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1951-10-22 第12回国会 衆議院 厚生委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十二日(月曜日)     午後一時五十二分開議  出席委員    委員長 松永 佛骨君    理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君    理事 亘  四郎君 理事 金子與重郎君    理事 岡  良一君       大石 武一君    田中  元君       武藤 嘉一君    柳原 三郎君       苅田アサノ君    福田 昌子君       松谷天光光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 橋本 龍伍君  出席政府委員         厚生事務次官  宮崎 太一君  委員外出席者         厚生事務官         (薬務局長)  慶松 一郎君         厚生事務官         (社会局長)  木村忠二郎君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         專  門  員 川井 章知君         專  門  員 引地亮太郎君         專  門  員 山本 正世君     ――――――――――――― 十月十六日  委員松本太郎辞任につき、その補欠として  羽田野次郎君が議長の指名で委員選任された。 同月二十二日  理事福田昌子君の補欠として岡良一君が理事に  当選した。     ――――――――――――― 十月十八日  医師たる公務員の待遇改善に関する請願丸山  直友君紹介)(第三号)  連合軍の事故による被害者損害賠償に関する  請願池見茂隆紹介)(第三三号)  強制医薬分業反対に関する請願千賀康治君紹  介)(第六九号)  同(千賀康治紹介)(第七〇号)  栗生楽泉園道路改修並びに防火施設費国庫補  助の請願武藤運十郎紹介)(第八四号)  社会福祉関係行政費全額国庫負担に関する請願  (辻寛一紹介)(第九二号)  結核予防法による健康診断及び予防接種費全額  国庫負担請願辻寛一紹介)(第一〇二  号)  上下水道施設費国庫補助等に関する請願辻寛  一君紹介)(第一一二号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 同日  兒童保護関係費国庫補助に関する陳情書外一  件(第一三  号)  遺族援護対策確立に関する陳情書  (第二〇号)  調理士従業員法制定に関する陳情書  (第三五号)  兒童保護関係費国庫補助に関する陳情書外二  十六件  (第五〇号)  国立療養所患者待遇改善等に関する陳情書  (第五四  号)  霞島、桜島、指宿温泉、開聞岳を結ぶ線を国立  公園に指定の陳情書  (第六一号)  瀬戸内海国立公園整備促進に関する陳情書  (第六四号)  兒童保護関係費国庫補助に関する陳情書  (第七  五号)  戰争犠牲者救済に関する陳情書外一件  (第八一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員及び小委員長選任に関する件  BCG接種に関する件     ―――――――――――――
  2. 松永佛骨

    松永委員長 これより会議を開きます。  まず理事選任についてお諮りいたします。委員福田昌子君が当委員会理事辞任を申し出られましたのでこれを許可し、その補欠選任につきましては、先例により委員長より指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松永佛骨

    松永委員長 御異議なしと認め、岡良一君を理事に指名いたします。     —————————————
  4. 松永佛骨

    松永委員長 次に、BCG接種に関し、最近新聞紙上にクローズ・アツプされ、種々と臆測されまして、その影響するところもきわめて大きいと存じますが、この際橋本厚生大臣より、これが経緯をお聞きいたしたいと存じます。橋本厚生大臣
  5. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 先般来、衆議院厚生委員会にも御報告を申し上げたいと思つておりましたところ、本日その機会を與えられましたことを、私まことにありがたく存じます。  実はBCG予防接種の問題に関しまして、その少し前に、こういう話をちよつと聞きました。本月の四日に、日本学術会議第七部の有志から書面が出て参つたのであります。その書面は、七部長と申しますか、塩田博士が持つて来られたのでありますが、私といたしましては、その書面だけではどうも趣旨がわからないから、署名された十数名の方々に会いたいということを申しまして、十二日の夕方に会つたのであります。その書面内容はこういうことでありました。BCG強制接種については、いろいろ疑義を抱く者もあり、問題があるから、なお厚生省においても愼重調査研究をしてもらいたいという趣旨でございました。そこで十二日に、説明を聞くまでは何もわからぬと思つておいで願つたのであります。塩田博士慶応医学部長阿部教授と、それから東大の医学部長をやつておられた兒玉教授慈惠医大細菌学寺田教授と、慶応病院長をやつておられる大森院長、それだけ来られました。そのお話趣旨は大体こういうことでありました。  BCG予防接種は、法的に強制するという建前であるけれども、これに関しては、有効であるか、それほど有効でないかということについても、いろいろな疑義がある。それよりも、まず第一に、重要な問題は、ほんとうに無害だか、有害な場合が絶無であるかどうかということについて、疑義が存在しておる。学問的にいいましても、経験的にいつても、いろいろな問題があるものについては、厚生省としてもつと研究をされる必要があるのではないか。いやしくも人体影響を及ぼす問題なんだから、研究調査を要するとすれば、その間、法的強制ということは一時差控えられるのが筋だと思うということを、主として阿部教授兒玉教授あたり発言されたが、そういう趣旨お話を伺いました。  私といたしましては、自分が責任者として執行しておる結核予防法でありますから、とにかく身体、生命に影響を及ぼす問題であるとするならば、調査研究を要することは重要な問題だ。ほかの経済政策等の問題であるならば、しかるべき程度で実行して、これを実行しながら調査もし、研究もしながらいろいろ内容改善をはかつてつてかまわぬけれども、いやしくも保健衛生関係の問題であつて人体影響があるというものについては、少くともこれを法的に強制をする場合には、論争等もあまりないという段階にならなければならないのではないか。それまでの間は、学術会議有志が言われるように、相当程度有効ならば、国としてサービスをし、それをどんどん実施するのに骨を折ることは、けつこうな話だけれども、法的に強制をして、いやでもしなければいかぬということは、あるいは考えものであるかもしれない。そこで私がその席上で申しましたのは、学問的に調査研究をした結果、有効、無効論についても、あるいは絶対無害か、ある場合には有害な場合があるかという論理についても、これは学問的にいろいろな研究をするということは、まことにけつこうなようであるが、今日すでに法律ができて施行されておるのだから、私としては、一体こういう問題について、なお調査研究いたす必要があるかどうかということ自身が、良心的に言つて非常に疑問だと思う。いやしくも調査研究をもう一ぺん本格的にやるということになれば、法的強制ということについては考えなければならないと思うので、私は今日どつちにとも措置もとりかねるし、御返事もいたしかねる。学問的な結論がどうあるかということは、後々の問題に讓るとして、少くとも学術会議においてなお調査研究を必要とするということについては、やはりこれは何かのデータがあり、根拠がおありなのだから、それを出してもらいたい。それについては、おそらく国内でもいろいろな疑わしい場合についての報告が来ておるので、こういうものについてもなお調べなければいけない。また日本の国内なり、あるいは外国なりで、相当学者議論があつて、これは荒唐無稽とは言いがたいとかなんとかいう、少くともなお調査研究を必要とするのだと進言されたことの根拠については、すぐに材料をお集め願い、それをお送り願いたいということを申しておきました。その際に阿部さんでしたかどなたでしたか、そこにおられた人から、それはあとからお送りするという話でありました。ただ研究それ自身、つまり学術的に内容研究して判決的なものを出すのは、日本学術会議というのは研究機関ではないのだ、それは違うのだという話でした。それは私の方で求めない、今日私として問題なのは、そういう研究をしてもらいたいということよりは、むしろ調査研究すべき問題が存在しておるのだということの進言材料を提供してもらいたいということを申しておいたのであります。  私といたしましては、この問題に関する限り、私がその方々の前で答弁いたした以上に、格別進んだことは考えておりません。ただ問題自身が、すでに実行しておる法律でありますだけに、これはきわめて重大な問題でありますので、総理には報告をいたしておきました。報告の要旨は、要するに現在の結核予防法について、日本学術会議相当人たちから、なお調査研究がいる、だからその結果いかんを見るまでの間は、法的強制はとめたらどうかという意見が出ておる。今日私としては、責任大臣として調査研究に手をつけるかどうかということは、きわめて重大な問題だと思う。いやしくもあらためて研究するとなれば、その研究結果というものが、必ず有効で、かつ絶対無害という結論が初めから出ると予定するわけには行かないのだ。調査研究をするとなれば、あらゆる場合を考えなければいけない。それはできておる法律だけに、とにかくこれを取上げて研究して行くこと自身相当の問題があるのだが、これは特に保健衞生関係の問題でもあるし、およそこういつた重大問題について論議を避けるということはよくない、至急その進言内容なつたところのデータ、つまり、なお現在すでに割切つてしまつた問題ではないのだという理由だけをはつきりさせたいと思つておるということを言うておきまして、了承を得たのであります。私は今日もそういうつもりで対処しておりまして、学術会議の方からいろいろ論文等の出て来るのを待つている次第であります。  これは人によつて考え方は違うと思いますけれども、その後議論が出て来た間に、大体有益であるのならば、中に若干有害な場合があつても、強制していいのじやないかという考え方の人もあるようであります。私の考えでは、ほかの近代文明国においても大体そうでありますように、人体影響を及ぼす問題は、たとい大多数の場合有益であつても、しかし絶対無害だということに割切れる段階になるまでの間、法律的強制は避けた方がいいのではないかということを考えているのであります。従つて日本学術会議から今日なお調査研究を要する問題であるという進言を受けましたことを、きわめて重要に考え、非常にいろいろ心配しながら対処いたしているというのが現状でございます。
  6. 松永佛骨

