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1951-11-16 第12回国会 衆議院 農林委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十六日(金曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 河野 謙三君 理事 野原 正勝君    理事 松浦 東介君 理事 小林 運美君       宇野秀次郎君    遠藤 三郎君      小笠原八十美君    小淵 光平君       川西  清君    中馬 辰猪君       幡谷仙次郎君    原田 雪松君       平野 三郎君    八木 一郎君       大森 玉木君    吉川 久衛君       坂口 主税君    足鹿  覺君       石井 繁丸君    竹村奈良一君       横田甚太郎君  出席政府委員         農林政務次官  島村 軍次君         農林事務官         (蚕糸局長)  青柳 確郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   佐竹  浩君         参  考  人         (全国養蚕販売         農業協同組合連         合会会長)   関根 久蔵君         参  考  人         (全国販売農業         協同組合連合会         参事)     小林繁次郎君         参  考  人         (日本製糸協会         副会長)    高田 利七君         参  考  人         (日本製糸協会         常任理事)   石橋治郎八君         参  考  人         (横浜生糸輸出         協会理事長)  西本勇次郎君         参  考  人         (横浜生糸問屋         協会会長)   川口 正一君         参  考  人         (全国桑苗協会         会長)     今村 輝男君         参  考  人         (中央蚕糸協会         会長)     吉田 清二君         参  考  人         (横浜生糸取引         所理事長)   石黒 武重君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君 十一月十六日  委員大野伴睦君、今井耕君及び金子與重郎君辞  任につき、その補欠として中馬辰猪君、吉川久  衛君及び大森玉木君が議長の指名委員選任  された。     ――――――――――――― 十一月十五日  農業改良局及び都道府県農業改良課拡充強化等  に関する請願菅家喜六紹介)(第一三〇〇  号)  信濃川左岸水利改良事業促進に関する請願(  田中角榮紹介)(第一三〇一号)  鷲津町及び新所村地先浜名湖埋立に関する請  願(中村幸八君紹介)(第一三〇二号)  動植物検疫所庁舎新築等に関する請願大石ヨ  シエ君紹介)(第一三〇三号)  食糧事務所職員行政整理反対に関する請願(  武藤嘉一紹介)(第一三〇四号)  同(福井勇紹介)(第一三七九号)  同(田中伊三次君紹介)(第一三八五号)  新宮地内開田工事促進に関する請願山口武  秀君紹介)(第一三〇五号)  鉾田町及び新宮地先干拓えん堤補強事業計画  に関する請願外一件(山口武秀紹介)(第一  三〇六号)  埴生浦干拓工事施行請願周東英雄君外一  名紹介)(第一三七八号)  牧野造成費全額国庫負担等に関する請願千賀  康治紹介)(第一三八一号)  農業災害補償法の一部改正に関する請願三宅  則義紹介)(第一三八二号)  農林統計機構確立に関する請願川島金次君紹  介)(第一三八三号)  上郷村の供米に関する請願三宅則義紹介)  (第一三八四号)  農林漁業資金貸付に関する請願三宅則義君紹  介)(第一三八六号)  積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法に関する請願  (大内一郎紹介)(第一四一六号)  米麦統制撤廃反対請願三池信紹介)(第  一四一七号)  同(井上良二紹介)(第一四二一号)  同(井上良二紹介)(第一四二三号)  同(井上良二紹介)(第一四二五号)  同(吉川久衛紹介)(第一四二六号)  同(井上良二紹介)(第一四二七号)  同外十八件(井上良二紹介)(第一四三六  号)  国営林道開設促進に関する請願坂本泰良君紹  介)(第一四五一号)  労務加配米廃止反対に関する請願上林與市郎  君紹介)(第一四五四号) の審査を本委員会に付託された。 同日  広葉樹利用施設拡充対策に関する陳情書  (第八〇一号)  積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法に基く農業振  興計画推進に関する陳情書  (第八〇二  号)  都市に於ける農地調整法適用の緩和に関する陳  情書(第八〇  三号)  農地事務局存続に関する陳情書  (第八〇四号)  農地拡張及び改良事業費大幅増額に関する陳  情書(第八〇五  号)  装蹄師免許制度存続に関する陳情書外一件  (第八〇六号)  国営小瀬田開拓地区内杉造林地帯存置に関する  陳情書外一件  (第八〇七号)  日本茶業復興伸展に関する陳情書  (第八〇八号)  砂糖法制定に関する陳情書  (第八〇九号)  生鮮食糧品卸売市場法案に関する陳情書  (第八一〇号)  北陸寒冷単作地帯に於ける農地事務局廃止反対  の陳情書外十三件  (第八一一号)  土地改良及び災害復旧事業等促進に関する陳  情書外十三件  (第八一三号)  亘理国営農業水利改良事業実施に関する陳情書  (第八一四号)  農産物検査員行政整理に関する陳情書外八件  (第八一五号)  町村農業委員会書記に関する費用国庫負担等に  関する陳情書  (第八一六号)  農業改良普及事業拡充に関する陳情書外一件  (第八一七号)  主食統制撤廃反対に関する陳情書外八件  (第八  一八号)  農業改良普及事業拡充に関する陳情書  (第八七五号)  同  (第八七六号)  同  (第八七七号)  同  (第八七八号)  同  (第八七九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長選任に関する件  繭糸価格安定法案内閣提出第三一号)     ―――――――――――――
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  繭糸価格安定法案を議題といたします。昨日の委員会においてお知らせ申し上げましたように、これより繭糸価格安定法案につきまして、利害関係者学識経験者より参考意見を承ることにいたします。  この際参考人として御出席いただきました各位にごあいさつ申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらずおいでをいただきまして、まことにありがとうございます。御承知のように、つとに各界から生糸輸出増進及び蚕糸業経営の安定をはかるために、繭及び生糸価格の安定の措置要望せられておつたのでありますが、今般ここにこの法案として政府より提出せられて参りました。本委員会は連日本案について慎重なる審議を続けておりますが、本日は本案に密接な利害関係を有せられる方々蚕糸業に深い経験を有せられる方々の御意見を承り、本案審議に資したいと思つた次第でございます。どうか各自のお立場から、十分忌憚ない御意見をお述べになりますよう希望をいたします。  それではこれから御意見を承ることにいたしますが、発言委員長の御指名によりましてお願いいたします。昨日は二十分以内において簡潔にお願いいたしたいということを願つておりましたけれども、今日は開会の時間その他いろいろな都合上から、できれば十分ぐらいに短縮をせられまして、特に要点に関する御発言を願いたいと思います。  なお一応全部の御意見を聞きました上で、委員各位よりの御質疑を願うことにいたします。  それではこれからお願いいたします。関根久藏君。
  3. 関根久藏

    関根参考人 繭糸価格安定法につきまして意見を求められましたので申し上げたいと思うのであります。  私ども養蚕業者を初め、製糸業者国内生糸生産関係の皆さんの一致した考え方、また海外におきましても、あらゆる消費国におきまして一致して要望されました日本糸価安定の問題は、その後いろいろ御配慮を得まして、今般繭糸価安定法として議会に御提案になりましたことは、まことにわれわれ業者といたしましてありがたいことであり、厚くその点につきまして敬意を表する次第であります。糸価安定法の問題が登場して参りましたときにおきまして、われわれ養蚕業の者といたしましては、この法案糸価を安定すれば、繭価の安定になる、かような考え方のようであつたのでありますが、とにかくそれのみをもつてしてはなかなか当初の目的は達し得られない、従つてこの安定法繭糸価安定法とせられたい。またこの繭糸価安定法のみをもつてしては、なかなか繭の増産養蚕業の進展ということは期し得られない。そこでこの法律と相並行しまして養蚕業振興をはかるために、これが最も根幹をなします第一資源であります桑園の維持拡充の問題を特にお考えを願いたい、それと同時にこの増産基礎をなします技術員の問題、技術改良の問題について特に御配慮を得たい、かようなことを養蚕業者としては政府意見を具申したのであります。糸価安定の問題が一にかかつて繭の増産をはかり、国内養蚕経営基礎を安定させ、従いまして農家経済の安定をはかり、それと同時に海外消費がそれに伴つて行くということでなければ、これはとうてい目的を達し得られるものでないことはまた御承知通りであります。いかにわれわれの方の経営が成り立つても、外国で買わなければこれは問題になりません。私はそのように実は考えておるのであります。要は養蚕農家生産費を保障され、これに加工する加工業者がその加工賃をとり、合理的な価格によつて海外に売るということでなければならぬと思うのであります。国内におきまして製糸家が繭を安く買い、あるいは養蚕家製糸の方に損をかけても高く売るのだ、こういうことではいかにこれが国家の事業であろうとも、内々の問題になろうと思うのであります。買手の方から行けば安く買いたいのは当然であります。また売手の方から言えば高く売りたいのは当然でありますが、とにかく繭の生産費が保障され、国内のそれの加工業者がやつて行け、その上で外国に買わせるようにしなければならぬと思うのであります。そこで本来ならば、この糸価安定は相当金額をもつて考えて行く必要があるのではないかと思うのであります。三十億と申しますれば、かりに十六万円するとして二月の生産量であります。かろうじて二月の生産量が買えるにすぎない。この二月の数量をもつて下値がささえられるとはなかなかもつて考えられない。糸価安定法の元をなしますその基金一つの営業の資本金ではないのであります。異常な場合に押える方法なんであります。欲を申しますれば、三十億が五十億になり、あるいは八十億になり、非常なたくさんな金額で、しかもその金を動かさないで当初の目的を維持できるようなことが理想的であろうと思うのであります。しかし現在のわが国財政状態におきましては、なかなかそれも困難であつたようでありますが、その問題が私は最も重要な問題であろうと思うのであります。三十億にしてもできないよりもできた方がいいのであります。そこで現在の御提案になつております法律案につきましては、われわれの方といたしましては全面的に賛意を表するものでありますが、将来におきましてこの基金増額と、それから繭が異常に低落した場合に云々ということがあるのでありますが、これは目先のことにおきましては、糸価に比べて異常に繭価が開きがあり、下るということは現実の問題としては近くは起らないと思いますが、万一さような場合が起つたときは、これも具体的な措置考えなければならぬと思うのであります。その具体的の措置といたしましても、これは金の伴います問題でもありますので、現状のところではなかなか困難のようでありますが、それらの点につきましても、将来お考えを願いたいと思うのであります。要はこの始まる時期の問題であろうと思うのであります。いかに審議会を設け、農林大臣価格を決定するといたしましても、海外状態が安いときにおきましては、なかなかそれに飛び離れた理論的な値は決定できないと思うのであります。一日も早くこの法案をおきめ願いまして、早くその基準価格なるものを御設定願い、そして全体の日本輸出増進わが国養蚕業伸展をお願いしたい、かように考えております。結論的に申し上げますれば、今の法案につきまして賛意を表するものであります。
  4. 千賀康治

    千賀委員長 ありがとうございました。  次に小林繁次郎君にお願いします。
  5. 小林繁次郎

    小林参考人 繭糸価安定法案につきまして、養蚕農民立場において、ただいまの全養連関根さんと多少見解を異にいたしますが、私の意見を申し上げます。この点につきましてのわれわれの意見を申し上げるについては、今日までの多少の経過もつけ加えて申し上げれば、われわれの主張が非常に明確になるかと思いますが、限られた時間でありますので、なるべく要点だけを申し上げたいと存じます。  当初繭糸価格安定法案ということになりますまでに、糸価安定法案の姿においてこの問題が出て参りました。もちろん生糸の国際的な性格から見まして、糸価の安定を確保して行くという御趣旨はわれわれもまつたく同意をいたすわけでありますが、しかし問題点は、単純な糸価の安定だけでほんとう意味において目的が貫徹できるか、われわれ養蚕農民立場おいては、この点が一番問題になつたわけであります。従つてやはり糸価の安定を確保いたしますためには、最高最低安定帯を設けるという基礎として繭価の安定を確保しなければならぬという見解に立ちまして、先ごろ来全養連あるいは全乾連等の各団体ともいろいろお話合いをし、国会あるいは当局に対しましても、繭価安定の方策をはつきりさせていただきたいということをいろいろお願いしたわけであります。そういう経過に伴いましてか、現在の繭糸価格安定法案としては第十条のあの規定等も出て参つたようでありますが、しかしこの条文そのものを拝見いたしますと、やはり非常に問題があいまいになつておりまして、これではたして養蚕農家として要望いたした繭価の安定を確保できるかどうか、従つてその基礎の上に立つべき糸価安定のほんとう意味の確保ができるかどうかということにつきまして、非常に不安を感じているわけであります。条文内容そのものからいたしましても、繭価の異常な低落についてというような字句等もあります点が、さらにわれわれの不安を助長しておるような感じがいたすわけでります。従つてわれわれといたしましては、先ごろたまたまありました農民大会におきましてもこの問題が論議されまして、これまたいろいろの機会に陳情等でお聞取り願つておると存じますが、三つの点をこの法案の中において解決していただきたいということを申し上げておつたのであります。一つは、糸価最低値繭生産費を保障することを原則としていただきたい。第二点は、糸価制低値中に占める原料繭の割合を七七・二%にしていただきたい。これは今までの農林省その他の数字によつての基準であります。それから第三点といたしましては、繭価を保障するために政府最低価格による繭の売渡しの申込みに応じて買上げを行つていただきたい。こういう三点の問題をわれわれの考え方として各方面にお願いをしておつたのでありますが、ただいま申し上げます現在の法案の第十条の中におきましては、実質的にはこれらの要請が取入れられたとは言えないのではないかという見解を持たざるを得ないのであります。従いましてわれわれといたしましては、あらためてこの際各方面方々にお願いしまして、冒頭申し上げます繭価安定の基礎の上に、ほんとう意味糸価の安定を確保するような姿におきましての本法案内容完璧化をぜひともお願いしたいと考えるわけでございます。われわれが主張いたしますこの繭の最低価格による買上制の点が万一措置されない、あるいはこの法案の中におきまして明確な措置として明示されていないというような姿において推移される場合、万一今後糸価低落を来したような場合におきましては、これは現在われわれが繭価協定等の実際にやつております姿から見まして、養蚕農家にとつては非常に困つた状態が発生しはせぬか。何と申しましても一般農業形態といたしまして非常に零細な姿でございますし、また現在の取引慣行等から考えましても、しかる場合におきまして、なかなか一般工業生産品原料取引と同じような姿においてこの繭の取引というものができて行く姿になつておりませんので、そういう点を考えますと、どうしてもこれは最低価格による買上げ措置というものをぜひとも実施に移していただかなくてはならぬ。特に今回の生糸最低買上げ制度の裏づけになります予算等の問題も、伺いますと非常に少額である。ただいま申し上げますような万一の姿に相なりましたときには、価格低落が繭の生産農家の犠牲の姿において処理されざるを得ないということに相なつて参りますと、先ほど来申し上げますような、生糸ほんとう意味の安定というものも確保できませんし、この法案の大きな趣旨といたされております養蚕経営確立も、従つてまた生糸輸出増進の根本的な目的も果し得ないような姿になりはせぬかという点を考えておるわけであります。ただ買上制という問題は、簡単に口で言い得ましても、実際問題としまして非常な困難が伴うという点もいろいろと言われるのでございますが、これはこの法案の真にねらう目標というものが絶対的なものであるかどうか、ぜひともこれをしなければならぬものかどうかによつて、その措置対策はおのずから生れて来なくてはならぬ、また生れ得るであろうということをわれわれとしては確信いたすわけであります。  以上簡単に要点のみを申し上げまして、私ども意見の発表にかえる次第であります。
  6. 千賀康治

    千賀委員長 次は高田利七君。
  7. 高田利七

    高田参考人 私どもが数年来この種の法案の実現について要望しておりましたのが、今般いよいよ国会においてお取上げ願う運びになりましたことは、一製糸業者立場としてだけでなしに、蚕糸業者全体の立場から見て、また日本全体の国民の一人としての立場から見ても、非常に喜ばしいことと感謝する次第であります。  私どもがこの糸価安定制度というものが必要であるということを痛切に感じ、これを要望して参りましたその本旨は、決して単に一業者、一企業体利害だけで要望して来たのではない、これは蚕糸業全体のために、また日本国際貿易に寄与する大きな意味から見て、このことが最も正しいことであり、望ましいことであるという考え方から、強く今まで要望して来たわけであります。このことは、申すまでもなく、生糸並びに絹製品というものの使命貿易商品であるというところに重要な意義を持つているのだということからして、何といつて海外要望にこたえるということが、生糸並びに絹製品使命を果すゆえんであると思います。  本年のロンドンにおける国際絹業会議、また昨年の会議、一昨年の会議などで、海外のすべての業者要望しておるところが糸価安定、糸価さえ安定してそれにその他適当な宣伝とか、適当な方策が伴うならば、絹については、たといくつ下の原料としての分野を大部分失つた今日といえども、今後相当大きな需要も喚起できるものだ。絹の将来というものは決して捨てたものではない。ぜひこの糸価を安定してもらいたい。特に最近においては、絹の競争繊維であるところの人絹が、昨年を通じて見ましても、朝鮮事変が起き、アメリカにおいてかなりの物価変動があつたときでさえ、七十一セントから七十八セントぐらいまでしか動いていない。わずかテン・パーセントしか動いていないのに比べて、絹の価格変動がはげしい場合は、もう絹についての今後の需要はだんだん減る一方である。ぜひこれを安定しろ、こういう要望が歴年強く叫ばれておつたのであります。従つてこれをその主要生産国たる日本において、制度として実現して行くことが何よりも大事である。そのことが絹の将来というものの生命を大きくして行くものである、こういう立場から、糸価安定制度を望んで来たわけであります。これさえ実現するならば、養蚕業も安定する、製糸業も安定する、絹についての輸山業も安定する、そして日本全体としての外貨獲得にますます貢献する、こういう建前、そういう考え方をとつて来ておるのであります。従いまして、安定という本旨にできるだけ沿うようにこの制度がつくり上げられることが望ましいのであります。その安定ということは、ここの考え方のように下値上値をつくり、その下値ほんとうに強力な下値であり、上値が強力な上値であることが望ましいと思う。一製糸業立場下値を保証してもらう、上値は、もし海外が買いつくならば幾らでも高値で売れば、それは利益がよけいになるからいいじやないかというような小乗的な、目先的な考え方を私たちはしているのではないのであります。上値も強力に押え、下値も強力に押えることによつて糸価が安定する。そのことによつて海外需要が大きく増進する。それで蚕糸業が安定し、発展するものである。そのことが日本貿易の上において、外貨獲得の線に大きく沿うものである。こういう考え方からいたしまして、長い将来を通じて完全に理想案だとは思いませんが、現状といたしまして、この法案には原則的に私ども賛成をするものであります。なおでき得べくんば、今申しました上値の強い線、上値制限、また下値制限というものを、この法案以上に強く線が引かれることが望ましいとは存じますが、大体において、この法案趣旨賛成をするものであります。  今安定ということが必要だというその考え方からいたしますと、この値幅があまりに広くなることは、これは安定を口にとなえながら、実際は安定しないということになるわけであります。ことしのロンドン会議において、海外の大部分業者が一致して要望いたしました三ドル八十セントという価格水準そのものは低過ぎるとは思います。これはそれぞれにおいて今後検討されて、適当な水準を見出すべきだと思いますが、そのときにつけ加えられました値幅として、上値一割、下値一割という上下の幅が望ましいものとして海外も決議したようであります。最も大事な顧客としての海外希望も、できるだけ値幅は狭めてあることが望ましいという意味を強く現わしているものだと存じます。私どもも目先的な損益という問題は超越して、本制度趣旨を徹底する意味において、できるだけ値幅は大きくならないように、狭くきめられることが望ましいということをつけ加えて申し上げる次第であります。理想論としてつけ加えて要望すべき点は、これは考え方によつていろいろ出て来るわけでありますが、この場合は、大局論として以上の意見を申し述べた次第でございます。
  8. 千賀康治

