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1951-10-27 第12回国会 衆議院 農林委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十七日(土曜日)     午後二時二十四分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 河野 謙三君 理事 野原 正勝君    理事 松浦 東介君 理事 井上 良二君       宇野秀次郎君    小淵 光平君       川西  清君    幡谷仙次郎君       原田 雪松君    平野 三郎君       八木 一郎君    坂口 主税君       足鹿  覺君    竹村奈良一君       横田甚太郎君    中村 寅太君  出席国務大臣         農 林 大 臣 根本龍太郎君         国 務 大 臣 周東 英雄君  委員外出席者         農林事務官         (農政局長)  東畑 四郎君         農 林 技 官         (農政局肥料課         長)      長尾  正君         專  門  員 難波 理平君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君     ————————————— 十月二十五日  愛知県に家畜衛生試験場東海支場設置請願(  早稻田柳右エ門紹介)(第二三二号)  佐賀関町の耕地災害復旧費国庫補助請願(金  光義邦君外一名紹介)(第二三三号)古口村字  外川区内国有林地内に砂防工事施行請願  (圖司安正紹介)(第二三四号)  笠間営林署管轄国有林移管に関する請願(佐  藤弘紹介)(第二三五号)  土地改良事業費国庫補助増額に関する請願(大  内一郎紹介)(第二三六号)  土地改良事業費国庫補助増額等に関する請願(  松浦東介君外四十二名紹介)(第二三七号)  地方競馬民営移管反対に関する請願塩田賀  四郎紹介)(第三〇六号)  労務加配米廃止反対に関する請願井上良二君  外一名紹介)(第三〇七号) 同月二十六日  り災農山漁村に対する長期事業資金貸付に関す  る請願小澤佐重喜紹介)(第三四五号)  十務岳山ろく治山事業促進に関する請願(佐  々木秀世紹介)(第三五六号)  常願寺川上流治山事業拡充強化に関する請願  (内藤隆紹介)(第三五七号)  団体営土地改良事業費国庫補助増額等に関する  請願小平久雄君外二名紹介)(第三五八号)  厚狭干拓東地区工事促進に関する請願(坂本  實君外二紹介)(第三五九号)  同(吉武惠市君紹介)(第三六〇号)  開拓地におけるししの被害防止に関する請願(  今井耕紹介)(第三六一号)  萩野村地内国有林砂防工事施行請願(図司  安正君紹介)(第三六二号)  砂糖法制定に関する請願小川原政信君外五名  紹介)(第三八五号)  熊本農地事務局存置請願永井英修紹介)  (第四四三号)  日田市に国立林業試験場設置請願村上勇君  紹介)(第四四四号)  仙台農地事務局存置請願外一件(山本猛夫君  紹介)(第四四五号)  土地改良及び災害復旧費増額等に関する請願外  一件(山本猛夫紹介)(第四八〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  肥料に関する件  食糧問題に関する件     —————————————
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  前会の農林大臣説明に対する総括的質問が若干残りましたので、これを許します。竹村君。
  3. 竹村奈良一

    竹村委員 先般主食統制の問題につきまして、残つている点をお尋ねいたしたいと思います。  それは先般も少し触れましたが、本年度供出米として二千五百万石をおとりになる、こういうことを知事会議において協議するのだ、こういうふうに言われておりますけれども、政府としてはほぼそういうふうに決定された。そこで本年度のいろいろな点から考えましても、二千五百万石ということになりますると相当過重になると思うのであります。そこで問題は、一方において自由販売計画されている以上、農民に対しましても、少くとも農民の必要とするいわゆる保有米、つまり食糧というものは、あげて米を中心としてその食糧を残さなければならない。従つてたとえば東北地方その他におけるところの雑穀の保有を強制したり、あるいはかんしよその他の保有を強制するということではなくして、少くとも米ばかりで八割五分ないし九割というものの保有食糧を許されるのが当然であると私は考えるわけであります。また農民の欲する保有食糧というものは、従来政府がおきめになつている保有量は非常に少きに失するわけでありまして、従つて少くとも米ばかりで六合以上の保有米を残されるのが当然である。これに対して農林大臣は、少くとも来年の四月から自由販売をされる以上、そういう措置を購ぜられるかどうか。この点をひとつつておきたいのであります。
  4. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答えいたします。本年度収穫見込みは大体六千五百万石程度であり、これによりまして従前のような供出割当てをいたしますると、大体二千七百五十万石になるのが常識であります。しかし本年は、ただいま御指摘のように、来年は統制をはずすという観点からいたしまして、また従前は相当きついと思われる供出をお願いいたしておりましたので、その点も勘案しまして、保有米については余裕を見ておきたい、かように考えております。従いまして大体の見当は二千五百万石ということを考えておりますけれども、実際今回のレース台風の問題、その他の今御指摘のような問題を勘案しますれば、若干これより下まわることもあり得ると考えておるのでありまして、大体御趣旨の点はわれわれも考えておるのであります。しかし急にこの保有米を、従前の五割も増して保有を控除するというようなことは若干困難ではないかと思つて、今事務当局にこの点を連日検討させております。私もこれから行きまして、全体のいろいろな計数を見まして、そうして生産者についても納得が行くような数字におちつけたい、かように考えております。
  5. 竹村奈良一

    竹村委員 生産者についても納得の行く保有米を認める、余裕をつけるということは、私は当然のことだと思うのであります。そこでもう一つつておきたいのは、先般伺つておきまして御答弁をいただいておらないのでありますが、かりに今おつしやつたように、ルース台風その他のいろいろな事情、あるいはまた前に聞いた自由販売等によりまして、いろいろ農業経済から割出し、あるいは自己の保有米から割出して、この割当を果し得ない農家があるかもわからない。ましてまた現在の電気事情等によりましても、脱穀等の遅延によつて、やむなく供出期限に間に合わないこともあり得ると思うのです。こういう場合に、もし農民側においてそういういろいろな條件のもとに供出が果せないという場合には、当然これは——もちろんいろいろな過去におけるところの強制的な、法律的な取締りは、自由販売の声を前にして実際上においてやり得ないのは当然だと思いますし、農林大臣は、そういう場合にはやはり納得の行くまで話合つて、決して強権発動はされないと思いますが、この点はどうでございましようか。
  6. 根本龍太郎

    根本国務大臣 取締りは現行の食管法によつて実施いたしますが、いわゆる強権発動を振りかざして農民不安感を与えるようなことはいたしたくない。先ほど申しました供出割当についても、若干緩和する結果になると思います。従いまして従来のごとき強権によつてとるというところまで行かなくていいだろうと私は考えております。
  7. 竹村奈良一

