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1951-11-07 第12回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月七日(水曜日)     午後一時五十九分開議  出席委員    委員長代理 理事押谷 富三君    理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       高橋 英吉君    花村 四郎君       牧野 寛索君    松木  弘君       山口 好一君    大西 正男君       石井 繁丸君    梨木作次郎君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         検     事         (法制意見参事         官)      位野木益雄君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十一月六日  委員稻村順三君辞任につき、その補欠として猪  俣浩三君が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月二日  高知地方法務局三瀬出張所存置請願長野長  廣君紹介)(第五九一号)  佐川町に簡易裁判所等設置請願長野長廣君  紹介)(第五九二号)  名古屋法務局葉栗出張所存置請願江崎真澄  君紹介)(第六二三号)  津地方法務局鵜方出張所存置請願中村清君  紹介)(第六九二号) の審査を本委員会に付託された。 同月六日  行政機構改革に伴う地方法務局出張所等の閉鎖  反対に関する陳情書外十六件  (第四九二号)  小泊登記所存置に関する陳情書  (第四九六号)  青森地方法務局原子出帳所存置に関する陳情書  (第五一八号) を本委員会に還付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  会社更生法案内閣提出、第十回国会閣法第一三九号)  破産法及び和議法の一部を改正する法律案内閣提出、第十回国会閣法第一四一号)     ―――――――――――――
  2. 押谷富三

    押谷委員長代理 これより会議を開きます。  まず会社更生法案について質疑を続行いたします。梨木委員より質疑の通告がありますからこれを許します。梨木作次郎君。
  3. 梨木作次郎

    梨木委員 第七條を伺いたいのでありますが、この移送取扱いでありますが、不当な移送取扱いをされた場合に、利害関係人から異議申立て方法を認めないと、非常にこれらの人人の権利を阻害することが出て来ると思うのであります。この点に関する規定を設けてないようでありますが、これはどういう趣旨なんでありますか、伺いたいと思います。
  4. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 移送について利害関係人抗告を認めるかどうかという点は、二つの相矛盾した要請から考えられる必要があると思うのであります。利害関係人の利益を守る点から申しますと、抗告を認める方がいいということは一言えるわけでございます。しかしながらこの手続は生きた会社更生させるとい建前をとつておりますので、手続の迅速を尊ぶことが非常に要求されるわけであります。裁判所が諸般の事情から移送を適当と認めてその処置とつという場合には、これはさらに抗告を許して、それについて紛争を巻き起すということであれば、事件が非常に延引いたしますので、これは裁判所処置にまかすとい建前をとつております。
  5. 梨木作次郎

    梨木委員 営業所あるいは工場が幾つもある場合におきまして、私どもが必配するのは、その際たとえば労働組合あるいは会社従業員利害関係人としていろいろな権利の主張をする場合に、非常に遠隔の工場あるいは営業所を管轄する裁判所職権移送された場合、やはりその裁判所認定が非常に不当な場合があるわけです。そういう場合に利害関係人から実情を訴えて、これを救済する方法を認めないということは、まことに不都合な結果を生じて来ると思います。会社更生目的としておる場合においては、特に会社企業の重要な構成要素としての従業員労働組合、これらの人々の協力なくしてはできないはずであります。従つて利害関係人からするところのかような職権による移送に対して、異議を申し立てる方法を認めないと、この法律目的とするところを達成する上においても非常に遺憾な結果になると思うのでありますが、そういうような規定を設ける意思はありませんか。そうでないと実際はこの法律というものは非常に実情から遊離した、あるいは不公正な会社更生を結果するように思われるのであります。その点をもう一度伺つておきたいと思います。
  6. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 もし不必要に裁判所移送するということでありますと、その後の手続裁判所としても非常に不便でありますから、そういうふうなことはいたさないと考えるわけであります。もし労働組合とかいう方面で移送について意見があれば、これは事実上十分意見を陳述していただいて、裁判所の考慮を促すとい機会はあるわけでありますから、そういうふうな運用でやつていただければ十分目的を達するじやないか。ただ申立て権利抗告権利を與える。それに対しては、手続として最後まで争い得るというふうなことになりますと、手続が非常に遅延いたしますから、そういうことは認めないということにいたしております。
  7. 梨木作次郎

    梨木委員 それではお伺いしますが、この更生申立てがあつて裁判所がこれにつきまして、第七條職権で、他の営業所を管轄する裁判所移送したその前に、利害関係人がどうしてそういう申立てをする機会を知ることができますか。
  8. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは第七條自体が本来非常に例外的な規定であります。特に「著しい損害又は遅滯を避けるため必要があると認めるときは」とい條件があるわけであります。この條件認定は、裁判所としても相当資料を収集して判断しなければならない。その段階において、これはおのずからその意見を反映する機会が、当事者として関心さえ持つておれば十分あるじやないかというふうに考えております。
  9. 梨木作次郎

    梨木委員 今の答弁では、私は不当な移送をされた場合の利害関係人権利を保護するに足りないと思う。しかしこれ以上は意見にわたりますから、次に移ります。  この移送というのは、裁判所は何か裁判をするのですか。特別の処分をすることになるのですか。それとも裁判所の内部的な手続で單に移送ということをやるにすぎないのですか。これはどうなりますか。
  10. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 移送裁判をいたします。
  11. 梨木作次郎

