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1951-11-09 第12回国会 衆議院 厚生委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月九日(金曜日)     午後一時四十五分開議  出席委員    委員長 松永 佛骨君    理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君    理事 亘  四郎君 理事 金子與重郎君    理事 岡  良一君       大石 武一君    高橋  等君       田中  元君    寺島隆太郎君       武藤 嘉一君    苅田アサノ君       福田 昌子君    松谷天光光君  出席政府委員         厚生政務次官  平澤 長吉君  委員外出席者         総理府事務官  小島 徳雄君         厚生事務官         (児童局長)  高田 正己君         厚生事務官         (保険局長)  安田  巖君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         参  考  人         (社会保障制度         審議会会長)  前田 多門君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ――――――――――――― 十一月七日  委員岡良一辞任につき、その補欠として水谷  長三郎君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員金子與重郎君及び水谷長三郎辞任につき、  その補欠として千葉三郎君及び岡良一君が議長  の指名委員に選任された。 同月九日  委員千葉三郎辞任につき、その補欠として金  子與重郎君が議長指名委員に選任された。 同日  金子與重郎君及び岡良一君が理事補欠当選し  た。     ――――――――――――― 十月三十日  地方自治法第百五十六条第四項の規定に基き、  検疫所支所及び出張所設置に関し承認を求  めるの件(内閣提出承認第一号) 十一月二日  児童福祉司の増員に関する請願大石ヨシエ君  紹介)(第六三一号)  公衆浴場法存続に関する請願塩田賀四郎君紹  介)(第六三二号)  国民健康保険に対する給付費国庫負担等に関す  る請願多田勇紹介)(第六三三号)  同外一件(竹尾弌君紹介)(第六三四号)  同(岩本信行紹介)(第六三五号)  アフターケア施設確立に関する請願(中曽根  康弘君紹介)(第六八六号) 同月七日  保険診療報酬の一点単価引上げに関する請願(  高塩三郎君外五名紹介)(第七〇六号)  生活保護法適用範囲拡大に関する請願福田  昌子紹介)(第七〇七号)  児童保護費地方財政平衡交付金から国庫補助  制度に切替えの請願宮幡靖紹介)(第七三  一号)  理容師及び美容師免許制度廃止反対に関する  請願田口長治郎紹介)(第七四〇号)  社会福祉主事設置費全額国庫負担請願(久野  忠治君紹介)(第七九三号) の審査を本委員会に付託された。 同月一日  児童保護関係費国庫補助に関する陳情書外百  七十件  (第三九八号)  同  (第三九九号)  同外二件  (第四〇〇号)  遺族援護に関する陳情書  (第四〇一号)  国民健康保険事業国庫補助に関する陳情書外  一件  (第四五六号) 同月六日  遺族及び留守家族援護に関する陳情書  (第四六六号)  札幌市にアフターケア施設確立に関する陳情  書(第四六八号)  結核予防法等改正に関する陳情書  (第四六九号)  らい研究所の設立並びに作業慰労金増額等に  関する陳情書  (第四七九  号)  食品衛生法等廃止反対に関する陳情書  (第五一四  号)  医療機関低利融資に関する陳情書  (第五二〇号)  結核予算削減反対に関する陳情書  (第  五三二号) 同月八日  食品衛生行政機構縮小反対に関する陳情書外二  件  (第五五八  号)  瀬戸内海国立公園施設整備費増額陳情書  (第五五九号)  瀬戸内海国立公園の第二次追加指定促進に関す  る陳情書(第五六〇  号)  瀬戸内海国立公園施設整備五箇年計画に関する  陳情書(第五六一号)  国立公園施設整備費国庫補助に関する陳情書  (第五六二号)  国立公園施設整備に対する国庫補助陳情書  (第五六三号)  同(第五  六四号)  阿蘇国立公園整備促進に関する陳情書  (第五六五号)  磐梯朝日国立公園施設整備に対する国庫補助  の陳情書(第五六六  号)  国民健康保険事業に対する国庫補助増額に関す  る陳情書  (第五六七号)  社会保険診療報酬単価改正に関する陳情書外一  件(  第五六八号)  児童保護関係費国庫補助に関する陳情書  (第  五六九号)  児童福祉司制度の存置に関する陳情書  (第五七  〇号)  遺族未亡人救済に関する陳情書  (第五七一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員補欠選任  小委員追加選任  地方自治法第百五十六条第四項の規定に基き、  検疫所支所及び出張所設置に関し承認を求  めるの件(内閣提出承認第一号)  社会保障制度に関する件  国民健康保険に関する件  児童福祉に関する件     ―――――――――――――
  2. 松永佛骨

    松永委員長 これより会議を開きます。
  3. 平澤長吉

    平澤政府委員 ただいま議題となりました検疫所支所及び出張所の殺害に関し承認を求めるの件について提案理由説明いたします。  今回連合国最高司令官司令部からの覚書により、入国指定港として新たに室蘭港、釜石港、舞鶴港、下津港及び徳山下松港が追加されましたが、これらの港における検疫業務を実施するため、厚生省設置法第二十条第三項の規定により、その他に検疫所支所または出張所を設け、外航船舶運航経済利便を与えるとともに、海外貿易促進して業務の万全を期したいと存じます。よつてここに地方自治法第百五十六条第四項の規定により、国会の承認を求めるため本案を提出した次第であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに承認されますようお願いいたします。
  4. 松永佛骨

    松永委員長 次に本件質疑に入ります。御質疑はありませんか。
  5. 高橋等

    高橋(等)委員 ただいまの検疫所増加に伴います定員増加関係を御説明願いたいと思います。
  6. 山口正義

    山口説明員 今回の増加に伴います予算的の措置といたしましては、ただいま補正予算に計上いたしまして総額五千二百万円。これは各検疫所船舶を購入いたします。それから簡単な施設並びにそこに要します人員に要する経費、そういうものを要求いたしておりまして、最小限度の職員の増加をお願いしてあるのでございます。これはまだ補正予算が決定されませんので、はつきりした数字は申し上げかねます。
  7. 高橋等

    高橋(等)委員 いや予算に出ているのを説明していただきたい。
  8. 山口正義

    山口説明員 予算にお願いいたしておりますのは、五箇所で六十一名お願いしてございます。
  9. 高橋等

    高橋(等)委員 最小限度定員であるように伺いますが、定員をふやす一方、片方で整理するというようなことを繰返しておつたのでは、きりがないのであります。この前の検疫所設置法案のときに、私から十分にその点を御留意願いたいということをお願いいたしたはずでございます。今後の運営にあたりましても、その点を十分御留意願いたいということを希望いたします。  それからなお、まだこのほかに、今後検疫所関係追加をせられると予定されるような箇所がありますか。あればどういうところが、大体の見当を伺いたいと思います。
  10. 山口正義

    山口説明員 現在検疫を実施いたします港は、ただいま提案理由説明にもございましたように、現在の段階におきましては、連合国司令部からの覚書によつて、その指示によつてきめているのでございますが、先般御可決いただきました検疫法によりますれば、政令によつてこれを定めるということになつております。将来は関税の率、あるいは出入する船の数というものによつて、それをきめて行かなければならないと存じておりますが、ただいま検疫所設置してほしいといつて陳情が来ておりますのは、津久見、新潟、三角、伏木、飾磨、そういうふうな港の陳情が参つております。
  11. 高橋等

    高橋(等)委員 もう一点だけ伺います。これはあるいは私の記憶違いかもしれませんが、検疫所をこうやつて置かれるのは、総司令部から覚書があつたときに限つておやりになるのでありますか、それとも日本政府の方で、独自の見解からこれを置くのか。ここに総司令部からの覚書により云々と、こういうことを特に書かれておりますので、一応その点を伺つておきたいと思います。
  12. 山口正義

    山口説明員 現在のところは、基本的に、海外からの船の出入港は、連合国最高司令官が指定するという規定がありますので、GHQの指令に基いて置のであります。
  13. 苅田アサノ

    苅田委員 検疫所設置のことについては、もちろん異議はないのでございますけれども、この際関連して伺いたいと思います。特にこの五港に限つて今度開港になり、検疫所が設けられるという手続を求められておるのは、どういう理由によるかということと、それからこの方面は主としてどういう国を相手国として貿易をしており、それはどういうものがあるのか、その内容につきましてお答え願いたい。資料関係をちよつと拝見いたしましたけれども、これに載つていないようですが、もし今おわかりでなければ、ただいまの点につきまして、後ほど資料を出していただきたい、かように考えます。
  14. 山口正義

    山口説明員 今回検疫所支所並びに出張所設置したいと存じますこの五つの港は、船の出入の数が最近非常にふえて参りまして、これを一々ほかの検疫所へまわして、そこで検疫を受けてからまたその港に入港させるというのでは、船の運航経済上非常に支障があるというので、新しくこういうところに検疫所設置したいというふうなことで、これは運輸当局あるいは私の方の厚生当局が、いろいろ相談いたしまして、さらに司令部の方からそういうふうな指示がございまして、これを設置するというふうにお願いしておるわけでございます。どういう物資を主としてこういうところに積んで来るかというお尋ねでございますが、室蘭釜石は主として鉄関係資材でございます。
  15. 苅田アサノ