    竹村委員 もう一つつておきたいのであります。先般も大臣は言われましたが、ともかく米の消費者価格——もちろんあの数字では私はできないと思いますが、価格を操作するために外国食糧を相当量入れる、この場合に、先般来食糧庁長官等から伺いましても、国内におけるところの麦の消費量において、麦の配給辞退をする人が非常に多いということを承つておるのです。その場合に、おそらく今後外国食糧輸入等においても米に切りかえられると思うのですが、一体どれぐらい切りかえられる自信があるのか。しかももし米を輸入するとすれば、莫大な補給金が必要である。高い外国の米をどんどん買つて行く。そうして国内価格を押えるために、みなからとつ税金で莫大な補給金を出す。そうして農家生産米価格を操作して押えて行きますならば、結局自分税金を出して、外国から高い食糧を買つてもらつて自分生産した米の値段を下げてもらつておる。農民の側から言えばこういう結果になるわけです。これに対してそのままにされるということになりますと、農民自分の生活を切下げ、生産費を押えられる、税金なんか払うのはばからしいということになるのは当然だと思うのです。現在農林大臣の考えておられますような米価抑制策、つまり外国食糧を入れて米価を抑制することは、日本農業を非常に圧迫することになるのでございますが、これに対する対策は一体どういうふうに考えておられるか、お伺いしておきたい。
  8. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答えいたします。輸入食糧をどの程度まで増すかということについては、今安本並びに食糧庁事務当局が、各般の資料を集めて検討中でございます。いずれ正式に需給調整法を提案する場合においては、その資料としていろいろと御批判を受けたいと思います。  それから現在の構想におきましては、内地米価格の操作は輸入食糧によらなければならないだろうと言われましたが、さようでございます。要するに外米なりあるいはまた輸入小麦、これらのものを比較的安く放出することによつて抑制せざるを得ないだろう。そうした場合には相当の価格差補給金が出て来る。これは結局において国民税金負担によつて一般会計から繰入れられるであろう。従つてそれは逆に言えば、国民税金負担において操作するということは大した意味をなさないじやないかというお話でありますが、過渡期としてはそういうことがあるだろうと思います。しかし漸次われわれは、全体の計数から見まして、現在の日本物価の動きは、他の工業生産品国際価格さや寄せもしくはそれ以上に上つておる、しかるにもかかわらず農業生産品については、現在の統制下においてむしろ国際価格より下げられておる。しかも農村において消費するところの一切の物資は、国際価格もしくはそれ以上になつている。この鋏状価格差の圧迫によつて農村が苦しんでいる。だからこれは経済の自然の原理として、農村における生産物がやはり他の物価と均衡をとることが正しい、こういうふうになれば、漸次輸入補給金もそれだけ減つて行くことになります。但し来年統制撤廃をなされた場合における、米に対する、あるいは主食に対する一時的な仮需要がぐつと増すことによる心理的な不安感、それは現在のように補給金を多くすることによつてなからしめる、こういうことでありますから、全体の長い目からするならば、価格差補給金は減ることになります。むしろ逆に、今度はこの補給金農業増産方面に使われる、こういうことになるだろうと思います。
  9. 千賀康治

    千賀委員長 竹村君に申し上げます。時間を経過しましたから結論を願います。
  10. 竹村奈良一

    竹村委員 それでは主食の問題は後日また伺うことといたしまして、いま一つつておきたいのは、今度のルース台風によつて少くとも一千億に近い被害があつたと言われている。ところが土地その他の関係における被害の問題、あるいは土地災害復旧の問題について、先般も少し伺いましたが、ずつと前の台風災害復旧予備金五十億円の支出すらまだほつてある。しかも予備金の八十億かなんかの配分を政府は考えておられるということを聞いたのでありますが、現在あの厖大なルース台風による被害に対して、政府は一体どれだけ出そうと考えておられるか、どういう用意を持つておられるか、この点だけを伺つておきたい。
  11. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ルース台風に対する復旧費の問題は、私から総合的に申し上げる立場にはないと思います。むしろ今ここに安本長官がおられますので、そちらの方に関係するかと思いますが、政府としては現在刻々の情報は得ておりまするけれども、まだ固つた数字を得ておりません。これができますれば査定いたしまして、それに基いて緊急のつなぎ融資、次には現在の予算をもつて足りないとするならば、補正予算をさらに組んで、本年度分に対する復旧費を計上しなければならぬと思いまするが、現在どの程度被害であるかということは、非常に大ざつぱの情報よりありませんので、従つてそれに基く計画も現在固まつてございません。     —————————————
  12. 千賀康治

    千賀委員長 これより肥料に関する件を上程いたします。昨日の肥料小委員会におきまして、肥料に関する諸問題について関係事務当局より種々説明を聴取されたようでありますので、本日は関係大臣出席を得まして、本件に関する調査を行うことにいたします。質問の通告がありますからこれを許します。河野君。
  13. 河野謙三

    河野(謙)委員 先日の農林委員会におきまして、目下の農村問題の中で特に緊急を要し、しかも重大であるという観点から、公共事業の小委員会並びに肥料飼料の小委員会をつくることになりまして、肥料飼料につきましては昨日小委員会を開きまして、関係事務当局出席を求めまして諸般の説明を求めたのでありますが、たまたま小委員会当初におきまして重大なる、しかも一日も放つておけない事実をここにわれわれは発見したのであります。つきましては、本日両大臣に、以下御質問申し上げることにつきまして、責任を持つてお答え願いたいと思います。  なお私は御質問申し上げる前に、一言特に念を押しておきたいのは、当然のことと御答弁があると思いますが、従来、政府の各大臣が、議会においてわれわれ議院に向つて答弁なすつたことにつきましては、どこまでも責任を持たれるかどうか。この点につきまして、私に特に前もつて答弁を要求します。同時に今後におきましても同様に議会におきましての大臣の御答弁、御意見というものは責任を持たれるかどうか。これをひとつ答弁願いたいと思います。安本長官農林大臣どちらでもけつこうです。
  14. 周東英雄

    周東国務大臣 議会に対する答弁では、無責任答弁はいたしておらぬつもりであります。しかし今お話のような、抽象的に何でもかんでも答弁に対して責任を負うかということについては、おのずから考慮があろうと思います。もとより政府の行う、また行わんとする仕事につきましては、あくまでもこれをやり遂げて行きたいというつもりで、いろいろの施策について御答弁申し上げておるはずであります。しかしその事柄以後においての事情の変化ということに対しては、おのずからお考え願わなければならぬと思うのでありまして、同じ條件のもとにおいてあるならば、そのものについては、御答弁を申し上げた通りに実行せられるように責任を持つのが当然であると思います。
  15. 河野謙三

