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1951-10-22 第12回国会 衆議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十二日(月曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 田中 萬逸君    理事 北澤 直吉君 理事 倉石 忠雄君    理事 島村 一郎君 理事 竹尾  弌君    理事 笹森 順造君 理事 並木 芳雄君       麻生太賀吉君    池田正之輔君       石原 圓吉君    石原  登君       伊藤 郷一君    小川原政信君       菊池 義郎君    近藤 鶴代君       佐瀬 昌三君    鈴木 正文君       田嶋 好文君    田渕 光一君       塚田十一郎君    仲内 憲治君       中山 マサ君    西村 久之君       西村 直己君    原 健三郎君       福田 篤泰君    藤枝 泉介君       守島 伍郎君    若林 義孝君       小川 半次君    坂口 主税君       中曽根康弘君    松本 瀧藏君       山本 利壽君    吉田  安君       田島 ひで君    林  百郎君       米原  昶君    高倉 定助君       中村 寅太君    黒田 寿男君       佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         国 務 大 臣 橋本 龍伍君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         法務事務官         (法制意見第二         局長)     林  修三君         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         大蔵事務官         (主計局次長) 石原 周夫君     ————————————— 十月二十二日  委員高倉定助君辞任につき、その補欠として中  村寅太君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  平和条約締結について承認を求めるの件(条  約第一号)     —————————————
  2. 田中萬逸

    田中委員長 これより会議を開きます。  前会に引続きまして、質疑を継続いたします。平和條約第二章第三條を議題に供します。菊池義郎君。
  3. 菊池義郎

    菊池委員 西村局長にお伺いいたします。この信託統治の問題ですが、内地にも軍事基地を設けながら、島だけを信託統治にするという理由が何であるかということが、さつぱり国民にわからないのです。これは何人も不審に思つている点であります。日本政府はこの條約を受諾するときに、当然その理由なり事情なりについてお尋ねなつたはずであり、また聞かなければならぬのでありますが、これについて確かめられたところを御発表くださいまして、そうしてこの疑問を解いていただきたいと思うのでございます。
  4. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御承知通り信託統治制度目的は、わけて二つございます。一つ国際の平和と安全に寄与すること、第二はその地域に住む住民の政治的、経済的、文化的向上をはかること、この二つの目的でございます。合衆国として南西諸島信託統治にしたいということの理由は、一応国際の平和と安定の確立のために、米国において管理することが絶対必要と考えたということでございました。
  5. 菊池義郎

    菊池委員 それはわかつております。が、島だけを特に信託統治にするというのは、どういう意味でございますか。秘密を保つとか何とかいうことでございますか。島はぐるりが海だから、秘密を保つのに都合がいいとか何とかいうことでございますか。それをお伺いいたします。
  6. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その辺のことは合衆国意向でございますから、私ども承知いたしておりません。
  7. 菊池義郎

    菊池委員 全島軍事基地にするのか、どうでございまするか。その点をお伺いいたします。
  8. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 第三條によれば、アメリカ信託統治制度に付することを提議することがある可能性規定しているだけでございますので、そういう具体的な問題については、先方意向承知いたしておりません。
  9. 菊池義郎

    菊池委員 條約を受諾せられるからには、そういう点も当然話合いがなければならぬはずであろうと思うのであります。どうもお答えが足らぬように思いますが、どうでしようか。
  10. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 菊池委員のおつしやつたような心持というものは、あえて申し上げますれば、十二分に先方には通じてございます。
  11. 菊池義郎

    菊池委員 つまり私のお伺いいたしまするのは、各島を全部軍事基地にしますると、法的にはともかくといたしまして、実質的にはその行政が軍政に近いものになつてしまいやしないか。そういうふうな心配からでありますが、政務次官はこの点おわかりにならないか、全島軍事基地にするのか、部分的に軍事基地にするか。
  12. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今後信託統治にする場合において、第三條にあるような明文にいたしておりますことは、ただいま條約局長からお答え申し上げた通りであります。従いまして、それまでは日本はこれこれの状態行政司法等を認めて行く。従つて今後の信託統治になりましたあかつきの状態において、どういう措置がとられるかは存じませんが、おそらく御心配のような状態ではないのではなかろうかと存じます。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 それからもう一つの疑問は、共産主義侵略防衛のための軍事基地とするならば、むしろ中央に最も近い九州とか西日本あたりに重点を置いて、軍事施設をなすべきものであると思われるのでありまするが、米国はこれらの地域を重視せずして、中共に対する軍事基地として遠く離れた西南諸島を選んだというのは、一体どういう意味でございましようか。その御推測をひとつ漏らしていただきたい。
  14. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは別に推測をいたしましても、推測が当るか、当らぬかはわからぬような話であります。ただ従来からの関係等を考えまして、またことに東亜状態にかんがみまして、この問題は総理からもお答え申し上げましたように、最も重要な地点であり、そうしていろいろ関係のある南西諸島に、現在のような情勢を続けて参つて、そうして信託統治制度ということを予想しながら進んで行く。こういう状態になつておりますので、全体的な観点の立場からとられたことだと思います。
  15. 菊池義郎

    菊池委員 沖縄などには三百万ドルを投じて、堅固な陣地を構築しておる。三百万ドルといいますと、日本の金に換算しますと十億以上にも相当するでありましよう。それについて、インドのネールも、英国のヤンガー、それから女流交士のパール・バツクなども、ここを東亜侵略の拠点にするために、アメリカはこんなことをするのだというような口吻を漏らしております。われわれは彼らがどんなこと言おうとも、それに迷わされるものではありませんが、とにかくこういつたような誤解を生ずるほどに、堅固な軍事基地を最も離れたところに築いている。それで人によつては、ここを第二の香港にするのだというような考え方も起つて来るようになつておりますので、どうもちよつとふに落ちない点がありますが、政府としてお答えができなければしかたがございません。それでは奄美大島は、最初の北緯三十度から二十九度にかわりまして、十島村、すなわち一つの村をなしております島が十ばかり信託統治からとりのけられております。同じ大島群島でありながらこうした区別をしたのは、どういう意味でございましようか。これをアメリカ側お尋ねなつたことがございましようか、どうでしようか。どなたからでもけつこうです。
  16. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本国民の感情としましては、総理からもしばしば申されましたように、この南西諸島の歴史的あるいは地理的、経済的、いろいろな関係から、切つても切り離されない状態にありまするから、同じように復帰することを念願いたしまするのは、しばしば申し上げた通りです。占領直後、行政の中から北緯三十度以南の土地が切り離されて参つたのでありまするが、今回幸いに二十九度、いわゆる一度以北は、すべて日本に復帰するという状態になりましたのは、まず第一歩といたしまして、たいへんけつこうなことだと存じております。しかし本質といたしましては、先般来御質問のときにお答え申し上げましたように、奄美大島並びに沖繩等におきます状態におきましても、同様な状態が来ることを念願いたしておりまする点は、国民全体の希望であろうと存じております。
  17. 菊池義郎

    菊池委員 つまり十島村だけが切り離されたということでありまするが、これには別に意味はございませんか。
  18. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいま申し上げました通り、特別に意味はないと思います。
  19. 菊池義郎

    菊池委員 條約局長にお伺いいたします。これらの島々主権日本に残るならば、住民国籍日本に残るという見解政府から発表せられておりまするが、往年の国際連盟は、委任統治地域住民には国籍がないということを宣言いたしております。そうしますと、信託統治委任統治とは、法的にどんな違いがあるか、これについて條約局長の御見解を承りたい。
  20. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 これはたびたび御説明申し上げたことでありますので、繰返すのはむだであろうと存じます。信託統治制度というものは、発足いたしましてからわずか五年余りになつておりまして、委任統治制度のように三十年近くの年月を経過しておりませんので、制度自身が、まだ憲章規定のわく内で発足しておる当初にあると言えばよろしい次第であります。委任統治制度のもとには、ある委任統治国が、統治の責任に当りました地域住民に対しまして、一括的に自国の国籍を与えようという試みをしたことがありますので、それが契機になりまして、委任統治委員会で、そういうことは国際連盟規約のもとでは許されないということで、結局国際連盟理事会の決議によつて委任統治地域住民については、委任統治地域住民としての特別のステータスを認むべきものであるという法的な解釈が生れた次第であります。信託統治については、いまだそういう段階に来ておりません。
  21. 菊池義郎

    菊池委員 これらの島々信託統治米国国際連合に提案いたしましても、戦略的な軍事基地を含むということを理由といたしまして、ソ連がこれに反対して拒否権を行使したならば、信託統治目的は達せられないわけであります。そういう場合はどういう結果になるでございましようか、條約局長に伺いたい。
  22. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 信託統治は何も戦略地域に限らないのであつて一般信託統治地域と、特に戦略的地域と指定された地域とがあるわけでございますが、現在の條約に規定しておることは、信託統治制度にする可能性規定しているにとどまつておるのでありまして、このどちらの種類信託統治制度にするかということは、全然未決の問題になつております。主として合衆国意向でございましよう。日本政府として推測の上に立つ答弁は差控えるべきであろうと思つております。
  23. 菊池義郎

    菊池委員 これがもしわれわれが希望的に観測しておりますように、アメリカが現在の状態を維持して行く、どうもそういうふうになりそうにわれわれは考えられる。そうすることが、アメリカにとつても機密を漏らさないで済む、国連の監視も受けないで済むことになれば、そうした方が得なんですから、アメリカとしてはそうするだろうとわれわれは考えておりますが、この希望的観測が当れば幸いだと思つております。多分私はそうなると思つておりますが、おそらく政府筋でもそう考えておられることと思います。かつてシーボルト大使が漏らされた言葉によりましても、そうなるのではないかと思われるのでありますが、そうなつたといたしますならば、内地と同じ軍事基地にすれば、今日島々に加えられておりますいろいろの制限は除去されるものであるかどうか、この点をお伺いした。
  24. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点も一昨日御答弁申し上げた通りでございます。政府といたしましては、第三條の規定のもとにおきましても、戦前日本本土とこれらの諸島との間に存在しておりました経済、財政、教育、文化関係は、合衆国がこれらの島々を管理するに必要な最小限度において変更されるだけであつて、それ以外は、全部従前通り関係が続けられるように管理していただきたいという考えでおるわけであります。
  25. 菊池義郎

    菊池委員 最後にお伺いいたしますが、小笠原島から内地引揚げた六千人の人々が、いまなお島に帰ることができないで非常に艱難苦労をしております。中には一家自殺までも企てた者もあつたくらいに、非常な苦労をいたしております。この島には、全然軍事基地もなければ、何らの施設もない、一人の米国兵もいない。それなのに今日まだ帰島を許されないのは、一体どういうわけでありますか、この点についてお伺いいたしたい。これはたびたびわれら外務委員会において申し上げた結果、政府としてもたびたび陳情折衝せられたことは、申すまでもないはずであります。そうしてその理由については、政府としては知り抜いておられるはずでありますから、このわけをひとつお漏らし願いたいと思うのであります。
  26. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話のように、火山列島、小笠原列島方面におきましては、現在わずかな人が帰国をいたしておる状態であります。引揚げて参りました当時六千二百有余名の人でありましたが、現在百三十余名が帰国をいたしておると承知をいたしております。従つてその他の六千百名余り人たちが、まだ帰国ができない状態にあります。しかしこの点につきましては、総理からもよくお答え申し上げましたように、十分この情勢アメリカ承知をいたしております。かつまたこれらの地方におきましては、一層今後経済その他の関係におきましても、十分日本状態承知しながら理解ある処置がとられることを期待をいたしまするし、またさように確信をいたしておる次第でございます。
  27. 菊池義郎

    菊池委員 同じ信託統治になろうというほかの島はみんな帰つておるのに、小笠原だけは軍事基地も何もない、兵隊の一人もいないのに帰れない。どうしてもわれわれその疑問を解くことができないのであります。今まで折衝されたところでは、向うは何と言つて答えたか、どういうわけで帰すことができないということを言つておられますか、そのわけをひとつおつしやつていただきたい。
  28. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいま申し上げましたように、これらの土地における状態はよく承知をいたしておると存じます。従いましてこれらの土地につきましては、日本政府は今後におきましても、住民熱望が達成されるように努力をいたして参りたいと存じます。
  29. 菊池義郎

    菊池委員 そのわけがお漏らし願えないところを見ると、どうも政府努力が足らぬように思われますが、どうぞひとつ今後十二分に努力をせられんことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  30. 田中萬逸

  31. 並木芳雄

    並木委員 吉田総理サンフランシスコ会議においても、本條文に関連して、信託統治に置かれるようになつて日本主権が残ると米英代表言明されたことに対して、喜びの意思を表明されております。私ども米英代表がそういう言明をされたことには、ひとしく喜ぶものでありますけれども、それは単なる口約束ではないのか、そういう感じがするのです。つまり米英代表のなされた言明並びに演説というものは、この條約に関連してどういう効力を持つておるのであるか。もし米英代表言明されることができるくらいであつたならば、どうしてこの條約の條文の中に、信託統治になつて主権日本に残るのだということを入れることができなかつたのであるか、まずその点をお伺いしたい。
  32. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 本来これらの島島に対しましては、日本主権を持つているわけでございます。平和條約によつて放棄されない限りは、日本主権は嚴として残ります。
  33. 並木芳雄

    並木委員 それは信託統治に置かれてからも嚴として残りますか。
  34. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 さようでございます。
  35. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、当然きまつていることをただ米英代表言明されただけであるのですか。
  36. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 第三條の真意について、日本国民になお十分の理解がないように米英全権において思われた、そのゆえに日本国民に対してその誤解を解き、米英両国真意を説明する意味において言明されたものと了解いたします。
  37. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、私どもの今まで政府の説明から受けた感じというものはかわつて参りました。実はそういうところに疑問の点が残つておるから、それで吉田さんはサンフランシスコにおいて米英代表演説をされ、言明されたことに対して、新たなる喜び感じたというふうに感じたのですけれども、これは私ども感じ方間違つてつたということになりますか。
  38. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 あるいは感じ方にお間違いがあつたかも存じませんが、正否は私の方で判断する限りでありません。
  39. 並木芳雄

    並木委員 それならば非常にはつきりしたわけでございますが、さらにこの信託統治制度アメリカが提案する場面が出て来ると思いますけれども、その手続国際連合に対してとられると思います。そのときにやはり主権日本に残るんだということがあらためて取上げられるものかどうか、その国際連合審議においてそういうものを確認する行為が行われるものかどうか、あるいはただいまの局長のお言葉では、それすらももう必要ない、嚴として主権は残るんだということでありますかどうか。
  40. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 平和條約におきまして、この島に対する日本主権が放棄されておりませんので、米国政府国連に対しまして万一信託統治制度を提案することがあるとするならば主権日本に残つているという前提のもとに提案されると了解いたしております。
  41. 並木芳雄

    並木委員 條約局長答弁が非常にはつきりしましたので、実は私がついて行こうと用意しておつた点が一ぺんに氷解したわけでございます。その点についてどうも今まで不安でならなかつた政府は、何か日本側主権が残されておらないものを、あたかも外交交渉によつて主権が残るようになつたと、手柄のように自己宣伝をしておつたと思つておりましたが、私どもに対してこれは自己宣伝であつたということを裏書きしたようなものであります。この際念のためお伺いしておきますが、この信託統治制度国連憲章第七十七條のどの種類になつておりますか。
  42. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は、サンフランシスコ会議ダレス代表がこの條約案を説明されました中におきましても、第七十七條の(ロ)の種類に属するものである、すなわち旧敵国から分離される地域の中に入るということを明言されております。そうすると並木委員は、分離とある以上は主権はないじやないか、とおつしやるだろうと思いますが、分離という意味には、主権をとれという意味は決して入つていません。分離の仕方はいろいろ方法があるのでございます。
  43. 並木芳雄

    並木委員 アメリカ信託統治制度を提案しなくても、この最後のところに書いてあります行政立法及び司法上の権力を行使する権利を持つておるのですから、実際上はアメリカとしてこれを利用するという言葉使つては悪いかもしれませんが、この地域夜利用する上において、何ら困らないのではないか。つまり信託統治にあえてしなくても困らないのではないかという点をお確かめしたいのです。
  44. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういう考え方は確かに成り立ちます。
  45. 並木芳雄

    並木委員 ですから、アメリカはこれを半永久的に提案しないであろうという見通しもつくわけでありますね。
  46. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 一に米国政府がとられる措置による点であります。
  47. 並木芳雄

    並木委員 アメリカとしても、あるいは英国としても、一日もすみやかにこの地域日本管轄下にもどしたい、そういう気持があることを私たち感じます。そこで私たちのこの熱願がいれられて、日本管轄下にもどる場合を私は今描いているんですが、その場合の手続方法、そういうものはどういうふうにしてとられるのでしようか。要するにこの第三條が必要がなくなる場合、その場合にやはりこの條約に署名し、批准した国々との間で、別の新しい何らかの條約をつくるわけでしようか。これは一般條約のいわゆる改訂というような問題と関連して参ると思いますがどういうふうになりますか。
  48. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それはあまりに将来の問題を今日提起していらつしやると思いますので、そういう問題が起りましたときに、日本より先にその問題に直接関係をしておられる、米国政府の方で、十分検討されるだろうと思います。
  49. 並木芳雄

    並木委員 それはわかつているのです。わかつていますけれども、條約の取扱いの点についてお伺いしているわけです。つまりアメリカとしては、これは信託統治にする必要もなし、ここに行政司法立法権利を有する必要もなくなつたから、日本管轄下にもどそうというたとえば言明をするなり、諸外国に通知をするなりで、効力を発するものであるかどうかというわけなんです。やはりこの條約を結んだ各締結国との間に、別の條約が結んれなくてはいけないものと思うのですがいかがですか。
  50. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それはあまりに将来の問題でありますので、私まだその答弁を差擦えたいと思います。
  51. 並木芳雄

    並木委員 そうですが、そういうことにやはり疑問があるんですか。  それでは一つ最後にお伺いしておきます。よく條約の改訂ということが言われます。私どもも今度のこの特別委員会審議を通じて熱望を訴えて、そうして改めていただきたいところは、できるだけすみやかに改訂してもらいたいと思ますが、これはごく常識的な、條約の改訂という言葉になるであろうと思う。これが実際に手続きとして行われて行く場合には條約の修正あるいは改訂、この條約そのものに対する改訂というものは、これはできないのですか。そういうふうに了解しているのですか。ですからその修正なり改訂なりというものは、別個にやはりこの條約と同じような形態を持つた條約が結ばれることによつて、初めて効力を発生するものであるかどうか、こういう一般的な質問をしておきたいと思います。
  52. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 一般論としてお答え申し上げます。條約の改訂というものは、大体前提としてその條約に改訂に関する條項が入つている場合と、入つていない場合とがあります。改訂に関する條項が入つている場合には、むろんその條項によつて改訂ができるわけであります。改訂條項が入つていない場合には、その締約当事国全部が合意すれば、むろん全般的に改訂ができるわけであります。それからまた国際連合憲章によりましても、ある一つ事態が継続することが、結局国際の平和と安定に害を及ぼすような事態が発生したと認められる場合には、国際連合の総会でございましたか、それが取上げて、その事態を調整する問題を審議することができるという一般的な規定がございますが、この国際連合憲章の予見している手続ということもまたひとつ考えられるわけであります。大体私の頭に浮ぶのは、この三つの方式と言いましようか、それが考えられる次第でございます。
  53. 並木芳雄

