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1951-11-09 第12回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月九日(金曜日)     午後二時十八分開議  出席委員    委員長代理 理事 押谷 富三君    理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君       鍛冶 良作君    高橋 英吉君       牧野 寛索君    松木  弘君       眞鍋  勝君    小野  孝君       石井 繁丸君    猪俣 浩三君       梨木作次郎君    世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         検     事         (法制意見参事         官)      位野木益雄君  委員外出席者         検     事         (法務府特         別審査局長)  吉河 光貞君         検     事         (法務府         検務局長)   岡原 昌男君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十一月七日  仙台法務局津谷出張所存置請願大石武一君  紹介)(第七三二号)  大阪拘置所移築反対請願押谷富三君外一名  紹介)(第七七三号)  同(石井繁丸君外三名紹介)(第七七四号)  同(大西正男君外四名紹介)(第七七五号) の審査を本委員会に付託された。 同月八日  法務局高須出張所存続に関する陳情書  (第五三九  号)  高須町に簡易裁判所設立に関する陳情書  (第五四〇  号)  高知地方法務局出張所存置に関する陳情書外六  件  (第五四一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  会社更生法案内閣提出、第十回国会閣法第一  三九号)  破産法及び和議法の一部を改正する法律案(内  閣提出、第十回国会閣法第一四一号)  法務行政に関する件  検察行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 押谷富三

    押谷委員長代理 これより会議を開きます。  まず法務行政及び検察行政について調査を進めたいと存じます。梨木委員より発言の通告がありますから、これを許します。梨木作次郎君。
  3. 梨木作次郎

    梨木委員 私は去る十月十七日の委員会におきまして、わが党の細川嘉六議員外三名の公職追放の問題に関連いたしまして、法務総裁質問いたしたのであります。その際時間の関係もあり、さらに総裁答弁に納得できない点もありましてこの点はいずれ速記録も検討いたしまして、質問することを留保しておいたのでありますが、この点に関してさらに質疑を続けたいと思います。  前回委員会総裁答弁によつて明かになつたことは、細川嘉六君外三名の国会議員追放は、昨年六月六日の最高司令官指令に基いて行つたものであるというようになつておるのであります。そしてそれは昭和二十二年勅令第一号に基いて国内的には措置したのだというようになつております。まず伺いたいのは、昭和二十二年勅令第一号の公職に関する就職禁止退職等に関する勅令を見ますと、好ましくない人物公職から追放するにあたりましては、同勅令の第四條によりまして、公職適否審査委員会審査の結果に基いて内閣総理大臣がこれを行うということに相なつておるのであります。そこで公職適否審査委員会に何年何月幾日におかけになつて、どういうような結果になつたのか、これをまず伺いたいと思います。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公職適否審査委員会にはかけておりません。
  5. 梨木作次郎

    梨木委員 公職適否審査委員会というのは現在廃止されておると承知しておりますが、その通りでありますか。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その通りであります。
  7. 梨木作次郎

    梨木委員 この公職適否審査委員会はいつ廃止されたか私ははつきり期日を覚えておりませんが、とにかく本年の十月六日現在には存在しておらないことは政府もお認めになると思います。その点いかがですか。この点に関達しまして、いつ廃止されたかも御答弁を願いたいと思います。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いつ廃止されたかはわかりません。それから十月六日というのは九月六日の間違いだと思いますが、当時なかつたことは確実でございます。
  9. 梨木作次郎

    梨木委員 公職適否審査委員会が廃止されておるのでありますが、これが廃止されたのは、実はこの二十二年の勅令第一号に基く公職追放というものは今後もうやらないということで、この公職適否審査委員会が廃止されたと私どもは聞いておるのでありますが、そうではありませんか。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 おそらくそういう都合であろうと思います。
  11. 梨木作次郎

    梨木委員 ところが、このたびの細川嘉六君外三名の公職追放は、二十二年勅令第一号によつておやりになつたということになりますと、公職適否審査委員会にかけておらない。するとこの勅令の規定する手続に違反してなされておるということになると思うのでありますが、これはどういう御見解でありますか。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 一々の手続まではこの勅令一号によつておりません。ただ追放をするということが勅令一号の骨子でございますので、この骨子に従いましてそういう処置が行われたわけであります。
  13. 梨木作次郎

    梨木委員 今の政府の御説明だと私よくわからないのであります。少くとも二十二年勅令第一号による限りは、第一号の規定する手続によらなければならないと思うのでありますが、一々はこの規定によつてやる必要がないというようなことは——法治国におきましては法律嚴重に遵守してやるというのが建前でなければなりませんが、その法規の規定しておる手続に違反して一々その通りにやらなくてもよろしいというような解釈が成り立つならば、これはまつたく法令というものを無視することになりはしないかと思うのですが、いかがでしよう。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これはさきにも申し上げましたるごとく、昨年六月六日の指令に基くものでございまして、その指令趣旨に従いまして、勅令一号により追放せられるものと同様な取扱いをしよう。これは追放処分をするという点において同様の取扱いをしろという趣旨でございまして、もともと勅令一号におきます審査委員会というものは、特別の指令によるのではなくして、いわゆる昭和二十一年の覚書該当者として追放をいたします場合に、はたして覚書該当者たる事由ありやいなやという点をこの審査委員会において審査をするということが目的でございます。従いまして、今回は昭和二十一年の覚書によるものではございませんから、この審査委員会に付する必要がなかつたわけであります。
  15. 梨木作次郎

    梨木委員 一九四六年の一月四日の覚書趣旨というものは、戰争中あるいは戰争以前におけるところの、覚書にそれぞれ該当する好ましくない行動のあつたものを公職から排除するというのであります。ところがこのたび公職追放された細川嘉六君外三名は、さような事実はなかつたということで、すでに国会議員に立候補する際には、政府自身が、この公職より除去されるような好ましくない人物であるかどうかを調査し、公職に適当するという、つまり資格審査の証明をもらつて立候補しておるのであります。従いまして、この覚書趣旨からいつても該当する筋合いのものではないと思うのでありますが、これはどういうことになりましようか。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 お説の通り、先般追放の諸氏は、戰争中あるいは戰争前の行動によつて覚書の事由に該当するという趣旨ではございません。これは終戰後行動によつて追放指令があつたものであります。
  17. 梨木作次郎

    梨木委員 だからこの終戰後行動については、この覚書並びにこの覚書に基いて出されている二十二年勅令第一号による追放ということは実際はできないのじやないですか。これはどうです。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 総司令部の特別の指令がなければ、むろんできないのであります。
  19. 梨木作次郎

    梨木委員 そこでこのたびは、政府説明によれば一九五〇年六月六日に特別指令があつた、こうおつしやるのでありますが、前会からの答弁によりますと、そういうように理解されるのであります。ところで一九五〇年の六月六日の指令では、はつきりと日本共産党中央委員二十四名と限定しているのでありますが、これを拡張してさらにこれを運営するということは、特別の指令がない限りはできないものと考えるが、その特別の指令というものはあつたのかどうか、これを伺いたいと思います。
  20. 大橋武夫

    大橋国務大臣 最高司令部解釈によりますと、一九五〇年六月六日内閣総理大臣宛の書簡におきましては、共産党中央委員会の全員を公職から罷免し、排除し、彼らをして一九四六年一月四日付の指令並びにこれを施行するための命令に基く禁止制限並びに義務に服せしむるために必要な行政上の措置をとるように指令する、こう述べられてあるのでありますが、この指令はその後におきましても、同様の條件に該当するものがあつた場合には、同様の行政上の措置をとるべきであるという意味を含めた趣旨であると解釈せられております。
  21. 梨木作次郎