    梨木委員 そうするとその移送裁判に対しては異議申立てができるわけですか。
  12. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 それに対しては認めません。
  13. 梨木作次郎

    梨木委員 裁判というのは決定ですか、命令ですか。
  14. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 決定であります。
  15. 梨木作次郎

    梨木委員 決定に対しては抗告はできるわけですか。
  16. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 それについて先ほど申しましたように、抗告を認めないというわけであります。
  17. 梨木作次郎

    梨木委員 民事訴訟法を準備しておきながら抗告を認めないというのは、特別の規定がありますか。
  18. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 第十一條にその規定があります。
  19. 梨木作次郎

    梨木委員 十一條によりますと、「この法律に特別の規定がある場合に限り、その裁判につき利害関係を有する者は、即時抗告をすることができる。」これは即抗告規定であります。私が聞いておるのは一般抗告であります。これは民事訴訟法を準用しておれば、一般抗告を排除しておる趣旨にはとれないと思うのでありますが、それはどうなるのですか。
  20. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 第十一條趣旨は、即時抗告は許さないが、通常抗告は許すとい趣旨ではないのでありまして、特別の場合に限つて即時抗告を許すと書いてありますが、抗告は許さないとい趣旨はおのずからここに含まれておると考えます。これは和議法においても同様の表現を用いておりますが、そのように解釈されております。
  21. 梨木作次郎

    梨木委員 それからその次に第十條を伺いますが、「更生手続に関する裁判は、職権送達しなければならない。」となつておりますが、この裁判というのはどういうものを意味しておるのですか。
  22. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 たとえば更生手続開始決定、あるいは更生計画認可決定、そういうふうなものであります。
  23. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、これは決定でも命令でも何でも、裁判所意思決定は全部職権送達しなければならぬということになるわけですか。
  24. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは更生手続に関する裁判である限りは、まず職権送達しなければならないとい趣旨であります。
  25. 梨木作次郎

    梨木委員 第十一條で、「その公告があつた日から起算して二週間とする。」となつておりますが、送達した場合はどうなるわけですか。
  26. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 同様であります。公告の日から起算をいたします。
  27. 梨木作次郎

    梨木委員 私はそこのところがわからないのですが、裁判当事者あるいは利害関係人に通達する方法として、公告送達二つあるのではありませんか。その公告の場合はこれでわかりますが、送達の場合はどうなるかということを聞いているのですよ。
  28. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 送達公告と二重にする場合もございます。重要なる決定は大体送達公告と二重にすることになつております。その場合に、送達基準にして即時抗告の期間を起算すると区々になるので、公告の日から起算するということにいたしております。
  29. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、この法律ではいかなる裁判通知も、公告送達二つ方法をとつておるのですか。
  30. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 さようではございません。重要なる場合に、と言つてさしつかえないと思いますが、ここの場合に公告をしろというようなことが出ておりますが、その場合になお送達もする場合があるわけであります。送達のみでする場合もございます。これは特に公告をしろと書いてなければそれでいいわけであります。
  31. 梨木作次郎

    梨木委員 だから私はそこを聞いておるのです。公告をしないで、送達によつて通知をする場合にはどうなるかということを聞いておるのです。
  32. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 送達のみの場合には、これは通常民訴規定と同様でありまして、送達の翌日から起算するということになつております。
  33. 梨木作次郎

    梨木委員 第十四條でありますが、「書類通常取扱による郵便に付してすることができる。」とありますが、通常取扱いによる郵便というのは、つまり民事訴訟法においては裁判書類送達には特別の扱いをやつておるが、それをやらないとい趣旨であるのか。それともこれは普通の郵便、たとえば書留でない普通の郵便でやるとい意味であるのか。それはどういうことになるのですか。
  34. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 普通の封書とはがき、そういうような取扱い郵便ということになります。
  35. 梨木作次郎

    梨木委員 それから同じ條文の第三項でありますが、「郵便物通常到達すべきであつた時に、送達があつたものとみなす。」この通常到達すべきであつたということは、どういう基準で判断するのでありますか。
  36. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これ自身基準でありまして、何らか変則的なことがなければ「原則として、この程度で到達したであろうというときに到達があつたものと見なすとい趣旨であります。これは現在の商法の二百二十四條の第二項にそういうことが書いてあります。
  37. 梨木作次郎

    梨木委員 第十五條を伺いますが、この意味がわからないのであります。「この法律規定によつて公告及び送達をしなければならない場合には、送達書類通常取扱による郵便に付してすることができる。」「公告及び送達をしなければならない場合には、送達は、」とこう受けて来ておるのでありますが、これはどういう趣旨なんだか、私には意味がわからないのですが、答弁を願います。
  38. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 通常送達民訴規定によりまして、厳格なる方式でしなければならないわけでありますが、この法律の中で、その裁判送達すると同時に、別に公告をするというふうな場合があるわけです。そういうふうな場合に、その送達方法を普通の民訴法の定める方法にさらによらせるということは、これは必要がないじやないか、公告もあるのだから、費用の関係もあるし、これは通常取扱いによる郵便に付してやつてさしつかえないのじやないかということを規定したのが十五條であります。
  39. 梨木作次郎