    河野(謙)委員 抽象論になりますけれども、世の中に、俗に君子豹変ということがあります。でありますから、私は必ずしも絶対的のことは申しませんが、およそ客観的に見、常識的に考えて、変更があるべからざる客観情勢において、変更が起るというようなことは、私はあり得ないと思う。しかしそういう場合が今まであつたのでございます。でありますから、私は特にお忙がしいところを御出席願いました以上は、特に時間のむだのないように再びこういうことで御出席願わなくてもいいように、今申し上げたような前提におきまして、責任を持たれるか、また過去におきましての事柄につきましても責任を持たれるかどうか。もちろん時間的な問題もあります。一年、二年前に大臣議会において答弁されたことを、どこまでも責任をとれとは申しません。しかし少くとも極端に言えば、一週間、十日、一月前に同じ條件において御答弁なすつたことについて、まさか私は大臣ともあろうものが、しかも神聖なる議会においてわれわれ国民の代表にうそをつくようなことはないと思いますけれども、私はそこに非常に疑いを持つておる一つの事実がありますから、この際もう一ぺん重ねて御答弁いただきたいと思います。(「具体的にやれ」」これから入るのだ、だまつている」と呼ぶ者あり)
  16. 周東英雄

    周東国務大臣 お答え申し上げます。抽象的な議論としてはただいま私から申し上げた通りであります。具体的の問題にお入りになりまして御質問願いたいと思います。
  17. 河野謙三

    河野(謙)委員 しからば大分あちらの方で急げと言いますから、急ぎます。  今日は通産大臣は御出席になつておりませんけれども、これは単に通産大臣だけの言明ではありません。ここに御出席農林省におきましても、同様な言明があつたのでありますが、事は肥料輸出の問題であります。内閣責任一体立場において、通産大臣はここに御出席ありませんけれども、肥料輸出についての民主党の小林君の質問に対しまして、御出席の両大臣も過日の本会議においてお聞きの通り肥料輸出に対しては高橋通産大臣は、国内需要を満たしてしかる後に余裕があつた場合に肥料輸出する。しかもこれを再三繰返して、あのとかくあいまいな大臣が、あのときに限つてきわめて明快に御答弁になつております。このことにつきまして農林大臣安本長官も、肥料の行政につきましては責任の一翼をになつている以上は、通産大臣の御答弁に間違いがあるかないか、しかも農林大臣はこれは必ずしもよそ事ではありません。肥料輸出につきましては通産省が起案し、これに同意責任がある。しかもその同意の場合の條件としては、過日の本会議において通産大臣言明されたと同様なことを農林省大臣初め事務当局も本委員会において、きわめて近い過去においてそういうことを言つておられる。これに間違いがないかということについて御答弁を要求するわけであります。
  18. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ちよつと速記をとめてください。
  19. 千賀康治

    千賀委員長 速記をとめてください。     〔速記中止
  20. 河野謙三

    河野(謙)委員 今の大臣の御答弁によりますと、フイリツピン台湾の各一万トンずつの問題は、近々突如として起つた問題かのように言われますけれども、そうではありません。われわれは肥料問題が特に重要であるために、八月の暑いさ中に、また九月におきましても、休会中に本委員会におきましては、常にこの肥料の問題を取上げ、しかも輸出の問題につきましては、最も政府と協力的に、通産省中心にして、輸出にこたえるためにはいかにしたらいいか、いかに電力を配分したらいいかということで、われわれは積極的に通産省増産計画に支援を与えて来ておる。通産省も八月のころにおきましても、九月のころにおきましても、輸出の問題を中心にして、どうしてもこれ以上増産しなければ輸出ができない。国内需要につきましては、その当時からあえて電気の増配については問題がなかつた。その八月、九月のときからすでにフイリツピンなり台湾なり、もちろん朝鮮もありますが、この問題も含まれての増産計画だつた。決してこれは突如として起つた問題ではございません。そういうことを八月、九月のころから前提にして論議しておるにもかかわらず、一方において増産ができないで、ただ輸出の方の義理だけは果さなければならない。その結果農村を最も愛される農林大臣にしては、今日の態度はきわめておかしいと思う。農村犠牲なくして肥料輸出ができるわけはありません。もし農村犠牲なくして輸出ができる方策がこれと相並行して立つてあるならば、私はそれをお示し願いたいと思う。たとえば増産については、電力がかような状況であるけれども、今日ただいまから他の産業を押えても電気をまわすという案が確定しておるならば、それを伺いたい。また価格安定方策について何かの方策があるならば、これを伺いたい。増産する先に輸出をやるという時間的のずれは、私は絶対に許しません。この点につきまして大臣の今の御答弁は、農村犠牲をしいることはしかたがないという前提ならば、私は今の大臣の御答弁で満足します。しかし大臣はどこまでも農村犠牲はしいない、こういう前提の御答弁ならば非常に矛盾がありますから、重ねて大臣から御答弁をいただきたい。
  21. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答えいたします。先ほど申し上げた次第でございまして、この問題は河野さんが御指摘のように、決して農村を全体的に苦しめるということではなく、やはり国際信義問題等、国際的な友好の問題と、一時的な農業生産手段であるところの肥料の時間的な一時の若干の不利は忍んでも、これは国交の友好関係をすみやかに回復するという前提のもとに考慮さるべきだ、国家の利益というものはもちろん各階級の総合的な利益によるべきでありまして、そのために若干のそこの矛盾は、これは政治的な大局的立場に立つて了解していただけるものではないかと思つておる次第でございます。
  22. 河野謙三

    河野(謙)委員 輸出を許可するということを一応のんだとした場合に、賢明なる大臣は、これに対して当然増産対策というものを片一方に持つておられると思う。増産対策通産省生産責任者でありますが、通産省と同時に輸出に承認を与えるという立場に立つておられる農林大臣とすれば、私をまつまでもなく、当然農林大臣から通産大臣に強い要求があつたはずだと思います。これに対して通産大臣はどう答えられたか、また通産大臣農林大臣の中間におられる安本長官は、それに対してどういう結末をつけられたか。もし増産対策がなかつたならば、価格調整だけで行くならば、価格調整をいかにやるかということについて、ひとつ案を示していただきたい。現に今毎日のように五円十円と上つております。現在の肥料価格は、大臣事務当局から御報告を受けておられると思いますが、もうすでに問屋さんの相場が九百円もしくは九百円以上になつておる。これでは農村の受取る硫安一俵の値段は、立ちどころに千円となることは火を見るよりも明らかです。一方において二万トンの輸出ということは内地の市価に影響がないはずはありません。現に輸出するという声だけで非常な悪影響を来しておる。こういうことでありますから、当然増産対策並びに価格安定対策、これらの施策があると思います。もしなければ非常に不親切だと思う。これについての御答弁を具体的に伺いたい。
  23. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘通り非常に電力がきゆうくつではございますけれども、肥料増産ということがただいま御指摘通り重要性がありますので、農林省から強くこれを要請をするのみならず、通産大臣もこれは了としております。さらにガス法に基くところの硫安生産に対しては、石炭の確保について協力する、こういう條件のもとに、しかも今後におきましてはこの二国以外のところは、強い要請はありますけれども、国内消費状況を考えまして、従つて先般決定しました増産に基くところの輸出計画は一応再検討しまして、十分に国内消費の安定を期するまでは今後は出さないように、輸出に対してはわれわれは当分この二万トン以外は出さないようにということを要請して、私は了解をとつたつもりでございます。
  24. 河野謙三

