○
菊池参考人 菊池でございます。ただいま荷見先生からいろいろ総論的なお話がございましたので、私すぐ本論の方に入
つて参りたいと思いますが、本論に入ります前に、
食糧政策のあり方というようなものにつきましてはいろいろ見解のわかれるところでございますので、これには全然触れないで話を進めて参りたいと
考えております。なお話の進め方にいたしましても、現在
政府が
考えられているような線に沿うて、
業務の量と合せた
人員というような観点から、
食糧庁の
行政整理の問題についての見解を申し上げてみたいと
考えております。実は昨日先生方に申し上げる原稿の草稿のようなものをつく
つてみたのでございますが、一夜明けてけさになりましたら、情勢が
相当かわ
つて参つたのでありまして、内容の
相当不適当な箇所も出て参
つておりますので、口頭で述べさしていただきたいと
考えております。
食糧庁の
行政整理の問題は、今度の各省の中におきまして最も紆余曲折をきわめたことでございまして、これは政策転換とからんで
参つたというような経過から、こういう
関係に
なつて来たものと
考えられるのであります。政令諮問
委員会の答申案が出たのがたしか八月の末だ
つたと思うのでありますが、その当時農産物
検査を先ほど来御
意見が出ましたように、自治団体に移行せしめようというようなお
考えで、七〇%の
整理率というものが出てお
つたのでございます。こういうものに基本を置きまして、
政府の方で鋭意御検討いただいたようでございますが、結論として出て
参つた線は、農産物
検査の方は
検査法によ
つてや
つて行くのだということと、
管理制度に関しましては、これは全面的に廃止して、需給調整法をも
つてやるのだというような構想が立てられたようでございます。その結果
定員法に現われておりますように、
管理業務は六〇%、
検査業務は半減の五〇%、合計いたしまして五一・二%というような莫大な
整理率が発表されたのでございます。その後
司令部とのいろいろな交渉の過程におきまして検討いたされました結果、
定員法に出ておりますような附則がついて来たというのが大体の経過のようでございますが、この中で非常な
問題点が二つほどあるように
考えられるのであります。
一つは、今回の政策決定が閣議で非常に短期間に決定されているというような
関係上、細部にわた
つて業務の
実態を検討して行く余裕がなか
つたのではなかろうかと思うのでございます。従いまして、六〇%の
管理業務の
整理につきましても、どういうよりどころで決定されて行
つたかということに非常に不明な点が多いのでございます。その後主食
統制撤廃に関する
措置要綱というのが出ておりますが、その内容を見ましても、さらに不明な点があるのでございまして、その
業務の内容が決定しないうちに
整理の率がきま
つてしま
つたというようなところに、何かしら納得しがたいものがまずあるのでございます。先ほど来
業務量と見合
つた人員というような観点が各
参考人から、また先生方からも御
意見として出ているところでございますが、その点が一点ふに落ちない点でございます。
第二点といたしましては、
司令部との交渉の結果、特別会計の中の
整理人員のちようど半分でございますが、七千九百六十一名を情勢によ
つて復活することができるという附則がついているわけであります。このちようど半分であるということについて各方面の御
意見を承
つたのでございますが、岡崎官房長官のお話によりますと、これは麦の
統制を
撤廃した場合と、それにプラスして
業務を合理化した場合の
整理人員なんだというようなこともおつしや
つていると聞いております。ところが、
関係筋方面に実際に当
つてみたところでは、補正
予算のあ
つた際に、
関係方面としまして、まだ主食
統制問題に対する態度が決定していなか
つたというようなことから、一月から三月までの
整理人員を了承した。しかし四月から六月までの
整理人員を含めて
定員法の検討を求めて来た際には態度が鮮明に
なつていたというようなことから、附則のような
措置をと
つていただくというように承
つたのでございます。そういたしますと、この一—三の
整理人員と、四—六の
整理人員との間に思想的な流れがま
つたく違
つておるわけでありまして、一貫した
考え方に立つべき
整理の
基準が、ここで二つにわかれておるというような点が問題ではなかろうかと
考えておるものであります。先生方も今後の御審議にあたりまして、どうかこの
