. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 現在切りかえの際はおそらくないと思いますけれども、将来にわたつてたとえば十年以上になつて——依然として判事補の者も現にありますから、そういうものをどういうように切りかえをするかということは、具体的に大蔵省と折衝してきめることに予定されているわけであります。
  44. 梨木作次郎

    ○梨木委員 われわれに配付されているこの資料を見ますと、現在裁判官は合計百九十八名の欠員になつておりますが、この現状で、定員の関係から判事になれないというような事態は今のところあり得ないように思うのであります。そういう現状なりに、今日この報酬の表にあるような特号を設ける理由の発見に苦しむのでありますが、それはどういうことになりますか。
  45. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 判事の欠員の数から申しますと、梨木委員が申された通り、今年、来年には、全部判事が充足されてしまつて、来年ないし再来年からは判事補判事の職務をするというような事態にはあるいはならないかもしれないと思われます。しかし、今年ももう五十名近く判事補から判事になるものがあります。この勢いでだんだんやれば、ここ二、三年間には判事が、判事補からせり上ることによつて充足されると大体予想しております。  それからさいぜん申し落しましたが、裁判所に入つてから十年以上にはなるけれども、戦争に出ておつたために判事補として勤めた年限が十年に欠けている。従つて、十二、三年になつておりながら依然として判事補に残つているというような者も、全部で二十名足らずくらいあるわけであります。そういう者に対しては、大蔵省との折衝の結果あるいはこの特号の面が活用される余地がありはしないかと考えております。
  46. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは、今度号数のふえた五、七、九、こういうところに該当する人はどのくらいに予定されておりますか。
  47. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 現在の改正なつた五、七、九号へどういう者が行くかということですか。
  48. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうです。どのくらいの人数が行くか。質問の理由をもう少し具体的に申し上げます。私は今五、七、九、ここへどれくらいの人が予定されているかということの質問をなぜするかと申し上げますと、実はこの率を見て参りますと、上の方が三割三分で、下の方が一割八分三厘、一割八分七厘というふうになつておりますので、そういう関係上、一割八分七厘とか、一割八分三厘とかいつたようなところに、人的な量から言つて、どの程度の人がこれに当てはまつておるかということを、今度の昇級の適正を判断する資料にしたいと思うので、質問しております。
  49. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 それは現在の一号が新号俸によりますと二号へ、それから二号の者が四号に、三号の者が六号に、四号の者が八号に、こういうように切りかわるわけであります。それで二号に切りかわる数字が百三十人くらい、四号へが九十人、六号へが八十人、八号へが百人くらい、大体それが概数だろうと思います。
  50. 梨木作次郎

    ○梨木委員 現在の五号、六号は今どれくらい人員がおるのでしようか。
  51. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 現在五号、六号にはおりません。
  52. 梨木作次郎

    ○梨木委員 欠員の問題を伺いたいのでありますが、先ほどもちつと触れましたが、合計百九十八名の欠員になつております。この欠員のほかに、さらに長期欠勤が四十名ということになつておりますが、最近にこれを補充し得る見通し、現在裁判所では非常に仕事が忙しいというのに、どうしてこれだけたくさんの欠員が補充できないかというような問題についての説明を願います。
  53. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 結局欠員がなかなか埋まらないというのは、裁判官には一定の、しかもかなり厳格な資格がございますから、だれでも持つて来てというわけには参らぬのであります。資格によつて制約をされております。それで裁判官の、俗に言つて人的資源を求めれば、結局在野法曹から仰がなければならないわけでありますが、裁判官検察官報酬一般公務員に比して優位になつたとは申しながら、なお在野法曹の、すなわち弁護士の実際の収入と、裁判官の実際の俸給というものを比較をすれば、やはり弁護士の実際収入にはとうていかなわないというのが、実際らしいのであります。従つて唯一のと申してもいい人的資源から裁判所へ招くということが、実際上は言うべくしてなかなか行われないわけであります。昨年のごときも五十何人ですか、六十人を欠けるくらい、実際は在野法曹から裁判官になつておるわけですけれども、それでもなお欠員を十分に補充するというほどには参つておりません。
  54. 梨木作次郎

