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1951-11-16 第12回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十六日(金曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 竹尾  弌君    理事 並木 芳雄君 理事 西村 榮一君       植原悦二郎君    小川原政信君       菊池 義郎君    栗山長次郎君       仲内 憲治君    福田 篤泰君       小川 半次君    林  百郎君       高倉 定助君    黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君  委員外出席者         議     員 江崎 一治君         外務事務官         (国際経済局第         二課長)    永井三樹三君         農林事務官         (大臣官房調査         課長)     齋藤  誠君         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 十一月十五日  委員小川原政信辞任につき、その補欠として  藤井平治君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員藤井平治辞任につき、その補欠として小  川原政信君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月十五日  未帰還者引揚促国民運動推進等に関する請願  (坂本泰良君紹介)(第一四四九号) の審査を本委員会に付託された。 同日  外国人登録令の改正に関する陳情書  (第七四五号)  千島列島の処置に関する陳情書  (第七四八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  旅券法案内閣提出第二八号)  国際連合食糧農業機関憲章を受諾することにつ  いて承認を求めるの件(條約第七号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  旅券法案及び国際連合食糧農業機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件を一括議題といたします。  逐次質疑を許します。ちよつとお断りいたしますが、法務総裁は非常に時間が短かいそうでありますから、なるべく簡単に御質疑を願います。並木君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 FAOに加入することについての審議の途上におきまして、私はぜひ大橋法務総裁に確かめておきたいことがあります。それは最近特に現内閣農村いじめ政策を連続して、失政に次ぐ失政を重ねております。そこで私に言わしむれば、私はこのFAO農業部門における一種の平和條約であると思う。せつかくこれに加盟しても、弱体政策をとる内閣のもとにおける農業というものでは非常に心もとないので、私は今回政府が米の供出その他に対する政策にからんでとつた措置とともに、今後取締り当局としてどういうような方針をもつてこれに臨むのかということをお確かめしたいのです。そこで政府方針によつて農家が今非常に迷つているし苦しんでおります。まず第一に今度の供米割当でございますけれども、これをまだ最終的には決定しておりません。まだこれから知事と都道府県の農業委員との間で相当の取引が行われる。その結果農家の間では、供米割当について話がつかない場合には、政府強権を発動するのではないか、こういう心配を持つているのであります。私は今度の場合には絶対に政府として強権を発動すべきではないと思つているのでありますけれども、まずこの点について総裁の所見をお伺いしたいと思うのです。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 米穀の供出につきましては食糧管理法がございますので、それに基いてやるだけでございまして、それ以外に特別なる強権の発動ということは考えておりません。
  5. 並木芳雄

    並木委員 無理な割当をいたしまして、その供米が完遂できない場合に、これまた供出を完遂させるために強硬手段をとるのではないかということも心配されているのですけれども、その取締りというものもよほど注意しないと、農家いじめになると思うのです。私どもはそういう点に対して、政府がどういうお考えを持つているかということをお尋ねしておきたいと思います。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 取締り当局といたしましては、忠実に法規を執行するだけでございまして、食糧管理法並びにこれに基きまする法規を執行するために、何か罰則に触れるような事柄がございますならば、従来ともこれが取締り励行いしておつたわけでございます。このことは特に現在の米の供出の問題に関連いたしまして、特に取締りを強化するとかあるいは緩和するとかそういう事柄ではなく従前通り方針をもつて取締りして行こうと考えております。
  7. 並木芳雄

    並木委員 私は今度のような場合には、どうしても供米割当というものが納得の行かないおそれがありますので、農家の立場を十分考慮して、総裁もこれに対する手心を加えていただきたい、こういう趣旨からの質問でございますので、そういう気持がおありになるかどうか、ちよつとお伺いしたいと思います。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法規によりまして定められた事柄について、法規を忠実に執行するのでございまして、この間において手心を加えるとか、あるいは強化するというようなことは考えておりません。
  9. 並木芳雄

    並木委員 そこで問題となりますのは、政府は来年の十一月一日から米の統制をはずすと言つております。そうしますと、それ以前いわゆる統制にひつかかつて違反行為をして罪に問われている人々に対する十一月一日以後の取扱いということでございます。これは單に米の問題ばかりではございません。ほかの統制事犯についても言えることと思いますけれども、十一月一日からはずすということが目の先にぶら下つているのですから、実際問題として主食の運搬とか売買というものが激化するのじやないかと心配しております。これに対してどういうように処置されるか。しばしば解釈があいまいでございまして、統制がはずれればもう適用されないのだから、やれるだけやみをやつておいた方が得だなんということも聞かれるのでございますけれども、この際政府見解をお伺いしておきたいと思います。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 将来統制法規撤廃されました場合におきまして、なお統制の継続中において起つた犯罪検挙について、撤廃後においてどう取扱うかということにつきましては、おのずから慣例ができ上つているわけでございます。また判決例もあるわけでございます。すなわち統制撤廃前における行為についての検挙並びに処罰は、統制撤廃後においても引続き行う、こういうことに相なつております。もちろん統制後においては新しく起る犯罪というものはございません。すでに発生いたしております犯罪につきましては、手心を加えるというようなことは考えておりません。
  11. 並木芳雄

    並木委員 今のに関連して、私周東安本長官がお見えになりましたから、お伺いしたいのですが、先般周東安本長官は、供米割当及び供出について強権を発動しないという答弁をされたそうでありますけれども、これはどういう意味答弁であつたのでしようか、この際お伺いいたしておきたい。
  12. 周東英雄