    苅田委員 相手国はどこですか。
  16. 山口正義

    山口説明員 相手国は、ただいま私どもの方にわかつておりますのは、米国とフイリピンでございます。それから下津徳山は主として石油でございまして、主としてアラビア方面からでございます。それから舞鶴は、先ほど申しました鉄とか石油とかいうふうな、特別に取立てて申すような資材はございません。
  17. 苅田アサノ

    苅田委員 どういうことでこれが検疫しなければならないのですか。
  18. 山口正義

    山口説明員 現在裏日本検疫所が全然ございませんので、裏日本に一箇所どうしても検疫所設置しなければならぬというふうな理由からでございます。
  19. 松永佛骨

    松永委員長 他に本件についての御質疑はありませんか。  他に御質疑もないようですから、お諮りいたしますが、本件質疑を終了するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 松永佛骨

    松永委員長 御異議がなければ、本件の、質疑は終了したものと認めます。  次に本件討論に入るわけでございますが、本件討論につきましては、別に通告もございませんので、これを省略いたしたいと存じますが、本件討論を省略するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 松永佛骨

    松永委員長 御異議なしと認め、本件討論は省略し、これより地方自治法第百五十六条第四項の規定に基き、検疫所支所及び出張所設置に関し承認を求めるの件を表決に付します。  本件承認すべきものと議決するに賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  22. 松永佛骨

    松永委員長 起立総員。よつて本件承認すべきものと議決いたしました。  なお本件に関する報告書につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、そのように決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 松永佛骨

    松永委員長 御異議なしと認め、さよう決します。     ―――――――――――――
  24. 松永佛骨

    松永委員長 次に理事及び小委員補欠選任の件についてお諮りいたします。委員金子與重郎君及び岡良一君が本月八日と七日にそれぞれ委員辞任いたされましたので、それに伴い理事及び小委員欠員を生じておりますが、両君は再び厚生委員にもどられておりますので、理事並びに欠員を生じました小委員会に、それぞれ辞任される以前の通り、再び選任いたしたいと存じますが、そのように決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 松永佛骨

    松永委員長 御異議なしと認め、このように決します。
  26. 松永佛骨

    松永委員長 次に人口問題に関する小委員選任の件についてお諮りいたします。該小委員会は現在小委員十名よりなつておりますが、これを十一名に改め、高橋等君を同小委員に選任するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 松永佛骨

    松永委員長 御異議なければそのように決定いたします。
  28. 松永佛骨

    松永委員長 次に社会保障制度審議会第二次勧告に関し、前田審議会会長参考人として御出席願つており、事務局からも局長小島説明員が見えておりますので、本件について前田審議会会長より御説明をお願いいたしたいと存じます。
  29. 前田多門

    前田参考人 本日は、本委員会におかれまして、先般社会保障制度審議会が発しました勧告につきまして、御説明を申し上げます機会をお与えくださいましたことを、まず何より深く御礼を申し上げる次第でございます。  すでに御承知のことと存じますが、昨年の十月に、社会保障制度審議会は、政府に対しまして、社会保障制度全般につきまして勧告を発したのでございます。爾後一年を経過いたしておりますけれども、不幸にいたしまして、その勧告実現を見ておりません。ごくささいな点については、つまり結核対策でありますとか、あるいは健康保険事務費国庫負担等につきましては、部分的に実現を見ておるようでございますけれども、全体といたしましては、実現を見ておりませんことを、はなはだ遺憾に存じておる次第でございます。すでに一年をけみしらことでもございまするし、また予算編成期が目睫に迫つておるときでもございますので、ただ先回の勧告がいわゆる聞きつぱなしにせられただけで、そのまま時日を経過いたしますことは審議会といたしましても忍びないことでございますので、昨年の勧告の線に沿いまして、その中で最も緊急を要すると認めるもの、でき得べくんば二十七年度の予算編成の中にこれを組み入れていただいて、その実現をお願いしたいと思うもの、そういうような点若干を指摘したいと思いまするとともに、昨年の勧告にはまだ載つておりませんけれども、その後一年の経過、社会情勢の進展によりまして、こういうことについて注意を喚起したい、またこういうことについてはすみやかに実行に着手していただきたい、こういうものを指摘いたしまして、先般第二回の勧告を発した次第でございます。  この勧告の文書につきましては、お手元に差上げてあることと存じますので、詳しいことを申し上げる必要もないかと存じますが、簡単に御説明を申し上げたいと存じます。  今回発しました勧告は、九項にわたつておるのでございますが、第一項の社会保障行政一元化ということにつきましては、これは昨年の勧告の中にも、ぜひ社会保障の問題は、一つの役所にできるだけまとめてやつていただきたい。従つてかりに社会保障省と名づけるような一元化したところの行政機関をつくつてもらいたいということを申しておるのでございます。名前は何もそれにとらわれる必要はございませんけれども機関一元化してもらいたい。このことを強く申しておるのでございます。かりにただちに全面的な一元化が困難といたしましても、少くともこれに向つて一歩を進めまするために、行政機構をできるだけ整備していただいて、そして窓口一つにして、人民のもつと利便になるように、事実上において政府施策一元化し得るような方法を考えられる必要があるということを、第一点にうたつております。  それから第二点の医療保険推進でございます。これはことに重点健康保険の上に置いておるのでございまして、健康保険において、事務費全額負担はもちろんでございますが、給仕につきましては、御承知通り、いまだ国庫は何らの負担をいたしておらないのでございますが、少くとも医療給付の二割は、国庫から負担してもらうようにしてもらいたい。これは健康保険についてもそうでございまするし、また国民健康保険についてもそうでございまして、このことは昨年の勧告にもございまするけれども、特に急を要するものとして、今回の予算編成等においては、ぜひ医療費の二割国庫支弁ということを実現するようにやつてもらいたい、これを強く主張いたしておるのであります。なお昨年の勧告にはございませんでしたが、国民健康保険の場合におきまして、これはやはり年次計画によつて強制的に設立させることを主張いたしておるのでございます。この第二におきまして重点を置いておりまする点は、大体さような点でございます。それから第三は、医療制度合理化でございます。これも昨年の勧告の中に、その意味は出ておると存じますが、社会保険制度中心医療保障ということを考えてもらいたい。たとえば、結核予防法のごとき、今回できましたことはけつこうでございまするし、またこの問題について、公費負担制について相当実現を見たことは、けつこうでございますけれども、これが社会保険とまつたく別個の体系をなしておりますために、種々の不便を生じておる。今後は医療の問題というものは、やはり保険中心にしてやつてもらいたい、このことを申しております。それから、これも昨年の勧告に申しておることでございますけれども、一面におきまして、この医療費の二割国庫負担ということを強調いたしまするとともに、診療費支払い方法につきましては、大いに改善を要する点があると存じますので、これらの改善につきましては、昨年の勧告にもそれを言うておるのでございますが、さらにそのことを指摘いたしまして、そして支払い方法改善をはかる。よく世間に聞きまするような、濫療濫診というような弊を防止していただきたい、そのことを申しております。  それから薬の問題でございます。これは昨年の勧告にはないと存じますが、御承知通りに、国民生計費に薬品の費用というものが、非常な大きな割合を占めておるわけでございます。ことに最近りつぱな新薬等ができまして、そのこと自体は治療上けつこうなことでございますけれども、それらを用いるというような関係からいたしまして、生計費の上におきまして、相当薬費用というものは重きをなしております。一口に申しますと、製薬事業公共性をもつと高めてもらいたい、このことについて力説しておる次第でございます。  それから第四の保健所の問題でございます。この保健所運営につきましては、なおいろいろの適当な改善が必要であると存じますけれども、ことに運営を民主的にいたしますために、また国民生活によく適応いたすことができまするために、地区公衆衛生組合とでも申しますか、名前は何でもよろしいのでありますが、地区公衆衛生組織を設けて、そこに各方面の方を網羅して御関係をいただいて、そして公衆衛生組織保健所と相まつて活動をする。また保健所は、ただ予算を画一的にとつて全国にばらまいてつくりましても、その内容充実をいたさない。はなはだしいところにおいては、何ら専門の人がおらぬ、こういうようなことであつてはなりません。その土地に適した、社会事情に適した内容充実してもらいたい、このことを申しております。  それから第五の結核対策でございまするが、患者総数の八〇%を占めまする在宅患者に対しまする施策に、もつと注意を喚起してもらつて予防措置を講じまするとともに、種々生活指導充実せしめてもらいたい。これには、前の項に申しております地区公衆衛生組織活動と相まつて、この推進を望むということであります。また結核行政につきましても、いろいろ今のところでは取扱いがばらばらになつておりまして、同じ厚生省の中にも、三つも四つもの窓口で、扱うところがわかれておるというようなこと、その他また各省間にもばらばらに相なつておりますが、その行政につきましては、統一化をはかつていただきたい。また結核予防及び医療に従事します者の再教育につきましては、あらゆる機関を動員して、その効果を発揮してもらいたい。またこの予防接種法結核予防法によりまする予防接種の問題、この問題につきましては、全体的な見地から見て慎重な態度をとつてもらいたい。  それから第六の年金保険積立金運用の問題でございますが、この積立金は、すでに三百億円にも達しておるのでありまするし、今後ますますこれが増大する傾向にあるのでございますけれども、ただいまこの資金の運用というものは、御案内の通り大蔵省預金部がやつておるだけのことでありまして、零細な金を出しました、醵出した者の意思というものが、完全に無視されております。この点を是正いたしまして、個々の被保険者福祉のために優先的に還元利用せしめるようにとりはからつていただきたい。またこの年金保険制度につきましては、第一次勧告の趣旨に基きまして、特に政府注意を喚起するということも申しております。  それから第七の社会福祉充実でございますが、先般福祉事務所というものが法律によつてできましたことは、けつこうでございますけれども、その内容充実という点につきましては、きわめて遺憾な点が多いのでございます。この福祉事務所に大きな権限機能を授けながら、福祉事務所がその機能を発揮し得ないような内容に相なつておりますことは、これは寒心にたえないことでございますので、すみやかに内容充実をはかるとともに、この福祉事務所ができましたために、たとえば民生委員等権限は非常に縮小を見たのでございますが、その縮小を見ながら福祉事務所それ自身の拡大された権能は十分に運営されていないということに、非常な弊害がありますので、福祉事務所内容充実をはかるとともに、関係の地方自治体の民生委員等と密接な協力が得られるように御配慮を願いたい。  第八の人口対策、第九の戦争犠牲者援護――この問題につきましても、これは昨年の勧告当時に比べますと、一層その緊要化が痛感せられるような問題でございまするので、人口対策につきまして政府注意を強く喚起いたしまするとともに、この点につきましては、当審議会といたしましても、最近委員会を設けまして、委員会にこの問題の研究を願つておるような次第でございます。戦争犠牲者援護につきましても同様でございます。ただいま本審議会といたしまして委員会を設けまして、委員会で策を練つておられるのでございまするが、この問題につきまして政府注意を喚起いたしておる、こういうわけでございます。  大体さような点を列挙いたしまして、政府注意を喚起いたしておる次第でございますが、講和条約ができました今日、いろいろ国際的の関係におきまして、新たな財政負担等が目に見えて来ておりますために、ともいたしますと、一部におきましては、こういう社会保障制度促進ということにつきましては熱が簿らぎ、また新たな財政上の負担を避けるというような傾向が現われておることを、審議会といたしましても非常に憂慮いたしておるのでございます。私どもの考えといたしましては、この際こそ社会保障制度をもつと拡充すべきときである。現に今回の講和条約の前文におきまして、日本国際社会に再び復帰しました上におきましては、国際連合憲章の原則を遵守し、国民生活の安定と福祉を創造するために努力すべしという規定まで設けられておるのでございまして、新たなる国際義務といたしましても、国民生活の安定と福祉を創造することに努力するということが、日本に課せられておりまする義務であろうと考えられまするので、その文句を総理大臣にあてました前文に引用いたしておるような次第でございます。  まことに粗漏な説明で恐縮でございますが、専門の事務局長その他も参つておりますことでございますし、御質問がございましたならば、お答えのできますものはお答えをいたしたいと存じます。要するに御意見もいろいろございますでございましよう。ことに巨細な問題については、これはいろいろ意見のあることであると存じますが、大体におきまして、この趣旨に幸いに御賛同くださいまして、何とかこういう趣旨が一日も早く国政において実現いたしますように、この上とも御高配をお願いする次第でございます。
  30. 松永佛骨