    梨木委員 それならば、公告という文字はいらないのじやありませんか。この法律規定によつて送達をしなければならない場合には、送達書類通常取扱いによる郵便物ですると書いたらよさそうなものですが、公告が入つておるから、私はわからなかつたのですが、どういう意味ですか。
  40. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 この法律によつても、送達だけをする場合には、通常取扱いによる郵便では不十分なのでありまして、同じ裁判について、その裁判当事者送達すると同時に、その同じ裁判を官報とか新聞に対して公告をするというふうな場合には、二つもあるのだから、その一方は略式でよろしいとい趣旨であります。
  41. 梨木作次郎

    梨木委員 三十九條で、裁判所が「その他必要な保全処分を命ずることができる。」こうなつておりますが、前にお聞きしたかどうか、ちよつと記憶がはつきりしないので、もう一度お伺いするのでありますが、その他必要な保全処分を命ずることができるとい場合には、たまたまこの会社が当時労働争議が起つておつたという場合には、その争議行為も停止するようなことが、この保全処分の中に含まれておるのかどうか。言葉をかえて申しますならば、裁判所争議中の会社の場合は、この争議をも、この会社従業員に対して停止することを命ずることができる趣旨であるのかどうかということであります。
  42. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは前にお答えしたことがあつたように存じておりますが、含んでおりません。
  43. 梨木作次郎

    梨木委員 四十一條でありますが、第三項に「調査委員は、調査をするにあたり、裁判所の許可を得て執行吏援助を求めることができる。」とありますが、これはどういう場合をさしておるのでありましようか。調査委員執行吏援助を求めなければならないような事項、これはどういうことを法律は予想しておるのですか、聞きたいと思います。
  44. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは会社帳簿書類等物件を検査するにあたりまして、調査委員が場合によつて妨害を受けたというふうな場合には、執行吏援助を求めるというわけであります。
  45. 梨木作次郎

    梨木委員 調査委員債務名義執行に類するようなことをやる場合があるわけですか。
  46. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 そういうことはございません。今申しましたように、第四十一條の第一項の権限、すなわち会社帳簿書類、金銭その他の物件を検査する権限調査委員は持つておるわけであります。しかしながら調査委員公務員でございませんから、妨害を受けるということになりますと、必ずしもそれを防ぐ有効なる手段もございませんので、執行吏援助を求めるということができるようにいたしておるのであります。これは商法の整理の規定にも同様の規定がございます。
  47. 梨木作次郎

    梨木委員 この点を伺いたいと思つたのでありますが、今の答弁の中でそれに触れておるようですが、調査委員職務執行というのは、これは公務執行とは理解されないわけなんですか、そういうふうに解釈はしておらないのですか。
  48. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 調査委員刑法にいわゆる公務員ではございません。従いまして職務執行妨害公務執行妨害罪に該当するということはないわけであります。
  49. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、公務員でないものが職務執行について援助を求めた場合におきまして、その執行吏のなす行為に対して何か妨害があつた場合、それは公務執行妨害になるというような解釈をおとりになるのですか。
  50. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 執行吏刑法にいわゆる公務員となつておりますので、これが調査委員援助によつて調査に協力しておるという場合に、それを妨害いたしますと、これは公務執行妨害になるというふうに考えております。
  51. 梨木作次郎

    梨木委員 第八十條に、悪意のあるものは否認することができるとい規定がありますが、この善意とか悪意とかいうことについての立証責任、これはだれが負担しておるというように解釈しておるのですか。
  52. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは管財人がある場合には管財人の方で立証責任を負担する、かように考えております。
  53. 梨木作次郎

    梨木委員 管財人あるいは管財人がないときは会社の方が悪意であることを証明する責任がある、こういうようになると承知してよろしいのですね。
  54. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 管財人がない場合には、第八十二條の規定によりまして会社でなくて更生債権者あるいは更生担保権者がなるわけであります。
  55. 梨木作次郎

    梨木委員 九十四條で、利害関係のないもののうちから管財人を選任しなければならぬとしておいて、但しそのうちの一人は利害関係のあるものから選任することができるということになつておるのであります。そして第二項はそれを受けまして、信託会社あるいは銀行の場合は管財人となることができる、これを見ますと、信託会社あるいは銀行の場合は利害関係があつて管財人になることができる、こういうことになるわけなんですか。
  56. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 さようではございません。二項は、従前破産管財人には法人はなれないと解釈されていたと思いますが、そういうことでなくて、この法律では、法人のうちの銀行信託会社自然人じやなくても管財人になることができるということをうたつたわけであります。利害関係のあるものは自然人と同様の関係になるわけであります。
  57. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、通常破産法などの場合は、管財人には法人にはなれない。しかしこの場合は特に法人にも、——法人である信託会社銀行にも管財人になる方法を認めたのだ、こういうことなんですね。
  58. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 さようでございます。
  59. 梨木作次郎

