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1951-11-01 第12回国会 衆議院 文部委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月一日(木曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 長野 長廣君    理事 岡延右エ門君 理事 佐藤 重遠君    理事 若林 義孝君 理事 小林 信一君    理事 松本 七郎君       柏原 義則君    甲木  保君       坂田 道太君    高木  章君       笹森 順造君    志賀健次郎君       渡部 義通君    浦口 鉄男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 天野 貞祐君  出席政府委員         地方財政委員会         事務局長    荻田  保君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     寺中 作雄君  委員外出席者         文部事務官         (初等中等教育         局長)     辻田  力君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (管理局教育施         設部施設課長) 佐藤  薫君         專  門  員 石井つとむ君        專  門  員 横田重左衛門君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  学校給食に関し説明聽取の件  昭和二十六年度文部省関係補正予算に関する説  明聽取の件     ―――――――――――――
  2. 長野長廣

    長野委員長 これより会議を開きます。  昨日に引続き、昭和二十六年度文部省関係補正に関して質案許します。本日は東條大蔵省主計局次長荻田地方財政委員会事務局長もお見えになることになつております。
  3. 浦口鉄男

    浦口委員 佐藤施設課長がおいでになつておりますので、ひとつお尋ねしておきたいと思います。  実は昨日も他の委員から質問が出ておりましたし、これはいつまでも問題になることでありますが、東北北海道等寒冷地帶屋内体操場の問題であります。文部省として、これらの予算をお立てになるときに、小学校の〇・七坪平均との関連を、どういうふうな趣旨基礎をもつて屋内体操場の方を立案されているか、その点を一応伺つておきたいと思うのであります。     〔委員長退席、岡(延)委員長代理着席〕 きのうは大蔵当局東條主計局次長からも、大蔵省立場として御説明願つたのでありますが、いま一度文部省としての立案の基準と申しますか、その点の御説明をいただきたいと思います。
  4. 佐藤薫

    佐藤説明員 お答え申し上げます。〇・七坪と申しますのは、いわゆる校舎だけでございまして北海道東北北陸というふうな地区に対して、校舎とは全然別個に屋内運動場予算要求いたしております。その基礎は、小学校が、生徒一人当り。一五坪でありますし、中学校は一人当り〇・二坪であります。但し小学校の方はいろいろ予算関係もありましてとりにくいという関係もあり、また本来の趣旨が、義務年限延長に伴う、すなわち新制中学校を重点に置くべきものであるという考え方から、実際の予算要求中学校の方だけを要求いたしております。  それからちよつと御質問に関連するので申し上げさせていただきたいと思うのでありますが、そういうふうな計算をいたしますと、小学校中学校で、全体では約三十万坪になるわけであります。しかし今も申し上げた通り小学校を抜きますると、中学校だけでは運動場面積が二十二万坪ばかりになるわけであります。  もう一つ関連いたしますので申し上げますが、そういう二十二万坪をできるなら、来年度〇・七坪完成していただくときに、同時にそれを一挙に終つてしまいたいという事務当局考えを持つておりますが、それも無理でありますので、一応五年くらいでやるという計画で、来年はその基礎に基いて要求をいたしておる、こういうわけでございます。
  5. 浦口鉄男

    浦口委員 そういたします。屋内運動場の完備については、明年度〇・七坪の教室が完成した後、五年計画で完成する予定だ、こういうふうにお聞きしたのでありますが、そういたしますと、現在の段階において、この積雪寒冷地帶屋内体操場はどの程度できているか、全然できていないというのでございますか。
  6. 佐藤薫

    佐藤説明員 その当初、二十五年に計画したのでありますが、そのときに全体の必要数が三十三万坪であつたわけであります。それに対しまして二十五、二十六年と、大体二箇年で約二万坪やつたわけであります。従つて現在三十万坪残つたわけでありまして、三・十二万坪必要なのに二万坪しかできませんから、大部分が残つておるのでございまして、若干やつておりますのは、それは地元の、御自分の力でやつておるのが大部分であります。但し、北海道につきましては、一万坪のうちの約三分の一ばかり二十五、二十六年に配分をいたしております。それは非常に寒い関係、雪の深い関係でありまして、それにいたしましても、非常に蓼々たるものであります。
  7. 浦口鉄男

    浦口委員 自力でやつておる分は、北海道のことは大体御説明があつたわけでありますが、他府県ではどの程度できておるというお見通しでありますか。
  8. 佐藤薫

    佐藤説明員 北海道以外の東北北陸は、大体一県平均の割当が二十五年、六年ともに三百坪ないし六百坪であります。従つてそういう補助が若干あつたところをほんの誘い水で、その三百坪をたとえば五校にわけますと六十坪ばかりになるのでありまして、実際は百五十坪、二百坪ばかりのものをつくります。そういう誘い水があつた市町村が、たまたまそれに五倍なり十倍のものを加えまして、実際自力でやつておるということでありまして、結果的にはきわめて家々たるものである、ほとんどないといつてもいいんじやないかという程度であります。ただモデルスクールなどは、案外責任を感じまして、相当つておるのでありますが、そういうものが若干あるだけで、結局蓼々たるものであるということであります。ちよつと計数的にどうも……。
  9. 浦口鉄男

    浦口委員 念を押すようですが、明後年度、二十八年度からの五箇年計画で―大体まだ三十万坪残つておると思われるのでありますが、これは必ず完成し得るというお見通しで現在のところでは立案されている、こういうふうに考えてよろしゆうございますか。
  10. 佐藤薫

    佐藤説明員 これはこういう席で言つては悪いかもしれませんが、折衝段階ちよつと御参考に申し上げて、御協力を仰ぎたいと思うのでございます。実は大蔵省とはその折衝を七月からずつと続けておりますが、金額相当張るという関係、〇・七坪あつた、あるいは危険箇所の問題ありということで、六・三制の問題が相当大きいので、金額を押える関係で、北海道だけに限定したらどうかという、相当強い考えもないことはないのであります。われわれはそれは困る、むしろこの際北海道東北はもちろん、雨の多い、例の単作地帯に対する地帯と同じような地域には、島根、鳥取、兵庫というふうな地域まで拡大してほしいというふうなことで、まつこうから対立しておる段階でありましてわれわれは何とか最後のこちらの意見を通したいというので努力いたしております。
  11. 浦口鉄男

    浦口委員 それではいま一つつておきますが、この間も施設課長ちよつと非公式に話したのでありますが、そのときのお話に、北海道は大体平均一坪に行つているというお話があつたのでありますが、これは内容を具体的にお話いただければけつこうです。実は申し上げるまでもなく、北海道は非常に後進地域で、開拓部落などにおきましては、非常に生徒数が少いところに学校一つ置かなければならぬ。これは網走の統計でございますが、私休会中国政調査に、専門員室の青木さんと一緒に伺いまして、特殊事情を伺つて来たのでありますが、網走という町の管轄には小、中学校が三十あります。そのうちの半数以上が一校百人以下、そこに六学級を収容しているというふうなことになつております。こういうところは平均坪数相当上まわると思うのでありますが、こういうものを全部平均して、なお北海道平均一坪に行つている、こういうふうなことでございましようか。
  12. 佐藤薫

    佐藤説明員 私その資料を持つて来ませんで、抽象的なお答えになるのでございますが、御勘弁願います。大体〇・七坪ということ自体が非常に不合理であることは、わかつておりますが、しかしそれはそれにしても、寒冷地方は、一つは雪の降るという関係、寒いという関係学校規模、それから学級の大小などによりまして、相当補正をいたしておりまして、今お話されましたようなことはもちろん含んでおりまして、結果的には〇・七プラス〇・三、合計一坪ぐらいになつております。全国平均で申しますると、〇・七四坪くらいになつております。しかし、たとえば四国の高知県などに、同じような原則が適用されております。と申しますのは、学校規模によつて生徒が少い、そのかわり面積が多くなるという関係があります。そういうものを全国平均しまして〇・七四くらいになりますが、北海道は一坪くらいになると思つております。しかし九州の交通も便利で、一応の基礎を持つておるものは。七坪、平均が〇・七四、特にひどいところが一坪、東北の方は〇・八四、このようになつておるのでありまして、これについては資料がございますから、あとで差上げることにいたしましてこれで御了承願いたいと思います。
  13. 浦口鉄男

    浦口委員 それでは私の質問はそれでよろしゆうございます。
  14. 渡部義通

    渡部委員 きようは大臣質問したいと思つておりましたが、まだ見えられないようですから、予算の上で若干の点を質問したいと思います。  第一に校舎建築に関する予算でありますが、十九億の文部省要求が九億五千万に削られでしまつた。ここに非常に大きな六二二制建築の進行上の破綻が来ているわけでありますけれども、それは一応別といたしましても、学校新設のほかに、老朽学校があつて、どうしても緊急を要するものが中には非常に多いと思うのです。この老朽学校教室がどのくらいあるのか、またそのうち緊急にどうしても改築しなければならないような学校教室坪数はどのくらいになつておるのか、その点をまず伺います。
  15. 佐藤薫

