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1951-10-25 第12回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    ――――――――――――― 昭和二十六年十月二十五日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 夏堀源三郎君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君    理事 内藤 友明君       淺香 忠雄君    川野 芳滿君       島村 一郎君    宮幡  靖君       松尾トシ子君    中野 四郎君       有田 二郎君    佐久間 徹君       三宅 則義君  早稻田柳右エ門君       深澤 義守君  出席政府委員         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (管財局長)  内田 常雄君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君  委員外出席者         大蔵事務官         (管財局外国財         産課長)    佐々木庸一君         日本輸出銀行専         務理事     山際 正道君         日本輸出銀行総         務部長     小林  登君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 十月二十四日  在外公館等借入金返済実施に関する法律案  (内閣提出第一四号) の審査を本委員会に付託された。 同日  揮発油税目的税として道路改良財源に充当  することに関する陳情書  (第一八九号)  退職金課税免除に関する陳情書  (第一九三号)  漁業証券課税全額免除に関する陳情書外八件  (第二一六号)  国有財産法並びに旧軍用財産の貸付及び讓與の  特例に関する法律等改正陳情書  (第二三九号)  たばこ小売販売利益率引上げに関する陳情書  (第二四六号)  税制改革に関する陳情書  (第二五〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本輸出銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第三号)  連合国財産補償法案内閣提出第五号)  一般会計歳出財源に充てるための資金運用  部特別会計からする繰入金に関する法律案(内  閣提出第一三号)  在外公館等借入金返済実施に関する法律案  (内閣提出第一四号)     ―――――――――――――
  2. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 これより会議を開きます。  昨二十四日、本委員会に付託と相なりました一般会計歳出財源に充てるための資金運用部特別会計からする繰入金に関する法律案、及び在外公館等借入金返済実施に関する法律案の両案を一括議題といたしまして、まず政府当局より提案趣旨説明を求めます。西川政府委員
  3. 西川甚五郎

    西川政府委員 ただいま議題となりました一般会計歳出財源に充てるための資金運用部特別会計からする繰入金に関する法律案につきまして、その提出理由を御説明申し上げます。  資金運用部特別会計は、資金運用部特別会計法規定により、毎年度の決算上剰余を生じました場合には、当分の間その全額一般会計に繰入れることになつております。しかしてこの会計が旧大蔵省預金部特別会計から引継いだ積立金につきましては、現在これを一般会計に繰入れることとなつておりませんが、右の積立金額は現在八億八千八百四十万円余あり、今回この金額本年度一般会計歳出補正予算財源に充てる必要がありますので、この積立金一般会計に繰入れることができることといたしたいのであります。  次に、在外公館等借入金返済実施に関する法律案提案理由を御説明申し上げます。  在外公館等借入金につきましては、在外公館等借入金整理準備審査会法に基き、政府は、鋭意在外公館等借入金確認事務を進めて参つておりますが、これが返済につきましては、さきに制定されました在外公館等借入金返済準備に関する法律に基いて、借入金を表示する現地通貨評価基準返済方法その他借入金返済実施に関する事項を定める必要がありますので、先般の第十一国会にこれに関する法律案提出したのでありますが、会期中に審議を終るに至りませんでしたので、今回重ねてこの法律案提出いたした次第であります。  次に、この法律案につきまして概要を申し上げますと、第一は、外務大臣が国の債務として承認した借入金返済請求権者に対しては、本邦通貨をもつてこれを返済することといたしました。  第二は、右の返済金額につきましては、在外公館等借入金評価審議会の答申に基いて決定した、別表の在外公館等借入金換算率によりまして、現地通貨表示金額本邦通貨に換算いたしました金額の三割増といたしました。さらに在外公館等借入金返済準備に関する法律第二案に規定されているところに従いまして、国民負担の公平の見地から、返済金額が同一人につきまして五万円を越えるときは、これを五万円とすることにいたしました。  第三は、借入金返済に必要な金額は、毎会計年度予算の定めるところにより、一般会計から国債整理基金特別会計に繰入れ、これを通じて支拂いを行うことといたしました。  その他返済に関する事務の一部の日本銀行への委託、返済手続細目につきまして規定いたしました。  以上がこの二法律案提出した理由及びその内容の概略であります。何とぞすみやかに御審議の上、御賛成あらんことをお願いいたします。     —————————————
  4. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 次に、日本輸出銀行法の一部を改正する法律案及び連合国財産補償法案の両案を一括議題といたします。連合国財産補償法案につきまして、内田管財局長よりこの法案内容説明を求めます。
  5. 内田常雄

