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1951-11-15 第12回国会 衆議院 農林委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十五日(木曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 野原 正勝君 理事 松浦 東介君    理事 小林 運美君       宇野秀次郎君    遠藤 三郎君      小笠原八十美君    原田 雪松君       平野 三郎君    八木 一郎君       金子與重郎君    坂口 主税君       足鹿  覺君    石井 繁丸君       竹村奈良一君    横田甚太郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 根本龍太郎君  出席政府委員         農林事務官         (蚕糸局長)  青柳 確郎君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君 十一月十五日  委員中馬辰猪君及び竹山祐太郎君辞任につき、  その補欠として大野伴睦君及び今井耕君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  繭糸価格安定法案内閣提出第三一号)     —————————————
  2. 千賀康治

    ○千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  繭糸価格安定法案を議題とし、昨日に引続き質疑を行います。石井繁丸君。
  3. 石井繁丸

    石井委員 昨日養蚕方面につきましては、斯界の権威者である八木委員並びに小林委員並びに製糸関係を多年やつておる小淵委員の三人のエキスパートから詳細な質問があり、また蚕糸局長から、これに対して蘊蓄を傾けた答弁がありましたので、私といたしましては、要点につきまして二、三質問をしたいと思うわけであります。  戦後の蚕糸局におきましては滞貨処理に没頭されまして、どちらかというと、戦前日本の花形であつた蚕糸局残務整理に没頭するというふうな立場に立ちまして、非常に苦境に立つたわけであります。つまり蚕糸局立場が非常に困難な立場にあつたということは、日本養蚕業が非常に苦境立場にあつた反映であろうと思うのであります。幸いに各方面努力によつて糸等滞貨が整理されて、今後ある構想をもつて日本養蚕問題、製糸問題に取組める段階になつたことは非常に喜ばしいことであります。今回蚕糸局長も、今までのような蚕糸局苦境時代を脱却して、大きな構想をもつて日本での養蚕界をひつさげて行つてもらいたい。こういうふうにまず冒頭にお願いをしておきたいと思うのであります。  そこでこの養蚕業をある構想をもつて発達させるためには、どうしても糸価の安定、繭価の安定という問題が取上げられるわけでありまして、将来の日本養蚕業立場から、これを目指して、今回本法案が提出せられたわけでありますが、われわれとしましては、いろいろなる点において批判があり、また訂正すべき点があろうとは思われますが、構想においてははなはだけつこうであろうと思うのであります。こういう前提を持ちながら、われわれとしてはこれの将来の最も正しい運営、これによつて蚕糸業全体の発展を期するために、二、三の質問を試みたいと思うのであります。  まず第一点の問題でありまするが、農林省長期計画というと、食糧増産一千二百万石などといつても、いつもきわものでありまして、実際政党あるいは政府のいろいろな問題が起つたときの目先のごまかしのような政策陳列で、ほんとうにやろうという気持もなく、また国民ほんとうにこれを信じないというような傾向で、非常に遺憾に思つてつたのでありますが、今回蚕糸局中心となつて養蚕五箇年計画を立てて、昭和三十年度においては、繭三千四百万貫、糸三十万俵を目途とし、そのうち二十万俵は海外輸出をして、外貨獲得一億ドルを目指して構想練つておるわけであります。こういうことにつきまして、われわれは蚕系局のそれに対する熱意のほどは十分に了承はいたしておるのでありますが、それに対する農林省並びに蚕糸局関係者熱意のほどを十分伺つておきたいと思うのであります。
  4. 青柳確郎

    青柳政府委員 昨日もお話し申し上げましたが、五箇年計画をやる際に最初に考えられることは、輸出増進という面だろうと思います。そのためにはこの繭糸価格安定法案というものを用意いたしました。それから一方需要増進もやつておるというような関係、それから国内的にはそれに即応して、とにかく繭の増産をはかつて行かなければならないという面については、先ほどもお話いたしましたが、繭の増産の面並びに製糸合理化の面、これらの面に対して予算的の措置並びにこれに伴う金融的の措置を用意して、来年度の予算は組んで参りたいと考えておる次第であります、
  5. 石井繁丸

    石井委員 そこで実際問題としまして、おそらく蚕糸局におきましても、予算面において十分に努力されて、国会方面もこれの協力を惜しまない、こう信ずるのであります。そういたしますると、大体五箇年計画は達成できるとわれわれ思うのでありますが、むしろわれわれが考えておるのは、最近農村におきましては、米のやみだとか、あるいは大小麦のやみだとかいうことが少くなりまして、現金収入の面がなくなつた。そうなりますと、全国的に農村において換金農産物は繭が一番手近な問題だということになります。特にこれは婦人等努力あるいは稚蚕共同飼育等を行いますと、最近の技術の改善等をまちまして、違蚕等がなくて、割合に確実に現金収入が得られるという立場から、将来は農林省考える以上に養蚕面においては増産が行われると思うのであります。そこで三十万俵を目途として努力するのでありまするが、実際の問題として農村において、生産がややつぐなう価格において、三十万俵を越え、あるいは三十五万俵あるいは四十万俵というように生産が増強せられる。桑畑についても、目標の二十五万町歩を越えて三十万町歩あるいは三十五万町歩というふうになるのではないか。特に桑畑等については、まわり桑等を十分に手入れする、あるいは今まで各方面において桑の途切れておつたようなところにまた増殖をするというようなことをすれば、実質において三十万俵を突破して、相当増産がされようと思うのであります。こういう形になると、今は不足であるという立場において恵まれておりますが、将来は生産増加という立場において相当圧力をこうむるのではないか、こういうように心配されることもあるのであります。あまり先のことまでも案じてはどうかといいまするけれども、案外早く繭の生産は増加する傾向のもとにあります。こういうふうに生産予想外に上まわつたときにおいても、なお国際的な市場においてこの販売が確保せられるかどうか、こういう点についてひとつ伺つておきたいと思うのであります。
  6. 青柳確郎

    青柳政府委員 本年度の繭の生産などを考えてみますると、大体五箇年計画の線よりもさらに幾分オーバーしておるような状態でございます。従いまして、われわれといたしましては、そういう面も考えられるのでありますが、しかしこの法案によりまして一応輸出増進をはかり、国内消費も増加されるかと思うのでございます。しかもさらに積極的に、現在海外に対する消費宣伝につきましても相当多額の経費を使つてつておるのでございまして、そういう事態が起きないように、われわれとしてはますます蚕糸業発展を希望して参つておる次第でございます。
  7. 石井繁丸

    石井委員 そこで蚕糸局長も十分に海外に対する消費宣伝等に努め、五箇年計画の予定を上まわつても、多々益益弁ずるという考えをもつて努力されるわけでありまして、まことにけつこうでありますが、実際問題として、日本では生糸というものに対しては、国際的な日本独占的製品である、こういう点に満足をいたして、海外販路開拓生糸あるいは絹製品に対する各国民需要を喚起するための努力がまことに遅れておつた。ある意味においては武陵桃源の夢をむさぼつていたというようなかつこうが見えたのであります。こういう販路開拓につきましてどういうような構想を持つておられるか、伺つてみたいのであります。
  8. 青柳確郎

    青柳政府委員 この法案の中におきましても、政府が一旦生糸を手持ちいたしました際に、新規用途なりあるいは新規販路に対しましては、特に最高価格にならなくても、ある程度売れるような形をとつておるのであります。今特に販路拡張というような面について政府としては特別な施策は講じておりませんが、民間側宣伝費というような形において、また国際的にも絹業者の全体の団体が現在できておりますが、そういうものを利用しながら、販路拡張に努めて参りたいと考えておる次第でございます。
  9. 石井繁丸

    石井委員 生産増強をやり、また販路等につつきしてもいろいろと努力をされておるということになりますと、製糸業としては今後の安定したる糸価ということが問題になつて来るわけであります。海外等におきましては、資料等を見ますると、あるいは三ドル八十セントぐらいにというような意見もあれば、あるいは四ドル五十セントぐらいを上まわらないようにというよう意見も、いろいろありますが、実際問題とすれば、海外において日本生糸が一番よく消化され、そうして需要においてあまり変化がなく日本注文がある、こういうような点はどれくらいのところが一番適当な価格であるかということにつきまして、詳細な御調査があろうと思うのでありますが、この点についてお聞かせ願いたいと思います。
  10. 青柳確郎

    青柳政府委員 価格の値ごろの問題でありますが、これはそのときどきの経済事情によつて違うことだろうと思うのでございます。従いましてどのくらいかと申し上げることはなかなか困難な問題でございます。実は今年の九月にロンドンで会合がありました際に、三ドル八十セントというようなことを新聞紙上で見ておるのでございます。しかしこれはあくまでもそれ自体の経済状態におきまして三ドル八十セントぐらいじやないかというような考え方であつたように思われます。しかも会議の内容を仄聞いたしますると、いろいろ議論があつたのだそうでございまして、三ドル八十セントときめるのは少し無理じやないか、それはそのときそのときの経済情勢によつてきまるべきものであるというような意見もあつたそうでございまして、やはり価格はどれくらいがいいかということは、そのときそのときの経済情勢によつてつて来るものではないかと思つております。
  11. 石井繁丸

    石井委員 そのときどきといいましても、要するに一応向うとしましても、この辺という一つ基準があろうと思うのでございます。これらの点につきましては、常に海外との連繋を密接にいたして、的確な情報を入れて、日本糸価海外実需価格がマッチするように努力を払うように願いたいと思うわけであります。  それから養蚕の問題は、日本において腰を入れて来るということになりますと、これに対する競争相手は、もちろんイタリアが最近没落したあとには、大体中共日本養蚕競争相手というふうに考えられるわけであります。今中共が鉄のカーテンという形になつておりまして、いろいろとアメリカ方面との関係が途絶いたしておりまする関係上、さような問題は起りませんが、日本ドル不足であることと同じことで、中共もまたドル不足である。共産党等努力して中共との関係が改善されると、ここでまた中国が非常に大きな繭の生産市場として国際的な市場にデビューするのではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。将来日本において糸価の安定がある意味において保たれ、これに対してなお国際的に安い繭が出まわつて来ると、この日本構想もくずれて来るわけであります。現在の世界においての繭の輸出をする国々情勢並びに中共養蚕状態等がどういうようなかつこうであるかということについて、お伺いをいたしておきたいと思うわけであります。
  12. 青柳確郎

    青柳政府委員 現在の国際情勢関係からいたしまして、中共の確たる情報はとるわけには参らないのでございますが、昨年の十月ごろまでに中共側海外に出しておりました数量を見ますと、その当時ニューヨークの市場で七千俵から消化されておりましたが、その際に月千俵ぐらい出ておつたのでございます。しかしそれも十一月以降から中絶して参つておるというような状態でございますが、今後中共方面からの生糸輸出というようなものも想像されますので、われわれといたしましては極力国内合理化の線を進めて参らなければならぬ。その場合に現在の農村経済あるいは製糸経済というような面から見まして、独自の立場でこの合理化のでき得ない部面もあろうかと思います。従つて来年度以降の予算的措置というようなものも、そういう面を補完する意味合いでわれわれとしては努力を払つて参りたいと思つております。
  13. 石井繁丸

    石井委員 この点については、今日本においては独占的なる立場をとつておるという関係で、国内的の対策だけでやや目的が達せられようかと思うのであります。将来はまた中共あるいはその他海外競争国の発生するということを常に考慮に入れて、養蚕家並びに製糸業者等に対しても十分な、恒久的な指導と対策とを練つてつてもらいたいと思うわけであります。  それからアメリカにおきましては、昔は生糸を輸入して、これを製品としてくつ下等に使つたのでありますが、最近はいろいろと資料等を見ます。ると、生糸使用の形態が変化して来た、あるいはまた生糸絹製品輸出国がいろいろと変化をして、イギリス等からも相当の引合せがあるというような形が現われておりまするが、最近生糸並びに生糸製品に対する国際的な需要の動きはどういう傾向になつておるか、あるいは今後それがどういうふうに行くであろうかという点につきまして、いろいろと今後の対策上御研究があろうと思うのですが、これらの見通しお話願いたいと考えております。
  14. 青柳確郎

    青柳政府委員 将来はとにかくといたしまして、現状を申しますと、あなたのお話のように、くつ下方面におきましては非常に悪い状態になつておるのであります。戦前アメリカあたりでも、輸出されましたものの八〇%はこの方面使つておりましたが、現在はたしか、二、三パーセント程度くらいに落ちております。従いまして大体これはアメリカでもヨーロツパでも同じ傾向を持つておりまするが、広幅の織物方面に使われている。ことにアメリカ方面ではネクタイなどに相当使われておるような状態でございます。
  15. 石井繁丸

    石井委員 そういうふうにアメリカくつ下専門需要からネクタイその他の方にいろいろ幅が広がつて来ている。こういう傾向は今後も増進され、あるいはこれが今まで生糸を使わなかつたような国々にまで普及するような傾向を見せておるかどうか。これらの点についてお伺いします。
  16. 青柳確郎

    青柳政府委員 この輸出の計数をごらんになりますとわかりますが、順次輸出数量は増加しております。われわれのところには確たる資料は集まつてはおりませんが、おそらくそういう方面に増大されておるものと思うのであります。英国の国際絹業会議においての会長のお話などを仄聞いたしますと、とにかく戦後購買力が増すにつれて値段の高いもの、品質のいいものと、順次衣料はかわつて来る。その際に婦人衣料についてはいろいろの部面生糸がだんだん使われ出して来ている。従いまして将来の生糸消費は、価格が安定しさえすれば、相当増加しようというようなことさえ言つておられる点からしますと、経済復興とともに、絹の使用は順次ふえて来るのではないかと思います。
  17. 石井繁丸

    石井委員 この点については蚕糸局長もよく農林大臣等と相談して、今後大公使館ができるような場合には、生糸消費地帯の大公使館については、参事官くらいに蚕糸方面の経験を積んだ人を一枚加えてもらうようにする。そうして今後日本外交官は、昔のように日本の国力を海外に誇示するとか、あるいは海外軍事力調査するというふうな形のものでなく、産業大公使というような形になろうと思うのであります。それでそういうような情報あるいは資料がとれるように、大公使館参事官等に参加するように努力願つて、そうして万般の将来の見通しを誤らないように、またそれだけではなく、生糸需要を喚起すること等についても、常に努力するようにいたしてもらわなければなるまいと思う。こういう問題については農林大臣に十分質問したいと思うのでありますが、農林大臣は全然養蚕方面はしろうとのようでありますから、蚕糸局長はそういう構想をもつて今から注文をつけておいてもらいたい。こういうことは農林委員、特に蚕糸方面関係する各委員の熱望するところであります。この点について十分の対策あるいは人員等について御研究してあるかどうか、伺つておきたいと思います。
  18. 青柳確郎

