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1951-10-22 第12回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月十七日  篠田弘作君が委員長に、佐々木秀世君、島田末  信君、塚原俊郎君、内藤隆君、小松勇次君、猪  俣浩三君及び山口武秀君が理事に当選した。     ————————————— 昭和二十六年十月二十二日(月曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 篠田 弘作君    理事 佐々木秀世君 理事 島田 末信君    理事 塚原 俊郎君 理事 内藤  隆君    理事 小松 勇次君 理事 猪俣 浩三君    理事 山口 武秀君       大泉 寛三君    岡延右エ門君       岡西 明貞君    鍛冶 良作君       志田 義信君    田渕 光一君       野村專太郎君    八木 一郎君       大森 玉木君    藤田 義光君       久保田鶴松君    坂本 泰良君       加藤  充君    松本六太郎君  委員外出席者         証     人         (石川土木部         長)      田中 精一君         証     人         (金沢地方検察         庁検事)    永田 敏男君         証     人         (石川県知事) 柴野和喜夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  証人出頭要求に関する件  公共事業費をめぐる不正事件     —————————————
  2. 篠田弘作

    篠田委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。公共事業費をめぐる不正事件につきましては、かねて事務局におきまして基礎調査中でありましたが、基礎調査も完了いたしましたので、この際、公共事業費をめぐる不正事件について、委員会において本調査に着手いたしたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議なきものと認めます。それでは調査することに決しました。  なお本事件につきましては、理事諸君の御了承を得まして、本日は石川土木部長田中精一君、金沢地方検察庁検事永田敏男君、石川県知事柴野和喜夫君、二十三日に、元佐賀鳥栖土木出張所長石動丸十郎君、佐賀地方検察庁検事樺島明君、佐賀県副知事舘林三喜男君、二十五日に東北地方建設局最上川下流工事事務所長伊藤美代治君、東北地方建設局最上川上流工事事務所長佐藤清見君、東北地方建設局工務部長深井浩三君、二十六日に、東北地方建設局長伊藤信君、建設省防災課長賀屋茂一君、建設省監察官石破二朗君、三十日に会計検査院第四局長小峰保栄君、建設事務次官中田政美君、以上十四名の諸君に、それぞれ本委員会出頭を求める手続をいたしておりますが、以上の諸君を本委員会証人として決定いたすことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議なきものと認めます。  それでは証人として決定いたしました。     —————————————
  5. 篠田弘作

    篠田委員長 これより公共事業費をめぐる不正事件について調査を進めます。  ただいまお見えになつておられる証人田中精一君ですね。
  6. 田中精一

    田中証人 田中精一でございます。
  7. 篠田弘作

    篠田委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り、本日正式の証人として証言を求めることに決定いたしましたから、さよう御了承ください。  これより公共事業費をめぐる不正事件について証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の朗読を願います。     〔証人田中精一君朗続〕    宣誓書   良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  8. 篠田弘作

    篠田委員長 では宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  9. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また発言の際はその都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしいですが、お答えの際は御起立を願います。  証人石川県の土木部長に就任されたのはいつですか。
  10. 田中精一

    田中証人 私が就任いたしましたのは、昨年の五月二十一日に金沢市に到着、ただちに就任いたしました。
  11. 篠田弘作

    篠田委員長 昭和二十五年度の国庫補助木橋補修工事として、工費百五十万円をもつて天狗橋補修工事に着手するに至つた理由、及び工事進行状態について述べてください。
  12. 田中精一

    田中証人 ただいま申し上げたように、私赴任いたしまして、天狗橋補修工事の実施されておることは、この事件発生後において承知いたしたのであります。国庫補助工事として成立して起工の運びまでは主管課長が代決執行いたしておりましたので、まだ現実についてこれを知る機会を得なかつたのであります。
  13. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、天狗橋を百五十万円をもつて補修工事をすることになつたのはいつですか。
  14. 田中精一

    田中証人 それはやはり他の工事と同様に、前年度年度末においてそれが内定したものと想像いたします。
  15. 篠田弘作

    篠田委員長 三月末までの間ですね。
  16. 田中精一

    田中証人 ええ。
  17. 篠田弘作

    篠田委員長 その後、この問題についてあなたは相談を受けなかつたのですか。何か報告は受けなかつたのですか。予算は前の年の三月末までにきまつてつたとして、工事に着手して——あるいはまだ計画しておつたのかもしれぬけれども、あなたが五月の二十一日に赴任をしたときには、事務的な報告は何も受けておらなかつたのですか。
  18. 田中精一

    田中証人 何も受けておりません。
  19. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたの方でも聞いておらなかつたのですか。
  20. 田中精一

    田中証人 聞いておりません。そういうものがあることを全然承知しておりませんし、またそういう補修工事等のごときものは他にも多々あるので、土木部長にこれを一々報告するということは、平常の場合はまずあまりないものと私は承知いたしております。
  21. 篠田弘作

    篠田委員長 国庫補助をもらつた場合でも土木部長は知らないのですね。
  22. 田中精一

    田中証人 土木部長の在任中におきまして国庫補助をもらつたもの、それから国庫補助に漏れたものについては、これは主務省から通知がございますから、これを十分閲覧して承知すべき建前になつております。
  23. 篠田弘作

    篠田委員長 前任者の時代にもらつた予算であるから、あなたは知らぬというのかね。
  24. 田中精一

    田中証人 そういう意味ではございません。私が赴任いたしました当時は、その年の他の事件のために、土木部内が陣容その他機構の面を相当改変しなければならないという内部的事情に忙殺せられまして、従つて町村を視察する、もしくは工事一つ一つ等について検討を加えるという余裕を持ち合せておらなかつたのであります。
  25. 篠田弘作

    篠田委員長 最初の予算については、あなたが今言つた通りだろうと思うが、それで、九月三日のジエーン台風によつてどういう損害を受けたか。それはあなたは御存じですか。
  26. 田中精一

    田中証人 これも承知いたしておりません。ジエーン台風直後は、あの風の方向その他からいつて、大体において能登半島地区が一番甚大な被害を受けたということを聞きまして、当時私は県議会の土木委員一行能登半島方面内浦海岸の視察に参りました。それ以外は、現地を見て歩く適切な時間も得ませんでしたので、見て歩きませんでしたし、一つ一つ工事被害程度についても報告を受けておりません。自分としても承知いたしておりません。
  27. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、ジエーン台風というのはあなたが土木部長になつてから起つた台風ですか。
  28. 田中精一

    田中証人 そうです。私赴任後の九月三日の台風でありまする
  29. 篠田弘作

    篠田委員長 そのジエーン台風でどういう被害を受けたか、あなたは知らぬわけかね。
  30. 田中精一

    田中証人 これは、被害を受けてから大体半月くらいの間には、各土木出張所で、各担当の技師被害状況の大体の見込みをつけて、何箇所幾ら被害を受けているといういわゆる被害報告というものを出して参ります。そうすると、これを災害主管課におきまして集計をとつて、ただいまでは建設省の方へ災害報告をなすことになつております。まず第一回は総額どのくらい、その次には何箇所でどのくらいという報告出張所から参りまして、その報告については私一応了承いたしておりました。
  31. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、天狗橋ジエーン台風によつて被害を受けた、その復旧費として一千万円の国庫補助金要求するに至つたその経緯についてもあなたは知りませんか。
  32. 田中精一

    田中証人 天狗橋というものは、ただいまでこそ事件化しましたから非常に私たちの印象に深く残つておりますが、当時私どもとしましては、そういうような他の場所の工事等と同様に、計画内容、金その他についても特に関心を払つて聞くこともいたしません。従つて一千万円というものの内容については特別私は承知いたしておりません。
  33. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは土木部長ではないですか。
  34. 田中精一

    田中証人 土木部長でございます。
  35. 篠田弘作

    篠田委員長 一千万円の国庫補助といえば相当大きなものだ。少くとも土木部長が、それに対して内容検討しなければ、実際に現地行つてもみない。現地に行かなかつたということについては理由があるかもしれないが、内容検討しておらなければ、そういうことも知らないということは一体どういうことですか。
  36. 田中精一

    田中証人 御承知通り、数百箇所にわたる災害箇所につきまして、土木部長が一々被害状況等を確認いたすことはなかなかむずかしいことであります。それで、土木出張所第一線技師が、その持ち合せる能力によつて大体どのくらいかかるという報告をし、その報告に基いて事務的にこれを主務省に連絡いたします。そうしてあとは、今度は主務省災害査定実査というものがございまするが、このときに、各主務省技師技官現地被害状況を見て、適切か否かを査定してくださる。こういう建前になつておりまするので、被害を受けた当時においては、府県の土木部しきたりもありまして、ただいま申し上げたように、土木部長が各箇所について被害状況を確認して、厳格にこれに検討を加えてその適否を出すということはやり得なかつたし、またやつておらないのがしきたりになつておるように了承いたしております。
  37. 篠田弘作

    篠田委員長 数百箇所被害箇所について、全部土木部長に行けと言つても無理な話であるし、またそういうことをやつていないということは常識でわかる。しかし、数百箇所全部が一千万円の国庫補助要求しているということはない。一千万円の国庫補助要求するということは、相当大きな被害がなければならぬ。ジエーン台風によつて一千万円以上の国庫補助要求をした箇所石川県にどのくらいありますか。言つてごらんなさい。
  38. 田中精一

    田中証人 ただいま記憶しておりません。
  39. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると君は何も知らないということになるが、それでもよいのか。第一線にまかせると言つても、土木部長第一線の役人ではないか。土木部長というものは一体どういう立場にあるか、それを君の見解から言つてごらんなさい。
  40. 田中精一

    田中証人 お答えいたします。ただいま申し上げたように、当時の第一線工事一つ一つについては、他のいろいろな事務的な要務がございまするので、確認するというようなところまで監督をするということはとうてい不可能と存じます。しかしながらその県の土木事業の持つて行き方、つまり根本的な方針あり方、こういうものについては、第一線の各土木出張所の所長以下技師等に対してその指針を与え、そうして円満に行政運営を運ばしめるということに重点を置いて、私としては考えて参つたのであります。
  41. 篠田弘作

    篠田委員長 土木部根本方針、あるいはあり方、それを第一線に指示して円満なる行政運営を期すると言うが、石川県の土木部根本方針あり方とは一体どういうものですか。それを言つてごらんなさい。
  42. 田中精一

    田中証人 これはなかなか多岐にわたつておりまするから、私が赴任いたしましたときの必要性から申し上げますと、その以前におきましては、各土木出張所職員気持がきわめて不安定でばらばらになつていたというような点から、まず職員気持を安定せしめて、所管事務に対して専念するように指導してまとめて行かなければならぬということが、まず当面私としては考えられたのでございます。それからその前に起つたいろいろな事件に関連いたしまして、たとえば工事執行上の問題についてどうあるべきかということについて検討いたしました。それから土木部内の機構、それから事業執行方法、こういつたような面、それから職員配置転換等の問題、こういうような面について私は実は忙殺されておつたのであります。それで各課の事務分掌規程の改廃、それから事業執行方法、つまり請負工事執行方法その他出張所員の、先ほど申し上げたような心構えあり方、こういうものについて具体的に一つ一つ改変指導を加えて参つたのでございます。
  43. 篠田弘作

    篠田委員長 だから、根本方針とかあり方とか、心構えといわれるのは、どういう根本方針石川県にはあるのか。普通の官吏や公務員以外のあり方とか、根本方針というものがあるのかないのか、それを聞いておるのです。特に君が一千万円の工事費も見ることができない。現地について見ないばかりでなく、予算内容についても詳しく見ることができないというほどその根本方針あり方について苦心を払わねばならぬということは、一般公務員地方公務員というもののあり方以外に何か石川県には特別の根本方針があるのかないのかということを聞いている。
  44. 田中精一

    田中証人 石川県に特別の根本方針があるとは申し上げたのではないので、私が赴任いたしました当時の現況から、私はむしろそういう方面重点を置いて考えておつた、かように申し上げたわけであります。
  45. 篠田弘作

    篠田委員長 気持が不安定でばらばらであつたというのはどういう理由ですか。
  46. 田中精一

    田中証人 これはこの前、二月の事件がございまして、職員一般に非常に不安定な気持であるかのごとく私は見受けました。
  47. 篠田弘作

    篠田委員長 二月の事件というのはどういうのですか。
  48. 田中精一

    田中証人 これは私の赴任前でございますから、内容につきましては承知いたしておりませんが、いまだに解決を見ないように承知いたしております。
  49. 篠田弘作

    篠田委員長 その内容は知らないのですか。
  50. 田中精一

    田中証人 私は申し上げかねます。
  51. 篠田弘作

    篠田委員長 その内容を知らないで、君はその対策を講じたのか。
  52. 田中精一

    田中証人 事件内容につきましては、私の赴任前のことでございますから……。
  53. 篠田弘作

    篠田委員長 事件が君の赴任前であろうとなかろうと、その事件職員気持が、皆ばらばらになつてつた、それを直そうとして苦心したのでしよう。
  54. 田中精一

    田中証人 そうです。
  55. 篠田弘作

    篠田委員長 それなのに内容がわからなかつたら……。
  56. 田中精一

    田中証人 若干推定いたしておりますが、何分赴任前のことで、ここで私は申し上げかねます。
  57. 篠田弘作

    篠田委員長 赴任前のことは言えないということですか。
  58. 田中精一

    田中証人 確信をもつて申し上げかねます。ことに今まだ司直取調べ中にも属しておりますし……。
  59. 篠田弘作

    篠田委員長 司直の取調へ中なら、なおさらあなたはわかつているはずですが……。
  60. 田中精一

    田中証人 私から申し上げかねます。
  61. 篠田弘作

    篠田委員長 申し上げかねるというのは、君自身の判断か、それとも何か申し上げかねるということについて、特別な法律的な根拠があるのか。
  62. 田中精一

    田中証人 私は内容にタツチしておりません。私の赴任前のことで、もしここで申し上げてかりにも誤つたことを申し上げるとさしさわりが出ると思いますから、遠慮させていただきます。
  63. 篠田弘作

    篠田委員長 遠慮させることができないと言つたらどうする。
  64. 田中精一

    田中証人 どうも想像に属することは……。
  65. 篠田弘作

    篠田委員長 想像じやないでしよう。二月の事件があつて、その事件のために石川県の土木部公務員気持ばらばらになつておる。それを君が直そうと思つて根本方針とかあるいは土木部の吏員のあり方について一生懸命指導した。ばらばらなつ原因がわからないで君自身が指導できるわけがないでしよう。原因はわかつているのでしよう。詳しくわからないでも、大体どういう事件であつたかという大体の程度で……。
  66. 田中精一

    田中証人 大体ならば申し上げます。これはつまり汚職事件という名のもとに扱われておりまして、多数の土木職員が退職するような事情に立ち至つた
  67. 篠田弘作

    篠田委員長 どういう汚職事件ですか。
  68. 田中精一

    田中証人 これはその内容は……。
  69. 篠田弘作

    篠田委員長 すでに司直の手に移つておるならば、内容は新聞にも出ただろうし、後任土木部長としてその事件は知つておるだろう。
  70. 田中精一

    田中証人 内容についてはちよつとここで確信をもつて申し上げるようなことはわかりません。
  71. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたの知つているだけのことを言つてごらんなさい。どういう筋合いの事件であつたか……。
  72. 田中精一

    田中証人 何か予算流用問題に関しているように……。
  73. 篠田弘作

    篠田委員長 予算の流用問題で汚職事件が起つて、そのためにいろいろまだ司直取調べ中でもあり、気持ばらばらになつておる。それをあなたは直そうとした。
  74. 田中精一

    田中証人 そうです。
  75. 篠田弘作

    篠田委員長 それであれば、その次に来るべき予算というものについては、あなたは厳正な立場において慎重にこれを取扱わなければならない……。
  76. 田中精一

    田中証人 そうです。
  77. 篠田弘作

    篠田委員長 しかるに職員心構えだけ訓示しておる。ところが何ら予算について目を通しておらぬ。
  78. 田中精一

    田中証人 これはお言葉ではありますが、今の災害検査申請額についてお前は目を通しておらぬというような御指摘のように承知いたしますが、これは先ほどもちよつと申し上げましたように、被害額の認定と申しますか、これはやはり末端技術者がこれを長年の経験から、被害区域幾らで金が幾らという推定のもとにこれを県に出して参りまして、総計をとつて主務省検査申請をする、こういうのが災害工事の事務的な慣例になつておるのであります。従いまして金の本ぎまりになりますのは、災害査定官現地査定して、その第一線地方技師の認定いたしましたその額の適否が、初めてそこにはつきりきめられるという、一つ主務省関門がございますので、私どもといたしましては、水害を受けたときはただいま申し上げましたような、そういう長年の慣例従つてつておりますので、今御指摘になりましたように、決議予算執行に対するほどの注意は、私どもとしてはしきたり上やつておらないことは事実であります。
  79. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、あなたのところに災害復旧に関する予算が来るときは、慣例によつて末端機関から来る。それであなたはその慣例によつて執行するときには、主務省関門を通るから、その執行については厳正にやるけれども予算要求する場合には慣例によつて盲判を押しておる、こういうわけですか。
  80. 田中精一

    田中証人 執行については、そういう意味じやございません。これは査定という一つ関門がございますので、申請したものについては、結論的には厳正な正しい線が出て来る。こういうことになつております。
  81. 篠田弘作

    篠田委員長 だから正しい線が出るまでは、あなたは黙つて慣例従つて判を押しているわけですか。
  82. 田中精一

    田中証人 そうでございます。
  83. 篠田弘作

    篠田委員長 末端機関というのはどこの辺まで末端機関ですか。
  84. 田中精一

    田中証人 これは土木出張所長が、各地方を担当しておりますいわゆる方面主任というものがおりまして、これが自分の受持つておる区域内に発生した災害について、ただちにただいま申し上げましたような概算報告をし、それから査定設計もつくつて、これを出張所でとりまとめてそれを本庁に出して来る。こういう慣例になつております。
  85. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、土木出張所というものはあなた方から見れば末端機関であるかもしれない。だけれども県から要求した場合に、国庫補助なら国庫補助金というものを要求する場合に、直接の責任者はたれがなるのですか。
  86. 田中精一

    田中証人 ただいま申し上げたのは、検査申請することになつておる、国庫補助金の請求は、査定が確立いたしまして、査定金額がきまつてから、それから国庫補助金を請求することになつております。
  87. 篠田弘作

    篠田委員長 それじや損害査定はたれがするのですか。
  88. 田中精一

    田中証人 これは建設省から特命を受けた建設省技官がこれを査定してくれることになつております。
  89. 篠田弘作

    篠田委員長 だけれども大体ジエーン台風被害——天狗橋被害幾らあるということの要求というか、それを査定する者がおるのでしよう。
  90. 田中精一

    田中証人 それはただいま申し上げた……。
  91. 篠田弘作

    篠田委員長 それは土木出張所でしよう。
  92. 田中精一

    田中証人 土木出張所方面主任自分所管のものについて、ただいま申し上げたような、そういう原案を作成して県に提出する慣例になつております。
  93. 篠田弘作

    篠田委員長 慣例上そうなつておるかもしれぬが、そうするとそれをあなたが国家に対して要求するわけなんですか。
  94. 田中精一

    田中証人 検査申請するのです。
  95. 篠田弘作

    篠田委員長 検査申請するといつたつて被害がなければ要求する必要かない。あなたの方でそれだけの被害があるということを責任を持つて申請するわけでしよう。
  96. 田中精一

    田中証人 そういうことになります。
  97. 篠田弘作

    篠田委員長 その責任者はだれですか。
  98. 田中精一

    田中証人 やはり県ということになるだろうと思います。
  99. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると県は土木部の問題だけじやない、いろいろな問題を扱つておるでしよう。
  100. 田中精一

    田中証人 ええ。
  101. 篠田弘作

    篠田委員長 土木事業に関する限りの責任者はだれですか。
  102. 田中精一

    田中証人 土木行政につきましての責任者は、土木部長責任を負うことになつております。
  103. 篠田弘作

    篠田委員長 その土木部長が何も知らないで盲判ばかり慣例従つて押して来て、それであなたは責任を果したと言えるのですか。
  104. 田中精一

    田中証人 盲判とおつしやいますけれども……。
  105. 篠田弘作

    篠田委員長 内容を知らなければ盲判じやないか。
  106. 田中精一

    田中証人 これは事実盲判です。慣例として土木災害工事はそういうふうに扱われておることに承知しております。
  107. 篠田弘作

    篠田委員長 慣例だけ尊重して、あなたは新しい土木部長としてそこに何らの努力もしないし、創造もしないし、改善もしないということであれば、何のためにあなたは根本方針だとか、あり方だとか、機構だとか、人員の配置だとか、気持の不安定を訓示するとか、どういう立場においてあなたはそれを訓示したのですか。
  108. 田中精一

    田中証人 これはまた言葉を返すようですが、災害検査申請のごときものは、先ほども申し上げたように、部長が一々確認することはできませんので、結局土木事業執行部下信頼の上に立つて……。
  109. 篠田弘作

    篠田委員長 部下信頼の上に立つということはいいことですが、しかしそうしていて現に汚職事件があつた。そうでしよう。
  110. 田中精一

    田中証人 そうです。
  111. 篠田弘作

    篠田委員長 そういう汚職事件があつておそらくあなたの前の土木部長は引責したんじやないですか、やめられたんじやないですか。
  112. 田中精一

    田中証人 そうだと思います。
  113. 篠田弘作

    篠田委員長 そのあとにあなたが来たのでしよう。
  114. 田中精一

    田中証人 ええ。
  115. 篠田弘作

    篠田委員長 だからそこの土木建直しについてあなたは一生懸命努力されたのでしよう。
  116. 田中精一

    田中証人 ええ。
  117. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしたら慣例だけ守つてつたんじや何にもならない。
  118. 田中精一

    田中証人 災害検査申請に関する限り一々土木部長がこれを確認してやるということは不可能事でございます。
  119. 篠田弘作

    篠田委員長 だから数百箇所のものを全部見まわれというのではない。千万円の橋の要求というものは石川県にジエーン台風で何箇所つたか。一千万円も国庫補助申請しなければならぬような大きな被害は、石川県にジエーン台風で何箇所ありましたか。
  120. 田中精一

    田中証人 箇所は記憶いたしておりませんが……。
  121. 篠田弘作

    篠田委員長 大体何箇所……。
  122. 田中精一

    田中証人 はつきり覚えておりませんが、三、四箇所はあつたんじやないかと思います。
  123. 篠田弘作

    篠田委員長 一千万円以上の要求をしたのが三、四箇所ある……。
  124. 田中精一

    田中証人 はあ。これははつきり申し上げかねますが、そのくらいあつたんじやないかと思います。
  125. 篠田弘作

    篠田委員長 三、四箇所つたとしても、石川県は狭いのですから、自動車でぐるつとまわつて見ればわかりそうなものですが、それも慣例従つてまわつて見ませんか。
  126. 田中精一

    田中証人 慣例でなくて、それは私が先ほど申し上げたように、まわる時機が得られなかつたのです。
  127. 篠田弘作

    篠田委員長 それほど忙しい——根本方針あり方だとか、気持の不安を直すとか、機構とか、人員の配置をやつたというのは、何箇月かかつてつたのか。
  128. 田中精一

    田中証人 私としては現実今申しましたようなそういう環境にございましたので、各土木出張所にあいさつまわりをようやくしたところで、まだまわる時機を得られなかつたのです。
  129. 篠田弘作

    篠田委員長 君が赴任されたのは五月二十一日でしよう。ジエーン台風は九月三日でしよう。大体その間三箇月以上、四箇月近い期間があるのに、その期間中君は所員の訓示だとか、機構いじりをやつて、そうしてそれで三箇月間暮したわけですか。
  130. 田中精一

    田中証人 そうです。
  131. 篠田弘作

    篠田委員長 そうであればこれはしかたがない。それはそれでよいとして、大体あなたの仕事のやり方はわかつたからよいが、それではあなたは道路課長及び金沢土木出張所長が通謀の上天狗橋を四分の三以上損傷する、そういう計画を実行したことを知つておりますか。
  132. 田中精一

    田中証人 これは全然そういうことは聞いておりませんし、事件後においてそういううわさを聞きましたが、全然そういうことは承知いたしておりません。
  133. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると課長と所長といえばこれはあなたの直接の部下だ……。
  134. 田中精一

    田中証人 課長は直接の部下です。
  135. 篠田弘作

    篠田委員長 出張所長というのはその下の部下だね。
  136. 田中精一

    田中証人 はい。
  137. 篠田弘作

    篠田委員長 しかし土木部から見たら幹部じやないか。そういう人間が一体橋を四分の三こわそうという計画をしておる。そういう相談にもあなたは乗らなかつたのか。
  138. 田中精一

    田中証人 そういうことは承知いたしておりません。
  139. 篠田弘作

    篠田委員長 検査報告もしていない……。
  140. 田中精一

    田中証人 そういう報告は全然受けておりません。
  141. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは君は部下に対して一生懸命訓示をしておるけれども部下はあなたに何も相談しないということになるね。
  142. 田中精一

    田中証人 そういうことになるかもしれませんが、全然受けておりません。
  143. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは君は浮いておるということになるが、それでいいのか。
  144. 田中精一

    田中証人 そういうことはございません。執行の一々について詳細の報告は受けておりませんけれども……。
  145. 篠田弘作

    篠田委員長 少くとも百五十万円でもつてやろうと思つた橋を、四分の三こわして一千万円の国庫補助をとろうという、そういう問題について課長と所長だけでもつて相談をして橋をこわすということは、普通の常識ではあり得ないではないか。
  146. 田中精一

    田中証人 私は課長と所長が橋をぶちこわす相談をしたということは考えられないとただいまでも思つております。従つてその話も聞いておりません。
  147. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると橋はだれがこわしたのか。
  148. 田中精一

