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1951-11-06 第12回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月六日(火曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 木村 公平君    理事 青木  正君 理事 坂田 英一君    理事 船田 享二君       大内 一郎君    鈴木 明良君       本多 市郎君    松本 善壽君       小林 運美君    村瀬 宣親君       井上 良二君    松澤 兼人君       加藤  充君  出席国務大臣         行政管理庁長官 橋本 龍伍君         農 林 大 臣 根本龍太郎君         労 働 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         人事院総裁   浅井  清君         行政管理政務次         官       城  義臣君         農林政務次官  島村 軍次君         労働政務次官  山村新治郎君  委員外出席者         農林事務官         (農業改良局統         計調査部長)  安田善一郎君         労働事務官         (大臣官房秘書         課長)     江下  孝君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      亀井  光君         労働事務官         (職業安定局         長)      齋藤 邦吉君         專  門  員 龜卦川 浩君         專  門  員 小關 紹夫君 十一月六日  委員苫米地義三君及び小平忠君辞任につき、そ  の補欠として村瀬宣親君及び高倉定助君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一八号)     —————————————
  2. 青木正

    青木(正)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は昨日に引続き行政機関職員定員法の一部を改正する法律案について質疑を行いますが、質疑に入ります前にお諮りいたしたいことがあります。本法案は重要なる議案でありますので、明日参考人より意見を聴取いたすこととし、参考人の人選につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青木正

    青木(正)委員長代理 御異議なければ、さようとりはからいます。     —————————————
  4. 青木正

    青木(正)委員長代理 それではこれより質疑に入ります。質疑通告によりこれを許します。井上君より質疑通告がありますから、これを許します。井上良二君。
  5. 井上良二

    井上(良)委員 昨日主として農林省所管人員整理について質問中、大臣の都合で質問を留保いたしたのですが、今日も大臣は非常にお忙しいそうでありますから、重要な要点だけを御質問申し上げたいと思います。農林省行政整理のうちで、最も大きな整理対象になつております食糧庁整理の問題でございますが、昨日行政管理庁長官は、政府食糧統制撤廃を四月一日より実行することにした、万一四月一日に実行不可能な場合は、七千九百六十一人を復員さす、こういう御意見でございました。     〔青木(正)委員長代理退席委員長   着席〕 そこで問題は、一万六千十四人のうち七千九百六十一人を、かりに統制撤廃が不可能な場合は残すが、残余の八千五十三人は一月から四月までに整理することになる。ここで問題になります一つは、一月から四月まで現行食糧管理法によつて食糧需給操作が行われておりますが、この場合一月から麦の統制がはずれるとすれば、これだけの人は整理してもよいのかどうかということでございます。そこで昨日この問題についていろいろ伺いましたが、麦の統制をはずしただけで残余統制管理事務が残つておりますので、その場合残余人間ではたして円滑なる需給操作が可能なりやいなやという問題が一つございます。この問題について、昨日事務当局責任者であります食糧庁長官に伺いましたところ、麦と米とを切り離して、麦の場合の人員はこれ、米の場合の人員はこれというように区分をして食管行政を行つておるのではない、立体的な行政としてこれを行つて来ておるのであるから、麦がかりにはずれたといたしても、実際の実働人員というものは、かくのごどき多数が整理されたのでは、実際の運営は困難であるということを明確に答弁をされたのであります。そこで問題は、この八千五十三人を整理するにあたりまして、具体的な法的根拠というものは、何によつて政府は行おうとするか。そこで問題は、圧縮いたして伺いますが、先般農林省設置法に伴う定員法国会承認を得られまして、その定員法による食糧庁所管定員はこれこれということで、国会承認を得ておるのであります。その食糧庁所管定員は、現行食糧管理法の施行に伴う必要な所要人員であるということは、法的に明らかであります。そうしますと、農林大臣はこの八千何ぼを整理するにあたりまして、一体どの法律によつてこれを整理しようとするかということがここで具体的になつて来なければなりませんが、何らこれに関連する法的な措置というものが国会に提案されておりませんので、この点を明らかに願いたい。これが一点であります。  それからいま一つ、昨日行政管理庁長官は、この附則第三項は、この法律国会に提案するにあたつて司令部との折衝の結果、司令部側からの要請によつてつけたものであつて、これは単に国会提出事務手続としてつけたような御答弁のように承つております。従つてこの数字というものは、はつきり具体的にかくかくなりという根拠に立つた数字でないような——もつと極端に申しますと、政府当局自身責任にあらずして、司令部からそうしろと言われたからしたのだ、こういうような御答弁であつたように伺いますが、その点農林大臣はそうお考えになつているのですか。この点もあわせて御答弁を願いたい。
  6. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答えいたします。まず第一に今回の行政整理対象になつておる一番大きな問題は、農林特に食管関係職員である。しかしてこの行政整理にあたりまして、もし四月一日から統制撤廃にならなかつた場合においては、附則第三項において七千数百名の人間を復員せしめるということについて、井上さんは、これは麦の統制撤廃を四月一日からやるという仮定をしてやつたのであるが、しからばその場合、麦の統制撤廃によるだけでそれだけの人間が減ることができるかどうか、こういうことの御質問であります。これにつきましては、井上さん御自身も御承知のように、現在の定員は、実は食管法においては雑穀いも類その他も全部主食として従来は見ておつたのでございますが、これは国内食糧事情の充実とともに漸次緩和して参りまして、現在は米麦だけでございますし、さらに今度一月一日から麦について統制をはずすということになりますれば、従来の事務量からすれば、これは相当軽減されておるということは何人も認め得ることだろうと存じます。しかし食糧庁長官がどういうことを言つたか、今あなたの言つたことだけをそのまま受取つて参ります場合に、食糧庁長官が、これだけの人間は麦の部分、これだけの人間雑穀部分というようなぐあいに定員をきめているわけではございません。従つて明確に麦のために何人減らせるとか、雑穀のために何人減らせるというふうな機械的な計算はできないと存じます。しかしながら政府とし、特に農林大臣といたしましては、諸般の事情を総合的に考察いたしまして、最小限度人員をもつてこの主食管理を実施するという、政府基本方針に基いて政治的に判断した結果、私は今回の整理方針でやれる、こう確信したものでございます。事務当局からいたしますれば、現在の定員がもつとほしいというような要求をされるのは、これはどの事務当局でも同じでございます。いずれの官署におきましても、事務の量と人員との関係においては、見方によつていろいろこれは考えがあると思いまするが、食糧長官が万全の上にも万全を期し、そうしてできるだけ自分の部下を整理することは差控えたいという気持はよくわかるのでありまするが、これはただいま申し上げましたように、麦の分について何ぼ減らす、こういうような計算ではなく、総合的に見て、現在の程度で間に合わして行きたい、こういうところでございます。これで万全であるかどうかということについては、意見の相違があると思いまするが、これで間に合わして行きたい。もし足らない部分においては、他の事業費その他において考えても、でき得るだけ定員を減らすことによつて、これは井上さんが昨日も言つておりましたが、これは食糧庁人員独立採算制関係からして、究極において政府財政負担にならぬ、こう言われておりますが、財政負担にならない一面におきまして、実はこれが消費者価格に転嫁されておるわけでございまして、その点から見てもでき得るだけ人員を減らし、そうして可能な最小限度定員をもつて運営するということは、これまた政府努むべき点だと考えております。  それから第二点の、附則第三項が総司令部との事務的折衝の過程においてやむを得ずああなつたというような御説明ということでありますが、この折衝には私は参加しておりませんので、事実はよく存じません。但しこの附則第三項が出たということについての考え方は、あなた方も御指摘のように、母法であるところの食糧統制撤廃に関する基礎法が出ていないにもかかわらず、定員法においてはあたかもそれを全部アプルーヴしたがごとき定員法であるならば、総司令部としての意見の統一がとれていないというような形になつて、あるいはまた一面から言うならば、事前に食糧統制撤廃に関して完全なる了解を得たというような印象を与えるのは好ましくない、こういう観点からして、あのような附則をつけるというようなことになつたのではないかという観察はいたしております。われわれの方といたしましては、すでに橋本長官からもお話なつたと思いますが、政府といたしましては定員法を制定し、また予算を編成する場合におきましては、四月一日から主食統制撤廃をするという方針のもとに策定したものでございます。その意味におきまして、この定員法その他がただいまのように編成されたことも、これ当然と思います。しかしながら母法であるところの食糧統制撤廃の問題につきましては、御承知のようにいまだ関係筋との間の了解を得ていないために、今折衝中でございまして、その意味においてこの時間的ずれがかようなかつこうになり、立法の形式からすればまことに不体裁な形になつたということは遺憾に存じておる次第でございます。
  7. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 昨日私の申し上げたことに少し井上さんの方に誤解があるように思いますから、筋を私申し上げて、もう一ぺん申し上げておきます。今農林大臣答弁のあつた通りでございますが、この附則のつきました趣旨、それに対する私たちの考え方はこういうことであります。政府といたしましては、主食統制撤廃をいたし、その順序としては麦の統制撤廃を先にやり、それから次いで米の供出後の自由販売をやり、それから四月一日からは米の配給撤廃をする。供出に関しては二十七年度は一つもないという筋で補正予算も、また定員法も立てたわけであります。しかして補正予算は、御承知のように全体の整理人員の半分を補正予算で落すという建前に相なつておるわけであります。従いまして私ども政府考え方といたしましては、何も人を仕訳して、米で幾ら、麦で幾ら、何で幾らというように考えたことはございません。総体主食統制撤廃をやり、それからあと残つて需給調節をやり、検査をやるのも、できるだけ簡素な人数でやるという建前計算すると幾らで済むかという総体人員計算をいたしたわけであります。しかし補正予算を組むという建前に相なつて来ますれば、そこに一つのけじめをつけなければなりませんので、二十六年度内には、一月から麦の統制撤廃をやり、大体米の供出後の自由販売は年度中にやるという建前を含めつつ、補正予算の中で約半数を落すということにいたしたわけであります。従いまして総司令部関係折衝におきましても、そういう趣旨で話をいたしたのであります。ところが経済科学局の方面においては、年度内に行いますところの麦の統制撤廃関係については自分の方は異存はない。米の統制撤廃の方も異存があるということをきめたわけではないけれども、オーケーするということをきめたわけでもない。従つて残りの半分の分については、これは結局その分が米になるわけだが、ここで全面的に定員を通過させて、万一にもぐあいの悪いときには定員をふやすことになるのだろうけれども、総司令部の意図というものが、何かここできめたようなことになると困るから、その点をはつきりしておきたいということであつたのであります。政府として、あの附則をつけるということはまつたく希望しないところでありまして、従いましてあの附則のついたのは、総司令部との定員法を提案するについての事務折衝の結果出て来たものであります。人数の点につきましては非常にいいかげんに計算したように言われましたが、そうではございません。ただ政府考えたのは、総体を一体として人数考えて、仕訳をしてみたことはありませんけれども、しかし補正予算を提出するときに、年度内に麦の統制撤廃をやるという建前で、かつ補正予算年度内に半分落す。人数補正予算で半分くらいに落すということになりますれば、たつて仕訳をしてみれば、米の分が七千九百六十一人あるということに相なりますので、その仕訳をして数字を立てるということにつきましては、総司令部との間にああいう附則の案文をきめることに話をしました。そうして閣議の決定を経て、最終的なオーケーを得て提案をいたした次第であります。従いまして当初から米の分で幾ら、麦の分で幾ら、一般的な能率増進幾らという仕訳をして人数を積算したわけではありませんけれでも、しかし仕訳をするということになれば、七千九百六十一名は米の統制撤廃が万一行われない場合に復活すべき人数であるということは、はつきり考えております。
  8. 井上良二

    井上(良)委員 そこで私どもこの問題を何でこんなに食い下つて聞いておるかといいますと、問題は整理される人の多い少いということよりも、一月から四月まで政府が内地産麦以外の統制をまだ実施することになるわけであります。またその結果から、当然三月一ぱいまでの供出や、あるいはまたその他配給等に関連する食糧統制の円滑な運営が可能なりやいなやということが問題であります。われわれが心配します点はその点にある。そこでこの八千何ぼを整理しました後に実際可能なりやいなや。これは一月から四月までかかつてやる仕事だからただちに影響はない、こう考えれば考えられるが、しかし整理対象になる八千何人という人もやはり新しい仕事を探す気持も起つて来ましようし、いろいろそこに事務整理の問題もありましようし、実際上政府が円滑にやらなければならぬ行政管理事務というものが、非常にそこに能率的に行かない面が出て来るという実際の問題をわれわれは考えて見ておるのです。政府は盛んに麦の統制をはずすはずすと言いますけれども、これは外国輸入小麦は全部政府が一手管理する、単にこれの配給だけが政府の手からはずれるだけなんです。あとは今までと一つもかわりません。そうすると、一月からはずれるというのは何かというと、内地産麦のものだけだ。ところがすでに内地産麦供出は完了してしまつている。それでその配給の面においても、内地産麦現実配給するものはないですよ。あとは全部外国産麦、外国小麦外国粉であります。一月からやる場合に麦をはずすはずすと言うけれども、すでに内地産麦供出は終り、それの配給は一切済んでしまつておるのです。政府は麦をはずすはずすと言うけれども、それは単なる給配面統制をはずすだけであつて、実際の仕事というものは内地産米外国輸入食糧だけに限つておるのです。そういう事実から考えてみて、ここに八千もの人を減すということを発表して、はたして円滑に供出政府予定通りの数量を完遂し、また輸入食糧についての管理払下げ等が総合的にうまく行くか行かないかということが、ここに問題になつて来る。問題はそこなんです。そこでわれわれがその点について聞きますと、政府の方は、いやどうもお前はそう言うけれども、実はいももあり、雑穀もあつて、これははずしたのだ。そこへ麦をはずすのだから、相当多くの人員が省けるような印象でございますけれどもいも雑穀をはずしたというが、これにかわる食糧配給されておるのです。いも雑穀をはずしただけ食糧配給が減つたかというと一つも減らないのです。いも雑穀をはずしても、これにかわる外国輸入食糧によつて国民配給量現実に減つていないのです。そうなつて来ますと、結局あなたがお話になりましたいわゆる人員整理は、事務当局がどう言おうが、政治的判断によつて人員整理数字をつかみ上げた、こう言う。恐ろしゆうどうも物騒なことだとわしは思うておる。少くとも定員法によつて食糧庁食糧行政をやつて行くのには、これだけの人間がいるという現実の事態に、科学的な行政的な検討を加えて、その結果国会承認を経て現在の定員法というものはあるのです。これを減らします場合は、当然その行政運営についての具体的な事実を検討して、国民に重い負担をかけないように、また実際行政能率を高めるという上から、これこれこれの点は省いてよろしい、これこれこれの点は現在国民の大事な食糧統制責任を持つてつておる政府としては残しておかにやならぬ。そういう具体的な事実に基いて、具体的な対象を検討して、その上で必要とする定員をきめるべきであります。そうではなしに、政治的判断に基いて整理するなんということを言つた場合、一体法律は何のために必要がありますか。そりや今の内閣皆さんそれぞれおえらい人ばかり集まつておりますから、そんなこまかいことを一々調べなくても、わし政治の勘で行くんじや、政治能力判断によつてやるんだと言われるか存じませんが、少くとも国民も納得し、国民をして得心せしめるためには、これこれこれの必要があつてこうするのだという具体的な事実が明らかにされないでは、国民は納得いたしません。そういう点で、今の御答弁ははなはだわれわれは満足することができません。そこでかりに今行政管理庁長官及び農林大臣が御答弁になりましたように、一月から麦をはずす、四月からは米をはずすと言われますが、はずしました後においても、政府食糧をまつたく自由かつてに放任するではなしに、外国食糧政府が一手にこれを輸入する、管理する、保管する、同時にこれを払い下げる、また国内米麦も農民の希望するものは無制限に買い上げる、こういうことで、事実食糧管理の一環が残ります。そうなりますと、四月以降の場合、政府が継続して行こうとする外国輸入食糧一手輸入及び管理保管払下げ内地米麦の無制限買上げ等に要する所要人員は、一体どのくらいを予定されておりますか。これをひとつ具体的に聞きたいものであります。
  9. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま井上さんは雑穀並びにいも類をはずしても、それにかわるべき麦その他粉が配給されているから、従つて事務量は減つていないはずだ、こういうようなお考えでありますが、これは專門家である井上さんから見て、少し言い過ぎじやないかと私は思う。御承知のように、いも供出についても、この保管については最も多くの人員を要したのであります。そのためにいわゆるキユアリング倉庫の問題とか、いろいろの問題を残しております。輸入食糧については大量一括して参りまして、しかもこれが委託加工して、そうして配給されていますので、その点は雑穀供出配給した当時からすれば、非常な事務量の減少でございます。なおまた一月一日から麦について統制をはずすという場合になりますならば、これは供出と同時に配給事務全部がなくなりまして、自由流通市場においてこれがなされるわけであります。そういう点を勘案しますれば、大体従前の定員の半分程度でやり得る、これがわれわれの見通しでございます。第一回の整理のときにも、非常に問題になりました国鉄従業員十万を首切るということは、ただちにこれは汽車がとまるのだ、停車場が動かぬとか、いろいろの意見がございましたけれども、あの当時われわれがいろいろと事務的な意見の反対があつたにもかかわらず実行して、事なく行つたという事実があるのでございます。今回の私が申し上げたところの政治的判断というのは、決して単なるあてずつぽうではございません。事務当局からしますれば、できるだけ人員を擁して、そうしてゆつくりやりたいという気持なのは当然でございまするが、その事務的な意見だけでこういうような行政整理はやり得ないのであります。そしてやはり政治的判断事務的要請とを総合して決定するのが、行政整理におけるところのやり方だ、こういうことを私は申し上げているだけでございます。  なお具体的にどれだけの人間が今後の需給調整をやる場合に必要であるかということでありますが、私は資料を持つていないから詳しく申し上げられませんが、見当としては、皆さんも御承知のように、戦前において米穀統制法を実施しておつた当時、たしか昭和十五、六年の状況におきましては、当時多いときには一千万石、少いときにおいて六、七百万石の買入れ、放出をやつてつた。その当時においては雇員その他一切を含めまして約一千二百名程度でございました。現在これに対応しまして輸入食糧が約二千万石程度つて参つております。従来統制を続けるという場合においてすら政府が買上げしたのは二千七百万石程度、麦においても約七、八百万、多いときには八百万程度でございます。こういうような事務量でございますので、これが麦、雑穀などについては全然その措置がなくなり、そうして末端配給に至るまでの調査、さらに今度は供出制度が緩和されて来ますと、現在の末端における検査員仕事米そのもの検査する以外に、御承知のように一々証票について計算のあれをやつておるのであります。これが非常に厖大な労力を要するのでありますが、これがなくなる。これが大きな軽減になるのでございます。そういたしますれば戦前における二倍あるいは三倍の人員を要するといたしましても、大体において四千そこそこで足りるのであります。そういうふうな計数的なことを見ましても、なお事務簡素化あるいは能率増進、こういう点を考えますれば、八千そこそこ人員がありますればやり得る、こういうふうなわれわれは考えを持つておるのであります。ただあなたが御心配になつておるのは、おそらく農産物の出まわる時期が一時に集中しておる、そのときにおいて、そのピークにおいて非常に困るだろうということは確かに考えられます。特に食糧関係のうち、検査事務収納関係仕事は非常に時期的に繁閑の差が著しいのであります。この一番忙しいときにフルに右から左にすぐさつと行けるようにすれば、定員を相当多くしなければなりませんが、全体を平均してやつて、そういう忙しいときには臨時的な事務費臨時傭員を使うということになれば軽減される、こういう意味でございます。その意味においては政府としましてはフルの、いわゆる一番忙しいときに遅滞なく全部右から左にやるというところの措置をとりますれば、仕事の閑散のときにはずつと人員は余剰を来します。これはとるべきではないということで算定したのでございます。そういうような総合的な判断からいたしまして、ただいま提案しておる定員法ができておるのでございまして、事務当局側から申しますれば、十分な人員をもつてそうして万全の上にも万全を期したいという気持でございましようが、政府といたしましては、これら事務職員の俸給がすべて中間経費として消費者価格にも入つておるのであります。そういう観点からしてできるだけ少い人数で、相当困難であつても、この整理を実施したい。これが現在のわれわれの考え方でございます。
  10. 井上良二