    河野(謙)委員 私の特に尊敬しておる農林大臣に向つて、どうもはなはだ言いにくいのでありますけれども、今の御答弁を何度伺いましても、輸出はきめたけれども増産対策は今のところ持つていないのだ。価格安定対策も持つていないのだ、ただこれから電気でも増配して、何とかかつこうをつけるつもりでおるのだ、それは気持だけの話であつて輸出の問題は現実の問題であり、価格安定対策増産対策については将来の問題である。将来と現在と食い違いがある。これは私はどうもおかしいと思う。しからば将来農林省では、肥料価格を今の米価から勘案して幾らが妥当であるかという一つの線があると思う。たとえば千円であるとか九百五十円であるとか、もしその線を突破したときは一体どうなさるか、それも成行きでしかたがない、こういうようなお考えであるか、もし千円以上になつたらどうするか、将来に対しての一つの考え、これをひとつ伺いたいと思います。
  25. 根本龍太郎

    根本国務大臣 先般委員会で御質問のあつた例の肥料需給調整法がどうなつたかということと関連するのでありますが、これは実は予算関係を担当しておるリード氏が、途中でこれを未解決のままで向うに参つたので、これだけ結局ペンディングになつたまま予算の上程ができなかつたのであります。従いましてこれについては、われわれ農林省といたしまして、需給調整法を放棄したのではございません。これは今後もさらに検討を加え、関係方面の了解も得てこれは実施いたしたいと思います。現在のところこれは專門家の河野さんも御承知のように、需給調整法というがごとき立法的措置、これに基くところの予算措置なくしては、実際上の価格、需給調整は困難だと思います。従いまして、これは将来の問題として現在検討いたしておる次第でございます。そのほかに現在しからば一千円以上になつた場合に具体的にどうするかということの問題は、究極におきましてこれは増産による供給面をふやすことによつて確保するよりほか、直接には現在できないと思います。この問題について、今御指摘を受けました、こういう状況において輸出することがさらに価格をせり上げることになるのだ、これは御説の通りであります。この相矛盾した中において、われわれは国家全体の総合的な利益のために二万トンはやむを得ないとして、その後は今後絶対に増産を裏づけすることなくしては輸出はしない、関係省との連繋のもとにこれを実施いたしたいと思います。なお増産については、現在の問題でもあり将来の問題でもございまして、現在の許される範囲における電力、その他の肥料増産のために必要なる諸條件を満たすことによつて増産を確保したい、かように考えている次第でございます。
  26. 河野謙三

    河野(謙)委員 私は先ほどからの丁寧な御答弁については、気持には感謝いたしますけれども、答弁そのものの内容にはきわめて不満足であります。それで本日ここでさらに農林大臣から具体的に答弁を求めようとはしません。あらためて私は今手元に用意しております決議案につきまして、本委員会同意を得まして、委員会の決議を通じて、政府に書面をもつて答弁を願いたいと思います。そこで今までの大臣答弁の中ではつきりしていただきたいことは、輸出大臣の方針としては、今度の二万トンだけは国際信義の問題からいつてやむを得ない処置として認めてくれ、但しこの二万トンを最後にして、今後は当初通産、安本、農林三省で協議して決定いたしました需給バランスの線に沿つて、当初の生産計画以上に生産が上まわらぬ場合には、あとは輸出は絶対にしないということが一つ。もう一つ価格の安定対策につきまして、過日流れました需給調整法案、この内容は今後同じかどうかわかりませんが、少くとも将来におきましてもう一度出直して、政府としては肥料需給調整法案なるものを本国会に提案をして承認を得るつもりだ、大臣はこれについてその後気持はかわつていない。この二つは私は今日はつきり御答弁がいただけたものだと思いますが、これはその通りならその通りという、ことで御答弁を要求しませんが、もし間違いがあるならば、そういうことではないのだと御答弁いただきたいと思います。  次に私は安本長官に伺いたいのですが、安本長官は先ほど来の私の質問に対する農林大臣の御答弁に対して、いかなる感想、いかなる意見を持つておられるか、これを御答弁いただきたいと思います。
  27. 周東英雄

    周東国務大臣 私は農林大臣の御答弁その通りだと考えます。
  28. 河野謙三

    河野(謙)委員 そういたしますと、安本長官通産大臣なり農林省が、かねて本委員会においてかたく再三再四にわたつて速記録を通じて約束されました、肥料増産なくして輸出はしない。国内需要を満たさずして輸出はしないということについては、通産省農林省と同様に、安本長官君子豹変といひますか、その線まで後退されたということでありますか。
  29. 周東英雄

