運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-11-16 第12回国会 衆議院 決算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十六日(金曜日)     午後一時二十六分開議  出席委員    委員長 菅家 喜六君    理事 大上  司君 理事 田中不破三君    理事 三宅 則義君       高塩 三郎君    高橋 權六君       田中 角榮君    渕  通義君       船越  弘君    畠山 重勇君       稻村 順三君  出席政府委員         建設事務官         (大臣官房会計         課長)     植田 俊雄君  委員外出席者         建設事務官         (河川局防災課         長)      賀屋 茂一君         建 設 技 官         (河川局長)  目黒 清雄君         建 設 技 官         (河川局治水課         長)      伊藤  剛君         会計検査院事務         官         (検査第四局         長)      小峰 保栄君         専  門  員 大久保忠文君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十四年度一般会計歳入歳出決算昭和二  十四年度特別会計歳入歳出決算及び昭和二十四  年度政府関係機関収入支出決算     —————————————
  2. 菅家喜六

    菅家委員長 これより決算委員会を開きます。  前会に引続き昭和二十四年度一般会計歳入歳出決算昭和二十四年度特別会計歳入歳出決算及び昭和二十四年度政府関係機関収入支出決算議題といたします。  まず報告書百七十ページ、建設省一般会計未収金報告番号六一四、工事費分担金の徴収に当り処置当を得ないもの——本件に関し建設省当局説明を求めます。
  3. 植田俊雄

    植田政府委員 六一四号の問題は、近畿地方建設局工事いたしております表六甲関係でございますが、表六甲関係は、これは全般的に非常に重要な箇所でございますので、昭和九年かの例の風水害以来、建設省が施工して参つたのでございます。改修工事につきましては、これは地方負担が二分の一でございますが、たまたま災害がございまして、災害復旧費改修分をやつたものでございますから、その災害復旧費の方で計算いたしますと、地方分担が三分の一になるわけであります。結果から見ますと、兵庫県に対する分担が少くなつたということが、問題になつたわけでございます。私どもとしましてもこの点はまことに手落ちでございまして、会計検査院お話のありました通り、この点ははつきり整理をつけることにいたしまして、災害復旧でも原形復旧範囲のものにつきましては、災害復旧費補助率をお認め願つて、それ以外の改良分につきましては、改良費に対する補助率の二分の一を適用するということにいたした次第でございます。その結果百二十二万五千円余を兵庫県によけいに補助金を出しておつたということになつておるのでございますから、この金額を至急に建設省に返還せしめる手続にいたしております。この点については県の方とも十分話合いがついておるのでございます。ただいままでのところは、まだ納入になつておりませんが、県の報告によりますと、十一月の県議会にこの返納金の件を上程いたしまして、それが議決になりますれば急いで返すからということでございます。若干の手違いがございましたが、会計検査院の御指摘の通り改めておりますので、御了承願いたいと存じます。
  4. 菅家喜六

    菅家委員長 本件について、会計検査院の側から御意見があれば、補足の説明を願います。
  5. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 本件につきましては、今会計課長からもお話がありましたように、検査院報告に従つて直すようにいたしております。別に申し上げることございません。
  6. 稻村順三

    稻村委員 これはそれだけのことなんですが、しかしどういうわけでこういうふうな行き違いが起きたのか、そのいきさつ、経過というものをお聞きしたいと思います。
  7. 伊藤剛

    伊藤説明員 この災害分担金の問題につきまして、戦後は多少原形復旧という点がはつきりしませんで、多少の超過工事を認めておりまして、あるいは工事期間などにつきましても、その区別が明瞭でなかつたのを、そのまま惰性としてあまり関心を持たなかつた、そういう現状がありまして、この六甲の問題につきましても、やはり厳格に考えれば、ここに指摘されてある通りであつたのですが、多少の超過工事は認める、そういうような惰性によりまして、このときまでについ直さなかつた、こういう現状でございます。
  8. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、従来はあまりこの点やかましくなかつた、それで多少の超過は認める、年々の会計検査の方も認めて来た。それで、実をいうと、二十四年もそうであろうとやつたところが、特にこの二十四年だけ会計検査院でやかましく、超過工事を認めなかつた、こういうふうに解釈してよろしいのですか。それをひとつ会計検査院建設省の両方からお伺いしたいと思います。
  9. 植田俊雄

    植田政府委員 災害復旧の問題につきましては、原形復旧超過工事ということが、いつも問題になるわけであります。御承知通り災害復旧原形復旧主義だという考え方が、昔からの伝統でございます。と同時に、原形復旧したのでは、とうていその川が維持できないという場合につきましては、ある程度の超過工事も、これは当然のことであつて、極端に言いますと、原形復旧にこだわり過ぎますと、むだな工事をやるという危険性があるのでありまして、内務省以来からの伝統といたしましても、ある程度の超過はやむを得ないものとなつておりましたし、また会計検査院の方の御事情はよく存じませんが、そういうものも認められたと申しますか、それが世間通常状態でありましたから、私は批難事項に載せなかつたこともあり得るのではないか——。これは想像でございます、会計検査院の御意見あとでお聞かせを願いますが、想像をいたしておるのであります。実は御承知通り、最近災害復旧ということが非常にはつきりなりまして——これは二十五年度全額国庫負担という制度ができまして、従来は三分の一地方が持つておりましたのが、全額国庫で持つということになりました際に、原形復旧超過工事範囲はつきり区別をつけるようになりました。また現在の地方土木災害復旧につきましても、原形復旧超過はつきり区別をつけるるいうことになりましたものですから、この問題を厳格に解釈しなければならない情勢に立ち至つてつたのでございます。その点は、私どもの方も十分承知はいたしておるわけでございますが、従来の惰性がございまして、超過工事も、これならば世間の常識じやないかというふうなところを、気がつかずにそのままに災害復旧工事としてやつてしまうというふうなことがあるわけでございまして、私どもとしましても、法律の建前がそういうことであります以上は、この点は十分注意して参らなければならぬということを考えております。今のこの問題については、二十四年度に限らず、その後の年度におきましても、いろいろ問題があるわけでございます。後ほど府県の災害復旧に対する補助金の問題が出て参りますが、その点でも、ただいまお話になられましたようなことを、ひとつ十分御検討願いたいと存じております。
  10. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 会計検査院の、災害復旧国庫負担についての従来の検査態度、それから二十四年度になりまして、従来見のがしていたものを急にやかましくこれに載せておるではないか、こういう御質問でございますが、まず災害復旧に対する会計検査院検査態度について申し上げて、御参考に供します。  今、政府委員から御説明がありましたように、原形復旧というものは区別が非常にむずかしいのでありますが、二十五年度災害復旧国庫負担に関する特例によりましてようやく原形復旧とは何ぞやということがはつきりしたわけであります。二十四年度までは、非常に不明確で、物理的の原形復旧をいたしましても、またすぐ流されてしまう。そういう災害復旧では、意味をなさないわけであります。そこで再度災害防止という大きな原則も入りまして、原形超過ということが、一般に相当行われておつたわけであります。これに対しまして会計検査院は、当局と歩調を合せまして、当局の承認されるようなものは、なるべく文句を言わない、こういう態度をずつととつておるのであります。二十四年度においてもこれはかわつておりません。それで先ほど御紹介がありましたが、宮城県の江合川の堤防原形超過という問題を検査院批難をしておりますが、これはいかにも従来の考え方が甘い、原形復旧という考え方から見ましても、いかにもひどいというので、実は載せたのでありまして、これは従来から言えば、非常に珍しい例であります。ただいま議題なつておりますこの六一四は、そうではないのでありまして、ここの三行目に、「本件工事は未改修箇所改良工事を施行したもの」——こう言つておりまして、原形がないのであります。建設省関係災害復旧というのは、工作物に対する災害復旧であります。これは農林省のように、耕地災害復旧とはたいへん違うのでありまして、工作物のあつたものに対する災害復旧というものは取上げられるのであります。何にもない、自然河川——天然河川とも申しますか、こういうものに対しましては、観念上、建設省関係災害復旧というものはあり得ない、というと、少し強過ぎるかもしれませんが、一応あり得ないのであります。そこに堤防があつたり橋があつたり道路があつたりして、初めて災害復旧という観念が成り立つのでありまして、天然河川の場合には補助対象にはならぬというのが、従来からの原則であります。これはその一例でありまして、未改修箇所災害であります。そういたしますと、常識的には少し妙かもしれませんが、一応建設省災害補助というものからははずされる箇所なのであります。そこに対して、工作物災害復旧と同じような三分の二という高率の補助を出したのがいけないというのが、この趣旨であります。原形復旧という、先ほどのお話とはちよつと程度が違うわけでございます。どうぞ、そのおつもりでお願いいたします。
  11. 稻村順三

    稻村委員 建設省の方にお伺いしたいのですが、この超過工事というものと原形復旧というものとの関係は、これは非常にむずかしいのがあたりまえで、この間にあまり法律的な解釈をすると、実際上、復旧工事のできない場合が非常にある。たとえていえば、先ほど検査院の方の人が言われたように、全然原形がないというけれども向い側には堤防があつたが、片一方にないというのがしばしばある。ところが片一方がくずれたために、そこを今度はあまりがんじようにしたために、こつち側に川が移動してしまつた。しかたがないからこの堤防復旧するためには、どうしても向い側堤防を、原形がなくても築かなければならぬ、こういう例がうんとある。私はどつちがいいとか悪いとかいうのじやないが、こういうふうなことも超過工事の中に考えることができるのかどうか、この点建設省意見を聞きたい。
  12. 植田俊雄

    植田政府委員 私どもこの仕事法律的に解釈いたしません場合におきましては、ただいまのお話通り、むしろもう少し広くいたしまして、一ぺん災害にかかりましたものを復旧いたしますれば、再度災害のおそれのないようなものにいたしたい。ただいま自然河川かどうかという問題がございましたが、これは神戸市内のことでございますから、あるいは昔築かれたままの河岸で、自然河川状態のものがあつたといたしましても、それは民家に対する防護をいたしておつたわけでございまして、自然の川であつたからといつて、築造された堤防と同じように原形復旧なり、災害復旧に若干の改良を加えて工事をやつていけないという性質のものではなかろうと思つております。この点につきましては、今度公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法におきましては、天然河岸でも、こういつた性質のものにつきましては、災害復旧補助をいたすことになつております。しかし、それを復旧しましたら、対岸の方がどうなるか、かようなことになつて参りますと、私その方の専門でございませんので、後ほど係の者が参りますれば確かめてみますが、解釈といたしましては、原形でなく、またそれがこわれてない以上は、災害復旧対象にはならないのじやないかと考えております。そこで、現行法律といたしましては、確かに会計検査院のおつしやるように、また私どもそういうふうに解釈して参らねばならぬと思いますけれども災害復旧というものは、その箇所々々の災害復旧でいいものであろうかどうであろうか。むしろその河川水系全体として思い切つてつた方が、ほんとの災害復旧になる、再度災害を受けない災害復旧になるのではなかろうか、こういう考え方があるわけです。この六甲災害復旧につきましては、デラ台風でございますが、六甲付近の川につきましては、昭和九年の災害以前の川幅では、再度災害を受ける危険性の非常に大きいものでございますから、あの水系全部として考えます場合におきましては、あるいは災害を受けない箇所の川でも広げることが、広くいいましては、災害復旧事業といえるかもしれないと思う。そういつた気持も現場人たちにあるものでございますから、つい法規上の解釈現場仕事をやつている人との間に、ときどきこういうふうな間違いが起るわけでございます。これは現行法がああいうことになつておるものでございますから、私どもとしましては、会計検査院のおつしやることはごもつともでございます、こういうことを申し上げるわけでありますが、立法論といたしますると、若干これはかわつて来るわけでございます。その点ひとつ御了承願いたいと存じます。
  13. 稻村順三

    稻村委員 そういうこともいろいろあろうかと思つて質問したのであります。私も決算委員に出て来て、初めてこういうことは知つたわけなんでありますが、こういうふうな工事上の矛盾が起るものは、現場と密接な関係を持つている建設省あたりで、会議などに意見をどしどし具申してもらいたい、こういうふうに考えているものであります。それぐらいの注文で、これに関する質問は打切つておきます。
  14. 菅家喜六