    梨木委員 なぜ法人たる信託会社銀行にだけ管財人となることを認めるような特例をお設けになつたのか、その理由を伺いたいと思います。
  60. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 この法律が定めまする更生手続——これは管財人職務は非常に重要なものになつておりまして、その人選が非常に重要かつ困難な問題になつておるわけであります。自然人管財人の候補を限りますと、これは相当きゆうくつな場合もあるかもしれない。むしろ法への中に、従前そういうふうな管財人にふさわしい経験のあるものがあれば、これを利用した方がよくはないかということから、認めたのであります。銀行信託会社に限定いたしましたのは——そういうふうな適格性は大体この二つに限るのではないかというふうに考えております。
  61. 梨木作次郎

    梨木委員 そういたしますと、九十四條の第三項に、「信託会社又は銀行は、代表者のうち管財人職務を行うべきものを指名し、裁判所に届け出なければならない。」こうなつておりますが、これはどういう趣旨なんでありますか。一般的に信託会社あるいは銀行に対して、こういう管財人職務を行うべきものの指名裁判所に届け出させるような規定なのか、それとも具体的に、ある信託会社あるいは銀行管財人指名した場合に届け出ろとい趣旨なんでありますか、これはどうなんです。
  62. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 今申されたあと趣旨であります。
  63. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、「代表者のうち管財人職務を行うべきものを指名し」とこうなつておりまして、この人がさらにまた管財人職務を行う代理と申しますか、そういうものを選任することができるような規定が、あとにそういう規定があつたと思いますが、そういうこともできることになるわけでありますか。
  64. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 管財人代理を選任することは、法人管財人なつた場合も同様であります。この管財人職務を行うべきものを指名したものの代理人でなくて、管財人たる法人代理人ということになります。
  65. 梨木作次郎

    梨木委員 どうも私はそこのところわからないのでありますが、一体大きな信託会社とか、銀行代表者管財人になるといつても、ほとんど忙がしくて実際上実務はとれないわけです。そうするといつでも結局この人間がさらに代理を命じ、それがやるということになる、そういうようなことになりますならば、結局はそういう特定人間——別にこれら銀行会社法人代表者の、またその代理というような形をとらなくとも、特定人間管財人になればいいわけなのであります。特に銀行につきましてこういうものを設けたということは、私やはりこの銀行信託会社企業を支配しやすいように、特に銀行信託会社にこういう特例を設けておるのじやないかというように、今の説明から解釈されるのでありますが、そこのところどうですか。
  66. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 信託会社または銀行取締役個人管財人にする場合と、それから銀行または信託会社自身管財人にする場合とでは、これは対外的な信用も違います。それからその組織を利用するという点においても違うわけでありますから、これは実益があると考えてこういうふうにいたしたわけであります。ただそういうような場合に、事実上管財人職務を行うべきものとして指名された者が、忙がしくてあまり仕事ができないということはありまするが、法律建前としては、これはまかせきりでなくして、その人にまず責任を持つて仕事をやつてもらうということを考えております。事実上その手足として部下の者を置くということは、これはさしつかえないと考えておりますが、仕事自体はあくまでもその職務を行うべきものとして指名された者にやつてもらうとい建前であります。
  67. 梨木作次郎

    梨木委員 九十四條で、「数人の管財人を選任する場合には、そのうちの一人を利害関係のある者のうちから選任することができる。」これでは一体公正な企業管理をなすべき管財人といたしましては、きわめて不適格であると思うのでありますが、なぜそのうちの一人を利害関係のある者から選任することができるようにされておるのでありますか。こういう除外例を設けることによつて特に銀行信託会社がこの規定を利用いたしまして、そうして管財人の中に一人入つて行きまして、実際はこれによつて、この銀行信託会社による企業支配を可能ならしめて行くとい方法が、ここに抜け道がちやんとできていると私は思う。この点についての御説明を願いたいと思います。
  68. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 御指摘のように、利害関係人管財人に選任いたしますと、手続の公正をはかるということは場合によつて困難な場合もないともいえないということは考えられるのでありますが、一面管財人更生手続開始後の会社の事業の経営とか、財産の管理職務を持つておるわけです。その点から申しますと、まつたく新しい人が入り込んで来てやつては、会社としては非常な蹉跌を来す、であるから数人の管財人を選任したような場合には、そのうちの一人は、従前取締役、社長というふうな人になつてもらつて経営の面はその人に主としてやつてもらうというふうにすることは必要じやないかという考え方から、この例外を設けたのであります。
  69. 梨木作次郎

    梨木委員 百二十五條に関連するのでありますが、これに書いてあるわけでございませんが、議決権の額ということが規定してあります。この議決権の額というのは、それぞれの更生手続を行おうとする会社事情において、裁判所が額を決定するというような建前になつておるのでありますか。少しわからないので聞きたいのであります。
  70. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 議決権の額は、第百十三條の第二項から第百十四條以下に法定いたしてあります。
  71. 梨木作次郎