    井上(良)委員 時間がありませんから、できるだけ簡単にいたしたいと思いますが、今四月以降政府外国食糧なりあるいはまた内地米麦の買上げ等に要する所要人員はどのくらいかという私の質問に対して、具体的な所要人員はここに資料を持つていないから申せないが、大体統制以前の状況なりを勘案し、その後またそれらを自由経済の状態に持つて行くまでの過渡的な諸般の情勢を織り込んで、かたいところ見積れば四千くらいでないか、しかしそこへ行くまでには非常に準備その他を要するので、大体八千くらいが政治的な感覚の数字ではないかと自分は思う、こういうあなたの答弁であつたのです。ところが政府から出されております資料によると、食糧庁定員は三万一千余、それに今度整理します人員が一万六千、そうするとあとに一万五千残る。そこであなたの言う八千と一万五千との開きがある。あなたは八千あればいいという。しかし整理した後にまだ一万五千残つておるのはおかしいじやないか、これはどういうことか、こう聞いておるのです。
  11. 根本龍太郎

    根本国務大臣 私の説明が少し抜けておつたからそういうふうな感じがしたかもしれません。私が申し上げたのは、戦前における管理事務については一千二百名程度であつた。今後統制をはずした場合、外国食糧を全部管理し、また内地麦その他について買上げ操作するということを見ましても、その面においては三倍その他がありますれば、その程度でできるという見当もあるのだ。しかしそれより余裕を見ておつたということが一つ。それからもう一つは、これを言い残したためにそういう誤解が起きたでしようが、検査事務につきましては、大体一箇町村一人でいいという議論もあつたが、それは少しきつい。現在の要員の約半分でやれるという見当でやつておるのであります。それはどういうことかと申しますと、先ほどちよつと御説明申し上げましたが、現在の検査官は、御承知のように米をさしを入れてみるというほかに、今の計算事務、証票をうんと書いておる。今度は統制がなくなりますと、これがずつと減つて来る。こういうことを勘案しますれば、事務量において約半数になつていい、こういうことで検査事務においては半数、それから管理事務については六割減、こういうことで算定いたしておるのでございまして、数字の点について説明が足りなかつたために、管理事務だけであとの者は全部抜いてもいいというような聞き取り方になつたかもしれませんが、それは間違いでございまして、ただいまのような数字でございます。
  12. 井上良二

    井上(良)委員 わかりました。今度の整理の目的の一つは国の予算を削減したいということが、大きな目的になつておる。ところが今度の食糧庁の一万六千の整理は直接国の予算には関係がない。これは中間経費によつてまかなわれておる。事実上国の一般予算には関係がない。ただここで関係がありますのは、食糧庁の特別会計に赤字が出ました場合に、一般会計から補填せなければならぬというときに、一般会計が負担はしますけれども、しかし実働人員自身の経費というものは、消費者が負担しておる建前になつておる。そこでさきにもお話がございましたが、そうすると統制をはずせば中間経費でまかなわれておるそれ自身がなくなるから、それだけ消費者の負担は軽くなるのではないか、こういうお話のように承りますが、しかし私ども計算によりますと、現行の消費者価格の中に含まれておる中間経費というものは、いろいろな角度から計算をいたしましたけれども、大体、二・四九%くらいではないかと押えております。それを自由経済時代に比べますると、自由経済時代は卸、問屋、小売り、この三段階をどうしても通りますので、その場合のいわゆる口銭といいますか、中間経費でありますが、これが二一%くらいになつておる。従つて現在の統制時代の方が、正真正銘の中間経費のマージンを計算いたしますと、安いということになります。従つて統制をはずしたら中間経費が安くなつて、消費者の負担がそれだけ軽くなる、という説明のようにはならぬとわれわれは考えます。この点に対して大臣はどうお考えになりますか、これをひとつ伺いたい。
  13. 根本龍太郎

    根本国務大臣 井上さんが指摘した点については、そういうふうな考え方もございます。ただ私がただいま申しておるのは、統制撤廃して、政府が操作をする場合におけるところの経費の問題にからんで来るのであります。従つてその場合においては、現在と同じような人員をもつてやるとしますれば、政府が操作によつて相当安くすることができるところのものが、原価が高くなつて来る、こういうことの議論になるのであります。全体として、統制撤廃した後に中間経費が現状以上に安くなるかどうかということについては、いろいろの議論があるようであります。たとえば現在いろいろの中間商人が常に固定したマージンをとつておるかというと、ある場合には損をして競争して合理化してやるということもあります。おそらく大体現状通りじやないかという議論もあるようでありますが、私は今それに触れているのではありません。政府は今度統制を廃止いたしますので、結局は多数の人員をもつてつて行くとすれば、政府が買いとつたり、あるいはまた輸入したものを放出する場合に、それだけ単価が高くなるわけです。単価が高くなるから操作上における機能はマイナスになつて来る、こういう点を考えておるのでありまして、その意味からいたしましても、われわれは統制撤廃後においては当然事務量も減るし、そしてまた政府払下げ原価を安くするということは考えられなければならぬことだと考えておるのであります。
  14. 井上良二

    井上(良)委員 そこで問題は、この統制をはずすことによつて政府が約一万六千ほどの人を整理する。これによつて相当大きな経費が生み出される、こういうことであります。ところがこの統制をはずしました結果、政府が一番心配をいたしておりますのは、はずした後の市場価格が何ぼになるか。この市場価格を安定させなければ、国民生活の安定の上に重大な影響があるというところから、本日の新聞を見ましても、来年度の輸入を三百二十万トンから三百七十万トンに引上げるといわれております。その結果輸入補給金も、現在の二百五十五億くらいを約三百億にどうしても計上せなければならぬ実体がそこに出て参ります。また一方米の出まわりを促進するためには、いわゆる輸入外麦粉をできるだけ安く売る。対米比価を六〇%まで引下げる。そのことから国内の麦に対する圧迫を加えますので、国内産麦に対して補給金を大体百億近く出そう——実数は百四十億くらいになりはせぬかという計算でありますが、そこまで言うとうるさいから、百億以下というくらいに押えて、そういう輸入補給金や内地産麦に対する補給金等によつて、この市場価格を安定し、米の出まわりを促進して、不平等な食糧需給操作をなくしよう、こういうお考えですね。このことから考えられることは、つまり統制をはずした結果、一方においては人員一万六千を削減することによる国家負担の軽減、国民負担の軽減ということをねらつておるようでありますけれども、逆に輸入補給金や外国食糧の輸入増によるところの国家の負担というものは、それだけふえております。ふえなければならぬ実情に政府は追い込んでおります。この矛盾を一体どうお考えになりますか。さらにまた現実政府はこの輸入補給金を明年度何ぼに組むべきか、明年度外米や外国小麦を何ぼ輸入するかということを算定するにあたつて国内の相場を一体何ぼに押えるべきか、何ぼが安定帯であるかということについて、いろいろ農林当局、安本当局、大蔵当局それぞれ意見が出ておりまして、一昨日までは百二十五円とかいつてつたものが、本日はにわかに相場が下つて百五円となつた。かりに百五円、百十円ということに想定をいたしましても、その結果起りますところの賃金ベースの改訂、物価の値上り、国家財政の膨脹、インフレの拍車、こういう悪影響を一体政府はどう食いとめようとするのか、これらによる国民の大きな不安と混乱と財政負担を一体政府はどう考えようとするか、こういう線が国民を全然納得させ、得心さすような線で、政府から説明も答弁もされておりません。そこにこの一万六千の整理の問題が、大きく国民を不安に陥れる一つの問題になつておる。私が今申し上げました通り、来年度の輸入の見通しはどう考えておるか、そうして今日外国の米の相場は、本年度予算によると、米で百四十五ドルから百五十五ドル、これが今日は百九十ドルを突破して二百ドルに手が届こうとしておる。日本の政府が米を買いあさる結果は、米の国際市場価格というものが一挙に四十ドルもつり上げになつておる。そういうことが行われれば行われるほど、日本の米の買付の状況というものは困難な事態に追い込められておる。そうなりますと、来年はまた米を百十万トンから貿うという計画を政府考えておるようでありますが、今年こういう状態が繰返される場合、来年の米を買います場合は、政府は一層危険な状態に追い込まれはせぬか。その結果日本に対するいろいろな国際的な信義の問題が起つて来て、せつかく占領下にあるにもかかわらず、国際小麦協定に参加を許された日本に、一体どういう影響を与えるかということを大臣はお考えにならなければなりません。そういう点から来年の食糧輸入を政府は一体何ぼに押えようとしておるのか、そうしてその輸入価格は一体何ぼになるか、その結果から来ます輸入補給金はどうなるかということと並んで、国内の市場安定価格というものが、少くとも司令部と交渉します場合、基本的な案として結論は出されておると思いますから、その点に対する大臣責任ある答弁をこの際伺つておきたい。
  15. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま井上さんからの御質問の要点は、政府統制撤廃の後需給並びに価格調整によつて操作しようとしておるが、その場合における価格の見通しいかん、これが第一点のようであります。これは価格の見通しというよりも、どの点を目安として調整をするかということによつて輸入食糧並びに補給金その他の問題が出て参るのでございます。現在政府としては、この点については新聞でも御承知のように、実はこの問題は農林ばかりでなく、物価並びに財政、金融、こういう方面に非常に重大な関係がありますので、この二、三日以来三省の事務当局の間で検討をし、さらにまた本日三相会談をして検討をして数案を得ておるのでありますが、これに基いて総司令部方面と折衝する予定になつております。ただいま折衝の過程においてその内容を申し上げるわけには行かないのでありますが、大体の見当としましては、現在の国民生活における主食の割合をふやさない。従つて消費者の生計費に影響を及ぼさないという観点から参りますと、いわゆる実効価格が目安になるのであります。この実効価格は場所によつて時によつて違いますけれども、一番問題になりますのは東京あたりであります。東京の米の現在の実効価格程度を目安としてこれを維持するためには、外麦を対米比価どの程度において政府は売り出すべきか、また外米についてもどういう比価において、従つて絶対価格としてはどれだけとしてやるべきか。こういうふうにして計算をして来ると、輸入食糧に対してどれだけの補給金が必要であるか。また現在よりも安く麦を払い出すことによつて国内補給金がどれだけ必要であるかというような試算をしておることも事実であります。その額についてはただいま申し上げる段階ではございません。それからもう一つは現在の麦の値段をすえ置いておつて、内地産麦については補給金をつけない、こういう場合においてはどの程度に米価がなるだろうかということを見、そうしてその場合においては生計費にどれだけはね返つて来るか、それが現在の国民の所得において吸収し得るかないかというようなことを試算しておることも事実であります。数案を試算いたしまして、そのうち財政上さらに国民生活あるいは賃金その他の方面に最もドラステイツクな影響なく、安定したところの経済再建の基礎になる場合ということを見出して、それを基本として折衝するという段階になつておりまして、詳細についてはただいま申し上げる自由を持つておりません。それからそういう観点からいたしまして輸入食糧考えられるというわけでありますが、しかし一つ御注意申し上げておきたいことは、本年は御承知のように、例年に比べまして非常に気象条件が悪かつたために、さらに災害、病虫害が出まして、収穫の予想は今非常に悪いのであります。そういう観点からいたしまして、実際量が足らないために、本年の計画において、三百二十万トンの計画では足らなくなることは事実であります。その上に若干の統制撤廃に伴う消費増というものを見ますと、それが少しだけふえることになりまするが、全体として三百二十万トン以上になることは事実でございます。この推算についても今いろいろ検討中でございますし、向うとの折衝の過程において、ただいまどれだけ輸入するかということをはつきり申し上げる段階ではございません。
  16. 井上良二

    井上(良)委員 どうですか大臣、ここをよくお考えになつてもらわなければならぬが、つまり一万六千人の人を整理する。この整理は、食糧統制撤廃するという基本方針を決定してやろうとするのですから、当然、そういう結論からこれだけの人を減らすということになつておる。ところが今御答弁をされました通り、この統制撤廃に伴つて逆に多くの外国食糧を輸入しなければならぬ。これは明らかであります。その輸入に伴つて輸入補給金が当然それだけふえる。また国内の産麦に対しても何とか手当をしなければならぬことは明らかであります。それからいま一つ消費者価格の値上りに伴つて当然給与ベースの改訂も必至であります。これは先般あなたが農林委員会で、私の質問に対して、給与ベースは改訂しなければなるまいということを言明されました通り、給与ベースの改訂は必至であります。給与ベースが改訂されれば物価はつり上るのであります。物価が上れば予算が膨脹することもこれ必至であります。そうなつた場合の負担というものと、物価体系一切が崩壊し財政が危機に至るであろうという危険があるがゆえに、ドツジさんがどつちもよう結論をつけ得ないで今日がんばつておるわけだ。問題はそこにあると私は思う。それほどの問題を政府当局でまだ結論がつかず、しかも一万六千人の人を首切るということについて、この問題に対する具体的な方針さえ国会で説明できない現状において、しかも法的にも、いろいろな点から考えても問題でない食糧庁整理を、この際無理にやらなければならぬことはないじやないですか。なんで通常国会に正々堂々と食糧統制廃止に関する法律案を出さないか。それを出して、その法律案の並行審議によつて定員法の改正を出されたらいいのです。しかもこれは一月から四月までにやろうというのでしよう。またあなた方自身も、一月から四月までの間に食管法の改正なり、あるいはこれにかわる米穀需給調整法なり、あるいは米穀市場法等を出そう、こういうつもりでおるのですから、そういうものが国会の審議で並行されるときに、食糧庁関係定員法の改正案を出されるということが妥当じやありませんか。そういう手続をとられることが、政府のためにも国民を納得さすにも必要であります。また現に供出の最盛期を控えて、実際政府が必要とする二千五百万石か二千五百五十万石か知りませんが、それだけ確保するということは——今日こういう問題を論議すること自身が非常な悪影響を与えるのであります。こんなことを国会で論議し、こんなことを政府がふれまわつてつては、おそらく二千万石の米は集まらぬと見ておるのです。知事みずからが二千三百万石以上は引受けられないと言つているではありませんか。そうしたら一体どうするのですか。それほどの大きな不安と、それほどの大きな問題を国民に投げ与えて、政府がそこまで無理押しをして食糧庁関係定員法をこの際改正し、実施しなければならぬという理由はないのです。どうしてもあると言うのならば、そのあるという理由をひとつ具体的に法的に説明してください。われわれはどう考えてもないのです。これは昨日から何べんも繰返しておりまして、委員長に怒られるかもしれませんけれども、少くとも現行の定員法食糧管理法によつてつている。これの改正案を出さずに、何を根拠に、何の法的根拠によつて一万六千を首切ろうというのですか。単なる政府方針にすぎない一つの仮定的な事実に立つているのではないか。まだ司令部の許可も得ていない今日、そういう点から政府がやろうとするなら、具体的にその法案を整備されて、この法案はこうなつたからこれだけの人がいらぬことになつた。そこで改正をしてくれ、こういうのが順序だと私と思つている。閣議決定でも、いつでもかえることはできるのです。決定はどうしても決定通りやらなければならぬということはない。たまにはかえなければならぬ場合も起つて来るのです。今まででもそんなことはたびたびあるのです。あなたは、出した以上は、これはもう政府の面子上どうしても引つこめるわけに行かぬと言うかしれませんけれども、これはどこからどう考えてみても事実上検討がしにくいです。このわきの問題はまだ聞いていないからわかりませんが、少くとも食糧庁関係人員整理というものは納得ができ得ない整理の仕方ですね。私はそう考えますが、あなたはどう考えますか。依然としてこれは閣議決定であるから決定の線で行けるとお考えになりますか。法的裏づけ、法的根拠はなくても定員法はかえられるとお思いになりますか。
  17. 木村公平

