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1951-10-25 第12回国会 衆議院 水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十五日(木曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員   委員長代理 理事 松田 鐵藏君    理事 二階堂 進君 理事 林  好次君       石原 圓吉君    川村善八郎君       田口長治郎君    田渕 光一君       永田  節君    平井 義一君       福田 喜東君    小松 勇次君       水野彦治郎君    木村  榮君  出席国務大臣         農 林 大 臣 根本龍太郎君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁次長) 山本  豐君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)     松任谷健太郎君         農林事務官         (水産庁漁政部         経済課長)   奥田  孝君         農林事務官         (水産庁漁政部         漁業調査第一課         長)      高橋 泰彦君         専  門  員 徳久 三種君     ――――――――――――― 十月二十日  漁業法の一部を改正する法律案内閣提出第四  号) 同月二十二日  九十九里沿岸漁民の救済に関する請願田中豊  君紹介)(第一八三号)  漁船保険制度改革に関する請願野原正勝君紹  介)(第一八四号)  同(岩本信行紹介)(第一八五号)  魚礁敷設費国庫補助に関する請願岩川與助君  紹介)(第一八六号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十二日  海区漁業調整委員会経費増額に関する陳情書  (第一一六号)  漁業協同組合連合会規模制限撤廃陳情書  (第  一三四号) 同月二十四日  魚礁敷設に関する陳情書  (第一八一号)  支那東海における日本漁船不法だ捕防止に関す  る陳情書  (第二四八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  漁業法の一部を改正する法律案内閣提出第四  号)  漁業災害復旧資金融通に関する件     ―――――――――――――
  2. 松田鐵藏

    松田委員長代理 これより水産委員会を開会いたします。  漁業法の一部を改正する法律案を議題として審議に入ります。政府より提案理由説明を求めるのでありますが、その前に瀬戸内海調査に対して、川村委員から発言を求められておりまするから、これを許します。川村委員
  3. 川村善八郎

    川村委員 私は第十一回国会において懸案となりました小型機船底びき網漁船整理に関する本委員会国政調査の経過並びに結果を御報告を申し上げます。  去る十月五日より同月十日まで六日間、水産庁浅井技官水産専門委員室管原主事とともに、大阪府、和歌山県、紀井水道四国瀬戸内海等の一部を調査に参りましてこれら府県において十数箇所、特に岡山市におきましては、岡山県、香川県、愛媛県、兵庫県、広島県、山口県、大分県等の漁業協同組合、同連合会その他の水産団体代表漁民代表、並びに瀬戸内海連合海区及び関係官庁官公吏代表等の会合を求め、懇談会を開き、さらに各地漁船漁具実態及び漁業根拠地及び漁民の生活並びに小型機船底びき網漁業漁村経済に及ぼす影響等実態をつぶさに調査して参りましたが、これら関係県の大部分は、本底びき漁業による濫獲影響を受けて、資源はすでに枯渇状態にあり、自県の沖合いのみにては、操業不可能のため、他県に入会操業をしなければならないもの及び他種漁業との深刻なる摩擦を起しておるもの、また稚魚を根こそぎ濫獲しておるもの等は、多数あるのであります。  従つて今にしてこれの整理対策を立てて、これらの漁民を救い、漁村経済の立て直しをしなければ、漁村百年の悔いを残すことになることは火を見るより明らかであります。従つて関係漁民も他種漁業者整理を希望している向きも強いようであります。ゆえに今国会において政府並びに本委員会は、漁業法の一部の改正と、これに伴い必要なる要綱その他適切なる処置を講じ、すみやかに整理を断行することは当然の処置であると思うのであります。しかれどもこの整理にあたつては、地方特殊事情及び漁民の強い要望等もありますので、政府並びに水産委員会においては、それらをよろしく勘案して法制化すると同時に、それに対する特別の措置を講ずることが適当と存ずるのであります。よつて参考までに各地で異口同音に主張せられたことを申し上げますと、一、他種漁業に転換する場合は代船建造を認めよ。二、乗組員に対する補償または失業対策を講ぜよ。三、整理を継続し、でき得るだけ短期間整理する予算措置を講ぜよ。四、船体買上げばかりでなく、機関も同一に買上げよ。五、船体買上げについては船齢による画一的価格を定めるな。六、整理と相まつて取締り強化をはかられたい。七、補助金に対して税金の免除をせられよ。八、地方特殊事情を十分参酌して整理せよ等でありますが、その他地方の一部には全廃論もあり、またある年限猶予をされたし等の論がありましたが、そのほか企画馬力等特別扱いにしてもらいたいというような意見もあり、そのほか種々雑多な意見がありましたので、これらは別紙に各府県及び地方ごと小型機船底びきの関係その他の要望事項を記載してありますので、後刻お手元に配付したいと思いますから、政府より小型機船底びき網漁船整理に関する漁業法の一部改正並びにそれらに附帯する法案及び措置等提案をなされましたならば、別紙事項参考として愼重審議の上すみやかにこれを可決し、整理の一日も早からんことを希望として申し述べる次第であります。  以上御報告申し上げます。
  4. 松田鐵藏

  5. 根本龍太郎

    根本国務大臣 漁業法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由の大体を御説明申し上げたいと存じます。  この法律案は、御承知のように前国会以来懸案のものでございまして、すなわち昨年の三月十四日施行を見ました新漁業法において漁民による漁業秩序の再建を意図し、旧法に基いて免許されました漁業権の再編成を行うとともに、許可漁業についても、それぞれ漁業民主化という見地から、再検討を加え、漁業制度改革を円滑に実施するとともに、さらにまた去る二月十四日総司令部より非公式の形で政府に勧告のあつたいわゆる日本沿岸漁民の直面している経済的危機と、その解決案としての五ポイント計画に掲げている第一ポイントに対する措置といたしまして、お手元に配付いたしてある法律案要綱に書かれているようなことを実施いたしたいと考えておるのであります。これはただいま申し述べました五ポイント計画中第一ポイントにおいて指摘されております濫獲漁業を禁止することによりまして、水産資源枯渇を防止するため、法律案に規定されております漁業増勢をとにもかくにも停止することをねらいとしておる次第でございます。ところで漁業許可権限自体は、都道府県知事に委任いたすのでありますが、その許可し得る総わく自体を中央においてしつかりと把握して、その増勢を停止しようとするのがこの法律案調整方式考え方であります。この問題につきましては、前国会において相当愼重に討議を重ねられて参つたのでありまするが、ただこれを裏づけすべき予算措置が欠けておりましたために、成立を見なかつたのでございます。今回は補正予算におきまして、小型機船底びき網漁業については二億四百万円、瀬戸内海機船船びき網漁業につきましては二千万円が認められることになつたので、すみやかにこれが実施をいたしたいと考えておる次第でございます。  次に本法律案において取上げました具体的内容について御説明いたしますと、第一、中型旋網漁業について申し上げます。現在旋網漁業はすべて都道府県知事許可となつておりますが、現在全部で約三千箇統の数に達しまして、さらに増勢傾向にあるのであります。従いまして前述した趣旨にのつとり、大型機船六十トン以上はすべて大臣許可漁業とし、中型船五トン以上大十トン未満特殊海域として農林大臣が指定する予定であります三陸、日本海中部及び日本海西部海域において操業するものは大臣許可漁業、その他のものは本法律案に規定するところでありますが、これについては農林大臣が各都道府県別ごとに定めるわく内で都道府県知事許可することといたし、小型船五トン未満は従来のまま知事許可にまかす方式調整1し、これらの増勢傾向を極力押えて行く予定でございます。なお前二者は別途農林省令を制定いたしまして規律する予定でございます。  第二に、小型機船底びき網漁業について申し上げます。この漁業は、現在機船底曳網漁業取締規則農林省令第二十六條ノ二の規定によりまして規律されているものを主といたしておるのでありますが、いわゆる以東底びきといわれる大臣許可漁業機船底びき網漁業とは取扱いを異にし、さほど問題がないものとして知事許可にゆだねられておるのであります。ところでこの小型底びきは、技術の進歩とともに漁獲能率が高まり、かつ僅少な資本で経営することが可能であることから、零細漁民が容易に入りやすい漁業でありまして、従つて沿岸至るところで操業され、戦時戦後の秩序の弛緩から無許可操業が常態化しまして、その数実に三万五千に達し、沿岸漁業秩序維持にゆゆしき事態を惹起しておる次第でございます。従いまして制度改革との関連からも急速にこの漁業秩序を回復するとともに、あまりにも資源との不均衡を来している点を是正するため、農林大臣が直接都道府県別許可わくを定めて、適正な操業統数減船し、この漁業自身の健全な発達と、他漁業との円滑を期そりとするものでございます。  第三に、瀬戸内海機船船びき網漁業について申し上げますと、この漁業は主としていわし及びその稚魚を採捕の対象とするものでございますが、小さいものが価格がいいことから勢い稚魚濫獲を来しているものでございまして、現在のままその増勢を放任することになりますと、いわし資源危機が叫ばれておる折から、内海における資源にまつたく破壊的影響を與えておる次第でございます。従つてこの漁業についても、特に緊急の必要がある瀬戸内海においては、農林大臣が定めたわく以上の許可統数を認めない強硬措置をとることにいたしたいのであります。  以上がこの法案の主要な内容でございまするが、ただいま川村委員からの現地調査における結果とも相合致する点がございますので、何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御協賛あらんことを切にお願いする次第であります。
  6. 松田鐵藏

    松田委員長代理 これより本案に対する質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。石原委員
  7. 石原圓吉

    石原(圓)委員 本案は今大臣説明をされる通り、長い間の懸案でありまして、すみやかに審議をして早く本会議に上程すべきであると考えるのであります。つきましては鹿児島、大分、宮崎、山口県等、今回の大災害におきまして約一万隻の漁船失つたのであります。しかもその地方はいずれも岸深海岸でありまして、漁船がなければ漁夫は全然失業をしておるわけであります。ことにその漁民は、漁船を失うと同時にむろん漁具も失い、しかも住宅も失つてしまつた者が大部分でありまして、これは非常な重大な問題であります。そこで私は一昨日の自由党総務会におきまして、瀬戸内海その他の多年の懸案を一挙に解決して、過剰になるところの漁船を、船を失つた各県へ急速に補いをすべきであるということを持ち出したのでありまするが、総務会におきましては全員一致大賛成でありまして、すみやかに政務調査会調査をして、そうして減船すべき船に対する補償金をこの際すみやかに決定をして、その船を九州及び山口県、四国等へ配付するという方法をとることになつたわけであります。つきましてはいよいよ減船ということになると、それを他の漁業に転換しようとか、その船主等いろいろの文句を言うたり意見を出したりして、せつかくこういう時期になつたのにそれが実行ができないのではないか。また水産庁の一部でもそういうことを持ち出すと、結局政府補償金を出さなくなりはせぬかというような杞憂を持つておる者もあるかのように聞くのでありまするが、それはもつてのほかでありまして、過剰による減船はあくまでも減船であります。減船をしなければ他の漁業者が全部窮地に陷るのでありますからして、それはそれとして、減船によるところの処置処置として、そうしてその船を、一日も早く船を失つた方面へまわすということにせなければいけない。また船を失つた地方にありましても、その地方がこれから資金用意をし、船の材料を用意をし、そのほか漁具用意をしなければならぬということになれば、このままなればなお半年や一年は失業状態に終る、しかもそれが四県にも五県にもわたる大部分海岸がやられておるというわけでありますから、これは農林省及び水産庁政府におきましても特段の考え方をもつて、この保護に対しては別個の応急な対策を立てるところの一つの組織を早くつくつて自由党政務調査会等と相応して、即時この問題を解決するように、特に委員長におかれても御善処あらんことを希望するわけであります。
  8. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいまの石原委員の御意見は非常に傾聴に値すべき貴重な御意見と存じます。政府におきましても、今回のルース台風によります漁業災害重大性にかんがみまして、緊急に措置を講ずべきである、かような気持をもちまして、ただいま水産庁事務当局をしてこれに対する善後措置を検討せしめておる次第であります。その一つ方法として、ただいま御指摘のような、今回の立法に基き減船いたしまするものをいそづけとするようなことをせずに、これを活用するということもその考察の一部であろうと存じます。なおまたこの災害に基くところの漁業補助は従来ほとんどありませんので非常に苦慮しております。公共施設でありますれば、これに対する災害復旧予算補助するとか、あるいは国営でやるとかいうことができますが、いわば個人の私有財産になつておるような船であります。これに対して補助をいたすということになりますと、災害に基く各中小企業の家屋の損失とかいうものまでも進展して来るおそれがありますし、またこれに対する金融の問題等相当むづかしい問題がございます。しかし御指摘のように数干そうあるいは万をもつて数えるほどの災害を受けておるという事態につきましては、何らか現在の法並びに予算の許す範囲内において最善の努力を傾注すべきである、かように考えまして目下事務当局をして検討せしめております。なおこの問題につきましては当常任委員会のいろいろの御意髪も十分拝聴いたし、具体的な案を急速に樹立いたしまして善後措置を講じたい、かように考えております。
  9. 小松勇次