    並木委員 よろしゆうございます。
  54. 田中萬逸

  55. 山本利壽

    山本(利)委員 一昨日でありましたか、同僚委員からも、日本の現在の最大不安は朝鮮問題がどう片づくかということであるという御意見がありましたが、確かにその通りであります。しかしさらに現在日本の最も不安定な問題の根底をなすものは、人口問題であると思うのであります。今回の條約によつて約四割五分からの領土を失い、さらに六百万からの人々が海外から送り返されて来た。こういう点から申しましても、今後の日本の不安というものは人口問題にあるのでありますが、今回の講和條約の前文のまず劈頭においても、「連合国及び日本国は、両者の関係が、今後、共通の福祉を増進し且つ国際の平和及び安全を維持するために」と書いてあるのであります。先般の大東亜戦争の起りました原因の一半も、わが国の人口問題に基因するということを考えるのでありますが、今回の條約を結ぶ折衝にあたつて日本の人口問題ということに関してどういう程度の折衝が行われたか、まずこの点についてお伺いいたしたいと思うのであります。
  56. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話のように、日本領土並びにこれに比例する人口というものはたいへんな率になつておりますし、従つて世界の国々の中でも最も欄密に相なつておるのであります。今回のこの戦争によりまして、その結果領土の相当部分、四割五分を割譲する状態に相なりました。人口はその残されたところに集中する状態になりまして、一層この現象は強くなつて来るのであります。しかしこの状態は、突発した状態ではないのでありまして、十分予想されながら、しかも日本の現状を十分承知しながら、この戦争の跡始末としての平和條約を進めて参る、この前提のもとになされた次第でありまするから、この日本状態につきましては、連合各国とも十分承知をいたしておられる点でございます。
  57. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいま政務次官からのお答えによりまして、連合国諸国においても十分この点を了承しておられるということを聞きまして、気強く感ずるのでありますが、それは十分に了解しておられるであろうと政府において考えておられるのか、あるいはいかような折衝をされて、どの程度までの了解を得ておられるというのか、その点について御説明を承りたいと思います。
  58. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本領土、人口、それから参りまする経済範囲、こういう前提が、本質的に、日本の問題の根本をなしておるものであります。従いまして、その本質的な根本を前提といたしまして、日本のこれからの独立、主権の回復というものが生れて来るのであります。これらの点に対しましては、日本のすべての資料、すべての状態をよく承知をしながら話を進めて参つたことは当然でございます。
  59. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいまの御答弁ではまことに具体性を欠いておると思うのであります。ちようど領土の問題のところでありますので、人口ということと領土ということが非常な関連性を持つておりますところからお尋ねするのでありますが、今回のように領土そのものがすでにはつきりと限定されてしまつた。そうすれば人口の問題については、産見制限とかその他いろいろございましようけれども、移民という問題が私は非常に大きな問題となると思うのであります。現在でも北米あるいはハワイ、南米その他に相当の移民がとどまつておりまして、これに職業が与えられ、その生活が安定しておるということは、日本国民すべてが感謝しておるところでありますけれども、最近、新聞雑誌その他によりまして、ブラジル、アルゼンチンその他の諸国から、しきしりに日本の移民を歓迎する、あるいは入国を許可するといつたような情報が入つて来る。これについて国民は非常な希望と明るさを感じておるのでありますが、ちようど領土関係でありまするから、日本の移民問題についての政府の腹案をこの際お漏らしを願いたいと考えます。
  60. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話のように大体四割五分四厘という程度の領土を喪失いたす結果に相なります。しかも人口が相当増加をいたす傾向にありまするから、これらの問題は日本にとつて大きな問題であります。しかしこれらの前提のもとに立てられました—承知をしながら立てられました戰争の跡始末としての、平和條約の締結にあたりまして、私どもはまずこの戦争状態が最も正しい状態において終結をし、その後日本が旧殻の中から新しい日本を踏み出して行くという状態をつくつて、そしてその後の状態をさらに検討して行くという立場をとつて参ることが必要であります。従いまして移民の問題等につきましても、二、三いろいろな外電その他の報道がなされておりまするが、日本人自体といたしましては、また政府自体といたしましては、今後この條約が効力を発生して新しい日本の建設というものに着手をしながら、しかも将来未開発地に日本民族が最も正しい信念を持つて、世界平和の協力のために活動するという状態に進んで参りますと、多くの国々が歓迎してくれる状態になつて来るのではないかと思います。従いまして今ただちに、従来の観念から申しまする、いわゆる移民という言葉によつて表現されますような立場をとることは、よほど慎重を要する点ではないかと存じます。
  61. 山本利壽

    山本(利)委員 一体條約というものは、最後條文となつて現われるときにはまことに簡單なものでありますけれども、この條約案をつくるにあたつてのいろいろの根底をなす折衝なりその他の点については、実に厖大なものであると考えておりましたので、私はさような、今後日本が生きて行く上の根本問題と考える人口問題、あるいはその一翼としての移民問題等について、詳しく御調査があり、さらに計画があつて、いろいろ今日までにも連合国の了解を求められておるべきであると考えたから、さような質問をいたしたのでありますが、この点については、今後日本国民の重大な問題でありますから、逐次立案されまして発表せられるように希望いたしまして、この問題は終ります。  さらに第三條に関連してごく具体的な問題でありますが、今回われわれが参考資料としていただきました「日本領域参考図」を拝見いたしますと、ちようど日本海を通つておりますこの日本の領域を表わします線が、竹島の真上を通つておるのであります鬱陵島は朝鮮にあるいは属するものとしても、竹島は元来島根県の管轄下にありまして、重大なる漁匠をなしておつたのであります。この竹島が、この地図で見ますと、われわれの領土なのか、あるいは鬱陵島に付属して朝鮮等へ移されるものか。これらの点について、島根県民はもちろんこれは日本領土なつたと解釈しておるのでありますが、この際はつきり御説明を願いたいと思います。
  62. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在の占領下の行政区画には竹島は除かれておりまするが、今度の平和條約におきましては、竹島は日本に入つて来ると申しますか、日本領土であるということをはつきり確認されたものと存じます。
  63. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいまのお答えを聞いて安心いたしましたが、さらにこういう重要なる委員会に配付されます地図で、明瞭を欠いておると考える点を申し上げたいのでありますが、今日まで再三問題となりました歯舞諸島等が、やはりこの地図では領域外になつておるのであります。千島であれ、あるいは歯舞、色丹等は、当然地図に表わす場合には、わが領土として書き表わしておくということが、今後あらゆる場合に有利なのであつて、それをわが国の手で作成した地図においてもこれを省かれておるというようなことは、まことに不注意千万であると考えるのでありますが、いかがなものでありますか。
  64. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御注意申し上げます。それはマツカーサー・ラインでありまして、領土の境界ではございません。御質問は全部お取消しを願いたいと思うのであります。私ども答弁も速記から取除いていただきたいと思います。そういう疑念を平和委員会で起したということそれ自身、私はおもしろくないと思いますので、お願いいたす次第でございます。
  65. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいまの西村條約局長お話を聞いて、私はまことに心外なのであります。この地図を見る者、あるいはこれを受取つた者、これがマツカーサー・ラインであろうというようなことも一応は承知するのでありますけれども、マツカーサー・ラインを示すものということが何ら明示してないのであります。日本領域参考図として配付されたものであります。ただいまの点についての御非難はお取消しを願いたいと思います。
  66. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはごらんの通り漁船操業許可区域でございます。多分黒い線で引いておる点を山本委員はおつしやつておられると思いますが、ここにありますように、漁船操業許可区域としてこの点線を引いておるので、全体といたしましては千島列島として示しておるだけであります。御承知おきを願います。     〔「それが誤解を生ずるのだ、資料を訂正せよ」と呼ぶ者あり〕
  67. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 資料の誤りはありません。あれば訂正いたします。
  68. 田中萬逸

    田中委員長 山本君、発言を御継続願います。
  69. 山本利壽

    山本(利)委員 それでは質問を進めます。さらに、これも芦田委員及び松本委員等から再三言及がありましたが、今回配付を受けましたこの條約案の英文と訳文とに誤訳があるという問題、今日まではこの点に関しては、小さな問題であるからとがめないかというような程度で終つたと思いますけれども日本人の大部分が読みます場合には、ほとんどが訳文を見るのでありますから、この條約案の第三條の「全部及び一部」という訳、原文におきましては、オール・アンド・エニイの問題、さらに関連いたしまして、安全保障條約の内蔵及び騒擾、デイスターバンスを騒擾と訳したことが間違いであるかないか、これらの点についてはつきりと、この訳文で正しいのかあるいは不十分であつたのか、不十分であれば、さらにこれを訂正する意思があるかという点についての御答弁を承りたいと思います。
  70. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 事務当局の責任者として御答弁申し上げます。第三條の日本文の問題でございますが、サンフランシスコ会議の九月七日の夜の会議最後のところで、会議の事務総長でありますケルトナー総長が報告いたしております。それは條約の調印本書の各国語に対する統一の問題についての報告でございます。これによりますと、この各国語は国務省において作成いたしましてその言葉を話す国の政府意見と承諾を求めるために送付した。それで、すべての関係政府から提出された意見その他を忠実に考慮に入れて作成したものである、こういうことな冒頭に言われまして、その次に、フランス語のテキストはフランス政府によつて正式に承諾をされ、またその他のフランス語を話す代表団によつて承諾されました。スペイン語の本文は注意深くスペイン語を話す代表団によつて検討されて承諾をされた。ロシヤ語のテキストについては、ソビエト連邦共和国政府から何らのコンメントも受領しなかつた最後日本文の本文については日本政府の承諾を得た、こう書いてあります。決して翻訳ではございませんので、日本文をお読みになるときにはすぐに翻訳のようにお考えになるのが、少しお間違いだと思います。国務省でつくられました日本文に対しまして日本政府意見を求められ、そうして最後に承認—アプルーヴアルを求められた次第であります。私どもといたしましては、全部及び一部とあれば、すなわち英語でいうオール・アンド・エニイという趣旨は十分出ていると思つてこれに同意いたしました。  なお日米安全保障條約の第一條の問題であります。あれは必ずしも翻訳ではございません。あの條約ができるまでは日米双方からいろいろの案文を提出いたしました。正直に申し上げますと、日本文で提出した案が最初であつたように記憶いたしております。それで御指摘の点は「大規模の」とありますので、従つて大規模のライオツトデイスターバンスとある場合には、何と申しましても、大規模という以上は、大規模な騒ぎだけでは、どうしても日本文として体をなさないと思います。大規模の騒擾というのが條約のねらうところであると確信いたしております。
  71. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいまの訳文の問題で、とかく誤解を起すのは、大規模が内乱にだけついておるのであつて、騒擾の場合は大規模がつかないというふうに考える人もあり、いろいろな誤解を生じやすい。こういう問題は最後には、いよいよどちらが正しいかと申しますか、紛糾を来した場合に、どちらによつて定めるかという場合には、英文によつて定めるものであるから、そういう際にはわが国が不利益にならないようにという老婆心から申し上げたのでありまして、その点において今後も遺憾がなければまことにけつこうであります。第三條に関する私の質問を終ります。
  72. 林百郎

    ○林(百)委員 国連憲章の七十九條並びに八十二條によりますと、将来信託に関する信託統治協定が当然結ばれることと思います。信託統治協定は直接関係国によつて結ばれると思いますが、この信託統治協定と、それから直接関係国というのはどういう国であつて、将来どことどこで、どういう信託統治協定が結ばれるのかということ聞いておきたいと思うのであります。
  73. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 七十九條の適用につきましては、公の有権的な解釈はございません。今日まで信託統治協定は十一できておりますが、各場合によつてつて来ております。これは私どもにとつてもきわめておもしろいと思う点でございます。大体今日までの先例を総括して申し上げますと、信託統治を引受けた国の政府が協定案を作成いたしまして、その政府が直接関係国と認める国と相談をして、それを国際連合の当該機関に提出することとなつております。従つて作成国はいつも信託統治に当る国の政府であるということはすでに確定いたしております。が、七十九條にいう直接関係を持つ国とその範囲は、その協定案をつくる国の認定にまかせられて曲るというのが、今日までの実情でございます。
  74. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、信託統治協定というのは受任国と国連との間で行うというように解釈していいですか。
  75. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 受任国が作成いたしまして、一般信託統治の場合には総会、戦略地域の場合には安全保障理事会の承認得る、こういうことになるわけであります。
  76. 林百郎

    ○林(百)委員 信託統治の協定である限り、やはり直接関係国間において協定が結ばれて、その協定が国連の総会なり、あるいはある場合には安保理事会にもかけられる場合があるでしようが、やはり直接関係国によつてまず協定が結ばれなければならないというようにわれわれは解釈しております。従つて私の聞きたいのは、この直接関係国の中に、信託統治協定がつくられる場合に日本が入つて日本意見がいれられて結ばれるかどうか、この点をはつきりお聞きして場おきたいと思うのであります。またアメリカとの間にどういう話合いがあつたのか。将来直接関係国の中には日本が入るという確約をとつておられるかどうか。その点をお聞きしておきたいと思うのであります。
  77. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 林委員御指摘のように、七十九條に、面接関係国によつて作成される協定案とありますので、協定案それ自身を、今日までの例によりますと、施政者になる政府がつくりまして、それを自国が直接関係国と認める政府と相談いたしまして、その上で国連のしかるべき当該機関に提出する、こういうことになつているわけでございます。今日までの先例を見ますと、施政権者になるべき政府がまず第一に直接関係国を選定し、しかもその直接関係国として選定した国との相談の仕方も違つて来ております。ほんとうにインフオアメーシヨンとして送付にとどめた場合もあるし、実質的に相談した場合もありますし、信託統治理事会に諮りましたときに、投票権のない地位において、自己が直接関係国と認めた国の政府理事参加を求めた例もある、こういうふうに、過去十一、二できました信託統治制度の作成の経過を見ますと、必ずこうでなければならぬという有権的な慣行は、まだ確立していないというのが現状でございます。  それでは将来合衆国が第三條に従いまして信託統治案を提案することがありとする場合に、いかなる手続をとるであろうかということは、これは主として米国政府見解が支配する点だと思いますが、われわれ日本政府といたしましては、これらの地域に対しまして、なお主権を有しているものでございますので、むろん最も直接の関係を有する国として、当方の意見を十分しんしやくしていただけることを期待しているということを御答弁することができると思います。
  78. 林百郎

    ○林(百)委員 大体期待するという程度ですか。この点については、はつきり将来直接関係国として日本と十分の打合せをするまた主権日本にあるということは確認されているのであるから、いずれはまたこの主権日本へもどるということが考えられると思います。そういう点について、ただ一方的にアメリカの方が呼んでくれると期待するということでなくて、はつきりした何か確約でもとつておられるかどうか。この領域をアメリカ信託統治にしなければならないということは、国際諸協定からいつてもないところなんです。むしろこれは非常に日本の国としては屈辱的な譲歩であると思う。それにもかかわらず、将来直接関係国として指定される、あるいは直接関係国として日本意見を問うか問われないか、その確約もとらなくて、ただ信託統治のいかなる提案にも日本が賛成するということは、いかにも日本政府として私は無責任だと思う。その点どの程度の確約をとられておるのか、ただ期待するという程度なのか、もう一度念を押しておきたいと思うのであります。
  79. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 両国間の友好協力関係、和解と信頼の関係から見まして、御指摘のような懸念は万ないと存じております。
  80. 林百郎

    ○林(百)委員 信託統治の基本的な目的は、憲章の七十六條に規定してあるのでありますが、一体このたびの信託統治制度を琉球、小笠原にしがなければならないというこの目的はどこにあるわけですか。
  81. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 信託統治制度目的はわけて二つあります。一つは、国際の平和と安全に寄与すること、第二は当該地域に住んでおる住民の政治、社会、経済的向上をはかるという二つのことであります。ことに信託統治について国際の平和と安全に寄与するということが第一に大きく出ておる点が、この前の委任統治制度と根本的に異なるところでございます。総理からもたびたび御説明がありましたように……。
  82. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。その点と、第二の信託統治の基本目的は「人民が自由に表明した願望とに適合し、且つ各信託統治協定の條項によつて規定されるところに従つて自治又は独立に向い住民が漸進的に発達することを促進すること。」とあるが、しかし沖縄並びに琉球のいずれの住民の願望も、日本国籍のもとに従来通り日本統治を受けたいというのが、住民の願望であります。また「自治又は独立に向い住民が漸進的に発達する」と言いますけれども、われわれは日本の政治のもとにおいても、沖繩、琉球の住民諸君の自治、独立に向つて十分責任を持てると思います。そうすると、これはまつた国際の平和及び安全という、いわゆる軍事的の目的から出ておると解釈とていいのかどうか、お聞きしておきたい。
  83. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は従来とも繰返し、合衆国においてこれらの島島を信託統治に置きたいという理由が、極東における、平和と安定の確立の見地から、合衆国の管理のもとに置くことが必要であるからであるということは、御説明申し上げてある通りであります。
  84. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、立法司法行政の三権をアメリカが握るということになると、教育だとか、あるいは用語だとか、こういう点はどうなるのですか。
  85. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 たびたび申し上げましたように、御指摘の面は従来通りにやつていただきたいというのがわれわれの当初からの、また現をもかわらない立場でございます。
  86. 林百郎

    ○林(百)委員 それも願望であつてアメリカの側ではどういうことを言うておるか聞いておる。(発言する者あり)自由党の諸君がうるさいことを言つておりますから、その点はそれでよろしいです。  次の問題ですが、この七十八條によると、国際連合加盟国の地域には信託統治は適用しないと書いてある。従つてもしここにおいて非加盟国の取扱いをするとすれば、五十一條の場合、要するに集団的安全保障、集団的自衛権の行使、これは国際連合加盟国に対して武力攻撃を行つた場合に発生すると書いてある。こういうことを考えてみますと、安全保障とかそのほかの、こういう武力的な必要が起きる場合には五十一條で、すなわち義務を負う場合には加盟国に準じて取扱われる。われわれの権利を主張する場合には非加盟国として取扱われている。要するに五十一條は、加盟国に対して武力攻撃が発生した場合に集団的安全保障を持つことを認めている。これは明らかに加盟国に対する武力攻撃というふうに書いてある。従つてわれわれが集団的な自衛権をもし主張するとするならば、これはまつた日本の国が加盟国に準じた扱いを受けていると思うのであります。そうすると、七十八條は加盟国の地域には信託統治制度というものは行わない。ここでなお権利を主張する場合には非加盟国で、義務を負う場合には加盟国、これは非常に矛盾しておると思いますが、この点について政府はどういうふうに考えておるかお聞きしておきたい。
  87. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は第七十八條の意味を林委員誤解しておられると思うのでありす。第七十八條は、ある地域が独立国となりましてその上に国際連合の加盟国となつた場合には、加盟国の関係主権平等の関係であるから、もう信託統治制度には服してはならぬ、こういう意味でございます。
  88. 林百郎

    ○林(百)委員 日本が講和によつて主権を獲得し、独立した国と国際的にも認められ、しかも集団安全保障の面ではあたかも加盟国に準じた取扱いを受けているのであるから、私は七十八條によつて明らかにこの信託統治制度については、われわれはこれを拒否することができるはずであると思う。ところがあなたはそういう解釈のもとに、日本権利を失う場合には非加盟国にして、日本が戦争に巻き込まれるかどうかという重大な義務を負う場合には、加盟国並になるということについては、あくまで政府の責任だと思うのでありますが、その点についてはその程度にします。  そこでこの信託統治制度が、今言つたように国際の平和と安全、要するに戦略的な意味を非常に持つて来るということになるならば、これは明らかに戦略地域だし、それからまたその戦略地域の諾任務については、安保理事会によつて決定されなければならないはずだと思うのであります。実質的には戦略地域の要素を持つていながら、形の上では安保理事会にかけるのがぐあいが悪いからといつて、一般的な信託統治制度にするということは、これは国連憲章の違反だと思いますが、この信託統治なつたところは、将来アメリカとしてはどういう形でこれを使うということを考えておられるのか、政府の所見をただしたいと思うのであります。
  89. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点は、これは一に合衆国の意思の問題でございまして、日本政府答弁する限りではございません。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう重要な点になりますと、いつも政府は、一にアメリカアメリカだと言つておるのであります。私はアメリカが戰略的にここを使う、要するに軍事基地にするということは明らかだと思うのであります。ある人に言わせれば、万一日本の本土がどこかの勢力に占められた場合に、これを爆撃するための基地にするということを言つておる人すらあるのであります。要するにわれわれは、日本の本土を爆撃されるように、日本領土の一部を外国の基地に供する必要は絶対にないと思うのであります。もしそういう軍事的な必要があるとしても、これは安保條約の行政とりきめで、アメリカ軍隊の配置の問題についてはきめることができるのであるから、信託統治にして日本主権をまで譲り渡さなくてもいいじやないか。あなた側の方ではなぜこれを行政とりきめの範囲内でとりきめなかつたか、これをお聞きしておきたい。
  91. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 林委員は、御質問の中でしばしば日本がこれらの島に対して主権を放棄するとおつしやいますけれども主権は放棄していないのであります。主権日本にあるのであります。
  92. 田中萬逸