    ○木村委員長 井上君に申し上げますが、定員法は当委員会が正式にこれを受理して今審議の過程にあるのでありますから、これを審議することは違法でないのみならず、他のいかなる関連法規がありましようとも、委員長の独自の見解によつて定員法のみを上程審議する権限があるものと思います。これに対する政府答弁は不要と思いますからさよう御承知ありたい。
  18. 井上良二

    井上(良)委員 提案された案自身の内部に、現行定員法と、定員法の施行に関する問題とまつたく食い違つた現実が起つておるのです。現行定員法国会承認した法律なんです。その定員法によつて食糧庁行政事務をやつているのです。その行政事務に変更が生じた場合は、法令の改正を国会に提案すべきです。これは建前なんです。法令によつて役人を雇つているのです。委員長は何によつて役人を雇つているとお考えになりますか。委員長質問いたします。
  19. 木村公平

    ○木村委員長 定員法は正式に受理してただいま審議の過程にあるのでありますから、これを独自に審議することは違法でないのみならず、わが委員会の権利であると同時に義務である。この委員会が正式に受取つたものに対して、委員の一員から何ら容喙さるべきものではないと私は確信している。
  20. 井上良二

    井上(良)委員 私は定員法の審議について異議を申しているのではない……。
  21. 木村公平

    ○木村委員長 あなたのお説によれば、審議そのものが検討の価値なしと言われるから……。(「井上君の言う通りだ」と呼ぶ者あり)君に言つているのではない。何を言つておるか。
  22. 井上良二

    井上(良)委員 検討の価値なしとは言つておりません。それは特に定員法の改正に伴つて出されています食糧庁関係人員整理が、何としても定員法改正という大きな問題から考えるならば、その政府案の骨子がなつてないじやないか……。
  23. 木村公平

    ○木村委員長 井上君に御注意申し上げます。御意見をお吐きになることは自由だが、いやしくも定員法は正式に受理されて、すでに当委員会の審議の過程にあるのであります。従つて定員法を審議することそのものが、何か不審があるかのごとき言説に対しましては、私は異議をさしはさむものであります。
  24. 井上良二

    井上(良)委員 それは委員長の誤解です。委員長は名の通り非常に公平にやつていただくことと私も思うておりますし、私も委員長と対立して意見を述べる必要はありません。われわれもできるだけ公平に議論をいたしております。ただこれは私自身判断で、定員法の審議自身については、私は異議を申しておるわけでもなければ、何にもそれについてとやかく言うておりません。ただ提案理由の中にあります一項について、どうしてもわれわれとしては納得できぬが、政府はどう考えるかということについての質問でございますから、別に私は委員長の権限についてとやかく容喙するわけじやございませんし、当委員会の審議に対して私はけしからぬというておるわけじやありませんから、その点は誤解のないように、ひとつ公平におとりはからいを願います。
  25. 根本龍太郎

    根本国務大臣 この問題については、すでに再三橋本行政管理庁長官から説明しておるわけでございまして、井上さんの言われるように、予算定員法、さらに実体法としての食糧統制撤廃に関する法規が、一緒に出ることが望ましいのであります。政府はその趣旨をもつて準備したのでありまするが、たまたま補正予算が先に準備ができて上程され、続いて定員法がただいま上程され、今実体法については向うとの折衝の過程においてまだ完全な了解を得ていない、いずれ成案を得ますれば出します、こういうことを申しているわけでございまして、政府は実体法を出さないということならば、そこに問題は出るのでありますが、出すべく今準備中で、それが完全な了解に達していないというわけでございますから、これは井上さんたちが内閣を担当したときにおいても、やはり当時立法すべきものが、実は非常に遅れてみたり、いろいろあるのでありまして、その点は御了承いただきたいと存じます。
  26. 井上良二

    井上(良)委員 そうしますと、さらに掘り下げますが、これは昨日も事務当局質問をいたしたのですが、今回の整理が第一線の現業を中心として、特に本年の産米供出に最も重大な関係のある検査員を大幅に整理しておりますが、そうしますと、今供出の最盛期を控えて、検査員を五〇%も整理するということを実際行つた場合に、はたして政府の予定する供出が完了できると、大臣はお考えになつていますか。
  27. 根本龍太郎

    根本国務大臣 その点は、非常に憂慮しておりましたが、御承知のように早場米の供出の状況をつぶさに現地について調査いたしました結果、これら検査員がサボタージユしたとか、あるいは抵抗したために遅れたという例はありません。これらの検査員の方々は、戦時中あるいは戦後の今日に至るまで、非常に努力をされまして、あるときは農民から非常な誹謗を受け、あるいは脅迫を受けてやつて来た。しかるに今やその任務がまさに終らんとするとき、行政整理になるということは、われわれは非常に同情にたえません。しかしこれらの人々は、一部には非常な憤懣を持つている人があるようでありますが、私現地の事務所長その他の人々にも数回会つて、国家の立場から協力方を要請しているのでありまするが、非常に遺憾の意は表しておりまするけれども、そのためにこの国家事務を放棄したり、あるいはそれに反抗するという強い意思は表明しておらないのであります。従いまして現状から見ますれば、さしたるさしつかえはないと考えております。なお御承知のように、例年の供出の実績を見ますると、十月までが早場米で、十一月、十二月が最盛期、一月においてほとんど全国的に見て供出の実績は八〇%近くまで行つているのであります。そうしてあとの二〇%が四月までかかる、こういうような状況でありますので、その方法よろしきを得、また現地の職員がよく政府の施策に協力してもらえまするならば——相当苦衷に立つておるようではありまするけれども検査事務員がサボタージユするために供出が遅れるということは、今のところ考えておらない次第であります。
  28. 井上良二

    井上(良)委員 大臣としてはそう考えるのが当然でございましようが、実際問題といたしましては、現に五〇%いかれるということになりますと、たとえば現実にだれをやめてもらうかという相談をしなければならない、打合せをせなければなりません。そういうことから、実際上その整理される対象人員を選び出すまでというものは、非常にそのつぶす時間というものがふえます。供米の阻止をするとかどうとかいうことではなしに、事務系統ではそういう打合せ、その他の関係から実際上かんじんの勉強がどうしてもおろそかになる結果が、そこに生れて来ることは事実であります。  それから、ここで重要に考えねばなりませんのは、御承知通り、あなたの御出身の東北地方は早場地帯でありますから、早くどうにか円満に行くかもしれません。ところが中部から九州にかけてであります。これはどうしてもなかて、おくてが多うございまして、供出の最盛期は二月から三月にかかります。そうなると政府は四月一日から統制撤廃とこういう。これが農民にどういう心理的影響を与えますか、問題はここなのです。ぐずぐず言うて一月がんばれば自由販売になる。そこで強権発動だ何だと言つてみたところで、一月済んでしまえばこつちのものだということになつてしまう。そうなるとやはりなかなかやつかいなことになつて来るのです。また中部以西は今度の台風で、すごい被害を受けておることは御存じでございましよう。そうするとここにも手紙が来ておりますが、中国のある県のごときは、あの台風前にすでに四割から五割の被害を受けておる、台風でまた大割の被害を受けた、こういうのです。台風前に五割の被害を受けておいて、台風後また六割被害を受けたといつたら、一体米はどこへ行つたか、一つもないようになつてしまうじやないかというような投書が、私のところへ来ておりますが、その通りです。やはり現場の農民なりあるいは現場の県庁なりは何とかして、できるだけ供出を負けてもらおう、そうして自由販売にする量を多く残そうと考えるのは、これはやみがたき心理であります。そうなりますと政府予定数二千五百五十万石というものが絶対確保できない状態に追い込まれはせぬか。そこへ持つて来て、今の検査官の半数以上の整理に問題がからんで参りますから、これは大臣なかなかそうあなたのんきに構えられませんぞ。そうなつてかりにこれが二千万代を割るというた場合には一体どうなりますか。現実内地の米の配給はどうしますか。
  29. 木村公平

    ○木村委員長 ちよつと井上君に申し上げますが、質疑定員法に直接関係のあるものに限つて、他の統制撤廃その他に関する問題は農林委員会においてお願いできないでしようか。
  30. 井上良二

    井上(良)委員 委員長、それは公平ではありません。私の今質問いたしておりますのは、検査員整理の問題に関連しておりまして、この検査員の五割も首切ることによつて生じる供米の不足という問題、それから来る国民に対する食糧の、生活の不安の問題というところに結んで来ておりますから、だから……。
  31. 木村公平

    ○木村委員長 それはそうでしよう。結びはそうだが、なるべく、他に通告者もたくさんおりますので……。
  32. 井上良二

    井上(良)委員 そういう点でぜひひとつ大臣の方でも、この検査員整理の問題については、私は慎重に考えてもらいたいことが一点。それからいま一つは、大臣が今何か検査員には検査の実務以外に帳簿整理等の事務系統の仕事をさせておるからこんなに人がいるのだという話で、一町村一人半ぐらいに減そう、こういうことだろうと思いますが、現実に一町村一人半ぐらいで、実際上供米の最盛期の場合に間に合うか合わぬかという問題が一つここに現実に起つて参ります。これをどうするかという問題があります。それからいま一つ、御存じの通り、この食糧検査関係は、本年春の通常国会で農産物検査法というものを制定した。これは議員提出です。これはあくまで米麦の品質を高度化して、一方流通を円滑にして、国民生活の安定及び農業生産の確保をはかろうという目的でこの法律は制定されている。ところがこれを減してしもうたら何にもならぬ。国営検査自身政府みずから否定する結果になり、この法律の目的にまつたく反する結果になる。しかもこの検査官はこの法律によると、二十七年度から検査手数料によつて大体まかなえて行けるという一つの構想の上につくられている。つまり二十七年度に約三十五億の検査手数料の収入を予定しているのです。これによつてまかなわれる人間約二万人という推定であります。現在二万三千おります。そうするとそんなに大幅に削減をしなくても——将来自由経済時代になりましても一層食糧検査というものには重大な使命が残つておりまして、その役割を果さなければなりませんから、国の予算の上にさほど大きな負担にならず、現実独立採算制を採用できる現実から考えてみて、この食糧検査官の大幅な整理という問題についてはいま一応検討を要すると考えますが、大臣はどうお考えになりますか。
  33. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは本会議並びに農林委員会でしばしばお答えしたことでありますが、主食統制撤廃に関する実体法については、われわれが成案を得て、そうして上程いたしますから、そのときに詳細に御審議を願いたいと思つておるのであります。  それから農産物の検査法の制定の意義、これについて私も十分承知しております。あれは自由党の農林委員の諸君が主体となり、井上さんたちも参画いたしまして、これは議員提出になつておるのであります。当時私も政調会長としてこれに参画しておるのでありますから、よく存じております。ただ今度の行政整理案によつて国営検査そのものを否定するというような考えは持つておりません。ただこの国営検査をいたしますにつきましても、できるだけ簡素化し、そうして実情に即したものにしたいと考えておるのであります。先ほど井上さんから若干反駁がございましたが、現在の供出制度に伴うところの検査事務の一番多くの事務量になつておりますのは、検査そのものよりも、御承知のように、検査員の認証なくしては実は農業手形なり、前払い金がとれない。このために非常に時間を費しておる。これが緩和されて参りますれば、これは単なる検査事務になつて来る。またこれには必要とありますれば、臨時的な事業費に基くところの臨時単純労務に服する人は別個に定員とせずともやれる。こういう構想のもとにやつておるのであります。もし実際やつて見て非常に著しくこれが支障を来すということになりますれば、これはいずれの官庁においてもまた定員の変更は考えられていいのでありますから、政府としては現在の整理状況でやり得る。かように考えておるのであります。  なお検査手数料と人員との関係でありまするが、御指摘の通りであります。これは本来食管特別会計自身独立採算制でありまするので、これでまかない得るという見当はつけておるのでありますが、他面からするならばやはりこの手数料も相当高いじやないかという議論もあるわけでありまして、この点はいずれ十分に検討してみたいと存ずる次第であります。
  34. 井上良二

    井上(良)委員 検査の実務に携わつておる方面の意見を聞きますと、供出最盛期を控えてかくのごとく大幅に整理されたんでは実際困る。特に大府県といいますか、相当地域的に広範囲な地帯を受持つておりまする検査員の労苦という点を勘案をいたしまして、一方政府では供出の督励といいますか、供出の促進をあらゆる手を講じてこの末端検査員に要求をして参る。そうなりますと、政府としてきめた供出の割当をできるだけその目標額に努力をして出してもらおうとすれば、そこで検査官が足りぬということになる。そうなつた結果はやむにやまれず費目の流用によるいわゆる臨時職員といいますか、臨時員を雇うてやらなければならぬ結果が生じるが、そういう結果になつてもやむを得ないとお考えになりますか。これはどうですか。
  35. 根本龍太郎

    根本国務大臣 本年分についてはそうふうな操作はいらないと存じます。二十七年度産米については定員を相当に減らしておりますので、その場合にはそうしたところの考慮を予算措置において考えるべきであると存じております。
  36. 井上良二

    井上(良)委員 次に伺いますのは、食糧庁全体の場合においても、政府の方からは、あなたは、事務当局のいろいろな意見を勘案し、これに政治的な考慮を払つてかくかくの人員整理する方針を決定した、この決定に従つて事務整理能率的な運営を考慮するというが、さりとはいえ、現実に片つけなければならぬ事務というものがありますので、具体的に昨日もいろいろ伺つたのでありますが、たとえていいますと、輸入食糧保管管理するもの、あるいはまた国内食糧の買上げ等についての保管、輸送、払下げがある。これに関連して、たとえば今農業倉庫を政府の倉庫に代用して使つておるところが多いのでありますが、これにしても農業倉庫を急激に減らすというわけには現実どうにも行かない状態にある。しかし一方定員はこれこれに減らせと言つて来ておる。そういうことから、実際の運営の上に、やむにやまれず臨時職員を雇わなければならぬ事態が起つて来ると思う。この人員では起つて来るということを事務当局では言つておりますが、また実際にこの現実を調べてみてもそうでありますが、その場合にはやむを得ないとお考えになりますか。
  37. 根本龍太郎

    根本国務大臣 事務当局からまだその報告は得ておりませんが、特異な例としてそういうことがあり得る場合においては、そのときに適当な措置を講ずるつもりであります。
  38. 井上良二

    井上(良)委員 次に農林統計に関連する問題で伺いたいのですが、政府は今度農林統計を大幅に整理をする。全体でいいますと四三・七%ぐらいになりますが、これも約半分に減らす。そうなりますと、政府は今までの農業統計にこんなによけい人はいらぬという理由は、一体どこにありますか。本年三月から四月にかけて日本へ参りまして、日本の統計調査組織を検討した国連の統計委員委員長ライス博士が、日本の統計組織の改善に関する意見として、統計の重要性と近代化を勧告し、その中で農林統計のごとき專門技術を必要とするものの例外的な独自の発達の必要を認めているということを申されておりますが、わが国の農業政策の樹立の上に、また特に国民食糧政策を確立する上に、この農林統計こそもつと拡充し、これの能率的な運営をはからなければならぬ、こうわれわれも考えております。この統計組織が縮小され、これの機能が半減されるというような行き方は、新しく独立を迎えた日本の経済の再建の上に、農業再建の上に、大きな支障を来して来ると私は考えておりますが、政府は、農業政策の樹立と国民食糧政策の確立を、一体何によつてはからんとしますか、これを伺いたい。
  39. 根本龍太郎

    根本国務大臣 農業統計機構の重要性については、御指摘の通り、私も就任以来これを強調して参つたものでございます。農業政策の一つの羅針盤とも申すべきものがこの統計でございます。しかもこれは非常に動的な統計でございまして、人口統計とか、あるいはまたその他いろいろ工業統計より以上に、実はこれが動的な見方をしなければならぬという意味において、政令諮問委員会においては、農業統計は普通の統計と同じようなサンプル・システムをとらずに、地方からの申告に基くものを集計、加工することをもつて足れりとするような答申案であつたにもかかわらず、この統計のやり方、これが最も経費がかからないで、しかも最も確実なものであるという観点に立つて、従来のサンプル・システムを採用しておるわけでございます。ところが一方におきまして、従来の作報の組織は、実は供出を強行するために使われたことも事実あるのでございます。そのためにかなりの摩擦を起し、そのために前線においてはこれらの職員が非常に苦労をして参つたのでありまするが、この供出制度が緩和もしくは廃止になりますれば、この供出を督励し促進するという部面における任務がなくなることは事実でございます。なおこの統計の確度については、これはことに問題のあるところでございまして、ほんとうからいうならば、一筆一筆実測し、またそれを集計するということが望ましいことでありますけれども、それはとうてい物理的にも人的にも不可能だということで、おのずからそこに統計技術の改善と、それから方式の活用によつてなさなければならぬ点があるのであります。従来特に日本の土地面積自体非常に不確定でございます。供出制度が始まつた当時においては、一年のうちに九州全土の耕地面積が一挙になくなつたというふうな統計が出て参つたり、また戦前におきましては、肥料の助成金を出したならば、一県で一躍一、二万町歩もふえてしまう。実はこういうような政治的な統計が多かつたのでありますが、幸い今度の統計調査機構ができてから、そういうものがなくなりました。また、なわ延びの検査とかなんとかいうことも大体三年くらい続けましたので、大体そういう方面も基礎数字がたまつて来た。そこでできるだけこれに金をかけることが望ましいことであるけれども、独立後いろいろ諸般の財政負担も多くなるし、またこれ以上国民の税金の負担を増すことができない。そういうことで、政府としてはなしたいことはたくさんありますけれども、がまんし得る限度においてその機能を維持して行くということの判定に立つて、今回の行政整理程度であるならば、AFOに参加する場合においても、あるいは小麦協定に参加する場合においても、国際的な信頼も受け、かつ国内における行政実施の場合における羅針盤としてもその目的を達し得る、こういう観点からただいまの整理案ができた次第でございます。
  40. 井上良二