    菅家委員長 次に報告書百七十一ページ、予算経理報告番号六一五ないし六一七、直轄工事費経理が著しく不当なもの、右三件の説明を求めます。
  15. 植田俊雄

    植田政府委員 六一五号につきましては、詳しく説明いたしまして、こうこうこういう理由でこういうことになりましたといつて、私ども言い訳をいたしますよりも、まずまことに相済まないことをいたしましたといつて、おわびを申し上げるよりほか手がないものでございます。私どもといたしましては、深く遺憾の意を表します。また今後もこういうことが起らないように、厳重に注意いたしておりますし、また現場機関におきましても、最近の情勢を十分察知いたしまして、今後はかかることがないであろうということを私どもも固く信じておるものでございます。  事件の要点を申し上げますと、富士川工事事務所で三百六十万円を、から出づら——最近よく新聞等に出ておりますから点検あるいは幽霊人夫等で浮かしたのであります。これは二十四年当時におきまして、超過勤務手当不足でありますとか、旅費不足でありますとか、あるいは備品を買いたいと思つたがその金がない、こういうようなことで、安易な方法といたしまして、こんな手を講じたわけであります。これは富士川工事でありますが、長崎国道にいたしましても、川内川にいたしましても同様でございます。要するに現場におきまして職員といいますか、労働組合といいますか、そういつたものの生活が苦しい、またそれを団体的に事務所長あたりに申し出られますと、事務所長といたしましても、工事をやるためには何とかこれの苦面をつけなければ志気に影響する、こういうところから安易に物事を考えまして、から出づらなどでこれだけの金をつくりまして、超過勤務手当とか旅費不足にまわしたわけでございます。このことにつきましては、私ども役所のように、工事をいたす場合におきましては、この点最も注意しなければならない問題でございます。非常に多くの金を持つておるわけで、こういう安易な方法で金がつくれるということが常套手段となることは、非常に恐るべきことであります。終戦直後の惰性が二十四年にまで及びまして、二十四年におきましても、会計検査院のおしかりを受けるような事態なつたことを、まことに遺憾に思つておるわけでございます。こういうふうにしてつくりました金につきましては、中ほどに書いてありますように残金がございましたので、その残金につきましては二十六年の一月から四月までの間に、全部国庫の方に返させることにいたしまして、全部国庫に入つております。なおごういつた金をつくりました副産物といたしまして、富士川工事事務所におきましては、こういつた金のうちの六十四万八千円を盗まれたような事態がございました。この犯人はただいままで発見しないという状況であります。まことに建設省といたしましては、世間に対しましても相済まないと存じておる次第であります。形式的の処分といたしましては、その当該責任者でありました事務所長には依願退職を命じたり、あるいは公務員法による解雇をいたしまして、厳重に処分をいたしました。最近衆議院の行政監察委員会でもお取上げになりました北上川水系の問題と、金の使い道については若干違いますけれども、金のつくり方は同じでございます。この点だけは固く戒めまして、今後こういつた事態の起らないようにいたしたいと考えております。その点ひとつ御了承願いたいと存じております。
  16. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 ただいま議題なつております六一五号から六一七号ですが、これは今政府委員からも御説明がありましたように、地方建設局の各工事事務所における直轄工事に対する経理の紊乱、違反であります。従来もいわゆる幽霊人夫経費を支出して行つて、ある資金を持つて、それを右から左に使うということは、ごく軽徹なものについては行われたようであります。終戦後これが非常に顕著になりまして、私どもも実は長い間実態をつかむことができなかつたのであります。きれいに整理されたあとに行きますと、わからなくなつてしまいます。二十四年度に、初めて富士川長崎国道、川内川、次にあります六一六の木曽川、それから最後にあります九州の肝属川、この工事事務所でようやくその実態をつかむことができたのであります。それでここに掲げた次第でありますが、これはいわゆる幽霊経理と申しますか、幽霊人夫と申しますか、こういう暗い影のある経理であります。大部分は右から左に工事費に使われるのであります。何も会計法上の制約を受けない何百万円の金を、当事者が自由に使える状態に置くわけであります。幽霊人夫をつくりまして、どんどん支出いたしまして、その金を右から左に使うのであります。非常に規則づくめな、非常にきゆうくつな国の経理というもののやかましい規則を全部はずしてしまつて、自由自在に使うという状態に置けるわけでありまして、そこに非常に弊害があるわけであります。幸いにこの点はさすがに内務省以来の古い伝統のある役所でありまして、私腹を肥やすという事態は案外少い。私ども今までずいぶん、二十四年に引続きまして二十五年度全国を見ましたが、案外少なかつたのは、これは御同慶の至りと思うのでありますが、ともかくも若干はそういう事故も出ております。  それから先ほど御紹介がございましたように、どろぼうにとられてしまつて犯人がわからぬ、こういうのが出ております。それからその金を違法な面に使う、たとえば成規の規定にない給与に使つたり、あるいは接待費的なものに使うというような面も現われております。二十五年度に全貌を御報告できると思つておりますが、非常に驚くべき金額がわかつたのであります。全国で四億四千万円くらいの金額幽霊経理をやつておるということが、四十幾つという工事事務所検査いたしまして実はわかつたのでありますが、二十四年度のここにあげました数件は、その序幕みたいになつておるのであります。これから全国を当つてみて、こういうものを見つけまして、本年度はこの幽霊を徹底的に撲滅しよう、こういうことで私ども全国を歩きまして、相当大きなものをあげたわけでありますが、この中で六一六号の木曽川なんかは、実にひどいのでありまして、うそ連続のような経理をいたしております。中をごらんくださいますとわかりますが、検査いたしましたわれわれも実は唖然としたのであります。相当やかましく書いてございますが、うそ連続のような経理なつておるのでありまして、こういうものは二十五年度を期して一切なくしてもらおうということで現在やつております。幸いに当局者も同じような気構えで進んでおられますので、数年を出でずして、こういう悪い経理は影を隠すものと私どもは考えております。
  17. 菅家喜六

    菅家委員長 質疑を許します。
  18. 高塩三郎

    高塩委員 ただいまの三件につきまして、建設省当局並びに会計検査院説明をお聞きしまして、まことに唖然たるものがあるのであります。大体建設省のこうした災害復旧というような経費につきましては、ことにこの三件は、特に悪質と申しますか、この批難事項にあげられたものは、手の込んでおるところの不在事実と、われわれは考えるのであります。しかもまたわれわれから見ますると、こうした事実が常套手段として繰返されておるということは、ただいまの御説明にもあつたのでありまして、おそらく過去におきましても、あるいは現在ただいまもこれが現実に行われておるということが想像できますし、またおそらくこれが将来必ず陸続として起るであろうというような予言をいたすことも、決して過言でないと私は思うのであります。そういう意味におきまして、今後当局において、ひとつ十分なる警戒をせられるように要望いたしまして、次に個個の問題について質問を申し上げたいと思います。  まず報告六一五号の問題でありまするが、これは一千三百万円の保有金の全部であるかどうか、そのほかにはないのであるか。それから資金保有はどのような形でもつて保管されておるのか。銀行はどこの銀行で、また預金者はだれの名義においてされておるか、説明願いたい。
  19. 植田俊雄

    植田政府委員 六一五号の千三百万円の金でありますが、これは先ほど申しましたように、超過勤務手当旅費不足のために逐次出しました金の累計額がこういつた数字でございまして、三つの事務所に一ぺんに千三百万円つくりまして、先ほど申しました使途に逐次出したというわけではございません。それからこの工事費につきまして銀行を利用したかどうかということは、ただいま私確実にお答え申し上げるわけには参りませんが、今までのこれらの経理の態様を見ますと、銀行を使わないで、現金保有し、現金経理するというような傾向がございます。これはもしもこういうふうにやつたとすれば、万一これが盗まれたときはたいへんでございますから、銀行に預かつてもらつた方が安全だというふうに、私どもは考えるのでございます。妙な話でございますが、銀行に預けますと、利子もついて参りますし、それからいろいろ証票類が残るという関係でございますとか、これはかえつておしかりを増すために申すようなことになりますけれども、それよりも現金で確実なところへしまい込んだ方がいいというような考え方が多いのでございます。これは非常な悪意でやつたというものではございませんで、現場の者かからでつくつたものでございますから、人に気づかれないでそのまま持つていたいという、かような考え方でスタートしたものでございますので、決してそう悪い意味ではございませんが、そういう傾向がございます。この金につきましても、おそらく銀行との取引関係はないのではないか、かように解釈いたしております。
  20. 高塩三郎

    高塩委員 次に年末手当にどのくらい流用したか。また「借入金利息等」とある、この「等」という文字でありますが、この「等」というのはどういうものであるか。それから「借入金利息」とありますが、何のための借入金であるか。これは法規違反の借入金ではないかと思うが、その点はどうか。また借入金の名義、また借入先、その利率、支払い利息等の問題についてお答え願いたい。
  21. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 政府側よりも、私どもで書きました案件でありますから、私の方から御説明申し上げます。その前に先ほど銀行に預けているかどうかというお話でありましたが、これはまれにございますが、大部分は手元に持つております。中には元なまを三百万円も持つているところを、警察に踏み込まれたという例もございます。ここにあがつております川内川のは、銀行に預けております。銀行預金の利子が帳簿にちやんと載つておりました。それからここにございます年末手当借入金利息でございますが、年末手当はここにございます富士川長崎国道、川内川三箇所合せまして百二十万二千円余り出ております。それから借入金利息でありますが、これは長崎国道と川内川、それに冨士川がごくわずか出ておりますが、全部合せまして三十四万八千円出ております。それで借入金はどういう借入金かという御質問でありますが、これは大体職員組合あたりが年末の越冬資金、こういうようなものを借りるのでありますが、その利息をこれから払う。元本はもちろん組合員が払うことになりますが、大体は利息をここから払うというような例が多いようでございます。
  22. 高塩三郎

    高塩委員 盗難にかかつた保有金がありますが、その後の処置はどうされたのか、御説明を願いたい。
  23. 植田俊雄

    植田政府委員 これはただいまのところ、これを保有しておりました者の責任とするかどうかという問題につきまして、ただいま会計検査院で御検討中でございます。
  24. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 今の御質問でありますが、これは工事事務所長が資金前渡官吏になつております。足りなくなりました金については、工事事務所長が一切の責任を負うことになるのであります。過失がなければ無責任になりますが、こういう事態でございますから、これは決して過失がなかつたとは言えません。現在検査院ではこれを有責とするような方向に事務が進んでおります。
  25. 菅家喜六

    菅家委員長 建設省当局に申し上げますが、先ほど来から各委員諸君の御質問に、どうも建設省の方が足並がそろわぬようです。一々会計検査院に聞かないと説明ができないようでは、建設省としてまことに思わしくない。批難事項が出て、すでに長い間ここにかかつているのであるから、委員会に出られる前に、こういうことは会計検査院説明でなくして、建設省当局もはつきりした答弁ができなければならぬ。この金がどうなつたか、利息はどうなつたか。ただいまの高塩委員に対する建設省の答弁のごときは、まことに遺憾だと思う。要求しておいた事務次官がおいでにならぬ。どこへ行つたかわからないそうでありますが、これは重要問題ですから、事務次官が来られなかつたならば、政務次官、大臣の出席を要求いたします。もし責任の人がおいでにならなければ、建設省関係はきようはこの程度にして、あらためてやることにいたします。ただいまのようでは審議にひまどつてしようがありません。一々会計検査院説明を求めるならば、建設省政府委員説明員の諸君にお出かけ願わなくてもよろしいのであります。会計検査院にだけ質問を続けていいことになる。聞けば聞くほど奇々怪々なる事実が行われて、しかも批難を受けて、その説明を国会から求められて、建設省の方がここに大勢おそろいになつても、説明ができないようでは、委員会の審議上非常に支障を来しますから、即刻連絡をとつてください。連絡をとれませんでしたならば、建設省関係は本日は保留して、継続にしたいと思います。その間御質問があればどうぞ……。
  26. 高塩三郎

    高塩委員 それでは質問を続けますが、政府の説明によりますと、長崎国道及び川内川両工事事務所の分は、返納方手続中と申しますが、その後の経過を御説明願いたい。
  27. 植田俊雄

    植田政府委員 この説明書を書きました当時は、手続中でございましたが、その後長崎国道につきましては四月の十四日、川内川の工事事務所につきましては四月の十一日に、国庫に納入いたしております。
  28. 高塩三郎

    高塩委員 会計検査院にお伺いいたしますが、この年末手当などに支給した分は、回収するのであるかどうか、お伺いしたいのであります。
  29. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 ただいまの御質問は、実は実際問題として非常にむずかしい問題であります。法律上やかましく申しますと、違法の給与になるわけでありますが、これが非常に小さい金になつて、大勢の人間にばらまかれてしまつているわけであります。これを回収するということになりますと、実際問題としてはほとんど不可能に近いのであります。現在では御承知かと思いますが、予算執行職員の責任に関する法律が出ておりまして、こういうことをいたしますと、これをやりました予算執行の職員が責任を負うことになるのでありますが、この当時はまだそういう法律もございませんので、なかなかこれは実際問題として回収困難かと存じます。
  30. 高塩三郎

    高塩委員 次に報告番号第六一六号についてお伺いいたします。八百余万円の借入れがありますが、これの借入先はどこか、借入れた名義はだれか、それに対して利息を払うのであるか、払わないのであるか、御説明を願います。
  31. 目黒清雄

    ○目黒説明員 この問題は、木曽川のおかこい堤という二重堤防があります。この堤防が、再三の洪水から非常に危険に瀕している。ところが国の予算がない。こういうことから、愛知県が金を立てかえて仕事をやつてくれ、こういうことに相なつたのであります。それでこの金は愛知県から借り入れたわけでありまして、その後これをただちに愛知県に返せば事は簡単なのでありますが、この金をさまざまに流用したということに、事件があるのでございます。実はそういう地方の要望でありますから、われわれの方でもできるだけこたえなくてはなりませんので、予算のない仕事を、立てかえとかその他の形でやるという時代があつたのであります。しかしこれは絶対にいかぬ。法の手続をしなくてはなりませんから、いかぬということで、最近はやめておりますが、この時代には予算が少い、しかも災害が多いという状態に立ち至つて、やむなくこういう形をとつたのであります。
  32. 高塩三郎

    高塩委員 この各築堤工事の繰上げ工事を施行せねばならなかつたその理由について、御説明願いたい。
  33. 目黒清雄

    ○目黒説明員 御承知通りに、関東の利根川の大災害がございました。それが全国的に洪水に対する脅威となつて現われたのであります。ことに木曽川は、戦事中何も仕事をしておらなかつた。そこへ関東の利根川が氾濫したことで、木曽川地方民は多少不安を抱いたのであります。そういう不安の状態がつのりまして、これが府県に陳情になり、国に陳情になつたのでありますが、国がこれにこたえる予算がないということから、それでは一応立てかえても仕事をやつてもらいたい、こういう非常な熱意があつたわけであります。原因としては、利根川の大破堤ということになるのであります。
  34. 高塩三郎

    高塩委員 さらに「八月以降において前記各築堤工事費等の予算から右借入金使用相当額を支出した」と、こうあるのでありますが、この工事費予算の受入れ年月日と申しますか、またはその工事費金額はどのくらいでしたか。
  35. 目黒清雄

    ○目黒説明員 手元に資料がありませんから、いずれ金額を調べましてから、お答え申し上げます。
  36. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 今の御質問でありますが、この予算が地建へ参りましたのは七月であります。それですぐに全部返してしまえばよかつたのでありますが、それをしないで、ほかへまわしてしまつた。そのためにまた穴が明きまして、愛知県からの借入金は全部返せないということになりまして、またずつとこういううそが続いたわけでございます。
  37. 高塩三郎

    高塩委員 次に附帯工事である宮田用水頭首工事は、最初の計画にはなかつたのであるかどうか。またこの工事の予算外に施行されたとありますが、この予算概算はどれくらいの金額であるか。さらに附帯工事については、国庫負担が三分の一とか、あるいは三分の二とかいうものがあるのかないのか、その点についてお伺いしたい。
  38. 植田俊雄

    植田政府委員 宮田用水につきましては、これは宮田用水の組合から、地方建設局が委託を受けてする工事なつておりまして、国が三分の二を持ち、地元が三分の一を持つということになりまして、その当時に予算といたしまして七百二十二万円を予定いたしておつたのであります。ところがその当時この用水が砂に埋もれておりまして、そのとりのけその他の経費——早くやりませんと、これは用水のことでありますから、急ぐ事情がありましたので、それで愛知県から借りた金を返さないでそつちの方へ持つて行つてしまつた、こういうことになつたのでございます。ただ一つの問題は、(2)の方に書いてございますように、持つて行きました金についての地元負担がはつきり出ていない。従つて宮田用水組合が全部の工事の三分の一を持つべきであるにかかわらず、七百二十二万円の三分の一しか持たないという不均衡が出て参つたわけであります。その不均衡のものにつきましては、この説明書の方にも書いてございますように、百三十八万六千円というものは、補助し過ぎたということになるのであります。それを取返すという措置を講じたわけでございまして、入り組みましたけれども、結果におきましては、宮田用水には決して過当な補助をいたしたわけではございません。これもその近付町村等のいろいろな陳情等によりまして、現場人たちが引きずられたのではないか、かように考えておるわけであります。
  39. 高塩三郎

