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1951-10-25 第12回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十五日(木曜日)     午後一時三十九分開議  出席委員    委員長代理理事 押谷 富三君    理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君    理事 猪俣 浩三君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    古島 義英君       牧野 寛索君    眞鍋  勝君       山口 好一君    田万 廣文君       梨木作次郎君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         検     事         (法制意見参事         官)      位野木益雄君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所民         事局長)    關根小 郷君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十月二十四日  国民身分登録証制定に関する陳情書  (第二四五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  会社更生法案内閣提出、第十回国会閣法第二  三九号)     ―――――――――――――
  2. 押谷富三

    押谷委員長代理 これより会議を開きます。  会社更生法案について、昨日に引続きまず章を追つて政府より説明を願い、それについて質疑を行いたいと存じます。  まず昨日行いました第一章及び第二章について質疑が残つておりますので、第一章及び第二章についての質疑を行います。梨木作次郎君。
  3. 梨木作次郎

    梨木委員 第三條の「外国人又は外国法人は、会社更生に関し日本人又は日本法人同一地位を有する。」とありますが、外国人といえば、申すまでもなく自然人をさしているのだろうと思いますが、これは念のために伺つておくのですが、本法案株式会社に対する会社更生の措置を講ずる法案であります。ところが第三條には、「外国人又は外国法人は」、とありますが、この外国人というのは、自然人についてもこういう更生手続がやれるという趣旨にも解釈できますが、これを明確にしていただきたい。
  4. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 第三條の外国人と申しますのは、外国人債権者または株主としてこの手続に参加する場合に日本人同一取扱いをするという意味でありまして、外国人である自然人対象として、更生手続申立てをするということを認める趣旨ではございません。
  5. 梨木作次郎

    梨木委員 ここで言う外国法人というのはどういうものをさしておるのか。具体的にたとえば本法案では株式会社だけに適用があるとなつておりますが、外国法人の中には会社としていろいろな種類のものがあると思いますが、これをどういうように考えておられるのか聞きたいと思います。
  6. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 第三條の外国法人は、株式会社に限らず外国において法人と認められておりますその他の法人、これがわが法律においてその存立を認められる場合でありますれば、その種類は限定しない趣旨であります。これは自然人と同様、債権者または株主としても参加し得るという場合であるわけでありますから、株式会社に限らないという趣旨であります。
  7. 梨木作次郎

    梨木委員 外国法人更生手続申立てばできるのですか、できないのですか。
  8. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 できます。
  9. 梨木作次郎

    梨木委員 そうなると、日本法人株式会社だけということになり、外国法人限つては、株式会社だけではなく、その他の法人もこの法案適用を受ける、こういうことになるわけでありますが、その通り解釈してよろしいかどうか。
  10. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 外国法人内国法人手続対象となるものは、株式会社またはその類似形態を有するものに限るとありまして、申立人になる場合は、これは株式会社に限らず、すべての法人日本法人外国法人と同様に申立てができるというわけであります。
  11. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、今私が具体的に聞いたのでありますが、その点についての答弁が具体的じやないので、もつと明確にしてもらいたいのであります。日本法人については株式会社だけが本法案規定する更生手続申立てができる、こういうことになりますが、外国法人限つては、株式会社であろうと、その他の種別の会社であろうと、本法案更生手続申立てをすることを認める趣旨でありますかどうか。
  12. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 説明ちよつと不十分なためであつたかと思いますが、申立てをするという場合には、会社みずからが申立てをするほかに、債権者として申立てをすることができるし、株主としても申立てをすることができることになつております。そのみずから申立てをする場合には、株式会社に限るわけであります。これは外国法人内国法人株式会社に限るわけであります。債権者または株主として申立てをする場合には、株式会社に限らない。この点も外内法人ともすべて同様であります。その点においては区別はないわけであります。これで御了解行くと思います。
  13. 梨木作次郎

    梨木委員 外国というのはどういう定義になりますか。外国法人定義を聞きたいと思います。
  14. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 外国法人と申しますのは、学説上いろいろ説がわかれているようでございますが、大体におきまして、外国法に基いて設立された法人というふうに解釈してさしつかえないと考えております。
  15. 梨木作次郎

    梨木委員 そこで私はこれはよくわからないので教えていただきたいと思いますが、本法に基く更生手続申立て株式会社に限る。ところで外国法人の中にも株式会社だとか、あるいは合資会社だとか、また日本で言う有限会社というようないろいろな名称会社があると思うのでありますが、その場合これははたして株式会社という名前を使つているかどうか、こういう点が非常に複雑であり、微妙だろうと思うのでありますが、そういう判定がはつきりつきますかどうか。従つて外国法人の中で、本法に基いて更生手続申立てができる会社というのはこういうものだということが明確にされておらなければ、この点について実際の運用上非常に混乱が起つて来ると思うのであります。この点について、大体日本で本法案適用を受けると想定される外国株式会社には一体どういうものがあるかということの御説明を願いたいと思います。
  16. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 外国法人にはいろいろな形態のものがあるようでございまして、中にはわが国の法人形態とひどくかけ離れているようなものもあるように聞いておるのでありますが、株式会社につきましては、少くとも文明国におきましては、大体本質においてほとんど共通の要素を備えておる形態のものが存在しておるようであります。名称は各国とも違うようでありますが、大体において株式会社類似形態のものがあるようでございます。商法の四百八十五條の二に「外国会社ハ他法律適用ニ付テハ日本ニ成立スル同種ノ又ハ最モ之ニ類似スル会社ト看做ス」というような規定がございまして、外国会社のうちで株式会社同種のもの、またはこれに類似のもの、これは日本株式会社とみなされるということになつております。
  17. 梨木作次郎

    梨木委員 そこで第三條のように、外国人または外国法人に対して会社更生に関し日本人または日本法人同一地位を與えるように一般的に規定しておりますが、しかしその会社更生に関して日本人に対しても同じような待遇を與えておらない外国に対しても、この法の適用をしようとする考えであるのかどうか、これを伺いたいと思います。
  18. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 さようでございます。無條件平等主義を採用いたしております。相互主義ではございません。
  19. 梨木作次郎