    田中証人 これは私としては全然わかりません。今検察庁てその点について取調べ中かと存じます。
  149. 篠田弘作

    篠田委員長 取調べ中かと存ずると言うが、あなたはそれじや検察庁から呼ばれておらぬのだろうね。
  150. 田中精一

    田中証人 いいえ、当初に証人として出頭して供述いたしております。
  151. 篠田弘作

    篠田委員長 取調べ中かと存ずるということはどういうことかね。
  152. 田中精一

    田中証人 まだ引続いて取調べ中であると考えられます。
  153. 篠田弘作

    篠田委員長 それではあなたは実際問題については何も知らぬと言うのか、そう承知していいですか。
  154. 田中精一

    田中証人 実際問題については知らないということに御了承願つて間違いございません。
  155. 篠田弘作

    篠田委員長 そうするとあなたは土木部長という責任をどこで果しておるのか。土木部長というのは土木部では偉いかもしれませんが、国民から見れば少くとも土木一切の責任を持つて知事を助けておる、こういう土木部長というふうに解釈するのだが、その土木部長が仕事の内容について何も知らない、そう承知してもらつてさしつかえないということは、あなたみずからの土木部長責任をどこで果しておるか。
  156. 田中精一

    田中証人 天狗橋がたまたま大きな事件化しましたからでございますが、たとえば小さい百万円ないし百五十万円の仕事については、土木部長が不在の場合には主管課長がこれを代理執行するというようなこともできることになつております。そうしてこういう事件化されない場合であつたなら、ただいまの金で百五十万円ぐらいの修繕工事ですと、そういうような執行工事をするのも決して違法でもないわけです。こまかいものについては私の承知しないのも多々あるのが現状でございます。
  157. 篠田弘作

    篠田委員長 こまかいものについてというが、一千万円の国庫補助要求するというような橋の修繕が、あなたの考えではこまかいと思つておるのですか。
  158. 田中精一

    田中証人 いいえ、ただいま申し上げましたのは、百五十万円程度ぐらいまでの補修工事のごときものは、土木部長の不在中は主管課長が代理執行することになつております。かように申し上げたわけでございます。
  159. 篠田弘作

    篠田委員長 それではお聞きしますが、天狗橋というのは金沢からどのくらい離れておりますか。
  160. 田中精一

    田中証人 時間にして自動車で大体一時間半ぐらいでございます。
  161. 篠田弘作

    篠田委員長 自動車で一時間半ぐらいの距離、そうすると先に百五十万円の補修工事をやろうとしたのが、ジエーン台風によつて千万円の国庫補助にかわつた、そうなつて来ると相当これは大きな問題だと思うのですが、しかも石川県がそういうのをほおかむりして——車で一、二時間の距離をふつ飛ばそうという気持はなかつたのですか。
  162. 田中精一

    田中証人 そういう気持はありませんで、ほかの点で多忙でございました。
  163. 篠田弘作

    篠田委員長 多忙でというが何が……。
  164. 田中精一

    田中証人 これは一々御説明いたしかねます。先ほど申し上げましたように災害工事に対する私たち土木技術者の考え方、あり方というものが、結局査定関門においてこれが正しい線かどうか、こういうことがわれわれの頭にございますので、今御指摘なさるようなさほどに私たちは考えておらないのが事実でございます。
  165. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると関門まではどなたが文書をつくつてもさしつかえないと思つているのですか。
  166. 田中精一

    田中証人 いいえこれにはおのずから線がございまして……。
  167. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは判を押している。
  168. 田中精一

    田中証人 押しております。
  169. 篠田弘作

    篠田委員長 それはどういう責任において押しているのか。
  170. 田中精一

    田中証人 これは結局災害検査申請につきましては建設省で内規がございます。この内規によつて申請するということを各係員が了承しておるものということを信頼いたしまして、その検査資料、総計表には捺印をいたしました。
  171. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは次に聞きますが、一千万円の国庫補助要求した仕事が、そういう不正事件のために国庫補助がなくなつた。そこであなたの方ではそれを県費によつて単独にこれを復旧した。かけかえてそれが総工費四百七十万円ででき上つておる。国庫補助だけで一千万円なければできない橋が、県でかければ四百七十万円ででき上る。これはあなたはこのときも行つてみなかつたか。
  172. 田中精一

    田中証人 これはその復旧ができてから今年度行つて実態を見て参りました。
  173. 篠田弘作

    篠田委員長 それではその国庫補助が、事件が起つてなくなつたときにも天狗橋には行かなかつたのかね。
  174. 田中精一

    田中証人 天狗橋には行きません。そのときは私は病気でずつと休んでおりました。
  175. 篠田弘作

    篠田委員長 何病気……。
  176. 田中精一

    田中証人 外科手術を受けましてずつと休んでおりました。
  177. 篠田弘作

    篠田委員長 そうするとジエーン台風の後一箇月の十二月二日になつて百五十万円の請負工事に中止命令を出したのは知つていますか。
  178. 田中精一

    田中証人 これも主管課において選考いたしましたので、事件後において中止命令を出しておることを承知いたしました。
  179. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは判を押しておらぬかね。
  180. 田中精一

    田中証人 押しておりません。
  181. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたが判を押していない。部長も知らぬ、知事も知らぬということですか。
  182. 田中精一

    田中証人 むろん知事は知らぬと思います。
  183. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると石川県というところは知事も土木部長もおらなくとも工事はできるというふうに解釈していいのか。
  184. 田中精一

    田中証人 これは取扱い事項によつて知事までの判をとらなければならないものも、部長までの判をとらなければならないものもあります。これはおのずから内規できまつておりますが、部長まで判をとらなければならないものにありましても、軽易なものによりましては主管の課長が代行することになつております。この事件は百五十万円くらいのことでございますから、主管課長が代行したと考えております。この中止命令については、これは主管課長限りで土木出張所長限りの命令ができるものと承知しております。
  185. 篠田弘作

    篠田委員長 補助金申請に対する跡始末はどうなつておりますか。一千万円の補助金を申請したのでしよう。
  186. 田中精一

    田中証人 これは補助金の申請はいたしておりません。検査申請をいたしたものでございます。
  187. 篠田弘作

    篠田委員長 検査申請というものは、それが通れば補助金がもらえるわけでしよう。
  188. 田中精一

    田中証人 もらえることになるわけです。
  189. 篠田弘作

    篠田委員長 もらえることになるわけですと言つたつて検査申請は補助金をもらうためにやるのではないか。工費がたとえば一千万円なら一千万円かかるということが確定すれば、そのうちの何分の一かは災害補助がやれるということになつているんじやないか。
  190. 田中精一

    田中証人 それが七百万円いりますか八百万円いりますか、その検査の結果査定金額を確定いたしますと、その確定金額に対して、うち国庫補助金幾らというものを別途々々請求をすることになるわけです。
  191. 篠田弘作

    篠田委員長 そうするとまだ国庫補助要求していないのですか。
  192. 田中精一

    田中証人 国庫補助要求はいたしておりません。建設申請だけした。
  193. 篠田弘作

    篠田委員長 検査申請が通れば国庫補助がついて来るでしよう。書類の問題は別として、実際問題として災害費は何千万円なら何千万円の災害復旧をやるということをあなたの方で申請して、それを本省が認めれば当然国庫補助がついて来るじやないか。
  194. 田中精一

    田中証人 査定金額がきまると国庫補助がついて来る。
  195. 篠田弘作

    篠田委員長 査定金額がきまつた国庫補助がついて来るでしようが。
  196. 田中精一

    田中証人 そうです。
  197. 篠田弘作

    篠田委員長 大きく申請するというのは、たくさんな国庫補助がついて来るからそうしたのでしよう。そうでなければこわす必要はないでしよう。
  198. 田中精一

    田中証人 その辺の事情はわかりませんが……。
  199. 篠田弘作

    篠田委員長 わからない、わからないじや何もわからないじやないか。
  200. 田中精一

    田中証人 こわすとか何とかいうことについては全然私ども存じません。
  201. 篠田弘作

    篠田委員長 たれがこわした。
  202. 田中精一

    田中証人 それはわからない。ただいま検察庁で取調中でわかりません。
  203. 篠田弘作

    篠田委員長 わからなければわからないでいいが、それではこの橋をこわした直接の責任者は検察庁で調べている。それについて死人ができていますね。
  204. 田中精一

    田中証人 そうです。
  205. 篠田弘作

    篠田委員長 けが人もできていますか。
  206. 田中精一

    田中証人 そうです。
  207. 篠田弘作

    篠田委員長 死人は何人できて、けが人は何人できたか。
  208. 田中精一

    田中証人 私の承知しておりまするのは、通行人が一人即死したそうでありますが、重傷者の中で一時間くらいたつてからさらに一人死んでおります。あと……。
  209. 篠田弘作

    篠田委員長 どういう人が死んだか。
  210. 田中精一

    田中証人 どういう人とおつしやいますと……。
  211. 篠田弘作

    篠田委員長 たとえば年齢、性別、そういうこと。
  212. 田中精一

    田中証人 これはただいま記憶いたしておりません。
  213. 篠田弘作

    篠田委員長 君は自分責任においてやつた、この慣例はともかくとして、法律上の責任は君にあるのだ。君は土木部長として部下の失態がそれだけあつて、しかもそこで死人ができた。その死人が、男が死んだか、女が死んだか、おとなが死んだか、子供が死んだかわからないか。
  214. 田中精一

    田中証人 年齢等は承知いたしておりません。
  215. 篠田弘作

    篠田委員長 君は見舞には行かなかつたか。
  216. 田中精一

    田中証人 私は見舞にも参ることができなかつた
  217. 篠田弘作

    篠田委員長 寝ておつたとしても、見舞に行けなかつたとしても、男か女か、おとなか子供かということくらいわからないのか。
  218. 田中精一

    田中証人 死んだのは二人とも男だつたそうであります。
  219. 篠田弘作

    篠田委員長 幾つくらい。
  220. 田中精一

    田中証人 年齢はちよつと……。
  221. 篠田弘作

    篠田委員長 おとなか子供か。
  222. 田中精一

    田中証人 おとなが二人であります。
  223. 篠田弘作

    篠田委員長 けが人は。
  224. 田中精一

    田中証人 ……。     〔「知らぬ知らぬと言えといわれたわけじやないかな、宣誓しただろう」と呼ぶ者あり〕
  225. 篠田弘作

    篠田委員長 今あなたにちよつと申し上げますが、さつきあなたは宣誓しているでしよう。「証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ」云々、今聞いているとあなたは直接の責任者でありながら何を聞いても知らぬ知らぬと言つて、当然委員会からすれば証言を拒んでおるものと見てもさしつかえないか。ほんとうにあなたは何も知らないか。
  226. 田中精一

    田中証人 私は知らないことは知らないと申し上げます。知つておりますことは知つていると申し上げます。
  227. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは責任者として何も知らないのか。
  228. 田中精一

    田中証人 事件発生後のことについては、関係者の取調べた結果を聞いておりますことについて、ただいま記憶いたしておりますことは全部申し上げます。
  229. 篠田弘作

    篠田委員長 全部申し上げてごらんなさい。
  230. 田中精一

    田中証人 死傷者について申し上げます。これはその後関係者の報告書について申し上げます。通行人が一名即死、人夫のうち重軽傷を受けた者が十七名でございます。その事故の発生した当日の午後、重傷を受けた者のうち一名が死亡して、結局二名死亡しております。
  231. 篠田弘作

    篠田委員長 少くも通行人にしろ何にしろ、とにかく二名も死んで、十五、六名の重軽傷が起きていることを、最初の書類に判を押したか押さぬかのいきさつは知らぬけれども、それがわからないというそんなばかな責任者というのはないでしよう。
  232. 田中精一

    田中証人 これは事件後におきまして、報告書をつくつて参りました。それに基いてただいま申し上げました。
  233. 篠田弘作

    篠田委員長 もちろんあなたが現場を見ていないということは、あなたは病気で寝ていたからわからぬだろうが、その報告書を見たらわかるでしよう。あなたはそれに基いて答えるつもりで来たのじやないですか。
  234. 田中精一

    田中証人 ただ年齢等は書いておりません。年齢とおつしやつたので、ちよつとまごつきました。
  235. 篠田弘作

    篠田委員長 やり方は非常にルーズですね。死んだ人の年齢や、男か女かぐらいは聞いておかなければまずいじやないですか。ところが今まで聞いたところによると、あなたは結局何もわからないと見てさしつかえないですか。最初の申請にあなたは判を押しているけれども、あなたのおつしやる通り盲判であつた天狗橋がどういう状態であつたかも知らない。落ちたときにはあなたは病気中だからもちろん行つておられない。その後書類によつて報告を受けたけれども、その書類についてもあなたは責任をもつて検討されておらないように思う。年齢が書いてなくても、どういう人が死んだか、若い者が死んだか、年寄りが死んだかということは、責任者として当然関心を持つべきだと思います。
  236. 田中精一

    田中証人 年齢は報告には書いてありましたが、この書類には書いてありませんので、記憶がありませんから……。
  237. 篠田弘作

    篠田委員長 しかしあなたは、この委員会に呼ばれるときに、大体そのくらいの準備をして来られなかつたのですか。天狗橋事件について調査をするということは、あなたのところに通知が行つているはずです。そうすれば天狗橋事件に関する一切の書類を持つて来たつてあたりまえでしよう。あなたがわからなかつたら、だれか連れて来て、ここで聞くことができなくても、書類を持たすとか何とかいうことが当然あるべきでしよう。あなたは初めから知らぬ知らぬというつもりでここに来たと見られてもしかたがない。どういうことを聞かれると思つて来ましたか。天狗橋不正事件について聞かれると思つて来たのじやないですか。
  238. 田中精一

    田中証人 むろん天狗橋事件に関していろいろ聞かれるということはあらかじめ承知して参りましたが、こまかい点については、わからないことははつきりわからないと申し上げる以外にないと思つておりました。
  239. 篠田弘作

    篠田委員長 こまかいというけれども、人が死んだり、けがをしたりすることは、こまかいことですか。それがこまかいことならば、一体大きいこととは何ですか。
  240. 田中精一

    田中証人 人が死んだことはほんとうに大きな問題でありまして、私といたしましては、自分所管土木行政の面から見て申訳ない、今回の事件の中枢をつかさどつている者としてほんとうに申訳ないということは、私は深く念頭に置いて考えております。
  241. 篠田弘作

    篠田委員長 一体二人死んで十五、六人もけがをしたというのを、あなたは申訳ないというけれども、申訳ないと思つているのならば、だれが死んだかということぐらい知つていなければ、申訳ないにならないではないですか。
  242. 田中精一

    田中証人 年齢はここで申し上げるほどはつきりと記憶していないのです。
  243. 篠田弘作

    篠田委員長 しかし死んだ人は二人ですよ。子供が死んだか大人が死んだかくらいは、あなたはわかつておるはずです。
  244. 田中精一

    田中証人 それはわかつております。
  245. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、あなたは慣例によつて判も盲判つたし、内部の機構の問題で没頭しておつたために、実際の工事内容は知らなかつた、こわしたのもだれがこわしたか知らない、死んだ人間もよくわからなかつたということなんだが、それで一体土木部長というものは勤まるものですか、勤まらぬものですか、普通の場合はどうですか。
  246. 田中精一

    田中証人 こういう事件が出ましたので、この天狗橋というものは非常に大きく反響を呼んだ次第でございまするが、そうでなく普通の災害工事というような場合におきましては、やはり先ほど申し上げたような意味において、私たちは慣例申請検査については、ある程度軽く考えて参つたのが今日までのしきたりになつております。
  247. 篠田弘作

    篠田委員長 そうするとあなたは、天狗橋事件が偶然に起つたからこれが問題になつて、おれは運が悪かつたのだ、何にも起らなければ、おれは土木部長としてあたりまえの責任を果したことになるのだ、こういうようにお考えですか。
  248. 田中精一

    田中証人 そういう意味ではございません。災害工事あり方というものの面から考えて私は申し上げました。
  249. 篠田弘作

    篠田委員長 従来の慣例はそうであつたかもわからないが、今あなたがここに呼ばれたり、あるいは部下司直の手によつて調べられているのだから、従来の慣例だけでは責任というものは果せないものであるということを、この事実によつてあなたはお考えになりますか、なりませんか。これからもやはり従来の慣例によつてあなたは仕事をして行きますか。
  250. 田中精一

    田中証人 これから当然改めなければならぬ事柄が出れば、むろん改めて行かなければならぬということは考えております。
  251. 篠田弘作

    篠田委員長 天狗橋事件に対するあなたの土木部長としての責任は、十分お果しになりたと思いますか。従来の慣例従つてつたのだ、たまたま事件が起つたのは、おれの運が悪かつたのだというように感じておられますか。それとも自分のやつておることはまだ十分責任を果しておらなかつたというふうに感じておられますか。私はあなたの今ここでの心境を聞いておる。
  252. 田中精一

    田中証人 どういう意味でしようか。
  253. 篠田弘作

    篠田委員長 事件にならなければこれでよかつたのだ、たまたま事件になつたので、こういうところへ呼ばれたり、あるいは司直の手が伸びているというふうにあなたはさつき言われているわけです。そうすると事件なつたことは運が悪かつたというふうに考えられるか。あるいは自分たちのやり方が十分でなかつたからこういう事件を引起したのだというように考えておられるか、どちらですかと聞いておる。もつとはつきりいえば、やつたことはあたりまえなんだが、事件が起きたのは運が悪かつたと思つているのか、事件が起きたことはわれわれのやり方が悪かつたからだというように考えておられるか、どつちなのか。
  254. 田中精一

    田中証人 災害工事の取扱いについては、先ほど来数次申し上げた通りの慣行、しきたりの線に沿うてやつてつておると思うのであります。この天狗橋事件についてもその慣行でやつて来たが、そのうちにこういう事態を惹起するような何ものかの過失なり、あるいは作為的なる何かのものがそこに加味されて、こういう結果が出たのではないかというふうにも考えられるのでありますが、まだこの結末が解明せられておりませんので、私といたしましては、何ともお答えできかねる次第でございます。
  255. 篠田弘作

    篠田委員長 何か原因がそこにあつた、しかし結末がついておらぬから答えられないとあなたは言われるが、結末というのは法律的な結末ですよ。あなたの言われる結末というのは、検察庁なり裁判所なりの取調べが終つておらないという意味でしよう。
  256. 田中精一

    田中証人 そうでございます。
  257. 篠田弘作

    篠田委員長 法律上の責任はあなたの言われる通りであつたとしても、しかしそこに国民の公僕としての道徳上あるいは良心的なものの判断というのは別にあるのではないですか。法律的の解決がすべてを解決するわけではないでしよう。そうすると、あなたがそこにあつたと言われることの中に、何かあなたの責任は含まれておるか、おらないか。
  258. 田中精一

    田中証人 これは先ほど申し上げましたが、何はともあれ私の所管する土木行政の一端からこういう不祥事件が出ましたので、これは当時天狗橋県会のときにも、私は県会を通じて県民に申し述べたのですが、自分所管事項からこういう不祥事の出たことは申訳ないということは、県会を通じておわびいたしておきました。ただいまも、こういう死傷者の出たということに対しては、まことに申訳ない、今後こういうような事態に立ち至つた原因がわかつたならば、再びかようなことのないように、自分としては全力を尽して行かなければならぬのだというふうに考えまして、深くおわびをいたしておるような次第でございます。
  259. 篠田弘作

    篠田委員長 深くおわびされると言われても、あなたの今までの陳述から見ると、何もおわびしたことにならぬと思うのです。死傷者が出たということも一つだけれども、そこにいわゆる大きな不正事件、最も代表的な不正事件一つあるという問題なのだけれども、しかしこれはあなたの心境の問題だから、ここでしいて追究しませんが、あなたの今までの陳述によると、この問題に対する責任は感じておられないように考えるのですが……。
  260. 田中精一

    田中証人 今申し上げましたように、私はほんとうに申訳ない事態が出たという行政上の責任は痛感いたしております。
  261. 藤田義光

    ○藤田委員 田中さんは建設省の砂防課長をされておつたことがありますか。
  262. 田中精一

    田中証人 ございます。
  263. 藤田義光

    ○藤田委員 先ほど来委員長の質問は非常に詳細をきわめておりましたが、私は国費の濫費という重大な問題でありますので、多少方向をかえまして質問してみたいと思うのです。田中さんの御答弁を聞いておりますと、国会が行政全般の監督権を持つておる、われわれ今その質問権と国政調査権を発動して、土木部長たる田中さんに忌憚のない意見を聞いておる、この厳たる憲法上の事実にかんがみまして、多少司法権の活動に気がねし過ぎておるというきらいを私は感じておりますので、その点から国費問題をお聞きしてみたいと思います。  あなたは砂防課長までやつておられましたので、公共事業費の支出の実際に関しましては、相当詳しい実際家であるというふうにわれわれは想像いたしておりますが、大体建設省の補助工事に対する査定というものは、天狗橋予算要求と実際の工事の実施状況を見ると、これが普通の状態ではないか。つまり災害が五百万円あれば、それを水増しして要求する、検査を求めるというのが普通の常識になつているのじやないか。われわれの聞知する範囲内ではそういうことをよく見聞しておりますので、実際の砂防課長としての体験を言つていただきたいと思います。
  264. 田中精一

    田中証人 ただいまの御質問は、いわゆる天狗橋一千万円要求という、そういうたぐいの水増し要求というものについての実際を話せ、かように承つたのであります。これはむしろ私から申し上げるよりは、建設省の防災関係の方からお聞取りの方が適切かと存じますが、私の了承しております範囲で申し上げます。  たまたま昭和二十五年は全額国庫負担の扱いがなされておりましたが、平生は三分二程度国庫補助でございます。それで被害を受けた場合、府県の直接の係官は、いわゆる原形復旧と申しますか、現実被害を受けた区域内のものを元通りに直す方法によつて幾らかかるかということを見ます、かりにこの金が五百万円といたします。そうした場合に、そのまま元通りにやると次の出水のときにまた同じように根こそぎこわれてしまうというように技師が技術的に見た場合には、これに改良の面を加えまして、二百万円もしくは二百五十万円というものをプラスして、七百五十万円もしくは八百万円——これは一例でございますが、かような設計を立てまして検査申請をいたします。そうして建設省査定官の査定の場合に原形復旧五百万円というものは何の削りようもございません。ただ改良の意味を加味した二百五十万というものに対しましては、これは最小限度の改良の程度を越えておるから百万円で十分だろう、いやこれは二百五十万円なければ再び災害を受ける、こういうふうに技術的な検討をいたすのであります。それで結局査定官が、これは原形復旧のみでたくさんだと見た場合は五百万円と査定いたします。なお五百万円が過大であると認めたときは、これを四百万円に減額査定を受けるのであります。それから反対に、どうしてもこれは七百万円かけなければ、元通りの復旧では二度の災害を受けるという場合には、これを七百万円の査定、いわゆる程度を越した二百万円というものを認めた査定をしてもらいます。こういうようなあり方に今日までなつておるのであります。そうして二十五年度におきましては、原形復旧の面につきましては全額を国庫負担する。その原形復旧の域を越えた額に対しましては、三分の一を地方が負担して、三分の二を国が持つという扱いになつております。この水増しといいますか、程度を越した査定設計をこさえて検査申請するというのは、府県の立場になりますと、再度災害を受けないようにしたい、そうして町村民を困らすことのないようにという意欲の働くのは、これはやむを得ない現象かと思います。それと、一つには、技術的な見方で、府県の技師がこれは二百万円超過した仕事をやらなければだめだと見る場合、主務省査定官が、これはそんなにかけなくてもよろしいと見るような場合があります。そしてこれは私の過去の体験から申しますと、府県の土木技術者は、少しでもいい仕事をやつて、二度と災害を受けないようにしてやりたいという意欲はどうしても働くものと思います。それでこの改良のための超過の金、いわゆる原形復旧の金にプラス・アルフアーというものが、百万円あるいは百五十万円になるということがあり得るかと思います。
  265. 藤田義光

    ○藤田委員 この点委員長からも質問があつたと思いますが、現実に天狗橋に関しましては、一千万円で検査申請をして、実際に県単が四百万円で竣工している。そうしますと、あまりに差額が大きい。これは原形復旧をされたのであるか。それとも改良費を加えて一千万円の検査申請をされたのか。その点おわかりでしたらお伺いしたい。
  266. 田中精一

    田中証人 お答えいたします。墜落後に復旧いたしましたのは、墜落橋梁の使える材料は全部これを使いまして、そうして墜落以前と同等程度の復旧をいたしました。それは金額にいたしまして、五百十五万円の予算で起工いたしたのであります。  それからやはりこの事件後において説明を聞いた結果によると、もともとこの橋は原型が非常に強度の弱い橋だつたそうで、安全荷重が大体三トン未満で、それ以上のものは危険だというような、非常に弱い橋だつたそうであります。それでこの一千万円という金は、もともとすぎ材でやつてつたものを何かひのき材を用いてこれを復旧する設計をつくつたという説明を聞いております。それから原形は、これは大体二トンなにがし、三トン未満の荷重に辛うじて絶える程度の計算でできた橋だそうでございますが、実際はこれに二倍前後の安全率を見ておられますので、トラツクが通りましても、どうやら墜落せずに通つてつたということを聞いておりますが、この橋梁で、安全荷重というものはやはり三トン未満、さように弱い橋であつたということを承知いたしておりますので、ただいま県が五百万で起工いたしましたこの復旧も、結局その弱い規格の通りに復旧がされておりまするので、その後において復旧いたしましてからまだ日がないのですが、数回にわたつてこれに手を加えなければ危険状態にあるので、ただいまは車馬の交通どめをいたしておるように聞いております。
  267. 藤田義光

    ○藤田委員 現実のサンプルとして天狗橋が出ておりますが、類似の事件は福島、長野、石川、大阪、岡山、徳島、佐賀等の諸県に出ておりますので、われわれとしては天狗橋の問題はもちろん重大でありますが、全般の、特に国の予算の五、六分の一を占めるかかる費目の濫費を、いかにして是正するかということが、今後の大きな問題でありますので、重ねてお伺いしておきますが、この水増し問題に対して、先ほど御答弁がありましたが、現実に災害復旧の場合におきまして、国庫補助の支出金額が非常に少い、しかも継続で支出される。ために相当水増し要求をしないと、初年度において、たとえば道路の場合におきましては人畜の通行に支障のない極度の復旧をするのに予算が足らぬ。継続費として出される場合の初年度の費用をいかに多く獲得するかということが建設、農林災害の実際ではないかというふうにわれわれは想像いたしておりますが、この点忌憚ないところを、一つ田中さんの御意見をお伺いしておきたいと思います。  それからもう一つ、外部監査に関しましては、会計検査院あるいは経済安定本部、大蔵省の主計局、行政管理庁等の諸官庁が権限を持つておりますが、実際上これらの諸官庁がはたして地方自治体の補助工事等に関しまして、良心的な監査をやつておるかどうか。現実に毎年こういう問題に関しまして、関係各官庁から真剣な書類の提出を求められたり、あるいは現地の監査を受けておりますかどうか、この点もお伺いしておきたいと思います。
  268. 田中精一

