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1951-11-14 第12回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十四日(水曜日)     午後一時十四分開議  出席委員    委員長代理 理事 押谷 富三君    理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君    理事 猪俣 浩三君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    松木  弘君       眞鍋  勝君    小野  孝君       田万 廣文君    梨木作次郎君       世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         文 部 大 臣 天野 貞祐君  出席政府委員         国家地方警察本         部       溝淵 増己君         法制意見長官  佐藤 達夫君         刑 政 長 官 草鹿淺之介君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君  委員外出席者         警  視  庁         (国家地方警察         本部警備部長) 柏村 信雄君         検     事         (法務矯正保         護局長)    古橋浦四郎君         検     事         (法務特別審         査局長)    吉河 光貞君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十一月十二日  委員高橋英吉辞任につき、その補欠として平  澤長吉君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員平澤長吉辞任につき、その補欠として高  橋英吉君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員石井繁丸辞任につき、その補欠として井  上良二君が議長指名委員に選任された。 同日  猪俣浩三君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 十一月十四日  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第三九号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四〇号)  裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案(  内閣提出第四二号)  裁判所職員臨時措置法案内閣提出第四一号)  (予) 同月九日  浦和地方法務局野上出張所存置請願川島金  次君紹介)(第八三〇号)  宮崎地方法務局神門出張所存置請願渕通義  君紹介)(第八七九号)  戦争犯罪者減刑等に関する請願高橋權六君  紹介)(第八八〇号) 同月十日  名古屋法務局藤岡出張所存置請願三宅則義  君紹介)(第九三六号)  芦別町に簡易裁判所及び区検察庁設置請願(  篠田弘作紹介)(第九九三号) 同月十二日  新潟地方法務局松代出張所存置請願(塚田十  一郎君紹介)(第一〇三六号)  長崎地方法務局豆殿出張所存置請願岡西明  貞君紹介)(第一〇三七号)  長崎地方法務局島原支部口之津出張所存置の請  願(岡西明貞紹介)(第一〇三八号)  鶏知登記所存置請願岡西明貞紹介)(第  一一〇五号)  長崎地方法務局田結出張所存置請願岡西明  貞君紹介)(第一一〇六号)  長崎地方法務局仁位出張所存置請願岡西明  貞君紹介)(第一一〇七号) 同月十三日  安芸郡下の登記所存置請願大西正男君紹  介)(第一一八一号)  弘見、宿毛両登記所存置請願大西正男君紹  介)(第一一八二号)  幡多郡下の登記所存置請願大西正男君紹  介)(第一一八三号)  久礼登記所存置請願大西正男紹介)(第  一一八四号)  高知地方法務局大栃出張所存置請願大西正  男君紹介)(第一一八五号)  高知地方法務局久礼田出張所存置請願大西  正男紹介)(第一一八六号)  高知地方法務局池川出張所存置請願大西正  男君紹介)(第一一八七号)  簡易交通裁判所設置等に関する請願岡西明貞  君紹介)(第一一八八号)  戦争犯罪者釈放に関する請願木下榮君紹  介)(第一二四七号) の審査を本委員会に付託された。 同月十二日  死刑廃止に関する陳情書  (  第六三一号)  金沢地方法務局志雄出張所存続に関する陳情書  (  第六三二号)  盛岡地方法務局世田米出張所存置に関する陳情  書  (第六三三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第三九号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四〇号)  裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案(  内閣提出第四二号)  裁判所職員臨時措置法案内閣提出第四一号)  (予)  法制に関する件  検察行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 押谷富三

    押谷委員長代理 これより会議を開きます。  まずお知らせいたしておくことがあります。すなわち委員でありました猪俣浩三君が、去る一日委員を辞職せられ、去る六日に再び委員になられました。つきましては、猪俣浩三君は理事でありましたので、この際理事補欠選任を行いたいと思います。理事補欠選任は、先例によりまして委員長において御指名することに異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 押谷富三

    押谷委員長代理 異議がないようでありますから、猪俣浩三君を理事に御指名いたします。     —————————————
  4. 押谷富三

    押谷委員長代理 まず裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案が付託になりましたので、以上二案について順次政府より提案理由説明を聴取いたします。
  5. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま議題となりました裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案提案理由を、便宜一括して御説明申し上げます。  政府は、最近における生計費及び民間の賃金の変動、その他の事情にかんがみまして、国家公務員給与を改善する必要を認め、今国会一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出し、現に御審議を仰いでおりますことは御承知通りでございます。  そこで裁判官及び検察官につきましても、一般職職員等の例にならい、その給与を改善する必要がありますので、この両法律案を提出いたしました次第でございます。  この両法律案は、この趣旨に従い、裁判官及び検察官報酬または俸給の額を増加するために、両法律の各別表改正いたしますとともに、裁判官報酬等に関する法律第十五條と、検察官俸給等に関する法律第九條に定めまする、報酬または俸給の各月額改正しようとするものでございます。この両法律案による改正後の別表、及び右各條に定めまする報酬または俸給の各月額を、現行のそれに比較いたしますと、その増加比率は、大体一般官吏俸給月額増加比率と同様でございますが、判事補、三号以下の報酬を受ける簡易裁判所判事、五号以下の俸給を受ける検事及び副検事につきましては、人事行政上の便宜を考慮して、その号俸の数を約二倍に増加することといたしております。  次に附則におきましては、一般官吏の例にならい、この法律は本年十月一日にさかのぼつて適用することといたしましたほか、ただ今申し上げました報酬または俸給号数増加に伴い、前述の裁判官及び検察官について、その受ける報酬または俸給の号を調整する必要がありますので、そのための必要な経過規定を設けたのでございます。  以上がこの両法律案提案理由でございます。何とぞよろしくお願い申し上げます。     —————————————
  6. 押谷富三

    押谷委員長代理 ただいま裁判所職員臨時措置法案及び裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案が付託されましたので、この際政府より提案理由説明を求めます。     —————————————
  7. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま議題となりました裁判所職員臨時措置法案提案理由を御説明申し上げたいと存じます。  御承知のように、裁判所職員裁判官及び裁判官の秘書官は、国家公務員法上初めから特別職なつておるのでありますが、その他の裁判所職員は、一般職に属する職員としての取扱いを受けて参つておるのであります。しかしながら元来これらの裁判所職員は、国会職員と同様に、行政府に属する職員とはその系統を異にするものでございまして、国家公務員法その他一般職に属する職員に適用いたします法律規定を、そのまま裁判所職員に適用いたしますことは適当ではなかつたのでございます。そこで昭和二十三年法律第二百二十二号によつて国家公務員法の一部が改正せられました際に、その改正法律附則第十一條におきまして、裁判所職員昭和二十六年末までを限つて国家公務員法に定める一般職に属する職員とする旨を規定いたしますとともに、去る第十回国会において成立いたしました裁判所法等の一部を改正する法律第三條におきまして、昭和二十七年一月一日以降はこれを特別職に属する職員として取扱う旨を明確にいたした次第であります。  そこで政府は、最高裁判所事務当局の協力のもとに、裁判所職員に適用すべき人事行政上の根本基準を定めまするための法律制定について、研究及び準備を進めて参つたのでございますが、たまたま、国家公務員法その他の人事関係法令について再検討の議もございまするので、裁判所職員に関する法案は、これらの法令に関する検討の結果ともにらみ合せてなお慎重に研究の上提案いたしたいと存ずるのであります。  しかしながら、ただいまも申し上げましたごとく、裁判所職員は、来年一月一日からは、すべて特別職となりまするので、この際何らかの暫定的措置を講ずる必要があると存じます。そこで一般職たる国家公務員に適用されまする法律規定中、人事院の国会内閣または関係庁の長に対する勧告権に関する規定等その性質上不適当と思われますものを除き、その他の必要な規定を、当分の間裁判所職員について準用すべきものとして、この法律案を提出いたした次第でございます。  何とぞよろしく御審議を御願いいたします。  次に同じく議題なつております裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。政府行政費を節約するとともに、行政事務能率化をはかりまするため、各省庁の事務簡素化いたし、その人員を相当数縮減することといたしたのでありまするが、この法律案はこれに対応いたしまして、裁判所につき事務簡素化により、裁判官以外の裁判所職員定員を縮減するため、裁判一所職員定員法の一部を改正するとともに、これに関連して裁判所法の一部を改正することを目的とするものであります。  まず裁判所職員定員法に関する改正について申し上げます。裁判所に提起される各種事件は全般的に依然増加の傾向にあり、しかも訴訟の促進が叫ばれておりますること等を考慮いたしますると、裁判所職員の現在の定員は決して多きに失するとは存ぜられないのでありますが、この際極力事務簡易化能率化を促進することにより、人員整理を行うことといたし、司法研修所教官裁判所事務官その他の職員について合計八百九十九人の定員を減少することといたしたのでございます。なお従来雇員及び傭人たる裁判所職員については、裁判所法規定との関連において予算上その定員が定められているにすぎず、また裁判官以外の裁判所職員定員については、職種別にその定員が定められておりましたところ、この点はむしろ行政機関職員定員法の場合と同様に、雇員及び傭人たる裁判所職員をも含めまして、裁判官以外の裁判所職員定員につきましては、その総員数を一括して規定するのが適当であると考えましたので、今回の定員改正と関連いたしまして、この趣旨に基く規定改正を加えることといたしたのでございます。  次に裁判所法に関する改正について申し上げますると、この改正は右に申し上げました通り裁判官以外の裁判所職員定員についてこれを総括的に定めることに裁判所職員定員法規定改正するのに伴い、裁判所法規定に所要の整理を行うためのものでございます。  最後に、この法律案附則でありますが、このたびの裁判所職員人員整理につきましても、一般公務員に対する行政整理の場合と同様、六箇月の猶予期間を設け、その間は新定員を越える員数の裁判所職員定員の外に置くことができるものとするとともに、今回の定員の減少に伴い整理される者につきましては、いわゆる審査請求制定を適用しないことにいたしたのであります。  以上この法律案内容の概略について説明を申し上げた次第でございます。何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  8. 押谷富三

    押谷委員長代理 ただいま提案理由説明を聴取いたしました四法案に対する質疑は明日行うことといたします。
  9. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に、法制に関する件について調査を進めたいと思います。発言の通告がありますので、これを許します。佐瀬昌三君。
  10. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 今回対日平和條約が調印されまして、まさに国会も批准のための承認が求められつつあるのでありますが、この平和條約の内容は、すでに周知のごとく、和解信頼のための講和なりとして、いまだ史上に見ざる特色を示しておるのであります。私どももとより日本立場からこれに対して大いなる感謝を持つと同時に、連合国に対する最大の敬意を表する次第であります。しかしながら講和和解信頼のためであると同時に、正義講和でなければならぬのであります。トルーマン大統領もまたダレス特使も、過般のサンフランシスコの講和会議において、この講和は復讐のためではないということを力説されております。また真珠湾攻撃パターン半島の死の行軍も忘れはしないとも言われております。われわれも同様に広島あるいは長崎における原子爆撃もまた忘れることのできない問題であります。しかしながらすべては勝ち負けの立場を脱却して、真の平和を指向してこの條約が恩讐のかなたに建設されんとする今日であります。私はこれを正義講和たらしめるがためには、一つの問題が残されておるのではないかという考えと、またその感想を若干持たざるを得ないのであります。それは具体的に申し上げますならば、この戦争犯罪人講和契機としていかに処遇するかという問題であります。当法務委員会は法と正義を扱う委員会であります。この職責、立場から戦争犯罪人に対する問題は、当委員会としても重大なる関心事でなければならぬと確信いたす次第であります。かような見地から私は以下若干なるべく簡潔に戦犯問題について政府質疑いたしたいと考えるのであります。  まず第一にお伺いいたしたいのは、あるいは外務当局なり法務府なりの方方の関知される限度においてけつこうでございますが、戦争犯罪というものは、今回の講和條約の調印によつて、全部終了したものであるかどうか、なお逮捕とかあるいは裁判とかいうような問題が残されておるかどうか、打切りになつたのであるかどうかという点を、あらかじめ承知いたしておきたいのであります。
  11. 大橋武夫

    大橋国務大臣 戦争犯罪という問題は、これはわが国といたしましては、ポツダム宣言受諾によつて引起つて来た問題である、こう考えておるわけでございます。今回の講和條約の締結によりまして、当然ポツダム宣言というものは、関係国の間で効力を失うものと存じまするので、今後調印国の間におきましては、戦争犯罪という問題は発生の余地がないものと心得ております。
  12. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 法務府の御見解には、私も賛意を表する次第であります。  次にこれまでに、いわゆる戦犯として処刑された者、あるいは現に受刑しつつある者というようなものの概況について、あるいは数字的に、あるいは受刑地場所別に、もし資料がありましたならば、この際承つておきたいのであります。
  13. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府委員より答弁いたさせます。
  14. 古橋浦四郎

    古橋説明員 ただいま戦犯として内地で受刑中の者は、約千四百五十名でございます、すでに刑を終えて仮釈放または満期釈放で出た者も相当ございます。大体二百五十名程度が仮釈放で出ておりまして、観察中でございます。そのほか若干すでに満期釈放で出所した者もあります。外地におきます数はつまびらかにいたしません。なおそのほかに、すでに極刑の刑を受けた者がございますが、その数はただいまちよつと手元に持ち合せておりません。
  15. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 外地における受刑者等についても、われわれとしては詳細に承知いたしたいのでありますが、これは後日調査の結果御報告を承ることにいたしまして、特に最近世間の注目を引いておる東京裁判受刑者あるいはフイリピンにおいて死刑宣告を受けながら、いまだその執行をされていない者があるというようなものについて、もし御説明が願えれば、これもあわせて承知いたしておきたいのであります。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在フイリピンにおきましては、総数百十数名、このうち約六十名が死刑宣告を受けて、なお執行されずにおる者の数と聞いております。なお在外受刑者といたしましては、このほかに濠州に二百四十名という数字が伝えられております。なお東京裁判については、後ほど取調べの上お答え申し上げます。
  17. 押谷富三