    ○梨木委員 現在裁判所所長というのは、裁判をやつておらないようでありますが、最近の裁判所所長というものは、以前の所長と違いまして、非常に権限が縮小されておると思うのであります。ほとんどこれに裁判をさせないで、主として何か行政事務をやらしておくには、少しひま過ぎると思うのであります。この点については、私は所長にもどんどん裁判をやらせるような方向に切りかえた方がよいと思うのでありますが、これはどうお考えになりますか。
  55. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 ただいまの御質問によりますと、全然やつていないかのごとき印象を受けますのですけれども、裁判所長の自分の事務量を一〇〇%とすれば平均二五%くらいは裁判事務をやつておるのであります。管内によつて多少は違いますけれども、平均すれば二五%くらいの仕事をやつているのであります。それから裁判所長の権限が縮小になつたという、御意見でありますが、たしかに前の所長の行政面から言えば、縮小になつた面もございます。それというのは、裁判官会議なるものが大体の行政面の意思決定をいたしておりますから、そういう面から言えば、所長事務が縮小になつたと言えますけれども、代表として執行するのは所長であります。ことに会計面においては、会計上の最高の責任を負わせられておるものですから、いわゆる司法行政事務の面の仕事が相当多量にあるわけであります。ただ私どもも傾向といたしましては、裁判官は本来裁判をするのが本務でありますから、できるならば司法行政事務に煩わされるということは、なるべく避けなけれ参ばならないと思うのであります。従つて所長会同、長官会同等があるごとに、常に長官及び所長もでき得る限り司法行政事務の面においてくふうをして、裁判事務の方に力を注ぐようにということを希望し、その方向にだんだん参つておるように存じております。
  56. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この点については私もこれ以上は触れませんが、ちよつと希望を申しておきます。それは裁判官のいろいろな意見を聞いても、また在野法曹の意見を聞きましても、実際裁判所長というのはひまなのです。会計をやるといつても、大したことはありません。それでありますから、輿論を聞きますと、やはり忙しいから裁判所長に裁判をやらせた方がいいという意見が、非常に強いようであります。これは裁判官の意見を聞いても、私はそのように受取れるのであります。ですからこの辺のところは、よく裁判官在野法曹の意見を取入れられまして、二五%ということではなくて、もつと大量に裁判をやるようにおとりはからい願いたいと思うのであります。二五%とおつしやいますが、報告の中にはどうなつているか知りませんが、実は家庭裁判所の調停事務をやるとか、調停ぐらいをやつておるのでありまして、実際の訴訟に携わつているのは、私の知る範囲では非常に少いのではないかというように思われるのであります。  それからその次に伺いたいのでありますが、先ほど田嶋委員からも質問が出たのでありますが、私も従来たびたびその点について意見を述べておるのでありますが、裁判官の異動の問題であります。これは勤務地手当関係もあつたり、それから住宅問題もあつたということで、異動が終戦直後におきましては非常に困難であつた。それからまた裁判官の身分保障の問題にも関連いたしまして、ほとんど裁判官の異動というものができなくなつておつた実情ではないかと思うのであります。ところがこうなつて参りますと、あまり有能でない裁判官を向わされた地域におきましては、いつまでたつてもこの無能な裁判官のもとに、あまり適正でない裁判を受けるというようなことになつて来ますと、裁判の権威を失墜することにもなりますし、また長く同じ地域に裁判官が往んでおるということは、いろいろ情実関係も生じて来まして、非常に裁判の権威に有害な作用が現にできつつあります。私はこのままで推移いたしますならば、ここ数年ならずいたしまして、裁判官が実際は上へ行かれないということで、また異動ということができないために、非常に人事行政の面から沈滞いたしまして、ここから裁判の腐敗が生じて来るのではないかということをおそれているのであります。従来は控訴院から大審院、こういう栄達の道も開かれておりましたし、それからまた普通の裁判官から部長になる、また裁判所長にするとか、いろいろな栄達の道が行政の面からも相当開かれておつたのでありますが、これがいろいろ身分保障の問題にも関連いたしまして、今日は非常にきゆうくつになつて来ている。こういうところから、裁判官の仕事に対する熱意というもの、人事の面の停滞からする不振というものが、実際起つて来ていると思うのであります。これをどういうふうに考えておられるかを伺いたい。
  57. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 終戦後のいろいろな経済事情、住宅事情、そういうものとからみ合いまして、裁判官の異動があまり終戦後行われておらないということは、確かに仰せの通りだと思います。しかし裁判官は、一方において御承知のように、その住所についての保障というようなものもございます。裁判官がその意に反してその勤務地をとりかえられないということも、結局はよい裁判、適正な裁判、しかも独立して十分にその機能を発揮させるための用意にほかならないわけであります。従つて一方において確かに裁判官が異動をして、有能、無能は別といたしまして、フレッシユな気持で働くことができ、そしてまた有能な人がおれば、その周囲あるいは後進の裁判官を誘掖指導することもできるという面から見ますれば、適時異動が行われるということが、これは人事の面から見れば好ましいことには相違ないわけであります。しかしながら裁判官をあまりに異動をさせるというようなことも、裁判官におちつきをなくさせる、安定感を失わせるという意味から、われわれ異動行をうについては、やはりいろいろな事情も考え、その人物が適材適所に行くようなことも、十分用意してかからなければならないと思うわけです。従つて裁判官の身分保障、ひいては裁判の適正、公正、独立というような面も考えながら、異動を行わなければならぬと思うわけであります。最近におきましては最高裁判所も、終戦後、ことに経済事情のために、裁判官が自分の郷里に職を奉ずるというような数が割合に多くなつておるようにも思いますので、そういう傾向も是正をし、住宅その他の問題もでき得る限り官舎その他の措置でまかないをしながら、しかも人事の異動を適正に行わなければならないという考えになつております。梨木委員の御希望をされた方面に、裁高裁判所としても動きつつあるものと御承知を願いたいと思います。
  58. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今の実情を聞きたいのでありますが、部長判事と言いますか、裁判長と言いますか、これを選任する方法が、実際どういうふうに行われておるかを聞きたいのです。
  59. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 それは下級裁判所から、いわゆる部の総括者というものの候補者のリストをつくつて、毎年末に最高裁判所の方に提出をし、それを最高裁判所裁判官会議調査をして、そのリストに基いて決定をする、こういうことになつております。
  60. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その候補者をきめる場合には、選挙か何かということになつておりますか。
  61. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 その候補者をきめるについては、各裁判所ごとにいろいろなきめ方をやつておるようです。選挙できめるというようなことも皆無ではないと思います。選挙できめてリストをつくつて最高に送るというようなところもあつたように聞いております。
  62. 梨木作次郎

