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1951-11-14 第12回国会 衆議院 農林委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十四日(水曜日)     午後二時十三分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 野原 正勝君 理事 小林 運美君       宇野秀次郎君   小笠原八十美君       小淵 光平君    川西  清君       中馬 辰猪君    幡谷仙次郎君       原田 雪松君    八木 一郎君       坂口 主税君    足鹿  覺君       石井 繁丸君    竹村奈良一君       横田甚太郎君    中村 寅太君  出席政府委員         農林事務官         (蚕糸局長)  青柳 確郎君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君 十一月十四日  委員大森玉木君、吉川久衛君及び井上良二君辞  任につき、その補欠として金子與重郎君、竹山  祐太郎君及び石井繁丸君が議長の指名で委員に  選任された。     ————————————— 十一月十三日  米麦統制撤廃反対請願千葉三郎紹介)(  第一一六七号)  同外五件(井上良二紹介)(第一二一三号)  同外十件(井上良二紹介)(第一二六〇号)  同(渡邊良夫紹介)(第一二六一号)  同(松尾トシ子紹介)(第一二六二号)  装蹄師免許制度廃止反対請願内藤隆君紹  介)(第一一六八号)  農業改良普及員行政整理反対請願外六件(  坂本泰良紹介)(第一一六九号)  同(千葉三郎紹介)(第一二六三号)  農林統計機構確立に関する請願永井英修君紹  介)(第一一七一号)  同(加藤鐐造君紹介)(第一一七二号)  同(千葉三郎紹介)(第一一七三号)  落合、蔭間に林道開設請願長野長廣君紹  介)(第一二一四号)  労務加配米廃止反対に関する請願井上良二君  紹介)(第一二三五号)が  同(中原健次紹介)(第一二六八号) の審査を本委員会に付託された。     —————————————  本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  繭糸価格安定法案内閣提出第三一号)     —————————————
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  先ほど、理事会を開催いたしましたるところ、小林委員より、目下問題になつておりまする知事会が議の状況及び知事会議の中におきます農業委員会の諸君もここに呼んで実情を調査したいという御意見もありましたが、目下農林大臣並びに知事会議の方は相当に急迫しておるらしいので、適当の時期に一農林大臣並びに農業委員代表者を呼びまして、実情を調査することにいたします。御了承を願がいます。  次に繭糸価格安定法案議題といたし、本日より質疑に入りますが、ただいま八木君より本案議事進行に関する発言の要求がありますので、この際これを許します。
  3. 八木一郎

    八木委員 ただいま議題となりました繭糸価格安定法案に関しまして、昨日小林君をも含めて蚕糸に関する小委員会を開きました結果、本法案重要性にかんがみまして、審議の適当なる時期において、利害関係者及び学識経験者を招致いたしまして意見をつぶさに聞く必要を認めました。その内容は、小委員会といたしましては、時期は明後十六日を、場所は本院内の適当なる委員室、人は養蚕に関する中央団体代表から二名、製糸に関する団体より輸出国用方面を代表されるような方をそれぞれ一名ずつ、貿易問屋をも含めて二名、蚕種、桑苗を一名ずつ、学識経験者二名、都合十名を招致されることを希望いたしまして、その手続、人選の決定は、委員長にこれを一任をいたして、ぜひとも小委員会決定通り採択されんことを希望するものであります。議事進行に関しまして、昨日の小委員会決定に基き、この際提議いたします。
  4. 千賀康治

    千賀委員長 お諮りいたします。ただいまの八木君の提案に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認め、さようとりはからうことに決しました。  これより本案質疑に入ります。通告がありますので、これを許します。八木委員
  6. 八木一郎

    八木委員 この法律案の重要なる部分につきましては、所管大臣出席をが求めて質疑を行いたい事項を持つておりまするが、その部分を除きまして、本日は当該局長にお尋ねいたします。  質問の第一点は、蚕糸業の将来に関しまして、最近海外輸出の思うほど伸びて行かない事実を見送つておりまする全国の蚕糸業界といたしては、その前途に対しまして一抹の不安を持つておるのであります。ナイロン、ビニロン、人絹等競争繊維を前にいたしまして、われわれは戦争以来いわゆる盲になつておりまするので、海外事情にうといのでありますが、当局としては、蚕糸業の将来、特にこの法律施行後に起きて参ります蚕糸業の将来に対していかなる見通しを持つておられるか、この点をまず承つてみたいのであります。
  7. 青柳確郎

    青柳政府委員 今の御質問は、生糸海外に対する輸出が非常に最近悪くなつて来た。従つて将来に対する見通しはどうかというような御質問でございまするが、これは皆さんも御承知のように、海外に対する輸出は、戦後の経緯を見ますと、順次増加の一方に来ておるのでございますけれども、今年は昨年に比較しますと、確かに幾分悪い傾向が現われて参つておるのでございます。しかし海外業者意見を聞きますと、輸出が減退して参りまする大きな原因といたしましては、まず値幅が非常に広くなつて暴騰暴落をしておるという面、いま一つ価格の居どころがどうかという面、この二つの面から何とか糸価の安定をしてもらうならば、ある程度輸出増進も期せられようということが、大体内外の業者の一致しておる意見のように思われるのでございます。しかも海外需要の旺盛なことにつきましては、実は今年の九月ロンドンで国際絹業会議の総会がありました際の英国の絹業協会会長の演説を引用してみますると、会長はこう言つておるのでございます。戦後の各国経済復興が順次回復するにつれまして、衣料方面に対する購買力は順次増加し、生糸をいろいろの方面に使つておる。従つてこの傾向が順調に参るならば、生糸海外におきまする消費というものは相当多くなりはせぬか、こう見込んでおるのでございます。しかもその会議の席上におきまして、われわれは今後5年後におきまして現在の生産数量の約倍額、三十万俵の生糸製造しようという蚕糸増産五箇年計画をつくつております。この程度消費は何ら心配するに値しないというようなことを証言しておる次第でございます。これらの面から見ますると、もし現在付託されておりまする繭糸価格安定法案が成立いたしますれば、海外業者の望んでおりまするように、いわゆる暴騰暴落というものは避け得られまするので、それによつて需要各国の今後の経済復興とともにますますふえて来るのではないか、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  8. 八木一郎

    八木委員 生糸国際商品として売れる商品である、三十万俵を目標にした、自信を持つておるとのお答えでありますが、その裏づけとして理解されることは、価格の安定について国際的な世論が、世界的な商品である生糸にがついて、日本に適切な措置要望勧告をしておる、こういう意味でこの法律重要性を認めます。そこで、この法律のねらいといたしておる価格安定の線についての考え方でありますが、価格安定の究極をつけば統制によることが一つ手段がであります。政府統制によらないで、この需給調整措置によつて価格の安定が期待できる、こういう自信をお持合せだと思いますが、その点を理解の行くように御説明を煩わしたいと思います。
  9. 青柳確郎

    青柳政府委員 今の御質問は、生糸需給操作によつて価格の安定ができるかということでございまするが、この法案によりますると、最低価格になりました際に、政府特別会計の基金の範囲内におきまして生糸を買上げて参りまして、最低値段を維持して参る。それから最高価格になりました際に、特別会計が持つておりまする糸がありますれば、その糸を売り渡して最高価格を維持して参る、大体こういう考えでおるのでございます。今の御質問の趣旨は、こういう操作によつて生糸価格安定ができるかという御質問でございます。実はこの問題につきましては、もし戦争とかあるいは非常に経済変動の激しい非常時におきましては、なかなか困難であろう思うのでありますが、とにかく過去の糸価変動を見ますると、大体騰貴がいたしまする前におきまして、価格の不安の感じから売込みが多く、それによつて価格暴落して参り、いざ上るという際において手持ち糸量がないために、多少の変動があればすぐさま上つて来ておる。つまり受渡しの荷物がないかというような意味合いからさらに暴騰迫車をかけるのが普通の暴騰の際におけるかつこそあります。それでわれわれといたしましては、この最低値段をある程度防止いたしますれば、低落に対する不安感がありませんために、売込みを急ぐという点が非常に少くなつて参るのじやないか。従つて下値がない場合におきましては上値が少くなつがて参るというような関係から、一応は安定して参るのではないか。いわんやこの特別会計に糸がありますならば、あくまでも上値はある程度抑えることができると思うのでございます。しかしその際にある一部の人たちから申さるるように、もし糸がなかつたらどうするかという問題があろうかと思いますが、われわれとがいたしましては、現在物価統制令に基きまして、生糸の部面については基準価格制をとつておるのでございます。こがれは今年の二月のあの暴騰の際にわれわれが臨時的の措置としてとつ制度で、ございまして、ほかの諸物資はかなりこの物価統制令からはずされておりますが、生糸のみはなお基準価格制をそのまま現在もとがつておるのでございます。もしそういうような事態に立ち至りますれば、この物価統制令を活用いたしましてやり得る措置もありはせぬかと思うのでこざいます。しかしさらにもし統制令がなくなるような事態に立ちまするならば、これにつきましては、われわれとがしては、少くも現在の段階におきましては、そういう面も十分考慮いたしまして今後対処して参りたい、今後の研究にまちたいというようなぐあいに考えておるのがでございます。
  10. 八木一郎

    八木委員 私は価格安定の目的のために、統制によらず需給調整手段において目的が達せられるとの信念はどこから来ておるのかという点をお尋ねしたのですが、自信は過去の経験によがつてつておるとの御答弁でありまするから、その点は了承をいたしますとしても、ここに心配なのは、生糸の持つ特殊性として、国内商品であり国際商品である。そこで国際商品価格国内商品としての価格との調整が、他がの物価国際価格にさや寄せされておりきらない日本物価体系実情にあわせて考えますと、安定の目的は達して、増産の意欲は上つて生産は相当増強されて来たが、結果として国際価格及び国内価格との安定調整が全きを期せないために、輸出目的であるけれども、国内需要が増大して来て価格の点で輸出にが向いて行かない。こういうような傾向が出て来ておるのが現状ではないかとさえも思うのでありますが、これはいわゆる需要供給経済の大原則で、国内価格がやがて安くなり、従つてまた国際商品市場今この生糸がどんどん輸出されて行く、こういう自然経済の動きにまかしておくべきことである。それまでもこの法律で安定の圏内につかもうということは期待できないのかできるのか、御所見を伺いたいと思います。
  11. 青柳確郎