    青柳政府委員 御趣旨通り、ますます需要増進をはからなければいかぬ、しかも輸出増進しなければいかぬということからいたしまして、来年度は、御趣旨のような予算を組んで大蔵省と折衝を進めております。
  19. 石井繁丸

    石井委員 いろいろと十分前提を述べまして、最後に、問題は繭糸価の安定、これがあらゆるものの中心だということに結論が行き、しかもこれがこの法案目的とする趣旨であります。そこで伺つておきたいのは、昔からばか高い繭を売ろうとした農家はない。ある確実なる収入を得れば、農民は大体満足している。昔繭の値が一貫目十三円、十四円もしたときに、農村の青年は芸者を買つたり何かしてろくなことは覚えない。そこで次に繭の価格が一貫目一円五十銭くらいになつてしまうと、せつかく桑の手入れや何かしておつたにもかかわらず、そういうばか安値では今度は農民の暮しが立たなくなる。こういうわけで、昔から農家にしましても繭価の安定ということについては非常に考えている。これに反しまして一番ふとどきな考えを持つてつたのは、大体製糸家であつたと思う。製糸家はある一定価格をもつて繭を買入れて、そうして一定の企業のコストに対するノーマルな利潤を但るということを目標にして経営しないで、むしろ投機によつてもうけようということを常に考えている。その大きな投機で勝つた人は生き残つて、それに勝たない人は負けてしまうという傾向が、今までの日本養蚕界を通じて、特に対外生糸輸出を通じて、現われたところの一番の悪弊であつたと思うのであります。この日本の重要なる産物を堅実なる経営によつて海外需要を喚起して、国民の生活を安定せしめ、収入を確保せしめるということでなくて、製糸業者はそれを投機の対象にして、巨利を博する。損をしたときには、これを農民にかぶせるというふうな傾向は常にあつたところでありますが、今回この繭糸価安定の法案が出ましても、案ぜられることは、繭をある一定安値において買つてあとで高いところのもうけ、いろいろと製糸業者が自由にあやつつてもうけることはかまわないのだ、常に養蚕農家は下積みで底値をけられ、製糸業者は十分に上値をつけられるように考えているのではないか、こういう危惧が各方面にあるわけであります。この糸の値段の上げ下げということが非常に人為的になされる傾向が現われている。特にこの春には三十万円台の生糸が現われたが、この原因がどこにあつたかという点について、十分なる調査に基いた蚕糸局の御見解を聞かしてもらいたいのであります。
  20. 青柳確郎

    青柳政府委員 あの当時われわれといたしましてもそれに対する方策を考えておりましたが、その当時の実情を考えてみますと、先売りを非常にたくさんやつており、その関係で売る品物売手側がほとんど用意していなかつた。そのときに御承知のように、アメリカの綿花の関係からまず綿糸上つたわけであります。綿糸が上りますと、自然人絹にまで影響する。また人絹から生糸にまで影響して来たという、経過をたどつてつたのであります。われわれといたしましては、この面についてある程度思惑的な部分がありはせぬか、こう想像いたしまして、実はあの基準価格制というものを設けたわけであります。三十万円の当時、アメリカの例の公定価格から換算してみますと、ちようど二十五万円くらいになるわけであります。それで二十五万円の基準価格を設けまして、その程度まで下つて来たわけでございます。その後における糸価情勢を見ますと、ほかの商品が漸次下るに従つてつて来たようなわけでございます。
  21. 石井繁丸

    石井委員 先ほど御答弁のありましたように、五箇年計画が順調に進んで、相当数量の繭並びに糸が出まわつて来る、また海外実需を常に見守つておる、こういうふうなことになりますと、おのずから需給についても調整がとれて、投機的なる活動の行われる余地が次第に少くなろうとは考えられるのでありますが、今年の春の大暴騰のようなことがありますと、輸出を非常に阻害する。かたがた国内においては、養蚕農家からしますと、たといそれがから売りであつて実需はなかつたとしましても、われわれがこれだけの繭の価格で売つてつたのに、製糸家あるいは問屋筋においては、そういう取引によつて巨大なもうけをしたという気持が出て、農民としてはそれに対する不満等も非常に大きくなるわけでありまして、健全なる養蚕対策を、阻害する結果になる。将来におきまして、こういうふうな人為的なる暴騰実需を伴わないから相場によるところの暴騰というような問題については、この法案におきましてもいろいろ考慮を払つておられるわけであります。それは政令にゆだねるという形になつているわけでありますが、これにつきましては先日来も、物価統制令が撤廃されたあとにおきましてはどうするかということについて、まだ別に考えはないが、十分に対策を立てたいというようなことを申しておりましたが、こういうふうな少数の投機業者によつて、’糸価がいろいろあやつられ、日本の大きな国際的なる商品輸出阻害、あるいは生糸に対する購買力を低減せしめるということについては、相当なる考慮が払われなければならない。先日来の算によりますると、いろいろと考えさせてもらいたいという意見の範囲を出なかつたのでありますが、これについては、考えさせてもらうでなく、先日小林委員からも強く要求されたのでありますが、ひとつこういうことでその点は十分にやつてのけられるであろうというふうな構想の御研究ができているのではないかと思いますが、蚕糸局長あるいは課長におかれては、どういう名案を考えられているか、お聞かせ願いたい。
  22. 青柳確郎

    青柳政府委員 昨日御説明申し上げた通りでございまして、今のところは物価統制令によつてやるべき処置が残されておりますので、それによつてつて参りたいと思つております。その統制令が撤廃された後の措置は、目下研究している程度でございまして、どういうぐあいにやつたらいいかというようなことまでは、まだきまつておりません。
  23. 石井繁丸

    石井委員 この点まだ蚕糸局としましては、重大問題中の重大問題で、この法案が生きるか死ぬかという一つ目途であるという立場において、慎重なる研究をいたしている、こう思うのでありますが、この点については、一部投機業者の操作によつて日本全体の蚕糸業の不安定を招く、あるいは国際的の蚕糸業の不振を招くことのないように、十分に研究対策練つておいてもらいたい。この法案が通過するかしないかということは、それらに対する蚕糸局農林省決意いかんという点にかかつて来るのではなかろうかと思いますので、ひとつ特段の御研究を願いたい。  それからこの問題で一番大きな問題は、先日来問題になつている最高価格最低価格、国際的に競争相手も出て来るという場合を考えると、日本だけではどうというわけに行かぬ。日本の米のように、ある意味において国内の絶対必要量に足りないというわけの品物ではありませんから、この最低価格最高価格の定め方は非常にむずかしいと思うのであります。しかしながらものにはいろいろ歴史的な流れがあるわけで、昔から大体繭一貫目は米の半俵というのが農村一つの常識になつてつたわけであります。繭の一貫目が米の半俵という一つ相場ができておつたときだと、農家養蚕家も安定する。特に養蚕専業地帯などになりますと、繭を売つて米買つてつたという場面が多かつたわけでありますが、こういう点について、今後繭の価格が安定すると、ある意味においてまたこの価格から日本国民生活、非米作農家の生活ともからみ合せていろいろと研究されなければなるまいと思うのであります。今年の米で言うと、石七千円だと二をかけて一万四千円、ここらの繭の相場だと農民は最も歓迎する。また米の価格が石五千円ということになると、一万円くらい、ここらで養蚕専業農家もがまんができるというふうに大体考えられるわけであります。これが長い間養蚕専業地帯の希望していた米とのにらみ合せにおける繭の価格ではなかろうか。統計面においても、いろいろと異常暴騰、異常暴落のあつたときは別として、一割八分から二割二、三分くらいの、大体二割を前後として動いている。つまり米が半俵、繭が一貫目というふうに動いている、こういうふうに思うのであります。この立て方等についてはいろいろな問題があろうと思いますが、今後米作地帯の人が副業的に養蚕をするというのなら問題は割合に少いと思うが、おそらく福島県の会津方面、あるいは山間僻地の岩手県あたりが蚕を飼うようになるかもしれない、また秩父の奥の米のできぬ所あたりで養蚕が盛んになるのではないか、われわれの県で言えば、吾妻郡であるとか、利根郡であるとか、米のとれない地帯で養蚕が次第に盛んになつて来るのではないかと思われる。この最低、最高価格ということは、将来においているくな問題があろうと思いますが、こういう非米作地帯、米のとれない所に専業的な養蚕農家が出て来るのではないかという構想相当入れて、方策を立ててもらわなければなるまいと思う。こういうことについていろいろ御研究もあろうと思いますので、それらの構想がどうなつているか伺つておきたい。
  24. 青柳確郎

    青柳政府委員 御趣旨は結局米価とのパリテイをとつたらどうかということか思うのでありますが、われわれといたしましても、実はこの最低値段につきましてはコストを考えて参ろう、コストの一定割合をとつて行くというような形をとつておりまするので、おそらく今のような御趣旨も、その結果から見れば一応なり立つて行くのではないかと考えます。そのコストの内容を見ますれば、いわゆる養蚕労賃というものもおそらく食糧から出て来るものではないか、諸物価の中心である食糧の値段というものもかなり大きなウエートを持つて来るのではないかと思いますので、その面で解決ができはせぬかと思つております。
  25. 石井繁丸

    石井委員 この点は非常に問題になると思います。価格の最高、最低のきめ方について——養蚕現金収入ということについて、農民がこういう方面に力を注ぐようになると、専業養蚕家というものが山間地帯等には非常に出て来る。これは大体米作あるいは食糧生産養蚕とどちらがつり合うかという場面等を勘案して、意識的に研究するといなとを問わず、発展傾向をたどるであろう。すでにその価格算定においては、米価とのパリテイを研究の中に入れて対策を立つてもらいたいと思うのであります。  そこでこの最高価格の問題は、御承知の通り海外実需とどう見合うか、どういうふうに海外実需がこれに並行しているかということによつて、おのずから定まつて来るものと思うのでありますが、具体的な問題として、来年の春三月の末までに、一応の最低、最高価格をきめよう、この法案からしますとそうなるのであります。大体蚕糸局長中心幹事役として、それから各課長がこれの中心的なる活動の担当者として、この価格形成について資料の提出あるいは説明等に当られると思うのでありますが、それに対しては十分対策、準備が整つていると思います。今の浜糸の価格国内経済の全般的なる関係を総合して、どの点に最低、最高価格が定められるのであろうか。大蔵省では十四万五千円ということで、三十億円の予算を組んで二万俵、こういうふうに言うたそうでありますが、これは予算をとるときの単なる目途であつて、実際は価格パリテイというよなういろいろな点を勘案して、現在の浜糸相場等を見て、海外実需等を長期的に見通して、来年あたりはどのくらいにできるだろうか、こういう点は今後われわれとしましては、農民に、ことしは桑畑に肥料をくれたらいいだろう、あるいはそう肥料をくれないで、麦の方へ肥しをまわしたらいいだろうというように実際に指導する責任もあるのであります。大体の目安で、来年の最低価格はどの辺、最高この辺だろう、そこでいろいろと対策を立つて合理化をはかつたらどうか、こういうふうな指導もしなくてはならぬ。こう述べたからこうだと責任を追究するわけではありませんが、現在までに作業の進んだ程度において、内輪の問題でありますから、隔意ないところの御答弁を願いたいと思うのであります。
  26. 青柳確郎

    青柳政府委員 その問題につきましては、価格決定の方法から申しますと、価格決定の最も近い時期までの経済事情を取入れて考えて参りたいと思いますので、今どのくらいになるかというような見込みはなかなか困難でございます。今のところそのくらいにしか答えられないのであります。ただ小林委員からも昨日お話がありましたが、一番やつかいな問題は最低値段ではないかと思われますので、最低値段関係につきましては、昨日は、合理化の過程に進んだ農家におきましては、その程度のものはある程度保証できはしないかというようなことを申し上げました。それはまだ具体的ではないというおしかりを受けたわけでありますが、その後いろいろ調査してみますと、昨日お話しました戸数分布表のところから申しまして、十一ページの二十五年産繭生産費別農家戸数分布表というところで、それの一番ピークのところまでなるべく努力して参りたい、これを目標にしてやつて参りたいというような気持を持つております。二十五年度につきましては、この辺になる。従つて毎年度のピークくらいを目標にして極力やつて参りたい。ですから最低値段になりました際におきましては、合理化の進んでおるところなら、ある程度カバーできるのではないか、かように考えております。
  27. 石井繁丸

    石井委員 ただいま蚕糸局長構想の一端を述べられた。大体最も平均的なる生産をしておる養蚕農家生産費くらいを償うというところで最低値段をきめたい、こういうお話のようでありました。われわれはまことに当を得た考え方であると思います。そこでこれは一つの技術面の問題になるのでありまするが、去年から見ると今年はものがいろいろと上つております。そこで二十六年度においてはピークがどの辺に出るようになつておるか、まだ作業全体は済むまいと思いますが、現在においてどのくらいになるか、多年熟練のある蚕糸局関係者でありまするから、大体見当がつくと思いますので、それをひとつお話を願いたいと思います。
  28. 青柳確郎

    青柳政府委員 その面も統計部といたしましては集計の過程にありますので、どれくらいになるかというような見当はまだつきかねます。
  29. 石井繁丸

    石井委員 農家等も、最近早起き鳥等を聞きまして、農村問題については、農民農林省の各課長、局長あるいは技官等の放送を聞いていろいろと研究をしておるのでありますが、ひとつこれらの点につきましては、委員会の速記録でどう言つたとかこう言つたとかいうわけではなくて、研究の結果は大体こういうふうになると、早起き鳥等において、課長あるいは局長にやつてもらうと、農民として大体の見当がついて、ははあ今年はこの辺で最低価格ができるのだな、そうすればうちではひとつどういうふうに計画を立てようかというふうに、いろいろと研究が進められると思うので、ひとつできる限り早く作業を急いで、ラジオ放送等にも連繋をとつて、早起き鳥等で聞かせたりして、大体の目途がつくように御努力願いたい、こう思うのであります。  そこで最高価格については、先ほど言つた通りに、今後しつかりした対策を立てて、国際的に不安を起させないように、最低価格については、そういうふうな点において、ひとつ食糧のパリティ等を考慮に入れ、また毎年のピーク等をもつて最低のものにしたいというふうな立場ですが、実際問題は、海外の競争等を考慮に入れると、まだ日本養蚕農家製糸家等も、販路の開拓あるいは経営の合理化努力しなければならぬ昔は、繭百目から糸量が、十匁か十一匁を突破して、十二匁も出ると、最良の繭というふうに言われた。その後黄繭種が入つたり、いろいろと改良を重ねまして、最近は十六匁を突破するようなものも非常に多くなつて来ておる。こういうふうにいろいろと養蚕方面努力小林委員等も養蚕技術家として大いに努力されたようでありますけれども、各方面の人々が努力して、非常に繭の糸の量が多くなつて来た。今後まだこの点について、努力によつては二十匁までも行けるんじやないかというふうな意見等もありますが、実際問題として、非常に高度に発達した日本養蚕技術において、今後なお製糸量をふやす余地があるかどうか、この点についてひとつお伺いしておきたいと思う。
  30. 青柳確郎