    周東国務大臣 供出米についてはどこまでも話合いによつて出していただくということで進みたい、こういう意味で申し上げたのであります。
  13. 並木芳雄

    並木委員 その話合いがうまく行かなかつた場合にどうするかということなのです。
  14. 周東英雄

    周東国務大臣 私は大体今日の事態としてよく県知事が町村長話合いをつけて、現在の災害等によつて実収が減ずるという場合においては、あの申合せにありますように、それぞれ減額補正をすることも認めておりますが、そう私は昔のように力ずくで取上げるというような形を今想定いたしておりません。
  15. 並木芳雄

    並木委員 次に大橋法務総裁にお尋ねします。日本の農地がだんだんと零細農化するということは非常に憂えられております。そこで私は田畑相続限つて均分相続でなく、いわゆる一子相続という便法が講ぜらるべきであろうというふうに考えておりますが、これについては憲法第二十四條、均分相続方針にももとるという説があるやに聞いております。そこでこの際法務総裁は、一子相続という田畑に適用する特別の方法を講じた場合、それが憲法違反するものであるかどうか、どういうお考えを持つておられますか。
  16. 守島伍郎

    ○守島委員長 ちよつと並木君に申し上げますが、今日は非常に時間が少い。今御質問趣旨はよほど本件とは議題が相違するようでございますから、——これは許します、許しますが、簡単にお切上げを願います。
  17. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この問題につきましては、政府がさきに昭和二十二年第一回国会農業遺産相続特例法案を提出し、その後この法案をさらに再検討を加えましたものを、再び一昨年の第五回国会に提案いたしたのでありますが、いずれも成立を見るに至らなかつたことは御承知の通りであります。政府といたしましては、今後近い将来においてこの問題について再び法案を提出するかどうか。またその場合にその内容をどのようなものにするかということは、今までの経過にかんがみ、国会における御論議を十分参考といたし、さらに農村における相続の実態、及びそれが農業経営に及ぼす影響をも一層よく調査いたしまして、農林省において研究を重ねていただくはずでありますが、法務府といたしましても、このような農林省政策面からの研究とあわせてこの問題について考慮をいたしたいと存じます。もちろんこの問題が憲法違反するというような形において提案されることはないでありましよう。必ず憲法違反しないような方法によつて、提案する場合においては提案いたしたいと考えております。
  18. 並木芳雄

    並木委員 もう一点だけお伺いします。私は、日本農業のために、今の内閣はこの際潔く総辞職をすることがいいと考えております。それは特に、今度FAOなどに入る場合に、こういう無定見な計画によつて日本農業の行政が行われるということは考えものであります。この際そういうことを内閣として真剣に考えておられるかどうか。そうしてこの場合にいつでも問題になるのですけれども内閣解散権がないから解散はできないのだというようなことで逃げられては困ります。私どもは、総理大臣辞職をすれば第二党に政権がまわるが、その場合に、多数である今までの与党が野党にまわつて不信任案をたたきつければ、その不信任案は通るのですから、憲法第六十九條で解散理由が出て来るわけです。私どもはそれでできると思うのですけれども、この点は、この前いつぞやの外務委員会でも、総裁は、研究しておきますという答弁でございました。いい機会でありますから、この際国会解散権についての法務総裁の権威ある見解をお伺いして、私の質問を終ります。
  19. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては、並木君の御説のような御意見衆議院の多数を制しまして、衆議院において不信任案が可決せられることがありましたならば、必ず解散をいたすか総辞職をいたすか、どちらかいたすつもりでおります。
  20. 守島伍郎

    ○守島委員長 次は林君。
  21. 林百郎

    ○林(百)委員 私は旅券発給の問題について、法務総裁質問したいのです。  旅券法案の第十三條に、旅券発給あるいは渡航先の追加の申請に対して制限條項があるのでありますが、その第五号に「外務大臣において、著しく且つ直接に日本国利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当理由がある者」は発給制限を受けるとあるのであります。そしてその次に、「外務大臣は、前項第五号の認定をしようとするときは、あらかじめ法務総裁協議しなければならない。」と書いてあるのでありますが、第十三條の第五号については、法務総裁はどういうようにこれを解釈されるか、その見解をまずお聞きしたいと思います。
  22. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は「外務大臣において、著しく且つ直接に日本国利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当理由がある者」については、あらかじめ法務総裁に御協議になる、こういう趣旨だと考えております。
  23. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで法務総裁が認定する「著しく且つ直接に日本国利益又は公安を害する行為を行う」というのは、どういう場合を言うのか、具体的な例をひとつ示していただきたいと思うのであります。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 外務大臣が認定なさる前に、あらかじめ法務府に御協議があると存じますが、法務府といたしましては、一々の具体例について判断すべきもので、一概に網羅的な表現をもつてこれ申し上げることは、ここに書いてありまする言葉以上に申し上げられないと存じますが、たとえば刑法の国家の公益に関する罪、すなわち内乱罪であるとか外患罪であるとか、あるいは国交に関する罪であるとか、また外国為替及び外国貿易管理法麻薬取締法銃砲刀剣類等所持取締令等、これらの違反になるようなおそれのある行為などは、この例に該当するというふうに考えておるわけであります。
  25. 林百郎

    ○林(百)委員 共産党員アメリカ渡航するという申請をした場合には、この十三條の五号によつて、拒否されるかされないか。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま申し上げました通り内乱罪外患罪、あるいは国交に関する罪、あるいは外国為替及び外国貿易管理法麻薬取締法銃砲刀剣等所持取締令等違反、こういうようなおそれのある符為をいたしました者は、私どもといえしましては、外務大臣がさように認定されるについては同意をいたしたいと思います。共産党の方にはこういう方は相当たくさんおられますから、そういうおの場合には、これは同意すべきものと考えております。しかし、共産党員であるからといつて、林君のごとくこういうおそれのない方は、これに同意すべきではないと思います。
  27. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、共産党員であるからといつて、そういう政治的な信條によつて外国への渡航制限はしないというふうに解釈していいのでありますか。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 もとよりその通りでございます。
  29. 林百郎