    松永委員長 ただいま橋本厚生大臣より、過般新聞紙上に掲げられました橋本厚相談話に対する経緯を承つたのでございますが、これはきわめて重大な問題でございまして、昨日理事会におきましても、いろいろ検討したのであります。  第一は、BCG接種については、法律的には別に罰則を付しておらない。一応強制の形にはなつておりますが、絶対唯一無二のものとして罰則を付しての強制ではないのでありますが、末端においての取扱いに手違いがあるのではないか。第二には、BCG強制接種は、予防接種法により昭和二十四年十一月から実施されて、結核予防法は第十国会におきまして数箇月にわたつて審議されたにかかわらず、その際に何らの申入れも、進言も、反対もなかつたのに、今日に至つて学界からこの種の申入れが行われたということは、何かそこに政治的意図があるのではないか。それがないならば、そのよつて来る学理的な根拠ということが問題になると思います。さらに第三は、これは少し申し過ぎかもわかりませんが、結核予防会BCGの製造が独占的事業のような状態にある、かつ同会に対しまして相当巨額研究費が補助されているという実情等が疑心暗鬼を生んで、ことさらに問題が大きくなつて来ているのではないか、こういう点に私どもも一応疑義を持つのであります。ただ問題は、現に法律として施行されている問題、これを行うことにつきましては、厚生大臣談話によつて非常な衝撃を與えて、この実施にも躊躇逡巡し、やめていいのか、やつていいのかという問題が、末端における重大問題だと思いますが、これはきわめて急速に措置をしなければいけないというところに立ち至つているのではないかと思いますので、大急ぎ措置をするということについて、厚生大臣はどうお考えになつておりますか。
  7. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ただいまの委員長の、大急ぎ措置をするということは、私はこの問題は、割切つた結論が早く出れば、それに越したことはないと思いますけれども、ただ問題が問題でありまするだけに、いや、学術会議の言うのはまつたく根拠がないとか、あるいはまた非常に急いでどうこうするということは、私としては、もう少し愼重考えてみたい。少くとも学術会議の申し入れられた問題につきましても、なお調査研究は必要なんだということを言われたのですけれども、それは結論でありまして、りつぱな先生方ではありますが、そういつた結論を出される根拠なつた当面のいろいろな事実のデータだとか、あるいはまた学者意見であるとかいうものを、私ももう少し検討してみたいと思います。ただなるべく早く問題がおちつくということは、私の希望するところであります。  なお、ただいま委員長の御発言がありましたが、私も実は厚生大臣になつてから日が浅いものですから、あるいは立法趣旨等について、誤解をいたしておるのかもしれませんが、私は省内におりまして、結核予防法というものは、法的に強制しているのだというふうな建前説明を聞きまして、大体そういう趣旨考えておるものですから、いやしくも法的に強制しているものであれば、要するにこれをあらためて研究するということになりますれば、研究してみる前に、法的強制を一時とめるとかなんとかいうことを考えなければ、話が無理ではないかということを、私自身としては、良心的に深く煩悶をいたしておるわけであります。ただ委員長の言われるように、その後、人からも注意を受けたのでありますが、結核予防法というものが罰則をつけていないということ、種痘法などとは意味が違うのだ、むしろ今日でも研究することがあればしたらいいので、それをいやでもおうでも、無理にでも強制接種をするというほど強い趣旨でない。だから、そう突き詰めて考えないでいいのだという話も、私は聞くのでありますが、ただいま言われた委員長のこの立法趣旨なるものについても、私も実はそう深く検討を重ねておりませんから、私、もう少しその点についても考えてみたいと思つております。
  8. 松永佛骨