    井上(良)委員 農林統計の整備拡充について、きわめて熱心な、かつ非常に積極的な対策をお持ちになつておるような大臣の御意見に対して、私は非常にうれしく思います。しかし実際ここに現われました整理の跡をたどつてみますと、大臣農林統計を重要視するのとは逆な結果が生れはしないかということを憂えるものであります。私どもアメリカに参りまして、アメリカの農林統計の組織なり運営なりいろいろ見せていただきましたが、日本の農林統計の実際の組織、運営等についても、いろいろ技術的な面また方法の面に改善を加える点が多々あろうと思います。何分にも資材、経費、專門技術者等の不足しておる日本の現状において、急激に世界的水準へ高めることの困難な実情はわれわれもよく了といたしますけれども、これが專門的な人を要すれば要するだけ、專門技術を必要とすればするだけに、この面に対する特段の考慮を政府としては払つて行かなければならぬのじやないかと思う。しかるに結果はまつたく逆な結果を生んで来ておる。たとえて申しますと、統計事務所を、従来平均五箇町村に一箇所の出張所を置いてあつたものを、今度は一郡に一箇所の支所にしてしまう、こういうやり方でございます。それから米麦の生産統計を府県別の理用程度に推計にとどめてしまつておる。水稲の作付歩合、現地調査の標本数を六七%も削減する。収量調査におきましても五六%を削減する。こうなりますと内地産米及び麦の生産実態調査というものを何で一体押えて行こうとするのですか。まことに不安な統計の基礎の実情でございます。われわれの内地産米の統計調査は、単に供出問題だけではございません。外国食糧をどれだけ輸入してどうすべきか、また国民食糧配給やその生活水準を維持する基礎的な資料にこれがなるのであります。そういう面で全然削減されてしまつて、しかもそれを集計する事務所といいますか、出張所が一郡にまとめ上げられる。従来五箇町村にあつたものが一郡にまとめ上げられる。そうするとその末端調査はだれがどうやつてやるのですか。これはどこか市町村にでも委任してやらせますのか。いや政府責任において末端の町村まで完全にやるというのですか。こういうことになると、まつたくどうにもならぬことになりはしませんか。
  41. 根本龍太郎

    根本国務大臣 統計調査の方法にはいろいろありますが、御承知のように申告に基くところの、各府県が申告を持つて来る場合も一つの資料になります。それからもう一つは面接調査というものがございまして、一々個々のところについて、一つのサンプルについて、——サンプルと申しますか、ある村の特定の標準をつかんで聞取調査をするとか、さらに今度は気象感応試験をやるとか、あるいはまた類推調査とか、いろいろの方法を総合いたしまして、今のサンプル・システムの方式をとつているのでございます。従来は相当末端仕事までやつてつたのでありますが、申告とかこういうものはほとんど地方自治体の資料に依存して行つてよろしい段階になつております。従来はこれが、供出に関連しまして、非常に政治的な抗争がされて来たけれども供出がなくなつて来るとそれがだんだんなくなつて来る。面接関係においても、今度は農民が非常に正直に言つてもらえるというような点、面積調査においても、なわ延びその他の点は、今度はだんだんなくなつて来る。こういう統計を調査する場合における今までの抵抗線がなくなつて来る。この点は相当考えられていいと思います。  それからもう一つは、供出のときにはほとんど個人割まで考えなければならぬというので、相当正確なものが必要でありましたけれども供出がなくなりますと、要するに今度は国、自治体の行政、いわゆる助長行政をやる場合における目安というもの、それから国家が全体の食糧事情を見て需給調整をする場合における指針となるところの資料が必要である。またアウト・ルツクと申しまして、いわゆる経済観測というような部面が必要になつて来るのでございますが、そういうような仕事はただいまの定員法の範囲内において大体でき得る、こういう見通しでございます。  それからまた国際会議においてどの程度の正確度のものが要求されるかということについていろいろ勘案してみましたが、これについてもただいまの整理案の状況で大体その適格性を持つ、こういう観点でやつておるのでありまして、その意味におきまして、これはいろいろ議論のあるところでございまして、国家財政が漸次向上し、財政がゆたかになりますれば、これはできるだけすみやかに今後も充実いたしたい、かように考えておる次第であります。
  42. 井上良二

    井上(良)委員 あなたの今の御答弁によりますと、無理してやればやれぬことはない、こういうお話でございますが、問題は今おります一万四千四百六十二人というこの統計関係の方々は、全然政府の計画しております統計調査関係以外の仕事をしておつたのと違うのです。これらの人々の働いた結果が、国が要求しておる統計調査の成績上らずはなはだ無能力者にしてその用をなさぬというのならこれはやむを得ません。そうではなしに、こういう人員が必要であるとして定員法ではこの人員を統計調査の必要から認めたのです。これらの人々がそれぞれ政府の任命する任務について具体的に統計調査の実績を上げておる今日——こういう人々が無能力者であつたならば別です。こういうものが必要であるとして統計調査定員は認めておるのです。それとこれとこれとこれとは、別個の農業政策なりわが国経済再建の方途を樹立する上においてもう必要がなくなつた。そういう調査はもういらぬのだ、だからこれとこれとこれとは簡素化して省く、こういうことでございますならば一応得心もできますけれども、依然として一応の農林統計の調査組織を持つて、必要なる調査項目を指示して、その調査を完成して行きたい。ただ活動し得る、また調査し得る具体的な末端の必要な基礎的な調査項目を断ち切つただけにすぎなかつたということが言えるのじやないかと思います。
  43. 根本龍太郎

    根本国務大臣 井上さんのお話の筋もわかりますが、政府行政整理を今やろうとしておるのは、今までこれが全然働かない、無能な連中だから切るということではなく、これは橋本行政管理庁長官から御説明したこととは存じますけれども、独立後の日本の経済の規模、並びに国民負担の限度、そういう点を勘案しまして、また戦前における日本の国力と機構とを勘案してみるならば、非常に官庁の組織が厖大化し、また人員もふえておる。役所の事務というものは、人員をふやせばふやすほどまた逆に仕事がふえて行く。戦時中あるいは戦後の特殊なる状況下において人員のふえておるのを、ここで思い切つてできるだけ簡素化し、安い政府機構をつくるのだ。しかしその整理の過程においては、行政整理のために使うところの経費などは、一、二年間あるいは一時的には異常な支出もあるかもしれぬけれども、全体を通じて見ますれば、将来において安いところの政府機構ができる、これを望んでおるのであります。その意味におきまして、これは今まで各役人がサボつてつたとか、あるいはまたむだだつたというよりも、できるだけ整理することによつて、将来の日本の自立経済の基礎をつくる、こういう考え方であります。整理される人については実にわれわれも同情を禁じ得ざるものがあるのでありますが、しかし今のままにして行くならば、将来における日本の財政というものは著しく困難な立場になつて来るから、ここに思い切つて行政簡素化し、将来における日本の発展の基礎を確立したい、これが行政整理のねらいでございます。その意味から申しまして、われわれは最小限度の、できるだけがまんし得る限度まで人員を減らして、しかも行政上は著しい支障を来さない、間に合う程度でやつて行きたい、これが現在の定員法をつくつたところの一番の根本の思想であるのでございます。
  44. 木村公平

    ○木村委員長 残余質疑は午後に譲り、午後は二時より続会いたしたいと思います。  暫時休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後二時二十四分開議
  45. 木村公平

    ○木村委員長 午前の会議に引続き、これより再開いたします。  質疑通告がありますからこれを許します。井上良二君。
  46. 井上良二

    井上(良)委員 午前中に主として農林関係行政整理について、所管大臣から御答弁をいただいたのでありますが、この答弁の結果、一つども疑問に思いますのは、附則第三項の規定は、所管大臣並びに所管当局は全然関知してない、こういうことでございますが、これは一体橋本長官はそんなことを相談せずに勝手にやつても一向さしつかえない、こうお考えになつたのでございますか。その点の食い違いはどうなんですか。
  47. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 さようなことはまつたくございません。附則をつけますにつきましては、関係方面との折衝の過程において問題が起つて参りまして、閣議において相談をいたしまして、いつでありましたか、あらためて、一度きめました定員法に対してさらにこの附則をつけるという閣議決定をいたしまして、そうしてその上で司令部の正式の了解を求め、国会に提出をいたしたものでございます。それまでの間に農林大臣とは終始連絡をいたして参りましたし、なおまた事務当局の方は、農林大臣が部内においてどういう方法をおとりになつたか、これは私の存じないところであります。しかしながらとにかくこの法律国会に提出をいたしまするのに、主管大臣が何にも知らない、閣議決定も経ない、私が独断で国会法律を出すというのは、附則一箇条といえどもできないということは御了承願いたいと思います。
  48. 井上良二

    井上(良)委員 私が午前中の答弁を聞き違えたかもわかりませんけれども、午前中この問題について根本農林大臣に聞きましたところ、附則第三項の問題については、自分は相談を受けていない。なおこのことについて昨日所管の安孫子食糧庁長官に聞きましたところ、全然その内容については相談を受けていない、こういうことであります。そこで午前中にもこの問題に関連していろいろ質問をいたしました通り、要は一月から四月までの食糧統制の円滑なる運営ができるかできぬかという問題にかかつておるのであります。そのことが円滑に行われるか行われぬかということの当の責任者である食管の長官が全然知らぬというようなことを、この定員法審議の委員会において明確に答弁されておる事実から考えて、いかにこの立案がずさんなものであるかということは一応言われるのじやないか。所管の大臣、所管の責任者たる長官が、自分の部下の整理について一向に相談を受けない、特に附則第三項の規定に関連して何ら責任のある答弁ができないということは、この改正法案の提出の責任者たる橋本大臣は、一体これでいいとお考えになるのですか。
  49. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 今回提案しております定員法につきましては、長きにわたつて、また閣僚懇談会あるいは閣議において、十分に練つたものでありまして、中間においていろいろな意見はありましたけれども、今回ここに提出をいたしましたように、さらにまたここに定員法改正資料として出しましたのにあげましたような内容をもつて決定を見たものであります。農林大臣責任をもつてこの閣議決定をきめられたということを私ははつきり了承いたしておるのであります。仕事の実体的な内容に関しましては、所管の当局において食糧管理にこれこれ、検査にこれこれ、何にこれこれという仕訳でやるということで仕事をやるんだと了承いたしております。  なお午前農林大臣から附則につきましては自分が何ら関知していないように言われたようでありますが、附則の交渉は自分でしたのではないんだからその経緯の内容は知らないということを説明したわけであります。私はこの問題の過程において終始農林大臣とも連絡をとり、ほかの閣僚とも連絡をとつております。もちろん農林大臣とは終始連絡をとつて参つたのであります。そうしてあの三十日の午前の閣議でさらに話をし所要の連絡をとつた上で、三十日の午後に開かれたる閣議で正式に閣議決定の書面的処理をして、そうして司令部を経て国会に提出いたしたるものであります。私は農林省の内部においてこれはどういうふうな仕事が行われておりまするかということは、これはもう所管の大臣からお聞きを願いたいと思います。私は責任大臣と話をいたしまして十分これでやれるものと考えておるわけであります。
  50. 井上良二

    井上(良)委員 昨日大臣はこの附則第三項は政府としても好ましからざる附則であつて、何とかこれをつけずにやりたいと考えたけれども司令部の承諾することがなく、やむにやまれずこの附則をつけた、こういう御説明でございます。その根本になつておりますのは食糧統制撤廃司令部のオーケーが可能なりという前提に立つている。もし食糧統制撤廃に関する司令部の諸般の検討の結果不可能なりといたしました場合は、今提案されております定員法の改正は根本的に考えなければならぬことになりますが、そうはお考えになりませんか。
  51. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 食糧統制撤廃につきましてはいろいろ説明を要することもあろうかと思いますが、私はかまえて了承を得まして、その撤廃の際におけるいろいろな手段方法等については問題があるかと思いまするが、実行に至り得るものと考えております。
  52. 井上良二

    井上(良)委員 その問題につきましてはこれ以上議論をすると討論になりますから、あなたがそうお考えになるという前提はすでにくつがえされいるので——といいますのは、附則第三項をつけなければならぬようになつたというのはどういうわけか。政府は過ぐる閣議決定によつて米麦統制撤廃するという方針を決定して、司令部の方の交渉に移つたところ、司令部難色を示してなかなかうんと言わない。特に本年の産米の供出の問題なり、あるいは明年度予算編成にからんでの輸入補給金問題なり、またその基本になりまする市場価格の問題等から来る国の財政的な負担のもろもろの関係から検討して、これらの諸案件が納得得心の行く具体的資料が提出されない限り、司令部としては返答の仕方がないということが報道されている。しかるにそれに対して政府の打つている手は、大蔵当局の意見、安本の意見農林省意見ことごとく食い違つている。政府みずから方針を決定し、その方針によつて完全に司令部了解が得られた上でこれが提案される問題なのである。国会審議の経過において、この改正案が不当なりとして国会が否決をした場合、初めて食糧統制撤廃は実現できないという前提に立つて附則第三項ならば問題はございません。ところがそうではなしに、司令部との話合いができないからという前提に立つている。今までの法律の提案に司令部との話合いができないからこういう附則をつける、一体そういう法律の提案が今までありますか。われわれ寡聞にして終戦以来議会に席を占めておりますけれども司令部をかさに着て、司令部意見がこうだからということで法律の提案を聞いたことはありません。司令部がいかに言おうとも、日本政府責任において法律は提案されるものであります。司令部政府との間は政府の努力いかん、司令部の好意いかんによつて解決される問題であつて国会の関与するところでありません。国会政府が提案された法案に対する慎重審議をすれはいいのでありますから、そういう関係からはなはだ不穏当な提案の仕方であります。あなたはそうお思いになりませんか。
  53. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 何か司令部をかさに着てという話で、何か司令部のおかげで非常にいい条文でもついたようなお話でありまするが、私は前々から申しておるように非常に迷惑な附則なのです。ですからかさに着たというよりも、むしろ司令部関係で非常にぐあい悪いものが出ておるというので、これによつて井上さんが非常に圧迫を感じておられるようには私は考えない、申し上げるとこういうことであります。私がなぜこうした説明を申し上げているかと申しまするのは、今回の食糧統制撤廃基本方針についても、関係方面において一番問題にしているのは、米の配給統制撤廃をいつの時期からどういうふうにするかということのようであります。麦のことについては、その附則にもはつきり米と書いてありまするように、問題にいたしておらないようでありまするし、それから統計調査の点もはつきり話に上りながら、この方はよろしいといつた意味趣旨は、二十七年に入つてから供出の問題は司令部としても考えていないという趣旨のように私は了承いたしました。ただ米の問題については、まだとにかく決定的意見を私どもの方で立てておらない、従つてつて定員法を通すと何かそこではつきりきめたようになるから、問題をいいとも悪いともきめてない部分だけについては附則をつけたならば出していいし、定員法の審議を急ぐだろうからそういう方法をとつたらどうだということであつたわけであります。かさに着るわけでも何でもございません。そうして従来こういつたような出し方はなかつたじやないかというお話についてはごもつともで、その通りであります。というのは司令部は昔ならば、こういう問題についておそらく提案を了承しなかつたと思うのです。今日の事態におきまして向うも政府考えているのに対して、できるだけ政府考えを生かして行きたいという考慮のようでありまして、むしろ従来ならばすつかりきまるまでの間ほんとうに提案自身を了承しなかつたであろうものが、こういう形で定員法の提案はやるのはけつこうだというふうになつて参つたのでありまして、今までなかつたとおつしやればその通りであります。しかし決して、これで司令部をかさにきてどうこうということは私も考えておりませんし、向うも全然考えておらないところであります。
  54. 井上良二

    井上(良)委員 私の質問したことが大分きつく聞えたようでございますけれども、私の言う意味は、非常に大事なことですから申し上げますが、あなたもお認めになりました通り、従来政府が法案を国会に提案いたします場合、またいろいろな政策を具体化いたします場合、それを天下に公表いたします場合は、占領下でありますから司令部のオーケーがなければやれないというのが一応の建前であります。そこで、司令部のオーケーがまだ最後的についていないものを無理に提案したというところに、この問題の所在があるわけであります。私ども国会審議の建前から考えますと、司令部との話合いができないからこういう附則第三項をつけたということは、国会の審議権として非常に遺憾に存じます。そういうことは政府の努力によつて解決すべき問題であつて政府が未解決のままに置いておいて提案をした、ここに問題があるのです。私はそう考えております。われわれはあの提案が、万が一にも諸般の国際情勢その他の情勢に応じて三月末に統制が解除できない場合には、これこれこれこれというならばわれわれも了解いたします。これはまた、国会の審議の過程においていろいろな検討を加えた結果、政府の提案を是とするか非とするかという結論が出た後に、もし必要とされた場合は困るから、その場合はこれだけの定員でやつてもらいたいという政府の提案であるなら了解いたしますが、司令部との話合い云々という言葉をここに持ち出したことにわれわれは問題がああると思う。あくまで政府責任において事を処理すべきであつて、そのことが全然なされずに、いきなりそういうことを未解決のままで出したというところに問題があるのであります。だから私ども国会の審議の建前から言いますならば、まだ会期もあることだから、この問題に関連して、少くとも司令部ともつと話を積極的に進められて、解決した上で提案をされる方が、この食糧庁関係については妥当でないかという私の考え方であります。これに対してあなたはどういうふうにお考えになりますか。
  55. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 これも昨日お話を申し上げた通りでありますが、もちろん井上委員の御指摘のように、早く基本的な話をまとめて、そしてこの附則問題も解決して出すということになれば非常に都合がいいのでございますが、米の統制、特に四月以降における配給の問題についてなお審議に若干の時日を要するという状態でございまして、今日ただいまの状態というものは私よく存じませんが、不日決定を見るに至るであろうと思います。臨時国会は会期も短かいことでありまするし、いずれまた、その終りころになりまして事がきまり、それから持ち出したというのではやはり時間的に間に合わないし、人員整理という問題は総体——政府全体の整理が、ある一定の時期にそろつて行われるということが、いろいろな面において便宜でございまするし、事がきまればしいて長く置く必要もないわけでありますから、そこで実体関係の問題については、なお関係の閣僚が向うと折衝を行うということで、この附則をつけて提案をいたしたわけであります。責任云々の問題については、これは明瞭に政府責任でございます。私はむしろざつくばらんに経緯を申し上げたのですが、その経緯から来て一体何人の責任でどうするかということについては、もちろん今日の段階において、井上委員言われる通り、諸般の情勢上統制撤廃が行われない場合にはこうするということでありまして、もちろん司令部との話合いができ上つていないということが具体的な内容でありましようけれども、支障の点がどこにあろうと、最終的な責任は、政府責任で処理をするということは間違いのない点でございます。いずれにいたしましても、政府といたしましては、食糧統制撤廃をやる方針でありまして、それが了承を得て、おそらくこれも死文に化する時期があると考えております。かりに万々一政府責任において何らかの措置をしなければならない場合におきましても、四月以降において七千九百六十一人の食管定員の復活をはかれば足りると考えて、この附則をつけたのであります。
  56. 井上良二