    青柳政府委員 本法の最初に輸出のが増進という面をうたつておりまするが、この点は、先ほどもお話いたしましたように、海外生糸需要者の一番大きな悩みは、とにかく安定してもらいたいということでございます。従がいまして価格が安定いたしまするならば、おそらく輸出は可能であろう、こう思うのでございます。そのほかに、今の現実の段階としては、とにかく国内に流れて海外には出ないではないかというお話でございまするが、海外輸出させるというようなことにつきましては、自由経済のこの法律原則から見ますると、なかなか困難だろうと思うのでございます。従つて別途の方策がとられるのではないかと思うのでございます。具われわれとして考え、しかもやりたいと思つておりますることは、前に行われました例の優先外貨制度でございます。現在この問題が取上げられまして、通産省におきましても目下その成案に努力中でありまするが、その際に、でき得るだけ生糸及び絹製品に対しましては、優先外貨の率の多い方に取扱つていただくように、われわれとしては申し上げ薫る次第であります。この優先外貨制度考えますれば、われわれとしては、とにかく生糸がそういう措置をやり得る大きな商品ではないか、こう考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、生糸原料から製品に至るまで、すべて日本経済でまかなわれておるという面からいたしますと、原料物価の安い地帯から三百六十円のルートによつて入れますものと同一視するわけには参らない。これをさらに輸出増進をして行こうという場合におきましては、でき得る限りそういうような面で輸出増進に努めて参りたい、こう考えておる次第でございます。
  12. 八木一郎

    八木委員 価格最低保証しておるので、経済を自然に流しておけば、国際価格国内価格との調節はでき、需要供給原則に基いて自然に輸出自体は出て来る。どうもこの法律のねらいではやむを得ませんけれども、こういうことだけでがはなく、他に何か方法考えないと、第一條の輸出目的を大きく明文に出しておるのに対してあきたらない感が深いのであります。ただいまの御所見を伺いますと、優先外貨制度を復帰するとかいうような措置を行政的に考えて、その点は別途に手を尽したい、こういうお考えのようであります。あるいは貿易手形に関する手心とか、あるいはその他にもあるかと思いますが、逆に国内的の消費を抑えるような考え、その別途行政措置については、この法律施行とあわせて特段の考慮が必要であるということを申し上げておきます。  それから次に、最低価格はこれで保証ができる、だから安心して桑が植えられるから増産になつて行くというふうに考えたいのですが、生産費を補償するところまでこの安定の線を引くべきものではないし、また引かないというお考えであろうと思いますが、この最低価格の線を繭生産費生糸生産費補償の線まで大体保証し得るというところまでお考えになつておるのですか。あるいは異常な低落を防止するのですから、一定割合考えておるのか、その点を伺いまして、次の質問を続けたいと思います。
  13. 青柳確郎

    青柳政府委員 最高価格最低価格というものはどういうふうなぐあいにしてきめるのか、この決定方法の大体をお話し申し上げますれば御納得の行くことかと思いますので、便宜そのことをお話し申し上げてみたいと思います。第三條の最高価格最低価格を明示しますものは、も政令で定めておりまする種類、繊度及び品位の生糸、これは大体現在のところ白二十一中のAも格とする予定でありますが、この生糸標準生糸といたしたいと考えております。この標準生糸最高価格及び最低価格は、政令の定めるところによりまして、生糸価格、繭の生産費生糸製造及び販売に要する費用、主要繊維価格並びに物価その他経済事情を参酌して農林大臣が定めます。この場合は、あとで御説明を申し上げまするが、繭糸価格安定審議会に諮問いたしまして、そこでの公正なる御意見を十分尊重いたしましてきめたいと考えております。それで標準生糸以外の生糸最高価格及び最低価格は、以上のようにしてきまりました標準生糸最高価格及び最低価格政令で定めるところによつて算出される額、これは買入れまたは売渡し申込み当時における実際の取引の格差をとることにいたしたい考えでおりまして、この額をかげんして得た額といたしたいと考えております。従いまして標準生糸以外の生糸最高価格最低価格は、売渡しまたは買入れの日に自動的にきまつて来るようにしたいと考えております。標準生糸の場合のように、前もつて何円というようなきめ方はでき得ません。この格差といものは、その当座々々の需要状況によつて相当な変動があるからでございます。標準生糸最高価格最低価格をきめるにあたりましては、先ほど申し上げました通り、いろいろな要素をしんしやくして参る考えでありまするが、これはどういう意味のものであるかということを御説明申してみたいと思います。本法目的は、初めお話いたしました通り生糸輸出増進と、国内におきます蚕糸業経営の安定にありまするので、安定しようとする糸価最高限及び最低限、すなわち最高価格及び最低価格は、この目的に沿うようなものでなければならないと存じます。生糸価格は、御承知のように物価変動の影響を大きく受けますとともに、他の繊維価格変動とも密接な関連がありまするが、これは単に内地の物価及び繊維価格について言えるばかりではなく、生糸の主要なる需要国でありますアメリカのそれとも、まつたく同様な関係があるのでございます。従いまして最高価格をきめるにあたりましては、輸出増進、すなわち生糸需要者の立場を十分考慮いたしまして、単なる生糸の時価によらないで、日本及びアメリカにおきまする物価並びに繊維関係と均衡を得ておる生糸価格を、最近の統計資料に基く一定の算式に当はめて求めてみたいと思つております。そしてこれを基準にいたしまして、その上に物価及び生糸の標準的な変動率参考といたしまして、一定割合をとつて最高価格というものをきめたい、こう考えております。従つて今度は最低価格につきましては、蚕糸業経営の安定をはかるという、この法律目的からしまして、まず前に申し上げました方法できまる最高価格基準といたしまして、物価及び糸価の標準的な変動率、つまりこれは値幅でございますが、これを参考といたしまして、その下値一定割合を限度として、経済事情をしんしやくして、一時的には定めますが、この場合繭の生産費生糸製造販売費をもあわせ考慮いたしまして、少くともいわゆるコスト一定割合を下らないようにしたい、こう考えておるのでございます。ただいま一定割合とだけ申し上げましたが、これらは先ほど申し上げました生糸輸出増進、及び蚕糸業経営の安定という本法目的に沿うように、慎重に決定して参らなければならないと存じまするので、各方面権威のある方々から十分御意見も伺いまして、最終的な決定をいたしたいと考えておる次第でございまするが、今御質問になりましたいわゆる最低価格というものについて、蚕糸コストはまるまる見られるかと申しますと、現在のところまるまるには見ない考えであります。古い絲価安定施設法におきましても、まるまるは見なかつたわけでございます。それなら幾ら見るかという問題になりまするが、われわれとしては、これをきめます際におきましては、事業全体につきまして合理化が進んでおる人たちでありますならば、大体納得のできるような程度価格にきめて参りたい。しかもこの最低価格というものは、いわゆる非常事態である。常時そういう価格が行われるわけではなくして、非常事態にありますものであるだけに、まるく見るということは、競争繊維のある事業でありますだけに、蚕糸業の健全な発達のためには、かえつて悪い結果になるのではないかという気持がいたす次第であります。
  14. 小淵光平

    小淵委員 ちよつと関連して——もちろん糸価安定の一番重要なことは価格決定の問題でありますけれども、最低価格をきめる場合に、まるく最低の線に行つたものを全部保証するということであれば、健全な発達のためにもかえつて云々というお話がありましたけれども、蚕糸業現状からいたしまして一番重要なことは、その原料であるところの繭をたくさんつくつて行かなければならない。戦前の四が分の一、五分の一にもなつておる今日、国内で全部の原料がまかない、輸出されたもの全部が日本の国の所得になるという事業にするために、最低価格決定考え方はどこまでも最低繭生産費を中心として行くという考えに進んで行かなければならないと私ども考えておるわけでありますけれども、今のお話を聞いておりますと、必ずしもそれをまるく保証する考えではないというお話でありますので、それではこの法律目的とする蚕糸業将来の発展のためにということにももとると考えます。最低というのは繭の最低生産費基準に置いて進んで行くのだというふうに私ども考えておるわけですけれども、これについて農林省としての考え方をお伺いいたしたいと思います。
  15. 青柳確郎

    青柳政府委員 今ほどもお話申し上げましたように、政府といたしましては繭の生産費及び生糸加工販売費を寄せました全体の生糸コストと申しましようか、それをまるまる保証するということは、今ほども申し上げましたような理由からでき得ないのでございます。しかしわれわれといたしましてはでき得ませんが、事業自体を合理的に経営なさつておられる人たちには、十分まかない切れるような程度のところできめて参りたいと考えておるのでございます。従いましてその割合をどうするかというようなことは、過去にも、ございましたですから、それらの例を十分しんしやくいたしましてきめて参りたい、こう考えております。
  16. 小淵光平

    小淵委員 かりにも農林省であり主管省であれば、もちろんこの価格決定には繭糸価格安定審議会というものができまして、あらゆる階層からそれぞれの権威者が集まつて基準値はもちろん出される。そのときに最低値段の協議も当然あることでありますけれども、問題は、農林省がさような考えで進んでおるというところに私は問題があると思うのであります。そういう観点から行政庁としての農林省は、繭の生産についてはその最低保証されるという考えをどこまでも持つて行くことでなければ、蚕糸業全体の発展のために非常に問題がある。こういう点に対する農林省としての考え方をお伺いいたしておるわけであります。もちろん決定することについては、当然種々なる條件がその中に入り、競争繊維関係もありましよう、あるいは審議会権威者意見も出ることではありましようけれども、少くとも農林省としての考え方は、さような最低生産心配のないことを基準として進んで行くのであるということでなければ、全体の蚕糸業発展のためにこれはゆゆしい問題である。この点を私は心配いたしまして今お伺いいたしたわけであります。いま一度お願いいたしたいと思います。
  17. 青柳確郎

    青柳政府委員 これは考え方の相違かとも思うのでございますが、過去におきましてもそういうようなことで、いわゆる最低値段というものは政府がまるくの保証はしない。私はこれはも米の買入れ価格どは性質が違うと思うのであります。米の方は御承知のように政府が買入れる価格でありまするがためにコストはまるまる見なければいかぬという形になりましようが、われわれのこの場合における買入れの措置は、これは最低価格と申しまして、考え方としては常時こういうものがあるわけではないのでございます。いわゆる非常時、異常な暴落の場合と考えておる次第でございます。従いまして考え方はやはりコストはまるく保証しない程度価格で行くべきではないかという考え方であります。
  18. 八木一郎