考え方を一貫するように御審議願えれば幸いだと
考えておるのであります。
以上が大体諸般の経過を顧みて感じた問題でございますが、次に今回の
整理の方針が
統制撤廃を唯一の足がかりといたしまして案の作成が進められているということでありますけれども、この
統制の
撤廃あるいは緩和というようなことが、現在の
統制機構を單純に
整理して行くということにはならないのではなかろうかというように私ども
考えている次第でございます。と申しますのは
統制以前の
農林省が、いわば戰前の
農林省が持
つていた機能が、戰時中に
統制機構にかえられましたごとく、再び自由な時代になりますれば、
統制の機能が性格をかえて生きて行かなければならないというように
考えるのでありますが、そういう観点から
食糧庁の機構を少し分析してみたいと思うのであります。
先ほど申し上げましたように、
管理業務と申します部分は、いわゆる
米穀事務所として昔需給調整に当
つていた機関でございます。それから
検査部門と申しますのは、先ほど来荷見先生からいろいろ詳しくお話がありましたように、昔の
食糧検査所でございます。この需給機関と
検査機関とが
食糧管理法制定を契機といたしまして、
仕事の上で歩調を一にしていたのでございますが、
昭和二十二年でございますか、統合いたしまして現在の
食糧事務所という機構に
なつたのでございます。そこで自由な時代におきましては、現在の機構は
食糧検査とそれから
米穀事務所という二つの機構であ
つたことをよく御認識願いたいと思うのでありまして、調整の問題の
関係する分野は言うまでもなく
生産に
関係のある調整機構、いわば
米穀事務所を前身とする機構でございます。
食糧検査機構は既存の
検査制度でございまして、そういう
意味で今後の
自由経済下における機能を十分発揮させていただくようにお
考え願いたいというように思
つているわけでございます。こういうように機能を異にする二つの機構が今
自由経済を迎えましてわかれるような機運にあるわけでございますが、今後の御審議に当りましても、どうかわけて御審議いただくようにお願い申し上げたいと思うのであります。
説明の順序といたしまして、先ほども荷見さんからお話のありました
検査の部門から御
説明申し上げて参りたいと思います。
検査部門は冒頭申しましたように、現在
人員をちようど半分にいたしまして、一万一千七百六十七名を残すというような観点に立
つておられるようでございますが、
検査が
統制のために生れたものではないということは、先ほど来の荷見さんのお話でも明瞭にわかることでございまして、明治二十二年——先ほど荷見さん三十年とおつしやいましたけれども、文献を拾
つてみますと二十二年のようであります。二十二年に同業者の
検査組織ができまして、その後明治三十四年ごろから逐次府県営の
検査が開始されて、
昭和九年には全国県営
検査に移
つたというのが
実態なようでございます。しかもその
検査機構の確立して行く順序をながめますと、
生産県から始まりまして消費県で終
つているというような形に
なつております。
昭和十五年に農産物
検査法というのができまして、
国営検査の形が打立てられたわけでございます。あらためて申すまでもなく、
国営検査ということは
統制に
なつてから始ま
つたのではございませんので、
昭和十五年の
統制に入るころに国営に
なつているという
実態も御認識いただきたいと思うのであります。このように
検査の
制度は既存の
制度でございまして、新しい情勢に対しましては、つまり
自由経済の社会が想定される場合におきましては、こういう時代に適応せしめるような構成、性格というものを與えていただくことが、今後の
問題点となるのではないかと思うのでございます。そういうことがもし十分果されないといたしますならば、農産物の取引機構の上に重大なブランクを残すような結果になることも予想されますので、愼重な御審議をお願いいたしたいと
考えております。国会におきましてはすでに
検査制度につきまして十分な御理解をいただいているところでございまして、先般三月に農産物
検査法が皆様のお力によ
つて制定されたわけでございます。この趣旨は今さら申し上げる必要もないところでございますけれども、将来次第に農産物が
自由経済機構に移
つて行くのだということを前提としてつくられたのでございまして、法律的にも従来
食管法八條に基いて
検査を実施いたしておりましたものを、單行法の農産物
検査法に切りかえたのでございます。そういうように