    千賀委員長 次は日本製糸協会常任理事石橋治郎八君の御発言を願います。
  9. 石橋治郎八

    石橋参考人 製糸立場から御意見を申し上げたいと思います。  先ほど高田君からお話がありましたが、御承知通り、わが蚕糸業は戦時中統制経済に置かれましたために、きわめて安定をいたしまして、いずれも相当の成績をあげておつたのでございますが、二十四年の五月をもつてこれが自由経済になりましたために、御承知通り糸価は、十四万五千円のものが一挙に九万五千円にまで低落いたしたのであります。それが今度は政府が三万俵買い上げるということによりまして、ただちに回復をいたしまして十月にはそれが十六万五千円、公定価格を上まわる非常な高値に相なつたのでございます。かような関係で、自由経済に置かれまして以来、この糸価の暴騰、暴落が非常にはげしくなつて参りました。そういう関係からいたしまして、海外の状況はどうかと申しますと、一般の化学繊維は半年ないし一年くらいは一定している、しかるにわが生糸は非常な波瀾で、実際投機的な形になつて海外業者は安心してその業務につくわけに行かないということで、そういう方面の国際的な関係からも、一日も早く日本糸価安定を要望する、これは国際会議においても言われております。また日本養蚕業者も、製糸業者も、いずれもこの業に関係のある者は、一日も早くこの糸価の安定を要望いたしておつたのであります。しかるにここに繭糸価格安定法案が上程されまして、今日ここで審議をされることは、われわれ業者としてまことに喜びにたえないのでございます。この問題についていろいろ御議論がありますが、要するに先ほど申し上げましたように、政府の声明によつて、三万俵買い上げるということによりまして、それが十六万五千円になつたわけでありますから、政府の力によつてこの糸価安定ができれば、われわれが理論として言うよりも、実際の力は非常に大きな力を持つのではないかと思います。でありますから、この三十億円をもつて糸価の安定ができる。われわれは要するにさような関係をもつてこれが五十億、六十億の大きな金額要望するのでありますが、今日のわが国の財政関係から行つて、それができないといたしましても、現状におきまして生糸を買い入れるということになりますれば、一般的な繭の価格も安定するということでございますので——もちろん理想としては繭の買上げもけつこうでございますが、この金額においてはその理想が達成できないために、一応ここで適当な買入れをして、一般に安定させるという目的に向つては、私はおそらく貫徹されるのではないか。ことに現在の需給関係におきましては心配ない。でありますから、一日も早くこの繭糸価格安定法案によつて業界が安定するようにお願いしたい。  なお日本内地における協議会におきましても、また国際会議におきましても、上下の値幅を一割くらいのところ、上一割、下一割というような、できるだけ狭い範囲に縮めるということが需要家の要望であり、また一般業者としての要望でございます。しかしながら予算の関係もありますのでいたし方ありませんが、われわれ業者といたしましては、この値幅をできるだけ縮小して、糸価の安定をはかるというふうにおとりはからいを願いたいことを特に希望いたす次第でございます。とにかく五箇年計画としては三十万俵の生糸の生産をすることになつておりまするが、要するに繭の価格が安定しなければ、三十万俵の五箇年計画の遂行はむずかしいと思います。また一般の中小製糸業者といたしましても、実際今日の需要に対する繭の供給が不足で、非常にアンバランスでございますので、経営の合理化をいたそうと思つても事実これはできないという現状にございます。これはわが国蚕糸業の発展の上において実に遺憾な状態に置かれているのでございまするから、どうしても繭の増産をはかつていただいて、われわれ製糸業者もともに合理経営をいたして、将来の蚕糸業の発展に大いに寄与するという考え方を持つているのでございまするから、そういう点からいたしまして、繭の価格の安定によつて増産ができ、わが輸出貿易の上に、外貨獲得の上に、大きな寄与ができるまうに御心配いただきたいことを特にお願いいたしまして、私の公述を終ります。
  10. 千賀康治

  11. 西本勇次郎

    ○西本参考人 輸出業者立場といたしまして一言意見を申し述べます。  この法案海外に対してどういう反響をもたらすかということについて考えてみたいと思うのでありまするが、先ほども高木さんが御指摘になりましたように、海外需要者はほとんど全部この施策を要望いたしているのでありますから、もはやこの法案に対しては、でき上るのを、そうして非常に強力な安定施策が行われることを期待しているわけであります。むろんこの法案輸出増進が第一であります以上は、海外の買手としてこの法案から期待するところは、何とか輸出優先、売り渡される場合、その品物が優先的に輸出されることを期待していると思うのであります。ところがこの九条によりますと、「政府は、生糸輸出を確保するため特に必要があるときは、第二条の規定により生糸を売り渡すに当つて、その生糸輸出すべきことその他必要な条件を附することができる。」ということで、優先的に売渡しを企図されているようでありまするが、この条項を英文ないし仏文に翻訳をいたしますると、その意味がはつきりわかりかねるのではないかということを恐れます。つきましては、この条文にはつきり輸出優先ということを掲げられまして、数量ばかりでなく、価格にいたしましても最高価格でなければ、輸出優先の場合でも出ないというようなことではなく、もう少し含みのあるようなぐあいになりますと、期待に沿うことになると存じます。また価格につきまして、海外要望として一割前後ということが言われておりまするが、これも一割の幅の間で、商売が円滑に運営されて、十分仕事ができるということを期待いたしておるのでありまして、そこへ縛りつけられまして、かえつて政府買上げによつて輸出が阻害されるということがかりに起ると、この法の精神が薄らいで来るのではないかと考えまするので、将来この中心値、ないし上下の幅の問題も、輸出ということを十分考慮にお入れになつておきめ願いたい、かように考える次第であります。もちろん十一条で新規の販路ないし用途に対しては、売り渡すことができるということがありまするから、ここで必ずしも最高価格ということを意味されていないのではないかと思います。それで一般的に新規販路の開拓ということばかりでなく、旧消費国に対する輸出でもそういうことができまするように考えていただきたい。輸出業者としてはこの法案に対しては、十分の期待を持つて賛成するものではありまするが、ただいま私が申し上げたことに対して、特に御留意願えれば非常に仕合せだと存じます。
  12. 千賀康治

    千賀委員長 次は横浜生糸問屋協会会長、川口正一君の発言を願います。
  13. 川口正一

    ○川口参考人 私は生糸問屋の立場でお話申し上げます。  およそ経済の発達には、自由競争という場面がなければものは発達しないと存じますが、終戦後昭和二十四年に生糸なり絹織物の統制が撤廃になりまして、その後の生糸の相場は、上り出せば一本調子に非常に上る。下り出せば一本調子に非常に下る。どこまで下るかわからぬというような不安がありまして、養蚕家の方は、苦労して繭をつくつても幾らで売れるかわからない。暴落するのではないかというような不安がある。また製糸家さんの方でも、繭を購入して糸をこしらえても幾ら下るかわからぬというような不安がある。また内地及び海外の機屋さんの方でも、これでは幾らまで下るかわからぬというような不安がある。それがために、生産者としても非常な不安があるし、消費者としても非常な不安がありますので、繭糸価の安定を業者の方で轟然と要望する声が起つたのであります。それでその後生糸取引所ができましたものですから、この生糸取引所が相場の暴騰、暴落を防ぐために非常な安定策になつておりまして、取引所ができてからの相場の変動は、できる前に比べますと非常に少くなつております。けれども将来国際物価が非常な変動をする時期に直面しておりますので、繭糸価の安定策をわれわれは要望しておりましたところ、ここに政府案として国会提案になり審議せられるということは、私は衷心感謝するところでありますが、しかしわれわれは、これはどこまでも伝家の宝刀として、抜かずしてその効果を発揮し得るようにしたいと思うのであります。あまり値幅を小さくしておきますと、しよつちゆう政府が買つたり売つたりする。そうするといつ売るかわからぬとかいうようなことで、かえつて消費者に非常な不安を起すようなことがある。ですから、あまり狭い範囲で安定することは、実際においてむずかしいのではないか、最近におきましても、羊毛はわずか二週間の間に九割上つております。また米綿なんかもわずか二週間ほどの間に二割五分も三割も上つておるのです。そういうふうに世界の物価が非常に波瀾を見せておるときに、生糸のみをわずかの幅で押える、これ以上は法律をもつて禁止するということは、非常なそこにむずかしいところがあるのではないかと思いますから、この法案を通過せられて、そうしてこの法案が生きて実施せられる、内外の生産者あるいは消費者が、安心してものをつくり、安心して消費できるというふうに運用していただきたいと思います。
  14. 千賀康治

    千賀委員長 次は野崎君の番になつておりますが、蚕糸協会の野崎清君は御病気だそうでありまして、御出席がありませんので、その次の全国桑苗協会長今村輝男君にお願いいたします。
  15. 今村輝男

    ○今村参考人 私は桑苗業者という立場から一言御意見を申し上げたいと思います。  今回国会提案されましたところの繭糸価格の安定法案につきましては、全国桑苗業者といたしまして、非常に深い関心を持つておるのでございます。蚕糸業の基本をなすものは桑園でありまして、いまさらこれを申し上げるまでもありませんが、桑園の造成と改善のためには、年々多数の桑苗の生産が必要なのでございます。しかるに従来桑苗の生産は繭の価格の変動に基きまして、養蚕業者の動向が非常に支配されやすいので、桑苗の生産はまことに不安定な状態にありまして、最近におきますところの桑苗の生産が非常に減少いたしておりまするのは、その間の事情を雄弁に物語つておると思うのでありまして、糸価の安定はもとより、さらに進んで繭価の安定を切望してやまなかつたところでありまするが、今国会繭糸価格安定法案が提出されまして、審議せられておりますことは、私どもといたしましてまことに喜びにたえない次第であります。この法案生糸輸出増進と、蚕糸企業の経営の安定をはかるために生糸価格の異常な変動を防止することと、繭の価格の安定をもはかることを目的といたしておりますることは、養蚕業者といたしまして、安心して経営に従事することが期待できるものでありまして、養蚕業者と緊密な関連がありまするところの桑苗業者といたしましても、桑苗生産の安定が期待せられるものでありまして、この法案賛意を表する次第であります。特に法案の第十条におきまして「繭価維持のための特別措置」といたしまして、「政府は、第二条の規定による生糸の買入によつてもなお繭の価格の異常な低落を防止することができないと認めるときは、繭の価格の異常な低落を防止するため必要な措置を行うものとする。」とあるのでありまして、私はこの規定するところのものは政府におきまして価格の保証についてさらに指導的責任と行政上の義務を負うことを明らかにしているものであり、本規定の適切なる運営を期待してやまないのであります。しかして蚕糸業の健全な発達のためには、繭糸価格の安定のみをもつてしてはその目的の達成は困難でありまして、本法案実施と相まつて、繭の生産面における対策を急速に確立されることが必要であります。われわれ桑苗業者といたしましては、繭の生産の基礎をなすものは、桑園の拡充であり、また桑苗生産対策の急速な確立を強く要望してやまない次第であります。今日の蚕糸業に課せられました使命は繭の増産であり、その要諦は、申し上げるまでもなく桑園の造成をはかることでありまして、このためには低能率の桑園を急速に改植することによりまして、能率の向上を期することであります。一方政府蚕糸業五箇年計画を見ますると、現在の桑園反別を相当に増加する計画になつておるのでございまして、これら桑園の拡充、改植の完遂のためには、きわめて多数の桑苗の生産が必要とせられるのであります。われわれ桑苗業者は、その責任の重大なることを感ずるとともに、その使命達成のために邁進をいたしまして、養蚕家に対しまして優良な桑苗を供給したいと願つておるものでありますが、この事業はなかなか容易でないのでありまして、桑苗の再生産を明確にし、確保するためには、必要な価格の維持を期待してやまないのであります。従来政府予算等を見ましても、遺憾ながらこうした処置がないのでありまするが、養蚕業者の桑園の拡充と確立を期するためには、その必要とするところの桑苗を安心して供給し得るところの施設の実現を、私どもは切に要望してやまない次第であります。  われわれ桑苗業者は、先月の二十七日に大会をいたしまして、われわれの使命達成のために宣言決議を行いまして、政府に対しましては、優良桑苗の生産確保施設を講ぜられんこと外四項をお願いいたしたような次第であります。  以上簡単に私ども考えておることを申し上げまして、本法案がすみやかに成立いたすことを希望し、本案賛意を表しまして、私の意見といたしておきます。
  16. 千賀康治

    千賀委員長 次は中央蚕糸協会会長吉田清二君。
  17. 吉田清二

    ○吉田参考人 蚕糸業対策として必要な施策は数々ありまするが、その中で最も大事であり、緊急を要するものとしては、価格を安定させるという方策であると思うのであります。と申しまするのは、蚕糸業において長年の間本質的のがんと思われるものは、値段が非常に暴騰、暴落することであります。これが非常に災いをなしておりますので、これを何とかおちつかせるということがきわめて大事な問題でありまして、業界多年の要望であつたのであります。これはひとり生産者の側から見て必要であるばかりでなく、消費者の側から申しましても最も必要なことでありますので、今もお話がありましたように、国内要望されるのみならず、海外消費者もひとしく要望しておることであつたのでございます。この問題が先年来いろいろと業界でも問題になり、国会関係方々も非常に関心を持つて研究御審議くださいまして、ここにようやく法案が提出されるに至りましたことは、われわれ業務に関係しておる者といたしまして、まことに喜びにたえません。結論的に申しますと、提案いたされておりまするこの法案が、とにもかくにも一日すみやかに通過いたしまして、国家の制度として実現になりまするよう切望にたえないところでございます。ただ理想と申しまするか、私この法案に対して希望を申し上げますれば、先ほど高田さんが仰せられたのでございますが、価格の安定、要するに値段をおちつかせるということに主意があるのでございますから、下値の方をがつちりささえるということがきわめて大事でありまするが、それと同時に高値の方も、いわゆる病的な値上りは差押えるということが同様にきわめて必要であると思うのでございます。値が現実に上つて行き、どんどん売れるにもかかわらず、この値を押えるということは愚の骨頂で、そういうことは決して政府として考えるべきでもなければ、だれも要望しておりませんが、ときたま病的な値上りをはく演ずるのでございます。一例を申しますと、現にこの一月から二月にかけまして、非常に値が上りました。それは具体的に申しますと、昨年の暮れに在荷がほとんどなくなつたということが、かなり業者の頭にはつきりしておつた。従つて需給関係からいうと、来年は売物がなくなるぞというのが声でありました。おそらくそのためにだろうと思いますが、いろいろな思惑師が入つて来て値が上つたのだと私は読んでおるのであります。その結果今年の一月から二月のわずかの期間において、一俵三十万円まで上りました。十六、七万円、約二十万円以下のところから三十万円まで、きわめて短期間に上つたのであります。しからばこの三十万円の値段で、どれだけの人がこの値段で売つてその値段をつかんだかと申しますと、きわめてわずかな人なのです。ところがその値段がくずれ始めまするや、一箇月もたたぬうちに十六万円まで下つてしまつた。この値下りということが、上つたよりもあとの値下りが非常にたたりまして、海外消費を非常に減退させているのでございます。簡単に数字で申しますと、今年の一月は昨年の一月に比較いたしまして、米国の消費を申しますと一五九、昨年の一月のアメリカの消費に対して今年の一月の消費は五割九分ふえておつた。二月が一一〇、ところがこのときの値上りのために、それからまた値下りがあつたために、三月が七六、四月が五二、五月が五一、六月が四二、七月が四四、八月、九月へ行きまして約六六、六〇というふうになつた。一度消費が多くなりましても、そういう病的の値上りの反動として値が下りますと、病気のあとの回復がきわめてむずかしいのでございます。これは非常に困つたことでございますので、私ども高値をがつちりしてもらいたいという希望を持つておりますゆえんのものは、かような病的な値上りを何とか押えなければいかぬ、こういうことを考えておることであります。この思想に合うように、法案もできるならば完全なものにしてもらいたい、こういう希望を私は持つております。その他の点につきまして、たとえば買値の三十億が少し足りない。もう少したんと買つてもらつて、そうして金を用意してもらつて下値の方もがつちりささえてもらいたい、この希望はありますが、これは財政等の関係もございますし、非常に困難な問題もございますが、これはまた適当な機会に増額してもらうということも可能と思うのでありますけれども高値を押えるということが、ここには手持品を売つて押えるという制度になつております。これはきわめてけつこうなことでありますが、手持品のない場合にどうするかという問題が残るのでございます。かような問題に適切な方策を立てていただくことを、いやしくもこの価格をおちつかせるという制度である上においては、十分御考慮願うのがいいのではないか、こういうふうに考えます。この一点を特に申し上げまして、私の意見にかえる次第であります。
  18. 千賀康治