    井上(良)委員 これ以上この問題について論議をいたしません。質疑をいたしませんが、ただ一点あなたにお考えを願つていただきたいのは、午前中私の質問に対する農林大臣からの答弁を聞いておりましても、あなたは盛んに統制撤廃は実行する、こういうかたい決意のようで、その決意の上に立つてこの改正案が出されておるようでございますが、いかにせん、午前中の農林大臣答弁を聞いておつても、たとえばこの統制撤廃に重大な関係のある本年産米の供出割当の折衝においても、あるいは統制撤廃後の市場価格の安定の問題にしても、それから出て参ります輸入の見込み高にしても、補給金の問題にしても、これ全体国民が納得し、われわれ国会議員として納得する線が何ら出ていないのです。こうこうこうなつているからこれで統制撤廃ができるのだという納得する数字を、納得する事実を、納得する具体的な説明をされた上で、だから多少時間的に急いだけれどもこの改正案は通してくれ、こう来なければ話の筋が立たぬのです。かんじんなことは一切言わぬで、今言う時期じやないと言う。実はそれがこれにひつかかつておるのですよ。その問題の中心が、そのかんじんの統制撤廃をやるかやらぬかということが、一万六千の人の首にかかつておるのです。国会及び国民をして納得せしめる当の責任者から、その具体的な何らの説明がないことは、あなたが午前中その横におつて聞いた通りです。しかるに人の首だけは早く切ろう早く切ろう、そんな一方的なむちやくちやな話なんてあらへんで、そんなことを言つたつてそれはあきまへん。そこが問題なんです。あなたは、よその所管だから、農林大臣や大蔵大臣、安本長官が一生懸命やつているんだから何とかなるやろうと簡単に考えておるだろうが、なかなかそうはいかぬ。いかないからこそあれだけもめておる。司令部のドツジさんが、おれの納得する案を持つて来たらよう聞いてやると言うているが、そう言われたら言われるほどむずかしくなつてややこしいですから、どこがどうなつているやらわからぬというのが、今日の現状なんです。これは正直なところ……。閣議で決定してこれを断行するというほどの大きな腹をきめて天下に声明して、司令部を納得するところの資料を今からつくらなければならぬなんて、そんなだらしない閣議決定がありますか。実際情ない話だ。一万六千の人のために政府のやつていることに、まことに私は割切れぬものがあるのです。またこの問題がわが国の経済全体をゆすぶる大きな問題になる危険がありますから、慎重な態度を政府みずからもとらなければなりませんが、われわれ国会議員としても慎重な検討を要する問題としております。ところがこの問題に関連する法案が提出されずにおります関係から、かんじんな問題について論議することができない状態にあるのです。しかるに一方定員だけは減らして行く、こういうことですから、どうしてもこの問題について結論を見出す具体的な政府提案が説明されませんと、どうしてもこの一万六千の問題は解決できない問題に来ておるのです。だからあなたの方で、ぜひこの一万六千を首切る定員法の改正に本委員会もひとつ審議を進めてもらいたいというのならば、今私が申しましたように、本年の産米の供出の割当は一体何ぼにきめるか。統制撤廃後の市場価格、輸入量、補給金、それに伴う給与ベースの改訂、物価の値上り、財政の膨脹、インフレ、こういう諸般の問題が総合的に説明されて、なるほど統制撤廃しても安心だ。いろいろ複雑多岐な困難な統制下に置かれておるよりも、自由党の主張するように統制撤廃した方がいいと、国民が双手をあげて賛成する説明をあなたはせなければならぬ。その説明が何らされていないのじやないか。ここに一万六千の整理の問題の難点があるのです。これをあなたにやいやい説明をせいと言うても、おれの所管じやないと言われたらわやくちやだから、この問題は政府として一応はつきりして、内閣委員会もまた数日開かれることの予定だそうですから、ひとつお打合せの上で、この問題については責任のある答弁のできるようにお願いしないと思うのですが、それはできますか、どうですか。
  57. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 食糧統制撤廃ということは、日本の国民経済の今後の発展の上において、国民の福祉の上において、ぜひ必要であり、いいことであると私は確信をいたしております。ただいまのお話につきまして、私も閣僚の一人として参画をいたしておりますけれども、こうした委員会におきまして、当面の所管大臣以外のものが発言をするということは、問題が重要なものであるほど避けなければならぬことと私は思つておりますので、今朝農林大臣から答弁いたしましたように、政府といたしましては、これに対する諸般の措置は着々進めておるわけであります。責任大臣として今日言明することができないという事情にありますことは、けさ話した通りでありまして、本日午後もいろいろ打合せをいたしておるようであります。井上委員からの御希望の筋は伝えておきます。
  58. 木村公平

    ○木村委員長 ちよつと念のために井上君に申し上げますが、統制撤廃の論議がいかようになろうとも、本委員会は、定員法に対しましては独自の見解から審議を進める予定であります。これは委員長の権限にあると思いますから、さよう御承知を願います。
  59. 井上良二

    井上(良)委員 私も大いに定員法の審議を進めるつもりで発言をいたし、質問をいたしておりますから、委員長の御趣旨によく沿えると存じますので、その点もあらかじめお含みを願いたいと思います。この点橋本長官に念のためにさらに伺つておきますが、あなたはさいぜんから食糧統制撤廃政府方針である。方針を決定したのである。しかしその撤廃の具体的な措置については、自分は所管大臣じやないから、所管大臣を出し抜いて説明するわけにはいかぬ。ところがその所管大臣の持つておる現行食糧管理法施行に伴う必要な定員整理する権限は、あなたが持つておるのです。ここがややつこしいんです。それからあなたはまことにそこを上手に逃げておるけれども統制撤廃を断行するというのならば、その中から一万六千を整理するというのならば、断行の具体的な措置についてかくかくかくかくのことでもう一万六千はいらぬのだからという、ここに裏づけの説明が必要になつて来ます。その裏づけの説明ということになると、これは農林大臣の所管で、わしの言うべきことじやない。しかしまあ閣僚の一人だから、よく相談をしてみる、こういうことですから、まあこの問題は一ぺん相談をしてもろうて、そうしてゆつくりひとつ政府方針が具体的に決定して、なるほどこれで統制撤廃しても、現行食糧管理法を廃止しても、国民食糧確保の上に、また今後わが国の経済再建の上に、大事な独立を控えて、何ら国内的な不安動揺を与えないという確信のある答弁が行われますまでは、遺憾ながら、この一万六千の首切り問題は、ちよつと保留しておいてもらわぬと、これ以上ここで論議してみたつて質問してみたつて、結がつきません。これはそういうことでちよつと伏せておきます。いずれ政府からそういう答弁があろうと思いますから、それを一つ私は政府に要求いたしまして、午前中の続きであります農林統計の質問に入つて行きます。  この農林統計で午前中二、三ちよつと重要な点について質問いたしたのですが、さらに政府から出されておる資料によると、同じ統計関係の各省庁の人員整理を見ておると、総理府統計委員会というのが整理一〇%、総理府統計局が一六、三%、大蔵省の統計関係二八、六%、厚生省が一五、五%、通産省一五、四%、労働省一八、六%、問題の農林省は四三、六%、こういう比率になつております。これは同じ統計調査事務を担当しておる各省の整理比率と、農林省と、これは一体どういうわけでこんなに農林省を首切らなければならぬことになつたのですか、比率の上で……。
  60. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 比率というお話がありましたが、提案理由の説明から始まつて再々御説明申し上げましたように、具体的な事務について必要の度合い、整理の可能性の度合いというものを一つ一つ検討いたしましたので、一定の比率をきめて、そうして天引きで整理をするというような立て方をとつておらないのであります。一つ々々によつて問題を掘り下げております。農林省の統計調査事務の問題は、これは井上さん御自身もよく御承知のように、もともとがいわゆる作報として供出制度とからんで非常に発展いたして参つたものであります。もちろんこの統計調査というような関係仕事は、精密にやるならばもつともつとやる仕事はたくさんあると思います。どの限度でいいとかどの限度では足りないとかいう問題ではないのです。今日日本の行政をできるだけ簡素、能率化するという建前からいたしまして、今日の統計調査事務、その主体をなしまするのは供出制度から始まつた作報の仕事が主体であつたわけでありまするが、供出がなくなるということになれば、その間において午前農林大臣から説明もありましたように、本来から言えば、供出をするために個人々々の生産者の調査までやりたいところを、そこまで行きかねるにしても、農林省としてできるだけこまかくやつてつたのを、供出割当ということから離れて総体的に統計として確固たるものをつかむという趣旨から言いまして、いろいろ検討いたしました結果、この数字を得たわけであります。これにつきましても、閣僚懇談会を数度開きまして、その統計調査の方式等も十分に練つてつたものであります。内容はけさお話もありましたように、五箇町村単位の出張所を郡単位に直すといつたようなことで、井上さんよく御存じのことと思います。
  61. 井上良二

    井上(良)委員 そういう抽象的な御答弁でははなはだ困るのでありまして、農林省統計調査部の議会における説明をいたします資料として出されておりますのによると、整理後の労力不足をおおうために、約三千名の労務者と非常勤職員を置かなければやれない。また現在行われている調査以外に農産物の在庫調査、農産物の加工工業調査、農家の作付計画の調査、販売量及び資材購入量額調査、農産物の市場の調査等新しく行うところの仕事を控えており、さらに農家経済調査対象戸数を現在の五千五百戸から一万二千戸に約倍加する希望を持つておる。こういうことをかりにやろうといたしますならば、今人員整理をいたしましてもただちに臨時職員その他の方法によつてやらざるを得ない実情になつて来る、こういうことになつておりますが、はなはだもつて何のための人騒がせな人員整理かといわなければなりません。また今長官は統計調査は作報から出発したので、何か食糧統制撤廃をすれば、もう作況調査や収量調査等の仕事はいらなくなつてしまう、こういうようなお考えのようで、この面を大幅に削減をする、こういう考え方のようでございまするが、しからば一体今後不足する輸入食糧の算定をどこで一体政府としてはおつけになりますか。
  62. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 これもけさの農林大臣への御質問と重複しておるようでありますが、農林大臣はつきり御答弁申し上げました通り輸入食糧の算定に必要な資料を得るためには、この陣容でよろしいということであります。
  63. 井上良二

    井上(良)委員 そうすると、そこに農林省の統計調査部長が見えておりますが、統計調査部長は今長官がそういう御答弁をされたんですが、実際上今の約半数首切られた後に、非常勤の職員や臨時職員を雇わなくとも完全にそういう資料が正確に出せる自信がありますか、これを伺いたい。
  64. 木村公平

    ○木村委員長 安田さんちよつと待つてください、答弁政府代表一人にお願いしたい。
  65. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 今非常勤職員、臨時職員についてお話がございました。私は先ほど井上委員から首切りの権能は私が持つておるというふうに言われましたけれども、そんなことはないので、これはここにも労働大臣がおられますが、全部閣議で決定をいたしまして、そうして国会にも法律を出しておるわけでありまして、私が定員法を改正するといつて、単独で仕事ができるというわけでは決してございません。従いまして繰返し申し上げました通り、これは閣僚懇談会及び閣議において所管大臣の御説明を承つて十分にねつたものであります。この統計調査の問題については面積の調査と、それから作況調査が主体になつておりますが、面積調査の問題につきましては、そうひどくあるピークがあるわけではありませんで、作況調査の場合には、何といつてもある収穫の時点をとつて調べます関係で、時間的に手伝いが必要な場合があるかもしれないから、これは了承してくれという農林大臣からの発言がございました。これはむしろ当然のことでありまして、ある時期の収穫をわずか数日間調べる。そのために必要な人員が相当多いからと言つて、これを一年中雇つておくという手はないのでありまして、当然そういうふうな場合はあり得ると思います。今何千人というようなお話でありましたが、こまかい人数等につきましては、これはむしろ予算の問題であろうと存じます。総体的な関係は数度練りました関係で、これでよろしいということに相なつたのであります。その内容の説明は農林大臣からけさお話をいたした通りでありますが、もちろん統計調査ということは供出ということがなくなつても必要でございますけれども、今日のこの陣容を整えて、今までやつて来た仕事の使命の一番大きなものは、何といつても公平な作柄をつかみ、作付面積をつかんで、供出割当を正確にやつて行くということが、一番大きな使命でございました。その部分の問題につきましては、食糧統制撤廃いたしまして、そうして供出がなくなる、ということになりますれば、個々の間のこまかい問題はこれは比較的そう気にしないでよろしいので、ある県全体をつかむというような形で収穫のあり高を調べるということができれば、国際的な信用の点においても、まずまず支障のないところまで行けるということで、この決定をいたしたものであります。
  66. 井上良二

    井上(良)委員 次にかくのごとき大幅な整理によつて、世界的な調査として行つております農業センサスの今後の調査は、いかなる方法で行いますか。長官は農業センサスの重要性をどう一体認識されておりますか、その点を伺いたい。
  67. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 農業センサスの問題につきましては、今日までやつて参りましたいろいろなやり方を、この定員法で出してありまするこの陣容によりまして続行いたして参るわけであります。
  68. 井上良二

    井上(良)委員 整理後の計画では、全国を十一の別に調査制度を簡素化するということになつておりますが、その具体的な方法を説明してもらいたい。政府委員から……。
  69. 木村公平

    ○木村委員長 大臣から願います。
  70. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ただいまの問題に関しましては、これは所管の農林大臣から説明してもらいたいと思います。
  71. 井上良二

    井上(良)委員 所管の農林大臣がいないのです。そこでそこに政府委員ですか来ておるが、説明できませんか。政府委員として出席しているのと違いますか。
  72. 木村公平

    ○木村委員長 特にあなたは政府委員答弁を要求されるのですか。
  73. 井上良二

    井上(良)委員 要求するじやなしに、委員長大臣がおる以上は大臣にやらす……。
  74. 木村公平

    ○木村委員長 そうです。
  75. 井上良二

    井上(良)委員 ところが大臣は、わしの所管ではないと言われる。そうすると所管責任者がそこにおるのだから、それに説明させた方が議事進行上はなはだ……。
  76. 木村公平

    ○木村委員長 農林大臣はいない……。
  77. 井上良二

    井上(良)委員 農林大臣はいないから、そのかわりに所管の何が来ているのだから……。
  78. 木村公平

    ○木村委員長 それは農林大臣からでいいでしよう、この次にして……。
  79. 井上良二

    井上(良)委員 そうなると、これは困るですね。これは政府当局でさしつかえありませんから……。
  80. 木村公平

    ○木村委員長 さしつかえありませんけれども……。
  81. 井上良二

    井上(良)委員 委員会の審議を進捗する上において、適当に答弁されるように委員長の方でひとつおとりはからいを願いたいと思います。
  82. 木村公平

    ○木村委員長 それは私の方で必要ないと認めて答弁を許さないのですから、さよう御承知を願います。
  83. 井上良二

    井上(良)委員 次に農林統計調査部では、最近林業統計、養蚕統計、畜産統計をたしかあれは昨年でしたかから始めまして、どうにか組織もでき上り、その緒についたところであります。これら三つの統計は、米麦その他の農業統計調査に並んできわめて重大な資料を提供する調査でありまして、この面でもそれぞれ予定の人員整理をいたそうといたしておりますが、そうなりましたのでは、せつかくでき上つたものをまた元へ返すということになります。長官は一体林業統計、養蚕統計、畜産統計は必要がない、そんなことを積極的にやらぬでもいい、こういうぐあいにお考えですか。
  84. 木村公平

    ○木村委員長 橋本長官答弁がしがたい場合には、農林大臣の出席をまつて答弁を願うことの方が便利な場合には、そのようにとりはからいますが、あなた答弁をなさいますか。
  85. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 具体的な問題に関しましては、所管の農林大臣に対する御質問がまだあるようでありますから、農林大臣の出席をまつて答弁農林大臣からしていただくことにいたします。
  86. 井上良二

    井上(良)委員 委員会の審議の進捗の上に委員長の発言は不穏当だ。事実そのためにわざわざ政府委員が議会の許可を得て出席しておるわけです。
  87. 木村公平

    ○木村委員長 不穏当ということはない。ぼくは衆議院規則によつてつておる。
  88. 井上良二

    井上(良)委員 大いに不穏当です。
  89. 木村公平

    ○木村委員長 不穏当と認めるのは、君一人認めればよい。ぼくはみずからの権限によつてつておる。
  90. 井上良二

    井上(良)委員 そんなべらぼうな権限はありません。
  91. 木村公平

    ○木村委員長 いや、ないことはない。なければ適当な処置をなさればよい。そういう権限があるとかないとかいうことは、わが輩の責任においてやつておるのだから、不穏当とかなんとか言われる必要はない。
  92. 井上良二

    井上(良)委員 委員長しからばあなたにお問いいたしますが、いずれの委員会においても、大臣質問をいたしました場合、こまかい事務的な問題について、大臣が一々ことこまかには察知しておらない。そこで補助員として事務当局が出席をされて、そのこまかい点については事務当局から説明をさすのが慣例であります。
  93. 木村公平

    ○木村委員長 慣例がありましようとも、委員長これを必要なしと認めた場合には、委員会の権限において発言を許さないことは、衆議院規則の六十六条から七十二条まで御研究あればよくわかることです。私は権限によつてつておる。必要なしと認めたのだから……。
  94. 井上良二