統制と
検査を漸次離して行くという方向が議会でも確認されているところでございまして、どうか皆様の先般の御確認をそのまま今後もお進めいただくように御
努力願いたいと思うのでございます。なお農産物
検査法の御審議をいただきました際の参議院の
農林委員会の質疑応答を私読んでみましたところ、非常にたくさんの注文が付されておるのでありまして、その一、二を拾
つてみますと、現在の
検査機構はまことに弱体である、もつと
人員をふやすなり、
予算を強化するなり、とに
かくしつかりや
つてもらわなくちやいけないというような、非常な御鞭撻を受けているところでございます。また
検査品目にいたしましても、北海道の議員のお方から出ている要望でございましたが、澱粉の
検査を忘れているということはいかぬ、あるいは除虫菊、はつかというような、こういう外国向け
生産品の
検査を落しておくということははなはだいかぬ、次の近い将来においては、ぜひこれらの農産物を
検査法の内容に織り込むようにという強い御要望があ
つたわけでございます。また長野県の議員の方だ
つたと思うのでございますが、あわ、ひえの雑穀類もぜひ入れなければならない、また製粉なんかにつきましても、ぜひこれは入れなければならないというようなことで、六品目ほど追加要請があ
つたのでございますが、いずれ農産物
検査法
改正の機会を見てこれらを追加するというようなことで、両院、全員一致賛成をも
つて通過を見たのでございます。そういうよらな経過をたど
つた農産物
検査法でございますが、国会の御理解をいただいている点を今後の政策の上に十分具体化していただきたいと重ねてお願い申し上げる次第でございます。くどくど申し上げるようでございますが、そのように
統制撤廃後の
検査の
業務というものは、
政府案のように
人員を半減してやれるかどうかということにつきましては、非常に疑問があるのでございまして、その理由につきましては先ほど来申されていることでございますので、あえて
説明をつけ加えませんが、メモ的に申し上げますと、
統制が
撤廃されましても、農産物
検査法に規定されてあります農産物の範囲というものは変更がないということ、それから
検査の数量には変更がない、むしろ増加の可能性があるであろうということは荷見先生からおつしやられた
通りでございます。また
検査の技術に最も嚴正高度化が要求されるということにつきましても、先ほど高倉先生から御確認のあ
つたような点でございますので、このほか
銘柄、
等級別の
検査を復活いたして参りますと、
仕事の範囲がきわめて複雑多岐にわた
つて来るということも否定できない問題だと思うのでございます。さらに農産物
検査の特徴といたしまして、
農家の庭先に及ぶような指導が今後ぜひとられる必要があるというように
考えておりますが、そこまで行きますと、現在の
人員ではま
つたく手
不足でございます。今後の問題としてぜひ御研究願いたい点でございます。
日本の
農業はしよせん
零細農でございまして、一定の数量を集めて
商品化するという上におきまして、規格の問題が非常に重要か問題に
なつて参ります。しかも
対象となる
農家は全国で六百万戸に及ぶ多数の
農家でございまして、これに一々
商品化技術を指導して参るというためには、どうしても庭先
検査を実施する必要が生じて参るわけでございますが、そういうふうな時代ができるだけ早く来るように今後の御研究が願わしいと思うのでございます。
先ほど高倉先生から御
意見が出ておりました臨時
職員の問題でございますが、これまでの経過を見ましても約二万人近い
検査員が
業務に当
つて参つたというのが
実態でございまして、忙しいときには臨時
職員を雇
つていたことは事実でございます。その臨時
職員を加えますと、これは年度はちよつと記憶にないのでございますが、約四万人近く
なつた時代があ
つたというように記憶いたしております。この
検査の権威というものを保つ
意味からも、非常勤
職員というような形で進めて参りますことは、今後の
検査の権威あるいは信用というような点から非常に疑問のあるところでございまして、ぜひ現在のように正規の
職員としての
検査員を配置いたしていただくように御研究願いたいと思うのでございます。
次に戦前と現在の
検査を比較いたしまして、
業務量が減
つているかどうだろうかという点について一言申し上げたいと思うのでございますが、先ほど荷見先生から国内の問題はほとんど同じであるか、あるいはふえるであろう、しかもその傾向としては小口