    押谷委員長代理 この際佐瀬君に申し上げますが、法務総裁は二時から参議院会議に出られますので、あらかじめ御承知を願いたいと思います。
  18. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 法務総裁に承つておきたいのです。参議院でも所信を御披瀝になつたように承知しておりますが、この講和機会に、これは国内犯罪を含めて、一般恩赦措置がいかように構想されておるか、簡単でけつこうでありますから、衆議院の法務委員会としてもこの際一応承つておきたいと思います。
  19. 大橋武夫

    大橋国務大臣 恩赦のことにつきましては、かねて本会議においてもお答え申し上げましたる通り、何分にも今回の平和條約の締結ということが、日本といたしましては、被占領地でありましたものが独立をするという、歴史的にきわめて意義深い時期でございますので、この機会恩赦法によるところの恩赦を行いますに、まことにふさわしい時期ではなかろうかと存ずるわけでございます。そこで具体的な時期といたしましては、いよいよ現実に独立をする時期、すなわち講和條約の効力発生の時期をもつて恩赦の発動をいたすようにいたしたい、こう考えておるわけでございます。この恩赦につきましては、法務府といたしましては、各般の準備を進めておる次第でございまするが、何分未曽有の有意義な機会でございますので、従来の先例等にとらわれることなく、広く受刑者に対して恩典を与えるようにいたしたい、この機会を真に国家再建のために有意議機会たらしめるという方針のもとに、調査を進めておるような次第でございます。特に戦時中あるいは戦後におきまする過渡的な時期に、いろいろな戦時的な立法が行われておりまするが、これらの法規は、この講和條約によりまして解消するものが大部分でございますが、こういう戦争遂行のための法規に触れて刑罰を受けておる、しかもその法規は今後において引続き存続せしめる必要がない、こうした廃止されるような戦時立法による刑余者につきましては、できるだけ大赦を行うというようなことが、適切ではないかと考えておるのであります。なお受刑者の範囲につきましても、できるだけ広く考えておりますし、また恩赦方法といたしましても大赦、特赦、減刑等、広く行うようにいたしたい。ただいま当局において準備を進めておる次第であります。  次に戦争犯罪その他外国の軍事法廷裁判わが国平和條約第十一條によつて受諾をいたし、日本国内において拘禁されております日本国民に対する刑の執行は、今後日本政府が担当いたすことに相なるわけでございますが、この引継ぎは講和條約の発効によつて行われると存じます。発効後におきましては、政府といたしましてはこの條約において日本政府に許されておりまするところの権限によりまする赦免、減刑、仮出獄等に対する、関係国政府に対する勧告権の行使に当りましては、十分に注意をいたしまして、でき得る限り国民のこれらの戦争犯罪者として処刑されておりまする者が早く釈放されますように、できる限りの努力をいたしたい、かように存じておる次第でございます。  なお委員長ちよつと速記をとめて……。
  20. 押谷富三

    押谷委員長代理 速記をとめて。     〔速記中止
  21. 押谷富三

    押谷委員長代理 速記を始めて。
  22. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 戦争犯罪及び犯罪人法的性格というものが、ニユールンベルグ裁判及び東京裁判あるいは学界の論説等を通じて、今日相当論議されておるのであります。一九四二年一月十三日の九連合国によつて発せられたセント・ジエームズ宮殿宣言という有名なものがございます。これによると、当時もつぱらドイツ戦犯を対象にして論議されたのでありますが、この宣言の結論として、戦犯近代文明諸国の理解する意味における政治犯罪人であることを確信すると記載されておるのであります。言いかえるならば、戦争犯罪は普通の犯罪にあらずして、政治犯罪であるというふうに性格づけられておるのであります。元来政治犯罪については国内刑法において、また国際刑法において、特別に寛大な処遇をするというのが古今東西一致した原則であります。国内刑法においては名誉拘禁制を採用するとか、あるいは国際刑法においては、政治犯罪が不当に処罰されないように、逃亡した場合庇護する庇護権があるとか、いろいろと寛大な処遇方法政治犯罪人については講ぜられ、かつ制度化され、実施されて、今日に来ておるのであります。私は講和契機として、連合国がみずからかように解釈を下しておるこの戦争犯罪、すなわち政治犯罪であるという考えのもとに、でき得べくんば東京裁判における受刑者に対しては、極東国際軍事裁判所條例第十七條を活用されんことを連合国最高司令部に期待するとともに、せつかく平和條約第十一條において相当寛大な処置がなし得る道を開かれた今日において、政府関係諸国と十分折衝されて、この二つの方法に基いて戦争犯罪人を、あげてわれわれとともに和解のための、しかして正義のための講和の祝福に均霑さしていただきたいということをこの際強く政府にも善処方を要望して、その点の質疑を終りたいと思います。  次に平和條約第十一條解釈に関連する問題でありますが、この條約によると、日本極東裁判あるいは各地の戦争犯罪軍事法廷において下された判決受諾する、そして刑の執行について国内にある受刑者を担任するということになつておるわけでありますが、この判決受諾という意味が多少あいまいな点があるように見受けるのであります。申し上げるまでもなく、裁判というものは法を大前提として、また事実を小前提として三段論法で結論つけられた判決主文によつて構成されております。ところが戦争犯罪に適用さるべき法そのものについて、あるいは軍律あり、あるいは成文化された国際條約あり、あるいは国際慣習ありで、なかなかこの法自体が捕捉しがたいものがあるのであります。しかして事実については、外地における戦争犯罪、特に俘虜虐待とかいうような事柄になりますると、言語の関係あるいは弁護の不十分等いろいろな点からして、事実を証拠上確定することがきわめて困難であるにもかかわらず、そういう法に基いて、またそういう事実のとらえ方に基いて、死刑に、あるいは無期、あるいは有期懲役に処されておるというのが戦犯裁判の実相であります。そこでこの條約十一條のその判決受諾するという意味は、そういう法やまた事実等の前提とされた事柄をも全部含めて、裁判全体として日本がそれを承認する意味であるのか、あるいはさにあらずして単に有期懲役あるいは無期懲役というようなものに処せられたその結論的な主文だけを日本が承認して、その刑の執行連合国にかわつて、あるいは委任に基いて、あるいは委譲に基いてそれの執行の任に当るにすぎないのかどうか。もし法や事実の認定についてもこれが日本政府として受諾するということであると、いわゆる再審すること、すなわち再び調べ直しをするということは、これは除外され、出来ないということにもなるように考えられ、もしまたそうでないとするならば、あるいはこれに対する再審なり、あるいは異議の申立てとかいつたような、さらに根本的に救済する道がなおそこに許されておるやにも思われるが、どうか。御承知のように平和條約第十七條ですか、これには外人に対する日本裁判戦時中粗雑であつたために、再審制度を設けて日本が審理し直すということが約定されております。私はひとり外人に限らず、正義の前には日本人も差別する必要はないと思う。従つてもし十七條の精神がこの場合に振りかえられるならば、十一條の場合について日本として考えるべく、あるいはこの條約自体について解決されないならば、将来の外交交渉なり折衝によつてそういう救済の道がなお開かれる余地があるのではないかというふうにも考えるので、政府としてはこの十一條判決受諾という意味を、現在においてはいかように考えられておるか。またもしそういう再審制度が将来交渉によつて設けられる余地があるように見通されておるのであるかどうかということについて、政府の所見を承つておきたいのであります。
  23. 大橋武夫

    大橋国務大臣 極東軍事法廷あるいは連合国戦争犯罪法廷におきまする裁判というものは、これは申すまでもなく日本法律による裁判ではないのであります。従いましてまたそれのみならず、これらの犯罪とせられておりまする行為そのものも、あるいは国際法上の通念により、あるいは人道上の理由によつて犯罪とせられておるものとは思いますが、しかし国内法によるところの犯罪と目すべきものでは、いかなる意味においてもない。実質上は国内法において犯罪とする事柄と同じような非人道的な活動はあつたかもしれません。しかしそれが国内法による犯罪ではないということは、これは争う余地がない。しかしながら第十一條におきましては、これらの裁判につきまして、日本政府といたしましては、その裁判の効果というものを受諾する。この裁判がある事実に対してある効果を定め、その法律効果というものについては、これは確定のものとして受入れるという意味であると考えるわけであります。従いまして今後これらの受刑者に対する刑の執行にあたりまして、日本政府日本裁判所あるいは行政手続によつてその判決内容を再審査するというようなことは考えられないと思います。一応確定の裁判としてこれを受諾する。但しこの確定の裁判執行にあたりましては、條約においても明らかにせられておりまするごとく、赦免、減刑、仮出獄等のごとき執行上の行政的措置は可能なのでございまして、この行政的措置につきましては、日本政府において勧告の権限があり、関係国政府の決定によつてかような行政措置が決定される、こういうことに相なつておりますから、政府といたしましては、今後刑の執行にあたりましては、十分に裁判の経緯等も調査をいたしまして、そうして必要なものに対しましては、これらの赦免、減刑、仮出獄等に対して日本政府に認められたる勧告権を十分に活用することによりまして、でき得る限り合理的なる結果を期待をいたすとともに、なるべくすみやかに多数の人々が、この法文から、釈放されるように努力をいたしたい、こう考える次第であります。
  24. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 法務総裁にもう一、二点簡単にお伺いしておきたいのですが、この受諾の効果としては、日本国内法上犯罪人としては処分しないという御趣旨のように拝聴したのです。従つて日本国内法においてただ行刑の部門だけを担任されて、その他の国内法の上からは、たとえば前科とかその他いろいろな取扱いについては何らこれを考えないということに結論は相なつておるのであります。そこでそういう受入れ方について政府は何か立法上の用意をなされておるかどうか、その点を承つてみたいと思います。
  25. 大橋武夫

    大橋国務大臣 行刑の面についての政府の責任がきめられておるのであります。これが国内法上の一般犯罪と同様な前科であるとか、そうした日本国内裁判に伴う当然ないろいろな効果というものは、この裁判には伴わないものと考えるわけであります。従つてなお御質問になりましたこの刑の執行、赦免等については、これは国内法上の裁判執行について規定いたしておりまする現在の監獄法その他の行刑法規をもつて律すべきではないと考えますので、これにつきましては特別の立法によつて諸般の規律を定めたい、こう考えるわけです。この法案につきましては、ただいま事務当局においてある程度の成案を得まして関係当局と折衝中でありまして、なるべく早い機会に御審議を煩わしたいと存じます。
  26. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 それから十一條にいう赦免その他の取扱いをするために、各連合国の決定なり政府の勧告なりが同時に必要とされておるわけでありますが、何かそういうことをきわめて迅速にかつ合理的に進行せしめるために、国際的な特別な機関でも設置されたならばよいのではないかというふうにもわれわれ考えるのおります。この点については今政府はどういうお考えをお持ちになつておられるか、あわせてこの点も承知しておきたいと思います。
  27. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これはなお決定的な考えという段階には至つておりません。しかし寄り寄り内部において話合いをいたしておりますところを申し上げますと、この刑の執行につき、ことに刑の執行に伴いまする赦免、減刑仮釈放等の日本政府勧告権を行使いたしまするその基礎的事実を調査する機関として、国内において何らか委員会の、ごときものを設けることが適当ではなかろうか、こう考えております。なお日本政府勧告権が通常の外交上の手続によつて行われまするということは、これは行使につきましていろいろ不便もございますので、何らか便宜な方法によりまして、一つの国際的な委員会のごときものができて、そこにおいて簡易迅速に関係各国の決定が処理されるというふうなことはきわめて望ましいものである、こう考えまして、さような方法に向つて努力をいたしたいと考えております。
  28. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 私もその点はきわめて同感でありますが、こういう司法事務については、今日の国際関係を見ると、一般外交事務と分離して、いわゆる司法協定を締結して、これを中心に委員会その他の機構を設置して、そうして司法交渉という簡易な手続をとるのが、最近の例になつておるようにわれわれ承知しておりますが、どうか政府はその点に御善処を賜わりたいと思います。  もう一点お伺いしておきたいのは、国外にある受刑者はこの條約からは一応除外されております。しかしこれは條約発効のときに日本内地にある者のみを限定してこれを対象として規定したものであるか、あるいは将来引続いて條約発効後といえども、日本に何らかの形で帰られた者はやはり十一條の適用を受けるものであるかどうかということについて、私どもは疑問を持つのでありますが、しかし第十一條の精神からいうならば、やはりその適用のときに国内にある者であるならば、すべてこの処遇を与えせしめていいものであるというふうに私個人は考えるのであります。従つてでき得べくんば発効前に国外にある者を内地に帰還させるということも必要であると同時に、発効後といえども、外地にある日本戦犯者を日本に帰還せしめるように努力されるということが政府に強く要望されることであると思うのでありますが、この点についてどういう御構想で臨んでおられるか、ここに明確にしておいていただきたい、かように考えます。
  29. 大橋武夫

