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1951-10-16 第12回国会 衆議院 水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月十六日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長代理 理事 松田 鐵藏君    理事 林  好次君 理事 上林與市郎君       石原 圓吉君    小高 熹郎君       川端 佳夫君    川村善八郎君       田口長治郎君    田渕 光一君       永田  節君    福田 喜東君       小松 勇次君    水野彦治郎君  出席政府委員         水産庁長官   藤田  巖君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁次長) 山本  豐君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)     松任谷健太郎君         海上保安庁長官 柳沢 米吉君         海上保安官         (海上保安庁警         備救難部長)  松野 清秀君         専  門  員 徳久 三種君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  水産資源保護増殖及び漁業取締に関する件     ―――――――――――――
  2. 松田鐵藏

    松田委員長代理 これより水産委員会を開きます。  水産資源保護増殖及び漁業取締に関する件を議題といたします。政府においては水産資源保護増殖をはかるため本国会漁業法の一部を改正する法律案の提出を準備されておるようでありますが、本委員会におきましても、これが審査の愼重を期するため、あらかじめその内容及びこれに関連する取締り対策等につきまして政府より説明を聽取しておきたいと思います。藤田水産庁長官
  3. 田渕光一

    田渕委員 議事進行について……。本日の議題外のことでございまするが、緊急を要するものでありまするので、一応各委員にお諮りするのであります。実は平和條並び安全保障條約の特別委員会が明十七日の午後から総理大臣説明を聽取して、十八日に総括質問をすることになつております。この平和條約及び安全保障條特別委員会の審議の運営方法といたしまして、わが党からは総括質問池田正之輔君北澤直吉君、塚田十一郎君の三君がやるのであります。塚田君が主として財政、北澤君は外務関係あるいは海外同胞引揚げ等をやるのであります。これに対して池田正之輔君農林委員会あるいは水産委員会重大部門を発言することになつておりますので、その池田君に予備知識を與え、資料を提供するために、至急に理事会を開くなりあるいは委員各位との打合せ、同時に水産庁当局との打合せ業界代表との打合せ等を緊急にやられまして、少くとも今夕までに資料準備を願いたいのであります。そうして明日午前中に担当の池田正之輔議員にこれを渡しまして、あすの総括質問準備をさせたいのでございます。これは御承知通り、今回の平和條並び安全保障條約、ことにこのラインの問題、漁業権問題等漁業関係のある重大なる問題でありまするから、委員長において適当に処置されんことを望むということを発言した次第であります。
  4. 松田鐵藏

    松田委員長代理 ただいま田渕君からの御発言に対して、この委員会が閉じたあと、ただちに政府当局委員会懇談会を開きまして、そこでその方法を協議したいと思いますから御承知を願います。
  5. 藤田巖

    藤田政府委員 本国会政府から提案予定いたしておりまして、不日付託に相なろうかと思つておりますが、この漁業法の一部を改正する法律案につきまして、一応その趣旨を御説明しておきたいと考えております。  この法律案先国会以来の懸案のものでございまして、いわゆる漁業制度改革を円滑に実施するとともに、例の総司令部から参つております五ポイント計画のうち第一ポイント、すなわち濫獲漁業禁止という事項に関係をする措置といたしまして、これを実施いたしたいと考えておるのであります。その内容はお手元に法律案及び法律案要綱がございますので、これをごらんいただきたいと考えております。これはただいま述べました第一ポイントにおいて指摘されております濫獲漁業禁止することによりまして、水産資源の枯渇を防止するために、この法律案に規定されておりますところの漁業の、今後の増加趨勢をとにもかくにも停止するということをねらいとしておるのであります。ところで漁業許可権限自体都道府県に委任をするのでありますが、その許可し得るわく総額自体を中央で把握しておきまして、その増加趨勢を停止しようというのがこの法律案調整方式考え方であるわけであります。この問題については、すでに前国会で、御承知通り司令部のアプルーヴアルも参りまして提案する運びにまで行つてつたのでありますが、ただこれを裏づけるべき予算措置の見通しがまだつきませんので、これを上程する運びにまではならなかつたのであります。今回この補正予算におきまして、小型機船底びき網漁業につきましては約二億六百万円、瀬戸内海機船船びき網漁業につきましては二千万円が認められた、これに関するところの取締り態勢もある程度整えて行くことができるようなことに相なりましたので、これをすみやかに実施いたしたいというのであります。  次に本法律案具体的内容について御説明申し上げますと、第一は中型旋網漁業であるわけであります。現在旋網漁業は、すべて都道府県知事許可になつておりますが、全部で約三千という数に達しておりまして、さらに増加傾向にあるのであります。前述いたしました趣旨にのつとりまして、六十トン以上のいわゆる大型船は、すべて大臣許可漁業といたしました。五トン以上六十トン未満中型般で、特殊海域として農林大臣が指定する予定であるところの三陸、日本海中部及び日本海西部海域において操業するものは、大臣許可漁業とする。その他のものは本法律案の規定するところでございますが、これについては農林大臣が各都道府県別ごとに定めるわくの範囲内で都道府県知事許可をするということにいたしたい。さらに五トン未満小型船は、従来のままで知事許可にまかすという方式調整をいたしまして、これらの増勢の傾向を極力押えて行くという考えであるわけであります。なお初めの二つの形態のものは、別途農林省令を制定いたしまして、これを規律する予定でおります。  第二に小型機船底びき網漁業でありますが、この漁業は現在機船底曳網漁業取締規則第二十六條の二の規定によつて規律されておるものを主とするのでありますが、いわゆる以東底びきと言われる許可漁業機船底びき漁業とは取扱いが異なつておりまして、これは従来知事許可にゆだねられておるのであります。ところで小型底びきは技術の進歩とともに漁獲能率も高まり、かつ僅少な資本で可能でありますことから、零細漁民が容易に入りやすいというようなことから、沿岸至るところで操業されております。戰時、戰後の秩序の弛緩から無許可操業が常態化するようなかつこうであります。その数は三万数千にも達しておるのでありまして、沿岸漁業秩序維持にゆゆしい事態を惹起いたしておるわけであります。従つて制度改革との関連からも急速にこの漁業秩序を回復するとともに、あまりにも資源との不均衡を来たしております点を是正いたしますために、農林大臣が直接都道府県別許可わくを定めまして、適正な操業トン数減船いたしまして、漁業自身の健全な発達と、ほかの漁業との円滑を期そうという趣旨でございます。  第三に瀬戸内海機船船びき網漁業でありますが、この漁業はいわし及びその稚魚を採魚の対象とするのでありますが、御承知通り小さいものが値段がいいということから、勢い小さな魚の濫獲を来たしているのでありまして、現在のままにこれを放置することも資源関係上重大な影響があると考えるのであります。従つてこの漁業につきましても、特に緊急の必要のございます瀬戸内海におきまして、現在一方予算的の裏づけに伴いまして、農林大臣が定めましたわく以上の許可トン数は認めないというような措置で、減船をいたして行きたいという考え方でいるわけであります。  以上が近く提案を予想しております漁業法の一部を改正する法律案の大体の内容でございます。
  6. 小高熹郎

