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1951-10-29 第12回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十九日(月曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 夏堀源三郎君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君    理事 内藤 友明君       淺香 忠雄君    有田 二郎君       佐久間 徹君    島村 一郎君       塚田十一郎君    三宅 則義君       宮腰 喜助君  早稻田柳右エ門君       高田 富之君    深澤 義守君       中野 四郎君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         法務事務官         (法制意見第二         局長)     林  修三君         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (管財局長)  内田 常雄君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         国税庁長官   高橋  衛君  委員外出席者         大蔵事務官         (管財局外国財         産課長)    佐々木庸一君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 十月二十七日  国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第一五号) の審査を本委員会に付託された。 同日  法人税引上げ案撤回に関する陳情書  (第二六七号)  公共事業実施に伴う土地買収代金に対し所得税  免除に関する陳情書  (第二九  八号)  林業税制改正に関する陳情書  (  第三一四号)  証券取引法改正に関する陳情書  (第三一六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合国財産補償法案内閣提出第五号)  所得税法臨時特例に関する法律案内閣提出  第一〇号)  財産税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一二号)  国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第一五号)     ―――――――――――――
  2. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 これより会議を開きます。  一昨二十七日、本委員会に付託に相なりました国民金融公庫法の一部を改正する法律案議題として、政府当局より提案趣旨の説明を聴取いたします。西川政府委員。  国民金融公庫法の一部を改正する法律案   国民金融公庫法の一部を改正する法律  国民金融公庫法昭和二十四年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。  第五条第一項中「六十億円」を「七十億円」に改める。    附 則  この法律は、公布の日から施行する。     —————————————
  3. 西川甚五郎

    西川政府委員 ただいま議題となりました国民金融公庫法の一部を改正する法律案について、御説明申し上げます。  国民金融公庫は、一般の金融機関から融資を受けることを困難とする国民大衆に対して、必要な事業資金の供給を行うことを自的として、一昨年六月設立されましたが、その後四回にわたつて増資行つた結果、資本金六十億円となり、本年八月末までに普通小口貸付八十三億八千万円を貸し付け、鋭意その目的完遂のため努力して参つたのであります。昨今公庫に対する資金需要は、きわめて盛んで、すでに本年度増資分二十億円は十月までに貸付を終り、十一月以降は既往貸付金回収金のみに依存せざるを得ず、増大する資金需要に応ずるにはきわめて不十分な状態でありますので、今回その資本金を十億円増額して七十億円といたそうとするものであり、この追加出資額は本年度補正予算に計上されているのであります。  以上の趣旨によりまして本法律案提案した次第であります。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。     —————————————
  4. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 次に連合国財産補償法案議題といたしまして、前会に引続き質疑を継続いたします。内藤君。
  5. 内藤友明

    内藤(友)委員 ただいま議題になつております連合自国財産補償法案のことにつきまして、一、二お尋ねいたしたいと思うのであります。私は法律のことには実はうといのでありまして、少し法務総裁からごらんいただきますと、実はおはずかしいような質問になりそうでありますが、その点ひとつしろうとだということで、お許しをいただきたいのであります。  それは前会に政府委員内田さん、林さんにお尋ねいたして、ややその中味のことは了解される節もあるのでありますが、まだ少しわからぬところがありますので、はなはだ迷惑なことを申し上げて恐縮なんでありますが、それは日本国との平和条約第十五条の(a)(b)(c)の(a)一番最後にあります「日本国内閣が千九百五十一年七月十三日に決定した連合国財産補償法案の定める条件よりも不利でない条件補償される。」この条約の事項から、連合国財産補償法案というものが生れて参つたものと思つておるのでありますが、そこでお尋ね申し上げたいのは、この条約の十五条の条文と補償法案なるものとの関係なのであります。つまり結論を申し上げますと、今提案されておりまする連合国財産補償法案というものは、一九五一年七月十三日に日本政府決定した案そのものだということを聞いておるのでありますが、そこでこの法案というものは、調印されました四十何箇国の人たちが大体了承しておることなのでありまして、従つて国家的な立場から考えますと、この補償法案というものを修正することは、ちよつと道徳上の立場から考えましてどうかと思うのであります。そこで問題になりますのは、この条約の十五条が連合国財産補償法案審議を、ある程度制限するのかしないのかという問題であります。それは実は私が法律に明るくないものでありますから、疑問に思いましたので、前回の委員会にもお尋ねいたしたのでありますが、その点法務総裁から、ただいま議題になつておりまする連合国財産補償法案、これはある程度の制限をするのだということでありますれば、もうそれで私どもはその線に従つて、この審議をしなければなりませんので、そのつもりでやりたいと実は思つておるのでありますが、法務総裁からそういう私の疑問に対しまする何か蒙を開いていただきたい、こう思つております。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まずこの平和条約十五条の末端に掲げらております事柄意味といたしましては、これはすでに御承知の通りであろうと存じますが、連合国財産に対する補償条件を、平和条約において規定をいたしたのでございまして、その内容といたしましては、七月十三日の閣議決定になりました法案の中に掲げられておる条件そのものを押えまして、その条件よりも不利でない条件補償すべき義務を、日本国関係国に対して負担するということを、この条約文において明らかにいたしたわけでございます。そこでここにありまするものは法案そのものでなく、法案の中に掲げられておる条件をさしたものでございまして、日本政府がこの条約批准いたしましたる場合においては、当然この条件よりも不利でない条件補償すべき条約上の義務を負うことはもちろんであります。そこで国内手続といたしましては、国家外国に対して負担をいたしておりまする条約上の義務履行するために必要な国内的手続として、この法案国会提案をいたしたわけであります。国会に対する法案提案は、これは他の法律案と何ら法律的に異なるものではないのでございます。もと院より国会といたしましては、この法律案についても他の法律案と同様に審議権を有するのでありまして、理論上の問題といたしましては、審議の結果もし右法律案の定めておりまする補償条件よりも相手方を有利にいたそう、有利の条件にしようというお考えでありまするならば、これを修正することは可能でありまするし、もし右法律案の定める補償条件を、これは連合国に対して有利過ぎて不適当であるとお認めになりますならば、その場合におきましては、同時に平和条約第十五条の(a)の末段の条約条項そのものを、不適当と認めることに相なると存ずるのでございます。従いまして結局は両条約締結承認する場合の国会態度いかんの問題と、相なるわけであろうかと存ずるのであります。平和条約締結について、同時に国会承認を求められております以上、その条約に右の条項が含まれておるからといつて、決してこの法律案について国会審議権が拘束されるということはあり得ない。ただ国会が十五条(a)末段の規定を含む平和条約に対して、その締結承認の議決をされましたならば、当然同一の意思体でありまする国会といたしましては、右十五条(a)末段の規定と相表裏いたしておりまする連合国財産補償法案についても、その成立を目途として御審議に相なるであろうということは、これは理論上当然であろうと考えるわけであります。
  7. 内藤友明