    梨木委員 法定してあるといわれてもわからないのでありますが、たとえば第百十三條では「次條から第百十八條までに掲げる債権についてはこれらの規定によつて算定した金額に応じ、その他の債権については、その債権額に応じて議決権を有する。」となつておりますが、これは具体的にどういうことになるのです。そこのところを説明してもらいたい。
  72. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 通常債権額議決権の額とを区別する必要がないわけであります。原則としては、債権額議決権の額は一致するわけでありまするが、それだと非常に不公平を生ずる場合がある。たとえば期限附債権が無利息であつて、その期限更生手続開始後に到来する場合、こういうふうな場合にはその債権額によつて議決権を行使させますと、すでに期限の到来している債権者と同等の議決権を有するというふうなことになりまして、不公平になりますから、その例外としてここに数條を掲げたわけであります。それ以外の場合は債権額と同じだというふうに考えていただいてさしつかえないと思います。
  73. 梨木作次郎

    梨木委員 実際の手続の場合に、たとえば五十万円と一万円の債権がある場合に、議決権はどういうことになるわけですか。そういう具体的なことを聞きたいのです。五十万円も一万円も一つの議決権は持つておるのかどうかということ、そういうことを聞きたいのです。
  74. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 この手続におきましては、一個の議決権とか数個の議決権とかいう観念は用いておりません。これは和議法破産法の強制和議においても同様でありますが、債権額に応じた議決権を持つているというような考え方であります。
  75. 梨木作次郎

    梨木委員 二百五十條でありますが、この規定から見ますと、更生債権者あるいは更生担保権者あるいは株主の権利が変更ざれることを規定しておりますが、これはたとえば債権について申しますならば、債権を減額するとか、こういう権利の消滅変更ということをもちろん予想しているのだろうと思いますが、そういうことになるわけですか。
  76. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 その通りでございます。
  77. 梨木作次郎