    田中証人 お答えをいたします。ただいま御指摘を受けましたように、府県といたしましては、この年々の災害復旧予算の確立したものにつきまして、年々の配付予算額というものは現実に非常に少いのでございます。それで、たとえば橋のごときもの、あるいは流失した道路のようなものに対しては、どうしても府県では重点集中的にこれをやらないと使いものにならない、非常に不利不便を感ずるということはございます。しかしながらそのために特に水増し要求をするということは、私の承知いたしております範囲においては、ないかと存じますが、要するにその程度を越した——原形復旧以外に程度を越して検査申請をするというのは、やはり府県のものの立場から申しますと、先ほど申しましたように、改良の面を幾ら程度これに加味するかという判断によつて、額が相当ふくれもし、また少くもなる、これがおもな原因ではないか。私の地方立場から考え、私の承知いたしております範囲では、さように考えられるのであります。  それから地方の財政に対する検査につきましては、地方財務局、それから経済安定本部の検査、それから会計検査院等、年間に三、四回ぐらいは財政経理の面の検査を受けております。事実地方としては応接にいとまない程度の御検査をいただいております。従いまして事務上については、かなりいろいろな角度から御検査をいただいておるように承知いたしております。
  269. 藤田義光

    ○藤田委員 最後に田中さんの御意見を伺いたいのですが、こういう問題の頻発をわれわれは目撃いたしまして感ずることは、国家財政と地方財政の配分の問題でございます。少くとも補助として国庫から地方自治体に支出されるものは、初めから地方自治体の財源として確保しておけばいいのじやないか。それを税金で国庫に納めまして、再び自治体がもらうところにいろいろな無理が生ずるのではないか。それだけの財源は府県庁並びに市町村が保持しまして、その保持した財源内で各府県あるいは市町村が創意くふうをめぐらして事業の実施に当るという、シヤウプ博士の勧告にもありましたような行き方が、むしろこういう事件の発生を阻止するのにいい方法ではないか、つまり補助というものを廃止いたしまして、その財源は地方自治体に渡すということが、日本の新しい国政ないし地方自治体のあり方として妥当ではないかと思いますが、天狗橋事件に関連しまして、土木部長としては日が淺いようでございますが、田中さんのひとつ忌憚のないところの御意見をこの点に関して最後にお伺いしておきたい。
  270. 田中精一

    田中証人 お尋ねでございますので、私の承知いたしておる範囲でお答えを申し上げますならば、事実ただいまの地方財源というものが、平衡交付金と、それから遊興飲食税といつたような限られたもので、非常に枯渇いたしておるように承知いたしております。従いまして昭和二十六年度における公共事業執行等におきましては、地方負担の予算をどこから支出するかというようなことで相当難儀をいたしておるのが現実でございますので、御指摘をいただいたように、地方財源をある程度確立していただくということは、非常に望ましいことのように土木部長としての私も希望にたえないところでございます。  それからお許しをいただいて希望をいま一つさせていただくならば、土木事業の面で、災害予算と、それから一般改良予算とございますが、この改良予算をできるだけ増強していただくことによつて、ことに橋梁のごとき、あるいは主要府県道のごときものに対する計画的な仕事を実施いたして参るならば、いろいろなこういう災害にまつわる不自然な現象もおいおいと少くなつて参るのではないかということも考えていただければ仕合せだと思います。
  271. 篠田弘作

  272. 山口武秀

    山口(武)委員 先ほどから証人のお答えによりますと、こまかいことを聞いても証人は答えられないと思いますが、その前にちよつとお聞きいたしたいのは、証人はこの天狗橋事件が発生した後に、この補修工事というものについて承知しておる、それまでは主管の課長に代決をさせていた、このように申しておりますが、主管の課長に代決させる前に、あなたはすでに土木部長として赴任しておる。赴任した以上は、土木部長としての任務と責任があるはずだ。そこであなたが代決させることを命令されてそうなつたのかどうか、それとも自然にそのようになつてしまつたのかどうか。これはどうですか。
  273. 田中精一

    田中証人 ただいまの御質問は、つまり代決以前に土木部長主管課長にそうなさしめたのかどうかという御質問のようでありますが、全然そういうことはございません。代決執行しておることも、私は承知しておらなかつたのでございます。これは先ほど申し上げましたように、主管課長が代決してもよろしいことに庶務細則の上において認められておりますので、おそらくそうなつてつたかと承知しております。
  274. 山口武秀

    山口(武)委員 それから、この天狗橋の復旧は、一千万円の計画で国庫へ補助を要求したのに、県の単独負担四百七十万円で竣工したのはどういうわけかということをあなたは先ほど委員長から聞かれたわけですが、あなたは外科手術をして休んでいて知らなかつた、このように答弁されたわけです。しかし現在病気はなおつておるようです。それほど病気は長かつたわけではないでしようから、その後において当然このことを調査しなければならないはずであります。現在はおわかりだと思うのですが、これはどのような事情ですか。
  275. 田中精一

    田中証人 ただいまの御質問の内容はちよつとわかりかねますが、その復旧が、一千万円のものが四百七十万円でできたという、その理由でございますか。
  276. 山口武秀

    山口(武)委員 そうです。
  277. 田中精一

    田中証人 お答えいたします。これは先ほどもちよつと申し上げましたが、これは墜落した橋の材料のうち使えるものは全部古い材料を取入れまして、破損もしくは滅失いたしております材料を新たに補足いたしまして、そうして原形の規格通りの復旧、いわゆる文字通り復旧いたしましたので、さように安くでき上つております。それから一千万円というものは、これはやはり事件後に私は聞いて承知したのでございますが、この契約は杉材を用いておつたが、強度が弱いので、これをひのき材にする計画であつたというように承知いたしております。そこで、ただいまの四百七十万というように原形復旧が非常に安くできたということ、それから一千万円というものは、そういうふうに質のいい材料を使うことにしたこと、かように私は承知いたしております。お含みを願います。
  278. 山口武秀

    山口(武)委員 そうしますと、四百七十万円で竣工したその橋というのは、竣工はしましたが材料も古い物を使つておりまして、ひのきのかわりにすぎを使つておるというような事情がありまして、あまりりつぱな復旧とは見られない、こう申せるのですか。
  279. 田中精一

    田中証人 仰せの通り、これは上流下流に橋がございませんので、やむを得ずそういう程度のものを拙速主義で復旧いたしました。文字通り非常に弱いので、ただいまはやはり車馬交通制限をしておるように承知いたしております。
  280. 山口武秀

    山口(武)委員 一千万円と四百七十万円では、五百三十万円の差があるのですが、材料費でこれだけの違いが出ておることに間違いはないのですか。たとえばこの一千万円というのは、単に材料がよくなるところに五百三十万円もよけいかかるということ以外に、もう少し何かここに伏在しておるというような点は、あなたはその後の調査によつては見当らなかつたですか。
  281. 田中精一

    田中証人 この一千万円の検査申請の設計は、墜落以前の非常に強度の弱い、腐朽頽廃して、しかも五十メートル前後のジエーン台風で揺られていたんでおつたもの、これを補修するための、まず補修すれば一年やそこらはもつだろうという意味の補修設計、これが一千万円と御承知をいただいてけつこうかと思います。それで墜落してから、拙速主義で四百七十万円で復旧いたしましたのは、人が通るにもどうにもならぬ、対岸との連絡もつかぬというような非常に難儀をいたしておる、かような実情から、最小限度、古い材料を使つて、もともと通りの形のものを復旧いたしたのでございます。それでその一千万円との差額がどうかということにつきましては、一々材料と設計について見ないことには、数字的に御説明はただいまのところなりかねますけれども、大体において今申し上げたような、そういうような意味合いと御承知を願つてさしつかえないと思います。
  282. 山口武秀

    山口(武)委員 私たちの方の調査によれば、以前よりもりつぱな架橋ができておる、かようにも聞いております。この一千万円の内容というものについて、あなたは、これは単に材料の違いだけだ、こうはつきりここで断言できますか。
  283. 田中精一

    田中証人 材料の質をかえたこと、それからその当時墜落以前に腐朽頽廃しておつて、さらにジエーン台風の影響を受けましたので、そのときの技術者が、この程度かえれば今後一年やそこらはもつだろうという目安のもとに、新しい材料を補給して修繕をする設計を立てた、その設計が一千万円だというふうに御承知をいただきたいと思います。
  284. 山口武秀

    山口(武)委員 この橋はジエーン台風によつて被害を受けていますか。
  285. 田中精一

    田中証人 被害程度はただいまわかりませんが、被害を受けておつただろうということは、はつきり私もその後の見聞によつて想像いたしております。
  286. 山口武秀

    山口(武)委員 あなたは先ほど、ジエーン台風被害ということをはつきり断言しましたが今度は想像というような話です。また先ほど委員長の尋問に対しては、あまりよくその間の事情はわからないというようなことを言つていましたが、どうですか。
  287. 田中精一

    田中証人 これは先ほども申し上げましたように、事件発生後においていろいろ見聞いたしました。つまり測候所長のお話では、金沢市は風速四十二メートル何がし、天狗橋現地においては、天狗橋に直角の方向におそらく五十メートル以上の風速でこれに当つたろうということを、はつきり測候所長からも承つております。それでそういうような観点から、ある程度被害は受けておつたろうということが想像できるのでございます。
  288. 山口武秀

    山口(武)委員 そうすると、あなたの言われる想像というのは単なる想像であつて、その内容についてはわからないのですね。あなたは先ほど五百三十万とか金がよけいかかつたことについて、ジエーン台風があつたり、それから材料の問題だ、こう二つ述べていたようですが、それはどうですか。
  289. 田中精一

    田中証人 それは結局先ほど申しましたように、相当荒廃した橋で、しかもジエーン台風によつて被害を受けたということが想像できますので、それに対処するために、木材は結局質のいいものを使つて、そして将来一年やそこらの間は修繕をしたりせぬでも持つだろうという目安のもとに、一千万円の設計ができたものであろうということを申し上げたのであります。
  290. 山口武秀

    山口(武)委員 何かその点あいまいでわかりませんが、こまかいことはいいでしよう。それからあなたは先ほど委員長の質問に対して、この架橋の損傷について、道路課長及び金沢土木出張所長が通謀してやつたとは思わない、こういうように言われましたが、何を根拠として課長、所長がやつたとは思わないのですか。
  291. 田中精一

    田中証人 そういう異常のことは私たちは絶対にないものという信頼を持つております。そういうような意味で申し上げたのであります。
  292. 山口武秀

    山口(武)委員 これはあなたに土木部長として、衆目の見るところ問題があるというより、問題にならないではないかというようなことを今あらためて念を押してお聞きしたのですが、あなたがそもそもこの石川土木部長として参りましたときに、汚職事件があつて、そういうものを粛正するという意味をもつて就任された。そういうような空気の中へあなたが行きまして、しかも現実に問題が起つていながら、そういうことはあり得ないというくらいのことで、この委員会において重大な証言、しかも問題の中心である課長や所長が通謀して損傷をやつたとは思わないということを言つておりますが、もう少し責任を持つて答えてもらいたいと思う。課長や所長がこういうことをやつたとは思わないと言われるならば、もう少し確固たる立場から理由を述べてもらいたい。述べられないと言うならばいい。どうですか。
  293. 田中精一

    田中証人 どういうことでございましようか。ちよつと御質問の要点がわかりませんので……。
  294. 山口武秀

    山口(武)委員 あなたは課長や所長が損傷の計画を立て、これを実行したとは思わないということを言つておりますが、あなたが信頼できるような状況ではなかつたはずです。土木部のあなたの所管のもとに動いている部下の仕事ぶりというものは、前に汚職事件があつたということでもすでに明瞭なはずです。そういう汚職事件があつた中において、あなたは手放しに所長を信頼して、課長や所長がやらなかつたということを簡単に断言していいものかどうかということなのです。
  295. 田中精一

    田中証人 お答えをいたします。天狗橋をたたき落すとかなんとかいうことについて、主管課長出張所長が通謀したと思わないか、かような御質問のように承知いたしましたが、私はそういうような大それた、橋を落すことについての通謀あるいは謀議をしたというようなことは、私はゆめにも考えておりません。これははつきりここで申し上げます。ただ災害申請をすることについては、これは災害とりまとめの主管課長がおりまして、それと各関係課長もしくは出張所長というものが当然連絡をとつて災害申請をしたということは考えられるのでありますが、橋を落すことについて謀議、通謀をしたというようには絶対に私は考えておりません。
  296. 篠田弘作

    篠田委員長 山口君、まだほかにも質問者がありますから、簡単にやつてください。
  297. 山口武秀

    山口(武)委員 そうしますと、それはジエーン台風でひとりで落ちたんですか。
  298. 田中精一

    田中証人 これは私は事件後において人為的、作為的に落した。つまり人力を加えて落したということは新聞紙上等にもすでに報ぜられておりますし、私もそれを見聞して承知いたしております。
  299. 山口武秀

    山口(武)委員 だれが落したか知らぬが、あなたのところの課長や所長はやらない、こういうわけですね。
  300. 篠田弘作

    篠田委員長 田中証人山口委員の質問は、落したことはあなたはつきり見て知つておるわけですね。その後見聞して知つておる。人為的に落した。しかし落したことは認めるが、課長や所長が通謀して落したということは、あなたはないということを確信しておるというわけですね。
  301. 田中精一

    田中証人 確信しております。
  302. 篠田弘作

    篠田委員長 山口君どうですか。確信の問題で、現在検察庁で取調べ中ですから、あなたの質問はそれくらいにして、あともう一人質問者がありますから、簡単にしてください。
  303. 山口武秀

    山口(武)委員 ここでやはり一番問題になると思いますのは、あなたは土木部長として県の工事立場というものを明快にしていない。今話を聞いておりましても、あなたは課長や所長のことをかばつている。しかしあなたは被害者に対して見舞にすら行つていない。病気だと言つている。病気とは申しましても、死者を出している以上、しかもあなたの責任上の問題である以上、病気がなおつたらなぜ見舞に行かないか。それすらもやつていない。そういうことをやりもしないでいて、自分の課長や所長になればかばい立てする。しかも石川県の土木部にはその前にも汚職事件があつたというではないか。こういうことには目をおおうている役人としての考え方にやはり一つの根本問題があるじやないか。あなたは県会を通じておわびをしたと言つている。しかしながらこういうような事件がなぜ発生したかについてはまだ申し上げられないと言つている。事件内容あるいは原因というものがわかつたら、再びそういう問題が起らないようにすると言つている。こういうばかばかしい、無責任な発言があるだろうか。あなたはだれに責任を持つのだ。県民に対して責任を持つんじやないか。そういうことであるならば、こういう問題が起つただけでも、しかも汚職事件を再び起さないように任命されて行つた建前からいつても、あなたは当然県民に対してもう少しはつきりした責任を負うて、こういう汚職問題を考えられなければならなかつたと思うのですが、あなた自身知事かあるいは県民に対して辞職をして責任をとりたいというような行動あるいは申合せというものを行つたかどうか、この点についてお聞きしたい。
  304. 田中精一

    田中証人 お答えをいたします。道路課長、土木出張所長土木部長は不当に擁護しておる、かような御指摘でございまするが、私は決して不当に擁護いたしておりません。ただいまのところ私は道路課長並びに出張所長には全幅の信頼を持つておるということにほかならないのであります。それから事件が発生いたしまして死傷者の出たときは、私外科手術をして休んでおりましたが、土木部長のお見舞として、かわりに監理課長を、死傷者のお宅へ親しくお見舞を申し上げさしてあるはずでございます。それから本事件に対してお前は辞表を提出する意思がないかというような御質問でございまするが、ただいまのところさようなことはまだ考えておりません。
  305. 山口武秀

    山口(武)委員 これほどの問題を起しながら、まだ辞職について考えたことがないということが、すでに常識はずれだと思う。それからもう一つ、この問題を起した張本人であり、現実の責任者である道路課長、土木出張所長、これを全面的に信頼しておるというようなことを、ぬけぬけとここで言つてのけるようなあなたの態度にこそ、この問題の原因があるのですよ。この点だけ、はつきり私は言つておきたい。
  306. 田中精一

    田中証人 ただいまのおしかりでございますが、天狗橋をたたき落す通謀をするというようなことは、これは殺人を謀議するようなことでありまして、そんなような大それたことは、絶対にしないものというふうに私は確信しておる、かように申し上げたのでございます。
  307. 篠田弘作

    篠田委員長 田中君に申し上げますが、あなたの確信が、もし検察庁、あるいは裁判の結果、通謀しておるということがわかつた場合には、あなたはどうしますか。あなたは、今は架空の確信だけれども、はつきりそれがわかつたときはどうするか。
  308. 田中精一

    田中証人 そういうことが確定いたしますれば、そのときは私は行政上の責任に対して決意いたすつもりでおります。
  309. 篠田弘作

    篠田委員長 よろしい。加藤君。
  310. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたがいわゆる天狗橋墜落事件に関与し、関知した事柄について、検察庁で調べられたことがあると言われましたが、大体その点については当委員会であなたが申し述べたようなことを陳弁したのですか。
  311. 田中精一

    田中証人 ただいま御質問の通りでございます。
  312. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたは欠勤したと言つているのですが、いつからいつまで欠勤して、その理由は何ですか。
  313. 田中精一

    田中証人 これは墜落以前四、五日前かと承知いたしますが、水虫がもとで、これに黴菌が入つて敗血症になりまして、それで約一箇月間とじこもつて、外科手術を受けて、かたがた注射療法をとつておりました。直りましてからも、歩行困難で約半月間くらいは庁内にとじこもつて、他出はできない状態でございました。
  314. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それでは、だいぶ複雑な御答弁で少し混雑しましたが、墜落事件のあつた四、五日前から水虫で療養しておつた、こういうのですね。
  315. 田中精一

    田中証人 水虫はずつと前からですが、黴菌が入りまして敗血症になりまして、それでたしか今日ははつきりいたしておりませんが、五、六日前と思います。
  316. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それで、いつまで欠勤したのですか。
  317. 田中精一

    田中証人 約一箇月間欠勤いたしました。
  318. 加藤充

    ○加藤(充)委員 全然県庁へ行かなかつたのですか。
  319. 田中精一

    田中証人 県庁へ行きませんで……。
  320. 加藤充

    ○加藤(充)委員 どこへ行つたのですか。
  321. 田中精一

    田中証人 自宅で寝たきりでございました。
  322. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あとで聞き知つたことでいいのですが、そのころにはあなたの部下であつた土木課長や出張所長というような人たちが検察庁や警察に呼ばれておつたのですか、あなたが休んでいる間に。
  323. 田中精一

    田中証人 ええ。私が休んでおる間にみな呼ばれたように承知しております。
  324. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたが警察ないしは検察庁に行つて調べられた最初の日にちは、いつです。
  325. 田中精一

    田中証人 それは、私が直つて出勤してからしばらくたつてからだと思いますが……。
  326. 加藤充

    ○加藤(充)委員 何月だつたのですか。年が明けてからですか。
  327. 田中精一

    田中証人 日どりはわかりませんですが……。
  328. 加藤充

    ○加藤(充)委員 正月済んでからか。全然そういうことを知らないのか。
  329. 田中精一

    田中証人 私の随行が来ておりますから……。君知らぬか。
  330. 加藤充

    ○加藤(充)委員 何言つておるんだ、てめえのこともわからないでどうするんだ。
  331. 田中精一

    田中証人 この席で、はつきり申し上げるには……。
  332. 加藤充

    ○加藤(充)委員 大体でいいから…。
  333. 篠田弘作

    篠田委員長 田中君に言いますが、君は今質問を受けておる。随行が来ておるかいないか知らないが、君は委員長の許可を得ないで、そういうことを言うのはどういうわけだ。自分が呼ばれたことがわからなくて、随行がどうしてわかるか、そういう態度がすべての行政上の問題になつて来ておるのだ、自分の呼ばれたことがわからないのに、随行に聞くというような、そういう官僚的の態度があるか。しかもここは国会の委員会だ、何だい、その態度は一体。
  334. 田中精一

    田中証人 申訳ありません。失礼いたしました。
  335. 篠田弘作

    篠田委員長 君は土木部長というものは、どんなに偉いものと思つておるのか。
  336. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あわてないで、簡単なことだから答えてください。梅の花の咲くころか、桜の花の咲くころか……。
  337. 篠田弘作

    篠田委員長 暮に呼ばれたか、正月に呼ばれたかぐらいのことはわかるだろう。
  338. 田中精一

    田中証人 たしか十二月じやなかつたかと思います。
  339. 篠田弘作

    篠田委員長 それでいいじやないか。
  340. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それからあなたが、病床におつたにせよ、おらなかつたにせよ、墜落事件についてその事故の原因というようなものの技術的な報告を受けたことがあるのかないのか、あるとすればいつごろなのか。
  341. 田中精一

    田中証人 技術的な報告ですか。
  342. 加藤充

    ○加藤(充)委員 たとえば墜落のときに、つり線が二十一本切れておるとか、橋のけたが七本故意にはずれておるとかいうような問題について、墜落の原因というものの、技術的報告というものを、とにかくあなたは上司機関として一応受取つておるはずだと思うが……。
  343. 田中精一

    田中証人 私は出動しましてから、上流ぎわのつり線がはずされた、それから木製のけたがのこぎりで切断された。これが墜落の原因だということを聞きました。
  344. 加藤充

    ○加藤(充)委員 文書で報告を受けたことはないのか。
  345. 田中精一

    田中証人 文書で報告は受けておりません。詳細に私が知つたのは、県会開会直前に道路課の係員をして、これの実態の報告をしてもらうようにいたしました。これが最初の報告でございます。
  346. 加藤充

    ○加藤(充)委員 これだけの大事件で、現場関係から墜落原因の一応の技術的の報告というものはないのですか、別に。
  347. 田中精一

    田中証人 それだから今申し上げた上流ぎわのつり線を切断したこと。
  348. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それではこう聞きましよう。あなたはそういう文書に目を通したことはないのだね。
  349. 田中精一

    田中証人 県会直前に文書として道路課からもらいました。
  350. 加藤充

    ○加藤(充)委員 県会というのはいつ開かれたか。
  351. 田中精一

    田中証人 これは十二月に開かれました。
  352. 加藤充

    ○加藤(充)委員 十二月ということだが、その直前というのはいつですか。
  353. 田中精一

    田中証人 十二月の初旬と思いますが……。
  354. 加藤充

    ○加藤(充)委員 そうすると、あなたはその書類をどこで見たのですか。
  355. 田中精一

    田中証人 今の私は……。
  356. 加藤充

    ○加藤(充)委員 見たという書類ですよ、県会直前に。
  357. 田中精一

    田中証人 県庁でそれを作成いたしました。作成したものを県庁で私は受取りまして、それによつて説明資料といたしたわけであります。
  358. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたは十一月十一日にこの事故が起きて、一箇月ほど自宅休養で水虫と敗血症で、県庁へ行かなかつたというのだろう。
  359. 篠田弘作

    篠田委員長 ジエーン台風の四、五日、前から、あなたは自宅で療養しておるのだね。
  360. 田中精一

    田中証人 ジエーン台風ではないのです。墜落の四、五日前です。
  361. 篠田弘作

    篠田委員長 墜落はいつですか。
  362. 田中精一

    田中証人 墜落は十一月の十一日と承知しております。
  363. 篠田弘作

    篠田委員長 十一月の十一日に墜落してその四、五日前からちようど一箇月ですね。そうすると十二月七、八日になりますね。それから半月ばかり外出されなかつた、そうすると、その日にちはわかるでしよう、どこで受取つたか。
  364. 田中精一

    田中証人 それを受取つたのは、県庁の土木部長室で私は報告を受取りました。
  365. 篠田弘作

    篠田委員長 十二月の初旬ですか。
  366. 田中精一

    田中証人 たしかそうです。
  367. 加藤充

    ○加藤(充)委員 最後に一点ですが、国庫の補助を申請した箇所が二、三箇所あるやに記憶しておると言つたのですが、この天狗橋の墜落事件をあなたは県庁に出勤しておつて文書で見られたと言われたけれども、敗血症は重症でしようが、それが直つて水虫だということになれば、天狗橋あるいは国庫の補助申請をしたという現場には行つたことはないのですか。
  368. 田中精一

    田中証人 天狗橋の現場にはその当時参りませんでした。それから先ほど委員長の御質問にお答えしたように、ジエーン台風の直後には、能登半島の内浦海岸土木委員一行とまわりましたが、それ以外にはジエーン台風による被害箇所を特に見に出ておりません。
  369. 加藤充

    ○加藤(充)委員 おれが聞いておるのは、国庫補助申請をしたところが、天狗橋のほかに一千万円程度のものが二、三箇所あるやに聞いておると言つたでしよう。そういうところを見てまわつたかと言つておる。
  370. 田中精一

    田中証人 今申し上げた能登半登の内浦海岸は、これはジエーン台風直後に現場を見ております。
  371. 加藤充

    ○加藤(充)委員 内浦海岸一円を見てまわつたかどうかを聞いておるのではない。国庫補助申請した箇所を見たかどうかを聞いておる。
  372. 田中精一

    田中証人 ですから内浦海岸の道路の災害を受けた、道路の流失されたところですか。
  373. 加藤充

    ○加藤(充)委員 その中に含まつておるかもしれぬというのですか。
  374. 田中精一

    田中証人 ええ、含まつておるわけです。
  375. 篠田弘作

    篠田委員長 加藤君、もういいかげんに……。
  376. 加藤充

    ○加藤(充)委員 もう一点だけ。二十五年の二月にも予算の流用か何かの問題で、多数の土木所員が、職員が非常に退職をするとかなんとかいう、それに連坐するとかなんとかいう問題が起きて不安があつたというのですが、どういう流用をやつたのですか。そうしてまたその額はどのくらいですか。
  377. 田中精一

    田中証人 これは先ほどの委員長の御質問のときにも申し述べましたように、私の赴任前のできごとでございますから、内容の詳細については、私は存じておりません。
  378. 加藤充