    松永委員長 いかがでございましようか。この問題についてどなたか御発言は……
  9. 大石武一

    大石(武)委員 ただいま橋本厚生大臣のいろいろなお話がありましたが、多少不審に感ずるところが二、三ありますので、この点をはつきりしたいと思うのであります。  第一番に、BCGの問題であります。BCGがきくか、きかないか、あるいは有害であるか、無害であるかということが、ただいま議論になつておるのであります。私の見解といたしましては、BCGというものは、理論上正しいものと思うのであります。またそれは強制的にやるべきものであろうと思います。但し、現在使用しておるBCG、つまり結核予防会独占事業としてつくつておる乾燥BCGというものは、私はあまりいいと思わない。おそらくあまり有効なものではなかろうと思うのであります。事実、そう有害であるとは思いませんが、効果の、ごく薄いものであろうと思います。この点に問題がありますけれども、理論的に、実際に結核予防としては、唯一無二方法であろうと思うのであります。ところが、今厚生大臣は、このBCG結核予防のやり方が、絶対に無害であつて有効であるものならばよろしいけれども、そうでない限りは、あくまでこれは疑問であつて、すぐやるのはさしつかえるというお話でありました。世の中に、絶対有効であり、絶対無害であるというものがあり得るでありましようか。何が一本有害であるかということでありますが、おそらくBCGに関して有害であるという点は、二つあると思います。一つBCGをやつた場所に、潰瘍をつくつて、なかなかなおりにくい、あとに醜い斑痕をつくるというのが一つ理由である。もう一つは、結核BCGを注射することによつてさらに悪化されたということ、この二つがあると思うのであります。  まずあとの点から申し上げますと、このBCGを注射したことによつて結核がさらに悪化したということは、間違いだろうと思う。これは巖密な研究が進んでいないので、ただそういうふうに感じた医者の無知であるか、あるいは単なる風説によつて、そういう見解も出たと思うのでありまして、どの文献を見ましても、BCGによつて結核が悪化されたという正確な文献はなかろうと思います。  それから、もう一つの前の理由である潰瘍をつくり、斑痕をつくつて、なおりにくいという問題は、種痘と比べたらいかがでありますか。種痘をすると、必ず猛烈なはれものをつくつてあとに醜い斑痕を残します。あるいは腸チブスとか、コレラとか、いろいろな予防注射を見ましても、いつでも、たいていの場合には、二、三日熱を出したり、あるいは非常な不快感を與えたり、頭痛を與えたり、いろいろな副作用があります。絶対に無害であつて絶対に有効であるというものは、世界中にないと思います。従つて、そのような副作用があるからといつて、その面だけを強調して、これは強制的にやつてはならないと思うという考えは、少しどうかと私は思うのであります。  それから、話が少し飛びますが、学術会議塩田博士あるいは阿部博士連中が、BCGに関していろいろな疑義があるといつて抗議を申し込まれたようでありますが、一体これらの抗議を申し込んだ博士の方が、はたしてBCG研究をどれだけしておいでになるでありましようか。おそらくこれらの人々は、BCGに対して何ら的確な知識はないだろうと思います。何らの深い知識を持つている人はありません。学界を見ましても、そういう連中が何ゆえことさら法で強制したBCGに関して、ジヤーナリズムに乘るような申入れをしたか、ここに何らか政治的な含みがあるのではなかろうかと私は思います。先ほども委員長が申されましたように、現在の結核予防会に対して、何らかの含みがあるのではなかろうかという感じがする。われわれの感情から申しましても、現在の結核予防会というものは、はなはだけしからぬ存在だと思います。BCGを独占し、その他を独占し、あらゆる閥をつくつて日本結核医学界を風靡しておるのは、あまり感心しないことであります。ましてあまり効果のないような乾燥BCGをつくつてそれを強制的にやらせる。しかも結核予防法による強制的な接種においては、範囲があまり広過ぎると思います。あれほど数多くやらなくてもよいはずです。やらなくてもよいところまでやつているところに、確かに予防法の欠点がある。これはむしろ悪く考えるならば、結核予防会独占事業の現われであるかもしれません。しかしながら、問題はそれだけにとどまらないのです。厚生大臣が、現に厚生省が主体になつて法律で施行されている結核予防法に対して、疑いを表明するということは、大きな政治問題になると思いますなぜかと申しますと、一般にこの公衆衞生という問題は、国民にとつて実際直接にはありがたくないように感ぜられる問題なんです。国民が、堤防をつくつてもらいたい、橋をかけてもらいたい、道路をつくつてもらいたいという問題については、政府が、いくらいやだ、金がないと言つても、国民はあくまで、してくれしてくれといつて要求する問題です。ところが、公衆衞生の問題は、それとは反対であります。お前は、結核予防注射をしろ、あるいは腸チブス予防注射をしろ、何をしろと言われれば、たいていの国民はいやがる。痛い思いもしなければならぬし、熱も出る。ほうつておいても、あるいは病気にならないかもしれませんから、たいていいやがる。一般に公衆衞生の問題は、国民が喜んで進んでこれを迎え得ない性質のものであります。従つて、わざわざ法律をつくつてこれを強制をしてやつてこそ、初めて公衆衞生が向上して行くことになると思います。そういうときに、その一番の指導の中心である厚生大臣が、法律強制的に実施しているこの問題に対して、疑いを入れるような言葉を放つたということは、厚生行政を推推する上に、重大な障害を與えるものだと私は思う。これによつて国民はなおさらのこと、公衆衞生に対して喜んでこれに従わないような傾向が出て来ると思うのであります。従つて、私はこの点を心配しておる。確かに、BCGに対して疑いはありましよう。それから結核予防会に対しても、われわれは非常な憤激を感じておる。しかしながら、国全体の政治面考える場合日に、国民公衆衞生を向上させる点においては、これは文化国家として絶対に必要なことですから、それに疑いを持たせるような言動が、厚生大臣にあつてはならないと私は思う。従つて、私はできるだけ早く、この機会にこの点を調節できるような行動をとられることが、最も必要なことではなかろうかと思うのであります。
  10. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 大石委員お話でございますが、私の考えておることを申し上げたいと思います。絶対ということは、この世の中にないのじやないかというお話でありました。これはあるいは非常に哲学的にいえばそうなのがもしれませんが、これも私はおのずから程度の問題であろうと思います。この間学術会議先生方が来られましたときも、会議の問題については、潰瘍の問題と、もう一つBCG接種によつて結核を増悪させた疑いのある場合があり得るのじやないか、少くともそういうようないろいろな疑い意見が出ておるし、レポートが出ておるというようなお話でありました。なおこまかいことを申し上げるといろいろありましたけれども、私はそれに関しましても、おのずから程度問題があると思います。潰瘍の問題というのは、残念ながら今日のBCG種痘の場合よりも非常に大きな、長くかかる潰瘍をつくるようであります。今後私はBCGを、ずつと、私自身もやつて参りましたし、公衆衞生の面からも施行するつもりでおりますけれども、この点について潰瘍を除く方法があるなら、どんどん研究すべきものだと思います。ただ一番の問題は、BCGによつて結核病勢を増悪させたのじやないかと思われるようなレポートがいろいろ出ておるし、新聞投書等も出ておる。聞くところによると、外国学者——日本学者はよく知りませんが、学者等論文の中にも、そういうことを掲げている人がある。かりに絶対的ということは言えないにしても、少くとも種痘をやつた結果、天然痘になつたり、あるいは増悪させたりというふうな議論があるかないかという問題と、結核の問題については、おのずから論議程度が違うのじやないか。私は近代文明国保健衞生の情勢を見ましても、からだにとにかく毒素なりあるいは生菌なりを植えるという場合には、非常に愼重な考慮の上でやつているし、現在われわれが大いに尊敬しておるイギリスとか、アメリカとか、ドイツとかいうような文明国では、あまりこれをやつておらないという点等考えてみましたときに、私自身は、かりに有効でありましても、無害であるという——まあこれは程度の問題ですが、ほんとうに無害なんだということについて、ほとんど論争がないというふうなところまで来ればよろしいけれども、とにかく相当程度の人が論争をし、あるいはまた相当広範囲に疑いが出るというふうなときには、やはりものを考えてみなければならないのじやないかということを、この問題とは別に、基本的な一つの民主主義の原則として考えております。  今日のこの問題に関してでありますが、私はそういうような見地からいたしまして、ただいま大石委員からお話がありましたように、愼重考えなければならぬということ、その通り私も愼重考えておるわけであります。ただ疑いを私が表明したのがいかぬというお話でありますが、それは少し私のものの考え方を御理解願いたいと思うのです。疑いを表明したのは私ではないので、日本学術会議の七部の有志方々疑いを表明しておられる。これは施行しておる法律なんです。いやしくも施行しておる法律に対して、いささかでも疑いを持つような事態が起つてはならないということなら、私はこの論議に取合つてならぬことになると思う。いやしくも民主主義で考える限り、一つ疑いを持つ意見が出て来て、その意見を聞いて、かりに調査なら調査をするということになれば、その調査結果というものは、現在の結核予防法を大いにやれ、あるいは罰則をつけてやつてもいいのではないかという結論が、必ず出るかどうかわからない。従つてそれを取合つて調べてみるかどうかということが、私の良心からいうと大問題であると思つておる。今日でもそうなんです。従つて、これに関しましては、ほんとうに調べるとすれば、あらためて私はあつちこつちに諮問しなければならない。今大石委員の言われたことに、学問的に結論を下すのは私の仕事ではないし、私には知識もない。ただ今日調査すべき段階にあるかどうか。要するに持ち出された問題に対して何らか取合うかどうかということは非常な問題だと思う。私が今日考えておりますことは、徹底的に諮問を調べるかどうかということについては、まだ学術会議の諸君からも、調査研究を要するという立論の基礎になつ論文なりその他の報告をもらつておりませんから、結論を出しておりませんけれども、聞くところによると、アメリカの結核学者として有名なマイヤー教授の論文なども出ておるようでありますが、学術会議方々意見を出されたのも、それなどが相当動機になつておるという話です。そういつたようなもので、やはり調査研究がいるということになれば、これは調べなければならないのではないかということを私は考えております。繰返して申しますが、疑いを表明したのは私ではないので、今日なお調査研究がいるのだという疑いを表明することが、もつともであるということを一応考えるならば、それを研究した結果はどうなるかわからないけれども、もつともなものであるならばやはりそれを調査研究しなければならないのではなかろうかということを私は申したわけであります。新聞は長い話を短かい言葉で書いてありまして、いろいろ誤解を受けるかもしれない。私が繰返して申しておりますのは、要するに疑いの表明に対して調査に応ずるか。いやしくもこれは調査しなければならぬということになれば、BCG接種自身は国でサービスをし、さらに強制的にやるにしても、法的強制というものは考えなければいけないのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。あるいは御所感を異にする点があるかもしれませんが、私自身はそういうつもりでおります。
  11. 大石武一