    内藤(友)委員 実はただいまの御答弁ではよくわからないので、ひとつ順を追うてお尋ねいたしたいと思います。ただいま総裁は、条約国会が認めたのであれば、第十五条の中に書いてあることによる法律というものは、当然認めなければならない。表裏一体だ。こうお話で、それが一番根拠のように伺つたのでありますが、条約憲法第七十三条に書いてありまするように、どこまでも行政府責任だと思うのであります。ただその行政府責任を遂行するのに国会承認を経るという手続をとる。それは国会承認を経るという手続をとるだけなのでありまして、責任はあくまでも政府にあつて国会条約締結には責任なしというのが、日本憲法じやないかと思うのであります。また憲法の五十九条を見ますると、法律というものは、政府提案せられようが、国会提案いたしましようが、これは国会がこしらえる。国会の全責任なのだ。でありますから、言葉をかえて申しますると、内閣責任である。その内閣責任であるということを、立法府責任考えるところに少し問題があるのじやないか、こう私は思いますので、形式はそうだけれども、腹の中は、平和条約承認したのだから、十五条ということはわかるのだから、それはわかるのじやないかという、人情論でありますか、裏の話と申しますか、それはよくわかるのであります。まさにその通りなのであります。またこういうふうな書き方で、いろな利害関係のある各国をおまとめになつたというアメリカの御配慮もよくわかる。またそうであつたから、実は早目にこの平和条約がこういうふうなことになつたのでありまして、私どもはそれは喜んでおるのでありますけれども、ただ日本憲法規定から考えまして、あくまでも行政府責任に属する条約締結、その条約文というものが、立法府審議制限するとかなんとかいうことは、ないのじやないかというところに、私は実は一つの疑問を持つておるのでありまして、私は今憲法規定から申し上げたのでありますが、もし私の考え間違つておりますれば、それはお前、そうじやないのだということを、ひとつ教えていただきたいと思います。お答えによりまして、また次のことをお尋ねいたしたいと思います。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま内藤委員から、条約締結行政府責任であり、行政府仕事である。これは憲法行政府条約締結権を持つということは、内閣権限に明らかにされておるのであります。ただ行政府締結いたしましたるところの条約というものが、批准せられましたる場合におきましては、その条約行政府を拘束するのでなく、日本国というものの国家としての義務規定いたすものでありまして、この日本国義務履行する場合に、必要な国内手続をいたす。その場合においては、あらゆる国内関係機関というものは、正しく成立いたしましたる政府国際的な義務履行に、支障なからしむるように協力をするということは、当然のことであろうと存ずるのであります。それでありますから、御指摘になりましたことく、条約締結行政府仕事でありまするが、その条約批准せられましたる場合においては、この条約に認められた義務というものは国家そのもの義務でありまして、これの履行のできるような措置を講ずるということは、行政府にいたしましても、立法府にいたしましても、当然のことではなかろうかと存じます。
  9. 内藤友明

    内藤(友)委員 そうしますと、条約締結ということは政府がやるけれども、そのやつた仕事によつてのいろいろな事柄国家が全部受くべきものであつて国家の中のどの機関もその線に沿つてやらなければならぬ、こういうお話のように承つたのでありますが、もしそういうことでありますならば、この十五条に書いてあります条約文は、今提案されております補償法案というものの審議制限する、こう見てよいのでありますね。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法律的にはむろん国会は自由でありますが、国会がこの法案を定める条件よりも不利な側に修正されるとか、あるいは否決をされました場合におきましても、日本国といたしましては条約上の義務を免れるわけではないのでございます。条約上の義務があります以上は、国家としては何らかの方法によつて義務通り履行をすべき責任があるわけであります。そういう点から申しますると、この法案審議においては実際上その限界があるということは、これは否定することはできなかろうと存じます。
  11. 内藤友明

    内藤(友)委員 大分私の疑いが晴れて参りました。ある程度の制限はやむを得ないというお心持のような答弁と承つたのであります。私はそうだろうと思うのであります。この前の委員会で、今お見えになりました林さんが、これは平和条約の一部であるということを繰返しお話になつておりました。またイタリアの平和条約でありますとか、よそのいろいろのものを見ますと、やはり条約の中にこういうふうなことは規定してありますので、そうだろうと思うのであります。しかし実質的にしろ、形式的にしろ、それはそうであるかも存じませんけれども条約というものは、国家国家との合意を必要とするものだと思うのであります。ところが法律というものはそうではないのでありまして、日本国なら日本国単独意思できめるというものなのでありまして、そこにむずかしい関係ができて来るのでありますが、そういうことから、条約の不利であるとか、不利でないとかという最後の解釈は、条約の二十二条に書いてありますように、国際司法裁判所決定するということになつております。ところが私どもが今審議しておりまするこの法案を、私どもとしましては条約の十五条に規定してある不利でない条件だと思つて修正した。連合国のためにいいのだと思つて修正した。ところがそれは国内法でありますから、私どもはそう思つて、また国内法のいろいろな疑義の最後は、最高裁判所決定せられるのでありまして、これは憲法の八十一条にはつきり書いてあるのでありますが、最高裁判所も、お前たち修正はその通りだ、これは十五条にもとらない、不利でない条件なのだ、こう認められて、国内立法府も、また最後の判定をする最南裁判所も、そうだ、こう認めた。ところが相手の国が、お前たちはそう言うけれども、不利でない条件にはならないぞ、不利だぞということになりまして、国際裁判所も、その条約締結した相手国言葉をいれましていろいろ調べたところが、その通りだ、こうなつたときに両者の関係はどうなるのかという問題があると思うのでありますが、これについてもう一ぺん、くどいようでありますが、ひとつ御所見を承りたいと思います。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 かりに国内におきまして連合国財産補償法案修正をいたした。その場合日において、修正せられる国会といたしましては、この修正連合国民に対する有利なる修正であつて、不利ではない、こういう考え修正をされた。しかしながら相手国においてはこれを不利と認めて、国際裁判所に対して出訴した。この場合におきましては、条約上、日本は本条約に関連いたします紛争につきましては、国際司法裁判所の裁判に付するということを規定いたしてありますから、この国際裁判所判決は、関係国に対しまして最終的に決定をいたすわけであります。日本としては当然それに服しなければならない。そうしますと、国際司法裁判所において不利なる断定をいたしたならば、日本としてはその不利なることを承認しなければならない。国内機関においていかに不利にあらざる意思決定をいたしましても、その意思決定というものは対外的には効力がない。従つて国家としてその判決に拘束されるわけでございますから、国家は対外的に当然その判決趣旨に従つたことを実現するような措置を、関係機関においてとらなければ、国際法上の義務違反というそしりを免れないだろうと存じます。
  13. 内藤友明

    内藤(友)委員 お尋ねしました事柄がだんだんはつきりして参りました。そうすると、最後に要約いたしますると、今審議になつておる連合国財産補償法案というものは、これは平和条約条項によつてその審議に何らかの制限を受けるものだ、こういう結論になるとかならぬとか、それだけ重ねてお答えいただけばけつこうであります。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法律的問題ではなく、実質上の問題といたしまして、審議権限界があることは否定できないだろう、こう存じます。
  15. 内藤友明