    青柳政府委員 その面につきまして一番大きな原因を来すものは、やはり蚕品種の改良の問題と、飼育技術の向上の問題、これらの問題がそこに集中して来るのだと思つております。その面につきましては、昨日も御答弁申し上げましたが、蚕種の改良の面につきましては、政府といたしましては、極力試験場なり、あるいは地方の試験場あたりにつきまして予算的措置も講じて参つております。また飼育関係につきましては、指導網の拡充並びに稚蚕共同飼育所に対する融資によりまして、稚蚕共同飼育所の設置の奨励をやつておる次第であります。
  31. 石井繁丸

    石井委員 これは短時日に解決する問題ではないのでありまして、あらゆる努力の結晶が一匁々々と増加して行くわけであります。今後の努力を願います。しかしながら、桑については相当に改良の余地が多かろうと思うのであります。昔から群馬県等、あるいは養蚕の盛んな所は、非常に桑等につきましては努力を払つて来た。最近は改良ねずみ返しがほとんど圧倒的になつて来ておるという点がありますが、桑の改善という場面についても、先日来の答弁で、十分に考慮を払つておるということですが、この点はひとつ特に御努力を願いたい。まだかなり古い昔の形の桑が残りておる。あるいは急速に桑畑に切りかえようとしても、なかなかそう桑苗が間に合わないというふうな形がありまして、合理化が行届いていない点が多いのであります。そこでこの問題については、価格の安定と将来の見通しを立てて、そうして桑の改良について十分の努力をしてもらうということが何よりも大切なことであろうと思う。漫然と、昔は反当り十六貫とれたが、今は九貫目になつてしまつて生産が落ちておる。何かそれだけを見ると、非常に畑を荒しておるというふうな印象を受けるのでありますが、実際の農民は、別段畑を荒しておるわけじやない。日本の非常に狭い土地を粗末に使うということはない。繭の値が不安定であるときにおいては、桑の方を小さくしておいて、中に麦をつくる、野菜をつくるということによつて、主力を間作に注ぐというふうな形において桑が非常に悪くなつて、反当の収繭量が減つておるという形になる。今後そういう点につきまして恒久対策が立ちますれば、農民も優良品種の桑を植え、そうしていろいろと恒久的な桑園管理等にも移ろうと思う。これらについては特に一層の御努力を願いたい。そこで桑の品種改良について何か非常に新しい研究等がありましたらば、この機会に蚕糸局お話を承つておきたいと思います。
  32. 青柳確郎

    青柳政府委員 繭の増産の基盤は、何と申しましても蚕の食糧であります桑の問題が一番大切でございます。実はこの問題につきましては、蚕糸試験場の今度の予算について、桑の部面を非常にたくさん組んで進んでおります。また一面地方に対しまして、新たにできました新品種が至急に普及されますように、各地方の蚕業試験場に対して、桑苗の育成施設に対して補助をやつておる次第であります。これは昨年からすでに開始しております。
  33. 石井繁丸

    石井委員 この法律を実施するに対し、各方面にわたつての御意見を聞いたのであります。一つ問題は、ここに繭糸価格安定といつておるが、これは糸価安定であつて、繭の点については何ら触れておらない。こういう意見養蚕家方面から出て、これは羊頭を掲げて狗肉を売るものであるというふうな非難が出て来ておるわけです。しかしながら、実際問題として、農村において、いかにして養蚕農家の繭を最も効果的に販売するかということにつきましては、多年努力が重ねらたのであります。組合製糸等が明治の初年から起りまして、ずいぶんと組合製糸もできましたが、これが思わしくなくして、組合製糸で有終の美を保つておるものは、ほとんどない。また各地に乾繭倉庫等ができましたが、倉庫の門には、何々乾繭倉庫と大きな字で書かれておりますけれども、実際中には乾繭を入れたことはなくして、その他のものをいろいろ入れた。あるいは乾繭倉庫という名を残したままにおいて、何か工場みたいなものに切りかえたりしまして、この点もうまく行つておらない。こういう関係で、繭の価格を維持して、直接農民に安定性を持たせるという点が、いろいろの努力にもかかわらず効を奏しなかつた。これは蚕糸業数十年の歴史に徴して明らかになつておる。そこで糸という面において安定をさせて問題を処理しよう、つまり将を射んとすれば馬を射よというような気持で、こういうふうに今度は乗り出した。いろいろと養蚕農家から非業あるが、しかし、われわれはそうでなく、これはほんとう繭価を維持するということを目ざすが、なかなかその目的は直接達せられない。そういうふうな間接的な手段によつて養蚕農民を保護しよう、こういうふうなねらいであると解釈いたしておるわけであります。この点について蚕糸局長あもいは農林当局が、実質上において糸価対策を宣言しておるようなふうに見えるが、われわれの方針は、繭価対策を本来の目的としておる、こういうふうに言い切れる御自信があるかどうか、ひとつ確信のほどを承つておきたいと思うわけであります。
  34. 青柳確郎

    青柳政府委員 その問題は昨日以来お話し申し上げたことでございますが、本日特に新たに御質問になりましたことは、乾繭倉庫あるいは組合製糸などというようようなものに対して、どういう考えを持つておるかというお話のように承りました。この部分につきましては、実は乾繭倉庫の問題につきまして本年度は融資をしたい。しかも、例の農林漁業資金融通法に基きます長期かつ低利の資金を融通したい、こう考えております。また組合製糸につきましては、われわれといたしましては、来年度ぜひそういう面で農民が設備の改良をやりたいというような場合においては、極力その趣旨に沿うように努力をして参りたいと考えております。
  35. 石井繁丸

    石井委員 この点については、先ほどの繭価対策を大いに考えておるという点について、蚕糸局農民に対する十分なる説得と今後の了解工作にかかつておる。どうも蚕糸局長にしましても、蚕糸局の課長等にしましても、いろいろと地方に参りましても、養蚕農家に接するということはなくして、製糸業関係者に接する機会が多い。それでそのあとにおきましては、御高見を拝聴するというくらいで帰つてしまう。そこで実際に蚕を飼つている農民は、直接蚕糸局長意見なり、あるいは蚕糸局関係の課長の意見を聞いても、養蚕農民に対する農林省考え方というものの浸透力が非常に弱いと思う。今後におきまして、やはり蚕糸局というものが大きく各農民から支持されるためには、蚕糸局長以下常に養蚕農民に接し、そうして農林省の農業政策、養蚕政策を浸透せしめるという努力が必要ではないかと思います。製糸家だけに会つたりして引揚げるというようなことでなく、常にまず養蚕農民に接触する。かつては二百数十万の養蚕農家があつたが、これが現在八十万戸に減つてしまつたということが、つまり蚕糸局の勢力の衰頽した大きな原因であつた。少くとも今後百五十万くらいの養蚕農家をつくり、ひとつ新しく農民に繭の生産意欲を増進させて、蚕糸王国の活動ぶりを認識してもらう、こういうような気構えであれば、その間おのずから、蚕糸局の蚕糸政策は製糸家本位で、養蚕農民に対してはあまり誠意がないというような疑問は解消するのではなかろうかと思う。今後養蚕農家に対してどのような気持で働きかけ、どのような気持養蚕農家と苦楽をともにするつもりであるか、そういうような点について、この重大なる法案の提出のときにおいて、蚕糸局全体の気構えをひとつつておきたいと思うわけであります。
  36. 青柳確郎

    青柳政府委員 われわれといたしましても、大体御趣旨に沿うような形で現在までやつておると思うのでございますが、もしそうではない事実があるというようなことでありますれば、極力その御趣旨に沿うように今後は努力して参りたいと考えております。
  37. 石井繁丸

    石井委員 最後に一点だけお尋ねいたします。この法案につきましては、構想といたしまして、日本が重要産業において、特に海外輸出商品においても常に国民投機性が影響して価格のフラクチェーシヨンがあるというような問題から、価格の安定ということに着眼された意味におきまして、これは今日の日本が国際社会に出る上において、当然かくあるべき問題であろうと思うわけであります。世界のあらゆる産業が、投機的な利潤より恒常的な安定利潤を目ざした経済に入るというときにおいては、当然そうでなくてはなるまい。この構想のもとに今回の法案が提出された。しかしながらこの点については、海外の競争あるいは国内における今後の増産と相まちまして、いろいろと運営上におきましても波瀾が起き、あるいはまた攻撃される場合も起ろうと考える。また本法案だけを見ましても、急所を打つのに、どういうくぎを打つてこの急所を締めるかというようなことにつきましては、きめ手がない。これは今後の研究にまつて省令に譲るというようなものが多い。ひとつ早急にそれらに対する省令等の腹案も構想をされて、この法律がほんとう目的を達成できるように、万全の策を立ててもらわなければならない。幸いに今まで下積みにあつた蚕糸局が、ドル獲得という意味において第一線に浮び上つて、今後国際関係需要とにらみ合せて、相当に将来に希望を持つて活躍ができる機会に遭遇したわけであります。局長も、日本養蚕の中興の祖になるような気持で、ひとつその気持を大きく持つて青柳蚕糸局長日本の新しき養蚕方面において一つの飛躍をしたという歴史が残るような気持で、それにはまずこの法律が龍頭蛇尾に終つてはいかぬ、あとほんとうの効果が発揮できなければいかぬというような気持で、十分にいろいろな問題について、万般間違いなく対策練つてもらわなければならぬ。この点を最後に希望として申し上げて、私の質問を終りたいと思います。
  38. 千賀康治

    ○千賀委員長 午後は一時半より再開することにして、暫時休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  39. 千賀康治

    ○千賀委員長 休憩前に引続きまして、ただいまから農林委員会を開会いたします。  農林大臣に対する質疑が保留されておりますので、ただいま農林大臣に対する質疑だけをお許しいたしますが、農林大臣は三時から所用があるそうでありますから、一人に対して十分あてお許しいたしますから、その時間の範囲内で質疑を終了されたいと思います。小林運美君。
  40. 小林運美

    小林(運)委員 私は昨日以来この繭糸価格安定法案に対する質疑をいたしておりますが、大臣が見えなかつたので大臣に対する部分を留保しておきましたので、この際大臣の御所見を承りたいと思いまして二、三の質問を申し上げたいと存じます。  今回政府の提出にかかる繭糸価格安定法案を通じて拝見いたしますと、重要な二、三の項目につきまして政府考えがはつきりいたしておらないので、この点を特にかいつまんで申し上げたいと思います。  昨日もちよつと触れておきましたが、繭糸価格の安定をはかるために生糸の買入れ売渡しをするという考え、ところが最近政府はその考えをかえまして、ただ生糸だけでなくて繭も安定をしたいというようなことからへ第一条、第二条あるいは第十条におきまして繭の安定をはかつて行きたいというようなことが書いてありますが、これらはすべて具体的に何らの意思の表明がない。特にこの問題については、先般の委員会でも大臣に私は希望を申し述べておいたのでありますが、この件に関しまして、この法案が出ても依然として具体的な措置がない点について、大臣の率直な考えを私は聞いてみたいと思うのであります。第十条のごときも、必要な措置を講じて繭価の安定をしたいということが書いてありますが、これについて一体どのような具体的な措置をとるのか、この点だけ大臣の明快なる御答弁を求めたいのであります。
  41. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 糸価安定だけであつて繭価の安定が具体的に示めされていないという御指摘のようでありますが、御承知のように繭価を安定する方法として繭を買い取る方法もありますが、これは技術的にも物量的にも予算的にも非常に大きな負担を増すのであります。現在糸価が安定しますれば、その糸価の安定のための最低価格の算定におきましても、一番大きな要素をなすのが繭価であります。繭価がその中に含まれておりますので、その点において繭価を安定せしむるのが本法の基礎条件でございます。もう一つ大きな要素といたしまして、現在生糸に対する需要は非常に多いのであります。これに対してむしろ供給源が少いという観点からいたしまして、繭が現在の状況においては暴落する傾向はないと見ております。しかしながらこの立法は恒久法でありますので、もしそういうようなことが起つた場合には、第十条に規定するがごとき必要な措置を講ずるのでありますが、その内容についてはそのときでなければはつきり限定し得ないと思います。ある場合においては乾繭保管という過去にやつたものも必要であろうし、あるいはまた委託加工に対して金融措置を講じ、それに対する諸般の措置を講ずるというふうに、時期々々においてとらるべき手段もおのずからかわつて来るだろう、そうした諸般の措置を講じて繭価の安定をはかるというのが第十条の立法の趣旨でございます。
  42. 小林運美

    小林(運)委員 大臣の前提の問題について私は少し意見が違つているのです。現在生糸の四千俵程度の在荷の売れ行きがいいということは現在は認めます。しかしこの根本問題は一体どこから来ているか、今年の春以来生糸が三十万円なつた。その後いろいろの変化を経て最近の市場の在荷は少い。従つて当分繭が余ることはないという見通しを持つておられるようでありますが、私はそうとは思わない。最近の生糸需要ほんとう需要であるかどうか。あるいはアメリカの軍需産業の関係があるかもしれない。そういういろいろの情勢からいつて、大臣の言われるごとく生糸市場というものはそんな簡単なものではないとわれわれは信じている。従つて十条の解釈も現在のところ繭にしわ寄せすることはない、繭が少くて生糸がどんどん売れて行くという現状は認めますが、今大臣のお話のようにこれは恒久法なのです。蚕糸業における憲法なのです。こういうような重大な法律をきめる際には——しかもこの問題か一年先あるいは六箇月先に起るかもしれない、そういつた場合には、今大臣のお話では、そういうようなことも考えられるということなのです。私はどうこうしようということは言わないのだけれども、将来において繭の方にしわ寄せするような重大な問題が起きて来たときに、現在は予算が三十億しかないが、また繭を買入れるにはいろいろの施設も必要だ、金も必要だ、人員も必要だということはわかり切つている。そういつた非常事態が将来起きて来ることもあり得ると思う。私はすぐ来月からやれとか、来年三月からやれということを言つているのではない。将来予算等の余裕がある場合には繭も買い得るのだというふうに私は解釈して行きたいのですが、根本的な考え方を大臣から承りたいと思います。
  43. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 第十条の必要な措置というのは、今小林委員が御指摘になつた点ももちろんわれわれは含むと解釈しております。その場合に繭の買取りの方法がいいのか、あるいは乾繭保管をやらせまして、それに助成金なり金融をつけるのがよろしいか、あるいはまた委託加工させてそれに金融をつけるのがいいか、その場合々々によりまして方法がいろいろあると存じます。そういうものを限定せず、広汎なる措置を講じ得る一つの法的基礎を規定したと解釈いたしておるのであります。
  44. 小林運美