    千賀委員長 次は横浜生糸取引所理事長石黒武重君。
  19. 石黒武重

    ○石黒参考人 私は取引所の理事長というよりは、むしろ個人として一応大体の意見を申し上げたいと思います。もともと自由経済の原則のもとでは、蚕糸業の実情からいいますと、糸価の安定ということは非常にむずかしいことであると思います。しかし同時に先ほど来の話にありますように、ことに海外需要方面から強い要望がるのでりあまして、まず政府あるいはその他の公の面から安定策を講ずるとすれば、今回の問題になつております法案のようなやり方でやるよりほかはないと私は思います。但しこの法案の効力についてはおのずから限度があるのでありまして、あまり関係者が過大なことをこの効果について期待することは間違いである。ある場合には非常に有効に使われる場合もありますが、ときと場合においては、この法案の程度のことではとうていささえきれないこともあり得るということを考えなければならない。しかし、だからといつてこの法案は役に立たぬというわけではないのでありまして、繰返して申しますが、本来非常にむずかしいことでありますので、まずやればこういう方法をとつてやる、その上でほかにもくふうがあれば、業者はあるいはそのほかの方面でもだんだんにくふうを凝らしまして、できるだけ業界のためになるような措置を講じて行くというほかはないと思います。私は思いますに、海外需要者がことに糸価の安定を希望することは、先ほど川口君の話にありましたように、実際一方において羊毛や綿花はやはり相当な動きをやつております。その方面もあるいは要望があるのかもしれませんけれども、われわれ寡聞にしてあまり聞かぬのであります。特に生糸糸価についてその要望があるのは一体なぜかと申しますと、御承知のように、生糸競争繊維である人造繊維の方面価格というものが、相当にしつかりと安定しておる、それで同種類のものを使う需要者が、一方の原料の方は安定しておつて、一方の生糸の方は不安定であるというところからやかましく言い出したのだと思うのです。ところで人造繊維の価格の安定というものは、御承知のようにこの生産者というものが大体において大きな工業生産をやる会社でありまして、その間にカルテルがあるだろう。——というようなことを言うたら、あるいは国内であつたら抗議を申し込まれるかもしれません。幸いに遠いので、そんなことを言わぬだろうと思うのですが、ある程度のカルテル的な協定もあるだろうと思います。それから大資本による厖大な生産をやりまして、若干の生産費あるいは原料代の動きというものは、その内部にとつておる利潤の調節によつておそらくやつておるのだろうと思うのです。そういう企業によりまして、人造繊維の安定というものは割合に容易に合理的に行われておるのです。それと比べて、御承知のような蚕糸業の実情におきまして、これに負けないような安定をしようというのは、本来を言いますと非常に無理なことだと私は思います。しかしまた同時にできるだけ安定をすることは必要なことだろうと思うのです。  そこで従来から時に応じまして公の立場から安定のことを考えると、いろいろ考えましても結局はこういうやり方におちついて来る。これはまた当然のことでありますので、この機会において幸いにここまでこの措置のことが進んで参りました以上は、まずもつてひとつこれをやつてみたらどうだろうかということを私としては思うのでございます。ただ先ほど申しましたように、この効力にはおのずから限度があるということは、これも当然のことでありまして、過去の実例をごらんになりますとすぐおわかりになるように、昭和六年でありましたか、当時の糸価安定融資補償法を発動しまして、相当な数量をストックいたしました。たとえば千二百五十円で維持しようとしましたものが、その後多年にわたつて八百円程度のところに低迷してしまつたというようなこともあります。過去における糸価安定の施策は、いずれかといいますと糸価安定ということを表にはうたいますけれども、業界の安定が実は裏に隠れた目的であつたのであります。今度の施策はいずれかと申しますと、糸価安定そのものをねらつておるだけに、非常にむずかしいところと取組んでおることになるのであります。私思いまするのに、今日の国の財政の実情とかいろいろな面を考えれば、理想を言えばきりがないのでありますが、今私が申しましたように、効力の点についてもおのずから限度がある。ある場合には非常に有効に使われるだろうと思うのですが、同時に、やつてみたがどうもうまく行かなかつたという場合もあろうと思うのであります。しかしうまく行かなかつたからといつて、それは当事者のやり方が下手だからだとは私は思いません。たとえば価格をどの範囲に限定されるか知りませんが、大体において同じ安定させるならば、なるべく幅狭く限定されたいというような御意見が強いようであります。その場合のことを考えてみましても、大体において今日繭の生産額は、製糸の生産施設と比較しまして比較的少いのですから、養蚕業者もいろいろの場合を考えて非常に不安に考えられるでしようが、大体において製糸家は今日の実情から申しますと、繭は割高に買うだろうと思う。そこにもつて来まして、かりに国内一般物価が変動し、燃料であるとか、その他いろいろな副生産資材の価格が変動するとか、あるいは賃金ベースが非常にかわつて来るとかいうようなことになつた場合に、ある場合には製糸家は最高価格のきめ方に対して非鳴をあげて来るかもしれない。それからまたその場合には、著しい変動だからといつて最高価格最低価格を改訂してもいいということになつていますが、たびたび改訂するようだつたらば、最高価格とか最低価格というようなものはきめない方がいいということにもなりましようし、これは運用してみまして、幸いいい場合にぶつかつて、うまい効果を上げれば政府は鼻高々だろうが、まずい場合にぶつかるとうまく行かないかもしれないと考えます。いずれにいたしましてもほかに方法がないと思いますので、こういう方法をおとりになつたことはいいと思う。最高価格制限ということについては、この法案ではやはり売渡し買入れの方法による最高価格制限ということでやつて行かれるようであります。この点につきましても、私は今申しましたように、この法案以外にもつといい方法があるとは思つておりません。と同時に、大体その効力におのずから限界があるというような見方をしておるので、決定的にぜひこうしたらいいだろうというような意見は持つておらないのですが、ただ三月までは御承知のように他方面から価格制限の規定もあります。さしあたりは特に最低の方は非常に厳格に押えるのではないが、ただ政府の買入れだけでもつて押えるのだということにしておいて、上の方だけ特にこの法案自体において、法的に何か制肘を加えるというようなことがありますと、これは場合によると今度はまた業界からこの制限を少し上げてくれとか、撤回してくれというようなことも起つて来るのではないだろうかというふうに考えるのであります。いずれにしても、繰返して申しますが、私はこういう方法以外にはないと思うと同時に、こればかりに関係者があまり過大な期待をかけられては間違う。ですからこういう措置も一方国として講ぜられると同時に、どこまでも生産費の低減という面についての業界の努力を、養蚕から製糸全般にわたつて極力ひとつ御勧奨になると同時に、業界もまたこれに努力いたしまして、その他いろいろな面から、何と言つて海外に売るについては、糸価の安定が人造繊維との競争の関係上確かに必要は必要なんですから、取引業者もその面に平生から心を配つて努力をするというようなことで、この法案と相まつて業界全体がこの面に努力することによつて発展を期して行くほかはないだろう、こういうふうに思つております。
  20. 千賀康治

    千賀委員長 以上をもつて意見の発表は終りました。  これよりただいまの御意見に対する質疑を行います。通告がありますのでこれを許します。八木一郎君。
  21. 八木一郎

    ○八木委員 全販連の小林さんにお尋ねいたしたいと思います。御意見を伺いますと、養蚕農家立場から批判なり意見はあるが、本法律案の成立には賛成である、こういうふうに拝承いたしたのでありますが、何としてもこれを何とかして行かなければならないという決定的な御意見であるかどうか、私の聞取り方が明確でないので、原則的に賛成であるかいなかお答えを願いたいと思います。
  22. 小林繁次郎

    小林参考人 ただいまの御質問でありますが、先ほど来申しましたような点からしまして、今の八木さんの御意見とは違うわけであります。私どもの先ほど申し述べました見解からいたしますと、ほんとう意味糸価安定というものを目途とするならば、やはり繭価の安定というものも同時に考えて行かなくちやならぬ、こういうふうに強く考えます。そういう点からいたしまして本法案がどうしてもこの程度の繭価の安定の内容しか持ち得ないということになる場合には、われわれの不安は消え得ませんので、これに反対せざるを得ないという見解を持つております。
  23. 八木一郎

    ○八木委員 その点が本法案の立法にあたつて最も苦心をした点でありまして、意見の相違になりますから申しませんが、御意見の中の七七・二%という数字をあげられた基礎については、昨日来政府の出したいろいろな資料とは相当食い違いがありますが、いわゆる糸価が下つて来た場合に、繭の生産費に割り込む圧迫と、生糸の加工費生産費に割り込む圧迫とが同率であれば、目的に合致する、数字はともかくとして御意見に一致するというお考えであるのかどうか、ひとつお伺いいたします。
  24. 小林繁次郎

    小林参考人 七七・二%の基準は、農林当局におきまして糸価格の中におきます繭の価格内容の数字が標準の数字として発表されております。ただ繭の生産費価格においては、統計調査部等に多少の間違いがありまして、その点は明確に公表されていないようでありますが、あとで修正をされております。繭の生産費価格糸価価格の農林省で認められた基準線をわれわれとしても確保して行きたい考えであります。
  25. 千賀康治

  26. 小林運美

    小林(運)委員 私は養蚕製糸の面について二、三御質問申し上げたいと思います。  ただいま小林さんの御答弁になりましたように、販連の方では原料としてのパーセントを七七・二%というふうに計算されておりますが、数日来の本委員会におきまする政府の答弁によると、資料等も出ておりまして、この読み方は非常にむずかしいと思いますけれども、大体七二%、あるいは七四%というような数字が出ております。これは将来も非常に大きな問題になると思いますが、今御答弁に統計調査部の方でこれを直したというお話がありましたが、その辺どういうふうに直されたのか、またどういう根拠で直されたか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
  27. 小林繁次郎

    小林参考人 ただいまの数字は手元に持つて来ておりませんが、生産費価格の食い違いであります。最初の数字としては千七百八十七円になつていることを記憶しております。
  28. 小林運美

    小林(運)委員 次に製糸の方の高田さんでも石橋さんでもけつこうですが、先ほど吉田さんの方から、上値をまわつたような事態が生じた場合には、この法律では何もやる手がない、どうしても何らか手を打たねばならぬという御希望がございましたが、製糸の方ではその場合どうお考えになつておりますか。また養蚕の方の関根さんでも小林さんでもけつこうですが、そういうものはない方がいいとお考えでございますか。この点製糸家養蚕家の方から別々に御意見を承りたいと思います。
  29. 高田利七

    高田参考人 お答え申し上げます。先ほど養蚕立場から、この程度では繭価については不安を持つているとおつしやいましたが、不安を持つているという意味におきましては、それは異常な状態が起きます場合は、糸価につきましては全然不安がない、下値は絶対にここでささえられるというほどには考えるわけには行きません。しかし糸価安定の目的は、現状としては一応これで達成せられる、こう考えております。  それで御質問のところへ移るわけでありますが、高値の方につきましては、やはり企業体の目先的な採算、利害という意味で、無制限に高く売りたいというその気持だけよりは、初めにくどく申し上げましたように、糸価安定ということが、大きな意味で見ての企業全体、蚕糸業全体、国の経済全体に寄与するものであるという意味で、場合によつては大義のために親を滅するくらいの気持で、この場合は何らか法的な根拠を与えられるような制度までも考えていただいて、高値制限していただくということによつて糸価安定という根本の線にはずれないように本法案を成立さしていただきたいということを切望するわけであります。しかしこれはあくまでも切望であります。できるだけこれが実現できるように御配慮願いたい、こういう意味です。
  30. 小林繁次郎

    小林参考人 ただいまの御質問について、われわれとしてはこういうふうに考えたいと思つております。問題は、いずれにしましても高値、低値の問題になりますれば、その基準の価格のとり方が基本線だと思います。それともう一つの点は、高値、安値の幅をどう見るか、先ほど来お話になりました二つの問題が問題である。従つてわれわれといたしましても、その基準線に妥当を得まして、そしてその幅はなるべく狭い姿において確保されて行くのであるならば、妥当な最高値というものは了承して行つていいのではないか、こういうふうに考えております。
  31. 小林運美

    小林(運)委員 先ほど先輩の石黒さんから、本法案は悪いものではないけれども、この法案によつてすべてが解決するとは思わない、そう大して期待は持てないというような御意見がございまして、われわれも非常にその感を深くするのであります。ただいまお話がありましたようなことも、これらに非常な関連を持つと考えておりますが、上値を禁止するというような事態が起つた場合には、輸出の方の立場からはどんなふうにお考えになりますか。西本さんから承りたいと思います。
  32. 西本勇次郎

    ○西本参考人 ぐらぐらした安定よりしつかりした線の範囲内で安定させることを希望しておるのは申し上げるまでもありません。ただそれには非常に有効な線の範囲内で安定させていただきたいことと、それからそのために輸出が阻害されないで優先されるのだという制度にしていただきたいということを希望します。早い話が、最高値に足りない場合に、一定期間だけ輸出の商談を優先的に受ける、ないしは一定の数量だけは輸出向きとして確保しておく、あるいは保留しておくということ、ないしは一定の数量だけを海外に出しておいていただくというようなことも考えていただけば、海外消費者はそれによつて幾分満足する。この法案そのものに対して、どうも海外の期待が大き過ぎるだけに、あるいは失望するのではないかということをおそれますので、特に優先ということを強調する次第であります。
  33. 小林運美

    小林(運)委員 本委員会には繭糸価格安定法案だけがかかつておりますが、目下大蔵委員会の方に、この特別会計の法案が上程されております。昨日の委員会において、この特別会計のやり方をどうするのだという質問がありましたが、政府当局では、この問題について明確な答弁がなかつたのであります。たとえば生糸下値で買いましてある一定期間保存しまして、生糸が上つて来た場合にこれを売り出して、特別会計が相当の利益を上げた場合に、この利益金をどうするかということが相当大きな問題であります。これに対しまして、この利益は蚕糸業者全体のものであるとか、あるいは養蚕業者のものだとか、あるいは製糸業者のものだとかいうような考えがいろいろ起ると思いますが、この利益金をどんなふうにしたらよいか、さらにこれを蓄積して大きなプールにして行くか、あるいはこういうような利益金を養蚕あるいは製糸振興のために使つたらよいか、こういう問題が相当大きな問題と考えますが、現在出ております特別会計の政府法案とは別問題といたしまして、この利益金が出た場合にはどうするか、また損失が出た場合も考えられますが、第一に利益をどういうふうにしたらよいかというような問題につきまして、養蚕及び製糸の方からどなたでもけつこうでありますが、御意見を承りたいと思います。
  34. 高田利七

    高田参考人 過去におきましても、国家の力によりまして、生糸の最高売渡し、最低買入れということによつて業界の危機を救つたというような例が一度ならず二度ならずあるわけであります。その場合に出て来た結果は、みな損失勘定ではなくして。プラスの勘定に結果としてはなつております。そのプラスになつた結果の益金の処置については、大体まわりまわつてこれを業界のために使つたという経過があると心得えております。今度の場合におきましては、もちろんこれでは国の特別会計に決して損失を与えるものではないと信じております。従つて出て来るその益金につきましては、どうか業界、蚕糸業全体のためにこれが活用されることを希望いたします。
  35. 小林繁次郎

    小林参考人 私、あるいは個人的な見解になるかと思いますが、ただいまの御質問に対しましては、やはりその自転々々におきましての問題のあり個所がありますから、それを十分見た姿で当然処理されなければならぬというふうに基本線として考えます。ただ養蚕農家というような立場からしますと、やはり非常に問題があります。従つてそういう益金が出た場合の均霑ということは、当然にわれわれとしては主張しなければならぬというように考えております。
  36. 石井繁丸

    ○石井委員 石黒さんにお尋ねします。非常に思惑的高値が高騰したときについては、ちよつと措置がない、この法案では制し切れないと考えます。さしあたり今は物価統制令があるわけです。この物価統制令等をやはり存置しておいて、異常暴騰や何かのときには措置をとるというようなことは望ましいかどうか。さようなものがなければ、また何らかほかの措置を講ずる必要があるのではないか。こういう点について御意見を承りたいと思います。
  37. 石黒武重

    ○石黒参考人 私は思惑があつて大きく動くということを言つたのではないのでありまして、つまり一般の経済事情の変動とか、あるいは国際事情の一種の急変とか、そのほかいろいろな客観的な事情で、蚕糸業が影響を受けるような場合は、元来蚕糸業の実情が、ある意味において弱体といいますか、内部において調節が非常にとりにくいものでありますから、価格の変動のあふりを、そう簡単には調整できないというような面から、私はこのような施策についての効果に限度があるということを申しておるわけであります。なお最高価格の調節ということについては、いよいよほんとうに必要があるならば、別途の方法をとられてもいいのではないか。また現在もそういうような方法があるようでありますから、必ずしもこの法案の中に、現在以上の特別な措置を入れなければならぬということもないのではないか。大体がもともと私の申しましたように、むずかしい問題でもありますので、何かやるときに、一挙に理想的なものに片づけて行こうなどというのは、少し虫がよ過ぎるので、まあこの程度のことをやりながら、といつてもう安定の問題はあれで片づいた、済んだというような観念を持つてはならぬと思うのです。情勢というものは、御承知のようにやはりいろいろかわつて参りますので、その情勢に応じた適切な処置を順次とつて行くようにした方がよいのではないか、こういうふうに思つております。価格の問題について、特にこの法案の中にぜひ入れなければならぬというようなお考えもあるかもしれませんが、私個人としましては、この法案はこれでいいのではないかというふうに思つております。
  38. 石井繁丸