    ○加藤(充)委員 ぼくが聞いておるのは、内容の詳細ではない。
  379. 田中精一

    田中証人 大体の金額……。
  380. 加藤充

    ○加藤(充)委員 どういう流用をやつたのか、金額は何ぼかという大体でいい。
  381. 田中精一

    田中証人 いや、これも承知しておりません。申し上げかねます。
  382. 加藤充

    ○加藤(充)委員 そんなばかな土木部長があるもんか。
  383. 田中精一

    田中証人 赴任前でございますから……。
  384. 加藤充

    ○加藤(充)委員 赴任前だつてあとからそういうもたもたが起きておるというようなことになつて、あるいは警察や検事局あたりで調べにかかつたとかいうような状態になつておるときに、今ぼくが聞いた二項目ぐらい全然知らぬ存ぜぬという土木部長がありますか。そんなばかな土木部長つたら、月給のただどりではないか。おまけに部長として、べらぼうに県民に負担をかけて、こういうばかなことをやつたら、強盗や窃盗よりもべらぼうなやつだよ、これは。しかもそういうことを全然知らないというばかなことでよく月給をもらえるね。
  385. 篠田弘作

    篠田委員長 ちよつと加藤君に御注意申し上げますが、言葉をもう少し慎んでください。  田中君に申し上げますが、赴任前のことであるけれども、あなたは先ほどもつたように、概略は御存じのはずです。だから何も詳しいことを言わなくてもいい。大体汚職の金額はどのくらいで、どういう内容であつたかぐらいのことは、あなた、説明ができるでしよう。
  386. 田中精一

    田中証人 これは金額についても私は……。
  387. 篠田弘作

    篠田委員長 全然知らない……。
  388. 田中精一

    田中証人 いや、流用したということは聞いておりますが、金額については私今承知しておりません。
  389. 篠田弘作

    篠田委員長 かつて聞いたこともない……。
  390. 田中精一

    田中証人 金額については聞いておりません。
  391. 篠田弘作

    篠田委員長 何人くらいの県庁の吏員が連坐したかも御存じないですか。
  392. 田中精一

    田中証人 これはおおよそでございますが、一応嫌疑なしとなつたようなものを合せて、やはり二十名近くかと思います。
  393. 篠田弘作

    篠田委員長 二十名ぐらいの土木課員——課員であるか、部員であるか知りませんが、やめたでしよう。
  394. 田中精一

    田中証人 やめたものも、やめないものも、やはり一応関係ありと思われるようなものは二十名ぐらいだと思います。
  395. 篠田弘作

    篠田委員長 二十名くらいのあなたの部下が関係した汚職事件で、あなたは金額もわからないし、内容もわからない……。
  396. 田中精一

    田中証人 それは私の赴任前にできてしまつたことです。
  397. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたの赴任前であつても、あなたは後任の土木部長として知らないとおつしやるのですか。
  398. 田中精一

    田中証人 これは内容についてはちよつとわかりかねます。
  399. 篠田弘作

    篠田委員長 わかりかねるということは、あなたは報告を受けておらなかつたというのですか。
  400. 田中精一

    田中証人 報告は受けておりません。
  401. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 議事進行について。ただいまの加藤君の発言ですが、共産党の加藤君の発言というものは、これは今現に田中君の言動に対して非常に注意を与えている。その同じ委員が非常に何と言いますかこの委員会にふさわしくない言葉を使うということは、これは慎んでもらいたい。私は国会の同じ構成員として、またこの委員会の同じ構成員として、匹夫下郎、町の無頼漢みたいな言葉を使うということは、われわれとして迷惑です。それについて委員長からも注意してもらいたい。
  402. 篠田弘作

    篠田委員長 それはただいまの岡委員の御意見と同感でありまして、証人の態度というものがあまりにもがんこであるから、多少感情的になるということは、これはやむを得ないかもしれないけれども、岡委員の指摘通り、まつたく民主主義的でない言葉をもつて証人を威嚇するような態度をとられたということについては、委員長としても一応注意を申し上げましたが、お前は月給のただどろぼうだなどということは、委員会の言論としてはふさわしくないからお取消しを願いたいと私は思います。
  403. 加藤充

    ○加藤(充)委員 ただどろぼうみたいなものだというのですから、私は取消す必要はないと思うのです。まつた石川県民が聞いていたら、県会を通じてごあいさつしましたとか言つておりますけれども、こんなばかなことでは、私よりもひどい言葉で感情を爆発させるだろうと思うのです。知らないからいいようなものの……。私は御指摘のような傾向が見られたことについては、私も今はあまり強い言葉を使わなくてもよかつたように思うのですが、事実月給のただどろぼうみたいなものじやないですか。
  404. 篠田弘作

    篠田委員長 それは事実を調べてみなければわかりませんが……。
  405. 大森玉木

    ○大森委員 議事進行について。私も石川県の県民の一員であります。しかしながら、今加藤君の言われたことは、まことに奇怪千万です。とにかくこの問題は、われわれは内部のことをよく知つておる。もはやあまり言い尽された問題であるから、先ほどから何も言わずにおるのであります。大体この落した原因に対しましても、田中君は遠慮しておるためにこれがはつきりしない。どういうことであるかというと、落したのが宮竹組という……。
  406. 篠田弘作

    篠田委員長 その説明は聞く必要はありません。証人として呼んでおりませんから。
  407. 大森玉木

    ○大森委員 質問と同時に私は今……。
  408. 篠田弘作

    篠田委員長 いや、それはあなたから聞く必要はありません。証人に対する尋問をしてください。あるいは加藤君の発言に対する議事進行か……。
  409. 大森玉木

    ○大森委員 加藤君の発言に対して一言意見を加えて結論に入りたい。そういうことであつて、問題は、もうすでにそうした事件がだれそれがやつたのだというような問題がはつきりいたしていることなんです。ところが、それをつるし上げやつておるから、田中君の態度というものはあいまいである、そこでそれをとらえて今加藤君の言われたことは月給どろぼうである、こうはつきり言つた。けれども、どろぼうであろう、どろぼうみたいだというようなことを言つたというてごまかすことは、速記録を見た上でこれをはつきりと処分してもらいたい。私はこれを取消さなければ、この議事進行に対して異議がある。取消してもらわなければ、あるいは本人はどうあるか知らないけれども、やはり石川県の名誉のために、これは名誉毀損であると私は考えます。
  410. 篠田弘作

    篠田委員長 それは速記録を調べた上でなければ、加藤君が月給どろぼうであると言つたか、月給どろぼうみたいなものであると言つたかということは、それは速記録を見なければわかりませんが、とにかく加藤君の発言は、本委員会における発言としてはふさわしくないということだけは、私は委員長として認めますが、お取消しになりませんか。
  411. 加藤充

    ○加藤(充)委員 いや、月給どろぼうみたいだ……。
  412. 篠田弘作

    篠田委員長 月給どろぼうということだけでなしに、たとえばおれというような言葉とか、あるいはお前というような言葉を使われたと思いますが、そういう証人に対して必要以上のお言葉をお用いになつたという点について概括的にお取消しになるかどうか。
  413. 加藤充

    ○加藤(充)委員 月給どろぼうみたいな感じを持つておりますから、そういう感じを委員会で述べたことは、私はその方がむしろ率直なんだと思うのですが……。
  414. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたの態度、あなたの気持は率直であつたかもしれぬけれども、発言された内容委員会の品位をきずつけたとしたら、委員としてどうしますか。
  415. 加藤充

    ○加藤(充)委員 月給どろぼうみたいなものを養つているのはかなわぬという気持を持つた。そういう気持を持つた委員がおつたら、ここでそのことを発言をしても、ぼくは行政監察委員会の威厳ですか品位ですか、きずつけたものだというふうには解釈できないのです。
  416. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは速記録を調べまして、あとで加藤君の善処をお願いするかもしれません。あとで速記録を調べます。島田君。
  417. 島田末信

    島田委員 大事な質問が一点抜けておるように思いますので、簡単にお尋ねいたします。この一千万円の被害査定申請したということは、天狗橋が全壊しだということが前提にならなければ、この額の申請はなかつたと思いまするが、これは認めますね。——天狗橋ジエーン台風でほとんどこわれたということでなければ、一千万円の被害査定は金額においてされなかつたと思うのですが、これは認めますね。
  418. 篠田弘作

    篠田委員長 いや全額ではない、四分の三だ。四分の三こわれたということを、あなたは認めるか認めないか。
  419. 田中精一

    田中証人 これが四分の三以上こわれた場合は、この橋は全部がだめで、かけかえを要するというふうになるわけでございます。
  420. 島田末信

    島田委員 ところが落さなければ、たたき落さなければ、そういう被害査定にはパスしない、通過しないということで、落されたのだと思いますが、そうなるとジエーン台風による被害がほとんどなかつたものを、そこまであつたものとして申請したということは、これは認めなければいかぬと思うのですね。
  421. 田中精一

    田中証人 ちよつとお答えいたします。これは墜落後において建設省査定官が現地を見まして、墜落したということを前提として、一応査定額を考えてもらつたのが二千五百四十七万六千円という金額で、このうち原形復旧が一千七百十万円、これが一応査定官によつて査定された金でございますが、査定官はこの墜落ということに疑義ありとして、一応保留されて今日に至つております。一千万円というものは、結局補修工事のある程度の完璧を期するという目途のもとにつくられた額と私は考えております。
  422. 島田末信

    島田委員 最初一千万円の被害査定を受ける、その目的は大体天狗橋被害を受けた現状に基いてその申請がなされたか、それ以上に大破損があつたものとして一千万円を申請するに至つたか、これはどうお考えです。
  423. 田中精一

    田中証人 これはやはりこの事件発生後におきまして、いろいろと技師から私も聞きました。その結果によると、ジエーン台風によつてこの橋の両わきに木で組んだジヨイント——この継ぎ手などが、大体三センチくらいずれておつて、重い荷重がかかれば墜落の危険があるという程度被害を受けておるということも聞いておりましたので、この結合部その他のものがいたむとその材料はもう使いものにならぬということになりますので、その関係上、ちよつと見たところは折れたり飛ばされたりしなくとも、そういう部面に対しては、新しい材料をさし加えなければならぬことになるものとただいま私も考えております。それで結局一千万円というものは、やはりかけかえのことは考えずに完璧補修という考えのもとになされたものと私はただいまも考えております。
  424. 島田末信

    島田委員 大体台風などの起きた場合に、被害が大してなくても、それに便乗して、いわゆる腐朽した橋梁などを一応修理したいという気持はよくわかる。しかしこの一千万円の被害申請を行う場合に、台風被害自体は大したことはなかつた。しかしそれに便乗してそういつた修理、修繕を行いたいという気持で、一応主管課長なりあるいは係の者が申請することにしたのだろうと思う。そこで私がお聞きしたいのは、われわれの行政監察の使命からいつて、要は国費の濫費を今後したくないというのが根本なんです。そうすると被害がないものを、被害があつたがごとく申請して、しかも今度はたたきこわさなければならぬような実情に陥つたということ自体が、われわれはこの問題だけでなく全般的に通じて、そういつたことを今後に防ぎたいという気持でおるわけなんです。そこで結局一千万円を申請したその被害程度というものと、それから橋自体の実情とをにらみ合して、大体その主管課長がやつたことが、いわゆる台風による被害がほとんどないものを、あるがごとく申請したという結果に陥つておるのではないか。そうするとあなたが全幅の信頼を置いておるというその課長のやつたことは、一応従来の習わしから行けばあり得ることには違いない。しかしわれわれから見れば、あまり被害もないものを、あるがごとく便乗して国費を濫費するという建前からいつて、そういつた主管課長なり係のやつたことは責任があるのではないか、こう私は見たいのですが、あなたの立場上どうなんです。
  425. 田中精一

    田中証人 ただいまの御質問はごもつともなように思います。この橋梁の災害復旧は、今までの慣行から申しまして、相当年数がたつて、いわゆる腐朽頽廃の状態になつてつて、しかもまだ形は整えておる、それが風害等によつて墜落した場合、あるいは墜落しなくても、もうちよつとの風害によつてつたく使用にたえない状態になつた場合は、災害査定しきたりから、これがかけかえ予算を見込めるというのが今日までのしきたりになつております。それでこの天狗橋のごときものも、相当強度の弱い橋で、しかも相当腐朽頽廃しておつたところへ、五十メートル前後の風速でやられたので、先ほど申し上げましたように、ジヨイント等が三、四センチ程度もずれておる。それでこのままでは重量のものは通れないというような状態で、これを補修するために一千万円の金額を掲げたものと思います。要するに災害の状態が、腐朽頽廃していたものでも、それが最後に使用不能になつ原因が結局風害なり水害なりが加われば、これは腐朽頽廃ということはあつても、一応これを全面的に認めるというのが過去のしきたりになつておるようでございます。お含みをいただきたいと思います。
  426. 島田末信

    島田委員 最後に私ちよつと申しますが、要は今言つたような台風などに便乗して、こういう予算をとるということが、いいか悪いかということを私は考えたい。そこで腐朽頽廃したそういつた橋をさらにかけかえるのならばもう一歩さらに別途の方法でやることがいいのだろうと思う。そういうことが台風などに便乗してやらなければやれぬというところに、一つの隘路があるということも考えられる。しかしそれを平気で、台風で大した被害もないのに、あるがごとく見せかけて申請した、そういつた主管課長には何ら責任はないのだ、全幅の信頼を置いていいのだ、こういう習わし自体に、私は国費全般から見て、濫費されやすい原因が伴うのじやないか。こういうところで私はむしろ今一歩、今後そういつた便乗した予算のとり方、被害もないものを被害があるがごとく見せかけるような申請の仕方、こういうことに対しては、あなた方がいわゆる部下のやつたことに対して十分責任を持たし、全幅の信頼などを持たない今後のあり方というものを私たちは要求したいと思う。その責任を、私は問いたかつたのです。
  427. 篠田弘作

    篠田委員長 岡西君
  428. 岡西明貞

    ○岡西委員 田中さんが昭和二十五年の五月二十一日に石川県の土木部長に着任されまして、それから九月の三日にジエーン台風が起つておるのでございますが、この間におきまして、あなたは土木部長として、関係方面にあいさつまわりをし、そのほか土木行政に関しましては石川県の各地を視察されたことがございますか。
  429. 田中精一

    田中証人 その間に地方を歩きましたのは、各出張所地域を一応全部まわりました。それからあとは、先ほど申しました能登地区のジエーン台風に基く現地視察、そのほかは、特別の用務が出てやむを得ない場所について二、三出ておると思いますが、ただいまのところ、いつ、どこに何箇所出ておるかということは記憶いたしておりません。
  430. 岡西明貞

    ○岡西委員 九月三日にジエーン台風が起りまして、あなたはすぐに能登方面を関係官を連れて御視察になつたということでありますが、その視察になられました結果、あなたが土木行政責任者として、専門家として、どのくらいの損害があるかということをそのときお認めになりましたか。
  431. 田中精一

    田中証人 その当時能登は見に参りましたが、そのときは交通網が寸断されておつたので、見に参りましたときには、まだ概算の金額すらも出ておりませんでした。     〔委員長退席、島田委員長代理着席〕 それでその他県下一般損害額について、先ほど申し上げましたように、出張所の各方面担当技師が概算を出して来るのは相当遅れておりましたので、概算どのくらいというものは、もくろみ書というものをつくるのでありますが、そのもくろみ書の原稿のできるとき初めて全体で幾らぐらいということがわかるので、かなり遅れてから承知いたしました。
  432. 岡西明貞

    ○岡西委員 それでは、九月三日にジエーン台風が起りまして、御視察になりまして、あなたは的確にこのジエーン台風による被害は金額において幾らあるかという見積りの算定ができなかつた。その後土木部の道路課長なり、あるいはまた所管土木出張所から、このジエーン台風による災害の状況とか、あるいはまたその損害の金額等は、いつあなたはお聞きになりましたか。
  433. 田中精一

    田中証人 ただいま申し上げましたように、もくろみ書というものを建設省に出すことになつておりますので、この原稿ができたときに初めて、全体で幾らということを承知いたしましたので、これはかなり遅れてからであります。
  434. 岡西明貞

    ○岡西委員 それはいつごろですか。
  435. 田中精一

    田中証人 どうも日取りははつきり記憶しておりませんが、十月の末か、十一月の初めではないかと思いますが、はつきり今記憶しておりません。
  436. 岡西明貞

    ○岡西委員 そうしますと、あなたは大体十月の末ごろ、このジエーン台風損害につき部下からの報告を受けられたということでございますが、そのとき実際のジエーン台風による河川の流出とか、たんぼの損害、家屋の倒壊、その他のものについて、ただ書類のみでそれを承知されたのか、特に現地検査した写真、添付書類その他をごらんになりましたか。
  437. 田中精一

    田中証人 これはそのもくろみ書だけを申達いたしましただけで、現地については何も見ておりませんし、またその現地を全部にわたつて見るわけにも行きませんし、このもくろみ書は、先ほども申し上げましたように、検査一つのよりどころとしての資料と心得ておりますので、もくろみ書ができると、総括で何箇所で、金が幾らだということくらいを一応念頭に入れて、もくろみ書を捺印して、すぐに建設省へ送つております。
  438. 岡西明貞

    ○岡西委員 あなたは、ジエーン台風被害については、もくろみ書だけで、現地を見ていないからよくわからなかつた、また写真等についてはごらんにならなかつたとおつしやいますが、現に先ほどの証言によりますと、九月三日ジエーン台風が起つた直後、あなたは係官を連れて能登半島を視察されたということを言つておられるのですが、これはずいぶん食い違いがあるじやないですか。
  439. 田中精一

    田中証人 お言葉で恐れ入りますが、一応能登半島の方は見ましたけれども、どの箇所幾らというような金額は、その当時全然わかつておりません。
  440. 岡西明貞

    ○岡西委員 金額を言つているのではないのです。あなたは能登半島を視察されたということを先ほどおつしやいましたけれども、その後の私の質問では、その金額その他の要求があつた時分に、現地を知らぬということをあなたはおつしやつたが、その前に事実見ておられるのではないか。
  441. 田中精一

    田中証人 いや、知らぬと申し上げたのではなくて、もくろみ書がまとまつて出るときに、そのもくろみ書について私は各現場については特に見に行つておりません。こういう意味で申し上げましたので、その災害直後に能登半島等を見たということも間違いはないわけであります。
  442. 岡西明貞

    ○岡西委員 そうしますと、台風による復旧費の第三次分として一千万円の国庫補助金要求するとき、あなたはもちろん決裁されたでしよう。建設省に出される時分に、土木部長として決裁をされましたか。
  443. 田中精一

    田中証人 今申し上げました検査申請のもくろみ書は、判をついております。検査申請に添付するもくろみ書というものがございますが、これに閲覧の判をついております。
  444. 岡西明貞

    ○岡西委員 そうしますと、この一千万円の国庫補助に対する要求額というものは、すでに十月の末ごろ部下から書類を提出されて、それをあなたが検分されて、判を押して本省に出された以上は、この天狗橋の落橋による問題とは全然関係のないことになりますね。天狗橋の費用とは全然違うわけでしよう。一千万円の国庫補助というものは、ジエーン台風による被害に対する国庫補助要求されたものであつて天狗橋の復旧の工事費とは全然関係がない金なんでしよう。
  445. 田中精一

    田中証人 これは県下全体の道路、橋梁、河川、砂防、海岸、これら全部を含めたものの箇所をずつと書いて、箇所別の概算金額を入れたそのもくろみ書というものができます。それに私は捺印いたしまとた。それに知事が知事名をもつて災害土木工事検査をしてくださいという申請書が添付されて建設省に出されたわけです。
  446. 岡西明貞

    ○岡西委員 その中に天狗橋工事費として……。
  447. 田中精一

    田中証人 その中に入つてつたわけです。
  448. 島田末信

    島田委員長代理 他に御質問がなければ、田中証人に対する尋問はこれにて終了いたします。証人には長い間御苦労様でした。     —————————————
  449. 島田末信

    島田委員長代理 それでは引続き永田敏男君より証言を求めることといたします。永田敏男君ですね。
  450. 永田敏男

    永田証人 そうです。
  451. 島田末信

    島田委員長代理 あらかじめ文書をもつて承知通り、本日正式の証人として証言を求めることに決定いたしましたから、さよう御了承ください。  ただいまより公共事業費をめぐる不正事件について証言を求めることになりますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓させなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人永田敏男君朗読〕    宣誓書   良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  452. 島田末信

    島田委員長代理 それでは署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  453. 島田末信

    島田委員長代理 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  証人はいつから現職に就任されましたか。
  454. 永田敏男

    永田証人 昭和二十二年六月二十八日付で検事となりました。そして昭和二十五年九月十三日付をもつて金沢地方検察庁に勤務することになりました。その以前、昭和十二年二月以降昭和二十一年五月二十一日まで朝鮮総督府検事をしておりました。
  455. 島田末信

    島田委員長代理 天狗橋事件の捜査の経過と本件に関する処分を要綱だけひとつ述べてください。
  456. 永田敏男

    永田証人 ちよつと書類を見てよろしゆうございますか。
  457. 島田末信

    島田委員長代理 いいでしよう。
  458. 永田敏男

    永田証人 天狗橋が落下いたしましたのは、昭和二十五年十一月十一日午前十時ごろであります。それがその翌日石川県の地方新聞である北国新聞などに掲載されまして、当時の金沢地方検察庁検事正名越亮一がこれを見まして、これは一応現地行つて実況検分の必要がある、こういうことで最初私に行けないかというようなお尋ねがあつたのでありますが、当時私は他の事件で非常に忙しくて行けなかつたのであります。そしてほかの検事も事件の関係でさしつかえがあつたために、検事正みずから庶務課長を帯同して現地に行き、実況を検分されたのであります。ところが橋が上流側が全部下に落ちてぶら下つておるのであります。そのぶら下つておる橋の縦げた及び上流側の下弦材が一部のこぎりで切断されておる箇所があつたのであります。それでどうもこれはおかしい、落下の原因は、その前にその橋が大分腐つておりまして、補修の必要があるというので、石川県で百六十三万円かと思いましたが、予算をもらつて、そして株式会社宮竹組に百五十万円で補修工事をやらせておつたのでありますが、その補修工事中あやまつて橋が落下したということであつたのであります。しかし検事正は、橋を補修するのに下弦材を切つたり縦げたを切るというのはおかしい、これは捜査の必要が十分ある、こう見られたということであります。この橋は石川石川郡鶴来町と石川県能美郡山上村の間を流れている手取川に架設してある橋であります。それで地元の鶴来町警察署においては、この橋が落下したときから、業務上過失致死傷害の容疑をもつて捜査をし、ちようど検事正が行かれたときも実況を検分しておつたのであります。検事正はよくいろいろ実況検分のことなどを注意して帰られました。帰るとすぐ私をこの事件の主任検事に指名されたのであります。一方国家地方警察におきましても、やはりこの橋については管轄権がありました関係上、鶴来町警察署と一緒になつて捜査を続けておつた。そしてまず鶴来町警察署におきましては、同月十六日、その橋の工事の現場主任でありまして、株式会社宮竹組の取締役であつた小村惇を業務上過失致死傷罪で逮捕しました。そうして翌十七日、金沢地方検察庁に同じ罪名で送致して来たのであります。また国家地方警察石川県本部におきましては、同月の十七日に石川金沢土木出張所の雇いだと思いますが、今西三郎を往来妨害致死傷の容疑のもとに逮捕いたしました。これは翌十八日検察庁に送致して来ました。一方私は同月十七日に、裁判官の令状をもらいまして天狗橋の検証におもむいたのであります。  検証の概略を申し上げますと、大体橋はつり橋になつておりまして三径間になつております、その三径間が全部上流側が落ちておりました。つり線は橋のたもとの方が一部そのままになつておるのがありましたが、あとはほとんど上流側が落ちております。下流側は異常がないのであります。そして先ほども申し上げましたように、検事正が見られた橋の、鶴来町側からいつて第一径間の四つ目の横げたのあたりの上流側の下絃材と、それから縦げたのうち三本ばかり切つてありました。そういうところから、これはどうも故意にやつたような疑いがあるというので捜査いたしました結果、十一月の十八日に検証して、その日に株式会社宮竹組の専務取締役金山岩松、それから石川金沢土木出張所の雇い山森郁夫、宮川務、松野二朗、この四名を逮捕したのであります。罪名は往来妨害致死傷罪、そしてこれらの被疑者について捜査をした結果、さらにこれは上の方からの指示に基くものであるという容疑を認めましたので、翌十九日金沢土木出張所長嶋倉武男、石川土木部道路課長竹島清一、この両名を逮捕したのであります。そうして捜査をした結果、同年の十二月九日、竹島清一、嶋倉武男、今西三郎、山森郁夫、金山岩村、小村惇、向山初三郎、先ほど言い落しましたが、その後向山初三郎を十一月の二十六日逮捕して調べておりました。そしてただいま申し上げましたような竹島、嶋倉、今西、山森、金山、小村、向山、これだけを往来妨害致死傷罪で起訴したのであります。そして残りの宮川務、松野二朗、この両名は起訴猶予処分に付したのであります。そうしてさらにこの事件については、予算獲得の目的をもつてなしたという疑いが多分にありました。さらにその点につきまして鋭意捜査を遂げました結果、昭和二十六年二月の七日、竹島清一を詐欺未遂罪でもつて起訴したのであります。そうしてその後公判を重ねておりまして、第一回から第九回まで全部併合して公判の審議をいたしました。これは最初から被告人側の要望であつたのでありますが、それぞれ立場が違う、竹島被告については県庁側で一番上の地位にある。それから出張所は業者との中間に立つておる。それであるから出張所の嶋倉武男、今西三郎、山森郁夫、この一つの関係。それからいま一つは、一番最後の工事を請負つてつてつたところの株式会社宮竹組の関係で、金山岩松、向山初三郎、小村惇、この三名の関係、これらはそれぞれの立場が違うから公判は分離してやつてほしいということで——検事としては分離すると非常に公判が長びくし、同一証人を何回も調べることになるので、訴訟経済の目的上困るといつて反対したのでありますが、裁判所はこれを分離いたしました。この三つの関係で証人調べを行つたのであります。そうして竹島関係では、第一回と第二回で終りました。それから出張所の関係では五回まで行きました。それから業者の関係、宮竹組の方の関係ではこれも第五回まで行つておるようであります。ところが最初予定しておりましたこの事件の関係者は、全部警察の調書、検事の調書、こうしたものには同意しないような意向であつたのが、大部分同意されまして、今までの警察の調書、検事の調書を証拠として提出することになりました。そうなりますと、これを分離したままでありますとそれぞれ謄本をつくらなければならぬ。それが非常に大部になりますので、検事の方からこの点の併合審理を求めまして、第十回からずつと公判を開きまして、そうして現在十五回まで行つております。それでほとんどこの警察並びに検事の調書は同意のあつた部分は全部提出したわけであります。それで現在は、検事の申請した証拠のうちで、石川土木部長田中精一の調書は、業者の方の関係と出張所側の関係では同意せられたが、竹島被告がこれに同意しない。これは証人申請をして来月の二日だと思いましたが、証人として公判廷において尋問することになつております。それからその間に検事の方から申請いたしまして、裁判所に天狗橋の検証を依頼し、なおその検証現場において工事に携わつてつた人たちの重要な者を証人として、全部現場で種々説明を求めたのであります。検事の立証の段階が大体次回くらいで一応終つて、それからあとは被告人側、いわゆる弁護人の方の申請証人尋問の段階に入る、かような経過になつております。
  459. 島田末信