    高塩委員 ただいまの附帯工事負担金の百三十八万余円でありますが、これは説明書には「精算することとし」というようなことがありますが、その結果はどういうふうなことになつておりますか。またその責任者に対しては、何か処分等を行つたかどうか。
  40. 植田俊雄

    植田政府委員 これは処置をいたしたのでございますが、二十五年度の宮田用水の工事がやはりあるわけでございます。六百万円の工事がございまして、補助率通り参りますと、国が四百万円持ち、地元が二百万円持つということになるわけでございますが、国の持分を百三十八万円分減らしまして、それだけを地元で持つという形で解決いたしました。
  41. 高塩三郎

    高塩委員 次に借入金の返済財源の不足金の三百四十九万余円でありまするが、この捻出のために労力費の付掛けあるいは設計土量の過大見積り等を行つたのであります。こういうことは過去においてもたびたび行われたと思つておるのでありますが、出張所長なり現場監督なりは、このような不正事実というものがすぐにわからなかつたのかどうか。あるいはまた直属上官と下僚の者とが情を通じて、こういう不正事実を行つたことを、上官の者が黙認しておつたのかどうか、そういう点についての御説明を願いたい。
  42. 植田俊雄

    植田政府委員 ただいまのところでは、この問題は重要な問題でございますが、工事をやつておりますときに、とぎどき先ほど河川局長現場の受入れから話されましたように、かようなことはあり得ることでございまして、これは現場の一出張所長限りで処理した問題ではないと私どもは考えております。また当時のいろいろな情勢で、会計法規でまずいということは、あるいは知つてつたのは当然でございますが、しかし場合によつては、会計法規にはまずくても、この工事をやつた方が地元のためにもなり、また予算を生かすためでもあろうというような現場の判断でやつたのではないかと私は考えております。
  43. 高塩三郎

    高塩委員 最後にもう一点お伺いいたしますが、結局この各築堤工事というものは、曲りなりにも完成したのかどうか。また愛知県より借りました八百万円は、債務返済済みであるかどうか。
  44. 植田俊雄

    植田政府委員 いろいろ入り組んだ操作はいたしましたけれども、結局は予定の工事は全部完成いたしましたし、愛知県に対する借金につきましても全部弁済いたしました。
  45. 高塩三郎

    高塩委員 次に報告番号六一七についてお伺いいたします。経理紊乱の極二十四年度の決算額の確認もできないとありますが、その後どんなふうに整理せられたか。また会計検査院は現在もこれを確認できるのかどうか、その点についてお伺いしたい。
  46. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 この肝属川は、実は従来検査に行つたこともないような辺鄙なところでございます。それで本局の——本局と申しますと、福岡にございます九州地方建設局でありますが、ここの監督もなかなか行き届かないというようなところでございます。そこで私どもは初めて、昨年の四月でございましたか、検査に参りましたところ、三月末で大きな金を、幽霊人夫でごそつと落しておることだけはわかつたのでありますが、工事が一体どこまでできておるものやら、その落した金に相応する工事がどれくらいできておるものやら、何もわからなかつたのであります。検査の手もつけようがない、こういうような状況でございまして、すぐにまたたしか六月だと思いましたが来るから、それまでにわかるようにしておけ、こういうことで一応帰つたわけであります。途中福岡に寄りまして、こういう状況だと言いましたら、本局でも実はびつくりいたしまして、それで私どもはその約束した時期に実はもう一ぺん行つたのであります。そのときには、本局もこういう事態を知らなかつたわけでありまして、驚いて係官を特派いたしまして、一緒になつて一生懸命に整理いたしたわけであります。その次に参りましたときには、一応工事のできた高もはつきりいたしますし、金の使い道もはつきりさせていたわけであります。そこのはつきりした中に、あるいは何か変なものも少しはあつたかもしれませんが、全体として見ますと、一応決算が確認できるような状態なつておつたのでありまして、それで私どもも全部検査を済ませまして帰つた次第であります。
  47. 田中角榮

    田中(角)委員 一、二点会計検査院に伺いたいと思います。架空名義で工事費を不当に支出した、すなわち幽霊人夫賃支払い事件でありますが、この問題はただ建設省だけではなく、農林省等現業官庁には、相当批難事項が列記せられておるようであります。これが根絶をいたすためには、もちろん言うまでもなく正すべきは正し、これが直接の責任者の処罰は免れないのでありますが、これをも全然なくしてしまうということを考えるのには、どうしても根本的な直営工事の形態、制度という問題から研究して行かなければならない問題であろうと思います。その意味におきましても、この問題に対しては、建設省側の意見——特に衆参両院の建設委員会でも研究をしておりますので、これに対しては論及しないことにいたしますが、この種事件は非常にたくさんあるのでありまして、これに対して法律的な見地から会計検査院意見だけをただしたい、こう思うのであります。もちろん会計法規的に違法性があります点を批難せられておるのでありますが、この種事件に対して、刑事訴訟法上の違法性というものはどの程度決定せられておるか。この種事件がたくさん刑事訴追を受けておりますが、今まであなた方が批難した二十三年度、二十二年度、二十一年度というような問題の中で、いかなる処分を受けておるかという問題が第一番。  第二番目には、こういう問題の中には、往々にして個人的な横領を含むものでありますが、個人的な横領を含むものは、犯人として刑事的に処罰を受けております。受けておりますが、先ほども小峰局長が発言をせられたように、全然個人的な横領を含まないこの種の工事会計法規上の違法だけを指摘せられておる。一応事件にはなるけれども、最終的な判決においては刑事訴追は免れておる、こういう事件があるようでありますが、会計検査院の違法性を指摘するという場合、こういうものと、単に予算区分を乱つたというようなものと、批難事項の中に差別があるかどうかという問題が第二点。  次は将来の問題でありますが、このような問題に対して、会計検査院会計検査院法を発動せられたものがあるかどうか。将来はどういうようなお考えであるか、この三点についてお伺いいたします。
  48. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 この種の案件につきまして、刑事訴訟法上の処置を受けたかどうか、これが第一点のように承知いたしました。ここにございます富士川長崎国道、川内川、それから木曽川と肝属川、そのうち富士川長崎国道、それに川内川、これは一応検察庁が取上げまして捜査はしたようであります。結局において私腹を肥やした者はない、こういうことで全部不起訴になつております。この種の案件は、先ほど申しましたように、二十五年度は非常に多いのでありますが、一箇所で一億というような大きな最上川の工事事務所でありますとか、あるいは信濃川、こういうところについて、一応検査庁で最上川も北上川あたりも手を入れましたが、全部不起訴になつております。私腹を肥やした者がございますと、これは起訴されるわけであります。信濃川などは私腹を肥やした疑問が濃厚だというので、たしか起訴になつていると思います。そういう個人のふところに入れた、私腹を肥やしたということがはつきり現われませんと、ことごとく不起訴の処分をしているようであります。これは全国共通の傾向のように見受けられます。  それから会計検査院はほかの、たとえば年度違いとかいうものと比べて、これをどういうふうに差別を設けているか、こういうのが第二点だと思いますが、これは文書でここに載せますと、さつぱり差別がつかぬのでありまして、みんな同じようになつてしまうのでございます。それで大体院内ではABCと申しますか、そういうふうなわけ方をしておりまして、特に悪いというようなものにつきましては、会計検査院法の従来の規定によりまして懲戒の要求をしているのであります。この六一六、六一七は——ことに六一六号は、実はすれすれのところまでわれわれは論議したのでありますが、これも相当悪いことは事実であります。ことに公明正大であるべき国の経理を、うそ連続で固めておるというのは、もつてのほかであります。しかし、当時の風潮といたしまして、どこもここもこれをやつているのでありまして、木曽川だけを責める、懲戒の要求をすると申しますのは、私ども検査も、実はこのころははなはだ行き届いていないのでありまして、全国的に当時やつておると思われるのは、ここに上つておりますのは、たしか五つであります。——二十五年度は三十くらいこれが出て来ますが、そうなりますれば、懲戒要求もいいと思いますが、こういつたところで、たまたま非常に骨は折つておりますが、見つけられたそれだけが懲戒要求の対象になるというのも、一体どうだろうかというような、こういうすれすれのところで、これはひつ込めて懲戒要求をしておりません。現在では、この種の案件は、先ほども紹介申し上げましたが、予算執行職員の責任ということで弁償の対象にはなりません。これも実は違法給与なんな相当怪しいのでありますが、違法にかつてに給与を出したような場合に、それは一旦横領して、そうしてかつてに自分で配つたのじやないかこういう法律構成もできるのでありまして、そういたしますと、これは弁償の対象になるのでありますが、そう見るのはいかにも事実に合いません。大体これは不当な給与——違法な給与ではあるが、自分でとつたのじやないということで、弁償の対象にはいたしませんが、少くとも懲戒要求の対象にはなるのでありまして、予責法の適用によつてこの種案件は、もしございましたら、私どもとしては当然懲戒要求を出す、こういうふうに考えております。
  49. 田中角榮

    田中(角)委員 ただいま衆議院の行政監察委員会でも、この種事案を取上げているようでありますが、この問題は会計法規上の問題というよりも、刑事訴訟法上の問題に一つの大きな根拠をつけておかないと、将来いろいろな問題が起るということも、私たち専門の立場から十分考えておるのであります。実際の厳密なる法規的な解釈からいうと、個人的な横領を伴わないこの種の事件は、予算区分を乱つたものということでもつて刑事上の責任を問われない、こういうのが一般であります。しかし会計決算というものを厳密にいうと、これは官庁組織が合同して国費を詐取した場合でも、刑事上の責任を負わないということでありまして、疑義は相当あるわけです。あるのですが、今までは私はこの種のものに対して、いついかなる状況において、いかなる事件を取上げて新判例を開くであろうかということを、注目をしておつたのでありますが、ただいまの発言をそのまま受取ると、個人的な横領を伴わない——一般からいうと詐欺罪でありまして、国民が詐欺にかかつたのです。もう一つは翼賛議会でありません、議決議会でありますから、国会が相当侮辱せられているわけです。これは国会の議決を無視した話で、許すべからざる行為であります。これを会計法規上あなた方が一つの区別をつけられないということであると——つけられないのがほんとうでありましよう。私の考えでは、実際ここに批難せられる事項そのものは、少くとも道義的責任を追究せられる、一歩進むと刑事上の責任を問われないだけであつて、国会の議決権を無視しておるということは間違いないことであります。こういうことは私たちも非常にこまかく考え、また研究もし、調査も行つたことがあるのでありますから、私はあえてそれを論じようとしておるのではないのでありますが、行政監察委員会などでもつて、こういう事件を取上げておりますのも、目標とするところは、ただ国費の濫費を防ぎたい、こういうことであります。私たち自体こういう問題をたくさん取上げておるので、自然に議決議会であり、責任を持たなければならない関係上、予算議決をするときに、こまかい予算のわくまで考えなければならないというふうになつたら、まつたく政治も行政も跛行状態になりまして、できた政治は生きた金が使えないということになりますので、私たちもそこまでは考えておらないのであつて、実際に即する最良の方法はどういうところにあるのだろうかということを真剣に研究しておるのであります。そういう意味で、ただいまの発言から言いますと、この種のもので最終判決において刑事的の責任を追究せられた事例がない、こういうことと、もう一つは、大体個人的横領を伴わないこの種の事件は、ただに会計法規上の違法性を会計検査院より指摘をせられただけであつて、道義的な責任は伴うとしても、刑事的な訴追は受けない、こう聞いてよろしゆうございますか。国会における会計検査院第四局長の証言は、簡単にお聞きはしておりますが、非常に大きな発言でありますから、根拠に基いた御発言を願いたいと思います。
  50. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 先ほど申し上げました今の御質問の重点でありますが、これは原則的なことを実は申し上げましたので、例外的なのが若干ございます。しかしこれは非常に例外で、たとえば建設省で申しますと、私の記憶しておるのではたしか信濃川のはちよつと申し上げましたが、これは個人が横領して実はうちへ持つて行つて、たんすの中に入れておつたのであります。これはそういう嫌疑をかけられてもやむを得ないのであります。たしか三百六十万円くらいだと思いますが、こういうのは起訴されております。これは非常に異例でありますが、この種の全然自分のふところに入れないで、役所の用途に使つたというので有罪の判決を受けたのが、私は役所について一つ知つております。これは鳥取県の天神川の工事事務所——非常に異例なので私覚えております。それからあと建設省関係ではございませんが、たとえば公団、これはさんざん新聞をにぎわした事件でありますから、あらゆる公団の不当給与、田中さんからいうと、国費の詐欺でありますが、不当な違法の給与を公団は軒並にやつておるようであります。これは記憶違いがありましたら訂正いたしますが、たしか肥料配給公団だつたと思います。これが起訴されております。それ以外の公団は、検察庁が活動したのはありますが、全部不起訴になつております。それから建設省以外の他の例では二、三、全国地方裁判所で、この種のもので、結局私服を肥やさないで全部役所の用に使つておるが、違法だというようなものを有罪にした例を存じております。一々申し上げるのは何でございますから申し上げませんが、そういうふうにごくまれには有罪判決があるのであります。これは単に検察庁が起訴しただけではなく、裁判所が有罪判決をしております。それはことごとく執行猶予がついておりますので、たいがいそのまま泣寝入りになつてしまうのではないか。これはもつと上級の裁判所に持ち出したら、はたして有罪であつたかどうかという点は、実はわからないのであります。上級裁判所の有罪の判決を受けた例は、全国に四つ、五つ私どもつておるのであります。それ以外は大体みな不起訴というのが例でありまして、建設省関係につきましては、信濃川ともう一箇所ございますが、これも特別な例でございます。それ以外は全部不起訴、こういうことになつておるわけであります。
  51. 田中角榮