    小松委員 別の問題で大臣の御意見を伺つておきたいのでありますが、けさほどの新聞を見ますと、十一月五日から日・米・カ漁業交渉が開かれるということが出ておるのであります。この漁業協定に関する問題は、日本政府からの招請によつてこれらの国々がこれを受諾したということが記事に載つておるのであります。しかしてこの問題は、日本水産の発展のためにきわめて重要な問題であります。従つて政府におきましても愼重な態度を持ち、かつ十分御研究を進められておることと存じますが、新聞によりますると、日本側正式代表根本農林大臣井口外務次官藤田水産庁長官十川水産庁水産部長のほか、国会及び民間から委員を出すということになつております。また一つ新聞には、民間国会からは、委員でなくして顧問を出すというような記事もあるのでありますが、こういう問題については、少くとも国会水産委員会があるのでありますから、国会からもその代表委員に加えるということをひとつ御努力願いたいのであります。大臣の御意見を承りたい。
  10. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいまアメリカカナダの方に、漁業協定に関する打合せのためにこちらから招請状を発したということのあれでありますが、これは御承知のように、日本独立と同時にできるだけすみやかにこの漁業協定を確立いたしませんと、独立と同時にマッカーサー・ラインは消滅するものとは書いてございますけれども、実際上の協定ができないと諸般の問題ル起しやすい。幸いにしてアメリカカナダが非常に好意的に、しかもすみやかに日本漁業協定をいたしたいということになつております。——これは正式に漁業協定をするための交渉団ではないと認めております。いわゆる宮前に打合せをする、そういう状況でございます。従いましてこの問題につきましては、いろいろ研究すべき問題がたくさんございます。なおその際の委員は、大体両国政府関係の人が当るのでございます。アメリカでもそういう人が出て来るようであります。あとの漁業関係者顧問として出席するような形でありますので、現在政府構想として考えておりますのは、両院の水産委員の長というようなところを目途として顧問団構成委員の中に入つていただく、また民間の業者の代表顧問団に入つていただきたい。かような構想を持つておるのでございまして実際の打合せなどは、この顧問団と向うの顧問団との話合いが一番の基礎になると考えております。政府代表は、いよいよ調印というか、公式な話合いのときにはもちろん前面に出ますけれども、顧問団の方々の意見を十分に入れて交渉するというような考え方を持つておる次第でございます。
  11. 石原圓吉

    石原(圓)委員 私は一昨々日は予算委員会で質問したのであります。私の考え方は、トルーマン大統領意向へらいうても、ダレス顧問意向からいうても、また今日までの状況によりましても、諸外国が漁業根拠地及び漁灘をなす地帯に保護区域をつくろうということが主眼のようでありまして、そうすると契約する国々保護区域の問題が起つて来る、その保護区域をどこでどれをつくるかわからぬうちに、一方の国とだけ協定してしまうということは日本のために非常に不利益だ、それだから関係諸国と全部協定はするけれども、契約の締結は同時にすべきであるということを委員会では強く主張したのであります。それに対して政府委員は、方針としては大体それがよろしい、特殊事情のあるものは、またその特殊の方法を講じなければならぬ。こういう意味の回答があつたのでありまして、これは農林省水産庁においても研究をしていただいて、同時に調印することがいいということに結論づけられることを希望するわけであります。そうして批准交換以後において、全部の関係国と同時に調印をすることを希望するものであります。それから委員の問題でありますが、私は政府として相手国と交渉する場合の委員と、日本日本だけの対外関係の最も適当な案を立てるところの委員会が必要だ、これは国内的に日本だけで一つのそういう委員会をつくつて、これは公式か非公式かそれは適法にやつて、十分研究する必要がある。そうして協定するに先立つては、それぞれの関係国現地日本相手国とが立会つて調査をする。そうすれば日本が終戦前から全世界の漁場へ拡張した実績が現われて来るのでありますから、この実績が多く現われることは日本のために利益である、よつて現地調査をぜひやりたい、こういうことを希望したわけでありまして、この点をよく御了承を願いたい。  それからついでですが、漁船保険の問題で大臣によく聞いてもらいたいのであります。今日まで漁船保険制度が貧弱なために、今度の九州の一万そうの船も保険にかかつていないので、みな滅失してどうすることもできない。だから今度計画しております強制加入のでき得る保険制度は絶対にやつていただきたいのです。強制加入のできる保険制度を確立して、そして船の寿命を定めて、年齢相当積立金をして行くことができたならば、今度の場合でも次の船は簡單にできるのです。日本は船の年齢はなるべく長いように、木造船を六年も、七年も、八年もということにして、保険自由加入だから有名無実のようになつておる。どうしても強制加入保険制度を早く置くことをぜひひとつお願いします。
  12. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま石原委員から申出られました点は、十分考慮いたしまして善処いたしたいと思います。
  13. 小松勇次

    小松委員 ただいま御提案になりました漁業法の一部改正に関する法律案でありまするが、この提案理由の御説明を承りまして、よくその内容を知ることができたのでありますが、この提案趣旨を実現する上において最も重要なことは、その整理方法いかんにあると私は思うのであります。先ごろから旋網漁業調整要綱小型機船底びき網漁業減船整理実施要綱をお示しになつておるのでありまするが、この案だけは具体的の内容を知ることができないのであります。そこで私は、まず整理の前提身なすところのこれらの中型施網漁業あるいは小型底びき網漁業瀬戸内海機船びき網漁業実態を知りたいのであります。すなわち都道府県別のこれらの総数この操業している船の中には許可及得ておるものもあろうし、あるいは無許可のものもあろうと思います。それらの操業状況漁獲物資源量等の御調査ができておると思いまするが、この機会に重ねて資源量調査の結果を承りたいのであります。
  14. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 小松委員からのお尋ねの点につ冒しては、いろいろと数字的にわたる部面が多いわけでございますので、即刻資料を整えましてお渡し申し上げるようにいたしたいと思うわけでございますから、御了承願いたいと思います。
  15. 小松勇次

    小松委員 それでは減船整理都道府県別総数をひとつついでにお示しを願いたいと思うのです。それからなお減船整理すべき対象をどんなぐあいにお選びになるのか、まずこの問題を伺いたい。
  16. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 この法律案に示されてございますように、一例を小型底びき網漁業にとつてみますると、法律実施になりますると十五トン以上の底びき網というものが、小型機船底びき網漁業から除外される点と、瀬戸内、伊勢湾といつた特殊海域につきましては制限馬力を告示することになつておるわけでございますが、その告示されました制限馬力以上のものが小型底びきのわく外に出るというようなことが第一に考えられるわけであります。  それからその次に、残りましたわく内の小型機船底びき網漁船の中からいろいろと條件示しまして、整理されることになるわけでございまするが、そのやり方といたしまして一応現在準備をしておりますのは、小型機船底びき網漁業減船整理特別法をつくりまして、その中の法律によりまして整理基準計画知事が海区調整委員会に諮問して定めて、その基準計画従つて整理計画を定めて参る。すなわち具体的にどの船を減船するかというような総合的な整理計画を定めて参るというような建前で進んで参りたい、かように考えておるわけでございます。やり方といたしましては、大体都道府県別に残る許可ないしは操業承認隻数というものがきまるわけでございまするが、それ以上に出て参ります隻数につきましては、各海区または組合別整理計画ができ上りまして、それに基いて知事許可ないし操業承認の取消しをやつて参るというようなやり方をいたしたいと考えておるのでございます。
  17. 小松勇次

    小松委員 この要綱を見ますると、小型機船底びきの整理の年度は、昭和二十七年の一月一日かり二十七年の三月三十一日までを初年度とし、二十七年四月一日から翌年三月三十一日までを第二年度とし、以下これに準ずる、こういうようなことになつております。なお整理期間昭和三十一年三月三十一日までとするということにもなつておりまするが、小型機般底びき網の整理期間はここにはつきりしております。その他の中型底びき網等整理期間は、何年間のうちにこれを完了する予定であるか、知りたいのであります。
  18. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 この法案内容になつておりますのは小型底びき網漁業旋網漁業、それから船びき網漁業の三種類でございます。小型底びき網漁業につきましては、小松委員からただいまのお話のございましたように、現在三万五千隻程度ある船を、五年間で二万隻程度に圧縮したいと考えておるのでございます。それから旋網漁業につきましては、ただいま大臣が御説明申し上げました通り、一応増加して参るという状態をストップする態勢で、現状を押えて参るということで進んで参りたいと思つておるわけでございます。そのために大臣許可知事許可ということにわけまして、知事許可する場合には、大臣わくをつくつてそのわくの範囲内で許可させるということを考えて、内部におきましてのいろいろな調整をやつて参るということでございます。  それから船びき網につきましては、提案理由にも説明がございました通り、いわし資源影響するという海区をとらえまして、自主的な減船処置を講ぜさせて参るということで考えておる次第でございます。
  19. 小松勇次

    小松委員 なおそれらの船の整理をいたしまするのに、当然財政的の措置を講じて、これらに適当な補助金を與えなければならぬと思うのでありまするが、これらに対する費用はどのくらい全額でかかるのでありますか。なお二十六年度はどれだけの予算であるか伺いたい。
  20. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 小型底びき網漁業につきましては、二十六年度は、提案理由にも御説明いたしました通り、予算といたしましては二億四百万円、それから船びき網の整理につきましては安芸海区だけを本年度予定しておりますので、二千万円ということで要求いたしておるのであります。それからなおこの隻数等につきましては、小型底びき網漁業の二億四百万円の基礎になつておりますのが、八百五十八隻の整理転換ということでありまして、来年度も予算計上の範囲内におきまして、極力減船処置を講ずるというような態勢をつくつて参ることに相なつておるのでございます。それから船びき網の問題につきましては、来年度は一応本年度の減船転換の実施状況調査して、一その調査の結果に基いてさらにさ来年度減船転換の処置を講ずるということで進んで参りたい、かように考えておる次第でございます。
  21. 小松勇次

    小松委員 総額で幾らですか。
  22. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 小型底びき網漁業の五年間にわたる総額は、本年度の八百五十八隻が大体二億四百万円かかる関係もございますので、先ほど申し上げました通り、三万五千隻の船を二万隻程度に圧縮し、一万五千隻を整理転換させるというぐあいになりますから、その比率で予算が要求さるべきであると考えておる次第でございます。
  23. 小松勇次

    小松委員 そういたしますると、これらの予算はどういうところに根拠を置いて算出せられたものであるか、伺いたい。
  24. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 それではただいま御説明いたしました小型機船底びき網漁業整理に関します予算内容について御説明いたします。  一番の問題の点は、小型底びき整理の場合の実際の補助金の算出の基礎でございまするが、これはただいま部長が御説明いたしました隻数を、さらに種類別、トン数別に考えて参りますと、この補正予算では大体三つの転換方法を考えております。その一つはつきいそ漁業へ転換するもの、他の一つは他種漁業へ転換するもの、さらにもう一つは運搬船へ改造する場合の補助、この三つの補助金の種類を考えております。  つきいそ漁業へ転換する場合につきましては、隻数は計算としては大体四百隻を見ておりますが、トン数にして三千五百十四トン、一トン当りを三万円、かように計算してございます。従つてこの額が一億五百四十二万円というふうに計算されております。  他種漁業へ転換する場合の隻数は、大体四百隻の予定でございまするが、新しい漁具を購入する場合の費用の半額を補助するという考え方にいたしますると、この四百隻の分の費用が大体八千七百八十五万円というふうに計算されるのであります。  次は運搬船へ改造する場合の費用でございますが、これも五十八隻、五百八十トンというふうにいたしまして、一トン当り一万五千円の補助をしたらどうかというふうに計算しております。これの費用が八百七十万円でございます。  その他の費用はこの整理に伴いまする旅費、調査費その他の雑費でございまして、以上の説明の分で大部分の費用が計算されておるような次第でございます。  なおこれは予算の組み方の場合の説明でございまして、これをどういうふうに実行するかという点については、詳細についてはただいま検討中でございます。
  25. 小松勇次

    小松委員 私は今ただちに計算ができないから、よくわからないのでありますが、二十六年度で八百五十八そうを整理するというお話でございますね。
  26. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 そうです。
  27. 小松勇次