    梨木委員 この第三條の適用にあたりまして、中国法人はどういうように扱うおつもりでいるのですか。
  20. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 もちろん外国人及び外国法人の中には、中国人及び中国法人を包含いたすわけであります。ただ平和條約の成立まではまだほかの関係から問題が残つておるかと考えます。
  21. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、中国法人は今のところこの第三條の適用を受けないと解釈されるのですか。
  22. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 もちろんこの字句の中には当然包含されるわけでございますが、送達関係とかいろいろそういうふうな関係もございまして、現実にはあるいは障害があるのではないかということを申し上げたのであります。
  23. 梨木作次郎

    梨木委員 現実送達等関係障害があるから、実際問題としては適用できないが、原則としては適用するのである、こう解釈してよろしいですか。
  24. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 さように解釈してさしつかえないと思います。
  25. 梨木作次郎

    梨木委員 それからアメリカにおきましては、本法案のような会社更生に関する法律というものが実際存在しておるのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  26. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 アメリカには会社更生手続と同様の制度が存在しているというふうに承知いたしております。
  27. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、アメリカのいわゆる会社更生法におきましては、この第三條に規定したと同じような日本人並びに日本法人に対して同一地位を與えておる規定がありますかどうかお伺いいたします。
  28. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 ただいま手元に文献を持ち合せておりませんが、アメリカにおきましても、たしか平等主義を採用しておるのではないかと思つております。
  29. 梨木作次郎

    梨木委員 この点はきわめて重大なことでありまして、今文献がないから正確な答弁ができないとおつしやいましたが、これはお調べの上正確に御答弁を願いたいと思うのであります。なぜならば日本人だけが——今後いろいろな関係で、経済的なアメリカとの提携というようなことがいわれておりますから、そうすればアメリカ会社がどんどん日本にやつて来る。そうした場合に、アメリカ会社に対してはこの会社更生法適用をしながら、その本元のアメリカ国内においては日本法人会社更生法適用を受けておらないということになれば、これは非常に重大なことであります。従つてこの点については、お調べの上明確に御答弁を願いたいと思います。特にアメリカの各州についての扱い方を個別的に明細に御答弁を願いたいと思います。  それからその次にお伺いいたしたいのは、ここの外国法人というのは、商法にいう外国会社取扱いと同じように考えてよろしいかどうか、これをお伺いいたしたい。
  30. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 はなはだ失礼ですが、ちよつと質問の趣旨がわかりませんが……。
  31. 梨木作次郎

    梨木委員 それではこういうぐあいに伺いましよう。外国法人というのは、日本支店あるいは営業所、こういうものを持つておる外国法人だけをさすのか、それとも単に日本と経済的な関係のあるものだけをさすのか、こういう点を聞きたいと思うのであります。
  32. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 外国法人が他の株式会社対象といたしまして更生手続開始申立てをするには、日本支店または営業所を持つておることを必要といたしますが、外国法人自身更生されるというふうな場合には、これは日本に主たる営業所を有するという点が必要であります。ちよつと言い直します。外国法人自身更生手続対象となる場合におきましては、日本支店または営業所を有することを要します。
  33. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、この支店というのは、商法外国会社の問題と関連して来るわけなんですが、これは登記しておることを條件とするのかどうか。單に支店と称しておれば、それでよろしいのかどうか。まずその点を伺いたいと思います。
  34. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 登記がなくてもさしつかえないと思います。
  35. 梨木作次郎

    梨木委員 それはどういう理由によるのでしようか。登記がなくてもいいということになりますならば、これは何を基準支店ということを判定されるのか。そうすると、この限りにおいては商法外国会社適用をあまり厳重に実行されないというようにも理解されるのでありますが、その辺のところをもう少し詳しく聞きたいと思います。
  36. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 商法の四百八十一條によりますと「外国会社ハ第四百七十九條ニムル登記ヲ為ス迄ハ日本ニ於テ取引継続シテスコトヲ得ズ前項規定ニ違反シテ取引ヲ為シタル者ハ其取引ニ付会社ト連帯シテ其責ニ任ズ」こういうふうな規定を置いております。この点における登記を欠くということは、この四百八十一條のような効果を生ずるわけでありますが、単に更生手続申立てをするというふうなことでありますれば、これはさしつかえないというふうに考えるのであります。
  37. 梨木作次郎

    梨木委員 この四百八十一條から言つても、これは第三者が、登記をしておらなければその会社存立を否認することができることになつておるのでありますから、やはり公的な機関であるところの裁判所は、その申立てをされた場合に、当然これは取引安全保護といいますか、いろいろな観点からこういう否認権を行使することも認めなければならないし、そういう精神からいつて登記をしていないような会社について更生手続申立てをする権能を認めることは、取引安全保護観点からいつても非常に不都合であると思うのでありますが、その点についての御見解をもう少し伺いたいと思います。
  38. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 御指摘の点はごもつともでありまして、現実には登記のない外国会社につきまして手続開始するということは、いろいろ障害が起るというふうなことがある。ただ法律建前からいうと、これはできないというふうには言えないのじやないかと考えております。
  39. 梨木作次郎

    梨木委員 その点は政府の確定的な御解釈なんですか。だとすると相当重要だと思うのであります。もう一度確かめておきます。
  40. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 そういうふうに考えておりますが、なお研究いたしたいと考えております。
  41. 梨木作次郎

    梨木委員 それから営業所でありますが、これも私はあまり知識がないので伺いたいと思いますが、これは支店はもちろんのことだから、営業所も何か届け出るとか何とかいう必要を條件としておるのかおらないのか、実際上営業所を設けてあればそれでよろしいという解釈なのかどうか。伺いたいのであります。
  42. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 支店という名称がつかなくても、常業所という実体を備えておればよろしい、同様に取扱うべきもの、こういうふうに考えております。
  43. 梨木作次郎