    内藤(友)委員 またすつきりしなくなりましたが、私は実質はまさにその通りだと思うのでございますが、その法律的のことをお尋ねしておるのでございまして、法律的にもそういうふうに考えていいのじやございますまいか。それをひとつお尋ねいたします。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 単純な法律論といたしましては、もし国会修正権がないということになりますと、国会がこの法案修正いたしましたる場合、その修正は当然無効である。あるいは修正して国会が可決した。その可決したその法案が成立しないということにならなければ、国会修正権がないということは言えないと思います。今、国会が独自の立場において修正をされましたる場合においても、国内法律としてその法律が成立することは、これは国内法疑いのないところでありまして、そういう意味においては国会審議権法律上は制限はない。自由に修正すれば、それが法律として国内においては当然効力を生ずるものである。こういう意味においては制限はない。しかしながら国が外国に対して負いますところの国際法上の一つ義務を認め、その義務履行するための国内手続として、この法案提案いたしておるわけでございます。それを条約趣旨違つたよう修正されましても、それでもつて日本国というものが、外国に対する国際上の義務を免れることにはならないのでありまして、国際上の義務関係におきましては、さような修正は何ら対外的には意味をなさない。従つてそういう面において国会審議権というものには、おのずから限度があるということは否定できない、こういうことを申し上げた次第であります。
  17. 内藤友明

    内藤(友)委員 そうなつて来ますと、私は憲法のことをひつぱり出さなければならぬのでありますが、憲法の七十三条には、条約というものはあくまで行政府責任ということになつておるのであります。ただその締結する過程といたしまして、国会承認を経なければならぬ。そのかわりに事前でもよい、事後でもよい、こういうことになつておる。もし承認できなければ、法律論からしますると、その政府責任を負わなければならぬということになるのであります。ところが法律というものは政府とちつとも関係がない。提案権はあるか知りませんけれども法律というものは国会がこしらえるものであります。そうしますと政府責任が、まあ袞龍の袖の陰という言葉になるか存じませんが、そういうふうなことになつて来そうな感じがしてならないのであります。行政というものと立法というものは、はつきり区別しておかなければならないのでありまして、もし今審議しております法律修正なつた、あるいは否決なつた、こうなりました場合において、そのあとのことは、今総裁国家がそういう約束をした、義務があるからとおつしやつたけれども、私は政府にその責任はあるのじやないかと思うのであります。その政府責任ということを、総裁国家々々という言葉を使つておられますけれども、そこに私は少し何だかもややしたようなところがあるような気がするのであります。私の考えが聞違つておれば改めますけれども、そういう場合は政府が当然責任を負うべきものであり、国家は何も責任を負うべきものではない、こう考えておりますが、間違つておりますか。重ねてひとつお伺いいたします。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 内藤委員は、内藤委員御自身の御意見間違つておるならは改めるとおつしやいますが、間違つておりますからどうぞお改めを願いたいと思います。
  19. 内藤友明

    内藤(友)委員 問違つておるところを御指摘にならぬのでありますが、それはひとつ憲法を読んでいただけばわかるのであります。条約締結国会義務じやないのでございましよう。国会もその責任を負わなければならぬのでございますか。
  20. 大橋武夫

    大橋国務大臣 条約締結政府仕事になつておりまするが、国会承認を必要とするわけでございまして、国会承認をしたということについては、国会として当然責任を負わなければならぬことであります。
  21. 内藤友明

    内藤(友)委員 それは一つの手段であつて締結責任はあくまでも行政府が持たなければならぬのではありませんか。
  22. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国際法上では、締結ということは、調印をしそれに対して批准行つて、有効な条約として確定することを締結と言うと思います。これにつきましては、行政機関の全権によつて、そういう条約のでき上る場合もむろんございましよう。批准を要しないで調印だけでできるというものもあるわけでございます。しかしながら今回の平和条約におきましては、国内法手続によつて、わが国としても批准をしなければならないということになつておるわけであります。国内法手続によりますると、憲法規定によりまして批准をする場合においては、政府事前または事後に、国会承認を受けなければならぬということに相なつております。すべて憲法上の行為につきましては、行為者みずからが責任を負うべきものでございまして、国会承認したということについては、これは国会がみずから責任を負うので、国会承認したということについて、政府責任を負うということはあり得ないわけであります。国会条約に対して全然責任がないという考え方は、これは私は許されない考え方じやないかと存ずるのでございます。
  23. 内藤友明

    内藤(友)委員 くどいようでありますが、承認したという責任はあるが、しかし締結したという責任国会にないと思うのでございます。それから今法務総裁は、平和条約というものができ上つたようなお感じのもとに、いろいろ話を進めておりますけれども、まだこれは審議の途中なのであります。それから補償法案も今審議しておる最中であります。そこで私は当初内田さんにお尋ねしたゆえんのものは、この平和条約草案というものが、この補償法案制限するのかどうかということをお尋ねしたのであります。しかしそれは法務総裁のさつきからの御答弁で、ある程度の制限をするということでわかつたのでありますが、そういうことをお尋ねしておつたのであります。しかし私は先ほど申しましたように、法律にあまり明るくないものでありますから、そういう疑問を持つたのであります。今のお答えによりまして、お前たち審議権はある程度制限されるのだぞということを承りまして、私のお尋ねした疑問は晴れたのです。ありがとうございました。
  24. 深澤義守

    深澤委員 大橋法務総裁に、ただいまの内藤委員の御質問から非常に明確になりました点を、もう一ぺん明確にしておきたいと思うのであります。ある程度の制限を受けるという結論なつたようであります。そういたしますと、連合国に有利に修正することは、これは可能である。その権限はあるが、不利に修正することは制限されておる。こういうことになると思うのです。これを裏返しに言えば、日本国にとつて有利に修正する権限はない、日本国にとつて不利に修正することはできる、こういう制限ということにもなると思うのですが、その一点はいかがでしようか。
  25. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは内藤委員にも特に申し上げておきたいと存じますが、先ほど来私はこの法案連合国側に対して有利に変更することは国会権限がある、しかし不利益に変更することは権限がないということは申しておりません。国会には有利に変更することも、不利益に変更することも権限はあるのであります。さような変更をされれば、それは日本国内法として完全に有効に成立するものであります。しかしながら、さような法律国内的には成立いたしましても、それはすでに条約において定められましたところの日本国の権利義務には何ら関係をしない。国際上の権利義務には関係ない事柄である。従つてさような修正、ことに条約趣旨に反したる修正をなすということは、これは実際上において無意味になるんではないか。従つて意味のある審議をするということになれば、事実上審議修正の内容については、限度があるのはやむを得ない、こういうことを申し上げたわけでございまして、法律的な権限があるとかないとかいうことは、先ほどから申し上げましたるごとく、法律的には権限がある。しかしさような条約趣旨に反した修正がなされた場合においては、それは事実上無意味に帰着する。従つて審議にあたつては、そういう趣旨で御審議になるべきものではなかろうかということを、申し上げたわけであります。
  26. 深澤義守