    大橋国務大臣 佐瀬委員のお述べになりました点につきましては、政府といたしましてはまつたく同感でございまして、この條項は條約発効の際にすでに国内に帰還をいたしておりました者について適用あるばかりでなく、その後においても、帰還した後においては、当然十一條の適用があるものと考えておるのであります。従いまして政府といたしましては、今後におきましても機会あるごとに、なるべく日本国民が外国において刑の執行を受けることなく、できるだけ故国に帰つて刑の執行を受けることのできますように、あらゆる努力をいたしたいと思うわけであります。
  30. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 もう一点だけお伺いしておきたいのですが、この條約からいうと日本国民に限られておるようであります。戦時中に朝鮮人あるいは台湾人といつたような者で、いわば準日本人として、われわれの立場から見るならば日本戦争遂行に協力された人だちが、相当戦犯者として収容されておるようにわれわれ聞くのでありますが、この非日本人の取扱いというものは、今後どういうふうになるか、これを最後に法務総裁にお伺いしておきたいと思います。
  31. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御指摘のごとく、日本国民でなく戦犯者として日本国内において現在拘禁されておる者については、直接平和條約十一條には関係ないと思います。しかしこれもおそらくは日本政府に巣鴨の刑務所が引渡される場合におきましては、同じように引渡される可能性があるのではないかと存じますので、それを日本政府としてどういうふうに処理すべきであるかという点を、ただいま関係当局と折衝いたしております。
  32. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 外務省の当局者が見えないようでありますから、なお若干の点について法務府の方々からお伺いしておきたいと思います。  法務府の佐藤意見長官にお伺いしてみたいのでありますが、平和條約第十七條(b)項であります。これは日本裁判の再審を規定されたものでありますが、この裁判の中には刑事裁判と民事裁判の両方を含むのか、あるいは単に民事裁判のみを対象にした規定であるか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。
  33. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいまのお尋ねの点につきましては、この十七條そのものの條約上における條文の配置、それから前の第一次世界大戦の際の平和條約でありましたか、そういうものを参酌いたしますと、われわれとしては民事事件のみであろうという一応の見解を持つております。しかしなおその点は確定しておりませんので、御指摘の二つを含むかどうかという点は、もうしばらく研究させていただきたいと思います。
  34. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 草鹿刑政長官にただしておきたいと思うのですが、戦争中に外国人で日本の刑事裁判を受けた者が一体どのくらいあるか、もし調査済みでありましたなら、この際発表していただきたいと思います。
  35. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 ちよつと今資料がなくてわかりません。御必要とあれば調査してお答えいたします。
  36. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 それでは次の機会調査の上御発表を願うことにいたしまして、現在進駐軍が日本人等について裁判されておるプロヴオスト・コート、いわゆる軍事警察裁判所の問題について、草鹿刑政長官に一、二お伺いしてみたいのであります。それは、このプロヴオスト・コートによる受刑者というものは、現在いかように刑の執行がなされておるかという点をまずお尋ねしたいのであります。
  37. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 現在大体の数は四百六十人ばかりであります。これらの人人は全国の各地方刑務所に分散して刑の執行を受けております。
  38. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 これはやはり国内法上は日本犯罪及び犯罪人として処遇されるものであるかどうか、この点ももし法務府の意見が確定されておるならばお伺いしておきたいと思います。     〔押谷委員長代理退席、北川委員長代理着席〕
  39. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 これは政令二百十五号の第八條に関連いたしまして、日本の刑務所に委託されて刑の執行を受けております日本一般受刑者と同じように取扱つております。
  40. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 行刑上の措置以外に、国内法の、たとえば累犯規定とか、その他あるいは公の資格問題とかいうことについては、国内法上どういうふうに扱われるのか。
  41. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 とりあえず私からお答え申し上げますが、この公の地位に対する資格関係におきましては、先年法務総裁解釈として、禁錮その他の刑罰に処せられるというような欠格條項の適用者は、同一に見なすという解釈を実は出したのであります。今の累犯その他の関係につきましては、今まで政府として解釈を発表したこともございません。この際における善後措置と関連して今研究いたしております。
  42. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 意見長官にもう一点お伺いしておきたいのでありますが、あるいは刑政長官でもけつこうであります。このプロヴオスト・コートによる受刑者は、平和條約第十一條の対象にはならないと私は考えるのでありますが、もしそうだとすると、このプロヴオスト・コートの受刑者に対する将来の執行について赦免、減刑等の問題はいかように措置されるのか、もし方針がおきまりであるならば承つておきたいと思います。
  43. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 佐瀬委員御指摘の通りに、プロヴオスト・コートの関係は、第十一條にあげております戦犯とは違つたものと私ども考えておりますから、十一條の問題ではないというふうに思いまして、この十一條とは離れた別個の立法措置の問題乏して研究を進めておる次第でありますが、まだ結論を得るには至つておりません。
  44. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 他に質問者が多数あるようでありますから、一応私の質問はこれで打切ります。
  45. 梨木作次郎

    ○梨木委員 関連して。今の軍事裁判関係受刑者の資格の問題でありますが、法務総裁の見解によると、禁錮以上の刑を受けたと同じような取扱いをするのだというように言われたようでありますが、どういう根拠でそういうことになるわけですか。これは日本裁判ではないわけでありますからこそ、別の法的な措置をとらなければならぬということになると思うのでございますが、それをどういう法的な理由によつて日本裁判を受けたと同じような効果のあるものとして取扱うようにされるのでありますか。
  46. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 今の解釈と申しますのはずいぶん古い話でございまして、数年前に属することでありますが、このプロヴオスト・コートというものは、仰せの通りに司法裁判所とかあるいは高等裁判所とかいうものとは違いますけれども、しかし一面においては、日本の占領治下における大きな国内法の秩序の中で正当に受入れられておる裁判所でありますから、その判決最高裁判所判決と同様に適格性の問題としては扱つてよかろうというのが理由でございます。
  47. 梨木作次郎

    ○梨木委員 しかしながら、軍事裁判判決というものは、日本法律によつて日本裁判所が下したものではありません。これは明らかであります。しかるに日本裁判所が下したと同じような法的効果を与えるということは、何らか占領軍の方からさような指令でも出ておるのならば、さような扱いをすることもやむを得ないと思うのでありますが、そういう指令も出ておらないでさような扱いをすることは憲法に違反しませんか。いかがでしよう。
  48. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいまの問題は、いずれまたプロヴオスト・コート関係法律案の際に御審議つてけつこうでありますが、この解釈は、司令部の関係当局と緊密なる連繋のもとに下された解釈であります。このことは、解釈の中にもたしかうたつて各方面にも御通知申し上げたつもりであります。
  49. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それは司令部の方と連絡をしてそういう扱いをされた。では何か指令のようなものでも出ているのですか。指令は出ておらないのですか。もし指令が出ているとすれば、何年何月幾日どこあてに出されたかをお示し願いたい。
  50. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 指令というようなものは出ておりません。総司令部当局とわが当局との意見の一致によつてきまつた解釈であります。
  51. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そのような扱いをされて、今まで具体的にどれほど扱つておられますか。軍事裁判判決を受けて刑の執行を終りまして——刑の執行中でもよろしいのでありますが、執行中ならば具体的な問題は起らないと思いますが、さようになりまして公民権といいますか、そういつた資格を喪失させられているような人々はどれくらいおありでありますか。
  52. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 公民権とか選挙権の関係は、法律に明らかでありますように在監中のものを主としておりますから、今の解釈とは事実上の関係はないわけであります。それによつてどうということはなかつたはずだと考えおります。その他いろいろな資格の條項を定めた法律関係につきましては、これは私どもの方ではわかりません。
  53. 梨木作次郎

    ○梨木委員 軍事裁判受刑者の、條約の効力発生した後におきまする扱い方、これは私どもの考えから申しますと、占領中日本裁判によらない裁判によつて刑を受けておるということになりますから、占領状態がなくなりますならば、当然に刑の効力を持続することができなくなりまして、釈放しなければならない性質のものであると考えますが、どういうふうにお考えになりますか。
  54. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 そういう点につきましては、先ほどから申し上げておりますように、佐瀬委員の仰せられた民事裁判の再審査問題とか、條約に基くいろいろの法務関係法律がございます。それを御審議の際に詳しく申し上げたいと存じます。
  55. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この軍事裁判関係受刑者の取扱いについては、この取扱いだけについての特別の法律を用意されておりますか。それはいかがです。
  56. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 おそらくその必要があるだろうと思いまして、研究を進めております。
  57. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その内容について、大体のところはまだ発表すべき段階じやないのですか。発表でさましたら、してもらいたいと思います。
  58. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 研究中でありますから、でき上りましたらただちに法案の形で御発表申し上げたいと思います。
  59. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それはいつごろお出しになりますか。この臨時国会に出す予定になつておりますか、それとも通常国会になりますか。
  60. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 條約関係はなるべく早い方がいいと思つておりますので、できれば臨時国会提案いたしたいと思つております。
  61. 北川定務

    ○北川委員長代理 次に発言の通告がありました世耕弘一君に対し、これを許します。世耕弘一君。
  62. 世耕弘一

    世耕委員 私は二、三点、数日前に起りました天皇行幸先における京都大学の事件に関して、国警側から今日までの状況について一応お尋ねいたしたいと思います。さしあたつて御報告があつたと思いますが、その内容をひとつここで御発表願いたいと思います。その順序を経て、私はあらためて質問を続けたいと思います。
  63. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 ただいまのお尋ねに対しまして、われわれが現在まで報告を受けておる状況について申し上げます。  天皇陛下の行幸は、今月十二日の午後一時二十分に京都大学にお成りになることになつておつたのであります。当日学校の正門から玄関までに、約千五百名くらいの学校の職員及び学生が、御通路に沿つて奉迎の態勢をとつていたのでありますが、御着の十分前ころに四、五名の学生が、過日のデモ行進で不法行為者として逮捕されました京大のある学生の即時釈放を唱えまして、これに対する資金のカンパを開始しようとしておつたのでありますが、これに対しまして他の学生が注意したので、多少もみ合いとなりまして、一時御道筋に支障を来すような状況になりましたが、警衛の警察官及び京大の守衛の努力によりまして、御通行が可能になりましたので、支障なく御着になつたのであります。従いまして、お着きの時間は予定通り一時二十分になつております。御着になりまして、車が玄関にお入りになつた直後、それまで比較的静かであつた奉迎者の中から、約百五十名あるいは二百名とも言われておりますが、一挙に玄関前の陛下のからのお車及び玄関の前の車まわしの築山をとりまきまして、いろいろのプラカードを立てまして、インターを合唱し、気勢を上げて、あるいは随従車の上にかけ上るといつたような状況が四、五分ないし五、六分続いた、こういうことでございます。こうして混乱いたしましたので、学校当局はただちにこれらの学生にその場を立ちのくように勧告したそうでありますが、とうてい学校当局では力が及ばないというので、この際警察に依頼いたしまして、警察の出動を要請したようでございます。そこで京都の市警におきましては、京都の御苑内に待機しておりました警察官を約五百名ほど応援に派遣いたしまして、十分くらいいたしましてから現場に到着いたしました。そうして警察官の実力によりまして、これらのとりまいている学生を押しのけまして、元の態勢に引きもどすことができました。そこで天皇陛下は二時十三分にお出ましになることができたのでございます。陛下が校内に入られて御視察中も、かなりインターあるいは平和を守る歌等を歌つたり騒いでおつたようでございますが、陛下は学校内の各部長からのいろいろの御進講をお聞きになりまして、二時十三分にお出ましになつたのでございます。御予定は二時にお立ちになることになつておりましたが、しかしこれは御進講に時間をとつた関係で、現場の騒ぎのために遅れたのではない、かように報告はなつております。従いまして、陛下のお出ましになるときには、すでに現場は車が通れないというような状況ではなしに、警察官が相当出ておりましたので、無事にお出ましになつた、こういうことになつております。
  64. 世耕弘一

    世耕委員 この事件は単なる天皇個人の問題ではなくして、国家の象徴たる天皇ということを考えますると、かなり日本国内の秩序が、大学においてすらあのような騒動が起るのだということが国際的に知れたときには、非常に治安に不安を感じさせるということが考えられる。ひいては対外的関係から見ても、日本再建に非常に思わしくないと思うのであります。そういう意味において、私は相当つつ込んでお尋ねしたいと思うのであります。  まず第一に、今度の事件をどういうふうに思うか。単なる学生運動と思うか、あるいは他意あつてやつたものかどうか。まずこの根本問題から、国警側の意向を承つておきたいと思います。
  65. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 現在この騒ぎのあつた原因等につきまして、京都の市警で鋭意調査をいたしておりますが、現在のところいろいろの情報はありますけれども、まだ背後関係等については確実な報告が参つておりません。
  66. 世耕弘一

    世耕委員 事件が起つてからもう数日を経過しているのです。いまなおその詳細な報告を受けていないということは、少し怠慢ではないかと思うのです。警察には電話があるはずだ。無電もあるはずだ。五分で京都と話ができるじやないですか。私はそういうようなお考えでこの問題をお取扱いになることは、少し軽率ではないかと言いたい。きようは特審局長もおいでのようですが、私はあとで法務総裁もお立会いの上で、もつとつつ込んでお話を承つておきたいと思うのであります。これは委員長にお願いしておきます。新聞その他の報道並びにわれわれがとつた情報によりますと、相当計画的なものであつた。そうして政治的なもの、政治性を含み、思想的な行動であつたということは、百目の一致するところである。今報告が来ていないということでありますが、あなたの方から調査員をお出しになりましたか。それとも報告の来るのをお待ちになつておられるのでありますか。
  67. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 この問題につきましては、むろん京都の市警の内部のことでございますけれども、われわれとしましても相当重大な関心を持つておりまするので、現地に対しまして電話その他でいろいろ聞き合しておるのでございますが、何しろ正確な情報をもつてお話を申し上げたい、かように存じまして、いろいろ現在までも情報の部分的なものはありますけれども、確実なものにつきましては、まだ申し上げるほどの正確なものは参つておらないのであります。
  68. 世耕弘一