    佐藤説明員 先日お配りしました資料に書いてあるのでございますが、簡単にそれについて申し上げます。その前にちよつと御質問に関連しまして、九億になつて非常に困つておりますが、特に困つておる問題は、それに見合う起債がきまつておらないという問題でありますので、これについても御協力を仰ぎたいと思つております。  次に、合一の危険校舎の問題でございます。差上げた表をごらん願つたらわかりますが、全体で百六十六万坪ございます。これは経過年数が四十年以上であるというもの、但し四十年以下であるものでも、非常に粗末なつくり方をしたために悪いものも若干含んであります。要するに老朽危険稜舎といたしまして百六十六万坪あります。そのうちで、今の御瞬間に対してお答えいたしますが、一日もほうつておけないというふうなもので、しかも県の土木部などから禁止命令が出ておるというふうなものをいろいろ合算いたしまして、約四十四万坪でございます。この問題につきまして関連して申し上げたいのですが、昨日大体ルース台風の査定を終えて帰つて参りましたが、学校だけの被害額が約六十億になつております。しからば、これに対しまして、先ほど申し上げた四十四万坪というものを改築するのに、どれくらいかかるかということを御参考に申し上げますと、約六十五億の補助を必要といたします。その二倍の百三十億が事業費でありまして、かりに百三十億の半分補助という従来の考えで行きますれば、六十五億を必要といたします。今申し上げましたルース台風の局部的な被害だけで六十五億でありましてさらにケイトが十三億でありまして、七十八億あるのであります。こんなことを考えましても、災害の発生を防止するために、どうしても老朽危険校舎を急速に改築することが根本的な対策であると考えまして、来年度は四十五万坪を三箇年で改築しようという考えで、三分の一の二十一億を要求しておる、こういうことになつております。
  16. 渡部義通

    渡部委員 この新設費がすでに、あれほど文部委員会及び文部省の強硬な主張にかかわらず、十億も削られてしまつておるというような中で、来年度の新設費に加えて、どうしても改築し、なければならない老朽校舎の額が、今言われただけでも七十八億にも及んでおるというようなぐあいに、予算要求の上に書くことは容易でしようが、これを実現するために、どういう道を文部省を見出されようとしているのか、具体的な構想を伺いたいと思います。
  17. 佐藤薫

    佐藤説明員 今申し上げた六十五億というようなもの、それに伴う起債というものをどう確保して行くかということでございますが、これは事務当局としては絶対にとるつもりでございます大臣も固い決心を持つておられますし、また文部委員会にも、それ以上に御協力を賜わりたいと考えておりますが、具体的なことは申し上げかねます。ただわれわれとしては、事務的な問題を一つだけ申し上げますが、四十年以上といつても、いろいろな種類がありまして、五十年、六十年というように、その経過年数別に具体的な資料をつくつております。もう一つは、この災害の場合でも、倒れた建物について四十年以上、四十一年以上、四十二年以上というように細分いたしまして、非常に科学的な明細な資料をつくつておりましてどうしても国の財政の上からも、こういうものを改築しな結局国が損をするのだということを大蔵省説明しておるというような技術的な問題がございまするが、全体的な構想は、私ちよつと課長でありまして申し上げかねます。
  18. 渡部義通

    渡部委員 それではこの根本問題については、後ほど質問したいと思いますが、予算の上で行政整理に伴う退官退職手当に必要な経費、これはこの前の説明によりますと、一月から三月までの間に三千七百人ぐらいの……。
  19. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 渡部君、発言中でありますが、お答えするに適当な方が今お見えなつておらないのですが、その問題についてはあとでどうですか。六・三の方で、課長において答えられる程度の具体的な問題を出していただきたいと思います……。  ちよつと速記をやめて。     〔速記中止
  20. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 速記を始めて。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 私、質問ではありませんが、休職について資料をお願いしたいと思います。それは給食か始まつて以来の予算経過給食について、いろいろな要求があるのです。給食によつてどれくらい体位が向上したかということ、これはなかなか判定がむずかしいだろうと思いますが、しかしそういうことももしでさましたらお願いしたいと思います。
  22. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 了承しました。
  23. 浦口鉄男

    浦口委員 大学学術局長にひとつお尋ねしておきますが、国立大学夜間部を設置するということは、二、三年前からたいへん輿論が高くなつておるのでありますが、来年度の予算に、全国国立大学に五校だけ夜間大学を設置される予定文部省立案をされているということでございますが、現在の段階でどういう事情なつておるのですか、その点をお説明願いたい。
  24. 稻田清助

    稻田説明員 お話のように、もう二十七年度の予算におきまして、全国で三校ばかり、大学夜間の短期大学を附設いたしたいと考えて、目下大蔵省予算折衝中でございます。
  25. 浦口鉄男

    浦口委員 どのくらいの予算を見込んで立案されておるのですか。
  26. 稻田清助

    稻田説明員 個々の大学の学科の内容によつて異なるわけでございますが、明年度当初年度といたしまして大よそ各大学において定員教官十各内外、及びこれに附帯いたしまする教授用経費及び生徒経費として要求いたしておりますが、詳細につきましては、後ほど御説明いたしたいと思います。
  27. 浦口鉄男

    浦口委員 これはちよつと質問ではないのでございますが、委員長を通じて―これは意見になるかもしれませんが、申し上げておきたいのであります。それは出版物その他のいわゆる倫理問題であります。終戦後言論、出版の自由ということによりまして、いろいろの出版物が氾濫しまして、その中には、ずいぶんいかがわしいものがありまして問題になつたことは、各位もご存じの通りであります。最近は幾分のおちつきを持つて来たという面も考えられるわけでありますが、最近非常にジヤーナリズムをにぎわしたチヤータレー裁判などの問題ふまだ解決していないわけであります。それで、これは私の考えでありますが、あのチヤターレー裁判の問題を考望ましたときに、ああした問題は、刑法対象として著者なり、あるいは翻訳者を罰するというその以前に解決すべき要素が非常に多いと思うのです。そういう点について、文部省あるいはわれわれ文部委員会といたしまして、ああいうことに対する一つの軌範と申しますか、何か限界というふうなものを大いに検討する必要があると思うわけであります。現在の取締り規則では、もちろん刑法以外に適用規則がないわけでありますから、これをすぐ法を適用するということになりますと、立法措置ということも出て来るわけでありますが、これは非常に検討を要することでありまして、そこに到達するまでに、文部委員会などで大いに検討する必要がある、こう思うわけであります。     〔岡(延)委員長代理退席委員長着席〕 そこで私は一つの提案といたしまして、こうした出版物あるいは映画、児童の玩具その他について相当範囲は広くなると思いますが、各界関係者を集めまして、一度参考人という形で、こういうふうな問題に対する各界意見を、この際文部委員会として聞いておくことが、非常に必要ではないか。その結果、結論は出ないと思いますが、今後のいろいろな対策に、われわれとしても参考になると考えるわけであります。この点委員長を通じてお諮り願えるならば、たいへんけつこうだと思うのであります。
  28. 長野長廣

    長野委員長 浦口君の御意見に対しましては、できるだけ御希望に沿うことにいたします。
  29. 渡部義通

    渡部委員 大学学術局長予算関係政府委員見えたので、質問を継続しますが、先ほど触れました行政整理に伴う退官退職者であります。これは三千七百人を一月から五月までの間に一の欠員でもつて、それを処理して行く退官磯を喜ることになるということでありますけれども、先日の説明では、教官欠員が二千名ほどある、そのほか長期欠勤者が若干あるから、実質的には現状大差ないだろうというふうに言われましたが、長期欠働者というのは、どういうような内容のものでありますか。
  30. 稻田清助

    稻田説明員 これは一般行政整理方針によつて考える問題でございますが、結核性疾患によりまして長期勤務していない者、これをいうと解釈しております。
  31. 渡部義通

    渡部委員 そうしますと、現在結核等によつて長期欠勤を余儀なくされておるような人たちは、今度の行政整理対象になるということになりますか。
  32. 稻田清助

    稻田説明員 対象外に置かれる措置でございます。
  33. 渡部義通

    渡部委員 そうしますと、この教官欠員の方は一応別としましても、先ほど長期欠勤者相当あるので、実質的には現状大差ないというふうに言われた点、これはどうもはつきり了解できないのです。教官欠員者というのは、定員がそこにあつて、しかも定員の補充を従来全然してなかつたということを意味するのですか。
  34. 寺中作雄

    寺中政府委員 欠員と申しますのは、ただいまお話になりましたように、定員があつて輿際にその定員を埋めていない、実人員がいたい、空席になつておるものでありまして、それが大体大学で二千人ぐらいあるということであります。それでありますから、かりにある程度行政整理責任数というものがかかつて来ましても、その輿際欠員でもつて、それを処理して行くということは可能であります。
  35. 渡部義通