    周東国務大臣 豹変とかいう言葉をお使いになるが、やはり今日の状態といたしまして、国内情勢はもとより増加のことを考えなければなりませんし、国際的にも考えて行かなければならぬ、ここに苦心があると思います。いちずに生産が増加されなければ出さないということ、このことは農家に対して当然考えられることでありますが、台湾とかフイリピンとかいう地域は、御承知の通り日本から出し放しで何も入つて来ない国ではございません。農家の必要とするところの砂糖その他のもの、ことに最近における鉄鋼石その他の原材料というようなものも供給してくれておるわけであります。そういう物品は農家には一つもいらぬものではないと私は思う。ことに私どもが農林、通産の議論の中に入つて唱和いたしたことは、できるだけ内地農村に迷惑をかけないようにして、今の苦しい中でも増産十五万トンを計画し、そのうち十万トンをと言つたことは前の通りであります。しかしそれが一トンも増産されなければ絶対に出さないかどうかというと、事情の変化もございました。講和條約の批准の問題も控えております。いわんや十五万トン増産した場合にということになると、肥料年度の最終にならなければ十五万トン増産できるかどうか数量的にわからぬ。これはやはり増産計画を立てつつ、月々の増産に応じて、場合によつては早く出さなければならぬ場合があると思う。台湾のごとき一例をとりましても、砂糖その他の関係肥料といたしますれば、その施肥の時期はきまつております。これはあなたは十分御承知と思う。これを増産ができて四月、五月になつて、相当に余るようにできたという実績を握らなければ出せないということになれば、十日の菊、六日のあやめで、そんなことをしても喜ばれない。そこにほんとうの悩みがあると思う。私は日本農村に対しても御理解いただかなければならぬと思う。十五万トン一厘一毛欠けても輸出できぬと言うのなら、肥料年度の最後にならなければわかりません。その間におきましてもおのずから時期がありまして、ある程度進みますれば徐々に出して行くということになるだろうと思います。不幸にして今年は八月の半ば及び九月において異常渇水という現象が出て参りまして、水力電気において二〇%の減であります。ここに非常に苦しみがあるのであります。今農林大臣も申しましたように、いろいろな事情から、十五万トンの七分の一の二万トン、これだけでもひとつ出してくれと言つて来ておる。外交的なものについては、やはり国際的に物を考えて、やむなく承諾せざるを得なかつたことは御了承願わなければならぬと思う。りくつから言えばあなたのおつしやる通りだろうが、そこにりくつを越えたものがあるのではないかと私は思う。私はそこらをお考え願えるのではないかと思う。今後におきましては、それならもう今後は増産できなければ出さぬかということになりますと、大分農林大臣も追究されておりまして、イエスと言わざるを得ない状態になつておるかもしれませんが、私は今後の増産につきましては全力をあげるつもりであります。最近の電力事情から、これを元のように追いついてとりかえすことはなかなか困難でできませんけれども、幸いにして最近火力電気の集中的な施策、極端に申しますると、大阪地区に入ります各産業に対して送つておる石炭を、すべて港頭で押えて、そうして話合いとは言いながら、強制的に電力会社にまわしておる。従つて一時きゆうくつなときに三千トンぐらいしかたけなかつたものが、最近は五千トンぐらいたけるようになり、だんだんとたまつております。そういうものから努力をして、できるだけ生産の減退を取返さなければならぬと思つておる。つまりこれだけ減つたあとですから、今までの計画数字通り取返すことは困難だと思いますし、これは事態の変化に応じて考えなければならぬ問題ですが、今の私どもの気持としては、日本農業のために相当増産のない限りは出さぬようにしたい、こういうふうに思つておることだけは申し上げておきます。
  30. 河野謙三

    河野(謙)委員 安本長官の御答弁は、日ごろの安本長官の性格からいつて良心的でないと思います。こちらから物をやるばかりではない、向うからも物をもらうのだからやらなければならないということは私もわかります。しかしその物の内容、たとえば台湾の場合に、台湾から砂糖をもらう米をもらう、こちらからは肥料をやる、この内容が問題です。私は農民にも聞いてみました。国内から肥料台湾へやつたならば、そのやつた肥料の分だけは犠牲を負います。価格の面においてまた数量の面において、農民は多くの犠牲を負うのです。こういうことで犠牲を負わされるくらいならば、農民は砂糖はなめたくないと言うておる。極端な表現をすれば、砂糖は都会のなめるものだ、農村は大して砂糖はいらない、米にしても同様です。向うからもらう砂糖なり米は農民にはほとんど関係がない。ところがこつちから出すものは肥料だ、これは農村の死活の問題です。こういうことで、私はその内容の点にまで入つて考えた場合に、この肥料輸出についてもう少し考えてみてよいのじやないか、こういうことを申し上げておるのです。しかし私は何も肥料年度の終りの来年七月まで待つて、十五万トンの増産ができなければ出してはいかぬというようなことは言いません。何としても肥料生産の一番の危機は渇水期であります。来年の二月の下旬なり三月の上旬まで待てば、それから先は大体順調に滑り出します。ことにこの間通産省の経験者を呼んで見ましても、この電気については全然見通しがない。ただ天を拝んで雨の降るのを待つておるのです。もとより向うにも施肥の時期やあるいはその他農業経營の関係で、肥料を欲しがる時期はありましよう。ありましようけれども、こういう際でありますから、それだけ向うに親切にされるならば、もう一歩内地農民にももつと親切にやつていただきたい。そういう意味から、私はやぼなことは言いません。肥料輸出問題そのものに対して反対をするわけではないけれども、まず何としても肥料増産して、内地農民に安く渡す政治をやつてもらいたい、これが肥料政策の根本問題だと思います。そういう意味からいたしまして、渇水期を経過するまでは、私の本来の気持から行けば、今の二万トンの輸出も絶対に賛成できない、そして三月になつて見通しがついたならば出せということを言いたい。安本長官はいろいろお立場上ここではそういうふうにおつしやいますけれども、私の今申し上げたこと全部とつてつて安本長官の気持だと思います。真に良心的に御答弁願うならば、今私が申し上げたことそのままだと思います。でありますから、ここで安本長官に重ねてそういうことを反問はいたしませんが、少くとも安本長官の気持は私の気持であるという前提で、どうぞ私の申し上げた通りに、通産省農林省との協議の至らなかつた点は、安本長官が公正に采配して肥料政策に誤りのないようにしていただきたいと思います。  なお最後につけ加えますが、今米の自由販売をやろうとしておる。米の自由販売の一番大きな裏づけは国内の米の生産の増加です。自給度を高めるということです。その自給度を高めるのに一番大きな要素は肥料です。この肥料を適正な価格で、しかも適量に農家の手元に時期を失せずに届けることが自由販売前提です。自由販売をやらなければならないやるのだということであるならば、私が言うまでもなく、むしろ自由販売をやるからには、肥料はこれだけ安くするのだ、しかもこれだけ増産するのだ、そうして肥料会社の方には経營の合理化また一面経營の安定のために、たとえば電気を特配するとか、あるいは肥料会社に対しても相当積極的施策というものがあつてしかるべきだと思います。肥料会社でも現在困つておりますけれども、私の承知しておる範囲内においても、川崎のあの昭和電工のような大きな代表的な肥料工場でも、生産量に対してわずか三分の一しかできない。三分の一しかできなければ二万円で上るコストが——私二万円かどうか知りませんが、かりに二万円で上るものならば三万円、四万円かかるのは当然です。そういう代表的な工場が、非常にコスト高で赤字に惱んでいるのがたくさんある。一面関西の工場においては、非常に生産が上り黒字を続けている。こういうことについても政府はもう少し親切であつてほしい。もう少し肥料行政について正直に、しかも農民に親切にやつていただくことをくれぐれもお願いしまして、あとは先ほど申し上げましたように、書面をもつて政府から回答を求めることにいたします。
  31. 千賀康治