    梨木委員 私の質問はきようはこの程度にしておきます。
  78. 押谷富三

    押谷委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。——ほかに御質疑がなければ次に進みます。     —————————————
  79. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に破産法及び和議法の一部を改正する法律案について質疑を行います。質疑の通告がありますからこれを許します。鍛冶良作君。
  80. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 破産法及び和議法の一部改正法律案三百六十六條の二の一番あとの項ですが、「破産者ガ其ノ責二帰スヘカラザル事由二因リ第一項ノ規定二依ル免責ノ申立ヲ為スコト能ハザリシ場合」とこうありますが、これはどういう意味なんですか、よくわからないので承りたいと思います。
  81. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これはたとえば不時の大災害がありまして、交通が杜絶して、そのために第一項の申立ての期間を守ることができなかつたような場合であります。
  82. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 しかしそうはとれないのです。第一項は、何時にても申立てをなすことができるとなつておる。ところが責めに帰すべからざる事由によつて申立てができなかつた場合には「其ノ事由ノ止ミタル後一月内二限リ免責ノ申立ノ追完ヲ為スコトヲ得」とあります。追完というと、初めに何か申立てがあつたのじやないか、今あなたの言われるようではなくて、第一項の期間を経過したとい意味だろうと思う。申立ての追完なのだから、一ぺんあつたものに追完するのか、それから何時でもできるというが、やれなかつた場合はどうなるか、その関係がわからない。
  83. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 「何時ニテモ」とございますが、その前に「破産者ハ破産手続ノ解止ニ至ル迄ノ間」という字句があります。これは「破産者ハ」とあるのは、破産宣告をするとい意味が中へ入つておりまして、破産宣告後破産手続の解止に至るまでの間ならば、いつでもできる、しかしながら破産手続が解止になつた後はもはやできないということになるわけであります。解止と申しますのは、終結それから廃止等破産手続の終了全般をさしているわけであります。この期間と申しますかこの間の申立てをなすべき制限の時間があるわけでありまするが、それを守れなかつたというふうな場合には、これは第五項で救おうというわけであります。本来ならば第五項のような規定は、純粋の期間であればいらないわけであります。民訴規定の準用によりまして——民訴の百五十九條、「当事者カ其ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リ不変期間ヲ遵守スルコト能ハサリシ場合ニ於テハ其ノ事由ノ止ミタル後一週間内ニ限リ懈怠シタル訴訟行為ノ追完ヲ為スコトヲ得」ということがございます。これで行けるわけでありますが、これは期間と申せませんので、それでこういう規定を特に置いたわけであります。  次に追完の点でありまするが、それは今申しました民訴の百五十九條にありますように、前にやつたものをその瑕疵を補うとい趣旨ではなくて、もはや期間を経過した以上はできないのだけれども、それを特に許すとい趣旨で追完という言葉を入れておるわけであります。
  84. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 よくわからぬのですが大したことではないから次に進みます。その次は三百六十六條の九の五号です。「破産者ガ本法ニ定ムル破産者ノ義務ニ違反シタルトキ」これはこの間もちよつと質問したのですが、それらと関連のあることと思いまするが、大体において具体的の実例をお聞かせ願いたい。
  85. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 たとえば破産法第百四十七條、第百五十條、第百五十三條等であります。
  86. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 なるほどこういうふうに明文に書いてあるものにぴしつとはまる違反があれば、これは当然になりますが、この間私申し上げたように、どこへ隠しておるのかわかれば、この條文に違反しておるというのはこれはぴしつと当てはまるが、そうではなくて、いかにも破産者にあるまじいというようなことは世上往々にあることなのです。そういうようなときには、もちろん表に現われて出れば当然なのだ。そうでなくて、今までのやり方を見ておると、どこかに何か不正があるようだと思われるときにこれをやられると、非常に一般が不平を持つと思うから、そういうような場合にはやはりこれにはまらぬというのでやれないのですかどうですか、その点です。
  87. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 そういうふうな場合には、破産法の第三百七十四條に該当する場合であります。これは破産手続としては非常に重要なることでありますから、債権者としては、そういう事実があれば、当然この免責の手続においてそういう事実を指摘して、裁判所に免責許否についての判断の材料を提供すべきものと考えます。そういうふうな事実はこれは手続が公正に行われる限りは当然防止できると思いますが、万一そういう事実を見のがして免責の決定がなされたというふうな場合に、これはさらに免責取消しの手続を認めまして、詐欺破産について有罪の判決が決定したような場合には、これはさらに免責の取消しの決定ができるということを三百六十六條の十五で規定しております。こういうふうなことから悪質なものは十分防止できるというふうに考えております。
  88. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の一番憂えますのは、法律上どれかにはまるであろうと思うけれどもはまらない。そしてよく言うことなのです。われわれは債権者とはいうものの、こういう見苦しい生活をしておるのが、あの人は破産者だといつてわれわれにはずいぶん合点が行かないというときに、さらに免責をやられるということになりますと、何かこう道徳的のことまでも攻めるわけには行きませんが、あつた方がいいんじやないかと思いますが、こういうふうに現われて、詐欺破産であるとか義務違反であるとかいうことになつて来れば、これはもう言うことはありません。かりにそういうものがあるとしてでも、なかなか債権者の方でそういうものを具体的に法律上の権限をつかめませんから、そういうような場合を憂えて言うのですが、現われて来ぬ以上はやむを得ぬものですかいかがですか。
  89. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 今おつしやることは大体法律の運用の問題だろうと考えますが、裁判所といたしましても、破産手続職権で事実の探知も行つておるわけであります。さらに債権者についても、免責について十分に異議申立てができる機会を與えてあるわけです。その運用よろしきを得れば、そういう事態は防止し得るものと思います。
  90. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 まことにくどいようですが、その異議申立ては、三百六十六條の九にはまるこれこれこれこれだと言わなければいかぬのか、それとも大体において、あれがやつておることはわれわれふに落ちぬことがあるし、どこかにけしからぬことがあると思うが、それらの点を考慮してやつてもらわなければいかぬ、こういうことが言い得るかどうか、三百六十六條の九の一から五まで、これにはまる、あれにはまるということを言わなければ、申立ての理由にならぬか、こういうことなのです。