    小松委員 それで二億四百万円の補償金を與える。あなた方はそれで十分だとお考えになつていらつしやいますか。
  28. 松田鐵藏

    松田委員長代理 余るんだよ。
  29. 小松勇次

    小松委員 そうなんですか。——それじや聞きません。
  30. 田口長治郎

    ○田口委員 私は中型旋網漁業につきまして一、二点お伺いしたいと思います。五トン以上六十トン未満の中型漁船を現状で押える。これは現在の状態から申しまして至当な考え方と思うのでございますが、現状で押えられる場合におきまして、現在の実績を尊重して、その実績によつて押えるという意味でありましようが、現在の旋網漁業の各府県隻数問題を考えてみますと、非常に進んだ県とほとんど未発達の県があるようでございますが、そこの調整をいかようにお考えになつておりますか。その点をお伺いいたしたいと思います。  第二に、農林大臣が指定をされた三陸、日本海中部及び日本海西部海区で操業する中型旋網の許可農林大臣に持つて来られた。こういう場合におきまして、旋網漁業と沿岸漁業との調整が非常にやかましい場合におきまして、現在は府県知事の責任において許可しております関係上、府県の沿岸漁業との調整はすべて知事の責任においてしかるべくやつている。言いかえますと、問題を中央まで持つて来ない。たまたま持つて来ることがありますならば、それは見当違いである、こういうふうに回答されてしかるべき状態にあるのでございまするが、農林大臣許可した場合におきまして、この沿岸漁業との漁業取締りの問題については具体的にどういう方法でやつて行くんだ、こういうような確固たるお考えがなければ、そこに一方には都道府県知事がすでに沿岸漁業問題に関心を持ち、それと直接関係のある中型旋網は都道府県知事関係のない農林大臣許可でやるへこういうような実情になりまして、そこにむづかしい問題が起ると思いますから、こういう方法でその点は取締りをして行くんだ、こういうような構想あるいは組織をお考えになつておりますれば、この際お伺いをしておきたいと思います。  第三点は、小型機船底びき網漁業許可、無許可を合せまして現在三万五千隻ある、こういうお話でございます。今日まで各地方でいろいろ調査したところによりますと、この三万五千隻の中には、ほんとうに漁場を荒廃させるような底びき網もありますが、全然資源を荒さないようなものも非常にたくさんあるのでございましてできますれば、各府県別にほんとうに漁場を荒廃させる小型底びき網漁業、あるいは資源関係のない小型底びき網漁業、こういうような詳細なる調査水産庁においてできておるかどうか。少くともえさ引のような幼稚な漁具では、気のきいた魚は入らない。常識的に考えましてもそういうような底びきが非常に多いのでございますから、この底びきの整理にあたりましては、その点を十分御研究になりまして、ほんとうに資源枯渇するような小型底びきは断固として整理をし、資源枯渇関係のない小型底びき、しかもそれによつて日々飯を食つている小さな漁業者が、こういうようなただ形だけで巻添えにあうような手落ちがないような方法整理問題を考えていただきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。害になる底びきと害にならない底びきと、こういう二つのものが確かに各府県にあると思いますが、その点についてもし水産庁府県別にでも御調査なつた資料がありましたら、あとでけつこうでありますから、提供していただきたいのであります。  以上三点をとりあえずお伺いいたします。
  31. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 第一点の旋網漁業の問題でございます。現状でストップした場合に、発達したところと未発達の地域の関係をどういうふうに調整するかというお話でございまするが、私どもの考えております点は、一応旋網描業の増加傾向にある情勢に対応いたしまして、現状でストップした後にお勇ましてお話のような点を処置して去る。その処置する方法といたしましては、知事に與えますわくの問題、これを縮小あるいは拡大するといつたような調整処置を講ずる必要があろうと考えておるのでございますが、法律害施につきましては、一応ストツプの加置を講じた上でお話のような点は調赦して行きたい、かように考えているのでございます。  それから第二点の旋網漁業と沿岸油業の調整の問題は非常に重要な問題憾ありまして、私どもといたしましても愼重に協議をした点でございまするが、調整方法といたしましては、まず禁止区域の設定を公平妥当に設定いたしまして、沿岸の操業の関係と旋網の操業、これはもつぱら沖合いの関係になりますが、その関係調整する。それからさらに禁止期間というものの設定をしようというようなことを考えているのでございまして、問題がいろいろと入会等の問題で出て参りますれば、農林大臣の権限におきまして、県と十分協議の上で具体的に処濁して参ろうということを考えているわけでございます。なおその場合におきまして、恒久的な調整機関が必要ではなかろうかというような御意見でございまするが、この点私どもも調整機関として沿岸と旋網との関係を裁定し得るような調整機関が欲しいと思つているのでございまするが、現在のところ海区調整委員会というものの活用によりまして、一応その関係を考えて参りたい。しかしながら海区調整委員会の現在の性格から申しまして、必ずしもこういう広地域にわたる裁定機関として適当であるかどうかといつたような点につきましても、多少疑問がございますので、この点はなお検討をして参りたい、かように考えているのでございます。  それから第三点の小型底びき網事業の問題に関しまして、資源的にあまり影響のない小型底びき網というものが——たとえて申しますと餌料をとるためにやつているような小型底びき網、しかも農林大臣の許した範囲内におきまして正直にやつているような底びき網もあるのでございますが、そういつた部面につきましては、この減船整理の際につきましても十分考慮して参りたいということを考えているのでございます。
  32. 田口長治郎

    ○田口委員 もう一点お伺いいたしますが、この特殊海域の設定につきまして、日本海中部及び日本海西部海域、これは多分鳥取県と石川県の所に線を引かれたものと思いまするが、一つ漁業を経営いたしている場合におきましては非常な資本を投下している。この場合に、この漁業が八箇月操業できる、あるいは十二箇月操業ができるということによりまして、その資本の効用というものが非常に違つて来るのでございます。漁業の場合におきましてはできれば十二箇月操業できるような操業区域でなければいけない、こういうふうに考えるのでございますが、この日本海中部及び日本海西部海域というふうにわけた場合におきまして、この海区で旋網が一箇年間操業されるつもりでおられるのでございますか。あるいはこの線によりまして操業期間というものが非常に制限をされる。言いかえてみますと、漁業の経営上からいつて非常に圧迫を加える、こういうふうな結果になるような心配はありませんか。御承知の通り、現在この海区ではその地元の漁業者許可を業者自体が借りまして、そうしてずつと海区を通じて操業しているような実態でございますが、表面上から申しますと、どうも各府県ごとに許可をとるということで非常にめんどうのようでございますけれども、そこは有無通じまして、業者同士で話合つて各海区でずつと仕事をしている。こういうことで現状はやつている次第でございまするが、こんなふうに線でくくられました場合におきまして、日本海西部海域で操業するものは日本海中部海域で操業することができない、こういうような結果になると思うのでありますが、そうなりました場合におきまして、この日本海西部海域、あるいは日本海中部海域というふうに独立した海域におきまして、一箇年間操業できるかどうか、もしできないとすれば、この線をある程度訂正する御意思がないかどうかということをちよつとお伺いしたいと思います。
  33. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 旋網漁業は、お手元に差上げました資料の通り、最近漸次大型化して参つております。従いましてこれには相当多額の資本を要することは御指摘の通りでございます。従いまして旋網漁業を経営面から見ますと、これも御指摘の通りできますれば年中休みなく各海区にわたつて操業するのが理想と言えると思つております。ただ問題は、やはり先ほど田口委員からも御指摘の通り、沿岸漁業との調整の問題が一番むずかしい点だと思つております。従いまして私どもの考えましたのは、先ほど部長から御説明がありましたように、とにかく現在の増加する傾向をストップする、同時にあまりに各県ごとに知事許可をばらばらにいたしますと、今言つたような経営面から見ましても非常に不自由な点がありますので、この点をある程度是正しようというような考え方を基本にいたしております。従いましてただいま御指摘の通り、日本海におきまして中部日本海区と西日本海区というふうにわけますと、それぞれの海区では一箇年操業ができるとは私どもは考えておりません。ただ現在の各県知事がばらばらの権限でばらばらに許可して行くので、それで御指摘の通りやむを得ず許可を借りてやるというようなことは、ある程度はこういう考え方で一歩前進して解決ができるのではないか、かように考えているのであります。従いまして経営面から見ますと理想的なものではないにしても、現在よりも相当進んだ考え方を取入れてみるというようなことになろうかと思います。なおかなり技術的にわたる点がございますが、西日本海区として操業し得る隻数のうちの、ある限定された隻数は中部日本海海区にも入つて行けるというような措置は当然考えたいと思います。一海区で許可を受けたものは他の海区には絶対に出られないというようなことはいだしたくない、かように考えております。ただどの程度これを交流するかということは、それぞれ船籍港の地理的な條件、従来の実績その他を十分考えまして、知事意見も聞き、沿岸漁業者意見も聞きながら善処して参りたい、かように考えているような次第であります。
  34. 田口長治郎

    ○田口委員 今回の中型旋網の制度改革は、ただいま高橋課長から申されましたように、統数を押える、これを府県知事許可にまかせることはどうしても技術的にできないから、特殊海区においては農林大臣許可にするのだ、この点は私らもさように考えるのでございまして、心から了承をする次第でございます。ただ統数を押えるということは資源の問題もございますが、現在操業している漁業自体を安定させる、こういう観点からも考えなければならないのでございます。私はこの西部海域、中部海域、これを共通に使えるかどうかという問題について心配をしておつたのでございますが、ただいまの課長の答弁によりまして、必要がある場合におきましては、西部海域の漁船も中部海域に入れることができる。独立した海区として考えない、こういうような御答弁でございました。非常に妥当なるお考えだと思います。こういう点私非常に疑問に思つておりましたところがはつきりいたしましたから、私の質問はこれで一応打切りまして、ただいまの御答弁を了承する次第でございます。
  35. 川村善八郎

    川村委員 ただいま提案になりました漁業法の一部を改正いたしまして、中型旋網、小型機船底びき漁業、並びに瀬戸内海機船船びき網の整理をするということになりましたことは、原則的には私は賛成をするものであります。ただ、今田口議員も御指摘の通り、地方のいろいろな特殊事情があるのであります。また本日も私劈頭に報告申し上げた通り、各地各様のいろいろな見意等もあるのであります。詳細にわたつてはお手元に相当詳細な調書が参つておりますので、これらを十分勘案して、要綱なりあるいは省令を出す場合には、あまり混乱なく喜んで漁民もこれに参加するという態勢をとるように御留意あらんことを、お願いする次第であります。  そこでこの問題につきまして二、三どうしても政府に実行をしてもらわなければならぬことがありますので、一応その点について御質問を申し上げたいと思つております。第一には各地意見がありましたが、補助金をせつかくもらいましても補助金に税金がかかる、いわゆる所得税がかかる、それに伴つて地方税もかかれば住民税もかかるというようなことになりますと、補助金をもらつたがかえつて貧乏しなければならないといつたようなことになりますので、今度の補助金に対してはすべての税金を免除しろという議論が相当強かつたのであります。私の調査した地方では全部が全部そういう意見であつたのであります。とれらについて水産庁政府に対してどういう手を打つて、一体どういう結果になるのか。  それから次は政府は船の買上げをしてそれぞれ補助金を交付することになつておるが、船が買上げられて漁撈ができなくなると、それに乗り込んでおる漁民は一応失業するということに相なるのであります。もちろん一定の時間には他の産業等にこれを転換させることもできましようけれども、とりあえず失業するということははつきりしておるのであります。そこでこれら乗組員に対する保障もしくは失業対策について、一体どういう案をお持ちであるか。  第三点はこれは他にも例のあることでありますが、せつかくこういう整理をいたしましても、次から次とまた無許可船が出て来るといつたようなことは、これまで例がたくさんあるのであります。それから私が調査に参りました紀伊水道でありますが、私らが調査に行くということは大体知つてつたのでありますが、十五組の二そうびきが堂々とやつておつた。時間がありますれば片つぽしからつかまえて忠告をして行くつもりであつたけれども、時間の関係上遺憾ながらそれを見のがして行かなければならぬという現場を見せつけられたのであります。従つて取締りの強化をしなければ、政府資金をせつかく出して整理をいたしましても、ただ水泡に帰するというようなこともある。国家資金を出したものが、何も整理の恩典にならないということになりますとたいへんな問題でありますので、この取締りをどういうような方法で行うか。  それから第四としては、先ほど田口議員も指摘しておりましたが、旋網の整理につきましては、やはり私も田口議員と意見を向うするものであつて、発達しておる所と、また発達がかえつて過剰になつておる所、まだまだ資源面からにらみ合せて、これから発達をさせなければいかぬという二通りあると思います。たとえていえば、九州方面はもう他県に行かなければならない、石川県まで行かなければならぬといつたようなことであつても、北海道は現に他の県の船がたくさん入り込んでいる。はなはだしきに至つては、常に委員長たる松田議員が指摘するように、日本の大資本家が母船の何万トンという船をもつて機船旋網漁業を堂堂とやつて、そして地元の漁民に迷惑をかけておるといつたような所もあるのであります。北海道のごときはまだ旋網漁業は発達しておりません。従つてまだ増加する必要があるのじやなかろうか、もちろん増加いたしまするには、他のそうした資本家の船を駆逐しなければならぬのでありますけれども、これらに対しまして北海道の特殊事情をどう見るか、北海道におきましても、すでに小型機船底びき網は政府の手を借りずに整理したのであります。政府補助金を出すとか、金融措置を講ずるとか、あるいは資材を買う資金を心配してやろうと口ではりつぱに約束したのでありますけれども、これは実行つかなかつたのであります。われわれは松田議員が陣頭指揮をして、やはり千そう以上の整理をしたというようなこともあるので、これらの転換等もあり、また将来機船底びき網漁業というものを北海道でも整理して行かなくてはならぬというときになりますと、やはり現在の資源のあるところの旋網漁業に転換することが一番手取り早いのじやなかろうか、かように考えるので、部長の答弁は現状で押える、一律に行くというようなことでございましたので、北海道にとつてもやはり現状維持で行くのか、そうしますといわゆる大資本漁業の旋網をそのなりに残すということにも解釈ができますので、北海道におけるところの旋網漁業というものも内地と同様に取扱うか、以上の諸点について御答弁を願いたいのであります。
  36. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 川村委員からお尋ねの四点にわたりまして、お答え申し上げたいと思います。  第一点の小型の減船整理補助金に対して税金がかかるというのは、はなはだおかしいという御質問でございまするが、われわれといたしましても、かかる減船整理補助金に、税をかくべきではないというような建前からいたしまして、実は大蔵省と交渉をしたのでございます。先ほど高橋課長からお話し申し上げましたように、この補助金内容がつきいその関係と、それから他種漁業転換と、それから運搬船等の転換といつたようなことになつておりまして、転換する場合の問題は、いずれも経費の一部の補助でございますので、経費の関係は、税がかからぬというような建前から、おそらく年度内に支出されます場合におきましては、税はかからぬというようなことでございまするが、問題になりましたのは、つきいそにする場合でございまして、これは税の体系から申しますると、譲渡所得になるような技術的な解釈が下されるのでございます。主税局におきましては、他とのつり合い上、実情はよくわかるけれども、なかなか困難であるというようなお話が初めございました。そこでその後主計局を介しまして、本予算の成立の経過並びにこの補助金の本質を説明いたしまして、主計局を通じて主税局の方に今お話を進めていただいておるような次第でございまして、その結果いかんによりましては、また何らか処置をしたいと思つておる次第でございます。当初法律ではつきりと免税の規定をうたいたいということで、大蔵当局に話合いを持つてつたのでございまするが、大体以上のような経過をたどつておるような次第でございまして、この免税の処置につきましては、一層努力をいたして行きたいと思つておるのでございます。  それから第二点の補助金が、船主には行くけれども乗組員の方には参らぬ、その結果乗組員失業をして、あすの生活にも困つて参るようなことになるから、これは何とか考えなければいかぬというお話でございます。私どももまつたく感を同じゆうするのでございますが、補助金の性質が許可船、無許可船を問わず、とにかく経営を転換するという点に、その性格がなつておりましたので、当初乗組員に対する手当の補助といつたようなことにつきましても予算を組んだのではございまするが、途中におきましてこの予算が落ちたのでございます。従いまして、われわれといたしましては、何とかしてこの乗組員保護施設と申しまするか、整理されました船に乗り込んでおる乗組員を、他の艦への乗組みのあつせんでございまするとか、その他の処置を県を通じていろいろ努力して参らなければいかぬというふうに考えておるわけでございまするが、そういつた処置では一向らちが明かぬというような点もあるとは思いますので、この点は十分今後何らかの対策を考えて参りたいというふうに思つておるのであります。  それから第三点の十五トン以上の二そうびき船が堂々と違反操業をやつておるというような問題、これはもつぱら取締りを強化せよというお話と承つておるわけでございまするが、当委員会のいろいろの御援助によりまして、本年度補正予算といたしまして、小型底びきの取締り強化のために、五十トン、二百五十馬力の新造船一隻とそれから用船三隻というものが認められようとしておるのでございまして、この補正予算が成立いたしましたあかつきにおきましては、そういう違反操業の多い瀬戸内等に重点的に取締り般を配船いたしまして、取締りを強化して参りたい、かように考えておるのでございます。  第四番目の旋網漁業の問題、これは田口委員からもお話のございました問題でございまするが、御承知の通り、旋網漁業自体が過去数年にわたつて相当発達整備して参つて、沿岸漁業との関係において摩擦を生じ、また旋網漁業の内部におきましても紛争を起しておるというような現状にかんがみまして、昨年初めに各府県に通牒をもちまして、暫定的に現状ストップの処置をとつたのでございますが、この際におきましても北海道等未発達の地区につきましては、現状ストップはするけれども、そういう地帶は多少ゆとりをもうて考えようというような意味の通牒が出されておるわけでございます。そういつた経過をもちましてこの漁業法改正提案されたのでございまして、その趣旨は十分くみまして対処して参りたい、かように考えるわけでございます。ただしかしながら、法律のねらいは一応現状でストップしてみてその上でいろいろのでこぼこを調整して行くというような処置をとる趣旨でございますので、法律施行後の調整問題として考えて参りたい、かように存ずるのであります。
  37. 川村善八郎