    内田(常)政府委員 ただいま議題となつております。連合国財産補償法案につきまして、その大要の御説明を申し上げます。  この法律は、すでに御承知のように、今回署名を経ました日本国との平和條約第十五條規定によるものであります。  平和條約の第十五條におきましては、敗戦時に日本国内にあつた連合国人財産あるいは連合国財産について、その財産戦争の結果損害または損傷を受けたときには、日本国政府がこれを補償するという原則を設けますとともに、その補償実施細目につきましては、日本国内法によるという形式がとられております。元来連合国財産補償に関します事項は、今回の日本との平和條約は別といたしまして、すでに第二次大戦後にできましたイタリアとの平和條約、あるいはブルガリア、ルーマニアとの平和條約におきましても、條約の中に比較的細目規定を置きまして、別に国内法を設けない仕組みになつておるのでありますが、日本との平和條約におきましては、條約をできるだけ簡単にいたして、その早期成立を促進するという趣旨から、條約の中には補償に関する原則だけをうたいまして、その実施細目については国内法の形をとるということにせられておるのであります。私ども承知をいたしておりますところによりましても、最初はこの補償法案内容に相当する事項が、日本との平和條約の付属議定書のような形で、準備をせられたこともありましたが、それがだんだん形をかえまして、ただいま申しましたように、條約においては原則だけを定めて、その細目日本法律による、こういう形式がとられたのであります。しかしてこの法律案は比較的簡単なものでございまして全文二十五條ございますが、その大要は第一に條約を受けまして補償原則について規定をいたし、第二には補償せらるべき財産損害算定について比較的こまかい規定を置き、第三番目に補償金請求及び支拂い方法について規定をいたしております。一番大切な事項は、この法律案の第三條及び第四條でありまして、この第三條及び第四條の中に補償に関する原則が掲げられております。補償原則といたしましては、これはおよそ連合国人財産戦争の結果損害を受けておる場合には、何でも補償するということにはなつていないのでありまして、いろいろ制限を設けております。その制限の第一は人に関する制限でありまして、その人に関する制限といたしましては、補償請求権者は、もちろん連合国人でなければならないことはむろんでありますが、この連合国人のすべてに補償請求権があるかと申すと、さようではないのでありまして、第三條にその規定を置いておりますが、連合国人であることのほか、その連合国人戦争中日本から特別の戦時措置を加えられたということを、原則といたしております。たとえばその身体について逮捕、拘禁を受けたとか、あるいはその財産について押収、領置処分、いわゆる当時敵産管理等仕組みを受けたもの等が中心となつておるのでありまして、例外的に身体または財産について、さような具体的制限を受けなかつたものでも、たとえばその連合国人が敵産管理法上、敵国として日本国政府によつて告示をされ、いろいろな直接的、間接的制限を受けた場合、あるいは、敵国として告示は受けなかつたけれども、その連合国人日本におれなくて、もつぱら日本外におつて従つて日本における彼らの財産をみずから管理することができなかつたというような場合は、補償を受けられるようになつておりますけれども原則は先ほど申したように、人について制限を設けたのであります。  第二の制限は、物の所在制限でありまして、日本における財産補償すると申しましても、これがイタリア等平和條約における補償原則とはたいへん違うところでありますが、この法律案におきましては、補償されるものは、日本が條約上主権を回復する地域にあつたもののみに限られる。具体的には朝鮮とか、台湾とか、樺太等にありました連合国人財産が、戦争の結果損害を受けても、これらの地域平和條約の結果日本主権が回復されない地域でありますから、これらの地域については補償をされないという、物の所在についての制限を設けております。  第三番目には、損害原因についての制限であります。條約では、「戦争の結果として損傷若しくは損害を受けている場合には、」とありますが、「戦争の結果」という文字が必ずしも明瞭ではないのでありますから、その戦争の結果による損害原因というものを、法律案の第四條に具体的に列記いたしまして、第四條の一号から五号までに原因制限的に掲げてございます。  その損害原因の第一は、直接戦闘行為に基く損害、たとえば空襲等に基く損害であります。ただここで奇異の感をあるいはお持ちになるかとも存じますが、この戦闘行為による損害は、單に日本軍戦闘行為による損害ばかりでなしに、連合国自体戦闘行為による損害、たとえば敵の空襲による損害等も、日本補償せねばならないというようなことになつております。  原因の第二は、戦闘行為ではなしに、戦時特別措置そのもの、すなわち敵産管理そのものに基く損害でありまして、第四條の第二号、第三号、第四号等に並べてありますものがそれでございます。敵産管理の仕方が非常に当を得なかつた、あるいはことに工業所有権等につきまして、これは敵産管理法上の敵産管理ではございませんが、工業所有権戦時法というようなものが当時ありまして、連合国人工業所有権を取消したり、あるいは無断で一般に対して専用権を設定したというようなことが行われましたが、これらに基因する損害等を一応補償することになつております。  それからその次に四條の第五号に、連合国占領軍当該財産を使用した期間中に生じた損害のうち、ある特定のものにつきましては、日本側がこの法律によつて補償する旨が掲げてあります。連合軍日本人財産を接収するのが原則でありますが、それらの日本人財産になつております中には、本来は連合国人財産でありましたものが、戦争中敵産管理によつて処分されて、日本人名義になつておる。それを連合国占領軍が接収した場合には、名義上の所有権者である日本人に対しては、補償料支拂いとか、損害補償というようなことが行われますけれども連合国人である真の所有者に対しては、この法律がなければ何も救済の手段がないということにもなりますので、一部の損失を直接連合国人に対して補償するような仕組みにいたしてございます。  それから第四番目に、時の制限がございます。時の制限はすでに條約にもありますように、まず補償を受けることができる財産は、開戦時、すなわち昭和十六年十二月八日現在に日本にあつた財産に限られるということが、その一つでありますけれども、さらにこの補償請求に関しましては、この法律のしまいの方に規定が設けてありますけれども、この法律が効力を発生いたしてから十八箇月以内に請求した場合にのみ、日本政府補償するが、十八箇月以内に請求が行われなかつた場合には、相手側請求権を放棄したものとみなされるという旨の規定を置いてございます。これは第十五條にさような規定が置かれてあるわけであります。さようにこの第三條及び第四條を中心といたしまして、補償原則を敷衍して規定し、また損害原因等を述べてあるのであります。  次に第五條から第十三條までのいろいろな規定は、補償をいたす前提となる戦争による損害額計算方法を、財産種類ごとに掲げてあります。たとえば有体物であるとか、あるいは工業所有権であるとか、あるいは金銭債権公社債権、そういうふうに種類をわけて損害算定規定いたしております。この損害算定基準、要するに財産を返還すべきものである場合には、返還したときの現状戦争が始まつたときの現状までもどすに必要な金額を、補償金支拂う際の物価で計算するということが書いてございます。もちろん敵産管理等でそれにかからなかつた特定財産につきまして、返還する必要のないものにつきましては、返還時の状態開戦時の状態にもどすということはありませんから、その場合には講和條約の発効時あるいは補償金支拂いのそのときにおいて、開戦時の状態財産状態をもどすために必要な金額というようなことにいたしてありまして、これらはただいま申しました五條から十三條までの間に規定をいたしてあります。  最後に、補償金請求及び支拂い方法が十四條以下に規定いたしてあります。この請求及び支拂い方法の第一に申し上げるべきことは、この補償金支拂いはすべて請求をまつて論ずるのでありまして、その点がイタリア平和條約における連合国財産損失補償のやり方とも、いささか違つております。イタリア平和條約におきましては、損失補償するということはイタリア政府の当然の義務とされまして、補償請求をまたないでも、政府が自発的に計算をして補償を実行するというふうになつておりますが、わが方の場合は、相手方の請求をまつて、またその請求伴つて、いろいろの挙証責任等相手側に持たせまして、その上で補償をするという仕組みになつておりまして、そのために補償金請求に関する具体的な規定規定いたしております。  それから補償金支拂いでありますが、補償金支拂い原則としてはすべて円貨で、日本国内において支拂うということにいたしておりまして、外国人に対する補償が行われましても、これが日本外貨ポジシヨン等影響を與えないように配慮されております。外国人がこれらを海外に送金いたそうとする場合には、それがたとい補償金として受取つたものでありましても、すべて為替管理に関する法律の適用を受けるという旨を規定いたしております。もつとも外国人財産自体が初めから外貨の形であるもの、たとえば外貨契約債権であるとか、あるいは外貨債の一部というようなものにつきましては、これは財産自身外貨でありますから、円で換算して補償をして、それで済ますというわけに行かないことになつておりまして、これらの例外的なものにつきましては、外貨計算補償をいたすけれども、しかしその補償を実行することにつきましては、日本外貨状況の許すすみやかな時期において、補償するというような規定が設けられておりまして、例外的に外貨補償する場合においても、日本外貨ポジシヨン影響を與えることを、極力少からしめるという配慮が行われておるのであります。  なお雑則等といたしまして、若干の規定が設けられております。日本側支拂補償金に対して異議がある場合には、異議申出を認めまして、それを再審査する。この再審査につきましては、原則として日本政府に設けられる連合国財産補償審査会という機関で、再審査をいたすのでありますが、場合により連合国との間に特別の協定が行われる場合には、その協定によつて混合委員会のような審査機関をつくつて、再審査をするという道も設けられております。今まで設けられましたイタリアその他の平和條約の例にならつておるのであります。  大体以上がこの法律案規定せられております事項内容であります。  さて、しかしてこの法律案講和條発効と同時に実施いたしまして、それによりまして連合国人から期限内に補償金支拂い請求がすべて出そろつたといたしました場合に、一体どのくらいの補償金支拂いを要するかということでありますが、これは先ほども申しますように、損害請求はすべて相手側挙証にまつことでありまして、財産種類も複雑でございますから、今私どもは正確な予測はできませんけれども、敵産管理をいたしました当時の財産、また日本人財産たる連合国人財産たるとを問わず、空襲等によりまして一般動産、不動産損害をこうむりましたその状況から推算いたしてみますと、かりに全部の請求が出そろつたといたしましても、その総体の金額はこの法律を適正に運用する限り、二百億円ないし三百億円の範囲でとどまり得るだろう。一応事務的な試算をいたしてみますと、二百七十億円というような試算もでております。但しこの支拂い方につきましては、先ほど條文規定を申し上げた際申し落しましたけれども、この法律案の第十九條に特別の規定が設けられておりまして、この補償金支拂い合計額は、一会計年度内においては百億円以内において支拂う、こういう規定が設けられておりまして、大体右の金額昭和二十七年度以降おそらく三年、四年の間に支拂われるような形に、相なるのではないかと存じております。この補償をいたします財産のうちで、いかなるものが一番多いかということにつきましても、この際簡単に申し述べますと、二百七十億円ばかりのうちに、今予測せられる最も多いものは株式に対する補償でありまして、これが百十四億円、これもまつたくの推算であります。その次が動産でありまして、これが八十七億円見当、その次が鉱業所有権関係補償でありまして、これが五十億円、建物に対する補償関係の十六億円等がおもなるものではないかと推算せられております。一応簡単に御説明いたしました。
  6. 小山長規