    田中(角)委員 ちよつと蛇足のようでありますが、これはきつと将来国会が国権の最高機関として真に実力を発動する場合、この問題でいつも小峰局長と意見を闘わしておるところの決算の最終確定権のような問題が、国会の最終の大きな問題として浮び上つて来ると思うのです。私たち自体も、こういう決算の批難を受けておりまして、現在の段階におきましては、会計法規上違法性を指摘せられて、われらが承認を与えるための過程においてこれを審査するということは、わかるのでありますが、われわれ国会議員の立場から、このような問題にどういう解明点を与えなければならないかという大きな問題が残つておるわけであります。そういう立場から私は小峰さんにお聞きしたり、会計検査院にお願いしたりするのは、これはばかな話でありまして、われわれ国会議員がきめるべきでありますが、過程でありますので、ちよつと申し上げておきたいのであります。いわゆる裁判官の判決も、絶対的なものではありません。もちろん、裁判官も神ならず、人間でありますので、一審、二審、最高審となつていても、これは絶対的なものではありませんが、いわゆる判例というものは、新しく法律解釈を判例によつてつくるのでありますから、私はこういう事件に対しては非常に大きな関心を持つておるわけであります。こういう問題が会計法規上の違法性を指摘するのみでなく、刑事上の違法性を指摘もせられる、いわゆる有罪の判決を受ける。執行猶予であろうがなかろうが、全然別です。罰金刑であろうが拘留刑であろうが、とにかく法律的の違法性を完全に指摘せられるということになりますと、こういう方法は全然やめなければならないという結論になる。そこに非常にむずかしさがある。実際直営工事でなければ——高度の技術を要するものとか、二つの行政区域にまたがる工事とか、非常に長年月を要する工事とか、莫大なる国費を投入する工事というものは直営を要求せられる。また試験的な工事もそうであります。代表的な工事もそうであります。ここに矛盾がありますので、私は決算委員でありますが、半分は建設委員としての発言をしておると、自分自身認めておるのであります。こういう問題は非常にむずかしいと思うのでありまして、あなた方から考えると会計法規上は違法性であるが、中に有罪になつた場合もあり、無罪の場合もある。ただ信濃川の問題は三百数十万円の公金を自宅に持つて行つていたことによつて、検察庁は起訴をしております。しかし先ほどからのお話の重点をじつとこうして見ておりますと、銀行に預金をしたかしないかという問題を前委員が発言しておりますが、大体預金をしておらないものです。預金すれば初めから足がつくからということで、これは多分農林省でもどこでもみなそうです。そうすると公金にして公金にあらざる体裁を整えておかなければならないものは、大体出納官吏が自宅に保管しておる。この信濃川の例は三十万円や五十万円の金は出張所の金庫の中にあつて、その余のものは出納官吏しか知らなかつたということが、起訴事実の第一条件になつているようでありますが、私はこういうものは個々の問題ではない。こういう非常に疑義の多い問題で、予算執行職員をいつも不安にしておるような問題は、やつてはならないのだ。この程度まではいいのだという定規は、会計検査院もよくお考えになる必要がある。会計検査院のみならず、国会が考えなければならないのだが、私は新進の小峰さんでありますので、そういうことを御注意申し上げておいて、将来のこの種の問題に対する会計検査院会計法規上の違法性と、それから刑事訴訟法上の違法性をどこにマッチさせるかという問題に対して、もし結論が出ましたら御報告くださることを、お願いをいたしておきます。
  52. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 承知いたしました。
  53. 船越弘

    ○船越委員 先ほど高塩委員からの質問の中に、借入金については相手はだれであるか、これは会計法上適法に借入れをなさつておるか、こういうような質問があつたように思いますが、この六一五号あるいは六一七号等におきまして、いろいろ借入金によつて操作をしておられますが、借入主はだれですか、一工事事務所長個人の名前で借入れをしているのであるかどうか。少くともこういう借入れは、私は国家の借金であるのではないか、こういうように考えるのでありますが、会計検査院と政府当局の両方からお答え願いたい。
  54. 植田俊雄

    植田政府委員 これらの借入金につきましては、地元の農業協同組合等が、当時におきましては工事費立替人というかつこうで工事に参与いたしておりましたので、それから借りたのが多いと思います。なお、借入れにつきましては、工事事務所長の名義で借りておりまして、これは工事事務所長の個人責任であります。決して国の責任じやないと考えます。但しお話の趣旨は、事務所長が借りますれば、貸します相手としては、国相手というふうに解釈いたしますし、また事務所長が自分の個人で使う金でございませんので、国が払う金のような錯覚を起すであろうと思う。返せないときは何とかやりくりして国から返すという傾向になりがちであります。これは非常に危険なことになりますが、形式的には、個人責任になると思います。  これは余談になりますが、私会計課長といたしまして、毎年年末に、金を貸してくれ、銀行から金を借りて職員に貸してくれという要求をしばしば受けるのであります。私は不明朗なる借り方では一切借りないと言つて、いつでも借りたことはございません。貸す銀行があるとしますれば、私個人に貸したのではなく、国家に貸してくれたのであります。混同の危険性はありますが、法律上では個人責任であります。
  55. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 船越さんの御質問ですが、実はこれはデリケートな問題でありまして、先ほど協同組合とかいう話がありました。工事所長名義で大体協同組合とか、あるいは昔の立替制度というのがありまして、立替人とか、こういう川の工事と密接な関係のある人から借りているのでありますが、貸した人は、工事事務所長個人に貸したとは、実は思わないのであります。これは国だから、何百万円だとか、何千万円という金を貸すのでありまして、とても個人に貸したということには、相手方は考えていないと思います。しかしいろいろ問題が起きますと、これは大体個人責任ということにされてしまうのが多いのであります。法律を突き詰めて参りますと、国が借りたということには、とてもならぬのでありまして、個人責任ということになります。ところが、一方で借入金の利子は、この公金の中から払つているのでございます。こういう方面から行きますと、これはまさに国の借金という扱いをしておりますが、いろいろ問題になりますと、個人責任ということに固まることになるわけであります。
  56. 船越弘

    ○船越委員 こういう大金が、そういう工事事務所長の名義で簡単に借りられる、こういうことになつておりますと、先ほどお話がありましたように、これが決済できない場合は、どうしても国家がしりぬぐいしなければならない、こういうことになつて来る。それでこういうことについては、今後どういうふうなお考えを建設省は持つておられるか。工事事務所長個人の考え方で、かつてに大金が融通できるような方法にしておるところに間違いが起きるのではないか。今後どういうふうにお考えになるか、その点をちよつと……。
  57. 植田俊雄

    植田政府委員 建設省仕事は、非常な大金を扱うわけであります。これはその処理いたします人よろしきを得なければ、何十万、何百万を問わないで、悪いことをやる覚悟でやれば相当な金が出せる仕組みでございます。またそれでは、その工事の本来の人を信用いたしませんで、金を払う人だけは別の系統の役所でやるということになりますと、工事は進捗いたしません。従いまして、予算がきまりますれば、できるだけ現場の職員に信頼いたしまして、その人の人格に信頼して工事をやつてもらうしか手がないわけであります。これはあえて現場に限らず、私どものような本省の会計をやつております者も、同様でございますけれども、特に現場については、その感が強いのであります。こういつた間違いが起りましたのは、工事は必ずこういうものがなければできないという性質のものではございませんで、終戦後の官吏の給与の問題、生活難等で、職員が団体行動を起しまして、事務所長に押しかけるというようなとき、初めのうちは抵抗いたしておりましても、意思が弱いといいますか、それをはねつけることができませんで、ついこういつた深みにはまり込んだのだろうと思うのであります。これは私ども実は現場の経験がございませんので、本省でじつとこの動きを見ておりまして、この二十四年度批難事項が初めてでございますが、二十五年度の北上川、あるいは関東事件の起りぐあいを見て行きますと、現場の職員は、実に真剣にこの問題に取り組んでおるということが申せるわけであります。この批難事項に出ましたことが、あるいは反対に考えて、またしかられているというふうに、外部の人で誤解される方があるかもしれませんが、決して建設省現場職員は、そんな考えは持つておりません。今度のこの事件の出ましたあとの、九州なら九州の地建の緊張の仕方は、はげしゆうございます。私ども本省から工事を監督している者から申しますと、あまりかたくやり過ぎて工事の進捗が遅れるのではないかとおそれるほど今締つております。締り過ぎているような感がいたします。私どもとしましては、そうかたくなるなと、今言いたいのでございますが、そう言い過ぎましても、また間違いが起るといけません。かた過ぎるかもしれませんが、一応締つてみようということで、建設省は本省も地建も一体になつて、その点を注意いたしております。私は二十五年度批難事項にも事案があるかと存じますが、二十六年度の、ただいま問題になり、私どもが反省しております後におきましては、あるいは絶無ということを保証するわけには参らぬかも知れませんが、私の気持では、出ないと、ただいまでは確信いたしております。各地建とも、こういうことにつきましては、従来の惰性とか、あるいは従来の気の弱さを振り捨てまして、思い切つて粛正するという態度でいるということだけは、御了承願いたいと存じます。
  58. 船越弘

    ○船越委員 ここへ上りましたわずかの案件以外に、各地方局にはこういうものに類似したものが相当たくさんあると思います。また先ほど小峰局長から、二十五年度には相当あるようなお話がありました。また本委員会におきまして、先般大蔵省から提出されました、公共事業の直轄工事の実施にあたり予算を無視して不適正な経理をなしているものという中に、宮崎県の大淀川改修工事費の一部をもつて職員の宿舎を買収しているものがある。あるいは広島県の太田川改修工事費の一部をもつて昭和二十一年度から昭和二十四年度にわたつて、百九十四万七千円の職員宿舎建設費に充当した。いま一つは直轄河川の球磨川改修工事でございますが、九州地方建設局八代工事事務所において、本工事実施にあたつて昭和二十四年度昭和二十五年度にわたつて架空の労務費を計上し、これを資金化して、出張旅費超過勤務手当、はなはだしきに至つては接待費等に使用している。こういうふうなことがこれに載つているわけであります。まだそのほかに、直轄河川の吉野川改修工事についても、こういうことが載つおります。こういういろいろな問題が起きる根本原因がどういうところにあるのかということについては、先ほど田中委員からもいろいろ御発言がありましたが、おおむねどういうところにあるか、今まで御研究をなさつたといたしますならば、その点を一応承りたいと思います。
  59. 植田俊雄

    植田政府委員 こういつた事件が起り、またただいまお話のありましたような事件もございますし、また御指摘になつた以外に、いろいろ類似の事案があるじやないかということをおそれまして、私どもの監察官も、それを発見し、また注意するために、各地にまわつておるわけであります。私どもの方といたしましては、ただいまの態度は、これこれのことについての援助が足りなかつたからだということの理由をもつて、こういつた事故の原因を他に転嫁して、自分たちの責任を回避しようという立場は、ただいまではとつておらないのであります。確かにこういつた事情にはこういつた弱点がある、またこういう弱点があるからこういう誘惑に負けて、こういう間違いが起るということはあります。私どもとしては、この点を改良してくれたら、こういうことは起らなかつたのだというような、責任転嫁の道を講じたくはないのでありますが、しかし現実の事態はどういうことから起つておるかと申しますと、今までの事案で一番大きなものは、超過勤務手当でございます。これは職員の給与が少いということの問題にもからんで来るわけでありますが、超過勤務手当は国家公務員法によりますと、一日八時間以上の勤務をしました場合には、一時間幾らという超勤を出さなければならぬことになつておりますが、現場に配つております超勤は、これは地方建設局事務所ごとに配分をきめておりますので、一律に申すわけには行きませんが、一律に平均いたしますれば、一人当り十一時間、十二時間程度の超勤であります。ところが工事におきましては、朝、人夫が出て参りますのが、一般の公務員より早いわけでございますから、一時間ぐらい早く出て段取りしなければならぬ。帰るときは人夫が帰りましてから跡始末をする。機械の係員でありますと、機関車の煙をあげて行くのには、やはり早く出なければならぬ。こういうぐあいで早出、おそびけが多いわけであります。それから土曜、日曜であります。土曜、日曜は、普通の官庁でははつきり休んでおるわけでありますが、現場におきましては、人夫は土曜、日曜に休んでは生計が立ちませんから、土曜、日曜にも出て参りますので、そうすると土曜、日曜も、職員の全部とは申しませんが、一部は必ず出ております。これをはつきりと超過勤務手当を積算しますと、月に何十時間ということになるのであります。ところが、この予算というものをなかなか大蔵省が認めてくれない。ところが、現場では生活が楽といいますか、もう少しゆとりのあるものでございますれば、現場の職員も超勤を要求しないでありましようし、また超過勤務手当という制度がなければ、そういうこともないでありましようが、とにかくもらえる権利になつております。法律があつても、予算がなければ支払いができないのだというのは、これは事務官のりくつでありまして、現場の人から言わせると、法律があつて、それを出すことになつておれば、それはどんな方法で出しても悪いことではないではないかというりくつが、場合によつては立つので、今のところは出すことになつております。この法律と予算の矛盾ということがいつも問題になります。このりくつは、ほかの方にも当てはまるのでありまして、食糧費が足りないというのも、これもいつも聞くことでございます。相当な食糧費はつけたと、大蔵省でも思つておりますし、私ども本省の者もこれ以上は大蔵省に無理は言えないというふうな予算にはなつております。金額で二十六年度には千四百万円の食糧費が行つております。ところが、現場事務所に参ると、ほんのわずかなものでございまして、中央からは各種の監査の方が参る、また地方の有力者の方もときどき見学に来られる。その他お客がある。そうすると、従来の慣習から一席設ける。一席設けると申しましても、決してぜいたくな料理屋でやつておるわけではありません。寮その他の実にちやちなところでやつておりますが、これが金がかかるのでございます。そういうふうなことで、千四百万円あれば足りるはずでございますが、実際は足りない。これは出さなければならぬわけだから、から人夫で出そうじやないか、こういうことになりがちでございます。土木工事というものを、こういうふうに普通の行政事務と同じように予算でしばつて、きつちり規則づくめで締めていいものかどうかについて、私自身も疑問を持つておりますが、しかし直営工事である以上は、やむを得ないと思います。そのわく内でやれるだけのことをやるのが責任じやないかということを、私どもとしては、現場の者に強く言つております。  それから、今度の事件では大してございませんが、予算のつき方がおそいとか、あるいは年度末の繰越しが認められないとか、いろいろ公共事業については隘路がございます。この隘路と称せられておるものを、今の時代に申し込んで、すべてが聞いてもらえるものとは思つておりませんが、聞いてもらえるものだけでも、一つ一つ解決をつけたいと思つて、努力いたしております。超過勤務手当の問題につきましても、政府部内でも、はたして今の超過勤務手当でいいかどうかということについて、再反省をしなければならぬ問題と、私ども考えております。しかし超過勤務手当を今まで通り出すといたしますれば、これは現場事務所長に大きな負担をかけることになる。私どもは、その点を恐れております。以上のようなわけでございます。
  60. 船越弘

