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椎熊委員 きようは御遠慮しようと思つておりましたが、せつかく
大臣がいらしたのですから、この際やや耳ざわりなことが多いと思いますけれ
ども、ごしんぼうを願います。
本日この
補正予算の
説明を聞きまして、私
ども痛切に
考えさせられるのは、本
年度の当初
予算の
審議の際における当局の態度、なかんずく当時の
大臣の
考え方——私は当時このことを指摘しております。
各省が
予算のぶんどりをするという、長い間の
日本の官僚の習慣は、いいか悪いかは別といたしまして、その役所といたしましては、まつたく当該の責任者は命がけでこれをやつておることであります。
〔
委員長退席、辻
委員長代理着席〕
本
年度の電気通信の
予算におきましては、大蔵省と
電気通信省の間には、世間公知というほど大きなけんかをしております。折衝の最中では罵詈雑言までいたしまして、ほとんど暴行ざたにも及ばんとするがごとき形勢があつたということすら、私
どもは聞いております。
従つて私
どもは、両省の当該官吏のその熱心なる
主張、その点におきましてはむしろ感心したくらいであります。そういう熱意のあまり、大体両省の当該官吏の間ではある種の了解を遂げられて、
最後は閣議の
決定によつて、閣議が
決定すれば、大蔵省も、大体当初電通省が要求したる
予算に近いものを認容してもいいという形勢にあつたということである。しかるに閣議の結果は、一たまりもなく当時の
大臣は池田大蔵
大臣のためにやり込められて——聞くところによると、やり込められたのではなくて、初めから
主張をしなかつたといううわささえ聞いております。閣議の
内容ですから、私はそれはつまびらかにいたしませんが、当時閣内における
電気通信省の
大臣と、大蔵
大臣との貫禄の上、識見の上から言つたら、おそらくそのようなことも事実であつたかと、私は
電気通信事業のために残念に思います。
従つて当初この
予算をわれわれに
審議をさせられたときに、私は、これは当然破綻を来す
予算である。当然
補正せられざるを得ない
予算である。
従つて不完全
予算である。こういうものを当
委員会に持ち込む
大臣というものは、政治家として責任を知らざるものである。逓信省以来、かつて
予算の問題でかくのごとき醜態を暴露した
大臣というものは類例を見ない。ひとりこの
大臣の自己の一身一家の名利栄達のためではなくして、
日本の政界のために、
日本の通信
事業のために、あるいは
日本の閣議の席上における
大臣の責任の立場から、こういう状態では
大臣としてあなたは勤まるものではない。断固として責任を明らかにし、あなたがやめることによつて、せめて
電気通信事業の——完璧とは行かないまでも、本
年度予算に対する一つの
主張が政界に大きな波紋を起して、これが復活せられないとも限らないと、あの席上において私が言つた当時遺憾ながらみずからの所信を閣内に反映せしめることができなかつたという理由において当時の
大臣がやめたならば、政治家としては実にりつぱなる出処進退であつたでありましよう。そうしてそのことは、
電気通信事業を救つたでありましよう。しかも恋々としてその職にとどまり、下僚を責めることに急にして、みずから反省するところなし。しかも彼の
大臣としての生命は、その後何箇月続いたか。私が指摘した
通り、この無力なる
大臣は日ならずして総理
大臣から辞職を
勧告せちれざるを得ないはめに至
つたのであります。かくのごときは、新憲法下における数代にわたる
内閣においても、こんな醜態は断じてなかつたことであります。私はこの
内閣のためにも、特に私の
関係する
電気通信省のために、残念に思う次第であります。従いましてこれを補佐したる政務次官、これを補佐したる
事務次官におきましても、当時私
どもの乱暴にも近かりし発言に思い合せて、御反省を願いたい。あなた方の責任もないとは言われぬのです。そこで私は今あなた方の責任を責めるのではない。幸いにしてこの無能な
大臣のあとに、私の日ごろ敬愛するところの
佐藤大臣が、今日絶対多数を持つ天下の第一党の幹事長という重職を、長きにわたつて、しかも成功裡にそれをやり遂げられ、功
なつて、さらに認められて閣内に入られた。私はこの