    深澤委員 その問題は大分はつきりして来たようであります。従つて事実上は国会の意思が、ある程度この平和条約承認によつて制限されて来るということが、結論になると思うのであります。そこで私がもう一つお伺いしたいのは、平和条約が和解と信頼に基く条約であるということを、政府当局は明言されているのでありますが、その平和条約の中に含まれるところの本法案の内容を検討してみますると、私は多少の疑問を持つのであります。その疑問の点をひとつ大橋法務総裁に明確にしていただきたいと思うのであります。もちろん平和条約は和解と信頼に基く条約でありますから、これが何ら懲罰的な意味を持つていないということは、われわれも考るのであります。ところが本法案の第四条の「損害の範囲及び財産の所在」の第一項第一号に、「日本国又は日本国と戦争し、若しくは交戦状態にあつた国の戦闘行為に基因する損害」の全部を、日本国が負担しなければならないということが、義務づけられているのであります。私は国家意思によつて戦時特別措置あるいは敵産処理、その他国家意思の発動いたしました結果与えた損害に対する責任義務というものは、これは当然あり得ると思うのであります。ところが第二号のように「交戦状態にあつた国の戦闘行為に基因する損害」、これは思わざる損害が非常にたくさんあつたと思うのであります。われわれが身をもつて体験いたしましたことく、アメリカの日本本土空襲のごときは、まつたく無差別爆撃であります。これが戦時施設あるいは軍事施設を目標としての爆撃であつたならば、これは当然その戦闘有為上やむを得ないのでありますが、あのような無差別爆撃のために広汎な損害が生じ、その中に連合国財産も損害の対象になつてつたという場合、その損害まで日本国が全部負わなければならないということは、はたして和解と信頼に基く条約であるかどうかということに対して、非常な疑問を持つものであります。従つて国家意思の発動によつた戦陣特別措置による損害は、当然負担すべきものであるが、あのような無差別爆撃によつて受けた被害の中に、連合国財産その他の被害があつた場合において、はたして日本国がそれを補償しなければならない義務責任があるかどうか。もちろんこういう法案に盛られた以上はあるということになつているのでありますが、閣議決定の場合においては、そういう点が私はある程度問題になつたのではないかと思うのであります。この際その点をひとつ明確にお聞きしたいのであります。
  27. 大橋武夫

    大橋国務大臣 かような条項は、従来の平和条約にも始終ある例でございまして、それによつて定められた趣旨であります。これは日本の敗戦国たる立場から考えまして、やむを得ないものと考えております。
  28. 深澤義守

    深澤委員 従来の各種の平和条約等にこういうものが盛られていることも、われわれは聞いているのでありますが、従来の平和条約とは異なつて、特にこのたびの平和条約が、和解と信頼に基く条約であるという見地から考えますと、この一項だけは、おそらく相当の議論が政府部内にもあつたのではないか。そうなつで参りますと、従来の平和条約と何らかわりがない、何ら和解と信頼に基く条約ではないじやないかという疑問が出て来るのでありますが、その点、閣議決定の際にこうした問題が、政府部内において問題になつたかどうかという点について、私はお聞きしたいのであります。
  29. 大橋武夫

    大橋国務大臣 閣議の内容につきましては、申し上げる限りでないと存じます。
  30. 内田常雄

    内田(常)政府委員 ただいまの大橋法務総裁の御答弁を補足して私から申し上げます。この法律案の第四条、その他各条にもございますように、政府といたしましては、連合国財産の損失、補償を負担するにつきまして、いろいろな限定を設けまして、できるだけ狭い範囲において負担するように法律の構成は努めてございます。たとえば従来の条約の例におきます実情とか、あるいはイタリアの場合、トリエステのごとき完全な主権の在立しない地域にある連合吉国財産の損失までも、敗戦国自体に損失を負担するような規定にもなつておりますけれども、これらの点につきましても、この法律案におきましては、日本の主権の回復される地域にある連合国財産についてのみ、財産権の補償をするというような点も一つでございます。なおまた大橋法務総裁からも御答弁がございましたように、日本として最小限度に負担する義務として、この責任をみずからとつたのでありますが、そのことは、他の十四条あるいは十六条、十七条等におきまする賠償、その他の敗戦国としての最小限度の義務を、みずから負担したのと同じ関連に立つものと存じます。
  31. 深澤義守

    深澤委員 そこでこの法案だけでは非常に漠然といたしまして、その補償の範囲がまことに明確にならないのであります。先般の内田局長の説明によりますれば、二百数十億が賠償の額になるという御説明もあつたようでありますが、そこで私は、昭和十六年の敵産処理以来、どういうぐあいに連合国財産に対する処置が行われているか、そうしてどういうものが具体的に補償されるべき対象になつておるかという、この具体的な資料が、この審議の過程において必要になつて来ると思うのでありますが、その資料の御提出ができるかできないか、その点をひとつお伺いしたいのであります。
  32. 内田常雄

    内田(常)政府委員 この法律案の構成は、連合国人の財産であつて、戦争のため損害を受けましたものすべてについて補償する建前ではなく、かかる連合国人のうち、特に日本人がその身体または財産について特別の拘束を加えた。すなわち日本人には加えなかつたけれども、そのうちの特殊の連合国人に限つて、身体または財産に拘束を加えました場合を、原則として補償いたす建前になつているのであります。従いまして具体的には先般も申し上げましたように、敵産管理法等によりまして連合国人の財産を没収して敵産管理に付し、それをかつてに処分した場合が一番多いのでございます。その次には敵産管理法とは法において異にいたしますが、工業所有権戦時法というような法律に基きまして、日本国政府がかつて連合国人の所有する特許権等を取消し、あるいは当該特許権者と国内の使用権者との特約に基きまして、その利用を認められておつた特許権等につきまして、その特定人に限らず多数人に専用権というようなものを設定いたしまして、特許権者の利益を侵害した、こういう場合が全体の大部分でございます。先般一枚刷りの資料をお配りいたしておきましたが、そのうちでやはり一番大きいものは、敵産管理によりまするところの不動産株式等が戦争の結果損害を受けたもの、その次が工業所有権戦時法等によりまして外国人の特許権、工業所有権を侵害したことに対する補償が一番大きい。その種類別は、建物が十六億円、不動産が今十七億円、株式が百十四億円等を主といたしまして、おおむね二百六、七十億円ということを申した次第でありますが、これも先般御説明いたしましたように、従来の条約の例と違いまして、これらの損失補償につきましては、日本自身が進んで損害の調査をして補償する建前をとらずに、一定期限を限つて当該連合国人たる請求権者の立証並びに請求をまつて、初めて論ずるという仕組みにいたしておりますために、あるいは二百七十億よりも少い金額で済むかもしれないという気持もございます。さらにまた補償をいたしますについては、まずこれらの敵産管理あるいは蹂躙した工業所有権等を、現状のままで連合国人に返還をする。その返還されたものについて損失のあつた場合に初めて補償する。返還の請求がないものには補償も与えない。こういう建前をとつておりますため、ただいまのところは一表にまとめました表で、おおむねの見当をつけ得る程度でありまして、この限界内におきまして、なお査定等はできる限り公正かつ厳格にいたしまして、日本の財政負担を軽からしめたい、かように考えております。
  33. 深澤義守