  91. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 申立てであります以上は、ただ漫然と申立てて理由は何もないということでは不都合でありますから、どうしてもこういう理由があるということを述べてもらわなければ申立てとしこの体をなさない。三百六十六條の九の一号に該当するということを一応うたつていただかなければならないのでありますが、これはそうむずかしいことではないのじやないかと考えるわけです。かりに法律構成が誤つておりましても、これは裁判所といたしましてもいろいろ職権でやるわけなんで、別にその法律構成が誤つておつたから不都合を生ずるというわけではないと思つております。
  92. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 三百六十六條の七を見ますと、これは異議申立ての事由を制限しておりません。けれどもそれは法律上の理由がなくてはならぬことはわかつておりますけれども、そのときに三百六十六條の九のようにこういうものにはまつておりますと、こう言わなければならぬのか。それとも大体において免責すべからざるものだというようなことでいいのか。こうなるのですが、結局三百六十六條の七では、こういう事由があつたら申し立てることができる、こう書いてはありませんですが、その点はどうでしようか。
  93. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 大体において免責を許すべきものではないというような主張は、これは非常に不明瞭なことになるわけでありまするが、やはり異議申立てという以上は、その理由として法律的な許否についての異議を支持するような事実を言わなければならないということは、やはり要請されておるものと考えます。しかしながらこれは場合によつて、全部に該当するというふうな趣旨であるというふうに受取れる場合もあるかと思います。そういうように漠然とした主張でも、これは裁判所に対する注意の喚起というような意味も持ちますし、申立てとしても場合によつては適法であると思いますので、これは常にいけないというふうなことはないと考えております。
  94. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その次は三百六十六條の十二でありますが、「破産債権者ニ対スル債務ノ全部ニ付其ノ責任ヲ免ル」こうなつておりますが、これは今まであつた債務がすべてこの決定によつて創設的になくなつてしまう意味でありますか。それともどういう法理によつてなるのか。これをまず承りたい。
  95. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 免責の決定が確定いたしますと、破産債権は消滅はいたしませんが、その債務についての責任が破産財団に限定されるとい趣旨であります。一種のいわば自然債務的なものになるというふうに考えます。
  96. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうもそれはよくわかりません。「免責ヲ得タル破産者ハ破産手続ニ依ル配当ヲ除キ」とある。あるいはその分だけ、そのほかは免れる。そうすると破産手続のものだけ残つて、そのほかはもういらなくなることになる。こう解釈してよろしいですか。
  97. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 嚴密に法律的に言わなければ、今言われる通りに解釈して大差ないということになるかもしれませんが、法律的に考えますと、債務自体はやはり残つておる。たとえばその債務を保証する保証人に対する追及はなお別にできるということを考えております。債務自体が消滅するというふうに考えると不都合を生じますので、そういうふうにはいたしておりません。ただ債務者としては責任を免れるのだ、それ以外の責任を免れるのだ、こういうふうな意味であります。これは普通の債権法の理論でも認められておるのであります。
  98. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 理論を私は根本的に聞きたいのです。今あなたがおつしやつたが、それをすぐ聞こうと思つておつたんですが、三百六十六條の十三を見ますと、保証人の債務も免れるし、担保権も消滅する、こうなつておる。基本たる債権が免責になつたのに、その担保債務が残るというその理由がわからなかつた。それからそれらの点を総合いたしまして、いま少し法理的に説明を願わぬとよくわかりません。これは非常に将来に大きな問題が生ずると思いますから、これだけは明確にしておかなければならぬと思われるので、ひとつあなた方のこれを立法されるに至つた法理的な根拠を明らかにしてもらいたい。
  99. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 債権法の理論におきまして、債務と責任というものは区別して考えられておるのであります。債務はあるが責任はないというふうな場合が考えられておるわけであります。たとえば限定相続の場合、これは債務は消滅したわけではないのでありますが、責任は相続財産の限度に限るということになつております。そのほかたとえば強制執行をしない特約があるというふうな場合も、これは債務はあるが責任がないというふうなことに判例上解釈されておるようであります。なおやや違いますが、債務はあるが訴求できないというものもある。これはたとえば時効によつて消滅した債務あるいは利息制限超過の債務、あるいは和議において一部免除を受けた債務というようなものがあるわけです。そういうものは広い意味で自然債務というように言われておるわけです。この免責された債務をこういうふうな性質を持つているものというふうに考えます。
  100. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうしますと破産者が免責を得た、そこで破産財団に属しておるものはこれはまだ免責を得ない、こう解釈していいわけですか、破産手続による配当を除きというふうにあるわけですから、破産財団にまだ財産が残つておるとすれば、その点は残らない、これが私第一番に聞きたいところなんです。その次はそのほかのものも責任は免れたんだが、債務は残つておるのだ、こういうことですか。まずこの二つを明らかにしていただきたい。
  101. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 財団の限度ではなお責任が残つておるわけです。それから債務は、免責されたものについても、なお自然債務として存続しておるわけであります。
  102. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると自分の方からそれじやお拂いいたしましようといえば、債権者は受取つてよろしいのでしようか。その点をひとつ……。
  103. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 債務者の方から任意弁済いたしますと、これは当然有効なる弁済でありまして、非債弁済とはならないというのであります。
  104. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今度はその反対に、債権者債権を持つておるが、債権者の方からは請求できない性質のものなのですか、これをひとつ……。
  105. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 債権者の側からは、破産者には追及できないということになつております。
  106. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうしてみると、主たる債務者に対して請求できないのに、従たる担保債務者に対し、もしくは担保物に対して、債権者が請求できる。この法理は一体どこから出て参りますか。
  107. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 その主たる債務はなお消滅してはおらないわけであります。請求はできませんが、消滅はいたしておらないのであります。それを保証する債務を存続しても、これはさしつかえない。むしろ保証債務というものは、そういう場合のためにこそ設けられたのではなかろうかということを考えるのでありまして、これは和議におきましても先ほどちよつと申し上げましたが、免責を受けた部分についての保証債務は消滅しないということになつております。