    小山委員 日本輸出銀行法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、昨日の委員会において日本輸出銀行副総裁にお尋ねしたのでありますが、輸出銀行から満足すべき答弁を得ませんでしたので、あらためて銀行局長に伺いたいのであります。  日本輸出銀行法改正にあたつては、二十億の増資をするのが今度の改正案目的である。しかるに昨日輸出銀行資金運用計画を聞いてみますと、どうもさしあたり二十億今年度内にどうしても緊急必要とするという、こういう積極的な理由が見出されない。そこで銀行局としては資金繰り関係その他から申して、二十億の資金はこの年度内にどうしてもいるのであるという積極的な理由があるかどうか。それをあらためて政府から伺つておきたいのであります。
  7. 河野通一

    河野(通)政府委員 昨日山際専務理事から御説明があつたと思うのでありますが、本年度日本輸出銀行融資計画につきましては、いろいろな数字試算されるわけであります。私ども計算をいたしました数字は、昨日山際さんからお話計算と、若干違つた観点かち見た点もあるのでありますが、私どもが見ておりますのは、通産省その他で計算をいたしております昭和二十六年度の機械の輸出計画であります。これははつきりしたものではございませんが、大体一億八千二百万ドル程度、こういうふうな計画になつております。その中でプラント輸出と認められますものが、いわゆる輸出銀行対象になるものでありますが、それの約半額程度ではないかというふうに押えております。半額といたしますと、九千一百万ドルということになるわけであります。これを円貨で換算いたしますと、三百二十八億という数字に相なるかと思います。これを輸出銀行とその他の市中銀行とが、協調融資プラント輸出融資対象といたすと考えられますものが、かたく押えて約七〇%、ラウンド・ナンバーで二百三十億、このうち輸出銀行の分担いたしますものが大体二割、八割の計算によりまして、百八十億余りという数字に相なるわけであります。それを、時期的なずれもありましようし、いろいろな観点で、大体百七十五億程度が実際に借り出されると見込んだのであります。それから輸出銀行資金繰りといたしましては、回収金年度内に十九億程度見込まれると思います。これを差引きますと、ネットの資金の放出の増は、百五十六億程度というふうに考えられるのであります。昭和二十五年度末におきやす残高が約十億でありますから、これを合計いたしますと、昭和二十六年度末における融資残高は、おおむね百六十六億程度になるのではないかというふうに考えております。そういうふうな計算からいたしまして、若干の余裕金も必要でもありますので、百七十億円というものが出費として必要であろうというような計算を、一応いたしております。ほかの見方からいたしますと、きのう山際さんからお話がありましたように、現在輸出銀行の方には公式の引合いでなくとも、非公式の引合い等を考えてみますと、百八十数億円のものが出ておるわけであります。そのうちどの程度が、実際に本年度内日本輸出銀行融資対象として実現するかという点につきましては、なかなか見当つけ方がむずかしいのでありますが、その観点からその引合いが出ておりまするものを、頭に置いて計算いたしましても、決して百五十億の現在の資本金で、十分にまかなえるということは保しがたいのであります。今後の見通しによりましては、私どもといたしましては、二十億よりもさらに多額増資を実は期待いたしたのでありますが、その点には——申し遅れましたが、将来場合によりましては、輸出銀行にある種の輸入金融業務を取扱わして参るような法案改正を、御提案いたしたいということを実は考えておりますので、そういう問題をも頭に置きながら、さらに多くの出資が必要である。二十億では少し足りないのであつて、もつと多額増資を期待いたしたのでありますけれども、財政上の都合でそういう多額のものが、実は組み入れることができませんような予算案になつております。従いまして今の状態では、近く御提案申し上げたいと思つております輸入業務を取扱うようなことになりますならば、相当程度資本金の増加ということが、将来の問題として必要になつて来るのではないかというふうな考え方も持つておるのであります。この問題は将来の問題として残つております。  なお作目山際さんからお話がありましたように、輸出銀行といたしましては、政府出資以外に資金のもとを得る方法が実はないわけであります。先国会中にも輸出銀行法改正につきましているく考えました際、政府出資以外にある程度借入金と申しますか、そういつたものができるようにして行つてはどうかというような考えも持つていろいろ案練つておつたのであります。これは先ほど申し上げました輸入業務についての構想と同じように、さらに検討を加えてできるだけ早い機会に御提案申し上げたいということになつておるわけであります。従つて現在のところでは政府出資金以外には、輸出銀行資金のもとを得る方法が実はございませんので、どうしても今申し上げましたようなことで、最低二十億程度のものは本年度内増資を必要といたすというふうに、私どもは考えておる次第であります。
  8. 小山長規