    川村委員 そこで私から意見を申し上げておきます。補助に対する税金の問題でありますが、課税せぬというお話でやや安心したのでありますが、まだ安心のできないことは、現に漁業法制定の時分に、いわゆる漁業権補償に対しても、しかも委員会において税の対象にはしないということを言明しておりながら、大蔵省に押上込まれて遂に衆議院では六%の税金をかけなければならぬといつたようなこともあつたのであります。あれらはまさに水産庁のミスといわなければなりません。この補助金の税金の免除の問題も、相当強力に推さなければならぬと思いますから、今後十分その努力を拂われんことを希望いたしておきます。  それから乗組員に対する保障もしくは失業対策の問題については——もちろん失業対策は別の省の所管になりますので、水産庁直接の所管ではないのでありますが、他省との関係を十分考慮して失業対策を講じてもらいたい。私の考えでは、現在のところ都道府県には今度の整理あるいは補助その他の措置の責任がないようになつておりますが、現に北海道は、小型機船底びき網の整理にあたつては、一隻四万円ずつの補助金というか助成金を出しております。そこでそれを基礎にいたしまして他種漁業に転換をして、失業漁民みずからの手において防止したという前例があるのであります。従つて今度の整理にあたりましても、都道府県あるいは地元その他整理される漁船と、それから整理されない、いわゆる残る漁船とがありますので、私はこの対策等はやりようによつてはできるのではなかろうか、国からは大体予算に織り込まれた補助が行く、そうすると、都道府県は何分の一というような助成金を出す。それから地元の市町村からも金融措置等において補償の責任をとるとか、あるいは幾分の助成金を出すとかいうことがありますれば、これも相当に効果があるのではなかろうか。また残る漁船からも助成の道を講じさせるように金融措置等失業のないようなことに持つて行きますれば、これは国の補助金と合せて失業対策が講ぜられるのではないだろうかと考えますので、この点について一体水産庁はどういう意見を持つておりますか、再びお伺いいたしたいのであります。  それから今後の残る船の許可を個人に與えるか、もしくは協同組合に與えるか、あるいは残る漁船だけが組合のような団体をつくつてそれに與えるか、このいずれに一体今後の許可もしくは操業承認といつたようなものを與えるか、この点をはつきりお害えを願いたいのであります。  それから先ほども劈頭に申し上げましたように、地方特殊事情があるということは、今水産庁で立てております整理案というものは、十五トン以上を整理するということになつておるが、私の調査によりますと、一町村十五トン以上ばかりで、ほとんどあなた方の考えております適格船は一隻もない。そうしますと、今水産庁の案だと一箇町村全部整理してしまわなければならない。こうなりますと、漁民失業者が多数出るばかりでなく、一箇町村の漁業経済というものを破壊する。ひいては町村自体の全面的経済に及ぼす影響が非常に大きくなるのではなかろうかということを一番強く考えておるわけであります。従つて地方特殊事情という、こうした大きな問題をどの程度に考えるか。いわゆる予算措置とは別に考えるという高橋課長の答弁ではありましたけれども、ほんとうに整理に当る場合には、十五トン以上というものをはつきり第一に切つてしまうかどうか、それともまたその村なり、あるいは町なりの事情をよく考えて、そうして隻数で行くか、あるいはトン数で制限して行くかといつたようなこともなければならないと考えるのであります。この点においてどういうふうなことを今後おやりになるかという点について、お答え願いたいのでありす。  最後に、松任谷部長から、北海道に対しては旋網の整理後は考えようという含みのある言葉をちようだいしたのでありますが、私が特に申し上げておきますことは、北海道に旋網に行つているものは特に資本家が多いのであります。この際その会社の名前は差控えますけれども、とにかくああいうものだけはストップどころか、やめさせた方がいいのではないか、そうして今後の機船底びき網漁業なり、小型機船底びき網漁業なり、その他の漁業整理しなければならない事態が北海道にも起ると考えておりますので、そういう一大転換をやる。いわゆる大きな財閥は沖合いにも行けるとか、おるいは今度の漁業協定で公海を自由にやれる時代も来ると考えますので、こういつた措置について一体どういうふうにお考えになつているか、再び部長の御答弁をお願いいたしたいのであります。
  38. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 川村委員からのお尋ねの四点につきましてお答え申し上げます。  第一点の船主には補助されるが、乗組員には補助の道がないといつたような問題に対しまして、政府として極力この対策を講ずべきである、その具体的な例といたしまして政府補助金を出すからには、地方庁も当然この整理についての経費を補助すべきであるというようなお話。それから残存業者において共助施設といつたようなことを当然講ずべきであるという御意見でございました。水産庁もまつたくお話の線を考えておつたのでございまして、御意見に沿いまして何らか地方庁に対しまして……(川村委員「何らかではだめだ。やるならやる、やらぬならやらぬ、はつきりしなければいかぬ。何らばかしで失敗しているんだ」と呼ぶ)補助できるような道を講じて行きたいと考えておるのでございます。なお共助施設につきましては、お手元にお配り申し上げました要綱にもございますように、組合が中心になつて共助の道を講じさせるというふうに考えておるのでございます。  第二点の残存船に対する許可または承認の方法でございますが、これを個人に與えるか、あるいはグループと申しますか、数人の代表者名義に與えるか、あるいはしつかりした組合名義に與えるかといつたような問題でございます。現在この減船整理の問題とからみ合せまして、いずれにした方が一番いいかということを研究しておるのでございますが、漁業法全体の建前から申しまして、組合に與えて組合員個人が使用するというような建前が、特別法として考える場合には一番すつきあいたすのでございますが、その場合に、従来間々ありましたような弊害がありはしないかどうかといつたような点等でございます。いろいろと考究中でございまして、なるべくすみやかにその結論を生み出してお答え申し上げたいと考えておるのでございます。  それから三番目の十五トン以上の、いわゆる法律によるわく外船の処置につきまして、この処置を強行いたしますると、場合によりましては全部落あるいは全村一齊に整理になつて、村の財政にも影響するし、失業者の処置にも困るというような実情にあるような地域をどうするかという問題でございますが、この点は御指摘のような地域もあるわけでございますので、何らか考えなければいかぬというふうに思つておるのでございます。もしこれを考えるといたしますると、実はこの提案されてございまする法律案を多少修正する箇所も生じて来るのではなかろうかとも思つておるわけでございまして、この点もいろいろと御相談申し上げまして、さような事態にならないように、しかも減船処置が漸次的にとれるような態勢もあわせて考えて参りたいと思つておるのでございます。  四番目の旋網漁業の問題に関連しまして、資本漁業が大資本を擁して中小の旋網漁業を圧迫するといつたような問題につきましては、旋網漁業内部の漁業調整の問題でございますので、なるべく漁業の機会が数多くの漁業者に均霑できるような態勢で、数多くの経営者が成り立つような方法で、漁業調整の問題を解決して行きたいと思つておるのでございまして、御指摘のような点並びに御意見につきましては、十分尊重して善処して参りたい、かように存ずるのであります。
  39. 二階堂進

    ○二階堂委員 問題になつております旋網操業の整理につきましては、原則といたしまして田口委員川村委員からお述べになつ趣旨に賛成をするものであります。ただ、かつおの旋網操業に対して、水産庁としては今後やはり都道府県知事許可制によつてこれを整理されて行く方針であるかどうか。私は少くともかつお資源保護という観点から考えてみまして、かつおの旋網操業だけは全面的に禁止された方がいいのではないかというふうに考えておりまするが、この点についてどういうふうな御見解を持つておるか伺いたい。
  40. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 ただいま二階堂委員から、かつおの旋網についてどうするかという御質問でございますが、私どもの考えている点を申し上げたいと思います。これは先ほどの要綱で御説明いたしましたように、六十トン以上については大臣が直接許可するという方法、それからこの漁業が一番多いと思われまする三陸海区につきましては、これも大臣が規制して参るという方式によりますので、各地方知事がばらばらにこれを許可して行くと心うような実態を、ある程度調整できるのではないかというふうに考えて参つております。ただかつおの旋網自身を全然禁止したらどうかという御意見でございまするが、この点はただいまの段階では、調整して参りたいとは思つておりまするが、これをただちに禁止するというようなことは、ただいまのところ考えておらないのでございまして、問題があればこの点はなお検討を進めて参りたいというふうに考えております。
  41. 二階堂進

    ○二階堂委員 調整ができるというお考えのようでありまするが、いろいろな過去のことから考えてみましても、とうていそういうことはし得られないのではないか、こういうふうに考えるのであります。少くともかつおにつきましては、水産庁としても全面的に禁止される方針をとられるべきであると考えるわけであります。この問題につきましては、ひとつ愼重研究されまして善処されんことを私は切に要望いたすのであります。
  42. 松田鐵藏

    松田委員長代理 私から申し上げますが、かつおの旋網というものは何箇統もないのである。しかしそれによる弊害というものは、——一旦旋網でまいた魚は全部とれるものではない。また逃がしたものもある。かような一旦網を見たものは全然えさにはつかないのであります。この弊害については、水産庁はよくその実態をつかんでいなければならない。今まで業者から陳情があつても、それの調査は少しも行き届いていない。そうした調査もせずに、そうした考え方を持つてこういう法案を出すなどということはもつてのほかである。しかも多額の予算をもつて研究部をつくつて調査をしておるのに、こういう問題に対して何ら調査をしていないということは、まことにどうかと思われる。また漁業協定が成立したあかつきにおいては、南方においても今までの海区に対して出漁をする場合が出て来る。現在の沿岸漁業ばかりでなく、そうしたときにおける外地に対してのトラブルは、やがては日本漁業に大きな悪影響を及ぼす。だから今のうちにこうした弊害を除去してしまわなければ百年の悔を残すことになると思う。この点水産庁においては十分調査をしていただかなければならないと考えておる。  それからもう一つ、先ほど石原委員からお話のこの、整理対象になる船を、いそづきなどにせずに災害地に向けようという、これはまことにごもつともの意見で、せつかくの資材を海の中に捨てる必要はない。ところが最も大きな問題は、漁業協定が成り立つた後における日本漁業が外洋に出て行くことをお互いが考えなければならぬ。失業対策の問題も起きておるときにおいて、こうした漁民をある期間のうちに指導して、そうして沖合い漁業に進出するように考えて行かなければならぬ。県々においてつぶされ、またこういう災害に対して買われて行く船というものの残存のトン数、そのときつぶされるトン数というものを、水産庁においてどこまでも保有しておくことが、将来の建造ということに対する大きな役割をなすのであつて、現在としたならば相当長い間再び漁船のトン数を増して行くことはでき得ない段階にあるだろうと思う。その場合水産庁は、今のつぶされる船のその県々のトン数をはつきり把握して保有しておくということを考えなかつたならば、日本漁業は成り立たぬものだ、かように考えておるので、その点を千分研究していただきたい。
  43. 石原圓吉