    田中委員長 林君、割当の時間がもうそろそろ参りましたから、結論をお急ぎ願います。
  93. 林百郎

    ○林(百)委員 要するにこれはアメリカ軍事基地のために、実質的には日本主権までも譲り渡しておる、私はこう言わざるを得ない。行政とりきめでいくらでもできることだ、また明らかに戦略地域でありながら、安保理事会にもかけない。こういう点で、これは明らかに日本領土をさいて、アメリカ軍事基地に提供している亡国的な、屈辱的な條項であると結論せざるを得ないのであります。これを言つて私の質問を終ります。
  94. 田中萬逸

    田中委員長 これにて第三條に対する質疑は終了いたしました。  次に第二章、第四條を議題に供します。田嶋好文君。
  95. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 私はこの第四條を第三條と関連せしめて本日は少し政府委員に聞いてみたいと思います。その前にお断りをいたしておきたいと思いますし、御了承を得たいと思うのでありますが、私の本日の質問の中には、法務総裁並びに大蔵大臣に対する関係部分が含まれておると思います。この部分に対しまして外務当局から御説明ができますなれば、御説明をなるたけ了承することにいたしましてもし御説明のできない部分がございましたならば、やむを得ない事情で大蔵大臣、法務総裁は御出席ないと思いますから、あらためた機会に、本日の私の質問にこの委員会においてお答えをいただきたいと思うのであります。  まず第四條の関係でございますが、第三條の南西諸島それから南方諸島の将来信託統治になされるかもしれません領土の部分についての、住民並びに住民の有する財産権の問題でございます。この第三條の領土につきましての主権の存在、並びにここに居住する国民日本国籍を維持して行けるということは、たびたびの総理大臣の御言明、その他関係政府委員の御言明によりましてわれわれは了承し、これに感謝をいたしておるのであります。そこで領土権が存在し、住民日本国籍を有しますということになりますと、この住民の所有する財産というものは、これは在外資産とは違いまして当然に日本国民の所有する財産と同様な形において従来通り取扱われ、所有権が認められるもの、こういうように私たちは解釈せざるを得ないのでございますが、この点に対してはどういうことになりましようか、当局の御見解をただしたいと思います。
  96. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 第四條をごらんなりますればおわかりなりますように、第三條の地域につきましては、第四條は全然規定が適用されないわけであります。従いましてこれらの諸島におきますと住民権利義務の関係は、何ら條約によつて影響を受けないで、従前通り尊重されて行くものと考えております。ただ第四條の(b)項に、これらの地域におきます財産に対しまして、アメリカの軍政府が処置をとつておる場合は、その処置は効力を承認しなければならない、こういうことになつておるわけでございます。しからば具体的にいかなる措置を今日まで軍政府の方でとつておるかということにつきましては、調査はいたしましたけれども、まだ具体的な事情がわからないのを遺憾に存じております。
  97. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 その最後の方のお言葉にもう少しつけ加えて御答弁願いたいと思うのでございます。第四條の(b) の規定によりまして合衆国政府のとつておる処置、これはまだ詳細な調査ができてないということで、これで一応了承いたしますが、この中に、先ほど委員質問の一部にもありましたように、戦争中に日本内地に疎開された方々がたくさんいらつしやる。この疎開された方々の財産というものは、どういうような形において保存され、どういうような形において現在存在しておるものでしようか、この点を御調査ができておればお答えを願いたい。
  98. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 戦時中内地に疎開されたこれらの諸島住民の方々は、大部分終戰後原島に復帰しておられると思います。但し小笠原、硫黄島方面は別といたします。問題は、むしろこういう内地に疎開していられた方方の内地に残された財産、この問題を主として原地に帰つた皆様が御心配しておられるように了解しておりますが、その実態は外務省所管でないものでございますから、今御答弁申し上げます具体的の資料を持ち合しておりません。
  99. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 その点は私もそうだと思いましたから、あらかじめ申し上げましたが、関係当局からこの委員会であらためて御説明願いたいと思います。  次に、これもお答えができるかできぬかわからないと思いますが、第三條の領土に対しましての問題であります。この領土の居住民国籍が当然に日本人であるところから、財産権はすべてこれらの人の所有に属するということが確認をされているわけでございまして、財産権は当然日本国民と同様に属するということが明確になりましたが、そういたしますと、たとえば疎開者の人々の残して来た財産、また疎開者であつてこれらの地域に復帰した人の内地に残した財産、これらの取扱いも在外資産の場合と異なつた立場において取扱う、これは当然に在外資産の賠償というような問題ともまた違つた意味において賠償等の起つた場合には考えなければならないと思うのであります。憲法上われわれ日本人の私有財産権が保護されるというような立場から考えましても、当然に在外資産の賠償問題とは違つた形において、これらの問題に対して賠償問題が起れば考慮しなければならないと思うのでありますが、この点に対しましていかような御見解を持つておられるかお伺いしたい。
  100. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の、財産が在外財産に入らないという点は全然同感でございます。広い意味で言えば一つの国内問題、そういうふうに考えるべきだと考えます。
  101. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 今度は非常にこまかく事務的な問題になりますのでどうかと思いますが、この居住民日本国籍を有するというところから、これらの国籍の取扱いに対しまして、日本内地日本国民と同様に取扱います関係から、戸籍法の適用がこれらの国民にもなければならぬ。戸籍法の取扱いは、日本では市町村役場が取扱いをいたしております。信託統治になつてから後のこれらの地域の取扱い状態を考えてみますと、ちよつとわれわれに理解しがたい点が多々生れるようでございますが、それはどういうようにお取扱いになるのでございましようか。この点を一応お伺いしたい。もしお答えができませんでしたら、法務総裁にお伺いします。
  102. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 住民の身分関係事項を特に変更する必要というようなものを、合衆国側で感じておられないようでございますので、御指摘のような事柄をいかにして最も好都合に実行し得るかというのが、結局当面の問題になると思いますが、これらの問題は、第三條の関連において今後日米間の一話合いをいたします一つの事項になることかと考えておりますし、また日本側としては、最大限に日本国民の要望は受入れてもらえる性質の事柄であると考えております。
  103. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 私の四條に対する質問はこれで終ります。
  104. 田中萬逸

    田中委員長 北澤直吉君。
  105. 北澤直吉

    ○北澤委員 今回の対日平和條約及び日米安全保障條約には、日本国民の財産権に相当影響のある條項がたくさんあるのであります。御承知のように日本の憲法におきましては、国民の財産権というものは尊重されることになつておりますので、この條約によつて受けまする国民の財産権の問題につきましては、これは国会としましても愼重に審議すべきものであると思うのであります。この点につきましては、私は総括質問におきましても一応触れましたし、また同僚の塚田委員からも、それからまたただいま田嶋委員からも触れられましたから、これまで触れてなかつた点につきまして、ひとつ政府に御質問したいと思います。  まず伺いたいのは、この第四條の日本の旧領土におきまする日本国及び日本人の財産の処理の問題でございますが、日本の旧領土と申しましても、朝鮮のように日本が独立を承認した地域と、それからまた單に日本領土権を放棄しただけの地域たとえば台湾か澎湖島、千島樺太、こういうものとは状態が違うのであります。この第四條によりますと、こういう旧領土における日本国及び日本人の財産と、それからそういうところにおきまする管理当局と、それから住民日本における財産につきましては、将来これらの地域の管理当局と日本との間に特別のとりきめをしてきめる、こういうことになつております。しかし、朝鮮及びアメリカの管轄に入りました南洋の委員統治地域につきましては、日本との間にそういう特別なとりきめをつくることができますけれども、台湾、澎湖島、千島、南樺太、こういう地域におきまする財産につきましては、これはソ連及び中国が今回の條約に入つておらぬ関係上、特別のとりきめを結ぶことができない、こういうように考えますが、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  106. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 北澤委員の御意見通りに考えております。
  107. 北澤直吉

    ○北澤委員 そこで次に伺いたいのは、日本が従来持つてつた関東州の租借地、つまり族順、大連についてであります。あの租借地というものは、大体委任統治地域と同じように解釈していいのだと思います。もしそういうふうに考えます場合には、関東州租借地、すなわち旅順、大連等におきます日本の財産についても、ただいまの第四條の規定によつて講和條約以後協定すべきものだ、こういうふうに考えるのでありますが、その点について政府の御意見を伺いたいと思うのであります。
  108. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 関東州租借地につきましては、この平和條約におきましては、第十條にあります中国における特殊権益の放棄の條項によりまして、放棄することになると考えております。
  109. 北澤直吉

    ○北澤委員 條約によりまして、関東州の租借権は放棄いたしましたが、その租借地における日本人の財産は別の問題であります。この関東州租借地におきまする日本人の私有財産どいうものは、やはり朝鮮とかあるいは南洋の日本委任統治地域にあつたところの日本人の財産と同じように扱うべきだと思うのでありますが、もう一ぺんその点について伺いたいと思います。
  110. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私どもとしては、御指摘の財産は第十四條(a)の2によつて処分されるものと考えております。
  111. 北澤直吉

    ○北澤委員 たとえば中国の香港の近くの九龍に英国の租借地があり、あるいは広州湾にフランスの租借地があるが、そういう解釈で行くと、中国におきまするイギリスもしくはフランスの租借地にあります日本人のああいう財産はどうなりますか。これは中国の領域内にあるというわけで、やはり第十四條が行使されますか。あるいはまたそういう租借地及び委任統治地域は、フランスもしくはイギリスの領土としてその方でとるのか、この辺をひとつ伺いたいと思います。
  112. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 現在中国で租借地を持つておるのはイギリスとフランスと了解いたしておりますが、その問題は、英仏と中国間の問題となり得る可能性があると考えております。
  113. 北澤直吉

    ○北澤委員 その点はそうでありましようが、ただ概念といたしまして、租借地というものをどう見るか、その領土主権を持つている国の領域と見るか、あるいは租借権を持つている国の領域と見るか。たとえば南洋の委任統治地域のようなものは、受任国の領域の構成部分として扱うということになると、その委任を受けた国の領域と見るか、あるいはその主権の帰属する国の領域と見るか、その点で非常に違うのであります。もしそういうことになりますと、この関東州の租借地をどう見るかということが非常に大きな影響がある。もし関東州の租借地というものが、それの潜在主権は中国にあるが、日本が現実に主権を持つてつたということで、それが従来の日本の領域であつたということになると、日本の旧領土であるということになる。そうするとそこにあつた日本人の私有財産というものは、第四條と同じような取扱いをしないと、非常に不公平になると私は思うのでありますが、もう一ぺん御説明願いたいのであります。
  114. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私どもは、法律の問題といたしまして、租借地というものは租借権国の領土とは考えないのでございます。九龍等にいたしましても、広州湾にいたしましても、中国の領域だと考えております。
  115. 北澤直吉

    ○北澤委員 少しこまかになりますが、そうしますと、南太平洋のイギリスの委任統治地域における日本人の財産、これは一体イギリスがとるのでありますか。そういう委任統治地域というものはどこの領域になるのですか。これを参考に伺いたいと思います。
  116. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 委任統治地域とおつしやいましたが、委任統治地域が何国の領有でもないということは、すでに国際連盟規約の当時の公的の解釈でございます。領有権というものはないわけであります。要するに、統治権、施政権を受任国が持つておるという関係にあるにすぎないのであります。従つて、今具体的に問題になりますのは、南洋の旧委任統治地域における日本の財産の問題だと思いますが、これは第四條によりまして、日米間の特別とりきめの主題目となるべき性質の問題でございます。
  117. 北澤直吉

    ○北澤委員 大体政府の方のお考えはわかりましたが、この機会に念を押しておきます。そうしますと、朝鮮と、従来日本委任統治にあつた南洋の委任統治地域における日本人の財産については、第四條によつて処理する。それから、台湾、澎湖島、千島、南樺太にある日本人の財産については、ソ連及び中国がこの條約に調印していない関係上、とりきめができない。それから、関東州の租借地の甘本人の財産は、條約第十四條によつて中国が接収する、こういうように考えます。そこでもう一つ伺いたいが、しからば、中国において日本行政権を持つてつた満鉄の付属地、あるいは北京の公使館区域、あるいは日本の租界、あるいは上海の共同租界、こういうところにあつた日本人の財産は、やはり第十四條によつて中国が接収するというふうに考えてよいのでありますか。念のために伺います。
  118. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういうふうに考えております。
  119. 北澤直吉

    ○北澤委員 そこで次に伺いたいのは、第四條によりますと、「日本国及びその国民の財産で」云々と書いてあるのでありますが、この国民の中には、この條約によつて「法人を含む」こういうように書いてあります。そうしますと、たとえば朝鮮にあつた朝鮮銀行、あるいは籍は日本の法人であるが、本店は朝鮮にある法人、ああいう日本籍の法人は、この場合はすべて日本国民と見るのでありますか、その点をお伺いいたします。
  120. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは第四條によるとりきめの主題と思うのでありまして、要するに関係政府間のとりきめによつていかようにも決定できる、こういうように考えております。
  121. 北澤直吉

    ○北澤委員 それから第四條に「日本国におけるこれらの当局及び住民」しかもその住民は「法人を含む」こう書いてありますが、こうなりますと、たとえば日本におる朝鮮人というふうなものはこの住民に入らぬ、従つて日本におる朝鮮人の財産については、この第四條のとりきめに入らぬ、こういうように考えていいのでありますか、この点をお伺いいたします。
  122. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは入らないと解釈いたしております。
  123. 北澤直吉

    ○北澤委員 そこで伺いたいのであります。この第四條によりますと、そういう旧領土にあつた日本国日本人の財産と、日本にあるそういう地域の管理当局及び住民の財産等については将来相談する、こうなつておるのでありますが、これはイタリアの講和條約の場合を見ると違うのでありまして、イタリアの場合におきましては、そういう旧領土におけるイタリア人の財産はこれを尊重する、イタリア人の財産は、外国財産の取扱いを受ける、没収、強制、移転の処分は受けない、こういうふうに書いてあります。従いまして私ども希望としては、こういう旧領土にあつた日本人の財産について将来協定をする場合には、なるべくそういうものを尊重してもらう、そうしてこれを没収とか接収とかしないというふうにしてもらうことが必要であると思います。もしそうでなくて、お互いにこれを相殺して放棄し合うということになりますと、その場合には所有者に対してある程度補償をするということがないと、非常に不公平になると思いますが、その点について政府はいかようにお考えでありますか、お伺いいたします。
  124. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ただいま北澤委員が御指摘になりましたイタリア平和條約の当該條項規定は、私見により百ますときわめて公正な規定であります。従つて第四條について意見を求められましたときにも、われわれはあの公正なイタリア平和條約と同じ原則が、対日平和條約においても採用せられるよう要請したことはもちろんでございます。しかしながら種々困難な事情がございまして、平和條約におきましては、一切両当事者間の交渉によつて解決するようにということでありまして、結局その解決の準則が示されなかつた従つて解決の準則から両当事者間でデイスカスしなければならないという結果になりました。そのことはむろん遺憾と存ずる次第でございます。
  125. 北澤直吉

    ○北澤委員 次に移りますが、先ほども條約局長の御説明の中に、合衆国の軍政府によつて行われた財産の処理の効力を承認する。従つてたとえば南朝鮮もしくは小笠原、琉球等にあつた日本の財産で、合衆国の軍政府によつて処理を受けた場合には、その処理を日本は承認しなければいかぬ、こういうことになつております。具体的な例を申し上げますと、朝鮮に本店がある朝鮮銀行の財産を、軍政府の処置によつて何らか処分するという場合には、これに日本は従わなければいかぬ。ところが日本にある朝鮮銀行の財産については、第四條によつて協定をするということになると、何といいますか、日本人が朝鮮銀行に対して持つてつた債権は、軍政府の処置によつて何ともならぬけれども日本にある朝鮮銀行の財産については、朝鮮当局はこれを主張するというふうな、非常に不公平なことになりはしないかと思うのですが、その点についてお伺いしたいと思います。
  126. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 要するにわれわれの立場としては、不公平にならないような協定を取結ばなければならないと考えておる次第であります。
  127. 北澤直吉

    ○北澤委員 それでは、それで、第四條の(a)(b)項を終ります。  次に海底電線に移ります。第四條の(c)項によりますと、「日本とこの條約に従つて日本国の支配から除かれる領域とを結ぶ日本所有の海底電線は、」云々と書いてあります。そうしますと、日本国の支配から除かれた領域という場合には、先ほども問題になりました小笠原諸島、琉球諸島というものは、これはどう考えるのでありますか。これは領土権は日本にあるから、第四條(c)項の「日本国の支配から除かれる」とは考えない。従つて東京から小笠原に行く海底電線、それから鹿児島から小笠原に行く海底電線は、従来通り日本のものである。最後小笠原については、小笠原からグアムに行く海底電線の半分の、小笠原に近い部分が日本のもので、あとの半分は向うのものである。琉球の方は西表島、琉球の一番南端のこの島と台湾との中間がその境になる、こういうふうな解釈をとつておるのでありますが、政府見解を伺いたい。
  128. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御指摘の地域日本の領域でございますので、日本の領域内の二地点を結ぶ海底電線ということでよろしかろうと思います。事実米国側におきましても、何も東京と小笠原をつなぐ海底電線の南の半分の所有権を取得せられる必要はなかろうと思います。むしろ必要とされるのは、小笠原における末端のいわゆる管理であろうと考えるのであります。従つてどもとしては、信託統治地域に限つてではございませんが、第三條に規定せられておる地域日本本土を結ぶ海底電線は、第四條の(c)項によらなくて、日本合衆国との間の話合いで円満な解決がつくであろうと考えております。
  129. 北澤直吉

    ○北澤委員 小笠原及び琉球島と日本との海底電線につきまして、政府のはつきりした見解が述べられまして満足であります。  それからこれに関連して、佐世保から大連に行く海底電線、長崎から大連に行く海底電線でありますが、大連は、先ほど局長の御説明のように、この條約によつて日本が放棄した地域であります。この大連と佐世保もしくは長崎を結ぶ海底電線は、第四條によつて折半する、こう考えていいのでありますか。これも念のため伺いたい。
  130. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御指摘の海底電線は、すでに現在折半領有になつておりますので、問題は起らないのであります。
  131. 北澤直吉

    ○北澤委員 あとの條項にも関連しますから、この機会に日本人の財産問題を伺つておきたいのでありますが、この條約によりまして、占領軍が接収しておつた財産は、将来日本国に返す、こういうふうな規定になつておるのであります。そうしてそういう接収された財産のアメリカに対する日本人の請求権は、この條約によつて放棄されておりますが、そういう接収財産の所有者から申しますと、少くとも損害を受けている。従いましてこういう接収財産を返還する場合、接収中に受けた所有者の損害につきましては、政府は補償するというふうなお考えを持つておると思うのでありますが、その点をひとつ念のために伺つておきたいと思います。
  132. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは後刻大蔵当局から御説明があるかと存じますが、私どもの了解する範囲では、すでにそういう案件に対しては、補償を現に行つておると、こういうふうに了解いたしておるわけであります。
  133. 北澤直吉

    ○北澤委員 続いて伺いますが、戦争中に日本の捕獲審検所がいろいろ判決を下し、それによつて外国の船もしくは積荷を日本が接収した。それを、この條約によりますと、将来こういう判決が訂正された場合に、そういうものを外国に返せというふうなことが書いてあるのでありますが、そういう場合に、捕獲審検所によつて日本が接収したものを譲り受けた日本人があつた場合には、公正な救済を受け得るのであるかどうか、そういう場合には黙つておる以外に方法はないのか、その点も伺つておきたいと思います。
  134. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御指摘の問題は、第十七條(a)項の関係でございます。その問題は同項の実施に関連して当然起る問題でございまして、目下関係当局の方で、関係各省間に具体的対策を考究中の段階でございます。
  135. 北澤直吉

    ○北澤委員 それでは次に伺いたいのは、この條約によりますと、外国に行つてつた日本の船の問題があるのであります。在外資産は、第十四條によつて、そこを管轄する政府がこれを接収し得るということになつておるのでありますが、船がたまたまそこへ行つてつたというために、在外資産として没収されているわけであります。従来からそこにあつた日本の財産と比べて、たまたまそのときに臨時に行つてつた日本の船というものとは、その間に相当の違いがある。調べによると、大体三百四十四隻くらいの日本の船が、終戰後外国で接収されているということでありますから、相当大きい問題であります。こういうようなたまたまそこに行つてつたがために、外国によつて接収された船舶というものに対しましては、これは政府は将来ある程度の補償をする考えがあるかどうか、この点も伺つておきたいと思います。
  136. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 一般在外財産に対する補償問題に関連して考究される問題であろうと考えております。
  137. 北澤直吉