    小山委員 数字で大体見当がついたのでありますが、元来これは見込みの問題であつて政府としてもどうしてもこれだけいるのだということは、おそらくこれは一種の勘というか、予測以外に出ないかと思うのであります。そこでそういう問題が起るのは、非常に資金の出所があまりぎつしりし過ぎておるというところに、原因があるかのように考えられますので、政府がただいま考えておられるような資金源を、たとえば預金部資金に求めるというようなことが必要になつて来るのではないか。期の途中において補正予算を組むのには、もう間に合わないというようなときに、一体どこに輸出の増進のための資金を求めるかというようなことになつて来ると、予算の技術の関係からいつても、資金運用部からたとい一時でもいいから借りられるような道を講じておく必要があるのではないか。また場合によつては、それを将来は予算上の措置として、政府出資に振りかえるというようなことも考えられましようし、何かもう少し融通性のあるような方法に、資金源を求めるということを考えることが必要ではないか。かような観点から先ほども質問したわけでありますが、政府においても大体そのようなお考えのようでありますから、その趣旨で今後も進んでいただきたい。私は一応これをもつて終ります。
  9. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は連合国財産補償法案につきまして、簡単に質疑をいたしたいと思います。先ほど内田管財局長から詳細な説明がありまして、大体了承したわけでございますが、二、三明確にするために質問を許していただきたいと思います。  昭和十六年十二月八日の開戦の当時における連合国財産のことでございますが、この第三條にもあります通り、その当時は日本といたしましてほとんど各国と戦争状態に入るわけです。その開戦の十六年十二月八日後交戦したという理由によつて、この第三條の第二項の規定があるわけだと思いまするが、今のところを見ますと、世界各国みな入つておるように思いますが、どういう状況ですか。開戦当時に日本と交戦状態になかつた国はどことどこでありますか承りた、
  10. 内田常雄

    内田(常)政府委員 第三條の二項について御質問でございますが、第三條の二項は戦争中本邦に居住しなかつた個人、あるいは戦争中本邦内で事業を行つていなかつた法人で、これは戦争中に日本から引揚げてしまつておつた連合国人ということでありまして、この二項の趣旨も、二項で補償が適用されるためには、やはり昭和十六年十二月八日に日本戦争し交戦状態にあつた国であつて、しかも今回のサンフランシスコにおける平和條約に署名し、また今後これを批准する国の範囲に限られることになります。
  11. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 それはよくわかりました。次は八條でありますが、公債、社債、特別な法律によつて発行した債券等によりまして、いわゆる外国から金を借りました。その返済期が来ておることと思いますが、これは一時ストップしておることと思います。これが相当あることと思いますが、簡単でもよろしゆうございますから、もし資料等ありましたら、どのくらい、どういうふうになつておるかということをお示し願いたいと思います。
  12. 内田常雄

    内田(常)政府委員 戦争中のいわゆる外貨債で、戦争中元本及び利息の支拂いを停止しておるものの御質問のように思いますが、これは約四億ドル余りございます。これの処理につきましては、平和條約の十八條のb項というのがございまして、日本は戦前の対外債務に関する責任を十分認めて、その処理を確実ならしめるために、連合国とすみやかに打合せをするという趣旨規定がございまして、それに応じまして別個に処理をされることになつておりまして、それらの外貨債連合国財産の返還とか、補償とかいうことの範囲外として処理いたされると思います。
  13. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 次にこの十五條に「十八月以内」と書いてありますが、十八箇月以内に日本に申し出た者は、三年ぐらいのうちに弁済する、こういう意味のことをいつておるわけですか。その辺をちよつと承りたい。
  14. 内田常雄

    内田(常)政府委員 この十五條で十八箇月以内に日本請求をしたものでなければ、その他のものは放棄したものと見なされる。それで十八箇月の請求をまつて、初めて日本側が、法律上は遅滞なく、あるいはすみやかにその支拂いを開始するわけでありますけれども、やはり日本側としても調査がいる。その調査決定しましたものを相手方に通告いたしましたものに対しまして、向うからさらに異議申出があるということになりますと、支拂いの実行は二年なり三年なりずれるのではなかろうか。このことにつきましては、平和條約の方の第十五條を見ますと、連合国財産は、返還する場合には九箇月以内の申請に対して、六箇月以内に日本国は必ず返還しなければならないという規定がございますが、この法律におきましては、日本補償しなければならない終期を特にきめておりません。従つて十八箇月以降二年なり三年の間というものであります。なおまたこの法律案の第三條三項に、補償請求するためには、まず連合国人は返還の請求をしなければならぬ。こういうことが書いてありまして、もし平和條約の十五條で定める九箇月の返還請求期限内に返還の請求をしなかつたものについては、返還請求権は失うとともに、第三條の三項によりまして、日本側補償もしないということになつております。そこで九箇月以内に返還の請求をして、それからさらに六箇月以内に日本政府から返還を受けて、都合十五箇月、最長一年三箇月目に返還の状態がわかるわけであります。その返還を受けたものについて、それに損害があつたかどうかを向うが見きわめて、そうして補償請求をして来るということになりますから、補償請求の方は返還の請求九箇月に対して、十八箇月というふうにずらしてある。その実行は手続上の関係と、しかもかりに一時に殺到いたしましても、先ほど申し述べました百億円というあの制限で打切りますから、まず二、三年は大丈夫だと思います。
  15. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 大分よくわかりました。十七條に「補償金補償時の公定外国為替相場」と書いてありますが、十六年のときの価格と今は大分違つておるわけですが、そこは審査会できめるのですか。その辺を明確にしていただきたいと思います。価格に対する算定です。
  16. 内田常雄