    深澤委員 そういたしますと、先般のあの一枚の紙に載せられた以上の資料は、現在出すことはできないという状況にあるという結論になりますか。
  34. 内田常雄

    内田(常)政府委員 一件々々につきまして、某々連合国人が戦前保有しておつて、これが敵産管理にかかつた、こういう財産は、だれだれが持つておる、それを返還されたとして大体幾らの損害に見るか、こういう御指定がありますならば、どんな詳しい損害額でもできますけれども、それを何千人かの分を集積いたしまして、各連合国人の補償に対する態度等を客観的にとりまとめることは、ただいまのところ不可能だろうと思います。
  35. 深澤義守

    深澤委員 私は、少くとも平和条約成立によつて、一応国内的にこうした問題が最終的に整理される場合において、国会と国民の前に、具体的にどういうものがわれわれの義務責任として補償されるかということが明確にならなくて、そうして漠然とこの法案審議するということでは、これは国会のわれわれの責任が済まされないと思うのであります。これは委員長に私はお願いいたしますが、単にこうした漠然たる形における審議は、まことに不適当であると思いますから、事務整理上相当の困難もございましようが、できる限り詳細の資料を提出あらんことを、ひとつお願いしたいと思います。
  36. 内田常雄

    内田(常)政府委員 この資料は信用していただいてけつこうでありますし、私どもは大体この金額の範囲内で始末がつき得る、こういう見通しを持つておりますけれども、もし委員長からの御希望もありますならば、これは紙は一枚くらいになつておりますけれども、これの算出の根拠等につきまして、ただいま御説明申し上げてもよろしゆうございます。
  37. 深澤義守

    深澤委員 われわれは単に補償の金額だけの問題でなしに、やはり補償の性格、その内容というものを国民に明確にする必要があると思う。それでなければわれわれの責任は済まされないと思うので、私は単に金額の問題でなしに、どういう性格のものをわれわれが補償するのだということを、明確にする必要がありますので、あえて内容にわたるところの資料をお願いしたいと思います。
  38. 内田常雄

    内田(常)政府委員 補償のやり方につきましては、先般の法案内容説明におきましても、十分申し述べましたように、連帯国人の財産を開戦時の状態に、その財産を返還したときにおいてもとしてやる、もどせぬ部分を補償する、こういう建前に相なります。たとえば連合国人が戦前五十坪の家を持つてつた、それが戦争の結果半分たたきこわされて、現在返還し得るものは半分しかない、そうするとあとの半分の継ぎ足しは現物では返せないから、結局現金で補償しなければならぬ。しかし最初五十坪の家が戦前の価格がかりに一万円であつた。ところが戦後非常に物価が上つて来ておりますために、今後御承知の通り講和条約の発効した後、九箇月以内の連合国人の請求をもつて、その六箇月以内に返還するわけでありますから、今後かりに十箇月日に返還したといたしまして、その十箇月目の返還の際の価格が、五十坪の家が百万円といたしますと、百万円のうちの半分が飛んでおりますから、これを元の状態にもどすためには、少くとも五十万円の補償金がいる。こういたしますと、さような計算のもとに五十万円を損失査定額といたして、それからいろいろ控除すべきものを控除いたしまして、個々の場合において、あるいは二十万円の損失補償をし、あるいは二十五万円の損失補償をする、かような計算に相なります。そういう建前のもとにおいて、一体わが国の建物が、戦争の結果どれだけ損害を受けているかという大数計算をいたしました上で、さらにまた連合国人の財産であつて、敵産管理を受けましたものについて、より少数のサンプル調査をいたしまして、そのサンプル調査の結果、連合国人の不動産というものは、大体何十パーセントの損害を受けたかということを客観いたしまして、それを根拠といたしまして、開戦時から今日までの不動産価格の値上りぐあい等をも参考にいたしまして、集積いたしまして二百数十億、こういう数字を出しているわけであります。しかしながら何べんも申しますように、この数字はあくまでも機械的に集積した数字でありまして、補償してくれという連合国人が現実にどのくらいあるか。まあ二割程度こわれているけれども、八割程度少し悪くなつた程度で自分の手にもどつて来た、日本もいろいろ多事多端であるから、二割の補償までも請求しないでよろしいというような、好意を持つている連合国人もあるわけでありまして、従いまして私はほんとうならばこの国会におきましても、株式が幾ら不動産が幾らというような数字を申し出げて、何か少くともその範囲では損失の補償をさせるといつたような気持を、各国のミツシヨン等に実は持つてもらいたくないとは思つておりましたが、国会提出してできるだけ精密な御説明を申し上げた方がよいと存じまして、あえていやな数字を申し上げた次第でございます。
  39. 深澤義守

    深澤委員 私は国会提出したこの額が出たから、これで連合国人が補償されるものとして、いろいろな請求が来るというような、そういうことはやはり審査委員会を設けまして、その審査委員会によつて厳重に今後審査されるわけでありますから、そういう弊害は十分除かれ得ると思う。かりに総額がこういうぐあいに出ました以上は、その内容に対して何ら承知せずにこの法案を通すということは、いかにも私は国会の権威にも重大な影響があると思いますので、なおこれを詳細にいたしましたこの算出基礎になりました資料を、提出できるかできないかということが、今の私の質問趣旨なのであります。その点をひとつ委員長からおとりはからいを願つて、できる限りの納得できる資料の提出をお願いしたいと思います。
  40. 内田常雄

    内田(常)政府委員 先ほどから申し述べますように、私どもといたしましては誠心誠意、この法律案の作成に至りまする経緯、それから数字を積み上げました方法等につきましてお話申し上げておる次第でありまして、さらに詳しい積み上げ方という頭の持ち方につきましては、これはただいま必要とあらば、大体こういう大数計算、こういう小数計算で積み上げたということは申し上げますけれども、これ以上こまかい資料はつくり得ないと思いますから、それを御承知願います。
  41. 深澤義守

    深澤委員 私は今の内田政府委員の説明はどうも納得が行かないのであります。いろいろな計算上の集積がこうなるのだということでありますが、そうでなしに、やはりここにこういう連合国財産があつた、その被害がこういう状態になつたということがなければ、これだけの数字が出て来ないと思う。そういうことを資料として国会提出するのは、何らさしつかえないと私は考えるのであります。従つてわれわれは、この法案審議が抽象的にならないように、あくまで具体的にするために、この資料を要求するということは、これはわれわれの当然の権利であると考えます。それができるかできないかということを、委員長からひとつ明確にお確かめいただきたいと思います。
  42. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 深澤君より今資料の提出の問題でいろいろお聞きになつておりまするが、この御要求になつておる資料は、でき得る範囲内で当然政府が出さなければならぬとは思つておりますけれども、今政府の方よりいろいろ御説明にあつたような事情もありまするので、この法案審議はなお明日も続行いたしたいと思いますから、明日までに政府の方と委員長と相談をいたしまして、どう処置すべきかということを確答いたしたいと存じます。     —————————————
  43. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 次に所得税法臨時特例に関する法律案財産税法の一部を改正する法律案、及び法人税法の一部を改正する法律案の三法律案を一括議題といたしまして、前会に引続き質疑を継続いたします。
  44. 奧村又十郎