    小高委員 ただいま水産庁長官から漁業法の一部を改正する法律案につきまして説明がございましたが、この間私どもが心配しているのは、かような基礎ができましても、取締りが徹底できるかという問題でありまするが、この点につきまして、先ほどの説明によりますと、具体的な方法がまだ説明されておらないのであります。その点についてお尋ねをいたしたいのであります。
  7. 藤田巖

    藤田政府委員 取締り関係につきましては、従来とも御承知通り水産庁において自分の船をあまり持つておりませんので、海上保安庁方面の非常な御協力によりまして取締りに従事しているわけであります。今回特に濫獲漁業整備に伴いまして、取締り関係につきましても若干の予算補正予算において認められているわけであります。補正予算において認められているものは五十トン、二百五十馬力の新造船一隻、それから用船といたしまして三隻、金額が三千四百五十万四千円、それから中型底びき網漁業取締り関係では、新しく用船がさらに二隻認められております。この金額は七百六十八万一千円、従つてこれだけは従来の取締り船にさらに追加をして操業されることに相なつたわけであります。もちろんわれわれは決して十分と思つておりませんので、今後とも保安庁関係ともいろいろよく連絡をいたしまして、この問題については万全を期して行きたいと考えております。
  8. 小高熹郎

    小高委員 法律はつくりましても取締りが徹底しておらないと、空文に帰するおそれがあるのでありまして、現に全国各地においてこの空文が盛んに横行しておつて、官庁の権威いずこにありやということを感ぜざるを得ない状態でございます。こういうことから考えまして、今後の講和條約後の祖国日本が、国際的にはなはだしく活動して行かなければならぬ、ことに水産をもつて立国の是として行かなくてはならぬということを考えますとき、少くとも沿岸漁業におけるところの取締りが徹底しておつて、そして漁業者事故が非常に少いということにならなければ、国際的な信用を回復することはとうていでき得ないということを思いまするとき、業者の自粛的なる行動はもちろんでございまするが、この種の取締りについては一段と強められなければならぬ、さようなことを考えます。ただいま水産庁長官からの御答弁によりますと、五十トン、二百五十馬力を一隻新設し、用船を三隻であるとか、あるいは中型機船底びき網取締りについては二隻を用船するとかいうお話でありまするが、われわれは現在の実情を知つておる者の一人といたしまして、こんなことではとうてい問題にならぬ、この種のものでは結局ナンセンスに終つてしまう、一つの笑い話に終つてしまつて、法はできたが、答えは出ないということになるのではなかろうかということを非常に憂えるものであります。先ほどの御説明によりますると、海上保安庁連絡をとつてやるそうでありまするが、海上保安庁においては、いかなる具体的方策を持つておられるか、それをお尋ねいたしたいのでございます。
  9. 柳沢米吉

    柳沢説明員 海上保安庁といたしまして、現在の漁業に関することを申し上げます。漁業法関係違反の大部分は、機船底びき網漁業の無許可の問題、禁止区域における操業というような問題がございまして、この違反状況を地域的に見ますると、瀬戸内、伊勢湾、三河湾、遠州灘方面が最も多く、しかも近ごろ長崎県沿岸及び日本海方面等においても、次いで起つて来るわけでございまして、またこの辺に関しましては、地元の沿岸零細漁民と他府県の底びき漁業船との対立抗争という問題も激化しておるように見受けられるのであります。しかしこの点に関しましては、漁業法の改正その他によりまして緩和されるのではないかというふうに見ておりますが、取締り方面から申します整備状況を申し上げますと、北海道方面におきましては、第一管区と申しますが、ここには巡視船十二隻、補助巡視船五隻、港内艇十隻、計二十七隻というものが配備してあります。第二管区は、塩釜に本部がございまして奥羽一円を持つておりますが、ここに巡視船十隻、補助巡視船三隻、港内艇八隻、合せて二十一隻の配備をいたしております。第三管区は、横浜を主体とした関東地方沿岸でございますが、巡視船三隻、補助巡視船二隻、港内艇十六隻、合計二十一隻の配備をいたしております。第四管区は、名古屋方面で、巡視船四隻、補助巡視船一隻、港内艇七隻が配備してございまして計十二隻ということになつております。第五管区は、四国沿岸及び近畿地方でありますが、巡視船五隻、補助巡視船一隻、港内艇十六隻を配備しております。第六管区瀬戸内におきましては、巡視船六隻、補助巡視船三隻及び港内艇十九隻が配備してあるわけであります。九州方面におきましては、巡視船二十五隻、補助巡視船四隻及び港内艇四十二隻が配備してあります。なお日本日本海方面でございますが、舞鶴におきましては巡視船九隻、補助巡視船一隻及び港内艇十一隻の配備をいたしております。新潟方面におきましては、巡視船四隻、補助巡視船一隻、港内艇四隻ということに相なつております。  これによりまして巡視船が七十八隻、補助巡視船二十一隻、港内艇百三十三隻、そのほかに用船二隻ということに相なつておりまして、現在のところ各種の沿岸海上の治安の確保に当つている状態でございます。しかしながらその任務は多岐多様にわたつておる関係で、まだまだ十分とは申されぬのでございますが、極力水産庁の方と連絡いたしまして、漁業取締り方面には十分なる力を入れて行くつもりでおるわけでございます。
  10. 松田鐵藏

    松田委員長代理 議事の都合上ちよつと休憩をいたします。     午前十時五十七分休憩      ――――◇―――――     午前十一時二十分開議
  11. 松田鐵藏