    石原(圓)委員 先刻大臣に向つて質問した漁船保険の問題は、少くもこの臨時国会に出す心構えでなければいかぬ。今度の鹿児島、大分、宮崎、山口等の損害でも、この漁船保険が確立しておつて強制加入であつて、船の年齢がきめてあつて、その船齢によるところの積立金がしてあつたならば、滅失した船はただちに自力で復旧できるはずだ。それが強制加入でないのみならず、政府保険金を支拂うのにも困るような状態の今日であるから、ああいう被害が起つた場合には、何らか特殊の方法がなければ漁業者が立ち行く道がないわけである。であるから、この際政府は速急に案を立てて提案すべきだということを強く要望します。しかもそれは強制加入によるところに基礎を置いて、そうして船齢に従つて積立てをする、これらのことと強力な規定のもとに案を立てる。もし政府が出さぬようならば委員提案でやるよりしようがない、この際をのがしたならば時期はとうてい来ない。それともう一つは、各府県減船すべきものを、今回の災害によつて解決ができるようになることは、非常な全国の漁村のための幸福だと思われる、いわゆるわざわいを転じて福とするということはこのときじやないかと思う。であるから、これは英断をもつてちよつと破格的な案を立てて、それで政府に迫るということにしなければならぬ、これを強く要望します。
  44. 松田鐵藏

    松田委員長代理 午前はこの程度にとどめまして、午後二時から再開いたします。  それではこれで休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時四十九分開議
  45. 松田鐵藏

    松田委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  漁業法の一部を改正する法律案を議題といたします。  水産庁当局より本案要綱につきまして詳細なる説明を願います。
  46. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 漁業法の一部を改声する法律案につきまして、提案いたしました改正條文について、逐條御説明申し上げたいと思います。  提案理由にもございましたように、現在の小型機船底びき網漁業なり、あるいは旋網漁業なり、それから瀬戸品海の機船舶びき網漁業等については、漁業許可権限自体につきまして、これを知事に委任する必要がございますので、法律改正によりましてその範囲を明確にいたし、その範囲において、知事許可の権限を委任すると、う態勢をとるわけでございます。従いまして、漁業法の六十六條の二といたしまして、「中型まき網漁業小型機船底びき網漁業又は瀬戸内海機船船びき網漁業は、船舶ごとに都道府県知出の許可を受けなければ、営んではならない。」どいうふうに、三者について知事許可を受けさせるような態勢をとつたのでございます。その三者の範囲はいかなるものかというのが二項にございまして、中型旋網漁業というのは、総トン数五トン以上六十トン未満の船舶によつて旋網を使用して行う漁業、これは主務大臣許可をする場合を除くわけでございますが、それを知事許可に委任するということを規定し、さらに小型機船底びき網漁業につきましては、「総トン数十五トン未満のスクリューを備える船舶によつて底びき網を使用して行う漁業」という範囲で知事に権限を委任し、それから瀬戸内海機船船びき網漁業の範囲は、「濫費内海において総トン数五トン以上のスクリューを備える船舶によつて船びき網を使用して行う漁業」という範囲に限定したのでございます。そこで問題は、提案理由にもございます通り、小型機船底びき網漁業につきましては、減船整理処置を講ずるということ、それから旋網漁業につきましては、現状をストップして調整処置を講ずるということ、それから瀬戸内海の船びき網漁業につきましては、転換の方途を講ずるという実体的な処置に即応して、法律上その根拠を規定したのでございます。それが三項、四項、五項というのに現われて参つておるのでございます。  まず第一に、三項は、主務大臣漁業調整のため必要があると認めるときは、都道府県別に第一項の許可をすることのできる船舶の隻数、それから合計総トン数もしくは合計馬力数の最高限度を定めたり、あるいは海域を指定してへその海域についてその許可をすることのできる船舶の総トン数でありますとか、あるいは馬力数の最高限度を定めることができるというふうにしまして、知事が行う許可わくを與える根拠を規定したのでございます。そのわくを與える場合において、その最高限度をきめるという場合には、主務大臣が中央漁業調整審議会の意見を聞いて、愼重に実体に即応した処置をとらなければいかぬということが四項でございます。そこでこの最高限度がきまりますると、それを越える船舶というものができて参りまするので、都道府県知事が、その越える船舶について許可をする権限は持つわけでございまするが、それを許可してはならないというふうに、具体的にわく実施させるような処置をはかるという意味でございます。  それからその次の漁業法の百三十八條に六号をつけ加えましたのは、罰則の規定を加えたのでございまして、すなわち六十六條の二の規定が加わりますと、それに対する罰則、すなわち知事許可を受けないで、以上申し上げました三つの漁業について漁業をやるような場合につきましては、罰則を適用するということになるわけでございます。  以上が本文で、経過法といたしまして附則が書いてあるのでございます。  第一項は、現在のところ中型旋網、小型底びき並びに船びき網につきましては別々に実施して参る予定で進んでいるのでございまして、まず小型底びきにつきましては、できれば来年の一月から実施して行きたいというふうに考えておりまするし、中型旋網につきましては、来年の三月一日を目途にオール・ストップの準備を進めているのでございます。それから瀬戸内海の船びきの問題につきましては、小型底びきと相前後してこれを実施して参る予定でございますので、この法律の施行期日を、以上申し上げましたような準備の態勢に合せてきめて参るという意味合いから、公布の日から起算して三箇月を越えない期間において、中型旋網の問題、小型機船底びき網の問題、瀬戸内海機船船びき網の問題といつたような区分を考えつつ、政令できめて参るという処置を考えているのでございます。  それから附則の第二項につきましては、中型旋網につきまして、現在知事許可を受けているものを、許可事務を省略する意味で、施行後一年以内に許可期間の切れるものにつきましては、その期日までということでございますが、それをつないだ経過規定になつているのでございます。すなわち漁業法第六十五條第一項の規定による都道府県規則に基いて、知事許可いたしました五トン以上六十トン未満の船舶でやる旋網漁業というものであつて、この改正法規によりまする六十六條の二の規定のうちの中型旋網漁業の規定が施行されるときに、まだ知事許可が効力を持つている場合につきましては、以上申しましたような処置でつないでおくということでございます。  第三項につきましては、ただいま旋網について申し上げましたと同趣旨のもとに、小型底びきについて規定しているのでございます。すなわち、機船底網漁業取締規則第二十六條の二の規定に基きまして、知事許可いたしました総トン数十五トン未満のスクリユーを備える船舶をもちまして機船底びき網漁業をやつておるというようなもので、その許可関係が、漁業法の本件の改正小型機船底びき網漁業の規定が施行になる際に、現に効力を有するものは、施行後一年の間は継続してできるというふうにつないでおるのでございます。括弧内は、先ほど申しましたような一年以内で許可が切れてしまうというようなものについては、その切れる日までということでございます。  それから四項でございますが、これは現在いわゆる以東底びきとして大臣許可を受けております磯船底びきの中に、十五トンに満たない漁船が相当あるわけでございます。この数は大よそ六百隻といわれておるのでございますが、そういつた数の漁船があるわけでございます。この大臣許可は、本改正案が施行になりますると、この改正案によりまして小型底びきという範疇に入るのでございます。しかしながらこれをすべて小型底びきとして処理するということにいたしますと、実質的には以東底びきが、より沿岸を操業することを認める結果にもなるわけでございますし、各地におきまして底びき船が沿岸漁業を圧迫するという行為が起つておりまする現在におきまして、いろいろと問題を起すことになりますので、法律施行後一年間は、かかる十五トンに満たない以東底びき船というものにつきましては、本改正法を適用しないでおいて、依然として以東底びき船として、小型底びきより沖合いで操業させる、従来の操業区域によつて操業させるというようなことを考えておるのでございます。従いましてこの一年間に極力増トンを実施しまして、十五トン以上の船として正式に以東底びき船としての資格を備えるように指導いたしまして、小型底びきの範疇に入つて参るというようなことを防止できる期間をつくつたらどうかという考えでございます。万やむを得ずに十五トン以上のトン数に増加上得ない、従つて小型に落ちるというようなものにつきましては、現在いろいろ準備いたしておるのでございまするが、いわゆる小型底びき整理減船に関する基本的な法律用意しておるのでございますが、そういつた法律に基きまして、整理減船されるようなことがあるわけでございます。この場合におきましても、本来の小型底びき船と、それから以東底びき船から落ちて参つた底びき船と取扱いをどうするかというようなことは、愼重に検討して考えて参りたいと思つておるのでございます。なお御参考までに申し上げますと、小型底びきに関するこの法律が施行せられると同時に、現在の機船底網漁業取締規則を改正いたしまして中型機船底びき網漁業取締規則といつたような規則に改めて、十五トン以上の船を規制する対象にするというように準備をはかつておる次第でございます。  それから五項につきましては、瀬戸内海機船船びき網漁業の経過処置でありまして、先ほど申し述べました二項の旋網の場合、三項の小型底びきの場合と同様の経過処置をとりまして、知事許可したものにつきまして、本法改正案に該当するようなものにつきましては、施行後一年を限つてその許可のつなぎをいたすというような建前になつておるのでございます。  以上が大体この改正の逐條の御説明でございます。
  47. 田渕光一

    ○田渕委員 議事進行のつもりでお伺いするのでありますが、本案愼重審議されなければなりませんけれども、きようはもう三時であります。かりにもし本案が本日中にでも審議を了するというならば、私の方でも一部記録に残さなければならないこともあるのですが、まずきようはどの程度まで審議なさるかという、もし理事会のお打合せでもあれば、委員長から承りたいと思います。
  48. 松田鐵藏

    松田委員長代理 この法案は一昨年から愼重審議しており、また予算も大体確定する見込みになつておるものだから、きよう中にあげてしまう予定であります。
  49. 田渕光一

    ○田渕委員 大体ただちに討論あるいは採決に入る御意向でございますか。実は平和條約並びに安全保障條約の特別委員会が三時から再開されまして、同委員会の総括的な質問で、石原先輩が漏れた点を総理大臣に答弁を求めるということになつて、実は責任を持つて委員会に出席しておるのであります。ところが二十日から二十四日まで総理が出ませんでしたので、きようは民主党の三木君がやりまして、午後のもう少し機会をつかまえてやりたいと思つております。そうしてこの平和條約並びに安全保障條約は本日三時から討論に入りまして、大体五時か六時ごろに採決が終るという予定でございますが、それまでにこの問題を採決するとなると、途中ではずして行かなければならぬということもありますので、もし時間が許されるならば、先輩各議員の御了解を得て、水産庁の当局の御意見をちよつと伺いたい点がありますので、五分間くらいでいいと思うのでありますが、もし御了承願えれば、そう願いたいと思います。大体運営の見通しと審議状況あるいはまた委員長におかせられて考えられておる点を承りたいと思います。
  50. 松田鐵藏

    松田委員長代理 大体もう質疑するところも、あと逐條、細則に対して、どういうことかということさえ聞けば、法案に対してはもはやないのですし、午前中もその打合せができておりますので、あなたの御都合によつて説明する前にあなたの関係あることの質問はお許しいたしますから、それを質問されて、それから向うの委員会へ行つていただいてけつこうです。
  51. 田渕光一

    ○田渕委員 委員長のお許しを得まして、また先輩各位にも御了承を願いまして、松任谷部長にお伺いいたしまするが、この資料の小型機船底びき網漁業処理要綱案の三葉目、ページで申しますれば六ページの十行目の「一、瀬戸内海における小型底びきの馬力は、一〇馬力以下に限定する。但し、紀伊水道においては、特殊事情を勘案し、当分の間“最高三〇馬力まで認めることがある。」こういう特殊事情を認められたことに対しては感謝するのでありますが、この特殊事情とはどういうことをもつて特殊事情といわれるのであるか。その事情をまず伺いたいのであります。
  52. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 紀伊水道の特殊事情と申しますのは大体二点ございまして、現在そこに操業しておりまする小型機船の性格と申しますか、隻数なり馬力数なりの現状が一つと、それからもう一つは自然的な條件の問題でございまして、内海と違いまして非常に風浪が強いとか、あるいは深いとかいつたような事情を考慮しまして、御承知の通り減船整理というような関係を、五年を目標にして漸次理想的な目標に向つて整理して参るというような意味合いから申しまして、この三十馬力程度を一応目標にしてやつて行つたならばどうであろかというような意味合いでございます。
  53. 田渕光一

    ○田渕委員 それで大体特殊事情の範疇がわかりました。そこでその「特殊事情を勘案し、当分の聞、」の当分の間という期間を、およそどのくらいに認められておるのかということをお伺いいたします。
  54. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 「当分の間」と書きましたのは、ただいま申し上げました通り、減船整理といつたような計画を、われわれといたしましては五年間でやつて参りたいと考えておるのでございますが、何分この減船処置につきましては、毎年の予算の計上を必要とする関係もあるわけでございまして、御承知の通り本年度はもつぱら十五トン以上のわく外船ですとか、あるいは制限馬力以上の船というようなものにつきまして処置をはかり、来年の予算の見通しによりまして——この当分の間というものが来年になりまするか、さ来年になりまするか、予算と見合つて処置して参りたいかように考えておるわけであります。
  55. 田渕光一