    ○石井委員 高田さんと川口さんに伺いたいと思います。高田さんは値幅は狭い方がいい、川口さんはできるだけ広い方がいいというのですが、どのくらいの値幅高田さんとしては望ましいか、川口さんとしては望ましいのですか。
  39. 高田利七

    高田参考人 お答え申し上げます。先ほども初めに申し上げましたように、かりに中心線を引くとすれば、上値一割、下値一割ということを海外業者考えております。人によりますと、海外業者は、もつと狭めて、上も下も合せて一割ということさえも言つているようであります。しかしこれはおのずから自由経済基礎に立ちながら、同時にこの制度をつくつて効果を上げようというところもありますので、単に極端なことをいつて一本値というところまでの強いことは考えてはおりません。私どもといたしましては上値一割、下値一割、総計二割の値幅というものが望ましいと考えております。
  40. 川口正一

    ○川口参考人 値幅の問題でありますが、繭糸価安定でありますから、値幅は狭い方がけつこうなのであります。しかし皆さんも御存じの通り、羊毛などはこの春最高から三分の一になつた、それでまた九割くらい上つておるのです。また米綿なども四十五セントから三十四セント台に下りまして、今はわずか二週間ほどの間にかかわらず、四十三セント近くまで上つておると思います。そういうふうに世界の物価が非常な変動をしておるのです。ただ人造繊維は製造する会社が少くて、非常に大きなものでありますから、半年もあるいは一年も同じ価格で販売しておるという事実はあります。それで生糸もなるべくそういうふうにしてもらいたいというのが、海外消費者の希望でありますが、大勢の養蚕家、大勢の製糸家は、製造してそれを金融とかいろいろな面で早く金にしたいものもある。あるいは機屋の方も、内地では小さい人、大きい人もたくさんおりまして、それらの人が金融面なりその他で競争したりいろいろなことをするので、それを狭い幅に安定することは、希望でありますけれども、あまり狭い幅に法律をこしらえてしまうと、下へつかえたり上へつかえたりして、かえつてそこでやみが起るとか、あるいはいろいろな弊害の方が多くて業界のためにならぬと思う。それですから、たとえば中心から二割下あるいは二割上というように、二割くらいの幅をこしらえておかなければ、運営がうまく行かない。あまり狭くするならば、政府で買入れられた方がいいのではないかと思います。
  41. 石井繁丸

    ○石井委員 西本さんの、輸出については、高値で売つて輸出を減退しないようにするということは、非常に有力な参考になる御意見であります。これについてはやはり最高値でなければ売り出さない、そういうことになれば輸出を阻害されるような傾向が相当大きく、また海外からもこの法案に対する信用を失墜するという御意見がありましたが、この点輸出振興するためには、最高値にならなくも輸出する必要があるというふうにお考えでありましようか  それから今村さんにお尋ねいたします。桑園の点について政府の施策が非常に悪いということでありますが、ひとつ桑園の立場からしまして、どうしたならば桑苗方面について責任を持てるかというような点について、適切な希望等がありますれば承つておきたいと思います。
  42. 西本勇次郎

    ○西本参考人 お答え申し上げます。価格が安定すれば海外需要増進いたしまするが、同時に国内需要増進する、内地の消費もふえて来るということが考えられます。従いまして最高価格に達して政府が売り出そうとしますと、いち早く内地の消費方面からの需要が起つて来て、海外の分はあとまわしになるということが心配されるのであります。またかりに同値といたしましても、御承知通り日本海外の相場が現在でも非常に開きがあります。過去においてもずつと差がついておりまして、海外でたたかれておる。海外消費を続けて行きますためには、内地よりも低い相場で売らなければならないという事実がありますので、その事実に基きまして、海外に対しては必ずしも最高値でなくても売れるような制度をつくつておいていただきたい、かように考えるのです。と申しますることは、最高価格では一月も二月もなかなか需要が起つて来ない。その間に内地の方ですつかり消費されてしまうというような事態が起りはせぬかというようなことが想定されるわけであります。またつけ加えて申し上げたいことは、最低価格においても、政府が買い上げておられるその間は商売は一時頓座する危険があります。せつかく安定のためにお買上げいただくのは非常にけつこうですが、その間そのために海外消費が障害を受けるというようなことのないように、最低価格をおきめになるときにお考えを願いたいということと同時に、そのお買上げの節も、都合によつては最高価格でなくとも海外に売れるという条件があれば、そこで安定の目的が、海外に関する限りは確立して行く。こういうぐあいに考える次第であります。
  43. 今村輝男

    ○今村参考人 お考えいたします。政府は御承知のようにこの法案、あるいは繭増産の五箇年計画等を立てられております。そういう点から考えてみましたときに、この五箇年計画の一番の基盤をなすものは、何と申しましても桑園の拡充であります。この桑園の拡充は御承知通りに桑苗が必要になつて参ります。ところで過去数年来の桑苗生産の実情を見ますと、先ほども申し上げましたように、糸値の動向によつて養蚕家の気持が非常にかわつて参るのであります。わかりやすく申し上げますと、製糸家におきましても、あるいは種屋におきましても、養蚕家におきましても、——基盤をなすものは養蚕家でありますが、一応養蚕家は桑園のある能力一ぱいは、安くても高くても蚕を買う。従つて思惑のない限り種屋さんというのは安定した商売ができる。それから製糸家も安かれ、高かれそれに基盤を置いての営業が成り立つて行く。ところが桑苗に限りましては、非常に安くなりますと、せつかく政府のかけ声によりましてつくりました桑苗もさらに売れて参らぬ。御承知のように生ものでありますので、たまたまそれがたきものになるというようなことが絶えず起つてつたのであります。そういう不安定がありますので、桑苗の生産が伴つて参らない。そこでどうしたらよいかという御質問でありますが、要は桑苗の生産業者をして、安心して桑苗をつくり得るように、つくつたものは全部桑園になるという施策が裏づけになりまするならば売れる。簡単に申しますならば、これに対する植付奨励金というものでも出しまして、それを生産されますところの業者に委託金というような形で出して、最低の線だけは売れなくても絶対保証するという手が打たれるならば、桑苗の生産も政府の保証によつて確実に達成できるというふうに考えるわけであります。
  44. 千賀康治

    千賀委員長 次は足鹿覺君。
  45. 足鹿覺

    足鹿委員 実は関根さんにお尋ねいたしたい点がたくさんあつたのでありますが、お帰りになつたようでありますから、残念ながら割愛いたしまして、他の方にお尋ねいたしたいと思います。  吉田さんにお尋ねいたしたいのでありますが、糸価の安定が蚕糸業の安定だというふうにお考えになりまして、下値もがつちり押えなければならぬが、高値も押えなければならぬ。こういう御意見であります。優先的に繭価の安定が中心となつて行くためには、かりに糸価が二十万円になり、十八万円になつた場合の繭価の比率は、どういう線が妥当であるとお考えになりますか。その点をお伺いいたしたい。
  46. 吉田清二

    ○吉田参考人 この制度は、繭及び生糸価格の安定をはかる手段として、まず第一段に糸の面において操作をする、こういう建前になつておるのでありますが、大体それで目的は達せられると、私思います。しかしながら直接的には糸だけにては必ずしも繭の値が安全でないという心配がございますので、その点も十分今度の制度には考慮に入れられて、そのような必要が生じた場合においては、繭に対して直接的な必要な措置を講ずるという政府の心構えが入つておりますので、私はこれで繭の方も安心してよろしいと考えております。糸値が幾らだから繭値が幾らにならなければならぬかということは、大体今までの慣例によりまして、製糸加工賃というものは、製糸の方でも主張され、養蚕の方でも考えられることで、交渉されております。適当にこの間話合いがあつて、糸値がきまればそれに話合いで繭値がきまつて行く、こういう関連がありますので、それによりまして糸値がおちつけば繭値がおちついて行くということになるかと私は信じておりますがゆえに、制度として生糸の部面における操作によつて繭の安定は大体八、九〇%までに達せられる。しかし何か異常な状態ができて、糸とは関係なしに繭値がえらく下るような場合には、別途に政府考えられる、こういう腹づもりをこの制度には示しておられるので、それでけつこうじやないかと思つておりますので、お答えにはならないかもしれませんが申し上げます。
  47. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、あるひとつの話合いによつて適当な繭価が決定される、それがいわゆる安定した繭価だ、こういう御見解でありますか。
  48. 吉田清二

    ○吉田参考人 先ほど申しましたのは、この制度で値段をきめられるというのは、生糸の買入れ値段をきめられるのでありまして、そして直接的な操作としては生糸を買い入れられるということをはつきり書いてございます。ですから、それだけにこの制度によりまして繭にどういう影響を及ぼすかという問題を私は申し上げた。それによつて繭の価格も適当のところに安定するものと思います。と申しますのは、この法律によつてただちに繭の値段を何掛けとは直接的には決定されませんけれども製糸家養蚕家の間においての繭の価格の決定は、今まで話合いでおのずからできております。正常の状態で行けば、糸値が幾らにきまれば大体それに呼応した繭値が今日まできまつておりますので、それで大体歩調がとれて行ける、こういうことに考えておるのであります。しかしながらそれがもし異常の状態で歩調がとれぬ場合には、繭に対して直接的な操作もする、こういうことがこの法律に入つておりますから、私は繭の価格の安定ということに対する施策としては、それでけつこう十分だと思います。
  49. 足鹿覺

    足鹿委員 安定した繭価ということは、再生産を保障する繭価だとお考えになりますか。それにつきましては、この法律の中で、そういつた問題、いわゆる安定繭価イコール再生産保障繭価ということが保証さるべきだとわれわれは考えておるのでございます。今日はなるべく意見を差控えたいと思うのでありますが、蚕糸業者の中核団体を指導しておられる吉田さんの、この辺の御所見はどうでありますか。
  50. 吉田清二

    ○吉田参考人 おそらく生糸の買入れ価格をきめられる際には、繭の生産価格を基準にされて、それから製糸加工賃はどれだけだということも考えられる。それを加えられたいわゆる生糸生産費が基準になると思います。従つてそういうものをもとにして最低の価格が保証されるということになりますれば、今度は逆に繭価の方もそれに連れて保証される、こういうふうに考えておるのでありまして、先ほどから申しておるのは、そういう意味のことを申しておるのであります。
  51. 足鹿覺

    足鹿委員 これは石黒さんでもけつこうだと存じますが、政府の予算は一俵十四万五千円で大体二万俵を買い付けるという根拠になつておるようであります。外国の買いたいという低値よりもさらに低値に組んでおるようでありますが、このことは糸価を圧迫することになりはしませんか。その点はどういう御見解でございましようか。本年の四月のアメリカ方面の相場の見通しにいたしましても、これ以上相当高いものを大体予想しておるようであります。この法の運用はかえつて糸価を圧迫し、勢い繭価の圧迫にしわよせが来はしないかということを感ぜられますが、その点いかがですか。
  52. 石黒武重

    ○石黒参考人 予算のことは私つまびらかにいたしませんが、値段のことは、この法案によりますと、別に審議会があつて、きめられるのであつて政府の予算算定の基礎によつて拘束はされないと思います。そういう単価で予算が組まれているということをことさらに強く宣伝しない限りは、さしつかえないのじやないかと思います。
  53. 足鹿覺

    足鹿委員 輸出関係の方にお伺いしたいのですが、国内価格輸出価格よりも高い場合には、輸出の数量が減じて来ると思う。そういうことになりますと、本法の精神に背馳する結果になりはしないかという感じを持つのであります。そうした場合に、製糸業者なり輸出業者は本法の精神に沿つて経営の安定のために、第二義的に輸出を重点にして、安売りをして行かれるだけの御用意がありましようか。この点実際問題としていかようにお考えになつておりますか。
  54. 西本勇次郎

    ○西本参考人 糸価が安定すれば、輸出増進になるのでありますから、仕事はやりよくなると思います。従いましてこの繭糸価安定法案によつて内地の消費輸出よりも促進されることになりましては、障害になりますが、特にこの点に御留意をいただきまして、輸出優先という面をにじみ出るようにしていただけばけつこうだと思います。
  55. 竹村奈良一

    ○竹村委員 私は高田さんにお伺いしたいと思います。上値を押えるという御意見でございますが、その根底をなすもの、たとえばこの法案の最もねらつている繭糸価の安定ということは、繭糸業、たとえば養蚕家あるいは製糸葉者の安定した経営ができるというところに、根本が置かれなければならぬと私は考えておるわけであります。この法案は一応そういうねらいをしているように見えるのでありますが、実際はそうではないわけで、先ほどからの議論によりましても、どうもその点がはつきりしていないようです。そこで私のお伺いしたいのは、つまり最低値をどこに置くか。しかも上値を押えて行く場合には、根本的には少くとも養蚕家の再生産を償う、しかもその上に拡大再生産になるだけの生産費、また製糸業者にいたしましても、糸価の安定の上に立つて一切の生産をやつて、これが拡大して行ける価格、これは今日の経済的な原則でございますが、そういう価格がきめられなければならぬ、こういうふうに私は考えるのですが、その形において上値を押え、下値を押えて行く、少くとも投機的な面は押えて行く、こういう御意見でございましようか、その点はつきり伺つておきたい。
  56. 高田利七

    高田参考人 お答え申し上げます。これは養蚕農家立場においては、もちろん繭の再生産、拡大再生産ができるような原価が保証されることが望ましい。製糸の場合は生産加工費、理想を言うならば、相当な利潤を加えた生産加工費というものが確保されることか望ましいということを申さねばならぬと思います。ところがひとつお考え願いたいことは、生糸が遺憾ながら——と言いますか、それなるがゆえに生糸あるいは絹が重要性を帯びるのでありますが、これは国際商品であります。海外が買つてくれる価格でなくては、いくらこちらで原価々々と申しましても、何とも商売にならないのであります。これが前の完全な統制時代でありますれば、国内だけの問題で、原価を保証してもらうという考え方で強く要望し、望みをかなえてもらえばけつこうなのでありますが、国際商品である点についてわれわれは心いたさなければならぬと思つております。従いまして非常に異例なあるいは望ましくない場合を考えますと、繭の再生産、拡大再生産を保証する価格を実際において下まわる、あるいは生糸生産費を割るような場合も絶対に起らないとは言えない。海外が買つてくれなくては、国内で芸者の着物だけをつくつているんでは、われわれの信念は通らないのであります。その意味におきまして、希望といたしましては、できるだけ繭の原価についてはもちろんのこと、製糸業者立場におきましては、生糸の再生産加工費を保証された最低価格が望ましいと思いますが、こればかりを強く考えて主張しまして、絹の生命をなくしてしまつてはいかぬということを根本に考えておるわけであります。
  57. 竹村奈良一

    ○竹村委員 輸出の面からお聞きしたいのでありますが、もちろん理想論を言われればそうですが、不幸にしてそういうことが望み得ないような海外的な事情が起つた場合、それを維持するためにというので、結局養蚕家に対しましては生産費を割つて行く。たとえば養蚕家が転業するといたしましても、桑園等をつくつておりますから、一応基礎があるのでありまして、桑園等をそのままにほつておくわけに行かぬので、生産費を割つてもこれをやつて行くということになりますと、そのしわ寄せが一番養蚕家に来るのではないかと私は憂えるのです。  それからもう一つは、たとえばお宅のような考え方で参りますと、結局製糸業者も工場をつぶすわけには行かないということになつて、その再生産を割つたしわ寄せがさなきだに低労賃で働いている女工さんの方にしわ寄せられて来るのではないかということになりますので、政府考え方ははなはだ不見識であり、不徹底である、そういうことはなくてもあつても同じような形になつて来るのではないかと私は考える。そこでたとえば労賃なんかは現在女工さんは幾らぐらいで働いておるのでございましようか。その点について承つておきたい。
  58. 高田利七

    高田参考人 最悪の場合は生糸の原価を割る場合がある、こういうふうにおつしやいますが、糸価安定の制度が徹底しますれば、糸の需要増進いたします。また価格もそう安値でなくても、相当価格海外はついて行つてくれるものだと思います。従つて先ほど非常な異例の場合としてあげましたような事態は起きないものと信じております。それから女工さんの賃金につきましては、地方事情もございまして具体的な数字には相当幅がありますので、今正確な数字を申し上げるわけに参りません。
  59. 千賀康治

    千賀委員長 竹村君に御注意しますが、質問は参考人発言によつてしてください。
  60. 竹村奈良一

    ○竹村委員 西本さんにお伺いいたしたいのでございます。海外における価格は、先般来三ドル八十セントとかいうことが情報として寄せられておつたのでございますが、現在の海外要望せる価格国内生産者の要望する価格との開きは、向うへ出す場合において、現在ではないのですかあるのですか。あるいはこの法案ができて、もし向うがなるべく安く買おうとした場合に、先ほど申されましたように、国内生産費を割つて来るというような状態が続くとしましても、現在の世界の繭生産において日本が非常に大きなパーセンテージを占めている関係上、一時輸出を差控えるというような方法をとりますならば、海外の値段も国内生産費を上まわるような形で買つてくれるという見通しはあるのでございますか、ないのでございますか。
  61. 西本勇次郎

    ○西本参考人 輸出の面からちよつとお答え申し上げます。三ドル八十セントという問題はその当時の値段で、私もロンドン会議に出席したのですが、その当時の情勢から見て、海外としてはもし日本生糸輸出増進を望むならそういう点が望ましいということで、一応の参考意見として言われた線でありまして、決してステイツクされている線ではありません。ところで海外日本との相場は、常に海外の方が下値でありまして、現在の情勢でも内地の方の相場が上まわつておるために、海外需要が非常に押えられております。しかし糸価が安定さえすれば、必ずしも値段の居どころを問題にしないという意見海外消費者の間にも相当有力にあるのでありまして、早い話が四ドルとか四ドル五十セントとか、場合によつてはたとい五ドルでも、それが中心になつてはつきり上、下に安定されるということであれば満足するという意見相当有力でありました。
  62. 小淵光平

