○
大石(武)
委員 ただいま
橋本厚生大臣のいろいろな
お話がありましたが、多少不審に感ずるところが二、三ありますので、この点をはつきりしたいと思うのであります。
第一番に、
BCGの問題であります。
BCGがきくか、きかないか、あるいは有害であるか、無害であるかということが、ただいま
議論にな
つておるのであります。私の
見解といたしましては、
BCGというものは、理論上正しいものと思うのであります。またそれは
強制的にやるべきものであろうと思います。但し、現在使用しておる
BCG、つまり
結核予防会が
独占事業としてつく
つておる
乾燥BCGというものは、私はあまりいいと思わない。おそらくあまり有効なものではなかろうと思うのであります。事実、そう有害であるとは思いませんが、
効果の、ごく薄いものであろうと思います。この点に問題がありますけれども、理論的に、実際に
結核の
予防としては、
唯一無二の
方法であろうと思うのであります。ところが、今
厚生大臣は、この
BCGの
結核予防のやり方が、絶対に無害であ
つて有効であるものならばよろしいけれども、そうでない限りは、あくまでこれは疑問であ
つて、すぐやるのはさしつかえるという
お話でありました。
世の中に、絶対有効であり、絶対無害であるというものがあり得るでありましようか。何が一本有害であるかということでありますが、おそらく
BCGに関して有害であるという点は、二つあると思います。
一つは
BCGをやつた場所に、
潰瘍をつく
つて、なかなかなおりにくい、
あとに醜い
斑痕をつくるというのが
一つの
理由である。もう
一つは、
結核が
BCGを注射することによ
つてさらに悪化されたということ、この二つがあると思うのであります。
まず
あとの点から申し上げますと、この
BCGを注射したことによ
つて、
結核がさらに悪化したということは、間違いだろうと思う。これは巖密な
研究が進んでいないので、ただそういうふうに感じた医者の無知であるか、あるいは単なる風説によ
つて、そういう
見解も出たと思うのでありまして、どの
文献を見ましても、
BCGによ
つて結核が悪化されたという正確な
文献はなかろうと思います。
それから、もう
一つの前の
理由である
潰瘍をつくり、
斑痕をつく
つて、なおりにくいという問題は、
種痘と比べたらいかがでありますか。
種痘をすると、必ず猛烈なはれものをつく
つて、
あとに醜い
斑痕を残します。あるいは
腸チブスとか、コレラとか、いろいろな
予防注射を見ましても、いつでも、たいていの場合には、二、三日熱を出したり、あるいは非常な
不快感を與えたり、頭痛を與えたり、いろいろな
副作用があります。絶対に無害であ
つて絶対に有効であるというものは、世界中にないと思います。
従つて、そのような
副作用があるからとい
つて、その面だけを強調して、これは
強制的にや
つてはならないと思うという
考えは、少しどうかと私は思うのであります。
それから、話が少し飛びますが、
学術会議の
塩田博士あるいは
阿部博士の
連中が、
BCGに関していろいろな
疑義があるとい
つて抗議を申し込まれたようでありますが、一体これらの
抗議を申し込んだ
博士の方が、はたして
BCGの
研究をどれだけして
おいでになるでありましようか。おそらくこれらの人々は、
BCGに対して何ら的確な
知識はないだろうと思います。何らの深い
知識を持
つている人はありません。
学界を見ましても、そういう
連中が何ゆえことさら法で
強制した
BCGに関して、ジヤーナリズムに乘るような
申入れをしたか、ここに何らか政治的な
含みがあるのではなかろうかと私は思います。先ほども
委員長が申されましたように、現在の
結核予防会に対して、何らかの
含みがあるのではなかろうかという感じがする。われわれの感情から申しましても、現在の
結核予防会というものは、はなはだけしからぬ存在だと思います。
BCGを独占し、その他を独占し、あらゆる閥をつく
つて、
日本の
結核医学界を風靡しておるのは、あまり感心しないことであります。ましてあまり
効果のないような
乾燥BCGをつく
つてそれを
強制的にやらせる。しかも
結核予防法による
強制的な
接種においては、範囲があまり広過ぎると思います。あれほど数多くやらなくてもよいはずです。やらなくてもよいところまでや
つているところに、確かに
予防法の欠点がある。これはむしろ悪く
考えるならば、
結核予防会の
独占事業の現われであるかもしれません。しかしながら、問題はそれだけにとどまらないのです。
厚生大臣が、現に
厚生省が主体にな
つて法律で施行されている
結核予防法に対して、
疑いを表明するということは、大きな政治問題になると思いますなぜかと申しますと、一般にこの
公衆衞生という問題は、
国民にと
つて実際直接にはありがたくないように感ぜられる問題なんです。
国民が、堤防をつく
つてもらいたい、橋をかけてもらいたい、
道路をつく
つてもらいたいという問題については、
政府が、いくらいやだ、金がないと
言つても、
国民はあくまで、してくれしてくれとい
つて要求する問題です。ところが、
公衆衞生の問題は、それとは
反対であります。お前は、
結核の
予防注射をしろ、あるいは
腸チブスの
予防注射をしろ、何をしろと言われれば、たいていの
国民はいやがる。痛い思いもしなければならぬし、熱も出る。ほう
つておいても、あるいは病気にならないかもしれませんから、たいていいやがる。一般に
公衆衞生の問題は、
国民が喜んで進んでこれを迎え得ない性質のものであります。
従つて、わざわざ
法律をつく
つてこれを
強制をしてや
つてこそ、初めて
公衆衞生が向上して行くことになると思います。そういうときに、その一番の指導の中心である
厚生大臣が、
法律で
強制的に実施しているこの問題に対して、
疑いを入れるような言葉を放つたということは、
厚生行政を推推する上に、重大な障害を與えるものだと私は思う。これによ
つて、
国民はなおさらのこと、
公衆衞生に対して喜んでこれに従わないような傾向が出て来ると思うのであります。
従つて、私はこの点を心配しておる。確かに、
BCGに対して
疑いはありましよう。それから
結核予防会に対しても、われわれは非常な憤激を感じておる。しかしながら、国全体の
政治面を
考える場合日に、
国民の
公衆衞生を向上させる点においては、これは
文化国家として絶対に必要なことですから、それに
疑いを持たせるような言動が、
厚生大臣にあ
つてはならないと私は思う。
従つて、私はできるだけ早く、この
機会にこの点を調節できるような行動をとられることが、最も必要なことではなかろうかと思うのであります。