    ○田渕委員 予算措置とにらみ合せてやりたいというふうなお話でございますが、そうすると、この当分の間という期間は非常に長く私は想像されるのであります。そう簡単に予算が出ないということは、現在の日本の経済の情勢、あるいは来年度の八千億円という予算の概略から見ましても、おそらく賠償その他の関係もあり、あるいは予備隊の増設あるいはまた独立後における日本の自衛力の予算というような点から見ましても、なかなかこういう点において十分予算が来ないということを、まず見通しとして、私は個人といたしましてそう考えるのであります。また逆にこれと相反して、どうしても減船整理をやつてしまわなければならぬから、ひとつこれだけの予算を認めようというようなことで、ぱつと来年度に出されて、ぱつと切られるという危険性もあるのであります。そこで予算措置というような、大蔵省に転稼し、あるいは安本に転稼するようなお言葉でなく、水産庁当局としては、およそ常識上何年ぐらいという見通しを——決して私は言質をとらえてどうこう言うものではありません。現在の状況とにらみ合せてわれわれはやつて行くのが委員としての務めでありまするが、ただ予算措置とにらみ合してというような漠たることでなく、およそどのくらいというようなことを承れば、それで漁民も納得するかと思うのであります。
  56. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 われわれの方といたしましては、当分の間ということがなるべく短かい期間であることを実は望んでおるわけでございます。御承知の通り、瀬戸内の漁業秩序のあり方といつたような問題を打立てる場合におきましても、こういつた経過的な処置が長く続くというようなことは、あまり考えて処置したくは、ございませんので、極力短かい期間で考えて行きたいということで御了承願いたいと思います。
  57. 田渕光一

    ○田渕委員 短かい期間とか長い期間とか申しましても、水産庁は気が長いのだから、短い期間というのは私は三年くらいに想像しているのですが、短かい期間という範囲をもう少し具体的に——予算措置の見通しも、あるいは事務当局としては交渉せられて、およそどのくらいで減船整理がついて行く、それであるから一般に並行して紀伊水道もおよそ二年先でやるとか、あるいは来年一ぱいにはむずかしいとかいうような点をお聞かせ願わぬと、これに携わつておるところの業者がこれを聞かんとし、またそればかりではありません、これに関連して反対が大きいのでございます。当分の間とか特殊事情とか、そういうような事情も何もわかりましたけれども、日本漁民が聞かんとするところは、こういう抽象的なことでなく、大体こうだと言えばその準備もできると思いますので、たいへん言いにくかろうが、三年ぐらい、来年一ぽいないし昭和二十八年あるいは九年ごろやる、そういうふうに伺つておいてよろしゆうございますか。大体その点を——決して言葉じりをつかむものではありません。
  58. 松田鐵藏

    松田委員長代理 ぼくからお尋ねいたしますが、第七国会、第八国会において紀伊水道の問題が論議されて、自由投票までなつたときにおいて、紀伊水道は一馬力も必要でないということをわれわれは地方から陳情を受けて、水産庁当局に対してもこれを進言したものであります。しかるに、この要綱から行くと、三十馬力などという馬力を規定しておるのは、一体どういう理由によつて現定されておるか、それをまず承りたい。
  59. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 御承知の通り、現在紀伊水道を含む瀬戸内海小型底びき船と目せられるものは一万四千六百五十八隻あるわけでございます。そのうち紀伊水道におきまして十五トン以上の船が百四十四隻、それから三十馬力以上の船が百八隻あるのでございます。そこで去年度は予算の見通しもできましたので、こういつた三十馬力以上の船につきましては切つて参るということで進んでおるわけでございます。来年度、さ来年度、とにかく五年でこの整理減船という処置を一応終るわけでございますので、五年目には必ず理想的な馬力制限のところに行くであろうというふうに考えるのでございましてこの五年の間にとにかく努力いたしまして、なるべく短かい期間で処理して参りたい、かように考えるわけでございます。
  60. 松田鐵藏

    松田委員長代理 漁民があの法案を通そうとして衆議院に陳情したときにおいて、一馬力も必要でない、繁殖保護をするのであるという議論によつて紀伊水道の問題が論議されたのであつて地方の実情は水産庁はよく御認識のことと思いますが、それに三十馬力のものが百何十隻あるということは、今までもぼくは合点が行かないのであるが、どういう考えでこういう三十馬力という数字をあげられているか、お尋ねしておるのです。
  61. 川村善八郎

    川村委員 この特殊事情というのは、私は調査に参りましたからよく事情がわかつているのであります。もちろん紀伊水道は瀬戸内海と違つて波も荒いし、海も深いということはよく承知しております。北海道におきましても小型手繰及び機船底びきがたくさんあつたのであります。とにかくあの方面の特殊事情のために馬力の大きいのが多いので、これらを一挙に切るわけに行かないから、当分の間という字句を使つたのでありまして、私が調査をした考えかち行きますと、最大限二十八年くらいでどうせ以東底びき網も整理の段階に入りますので、かえつて二十八年の三月三十一日までにするというお答えをした方がはつきりして、漁民も準備ができるのではなかろうかと考えております。     〔松田委員長代理退席、二階堂委員長代理着席〕 ただ瀬戸内海と紀伊水道とは、同じ馬力で同じトン数で操業することは容易でないということだけは認めて参つたので、この点について要綱等の制定の場合は十分考慮して、つまり田渕委員の質問されたような意味がどこにあるかということを勘案して決定した方がいいのではなかろうかと考えるのであります。
  62. 松田鐵藏

    松田委員 ただいま川村委員から紀伊水道及び瀬戸内海の本年度においての御調査の結論から行くお話を承つたのでありますが、そもそも紀伊水道という問題は、私どもが代議士として出て来て、日本の新しく制定された漁業法の精神に基いて、漁民の将来行くべき道に対しての論拠から言つて、すでに第七、第八国会において論議された問題であります。しかもわれわれは、国会閉会中においても幾たびか瀬戸内海の実情の調査に参つたものであります。また紀伊水道の実態をも見て調査に乗り出したものであります。しかもこの紀伊水道の問題はあれほど論議されており、その実態が今までどのようになつておるかということをつぶさに調査して見るのに、先ほど川村委員からも話されたことく、いまだに二そうびきの漁船をもつて違反漁業をあえてしているもつともいまわしい漁民すらあることが報告されているのであります。いまや漁業協定を目先に控えている日本漁民が、みずから日本法律を蹂躙することがあつたならば、世界との漁業協定日本の国で結ばれる可能性がありやいなや、これは単なる地方問題の解決ではないと私は考えるのであります。日本の国が世界の信用を得るために、われわれが真剣になつて漁業協定を結ばなければならない。日本水産の行くべき大きな道がここに約束されんとするときであります。しかるにこの実情はどのようであろうか、現在の姿はどのようであろうかは存じませんが、川村委員の御説明の通りだとは思うのであります。かようにして第七国会、第八国会においてさえ論議されて自由投票の線まで行つたその漁民が、いまだにその違反、密漁、あらゆる違反漁業をあえてしておることに対しては、水産庁整理をする段階において何のためにこれを躊躇しておる必要があるか、もしここにおいてこんな緩慢な政策をとるのであつたならば、いつにしてこの小型底びき網漁業整理が断行できるやいなや、私は絶対にでき得ないと信ずるものであります。單なる感情からではなくして、われわれがそのときにおいてあらゆる努力をした。ゆえに今日さような感情をはさんでものを言うのではありません。現在の日本の国の実態を考えたならば、よくここに判断をして考慮して行かなければならぬ問題と考えるのであります。紀伊水道ばかりではありません。今や三重県のあの伊勢湾に対しても、かような問題が出て来ております。また新潟県においても、あらゆる海区においてかような問題が出て来ております。これをいたずらに地方の実情がこうであるからというような考え方を持つて行つたならば、あなた方が制定せんも、われわれがここに論議しておつて、この法律を定めんとしても、この法律通り日本国民は守れるかどうか、もし守れないときにおいてはどうするか、世界の漁業協定に対して、われわれみずからがこれを蹂躙して行かなければならないというはめに立つて行くものと私は考えるのであります。この点に対して、願わくはここでほんとうの腹を打ちまけて、水産庁の考えておるところは二十馬力が至当でないかというならば二十馬力でもいいだろう、十五馬力がいいというのであつたら十五馬力でもいいだろう、ただ單に現在三十馬力の船が百何そういるからということで、いたずらに三年間なり五年間なりかようなものを許しておく、整理対象にしないのだという考え方を持つならば、私はこの法案に対して反対するものであります。真に日本漁民の行き方を是正して行くという考え方があるならば、ただいまの段階驚いてもつともつと厳重にこれを是正しなければ、とうていこの法案の通過を見ることはできないと私は考えるのでありまして、この点水産庁のほんとうの意思を発表願いたいと存ずるものであります。
  63. 田渕光一

    ○田渕委員 関連して——私は趣旨において松田委員と同感であります。しかしながらこの紀伊水道に三十馬力の船が百八隻もあるという水産庁当局の今の御説明は、これはほどんど徳島県の問題であります。かりにどこであろうと、われわれは徳島県だけではなくて、日本水産面ということから論ずるのでありますが、あの深海で風浪のはげしい、ことに和歌山県の箕島沖の船が潮岬まで流される、かような意味で非常に苦しいから、この取締りを行政的な措置でとらずに政治的に片づけるために、本委員は各先輩皆様方の援助を受けて御審議を願つて紀伊水道、これを私はどこまでも一地区の問題のために論ずるのではありません。ただ十五トンの船が百四十四隻ある、三十馬力の船が百八隻あるというのは徳島県に多いのですが、はなはだしいのは愛知県の船が入つて来ております。あるいはまた最近のことでありますが、串本沖で愛知県の船が沿岸漁民を荒して網まで持つて行つたということを聞いております。こういうことは紀伊水道ばかりではありません。今の松田委員の仰せの通り、近くは新潟港のあの問題あるいはその他起きておる問題があるが、こういう問題を終戦後ほつたからしてやらせておいて、そうしてこれにただちに予算措置も十分につけずして、当分の間というようなことで措置して行くというようなだまし打ちをされるということはいかぬと思うから、この特殊事情と当分の間ということの定義を聞いたのであります。今徳島県とか愛知県に例をとりましたが、和歌山県にももちろんありましよう。それはごくわずかの問題です。このわずかのものというのは、その原因は先ほど私が紀伊水道のときに説明した通りですが、兵庫県の淡路島のあの由良に海軍の根拠地があつて、そこでやり出したという、よそのものが荒すから仕方なくとらなくちやならぬという問題です。これをわれわれが性急に片づけようとしたのが紀伊水道の問題で、私は実際生命をかけてやつておる。この生命をかけてやつておる問題をわずか二行か三行でもつてずるずると片づけてその必要がないということになつたら重大な問題でありますから、どうかこの点は勘案を願いたい。私は決して松田委員の論旨に反対するわけではない、全然同感であります。日本漁業としてほんとうに世界に信頼される漁業態勢を整えて行かなければなりません。しかし今までやつて来たものをお前いかぬとしてやれるかどうか、松任谷部長が瀬戸内海調査に行つて非常な御苦心をなさつて帰られたということも聞いております。また千葉県のさんまの問題においても、われわれが茨城県に行つたときにも、ほんとうに命を覚悟してやつておる。根室の問題においてもその通りである。決してこんな水産庁の一片の三行や五行の問題ではできるものではありませんから、どうかひとつ——当分の間なんということは、最短期間ということを希望する精神はよろしいが、私は現地において十分に漁業協同組合を指導し、円満に行くように解決をいたさせますから、本案で通過することを望んで私の関連事項を終ります。
  64. 石原圓吉

    石原(圓)委員 この問題については伊勢湾にもその例があります。伊勢湾は最高十馬力ということにこの内容にはなつておるのであります。しかるに最近愛知県の運動によつて一二十馬力の要求があつた。そのために水産庁におきましては、二十馬力で妥協しようというような空気があるということでございます。そうしたならば、これはもう全体が魂のこもつておらない内容であります。こういうような内容をもつてやるということは、われわれをごまかすことになるわけであります。さようなことでは私はとうてい審議は進められないと思うのであります。政府がこの通りどこは十馬力、どこは二十馬力ということを明示してわれわれの前に出す以上は、その通りに必ず実行するという信念がなければならないのであつて、ただ中央の情実やいろいろな運動によつてたちまちそれを変更するというようなことでは絶対にこれは信じられないのであります。それであるからこれを撤回して、さらにあらためて案を立て直して審議に移ることを望みます。
  65. 松田鐵藏