    ○北澤委員 さらに伺いますが、第十四條によつて連合国がその領域内の日本人の財産を接収するという場合に「日本国又は日本国民が所有し、又は支配した団体」ということになつております。これはたとえば例をとつてみますと、中国における中国籍の会社がある、しかも中国籍の会社であつても、日支合弁の会社であつて、その株は半分以上日本人が持つておる、あるいは重役が半分以上日本人であるという場合は、籍は中国の籍の会社であつても、これは日本国民が所有しまたは支配した団体ということで、そういう会社の財産は没収される。こういうふうに思うのであります。十四條の2の(c)であります。そういうような日支合弁会社がたくさんある。そういう日支合弁会社の財産であつても、しかも籍は中国であつても、株は過半数日本人が持つておる、あるいは重役が日本人であるという場合には、これによつて没収されるかどうかという点を伺つておきたい。
  138. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういうふうに考えております。
  139. 北澤直吉

    ○北澤委員 それでは私の第四條に関する質問はこれで終ります。
  140. 田中萬逸

    田中委員長 これにて第四條に対する質疑は終了いたしました。  午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時より委員会を再開し、質疑を継続するごとといたします。この際暫時休憩いたします。     午後零時五分休憩     —————————————     午後一時十六分開議
  141. 田中萬逸

    田中委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  平和條約に対する逐條の審議を継続いたします。第三章第五條を議題に供します。佐瀬昌三君。
  142. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 私は第五條について簡単に政府委員に対して御質疑をいたしたいと思います。  本平和條約の前文においてすでに日本国としては「あらゆる場合に国際連合憲章の原則を遵守し」こう書かれてあります。しかしてさらに第五條において「日本国は、国際連合憲章第二條に掲げる義務、特に次の義務を受諾する。」とうたつてあるわけでありますが、すでに前文にある以上は、かような必要はないではないかと一応疑問を持つわけであります。しかしなおあえてこれを第五條に規定したゆえんのものはどこにあるかということを、まずお尋ねしたいと思います。
  143. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 第五條の(a)の規定は、(a)と同時に(b)項と両方を対照して了解すべき事柄でございます。前文におきまして、むろん日本といたしましては、国際連合憲章の原則によつて行動するという意向を宣明いたし、連合国の方でこれを歓迎いたすというふうに了解しております。この国際連合憲章の原則という中には、そういうふうな百條に余る條項を含んでおりますが、そのうち特に重要なのは、第一條の目的と第二條で規定しております国連目的を達成するために、各加盟国が行動の準則とすべき基礎原則でございましよう。第三章で日本の安全保障を定めるにあたりまして第二條の行動原則を、日本とこの平和條約に参加いたします連合国との関係におきまして行動の原則とする條約上の関係を樹立するということはきわめて有意義だと存じます。何となれば、前文に日本といたしましては、国際連合に加盟いたし、そうしてしかる上に国際連合の原則に従つて行動するとなつておりますが、現実は国連加盟必ずしも容易ではないのでございますので、その実現に至るまでの間は、この平和條約を受講いたします日本連合国との相互の間に、あたかも日本は正式に国際連合加盟国となつたと同じような條約関係を設立するというところに非常に意義があります。その意味で(a)項と(b)項とわかれたものと了解いたす次第であります。
  144. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 第五條においては、もつぱら日本国際連合に加盟する以前において、なおかような義務を受諾するということを規定づけられたわけでありますが、先ほども委員でしたか、義務を負担する点においてはすでに加盟国と同様である。しかし権利の点においてはそれが顧みられないというような御質疑があつたのでありますが、国民としても、日本国際連合に加盟する前後において、義務なり権利なりについていかような法的地位を持つておるかということを全体として知りたいという状態にあると考えるのであります、そこで日本国としてのその関係の法的地位ということをこの委員会を通して国民一般に明確にしていただきたい、かように考えます。
  145. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 (b)項におきまして、連合国日本に対する関係におきまして日本と同様第二條の原則に従つて行動すべき義務を確認いたしておりますので、日本といたしましては、(a)項によつて受諾していると同じ義務を、この平和條約に参加している連合国に対して、権利として要請する立場にあるわけでございます。
  146. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 (a)項の(i)でありますが、国際紛争を平和的手段によつて解決する義務を負担するということは、特に新憲法によつて戰争権を放棄した日本としては、当然のことであり、また国際連合によつてかような解決の処置を求めるというのは、国際関係の上から見ても、きわめて緊要なことはいうまでもないのであります。そこでここにいう国際紛争というものは、この條約の上においても将来多々予想されるこ参とと思うのでありますが、これを具体的な事例をもつて、一応考えられる点を明らかにしていただきたい、かように考える次第であります。
  147. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ここにいう国際紛争には何ら特殊の意味はないのでありましく私どもが一般に常識的にいう国家間の紛争の意味であります。
  148. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 この條約の上において将来生ずることが予想され得るような、たとえば領土の問題とか、あるいは賠償の問題、その他平和條約の解釈に関する諸問題というものが含まれることになるのでありましようか。
  149. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 この平和條約に関して生じます日本連合国との間の紛争については、この條約二十二條に解決方法規定いたしております。これはいわゆる国家の行動の原則を規定いたしております国際連合憲章第二條を引用しておるわけであります。広い意味におきまして国家と国家との間に交際が行われる、その間に紛争が生ずる場合には、平和的手段をもつてお互いに解決しなければならぬという国際的行動の基準でございます。
  150. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 そこでお伺いいたしたいのは、歯舞・色丹諸島に関する領土の帰属問題について、日本国として第二十二條に基いて国際司法裁判所に対し、ソ連を相手として提訴できるかできないかという問題になると思うのでありますが、先般條約局長から、たしかそれが不可能であるという御説明があつたように記憶するのであります。この点はヤルタ協定その他いろいろの関連から、われわれも愼重に考えなければならぬ問題であると思うのでありますが、国際連合に加入し、また国際司法裁判所の規定に参加しておる当事国としてのソ連に、この二十二條等を離れて、一般原則の上に立つて平和的手段による国際司法裁判所による解決ということは道がないのか、あるのか、その点をお伺いいたします。
  151. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ソ連邦はこの條約に署名いたしておりませんので、第二十二條に定めるこの條約に関連して起る紛争解決の手続を遵奉する義務はないわけであります。従つて二十二條によつて歯舞、色丹諸島に関する問題を裁判所に提訴する道はないわけであります。それでは、ソ連邦はへーグの国際司法裁判所の規定の当事国でございますので、裁判所それ自体の憲章とも申すべき規定によりまして、日本はこの問題を裁判所に提訴する可能性があるかと申しますと、その点も遺憾ながらないのでございます。規定によりますと、国際紛争の両当事国がともに裁判所に提訴するということを合意した場合にだけ事件を提訴できる次第でございます。ただ規定の第三十八條でございましたか、それによりますと、四種類ばかりの紛争を列挙いたしておりまして、これらの事件については合意がなくても一方的に同裁判所の管轄権を認めるという趣旨の宣言をすることができることになつております。その中にはむろん国際條約の解釈の問題が入つております。しかしソ連邦は、学者のいう義務的管轄でございますが、まだこれを受諾する宣言をいたしておらないのでございますから、ソ連と他国との間の国際紛争は、両当事国間にこれをへーグに持つて行くという合意がない限り、どういたしましても提訴できないことになつておるわけであります。ソ連と日本との現在の関係が続く以上は、そういう合意ができようとも思われません。だから結論としては、へーグのコートに持つて行く道はない、こういうことになる次第であります。
  152. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 (a)項の(ii)についてでありますが、日本国に対して、武力の行使、あるいは武力による威嚇を愼まなければならぬということを受諾させられるわけでありますが、これは現在の非武装国としては事実上あり得べからざることであります。ただこの條約の裏には、あるいは再軍備ということを前提的に顧慮された結果かような條項が設けられたものではないかと付度する次第でありますが、その間の條約締結の経緯について御説明を願いたいと思います。
  153. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういうふうなことは全然ございません。日本連合国との間におきましては、国際連合憲章第二條に定めます行動の準則に従つて、お互いに行動しようという趣旨以外に何ら他意あるものではございません。
  154. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 (a)項の(iii)に関連する問題でありますが、ここには日本国が、国連がとるところのいかなる行動についてもあらゆる援助を与えなければならぬということが規定されておるのでありますが、このいかなる行動という意味を一応明らかにしておいていただきたいのであります。
  155. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点は、たびたび総理から御説明があつ通りでございます。第二條には、国際連合加盟国が、第一條に定めております国際連合の大目的であります国際の平和の維持と国際協力の発達、この二大目的を達成するために準拠すべき行動の原則を定めております。その一として、国際連合が、この国際連合憲章規定従つて行動をとつた場合には、加盟国は国際連合にあらゆる援助を与えなければならぬ、こういうことになつておりまして、原則規定でございます。しからばいかなる援助が要請されるかということは、第三章以下の規定に従いまして、国際連合の当該機関、総会または安全保障理事会が具体的問題が起りました場合に、憲章規定を適用いたしまして勧告なり決議なりによつて各加盟国に要請いたすわけであります。要請される内容によつて日本が与うべき援助の内容がまず決定されるわけであります。しかし勧告なり決議なりによつて要請を受けました場合に、日本としても、その受けた要請が、法律的に見て、また実際的に見て可能な場合にだけその範囲において援助を与えればよろしいのでございます。憲法におきまして軍備を放棄し、戰争を放棄している国といたしましては、かりに勧告なり決議なりによつて、加盟国に対しましてそういう軍事的行動に対する参加を要請されましても、日本としてはそれに応ずるわけには行かない。同時にまた、国際連合の方の勧告なり決議なりで、ある一国に対します、たとえば外交関係の断絶ないしは通信関係の断絶というようなことを要請して参りました場合に、日本と当該国との間に外交関係のない、ないしは交通関係がない場合には、むろん日本政府といたしましては、それに応じようにも応じられない、こういう関係になるわけでございます。
  156. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 結局、いかなる行動という意味は、国連で決定されるあらゆるものを含むということになるようでありますが、しからば憲章五十一條による自衛権に基く戰争、あるいはいわゆる制裁戰争というようなものも含むということに了解されると思うのでありますが、その点はいかがです。
  157. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 五十一條に規定いたします自衛権による行動というのは、よく條文をごらんなさいますとおわかりになりますように、国際連合の安全保障が憲章によつて予定される措置をとるまでの間、加盟国が自発的にとり得る非常手段を規定したものです。ですから、国際連合の方から自衛権の発動を要請するというようなことは考え得られないのです。国際連合が具体的な措置をとるまでに、国家としては緊急切迫した事態に対しては、何らかの措置をとらざるを得ない、そういう例外的の場合に、国際連合憲章に掲げられる実力行使をとり得る可能性規定しているのが五十一條でございます。
  158. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 国連の決定する制裁戦争というものは含まれることになるのですか。
  159. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 むろんそれは国際連合憲章第六章及び第七章によつて国連がとる行動も含まれるのでありますから、制裁戦争という用語は妥当でございませんが、強制措置というものはむろん含まれるわけであります。
  160. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 たとえば、朝鮮動乱における国連軍の行動というものも含まれることになると思うのですが、この点はどうでしようか。
  161. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点に対しましては、冒頭私が説明いたしました通りでございます。国際連合総会なり安全保障理事会なりが、加盟国に対しまして強制措置をとることを要請いたしますと仮定いたしまして、その強制措置の内容が、電力の行使または軍事行動を含む場合には、日本といたしましては、憲法上車力を持ちませんし、交戦権を放棄いたしておりますので、そういう要請には応ずべき立場にないということになるわけでございます。
  162. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 それはむしろその後に続いておる、いわゆるあらゆる援助を与えなければならぬというあらゆる援助の意味から限定される問題であろうと考えるのであります。日本の憲法その他から、日本の行動として合法的に許される援助であろうという意味にもちろんわれわれは解釈いたして砦のであります。そこで、このあらゆる援助が、抽象的には合憲的なものでなければならぬという線は引けるのでありますが、これを具体的にいつて、いかなる協力援助ができるかということは、将来相当微妙な問題になるのではないかと懸念されるのであります。いわゆる軍事的協力ということがこのあらゆる援助の概念の中に全然入らないか、またある程度の軍事的様相を持つたものは入るのかどうかということに疑問を持たざるを得ないのであります。この点について政府委員の解明をお願いしておきたい。かように考える次第であります。
  163. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 日本に関する限り軍事的援助の可能性は全然ございません。
  164. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 いわゆる警察的協力という点はいかがでしようか。
  165. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 国連が加盟国に対しまして、援助を要請する場合は国際問題でございます。国際紛争でございます。警察は純粋に国内治安のために存在するのでございますので、御質問のような事態は生ずる余地がないと考えております。
  166. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 従つてたとえば警察予備隊を派遣するというようなことはあり得べからざることであるというふうに了承してさしつかえないと思うのでありますが、同時にこの際條約局長お答えのできる範囲でけつこうでございますが、たとえば義勇軍というような問題は政府としてはいかにこれを考えられておるか、この点もあわせてお伺いしておきます。
  167. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問に対しましては、すでに自由党の総裁であり、内閣の首班である吉田総理が、そういうことはないとお答えになつておるところでございます。
  168. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 (c)項でありますが、これはある意味においては日本に自衛権があることを確認したというふうにもとれるのでありますが、日本の憲法の解釈においても、すでにこの点は相当問題のある箇所でありまする私どもは、日本は戰争権を放棄はしておるけれども、憲法第九條は断じて自衛権を放棄したものではないというふうに従来解釈して参つて、おるのでありますが、日本に自衛権があるということは、一体この條約によつて初めてさように結論されるのか、やはり政府の考えとしては、憲法第九條に基いて本来的に自衛権を持つておるというふうに御解釈なさつておるか、将来のためにこの点も明らかにしておきたいと思います。
  169. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点も総理がたびたび御説明になつておる点でございます。国際法上独立主権国が自衛権を持つというのは当然の法理でございます。この條約第五條(c)項の規定をまたずして、日本は自衛権を持つておるものでございます。
  170. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 五條に関してはなお他にも問題がありますけれども関係政府委員が出ておりませんから、私の質問は一応これで打切つておきます。
  171. 田中萬逸

  172. 並木芳雄

    並木委員 ただいま局長から、いかなる行動並びにあらゆる援助についてのところで、国連の総会または安全保障理事会などで勧告、決議をして、それを各国に要請するであろう。その場合に日本としては必ずしも全部が全部これを受けなくてもよろしいというふうに聞きましたけれども、その通りですか。
  173. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 国際連合の要請に対しましては、日本としては法的に可能であり、事実的に可能である限度において援助を与うべきものであると考えております。
  174. 並木芳雄

    並木委員 法的に可能であり、実質的に可能であるという判断は、当然国会の承認を求めてやるべきものであると思いますが、それとも政府政府見解行政行為としてやるつもりであるかどうか。
  175. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 問題は外交事務の処理であると考えますので、政府限りでできることであると考えております。
  176. 並木芳雄

    並木委員 政府だけでやられますと、やはり安全保障條約の中の行政協定の内容が問題になつておるのと同じように、私ども国民としては権利義務の関係が出て参りますので、不安が残るのであります。やはりこの「あらゆる援助」の内容につきましては、国会の承認を求めて内閣がこれを行うというふうに解釈をすべきものであると思いますが、いかがですか。
  177. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 決してそうは考えません。むろん国会としましては、国政審議権をお持ちでございますから、十分政府措置に対して批判される権限はお持ちであると考えております。
  178. 並木芳雄

    並木委員 求められたあらゆる援助の内容が、日本の法律に抵触することがないとは断言できないと思います。その法律に抵触する場合、政府は常にこれをしりぞけるかどうか。
  179. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 政府といたしましては、法律の範囲内においていたします。
  180. 並木芳雄

    並木委員 現在の朝鮮の動乱がなお続いて行きますならば、いわゆる国連軍司令官というものも続いて日本にとどまるものと思われるかどうか。
  181. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは米国政府の問題でありますが、現実問題といたしましては、現に東京におる連合国最高司令官が国連軍の総司会属目を兼ねておられるのであります。平和條効力発生後、連合国最高司令官という地位はむろん当然解消をいたしますけれども日本における米国軍の司会風呂であるという地位は保持されるかもしれません。そういう場合には、むろん同一の人が国連軍の司令官を兼ねておりますので、並木委員が御指摘のような事態があり得ると考えております。
  182. 並木芳雄

    並木委員 国連軍司令官のもとに、やはり司令部というものが現在できそおるのですか。日本にですよ。
  183. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ちよつとその辺の事情をはつきり存じておりませんから、答弁いたしかねます。
  184. 並木芳雄

    並木委員 ここでお伺いしたいのは、国際連合軍司令官が続いて日本に駐留されるとなるならば、條約が成立して日本が独立したあかつきのことですから、日本国連との間で何らかのとりきめが行われる必要があるのではないですか。
  185. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点に対する誤解を防ぐために、安全保障條約と同時に、吉田総理とアチソン国務長官との間に公文が交換された次第でございます。朝鮮において国際連合軍のために行動しておる国際連合加盟国が、日本を通じてその軍隊を支持することを容認するという文句がございますが、まさに御疑問の点に対する、平和條約発効後の法的根拠を与えるために、公文が交換された次第でございます。
  186. 並木芳雄

    並木委員 「あらゆる援助」というものと安全保障條約の行政協憲の内容というものとを吉田首相が混同されておるように、私どもは先日来聞いておりました。そこでこれを明らかに国連に協力する「あらゆる援助」という一般的な問題と、日米安全保障條約による行政協定というものとは別ものであると思うのですけれども、相互の間にどういう関連性があるか、全然別個のものであるかどうか、こういう点についてお尋ねしたいと思います。
  187. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 別個の問題であると考えております。
  188. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、吉田総理があらゆる援助とはどうだという質問に対して、行政協定によつてきめられるであろうというお答えをしたことはどういうことを意味するのですか。
  189. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 総理はその点は訂正いたされました。それで御質問に答える必要はないかと存じます。ただ総理がちよつと早合点なさつてお答えなつたのかと思うのです。私どもは安全保障の行政とりきめが関連して来る場合は、合衆国が極東におきまして国際連合の要請に応じまして軍事的措置をとる場合に、日本におる米国軍隊が参加するという事態が考えられるわけであります。そういうときに、日本といたしましては、行政とりきめの範囲内におきまして米軍に便益を提供いたしますと同時に、それ以外のものは全部米国の負担とするという考えが働いて来る。こういうことになりますので、ごく具体的な場合、言いかえれば、極東において国際連合のために米国行政措置に参加する場合にだけ、行政とりきめというものがやや関連を持つて来る場合があり得るわけであります。その場合が頭にあつたので、ああいう御答弁をなさつたのであろうと想像いたす次第であります。
  190. 田中萬逸