    ○林(百)委員 法務総裁は、われわれの質問に対してはそういうように一応もつともなような答弁をなさるのでありますが、最近の特審局の動きなどを見ますと、非常に深憂すべきものがあるのであります。たとえば、法務総裁は、林君のごとき心配のない党員はと言いながら、実は私のところへ親子兄弟全部特審局から調査に来ておりまして、非常に迷惑をこうむつておる状態でありますが、今度は、日本の国へ外国共産党員が入つて来るというような場合には、日本の国へのその渡航を拒否する基準は、どういう基準になるわけですが。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本において、出入国管理令によつて外国人日本へ入つて来ることを拒否する、その基準についての御質問でございますか。
  31. 林百郎

    ○林(百)委員 そうです。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 それは管理令において明確に定めてあるわけでありますから、管理令をごらんいただきたいと思います。
  33. 林百郎

    ○林(百)委員 管理令を見ましても、非常に抽象的な字句が用いられていて、たとえば工場でストライキを煽動するような団体に帰属する者だとか、あるいは民主主義的な政権を破壊するような意思を持つている者というような、非常に抽象的な基準であつて、これを濫用することによつて、政治的な信條に対する大きな制限を加える危險が非常にあるわけです。この十三條の五号にしましても、将来の出入国管理令外国人日本への入国の拒否の場合も、もう少しやはり具体的に例示すべきであつて、単に「公安を害する行為を行う虞れがある」とか、あるいはそう「認めるに足りる相当理由」だとか、こういうことだけでは、そのときの政権によつてこの判断の幅が非常に広くなつて、基本的な人権侵害される危険が非常にあると思うのでありますが、こういうものを具体的に例示する意思があるかどうか。あるいは附則か何かでそういうものを具体的に示して、いやしくも基本的な人権侵害にならないような方法を講ずる意思があるかどうか。そうでないと単に「公安を害する行為を行う虞があると認める」というようなことだけでは、非常に広汎な制限をされる可能性があると思うのです。私はきよう配付になりましたいろいろの資料を見ますと、たとえば米国の国務省が旅券発給を拒否する場合のごときも、この日本の国の五号に該当するものが四号にありまして、「国の福祉に反し、又は国の政策に反して外国政務、又は軍務に従事するため渡航を企てるもの、」ですからその国の福祉に反し、政策に反しても、外国政務または軍務に従事するという非常に特定の制限があるのであります。ところが日本の方のは單に「日本国利益又は交安を害する行為を行う虞がある」ということだけで非常に抽象的であります。それからオーストラリア移民法の例を見ましても、これは入国禁止の場合であります。これもやはりこれと同じような條文がありますが、もう少しここが具体的に説明がついています。たとえばオーストラリア入国禁止該当者のうちの第十一項ですが、「武力または暴力をもつて連邦政府州政府、または他の文明国政府の顛覆を唱道する者、または一切の法律秩序の廃棄を唱道する者、または組織政府の廃止を唱道する者、または官公吏の暗殺を教唆しまたは財物の不法破壊を煽動または指導する者、または本項記載主義を抱懐し及びその実行を指導する団体の会員またはこれに加入する者。」これもおそらく暗々裡には共産主義者のことをさしていると思いますが——日本共産党が実際そういうことをする、しないは別として、おそらく共産主義者に対する一つの制限だと思うわけなのです。しかし十三條の五号みたいに、こんな抽象的などうにもなるような條文というものは、国際的についても例がないのであります。これに対して法務総裁は、将来やはり同じ共産党あるいは共産主義者制限するにしても、もう少し体裁のいいようなやり方をやつたらどうかとわれわれは考えるのでありますが、この点について政令か附則か何かで、もつと具体的な例を示す意思があるかどうか、もう一度これをお聞きしたい。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法務総裁といたしましては、共産党員に対して入国禁止するとか、あるいは旅券発給を拒否するというようなことをはつきり規定しようというようなことは、もともとそういう意図がないのでございますから全然考えておりません。しかし御指摘のごとく、第十三條の特に第五号につきましては、これの記載のいたし方がきわめて漠然といたしておりますので、これを具体的に運用いたします際において、濫用を戒める必要があるということは、これはまつたく同感でございます。法務府といたしましては、本案を実行いたしますにつきましては、外務当局におきまして必ずもつと具体的な説明関係機関に指示されて、濫用を戒めらたるということを期待いたしておるわけでございまして、その詳細な具体的な項目を外務省において御研究になるに際しましては、法務府といたしましても十分御協力いたしたい、かように考えております。
  35. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、外務省の方にお聞きいたしますが、今まで共産党員アメリカ渡航申請した人があつたかどうか、またこれが許されているかどうか、またそういう可能性があなた方はあるとお考えになるのかどうか。具体的にいいますと、羽田空港へ知つている人を送りに行くことすら、私たち共産党員では、あそこは関門があつて許されないのですよ。ましてやアメリカ渡航する。法務総裁は法理論的には、共産党員アメリカ渡航するという申請をしても、たとえば林君のごときは必ずパスポートがおりるだろうというような御親切な答弁をしてくれているのですが、実際可能だかどうか率直のところをお伺いしたい。もし可能ならば私申請しますからね。
  36. 島津久大

    島津政府委員 今日までただいまお話のありましたような実例はございません。
  37. 林百郎

    ○林(百)委員 ですからね、実際日本共産党国会議員として、アメリカ渡航したいというパスポートの下付の申請をした場合に、おりる可能性があるかどうか、率直にあなた方の考え言つてもらいたいと思う。羽田の空港へ入ることすら、共産党員に対しては向うが許可をおろさないものが、実際アメリカ渡航するということを許すかどうか。ソ連の方には鉄のカーテンがあるあるというけれども、私は向うの方にも大きな鉄のカーテンがあるような気がしてしかたがない。しかもそれを十三條の五号で「公安を害する行為を行う虞がある」というようなことで、将来を制限しているということが実体じやないかと私は思うわけです。ですから日本共産党国会議員アメリカ渡航したいという申請をした場合に、実際パスポートがおりる可能性があるかどうかということですね。
  38. 大橋武夫

