○十川
説明員
お話の点は、インドに第十七大洋丸が行きますことについて、いろいろと御
意見を加えられて
お話に
なつたことと思いますが、それにつきまして私があつせんをしたと申されましたが、あるいは見方によりましてはあつせんをしたということになるかもしれません。いま少しくこのことにつきましては詳細に
説明を申し上げた方がいいように
考えますので、その間の
事情をもう少し詳細に御
説明を申し上げたいと存じます。
本年二月に太平洋
漁業会議がインドのマドラスで開かれまして、私がオブザーバーとしてこれに
出席いたしたわけであります。これよりさきに、インド
政府の要請によりまして、
日本から、インドの
漁業を開発するために、だれか技術者を送
つてくれないかという話がありまして、これは
水産庁をま
つたく通じないでいたした契約でございますが、三人からなります何と申しますか、
一つの団体をこしらえまして、インドのボンベイに送
つたわけであります。
事情をもう少しく明確にいたすために、インドの
漁業につきまして、きわめて概略に御
説明を申し上げた方がよろしいかと存じます。インドの
漁業は、現在年産約六十万トン
程度のものをと
つております。そのうちの約四十万トンは海の生産にな
つておりますが、しかしインドは独立をいたしましてから後、現在非常に食糧に困
つておるわけであります。たくさんの人が飢餓に瀕しておりますために、この飢餓に瀕しております人々を救うために最も早い方法は、海の資源を開発いたしまして魚類の供給を十分にいたし、そうしてたくさんの人を飢餓から救いたいというのがインド
政府の念願であ
つたわけであります。これに関連しまして、三人のチームからなります
日本の技術者を招聘いたしたわけであります。この技術者は大洋
漁業から送られた技術者でありまして、その指導者に
なつた人は上田大吉という人でありますが、それと発動機及び機械に経験のある人がついて行きまして、それともう一人漁夫がついて、三人で向うへ招聘に応じて行
つたわけであります。そこで今までインド
政府はイギリスからも技術者を招聘いたしましたし、アメリカからも招聘をいたしましたけれ
ども、
漁業をなすことに成功をしなか
つたわけであります。幸いに
日本から参りましたこれらの技術者はきわめて優秀な人でありまして、それがためにようやくインド
政府といたしましては、インドにおける
漁業を再建することの職務を得たわけであります。これらの人々がさらにインドの
漁業を実際に開発いたしますためには、もう一歩踏み込んでやらなければならない、こういうことになりまして、これらの人々と、それからインドのボンベイの州の
水産局長のセツトナーという人でありますが、この人とが二人協議をいたしまして、そしてこれは正規のトロール船を一隻送
つてもらいたい。これはなぜトロール船でなければならないかと申しますと、
日本の船が参ります場直は、続航
能力の
関係から、現在のところでは底物をとるといたしますとトロール船以外は参れないわけであります。もし底びき網船を持
つて参るとすれば、続航のときの
関係で途中で補給をいたさなければならないのであります。それともう
一つは先ほど申し上げました上田大吉氏外二名の
一つのチームがありまして、これが大いに、ボンベイの
水産局長の信用を博しまして、そしてインド
政府から大洋
漁業の船を派遣してくれないかということをGHQを経て申請して参
つた次第であります。そうしてインド
政府と大洋
漁業との間に契約ができまして、今申しました十七大洋丸を派遣することになうたわけであります。それにつきまして私
どものいたしましたことは航海の許可を得なければならないわけであります。この航海の許可を得ますためには現在は御存じの
通りマツカーサー・ラインがありまして、マツカーサー・ライン外において、たといインド
政府が承認いたしましても
日本漁船が操業いたしますためにはそれらの航海の許可を得なければならないことはちようど南氷洋の捕鯨と同じであります。それでその航海の許可を得ますために私
どもの手を経て依頼をして参りました。この航海の許可は極東海軍に申請いたしますのでありまして、業者から直接出すことはできないのでありますから
水産庁に頼んで参りまして、航海の許可のあつせんと言
つて参
つたわけであります。私は趣旨からいたしましても、この何千万という人間が飢餓に瀕している時分に、将来インドの
漁業を再興されますために
日本が持つ技術を貸與いたしまして、たくさんの人の生命を飢餓からの死亡するところを救おうとするところの行いに対しまして、私は大洋
漁業が
お話になりましたような、いかようなことがありましようとも、人類の一人として私は
努力いたしたいと
考えるわけであります。