    松田委員長代理 これより会議を再会いたします。
  12. 小高熹郎

    小高委員 先ほど海上保安庁長官からの私の質問に対する答弁によつて巡視船予想外隻数が多くある、こう私は察知し得たのでありまするが、この巡視船がいかなる行動をとつているか、あるいは事故が起きたとき、または監視船としての使命を果すとき、モーシヨンが鋭いか、緩慢であるか、こういう点に思いをいたしますとき、幾多の疑義を持たざるを得ないのであります。先ほど新潟県からるる陳情がございましたが、私は先年新潟県の海域帶及び佐渡をよく見て参りましたので、一応事情は了承できるのでありまするが、これに対しても取締りがなつていない。ことにこの取締りの点について想いをいたしますのは、取締りもきわめて迅速でなければならないのでありまするが、水難救助の点について一言触れざるを得ない。これは取締りに対して刺激を加える意味において申し上げるのでありますが、本年の春、千葉県の銚子沖合いにおいて難破船があつたので、ただちに銚子海上保安本部連絡いたしますると、出動するということになつてつたのでありまするが、ぐずぐずしておつた。そのうち外川港を中心とする漁夫が身命を賭して、怒濤を越えて大体救助終つたあとで、のこのこ海上保安庁救助船が出かけて行つた。そうして結果の報告はどうであるかというと、わがもの顔に、全部自分たちの手柄であるように本部へ報告した。この事実は外川及び銚子漁民の非常に激昂するところと相なりまして、私に対して、かような態度は許されぬことであるから、強く政府に対して反省を促してもらいたいという希望があつたのであります。当時役所に対しては、るるこの問題について進言しておいたのでございまするから御承知と思うのでありまするが、そういうことを思いまして、ただいま問題になつている監視船の問題、これは水産庁においてはきわめて隻数が少いのでありまするから、せめて海上保安庁巡視船監視船の役割をすると思いまするが、このモーシヨンがたくましくて、法とともに必ず答えを出すという姿があるならば、先ほど新潟県からかような悲痛な陳情があつたというような結果もないのではなかろうか、こう思いまするとき、私はこのスローモーシヨンの船及び役所の存置は好ましくない。しからばモーシヨンを強めるにはどうしたらいいか、そして活発なる活動を促すにはどうしたらいいか、それは人である。ゆえに人事の交流等行つて、今までのような行動でなく、もつとたくましい行動がとり得られるかどうか。もしその具体的資料がほしいというならば、いささか資料も持ち合せておりますので、後刻開陳いたしてもよろしゆうございまするが、これらに対して海上保安庁長官の明快なるお答えを願いたいのであります。
  13. 田渕光一

    田渕委員 この問題はまことに長い間の問題でありまして、かようなことは、今日新潟港漁民一同から陳情を受けるまでにとつくに片づいていなければならぬ問題であります。まことに取締り当局の不徹底とだらしなさを詰問するものであります。ことに海上保安庁長官に聞きたいのでありますが、かつて保安庁が大きなスキヤンダルを出して、それが行政監察特別委員会で調べられた当時に、あなたが次長として出られて私は知つている。その精神がやはり末端にまだ行き渡つていない証拠ではないか。このことが本年の北海道行政監察調査においても、北の海区の取締りがなつておらぬ、経費が足らぬとか、どうとかではない。一つ志気の問題である。今の小高委員の問題に対してはその通りでありますが、一体新潟港にどういう設備をしておつて、どれだけ巡視船があるかということをはつきり答弁していただいて、それから私は聞きましよう。
  14. 柳沢米吉

    柳沢説明員 第一の取締り敏速であるかどうかという点、これが対策、こういうことについてお答え申し上げます。保安庁が発足いたしまして三年半に相なります。発足当時におきましては老朽船その他でありまして、あるいは行動敏速を欠いておつた点があるやに見受けられます。先ほど数字を申し上げました巡視船につきましては、大部分が新しい巡視船になつて来ております。しかもこの巡視船行動に関しましては、常に留意をいたしまして、敏速果敢ということをモツトーにしてやつております。最近においては、われわれ内部の人間といたしましても、相当志気があがり、敏速行動をしているように感じておる次第であります。  なお人員その他の整備という点は、御指導によりましていかような方法でも、国のためになる方法であるならば、ぜひ取入れて御指導を仰ぎたい、かように考えておる次第でございます。  なお海上保安庁が現在新潟にどれだけ船を持つておるかという御質問でございますが、現在新潟におきます船は巡視船が二隻ございます。港内艇が二隻ございます。その付近を申し上げますと、伏木巡視船二隻、港内艇一隻ということになるのであります。そのほかに巡視船に準ずる船が伏木に一隻あります。これは現在修理中でございますが、すぐ修理を終える、かように私は考えております。
  15. 田渕光一

    田渕委員 巡視船二隻のトン数馬力港内艇二隻のトン数馬力説明を伺いたい。
  16. 松野清秀

    松野説明員 お答えいたします。新潟に現在置いております巡視船は、一隻は四百五十トン型でありまして、速力は大体最高十五ノツトであります。それからもう一隻は戦時中の特別駆潜艇でありまして、これは御存じの通り木造船で、速力もせいぜい十ノツトのものであります。港内艇は最近建造いたしました十二メートル、速力約十三ノツト程度のものが一隻と、一隻は古い港内艇でありまして、あまり港外へは出られないというような状態のものであります。  それから伏木に配属いたしております巡視船のうちの一隻は、ただいま申し上げました新潟におきますさどと同型であります。もう一隻は約百四十トン程度の、これは戰時中使つておりました飛行救難艇でありますが、この船は大分状態が悪くて、現在速力について申し上げましても、十ノツト程度のものです。なお新潟伏木につきましては、本年末までに二百七十トン型の新しいのを配船する考えでおります。
  17. 田渕光一

    田渕委員 四百五十トンからの十五ノツト出る船ならば、私はレーダーの設備はしておると思つておる。そのくらいのことはさしておるはずであります。そうすれば、このくらい大型のものならば二十トン、三十トンの小型底びき船が集団でやつて来るのを巡視しておつて、ガスの中でも発見されなければならない。しかるに海上保安庁がなめられておるということが、この陳情書の一項を見てもわかる。九月二十八日――約一月前になりましようが、今後はいかなる禁止区域でもその取締りに拘束されず、断固行動を起す、こういうような決議をするということは、第一水産庁当局取締船もなめられておるし、海上保安庁当局もなめられておるからこういう結果になる。嚴として取締りをしておるならば、こういう決議をするはずはない。いかにあなた方が何ぼ予算をとつて船をつくつても、やつておる人間精神を與えなければ何にもならない。われわれが現地で乘つてみましても、北海道あたりでも青年がよくやつておる。その機艇内の様子もよくわかりますけれども、指揮系統が乱れておるからこういうことになる。大体なめられておるから、こういう決議をして来るということになる。だから嚴重取締る意思ありやいなや、ただちに指令してやる意思ありやいなや、これを警備部長に伺いたい。長官からもこの答弁を一ぺん伺つておきたい。
  18. 柳沢米吉

    柳沢説明員 海上保安庁といたしましては、今までもこの件については相当全国取締りをしておるわけであります。現に密漁につきまして、昭知二十五年八月から昭和二十六年七月三十一日までの一年間におきまして、密漁検挙件数は二千七十八という件数に及んでおります。なお人員にしまして二千四百五十何名ということに相なつております。従いまして各方面において、密漁については断固取締りの方向をとつております。しかしながらまた先ほどの陳情にもありました通り監視の目をくぐつて行うということも、また密漁の方でも相当にやつておることも聞いております。しかしながら海上保安庁といたしましては、もし今回の場合につきましても、禁止区域に対して法を無視して入るというようなことが起りますならば、断固として取締る決心を持つておるものでございます。
  19. 田渕光一

    田渕委員 長官にもう一言伺いますが、この取締りに対して、あなたの方へ政治的圧力、あるいはまたその他のボス的事業界圧力と言おうか、妙な手が伸びたようなことはございませんか。それをはつきり伺つておきたい。
  20. 柳沢米吉