    ○船越委員 御苦心の存するところはよくわかるのでございますが、民間工場にいたしましても、労働基準法を厳格に適用すれば、その会社はつぶれてしまう。労働組合は、これを完全に実施しろと経営者に迫る。ところが経営者の側では、資金不足で実施できない。こういう場合がたくさんあるのであります。そういうときには、やはり両者相歩み寄りまして、そこに打開の道を講じて行つておる。ところが、国家のやり方を見ますと、今おつしやるように、超過勤務手当法律によつてどうしても要求する権利がある、だから出さなければならない。ところが、片方には会計法というものがあつて、これを乱ることができない。こういうことになつておるのであるから、両方の因子の最大公約数ですか、最小公倍数ですか、これの範囲内で仕事をなさるのがあたりまえである。ところが超過勤務手当だけに重きを置いて、会計を乱り、予算を乱つて支出するということは不当である。民間の会社では、こういうことは絶対にできません。国家の予算であり、自分のふところが痛まないから、こういうことが非常にたくさん行われておる、こういうふうに私は考えます。今後はどうかこういう点は抜本塞源的に、ないようにすることに努力していただきたいと思います。  それから先ほど、今非常にかたくやつておるために、工事が延びるようなことがありはしないかと憂えておるくらいだというお話がありましたが、むしろそういうふうな方法で、当分の間かたく締めてやつていただきたい。そうすれば、おのずから打開される道があろうかと思います。どうかこういうふうにお願いいたしておきたいと思います。  それから、会計検査院小峰局長にちよつとお尋ねするのでありますが、今後こういう事態を再び起さないようにするには、検査院としては、どういう方法でやつたらいいとお考えになりますか。
  61. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 先ほど幽霊経理についての絶滅策、こういうお話でありまして、原因についてもこまかい御紹介がありましたが、私どもも大体同じようなところに原因があると思つております。公共事業の運営上の隘路ということを、いろいろ申されておりますが、結局は幽霊経理というのは、会計法規の制約を免れるために、易きにつく経理で、絶対にこれをしなければ地建の工事に支障を来すというものとは、実は——これはずいぶんたくさん見ましたが、私どもには、結論として思えないのであります。いろいろなことを申しております。これをやらぬと繰越しができないとか、あるいは公共事業費の認証がおそいとか、継続費が来なくて因るとか、いろいろ申します。しかし私どもが見て歩きました工事事務所が、決して全部やつておるわけではないのであります。二十五年度で申しますと、大体五十ほど検査をいたしました中で、約三十がやつておるのであります。あとの二十はやつていないのであります。私ども同じ能力を持つておる人間が、同じ方法検査をして参りまして、どうしても見つからぬというのが二十の大部分であります。たとえば行政監察委員会で問題になりましたが、東北地方が非常に多いのでありますが、東北でもやつていないところもある。雪の関係工事年度末にやりにくい、一月以降できない、そのために金が余つてしまうから、年度末にぽんと幽霊で落してしまう、こういう説明もあつたのでありますが、これは事実に合わないのであります。たとえば、北陸で申しますと、富山、これは非常に厳重な検査をいたしましたが、全然やつておりません。ところがその両側の工事事務はやつておるのであります。こういう事態でありまして、やらない工事事務所も相当あるのであります。しかもその中には、たとえば、これはいいことでありますから、名前を申し上げますが、淀川——大阪のあの淀川といいますと、日本で代表的な大きな工事事務所でありますが、これは全然やつておる形跡がないのであります。それから関東地方で申しますと、栗橋の利根川上流事務所、これはかつてつておりましたが、検査院にぎゆうぎゆうとつちめられまして、ぴたりとやめてしまつたのであります。そのために、その後利根川の改修工事が遅れたというような話は、別に聞いておりません。やろうと思わなければ、できるのであります。しかしうるさい国の会計法とか、会計検査院とか、国会の予算とか、いろいろな制約がありますが、そのうるさいのを避けるために、一番やさしい方法としてやつておると、結論的にそういわざるを得ないのであります。いろいろ制約もありましようが、それは受入れようと思えば、受入れられる程度の制約であります。決して絶対に制約を犯してこういう幽霊的な経理をしなければ、やつて行けないというものではないと思うのであります。私どもとしては、今非常に冷酷というような印象を与えるかもしれませんが、要するに幽霊を駆逐しよう、これをとつつかまえて直させる、そして余つた金はどんどん国に返させる、こういう方法を実はとつておるのであります。ほかに大きな隘路がありますれば、これはその隘路打開に私どもとしては協力しなければいかぬのでありまして、またしてもおりますが、これを見つけられましたものは、実はその次からぴたりとなくなつてしまうのであります。そのために工事が遅れるというような話も、実は聞いておりません。それで、私どもとしては、来年いつぱいぐらいかかりましたら、また新型があるいは現われるかもしれませんが、従来の幽霊経理のやり方というものは、まず一掃できるのじやないだろうか。われわれは、今まで歩かなかつたたくさんの工事事務所を、歩いてみたいと思つております。幹部の方は、大体検査院批難に順応されまして、これをなくしてしまおうという気構えに、現在もう各局ともなつておるようでありますが、これがいかに早く末端に浸透して行くか。建設省地方工事事務所は、末端の力のなかなか強いところであります。事務所長工事を受持つ範囲がなかなか広いのでありまして、とても末端のこまかい経理までは目が届きかねるというような面も、多々あるように見受けられるのであります。末端を早く直す、こういうことをやつては悪いのだという観念が浸透して行くことが、私どもとしては望ましいのであります。そうなりますと、今のところ大体これはなくすことができるのじやないだろうか、こう考えております。
  62. 稻村順三

    稻村委員 ちよつとお伺いしたいのですが、今も、一番の問題は予算の関係だというふうな話がありましたが、私も地方におりまして、ちよつと見ますと、幽霊人口の一番大きいのは職員の超過勤務だとかなんとかいうことよりも、普通の人夫です。たとえば人夫賃が上つて、今まで百五十円であつたのが、二百円出さなければだれも来ない。そういう場合に、八百人のものを千人と、実際上は八百人しか使わないで、二百人の幽霊人夫を使うというようなことを、私たちはしばしば見て来ておるのであります。こういうような事例が、実際を言うとやはり検査の中にあつたかどうか。事実を言えば、この前も、これは県営工事でありますけれども、新潟県でその問題で検挙された。検挙されて調べてみましたところが、実を言うと、予算の関係上半分ぐらいしか使えない。それで半分だけ使つて、しかも決算報告書にはどうかと言うと、千人なら千人使つた、五百人しか使わないでも、千人使つたといつて出さざるを得ない。そうでないと、予算がとても出て来ない。実際上の単価よりも上つている。こういうことのために、遂に刑事被告人まで出した事実も私たちは知つている。こういう事実があつたかどうか、伺いたい。
  63. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 今のやみ賃金のお話でありますが、これは現在では、その弊害は比較的少くなりました。かつて職種別賃金、俗にPWと申しておりますが、これがいろいろな工事に適用されておりました時代、言いかえますと、法律百七十一号、これがあつた時代には、そういう弊害が非常に多かつたのであります。たとえば、実際に東京付近でも、人夫が今でも二百何十円というようなことになつております。現在では終戦処理費で適用しておりますが、非常に安いのであります。実際には季節的にも、またそういうことを離れましても、非常に高い賃金を出さなければ雇えない、こういう事態が多いのであります。ことに新潟のような北陸になりますと、雪の関係というものに非常に支配されまして、季節的に相当変動がはげしいようでありますが、PWはなかなか季節的な変動など見てくれておりません。やみというものを一切押えるという建前で、法律の百七十一号の一環としてできた公定賃金でありますが、これをのがれるために、公定賃金で一応書きまして、人夫の方で調整するということが一般に行われているのであります。そのために、今お話通り、文書偽造とか、詐欺とか、警察に検挙されたという話もございますが、全体としてはそういうものは非常に少いのでありまして、会計検査院でも、公定賃金ということを相当強く、いろいろ検査主張はいたしましたが、この辺の実情は、実は十分伺いまして、また実際のやみ賃金の調べなどもございますし、そういう点で形式的にただ人夫を水増ししたからどうとかいうようなことは、検査上では実はあまりしておりません。その辺の実情は十分に調べた上でやつているつもりであります。それからこの地建の幽霊経理も、やみ賃金ということが一つの導火線に実はなつたのであります。地建の人夫を雇う場合に、公定賃金では来ない。公定賃金だけを正当経理をいたしまして、やみ賃金を払う財源を幽霊資金に求めるということが行われまして、終戦後それが一つの大きな導火線になつたことは事実であります。現在ではPWというものは、終戦処理費関係だけに適用されておりまして、それ以外は大体適用されておりません。それでやみ賃金という問題がなくなりまして、現在ではこういうものは使わぬでも、ちやんと正当な支出ができる、こういう段階になつております。
  64. 稻村順三

    稻村委員 昭和二十四年度当時には、実際そういう問題が非常に多かつたと、私は思つております。それからもう一つ問題になるのは、これはやはり公務員法とも非常に関係が深いと思うのでありますけれども、たとえば、先ほど申しました通りに、現場の公務員が超過勤務をやる。超過勤務をやる場合、これはもう財源というものが足りなくて、超過勤務の金を何とかして捻出しなければならぬ。これは最大公約数でと言つたところで、やはり国家公務員は、ことに普通の労働組合なんかと違つて、実力行使ができない。そういうような実力行使ができないというので、やはり保障しなければいけない。こうなれば、私たちが予算を組む場合に、その公務員のそういう特殊な勤務というものを全然考慮しない予算というもの自身が、私はむしろ責めらるべき予算だと思います。元来私の知つている限りにおいては、現場の職員の人などは、ほとんど夜通し監督をやつております。ことに新潟県のような地盤の悪いところで、水などがある場所だと、夜通し、ほとんど夜中に仕事をしている。こういうような仕事は、それはどうかと言うと、公務員に現場へ行かなくてもいいと言つたところで、やつている以上やはり行かなければならない。こういうようなことが私は起きて来ると思う。そういう特殊の事情というものを予算の中に見込まないで、そうしてただ八時間労働、超過勤務三十分なら三十分が平均だといつてずつとやつてしまうところに、予算の欠陥があるのでありまして、やはりあなた方の立場から言つても、予算の編成上の欠陥から、こういうものが起きるのだ。先ほど小峰局長の話を聞きますと、一度注意すると、これはしないで済むと言うけれども、そういうところでは、すると超過勤務などというものをしないでやつているというのか。それとも超過勤務手当なしで超過勤務をやつているという事実があれば、これは重大問題です。どうやつてつじつまを合せているのか、その点の実情をひとつ御報告願います。
  65. 植田俊雄

    植田政府委員 超過勤務手当の予算は、非常に各官庁とも苦しんでいる問題であります。各官庁とも本省、地方を問わず、三分の一ないし四分の一しか出ないわけでございます。昔は超過勤務手当がなくても、役人は無制限な公務だということで行けたわけでございますが、今はそうは参らない。これは各省会計課長共通の悩みでございます。今現場の問題でございますが、超過勤務手当がなければ、作業をしなくてもよろしいというふうな、余裕のあるような工事現場は、私どもにはほとんどないのでありまして、すべて超過勤務を要するような状態でございます。従いまして、私ども職員組合の方方に会いましたときに、いろいろ話しまして、私も強圧的に言つたわけではございませんし、また組合もけんか腰でもございませんし、笑い話のように話した問題でございますが、これは先ほどもお話がありましたように、経営者的な立場では申し上げておりません。私ども工事現場は、内務省伝統がございまして、とにかく夜でも土曜日でも日曜日でも、飛び出す習慣を持つているのであります。あなた方に頼むから、どうしてもできないというならしかたがないけれども、あなた方の工事というか、伝統の力をもつて仕事を続けるしか、今のところはしかたがない。私どもとしても、大蔵省に対して超過勤務手当の要求をするという考え方には、かわりはないわけですから国の財政の都合もありまして、なかなかそれができないというふうな事情も、組合員としてはわかつてくれまして、超過勤務手当が足りない足りないといつて、私どもに要求には参りますけれども、そのために超過勤務をしないで、仕事を投げやりにしてほうつておくというふうな傾向も、ただいまのところはないのでございます。これは先ほど船越委員のお話がありましたときにも、私お答え申し上げようと思つたのでございますが、いろいろ国の事業というものは、これは私どもから申すと口はばつとうございますが、なかなかどの範囲をもつて能率を上げたと見ていいかどうかの標準が、むずかしいわけでございます。特に工事をやりまして、川の工事、道路工事ということになりますと、これは具体的な資産科目がありませんから、バランス・シートがどうしても合わないのです。つぎ込めばつぎ込むほど国の損失になる。つぎ込んだだけで、それが生きて残つておるか死んでしまつているかが、少しもわからないというふうな、妙な企業形態なわけでございます。この点は専売でタバコをつくる場合と若干違うわけでございまして、私どもとしましては、公務員法によりまして要求せられる金をつぎ込むばかりが、決して能ではないので、私ども工事の点につきましては、これはあるいはまた稻村委員の御意見もあると思いますが、相当中央建設局も、設計その他の面ではよくやつてくれていると思います。しかし事業を安く仕上げるということの努力もいたさなければならぬのじやないか。そのためには、私は直接工事費ばかりでなくて、間接費についても、国の直営工事をやる場合には、常に考えておかねばならぬ問題である。特にそのうちでも民間の建築業者の資格において、建設間接費を使い込み過ぎていはしないかということに、注意をしなければならぬということを、去年あたりから強調いたしまして、大分地方の地建局長あたりの共感も得ているような状態でございます。そこで、これは稻村委員お話になりましたことと若干矛盾して参るのでございますが——労務官という言葉が適当かどうかは存じませんが、居残りしている事実は、決して私ども否定するわけではございませんが、居残りしなくてもいいような事務形態に、もつと持つて行けないものであろうか。その点をもつともつとくふうしないと、あまりに超過勤務手当——現実に残るだけであり、あるいは夜ふかししまして、あるいは若い人が昼のうちぶらぶらして、夜になつてぶらぶら昼の間の仕事を続けておつて——これは極端な場合でございますが、極端な場合にそういうことをやつて、それが何にもバランス・シートでチエツクするものがございませんから、要求通り出してしまうということになつても、これもまことに申訳ないのではないか、こういうことを考えているわけです。私は役人のように、どうも営業成績とか、そのほかでチエツクされないような仕事におきましては、超過勤務手当という制度が適当であるかどうかについては、私個人としましても相当疑問を持つております。しかし疑問を持つておるからといいまして、建設省関係の超勤の予算の獲得戦におきまして、決して人後に落ちているわけではございません。毎年獲得戦には相当活躍いたしておりますが、とうてい思うようには行かないのでございます。今後ともその点は努力いたしたいと思つております。それから私どもの組合の方々も、時には強く申すこともございますが、私個人に会いましてよく話をいたしますと、やはり昔の伝統もございまして、よくわかつてくれまして、私どもの努力は努力として買つてくれますし、また不満は不満として聞いております。ともかく超勤がなくても、工事には支障を来すまいというふうな覚悟で働いておることについては、感謝いたしておる次第でございます。
  66. 稻村順三

    稻村委員 ちよつとその点もう少し聞きたい。そうすると、第一の点ですが、これは結論的に申しますと、大体超勤手当を出さないで済むような現場はない。これはもちろん私も、ことに災害復旧のようなものについてはそうだろうと思います。そういうようなところだとすれば、しかもそれに予算がないということになれば、これは公務員法でせつかく保護されて、労働組合としての団体の行動を制限されるという下級官吏に——私は実を言うと、官吏だというても、現場の監督などは別だ、行政権を持つておるわけでも何でもないので、普通のただ官庁に雇われておるというだけであつて、これは実際上身分上において、行政権を持つていない普通の労働者と同じである。そういうようなものが、ある程度の団体行動を制限されるというのは、要するに先ほど申しましたように、一応公務員法によつて保護がある。その公務員法による保護として重要なことは何かというと、それだけの給料を確保しておることだ。それにもかかわらず、この点私たちは重要に考えられることは、大体が現在の建設省現場では、予算が足りない、それにもかかわらず支払いを予定しないところの超過勤務もあえてなしておるという事実、この事実をやはりはつきり認めるかどうか。私はこれは非常に大きな今後の問題だと思う。その点をもうちよつと……。
  67. 植田俊雄