    八木委員 ただいまの小淵委員関連質問も私が追究してはつきりいたしたい点なのですが、最低保証できない、非常事態の場合だからこれはやむを得ないのだというのでなくて、先ほど蚕糸局長も言われたように、生産合理化して、廉価多収獲をいたしておるものは十分保証はでき而という線が最低でなければならぬと思うのです。それも非常事態だからやむを得ないという深い底のところを見ておるならば、さような最低支持はあつてもなくても同じというにひとしいものだと思うのでありますが、この点は繭生産費の調査を資料としていただいておりますが、最低幾ら最高幾ら、大体平均はどのくらいのところにあるということのお示しを願い、方針として、だめを押しますがその最低合理化した生産費でもなお保証できないというのでは事重大だと思うので、重ねてお尋ねいたします。
  19. 青柳確郎

    青柳政府委員 その面は一番最初にお話申し上げましたように、合理化が進んでおる業態であるなら、ある程度償う程度の値段にしたいと考えております。そうでありませんと事業自体が萎縮してしまうという面があろうかと思います。最高最低価格の実際の数字につきましては、先ほどもお話申し上げましたように、われわれとしては今後その方面の業界の人たち、あるいはまた皆様の御意見をお聞きしながらきめて参りたいと考えております。
  20. 八木一郎

    八木委員 繭の生産費資料は、発表されたものも印刷物も確かにあるはずだ。私の言うのは、六百円から千五裏でもあるとか世上にはいろいろ言われておりますが、平均適正な価格幾らだというポイントを聞くのならばとにかく、最低幾ら最高幾らという調査は出ておるということですから、その資料説明はできるはずだと思いますが、できなければ後刻に讓つてもいい。
  21. 青柳確郎

    青柳政府委員 それは農林省で調べた二十五年度の繭生産費の調査を見ますと、お手元にお配りしてありますが、最低は四百円から最高は三千六百円まででございます。十一ページの繭及び生糸価格及び生産費に関する資料というところであります。八ページにその平均が出ておりますが、それをごらんになりますと、費用の合計が千百二十四円になります。それから副産物の収入を差引きますと千三円になります。それに資本利子、地代を算入いたしますと千九十二円、それに租税公課を算入して千二百十九円になります。
  22. 八木一郎

    八木委員 小淵委員関連質問によつて明瞭にはなつて来ましたが、局長の答弁を聞くとどうも信念のほどが明瞭を欠く。この法律で期待できる価格支持の最低線では生産費は十分に補えない。そうすると、これはいつの調べか知りませんが、この千百二十四円という適正な生産費を全部は償えない。しかしこれより以下で合理的な生産の増強をやつておる人には償える線が最低の線としてこの法律を適用されるはずだ、こう期待もしておりますし、その信念もお持合せだと思つて質したわけであります。それでなければこの法律意味がなくなる。われわれは生産費一ぱいの保証はできないけれども、いわゆる最底底値、てこ入れ価格は、繭についても糸についてもその意味において最低の意義がある、こういうのです。そこで生産費の補えない部分をいかなる手段方法で行政上予算上措置して行くかという問題が真剣に検討されなければならないと思う。そのために現に予算も要求せられ、指導員の身分安定だとか、あるいは桑園の助長政策であるとかいろいろな要求のお考えもあると思う。現に蚕糸行政もとつておられると思う。両々相まつて価格政策のみでは生産費を償い得ないということを認めつつ、他の適当なる助長政策を蚕糸行政の上に盛り上げて行かなければならぬという信念を持つものでありますが、この点局長の、この法律運用に対する行政上の態度として、御信念のほどを明確にしていただきたいと思います。
  23. 青柳確郎

    青柳政府委員 その面につきましては、来年度の予算におきまして、養蚕、製糸の合理化、いかに生産費を安くするかという面に極力主力を注ぎまして、予算的な措置を講じて参ろうかと思つておるのでございます。その予算の中心となるべきものは、繭の部面につきましては、現在反当収量を見ますと、一反歩当りの繭の収量の平均は、全国十一貫ばかりになつておるのでございます。この内容をつぶさに検討して参りますと、十六年以上のいわゆる荒廃桑園、一人前の生産をあげ得ない桑園が非常に多くを占めているわけでございます。これをなるべく能率の高い桑園にするということが、即養蚕の合理化の基本的なものではないかと考えまして、来年度の予算におきましては、その面の予算を要求しております。さらに養蚕部面におきます一つ合理化の形態といたしましては、飼育面におきまして、稚蚕共同飼育というものに主力を注いで参りたいと思つております。さらに養蚕の部面で、いわゆる収繭量に大きな影響のあります事項といたしましては、病虫害並びにきよう蛆というようなものの駆除の経費、これらのものも見込んでいるわけでございます。しかし何分にも養蚕の人たちは数の多いことでございますので、それらの人たちを指導して参りますために、指導員並びにわれわれが、指導の中心として、現在考えております養蚕の指導所、これの事業面の経費をふやしまして、極力技術指導によりまして増産をはかつて参りたい。これがすべてコストの低下に役立つ事項ではないかと考えておる次第でございます。また一方、製糸の加工賃の低下の面にも、側面的に影響があるかとは思いますが、製糸機械の能率化と申しますか、その方面の研究費につきまして、できる限り多額の経費を要求しようかと思つております。現在はこの研究費につきましては約八百万円ばかりとつておりますが、来年はさらにこの金額を倍額ぐらいにふやしまして、一方また工業化の試験の経費も多額の要求をしておる次第でございます、目下この面につきましては、大蔵省と折衝を始めておるのでございまして、近くどの程度のものがこの方面に予算としてまわるかというような面も見当がつこうかと思つております。
  24. 八木一郎

    八木委員 重要な問題は大臣に尋ねることにして、最後に点だけはつきりしておきたいと思います。  目的は、第一條の明文のごとく、繭及び生糸価格を安定するのだ。生産者として一番心配なのは、高い方はむしろ高いほどけつこうだが、低い方は非常に心配になる。そこで最低線をどこに引くかという方針を明確にしておきたいので、今小淵委員関連質問にも重ねてお尋ねいたしましたが、明瞭になりました。そこで手段として、なぜ繭の買入れということをやらないか。第二條において糸でやるごとにしたが、繭で買い入れるということを直接やつたらいいじやないかという疑問を持つのは当然であります。この点は実は自由党としても、相当党内で問題とし、研究をいたした結果、現段階においては、繭を直接買い入れることによつて生ずる費用、これに要する財政支出の金額、またその特異性——品質がいたむとかその他のいろいろな事情を勘案して見て、手段として糸を選ぶことでも目的は達成し得られるものだとの結論に到達いたしまして、これに賛意を表しておるわけでありますが、局長は、専門的な立場にお立ちになつて、第一條に示した目的が、第二條以下にある手段において十分に達せられるかいなかということを明確にいたしておきたい。もし達せられない事態が万一起きたとき、これは第十條かに規定しておることによつて何とかしよう、こういうことであろうと思いますが、二の親心というか、指導精神、指導の方針をも含めて明答を期待いたしがます。これで終ります。
  25. 青柳確郎

    青柳政府委員 なぜ生糸の売渡し、買入れの方法だけで、繭の価格の安定をもできるかという面、しかも、この繭糸価格の安定の方法といたしまして、第二條で生糸の売渡し、買入れの規定だけ設けておるのでありますが、その面について私の考え方を述べてみたいと思います。  政府は繭及び生糸価格の異常な変動を防止するために、申込みに応じまして、最高価格で保有する生糸を売り渡し、予算の範囲内で最低価格生糸を買い入れることにいたしております。すなわち、生糸の売買操作によつて繭及び生糸価格の安定をはかつて参るのであります。戦前におきましても、繭糸価格の安定につきましては、数回にわたり、長い間業界で多大の努力が払わかて参りましたことは、御承知通りでありますが、帝国蚕糸株式会社あるいは帝蚕倉庫株式会社などによりまする生糸の買入れ並びに共同保管、あるいは銀行の生糸担保融資に対する政府の補償、養蚕業者の行う乾繭保管、または委託製糸に対する低利資金の融通等、いろいろの方法が相次いで行われて来たのでありますが、最後に結実いたしましたものが、生糸の売買による繭糸が価格の安定を企図した昭和十二年の糸価安定施設法であつたのでございます。数年来われわれが繭及び生糸価格の安定につきまして、業界の人たちとも数回にわたつて協議いたしまして、いろいろ考えて参つたのでございますが、少額の経費でその目的を達するためには、結局、生糸の売買による方法現状においては最善であるという結論に達したのでございます。われわれといたしましては、こういうような考えからいたしまして、やはり生糸でやるのが一番経済的ではないか。もし繭を買い入れるというようなことになる場合の欠点を考えて参りますと、とにかく買い入れるような事態が発生いたします場合を想定いたしてみますると、繭の出まわり時期に価格は下つたという場合が考えられるのでございます。従いましてその繭の値段を維持いたしますために、繭を買い入れることになりますると、相当数量の繭を買い入れなければ、価格の維持が困難になる。従つて相当の金がいるのではないか。生糸の場合よりも相当の金を用意しなければいかぬという問題が一つ。もしそういうような多額の金があるものならば、この際むしろ生糸をさらによけいに買い上げる方がなお価格が安定して来はせぬか、こう考えられるのでございます。  いま一つの問題は、もし繭を買い入れるということになりますると、この保管、管理の経費が相当かかるわけでございます。たとえば保管料などを見ましても、生糸一俵に相当する繭を保管します場合の保管経費を見ますると、相当金額がかさんで参ります。現在の事態で約三倍にもなるというような形になるわけでございます。またもう一面考えますると、保管中における品質の低下、これを繭の場合と生糸の場合を想定いたしますると、繭の場合は品質低下が非常に早いのでございます。生糸のごときは、過去の例から申しますると、とにかく七年も保管いたしましてなお品質の低下は少い。御承知のように、繭ならば、とにかく一年も保管いたしますると、相当の品質の低下を来すわけでございます。しかし  て品質の低下を防ごうというためには、結局はこれを委託加工でもして生糸にして保管しなければならぬという面があるわけであります。そういう面からいたしまして、われわれといたしましては、繭を買うという措置はとらないで、生糸の売買によつてやりたいと考えておる次第でございます。もし生糸の売買によりまして。繭価の最低値段をさらに買いたたかれるというような事態が発生いたしました場合には、この第十條の規定によりまして、政府といたしましては、何らかの処置を講じて参りたい、こういうようなぐあいに考えておるのでございます。それで第十條で何らかの処置を講ずるということになつておるのでございまするが、この面につきましては、やはりその下ります事態によりましてその下り方の原因いかんによつては、浅い場合もありますし、深い場合もあります。従つてその事情に対処して行きますために、いろいろの方法があるのではないかと考えられるのであります。過去におきましてとられておる例を考えてみますると、乾繭保管に対する融資であるとか、あるいはまた委託製糸に対する低利資金の融資というようなものがとられておるように思うのでありまして、われわれといたしましては、そのとき事態々々に即応して適当なる措置考えて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  26. 千賀康治

