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山名会計検査院説明員 国鉄の最後に、将来
注意するという点については、私
どもの方も了承するのでございますが、一つ一つの問題を提起いたしましたいきさつを、多少ごごで御
説明申し上げますと、六四七号、これは信濃川の発電工事の際の水路トンネルを掘るときに使いました坑木とか角材とか板材とかへいわゆる仮設材の償却をどう見たがよいかということを、私の方で取上げた問題であります。
国鉄で計算しておられます償却法は、普通の一般の工事の場合は、坑木は大体三べん使えばただになるという見方をとられておりますが、信濃川の場合は、同一の箇所で七万石という坑木を使
つたのでありまして、非常に莫大な坑木にな
つておりますし、その坑木も径が大体一尺内外でありまして、これを三べん使うと
——大体平均三箇月になるのですが、三箇月使うと、あるいは多少損じたり、腐蝕をいたしたりいたしまして、頭の方とか底の方がくずれたり何かいたしますから、寸が足らなくなるのですが、三べん目にやはり
使つておるということはそれでもう全然使えなくなるという問題ではなくて、三べん使
つたあとでも、なお板や角材がとれるだけの物理的な性状を持
つておりはしないか。それからまた、現場には製材の施設があ
つて、その原木から板及び角材をと
つておるのだから、
従つてよそに持
つて行
つてとやかくするのではなしに、現場に製材施設があるのだから、三べん使
つた丸太でも、とにかくそこで製材及び板にするだけの経済的な価値はあるじやないか。七万石の原木がそこで無価値にな
つて、まきに燃やしたというわけのものではない。
従つてかような非常な莫大な数量であるということと、製材施設があるということと、なお板にひいたり、角板にして使えるという場所があるということになれば、三べん
使つてただだという見方は、どうも甘過ぎはしないかという
——これは私の方の今までに
検査院としてや
つたあれではないのですが、そういう見方も立つではないか。
国鉄でも、もちろんその点は支保工としては
使用価値はないと認めた。しかし量は別として残存価値は皆無じやないので、今後の旦積りについては
研究するというお返事でございますので、私の方もこれについては将来改ま
つて行くであろうということを
考えて、私
どもの新しきものの見方で出しました意図は到達したわけでございます。ただ衣掛隧道の四〇%の場合は、私の方が仮計算で引用した数字でありまして、絶対的なこれが残存価値の数字だというわけではありませんで、ただ普通の丸太棒から製材したものは六〇%だが、これは
使つてしま
つた後の原木だからまあ四〇%ぐらいに見れるのじやないかという仮計算で見て行くと、どんなものになるだろうという勘定をと
つて、また衣掛隧道のそうい
つたものとひつかけたあれでございます。
それから六四八号の、追加工事の問題なんですが、これも多少いきさつがありまして、信濃川の隧道工事で、追加工事の単価が、前の工事の単価と同じ単価であるのは、
ちよつと変じやないかという問題なんです。
国鉄の方では、
検査院に対する
説明が、現場の職員の
説明と、本庁における
考え方と違
つてお
つたといういきさつはあるのでありますが、とにかく
国鉄の方では、単価が同一だというのは、要するに全工事に必要な直接費、間接費を合算した総工費を、全工事量で割
つて平均単価にな
つておるから、問題ないじやないか、追加工事であろうと本工事であろうと同じ単価でよろしい、こういうお答えであります。そういう計算の仕方であることは、ごもつともだと思うのでありますが、私の方で工事費の方の間接費だけをと
つてみると、全工事に必要な間接
経費を、全工事量で割
つてあるとは、どうも見かねるという問題なのであります。少しい貸さつを申し上げぬとわからないのですが、要するに本院では、工事の現場を
検査いたしましたときの印象では、どうも前の方の工事の工事費の中に積算してある間接
経費がまかなえる部分がある、こういう印象を得ました。そうすると、
あとの追加工事の分はただにな
つて、前の仮設費で見られておるのだから、その部分はいらぬじやないかという見方を、私の方ではと
つておるのであります。それでは仮設費だけじやなくて、機械器具の運搬の費用も同じことではないかということで、そのただにな
つたものを、
あとにな
つて金を払
つている要素がありはしないかという
注意をいたしたのです。
——鉄道の現場の方の話で恐縮なんですが、現場の方では、工事量が非常に少いから、影響はないと