  32. 井上良二

    井上(良)委員 今河野委員との質問応答で明らかになりましたが、政府では二万トンを台湾とフイリピンに輸出することに、三省間で話がきまつたようでございますが、それがはつきりきまつたかどうかということを明確にしてもらいたい。それからさようなことを三省大臣間でおきめになる前に、三省の事務当局の意見を聴取された上で決定されているかどうか。そういう事務当局間の意見は全然参酌する必要なし、外交的な、国際的なまた政治的な考慮からやつたのであつて、全然事務当局の意見は聞いていないということですか、その点もあわせて農林大臣から伺いたいのであります。  次に伺いたいのは、いろいろな関係輸出をしなければならないという政府の苦しい立場はわれわれも了としますが、問題はそれをやる場合に、国内肥料にどういう影響を持つて来るか、それに対するはつきりした対策が立てられておりません今日、この輸出がいつもあなたが申しますいわゆる心理的影響を持ちまして、価格のつり上げを実際に見ているという事実からいつて価格のつり上げにならぬというここにはつきりしたものがありますならば、輸出しようと一向さしつかえありません。いろいろな悪条件が重つているところへ輸出をやることによつて、しかも供米代金が入つております農家には、肥料が上るという前提に立つてこれを買おうとする意欲が強くなるのは当然で、そこに肥料価格をつり上げている要因もあります。市場価格の安定に対する具体的な対策政府にない今日において、輸出というものが非常にこれを混乱させていることは事実であります。これに対し政府として何ら考慮を払わずに、単に相手方の要求だけを高く評価して、それでものをきめたということに問題があります。  それともう一つは、本会議において政府を代表してここ数日前に、国内の需給の見通しが立たぬ限りにおいては輸出をしないということをはつきり言明している。しかるに数日後において輸出を決定したということは、一体どういうことですか、そんなに事情が急変するということはありません。二、三日前の国会の本会議において、政府を代表してはつきり当の責任者である通産大臣から言明がありながら、数日後においては三省間でこれを決定するということは、一体どういうことですか。これは何としてもわれわれ国民としては納得できません。特に食糧増産を一手に引受けなければならぬ責任の衝にあります農林大臣として、これに同意を与えるということは何としても軽率ではないかと思う、その点について伺いたいと思います。
  33. 根本龍太郎

    根本国務大臣 質問の第一点は、台湾一万トン、フイリピン一万トン、合計二万トンの輸出に対して、三省間で同意のサインをしたかということでありますが、その通りであります。しかもこれに対しては、事務当局の意見は聞いたかというお尋ねですが、意見は聞いておりまするけれども、事務当局の意見を越えて、先ほど私が御説明申し上げ、さらに周東安本長官から申し上げた見地において、これが三省間で決定いたしたものであります。従いまして、その責任事務当局にございません。  さらに高橋通産大臣言明との関係について追究でございまするが、これも先ほど河野委員に答えた通りでございまして、これは原則といたしまして、政府国内需要を満たして、しかる後輸出するという根本方針は何らかわりません。但し先ほど申し上げましたような理由におきまして、これが特殊なる国際上の信義と国交の回復を前にしての外政上の観点をも考えて、特別なる措置としていたしたということを御了承いただきたいのでありまして、これは長い目で見ますれば、やはりいついかなる場合においても、こういうふうな転換期においてはやむを得ざる措置というものがあるだろうと思います。この点はやがて農民の方々からも御理解いただけるのではないか、私はかように思つておる次第であります。
  34. 井上良二

    井上(良)委員 もう一点農林大臣に伺います。さきに河野さんからも申しておりましたが、問題は、何で輸出問題がやかましいかというと、肥料価格が上るというところに問題があるのです。従つて政府は、一体肥料の市場価格を、今日の米価に比して一体幾らが妥当と考えておりますか。八百円を妥当するか、千円を妥当とするか、一体幾らが妥当とお考えになつていますか。それ以上を越えた場合は、たとえば需給調整法をつくるなり、あるいは外安を輸入するなり、何らかの方法によつて値上りを食いとめるという手を打たなければならぬと思います。その対策が何らなしに輸出されるというところに問題が起つております。一体農林大臣は、この市場価格を。今日の米価農家経済その他から総合して、何ぼが妥当だとお考えになりますか。
  35. 根本龍太郎

    根本国務大臣 物価問題は、私が申し上げるのはちよつと筋が違つておると思いまするがこれはいろいろの要素で考慮されなければならない。生産者としてはできるだけ安いことを望むのでありまするが、他面におきましては、生産者は、やはりある程度利潤ということを見て行きまするので、この点は現在の市場において決定される場合において、どれが適当なりということを端的に申し上げることは困難でございます。そのためにわれわれは先ほど申し上げましたように、需給調整法を準備いたしたのでありまするが、これまた先ほど御説明申し上げた理由で遂に上程の運びに至つておりません。しかしわれわれ農林省といたしましては、いまだこの問題を断念いたしておりません。これは肥料のみならず、全体の物価体系その他の問題がございまするので、あるいは周東安本長官からお話あるかとも思いまするが、今農林省として、単に農民立場だけで肥料はかくあるべきだということを断定するのは、いささか軽率のそしりを免れないと思いまするし、今のところ、私これに対して明確なる答弁をいたす準備はございません。
  36. 井上良二

    井上(良)委員 私は責任を追究するつもりで言つておるのではありません。農民を安心させたいためです。と申しますのは、御承知の通り政府では米麥の統制をはずす、しかし本年の産米に対してはバツク・ペイをするということが明確にされております。そうなりますと、この肥料が一体どういう価格になつて本年の米価がきめられるか、また今後国内産米及び産麦の価格が、市場価格において最も妥当という価格はこれこれという場合に、当然この肥料価格が裏づけになつて安定しておらなければなりません。そういう場合に、肥料行政の責任者、特に肥料の配給面の責任者である農林大臣は、この米価生産費あるいは消費価格に一番大きな影響をして来るこの肥料価格が、何ぼでなければならぬという大体の肥料についての価格安定の線は、大よそ想定されておらなければならぬと思います。その安定線を上まわつた場合に、需給調整法が必要であり、あるいはまた外安の輸入が必要であり、従つて安定線が一体何ぼであるかということをこの際明らかにされることによつて農民も安心をするでありましよう。また輸出もそれによつて認められる段階もあるかもしれません。そういうような点が明確にされずに、追つて検討するといううちに肥料はどんどん上つて行きます。そうなつてしまえば、結局肥料が市場に現われるよりも、市場から隠れるという方が多くなつて来ます。現に東北その他のあなた自身の選挙区の方面においても、肥料の購入にいかに農協が困つているか、西の方の大きな肥料会社は、全部肥料をストックして外に出さない。東の方は肥料が足らずに困つている。こういう現象がすでに起つておるではありませんか。こういうような肥料の偏在と不円滑な流通とは、政府がこの肥料価格に対して明確な手を打つて行かぬところに原因があろうと思いますから、はなはだどうも追究するようで悪いのでございますけれども、これはやはり肥料価格を安定させ、農家を安心させたい立場から、この線を明確にしていただきたいと思います。
  37. 根本龍太郎