    田中委員長 これにて第五條に対する質疑は終了いたしました。  次に第三章第六條を議題に供します。若林義孝君。
  191. 若林義孝

    ○若林委員 私は、海外同胞引揚に関する特別委員会関係者といたしまして、その立場から第六條(b)項に関連いたしまして、二、三の質問をいたしたいと考えるのであります。そもそも平和條約は戦争の跡始末であり、総決算であるというその性質上、当然終戰以来いまだに解決を見ざる日本人抑留者の問題、ソ連、中共等によつて不等に拉致抑留せられておりまするまま、未解決の三十数万同胞の運命に関する問題が條約中に明確にうたい込まれねばならないことはいうまでもないところでありますが、去る七月十三日発表の第一次條約草案には、本問題は一顧も与えられておらなかつたのであります。もしそのまま條約が成立し、ポツダム宣言が失効したといたしますならば、いまだにあらゆる困苦と闘いつつ、切なる望郷の思いを数行のたよりに託して肉身相見るの日を一日千秋の思いで待ちこがれておる中共地区の同胞、一切の音信を絶たれて、六度厳寒の異境に身をもだえつつ、故国の妻子を夢見る在ソ同胞、これらの方々の救出は、ポ宣言にかわるべき根拠が喪失する限り、永遠にその手がかりを失うてしまうことになるのであります。かるがゆえに七月下旬、憂悶心痛その極に達しました全国百数十万の留守家族の代表は、講和條約にこの問題の挿入を望んで東京に参集し、遂にわが身を削つて天に祈らんと、千鳥ヶ淵において彼の悲壯なる無期限集団所願断食行に入つたのであります。その間国会並びに政府は、あげてこの留守家族の悲願を達成せしむべく、百方奔走努力して参つたのでありますが、この官民一体、日本民族をあげての熱願は、遂に條約本文の修正挿入となつて実現し、いわゆる和解と信頼の講和たることが立証されたことは、わが国民のひとしく喜びとするところであります。この第六條(b)項の挿入は、一、留守家族の悲願、一、日本民族の熱望が、正義を愛し、自由を守らんとする全人類の悲願熱望であることを、天下に明らかに表明したことになるのであります。八千万国民が條約締結を機にいたしましてやや愁眉を開いておるとき、引揚げ問題の挿入してない條約案文をながめたときの留守家族の心境は、あたかも死の宣告を与えられたごとく悲歎の淵に陷れられたのでございましたが、今日格別の少数の者を除いては、心を一つにして八千万国民講和條約を喜び迎えることができるのであります。私はここに、本問題にかねがね深い関心と絶大なる盡力を寄せられて、今回の條約修正努力せられました米英両国政府を初めとする連合各国、とりわけダレス大使に対しまして、衷心感謝の念を禁じ得ないものでありますが、同時に桑港会議の席上、本問題に関しきわめて好意ある発言をせられましたセイロンその他諸国に対し、あわせてここに深甚の謝意を表するものでございます。しかし本問題は條約を締結せざるソ連、中共等に抑留せられております君たち引揚げについてきわめてむずかしい問題となることを暗示するのではないかと思うのでありまして、それだけに留守家族を初め関係者といたしましては、今回の第六條(b)項が、この問題解決について持つ意味なり、またこれを調印して来られました政府意向なりを伺い、その疑いを明らかにしていただかなければならないと考える次第でありまして、私はこういう立場から、重複を避けつつ二、三輪伺いをいたしてみたいと考えるのであります。  平和條締結によりましてポツダム宣言が失効することは、国際法上常識であると存ずるのでありますが、この平和條締結に参加せざりしソ連は、なおポツダム宣言の拘束を受けるものと存ずるのでありますが、いずれ拘束を受けておつたところで、現在六年間、何の義務をも果さないところを見ますと、実に慨嘆にたえないのでございますけれども、法律的の解釈といたしまして、ソ連はいまなおポツダム宣言の拘束を受ける立場にあるのであるかないのであるか、これをもう一度はつきり御説明を願いたいと存じます。
  192. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ポツダム宣言の効力につきましては、先般来の御質疑によりまして、吉田総理からも詳しく申し上げた通りであります。さらに重ねての御質問でございまするが、ことに具体的に、ソ連が署名しなかつた場合、この引揚げ問題についてのポツダム宣言第九項による問題はどうかという意味の御趣旨だと存じます。私どもは、いわゆるこのポツダム宣言の効力につきましては、ソ連は平和條約に署名はいたしませんが、ポツダム宣言自身としては十分効力を持つておると信じております。
  193. 若林義孝

    ○若林委員 次に調印しました連合国が、ただいま議題となつております條項によりまして、引揚げに関する援助並びに協力をせられることになるのでありますが、それは単なる好意と解してよいのでありますか、あるいは義務としてここにあげられたのであるか、その強さの程度をひとつ……。ただ単なる好意を見せるためであるか、あるいは責任として、義務としてここに明記せられたのであるか、なおもう一つ、ソ連を含む連合国としてポツダム宣言というものは発せられたのでありますから、ソ連と共同の責任を感じてここに明記せられておるのか、あるいは単に連合国として、今度調印をした自国の責任のみを果すという意味においての條項であるか、この点をひとつ伺いたいと思います。
  194. 草葉隆圓

    草葉政府委員 平和條約は、これに署名いたしましたいわゆる連合国が、当然相互の関係においてこれを守る重要なる條文でございます。従つてこの第六條の(b)項は、そういう意味において当然連合各国もこれを承認し、この実現に努力すベき立場にあると存じます。
  195. 若林義孝

    ○若林委員 この條項に協力をせられるということは、ポツダム宣言の場合感じておつた義務というものに、いわゆるこれに継続してその義務を持つという意味でありますか。調印国の立場からいえば、一応ポツダム宣言というものは効力をなくしておりますから、新たにこの條項によつて、新しくその協力の義務が発生したものと解釈してよいですか。
  196. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは、ポツダム宣言第九項の規定が、まだその実施が完了していない限り実行される竜のと思います。もちろんポツダム宣言の権利、義務という関係は、先般来詳しく総理からも、あるいは條約局長からも申し上げた通りであります。ここにありますのは、いわゆるポツダム宣言の第九項の、まだそれが十分実施が完了されておらない状態において、これをあの精神に基いて実行されることを規定いたしたものであります。
  197. 若林義孝

    ○若林委員 過般の松本委員の質疑の際に、漁業問題で吉田総理は、ソ連との交渉は、講和をしていないのであるからむずかしいけれども、何らかの話合いができようという意味の御答弁をなさつたのであります。むろんこの漁業問題もきわめて重要な問題なのでございますから、当然であろうと思うのでありますが、同様にこの引揚げ問題に関しましても、吉田総理の漁業問題に関してお答えになりましたように、何らかの話合いはできることになるのでございましようか。
  198. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話のように、できるだけの方法をとつて、ことに効力を発生しましたあかつきには、日本主権を回復しまして、各関係国にもそれぞれ公館を設置し得る状態になつて参ります。従いまして、いろいろな機会をとらえまして相談のできる最大の方法をとつて参りたいと存じます。
  199. 若林義孝

    ○若林委員 このことに関する具体的のことがお漏らしを願えのお示しを願えたならば、非常に安心ができるのでありますが、一方考えますと、ソ連の代表部は、総司令部の解消によつてなくなるのであるという御説明があつたわけでありますから、そうしますと、今までおりますところのソ連の代表部というものが日本引揚げることになるのか、あるいは何らかの形でソ連から日本に駐在を要求して参ることになるのか、あるいは、今までの交渉経過はことごとく司令部を通してソ連に交渉をいたしておつたのでありますが、今度は単独にソ連に日本政府として交渉を開始することができるのであるか。(発言する者あり)加えて、ひとつ具体的にどういう方途を講ずべきであるか。しきりにいろいろなやじが飛んでおりますけれども、ほんとうに世界の平和を念願するという国であるとするならば、ソ連という国からは、帰つた者と残つて曲る者との数より言うてないのでありますが、死んだ者の数くらいのことを示して来てこそ、初めて真に私たち納得が行き、筋道の通つた行き方をやる国だという感じがするのでありますけれども、そうでない以上、しきりに飛んでおります反撥的のやじに耳を傾けるわけに行かぬのであります。どうぞひとつ具体的に、どういう代表部を相手にして行くかというような事柄をお漏らし願えたらと思います。
  200. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これも先般来申し上げましたように、占領機関に対する派遣として、現在はソ連代表部が参つておりますので、占領が終了いたしますときにその性格はなくなる次第でございます。その後の問題につきましては、その情勢によつていろいろの方法が考えられて行くと存じます。しかしまだ国交が回復しておりません限りにおきましては、ソ連、日本両国の代表交換という状態には相なつて参らないと存じます。しかし水産の場合にも総理から申し上げましたように、いろいろ相談をする方法は、日本が独立いたしますると、なおそれぞれの方法によつてやれると思います。ことに引揚げの問題につきましては、前々からもお答え申し上げておりましたように、現在におきましても、司令部なり、あるいは司令部を通じてこれらの国々と面接国交の状態にありまする国を通じて従来から懇請をして参つておる状態であります。なお日本が独立をいたしますると、幸い現在四十八箇国が署名をし、しかもこの第六條の(b)項によりまして、十分この意味を承認いたしておりますので、これらの国々の力も借りまして、ことにまた国際連合総会におきまする委員等の活動をまちまして、具体的に進め得る状態に相なつて来ると思います。
  201. 若林義孝

    ○若林委員 この引揚げ問題こそ、講和條約が締結されましても、最後までわれわれの悲願として将来残される問題ではないかと思いますと、心がそぞろ暗くなるのでありますが、政府は今まで暗々裡にこの問題について苦心をし折衝をせられておることが、一般国民、特に留守家族の人たちに映じなかつたことから、相当不満に考え、さびしく思う事柄があつたのであります。たとえてみますと、五月十四日、六月十九日に切々たる国民の悲願を国連の議長あてにお送りになつておるにもかかわらず。これは国民には知れ渡つていない。これが七月二十五日に外務省から発表されまして、ここまでやつてくださつておるのかという気持で、一縷の希望というものを抱き、政府に対する信頼感を増したのでございますが、もし将来ともこの交渉に対して政府がとられます事柄を、さしつかえない限りひとつその都度その都度発表をしていただきますならば、という気がするのであります。  なお六月二十六日に国際連合におきまして、昨年の十二月十四日の決議に基いて、特別委員会の三人委員が任命をされたわけでございますが、その後この引揚げ促進についていかなる活動をしておられるか。私のところへは議長から、この活動を開始するのであるから万全の策がとられるであろうという通知が参つておるのでありますが、その後の引揚げ促進について三人委員会のとられました情報が、外務省でおわかりでございましたならばお伺いいたします。
  202. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この引揚げの問題につきましては、政府は今後とも全力を盡して、すみやかな引揚げの完了に努力して参りたいと思つております。つきましては、国連の三人委員会の活動は、その後各国からの情報を収集いたしておりましてその情報の収集を検討して、それから次の活動に乗り出すという、そういう状態だと承知いたしております。大分各国の情報が集まつて、現在それを検討いたしておられる状態であると承知いたしております。
  203. 若林義孝

    ○若林委員 次に最近グアム島から帰還をいたしました方たちの記述を読みまして、われわれは一方において気分を明るくする面もあり、また一方におきましては、なおたいへんな事柄があるのじやないかという気持がするのでありますが、特にこの現地に遺骨がなお累々たるありさまで、ジヤングルの中において泣いていると訴えておるのであります。平和條約調印に際しましての吉田全権の宣言の後段におきましても「日本国は、連合国が、連合国の領域にあり且つ保存を希望される日本人の戦死者の墓又は墓地を維持するために取極をする目的をもつて日本国政府との協議を開始すべきことを信ずる。」と述べておられるのでありますが、南方諸地域での戰残者の数は、おそらく百万を越えておると思われるのであります。この遺骨や墓地の整理保存は、多数遺族が涙をもつて念願しているところでありますが、政府はこれらの遺骨及び墓地の整理保存について何らかの腹案をお持ちでございましようか。もし腹案があればお示しを願いたいと思います。
  204. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本がこの平和條約にあたりまして宣言をいたしましたいわゆる墓地記念碑等の宣言の中に、幸い連合国もその連合軍の領域にありまする同胞の戦死者の墓なり墓地の維持について、今後十分これを尊重し、これがとりきめについては今後協議して参るということを宣言いたしましたことは、同時に連合国がこれを承知いたしてくれておる件でございます。これが具体的な問題につきましては、今後進めて参らなければならないと思いますが、遺族も十分満足されるような方法をとつて参りたいと存じます。
  205. 若林義孝

    ○若林委員 その條文は、御存じの通り軍人の捕虜に関する條項でございますが、一般邦人に関しましては、やはりこれと同様に取扱いを受けるべきものと解釈してさしつかえはないのでございましようか。
  206. 草葉隆圓

    草葉政府委員 いろいろ捕虜といたしております中には、すべて軍人というかつこうになつておりまするが、これは当然一般邦人は、軍人あるいは軍人のような取扱いということを考えての上で進んで参りた。
  207. 若林義孝

    ○若林委員 ここまで引揚げ條項が世界の悲願としてこの條文に取上げられるようになつたということにつきましては、留守家族を中心として、全国の一大国民運動が実現しまして、これによつて促進されて行つたということ。この国民運動の効果がこの講和條約への挿入ということになつたことと照し合せてながめましたときに、この国民運動の価値というものを政府は一体どういうようにお考えになつておりますか。
  208. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は引揚げの問題につきまする国民運動に対しましては、まことに国民の熱情の結晶と存じまして、心より各位に敬意と感謝の意を表しておる次第であります。
  209. 若林義孝

    ○若林委員 平和條約が締結せられまして、日本が独立国家となつたといたしますならば、この国民運動に政府も先頭に立つて、これを推進して行かれるという御意思はございませんでしようか、どういうお考えですか。
  210. 草葉隆圓

    草葉政府委員 まだ未引揚げ邦人が、お話のように、政府が発表いたしましたような状態に相当残つておりますので、これが引揚げの完成のためには、政府国民諸君と一体となりまして、その実現を期して参りたいと存じます。
  211. 若林義孝

    ○若林委員 そういう意味におきまして私がお願いをいたしておきたいことは、今までは国際事情関係というものもあり、この運動が政府の作意したところの運動であるというような誤解を受けるおそれがあるので、遠慮しておられたように思うのでありますが、かくまで明瞭に国民運動としてやむにやまれざる引揚げの促進、また未復員の君たちがあるということが厳然として世界に認められました以上、おそらくこの運動を政府が助成せられ、また一体となつて行くというお言葉もありましたように、費用その他の点におきましても、私は相当援助すべきではないかという考えを持つておるのでありますが、今日それに対しての御見解を伺うわけにあるいはいかぬかとも思うのでありますが、将来この運動が堅実に発展をして参りますよう、政府も一段の御配慮を願いたいと考えるのでありまして、ダレス顧問からわれわれ切切たる御熱意のあるお手紙を承つております。吉田総理が平和会議におきまして、この問題について世界列国に対して懇請をせられました熱意を、留守家族その他国民承知をいたしておるのであります。より以上の推進をこの條約によつてせられますようひとえに折りましてこの條項に関します私の質疑を終りたいと思います。
  212. 田中萬逸

  213. 並木芳雄

    並木委員 この六條の但書に「この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として」云々とございます。現在日本としてはアメリカと日米安全保障條約を結ぼうとしておりますけれども政府としてはアメリカのほかにどういう国と結ぶことを考えておられますか、お伺いいたします。
  214. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在御審議を願つております以外には、ただいま考えておりません。
  215. 並木芳雄

    並木委員 一つよりは二つ、二つよりは三つと、多い方が安全性が増すものと政府は考えておるかどうか。
  216. 草葉隆圓

    草葉政府委員 必ずしも数だけの問題ではないと存じます。
  217. 並木芳雄

    並木委員 太平洋條約というようなものも考えられますけれども、太平洋條約はやはりこれの形をとつて一つ、二つ、三つという形で結ばれて行くものと思われるかどうか。それと別に太平洋條約というようなものになるのかどうか、見通しについて……。
  218. 草葉隆圓

    草葉政府委員 まだそういう点については考えておらないのであります。
  219. 並木芳雄

    並木委員 先日来政府は、平和條約と日米安全保障條約とは不可分であるというふうに私は聞いておるのですけれども、どういうわけで不可分であるかということの琴線に触れた説明がないのでございます。どうかひとつ、これこれこういうわけだからどうしても不可分だというところを、よく説明していただきたいと思います。
  220. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は可分、不可分というのは、政府ではあまり申し上げなんだのであります。可分か不可分かという議論は、私もこの間お答え申し上げましたが、形の上でははつきり違つた條約として皆さんの御審議をいただいております。しかと内容においては、これは密接な関係がある。こういうことを御答弁申し上げておいた次第であります。
  221. 並木芳雄

    並木委員 内容において密接な関係があるということを、ほんとうにもう少し徹底してもらいたいと思うのです。そういう点について共産党の諸君から質問が出ると、何だか知らないけれども、はれものにさわるようにやつてしまうから、われわれのように、また立場の違う者が同じような質問をしたときに、ぼくたちは非常に損をするのです。われわれのは立場が違うのですから、どうして内容的にしかそぞれ不可分でなければならないかという情勢を説明してもらわなければ困るのです。
  222. 草葉隆圓

    草葉政府委員 あるいはこの第六條の(a)項によりまして「連合国のすべての占領軍は、この條約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内」—最近この條文がたいへん読み違えられておる節が多いと思います。と申しますのは、九十日間は占領軍はおるのじやないか。その間にひとつ相談したらいいじやないかという御意見が多いようでありまするけれども、これは決してそうじやなしに、この條約の効力が発生しますと同時に、占領軍は性格を失う筋のものであります。その後は少くとも九十日以内に、できるならば明日、あるいは十日、九十日以内、こういう意味の九十日以内であります。従いまして効力が発生いたしますと同時に、その日と申しますか、日本がいわゆる主権を回復したその日に力の真空状態になる、こういう意味において密接不可分なものである。効力を発生してから、さてこれから相談するというものではないのでございます。これは御審議にあたつてよくひとつ御留意をいただきたいと思います。
  223. 並木芳雄

    並木委員 絶対にそれだけの理由なのであるか、それとも別に世界の情勢とか、そういうような理由はないかどうか。
  224. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本がせつかく効力を発生しました日から全然力の真空状態になり、世界の心配の種になるような独立というものは、これはまことに不十分なことであります。そこで今のうちに—この効力の発生したあくる日から全然力の真空状態になります。九十日というのはただ引揚げの準備期間の問題だけでございます。この点をよく御了解を願いますると、効力発生と同時に力の真空状態を埋める方法をとつて行くことは当然のことであります。
  225. 並木芳雄

    並木委員 その点について、連合国ということについて二十五條に「この條約の適用上、連合国とは、日本国と戰争していた国又は以前に第二十三條に列記する国の領域の一部をなしていたものをいう。但し、各場合に当該国がこの條約に署名し且つこれを批准したことを條件とする。」というふうに、連合国という意味の定義のようなものを定めてあります。そうするとこれが普通の定義であれば、この第六條に連合国一つまたは二つ以上を一方とするというこの連合国は、厳格に解釈すると批准をした後ということになるのです。それでは今の次官のような答弁が成り立たなくなるのですが、齢そらく私は「この條約の適用上」という文句に何かあると思いますが、これはどうですか、二十五條の連合国の定義は。
  226. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その問題は、第六條の但書は第六條に対する但書でございまして、本体は第五條の(c)、日本は独立国として安全保障とりきめを締結する権利がある。これが原則規定でございますので、並木委員の御指摘になりました原則規定と例外規定との関連におきまして、やや欠階があるのではなかろうかという御質問に対しては、その通りでございますという答弁をいたします。
  227. 並木芳雄

    並木委員 ちよつとしつこいようですが、連合国意味について、二十五條では署名し批准しなければ連合国というものにならないと定められてある。そういう意味連合国というものを厳格に適用するならば、この六條の(a)にいう連合国もまた署名し批准してからでなければ、安全保障條約を締結することができないのじやないかというふうに受取れるのですが、この点いかがでしよう。
  228. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御指摘の通りでございます。しかし安全保障とりきめの権限に関する規定は第五條の(c)項が原則でございまして、それに対しては何ら相手国について制限がないのでございますから、日本としては條約の第二十五條でございましたかに定義されている連合国でない国との間にも、第五條の規定によりまして安全保障とりきめをする権能を持つている、こういう解釈になる次第であります。
  229. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、署名し批准を終らない間にわれわれが締結しようとしておる日米安全保障條約は、この第五條の(c)によつて結ばれるものと解釈されるわけですね。
  230. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その通りでございます。
  231. 並木芳雄

    並木委員 それではこれはまたむだな議論になつてしまうのですが、第六條の(a)の終りの方に、「外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。」日本国の領域とはつきり限定してあります。ところが日米安全保障條約の方では第三條でしたかに「日本国内及びその附近に」という文字になつているのですが、これとの関係はどうなるのですか。
  232. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 嚴格に申し上げますと、日米安全保障條約におきましても「その附近」という文句は、いらないという解釈も成り立ち得ると思うのです。しかし一つの独立国が他の独立国のきわめて付近に軍隊を置くということは、政治的に見て非常に意味のあることでございますので、その付近にありまする独立国の事前の承諾を受けておくということには政治的の意義がある。それだから「日本国内及びその附近」こう書いておる次第でございます。
  233. 並木芳雄