    ○梨木委員 おひざ元の東京はそうなんではありませんか。
  63. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 ひざ元の東京と言いますと、非常に明るいようなんですが、私が東京地方裁判所におりました場合は、選挙ではないのです。裁判官会議を準備をし、裁判官会議にかける事項の選択、準備というようなことをするために、常置委員会というのがある。常置委員の数は十四名で、多分民事部七名、刑事部七名となつておつたかと思いますが、その常置委員会で大体下準備をしてリストをつくつて、そしてそれを裁判官会議にかけて、裁判官会議が決定をして、上申をするというようなことになつております。高等裁判所も多分常置委員会がリストをつくつて、それを裁判官会議に提出をして、裁判官会議の議を経て、最高に上申をしているという形式だと思います。
  64. 押谷富三

    押谷委員長代理 他に御質疑はございませんか。——他に御質疑がなければこれより両法案を一括討論に入ります。  討論の通告がありますから、これを許します。田万廣文君。
  65. 田万廣文

    ○田万委員 私は共産党を除く各会派を代表いたしまして、ただいま議題となつておりまする裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、並びに検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、この両案に対して討論をいたしたいと思います。  結論的に申しますならば、両法案の通過に対しまして、私どもは賛成の意を表する次第であります。提案理由にもございます通り、近来における諸物価の値上り、これは一般職の職員の諸君にも、また裁判官並びに検察官の諸君にも、必然的に生活の改善、俸給の改善ということが出て来るのであります。私どもはその意味において、今日の情勢においてはやむを得ない措置だと考えるのであります。ただここに一、二希望的な意見を申し上げたいと思いますのは、すでに他の委員からも種々論議されたと思いますが、要は裁判官の諸君にいたしましても、検察官の諸君にいたしましても、その職務とするところは人権の確立であり、財産の保護である。公正なる裁判官公正なる検察官の行動というものが、民主的な今日においては強く要望されておるのであります。その意味から言いまして、今までも熱心に職務に従事せられておつたことと存じまするが、二、三の委員から指摘されましたように、国民の負託にこたえるためには質の問題がいろいろ論議されておるのであります。この点におきましては、当局において、裁判官のみならず検察官の諸君においても、国民の要望にこたえるだけの実質をよく御研究、御勉強くださるよう、この上ともに特にお願いしたいと思うのであります。  私がこの際申し上げたいことは、裁判所の下級職員並びに検察庁の下級の職員の待遇に対しまして、特別の考慮を払つていただかなければならぬと思うのです。これは私どもが地方に参りまして親しく聞く声でございます。裁判官並びに検察官報酬はどんどん物価に比例して上つて行く、私どもも上げてもらうのであるけれども、今日の俸給生活の状態からいつたならば、とても諸物価の値上りに比例しては生活ができない。中にはやむを得ず職を放棄して他に何十年間やつた職場から転向しなければならない、かような悲痛な声もしばしば耳にするのでございます。相当熟練なさつておる一般職員の方々が、裁判所あるいは検察庁から転向されて行くということは、職務の著しき遅延と申しますかそういう点が起り得る可能性を多分に持つておるのであります。この点から申しましても熟練した一般下級職員の待遇をよくして、ほんとうに国民の要望にこたえるりつばな裁判所りつぱな検察庁となつて職務が完全に遂行されることを私は特に念願したい。その意味からいつて裁判所の下級職員諸君の生活安定のために絶大なる御努力をお払いになることを、私はこの際申し上げておきたいと思うのであります。  本法案は時代の物価値上り、いわゆる生活費の高騰についてやむを得ない措置と思いますので、賛成の意を簡単でありますが表明し、あわせて希望意見を申し上げた次第であります。