    大橋国務大臣 第五号によつて共産党員をチエツクするという意味は全然考えておりません。
  39. 林百郎

    ○林(百)委員 最後にお聞きしますが、法務総裁国会答弁では一見非常に民主主義的な御答弁をよくなさるのですが、事実は特審局あたりでは、たとえば私の兄弟親子まで特審局から全部調査に来て非常に不安にかられているわけです。あなたから見れば最も模範的な共産党員ですらそうなんだから、ましてや違う党員の諸君は非常に脅威を受けているわけです。私のところへ弟が荷物を送つただけで、弟のところへ、たとえば会社の職場へすぐ調査に行くわけです。それから私の交や法律事務所なんかも、制服の警官が行つて聞いているわけです。寮の寮母が驚いちやつて、何が悪いことをしたのですかということを聞かれる。これが現状なのです。またわれわれが仄聞するところによると、この臨時国会終つた直後には、さらに共産党議員追放をするというようなこともわれわれ聞いているわけです。これはそれに対してわれわれが心配するしないということは別です。われわれの身上の問題ですが、しかし日本民主主義を守る上からいつて、そういうことは私は慎むべきだと思うのです。それについて、今援この国会が終了した後に、共産党議員追放だとか、そういうようなことをなさる意思があるどうか。またそういう不当な基本的な人権侵害するような——私のところへ弟が本箱を送つて来たというだけで、制服の巡査が職場へ行つて調査するというようなことは、将来法務総裁に慎んでもらわなければならない。あなたは吉田内閣法務総裁だから、私の方からこう言つても慎まれるかどうかわからぬけれども、そういう点はあなたは気がつかぬかもしれませんが、基本的な人権が非常に侵害されているわけです。ですからそういう特審局やいろいろなそうした不当な基本的な人権侵害をするようなことについての将来の考え、並びにこの臨時国会終つた直後に、日本共産党国会議員をさらに追放するというような意思があるかどうか、この際はつきりあなたの意見を聞いておきたい。
  40. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国会が済んだ後に共産党員に対して何かするという御質問ですが、これについて考えておりますのは、渡部義通君の逮捕状が出ておりましたが、これは国会の召集によりまして執行不可能になつておりますので、国会が終りましたら、さつそくたま逮捕状をもらつて逮捕したい。これ以外に考えておりません。
  41. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君。
  42. 黒田寿男

    黒田委員 ただいま林君が御質問になりました点と、私の質問と多少重複すると思いますが、もう少しつつ込んでお尋ねしてみたいと思います。  この旅券法第十三條に関して私も法務総裁質問をしたいと思うのでありますが、前会までの政府委員に対する質疑におきまして明らかにされましたことは、わが国民憲法第二十二條によつて海外渡航する自由が原則的に認められておるということ、しかるにこの法案第十三條によりまして、一般旅券発給等制限を設けたのは公共の福祉という観点からだ、こういう点であつたのであります。そうであるとしますならば、第十三條は国民基本的人権ことに自由権制限を規定したことになるのでありますから、私どもはよほど慎重な態度で、かつ十分にこれを研究してみなければならないと考えます。このような見方に立ちまして、私は前会までに政府委員に若干の質問をしたのでありますが、まだ十分に明らかにされていない点がありますので、その点を明らかにしていただくために、特に法務総裁の御出席を煩したのであります。  そこで第一にお尋ねをしたいと思いますことは、これはわかり切つたことと思いますけれども、念のためにお尋ねしてみるのであります。従来までの政府委員との質疑応答の過程におきまして、多少不安に感じた点でありますから、わかり切つたことであると思いますけれどもお尋ねしておきたいと思います。それは、第一に、わが国の法律で犯罪行為とされておる行為以外の行為、言いかえますならば、わが国の法律では犯罪行為とはされていないような行為で、なおかつ、この第十三條第五号の、「著しく且つ直接に日本国利益又は公安を害する行為」とみなされるようなものがあるかどうか。私はないと思うのでありますが。この点はあるかないかということを簡単にお答えくださればけつこうであります。
  43. 大橋武夫

    大橋国務大臣 原則的にはないと思います。しかしながら、御承知のように犯罪行為というものが成立いたしまするためには、いろいろな法律上の約束があるわけでございまして、これらの約束によりまして、犯罪が成立しないという場合もあるわけでありますが、しかし旅券発給停止の場合におきましては、事を実質的に見ますれば、従つて犯罪にならないものでも、それが実質上犯罪になるものならば、法律上犯罪が成立しない場合におきましても、発給がとめられるとこういうことは考え得ると存じます。
  44. 黒田寿男

    黒田委員 ちよつとその点はつきりいたしませんが、法律上では犯罪にならないけれども、事実上犯罪になるというようなことは、私はきよう初めて聞く法律論であります。私は今までいろいろ法律の本を読みましたけれども、そんな種類の犯罪があるということは、きよう初めて聞くことであります。法律上犯罪とならないのに、事実上犯罪となる、そんなものがあるのでありますか、何かお考え違いではありませんか。
  45. 大橋武夫

    大橋国務大臣 たとえばある種の行為については、予備陰謀を罰しないというようなものもあるわけであります。そういう場合において、予備陰謀等を何しておつた、しかしながら予備陰謀だけでは犯罪にならない、しかしこれは旅券法の十三條第五号におきましても、「虞がある」とこう書いてあるわけでございまして、犯罪をした者と限つておりませんから、犯罪者よりも多少広くなるのはやむを得ないと思います。
  46. 黒田寿男

