○
小川原
委員 ただいまもお話がございまして、それで一かどのわれわれの心配が、
住民に対してはなく
なつたのでありますが、次にお尋ね申し上げることは、この千島というものをさように
連合国が認めており、また
吉田総理も、ただいまのお話のように演説をなさいまして、その演説に対してグロムイコ
全権からも演説がありましたが、そのときに、この島の問題を話されまして、
自分はどうしても承服いたしかねる、こういう言葉で
日本のものであるという主張をされておるのであります。まことに私はけつこうだ、こう
考えるのであります。しかしこの問題につきましては、これだけにいたしまして、ただ
委員長にお願いしておかなければならぬことは、将来これが—
今はこうして放棄されるでありましよう。またいたさなければならぬ
状態に
なつたでありましよう。
世界の人
たちまたよく知
つてくれるでありましよう。しかしながらこの島は
日本が
武力によ
つて得たものでなく、
日本が孜々常々としてこれを得たのである。今までの歴史的な状況から見まして、
ソ連人がおつたのではない、またロシヤ人がおつたのではない、アレウト人もおつたのではない、ある時代にはアレウト人も生産的に連れて参つたのでありますけれ
ども、彼らは
自分が住むことができないというので、みな引揚げてしまつた。あとはみなアイヌによ
つて生活をしておりましたが、ロシヤ人はその後に参りまして、非常な苛斂誅求を加えたのであります。というのは何であるかというと、男一人に対して皮を何枚とる、こういうようなことになりまして、それがだんだんと徴税が安くなりまして、男一人に皮一枚というようなことにな
つていますけれ
ども、だんだんと彼らは恐れをなして、そうして無人島にな
つてしまつたのであります。無人島になりましたが、あとから入
つて来た人
たちが見ると、
日本の刀であるとか、
日本の什器であるとか、日用品がある。それから占守島に移
つて、そうしてこれがカムチヤツカと交易をしておつたという事実もあるのであります。それならばロシヤの工芸品があつたかと調べてみると、そういう工芸品は全然この三十二の島の中からは出て来ないのであります。そういう昔からまつたく自然に国土をなしておつたところのこの両島が、しかも方里で申しますと一千方里くらいである。そうして広い大した海域を持
つております。その海域からわれわれ人口八千万人が
一つも漁獲をすることもできなければ、あるいはそこに移住することもできないということになりますと、これは
平和條約ではありますけれ
ども、二面からながめると、
日本の人口というものを圧迫してしまつた、こういうことに相なるのでありまして、これは非常な重大な問題であるといわれわれは
考えるのでありますが、こういう点からいたしまして、今後長い年の間には—一年とか二年とかそういう気短かいことは申しません、長い時間の間におきましては、適当な機会はたくさんあろうと思う。そのときは
政府におかれましてはひ
とつ一層の
努力を払われ、われわれ
国会議員もまた
国民の代表者となりまして、これが復帰することには
努力を惜しみませんけれ
ども、
政府はことに情報
機関を持
つておられるので、その機微をよく知ることができるのでありますから、ひ
とつこれは記録に載せておいていただいて、そうして
国民の満足の行くように、
世界の平和を確立して行く上におきまして、特段のひ
とつ御心配を願いたいことを、ここにつけ加えて申し上げておくのであります。
そこで歯舞の問題であります。歯舞はもう問題が盡きておると思うております。ダレス顧問によりましても、これは
日本の
領土である、こういうことでありますし、まだ先ほど申しました
通り、
吉田全権も承服いたしかねるとあるのでありますけれ
ども、これが現実から見ますると、そう行かぬのであります。ここに漁業をしておる者は、何かの
関係からひつぱられて行くのであります。海の中に線をこさえて、この動揺するはげしい北の海に、これからこつちへ入つた者はつかまえるんだ、一体何のことでありましよう。人道から見て、一体こういうことはしなければならぬことでありましようか、私