  27. 小林運美

    小林(運)委員 私は今回の繭糸価格安定法案に対しまして、以下蚕糸局長に技術的な問題を主として質問をいたしたいと思います。なおこの繭糸価格安定に対する政府の方針につきましては、後ほど大臣が御出席になるそうでありますから、大臣にとくと御質問を申し上げたいと思いまして、この部分は留保いたします。なお蚕糸局長その他関係の各省の方々にも御質問をいたしたいと思いまするが。本日は出席がありませんので、本日は蚕糸局長関係のみの、できる範囲におきましての質問を進めて参りたいと思まいす。  まず第一に、先ほどもお話があつたのでありますが。この繭糸価安定の法律を見ますると、養蚕家に対する保証というようなものが非常にあいまいでございます。先ほども、生糸最低価格をきめる際に、またこれを考えた場合に、繭の生産費というものをどの程度まで見るかというような質問がありましたが、これに対する答弁は非常にあいまいである。先ほど蚕糸局長はこの表を例にとつて言われましたが、この表にあります昭和二十五年度の蚕繭が生産費別農家戸数の分布表を見ますと、最低は四百円、最高は一千円、こういうのが出ております。しかしこの表を見ますと、大体七百円から千二百円ぐらいが大部分を占めておる。そうなりますと、この表をただちよつと見ましても、大体九百円ないし千百円ぐらいが中心の生産費と思われる。こういうような中心生産費というものが数学的にも考えられる。こういうはつきり出ておるものを、生産費を基調として生糸最低の値段をきめる場合、これを保証するかどうかということが重大問題である。ところがこれに対して蚕糸局長は何だかあいまいなことを言つておる。この繭糸価の安定施設というものは、日本生糸が売れるとか売れないとかいうような意味もありますけれども、一番重要な問題は、生産農家を基本にして、これらが安心して繭をつくれるかどうかというところに重点を置かなければならぬとわれわれは考えております。ところがその生産費も償えるのかどうかわからぬ、ただ相場のかげんでいいかげんに最低の値段をきめる、そんなものならこんな法律はいらない。かつてにほつたらかしておいてもいい。この法律があるということは、そういつた生産費をある程度保証してやるというところに意味がある。こういうことを蚕糸局長はぜんなふうに考えますか。もう一ぺんはつきり答えていただきたい。
  28. 青柳確郎

    青柳政府委員 先ほどからお話申し上げておりますように、合理化の進んでおるものについてはまるく保証されるような価格になるかもしれませんが、これから出ます生産費に対して、ある一定割合価格を出して参りたい、こう思つております。その程度のものは保証して参ろう、こういう考えであります。それならその額はどのくらいかと申しますれば、合理化の進んでおるところでありますれば、まるまる保証されるような形になるかとも思うのであります。
  29. 小林運美

    小林(運)委員 ある一定割合ということではどうもわからない。ここにが生産費の表が出ておるが、先ほどの説明のように、たとえば七百円から千二百円というものは大部分なんです。こういうものがはつきりしておるのに、どこからどこまでが生産費保証すべき線かということをはつきり言わなければ、ある一定のというようなことではちつともわからない。養蚕家にそんなことを言つたつてわからない。こういう点をはつきりしてもらいたいのです。
  30. 千賀康治

    千賀委員長 今の点は答弁がないそうであります。
  31. 小林運美

    小林(運)委員 答弁がなければ私は答要していただくようにいろいろ申し上げたいのですが、しかしきようは資料がなければこの次でもけつこうですから、よくその点をお調べになつて、はつきりした御答弁をいただくことを留保して次に進みたいと思います。  次にこの法案の第二條の問題でございますが、「政府は、前條の目的を達成するため、申込に応じて、最高価格でその保有する生糸を売り渡し、又は予算の範囲内において最低価格生糸を買い入れる。こういうふうに書いてあります。今回の、補正予算には糸価安定のための経費として三十億円が計上されております。これも非常にあいまいなんでございますが、今度の法案繭糸価格安定法案で、予算に出ておるのは糸価安定、こうなつて参りますとどうもあいまいなのです。予算の方では生糸が安定さえすればよいということになる、この法案では繭も生糸も安定させるということになる、これは一体どういう関係にあるのか、あの三十億というものは生糸だけの安定を目途としておるかどうか、この点をまず第一に伺いたいのであります。
  32. 青柳確郎

    青柳政府委員 先ほどもお話いたしましたように、繭の価格及び生糸価格を安定するために、その一つ手段として生糸価格を安定するのが一番効果的ではないか、こう考えておるわけであります。この法律は恒久法でありますだけに、現在の段階にありましては、われわれとしては生糸の売買操作によつて繭の価格も安定できるものと確信しておるわけであります。しかし恒久法の建前からいたしまして、もし万一将来この生糸を買い上げることだけによつて、なおかつ繭の異常な暴落を防ぐことができない場合には、われわれといたしましては第十條の規定により適宜な措置を講じて参りたいと考えておる次第であります。
  33. 小林運美

    小林(運)委員 蚕糸局長、私が質問したことだけに答えていただきたい。私の質問は、繭糸価格安定法案の第二條は生糸のことを規定している。しかしこの法律の題目は繭糸価格安定法案で、繭も生糸も安定すると書いてある。ところが予算の方では糸価安定のために三十億を計上してある。この三十億の経費は糸価だけに使うのかどうかへ繭は関係ないのかどうか、このことだけ簡単でけつこうですから御答弁願います。
  34. 青柳確郎

    青柳政府委員 先ほどもお話申し上げたように、われわれといたしましては、生糸の売買だけをやつてある程度繭価が安定するものという形でこの法案ができているわけであります。もし万一できなかつた場合にどうするかというときには、第十條の規定に基いてやつて行こう、さしあたり現在のところでは生糸の売買操作によつて十分繭価をも安定できるという考え方であるわけでございます。その関係からそういうように規定しているわけであります。
  35. 小林運美

    小林(運)委員 私が先ほど言つたように、蚕糸局長は私の質問にだけ答えていただけばいい。この法律では繭糸価となつてつて生糸も繭も安定する、法律案第十條には特別の場合には繭云々と書いてある。ところが予算に出ている糸価安定のために使う経費というのは生糸の売買しかやらないのか、ほかのことはどんな場合が起きても使わないかどうか。それだけなのです。ということは裏を返せば、私は局長の答弁を誘導するのではないけれども、そういう事態が起つた場合に、政府はこの三十億円は生糸の売買以外には全然使わないかどうか、第十條に繭云々と書いてあるが、この三十億に繭の方には全然使わないかどうか、このことをはつきり答えていただけばいいです。
  36. 青柳確郎

    青柳政府委員 繭糸価格安定法とともに後ほど糸価安定特別会計法案が出ると思いますが、この規定から申しますと、この基金の使用される範囲は生糸の買入れ売渡しだけに限るというように書いてあるのでございます。従いましてそういう面の改正でもない限り、やはり生糸の買入れ売渡しだけで行くことになるだろうと思うのであります。
  37. 小林運美

    小林(運)委員 私はそれだけが聞きたかつた。ほかのことは必要ないことなのです。今局長の答弁によると、今度の予算にあります三十億は生糸の売買だけに使つて、その他のことには全然使わない。しかも三十億円の問題については別途特別会計法律をつくつて国会に提案するということなのです。これだけわかればけつこうなのですが、これに対するわれわれの考えは別問題として、第二條にあります生糸の買入れ売渡しについて政府は現在三十億を予定している。そういたしますと生糸の買入れに要する金は総額三十億なので、その場合に政府は買入れの価格を平均どのくらいに見ておるか、必ず計算されておると思う。最低生糸の買入れ価格はどのくらいで計算されたか、それをお答え願います。
  38. 青柳確郎

    青柳政府委員 これは今年度の予算の際に、すでに衆議院の方は可決になつたことと思いまするが、その際に計上されておりまする金額は、十四万五千円で二万俵を買い上げるという予算内容になつておるのでございます。これは一応予算の面としてはそういう形になつておりまするが、この法律の運用については、額が高くなれば高くなつただけ数量は減るというようにお考えになつていただきたいと思います。この法律の実施と予算の面の金額とは、一応別であるというぐあいにお考えを願いたいと思います。
  39. 小林運美

    小林(運)委員 そうしますと、予算の面では一応十四万五千円を二万俵買入れるということが予定されておる。しかし今局長のお話ですと、こんなものはただ予算をつけるだけの関係で、いい加減なものだ、実情に応じてどういうふうにでもなる、これは重大問題である。なぜかというと、たとえば生糸国際情勢やいろいろな関係から、それが倍の二十九万円になつた、一万俵だということになると、はたして糸価安定が期し得られるかどうか。あなたが今言つたように、予算は予算だ、実際は違うのだということになれば、そういうことも予想される。そういう場合に、一体一万俵で糸価安定ができるかどうか。それを逆に言えば、十四万五千円というものは一体どこから出て来た値段か、その根拠はどこにあるかということをもう少し明瞭にお答えを願いたい。
  40. 青柳確郎

    青柳政府委員 これは予算のときの説明で、おそらく大蔵当局からお聞きになつたことと思うのでございますが、予算編成当時における時価から、おそらくあるいは二割下げくらいの金額で計算されておるように思います。がそうして二万俵出ておるように思われます。
  41. 小林運美

    小林(運)委員 そこでわかり切つたことを言うようですが、どういう考え方から十四万五千円を最低の値段としたかということの基礎をはつきり言つていただきたい。一応予算に計上する以上は何かあなたの方で計算があるはずである。たとえば現在の世界の蚕糸業の情勢や、その他各繊維類の関係から考えて、あるいは先ほど問題になりました繭の生産費の問題、生糸生産費が五万幾らということは、すでに農林省で発表しておる、そういうようなことから、一体十四万五千円というものはどこから出て来たか、はつきりお答え願いたい。
  42. 青柳確郎