思つてや
つたのでありますが、そういえばそうもいわれますというので、
批難を出したのです。ところが
国鉄本省の方では、そうではなか
つた。現場のそういう
考えは誤解であ
つた。全工事量で全
経費を割
つた単価でやらせたんだ、こういう
報告です。そこで私がこれから申し上げるのは、この
検査報告には書いてないのですが、それでは全工事に必要な間接費の総
経費と全
経費と全工事量をどう見たか、その割算の資料を出してほしいということを申し上げて、それでなるほどということになれば、私の方も現場で錯覚をした、また錯覚をさせられたということにな
つて、私
どもはやむを得ぬ、これは私の方の手落ちだ、こう
考えようということで、基礎資料を出してほしいということを申し上げたわけでありますが、それが出て来ないのであります。
従つて、それでは私の方としても全工事量で割
つて間違いのない単価だという確認がついておりません。それから第一工区だけの計算をいたしてみますと、
国鉄が最初に計算されました全設計工事量と、実際におやりになりました工事数量を見ますと、実際にやりました工事数量が多いことになる。多いことになると、平均単価でやられましたものが割高になるという勘定になるのでありまして、工事量が設計工事量と違
つて参りますれば、当時の算式のうちの数字の入れ違いを来すので、当然改算の上減額をするという措置をとらなければならぬ。これは論理的な結論になるわけでありますが、その点がこの案ではまだやられていない、私の方ではこういう感じを持
つておるわけであります。
それから六四九号の問題は、これは電車職場の建設工事なんですが、総体七千万円の工事のうち分割された。これは鉄骨の加工、建方の工事で、どうも少し高過ぎるという感じを持ちまして、点検いたしてみますと、
国鉄では鉄骨工その他の人工を一トン当り二十八人六と見ておられるのでありますが、本院ではどう勘定してもこれは二十六人で十分だ。それから労務賃が一人当り五百十六円お出しにな
つておられますが、五百十六円の根拠がない。それからまた別に平米当り千三百円のびよう打ち作業費、その他の
経費を見込んでおられますが、これも理由がないではないかという感じを持
つたのであります。そこで第一の二十八人六の話でありますが、大体
国鉄で二十八人六とおとりになりました中には、これには四百五十トンのうち、二百トンは古鉄材を使
つたので、この古鉄材のゆがみ直しをやるとか、穴埋めに二人はいるのだという計算をおとりにな
つておられるのですが、私の方では二人を入れまして、一応基本的、原則的には、トン当りは合計二十人になる。しかしマル公賃金の人夫じやよう働かぬ、大体戦前の七割ぐらいしか働かぬので、二十人を七割で割
つた二十八人六というところがトン当りとしていいのだ、こういうお勘定をなさ
つたわけであります。そこの基本の二十人という数字が、はたして妥当であるかどうかという点になりますと、今申し上げました古鉄材を使うので、ゆがみ直し等に
人間がいるというのですが、四百五十トン使いましたうちの古鉄材というのは、二百トンなのであります。それを全体の四百五十トンにかけて行くということは、事実に合致しませんし、また別の
契約で二百万円をかけて、古鉄材は選別及びさび落しその他の工事をすでにやらせた鉄材でありますので、これについてさような要素を重複してお勘定になるということは、理論的に不備があるのではないかという
考え方を持
つておるのであります。
そこでなお申し上げますと、鉄骨一トン当りどれくらいいるのか。それが標準のものさしになるものであろうかと
考えてみますと、大体大蔵省の営繕管財局の古い資料によりますと、戦前は十三・一人いるというのが大体の普通の見方であります。戦後では東大の工学部の先生の桜井という人の建築労務という害物を見ますと、トン当り二十人三にな
つておるので、今、
国鉄が、二十人になるが、戦前の人夫に比べて七割ぐらいしか働かぬから二十八人にしたのだとおつしやる。要するに七割しか働かぬというのは、営繕管財局が十三人、戦後は二十人ぐらいいるということになりますと、七割ぐらいしか働かないというので、それも一理あるのでございますが、大体七割ぐらいしか働かぬという要素を見て二十人だというのが、普通のものさしにな
つておるのであります。そこで私の方も、この工事は非常に工期を急ぐとか、冬期にかかるとか、いろいろな要素がありますので、二十人ではやはり無理だろう。三割増しの二十六人に見たら、まあ無理がなくな
つて行けるのではないだろうかというので、人工の見方はそういうふうに見ております。