機会に
佐藤大臣に非常なる期待をかけるのです。私はこのようなみじめな
電気通信事業を、ほんとうにあなたのような新進気鋭で、そうして閣内にも威力を持つであろうところの、ほんとうに将来ある政治家が、ほんとうに逓信
事業というものに身を打込んでやつてくれるならば、画期的な一つの
基礎を固めることができるであろう、こう私は期待するのです。よほどの人でなければ、この
電気通信事業というものは、今のようなやり方では、いつまでたつてもよくなりません。今度の
補正予算を見てごらんなさい。みんな膏薬張りです。このために
日本の
電話がどうよくなるか。
部分的には、あるいは一
部分は非常にいいところもございましようけれ
ども、こんなに発展して行く
日本の経済界、こんなに膨脹して行く
日本の国情というものに、追いかけても追いかけても追いつくことのできないような、幼稚なる感覚でその日暮しをやつておるのが、今日の
電気通信事業です。こういうことでは、いつまでたつてもよくならぬのです。そこで、こういう強力なる
内閣のもとに、あなたのような有力なる
大臣が出た以上、これはひとつ国の
方針として、来
年度予算あたりから、ほんとうに真剣に、画期的な大
計画をもつて臨むにあらずんば何年たつてもこういう、状態が解決できない。私が
佐藤大臣に望むところのものは、あなたはせつかくこれだけの大きな役所を二つも抱えて閣僚とな
つたのですから、この際あなたはこのことを解決することによつて、ひとり国家のために貢献するのみではない。あなたが
日本の政治家として将来伸びて行くためにも、このことは非常な期待をわれわれからかけられおる点なのです。私があなたにお
考え願いたいことは、今度の
補正予算で私
どもが指摘した
通りです。このうちで人件費の賃金ベ
ースによるところの増額のごときは、これはやむを得ない問題でございます。その他は全部当初
予算を組む時分に、ほとんど見通しがついておる問題です。これらは前
大臣の不手ぎわによつて、
電気通信省の役人が
計画した
通りの、それに近かりし
予算をとることができなかつたという醜態の結果、当初
予算のまつたく根本的な
補正なんで、その後時局の変転その他によるやむを得ざるに出でたる
補正だと私は思わぬ。当初
予算の編成の当時における役人諸君が持つた熱意が、
大臣の政治力とぴつたり合つておるならば、このような醜態の
補正予算を出さなくてもよかりたと私は思うのです。しかしながらすでにそれは過去のことです。
従つて私は
電気通信事業のために、この
補正予算を否決しようとは思わぬ。これも何とか通過さして、たとい彌縫策でもやらないよりはいいのですから、やつた方がいいと思いますけれ
ども、そんなことで安心してお
つたのでは、いつまでたつてもよくならぬということ、それを私は特に
佐藤大臣に
要望いたします。そうして今同僚から申された、ときたま聞くいまわしい問題のごときも、ほんとうに緊張して
大臣が一生懸命役所のためにやり、閣内でも、この役所のために発言権に非常な重きを加えられたということになれば、下の役人諸君の緊張の度もおのずから違うと思う。ああいうような無責任な
大臣のもとにおいては、まじめに仕事をやるのがばからしく
なつて、すべてが放慢に流れたから、そういう間隙に乗じていろいろいまわしいこともあ
つたのではなかろうかと、私は非常に残念に思います。どうかこの
機会において、
佐藤大臣を中心とせられて、下僚の諸君は一生懸命に、この
日本のほんとうの基盤をなす神経中枢たる
電気通信事業というものを諸君の手によつて、この
大臣のときにおいて
改革するという意気込みで、ひとつ緊褌一番、大
計画を樹立してもらいたい。これが私の念願なんです。特に
佐藤さんには、私は非常にあなたの政治力を信頼いたしまして、むしろこれは私
どもも多少
関係のあつた役所でございまするから、あなたにお願いするのであります。実は
大臣の
説明に対する
質疑としては不適当だと思いまするけれ
ども、かくのごとき
機会でなければこういう発言もできませんので、耳ざわりではございましたろうが、一言将来の
日本の
電気通信事業のために、憂いを同じくする人々の気持をあわせ代表いたしまして、私はこのことを
大臣に進言しておきたいと思います。(拍手)