    内田(常)政府委員 補償金は十七條の第一項にありますように、原則としてはすべて円で支払いますから、一般的には為替換算率の問題は生じないわけでありますが、第二項で、先ほど申し述べましたような金銭債権とか、公社債等のものが外貨建である場合は、それは外貨で返さなければならない。そこで外貨建の場合には、昔の外貨の額面通りの外貨補償すればいいわけです。つまり第十七條の二項で、円貨以外の通貨、すなわち外貨で表示され、外貨によつて支拂わるべきものである場合には、補償金外貨支拂いを承諾するということでありますから、昔かりに一万ドルという債権連合国人日本人に対して持つておるとすれば、その債権を敵産管理をして敵産管理委員会政府の指示で消してしまつたという場合には、やはり一万ドルで返す。ただそれを円と比較してみますと、今の一万ドルは三百六十万円であるけれども、昔の一万ドルは四万円であつたという、観念上の換算率は出て参りますけれども一般的には御質問の問題も起るまいと思います。
  17. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 よくわかりましたが、やはり資産の算定は、昔たとえば日本の金に換算して五万円のものが、今も五万円でいいのですか。それとも物価指数が上つておるから、それを百万円なり二百万円にするのですか。それを明確にしていただきたい。
  18. 内田常雄

    内田(常)政府委員 円で補償する場合には御質問のようになります。昔十万円の家が戦争の結果半分飛んでしまつた。そうすると五万円の分を返還して、あとの五万円の分を補償すればいいのでありますが、その後十年の間に物価が百倍になつておつたといたしますと、その家を元の状態にして返すためには五万円ではなしに、五百万円相当額の支拂いがいる、こういうことであります。
  19. 小山長規

    小山委員 連合国財産補償法案について、原則的な点を二、三質問しまして、あと逐條的な点はむしろそちらの方から説明を伺いたいと思うのであります。この連合国財産補償ということは、これは賠償なのでありますか。あるいは賠償と関係がないのでありますか。まずその点を伺いたい。つまり申し上げたいことは、これは一種の賠償なのじやないかということであります。従つて相手国が日本に対して賠償を請求する場合には、この金額は向うの請求金額との間に相殺関係が起るのかどうか。それをひとつ伺いたい。
  20. 内田常雄

    内田(常)政府委員 きわめて広い意味においては、敗戦国の戦勝国に対する賠償と言えないこともないでしようが、條約上のいわゆる賠償とは異なると思います。従つて平和條約におきましても、賠償関係の方は十四條で定められておりますに対しまして、連合国人財産の方は十五條で設けられてありまして、戦争の結果損害を受けた私有財産に対する敗戦国の補償ということでありまして、敗戦国としてのいわゆる賠償のほかに、條約上の慣習として、ヴエルサイユ條約以来別の意味で、戦勝国人財産補償というものが行われております。
  21. 小山長規

    小山委員 それから平和條約では、日本人財産が中立国にある場合に、没収を受ける規定がたしかあつたと思うのですが、それとこの法律との関係は、その中立国との間には、法律上の相殺という意味でなしに、何か一つの取引になり得るのでありますかどうか。
  22. 内田常雄

    内田(常)政府委員 この法律及び條約の第十五條補償いたしますのは、いかなる意味においても連合国人財産でありまして、従つて平和條約に署名、批准しない中立国につきましては問題ございません。
  23. 小山長規

    小山委員 この法律案は非常にわかりにくいのであります。それでおそらくきようの間に合うまいと思いますが、ひとつそちらの方から、あなた方立案にあたつて問題になつた点を、われわれに説明していただきたい。
  24. 内田常雄