    黒田委員 法務総裁の先ほどのお話がそのような意味で仰せられましたのであれば、私は先ほどの質問のあとにその点を問題にしてみようと思つてつたのであります。この問題はあとから伺います。私が今質問いたしましたのは、五号全体を総合しての質問ではなく、五号の中に「著しく且つ直接に日本国利益又は公安を害する行為」と、ここまで切つてお伺いしておるのであります。その行為は、日本の法律において犯罪とされておる行為以外にはないものである、そうではないかとこう質問をしたのであります。あとの「虞がある」という問題は、このあとで私は質問をしたいと思います。
  47. 大橋武夫

    大橋国務大臣 「著しく且つ直接に日本国利益又は公安を害する行為」でございますから、これは原則としては犯罪になるものに限るだろうと思います。
  48. 黒田寿男

    黒田委員 けつこうです。私もそういうふうに思つておりますが、念のためにお聞きしたのであります。そうしますと、第二点といたしまして、第五号の「著しく且つ直接に日本国利益又は公安を害する行為」というのは、わが国の法律で犯罪行為と定められておる行為の中の何らかの行為に該当するものでなければならぬ、このことも議論のないところと思いますが、念のために簡単にお答え願います。
  49. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そういうふうに考えます。
  50. 黒田寿男

    黒田委員 けつこうであります。私もそう考えております。そこで先ほど林君の質問に対して御答弁になりましたけれども、あらためてもう一度お聞きいたします。その行為とは具体的には何であるか、「著しく且つ直接に」というふうに範囲が限定せられておりますから、そう多数にこのような行為すなわち犯罪行為があろうとは私ども考えません。これを示すことも大して困難な問題とは考えません。この点、実は昨日まで 法務府関係の政府委員の御説明では、明瞭さを欠いた点があると思いますので、きよう、特に法務総裁に御出席を求めまして、この点をできるだけ具体的にお示し願いたいと思うたのであります。
  51. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先にも申し上げました通り、これは網羅的に申し上げるということは容易でないと思います。ただその顯著なる例として申し上げますならば、刑法の内乱罪外患罪国交を害する罪等はこれに当るでありましようし、また刑法以外の法律としましては、外国為替及び外国貿易管理法麻薬取締法銃砲刀剣類等所持取締令等違反になるごとき行為は、これらに該当すると思うのであります。
  52. 黒田寿男

    黒田委員 それではもう少し進んでお聞きしたいと思います。これは先ほど法務総裁が一部お答えになりました第五号の後半に関する部分についてでありますが、外務大臣一般旅券発給をしないことのできる場合の一つといたしまして、第五号の場合があげられているのでありますが、第五号の場合は、第五号の行為を遂行したものについていわれておるのではないと思います。すなわち既遂者についていわれておるのではない。既遂者の場合は、私はあるいは第二号の「死刑、無期又は長期十年以上の刑にあたる罪につき訴追されている者」とか、あるいは第三号の「禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終るまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」というところに当てはまるようなことになつて参ると思います。第五号の場合は、犯罪を遂行した場合の規定ではない、既遂者に関する問題ではなくて、すなわち、将来かくのごとき犯罪を行う心配のある、おそれのある者について、規定してあるのであります。しかも單におそれあるという漠然たる理由ではなくて、おそれがあると認定するに足るだけの相当理由がある、こうなつておるのであります。すなわち何らかの外形的行為によつて、そのように認定される場合に限るというように限定されておるものと考ます。この点いかがであかましようか。
  53. 大橋武夫

    大橋国務大臣 「虞がある」というのは、そういう行為をかつてなしたというだけではなくて、将来においてなすであろうということを予想されるもの、しかもそれを予想するについて十分なる根拠があるもの、こういう意味であると存じます。
  54. 黒田寿男

    黒田委員 私もそういうように考えます。
  55. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君、時間があまりありませんから……。
  56. 黒田寿男

    黒田委員 そこでさらに問題が起ると思います。そのように單に過去においてある思想を持つていたとか、あるいはまた先ほど法務総裁が言われましたような犯罪の既遂者である、前科者であるというようなことで、これを将来もやりはしないかというふうに、漠然と「虞がある」というのではなくて、「虞があると認めるに足りる相当理由がある」ということになつておりますので、これは法律的にいいますならば、犯罪の、少くとも未遂と認められる程度の行為がある、漠然と「虞がある」というのではなくて、少くとも刑法上未遂と称せられる程度のところまで発展した行為がある、外形的に少くともそこまでの行為がある、このほか、あるいは予備がある、あるいは陰謀がある、このように単におそれがあると精神的に想像するというだけではなくて、外形に現われ、行為の上に現われた行為すなわち刑法上未遂といわれる行為、あるいは予備、あるいは陰謀といわれる程度にまで、具体化された行為があると思われるような場合に限定すべきではないか、私はそう考える。それからなお同時に、そのような未遂、予備及び陰謀というような行為が、罰せられる行為に当る場合のものでなければならぬ、こういうように私は限定すべきではないかと思う。これは自由を制限する規定でありますから、できるだけ厳格に限定して解釈すべきであると思います。私は重ねて申しますが、「虞がある」ということが、刑法上未遂、予備あるいは陰謀というようなところまで、少くとも外形上に現われるところまで行つた行為でなければ、五号の場合には当てはまらないと解釈すべきではなかろうかと存じます。どうでありましよう。
  57. 大橋武夫