    梨木委員 その解釈が非常に問題でありまして、私は前回質問でも申しましたが、この昨年六月六日の指令というものをさように拡張解釈することが許されるといたしまするならば、これは政府の一存によりまして、国民が選んだ国会議員までも、行政処分追放するというような重大な結果をもたらすのであります。そこで私は聞きたいのでありますが、この六月六日の指令というものの解釈を、一体そのように拡張して解釈してよろしいのかということ、その解釈内容、これはどういうふうに理解したらよろしいのか、もしもこういうような拡張解釈が許されますならば、まつたく国会議員もまた国民の基本的な人権というものも、この角度からくずれ去つて行くだろうと思うのであります。従いましてこの点についての解釈というものが、いつそのように拡張して実施してもよろしいというぐあいにきまつたのか、またその解釈内容というものをはつきり伺いたいのであります。
  22. 大橋武夫

    大橋国務大臣 一九四五年の九月三日に、最高司令官指令第二号というのが布告せられたのであります。この第一部総則という章に相なつておりますが、その第四項におきまして、「連合国最高司令官権限ニ依リ発セラルル一切ノ布告、命令及訓令ノ正文ハ英語ニ依ルベシ日本語翻訳文モ発セラレ相違発生スル場合ニ於テハ英語本文ニ拠ルモノトス」こういうふうに書きまして、その後段に、「発セラレタルレカソ訓令意義ニ関シ疑義発生スルトキハ発令官憲解釈以テ最終的ノモノトス」かように訓令が出ておりまして、日本政府といたしましては最高司令官指令についての解釈は、この一九四五年九月三日指令第二号の訓令趣旨によりまして、発令官憲解釈に拘束せられておるわけであります。
  23. 梨木作次郎

    梨木委員 その点はわかりました。でありますから、私は聞きたいのであります。発令官憲にその解釈がまかされておるというのでありますが、しかしながらこの六月六日の指令を私どもが読みますならば、これは明らかに二十四名だけに限定されておる。それを拡張されるということになりますならば、どのように拡張したのかということが、われわれ人民に知らされなければなりません。でないとまことに不安なものであります。だから私は連合軍最高司令官がこの指令解釈する権限專権的に持つておるというのはわかりますが、じやどういうぐあいに解釈しておられるのかというその解釈内容というもうが示されなければなりません。具体的に申しますならば、今までだつてこの指令解釈について疑義がある場合には、日本政府も尋ねております。そうして一つ指令解釈についてまとまつた結論というものが出ておるのであります。私はそれを聞きたいのであります。そうでないと拡張解釈司令部專権であるということで、一切がそのようなことでやられるといたしますならば、私はこの前にも申しましたが、このたびは日本共産党国会議員に対して追放という処分がなされましたが、一朝立場をかえますならば、すべての国会議員に対してこのような追放をなす可能性が出て来るではないかということを私は心配するがゆえに、この解釈内容について明快な御答弁を願いたいと思うのであります。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもはこの指令によりましてすべての国会議員追放されるという可能性を全然考えておりません。この六月六日の指令というものの解釈が、もしどうしても詳しくお聞きになりたければ、これをよくお読みになりました上で、発令官憲行つてお打合せをいただくことが適当かと存じます。
  25. 梨木作次郎

    梨木委員 私は以前に政府に対してこういう質問をしてあるのであります。今まで連合軍最高司令部からいろいろな指令が出る、あるいはいろいろな命令が出た。ところがその指令命令を出す権限を持つている人がだれに対してそういう指令命令を出したかということが、国民の前に明確にされておらなかつた。そのために、これは命令であるとか指令であるとかと言つて日本官憲が非常に不当に日本人民基本的人権を侵害するような行為があつたのであります。そこで私は政府に対しましてこのような場合に——たとえば具体的な個々の集会を禁止するという指令が出たといつて禁止して来る。しかしわれわれから言えば、その指令命令というものが国民に知らさなければ、その適法な根拠というものを知るすべもない。そういうことから基本的な人権官憲專権によつて蹂躙されるという危険を感じましたから、これは明らかにそういう指令だとか命令というものは、国民の前に公表すべきものだ、公示すべきものであると考えるが、政府はどういうぐあいに理解しているかということを質問したときに、その際にはあくまでも公表すべきであるということを政府は答えておるのであります。これは私が文書で政府質問して政府答弁がそのようになつたのであります。法務総裁は、すべての国会議員がそのように追放されるすうなことは考えられないとこの前もそう言われましたが、しかしそれは政府が單に考えないというだけのことによつて、少しもわれわれ国会議員としての地位は保障されないのであります。政府がどう考えようとああ考えようとわれわれは法律によつて保障されているということの建前が、はつきりと打ち立てられない限りは安心することができないのでありますから、やはりこの指令解釈というものを明確にしておくことが必要だと思うのであります。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 指令解釈はその都度明確にいたしております。
  27. 梨木作次郎

    梨木委員 だから私は、今の点は明確でないからどうかひとつ教えていただきたい、こう言つておるのであります。ところがあなたはこれをその指令を出したところへ行つて聞きなさいと言われる。しかし私はこの指令はつきりしないから、政府責任においてこれを明確に国民に明示すべきであるというように要求するのでありますが、その点いかがですか。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 一九五〇年六月六日の指令は、これは読んで字のごとく明らかであると考えております。従いまして、特にこれの解釈について疑問を持つというふうには私ども考えておりません。
  29. 梨木作次郎

    梨木委員 それではもうそれ以上押問答してもしようがありませんから、質問を次に移します。  私は前回委員会におきまして、追放理由説明を要求したのであります。ところが法務総裁は、ただいま説明すべき段階ではないと、こう申されました。しかるに九月六日の参議院の文部、水産連合委員会におきましては、吉橋敏雄説明員法務総裁の指示に従つて明らかに追放理由というものを説明しておるのであります。これによりますと、今度の追放というものは、これらの人々日本共産党臨時中央指導部委員であつたというここと、それからこれらの人々が「法令に基く権威に反抗し、しばしば占領軍に反抗、反対し、及び虚偽煽動的又は暴力主義的傾向を助長、正当化する言動に出でたものと認められる。」ということが公職追放理由になつておるのであるとの説明がありました。ところがこれに対しまして、これは間違いだと政府はおつしやつております。しかし私は少くとも法務総裁部下国会議員に向つて国会においてこのように明快に説明したことが間違いでもつたということ、それだけで一体責任が果されるかどうか、私はこれは重大な問題だと思うのであります。なぜならば、私が説明するまでもなく、国会というものは国権の最高機関であります。政府というものはこの国会から選挙によつて構成されるものであります。いわば国会議員主人であります。主人と言うと語弊がありますが、人民主人であつて、ここから選ばれた代議員としての国会、この国会で決定されたことを執行するのが政府ではありませんか。この政府行政的な処分によつて主人である国会議員追放しておる。しかもその理由国会において説明しておる。それが間違いでありましたということ、そういつたことで私はこの点の責任が、責任を感ずる者の処置としてこのまま放置することはきわめて不当であると思うのでありますが、法務総裁はこの点についての責任をどういうふうにお考えでありますか。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 間違つたことを間違つたままにしておくこと、これはまことに不都合でございまするから、間違つたこととして正す、これが責任のある措置であると考えます。
  31. 梨木作次郎

    梨木委員 正すのはけつこうなんであります。しかしながら正しただけで私がこのような間違つた報告国会に対して行つた吉橋敏雄君に対してどのような処分をされたかということを聞いたところが、單に注意を與えたにすぎないとおつしやるのでありますが、これでは私はその責任を明らかにする点において、きわめて不適当なやり方であると思うのでありますが、どうお考えでありますか。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 部下の過失に対しましていかなる措置をとることが適当か、これは私はやはりその上司において十分に考えるべきここと思うのでありまして、これについて梨木君から御批判は、これは自由であります。私自身としましては、諸般の状況から見まして、これは注意を與えればそれで十分である、こう確信をいたしておるわけであります。
  33. 梨木作次郎