    松田委員 松任谷部長の答弁を要求いたします。
  66. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 はなはだおしかりを受けた次第でございますが、田渕委員の申された通り、取締りの関係を十分に徹底いたしまして、違反の関係をなくするというのが根本の問題であろうかと思うわけであります。ただ問題は、漁業秩序というものを漸次安定させつつ減船整理をやつて参るというのがこの法律改正を見ます理由でありまして、違反のものはすべて残らず一齊取締りをするということのもとに一応経過的な秩序段階をつくりつつ、その理想目標に達して行くということを実は考えておる次第でございます。たとえば松田委員が申された紀伊水道の問題にいたしましても、われわれとして三十馬力で満足しておるのではございません。特に紀伊水道の馬力制限につきましては、瀬戸内海の連合海区漁業調整委員会におきましても慎重に審議をいたしまして、二十馬力という線を出したのでございます。この二十馬力を実行できるかどうかということは、一にかかつて予算の問題であるということも当時の記録にあるのでございまして、その場合において水産庁が大蔵省に対し、とにかく理想隻数、理想馬力数まで達するように努力してほしいというような要望もありまして、本年度の予算の見通しがつきましたならば、この二十馬力の決議した線を実行できるかどうか、もう一ぺん再検討するということに相なつてつたのでございます。伊勢湾の問題につきましても同様でございますので、そういつた事情にあることを御了承願いたいと思うわけであります。
  67. 川村善八郎

    川村委員 議事進行について——ただいま提案されました漁業法の一部改正に伴う要綱並びに措置要綱その他のことについて議論がありましたが、われわれは政府提出の法律案といえども修正する権利を持つておるのであります。従つて私は一応全部説明を聞いて、本委員会において協議会なり懇談会なりを開いて修正の意見をまとめて、そして本委員会にかけてやられましたならば、われわれの意のごとく修正するのもよい、かように考えます。石原委員の言われるごとく立て直しをして来いと言つても、結局水産庁が立て直して来た案がわれわれの意のごとくであれば賛成できるかもしれませんけれども、また立て直したものに対して議論ばかりしているようなことでは委員会審議は進まぬと考えますので、一応説明を聞いて、われわれが修正すべきところは修正して、そして委員会を通過させた方が、時間的にもまた実質的にも有効でなかろうかと思いますので、この点委員長から皆さんにお諮り願いたいと思います。
  68. 松田鐵藏

    松田委員 川村委員の御意見もしごくごもつともなことであります。しかし今ここで田渕委員が発言されたのも、私が委員長席において許したのであります。そこであまりにもこの要綱がわれわれの考え方とかけ離れておつたことは、先ほど申した通りであります。ゆえにただいま松任谷部長が言われたように、権威ある、信頼のでき得る海区調整委員会において二十馬力という線が出ておつたということであれば、二十馬力とすべきがほんとうでないか、しかしそこにおいていま一年か半年、二十八年度なら二十八年度という二年間においてこれを調整しなければならない。それが必要だというのであつたならば、率直に申してくだされば、われわれも了承するのであります。吉田首相のごとく、どこまでも秘密外交で自分の腹の中に納めておこうとするから、こういう議論が出るのであつて、なぜこういうことを率直に申さぬかということを私はつくのである。水産庁が三十馬力にすべきであるというならば、——海区調整委員会もそういう意見であるから、また二十八年なら二十八年までそうすべきであるが、現在の段階としてやむを得ないということを一言言うのであつたならば、われわれはこの案に対して了とするのである。この点に対していかなる考えを持つておるか伺いたい。
  69. 松任谷健太郎

    松任谷説明員 現在の段階におきましてはやむを得ぬと思つておるわけでございます。
  70. 石原圓吉

    石原(圓)委員 議事進行の上から意見を提出します。ただいま川村委員の妥協説、松田委員の強硬説があるわけであります。この結論を得るために、私は一つ意見を提出します。それは、これは水産庁において一定の馬力等につきまして双方の言い分を聞いて、庁の権限できめようという一つ水産庁の権限拡張を包容した案であるといわなければならぬ。そういうことはほんとうに水産行政の上によろしいかどうか。それは絶対によろしくない。     〔二階堂委員長代理退席、松田委員長代理着席〕 でありますから大体の方針としては川村意見に賛成はしたいと思うのであるが、この場合伊勢湾は絶対に十馬力よりふやさないということを、ここに修正案とすることに賛成をされたい。同時にまた瀬戸内海のみならず、全国のこの種のものはこの際全部実行すべしという二つの條件をつけて、川村意見に賛成します。
  71. 松田鐵藏

    松田委員長代理 実はそれを水産庁にごまかされるのがいけないと思つて今この委員会を開いておるのでありますから、その点はどうか厳重に皆さんから御注意を願いたいと思うのであります。
  72. 川村善八郎

    川村委員 ただいま松任谷部長から、漁業法の一部改正法律案についての内容の御説明があつたのでありますが、その中に二、三お伺いしたいことがありますので、その点をお答え願いたいと思います。  第一の問題は、第四項に「主務大臣は、前項の規定により最高限度を定めようとするときは、中央漁業調整審議会の意見をきかなければならない。」とある。これはもちろんその通りでありますけれども、中央漁業調整審議会というのは、はたして全国的にその事情を知つておるかどうかということが非常に不安であります。そこで、その前に、各部適府県に海区調整委員会連合会があるはずであります。連合会意見を聞き、さらに中央漁業調整審議会の意見を聞くということであれば、地方の事情もよく聞いた上さらに中央で中央漁業調整審議会にはかるということになるのでありますが、こうした点におきましてどういうお考えを持つておるか。中央漁業調整審議会の人選等の問題についても、漁業法が制定された当時から非常な論議をされておるのに、今日人もかえない。あの当時農林大臣から一部の分子をかえるというような意味の意見もあつたにもかかわらず、現状のままでいるというような人事の措置についても不安がありますので、この点はどういうお考えかお伺いしたいと思います。
  73. 山本豐

    ○山本説明員 いわゆるこの海区連合委員会意見を聞くということは、もちろん前提として実際にあり得ることと思うのであります。現に瀬戸内海の問題につきましても、あそこの連合委員会でたびたび会議を開いて、いろいろ議論をされておるわけでありまして、おそらくそれが材料となつてこの原案がでたような事情にあると思うのであります。ただそこまでこの法律の上に書くかどうかという点は、なお研究してもいいのではないかと思うのであります。実際問題といたしましては、もちろんその地方意見は十分聞いて後に中央に入つて来ると思うのであります。それから中央審議会の意見を聞く点はどうか、審議会の機構の問題、人員の問題もいろいろお話があつたのでありますが、この点についてはいろいろ考えなければならぬ点があると思います。とにかく水産庁が独善でやるよりは、間接でもとにかくこういう委員会意見を一応聞きとりまして、その上できめるという一つの機会を與える方が、民主的でよかろうじやないかという意味合いだと思うのであります。ただこの審議会の運営等につきましては、ただいまの御意見等は十分尊重してやらなければならぬというふうに考えるわけであります。
  74. 川村善八郎

    川村委員 もう一点伺いたいことは、この法律が通りますると、その日から十五トン以上のものは全部整理をしなければならぬということに相なるのであります。私が調査した結果から申し上げますと、十五トン以上の船が相当に多数あるのであります。そこで瀬戸内海は特例を認めるような法律になつておりますが、これらも何とか措置を講じまして、附則に修正を加えるとかいうようなことをしなければ、法律を通したはいいが、十五トン以上の船はただちに操業ができないということになりまして、私がきよう劈頭に申し上げました通り、一箇町村ほとんどが十五トン以上であつて整理をしなければならぬということになりますと、失業者も出れば、村の経済も破壊するというようなこともありますので、こうしたような点については、もちろんこれは修正できることでありますけれども、どういう意見を持つておられるか、一応承つてから、さらに最後に討論の場合に修正をいたしたい、かように考えますのでこの点を承りたいと思うのであります。
  75. 山本豐

    ○山本説明員 ただいまの川村委員のお話は、私としてはしごくごもつともであると思うのであります。原案の考え方、もだらだらでは困る、ぴつしやつとやりたいという——これは当事者としてやむにやまれぬ気持で原案ができておると思うのであります。しかし実際問題として運用する場合には、先刻からも川村委員の内海におけるいろいろの事情を拝聽したのでありますが、それらの点もよく考慮に入れまして、どういう修正案がいいかは問題でありますが、そこに多少のゆとりを持たせるような方法がよろしくはないかと考えます。
  76. 松田鐵藏

    松田委員長代理 水産庁当局は私から申入れをいたしまするが、この法案の通過後においても、その要綱をきめる場合には当委員会に相談をして、あらゆる点を了解してから要綱をきめるように、私から申し入れておきます。これについてあなたの御意見はどうか。
  77. 山本豐

    ○山本説明員 ただいま松田委員長代理からお話がありましたが、水産庁といたしましても、これはいろいろ各界にも影響するところが大きい問題でありますので、できるだけ念には念を入れてやるのが至当であるこ思うのであります。そういう意味からいたしまして、水産庁の責任者といたしましては、当然水産庁で案はつくらなければなりませんが、この法律に基く政令でありますとか、あるいは要綱、取扱い方針というようなものにつきましては、委員会の諸公の御意見もいろいろ拝聴いたしまして、事前によく連絡をとつた上で進めて参りたい。かように考えております。
  78. 松田鐵藏

    松田委員長代理 ちよつと速記をとめて……。     〔速記中止〕
  79. 松田鐵藏

    松田委員長代理 速記を始めてください。  本案につきましては修正の意見もあるし、次の委員会に讓りたいと思います。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 松田鐵藏

    松田委員長代理 御異議なしと認めます。
  81. 松田鐵藏

    松田委員長代理 それでは次に漁業災害復旧資金融通に関する件を議題といたします。本件に対し水産庁当局より御説明を願います。
  82. 奥田孝

    ○奥田説明員 初めにルース台風の被害概況をお配りいたしました資料によつて簡単に申し上げます。  これは昨日現在で各県の報告をまとめたものでございまして、この数字は今後多少かわるかと思いますが、これによりましても、大体今度のルース台風の被害の外貌はわかると思います。これによりますと、漁港の損害は金額にいたしまして三十六億三千五百万円ほどであります。漁船は一万二千六百四十五隻で、二十四億三千万円程度の被害であります。漁具は金額にいたしまして八億八千百万円、その他のものが十五億三千七百万円、合計いたしまして八十四億八千七百万円程度の被害となつております。その他の被害のうち特に養殖施設としてわかつておる分だけを集計いたしますと、これが約一億三千五百万円になつております。この損害のうち、鹿児島県が大体全国の損害の半分近くの三十五億三千万円という大きな被害をこうむつておることがわかるわけであります。  こういう災害を受けました際に、これは毎年のことでありますが、何よりも必要なことはその復旧資金であります。御承知のように、農業につきましては農業災害補償制度というものが確立されておりますが、漁業につきましてはわずかに漁船保険制度があるのみであります。しかもその漁船保険制度も十分利用されておらないというような状態であります。いわんや一般の漁具、養殖施設につきましては何ら救済の方法が講じられておらない現状でありまして、そういう災害を受けました漁業者が、ただでさえ金融難に困つておりますので、それが独力でもつて金融機関から融資を受けて立ち上るということは非常な困難を伴うことでございます。そこでわれわれといたしましては、漁具なり養殖施設につきまして、一日も早く災害補償制度を確立することが必要と考え、それがために必要な調査を至急に始めたいと思いまして、それに要する経費も二十七年度予算として要求いたしておりますが、これは大蔵省の予算の認め方いかんによりますが、そういう漁具災害補償制度を打立てますためには、どうしても三年なり五年の年月を要すると思います。その間のつなぎの措置といたしましては、災害を受けました漁業者の復旧資金につきまして、国家が援助を與えることがどうしても必要場なことと思うのでございます。例の五ポイント計画におきましても、一般の融資と災害救済の融資とはやはり別に扱うべきであつて災害救済融資については政府が特別の措置をとるべきであるということが強く指摘されております。そういう次第でありますので、水産庁といたしましては、二十七年度予算において災害復旧融資に関する損失補償並びに利子補給の経費をただいま要求しておるところでございます。これが実現いたしますれば、さつそくルース台風の被害者にも適用できるわけであまりして、漁業者にとつては復旧に対する一つの力添えになると思います。  この案で取上げましたものは、一応漁船につきましては漁船保険がありますのでこれを除きまして、直接の生産手段として必要な漁具と養殖施設についてだけであります。この内容は非常に簡単でありまして、漁業者漁具または養殖施設に台風による損害を受けまして、銀行から復旧資金を借りた際に、政府がその融資額の一割五分を限度として損失補償をすることができるということが第一点。第二点といたしまして、その復旧融資に対して政府が年四分の利子補給をするということがこれの概要になつておるわけであります。お配りいたしました予算の要求書の第四枚目に、利子補給金算出基礎という項目で予算の計算基礎が出ております。これも簡単でありますので、御説明申し上げますと、最近二年間の台風による平均の被害額が年約二十四億になつております。これは漁港等の公共事業で救済するようなものは除いてありまして、いわゆる私企業の損害として年二十四億という平均になつております。この平均二十四億の損害のうち漁具——そこに小さい数字で書いてありますように、漁具の損害が約十億ほどになります。養殖施設が二億七千万円、漁具と養殖施設を合せて約十三億になります。その損害の約七〇%を要融資額と計算いたしますと、漁具養殖施設の要融資額が約九億になるわけであります。その九億の一五%の損失補償をするわけでありますので、一年間の政府補償限度は一億三千五百万円ということになるわけでございます。それから利子補給額としてはその九億の四分でありますので、三千六百万円という数字が出て参ります。それで復旧融資の期限については、漁具がすえ置きなしの二年間の均等償還ということにしておりますし、養殖施設についてはすえ置き一年の四年間で償還するということにしておりますので、二十七年度の予算として入れますのは、とりあえず四分の利子の補給の三千六百万円ほどになります。政府の損失補償債務は、今申し上げましたように融資の期限を過ぎてからそういう債務が発生しますので、二十九年度以降に政府の損失補償債務が発生することになるわけでございます。そういう次第で、二十七年度の予算としてはその利子補給額三千六百万円が大部分内容になつておりまして、それに多少の人件費、事務費が加わりまして、三千七百七十六万円をただいま要求中であります。被害を受けました漁業者にとつては、わずか一五%の損失補償と四分の利子補給ではまことにもの足りないという感じをお持ちになると思うのでございますが、現下の財政金融の情勢から、この程度のものすら実現に非常な困難があるというぐあいに思つております。水産庁としては何とか困難を冒してこれを実現させたいと思いますが、当委員会におかれましても格段の御鞭撻と御協力をいただきたいと切望する次第でございます。
  83. 二階堂進