    渡部委員 そうしますと、やはり長期欠勤者、つまり結核等による長期欠勤者でありますが、こういう5人があるので、三千七百人の整理が行われる場合にも、現状大差なくなると肯われるのは、ちよつとおかしいと思うのです。長期欠勤者結核等によつて療養しておる人がおるから、現在の定員整理しなければならない場合に、実際上の整理の数を少くするということには、ちよつとなりかねるように思うのですが、この点はどうなのですか。
  36. 寺中作雄

    寺中政府委員 欠員、いわゆる定員に対する欠員というものと、長期欠勤というものとは、多少別のものでありまして、欠員の方は全然職員を置いてないのでありますし、長期欠勤の方は、実際に人がおりましても、長く休んで出て来ていない。この長期欠勤表については、まず休職措置をする必要があるわけです。それで休職なつ長期欠勤者につきましては、これは定員外に置くという一応の話合いなつておりますから、定員外として処理せられるのでありますから、整理する数の中に見込まれるわけであります。整理した後に、それだけの長期欠勤者があつてももそれは定員外として認められるということであります。
  37. 渡部義通

    渡部委員 長期欠席者は、定員外なつておるのですか。
  38. 寺中作雄

    寺中政府委員 長期欠勤者が、希望をいたしまして休職になりまして、そうして、なりますれば定員外として置かれることを認められることになると思うのです。
  39. 渡部義通

    渡部委員 そうすると休職者は現在は定員外なつてれるのですか。
  40. 寺中作雄

    寺中政府委員 現在定員外なつておるわけではありません。今度の行政整理措置をやるについては、この長期欠勤番定員外として措置するという話合いなつておる。今度の行政整理に関してのことであります。
  41. 渡部義通

    渡部委員 そうしますと、大体かわりがないと言われますけれども、三千七百人の被整理者が出て来るという場合に、実際上教宣整理はどのくらいになつておりすか、具体的に。
  42. 寺中作雄

    寺中政府委員 三千七百人の被整理者につきまして、そのうち教官幾らにし、また事務職員幾らにするということは、まだ決定いたしておりません。現在研究中でありまして、各学校の実情に応じて教育に支障のない、また事務の満満を来さないということを目標に十分案練つて、その内訳をつくるつもりでおります。でありまするから、欠員があり、または長期欠勤がありましても、実際に教官事務職員との割合の関係で、必ずしも欠員がごつそり行政整理数に当てはまるというわけには参らぬかと思いますが、そこのところは欠員等もにらみ合せて、現在研究中であります。
  43. 渡部義通

    渡部委員 もう十一月で、やがて二十七年度の予算さえも組まれる時期でありますので、すでに一月から三月までの間に整理するということになつている以上、大体の見当はつけられていなければならないと思うのですが、実際上大体の見当さえも各学校等についてつけられていないわけですか。あるいはまたもつと抽象的に言いますと、事務員教官との一般的な整理数というふうなことにさえも、まだ大体の見通しがついておらないわけですか。
  44. 寺中作雄

    寺中政府委員 実は現在の新制大学は、旧制大学あるいは旧制専門学校から切りかわりましたので、その際もいろいろ職員構成上に不均衡、不公平があつた点があるのでありまして、この際定員事務員教官振合い等における配置を再検討するというつもりでおるのであります。でありますから、いろいろ具体的な資料をとつて最も全中な均衡のとれた形にやりますために、鋭意研究中でありますが、もう近く見当がつきますので、そうすればそれを各学校に内示して行くというつもりでおります。
  45. 渡部義通

    渡部委員 教員組合その他の方では、大体教官について七百五十名くらいの整理者があるというふうに、文部当局―どの辺の当局かわかりませんが―から聞いておるというふうな話もあります。そのような話はあるわけですか。
  46. 寺中作雄

    寺中政府委員 実は行政整理の数を出します際に、教官については何パーセント、そのうちわく外を幾らにするというようなこまかい積算をして出上たわけでありますが、実際の整理にあたわましては、そういう根拠的な内訳のものとは無関係に、具体的な配当をきめるという方針でおりますので、ただいま七、八百名というようなお話がありましたが―大体その算出の基礎については、そういうふうな根拠があつたかもしれませんが、具体的にそれを当てはめる場合には、別の立場から再検討して教官の人数をきめるというふうに考えております。
  47. 渡部義通

    渡部委員 教官及び事務員を、一定の大体のパーセンテージで整理されるというような場合に、どのような、またはどの課目を受持つておるとか、どういう事務についているとかいうようなことを検討した上で、どういう面を整理するのかということも、大体見当ついておるわけですか。
  48. 寺中作雄

    寺中政府委員 教官の担当課目等によるどういう課目の人を整理するとか、そういうふうなことについては、全然見当がついておりません。ただその他の職員については、業務職員であるとか、あるいは農場員実験工場の職員であるとか、その他の事務職員であるとかいうような区別があるわけでありましてそういうものについて多少、その面では理由があるのではないかというような点がありますれば、それについて考慮するというようなことをやることになるかと思います。
  49. 渡部義通

    渡部委員 たとえば七、八百各の教甘が整理されるとしまして、その場合各学校、各大学の実情を検討された上で、その大学の被整理者の数をきめるという場合には、当局としては、やはりこの大学における教官定員のうち、どの部分整理することができるかどうかということをきめなければ、その大学に対して指示することはできないということになると思うのです。従つてそういう点まで考えられての上で整理がなされると思うわけですが、そうなつて来ますと、相当準備が必要だと思いますので、すでにそのような準備がなされていなければならぬはずだと私は考えるわけです。大学局長は、その点はどういうふうに考えておりますか。
  50. 稻田清助

    稻田説明員 会計課長がお答え申し上げましたように、目下会計課長その他の準備中でございます。
  51. 渡部義通

    渡部委員 準備中のことはわかります。わかりますが、各大学教官等を整理する場合には、大学における講座においてこういうような教官整理でき得るかどうかということを決定しなければ、指示ができないわけで、それを決定する場合には、文部当局として講座と教官定員とを考え合せた上で整理されるのかどうか。その点を聞いておるわけです。
  52. 稻田清助

    稻田説明員 整理いたしますために、いろいろ調査いたしております過程におきましては、お話のように、それぞれの準科、学部の性格、講座の状況及び現在の教員配置というようなものが、重要な参考資料として扱われることになります。
  53. 渡部義通

    渡部委員 その点がまだ検討済みでないと言われるならば、これ以上お聞きできないと思いますけれども、来年度新制大学の四年制が初めて成立して来るわけです。そうしますと新しい講座なり新しい科目なりが、新制大学の四年の場合に出て来るわけだと思います。こういう場合において、新しい適当な教授を採用するとかいうような問題が、当然生ずるわけですが、これについては文部省ほどういうふうに考えておりますか。
  54. 稻田清助

    稻田説明員 新しい大学をつくります場合に、大体初年度におきましては五割の教官、次の年度におきましては三割の教官、次の年度におきましては二割の教官々充当いたしましたので、すでに本年度におきましては、教官組織は完成形態にあると考えております。
  55. 渡部義通

    渡部委員 しかし四年制が初めて来年成立すると思いますが、その場合のことです。
  56. 稻田清助

    稻田説明員 大学は必ずしも学年制で考えませんで、およそ一般教育、専門教育の課程を考えますので、本年度から専門教育を出発いたしますときに、専門教育教官全部を整備いたしたわけでございます。
  57. 渡部義通

    渡部委員 もちろん大学が学年の段階によつて講座のすべてがきまるのではないですけれども、しかしながら、四年制が初めてできる場合に、諸所の大挙において、情勢に応じて新しい講座を必要とするというような場合があり得ると思うのです。そうしますと、新しい教授が必要になつて来るわけなんで、このような場合に、現在の政治問題と関連して新しい採用ができないということになると、大学の方では非常に不便を感ずると思うのですが、そういう考慮を拂われておるかどうかということであります。
  58. 稻田清助

    稻田説明員 定員的には、すでに明年度を本年度において予測いたしまして、整備をいたしたわけでございます。
  59. 松本七郎

    松本(七)委員 定員の問題は内閣委員会が扱うのだろうと思いますが、文部委員会としても連合審査を要求したらどうかと思います。ひとつ委員長の方でとりはからつていただきたいと考えます。
  60. 長野長廣

    長野委員長 適当に処置いたします。
  61. 高木章

    ○高木(章)委員 これは会計課長でもおわかりかと思うのでありますが、昨日来新聞をにぎわしておりまする例の澁谷の松濤中学―モデル・スクールに指定されておる学校だそうでありますが建築費のほとんどが支払拂済みで、校舎が半分しかできない、そうして何か区長か助役を追究しておるというような報道でありますが、現在文部省で、あの学校について何らか調査済みであつたら、その点ちよつと御報告願いたいと思うのであります。
  62. 佐藤薫