    梨木委員 ところで法務総裁参議院委員会におきまして——当時は九日の六日であります——逮捕された人人の容疑事実について、どういう容疑逮捕したのかということの大野幸一君の質問に対しまして、今捜査中であるということで答えられなかつたのであります。しかしすでにもう逮捕された人々は釈放されております。従いまして、もはや捜査中を口実にこの逮捕の具体的な容疑事実を隠す何らの理由もないと思います。そこで逮捕理由について御説明願いたいと思います。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 本件は前回委員会においても申し上げましたる通り容疑者逮捕せられたる方ばかりでなく、他にも多数の人があるわけでございまして、この他の人々につきましては、いまだ逮捕に至つておりません。従いまして、事件全体といたしまして、なお鋭意捜査中に属しておるわけでございまして、いまだこの内容について御説明をする段階に至つておらないことをはなはだ遺憾といたします。
  35. 梨木作次郎

    梨木委員 法務総裁はそういうことをおつしやいますけれども、これはあまりにも官僚的秘密的であり、また捜査中であるからとおつし、やいましても、すでに逮捕された人は釈放されておるのですよ。この人から逮捕理由を聞こうと思えばいつでも聞けるのでありますよ。それをこの国会において説明できないというようなこと、しかもそれを捜査に籍口してできないということは、あまりにも国会審議権に対してこれを尊重しない態度であろうと思うのでありますが、それでも総裁はやはり今でも捜査に名をかりてこの逮捕の具体的な理由を御説明にならないつもりですか。
  36. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その通りであります。
  37. 梨木作次郎

    梨木委員 その次に伺いますが、一応法務総裁の今までの説明を聞いておりますと、逮捕ということと追放ということは一つの司法的な処分であり、一つ刑事的な処分である、こうおつしやつて刑事的な処分についての釈放を理由行政処分の問題は別個に扱つているように言われておりますが、しかし問題は、同じ事実を基礎にしておるのであります。それは今までわれわれが入手した勾留状嫌疑内容と、それからしばしば政府新聞発表などによつて公表し、また先ほども引例いたしました参議院におけるところの吉橋説明員説明によつても、公職追放の具体的な理由逮捕理由というものは、まつたく同一の事実を基礎にしておることは明らかなのであります。ところで九月六日現地におきまして、法務総裁参議院におきましてこう答えておるのであります。この行政処分内容についての、どういう資料についてこれをやつたかということは、「如何なる資料によつてかような認定が行われたかということは、行政処分については明瞭にする機会がないと思います。併したがら一方におきまして、これらの処分に対する刑事上の手続が今後進行いたしますと、これは刑事訴訟法の規定によりまして、適当な時期に証拠として法廷に提出いたすものであります。」こう言つておる。ところがすでに刑事手続におきましては釈放されておる。そしてしかも検事総長説明によれば、逮捕嫌疑を裏づけるところの証拠がないということで釈放されておる。こうなつて来ますならば、もはや公職追放理由になつている事実についても、まつたく根拠証拠がないということが今日明白になつたのであります。それをしも行政処分の方はこれは別個だからと言うて、この誤つた措置について政府がこれを取消すというような適当な処理をしないということは、これは私は非常に不当なことであると思う。この点について、政府はどういうぐあいにお考えでありますか。
  38. 大橋武夫

    大橋国務大臣 刑事手続につきましては、なお捜査段階にあるのでございまして、今後起訴できる程度の段階まで熟しますれば、当然に起訴になるわけであります。ただいまは捜査はまだそこまで進展いたしておらないわけであります。従いまして逮捕理由なつた事実があるかないか、また追放理由があるかないかというような点は、これは別にそれがために何ら紛淆する問題ではない、こう考えます。
  39. 梨木作次郎

    梨木委員 法務総裁参議院で御答弁なすつたところを私は理解するに、こういうぐあいに答えられておると思うのであります。行政処分の方は——これは不当なことでありますが、行政処分の方はどういう資料によつて認定したかは、これは発表する機会がない。しかしながら刑事処分の方は、刑事訴訟法の進行に従つて法廷証拠として出すだろう。こういうのである。ところが法廷証拠として出す、そういう証拠がないということで釈放しているのであります。だからもはや今日におきましては、どういう理由逮捕した、どういう理由追放したかということは、何ら国民の前に明確にされないことになつておるではありませんか。私はこれではまつたく、こういう政府措置というものは民主主義の原則に反しておると考えるのでありますが、そうお考えになりませんか。
  40. 大橋武夫

    大橋国務大臣 行政処分につきましては、もちろん行政上の証拠に基いて判定をいたす必要から行われるものと考えております。しかしながら司法処分の面におきましては、いまだ起訴するに十分なる証拠を收集する時期に至つておりませんので、従つて目下起訴が行われておらない。こういうわけであります。
  41. 梨木作次郎

    梨木委員 私ども国民の基本的な人権に対して制限を加えるようなこと——具体的に申しますならば刑事処分であります。こういう刑事処分を科する場合には、あくまでも愼重手続によつて、最も嚴重手続によつてつくられた証拠、その証拠によつて刑事的な処分をすべきであるという建前から、刑事訴訟法というものが規定され、これに基いて人民の自由を制限することを裁判によつて決定するというようなことになつておると思うのであります。人民の基本的な自由というものを制限する場合には、そういう愼重手続を経なければならない。だからこそ行政的な処分によつて基本的な人権制限することは一切これを認めないというのが、これが新憲法のもとにおける、また民主主義のもとにおけるところの基本的な要請であります。刑事的な処分におけるところの資料というものは、これは基本的な人権制限するための何ら有力な、国民すべてを納得させるような証拠となし得べきものではないというのが、これが刑事訴訟法を設けた根本的な目的であると思うのであります。だとするならば、刑事的な手続によつて、この有効な、的確な証拠として出すようなものがないということで釈放しておるのであります。にもかかわらずさような刑事的な手続におけるところの証拠能力もないような、さような行政官憲の集めた資料によつて、かかる重大な国会議員の地位を奪うというようなことをやるということはこれは刑事訴訟法というものがあるごの建前からいたしまして、基本人権を尊重するという建前からいたしましても、まことに不当なことであると思うのでありますが、さような行政処分によつてかかる基本人権を奪つてしまうようなことについて、今日におきましてはもはや刑事的な証拠というものが、刑事訴訟法上の証拠というものがないということが明らかである以上は、これを取消すことが至当であると思うのでありますが、いかがでありますか。
  42. 大橋武夫

    大橋国務大臣 刑事訴訟の必要とする証拠がないことが明らかである、こういうのはあなたの独断でございまして、ただいま検察庁におきましては、刑事訴訟法証拠となるべきものをとらえ得るという考えのもとに、捜査を継続いたしておるわけであります。この点をお取違いのないようにお願いいたします。
  43. 梨木作次郎

    梨木委員 まあその点は政府はそう御答弁になるだろうとは思つておりましたが、ではそれはその程度にいたしまして、私はこの昭和二十二年勅令第一号の根拠になつている指令、つまり一九四六年一月四日の指令、この指令の十九項を見ますと、この指令の規定條項によつて影響を受ける日本帝国政府官吏及び下級職員は、すべてこの指令の精神及び文句の遵法及び遵守について、個人としてかつ嚴格に責任をとらねばならない、というように規定しておる。これは追放される人々も含んでおることではありましようが、また一面におきまして、この公職追放の実際の事務を扱うところの政府官憲が、基本的な人権を侵害しないように、嚴重に嚴格にこれを扱わなければならない。それについての責任をとらなければならないということを規定したものであると思うのでありますが、今回のような国会において一ぺん発表したことが、あれは間違いでありましたというようなことは、これは明らかにこの指令趣旨からも責任をとらなければならない政府官憲が、責任をとつておらないようなことになつておると思うのでありますが、この指令趣旨について政府はどうお考えになりますか。
  44. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御指摘の指令は、読んで字のごとく、御趣旨通りであると考えます。
  45. 梨木作次郎