    青柳政府委員 それはその当時における時価から見て、約二割下げくらいのところで大蔵省が立てたわけであります。これは先ほども申し上げましたようなことでございまして、詳しく価格構成まで考えての金額ではございません。
  43. 小林運美

    小林(運)委員 今局長はその当時の値段云々といつておる、それはいつお立てになつたか知らぬけれども、現在は二十万、その二割下げは十六万円、ところがあなたは十四万五千円と言う。最近こういう問題が起きてから、大蔵省があなた方と折衝される場合に、十八万円なんという生糸の値段は一ぺんもなかつた。どうしてこういうふうに低くしたか。二割ということはちつとも意味をなさない。
  44. 青柳確郎

    青柳政府委員 当初折衝して参りました時分は二十万円の相場でありました。それからその後暴落いたしまして、たしか十七万くらいになつたことがございます。その時分の価格を大蔵省としてはとつて、そういうようなことにしたのだろうと思います。これは大蔵省の付度でございますが、われわれが当初大蔵省と交渉いたしましたときは、二十万円台の相場を基準にいたしまして、それから大ざつぱに見積つて二割下げぐらいのところを——たしかあのときは十六万円だつたと思つておりますが、農林省としてはそういう予算案を提出したわけでございます。
  45. 小林運美

    小林(運)委員 そうするとあるいは十七万五千円になつた場合もありますが、その期間がはつきりしないのでその辺はわかりませんが、一応そういうふうになる。ところがあなた方の方では二十万円の二割下げの十六万円、ところが大蔵省ではこれを十四万五千円にしてしまつた。これも予算のことでありますので、これ以上私は追究しませんが、しからばこの場合二万俵買つたならば、生糸の値段がはたして安定できるかどうか、こういうことなのです。あるいは場合によればこの値段がもつと上つて、二十何万円になる場合がある。そうすると俵数は減つて来る。二万俵からあるいは一万俵になるかもしれない。一体そんな場合に、この程度でもつて生糸糸価の安定ができるかどうか、その確信をひとつ伺いたい。
  46. 青柳確郎

    青柳政府委員 幾ら買えば下値が抑えられかるとい見当なかなか困難でございます。それでわれわれとしましてこれを検討いたしまする際に、過去の例をしんしやくして考える以外に手はないのでございます。お手元にも参考資料が配つてございますが、第三編の価格調節に関する立法例というのがございますが、その十三ページを、ごらん願いたいと思います。一応算定いたしまする際に、われわれとして考えましたことは、過去において糸価の安定をやりまして、一応成功した点を考えまして、最もたくさん買入れましたものは、ここで見ますると、生糸の年生産額の約二箇月分を買上げております。ところが一番多額に買上げましたものから、便宜三回分をとりますと、一番最低のものは〇・三箇月ですでに価格の安定をみたという形になつております。それでこの三回を平均いたしますと、大体年生産数量の一・七箇月分という見当になろうかと思います。しかしこの当時におきまする生糸の需給を考えますと、むしろ供給力は勝つておる。人絹の影響の面から需要力はむしろ減退しておるというような事態であつたのでございます。それでなおかつこの程度くらいでもつて安定をみたという面から見ますると、今日はその当時と比較してみると、生糸の需給の面は非常に窮迫して参つておるのでございます。御承知のように、現在横浜、神戸の滞貨は四千俵というようなことで、月平均の出荷さえもまかない切れぬというような窮迫状態に現在あるわけであります。しかもこういうような需給関係がかなり続くのではないかというような見解から見ましても、われわれといたしましては、もちろん買入れの単価がどのくらいになるかはわかりませんが、三十億程度のものがありますれば、一応は下値抑えも可能ではないか、こう考えておる次第でございます。
  47. 小林運美

    小林(運)委員 過去の例と現在の例は大分違います。状況も違います。その当時の生糸消費状況、世界的な状況等ずいぶん違いますので、これ以上私がこの問題について追究いたしますと、議論になりますので、この程度にいたしますが、現在は四千俵の滞荷しかない。これは生糸を買い入れるという状態にはありません。しかし国際情勢その他どんな事態が起るかわからぬ。そこで万一この三十億円で二万俵買えるか、一万五千俵買えるか、あるいは二万五千俵買えるかわからぬが、これを全部使つて、まだ糸価が安定できなかつた場合には、どういうふうにされますか。
  48. 青柳確郎

    青柳政府委員 われわれといたしましては、この基金で糸価最低値段の堅持はできると考えておりまするが、これだけの予算を全部使つても、なおかつ糸価の維持ができないというようなことになりました場合には、今からそれに対してどうするかということは申し上げかねますが、その事態になりましたら、これは考えて行かなければならぬ問題だ、こう考えております。
  49. 小林運美

    小林(運)委員 これ以上追究することはやめますが、今度はその反対の場合、政府が二方俵なり一万五千俵なりを、この三十億円の金を使つて買入れて、生糸上つて来た場合、政府生糸の売渡しを始める。その売渡しの條件その他についは、あとでいろいろ御質問いたしたいと思いますが、その際に生糸をありつたけ売つても、生糸の値段が上つて行つた場合には、どうされますか。
  50. 青柳確郎

    青柳政府委員 一応特別会計が糸を持つておりまして、価格暴騰して参りました際に、その糸を全部売り尽してしまつて、なおかつ価格が上るという事態になりますれば、おそらくこれは価格改定の時期ではないか、こう考える次第でございます。
  51. 小林運美

    小林(運)委員 価格改定ということもここにございますが、価格改定をしてもさらに上り得ることも考えられる。これはすでに自由党でもずいぶん御研究になつたと思う。われわれはその経過も知つている。その場合に、生糸最高価格をきめて——ここにある最高価格ではなくて、これ以上上つてはいけないという禁止価格というようなものを考えておりませんかどうか。
  52. 青柳確郎

    青柳政府委員 これは八木委員からの御質問に対して先ほどもお答えしておりますように、この法案の骨子といたしましては、とにかく生糸の売買操作によつて最高最低の値段を押えつけて行こうという考え方でございます。今のような事態でありまするならば、これは価格改定をやつて、行くという方法をとろうかと思つております。それで八木先生のときに私は御説明申し上げましたように、一応最低値段を抑えつけますれば、最高値段もある程度防げる、こう思うのでございます。それでもなお一種の禁止価格というようなものを設けないかという御質問でございますが、現在は物価統制令もございまして、われわれがはその面で措置をやつておるのでございますが、それが廃止になるというようなこと、またその後においてそういうことをやつていいか悪いかというような面につきましては、今後の研究課題に移して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  53. 小林運美

    小林(運)委員 そういたしますと、われわれがすでにそういつたことを予想し、蚕糸局でもこういう問題はずいぶん研究されておるようでございますが、こういつたことを予想されていながら、しかも、これは繭糸価安定の法律だ、最高最低でもつてこうするのだ、価格操作でやるんだと言いながら、すぐ先にわかつておるようなことを、まだこれから考えるというのでは、どうもほんとうの繭糸価安定じやない。お茶を濁した程度である。今のようなあいまいなことではわれわれは納得しかねます。これも私はこれ以上ついてもしかたないので、この問題は次の機会に譲りたいと思いますが、もう少し誠意をもつてお答えを願いたいということを申し上げておきます。  次に、生糸生産費、繭の生産費については先ほど触れましたけれども、生糸生産費はすでに今日政府は発表しておりますが、今後この法律を施行するにあたりまして、生糸生産費ということが非常に大きな問題になつて来た。今までの生糸生産費は、ほんの参考程度であつたけれども、今度の生糸生産費というものは、直接大きな影響を持つて参りますので、この生糸生産費はどういう考えを持つておきめになりますか。また生産費全体といたしまして、繭の生産費も大きな問題でございます。すでに米価の算定にあたりましてはパリテイ方式をもつて今までやつております。この場合、私は生糸の値段をパリティでどうこうと言うのじやないけれども、生産費を一体どういう形で見て行くか、今までと同じような方法生産費を見るかどうか、繭と生糸の両方面にわたりまして、生産費のきめ方につきましての構想をはつきりお示しを願いたいと思います。
  54. 青柳確郎

    青柳政府委員 繭及び生糸生産費につきましては、小林委員のおつしやいますように、非常に重要な問題でございますので、十三條に規定を置いてありますが、その規定に基きまして調査をして参りたいと思つております。
  55. 小林運美

    小林(運)委員 十三條にありますいろいろのことを参酌してお考えになるということでございますが、これもなかなかあいまいなんです。私は、もう少しはつきり御答弁を願いたいと思う。たとえば、先ほどここに示されました生産費の表があります。この生産費は、やつた方法もここに書いてありませんが、今までのこういうやり方を続けて行くのかどうか、こういうことなんです。
  56. 青柳確郎

    青柳政府委員 繭の生産費につきましては、実は現在統計調査部の方で調べているのでございますが、米などの生産費は、現在便宜パリテイを利用して生産費というものをとつております。それでわれわれの方では、生産費をほんとうに調べるか、あるいはまたパリテイの形において米のように生産費を見まするか、実はこれは目下研究を進めているような次第であります。一番事態に即応して、真に養蚕家の繭の生産費コストを現わすような形で進んで参りたいと思つております。
  57. 小林運美

    小林(運)委員 私の質問に対して率直にお答えを願いたいのですが、どうもピントがはずれております。なお生産費の問題につきましては、統計調査部の方でやつておられるというので、あらためて明日でも統計調査部の方から来て見解を承りたいと思いますから、この問題はあとに譲ります。統計調査部は、今度の問題で首を切つてしまつてこれだけの調査ができるかどうか、これも疑問でありますが、これはあしたに譲ります。  そこで問題は、この生糸の値段をきめる場合に、生産費原料繭との割合を、政府は一体どのぐらいに見ておられるか。これはパーセントでわかる。先ほど言つた生産費がどうだこうだということでなくて、現在までの生糸生産費生糸の値段、それから考えれば原料費というものは一体どのくらいに見ているかということを、パーセントでけつこうですからお考えを承りたい。
  58. 青柳確郎

    青柳政府委員 生糸価格の中に占める繭代の調査でございますが、これは大正十年から昭和二十四年までの平均を考えますと、その当時取引されました繭の価格生糸価格に対しまして何%を占めておるかと申しますと、七三・四%になつております。それから団体なりあるいは政府なりが生糸の加工賃を調べておりますが、その加工賃をその当時の生糸価格から引きますと、これまた七三・二%ばかりになつております。
  59. 小林運美