    ○小淵委員 全販連の小林さんに一点だけお伺いしたいと思います。私はおそく来たために小林さんのお話を承る機会がなくて残念だつたのですが、先ほど八木委員からの質問によつてこの法案に反対であるというふうに私聞き取れたわけであります。もちろん法律ができるのでありますから、これについての批評はいろいろあります。たとえば先ほどお話が出ましたように、この法律のうちで高値を押える点がどうこう、あるいは予算の面がどうこうということもありましたが、私ども今日までいろいろ審議して参つた過程には、一応十条に繭の問題が書いてあるけれども、この繭については金融措置なり、あるいは下値の保証の問題なり、結局繭を一番安定させるには買い上げるよりしかたがないのじやないかというようなこともいろいろ研究して参つたわけでありますが、繭を買い上げることにいたしますと相当予算にも関係して参る。結局いろいろ批評いたしますとたくさん問題はあるのでありますけれども、この法の精神にあるように、蚕糸業の安定と興隆のため、ひいては輸出振興のためにこの法律が必要だということが一条に明示してあるのでありますが、こういう点からいたしまして、たとえば小林さんのお考えは、万々が一これがつぶれてしまうというような場合があるといたしましても、つぶれても反対だという御意見であるか、それとも、これでできる法律としてまず成立させることがよろしいかという点について絶対反対だというのであるかどうか、その点小林さんのお考えをお伺いいたしたいと思うのであります。
  63. 小林繁次郎

    小林参考人 あるいはおいでになりませんときに私申し上げたかもしれませんが、われわれの考えおりますのは、この法案の第一条等に多少意見はありますが、蚕糸業基礎確立して輸出増進をするという考え方は、私はこうしなければならぬと考えるわけです。しからばそういう目的を貫徹するための内容が具体的になつておるかということを掘り下げてみますと、養蚕関係あたりの考え方としますと、もつとこの法案内容として、同時的に明細な裏づけができるのではないか、具体策は持ち得るのではないかということを考えて申し上げました。
  64. 小淵光平

    ○小淵委員 そうしますと、この第一条の精神に沿つたことが大部分盛られてあるから、大体の考えとしては、賛成であるというふうに了解してよろしゆうございますか。
  65. 小林繁次郎

    小林参考人 ちよつと違うのです。結局第一条の考え方を貫徹するために、私特に指摘申し上げたのですが、第十条の点について具体策を持つていただきたい。繭価の安定についての異常な低落の場合という問題が入つておりますが、そこまでお考えであれば当然繭価についての施策の大体の考え方は出て来るわけです。具体的に申し上げれば買上げ措置なら買上げ措置を当然この法案内容としてつくつていただけるのではないか、またそういうことを養蚕農民として要望しなければならぬ、こういうふうに申し上げたのです。そのかんじんかなめのことが抜けることになるとわれわれとしても反対の態度をとらざるを得ない。ですからこの法案絶対反対だという意味合いでのお尋ねであるとすれば、われわれの希望は、こういう法案の中で当然考えらるべき、しかも落ちておるものについて、これは必ず盛り込んでいただくというふうに積極的に考えております。
  66. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 吉田さんにちよつとお尋ねします。先ほどお話の中に、糸価がいたずらに暴騰、低落するということがありましたが、そういう実際の需給関係を離れた取引機構による糸価の変動の原因はどこにあるか、ちよつと伺いたい。
  67. 吉田清二

    ○吉田参考人 法的な異常な値上りをする原因は必ずしも一つではありませんが、最近の例を申しますと、しばらく滞貨がございまして閉鎖機関にも三万俵という糸があつたのでありますが、それは昨年のうちに売り尽されて、一時心配しておつた製糸の手持品もない。そうすると来年の需給関係考え、昨年通りに今年も輸出されるものであるならば、売るものがなくなるだろうという声が昨年の暮から起つたのでありまして、これはみながそういうふうに考え、われわれもそういうふうに考えた。こういう情勢になりますと、ほんとうの蚕糸、生糸、絹物で飯を食つておる人たちの採算関係だけで売り買いが行われないで、畑違いの方面の人たち、一もうけしようというような人がそこへ入つて来ることが間々あるのでございます。はつきりだれが入つて来たということは私どもわかりませんが、そのような形勢が今年の一月ごろにかなり濃厚であつたと思います。横浜で値段だけが三十万円と言つてつて、実際に売買できる数量はわずかな数量しか行われておらないという奇現象を呈しております。ただ値段だけが上つているという現象、それ自体はよろしゆうございますが、かようなことは決して上りつぱなしになるものではないので、それは異常状態のものは必ず反動がある。適当なところでとまらないで逆にえらく下る心配がある。病後の回復というものが非常に困難であり、これが蚕糸業に対して非常な災いをなす。この心配を予防してもらいたいということを先ほど申し上げたのでありますが、今申し上げましたようなことが、そのような場合には間間畑違いと申しますか、場違いと申しますか、そういう方面からの売り注文、買い注文というものが出て来るおそれが多分にあるのであります。これもある程度はよろしゆうございますが、度を過ぎると蚕糸業に非常に災いをなす、こういうことを私は恐れているのであります。
  68. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 実は私が伺いたかつたのは清算取引をやつておりますね、これがはたして健全な取引かどうかということなんです。御承知のように、この法律そのものによつて糸価の安定をはかろう、需給調整等をやつて行こうというのでありますが、取引機構そのものの中においても、健全なる糸価の安定をしなければならぬということは当然であります。その場合に実物取引はわかりますけれども、清算取引というのがはたして健全なる取引として糸価の安定に役立つかどうかということなんです。これは生糸が自由商品なら清算取引はけつこうですけれども、一方において政府が需給調整をやつて行こう、価格調整をやつて行こうという法律を出した以上は、一面において自由経済の中には多少の制約があり、その場合に生糸の方は清算取引が今年の四月以来出発しましたが、これがはたして健全なる糸価の安定のために役立つているか。どうもこれがから売買の道具になつて、それが先ほど御指摘になつたいたずらなる糸価を生んだ原因になつているのではないかということを、私は御経験もあり、権威者の皆さんですから、吉田さんでもどなたでもけつこうですから伺いたいと思います。米あたりでも需給調整をやつた場合に、正米取引をやろうという場合に、大体われわれの聞いている意見は、米の需給調整をやつて行く以上は実物取引が復活しなければならぬけれども、清算取引はやめようというのが大体の学識経験者の御意見のようです。それらをもつて糸の場合を考える場合に、私ども経験はないのですが、清算取引の場合にははたしてどういう結果を生んでいるかということをこの際伺いたい、こういうことなんです。
  69. 吉田清二

    ○吉田参考人 御心配になる点は私も同感の点が多々あるのであります。取引所の問題につきましては功罪半ばすると申してよかろうと思います。悪い半面五十パーセントー、よい半面五十パーセントと申してよいと思います。と申しますのは、たとえば養蚕家にいたしましても製糸家にいたしましても、原料を一時に買つて資金だけは一ぺんに寄せ集めてしまつて、それを長い間かかつて製品にして売つて金にかえるというやり方をしているわけなのでありますが、資金を投じた際に、そのときの相場でつなぎをしておくということができることは、非常に業界を安泰させる上においてけつこうであります。かような場合において、商いのできる先約を売りたいだけ売るというような組織というものは、現物ではなかなか困難——。先売りもありますが困難なところがあります。そこで値ぎめで先約定をはつきりして、途中でかえようと思えば簡単にかえられるというような取引機構というものが、現物だけではなかなか困難な点がございます。その意味においてここの欠陥を補つてくれるものは現在の清算取引だと思います。かような意味において、清算取引というものは業界を安泰させる上において非常に役立つものと思うのです。私ども昨年この制度日本においてつくる方がよろしいということに対して大いに賛成して、ややもすると海外では今河野さんおつしやつたような意味で、反対のような意向がございましたが、私どもは半面いい面もあるのだ、ことに日本においては必要なんだ、こういうことをよく話をしまして了解を得てできたわけです。ところが今お話のように、悪く行くというと、これは私が先ほど申しましたようなことが行われやすい。かえつて清算マーケツトにおいては行われやすい心配も多々ある。従つてこれは取引関係業者が、よく自分たちの立場なり使命なりというものを認識してもらつて制度の機構なりあるいはやり方の上において十分注意をして、悪い面ばかりが現われないようにやつてもらうということがきわめて必要であります。もしそういう場面がしよつちゆう行われるようでしたら、われわれは声を大にしてつぶす方へ賛成する一人でありますが、先ほど申しましたように、悪い面といい面があると思いますので、私どもはいい面だけを十分生かして行きたい、こういう意味において取引所はやはり現在のようにやつてつてもらいたいと考えます。
  70. 千賀康治

    千賀委員長 これをもつて参考人各位に対する質疑を終ります。  参考人各位には、公私御多端であるのにもかかわらず長時間御出席を煩わしまして、有力な御意見を伺うことができましたのはまことに感謝にたえません。農林委員会の名をもちまして厚くお礼を申し上げます。  午後は二時より再開することにいたしまして暫時休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ————◇—————     午後二時二十五分開議
  71. 千賀康治

    千賀委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  繭糸価格安定法案の質疑を続行いたします。通告がございますから、順次にお許しをします。小淵委員
  72. 小淵光平

    ○小淵委員 次官にお尋ねいたしたいと思います。この繭糸価安定に関するところの予算関係を見ますると、三十億円という予算が組まれておるのでありますが、この三十億円という予算で——もちろん生糸、あるいは繭に対しても、はなはだしく値段の下落した場合には何らか措置を講ずるということもありますから、この予算の中で措置をするのかどうかはしつかりはわかりませんけれども、いずれにいたしましても三十億円というもので不足が生じた場合には、運用部資金等の借入れができるかどうか。この点をお伺いいたしたいと思います。
  73. 島村軍次

    ○島村政府委員 現在政府提案いたしております三十億円は、御承知通り糸価安定に限られた予算措置になつておるのであります。従いまして繭価の安定については将来に関する問題でありまして、いわゆる非常事態と申しますか、さような際に繭価が不当に買いたたかれるということを考えますと、将来に対する措置としては、たとえば乾繭の保管、あるいは零細な養蚕家をもつていたしております組合製糸とかいうところに対する金融の措置は、十分考えて行かなければならぬと思うのであります。これらの問題でなおかつ不十分の場合におきましては、あるいは買入れ等の処置も考えるのでありますが、現在の範囲におきましては、さような措置については将来の問題として御了知願いたいと思います。
  74. 小淵光平

    ○小淵委員 その将来の措置は、それでもちろん適宜な措置が講ぜられることはよくわかりましたが、今お尋ねをしたのは、三十億円という予算が盛られておるが、たとえば生糸の下落がなおはなはだしくして押えることができない場合に、この三十億円という組まれた予算を越えて、特別会計が運用部資金を借入れしてさらに生糸を買おう、あるいは繭を買おうというようなことが将来行われるようであれば、そういう処置ができるか。この資金措置の問題がどういうふうになりますか、その点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  75. 島村軍次

    ○島村政府委員 現在わが国の置かれておる地位の範囲内におきましては、なかなかさような措置考え得られない情勢にあることを御了承願いたいと思います。
  76. 小淵光平

    ○小淵委員 そうするとこの補正で組まれた三十億円だけが繭糸価安定法に基いての当面の資金であると考えてわれわれは進むべきであるかどうか、いま一度お伺いいしたいと思います。
  77. 島村軍次

    ○島村政府委員 本制度の運用にあたりまして、また経過的に考えますと、この三十億円では必ずしも十分ではないと思うのでありますが、財政上その他の情勢から判断いたしまして、現在では三十億の範囲においてその最大の目的を達成するように努力いたしたいと考えております。
  78. 小淵光平

    ○小淵委員 そうすると二十七年度予算にはこの予算を増額要求する意思があるかどうか、これをお伺いいたしたいと思います。
  79. 島村軍次

    ○島村政府委員 財政当局との折衝の際におきまして、法案はここへ提出いたしますが、二十六年度及び二十七年度の両年度にわたつてこの措置を行うという話合いにおいて決定をいたしたような次第でありまして、二十七年度の予算には別にあらためて予算の提出はいたさない予定であります。
  80. 小淵光平

    ○小淵委員 次に価格決定の問題でありますが、これはなかなか重要な問題であることは言をまたないのであります。もちろん法に定まれる審議会によつてこの値段は発表されることと思いますが、この価格を発表する場合、一定の中心値あるいは制低制高の値段が発表されることと思いますが、制低値につきましてはもちろん買上げという措置が行われるのであるが、ただ午前中のお話を承つても、その場合にも上の方については何らかの措置をされるのが好ましいというお話もあつたわけでありますが、最高の値段が出たときに対する措置はどんなふうにするお考えであるか、これをお伺いいたしたいと思います。
  81. 島村軍次

    ○島村政府委員 この問題についてはいろいろ論議のあるところであると思いますが、先般の農林委員会において局長から説明申し上げた通りでありまして、なお詳細についてお聞きであれば局長からお答えいたします。
  82. 小淵光平

    ○小淵委員 それでは局長さんからでもけつこうですが、もし手持ちのないときに非常な高値が生じたときには、何らか法的措置を講じてやられるお考えを持つておるかどうか、お伺いしたいと思います。
  83. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 この問題につきましては、昨日もお話申し上げたのでありますが、大体の行き方としましては、もし手持ちのない場合にはその措置はいたしません。ただ現在物価統制令がありますので、それを利用して行きたいということが考えられるだろうと思います。
  84. 小淵光平

    ○小淵委員 現行清算取引の場合は、——例の物統令による二十五万円という値段についての措置は講じられておりますけれども、清算取引価格がもし二十五万円以上になつた場合には、現在において何らかの措置が講じられておるかどうか。それからもし三月で物統令が切れてしまつたあと、清算取引所法によつて一定の価格にその値段を押える措置がとり得るかどうか。これは上値なつたときの関係が問題でありますので、この問題を伺いたいと思います。
  85. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 現在は取引法において物統令の適用をいたしております。三月以降において廃止される場合はどうかという点については、これはその後において研究課題として残るわけであります。
  86. 小淵光平

    ○小淵委員 それからこの法律の中の審議会についての問題でありますが、条文を見ますと、繭、生糸の安定その他重要事項という文字がありますが、この重要事項というのは、だとえてみれば、もちろん蚕糸全般にわたつての重要事項でありましようが、繭等の場合において、何か標準になる掛目等の基準が計算の上に出されて表示されるというようなことが、この審議会の重要事項という中に入つておるかどう「か。要するに非常に掘り下げたことを外部に発表でき得ることがこの重要事項というふうに解釈しておるのかどうか、この考え方をお伺いしてみたいと思います。
  87. 島村軍次

    ○島村政府委員 ただいま御指摘のような点も確かにその一つであろうと思うのでありまして、審議会の決定すべき事項については各般にわたつていわゆる重要事項についての事柄を目下検討を加えておりますので、御指摘のような点も当然考えられることだと存じております。
  88. 小淵光平

    ○小淵委員 この審議会委員は、もちろん蚕糸全般に対してのセンターを出すことでありますので、あらゆる角度から検討を進めなくてはならないが、この委員の構成は一体どのくらいの人員を考えておるか。またこの中に含まれる専門的、たとえば製糸なり輸出業者なり、輸出絹織物なり、問屋、蚕種あるいは養蚕、学識経験その他というような構成を一応考えておるかどうか、これについてお伺いをいたしたいと思います。
  89. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 大体御意見のような人を全部含めて構成して参りたい、こう思つております。
  90. 小淵光平

    ○小淵委員 この審議委員の中に今申し上げたほかに、たとえば国会議員というような職責にある人を入つてもらうということを考えておるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  91. 島村軍次

    ○島村政府委員 いわゆる学識経験者ということでありまして、繭価の安定上必要な各種の専門の方々審議会委員として入つていただきたい。たまたま国会中においてそれらの専門の方方がお入りになるということも考え得ると思うのでありますが、これは国会法の範囲においてきめられたもの以外の、つまり抵触しない範囲において、国会の人が入り得ることも将来の問題として考え得ると存じております。
  92. 小淵光平

    ○小淵委員 国会議員が入り得るということではなしに、国会議員も構成員として考えておるのだというふうには考えられないものでありましようか、お伺いいたしたい。
  93. 島村軍次

    ○島村政府委員 ただいまお答え申し上げました通りに、前提としては、あるいは原則としては国会議員がこの審議会に入るということではなくして、繭価安定審議会目的達成上必要なる限度においてその中に入り得ることも考えられる、こういうことに御了解願いたいと思います。
  94. 小淵光平

    ○小淵委員 もちろんこの法律は、蚕糸業全体の発展と安定、輸出の増強ということが精神になつております。輸出の確保のためには輸出優先で生糸の売出しをすることも当然なことだと考えております。しかし内地で使う生糸輸出生糸の値ざや等の問題が逆になつた場合にとられる措置は、どんなものであるか。たとえば生糸輸出がおもなものであるから、一時的には内地が上まわつていても、いずれは輸出にだんだんさや寄せをして行つて、値段が引合つて来るから、措置は何も講じないが、値段が内地より輸出の方が下まわつていて、輸出優先をどうしてもしなければならないようなとき、結局そういう現象の起つているときに、何らか措置を講じて輸出をすることにして行くお考えであるか、この点をお伺いいたしたい。
  95. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 これにつきましては、先日申し上げました通り、そういう場合の措置としてはこの法律では何らできないわけでございます。従つてこの法律以外の方法でやらざるを得ない、こう思つております。その措置として現在考えられるのは、優先外貨の制度ではないか、こう考えております。
  96. 小淵光平

    ○小淵委員 生糸についてはさように可能な範囲でやつて行かれることと存じます。ただこの場合考えなくてはならないのは、輸出絹織物業者に渡す生糸輸出優先に基く生糸というふうに解釈して渡しているかどうか。年間少くとも四万俵以上の生糸輸出絹織物としてつくつておられるのですから、これは結局、結果において輸出されるものであるという解釈に基いて、同一な取扱いをして行く考えであるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  97. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 この問題につきましては、生糸ほど確実に輸出されるかどうかということの確証が握り得ないがために、この法律の中にはつけ加えておかなかつたのでございます。もしその後の研究の状態いかんによりまして、確実に把握できるというようなことになれば、入れてもいいのじやないかと考えております。
  98. 小淵光平