    島田委員長代理 近ごろ公共事業に関して、公務員の綱紀が非常に紊乱した事実が多いといううわさがひんぴんと行われておりますが、証人が実際に知つている範囲内で、ごく代表的な事実をお述べ額いたいと思います。
  460. 永田敏男

    永田証人 この天狗橋以外の事件についてでありますか。
  461. 島田末信

    島田委員長代理 天狗橋事件以外にも、証人の知つている範囲内でごく代表的なものがあればお述べ額いたいと思います。
  462. 永田敏男

    永田証人 公務員関係で当職が金沢地方検察庁で取扱つた事件は、この前に北陸電気通信局の職員の涜職事件がありました。その前に前任者が起訴して、その引継ぎを受けた事件が一件、これだけであります。そのほかの件は、私が直接取扱つておりませんから、ここで申し上げるまでのはつきりしたことがわかつておりません。
  463. 島田末信

    島田委員長代理 天狗橋事件は、われわれが聞いた範囲内では、予算の獲得のために無理にたたき落した。そうして被害査定を受けるのに大体都合のいいような方法をとつたんだというふうなことを聞かされているのですが、あなたがお調べになつたところで、真相やら見通しについて述べていい範囲内で御説明が願えれば発表願いたいと思います。
  464. 永田敏男

    永田証人 昭和二十六年二月七日、竹島清一に対する詐欺未遂の起訴と申しますのは、いわゆる予算獲得を目的としてやつたが、その目的を遂げなかつたという容疑でもつて起訴されております。それは大体石川県におきましてこの天狗橋が前々から、最初に設計した当時から少し設計に無理があつたようであります。その後雨や風にさらされて、何回かこれを修理しておつたようであります。昭和二十五年四月ごろになりまして国庫補助を受けようというので、百七十四万円の予算の請求をして、とにかく百六十三万円が認められたんじやなかいかと思つております。そうしてその年の八月の二十二日に、石川県知事石川金沢土木出張所長がこの橋の補修工事の請負指名入札をやつたわけであります。その結果、株式会社宮竹組が百五十万円で落札をしまして、同月二十五日に石川県知事と宮竹組との間に百五十万円で天狗橋補修工事をやるという契約が成立したのであります。そこで宮竹組では同年九月一日からその補修材料の収集に着手しております。ところが、たまたま同月三日ジエーン台風が襲来いたしまして、本邦の各方面に相当の被害を受けたのであります。天狗橋はこのジエーン台風でどの程度被害を受けたかということがこの事件の問題な点であります。検事の捜査した範囲におきましては、この台風によつて被害があつたということがどうも認められないのであります。ところが、石川県におきましてはこのジエーン台風によつて被害をこうむつた、こういうことで復旧工事費一千万円の国庫補助申請をしたわけであります。この国庫補助申請をしたことがはたして適当であるかどうかということになるわけであります。この点につきまして、捜査をしたところでは、この予算請求の一番起案者になつているところの当時の石川土木部道路課長竹島清一は、この天狗橋に一度も行つて見ておらないのであります。従つてジエーン台風によつて天狗橋がどんな被害を受けたかということは本人は知らないのであります。それからその下の石川金沢土木出張所長、それからその部下である技師沢田正春、それから今西三郎、そういつた天狗橋所管している土木技師どもジエーン台風当時及びその後にこの現場に行つておらないのであります。従つて全然その被害がどの程度つたかということはわからないのであります。ところが、九月の中旬ごろに竹島道路課長がその当時石川金沢土木出張所に勤務していた技師沢田正春を呼びまして、ジエーン台風によつて天狗橋が相当の被害を受けて、その復旧工事を必要とするような設計内訳書をつくつて出してくれ、こう言つたわけです。そこで沢田技師は、さらに同出張所に勤務しておつた山森郁夫にその作成を命じまして、そうしてでき上つたのが五百六十二万円の設計内訳書であります。この五百六十二万円の設計内訳書を沢田正春が竹島道路課長のところへ持つてつたところが、これでは工事費が少いから一千万円くらいにしてくれ、こういつたものですから、沢田正春はさらに五百六十二万円の設計内訳書を持ち帰つて、山森郁夫に一千万円の工事内訳書をつくつてくれ、こういつてつくらせた。そうしてそのころ竹島被告のところへ出したのであります。山森郁夫がつくつて、沢田の手から竹島被告のところへ行つたこの一千万円の復旧工事の内訳書が基本となつて石川ジエーン台風昭和二十五年災害復旧工事もくろみ書というものができ上つたわけであります。そうして十月の四日に石川県知事より建設大臣あての国庫負担災害復旧検査申請書というものが出て、その申請書にこの目録が添付されて建設省にまわされたわけであります。ところがこの書類を出した結果、建設省では実地に現場に行つて調べてみなければならぬという関係で、齋藤技官ほか技官が二名、それから事務官一名が富山県を通つて石川県へ来たのが十一月の十二日から十五日までであつたのであります。それで十一月の十二日に建設省から天狗橋を見に来るということを県の方で知つたのが、大体十月の二十日か二十二日ころなのであります。それでその当時、天狗橋の鶴来町の反対側の山上村のたもとに百五十万円の補修工事をするために材木が積んであつた。これをそのまま置くと、建設省から見に来た場合にどうも見つかるじやないか、それはもう隠せというわけで、一部はすぐわきの方へ置いたのですが、大部分はずつと下流の方に持つて行つてしまつた。そうしてさらに十一月に入つてから、一部その付近に置いたのもほかのところへ運んで、結局もう十一月の上旬には、天狗橋の付近には百五十万円の補修工事の材料は見えなくなつた。そうしておいて、この十一月の七日ころに竹島被告が出張所長の嶋倉に対して、天狗橋査定が四分の三以上の被害程度でなければ検査が通らないから、そのつもりでやつてくれ、こういう指示をした。それからまた十一月の八日、その翌日ごろ金沢野町駅から市内電車の中で、竹島道路課長が宮竹組の専務取締役の金山岩松に会つたときに、天狗橋はあのままでは査定が通らないから、ジエーン台風によつて自然にこわれたように、四分の三くらい橋を傾けてくれ、こういうように言つたということであります。もつともこの点は言うことが違うのでありまして、嶋倉所長、金山岩松はそういうふうに言われたと言つておるのでありますが、竹島道路課長はそういうふうなことは言つたことはないといつておるのであります。これは証拠の問題になるわけでありますが、とにかくそういうふうに、言うことがかわつておるということだけはつきりと申し上げておきます。その結果、出張所側の方では、今西三郎とか、山森郁夫とか、松野二朗、宮川務、こういう人たちが、宮竹組の方に行きまして、天狗橋に一緒に出かけまして、この橋をこわすことなどを、こうやつたらいい、ああやつたらいいというような具体的な相談をしておるようであります。そうして結局、今度は宮竹組の方では、金山が工事の現場主任をしておる小村惇、それからそれまでに天狗橋工事に何回か携わつたことのある向山初三郎、こういう者に命じて、この橋を傾けなければならぬ。どんなふうに傾けるかというと——これは具体的にこの事件では明確にわからないが、とにかく四分の三傾けろというのだから、四分の三傾ければいい、こういうのであります。その四分の三は橋がこうなつているのをこういうふうに四分の三傾けるのか、この橋の全長の四分の三ぐらいを傾けるのか、これははつきりしないのでありますが、とにかくそういう指示を受けたというので、傾ければいいだろ、というわけで傾けることを計画した。そうしてそれを傾けるにはどうしたらいいか。結局つり橋ですから、つつてあるつり線をはずせばいいじやないか、そうしてつり線をはずしたところへかぐらでもつてワイヤー・ロープを巻いてかわりにつつておく。そうしてつり線をはずした上で、つり線がこうありますと、そのまわりに橋のたもとの方からかぐらでワイヤーをおろして、ぐつと巻き上げてまたもとのところにつつておいて、そうしてもとのつり線をはずしておいて、補助のつり線をつけてつつておいて、結局全部はずしたあとで下げて行けばいいじやないか、こういう計画だつたようであります。ところがどうもそれがうまく行かなくて、橋が落ちてしまつた。捜査の結果そういうふうに認められるのであります。結局、建設省から係官が来たのが十二日でありまして、橋の落ちたのが十一日、その来る前の日までにこれをやらなければいけないといつてつたのが、こういうふうになつたわけであります。  なおジエーン台風による天狗橋被害状況がどうであるかという点につきましては、私にも捜査並びに公判における状況などによつて、見解はあるのでありますが、これをここで申し上げることは、今公判が進行中でありまして、今後相手側の証拠の提出、反証の提出があるわけでありますので、ここでちよつと申し上げかねるわけであります。
  465. 島田末信

    島田委員長代理 委員の側で質問がありますか。
  466. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大体わかりましたが、建設省技官が行きましたが、それで行つてどうであつたか、その結果をちよつと……。
  467. 永田敏男

    永田証人 十二日に建設省技官齋藤正男、それから澁谷一友、樋口哲司、税所国雄、この四人が参りました。そうしてこのときは天狗橋だけを視察に来たわけじやなくて、石川県下の災害状況を見に来たわけであります。天狗橋に行きましたのは十二日の午後であります。これは方々に手わけして行きましたので、そのとき行きましたのは齋藤技官がそこへ行つております。このときの建設省の一番首席は齋藤技官で、これが天狗橋に行きまして、そうして最初金沢から出て辰の口を通つて、鶴来町と反対側の山上村の方の橋詰めに行つたわけです。そうしてそこで、十分か十五分くらいだと思いましたが、見まして、さらにほかへまわつたわけであります。それで結局このときにはもうすでに天狗橋のこの事件が新聞にも掲載し始められておつたのであります。それで建設省技官の方でも、これの査定はすぐやらなかつたわけであります。ほかのものは、十二日の分は十二日に済ませておるのでありますけれども、この分だけはそのままになつておりまして、一番最後に十四日の日かと思いましたが、十四日の一番最後のとりまとめのときに、結局これは保留になつてしまつたわけであります。これはどうもジエーン台風による被害状況がはつきりしない、こういうわけで保留になつたようであります。
  468. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは技術官が見れば、今のあなたの話では、のこぎりで切つてあるというのですから、台風でいたんだものか、作意でいためたものか、すぐわかると思うのですが、それはそれでは見なかつたのですか、それとも見て、そういうのだから台風被害と認めぬといつたのですか、どちらでしようか。
  469. 永田敏男

    永田証人 それは橋を切つたところは、鶴来町側から一番最初の径間なんであります。ですから鶴来町の方へ行けばすぐわかるのであります。ところがまわつたのは反対側の山上村の方へまわつたのであります。そのときは橋が落ちておりますから、橋は渡れぬわけでございます。それからその当時は渡船もまだ通つておらなかつたので、結局こちらへまわれなかつたのであります。それで検事としてはこの点にも多少疑問を持ちまして、そのときの案内役は、石川県の砂防課長の佐久間龍男という人が案内したわけでありますが、この点について検事としてはわざわざ切り口が見えない方に自動車をまわしたのじやないか、こう言つたのでありますが、いやそういうことはないと言つているのです。
  470. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは、それ以上はなんですが、ある一説では、わざわざそこへまわして、そうしてそこを見せないで、その晩和倉温泉へ連れて行つたという話ですが、それはどうですか。聞いておりませんか。
  471. 永田敏男

    永田証人 わざわざ行つたかどうかということは、証拠によるものですから、検事としては、今のところでは、わざわざそこへ連れて行つたのだという証拠は——山上村の方へ行つたということだけはわかるのでありますが、わざわざ連れて行つたんだということは、結局、連れて行つたのは佐久間龍男でありますが、本人がそうでないと言いますと、本人の言うことがうそだという証拠はちよつと出て来ない。それから和倉温泉でしたか、どこへ行つたか知りませんが、とにかくどこかの宿屋へ行つていることだけは、はつきりしているのであります。
  472. 加藤充

    ○加藤(充)委員 この尋問事項にも書いてありますように、何かあなたのお扱いになつた、あるいは金沢地方検察庁としてお扱いになつた公共事業関係の綱紀紊乱の事件の例を述べてほしいということで、そのときにあるいはお述べになつているかと思うのですが、あるいは私聞き逃しておつたら、たいへん不見識で、御指摘願いたいと思うのですが、先ほどの田中精一という石川県の土木部長証人喚問をいたしております間に、二十五年の二月ごろですか、やはり石川県庁の土木部に関連のある予算の流用があつて、それに数十名の者が連座しているという事件があつたのを、あるいは検察庁方面でも手を入れたとか入れないとかいうような話があつたのですが、そういうことはあつたのでしようか。
  473. 永田敏男

    永田証人 実は私が取扱つておらない事件でありますから、申し上げておらないのであります。ただ現在公判に係属中の事件土木部事件というのがあります。これが石川県の土木部並びにその出張所関係に関連があるのではないかと思います。これは主任でございませんと、はたしてどの程度のものであるか、よくわかりません。これはちよつと余事にわたりますけれども、検事は自分が扱つておる事件も、なるべく人に知らさないようにしております。ほかの検事にも知らさないようにしておりますから、ほかの人のやつておる事件というものは、よくわからないのであります。
  474. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それではこういう事件はありましたでしようか。これは能登半島の若山村とかいう村の問題ですが、新制中学校の建築について、まだ未建築な、ほとんど基礎工事もやつておらない程度のところへ台風が襲つて来たのを奇貨として、それはジエーン台風による損害として、そうして過大なというよりも、むしろ虚偽の理由を並べて地方起債の申請を出して、そうしてそのことについて村長か何か、詐欺か何かで起訴されておるという事実はありますか。
  475. 永田敏男

    永田証人 その事件も私が扱つておらないのでありまして、詳しいことはよく知らないのであります。
  476. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私が今お尋ねしたような程度のことは、あなたは御存じですか。
  477. 永田敏男

    永田証人 何か新聞にそういうようなことは出ておつたと思います。
  478. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたのところで扱つたことはないのですか、検察庁として……。
  479. 永田敏男

    永田証人 検察庁であるいはやつておるかもしれませんが、しかしこれは先ほど申しましたように、その事件を取扱つている人でないとよくわからないのでありまして、ほかの検事は……。
  480. 加藤充

    ○加藤(充)委員 いや、あなたの方で扱つているかどうかだけでいいのです。扱つているのですか。
  481. 永田敏男

    永田証人 その点もはつきりしません。
  482. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それでは、あなたがお述べになつた事柄については、検察庁が調べたり起訴したりした関係としてお述べになつたのではなくして、あなたがたまたま主任検事として調べた件についてだけ述べられたわけですか。
  483. 永田敏男

    永田証人 さようであります。
  484. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それから、詐欺未遂で起訴されたのは竹島という人ですか。
  485. 永田敏男

    永田証人 その当時の道路課長の竹島一人であります。
  486. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それから田中という土木部長を被疑者としてお調べになつたことはあるのですか。
  487. 永田敏男

    永田証人 これは田中精一は次席検事が調べておるのです。このときは大勢で調べましたものですから……。
  488. 加藤充

    ○加藤(充)委員 結局検事局としては調べたのですね。
  489. 永田敏男

    永田証人 調べました。
  490. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それでお尋ねするのですが、理論上あるいは事実上、共犯関係に立つているものとわれわれがここで聞いたのですから、これはしろうとが一斑をもつて探り当てるようなもので、必ずしも妥当な考え方じやないかもしれませんが、少くとも一道路課長あたりだけでは、そんな大それたこと——人が死んだりしたようなことにまでなりましたけれども、橋を四分の三傾斜させろとかいうような大それたことは、役人の組織の関係から行つてもできそうにもないと思われる。先ほど鍛冶委員からもあつたように、和倉温泉かどこかに案内したということになれば、案内した者は属僚の下ツ端でしようけれども、そういうふうな計画が、県としてあるいは土木部として予定されているということになれば、案内した者の肯後に事実上理論的に、その共犯関係がある者があると思うのですが、そういう点では、先ほどの土木部長などさしあたりこういうような者を起訴しなかつたという理由は、どういうことだつたのでしようか。
  491. 永田敏男

    永田証人 この事件は二つにわけて考えていただかなければならぬと思います。一つ予算獲得のためにやつたいわゆる詐欺未遂の方の事件と、それからその結果として起きましたところの往来妨害致死傷害の方とは、二つにわけて考えないとどうしても出て来ないと思う。まず詐欺未遂の方の点につきましてでありますが、これは今御質問にありましたように、こういうことを道路課長の一存でもつてやられるのかどうか。これはやはりもつと上の人がそういうことを知つて、みずから命ずるか、命じなくても道路課長の進言に基いて、それに決裁を与えてやつておるのではないかという疑いが多分にあるのであります。この建設省に提出いたしましたところの国庫補助申請書ですが、この申請書の起案には、それぞれの関係者が決裁しておるわけです。それには多分土木部長も決裁しておつたのじやないかと思うのですが、これは帰つてよく調べてみないと断言できません。とにかくいずれにしても、土木部長はこれに密接な関係があるから、知つてつたのじやないかという疑いが多分にありまして、その点については、検事としても鋭意力を尽して捜査したのであります。何分にも土木部長がそういう指示を与えたという証拠、それから道路課長からそういう進言を受けて、それに承諾を与えたというところの証拠、こういうものが明確に出て来ないのであります。
  492. 加藤充

    ○加藤(充)委員 事件発生の直前に水虫ということで敗血症か何かを併発しまして、どの程度かわかりませんが、自宅ひつこもりをやつて県庁職場に姿を出さなかつたような事実関係についてへ検察庁は田中土木部長をお調べになつたことはありますか。
  493. 永田敏男

    永田証人 田中自身については今記憶がないのでありますが、建設省から係官が来た当時、これはちようど十二日が日曜になつてつたということであります。その日、昼ごろに建設省の係官は富山県から石川県庁に来たのですが、そのときは土木部長はおらなかつたようであります。それは何か水虫ができたとかいう話でした。
  494. 加藤充

    ○加藤(充)委員 大体先ほどのお話で、十月の二十日ごろに県の方に中央から来る齋藤技官あたりが来るということになれば、これは事件の起る前に土木部長が関係しないような形になつて行く経過もうなずけると思うのですが、それはさておきまして、盲判の刑事責任ですね、起案の決裁についての判を押した者の責任ということですが、これはいろいろなところで理論的にも事実的な問題にも関連するのでお尋ねするのですが、大体最後の決裁のいわゆる盲判を押すということによつて、席順の上の者は権威を持つわけですね、その最後の一つの判を押してもらうためにずいぶん苦労をするわけです。ところがいざ問題が起きますと、それは盲判つたということで責任がはぐれて行く、おれは直接知つているとか、知らないとかいうような事実関係に入つてしまつて盲判責任というものが追究されないことになり、それがあたりまえということになつて、いわゆる盲判ということになりますと、初めの監督なり責任の実質が失われて行くと思うのです。いくら上から監督をやりまして判を十並べてみましても、かんじんかなめの問題が起きたときに、それは盲判だということで、こういうふうな莫大な財産的な人命的な被害が起きている事件について、これが責任をのがれるということになりますと、これはたいへん行政の面からいいましても、刑事責任の面からいつても、そこの結合を離れて来る。私はこういうところに——実を言うとこの天狗橋を墜落させた事件というようなものも、下級の末端の一道路課長あたりが全責任を負つてしまうという形になつて、これがすなわち私は無責任な官僚政治といいますか、官僚行政原因がここに現われていると思うのですが、盲判責任の方をひとつお聞かせ願いたい。
  495. 永田敏男

    永田証人 盲判の点は、どうも私の職権の範囲を越えているように思うのです。これは行政上の問題でありまして、私は司法の問題しか知らないのであります。でありますから、盲判の方の点はこれはまたほかの方の問題だと思うのであります。
  496. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それから検事正の名越さんが金沢の検事正をおやめになつ理由なり原因を私どもが聞いているのには、柴野知事が相当猛運動をやつた。その名越さんという人は大物を扱い過ぎる。責任を上まで持つて行かれたのでは困るというような形でもつて、猛運動をやつた結果であるというような巷説を相当強く聞いているのですが、検察庁内部としてそういうふうなうわさなり、あるいはそういうふうなことをお聞きになつておるかどうか。
  497. 永田敏男

    永田証人 名越検事正がおやめになつたことは確かでございます。検事正はみずから今回身を引かれるというような話を退官のあいさつのときにされたと思うのですが、しかしそれがどういうふうな原因であるかということは、これは私にはわかりません。多分やめられるというお考えのもとにやめられたのではないか、こう思うのです。
  498. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたにそれを言わせるのは無理でしようからよします。
  499. 島田末信

    島田委員長代理 大泉君。
  500. 大泉寛三

    ○大泉委員 この事件は県の責任事業で起つた問題で、個人の利益のための詐欺行為でなくいわゆる団体的な詐欺行為であると思うが証人は被疑者として個人を起訴されているのでありますけれども、これは団体人の代表としていわゆる被疑者として取扱つているかどうか、またこれに対しては、検事として政治力の背景があるかどうか、こういう御観察を承りたい。
  501. 永田敏男

    永田証人 これは現在の刑法の建前が人を対象にしておるのであります。ただ人には法人と自然人とあるのでありまして、法人の場合は、会社とかそういう法人が対象になります。刑法の問題としては、理論的には現在は法人にも刑事責任能力もあるのだというのが学説上認められておるのであります。刑事責任というよりも、法人には法行為能力があるというのが一般に認められておる学説であります。ところが理論のいかんにかかわらず、現在の刑法そのものがこれは自然人を対象としておるものである。こういう点も争いがないようであります。なぜかと申しますと、現在の刑法はみな懲役刑が規定されております。罰金の規定のある場合でも、必ず懲役が選択刑になつておる。あるいは懲役と罰金刑が一緒になつておる。こういうので、懲役に処するような場合には法人は絶対に処せられない。懲役にして会社を処罰して刑務所に入れるということはできないのですから、現在の刑法そのものの建前としては、法人は対象にならない。ただ特別法での取締り法規、たとえば統制違反なんかについては、やはり法人なんかも刑事責任能力を認めて罰金刑に処しておるものもありますけれども、刑法それ自体としてはないのであります。従つて詐欺とか、往来妨害致死というような刑法犯について団体を処罰するというようなことはできないのであります。どうしてもその行為の責任者がだれであるかということに行かなければいけない。ただそれ以外のものが関与しておれば、共犯としての責任を負うことになる。本件につきましては、竹島被告人の行為として責任を負つておるわけであります。
  502. 大泉寛三

    ○大泉委員 私の聞かんとするところは、その個人を団体人、いわゆる法人の代表として取扱つておるかどうかということであります。この事件はある個人の利益の有無によつてつた問題でなくて、いわゆる石川県の財政をゆたかにしようとか、あるいは利益を得ようという、つまり大きく言えば県民であり、あるいは県民の代表者であるところの各政治家、あるいは県知事、あるいは責任を分担しておるところの土木部長とか、こういう各代表者がおるわけであります。この代表者がおのおの責任の面には現われて来ませんが、しかし検事が被疑者として起訴しているのは、どうもわくからはずれた個人のように思いますけれども、これはその個人の利益のために行つたんではないように私どもには思われる。それならばやはり団体に関係のあるものとして取扱つている以上は、団体人の代表として取扱つておるのかどうかということであります。
  503. 永田敏男

    永田証人 これは竹島清一それ自体も、昭和二十五年度に災害のあつたことについては特例が出ておりまして、全額国庫負担ということになつております。それでありまするから、ほかの災害の場合には、一部国庫が補助する、あと地方で負担する、こういうことになつておるようでありますが、二十五年度の特例に関する限りは、全額国庫で出してもらえる。従つてこの一千万円のなにを経て、さらに資材、橋梁による補助を得て、この天狗橋を鉄橋にかけかえようとしたのだということを竹島は県に対して言つておる。それでありますから、竹島個人の利益を得ようと思つてつたのではないことだけはわかるのであります。ただこの場合でも、検事としてはそれが竹島の犯罪の動機になるのでありましてこの県なら県という、県は一つ地方公共団体であります、法人であります。法人自体がこういう不法行為を目的としてやつているとは思わないのであります。どうしてもその法人を構成するところの人が、ある何らかのほかの目的が公——公というとおかしいのですが、自己の個人の私益をはかる目的以外の目的をもつてやるかもしれませんが、それは単なる動機にすぎない。従つてこういう不法行為に携わるというのは、竹島なら竹島個人の責任に帰する。こういうふうに考えております。もしほかの人がそれに関与しておれば、これもやはり個人としてこういう不法行為に関与しておるのだ。団体それ自体の目的は不法行為を目的としてやつたのではない、こういう考え方。もちろん個人の責任が同時に団体の責任に帰する場合もあるだろうと思いますが、現在の刑法の建前では、どうも団体の責任というところに行きませんし、検事としても団体の責任ありやいなやというようなことについて、この事件を取扱つておらないのであります。また取扱う必要がない。やはり刑法上の被告人になる人は常に個人でありますから、個人を対象にしなければならぬ。  それから先ほどのお尋ねの中に、政治的云々というようなことがありましたが、これも検事としてはそういう政治的なことについてはよくわからないのであります。
  504. 島田末信

    島田委員長代理 他に質問がなければ、永田敏男証人に対する審理はこれにて終了いたしました。証人には、お忙しいところを御苦労さまでした。  次は、本会議終了後ただちに柴野和喜夫君の証言を求めることといたします。暫時休憩いたします。     午後二時九分休憩      ————◇—————     午後二時四十五分開議
  505. 篠田弘作

    篠田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。証人の尋問を続行いたします。柴野和喜夫君ですね。
  506. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 はい。
  507. 篠田弘作