    植田政府委員 現実におきましては、超過勤務手当のない勤務を職員はいたしておるのであります。
  68. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 先ほども超過勤務手当のことが大分問題になつておりますが、これはちよつと御参考に金額を申し上げますと、この残資金から出しました金額が、二十四年度は九十数万円、二十五年度は今私どもが調べておりますが、四百八十万円であります。三十一の工事事務所幽霊資金があつたのでありますが、その三十一の工事事務所で四百八十万円であります。これはそう大きな金額ではございません。それで先ほど来、稻村さんが非常に強く問題にされておるのは、非常な下級職員と思います。建設省工事事務所現場には、官吏でない職員が非常に多いのであります。人夫名義の職員であります。現場監督というようなことは、大体この種の職員がやつておるのであります。夜おそくまで、あるいは朝非常に早くから——、こういうのは形式上は人夫であります。建設省のお役人ということに現場ではなつておるのでありますが、これは人夫賃で支弁される職員であります。行政整理があるたびに、はかま人夫と言つておりますが、これがだんだんふえておりますが、これは人夫賃で払うのでありまして、これは当然時間によつて給与を受け得るのであります。この人たちには超過勤務手当をもらう超過勤務という観念はあり得ないのであります。十時間働けば、十時間分の給与を受けるのであります。一般の公務員は、八時間までは月給で、二時間は超過勤務手当ですが、この種の職員は原則としてはそうじやないのでありまして、時間によつて給与をもらうのでありますから、当然にこれは超過勤務手当をもらつておるのであります。この種の職員が、私どもの見たところでは、現場には一番多いのじやないかと思います。それでこの幽霊資金から超過勤務手当をもらつていた人は、いわば雇員以上の正式の職員であります。これは本省はもちろんこの種の職員ばかりでありますが、本局もこの種の職員が多い。が、末端に行くほどこの種の正規の職員は少いのであります。八千万円、九千万円というような大きな現場をやつておりますところに、正規の職員が二名しかおらぬとか、三名しかおらぬとかいうような実例を私どもつて、実は驚いておるのでありまして、大部分が人夫名義の職員が多い、この人たちは決して御心配になるような、超過勤務手当なしに超過勤務をやるということはないのでありますから、それだけ御参考に申し上げておきます。
  69. 稻村順三

    稻村委員 今の答弁で、ちよつと質問したいと思いますが、そういたしますと、そういうふうなものを現場で一番持つておるとすれば、これは年末手当などが大事な問題となつて起つて来ると思います。そういうのになりますと、やはり年末手当を出さないと、なかなかこれは——公務員である場合には、年末手当などを出さぬで済みますけれども、そういうような人夫名義のものが非常に多いとすれば、やはりこれは年末手当でも出さないと、その事務所がなかなか運営できないというような問題も起つて来ると思うのです。  それからもう一つ、人夫名義で工事の監督をしたりなんかしておるということを、今ちよつと聞いたのでありますが、これは事実ですか。これは建設省の方の人から私は聞きたい。人夫名義でもつて工事監督や何かをやらせておるということになると、これはある程度いえば、国の責任を人夫にまかせておるというので、これは大きな問題になつて来るのです。こういうようなもので不正工事だとかなんとかやかましいことを言うこと自身、国が無責任だと思うのでありますが、その点どういうことになりますか。
  70. 植田俊雄

    植田政府委員 この直営工事につきましては、定員のきめ方に、昔から伝統がございまして、いわゆる本定員というものと、工事費にスライドいたします定員と、昔から二つがあつたわけでございます。工事にスライドする方は、いわゆる用人と申しております。現場でたたき上げたいわゆる監督でございますが、監督に当る用人の人が多かつたのでございます。この人たちは、国家公務員法の定員がきまります場合に一部が本定員に入りまして、一部はそのままで定員外に残りまして、工事費から支弁されておつたわけであります。私どもとしまして一番理想的な定員の形態から申しますと、全部を国家公務員にいたしまして、そうして一部は、国家権力を行使する監督的な仕事をやる、現場工事のいわゆる現場監督をいたすものにつきましては、これは現場工事費の中から支払う。従つてその監督の経費は、その建造原価につけ加えることができる、こういうようにするのが本筋だと思うのでございます。ところが公務員法というものが一律にでき上つてしまいまして、一般の行政官庁と同じような公務員法なつてしまつたものですから、従いまして現在本定員に入つておりますもののうち、三割、四割というものは、事務をとるようないわゆる事務屋技術屋ではございませんで、現場現場監督、棒がしらでございます。先ほど小峰局長のおつしやいました監督というのも、工事現場監督でございまして、いわゆる棒がしら的なものでございますので、その点は間違いないようにお願いいたしたいと思います。  それでこのような問題に発展いたしましたのは、人夫名義の職員ということになつて参つたのでございますが、これは経理、人事あるいは労働基準法、職業安定法の関係が非常に複雑になりましたものですから、言い訳といたしますれば、工事用の人夫の人に事務の方も手伝つてもらつておるのだということになるわけでございますが、実際のところはなかなかそうも言い切れないので、初めから事務の手伝いをさせるために、近所の中学校の卒業生を雇つておるというのもございます。いずれにしましても、ただいままでのところは、いわゆる公務員と、こういつた臨時に使つておるものとの間につきましては、身分上の差があるわけでございますし、また身分上の差が若干あるのが当然なわけでございます。従いまして、本定員のものには超過勤務手当がつきますが、こういつた人夫の人には超過して働いただけは歩増しで人夫賃をつけて参ります。しかし本定員の方に年末手当がつきましても、これは予算の積算がございませんから、現場の雇いました人夫には年末手当は出せない、こういうように若干の差はあるわけでございます。しかし、こういうふうに定員外で雇つております人夫につきましても、相当長期にわたりまして、また本定員とそう差をつけることのできないものにつきましては、最近準職員という制度を設けまして、この人たちにつきましては、共済組合に加入せしめ、有給休暇を与え、病気しましても国家の手で無償で療養させることができる、こういうふうな療養の方法を講じまして、ほとんど本定員とかわりないようものがございます。これは五千八百八十四という人数を限られ、またこの範囲につきましては、情勢の大きな変化のない限りはふやさない、こういう方針で臨んでおります。ただいまの点は、この程度で御了承願いたいと存じております。
  71. 菅家喜六

    菅家委員長 それでは報告書百七十四ページ、報告番号六一八ないし六二〇、直轄河川工事の施行に当り処置当を得ないもの、及び報告番号六二一ないし六二五、災害復旧工事費の査定又は工事の施行当を得ないもの、以上八件を一括して説明を求めます。
  72. 植田俊雄

    植田政府委員 六一八から六二〇までの間におきましては、工事技術上の問題が非常に多いわけでありまして、後ほど河川局の治水課長から説明いたしたいと存じております。  その次に六二一から六二五までの問題は、先ほどもちよつと話がございました災害復旧補助工事で、災害原形復旧と程度超過の間の、きわめて会計検査院との間の微妙な関係のある問題でございます。これは実は私もここでお答えするほどのはつきりしたけじめがつけかねる方の問題でございますので、率直に申し上げますと、この問題は現在地方の土木関係の問題として、きわめて重要な問題でございます。防災課長も参つておりますので、防災課長の言い分をよくお聞き願つて会計検査院のおつしやることもごもつともでございますから、これもお聞き願いまして、私どもこれはこういう委員会で申し上げてまことに失礼でございますが、お知恵を拝借いたしたいと考えておるほどの問題でございますから、よろしくお願い申し上げます。
  73. 伊藤剛

    伊藤説明員 六一八ないし六二〇の件につきまして御説明したいと思います。  六一八と六一九は、先ほど会計検査院の方から御説明を願いました利根川上流の改修工事についてでございまして、栗橋の対岸の仕事でございます。ここの区域が非常に狭かつたために、昭和二十二年に利根川に破堤が起りまして、東京方面は御存じの通り災害を来したようなところでありまして、これを拡充するのは非常に緊要で、かつ急いでやらなければならない仕事つたのでございますが、まず工事をやる順序といたしまして、先に保証によりまして用地を確保し、そのあと土木工事をどんどん続いて追いかけてやらなければならぬのに、用地の買収の方が予定よりも少しおそくなりまして、うしろからすぐ土木工事がおつかけて来る、それでこんなような結果になつておるわけでございます。それで一応口でその地主に対してその土地はこれこれの値段で売つてくれ、こういう口約束をした簡単なことだけで、すぐそれは買えるものと確信いたしまして、工事を進めて来たために、その土地にいざぶつかつたときに、そのくらいの値段ではなかなか売つてやらぬ、こう言われまして、仕事はすぐあとからおつかけて来るし、やむを得ずこの土地は平均三メートル、最大六メートルばかり——あの辺の川幅は六百五十メートルばかりございますが、それにつきまして最大六メートルばかり移動させたのであります。従つて今までまき出してしまつた土がいらなくなつたために、ほかにもどした。そのためにここに上つておる金がむだになつた、こういう問題でございまして、これはいくら緊要で、いくら忙しい仕事であつても、周到な注意のもとにやらなければならぬのであります。もちろん経理とかその方については、非常におほめにあずかつたような工事事務所長ではございますが、これはやはりはつきりあやまちでございますから、これは十分注意いたします。  それから六一九は、この付近に合流いたしております渡良瀬川の、栗橋から二キロばかり上流にさかのぼつたところの工事でございますが、ここも昭和二十二年の栗橋の破堤と同時に、六箇所ばかり破堤いたしました。その復旧と同時に、在来の高さ、在来の断面で堤防の断面におきましては不十分である。やはり緊急に築堤工事に着手いたしたのであります。この辺の大体の設計として前腹つけ工法によるのを最善と考えたのであります。もちろん御指摘の堤防に関しましては、実は御指摘の通り、うしろの方の腹つけをした方が、精算してみた結果経済的である、こういうことがわかつたのでありますが、多少工事を急いだあまり、その付近全体として大体前腹つけがよいということで局部的な検討をやらなかつた。そのためにこういうような結果になつたのだと思います。これについても、先ほどの工事事務所長に対して十分戒告をいたしました。  それから六二〇の北利根川は、これは霞ケ浦から牛堀、潮来を通りまして利根川に合流いたしております川でありまして、この川の断面が足りない。霞ケ浦が最近毎年のように氾濫をする。それを防ぐためにこの断面を大きくする。そのための浚渫工事でありますが、やはり昭和二十三年ごろ、あちこちで非常に電力を使つて緊急工事をやつておりました関係上、電力の契約に少し遺憾な点があつた、こういう点なのであります。すなわち単位当りの電力使用量は一キロくらいで済んだのでございますが、電力を受けるために方々に変電所を設けたのであります。それから電線を新設しなければならなかつたのでございます。それを別個の設計でやればよかつたのですが、一キロ当り電力単価としたために、これが結果において若干高くなつた、そういう新設の契約をもらうことになつたのであります。これも、なお精算すれば、そんなにたくさん見てやらなくてもよかつたのでございますが、やはり工事を急ぐのあまり、そういうような単純な契約をやつたのであります。これも工事事務所長に十分に警告すると同時に、現在におきましては、もつと合理的な経済的な契約で工事をやらせております。
  74. 賀屋茂一

    賀屋説明員 六二一号のこの江合川の堤防工事の問題でございますが、これは江合川が、先ほど申し上げたと思いますが、非常な大災害を受けまして、この地点は相当砂防施設もしておつたところでございますが、砂防施設のごときものは全部とれまして、堤体が川の中に埋まつておるような現在の状態なつております。それで河川が合流する直下流のところでありますので、これは右岸堤防でございますが、前の堤防のところには復旧できない。それで数十メートル後退させて復旧をしたわけでございます。それで旧来は霞堤になつておりまして、山から落ちて来た水は自然に流れ出るということになつておつたのでありますが、堤防が後退しました関係で、これを霞堤にすることができませんので、一本の河川にしたわけでございます。そうしますと山側から落ちて来る水流の、その水のはけ口がないわけでありまして、この築堤に控え横堤で水をはかせたのが実は誤解のもとじやないかと思うのです。二本の堤防——堤内地の低地に横から落ちて来る水を、洪水中でもはかさなければならぬものですから、相当大きな横堤をつくりまして、その横堤の上がいわゆる排水路になつておるわけであります。これは堤内地が河床よりも低いところでありまして、山から落ちて来た水をそこにためるわけに行きません。江合川は二日間ぐらい自然排水ができませんので、この間の水をかけひ的なもので排水をしようという施設をしたわけでありますが、これが災害復旧としては、かえつて行き過ぎの工事じやないかということに実はなつておるのであります。横堤には、これは練石積みにしておるのもどうかというような御議論もありはせぬかと思うのでございますが、建設省の査定といたしましては、水を本川の出水の高いうちにはかせなければなりませんから、はかす方法は当然本堤防を一本にした関係上それでやらなければなりません。そうしませんと、家がありますので、家が二日も水につかつてしまうという状況になりますので、復旧の処置をしなければならない、こういう確信を持つております。ただやり方としては、もつとかわつたやり方がありはしないか、あるいは上の方に水を持つて行かなければならないのじやないかというような、いろいろ御議論があろうと思いますが、建設省としてはそのところに持つてつた方がいい。ただ二本の本堤が切れたときに、横堤があるから多少それで持つことができるだろうという説もあるように聞いておりますが、これはおそらく本堤が吹き飛ぶような災害でありましたならば、横堤はとても持ちこたえるとは考えられません。感じといたしますれば、本堤が乗り越えられたときに、多少水を防ぐ一時的なものになりはしないかという感じがいたしますが、本川の水が深い間に堤内の低地の家のあるようなところに水をためつばなすことはできない。かけひのような高い横堤をつくりまして、その上を水路にしまして水を流すような施設をしたわけでございます。確かに災害復旧方法としては当然やらなければならぬことだと考えておるわけでございます。  それから六二二の宮城県の工事でございますが、これは査定設計に、築堤の盛土を全部肩で運ぶような設計になつておる。ところが実際を見ますと、ブルトーザーを使い、トロツコを使つておるじやないか、そうするとブルトーザーを使い、トロツコを使うならば、設計変更をした方が安く上るというような御説明でございます。災害は御承知のようにたくさんな箇所に出ますので、一々そこに機械があるだろうという想像はできないのであります。機械があつても、また使いたくても、どういう請負者がお請負いになるかわかりませんので、大体機械は使わぬということで、実は査定をしておるのでございます。この点は今後は考えなければなりませんが、現在といたしますと、ほとんど原始的な人夫の力でやるというような査定の仕方をしておるのでございます。今後お考えになるかもしれませんけれども、これにつきましては、現在建設省の方針としてそれをやらせておりますので、特に高い金額で査定額をきめて国の方へ迷惑をかけるという考えではございませんで、これはそういう方針でわれわれの方としてはやつておるわけであります。  それから六二三の宮城県の築堤で腐蝕土を使つておるということでございます。これは最も悪いことでありまして、検査設計でもそれは認めておりません。こんなことになつたのは、どういう事情があつたのか知りませんが、仕事ができぬというようなことからの問題ではないかと思うのであります。検査院からおいでになつたときに、たまたま築堤の上に腐蝕土があつたということでございますが、これはわれわれの方でも絶対に許しません。現在におきましては県単独の負担でこれは全部査定の設計の通り復旧をやらせております。  それから六二四の富山県の問題でございますが、これはまつたく設計の誤りでございます。いわゆる誤算というか土盛の見方が違つてつたわけでございます。これは査定の方の責任でございますが、実はこういうふうな誤算は間々多くの箇所ではあるのでございます。この誤算は土盛が一千立米あればよいのに二千立米もあつたという場合でありまして、この逆の場合もあるのであります。一千立米のところに、査定のときに実は五百立米しかなかつたということもあるのであります。こういうことはあつてはならないのでございますが、たくさんのものを見ますと、そういう違算があるのであります。そういう違算があるから査定額を見てからやるなどということは、絶対にございません。これは実施設計をいたしまして、見込みが多かつた場合には、中間入札の方法でどんどん処理して行く。これは国庫負担対象からは除外されております。本件につきましても、設計変更で正しい設計にいたしまして、当初の査定の誤りは是正させております。これは最後の全部竣工いたしましたときには、その除外された金額に対する国庫負担というものは、もし違つてつたとしますれば還付するという方針でございます。そういうふうな計算の方法をたいがいやつておるわけであります。  それから兵庫県の問題でございますが、査定以上の仕事をやつたというわけでございます。築堤の上にさらに増加施設をしているということでございます。これは災害復旧から申しますと超過でありまして、これは認められません。但し、県がおやりになることは、なお以上のつぱなものをやるのでございますから、さしつかえないのでございますが、国の負担としては、これは負担いたしません。結局県が査定以上の仕事がやりたいときには、設計変更の認可を出すのでありますが、認可を受けておらないで先にやつてしまつたというわけでございます。この分につきましては、その後設計変更の方法をいたしまして、超過の分につきましては、県の単独負担というような処置をいたしております。  大体以上であります。
  75. 小峰保栄