    小林(運)委員 そういたしますと、これは過去の大正何年からの例でございますが、これは過去の生糸価格と繭の生産費原料というようなお話で、これもはつきりしないのですが、こういうふうに解釈していいかどうか。たとえば生産費はどんなにかかつて生糸は安く売れてしまつたというようなこともあり、生産費は少かつたけれども生糸は非常に高く売れて、養蚕家がもうかつたというようなこともある。これは上り下りはあるけれども、長い年月の間における生糸生産費に対する原料の歩合というものは七三%前後だということは、これははつきりしていいかどうか。そういうふうに蚕糸当局は見ておられるかどうか、ひとつ御見解をはつきり承りたい。
  60. 青柳確郎

    青柳政府委員 七三・二%になつておりますが、これの最高最低を申しますとかなりの開きがあるのであります。繭の七三・四%は平均でございますが、その最高は八一くらいのときががあります。最低が五七というようなことになつております。生糸価格から加工費を引きましたそれから見ての割合を申しますと、平均が七三・二%でございますが、最高の場合には七七・八、最低の場合には六八・二でございます。いずれにいたしましてもこれは過去の例でございまするので、現在の事情を十分調査いたしましてその上でお答えいたしたい、かように思つております。
  61. 小林運美

    小林(運)委員 現在資料がないということでございますれば次の機会でけつこうですが、大体過去の長い例をとつて、現在の状態において、繭の原料費と生糸生産費割合は大体これくらいだという数字をひとつこの次にお示しを願いたいのであります。  次に第三條の二の問題でございます。「標準生糸以外の生糸についての前條の最高価格及び最低価格は、標準生糸最高価格又は最低価格にそれぞれ政令で定めるところにより算出される額を加減して得た額とする。」とありますが、これは一体どういうことを意味しておるかということを一応お聞きして、先に進みたいと思います。
  62. 青柳確郎

    青柳政府委員 最高価格最低価格は一応標準の生糸についてきめるわけでございます。それで標準の生糸は白二十一中のA格についてきめようかと思つております。それで白二十一中のA格以外の生糸はそれなら最高価格最低価格をどうするか、こう申しますと、それはその買入れ、売り渡しをやりますときの時価、いわゆる格差標準生糸最高最低価額に加減いたしましてきめて参りたい、こう考えております。
  63. 小林運美

    小林(運)委員 そういたしますと、現在の十四と二十一中と格差もいろいろありますが、たとえば過去においてがスペシヤル・スリー・Aというような、今あまり必要がないような生糸をある業者がたくさんつくつた場合でありますが、それを統制会社が買つた。ところがその買い入れた生糸がいよいよ売るときになつたら、買つたときよりずつと安くなつてしまつた、こういうような過去の実例があります。これはこういう場合と同じ問題だと私は思います。従つて政府標準生糸に対する格差をきめて、大体この辺まではこう、また上の方はこの辺だ、下の方はE格とかB格、十四はこの場合こうだ、二十一はこうだというような大体の目標があるはずだと思います。一体その目標はどんな程度考えておられるか。いらぬような生糸を、これは政府が買うのだといつて、うんと高い生糸をどんどんつくつて政府が買い上げる。あるいはうんと格の低い生糸をどんどんつくつて、将来輸出ができるかどうかわからぬようなものを、——これは上下ともありますが、そういつた大体の目安をつけておるかどうか、できればその格の差たとえばツーAだとか、あるいは下はE格だとかいうような範囲がわかつておりましたらお示しを願いたい。
  64. 青柳確郎

    青柳政府委員 それは第七條に書いてありまするが、政府の買い入れまする生糸の種類、繊度及び品位についての規定でございます。種類というのは御承知のように、白だとか、黄だとかいう意味であり、品位といいますのは、A格、B格というようなことになるわけであります。これは蚕糸業法の十六條の第一項の規定に基きました検査、つまり輸出生糸の検査を受けた糸につきまして考えで参りたい、こう思つております。それでこの範囲は省令できめることにいたしておりまするが、今小林委員のおつしやいますように、すべての特殊生糸までも買う必要はないのではないか。十四中、二十一中を通じまして、大体十ぐらいの程度の範囲において買つて参りたい。これがつまり現在横浜、神戸の取引市場におきまする普通の取引の生糸だと思います。この程度のものを入れますと、横浜、神戸に出荷いたしまする生糸の約八五%ぐらいのものが対象として買い入れられることになる、こう思つております。
  65. 小林運美

    小林(運)委員 そうすると現在の八・五%が横神両港で取引されている生糸というものはわかつている。あるいはスリーAから、下は、A格だとか、B格とか、そういうような範囲が大体六條できまる。その範囲というものは、二十一の場合は何格から何格まで、あるいは十四の場合は何格から何格までということの大体の見当がありましたら、この際お示しを願いたいのであります。
  66. 青柳確郎

    青柳政府委員 大体の腹案でございますが、二十一中はスリーAからC格まで、十四中はスリーAからB格ぐらいまでの程度を現在考えております。これは腹案でございまするが、大体その程度考えております。
  67. 小林運美

    小林(運)委員 そういたしますると、この問題はそのときどきによつてまた生糸需要状況その他によりそれらが勘案されてきまると思いますが、これもなかなか実際の問題になりますと非常に重要な問題になつて来ると思いますので、これは十分考えてやつてもらいたい。というのは、先ほど私が申し上げましたように、過去におきまして、戦争が済んで海外の市場がわからない。そこで最近の生糸消費状況は、くつ下の方面は非常に少くなつて来ている。織物や特別な編物になつて、くつ下にはあまり使われない。そういう際に今までの戦前を中心としたスペシヤル・スリー・Aや、それ以上の、今まで言われていた高級生糸、特殊の生糸を、その当時政府は無暴にも統制会社をして買わしめた。ところがあとでだんだん事情がわかつて来ると、そういうものは市場価値がない、もう売れないというようなものを政府が買上げ、そうして実際に売つた場合にはうんと安いものになつてしまつて、特別の人だけが非常な利益を得た。これは下の場合もそうでございます。こういうような問題が実際問題として過去にはあつたのでありますから、この価格をきめるときには、そういう場合を勘案してなるべく範囲を小さくして、そういうような危険のないようにきめていただきたいということを、この際特にお願いをいたしておく次第であります。  次に先ほど触れました問題に関連しますけれども、現在政府考えております三十億円の範囲で生糸の売買を行う。それで大体安定は期し得られるというような政府の非常に自信のあるお話でございますが、私はこの問題は非常に自信がない。とても三十億円くらいでは安定ができないというような場合をかなり想定いたしております。しかも過去の蚕糸業界価格変動というものは、あらゆる他の産業に比較しまして、一番大きな問題であつた。今回繭糸価格安定の法律をつくるのもそこに原因している。それは何かというと、生糸は投機の対象になりやすく、吉村将軍というようなものが出て来て、生糸を買うというようなことから、われわれ蚕糸業界は非常に迷惑をしておつた。そこで今度こういうような法律をつくつた。ところが先ほど私が申し上げましたように、三十億円くらいではとうてい応じられないという程度の投機業者が出て来るかもしれない。そこで買占めの問題ですが、ここにありますように、一体買占めということを断定するには、政府はどの程度をもつて買占めとするか、あるいは日本の機屋なり、アメリカの機屋なりが、生糸が高くなると思つたら相当買うかもしれない。あるいはこれはいかぬと思つたら、相場で売つて来るかもしれない。この相場で売る、売らぬということを、ここで論議はいたしませんが、現物を買い占めるということについて一体どのくらいの範囲をもつて買占めということの断定をするか、その根本的な考え方をお示し願いたい。
  68. 青柳確郎

    青柳政府委員 売買にあたりまして、これがいわゆる思惑による買占めかどうかというような判定の点は、なかなか困難でございますが、しかし第一義的に考えられますことは、中間商人に渡すのか、あるいはまた実需向きに渡すのかという面が第一段のやり方ではないかと考える次第でございます。従つてわれわれといたしましては、極力こういうような事態に対して、いわゆる買占めによる一つの利益を、ある一部の業者のみが壟断するというような形にしないような方法を極力考えまして、やつて参りたいと考えている次第でございます。
  69. 小林運美

    小林(運)委員 その程度では買占めに対する解釈の限界が不明瞭だ、もう少しこれははつきりしたお答えを願いたい。そこでこれはもう少し当局が研究されて、明日でもいいから、はつきり買占めの、定義というものをきめていただきたい。きようは私はこれを留保しておきますが、第九條の、「政府は、生糸輸出を確保するため特に必要があるときは、第二條の規定により生糸を売り渡すに当つて、その生糸輸出すべきことその他必要な條件を附することができる。」この生糸輸出すべきこと、その他の必要な條件というのは一体どういう條件なのか。
  70. 青柳確郎

    青柳政府委員 輸出確保の場合におきまして、政府が持つておりまする糸を売りまする場合に、今小林委員が言われた買占めの場合と同じく、非常にその前提が困難でございます。従いましてわれわれといたしましては、輸出契約のある者に対して売る、しかもその條件は、輸出しなければならぬ、また輸出をしました場合におきましては、その証明書を出させる、あるいはまた、もし輸出をしませんで国内に対して転売をするというような事態になりました場合におきましては、あるいは違約金をとる、そういうようなことを現在のところ考えておる次第であります。
  71. 小林運美

    小林(運)委員 政府自体が違約金をとるとかいうことをするのですか。輸出商が、輸出目的をもつてやつたところがそれを履行しなかつた場合には一体だれがどういう制裁を加えるのか。
  72. 青柳確郎

    青柳政府委員 それは政府と買入先の、もし輸出商でありまするならば、輸出商との間の売買契約の條項の中にそういうようなことを入れましてやつて参りたい、こう考えておる次第であります。
  73. 小林運美

    小林(運)委員 この問題も実にあいまいなのです。もしそのことが研究ができておらなかつたら、あしたでもけつこうですから、この問題もはつきり解釈をきめていただきたい。  次に第十一條に「政府は、その保有する生糸を貯蔵し、加工し、整理のために売り渡し、又は新規の用途」云々と書いてありますが、一体加工というのはどういうことをするのか。政府自体が生糸を織物にするのか、あるいは編みものにするのか、こういうようなことは実際政府の機関としてやり得るかどうか、これはどういうことなのですか。
  74. 青柳確郎