    梨木委員 営業所実体を備えておればよろしいというのでありますが、看板だけ掲げて、ちよつと事務員の一人がおつても、まあ営業所といえばいえないことはないと思うのでありますが、この辺のところをもう少し、これが営業所であるということについての何か判定基準のようなものをお持ちかどうか、そこのところを伺いたいと思います。
  44. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは非常にデリケートな場合があると思つておりますが、商法あるいは破産法等におきましても、すでに営業所という言葉はしばしば用いられておるわけであります。この法律におきましても、これは別に特別の意義を持つものではなく、これらと同様の意義を持つものであるというふうに考えております。その基準と申しますが、これは個々の場合に認定をすべきものではないかというふうに考えております。
  45. 梨木作次郎

    梨木委員 そこで聞きたいのでありますが、これから日米の間の経済関係というものは、非常に密接になつて来るというようなことも考えられる。また政府はそういう方針をとつておりますし、そうなりますと、経済的には資本的に非常に強力なアメリカ会社、これに対しまして、かりにアメリカ国内において日本法人に対して第三條のような同一地位を與えるという無條件平等主義をとつておるといたしましても、経済的に非常に微力な日本会社の場合におきましては、もう経済的に参つてしまう。そういうことからただちに日本において無條件平等主義をとるのだという建前で、日本国内において強力なアメリカ会社——アメリカだけじやありませんが、強力な外国会社に対してこういうような地位を與えるということを必ずしも必要としないように私は考えるのでありますが、どうしてこういう規定を設けられたのか、この点についての理由を御説明願いたいと思います。
  46. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 御指摘のように、アメリカには経済的に有力な会社が多い。日本にはそれに比較すると、全体として規模の小さい会社が多いだろうということは御指摘の通りであります。特にそのような事態があつたといたしましても、アメリカ会社に対して特別の何か取扱いをする理由があるだろうか。これは格別ないのじやないかというふうに考えております。  それから外国法人適用があると申しますが、外国法人本店外国にあるわけで、ただ営業所あるいは支店日本にあつて本国本店の方が破産状態になつて支店の方についても破産があつたという場合に、これをこちらの関係において解体してしまうということがありまして、そういう意味日本関係においてのみ解体するというのでありますから、その点も御承知を願います。
  47. 梨木作次郎

    梨木委員 そこで聞きたいのでありますが、外国法人に対して更生手続申立て権利を認めるということになつておりますが、一体本法の目的とするところの窮境にあるが、再建の見込みがある株式会社、こういう事実、また第三十條の「事業継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」こういう事実を一体外国本店を持つている外国法人について、その正確な実情をどうしてつかむか、これを聞きたいと思います。
  48. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 外国法人更生手続開始原因の有無の調査について、外国法人内国会社のような方法と同様な方法で容易にできるということは申せませんが、これは今日のような交通の発達した状態のもとにおきましては、不可能でないというふうに考えております。
  49. 梨木作次郎

    梨木委員 私は、本法案が実際に運営される場合において、この点が国民経済にとつて非常に重要な関係を持つて来ると思うのであります。だからもう少しこの点を掘り下げて聞きたいと思うのでありますが、今あなたは、簡単に、今日のいろいろな通信交通関係からして、外国法人についての更生手続開始原因調査もまあ可能なようにおつしやいましたが、しかし実際はこれは非常に困難だと私は考える。たとえば、かつて満州へ日本人一旗組が行きまして荒かせぎをしたが、結局失敗をしたというような例がある。それと同じように、外国人日本国内営業所基準もきめないで、単に看板一つ出して事務員の一人くらいおる。しかしここで一旗組で大思惑をやりまして損をする、そういうような場合におきまして、これに更生手続開始権利を與えることによつて日本国民がこれからどういう大きな犠牲を受けるかということを私は心配せざるを得ない。この点について、日本国民経済を保護するについてどういうようなお考えをお持ちかということを聞きたいと思うのであります。
  50. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 外国人がふらつと日本へやつて参りまして、商売をやる。そうして損をしてさつさと引揚げるというふうな場合は、この法律によりませんでも、別に日本国内財産がないということでありますれば、これは日本国内としては何ともいたし方がないと思います。本国に訴えを起すとか何かの方法によらざるを得ないわけでございます。特にこの法律があるからどうというような関係ではないと思います。
  51. 梨木作次郎

    梨木委員 それはそうではないのであります。これは「窮境にあるが、なお再建の見込のある株式会社」と書いてある。こういう理由で実は借金を踏み倒そうというわけである。踏み倒そうというと少し言い過ぎかもしれませんが、実際借金の整理をやろうという。そこで、損をしてからつぽになつて引揚げてしまうのはそれはよろしい。しかし実際は、外国法人といつたら、その詳しい実情をつかむことが前提的に困難である。そういう困難なものであるだけに、この会社更正法を利用して、日本国内におけるところの借金の踏み倒しをやりはしないかという点を私は心配する。特に今後どんどん外国資本が入つて来る。また日本資本家外資導入ということは盛んに努力しておる。その場合に、第三十條のこの規定事業継続に著しき支障を来すというようなことで、外資の入つておる会社がこの会社更生法適用いたしまして、これを使いまして、日本国内におけるところのいろいろな負債を巧みに踏み倒すようなことをやりはしないか、その心配がないかということを私は言つているのです。一体実情をつかめますか。こういう点を私は聞きたいと思うのであります。
  52. 押谷富三

    押谷委員長代理 梨木君に申し上げます。質疑は十分盡されたいと存じますが、でき得る限り重点的にやりたいと思いますから、なるたけ議論にわたらないようにお願いをいたします。
  53. 梨木作次郎

    梨木委員 わかりました。では、重要なことを重点的にやります。
  54. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 外国法人について調査が困難を伴うということは言えるかと思いますが、調査が行きわたらない場合には、これはわからないままに決定をするというわけではございませんので、わからなければわかるまで審議する、そうして処置するというわけでありますから、その点は別にさしつかえない、運用さえよろしきを得ればさしつかえないというふうに考えるわけであります。  踏み倒しという手段が濫用されないということでありますが、これは、もし憂いがあるとすれば、内国法人についても同様の憂いがあるわけであります。これは、関係者の大多数が同意し、しかも裁判所が厳密なる法律條件を検討して判断するということでありますから、この点はその運用を信頼するほかはないと考えます。
  55. 梨木作次郎