    松永委員長 次に本件についての委員からの発言の通告がございますので、順次これを許します。丸山委員
  31. 丸山直友

    ○丸山委員 会長さんにちよつとお伺いしたい。先ほどお話になりましたお言葉を拝聴いたしますと、昨年の第一回の勧告政府に出されましたにもかかわらず、その実現を見なかつたことは、非常に遺憾であつたというお話がございました。なお聞きつぱなしで時日を経過しておるというようなお言葉があつた。この第二の勧告は、大体において、今度は政府でも、この程度のことならば財政的にも、あるいは立法的にもできるであろうというお見通しで、御勧告なつたものと考えられるのであります。そういたしますと、私どももこれを検討いたします上に、法律の改正等も行わねばならぬ部分もあると存じますが心得のためにお伺いしたい。  まず一番最初には、第二次の勧告が、また一年くらいその大部分において聞きつぱなしで時日を経過するようなことが、もしありました場合には、この勧告をお出しになつた責任として、どういうふうな処置をおとりになるとか、何か特別な御覚悟があつてでありましようか。あるいは聞きつぱなしになつた場合には、また来年第三次の勧告でも出すというな心構えでございましようか、そういう御覚悟のほどを承りたい。
  32. 前田多門

    前田参考人 御承知通り社会保障制度審議会と申しますものは、法律によつて設定せられておりまして、政府に対しまして、社会保障制度につきまして勧告を発しまする機関でございます。勧告を発しまするのと、それから政府が議会に社会保障関係の法律案を出しますときには、必ずまず先に審議会の意見を諮問する、こういう建前に相なつておりますので、審議会といたしましては、審議をいたしまして、その結果勧告をいたしますよりほかに、手がないのでございます。それ以上突き進みまして、実行運動をいたしますとか、実現のために大会を開きますとか、そういうようなことは、一切法律の上ではできない、手を縛られている機関なのでありまして、できません場合においては覚悟はどうだと仰せられますと、これは非常に審議会といたしましては、当惑をいたしますわけで、また第三次の勧告をいたしますか、あるいはこれは審議会委員のそれぞれの考えであろうと思いますが、そういつまでも顧みられない勧告をしよつちゆう出しておるくらいなら、これはまつたくむだに時間を費すのだから、もう一同ごめんをこうむろうじやないか、やめるというような方が出て来るのではないかと思います。会長自身といたしましても、これは将来いろいろ考えなければならぬことと考えておりますが、会といたしましては、権限の上でそういうように制約を受けておりますので、いかんともいたし方がない。
  33. 丸山直友

    ○丸山委員 大体の勧告書の取扱い方並びに処理についての御覚悟のほどを、お伺いしたのでありますが、これは事務局長の方が御答弁になるのに御都合がいいと思います。各条的に少しこまかくなるかもしれませんが、やつて行きたいと思います。第二の医療保険推進ということで、医療保障、ことに国民健康保険重点を置いて予算を編成すべきであるという意味を少し詳しく伺いたいのでありますが。現在は国民健康保険重点が置いてない、被用者保険重点が置いてあるという意味なのでございましようか。何か特別に、どういうふうなところに重点を置いたがよいかということのお考えがございましたら承りたい。
  34. 小島徳雄

    小島説明員 今の御質問でございますが、御承知通り健康保険は強制設立で、必ず設立しなければならぬ、国民健康保険は任意設立になつておりますから、現在できている立法の建前が違つております。従つて現状のままで放置いたしますと、国民健康保険は、まさに廃止、停止という問題が非常に大きくなつて来て、社会保障全体の将来の推進のためにはより危険性がある。こういう意味において、国民健康保険は崩壊の一歩手前にある、こういう意味であります。
  35. 丸山直友

    ○丸山委員 まだどうもよくのみ込めないのですが、重点をおいて予算を編成すべきである、という意味は、どういうふうな予算を編成すべきか、被用者保険国民健康保険とどういう点が違つているから、だから国民健康保険のどういう点に重点を置いて予算をどう編成すればいいかということの、具体的な御意見を承りたい。
  36. 小島徳雄

    小島説明員 その内容につきましては、ここにも書いてございます通り、現在は、事務費につきましては、国民健康保険政府の金額負担健康保険は七割の政府負担、給付費につきましては同様に一文も政府負担していない。従いまして、予算の編成にあたつては、ここにも書いてありますように、国民健康保険も、健康保険についても、その給付費についても医療費の二割の負担となすべきである、事務費については当然金融国庫負担とすべきである、こういう意味であります。
  37. 丸山直友

    ○丸山委員 事務費は、現在国民健康保険は全額もらつており、健康保険は全額ではありません。つまり国民健康保険の方に重点を置いております。それから給付金に対して二割というのは、国民健康保険健康保険も同様である。それならば、それ以外に特に重点を置いて予算を編成すべきであるという意味は、ただいまのお話では、少しも重点にならない。だから、一体どういう点で国民健康保険重点を置いて、予算をどういうふうに編成をせよという御意向であるか、これ以上どういうふうにすればいいのか、承りたい。
  38. 小島徳雄

    小島説明員 国民健康保険につきましては、そこにも書いてあります通り、現在経営困難に陥つているものについては、再建整備に関する費用を、ある程度国庫が更生資金の形で融通するとか、あるいは国庫負担の形において、これを再建整備の費用にするということを、国民健康保険については特に書いてあります。実際の内容については、この言葉が多少表現がまずい点があるかもしれませんが、考え方の骨子は、先ほども申しましたように、国民健康保険健康保険という制度の立つている立場が現在違つている。国民健康保険については、政府がこの問題について、よほど重点を置かないと、もし政府が給付費について国庫負担をしないような場合が起りますれば、国民健康保険はまさに崩壊する危険がある。そういう意味において、政府予算を編成する場合におきまして、国民健康保険の重要性、給付費の負担の重要性を特に考慮しなければならぬということをつけ加えておるのであります。
  39. 丸山直友