    佐藤説明員 新聞でちらちら見ましたので、都の方には調査を依頼してあるのですが、まだはつきりした回答がないのでございます。
  63. 長野長廣

    長野委員長 荻田局長がお見えになりました。
  64. 浦口鉄男

    浦口委員 地方財政委員会荻田事務局長がお見えなつたようでございますから、ひとつお尋ねいたします。  実は昨日大蔵省東條主計局次長に来ていただきましたときにも、お伺いしたわけでありますが、今年成立いたしました議員立法による産業教育振興法の予算措置をするために、今文部省当局並びに與党である自由党の方々に、たいへんな御努力を願つておることは承知しておりますが、昨日お聞きするところによりますと、この産業教育振興法が、地方財政委員会としては、むしろこれを廃止すべきような方向に向いておるということが、非公式でありますが、出ておるということを聞いて、たいへん委員会といたしましても、皆意外なショックを受けたわけでございます。まずその点について一応お伺いしておきたいと思います。
  65. 荻田保

    荻田政府委員 その問題に対しまして、地方財政委員会では、別に何ましきめておりません。
  66. 浦口鉄男

    浦口委員 そう簡単に答えられてしまうと、ちよつと寄りつくところがないのでありますが、そうなりますと、そういうニユースの根源が、たいへん問題になつて来ると思います。実は政令諮問委員会といたしましては、十月の十三日でございますか、首相官邸で六三一制その他の問題について会合があつたということを聞いております。その報道によりますと、六・三制の件では、もちろん具体的なこまかい内容は申し上げませんが、とりわけ中学校、高等学校、短期大学においては、職業教育に非常に重点を置いてやるというふうな線が一応出まして、大蔵当局とも話合い中だ、こういうことを聞いて参つたのでありますが、昨日東條主計局次長にお聞きしたところでは、まだ大蔵省として具体的な見解を発表する域に達していないというふうな御答弁だつたと思うのでありますが。天野文部大臣も声明されておりますように、今後の日本の教育の行き方としては、職業教育に重点が置かれなければならないということで、私は非常に産業教育振興法の明年からの実施について、期待を持つておつたわけであります。そこに突然昨日そういうことをお聞きいたしまして、非常に意外に思つたわけであります。それできよう荻田さんに来ていただきまして、この政令諮問委員会並びに大蔵省地方財政委員会との産業教育振興法をめぐる関連性についてお尋ねしたいと思つておいでを願つたわけでありますが、地方財政委員会として、全然そういう意見を発表したことがない、こういう今の御答弁であります。しかし何らかこの法案についての御意見をお持ちでないことはないと思うのでありますが、いま一度お尋ねをいたします。
  67. 荻田保

    荻田政府委員 政令諮問委員会の答申も公に出ておりませんし、どうなつているか、私はよく存じないのであります。それからいろいろそれに関連しまして、地方の行政の簡素化、財政の節約というようなことについても、案が各方面で考えられておるようでございますが、別に公式にこの問題につきまして、具体的にわれわれの地方財政委員会におきまして、どうという態度をきめたこともございませんし、いわんや発表したこともございません。
  68. 浦口鉄男

    浦口委員 それでは、予算の面からでなしに、このたび行われております行政簡素化の方向から、何か御意見がおありと思うのでありますが、その点いま一度お伺いいたします。
  69. 荻田保

    荻田政府委員 地方行政の簡素化につきましては、地方行政簡素化本部というものを内閣に置きまして、そこでいろいろ考えられておるようであります。われわれもメンバーになつておりますが、まだそういう問題につきまして、決定の段階には至つていないのであります。
  70. 浦口鉄男

    浦口委員 それでは行政簡素化という面では、まだ御意見が発表されていないということを了承いたしておきますが、われわれ聞くところでは、いわゆるこの産業教育振興法によりまして、大体国家補助が二分の一見当というふうに考えているわけでありますが、この残余の分は地方財政にかかるわけでございまして、現在の地方財政の実際面から、非常に地方財政を圧迫するものであるというふうな観点に立つて地方財政委員会から、この法案の廃止というふうな強い線が出たかどうかはわかりませんが、非常に厳格な批判がなされたというふうにも聞いているのでありますが、財政面からいかがでございまかす。
  71. 荻田保

    荻田政府委員 簡素化本部内の議論というものは、全然外に出ておりませんし、また出すべきものではない意見でございますから、それがどうなつているかということは、別にわれわれここで申し上げる限りではないと思います。ただこの法案が通りましたあとにおきまして、ほんとうにこれをやつて行くにつきましては、莫大なる地方費負担がかかりまして、第二の六・三制の問題のような、地方財政に非常に困難な嘉態を招来させる一つの大きな根源になるものだと考えておりますので、やるならやるではつきりと、政府が国庫補助を用意するだけでなくして、地方の財源も十分に用意してからやつてもらいたいということは、これは今でも申し上げることができます。
  72. 浦口鉄男

    浦口委員 その点よくわかりました。大体六・三制は、十分とは言われないと思うのでありますが、来年度をもつて校舎の方は一応のけじめがつく、その後において産業教育振興法が施行されるということを考えておりますので、今おつしやるように六・三制の上にまた二重の負担がかかる、こういうふうには大体においては考えられないのでありますが、その点財政委員会として、どういうようにお考えになりますか。
  73. 荻田保

    荻田政府委員 御承知のように、地方財政の困つております問題は、六・三制を始めたことだと思います。それで、今おつしやいましたように、一応のけじめが来年つくというような説も聞くのでありますが、われわれはそのかつこうの上だけではどうにもならない、ほんとうのことを考えませんと、結局地方財政はおちつかないのであります。かりに国の方で、六・三制はもう済んだから、来年からやめるのだ、こういうようなことを言われましても、ほんとうに解決していないものは、どうしても地方財政にかぶさつて来るのでありますから、われわれは、あくまでもそういう形式的な議論だけではなく、数字ではなく、ほんとうのところそれをやつて行くためにどれだけの金がいるかということを考えて、そうして地方財政全体の計圃を立てたいと考えております。その限りにおきましては、六・三制も今のようなやり方では、とうてい来年までに完成することはできません。まだまだ百億台よりも大きな、千億台ぐらいの金がいるだろうと、われわれは一応推測しております。従いましてこれにさらに実業教育の問題が出発いたしますれば、非常に大きな地方の負担になるということを考えております。
  74. 浦口鉄男

    浦口委員 それでは一応荻田さんの御意見を承るのはその辺にいたしまして、そうなつて参りますと、結局義務教育費の全体の問題にからんで来るわけでありますが、聞くところによりますと、文部省は来年度から義務教育費国庫負担という意味合いにおいて、平衡交付金からこれを分離して考えたい、こういうことが伝えられているわけであります。天野文部大臣もお見えなつておりますので、これは大臣の日ごろの御主張でもございますから、あわせて御答弁を願いたいと思うわけであります。われわれとしてもこれが完成すれば非常に国家賦政、あるいは地方財政において確立することでありますので、たいへん喜ばしいと思うのでありますが、報道によりますと、これについては、すでに自由党でも新政策としてお取上げになつており、大蔵省、地財委等の意見をも相当織り込んで、実現の可能性が強いというふうに報ぜられているのであります。たとえば概算一千億円の義務教育費がいるとして、そのうちの二三%は都道府県、市町村が二〇%と見まして、残りの五十七%の五百七十億円を平衡交付金九ら分離して特別の措置をする、こういうふうに報ぜられているのでありますが、この点について荻田さんの御意目を承り、なお文部大臣からも御答弁をいただきたいと思います。
  75. 荻田保

    荻田委員 教育平衡交付金、そういう問題をかねて文部省事務当局より承つていりますが、われわれの考え方としましては、平衡交付金制度を地方財政について適用する限り、そのようだ制度はおもしろくないと考えております。むしろ平衡交付金制度をあるべき妻に完全に育てて行く方が、地方財磁あるいは教育財政という面から見てま適当だと考えております。
  76. 天野貞祐

    ○天野文部大臣 従来のようにただやつていたのでは、とうてい教育費というものを確実に確保することはむずかしいと思う。先年来標準義務教育費確保の法律案というものも計画しましたが、それでもどうもいろいろな点からしてよく行かない。それでここに新しいくふうをして、そして教育財政が確立されるようなことを考え、諸方面の御意見を今承つて研究をいたしておる次第でございます。
  77. 浦口鉄男

    浦口委員 いま一つ荻田さんにお開きしておきまして、あと他の委員に瞬りたいと思いますが、産業教育振興法が、相当厖大な計画をもつてなさなければならぬということを、われわれは強調しているわけであります。もちろんこれが地方財政に非常に負担をかけるということは、単なる数字の問題でなく、実際的に考えたいという荻田さんの御意見は、もつともだと思うのであります。もちろんこれは地方の都道府県あるいは地方自治体において産業教育振興に対する計画をいたしまして、自発的の計画に基いて国家が二分の一、場合によつては五分の四までと称しておりましたが、補助する、こういうことになつておりますので、国家としての計画を押しつけて、地方財政にあえて負担をかける、こういう観点に立つているのではないということを、一応われわれは考えております。ただ実質的に圧迫するという論になつて参りますと、先ほどの御意見も出て来ると思いますが、その点国家が強制局に負担をかけるのではない、あるいは六・三制とはまたおのずから観点が違うという考えに対しての御意見は、いかがでありますか。
  78. 荻田保