検査が戰前より増加するであろうということが申されているのであります。そのことが国内的な特徴でございまして、もう
一つ対外的な面が新たに加わ
つて参
つております。御承知のようにただいまの
日本の
食糧生産をも
つていたしましては、国内
食糧は約三百二十万トン
不足である、こう申されております。これは消費規正を
中心とする
管理制度があるので、三百二十万トンに押えられているわけでございますけれども、消費規正がもしなく
なつた場合、これは当然量の増加が予想されるところでございます。最近の
新聞を見ますと、
政府でもそのことを予想してだろうと思うのでございますが、五十万トンの増加をいたしまして、三百七十万トンを輸入するというように申しておられます。三百七十万トンと申しますと約二千五百石万になります。二千五百万石くらいの数量が外国から入
つて参るわけでございますけれども、この数量は実に莫大な数量でございまして、今日米の
供出数量が二千五百万石というようなことで割当てられるという報道が伝えられております。
日本の米の販売総量に匹敵するほどの外国
食糧が
日本に入
つて参るわけでございます。しかも戦前におきましては米の輸入は朝鮮、台湾に限られておりまして、その
検査は現地の
検査を信用してそのまま入れていたというのが
実態でございまして、何ら
検査がなされていなか
つたのであります。今後二千五百万石に対して新たな
検査が生れて来るという
実態があるのでございます。
以上大体
統制撤廃後の
検査業務が数量的に、また技術的に非常に複雑多岐に
なつて来るということについて申し上げたのでございますが、一面私どもの実行しております
検査に対しまして、きわめて非科学的だという御非難も受けておるところでありましで、非科学的なるがゆえに能率も悪いのじやないかというようなことも、あるいはお
考えの筋があるかと思うのでございます。これは確かに現状におきましてはさしを使う
検査が大部分でございまして、原始的な形をと
つていることはいなめない事実でございます。ただ申し上げたいことは、欧米の
農業のように大規模の
農業を行いまして、一戸の
生産量が
相当数量に上りますような場合には、その
検査は大量の中から抽出いたしまして
検査を実行するというような方法がとられるわけでございます。あるいは大量を大きな機械の中につつ込んでおいてサンプルをとり、
検査をするという方法がとられるわけでございますが、
日本のように
零細農を基本といたしました
農業におきましては、どうしても小口の販売数量になりまして、結局一俵單位の
検査にならざるを得ないのでございます。こういうような小口の
検査を実施いたします場合に、一々科学
検査というものを実行しで参ることに一定の限界が参ることは当然でございまして、先ほど荷見先生からもお話がございましたように、商取引の迅速性という点からも、ある
程度われわれの勘とさしの
検査、いわば熟練を基礎とした
検査というものが必要に
なつて参るわけでございます。なお今後科学的な施設も整いまして、科学的な裏づけのできるように
努力して参る計画は立
つているのでございますが、そういうように一定の限界があるということを御認識いただきたいと思うのであります。
最後に
検査問題につきまして一言触れさしていただきたいと思いますことは、先ほど来お話のありましたように、
検査制度は受益者によりまして手数料が支払われているのが常態でございまして、
統制撤廃後のこういう手数料収入というものを
考えてみますと、おおむね独立採算が可能な
状態が
考えられているのでございます。
検査関係の
職員というのは、こういうように財政的な
負担をあまり要しないところの
職員であるということが、他の
官庁機構に勤務する
職員と著しく趣を異にした点でございます。
なお御参考までに、この
検査員が半減いたしました場合に、
検査員の町村別配置がどういうようなぐあいになるかということについて、下から積み上げて検討してみたのでございますが、現在
検査員の配置のない町村は全国で三百七十一町村ございます。全国の市町村数が一万三百六十五でございますから、三%くらいになるかと思います。ところが
検査員を半減いたしました場合、
検査員の配置ができなくなる町村が三千四十になるように計算いたされております。その結果、約三割の町村が
検査員を持たない町村に
なつて来るということが申されるかと思います。先生方の御郷里の市町村をお
考えいただきまして、そういう