    梨木委員 ところが外国法人については、日本国内財産についてだけこの効力を認めるということになつておりますが、これでは日本国民が非常に迷惑するようなことになりはしないかと私は思うのであります。これは、外国法人については、どうして日本国内財産についてのみこの適用を受けておるのか。外国の、その国内における財産にまで効力を及ぼすような——それはまあ相当いろいろな問題があると思いますが、どうしてこういう点を考慮しないのか、これから日本国民が非常に迷惑しやしないか、こういう点を聞きたいと思います。
  56. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 国内開始したある手続を、外国にまでその効力を及ぼすかどうかという点は、立法上いろいろ主義があるようでありまして、御意見のように、一国で始まつた手続効力外国に及ぼすという立法主義も採用されている国もあるというふうに承知いたしておりますが、これはそれぞれ一長一短があるわけであります。日本におきましては、在来、破産手続においても和議手続においても、この更生法案におけると同様に属地主義を採用しているわけであります。日本開始した更生手続外国にある財産効力が及ばないと同様に、外国開始した更生手続日本にある財産に及ばないというようなことになつておりまして、これは利害相半ばしているわけであります。いろいろ論争はありましようが、従前のこの種の手続を採用した属地主義本法はよつたというわけであります。
  57. 梨木作次郎

    梨木委員 そこで、この第四條の、外国開始した更正手続というのは本法による更生手続でありますか。これはどういう意味でありましよう。
  58. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは本法による更生手続ではございません。実体的な意味更生手続でありまして、アメリカといたしますれば、アメリカ開始した更生手続、こういう趣旨であります。
  59. 梨木作次郎

    梨木委員 これはもう少し具体的に、本法にいうような会社更生法手続のある国は、どことどこと、どういうものがあるのか。あまり抽象的で困りますが、特に日本経済関係を結ぶような外国において、どういう手続を持つておるのか、この点がおわかりでしたら御説明願いたい。説明できなければ、後刻資料で御報告願いたいと思います。
  60. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 この法案と最も類似した更生手続を有するものはアメリカ合衆国であります。そのほかにこれと相当類似した国として、イギリスにもこの種の制度があるように承知いたしております。その以外のことにつきましては、ただいまのところ承知いたしておりません。
  61. 梨木作次郎

    梨木委員 それか ら、これは今度の日米安全保障條約の中の行政協定でおそらくきまるのだろうと思いますが、アメリカの軍人、軍属に対しては、どういう適用をするおつもりですなんか、こういう点はおわかりですか。
  62. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 通常のアメリカ人と同様の取扱いになります。
  63. 梨木作次郎

    梨木委員 通常とおつしやると、それは適用する建前になるのでありますか。
  64. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 軍人、軍属以外のアメリカ人と同様に、この法律適用があるというふうに考えるわけであります。ただ日米防衛條約ですかの結果、行政協定ができるようでありまするが、その内容いかんによつて、あるいは影響するところがあるかどうか、この点はなお承知いたしておりません。しかしながらこれは原則として、もちろん適用があるわけであります。
  65. 梨木作次郎

    梨木委員 これはまたあとで伺うことにいたしまして次に移ります。第九條では、これは昨日山口委員からも御質問があつたようでありますが、財産権の処分あるいは制限をするような事項を処理することになつておりますが、更生手続に関する裁判を口頭弁論を経ないでやるというようなことでは、財産権の保護に非常に遺憾な点が出て来ると思うのでありますが、なぜ口頭弁論を経ないこういう簡略な手続をおとりになるのか。こういうことでは財産権の保護に支障を来して来ると思われるのでありますが、これについての見解を聞きたいと思います。
  66. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 更生手続に関する裁判は、財産権の存否、変更等に非常に影響を及ぼすことになることは御指摘の通りではありますが、この裁判自体は手続の性質といたしまして相当迅速を要するわけなんです。それからまた事案の内容といたしましては、結果は重大でありまするが、究明すべき原因自身は必ずしも口頭弁論を経なくても究明し得るというふうなことが考えられるのではないか、それで口頭弁論を経なくてもできるというふうにいたしたわけであります。もちろん必要があれば、口頭弁論は当然開かるべきものと考えております。破産手続とか和議手続等も、これは同様に財産権に影響するところの重大な裁判でありますが、やはり口頭弁論を経なくてもできるというふうになつております。かたがたそれを参考にいたしたわけであります。
  67. 梨木作次郎

    梨木委員 九條の二項でありまするが、更生事件に関し必要な調査をすることができるとありますが、必要な調査というのは、どの範囲のことを想定されておるのでありますか。
  68. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 たとえば必要な証人を尋問するというふうなことであります。これは破産法、和議法においても同様な規定があります。
  69. 梨木作次郎

    梨木委員 そのほかに何かありますか。
  70. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 証人尋問のほか、民事訴訟法の規定する各種の証拠の取調べ、それから事実の探知等がございます。
  71. 梨木作次郎

    梨木委員 第三十七條でありますが、ここの利害関係人というのは、大体どの程度のことを想定されておりますか。
  72. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは債権者株主等でございます。
  73. 梨木作次郎

    梨木委員 ここで会社の従業員あるいは労働組合、これを含みますか。
  74. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 従業員も、会社に対して債権を有しておるというふうな場合でございますと、この中に含まれることになります。單に従業員であるという関係のみからこういう申立てができるかどうかということは、事案によりまして、あるいはそういうふうなことが言える場合がないとも言えないかもわかりませんが、原則としてこれは入らないというふうに考えております。
  75. 梨木作次郎