    世耕委員 この問題は国会においては相当重大視して、昨日のごときは本会議で論議された問題であります。一大学の騒動じやなくなつている。そういうふうに世間は見ておるのであります。私たちから考えれば、長官がいなかつたら、あなたはなぜ乗り込んで行つて御自身で御調査にならなかつたか、こう言いたい。むろん東京も忙しかろうけれども、この問題は非常に国際的な響きもあるように私は考える。しかもわれわれが調査したところ寝ると、計画的であつた。それならば事前にわかつていなければならない。その事前にわかつているものに対して、かくのごとき騒動を起して、しかも千名近くの警官が出動しなければならぬというようなことは、大きな責任問題じやないかと思う。しかしながら、国警としまして直接の責任を持つていないことは、警察法第五十四條の二でございますか、「国家地方警察と市町村警察及び市町村警察は、相互に、犯罪に関する情報を交換するものとする」という関係があるから、実は直接の責任ではないけれども、これを掘り下げてお尋ねしているわけであります。これは人にまかせないで、気のきいた人が行つて現場を御調査されることを特に要請いたします。なお文部大臣にもお尋ねする予定でありますが、この点は特にお願いしておきます。  それからもう一つは、警察はなぜもう少し早目に、かような不祥事を起させないような対策をとらなかつたか。それについてあなたの方から何か示唆してやつたか、それともただ報告のみを受けておるのか、従来どういうふうにやつておつたか、また大学に対するそういうようなもし事件がありそうな予感があつた場合に、あるいは予測できた場合に対する対策はどういうふうな方法をとつてつたのかということをまずお尋ねいたしたい。これは幸いにして陛下はおけがなさらなかつた。御無事であつたことはまことに御同慶にたえないけれども、おけがなされたらどうしますか。陛下個人ではありません。八千万国民の象徴が蹂躪されたということになる。そうなると憲法問題ではないのです。われわれ国民の体面問題をここに引き起される問題であります。非常に官庁側は軽いような感じを持つてこの事件を取扱つておるのではないかと私は思います。この点についてどういうお考えをお持ちになつておりますか。
  69. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 ただいまおしかりを受けましたのですが、案は本日長官がこの席へ出席できないのは、けさ京都へ立つたからでございます。学校当局との折衝の問題は、最初には相当数を学校に入れるという計画であつたと私は承知しております。私どもとしましても、相当今日までに京都の学生が騒いでおるということは承知いたしておりますので、相当注意をする必要があるというので、注意を喚起することは、国警の京都の隊長を通じて連絡いたしておるのでございます。ところが数日前になりまして、京都の学校の方から、警察官があまり入ると学生を刺激するというようなことで京都の市警に申入れがあつた。そこで警察の方としても従来かち、あまり警察官を入れてぎようぎようしくやること誓うかということで、最近は警察官の数をなるべく減して行くという計画になつておりまするので、学校当局が最後まで責任を持つのであつたら、一応まかしていいじやないかということで、多少の警察官は入れておつたようでありまするけれども、とても力が及ばなかつたというのが実情のようでございます。従いまして、われわれの見方からいたしまして、事前に相当数の警察官を入れてやつた方がよかつたか、入れるべきであつたかどうかということは、現地の警察と学校との話合いで、おそらく現地の警察においてもそれで十分だと考えた結果であろうと存じまするが、しかし事件が起りましてからただちに、近くに予備隊がおりましたので、それが一齊に参りまして、十分整理いたしまして、陛下が構内にいらつしやる間に整理ができまして、また陛下もその騒ぎをほとんど御存じないくらいの程度にお帰りになつたように聞いておりますので、われわれとしましてはせめてもの仕合せだと存じております。
  70. 世耕弘一

    世耕委員 この間私は陛下が大阪の方へ行幸のときに列車で行き違いになつて東京へ帰つて来たのですが、その列車の通行の両側には、国鉄の従業員がそれぞれ任務を完遂するためにむしろよけいじやないかと思うぐらい人を繰出して手配をしておりました。脱線してしまつたらおしまいで、脱線したときの責任をだれが負うかという議論をするよりも、いかにすれば危険から救われるかということが、私は治安の根本でなければならぬと思う。なぜ万全を期さなかつたかということ、そこに問題がある。どうも近ごろは、新しい憲法ができ、新しい刑法ができてから、警察の方がとういう問題について及び腰になつた。中途半端だ。中腰でものを取扱つているきらいがあると思うのであります。京都大学に不穏の形勢があると認定したら、なぜ堂々と出動してその責任を果さなかつたかと言いたい。京都大学は今度の事件ばかりではない、数回にわたつて事件がある。ある場合は警察官の出動するトラックの前に学生が寝た事件もございましよう。そういう前例がある。少し遠慮し過ぎたのではないか、この点の認識を私はこの機会に明らかにしてもらいたい。そこでなお文部大臣にもお聞きする予定でありますが、大学の自治ということについて、あなた方はどんな考えをお持ちになつておるか。もちろん大学の自治というものは、そんな広大なものではないでしよう。治安の維持あるいは保安の立場から必要であると見るならば、堂々と乗込んでその陣容をはつきり立てたらいいじやないか。私は警察官の侵入を、ただ大学の自治という立看板のみによつて躊躇させるべきものではないと思う。この大学の自治については別な観点から私はお尋ねいたしたいが、この点はどうです。特審局長も幸いおいでだから、両方からひとつ聞いておきたいと思う。
  71. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 私は大学がどの程度の自治力を持つておるかということについては、今申し上げる立場でないと思いまするが、ただ学校当局が相当の自信を持つて警察と折衝しまして、警察の方で納得が行つたから、配置を少くしたということでありまして、ただ不安があつたので、付近に予備隊を配置したということは、京都市警としても相当な注意を払つてつたのじやないか、かように私は考えております。     〔北川委員長代理退席、押谷委員長代理着席〕
  72. 吉河光貞

    ○吉河説明員 御質問をちようだいしましたが、団体等規正令の運用につきましては、学内、学外を問わず、社会としてこれを一律に励行しております。
  73. 世耕弘一

    世耕委員 今次長から御説明がありましたが、私は万全を期すということが大切じやないか、万全を期すということが大切であるということならば、今度は万全を期したということは言えないでしよう。ただ大学の方から、おれの方で何とかするからまあ手を入れてくれるな、かえつて刺激するから……。そういうことを信じたから手を打たなかつた。そういう打たなかつたことが、非常によかつたとあなたはなお今日思つておられますか。それともこれはやつぱり積極的にやつた方がよかつたと御判断になりますか。急所はそこなんです。私の聞きたいところはそこなんで、だから中途半端で及び腰だと言うのだ。これは私は警察を攻撃するのではないのです。警察がなぜもつと積極的に動かないか、治安に対してはもつと積極的な信念を持たないのかということを言いたい。そこなんです。どうもあなたとは顔見知り合いで、多年の懇意で、あまり聞くのはぐあいが悪いのだが、どうもしかたがない、あなたが矢面に立つておられるのだから……。長官でも出て来られたらもつと聞きたいと思うのですけれども、私の意のあるところを十分承知しておいていただきたい。私はもつと警察は積極的に動いていただきたい。今特審局長もおつしやつたように、あの調子でなぜ出さなかつたか、あの調子でやつたならば、私は治安というものは確立できたのじやないか、今このようなひまをつぶす必要がなかつたのじやないか、こう思うのです。その点はよほど今度はひとつ考慮していただきたい。それはそのくらいにしておきます。  次に、何名警官が出動しましたか。学生はどれだけ、そしてどれだけが先頭で騒いだのか。またどこの学生が入つたのか。その中に労働者が入つてつたのか。共産党の人が入つてつたのかというようなことも、もう報告が来ておるはずでしよう。新聞にはもうすでにそういうことは一部発表しておりますから、次の質問の用意のためにお尋ねしておきます。
  74. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 当日陛下の自動車の付近に集まつて騒いだ学生は、見る人によつて多少違いますが、百五十名ないし二百名、かように考えております。騒ぎを知つて現場にかけつけた警察官が五百名、それから校内その他に学生、職員等が千五百名ほど……。
  75. 世耕弘一

    世耕委員 予備隊が出たという話ですが……。
  76. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 予備隊は五百名でございます。予備隊と申しますのは、警察の予備隊でございまして、いわゆる予備隊ではございませんから……。
  77. 世耕弘一

    世耕委員 質問の順序から、ちよつと特審局長にお尋ねしますが、この事件に対して特審局は事前に知つていたはずなんですが、どういうふうな手をお打ちになりましたか。あるいは自治警並びに国警等にも連絡をされて、万全を期せられたかどうか。
  78. 吉河光貞

    ○吉河説明員 実は少し前後の経過にわたりますが、幅をつけて申し上げたいと思います。  今年秋に陛下が関西方面に御旅行なさるにつきまして、九月の二十七日でございますが、関西方面における一般の情勢並びに特異な情報につきまして、法務総裁から特別審査局にお尋ねがありました。私どもといたしましては、特審の職員をして、刑政長官の部屋で宮内庁の幹部の者に、近畿、中国、東海を含め、一般的な状況、特に特異な動向等について詳細に御報告申し上げ、万全の措置をとられるように御参考に供したのであります。ところが越えて本年の十月二十二日、特別審査局の近畿支局長から私の方に報告がありまして、陛下が舞鶴に行幸されるにつきまして、ごく少数の左翼分子の間に、軍事基地復活反対闘争をこれを契機として展開するというような報告がございました。即日これを部下をして宮内庁の幹部に電話をもつて報告いたしました。ところが陛下が国民体育大会に臨御のため、同月二十七日広島へ行幸されるに際しましては、あらかじめ中国の支局が中心となりまして、該地方の実情を調査いたしました。これがために支局長を東京へ招集する会議を延期いたしまして、もつぱらその仕事に従事させました。ところが広島の自由労働組合名をもつて広島労働者の生活苦を訴えるという壁新聞が出されたというような事件のほかには、何ら重大な事件がございません。事前にも重大な動向がございませんので、これは関係方面には報告いたしませんでした。ところが十一月の十日、京都地方に行幸されるにつきましては近畿支局の京都駐在官を主力として、近畿支局員をして鋭意調査をさせたのでございますが、十月の二十六日並びに十月の三十日に私の方へ現地から報告がありまして、陛下の行幸に際しては、赤旗とプラカードで迎えるというような動きがある。さらに十一月の十日の午後になりまして、陛下の行幸に際しましては、一部左翼分子の間の計画といたしまして、天皇行幸に際し、五人組を組織して、天皇到着時に校内デモを組み、学内を赤旗とプラカードで埋めるというような動きがあるというような情報が入りましたので、即日中央といたしましては、関係機関並びに上司にこれを報告いたしております。報告をいたしましたのは月曜日の午前でございます。ところが遺憾ながら同日の午後に至りまして、こういうようなお尋ねのごとき事件が現われたのでありますが、こういう報告をいたしました近畿支局におきましては、もとより現地におきまして、関係機関並びに関係当局と緊密な協力関係にありますので、情報交換その他によりまして、こういう情報はすべて警察、学校当局にも通達して、注意を喚起しておるというような状況でございます。なお今回の事件につきましては、背後団体の有無並びに事件の具体的内容につきましても、私どもといたしましては、他の関係機関と協力して、すでに数日前より調査をいたしているような状況でございます。
  79. 世耕弘一

    世耕委員 天皇陛下に、再軍備並びに平和問題等に関連して公開状を提出しようとしたということが、新聞その他にも出ていますが、その公開状の内容を御承知でありましたら御発表願いたいと思います。それからもう一つは特審局長にお願いいたしたいのですが、京都大学はいわゆるいわくつきの大学です。そして最近においては、相当過激的な分子が細胞組織をしておるはずであります。そういうところへ御調査が進んでおられるか。また最近国立大学並びに公立大学には、そういう方面の組織網がかなり伸びております。これは大学ばかりじやありません。近ごろ中学校まで伸びていますが、国立大学はどんな細胞組織状態になつておるか、そういうことの調査が行き届いておるか、発表してさしつかえない範囲において御発表を願いたい。なぜこういうことをお尋ねするのかというと、そういうところまで手が伸びていることを一般の人はあまり知らない。私はこの機会にこういうことを国会を通じてお知らせくださる方が、国民の理解を深める上において必要じやないかと思いますから、お知らせ願いたいと思います。
  80. 吉河光貞

    ○吉河説明員 お尋ねの通りで、ございまして、京都大学におきましては細胞が結成されておりまして、これは団体等規正令によつて届出をいたしております。昭和二十五年十月十日現在の届出が現在生きておりますが、その構成員の数は二十三名でございます。そしてかような学内における細脆も、すべて団体等規正令による届出を勧奨し、届出をさせておるようなわけであります。全国大学における細胞結成の状況は、ただいま資料を用意しておりませんので、後目的確な資料をお目にかけたいと思います。
  81. 世耕弘一

    世耕委員 このような事件に、この細胞関係が活動しておりますか、まだそこまで報告が来ておりませんか。
  82. 吉河光貞

    ○吉河説明員 本日は、京大細胞自体の活動状況に関する資料を持参いたしませんでしたが、大体京都におきまして、最近現われました事件というよりも、むしろできごとを拾つてみますと、二十四年の十一月に京都府の学連が結成されまして、事務所が京都大学の中に置かれました。二十五年の十二月十七日に、この事務所が立命館大学の中に移されました。同年の十二月の五日には、京都市円山公園で市民蹶起大会というものに学生が多数参加しまして、京大の同学会の会員五十名か検挙された事件が起きております。二十五年の十二月十一日、京都市役所で京大生が六十名くらい、午後一時ころ検挙者返還を市長に面会を求めまして要求いたしました。市長不在のために、秘書課長と押し問答をしたようなできごとがございます。二十六年四月十四日に、京都大学付近に原子兵器の禁止、婦人と子供を原爆より守れ、というようなビラが散布されました。学生の手によつて行われた疑いがございます。その日同地におきまして、民科の学生グループが、ミユラー博士に対する公開質問伏を、GHQに送付したというようなできこともございました。二十六年五月十二日には京大生約百名が、国会を除名されました川上貫一氏のために資金カンパを行いまして、トラツク一台に分乗して赤旗二旒を仕立て、英雄的同志川上貫一、全面講和と再軍備反対のために闘う云々と連呼しながら、十四日までとまり込みでやつたというような事実がございます。ただいま申しました京都同学会という学生団体は、その責任者が執行委員長木村砧一郎氏でありまして、現在構成員は一万一千名といわれております。これが本年七月現在の状況でございます。
  83. 世耕弘一