    ○丸山委員 どうも私どもにははつきりわかりませんけれども、その点はそのくらいにしておきましよう。  それから強制的に設立ということがございますが、これは年次計画という中に、箇条的に多少しぼつてあるわけですね。大体年次計画というのは、どのくらいの年次計画の御意思でございますか。また強制設立にしなければならない理由。現在強制ではございません結果、全国の町村数から言いましたら半分もできておらぬかと思います。またできているものでも休止の状況にあるものもあるかと思いますが、その原因がどこにあるのか。その原因を除去しないで、ただ強制的に設立しただけで、それがうまく運営せられるというお考えで、この強制的設立ということをうたわれたものであるか、その辺のところをもう少し詳細に承りたいと思います。
  40. 小島徳雄

    小島説明員 国民健康保険を、強制設立にするがいいかどうかという問題は、昨年勧告した場合におきましても、審議会におきまして非常に研究された問題であります。審議会ばかりでなく、各方面で、国民健康保険が強制がいいか任意がいいかという問題は、非常に大きな問題であつて、研究を尽された問題であります。昨年勧告をいたしました当時におきましても、審議会におきましては強制設立ということを考えまして、これを関係方面に出したわけでありますが、いろいろ関係方面の御意見もございまして正式の十月の勧告におきましては、強制設立をやめまして、任意設立という方法をとつて勧告いたしたのでございますが、日本が講和を控え、新しく自主的に問題を解決し得るような時期に際会いたしましたものですから、一応この際、もう一度強制設立ということを審議会として考えて、正式に政府に提出することになつたわけであります。  もう一つは、このあとの三のところに出ておりますが、生活保護法医療扶助の問題、あるいは結核予防法の問題、これらの問題を社会保険中心にしてやるという場合におきまして、町村では国民健康保険がないというような場合におきましても、どうしても生活保護法医療扶助というものがいるわけであります。もし全国に全部普及しておりますれば、結核予防法の問題につきましても、あるいは生活保護法医療扶助の問題につきましても、総合的に社会保険中心に考えることが可能であります。しかし現在のように国民健康保険があるところではあり、ないところではないというようなことになりますと、どうしても最低生活を保障する場合には、医療扶助という問題を独自に考えなければならぬ。また結核予防法の問題につきましても、国民健康保険のないところの町村には、これは全然考えないというわけにも参りません。従いまして、社会保険中心として考える場合におきましては、当然全国民を対象とした医療保障というものも考えなければならぬ。健康保険につきましては、御承知通り強制設立で、全部入つておりますが、社会保障審議会としましては、将来医療保障という大きな問題を考える場合、医療に関する問題については、全国民社会保障の恩典にあずかるようにすべきであるというのが建前であります。その意味におきまして、今回の勧告におきましては、国民健康保険の強制設立をしようではないかというふうに勧告いたしたわけであります。ただ実際問題といたしまして、今日の実情から申しまして医療機関の問題を考えなければならぬ、町村の財政も考えなければならぬ、一足飛びに社会保険を全国的に強制設立させると申しましても、それは無理をしいることで、かえつて審議会勧告が机上のプランということの非難を受けるおそれもあります。そういう意味におきまして、年次計画をもつて漸次できるところからやつて行くということで、この年次計画を五年でやるべきか十年でやるべきかという問題につきましては、審議会といたしましても、まだ決定的な意見は出しておりません。ただ昨年勧告を出した当時におきましては、大体五年ぐらいで全国に普及するというような案を立てて勧告いたしたことは、事実でございます。
  41. 松永佛骨

    松永委員長 丸山さんに申し上げますが、実は前田会長さんが、三時から次の会合がございまして、その方に御出席になるそうでありますから、あと事務局長さんに対する質問は保留していただいて、引続いて前田会長さんに対する御質問を、ほかの委員とかわつていただきたいと思います。
  42. 丸山直友

    ○丸山委員 どうぞ。
  43. 松永佛骨

    松永委員長 それでは金子委員
  44. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいま丸山委員から、極端に申しますと、審議会が結果において作文製造所のような形に追い込まれておる、かりに政府が来年もこれと同じことを繰返したらどうするかという、大分きつい質問が、審議会の会長に向つてあつたのでありますが、それに対するお答えをここで聞いておりましても、なるほどそれよりほかないかということになりますと、私ども審議会に大きな期待をかけるとともに、大きな失望と、二つこもごも出て来るわけでありまするが、その点はどう申しましても、それ以上どうにもならぬことでありますので、繰返してお話申し上げることはやめまして、ただ私は常々考えておることでありますが、審議会長の御意見というか、むしろ審議の過程におきましての審議会の全体の雰囲気といいましようか、意見といいましようか、その状態をひとつお聞きしたいことがあるのであります。それは昨年度の勧告に対しましても、総論的な見出しには、国民社会保障、ことに医療の保障というようなことに対しては、機会均等であるべきだということをまず見出しに書いておるのであります。にもかかわらず、今度は各章の段に参りますると、被用者はこうあれ、一般国民はこうあれとはつきりわけておる。それは段階としてやむを得ぬということであれば、これは一応納得するのでありますが、しかし、ただいま丸山委員から、現在国民として機会均等の形でない、機会均等の形どころか、極端に社会保険の一面、ことに狭い意味の医療保険の面からしわを寄せられておるところの一般国民という階層に対して、二割の助成をしろ、それから次の章へ持つてつては、健康保険に対していわゆる被用者保険に対しても、二割の補助というようなことが書いてある。こういうことは、審議の中において、日本国民層を、一般国民と被用者国民というふうな形にわけることは妥当でないという意見は、審議会には出ないのでしようか。
  45. 前田多門

    前田参考人 私も正直に申しますると、この小委員会にときどき欠席いたしまして、委員の方のすべての御議論をまだ拝聴したわけでもございませんけれども、私の承知いたしておりまする点では、お話の通りに、なるべく均等化というところにひとつ向けて行かなければならぬという空気は、審議会全般を通じまして、非常に強い考えがあります。そのために今回国民健康保険にもつと活を入れまして、年次計画でもよろしいから、強制的に設置するようにしてもらいたいということを力説いたすようになりましたのも、その趣意にほかなりません。どうも被用者だけにこの社会保障制度が限られておるというのでは、ほんとうの社会保障制度ではないわけでございまして、ことに日本においては、被用者以外に、独立稼業をいたしておりまする者の中に、社会問題の対象になる層が非常に、かえつて西洋諸国よりは多いかと存じます。たとえば中小工業者でありますとか、農民でありますとか、そういうような対象に向つて社会保障制度が動きませんければ、ただ限られておる健康保険だけに力を入れたのでは、それは均衡よろしきを得ない。従つて国民健康保険などにつきましても、昨年よりは百尺竿頭一歩を進めまして、強制設置ということを強く打出しておるというような次第もありまするので、差別的にするというよりは、均等化に行こうという考えが、御承知通り審議会委員は各方面の代表者がお集まりでございますから、その方面の利害にかかわらず、全体の意向はそういうふうに動いておると私は看取いたしております。
  46. 金子與重郎

    ○金子委員 だんだんに機会均等であらねばならないという方向へ向いておるということを伺いまして、非常に私けつこうだと思つておるのであります。ただこれは私審議会の会員の一部の方々と、常に私的に乱暴なことを申し上げるのでありますが、大体審議会の会員は、こういうことに対する考え方が足えぬぞ、なぜならば、審議会の会員のメンバー全部の戸籍調べをしてみると、その人たちの実際の生活環境というものは、いわゆる健保なり共済の形において人生を送つて来た人たちが大部分だ、だから生活体験として、一般国民的な感覚が少いのじやないか、こういう論議を私いたしておるのであります。蛇足でありまするけれども、その点は今後――これはお願いになるのでありますが、ぜひとも日本の国情というものは、アメリカやイギリスや、その他の諸国とは根本的に違う、なぜならば、日本の工業面におきましても、経営者であり、みずから労働者であるという中小企業の方が非常に多いことと、ことに四割八分からを占めておる農民というものは、実際において企業ではない、企業の形こそとつておるけれども、これはまつたく自分の労働というものを投じてただ生活しているだけなのでありまして、労働を休んだならば、企業として一日も成り立たない形におるのが日本の農業であります。そうしますと、これらのものを一般国民として、そして被用国民と差別をつけるという理由は、どうしてもわからない。むしろこういうことを、いまさら被用国民であるとか、一般国民だとかいう言葉自体に、私は間違いがあるのじやないか、この医療保険に対しては間違いである、こういうふうに考えておるわけであります。従つて今後そういう傾向に対して、この文章を見ますと、第一次勧告よりも、この点は幾分はつきり出て来つつあるように思えるのでありますが、この点はむしろ私どもの今後のお願いとして申し上げるわけであります。ただここで一つ問題になるのは、これはあとで事務局長さんからお聞きしてもよろしいのでありますけれども国民健康保険を強制設立してほしい、年次計画によつてそういう計画を進めろということを、ここで勧告されましても、これは私が政府の立場になつて勧告を受けたといたしましても、今の国庫があの状態で、半分のものを使用者が支出しておりましてすら、なかなかやつて行けないのであります。このような現実の国民健康保険の状態で、よしここで思い切つて二割の給付費の補助をいたしましたところで、これで一点単価が一割上りますと、これはもう大体御破算になつてしまう。その程度のことで、一体今の保険が強制し得るかどうか。それならば、それらの人々の状況と資格が足らぬかと申しますと、そうではなくて、おそらく今のインテリの多い共済の組織におきましても、あるいは健保の組織におきましても、国民健康保険と同じ立場に置いたならば、彼らがはたして法の束縛なくして入り得るかどうか。要するに一方は法的な制約があるから入り、一方は法的な制約がないから入らないということでなくて、そのおのずから持つ条件というものに、格段の相違があるわけであります。従つて、これは単に町村長あるいは指導者の人たちの熱意ということだけでは、解決がつかぬ問題がある。従つて、これを強制設立とした方がいいという勧告がありましても、今の状態で、どういうふうにして強制設立をし得るかということに対して理解がつかない。要するに私どもには、こういうようなことであるから、強制的につくれと言い得ない立場にあると思うのでありますが、これをどういうふうな方法によつて言い得るようにしようとするか、具体的な問題が出たのでありますが、その点をひとつお聞きしたいのであります。
  47. 前田多門