状態が起きて参りました場合、今後厳密な
検査を実行しなければならないような
経済情勢にありながらも、それは逆行するような
状況が出て参ることが、容易に御想像がつくのじやなかろうかと思うのでございます。
ここに数県のサンプルを拾
つて参つたのでございますが、岡山県におきましてはちようど三〇%くらいな町村が配置できなくなりますし、
委員長の御出身の県でございます岐阜県におきましては、五二%の町村が
検査員の配置ができない結果に
なつて参ります。また石川県におきましては、三八%の町村に
検査員の配置ができない結果に
なつております。長崎県におきましては同様三〇%、栃木県におきましては二七%というように、各県の
状況によ
つてかわ
つておりますが、農産物の
検査が現にできないというような
状況が出て参ることは必至でございます。ま
つたくこう
考えて参りますと、過去五十年にわたる農産物
検査制度の崩壊が今来ようとしているというような感に打たれるのでございます。
次に
食糧管理業務の面でございますが、これがいわゆる一夜にして情勢の変じた点でございます。従いまして内容についてどの
程度申し上げれば、
人員の的確な判断の基礎になるかということにつきまして、私何にも持
つておりませんが、ただ
新聞の伝えるところによりますと、麦だけは
統制を
撤廃するのだというようなことが申されておりますので、その線に沿うて
考えてみたいと思うのでございます。
食糧庁
職員の
行政整理についてというつづりがお手元にあると思うのでございますが、その最後に、その場合を想定した
業務内容の増減について
資料をつけてございます。その
資料のアウトラインを申し上げますと、
検査関係につきましては、先ほど申し上げました事由によりまして、何ら変更はないわけでございます。農産物
検査法の中に麦が強制
検査ということではつきり規定されておりますので、数量的にかわ
つて来るという要素が
一つも発見できないのでございます。また
管理部門のうち買入れにつきましては、麦につきましても、かりに
農家の希望に対して買い応ずるというような態勢を持つとしますれば、常時店開きをいたしておく必要があるのでございます。しかも麦の総
食糧の中に占めるウエートは、御承知のように二〇%前後でございまして、買入れ数量といたしましては、国内産
食糧の買入れ数量の中で二二%くらいなウエートでございます。従いましてそれじや二二%切れるのじやないかというような感覚が生れるかとも思うのでございますが、麦と米とでは時期が違うのでございます。何と申しましても、
食糧管理の面から申しますれば、米を買うという態勢が最も大事なのでございます。麦はま
つたくその余暇に現在まで買い入れる力があ
つたのでございます。その点で繁閑の差は多少出るかもしれませんが、必要
人員という点では、買入れで
減員が
考えられないというのが
実態かと思うのでございます。
次に売却についてでございますが、売却につきましては、今後の輸入
食糧の増加を
考えに入れ、また国内産米の買入れというようなことを
考えてみますと、最も大きな部分はそのままそつくり残
つてしまうという
関係に
なつて参ります。たとえて申しますならば、
昭和二十五年度における国内産米の買入れ予定数量が二千八百万石でございます。それから輸入
食糧が三百二十万トンでございますから二千二十万石、合計いたしまして四千八百二十万石、これが輸入
食糧と国内産米の数量でございます。これに麦の七百ないし八百万石を加えましても五千六百万石、その
程度の数量になるわけでございます。今年の割当は二千五百五十万石と伝えられております。さらに輸入
食糧が三百七十万トンといたしますれば二千五百万石になりますが、合せまして五千五十万石、それにどれだけ加えるかわかりませんが、販売数量は、八百万石の麦のうちかりに半分入
つたといたしますと、昨年までの売却数量とちつともかわらないという結果に
なつて参るわけでございます。買入れの面におきましても、売却の面におきましても、輸送、保管の面におきましても、
業務量にはいささかも変化がない。しかも
仕事の
実態は複雑に
なつて参ります。御承知のようにこれまでは却売業者に払い下げて
参つたものが、今後の払下げの形式は、自由市場を通じて流すわけでございますので、いろいろな面で複雑な面が生じて参りまして、
仕事の量は減
つて参らないというのが、麦だけはずれた場合の
実態だろうと私ども見ておるのでございます。
資料をつけてございますので、よく御検討を願いたいと思うのでございます。