    大橋国務大臣 それほど限定されて解すべきでないと思います。将来においてそういう行為を行うという可能性を、十分なる根拠によつて予測することができれば、必ずしもその人が、かつてある犯罪について、未遂、予備、陰謀等をなしたという事実を証明する必要はないと思います。
  58. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君、もう時間が参りましたが、なるべく簡単に……。
  59. 黒田寿男

    黒田委員 もう少しです。法務総裁は私の意見をお聞き違えになつたかもしれませんが、過去においてというのではなく、将来において——それは将来の問題である。既遂したものではなくて、将来の問題であります。おそれがあると認める、そのおそれがあるという場合は、単にそれをおそれがあると漠然と考えるべきではなくて、「虞があると認めるに足りる相当理由がある者」となつておりますから、私が今申し上げましたように、まだたとえば内乱罪とまでは行かないけれども内乱罪の未遂あるいは予備あるいは陰謀であると認められるような場合について、未遂、陰謀あるいは予備が犯罪になるときめてある、その未遂、予備、陰謀、少くとも、その程度のものになつた場合に限定するというように考えないと、非常に、私は、この第五号が濫用せられるおそれがある、行政官の認定によりまして、国民基本的人権、ことに自由権が抑圧されるおそれがあると思いますが、私は料来の問題として「虞があると認めるに足りる相当理由」というのは、刑法上未遂、予備、陰謀、少くともその程度までの外形的行為が現われ、それが罰せられるような場合のものでなければならぬ、かように限定すべきではなかろうか、こう考えますが、この点あらためてお伺いいたします。
  60. 大橋武夫

    大橋国務大臣 黒田委員の御質問の要点は、第五号は、将来において公益を害するような行為を行うおそれがあることである。ところでそれを認定するについては、いかなる根拠で認定するかというと、それは各般の犯罪について、少くとも未遂、予備、陰謀の程度に達しておるということで、そのおそれありということを立証すべきである、こういう御趣旨ではないかと思いますが、私はこのある種の行為を行うおそれがあるかないかということの認定につきましては、特にその認定資料について、法律上の制限はないと思います。自由に各種の資料を総合いたしまして、十分にその危険性を認定し得ればよろしいのであつて、その人のかつての予備、陰謀、未遂等の行為ということは、認定をいたしまするについての有力なる資料の一つではありますが、それだけに資料は限らるべきではない、こう考えます。
  61. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君に申し上げます。あなたの時間はほかの方より大分進みました。のみならず、もう結局意見の相違に帰するようでございますから、これで打切りたいと思います。
  62. 黒田寿男

    黒田委員 委員長の仰せられることはごもつともであります。大分意見の領域に入つて来ましたが、もう一点だけ……。
  63. 守島伍郎

    ○守島委員長 それではもう一点だけあなたには非常に不公平に時間をたくさん上げた結果になつておりますから。
  64. 黒田寿男

    黒田委員 もう一点だけで終りたいと思います。私は今申し上げましたような内容に、「虞があると認めるに足りる相当理由」を限定して解釈すべきだ、こう申したのであります。法務総裁は資料のことを申されました。私は資料ではなくて、程度の問題として申し上げたのであります。言いかえれば、かつてに、いいかげんの資料で、将来かかる行為を行うおそれがあるというように、行政官によりまして認定せられて、基本権が害せられることがあつてはならぬ。こう私は考えておるのであります。しかし議論になる点は、これ以上は申し上げません。また別の機会に譲ることにいたします。そこで私はそういうように考えますので、この五号のような抽象的な表現の仕方でなくて、具体的に列挙すべきではないが、これは「落しく且つ直接に日本国利益又は公安を害する」というような非常に限定せられた行為でありまして、そうたくさんあるわけではありません。たとえば、昨日私が要求いたしまして、今日外務省から御配付いただきました、アメリカ旅券発給を拒否する場合の例を見ましても、相当具体的に書いてあるようであります。その中には、国際的詐欺師、国際的賭博者、売淫の仲介業者、阿片吸飲者、こういうものも列挙されております。これらは日本では未遂とか、予備とか、陰謀とかいうことを罰するほどの重大な行為ではないと考えられております。ここで第五号に書いてあるものは、私が先ほど言いましたような、政治上重大な行為で、刑法上未遂罪、予備罪あるいは陰謀罪が罰せられておるような場合のものに限定する、それ以外のものは、アメリカの例にありますように、やはり例を示して国民に知らせて安心の行くようにしておきませんければ、私はこの第五号が濫用せられるおそれがあると予言しておきます。私の予言は不幸にして当りはしないかと思うのであります。そういう予言が当る不幸を見なければならぬようなことがあると思います。後日人権蹂躙の問題を起すと思いますので、この表現は適当でない。予備、陰謀、未遂等を罰する以外の犯罪行為について旅券発給を拒もうという場合には、やはり列挙しなければならない、こう私は申し上げたい、要するにこの表示の仕方ではよろしくない、これが私の考え方であります。このままではどうも国民には非常に不安であると思います。これは意見になりますが、法務総裁にも御意見がありますれば承りたい。これで私の質問を終ります。
  65. 大橋武夫

    大橋国務大臣 「第五号の濫用について御心配になつております点は、私どももこれは実施上十分に注意しなければならぬと考えるわけであります。そこで、アメリカにおきましても、法律の規定は非常に抽象的でありますが、しかしこれを実施するにつきましては、お手元に配付したような具体的詳細な項目を関係者に指示して、その濫用を戒めるという措置をとつておられるように聞いておるのであります。私は本法を実施いたします際におきましても、必ず外務当局におきまして、アメリカの例にならつたような具体的詳細なる項目によりまして、この濫用を予防する措置を講ぜられるということを期待いたしておりますし、またそのことにつきまして、法務府といたしましても、できるだけ御助力をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  66. 守島伍郎