    内田(常)政府委員 この連合国財産補償法をつくりますのは、実は技術的にはきわめて容易でありまして、お手本は、先ほども申しましたように、イタリア平和條約七十八條とか、あるいはブルガリア平和條約の百七十九條、ルーマニアの平和條約、さらにさかのぼつては第一次大戦の際のヴエルサイユ平和條約、みな相当長い規定がございます。従いまして、日本との平和條約をつくられます場合にも、大体それらを手本にしたと思われる條約の付属議定書案のようなものを、外務省を通じて大蔵省に示されまして、従つて初めは條約の條文中、あるいは付属議定書としてわれわれ及び国会の手を要せずに、そのままサンフランシスコで調印されるようなかつこうになつたのかもしれませんが、先ほども触れましたように、日本との平和條約の場合は相手国が非常にたくさんありますし、また時期を急ぐ関係上、非常に複雑な補償に関する規定を、他の條約と同じように入れますと、必ずしも連合国その他の足並が一致しないかもしれないというような点もあつたろうと推測されますので、従つてこの平和條約の中には、第十五條でごく簡単に、二行か三行補償するという原則だけを設けて、あとの他の條約にあるような部分は、連合国側と打合せて日本国内法の形をとる。国内法の形をとる際に、先ほど申し上げました通り、私どもが一番苦心しました点は、お手本は幾らでもあるのでありますが、日本の財政状況並びに日本が今日置かれております特殊な地位から、できるだけこれを制約して合理的な補償範囲にとどめるように全体的に苦心したことでございます。そこで三條、四條等はあるいは本来いらないのかもしれませんが、同じ連合国人だと申しても、サンフランシスコで判こを押した連合国人が、日本損害を受けた場合にはみな補償するということはしないで、連合国人てあつても、日本の敵産管理法という狭い法律敵国として告示されたもの、言いかえれば英、米、蘭の三国及びその領土であつた国だけに限定する。あるいはそうでないものであつても、敵産管理法とかあるいは工業所有権戰時法とか、あるいは憲兵の権力行使とかいうような特殊な、日本人には適用せられない公権力の発動をして、それらに身体上あるいは財産上の迫害をしたものに限るということにしようじやないか。日本人と同じような状態のもとにあつてそれが戦争の被害を受けても、これは日本人並にしてもらいたいというような趣旨から、この三條は向う側とずいぶん打合せまして、必ずしも所期の目的を達したとは申せませんけれども一般の他の條約に見られるよりも範囲を狭めてございます。第三條の第二項も先ほど触れましたが、日本にいなかつたというようなもの、これは、たとえばフランス人なんかの場合を考えますと、フランス人は敵産管理法敵国として告示はいたしておりません。しかし今回の平和條約では一般連合国として入つております。従つて、そのフランス人の財産を無條件で補償するということは、考えなければならぬ点じやないかということでありまして、フランス人に補償するかもしれないけれども、その場合は、フランス人たる連合国人が、日本を離れて日本にある彼の財産についてまつたく処置のしようがなかつたというような事項であるとか、あるいはフランス人の中でも、特にお前が横浜の山の上に家を持つているのは防牒上よろしくないから、その家をとりこわせというような公権力を発動した場合に限るというように、わかりにくい第三條を設けたことが苦心したところであります。第四條も同じでありましてこれはイタリア平和條約を見ましても、あるいはその他の平和條約におきましても、戦争の結果損害を受けた、あるいは敵産管理等によつて損害を受けたということが書いてあるだけでありまして具体的になかなかわかりにくい。従つて今後の外交措置上どこまで押されて来るかわからないから、できるだけ範囲を限定的に狭めて特掲したいということで努力いたしまして、これも理想的とは申せませんでしたけれども、できるだけわが国の貧弱な財政状態その他にマツチいたしますように、こういうようなわかりにくい規定を列記いたした次第でございます。なおまたしまいの方の一年間百億に限るというようなことも、もちろん條約の原案にはございません。これは小山委員からお尋ねがありましたように、ほかの賠償上の負担その他も競合するであろうから、できるだけこの苦痛を延ばしたいという趣旨から、百億円以内というような規定が置かれたのであります。その他の規定もたくさんあるようでありますけれども、一体損害とは何かということをきめてかかろうではないか。しかも損害とは何かということをきめてかかつて、その損害の全部を補償するのではないので、きめられた損害のうちで連合国人が利益を受けたものは差引く。差引いた金額が—— 損害額と利益というものは観念上わけるべきだということで、第五條から十七條まではもつぱら物理的、経済的な損害を算出するこまかい規定を置きまして、そうして十四條以下におきましては補償金額という見出しを特につけまして、損害額のうちで、ある部分が補償されるというように理詰めでわけて補償して行きまして、従つて外国の講和條約は款とか項とかにわかれて非常に長いものでありますけれども、とにかくそれより若干長めなこういう法律案なつたわけであります。
  25. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 ちよつとわからぬ点をお尋ねしたいと思います。今度の平和條約に従つてこの法律はできたのでありますが、平和條約では、こまかい規定があれば調印した国は責任を負わなければならぬのであります。ところがこれは負けた日本国内法律でやられるのでありますが、これで連合国が承諾するのかしないのか。それはどういう関係になるのですか。
  26. 内田常雄

    内田(常)政府委員 ごもつともな御質問であります。すでに御承知のように、講和條約の草案も、経過において二、三かわつて来ております。最後にこの講和條約案がとられます前の形は、十五條補償原則をきめると同時に、補償のやり方は、連合国の監視のもとに日本で先に法律をつくらしてしまつて、それを公布させまして、連合国財産補償に関する法律第何号の定めるところによつて補償すべしというふうに書かれておつたのであります。従つて、監視のもとにつくられた法律によつて、その法律を條約の中に引用して、連合国補償を受けるとすれば、連合国は心配ないのでありますが、今度のような形で、補償細目日本法律にまかせるということになれば、御質問のような心配があると思います。そこでこのつなぎといたしまして、第十五條にありますように、日本側国会提出いたします法律案の原案を閣議決定いたしまして、日本はこのような法律国会提出して賛成を求める、従つて日本を信頼してもらいたいということで出しましたものを十五條は引用いたしまして、七月十三日に閣議で決定した法律案よりも悪くない條件で補償する、こういう書き方にいたしたいのであります。今回提出いたしましたこの法律案は、七月十三日に閣議決定いたしました法律案と、「てにをは」等の修正がありまするほかはまつたく同じであります。従つて、この形において国会で協賛せられて法律になります以上、また平和條約の十五條にああいう明文があります以上は、連合国といたしましても、これで満足せられることになるわけであります。
  27. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 私は、法律のことはあまりよくわからぬのでありますが、この案文はすでに七月の十三日に閣議で決定して各国に渡してある。それで大体この案で了承して平和條約に調印したということになるのでありますが、しからばこれが今度の国会に出されまして、道徳的に考えますれば、これをこのままのまなければならぬのでありますが、そうしますと、国会審議権というものと、今まで政府がおとりになつて来られた行政措置と、どういう関係になりますのですか。これが大事なところじやないかと思いますが、はつきりしておかなければならぬ。これをうのみにせよというのか。それとも適当な修正まかりなるというのであるか。その点をお伺いしたい。
  28. 内田常雄

    内田(常)政府委員 これは私からお答え申しますよりは、法務総裁等があらためて御答弁申し上げる機会があるかもしれませんが、私ども政府部内において打合せて了解いたしておりますところによりますと、この法律案は、十五條に引用いたしておりますところの「日本国内閣が千九百五十一年七月十三日に決定した連合国財産補償法案の定める條件よりも不利でない條件で補償される。」とこの條約には書いてあるのでありまして、しかも政府が今回提出いたしましたこの法律案が、閣議決定の法律案とまつたく同じだといたしますならば、日本国の全権がこの條約に署名し、しかしてその署名された條約を今回国会が御承認をせられるならば、この十五條に基く立法の措置も十分国会が御承知の上で、條約を承認されることになりますから、従つてこの法律案国会が賛成せられて法律にして成立させるということは、内閣の義務であると同時に、国会も自分の承認したその條約に基いて、それにうたわれている法律をつくるということでありまして、決して立法権の否定とは相ならぬという解釈でございます。
  29. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 私法律のことについてはよくわかりませんので、教えていただきたいと思いますが、内田さんはなかなかこの点は御研究しておられるようですが、なるほどこのたび全権が向うへ参りまして調印して参りました。そのとき、それらの全権に、閣議決定の案はこういうものだということをお示しであつたのかどうか。それをお尋ねいたします。
  30. 内田常雄