以上要約いたしますと、新しい情勢に基く
食糧管理におきまして、何ら私ども
減員の余地というものを
考えられないように思うのでございます。
定員法のことについて申し上げる予定でございましたが、これは新しい情勢のもとにおそらく修正されると思いますので、これについてはここでは触れないことにいたしたいと思います。
次にもう
一つ申し上げておきたい点は、財政的な見地から見た
食糧庁の
人員の
整理でございますが、
政府が今度とられておりますところの
行政整理の基本的な理由と申しますのは、財政
負担の軽減にあるように私ども聞いて参
つておるのでございます。この財政
負担の軽減によりまして、結論的には減税をはかるということが
政府の目的のようでございますけれども、こういうような見地から
食糧庁の
人員整理を見ますと、ま
つたく
意味のないことは先生方御承知の通力でございます。と申しますのは、
食糧管理に必要な一切の経費というものは、これまで
食糧管理に当
つたサービスの代償といたしまして、消費米価の中に織り込む建前に
なつておるのでございまして、お手元の
資料の中にございますけれども、全部消費米価の中に含まれております。税金からは建前としては
負担をいただかないことに
なつているのでございます。ただ輸入補給金とインヴエントリー・フアイナンスの面におきまして、財政
負担が生じているのでございますが、その輸入補給金は御承知のように二百二十五億円でございまして、インヴェントリー・フアイナンスは百億円が計上されているのでございます。しかし輸入補給金につきましては、池田蔵相は今後も輸入
食糧の価格調整をするために補給金は支出して行く
考えであるということを申されております。そういうことになりますと、この輸入補給金の面は、財政
負担の軽減というものには別につながらない問題と
なつて参るわけでございまして、インヴエントリー・フアイナンスの百億だけが問題かと思うのでございます。かりに——これははなはだ私見にわた
つて恐縮でございますが、百億円と申しますと現在操作されております約六千万石の数量で割
つてみますと、石当り八十五円くらいでございまするし、一升にいたしまして八十五銭に
なつて参ります。で、
統制がはずれた場合に、よく
政府の要路から申されておることでございますが、米は百十円くらいになるだろうというようなことを申されております。この百十円ぐらいということにつきましては、私ども別の
考え方を持
つておりますが、かりに百十円といたしましても、現在公定価格が八十七円ほどでございますから、二十三円ほど一升について上るわけでございます。そうなると、インヴエントリー・フアイナンスが
統制のために存在するそのための財政
負担が一升八十五銭であるとすれば、ただいまのように、
統制撤廃後百十円ということによ
つて一升当り二十三円の
負担をいたします消費者にと
つては、インヴエントリー・フアイナンスがあ
つた情勢の方がよいのじやなかろうかというよろな感覚もあるいは出るのではないかと思います。そういうような点から見ますと、インヴェントリー・フアイナンスは、米の値上りによ
つて支払われなければならない
金額に比しまして、きわめて少い
金額ではなかろうかというようにも見られるのでございます。このように見て参りますと、財政
負担の軽減を理由とするところの
行政整理という問題には、
食糧庁の場合つながらないのではなかろうかと
考えている次第であります。
次に今回の
行政整理全般にわたる問題について、多少触れさせていただきたいと思うのでございますが、以上申し上げましたように、
食糧庁の
人員整理につきましては、どうも私ども理論的に納得しがたいものがたくさんあるのでございまして、どうかここを十分御審議願いたいと思うのでございますが、
行政整理の行き過ぎということにつきまして、先ほど荷見先生からお話のありましたように、国民に対する
サービスがそのためにこわれてしまう、たとえば農産物
検査の
制度がこわれてしまう、あるいは需給調整もやれなくなるというようなことになりませんように、どうか愼重な御審議を願いたいと思うのでございます。今回の
行政整理を全体的にながめまして、
農業関係に非常に重くかか
つていることは各
参考人から申されていた
通りでございまして、お手元の
資料の中に各省の
整理率と比較したものがございますが、
農林省全体といたしまして、三一・四%でございまして、これに次ぐ