    並木委員 具体的には日本の場合「その附近」というのはどんなものが入りますか。
  234. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 今のところは具体的な場所はないようでございます。
  235. 並木芳雄

    並木委員 たとえばという例示でもいいのです。
  236. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 日本の付近の地域はみなそれぞれ領有国があり、ないしはその帰属につきまして連合国間に紛争がある問題でございますから、具体的に地名をあげて御説明するのは差控えた方がいいと考えます。
  237. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと先ほどの不可分論にもどるのですけれども、私どもは安全保障條約を論議する場合にも、やはり條約が成立して独立してからの方がよかつたのではないかという感じを、こういう観点から持つのです。つまりそれは、現在では何と申しましても占領されておるのですから、対等の立場にない。そうすると私ども会議員でも、言論などの制限がございます。ところが主権が回復すれば、言論なども完全に自由になつて参りますから、現在では私どもの言いにくいことでも、そのときになれば言うこともできるじやないか、対等の立場に立ち、独立したあかつきに審議され結ばれる方が日本の立場を守るためによかつたのではないかという感じを持つのですが、そういう点について政府はどう感じておられますか。
  238. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはさきにも申し上げましたように、九十日というのかたいへん耳ざわりになつて来ると思います。むしろ効力の発生しました日から自由になる、ここにいう完全な主権が回復されますから、それからの方がいいというのは、かりに火事になつてから消防ポンプを買つていいじやないかという議論と同じになります。そうでなしに、万一火事になるということを予想して消防署を置き、消防ポンプを用意するということがほんとうであります。従つて効力の発生した日からは自由になり、主権の回復ということはわかつておりますが、その前から準、備をするということは当然なことであります。その場合言論のというお話でございますが、少くとも日米安全保障條約の御論議にはさような御心配なしに十分御審議を願いたいと思います。
  239. 並木芳雄

    並木委員 十分納得できたとは言いかねるのですが、アメリカの方でも日本を守つてやると言つておるのですから、九十日をあまり次官はたてにとつてこだわり過ぎておるのじやないかと思うのです。九十日までは駐屯できるのですから、そこのところはそう次官がかたくなるほどのものではないと思うのです。ここでそのためにお伺いしておきたいのですが、独立して主権が回復すれば、これはいうまでもなく言論その他一切合財自由になると思つておりますが、その通りでしような。たとえばプレス・コードのようなものはもちろんなくなるし、外国に対する私ども日本人の批判というようなものも自由になると思われますけれども、この点確かめておきたいと思います。
  240. 草葉隆圓

    草葉政府委員 法律に示されました範囲においての自由は当然であります。
  241. 並木芳雄

    並木委員 法律でなくて憲法ではないのですか。
  242. 草葉隆圓

    草葉政府委員 当然さようでございます。
  243. 並木芳雄

    並木委員 これはなかなか私は、実際に独立したあかつきには微妙な問題を含むと思いますから、はつきりしておきたいのですけれども、外国に対する批判なども完全に自由になりますか。
  244. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいま申し上げた通りでありまして、自由になると思います。     〔発言する者あり〕
  245. 田中萬逸

    田中委員長 共産党の田島君、注意願います。
  246. 並木芳雄

    並木委員 政府は、何かプレス・コードにかわるべきものとか、あるいは検閲制度などを考えておると聞いておりますけれども、その点どうなんですか。  それからアメリカ軍が日本に駐留するようになりますと、それに関する場合も完全にわれわれは自由であると解してよいかどうか。
  247. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはこの前文にもありますように、十分民主主義国家としての体面を保つて行くために、あらゆる具体的な方法をとつて、そうしていわゆる人権の尊重、人権宣言を守つて行きたいと思つております。     〔発言する者あり〕
  248. 田中萬逸

    田中委員長 静粛に願います。
  249. 並木芳雄

    並木委員 ちよつとこれは外務当局では無理かとも存じますので、これは大橋法務総裁に尋ねることを留保しておきましよう。
  250. 田中萬逸

    田中委員長 大橋君が出られたら質問を願います。
  251. 並木芳雄

    並木委員 それでは一応この程度で……。
  252. 田中萬逸

    田中委員長 これにて第六條に対する質疑は終了いたしました。  次に第四章第七條及び第八條を議題に供します。本條につきましては質疑の通告がありません。ほかに御発言もないようでありますから、次に進みます。  第四章第九條を議題に供します。石原圓吉君。
  253. 石原圓吉

    石原(圓)委員 日本の漁業者、漁民は約千八百万人であります。この人たちが海岸に居住をして、そうして終戰前にすでに大半の漁船を失い、漁具を失い、漁港を破壊され、以来六年、その間非常なる忍苦に耐えて辛うじて生活をして参つておるのであります。この一千八百万人のうちの勇敢なる漁業者たちが、小さな船に着の身着のままで沖合いへ出てそうして太平洋全体を開拓したのであります。また太平洋以外の、ただいま紛糾を重ねておるところの東支那海、朝鮮、露領方面等もほとんど大部分は日本の漁業者が開拓をいたしたものであります。今日この千八百万人の漁民の生活の基本がどうなるかというこの大事なときに、私は政府当局が漁民全体をこの漁業協定にあたつてつんぼさじきに置いておるような感がするのであります。このことは日本国民の約五分の一を占める漁民を、政府が軽く見て器る一つの証左ではないかと私は思うのであります。そこで私は、往年日露漁業協定にあたりまして、しかもそのときの日本は戰勝国でありましたが、日露漁業協定においては、日本は非常な不利な條件に服しなければならなかつたのであります。それはその当時のロシヤが、このカムチヤツカ方面の漁業を日本に要求通りに与えたならば、ロシヤの国民の生活に脅威を受けるということで、非常なる有力な書類を提供して、そうして用意周到なる交渉をいたしたのでありまするが、日本政府は、はなはだ戰勝に酔うて、軽々にその衝に当つたがために、非常なる不利益なる條件のもとに応諾せなければならぬことになつて、爾来日露漁業に関しては、日本は非常なる犠牲を払つたにかかわらず不利益を忍んで参つたことは、ここに明らかな事実があるのであります。今回の日本の立場は戰敗国であります。戰敗国が戰勝国に対して漁業権の問題を協定するにあたつて、われわれは政府が十分なる資料その他の用意をととのえておるかどうかということを非常に杞憂をいたすのであります。この問題について一応御所見を伺つておきたいのであります。
  254. 草葉隆圓

    草葉政府委員 漁業問題につきましては、お話のように日本としましては今後独立後は一層重大な意義を持つて参るので、これは総理からもたびたび申されましたし、また今までの折衝中におきましても、漁業問題は特に大きく取上げましてあるいは交渉中の書簡となつて現われ、あるいは声明となつて現われる等、いろいろの方法をもつて進んで参つたのであります。ことに領土の少くなりました日本におきましては、公海における漁業というものは最も大事なものでありまするから、多くの準備と資料とを集めて進んで参つております。
  255. 石原圓吉

    石原(圓)委員 トルーマン大統領は終戰直後の一九四五年の九月二十八日に左のような声明を発しておるのであります。「水産資源の保存および保護に関する切迫した必要にかんがみ米国政府は沿岸に隣接する外洋中、漁撈活動が実質的な規模で展開され継続されて来た水域に保護海区を設定するのが適当と考える。その海区ではそれが自国民のみの活動による場合には米国の規則および管理に従い、米国民および他の国民により合法的に共同して行われてきた場合には当該国との間の協定で定められた規則および管理に従わなければならない。いかなる国家にも前記の原則に対応して自国沿岸沖に保護海区を設定する権利を容認する。ただし、このような水域に現存する米国民のあらゆる漁業上の利益に対して前記に対応する承認が与えられる限りにおいてである。」こういう声明を出しておるのであります。この声明の最初に「水産資源の保存および保護に関する切迫した必要にかんがみ」とあるが、この切迫した必要ということに対して政府はどのような解釈をされるのであるか。これをまずお伺いいたします。
  256. 草葉隆圓

    草葉政府委員 一九四五年の九月に、いわゆるトルーマン宣言といわれております水産宣言がお話のようになされたのでありますが、これは従来も、ことに太平洋沿岸におきますアメリカの漁業についていろいろ問題にされ、その結果から発せられたものと想像いたすのであります。そういう意味における内容を、緊迫したという内容をもつて表現されたものではないかと思います。   (委員長退席、竹尾委員長代理着席〕
  257. 石原圓吉

    石原(圓)委員 私は、政府と全然解釈が違うのであります。切迫した状態というのは、日本の漁船がアメリカの海岸へまでも殺到して行つて、脅威を与えるということが切迫したことでありますが、このときにはもう日本にはこれという船もないのであります。戰争中ずつと太平洋へ出漁していなかつたのであります。していなかつたのであるのに急迫しておるということは、これはトルーマン大統領の一つの政策上のゼスチユアでないかと私は思う。こういうことを基礎としたアメリカの方針につり込まれるおそれがないのかどうかと私は大いに杞憂するのであります。この点もう一言お伺いしておきたいのであります。
  258. 草葉隆圓

    草葉政府委員 九月二十八日のいわゆる漁業に関するトルーマン宣言におきましても、いろいろ内容はお話のように今まで日本の漁船による圧迫と申しますか、そういうふうなことは当時あまりなかつたと存じます。また従来におきましてもさようではなかつたと存じます。
  259. 石原圓吉

    石原(圓)委員 この問題はこの程度にいたしまするが、トルーマン大統領の言うておつた保護海区、この保護海区というのはどのような規模であるか、またどの方面に設定するのであるか、その内容について御存じの範囲を御説明願います。
  260. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この宣言はなさりましたが、これは現在行われておらないのであります。
  261. 石原圓吉

    石原(圓)委員 第九條は簡単な條項であります。公海における漁猟に関する協定についての規定であつて、公海の漁猟について、日本希望する連合国と漁猟の規制または制限並びに漁業の保存及び発展を期する規定を結び合つて交渉を開始するものとある交渉を開始されるということは、むろん交渉を開始しなければならぬと思うのでありますが、この交渉を開始して、そうしていつまでに漁業協定の結末をつけるという最終的期限はきめておらないように考えるのであります。私は、この漁業協定を日本が早くすることは不利益であると考えるのであります。これは私のみならず、日本の漁業者のおもなるものはそう考えておるのであります。ことにまた、実際漁業協定をするにいたしましても、ある一方の国と協定をしてその国との間に保護区域のようなものができるとまた次の国と協定をして、またその国といろいろの條件、保護区域等を定めた場合には、日本の漁業を営む区域は見通しがつかない、どういうことになるのかわからないという結論になると思うのであります。ゆえに私は、この條項にあるように交渉は開始するが、漁業の協定は、関係諸外国と同時に締結すべきものであろう、とこう考えるのでありますが、政府の御所見はいかがでありますか。
  262. 草葉隆圓

    草葉政府委員 漁業問題につきましては、実は従来から日本漁業の濫獲等によるところの脅威ということが相当問題にされておつたのであります。しかし事実においてはさようなことはほとんど少かつたと存じます。むしろ言われておりますような脅威が多かつたのであります。そういう意味におきましても、公海漁業その他の漁業におきましては、現在国際的に漁業の條約を結びました国も相当多数あります。今後はなるべく早い機会に日本関係国と漁業問題についての相談を進めまして、そうしてはつきりした態度をもつて公海において日本漁民の安易なる、そして最も有効なる手段によりまする漁業を進めて参りますことが、国際信用上最も妥当なる道ではないか、かように考えております。
  263. 石原圓吉

    石原(圓)委員 その点は、草葉次官と私とは意見が一致しております。協定をするということは必要があります。但し、最近聞くところによると、アメリカとカナダとが日本へ来て、日本と三国の協定を早くしようというような空気があるということであります。そういうことになれば、先刻のトルーマン大統領の声明そのものが重圧になると私は思うのであります。そういう径路の交渉の仕方並びに協定はよくないと思うのであります。関係国と協定はしなくてはならぬ。ならぬけれども、すべての関係国と同時に協定をする。そのうち、あるいはすべてと申しましても、参加しないところもあるでしよう。それはやむを得ない。参加する各国とは同時に協定すべきである、こう考えるのであります。もう一応伺つておきます。
  264. 草葉隆圓

    草葉政府委員 先ほど申し上げましたように、漁業に関する一九四五年九月二十八日のトルーマン宣言は、現在実施されておりません。かつこの宣言につきましては、むしろ最近は異にした方向をアメリカの漁業政策としてとつて参つておると承知をいたします。従つてこの宣言はあまり念頭に強くお考えにならないでもいいのではないかと考えております。ことにアメリカとカナダと日本との漁業につきましては、従来からいろいろ国際的に問題を生じておるのでありまして、なかんずくブリストル湾におきまする漁業の問題等におきましては従来から、ことに太平洋沿岸のアメリカ漁業界におきましては、話題をにぎわしておるのであります。しかしここにおきましても、従来から日本漁民は必ずしも魚を濫獲したということはないのでありまするから、一層この機会に、早く業者が相談をして、公正なる道を開きながら、公然と安心して漁業ができ、しかも日本漁業の信用を高める方法をすみやかにとつて行くことが、日本の漁業の将来においては最も必要な道と考えまして、近くアメリカ、カナダとの漁業の相談を始める手配を進めておる次第でございます。
  265. 石原圓吉

    石原(圓)委員 大方針については次官も私もかわらないのであります。ただ同時にするか、一部の国々とするかという点であります。これの確答を得にくいのはやむを得ないと思います。できればあとで総理大臣からでも答弁を得なければならぬ問題かと思うのであります。それはまずその程度にいたしまして、これはちよつと委員長にお願いをしておきます。本年の二月十四日であります。ダレス顧問に対して吉田首相より出した書簡であります。それからその回答がダレス氏より参つておるのであります。これは時間の制約を受けた都合上、読むのは省きますから、これを速記録に記録することをお願いをいたしておきます。よろしゆうございますか。
  266. 竹尾弌

    ○竹尾委員長代理 よろしゆうございます。
  267. 石原圓吉

    石原(圓)委員 この吉田首相がダレス顧問へ提出した書面はまことにりつぱなものであります。男らしいものであります。また国際信義を十分に尊重したところの書面であります。われわれもこれは非常に同感であります。この書簡を出す前に、国際信義を守るために日本は水産資源保育に関する法律をつくつて、まず世界にそれを示して、日本の立場を明らかにするということが漁業協定を締結するのに先だつての手段であり、またその結果が非常によかろうと考えて私どもは昨年その案を提出したのでありますけれども、ある一部が意見が一致せずしてオーケーがもらえなかつたのであります。これは政府提案でもよろしいし、またわれわれ議員提案でもよろしいから、いつときも早くこの法律をつくつて世界に示す必要があると思うのであります。またこのダレス特使よりの返事がまことにありがた過ぎるのであります。このありがた過ぎることに私は不安を感ずるのであります。これを読むのは時間を制約されたからやめておきますが、速記をごらんを願いたいのであります。このようなことは、初めはトルーマン大統領におどされて、今度ダレス顧問にはほつぺたをぼたもちでたたかれるような感じを与えられるのではないかという不安を私は持つものであります。それからこの書簡を出す前に、漁業並びに漁場のことにつきまして、政府とダレスさん、またマダナソンさん、その他の人々と御会談があつたと思うのでありますが、その御会談の内容を許す範囲でここで御説明を願いたいのであります。
  268. 草葉隆圓

    草葉政府委員 さきにお答えを申し上げるのを一つ落しておりましたが、なるべく全体との漁業の打合せをする方がいいのではないかというお話で、この点につきましては、従来からもその方針で進んでおります。従いまして、たとえば国際捕鯨條約等におきましては、これは世界の全般的の問題でございまするから、これに加わりながら進んでおりますが、漁場の問題につきましては、あるいはアメリカ、カナダ間のハリバツトの保護の問題、フレーザー河の問題等いろいろ区域的に違つて参つている。従いまして世界全体の会議というような形をとり得ないのであります。いわゆる関係国とこういうことになりますので、こういう点におきましては、関係国だけの交渉ということで今後案を進めて参る予定でございます。  それから漁場問題につきましては、先ほど申し上げましたように、日本としては天然資源獲得の上に最も大事な大きい問題でございましてこの條約の交渉にあたりましても、ただいまお話にありました本年の二月七日の書簡になつて現われ、その後進んで参つております。その内容のこまかいことは、結局この書簡によつて現われたことでございまするから、御了承を願いたいと存じます。
  269. 石原圓吉

    石原(圓)委員 今日までの外国との漁業協定では、日本関係するのは捕鯨の問題だけであると私は心得るので彫ります。今後どのような條項が起るか知らぬのでありますが、ただ一つ残されているのは、らつこ、おつとせいの協約に日本が入つていないことで、これはいかにも残念であります。もとよりこれは、太中洋戦争に先だつて日本が放棄したという一つの非常なしくじりがあるのでありまして、今日までこれに参加の機会が得られなかつたことはまつたく非常な不利益であります。しかもそのらつこ、おつとせいは、三陸方面では海岸まで近寄つて来るほどたくさんに繁殖をしておるのでありますが、日本はこの漁獲ができないのみならず、あの方面のかつをまぐろ、その他の日本が漁獲すべきものをこのらつこ、おつとせいのためにかえつて食い荒されておるという実情であります。でありまするから、この機会にらつこ、おつとせいの條約にもぜひ日本が参加することができるように、政府において特段の御努力をされるよう、ついでながら希望をいたしておくものであります。  漁業協定をするにあたつて一番問題となるのは、保護区域の問題と、また吉田首相より関係方面へ申し出ているところの出漁の遠慮の問題、それからもう一つは、これはこれまでの問題でなく今後の問題ですが、今後米軍が日本に駐屯するにあたつて非常なる脅威を受けることですが、日本の海岸において海軍が演習をするために、漁場の漁業の操業や漁船の航行を禁止することであります。このことが拡大して参りましたならば、これは沿岸漁業が非常な脅威を感ずる、こういうことになります。この点に対しては政府と米軍との間に何らか申合せとか協定があるのでしようか、承つておきたいのであります。
  270. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この問題につきましては、実は政府におきましてもいろいろ研究を進めて参つておるのであります。ことに直接に業者が、特別演習一指定地等のために漁撈にたいへんな影響を来すというようなことがありますると、先ほど申し上げました漁業の性質から、まことに影響を大きく来して参りますので、関係省で先般来打合せをいたしましてまた司令部においても十分日本意見を聞きながら、今後演習地の設定等をして行くということでございます。従いまして今後十分連絡を保つてさような影響の少いことを期して参りたいと思つております。
  271. 石原圓吉

    石原(圓)委員 日本の海軍でも、日本の沿岸の漁業に支障のあるところでは演習はしなかつたものであります。それをアメリカの海軍が、しかも最も大切な沿岸の漁場を期間的に閉鎖をするということは、これはもう漁民の死活問題であります。この点は強く交渉をして、そうして漁業をしない沖合いで演習をすることに交渉をすべきであると考えるのでありまして、この点を特に要望をいたしておきます。  次に漁業協定をなすにあたり、その以前にその関係地区を、日本とその関係国とが現地調査をするということが最も必要であると思うのであります。先刻も申すように、日本の漁業者がほとんど太平洋その他の漁場は開拓したのでありまするから、現地を調査すれば、そのところどころにおける実績が証明をする道があいて来るのであります。そのことは日本にどれだけ有利な結論を得るかということは申すまでもないのであります。であるからその交渉にあたつて、現地を調査することをぜひやらなければならぬと思うのであります。これに対する御所見を伺つておきます。
  272. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実はただいま申し上げましたように、なるべく早く漁業のとりきめを関係国と進めて参る、それについては国内のいろいろ関係各省、並びにこれに関しております業者、あるいは国会の関係の方々という方面におきまして十分検討をして進んで参りたいと存じまして、水産に関する打合せ会等を今度開いて現実の問題に即応する行き方をとつて参りたいと思つております。
  273. 石原圓吉

    石原(圓)委員 関係者を集めて会議を開いてとりきめをするということは、非常に私は賛意を表するものであります。その場合には衆参両院の水産に関係する常任委員会の人たちをも、それに参加さすべきであると考えるのでありますが、いかがでありますか。
  274. 草葉隆圓