    世耕委員 ただいまの御説明でほぼわかりましたが、結局結論を簡単につけてみれば、これは国警や警察の責任ではなくて、京都大学自体の怠慢が、多くの事件を生んだというふうな結論をつけざるを得ないような状況であります。これはもう少し私は具体的な問題をとらえてお尋ねしておきたいと思いますが、さしあたつて先ほどお尋ねした、陛下に出した公開状の内容ちよつとお知らせ願いたいと思います
  84. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 公開質問書は、宇治御巡行の際にビラでばらまかれましたので、その際手入いたしております。内容は「十一月十二日京大学会は天皇の来学を控えて次のことを質問する。人間としては天皇に同情するが、あなたが歩かれる行路は自由性がない。軍国イデオロギーの筋書を歩いているものでその役割を果しつつ、以前の軍国イデオロギーとなることは同情しません。それで退位せられ天皇制を廃止されんことを望みます。人間としてこのことを考えていただきたい。一、もし日本が戦争に巻き込まれそうな事態が起るならば、かつて終戦の詔書において万世に平和の道を開くことを宣言されたあなたは、個人としてでもこれを拒否するように世界に訴えられる用意があるでしようか。二、あなたは日本に再軍備を強要されるような事態が起つたとき憲法においで武装放棄を宣言した日本国の天皇として、これを拒否するよう呼びかけられる用意があるでしようか。三、あなたの行幸を理由として京都では多くの自由の制限が行われ、又準備のために貧しい市民にまわるべき数百万円が空費されています。あなたは民衆のためにこれらの空費と不自由を希望されるでしようか。四、あなたが京大に来られて最も必要なことは、教授の進講ではなく大学の研究の現状を知り学生の生活の実体を知られることであると思う。その点について学生と会つて話合つていただきたいと思うのですが不可能でしようか。五、広島、長崎の原爆の悲惨はあなたも終戦の詔書で強調されていました。そのことは私たちはまつたく同意見でそれを世界に徹底させるために原爆展を製作しましたが、その開催があなたの来学を理由として妨害されています。あなたはそれを希望されるでしようか。また私たちは特にあなたにそれを見ていただきたいと思いますが、見ていただけるでしようか。」以上であります。
  85. 世耕弘一

    世耕委員 大体お読み願つたので、その動きの全貌を了承することができました。今度の問題に参加した連中は、学生や労働者が主であるかもわからぬが、非常に低級な思想を持つていることは想像できる。なぜかというと、天皇というものの性格を知らぬ、天皇は再軍備をするとかしないとか、あるいはどうするとかこうするという権限はない。それは旧憲法時代である。旧憲法時代の天皇をつかまえて言うなら、うなずかれる筋もありますけれども、今日は天皇は国民の象徴であります。国会が最高の権限を持つている。そういうことがあれば、なぜ国会陳情しないかと言いたい。しかも最高学府の学生がもしこれをやつたとすれば、よほど低級な者ばかりの集まりだと言える。また同時にそれを指導している教授並びに責任者は何をしているか、こういうことも言いたくなるわけです。昨夜の東京新聞の社説欄を皆さんごらんになつたでしようが、学園、特に国立大学で赤色闘士となるよりも、まず人間になるために、強くそれら学生の反省を望む。そしてもし反省の要なしとするならば、学園、特に国立大学を去つてもらわなければならない。国立大学の維持費における月謝は、いわば九牛の一毛で、大部分は全国民の血税である。民主的国民は、その民主主義を破壊する者のために、一銭をも負担することは耐えられないということを言つておる。これは国民の声です。これは国警次長にお尋ねする筋ではありませんけれども、こういうような学生を取締るには、それぞれ相当の考えを持つていらつしやらないと、ただ学園は自治だから、大学の自治を守らなくちやならぬからというので、そうした時代遅れの考えを持つている連中、急進だとか進歩的という名前のもとに、警察官の行動を鈍らせるようなことは、今後なさらないようにしていただきたいということをお願いしておきます。  なおこの際特審局長にもう一点お尋ねしておきたいと思いますが、全面講和ということについて、共産党の諸君は非常に熱心であり、社会党左派の諸君も熱心でありますが、学者の中にも全面講和を主張する人がある。その全面講和を主張する人の中に大学の先生がいる。私の調べたところでは四十何名かのそうそうたる大学の先生がいる。東京大学が十二名、京都大学が五名か六名というふうな数が出て来ております。そういう全面講和論者がいるために、大学に赤旗がひらめいたり、わつしよわつしよやつたり、インターを歌つて騒ぐようになつて来ている。こういうような実情はどうですか。最近私が調査した範囲によりますと、名前を申し上げることだけは差控えますが、平和問題懇話会という会ができて、人が集まつているようです。私が拾い上げたところでは大学の連中が四十名ばかりいる。こういう人物はどういう人物であるかということは、特審局は一応お調べになつたかどうか、後刻来られる文部大臣は、元やはりこの平和問題懇話会のメンバーの一人だつたということも聞きます。また東京大学の南原君も、同様に全面講和論の主張者であり、平和問題懇話会のメンバーの一人であるということは世間周知であります。そういう人たちにたくさんの月給を払つて国民は一生懸命ちようちん持ちをしなければならないような何か義理合いがあるかどうか、真相だけ承つておきたいと思います。
  86. 吉河光貞

    ○吉河説明員 ただいまお尋ねの平和問題懇話会につきましては、団体等規正令によりまして、これが届出を要する政治団体なりやいなや、目下慎重に調査を進めておるのでありまして、まだ結論に達しておりません。
  87. 世耕弘一

    世耕委員 あと文部大臣と法務総裁にお尋ねいたしますが、一応これで私は打切ります。
  88. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ちよつと関連して……。国警次長に伺いたいのですが、先ほどの報告中、警察官を学内に入れてはかえつて刺激するからといつて入れぬように言つて来たのは、だれが言つて来たのかよくわかりませんでした。学生というふうに聞きましたが、その点……。
  89. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 学生ではありません。大学の学生の関係の課長であります。
  90. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それからプラカードを出したと聞きましたが、それは間違いありませんか。
  91. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 間違いありません。
  92. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はその点、先ほどの世耕さんの質問から考えても、非常に重大だと思います。ただこつそりと集まつてやるとか何とかいうことでは、これはわからぬということもありますが、プラカードは物です。それをちやんと学内に持つてつてつたのでしよう。そういうことまでもわからなかつたというのでは、それはもう警備に当る者の大責任じやないかと思いますが、これはどうです。見ればすぐわかる。前もつてちやんと用意して来ておるに違いない。これはどうお考えになりますか。
  93. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 結果から見まして、確かに計画的であつたということは想像できるのでございますが、ただ京都の市警と大学とがそうした話合いをした理由としては、なるべく警察官を出さないように、出すことによつてかえつて学生を刺激して、学生の騒ぎを大きくするというようなことを考えたのじやないかと思いますが、この点は私どもはつきりしたことはわかつておりません。当時の京都市警の心境というものはわからないのですが、はつきり申し上げられることは、計画的であつたということ、これはあとからでも想像ができると思います。
  94. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これはよくあることです。そういうことを言つて来るときにはなおあぶない。刺激しますからと言つておいて、警備を薄くして、その間に乗じて来るということは、これは共産党員の常套手段である。たとえば全面講和だの軍事基地反対というのと同様なんです。日本に外国の軍事基地を置くなということは、そのすきに乗り込もうという計画であることは、われわれは明々白々だと思います。それと同じような意味で、そういうことを言つて来るときには、なお警戒すべきだ。私はまつたく乗せられたのではないかと思いますが、これらの点も十分調べてもらわなければならぬと思います。
  95. 梨木作次郎

    ○梨木委員 関連して……。今京都大学に警官とそれから予備隊が五百名出たということでありますが、今特審局長の説明を聞いておりますと、天皇がどこかへ出かける場合に、昔と同じようなえらい大騒ぎをして、特審局長の言葉を借りるならば、左翼分子の動きを非常に神経過敏に調べているようでありますが、そして今の天皇に対する公開状の中を見ましても、天皇が出歩いておるために、非常に人民が自由を制限されておるようなことが訴えられております。そこで聞きたいのでありますが、今でも天皇がどこかへ出かける場合に、警察当局はどういうようなことを命ぜられますか、警備についてどのような警備をされますか、これをまず聞きたいのであります。
  96. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 天皇陛下が行幸される場合には、国家の象徴としての天皇陛下の御無事のために、支障なく御旅行ができますように警備いたしておるわけであります。
  97. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それはまことに抽象的な答弁でありますが、それではこういうぐあいに聞きましよう。今度の天皇が関西の方に行かれるについて、警衛のためにどれだけの費用を出しておられますか。それがおわかりになりますか。おわかりになりましたら御答弁を願います。それからどれだけの警察官が動員されたか。
  98. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 警衛の費用としましては、大蔵省でいただいた金が年間に三百万円ありますが、それ以外には、特にいる場合には、普通の費用を使つておりますので、行幸に何ぼ使つたというようなことは計算できません。それから警察官は大体その県の警察官、国警、自警が一緒になつてやつておりまして、その県の警察官の定員の中でやつておりますので、それ以上の警察官は使つておりません。
  99. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今大蔵省からもらつている、国警の方は三百万円、天皇の警備のための費用、自治警がどれだけ使つて、そして天皇が来られた場合、警備にどれだけ支出しているかということは、今のところおわかりにならないのですね。
  100. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 わかりません。
  101. 梨木作次郎

    ○梨木委員 私は今度の京大の事件をきつかけにいたしまして、またまた天皇が方々出歩く場合に、以前と同じような人民の自由を非常に制限して、そうしてものものしい警衛に復活するような、そういうことにまた利用しようとしておるような感じを禁じ得ないのであります。今の公開状の中を見ましても、これはかつて雑誌「真相」には天皇が行啓するというふうなところには、みんな町がきれいになつた、町がきれいになるのはけつこうだけれども、そのために非常にそこの県や市町村において莫大な費用を支出させられておるというようなこと、つまり人民の受けるところの被害というもの、こういうことにやはり十分な配慮をしなければ、国民の象徴と称しておる天皇が、国民から実はありがた迷惑の存在になることが出て来るのでありますが、その点はどういうようにお考えになられますか。警衛の点について人民の自由の保障、人民に経済的な被害を、犠牲を押しつけないようにすべきであると思うのでありますが、この点についての取締り当局考え方を聞いておきたいと思う。
  102. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 御警衛につきましては、これは非常にむずかしいようでありまして、あまり警察官がたくさん出まして、かえつて陛下と国民との間を警察官がさえぎるようなことになりましては恐れ多いのであります。しかし絶対に御無事に御旅行をしていただかなければなりませんので、警察官は多く使わないで、そうしでその目的を達するようにということで苦心をいたしておるようなわけであります。
  103. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それから刑政長官に伺いたい。仙台の刑務所でありますが、ここに松川事件の被告の人たちが収容されておりますが、過般夏ごろでありましたが、私面会に行きまして見て来たのであります。収容所はこれは仮の所らしいのでありますが、つまり部屋のまん前のところに非常に大きな目隠しがかかつているのであります。これでは日光が入らないで非常に収容者の健康に害があるということで、刑務所当局にこの点を注意しましたところが、実は拘置所になりまして、この拘置所にいろいろ面会に来る人があつて、その面会に来る人がその部屋から見えるので目隠ししているのだ、こういうのであります。その面会所とその収容している部屋との中間に塀をつくれば、部屋のところに大きな目隠しをつくらなくも済むのでありますが、これはわずかの費用でできるのでありますが、それが依然としてそういう状態にあります。これは特に仙台の刑務所には、御承知のように死刑宣告された人、また死刑判決を受けた人たちがたくさん収容されておりますし、長期の収容者が多いのであります。ところがそういう不健康な状態の中に長く収容しておくということは非常に健康によくないと思うのでありまして、わずかの費用でできるのでありますから、この点は早急に外来者の面会所と監房との中間に塀をつくれば撤廃していいわけでありますが、この点はどういうぐあいにお考えでありますか御見解を聞いておきたいと思います。
  104. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 実情をよく聞きまして、今仰せの通りならば何とか収容者の健康上最も適当な措置をとるように善処いたしたいと思います。
  105. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それから次に伺いたいのでありますが、この前私は検務局長に伺つたのでありますが、九月の四日に共産党の国会議員その他の人たちに逮捕状が出され、それに引続きまして全国的に家宅捜索というものが行われているのであります。特にひどいのは十月九日には全国八百六十一箇所に捜査を行つたのでございます。こういう捜査というものは、これはこの前の検務局長の答弁では中尾佐太郎という人の事件に関連して調べているのだと、こういう話でありましたが、しかしこれは十月九日にとどまりませんで、その後も引続き行われ、しかもこの中尾佐太郎という人がすでに起訴された後におきましても、家宅捜索が同じように行われているようであります。この点の実情はどういうことになつているのでありますか、聞きたいと思います。
  106. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 的確な資料をきよう持つて参りませんでしたけれども、おそらくこれは、事件は目下捜査継続中でございますので、その捜査の継続中におきまして、さらに捜査の必要上からそういつたような捜索が継続されているのだろうと思います。
  107. 梨木作次郎

    ○梨木委員 どうもこの点につきましては。すでに十月九日のことであり、その後において起訴されておるのでありますが、この事件内容の詳細につきまして、どうも政府当局の方は答弁を回避するように思われてしようがないのであります。すでに起訴された者があり、しかもその後も引続き行つておるというような大きな全国的な事件ということになれば、そんなにたくさんあるわけではないので、相当詳細な報告が刑政長官の方に行つているはずだと思うのですが、どういう事件内容で、どのように捜査を行つて、その結果がどうなつておるかということは、おわかりでありませんか。
  108. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 大きな事件の捜査になりますと、もちろんあとで報告を受けますが、この報告は、その都度参る場合と、ある一定の段階に達しまして、まとまつたところで報告を法務府の方に出される場合に、いろいろその事件事件によつて、また捜査の関係上、いろいろなふうに報告が参つて来るのでありますが、おそらくこの事件につきましては、まだまとまつたような報告は来ていないので、的確な御回答ができないのだろうと思います。
  109. 梨木作次郎