    柳沢説明員 そういうことは絶対にありません。
  21. 田渕光一

    田渕委員 まさしくそうでなければならぬと思います。将来といえども、いかなる政治的ボス活動その他がありましても、国会水産委員会がついておるのだという決意を持つて、しつかり、断固として取締つていただきたい。ことに陸上取締りに対しまして――漁獲した品物を陸上に揚げる場合に、国家警察あるいは新潟なら新潟自治警察等陸上警備取締りのなにが一つのなわ張り争いに――熱心の余りのなわ張り争いでなくして、取締り自治警察あるいは国家警察海上保安庁あるいは経済調査庁、こういうようなあらゆる部面の責任のなすりつこをしていることが、一つ業者の食い入るところではないかということを、われわれは行政監察委員会として取調べた当時に記憶しております。かような意味において、国家警察並び新潟自治警察あるいはその他の取締り当局と十分に緊密な連絡をとつて、そうして海上におけることは、今長官答弁されたように、嚴重海上保安庁取締つていただきたいと思うのであります。  それから水産庁長官にお伺いいたしますが、水産庁取締船は今日まで一体何をしておつたかということについて、ひとつ答弁をしていただきたいと思います。
  22. 藤田巖

    藤田政府委員 水産庁取締船は非常に貧弱でございまして、従来一隻を予定いたしておるわけでありますが、率直に申しまして、あまり積極的な活動をするところまでには至つておりません。
  23. 石原圓吉

    石原(圓)委員 幸い保安庁長官水産庁長官のおそろいのところでありますから、今後の日本海上保安のあり方につきまして承つておきたいのであります。漁業の面から申しますると、マツカーサー・ラインというものがあります。このマツカーサー・ラインは、日本関係諸外国との漁業の協定が成立すると同時に消滅されるというのが大体の見通しであります。たとえば批准交換の成立した以後において自然消滅になるか、あるいはそれ以前にマツカーサー・ラインの撤廃を宣言するか、いずれかの方法によつてマツカーサー・ラインはなくなると思うのであります。そのなくなつた場合に、日本漁業者を保護するのにはどうするか、この問題であります。すでに陸の方におきましては、いわゆる軍備の前提といたしまして、警察予備隊が現在非常な努力をして将来の方向を定めんとしておるわけであります。すなわち海上保安庁は、いわゆる将来の海軍として進むべき性格を帶びておるものといわなければならぬと思うのであります。その場合において、海上保安庁は、いわゆるただいまの警察予備隊のごとき心構えをもつて、将来の、しかも近い将来の軍備を充実する用意がおありになるかどうか、まずこの点を一点お尋ねをして次の資問に移りたいと思います。
  24. 柳沢米吉

    柳沢説明員 海上保安庁といたしましては、現在のところ、現在の考え方すなわち海上の安全の確保、海上の治安ということを目標といたしまして将来も進んで行くべきものではないか、かように私は考えております。ただ政府がどういうふうな方向をとられるか、議会でどういう方向をとられるかは、われわれの関知するところではないのであります。いずれにいたしましても、マツカーサー・ラインその他の撤廃後における諸種の問題において、海上の安全の確保という点については、他に機関のない限りわれわれが責任を持つてやるべきであつて、それに対する対策はわれわれとしても考えておくべきではないかというふうに思つております。
  25. 石原圓吉

    石原(圓)委員 私がただいま承つた程度では、長官の御方針は非常に消極的であるように考えられるのであります。少くも政府に向けて、また政党に向けて、遠大なる構想そのものを進言するというところにまで長官の立場は進んでいなければならぬように私は考えるのであります。戰争前は、日本漁業者は露領カムチヤツカ方面に対しても、海岸三マイルまでは進出しておつたのであります。また赤道直下を突破してまぐろ、かつおの漁業者は進出しておつたのであります。今度漁業協定が成立するにあたつて、ぜひとも戰前の状態に復帰して、日本漁業の拡張をはかりたいというのがわれわれの念願としておるところであります。その問題が成功するに最も必要なものとして、それらを後方から援護するところの保安庁の任務は重大なるものでなければならないと思うのであります。マツカーサー・ラインを撤廃するしないにかかわらず、現在困つておるのは以西底びきであります。支那海及び朝鮮海においては、たとい批准交換以後においても、ソ連や中共とさつそく漁業の協定ができるとは思えないのであります。逆に彼らが日本の近海に漁業として進出して来る場合には、だれがその防禦をするかと申しますと、海上保安庁の力と水産庁における取締り船の力にまたなければ、何ら防衛のないところの漁船が進出するわけにはいかないのであります。現在すでに支那海において非常な脅威を受けておることは御承知通りであります。しかるに最近のわれわれの見るところでは、水産庁保安庁との間に、この取締りの方針が徹底しておるかどうかということについて、はなはだ不安なる点があるのであります。海上保安庁にまかせておいてはいけないという気分が水産庁の一部にはあるのではないか、また水産庁にまかせておいてはやれないというので、保安庁自分の手でやらなければならないという点、この点が一致しないために、はなはだ不徹底な状態に現実にあるのではないかと思うのであります。現に私の県では、伊勢湾に三重県自体で取締り船をみずからつくらねばならぬという漁業者自体からの要望が沸き上つて来ておるのでありまして、あるいはこの冬の県会では、一隻の取締り船を建造することになるかと思うのであります。これらのことは、私がただいま申し上げるところの、保安庁水産庁との間に緊密なる精神的な連繋がないという点にあると私は思うのであります。この点に対する現状並びに将来に対する御方針、この点を水産庁長官保安庁長官よりはつきりと御説明を願いたいのであります。
  26. 藤田巖

    藤田政府委員 ただいま石原委員から、水産庁保安庁との間において、何か漁業取締り上あまりしつくりしていないというような意味の御質問があつたかと思いますが、漁業取締りは水産庁としても非常に関心を持つております。しかしながら水産庁は、御承知通り取締船が非常に貧弱であつて、とうていこれではやれないわけであります。そういうようなことからいたしまして、常に海上保安庁といろいろ御連絡をいたしましてやつておるつもりであります。今後ともそういう点については、一層緊密な連絡をして進んで参りたいと思つております。  それから次西底びきの取締りにつきましては、これは沿岸取締りというよりも、むしろ非常な沖合いの取締りであります。そういうような考え方からいたしまして、従来水産庁で特に別の用船をいたしまして、八隻でありましたか用船をいたしてやつておりますが、これも今後日本が自主権を回復し、海上保安庁自身が独自の自主的な立場から海上の治安に任ずることになりますれば、おのずからその活動範囲も――従来のいろいろの制限もまたなくなつて来て、活発なる活動ができることを私どもは期待をいたしております。それで今後一層緊密なる連絡をとりましてやつて参りたいと思います。
  27. 柳沢米吉