    荻田政府委員 こういう問題は、形式的な議論と実際どうなるかという議論とは、非常に違うことでございまして、たとえば六・三制にいたしましても、国の方で算定して、これだけの單価でこれだけ坪数を建てればやつて行けるのだということで、一方的にきめておられますが、決してそれでは六・三制はできないのでありまして、国のきめますわく外において、相当大きな地方負担をしなければできませんし、いまだにそれができていない状態であります。実業教育の問題につきましても、やはりそういう問題が起るだろうということを、われわれは考えておりますので、六三制の経過等をもよく考えまして、またそのようなことを繰返さないように、やる以上はほんとうにいるところのものを国も地方も用意して、その上でやるべきだという考えを持つております。
  79. 浦口鉄男

    浦口委員 いま一つ最後に私として希望を申し上げておきます。この産業教育振興法は、教育に関する單行法といたしまして、しかもまた議員立法といたしましては、おそらく相当重要な、ある意味では画期的ともいえる大きな法律だと思うのであります。それが明年からの実施を前にして、非常にこれが予算措置において、ひいては廃止というような声が出るということは、公式、非公式を問わず、それはこの法律に非常に期待をいたしました全国の高等学校学校当局並びにPTAその他学生生徒に與える影響というものは非常に大きいと思う。ひいてはこれは法の権威にも関すると思いますので、地方財政委員会が実際問題について深く検討されて、地方財政に対して御心配になつておることはよく承知をいたしますが、そういう観点に立つてなお十分に御検討をいただいて、この実施に御協力をいただきたいということを、私希望をいたしまして質問を打切ります。
  80. 松本七郎

    松本(七)委員 私も荻田さんにちよつと御意見を伺つておきたいのですが、文部当局としては、義務教育財政の確立ということを、従来からもいういろいろされておる結果、いろいろな案が出て来るわけですが、しかし根本的に学校の義務教育の制度というものと財政制度というものに食い違いがあるように思う。この義務教育の方の学校制度の建前からいつて、それに合せるような財政確立をやろうとすると、どうしても国庫負担とかいう問題が出て来て、地方賦政制度の根本の問題に触れて来る。ところが一方地方財政制度を建前にして、そつちに教育の方を合せて行こうとすれば、地方財政が窮乏しているため、なかなかうまく行かない、ここに根本の問題があると思う。荻田さんの考えておられる将来の地方財政のあり方―現在の制度そのものにあまり拘束されないで、将来の地方財政はいかようにあるべきかということから、一体学校の義務教育費というものと、義務教育のあり方とその費用の確保という点を、どういうところに今後打開の道をとつたら、地方財政との関連でいいと考えておられるか、その点を伺つておきます。
  81. 荻田保

    荻田政府委員 たいへんむずかしい問題でございますが、やはり地方団体といたしましては、これはひとり教育だけではなく、建設行政、治安維持の面、あるいは社会福祉行政その他一般行政を総合的に行い、しかもそれは中央集権でなくて、地方分権という観点から、財政的にも独自の財源をもつてそれらの事業を行つて行くことが適当だと考えます。しかしながら、現在の地方団体の財政力にきわめて不均衡のありますときに、これを独自の税だけでもつて処置しろと言いましても、これはとうてい不可能のことでありますから、そこにやはり財政を調整する作用がなければならぬ。しかもそれが中央集権的な補助金とかなんとかいうひもつきのような制度になることは、これはおもしろくありませんから、やはり平衡交付金の制度――必ずしも現任の姿がそのままよいとは考えませんが、そういう趣旨の制度が今後強力に活用されて行くことが必要だと思います。しかしいずれにいたしましても、そのような場合、結局地方の財政需要に対しまして、財源が十分になければならないということに帰すると思います。つまり国家財政が苦しいから、地方はもつと悪くてもいいんだというような考えではいけないのでありまして、やはり国家地方を通じての、国と地方との間の財政調整、こういう意味におきまして、平衡交付金の額というようなことがきまつて来ると思うのであります。われわれから見ますと、少しひがみかもしれませんが、何か中央の財政だけの健全化をはかつて、地方の財政にしわが寄つているということが、現在なのでありまして、その限りにおきましては、ひとり教育だけ、財政だけが健全であるということはあり得ないのであります。やはり総合的に地方団体の財政が健全になつて行かなければ、あらゆる面におきまして悪い結果が出るものだと考えております。そういう意味におきまして、あくまで教育一つの大きな地方自治の行政とし、従つて地方財政一つとして考えて行きたいという考えを持つております。
  82. 長野長廣

    長野委員長 ほかに荻田局長に関連しての発言はありませんですか。  それではちよつと私から荻田局長にお伺いしたいのでありますが、いまさらただいまの話以外の問題を、ことさらにここでかれこれ重くとりはからうことはいかがと思いますが、問題の性質上、ちようどまたお見えなつておる関係上、お伺いしたいと思います。この問題は実は画期的の重大問題として、これを特に大蔵大臣の所見を文部大臣と御鼎坐の上で伺いましたが、大蔵大臣はきわめて積極的な態度をとりまして、本問題は教育上重大な問題であるから、もつともつと経費としてはかけるべきものである。であるから、自分も具体案については極力ひとつ研究を進めたいつもりである、こういう話がありまして、その後もただいま仰せられる重大な問題につきまして、御検討の上で是認せられまして、そうして大蔵省としては今日の経過を生むに至つた次第であります。次いで地方財政委員会関係の方面につきましても、事重大であるから、特に御詮議を願いました結果、常任委員会に至るまで全部が、きわめて賛成である、すみやかにこういうものの成立を希望するのであるということを述べられ、特に参議院等に対しては責任者が出られまして答弁をせられておるのであります。かくして、とにもかくにも国会を愼重審議の上で数箇月を経過して通つたものであります。そしで今や全国は、これが実施について着々地方自治体等において準備を進めておる向きも多いのであります。そこで、私は、こういうように水も漏らさぬ調査をし、そうしていやしくも国会が、あなた方の官庁の協力を得て決議をしたものを、われわれの知らないうちに、これが何らかの形で世間に出て来るというようなことがありますことは、立法府と行政府のいろいろの誰の関係において、はなはだおもしろくない結果を生むに至るの因をなすものではないかということを感ずるものであります。しかし今お話を承りますと、何も表面化したものはなく、またそういつたことの結果を生むような意思表示もせられたものでないということは、これは承つて安心をしましたけれども、しかしお話の裏には、あるいは地方財政関係よりいたしまして、相いれない、おそれがありはせぬかという、関係者、ことに責任の重大な地方の人々にとりましては、あるいは支障を生ずるのではないかという精神的な打撃を受けぬとも限らぬような話の裏を感ずるものであります。何事も重大な画期的な、しかも国家を起死回生の運命に至らしめるような重大な仕事というものについては、半面において非常な危惧の念も起るのは、従来の例に照してあり得ることと思いますけれども、そこを断行するところに新日本は生きると思う。ゆえに、いやしくもかくのごとき意見があるならば、公式と非公式を問わず、国家の重大事にかんがみて、立法機関のしかるべきものと、とにかく愼重に形式、表面論でない内談でよろしいから、話合いをして、一歩を誤ることのないようにせられることが必要じやないかと思います。この私の気持は――ことにお話によると、重大な問題でございますから、きわどいところもあると思いますが、その立場に立たれる、ことにここで公式でお話になるというようなことから考えましても、特にこれは思いをめぐらす必要があると思いますが、局長とせられましては、こういう私の気持に対してどういうお感じを持たれますか、一応承つておきたい。
  83. 荻田保

    荻田政府委員 委員長の言われますこと、まことにごもつともだと思います。この問題につきましては、実は私自身がこういう御答弁を申し上げることは、何か少しちよと筋違いのような感がいたすのでありますが、せつかくお呼出しを受けたので、私自身の考えを申し上げてお答えといたします。この地方行政の簡素化につきましては、国の行政の簡素化と並びまして事務、機構、人員、この三者一体の簡素化をしておるのであります。その限りにおきましては、すでに成立いたしました種々の法律につきましても、大きくかえるということを考えているのであります。いやしくも国会で成立した以上は、この法律は一般の民意であるから、いじるというようなことを考えるのはいけないというようなことは、おそらく政府としてもお考えなつていない。むしろ全部再検討し面す、新しい日本に合うように再検討し直すという考えで出ておるのだと思うのであります。それで地方行政簡素化本部でいろいろの意見が出て、ほかのところにおいてその案が練られているのでありますが、その途中におきまして、いろいろこの件につきましても批判を受けたのだと思います。いずれにいたしましても、簡素化本部で最終的にきまりましたものは、いずれ閣議に出て、その上で政府全体の意向として、それぞれ法律の改正なり何なりを立案して国会に提出して実行ができるべきものだと考えております。その途中ドおきましてはいろいろの話も出るかと思いますが、最終的には国会に出る、あるいはもう少し進行した段階におきまして、それぞれの責任者から、おそらく委員会等にも御相談があることと考えております。
  84. 渡部義通