    ○梨木委員 これは全国的に行われておるのでありまして、たとえば東京地検だとか大阪地検だとかいうところについては、その地検に行けばわかるかもしれませんが、全国的なものについて捜査の適正を判断する上においては、やはりどうしても全国的な資料をお持ちのあなたの方から聞かないと、この検察のやり方についての批判というものができないのであります。そういう観点から見ますと、これはあるいはまた特審局が指導権を握つて、そうして検察庁がこれに利用されておるというのじやないかと思うのですが、いかがですか。そうじやありませんか。
  110. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 私が報告を受けております範囲におきましては、この事件につきましては、特審局は関与していないと聞いております。
  111. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それならばなおさらあなたの方では検察庁の報告は詳細とれるはずであります。私の方は新聞の記事を全部集めまして、ここに資料は持つております。今日は大分遅くもなりましたから、私はこの点について、大阪ではどう、東京ではどう、全国ではどうということの資料を持つておりますが、この点についてあなたの方の報告とどう違うのかを、次会に対照にお答えを願いたいと思います。それによつて、この検察のやり方は非常に適正を欠いた行き過ぎのものであるということについて、世の批判を仰ぐようにして、検察の適正化をやつて行かなければならぬというように考えておるのであります。そういうわけでありますから、この点次会までにひとつ詳細お調べになつて、お答えができるようにしていただきたいと思います。
  112. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 できるだけ準備をいたしますが、何分にも今おつしやいました数だけといたしましても、全国で八百何十箇所になつておりますので、もしお願いができましたら、この中でどの箇所についてはこういう事実があると御指摘を願えれば、われわれの調査いたすのに非常に便利ではないかと思います。全部をこれからやりますと、これはたいへんだと思いますし、おそらく法務府へまだ全部の報告は来ていないだろうと私は思いますので、最も関心をお持ちになつておりますような箇所が、ございましたら、あらかじめ私の方へおつしやつていただけば、こちらの方でも十分調べた上お答えいたします。
  113. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは私の方で新聞記事から抜萃した資料を持つておりますから、ひとつお伺いいたします。十月十六日の毎日新聞の記事であります。これは十月十六日午前七時を期して東京都内の家宅捜索を行つておるのであります。その際新聞記事によりますと、女学者の武林無想庵さんのうちや、徳田球一さんの弟さんの徳田正次さんなど二十五箇所の家宅捜査を行つておるのであります。そしてその記事によりますと、人民新聞だとか党活動指針などを初め、反米パンフレットなどの証拠書類の押収を行つたとなつておりますが、しかしながら武林無想庵さんのうちではほとんど何にもなかつたというように出ております。これは実に不当な家宅捜索であり、盲めつぽうなやり方であるということで、ジヤーナリズムの上でも相当非難を受けておることは御承知通りでありますが、この一つの事例を見ましても、この家宅捜索は、一体どういう権利で、そしてどういう人の犯罪事実についてなされているのかというようなことをお伺いしたい。家宅捜索をしなければならない相当な理由と根拠に基いてするということ、これが保障されない限りは、これはまるで網を張るように、どこかあの辺をやつてみたら何か出て来やしないかというやり方で今後家宅捜索が行われるとなりますれば、これは人民の基本的人権というものはまつたく保障されないし、同時にまつたくほんとうに恐怖状態というものが出て来ると思うのであります。でありますから、これをひとつお調べを願つて、御答弁を願いたいと思うのであります。その他は私は委員会外において材料を提供しますから、お知らせ願いたい。  それから次にお伺いいたしますが、東京大学の工学部の教授、助教授というような人たちの部屋を全部一齊に家宅捜索した。これも去る十月十九日に行つておるのであります。この点につきましては、東京大学の教授の人たちからも、あまりに不当な家宅捜索のやり方に非常に非難の声が起つておるということを聞いておりますが、これもどういう嫌疑でだれの何という人の犯罪事実についてこれを行つたか。その捜査はどういうぐあいに家宅捜索の手続を行つておるかということを聞きたいと思うのであります。
  114. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 ただいまの東京大学の工学部の捜査につきまして、われわれの方で受けておる報告に基いてお答えいたします。この捜索の端緒でありますが、警視庁が今年の十月十五日に昭和二十五年政令第三百二十五号の被疑者として逮捕しました伊藤寧子の事件に関連しまして、昭和二十六年十月十七日文京区本郷一丁目七番地株式会社マミヤ光機製作所ほか数箇所を捜索し、押収したノート、メモ類等より被疑事実の容疑が認められたので、その配付場所の一つと認められた前記東京大学建築学科を十月十八日警視庁から係官が参りまして捜索、差押えの請求を東京地方裁判所にいたしまして、令状の発付を受けて、この令状に基きまして十九日午前七時から八時三十分までの間、この場所の捜索を実施した。このときの捜索の状況は平穏に執行を、終つたもので、執行関係職員である工学部長もこれに立会い、工学部長の了承を求めている等慎重に行われた。ところが執行の結果は差押えるものを発見するに至らなかつた、こういう報告に接しております。
  115. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今工学部長の立会いがあつたと言われますが、ところでこの捜索の箇所はどういうように指摘されておつたのでございましようか。これは工学部の教室、教授、助教授の部屋全部をやつたらしいのでありますが、この配付先ということになりますならば、これは特定しているわけなんでございます。それはどういうことになつておりますか。
  116. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 この報告ではちよつとその場所が東京大学建築学科というような報告になつて、少し具体的には出ておりませんが、もし必要ならば、その点明瞭に調べて、次にお答えいたします。
  117. 梨木作次郎

    ○梨木委員 だからこの点が実際の捜索になると問題なんでありまして、家宅捜索の場合でも、場所を非常に抽象的に漠然と書かれるというと、実際は現場で捜索にあたる人がその辺をずつと捜索するということで、同一建物におきましても、全然管理者やまた居住者が違うような場合に、一つの建物だけを指定してありますと、そこの中をみんな捜索して、捜索状に指定されておる以外の人たちに非常に迷惑をかけている実情を、たくさんわれわれは経験するのであります。本件の場合におきましても、私の方の調査によりますと工学部長の立会いがあつたというのは、これはもつとよく調べてもらいたい。私の方のでは全然この立会いなしで、特に部屋を調べる場合には、小使さんを外へ出しておいて、そうして中からかぎをかけて調べておるという状態なのであります。特に大田助教授の部屋なんかは全員が不在だつた。その不在のところを捜索しているというような事実もあるのであります。でありますから、この家宅捜索をするような場合の捜索令状の中にも、捜索すべき場所というのははつきりとして、あなた方が嫌疑をかけられておる、その特定の場所を他人に迷惑をかけないように特定されるということをしないと、非常に人権を侵害する結果になつて来ておるのであります。それから何を捜索するか、捜索すべきものをやはり特定してやらないと、ある範囲の特定をかなり厳重にやらないと、捜索に行つた人が何でもかんでも何か左翼的なものはみんな持つて来るというような実情になつておるのであります。この点も十分気をつけてもらいたいと思うのであります。
  118. 押谷富三

    押谷委員長代理 私から一点京都大学の事件についてお尋ねをいたしますが、この学生の処分ということが、将来のこの種の問題について、大きな関係を持つていると思うのであります。処分を誤れば、第二の京大事件、第三の京大事件が出て来ると思いますが、この当面の学生に対する処置は、大学当局はもちろん大学当局立場から、学生に対し適当な処置があると思いますが、政府としてはこの学生に対してはどういうお考えをお持ちになつているか、お伺いしたいと思います。
  119. 吉河光貞

    ○吉河説明員 委員長かちの御質問でございますけれども、あまり広汎な政府の政策に関することは、私ども事務当局として全然申し上げる立場でも、ございませんが、ただ団体等規正令の運用につきましては、学生団体の取扱いということにつきまして、相当慎重に考えてやつて行きたい。とにかく一人前の社会人ではない学生である。学校という集団生活の中でいろいろな事態をかもす。学校当局がおやりになる行政的な各種の処置というものと、私どもが規正令の運用として行われる団体の解散、追放とかいうような処分とは非常に違つた処分であつて、私どもとしてはこういうような団体の解散とか、追放というものにつきましては、非常に慎重な態度をとつて、将来ある若い学生諸君のことを、十分その点は考えて注意して行きたい。学校当局のおやりになる行政処分については何ら申し上げる立場にはございません。
  120. 世耕弘一

    世耕委員 特審局長にお尋ねいたしますけれども、団体等規正令でやられておるのだから、それに基いておやりになる方がいいんじやないですか。学生だから特別に取扱うということは、何か法的根拠が私はないんじやないかと思う。そういうような甘やかしの仕方をするから、他の大学がまたそれに乗つてつて来る。今日少年審判その他等もありますから、私は苛酷な取扱いをしろというようなことを言うのではないけれども、その規正令に基いて、行動した者に対しては相当の処置をすることが考えらるべきではないか。そうしないと、今度は学生だから騒いだつていいんだ、人を殺したつて軽く処罰されるのだという方面の思想の動きを、どういうふうに処置できるかということを、非常にわれわれ心配しておるのであります。文部大臣からあらためて私は聞こうと思うのでありますが、どうも最近は教育者が学生を甘やかす癖がある。これは小学校から同様であります。いたずらに個人を尊重するとか、人権を尊重するとかいう言葉にかられまして、教育の根本を失つて行く場合が多いと思う。私は愛情を失せよと言うんじやない。絶大なる熱情と同時に、教育者らしい態度は持していただきたい。同時に、今の問題のごときも法律的見地から一応審判する、そしてさらに第二義的にまた別な取扱いをするということはいいと思いますけれども、お互いに人格を持つておる間でございますから、むしろ公平に取扱うということをまず前提として御研究あることがしかるべきではないかと思います。この点はいかがでございましようか。
  121. 吉河光貞

    ○吉河説明員 もとより団体等規正令におきまする政治団体の行動というような面につきましては、学内、学外を問わず厳重にこれを励行いたしております。また団体等規正令に該当するような刑事犯罪につきましても厳重な調査を進める方針を持つて臨んでおるのであります。団体の解散並びにその役職員の追放と、いうような措置につきましては、十分慎重な調査を進めまして、学生の動きの実情に即応したような適正な措置を講じて行きたいと考えて、今研究しておるようなわけであります。全然甘やかすというような態度では、ございません。
  122. 世耕弘一

    世耕委員 もう一点伺つておきますが、少くとも大学等の学校の中へそういう政治活動をなすような団体を持たせることが適当であるかどうかということをお考えなつたことがございますか。
  123. 吉河光貞

    ○吉河説明員 これは文部当局としてお考えなつているやに承つておるのでありますが、的確な情報は入手しておりません。
  124. 世耕弘一

    世耕委員 文部省の考えじやなしに、あなたの方の考えでどうなさるか私は聞きたい。おそらくあなたの方の考えが推進力になるのであつて、文部省側からはつきりした態度をとるんじやないでしよう。ほんとうをいうと、文部省は及び腰です。
  125. 吉河光貞

    ○吉河説明員 実は学生なるがゆえに政治運動をしてはいけないという建前にはまだなつておりませんので、その点につきましては、別に区別した方針を持つておりません。
  126. 世耕弘一

    世耕委員 ちよつとそれはおかしい。私は学生だから政治運動をしてはいかぬと言つているのではない。政治的行動をする団体を大学の中に持つことが許されるかどうかという問題なんです。それはあなた方の見解がまず最初にならなければならないじやないかと思います。
  127. 吉河光貞

    ○吉河説明員 私どもといたしましては、やはり団体等規正令によりましてこれを運用いたしておる立場におりまして、団体等規正令によりましては、学内において政治団体をつくつてはならぬというような規定も、ございませんので、この問題につきましては、積極的な方針を持つていないのであります。
  128. 世耕弘一

    世耕委員 そうしますと、学生だけ特別な扱いをするということになるのですか。学校の中へもぐつて行動すれば、特別な恩典に浴せるということになるのですか。
  129. 吉河光貞

    ○吉河説明員 学内における政治団体は、これを調査いたしまして届出をさせておるような状況でございまして、全国の大学などに結成されました細胞、あるいは全国的な組織としての学連につきましても、届出をさせるということになつております。
  130. 世耕弘一

    世耕委員 もしそういうような不穏な行動があつた場合に、手入れいたしますか。
  131. 吉河光貞

    ○吉河説明員 もちろん他の調査と区別なく、厳重な調査をいたします。
  132. 世耕弘一

    世耕委員 これまでの前例があればその前例、並びにそれに関する問題についてお示し願いたい。なぜこういうことをお聞きするかというと、実は文部大臣に丁寧に御質問しようと思つたが、文部大臣はおそらく法律は知らぬだろうと思うから、あなたの方から予備知識を得ておいて、それから結論を言おう、こう思つている。決してあなた方を責めるとか、あるいは意地の悪い質問をしようとするのではない。これは非常に大事な問題です。こういうことを国会で論議することは、かえつてあなた方の立場を公明にすることだろうと思うので、お尋ねするのだから、そのつもりでどうぞ虚心坦懐にお返事願いたいと思います。
  133. 吉河光貞

    ○吉河説明員 学生関係の団体その他の問題につきまして調査したことは確かにあると思います。ただいま的確に申し上げるような資料を用意しておりませんので、さつそく資料を調査しまして、次会に御報書いたしたいと思います。
  134. 世耕弘一

    世耕委員 今共産党の梨木君から御質疑があつたのですが、大学の教授、助教授のところの研究室の部屋かしらぬが、手入れなさつたという話ですが、それはいわゆる細胞組織のメンバーの中に入つていて問題を起したのですか。それとも全然個人的な外の関係からそういうことをなさつたのですか。
  135. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 これは刑事訴訟法の規定に基きまして、特定な個人に対する被疑事実があつた場合に、刑事訴訟法上の手続でやつた捜査です。犯罪の捜査ということは特別審査局はやりません。
  136. 世耕弘一

    世耕委員 その捜査なさつた例といたしまして、大学を捜査したというのは、それは大学内で研究室を捜査なさつたのですか。それとも教授の自宅を、なさつたのですか。
  137. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 大学の中をやつたように私報告を受けております。東京大学工学部建築学科の中でです。
  138. 世耕弘一

    世耕委員 それは思想的背景ですか。単なる政治的なものですか。それとも何か破廉恥の問題ですか。
  139. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 これは政令三百二十五号違反容疑によつて捜査いたしたのでございます。
  140. 世耕弘一

    世耕委員 そういう場合には、大学当局に一応了解を求めますか。それとも職権をもつてただちに執行いたしますか。
  141. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 これは刑事訴訟法の規定に基きまして、この捜査すべき場所に責任者の立会いを求めまして捜査いたします。
  142. 世耕弘一

    世耕委員 そのときに、大学の自治のことについてへりくつをこねまわしたようなことはありませんか。
  143. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 これは刑事訴訟法に基いてやりますので、大学の自治は抗弁にはなりません。
  144. 世耕弘一