    大石(武)委員 ただいま厚生大臣の御答弁をお聞きして非常に安心したわけであります。と申しますのは、われわれは厚生大臣の話を聞いたわけではなく、新聞紙を見たわけでありますが、その新聞紙の論説では、どうも厚生大臣はこのたびの結核予防法を否認されているような話ぶりに感じたのです。そこでわれわれはただいまの質問を発したわけです。ところが、ただいまの意見を聞くと、私は厚生大臣考え方は正しいと思う。いわゆる現在施行されている法律であつても、疑いが出た場合には、あくまで調査研究するというその考えは正しいと思います。そういう限りにおいて談話を発せられたのならば、私は何も責める必要はないと思う。ただ否定されるような方向にわれわれは聞きましたので、これを質問しなければならなかつたわけでありますが、今の厚生大臣の話のように、結核予防法を否定しているのではない、あくまでもそれはそれとして、別に調査研究する必要があるというのが真意であるとすれば、われわれはこれをあえて責める必要はなかろうと思うのであります。
  12. 岡良一

    ○岡(良)委員 大臣は行かれましたが、問題は、大臣の御答弁を聞いていると、この問題についての黒白を、厚生省責任においてつけることについて、何ら明確な態度の表明がない。結核予防法をわれわれが大幅に改正し、その名のごとく、あの予防法の中で予防の一番大きな武器は、いわばBCGであります。この効果が全国的に疑われるような大きな衝撃を與える結果を誘致しておいて、政府としてはつきりと黒白をつけることについてきわめて逡巡しておられる印象を與えていることは、法律に協賛したわれわれとしても、国民にまことに相済まないところである。しかしこの責任は一応おくとして、幸いに次官も公衆衞生局長もおられますので、橋本厚生大臣の御答弁の間に間にあつた、いささか技術的な点について、特に公衆衞生局長にお尋ねしたい。  第一点は、学術会議の答申案というものは、まことに結論だけを打出されたものであるように思いますが、そのデータとなつたのはどういうものですか、それをお聞きしたい。
  13. 山口正義

    ○山口説明員 お答え申し上げます。ただいま岡委員の御質問の学術会議申入れに関するデータ、これは私どもの方はまだいただいておりません。
  14. 岡良一

    ○岡(良)委員 橋本厚生大臣の御答弁の中に、データとして——これは想像されたのかもしれませんが、いやしくも公的な団体が、大臣に一応の意見を具申する場合において、その理由を口頭をもつてしてでも言わないことはないと思うのであります。單に調査を要するというだけでは、相済まないと思います。そこで口頭で聞かれたのだと思いますが、確かに大臣の答弁の中に、潰瘍ができることと、さらに結核が増悪するということが理由になつておりましたが、まだそういうことはお聞きになつておられないのですか。
  15. 山口正義

    ○山口説明員 ただいま仰せられましたように、潰瘍ができる、あるいは結核を誘発するというふうなお話が出たのでございますが、具体的にどういう方にどういうふうに出た、あるいはどこで調査してどういうふうになつたというふうな、具体的な資料を伺つておりません。
  16. 岡良一

    ○岡(良)委員 BCG効果判定については、先ほど大石委員からも言われましたように、かつてBCGは、いわゆる生菌の浮遊液であつたことは、局長も御存じの通りでありますが、今は乾燥したものを用いております。従つて、菌が生きたままでいない、死亡しているものが非常に多いということは、製造者自身もそういう述懐を漏らしているということを、私は聞いたことがある。そういうことになれば、従つてBCG効果も、免疫に対する能動性も、かなり減ずるということが考えられるのでありますが、そういうことについて厚生省はかつてお聞きになつたことがあるか。またBCG強制接種しようということに疑問があるということであれば、BCG接種液そのものについての効力検定ということについて、何らか適当な措置をおとりになつておられるか、そういう点につ了いて伺いたい。
  17. 慶松一郎