    柳沢説明員 今藤田長官からお話がありましたが、水産庁海上保安庁とは、相当に緊密に今までやつてつたつもりでおります。しかし御指摘のような点がないかと憂えまして、今後なお一層注意いたしまして、連絡をいたしてやつて行きたいと考えている次第であります。  なお今御質問のございました、将来に対するお前の計画ぐらいは出したらどうかというお話でございますが、われわれといたしまして、個人的にはいろいろ考えておりますので、御必要でありますれば御指導を仰ぎつつ私の方で思つていることも席を別にして申し上げたいと思います。
  28. 石原圓吉

    石原(圓)委員 日本人は今後漁業に進出しなければならないということは論のないことでありまして、ただいま問題になつている以西底びきの方面、いわゆる支那海、朝鮮海、アリユーシヤン郡島及びカムチヤツカ方面、これもいかなる困難を打開してでも、近い将来日本漁業が進出し得るようにしなければならない、そのことに渾身の努力を拂わなければならないと考えている次第であります。  また最近にアメリカ、濠州、日本等の間に、最初に太平洋の漁業の協定が成立するのでなかろうかと思われるのであります。その場合において何が一番必要であるかといえば、あの広い海面を日本漁業者が安心して自由に漁業に励むようにするのには、いわゆる海上保安であります。密漁取締りというよりは、海上の安全を守つてやるという点に重点がなければならぬと思うのであります。この観点から保安庁水産庁は、今後一層密接なる連繋のもとに、理想的な漁業者の保護をはかるところの施設を急速に実現するように、切に希望する次第であります。私が今日まで承つているところでは、保安庁の船に乘り込む人たちは外地から引揚げて来た人であるというか、とにかくも少し荒つぽい粗雑な人たちが相当乘り込んでおつた。そのために密漁をせなければならぬ時期には、密漁の任務を果すべく地方より出て来て、家には姿を見せないというようなこともしばしばあつたという説もあるのであります。これは單に保安庁の乗組員、また水産庁取締船の乗組員のみにまかしておくということはいけないと思うのでありまして、これはそのもよりの漁村、漁業者の代表者が交代にその般に乘り込んで、そして協力して取締りのことや、保護のことをやつて行かなければならぬと思うのであります。それらは水産庁保安庁の密接なる連繋によつて今後改善されることは間違いないと思うのであります。どうかこの日本の周囲の広大なる漁場に進出せんとするところの日本漁業者のために、保安庁水産庁は、安心して漁業に従事できるような方策をとることを、特に切望するものであります。それらの案に対しては、私案にかかわらず、また庁内の案にかかわらず、私どもはそれをお示し願つたならば、それの実現に対しては渾身の努力を拂つて行きたいと考えておる次第であります。この希望を述べまして私の質問を打切ります。
  29. 永田節

    ○永田委員 違反取締りに関連いたしまして、引続いて水産庁長宙にお伺いしたいのでありまするが、先ほど石原委員からも御説明がありましたように、外国と日本漁業協定を結ばんとするにあたりまして、かような違反船が日を追つて増加するということは、日本水産のためにすこぶる遺憾に思うのであります。この影響がいかなる結果をもたらすかと申しますと、勢い遠洋漁業がはばまれまして、従つて従来の動力船が沿岸漁民を圧迫する、その結果は、沿岸漁民がますます窮地に追い込まれる、かようなことになつて参るのであります。若干日本水産行政に食い違いもありまするが、いかがと思われる漁業制度の改革が急遽実現を見なければならぬ、かような今日の状況におきまして、これらの違反船を取締るということは、技術の面におきましても、すこぶる困難な点が予想されます。しかしあえてこれを行わんとすればできないこともない。今日水産庁が扱つておりますところの違反事項は、漁業制度を改革した、この進歩した法律の実施にあたりまして逆に違反船が年々増加しつつあるということは、――さきに北海道のさんまの漁期違反、または有明海におけるところの一方的の漁区の告示、能登半島の旋網並びに浩岸漁業のトラブル、いままたここに新潟県の陳情を受けております。これらは、法律精神というものを水産庁がよく御理解がない。法律精神というものは、善良なる漁民を救済する、法律によつて保護する、しかしその半面において違反船のあつた場合は最大限にこれを処罰しなければならぬ。この処罰という対象があつて初めて善良なる漁民が安んじて業につくことができる。乏しい予算の中で、沿岸漁民にはお気の毒でありまするが、あたたかい手を差延べることができない。違反船に対して政府は、何ら躊躇することなく凝つては百錬の鉄となり、鋭利かぶとを断つがごとき断をもつて臨まなければ、かようなことは将来といえども容易に防ぎ得るものではない。過般所々に起りました違反船処罰の行政処分の実情はどうだ。まことに緩慢ではないか。この違反船を今日かもし出しているところの原因は、水産庁みずからの責任であるということを反省してもらいたい。私の意見としては、この違反船の違反処分は、單に行政処分にとどまることなく、刑法も併科してしかるべきだと思う。また法律はさようなものになつていると私は承知いたしております。しかるに水産庁が現地に調査に参りましても、業者との話合いがついたとかつかないとかいうことで、あやふやに今日までなつておるのが実情である。さような緩慢な態度が、今日かくも密漁船を無政府状態の乱暴な百鬼夜行の状態に追い込んだということが言えるのである。ただいまの私の質問に対して水産庁は、将来かような違反船の取締りに対して嚴重取締る気があるかないかということを、簡單でよいから誠意のあるところを示してもらいたい。
  30. 藤田巖

    藤田政府委員 われわれといたしましても、今後漁業秩序の確立をして、悪質なる違反に対しては断固として嚴重なる処分をもつて臨む、しかもそれはやはり取締力の充実に伴いまして、御趣旨のような点に沿うて進みたいと考えております。
  31. 松田鐵藏

    松田委員長代理 長賞に私から申し上げますが、先ほどの陳情書のあの決議文にあつたような、ああしたことをあえて行う漁民があつたとしたならば、長官はどのような考えをもつて臨むか、この点を委員長の立場からお聞きしておきます。
  32. 藤田巖

    藤田政府委員 この新潟における底びきの問題は、従来とも非常にむずかしい問題であるわけであります。われわれといたしましては、やはり国法はあくまでもこれを守つて行かなければならぬと考えております。それと同時に、またその国法自身がいろいろの実情に適してこれが調整されて行くということも考えなければならぬと思います。従いましてわれわれとしては、いろいろの点を今後十分研究をして、確実にこれを守らすべく、新しい法律について断固としてこれを守らせて行く、こういう行き方であります。
  33. 松田鐵藏

    松田委員長代理 長官に重ねて伺いますが、私は、あの決議文に対するあなたの意見を聞いておるのです。
  34. 藤田巖

    藤田政府委員 ただいま申しましたように、決議内容すべてにつきましては、いろいろ検討の余地もあるかと思います。従つて先ほど申しましたように、この問題については十分その真相も調査し、適当な秩序を確立いたしまして、それを守つて行くという線で、陳情趣旨は極力その線に沿つて措置したいと思います。
  35. 松田鐵藏