    小林(運)委員 大臣はなかなかいい答弁をしてくれましたが、私はすべからくこういう法律をつくる以上は、恒久法なのだから将来においてこういう場合があつたらこういうふうにするというようにしてもらいたい。憲法を終戦後つくつたけれども、すでに三年足らずして憲法の改正の問題が起きている。しかも現在のわが国においては憲法の解釈等もいろいろに行われております。国会の解散の問題とかいろいろあります。こういうふうに法律というものは時勢によつていろいろ変化を来して来るのでありますから、こういうような根本の精神を盛るべき法律に対しては、先の先まで考えて、そのときには適当な措置を講ずるのだ、その場合にはこういうようなこともあり得るという、しつかりした責任のある大臣の答弁を私は求めたかつた。それに対してただいまの大臣の答弁によりますと、そういうような場合には、そういうこともあり得るということを聞いたことは、私は非常に満足をいたします。そこで十条の場合の、繭を買入れる、あるいは乾繭の保管をするとかいうことについて、現在のところはいろいろのことがあつて困難だという事情もよくわかつておりますので、その点は将来の問題といたしまして、ぜひ私はこういうことを実現したいという希望を持つております。  そこでひとつ考えたいことは、ただ現在の乾繭保管、あるいは繭の買入れというようなことがむずかしいから、もうこれはできないのだというように言わないで——私は昨日蚕糸局長質問いたしましたが、たとえば繭の保管だとか、糸製品に対する金融だとかいうようなことも過去にはあつた、しかし現在はもうこれだけだというようなことでなしに、こういうような問題もこれから具体的にどんどん研究してやつて行きたい、ひとつこういう腹をもつてつていただきたいことを申し上げておきたいと思うのであります。  次にもう一つの大きな問題といたしまして、現在の蚕繭処理の問題でありますが、きのうも蚕糸局長にこの問題をお聞きしましたが、どうも要領を得ない。現在の蚕繭処理の形態は、各業者とも困つておる。製糸業者も、養蚕団体も、それに関係するいろいろの人たちが、どうもこれでは困る、製糸家の方からいえば、どうも繭の値段をつり上げられてしまう、養蚕家の方から行けば、繭の値段をたたかれるのだ、両者お互いに相反したことを言つております。かような蚕繭処理の方策がはたしていいかどうかということを聞いた。ところがこれで満足とも言わないし、これではだめなんだとも言わない。何だからもつともはつきりしない。だれが見ても現在の蚕繭処理の方式はどうもまずい。まずければこれを改正して行かなければならぬのに、それに対する政府の意図がうかがわれない。そこで私は大臣に、現在の蚕繭処理の方策をどういうふうにして行くか、もし具体的な考え方があれば承りたい。なければ、今後はなるべくこういうような方式によつて、しつかりした蚕繭処理の形態をはかつて行きたいという意見を、ひとつはつきり承りたいのであります。
  45. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 蚕繭処理の問題は非常に議論のあるところであり、また大いに改善すべき点もあるわけであります。これは今私はつきりした腹案を持つておりません。従いましてこの問題については、各方面の実情並びに御意見をも十分に聴取いたしまして、これが改善に向つて研究を進めて参るつもりでございます。
  46. 小林運美

    小林(運)委員 蚕繭処理の問題は、大臣誠意をもつてお答えになりましたので一応満足します。今後もさような見解に立つて十分研究して、蚕繭処理のりつぱな方策を考えて実施していただきたいのであります。  次に現在の製糸業法でございます。これは二十年ほど前につくりました法律でございまして、いろいろ問題があります。たとえば最近非常に盛んになつて参りました器械座繰りの問題でありますとか、その他製糸業の免許の問題等いろいろこまかい点がございますが、現状をもつてどこまでもやつて行かれるかどうか。この法律はなかなか大きな問題でありまして、今まであまりこの問題に触れなかつた。しかし根本にはいろいろの問題が起きおる。これをいつまでもほおかむりして行かれるつもりであるか。根本的なお考えを一応承りたいのであります。
  47. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 小林さんが御指摘の通り、これは相当古い立法でございまして、現在の情勢に必ずしも適応しない問題がたくさんありまするが、しかしこれはたいへん広範な法律であるとともに、これの関係する部面相当多いのでありまして、実情に沿うように改正すべく、鋭意検討を命じておるわけでありまするが、今にわかにその立法の準備ができませんので、蚕繭処理と同様に、これも十分研究を進めて、成案を決定次第改正の運びに持つて参りたいと思つております。
  48. 千賀康治

    ○千賀委員長 次は足鹿覺君。
  49. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣がおいでになりましたから、基本問題について、ごく簡単に二、三お尋ねをいたしたいと思います。生糸のみならず、茶にいたしましても、あるいは輸出カン詰にいたしましても、輸出商品に対する政府の基本的な今後の方針は、この蚕糸業対策にある程度現われておると解釈していいと思う。この問題は、単に蚕糸対策のみと解釈することはできない。昭和二十四年四月に為替が再開し、また同年の十月にフロアプライスがやめになつて、爾来生糸も急激な値下げを受け、輸出農産品は非常な乱調子になつて、業界の受けた打撃も大きいし、従つてまた農民のこうむつた被害は甚大なのであります。フロアプライス廃止以来乱調子になつて来たところの、輸出農産品に対する基本的な政府構想はどこにあるのでありますか。この点をまず最初にお尋ねいたしたいと思います。
  50. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。農産物の輸出の問題と関連いたしまして、国内産業の調整、農民経済の安定の観点から、蚕糸業と同様に安定政策をとるべきではないか、こういう御意見のようであります。基本的にはわれわれも賛成でございます。現在問題になつておりまする蚕糸業が、一番広範な問題であり、しかもこれが一番価格の変動、その他の状況において影響を受けましたので、まずこれに着手したのでございます。お茶の方についてもいろいろ議論がありますけれども、実はお茶はそれほど大きな変動その他が現われておりませんので、おおむねこれは品質の改善、それから相手側の選択、信用状況の確立ができた場合においては、従前においてもあまり差がなかつた。こういうような観点から、今のところはかくのごとき特別措置を講じなくても大体やつて行けると考えております。  またもう一つ問題になりますのは、おそらく柑橘その他のカン詰類の問題も出て参りますが、これの原因は、市場関係よりもむしろ品質の問題と、契約した相手方の選択が十分でなかつたということのために、キャンセルなりその他が起きておるようでありますので、この点も漸次研究いたしまして、もし総合的にこういう方法を講じなければならぬという場合には考えなければならぬと思いまするが、いまただちに輸出農産物について、全面的に総合的な価格安定政策をとるという考えは持つておらない次第でございます。
  51. 足鹿覺

    足鹿委員 問題は輸出の採算が立つか立たぬかという問題から、現段階におきましては、輸出価格そのものが問題になつて来ておる。今農相のおつしやいましたように、結局安定の問題なので、従つて今の状態で行きますと、経営の合理化そのものの前提が、もうすつかりぶちこわれてしまうような形になつておる。どうしても安定対策が、強く前面に押し出されて行かなければならないと思うのであります。  そこで調節の問題であります。繭糸価安定法の基本の問題についてお尋ねいたしたいと思うのでありますが、今の段階において、製糸業者として生きて行く道は、結局糸価と繭の価格について、ある程度思惑をやつて行く以外にはほんとうに立つて行く方途は困難ではないかと思う。従つてどういたしましても、いろいろな形で繭価にしわが寄つて来ることは明らかであります。そういう点について、幸い本法案糸価安定法として原々案が考えられておつたにもかかわらず、繭の一字が入つたことは一歩の前進ではありますけれども、先刻も小林委員からお話がありましたように、一条においては輸出優先の考え方に立つておるが、輸出を促進上、糸価の安定をはかり、ひいて繭価の安定と養蚕の経営の安定に資するという、第二次、第三次的に繭の問題が取上げられておるのであつて、あくまでも優先的に糸価の問題が考えられておることは明らかであります。従つて十条におきましても、必要な措置をとる云々ということのみでありまして、この法案から直接繭価安定対策の具体的なものを知ることができないことを非常に遺憾に思うのであります。その点につきまして、結局政府蚕糸業対策についての経営の合理化について、基本的な考え方はどういう考え方か。私どもをして言わしめますならば、販売価格、供給量というものが計画されて、そこに一つ糸価の安定がなされて行くのではないかと思う。ただ単にこちらの方で一様に糸価の安定政策だというので、三十億の予算でこの買上げ制度をやつてみましても、基本的な販売価格の問題と供給量の計画が並行して行かない限り、買手筋の外国人商社、その他諸外国の方では、そう簡単に、われわれが希望するようには出て来ないのではないかと思われるのであります。その点について、基本的にはどういうふうにお考えになつておるのでありますか。今私どもこの法案から受ける印象は、生糸価格マイナス加工費イコール繭価、こういう印象を受けるのであります。従つて繭の生産費に大きなしわが寄つて来ることは、養蚕農民がひとしく憂えておるところであります。でありますから十月十五日の農民代表者会議にも、自然発生的にこの糸価安定法案に対する反対の意見すら出ておるのであります。この点について、基本的にどうお考えになつておるか。農林大臣の明確な御所見を承つておきたいと思います。
  52. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。本法におきまして、糸価を安定することも通じて繭価を安定するということであるから、第二次的に考えられておる、かような御指摘でありまして、これは先ほどの小林さんと同様の質問でございます。現在われわれの考えといたしましては、糸価を安定せしむるということが、特に海外における生糸に対する需要増進して来る、こう考えておるのであります。従いまして需要が強気になつて参りますと、それだけ糸価も安定しつつ漸次上る。従つてこの糸価の中に一番大きな要素として含まれるのは繭価でございます。ところが足鹿さんは繭価に対して、その中から加工費を引いたものに押つけられるから、不利になつた場合は繭価にさや寄せられ、有利になつたときには頭をはねられるじやないか、こういう御心配のようでありますが、これは需要供給の関係価格が成立するものでありますので、もし非常に有利になるということになりますれば、製糸者はできるだけ多くの繭を買い取りまして、加工してこれを売り出そうとしますから、その点においてはむしろ売手相場になるではないか。従つてその点においては繭の価格相当高くなつて来て、競争して製糸業者が買うということで、それにさや寄せはあまりできないと思います。非常に低落したような場合には、直接繭価に響くよりも、やはり生糸それ自身にこれがしわ寄せをするわけです。その点がささえるものがなかつたために、今度は翌年に非常に影響を及ぼされまして、繭価が不安定だというので養蚕しなくなる。これに応じまして価格が下るときに、最低価格糸価を押えておりますから、農民は常に最低価格で買い取られるものまでは間接的に保証されておるというので、安心して生産が続けられる。こういうような関係からいたしまして、われわれは現状においては、この繭糸価安定法をもつて現在農民が要望しておる程度まではこれを満たすことができる、かように考えております。  なおもう一つ基本的な問題といたしまして、足鹿さんが御指摘になりましたのは、養蚕合理化、さらに計画的な生産、さらにはそれに引続いて供給者として繭価決定に対する発言権を持たせなければならぬということでございます。私はまつたく賛成でございます。この意味におきまして来年度予算におきましても、養蚕合理化のために諸般の経費を組んで、目下大蔵省と折衝中でありますし、なお一面におきましては、これはどうしても協同組合——昔養蚕組合というものがございましたが、これと似たもので、全国的な一つ養蚕団体の統一的な組織強化が必要であろうと思いまして、この意味におきましては農林漁業組合再建整備法においても考えなければならぬのみならず、一面におきましては、技術の改善あるいは経営の合理化の線におきまして、先般以来御要請がありました養蚕技術員の政府助成をはかりまして、漸次足鹿さんの言われる線に近づけて参りたい、かように考えておる次第であります。
  53. 足鹿覺

    足鹿委員 いろいろ御丁寧な御答弁をいただいたのでありますが、農林大臣がお考えになつておることは、理想論のようであります。生産量の十分の一、輸出量の四分の一に足らないところの三十億をもつてする調整数量で、はたして最低価格ほんとうに維持できるかどうかということは、私どもは疑いなきを得ない。しかし政府が現在予算を三十億と算定されたところの基礎を考えてみますると、単価は十四万五千円としてやつておられる。ところが現実において農林省統計調査部から出したところの本年春蚕の生産費計算千七百六十八円から行きますと、二十三万幾らという価格になる。そういたしますると三十億円でもつて調節をするところの政府の買上げ数量というものはきわめて少くなつて来ます。従つて農林大臣構想しておいでになるようなことは、抽象論過ぎるのであつて、実際的には、ほんとうに影響のある施策は困難ではないかと思つております。従つてもしこの三十億円ぐらいで不十分であるというような場合はどうされますか。この点について農林大臣から確たる御所見をこの際承つておきたいと思うのであります。  それからただいまは、農業協同組合の面において、養蚕関係の事柄を統一して行くことに政府は意を注いで行くという御趣旨であります。この点けつこうでありますが、現在の養蚕組合の実態を見ますと、その販売方法について見ましても、農家は現物を先へ製糸業者に供出してしまつてあと価格を決定してもらうのであります。従つて太い方を製糸業者がつかまえてしまつておりますから、泣く泣くある程度繭価協定に応じて行かなければならないという実情があるのであります。しかもそれらの実態に対して、販売方法の改善ということが十分なされておらない。すなわちその販売方法の改善の基礎をなすものは、繭価の合理的な決定の基礎をどこに置くかということである。すなわち……。
  54. 千賀康治