  66. 押谷富三

  67. 梨木作次郎

    ○梨木委員 私は日本共産党を代表いたしまして、ただいま議題になつております裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に反対いたします。その理由を簡単に申します。  この改正案の提案理由にも明らかなように、国家公務員の給與の引上げ法案が別に提出されております。もちろん国家公務員の給與の引上げは、最近の物価高騰に伴う生活の窮迫を救うために、この法案が出されておることは申すまでもありません。ところがこの国家公務員の給與の引上げは、政府の引上げを見ますと、人事院の勧告を無視して非常に下まわつておるのであります。私は裁判官並びに検察官の給與の引上げには、決して反対するものではありません。これには賛成するのでありますが、しかしながら出されて来ておるところの引上げの率というものは、人事院の一般国家公務員の給與の引上率にさえ及ばないものであるということを強く私は指摘しなければならないと思うのであります。そういうような観点から、この裁判官報酬の引上げの方を見て参りまするに、裁判官の引上げの率は、一般国家公務員よりは特別に扱つておるのでありますが、それにいたしましても、裁判官一般の国家公務員よりも特別に給與をよくしなければならぬというこの理由が肯定されますならば、最近におけるところの物価高騰から来る生活の圧迫を救うために、給與の引上げがなされなければならぬといたしますならば、同じような率で人事院が勧告しているその人事院勧告の率を少くとも織り込まなければならぬ。少くとも人事院の勧告案を基礎にいたしましてやらなければならぬ。ところがそういうぐあいになつておらないということ、これが一つ。それからさらに引上げの内容を見ますと、われわれに配付されている資料によりましても、最高裁判所長官は三割三分三厘であります。ところが第一線で忙しい仕事をやつているところの判事補の引上の率を見ますと、約その半分です。これを判事補改正の八号、現在の四号に例をとつてみますならば、一割六分二厘ということになつておるのであります。こういうように上に厚く下に薄い給與の引上げというものは納得できない。現在の俸給の引上げというのは、物価の高騰から来ておるのであります。そういたします。ならば、実際の最低の生活を保障するという観点からいたしますならば、日常生活必需物資の高騰、これが一番大きな原因であります。特に現在の日本の生活のうち、食生活が約六割を占めるというような現状におきまして、最高裁判所長官も、それから八号の判事補も食べる量はそんなに違わないのであります。さような観点から見ますならば、この引上率というものは、適正を欠いておるという観点から、私は反対せざるを得ないのであります。そういうところに私の反対する理由があるのであります。これは裁判官の方であります。  それから検察官の方は、本来検察官は行政官であります。行政官を一般の国家公務員と特別扱いをして、これに特別給與上の優遇をするということに、われわれは根本的に反対なのであります。そこへ持つて来て、さらにこの内容を見ますと、これもやはり上に厚く下に薄い。たとえば検事総長を見ますならば、三割三分三厘でありますが、検事の現在の九号、新俸級の十四号俸を見ますならば、一割六分二厘ということになつておるのであります。とういうような今度の法案の引上率を見ましても、まことに不公平なものであるという観点から、反対する次第であります。
  68. 押谷富三