整理率を示しておる省は通産省の二〇・九%でございます。その次が大蔵省の一五・一%でございまして、その他は三%から六%の間に
なつているのでございます。こういうように今回の
行政整理の三割を
農林省が一手に引受けておるような形に
なつておりますことが、どうも私どもの常識的ならち外を越えておるよう思われてならないのでございます。これははなはだ失礼な話でございますけれども、そういうような感じがいたしておるのでございます。特に
食糧庁の
職員についてきわめて苛酷でございまして、過半数の
整理というような形に
なつておるのでございます。これは
統制撤廃に基因するものであるというような御理由かと思うのでございますが、この
統制撤廃に関するところの
整理は、
農林省内におきましてもう一箇所
統計調査
関係の
職員がございます。これがやはり四五%の
整理率を適用されておるのでございまして、二人おれば、お前かおれかどつちかというような、そういう
整理率でございます。
統計につきまして先ほど来松本先生から種々御
意見が出て参
つていたようでございまして、申告調査等によ
つてや
つてもいいのではなかろうかというようなお話であ
つたように承
つております。しかし現在
統計技術というものは、世界的に非常に高いレベルに達していることは御承知の
通りでありまして、世界の
統計のレベルというものがある
程度そろ
つておりませんと、
一つの国際的な
統計というものはまとま
つて来ないこともおのずから明らかなことだろうと思うのでございますが、申告調査のような場合におきましては、いわば
統計技術的に見ましたところの確率と申しますか、正確度というものが出て参らないのでございます。科学的な基礎のもとに立ちました
数字においてのみ
一つの正確度というものが
考えられるのでございまして、その辺もひとつ世界
統計の水準から御判断が願えれば、御理解いただけるのではないかと思うのでございます。わが国の
統計は数年前に参りましたドクタ一・サールによりまして、やつとこれで国際的な水準に達したのだというような賞讃の言葉をいただいておるわけでございますが、ただいまこの賞讃を水泡に帰するようなことがありますと、これまでの
努力がま
つたく何のためや
つたのかわからないようなことになると思いますので、この面につきましても、十分御検討が願いたいと思うのでございます。なお
統計の面につきましてつけ加えたいと思いますことは
統計は必ずしも
統制のために生れたのではなくて、ただ戰後生れたものだから
統制のために生れたもののようにお感じになるかもしれません。あれは
司令部からもたしかサゼスチヨンがあ
つてできた組織だと思
つていますが、その際は
政府もまた民間人も、一切のものから離れた第三者的な
立場においてものを正確につかむ機関をつくるのだという趣旨でつくられたのでございます。決して
統制のためにつくられたのではなくて、
国家百年の計の基礎といたしましてつくられた組織でありますことを、あらためて御認識願いたいと思うのでございます。
なお今回の
行政整理につきまして、さらに社会的な
問題点があると思うのでございますが、それは
行政整理のあとに何ら
失業対策というようなものが確立されていないことでございまして午前中
毎日新聞の
井上さんの触れられた
通りでございます。この点をどうかもしおやりになるならば十分国民が納得できるだけ御
説明いただきたいのでございます。ことに
食糧庁の場合あるいは
統計関係の場合というものを拾
つてみますと、半数あるいは過半数に及ぶ
整理人員でございますのでこれまでのように残留者が少数の
整理人員に対して友情をも
つて就職のあつせんを
努力した、あるいは永続勤務者が退職金で何かの
仕事を始めるとい
つたようなことで、救済が講ぜられていたこともま
つたく困難になるのでございます。半数以上の人が切られるということになりますれば、当然同僚愛をも
つていたしましても救済の方法はございませんし、また永続勤務者ということではなしに、きわめて短期な勤務者につきましても、その事情を問わずに辞職を勧告しなければならないというような事態が出て参るわけでございます。このような人々が、将来の
自分の身分の不安定というものをすでに感じているようでございまして、職場における動揺はきわめて大きいようでございます。どうかこの辺につきましても、政治家としての先生方の十分な御配慮によりまして、路頭に迷う
日本人の一人も少くなるような方向で御審議が願いたいと
考えるのでございます。私の
意見を終ります。