    小峰会計検査院説明員 ただいま六一八から六二五までの案を治水課長、防災課長から御説明がありました。治水課長お話によりますと、六一八から六二〇、これはいろいろこまかい御説明がありましたが、結論的には検査院の言う通り改めさせた、あるいは注意した。こういうことでございますので、私特に申し上げることはありません。  六一二から六二五でありますが、これは六二一を除きましては、弁明書によりましても、また今の御説明によりましても、必ずしも検査院批難に対して異議はないようであります。六二一について、いろいろ御説明がありましたが、検査院批難と相反する点もございますので、この案件につきまして、ちよつと御参考に申し上げたいと思います。  これは江合川の鳴子温泉のそばの堤防であります。ここは二十三年の大きな災害で、在来のものは全部流されまして——在来のものといいますと、ざつと三メートル余りの小さい堤防でございます。これが流されましたので、ずつと後退させまして七メートルほどの高さの堤防をつくつたわけであります。三メートルの堤防が流されたので七メートルの堤防をつくるということは、二十五年度では原形超過になりますが、従来ですと、これは災害復旧三分の二の国庫補助対象にするということは、再度の災害防止意味から申しまして、従来も検査院建設省と歩調を合せて、批難したことはございません。本件の場合におきましても、その程度でしたら、会計検査院は、従来の取扱い通り、これは決して原形超過とは考えていないのでございます。これは認定は越えておりますが、再度の災害防止ということが災害復旧の要素でございます。幾らつくつても流されるというようなものをつくつても、しかたがありません。七メートルと申しますと、二十三年のかつてない大洪水の際の最高水位が一メートルでございます。私現場に参りましたが、りつぱな堤防でございます。今まで出た記録的な洪水よりも一メートル五十も高いという大きな堤防をつくつております。これまでは私どもとしても別に三分の二国庫負担対象にするということには異議はないのであります。ところが、先ほどちよつとお話がありましたが、この堤防の間に平地がありまして、裏ががけになつております。この間をやはり高さ七メートルの堤防二本でつないだのであります。これが問題の批難対象なつているわけであります。これの長さが問題でございますが、一本が七十三メートル、一本が百七十二メートルの相当なものであります。この間が二十メートルあるのでありますが、この二本の間に控え横堤を出したわけであります。これに対しまして先ほど建設省当局は、排水のためだ、こうおつしやるのでありますが、県はこれは排水のためだとは言つておらないのであります。現在では排水の目的もあるが、今の直高七メートルというのは非常に大きなりつぱなものであります。この石張りの堤防の強度を備えるための控横堤だ、こう言つております。ここに建設省側と県側との若干の食い違いがあるように見受けられるのであります。私どもとしては、控横堤となると、ちよつとおかしい。日本中に堤防もたくさんございますが、つつぱりを入れなければ持たぬような石張りの堤防というのはございません。建設省の言い分の排水という面から考えますと、排水ならばほかに方法があるだろう。これは六百七十万円かかつております。ただ裏の水をはくために六百七十万円の大きな金をかける必要はないじやないか。実はそこへ集まる水のこまかい計算をいたしましたが、必ずしも満足な排水路とも思えぬのであります。これは今年でありますが、実は建設省検査院批難に反対されておりますので、現場を見に参りました。百七十二メートルという長い方の入口を住民がふさいでおるのであります。こんなものがあつては困る、いざというときに排水路の用をなさぬ、そういう状態であつたのであります。これはたいへんじやないか、こんなことをしていて、ここへ水がたまつたならば、えらいことになるおそれがあるじやないかということで、ちようど一緒に参りました砂防課長もびつくりしまして、すぐにこれを取除けと言つておりましたが、私どもが見る機会がなかつたら、これはふさがれたまま用をなさぬでしまつただろう、こういう程度の排水路なんであります。私どもとしましては、県がそういう工事をやりたいのならば、これは県が改良的な意味でおやりになるのはけつこうだろう。しかし国庫補助の三分の二という、ほかに例のない高率の国庫補助災害復旧工事としてやるのは行き過ぎじやないだろうか。今の三メートル五十しかない堤防の側に、七メートルもの石張りのりつぱな堤防を立てて、そのうしろにつつぱりか排水か知らぬが、とにかく横に直角の堤防というのは、日本中にあまりないと私は思うのでありますが、こういうものをおつくりになつて、これも改良ならばよろしいが、災害復旧としての工事としては行き過ぎじやないだろうか、こういうのが実は批難の骨子であります。おやりになるのは自由だが、それは二分の一なりあるいは三分の一の国庫負担しかない改良工事としておやりになるならば、検査院としては決して文句はないのでありますが、三メートルの堤防が流された、それに対する災害復旧としては行き過ぎではないか、こういうのですが、どうも建設省側もなかなかこれに対して御納得が行かぬようでありまして、どうかひとつ適当に御判断を願いたいと思います。
  76. 田中角榮

    田中(角)委員 前段の批難事項は、非常に不愉快なものでありましたが、後段の批難事項は、建設行政を扱う方方と、会計法規の違法性をつこうとする会計検査院意見が対立するなどということは、当然あることでありまして、こういう問題は現在の公共事業の予算の執行にあたつては、たくさん残されておるわけであります。災害原形復旧ということは、前国会でようやく目鼻がついた。しかしこの細部の認定ということになりますと、まだまだ異論がたくさんあるのでございまして、こういうことをまず会計検査院批難せられ、非常に金額は小さいようでありますが、技術的な面までタツチをせられておりますことは、敬意を払つております。しかし建設省自体も、なるべく批難をせられない方がいいから、御意見もあるでありましようが、私は第三者として率直に申すと、前段のようなひどい批難事項もあるのですから、この程度の批難をせられたときには、建設省はあまり意見を言わないで、これは第三者に認定をまかす方が正しいと私は思います。それからもう一歩進めると、いろいろと議論もありますし、難点もあるのでありますが、災害復旧工事と府県負担工事とが、同一の比率でもつて補助せられるという場合だつたら、問題はないのですが、三分の一、二分の一であるというところに問題があります。しかもわれわれ建設委員としては、いつも言つておるのでありますが、工事量をふやしたい、ところが総予算のうち二十億の過年度災害に対しても、まつたく血道を上げて闘争を続けておるような状態でありますので、国が負担をしなければならない場合はもちろんでありますが、こういうように三分の二を二分のにしても、実際は府県が補助工事を行うということであれば、なるべく分担して工事量をふやす方がいいということが、災害復旧及び公共事業費に対する定義でなければならぬ。だから会計検査院建設省との意見の対立などという問題は、あまり問題ではなく、これは根本的なものさしではからなければならぬ。私の言うのは、こういうことが実際は続けられておるのです。なぜならば、改良工事年度予算に入らないものですから、災害で片づけてしまうということは、これは通例でありますが、このままにしておくわけにも行かない。しかしこれをやめてしまつて原形復旧という完全なる定義をつくつたならば、完全な災害復旧ができないうちに、また流されるでありましよう。この限界が非常にむずかしいのであつて、建設委員会の議題などにしても、ただいまの六二一などは、優秀なる議題だと思つております。私自身もこういう問題に対してはやつておるのですが、ただ総括酌にいろいろな無理も含み、しかも非常にむずかしい予算執行を行わなければならないのでありますから、いろいろ非難せられることがありますが、これに対して決算委員として私が考えるのは、非難せられるということよりも、これに対して普通の人の感覚では考えられないような非常なマイナス面が出て来ることをおそれる。一般的な各省官房会計課長の所管事項であつて、金銭出納に違法性があつたというような問題は、直せば直るのですが、こういう問題は直すだけではなく、今のままの感覚で第三者がぴちぴちと締めて行くと、公共事業はできなくなつてしまう。先ほどの稻村君の発言などは、私は少し片寄つた方面からだと思つてつたのですが、私の考えでは、こういうことをずつと続けて行つて、しかもそのものさしというものをはつきりきめないでいると、対立のままで批難せられて行く、こういうものがたくさんあると、公共事業費そのものに対して、いろいろな議論が出て来るのであります。現在政府部内でも、いろいろな事件が起きております。経済安定本部では公共事業法をつくろう、公共事業費監察法をつくろうと言つておる。私はそれに対して反対の態度をとつて来たのでありますが、前段の話だと、公共事業費監察法をつくつた方がよろしいという議論も成り立つわけであります。だから、今までは経済安定本部の認証を必要とし、大蔵省の認証を必要とし、しかも本省からも監督を受け、会計検査院からも監督を受けなければならぬのに、なおこのような状態を続けておるというところに問題があるのであります。だからこれ以上たくさん機構をつくつて締めつけたら、公共事業というものは非常にむずかしくなりますし、公共事業の計画もなかなかむずかしくなる。私は今の状態では、日本の国費支弁の焦点は、公共事業費にありといつても過言ではないと思う。まつたく限られた国土に、八千三百万人の人間が生きなければならぬのでありますから、これは国土の効率利用以外には何ものもありません。そういう意味で、私は国土開発保全というような立場から、公共事業費の増額を大いに言つておるのですが、どうもこういうはつきり会計法規上にも疑点があるような現在のままで行くということは、非常に損な立場にある。だから、私自身も専門的な立場から申し上げますと、いろいろな建設省の今のこういう非難を直すべき手は知つております。知つてはおりますが、その前に、建設省自体が、いわゆる公共事業をいかに効率的に行うか、その施行の方法、機構等に対しては、旧内務省の流れをくむものであるという長い伝統を誇るだけではなく、新しい一つの態度をもつて研究をされたい。そしてその研究の結論を得るときには、こういう非難が私はなくなるという自信を申し上げたいのであります。そういう意味では、私がときどき申し上げておる技術的な問題などにも、今までは認証が多かつた検査が多かつたので、検査も少くしよう、認証も簡単にしようと言つておるのですが、防災課長が言われたように、防災工事費ではできないから、やはり今のままで災害費でやらなければならぬ。もしそれをやらなければ、原形復旧したところで、堤防はつながらないというような事態がたくさんありますので、根本的な問題をひとつ解決せられるように努力を払つていただきたい。技術的な問題なども、私が申すまでもなく、予算の大わくが決定してから示達を受けて、それから正式設計書を本省に提示し、これに対して認可を受ける。その工事施行の途中において設計変更が出た場合は、もう一度認可をとらなければならない。こういうふうでありますと、年度も十二月に繰上げる以外にないのであります。実際雪国などは、ほとんど今ごろから工事が発注せられるのです。だから、今ごろから発注せられるとして、一箇月ぐらいすれば雪が降るのですが、一体それでどうして三月三十一日までに工事を仕上げ得るのか。しかも繰越しは非常にむずかしい認証手続をとつておるようであります。今年度からは繰越し手続が認められておるのでいいのですが、これを合法化そうとするところに無理があるのであつて、十二月初めから工事をすれば、雪の中でやらなければ工事ができなくなる。それをできたようにしなければ違法であるというところにも無理がありますし、またこれをできたようにしなければならないというところにも無理があります。といつて、日本の国土を保全開発しなければならぬという大原則をかえるわけには行かない問題でありますので、私は特に今日は大臣、次官がおいでにならないので、あらためて御質問も申し上げ、意見も申し述べますが、これはただに建設省の問題だけではなく、日本全体の問題であり、非常に大きな問題でありますので、特にその責任の衝に当つておられる技術官の諸君等は、今まで自分の教わつて来た伝統はこうであるというような覊絆を脱して、抜本的な、飛躍的な公共事業の施行、いわゆる国費の執行面を研究せられたいということだけ一言申し述べておきます。
  77. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 本日は、大蔵委員会と決算委員会の両方がありましたので、前半は大蔵委員会の方で質問いたしておりましたからこちらへ参れませんでした。ただいま同僚田中委員からも意見がありました通り、われわれも公共事業につきましては、全幅の信頼をもつて十分やつてもらいたいという熱意を持つておるのであります。そこで先ほど治水課長からもお話がありました通り、いろいろな問題があつたのでありまするが、ことに河川局長も来ておられますからお話申し上げたいと思います。その点は、大臣、次官も御出席のときにも申し上げるつもりでありまするが、こういうような公共事業、特に河川というようなものは、先ほど田中委員からもお話がありました通り、切れたときにおきましては、問題なく全面的に被害をこうむるのであります。こういうものを早く工事を完了いたして、災害に再び起らないようにすることが、河川工事の要諦であると考えております。先ほどお話のありました通り、この災害復旧等につきましても、あるいは分に過ぎたとおつしやるかもしれませんが、やはり分に過ぎたくらいやらないと、再びこういうような災害が来るおそれがありますから、この点につきましては、ぜひ地方の、いわゆる県等と御協議願いまして、国のやる工事地方のやる工事を一緒にやつていただいて、再び災害の起らないように、河川の改修なり防災なりをしていただくことが、緊要欠くべからざる事項であると思います。これに対しまして当局はどういうようにお考えになつていらつしやるか、局長から承りたいと思います。
  78. 目黒清雄