    押谷委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。両案に賛成の方の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  69. 押谷富三

    押谷委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なおこの際お諮りいたします。衆議院規則第八十六條の委員会報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議なければさようとりはからいます。  午前の会議はこの程度にいたし、午後二時より再開いたします。暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後三時四十分開議
  71. 押谷富三

    押谷委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  これより請願の審査に入ります。請願の審査は、文書表の朗読はこれを省略し、ただちに政府の意見を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議がなければ、さようとりはからいます。  なお、最高裁判所事務次長より出席説明いたしたい旨の申出があります。  これを認めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議がなければ、さよう決します。  まず日程第一、第二、第一〇、第一二、第一三、第一四、第三六は、揖斐町、大聖寺町、石川町、高須町、鷹巣町、佐川町にそれぞれ簡易裁判所を設置せられたいという請願であります。文書表の朗読を省略いたし、政府及び最高裁判所の意見を求めます。
  74. 高木松吉

    ○高木政府委員 岐阜県揖斐郡揖斐町に簡易裁判所及び区検察庁設置請願に対する法務府の意見を申し述べます。  簡易裁判所及び区検察庁は、その数が十分でありませんので、その増設方につき、全国各地から国会その他に熱心に請願や陳情がなされているのでありまして、名古屋高等検察庁管内のみで十一箇所に及んでおるのでありますが、財政その他の関係からその増設は思うにまかせない現状にあるのであります。  今回請願のありました岐阜県揖斐郡揖斐町に簡易裁判所及び区検察庁設置のことにつきましては、さきにその旨の請願書が提出されましたので、すでに調査の結果、土地の状況も一応判明いたしましたが、今申し上げましたような事情もあり、他地方との均衡の問題もありますので、最高裁判所とも協議いたしまして、なお十分研究いたしたいと存じますから、さよう御承知をお願いいたします次第で、あります。  次に石川県江沼郡大聖寺町に簡易裁判所及び区検察庁設置請願に対する法務府の意見を申し述べます。  江沼郡大聖寺町に簡易裁判所及び区検察庁設置のことにつきましては、去る昭和二十五年三月二十八日付をもつて、同町長外二十名から請願書の提出がありましたので、さつそく調査の結果、土地の状況も一応判明しているのでありますが、現下の国家財政事情等から、その設置は思うにまかせない現状にあるのであります。なおその設置については、他地方との均衡の問題もありますので、最高裁判所とも協議いたしまして、この上とも十分の研究をいたしたいと存じますから、さよう御承知をお願いいたします。  福島県石川郡石川町に簡易裁判所及び区検察庁設置請願に対する法務府の意見を申し述べます。  簡易裁判所及び区検察庁は、社会秩序の維持にあたる第一線の国家機関でありまして、国民の利害に関係するところがきわめて多いにかかわらず、その数が十分とは申されませんので、その増設方につき、全国各地から熱心に国会その他に請願や陳情がなされているのでありまして、その数は数十箇所に及んでいるのでありますが、財政その他の関係から、その増設は思うにまかせない現状にあるのであります。  さて、今回請願のありました福島県石川郡石川町に簡易裁判所及び区検察庁設置のことにつきましては、最初の請願でありますので、さつそく関係庁に照会いたしまして諸般の状況調査中でありますから、右調査の完了をまち、最高裁判所とも協議いたしまして、何分の考慮をいたしたいと存ずる次第であります。