    ○小淵委員 次に繭の問題についてお伺いいたしたいと思います。繭については午前中も非常にくどくお伺いいたしたのでありますが、結局異常な低落のあつた場合には、繭について何らか措置を講ずる、これはそうして行く以外にはないと思いますが、その何らかの措置というところによくわからない問題があるので、これを具体的にお伺いができればきわめて幸いでありますが、それはなかなか困難ではないかと考えます。私が一応推測して考えておりますことは、繭についても何らか措置を講ずる、その措置というのは、しばしば局長からもお話がありましたが、あるいは融資をするとか、あるいは融資をしておいた繭に対して下値の保証をするとか、あるいは一定の蚕糸年度を越して行く繭については政府で買い上げて処理して行くとか、あるいは買い上げた繭について売渡しをするとか、あるいは賃びきをさせるとか、こういう問題が一応考えられるのではないかと推測いたすわけであります。この繭はもちろん二千数百万貫の繭ができているのでありますから、そのうちの五〇%がもしこれらの措置をするということになりましても、金額あるいは施設あるいは人というふうな問題について非常に広汎にわたつて参りますから、これは事実問題としてなかなか困難な問題ではありますけれども、繭について考えておられる、いま少し具体的なことをお話いただければ、ある程度はつきりして参るのではないかと考えておりますので、それをひとつお伺いしたい。
  99. 島村軍次

    ○島村政府委員 先ほどお答えを申し上げました通りに、およそ繭にいたしましても、農産物価格の需給調整というような問題はなかなか困難でありますが、物の売買を政府でやるという建前は、御承知通り相当論議のあるところでありまして、従つて繭の生産に関してそれの買取りあるいは売渡しというようなことは、製糸の段階にとどめておきまして、別途金融上の措置を講ずるというのが、まずこの必要なる措置として考えられる第一段階であると思うのであります。あるいは組合とか、あるいは養蚕者の養蚕関係の団体等において、もちろん従前にありましたような乾繭の設備を持つて乾繭保管をするということも当然考えられることでございますし、それらに対する金融措置をやれば、やがてこれが繭価の安定ということにも相当役立つものだと思うのであります。それらの措置を講じた上で、さらに非常な事態が起きた場合において、あるいは買入れ等の方法も考えられるのでありますが、前段申し上げましたように、買入れまでの段階には、これはいろいろな予算上あるいは財政上あるいは経済上の措置を、そうすぐに必要な措置としてとることはなかなか困難ではないかと思つておるのでありまして、その情勢いかんによつて必要な措置考えるということがすなわち本法律第十条のねらいでありまして、具体的な問題につきましては、不十分ではありますが、さような点で将来の問題として検討を加えたいということで御了解を願いたいと思います。
  100. 小淵光平

    ○小淵委員 この繭糸価格安定法は、第五国会以来今日いよいよ日の目を見たわけでありますけれども、その間たとえば政府案として出そうと考えたものに、公社案あるいは繭糸価安定法案、また八木案あるいは白波瀬案というような案が幾つも出て、今日までずつとやつて参つたわけであります。今回最も完全なりつぱな原案がここにできたわけでありますけれども、この十条の繭の問題について、先ほどお伺いした種々なる方策がある、その問題については将来の問題として考えて行こうということでありますが、この繭の問題について、たとえば監督の面であるとか、あるいは保管の面であるとか、あるいは売渡し、買取りというような面になると、なかなか問題があるのは当然のことでありまして、当時これらの案いろいろ研究して参りますまでには、たとえば繭なり生糸なりについては繭糸金融公庫というようなものもどうだろうというようなことを考えた時代もあつたわけであります。それは特別な機関にこれらのものをゆだねてやらせようということも考えたわけでありますが、そういうようなことも一応は考えの中に持つておるかどうか、これをお伺いいたしてみたいと思います。
  101. 島村軍次

    ○島村政府委員 現在では事業者団体法及び独占禁止法等の関係で困難だと思いますので、将来の問題として考究を進めて参りたいと思います。
  102. 小淵光平

    ○小淵委員 これらの生糸がいよいよ買上げになるということになりますと、昔の帝蚕倉庫、横浜の倉庫あるいは神戸の倉庫等を使うことになると思いますが、こういう保管の場所であるとか、あるいは政府が管轄をしておるところの倉庫というようなことについては一応考えておられるかどうか、またそういうものがあるかどうか、この点をお伺いをいたします。
  103. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 この法案生糸を買い上げます地帯は横浜、神戸でございますから、そういう部面におきまする倉庫の施設なりあるいは相手方の信用力なりというようなものは、十分調べたいと思つております。
  104. 小淵光平

    ○小淵委員 大体不明な点がややわかりましたが、問題はこの十条の繭価維持のための特別措置の問題であります。これはただいま次官のお話でも、将来の問題として考えるということでありますから、将来に漸次考えていただくことではありますけれども、必ずしも繭と生糸は、生糸が安定すれば繭が安定するということのみは考えられない節が多分にあるわけであります。そのために今はアンバランスになつておりますから、結局製糸業者の力のあるうちだけは、これは競争で繭を引取りまするそのために異常な安値というものは繭についてはないと思います。しかし生糸——せいしというのは生き死にと書くぐらい、非常に変転きわまりない事業でありますので、あるいは現在のアンバランスも、ときによつては繭がだぶついて来ることもないとは言えないと思うのであります。従つてこの十条の繭についての何らかの措置ということには特に考えを及ぼしていただいて、具体的な問題がわれわれにわかり得るように、なるべく研究を進めていただくことを特に希望申し上げて質問を終ります。
  105. 小林運美

    小林(運)委員 私は先日来この法案についていろいろ質問をいたしましたが、重要な点につきまして、その後各委員の質問に対する政府当局の答弁にやや食い違つた点があることを、この際はつきりしておきたいと思うのであります。昨日私は根本農林大臣の出席のあつた際に、この十条の問題につきまして質問をいたしまして、私の予期しておりましたような答弁があつたのであります。しかるに蚕糸局長並びに島村農林次官等におきましては、その後ややこの大臣の答弁と食い違うように見える点がありますので、この際はつきりひとつ確認をいたしておきたいと思うのであります。昨日の農林大臣の答弁によりますと、この十条の問題で、現在は予算的な措置としては生糸の買入れのために三十億を計上しておるけれども、これは暫定的な問題であつて、将来異常な場合、また将来財政が許すならば繭の買入れも行うことができる、またそういう考えで行きたいというはつきりした答弁があつた。これに対して、次官あるいは局長の答弁が、各委員の質問に対して少しあやふやな点がありますので、この辺をはつきり再確認をしていただきたい。次官、局長ともおられますから、それでいいかどうか。大臣の答弁の通りにやつていただきたいと思いますが、これをひとつ再確認をしていただきたい。
  106. 島村軍次

    ○島村政府委員 大臣の答弁申し上げた通りでありまして、さように御承知願います。
  107. 小林運美

    小林(運)委員 蚕糸局長は答弁がありませんが、次官の答弁に同感だろうと私は考えまして、さように確認をいたします。  次は私は標準値段の問題で一昨日蚕糸局長にいろいろ御質問をいたしたのでありますが、標準値に対して現在どんなふうな考え方を持つておるかというような点も、これは現在きめるのではなくて、来年の三月にきめる、また三月以降において場合によつては五月三十一日までの間にきめるというような規定になつておりますが、この標準値段のきめ方、すなわち標準値段に対して上値が幾ら、下値が幾らということがこの法律の山なんです。ところが午前中に業界の代表者からいろいろな御意見もありましたけれども、先般のロンドン会議におきまして一応三ドル八十セントという値段を示しましてこれで糸価安定をやつて行きたいという決議がされた。しかもわが国の代表も今回は正式に代表として行つている。これを持つて来てこの糸価安定に関連を持たせるということは、われわれ考えて非常に矛盾がある。買手の方は安く買うのが当然であり、売手の方は高く売りたいというのが当然でありますので、この問題は糸価安定の標準値段をきめる際の重要なものにはならない。一応そういつた線も考えるけれども、われわれはどこまでも売手であるという立場から、そういうものには一顧でも与えないという覚悟をもつて政府はやつて行かなければならないと私は思うのでありますが、さような覚悟はありますかどうか、次官にお伺いする次第であります。
  108. 千賀康治

    千賀委員長 この際小林委員に申しますが、佐竹主計官がただいま出席でありますから、同時に質問を許します。
  109. 島村軍次

    ○島村政府委員 ロンドン会議の決議の三ドル八十セントの問題は、午前中私も傍聴いたしましたが、承つているところによりますと、向うの希望値段でありまして、こちらといたしましては、各般の情勢を判断いたしまして適切な標準値段をきめることにやぶさかでない考えを持つております。さように御承知を願います。
  110. 小林運美

    小林(運)委員 大蔵当局が出席のようでございますから、繭糸価格安定法案に対する裏づけとなります糸価安定特別会計法案が現在大蔵委員会にかかつおりますが、われわれは本委員会と合同審査をもつてこの糸価安定特別会計法について十分質疑をいたしたいと考えておりましたが、時間の関係でこれらもどうなるかわからないということで、私はこの糸価安定特別会計法について大蔵当局の明快な御答弁を伺いたいと思うのであります。  まず第一に特別会計におきましては、大体今回の予算の獲得の原因となつたのは、かねてわれわれ繭糸関係の業界において当然受取るべき金がありました。これを大蔵当局があたためておつて、これを今回の繭糸価安定の施設のために使うという条件のもとにこれを政府に納めて、これがほとんど大部分の財源となつて今度の三十億が支出されたというふうに承つておりますが、かような意味からいたしまして、この三十億はいわゆる業界とのひもつきだとわれわれは考えている。従つてこれらの問題については、大蔵省が一般会計からどうだとかこうだとかいうようなことはある程度差控えてもらいたいということがわれわれの希望なので、こういうような事情は十分大蔵当局で御承知のはずだと思うのであります。以下これらに関して二、三質問をいたしたいと思いますが、さような見解でいいかどうか、大蔵当局の明快なる御答弁を承りたいのであります。
  111. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 ただいまの御質問は、昭和二十六年度の補正予算におきまして糸価安定特別会計への繰入れとして計上されました一般会計よりの繰入金三十億円というものは、業界とのひもつきであると考えてよいかというお尋ねであつたと思います。この問題につきましては、私どもから御説明を申し上げますまでもなく、すでに小林先生は十分御承知のことと存じますが、閉鎖機関の清算剰余金の一部を政府に寄附されるということとの関連でこの問題は動いて参りました。その意味におきましては、業界において蓄積されました資金を、使途を指定して国庫に寄附される、またその寄附された財源をもつて糸価安定の施設を講ずるという筋道につきましては、まさにおつしやる通りだと思います。ただ金額的にそれがはたして受入れたものと出すものとがぴたりと一致しておるかどうかという点になりますと、この点は必ずしもそういう正確な計算には相なつておらないようなわけでございます。いずれにいたしましても趣旨としては、糸価安定のための政府の施策を行うための源財として寄附され、それを受けて政府として糸価安定の施策を講ずるということはお説の通りでございますが、ただそれであるからと申しまして、特別会計法なり、ないしは予算の使途なりにつきまして、まつたく大蔵省として何らの意見も申し述べられぬというふうには実は了解いたしておりませんので、これはやはり財政全般の問題として、それの一環として私どもは処理いたしたい、こう考えております。
  112. 小林運美

    小林(運)委員 私はひもつきだからこれを全部どうこうしろと言うのではない。ただいまの御答弁のように、この成立ちはそういう成立ちであるので、今後この会計におきましていろいろの問題があつた際には、そういうことを十分考慮に入れて操作をしてもらいたいというのが私の考え方なんであります。それについては大体お認めのようでございます。  そこでこの特別会計法によりまして生糸最低値で買い上げまして、また時期が参りまして生糸が高くなつて政府が売り出すというような際には、必ずもうかるにきまつておりますので、政府がもうけたこの金を一応積立てをしておくというようなことがだんだん行われますが、この積立てにしても相当幅が大きければ非常に大きな金額になり、幅が小さければ少くて済む。これは量にもよりますけれども、とにかく相当金額が積み立てられることになります。ところがわれわれはこういう特別会計に金を積み立てるのが目的ではない、糸価の安定をはかることが目的であつて、金をもうけるとかどうとか——これはほかの一般の会社であれば多々ますます弁ずる、金をもうけることはいいのですが、政府がこういうことをやるには、やはりこの法律目的を達成さえすればいいのだ。そこでその余剰としてプラスの金が出て来た。これはただ積み立てておけばいいかと言えば、必ずしもそうではない。財政が許すならば、この積立金なりあるいは剰余金というものを、業界のために、しかるべき方法に使うのが当然ではないかというふうに私は考えるのでありますが、こういう面に対して、大蔵当局はどんなお考えを持つておりますか。
  113. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 糸価安定特別会計法にもございますように、この会計におきまして毎会計年度損益計算上の利益を生じましたときには、これは積立金に繰入れる。また一方、損失を生じましたときには積立金を減額して整理をするという規定があることは、これはもう十分御承知のことと思います。そこで最低価格をもつて買い入れ、最高価格をもつて売るわけでありますから、利益の出るのは当然であろうと思います。ただこの糸価安定の目的を十分に果しますためには何ほどの資金が必要であるかということは、今日の一応の見通しといたしましては、三十億円の資金をもつてやるということに一応考えられておるのでありますが、将来におきましてはこれがいかような姿になるか、これはまつたく何人も予想しがたいところであると思います。万一さらに資金の需要を生ずるという場合を考慮に入れますと、積み立てました利益を右から左へくずして、何らかの方法に使つてしまうというわけにもなかなか参らないのじやないか、こう存ずるのであります。ただこの特別会計法にもさらに規定がございまして、決算上の剰余金は翌年度の歳入に繰入れる。これは当然のことでございまするが、年々それを受け継ぎまして、万一新たなる資金需要が起りました際の備えに万全を期すということを予定しておるわけであります。将来どういう形になるかわかりませんが、非常な巨額にこれが累積されて来るという場合には、おつしやるように何らかの方法をあるいは考えなければなりませんが、しかしさしあたつてどもといたしましては、今日の段階では、こういう形で翌年度に剰余金として受入れまして万一に備えて参る、こういうことで参るのが最も糸価安定の目的にかなうことであり、また業界の御要望にこたえる道ではなかろうか、こう考える次第であります。
  114. 小林運美

    小林(運)委員 私はその前に、もう一つお聞きしたがつたのですが、大体もうかつた場合の積立金に対してはわくをつくつておられるかどうか。積立金と剰余金の関係はどんなふうにお考えでございますか。
  115. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 積立金に対しましては、別にわくというものは考えておりません。
  116. 小林運美

    小林(運)委員 そうしますと、もうかつた金を全部積み立てるのではないのですか。
  117. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 損益計算上り利益はこれを積み立てる、こう規定してございます。
  118. 小林運美

    小林(運)委員 これ以上追究してもしかたがありませんが、大体私たちは一応の目安を持つております。しからばそういうような積立金がどんどんふえて、さらに剰余金が生じてこれを一般会計に返すというような際に、たまたま蚕糸業界はいろいろの施設を講じなければならぬ。たとえば現在におきましても、養蚕指導員の身分安定のための支出というものは、われわれ業界で希望している九牛の一毛にも足らないような金しか出ていない。これはもう数年来われわれが口をすつぱくして政府当局に要望しているが、これを満たさない。その他本日もいろいろ意見のありました桑苗の問題、あるいは蚕品種の改良の問題、あるいは養蚕増産のためにするいろいろな施設、稚蚕共同飼育の問題その他各般の必要な問題がありますが、大蔵当局はなかなかこういう問題に対して金を出してくれない。しかも過去においては、生糸の買入れによつて生じた金がどんどん一般会計へ入つている。しこうして今度は、こういうふうにはつきりした糸価安定特別会計法によつて利益の生じた金を一般会計へ入れる以上は——これは過去においてもいろいろ例がありますので、ひもつきといつてはおかしいのですが、先ほど私が一番初めに申し上げたような意味からいつて一般会計に繰入れたその分くらいは、少くともそういつた新しい蚕糸業増産その他の必要な施設に支出して行くということが、当然の帰結ではないかとわれわれは考えるのですが、そういう点について大蔵当局はどんなふうにお考えですが。
  119. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 ただいまお話のございました蚕糸技術の改良の問題でございますとか、あるいは桑苗の改良の問題、いろいろ養蚕業並びに製糸業の面には今日問題が山積しておるわけであります。大蔵省といたしましても、養蚕業並びに製糸業の国民経済に占めます地位の重要性は重々認識いたしておるわけでございまして、ことに技術改良普及の点につきましては、先ころ来御審議をいただきました補正予算においても、相当の待遇改善の経費を盛り込んでおるわけであります。今後とも蚕糸業振興のためには十分なる支出を見積つて参りたい、こう考えております。
  120. 小林運美