    ○千賀委員長 足鹿君、お約束の時間がが経過しております。
  55. 足鹿覺

    足鹿委員 もう少しだけ……。繭価をきめて、それに加工賃をプラスして大体の日本におけるところの糸価の想定を立て、その線に沿うて一つ計画数量増産をはかつて、世界市場に対して、日本生糸である程度指導的な立場に立つて行くことは必ずしも不可能ではないのであります。つまり日本がその指導的な立場にあるのでありますから、いわゆる生産価格を押えて行くという考えではなくて、繭の生産費を基礎にして一つの合理的な取引が行われ、その取引の仲介なり、適正取引に協力者として農業協同組合がこれに参加して行くためには、どうしても蚕繭について協同組合が自主的な統制権を持つて絶対量を確保してこそ、初めて正しい生産費の保証がされると思うのであります。そういう具体的な施策を持たずして、ただ単に協同組合を育成強化するということでは、御構想けつこうでありますけれども、できないのであります。私は今までの繭価の決定方式等を見まして、その感を深くしておるのであります。繭価の決定の基本方針についての農相のお考え、それを根本とするところの取引の基本的な改善については、どのようにお考えになつておりますか、その点をお尋ねいたしたいのであります。  それと来年度予算には相当の経費を計上せんとして、今せつかく折衝中であるという御言明がありました。その蚕糸業振興の基本的な方策の重点は、一体どこにあるのでありますか。その点も時間があまりありませんので、あわせてお尋ねを申し上げ、私の質問を打切つておきたいと思います。
  56. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 足鹿さんはいろいろと御意見をまじえての質問でございます。簡潔にお答え申し上げます。  先ず第一は、三十億の予算では糸価の安定をはかることができないじやないかという御議論のようでございます。過去におきましては繭糸価格の安定は、通常生糸生産量の〇・三箇月分あるいは〇・二箇月分の買入れをすれば、大体できておつた、こういう実績がありますので、大体それを基準として算定した予算でございます。しかしこれは御指摘のように、買入れ価格変化によつていろいろと御議論がわかれるところでありましようが、現在ではこれで大体行けると思つております。  その次に、もし三十億の予算でどうしても間に合わなくなつた場合はどうするかということでございますが、それは常にあることでありますから、どうしても必要なときは、予算を補正して、その目的を達成するために、考えなければならぬということもあるのでございます。  その次には、価格決定に対して繭の生産費を基礎として考えるべきだという御議論でありますが、これは今度の審議会においていろいろ御議論になるだろうと思います。今からあらかじめ何を基礎としてやるということは申し上げられぬのでありますが、基本的には、完全に生糸を統制して政府が専売するとかなんとかいう場合、あるいは国家管理によつて輸出するという場合には、相当問題になるだろうと思いますけれども、原則としては自由市場における価格の安定措置であります。そういたしますればおのずから足鹿さんの考える点と異なつた点において考えられてさしつかえないじやないかと考えております。  それからもう一つ養蚕合理化のために何を今後やろうとするのか、その重点をお尋ねでありますが、これはやはり一番根本になるものは、戦時中に非常に荒廃した桑園をできるだけ早く復活してやるということが、一つの基本条件だと存じます。これに対する助成その他のことを考えております。それからまた優良種苗の奨励を考えております。それから次に問題になりますのは、せつかく桑園その他をつくつてやりましても、結局資金の問題だと存じます。資金関係がなかなか梗塞しておるので、進展しておりませんが、農林漁業融資特別会計における融資を来年度からはわくを少し広げて、これを裏づけしてあげたいと存じます。なおそのほかに農林中金における融資あつせん等諸般の措置を講じて参りたい。それからもう一つ養蚕における災害共済の関係もあるかと存じますが、そうした問題を総合して参りたいと存じます。詳しいことにつきましては、必要に応じまして蚕糸局長から答弁いたさせます。
  57. 千賀康治

    ○千賀委員長 次に竹村君。
  58. 竹村奈良一

    ○竹村委員 この法案繭糸価安定法案という意味で出て参つたのでありますが、これが出される前の新聞等にいろいろ伝えられた状態から見ますと、これは糸価安定法案として出される御予定のように思いました。先ほどいろいろ各委員質問にもあつたように、繭価にいろいろしわ寄せが起るという懸念が強いので、何とか一応養蚕農家の納得の行くような形をつくりたいという考え方から、とつてつけたような繭糸価安定法案となつたような感じを、本法案を見ていると受けるんですが、ここでまずこの法案を出された基本的な考え方を大臣に伺つておきたいのであります。これはたとえば世界の絹業会議等において日本糸価安定を希望するといういろいろな勧告が行われた。その上に立つてこの法案を提出される考え方を持たれたかどうか、この点を伺つておきたい。
  59. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。第一点の問題については、先ほど小林さん並びに足鹿さんに答弁した通りでございます。  第二の問題については、これは絹業会議によつて勧告されたからやつたのではなく、すでに数年前から農林委員会あるいは経済安定委員会等から要請されたのでありまして、この点は向うの勧告によつてできたのではなく、これは従来から要請され、本院において決議もございました。ただその当時においては予算措置ができないので非常に難航を重ねておつたのでありますが、今回予算措置ができましたので、この予算と同時に提案いたした次第であります。
  60. 竹村奈良一

    ○竹村委員 もちろん本委員会等におけるいろいろな決議等を通じ、数年前からの構想によつて予算的措置が現在できたからこういう法案を出された。そうしますと少くともこの法案によつて生ずる利益というものが、この法案に一応概括的に規定されているように、いわゆる養蚕家並びに製糸家ともどもに利益をはかるということが私は基準になつて来るのではないかと思う。しからばその養蚕家の繭に対する価格にしても、先ほどからいろいろ問題がありましたが、これは今日の状態のもとにおいては、生産費を償う価格、しかも現在の資本主義社会におきましては生産費を償うだけではなしに、一つの利潤を見た拡大再生産価格というものによつて割出されなければならない。またたとえば製糸事業にいたしましても、今日の事業として成立つ価格によつて輸出をしなければならない。これが基本であると私は思うのであります。そういう基本の上に立つて海外輸出をいたしまして、この輸出をする価格が、たとえば世界絹業会議等で問題になつております向うで買おうとする価格との間、つまりここには相当な開きがあつて、大きな問題になると思うのでありますが、これに対して現在三十億をこの予算に組んでいると言われますけれども、しかしこれだけで向うが買おうとする価格と、こちらの国内養蚕家あるいは製糸家等が採算に合うような価格輸出する価格との調節が、私はこのままにおいて十分とり得るかどうかということに疑問を持つのでございますけれども、農林大臣はこの点についてどういうような確信と方針を持つておられるか、お伺いしたいと思います。
  61. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 これも先ほどお答えした通りでございますが、これは買手側としては、できるだけ安く買いたいというような立場で進んで来るのは当然だと思います。日本側としては、できるだけ製糸業者もあるいは養蚕業家も成立つという方針をもつて進むのでありまして、具体的な価格の問題は、国際市場における需要供給の関係とその取引の方法できまろうと思います。
  62. 竹村奈良一

    ○竹村委員 もう一点伺つておきたいのでございます。世界絹業会議で一応日本に指示されたのか、希望されたのか、その点は詳しくわかりませんが、たとえばそのときには三ドル八十セントという価格を指示されているわけでございますが、これは日本の強い希望であるのか、あるいはこれ以上では買わないのか。たとえばこの勧告価格というものはどういう性質を持つのか、ある程度の強制力を持つのか、その点を承つておきたい。
  63. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 あれは何ら強制力を持つものとは考えておりません。希望の意見としてああいう数字が出たものとわれわれは解釈しております。
  64. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それでは私伺つておきたいのでございますが、現在日本の置かれている国際的な状態——現在日本がまだはつきりと独立していないという観点でお答えになればそれまででございますけれども、しかし実際においてあの平和条約ができましても、おそらく日米経済協力その他によつて日本経済面に対しましても相当強力な指示というものがあつて、これ以外に日本が独自に行動するということは、日本立場から言つてまた現在の政府のやり方から見ましてもでき得ないのじやないか。そういう場合に、向うで勧告された指示価格というようなものをはねのけて、独自に進むだけの自信は、おそらく現在の政府にはないと私は思うのでありますが、もしそれが確実にできるというような見通しでおられるのか。その点をもう一度伺つておきたい。
  65. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。現在まで完全な占領下にありましても、需給の関係から非常に暴騰したこともある事実から見ますれば、これは原則として世界市場における需要供給の関係によつてきまるのでありますので、世界絹業会議におけるところの、あれは単なる希望意見として聞いてさしつかえないとわれわれは考えております。
  66. 八木一郎

    八木委員 私は根本農林大臣にお伺いいたしたい点を二つ持つて特に出席をお待ちしたわけであります。その一つは、国内産業として重要な蚕糸業の政策に対する政府の方針であります。その二つは、国際的な世界的な視野において、過去一世紀にわたり発達して参つたこの蚕糸業の将来に対する政府の御方針、この二点であります。  第一点の、国内産業としての蚕糸業の重要性については、いまさらここに申し上げるまでもなく、零細な日本農村振興の上には、畜産とともに養蚕を取入れなければやつて行かれない宿命場的な事態に置かれておるという特異性が、世界の産額の七割も八割も占めるまでに発達して参つた事情であると思うのであります。これが戦争のために、農業経営に必要欠くべからざる桑園を小作零細農家の経営の中から転換を強要した。終戦以来だんだん食糧事情がかわつて来るにつれまして、農家自身としても、この養蚕を取入れた農業経営に移つて来たという事実。また工業面から見ますと、大資本の製糸が経営しておるといいますが、中小零細工業、家族工業の少し発達した程度の方々が何百というこまかな工場にわかれて仕事をしておる。ここにもまた宿命的とも言いたいほど蚕糸業に深い結びつきを持ちまして、困難なる経営の中に蚕糸業の復興に努力を払つておる。原料は必要量の半分もできていないけれども、なおかつ無理をしてこの経営を続けておるという事実。商業面の輸出に関しましては、戦時中の盲貿易の間を通して、輸出第一船を生糸で送り出してから、困難なる事情はありまするが、長い間の経験に徴しまして、順次輸出大宗の地位をとりもどそうという意欲、私はこれらの涙ぐましい事実を見合せますると、日本の民族産業として重要なものはやはり蚕糸である。こういうことを痛感して参つておりまするだけに、この産業の復興発展のためには重点的な施策、政策は何であるかということをつぶさにわが自由党政務調査会等の調査機構を通じて調べてみますると、蚕糸業の将来が、人類に流行の二字がある限りその魅力は失われない。また日本の持つ特異な立地条件がある限り、世界七十民族国家の中に処しても、やはり国際分業として日本が最適当である。こういう自信を深めまして何としてもこれは復興しなければならないのだという結論に到達し、その具体的な手段として、ここにようやく立法化され、予算化されて参つたこの蚕糸業安定問題であるというふうに感じまして、この意味が非常に深いということを私自身はまず申し上げて、これに臨む政府の態度としては、国内問題は生産増強に沿うての安定政策でなければならぬと思うのでありまするが、根本農林大臣は就任早々、農政は価格政策だけではいけない。価格政策のみにおいて、万全を期するわけには行かない。日本農村の実情を認めて、価格政策に関しては、農産物の最低価格を何とかして支持するということから、これによつて最低価格、てこ入れ価格、支持価格という措置をとつて参り、その及ばない点は資金的に、農林漁業資金とか、あるいは災害の復旧だとか、あるいは課税の問題だとか、諸般の保護助長の政策を、あたたかい手をさしのべて行くのだ、こういうことを就任早々言われた。そういう大方針に沿うて蚕糸の国内問題についてはつきりしていただきたいのは、この法律によつて最低価格は、合理的な生産を続けるための最低生産費は保証をいたして、及ばないところはいわゆる保護助長の政策をもつて増産を期し、蚕糸の置かれた将来に約束づけたいという方針で臨まれることと信ずるわけであります。そうしますると、最低価格支持に関する期待は、この法律によつて全きが期せられるかどうかという点を一つ、またそれとうらはらとなりまする保護助長の政策について、何を考えておるかという点を明らかにしてもらいたい。  以上の点をお伺いしたいと思います。
  67. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 八木さんの言われた点は私がしばしば申し上げた通り政府の方針でございます。  なお具体的にこの予算並びにこの立法で養蚕家並びに製糸家、さらには貿易業者に対して安定を期することができるかということでありますが、われわれは先ほどいろいろ御説明申し上げた理由によりまして、おおむねこの予算措置と立法でなし得ると存じます。なお基本的な問題といたしまして、現在日本農村におきまして養蚕業の必要性、さらにまた大いに増産しなければならぬという点についてはまつたく同意見であります。これが基本政策についても先ほど足鹿さんの質問に関連して申し上げました通り、まず一番大事なことは繭の増産の基本的条件は、やはり桑の増産でございます。桑の増産のために桑苗の育成並びにそれらの諸般の情勢を勘案いたし、さらにはまた経営の合理化にあたりましては、ぜひとも資金的な裏づけがなければなりませんので、資金計画についても農林漁業融資特別会計、あるいは農林中金による資金のあつせん等も考えている次第であります。
  68. 千賀康治

    ○千賀委員長 八木君、簡単に願います。
  69. 八木一郎

    八木委員 国際問題についてはわれわれは国際小麦協定に参加をいたして、国際経済の中に日本経済日本農業の重要なスタートを切り出したわけでありますが、これは農民立場に立ちますと、麦、かんしよをつくつている畑を経営して行くことが適切であるか、ここに桑を植え、養蚕をして繭を糸とし、外貨をとることが適切であるかというところに眼をつけるのでありますが、そこで輸入をする小麦について国際協定に参加し、国連の経済部の活躍にまで期待を寄せておりますわれわれとしては、輸出について生糸のような国際的商品の七割も、八割も占めている。われわれから見ると、これもまた国際協定の線にまで将来発展をさせて取上げて行く性格が当然のように思う。そうなりますと、国際協定価格に基いて一定数量一定価格をもつて国際間の取引の対象となる。それが小麦について考え得られると同様に、輸出する生糸について考えられまして、適地適作、立地条件に合つた宿命的産業として養蚕業の根を深くおろすことができるというように私は考えている。こういう考え方に関しまして、日本の農業も小麦協定をスタートとして切り出したこの際、生糸に関してもひとつ考えてみようというお考えはお持合せがないかどうか、検討してみる意思があるかどうか、これをひとつ伺いまして私の質問は終ります。
  70. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 生糸に関して国際的な一つの機関ができるべきであり、それに参加すべきではないかという御意見のようでありますが、現在まだその段階まで達しておらないようであります。しかし漸次そういうような国際的な関係機関ができるのではなかろうかと存じます。その際はわれわれも参加すべきであります。しかしその場合において、やはりわれわれは小麦協定における場合と違つた立場における発言権を持つことと存じます。なぜなれば、御指摘のように日本養蚕業従つて生糸が圧倒的優位を占めている関係上、われわれ大いなる発言権を持ち、また発言権を十分に伸ばし得る機構にわれわれは導くべきである、かように考えております。
  71. 千賀康治