    梨木委員 私は次に伺いたいと思うのでありますが、このたび、こういうような形で細川嘉六君ほか三名が公職追放になりました。ところで一九五〇年六月六日のこの指令というものと、それから政府説明によれば、昭和二十二年勅令第一号と、これが一体となつて、この公職追放という一つ処分が有効に存続しておると思うのであります。そこで講和が発効いたしまして、その後におきましては、指令というものは、その効力が消滅することは言うまでもありません。そういたしますると、この指令というものは効力をなくす。そうすると、その後におきまして、これらの追放に関しての指令解釈というものについて、われわれは非常な疑問を持つておるのでありますが、これの解釈の誤り、これを正す、そういうようなことは一体どこで扱うようなことになるのでありましようか。
  46. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この指令解釈というものは、発令官憲專権に属しておりますから、司令部が解消いたしますれば、その後はこの解釈についてだれが解釈権を持つということはないわけであります。
  47. 梨木作次郎

    梨木委員 だれも解釈権を持つておらないということになりまするならば、一体こういう切捨てこめんの不当な処置を受けた者の救済の方法がないということになりますが、これは少くとも裁判所において取上げるべき性質のものであると思いますが、いかがでありましようか。
  48. 大橋武夫

    大橋国務大臣 占領中に占領軍司令官のなした措置というものにつきまして、講和克復後におきまして裁判所においてこれをくつがえすというようなことは、とうてい考えられません。
  49. 梨木作次郎

    梨木委員 講和が効力を発生した後におきましては、指令というものは消滅する。そうなれば公職追放というものも、従つてこの有効な一つのささえというものはなくなるわけでありますから、効力がなくなると解釈してよろしいですか。
  50. 大橋武夫

    大橋国務大臣 何らの法律措置がとられなければ、現在のポツダム政令によりまする公職追放というものはなくなる。こういうふうに今政府としては考えております。
  51. 梨木作次郎

    梨木委員 なくなる……。
  52. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その効力はなくなるというふうに考えております。
  53. 梨木作次郎

    梨木委員 何らかの法的措置がなければ、その公職追放の効力というものは消滅する、こういうことに承つてよろしいのですか。
  54. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そういう趣旨でございます。
  55. 梨木作次郎

    梨木委員 そういたしますと、このたび細川嘉六君外三名、その他わが党の中央委員二十四名、そのほかアカハタの幹部諸君が追放されておりますが、講和が効力を生じた後において政府は何らかこの公職追放の効果を存続させるような特別の法的措置をおとりになるようなお考えですか。
  56. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その点はなお政府において研究をいたしております。
  57. 梨木作次郎

    梨木委員 今度の細川嘉六君外三名の国会議員公職追放の問題に関連いたしまして、実はこれは先ほど政府答弁されたように、公職適否審査委員会というものはすでになくなつている。しかもこれはわれわれの情報によれば、日本政府が情報を提供して、そうしてこれらの人々日本共産党の臨時中央指導部員だということ、そうしてこの人たちが何か政令三百二十五号に該当するような文書を共同で作成した、こういう事実、これを司令部へ提供いたしまして、司令部はこれに基いて日本政府追放することを容認したというような、そういういきさつになつておるということを聞いたのであります。そこで私たちは司令部へ参りまして、そういう政府資料というものは根拠がなくて、そうして実は捜査をやつてみたけれども、その事実を裏づけるところの証拠もなくて、逮捕をした人を釈放せざるを得なくなつたという事情である、だから従つて政府措置は明らかに不当である、しかし今はこれを救済する方法はありません、これはどうしたらよろしいでしようかということを聞いたのであります。これは司令部の何とか、名前はちよつと忘れましたが、これはとにかく非公式な私的な昇解だと断つておりますが、そうなれば日本政府責任においてそれは取消す道もあるのだというような趣旨のことを答えられておるのであります。従いまして私はこういうような事情をも考慮に入れまして、今政府が研究中だということについての法的特別措置をとられる際におきましては、十分な考慮を拂つてもらいたいということを希望しておく次第であります。  それからその次に、これは、大体公職適否審査委員会というものも廃止されているとおつしやるのでありますから、この昭和二十二年の勅令第一号による追放をやる場合には、これはAからG項までの分類がありますが、この分類のどれに該当することになりましようか
  58. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは第二次世界大戰の終戰前の事由によつて公職追放をする者につきましては、その分類の別表があるわけでありますが、その後の行動につきましては、これらの別表のどの項目ということはないのでありまして特別の指令に基いて特に追放をいたすことに相なつております。
  59. 梨木作次郎

    梨木委員 少し繰返すようでありますが、私どもが十月の九日に岡崎官房長官に会つて公職追放の問題について政府の見解を問いただした際は、追放理由は、これらの諸君が臨時中央指導部の実質的なメンバーであつたというここと、それから臨時中央指導部から出された好ましくない指令について責任があるということを答えておるのでありますが、これはさきの参議院委員会における吉橋説明員説明と符節を合せておるような答弁でありますが、この点も間違いでありましようか。
  60. 大橋武夫

    大橋国務大臣 それはきわめて不十分であると思います。
  61. 梨木作次郎

    梨木委員 きわめて不十分だということでは、私にはよく理解できないのですが、間違つておるとおつしやるのでありますか。不十分だといえばどこが間違つておるという御趣旨でありましようか。
  62. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましての追放理由は、そこに申されたことではない、こういうわけであります。
  63. 梨木作次郎

    梨木委員 追放の問題につきましては非常にこの問題は重要でありまして、まだ納得できないところがありますが、しかしこれはきようの御答弁をさらに速記録でよく検討いたしまして、後日もう少し政府の見解を問いただしたいと思いますが、きようはこの程度にいたしておきたいと思います。  その次に検務局長にお伺いいたしたいと思います。私こはの前の委員会で、十月九日に全国八百数十箇所にわたりまして家宅捜索が行われておる。これはどういう人の犯罪事実についての嫌疑で、どことどことどのようにやつて、その捜査の結果はどうなつておるかというようなことについての説明を求めたのでありますが、調べた上で答弁するというお話でありましたが、これをお答えを願いたいと思います。
  64. 岡原昌男

    ○岡原説明員 お尋ねの去る十月九日に、全国数百箇所にわたりまして一齊に押收捜索をいたしましたことは、事実でございます。これは連合国に対する破壊的批判を記載いたしました党活動指針と申しますか、昭和二十五年政令三百二十五号違反の文書が、全国的に配布されておるという事実の証拠固め並びにその事実に関係いたします他の被疑者の発見等を目的として行つたものでございます。事件の当初から申しますと、この捜索、差押えを行うに至りましたのは、九月の末に東京都内におきまして逮捕されました詐欺の現行犯人中尾佐太郎なる者が、取調べをいたしました結果、党活動指針の全国的な頒布を担当しておつたという資料がわかつて参りましたので、これに基きまして、さような手配になつたのでございます。この中尾は、その後取調べを進められ、また各地で集められました証拠に基き、十月二十七日に東京地方裁判所に起訴されております。また捜索、差押えの結果、現在までに十数名の関係被告人の起訴を見ておる状況でございます。なお本件に関しましては、さらに若干関係者もありますので、引続き各地の検察庁において捜査が続行されておるようでございます。先ほど申し上げました押收、捜索はすべて裁判官の適法なる令状を得て行つたものであることを申し添えておく次第であります。
  65. 梨木作次郎

    梨木委員 そういたしますと、中尾佐太郎という人が活動指針の全国的な配布をした、この配布先を捜査するということで八百数十箇所をおやりになつた、こういうことになるのでありますか。そういたしますと、八百数十箇所は、私は実は一々その場所と氏名と、捜索の結果を聞きたいのでありますが、これはわかりませんか。
  66. 岡原昌男