    梨木委員 更生手続開始決定があつた場合に、労働協約というものはどういうような関係になるのか、それを伺いたいと思います。
  76. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 更生手続開始いたしましても、労働協約は解除することができないという規定が、第百三條の第四項に設けてございます。存続するということになります。
  77. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、この管財人ができた場合に、労働協約上の経営者側の相手をだれにしたらいいのか。それはどういうぐあいに考えておられますか。
  78. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは管財人が相手になるべきものと考えております。
  79. 梨木作次郎

    梨木委員 管財人のない場合はどうなりますか。
  80. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 会社であります。
  81. 梨木作次郎

    梨木委員 会社ということはわかりますが、会社の取締役はいろいろな行為に制限を受けますので、その場合はだれを相手にするのですか。
  82. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 管財人のない場合におきましては、取締役が依然として会社の業務及び財産の管理をいたします。ただ裁判所の監督を受けるというわけであります。従いましてこの相手方となるべきものは会社、すなわち会社の代表取締役と申しますか、そういうものであります。
  83. 梨木作次郎

    梨木委員 その場合裁判所が少しは——少しはというと語弊がありますが、裁判所を相手にいろいろな交渉をするようなことになりはしないかと思うのですが、その点はどうお考えですか。
  84. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 裁判所はただ監督の役目があるだけでありまして、相手になるのは会社のみであります。
  85. 梨木作次郎

    梨木委員 三十七條から行きまして、労働協約の一時的な効力の停止というようなことは、裁判所はできるのですか、できないのですか。
  86. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 三十七條からもそういうことはできないと思います。
  87. 梨木作次郎

    梨木委員 それでは三十九條で保全処分、こういう形で労働協約の一時的な効力の停止を命ずるというようなことはするんじやありませんか。それから争議権の行使というようなことを制限するんじやありませんか。
  88. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 三十九條は、会社自体の業務及び財産に関する保全処分でありまして、争議行為そのものを対象とする保全処分というふうなものは、これは直接の対象といたしておりません。
  89. 梨木作次郎

    梨木委員 それでは総括的に伺いますが、会社更生手続申立てをする前の保全処分、あるいは申立てがあつた後におきましても、そこの労働組合が争議権を行使することには、何らの制約や制限を加えるものではない、こう解釈してよろしいですか。
  90. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは一般の労働法の適用を受けるというふうに考えております。
  91. 梨木作次郎

    梨木委員 その点は大事ですからもう少し正確にお伺いいたしますから、お答えを願いたいと思うのですが、それでは本法適用にあたりましては、労働法できめているいろいろな労働組合の活動に対する制約はともかくとして、本法によつては、労働組合の持つておる労働法上の権利を制限し、禁止し、制約するというようなことはできないのだと理解してよろしいわけでありますか。
  92. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 本法で労働組合法自体を制限しておるというような点はないと考えております。ただ実態におきまして、会社が非常に悲惨な状態にあるという場合に、個々の労働協約の條項が文字通り適用されるかどうかというような問題はありますが、これは労働法の一般理論によつて解決するというふうに考えております。
  93. 梨木作次郎