    ○千賀委員長 次は石井繁丸君。
  72. 石井繁丸

    石井委員 今までいろいろお話がありましたが、この問題について本法案に対する各方面意見は、この法律が的確に最低価格最高価格が維持されていれば、それでけつこうだ、こういうことについては、これは共産党から自由党、各党異論がなかろうと思います。この点についてはほとんど異論はない。問題は、農林大臣以下農林当局並びに現政府が、ほんとうにこの法律をこしらえて、この法律を十分に活用できるかどうか、あるいはまた活用する熱意があるかどうかという点にかかつておろうと思うのであります。今まで各方面意見を聞いてみますると、どうも農林省においては、三十億円の予算をとつた、そこでこの法律をつくつてというくらいの軽い考えではないか。ほんとうにこの法律を活用するというほどの熱意がないのではないか。こういう点が各方面において、この法案に対する深刻なる危惧を抱いておる根本原因であると思う。そこでこの法律を実際実行してあくまでやり抜くためには、政府においても将来海外に対する日本生糸輸出についていろいろと努力、宣伝をするという場面が現われて来る、そういうようなことがこの裏づけをなすものでありまして、先ほども蚕糸局長にお尋ねしたのでありますが、アメリカとかあるいはフランスという生糸の大きな需要地に対しましては、今後大公使館に対して、蚕糸方面のいろいろな経験者を、参事官あるいはそういういろいろな要職につけて常に努力させる。糸の販売あるいは絹製品の販売についての努力を怠らない。こういう場面等が現れなければ、実際に法案をつくつたけれどもこれはただのおざなりである。ほんとうに誠意があるのだというふうには了承できない。こういう問題について、今までに大公使の設置問題等が閣議等においていろいろと述べられておるが、農林大臣としてはどういうような発言をし、あるいはどういうような要求をされておるか。これらについての今までの発言あるいは主張等をお聞かせを願つて、各方面にこの法案に対する十分の誠意を披瀝願いたいと思うのであります。
  73. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 ただいま御指摘のように、この繭糸価安定の方策は、同時に海外における販路の確保、さらにはそれの拡大ということがひとつの裏づけとしてなされなければならない、こういうお考えまことに同感でございます。従いまして今後日本が完全に独立の後、各国に大公使館等の外交機関が設置される場合、主たる需要国についで、その構成員の中に蚕糸関係の要員を置くべきである、この意見についても同感でございます。従いまして外務大臣に対しましても、この問題とは若干離れまするけれども、食糧関係方面と、さらに蚕糸関係についてはぜひともその要員を確保することを要望しておる次第でございます。
  74. 石井繁丸

    石井委員 これは前に質問があつたかもしれませんが、今予算が三十億組まれまして、大体当局の意見によると、十四万五千円で二万俵買うという方針のようでありますが、いろいろと質問いたしますと、最低価格はこの十四万五千円よりは相当に高まつてきめられるように思うのであります。そこでわれわれは先ほどの質問におきましても、農産物としては、非常に手早く金がとれるところの繭に越したものはないという立場において、今後農林省の五箇年計画は、あるいは予定以上に進捗するであろうと考えるわけであります。三十五万俵からあるいは四十万俵くらいも繭ができるようになろう。ただ、今のように販路拡張に大いに努力を払う、かような場合において最低価格が維持されているということにつきましては、相当予算の裏づけが常になければならない。こういうことがなければ、桑を植えあるいはその他の農家施設、かごをつくりましても、五年や六年使わなければむだになつてしまう。いろいろと養蚕具を買いましてもみんなむだになつてしまう。そこでこういうふうに養蚕業相当に五箇年計画のわくを越えて発達をいたした場合においても、その法律を十分に責任をもつて維持して行く気構えがなくてはならないと思う。これはある意味において、自由党の農林大臣あるいは何党の大臣といわず、農林省において、それを今後一貫して堅持するという根本精神が確立されなければならないと思うのでありますが、養蚕が発達いたした場合においても予算獲得に努力をいたして、最低価格はあくまで維持をする、こういう決心等につきまして御意見を承つておきたいと思うわけであります。
  75. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 ただいま御指摘の通り、われわれもその方針をもつてこの立法をいたし、また今後の運営に当りたいと存じます。
  76. 石井繁丸

    石井委員 次に最高価格でありますが、最高価格は御承知の通りに一部の投機家によつてあやつられておる。事実と伴わないのに糸の値が上つて来る。数名の取引所における相場師によつてあやつられる。値が上つたらそれでいい、農民も喜ぶのじやないか、こういう安易な気持であつてはいけないわけであります。人工的に値が非常に上げられるということについて、物価統制令等がもし撤廃されたような場合に、どういう処置を講じて国際的の秩序に伴わないところの価格暴騰等を処理するか。  もう一点は、この法律案は繭糸価安定といつても、糸価安定だけで繭の方については何らの対策が講ぜられていない、これでは農民をあざむくものである、こういう御意見が多いのでありますが、この繭についても万全の考えを持つて、もし農民の乾繭等に対するところの要求があつた場合においては、乾繭倉庫あるいはその他をいろいろと整備して、森農林大臣のさつまいもの倉庫のようなことでなく、キユアリングで大体自由党の倉庫政策はいろいろと非難を受けましたが、かようなから念仏ではなく、ほんとうに建設的な対策農民の期待に沿うような御意思があるかどうか。この二点についてお伺いをして、私の質問を終りたいと思います。
  77. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 第一点の、物価統制令が廃止された場合においてはどうするかということでありますが、現行は物価統制令がありまするので、それを基本として考えております。廃止される状況になりますればそのときに措置を講じたいと存じます。  第二点の質問は、いわゆるこの立法は糸価安定が主体であつて繭価の安定策が非常に副次的である。従つてこの点について明確を欠いておるということでありましたが、この問題については、先ほど数名の議員の方々の質問に答えた通りでありまして、第十条の運営にあたりましては、その事態が起つた都度において具体的な方策が違うと思います。そういう問題については、十分にその事態に適合する措置を講ずる、その方策についての基礎をここに置いたのでございます。その点は十分われわれは責任を持つて実施したいと考えておる次第であります。
  78. 千賀康治

    ○千賀委員長 農林大臣の約束の時間が参つておりますので、大臣に対する質疑はこれをもつて終了いたしまして、続いて蚕系当局に対する質疑を継続いたします。足鹿委員
  79. 足鹿覺

    足鹿委員 蚕糸局長にお尋ねをいたします。先刻来農林大臣にお尋ねをいたしたのでありますが、農林大臣に対する質疑がきわめて短時間でありまして意を尽しておりません。このような重大な法案を、所管大臣に十分と時間を制限して審議をするということはまことに不満でありますが、委員長がさようなおとりはからいを強引になされますので、蚕糸局長においてある程度かわつて答弁を願い、できない問題がありましたならば、あらためて農林大臣の御出席を煩わして問題を明らかにして、今度の法案の審議に支障なきようおとりはからい願いたいと思います。委員長において適当に御処置をされることをまずお願い申し上げて質疑に入りたいと思います。  先刻農林大臣に対しまして、一般的な基本問題についてお尋ねをいたしたのでありますが、これに関連して蚕糸局長の御所見を承りたいことは、日本における蚕糸業の現段階は、まず安定を中心考えて行かなければならぬということについては、農林大臣の御所見があり、それについてのいろいろな基本策は一応解明されたのであります。しかし当面の問題として、いわゆる安定という合理化目標と、その条件というものは一体何だということについて、蚕糸当局は具体的にどういうふうにお考えになつておるのであるか。たとえば、いわゆる安定した価格というものを一体どこに置いてお考えになつておるか。またその安定価格は、ある一つの取引数量というものを背景として、裏づけとして考えられるのであるか。日本におけるところの蚕繭量、ひいては蚕糸業そのものの数量というものは、一体どこに根拠を置いてその立案の基礎にしておいでになるのであるかということについて伺いたいと思う。すなわち安定した価格、取引の数量、この政策の基本について伺いたいと思う。同時に蚕糸業としての具体的な内容として、いわゆる適正規模あるいは合理的な設計の基本については、どういうふうにお考えになつておるか。この点、あまり簡単過ぎて先日来の御答弁はわかりにくいのでありますが、十二分に納得の行く御説明を承りたいと思います。
  80. 青柳確郎

    青柳政府委員 安定した価格、こう申しまするが、価格自身の形成の一番大きな問題は、需給の問題だと思うのでございます。生産者側で、これならコストが合うという問題が供給力として現われまするし、また需要者側から見ますれば、これなら消費し切れるという面が需要面に現われて参ると思います。その合致した面で安定して参るのが真の安定であると思う。法案趣旨に述べておりまするところの、輸出増進国内蚕糸業の経営の安定だという面は、その面をうたつておる次第でございます。  それから現段階におきまして、数量はどのくらいかという点でございまするが、この問題は例の五箇年計画の際に御説明申し上げましたように、今後五年後におきまして大体どのくらいかと申しますと、約三十万俵という計画を立てておりまするが、この程度くらいのものが一応適当なものじやないか、また需要側でも、これに対してこの程度であればさしつかえないというようなことを言つておる面から見ましても、大体この五箇年計画くらいのものが適当ではないか、こう思つております。
  81. 足鹿覺

    足鹿委員 大体その数量については三十万俵で、安定価格については審議会等で検討して考えたい、製糸業者も納得し、養蚕業者も理解するようにきめたいというのですが、その通りであります。しかし現実の問題といたしましては、安定の基礎は、やはりこの繭価の安定に出発した考え方でなければならぬということを私どもは考えておるのであります。その点について、午前中に石井委員は、米価のパリテイというお考え方についてもただされましたが、これらの点についても明確な御答弁がなかつたようであります。先刻農林大臣は、自由経済下に置くのであるから、価格については需要供給にまかせればよい、それが原則だとお話になつている。しかしながらこの繭糸価格安定法案の精神はそういうところにはない。ある一つの安定した価格目標にして、繭糸価格安定法の立法の基本がそこに置いてある以上、安定価格に対するところの、当局の一つの基本的な信念なしにかような法案の立法に当られることは、少し不見識ではないかと思う。たとえば法案の末尾にありますところの第十四条及び第十五条によりますと、農林大臣の諮問機関として審議会を設置されることになつている。ところがその農林大臣が任命するところの委員の構成を見てみますと、関係行政庁の職員及び蚕糸業に関する学識経験者の中から農林大臣が任命することになつている。民間の業者代表も、あるいは真の農民代表も、あるいはその他の利害関係者というようなものも入れずして、関係行政庁の職員、蚕糸業に関する学識経験者のみをもつてして、安定の基礎であるところの価格問題が解決できるかどうか、私どもは疑なきを得ない。米価審議会の今までの経緯について考えてみましても、このようなことでほんとうにこの安定価格を生み出せるかどうか。私どもは、自由経済下にあつても、日本蚕糸業が戦後遅々として発達しない、製糸業者が求めるだけの蚕繭量がどうしても生産できないというのは、基本的にその価格に対する保証がないからであると思う。従つて私どもは、この繭糸価格安定法に期待することは、糸価の安定よりもまず繭価の安定を優先すべきであるという見解に立つて、問題を解決して行かなければならないという所信に立つておるのであります。この点については、くどくなりますからあまり申し上げませんが、この第十四条、第十五条は、価格形成の問題と重要な関係がありますので、この関係行政庁の職員あるいは蚕糸業に関し学識経験のある者以外には、民間業者も入れないのか、あるいは農民代表も入れないのか、農村関係の学識経験者も入れないのか、一体どういう御所見であるか、ただ価格形成について具体的に現われておるのはこれだけでありますから、この点について、まず明確にしていただきたいと思う。
  82. 青柳確郎

    青柳政府委員 学識経験者とこれには書いてありますが、われわれの想定しておりますところは、主として蚕糸関係関係しております業者の人たちも入れて参りたいと考えております。さらに衆参両院の方で、しかも蚕糸関係関係しておいでになるような人たちも一応考えたいと思つている次第であります。
  83. 足鹿覺

    足鹿委員 さような程度では、おそらくこの審議会については養蚕農民は納得しないと思う。その点につきましては、私どもは、もつと当局はよくお考えになり、真剣に繭糸価格安定法の名にふさわしいような審議会の構成について御考慮される必要があると思う。これは意見でありますから多くは申し上げませんが、重大な見解の相違であることを明らかにしておきます。  そこでまた価格形成の問題に入りたいと思いますが、先般の農業復興会議主催の全国農民代表者大会は、御存じのように繭の制低価格について、糸価制低値中に占める原料繭の割合を七七・二とするよう要求しております。この考え方に対して当局としてどういうふうにお考えになつておりますか。統計の示すところによりますと、糸価に対するところの繭価の比率は、大体五三%から六八%程度を上下しておるように私どもは見ることができるのでありますが、この基本的な考え方についてはどういうふうにお考えになつておりますか伺いたい。
  84. 青柳確郎

    青柳政府委員 繭価糸価との関係でありますが、従来の自由経済のときの比率を考えますと、最高が八割五分、最低が六割二分ばかりになつております。これは実は昨日御要求がありまして、われわれの方で調査したものでありまして、お配りする予定で持つてつた次第であります。これをごらんいただければ、大体自由経済時代の比率というものはおわかりになるだろうと思います。それで七七・二%ばかりの御要求があるということでありますが、これはやはりわれわれとしましては、需要供給によつてきまるものではないかというような感じがいたす次第であります。その際にわれわれとしまして幾らの比率が繭について至当かというような、つまり価格に触れて参るというようなことになりますと、やはり流通統制までもやつて行かなければならないということで、われわれとしては、現在はそういうことを避けたいと考えておる次第であります。
  85. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも立法の趣旨と局長の御答弁とは、必ずしも合致しておらぬ点があるのではないかと私どもは思う。適正価格に対する相当の牽制力を持たない法案というものが、どの程度まで効果があるか。これは言わずともわかつたことだと思うのであります。ただ統制経済であろうと、自由経済であろうと同様だろうと私は思うのでありますが、一体養蚕農家の再生産を保障するところの生産費というものを基本に置いてお考えになつて行くという考え方があるならば、それを立法措置においてどう固めて行くか、また付帯的ないろいろな施策の上に、どう固めて行くかということが中心にならなければならないと私は思う。しかし価格政策だけでは問題は解決できないから、そこに一連のあるいは金融措置とか、あるいは国家の財政投資とかいう点においてカバーされるのであろうと思うのであります。私は価格政策一本やりでもつてすべてを解決しようというのではありません。その点では私どももきわめて理解を持つておるつもりでありますが、その基本すらもはつきりと御言明ができないということは、私ども本法の運用の面において、何と申しますか非常に危惧にたえないところがあります。従つてただいまの御答弁では私ども納得することができません。  それから先刻農林大臣にもお尋ね申し上げましたが、これは生産費との関連もございますが、繭及び生糸生産費を基礎として算出したところの生糸価格は、農林省の発表によりますと千七百八十七円ということになつておる。この場合に生糸十六貫に含まれておるところの加工費は五万四千四百三十二田いうことにわれわれは聞いておるが、いわゆる加工費の最高最低はどういう数字になつておりますか。この五万四千四百三十二円という加工費を優先的に確保して行く場合には、そこに非常に大きな変動が起きて来ると思う。最高と最低とでは七万円から三万円ぐらいあるように私どもは聞いておる。そういつた場合にわが国製糸業合理化について、当局は一体どういう施策を持つておられるのであるか、加工賃優先の考え方を持つておられるようでありますが、その加工賃は全然合理化には手をつけておられぬのでありますか。いわゆる生産費を決定して行く上の重要な一つの要素でありますところの加工賃についての考え方は一体どういうふうでありますか、お伺いいたしたい。
  86. 青柳確郎