さよう御承知を願いたい次第であります。  岐阜県海津郡高須町に簡易裁判所及び区検察庁設置並びに岐阜法務局高須出張所廃止反対請願に対する法務府の意見を申し述べます。  このたび請願のありました、岐阜県海津郡高須町に簡易裁判所及び区検察庁設置のことにつきましては、最初の請願でありますので、さつそく関係庁に照会いたしまして諸般の状況調査中でありますから、右調査の完了をまち、最高裁判所とも協議いたしまして十分研究いたしたいと存じます。  なお行政整理に伴い岐阜法務局高須出張所及び今尾出張所を廃止するやいなやは、同地方民にとり重大なる影響のあることでもありますので、その存置方につき十分考慮いたしたいと存じますから、さよう御承知をお願いいたします。  秋田県北秋田郡鷹巣町に簡易裁判所及び区検察庁設置請願に対する法務府の意見を申し述べます。  簡易裁判所及び区検察庁は、現在全国に五百六十八箇所がそれぞれ設置されているのでありますが、その数は必ずしも十分とは申されませんので、全国各地からその増設方につき請願や陳情のありましたものは、現に数十箇所に及んでいるのでありますが、現下の国家財政事情等から、その設置は思うにまかせない現状にあるのであります。  今回請願のありました、秋田県北秋田郡鷹巣町に簡易裁判所及び区検察庁設置のことにつきましては、去る第十回国会におきましても同趣旨の請願がなされまして、すでに調査の結果、土地の状況も一応判明しているのでありますが、今申し上げたような事情もあり、他地方との均衡の問題もありますので、最高裁判所とも協議いたしまして、なお十分研究いたしたいと存じますから、さよう御承知をお願いいたします。  高知県高岡郡佐川町に簡易裁判所及び区検察庁設置請願に対する法務府の意見を申し述べます。  簡易裁判所及び区検察庁は、直接社会の秩序維持に当る第一線の国家機関でありまして、国民の利害に関係するところがきわめて多いにかかわらず、その数が少いために全国各地から熱心に請願や陳情がなされているのでありまして、政府といたしましては、去る第十回国会に、わずかに三箇所ではありますが、栃木県下都賀郡小山町外二箇所に簡易裁判所設置に関する法律案を提出いたしまして、幸いその成立を見ました次第でありますが、国家財政上の制約等から、この上の増設は思うにまかせない現状にあるのであります。  今回請願のありました、高知県高岡郡佐川町に簡易裁判所及び区検察庁設置のことにつきましては、すでに調査の結果、土地の状況も一応判明いたしておりますので、最高裁判所とも協議いたしまして、なお十分研究いたしたいと存じますから、さよう御承知をお願いいたします。
  75. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 岐阜県揖斐町、石川県大聖寺町、福島県石川町、岐阜県高須町、秋田県鷹巣町、高知県佐川町に簡易裁判所設置方の請願の点について、最高裁判所の意見を一括して申し上げます。  簡易裁判所は、国民に最も密接する第一審裁判所でありまして、最高裁判所におきましては、土地の実情、交通の状況、及び事件の関係その他を勘考して、でき得る限り多くの簡易法務裁判所を設置し、国民の要望に沿いたいと考え、その都度政府当局にも意見を具申し、一部その実現を見たものもあるのでありますが、国家財政との関係もあり、十分検討を加えた上、でき得る限り御趣旨の実現に努力いたしたいと考える次第であります。以上裁判所の意見を申し上げました。
  76. 押谷富三

    押谷委員長代理 何か御質疑はありませんか。——御質疑はないようでありますから次の日程に移ります。     —————————————
  77. 押谷富三

    押谷委員長代理 日程第四ないし第九、第一五ないし第一九、第二二ないし第三五、第三七、第三八、第四〇、第四四、第四五、第四七、第四九ないし第六一はいずれも法務局出張所、登記所の存置の請願でありますので、これを一括議題といたし、政府の意見を求めます。
  78. 高木松吉