    ○慶松説明員 お答えいたします。御存じの通り生菌によりますBCG、すなわちいわゆる液体BCGにつきましては、昭和十三年から十八年までの間におきまして研究されました結果、当時の日本学術振興会から厚生省に具申がございまして、これを使うことになつたのでございます。そうしてこれは昭和十九年から使つてつたのでございます。ところが、御存じでもございましようが、このものは一週間ぐらいしか命がございません。その意味におきまして、戰争中から陸軍軍医学校において研究いたしておりましたのがいわゆる乾燥BCGでございまして、これを今日国立予防衞生研究所におられる柳沢博士その他が取上げまして、この研究をいたしましたところが、これも有効であるということがわかりまして、今日乾燥を使用いたすようになつたのであります。この乾燥BCG昭和二十四年から取上げているのでございますが、実際上国家でこれを検定いたすようになりましたのは、昨年からでございます、この検定におきましては、いろいろな方法をやつておりますが、しかしながらその最も必要な点、すなわちこれが効力があるかどうかということにつきましては、幾つかの試験をやつているのでございます。すなわちモルモツトにつきまして、これを注射することによつて結核を防ぐことができるかどうかということを、つくりました製品の製造番号ごとにやつているのでございます。なおこの検定も、二十四年からやつているのでございます。その意味におきまして、私どもはこの検定によつて、このものが効果があるという判定のもとに使わせている次第でございます。
  18. 岡良一

    ○岡(良)委員 われわれとしても、学界論争の中に国会が巻き込まれることは、まことに迷惑なことでもあり、委員長の御指摘になつたような事実が、かりにあるとして、学閥的なその他いろいろな対立抗争というふうなものがある。その中にわれわれの論議判断が誤たされるということは、まことに迷惑千万なことであります。厚生省としては、少くとも昭和十三年以来BCGを使い、モルモツトを通じての檢定においても、まさしく有効であるという信念は、いまだに強く持つておられるのでありますか。
  19. 慶松一郎

    ○慶松説明員 少くとも私どもの檢定あるいは今日使つておりますものにつきましては、ただいま申しましたように、検定の結果から申しまして、有効であるという考えを持つておる次第でございます。
  20. 岡良一

    ○岡(良)委員 そうすると、先ほど大臣の御答弁では、少くとも学界として、これについてはなお調査を要するという意見が具申されておる以上は、やはり種痘のような場合と違つて法律強制をして結核を誘発するというような事態があることは、まことに相済まぬことでもあり、従つてこれには苦慮しておるというようなお話であつたが、あなたの話を聞けば、絶対に有効であるというお話で、大臣とあなたのお考えの間に、多少食い違いがあるような感じがするのですが、その点なお確かめておきたいと思うので、重ねてお伺いする次第であります。
  21. 慶松一郎

    ○慶松説明員 私も先ほど来大臣の御答弁を聞いておりましたが、有効か無効かということにつきましては、大臣は別に無効というような意味のことを言われたとは、私は聞いておりません。従いまして、私どもは大臣の答弁と、その点につきまして違つているとは思つておらぬ次第でございます。
  22. 岡良一

    ○岡(良)委員 ただ私どもは、当該主管局長という立場において、やはり学術会議の具申よりも、あなた方が結核予防の幕僚であつて、幕僚が確かにこれが有効であるというお考え、しかもそれは責任ある檢定なり、試験なりを通じての結論をもつて、はつきり有効であるというお考えであれば、当然厚生省が一体となつて、厚生予防結核予防の対策に当らなければならない以上は、その意見が中心となつて結核予防対策は今後も推進さるべきものである。従つてBCGもやはりそうした学術会議意見具申そのものにこそ調査を要すれ、やはり既定の方針通り行くべきがほんとうではないかと私どもは考えるわけですが、そういう点については、どういうお考えでしようか。
  23. 山口正義

    ○山口説明員 私からお答え申し上げますが、BCGが有効であるということにつきましては、ただいま慶松薬務局長からもお答え申し上げました。大臣も、有効であるということについては、お考えは同じだと存じます。ただ学術会議の方からのお話で、有害であるかどうかというふうな疑いがあるという学術会議の方の先生方お話なのであります。大臣も先ほどお話になりましたように、現在結核予防法に基いて実施しておりますBCG予防接種が、研究を要するかどうかという資料を学術会議の方からも出していただき、私どもの方でもよく調査をしておるというふうな段階でございます。
  24. 岡良一

    ○岡(良)委員 言葉の表現とでも申しましようか、これは別な話ですが、先ほど大臣結核を増悪するというようなお話をされておりました。あなたは誘発と言つておりますが、BCGに関する限り、これは非常に大きな違いを持つておることは御存じの通りであります。要するに、BCGというものは、本来予防のためにはマントー氏反応で、結核のない者に免疫を與えるためにするものであつて従つて、もしかりにBCGをやつて結核を増悪するという場合があれば、これはすでに結核を持つておる者であつてBCGをしてはならぬ者にしたのであつて、これはBCGが悪いのではなく、その前の診断なり、手順において誤謬があつたということで、厚生省としては増悪させたというようなお考えは、実際にはとらないのだから、そういう点は十分お気をつけ願いたいと思うのです。実は今日大臣の御答弁で、いろいろ苦慮されているというようなことを率直に承つて、私ども非常に敬意を表しておりますが、山口さんは御存じないでしようか、最近ある結核研究所で、BCGによつて陽性になつたか、自然感染で陽性になつたかということを判定する試薬というか、接種薬ができておるということを、御存じないでしようか。
  25. 山口正義

    ○山口説明員 ただいま岡委員の御指摘になりました第一の点でございますが、結核を誘発するか、増悪させるかという問題については、私どもよく聞かされますのは、BCG菌によつて結核症を起すような場合があるということを言われたことがございます。それから、すでに潜在しております結核を増悪させるという二つのことが考えられるのではないかということをよく聞かされるのでございます。具体的な資料は、まだ伺つておりませんが、そういう話は伺います。私ただ誘発の方の言葉だけを用いました。  それから第二の点の、BCGによつて陽転したか、自然感染によつて陽転したかという点を見わけるための試薬を、私まだ承知しておりません。
  26. 岡良一