    ○岡原説明員 お尋ねの箇所は、先ほど数百箇所と申し上げましたが、相当箇所に上つておるのでありまして、最初東京でこの事件に手をつけました際には、それより若干数が少かつたのでございます。しかるに実際に各地に連絡いたしまして、この中尾佐太郎から出ました各所番地を調べてみましたところが、中には移転した者もあり、あるいは偽名の者、あるいは隣家の者もあるといつたような事実がわかりまして、その結果、捜索場所が追加されたように報告が来ております。なおこの数百箇所と申しますのは、あるものは報告に載つておりまして、具体的にところ番地、氏名もわかつておりますけれども、全般的に各地検の報告がそろつておりませんので、これは今のところちよつとまとめて申し上げかねることを御了承願いたいのであります。
  67. 梨木作次郎

    梨木委員 新聞ではたしか八百五十箇所となつておつたと思います。ラジオでも同じように報告したと思うのであります。そこで私はせめて地検別にでも、十月九日に行つた家宅捜索の全国合計した数を御報告を願いたいと思います。同時に、その後も捜査を継続しておると言われるのでありますから、中尾佐太郎君の政令三百二十五号違反容疑についてすでに起訴されておるのでありますから、現在までに行つた家宅捜索の総計を御報告を願いたいと思うのであります。私がなぜこういうことを申すかといいます。ならば、一人の中尾佐太郎という人の政令三百二十五号違反に籍口いたしまして、かくも広汎な家宅捜索を行う、しかもその家宅捜索はまつたく関係のないような人のところに捜索が行われておる。捜索をいたしましても何にも容疑になるようなものは出て来ておらない。こういうことは、新聞でもまつたく例証されるような写真や記事となつて現もれておる事実に徴しても明白であります。かようなことが容認されまするならば、まつたく基本的な人権というものが侵害され、平和な市民が安心をいたしまして生活することができない。恐怖の底に陷れられることに相なるのでありまして、さような関係から、はたして検察のようなやり方が適正であるかどうかを判断する資料に必要でありますから、これを御報告願いたいと思うのでありますがいかがですか。
  68. 岡原昌男

    ○岡原説明員 お尋ねの各地検別に押收捜査の場所、その結果等を書面をもつてというお話でございますが、先ほどちよつと触れました通り、実は十数名関係人の起訴を見ました後、引続き捜査が進展しているようでございます。実は中尾佐太郎の関係はすでに起訴されて、従つて先ほど申し上げる程度のことは発表してさしつかえないと思つて申し上げたのでありますが、現に捜査進行中のものはちよつとさしつかえがございますので、なお取調べました上でここでお知らせしてさしつかえないものはお話してもいいと思いますけれども、その点はあらかじめ御了承願いたいと思います。
  69. 梨木作次郎

    梨木委員 過般東京大学の工学部の教室を一齊に家宅捜索をしております。これはどういう嫌疑でおやりになつたのでありましようか。
  70. 岡原昌男

    ○岡原説明員 ただいま御質問の点につきましては、私まだ報告を受けておりませんので、いずれまた調べました上でお答えいたしたいと思います。
  71. 梨木作次郎

    梨木委員 その点はそこに御出席の吉河特審局長はよく御承知だろうと思いますが、その点の嫌疑内容についてお伺いいたしたい。
  72. 吉河光貞

    ○吉河説明員 実は私もまだそういう報告を受けておりませんから、いずれまた調べまして……。
  73. 梨木作次郎

    梨木委員 東京大学の工学部教室の捜査というものは、文部委員会においても重大な問題となつておるのでありますが、これは教室と申しましても、大学の教授の部屋であります。この部屋を一斉に捜索しておるのであります。しかもそのやり方たるや当該教授の立会いもない。公務所というものは、家宅捜索する場合には公務所の責任者あるいはこれにかわるべき者の立会いなくしてはやれないはずであります。しかるにさような者の立会いもなく、小使いさんは部屋の外に待たしておいて、家宅捜索しておるのであります。これでは、学問の研究に必要ないろいろな材料というものを持つているでありましようが、学問研究のために必要な資料、これまでが三百二二五号違反の容疑に問われることになりますならば、学者の研究の自由というものはまつたく阻害されることに相なると思うのでありまして、非常に重大な問題であると思うのであります。かつて早稻田大学に、戰争前におきましては、軍事教練云々の問題につきまして、佐野学氏の教室に官憲が入つたということで、当時非常に大きな問題になつたのでありますが、それどころではなくして、かような広汎な、しかも場所も何も指定しないような家宅捜索令状によりましてこれをやるということは、もうここまで来ては、ほんとうに今日の日本人権の保障は空文化しておるのではないかとわれわれは疑わざるを得ないのでありまして、この点について責任者はまだ御承知ないというのでありますから、この捜査のいきさつについて十分なお調べをした上で御報告をお願いしたいと思います。  その次に、前回わが党の議員の木村榮君の家を家宅捜索した問題を調べてもらいたいと言つたのでありますが、これはどういうふうになつておりますか。
  74. 岡原昌男

    ○岡原説明員 本件につきましてさつそく地元の方に問合せをいたしましたところ、その報告によりますと、十月九日の朝松江地検から検察事務官が四名、木村代議士のお宅に参りまして、押收捜索の令状に基いて捜索したそうであります。立会人はお母さんの木村ゼンという方と弟さんの木村民雄という方、それから同居人の武部得一という三名であつたそうであります。約一時間ほどおりまして、押收物件は日本共産党臨時中央指導部名義のパンフレット五部その他計八点ということに報告されて来ております。なおその後十月十六日午後に木村代議士が松江地検に参られまして、本件につきまして事情を聞かれたそうであります。そこで渉外係の検事がさつそくその押收物の内容をさらに詳細に点検しました結果、本事件には直接必要ではないという認定をいたしまして、同日返還付したと報告されて来ております。
  75. 梨木作次郎

    梨木委員 今の御説明だとこれも中尾佐太郎君の嫌疑だろうと思いますが、中尾佐太郎君の嫌疑というのは、今御説明なつたように活動指針の配布に関連しての捜索だと聞いているのであります。だとするならば、木村榮君のところからは国会情報まで押牧して行つている。こういうことはまつたく容疑事実と関係のない捜索をしていることになりはしませんか。事実今あなたの御答弁のようにみんな仮還付しているというのです。こういうようなやり方、ここが問題だと思うのです。だからこれは、結局はこの中尾佐太郎という人がたまたまそういう嫌疑に問われたということを、一切の共産党員の家を家宅捜索する口実にしている、そういうように言われても弁解の余地はありますまい。私はこういう警察のやり方は非常に不当だと思いますが、これは一体どういうような指導をされているのですか。どういうような監督をされておりますか。家宅捜索にあたりましては、ちやんと何を捜索するかということを指令しなければならない。一体何を捜査するということで家宅捜索されたのですか。それをひとつお伺いいたしましよう。
  76. 岡原昌男

    ○岡原説明員 押收捜索の令状には、おそらく例の中尾佐太郎関係の被疑罪名が書いてあつたと思うのでございます。それに基きまして、現場に来ました検察事務官まで——これは私の想像でございますが、たいへんに誤解をしたのか、何でも日本共産党臨時中央指導部とでも書いてあればいいと思つたのか、その辺はよくわかりませんが、とにかくただいまのようなパンフレットを持つて来たのでございます。今お話の現地の検察事務官の指導、訓練、監督といつたようなものにつきましては、たいへん至らぬところがあるようにこの事件でわかりました次第でございます。この事件について今これ以上詳しいことは、実は報告が参つておりませんので、具体的にこの現場に差向けるのにどういうものを持つて来いということをあれしましたか、その辺は詳細にいたしかねますけれども、爾今かような際には十分押收物の特定、少くともその範囲の特定等につき万遺憾なきを期したいと存ずる次第でございます。
  77. 梨木作次郎