    ○二階堂委員 ただいま説明を承りました復旧資金融通に関する臨時措置法案でありますが、こういう法律はもうすでに提出されて、漁具等を失つた漁民の復興に十分役立つていなければならぬはずの法律だと考えております。ただいま各地において非常なる台風の被害を受けて、漁民が船を失い、漁具を失い、しかも徳島のごときは高潮のために住む住宅を失つているような現状であります。こういうような災害を受けました漁民は、特にこういう政府措置を願つていることは申し上げるまでもないのでありまするが、ただここに上程されておりまする法律案説明を承りますと、私の今日の気持からいたしますれば、まことに微々たる金額にすぎないものでございます。しかしながら今日の財政の状態をもつていたしますれば、多くを望むことはとうてい不可能な現状かと思われまするが、たとい僅少な金額にいたしましても、私どもはこういう法律案を是が非でも通過さして、政府が積極的に被害を受けた漁民の復興に大きな力を添えるということは、当然いたさなければならないと思うのであります。この趣旨につきまして私は非常に賛成いたすのでありまするが、ただ予算の見通し、裏づけというものが全然ないようにお聞きしたのであります。この予算の見通しについて、水産当局と大蔵省との間に一体どのような話合いがなされているのか、どういう見通しがあるのか、この点についてお伺いいたしたいのであります。
  84. 山本豐

    ○山本説明員 ただいま二階堂委員にこういう制度の必要なゆえんをお認めいただいたのでありまするが、実は水産庁におきましも、何とかこういうものが早くほしい。根本的に申しますると、いわゆる漁業災害補償制度というところにおちつかければならぬのでありますが、これはいろんな事情がありましてそう簡単には扱いにくい問題でありますので、とりあえずは漁船について、漁船保険制度を拡張することと、漁具その他について安心して金融機関が融通できる、そういう意味の一つのてこ入れが水産についてはどうしても必要であると考えまして実は前前国会ぐらいから、この問題は水産庁としては、こうでもない、ああでもないといつているく研究して来ておつたのであります。たしか前国会でも最後まで参議院の方にお願いしたりいたしまして、予算の折衝の問題と並行いたしまして、参議院の委員長などにもおはかりして来た経過があるのであります。しかし結局予算的にものにならぬものでありまするので、法律提案は引込めたような事情があつたわけであります。いつも災害の発生したときにおいては、各方面において非常に認識が新たになるのでありまするが、その時機を逸しますると、まあ何とかやつて行けるのではないかというような気持にもなる関係もありまして、今日まで延び延びになつてつたのであります。今回のルース台風などを見ますると、この案におきましてもきわめて微温的で、予算等におきましてもさらに拡充をはからなければならぬのでありまするが、とにかくこういう一つのレールを敷いておくことが水産金融については大切ではないか、こういうふうにわれわれ考えているのであります。現在大蔵省の見通しは、実はまだ下内示も全然ないのでありまして、はつきりしたことは申し上げられないのでありますが、農林省の内部では、今までもたびたびこの問題を取上げたときに、省議でも議論になりまして、当初におきましては、水産がこういうものを出せば、農業とか林業についてもこういうふうなことはけつこうなんだから、合流して一緒にやろうじやないかということで、一時しばらく遅れるというような事情のあつた時代もあつたのであります。そんなような意味で、とにかく省議においては、これは金額は少いのでありますが、一応この必要性を認めまして通してくれたのであります。はたして大蔵省でこれをどういうふうに取上げるか、問題でありますが、今回のような大きな災害品がありますれば、これを機会に、大蔵省の認識を深め得る好材料でもあるわけでありますので、何とかしてこの予算を確保して、とにかくこういうような方式を一日も早く確立したい、このように考えておるのであります。
  85. 二階堂進

    ○二階堂委員 ただいま御意見を承りますと、これは一応省内ではさまつておる。しかし大蔵省がこれをどういうふうに取扱うか、今後の問題だ、こういうふうな御意見のようでありまするが、この問題は、ことに災害等を通して考えてみますると、きわめて緊急を要する問題のように私は考えるのであります。そこでただ省内だけでこの問題を一応まとめたんだ——少くともこういう法律案をあなな方の方で提出されるとするならば、ぜがひでもこの法律を通過させなければならぬ、そうして困つておる漁民を助けなければならぬという非常な熱意を持つて大蔵省当局に対しましても折衝をせられるべきものであると考える。にもかかわらず、大蔵省との問題は今後の問題であるといつたような気持でこういうような法律案われわれの建議されるということは、水産庁当局の決意をはなはだ疑わざるを得ないのであります。そういうようなことであるから、いつも水産があとまわしにされ、冷飯を食わされるということが事ごとに今まで起つておりたのではないか、少くともこうい商案ここにわれわれの前に提出される以上は、ある程度の大蔵省との折衝もなされ、是が非でもこれを通さなければならぬという決意のもとに、こういう法律案をわれわれの前に呈示してもらいたい。そうして誠意あるところの気持でもつてわれわれにも協力を求めるのが、私は当然ではないかと考えるのであります。もちろんこの趣旨に対しましては非常な賛成を私はいたすのであります。従つて大蔵省に対しましても、是が非でもこの予算の獲得については十分の努力を私もいたしたいとは考えておりますが、先ほど次長の御説明を伺つておりますると、大蔵省に対して努力が足りないのではないか、こういうことを考えるのであります。こういう態度は捨てていただきたい。なおまたこのルース台風に対する緊急対策につきましても、漁船を失い、漁具を失つて、あしたから食うに困つておる漁民がたくさんおるわけです。すでにある程度の総合的な結果がここに出ておるのでありまするが、これらの緊急を要する対策、なかんずくこの金融の対策等について、水産庁の当局としましては、一体いかようなる対策を考えておられるか。金融の問題等について、さしあたり鹿児島県あるいは宮崎県あるいは山口県、こういうようなところに対しまして、どのような金融的な措置をとろうとお考えになつておるのか、あわせて水産庁当局の御意見を承りたいのであります。
  86. 山本豐

    ○山本説明員 今回の台風は、昨年等と比べまして比較にならぬぐらい非常に大きいのであります。そこでこれに対する対策でありまするが、いろいろ資料を目下集めておる途中でありますけれども、いずれにしましても対策は講じなければならぬのでありますから、われわれとしましては、省内でいろいろその方法論を練つておるのであります。なかなか名案いうものはないのでありますけれども、しかしながら漁港その他の公共事業関係につきましては、一応いわゆる災害予算というものはとれるわけでありますので、これをひとつできるだけ大きくとりたい。そのつなぎとしましては、一応とりあえずつなぎ融資——これもやはり預金部等の資金わくを出してもらわぬことにはできないのでありますが、これはおそらく全体のわくの問題とも関連いたしまして、必ずそういう方向には持つて参れると思うのであります。  次に漁具漁船の問題であります。これらの問題は、実は金融ベースその他におきましても非常に問題があるのでありますが、ここにいろいろ考えておりますような案も、これは将来のための一つの裏づけといいまするか、長期の資金を出す一つの手がかりになる方法でありまして、これができるまで荏苒待つているというわけにも参りませのんで、応急的にはやはり預金部資金等のわくを出していただいてそうして極力その金融あつせんをはかわまして、金を落して——もつともこれも方法としましては、個々ではとうていこれは信用の問題もありますから、協同組合等を中心にいたしまして、大いにあつせんをする。今朝来いろいろ議論が出ておりましたように、この転換船をまわして行くということも、これも引取る方の融資の問題もからんで参ると思うのであります。このことも中に織り込みましてそうして漁船漁具の融資あつせんをする、こういう方向を今考えつつあるわけであります。主なお漁業権証券との関係もおそらく出て来ると思うのでありますが、この問題は非常にデリケートでありまして、たとえばこういうためにのみ漁業権証券が使用されるということは、これはやはり相当警戒を要すると思うのであります。しかしながらこれはある程度関連を持ちまして役立ち得る場合もなきにしもあらずというふうに考えるのでありますが、原則的にはそういうことに漁業権証券を使われるということは、いろいろ問題があると思うのであります。それからまた資材の問題につきましては、これは現在漁網等については統制が撤廃になつておりますが、しかしながら石油等において、解けかかつてはおりますが、まだ残存しておるのであります。従つて石油等におきましては、災害地の方に、いわゆる原油の配置といいまするか、その方に重点的に手配する、こういう方向に関係方面と連絡をとりまして措置を講じたい、こういうふうに考えておるのであります。この災害の融資ということは、言うべくして実際問題としてなかなかむずかしい問題でありますので、われわれといたしましても非常に頭痛をいたしておるわけでありますが、とにかく応急的にあつせんすべきものをあつせんいたしまして、続いて今後のごともございますので、半恒久的な裏づけというものを講じて参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  87. 川村善八郎

    川村委員 ただいま御提出になりましたこの漁業災害復旧資金融資に関する臨時措置法案は、まことに内容においてはけつこうであります。ただ一つお伺いしたいことと、さらにこの法案を提出するずつと以前に司令部と折衝したことがありますので、それらの経過等もあわせて申し上げて御所見を承りたい、かように考えております。  そこで第二條の二行目に、「損害を受けた所有者で漁船等の復旧のために融資を受けようとするもの、又はその者の加入する水産業協同組合でその組合員の漁具等の復旧のために融資をしようとするもの」つまりこれから解釈すると、組合員でない者でもこれの恩典に浴することができる、それから漁業協同組合に入つている者は、もちろんその組合の融資を受けることができる、そういうふうな考え方で立法したものと思います。そこで奥田課長の言われたところによると、予算がまことに微々たるものであつて、協同組合などの手を経て手続をした時分には、すでに個人で早く手続をした者が先取特権を持つているというようなことになりはしないかという心配があるのであります。たとえて申し上げますれば、この法律案から見ますると、大事業家もこの恩典に浴することができる。それから零細漁民もできると非常に大幅になつておるから、ただ單に考えるとまことにけつこうでありますが、今獲得しようと考えておる予算の率からいうと、全部に行き渡ることができないのじやないかという心配があるのであります。そこでまず東京などに本社を持つておるようなところは、ただちに農林大臣あるいは水産庁と折衝して借りる方法をとれるが、九州なりあるいは北海道におる漁民は、手続や何かしているうちに、近い者に先んじられるというおそれがあるので、私はこの際漁業協同組合の育成強化という点からいつても、組合に加入しておる者のみに補償をしてやるということがいいのじやないか。——これは私の考えであります。なぜとなれば、大きい会社等は一割や二割五分の損失補償をしてもらわなくとも、また利息の補喧をじてもらわぬでも、おそらく金融かすらすらと進むのじやないか、それに引きかえて、個人はなかなか協同組合から融資を受けるというわけにも参りませんし、また地元銀行からの金融も容易でないので、むしろ私はこの際協同組合員たる漁民にのみこういう法律を適用して、そうして漁業協同組合というものを信頼させることと、またそうした組合員によつて育成強化してやることがほんとうでなかろうか。そこで予算が大幅にとれるときになつて、初めて全般の漁民にそれが均霑するような方法がとられることが妥当でないかと考えるのですが、この点について奥田課長あるいは山本次長のお考えを率直に聞かしていただきたいのであります。  それから法律をあなた方が考えておつてまだ出ない前に、まだヘリングトンが在京中、この問題について意見を伺つたことがあります。そのときの意見としては漁船漁具、これらを不漁の場合、つまり凶漁の対策としても補償すべきではないか。今までは義務づけられて、長い間統制にひつかかつて安い値でも供出しなければならないときであつた。しかるに同じ立場にある農民は、農業保険法によつて凶作の場合は救われておる。漁民は同じ強制統制で出荷しておるときにこの恩典に浴すことができないのだが、この点においてどう考えるかという私の質問に対して、ヘリングトンが私らも実は農業と漁業と同じように、災害補償をしてやらなければならぬということは考えておるが、漁業は農業と違つて非常にめんどうだ。であるからせめて災害の場合の漁具補償等はするべきであるという意見があつて、その後ダレス特使が参りまして、いわゆる五ポインドを発表する場合にこれが織り込まれたというようなことになつておりますので、おそらくオーケーはめんどうでないということも考えております。従つてただいまの御説明によりますと、大蔵省当局等の折衝の問題もまだできておらないということでありますが、幸か不幸か九州方面に大きな損害がありましたので、おそらく党内は一挙にまとまると思います。それでこの点は政府にまかしておくよりも、むしろ議員提出によつて委員全部の協力を得て押して行つた方が早いのではなかろうかと思いますので、この点もあわせて次長並びに課長の御意見を伺いたいのであります。
  88. 松田鐵藏

    松田委員長代理 次会は二十七日土曜日午前十時より開会することとし、本日はこの程度で散会いたします。     午後四時四十七分散会