    松田委員長代理 違います。私は現在の法律の上においてあの決議文というものを、あなたはどう解釈するかということを聞いておるのであります。
  36. 藤田巖

    藤田政府委員 底びき網の人たちが、十五日以降一齊に何らの約束も受けずにやつて行く、こういう趣旨についてどう考えるかということでありますが、それについて私先ほどから申しておりますように、あくまでも正しい国法というものは守らす。従つてそれに違反するところの決議というものについては断固取締つて行く、かように考えております。
  37. 川端佳夫

    ○川端委員 それに関連して……。漁業法の改正に伴いまして取締りが非常に重要であるという問題から、取締りの方策ついての御議論がいろいろとあつたわけでありますが、この取締りの御議論を拜聽いたしておりまして、いよいよ焦点ははつきりして参つたことを、保安庁長官水産庁長官委員各位も大体おわかりになつて来ておると思うのであります。というのは、私は率直に申し上げまするが、今取締り強化の問題をあちらからこちらからついてみまして、結局その焦点になるのは、保安庁漁業取締りをしておることが妥当であるかどうか、こういう問題だと思うのであります。保安庁の任務もいろいろございます。ところが海上全般の保安秩序維持のためにある海上保安庁の任務の中に、漁業という特殊な業態の取締りをやるということについて、保安庁長官が腹の底からほんとうに自信を持つておられるかどうか。私自身としては、保安庁に置いておることが、むしろこういう難問題を惹起することになるという議論が起つて来る原因になつておると思う。漁業取締りは、むしろ一元的に水産庁がやるべきである、こういうふうに私は考えておるのでありまするが、こういう私の意のあるところについての保安庁長官のお考えを率直に伺いたい。
  38. 柳沢米吉

    柳沢説明員 お話のように、海上保安庁の業務というものは種々雑多ございます。その中で漁業に関しての問題につきましては、農林大臣の指揮を受けましてやるものであります。この密漁その他に対して一つの施設を行うということは、なるほど一面から考えますと、御議論としては正しいと思います。しかし海の問題に関する限り、しからば密漁に対して一つ取締りの船をつくるということを行い、また密貿易に対しても同じように行うという議論が必ず成立する。同時に不法出入国に対しても同じような問題が起り、また海難の防止についても、救助についても同じような問題が起る。これらを分散して設立した場合に、国家の経費は非常によけいかかり、不完全なもののみができ上るということになるのではないか。従いまして海上保安庁の任務といたしましては、海全体に関しては、ここに一本として初めて成り立つものだと考えておるものでございます。しからば漁業に対してどういうことを考えておるかということを申し上げますと、まずその海上保安庁の船をいかに使うかということにあると思います。たとえば暴風時期においては、非常に海難が起きてこれに全力を注いでおります。しかし一旦平穏な海になりますと、密貿易あるいは密出入国あるいは密漁というものが起るのであります。従いまして、その精力をそのときどきに応じて使つて行かねばならぬ。これが海における機動性のある船の使用の仕方であると考えております。従いまして海上保安庁といたしましては、現在の状態をもちまして、海の治安は分離すれば不経済であるという考えを持つております。しかしここにわれわれが考えなくてはならないことは、人員にしましてもその他にしましても、密漁その他の取締りについては、水産庁に対して十分なる連絡を必要とすると同時に、水産庁の最も経験ある人材を入れてやつて行かねばならぬ、かように考えております。
  39. 川端佳夫

    ○川端委員 ただいま保安庁長官の意のあるところを伺つたのでありますが、私は重ねて申し上げたいのは、漁業取締り保安庁がいろいろ予算関係――経費節約と言いますか、経済的な観点からやつて行くといたしまして、人材を水産庁から入れなければならない、こういうようなお考えも伺つたのであります。私はそれを言いたかつた。せめてここで私たちの考えておりまするように、理想的に水産庁自身で取締りをやるということが早急に実現されないといたしましても、保安庁漁業取締りの面に対しましては、水産庁からその関係の専門家を入れて取締りの完璧を期してもらいたい。保安庁のやつておられる取締りの実情をながめますると、計画的にやる違反漁業者保安庁取締りを決して苦にしておりません。この網をくぐつて行くことは非常に楽なことだというのが実情であります。それはなぜかと申しますと、漁業に対する専門的な知識がないからであります。保安庁長官はこの点をよくお考えになりまして、早急に專門家を配しまして、この粗漏な点を補つていただきたい。これを長官にお願いいたしたいのでありますが、御意見を伺いたいと思います。
  40. 柳沢米吉

    柳沢説明員 先ほども申し上げました通り、そういうふうにやりたいと考えております。
  41. 永田節

    ○永田委員 私はただいまの川端君の御意見に若干反対するのであります。端的に申しますと、やはり取締り海上保安庁にゆだねるべきだと私は思う。しかし水産の技術の面に乏しいという点はいなめない。たとえばこういうことがある。密漁の底びきを発見いたしまして、監視船がその船に至りましたときに、密漁船がなわを切つた場合はそれはわからない。まだそのほか多々ある。そこで密漁をいたしておりませんと言えば、ああ、そうかで見逃した場合がある。かようなことを防ぐ意味において、海上保安庁のサーベル、ピストルの船に丸腰の水産の專門家の役人が乘つて行つて協力をして押えるということは最も適切な方法であると思う。これは水産庁海上保安庁と双方の協議事項である。水産庁の役人が保安庁の船に乘つていけないという規則はない、拒む理由もない。そこで誠意があれば水産庁はみずから保安庁に頼んで乘せてもらうということが私は妥当じやないかと思う。これは川端君にまことに相済まぬが、私はかような意見を持つておる。しかしこれはこれで打切ります。  さて先ほど長官新潟県の密漁船に対して、今月の「十五日以降は海上ではどの官庁にも拘束されず、業界の生活権と職場確保に向つて断固として行動を起す。」かような激越な決議文が現に昭和二十六年九月二十九日の新潟日報に掲載されておる。この写しを私は今手に持つております。かような事態に即しまして、今日どういうようなお考えでおるのか、この事実をどういうふうに処理されるかということについて、あなたは、真相を調査されて、善処いたしますというような答弁でございますが、さようなことでは間に合わない。もうすでに行動が起つているかもしれない。この事実にかんがみまして、即刻海上保安庁は電話指令をもつてこの事実を警戒し、また水産庁長官はすみやかに係の者を派遣いたしまして、実情を把握いたしまして、場合によつてはこれを告発しなければならない。かような緩急よろしきを得る適切な処置をわれわれは希望しておる。それらをこれらの陳情の者が聞いて帰りたいと思つて、はるばる陳情に参つておるのじやないかと思う。この処置に対して私の意見が正しいか、諸君の意見が正しいかという返事を聞こう。
  42. 柳沢米吉