    井上(良)委員 しからばお伺いいたしますが、現に必要なしと認めるといつても、そういうむちやくちやな一方的な宣言はありませんよ。
  95. 木村公平

    ○木村委員長 宣言じやありません。
  96. 井上良二

    井上(良)委員 少くとも橋本大臣において、自分の所管でない関係でよくわからないがら、しかもそこに政府委員が来ていなければ別であります。政府委員が出席しておつて答弁をすれば、それだけ議事は進行されるのです。それをあなた一存でさせぬのだ。そえなむちやくちやな話がありますか。
  97. 木村公平

    ○木村委員長 井上君に申し上げます。事は農林省所管であるから、農林大臣が出席の上において答弁をする機会を与えるということをしばしば私は言つておる。あなたは前から大臣答弁を切実に希望されておる方なんだから、特に私はこういう重要問題については、農林大臣答弁こそ、あなたに対する礼儀であろうと思うから、親心をもつて申し上げておる。
  98. 井上良二

    井上(良)委員 いや、わかりました。なかなかええ親心ですが、私はまたそこまであなたがお考えくださることについでは非常に感謝にたえませんが、問題は農林大臣が参りまして説明を願うのが一番よいのですけれども大臣も他の委員会の要求に応じて出席されておるときでありまして、これらの問題については事務当局責任者答弁をされても私としては満足であります。あえて大臣答弁をまつまでもないことであります。特にこのこまかい点に入つて行きますから、当面の責任者である統計調査部長から答弁されることが議事の進行上かえつて委員長を助けることになりはせぬかと、こうも考えておるのであります。そこで委員長の方で適当に公平に取扱われんことを私は希望するわけであります。この問題はせつかく委員長がさようおつしやいますが、やはり事人員整理に関する重大な死活の問題でございます。従つて大臣が参りましてから質問をいたすことはいたしますが、最後に一言長官に伺つておきたいのは、昨日私の質問に対して大臣は、今回整理いたします約九万名の人々に対しては、諸般の事情を考慮して十分妥当な処置をとりたい。特に今回整理する者に対しましては、従来の手当制度を改めまして、約八割増しの手当を渡す、こういう御説明がございました。そうなりますと、今まですでに整理対象となり、現に各種公団の解散閉鎖に伴いまして残務整理をいたしております職員が公団関係にございます。これらの人人は従来きめました手当で今後やめて行く者も処置をし、今回の人間に限つて新しい手当をお出しになりますか。それとも現に就職しておる者については新しい規定を適用いたしますか。これはどういうことになりますか。
  99. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 すでに解散することが決定いたしまして、清算公団に従事中の人員に関しましては、今回の行政整理関係がございませんから、特別な退職金の適用はいたしません。
  100. 井上良二

    井上(良)委員 それはちよつとおかしいじやないですか。一応退職手当をもらつて、それでこういう仕事を引続いてやつてくれるということでやつておるなら別でありますが、そうではなしに、国が必要として、これこれの清算にこれこれの者は残つてつてくれといつて、現にまだ就職しておるのです。しかしこの四月三十日でそれぞれおよそ清算が済みまして実質解散をしなければならぬものが相当出て来るのであります。そうしますと、当然今回のこの整理の規定を適用してやるのが親心じやないかと私は考えます。これは前の法律でやつておるのだから、今度のやつとは違うのだ。そこはちよつとおかしいじやないですか。ちよつとそこで何か考えてやつてくれぬか。
  101. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 井上さんの親心のように、ほんとうに何でもできるだけ手厚くするということはけつこうなことでありますが、やはり今回の行政整理は、独立後の新日本の自立のために相当な無理をして御退職を願うわけでありますから、特別な手厚い手当にしたのであります。従来本来の臨時的な機関でありまする公団に奉職をいたしておりまして、解散することがきまつて清算中のものにつきましては、これは今回の行政整理のような意味でやられるのとは違いますので、従来のきめられた方針従つて御退職を願うということでやむを得ないと思います。
  102. 井上良二

    井上(良)委員 次にこれはあなたの直接の所管に関する問題ですが、厚生省所管の整理で、国立病院関係の医療関係に従事します医師その他特別な方方をたしか五%整理するということになつております。御承知通り国立病院その他の入院患者はどんどんふえております。反対に適当なよい医師を充実することは実際上困難な実情にあります。それに世間づき合いというか、他の省庁につき合えということで、右から左へ全部五%行け、こういうことになつておる。ところが、これがあなたも御存じの通り、東京とか大阪とかいうような文化の発展した大都市近郷の国立病院ならば、多少定員一ぱいはおるかもわかりませんが、辺鄙な地方に分散しております病院勤務の医師は、事実上定員一ぱいいないのであります。そういうところへ持つてつてならし五%行けということになつたら、実際上そういうよい医師に、待遇のあまりよくない国立病院なんかに行つてよき医師として長く働いてもらうのには、特別の技能者ですから、政府は特別に考慮せねばならぬ必要がありはせぬかと思うのですが、そういう点についてどうお考えになつておりますか。
  103. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 看護婦については、これはまつたくどこも人手が非常に不足でありますので、整理をいたさないことにいたしております。医者につきましては、ごくわずかでありまするが、御指摘のように整理をいたすことにいたしておりますが、これは総体的な関係から見まして、ここにもできるだけの能率化をはかり、働いてもらうという趣旨でありまして、今井上委員から御指摘のありましたように、なるほど医師の分布状況も、旧陸海軍病院時代には山奥の病院にも充実いたしておりましたのが、今日では都会の病院には人がたくさんおつて、地方の辺鄙な病院に数が少いのであります。これは総体といたしまして今申しましたような軽微の整理をいたしますので、たださえ配置が少くて欠員を生じておるような所へ、また個々の病院、療養所ごとに少いものをさらに少くするというような整理はいたさないつもりであります。
  104. 井上良二

    井上(良)委員 この際労働大臣に一言伺つておきたいのですが、これは昨日もちよつと長官にお伺いいたしたのですけれども、御存じの通り現在日本に約四、五十万の失業者が実際上おり、その上に半失業の者が二百万前後おるということが言われております。そこへ持つて来て今度この九万人からの人が整理されるのであります。そうなりますと、その人が年少者で、転職しましても前途相当希望のある人々が多数であります場合ならば、また転職を願つてそれぞれ新しい就職をされる機会も多いと存じます。ところが戦争以来統制事務が相当多くなり、またそれに伴う政府職員の増加が必然に行われました結果、各省庁の定員が非常に膨脹して来たのでありますが、その後統制事務も順次解除され、役所の機構も漸次縮小され、この間前後約十年間という日時が経過しております。そうすると、その当時まあ給料は安く、いろいろ待遇についても民間会社に比較すれば悪いけれども、役所へ入つておれば、対外的信用においても、また将来安定するということで、それぞれ役所に就職をされた人が大部分であります。その人が今日はそれぞれもう三十歳以上の妻帯者になられておる。三十歳以上の者が今日失職いたしまして転職します場合に、容易にその仕事口は見つからない現状にあるのであります。特に特別な技術を持つた人、特別な手腕を持つた者以外の人々、特に事務系統の人々がただちに右から左へ就職ができるという情勢ではないのであります。昨年朝鮮動乱が起りまして、一部軍需景気が日本にも訪れましたから、その面で失業救済その他の上に多少の明るさを見せたと政府は申しておりますけれども、それは一時的現象であつて、全般の大きな失業救済の上にはなかなか遠いものがあろう。まして今後朝鮮動乱の終結も云々されておるときに、しかも今申します中年の人々が多数の家族をかかえて失業するというときは、実際その人の前途を考えると容易ならぬことでないかと私ども考えます。これらの人々の失業対策として、労働省としては一体どういう対策をお考えになつているかということを、近く整理対象になる人々が安心できますように、明確にお示しを願いたいと思います。
  105. 保利茂

    ○保利国務大臣 井上さんの御懸念の点は、私どももまつたく同様の心配をいたしておる点でございまして、先般も委員長の御質問に対してお答えをいたしました通りでございますが、なお繰返して申し上げますれば、今回の行政改革に伴う必然の結果として、人員整理を行わざるを得ないという結果になるが、その行政改革を全国民的要請のもとに行うにいたしましても、その結果離職の余儀なきに至る諸君に対して、国として政府としていかような措置をとるか、その基本方針をまずもつて定めた上に行政改革にとりかかるべきであるという基本的態度に基きまして、行政管理庁長官からしばしば申し上げておりますように、まず離職当座における生活不安をなからしめるように、相当の財政負担ではありますけれども、今回の臨時措置として退職金の大幅の割増しをつけて、離職当座の不安をまずなからしめ、しこうして各実施官庁において、退職をせられる人々のうち、再就職を希望せられる者については、できるだけひとつお世話を申し上げる。民間産業への就職制限の緩和措置を講じておるのもそういうわけでございます。さらに職業安定所を中心としまして、あるいは今後地方においてもある程度の中央にならつた措置が講ぜられるものと期待をいたしておりますから、必要に応じまして職業安定所を中心として民間の協力を得て強力に失業対策を推し進めて参り、そうしてできるだけ再就職の機会を見出すように努力するということが一般的措置でございますが、今日の労働市場から見ますと、お説のように技術を持つておられる方は比較的就職の問題は困難ではないような状況を呈しております。技術を持たない人たちの就職は、全般の情勢からして相当困難な状態にある。この長い数箇年の経験から見ますと、各地方庁で実施していただいております職業補導の実績は、その意味において非常に見るべき効果を上げておる。労働市場の需要と見合つた簡易な職業補導を半年ないし一年やる。その講習を受けた人はほとんど百パーセントの就職率を示しておることから見ましても、目立つことではございませんけれども、これがいかに有効であるかは実績の示しておる通りでございますし、また行政改革のねらいとするところもできるだけ行政能率を高からしめ、しこうして一人でもより多く産業再建の方に職場を開いて行くということが一番大事であろうという意味からも、また地道に再就職の機会をつかむということからも、この職業補導施設を、今回整理退職をせられる方々を対象として、来年度一年限りの臨時の施設を開設いたしたい、かように考えて、一方においてただいま補正御審議を願つております予算の中にも所要の予算をお願いいたし、そうして三月までに準備を整えまして、むろんこれは強制するわけでも何でもございませんから、各人の希望があれば四月早々それによつて少くとも一万人以上を補導収容し、産業戦線への再就職をはかつて参りたい。かくすることによりまして、大体今回の整理退職をせられる方方の処置は、そう憂うるところなく解決できるのではないか、またしなければならぬ、こういうふうに考えておる次第であります。
  106. 井上良二

    井上(良)委員 農林大臣が見えませんので、私の質問大臣が来ましたときまで保留しておきますが、大臣はいつ来る予定でありますか。
  107. 木村公平

    ○木村委員長 大臣にはあさつての連合審査のときにでも出席させるよう私が大いに交渉いたしましよう。
  108. 井上良二

    井上(良)委員 ではそういうことで保留しておきます。
  109. 木村公平

    ○木村委員長 加藤充君。
  110. 加藤充

    ○加藤(充)委員 まず橋本長官にお尋ねいたしますが、人の首を切るということはだれもやりたがらないことでありますし、得心させて首を切るということもたいへんむずかしいことだと思います。ところがそれをおやりになるのであなたにお尋ねするのでありますが、首切りのやり方によりますとかえつて仕事が渋りますし、またその結果は国民一般にかえつてたいへんな不利益を来すところが多いのであります。それで残された者は首をなぜながらほつといたしますけれども、業務自体がふえて少くなつておりません場合におきましては、当然そこに労働強化が引起ります。御承知のように有名な職階制、あるいは最近では職場々々で勤務評定制度というようなことでえんま帳ができておりまして、その職場はまつたくほがらかな明るい職場とは言いにくい陰惨をきわめた状態が現出されておることは事実であります。また一方こういうふうに首切りをやりますと、民間の労働者にも必ず波及いたします。これは事実であつてりくつじやございません。企業の合理化というようなことですぐ資本家がまねをいたします。そうして公務員の中から、あるいは民間の工場から、これがきつかけになつて、なだれのようにと言つては語弊があるかもしれませんけれども、たいへんな失業者の量が結局町に流出されます。失業者にとつては、再就職の問題がたいへんな深刻な問題でもありましようが、そういうような状態になりますと、結局工場経営ではこれが低賃金の基礎となります。こういうふうなことになつて参りますと——これは世間で有名なことになつておりますが、日本の労働賃金は、今独立問題で盛んな騒ぎをやつておりますエジプト並だというようなことが大体の相場であります。これは数字が示しております。そしてまた日本の労働者の賃金がきわめて安いので、日本に軍需の注文を割りつけたアメリカでは、四億八千万ドルかの軍事予算を節約し得たというような報道もあります。そうして失業者はどうなるかというと巡査になります。食えるところは巡査とか警察予備隊ですから、そこに掃きだめのように集められて参ります。こういうようなときにさらにやり方によりますと、国民の福祉厚生を主眼とする行政機構が廃止されたり縮小されたり、あるいは当然国家がやらなければならない業務を、財政というようなことに、あるいは合理化、簡素化というようなことに藉口いたしまして、地方にしわ寄せ分担を押しつけます。そうしますといわゆる福祉厚生の場面というものは著しくその機能を低下するか、あるいはまつたくそれはなきにひとしいようなものになつてしまうのであります。こういうことを一わたり見てみますと、この首切りのやり方というものは、それをやる必要は出て来ましようが、いわゆる新しい憲法において平和とか民主とか、基本的人権とか、生活権だとか、勤労権だとかが新しくうたわれて、その方向に皆さんがわれわれが努力を示さなければならないときに、この憲法の精神なり憲法の条文を頭からタンクが踏みにじるようにぶちこわしてしまうようなことになりはしないかと思われるのであります。政令諮問委員会から出している答申案に基かないのだと言われればそれまでですが、あの答申案によりましても行政事務の縮小整理行政機構の改革及び行政事務の合理化に伴い大幅の人員整理が可能だということがあるのであります。本来行政機構の改革と並行的に人員整理の問題が提案され審議されなければならぬと私どもは思うのであります。しかるに何ぞや人員整理だけが先に出て来て、数だけの審議をしろと言われても、われわれは公正な権威のある責任のある審議はできない状態であると思うのであります。なぜこういうふうにばらばらにして、首切りの数字だけ先に出して来たのか、その原因を最初に承つておきたいと思うのであります。
  111. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 数々の御意見の中には大分意見の違うところがありますが、それは別にいたしまして、定員法がなぜ先に出たかというお話でありますが、これは昨日末繰返してお話を申し上げたところでございまして、あらためて申し上げる必要はないかと思います。政令諮問委員会の答申案にもございますように、本来行政整理という面から言いましたならば、事務の繁閑に応じて人員整理し、かつまた機構も統廃合して行くというのが趣旨であろうと考えるのであります。事務の繁閑とにらみ合せ、事務の合理化というものを先に立てて、それから人員整理も起り、また若干別の要素も入りますけれども機構の統廃合をやる、機構の統廃合をしたらそれに伴つて人員整理が起るという御意見でありますが、私はそうならないと思います。何と申しましても事務が本体でありますから、その事務を行います役所をかりに三つあつたの一つに統合することになれば、人員整理はできるでありましようが、仕事はやはり行つて行かなければならないのであります。事務簡素化にならつて人員整理は先にやるのが筋だと思つております。もちろん全般の条件がそろいますれば、機構の改革もそろえて全部出せればたいへんよろしいと思いますが、先ほど申し上げた通りなお若干検討を要する点がございますので次に譲つたのであります。しかしながら主体をなしまするものは事務でありますから、その事務が、ある役所にあるのがよそへ移りましても、これによつて起る人員の移りかわりがありましても、総体的な数というものは原則としてあまり動かないと思います。御了承願います。
  112. 加藤充

    ○加藤(充)委員 事務がまつ先だというのですが、人民広場の紙くずを拾うみたいに仕事をするわけに行かぬのであります。そういう仕事はできるかもしれませんけれども、組織的に系統的に能率的に科学的に行政事務はやつて行かなければならないのでありまして、仕事をするということがすなわち機構制度の問題と一体にならなければ、行政事務簡素化もなければ機構の整備もあり得ないし、同時に人員整理もあり得ないと私は思うのであります。これは議論になりますから、あとでゆつくりすることにいたします。  次に先日来のあなたの御答弁によりますと、遅れては参つたけれども近く本格的な行政機構の改革案を提案するつもりである、こういうようなことであります。まず人員を先に出したつて不穏当ではない、審議はできるはずだと言うのですけれども、本格的な行政機構の改革案を近く出すのだという準備の段階に今立ち至つておりまするときには、数ばかりの人員整理案だけでなしに、それを提案すると同時に、それを審議する際に、あなたの構想だけでも、いわゆる本格的な行政機構の改革の構想だけでも承つておく必要があると思うのであります。  それからついでですから、私は重ねて質問をいたしますが、大体において数だけ出して来て、しかも井上委員からも申し上げたようでありますけれども附則の三というようなものがついているという、まつたくいただきかねるようなこの定員法の出し方、内容というものは、本質的に言つて不見識であるばかりでなく、同時にまた定員法というものの根本をぶちこわすものであり、さらに進んでは、国会を何と心得ておるかという問題と関連する重大な問題であると思うのであります。そこできのうの御答弁では、行政機構の改革については、このたびのいわゆる定員法の首切りの次に来るのだけれども、その中に大量の配置転換あるいは転職、さらにそのときに発表された案によりましても、十三万ほどの整理が八万七千ほどになつておるのですが、一人の首切りでもたいへんな問題なのに、そこに四万もの差がついておるのです。この次の行政機構の改革というようなときに、さらに多量の首切りというものをするつもりがあるのか。二、三段構えの首切りということをお考えになつておるのかどうか。  それからもう一つ、これはあなたの答弁をまつてからお尋ねするのが順序かもしれませんけれども、いわゆる政令諮問委員会ですか、ああいうふうなところの答申案の方向というものが、大体あなたの構想に近いものであるか、あなたの構想はそれに立脚するものであるというように了解してさしつかえないものであるかどうか、その点を承りたい。
  113. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 何か今十三万とか何とかいう数字がございましたが、私よくわかりませんが、いずれにいたしましても、ただいまお尋ねのことはもうほとんどきのう以来御答弁申し上げたことで尽きております。機構の改革案は、不日成案を得て御審議を願いたいと考えておりまするが、この場合には、中での、省局間の異動は行われましても、総体的な人員といたしましては、つまり事務は、そこに掲げましたところの人員整理案の基礎になりましたところの残りの事務というものが必要であると考えておりまするので、人員整理というものはもう考えておらないのであります。
  114. 加藤充