    渡部委員 大臣質問いたしたいのですが、申すまでもなく今、日本は、歴史上かつてない重大な、またきびしい時局に当面しているわけです。教育もこの置かれている條件のもとで、いろいろ解決をしなければならない根本問題に当面しているわけであります。これは一方では教育施設の拡充整備といいますか、これをどういう方向に向けなければならないかが、予算面に現われておるわけでありますし、他面では、日本の教育がどういう精神に基いてなされなければならないか、日本の教育の方向はどうあるべきかという点にかかわつて来るわけであります。こういう二つの点から見まして、われわれは日本の教育を今どうしなければならないかという、きわめて重大な問題に当面しているわけであります。そこで予算の面からまずお聞きいたしたいのですが、第一に義務教育の点です。この点では、義務教育の半額は国庫負担ということになつておりますけれども、決定的なものは、実質上地方の負担にかかるわけであります。ところが地方では、教育費が地方財政のきわめて大きな部分を占めており、しかも地方財政が今日だれしも認めるような崩壊状態にあるのでありまして、義務教育費の分担を完全にできるような府県は、わずかに九府県にすぎない。三十六県というものは、義務教育を果すために、租税の全額を用いても、なお百億も不定しているといわれている状態であります。教育費がこのような破綻的な状態に置かれているときに、一方御存じのように警察費とかいろいろな軍事費とかいう面では、非常に豊富に用いられている。きのうの新聞に出ております大橋法務総裁の参議院における答弁によりましても、まつたく満足しておるような形で、警察予備隊費の増額が報告されております。ところが、不幸にして文部省の側においては、大臣政府委員から文部委員全体に至るまで、少しでも満足できるような報告をされたり、報告を聞いたりするような條件に、まつたくないわけであります。こういうふうな傾向は、日本の教育行政の上では、決定的に重大な問題として取上げられなければならないと思いますけれども、文部大臣としましては、こういう義務教育費を含むところの教育行政全体が圧迫されておるという傾向を、どのようにして打破されようとしているのであるか、根本方針を承りたいと思います。
  85. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいま義務教育費は半額国庫負担というお説でございますが、義務教育費は、半額国庫負担ということではなくして、平衡交付金の中に入れられておるのであります。その点は、私は渡部さんのお考えはどうかと思うとお答えいたします。確かに、教育費はこれで満足だとは言えないのです。また平衡交付金に入つた金が、地方が苦しいために、必ずしも教育に使われないというような現状にありますから、それで新しいくふうを今いたそうと思つておるわけであります。半額国庫負担ということには今はなつておりません。それからまた警察予備隊などにたくさんの金がいるから教育費が少くなるということは、私も非常に残念なことと考えますが、日本の置かれている現実が、国内的にも必ずしも平穏でない。すべての人が日本国を平穏にしてくれれば、警察予備隊というものはいりませんけれども、現実はそうなつていないから、苦しくてもそちらに金を使わなければならない。従つてまた教育費が不足になるということは、まことに潰憾なことだと私は思つております。
  86. 渡部義通

    渡部委員 文部大臣教育費が警察費等々のために非常に圧迫されていることを遺憾とされているという点は、私もまつたく同感でありまして、このような傾向を排して日本の教育を拡充発展させるという根本方向に向うために、全努力が拂われなければならないと思います。しかしながら、警察予備隊等をどんどん増設しなければならぬような国内情勢にあるとおつしやるけれども、この点については、私は文部大臣とは非常に意見の相違を持つています。しかしながら、今すぐここでその問題についてどうこうという議論は差控えたいと思いますが、単にそれだけではなしに、警察的な軍事的な予算教育費を圧迫しているというだけではなしに、この警察的、軍事的ないろいろな動きが、教育そのものを非常に困難ならしめている、あるいは教育機能に対して侵害しているという事実が起つているわけであります。きのう自由党の若林君から―事実はあげませんでしたが、若林君によれば、その事実をはつきり持つているという立場から報告し、意見を求められたのでありますけれども、それは軍事基地が拡張されるに伴い、学校機能がいろいろな点で阻害されているという点、たとえば軍事基地のために学校が強制的に移転させられるとか、警察予備隊のために校舎がその方面に横取りされてしまうとかいうようなことであろうと思うのですが、若林君の場合には、軍事基地を拡張するために学校が移転せしめられるとうい現実の問題にぶつかつている。こういう場合には一体どうしたらいいのか。この場合には国家はこの移転の経費を全部負担すべきであるかどうか、また負担するというような考えをもつてこういうことに処そうとしているのかという点を質問されたわけですが、このような軍事基地等が日本の学校機能をいろいろな点で侵害しているということについての大臣の見解を伺いたいと思います。
  87. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は、国内的に警察予備隊を強化しなければならぬとか、また国内的にも軍事基地をつくらなければならぬとかいうような現実に日本が遷かれているという事実のために、いろいろな障害が起るということは、これはいたし方ないことである。けれども、その学校などの場合には、できるだけその障害を少くして、移転などをしないで済むように、できるだけはからつて行きたいという考えでございます。しかし、万一移転をしなければならないときは、できるだけその償いをするとか、そういうような十分な措置を講ずるようにしたいと考えております。
  88. 渡部義通

    渡部委員 大臣のお考えの根本は、いつも置かれている現実の土に立つて教育行政その他の政治が行われなければならないとおつしやるわけです。しかしながら、問題は、日本の教育をどうするかという根本問題にかかわつて来る場合は、置かれている條件をいかにかえて行つて、日本人の教育をりつぱに貫いて行くかという見地から考えられることの方が、私は当然だろうと思うのです。その点について、文部大臣は、いつでも現実がこうなんだからやむを得ないという考えをもつてやられるならば、現に予算の面でも、いつも文部当局考えが貫かれておらなかつたというのは、そういう考えから出ておるのじやないかという懸念をわれわれは持つわけです。そうじやなくて、これこれのことがなされなければならぬとするならば、現実に置かれている状態を、むしろそれをかえても、貫いて行かなければならぬという決心のもとに行政が行われて行かなかつた場合には、それがいつも不徹底に終るのではないか、いつも理想的な方向が貫かれないで終つてしまうのじやないか、私はこういう懸念を持つわけです。その点についてはどうですか。     〔委員長退席佐藤(重)委員長代理着席
  89. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 渡部さんのような方から、そういう抽象論を伺うことを、私は非常に意外とするものであつて、われわれは現実に生きているのですから、現実によつてわれわれが規定されるということは、当然な話であります。しかし、同種われわれが現実を規定する、その両面を持つているのが現実であつて、ただ理想的に、自分はこうやるのだから現実をかえるといつても、そういうことは不可能なことだ思うのです。われわれは、一方においては現実から規定され、他方においては現実を改造して行く、こういう両面を持つているものが、われわれの生きている現実だと思うのです。あなたからそういう抽象論を伺うことは、私は非常に意外とするものであります。
  90. 渡部義通

    渡部委員 私は、むしろ文部大臣がとつておられる立場を表現したのであつて、私自身はそういう考えを持つておるものではありません。私自身からいえば、文部大臣が立つておられる現実というのは、かえられないと思われる現実、現在政府がとつておる政策、立脚しておる、あるいは政府が望んでおるところの、あるいは政府の背後の勢力が望んでおるところの政策、それが現実の政策だというふうに考えるのであつて、われわれ現実と言う場合にはそのような現実ではなくて、日本の国民全体がどういうふうに動こうとしている、また現に動いているのか、何を求めているのかということがほんとうの現実だと思うのです。そういう点から言いますと、それは非常に抽象的で、文部大臣一つの哲学的な立場ですか、そういうものを持つておられるところのものを理想と称したのでありますけれども、現実と申しますと、そういう現在の政府がとつているものが、現実の上に立脚している。その現実というのは政府の要望であり、政府の背後にある勢力の要望であるところの現実なのであつて、日本の国民全体は、そういう方向には現に動いておりません。現に国民全体の動きというものは、たとえば軍事基地にも反対しておりますし、警察予備隊の増設にも反対しておりますし、今日の政府がとつておる一切の基本的な政策の方向に反対しております。これは大多数の国民がそうであります。そういう立場こそが、ほんとうならば発展して行く方向の現実なのであつて、文相がいわれておるところの現実は、現状を押えており、現状を逆転させておるところの現実であるわけです。だから、そういう意味での議論をされるならば、私は議論の方向をまつたくかえなければなりません。だから私は、次にそれならば報告かたがた御質問しますが、たとえばこういう問題が起きております。現に東京大学の工学部で、建築科の全教室が捜索されたという事件が起きております。これは十九日でありますが、この十九日の朝、検察庁関係の者が東大に行きまして、大学当局の何らの了解も得るところなく、小使を立ち会わせただけで、しかも捜索すべき相手の名前も、教室も指摘することなしに、全教室にわたつて捜索が行われた。こういう傾向こそが、今日警察予備隊が増強されたり、軍事的ま基地がどんどんできて行つたり、こういう現実の一つの反映をなしておると思うのです。このような捜索の仕方は、大臣も御存じでありましようが、今までの日本の教育の歴史を通じて、かつてありません。大正十二年でしたか、私たち学生時代に、早稻田大学教室の捜索が行われましたが、その場合には、一つの目星があつて、ある一定の人が指摘されてそうしてそこの教室だけが捜索されたのであります。しかし、今度の場合はそうではなくて、いかなることを捜査するというような何らの表示がなされずに、教授、助教授その他全教室にわたつて、一階から三階まで全部捜索されておる。だれを何の目的のために捜索するということは、一言も述べられていないのです。しかもそれは、大学当局の何らの了解も得ていない。こういうことが行われていることについて、大臣はこの傾向は現状やむを得ないのだというふうに見ておられるのか、現実に印してそれは当然のことだというふうに見ておられるのか、これをお聞きしたいと思います。
  91. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は、その事実を聞いておりませんからして、何とも判断をいたすことはできません。もし御必要ならば、事務当局からお答えをいたさせます。
  92. 渡部義通