    ○奧村委員 所得税法臨時特例に関する法律案について一点だけお尋ねいたしたいと存じます。  要綱には、退職所得に対しては、特別のとりはからいをなさるように出ておるのであります。条文を見ると、その規定が十八条に出ておるのでありますが、これは単に別表に掲げてあるのであつて、要綱に出ておるような趣旨は条文には出ていないのでありますが、これはどういうわけなのでありますか。
  45. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 別表に出しておりまする税額の表、この表が要綱に書いてありますようなことを前提にいたしまして計算いたしまして、これをもつて税額にする、こういうわけでございまして、特別に重複して書く必要はなかろうというので、このようにいたしたのでございます。ことにこれは臨時特例でございますし、この次の所得税法の改正の際には、その辺のところをもう一ぺんよく検討いたしてみたいと思いますが、今回の法律案といたしましては、これで必要かつ十分であると考えておる次第であります。
  46. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この要綱によりますと、退職所得に対しては画期的な処置をなさるのであつて、しかもこれは来るべき通常国会においての所得税改正の方向を、はつきり示しておることと思うのであります。従つていずれ来るべき通常国会においては、要綱にあるような条文をはつきり現わされるものと思うのであります。それがため暫定的にこういう表でもつて現わされたことと思うのでありますが、それでは要綱に基いてお尋ねをいたしたいと思うのであります。要綱では実ははつきりいたさないのでありますが、退職所得に対しては十五万円をまず特別控除いたして、十五万円特別控除した残りの半額をまた控除して、あとの半額に課税する。その課税の率は他の所得との総合課税でなく、この退職所得だけを別に切り離して、分類して課税をするのか、総合課税でやるのか、はつきりしておらぬが、この点どうでありますか。
  47. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 その点は前に御説明申し上げましたように、分離いたしまして課税する建前でこの附則の税額表を出しておりまして、この税額表をごらんになりますならば、この要綱で説明しておりますような方法で計算した税額が、この税額表の税額になつているということを御了解願えるかと思います。分離して課税する建前であります。
  48. 奧村又十郎

    ○奧村委員 御説明にもありますように、確かに分離して課税しておるのでありますが、これはかねてシヤウプ勧告に基いてわれわれがつくつた法律、特にこの所得税法のすべての所得を総合課税するという大原則を、ここでぶち破られることになるのでありますが、いずれこの方針は通常国会において、ほかの一時所得にもかような考え方を適用なさることと思うのであります。そこでなぜこの総合課税でなしに、分離して課税なさることになつたのか。その理由をお尋ねいたします。
  49. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 所得税の純粋理論から申しますと、あらゆる所得を総合して課税するというのが理想的でありますことは、奥村さん御承知の通りでございますし、それからまた二十五年度の改正によりましても、そういう方針で現行法はできておるわけでありますが、ただ実行の結果等に顧みましてよく考えてみますと、やつぱりこの種の所得は、普通の所得と若干違つた性質があるということも否定し得ない。それらを総合いたしますと、今の所得税の普通の税率が相当高いので、上に乗つかることになりまして、この種の一時所得の負担が相当高くなる。そういう点を考慮いたしますと、わが国の現状からすると、分離して課税する方が実際に即しはしないか。それといま一つは課税の簡易化をはかるということを、一般から非常に要望されておりますが、そういう点からいたしましても、分離して課税するということでなければ、なかなかうまい案ができないということになりますので、今回は分離して課税する建前にいたしたのでございます。その他の所得についてどうするかということは、これは通常国会までに検討いたしまして、提案したいと思つておるのでございます。通常所得以外にもいろいろございまして、山林所得は、どつちかと申しますと、通常所得と時所得のあいのこと申しますか、両面の性質を実は持つておるようでございます。譲渡所得になりますと、一時的な色彩が大部分である。そういう所得の性質に応じまして、また課税の実際負担の実情等に応じまして、それらの所得に対して、どういう扱いをした方がいいか、単に所得税の理想論だけではなくて、日本の現状にも即応し得るように研究してみたいというので、目下いろいろな案を実は検討いたしておりますが、純粋の一時所得的性質の強場いものにつきましては、退職所得のように分離して課税する方が簡単でありまするし、実際的ではあるまいかと思いまして、目下そういうような案を二、三研究中でございます。いずれ通常国会までにはできるだけ考えまして、妥当な案を御提案申し上げたいと考えておる次第であります。
  50. 奧村又十郎

    ○奧村委員 山林所得、譲渡所得に対しても、特に一時的な所得については、通常国会において相当改正するんだ、こういうことでありますが、私はこの法案審議の際に、もつとつつ込んで政府の御方針をはつきりしていただきたいと思うのであります。というのは、退職所得に対して、ただいま御提案のような制度を考えておられまする以上、税の公平の面からいつても、山林所得あるいは譲渡所得についても、政府のある程度はつきりした御方針が明かでなければ、われわれはこの退職所得の審議について、これを承認することはできぬ、こういうことになるのであります。いずれこの法案審議中には、もつとつつ込んで、お尋ねいたしたいと思いますが、できるだけはつきり御答弁を願いたい。  そこで本日は、この退職所得のみに限つてお尋ねするのでありますが、退職所得は普通の所得とは違うんだ、従つて特別にこういう取扱いをなさるというお話であります。退職所得が普通の所得と違うということは、今始まつたことではない。われわれがシヤウプ勧告に従つて、この所得税制を審議したときから、論議の的になつてつたのであります。そこで、普通所得と違うのであるから、今回特にまず十五万円の基礎控除をなさつた、次に半額控除をなさつた、あとの半額に対して分離の課税をなさるという、この三段構えの減税の処置をなさつた理由をお尋ねするのであります。普通所得と違うというのは、どの点が違うのであるか。一時所得の意味において違うのであるか。その点……。
  51. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 お話の点はあまり御説明を要しないかと思いますが、退職所得は勤労所得的な要素がある。しかも給与所得の一種の延長と申しますか、そういうものであり、かつ一時にもらう所得である、こういう点が退職所得の特色ではないかと存じます。譲渡所得になりますと、資産所得的なものであつて、かつ一時所得であるということになるかと思います。それから山林所得になりますと、さつき申し上げましたように、これは年々山林所得のある人が相当多い。それも本来元本的な所得というよりも、年々山林が成長いたしまして、生じ得べかりし所得を一時に取得する場合のあることも事実でありまして、山林所得になりますと、その辺の一時所得的性質も、よほどほかの所得と違う。事業所得的な要素と一時所得的な要素と両方持つているのではないか。奥村さん御承知の通り日本のずつと前の所得税でありますれば、純然たる一時所得には課税してなかつたが、その当時も山林所得にはやはり課税いたしております。従いましてその辺所得の種類によりまして、若干差があるようでございます。所得税の純粋理論から申しますと、全部所得を総合いたしまして、しかも負担として適正な負担をするという考えが、最近最も進歩した所得税理論でありまして、変動所得の平均課税方法で課税をするという、二十五年から行いました課税方式というものは、所得税理論といたしましては、最も進んだ税制だと今でも実は考えております。たださつき申しましたように、所得税の一般の税率等が重いために、こういう所得が一町に入つて来ますと、変動所得の平均課税方法だけでは、現実問題としては必ずしも即応しない部面がある。それから五箇年の平均課税にいたしましても、なおまだ完全に問題は解決されていない。しかも非常に納税の方法が煩雑で、かえつて納税者は、公平ではあるが、めんどうなので困る、こういうような議論もありますので、日本の現状からいたしますると、さつき申しましたように、なるべく簡単化をはかりまして、同町に一時所得的な性質にかんがみまして、負担の緩和をはかつたらどうか、こういう趣旨提案をいたしたのでございます。  十五万円の基礎控除をいたしましたのは、これは所得がなくなつてしまつたような人の場合には、実は現在の税法でもかからないのです。少額の退職所得は、最初の年はかかりましても、その次の年からかからなくなりまして、あるいは返さなければならないようになつておるのであります。ところが今度は分離課税をしますので、そういうことがなくなりました。従つてそれに対しましては、一定額の控除が必要ではないか、こういう意味で基礎控除の三年分、扶養親族が三人か四人くらいでありますと、一年分の基礎控除と扶養親族の控除額、その程度の控除は退職所得について認めた方が妥当ではないか。これは理論的にはつきりした数字は出て来ないのですが、そういう一つのよりどころからいたしたのであります。  それからいま一つは、二分の一控除して半額に課税するわけでありますが、これはやはり一時にもらう所得であるので、ある年に固まつた所得になるわけであります。それに対しまして、年々の所得に対しまする税率をそのまま適用したのでは無理であろうというので、半額を課税所得にしまして、税負担を計算する。しかもこれはなるべく簡単な方法がいいだろうというので、半額にする、こういう方法にいたしたのでございます。りくつから申しますと、二十五年度から実行しました方法、これは捨てがたいものがあると思うのでございますが、今の実際から申しますと、こういう方式の方が、より実情に即しはしないだろうかというので、かような改正にいたすことにいたしたのであります。将来所得税がすべて非常に理想的な状態になりまして、うまく行くということになりますれば、私はやはり理想としては現在のような方式の方が、将来非常に長い眼で見ますと、理論的にはいいのではないかと考えますが、今の実情から申しますと、やはりこの提案いたしましたような方がより妥当ではないか、こういう意味で改正案を提案いたしましたことを、御了承願いたいと思います。
  52. 奧村又十郎