    ○岡(良)委員 元来結核は非常に高度で、粟粒結核などを持つていれば、ほとんど九〇%以上はマントー氏反応が出て来ませんので、そういうところから誤謬が起れば起ります。一面潰瘍結核は、皮膚が結核に感染していることでありますから、そういうことは別といたしまして、実は私思い出したのですが、金沢大学附属の結核研究所で、BCGによつて陽性になつたのか、自然感染によつて陽性になつたのかということを鑑別する接種薬を出しておる。それは学会でもすでに昨年発表されておる。それからある県において相当高範囲に、実はためしに使われているということ、とにかく用いられて試験されているということも聞いておる。その結果については、詳しいことは知りませんが、しかしBCGの効力を判定するために、モルモツトもけつこうですが、そういう薬のあるということも、何かの御参考にお伝えいただければけつこうだと思います。特に私が製造者から聞いたことは、これがBCG接種による潰瘍に軟膏として使うと有効だということですが、別にプロパゲイターというような人でなく、まじめな学者で、そういうことがあつたことをこういう機会でありますし、友人でもありますから、御参考にしていただきたいと思います。  それではこの程度で、あとまた大臣が来られましたら、お尋ねいたします。
  27. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいま問題になつておりますところのBCG問題につきましては、参議院は大分大きく取上げておるようであります。当委員会としましては、先日委員長から御相談がありましたときにも、一応委員会としての意見を申し入れる程度でいいじやないか、これを問題にすることによつて、いやが上にも新聞紙等が取上げることが、何らの裨益することもなくて、逆にただ国民を疑心暗鬼に追い込むだけであるということを、私どもも考慮いたしまして、その問題をことさらに取上げる意思を持たなかつたのであります。ただ先ほど大臣からの答弁を聞いておりますと、個人の良心的なものの考え方という点においては、了承できるのでありますが、しかし立法と、もう一つ行政の補佐に立つ人たち発言としては、そういうただいま答弁されたようなことを言えば、当然そこに大きな疑心暗鬼を生んで来るということは、私が聞いてもそう想像せられるのでありまして、私どもはかつて結核予防法の審議にあたりましても、もちろん專門家でありませんので、その技術的な面においては政府当局の原案を出す方々考え方というものを信頼いたしまして、またここにおりますところのその專門の委員からは、相当くどくその点に対しての質問もあり研究もあつた。その結果一応立法されたものが、よしんば学界であろうが何であろうが、一つの注意なりあるいは勧告があると、ただちに、では考えてみましよう、研究してみましようというようなことになりますと、ほかの立法にも、不満を持つておる人は、国民の中にはたくさんあるのであります。そういうときに、不満の意見が、あるいはかわつた意見が出て来ると、いつもそれでは考慮いたしましようというようなことを、もし当該大臣が言つたとするならば、問題が非常にデリケートになつて参りますので、これはむしろ私はここで政府委員方々に質問するというよりか、もう一度なるべく近い機会大臣に御出席を願いまして、ことにこればかりではなくて、最近続けざまに厚生省関係におきましては、国会において一旦きめた予算を、総理大臣のかつて発言で、今度は減らしてもいいのだというような疑惑を国民に持たしてみたり、あるいは国会においてはつきり立法したものを、また考え直してみましようというような感覚を国民に與えたり、こういうことを続けざまにやつております。この点については厚生省では、ことに連発二発出しておるわけでありますから、次の機会に、もう少しはつきりと大臣から考え方を伺いたいと思いますので、私はきようは政府委員方々から答弁は必要といたしませんが、大臣になるべく近い機会に本委員会に出席していただくように、委員長からおとりはからい願いたいと思います。
  28. 松永佛骨

    松永委員長 ただいま金子委員の御希望でございましたが、大体当厚生委員会は、明後日の午前十時より開会することとし、大臣の御出席を願うことにいたしております。
  29. 福田昌子

    福田(昌)委員 明後日大臣がお見えになつてからお伺いいたしたいと思いますが、その前にちよつと行政当局にお伺いさせていただきたいことは今度、結核予防法が国会を通過しました後に、こういうような非常に国民一般に疑惑を起させるようなBCGの問題が取上げられて参りましたが、これは一体どういうことが原因で取上げられて来たのか、そのいきさつを御説明願いたい。
  30. 松永佛骨

    松永委員長 それはさつき大臣が御説明したことですね。
  31. 福田昌子

    福田(昌)委員 大臣の御説明をお伺いしたのでありますが、あの程度のことで行政当局が問題として取上げるということになりますと、結核予防法BCGに限らず、他の方面にもその程度のことはあり得ると思うのであります。それをこのBCGに限つてお取上げになつたということについては、私ども了解に苦しむものがありますから、この問題がよつて起つたその原因と思われるようなことを、厚生当局でお考えの節を御説明願いたい、こういう意味であります。
  32. 宮崎太一

    ○宮崎政府委員 大臣からいろいろ御説明なつたと思いますが、私ども聞いております限りにおきましては、一つは社会保障制度審議会におきまして、これは福田委員委員として御承知でありますが、BCGの問題につきまして、第二次勧告をするにあたりまして、起草委員が、BCGの問題につきまして相当強い主張をされ、それにつきまして、社会保障制度審議会におきまして、数回熱心な御討議があり、土曜日の夜までかかつてこの問題が審議された、これは福田委員も御承知の通りであります。これが一つ社会保障制度審議会における議論でございます。  それからもう一つは、先ほど大臣が言われましたように、学術会議有志が、この問題について意見を言われた。それで大臣のところへ有志が来られる前に、日本科学技術行政協議会のある会合においてもそういう話があつたようであります。それから私のところへ塩田博士が来られて、BCGの問題の話もございました。またこれは私は知りませんけれども、大臣のところへ行つても、そういう話があつたようであります。そうしてああいう書類が出てまた書類に基きまして大臣の招きで、有志のうち五名でしたか来られまして、御説明があつたというのでありまして、それ以外のことにつきましては、いろいろ私もうわさを聞いておりますけれども、それは的確なものではございませんので、そういうような動きがあつたということだけを申し上げます。
  33. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういうような、現行法律に対していろいろ疑惑を起させるような御注意なり御意見が出たというようなことは、了承できるのでありますが、そういうような意見が出ましたならば、厚生当局としては、さつそくBCGならBCGの個々の学者について、一応の御研究になさつていただいてしかるべきであろうと思うのでありますが、そういうようなことを厚生当局としては、していただきましたでしようか、どうでしようか。
  34. 宮崎太一

    ○宮崎政府委員 そういう意見がございますけれども、厚生省——私は技術者でありませんが、技術の方におきましては、これにつきまして疑いを持つておりませんので、初めの二、三の議論につきましては何をもいたしませんでしたが、その後結核予防法に基く結核予防審議会の方におきまして、結核の専門家がたくさんおられますので、その専門家にいろいろ御質問をいたしておるのであります。専門家の方でもその辺の検討をされて、近く御返事なさることになつておると思います。あと結核予防につきましてのBCG研究をしておられます方々からは、いろいろなことを承つております。しかし厚生省の当局といたしましては、まだそれに対しまして、疑いを持つておらない次第であります。
  35. 福田昌子

    福田(昌)委員 厚生当局として多少御研究していただいていることは、非常にけつこうなことと存じますが、御研究なさるまでもなく、すでに厚生当局においては、BCGに対して確たる信念がおありだ、こういうことでございますれば、外部から、たとい日本科学技術行政協議会、あるいはまた学術会議の第七部会の有志の方が、いろいろな御意見を持つて来られようとも、社会保障制度審議会委員の一、二が、いろいろな意見を出そうとも、そういうことにおいて行政当局がお迷いになるということは、私案に解せない態度に感ずるのでございます。先ほどの厚生大臣の御意見、この間の新聞発表に関しまする御弁解は、橋本厚生大臣が非常に良心的な人である、愼重な方であるという点においては、了とするのでありますが、私は、いやしくも厚生大臣、また行政当局の担当者としての御意見としては、きわめて残念しごくな、信念のない人だという感じを持つのであります。橋本大臣の御意見は、大臣おいでになつてからお伺いすることにいたしまして、厚生当局自体が、それほどの強いBCGに対する確信と信念をお持ちであれば、なぜ人心がこれほど疑惑を持つておりますときに、厚生当局の意見なるものを御発表願わないのであるかということを、私お尋ね申し上げたいのであります。
  36. 宮崎太一