    梨木委員 質問を終ります。
  94. 押谷富三

    押谷委員長代理 他に質問ははございませんか。——質問がなければ、第三章以下全文につきましての逐條御説明を承りたいと思います。
  95. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 それでは第三章以下の概略の御説明を申し上げます。  第三章は、更生手続における最も重要な機関であります管財人について、その選任、会社財産関係の訴訟についての当事者適格、職務執行の方法、注意義務等、基本的な事項について規定いたしております。なお管財人の職務権限等は、他の章において規定されておるものが多いことを御承知願います。  第九十四條、これは管財人に関する基本的な規定でございますので、説明申し上げますと、本條は、管財人の資格要件、その他管財人の選任について定めたものであります。管財人は、会社の業務及び財産の管理または更生計画案の作成及び遂行に当るものでありますから、そのような職務を行うに適した、しかも利害関係のないもののうちから選任すべきことを原則としております。ただ会社の取締役とか、大口債権者等を管財人に選任する特別の必要があるというふうな場合におきましては、例外を認めております。法人の中でも、信託会社や銀行には管財人として適当なものがございますので、これらも管財人に選任できることといたしてあります。またこれらの法人が管財人に選任された場合には、事務処理の責任を明らかにするために、代表者のうちから管財人の職務を行うものを指名して裁判所に届出させるというようなことにいたしてあります。  次に第九十五條から第百一條までは、管財人の職務執行の方法等について規定してありますが、これは説明を省略いたします。  第四章に移ります。第四章は、更生債権及び更生担保権の意義更生債権者、更正担保権者及び株主権利並びにその届出、更正債権及び更正担保権の調査及び確定、代理委員の選任、相殺権等について規定いたしております。  第百二條でございますが、これは更生債権の意義を定めたものであります。内容は大体和議債権等の例にならつております。  次に第百三條から第百十一條まででございますが、これは更生手続開始前後にわたる権利関係、または数人の債務者のうちの一人について、更生手続開始された場合等の更生債権について規定いたしております。詳細の説明は省略いたします。  第百十二條でございますが、これは更生債権及び更生担保権の弁済の禁止等について定めてあります。なお国税徴収法または国税徴収の例によつて徴収することができる請求権について、特別の例外を認めております。  第百十三條でございますが、これは更生債権者の参加の権利及び議決権等について定めたものであります。  次に第百十四條から第百十八條までは、議決権の額の算定の方法について規定いたしております。これも詳細の説明を省略いたします。  第百十九條、これは更生手続開始前に生じた一定の租税債権、及び会社の使用人の給料並びに預かり金、身元保証金の返還請求権等を共益債権として認めとるいうふうにいたしまして、これらの債権の保護をはかつたものであります。特に給料債権等の保護については相当画期的な内容、意義を有するものと考えております。  第百二十一條でございます。本條は更正債権のうちで劣後性を有するものを定めたものであります。  第百二十二條、これは租税等の国税徴收法または国税徴収の例によつて徴収することのできる請求権については、徴収権者の同意がなければ減免等の定めをすることができないというふうなことにいたしたわけであります。  第百二十三條は更生担保権の意義等について規定いたしております。  次に第百二十五條及び第百二十六條、これは更生債権及び更正担保権の届出について規定いたしております。  次に百二十九條でございまするが、これは株主がこの更生手続に参加することを規定したものであります。なお議決権についても規定いたしております。  次に第百三十條はその株式の届出について規定いたしております。  第百三十二條は裁判所が届出のあつた更生債権、更生担保権及び株主権について、それぞれ更生債権者表、更生担保権者表及び株主表を作成して、一定の事項を記入すべきことを定めております。  次に第百三十五條以下第百五十六條までは、更生債権及び更生担保権の確定の手続について規定いたしております。これらはこの手続において実体的にその存否が規定されることになるわけであります。  次に第百五十九條でございます。本條は更生債権者更生担保権者及び株主の分類について規定いたしております。これらの権利者はそれぞれその権利の性質及び利害の関係が異なつておりますので、これをここに掲げておりまするような組にわけて、更生計画案について決議をさせることになつております。その決議のため及び計画案作成のために分類をすることをここで規定いたした次第であります。裁判所はこれらの分類を適宜変更することができるわけでありますが、更生債権者更生担保権者及び株主、これはそれぞれ別々の組にしなければならないというふうになつております。  第百六十一條でございまするが、これは代理委員というものを規定いたしております。更生手続には多数の利害関係の異なる権利者が参加しまして、更生計画案の作成及び決議等のために、相互に折衝を行うようなことが多うございますので、このような機関を設けまして、手続の円滑迅速な進行をはかることができるようにする趣旨であります。  第百六十二條は社債権者に関する特則を定めたものでございます。  第百六十三條及び第百六十四條、これは相殺権について規定いたしたのであります。原則として破産法で認められておりまする相殺権と同様でございまするが、ただその相殺を許す範囲が相当制限せられております。  次に第五章に移ります。第五章は関係人集会について規定いたしております。関係人集会は債権者株主、その他の関係人の集会でありまして、更正手続開始後の会社の業務及び財産の管理並びに更生計画案について審理し、または更生計画案について決議する等の権限を有しております。本章はこの関係人集会の招集手続、期日及び議決権に関する事項等、関係人集会の通則的な事項を規定いたしております。本章の各條の説明は省略いたします。  次に第六章に移ります。第六章は更生手続開始後の会社の業務及び財産の管理、管財人等の一定の事項についての調査及び報告の義務、審査人の選任、更生計画案の作成から議決に至るまでの手続、共益債権等について規定いたしております。第百八十條から第百八十三條まで、これは管財人等が一定の事項を調査いたしまして、裁判所に報告すべき義務を規定いたしております。  第百八十六條に移ります。第百八十六條は管財人がない場合の更生事務の処理及びその責任について定めたものであります。この場合におきましては、会社は本来管財人の処理すべき事務である更生事務を処理すべき義務がありますので、裁判所の監督に服することといたしております。そうして注意義務を管財人と同様といたしております。注意義務違反の責任は会社自身のほか、任務を怠つた取締役も負うというふうなことになつております。  次に百八十九條でございますが、これは更生手続中といえども、会社は原則として営業を継続すべきものでありまするが、特別の場合には許可を得て休止ができるというふうなことを定めたものであります。  第百九十一條は審査人について規定いたしております。審査人は会社更生事務を処理する場合に、管財人を置くほどのこともないが、会社更生事務の処理をまかせてしまうことも適当でないというふうな場合に選任するものでありまして、審査人は裁判所の命ずる事項を行うことになるわけであります。ただ管財人と異なりまして、会社の業務及び財産の管理をさせることはできないというふうにいたしてあります。  次に第百九十四條であります。本條は、更生事務の処理については法律知識を必要とすることが多いので、常設の法律顧問を置くことができるものといたしたことであります。法律顧問は費用の前払い及び報酬を受けることができることになつております。  次に第百九十五條及び第百九十六條でございます。これは第一回の関係人集会についての規定であります。