    ○高木政府委員 登記所の存置に関する請願についてお答えいたします。御承知の通り登記所すなわち法務局、地方法務局及びその支局、出張所は昭和二十二年裁判所法施行と同時に、司法事務局として本局四十九箇所のほかに支局二百三十一箇所、出張所一千七百八十八箇所を擁して裁判所から分離発足したのであります。当時裁判所からこれに組みかえられました人員は、登記、供託等の現場職員六千四百八十一名にすぎず、別に管理事務、戸籍指導職員の若干の増員と、訟務、人権擁護、農地改革関係事務等の増加に伴う増員が認められましたものの、現在八千五百十七名、昨年税務署から土地台帳、家屋台帳事務の移管を受けました際には、農地改革関係の人員を組みかえられましたのみで実質上の増員がなく、加うるに逐年の事務量の増加によりまして、法務局、地方法務局の人員、特に庶務、会計、人事等の管理事務担当職員に不足を生じ、現実には登記所の現場職員をこれに転用して、きゆうくつながらようやく事務を処理して参つたのであります。しかもなお法務局、地方法務局の事務一般の行政事務と異なり、法規の厳格なる適用による準司法事務とも称すべき性質のものでありますから、現在のままでその事務を簡素化することも不可能な実情にある次第であります。  以上の事情のもとにありまして今回の行政整理が行われることとなつたのでありますが、法務府におきましては、法務局、地方法務局の事務の性質、人員の窮乏している実情にかんがみまして、この関係の行政整理は極力避ける方針を堅持して関係各庁とも連絡して参りました。幸いにして以上の実情考慮され、行政整理の結果は比較的少数の減員にとどまることとなりました。  事務の性質が一般民衆の日常生活にきわめて密接な関係にありますために、登記所の廃合はできる限り避け、当分事務応援等によつて窮状を打開するとともに、別途増員その他の予算措置をお願いして将来を期したいと考えます。
  79. 押谷富三

    押谷委員長代理 何か御質疑はありませんか。——質疑がなければ次の日程に移ります。     —————————————
  80. 押谷富三

    押谷委員長代理 日程第二〇、第二一及び第四六、第六三、戦争犯罪者の釈放に関する請願一括議題といたします。政府の意見を求めます。
  81. 高木松吉

    ○高木政府委員 戦争犯罪人として外地で服役している人々やその家族の人人の精神的、物質的苦痛を考えますると、まことに同情にたえないものがありまして、政府としてもその釈放の一日も早いことを希望しておるのでありますが、わが国は平和條約第十一條によつて、連合国戦争犯罪法廷の権限で国外服役の戦争犯罪人を釈放するというわけには参らないので苦慮いたしておるところでありまして、これについては関係国の理解と同情を得なければならないと考えております。この国外服役の人々が、わが国内で服役するようになりますれば、平和條約発効後はその第十一條の規定により赦免、減刑及び仮出獄を受ける機会が與えられることになりますから、條約の発散後の適切な処理については遺憾ないようにいたしますため、目下鋭意準備中でございますので、御了承を願いたいと存じます。
  82. 押谷富三

    押谷委員長代理 御質疑はありませんか。——御質疑がなければ次の日程に移ります。     —————————————
  83. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に日程第三三、土地家屋調査士法の一部改正に関する請願を議題といたします。政府の意見を求めます。
  84. 高木松吉

    ○高木政府委員 土地家屋調査士は土地、家屋の状況を明瞭ならしめるための土地台帳及び家屋台帳の登録につき必要な調査、測量または申告手続をすることを業とするものでありますが、土地台帳及び家屋台帳の登録事項は、国民の土地及び家屋に関する権利関係にも影響するところが大きいので、高度の正確さを要求される重要な業務であります。  以上が土地家屋調査士について国家試験制度を採用した理由であろうと考えますが、試験制度への切りかえ時における経過的措置として、従来土地家屋調査士の実務を営んでいた者の救済方法として、土地家屋調査士法附則第二項において、昭和二十七年九月三十日までは調査士とみなし、第三項において特に選考の制度が設けられたわけであります。本年六月十七日その選考を実施したのでありますが、その際には実務経験も十分考慮し、筆記試験も前述の調査士として常識上当然知つておくべき最小限度の問題を提出したのでありまして、従来の実務経験者であつて、今後とも法律の要求する調査士業務を正確に行い得る者は、選考によりまして土地家屋調査士の資格を與えられたわけであります。なお右の選考において不公正な取扱いがなされたようなことは絶対にないことは申すまでもなく、右の選考により不合格となつた者にも、今後毎年行われる試験によつて調査士の資格を得る道は開かれているのであります。従来税務署またはその長において公認した者があるとの趣でありますが、それは制度上何らかの基準によつて認められたものではありませんので、そのような形式的事由のみによつてただちに調査士の資格を認めることは、土地家屋調査士法が制定された趣旨から申しましても、妥当でないものであると考えるのでありまする
  85. 押谷富三