    ○加藤(充)委員 二十四年度にも大首切りをやつたのですが、そのすぐあとから、いわゆる定員外の臨時職員というようなものを雇い入れました。その中にはほんとうに臨時職員らしい臨時職員もあるようでありますけれども、常勤的非常勤というような、まつたく常識では解釈、理解のできないような変な言葉を発明して、ほとんど常勤的にたくさんの者を雇い入れておるのであります。今度のこの農林省関係の首切りでも、主食統制撤廃の問題と関連して、それがどういう影響があるかというような事柄について、井上君あたりから再三質疑がありましたが、そのときに安孫子食糧庁長官は、表面はしようがないから首を切らざるを得ない、しかしながらこれではどうも業務渋滞の危険がなきにしもあらずで、この程度の首切りをやられたのでは、業務担当の責任をとりにくいから、そのときにはしかたがないから臨時職員で穴埋めをする、これがその首切りの対策でございますということを言つたのであります。そういう事例は先ほども申し上げましたが、人事院から通牒を出して、定員法に触れないで、定員職員と同様な職務内容、同様な責任を持たせる職員を首切り後に定員外にたくさん雇つている。これは人事院の発表した資料によりましても、大体において八十万くらいの定員あるいは現在員のところに持つて来て半ば以上の四十八、九万の臨時職員というような数字が出されておるのでありますが、こういうばかげたことをやつておりましたのでは、いくら定員法でやかましく論議をやつて首を切りましても、それは決して事務簡素化にもならなければ、国民負担の軽減にも何にもなりやしない。ただ看板だから一ぺん首を切つておけ、あとは入れかえておけというようなやり方で首を切つてはいかぬと思います。従いまして今度定員法の一部改正というまことしやかなおごそかなこの法律の名前で、一々一人二人の端数までつけて出して来ましたけれども、こういうふうな端数まで出して来る定員法のやり方は、まつた国民を瞞着するにひとしいものだと言わなければならないと思うのであります。しかもこの定員外にはみ出されました臨時職員というようなものは、人事院規則の八—七の6によつて、国家公務員法の第七十五条、第七十八条から第八十条まで及び第八十九条から第九十二条までの規定は適用されないことになつて除外されておりますから、待遇の面でも、身分保障の点でも、これはまつたく臨時工的な職員であります。政府がこういうやり方をいたしますと、労働基準法は公務員には適用にならないのでありましようけれども、労働基準法の第二十一条の精神を政府みずからが踏みにじつて、臨時工で国家の事務をやつて行き、その上に少数の特権的な高級官僚だけがあぐらをかいてやつて行くということになります。先般行政監察委員会で、東北地方建設局の公共事業の土木工事に発端した不祥事件が問題になりましたが、それは、莫大な人件費を国家が責任をとらないために、定員外の職員をたくさん擁しなければ仕事ができないという実情であり、例年の災害を待つことはできないというので、無理をして工事を急いだ結果、その給与が出て来るところがなく、やみ給与という形で非難をされておりましたけれども、工事費から給与を出して補つているということでありましたが、こういうようなやり方で、末端の現場では、犯罪まで犯してその給与をまかなつて行かなければならないことになつていますが、この点について、私は、橋本長官責任のある見解を確かめておきたいと思う。
  115. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 加藤委員の御指摘のありましたような事実、つまり行政整理をやつてからあとで、常勤的な臨時職員を雇つておるという事実が若干あるそうでありまして、はなはだけしからぬことだと思います。もちろん行政整理ということはなかなかつらい仕事でございまするから、なるべく抜け道をつくつて、お互いに数を少くしたいという気持の動くのは、これは人情としてあり得ることではございまするけれども、今回の行政整理は、むしろそういう点もいろいろ考慮いたしまして再三検討をいたしました結果、政令諮問委員会の答申案によりますれば、十八万くらい予定しておりましたのが、十二万といつたふうなところまで参つておるのも、そういう点を考慮したわけでありまして、今回の行政整理後におきましては、ほんとうの意味仕事のピークのときの手助けに非常勤の職員を使うというふうな場合のほか、さような抜け道は、予算の方ともにらみ合せて、かまえて加藤君の御期待に沿うように厳禁するつもりであります。なお、従来二十四年の整理の際におきまして、お話を伺つておりますると、何か全部そういう抜け道があつたようなふうに強く仰せがございましたけれども、これは整理減二十五万八千三百六十七のうちで、ごく一部にそういうことがございましたようで、この行政整理によりますところの財政面あるいはその他の効果というものは、十分上げておることを確信いたすものであります。
  116. 木村公平

    ○木村委員長 加藤君、橋本厚生大臣、保利労働大臣に対して予算委員会から盛んに出席を求めて参りますが、まだ質問がありますか。
  117. 加藤充

    ○加藤(充)委員 まだ始まつたばかりで、まだありますかと言われると御答弁に困ります。
  118. 木村公平

    ○木村委員長 それなら、予算委員会の方がもう最後で、きよう質疑を打切るような様子で、どうしても答弁を必要とするようですから、残りますれば、またこの次の機会にお願いするとして、ひとつ御了解を得たいと思います。
  119. 加藤充

    ○加藤(充)委員 先ほど来木村委員長は、内閣委員会の権威というもの、同時にこの委員会が、たれが何といつても、定員法責任をもつてやるんだ。おれはそのつもりでがんばつておるんだから、よけいなことは言うな、熱心にやれということで、予算も大事だけれども予算がきまつてこつちに押返しするということになつたら、もう内ぼりも外ぼりも埋められたような形になつてしまう。従つてここで権威ある内閣委員会が、木村委員長を先頭に、これがいいか悪いかという慎重審議をやつた上で、予算の方でも、これがいいことになつたから財政的の措置をしろというようなところまで持つて行きたいと思う。強い親心を希望してやみません。
  120. 木村公平

    ○木村委員長 いろいろりくつはあろうが、今終るというところですから、予算委員長からしきりに催促して来るし、長年の慣習もあることですから、いつでもまた出席しますから、そう言わないでひとつ御了承ください。  それから保利労働大臣も要求されておりますから、四時半まで御出席をお願いして、あとはまた次の機会にお願いします。
  121. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それでは、私のところへ参りました簡単なはがきを読み上げまして、労働大臣の御返答を承りたいと思います。簡単ですから粉飾なしにこのはがき全文を御紹介します。「労働階級の地位の向上、労働関係の民主化の一半はわれわれにその責任が負わされているのであります。」こういう書出しをしたのは、大阪のある労働基準監督署の職員であります。その気負い立つた心構えのほどは、労働大臣とともに私は喜んでよみしたいと思うのであります。はがきは続けて書かれていますが「われわれは一昨年他官庁と同じように、人員整理を受け、人員は四百四名(管下十三監督署の人員を含む)になりました。今春労基法改悪が云々される時期においては、やつただけの超過勤務手当は支給されず、出張しても、旅費の裏づけは完全になく、事務用の消粍品はおろか、備品さえも不足を告げており、印肉、セロフアンの類を下級職員自分の乏しい給料の中から自弁しております。直接監督に当る第一線の監督官は五十七名で、管下全事業場を一巡するには三年を要する状態であるにかかわらず、監督官の監督旅費は一箇月二十日の予算を十日に減らされました。だからといつて、監督官は十日だけ監督すればよいというわけには行きません。われわれの希望により多少の増額はあつたものの、補助者の旅費などは問題になりません。大阪労働基準局は、いまだに旧兵舎の仮住居から出ることはできず。管下十三監督署のうち八署までが間借り生活で、常に追い立てを食つておる次第です。大阪労働基準局のかたわらに、今度二階建のきれいな特審局の近畿支局が新築され、われわれは行き帰りはなはだ複雑な気持で眺めております。四百四名の職員のうちには、肺疾患のため十二名の長期欠勤者があり、医者から療養を言い渡されても、生活のために、また最近では首を心配して、無理して出勤している者も決して二、三にはとどまりません。だからといつて、われわれは仕事の手を抜いてもよい役所ではありません。仕事の手を抜いたら喜ぶのはだれで、迷惑するのはだれかということは明瞭であります。最初われわれは五割切られると言われ、今は二割と言われています。しかしわれわれは一人でも切られることはできない。今まで少い人数でやつて来たのは、今日二割もまだ首を切つてもらう余裕があることを実証するためではありません。」という手紙であります。これは橋本長官がおりましたら、それに対して行政機構の改革の問題と関連してお尋ねするのが当然だと思うし、それが筋道だと思うのでありますが、このわずかなはがきの中につづられておりますような状態が、今整理されるあなたの所管の労働基準監督関係のところに出ておるのであります。手紙の文句の通りこういうような状態になりますと、これはもう労働基準監督とかいうような看板をおろすにひとしいものである。できない看板をかけておくのは看板に偽りありなのであります。私はこういうような労働基準法違反というようなものが、今全国でどんなふうに行われておるのか、あなたはどう把握しておるのか、それに対して、若い監督署の職員が、労働階級の地位の向上と労働関係の民主化の一半の責任は、われわれ労働基準監督関係に勤めておる職員にあるというこの気負い立つた気構えに対しても、ひとつ大臣にその点の見解を承りたいと思います。
  122. 保利茂

    ○保利国務大臣 お手紙をお預けいただけますれば、責任を持つて調査をいたします。それを調査いたしました上でお答えをいたします。事務的の関係につきましては基準局長が見えておりますから、基準局長から御説明をいたします。
  123. 亀井光

    ○亀井説明員 ただいまの御質問の中に違反の状況はどうかという御質問がございました。最近の状況を申し上げますと、逐年違反の件数は減つて参つておりまして、われわれといたしましては、基準法が相当行き渡つて参つておるというふうに考えております。特に、違反の中の形式的な違反、すなわち手続等の違反と、それから労働条件に関します実質的な違反と比べてみますと、施行当初は形式的な違反が非常に多かつたわけであります。これは法の周知徹底が十分でなかつたということにも関連するのでございますが、逐年形式的違反が減つて参つております。このことは基準法が滲透して参つておるということを示すのではないか、かように思うのでございます。  なお行政整理の問題でございますが、われわれといたしましては、内部事務におきまして相当簡素化する事項があるのではないか。監督官は御承知のようにわらじをはいて出歩きます仕事でございますから、できるだけ監督官についての整理は、一般の内部事務をやらせないで監督本来の仕事に当らせる。内部事務整理することによつて、そこに事務官以下こういうものの整理を重点的に行つて行きたいというふうに思つております。
  124. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私はこの際承つておきたいのですが、朝鮮戦争に関連したあの筋の特需の企業には、労働基準法などというものに関係なしに、予定通り増産しなければいかぬ、生産を上げなければいかぬというようなことを政府自身が通達をされておるかのごとく聞いているのであります。これは労働省あるいは政府としてはやはりもつてのほかの処置だと思うのでありますが、その点についてお確かめいたしたいと思います。
  125. 保利茂

    ○保利国務大臣 私は関知いたしません。
  126. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それではこれは先ほど読み上げました手紙の連絡をいたしますのと同時に、はつきりした資料をもつてお尋ねすることにいたします。  それから長期欠勤者の問題ですが、その数字と、それからその原因というようなものについて、数字があつたらお示しを願いたいと思います。
  127. 保利茂

    ○保利国務大臣 それは基準関係だけですか。
  128. 加藤充

    ○加藤(充)委員 いや基準関係だけではございません。
  129. 保利茂

    ○保利国務大臣 労働省の関係でございますね。
  130. 江下孝

    ○江下説明員 お尋ねの長期欠勤者の数、並びにこれの原因ということでございますが、私どもの方で今年の十月一日付で調査いたしました数が、労働省全職員で八百三十三名となつております。それは定員二万一千八百二人に対しましてであります。長期欠勤の内容は、一箇月以上の者を見ておつたのであります。原因と申しましても、これはひとり労働省だけでなく、各省みな共通の問題であろうと思いますが、やはり終戦後の全般的な生活状態の困窮ということが、一番大きな原因であろうと思います。私どもといたしましては、今後はできるだけ公務員として採用いたします際に十分体格検査を行うことが必要ではないかというふうに考えております。
  131. 加藤充

    ○加藤(充)委員 生活水準が低いのである、そして敗戦後というお話、そういう表現それ自体は間違いではないかもしれません。しかし最近BCGの予防注射の問題が問題になつておりますが、予防注射を打つよりも前に、生活水準一般でなくして、労働者なり公務員なりの生活の基礎というものは、やはり賃金であり給与なのであります。それで賃金なり給与が低いことが、やはり長期欠勤の根本の原因だと思うのであります。もう一つは、これから体格検査を厳重に行うといいますが、最近ではずいぶん厳重な体格検査を受けて職場に採用されて、入つてからしばらくたつて、いわゆる低賃金のところへ持つて来て、このうつとうしい職場で働き過ぎて、からだがこわれるという者が多い。しかもそれが当然に長期欠勤にならざるを得ない結核系統の病気だというようなことは、大体の数字が示している通りなのであります。私はそういう点で、とりわけ公務員の長期欠勤、特に肺結核系統の病気については、公務による病障害の取扱いを受けなければならぬ、またそうするのが当然だと思うのでありますが、このたびの定員法改正の首切り法では、この長期欠勤者を定員のわくの外に出すということが規定されました。いかにも病床に伏せつて妻は飢えに泣くというようなたぐいの者を首切ることは残忍だ。それは言われるまでもなくその通りでありますけれども、わくからはずした、これがはたして宣伝されるように万全な、人情味のあるあたたかい処置であるかどうか、この点は大いに疑問であるばかりでなしに、反対しなければならないと思うのでありますが、大体定員のわくにはずされた者は何箇月どういう給与手当を受けるのか、そうしてそれでだめだつたということになつたら、そのときにどういう処置を受けるのか、先ほど申し上げましたように、原因が原因だけに問題は重大であります。また幸いにして療養これ努めてこれが回復しました場合においては、その人たちはどこで、元住みなれた、そうした多少の技術に関係のある職場にもどる方法の余地が残されているのか、これはある程度まで飼い殺しにして、その先はもう突き放しというようなまことに残忍なやり方のカムフラージユだとも思いますので、この点について失業対策なり、そういう点であなたの御返答を聞いておきたいと思うのであります。これは橋本長官に尋ねるのが至当かと思いますが、あなたも全然無縁の人ではないわけでありますか……。
  132. 保利茂

    ○保利国務大臣 あなたの言われましたように、私のお答えする筋合いのものもないようでありますが、大体行政改革に基く人員整理をやる場合に、長期欠勤者は休んでおられるわけだから、休んでおられる方に退職していただくということは、現に元気よく日々お働きいただいておる方にやめていただくよりも、本来その面から言いますと、合理的のようでありますけれども、そういたしますとせつかく病気の療養をされている長期欠勤の人々が、病気を押して出勤をし、またからだを無理せられることになりますので、この長期欠勤者については今回の処置としては一応定員の外に置いて、結核患者については二箇年間給与の八割を支給して、十分療養の期間手当を尽す。その他の一般病気によつて休んでおられる人は一年ぐらいの期間療養して、病気回復後にはまた元の職場に帰られるように、各官庁で処理する。しかし今日の国の状態から申しまして、二箇年間という長期の療養期間の措置をとりますことは、かなり大きな負担でありますけれども、今日の場合でございますから、そういう措置をとるようにいたして、十分安心して療養ができるようにするという処置を講じて参るつもりであります。  なお賃金が低いということでございますが、これはまことにその通りでございます。しかしながら賃金は結局支払い能力いかんにかかつて来るのではないか。民間におきましては各事業場の経営、経理の状況によつて支払い能力が高まることによつて賃金は上昇して行かなければならぬ。国におきましても国民の担税力が高まりまして、財政がこれに伴うならば、当然これは改善されて行かなければならぬ。そこを両々にらみ合せて処置をして行かなければならぬ。今日をもつてわれわれとても満足をいたしておるわけではありません。ともかくも暗く暗く世の中を見られようとするあなたのお気持に対して、われわれはそういう困難な状況から一段々々と明るい方面へ行つて、よりよき国民生活をもたらして行くようにしなければならぬのじやないかと思つております。しかしさればとて現状から一足飛びに高賃金を期待するということは、支払い能力の問題から困難ではないかと考えております。
  133. 木村公平