    柳沢説明員 海上保安庁といたしましては、先ほど申しました通り、事あらば断固としてこれを鎭圧するつもりでございます。その処置といたしましては、ただいますつと新潟とは二時間おきに無線電話をもつて連絡し、その情報をとつておりますが、現在のところまだ不穏に出て来るという空気は見えておりません。もしそういう事態が起りますれば、現在警戒船といたしましては新潟にありますさどNS23、のと、はやぶさの三隻を待機させておりますと同時に、第二管区におけるところの第六共同丸、みくら、及び第八管区におけるくずりゆう、おきの新船を用意いたしまして、準備を整えております。
  43. 藤田巖

    藤田政府委員 われわれといたしましてもあくまでも規則は守らせなければならないと考えております。これに対する処置につきましては、ただいま保安庁長官の回答と同意見でございます。
  44. 田口長治郎

    ○田口委員 関連して……。終戰後道徳が低下する、あるいは遵法精神が全然なくなる。これは陸上も海も同じことでございます。陸上の方はどうにか今日立ち直つておりますが、海の方はほとんど手がついていないというような状態でございます。そういう観点からいたしまして、かかる空気は全国至るところにあるのでありますけれども、今突発いたしておる、噴火しておる問題は新潟の問題で、これをまず第一に押えるということが必要でございます。そのためには私は無線で連絡をする、あるいは電報を打つ、そういうような処置ではなしに、この際むしろ警備部長あたりが新潟に飛んで行かれる、――あそこには本部が置かれる、こういう例を全国にぼつぼつつくるようになれば、たいへんでございますから、今できた第一発の問題をそのくらいの意気込みで鎮圧することが必要ではないかと思うのであります。幸い新潟は夜行で行きますと、翌朝ちやんと着く。一日いて夜行で帰られますれば、またその翌日は東京へ帰れる。大体この程度の距離でもございますから、むしろ警備部長新潟にどつしりと一応腰をすえられて、付近の配下にほんとうに海上保安庁としての精神のあるところを直接に伝えて、海上保安状態陸上に比べて一日握れておるところを、一日も早く取返していただきたい、こういうような考えを持つておるのでございますが、長官はその点につきましてどうお考えになりますか。一応お伺いをいたしたいと思います。
  45. 柳沢米吉

    柳沢説明員 海上におきます問題につきましては、治安問題としては保安庁が責任を持つております。御説の通り、現在の状況は逼迫しておりますので、本部長が新潟におりますから、これに指揮をとらせて、無線連絡でどんどん今やつております。従いまして、状況に応じて警備部長を差向けたいということも考えておる次第であります。
  46. 田口長治郎

    ○田口委員 私らが地方をまわりまして、いろいろ演説をして歩く場合があると思いますが、その際にいつも顔を見ているところの役者では人が集まつて来ない。また気分も新しくならない。こういう観点から申しまして、新潟本部長がおられるかもしれませんけれども、さらにこの際は本庁から責任ある人が行かれることが、指揮系統からいたしましても、あるいは地方の人の受ける感じからいたしましても、格段の相違があると思うのでございますが、重ねてさような意思があられるかどうか、お伺いいたします。
  47. 柳沢米吉

    柳沢説明員 御説ごもつともと考えます。ただちにその手配をとりたいと思います。  ただ先ほどちよつと御報告が間違つておりましたので、訂正いたします。十六日午前十一時二十五分、海上保安庁の警備課から連絡が参りまして、この不法の処置をあるいは強行するやもしれずという情報がただいま入りました。
  48. 田口長治郎

    ○田口委員 ただいま長官から、ただちに本庁から責任ある人を派遣する、こういうようなお話がございました。その点はかかる問題を未然に防止する意味におきまして非常に重大なる処置であります。しかも有意義なるお考えと存じまして、すみやかにそういう処置をとつていただきたいのでございます。
  49. 田渕光一

    田渕委員 今の田口委員質問に対しての答弁には満足したものであります。しかしなおこれを威嚴あらしめる上において、これらに対する海上保安庁並び水産庁長官の適当な処置と同時に、裁判権を持つているところの新潟地方検事正が、もしこれをやつた場合には、嚴罰をもつて臨むという声明を出されまして、法の執行の前に威嚴を示す、こういうような連絡委員長は法務府に対してとられることを要望しておきます。
  50. 松田鐵藏