    前田参考人 一般に国民の各層にわたるように今後とも注意しろという御注意に対しましては、私も――もつともこれは会長の一存でどうにもなりません、会長というものは議事の進行をはかる係のようなものでありまして、会長の意見というものは、なかなか会の意見とはならない建前になつておりますが、私といたしましては全然御同感でございまして、また私の観測するところによりますれば、会の同僚各位も、立場を忘れてそういうおつもりになつておられるようでございます。  それから国民健康保険の強制設置につきましては、これはなおこまかいことは事務局長から御答弁申し上げるでございましようが、実は私個人といたしまして、これを創設するときに多少お手伝いをした関係もありまするので、非常に私はこれに興味を持つておるものでございますが、お説の通りに、これは制度だけではとうていできるものではない。強制的にやるということをきめただけでは、これはなかなか実際行くものではなくて、受入れ態勢と申しまするか、その町村の人たちの気持というものを導いて行く。それから、何よりも町村におられるお医者様の気持というものが、ぴつたりこの制度の精神に合うようにやつていただくということが、必要であると思います。私がこの創設当時、これを唱えておりました当時に比べますると、ただいまはよほどその点も精神的に進歩を見ておるようでございますけれども、まだまだここらはその余地が非常に多いことと存じます。ことに御同様に非常に心配いたしますることは、濫診濫療というような事柄でございますが、これはどうしてもこの制度のできたのに対しまして、一つのやはり道義的な、こういう社会連帯的な制度にふさわしい国民道徳というものをつくつて行かなければならぬということを、非常に痛感いたしますので、私は別の資格で、機会あるごとにこういう気持をつくつて、受入れ態勢をつくつてくれということを力説いたしておるわけでありまして、まつたくその点においては御同感で、大体この制度を強制的にしたというだけでは、この目的は達せられるものではないと存じます。しかし一方、国といたしましては、制度としてそのくらいに力を入れて、何年計画で強制的にやるのだ、一ぺんひとつ川を渡つてしまつて、さてひとつやろうということでございませんと、いつまでたつて実現できないことであろうと思いますので、審議会として決議されました強制的設置云々につきましては、私も賛成しておる次第でございます。
  48. 金子與重郎

    ○金子委員 もう一、二点だけ会長から伺いまして、あとは事務当局からお伺いしたいと思いますが、この審議の過程におきまして、いわゆる機会均等でなければならないという原則は、私はそう信じておりますが、現実の実行する可能性の立場からいつて、少くとも各種保険の中から、医療の問題だけは全部画一的に切り離してしまう、こういつたふうな御意見は、審議会にはありませんでございますか。
  49. 小島徳雄

    小島説明員 審議会といたしましては、前の勧告にもあります通りに、一応現在の医療を――将来の体系としましてどういうふうに考えるかは、実は御意見があると思いますが、一応現在の段階としましては、国民健康保険健康保険とを一応わけてやつて行く、こういう考えであります。と申しますのは、一つには事業主の負担という問題もありますし、全体の社会保険の体系というものが、多少一般国民と被用者につきましては違つております。また発展の段階におきましても、多少差異があるということが常識のように思います。将来の理想体系におきましては、そういうことになることも、あるいは考え得ると思いますけれども、現在の段階におきましては、さように一応差別を設けて、漸次発展するというのが、大体審議会の考え方であります。
  50. 金子與重郎

    ○金子委員 審議会といたしましては、この医療関係に関する限りは、現在の各種社会保険から画一的に切り離そうという御意見は、今のところないということでありますね。それではそういうふうに承知いたしまして、ただこれは一言意見になつて恐縮でございますが、私は今の健保において、使用者は費用を出していないという見解を持つているのであります。なぜならば会社へ行つてみましても、あれは損失勘定の中に入つております。損失勘定の中に入つておるとすれば、広い意味における、われわれその物を消費する者が出しておるのであつて、その人たちが出しておるのではない。あれは使用者が出しておるからということの見解は違う。もし人を雇用しているために、それだけの社会保障に尽す義務があるなら、それは特殊な税金を国家がとればいい。その人たちが決して労働者に恩典を与えておるのじやない、こういう見解をとつておりますので、そういう意見もあるということを、この際ひとつ申し上げておきます。  時間もありませんから、私の会長に対する質疑はここで打切ります。
  51. 岡良一

    ○岡(良)委員 先ほど前田会長のお言葉の中に、委員の中には、もし政府がこの勧告を顧みないというときには、進退を考慮する人もあるかもしれないというお言葉がありましたが、御存じのように、昨年の七月には試案要綱が出、十月には全面的な体系づけられた勧告が出た。それで国民としても、その実施の一日もすみやかならんことを非常に、いわば旱天の慈雨を待つ気持で期待をしておつたことは、御存じの通りだと思います。しかもあの時の勧告は、大内教授も――大体財政学の権威と目される大内教授が、現在の日本財政規模において可能であるということを、はつきりと銘を打たれて勧告を出したにもかかわらず、政府はそれを十分に実行していない、きわめて不誠意な取扱いをしておる。そこで今度また第二次勧告においては、前回の勧告の中でも特にやつてもらいたいという部面を拾い上げられて、この第二次の勧告になつておるようでありますが、審議会そのものは、そういうわけで、これは国民に対して公的な機関としての責任があるばかりでなく、道義的な重大な責任があろうと私は考えておるので、もしこの勧告が実施されないならば、国民に対し自己の法的責任からも、また道義的な責任からも、審議会委員は総辞職をすべきだ、私ならばそうすると私は申し上げたいのですが、そこまでの決意があつてしかるべきと思うのでありますが、この機会に非常に失礼な質問ではありまするが、前田会長の率直な御意見を伺いたいと思います。
  52. 前田多門

    前田参考人 私が審議会委員の皆さん方の御意見を代表して、ここで申し上げるということは、とうていできないことであると存じます。従つてこの審議会勧告をたびたび発しても、その実現を見ません場合に、審議会として――審議会というのは、結局委員から成り立つておるわけでありますが、委員の方々がどういうような態度をとられるか、このことはちよつと私から申し上げることはできないと存じます。けれども、お話の通りに、公の機関としてせつかく勧告機関というものが法律によつてできておるにもかかわらず、この審議会がいくら勧告をいたしましても、一向これが顧みられないということになりまするのは、これはただ面子とか感情問題とかいうような小さなことよりも、国家としてこれは非常に打捨てがたいことでございまして、私は国民の輿論、国民の良識が、おのずからその帰趨をお示しになるべきだろうと考えておる次第でございます。
  53. 岡良一

    ○岡(良)委員 とにかく設置法によつても、内閣と同等な立場において、堂堂と内閣総理大臣に勧告をなさるという、そういう高い地位の審議会でもあつてみれば、大臣の諮問にこたえて意見を具申するといつた底の、あり来りな審議会とはおのずから趣を異にしておりますので、私どもといたしましては、そういう点にかんがみられて、また国民も、ほんとうにそれを実施すべきであるというほうはいたる輿論を喚起するためにも、やはり審議会自身が明確なる道義的政治的な責任を明らかにする底の決意があつてしかるべきと思いますので、まだ将来の問題ではありまするが、十分にひとつ政府と御折衝をお願いしたいと思うのであります。  それから、なおこの際お聞きしておきたいことは、設置法によると、内閣総理大臣に勧告するということになつて、内閣が国会に報告するという手続になつておるようでありますが、これはかねてより私どもの考えでは、立法の府としての国会が当然勧告を受け、国会は特別委員会等を設けて、その立法に当つて行くという形が、この社会保障制度そのものを実現するためにも、また法規上から見ても、妥当な筋だと思つておるのでありますが、こういう点について、会長はどういうふうに考えておられるか、承つておきたいと思います。
  54. 前田多門