    ○守島委員長 これにて両案件に関する質疑を終了いたしました。  それではまず旅券法案議題といたしまして討論に入ります。     〔「討論は午後に願います」と呼ぶ者あり〕
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 討論の前にちよつと聞きたいことがあるのです。外務省の方でいいのですから……。
  68. 守島伍郎

    ○守島委員長 それは次の機会に願います。——北澤君。
  69. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいま議題となつておりまする旅券法案につきまして、私は自由党を代表して賛成の意を表するものであります。  最近連合国最高司令部におきましては、従来最高司令部が持つておりました日本人の国外渡航に関する許可権を日本側に返還する意向のあることが明らかになつたのであります。しこうしてこの旅券法は、これに伴いまする国内体制を整備するために提案されておりますので、私どもすみやかにこういう法案をつくつて日本側が自主的に海外渡航を許可するようにすることが必要だと思います。そういう意味におきまして、私は自由党を代表しましてこの法案に賛成の意を表するものであります。
  70. 守島伍郎

    ○守島委員長 次は林君。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 旅券法案については、先ほど黒田委員並びに私からの質疑もありました通りに、この十三條の第五号は当然取除くべきだと私は考えるのであります。これによつて政治的な判断がなされる危険が多分にあるのでありまして、従来の吉田内閣政策を通じて、われわれ経験からいつて、こういう抽象的な條項によつて、政治的な信條を持つた人に対する海外渡航制限を非常にするという可能性考えられますので、この十三條の五号については、基本的な人権侵害するということの理由によつて、私どもはまず第一に反対したいと思うのであります。第二は、これに対して異議の申立てをした場合に、その異議を、どういう機関で、どうして裁決するかということの規定がないのであります。私はこの点を外務省の方にお聞きしようと思いましたが、質疑の機会を失つたのであります。これまた外務大臣の一方的な事由だけで裁決し、その裁決に対する救済の方法が全然ないのであります。この点から申しまして、この十三條の第五号は、政治的に非常に濫用される可能性がこの点からも出て来ると思うのであります。この異議の申立ての方法があるならば、その異議の申立ての方法について、どういう機構でどういうふうに裁決するか、外務大臣の一方的な認定でなくやるような方法を当然講ずべきだと思うのであります。そうでないと、ときの政府の政治的な都合によつて、われわれが外国一行く自由が非常に制限される可能性があるのであります。この点についてわれわれは賛意を表しかねるのであります。また具体的な問題として、たとえば中国、ソ同盟、こういうようなところへ行こうとしましても、おそらくこれに対しては十三條の五号によつて制限される。中国、ソ同盟との自由な交通がこれによつて制限される。また英米諸国へ行く場合にも、その人の政治的な信條によつて制限されるという可能性が非常にあるのであります。現に国会議員アメリカの視察に対しても、日本共産党国会議員指名されたことは一度もないのでありまして、過去の事実からいつても、たいがい自由党、民主党、社会党の右翼の人たちだけが行けるのであつて、(「左派も行つてるよ」と呼ぶ者あり)社会党の左派の人はめつたに行けない。行けば、帰つて来るとたいがい右派の方に行くようになる。ましてや労農党、共産党に至つては、一度もアメリカへ行くことを許可した例がないのでありまして、こういう事実をこの旅券法によつて法制化し、具体的な既成事実に基いてこの法案の運用をするものであると考えます。から、この法案によつて、われわれの渡航の自由、居所の自由、あるいは交通の自由、そういうような基本的な人権が非常に侵害される。これがこの法案によつて合理化されるという理由から、われわれはこの法案に対しては、反対の意思を表明するものであります。
  72. 守島伍郎

    ○守島委員長 次は黒田君。
  73. 黒田寿男

    黒田委員 私はこの法案の取扱い方につきまして、多少異議を申し述べたいと思います。実は私はこの法案について修正案を出したいと考えておりましたので、午後に討論採決等の手続に入つていただきたい、こう考えておりました。ところが、私が法務総裁質問中に、委員に対して何らの相談もなく、理事諸君がかつてに、私の質問終つたらすぐ討論採決に入るということをおきめになつたようであります。理事会の権威を私は認めたいと思いますけれども、このようなことは将来断じてないようにお願いをしたいと思います。理事会が理事会でかつてにきめてそれを押しつける、さようなことができるものではないのであります。議事の進行の便宜上理事会を設けてあるのでありますから、一応全委員の意向を聞かなければならない。理事会の意向が結局全委員の意向になることが普通予想せられるところでありますけれども、一応その手続だけはとらなければ、私は、理事会が他の委員に対して親切な態度に出たものと認めることができないと思うのであります。そういう意味で、実は、私は、すぐ討論が始まるということにつきまして、非常に心外に感ずるのであります。こういうことは将来絶対にないようにお願いしたいと思います。できたことはしかたがありません。しかしこのことは繰返してお願いをしておきたいと思います。  そこで私は第十三條に非常に問題があると考えます。これは私どもある特定の政党に属しておるとかなんとかという小さな見地から言うのではありません。わが憲法において保障せられております国民人権と自由を守る、こういう大きな広い見地から見て、問題があると考えるのであります。そこでこのままのものをのむことは、国民の自由を守るという見地から私にはできないので、これを削除する修正案を出そうと考えておつたのであります。しかしながらその機会を不合理に蹂躙されまして、ただちに討論をしなければならぬことになつたことを非常に残念に思います。私は、この法案は、非常に問題のある條文を含んでおりますので、この際一応全面的に反対をしたいと思います。も少し私どもの言論の機会についてごしんしやくくださいますならば、私もいろいろと考えてみたいと思つたのでありましたが、そういう機会が与えられて、ただちにこの原案を押しつけようという態度でありますから、私は残念ながら反対せざるを得ない。旅券法それ自身の成立を決して原則的に否認するような、非常識的なことを申し上げるのではありませんけれども、講和條約も、各国がいつ批准するか確定的なことはわかりません。まだ相当期間がある。そのうちに吉田内閣が倒れてもつと民主的な政府ができて、あらためて民主的な旅券法をつくるという日時の余裕がまだあると思う。今ここで急いで、委員の発言を無理に押えてまで、通そうとするような法案に私は反対するものであります。吉田内閣でも倒れて、そのあとであらためて時期に遅れないように、いい旅券法をつくりたい、こう思いますので私は反対いたします。
  74. 守島伍郎