    ○木村委員長 保利労働大臣の退場を許可します。
  134. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それでは今の続きだけやつてあと労働大臣に対する質疑は留保することにさしていただきます。今支払い能力が問題になつたのですが、実際公務員の賃金と民間企業の賃金とはお互いに作用し合つているのであります。そういう条文の体裁は高かからず低からず、不公平のないようにということになつておるようでありますけれども、最近の雲行きは、民間の給与を公務員の給与ベースが引下げておる。高からず低からずと言つておりますけれども、実は民間の企業の賃金が、公務員の給与ベースに右へならえして来て、公務員の給与ベースが低ければ、それにスライド・ダウンして来てしまうという状態になつて来ておると思うのです。これは私の議論じやありません。経済安定本部から出しておる二十六年度の年次経済報告のところをちよつと開いて見ただけで、その立場からすらこういうことが言われております。「かくのごとくおおむね労働生産性の上昇より賃金の上昇率が下まわつておるために、製品や価格の上昇と相まつて製造工業の労務費比率指数も二十五年六月を一〇〇として、九月八七、十一月七五、二十六年一月七一と、顕著な下降を示し、企業採算好転の一大原因ともなつておる。」こう書いてあるのであります。これはあなたの関係で、公務員の関係では直接ございませんけれども、もうけ過ぎておつても、賃金を払わないということはこの報告によつても明らかでありまして、そういう状態のときに、さらにそれよりもはるかに下まわる公務員の給与ベースを立てて行くというやり方では、高からず低からずと言つておりましても、結局、公務員の給与ベースが低いこと自体が、逆に今度はまつたく人権を無視したような企業採算をかつてにやつてもうけている民間の資本家、企業家に合理的な弁解の基礎づけを与えてやるようなことになつてしもうのであります。政府予算措置がどうだとか、支払い能力がどうだとか、国力がどうだとか言つておりまするが、翻つてこのたびの補正予算の特徴を見ましても、予備資金的な、いわゆるリザーヴ的なものがたくさん含まれている、ポケツトの金がたくさんある。それが何に使われるかということが明瞭に示されていない。はつきり示すことのできない使途のために、今のようなたくさんのリザーヴがされている。こういうようなことから見ても、金がないとは言われないのであります。これはあなたにりくつを言つてもしかたがないし、問答を重ねてもしかたがないような気がして、思うようにやれませんが、結局今の人員整理の問題、行政機構の改革の問題にいたしましても、明らかに軍隊化された警察予備隊あるいは中央集権化して強力になつた、名にしおう昔の警察にひけをとらないようなあの国警というようなもののために、どれだけ莫大な金が出されておるか。こういう莫大な金を出しておきながら、支払い能力がないというような形で、低賃金を押しつけたり、ましてや人事院の勧告すらも無視するようなやり方では、生活水準が低いから病気になるんだというけれども、まじめな仕事に熱心な公務員を病気にさせてしまう原因は、政府みずからにあるのじやないかと思うのです。決して金がないとは私どもは了承できないのであります。それで病気になつた者に対しては二年間というものはたいへんな負担だ、その面を見れば、なるほど負担に見えるかもしれませんけれども、全体としてこのたびのようにたくさんの首を切つて、これでみなの負担が軽くなる、国のかかりが軽くなるのだとかいうようなばかげたことを言つて、たくさんの出血を要求する根拠を私は承認するわけには行かないのでありますが、その点について、大臣がいなくても、しかるべき方の御答弁を願いたいと思います。
  135. 山村新治郎

    ○山村政府委員 御意見十分拝聴いたしましたが、前段の問題につきましては、公務員の賃金ベースが一般の民間における賃金を引下げるような傾向にあるじやないか、そういう影響をもたらすというようなことについての御意見であつたと思いますが、公務員の賃金ベースを決定する際には、もちろん民間の賃金あるいは生活水準その他を参考にいたしますが、民間の賃金は千差万別でございまして、決して政府が影響力を持つている次第ではございせまん。その点ひとつ御了承願いたいと思います。  なお後段の問題につきましては先ほど大臣がお答えになつ通りであります。
  136. 加藤充

    ○加藤(充)委員 先ほど大臣は、八万ちよつと首になる中で退職金を八割増し奮発した、あとは小規模の職業補導をやつてまあまあ一万人くらいは救済をする見込みだと言うのであります。なるほど職業補導の関係でたくさんの人が就職しているという御報告は聞いたし、そういう数字もあるかのごとく見受けられるのでありますけれども現実に補導を受けて九〇%とか何とか就職の目先のきまつた人たちの家庭の状況、年齢あるいは家族数あるいはその身につけた技術、それから現実に雇われて行つた先の職場の状態というようなものを見なければ、とうとうとして九万人近い者が一齊に大量に首を切られて行きましたときに、その職業補導というような形で一万人はおろか——あるいは一万人救済できたとしても、その残りの八万人はたいへんな問題を背負い込んでいるわけなのでありまして、これだけで大整理というものは社会不安を巻き起す原因となる可能性があるから、政府としては実施上十分適切な対策を立てる必要がある。しかも万全の措置を講ぜねばならないというようなことが、政令諮問委員会の答申案にもうたわれておるのでありますから、先ほど大臣が答えた失業対策というようなものはほんのごまかしで、実際上の役に立たない。先ほど朝鮮事変で失業がどうだこうだと言われましたけれども、これとて政府の出しておる先ほどの報告書によりますれば、朝鮮事変が幸か不幸かは別としまして、根本的に定時的な継続的なほんとうの安定した就職の上にはあまり大きな影響はなかつた。みないつ首になるかわからぬ、その日稼ぎの臨時工みたいなものにすぎないということが言われておるのでありまして、こういう点から見ても失業対策というものは今後ますます深刻化する。特需その他のもので殷賑をきわめるものが部分的には起きますけれども、よけいなことを言うまでもなく、最近のやり方によりますれば、とうとうとしてあのコマーシヤル・ベースの上に乗り切れずに脱落して行く企業体が多いのであります。平和産業の実情はそうであります。関西あたりでは電力などの問題につきましても、倒産して行く企業が多いのでありまして、アルミの増産だとか、あるいは特需の軍需工場には電力の配分がよけいある反面、電力不足に迫られて店じまいして行くものが多いのであります。こういうようなものは、同時に失業対策としても決して楽観は許されない。ますます真剣に対策を立てなければならぬのでありまして、所管の労働者が騒ぐのはけしからぬということで、警察が予算だけふやして弾圧したのでは、とうていこれは押え切れるものではありません。ついては九万という大量出血をいたそうとする政府当局の対策としても、先ほどの大臣の失業対策の答弁は当面不十分きわまるものと思うのでありますが、あの穴をどうして埋めて行くつもりなのか、その点についての方針をお聞きしたいと思います。
  137. 山村新治郎

    ○山村政府委員 今回の行政整理に伴う失業対策の問題につきましては、政府といたしても深い思いやりをかけてあげなければならぬと存じておる次第でありまして、私先ほどの大臣答弁のときにおりませんでしたが、大臣から御答弁があつたことと存じますが、大体十二万の整理員に対しまして実際出血は幾らぐらいかということを労働省として推定いたしましたときに、長期欠勤あるいは病欠等を勘案いたしまして六万ないし六万五千の程度になるのではないかと考えておる次第でございます。しかしこの六万ないし六万五千の方々といえども、ほんとうに政府としてこの窮状を救つてあげなければならないという意味から、御存じのように退職金につきましても四割ないし八割増額の退職金を出されるわけでありますし、同時にまた課税の面につきましても、今までとは異なりまして、控除を十五万円として、課税の減免の処置も講じられた次第なのであります。従つてこの退職金によりまして、新しく職業を得られるまでの間の食いつなぎと申しましようか、生活の安定を期したいと存じておる次第でございますが、しかし何としましても新しい職業を見つけてあげるということが、非常に重大な問題でありますので、先ほど加藤委員からお話がありましたように、補導関係の充実によりまして労働市場の求める労働条件と申しますか、労働技術を新しく習得して、新しい生活分野に進発して行くという便宜を与えております。同時にまた一面におきまして、今までは官吏の就職制限等もあつたのでありますが、この制限を解きまして、すなわち今まで直接関係官庁に関係のある業種へは就職がすぐできなかつたのでありますが、これもできることにもなつておりますし、同時に各省とも十分連絡を取合いまして、これらの離職者に対しては職業のあつせん、あるいはまた今後欠員が生じた場合には、やはりこれらの方々を優先的にとり入れる、あるいはまた広く公共職業安定所の窓口を増加いたしまして職場開拓をいたす等の処置をもちまして、この六万五千の方々に対するあたたかい手を差延べて参りたいと存じておる次第であります。
  138. 加藤充

    ○加藤(充)委員 新しい労働分野それから労働力を求めておる方面というのは、具体的にどの方面に目安を立てられているのか、具体的に見込みを承りたいと思います。なお職業補導並びに就職の世話については、職業安定所などの窓口を広く開いてというが、その広く開くところを狭くしてしまつて仕事している連中をどんどんあなた方のところで首を切つておるようなことになつて、これではあなた自体の御答弁をみずから殺したようなことをお認めにならざるを得ないと思うのですが、その二点についてお尋ねいたします。
  139. 山村新治郎

    ○山村政府委員 その人々によりましておのおの特長もあると思いますので、その方々の能力に応じた職業補導をいたして参りたいと存じている次第であります。  なおまたこの職業安定所の窓口の強化という問題でございますが、確かにこの点につきまして、やはり一般行政整理一つのおつき合いと申しましようか。その点からの原案が出ておりますが、もしもこれが通過いたしましたあかつきは、省内における事務のやりくり等によりまして、万遺憾なきを期して参りたいと存じます。
  140. 齋藤邦吉

    ○齋藤説明員 私からも一言お答え申し上げますが、安定所の職員行政整理につきましては、管理事務だけについてある程度整理を行うだけでありまして、職業紹介その他現業関係には一切整理をしない、こういうことに相なつております。
  141. 加藤充

    ○加藤(充)委員 大臣がおりませんから続けてやつてしまつたのですが、これはこの程度でとどめておきまして、人事院の浅井さんにお尋ねしたいと思います。  何回も例にひつばるようでありますが、今度の機構改革、人員整理の諮問委員会の方からの答申によりましても、それには問題はありますけれども、それはここでしばらくあずかりにいたしまして、公務員一人当りの行政事務分担分量の増大化は必至である、また事務処理の能率化もはからなければならないのであるから、公務員の給与の改善を考慮しなければならないということが書かれている。この前にあなたのところではベース・アツプの勧告をされました。しかし新しい首切りが起きましたあと、これは事務分量の増大化が必至であるというように書かれているが、これは必至のことでありますので、こういう面についてあなたの方ではさらに給与の勧告をする必要を理論上今持つておられるかという点が一つ。  それからこのたび政府ではいわゆる千五百円ベース・アツプというようなことで、あなたのところの勧告を無視されているのでありまするが、こういう状態によつて今申し上げましたような行政整理をやつて、個人一人当りの事務分担量が多いというようなこと、それで仕事能率を上げなければならないというようなことになつて行つた場合に、やはり公務員といえども人間でありますし、給与で食つて行くのでありますから、事務能率化、合理的な科学的な行政事務運営というような点から、給与ベースの問題について何か考えておられるところがあなたの職責上、立場上おありだと思いますので、その点を承りたいと思います。
  142. 浅井清

    ○浅井政府委員 加藤さんにお答えをいたしますが、公務員は初めから能率を上げて全力をあげて仕事をしなければならぬということになつておりますから、それはもとより当然のことであろうと考えております。人事院が給与の引上げを勧告いたします場合は、公務員法に規定されております条件が備わりましたときに勧告をするのでございまして、過去におきましてもそうでありましたし、将来におきましてもそのようにいたしたいと存じます。
  143. 加藤充

    ○加藤(充)委員 人事院の看板には能率的人事行政というようなことが掲げられておりますし、その点から定員というようなものが職務量との関係その他から規定されて来ていると思うのでありますが、このたび事務簡素化ということは言えても、事務定量が少くなるということが必ずしも言われておりませんし、その点については一部は地方に委譲するとかいうようなことで責任をのがれておる節もあるのでありますが、そういうふうなことにしましても、職場々々におきましては事務定量が減るということはないし、減るという立証も何ら説明されておらないのであります。能率的人事行政の面からみて、このたびの行政整理、大量の首切りというような点をどういうふうにお考えになつておるのか、人事院としての御見解を聞いておきたいと思います。
  144. 浅井清

    ○浅井政府委員 お尋ねではございますが、この定員の問題は行政管理庁の管轄に属しております。政府といたしましての答弁は一本でございますから、これにつきまして人事院がこの席上で異なれる御意見を御期待になりますのは、これは御期待がはずれるかと存じます。
  145. 加藤充

    ○加藤(充)委員 公務員の身分保障、それから労働条件の維持、保護というような役割をあなたのところでは一般的に負うておると思うのです。それで行政整理は私の権限外であるということになればまた何をか言わんやでありますが、今度の定員法の改正によりますと、いわゆる不利益処分、あるいは地位の保障、身分の保障を害された者については、審査の請求権というものがなくなつている。争議権や団体交渉権、その他の一般の労働者の持つ権利はあくまでも憲法に保障されておるが、その基本人権としての諸権利を公務員は制限されて来た。この制限は至つて不当でありますけれども、しかしそれを補うものとして身分の保障を審査請求権ということで一応つなぎをとめて、その職責はまず人事院あたりがやらなければならなくなつて来ておると思うのです。ところがこのたびは、そういうふうな権利を全面的に剥奪いたしまして、切捨てごめんをやつておるのであります。これらの問題について人事院は、私どもの権限外であるというようなことは、職責上も言われない問題であるし、権限外だと言われるかもしれませんけれども、公務員の保護機関としてそういう役割を持たされた人事院としては、何らかの手を打つべきであつたと思うのであります。この点についてあなたの見解なり、またこのことについて努力して来たところの報告を承りたいと思います。  なおこれはあなたにお聞きするのはあるいは当を得ないかとも思われますが、こういう公務員の審査請求権というものを奪つたこれとの関係で、憲法三十二条並びに行政事件訴訟特別法との関係、これらについて人事院に請求に応じた審査権がないとするならば、その点について聞いておきたいと思います。
  146. 浅井清

    ○浅井政府委員 加藤さんにお答えいたしますが、私はかつて公務員の保護を人事院がやらないと申し上げたことはないのであります。ただいまお話になりましたこのたびの定員法改正法案の附則におきまして、人事院への訴えの制度を取除いてございますることについての御論議と存じまするけれども、これはひとつ裏の方からもお考えを願いたいと思います。なるほど首を切られました者が人事院へ訴えて出て、人事院がそれをさばくことも公務員を保護することでございましよう。しかしながらこれを人事院が受け付けるといたしまするならば、まずもつて行政整理の基準というものをきめなければ、とうていその審理はできないのでございます。そういたしますると、その基準はどういうことに相なるかと申しますれば、おそらくは成績の悪い者、それから老朽事に耐えない者、あるいは不適格な者というようなことになりはしないでしようか。もしもそういうことになりますると、やめられた人にそのような焼印を押してしまうことに相なります。そういたしますると、これはその人の失業受入れ等についていろいろと問題がございます。ですから公務員を保護いたしまするということは、人事院への訴えを認めるということだけではないと御承知置きを願いたいと思います。  次に申し上げたいと思いますることは、加藤さんは、人事院への訴えの制度を取除きますれば、切捨てごめん、むちやくちやな首切りが行われるという前提に立つての御論議と存じまするが、これは二つの点においてそうではないのでございます。第一に、この定員法においては、どこに国家公務員法のすべての規定を取除いて野放しにすると書いてございまするか。さようなことは一つも書いてないのでございます。今回の整理たるや、明らかに公務員法七十八条第四号に当るところの整理でございまするからして、公務員法の適用及びこの七十八条を基礎にいたしておりまする人事院規則の十一ー〇というものは厳然として適用されておるのでございます。第二に、過去の例においてこれを見ましても、任命権者は決してむちやくちやに首を切るものではないのでございます。現に人事院へ多くの訴えが参りまして、それをわれわれで取扱いました経験によりましても、首切りを取消した例はまことに少く、首切りを承認した例はまことに多いのでございますから、任命権者というものは切捨てごめんをやるものであるという御前提は、失礼ながらお間違いかと存じます。
  147. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私がおめでたいのかあなたがおめでたいのかしらないけれども、そういうおめでたいことを言つていて、今度の行政整理で、人事院などというものは廃止してしまえということで、あなたのところがまつさきにやり玉に上つているということは、まつたくこれはおめでたいといつては失礼だけれども、そういうことを知らないで、いいかげんなことを言つているのだとしたら、おめでたいと言わなければならない。人事院というものは都合のいいようなことばかり言つては、敵にして来たのは公務員ばかりなのだ。公務員のことでまことしやかに保護規定だなんと看板をかけておいて、いざとなつてみれば何にもならない。ただ最近ちよつとましだと思うのは、給与ベースの勧告だけだ。あれとてもあなたが一応改訂を出しただけで、そのことについて、こういう千五百円ベース・アップだと言つているときに……。
  148. 木村公平

    ○木村委員長 加藤君、質疑国会の品位を重んじて、もう少し丁重に願います。
  149. 加藤充

    ○加藤(充)委員 そういうふうな状態で、給与ベースの点についてだけは、多少政府よりはましだ。だがそのほかのことについては、何ら保護の機関になつていない。人事院が審査請求に基いて、公開審査をやつて、たいがいの者は首になつたり、職場をおつぱらわれたり、処罰されたりしている。任命権者というものはむちやくちやなことをするものじやないということがうなずけたと言われますけれども、あなたがお考えになるのはかつてでございますが、しかしあなたの人事院の審判なるものに得心しない者はたくさんおるのであります。これは首を切られた者だけが恨み返しに得心しないというのじやなくして、レッド・パージというようなものはまつたくきたないやり方だ。卑怯下劣なやり方であるというような主張を、読売か、東京日日であつたかに、左翼的だとか言われる人でない評論家が口をきわめて——これは今木村委員長が言われたように、国会で発言すれば、国会の権威を無視する。私の言つたことよりもつとひどいことですが、口をきわめて罵倒しているようなととがあるのであります。そういう点で私はお尋ねしたのでありまして、憲法三十二条、それから行政事件訴訟特例法との関係について、あなたの方で審査請求権を受付けることができない、それが剥奪されるとなれば、その唯一の救われる道はどういう関係になるのか、公務員の保護機関としての浅井さんにお聞きしたいのです。その点については御答弁がなかつたと思うのであります。
  150. 浅井清

    ○浅井政府委員 最後の点は申し遅れましたが、法律問題につきましては、これは裁判所へ出訴し得ることは公務員法に明記してございますから、御承知置きを願います。なお共産党の御批判は御自由でございまするけれども、事実をもつて答弁申し上げますれば、人事院で判定をいたしましたのに不服な者は、もう一度人事院へ再審の請求をいたす道が開かれてございますけれども、いまだかつて一件もございません。また法律問題が起りました場合には、裁判所へ出訴権が認められておりますけれども、これはただ一件のみ、しかもそれは途中で取下げになつておりますから、人事院の判定に不服な者はまことに多いとおつしやいますけれども、是認する者もまことに多いことを御承知置き願います。
  151. 木村公平

    ○木村委員長 本日の質疑はこの程度にて打切り、明後八日午前十時半より継続することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十九分散会