    内田(常)政府委員 條約の十五條にありますように、日本国政府が七月十三日に閣議決定した法案でありますから、従つて閣議には出されて、閣僚の諸公は十分御承知であります。しかして総理大臣は内閣を首班しておられるのでありますから、総理大臣、大蔵大臣等を通じて、もちろん各全権の方はこの法律案が出されること、その内容がきまつておることを承知しておつたものと思われます。また第十一国会におきまして、詳しい討論はなかつたようでありますけれども、講和全権の承認を受けるための国会におきまして、大蔵大臣等の発言がこの点に若干及んだものだと、私は記憶いたしております。
  31. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 それならば私はむしろ法律によらずして、政令でおやりになる方がすつきりするのじやないかと思う。法律国会にお出しになる以上は、国会国会の意思によりまして、修正することもありましようし、あるいは否決することもありましようし、いろいろな場合があると思います。そうなりますと、承認も経ずしてこの案が、それは示されたかどうかは存じませんけれども、それを何か強制するような形になるということは、この法律をお出しになる出し方が、私は少しりくつに合わない点があるのじやないかと思います。重ねてお尋ねいたしますが、これは相当国会審議権というものと重要な関係があると思います。これは法律でなしに、政令でお出しになるならば、それは政府の責任においてなさることでありますから、これは一向さしつかえない。この点は法務総裁にお尋ねしてもいい。それからまた私の方も、私どもから送つた代表がおるのでございますから、それにはたして事実これをお示しなさつたかどうかということも、尋ねるだけは尋ねてみたい。もしそうであるならば、今日はこんなものをお出しなさらぬでもいいのじやないかと私は思う。
  32. 内田常雄

    内田(常)政府委員 先ほど来申し述べますように、事の次第が、本来ならば各国の前例によりましても、條約の中に書かれておりますものを、ただ條約を早期に成立せしめ、各国の足並をそろえるという趣旨から、形をかえて細目日本国法律によるということにしたのであります。従つて批准せられるまでは、この法律案と條約草案とは一体のものであります。国会がこの條約を御承認にならないと、批准ができないわけであります。従つてこの條約の承認と、この法律に対する賛成とは、これも国会として一体であろうかと私は存じます。條約が承認せられる以上は、この法律案に御賛成くださつて、この法律を制定せしめるということが、事態に適するのではなかろうか。もつともこの十五條を読みましても、国会の義務なり、あるいは全権の今後の仕事の範囲というものは、この閣議決定の法律案に定める條件よりも不利でない條件で、連合国財産に対して補償をするとありますから、従つてまつたく理論的には、これは政府として有利な法律に直して国会提出することもできます。また国会として国会の立法権をもつて連合国に有利な修正をなさろうと思えば、できないことではないと思いますが、十五條、十六條、十七條その他の関係におきまして、日本国の財政上事しげきことでありますから、この際連合国補償をこれ以上有利に修正なさるということも、必ずしも政府として適当と思つておりません。国会としても同意見であろうと思いますので、右利な修正はできるけれども、されなくてもいいのじやなかろうか。不利な修正は條約上できない、こういうことでありまして、論理的にはそういう余地もありますから、お尋ねのように、政令でつくるべきものではなくて、やはり承認される條約と一体として、法律の形で制定される方が事態にかなうと思います。
  33. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 調印して参りました條約は、承認するとかしないとか、これは白か黒かはつきりしておるのであります。ところがこうして出されました法律は、これは修正もできるのであります。今お話のような不利とか、不利でないとかいうのは、だれが中心となつての不利とか不利でないとかいうことか、お答えをいただきたい。いずれにしても、そういうふうなものさしで修正ができるということは、一応うたつてあるのですからできますが、ただ国会審議権というものが非常に拘束されておるような形で、政府がこういう御処置をなさることについて、問題があるのじやないかと私は思うのであります。そこでさつきお尋ねしました不利というのは、だれの立場において不利とか不利でないとかいうのか。はつきりお聞きしたいのであります。
  34. 内田常雄

    内田(常)政府委員 條約の第十五條をずつと読み下して参りますと、不利でない條件というのは、連合国人に対して不利でない條件としか読めないと思います。
  35. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 これはいずれあとでその方の責任者の方にひとつお尋ねしたいと思いますから、留保しておきます。
  36. 川野芳滿

    ○川野委員 ただいま内藤委員の質問に対しまして、実は七月十三日でしたか、閣議決定の線において決定した上、この法案を出された、こういう御答弁であつたように聞いたのであります。もちろん日本政府の考えで法律中を出されたものと考えますが、その間におきまして、連合国側から財産補償をしてもらいたい、こういう要求がありまして、その要求に基いて、内々こういう法律案を出せ、こういう示唆のもとに、こういう法律案を出されたのであるか。この点一つお尋ねしてみたいと思います。
  37. 内田常雄

    内田(常)政府委員 先ほど申し述べたところでありますが、この平和條約を起草しましたアメリカ側としては、最初は補償に関する事項日本法律の形にしないで、條約そのものの中に、イタリアの條約と同じように、條文で入れるような形で日本側に示されたようであります。これはこの点ばかりではなしに、私は條約全体のことは存じませんが、ほかの点におきましても相当長い條項があつたのじやないかと想像されますが、御承知のように平和條約の成立を急ぐ。またサンフラシスコ会議に招請する五十何箇国かの賛成を求めるためには、あまり補償実施細目等の手続的な枝葉末節のことで、各国の足並がそろわないために、平和條約成立の時期が遅れるというとは、アメリカとしても得策でないし、また日本としても適当でないだろうということで、だんだんこの條約の條文を簡単にする際に、條約においては、イタリア條約、ブルガリア條約、ルーマニア條約、その他今回の第二次大戦後の條約の例にならつて連合国人補償を受けるのだという原則的なことを簡単に書くにとどめて、その細目は、アメリカ、英国その他の諸国と打合せた内容による法律案の形にして、国内法できめる。しかしその国内法できめるについては、十五條にありますように、大体一つの最低線を設けて、これを連合国側に見せて、それを條約の中にうたつて、それを下らない線で補償する。こういう形になつたわけでありまして、この経過におきましても、また法律案内容におきましても、わが国に対して不利益ではなかつたと私は確信いたしております。
  38. 川野芳滿