    渡部委員 こういう事実さえ起つておるときに、その事実を聞かれていないということが、むしろ大臣としてはなはだ事実に通じていないといわざるを得ないと思うのです。これほどの重大な事件は、いまだかつてありません。またこれほど無法な捜索は、いまだかつてありません。こういう事実があつたことは確実であります。あつたとすれば、これに対してどういうふうな考えを持つておられるかということを聞きたいのです。
  93. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 事実をよくせんさくしないで判断をするということが、私は一番百悪いことだと思つております。また事実をよく聞いておらないから、判断をしないのがよいけれども、今申すように、御必要なら政府委員からお答えをさせます。政府委員は知つておる。
  94. 稻田清助

    稻田説明員 お話のようなことを耳にいたしましたので、東京大学に照会いたしましたところ、確かに十月十九日の朝、警視庁と本富士署から警察官が参りまして、令状を示して工学部の建築学科の教室、その他附属建物を捜査するということで、学校に参つたことがあるのであります。それにつきまして、工学部の事務長は外一名の立会いの上で三、四十分捜査いたしました。別に何ら証拠物等を持ち帰りもしないで帰つたということであります。大学関係者といたしましては、刑事関係の法令に基く令状を示し、その責任者であるということを認識せしめて、こうした権限を行使いたしました場合、それに従いまして捜査せしめた次第だと申しております。
  95. 渡部義通

    渡部委員 それは大学学術局長に対する公式の報告ですか。
  96. 稻田清助

    稻田説明員 問合せに対します答えであります。
  97. 渡部義通

    渡部委員 これはそこに立ち会つた人の報告によれば、多少違つております。大学当局では、事前には何らの了解を與えてもおらないし、留守中になされております。小使だけを立会わせてなされておるのであつて、南原総長も、この点については非常な不満を、公然と漏らしております。また教授たちも、これは非常に不法な、かつ乱暴な捜査方法である。名前も示さずに、たれそれにどういう犯罪容疑があるということさえも示さずに、全建築単科教室にわたつて捜索したということを、はつきり明言しております。従つて事務局長あるいは事務長がこれに了解を與えた上でやられたということも間違つておりますが、それよリもつと根本的な問題は、だれに対するいかなる容疑によつて捜索するという、何らの目標も示さずに捜査したという事実であります。こういうことは報告されていませんか。
  98. 稻田清助

    稻田説明員 あらかじめの予告はなかつたようであります。そこに参りましたときに正式の令状を示した。ただ捜査中のことでありますから、いかなる捜査容疑で、いかなる捜査目的があるかということは、建物管理者といえども、これを聽取できない状況にあつたと考えます。
  99. 渡部義通

    渡部委員 いろいろ捜査の場合には、必ずだれそれについて何々の容疑によつて捜査するということが明記されてあるはずであります。ところが東大工学部の場合には、それが何ら明記されてありません。このような形でなされたという報告があつたのかどうか。
  100. 稻田清助

    稻田説明員 私の聞きました範囲におきましては、そういう点についての説明はなかつたと聞いておりますが、なお、さらに詳細状況は調査いたしたいと思います。
  101. 渡部義通

    渡部委員 事実は、先ほどから繰返して申しましたように、だれそれという指定はないということが、今日確認されております。それからどういう目的でということもありません。ただ工学部全体が突如として警官隊に襲われて捜索せられたということだけが真実であります。従つてこういう事柄が行われるということは、これはまつたく法律さえも無視した乱暴きわまることであつて、いまだかつて日本の教育史上には、こういうことはありません。これほど重大な問題が起きているときに、政府委員から文部大臣にさえも報告されておらない、しかももう十日以上もたつておるということに問題があると思うのでありますが、なぜそれを大臣に報告されなかつたか。
  102. 稻田清助

    稻田説明員 私はその話をけさ聞きまして大学に聞きただしたわけでございます。まだ大臣に申し上げるいとまがなかつたわけでございます。
  103. 佐藤重遠

    佐藤(重)委員長代理 まだたくさんございますか。
  104. 渡部義通

    渡部委員 いろいろございますが、この問題だけを進めたいと思います。
  105. 佐藤重遠

    佐藤(重)委員長代理 なるべく簡潔に、結論をお急ぎください。
  106. 渡部義通

    渡部委員 それで大臣、実際これは、日本の教育史上にないほどの重大問題であつて、しかも今日の一つの特徴を現わしていると思います。到るところでこのような形で捜索が行われております。ある地方なんかでは、警察官が無記名の逮捕状の紙を持つてつて、つかまえると、そこでその人の名前を書いて逮捕するということまでも行われておるわけであります。これはまつたくフアツシヨ的なやり方であるということは、文部大臣もはつきりと御認めになると私は確信します。このようなことが大学にさえも行われ出したという事実があるわけで、この情勢こそ、私たちはどうしても押えなければならぬ。こういう情勢を押えるごとなしには、大学の自治とか、学園の自由とかいうことを百万ぺん唱えられたとしても、そんなことは何の意味もありません。従つて私は、この問題も大臣が根本的に明らかにされると時に、この問題についての大臣の決定的な意思表示を求める必要があると考えるわけであります。大臣はこの問題を調査された上で、いかにこの問題が重大な意義を持ち、日本の教育史上にないほどフアシズム的な乱暴なやり方が、すでに学園内にまでも及んでいるんだという事実を朗らかにした上で、これに対する処置、あるいは声明なりを出される考えがあられるかどうか、この点をお伺いしておきます。
  107. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 大学は今自治になつておりますから、それほど重大なことならば、当然学長が私に報告をされるはずだと思つております。私は一言も学長から報告を聞いておりませんのですから、それに対して今何という考えもございません。
  108. 佐藤重遠

    佐藤(重)委員長代理 時間もないようですが、いかがでしようか。
  109. 渡部義通

    渡部委員 それではこの問題は委員長に望んでおきますが、法務総裁を呼んでいただきたいと思う。これは法務関係であると同時に、日本の教育の上で、最も根本的な問題を含んでおります。なお大臣に対しては、いろいろ質問したいところがあるわけですが、近日中ずつと出てもらうことができるでしようか。
  110. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私はいとまさえあれば出て参ります。ただ私はこういうことを御了承願いたいのです。もう通日何でもやつていて―たとえば明日ロツクフエラー氏に会うことになつております。一体ロツクフエラー氏に会つて、どういう話をしよう、どういうことを研究しようというようなことも、さつぱりしにくい。頭がぼやけてしにくいのです。大臣をそういうふうなことにするのはどうかと思う。おとといも日教組の諸君が文部省にとまり込んで、夜中にしよつちゆう連絡を受けて、夜中出て来い、朝は五時半から起されて一そういうことをしておつて、はたして文部大臣として仕事ができるものか。どうか渡部君においても、一応御考慮をいただきたい。
  111. 松本七郎