    松田委員長代理 わかりました。
  51. 川村善八郎

    ○川村委員 ただいま問題になつております漁業取締りの問題、特に新潟県の問題について、御意見も拜聽し、さらにそれに対する御答弁もあつたのでありますが、過般私も大阪府、和歌山県、徳島県、瀬戸内海全般の小型機船底びき網の状態がどうなつておるかということを視察に参つたのであります。和歌山県から紀伊水道を通つて徳島に行つたのであります。その場合の小型機船底びき網の操業状態は、いずれも二そうびきで、堂々と違反している。そういう状態を見せつけられまして、まことに唖然とせざるを得なかつたのであります。紀伊水道には一そうの取締船もおらないのか、海上保安庁は何をしているのか、あるいは水産庁取締船は何をしているのか、もつと端的に言うと、地元にもそれぞれ取締船並び指導あるいは監視の立場の船がいるはずだ、また役所があるはずだ。しかるに国会から調査に行くということは各新聞に書かれたにもかかわらず、その面前で十五組ほどの違反船が操業しておつた。あきれざるを得なかつたのであります。時間がありますれば、和歌山県の取締船に乘つてつたのでありますから、これを一々とらえて、その事情等をよく調査して参りたいと考えましたが、時間の関係上、徳島に直行いたしましたので、いとまがありませんでした。しかし実際今まで取締りのことをずいぶんやかましく言われておるが、この取締りの完璧を期せぬことは事実であります。これはわれわれの方にも責任があることは痛感しております。なぜといえば、海上保安庁にはもちろん取締りをするための船あるいは施設あるいは技術的なすべての準備ができておる。先ほどから各委員より指摘された通りでありまして、これらを予算化して、そして十分に施設も持たせ、あるいは取締りの技術も十分持たせてやるということが当然だと思つておりますが、とにかく取締りということを嚴重にしなければ、この日本で枯渇している資源がますます枯渇をいたしまして、しまいにはその余波があらゆる方面に及び、陸上にも波及するのじやなかろうか、かように考えましたときに、この取締りというものはまことに重大と考えられるのであります。  そこで各委員から相当に意見もありましたので、取締りの問題につきましては大体この程度にしておきますが、私は遅れて参りまして、ただいまこの書類を見ましたところが、小型底びき網の整理の要綱等が出ておりますが、この要綱を見ますと、相当にこれは取扱いの上で何かの処置を講じなければ、この要綱一本やりで行つた場合には、まつたくその地方の漁村の経済は破壊してしまうというようなことが、われわれが現状を調査いたしました上で明らかに現われて参つたのであります。もちろん原則的にはこの要綱でやつて行かなければならないということははつきりしたのでありますが、取扱いにおきまして、これは相当考えてやらぬと、たとえていえば、ある村ではこれに該当するところの船が全部だ、二、三隻除くとあとは全部整理をしなければならない船ばかりだ、こういうことで、それをすぽつと全部切つてしまうということになりますれば、そこの漁民の生活が破滅するばかりでなく、漁村の経済の破滅にもなるということでありますので、この取扱いにつきましては、委員会でも相当研究をして、この要綱の内容の変更も、あるいは改訂もしなければならぬではなかろうか、かように考えておりますので、次回の委員会にもしこれを取上げるといたしましたならば、委員長はどうかしかるべく御処置をお願いしたいと思うのであります。もちろん私の調査に対しましては、後刻本委員会で詳細な報告をいたすべく、今それそぞれ各方面の意見あるいは実態等をとりまとめて書類にしておるのであります。水産庁ともいろいろ協議をしなければならぬのでありますから、相当の日数を要すると思いますが、今月の末に大体その調査の書類がまとまると思いますから、その後においてこの問題をお取上げ願えればけつこうだと思つております。そこでまずその間の取締りですが、これは何とか水産庁並び保安庁が協力をいたしまして嚴重にしなければ、いまに命を切られる小型機船底びきであるから、乱脈しほうだいのことをした方がいいのじやなかろうかというような考えを持つておる向きもわれわれは見て参つたのであります。たとえていえば、われわれに対する発言においても、国家がこれを整備するというのであるから、国家の責任においてわれわれの要求する補償をすべきである。もしその補償がわれわれに納得行かなければ、われわれはいたし方ない、実力行使をしなければならないというような意見も中にはあつたのであります。従つて今この要綱がおそらく新聞等に発表されますと、それぞれの地方において、これをすなおに守る所もありましようし、断固反対する所もありましようが、断固反対せんとする所は、いわゆる実力を行使してやるというような方向にあるいは行かないでもないというようなことを見受けて参りましたので、海上保安庁並び水産庁では、その地方に対して集中的な取締りをしていただくことを懇願する次第であります。もちろんその地方のどこどこということについては、いずれ書面なり口頭なりであなた方に申入れをしたい。この席ではあまりに範囲が広うございますので、この際はばかつておきますが、とにかく取締りの強化は十分にやつていただかなければならぬ。特に小型機船底びき網の問題についても、新潟県と同様な、より以上の取締りの強化をはかられんことをこの際要望しておくと同様に、小型機船底びき網漁業処理要綱の取扱いについては、委員長において十分なる用意をしてから、本委員会において本格的に取上げられんことをこの際要望しておきます。
  52. 田口長治郎

    ○田口委員 幸い本委員会海上保安庁長官警備部長がおいでになつておりますから、私はこの機会に漁業取締りにつきまして御研究を願うテーマを一、二申上げておきたいと思うのであります。  海上秩序の確立ということは、各府県にいたしましても、水産庁にいたしましても、海上保安庁にいたしましても、いずれも責任があり、やつていただかなければならない問題でありますが、取締船の現有勢力から申しまして、その中心はどうしても海上保安庁において責任をもつてつていただかなければいかないと思うのでございます。この点から申しまして、現在の海上保安庁取締船の動き方の問題について、私はときどき注意をしておるのでございますが、どうかすると、漁業取締りについて、やつてはおられるのであるが、ほんとうに心魂を打込んでやつておるという点が見えないのであります。これは海上保安庁の設立が密輸入の防止あるいは不法出入国というような問題を主としてやるというような当初の気持が今に反映しておるのではないか、あるいは一面から申しますと、漁業取締りは自分の方ばかりではない、各県も、あるいは水産庁も同時にやつておるのであるから、お手伝いの意味ではありませんけれども、どうもほんとうに力が入らない、そういうような点があるのではないか、こういう疑いを持つことが第一でございます。第二にこの船の行動が、海上保安庁の場合におきましては、いつもきまつた所をきまつた時間に動く場合が非常に多い。私は鹿児島と長崎の間の船の行動を見ておるのでございますが、どうも業者に言わせますと、海上保安庁の船は大体この線を何時ごろ通過する、こういうような話をしておるのでございます。先ほどの長官のお話では、少くとも取締つておるのであるけれども、その裏をかいて、というようなお話もあつたように記憶をいたしますが、どうせどろぼうは全部が裏をかいてやつているのでございますから、事務的の船の動き方ではなかなか検挙しにくい。今二千何そう検挙されたということでございますが、おそらくその検挙された二千何そうというのは、どろぼうとしては大体しろうとのどろぼうがつかまえられたので、ほんとうのどろぼうは、そういうことでは拿捕あるいは取締りにひつかからないということになると思うのでございますが、それにはやはり漁場の位置と、魚の月による動き方、どこにいつの時期には漁船が行くか、おそらくどろぼうをする場合におきましては、ほんとうにこの時期にここに魚がたくさん集まる、こういう地点を知つた連中が、その時期にさつと行つて魚をとるのでございますから、海上保安庁ではその上を行かれて、ここに行けばどういう魚がいつ集まつている、こういうことまで御承知になつて取締る、従つて夜であろうが、晝であろうが、むしろどろぼうするものは夜全部やつているのでございますから、晝は寝ておりましても夜その時期に出動をする、こういうような点が少しぬかつているのではないかと考えます。  それともう一つは情報の問題でございますが、少くとも各府県で取締りをしている場合におきましては、各地からの取締船行動について注文もあります。また違反船の行動の通知連絡もありまして、非常にその点は各地の情報が入手されて、その情報によつて行動ができるのでございますが、保安庁はまだ設立が浅い関係もありまして、各地からの業者その他の情報を常に豊富に入手する、こういう点が十分に至つていないのではないかという考えもいたすのでありますが、とにかくこの海上秩序の確立ということは、保安庁で責任をもつてつてもらわなければならぬ。こういう観点から申しまして、私らが会社を経営する場合におきましても、それはあらゆる点にくふうし、研究をして経営を乘り切つて行く、こういうような行き方であるのでありますが、どうか海上保安庁とされましても、漁業取締りについて、ひとつ十分有効なる方法をあらゆる面から研究していただいて、そしてこの問題だけは少くとも自分のところで責任もつて解決するのだ、これが陸上保安の確立程度海上が行きました場合におきまして、初めて日本の再建の基礎が成り立つたのである、こういうような重大問題に私らは考えておりますから、どうか取締りについてあらゆる面からのくふう、研究をもう一段努力をしていただきたいのでございます。これは私の希望でございますが、何かそういう点にも御研究を願いまして、そして、私らの期待に反しないように、この席を借りまして要望する次第でございます。
  53. 松田鐵藏

    松田委員長代理 これにて委員会を閉会いたします。     午後零時三十四分散会