    篠田委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り、本日正式の証人として証言を求むることに決定いたしましたから、さよう御了承願います。  ただいまより公共事業費をめぐる不正事件について証言を求むることになりますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求むる場合には、その前に宣誓をさせねばならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むごとのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙祕すべきものについて尋問を受けたときに限られでおりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人柴野和喜夫君朗読〕    宣誓書   良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  508. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  509. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようにお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  証人石川県知事に就任されたのはいつですか。
  510. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 昭和二十二年の四月就任いたしまして、本年の四月三十日再任いたしたわけであります。
  511. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、あなたは前の公選ですね。
  512. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 前の公選で。今度あらためて選挙に出まして、今度当選いたしましたのは四月三十日。
  513. 篠田弘作

    篠田委員長 その前は。
  514. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その前は一旦やめまして、やめる以前は滋賀県の知事でございます。
  515. 篠田弘作

    篠田委員長 証人天狗橋が百五十万円で補修工事を施工しておつたということを御存じですか。
  516. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その補修工事は実は土木出張所限りの委任事項でやつておりまして、われわれの手元て全然急所を知つておりませんので、事件前には全然存じておりませんでした。
  517. 篠田弘作

    篠田委員長 証人天狗橋ジエーン台風被害を受けたということは聞きましたか。
  518. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 被害一々については報告が全然ございませんでした。ただ建設省に対して、被害地域に対する査定官の派遣を申請する別紙に、天狗橋損害の点がついておつただけでございまして、具体的に天狗橋を取上げての報告は一回もございません。
  519. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは災害復旧で一千万円の工費をもつてこの天狗橋の復旧をやる、そういう報告はどうですか。
  520. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その査定要求の別紙の中に、約四百箇所ほど災害箇所が入つておりましたが、その一つに、天狗橋をあげて一千万とあつたそうでございます。しかしながらまことに残念でございましたが、私は単に査定官の派遣だと思いまして、一括して判こをつきましたので、事件前においては一千万の請求をしているというということは十分記憶いたしておりません。
  521. 篠田弘作

    篠田委員長 そうするとあなたも知らぬようだし、さつきの土木部長盲判を押したという話をしておるのですが、県庁の幹部というものはみんな盲判を押すようになつていますか。
  522. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 実はその場合には、災害箇所が数百箇所に及んでおりましたので——むろん単独でこの事件が来ればよくわかるのですが、北はわれわれの方の果てから、南は福井県の境まで、数百箇所に及んだのを一括して参つてつたものですから、見落したことだと思います。いずれにいたしましても、知る知らぬにかかわらず責任は私にあることだと存じております。
  523. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、最初百五十万円の復旧工事をやろうとしたのだが、そこへちようどジエーン台風が来たので、そのジエーン台風に便乗して、橋を四分の三以上傾ければ一千万円くらいの補助をもらつて橋を新しくかけかえることができる、そういう考えのもとに橋をこわした、道路課長あるいは土木出張所長、あるいは請負人との問に話合いをしてこわした、そういうこわした事実はあなたは認めますか。
  524. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 謀議したのかどうかは存じませんが、こわした事実は認めます。
  525. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは天狗橋事件が起つてから天狗橋行つてみましたか。
  526. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 復旧前には見ておりません。
  527. 篠田弘作

    篠田委員長 そういう問題が起つたときも行かなかつたか。
  528. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私直接その橋のところへは参る機会がなくて参りませんでした。
  529. 篠田弘作

    篠田委員長 かけかえた橋も見ませんか。
  530. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 かけかえた橋は見ております。
  531. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと天狗橋の問題は、数百箇所の問題と一緒に、一括してあなたのところへ持つて来たので、そういう内容も知らないし、謀議したというような事実もあなたは全然知らない……。
  532. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その事件のあつたとき、実は私は金沢におりません。
  533. 篠田弘作

    篠田委員長 どこにいたか。
  534. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その前しばらく東京に滞在しておりまして、私の留守中に起つた事件でございますので、十分知らなかつた点もあつたかと存じます。
  535. 篠田弘作

    篠田委員長 東京で何をしておられたのですか。
  536. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 政府へのいろいろの打合せ、交渉をいたしております。
  537. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、その中に天狗橋の問題、ジエーン台風なんかの問題はなかつたのですか。
  538. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ジエーン台風全体としての災害復旧、その他についての援助を求めておつたことがあるかと存じますが、一々個々のどれをどうしてくれという陳情は一切いたしておりません。
  539. 篠田弘作

    篠田委員長 ちようどその天狗橋の問題が起つたときに、あなたは東京におられ、土木部長はまた病床にあつたというのですが、時を同じゆうして両幹部が留守であつたということは、偶然の一致というか、ちよつと考え方によつては両幹部が逃げておるようにも考えられるが、これはどうですか。
  540. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 実は私は留守をいたしまして、列車中で翌朝ようやくその事件知つた。その事件天狗橋が加工によつて落下したというような書き方でなく、ただ人が死んだというような記事だけでありまして、それはどういう点かと申しますと、従前ともこの橋は非常に弱い橋で、前にけがをして死んだ人があつた。それで通行どめを出さないでまたやつたかといつたような、むしろ逆の心配をいたして帰つて来、ただちに調べましたところ、通行どめをしてあつて御心配いらぬのですという報告を受けておるわけでございますから、逃げたという考え方はいたしておりません。
  541. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたはこの事件について検察庁の取調べを受けましたか。
  542. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 参考人として私の陳述を聞き取つていただきました。
  543. 篠田弘作

    篠田委員長 検察庁へ行きましたか。出頭してですか。
  544. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 行きました
  545. 篠田弘作

    篠田委員長 天狗橋事件の切り落したという事実をあなたは認めておるのだが、その責任者は一体だれだと考えますか。
  546. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 検察庁の考え方によりますと、役所が何かの指示を与えて、そして土木請負業者が落下さしたんじやないかという疑いをもつて起訴されておるわけでありますが、その当時の直接の責任者であるとして、今検察庁に呼び出されておる元の道路課長は、当初より現在に至るまで、その指示をしたことを否認いたしております。従つて現在の状態ではこれが一番の論点になつて目下公判が開かれておるわけでありますことを御了承願います。
  547. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると天狗橋事件責任者というものについては、まだあなた方は認めておらぬわけですか。
  548. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 むろん私個人としては、行政上の責任については、十分監督上その他を認めておるわけでございますが、刑事上の責任という問題につきましては、まだわれわれのところでははつきりわからないと申し上げなければならないことを御了承願います。
  549. 篠田弘作

    篠田委員長 従つてそれに対する懲戒処分というようなものは、まだやつていないわけですか。
  550. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ともかくこういう事案が出ましたことについては、私としても重々責任を感じております。部下においても責任を感じまして、当該の起訴されたものは、起訴以前に全部辞表を提出いたしております。従つて本人の考え方を入れまして罷免をいたしておるようなことになつております。
  551. 篠田弘作

    篠田委員長 起訴されたものは全部罷免しておるのですか。
  552. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 さようでございます。
  553. 篠田弘作

    篠田委員長 それではもし、起訴されたけれども、裁判で無罪になつたという場合はどういうことになりますか。
  554. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 これは本人の名誉のためにも、本人が希望いたしますならば、もう一度復職その他の何かの処置をとつてやりたいと、私だけは思つております。
  555. 篠田弘作

    篠田委員長 その橋を切り落したものは、今のところでは請負者がやつたというように解釈しておりますか。
  556. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ただちにその結論が実は出ない、出ませんが、公判の経過を見ておりますと、そういつたような陳述をするものと、それを否認するものと、両方出ております。
  557. 篠田弘作

    篠田委員長 陳述する方は、どういう立場の人ですか。
  558. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 それは現場におつた、たとえばそのことをやつた大工などの証言の中に、全然役所の指示を受けておらぬというような証言が出ておるように聞いております。
  559. 篠田弘作

    篠田委員長 役所が大工に直接指示するわけはないでしよう。
  560. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 しかしそれはだれだれの事業者から指示された、こういうふうに言つております。私直接それを聞いておりませんで、新聞で承知いたしておるわけですが、そういう証言で、役所側に指示されたような状況はなかつたという証言もあつたということを申し上げたのであります。
  561. 篠田弘作

    篠田委員長 それは常識的に考えて、橋を切り落した個人々々の大工に役所が指示するわけはない。結局役所が請負師に指示し、請負師が大工に指示をする、あるいは現場に働く土方に指示するということがあたりまえで、大工自身に役所の課長なり部長から直接指示するということはあり得ない。そういうことは当然ですが、それでは役所から指示を受けた側の人はどういう人ですか。
  562. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 役所から指示を受けたのは、当該の事業をした宮竹組の専務で、元の道路課長から電車の中の立話で、お前ひとつつてくれと言われたという陳述をいたしておるのを私承知しております。
  563. 篠田弘作

    篠田委員長 もつとも文書でそんなことをやる人はないでしようね。そうしますと、今の点は結局水かけ論だ。指示したと言う、指示しないと言う。また常識上指示したということは、なかなか証拠でもない限り言えないと思うが、それではあなた知事として、土木請負者が指示も受けないで橋を切り落すということは、一体どういう考え方に基くものかということを……。
  564. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私がかりにそういう前提で予想を立てるといたしますと、土木業界の一つの慣習がありまして、ある工事を引受けておる、その工事に増し工事があつた場合においては、大体土木界の常識として、その工事をやつておる者に、次の工事を随意契約その他でやらせるような慣行が行われておるのであります。あるいはそういうことを目途としたのではないかという以外には考えられません、
  565. 篠田弘作

    篠田委員長 しかし現実の問題として、専門家が百五十万円で全部見積つて石川組が復旧工事をやろうとしておつた。それはあなた知事として知つておらぬと言うけれども、知らなくてもかまわない。しかしその次にジエーン台風が来て、それによつてどのくらいの損害を受けたかということは、あなたは知らなくても、土木課長なり出張所長は知つているはずじやないか、それをどう思いますか。
  566. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その百五十万円の復旧工事というのは、私が今の立場に立つて申し上げてみますと、天狗橋そのものがジエーン台風によつて落下いたしておつたのじやない。ただ非常ないたんだ状態になつて、たとえて申しますれば、その落下の二週間以前に警察が県と連絡なく、危険であるからというので、全部の車馬その他の通行禁止をしたような陳述を警察側がして、おります。そういう点から見て、むろん危険を冒せば通れる程度の橋であつたが、不測の損害が起る危険があるという状態にあつたことと思います。ジエーン台風以前からやつてつた工事そのものは、橋げたの板を直すとか、何とかいつたような工事であつたのではないかというふうに私は考えております。
  567. 篠田弘作

    篠田委員長 だからあなたの今言う通り、橋が初めから落下しておつたのなら、より以上にこわすということは考えられるわけだ。けれども交通どめをしたときは、警察から注意があつて、どの程度に危険であるかということは警察も知つておる。そういう復旧工事を請負つた者が、次の工事を請負いたいからといつてジエーン台風でいたんでおらない橋のワイヤーを切つたり、橋げたをこわしたり、かりにこわすことに成功するとしても、もし県の土木当局が、ジエーン台風あとではそんなにこわれておらなかつたじやないか、お前こわしたのかと、逆に正義感の強い役人であれば言うでしよう。そういう交渉に行つたときに、次の工事を請負うことができないばかりでなく、おそらく一切の工事に今後は入札することもできないでしよう、常識的に考えてみて。あなたが知事として、一体そういうことを許しますか。
  568. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 実はこの橋がジエーン台風でどのくらいの損害があつたかというお尋ねかと存じますが、私としては橋を見ておりませんので、確かな証言をいたしかねますが、しかしながら当時安本の官吏がこの橋を見に来ておつて、私はその報告書は見ておりませんが、私の部下報告によりますと、ジエーン台風によつて損害があつたという報告書を提出しておるというふうに聞いております。それから検事側で鑑定している鑑定書の中にも、この橋は根本的にやり直さなければならない橋であるということも書いているようでありますし、警察における処置等を見ても、損害があつたのではないかと私は今考えておるわけです。
  569. 篠田弘作

    篠田委員長 根本的に橋が悪くて直すというのなら問題は起らないわけですね、実際問題として。しかしジエーン台風あとで、落橋の前日まで県の自動車も宮竹組の自動車も通つてつたし、一般の交通もしておつたということが警察の報告で、この委員会に来ているわけです。
  570. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私もその前日通つたということを聞いております。聞いておりますが、一面においてそれは特殊な関係者であつて一般の交通に対しては危険であるからというので、特にその所轄の警察が単独で全部の交通禁止の処置をしておつた従つてそこを通つておる者は特殊な関係者であつて、交通どめを承知で、ある種の目的で通つた者であるというふうに私は今了解いたしております。
  571. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと二名の死者と十六、七名の重軽傷者が出ておるのですが、その人々は全部工事関係者ですか。一般の通行人は入つておりませんか。
  572. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その中で一人年寄りの人が一般通行者として入つております。これは取調べ、その他の経過を聞きますと、全部が何回かとめた、とめたにもかかわらずその制止も聞かずに入り込んで行つて落ちたというように承知いたしております。その他は工事関係者であります。
  573. 篠田弘作

    篠田委員長 そこで前にもどりますが、さつきあなたは請負者が次の請負工事がほしいために切つて落したと思われる点もある。これは一つ想像であろうけれども、そういうことも考えられるというふうなお話でしたが、そういうようにあなた考えておりますか。
  574. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 工事請負者が単独にやつたとすれば、そういう原因しか私としては考えられないのではないかということでお答えしたわけです。
  575. 篠田弘作

    篠田委員長 ジエーン台風あとの橋のいたみ方については、あなたが今いつたように、警察でもその前から通行どめをしておるくらいであるから、警察でもどの程度いたんでおるかわかつておるし、また土木出張所でもわかつておらなければならない。その場合ジエーン台風が通つたあとで落ちていなかつたものを、工事請負人が落したということになれば、一体土木出張所というものはその工事請負人に対して普通どういう態度をとりますか。もしあなたが所長であれば。
  576. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 要するにこの橋はお調べかと存じますが、戦時中につくつた橋で、年がら年中交通どめがあるほど弱い橋だつた。それで約五十メートル以上の風が吹いておつたから、表の橋げたそのものは落ちなくても、ゆるんで非常にあぶない状態にあつて、重量制限はもちろんのこと、一般の車馬もとめなければならないというふうになつてつたのですから、落ちてしまつたということではありませんが、ともかく使用に非常に困難な状態であるという程度被害はあつたというふうに私は聞いておる次第でございます。
  577. 篠田弘作

    篠田委員長 ワイヤーがいたんでそれが切れたとか、あるいはそれが非常にゆるんで橋が傾いたとかいう問題ではなくて、現実にワイヤーを何十本か切つておるのでしよう。そうすると宮竹組があとから工事の請負をしたいために落したとしても、技術者から見れば、それは刃物で直接切つて落したものであるか、台風で、自然の力で切れたものであるか一目でわかると思うんですがね。
  578. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その橋のつり線を切つておるわけです。従つてその程度をひどくしようとした行為のあつたことは私としても今承知いたしております。
  579. 篠田弘作

    篠田委員長 さつき土木部長証言によると、その前の二月、まだ土木部長が就任しない前だそうだが、石川県に二十名ばかり関係した土木汚職事件があつて司直の手が伸びておつた。これはあなたもそのときは知事だつたわけですね。
  580. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 そうです。
  581. 篠田弘作

    篠田委員長 その汚職事件内容は、もちろんあなたは御存知だと思うが、その内容はどういうもので、金額はどのくらいだつたか。
  582. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 それは各土木出張所が直営工事をやつておるわけです。その直営工事の人夫賃をごまかして、一部遊興に使つたということの事件でございます。その金額は、検事局のいうのは、私の記憶違いがあるかも存じませんが、三百万円くらいになつてつたかと存じます、そういう事件でございます。
  583. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、それによつて、近来特に土木部関係公務員の綱紀が非常に乱れておつた。あなたはとにかく知事選挙に立つて、公選知事として二度も当選しておるのだから、おそらく県民の知事に対する信望は厚いものだと私は考えておるけれども、そのあなたに対する県民の希望、期待というものが、こういうような綱紀紊乱事件によつて非常にそこなわれるということがあり得ると思うのですが、そういう県民の期待に対して、あなたは公務員の最高責任者としてどういう態度をとつて来ましたか。
  584. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 今委員長のあげられた土木関係公務員汚職事件の直後におきましては、全部これらの機構を再検討いたしまして、その再検討いたした内容に基きまして、あるいは直営工事土木出張所限りに委任してあるものを、ある一定の限度に切下げてしまう、あるいは土木請負事業についても一定の限度を与えるとか、いろいろの方法をとつて粛清し、機構上からもいろいろ弊害を除去する手段をとると同時に、県民全部の御協力にまたなければ、十分なるこれらの綱紀粛清というものができないわけでありますので、この点について、あるいは一部人事の異動もいたしましたし、全般の人たちの協力も求めるように努力いたし、また今度の選挙に際しましても、その粛清をすることを一つの心がけといたしまして、県民に訴えたような次第でございます。
  585. 篠田弘作

    篠田委員長 そうするとその問題については、あなたとしては県民に訴えたというが、どういう方法で訴えたか、
  586. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 今後かくのごときことを絶対に起さないように全力を尽すという意味において県民の御了解を求め、非は非として粛清するということに県民にお願いしたわけでございます。
  587. 篠田弘作

    篠田委員長 それは県会か何かを通してですか。
  588. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 県会を通し、あるいは演説を通し、何百箇所についてそういうことを申し上げたわけでございます。
  589. 篠田弘作

    篠田委員長 それから、国費であれば一千万円の補助を要求するが、県費であれば四百七十万円で間に合せる。これはほんの間に合せの橋であつて、さつき土木部長が一千万円でも一年くらいは持つだろうという考え方でやつたということを言つておるけれども、一体橋のかけかえを、少くとも国民の税金をもつて、あるいは県民の税金をもつてやる場合に、一年くらいしか持たない橋をかけるもかけないもない。かけるべきものかどうか。
  590. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私は査定官の派遣を要求した場合に、その中に一千万円があつたという場合、またそれぞれの災害箇所について金額その他を書いたときには、私自身といたしましては、その当不当は、現場を見ておらぬし、また技術者でない関係上わかりませんので、ただ部下の言を信用したということになるかと存じますが、顧みましてこの事件を見ますと、現在のあの橋の状況では、おそらく一千万円でも、十分な、地方の要望に沿うだけの橋はできないだろうと考えております。従つて当時県費の少い折でございましたので、ようやく四百万円の金をひねり出して、とにかく通れるようにしようというようなことでいたしております。その後におきまして、その橋はたびたび交通制限をせざるを得ないような状況になつております。
  591. 篠田弘作

    篠田委員長 今国民が重税に苦しんでおるし、一千万円の国費を補助するということになると、国会でもそうでありますが、各省でも一千万円以上になると、相当大きな問題だと思う。それを何百箇所もつきまぜて、知事の所に持つて来たもの、土木部長の所に持つて来たものを、百万円のやつも千万円のやつもつぎまぜて、ただ一枚の決裁判をとるように持つて来る、それに対して知事も土木部長盲判を押しておる、そういうことでは、国民の血税をもつてやる工事についての責任が果せないと思うが、何か金額によつて、何百万円以上は知事が必ず目を通す、あるいは何百万円以下は出張所長、課長にまかせるというような内規はあるのですか。
  592. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 土木の請負事業で、ほんとうに事業にかかるというような場合においては、大きなもの等については上の方まで持つて参りますが、小さなものについては土木出張所限りでやるという内規がございますが、今申しましたのは、われわれのところに出て参りましたのは、ともかく災害を受けた非常な緊急な事態の、忙しいときでございますので、とにかく私にいたしましても、一々現場を見るわけにも参りません。従つて一応各地方から出て来たものをとりまとめたものをもつて政府にお願いするという以外に道はなかつたので、はなはだずさんであつたことを今になれば申訳ないと思いますけれども、通さざるを得なかつたというふうに存じておる次第であります。
  593. 篠田弘作

    篠田委員長 すると、実施する場合には相当注意をしてやるが、緊急の際であつたからやむを得ず判を押したわけですか。
  594. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 そういうことであります。
  595. 篠田弘作

    篠田委員長 実施する場合に、何百万円以上は知事が決裁する、あるいは必ず目を通す。何百万円以下は所長、課長で間に合わせるという規定はありますか。
  596. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 二百万円以下の請負工事については、土木出張所限りでやりまして、あとは全部形としては私のところまで来なければならぬことになつております。しかしながら、ものによりましては、副知事が自分責任で代決する場合もございますが、ともかくも表向きの権限の分配としては、そういうことになつております。
  597. 篠田弘作

    篠田委員長 二百万円以下は所長の権限でやらせる、こういうことになつておるわけですね。
  598. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 そうです。
  599. 篠田弘作