    草葉政府委員 十分御相談を申し上げたいという予定です。
  275. 石原圓吉

    石原(圓)委員 マツカーサー・ラインは、漁業協定が成立して平和條約の批准交換が済めば、当然自然消滅とは思いまするが、それまでの期間がまだ相当あると見なければならぬのであります。今日マツカーサー・ラインがあるために非常に苦しんでおる漁業者と、困難を感じておる漁業者とあるのでありまするが、このマツカーサー・ラインを協定以前に、批准交換以前に撤廃を求める意思があるかないかということをお伺いいたしておきます。
  276. 草葉隆圓

    草葉政府委員 平和條約の効力発生前にマツカーサー・ラインの撤廃ということは、困難であろうかと存じます。ただ場所によりましてその区域の変更等は、これは御相談申し上げることもできるかと思います。
  277. 石原圓吉

    石原(圓)委員 マツカーサー・ラインが撤廃されてもされなくても、いわゆる東支那海、その他数箇所の漁場は非常に困難を感じます。この問題についてどういう方策をとられるか、たとえば支那海、朝鮮海等この方面に出漁する漁業者の保護と申しまするか、またその水域というようなものに対してどう考えておりますか、この第三條に領水という言葉があります。領水は、私は昔から言うておる領海と心得るのであります。ロシヤはずつと以前から十三海里を自分の国の領海であると主張しております。日本は常識的に三海里をもつて領海と言うております。中共は、日本の海岸まで自分の領海だ、こう言うております。この領海なるものがマツカーサー・ラインを撤廃するせぬにかかわらず、これは世界的な一つの険路であると思うのであります。この問題はこの際、たとえば三海里とか大海里とか、あるいは適当な方法適当な程度で、世界的の全世界の領域をきめる必要がある、そうせなければ平和な安全な漁業はできないと私は考えるのでありまするが、その点に対するお考えはいかがですか。
  278. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはお話のように、領海の距離の問題について国によつて一定しておらないのははなはだ遺憾でありますが、しかし日本が三海里とかりにいたしましても、相手国が十海里という処置をいたしておりまする場合には何らこれを改めさせる方法は現在はとり得ないのであります。ことに東支那海等における問題におきましては、現在むしろ中共はマツカーサー・ラインすらこれを認めないという態度をとつているのではないかと思われる状態であります。従いましてこのような議論をなされると、日本といたしましては、国際法的に従来の慣例としても認められて来た公海というものを全然否定するという中共の態度になつて参りますので、はなはだ遺憾と存じておりますが、こういう問題は、当然世界各国の公正な立場によつて解決される問題であると存じます。
  279. 石原圓吉

    石原(圓)委員 私はこの各国との漁業協定ができる以前において日本の漁業家が外国の漁業家と共同経営をする、そして日本の漁業者が外国人との共同のもとに出漁をするということは大いに考えなければならぬ問題と思いますが、これに対してどうお考えになりますか。
  280. 草葉隆圓

    草葉政府委員 外国にもいろいろありまして漁業の種類によりましては、日本の漁業よりも相当進歩したる特別なやり方をとつておられるところもあるようです。また種類によりましては、むしろ日本の方が進歩しておるような状態の面もあろうと存じます。しかしいずれにいたしましても、したやり方については、あるいは学問的あるいは科学的にこれを十分研究して進めて参ることが最も漁業の発達に資するゆえんだと存じております。
  281. 石原圓吉

    石原(圓)委員 私のただいま申し上げたことは日本の漁業協定を有利に展開せしめるという建前から御参考に申し上げたのでありますから、事件の進展によつて十分お考え願いたいと思います。  その次にお伺いをしたいのは、あくまでも航海の自由ということは原則になつておる。従つてたとえば先刻来問題となりました領海の問題とか、あるいは保護区域の問題とかいうものがありましても、いわゆる航海なるものは絶対自由になるもの、そう心得てよろしいでありましようか。一応念のために承つておきます。
  282. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御所見の通りと考えております。
  283. 石原圓吉

    石原(圓)委員 私は諸外国のうちで最も日本に接近した南朝鮮と申しますか、韓国政府と申しますか、韓国南海岸、東海岸の漁場は日本の漁業者と密接な関係があると思うのであります。また人情的にも、その他従来の因襲的な相互の心理状態はあつても、早く協力して漁業をやりたいという気分は十分あると思うのであります。また朝鮮の漁業者を日本へ連れて来て、日本でやらしてやるということが利益な漁業もあると思うのであります。この朝鮮南岸の漁業及び従来の漁業権と申しますか、日本人にも北朝鮮の利権が相当あると思うのであります。これらは十分親密な話合いによりまして打開の道はあると思うのであります。ぜひともその点に十分の努力希望する次第でありますが、どういうお考えでありますか。
  284. 草葉隆圓

    草葉政府委員 朝鮮沿岸、ことに朝鮮近海におきまする漁場は、従来から同じ日本のうちにありました時代におきましても、最も重要な漁場の一つであつたと思います。そして、その多くは日本人によつてなされておつた漁場であつたと存じます。今後独立いたしました朝鮮の漁業につきましては、お話のように、従来とも日本の漁業家が強い経験と体験を持つておりますから、十分相談し合つて進めて参りたいと存じます。
  285. 石原圓吉

    石原(圓)委員 最近拿捕されるところの漁船が激増して参りまして、非常に脅威を感じておるのであります。これは東支那海が主でありますが、こういうことは中共にも非常な不利益であつて、双方とも利益にはならない問題であります。この問題について、何か暫定的にもこれら拿捕等のないような方法を立てるお考えはないでしようか。また見通しも承つておきたいのであります。
  286. 草葉隆圓

    草葉政府委員 直接私の方の所管ではございませんが、しかしいろいろ関係して参りますので、実は先般来関係各省と連絡を密にしながら進んで参つておるのであります。お話のように、漁船の拿捕というものは平穏に公海において安心をしながら漁撈を営んでおります者にとりましては、一番の脅威であります。従いましてそれぞれ関係各省と十分連絡をとりまして、あるいは監視船を十分にするなり、かような事件の起らないような漁業の状態において漁民の漁撈を守つて行くことが急務であると存じます。
  287. 石原圓吉

    石原(圓)委員 委任統治領となると目されるところの琉球その他の諸島の周囲の漁業並びに漁業基地についてはどのようなお考えを持つているでしようか。特に北海道の歯舞付近はマツカーサー・ラインが陸地へ食い込んでいるために、根室東海岸の漁業者は自分の目の先にながめておつて漁獲ができないという状態であります。これは陸地の問題いかんにかかわらず、世界的な不利益であります。ロシヤも絶対にとりに来ないのであります。またアメリカ委任統治をしている琉球諸島小笠原には漁業をしに来ないのであります。日本もできない。また関係各国も漁業はしない。こういうことになれば、それは貴重な資源を無意味に失うことになります。これは相当の努力を払つて、こういうことがないようにぜひともやつていただかねばならぬと思うのであります。この点いかがでございますか。     〔竹尾委員長代理退席、委員長着席〕
  288. 草葉隆圓

    草葉政府委員 北洋漁業の関係におきまして、千島が主になつておりましたことはお話通りであります。ことに歯舞、色丹におきましては、北海道と本島との距離が三海里そこそこでありますので、その中間をマツカーサー・ラインが行つております関係で漁傍にたいへんな困難を来している次第であります。また南方諸島小笠原その他の方面におきましても、遠洋漁業の墓地としての重大な使命を持つておりましたので、これらが漁業基地として使用できない場合におきましては大影響を来す次第であります。しかしこれらの問題につきましては、幸いに二十九度以南の直接アメリカ関係において行われるところでありますから、今後十分相談をして参りたいと存じております。ただ北洋漁業等におきましては、先ほど来領土委任のときに話がありましたように、なかなか困難な問題があろうと存じます。
  289. 石原圓吉

    石原(圓)委員 最後にお願いと、もう一つお尋ねがあります。私は講和全権が出発されるに先だちまして、漁業協定について水産議員連盟を代表いたしまして、吉田全権に書面を出してあります。この書面の要項は時間の関係上省きまするが、政府においては十分参酌をしていただいて、そうして善処されることを特に望むものであります。また公海の漁業権に対しては平等でなければならぬ、片務的な協約であつてはいかぬということを特に私は要望するものであります。最初から申しまするように、日本の漁業者、いわゆる漁民なるものを政府は相当軽く見ておるということに、漁民全体が不満があるのでありまして、これまで少しも水産委員でわれわれも、どういう内容で今日まで経過をしておるかということがわからないのであります。こういうことでは今後非常な不利益な結果になると私は思うのでありまして、その点はあくまでも強く要望をいたしておきます。いわゆる漁民全体の民間の声を十分に尊重されて、そうして漁業協定に当られんことを希望するものであります。但しカナダ、アメリカからやつて来ても、それだけ押しつけられて先に協定をするということは、絶対反対であります。関係諸国と同時に協定をする。同時にその協定に先だつては、現地調査を相互立会いでするということを強く要望をいたしまして、私の質問を打切ります。
  290. 田中萬逸

    田中委員長 これにて第九條に対する質疑は終了いたしました。  次に第四章第十條を議題に供します。本條につきましては質疑の通告がありません。—ほかに御発言もないようでありますから、次に進みます。  第四章第十一條な議題に供します。佐瀬昌三君。
  291. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 十一條は戦犯関係でもつぱら法務府の所管になつておりますが、法務総裁はお見えにならないので、次の條文を御審議つて法務総裁の御出席次第に十一條の質疑をいたしたいと思いますが、いかがでしよう。
  292. 田中萬逸

    田中委員長 それでは次に移つてよろしゆうございますね。田嶋好文君。
  293. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 十一條につきまして、時間もございませんから、簡單に御質問いたしたいと思います。この十一條によりますと「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し且つ日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」そのあとの部分「これらの拘禁されている者を赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、」と、こうなつております。この「これら」の問題をお聞きするのでございます。実は文章が非常にあいまいになつておりまして、もしこの「これら」という言葉が、前の「日本国で拘禁されている」こういうことを受けた言葉であるといたしますれば、赦免、減刑、仮出獄は、日本国で拘禁されておる戦犯のみこの規定が適用される。ところがこの「これら」というものが極東国際軍事裁判所、連合国戦争犯罪法廷において裁判された国内国外を問わざる、こういうことになりますと、現在国外におりまして戰犯者として処遇されておる人たちに対しましても、この赦免、減刑、仮出獄が日本政府の勧告によつて行われる、こういうことになるわけでございますが、この点を御説明願いたい。
  294. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 第十一條の「これらの」と、いうのは、明文にあります通り日本内地で服役しておる戰犯諸君についてのみ適用があるわけでございます。そうでありますから田嶋委員が御指摘になりますように、この平和條約が実施になりましたあとにおきましても、国外において服役しておりますわが同胞に対しましては、第十一條後段の利益が及ばないという結果になります。この点はこの第十一條につきまして日本政府意向を開陳する機会を得ましたときに、るる陳情いたしてございます。そうして日本国民といたしましては、この平和條約が効力が発生するまでに、内地服役というものが実現いたしますように関係連合国に対して懇請いたしておる次第であります。米国政府といたしましても、その日本側感じはよくわかるという話でございました。
  295. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 これに対しましては、日本政府におきましても、まだ解釈に悩んでいられる節があるのじやないかと私推察されるのであります。しかしきようの御答弁によりまして、この十一條は国内に拘留されておる戦犯者で国外において拘留されておるものが含まれないということになりますと、御説のように、もうこれらの人を日本政府の手によつて救い出すという方法がないのであります。まことに私たちは、国外にいられるところの戦犯者に対しまして考えまするときに、何だか感慨無量のものを感ぜざるを得ないのであります。しかし敗戦の結果、これはやむを得ないのでございますが、先ほど私が申しましたように、解釈上もまだ疑義が残る規定だと思いますので、大いにこの解釈の問題につきましても、関係各国と折衝なさるようにお願いをいたしたいと思います。なおこの国外戦犯者につきまして問題になりますのは、結局各拘置されておる国、それから各裁判をした国によつて、非常に取扱いが異なつております。外国で裁判を受けました者でも、一応日本内地において現在拘禁されておる人もたくさんあります。これらの人は、この規定によつて救われる。たまたま国の状況によつて、収容されておるその国の取扱いによつて、それがいろいろな意味内地に返すことを好まないという特別な事情のために、外国に残つておる人が非常に多いわけであります。この点を十分御了察くださいまして、今後政府の一段の御努力がお願いできますればこの上ないことと思います。  以上で私の質問を終ります。
  296. 田中萬逸

    田中委員長 これにて第十一條に対する質疑は終了いたしました。  第四章第十二條及び第十三條を議題に供します。この両條につきましては質疑の通告がありません。別に御発言もないようですから、次に進みます。(発言する者あり)共産党の持ち時間はありません。  第五章第十四條を議題に供します。菊池義郎君。
  297. 菊池義郎

    菊池委員 政府日本の賠償について金銭賠償も生産品賠償も出さないで……。    (発言する者多し)
  298. 田中萬逸

    田中委員長 静粛に。
  299. 菊池義郎

    菊池委員 役務賠償のみに限定できるような御答弁をされておるのでありまするが、十四條の(a)の1によりますると、連合国希望するならば、生産や沈んだ船の引揚げその他の作業において、日本人の役務を当該国の利用に供することができる云々ということは書いてございまするが、これはきわめてあいまいな文章でありまして、もし先方希望しないならば、役務以外の方法によつて先方の請求通りに縛られなければならないというように解釈されるのであります。これについてどういう御見解を持つておられまするか、お伺いいたしたい。どういうわけでもつとはつきりした文章を受諾されなかつたか、その事情についてお伺いいたしたいと思います。
  300. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御指摘の役務は、原文にあります通り生産、沈船引揚げその他の作業における役務でございまして、役務賠償以外の賠償方式は、十四條の(a)の1は予見いたしていないのでございます。
  301. 菊池義郎

    菊池委員 ただいま申しましたように、希望するならばというようなことは書いておりますので、希望しなければ、向うの請求通りにその他の賠償を出さなければならぬかどうか、この点について……。
  302. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういう解釈はどこからも生れて参りません。
  303. 菊池義郎

    菊池委員 これは裏返ししますとそういう解釈ができるのでありますが、これは必ずできます。
  304. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 希望しなければ賠償をしないのであります。
  305. 菊池義郎

    菊池委員 賠償しなくて済むという文章はどこにもないのであります。つまり日本経済は完全な賠償を行い、かつ同時に他の債務を履行するためには、現在不十分であることが承認されるというだけのことでありまして、不十分ということは、賠償しないという意味に解することはできないのでありますが、どうでありましようか。
  306. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういうふうな解釈はどうしても生れません。
  307. 菊池義郎

    菊池委員 いや、私はどうしてもそういうように解釈ができると思うのであります。見解の相違でありますから、しかたがありませんか。  それから生産や沈船の引揚げその他の作業といいますると、いろいろな作業を包含すると見なければならぬのでありまするが、最近日本の南方からの引揚げ軍人、あるいは南方に対する移民の希望者あたりの間に、盛んに移民賠償にしてくれという声がある。つまり移民を賠償の対象にするというのではなく、移民による役務の賠償、未開発地の農耕開発によるところの賠償方法、これをひとつやつてもらいたいという意向があるのでありますが、そういうこともこの文章の規定の中には含まれていいものでありましようか、どうでしようか。向うが希望すれば……。
  308. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは一切この條約の規定に従いまして、この十四條(a)の1に規定されておるわくの中で両当事国間の話合いできまるわけであります。
  309. 菊池義郎

    菊池委員 わかりました。これで質問を終ります。なお時間を制愛いたします。
  310. 田中萬逸

    田中委員長 若林義孝君。
  311. 若林義孝

    ○若林委員 特に在外資産のことに関連いたしまして、各同僚委員から熱心な質疑がありまして、また非常に御熱心にこれに答うる御答弁があつたのでありますが、二、三簡單でございますがお尋ねいたしますから、要点を明確にしていただきたいと思うのであります。連合国にあります日本財産の現在までの処理状況が、外務省におわかりでございましようか、それをひとつ……。
  312. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 何分戰争中、また戰後も直接の関係が断絶いたしました関係上、詳細な事情はわかりかねておりますが、比較的よくわかつておりますのは、米国における処理状況程度のものであります。
  313. 若林義孝

    ○若林委員 もし在外資産にいたしまして、私有財産を尊重するという意思があり、また中立国その他にございます財産を正常な形において日本に返還して来た場合には、日本政府においてその財産はいかように処理せられるおつもりでありますか。
  314. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御指摘のような事態は、政府政府関係においては生じないのでございまして、條約の規定によりますれば、連合国の領域内にある日本財産の清算は、その当該連合国の国内法に従つて行う、こういうことになつておりますので、実際は先方の国内法によつて処理される、こういうことになつております。当該連合国対問題の私有財産の所有者である日本人との関係、こういうことになつて来ると思うのであります。
  315. 若林義孝

    ○若林委員 ではその場合は厳然として私有財産は、その所有者である個人に返還されると解釈してさしつかえはございませんか。
  316. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 十四條の(a)の2の(ii)に、五個の例外が規定してあります。この例外に該当する場合には留置、清算されないことになつておりますので、その場合は当該連合国の国内法に従つて還付する。還付する場合には、管理に要した費用は差引いて還付する。その他当該の規定があるわけであります。それとは別に、いわゆる事実戰争によつて何ら被害を受けなかつたような連合国におきましては、特にその国の領域内にある日本の私有財産を留置、清算する権利は持ちましても、清算する必要というものがない場合が多いと思いますので、私どもとしては自発的措置として條約によつて得ておる権利を行使しない、具体的に言えば、日本人の財産所有権を認めてくれることがあり得るであろう。将来またそういう方向に持つて行くように外交関係や領事関係が再開された場合には努力すべきものであろうというふうに考えております。
  317. 若林義孝

    ○若林委員 そこで賠償というものは、今度賠償の引当てとして私有財産の連合国なり中立国にあるものが、その性質のいかんを問わず接収を受けておるのでありまして、返還をされないのでありますが、これは私有財産の尊重、いわゆる人権尊重の面から言つて、あくまでも連合国としては、日本に賠償の能力があるとするならば、私有財産その他の接収、没収なくしてとるべきだ、こう考えるのでありますが、本質的に考えまして、この私有財産を没収し接収をしてしまつたということは、便宜的のものと解釈してさしつかえはないのですか。
  318. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は昨日も詳しく御説明した点でございます。十九世紀末ないし二十世紀初頭の戦争におきましては、へーグ陸戦法規にありますような私有財産尊重の原則というものを決定し得たわけでございます。第一次世界大戦、また今度の戦争のような大規模の徹底的破壊を伴う戦争におきましては、戰勝国が戰敗国から賠償をとろうという場合に、ほとんど戦敗国に賠償能力がないといえる状態でございます。従つて第二次世界大戦後におきましては、対日基本政策におきましても、日本の領域として残される地域以外にある日本財産と、それから日本にある施設の撤去、この二つをもつて賠償に充てるという政策がいち早く決定されたような次第でございます。第一次世界大戰後のヴエルサイユ條約におきましても、やはりドイツの在外資産というものは賠償に充当されました。ですから一九一四年の第一次世界大戰以来、戰争における私有財産権尊重という原則は大きな変化を受けつつあるわけでございます。ヴエルサイユ條約なり、四七年にできましたイタリアその他の五つの平和條約におきましては、戰勝国の方は戦敗国政府に、処分された在外資産に対する補償義務を課することによつて、辛うじて良心的に私有財産権尊重の原則を貫いたという法律上の立場をとつたわけであります。ところがこの前の戰争の結果を見ましても、補償義務を條約上とつたドイツも、ほとんど補償の実をあげておりません。四七年のイタリア平和條約においてもやはりその規定はございます。それに応ずる国内法もイタリアは幾分制定されているようでありますがその国内法によつて補償が現実に行われたという情報をまだわれわれは持つておりません。今度の会談におきましては、いわゆる戰勝国の建前が、條約はできるだけ簡単な文書にしておいて必要最小限の規定を置き、それ以外のものは全部独立国としての日本の最善と思う処分をすることに期待するという建前で来たわけでございますのでごらんの通り第十四條(a)の2の規定連合国の方で賠償に引当てることができるという規定だけ入つた次第でございます。
  319. 若林義孝