    小林(運)委員 あなたは、今ここでは大分うまいお話をしているが、いよいよ予算獲得準参りますと、蚕糸当局はあなたの一喝のもとにみな遣い返されてしまう、こういうのが実情なのであります。今あなたのおつしやつたその言葉はちやんと速記に残つておるのだから、今度行つたときには、この速記のようにひとつやつていただきたい。これは余談でございますが、それほどに今まで、蚕糸業界に対しまして大蔵当局は非常に冷淡であつた。あなたは多少おわかりかもしれませんが、全般といたしまして、蚕糸業界に対する予算の問題は非常に冷遇されておつた。しかもあなたが先ほどお話になつたように、蚕糸業界は外貨獲得という面において実に大きな力をいたしておる。現在日本が米を輸入する、これから輸入物資が相当あると思いますが、それの代替をするものは何かというと、蚕糸業による外貨獲得なのである。こういうような大きな意味において——ただ国内にいろいろな産業があり、大きい産業があつても、これはみな内輪の問題で、われわれのこの国立から、全然よその力を借りずに生産されたもので、これだけの大きな外貨を獲得するものはない。そういうような意味において、われわれはただ糸価安定から出た剰余金ばかりではない、もつとく大きな意味から、蚕糸業振興発展のために相当の額を支出するのが当然だと思う。そうしてこの蚕糸業の改良ができれば、ますますわれわれの国家収入というものはふえて来る、そして外貨がどんどん入つて来るということになりますので、これは十分ひとつお考えおきを願いたいと思うのであります。従つて先ほどから私はくどくど申し上げましたが、この特別会計によつて一般会計に繰入れるようなものがありましたならば、卒先してこれは蚕糸業の改良に支出するということを、大蔵当局はこの際御確約を願いたいと私は考えますが、それに対する御意見を承りたいのであります。
  121. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 小林先生の御趣旨まことにごもつともと存じます。大蔵省といたしましては、今後とも蚕糸業振興のためには相当な経費を見積つて参るということで、御趣旨に沿うようにできるだけの努力をいたしたいと思います。
  122. 小林運美

    小林(運)委員 次に今回の繭糸価安定法について、糸価安定特別会計が設けられましたが、この三十億の予算の考え方でございます。予算説明によりますと、一俵十四万五千円で二万俵買い入れるというような説明がありますが、これはどこまでも一応の予算説明であつて、実際問題として明年三月に、たとえば最低値がきまつた場合——この予算とは全然かけ離れて、この法律に明記してあるように、世界の情勢、日本の業界、経済界その他いろいろの材料を入れて最高最低値がきまると私は思う。従つてこの十四万五千円というものにはこだわらないと解釈していいかどうか。
  123. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 十四万五千円と申しますのは、ただいま御指摘の通り、予算の積算の一応の見積りでございます。現実に最高最低値をきめる段階になりましたならば、そのときの情勢を見てきめて行くべきものと思います。
  124. 千賀康治

    千賀委員長 竹村奈良一君。
  125. 竹村奈良一

    ○竹村委員 私は政務次官にお伺いいたしたい。朝からの参考人意見を聞いておりますと、たとえば輸出協会なんかの人は、政府の買い上げた生糸輸出を優先にせよという要望が非常に強いのでございますが、政府としてはそういう輸出優先というのを確認されるような形で今後輸出を行うのかどうか。
  126. 島村軍次

    ○島村政府委員 輸出優先の問題は、この法律の範囲内においては、政府の手持ちに対しては、条文には上つておりますように、買い上げたものに対しては、なるべく輸出に振り向けるような措置を講ずるという考え方を持つております。
  127. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そういたしますと、この法案が成立して、最低価格で買い入れたものを大体輸出に重点的に振り向けるということになると、問題は輸出価格ということにもなつて参るのでございます。しかしそれはそのときの経済的な状態でおそらく決定されるものでありましようが、そこで問題は、私は参考人の人々にも少し意見を申し上げたのでございますが、その場合に海外の市況と国内における法律を実行する目的とが相違しないような形における輸出価格ができ得る見込みがあるかどうか。これは政府としては重要な問題であろうと思いますので、まず伺つておきたい。
  128. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 最高価格になりました場合に、輸出優先の措置をわれわれの方はとつて参りたい、こういうぐあいに考えておるのでございまして、最高価格以下の場合においては、内需の方に出そうが、海外に出そうが、いずれも自由に考えておるわけでございます。あなたの御質問の趣旨がよくわからないのですが……。
  129. 竹村奈良一

    ○竹村委員 たとえばこの繭糸価格安定法のねらいは、糸価を安定する、この前提をなすものは、少くとも国内養蚕業あるいは製糸業が採算に合う形においてのみ安定される。単に海外の市況だけで安定するものではない。その骨子にこの法律が立つていなければならぬと思います。従つて輸出を優先にするとおつしやつておりますが、海外の市況が非常に安くなつて生糸輸出いたしましても、国内の繭あるいは生糸生産費を割つた場合においては、輸出しても何もならぬ。少くとも外貨獲得という大きな問題を問題にされておりますけれども輸出するということはやはりもうけることである。決して国内生産費を割つて、損をして輸出するということは、外貨獲得にも何もならない。問題はこの点がはつきりして、そういう見通しを今後持つておられるのかどうか、この点を聞いておるのです。
  130. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 そういう場合は起きないという仮定のもとに、こういう法案ができておるのであります。
  131. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そういう場合がおそらく起きないものであろうという考え方は、今日アメリカにおける生糸需要の増大の面、たとえばくつ下とかいう面の需要でそういう見通しが持てるのかどうか。いろいろな面において論ぜられておるところを見ますと、生糸需要は、ナイロンその他によつて非常に圧迫されて、だんだん少くなつておる。これは一般的な傾向でありますが、最近アメリカにおいて非常に需要が増して来たということは、アメリカにおける軍需的な面にこれが非常に使われておつて、それだから海外の必要が多くなつた。従つてそういう見通しだから最低値を割ることはないというお考えですか。あるいはそういうものがなくなつても、ナイロンその他を駆逐する、いわゆる人間のほんとうに必要なもの——これはみな人間が必要なのですけれども、戦時特需の面がなくなつてもそういう見通しをお持ちになつておるのかどうか。
  132. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 終戦後における輸出の増加は、軍需には全然関係がないと信じております。現在の段階におきまして、生糸がアメリカにおきまして、軍需関係に使用されておるということは、われわれはまだ聞いておりません。
  133. 竹村奈良一

    ○竹村委員 あなたの方からお出しになつた表で見ますと、最近になつて非常に激増しているわけでございますが、その事情は一体どういうわけですか。
  134. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 アメリカの有効需要によつて増加しておるように考えております。軍需には全然関係のない、民需関係の有効需要の増加によつて、健全に増加して来ておるのではないか、こう考えております。
  135. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それではもう一つ私は聞いておきたいのです。たとえば十条のことが非常に問題になつておるわけでありますが、先般各委員からの質問でいろいろ答えおられるのですが、どうもはつきりしない。たとえばけさからの参考人の一人、吉田さんであつたと思いますが、足鹿さんの質問に対して、吉田氏の考え方は、この政府が出して曲る法案繭糸価格安定法案となつておるけれども、その前提をなすものは糸価の安定である。従つてこれに対する買入れ値段がきまれば、おのずから繭価というものは付随的に決定されるものであるという参考人の御意見が強く出ておつたのでありますが、この十条を見ておりますと、なるほどそういうふうに考えるわけです。繭糸価格安定法案となつておるが、だれが見ても、たとえば参考人にすらそういうふうに見えるように、われわれもこの十条についてはそういうふうに考えるのですが、一体政府はその点をどういうふうに考えておられるか。糸価の方がきまれば当然必然的にきまるのだという付随的な考え方かどうか。この点をお聞きしておきたい。
  136. 島村軍次

    ○島村政府委員 第十条に示しておりますように、生糸の買入れによつてもなお云々と、なおということを書いてありますが、法文の目標は糸価の安定を主体に置いて、目的の達成できない場合において十条の規定が当然考えられるということであります。大よそ段階がありますから、竹村さんの御意見一つ考え方としてあるいはまたさようなことも考え得ることではありましようが、順序及び情勢から考えますと、まず糸価の安定からであるということで、法文がつくられたわけであります。
  137. 竹村奈良一

    ○竹村委員 大体問題ははつきりして参つたと思うのでございます。そういたしますと、糸価が安定すれば必然的に国内の繭の価格が決定されるということになつて参りますと、政府考え方が大体はつきりして参りましたが、その考え方は非常に順序が違うものと思う。少くともこの糸価を安定するということを前提に置かれる前に、日本製糸業の本体をなす根本は一体何であるか。これはやはり繭をつくるものである。従つて繭価の安定、養蚕農家の安定をまず先にはかつて、しかる後にこういう法案が出されなければならぬ。もちろん条文的には繭糸価の安定となつておりますけれども、今政務次官の説明されるように、まず糸価というものが先に問題になつて来て、根本的な考え方においてはまずまつ先に取上げなければならぬ養蚕農家の安定をどうするか、その生産費を償う価格というものをどういうふうにして行くかということが、付随的に取上げられておるところに大きな問題があるのであります。先ほど蚕糸局長のお話では、輸出いたしましても生産費を割るものではないというふうに言つておられますけれども、しかし今日日本養蚕業考えますと、桑をつくつておる、もう値が安くなつたから蚕を買うことはやめようというわけには参らないのであります。ただ桑があるから必然的に自家労力で何とか養蚕をやつて行くということになる。従つて海外の値段が安くなつた場合においては、しわ寄せば結局養蚕家に来ると思うのですが、これに対して、その場合において何とかするというのでは実はわれわれとしては納得はできない。この点についてこの十条をもつとはつきりと、養蚕家の繭の生産費を償う価格はこうこういうふうにするのだというふうに改正する御意思はないか、それをお聞きしたい。
  138. 島村軍次

    ○島村政府委員 朝の権威者の話に追従するわけではありませんが、ともかくも政府考えましたのも、糸価の安定を期するならば繭価の安定も期せられる。しかして、生産費の問題になりますれば、この法律の適用によつて、それらの問題も当然考慮の中に入れられて糸価が決定され、それらの問題がやがて考慮の中に入れられて繭価が決定になる。糸価の基準が繭価にも影響を及ぼす。こういうことは、例は悪いかもしれませんが、卵が先か鶏が先かということと同じような結果になることと私は考えております。
  139. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それではお伺いいたしますが、たとえば朝の参考人小林さんの御意見では、生産費糸価に対するパーセントを七七・二%は認めてもらいたい、それをまず希望するという要望があつたのであります。私自身はこのパーセントで行くことには必ずしも賛成はいたしませんけれども、一応は参考人の御見解として七七・二%を要求されているわけですが、そういう面をどうきめる御意思ですか。
  140. 島村軍次

    ○島村政府委員 現在の繭なり生糸価格というものは、大体自由取引になつておる点から考えますと、そのときの情勢によつて加工費なり、あるいは生糸生産費というものもおのずから違つて来るわけであります。従つて必ずしも七七・二をとるべきだというふうには考えられないわけであります。
  141. 竹村奈良一

    ○竹村委員 政府のお話を聞いておりますと、先ほどは糸価の安定と繭価の安定は、鶏と卵のような関係だと言いながら、かんじんのパーセントの面になりますと、そのときの経済的な状態によつて、このパーセントはかわつて来るというふうにおつしやいます。これではますます養蚕家の面が非常に不利になるのではないか。たとえばその他のいろいろな製糸業者の必要経費というものが増大して参りますと、必然的に繭価というものにしわ寄せをして、これを安い値で買い上げるという形になつて来るのではないか。従つてやはり万全の策ではない。万全の策ではありませんが、やはり生産費のパーセントというものをある程度はつきり明示する必要があるのではないか。それには七七・二%というものは絶対的に必要なパーセントというふうに考えられておるわけですが、政府はそういう点についてもやはりはつきりすることはでき得ないのかどうか、重ねてお尋ねいたします。
  142. 島村軍次

    ○島村政府委員 お話の点はちよつと私にはのみ込めない点があるのでありますが、結局お尋ねは、生産費を基準にするとしわ寄せが農家の経済に及ぼされるという前提からのお話だと思うのであります。私が先ほど御答弁申し上げましたのは、現在の段階では、生産費もパリティ指数もあまり違つてないような情勢でありますので、取引そのものから申しますと、自由の取引が前提になつているということをお答えいたしたのであります。答弁は別に矛盾はないと思つております。
  143. 竹村奈良一

    ○竹村委員 蚕糸局長にひとつお伺いいたしたいのでございます。先ほど生産費を割るようなことがない、こういうふうに伺つたのです。そこで問題になつて参りますのは、たとえば繭価の方は少し別といたしましても、製糸の方でございますが、ここに載つている生産費の計算をある程度拝見いたしたのでございますが、具体的にあなたの方で調査がされているとするならば、この製糸の中に占める労働者の労賃というような分は、一体どのくらいの形で占められているか。たとえば他産業と比して、これは通例ではあまりにも低い労賃であるということは、一般的に言われているわけでございますが、この面はどうなつておりますか聞かしていただきたいと思います。
  144. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 大体この加工費の中で労務関係の費用は四〇%かあるいは三五%程度くらいではないかと思われます。他産業と申しましてもいろいろありまするが、紡績関係から見ますると幾分低いかとも思います。
  145. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そこで私は心配いたしますのは、輸出の場合におけるいわゆる生糸生産費というものが、他産業よりも低い紡績業よりもなお低い。御承知のように、日本の紡績業に占める労働賃金というものは最も低率である。しかもこれが戦前等におきましても、日本の紡績業の輸出はいわゆるソーシヤル・ダンピングと言つて問題になつたくらい低賃金でありますが、しかもそれよりも低い賃金を基礎にして生産費を組み立てられて、しかもそれで輸出されてその輸出価格が引合うのだということになりますと、将来日本輸出品というものはまた労賃をしわ寄せして労賃が低いがゆえに海外に出て行くという形になつて参ると思うのでありますが、こういうような点も、普通一般の労賃に引上げた形における生産費を出した上においての輸出価格が引合うのかどうかということについては、どうでしようか。
  146. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 今申しました生産費は、実は現実に製糸業の内部において資本家と労働者との間に協定されてきまつて来た価格でございまして、われわれといたしましては、理想としては御趣旨のようなことが考えられるかと思いまするが、われわれが現実に取扱います場合には、こういう数字が出て来るのではないかと思います。
  147. 足鹿覺

    足鹿委員 大蔵省の佐竹さんに二、三お尋ねを申し上げ、かつ昨日落しました点を蚕糸局長なり農林政務次官にお聞きしたいと思います。  まず大蔵当局にお尋ねしたいのでありますが、もとの案は糸価安定である、そういう構想から農林省と御折衝になつておつたと思う。ところが先月の初めごろから中旬ごろにかけて、ほうはいたる養蚕農民の声が起きて来た。そこであわてて政府はこれに繭の字を加えて法第十条で必要な措置を入れた。いわゆるにわか仕立ての繭糸価格安定法であるということは何人といえども否定することはできない。その証拠には、その内容になるところの具体的な裏づけが一つもない。そういう点は、大蔵当局は当初糸価安定で折衝を受け、これが後急拠繭糸価安定にかわつたのに対して、三十億のわくについて農林当局からその増額とか、あるいは将来不足を生じたときには、そういうような点について何らかの折衝があり、打合せがあつたかどうか。
  148. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 三十億円の増額につきましては別に要求はございませんでした。
  149. 足鹿覺

    足鹿委員 そういたしますと大蔵当局としては、農林省の考え方は絶対に妥当である、これが糸価安定が繭糸価安定にかわつても三十億でけつこうやつて行ける、立法の効果が上る、そういうふうにお考えになつておるかどうか。最近の傾向は、農林省がいろいろな案を出しても、大蔵省は独自な財政的立場に立つてこれに厳重な査定を加えられる。いろいろな大蔵省独自の意見を述べられて、いろいろ農林政策に大蔵省の意見が強く反映しているということは内外とも知つている。この大きな重大な恒久立法であるところの繭糸価格安定法に対して、農林省が三十億と言つたから、何、それ以上何らの感想もない、こういうふうにとつているのでありますか。その点をお伺いいたしたい。
  150. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 さしあたつての状況といたしましては、三十億をもつて所期の目的を達し得る、このように考えております。
  151. 足鹿覺

    足鹿委員 これは佐竹さんにお尋ねすることはちよつとどうかと思いますが、大蔵大臣の方が適当と思いますけれども、ついででありますからお尋ねをいたします。三十億では昨日来の質疑応答によつて、とうてい所期の目的は達成できない、また今日の午前中の各界の権威を網羅したところの参考人意見の上においても、これは明らかなのであります。昨日来の質疑応答によつても、もし万一所期の目的を達成しなかつたときには考えるということも農林大臣は言明しておる。この点についてこの計数に明るい大蔵当局が、農林当局の言つていることを易々諾々として、この立法効果の裏づけとして、三十億はこの程度でいたし方がない、こういうふうに単純にお考えになつておるということは、従来の農林政策に対するところの大蔵当局のお考え方からすると、われわれは度しがたい。将来資金の不足が自明になつた場合には、大蔵当局としてこの増額に対してはいかなる御所見を持つておられますか。この点は非常に重要な問題になろうと思いますので、もし明確な御所見が承れないということでありますれば、他の機会に大蔵大臣なりまた責任のある人に御質疑を申し上げてもいいが、もし伺えますならば伺つておきたいと思います。
  152. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 今日の予算は現在の状況を元にして組まなければならぬわけでございますが、将来の情勢がどのように変化いたじますか、これは先ほども申し上げましたように、実は何人も予測しがたいところでございます。そこで今日としては三十億をもつて足るということは申せようかと思いますが、しかし将来著しく情勢がかわつて来る場合に、はたして三十億をもつて足るかどうかということは、御説の通りまことに疑問であると思います。要は糸価を安定させることにあるわけでございますから、情勢が将来かわつて参ります場合には、そのときの情勢を見てきめて参る、こういうことでございます。
  153. 足鹿覺

    足鹿委員 これは佐竹さんに聞くのはどうかと思いますが、関連がありますので最後にお伺いしておきたいと思います。それは先刻も申し述べましたような事情で、糸価安定が繭糸価安定にかわつた。養蚕農民の要求というものは、要するに法第十条において繭の政府買上げを規定しておるが、もしただちに政府買上げができないならば、六箇月の手持ちをして、その間養蚕農民に融資をし、その後に政府買上げ措置を講じてもおそくはないという要求をはつきり掲げている、これは筋の通つた問題であります。乾繭融資の点について昨日農林大臣も御答弁になつておりました。あるいは委託製糸を奨励して、これに対する金融措置を講ずるという意味のお話がありました。その点について所管省である財務当局として、農林省と今までどういうお話合いをしておられますか。いわゆる委託製糸に対して、あるいは乾繭処置に対して融資を行つて行く、その融資の方法なり、また融資の金額なりについて、農林当局と御折衝になつたことがありますか。
  154. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 再々申し上げますように、第十条の発動をされる時期というものは、今日なかなか予測しがたいところでありますし、実際に一体繭がどのくらいに下る、またその場合に一体どの程度を融資の対象とするかということについては、そのときの情勢を見ませんとはつきりいたしませんので、農林省との間では、具体的な数字の問題にはまだ入つておりません。ただ考え方としては、乾繭担保の融資をして、それによつて一時のつなぎをして、なお繭価がさらに回復をいたさないという場合には、委託製糸の方法によつてひきました糸を特別会計において買い入れる。このような筋道について話合いをしているわけであります。
  155. 足鹿覺