第一回の関係人集会は更生手続開始会社の今後の管理の方針を検討するための集会であります。  次に第百九十七條及び第百九十八條であります。これらの條文は更生計画案の作成及び提出について規定いたしたものであります。管財人等は更生計画案の作成及び提出の義務があります。しかしながら更生債権者更生担保権者及び株主はそのような義務はありませんが、任意計画案を作成して提出することはできるというふうにいたしております。なるべくよい案を求めるという趣旨であります。  次に第二百條及び第二百一條であります。これは更生計画案審議のための関係人集会について規定いたしたのであります。  次に第二百二條は、裁判所は必要なときには、会社の業務を監督する行政庁等から意見の陳述を求めることができるというふうなことを定めております。また二百三條におきましては、更生計画案については労働組合等の意見を聞かなければならないというふうなことを定めております。これは計画案が使用人に重大なる利害関係を持つものであるからであります。  次に二百七條でありますが、これは提出された計画案が結局において認可できないようなものでありますれば、せつかく手続を進めてみてもむだでありまするので、関係人集会の審理または決議に付さないでもよい場合を認めたわけであります。  次に第二百八條であります。本條は更生計画案決議のための関係人集会の招集、及び関係人に対する更生計画案の写し等の送達について定めたものであります。案の写し等を送達することにいたしましたのは、事前に関係人に案の内容を知らせまして、決議に便利ならしめるようにする趣旨であります。  次に第二百十三條でございます。本條は更生計画案の可決の要件を規定いたしております。権利者の頭教は考慮しないことになつております。各組において、法定の額または数以上の決議権のある者の同意を得られないと案は可決されないことになります。しかしながら和議等の場合に比して可決の要件は緩和されております。清算を内容とする更生計画案というものがございます。これは説明が落ちましたが、その場合には更生担保権者については全員の同意を要するというふうにいたしてございます。これは破産手続及び特別清算手続との均衡を考慮したものであります。  順序がいささか逆になりまするが、第百九十九條に清算を内容とする計画案という規定がございます。これは会社の維持継続を前提とする計画案ができない場合に、本来ならばこの手続を廃止して、あらためて破産手続あるいは特別清算手続等をやる必要があるわけでありまするが、せつかく進めた手続をやめて、また別の手続に移すという手続のむだを省く意味で、この手続の内容において清算を内容とする計画の作成もできるというふうな特別の場合を認めたわけであります。これは更生手続開始当時は、もちろん企業の維持存続が可能であると認められた場合でありまするが、手続の進行中に事情が急変いたしまして、更生が困難な事態に立ち至つたというふうな場合の特別の措置を認めたわけであります。しかしながらそういうふうな場合におきましては、これは更生担保権者は破産等の場合に比べまして特に不利な立場に立たないように全員の同意を要することといたしたわけであります。  次に第二百十六條から第二百十八條であります。これは共益債権について規定いたしております。共益債権は破産の場合の財団債権に準じて認めたものであります。共益債権相互の間には破産と異なりまして特に順位を認めておりません。なおここに規定するもののほかに、各條に特に共益債権とするという規定がほかに設けられておる場合がございます。たとえば先ほどの使用人の給料等の規定であります。  次に第七章に移ります。第七章は更生計画の必要的及び任意的な條項並びに計画の條件に関する原則等について規定いたしております。第二百十九條、これは更生計画案に関する原則的な規定であります。本條は更生計画に関する総括的な規定でありまして、第一項は更生計画の必要的條項を規定いたしております。第二項は任意的な條項を規定いたしたのであります。任意的な條項を定める場合におきましても、特に重要な事項につきましては、一定の要件を具備すべきものとして計画の内容を明らかにさせ、またあわせて計画遂行の場合における商法その他の法令の適用の排除が可能なようにいたしてあります。たとえば新会社の設立というものを、更生計画案において規定いたしたという場合におきましては、一定の要件を備える場合におきましては、商法規定する会社設立に関する諸要件を備えなくても、定款を作成して討議するという程度の簡單な手続で、新会社の設立はできるというふうなことも規定いたしております。これは従前の債権者等にその債権にかえて新会社の株式を與えるという場合でございます。  次に第二百三十四條に移ります。これはただいま申し上げました新会社設立についての計画案の記載事項の規定であります。第一項は更生債権者更生担保権者または株主に対して、元の債権、株式等のかわりに、新しい株式を與える、これらの株主のみで新会社を設立する場合の要件であります。第二項はそれ以外の方法によつて会社を設立する場合の要件であります。この場合におきましては、更生債権者更生担保権者または株主に対して、新たに払込みもしくは現物出資をさせ、またはさせないでその株式を引受けさせる場合も含んでおります。たとえば従前五十円の額面の株式を持つてつた株主に対して、新会社の額面五十円の株式を二十五円だけ新たに払い込めば與えるというふうなことができるわけであります。なお計画においては新会社の取締役及び監査役の選任についても定めるべきものといたしております。この計画において規定した新会社設立についての効果の規定は、二百六十七條及び二百六十八條に規定いたしております。  次に第二百三十六條でございます。これは更生計画に関する重要な規定でありまして、更生手続に参加する権利者の権利には、その性質に差違があり、その差違を無視するときは、不当な権利の侵害を生ずるということもありますので、権利の性質に応じて必ず計画の條件に公正、衡平な差等を設けなければならないことを規定いたしたのであります。この順位を無視した計画、たとえば株主権利債権者権利よりも有利に取扱うような計画は不適当でありまして、たとい可決されましても裁判所はこれを認可することはできません。また第二項は、罰金、科料等の請求権及び租税等の請求権は、特別の性質を有するものでありますので、第一項の規定適用がないことを明らかにしたのであります。  次に第二百三十七條、これは平等の原則について規定してあります。更生手続は各権利者が公正、衡平に満足を得ることを本質といたしておりますので、本條は、同じ性質の権利者に対する條件は原則として平等でなければならないことを定めたのであります。しかしながら形式的に平等は、必ずしも実質的な衡平をもたらすものではございませんので、少額債権等については例外を認めることにいたしております。  次に第二百三十八條でございます。これは取締役及び監査役の選任等に関する計画の定めが衡平であつて債権者等の一般の利益に合致するものでなければならないということがいわれております。  次に第八章に移ります。本章は更生計画認可の要件及びその効果、更生計画の遂行及びその遂行に関する他の法令の規定の特例、更生手続の終結等について規定いたしております。  第二百四十一條更生計画認可の要件を規定いたしております。第一号から第三号までは一般的な要件でありまして、第四号及び第五号は特別な場合の要件であります。裁判所は可決された計画がこれらの要件を具備しているかどうかをあらためて審査いたしまして、要件を満たしていると認めた場合に限り認可の決定をすることができます。ただ手続上ささいな欠陷があるような場合で、諸般の事情から見て、計画を認可しないことが不適当と認められるときは、認可の決定ができるごとといたしております。  次に第二百四十二條であります。本條は同意を得られない組のある場合の認可について規定いたしております。更生計画案について同意を得られない組がある場合でも、その組の権利者の権利を第一項に掲げるような方法で十分保護してやるような場合には、その同意がなくても計画の認可をすることができるというふうにいたしたのであります。