    篠田委員長 委員諸君から何か聞かれることがございますか。     〔委員長退席、内藤(隆)委員長代理着席〕
  600. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 証人にお伺いいたしますが、ジエーン台風によりまして非常な被害があつた、その被害箇所は、数百箇所であつたので、天狗橋について、特に災害がどうであつたかということは気がつかなかつた、わからなかつたというお話でございましたが、その数百箇所被害災害対策として要求された金額は、石川県としてどのくらいの金額がありましたか。
  601. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 全体で約五億万円くらいになつてつたかと考えております。
  602. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 五億万円のうち、石川県に復旧費として現に国からおりた金はどのくらいですか。
  603. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ちよつと今記憶がございませんが、その五億万円に対して、さらに建設省が現場を見て、あるいは農林省が見て、査定いたしております。その査定いたした金に対して約一割二、三分くらいしか参つておりません。
  604. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 五億万円のうちの一割二、三分と申しますと大体六、七千万円だと思う。その六、七千万円のうちの一千万円といえば、被害を受けた大なり小なりの箇所は数百箇所であつたかもしれませんが、それから計算しますと、相当な金額になるわけです。その一千万円が何十億の中の一千万円であれば、さほど気にもとめないでしようけれども、数千万円の中の一千万円ということになれば、私らとしては常識的に考えても、一番大きい方の災害復旧の国からの補助金だろうと思うのですが、それも数百箇所つたから特に天狗橋ということに意を配らなかつたのでございますか、その点をひとつ承りたい。
  605. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ただいまの私の説明は足りませんでございましたが、五億円という中に一千万円というものが入つております。さらにそれを幾ら幾らというふうにして切りくずして、たとえば五億円と申しましても、当時の金——ちよつと私は記憶がございませんが、おそらくは五千万円前後ぐらいしか査定を受けておりません。そのさらに一割程度の金が参つたと、こういうわけで、最初のなまの一応のこちらの見込金額の中の一千万円と申し上げたのであります。
  606. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そうすると、この一千万円というのは天狗橋災害要求額でしたか。
  607. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 災害の復旧の見込額を出しております。
  608. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 それからもう一つ私の合点の行かないのは、天狗橋ということにつきましては、証人としては常に頭の中にあつたのたろうと思う。なぜかと言いますと、先ほど来お聞きいたしますと、天狗橋はかつて通行人が死んだこともある、汽車の中で人の死んだということを聞いて、またああいう事件が起きたんぢやないかというふうに、直感的に来たという先ほどの証言でありましたが、ジエーン台風などがあれば、常に心配していた橋ですから、あなたが直感的に、あの天狗橋はどうかというようなことを考えると思うのですが、そのときの感じはどうでしようか。
  609. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 実は、はなはだ申訳ないですが、当時ともかく全体のわくをとることに一生懸命になつておりまして、個々の事態について一々精査することなく、ほとんど部下にまかせましてやつておりましたので、その災害全体の五億を出すときに、天狗橋はどうだというふうに実は具体的に考えませんでした。
  610. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 その点が私ははつきりしないのですが、数百箇所といつても、そのうち橋の落ちたのはどのくらいですか。
  611. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 橋は、ちよつと今記憶が正確でございませんが、十数箇所橋についての災害復旧をいたしておつたかと思つております。
  612. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 橋が十数箇所というと、十数箇所ならそう数の多いものではありません。数百箇所というのはまだいろいろこまかいものも合せて数百箇所であつて、そのうちの橋が十何箇所でしよう。そうすると、当然この天狗橋などという常にあなたが気にかけていた橋ですから、常識としてすぐ直感的に天狗橋がどうなつたんだろうかと、要求額を一々見ないでも橋が十何箇所であつて、どこと、どこと、どこぐらいはわれわれ常識とすればすぐ来るはずですが、どうしてもそのときには忙しかつたから気にかけなかつたとおつしやるのですか。
  613. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 今この場合でそういうお尋ねをいただくとはなはだ何でございますが、ともかく私の方へ渡つている表は、橋が幾ら、何が幾らと、こういうふうな抽象的なものをもつてわれわれ政府に折衝いたしておりまして、具体的なものにつきましては、私ども部下がやつておる。この問題について一回私のところへ来ておりますが、それは単に査定官を派遣要求してくれという問題でありますので、これで金額がきまるわけでも何でもありませんので、大体こういうふうにしてこれを出して、政府で派潰して調べてもらう、こういう話でありましたものですから、このまま通つたようなわけであります。
  614. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 これをつつ込んでもしようがありませんが、請負師と県の役人との関係ですが、先ほど一応想像されると、これは事実ではないが、請負側がこの工事を破壊したことが事実とすれば、こういうことも考えられるという先ほどのあなたの御証言があつたのですが、たとえば請負師が補修工事ですか、補修工事に百五十万円で宮竹組がやることになつた。それがもしその請負師がこわしたと仮定いたしまするならば、補修ができないうちに橋をこわした。こわすとどういう結果になるか、たとえばこわして新たにかけかえするときには、国から金が出るのか、県から出るのか、あるいは何ぼの補助があるかというようなことは、あなたの方の請負師が全部御存じですか。たとえばこわしたら県の方からすぐ出るのだとか、あるいは国の方からすぐこの補助が出るのだとかいうようなことは、請負師仲間ではよく承知しておりますかどうか、それを承りたい。
  615. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 普通の土木業者でありますと、長年やつておる者ですと、おそらく私自身よりも災害復旧その他についてのいろいろのことをよく知つております。ただこの宮竹組というのは、私もこの事件が起きてから初めてこの組があることを承知したような組であります。たつた一回指名に参加し、初めて偶然落札してやつたような未熟な者であつたものですから、その組そのものがよく詳しく知つてつたかどうかということについては、私はよくわかりかねるのです。
  616. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 事件が起きて宮竹組ということをあなたが御承知なさつたのでしようが、事件が起きたからには、いわゆるその過程の全貌を明らかにするということが、あなたの責任だろうと思います。そういたしますと、宮竹組というものが、どういう過程を経て指名人に入つたのか、要するに地方工事責任者が指名をさせたのか、それとも地方土木課長なり道路課長なりがやらしたのか、その点お調べになりましたか。
  617. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私調べておりませんが、宮竹組は役所の側に、こういう組ができたから仕事をさせてくれと頼みに来たと思います。それでこの案件については、三十数名の人を指名して競争入札いたしておるわけであります。その競争入札した結果、落札したということになつております。
  618. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 通常の考えでは、世間に請負師というものは、何万何千とありまして、あらゆる工事に入札の競争が始まるのです。そこで指名になるということは、われわれの聞き及ぶところによると今容易でないのです。そうするとこの容易でない指名の中に、指名者として加えられたのですから、——あなた方が自分部下をかわいがるということは当然であります。あなたの部下にそういうような不心得の者があつて、請負師にこわせなどということを命令をしないであろうと今でもあなたが信ずるのは、これは当然だと思います。私らもあなたの立場に立つたらそう考えます。そうすると勢い請負師に何かなかつたかということになると思います。そうすればこの請負師がどういう過程で指名をされ、どういう過程でそういう入札を得たかということくらいは、あなた自身行政上の責任者として調べなければならぬと私は思うのですが、今まで調べていないということでありますが、この人を検事的な立場で調べなくても、今まで一回でも二回でもお呼びになつてお聞きした程度のこともございませんか。
  619. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 実はこれは私証言するのに不適当かどうかと思つて差控えておつたのでございますが、実は宮竹組の社長と申しますのは、これはあとでわかつたことですが、ある県会議員が社長になつてつたのです。もともとこの県会議員本人は、別に東京あたりに支店があるくらいな優秀な大きな土建業をやつておるのです。ところがどういう関係か、そういう小さなものに社長という名前を貸したのか、実質的に社長をやつたのか、その辺の内輪のことはわかりませんが、新たにそういうものをつくつてつたことでありますから、しいてお尋ねに対して私の想像幾らか加えて申しますれば、そういう有力者の社長がやつておるのだから、選定にあがつたというふうにも考えられます。
  620. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 私はあなたの想像や何かをお聞きしているのではないのですが、そうならばなおさら——会議員であり、しかも一方の請負師の堂堂たるところの経営者が、宮竹組というような小さな請負の社長も兼任して、しかもこの指名に入つたということならば、あなたの証言から言うならば、当然一応は疑つてみることになるのです。私があなたの立場になるならば、その疑つていいものを、いかに有力者であり、県会議員であるとはいいながら、今まで調べなかつたことについて、あなたは責任を感じませんか。
  621. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 これははなはだお言葉をいただきますと申訳ない点でございますが、ともかくこれはそういう指名に入つたということでございまして、それについて、私が今想像するような、裏づけになるような事実が、実ははつきり出ておりません。ですから今申し上げますときにも、想像ということを申し上げたような次第であります。
  622. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 あなたは検事でもなければ裁判所の役人でもないのですから、証拠をあげて一々調べるというような態度はなくてもけつこうだと思います。ただ先ほどから証言をお聞きいたしますと、石川県民に対してはまことに申訳ない、行政上の責任を感じて、あらゆる機会において、あるいは演説においても、あるいは文書においても、自分立場というものに対して遺憾の意を表明しているということを仰せられましたが、遺憾の意を表明するだけではいけない。この事実を糾明するひとつ行政上の責任があるだろうと思います。だから今まで調べなかつたが、今まで宮竹組の責任者を呼んだり聞いたりはできなかつたが、今後それならあなたは、これをどこまでも裁判所でなく、あなたの立場としてこの事実を、あるいは真相を糾明するお考えがあるかどうか承りたい。
  623. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 実はその県会議員が社長で、実質的にやつてつた専務が死亡してしまつておるのです。で県会議員は、実は、はなはだ何でございますが、私とまつたく政治的所見を逆にしておる立場に立つておる人のように判断いたしますので、非常にその点に対する困難な点があるのでございます。従つて私としては、責任は十分感じておりますので、むしろ今後選定において、誤りなからしめるように、むしろいたすべき筋合いのことと思つて、その点に重点を置いて指導をしておるようなわけであります。
  624. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 今後あらゆる方面に、再びこういうことを繰返さないようにやるということはもちろんであります。しかしながら起きたこの事実の真相を糾明するということが、百万言の、いわゆる陳謝の意を表するよりも、事実はこうだつたということで、県民なりあるいは中央の官庁なりが、私は納得することだろうと思います。だから私は何回も繰返すように、検事的な立場取調べでなく、真相を行政責任者として明らかにして、これを県民に発表するということは、あなたのなさねばならぬ仕事の一つであり、また責任の一端であろうと私は考えます。ことさらに、今お聞きいたしますと、その県会議員が、あなたと政党的かあるいは何か知りませんが、相反する立場にあるということですが、何もそれは政党的な争いじやありません。これは要するに事実は事実かといつて糾明するのですから、そんな反対党であろうと何であろうと何も遠慮することはないだろうと思います。今まだあなたからその証言を得られないのですが、今後のいろいろ大問題で、再びあやまちを繰返さないという証言で尽きたのですが、もう一ぺんあなたの責任において、事実を糾明するというお考えは今ございませんか。再びあらためて……。
  625. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 御親切なお言葉でございまして、私としても御趣旨がよくわかつておりますので、十分考えて善処いたすようにいたしたいと思います。
  626. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 それから、これは先ほど田中土木部長ですか、この人の証言を私はちよつと私用がありまして、最初だけ聞いて行つたのですが、この土木部長証言を聞いていると、これも知らぬ、あれも知らぬというのです。そうするとわれわれとしては、土木部長という立場は、あなたは県政全般に対して目を通さなければなりませんので、一々小さなことはわからないということで一応納得ができるのですが、いやしくも土木部長なるものが、とにかく百五十万円の補修工事にしても、あるいは一千万円の災害要求にしても、相当な金額であります。そういうものを土木部長が知らないということの証言では、われわれは納得ができませんが、あなたは知事として、そういう証言がもしここでなされたとしたならば、その土木部長のいわゆる責任というものを、どうお考えになりますか。
  627. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 土木部長が、落下いたしましたその事件のあつた前後は、歩行のできないほどのひどい病気で寝ておりましたので何でございますが、全体の計画としては、一応の責任者であることは、私は間違いないと思うのであります。従つて自身にいたしましても、知る知らぬにかかわらず、行政上の責任はあるものと考えているのでございます。土木部長にしてもおそらくは、言葉は足りなかつたかも存じませんが、そういうことじやないかと私は考えております。
  628. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そういう証言では私は納得できないのです。行政上の責任はもちろん土木部長もあるだろうという行政上の責任よりも、該当したこの事件の直接の責任者としては、私は土木部長だろうと思います。で知る知らぬは二段としてもというあなたの御証言ですが、当然知つておかなければならない事実じやないですか。要するに補修工事にしても何にしても……。
  629. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 補修工事をやつてつたのは、これは私はおそらく知らなければならぬ立場にあると思います。それから天狗橋のことを申請することも、知らなければならない立場にあると私は思います。ただ事実問題として、知つたか知らぬかということになりますと、本人の考え方をある程度聞かなければわかりませんが、現在まで検事局その他の取調べによりますと、大体ある程度知らないような点があるように——これについては責任問題とか何とか別といたしまして、あるようなふうに伺つておりますが、この点は私はただいまそう思います。
  630. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 あなたの部下をかばうという美しい気持はわかりますが、土木部長が知る知らないは二段だと言い、また検事局の調べにおいては、ある程度知らない点もあるかもしれないと言うが、あなたの県では、こうしたことを直接の決裁をやるのは、ことに補修工事とかあるいは災害要求とかいうようなものは、国から来る金なんです。そうすると、そういうものは土木部長が知らないでいてもいいものですかどうですか。
  631. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 中央から来る関係、あるいは私の下僚としていろいろな業務をいたす関係から行けば、土木については何と申しましても、直接に土木部長責任者だと私は思うのであります。従つてある程度のことは知るべきが当然だと私は存じております。
  632. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 私はある程度ということでなく、一切の土木関係の仕事は、部長が当然知らなければならないのだという御証言が願いたいくらいです。だけれどもあまりこまかいことを——下水を直すことまでも、わかりませんでしようが、十幾つの災害の中に加えられるような天狗橋、しかも一千万円を要求するほどの天狗橋を、土木部長が知らなかつたという証言で、われわれもそうでしたかということで引下るわけには行かない。だからこの点をはつきりしていただきたいのですが、もしこれをどこまでも土木部長が知らない、ただ口で知らないと言うから知らないのだ、知事としても、それは知らないこともあるでしようというようなことで解決してしまえば、この委員会が、まるで偽証されたようなかつこうになる。この点がまずこの問題をあいまいにする、一つの疑念を抱かれている点だろうと思います。だからあなたは土木部長に対して、検事局の調べはどうか知りませんが、あなた御自身として、この天狗橋の問題に対して、土木部長からこういうことを知つていたかどうかお聞きしたことがありますか。
  633. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 土木部長そのものからは、実は私は被害報告を受けたことは一度もないのです。しかしながら全般の被害というものは、下から盛り上つてつておりますから、その一番上に土木部長がおるわけですから、総括的には知らなければならぬ地位にあるということを私は思つているわけです。
  634. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 いや私の言うのはそうじやない。被害の限度とか被害の状況じやなく、天狗橋というのは当然問題になつたのでしよう。しかもその真相がいまだに明らかでないのでしよう。そうすればあなたとして土木部長を呼んで、こうこうこういう天狗橋のいきさつはどうなつていたか、君はどういう点まで知つていたか、どういう点はどうしたのだということを、土木部長からあなたは当然聞かなくちやならぬだろうと思います。要するに災害や何かではない、この問題の起きた直後において、当然いろいろな話があるだろうと思いますが、土木部長をお呼びになつて、君はどういうわけか真相を説明しろと言つて聞いたことはございますか。
  635. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 事件直後においては、もちろん土木部長を呼んでいろいろな状況を聞きました。ただ御参考に供したいのは、私は富山で、汽車の中でこの事件が起つたことを知つたのです。帰りましてすぐ土木部長に実は電話をしまして、私が先ほど申しましたように、通行どめも何もないところへまた人でも落ちたかという心配をして、土木部長に聞きましたら、それは通行どめがしてあつたのであつて、決してあなたの言うように放置してあつたために落ちたのではなくて、むしろ幾ら言葉は悪うございますが、その落ちた人の過失があるというような報告があつて、そうしてその落下とか加工ということについての報告はそのときは全然ございませんでした。従いまして、土木部長もほんとうに深く知つてつたかどうかということについて、今もつて疑問を抱かれる点があるのでございますが、しかしながら今にして考えてみて、それを知らなかつたことがどうだということをいわれれば、もつと土木部長としても、私としても、つつ込んでいたすべきだつたというふうに考えておる次第でございます。
  636. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 この問題は知らなかつたのだろうという、あなたのすでにそういう考えを持たれる中に、私が幾らつつ込んでもどうにもならないのですが、私らの常識としては、土木部長というものは当然いろいろなことを調査しなければならないと思うのですが、この天狗橋が落ちてこうなつた、ああなつたということは、事件が起きてからわかつたのですか、それとも事件を起訴される前に、いろいろな問題が表面に出ないうちにわかつたのですか。あなた方がわかつたのは……。
  637. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私が知りましたのは、事件が起きて、そうして検事局の捜査の手が及びそうになつて、起訴前に私の耳に初めて入りました。
  638. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 検事局が一番先に手をつけたのはどこですか。
  639. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 最初警察で……。
  640. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 警察です。警察が一番先だ。
  641. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 警察が一番先でございまして、それから検事局が、検事正がみずから現場を見られて、その結果事件が起つて、ぼくらもびつくりして、あらためて呼び出すというような状況になつたようなわけでございます。
  642. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 これはまた検事の方からのあれもあつたのだろうと思うのですが、警察の方で一番先に呼出しをしたのはだれですか。
  643. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 たしか宮竹組の工事の直接の担当者じやなかつたかと私記憶しております。
  644. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 よろしゆうございます。
  645. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 ほかに……。坂本君。
  646. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 実は二、三お聞きしたいのですが、ジエーン台風がありまして、県内に被害があつた際に、知事は被害地の視察をされましたか。
  647. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 それからしばらくたちまして、九月の三十日ごろになつて、ようやくからだのすきを得て能登方面を、ずつと村々の慰問をかねてまわりました。
  648. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 そういたしますと、天狗橋災害復旧額の一千万円を含む数百箇所の補助の申請は、視察前にやられたわけですか。
  649. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ちよつと実は日付の前後を今私記憶いたしておりませんので、これは書類を見ますればお答えのできることでございますので、御必要があれば、また説明さしていただきたいと思います。
  650. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 しかしそれははつきりした日付でなくて、大体台風なんか起きた場合には、どこの県下でも知事みずから陣頭に立つて被害地を視察するわけですね。私はあなたのところがどれだけの被害があつたという事実はわかりませんが、ただいまの証言によると、災害箇所は数百箇所に及んでいた、その中の一部であるから一部としての決裁をした、そういう証言でしたが、数百箇所もあるジエーン台風被害ならば、私は知事みずから、あるいは知事が行けないところは、各部長を担当をきめて、県内を視察するのが、大体被害地の各県の今までとつておる態度ではないかと考えております。だからそういう点についてのことを考えて、それをやられたかどうか。もし何かの都合で遅くやられたならば、この大被害の補助の申請をやつた後にされたか、あるいはやる前にされたか。それをお聞きしたい。
  651. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その被害のあつた翌日、一箇村私が参りました。その他は、実は私が余儀ない用事で、そのまま捨てて上京しなければならぬ状況にございましたので、上京すると同時に、県で臨時県会を開きまして、副知事に依頼いたしまして、各方面手わけして視察慰問をいたしております。遅れて私自身も、慰問をかねて一部分の災害地に行つておるわけでございます。ただいま申し上げたのは、その日付と、私が先ほど証言いたしております査定官の派遣要求のその申請との前後だけが、ちよつと今私が記憶を持つておりませんので、書面について後刻証言さしていただければ仕合せだと思つております。
  652. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 それで天狗橋の問題で聞きたいのですが、この天狗橋は、被害者は、一般人は年寄りが一人で、その他は工事関係者であつたというお話でしたが、工事関係者のうち二人が死亡して、その他十七、八名が重軽傷だと、そう聞いておるのですが、大体その通りかどうか。
  653. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 工事請負業者の中で死亡した者はたしか一人だつたと思います。その他は十数名けがをいたしたわけでございます。
  654. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 工事中だから通行を禁止してあつた。その点について多少疑問を持つておるからお尋ねするのですが、これはこの天狗橋を、被害を受けていないけれどもジエーン台風被害を受けたというふうにするために工作をして、橋げたを切り、いろいろなことをやつていた。そういう工事をするから、通行を禁止していたのじやないかと思うのですが、その点どうですか。
  655. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私の聞いておるところによりますと、検事局に対する陳述の中で、その所轄の警察署の巡査部長が、その二週間でしたか、十日ほど前に、警察独自で通行禁止をしたという陳述をいたしておるように聞いておりまするが……。
  656. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 二週間前に通行禁止をしたというのが、一般常識からも科学的にちよつと考えられないのですが、二週間くらい前からそういうような工事を始めたから、これは警察と、工事する人夫と、県庁と——これはわれわれはわからぬですが、一緒にぐるになつて、そして天狗橋災害を受けていないのに受けたようなふうを、建設省から見に来る前にしなければならぬから、それを工作するので通行を禁止し、そうしてそのいろいろな工作を始めたのじやないかという疑問が非常に多いわけなんです。ですから二週間前に通行を禁止したというのは——被害を受けていないところの橋に対して通行禁止するというのは、われわれはどうもはつきりしないわけですが、通れない状態にあつたから、二週間前に通行を禁止したのかどうか。その点をもう一ぺんお伺いします。
  657. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 ちよつとお待ちください。その点さいぜんの検事の証言中に、検事は、ジエーン台風によつて天狗橋被害は認めていないようですがね。ただ法廷の関係上、これはここで述べないが、こちらは、何といいますか、そういう証拠を持つておる、こういうことなんです。あなたはそうすると、この天狗橋ジエーン台風によつて被害をこうむつておると認められておるのですな。
  658. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私は当時政府に要求をする際においては、これはともかく出て来たものを認めたというにすぎませんのですが、現在私はそれを振り返つて、今橋がどうのこうのというのを見ますと、一つは今申しましたように、これも私は全部聞いておるだけで、読んでおるわけではございませんので、御了承願いたいのですが、その検事の提出した鑑定書の中に、この橋は根本的にやらなければ、とうてい使用にたえない悪い橋であつたということを書いておるということを聞いております。それからもう一つ、安本の課長が現地調査に参つております。その報告の中にも、被害はあつたものだというふうな報告をしておるというふうに聞いております。それからもう一つは、裁判所側の鑑定書の中にも、大体検察側の鑑定書と同じように、ある程度の何かゆるんで被害があつたということを書いておる。読んでおりませんが、私はそういう報告を受けております。これらから見て、どの程度被害があつたかということになりますと、私にもちよつとわかりかねますが、何か被害があつたものじやないかというふうに現在承知いたしておるわけであります。
  659. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 その点はすこぶる重要だと思いますがね。
  660. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 そうすると、確認することになるのですが、二週間前に通行禁止したというのは、この橋が被害を受けて通行不能であるから通行禁止をした、こういうふうに了承してよろしゆうございますか。
  661. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私は、そのした行為は陳述をしたというふうに聞いておりますが、私の考えでは、ともかくその一両日前に通つた者もいるのですから、通つて通れぬことはないが、ともかく危険を伴う、一般の交通の用に供することは不適当だというふうに警察側は判断したのではないかというふうに存じております。
  662. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 先ほど佐々木氏の質問にもあつたかと思いますが、災害の場所は数百箇所に及んでおる。そのうちの一部であつた。そこでお聞きしたいのは、あるいはこれは建設省関係、農林省関係の両方が含まつておると思うのですが、両方含めて、見積額一千万円以上という被害は幾つくらいありましたか。
  663. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 一箇所につきまして一千万円というようなのは、何箇所つたか、私は今記憶いたしておりませんが、非常に多数のものがありまして、一千万と申しますれば、どちらかといえば大きい方に属していはしなかつたかと思つております。
  664. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 そこで各県からのいろいろなデータを見ますと、一千万円というと相当大きいのですが、このくらい大きい被害は幾つあつたかくらいは、知事は御記憶がありはせぬかと思うのですが、その点はいかがですか。
  665. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 今その内容に入りまして、坂本委員からのお尋ねのような、何箇所ぐらいあつたかということになりますと、ちよつと今お答えいたしかねておるのでございます。
  666. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 最後にもう一点だけ、県庁の関係で本件で起訴されておる者は何名であつて、全部依願免官になつたかどうか。
  667. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ジエーン台風の関係で依願免になつた者は五、六人かと存じますが、全部依願免になつております。
  668. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 そうしますと、大体官吏が起訴された場合は、公務員法によつて休職になるのですが、休職にせずに、全部依願免にされたのですか。
  669. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 実は国家公務員法は存じませんが、地方公務員法には、たしか私の記憶ではそういうような規定がないかと存じますが、通例の役人の常識としては、本人は否認しておる、検事はこれを訴えておるというような場合には、休職にいたすべき筋合いかとも存じましたが、何と申しましても、これらの人の妻子その他がそれでは食べて行かれない。幾らか御批判もあることかと存じましたが、私がかぶつて依願免にしたような次第であります。
  670. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 私は依願免がいいとか悪いとかいうことを言つているのではない。地方公務員法には、刑事上の訴追を受けた場合は休職にすることができると今度の規定にはなつております。以前の官吏服務紀律においては、することを得というようになつております。得というのだから、してもいいし、現職につけておいてもいいという解釈をわれわれはとつておるのですが、事実は大体休職にする。そこでその休職にするというのは、無罪で晴天白日になつた場合は、当然原職に復帰する、こういう建前で休職というふうにわれわれは善意に解しておるわけです。ですから、休職にしたがよいか、依願免にしたがよいかということは、これはどちらがよいかということには、両方とも利害はあると思います。それで知事として慣例上やつたと言われるのですが、ただ聞きたいのは、前の道路課長以下五、六名全部依願免にした、こういうわけですね。
  671. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 従いまして私は全部依願免にいたしておりますが、全部起訴前に本人が依願免を願い出た者について処分したわけであります。
  672. 島田末信

    島田委員 私は本事件を通じて今まで証人からお聞きした点で、大体天狗橋はすでに腐朽しておつたし、重量にたえ得ない、いつかは当然かけかえなければいかぬというような橋であつたと観察するのです。そこでいつこれを直すか、またかけかえるか、その財源をどうするかということも、一応地元としてはいろいろ悩みの種であつたと思うのであります。ところが、ジエーン台風が起きて、これに便乗して、その損害のあつたごとく装うて——多少の損害はあつたかもしれないが、いずれにしてもその損害自体を過大に見積つて被害の算定について申請したということについては、これは土木部長は全然知らないということだし、また県を統括しておられる証人におかれては、もちろんそういうことは実地に見てもいなかつたし、わからなかつたということも一応察せられますが、土木出張所長なり、当時の主管課長は、それに十分参画もしておるであろうし、またその算定についても事務当局として携わつているであろうし、この過大な見積りをして申請したことが、結局橋を落さねばならぬような結果にも追い込んだし、さらには県費でもつてまた相当額の補修費を出さなければならぬという結果にも陥つているわけです。要は過大なる見積り、いわゆる虚偽の申請をしたということの責任は、当然これは考えねばならぬと思いますが、これに対する証人の考えと、やつた処置についてお伺いいたします。
  673. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 実はその当時におきましては、ただいまお尋ねのありましたように、一般的にたくさんありましたので、ともかく査定を受ける要求をした別表に一千万円と出ておつたという程度にとどまりますが、現在考えてみますと、その金額が過大であつたかどうかということになりますと、私としては過大であるという御意見に対して、ただちにそうじやなかつたと申し上げることもできないのでございますが、しかし一面から行きますと、この事業というものは、ただ原形復旧でなくて、要するにそれに加工してよい橋にするということもある程度認められているのであるから、例を申しますれば、五百万円なら五百万円の災害に対して、さらにそれをりつぱにするために五百万円というものをつけ加えで復旧金額として請求することを許されておるというふうに私は聞いております。従いまして、当時この橋を査定いたしました査定官も原形復旧は幾ら、それに増すやつは幾らというふうにわけて査定をいたしておるようなわけでありますので、ただちにこれが過大であるというふうな結論も出ないのではないかというふうに私は考えております。
  674. 島田末信

    島田委員 私はそういうふうな擁護をする気持の一面はわかりますけれども、いずれにしましても一千万円の査定申請した。そのことがいよいよ調査建設省からやつてつた場合に、これを通すために工作した結果が、橋を落さねばならぬという実情になつたということは、これは結果論からいつてはつきりしておるのであります。そうなると、おのずから原形復旧並びに改良工事等に見積られるその査定自体が適正なものであるならば、橋を落してまで調査に派遣された者に見せねばならぬというふうなことは普通考えられないことなんです。そこでそこまで行かなければならなかつたというこの実情は、要はジエーン台風に便乗して、いつかは直さねばならぬ橋を一挙に永久構造か何かに切りかえてもらいたいというつもりで、私はその動機において必ずしもよかつたとかいけなかつたとかいうことは、今すぐ問題にしなくてもいいと思うが、しかしどういう考えであつたにかかわらず、そのやつた結果が一応橋を落すようなはめに陥つた、その後国庫の補助も留保されて地元は県費で負担しなければならない、直したが、その橋は少くも一年もすれば、その橋自体の重量にたえないというようなものしかできない。これは県費も相当損傷したであろうし、また刑事被告人も出したという結論を生んだというのは、動機のよしあしは別として、ジエーン台風に便乗して、この橋をひとつ過大な見積りのもとに国庫の補助を得ようというような、端的にいうならば虚偽の申請自体がこういう結果を生んでおるのであつて、なるほど人情論から行けば、課長なり、あるいは土木出張所長のやつたことに対して比較的そういうことはありがちなことかもわからぬし、またそういうことが必ずしも悪辣な行為として責めるに足らぬ、憎むべき行為ではなかつたというふうにも考えるかもしれぬが、いやしくも国費を使用しなければならぬという問題を対象として、しかもこれが公然として現われて来たという場合に、その責任を追究することを、私は証人土木部長も一向考えていないように思う。土木部長自体の証言を聞いてみましても、全幅の信頼をいまだにささげているような言辞を弄しておるので、人情論においてそういつた一面も考えられるかもしれぬが、しかしこれに対しては泣いて馬謖を切るという峻烈なる批判を与えること自体が、社会のいわゆる善を進めるゆえんであり、国費を濫費しないで適正な算定のもとに国庫の補助を仰ぐという一つの道筋を立てるゆえんじやないかと思う。なるほどそういつたことは内輪から見れば、まあ県のためにやつてくれたのだとかいろいろありましよう。しかしこれをただなおざりに責任を追究することをせずに、むしろ全幅の信頼を持つているということを、証人がかような局に立つておりながら公然と言い放つということでは、今言つた世の中の粛正は不可能だと思う。この辺に対してはよほど考え直してもらつて、むしろ責任の追究すべきものは、これは人情上なかなか困難なところもありましようけれども、いわゆる決意を持つて、やることはやらなければ、この社会悪を防ぎ、あるいは正義を推進することはできないと思う。この点現在のあなたのお気持を聞かしていただきたい。
  675. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ただいまのお尋ね一々ごもつともな点で、私として頭を上げる余地もないような気もいたすのでありますが、この問題について過大であつたかどうかという点については、種々われわれ技術者を呼んで調べてみますと、私もしろうとでございますが、いろいろの答弁を聞きますと、必ずしも過大であつたという結論を出すことは困難な点がありますので、私どもただいま申し上げたような証言をいたしたようなわけでございます。由来わが石川県は比較的ものを正直にいたしておるというような御信用を得ておつたにもかかわらず、このような点についてお疑いを受けたことについては、私としてはまことに何とも申し上げようのない残念な気持で一ぱいになつているわけでございますので、十分その点については御意思に沿うような、自分としては覚悟で進めたいと考えております。
  676. 大森玉木