    青柳政府委員 繭の糸価安定施設の特別会計でもこういうようなことをやつておつたわけなのですが、もし生糸需要増進する意味合いで新製品を加工するというようなことの必要な場合におきましては、この適用によつて政府が加工して参つたらどうか、しかし政府自体が織るという形でなしに、委託して織らせるというようなこともやつてみたらどうかと思つておるのでございまして、現在そういうことがあるということでなく、あるかもしれませんものですから、こういう規定を設けたわけでございます。
  75. 小林運美

    小林(運)委員 まだその他いろいろの問題もありますが、本日の御答弁を聞きますと、ずいぶん準備がない。蚕糸業実情から考えまして、こういつた法案をお出しになるなら、もう少し準備を十分にしていただきまして御答弁を願いたい。従いまして明日は十分ひとつ御研究の上明確な御答弁を願いたいのであります。  次に先ほども触れまし十條の問題でございますが、政府はこの繭糸価安定法の法律を用意いたしまして、今国会以前にしばしば中間におきましてわれわれは農林委員会を開き、その際に、根本新大臣が就任早々にあたりまして、繭糸価の安定のために法案を用意しておるというような発言がありましたので、一体生糸を安定すれば繭が安定できるかどうかということを私は質問いたしましたところが、最初の日には根本農林大臣は不用意に、生糸の安定はすなわち繭の安定だという発言をしました。その日は私は質問の時間がなかつたので、次の日に質問をいたしましたところが、これはそうでなかつた。やはり今度の繭糸価安定の法案では、繭の価格の安定もやるのだということを農林大臣ははつきり言つておつた。今回の法律案を見ますと、まつたくこの看板は繭糸価安定法というりつぱな看板でありますが、内容に至りましては、十條に特別な場合には何か措置を講ずるという簡単なことしか書いてない。しかも予算の裏づけについては、先ほど私も質問いたしましたように、今回の補正予算には糸価の安定のみの三十億円ということなのです。この法律には偽りがあると私は言いたい。第十條は一体どういうことを意味しておるか、ひとつ局長の見解を承りたいのであります。
  76. 青柳確郎

    青柳政府委員 先ほどもお話いたしましたように、生糸価格の安定によつて繭の価格の安定はさしあたつてできるものと私どもは考えておるわけでがあります。しかし非常事態においてこういうような措置を必要とするような場合もあろうかと思いますので、実はこのような規定をもうけたのでございます。本條の根拠といたしましては、いざという場合には養蚕家を救済するための何らかの措置を講じたいという意味合いで本條の規定をしておるわけであります。
  77. 小林運美

    小林(運)委員 異常なる場合に低落を防止し、異常な場合に生糸の値段の高騰を防止するのがこの法案の骨子であるべきである。ふだんの場合ならばこういうものはいらない。この十條のしかるべき措置というのは、一体どんなことを政府はお考えになつておりますか。これを具体的にひとつお示しを願いたい。
  78. 青柳確郎

    青柳政府委員 先ほどもお話し申し上げたのですが、過去においてこういうような措置を講じました例といたしましては、養蚕家に対して乾繭保管に対する低利資金の融通並びに委託製糸に対する取引資金の融通というようなこともやつておつたのでございます。これらの事態を十分考えまして、そのときどきの事情の深さによりまして適当な措置を講じて参りたいというのでございます。
  79. 小林運美

    小林(運)委員 そうしますと今具体的に出ましたのは、異常の場合には乾繭に対して融資をする、委託の製糸の場合に金融をするということなんですが、これは一体どんなふうにやられるか。また一体この以外に方法はないのかどうか。この乾繭保管に対する融資、委託製糸に対する金融というようなこと以外には何も考えられないかどうか、まず第一にその問題だけをお伺いいたします。
  80. 青柳確郎

    青柳政府委員 私どもといたしましては、現在どういうようなことをやるというようなことはまだきまつておりません。それで過去の例にはこういう例があつたということでございます。それ以外に適当な方法でもありますればその上で考えて参りたい、こう思つております。
  81. 小林運美

    小林(運)委員 そうすると、先ほど言つたところの乾繭の融資もやつた、委託製糸に対して金融をどうこうということは過去のことであつて、この問題についてはそんなことは全然考えておらぬ、何も考えがないということなんですか。現在のところでは、繭の異常なる低落を繭価にしわ寄せされた場合に、政府は何の対策もないということなんですか。
  82. 青柳確郎

    青柳政府委員 そのときそれの事態に即応して適当な措置を講ずるのが、この法律の精神であります。
  83. 小林運美

    小林(運)委員 そういたしますと、どうも第十條では何も期待できない。そんなことで一体いいのですか。このほかの條文には、これはこうするのだ、予算はこうだということは書いてある。ところがこの十條に至つては、看板には繭糸価安定と書いてありながら、何もわけがわからない。こういうりつばな看板を掲げておいて、ここに至つてはただお茶を濁した程度であつて、具体的には何も考えておらないということなんですか。この問題は、局長がこれ以上答弁できなければ、私はまだほかに考えがありますのでこの程度にいたしますが、蚕糸当局としては、この問題については何も考えがないということをはつきり再確認を願いたい。
  84. 青柳確郎

    青柳政府委員 何もやらないというような気持でこの法案を出しておるわけではございせん。いろいろの方法はあろうかと思いまするが、そのときどきの事態に即応してまたおのずから方法も違うのじやないか、それをここにはつきり一方的なやり方を明示しておくのはかえつてよろしくないのじやないかと思います。
  85. 小林運美

    小林(運)委員 この問題につきましては、私もこれ以上蚕糸局長を追究いたしません。あらためて大臣等に伺うことにし、留保いたしておきます。  なお二、三の問題について御見解を承りたいと思います。この繭糸価格安定法を判定するにあたりまして、先ほど八木君からも蚕糸業見通しについて質問がありまして、政府は三十万俵くらいは売れて行くのだというような見解を表明されました。現在の情勢はあるいはそうかもしれないが、一体蚕糸局はどういう條件で、どこへどれだけ売れて行くのだというような見通しがありますか。たとえばこれから生糸は編みものにするのか、あるいは織物にするのか、織物なら羽二軍がいいか、ジヨーゼットが売れるのか、そういう具体的な見通し、それから売れる先は、一体アメリカなのか、英国なのか、フランスなのか、フランスには何俵、あるいは英国には何俵くらいか。ただ三十万俵と言つたつて、どこにどう出て行くのか見当がつかない。そういうことをこの際はつきり蚕糸当局は言明を願いたい。
  86. 青柳確郎

    青柳政府委員 大体五箇年計画で想定いたしておりますことは、三十万俵に対しまして、輸出といたしましては十五万俵、輸絹といたしましては四万俵、内需といたしましては七万八千俵でありまして、これが五年後における大体の目標でございます。従つて国内には十一万八千俵ばかり流れることになります。この程度消費ならば国内は十分にまかない切れますし、また海外への輸出の面でありますが、これは小林委員もすでにアメリカにおいでになりまして、アメリカ業者の意向は十分お聞取りだつたろうと思うのでございますが、とにかく価格の安定さえできるならば、月一万俵くらいはアメリカでも十分使えるのだということは、各売買業者の異口同音の言葉でございます。従いましてこの程度くらいのものは十分可能かと思つております。
  87. 小林運美

    小林(運)委員 今の十五万俵輸出の場合に、アメリカには一体どのくらい、ヨーロッパ、特に英国とか、フランス、イタリアにはどのくらいというような、国別に大体の目標があるはずだと思う。そういうようなことが生糸消費の将来を決する重大な問題で、生糸業者だけではなく、養蚕家が繭をつくるにしても、一体どこへどのくらい売れて行くということがわからなければ、繭をつくる張合いがないので、そういうような問題について、もう少しお示しを願いたい。
  88. 青柳確郎

    青柳政府委員 この十五万俵の内容を見ましても、現在の情勢から申しますれば、やはりヨーロッパとアメリカと大体半々くらいに行くのではないか、むしろアメリカの方がちよつと上まわるというような程度ではないかと思つておるのであります。
  89. 小林運美

    小林(運)委員 これも現在資料がなければ、あとで今後の輸出見通し、内地消費見通しというようなものを資料として御提出を願いたいと思います。  次に現在の状態は滞貨が四千俵しかない。これらについては原料が足らぬというようなことをしばしば政府で言つている。しからば蚕繭の増産対策があるはずだと思う。この蚕繭の増産対策の具体的なことをひとつこの際明らかにしていただきたい。
  90. 青柳確郎

    青柳政府委員 この問題は、八木委員の御質問に対してもお答えいたしましたが、現在政府といたしましては、五箇年計画を設定しているわけであります。それで今後五年後におきまして、繭の数量が現在二千四百万貫くらいまで行つておりますのを三千三百万貫くらいにしたいという目標を立てておるのでございまして、これを推進いたしますために、この繭糸価格安定法というようなものを設けまして、極力輸出をしやすいようにいたします。それから一面業者に呼びかけ、業者の了解を得まして、年々一億円くらいの宣伝費がすでに可決されておりまして、昨年、本年度にわたつて海外の宣伝に従事しているような次第であります。それでさらにこれを促進いたします意味合いで、来年度の予算に対しましては、繭の増産面につきまして、先ほども申し上げましたように桑苗に対する補助、稚蚕共同飼育に対する資金の融資、特に単作地帯に対する稚蚕共同飼育については補助までも計上しております。そういうような形で、大体八木委員の御質問に答えたようなことでありますから御承知を願います。
  91. 小林運美

    小林(運)委員 先ほどお話がありましたけれども、これはもう少し具体的に私はお聞きしたかつた。その一つの例として、繭の増産生糸の改良の根本は何かというと蚕品種である。この蚕品種に対して政府は今までほとんど何もやつていない。蚕品種の改良は蚕業試験場でつやておるということでありますが、蚕品種の改良に対して、政府は何も具体的な方策を持つていない。蚕品種の改良によつて蚕糸業が非常な発達をして来たから、それでも蚕品種の改良はたくさんだというようなお考えか。生糸の品質の問題とかあるいは生糸の歩合の問題とか、改良の問題とかたくさんありますが、そういうことをほつたらかして、試験場にまかしておけばよい、こんなものじやいかぬと思う。蚕糸当局は、蚕種の改良に対する具体的な方策を持つておるかどうか。この点について明確な御答弁を願いたい。
  92. 青柳確郎