    青柳政府委員 加工賃の合理化の面には政府はどんな施策を行つておるかというお尋ねでございますが、その面につきましては昨日もお話しましたように、本年は八百万円程度予算を組みまして極力自動繰糸機その他の製糸関係の部門の研究費として計上しております。さらに来年は工業化試験なり、あるい一はまた試験研究費の増額をして参りたいと思つております。それで加工費の面における分布図は十三ページにございます。これが二十五年の分布図で、こういう形において現在製糸の加工賃が形成されております。
  87. 足鹿覺

    足鹿委員 どうもはつきり聞き取れないのでありますが、あとでまたよくお伺いすることにいたします。これは先刻もお尋ねしたのでありますが、三十億の予算の範囲において二万俵程度生糸の操作をやつて期待が持てるかということについて、農林大臣もはつきり期待は持てるということはおつしやらなかつた。事務当局としてもおそらくそうであろうと思いますが、ほんとう繭糸価を安定して行くための理想的な予算というものは、一体どこに線を引いておいでになりますか。いわゆる年産の十分の一程度輸出量の四分の一程度を操作するということで、糸価にしろどの程度の牽制ができるかということは、業界そのものもたよりなく考えおるようにわれわれも伝え聞いておる。その程度法案でも、とにかくこの法案は通しておく、先は先で何とかする、ありはなきにまさるというきわめて消極的な考え方も一部にあるようでありますけれども、そのような考え方で、今直面しておるところの蚕糸業の振興の再出発点にするというようなことでは、いささか私どもたよりないと思わざるを得ません。そこで事務当局が考えておられますところの、ほんとうに市況を左右し得る予算のわくは一体何ぼであり、その計算の基礎はどこに置いたらよろしいのであるか、一応承つておきたいと思います。
  88. 青柳確郎

    青柳政府委員 この御質問については昨日以来何回も第答弁申し上げましたが、われわれは三十億程度で十分やつて行けると思つております。
  89. 足鹿覺

    足鹿委員 やつて行けるとおつしやいますけれども、実際問題としてやつて行けないのではないかということが大体常識化されておるわけであります。しかしこれ以上は問答になりますから申し上げることを差控えたいと思いますが、要するに私どもとしては第一条及び第十条、第十四条、第十五条が、この法案に冠せられたところの繭糸価格安定法の名にふさわしくない内容であるということを言いたいのであります。これについて事務当局としては三十億でもやれる、この法案でもやれるという手放しの楽観論であるようでありますが、事業はそうでない。養蚕農民ほんとうの声としては、大部分の農民は必ずしもこの案に対しては賛意を表しておらない。一体そういつたものにほおかむりをして、やつて行かれると言うことは、私は少し考え方が甘いのではないかと思います。  そこで第一条について特にお伺いしておきたいと思いますが、第一条は生糸輸出増進及び蚕糸業の経営の安定という考え方に立つておられますが、まず養蚕業発展を優先的に考え、その結果をして製糸業の安定があり、ひいて輸出増進が期せられるという考え方に立つた特別な措置を何かお考えになる意思はないかどうか、今提案されたものをすぐに改正するということはなかろうと思いますが、聞くところによると、不満足であるけれどもとにもかくにもこれを通すのだということである。それは近き将来において修正を示唆しておるかのごとく受取れるのでありますが、事務的な御所見でもけつこうですが、当局は近き将来において第一条の考え方に対して修正を加えて行くお考えがあるかどうか。  それから第十条は、繭価維持のための特別措置について、繭を買う意思はない、その理由として保管が困難であるとか物量的にも困難であるとか、いろいろな理由があげられておりますけれども、全国の養蚕農民繭価の安定の立場から乾繭の政府買上げを要望しておる。この点については融資あるいは委託製糸一点張りで、法の改正また特別な措置は全然考えて行かないのであるというふうに受取つてよろしいかどうか、この点は重要な点でありますからはつきりと御所見を承つておきたい。以上であります。
  90. 青柳確郎

    青柳政府委員 第一条の変更の問題でございますが、われわれとしては、現状においては何らそういう変更の余地はない。これで行けるのじやないか、これで行くべきじやないかと考えております。  第十条の問題は、先ほど大臣が御答弁になつた通りでございます。
  91. 千賀康治

    ○千賀委員長 金子委員
  92. 金子與重郎

    ○金子委員 たくさんの委員から広い範囲にわたり質問がありましたので、重複を避けまして、質問されなかつた二、三の点に対して伺つておきたいと思います。  まず第一に、ただいま足鹿委員と局長の間で、この法律が糸価安定に効果があるとかないとかいうような問題がありましたが、私どもがこの法案の審議にあずかつておりましても、率直のところを申しまして、三十億の金をかけて二万俵程度のものを政府の手持ちにいたしたところで、かつての歴史から見てこれだけ大きな投機的な性格を持つていた繭糸価の安定には、相当たよりないという考え方を持つておるわけであります。ただ提案なさつている当局の立場から、これはたよりないという説明はおそらくできないと思いますけれども、私どもは良心的な意味で、これはたよりないと考えておりますが、ことに繭の価格を安定するのにこういうこともやりたいということが今頭に思いつきがありましたら、これは言質をとるとか何とかいう意味でなく、私どもも勉強する意味においてお聞かせ願いたいと思います。
  93. 青柳確郎

    青柳政府委員 それは先ほどお話申し上げた通りでありまして、先日来数回お答えいたしております。
  94. 金子與重郎

    ○金子委員 やはり政府委員は提案者という立場にとらわれ過ぎまして、そういうふうなことであればそれは非常に冷淡だ、無責任だということを私は考えております。それからかりに三十億程度の財政支出でも相当不安な状態が起るということを私は考えておりますが、しかし財政支出にはおのずから限界がありますので、一応三十億という立場におきましても、これに対して貯蔵資金を出したらどうか、たとえば政府一つ価格を安定させて保証しておるわけでありますので、糸にしても繭にしましても価格の裏づけを政府は一方にしておりますから、それに対して低金利で金を供給してくれるならば、農民農民製糸家製糸家の手持ちの範囲においてそれを貯蔵することができるわけであります。ですから単に買い上げる資金というのではなくて、その買い上げる資金によつて買い上げて、なおそれが破れんとしたときには、政府一定価格を指示しておきまして、裏づけがありますから、低利資金さえ貸してくれれば製糸家養蚕家も繭を持つことができる。そこでこの法律を施行する上に、糸なり繭なりに対する貯蔵貸付金というものを考えておることはないかということをお伺いいたします。
  95. 青柳確郎

    青柳政府委員 実はこれは生糸の買入れ及び売渡しだけでもつてつて行こうという法案趣旨であります。こういうぐあいに考えました原因はどこにあるかと申しますと、過去におきまして、あなたのおつしやいましたように、共同保管をやつたことがございます。ところがその共同保管がついに政府の補償というところまで行きましたが、補償で解決できないで結局政府は買収法を出して買つたという経過がございます。そういう面から見て最後的に発案されたものがやはり生糸の売買操作によつてつて行こうという形にかわつたわけであります。ですからわれわれといたしましてもそういう方法が一番いいのではないかという形で、今回のこの法案になつた次第でございます。
  96. 金子與重郎

    ○金子委員 私の申し上げることがそのまま適切に受取れなかつたような答弁でありますが、私の言うのは保管貸付金で安定をしろというのではないのです。一応買上げが三十億というように限界が切られておるから、これを補足する意味で、その線が破れる線に入つたときに貸付金によつてもなおこれを保持するというだけの考え方はないかどうかということなんです。
  97. 青柳確郎

    青柳政府委員 その面につきましては、たしか昨年の三月でございますか、政府が糸の暴落に対処する意味合いで生糸の保管をやりました。その際に日銀に融資あつせん方を政府として行つたことはあります。それはそのときそのときの事態に即応してそういうことができるだろう。またそういう面も考えられるだろうと思います。——そういう方法がとれるだろうと思います。
  98. 金子與重郎

    ○金子委員 どうも局長のお話は、さつきはそういう方法はだめだから買上げるというようなお参話であつたが……。私の申し上げるのはこういうことなんです。単に糸だけの問題ではないのです。繭も同じことなんです。もつと具体的に申し上げますと、繭が一定糸価によつて当然安定させる線に来ているけれども、それがたとえば掛目協定が合わぬとかいう場合に、その糸価の最低を押えてあるのだから、その最低の線に押えた採算で逆算したときに、繭の価格も当然出ますから、それ以下に取引が行われるような場合におきましても、ただ繭を買うということだけでなく、そこのところに繭の貯蔵資金を出せばそれが維持できるじやないか。それからまた三十億の金が終えてしまつた、しかしながらこの法の目的を達成することができなかつたという場合に、その補助政策として、政府は低利資金をもつて製糸家に糸を持たせたらどうか、こういう考え方をあなたは持つておらないかということなのです。
  99. 青柳確郎

    青柳政府委員 そのことはこの前の十条の説明で十分尽きておるのじやないかと思うのでございます。ただ十条まで行くまでに、そういう面があるかということになりますと、現在でも中金からそういう資金の融資もやつておる次第であります。
  100. 千賀康治

    ○千賀委員長 理事会を開きます。ちよつと速記をやめて……。     〔速記中止〕
  101. 千賀康治

    ○千賀委員長 それでは速記を始めてください。小笠原委員
  102. 小笠原八十美

    ○小笠原委員 委員会もう少し締りをつけてやりましよう。そうでないとこんがらがつてだめだ。また蚕糸局長政府委員なんだから、委員長と呼んでごらんなさい。まだ一言も呼んでいない。だからあなたが発言し出してから、委員長蚕糸局長蚕糸局長と呼ぶじやないか。また数字なんかを聞かれたら、係の者にやらせますといばつてやりなさい。きようはきのうよりも上できだけれども、局長は局長の権限を発揮してさつさと進めるようにしないと、いつまでかかつてもだめだ。あなたの方の答弁がうまく行かないと、野党の方はいつまでも質問を続ける気持になる。それを与党だからといつて断圧することは心苦しい。委員同士の納得ずくでやらなければならぬ。そこをうまくやつてもらいたい。また委員長もしつかりその点注意してやつてほしい。以上私は議事進行について申し上げます。
  103. 千賀康治

    ○千賀委員長 小笠原先輩の注意は翫味すべきところ多しと思いますから、委員長政府も大いに戒心してやることにいたします。
  104. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいまの貸付金の問題は、少し話がこんがらがつているようでありまして、あまりはつきり私にはわかりませんけれども、この問題は際限がありませんから、これで打切りまして、次にこの法律を施行する目的が、繭と糸の価格を安定して、養蚕業発展と同時に、製糸業の健全なる発達をはかるところにあると思うのでありますが、ただここで養蚕家立場製糸家立場——製糸家立場にしても、大資本の場合と小資本の場合と非常に違いがあるのでありまして、最近だんだん戦前の形にもどりつつある。どういう形にもどりつつあるかというと、大資本製糸が小資本製糸をだんだん圧迫して参つております。これは力の相違だといえばそれまででありますが、それと同時に、特約製糸の方向をだんだんたどつて参ると思います。これを極端に言えば、搾取するという形が強くなつて来ると思いますが、特約製糸発展に対して局長はどういうふうに考えておられますか。
  105. 青柳確郎

    青柳政府委員 これは昨日もお答え申し上げましたが、蚕繭処理の方針としては、生繭の分については団体協約で進んで参ろうかと思つております。とにかく養蚕家の場合には団体販売をさせて参りたい、こう思つております。
  106. 金子與重郎

    ○金子委員 団体協約というものが内容において、実質的に特約製糸の方向に入りつつあるということを御承知ですか。
  107. 青柳確郎

    青柳政府委員 過去における特約製糸というものと今の団体協約というものは幾分違つているものではないか、こう思つております。しかも現在の団体協約は、少くも県単位、郡単位においてやらしておるのでございまして、まだ戦前のような特約化というところまでは行つていないのだ、こう思つております。
  108. 金子與重郎

    ○金子委員 それは末端の養蚕事情に対する局長の認識不足であります。なぜならば、御承知のように、蚕種の研究は、農林省がどうがんばつても、今の巨大製糸のやつております研究には実際かないません。これはほかの農産物と違いまして、品種と飼育の方向と製糸と一貫しなくては目的の糸は出て来ないのであります。従つて団体協約と言いますけれども、団体で甲なら甲、乙なら乙という製糸と協約いたしますなれば、そごに当然まず第一に蚕種の供給を受けなければなりません。そういたしますると、それは一方に資材供給を始めているわけです。そういうことはかつての特約製糸と必ず同じ方向に入つて行く。ことに農業会当時は、農業会として特約製糸をしておつたのがほとんど全部でありまするが、その後におきまして、加入、脱退の自由になりましたる現行の協同組合におきましては、それから別派の養蚕組合というものをつくりまして、その養蚕組合が団体協約をしている。そうなりますると、その別派な養蚕組合は経済力を持ちませんからして、従つて養蚕農家の必要な資材供給やなんかをまず巨大製糸から受けて来る。そうして資材を受けて、前と相殺の形において、まつた養蚕家製糸家に食われているという昔の形が生れて来る可能性が多分にある。こういうことをあなたが御承知にならぬとすれば、あなたの認識不足であります。それに対してどういうふうな方針を今後とられて行くか。そういうことを断つておきませんと、こうして国家の貴重な予算を使いまして、糸の安定をはかりましても、それは養蚕家の安定にはならないという考え方から、私はこの質問を申し上げるわけです。
  109. 青柳確郎

    青柳政府委員 どうも考え方が違つているように思うのでございます。つまり現在の段階におきましては、昔のような特約的なものになつていないように思うのであります。蚕種にいたしましても、とにかく売買をやる、しかも繭の品質の問題なんかは検定取引でやつて行くというような形で、いわゆる昔の主従関係のような形にはなつていないのではないかと思うのであります。
  110. 金子與重郎