また労務賃の五百十六円というのは、これは
国鉄の方は、頭数の方で非能率の点を計算に入れてあるのですから、賃金はマル公計算の、いわゆる鉄骨工四百四十円、とび工三百二十五円、雑人夫二百九十七円という計算でいいはずです。頭数の方で非能率を入れてあるのですから、賃金はそういう賃金計算をしてもいいのではないかと思うのですが、全部の二十八の人工について、鉄骨工以上の五百十六円を見られておるのはどうも高過ぎる。それからびよう打ち作業は、今の人工の二十六人の中に勘定に入るのが普通世間の
通り相場にな
つている。要するに総体的に工期を急いだりいろいろなことがあ
つて、非常に早くやらす、急いでやらせるという点に、少し要素を重くお
考えにな
つてこういうことにな
つたのではなかろうか。私の方で山辺発電所あたりの工事を見ると、大体似たり寄
つたりで、私の方で勘定したもので大体できているということでありまして、
国鉄内における一つのものさしを当ててみても、やはりそうではないかということで、この点についても高過ぎるという印象は、のかないのであります。
それから六五〇号の問題は、これもやはり随意
契約でありますが、総体として材料費、労務費、労働諸役務費のうちで、特に労務費の計算が高いのであります。工事の性質は、ただいま申しましたように、スイツチ・バツクのところを盛り土をして、直線軌條を敷けるようにするために、いろいろ土どめをや
つたり、切りとり盛り土をやる、石の落ちるのをとめたり、土どめ石垣をや
つたり、側溝ということで、その部分だけ切り離してみますと、いずれもこれは普通の土工工事であります。ただ列車の待ちの
関係がありますので、私の方で大体普通いる、
国鉄の持
つておられる標準歩がかりに二割の手間賃を加えればできるのではないかということで見当をつけて
検査をしたのでありますが、大体私の方は、五千五百人くらいあればいいのではないか。それに対して一万六千人の人夫を見ておられるので、大体三倍ぐらいになるのですが、これはどうも多過ぎるという印象はのかないのであります。現場で非常に熱心にやられた方には、気の毒なんですが、現場で
研究するために、実績の出づら、歩がかりをきちんと整理されている人の資料を見ますと、大体やはり五百五十人というのが実績にな
つておるのであります。
国鉄は、これは部外に対して権威を持つものではないので、部内のほんとうの職員の勉強の資料として持
つておるものだという
お話ではありますが、私の方で大体見当をつけました
程度でできるのだという、当らずといえ
ども遠からずという
程度ではないかというふうな感じを持
つております。
それから六五一号でありますが、これは
国鉄の方では、橋脚の掘られるのを、箱わしく式の
考え方で工事をされるように、いろいろ計算にな
つておりますが、私の方はこれは矢板を打込んでや
つた方が安くつくではないか、素掘りをして箱わくを詰めて、それから土をと
つて箱わくをぐんぐん沈めて行くという
方法よりも、多少の素掘りはいりますが、鉄矢板を打込んでや
つた方が、人工の
関係、時間の
関係からい
つて、非常に安くつきはしないか。まあいろいろなやり方がありましようが、私の方はそう
考えたのです。はなはだ卑近な例で恐縮なんですが、弁当を食べるときに、お膳に一つずつのせて食べて行けば、同じ材料でも高くつく弁当で込めて食えば安くつくというふうな、ざつくばらんな話では、そういうところではないかと思うのでありまして、矢板工でやるとすればこういうことで勘定が合いはしないか。ことに、
あとで同じ
條件の橋脚を新設いたしましたときに、請負に出しましたのは、非常に安く出しましたのです。それはさつき
お話になりましたように、ダンピングのためもありましようが、その工事も、やはり請負人が工事
経費を安くあげるために、矢板を打
つてや
つておるということで、いろいろなやり方はあるのであろうが、節約するというやり方で行けば、矢板工で、私の方の見ました計算でできるのではないかという
考え方でありまして、いずれも多少
国鉄のや
つております工事に汚して、私の方の見方が今までの普通の行き方でなしに、
ちよつと見方をかえた
検査報告にな
つておりますので、
国鉄では一生懸命や
つておられますが、こういう見方をすればこういうことになるという要素が入
つておりますので、多少その点で、
国鉄で一生懸命や
つておられる方にはお気の毒だと思われるような点も
批難の中にありますが、こういう新しい一つの見方で厳格に締めて行くという要素も、
検査院としては必要ではないかということで、あえて提案いたした次第であります。