    世耕委員 なお念のためにもう一度承つておきますが、警察官が出動して、その治安を維持するような状態になつた場合、大学の中でさような犯罪が起つた場合の処置は、やはり一般的刑事訴訟法によつて処置なさると思うのですが、そうしますと、今度の京都大学の事件はどういうふうに御処置なさいますか。
  145. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 犯罪がもしあるという容疑を持つに相当の理由がありますと、これはやはり一般刑事訴訟法の規、定に基いて犯罪の捜査をやります。
  146. 世耕弘一

    世耕委員 今度の事件犯罪容疑なしと見ていますか、それともあると認められるのか。私の考えでは天皇の行幸が、国警側では十三分遅れたと言つていますが、新聞では十四分というから、一分くらいの差だが、とにかく十四、五分遅れたということは事実だ。文部大臣が昨日本会議説明したのには十五分ばかりと言つていますが、一分とにかく予定が遅れたということは事実なんです。それは中で熱心に説明を聞いていたから、十五分遅れたというようにつじつまを合せていたというふうにしかわれわれは聞いておりません。時間の食い違いが、偶然か何か知らぬが、それだけの食い違いがあるということだけは事実です。私はこれを見逃すわけには行かぬのであります。もし警備の手違いがあつて、十五分の食い違いが生じた場合に、私は大きな問題が起ると思います。当然これは治安の問題に触れて来る問題だと思いますが、学内におけるそういうような騒動が起つた場合に、これを単なる大学の自治というふうに軽く取扱うか、それとも犯罪の容疑ありとして、あなたの方で厳重な捜査をなさるか、その態度を承つておきたい。
  147. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 この事件につきましては、京都の地方検察庁が捜査をやつております。で、考えられますことは犯罪がもしあると仮定いたしますならば、これはおそらく京都市の條例違反もしくは暴行罪というような犯罪が想像できますけれども、これは目下捜査中でございますから、はたして犯罪があるかどうかということも今日まだわかつておりません。
  148. 梨木作次郎

    ○梨木委員 先ほど東京大学の工学部の工学部長が立ち会つたとおつしやいましたが、この工学部長のお名前はおわかりですか。
  149. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 ちよつとわかりません。
  150. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは工学部長のお名前を知らしてもらいたいと思うのでありますが、私の方に来ておる情報では大田学部長が捜査の途中で登校された。しかし最初から登校されて立ち会つたということは聞いておりません。従つてもしあなたのおつしやる、工学部長というのが大田さんだつたならば、少し事実と相違しておるようであります。御承知のように、これは大学でありますから、刑事訴訟法から申しますと、おそらく公務所ということになるのではないかと思います。そうしますとこの公務所の責任者の立会いなき限りは家宅捜索をするということは、刑事訴訟法から言つて違法であろうと思うのでありますが、こういう場合にはだれが立ち会うべき性質のものとお考えですか、これをひとつ伺つておきたい。
  151. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 それらの点につきましては、事実を詳細に取調べまして、この次お答えするようにいたしたいと思います。
  152. 押谷富三

    押谷委員長代理 この際暫時休憩いたします。     午後四時四分休憩      ————◇—————     午後四時十五分開議
  153. 北川定務

    ○北川委員長代理 これより休憩前に引続いて再開いたします。  それでは文部大臣が御出席になりましたから、世耕弘一君に質問を許します。
  154. 世耕弘一

    世耕委員 文部大臣に簡単に二、三点お尋ねいたします。先ほど京都大学事件について、特審局並びに国警から、それぞれ入手した報告を承つたのでありますが、今回文部大臣として京都大学事件内容の入手したことを御説明を願いたいと思います。なお昨日本会議で御説明なつた程度ならば、もうすでにほかの方から聞いておりますからよろしゆうございます。
  155. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 文部省からは今人を出して京都大学の方へやつておりますが、まだ帰つて参りませんので、京都大学からはまだ何の報告もありませんから、きのう本会議で報告した程度以上のものはまだございません。
  156. 世耕弘一

    世耕委員 それでは急所だけお尋ねいたしますが、京都大学へ陛下が行幸なさつたのは、陛下の御意思でお立寄りになつたのか、それとも大学の方から要請されてお立寄りになつたのか、その方はおわかりでございましよう。
  157. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 まことに申訳ありませんが、それはどちらであるか、はつきりわかつておりません。
  158. 世耕弘一

    世耕委員 天皇陛下が国立大学へ行幸なさるときに、これこれの目的で行まするということは、文部大臣に御報告はないのですか、これまでの慣例としてはありそうに思うのですが……。
  159. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 おいでになるというだけの御報告でございます。
  160. 世耕弘一

    世耕委員 なぜこういうことをお尋ねするかというと、陛下が御自由にお立寄りになつたのと、大学が要請してお立寄りになつたのとでは、この事件の取扱いの上に大きな差があると私は思う。それで実は前提としてお尋ねいたしたのであります。おそらく寄りたいから寄るというのではなくして、大学側から要請したのではないかというふうに私は判断いたしております。もしそうだとすれば、お客を呼んでおいてあのざまは何だ、大学としてはあまりにだらしがないじやないか、これはひとつ大臣としてはおしかりがあつてしかるべきではないか、こう思うのです。それともう一つは、陛下のお出ましになつているときに、学生が労働歌を歌つて騒ぎまわるというのはどういうわけか、そういうような教育を京都大学はしているのかどうか、学生の指導方針はどこにあるのか、賢明な文部大臣はこの点について相当苦慮をなされておることは私承知いたしておるのでありますが、どうも徹底していない。この点いかがですか。
  161. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 京都大学にこういうことが起つたことは非常にお気の毒だと思つております。なぜかと申しますと、前の学長も非常に熱心に学生を指導されてもし詳しく調べるなら共産主義の学生は京都大学は少い方ではないかと思います。けれどもこういうことが起つて来るには、学生全般にわたつて一種の風潮がありまして、私はそれを一体どうしたらばほんとうに正常な状態に置けるかということで非常に苦心はいたしても、年の若い君たちだものですから、すぐいろいろな世間のことを信用してしまつて、こういうようなことにもなつて来ると思うのです。私いつも学生に向つて言うことは、学問は研究してから判断をするのだ、むやみにいろいろなことを判断をしないで、よく研究をしてそれから判断を下せと言つたりいろいろいたしておりますが、結局こういうことが出て来るということは、私まことに相済まないことだと思つております。ただその動機はおそらくは学生が自分で考え出したことではなくして、何かそういう者を使嗾したとかいうようなこともあるのではなかろうかというように思つておる次第でございます。
  162. 世耕弘一

    世耕委員 文部大臣は哲人だから哲学的な見解から非常に蘊蓄のあるお言葉を承つたのですが、現状は必ずしもそうじやないと私は実は思つておる。先ほど特審局並びに国警の次長から承つたのですが、京都大学にはすでに共産党の細胞組織がある。そして団体等規正令に基いて届出が出ている。私は共産党であろうが右翼であろうが、そんなことは問題ではない。しかし学問の府に、ある一党一派をなす党を学内に組織さして、それをば公然と行動させるということで、はたして公平な学問の研究ができるかどうか、文部大臣この点はどうですか。
  163. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 御説の通りでございます。私も学問がそういう一党一派に偏したのではいけないと平生から思つておるものでございます。
  164. 世耕弘一

    世耕委員 もし私の意見と御同調くださるのでしたら、学内にそういう一党一派に偏する党派別の団体を組織して、公然と行動するということは当然差控えなくちやならない。これは厳重に申渡しをお願いいたしたい。それから先ほども申し上げましたが、労働歌を齊唱しておる。京都大学には校歌というものはございませんですか、労働歌以外に歌は……。
  165. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 大学の歌というのは、私の記憶するところではございません。今はあるかどうか、私も実は京都大学の出身者でございますが、明治四十五年の卒業でありますから、その後どういうことになつておるか、つまびらかにいたしませんが、どうもないように思います。
  166. 世耕弘一

    世耕委員 なければないとしていいのでありますが、労働歌を歌わないでもいいんじやないか。学生は労働者に低下したのですか。実はこういうことをお聞きするのは、あなたと議論するつもりじやないのですが、非常に大事なことだと思つて聞くのですが、最近世間で大分問題になつておる、大学の教授は労働者かという問題を、実は私ども取上げているのです。日本立法の基礎からいうと、労働基準法の九條かに照しますと、月給をもらう者はみな労働者という規定なつておる。だから文部大臣といえども労働者である。総理大臣もあの議論から行けば労働者ということになるのです。そこに大きな疑問を抱く。そうすると大学の教授は労働組合を組織して労働運動をやつていいのか、労働歌を歌つていいのか、こうなつて来る。そうすると学生が労働歌を歌うのはかまわないじやないか、これも合理的になつて来るわけです。しかしながら大学の教授は労働者なりということは、私たちの常識にはどうもぴつたり合つて来ない。こういうようなこともはつきりさしておく必要があるのじやないかと実は思うてお尋ねしているようなわけなんです。実はこういう問題は、日本国内だけでせんさくしてもだめだと思いましたから、私は私の名前でアメリカの大学——ミネソタ、アイオワ、ニユーヨーク、スタンフオード、メリーランド、イリノイ、オクラホマ、ハーバート、この大学の総長あてに、大学の教授は労働者か、労働組合を組織して労働運動をやつていいのか、あなたの方の国はどういうふうに考え、どういうふうに動いているかということを率直に返事してくれ、それと同時に大学の自治というものはあなたの方ではどういうふうに解釈しておるのか、という二点を航空便で先月問合せを発した。ところが向うから航空便で返事をくださつたのもありますし、普通便でくださつたのもありますが、それによりますと大学の教授は労働者じやない、こういう回答が来ているのです。大学の教授は労働者でない専門職である、労働者というような観念を持つておらぬということの回答が、これらの大学の総長から来ているのです。ところが日本ではこれがはなはだあいまいになつています。だから私の大学でも今問題が起つておるのですが、適当にあらざる教授と見て部長会議並びに教授会で罷免した者に対して、中央労働委員会で、その罷免を不当なりとしてもう一ぺん使えというような問題が実際問題として起つておるのでございますが、これは今裁判が係属中で、どういう結論になるかわかりませんが、とにかく大学の教授は労働者であるか、大学の自治はどういうものであるか、学生が労働歌を歌うということは、はたして時宜に適したものかどうか、こういうような点はこく常識的な問題でありますけれども、判断のしようによつては、深刻なある一つの真理の討究になると思いますから、ひとつ要領のいい御返答を願いたいと思います。
  167. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 大学の教授は、国家教育公務員ですが、国家教育公務員はそういう任意団体をつくることはできるのですが、労働組合はつくれないことになつております。一体労働者という言葉は、私どもどうかと思うので、勤労者と言いたいくらいでございますが、しかし労働者といつても、大学の教授は特殊な労働者というようになつております。従つて普通の意味の労働組合は組織できないということになると思います。学生がそういう労働歌を歌うというようなことは、これは私は非常に不適当なことだと考えております。
  168. 世耕弘一

    世耕委員 近ごろはドイツのアルバイトという言葉を用いて、労働者というのが、アルバイターという言葉で学生間に使われ、これが近ころ流行しておるようでありますが、どうも最高学府、しかも権威ある京都大学で、陛下を迎える前後において労働歌を歌うということは、いかにも不見識だと思う。実はなぜそう言うかというと、ゆうべの東京新聞の社説を文部大臣ごらんなさつたでしようか。——先ほどもこの委員会ちよつと私は読み上げたのですが、まことに深刻な批評が出ております。国民は、ああいうような労働歌を歌うような学生に血税を納めて勉強させているんじやないという意味のことを社説に掲げておりますが、こういうことに関しまして、文部大臣はどういうふうに御判断なさつていらつしやるか、まずそのところを簡単に承つておきます。
  169. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私も国立大学の学生が、非常な国民のつらい金をもらつておるにもかかわらず、そういう労働歌を歌うような思想傾向になるということは非常に残念なことだと思います。
  170. 世耕弘一

    世耕委員 時間がないので簡単に片づけて行きますが、行幸に先だつて、治安その他の万全を期するために、特審局はもちろんのこと、国警の京都地方警察が大学当局に対して十分な打合せをしたそうでございます。ところが、それに対して、京都大学の方では、大丈夫だ、学内の自治、治安は私の方で守るから、一切学内に警察は入らないようにしてくれということの要求があつたから、実は遠慮しで入らなかつた、もしあのときに少しでも警官の配置をしておつたならばこんな不祥事は起らなかつたであろうということを、京都の永田市警本部長が談じておるのですが、こうなつて来ると、京都大学当局は、学生の動きとか、学生がどういう思想を持つておるか、どういうふうな行動をしておるかということについて、常に無関心であつたということが非難されるのであります。またもう一つ深刻な解釈から言うならば、むしろそれを奨励していたんじやないか、国警並びに自治警あるいは特審局から、いろいろな忠告をなしたにもかかわらず、これを軽く取扱つておつた。むしろ学生のデモの便宜をはかつたような結果がここに現われて来るのであります。文部大臣は事情が一切わからぬとおつしやれば、後刻問題を明らかにしていただかなければならぬが、この問題は簡単に取扱うべき性質のものではないと私は思います。
  171. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 京都大学は先ほども申しましたように、前の鳥養学長でも今度の服部学長でも、非常に熱心に学生を指導しておられます。これは教育界の人もすべて認めておるところだと思います。ただ警察との連絡があつたそうでございますが、今の学生を扱うということは非常にむずかしい。これはよく御了解をいただきたいと思うのです。あらかじめ警官を入れたらよかつたということは、あとからは言えますけれども、その前には、はたしてそれがいいかどうかは非常に疑問である。これは、どういうわけかわかりませんが、学生は警察というものに対して非常に敏感であつて、警官を学内に入るということは、学生にとつて非常に大きい影響を持つものです。それで京都大学当局は、自分らの力でこれをやろうと思つたことと思います。どころが大学自体には何の力もないのですから、こういうことが起ると非常に困つたことになつて来る。その間は京都大学学長としては非常な苦労をされて来たことだろうと思います。決してこれを軽々に考えたわけではないということを、世耕さんにひとつ御了察をいただきたいと思います。
  172. 世耕弘一