    青柳政府委員 蚕種の製造業についての一番の問題は、設備と技術者だろうと思うのでございます。戦前におきまして、この蚕種製造業の設備に対しては補助というような制度さえもあつたわけであります。戦後におきまして財政の逼迫の折から、そういう方面の予算の計上が困難でございまするので、小林委員がおつしやいましたように、われわれとしては蚕種製造業者がお使いになる原蚕種の品種の改良については、国及び地方の試験場を通じて、極力優良な蚕種を育成するように主力を注いでおる次第でございます。しかもその設備の問題については、実は今年度も農林漁業資金融通法によりまして、長期の低利資金の貸付というような面について、いろいろと骨を折つておるのでございますが、今年は困難で、ございましたが、来年は極力こういう方面の資金の融資をはかつて参りたいと思つております。それから現在予算面で見ておりますることは、沖縄及び台湾の失陥に基きまして蚕種飼育分場というか、そういうようなものを実は現在種子島や屋久島あたりに設けまして、民間の蚕種業者の使用に充てたい、こう思つて経費も計上してございます。
  93. 小林運美

    小林(運)委員 蚕種製造業に対しては、国の試験場、県の試験場を通してやつて行く、具体的の問題としては、農林漁業金融資金で設備その他の問題について融資の道をやつて行きたい、しかし今年はだめだ、それから沖縄あるいは台湾を失つた、これも何とかしたい、こう言われますが、これらの問題をもう少し具体的に予算化して、しつかりしたものを考えていただきたい。蚕種は非常に重要な問題であるが、こういうところに力が入つていないことを私は特に指摘を申し上げたい。  次に養蚕指導員の問題については先ほど八木君の御質問がもありましたが、これも実に大きな問題である。八木君のごときは長年第一線に立つてやつたけれども、政府は自由党のこれだけ大きなバツクを持つておりながら、現在における予算的措置幾らだ。まつたくお話にならないような経費しかとつておらない。こういうようなことで、いかに糸価安定をしようが何をしようが、大体お蚕を飼う養蚕家があきれてしまう。第一線にある養蚕技術員に対して、もつともつと力を入れてやらなければならぬ。ただ力を入れますと口だけではいかぬ。やはり予算化して、これだけの金をやるから第一線の養蚕技術員はどんどん養蚕に励んでもらいたいということで、養蚕技術員の活躍によつてこそ蚕繭の増産は期し得られ、品質の改良はできる。こういうことは私が言わなくてもわかり切つたことだ。これに対する政府の施策は非常に貧弱である。しかも大蔵当局の無知蒙昧な連中に言い巻くられて、蚕糸当局が引下つがて来るというようなことでは、蚕糸業の将来のために私は重大な問題だと思う。これは今後徹底的にがんばつてつていただきたいということを希望いたしますとともに、これに対する考えがあるならば承りたい。
  94. 青柳確郎

    青柳政府委員 実は今まで蚕糸業関係の予算は非常に少かつたわけであります。しかしこれはやはり情勢がしからしめたものと私は考えておるのであります。御承知のように、終戦後における生糸の滞貨が最高に達しましたときは、一箇年分の生産数量に相当するくらいの生糸の滞貨があつたわけであります。ようようその滞貨の一掃を見ましたのが昨年の十月でありました。滞貨が一掃されたというような関係、とにかくそういう一種の苦境時代におきましては、試験研究が主だつたという関係から、一般の蚕糸業の予算は非常に押されておりましたが、そういう客観情勢から申しますと、われわれとしては増額が要求しきれなかつたのでございますが、今年は非常に好転して参つておりまするので、そういう面に対する予算は、先ほどもお話しましたように多方面に組んでおりますので、皆さんからの御援助によつて、ぜひ御通過方をお願いいたしたいと考えておる次第でございます。
  95. 小林運美

    小林(運)委員 これは蚕糸局長重大なことです。飛んでもないことです。生糸が滞貨しておつたから何もやらなかつた。生糸が売れ出したからこれからやる、こんなことでは政府の方針は一体どこにあるのです。売れなければ何もやらない、売れなければ養蚕技術員の責任だ、こういうふうにもとれる。いかに現在の状態がどうであろうとも、国の方針を立てて、養蚕の振興をやらなければいかぬという情勢にあれば、あるいは売れても売れなくても別の問題である。生糸の滞貨があつたから養蚕技術員に金を出してやらなかつた、そんなことは飛んでもないことである。これは局長ひとつ取消していただきたい。
  96. 青柳確郎

    青柳政府委員 小林委員の御質問蚕糸業全体の予算が少いじやないかという御質問だつたと思いますが、その前段に対するお答え、それから次に今お話になりました指導員の問題でございまするが、これは八木委員の御質問の際にお答えいたしましたが、昨年度は二千四百万円ばかりのものが、本年度は約七千万円近く補正予算で認められたのでございます。さらに来年度は一億六、七千万円くらいのものを要求しております。
  97. 小林運美

    小林(運)委員 私の言つたのは、そういうことでなくて、先ほど申し上げましたように、生糸が売れないから養蚕技術員の経費もとらなかつたということでは、だめだ。やはり生糸が売れる売れないということは、海外の情勢やいろいろあつて、それとは問題が違う。とにかく現在繭を増産しなければいけない。一番問題は養蚕技術員だ。そういう点についてもつと政府ははつきりした腹を持つて、技術員の身分を安定してやるという気持がなければ、絶対に蚕繭の増産なんかできない。しかも今お話のように、来年度は一億数千万円、しかもこれを要求する。こんな程度では蚕繭の増産はできない。もつともつと現在の養蚕技術員の全体に対して身分を安定して、これだけ持つてやるという気構えがなければならない。そんな弱腰では大蔵省の関門は絶対に通れないと思う。ひとつ出直して、この問題を考えていただきたいということを私は要望しておきます。  次に蚕繭処理の問題でございます。今までの蚕繭処理の問題につきましては、私はしばしばこの委員会においても意見を申し上げ、政府の善処を要望しておつたのでありますが、依然として現在の蚕繭処理の方策はまつたく無方針、やりほうだい。現在の蚕糸関係法律がありますが、一体あの法律は何のためにあるのかわけがわからない。私はまず第一に、今後の蚕繭処理を政府はどういうような形でやつて行かれるか、具体的な方策を承りたいのであります。
  98. 青柳確郎

    青柳政府委員 現在蚕繭処理の形態は、実は売買両当事者と十分お話合いをいたしまして、決定されております一つ方法といたしましては生繭の団体取引、養蚕農協の団体販売ということが一つ、それから養蚕農協の乾繭販売、いま一つは組合製糸という三つの基本方針心もとに、取引を指導しておる次第でございます。昨年は大体こういう処理形態に基きましてどの程度の取引が行われたかと申しますと、大体九〇%程度のものはこういう指導方針に基いた取引形態を形成しております。また本年度のぐあいはどうかと申しますと、生糸価格の乱高下の関係で繭値段が混乱しておつたということから、取引の混乱が相当予想されておりまするが、実際はやはりこういう形態をとつて取引されておるのが大部分じやないかと思うのであります。しかし今年度は相当その面で売買両当事者とも苦労しておいでになりまして、実は最近の新聞紙上でもごらんになります通り、養蚕及び製糸の面では、おのおの今後における蚕繭処理の形態につきまして、再検討を払つておるような状態でございます。いずれそれらの事態が判明いたしましたら、政府はそれに即応するような措置をとつて参りたいと考えておる次第であります。
  99. 小林運美

    小林(運)委員 この問題についても、現在の蚕繭処理の状況では非常に不満であつて、これから何かいい方法考えてやりたい、これはいいのです。しかしその方法も何も今具体的にない。しかも今までやりました蚕繭処理の問題につきまして、現在の法律を守がつていない点がたくさんある。この問題は一体どうする、政府は行政の責任を一体どうする。群馬県における生繭の取引の問題であるとか、昨年起つた団体取引の協約の違反の問題がたくさんある。こういつた問題を政府は一体どんなふうに処理をして来たか。これは一々具体的に例をあげて、その処置等について御答弁を願いたいのです。
  100. 青柳確郎

    青柳政府委員 群馬県の繭の取引についての法律違反というのは、どんな事例でございましようか。例の埼玉で起きたあのことでございましようか、群馬県の事例は私よく存じませんが……。
  101. 小林運美

    小林(運)委員 蚕糸局長蚕糸業の行政の主任であるはずなんです。すでにこういうような具体的な問題がたくさんあるものを、どれがどうだといつてわからないということでは、はなはだけしからぬ、もつと十分調べていただきたい。私から言うまでもない、自分のところでわかつておるはずだ。そういうことはわからない、質問によつて答えるというなら、私はいつでもどんな例でもお示ししますが、こういうようなことを私はここで洗い立ててどうこうというのじやない。そういういいかげんなことをしておるから、業界は非常に乱れておるのだ。それに対する具体的な例を引いて、この問題はこうだ、遺憾ながらこういうことがあつたけれども、今度はこうするというような建設的な意見を私は聞きたかつた。それに対して、おれはそんなことを知らぬというようなことでは、私は共産党のまねはしたくないけれども、実例を示して当局の絶対的な答弁を要求します。  この問題はこの程度にいたしますが、繭検定に対して現在政府は一体どう考えておるか。繭の検定ももうずいぶん古くなつておる。たとえば検定のかまが座繰なんです。ところが現在の製糸の状況は、ほとんど大部分とは申しませんが、非常にたくさんのものが多條座繰ですこういう技術的な問題も起つておるのであります。こういうような問題はどうやつて行くか、繭の検定そのものがこのままでいいかどうかということについての、政府のはつきりした見解をこの際承つておきたいと思います。
  102. 青柳確郎

    青柳政府委員 繭検定の検定機械が現状に即応していないということは、小林委員お話通りでございまして、われわれといたしましても、現在の製糸工場と同じ機械に基いて検定をして行くということが、一番理想的だと考えております。従いまして来年度の予算で、今後三箇年計画で全部検定所の機械を改良するというような予算を組んでおります。一方また検定事業をどうするかというお尋ねでございますが、この問題につきましては、繭取引の公正及び繭質の改善という問題から見ますれば、どうしてもこの検定取引というものはこのまま続行して行く方がいいじやないかと考えております。しかし中には小荷口検定のある程度の免除だとか、あるいはまた任意検定という問題も聞いております。しかしこれらの問題は検定自体の本質にも関係いたしまするので、小荷口検定のようなものはある程度検定自体の本質に影響がないものならば、これはなお考えて参りたいと思つております。
  103. 千賀康治

    千賀委員長 次会は公報をもつて申し上げます。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時五十一分散会