    梨木委員 ぜひそういうぐあいにやつていただきたいと思うのであります。刑事訴訟法の二百十九條にも、差押えの令状には差押えるべき物を指定しなければならぬと書いておるのであります。今のような、こういう状態で捜索をし押收するということになりまするならば、これは共産主義的な文献、共産党の出版している共産党関係の出版物はみんな押收して行くということになつて、これはまつたく出版の自由、言論の自由というものを剥奪することになるのであります。これはまつたく不当なことであると思うのでありまして、この点は十分、今後の捜索検察にあたりまして注意をしていただきたいと思うのであります。  それから次に伺いたいのでありまするが、やはりわが党議員の苅田アサノ君のところにも家宅捜索が行われておるのであります。この家宅捜索は、実は家宅捜索の令状にはどこを捜索するということが何ら書いてなかつた、椎野悦郎君の名前があるだけだ、こういうことを聞いておるのでありますが、これは一体どういう令状によつて、だれの嫌疑でどこを捜索するということでやつたのでありましようか。この点おわかりでしようか。
  78. 吉河光貞

    ○吉河説明員 実は先般、梨木委員から岡原検務局長に対しましてこの問題についての御質問がございまして、岡原検務局長から私の方に照会がありまして、どうもこれは家宅捜索令状による家宅捜索ではないようだが、特別審査局関係の処置ではなかつたのかというようなお話がありましたので、調査をして、現地に問い合せをいたしましたところが、これは党活動指針の発刊停止処分として必要な措置として捜索押收が行われておるような状態であります。岡山市内における党活動の指針の発刊停止措置、これに伴う必要のある措置として、岡山市絵図町三百七十五番地深見民一及び同人妻ヨシ子さんがいずれも党活動指針配付に関係あつた者といたしまして、同日岡山、広島支局の職員が捜索いたしました。ところが深見さんの二階に同居されております苅田アサノさんに対しましても、同様の理由でやはり発刊停止措置といたしまして捜索いたしました。この場合には、深見さんが立会人となつております。かようなわけで、両所から党活動指針若干、その他のものが押收になつておるというようなことでございます。
  79. 梨木作次郎

    梨木委員 その際、三十二年テーゼだとか、十八回総会の決議書だとか、平和の闘いだとかいうようなもの、それから苅田さんのごみだらけのアカハタだとか、新しい世界だとか前衛、こういうものまで押收して行つているわけでありますが、これはどういうわけですか。
  80. 吉河光貞

    ○吉河説明員 実は電文の照会で、現地から至急に報告を取寄せたものでありますから、詳しい事項は明らかにされておりませんが、さらにさつそく詳細な調査をいたしまして、お答えいたしたいと思います。
  81. 梨木作次郎

    梨木委員 それから、その点について伺いたいのでありますが、一体発刊停止の措置と同時に家宅捜索などをやつておるのでありますが——この場合におきましてもそうでありますが、私は家宅捜索や押收をするのは、やはり日本の裁判所の裁判官の発した令状によらなければできないと思うのであります。にもかかわらず令状なくしてやつておる。これは明らかに違法であると思うのでありますが、特審局長はいかが思いますか。
  82. 吉河光貞

    ○吉河説明員 アカハタの発刊停止の指令並びに同類紙、後継紙の無期限発刊停止の措置に基きまして、これらの必要なる措置をとることが、強くわれわれとして指令されております関係上、捜索、押收、封印、監視等の措置を実施して来ておるわけであります。
  83. 梨木作次郎

    梨木委員 私は発刊停止措置というものは、法務総裁が発行を停止をしたという通達だけを持つて来て捜索をするということは、これは明らかに不当であります。やはり家宅捜索をする場合には、日本の裁判官の発した令状によらない限りは、家宅捜索や押收をしてはならない。これが憲法の精神に合致した措置であると思うのであります。こういうことはぜひ今後ともやめていただきたいと思います。これで終ります。
  84. 押谷富三

    押谷委員長代理 この際委員各位に御了承を得たいことがあります。本法務委員でありました吉田省三君が過般なくなられました際に、本委員会の名におきまして弔慰金五千円を送つておいたのでありますが、これを御負担を願いたいと存じます。そうしてこの御負担金は歳費から差引くことにいたしたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議がなければさようとりはからいます。  この際休憩いたしまして、これからの審議の関係について懇談をいたしたいと思います。暫時休憩いたします。     午後三時三十七分休憩      ————◇—————     午後三時五十二分開議
  86. 押谷富三

    押谷委員長代理 それでは先刻に引続き会議を開きます。  会社更生法案について梨木委員より質疑の通告がありますからこれを許します。梨木作次郎君。
  87. 梨木作次郎

    梨木委員 更生手続を終結いたしまして、いわば新しい会社ができることがあると思うのでありますが、その新しい会社と労働組合との間の労働協約、これは新会社が引継ぐことになりますかどうですか。その点はどういうぐあいになりますか。
  88. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 その点につきましては、法律的にはいろいろ説がなされておるようでありますが、少くとも事実上においては、引継がれるものというふうに考えます。
  89. 梨木作次郎

    梨木委員 そこのところを聞きたいのですが、事実上引継がれるところのは、法律的にはどうなのですか、法律的なことを聞きたいのです。
  90. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 現在の一般の労働法の理論におきましても、そういう点の争いがあるようでありまして、その一般法の理論にこの会社更生法も従うわけであります。
  91. 押谷富三

    押谷委員長代理 他に御質疑はございませんか——質疑がなければこれより討論に入りますが、討論に入ります前に、修正案が委員長の手元に提出されておりますので、提案者よわ趣旨の弁明をお願いいたします。北川定務君。
  92. 北川定務

    ○北川委員 議題になつておりまする会社更生法案の修正の動議を提出いたします。まず修正案を朗読いたします。会社更生法案を次のように修正する。附則中「昭和二十七年一月一日」を「昭和二十七年七月一日」に改める。提案の理由を申し上げます。  本法案は第十国会に提出せられたものでありまするが、原案では昭和二十七年一月一日から施行することと相なつておりまするが、第十二国会で本法案を成立せしめるといたしますれば、余日幾ばくもないのでありまして、かつ三百條の厖大なる法案でありまして、国民にも十分これを周知せしめる必要もあり、かつ各会社にもそれぞれ準備をさせる必要がありまするので、昭和二十七年七月一日より施行することに修正せんとするものであります。各位の御賛同を願いたいと思います。
  93. 押谷富三