    ○金子委員 そこにそれだけ蚕糸当局がおつて、このくらいのことがわからないから、ここで私がお聞きしても時間の空費になりますから、私の質問はこれでやめておきますが、あとでよく研究してください。
  111. 横田甚太郎

    ○横田委員 この法案審議の質疑応答を聞いておりますと、養蚕振興ということが非常に問題になつているにもかかわらず、つまり養蚕は蚕を飼う人、あるいはできた繭を大事にしなくてはならないのに、糸になつてしまつたものを非常に気にしている。この点が私たちは非常に不満なんです。  そこで伺いたいのですが、まず基礎知識のために、日本には養蚕適地と言われるものが一体どのくらいあるのか、そうして実際やつているところの面積はどのくらいか、このことを承りたい。
  112. 青柳確郎

    青柳政府委員 養蚕適地の面積はどれくらいかというような御質問でございますが、とにかく適地が適地でないかということは、その土地の利用によりまして、ほかの作物をつくるよりはさらに有利だという形の所が、いわゆる適地という形になるだろうと思うわけであります。その面から見ますると、現在どのくらいの面積があるかというようなことは、はつきり申し上げかねますが、現在養蚕が主として行われている地帯が、これがまあ適地というか、地方という形になると思うのであります。そうしますと、現在は関東以北あたりが中心になつております。
  113. 横田甚太郎

    ○横田委員 何をとぼけたことを言うておるのですか。二十六年の五月四日を御存じですね。このときには、たしか蚕糸業振興緊急対策というものを政府は発表しておられるのですよ。それには三十万俵の繭の生産を確定するということを決議しておられる。そこには老朽桑園の問題からあるいはまた新しく桑園面積をふやすという問題からすべて出ているのです。これは何でもない本ですが、しろうとが一冊読みました本の中におきましても、長野県の殖科付近、この辺なんかは適地として言われている。今まで長野県が非常に養蚕業の適地であつたやつが、このごろ群馬に追い抜かれている。その立地条件なんかについて民間で非常に研究されている。だから私の聞きたいのは、日本養蚕適地というものがあるということがたくさん言われている。そうしてその面積は民間でわかつているくらいだから、あなたもわかつているはずなんです。そういうものを基礎にしてこの緊急対策が立つたんでしよう。そこで私が聞きたいのは、その適地のうちのどれだけの面積が使われ、そうしてどれだけが今残つているかというような目標をはつきり承りたい。これがはつきりしないと、緊急対策というものの振興が少しもわからんじやないですか。状況というものがさつぱりわからないじやないですか。その点をもう少し明確にしていただきたい。
  114. 青柳確郎

    青柳政府委員 蚕糸業がかつて一番隆盛でありました時分は、約七十万町歩以上ありました。それが現在十八万町歩ぐらいになつております。従つて今の適地ということは、現在引き起されたものの部分が、順次そのときどきの経済事情によつて、適地化して来るのではないか、こう思つております。
  115. 横田甚太郎

    ○横田委員 適地化して行くんじやないかというような問題でなしに、どういうふうな形において七十万町歩を今後適地化されるか、されないか。またこのうちの七十万町歩を使わなくてもいい。二十万町歩なら二十万町歩でいい。こういうような点に対するお考えを聞きたいのです。これは大体桑園の面積を二十五万町歩にしたいというのが緊急対策の骨子ですね。そういたしますと、七十万町歩でありますと、この三倍近くの面積があるわけですね。そうしますと、この面積のすべてを使わなくても、できるわけなんですね。こういうような点を私は聞きたいから聞くのです。あなたの給料は片倉製糸から出ているのではないのですから、こういうような点をよく研究しておいてもらつて答弁してもらいませんと、片倉製糸の中で眠つていて、宴会で言つているようなことを言われると困るのです。だから承るのです。もつとはつきり聞きますと、七十万町歩のうちの十八万町歩を利用し、あとの五十二万町歩はどういうふうに利用されるつもりか、これをはつきり聞きたいのです。こういうようなものがいろいろ解決がついて行きませんと、繭の値段が上つても下つても、これは問題の解決にはなりませんよ。大体系の値段が十一万円あまりのときもあれば二十五万円のときもある。これが大体生活必需品ではなしに外国の女の人たちが頭にかぶるネッカチーフに魅力を感じたときとか、あるいはまた何といいますか、そういうような流行を追うたときに非常に需要が多くなる、こういうことが言われておりますね。しかし多くなつたからといつてうその場合でも三年たたなければ桑というものは十分使えないのですから、流行を追うことはできない。だからこれは非常に計画がいることなんです。計画がいつて、しかも繭になつてから糸にし得るような条件にするためには、よほど計画を立ててやらねばならないのに、あんたの答弁は、今まで農林委員会で聞きました政府答弁の中で最もややこしいやつであつて、これほど糸のもつれたのはないというほどややこしい答弁であります。だから簡単にこちらで伺うことは、箇条書きで伺うのですが、七十万町歩の適地があるのであれば、この七十万町歩に桑を植えるつもりであるのかないのか、それともまたこの中で二十五万町歩であればあとに残つたものはどういうふうにされるのかということを承りたいのです。なぜかと申しますと、一時戦争が終りまして、外国から米を買う場合に、アメリカの人たちは生糸がすきだ、生糸買つてくれるだろう、これで金がかせげるだろうというので、非常に生糸に対して魅力を感じたときもあるのです。こういう意味で聞くのですから、七十万町歩の今後についてはつきり承りたい。
  116. 青柳確郎

    青柳政府委員 七十万町歩と申しましたのは、過去における最盛時のことでございまして、そのうち十八万町歩が現在桑園になつております。それ以外のものはほかの作物が植えられているわけでございます。
  117. 横田甚太郎

    ○横田委員 もつと聞きたいのですが、これはあんたわからぬのでしよう。ほかの作物が植えられている。こんなものは適地、不適地の問題ではないのです。養蚕に必要な桑というものは、山から雨で土砂が流れる場合に、桑を植えておくと、非常に土砂を防ぐのに都合がいいとまで言われているのです。特にからつ風の強い所は、これを植えますと非常に防風林の役目を果す、従つて麦をつくるのにつくりやすい。これほど農業に密接な結びつきがあるのです。養蚕でとれます蚕沙はいい飼料であつて、これを食わないのは、畜産の中ではおそらく馬くらいではなかろうかと言われているのです。これほど重要なものなんですから、日本の農業のいわゆる食糧ではないのですが、自給度の問題になつて来ますと、これが金にかわつて、高い麦の押しつけに対して身がわりの金を払うということから、非常に重要になつて来るのですね。だから私はこれをはつきり聞くのです。もつとあんたに答えていただきたいのは、日本の傾斜十五度を境といたしまして、農業適地は大体九百万町歩からあると言われているのです。気の弱い農林省の役人でも四百万町歩はあると言つているのです。これらの未墾農業適地に米作がどのくらいやれ、麦がどのくらいつくれる、桑がどのくらいつくれるか聞きたいのですが、大体こういう土地は米ができないので、桑が適地ではないかと思うので、聞くのですが、これは答えられないと思いますから、しつつこく聞きませんが、蚕糸局はよろしく片倉製糸の宴会に出ているような、なれ合い答弁をやめていただきまして、もつと日本の農政とか、養蚕考えて、当面の責任当局としての貫録のある答弁をしていただきたい。  それから二番目には、この法案を見ております上、繭及び生糸価格の非常な変動を防止するためにこういうことが設けられているのですね。そういたしますと、一番安いときで、二十五年の六月にこれがちようど十五万三千円しておりました。それが大体二十六年の三月には三十万五千円まで繰上げております。こういうように非常に変動があるものなのです。こういう場合に、政府は大体十四万五千円で二万俵の糸を買うために三十億の予算を組んだとなるのですね。そういたしますと、かりに十四万五千円で糸を買つて、これを売る場合には一体幾らに売るか。かりにこれを二十万五千円で売るといたしますと六万円からもうかります。そうするとこれは非常なもうけになるのです。こういうようなもうけは一体養蚕にどう潤して行くのか、どこの収入になるのか、これで日本の産業とのつながりがとうなるのか。おそらくこれで蚕に集つた役人という白ありを飼うような結果になるのじやなかろうかと思うので、この点ははつきり聞いておきたいのです。
  118. 青柳確郎

    青柳政府委員 その詳細な特別会計の経理の問題は、近く御審議をお願いいたします糸価安定特別会計法の中に規定されることと思います。その際に御説明を申し上げます。
  119. 横田甚太郎

    ○横田委員 それではその輪郭もわからないのですか。これは大蔵委員会にもうかがつているのでしよう。
  120. 千賀康治

    ○千賀委員長 横田委員に申します。昨日付で大蔵委員会に提案になつております。
  121. 横田甚太郎

    ○横田委員 きのう文字として出るくらいだつたらその内容はわかるはずなのです。おそらくこれはあなたたちも合作してやられたものだろうと私は思うのです。だからこういう形におけるところの、かりに一俵六万円のもうけが出た場合に、これが日本養蚕にどう動いて行くのか、このことを聞きたいのです。
  122. 青柳確郎

    青柳政府委員 それは所管が大蔵省にも関係しておりまするので、大蔵委員会で詳細に御説明を申し上げた方がよかろうと思います。
  123. 横田甚太郎

    ○横田委員 あなた何を言つているのです。糸が上る、下る、それで日本養蚕が非常に打撃を受けて困る、こういう問題をなくするためにこういう法案考慮されているのです。大蔵委員会と申しましても、簡単に言つてやはり衆議院の委員会なのです。そこにかかつたのは金の面でありまして、もし国会に良心があるならば、大蔵委員会と農林委員会が合同審査をやる、そこで答えなくてはならないのです。あなたがきよう逃げを張りましようとも、われわれがもしまじめに国会を運用いたしましたならば、やがて二日か三日先には答えねばならない問題です。だからその点は答える方がいいのむやないのですか。
  124. 青柳確郎

    青柳政府委員 特別会計法の大体の考え方といたしましては、そういう利益金がありますと、一応特別会計の収入として掲げるという形になつております。その上で政府は、必要ある場合におきましてはそれについて一般会計に繰入れるという形になつております。
  125. 横田甚太郎

    ○横田委員 それではこれを例にとつて伺いますが、十四万五千円で買つたものを二十万五千円で売つて、一俵について六万円の金をもうけて、そうしてこの金を運用いたしますときに、十二億のもうけが国の特別会計に入るのですね。これはそこに入るのかそれとも民間に出るのかということをはつきりしておいてもらいたい。あなたの説をこちらが憶測して考えまして、もし国の一般会計に入るものならば、政府はどうしてこんな形で金もうけをしなくてならないのか、これがふしぎなのです。なぜといつて米の場合もちようど同じで、安くなつたら買います、高くなつたら売り出しますというやり方で、吉田首相はドツジに言われてやめた、これもそれと一緒ではないか。あなたたちにはいかに安くても国から給料が出ておりながら、——安かつたらあなたたちがストライキをやつてつてに上げるようにしたらいいのですが、どういうわけで十二億の金をもうけなければならないのですか。
  126. 青柳確郎

    青柳政府委員 それに対する答弁は、先ほど申し上げました通りに法律に書いてございます。
  127. 横田甚太郎

    ○横田委員 先の十四万五千円、二十万五千円の話で行きますと、一俵について六万円もうかるでしよう。それでこれを三十億の金を運用して買い集めますと、どうしても十二億の金がもうかるようになる。十億になつてもいいですが、こういうようなものをもうけるための法案ですかと言うのです。あなたはそういうふうなとぼけた答弁をしておつて意地悪く構えておると、こつちも意地悪く押して行かなければならないですよ。だから十二億の金をもうけるためにこういう法案をつくつたのですかと言うのです。
  128. 青柳確郎

    青柳政府委員 この法案目的は、決してもうけるためにやつたわけではありませんで、糸価の安定をやろうという面にあるのであります。従つてひいては繭価の安定にも資しよう、こういうわけであります。
  129. 横田甚太郎

    ○横田委員 養蚕の振興のためにやつておるのなら十二億の金をどうばらまくのか。あなたたちのふところに入れるわけではない、国の一般会計に入れる。こういう形において金をもうけることができるのだから、この金を農民とかあるいは糸屋に貸してやつた方がいいのじやないか。もつともつとやらなければならぬことがたくさんあるでしよう。蚕の品種の改良とかあるいは老朽桑園に対するところのいろいろの手を打つとか、あるいは桑園適地に対してこういう三十億なら三十億の一部を投じて、モデル養蚕地帯をこしらえるとか、こういうことがあるはずでしよう。私が言うのは、養蚕地帯というものが、日本の今の事情から言いまして、経済的な一つの基盤の上に乗つていないような形において扱われておる、こういう場合に政府が金を出して、安いとき買うて高いときに売つて、商売してもうけて、その金がどこへ行くやらわからないような形にしてこの金を握つておいて、地方から平衡交付金のときのように頼みに来て、そのときに大臣がかぶりを振るだけでいばつておるのが政治のあり方でしようか。養蚕の振興というのはそんなものではないでしよう。だからその根本を聞きたいのです。
  130. 千賀康治

    ○千賀委員長 答弁ないそうであります。
  131. 横田甚太郎

    ○横田委員 どういうわけで答弁がないのですか。必要がないのならどういう点が必要ないのですか。
  132. 青柳確郎

    青柳政府委員 その問題につきましては、先ほどから御答弁申し上げました通りであります。
  133. 横田甚太郎

    ○横田委員 どうしてこれは答弁がないのですか。十二億の金が一体どうなるのですかと言うのです。どこに入るのですか。入つた金がどういうふうに養蚕振興に流れるのですかと言うのです。こういう形において金がもうかるものか損するものか、その目途がついておるか。その目途もついていないのですか。三十億の金はあなたの金でもないのですよ。三十億の金は、日本の労働者が肉も食へない安い賃金で働かされ、知事さんががんばつても取られるような形において農民の米がゆすり取られ、こうしてできた金の一部ですよ。そうじやないですか。だから簡単に言つておきますが、こういうふうな説明もできないところの人を説明に立たしてこの法案を通そうというようなところに、この衆議院におけるところの自由党の横暴があるのです。こんなものは参議院を通るものか、ばかばかしい。もつと適当な答弁をこれから用意して来ていただきたい。こんなことをするのだつたら、事あるごとに蚕糸局と片倉製糸との醜関係をあばきますから……。こんなばかばかしいことがあるか。これでやめます。
  134. 千賀康治

    ○千賀委員長 本日はこの程度にいたしまして、明日は午前十時より開会いたします。なお明日は、本案に関しまして利害関係者、学識経験者の参考意見を聞くことにいたしますから御承知おきください。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時二十一分散会