    ○宮崎政府委員 先ほど申し上げましたように、今のところ、私どもは何らの疑いを持つておらないのでありますが、学術会議の資料その他が出まして、また参議院等においても検討を加えられておるのでありますが、もしそういう一部の説のように、有害であるということに相なりまするとすれば、われわれは考えなければならない、こういう気がいたしますので、ここしばらくの間でありますがゆえに、目下のところ検討を加えておる、こういう程度でございます。
  37. 福田昌子

    福田(昌)委員 私、行政当局としての御態度に対しまして、実ははなはだ不満であるのであります。それほどの信念をお持ちであれば、国民を迷わすことのないような行政当局の信念なるものを、即刻御発表いただきたいということを申し上げたのであります。順序が相違いたしまして、すでに新聞で面常に騒がれたあとでありますから、今後厚生当局としておとり願う態度としては、さきには厚生大臣談、次には次官談が出るかもしれませんが、そういうような御意見におきまして、これ以上人心をまどわすような御意見の御発表は、嚴にお差控え願いたいということをお願い申し上げたいのであります。  それからもう一つお伺いいたしたいことは、BCG問題が、今日こういうように沸騰して参つたということに対しましては、BCGそれ自体の効果とか、あるいはまた副作用とかいうようなことに対しましても、いろいろな観点からいろいろな論争が、ある程度ありましよう。しかし、今日この問題がこういうふうに沸騰して来た当面の学術的な材料というもの、すなわちたとえて申し上げますと、非常に副作用が出て困つた例が起つて来たとか、あるいはまた先ほど局長から御説明があつたように、BCGによつて誘発されるような大がかりな事態が起つたとか、そういうふうなことがあつたのでございますかどうか、それをお伺いいたします。
  38. 山口正義

    ○山口説明員 最近におきまして、特別な事態は何も起つておりません。
  39. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、このBCGの問題は、純学問的な見地に立つてBCG効果いかん、あるいはまた副作用ということが、あながち問題の主点ばかりでないというふうな感じがするのであります。案外江戸のかたきを長崎で討つような、とんでもないところに目的があるのかもしれないという感じがするのであります。そういう点に対しまして、厚生当局は何らかその対策、研究なりをしておいでになりますかどうか、お伺いしたい。
  40. 宮崎太一

    ○宮崎政府委員 そういう深いいろいろないきさつ等につきましては、私どもは研究いたしておりません。
  41. 福田昌子

    福田(昌)委員 御研究になつておらないといたしましたら、御研究願いたいのでございます。そうしてBCGがこの問題を起した百パーセントのものではない、それに関連した何かがあるというような感じを大衆が持つておる。その点に対しましても、大衆が持つておる疑惑を払拭するような厚生省のはつきりした態度をお示し願いたいと思うのでございます。どうかその点に対しましても研究と、厚生省の善処方をお願い申し上げたい。  今度大臣がお見えになりましたら重ねてお尋ねいたしますが、これで私の質問は終ります。
  42. 松永佛骨

    松永委員長 御質疑が盡ききないようでありますが、私から簡單に一、二分間当局にお尋ねしたいのです。さきにも申し上げましたように、BCG予防接種は、罰則を付せずに、ある程度の幅を持たせて法文化しておるのでありますが、末端においての取扱いはどうなつておるか、極端に言えば、BCGをどんどんやればいいのであるというような、ほんとう強制をやつておるのであるかどうか。なお、本年の結核予防法案審議の際に、丸山直友委員からたびたび御指摘がありまして、ツベルクリン反応は一回では不備である、二回行わなければならぬということを言われたのでありますが、もしツベルクリン反応を一回行つて、陰性だからといつてBCG強制した場合、そのツベルクリンの第一回の調査に粗漏があつた場合には、国家がその責めに任じなければならぬといつたような場面も生ずるのでありますが、一体末端の扱い方はどういうふうにしておられるか、ひとつ公衆衞生局長から簡單にお伺いしたいと思います。
  43. 山口正義

    ○山口説明員 第一のお尋ねの点でございますが、BCG接種予防接種法の中に取入れられましたときには、予防接種法全体の関係で、定期の予防接種につきましても、あるいは定期外の予防接種につきましても罰則がついておりました。しかしこれを本年三月国会で御審議をいただきました結核予防法に移します際には、片方は非常に急性の伝染病を取扱つており、結核の方は慢性の伝染病でございますので、事の緊急性の観点から、結核予防法に移しましたときには、定期のものにつきましては罰則をはずしておるのでございます。定期外のものにつきましては、罰則がそのまま残つておるのでございます。しかしながら、予防接種全体の運営につきまして、昭和二十三年に予防接種法ができましたときに、厚生事務次官の通牒によりまして、予防接種法に基いて予防接種を実施して行きます場合には、いたずらに法をたてにとつて強制々々というようなことでなくて、よく国民にこの予防接種というものを納得させて、そうしてこういう法律があるのだということを教育して実施するようにというふうな通牒が出ております。爾今末端において予防接種を実施いたして参りまするにつきましては、その精神にのつとりまして実施いたしておるのでございます。結核予防法が可決になりまして施行いたします際に、各地方におきましてブロツク会議その他の会議をいたします際に、この予防接種につきましても、そういう点は十分指導して参つておるのでございます。  それから、ツベルクリン反応を一回だけでやるのは不十分ではないかというふうな点、ただいま御指摘のように、法審議のときにも、丸山委員から御注意がございました。私どもといたしましても、ツベルクリン反応の実施の方法につきまして、十分注意して愼重にやるようにということを注意いたしておるのでございます。一回の成績によつて的確な効果が出ますように実施するよう、指導して行つておるのであります。
  44. 丸山直友