    ○川野委員 そういたしますと、日本人財産にも相当損害を及ぼした問題があると思う。敗戦国でございますので、日本政府財産補償を求める、こういうことは不可能であるかとも考えまするが、日本の民間人の損害に対する補償という問題については、あるいは当然日本としても要求していいのじやなかろうか、こういうふうにも私は考えるのでございますが、この点についてどうお考えになつておりますか、お尋ねしてみたいと思います。
  39. 内田常雄

    内田(常)政府委員 これは私からお答えすべきことではないかとも思いますが、もちろんお尋ねのように、日本人外国人と同じようにいろいろな損害を受けておりますから、日本の財政が許すならば、あるいは政府から日本人に対する損害補償する予算案なり、法律案なり提出することも望ましいことであろうかと存じますけれども日本人に対する同種の損害につきましては、他にも同様の損害事項がたくさんございます。在外財産をこの條約によつて没収された損害でありますとか、あるいは戦争に基因していろいろな損害が国民にはあるのでありますが、それは全体の戦争損害との関係において、国内の財産戦争損害をどういう位置に置くかということで、きめなければならぬ問題ではなかろうかと思います。先ほど政務次官からも提案趣旨説明がありましたが、在外公館借入金に対する弁済も、これは形は弁済でありましようが、あるいは一種の戦争による補填のような感じも持てるのじやないかと思うのであります。いろいろな問題の中で、どれを優先さして弁済し、補填するかということで、きまつて来る問題であろうと思いまして、これは財政状況いかんによると思います。
  40. 川野芳滿

    ○川野委員 私の質問の趣旨は、日本政府から日本人の民間の損害補償してもらう、こういう意味の質問ではないわけなんです。日本人の外国における損害補償をやはり外国においてしてもらう、こういう意味なのであります。私はどうしてこういう質問を申すかと申しますと、実はこの損害の調査ということが非常に問題になるかと存じます。損害の調査を日本政府だけでおやりになるか、あるいは外国立会いでやるのかわかりませんが、かりに損害補償する場合に、外国における日本の民間人の損害補償する、こういうような点があるならば、この損害補償の値踏みというものもおのずから形がかわつて来る。すなわち安く値踏みもせられるのではなかろうか。こういうふうにも私は考えますので、この質問をしたわけであります。重ねて質問をいたしますが、外国における日本の民間人の補償というものを、やはり外国に私は要求するのが当然である、こういうふうに考えますが、この点についてお尋ねしてみたいと思います。
  41. 内田常雄

    内田(常)政府委員 私も国民の一人といたしまして、できるならばそのような要求をしたいと存じますが、平和條約の十四條におきましては、御承知のように日本人連合国内における財産については、それが完全な姿で残されておろうと、またそれが連合国戦闘行為によつて損害を受けておろうと、すべて原則として連合国側に領置没収されるという規定がございます。それからまた條約の他の條文、第十九條に、日本国は、国民にかわつて戦争の結果損害その他の請求権が生じたものであつても、それらの請求権連合国に対して放棄するという條文がございまして、その両條の関係から、ただいま御質問の要求につきましては、まことに残念でありますけれども、できない状況にあります。
  42. 川野芳滿

    ○川野委員 私はどうしてこういう質問をしたかと申しますると、敗戦の條件といたしましても、ポツダム宣言を全面的に受諾する、こういうことで、実は敗戦の誓いを結んだわけであります。しかしその後国民の声といたしまして、領土面におきましてもあるいは沖繩、大島等の返還の要求をいたしております声も生まれ、さらにポツダム宣言には、沖繩、大島等も日本から取上げる、こういうことにも相なつておりましたのを、管理ということになつて、将来日本に返つて来る、こういうことにも形がかわつて参りましたので、なるほど日本人財産等におきましても、これは当然補償を求められぬという規定にはなつておりまするが、これは表面のことでございまして、内面的にほ、これらの問題についても相当日本政府としても交渉する余地があるのではないか。言葉をかえて申しますならば、外国人補償額というものの見積りにつきましても、これは高く見積るか、安く見積るか、こういうことにつきまして、日本損害というものは、相当差が出て来ると思います。こういうことから考えまして、日本人の外国における財産補償はしてもらえないが、しかし日本に牽ける外国人財産補償はするのである。こういう点をよく御勘案いただきまして、そうして補償額の決定等につきましては、十二分に国家国民のために違算なきを期せられたい、こういう意味をもつてただいまの質問をいたしたのでございますので、どうかひとつ調査等にあたりましては、そういう意味を含めて、できるだけひとつ日本国家の損害を少くする、こういう面において善処されんことを切望いたします。
  43. 内田常雄

    内田(常)政府委員 了承いたしました。ただいまの趣旨は、実はこの法律案の第十四條あるいは第十二條等にも苦心して盛り込んでございます。先ほどもちよつと触れましたが、損害額は一応算定しても、実際補償する際には、すでに連合国人が受けた利益を差引くということで、第十四條の一号二号三号と差引く金額を、相当連合国側の抵抗がありましたにもかかわらず、遂に挿入することに了解を得た次第でございます。また会社の損害算定等におきまして、第十二條にきわめてむずかしい、またある意味でわけのわからないような規定を置きまして差引くものを相当掲げておりまして、理論院筋の通るものは遠慮なく考慮した上で、損失額ないしは損失補償額を決定するということにいたしてございます。  なおその他のものにつきましても、現実に補償金支拂い、また損害を査定する場合には、御趣旨従つてできるだけ日本の財政負担を避けるという趣旨をとつて参りたいと思います。
  44. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 内田さんにお願い申し上げたいのですが、イタリアの條約の中の賠償の規定その他を、もし願えますならばひとつ資料として見せていただきたい。それからもう一つ、第一條の戦争の結果ということは、これは間接直接両方含めてのことなのでありますか。
  45. 内田常雄

    内田(常)政府委員 第一條の戦争の結果、あるいは條約第十五條に言う戦争の結果というのは、間接直接を含めての意味だと思います。しかしこの法律案をつくつて参ります際には、先ほども申しました直接的なものに限るという、いろいろな限定の趣旨から第四條を置きまして、戦争の結果というのは、一から五までに掲げる小範囲のものだけに限る、こういう趣旨で、大体直接的なもののみに限るような趣旨でつくつておるのでございます。
  46. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 それでは本日はこれをもつて散会いたします。     午後零時三分散会