    前田参考人 立法上の問題といたしましては、確かにお説もりつぱに立ち得る一つの理論だと存じます。しかしながら、政府勧告するという建前にいたしても、それが必ずしも妥当でないともいえないのであります。その点について、どつちにいたしたらよろしいかということについては、実はただいま注意を御喚起願つて、私もなるほどそれは考えるべきだということに気がついておりますが、ただいまの法制のままでも、政府がほんとうにまじめに考えてやるつもりがあれば、運用ができるし、また現に第二次勧告案を、今日のようにお呼びをいただいて、国会においても私どもの立場をお聞きただしになるような次第でありますから、政府に対しまして、国会が鞭撻していただく道というものは、幾らでもあるのではないかと思います。すべての勧告機関が、必ず国会に向けられなければならぬかどうか、この点までは、私は考え抜いておりませんことを、率直に申し上げておきます。
  55. 岡良一

    ○岡(良)委員 私が申し上げたのは、やはり直接国会に勧告するということになれば、国会は審議会勧告によつて拘束をされ、また当然立法機関としての機能をその方向に発揮しなければならないという道が明確に直截に開かれるということにおいて、社会保障制度実現そのものへの道が、大きく開かれるのではないかという、いわゆる社会保障制度そのものを実際に実施するという面から見て、その方が効率的ではないかということを、実は申し上げたわけであります。  それから、この前の勧告がありましてから今日まで、審議会としても、その実現については多大な関心を持つておられたことと思うのでありますが、政府の方でどういうふうに第一次勧告を取扱つて来られたか。それに対して審議会としては、どういう批判あるいは印象を持つておられるかという点について率直な御心境を漏らしていただきたいと思うのであります。
  56. 前田多門

    前田参考人 第一次勧告が発せられましたときは、実は私はまだ審議会委員でございません。いわんや会長でございませんから、その当時のことは、直接には存じませんが、私の承知いたしておりますところによりますと、この勧告を発しましてから後、会長は政府にこの結果を手交いたしまして、勧告実現をその当時の会長が迫られたようであります。また御承知通りに、この審議会委員の四十名のうち、十名は国会に席を置いていらつしやる議員であられるのでありまして、ことにその点について私が非常に感じておりまする点は、この十人の議員の方が、この委員会にも席を持つていらつしやる方がおありのようでありますが、この社会保障の問題につきましては、政党政派の別を超越なさつて、党争を全然超越なさつて、まつたく同じいわゆるユナイテツド・フロントをとつていらつしやつてくださつていることを常に感謝いたしておるのでございます。それで最も有力なる国会議員の方の御活躍というものは、非常に目ざましいものでありまして、機会あるごとに、ことに議会が開会中におきましては、政府当局を刺激して、促進をはかつておられるということについては私は非常に感謝の意を表しておる次第でございます。私はまつたく微力で、また背後に何らの力も組織も持つておるものでもございませんので、私一個が何を申したところが、政府の人たちがどれだけこれを顧みてくれるかわからないと、常に思つておるのでございますので、少なくともこの審議会の意見に対しまして、政府があるいは関係閣僚会議を開き、そのために審議室を設けるとかいうような措置をとりました点は、前会長の努力もさることでございまするが、議員から御出身の委員の方の非常な涙ぐましい御努力によるということを、ここに明らかに申しまして、感謝の意を表したいと存ずる次第であります。機会あるごとに、私ども政府の方々にこの促進を御注意いたしておるのでございまするが、そのほかに法律上から申せば、審議会の国有の権能では、あるいはないのかもしれませんが、つまり勧告機関でございますから、それ以上のことはできないはずでございましようが、黙視することができませんので、私の記憶では二回でございますが、外部の方に呼びかけまして、いろいろの団体の代表者、あるいは労働団体の代表者の諸君、あるいは経営者の団体の諸君、医師会の方、新聞界の方、あらゆる階層の有力な団体の代表者の方にお集まりを願いまして、内閣の官邸を借りまして、官邸にお集まりを願つてこの勧告案の御説明をして御協力を願つて、それらの団体の方々がひとつ気勢をあげて輿論をつくつて、国会、政府を動かして、必ずこれが実現できるように御尽力を願いたいということを訴えたこともあるのでございます。これらの団体の方々も、非常にその意を了とされて、お互いに幹事を設けて、その実現達成に努めようということを申し合わされたような次第でございます。
  57. 岡良一

    ○岡(良)委員 私が申し上げたことを、会長は少し取違えておられるようですが、それはさておきまして、ただ問題は、それぞれの党が、党派を超越してこの実現のために熱意を示しておると申しましても、やはりそれは大砲よりバターか、あるいはまたバターよりも大砲かという政党の性格の差異がありますので、問題は社会保障制度審議会が決定された構想が是か非かということにおいては、是であるという点において一致いたしましても、それを実施するというその点になりますと、そこにおのずから政党の性格から来る差異というものが出て来ることは、申すまでもないと思うのであります。それは別といたしまして、ただ私がお尋ねいたしましたのは、これは事務局長からお答えを願つてもいいのでございますが、昨年あの勧告が出ましてから、私の同僚議員が、参議院で岡崎官房長官に対して、第一次勧告の取扱いについて、政府の所見をただしました。そのときに――はつきり速記録に残つておりますが、岡崎官房長官は、関係閣僚の懇談会を設けて、一箇年間十分に調査した上で、来年度においては立法化したい気持を持つておるということを言つておられるのであります。その後、なるほど林厚生大臣が、いわば責任者というふうなかつこうで、農林なり労働なり関係の閣僚懇談会が持たれた。そしてその幹事役は各省の次官であるというふうなことも、漏れ聞いておつたわけであります。その後林厚生大臣もやめられて、衆議院議長に御就任になつたが、その後政府部内では関係閣僚懇談会というものがはたして継続されておるのかどうか。そしてそれはどの程度に立法化の道を進めておられるのか。これはいずれ皆さんの次には政府にただしたいのでありますが、そういう情報については、審議会の方でも入手しておられると思いますが、そういう政府の取扱いについて、もう少しこうすればいいじやないか、もう少しこうあつてほしいというような御希望はないかということを、伺つておきたいと思います。
  58. 前田多門

    前田参考人 ただいまお話になりました関係閣僚懇談会につきましては、私の率直な所感を申し上げますと、どうもそういう組織はおできになつておるのでございましようが、この問題のために、活発に御協議になつておるというような印象は、私は得ておりませんので、機会あるごとに、これをひとつやはり働かしていただきたいということを申しておる次第でございます。
  59. 岡良一

    ○岡(良)委員 あとのことは事務局長にお尋ねをいたしたいと思いますから、この程度で……。
  60. 松永佛骨

  61. 苅田アサノ

    苅田委員 ただいま岡委員よりもその一部をおつしやつたのですけれども、この第一次の勧告案ができましたあと、本委員会でも、大内会長をお呼びいたしまして、お話を開きましたときに、現在の社会情勢の中で、現政府がやつたにしても、少くとも文化的な国家であれば、この程度の勧告に沿うところの処置はしなければならないということを、はつきり当委員会でもおつしやつたわけなんです。ところが、ただいま会長自身もお認めになりましたように、その勧告の大多数のものを、まだ政府は実施しておらないという状態なんです。そのところにまたこの第二次勧告が出ました。ところがこの勧告の文面を見ますと、第一次勧告に具体的に勧告されておりました、今国民が必須としておりますところの措置は、一、二を残しまして大体問題にならず、そうしてかえつて機構の整備であるとか、あるいは衣食住を中心とする生活の合理化というようなことが、全面的にうたわれるようになりましたので、一部では、社会保障制度審議会が、政府に対しまして非常に意見が後退して来ておるのじやないか、こういうことを心配しておる向きがあるように思うのであります。私も確かにこの文面からだけ見ますと、非常にそういう点が強いと思うのでございますけれども、これはただいまも会長がちよつとおつしやいましたように、以前の勧告にあるものも、そのままやはり現在の社会保障制度審議会の意見として、ぜひやらなければいけない、こういうことを強く主張しておるのであるかどうか。それとも第二次にあげられました点だけが、当面やられればいいというふうにお考えになつたのかどうか、この点をひとつはつきりとお聞きいたしたいと思います。
  62. 前田多門

    前田参考人 ただいまの御質問の点は、非常に重要な点であると思いますので、私の方から進んで申すべきことであつたと思います。御注意を受けて非常に感謝いたしますが、まつたく審議会といたしましては、第一次の勧告をただ緩和して、第二次の勧告でもつてまあがまんするのだ、そういうような弱い考えを持つておる人は、委員の中に一人もないのでありまして、第一次勧告は、ことにあれは即時全面実行ということを言うておりまして、即時全面実行ということを決して撤回しないのでございますけれども、しかしながら、諸般の情勢からいたしまして、急にあれが、たとえば二十七年度の予算に全部できるかと申しますと、どうもその見込みが怪しいように懸念せられるわけであります。ただ黙つておつたのでは、ますます機会を失うだけでありまして、せめて緊急一日もゆるがせにすることのできないというものを指摘して、さらに政府注意を喚起したらどうだろうか、こういう多数の意見がございまして、今回の勧告案が出たのでございます。それで、決してこの文中におきましても、前の勧告の線から退いたということは、少しも、どこにも出ておらないのでありまして、その趣旨もまつたくそこにあることをひとつ御了承を願いたいと思います。
  63. 苅田アサノ