  108. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこにどうも疑問が残つて来るのです。主たる債務者には請求できない。けれども保証人になら請求してもいいのだ、なるほど債権という性質からいえば、主たる債務者が拂えないのだから保証人からとればいい。こういう議論も考えられますが、保証債務というものは、主たる債務があつて、主たる債務というものをどこまでも追及するだけしてみて、いわゆる検索の抗弁があるのですから、追及してみて、それでだめだつたらしかたがない、お前出せ、こういうことが常識じやありませんか。主たる債務は請求できないのだけれども、保証人ならやれるのだ。こういうことになると、これは実際問題から考えてみますと、なるほど免れたる破産者はまことにけつこうかしらぬが、保証人の目から見ると、どうも驚いたものなんです。こつちはあるがために保証してやつて、向うは請求されない。それを助けてやろうと思つてやつた者が請求されるというのは、どうも合点が行かないのですが、それでさしつかえないのでしようか。
  109. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 今仰せのような考え方もできまするが、現在の破産法等における建前を見ますと、やはりその反対に、むしろ保証債務はそういう場合に実益があるのではなかろうかというふうな考え方をとつておるように考えるのであります。破産法の三百二十六條をごらんいただきたいのですが、この規定は第一項で「強制和議ハ破産債権者ノ全員ノ為且其ノ全員ニ対シテ効力ヲ有ス」とありますが、この「強制和議ハ」というのは内容として債権を減額するとかいうふうなことも入つておるわけであります。この効力は破産手続に参加したい破産債権者のためにも効力を生ずる、こういうような趣旨であります。第二項で「強制和議ハ破産債権者カ破産者ノ保証人其ノ他破産者ト共ニ債務ヲ負担スル者ニ対シテ有スル権利及破産債権者ノ為ニ供シタル担保ニ影響ヲ及ホサス」この趣旨は、減額された部分についても保証人としての責任は免れないということをさしておるものではなかろうかと思われます。
  110. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この場合はまだ和議條件に基いて履行しなければならぬ。従つて保証人の債務というものは当然認められてもいいと思う。今度の場合は、免責になるのです。本人は免責といえば、主たる債務がなくなつたのと同じです。しかるに保証人と担保だけにはちつとも影響を及ぼさぬ、こういうことになると、保証人の目から見ると、ばかな話で、主たる債務者がのほほんと構えて、そこで免責になつてお前だけそれでやつて行けと言われたら、私は社会常識上悪影響を及ぼしはしないかと思うのですが、いかがでしようか。
  111. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは考え方によると思いますが、保証の制度の性質としてそういうものであるというふうに考えれば、さしつかえないのじやないか。現在の破産法それから和議法もそういうような建前をとつておるのでありますから、すでに、もしそういうような悪影響があるといたしますれば、これは現在の法律についても言い得ることではないかと考えられます。そういうふうなことからも大した影響はないというふうに考えられますので、これはさしつかえないと考えます。
  112. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これ以上は議論になりますが、われわれは保証債務というものは従たる債務と心得ております。しかるに、主たる債務はなくなつて、従たる債務だけ残るという今の説明はちよつと納得が行きかねます。そこで私は翻つて聞きますが一体破産者として特別の取扱いを受けるのはかわいそうだということで、この法律をこしらえられたのでしようが、債務の履行までも免責してやらなければならぬほどの理由がありますか。破産者としてのいろいろな取扱いはやめさせる、もちろん力があつたならば、これを拂うことはさしつかえないのじやないか、それをやめさせる、もう債務はなくなつた、責任を免れさせるのだ、こういうところから出て来るものだから、こういうことが出て来るのです。免責と言わぬでも、何かそこに破産者としての酷なる取扱いを免れさせると言つたら、この法律をつくつた根本の趣旨にむしろ適合するのではありませんか。この点はいかがですか。
  113. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは免責の制度の本質に関係することでありますが、今申された部分は、むしろ復権の点を申されておるのではないかと想像するわけであります。破産者が破産宣告を受けたために公職につけないとか、いろいろそういう制限を受けるということをなくするという点は、これは免責の制度をとらなくても各個の法律でそういう制度をなくすればとれるわけです。今度のこの破産法の改正で考えておりますのは、むしろその点をさらに一歩進めて免責自体のことを考えておる。資格のみを與えても、債務が永久に残つて行くということでありますれば、これは一生日陰者に終るということになる。善良なる破産者で、特に責めるべき事由もない事由によつて破産になつというような人は、非常に大きな債務を負つた、そのために一生立ち上る機会を持たないということでは、これは非常に気の毒なことではないか。そこまでも追及するのが、現在の社会の制度として合理的かどうかということを考えた場合、むしろ財産全部を善良に投げ出してそして誠実に行動して行くという破産者に対しては、債務自体も一応責任を免れしめるということにした方が合理的じやないか。債権者の立場からしても、事実今まであまり破産宣告後において破産債権の追及をしたという例を聞いておりません。執行吏役場等でも大分調べましたが、そういう経験は全然ないそうです。そういうふうなことから行きましても、これはただ債務者をいじめるだけにすぎない。そういうようなことが考えられますので、むしろそういうふうな免責の制度を思い切つて採用して、その濫用を防止すればいいじやないかというようなことで、免責の制度を考えた。英米等におきましては、これは非常にうまく運用されて、早く破産者を更生させて、一日も早く社会の中に明るく更生させて社会の活動に寄與させるというふうなことをやつておるように聞いております。そういうふうなことを今度この法案によつて考えておるのであります。
  114. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そういう方面から考えれば、それはなるほど債務者にとつてはいいことには違いありませんが、自分の債務はもうなくなつてそれで更生する。ところがよそから担保を提供されておつた者及び保証人が追及されておるのをだまつて見て、それで自分だけ更生していいということはどうでしようか。一般に及ぼす影響というものから……。
  115. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 今言われることを、もし法律的に生かすといたしますれば、非免責債権のなかに保証債務というものを入れるかどうかというようなことにもなると思いますが、これは保証債務を残すということになりますと、この保証債務というものはやはり主たる債務と密接な関係があるので、結局主たる債務の方も何とか考えなくちやならぬということで、免責されぬ債権との差異の問題にもなるわけでありまして、法律的にはそういうものを入れるということは、ちよつと困難じやないかと考えるのであります。道徳的には、あるいはそういうような事態が考えられるかと思いますが、法律的にはこれはやはり従前のような建前をとらざるを得ないというように考えます。
  116. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これ以上は議論してもしかたがありませんから……。
  117. 押谷富三

    押谷委員長代理 他に御質疑がございませんか——他に御質疑がなければ本日はこの程度にいたし、次会は明後九日午後一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十六分散会