    押谷委員長代理 これにて修正案の趣旨説明は終了いたしました。  これより討論に入ります。討論の通告がありますから、これを許します。鍛冶良作君。
  94. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は自由党を代表いたしまして、本案に賛成いたすものであります。但しこれに対していろいろ希望がありますので、実はこの際その希望を入れるようにとも考えてみたのでありますが、厖大な法案に対して、これらの点を手入れをするということになりますと、とうてい本会期において間に合わぬであろうと思いまするので、政府におかれてもいろいろの御事情もあるここと思いまするから、一まずこの法案を通しておいて、後日機を見てわれわれの希望に沿うように、政府におかれても御留意を願いたい、かように考えるのであります。  そこで第一に述べたい点は、この会社更生法なるもののねらいといたしまするところは、われわれも非常に賛成であります。時宜を得たものと考えるのでありまするが、顧みますると、これと同じような趣旨のもとに出ておりまする法律は、今日までずいぶんあります。整理を中心とする商法上の特別整理法その他等もありまするし、また清算をねらいといたしまする特別清算その他等も同様に、破産に導かないでできるだけ会社なりその他のものを助けようという法律が出ております。ことに破産法及びこれに附随いたしまする和議法も出ておるというようなわけでありまして、同一のねらいのもとに行われる法律がこのように幾つもある。しこうしてまたこれらの法律の中に、せつかく出されたにもかかわらず、事実上において大して活用しておらぬ法律もあると考えるのであります。それらの点から考えますると、でき得るものならば、これらのものに対して体系をつくりまして、できるだけ一つにまとめてたとえばアメリカにおける破産に関する法律というふうなことで、まず会社が行き詰まつて来ましたときには、会社を更生きせるということが私は第一じやないかと思う。そこでどうしても更生できぬということになりますと、今度は整理にかかる。そしてその整理がもううまく行かなくなりまして今度は清算に移る。その清算には特別清算もありましよう。さらに特別清算でもいかぬというのなら破産にするか、強制和議をやる。強制和議でもどうしてもいかぬということになれば、ここで初めて破産に行く、こういうふうな体系を立ててやられるということが最もよろしいことだと考えますので、根本的にこの点を今から御研究を願いたいと考えるのであります。さらにそれらの点に対して手入をせられるということになりますと、一般輿論として出ておりますものには、この更生法案によりますと、株式会社の大きなものを中心としてやつておられるようでありますが、銀行その他金融機関から申しますと、いわゆる大会社株の上場せられておるようなものに対してはそう破産に導くようなことは実際にはない。よほどでなかつたらないわけです。追い詰められるものはこれらのものではなくて中小企業会社、ことに戰後たけのこのように出ました資本金二十万円以上から五十万円くらいの会社が最も多いのでありまして、ここで急いで更生の道を立てようとなさるならば、これらのものをまず助けることを考えられることが必要ではないかと考えるのであります。  次にはこの法案は資産であるとか、その他金を分配するもの、そういうことを中心としております管財人の仕事が中心として規定せられております。しかし会社更生に何より大事なことは、行き詰まつたときには輸血するという資金の融通とか、特に仕事の局面をかえてやる、こういうことが特別大事なのでありまして、かような任務をやるものを中心として更生案を立てられるのがほんとうではないかと考えるのであります。しかるにこの法律破産法及び和議法の規定の準用が非常に多いのでありまして、われわれはこの実際面に適合するものに欠けているように考えますので、この点の御留意を願いたいと存じます。  それから中小企業会社の更生の要点は、何と申しましても高利貸しと税金に攻められるということを助けてやることが最も急務なのであります。しかも高利貸しは無担保でやつておりますので、いよいよ悪くなるということになると、もう更生どころでない。人より先につぶれようが何しようが、早く金を取立てるということに專念いたします関係上、会社が参らざるを得ないことになるのでありまして、これらの点についても、ことに税金の面については、でき得る限り国税庁等と御協議なさいまして、この目的の達せられるように規定の幅の広いものにせられることを望みたいと思うのであります。  それから先ほど申しました管財人と申しますと、何と申しましてもその事業に関係しておるいわゆる同業者中の顔のきく人が入るということが一番大切なのであります。ところがそういうことになりますと、ややもすると独禁法などでこれに参加することが不能な点もありますから、これらの点に対しましてもできるだけ緩和するような方策をとられるように希望しておる面が多いのであります。  それからこの法案でやりまする更生のやり方を見ますと、裁判所でやりますが、裁判所における手続その他等を見ますと、二年や三年はすぐ費されてしまうのであります。その間に会社の事業もなかなかうまく行かなくなる。債権者に対しても不測の損害を及ぼすという実例がありますから、裁判所でやることは公平ではありましようけれども、煩瑣なる手続を経ないでできるようにして、でき得るものならば裁判所においても專門の部くらいを設けられて、これに特に堪能な裁判官をあてられるということが最も望ましい、こういう意見が多いようでありますから、これらの諸点ともつけ加えまして、希望條件を付しまして本案に賛成いたすものであります。
  95. 押谷富三

  96. 石井繁丸

    石井委員 日本社会党を代表いたしまして討論をいたします。  この法律はアメリカにおいて非常に成功を牧めたという会社更生手続に範をとつて、ひとつ日本においてもいろいろと財界の変動等を振り返つたときに、会社がいろいろと手を盡せば更正ができるのに、その手の盡し方が足りなかつたために破産をせしめる、あるいは解散せしむるということを防止するというのを、日本の財界あるいは事業界に導入したわけでありまして、その趣旨としましてはまことに当を得たものと考えるのであります。問題はアメリカにおいて非常に成功を牧めたその制度が、日本においても成功が攻められるかどうかという点でありますが、この点につきましてはただいま鍛冶委員も希望意見として申し述べました。つまり会社更生の中心人物となる管財人にその人が得られるかどうか、また金融的な方面についていろいろと措置が講ぜられるであろうが、こういう二点に問題は盡きるのではなかろうかと思うのであります。当委員会におきましてもいろいろと論議をし、あるいは各所におきまして公聽会等を開きまして意見を聞いたのであります。商工会議所等の意見などにおきましても、今までの破産管財人が弁護士や何かが中心としてつまり整理というふうな建前をとつたわけであります。ひとつ商工会議所その他のいわゆる経済界におけるところのエキスパートを管財人等に登用して活用してもらいますれば、相当の効果が上げられるのではなかろうか。こういうように申されるのであります。われわれとしましても当委員会において各委員から、あるいは政府委員からも述べられた、この適当なる管財人、財界等において破産会社の更生に苦労された人々を十分に活用する、こういうふうにやつて、今後会社更生のために本法を活用いたしますれば、日本においてもいろいろと効果が上げられるのではなかろうかと考えるわけであります。金融方面につきましては、金融界の人々は、何とか脈のあるものは銀行ではめんどうをみる、こう言つておるのでありますが、一番大きな問題は、銀行方面から多額の融資が受けられない中小企業方面の会社更生の金融措置が、どうされるかというようなことであろうと思うのであります。この点について今までうとんぜられておつた中小企業金融も、いかにして中小企業を育成するかというふうな観点につきまして、あるいは中金の問題、あるいはまた政府運用部資金を中小企業の金融機関にまわすというふうなことが考えられまして、次第に中小金融についての措置が講ぜられつつあるわけであります。この中小企業金融を重視するということと相まちまして、この会社更生法を実際に行われる会社更生に適用いたしますれば、これまた本法が相当に生かして使えるようになろうかと思うのであります。われわれはこういう観点について、破産の場合のような管財人でなく、ほんとうに生きた会社の管財人、つまり管財人よりは会社更生管理人というふうな立場において適任者を得、金融の方面においての裏づけをまつてこれを重視してやりたい。初めてできた法律でありますから、いろいろな点について疑義も持たれましようが、こういう点を今後われわれ立法に参加したものが十分に努力を拂いますれば、効果が上げられよう、こう考えるわけであります。なお労働組合等の方面からはいろいろとこの点について不安が感ぜられておるのであります。つまりこれを会社の資本構成をかえでしまつて、そうして労働組合との前の労働協約その他賃金を肩がわりする。こういうことに悪用されるのではないか、こういうふうに言われておるのでありまするが、われわれはこの点につきましては、労働組合並びに企業に参画する経営陣の人々が、その点につきましては、十分に愼重な態度をとり、そうして正しい会社の更生をして行く、かような法律を悪用するということはなかろうというふうに考えまして、もしさようなことがありましたならば、いろいろと労働委員会等において十分警告等をしてもらい、これの悪用を防止いたしますれば、さような点は杞憂に終るのではなかろうか、こういうふうに思うのであります。かような立場からしまして、むしろつぶれて失業者になるよりは、会社の更生によつて労働組合員あるいは会社の従業員も失業の苦を味わないで済む、こういうことになろうと期待してやまないのであります。かような点から日本社会党を代表いたしまして、今後の活用につきまして、われわれもまたいろいろと各施策に協力したいということを申上げて、賛成の討論といたすものであります。
  97. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ちよつと委員長。さつきの結論だけ訂正いたします。  先ほど私の結論は修正案に賛成いたしまして、修正部分を除いた他の部分に対してこの希望條件を付して賛成する、こういうことに訂正いたします。
  98. 押谷富三