    苅田委員 そういたしますと、具体的にお聞きしたい点があるわけなんでありますけれども、たとえば第一次の勧告には、被用者五人以上でなくとも、すべての被用者に対しましては、健康保険を適用しなければならぬということが、はつきり書いてあるわけなんです。御承知のように現在一人や二人あるいは三人の小さな町工場の被用者の方が、むしろ大工場よりもやはり生活条件も非常に悪くて、病気のときの措置なんかもやはり非常に困窮しておる。たとえば、日雇い労働者などがいつも問題といたしておりますのは、自分たちは最も弱い被用者なんだから、自分たちにこそ健康保険は適用させてもらいたいということの要求が始終出て来ておるわけなんで、おそらくこういう点を考慮なされて、この前の勧告には、そういう最も弱い労働者に対して、健保の恩典というものが措置されなければならないというように勧告されたと私は思うのでありますけれども、これは今年はさらにふえておると思うのです。諸般の情勢から推しましても、そういう要求はふえていこそすれ、決して少くなつてはいないと思うのでありますけれども、こういう問題が今度の勧告案には、一つも書かれていないわけなんです。こういう問題も、社会保障制度審議会といたしましては、現在ではどうにもならないから、時期を待つてやればいい、こういうところまでおさがりになつたのであるかどうか、これを聞きたいと思うのです。
  64. 前田多門

    前田参考人 先ほども申し上げますように、決して時期を待つてやればいいのだという、あきらめ的な態度でやつておるわけではないのであります。けれども、少しでもわれわれの目的を達するために橋頭堡を固めますために、ことに予算編成等に関係をして政府注意を喚起したい。そうしてそれをすぐ、考えさえきめてくれれば実行のできることだ、こういうものを拾い上げてやろうというので、この列挙事項ができたわけでございまして、御指摘の点を決して軽く見ておるというわけではないのでございまして、また御指摘の点が早く実行されるということについての審議会の熱意は、少しもかわつておらないものと考えております。
  65. 苅田アサノ

    苅田委員 しつこいようですけれども、もう一点この点に関してお聞きしたいのです。これはここに保険局長もおいでになるわけなんですが、そういう勧告に対しまして、政府の方では、これは実際に技術的に見て、こういう人たちにそういう保険をかけるということが非常にむずかしい、こういうふうなことを言つておいでになるのです。ところが、社会保障制度審議会の建前とすれば、現在の日本では、最も最高と思われる各方面社会保障制度についての経験者やら、あるいは専門の方が、即時実施できるという建前でこれを勧告なすつておる。こういうことになつておるわけなんですけれども、そうすれば、この予算措置じやなくて、技術的に取扱いがしにくいというような問題でできないと言つているのに対しまして、どういう処置があつたか。つまり社会保障制度審議会としては、こういうことをやれば、できないはずはないというような対策がおありになると私は思うのですけれども、それにつきまして、ちよつとお伺いしたいと思うのです。
  66. 前田多門

    前田参考人 私の理解いたしております範囲におきましては、ただいま御指摘の点につきましては、今度緊急的の措置をとるための第二次勧告案については、審議がなかつたことと承知いたしております。
  67. 松永佛骨

    松永委員長 前田会長が御退席になりまして、小島事務局長がいらつしやいますが、きようは他に案件もございますので、社会保障制度審議会に対する御質疑は次会にこれを譲つていただきたいと存じます。     ―――――――――――――
  68. 松永佛骨

    松永委員長 次に国民健康保険に関する件について、国民健康保険に関する小委員長の亘四郎君より発言を求められておりますので、これを許します。亘四郎君。
  69. 亘四郎

    ○亘委員 先般国民健康保険に関する小委員会が当委員会設置されまして、私ども委員は、数次にわたりまして、国民健康保険の問題を、あらゆる角度から検討いたして参つたのであります。その結果といたしまして、今般小委員会におきまして、国民健康保険をさらに強化する必要があるという点にかんがみまして、決議案を作成いたした次第であります。よつてその小委員会の結論としてでき上りました決議案をここに御報告申し上げて、皆様方の御了解を得たいと思うのであります。  ただいまその決議案を朗読いたします。    国民健康保険強化に関する決議案   国民健康保険事業の現情に鑑み政府は速かに次の措置を実施すべきことを要望する。  一、保険給付に対し国庫補助を支出すること。  二、診療報酬の未払を即時解消するため保険者に対し長期資金を貸付すること。  三、国民健康保険直営診療施設設置費に対する国庫補助額を増額すること。  四、国民健康保険事業の指導を強化すること。  右決議する。  以上の通り決議案をつくつたことを御報告申し上げます。
  70. 松永佛骨

    松永委員長 本件についての御発言はございませんか。
  71. 岡良一

    ○岡(良)委員 ちようど保険局長がおられますから、この決議案に盛られている内容、特に一、二、三項は、これは直接国の予算関係することですが、保険給付に対する国庫補助を支出することについては、厚生省二十七年度予算に、予算省議では、例の百二億ですか、給付費の二割の国庫負担ということで決定しておられる。第二項についても、五箇年間すえ置きの二十年年賦で十三億出ておりますし、あとのも四十何億出ておりますが、その後の大蔵省との折衝の経過を聞かせていただきたいと思います。
  72. 安田巖

    ○安田説明員 お答えいたします。岡委員から仰せの通りでございまして、一、二、三につきましてはそれぞれ予算を要求いたしておりますけれども、まだ大蔵省の方から、第一次の査定として大体幾らだというところまで至つておりません。私どもがほのかに聞いておるところでは、この月末になるじやないかといういうふうに承つております。いずれそれを見ましてから善処いたしたいと考えます。
  73. 岡良一

    ○岡(良)委員 特に第一項のごときは、いまさらお出しになつたものではないので、終戦後ここ一、二箇年すでに御経験もありますが、どうですか、速記をやめてでもあなたの見込みをお聞かせ願いたい。
  74. 松永佛骨

    松永委員長 速記をやめて。     〔速記中止〕
  75. 松永佛骨

    松永委員長 それではお諮りいたします。  国民健康保険に関する小委員会において作成いたしました決議案の案文を、当委員会の案文として一応決定し、提案者には御賛同を得た委員及び本件に関心のある議員の諸君になつていただき、その取扱いに関しては、委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。なお本件の修正等につきましては、委員各位の御趣旨もございまするので、委員長において適宜修正することを御承認願いたいと存じます。御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 松永佛骨

    松永委員長 なければ、そのように決定いたします。     ―――――――――――――
  77. 松永佛骨

    松永委員長 次に児童福祉法による児童福祉施設保護費は、昭和二十五年度以降、地方財政平衡交付金に切りかえられているため、各方面において非常な困難を来しておる旨の陳情が、全国各府県の関係団体並びに実務従事者より多数参つております。特に一昨日の児童の擁護施設協議会の席上においても論議があつて、懇願され、昨日よりの社会福祉事業大会参集者よりも、きわめて真摯かつ必死の陳情を連続的に受けております。各委員におかれても御同様のことと存じますが、これに関して、その実情を高田児童局長より伺いたいと存じます。
  78. 高田正己