    押谷委員長代理 御質疑はありませんか。——御質疑がなければ次の日程に移ります。     —————————————
  86. 押谷富三

    押谷委員長代理 日程第四一ないし第四三、大阪拘置所移築反対請願を議題といたします。この請願は私が紹介議員でありますので、簡單にその趣旨を申し述べます。  法務当局は大阪拘置所を同区内の北錦町に移築する計画をしておるのでありますが、この移築予定地は大阪市の都心に当る北区のしかも殷賑繁華な商店街、稠密する住宅地域の中央部に位しまして、また乗降客が日に十万人を越えるという天満駅という要衝にありまするために、雑踏喧噪をきわめまして、その環境は拘置所には絶対不適当であり、もしこれが移築した場合は、外部の音響や空気が収容されている被疑者に対して相当の刺激を與えるのと、また社会風教上はもちろん、付近には学校もありまするので、教育上に及ぼす影響は少くないというのでありまして、この拘置所移築に反対しようというのであります。これにつきまして政府の意見を求めます
  87. 高木松吉

    ○高木政府委員 大阪市北錦町に大阪拘置所移築反対請願についてお答えいたします。大阪拘置所の戦前における収容人員は、四百五十五名でありましたが、戦後の異常なる犯罪増加によつて、その収容人員は実に定員の四倍を越えるという、かつてない過剰拘禁を現出するに至りましたので、緊急対策として、昭和二十三年五月、大阪府下北河内郡四條村の民間工場を買収修理して拘禁所とし、一部の被告をこれに収容して参つたのであります。しかしながらこのような二面拘禁は、被告人の両所間における移送途中の逃走の危険や、職員の配置においてはもちろん、訴訟の進行等にも重大なる影響がありますから、大阪拘置所の本格的な移築がどうしても必要でありますので、さきに北錦町に敷地を選定いたしまして建設のための諸準備を進めて参つたのであります。しかるにその後地元住民よりの反対があり、衆参両院の法務委員会におかれても同様の見解を示され、さらに今回請願の次第もありますので、当局においても御趣旨を尊重して、移転計画をとりあえず中止するよう現地に指令いたしますとともにさらに研究の上円満かつ妥当なる解決策を講ずるようにいたしたいと存じておる次第であります。
  88. 押谷富三

    押谷委員長代理 御質疑はありませんか。——なければ次に移ります。     —————————————
  89. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に日程第六二、簡易交通裁判所設置等に関する請願を議題といたし、政府の意見を求めます。
  90. 高木松吉

    ○高木政府委員 ただいまお申し述べになりました簡易交通裁判所設置請願の御趣旨は十分了解いたしました。近時交通機関の発達と都市への人口集中に伴い、交通事故が頻発しておりますことはまことに遺憾にたえません。交通事故の発生原因が複雑多岐であり、その責任の究明が困難であることは、仰せの通りでありまして、交通事犯の処理につきましては、裁判所、検察庁等におきましても、必要に応じ専門の係を設ける等して、その迅速的確なる処理を期している状態であります。しかしながら交通に関する事件のみを取扱う特別の裁判所を設置いたしますことは、現行の裁判機構に重大な影響を及ぼし、また他種事件との権衡、国家財政との関係等をも考慮する必要がありますので、なお愼重に研究いたしたいと存じますから、さよう御承知をお願いいたす次第でございます。
  91. 押谷富三

    押谷委員長代理 他に御質疑は、ございませんか。——ほかに御質疑がなければ、本日審査いたしました請願中、日程第一ないし第一九、第二二ないし第三二、第三四ないし第三八、第四〇ないし第四五、第四七ないし第六一は、いずれもこれを採択いたし、議院において採択の上これを内閣に送付するを適当と認めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議がなければさよう決定いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時六分散会