    押谷委員長代理 石井君も同様ですね。
  99. 石井繁丸

    石井委員 はい。
  100. 押谷富三

  101. 梨木作次郎

    梨木委員 私は修正並びに修正部分を除く原案について、日本共産党を代表いたしまして反対いたします。反対の理由を申し上げます。  私ども一つ法律をつくる場合においての態度を決定するには、表面この法律の中でうたつていることだけで実際その法律が行われようとする現実の社会が今どうなつているかを考えなければならぬ。この現状と切り離して問題を論議した場合には、まつたくそれは空疎な観念論になるのであります。そこでこの法律を見ますと、なるほど第一條には、窮境にあるが再建の見込みある株式会社について事業の更生をはかることを目的にしているんだ、こういうようにうたつており、またこれに賛成する人々は、窮境にあるところの中小工業者更生のために、この法律は効果的であると言われるのであります。法律の表面を見れば、なるほどその通りでありますが、しかしその法律が今実施されようとしておるところの社会の現状はどうであるか、これを見まする場合、これは明らかに自由党、吉田内閣の政策によつて日本の中小企業のみならず、一流の企業に至るまでも、これが日米経済協力、言葉をかえて申しまするならば、アメリカの軍需産業の下請に協力しない限りは、破産、倒産の運命に陷つておる。私はここに十月三十日の日本経済新聞の記事を引用いたしますが、ここでは、一流企業におきましても不渡手形が激増しておるということを報道しておるのであります。まして一流企業にあらざる中小企業の困憊している現状は、これは私が喋々説明をするまでもありません。ところでこのような軍需産業に忠実に奉仕するような企業というものは、こいつは助かる。しかしながらあくまでも平和国家の建設のためにさような軍需産業をやらないところの、日本の平和的な発展のための企業というものは、つぶされて来ておるのであります。それではこの現状においてこの法律を実施するならば、どういう結果になりますか。結局は軍需産業、アメリカの軍拡経済の下請にならない限りは更生できないという結果に相なるのであります。この点はきわめて重要であると思うのであります。この法律を見ますると、結局はたくさん借金のある会社、あるいは重税にあえいでいる会社に、借金の支拂い猶予あるいは借金の棒引き、税金の実際上の支拂いを停止するというような恩典を與えようとしておるのでありますが、しかし実際このようなことを実現するためには、今の吉田内閣の日米経済協力の線に沿わない限りは、これはできないのであります。軍需産業の下請に甘んずるということ、結局は日本がアメリカのそういう軍事的な政策の線に沿つて企業を運営しない限りは、この法律の恩典に浴することができないということになるのであります。これは先ほども申しましたように、たとえば銀行とか、金貸しとか、こういうものがこの会社更生法を利用いたしまして、この会社は更生させなければならぬ、つまり軍需産業をやろうをしておるというようなことならば、これは助けることができるわけなんです。しかしそうでないものは、この更生手続をやる場合には、やはり多額の費用を要しなければならぬというようなこと、それからその間におけるいろいろな資金、こういうものの援助がない限りは、これは実際できないのであります。それを一体だれがやつてくれますか。結局は経済的な支配力を持つておるもの、銀行、こういう人々の援助の上にのみこれが可能になるということ、これは結局におきましては銀行資本、つまり金融資本が、日本の軍需産業を育成し強化する、その支配をたやすくするようにするための法律であるということに実際上は相なるのであります。さらにここで特に重要な点は、第三條におきましては、日本の会社だけではなくて、外国の会社にまでこの法律の適用を認めようとしておるところに、きわめて注目すべき点があると思うのであります。私はこの点について政府質問をいたしました。一体窮境にあるが再建の見込みがあるかどうかということの調査にあたりましては、これはあくまでもその会社の実態がはつきりつかめなければならないはずであります。アメリカにある会社の実態を日本でつかむことができますか。実際上はこれはできない相談であります。にもかかわらず、このようなものにまで何ゆえに適用を広げなければならぬか。ここにこそやはり日米経済協力を根幹とするこの法律の実際上の利用ということが考えられるのでありまして、こうなつて来まするならば、外国の会社が権力をたてにいたしまして、日本国民の借金や税金を踏倒しにするようなこともできて来るということを想定しなければなりません。この点からも、まことにこの法律日本の今後の平和的な発展のために、今吉田政府のとつておる政策と関連いたしまして考えた場合に、私どもは賛成し得ない多くの根拠を見出すのであります。  さらに第二点といたしまして、この法律は労働者の権利に対して非常に大きな圧迫を加える結果になるような條文が、所々方々に見受けられるのであります。たとえばこの会社更生手続を開始する前後におきまして、裁判所の認定によりまして実際は争議行為の中止をやる。こういうことによつて労働者の基本的な権利に対して、圧迫あるいは制限を加えるというようなことに相なりまするし、また長い間労働者が遅配欠配に悩んでおるところの賃金債権の保障の面におきましても、單に共益債権というようなものの中に、これをぶち込んでしまつておるような事実の中にも、労働者の権利の軽視、圧迫、これは見のがすことができないと思うのであります。労働者は自分の労働を売つて、それによる賃金の支拂いによつて生活をしているのであります。この人たちの賃金債権というものは、何をおいても最優先的に保障されなければならないにもかかわらず、共益債権の中にぶち込んでおるということも、きわめて不当であると私は思うのであります。それから労働協約の点につきましては、この法律の適用の場合におきまして、いろいろな部分について排除するといつておりますが、しかし私の質問に対しまして、個々の労働協約は、更生手続の開始とともにこれを解除することができる、言葉をかえて申しますならば、更生手続の開始と同時に、労働者を解雇することができるようなことになつておることも、まことに重大であると思うのであります。  それからこの法律内容を見ますと、第三番目に不当な点は、ほとんど法律の面では、裁判所にこの更生手続の非常に重大な場面をまかしております。一体裁判所でこういうことができますか。現在の日本の裁判所の裁判官の能力をもつてするならば、実際生きた企業の更生手続なんということは、とうていできるものではありません。そういうことを求めようとすることは、木によつて魚を求むるがごときことであります。しからば一体実際の運営はどうなるか。結局は裁判所が任命した管財人、あるいは審査人、こういう人々が実際は裁判所をロボツトに使つて、実権を握つて行くということになるのであります。ということになりますならば、先ほど私が冒頭に申しましたように、やはりこれは銀行から派遣された、あるいは信託会社から派遣された管財人、あるいは経済的な背景を持つたこれらの人々が会社に派遣されて、この人々に会社経営の支配権を握らせるということに実際上はなつて来るのではありませんか。こういうところに、実は裁判所というような公平なものを使つて、公正に更生手続をやるだろうとは見せかけで、実際は経済的な権力を持つたものの会社の支配を容易ならしめるものであるということが、この法律のねらいになつて来ていることは明瞭であると思うのであります。  私は大体以上の理由によりまして、この法案は表面上はまことに中小企業の窮境を救うかのごとくうたつておりますが、実際の運用の面においては、日本の現状に照して、これは日本国民経済を軍需産業的なものに再編させ、さらに内外独占資本に日本の企業の支配を容易ならしめるようなことに役立つという面におきまして、反対するものであります。
  102. 押谷富三

    押谷委員長代理 これにて討論は終了いたしました。  これより採決いたします。まず修正案について採決いたします。ただいまの修正案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  103. 押谷富三

    押谷委員長代理 起立多数。よつて修正案は可決されました。  次にただいまの修正部分を除いた原案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  104. 押谷富三

    押谷委員長代理 起立多数。よつて本案はただいまの修正案通り修正議決されました。     —————————————
  105. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に破産法及び和議法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより討論を省略し、たただちに採決に入りたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議なければ、討論を省略いたしまして、これよりただちに採決に入ります。本案に賛成の方の御起立を願います。     〔総員起立〕
  107. 押谷富三

    押谷委員長代理 起立全員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました二法案に関する委員会の報告書の作成に関しましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議がなければさようとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会