どもの常識から
考えるならば、はなはだけしからぬと思います。この陸地にあ
つてさえも、ここからは
といつて線を入れたならどうなる、馬が入
つてくれば越える。海の動揺の中に線を画して、これから入つちやいかぬ、何のことでありましよう。
世界が真に平和であるならば、人間の基本人権というものを尊重する上において、何がどつちに一里流れようが、こつちに三マイル流れようが、問題じやないと思うのです。それをつかまえて行かれてぎゆうぎゆう言わされる、こういうことは私
ども世界の平和を欲求するところの人類のすることではない。私はかように信じておるものであります。どうかこういう点もひ
とつお
考えを願いまして、この問題はすみやかに—
日本の
領土である、クリル・アイランドではないということがわか
つておるのでありますから、明日からでも、安心をして、まくらを高くして、
住民が暮し向きのできるように、ひ
とつ特段の御配慮をお願いいたしたい、かように
考えます。(「
吉田反共
政府だからできないのだ、民主的な
政府ならちやんとできる」と呼ぶ者あり)それでは私は申し上げる。私はそういうことを言いたくないのでありますけれ
ども、私
どもがこの條約に判を押すということは何のためでありましよう。私
どもはこれは一応記録に残しておいてもらいたいと思う。
委員長、一応申し上げておきたいので時間を許していただきたい。それはこうであります。往年われわれは
ソ連と不可侵條約を結びました。この不可侵條約を結んだということは、いい、悪いということは別問題でありますけれ
ども、私
どもは不可侵條約は、信頼という一念からしてやつたのであります。そうして
ソ連がドイツから襲われたときには、われわれはこれを助けたのであります。何で助けるかというと、信頼しなければならない、條約というものは空文でおるといえばそれまでだ、文字の問題だ、けれ
ども日本人はそういう不信なことはしない、今度の條約においても信頼感というものはそこにあつたと思う。それなのに、
日本が刀が折れてしま
つて、どうぞ降伏をお願いする
といつて、地獄に仏で
ソ連にお願いしたのです。われわれは
ソ連を決して敵としておりません。
ソ連なら救
つてくれると思つた。それに何でありましよう、そのときにやいばを取直した、われわれはやいばを捨ててしまつた、それに鉄砲をさしつけた。こういうことではわれわれはまくらを高くして夢を見ることはできない。人権蹂躙した。われわれはここに信念を持
つておる。いかように宣伝しようと、この事実を何とする。しつかりこれは記録に残しておかなければならぬ、こういう
状態である。われわれのかわいい子供がたくさん捕虜にな
つておる。それがいかような苦しみを受けておるか、ひ
とつも報告がないじやないか、国際公法はそんなことは許しておらぬ、まつたく国際公法を無視しておる。われわれは今も
ソ連と握手するにやぶさかでない、けれ
ども事実が違う。
日本はここに武器を持
つておらぬ、兵隊がない、それは
憲法が許さぬからわれわれは持ちませんが、そういうことがあつたとするならば、いつ何時どんなことをされるかもわからぬ。私ら北海道人は戦々競々としておる。こういう事実を見のがすことはできない。こういうことであるから……(「マツカーサー・ラインじやないか、マツカーサーがきめたのじやないか」と呼ぶ者あり)マツカーサー元帥がきめたと言うけれ
ども、ラインの名前はそうであろうが、それは列国がきめたのであ
つて、
ソ連なんか、ことにそれに参加いたしておる。もしマツカーサーがきめたならば
ソ連がほんとうに
日本を信頼するならば、私の国はそんな線はいりませんとなぜ言わぬ。しかし
アメリカは民主国家であ
つて、われわれに対する態度は民主的であるからわれわれは賛成した。
ソ連は何と言おうとも非民主的であるからわれわれは
反対する。口ばかりが民主的であ
つて、事実はまつたくそうでない。その証拠があつたならば林君言いたまえ。これだけを記録に残しておきます。この程度におきまして私の
質問は終ります。