    足鹿委員 養蚕農民としての悲願は、繭価を保証して、拡大再生産をなし得るような安定した繭価ということと、いま一つは、取引の改善によつて正当なる養蚕農民の主張が正しく反映するような取引機構ということを望んでおるのであります。清算問題については昨日来御質問申し上げたので、本日は省略いたしますが、特に取引機構の改善について、大蔵当局の御所見を承りたい点がいろいろあるのであります。現在取引の一番矛盾は、特に養蚕に関する融資の問題であります。養蚕農業協同組合を育成強化する、また相当分裂している養蚕農業協同組合の分野を整備して、今後の取引機構の裏づけをすることが必要である。昨日農林大臣は改善に資そうと言明された。ところがこれが結局今のように養蚕農協にはびた一文の融資もしないで、いわゆる買手であるところの製糸業者に融資をして、製糸業者は日銀、市銀を通じて、今度製糸業者からいわゆる買付資金が運用される。その間にあつて養蚕農協というものは、養蚕農民製糸業者の間に立つて、どちらかというと製糸業者の鼻息をうかがつて、わずかに余喘を保つというがごとき微弱な存在に現在なつていることは、残念ながら事実であります。これに対して、養蚕農協に融資をして、養蚕農協が自立統制を確立して行く一つの金融的な裏づけをもつて初めて公正な取引の実現ができると思う。こういう不合理な養蚕に関する融資方式に対して、大蔵当局はどういうふうにお考えになつておりますか、御所見を承りたい。
  156. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 金融の問題は私の受持外に属しますために、明確なお答えはいたしかねるのでございますが、ただ考え方といたしましては、繭の買入費に対する融資を行うことは、間接的に養蚕農家経営に活を入れて参ることであると思います。
  157. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの問題について、島村政務次官か青柳さんにひとつ……。養蚕金融に関して昨日農林大臣も御答弁になつておりましたが、いろいろな施策があるように聞きました。ただ抽象的な御説明で了承できないのでありますが、この養蚕農民に対する金融方法の改善あるいは取引の背景をなすところの金融の問題について、どういうような御所見を持つておられるか承りたい。
  158. 島村軍次

    ○島村政府委員 私も足鹿さんの御意見賛成であります。ただ現在の段階では、御承知通り養蚕農協への融資がまだ行われていない。そこでこれは将来の問題でありますが、御意見を尊重して大いに努力いたしたいと思います。
  159. 足鹿覺

    足鹿委員 明確な御答弁がないようでありますから、これ以上申し上げませんが、取引の改善の問題については、ただ抽象的に農林大臣なりその他から御答弁になつた程度であつて、いかに繭糸価格安定法案の裏づけとしての養蚕家の利益を擁護して行くことに薄いかということが、この一事をもつてわかるのではないかと私どもは思う。  そこで第二の問題は、主として青柳さんにお尋ねいたしたいと思いますが、現在養蚕増産指導の系統というものが、いろいろ複雑しているように私ども聞いております。蚕糸試験場の流れをもつて、技術指導の中核であるとわれわれは思つておつたところが、話に聞きますと、養蚕技術指導所というものが各府県にあつて、わずかな職員が何かおやりになつているらしい。ところがその人々の職能というものは、現在各地方における蚕糸業の発達に対しては大した存在ではないらしい。ただ蚕糸局の出先機関としての域を出ないという程度にわれわれは聞いているのであります。昨日来養蚕農民のためにああいうことも考えている、こういうこともやるんだと言われるけれども、事実現在の蚕糸局の末端指導機構の上から見ましても、てんでなつていない。そういうことで実際その大きな御計画があつても、頭でつかちで、下へ行くほど微弱なものになつて、結局じようごの口は大きいけれども、出て行くところはごく小さなものになつてしまつて、そうして最後の養蚕農民にこれが行くときには霧雨のようなものになつて、わけがわからなくなつてしまう、こういうのが現状ではないかと思う。そういう点について、今後の日本蚕糸業の育成強化の一つの組織に対する基本的な構想というものは、一体どこにあるのであります。か、その点をひとつお伺いいたしたい。
  160. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 今の養蚕の指導所の問題につきましていろいろ御意見がございましたが、何分にもこの制度をつくりましてからまだ日が浅いので、いろいろ御意見のある点はあろうかと思います。しかしこの養蚕業は、ほかの農業と比べまして、とにかく技術面におきましては相当向上しておるわけでございます。末端まで参りまして技術の指導をやりませんと、なかなか困難であるがために特に蚕糸だけはああいつた指導員を末端に設けておるわけであります。財政の関係から幾分事業費その他の面で拘束も受けており、しかも先ほどもお話しましたように、まだ施設して日もたたぬという面からいろいろと御意見もあることと思いまするが、来年度のこの事業費の増額の面も組んでおりまするし、皆さんの御期待に沿うように、またわれわれが養蚕指導をしまする場合に、あの組織が一番いいんじやないかと現在でも考えておりまするし、その拡充にできるだけ邁進して行きたいと思つております。
  161. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも製糸の点についてはいろいろ御検討になつておるようでありますが、かんじんな生糸のもとである養蚕業ということについては、実際には熱心なのかもしれませんが、何ら具体的な答弁を承ることができないのを残念に思います。しかしこれももともと製糸業というものと養蚕業というものの利害が相対立したものが、一つの蚕糸局の中におります関係上、なかなか局長の思うようにも参らぬだろうと思つて御同情申し上げておるわけであります。大体こういう機構におきましては、ほんとう養蚕業振興と、養蚕農民の生活の安定というような徹底した施策は、おそらく行われないだろうと思う。今のような蚕糸局の機構では、私どもは農民を納得せしめるような指導方針も生れて来ない。いわゆる蚕糸行政の基本的な機構の変更すらもわれわれは考えざるを得ない。そういつた点でこれは根本論になりますので、これ以上申し上げることは差控えたいと思いますが、最後にいま一つお伺いいたしたいのは、政府の昭和二十六年の予算中に十九万円に近い数字が、農業の共済掛金から見た繭代としての基礎になつておるようであります。しかしながらこの糸価安定法価格の算定の基準は、十四万五千円になつておるようであります。同じ政府のやられているところの養蚕の共済金の掛金の基準というものが、繭価を十九万を基礎としてみている、一方繭糸価安定法の三十億のわくのもとは、十四万五千円で見ているというふうに統一を欠いておるのは、一体どういうわけでありますか、その点は青柳さんどういうふうにお考えになつておりますか。
  162. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 糸価安定法の十四万五千円は大蔵省側から説明になりました通り、単なる積算の基礎で、こういう形になつております。しかし共済掛金の十九万五千円はその当時の糸価をしんしやくしてきめましたものでございます。
  163. 足鹿覺

    足鹿委員 最後にもう一つお尋ねをして質問を打切りたいと存じますが、国際絹業会議の大体の考え方要望と申しますか、これは御存じの通り一俵三ドル八十セントと聞いている。すなわち十四万五千円に該当するそうでありますが、その後アメリカ側では四ドル、すなわち十九万二千円でやつているということを聞いております。すでに現在立法当初においてこういう考え方が出ている。そういつた点で蚕糸局の考え方海外考え方というものの間には相当な開きがあるのではないか。その点はどう解釈しておられるか。またどういうわけでこういう数字が出ているか、その理由をお聞かせ願いたいと思います。
  164. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 これはやはり買手側の事情から来ていると思います。先ほど間違いましたが、共済掛金については九千掛でたしか計算していると思います。これは国内繭価の見通しから見まして九千掛くらいが妥当ではないかということで共済掛金の額はきまつたわけであります。
  165. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも合点が行きませんが、結局今の国際絹業会議なり、その他アメリカからの希望なりというものは、大体十八万二千四百円から十九万三千円という程度が大体値ごろという線が出ているにもかかわらず、ことさらに政府の立法の一つ考え方基礎を十四万五千円に押えてお考えになつているという点については、何か十四万五千円というものを政府は妥当な価格であるという前提に立つて考えになつているのでありますか、その辺の関係が私ども理解することができないのであります。その点はどうなつているのですか。むしろ立法の基礎というものは、いわゆる加工賃なり、繭価の原価なりを加えて、それに適正利潤も加えて糸価が決定することが一番好ましいという、今日の午前中の参考人意見にもかかわらず、ことさらに立法の基礎を低く見て行くという理由は、一体どこにあるのでありますか。
  166. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 これは先ほどもお話しましたように、その点は大蔵省側から御説明になつ通りであります。
  167. 千賀康治

    千賀委員長 横田委員
  168. 横田甚太郎

    ○横田委員 糸価安定特別会計法案の第四条に、「この会計においては、生糸の売渡代金、一般会計からの繰入金及び附属雑収入をもつてその歳入とし、生糸の買入、貯蔵及び加工に関する経費、事務取扱費その他の諸費をもつてその歳出とする。」と書いてありますが、これは買入れ期間中に加工するという意味ですか。  それからここに書いてありますところの大体の経費、事務取扱費その他の諸費はどのくらいに見ておられるか、その点を伺いたい。
  169. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 これは原則としては、糸を買つて糸を売るわけでございますから、加工ということは大体においてはないわけでございますが、万一包装をかえ、その他荷いたみ等を直すというふうな加工を施さなければならないというような場合に備えたわけでございます。主体はあくまで糸を買い、糸を売るということであります。  それから事務取扱費その他の諸費と申しますものは、金利でありますとか、倉敷料でありますとか、保管中の経費並びに買入れ、売渡しに伴う輸送の諸費でございます。
  170. 横田甚太郎

    ○横田委員 そういたしますと、生糸を買うて、政府が持つておる期間は一体どのくらいの期間を見込んでおられますか。これは今までの実績から見て御答弁を願いたい。
  171. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 この持越しの期間につきましては、生糸相場の変動によつてかわつて参ります。明確な見通しを立てることは何人もできがたいところでございますが、本年度の補正予算におきましては、一応全量を年度末まで持ち越す、こういう計算でございます。
  172. 横田甚太郎

    ○横田委員 それはなおはつきりしておきたいのですが、時間がないので、次に八条を伺います。八条によりますと、これは損益計算上の利益及び損失額の問題ですが、この損失額が積立金のわくを越えた場合は、当然税金による国民への赤字負担になるのでしようか、この点だけ伺つておきたいのです。
  173. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 万一積立金をもつてまかない得ないという場合には、一般会計から補填をする以外に道はないと思います。
  174. 横田甚太郎

    ○横田委員 これもあまり質問が飛び過ぎて残念なんですが、自由党がやかましく言うのでしかたがないが、四番目に伺いたいのは、生糸最低価格と最高価格の開きが非常に大きい。これを改訂するためには三十億の金を組んで、この予算のわく内において買い入れたり売り出したりして解決をつけるという解決方法が一つ出ておる。政府はこれ以外に解決の方法はないと考えておるのですか、この点をひとつ承つておきたいのです。
  175. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 これは前回から何回もお答え申し上げましたが、とにかく一種の、売買によつてやる以外に方法はないというように考える次第であります。
  176. 横田甚太郎

    ○横田委員 これはきのうも申しましたように、生糸になるまでの繭、この養蚕事業の中にこそ、初めてこの問題の解決があるとわれわれは思うのです。それは大体長い時間安い金で働かされておるところの女工さん、あるいはこれに従事する農民、しかもその農民たちは、若い人は養蚕には従事しない。多くの場合年寄りたちがやつておる。これは重大な問題だと言われておる。この点はずつと言いたいのですが、希望条件として、また反対討論のときにも述べますが、こういうような点で、価格だけでものを解決つけるということは、政府一つの商売をやつて、損した場合には国に負担をかけて、得ない場合には役得をはかるというような、いわゆる白ありを飼うような経済の基礎になるのですから、今後よろしく御勉強を願いたい。  次は第五条の問題ですが、第五条によりますと、最高価格最低価格をきめた場合に、ときによるとこれをかえる場合ががあると書いてある。そういたしますと、一年のうちに一回かわる場合もあるし、二回かわる場合もあるし、ときによると何回もかわる場合もある。そういたしますと、私が疑問に思うのは、変動がはなはだしいので糸価安定のために組まれたところの法案であるにもかかわらず、それによつてさえ解決がつかないほどひどい変動があるということは、さつきの問題と照し合せて、生産過程によるところの隘路、生産構成中に上り下りがある、その解決がついておらないからこうだと思うのですが、その点についてのお考えはどうなんでしようか。
  177. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 これは異常なる経済変動の場合でありまして、そうたびたびあろうとは考えておりません。
  178. 横田甚太郎

    ○横田委員 そういたしますと、この三十億なるものは、ここにも出ておりますように、これは約二十一万五千九百俵に対するところの三十億であつて蚕糸業振興五箇年計画によりますとこれが三十年には三十万四千七百俵になりますね。この場合には、三十億の金をもつとふやすか。ふやすといたしましたならば、これは五箇年計画第一年度にふえます一万九千四百俵、次にふえます三万七千六百俵、第三にふえます六万七千二百俵、最後にふえます八万八千八百俵、これをふやす場合に二万俵を単位にしてやるのか。なぜ二万俵ということを言うかというと、十四万五千円にいたしまして、これを二万俵買うと言つておるでしよう。だから私は二万俵を基礎にとつたのです。この点をはつきり伺つておきたい。
  179. 青柳確郎

    ○青柳政府委員 少くとも現段階においては三十億でよろしいというような答弁をしております。
  180. 横田甚太郎

    ○横田委員 その点はそういうふうなばかげた答弁で満足するのじやないんですが、与党の人が非常にあいそうよく聞いているので今日はがまんしておくわけです。これから答弁に来られたときはそんなばかな答弁では満足できない、ここでは通しませんということをはつきりしておいてもらいたい。  それから次に私が伺いたいのは、この繭糸価格安定法案の第一条に、蚕糸業経営の安定をはかるためにとかくあるいは生糸輸出増進をはかるためにと書いてありますが、これは大体単に文字が並べてあるというように解釈しておいていいでしようか。もし文字が並べてあるということが暴言であるとすれば、何か具体案があるのでしようか
  181. 島村軍次

    ○島村政府委員 数日来御検討の上でこの法案をよくごらんになれば、内容はすつかりわかると思います。
  182. 横田甚太郎

    ○横田委員 次官は非常に大みえを切られましたが、きのうおとといの答弁あるいは質疑を速記課へ行つてお読みになりましたならば、あなたの答弁がどのくらい当てにならぬものか、はつきりわかる。そのときあなたは来ておらなくて、欠席しておつたから今のようなとぼけたばかな答弁ができるのであつて、今後よろしく御勉強をお願いします。  それから私の聞きたいのは、八番目の、このとらの子の三十億の金で二万俵の生糸を買う場合に、きのうも問題になつたのですが、十四万五千円で買うて二十万五千円でかりに売るとして、一俵六万円もうけるとしますと、これでは明らかに十二億の金がもうかる。この金をもうけられた場合に——損をする場合は法律に書いてないのですから赤字負担になるのですからもうかつた場合はこの金は必ず養蚕農家に返してもらえるか。なぜこんなことを言うかというと、この金は蚕から出た金であつて、蚕を飼つて加工し、そして糸をこしらえたためにもうかつた金だから、この金は明らかに農家に返してもらいたい。大蔵省のような白ありを飼つている、うわばみ官僚のような中に持つて行きますと、この十二億は農民に返らない。だから大蔵省の見解をはつきり伺つておきたいのですが、もしここに十四万五千円で買うたものが二十万五千円で売れて、一俵について六万円もうかつた場合に、そのもうけはだれのもうけであつて、どこへ返すべきだというところの、はつきりした見込みがあるかないかということを明答してもらいたい。
  183. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 先ほど小林委員の御質問に対してお答え申し上げた通りであります。
  184. 横田甚太郎

    ○横田委員 まだはつきりしていないのですが、このもうけを必ず返してもらえる先は農家であるか、農家でないかということをはつきりしてもらいたい。われわれの見解によりますと、繭が上つた、下つたというために心配して三十億の金を組んで、そうしてきようも業者をたくさん呼んで来て話を聞きました。そうしてわれわれが受けた感じといたしましては、生糸が上つたり下つたりするので私たちがもうかるのです。あまり上つたり下つたりすることの心配をしてくださいますな、というてあまり大きな上り下りも困りますから、その上り下りの幅を小さくしてください、こう言つているではないか。資本主義経済のもとにおいて、物が上つたり下つたりするのはあたりまえであつて、これは自由党の資本主義不自由経済の破綻である、(「何だと」と呼びその他発言する者多し)だからもしこういうようなもうけが生じた場合には、必ず農家に返してもらえるという確答を得たい、これだけです。これで私は質問をやめます。
  185. 千賀康治

    千賀委員長 以上をもちまして本案に対しまする通告順による質問は終了いたしました。     —————————————
  186. 千賀康治

    千賀委員長 この際申し上げたいことがございます。小委員会の設置に関しましてお諮りいたします。本委員会には現在までに請願百八十一件、陳情書百四十九件がそれぞれ付託及び送付になつております。これらの請願及び陳情を審議せしめるために特に小委員会を設置し、その審査の結果を本委員会に報告せしめることにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  187. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。なお小委員の員数、小委員及び小委員長選任につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認め、追つて委員長において御指名いたします。  明日は午前十時から開会することにいたしまして、きようはこれをもつて散会いたします。     午後四時二十五分散会