    ○目黒説明員 災害工事の施行の方針は、これはいろいろ議論があります。災害原形復旧にとどめたのでは、さいの河原であるという議論もあります。それから反面に、それならば災害が起きたところに思い切つた仕事をやつてつたら、反面一般的な公共事業費のわくに食い込まれて根本的な施策が立たないのではないかという議論もあります。そこでわれわれはどちらかと申しますと、できるだけ一定の計画のもとに、日本の河川なら河川をながめて、重点的に仕事を遂行して行きたいというのが希望でありますが、たまたま災害が起きますと、災害地方のみにそれが偏するという心配も起るのであります。     〔委員長退席、田中(不)委員長代     理着席〕 でありますから、災害地方とその他の地方とで、その軽重の度合いをいかにあんばいするかということが、災害復旧費の使い方の方法だろうと思うのであります。そう申しましても、われわれとしても、原形復旧にこだわつて、ただ国費を濫費するという行き方はとりたくないのであります。でありますから、災害復旧を、程度超過仕事をしましても、これは負担金が違いまするので、普通の二分の一の負担でがまんしてもらつて、それでりつぱな仕事を仕上げたいというふうに思つております。また田中さんからお話のような、今後公共事業の行き方を、根本的に考え直さなければならぬじやないかという御意見もありますので、われわれは目下寄り寄り協議いたしておりますが、内務省伝統といたしましては、直轄偏重と申しますか、直轄に非常に重きを置いておるのであります。そのために、堤防も十分な堤防ができたと信じております。しかしながら、直轄工事の効率といいますか、能率というような点におきまして、他の請負工事との比較がなかなかできないのであります。よければ幾ら金がかかつてもいいのかということになりますと、われわれは相当疑問を持ちますので、少くとも直轄工事と請負工事とを併用して、その間に競争させる手段を講じなければならぬじやないかということが、われわれの考えて行く問題だと思います。ところが、今直轄工事におきまして、いろいろの不在処理があり、いろいろ批難されておりますが、請負工事になりますと、またそれ以上の、あるいは刑事上の問題まで進展するような心配があるのであります。非常に厳重なる監督を要することもありますので、直轄工事になれておりますわれわれの部下を請負工事に移行するためには、相当な準備、訓練がいるのではないか、こういうふうに考えております。ただちに請負工事に移行するわけには参りませんが、お互いの長所を取入れて、なお進歩できるような制度をつくりたい、お互いに牽制し合つて、進歩するような行き方をとりたいと考いております。
  79. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 目黒河川局長お話によりまして、日本全国にあります河川を改修し、あるいは災害の起らないように努力する、こういう建設当局の御努力に対しましては、賛意を表します。それと同時に、またこれらの改修にあたりましては、毎回国会にお出しになる予算と、大蔵関係経費の点もありますから、もちろん簡単には行かぬわけでありますが、これらの復旧工事なり、あるいは災害防止工事なりに対しましても、なるべく早く完了したいということは、当局も思つていらつしやるわけであります。その中におきまして、年数がたちますと設計の変更などがありまして、ある程度までまたやり直すということもありましようが、私は大蔵委員でありまして、建設委員でありませんから詳しくは知りませんので、その辺の御構想を承りたいと存じます。
  80. 目黒清雄

    ○目黒説明員 利根川の例をとりましてもわかります通りに、最近の洪水の状態は、いろいろな環境の変化によりまして、だんだん増加して参りまして、かつては一万立方メートル毎秒というものが、すでに一万七千になつたということから推しましても、七千の増加が来ておる、こういうことでありまして、一応ある程度の計画を立てて改修して参りましたが、さらにこれを再改訂しなければならぬ時期に到達していることは事実であります。従つて、その計画を立て、さらに予算要求をしなければならぬというのも事実であります。そこでわれわれとしては、この改修計画を再改訂する場合に、今までの堤防のみにたよつた行き方はどうであるかということもまた検討しておるのであります。上流にダムをつくり、上流において貯溜する方法も、考えなくてはならぬ事柄だろうかというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、再改訂の時代に入つておりますことは事実であります。
  81. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今のお話でありますが、道路といい、河川といい、日本の交通あるいは文化の源泉であり、地方の開発にきわめて重大な案件でありますから、これら公共事業につきましては、われわれ国会議員も全幅の熱意と誠意を披瀝いたしまして増額もいたし、またその事業の完成にも尽力いたしたい、こういうふうに考えております。つきましては、今まで直轄工事がたくさんあつたわけでありますが、今局長の話によると、民間の業者にも多少請負わせるというような意思であると思いますが、これらの改修等における比例につきましては、直轄を中心とせられ、民間を従とせられる御傾向でありますかその辺をもう一ぺん承りたいと存じます。
  82. 目黒清雄

    ○目黒説明員 直轄でやります工事は、なるべく試験的な新しい試み、日本で今までかつて試みられたことのないような新しい試みをやる場合に、あるいは相当まとまつておりまして、それが機械施行その他の改良工法というような場合、あるいは構造物が非常にむずかしく、請負に付することができないようなものといいますか、最初から予測ができないので請負契約のできないようなもの、こういうようなものを主体に考えて参りたいと思うのであります。請負者がすでにいろいろの経験を経て、請負工事に出しても心配のない工事は、請負工事にしたいと思います。
  83. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 先ほど田中委員かちも御質問がありまして、政府の御苦労もわかります。私も昨年北海道へ参りましたが、北海道におきましては、先ほど田中委員の言われた通り、寒くなりまして冬のうちの工事はできないというわけで、御承知通り、できないものもでき上つたという報告をするものも相当あるというのであります。これは技術面等を考慮に入れて、もう少し早く、暖いうちにやるというようなことは、予算上できないものでありましようか。その辺の関係を少しくはつきりさせていただきたいと思うのであります。
  84. 植田俊雄

    植田政府委員 ただいまの点は、実は二十三年、二十四年、二十五年、二十六年と、だんだんと改善されて参つております。初めのうちは、二十三年につきましては、安本の認証は四回、大蔵省の負担行為訂則が四回、支払い計画が四回と、平均四つにわかれております。非常に無理があります。その後安本の認証が二回になり、大蔵省の負担行為訂則が実質上二回になりましたが、しかし依然として、金を支払う方は、現在に至りますまで年四回というふうになつております。金の支払いの方は国庫の財政の都合がございますから、これを四つにわけるのはやむを得ないにいたしましても、国庫の金の都合で工事が延びるのは、非常に困るわけであります。そこで二十五年度から、だんだん寒冷地帯、特に北海道につきましては、早く金をつけるようにいたしております。従いまして、早く金繰りをつけて、工事をやりますのに支障のないようにいたしておりますが、しかし、その場合問題になりますガは、先ほど田中委員からお話になりましたように、安本が認証する、あるいは設計変更をする場合、一々本省に伺いをしなければならぬという手数がかかるために、せつかく金が行つてつて工事に着手できないというような問題があるわけであります。この問題も漸次解決がついて参りますので、現在の制度のままで行つても、相当改善できるかと思つております。しかしいずれにしましても、気候に支配される工事のことでございますから、間々年度区分を誤るようなことがございまして、会計検査院のおしかりをこうむる、あるいは会計検査院のお目こぼしを受けているのではないかと思いますが、こういうことのあることは、まことに残念でございます。繰越し手続は、今度会計法が改正になりますと、正式に認められますので、こういう区分を誤ることのないように、工事が遅れたものは繰越して工事をして行くように、努力いたしたいと思います。
  85. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は本年の七月に、九州の熊本県、鹿児島県、宮崎県等々をまわりましたが、川内川を初め、たいへん氾濫をいたしておりまして、町のまん中のたんぼも、海のようになつておつたことも見たわけであります。ああいう九州地方のような災害の多いところにつきましては、よほど国土計画と申しますか、あるいは河川の改修といいますか、あるいはその他道路の改修ということにつきまして、相当注意を促してやらなければならぬと思つております。言うまでもなく、当局の方におきましては、相当準備をせられておると思いますが、それらに対しましての復旧もたびたび行われ、災害もたびたび起る、かように考えていますが、実際はどういうようになつているのでありましようか、簡単でけつこうでありますから承りたいと思います。
  86. 目黒清雄

    ○目黒説明員 災害が九州地方にたびたび起るので、どうも今までの効果がないのではないかというような質問であるようでありますが、実は災害が起りますのは、場所が違うのでありまして、大体河川改修をした箇所には、災害は起らないのであります。未改修の、いわゆる原始河川というものに起つて参るのでありまして、それは今の予算ではとうてい実行し切れないようなところに、だんだん災害は上りつつあるということであります。予算をつけて執行しました過去のものは、それだけ効果を現わしておるわけであります。
  87. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 ただいまの御説明によつてわかつて参りましたが、公共事業、これはプリントいたしましたものを見ると損になつておりますが、私どもが見ますと決して損じやない。やはり企業会計、私経済におきましては、相当改良をいたしましたり、改善をいたす、もしくは回復したものについては、相当尊重して見ておるのです。国の決算でありますると、ややもいたしますると、そういうような企業体的な会計組織じやございません。しかし私どもは今後の発展から考えまして、官庁におきましても、ある程度の企業会計の原則を基準に考えられまして、相当会計的につぎ込んだものにつきましては、相当の価値を評価いたしまして、決して国会に報告することを要求するわけではございませんが、必要上これを官庁に備えておいて、いつでも見るというふうにいたしましたならば、今まで使つた費用がこういうようになつているという実績もわかりまするし、業態の回復いたしたこともわかるのでありますから、そういうような組織に考え方をお持ちくださるような用意があるかどうか。われわれは将来そういう用意を持ちたいと思いまするが、当局はどう考えておられますか、承りたいと思います。
  88. 植田俊雄

    植田政府委員 国の会計でございましても、一般の消費経済的な、たとえば建設省なら建設省の本省の会計でございますと、これは純然たる家計と同様な消費経済でありますので、これはバランス・シートにならない問題であります。すべてが消費の支出でございます。お話通り公共事業は全部生産的な支出でございまして、支出に充てたものは、そのまま資産として残るべきものでございます。ただ国鉄の会計とか、専売の会計のように、資産がある程度換価価値を持ちますものにおきましては、その部分を資産に置き、また出ました支出は損費の方に組みかえる、こういう道があるわけでございまして、バランス・シートが成り立つわけでございますが、こういつた公共事業の支出の面におきましては、ただいま仰せの通り、生産財をつくるわけでございますから、当然資産が残るわけでございます。この評価をどういうふうにつくり上げるかということについては、今後も私どもの研究の題目としてやつて参らねばならぬと思います。ただ堤防にしましても、道路にいたしましても、資産を外部に売ることのできる換価的性格のものではございませんので、そういつた意味での評価というものはできないわけでございます。ただ私ども川なり道路なりの工事を将来において振りかえつてみました場合に、その工事が安くできたか高くついたかということの反省材料としての資料というものは、当然あるべきでございます。私ども最近には見かけないのでございますが、昔は工事年報というのがございまして、一つの直轄工事の設計その他の細目が出ておりまして、その経費がすつかり組み込まれて、どの堤防が幾らででき上つたかという計算ができておつた終戦後は公共事業費の会計形態がかわりまして、直接費ははつきりとわかりますが、間接費に至りますと、どこまでがその工事につぎ込まれたものであるか、どこまでが一般管理費かという区別がつかないような会計形態になつてしまつた。私は現在のこの制度がだんだんと改善せられるにつれまして、直接費は当然資産の方に組みかえすることができる、また現場工事費につきましても、はつきりと区別してつけることができる、あるいは地方建設局の監督している管理費につきましても、割がけでつけることができる、ここまではつきり経理できる状態に持つて行くべきだと考えております。国の会計制度は、全般的に消費経済を建前にしました会計組織になつておりまして、急激には参りません。私どもの研究題目といたしまして、短時日で完成いたすとは考えられませんけれども、努力目標としては、できるだけ近い機会に達成いたしたいと考えております。
  89. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 時間の関係上簡略にいたしまして、次会には大臣なり局長以外に、政務次官もおいでになり、事務次官もおいでになると思いますから、最後に目黒局長にお聞きしておきたいと思います。公共事業につきましては、実際日本の建設には重大関係がありますから、ぜひこれらに対しては増額をいたし、また緊急欠くべからざる事業はやつてもらいたい、こういう熱意に燃えておるわけであります。大蔵委員といたしましても、特に賛意を表しておるわけであります。この際補正予算もきまり、また二十七年度の予算もすでに立案中であろうと考えておりまするが、こういうようにきまりました予算等は、なるべく早く実行に移す。あなた方のお考えによりまして、緊急欠くべからざる方面から先に手を出すことはもちろんでありますが、なるべく年度内に完了するというような熱意と誠意を披瀝されまして、事業の進展に貢献せられますならば、ますます公共事業によりまして国民が安心をいたし、また将来とも、これに対しまする納税方面についても、意を強うすることと考えるのであります。かような意味合いにおきまして、政府当局であり、直接衝に当られておりますところの河川局長並びに各課長、道路局長並びに道路各課長を初めといたしまして、建設行政は国民に密接な関係を持つておりますから、どうか信頼の置けるような制度並びに施設を整備されまして、早くこの工事の完了なり、国民の要望を満たすように御努力していただきたいと思います。これに対します目黒河川局長の誠意ある御答弁をいただきたいと思います。
  90. 目黒清雄

    ○目黒説明員 われわれ公共事業に携わつておる者としては、やはり地方民の福利を増進し、あわせて産業の進展をはかりたいというのが念願でありまして、どこまでもパブリツク・サーヴアントの気持でやつて参りたいと考えております。でありますから、事業の結果がいかなる経済的な効果を及ぼしたかということにつきましては、常にそのチエツクを怠りなく、少くとも事業効果の多いもの一国家に貢献するものから早く始めてその効果を現わしたいと思つて考えております。今の御意見はごもつともでありますから、十分にその意を体して行きたいと思います。
  91. 田中不破三

    田中(不)委員長代理 本日は建設省所管について審議いたしたのでありまするが、時間もずいぶん経過いたしましたので、大臣及び事務次官等に対する質疑はこれを次会に譲り、本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十一分散会