    根本国務大臣 いろいろときびしい御追究のようであります。これは御承知のように、政府が管理しておりますれば、どれだけの値段ということが明確に答えられますけれども、現在補給金をはずし、自由市場になつている限りにおいては、どこで政府は押えるかということを御追究になつても、私としては答弁いたしかねるのであります。但し今言われたように、業者が肥料を売惜しみをして、しかも積によつて暴利を貪るということは許さるべきではありません。また現在の生産費をはるかに越えて、売惜しみによつて暴利を貪るということも否定さるべき問題だと思います。今のせつかくの井上さんの御質問ですが、今何百何十円が適当と認めるというこを私から聞き出そうとしても無理であります。あなたがこの点についていくら御追究になつてもできない相談でありますから、これ以上御追究にならぬように願います。
  38. 井上良二

    井上(良)委員 ただいま農林大臣から肥料の安定価格についていろいろ御答弁がございましたが、私は非常に不満足であります。今統制政府がしていないから、そういうことを聞かれても、政府責任ではないというような御答弁でございますけれども、それでは実際は肥料価格が暴騰して、農業生産が、一切困難な状態に陷り、またそれに伴い農家が非常に困難な実情に陷つても一向さしつかえないという議論になつて行きますから、私はそういうむちやなことを言いたくない。そこで私があなたにそれ以上質問しましても、この問題についてははつきり申せないと言いますから、追究はいたしません。  ただここで安本長官に伺つておきたいのは、先般も、本肥料年度において十五万トンの増産をはかるために、約二億五千万キロワットの電力を、特に肥料生産の方に他の産業の電力を切つても特別に割当てる、こういう方針であります。われわれもその政府肥料への傾斜生産電力割当対策に大いに努力をしていただくように要求したのであります。ところが現実は、あなたも今御説明通り非常な渇水に陷りまして、八月、九月の肥料生産はどうにか計画を上まわつた実績は出ておるとはいうものの、十月に入りまして肥料生産は非常な減産になつております。従つて最近電力が多少緩和されたといつても、これからいよいよ渇水期へ入りまして、来年の三月までの見通しが明確に立たぬ今日、たとえば水力の面で、これだけ落ちた場合は火力でこれだけふやす、あるいは電力による分をガスに切りかえて、そのために石炭をこれだけ使う、またガスでいかぬ場合は火力発電をもつと積極的に動かして、それによる電力の供給を確保するために、必要な石炭対策なりまたは重油対策なりというものが総合的に計画されて、その上でこれだけの電力は必ず肥料会社に割当ができる、だからこれだけの増産は可能である、生産計画を上まわる増産は可能であるという具体的な説明がされぬ限りは、肥料生産の前途は計画さえ非常に困難でないかという見通しをわれわれは持つおりますが、これに対して安本長官はどうお考えになつていますか。来年の三月までの増産に対して、電力事情なり石炭の割当なり、その結果から肥料生産は、月々計画生産が可能であるという具体的な事実に基いた御答弁をいただきたいと思います。
  39. 周東英雄

    周東国務大臣 井上委員の御質問はまことにごもつともであります。私どもも八月の下旬から九月にかけての、まつたく二十年来ない異常渇水によつて、起つた電力の不足が、ことに水力電気において二〇%の減になつておる。これを埋めることは、ざつくばらんに申しまして私は相当に困難だと思います。実は今年の電力計画としては、豊水時なんということは考えたことはないので、やはり平水時を目標において、しかもなおかつ火力発電というものの補いをなさなければならぬ。石炭の総数量は上下合せて、たしか六百二、三十万トンだつたと思います。そのうち下期渇水期に充てられるものは、これははつきりしておりますが四百七万トン、これで進んで参つておつたわけでありまして、その間御指摘のように、こういう條件で行けば二億五千万キロワットの出力を充てて十五万トン増産をしたい、それで十万トン出したいという計画でありました。ところが先ほど申しましたように、水力によつて二〇%の減ということになりましたので、それを全部火力で補うということにつきましては非常な困難があります。と申しますのは実は下期充当の四百七万トンの火力石炭というものは実にありがたいことでありまして、今年の石炭の増産計画の四千五百万トンというものは非常にその成績をあげて、おそらくそれを上まわるであろうという成績であります。従つて電気における四百七万トンは充足できますが、二〇%の減を補うということになれば、やや無理に近いものがあるわけです。これをやれということはなかなか困難です。ことに石炭が、今申し上げたように昨年度はたしか三千九百二十三万トン、約四千万トンくらいの生産実績でありましたのを、今年は四千五百万トン計画で、それが上まわろうというところまで、約一割三分の増産計画の達成を見ておる。その上に出せというのですからなかなか困難です。しかしそんなことは言つておられぬので、非常時は非常時としての協力を求めておるのであります。ただいま内地における石炭に対する金融措置をことに急いでやる場合においては、中小炭鉱の方面に対して約十五億円を開発銀行、市中銀行と半々に出すことによつて、大体三十万トンといいますが、私はしつかり踏んで二十万トンと思つております。またインド炭二十万トンを大体外貨を組んで、その上になお五十万トン近くほしいと思つております。しかしこれはざつくばらんに言うて、場所なり船なりの関係で、この下期の三月までに確かに入るかどうかということについては、私どもやや心配しておりますが、内輪に見て十万トンくらいのところと考えております。それよりも一番手取り早いところがやはり重油の転換であります。これについては、この前非常に乱れましたときに、約十万五千キロリットルだけは、電力用重油としての輸入を追加して認めてもらつたのですが、それでも実は足らぬので、今考え方といたしましては、もう二十万キロリットルほどほしいということも折衝を始めております。こういうようなものができれば、重油は効果において、トン当りちようど石炭の二、三倍になります。そういう関係で非常に効果が上ると思いますが、こういう関係を総合いたしましても、二〇%減をそのまま取返すことはなかなか骨が折れる。これは明らかに申し上げた方がよいと思います。従つて今私どもが考えておりますことは、最小限度の応急処置としてこれを考えた場合において、はたしてどれだけは確保できるかということは、もう少し時間的に待つてもらわなければならぬ。品の上で何万トン入れたから、何万トン出るということは少し早過ぎる。これは机上の空論になつてはいけませんので、それらを確定させた上で、重要産業——もちろん肥料もその中に入りますが、全体を見て、減になつたところをどういうふうに補つて行くか、そこにも重点産業に対する分配問題が起ると思います。その際におきまして、私どもは肥料についての問題は、でき得る限り有利な立場に立つて、配分について努力いたしたい。かように考えております。ただいまの井上さんの御質問はごもつともでありますが、今すぐ何ぼという形で、いいかげんな数字を申し上げることは控えまして、今計画は実体的に進めておりますので、もう少したつて、どのくらい減になつたものを取返せるかという見通しがついたときに、さらに報告をする機会があろうかと思います。御了承を願いたいと思います。
  40. 井上良二