    丸山委員 関連質問——結核予防法を審議いたしましたあの過程で、私がいろいろなことを申し上げて、多少うるさいといわれる程度に申し上げておつた。私は今日のような事態の起ることを予想しておりませんでしたが、可能性のある問題については、全部あの際申し上げておいたはずであります。たとえば今の誘発という問題、これもすでに感染しておる者に対してBCGが注射されたとき起るのであつて、すでに感染があつたということを実証するのは、ツベルクリン反応を見るよりほかないのであります。その場合に、現在市販のツベルクリンというものの品位はどうであるか、それの検定はどうなつておるか、その生産量はどうなつておるか、はたしてそれが完全に行われるかというようなことを詳しくお聞きしたのであります。またその当時二千倍でよろしいとか、あるいは一部の学者の言うように二百倍のものをやらなくてはならぬのかというようなことも念頭にありましたので、第一回目に、もうBCGを注射する対象となる者を決定するこのツべルクリン反応には、非常に愼重を期さねばならぬということを申し上げておいたが、はたして今こういう問題が起つて来た。  なお、これは少しそれと離れておりますが、その当時のあなたの御答弁等を今振りかえつて考えてみますと、今日は保險局長は見えておりませんが、保險における給付と結核予防法における給付との間の調整、これもあのときさんざん申し上げた。また生活保護法との調整のことも申し上げたのであります。それがはたして問題になつておる。私どもがお伺いするときには、そこまで考えて質問しておるのであるから、それに関し万全な処置を講ぜられるように、お座なりの答弁をしないで、実際にうまく行われるようにせられるということが、私は必要であろうと思います。そこが実際に行われておらぬ結果、こういうことが起つておると思うのです。今後も、こういうことは多いと思いますので、私どもが考えておることは、決してあなた方をいじめようとか、りくつつぽくものを言おうというのではなくて、法の運用が非常に円滑に行くことを念願して、こういう欠点がないかどうかということを心配して言うのであるから、その場合にもう少し法の運用に向つて、誠意を持つてつていただきたいということを特にこの際申し上げておきます。
  45. 松永佛骨

    松永委員長 なお昨日の当委員会理事会におきまして、BCG強制接種予防接種法により昭和二十四年の十一月から実施されており、結核予防法は本春の国会におきまして、数箇月にわたつて審議を続けておつたその際には、何らの申入れ進言もなかつたのでありますが、今日に至つて学界からこの種の申入れが行われたについては、その間何らか政治的意図があるにあらざるや、またそれが全然ないとするならば、そのよつて来る学術的な根拠というものに対して、一応学界意見を聽取する必要であるのではないかという話が出まして、丸山福田委員に御起草願つてBCGに関する照会状をつくつていただいたのであります。一応朗読をいたしますが、これを出すことに御異議がなければ、正式に出してみたいと存じます。   昭和二十六年十月二十二日    衆議院厚生委員長 松永 佛骨  日本学術会議第七部長       塩田廣重殿      BCGに関する件   昭和二十六年十月四日、日本学術会議会員(第七部)有志より厚生大臣に対し結核予防法に基くBCG強制接種反対であるが如き申入れをなされたことが新聞紙に報道されて以来国民はあげてBCG効果並に有害性について疑念と不安を抱くにいたり、結核予防上放置することができなくなつたものと思われます。BCG強制接種予防接種法により昭和二十四年十一月より実施され、結核予防法は第十国会に於て数ケ月にわたり審査され、昭和二十六年四月より実施されたに拘らず、かかる申入れがなされないで、今回突如としてなされた理由並に根拠を承知したいのでこれに関する詳細なる資料を早急に御提出下さるよう御依頼いたします。  以上のごとき文書をもちまして、日本学術会議第七部長に提出し、その資料をちようだいして、当委員会としてもさらに研鑚をして行きたいと思います。なおそれが有効であるか有害であるか、あるいは有効であるか無害であるか、無害であるか有害であるかというような、いろいろなデータが必ずあると思いますが、そういう場合に、もしこれが効果がない、害がある、それが副作用の範囲を越えた害があるとなれば、すみやかにこれをとりやめなければならないことは、あえて橋本厚生大臣の言をまつまでもなく、これは当然のことであると存じますが、今日の段階において起つている現実の問題でありますから、早急にこれを解決する必要があると存じますので、一応学界からこれに対する詳細なる報告をちようだいしたいという意味でこれを出したいのでありますが、これを提出するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 松永佛骨

    松永委員長 御異議がなければさよう決定いたします。  次に先ほど申しました結核予防会BCG製造が、独占的な事業のような状態にあるということと、かつ同会に対しまして相当巨額研究費が補助されておる、そういうことが、また何らかの政治的な含みを持つており、この問題に対して火に油をかけておるのではないかと思われる節もないではないのでありますが、こういう点につきまして当局のお考えを一応承つておきたいと存じます。
  47. 慶松一郎

    ○慶松説明員 結論的に申しますと、結核予防会だけにこのBCGワクチンをつくらす考えは、私ども毛頭ございません。これに関しましては、すでに当委員会でございましたか、参議院の厚生委員会でありましたかに答弁いたしたことが、私の記憶にあるのであります。ただしかしながら、現在の状況では、結核予防会以外にこれをつくりたいと申して来ておるものもございませんし、また技術的に申しましても乾燥BCGワクチンをつくり得る技術人が、他の製造所に見出されておらない状態でございます。  なお今日結核予防会のみがこれをつくつております状況をごく簡單に申しますと、結核予防会の本部におきましてつくり始めましたのが昭和二十四年の四月でございまして、なお昭和二十五年の二月に至りまして、東北におきまして結核予防会の支部がこれをつくり始めました。それから本年の八月に至りまして、大阪の結核予防会の支部がこれをつくり始めたのでございますが、この大阪の分はまだ現物が出ておりません。なお規模の点から申しますと、東京のものが一〇〇といたしますれば、東北の分はせいぜい五ぐらいでございまして、きわめて小さな規模でございます。繰返して申し上げますが、液体のBCGワクチンにおきましても、結核予防会が過去におきましてこれをつくつておりましたが、それは結核予防会がそれだけの陣容を持つておつたからでありまして、それが乾燥BCGにかわりまして、この所でつくつておるのであります。しかしながら、もちろん私どもといたしましては、他にこれをつくりたいというものがあり、しかもその施設なりあるいは技術なりが十分認め得るものならば、これをつくらすことにつきまして一向やぶさかでないものでございます。
  48. 松永佛骨

    松永委員長 いずれBCGの問題につきましては、明後日の当委員会においてさらに詳細審査をすることにいたします。     —————————————
  49. 松永佛骨

    松永委員長 次に、人口問題に関する小委員会の設置、並びに小委員、小委員長選任の件についてお諮りいたします。  土曜日の理事会におきまして協議の結果、人口問題に関しては、国の重大問題でありますので、小委員会を設け、細密に検討されたいとの御要望が強かつたのでございますが、小委員十名よりなる人口問題に関する小委員会を設置することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 松永佛骨

    松永委員長 御異議なしと認め、該小委員会を設置することに決します。  次に、小委員及び小委員長選任についてお諮りいたしますが、この選任につきましては、先例により委員長より指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 松永佛骨

    松永委員長 御異議なしと認め、人口問題に関する小委員に       青柳 一郎君    丸山 直友君       亘  四郎君    大石 武一君       松井 豊吉君    金子與重郎君       岡  良一君    福田 昌子君       松谷天光光君    苅田アサノ君 以上の十君を指名し、小委員長には大石武一君を指名いたします。  本日はこれをもつて散会し、次会は明後二十四日午後一時——さきに十時と申し上げましたが、部屋の都合で午後一時より開会することにいたします。     午後三時十八分散会