    世耕委員 妙な言いまわしをされたように私はとれるのでありますが、京都大学の事件は今度初めてではないのです。前回も事件を起して、本委員会は特別に調査員を派遣した事情があるのです。いわばいわくつきの悪質の大学なのです。ほんとうを言うならば、むしろ警官をこつそり目立たないように、学生を刺戟しないように配置することが、今度の処置としては常識的なのです。それをしなかつたというところに欠点がある。前の鳥養学長も今度の学長も、人格のりつぱな方で、苦心されていることは私はよく知つています。けれどもこういう問題について十分の手配がなかつたということは、先ほど国警並びに特審局の方が言つております。ことにプラカードを持つて押しかけて来るなどということは、計画性がなかつたらできるものではない。その計画がわからなかつたということは、大学当局が無能だということである。無能でなかつたら無関心、しからざればそういう便宜を彼らに与えたという、この三つしかない。私はそういう悪い意味でそれを取扱いたくない。  もう一つ私のねらいは、京都大学の不祥事件をきつかけに、教育の根本をあなたに建て直してもらいたい。指導精神を確立してもらいたいというので、実はつつ込んでいるのです。一京都大学の問題を取上げてかれこれ言うのではありません。あるいは学長に責任を負え、あるいは指導部長に責任を負え、そんなけちなことを言うのではない。大体今日学生が労働歌を歌つたり、非常識きわまる行動をするということには、教育者に責任がなくてはならない。その教育者の責任をどこで発揮するかということを、賢明な文部大臣からこの機会にはつきりと言明を得たいというのが私の希望なのです。これも新聞の論調から申し上げますならば、労働者ならともかく、最高学府の学生が、天皇に対して、平和をどうしてくれるのこうしてくれるの、再軍備をどうしてくれるの、あるいは天皇制をどうしてくれるのというような、決議文とか公開状を書いて渡そうとした、これがすでに非常識だ、憲法を知らないものである。日本の憲法を一目見たらそれくらいのことはわかりそうなものじやないか。天皇はただ国家、国民の象徴であつて、昔の旧憲法のような権限がないということは一目瞭然だ。それを最高学府の京都大学の学生が麗々しくやつたということは、教育者として恥じなくちやならぬじやないか、こう私は言いたい。これはひとり京都大学ばかりじやありません。われわれは教育全体に通じて目ざめなければならない、改革しなければならない重大な時期に今当面しているのです。だからこの機会に文部大臣の御抱負を承りたい。最近承れば、新しい道徳律を確立した御声明があるように承つておりまして、私は心強く思つておつたが、一向に出ないのを私はむしろ遺憾に思う。なおまたかつてはレッド・パージの問題で、世間がかなり騒ぎましたけれども、立消えになつてしまつた。そういうような問題が、ひいてはこういう京都事件のような、学生の甘えかけた事件発生させたのではないか。きようは御説を承り、教育の大本をほのめかしていただきたい、かように考えるのでありますが、この点はいかがでありますか。
  173. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 京都大学の出来事については、世耕さんのおつしやる通りで、私どもはそうおつしやられれば一言もない、ただ自分たちの至らないことをおわびするほかはありません。これは一体どうしたらできるかということは、非常にむずかしい問題でありまして、今の京大のような大きな大学になると、ますますむずかしくなる。ことに法経の学生の数が非常に多いということになると、これはなかなかむずかしいことであります。やはり学長がいくら熱心でも、教授がそれに協調してくれなければだめなのです。教授が学長にほんとうに協力してくれれば初めてできることでありまして、その点が非常に遺憾だと思つております。学長に協力してそういうものをしずめるというと、これは保守反動だと言われるおそれがあるから、それでどうも人情としてはそういうことをあまりやらない、あるいは積極的に、むしろ学生の意を迎えるというような人も皆無ではないかと思うのであります。だから問題は、教授諸君がほんとうに学長と一緒になつてやつてくださるということ以外に道はないように思います。しかし一方においてそういうことをすると同時に、学生の生活を安定してやるということも、非常に重大な問題であります。私が育英資金というものに対して、非常に大切なことと思つてそこに力を入れておるのもそのためでございます。一方においては学生の生活状態をよくすると同時に、他方においては教授諸君に、ほんとうに熱心に教育者という立場を自覚してやつていただくことが、さしあたつて私の今考えておる点であります。
  174. 世耕弘一

    世耕委員 学生の補導という問題について、もう少し積極的な何かお考えはございませんか。このままではいけない。今大臣がおつしやるように、どうも学生を指導する、あるいは補導する教授が、むしろ煽動役にまわつた例なしとは言えない。かえつてむしろその方が主でこんな問題が起つて来たのではないかという懸念もわいて来るのであります。そこでそれはそれとして、教授陣営の改革も必要でありましようが、さしあたつて学生を補導すべき、もつと何か文部省として対策がなくちやならぬと思うが、この点はお考えございませんか。
  175. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 実は私は二年間、京都大学の教授時代、学生課長を兼ねて、学生の指導ということもやつてみた経験もありますが、その後学生の補導都というのを非常に弱くしてしまつた。これは戦時中などのいわゆるあつものに懲りてなますを吹くというようなことで弱くしてしまつた。そこに一つの難点もあると思つております。だからこれを強化することが必要だ。その予算も出しておるつもりでございますが、そういう点がすべて都合が悪くなつて来ている。また一般の世間の風潮も何かこの進歩的とかいうようなことがはやつて来て、学生をしつかりと引締めて行くという風がどうも足りな。これというのも、戦時中あるいは戦前、いわゆる極端な国家主義でもつて、個人というものを無視して、ただ国家がよければ個人はどうでもよいんだというようなふうのやり方をあまりしたために、その反動として何でも個人というものばかり主張するという、非常にそういう傾向が学生ばかりでなく社会に強い。社会に相当有力な方々でもそういうような主張をしておるというような、全体の雰囲気が学生をこういうようなことに導く点もあるというふうに自分は思つておる。これを簡単に正道にもどすということがなかなかむずかしい。けれども自分たちはできるだけのことをしようと思うのです。ただ今世耕さんのおつしやつてくだすつた、私がみんなの参考になるような日常生活の指針というようなものをひとつ出そうというようなことを考えるのも、そういう意図によるものでございます。
  176. 世耕弘一

    世耕委員 御経験のおありになつた当時の天野学生部長というような人が——あなたのあとを継がれるような人物があれば、こんな問題は私は出なかつたと思う。  なおこの新聞等の情報その他の情報並びに今報告を受けてみますると、京都大学の学生ばかりでなしに、近所の学生も集まつて来て騒いでいるようです。これは学生部長だとかあるいは補導部長とかいうような者は、全国的にそういう連絡を保つて、緊密な関係を持たなければ救い切れないんじやないかと私は思いますが、それはただ国立大学だけのお考えで今の御計画をお持ちになつておられるのか。また公私ともの大学を標準にしてお考えなつておるのか。部分的には京都の実例でよくわかる。京都大学へ応援に行つたり、あるいは京都大学から出かけて来たりするのに、他の大学、私立大学その他が入つておるということは今報告を受けておるのですが、こういう点について、何かもつと進んだお考えがおありになるか、どうか。
  177. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 その点につきましても、たとえば京都なら京都の、そのブロックでそういう補導部の人たちが集まつて、しよつちゆう連絡はとつておるのでございますが、しかしそれにもかかわらず、一ところに事が起ると応援に行くとか、あるいはこういうこともあるのでございます。前に京都大学でもつて総長をかん詰めにしたような事件があつたのですが、そのときも調べてみれば学生は少数であつて、みんなわきから来た学生でないものが多数入つてつておるというようなことがありまして、今度のこともやはり他からも応援に来ておるのではないかと私も思つております。
  178. 世耕弘一

    世耕委員 まだこまかい点がございますが、文部大臣はあまり情報などをまだ入手されておらないようでありますから、これ以上のことをお尋ねすることを避けますが、この問題をきつかけにしてお尋ねしておきたいことは、大学の自治という問題であります。この大学の自治ということをときどきはき違えて、あるいは警備しなくちやならぬところに警備しなかつたり、またすべからざるところへやつたりするという点が非常に多いのです。だから大学の自治というのはどういう程度に限界があるのか。この点は特に法務総裁からもお尋ねしておきたいと思います。
  179. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 これは世耕さん、ひとつ政府委員からお答えさしていただきたいと思います。
  180. 稻田清助

    ○稻田政府委員 法制的に申しますれば、ただいま教育公務員特例法がお話の大学の自治に関連する規定を持つておりまして、主としてこれは人事に関するものでありますが、ねらいどころは学問の研究の自由を保とうという点にあるわけでございます。場所的に大学の領域を管理いたしますることは、これはもちろん学長の責任でございまするけれども、大学の区域といえども治外法権ではないわけであつて、社会上あるいは大学内の秩序を維持する意味におきましては、もとより警察官の助力を必要とするわけでございまするが、この点におきましては、問題は法制的以上に、先ほど大臣から申されましたように、教育的の観点から見て、そういう領域を教育にふさわしい状態に保とうという点において、ときとして大学の自治という言葉が引用されますけれども、これは法的のものとは考えられないのであります。
  181. 世耕弘一

    世耕委員 京都大学はすでに大学の自治が数回破壊されているのです。今度なんかもその破壊された事実を認識しておれば、こんな不詳事は起さなかつたはずなんです。それはなぜかというと、大学の自治ということを偏重しているからです。服部学長の談話として新聞に発表されておるようでありますが、これによりますと「服部京大学長談、非常に混雑したので警察に整理を要請した。幸い事故がなく終つたが云々、」というようなことを書いております。事故がなくて終つたのでなくして、事故があつたのです。学長はこれを事故だと思わないのです。この日本の国家を象徴する天皇が行幸した、そうしたところにプラカードを立てて押し合つたり、十五分の予定を延ばさなければならないようにしたりすることは、外国の物笑いなんです。日本国内の自治は大学ですら、学生ですら、こんな状態じやないかということを言われると、国外に日本の国の信用を落したということは、これはもうあまり論ずる必要はないと思う。こういう解釈が、私から言えば、誤つている、時代遅れなんです。何回もすでに京都大学は事件を起しているんだから、今度は万全の処置を講じてみたのだが、なお足らなかつたというのなら、気の毒だが、誠意がないのだ。また極端な議論をする人からいえば、京都大学全体が怪しい。こんな大学に予算をやる必要はないじやないか、もつとほかの大学べまわした方がいいじやないか、こういう疑問が、真相をうがたない者には出て来るわけである。これははなはだ私は遺憾であると思う。大学自治ということはまことにけつこうなことであるけれども、自治の内容をはき違えないように私はすべきだと思うので、この意味においてお急ぎのようだから、法務総裁からひとつ承つておきますが、もうすでに特審局長並びに国警その他では、数日前からこういろ騒動があるだろうということは承知しておつた、情報が十分入つていた。今度はやるぞということがわかつておつた。これほどはつきりわかつていたのに、なぜ京都大学の中へ警官を配置して、この醜態を未然に防ぐことができなかつたか。結局法務府自身も及び腰じやないか。大学の自治というようなことが頭へはつきり入つていなかつたから、こういうことになつたのではないか。もし私がかりにそういう立場におつたら、この間もこういうみそをつけたじやないか、この上にみそをつけることは国家のために許しがたいからやるといつて、私は断固としてやつたであろうと思う。どういうわけで、なぜ遠慮したのですか。
  182. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法務府といたしましては、特審局におきまして大体の情勢判断をいたしておりますので、関係者でありまする大学当局並びに京都市公安委員会に対しては、相当な警告を発しておるわけであります。その警告に対して措置されたのは、公安委員会並びに大学当局でありまして、これ以上特審局といたしましてはかれこれさしずをいたす権限がないわけでございます。
  183. 世耕弘一

    世耕委員 そうなつて来ると、京都大学の当局が非常な大きな失策をしたということになつて来るのですが、文部大臣はどうお考えになりますか。
  184. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 それはもうそういうよりいたし方ございませんが、ただただいまの、事故が起らなかつたとかいうようなことは、はたして新聞の通りに学長が言われたものかどうかわかりません。よく私などが談話をしても、その通り出ないこともあります。ただ私は今の学長は、ことに医科の方で非常にりつぱな方で、また手腕もおありの方で、まだ学長になつたばかりですから、いろいろふなれな点もおありだろうと思います。私も京都大学に対して——世耕さんができごとをとらえておつしやられれば、これはまことにいたし方ない。私どもは申訳ないというよりいたし方ございませんが、しかし京都大学の前学長も、今度の学長も、こういうことには非常に熱心になさつているということを御了察いただきたいと思います。かつ警官を学内に入れるということの持つている意味、それが学生に及ぼす心理的な影響、そういうものもこの際お考えいただきたいのであります。出た結果からいえば、おつしやられる通りであります。こういうように考えまして、結果についてはおわびいたすよりいたし方がないと思います。
  185. 世耕弘一

    世耕委員 見通しがなかつたということなのです。結論は結局感覚が鈍かつたということなのです。服部学長の人格その他について、私よく存じ上げております。服部学長がそういう難局に立たれたことは、むしろお気の毒だと思う。それは前の総長も同様であります。しかしながら、大学自体が総長の意思を継いでその通りつているかどうか、行つていないということが今度の不祥事の発生じやないかと思う。そこを実は改革してもらわなくてはならぬ、こういうふうに申し上げておるのです。  ただ総長がその主たる責任の立場なつておるから、お話申し上げるわけであります。そういうわけですから、この点は特に十分に御注意願いたいということをお願いいたします。  要するにお尋ね申し上げたことは、大学の自治という問題について明確な責任を持つていただきたい。いやしくも大学の自治を高揚する以上、その自治に対する効果を現わすことに努力していただきたいということと、かくのごとき事件がもしうやむやに京都大学で葬られるようなことがあつたとするならば、これを契機として他に及ぼすことを憂慮いたす関係から、特に問題の御善処をお願いしたいと思いまして、質問いたしたつもりであります。これで終ります。
  186. 北川定務

    ○北川委員長代理 本日はこの程度にいたし、明日は午前十時三十分より開会いたします。     午後四時五十四分散会