    ○奧村委員 退職所得に対して十五万円の基礎控除を新たに設定したこと、それから半額控除をしたこと、これの理由は令の御説明で大体わかりましたが、あと総合課税をなさらずに分離課税をなさることについての事情は、私聞きもらしたか、御説明がなかつたか、わかりませんでしたので、もう一度お伺いいたします。
  53. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 総合課税をいたしますと、やはりその年の所得がどうであつたかということによつて非常に影響される。それで一月にやめて、その年の所得が非常に少くなつた場合と、十一月ごろやめまして、なおその所得が多い場合と、総合課税しますと、どうしても税額に非常に差が出て来る。それをならすためには、五箇年間平均しまして課税する方法をとるよりほかない。そうしますと非常に何と申しますか、手続がやつかいである、めんどうである、こういうことは避けられない。いずれがいいかということを考えまして、結局こういう所得は一種特別な性質を持つておりますので、分離して課税いたした方がいいのじやないかという考えであります。もちろん完全な方式を考えますと、総合してやつた方がより公平な場合もございますが、それは一方におきまして、課税の簡素化ということを考えまして、むしろこのような方法が今としては実情に即する、こういう考え方でいたした次第であります。
  54. 奧村又十郎

    ○奧村委員 五箇年の平均課税は非常にめんどうであるからやめるのだ、それをやめるについては、総合課税をすればその年の所得が多い場合は、特に税率が高くなるから、特に退職所得を区分したのだということでありますが、そうすると五箇年平均課税のあの制度は、退職所得でなしに、すべての一時所得について平均課税の制度はやめるのだ、こういうお考えなのですか。
  55. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 その点を今研究しているということを申し上げたのでございます。たとえば漁業所得とか著作権の所得、これはどうも一時所得とはいえない。ただ年によつて非常に変動する。こういうものの負担を数年を通じまして合理化するためには、いくら考えましても、やはり変動所得の平均課税のような方式を採用せざるを得ない。めんどうでもこの方は解決する方法がないのじやないか。やはりそういうものにつきましては、この方法は残した方がいいのじやないかというふうに、今でも考えております。ただ譲渡所得とか、また山林所得をどうするか。これがさつき申しましたように、実は一時所得と普通所得との中間ぐらいに位しますので、今問題になつておるのでありますが、譲渡所得につきましては漁業所得や著作権等の所得とちよつと違いまして、これは純然たる一時的性質が強いので、この方はむしろ退職所得的な課税方法を採用する方がいいのじやないかと考えておりますが、その辺のところはまだ最終的に案をとりまとめておりませんので、そういう方向でなおよく研究いたしまして、通常国会に妥当な案を提出するようにしたい、こういうふうに考えております。
  56. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 今回法人税法とそれから所得税法の改正を行うにあたりまして、個人所得税の場合は二百万円で百分の五十五ということに改正になるわけでありますが、これは私も前から主張しまして、小さな五万円の百分の二十というものは廃止してしまつた方がいい。かえつて零細な所得者に対する社会政策的な意味からも、それを廃止すべきではないかということを主張して参つたのであります。今回もこの八万円以下について、また百分の二十と考えておりますが、だんだんこの所得の金額が、二百万円以上百分の五十五というふうに改正して行くなら、これは十万円以下をかえつて全然なくしてしまつた方が、社会政策上も妥当なように思うのでありますが、いかがなものでしようか。
  57. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 税率の一番下の刻みが、八万円から百分の二十となつておりますが、この八万円と申しますのは、実は課脱所得でございます。と申しますのは、所得金額から、給与所得でありますれば例の勤労控除と基礎控除と、それから扶養親族の控除と、それを差引いた残りの所得でございます。従いましてこの金額を削るということになりますと、またその控除額をそれだけ上げるというのと同じでございまして、税率といたしましては、この八万円をどこに置いた方がいいかは問題だと思いますが、これはやはり置かざるを得ないと考えておるのでございます。この表のうしろに示しておりまするように、普通の世帯でございますと、控除額が実は基礎控除だけではなくて相当ございます。給与所得でありますと、扶養親族が四人いますと、十四万七千円実は控除される。だから十四万七千円を控除した部分の所得、それが八万円以下の部分に二割かかる、こういうのでありまして、実際の所得税負担はうしろの表にも示しておりまするように、たとえば年収二十万円で夫婦及び子供三人の事業者の場合でありますと、現在三万円、つまり所得の一割五分かかつておりますのが、改正案によりますと、一万八千五百円になりまして、所得に対して九分二厘五毛の、負担ということになるわけでありまして、基礎控除、扶養控除、税率と、この三つをかみ合せて御判断願いたいと考える次第であります。
  58. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 当初は五十万円までは百分の五十五というふうに計算されておつたのですが、前回の議会では百万円まで百分の五十五、今回また二百万円までは百分の五十五と、こう段階をしよつちゆうかえて行つておるようであります。これはどういうお考えのもとに、こういうふうに国会委員会のたびに変更されて行くのでありますか。この点をお伺いしたいのであります。
  59. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 これは今までの所得税の税率が、どうも下の方から少し早く重くなり過ぎていはしないか。従いまして、税率の適用を少し上にずらせまして、それによつて負担の緩和をはかる。先般も申し上げたのでありますが、今まではたとえば二十万円、これは課税所得でございますから、さつき申しましたなうに、基礎控除、扶養親族の控除をした残心の所得でございますが、二十万円を越えますと百分の四十であつたのでありますが、どうも今の所得の実情から見て少し高過ぎるというので、今度は二十万円を越える金額は百分の三十五と、五%を軽減することにいたしたのであります。この程度の税率でございますれば、今の財政事情等から見ますと、まず所得税としましては妥当なところではないか。中堅どころからの税率の高過ぎるのを順次上にずらしまして、負担の緩和をはかるようにしたい、こういう趣旨でございます。