    ○若林委員 それではイタリアの場合補償義務が明記されて、今日の條約にはそれは明記されておりませんが、これは日本の自主性を強く認めて湘るという御説明が前にあつたのでありますが、やはり日本の自主性においてこれが処理さるべきものであるから明記されていないと解釈してさしつかえないのですか。
  320. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その問題の解決はあげて日本の自主的解決にまかされている次第でございます。
  321. 若林義孝

    ○若林委員 日本政府といたしましては、大蔵大臣の先日来の御説明の中に、現在の状況において補償はよく考慮する、また草葉政務次官からもよく考慮すべきである、それから周東安本長官からも、その表現はきわめて愼重に、在外にあつた人たちに対する遺憾の意を込めての御答弁があつたのでありますが、政府といたしまして、将来財政的に力を持つて来た場合は考慮せられるお考えでありましようか。
  322. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この條文にありまするように、現在日本は賠償の支払いに困難を生じております状態であります。従つて私有財産に対しましても、できるならば十分ないわゆる支払い補償をするのが最もいいことでありますが、先ほどもお話がありましたように、近代戰では今まで戰争犠牲者に対しては相当な犠牲を払わせておるのでございます。従いまして国全体の立場から十分検討して、最も妥当な方法を発見する以外にはないと存じております。
  323. 若林義孝

    ○若林委員 賠償という意味は、国内の資源あるいは財政力、経済力を国外に出すということでございますが、国内における補償ということについては、経済の自立、国力という点に影響はさほどないように思うのでありますが、国内においての補償はどういうふうにお考えですか。それからなお公債という形式でこれを補償するということは御考慮になれないものか、伺つておきたい。
  324. 石原周夫

    石原政府委員 事務当局としてお答えをいたしますが、非常に大きい問題でございますので、ごく概要を申し上げます。  最初に国内の補償の問題であるから、経済力の点から見て大したことがないではないかというお尋ねでございますが、この補償という問題を財政を通じてやりまする場合におきましては、非常に大きな財政負担がかけられまするので、国内の補償の面におきましても、財政上非常に大きな問題になるのであります。  それから後にお述べになりました公債というお話でございますが、これは大臣からもお答えがありましたように、補償それ自身が非常に重大な研究を要する問題でありますので、補償の場合の手段として公債がどうかということにつきましても、今簡單にお答えできないのであります。
  325. 若林義孝

    ○若林委員 私はこの問題につきましては、政府のおとりになる処置は、とにかく国内的に及ぼす影響は大きなものがあると思うのであります。「日本国の法制によつて作られはじめた安定及び福祉の條件を日本国内に創造するために努力し」云々ということが前文にうたわれておりますが、これはこの点ばかりではございませんで、遺家族その他の問題、あるいは国内におきまして戰災にかかり財産をなくした者など、相当問題が起つて来ると思う中に、特に明確にこれが数字的に現われるという問題であります。従つてその処理を一歩あやまるならば、前文に掲げてあります国連憲章その他日本の世界に対する信用にも影響があると考えますので、政府として十分誠意を持つて処理せられるよう切望いたしたいと考えます。これで大体この條項に関します私の質疑を終りたいと思います。
  326. 田中萬逸

    田中委員長 林百郎君。
  327. 林百郎

    ○林(百)委員 時間に制限があるそうですから、一言だけお伺いいたします。  第十四條の(a)項の1でありますが、この役務賠償については、この役務の代価はやはり日本政府の財政的な負担になるのかどうか。この役務賠償がもし具体的に行われるとすれば、国内的にはどういう形で行われるのか。たとえば政府から日本の民間の産業家に発注がなされまして、それからその相手方の賠償請求国の要求するような形の役務を行いまして、その日本の民間産業家に払うべき負担は国家の財政の負担にするという形で行うのか、その点を聞いておきたいと思うのであります。これが第一点であります。  それから第二は、第十四條の初項でありますが、この「直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。」とありますが、イロア・フアンド、ガリオア・フアンドの援助資金はどうなるのか、これがこの條文の解釈だけでいいますと、この援助資金は債務になるというように考えられるのであります。しかもダレス氏の声明によりますと、これは最も優先的な債務だというようにいわれておると思うのであります。これは御承知通りイタリアでは、この両援助資金が債務でないということで、返済の必要がないということになつておるのでありますが、日本だけはこれが債務で、しかも最優先的な債務だといわれているようであります。そうなるとこれは一体いつどういう形で支払うのか。またアメリカの方の意向はこの点に対してどういうのか、最優先的な債務だとはいいながら、アメリカの方としてはどういう形でこれを将来請求しようとしておるのか。あるいはまたイタリアのように、これを日本に全然与えて、もう請求しないというのか、その辺の二点だけを十四條について聞いておきたいと思うのであります。
  328. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 第一点の御質問は、役務賠償が関係両国間の間に協定として成立した場合に、その実施として政府が役務提供の任に当り、民間会社がその下請の形をとるのか。それともとりきめによつて、役務賠償を受ける連合国が、直接日本の会社に注文を出すという形式をとるであろうかという点が一つつたと思います。その点はこれから第十四條(a)の1によりまして交渉してでき上ります協定の中に規定されるべき最も重要な事項の一つであろうと考えております。それから日本が賠償協定によつて提供する役務に対しては、政府が負担をするか、要するに政府が発行する円価をもつて払うか、こういう御質問の点でありますが、その点は原則として日本政府が払う。だからそこにいわゆる役務賠償の賠償たる意味が生じて来る、こう思います。従つてそういう生産の裏づけのない円価が日本経済に及ぼす影響いかん、通貨制度に及ぼす影響いかんという点がきわめて重要な、忘れてはならない点だ、こう考える次第であります。  質問の第二は御指摘の通り、終戦以来日本合衆国から受けておりますガリオア、イロアでございますが、あの債務が日本政府の対米債務として存続するという意味を持つております。ではその債務の支払いが賠償に優先すべきものであるということは、一九四七年だと記憶いたしておりますが、極東委員会の対日政策の賠償の部に明文で書いてあるわけでございます。極東委員会の決定からそうなつて来ます。具体的にいついかなる方法によつてこの二十億ドルに達する債務を弁済すべきかということは、日本にとつてはきわめて重要な問題でございまして、関係政府当局においては愼重に御考究中のことであろうと思います。
  329. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました最後に、今日本に駐屯しているアメリカの軍隊が使つているPD工場あるいはLR工場、直接軍の管理している工場があるのでありますが、こういう今軍が直接使つている工場、たとえば前の陸軍工廠あるいは海軍工廠などもLR工場としてアメリカ軍が使つておるようであります。こういうものは講和後はどういう管理に移されるか、やはり一応賠償としてとられるか、あるいはこれは行政とりきめによつて適当な取引関係でこの代償が決定されるのか、今日本に駐屯しておる軍隊が面接管理しておる工場の処置、これが一つ。それからもう一つ、先ほどの役務賠償の点で、これが国家の財政負担になる、物資の裏づけのない日本の円が発行されることについては、日本の財政に及ぼす影響が非常に重要だという点、おそらくそういうこともあつて、ここで一応「存立可能な経済を維持すべきものとすれば、」云々というようなことが出て来たと思いますが、サンフランシスコにおけるフイリピン代表の演説によりますと、これがあると実質的には賠償がとれないことになるので、こういう規定にかかわらず、相当強硬な賠償の請求の意見を特にフイリピン代表などがしておるようでありますが、この点将来役務賠償を請求して来ると考えられるフイリピンあるいはインドシナ、そのほかの国が、この存立可能な経済を維持するものとすれば、現在賠償能力はないということを了解される可能性があるかどうか、その点を最後に聞いておきたいと思うのであります。
  330. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 第一点の御質問の事項でございます、実情を詳しく存じませんので、私から答弁をすることはあるいは不正確な結果になりはしないかと思います。しかしこの第十四條によりますと、施設賠償というものは全然予見されておりませんので、現在進駐軍によつて直接運営されている工場が賠償に充当されるというようなことは考えられないところでございます。平和條効力発生後、しからば現在行われているような工場の運営がいかになるかということは、あるいは行政とりきめとの関連において問題になることもあるかと存じますが、ちよつと私には見当がつかない問題でございます。  フイリピン代表がサンフランシスコ会議で第十四條1の規定は全然不満である。何となれば同條約は役務賠償だけを認めておる。フイリピンとしてはどうしても役務賠償以外の方式による賠償を要求する権利を留保するという趣旨の演説をいたしておることは、すなわちフイリピン政府におきましては、平和條約の第十四條による役務賠償以外の方式が認められれば、日本の存立可能な経済も不可能になるという関係であることを十分承知した上で、この規定が不満だからとの理由で自国の立場を留保したわけでございます。日本政府としましては、吉田全権の演説にも言われましたように、平和條約を受諾した以上は、この第十四條の規定の範囲において誠意を盡して賠償の義務を履行する、こういうことを明らかにされた次第であります。もちろん吉田総理としては、明確に演説をなさいましたし、またサンフランシスコにおきますロムロ全権代表との会談におきましても、その点ははつきり申しておられるようであります。日本政府は、経済事態はきわめて困難であるけれども、條約を受諾した以上は、條約の規定の範囲内において誠実にこれを履行する覚悟である、この点を厳格に明らかに説明しておいででございます。
  331. 田中萬逸

    田中委員長 これにて第十四條に対する質疑は終了いたしました。  次に第五章第十五條より第十八條までを議題に供します。  この各條につきましては、質疑の通告がありません。ほかに御発言もないようでありますから次に進みます。  第五章第十九條を議題に供します。西村直己君。
  332. 西村直己

    西村(直)委員 時間がございませんから、十九條の(d)項を中心に要点だけ二、三簡単に御質問申し上げます。  第十九條は、趣旨としましては、一口に申しますれば、占領中に占領当局の指令、または日本の法令によつて行われた作為とか不作為の行為の合法性を認めて、連合国民の刑事責任、民事責任を問わないということだと思うのですが、これに関連しまして、占領中に占領軍の権威並びに占領政策の結果として出ました覚書、あるいは指令その他、これに基くポツダム政令等のいわゆる占領諸法規の効力についてであります。これは平和條約発効の日まで有効であることはもちろん疑いないのでありますが、この條約発効の日以後において、従来の一切のこういうものは将来に向つてどうなるか。これにつきまして法務総裁がおられなければ、條約局長からでも代弁をお願いいたします。
  333. 林修三

    ○林政府委員 お答えいたします。御質問の占領中におきまして占領軍当局から発せられました覚書等につきましては、平和條約の発効とともに当然効力を失うものと考えております。しかしながら、その覚書に基きまして国内立法といたしまして制定せられましたわれわれのポツダム命令につきましては、これは学説上議論のあるところではございますが、政府といたしましては、当然には効力を失わないものと考えております。そのポツダム命令の平和條約発効後の措置につきましては、その内容におきまして、平和條約の発効に偉いましてあるいは廃止を要するものもございましよう。また改正を要するものもございますので、これに関する法律案を準備いたしまして、その処置を決定いたしたい、かように考える次第であります。
  334. 西村直己

    西村(直)委員 このポツダム勅令を中心にしましたものに対しましては、国内でも意見がわかれておるようでありますが、政府といたしましては、当然には効力を失わないとおつしやられましたが、その根拠について御説明を承りたいと思います。
  335. 林修三

    ○林政府委員 お答えいたします。ポツダム命令は御承知のように昭和二十年勅令第五百四十二号と申します緊急勅令に基いて制定せられておるものでございます。この緊急勅令は当時旧憲法に基きまして制定せられた勅令でございましてその後の帝国議会におきまして事後承認を得まして、国内法としての効力を持つておるわけでございますが、この法律としての効力を持つ緊急勅令に基いて国内立法として制定せられた命令は、国内法としての効力を持つておるので、平和條約の発効とともに当然に効力を失うものとは考えておらないわけであります。
  336. 西村直己

    西村(直)委員 その御解釈も一つの御解釈であると思うのでありますが、さらに論を進めまして、占領諸法規の改廃ないしは調整につきましては、昨日のニユーヨークの新聞にも、ダレス氏と一緒に講和條約に参画しましたアリソン公使の意見が出ております。すなわち、日本政府日本国民は、これら諾法規の精神と真の目的とを愼重に検討すべきである、日本の近隣諸国は、占領の束縛から離れた日本がどうなるかについて、この占領法規改廃について関心を持つておる、こういう趣旨のことが出ておりました。すなわち占領諸法規あるいはポツ勅関係の諸法規を改廃あるいは調整することは国際的にも関心がある。また平和條約の前文に瞬きましてもその趣旨のことが述べられてありまして「降伏後の日本国の法制によつて作られはじめた安定及び福祉の條件を日本国内に創造するために努力し」というこの趣旨は、もちろんわれわれは受取らぬのでありますが、問題は、占領下におきましては占領目的、占領の権威から来るところの、憲法の法原と同時にポツダム勅令系統の法原があるのでありまして、この二つの法原によつて日本国民は生活をいたしておつたと思うのであります。しかしながら一面考えますと、日本国民の立場からは、主権が回復いたしますと同時に考えねばなりませんのは、国民の実生活というものを考えて行かなければならぬと同時に、国民主権、自主というものを考えます場合におきましては、このポツ勅につきましては、国際信義を考えながら、同時に一面国民の生活の実情、憲法の精神というものを十分にくんで行かなければ、いわゆる対等国としての立場はとれない、また国民の感情もこれにマツチして来ないと思うのであります。そこでこの改廃の手続でありますが、改廃の手続は一本の法令でなさる場合が多いのでありましようか。それとも個々の法令についてそれぞれ国会の審議を経ておやりになるお考えでありましようか。この点を法務総裁にかわつて林さんからはつきり御答弁いただきたいと思います。
  337. 林修三

    ○林政府委員 ただいまのところ政府側といたしましては、御承知のようにポツダム命令は現在効力を持つておりますものは百数十件ございます。この中には、ただいまお話もございましたが、占領の終止とともに当然に廃止すべきところのものも相当ございます。またかりにその効力を存続させるといたしましても、そのままでは適当でない、何らかの改正を施す必要のあるものもございます。また大体の内容から申しまして、平和條約後においても、そのまま国内立法として継続させて参りましてさしつかえのないものもございます。大体こういう三つの範疇にわかれることだと思うのでありますが、これにつきまして、ただいまのところ一応の考えといたしましては、廃止または改正を要するものにつきましては、大体におきまして各省ともに、あるいは各省各部、ことに大体まとめまして、改正または廃止の手続を生りたい、かように考えております。そのほかに、ただそのまま存続させてもいいものがあるわけでありますが、これにつきましては、一応ただいま考えておりますところでは、昭和二十年勅令第五百四十二号、これは当然廃止いたさなければなりませんが、これを廃止いたします法律におきまして、その他の法律によつて改廃されないものについては、将来も効力を持つている、こういう念のための規定衣設けることが至当ではないか、かように考えて今準備いたしておる次第でございます。
  338. 西村直己

    西村(直)委員 大体三段階にわけるという趣旨はわかりますが、ただ問題は、平和條約の前文にも、單に占領政策下に行われた法制を引継ぐのではなくして、創造しという言葉使つております。言いかえればクリエートするという言葉使つておりますので、私は法原の違つた占領諸法規から来るものにつきましては、やはり相当国会において審議する、もちろん占領から独立に引継ぐには円滑に行かなければなりませんけれども、同時に、国会の審議権というものについては、相当尊重されるように政府に望みたいのであります。  次にさらに問題を進めまして、最も大きい問題として、一つ公職追放の問題がございますが、公職追放は占領政策のもとにおいては、われわれは納得できる制度でありますが、さらに一歩を進めて、独立後においてこれについていかなる扱いをされる御方針でありましようか。官房長官に御意見を承りたいのであります。
  339. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 公職追放については、大まかに申しますと二種類あるわけであります。一つは、終戰までの期間において、戦争に国民をかり立てたような人々を追放しておる。及び終戦後におきまして民主主義もしくは憲法のもとにおける政府を転覆しようというような考えを持つている人々を追放する、こういう二種類になつておると思います。そこで、これは考えようでありますが、初めの方の種類のものは、戦争が終りまして相当期問たつた場合にはあるいは必要がなくなるかもしれぬと思つております。というのは、要するに、一つは責任の問題でありますが、これも人々の行為によりまして責任の軽重もあるわけであります。現に責任の軽いと思われる人は、すでに追放解除の措置をとられておるわけであります。そこで、今後永久にそういう制度を残して置くかどうかということは、多少の疑問があると思います。なるべくならば早い機会にそういうものを改めたいと思つておりますが、しかし同時に、ポツダム宣言を受諾した日本としましては、その宣言の初めに書いてあるように、日本をあやまつて軍国主義に導いたものは永久に追放せらるべきというような文字がありまして、独立したから全部御破算だということもいかがかと考えております。しかし傾向としては、だんだんそういう人は少くなつて、しまいにはなくなる、こういうふうに思つております。他方、ようやくにして基盤をつくりましたわが国の民主主義を守るために、これを転覆しようというような考えの人を国民の税金でまかなつておる、公職につけて置くというのは矛盾であります。この方は、将来ともやはりこういう制度が必要ではないかというふうに考えております。
  340. 西村直己

    西村(直)委員 この問題はいずれ他の機会において論議せられるところであると思うのですが、政府におかれましては、基本的人権の問題とも関連がございますから、慎重に御考慮願いたいということで打切りまして、さらに関連いたしまして、橋本行政管理庁長官がお見えになつておりますので、橋本行政管理庁長官に、お尋ねいたしたいと思います。  占領下におきましては、占領諸法規あるいは覚書、ないしは勧告等により、日本を民主化し、行政を民主化する意味で相当複雑な行政機構ができておることは多くの国会議員の方も御同感であろうと思うのであります。実は日本の今の民主化は、占領下の経緯並びに占領政策によりまして、多少与えられたる民主主義の形をもつている。それを今の平和條約の前文では言いかえれば創造しろと書いてある、クリエートしろと書いてあるのであります。この趣旨から申しましても、占領下における行政機構と占領解除後の行政機構とはおのずからそこに多少観点がかわつて参らねばならぬと思います。いわんや国民の負担というようなもの、生活の実情というものを考えた場合において、この点大いに考慮しなければならぬ。先般新聞の報ずるところによれば、行政機構の改革においては相当減員をするように報道をされておるのでありますが、この間における行政管理庁長官としての御所見を承りたいのであります。
  341. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 ただいまの御質問お答えをいたします。行政機構の改革は考えて実行するつもりでありまして、準備を着々いたしております。ただ臨時国会は会期が短かいことでもございまするし、愼重に考慮を要することがございまするので、今日この会期の短かい臨時国会に出すことは不適当であると考えまして、もう少し研究を続けたいと思つております。なおその内容に関してでございますが、民主主義的な行政機構を、今後もますます維持し発展させて行きたいという基本方針は少しもかわつておりません。ただ占領下におきましては、ガリオアその他でささえられておりましたために、日本の今日の実情から申しまするならば、財政その他の観点をあまり考慮しない、日本から見ると、比較的ぜいたくな機構ができておるものもあると思います。民主主義的な制度を安上り的にやるという観点から見ても、見直すことはやりたいと考えております。なおまた占領直後の施策といたしましては、日本の軍国主義の復活ということをおそれますあまり、力の結集というようなことはなるべく避けたいという部面から行われた諸般の機構的改革がありますが、こういう面につきましては、むしろもう一度見直した方が、いいという趣旨は連合国の側にもあるかと思います。リツジウエイ総司令官の声明におきましても、そういう部面を検討するということは適当であると言つております。ただこの点について世上いろいろ疑惑がございますので私どもはあくまでもそういつた意味での行き過ぎをもう一度見直して見るということと、もう一つは、民主主義はなるべく金を使わないということで実行したいと考えております。それ以上のことは考えておりません。なお御参考に申し上げますが、行政機構の中で、ほんとうに連合軍総司令部のメモランダムのような非常にきつい指令でできたものはごくわずかでございまして、いろいろな勧告、勧奨といつたような過程を経てできた機構がかなり数多くあるという実情を申し上げておきます。
  342. 田中萬逸

    田中委員長 これにて第十九條に対する質疑は終了いたしました。  第五章第二十條より第七章第二十七條までの各條及び議定書並びに宣言を一括して議題に供します。  これらにつきましては質疑の通告がありません。—別に御発言もなければ、これにて平和條約及び議定書並びに宣言に対する逐條の質疑は終了いたしました。  明二十三日は午前十時より開会いたしまして、安全保障條約に対する逐條審査に入ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十一分散会