    ○大森委員 議事進行についてちよつと……。証人にお尋ねいたしたい。それは私はこういうことを聞いている。問題の重点がおわかりでないからいろいろ皆さんから尋ねておられることがうつてまわつているので、要点だけをお尋ねいたしたい。それはこの橋が……。
  677. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 大森君、議事進行ですか。
  678. 大森玉木

    ○大森委員 議事進行だ。それはどんなことかということをお尋ねする。こういうことなのだ。(発言する者多し)黙つて聞きなさい。なるほどそうだということならば話がわかるが、今度のこの問題に対して橋を落したか落さぬか、たれが落したのであるか、これが問題なのだ、それを今論議いたしておる。そこで私の聞き及んでいるところによりますと、宮竹組の責任者が法廷に立つて、そうしてどういうことを言つたか。修理工事だけではわずかな金である、これではもうからないから、ひとつこれをこの機会に落して、やり直すことによつて大きな金もうけができるというので、自分は新しい自転車も買つた、また自分たちはそれがために前祝いの酒も飲んだ、こういうことを裁判所法廷において証言をいたしたということを私は聞いている。そうすると何もこれに対してかれこれ何することはない、こういうことを聞いたのでありますが、これについてどういうことをお聞きになつたかどうかということを証人にお聞きしたい。(「議事進行だよ」と呼び、その他発言する者あり)事件の真相がわかればいいのだ、だから私はこれを知事に聞きたい。こういうことをお聞きになつたかどうかということを聞きたい。
  679. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 それは議事進行とはならない、いろいろわからぬ点は委員として順々に聞くのは当然である。あなたは地元におられて詳しいけれども、あなたの一方的な話をもつて……。
  680. 大森玉木

    ○大森委員 この問題はこれによつてはつきりするじやないか、そうすれば議事進行じやないですか。いつまでもくだらぬことをああでもない、こうでもないということを聞き返しても……。
  681. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 議事進行でいいですよ。それでは山口君。
  682. 山口武秀

    山口(武)委員 こういうような土木関係の不正事件は、私がお聞きする一つの点としては、こういうような不正の問題が起りましても、これが現地だけで責任が終つてしまつて、上部にその責任が及ばないというところに私は問題の重大な一つの点がありはしないだろうか、このように考えているわけなのだ。それでお尋ねをいたしたいわけなのですが、先ほどの証人の話によりますると、天狗橋の問題について取調べに当つた金沢地検の検事正名越亮一、こういうふうに承つたのでありますが、この点間違いないでしようか。
  683. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ちよつとお尋ねがはつきりいたしませんでしたが、もう一ぺん……。
  684. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 質問の内容がはつきりしないそうですから、もう少しはつきりやつてください。
  685. 山口武秀

    山口(武)委員 天狗橋の問題は、名越検事正が直接この問題を調べた、その調べに当つたと言われますが、間違いありませんか。
  686. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 新聞で拝見いたしたところによりますと、名越さんが自分で現場を見られたようでございます。
  687. 山口武秀

    山口(武)委員 新聞で見るところによると、名越さん現場を見られた、それだけしか御承知ないのですか。検事正自身がこの問題の指揮に当るということについては、あなたはほかの方面からお聞きになつているか、あるいはほかの方面から知る機会はなかつたのですか。
  688. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 検事正としては職務上当然御指揮になつたのではないかと承知いたしております。
  689. 山口武秀

    山口(武)委員 名越検事正はその後職をやめておられるようですが、名越検事正が職をやめたことをあなたは御承知ですか。
  690. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 一週間ほど前のことでございましたが、おやめになつたことを承知いたしております。
  691. 山口武秀

    山口(武)委員 なぜやめられたかということにつきまして、何か御承知ないでしようか。
  692. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 何か伺つておるところによると、千葉で公証人をやりますために後進に道を譲られたというように承知いたしております。
  693. 山口武秀

    山口(武)委員 後進に道を譲ると申しますか……。
  694. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 ちよつと注意いたしますが、なるべく事件に関連したことでやつてください。
  695. 山口武秀

    山口(武)委員 これは大体官吏がやめる場合の常套的な文句になつておりまして、理由というものはさらにいろいろあるようですが、単に後進に道を譲つたといたしますと、停年でも来てそうなつたのでございますか。
  696. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 それはあなたは知らぬでしような。
  697. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私は存じません。
  698. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 知らないそうです。
  699. 山口武秀

    山口(武)委員 ちよつと事実関係についてお伺いしたいと思いまするが、初めに天狗橋補修工事が百五十万円でなされていた。それからその後十月二日付の県土木部長名で宮竹組に対して執行中止命令が出た。これより先九月の三日に北陸を襲つたジエーン台風によつて、この橋も相当の被害をこうむつたこととして大規模な改修工事を行わんとする意図があつた。そこで県は災害復旧第三次要求分として、復旧費一千万円を計上して国庫補助金申請をなした、このことはいかがでございますか。
  700. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 一千万円という金額は、これは復旧金額としてわれわれの意見を付して査定要求したことは事実でございます。
  701. 山口武秀

    山口(武)委員 その申請をして建設省からこの実地査定のために齋藤監察官外四名を派遣する旨が県に通知された、こういう通知があつてから天狗橋の落橋といいますか、破損といいますか、このことが起つた、そういうことになりますね。
  702. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 申請がありますれば、従来の慣例として通知のあるなしにかかわらず必ず査定官は派遣される実情になつておるように承知いたしております。
  703. 山口武秀

    山口(武)委員 私の聞いておりますのは、そういうことになつてからこの損傷の問題が起つたか、これを聞いているのです。
  704. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ちよつとその日時の関係は今承知いたしておりません。
  705. 山口武秀

    山口(武)委員 日時の関係がわからないと申しますが、損傷事件が起つてから調査に来るわけはないでしよう、いかがですか。
  706. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 損傷事件が起つてから現場を視察されたように承知いたしております。
  707. 山口武秀

    山口(武)委員 私が先ほど尋ねまして、あなたが答えられましたのはそのことではなかつたはずです。あなた自身言葉には矛盾があるはずです。私が申しましたのは、一千万円の国庫補助申請に対して齋藤監察官外四名が来るという問題を聞いたわけです。そうしたらその通りですと答えたでしよう。ところが損傷事件があつてからということにあなたは今すりかえたようですが、そうじやなかつたのですか、いかがですか。
  708. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ちよつとわかりません。私の答弁が悪いか存じませんが、われわれの方では全体約四百箇所ばかりの箇所について査定要求をし、その箇所について査定官の派遣の通知があつたことと承知いたしておるのであります。査定官は落下のあつた後に到着して天狗橋については現場を見た、こういうふうになつておるのであります。
  709. 山口武秀

    山口(武)委員 単に事実の上で結果的にそうなつたわけでありまして、それで私は明らかになりましたが、ともかくあなたは一千万円の国庫補助申請をなしたところ、建設省から係官がやつて来たということはお認めになつたようですが、そういうことになりますと、あなたは先ほど増し工事をやれば、これは大体の慣例から見て原請負者がやることになつておると申しておりますが、こういうように役所が、この場合役所というのは県ですが、県側の方で一千万円の申請をしておつたとすれば、請負者の増し工事のためにやつたというよりも、当然一千万円の申請問題にからんでこの損傷問題が起つたというように考えられるのが至当ではないのですか。
  710. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 先ほどの委員のお尋ねは、もし役所が関係がないこととして、土建業者だけであつた場合にどういうふうにこれが考えられるかということで、これは証言と申しますより、私の意見に属するものを申し上げたように承知いたしておるのでございまして、検事局側は一千万円をとるためにやつたんじやないかというふうに疑つて、今起訴をいたして取調べをしておるというような次第でございます。
  711. 山口武秀

    山口(武)委員 そうしますと、先ほど請負業者がやつたというような場合の想定というのは、単にあなたが仮定して事実から離れた問題についての意見を申した、こういうことですか。
  712. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 実は土木業者が単独でやつたか、あるいは役所が指揮してやつたかということが、ただいま争点の一つとして、最も重要なポイントとして公判が行われておるような次第でございます。
  713. 山口武秀

    山口(武)委員 土木部長は、現場の金沢土木主張所長あるいは県の道路課長、こういう人たちがやつたとは全然思つておりません、こういうことをきわめて確信を持つて断言されていたようですが、やはりあなたもそのようにお考えですか。
  714. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私の元使つておりました道路課長竹島君は、自分は誓つてそういう使嗾をしたことはないということを私にたびたび申しておるような次第でありますが、この点が、ただいま申しましたように、公判においてその考え方が真実でありやいなやを調査されておるわけでございます。
  715. 山口武秀

    山口(武)委員 土木部長があなたにそういうことはないとしばしば言つておるというのですか。
  716. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ……。
  717. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 なるべく簡潔に要点に触れてください。
  718. 山口武秀

    山口(武)委員 簡潔でないというので一番あとにまわされたのです。田中土木部長の話によりますと、田中土木部長は、前に汚職事件がありまして、この粛正というような任務も兼ねてやつて来た。それで着任してから三月というものは内部の機構いじりばかりやつてつた——機構いじりといつても何ですが、職員気持の安定や統一をはかることを考えた。それから職務分掌規程の改廃というようなことを考えた。そういうような内部のことばかりやつておりまして、工事の現場のことにはタツチしなかつた。そういうことを理由として、大体証言に対しての答弁がなかつたわけですが、土木部長にそういうような仕事をさせたというのは、知事が了解の上で、あるいは知事の意見というものが入つてやらせていたのですか。
  719. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 前に土木事件がございまして、これを力を合せてひとつ粛正して、県民のお気持に沿うようにするという点においては、私も土木部長も同じかと存じますが、県の土木工事は、例を申しますと、本年にいたしましても、公共事業だけで七億近い事業があるわけでございますので、一々の工事現場を土木部長が直接指揮するということは、とうてい許さぬことと考えますので、ある程度土木を見るという点その他は、土木部長の技術的な判断によつてやるように、まかせているわけでございます。
  720. 山口武秀

    山口(武)委員 先ほど田中部長言つているのはそういうことじやないのです。ある程度まで判断でやつたとかやらないとかいうことでなくて、内部の問題だけで三月以上を費やしてしまつた工事の問題あるいは現場の問題は三月ばかりできなかつた。それは内部の統一の問題とかあるいは職務分掌規程の改廃という問題、こういうことをやつていて三月間を使つてしまつた。こう言うのですが、このような仕事のしぶりというものは、あなたが指示してやらせたのですか。
  721. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私は土木事業につきましては、土木部長にある程度まかせておりますので、土木部長が必要に応じて——それぞれのその立場にある人が仕事をやるわけでありますが、それを監督し、しかも粛正の仕事をすることは当然かと考えておりますので、それらの緩急は土木部長の判断にまかせるほかないということを申し上げたような次第でございます。
  722. 山口武秀

    山口(武)委員 仕事の緩急というようなことではありません。内部の問題だけに三月間首をつつ込んで、ほかのことは何もわからなかつた、こう言つているのです。仕事の進め方から見ますと、きわめて異常な形で問題が来ていやしないか。普通の常識ではないことが行われているのです。実際はわかりませんが、少くとも先ほどの土木部長証言はそうなんです。それだから、あなたがやらせたのかと聞いているのです。
  723. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 何と土木部長が申しましようとも、土木全体については土木部長責任者であるのであります。あるいは本人の気持としては、そういつたような内部のことに忙殺されるというような気持であつたかも存じませんが、何と申しましても、全体について監督あるいはそういつたようなことについて協力してもらうべきものだというように私は承知しております。
  724. 山口武秀

    山口(武)委員 尋ねていることに対して決して答えないから、何遍聞き直してもよろしいのですが、それならば、あなたは土木部長がどういうような仕事を着任以来三箇月余というものやつていたかということについては、あまり知らないと言われるのですか。
  725. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私は、内部のことだけで、外部のことは全然見ぬでいいとか、そういつた指揮は一切しませんので、要するに土木部長に、私の申しましたような土木部のりつぱに行くということに全般的に責任を持つてやることをお願いをいたした、こういう御答弁を申し上げでいる次第であります。
  726. 山口武秀

    山口(武)委員 そうしますと、あなたの考えているように土木部長は動いていなかつた、私はそう判断するほか方法がないわけなんです。それでこのような問題を起しましたが、これは当然この問題に直接に関係した直接の下手人だけの責任ではありません。また隠されているかともちよつと思われます。教唆犯人だけの責任でもないだろう。こういうふうな問題が起るような風紀においた県の内部、あるいは土木部関係の公務員の中の風紀、こういう問題に一番の問題がある。あなたとしては一番ここの問題を考えなければならないわけですが、現在土木部長は、私自身がこの問題について責任をとりあるいは辞職するというようなことは全然考えてもいない、このようなことをいわれておりまして、これは普通ならだれでも、たとい自分責任をとるに値しないような問題を起しても、立場上一応責任をとらなくちやならないのじやないかというような一応の考えぐらいはするのが普通でありましようが、あなたのところの土木部長は一ぺんも考えていない、こう言つておられるのですが、このような土木部長の態度というもの、それからなお土木部長のそのほかの問題をあなたが見ていまして、少々土木部長として、あるいは人間として、欠けるところがありはしないか。今後土木部長としておいて、また問題を引き起さないという保証をあなたが逆に与えられるかどうか。
  727. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私の見るところでは土木部長はきわめて小心翼々の人であるように思つているのであります。従いましてできる限りりつぱな土木をつくることに努力をいたされているということであると私は信じているのでありますが、御批判のような点につきましては、何と申しましたか直接伺つておりませんので、ちよつとお答えがいたしにくい点があるように存ずるのでございます。
  728. 加藤充

    ○加藤(充)委員 こまかい質問をいたして恐縮ですが、この橋のかかつていた道路はこれは国道でしようか、県道でしようか、あるいはその他の道なんでしようか。
  729. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 これは県道でございます。
  730. 加藤充

    ○加藤(充)委員 県道で、ああいうような川があつて、この橋は非常に重要な意味合いを持つた橋ですが、その橋の交通禁止、交通制限というようなものをやるまでには、仮橋をつくるとかそれにかわる渡船の方法を考えてからしか交通制限ないしは交通禁止というような処置はやられてはならないように思うのですが、そういうふうな処置をやらずに、一警察の所轄の者が交通制限をやつたというのでしようか。
  731. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その交通禁止が長期にわたるような場合はもちろん渡船もいたさなければならない、またあるいは仮橋ということもいたさなければなりませんが、仮橋になりますと、そう簡単にこれもできるものではありませんので、むしろ従来のやり方といたしましては、一時交通を禁止してもそれに何とか手当して通して行くというようなやり方を、まあ膏薬張りでございますが、いたしておつたようなわけでございます。
  732. 加藤充

    ○加藤(充)委員 ジエーン台風の直後にこの橋に交通制限する、あるいは禁止するというような警察の処置ないし県の処置があつたのですか。
  733. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 県の方ではその前後に、日時はわかりませんが、一種の重量制限などはいたしておつたように記憶いたしております。なお警察は警察の考え方で、ジエーン台風の後においてそういつたような禁止のことをやつたというように私は報告されております。
  734. 加藤充

    ○加藤(充)委員 事件の起る十日ないし二週間前に警察がわざわざ制限をやつたので県側には落度がない、だから不幸にしてけがをしたあるいは死んだ人も、わざわざ走り込んで、まあ火中に飛び込んだ虫のような形で、死なないでもいいのをわざわざ死んだ、けがしたのだというようなことまでおつしやる方があつたのです。あなたもそういう趣旨のことをおつしやいましたが、そうするとそこを通つて悪いというようなことまでの強い制限じやなかつたのですね。
  735. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その報告によりますと、交通制限をしておる、交通禁止をしておる。しかもその老人に対しては何回かそでをひつぱつてとめたという事実も、検事局の調査で明らかになつておるように聞いておるのでございます。
  736. 加藤充

    ○加藤(充)委員 こちらの委員会で調べました材料によりますと、十月のずつと前から指名入札をやつたりして、工事を請負わしておつたけれども、いろいろなことで仕事が始まらないでおつて、そのうちに計画の模様、方針がかわつて、前の請負工事は、十月の二日に工事中止命令を、請負わせた宮竹組に県の方から出しておるというのですが、さすれば私は、あなたが言つた事件が起きた十日前あるいは二週間前、日時はさだかでないとおつしやつたそのころに、わざわざこの交通制限をやり出したというところに、かえつて臭いものを感ぜざるを得ないのですが、十月二日に工事さしとめをやつたそのころに、警察がわざわざ、仮橋も、渡船の方法も、何も別に考えず、そういう交通制限をかつてにやつたのですか。
  737. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 その十月二日の前後については私も正確でございませんが、大体ただいま申しましたように、事件の起つた二週間でしたか十日くらい前に、警察が——あるいは地方民の訴えがあつたかと存じますが、あぶないというので、巡査部長が指揮して、交通を禁止したということを陳述いたしておるように私は聞いておるのでございます。
  738. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それはちよつと理解に困ることなのですが、とめてもわざわざ入つて行く人があるほど、その交通制限というものは地元関係民、その付近の人たちに不便を与えていたと思われるのです。もしそういう事実があつたということを前提に判断いたしますと、わざわざ地元民の方から交通制限をしてくれというようなことで、警察に発動を促したというようなことは、ちよつとロジツクがおちつきかねるように思うのですが、これは議論になりますから申し上げません。私どもはこういうふうな不正土木工事の大きいもの、小さいものをいろいろ見たり聞いたりしております中には、飲み食い関係で弱い地元の警察というものは、頭からなでられたり、あるいは股の下に入れられたりするような事実がずいぶん多いのであります。検事の話では、その十月の二十日か二十二、三日ごろに、上の方から齋藤監察官外四名が出張するということが県にはわかつたのであります。そして——警察はまだそういうことには関係ないでしようが——いろいろな悪だくみが行われて来た。現実に工事はやつておらない。地元民はジエーン台風の後にも、そでをひつぱつてとめられても、さつき言つたように通らなければならないというようなときに、ちようど十月の終りごろか、その十日前か、日にちははつきりしませんが、わざわざ警察が出て来て、もしものことがあるといけないから交通をさしとめるというようなこと、人のそでまで押えてさしとめるということになると、これは警察がとめたから、そういう措置をとつていたから、工事側には責任がないのだというのじやなくして、むしろそのことは弁解にならずに、問うに落ちず語るに落ちたたぐいで、結局地元の警察までが一体になつて、そういうふうな不慮の災害が起るような悪だくみがされているから、せめて人畜に被害がないようなことに、情を知つてか知らずか、事実的には加工を加えたと思われる節があるような感を私は強くするのであります。だからあなたの判断と私の判断は、まるきり別になるので、これはやめますが、あなたは石川県は非常に正直だというおほめの言葉をいただいておつたということです。そしてまたこの天狗橋の落橋の事件については、決裁に判を押したけれども、一括した押し方であつて責任のとれるような判の押し方でないし、事実をよく存知しておらぬというのです。そういうことはあり得ると思うのですが、あなたが現にごらんになつたことについて不正が行われている。しかも土木関係について石川県に行われていることを私は確かめておりますので、この点をお尋ねしたいと思います。石川県の能登半島の若山村では、新制中学が建築中で、その工事はまだ緒についたほどで、まるきり建つても何もしておらなかつたところヘジエーン台風があつたので、これを奇貨として、すつかり建つたか、あるいは相当進行したものが、そのために被害をこうむつたということで、起債か何かの補助の申請をやつて、これが結局露見をいたしまして、若山村の村長さんは、事情、動機はいろいろ気の毒な点もありますし、われわれもわかるので、そういうことを一一つき上げて行くのはどうかと思われるのですが、とにかく検事局の問題になつてしまつて、今起訴されていることはあなた御存じですか。
  739. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 ただいまのお尋ねなり御意見の中に、警察が禁止したということですが、とめたのは警察でございませんので、全然警察と連絡のない人間がそでをひつぱつてとめたのでございますから、この点は私の答弁が悪うございましたら御訂正願います。  次に若山村の問題についてお話があつたのでございますが、これは公共事業に関係なくて、単に若山村の村の単独起債の問題でございますが、これは全部不起訴になつているように承知いたしております。
  740. 加藤充

    ○加藤(充)委員 これについては、あなた自身がその地元の災害視察に行かれ、学校の被害程度を御視察あそばされたのではありませんか。
  741. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 私はその学校の被害調査のため、その地方へ出張いたしたのではなくて、他の用事で通過した場合に、たまたま学校に面した県道の付近を通つた、こういう事実があるだけであります。
  742. 加藤充

    ○加藤(充)委員 これは地方土木工事じやなくて、今調べられている本筋の公共事業に関係のないことだとおつしやつた。それはその通りですが、私はやはりこれに重要な関連があると思つたからお尋ねしてみたので、地方の起債は制度上はもちろん単独の市町村の起債でしようが、ところが実際上は県の土木部その他と関連がなしに行われ得るのでしようか。
  743. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 これは土木部その他に全然関係がない事案でございます。
  744. 加藤充

    ○加藤(充)委員 六・三制なり新制中学の建築というようなものは、土木部所管じやないかもしれぬけれども、建築工事なんですが、そういうものには県は全然関係ないのですか。
  745. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 六・三制の公共事業に関しては、これは教育委員会所管に属しております。
  746. 加藤充

    ○加藤(充)委員 そういう制度的なものではなく、事実上、実体的には、これは教育委員会だから知らぬというのじやなしに、県と全然無関係には行われることがないのではないか。だから結論まで言いますと、あなたがたまさか視察に行つて学校のわきを通つたので、そのことを聞き及んだ程度のことであつて、職務上の視察でもなければ、別にそのことについて自分がどうしたというようなことに責任を負わされるのは迷惑な話だという御答弁の趣旨と、私は思うのです。それで県と地方起債の関係をお尋ねする。事実上の問題です。
  747. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 公共事業の起債その他は全部教育委員会でやりまして、制度上においてもわれわれの方には何ら関係はありませんが、知事をしている以上、いろいろな陳情も受けますれば、いろいろな援助も頼みに来られるわけです。この問題に関しては、その当日若山村へ行きましたときに、多数の人の前で話が出たのですが、私ははつきりと、そのことは私の御援助の範囲を越えているからとお断りをいたしておるような次第であります。
  748. 加藤充

    ○加藤(充)委員 簡単にやります。名越検事正がおやめになつたのですが、この人は石川県では、竹田儀一さんを現職厚生大臣のときに検挙した当面の責任者であつたことを、証人は御存じでしようか。
  749. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 そういうことは承知いたしておりません。
  750. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私の方でもこれはずいぶんいろいろ調べたのです。これは私どもが検事局でちよつとしたことを聞いたり調べたりして結論を出しているだけではなくして、先ほどの検事のお話によつても、理論上あるいは事実上、土木部長が共犯関係にあるのでないかという強い疑いを持つて追究をした。疑いを強く持つているけれども、まだ実証の問題に余地があるので、それは起訴の中から切つたと言われるのでありまするが、そのことに関連いたしまして、私どもはこれを当委員会調査の中にもあつて、これに対する具体的考察というようなときに……。     〔発言する者あり〕
  751. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 もうしばらくですからどうか妨害しないことにして……。
  752. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたは今言われるように、府県の制度上、知事まで刑事責任を負わせるというのはむりでしよう。だけれども盲判というものも限度があると思います。しかし上級一般盲判だというのではなくて、いわゆる盲判というのはあなたの程度のことをいうのであつて、府県の土木部長が判を押した以上は、それが盲判になるというのであれば、判というものを盲にするものであると私どもは思うのです。制度の上で、上級がいろいろ判を押します。あなたもいろいろ決済には書類によつては最後に判を押すと思うのですが、この天狗橋事件について、土木部長も判を押していることは明らかである。これは検事の証言の中にも出ておる。そうすると、そこまで盲判ということになりますると、これは判を押して監督し、指導する、そうして同時に責任を持つということが、まつたくめちやめちやに破壊れてしまうことに相なるのでありますから、これは少くとも土木部長あたりは盲判でない、責任のある判を押したものだということは、制度上の解釈からも、同時にあなたが最高の責任者として、下級の公務員を監督する立場に立つても、私は土木部長責任というものは、その盲判論議からだけでも一応疑い、あるいは追究されるのが、正直な、そうして妥当な、またなさねばならない監督の態度であると思うのであります。しかるに何ぞや、土木部長をあなたが一体になつてかばつておるという発言全体の空気を、私は見逃すわけには行かないのでありますが、この点についていかがでしようか。
  753. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 御質問ではございませんが、土木部長が被疑者としてこの事件について取調べを受けたように、私は聞いておりません。参考人として取調べを受けておるように承知いたしておるのでございます。  なおこの判の問題につきましては、私自身にいたしましても、土木部長にしても、同じことではないかと思うのですが、判を押した以上、かりに盲判でありましようが、何であろうが、私としては責任を感じておるわけでございますので、その点は同様だろうと思つております。
  754. 加藤充

    ○加藤(充)委員 最後にもう一点、今あなたは、土木部長は参考人として呼ばれたので、被疑者あるいは強い疑いをかけられて呼ばれたものではないというふうにおつしやつたのですが、その点は検事と少し違うようですが、そういうようなことの中に、私は最後に一つつておかなければならない問題があるのです。というのは、先ほど言いましたように、名越検事正は竹田儀一さんを現職大臣の当時に検挙した人である。あなたは奥さんなどを通じて、特に前に建設方面に最高の責任を持つた大臣、しかもまた有力なる大臣などとの親交を通じて、上級への波及を食いとめるために、そうして土木部長あたりから下に——かわいそうな道路課長に責任を分担させるように、それ以上に検察の追究が波及しないようにするために、非常な努力をやられた。そうして陰に陽にのその圧力の関係で、名越検事正は遂に辞職のやむなきに至つたという地方のうわさ、それからまた同職などの間の話を、茶飲み話にすぎないでしようが、聞くわけであります。そういうことについてあなたは思い当る節がありませんか。
  755. 柴野和喜夫

    ○柴野証人 竹田儀一さん云々というお話は、何かお尋ねの委員の御記憶違いあるいは御調査違いじやないかと思つております。なお、われわれの町でうわさしているのは、名越さんにいたしましても、今度公証人という有利な地位があつたので、お引きになつたという以上のうわさを、私は一向に聞かないのであります。
  756. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私はこれで終ります。
  757. 内藤隆

    内藤(隆)委員長代理 他に御質問がなければ、柴野証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長い間御苦労さまでありました。  明二十三日は午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十八分散会