    ○高田説明員 この問題につきましては、すでに委員各位の非常な御尽力をいただいておるのでございまして、なおそれぞれ現場の者から、皆様方のお耳にも、実情が十分に入つておることと存じまするけれども、お手元に配りました児童保護費の現況というガリ版刷り、これをごらんいただきますと、何県の何という施設がどういうふうな状況になつておるかということが、一応御了承いただけると思うのでございます。ただこれは五月十九日現在ということになつておりまするが、本年の一月現在で報告を求めたものでございまして、その後の状況の詳細につきましては、まとまつた資料をまだ持合せておりませんことは、はなはだ遺憾でございます。しかしながら、これによつてごらんいただきまするような状況が、その後も引続いて存在いたしておることは、間違いのない概論的な事実でございます。この内容につきましては、非常に数が多うございますので、一々御説明を申し上げることを省略いたしまするが、そこで大わけに書いてありますように、この未支払いまたは支払い遅延というふうな状況、それから四枚めくつていただきまして、五枚目から措置児童を解除したり、新たに児童を措置したりするのを避ける傾向があるというふうなことが一つ、それからその次をめくつていただきまして、措置費の徴收が不当にきつくなつたり、または措置を富裕児童に限定する傾向があること、それからその次のページに、年度中途において新設または設備拡充した場合、措置費が支払われない傾向がある。五番目といたしまして措置費支払いが最低基準を下まわる傾向がある。それから児童福祉施設に対する予算の削減その他の影響、大体こういうふうに大わけをいたしまして、具体的な事例をわけてみたわけでございます。ただこれは、ごらんいただきますると御了解いただけまするように、県から報告を求めた資料でございますので、多くは市町村のことを申しておりまして、県自体のぐあいの悪いことは報告漏れになつておるおそれがあるのでございます。従いまして、施設の種類といたしましては、ほとんどが保育所関係ということに相なつております。しかしながら、この県自体の場合におきましても、やはりぐあいの悪い状況が起つておるということは事実でございまして、二、三具体的な実例をあげてみますると、この資料にはございませんけれども、某県におきましては、二十五年度において精神薄弱児施設――これは県立の施設でございまするが、この増築をいたした、これはもちろん国庫の補助も伴つて増築をいたしたわけでございまするが、二十六年度予算においてはその措置費の予算化がなされておらない、経営費の方の予算化がなされておらない。従つて、建物はできたけれども、子供を入れるわけに行かない。某県におきましては、教護院――これは不良少年を入れる県立の施設でありますが、九十五人という收容定員に対しまして、六十五八しか予算化がなされておらない。しかしその県において教護院に入れなければならぬと認定いたしました子供は、百八十四名あるというふうな状態。また某県におきまする肢体不自由児の施設におきましては、收容定員が五十人であるにもかかわらず、二十五人しか予算化されておらない、目下入所措置を要するものが九十九人ある、かような状況でございます。そのほかいろいろ具体的な実例がございまするけれども、数から行きますと、このガリ版刷りの中に示しますように、やはり保育所が非常に大きな数になつて、非常にぐあいが悪いことに相なつておるということは、事実でございます。保育所につきましては、この資料にございませんけれども、最近聞きました実例におきましては、これは大きな旅府県でございますけれども、三十三施設が新設の認可申請をいたしておるけれども、具体的な措置がないために、その認可をしないというふうなことも聞いております。また養護施設につきましても私施設の、プライベートの養護施設――これはもちろん建物の方は自分で建てるわけなんですが、建物は建つたけれども子供を入れることができない、財政の都合によつて認可がはばまれておる、こういう状況であります。  大体ぐあいが悪くなつておる実情は、以上でございまするが、これに対しまして、最近の陳情と申しまするか、実情を訴えて来る側の状況でございまするが、交付金制度ができました二十五年度等におきましては、主としてわれわれの仕事の関係者が訴えて参りました。従つて県で申せば、民政部系統の者の声が非常に大きかつたわけでございます。なお当時は、総務部系統の、いわゆる財政の立場に立つ者、あるいは県政全体をあずかつておる知事さんでありますとか、市政全体をあずかつておりまする市町村長さんの立場からは、地方自治強化という観点から、必ずしもこの制度について悪いということを言つておられなかつたのでございます。それが最近におきましては、実際の仕事の状況を見て、これでは困るということでだんだんと認識が改まりましたせいでございましようか、関係者あるいは関係部局の陳情だけでなしに、全般の立場に立つ人、たとえば県会議員の立場にお立になる方、これが個々の県会議長名前でお出しになるところもありまするし、あるいはブロツクの県会議長が連合して、そういう上申書をお出しになるところもあります。さような方々の陳情あるいは市長の上申書というふうなもの、あるいは先般の、八月でございましたか、東京で開かれました全国の市長会では、この問題を取上げて総会の決議になつてもおります。なおまた先般政府の方で開きました知事会議におきましても、これは補助金にすべきであるというふうな強力な意見が出まして、それについて前大臣からいろいろと御答弁をしたというふうないきさつもございまして、この制度では困ると言う人が、だんだんと傾向がかわつて参つたということも、この問題の性格を現わす一つの証左ではないか、かように存じております。  皆さん方の方が、むしろよく御承知と思いますので、大体の状況をとりまとめて簡単に御説明申し上げました。
  79. 松永佛骨

    松永委員長 他に本件に関しての御発言はございませんか。
  80. 岡良一

    ○岡(良)委員 この機会にお伺いしたいのですが、児童福祉措置をしなければならない児童と、そうして措置し得る施設との福祉比率ですが、どういうことになつていますか。各府県別とか全国的な統計はありますか。
  81. 高田正己

    ○高田説明員 正確な数字は覚えておりませんが、全国的な状況の概数だけ申し上げますと、今私どもが直接間接に施設でお預かりし、施設でお世話をし、あるいは里親に委託をし、直接間接私ども関係でお世話をいたしておりまする子供さんの数が、全国で約四十万であります。それで昨年、統計の専門家の立場からやつていただいた調査がございます。抽出調査でありますけれども、ある程度の信憑性が置けると思うのでありますが、その結果によりますと、もう三十万から三十五万ぐらいお世話をしなければならない子供さんがある。これはいろいろな種類でございます。施設は御承知のように十一種類ございますので、いろいろな観点からお世話をしなければならない子供さんがある、こういうふうな統計を私どもつております。しかしながら、これは見方によりますので、必ずしもこれだけの施設をつくらなければならないという簡単な結論は出ないと思います。さような一応の数字を私どもは持つております。
  82. 岡良一

    ○岡(良)委員 特に児童福祉法だけ平衡交付金から切り離して、補助金に復元しろという論拠が、この決議だけでは、ちよつと積極性がないように思うのですが、どうですか、何かないですか。
  83. 高田正己

    ○高田説明員 これは私ども従来から主張いたしておるところでございますが、児童福祉に伴うすべての費用を補助金にしてくれという要求をいたしておるわけではないのです。児童福祉に要する費用の中で、施設補助費と申しまするか、すなわちその中に入つておる子供の食いぶちでございますが、最低限度の生活を維持するに足る費用を補助金にしてくれということ、これが第一点でございます。第二点といたしましては、今日生活保護法が御承知のように補助金として運用されております。今われわれが主張いたしております経費は、以前は生活保護法でやつておつた経費でございます。生活保護法でただいま施設に流しております、いわゆる養老部に流しております費用、それと同じ性格の費用でございます。それで端的に申しますと、総合施設におきまして、いわゆる孤児部、養老部を持つておるという施設におきましては、養老郡に対しましては経費は補助金で流れておるが、孤児部に対しては平衡交付金で流しておる、こういうことは、性格の同じところでありますので、どうであろうかという主張でありました。私どもは平衡交付金制度の根本に反対をいたしておるわけではない、制度そのものについては、けつこうな制度であると思つております。従つてこれが制度の意図しておるがごとくに運用されますならば、あるいは平衡交付金でもいいかもしれない。しかしながら、現実の姿は必ずしもその理想としておるように運用されておりません。従つて、理想と現実との矛盾が、政治的に発言権のない子供の費用にしわ寄せされて来る傾向が非常にある。それで困るということを、主張いたしておるわけでございます。なおまたこれは非常に技術的、事務的な話になりますけれども、御承知のように平衡交付金というものは、単価に員数をかけて計算をいたします。その際に児童福祉費用におきましては、員数は児童福祉施設に入所しておる子供の数を員数といたしておる。そういたしますると、この弊害が方々に現われておりますように、平衡交付金の性格といたしまして、どこかの時期を押えなければならない。四月三十日でしたか四月一日かに施設に入所しておる子供の数を押えるということに、今の制度ではなつております。これは平衡交付金の建前上、避けられないことでございます。ところが、片一方で、私どもの方の行政は、どんどん今伸びる過程にあるわけでございまして、そしでその計算の中に入つておらないからという理由で、今のように建物は建つても認可をしないとか、あるいは予算措置をしないとかいうふうな実態が出て参ります。さような平衡交付金の算定の基本的な性格と、われわれの仕事とがマッチしないというふうな、ごく事務的な、専門的な理由もあるのでございます。  以上申し上げましたようなことが、われわれが他のものと切り離してこれを問題にしてほしいと主張をいたしておる、従来からの理由であります。
  84. 松永佛骨

    松永委員長 ちよつと速記をやめててください。     〔速記中止〕
  85. 松永佛骨

    松永委員長 速記を始めてください。  それでは本件の取扱いに関してお諮りいたしますが、本件につきましては、前国会から問題となつておりました重要事項でございますので、当委員会において決議を行い、関係方面に対して所要の手続をとりたいと存じますが、まず決議事項を朗読いたします。   児童福祉法による児童福祉施設保護費は、昭和二十玉年度以降、地方財政平衡交付金に切替えられているが、その実施後僅か一年半にして、当初予想せられたような弊害が、各地において既に堪え難い様相を呈している。即ち  一、保護費の支払が、国の定める最低限度の額を下廻る傾向があり、児童の保護が危殆に瀕している、  二、児童福祉施設に対する保護費の支払が著しく遅れているため、多くの施設が経営困難に陥つてる、  三、措置児童を解除し、新たに児を措置することを避け、又は自で措置すべき児童を他県に追放するため、要保護児童が放置されている、  四、児童福祉施設の新設又は増設が妨げられている、  等の実例は枚挙に暇がなく、児童福祉行政は今や後退の危機に迫られているといつても過言ではない。   若く、しかも地味で即効的でない児童福祉行政の如きに対しては、国家の特別の保護が最も必要である。この意味において本委員会児童福祉施設保護費を速やかに当初の如き国庫補助制度に還元することを適当と認める。  以上の事項を決議し、その取扱いに関しては、委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 松永佛骨

    松永委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時一分散会