第一項は計画案を関係人集会の決議に付して不同意の組があつた場合、第二項及び第三項は決議前に同意を得られないことが明らかな組がある場合の規定であります。この規定はこれらの組の者の権利を保護しつつ、更生計画の成立を容易ならしめるようにした趣旨規定であります。  次に第二百四十四條であります。本條は更生計画の効力はその認可の決定のときに生じ、決定の確定を待つて発生するものでないことを明らかにしたものであります。確定を待つて効力を生ずることといたしたのでは、計画の遂行に時宜を失するおそれがあるからであります。  次に第二百四十九條に移ります。本條は更生債権等の免責等について規定いたしております。この免責等の効力を認めましたのは、更生後の会社法律関係を明確にし、かつ更生を容易にするためであります。届出のなかつた債権とか、届出があつても異議のあつた債権で確定手続をとらなかつたようなものは、会社は認可決定があつた後はその債権の弁済をする責任がなくなるわけであります。罰金等の請求権及び租税の一部につきまして例外を規定いたしましたのは、罰金につきましては性質上免責を許さないものであるからでありまして、租税の一部、これは脱税犯が後に発覚したというような場合の特別の場合でございまするが、そういうふうな場合には免責を認めない。これは不適当であるからであります。  次に二百五十一條であります。これは更生債権及び更生担保権については、届出をして一定手続がなされた場合に初めて更生計画による権利のわけ前をもらえるということにいたしたわけです。和議なんかと違いまして、参加しないものには権利が認められないわけであります。  それに反しまして第二百五十二條におきましては、株主につきましては届出をしなくても計画において認められました利益のわけ前にはあずかれるというふうなことにいたしました。これは株式の性質上、この届出の有無によつて取扱いを異にすることは不適当であると認められるからであります。  次に二百五十四條でありまするが、これは更生手続開始によつて中止した破産手続等の執行について規定いたしたものであります。  第二百五十五條は、更生計画遂行の責任者について規定いたしております。第二項は管財人がなく会社による遂行が適当でない場合に、計画の遂行に当らせるために整理委員を選任することができることとしたものであります。  第三項は、計画遂行の確実迅速を期するために管財人等に発起人または設立委員の職務を行わせることとしたものであります。また第四項は、調査委員及び管財人に関する規定を整理委員に準用したものであります。  第二百五十六條におきましては、更生計画の遂行について裁判所は必要な命令をすることができる、こう定めてあります。  次に第二百五十七條から第二百六十九條までは、これは先ほど申しましたこの計画案の遂行についての商法等の規定の特例を定めたものであります。これによつて計画の遂行が簡易迅速にできるようにいたしたものであります。  次に第二百七十條であります。本條は更生計画の定めによりまして新らしく更生される会社または新らしく設立される会社株主または債権者なつた者が、権利者となつてから三年間も何らの請求をして来ないというふうな場合には、これはその権利を失うというふうなことにいたしまして、従来の権利関係を整理して、会社または新会社更生を容易ならしめるようにいたしたものであります。  次に第二百七十三條から第二百七十七條までは私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律すなわち独禁法の特例その他他の法令の特例について規定いたしております。特に申し上げたいのは第二百七十七條の税法の特例であります。本條は更生手続に関する税法の特例を認めたものでありまして、第一項は新会社の租税債務の承継について規定いたしております。また第二項は会社事業年度の特例を規定いたしております。第三項に至りまして、これは更生計画による会社更生を容易ならしめるために租税の軽減をはかつたものであります。更生手続によりまして会社財産の評価がえをした場合、あるいは更生手続によつて会社の債務が消滅したというふうな場合には、本来ならばこれは益金として算入されるわけでありますが、この場合におきましては特にこれを従前の繰越し損金の限度においては益金と見ないというふうにいたしまして、更生を容易ならしめるような処置をとつたものであります。これはせつかく更生計画において債務をうんとまけてやつたところが、その大半を税金にとられるということでは困るというふうなことが考えられるからであります。それから第四項、これは法人税の中間申告等に関する規定の特例であります。法人につきましては、六箇月ことでございましたか、中間申告というものをする義務があることになつておりますが、更生手続中はそのような義務を課さないというふうなことにいたしたわけであります。次に第五項及び第六項でありますが、これは更生手続に関する一定の登記及び登録についての登録税の減免について規定いたしております。第五項の場合には登録税を全然課さないわけです。第六項の場合にはこれは軽減するわけです。これも更生を容易ならしめるための処置であります。  次に第二百七十九條であります。更生計画の変更について本條は規定いたしております。更生計画の認可決定後はもとよりその計画の変更を許さないのが原則でありますが、経済事情の変動等によりまして、やむなくその計画を変更しなければならないような場合も生じないとは限らないわけであります。本條はこのような場合に計画の変更を許しまして、計画の瓦解による手続のむだを省くことができることといたしたものであります。  次に第二百八十條であります。更生計画の確実な遂行をはかるために、計画の遂行が終了した場合または計画遂行の見込みが確実についた場合に、初めて更生手続終結の決定をすべきものといたしております。従前の手続等と異なりまして、手続の内部におきまして計画の遂行をすべきものといたしたのであります。この二項は準用規定であります。本條の第一項はその趣旨を明らかにしたものであります。  次に第九章に移ります。第九章は更生手続の廃止について規定いたしております。決議に付するに足りる更生計画案が一定の期間内に提出されない場合、または更生計画案が関係人集会において可決されない場合、また会社が届出をしたらすべての更生債権者及び更生担保権者に対する債務を完全に返済することができるような状態なつた場合、こういう場合は稀有だと思いますが、万一そういうふうなことがあつた場合とか、あるいは計画認可決定後におきまして、計画の遂行の見込みがないことが明らかになつたような場合、こういうふうな場合には、もはや更生手続を続行する必要がございませんので、手続を廃止すべきものといたしたのでございます。個々の條文の説明は省略いたします。  次に第十章であります。本章は調査委員、管財人、審査人、整理委員、法律顧問及び管財人代理に対する報酬、また更生債権者更生担保権者、株主、代理委員及び代理人に対する報償金等について規定いたしております。管財人等につきましては、その職務と責任にふさわしい報酬を與えなければならないというふうなことを特に規定いたしております。十分なる報酬を與えて、十分なる働きをしてもらうというふうなことを期しておるわけです。また更生債権者またはその代理人等が、その本来の立場以上に更生手続に盡力して、その人の努力のために会社更生ができた、更生計画が成立したというふうな場合におきましては、特にそのような人にも会社から報償金を與えるというような規定にいたしたのであります。  次に第十一章であります。これは更生手続に関する罰則について規定いたしたのであります。各條の説明は省略いたします。  以上で概略の御説明を終ります。
  96. 押谷富三

    押谷委員長代理 本日はこの程度にいたし、明後日午前十時三十分から委員会を開催いたしまして、参考人より意見を聽取いたしたいと存じますから、委員各位におかれましては定刻に御参集を願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十五分散会