    松本(七)委員 時間がたいへんおそいのですが、二点だけ大臣に伺つておきたいと思います。  義務教育費の確保については、非常に苦労されておるのですが、先ほど荻田さんのお話を聞いていても、結局文部当局が何か手を打とうとすれば、現在のあらゆる制度で壁にぶつかつて、地方財政の方は、これはまかりならぬという、そういうことを今後どうやつて打開したらいいかということを考えてみる必要があるじやないかと思う。現在でも、はたしてそういういろいろな案を出しては、向うになるべく納得させるような行き方で行くのか、それとも、地方財政のあり方というものを教育方面から考え相当矛盾があると思うのですが、それを根本的に地方財政の制度自体を改めろというような要求をひつさげてやられるのか、それとも一応は地方財政の建前はそのままとしながら、そのわくの中でできるだけ義務教育費を確保する努力をされようとするのか、その点を伺つておきたい。
  112. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 そういう点については、文部省立場は非常にむずかしい立場にある。いわば何にも権利がなくて義務ばかりしよつておるというような、そういう非常に不備なものがあると思う。けれども、今お尋ねになつた点については、現在そういう制度が歳り立つているのですから、できるだけ誠意をもつて向うの了解を経て、そうしてやつて行きたいという考えでございます。
  113. 松本七郎

    松本(七)委員 それからもう一つ。これは文部大臣が参議院で言われたことだと思いますが、何か天皇が道徳の中心だというようなことが新聞に出て、これが各方面に相当反響を呼んでおる。中には誤解もあるようですし、はたしてどういう意味か、その真意を明らかにしていただきたい。
  114. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は、国家の中心は、何だと問われたのです。国家の中心が何だと問われると、やはり私は、日本では天皇ということになる。けれども、天皇が中心でも、それを宗教的中心と考えてはいけないと思うのです。いわゆる崇拝の中心と考えてはいけないと思うのです。それからまた、天皇を権力の主体と考えてもいけないと思う。そういう考えを排斥して、今後あるいは起るかもしれない、そういう天皇を崇拝する考え、天皇を権力の主体とする考えを排斥して、そうして天皇は親愛の中心であるというふうに考えるべきものだと思うのです。親愛ということは、道徳のカテゴリーでありますから、それで滋徳的は中心と考えるべきだ、こういう考えを持つておるわけであります。繰返して申しますれば、そういう意味で道徳的であつて宗教的と考えてもいけないし、権力的と考えてもいけない、そういう考えでございます。
  115. 浦口鉄男

    浦口委員 実は私もその問題についてお尋ねしたいと思つていたのですが、時間がないので保留したわけであります。これについては私も私の観点があるのです。ということは、国家の道徳的中心は天皇であるということは、十月十五日の参議院の本会議の演説も、私直接お聞きしたのであります。それは非常に問題だという野次が大分出ておつたのであります。私も別な意味で非常に問題だと思うのでありますが、これは大臣もいろいろお仕事で頭がぼやけているとおつしやいますから、いずれ疲れがおなおりになつてからひとつお聞きしたいと思います。私もまた私なりに一つ意見を持つております。ということは、これについて私資料を忘れて来ましたが、十月十七、八日ごろの毎日新聞と思いますが、記者との一問一答を新聞で拝見いたしました。ところが天野文部大臣は、元来自分は、皇室とか、天皇についていろいろ論議することは好まないという御意見が出ていたのです。これはお言葉そのままかどうか知りませんが、私は、こういう前提に立つて、結論だけを天皇が道徳の中心だということを申されるところに、非常に大きな誤解があると思う。ということは、かつて戦争前から戦争中でありますが、われわれは天皇研究ということを言うた。ところがこれが当時の内務省あるいは特高から、天皇に対して研究という言葉を使うことそのものが不敬だと、たいへんしかられた経験を持つておるのでありますが、われわれはやはり研究をしなければ、実体がわからない。先ほどもおつしやるように、天皇はただ宗教的に無批判に、あるいは権力の主体としてあるいは伝統だからというふうな抽象論でなしに、やはり研究すべきだ、そうして合理的に尊敬すべきものは尊敬すべきだという主張に立つてわれわれは天皇研究をしようということをよく申したのであります。当時それが非常に弾圧されたという経験からいいまして私は文部大臣の言葉をとらえるわけではありませんが、皇室、天皇に対してあまり論議することは好まないということは、私どもとしては、ちよつと納得が行かない。この問題は時間がございませんので、いずれ機会をあらためてゆつくりお尋ねしたいと思います。その点を一言申し上げておきます。
  116. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 これは確かに私も非常に問題だと思つております。天皇の地位というものを何か隠してしまつて、漠然とあごがれの象徴だとか言つたつて、だれもわかつている人はいないと思う。だから私はそれを明らかにすることがいいと思います。現に私は「今日に生きる倫理」という私の著書の中で、天皇の性格というものを明らかにしております。けれども、みだりに天皇の論議をすることは、私は好まない。けれども、問われたから、ことに中心という言葉に私はちよつと疑問を持つたのですけれども、問われたからそう害えた、こういうことなのであります。それからあの毎日の標題に、道徳の中心とありますが、私はどうも、これは理解されないかもしれませんが、道徳的中心ということと、道徳の中心ということとは、私などは全然違つておると思う。道徳的ということは、道徳的意味を持つた中心ということであつて、道徳の中心というと、そこからすべての道徳が出て来る、こういうところで違つておるのであります。私はそういう道徳的性格を持つた中心という意味で述べたのですが、これは普通にちよつと、了解しがたいことのためでございましようか、あの毎日の標題でさえ、道徳の中心となつております。しかし人によつては、これを道徳の中心というふうに考えても、それも一つの理論だと思つております。
  117. 浦口鉄男

    浦口委員 その論議は、先ほど申し上げた通りやめることにいたします。ただ国民実践要綱というものをお出しになる、これもやはり天野文部大臣個人の立場においてお出しになるということが、たいへんな誤解を受けておるわけでありますが、これを最近お出しになる御予定なつておるのでありますか、その点をお伺いして質問をやめます。
  118. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は何かそういうものを出してそれで何でも解決してしまおうと思つておるわけでは、ございませんが、しかし非常にそういう要望が強いのです。だから、出したからといつて、何も害ということはないだろうと思つておるのです。世間には害があると言う人があります。しかし、これを押しつけがましくないように出すには、何を主体としたらいいかということを、非常に苦労して研究してみました。天皇というわけに行かぬことはもちろんですが、内閣総理大臣ということではどうかというと、やはり私の印象では、何か押えられるような気がする。それならどうしたらいいかということを文部省事務当局研究してもらいましたら、文部大臣天野貞祐と出したがいい。けれども、その際に、これが訓令というようなことになると、それを押しつけるということになるから、訓令とはしないが、文部大臣天野貞祐で出す。それで、言葉がないものだからそれを個人というような言葉で言つたわけです。訓令でなく出す、そうして人の参考に供する。しかし、私」はその後、それでも出す主体ということは、まだ一応研究する必要があると思つて、なお研究いたしておりますが、要するに、押しつけがましくなく、ただ人の参考に供そう、しかもその内容も、何人といえども承認するようなことです。たとえば、個人といえば人格の尊厳であるとか、社会といえば責任であるとか輿論であるとか、そういうことを体系的につくり上げて、従来のようにただ読み上げるようなものでもなければ、憲章のようにただ條項をあげるだけでもなくして、人格の
  119. 渡部義通

    渡部委員 今言われた、天皇が国家の道徳的中心であるということが、歴史的にも現実的にも、私としては非常に疑問を持つておりますので、この点については、私は一人の科学者として、今後も徹底的にここで意見を交換したいと思うのです。それはつい先ほど申しました精神的な方向という意味では、決定的な意味を持ちます。きようはそれを申し上げる時間がございませんから、申し上げませんけれども、大臣構想の中にできているものが、ある程度成文化されておるとか、そういうことになつておりますか。
  120. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は「今日に生きる倫理」のうちに誤いおりますけれども、これは私が一私人として誓いたものですから、今日の立場では少し違う。違うというのは、あれまで書いたものです。
  121. 渡部義通

    渡部委員 結局それを世間では、文部大臣の実践要綱という形で漠然と伝えられておるわけですが、実践要綱なるものの原案的なものができておるとすれば、これを発表される前に、これは日本文教の中心とも見られ、根本精神ともなると思われますので、文部委員会にこの点について諮られるという御意思はあるわけですか。
  122. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私はそれが私個人の考えではいけないから、委員会に諮るうと思つております。国会に諮るということは、まだ考えておりませんが、よく研究をいたしてみます。
  123. 渡部義通

    渡部委員 国会は軍に予算面を云々するというだけではなしに、文部委員会は文教一般の根本的な方針について検討を加えるという性格を持つている。従つて全国民の前に公表されるような性質のものであるとすれば、全一国民の代表だといわれている国会の文部委員会に、やはりこれを見せていただいて、こういう精神的な根本方針についての検討もぜひ文部委員会ですべきものだというふうに私は考えるわけでしてこれをぜひ国会の方にも、草稿ができておるならば、大綱でもいいわけですから、ぜひ出して見せていただきたいと思います。
  124. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 承つておきます。
  125. 佐藤重遠

    佐藤(重)委員長代理 ちよつと委員長から申し上げます。先ほど松本七郎委員より御要求がありました行政整理の問題に関して、内閣委員会に連合審査の申入れの件でありますが、内閣委員長と協議の上、日時を決定した上で申入れの決議をすることにいたしたいと存じますが、御了承を願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時十二分散会