    井上(良)委員 今非常に御親切な御答弁をいただいたのでありますが、そういたしますと、政府の方では、来年の三月までの渇水期の各月別の肥料生産計画が予定通り実績を上げ、またそれを上まわる増産ができるという見通しは、今日のところまだ立つていない、こう解釈してもよいのでございますか。その点どうでありますか。
  41. 周東英雄

    周東国務大臣 端的に申しますれば、何ぼ増産できるという形には、今電気の見通しの上からいつてはつきりは申し上げかねます。しかし私どもは、何とかして今計画しておる、そのくらいの実現ははかりたいと思つて、先ほどちよつと申しましたように今大阪あたりでは、官民一緒になりまして、話合いの上とはいえ、ずいぶん無理な手を打つております。普通の産業方面は実は石炭だけためても、電力がないためにこれが有効に動きません。むしろこの際、これは追いかけごつこであるかもしれませんが、電力の方に集中して、電力を出してほんとうに動くようにした方がよいだろうということで大分取上げてもおります。もう一つ先ほど申し落しましたが、従来自家発電について大分制限が加えられておつたのを肥料会社等で持つておる自家発電については、むしろフルに動かさせて、その間における火力料金の高さというものは、とにかく全体のために努力するのですから、電力会社等がこれを買い受けるなり何なりして、調整をはかるということにして、公益事業委員会を通じて大体了承させております。こういう形であらゆる方面をやつておりますが、要するに電力の問題は、非常に重要でありますけれども、全体的の産業にそういう減を起した事柄でありますので、それらに対しても、全体としてどういうふうにわけるかということがきまらないと、ただいますぐには申しかねますが、肥料については十分考慮を加えて行きたいと思います。
  42. 井上良二

    井上(良)委員 よくわかりました。ついては私から特にこれはお願いしておきたいのですが、そうなりますとこういうことになります。私どもも電力については、大阪が危機に陷りましてから、関西配電の当局者たちについて、いろいろ実情を伺つたのでありますが、一番問題は水力が不足をしておる。火力に切りかえなければならぬ。ところが火力に切りかえるにも、問題の石炭の確保がなかなか容易には、価格その他いろいろむずかしい問題がありまして、解決ができない。そこで外炭を入れようとしても、これが十二月、一月にならなければ役に立たない。さらに重油にいたしましても、設備の変更、施設の改良等に相当の日時がかかりまして、これまたさつそく利用することはできない。かりにそういう予定された補助的な対策が成功いたしましても、いよいよ水力不足に対する火力による発電というものが効果を上げて来ますのは、やはり二月末から三月になりはせぬかという時間的ずれをわれわれはここに考えておかなければならぬ。事実いろいろむずかしい経済的な悪條件が重つておる時代ですから、どうしてもそれだけの時間的なずれはここに参ります。そうすると政府のいろいろな努力にもかかわりませず、なかなか予定通り進まない。特に肥料生産にもそれが影響して来ることになりはせぬかということを、今日からわれわれは憂えておるわけです。そこで問題は来年の春肥の対策政府は今日から考えておく必要はありませぬか。いろいろあの手もこの手も打つたけれども、実際予定通り生産ができなかつた。その結果春肥が非常な暴騰を来すということになりましたときに、そこへ米の統制は撤廃される。こうなりますからこれはなかなかやつかいな悪條件になつて参りますので、少くとも来年の春肥の需要期を控えて、今私が農林大臣質問を申しました通り、一体市場価格を何ぼに安定さすか。これは一つ農業政策として、食糧確保の見地から、また食糧国内増産の建前から、どの程度に一体これを安定させたらよいかという対策を、今日から考えていただいて、さきに河野氏からもお話がありました通り、具体的に需給調整法なり、あるいはまた外安の輸入なり、いろいろな手を考えて、ここで手を打つていただきませんと、たいへんなことになりはせぬかという一つの心配をいたしております。この点について、電力なりあるいはまた石炭なり、外国の燃料なりについていろいろ手を講ぜられて、肥料増産へのいろいろの努力に対してはわれわれ敬意を表するのでありますが、さらに一層そういう悪條件——この渇水期に解決できない條件が横たわつておりますから、これをあなた方の方で見抜いてしまつて、今日からその場合に備える対策政府としても御検討願うように私は最後に要求したいと思います。そういう点についてどうお考えになりますか、この際最後の御答弁をいただきたいと思います。
  43. 周東英雄

    周東国務大臣 お話のように春肥の問題は、使用量の三分の二くらいになるわけですから、これに対する対策を今から十分に考えておけという御意見についてはまつたく同感であります。生産の面におきましても、最近大分火力についての石炭の集中増加の効果が少しずつ上つております。大阪における尼ヶ崎の火力発電の石炭をたく能力が大体一日七千五百トンくらいだそうです。それが従来三千トンぐらいでありましたが、最近は約六千トン弱、五千トンをちよつと上まわるぐらいになりました。先日雨が降りまして、私ども一部の人から、雨が降つて安心だろうと言われましたので、私はこんな雨は一日、二日でおしまいだろうと申しました。だから雨が降ろうが降るまいが当然渇水期に入るわけですから、今までの分を取返すということだけでもたいへんで、渇水期における石炭の手持ちがなくなつておる、そういう意味においても手はゆるめずに行くということでやつておるわけであります。どこまで行きますか、これはちよつとここで言えませんが、しかしかなりきゆうくつな状態にあります。従つてその間に処して、どのくらいの価格にするか、春肥に対して処置をするようにということはまつたく同感であります。農林大臣も、その点につきましては、農林省としての考えはそんなにかわつておらないということでありますので、私どもも政府の一員として、そういう意味において農林大臣を助けて行きたい。どのくらいに価格をつけたらいいかということでありますが、これは御心配ごもつともですが、ただいますぐに四月ころの価格をどのくらいにするということを申し上げることは、今のところ不可能だと思います。大体生産費が、どうなるか、これは原材料の関係並びに電力その他がどうなるかということによつても違つて来ると思いますが、お話のように、春肥の対策としては、十分施策を今から考えて行きたいと思います。
  44. 千賀康治

    千賀委員長 次会は来週火曜日午後一時に再開することといたしまして、本日はこれをもつて散会いたします。     午後三時五十二分散会