  60. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 それから法人税の問題ですが、これは当初個人所得よりも法人税を率の軽減をせられた理由は、資本蓄積ということを非常に問題にされておつたわけですが、今度の改正では百分の四十二になつた。これは私らも少し引上、げなければならぬということは、前の委員会からも賛成の考えであつたのでありますが、これを私らは現行の百分の三十五をそのままにしておきまして、資本蓄積から考えるならば、元の税法を生かしまして、特別利得税をとつた方が、かえつて効果的だと考えるのでありますが、どういう意味で百分の四十二をおとりになるようになつたか。その点を伺いたい。
  61. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 最近会社の収益状況が非常によくなつていることは、宮腰委員のお認めになる通りでございまして、私どもの調査によりましても、この一、二年で会社金葉の内容は著しくよくなつたというふうに見ておるのであります。これは後ほどいずれ資料を整理してお配りしたいと思つておりますが、たとえば償却前の利益でございますが、昭和二十四年度は千百九十四億ぐらいでありましたのが、二十五年度は二千六百八十五億に増加し、さらに本年度はそれが六千七十五億円程度に増加するのじやないか。償却も昭和二十四年度は百五十九億円程度であつたのが、昨年は再評価等によりまして九百五十九億に増加し、さらに本年は再評価の効果がフルに現われましたのと、第三次再評価を行いますのと、それから償却年数等につきまして、全面改正をとられました等の事情によりまして、千百十五億円程度に増加する。償却を差引きました利益から申しましても、二十四年度の千三十五億に対しまして、二十五年度は二千百二十五億、本年度は約五千億近くの四千九百六十億程度増加するのじやないか。相当法人の成績はよくなつておりますので、この際法人税について若干の増税をはかるのは、税制として妥当ではないかと考えたのでございます。増税をはかります際に、御指摘のように超過所得税的なもので行くか、あるいは法人税の税率を一般的に引上げるか、これは確かに問題でございまして、私ども検討したのでありますが、超過所得税式な方法で行きますと、超過所得を一体何によつて計算するか。資本金に対する利益率で計算するか、あるいは過去の一定の事業年度の利益額との比較で行くか、いろいろな方法がありますが、なかなか適正な標準を求めるのにむずかしいところがある。前回の超過所得税をやめました一つの大きな理由が、やはり超過所得税の計算の標準というものが、なかなかむずかしいというところにある。それが一つ。それからいま一つは、超過所得税式に行きますと、超過利得に対しましては、やはり相当高い税率で課税するという方向に行かざるを得ないことになると思いますが、そうしますと、会社は利益が出ると、そのもうかつた上の部分は相当高率な負担をする。すると勢い、会社は利益を有効に使わないで、濫費等の傾向に陥る、そういう弊害もございます。それから徴税の実際から行きましても、会社も計算上非常にめんどうな問題がございますし、役所におきましても非常に手続がやつかいであるという点を考えますと、むしろこの際は一般の法人税の引上げによつた方がいいのじやないか、こう考えたのでございます。それで昨年あたりまでは、法人税によりまして相当利益状態に跛行がございましたが、最近はよほどそれがなくなりまして、ほとんど全部の会社が配当をするような状態にまでなつておりますし、もちろん利益状況は非常にいいものと、それほどでないものと、若干差異がございますが、今までのようなこともございませんし、全般としまして相当改善をはかられつつありますので、この際はむしろ法人税の税率を一般的に引上げる方がよろしかろうというので、このような改正案にいたした次第でございます。
  62. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 これから考えると、法人の税収、個人所得の税収は大体かわらないように考えられますが、ことにこの法人の方は百分の四十二とるということになりますれば、幾らか法人税の収入が増加する。また現在までに法人税は自然増収が非常にあるようでありまして、その点から考えて、均衡上協同組合だとか特別法人の減税をする必要があるのじやないかと考えるのでございますが、お考えを承りたい。
  63. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 法人税の収入が最近非常にふえて来たことは、御指摘通りでございます。本年の当初予算では、所得税二千二百二十七億に対しまして、法人税は六百三十六億程度計上いたしたのでございます。今回の補正後は、所得税二千三百四十五億に対しまして、法人税は一千四百九十四億、非常に接近しつつある。この傾向は、私は来年度はさらに一層そのような傾向になるだろうと見ております。わが国の経済がだんだん常態化して参りました一つの証左であると考えております。それに関連しまして特別法人税の税率のお話がございましたが、その点は二十五年度の改正で、実はこれも理論上に従いまして、一般法人と同率にしたのでございますけれども、やはりこの種の事業の実態から申しますと、若干差をつけた方がいいのじやないかということを考えまして、今回は農業協同組合などには増産をしないということで、開きをつけることにいたしたわけでございます。
  64. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 これは酒税の場合だと、小売商店にそういう犠牲を負わせないということで、適切な手続をとりまして、酒税の問題は簡単に片づいたのでありますが、今議会に盛んに、織物消費税を小売業者に負担させたあれを、返してもらわなければ困るということを陳情に来られます。これは国の予算とも重大な関係がありますが、これを返還すること自体が、酒税の場合と対照して当然のように思うのでありますが、このお考えをちよつと伺つておきたいと思います。
  65. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 織物消費税をやめたことによりまする値下りの損を何か補償するか、あるいは税金を返してくれというような要望は、大分前からありまして、私どもいろいろ研究してみたこともありますが、なかなかいい実行案ができない。また価格の変動が、消費税の廃止によつて生じたのか、一般の商況によつて生じたのか、その辺のところにつきましてもなかなか問題がございまして、いい実行案もできませんし、解決を見ていないのであります。私どもその後における状況からいたしましても、これを今解決するのは実はむずかしいのじやないかと、考えておる次第でございます。
  66. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 それでは休憩いたします。午後は一時半より会議を開きます。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時三十二分開議
  67. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 それでは会議を開きます。  午後の会議には野党の方々から御質問願いたいと存じておりましたが、今のところ民主党の早稲田君一人でありまして、社会党からも共産党からも見えておりません。  よつて本日は散会いたします。     午後二時三十三分散会