    ○守島委員長 これにて討論は終局いたしました。  旅券法案について採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  75. 守島伍郎

    ○守島委員長 起立多数。よつて本案は可決いたしました。     —————————————
  76. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に国際連合食糧農業機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件を議題といたします。ただちに討論に入ります。北澤君。
  77. 北澤直吉

    ○北澤委員 私は自由党を代表しまして、本案に賛成の意を表するものであります。  国際連合食糧農業機関は、世界の各国民の栄養及び生活水準を向上し、食糧及び農産物の生産分配の能率を改善し、並びに農村住民の状態を改良することを目的としておるのであります。わが国がこの機会に加盟が実現しますならば、これによりましてわが国は栄養、食糧及び農業に関する各種の資料報告等を受けるし、並びに世界の栄養、食糧及び農業の現状を把握することができるのでありまして、わが国の農業生産政策に寄与すること多大なものがあると思うのであります。そういう意味によりまして、私は自由党を代表いたしまして、本案に賛成の意を表するものであります。
  78. 守島伍郎

    ○守島委員長 次は西村君。
  79. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私は社会党を代表しまして、本案に賛成するものであります。  ただこのときに條件をつけておきたいと思うことは、本案を見ますと、日本も加盟国の義務を果すために、農業統計その他を整備しなければならぬのであります。しかるに定員法によつて農業関係統計職員が半分以上整理せられることになるのであつて、これでは完全なる義務を遂行することはできないと思うのでありまして、本案は賛成いたしますが、農業関係統計職員の半分以上の整理は、この際中止するということをつけ加えまして賛成いたします。
  80. 守島伍郎

    ○守島委員長 林君。
  81. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方の党は、第一條の第二項のd「食糧及び農業生産物の加工、販売及び分配の改善」e「適当な国内的及び国際的農業信用の供与のための政策の採用」こういう條項を見て行きますと、この中には中国、ソビエトあるいはそのほかのいわゆる社会主義圏に属する国が入つておらないのであります。こうなりますと、結局これは米英ことにアメリカの過剰小麦をどう処分するか、アメリカ農業政策アメリカ圏の諸国にどう押しつけるかということになる可能性があります。またそれを私どもは意図しておるのではないかと思われます。御承知の通りに、日本農業は非常に過小農業でありまして、大きなアメリカあるいはカナダの農業に太刀打ちできるはずはないのであります。しかも米英が圧倒的な支配権を持つているこうした機構へ入りまして、生産品の分配、販売、加工の改善、あるいは農業信用の供与の件、国際政策の採用の件というようなことを通して、アメリカの近代的な大きな農業日本農業を隷属させるということになりますと、これは日本農業の発展ではなくして、かえつて日本農業の発展を阻害し、大きな国際的な資本主義的な農業に隷属させるということが、可能になつて来ると私たちは思うのであります。われわれはできるならば技術的に科学的に、中国そのほかソビエト同盟というようなところともお互いに援助、交換をしたいのであります。しかしこの憲章によつては、そういう道がとざされているのであります。そうしてアメリカの過剰小麦をどう処分するかということを中心としたこの国際的政策の採用という項目を通じて、そういう一環の中へ日本農業が引込まれることによつて日本の負担はかえつて加重すると思うのであります。われわれはこうした一方的で、しかも恩恵を受けるような仮面のもとに、実はアメリカ農業恐慌をどう処理するかということを中心にして、つくられておるこの国際連合食糧農業機関憲章に加盟することは、日本の自主性と日本農業の将来の発展を考えますと、むしろ反対して、自由に社会主義圏、資本主義圏、いずれからも小麦を入れたり、技術援助を受けたり、信用を受けるという立場の方が、アジアにおける日本の地理的な立場からいつても有利だと思いますから、こういう米英の支配圏内に属する農業機関の中へ、日本がみずから進んで入つて行くことについては反対する次第であります。
  82. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君。
  83. 黒田寿男

    黒田委員 私は国際連合食糧農業機関にわが国が加盟することに賛成いたします。この機関の憲章に定められてあるところを見ますと、わが国の遅れた農業から見まして、現実に、ある程度の利用価値が私はあると考えるのであります。そういうふうに積極的に考えるべきであると思います。国際政治情勢によりまして、この機関がその勢力に相応したような利用のされ方をなされはしないかというおそれはもとよりないことはありません。けれどもその問題に関しましては、憲章の規定から見ますと義務的のものはないのであります。義務づけられるものはないのであります。わが国の主体性がどう確立されておるか、わが国の政府政策はどうか、ということがむしろ重点になつて考えらるべきものでありまして、この点は、わが国自身の政府がしつかりしておりますれば、私は林君のお考えになるほどの心配はなくてやつて行けると思う。従つてどもは今の日本農業の現状からいたしますれば、積極的にこれを利用すべきだ、こういうふうに私は考えております。いろいろと申したいこともございますけれども省略いたしまして、以上をもつて私の賛成意見としておきます。
  84. 守島伍郎

    ○守島委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。国際連合食糧農業機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件を承認すべきものと議決するに御賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  85. 守島伍郎

    ○守島委員長 起立多数。よつて本件は承認すべきものと決定いたしました。  なお本日議決いたしました両案件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なしと認めましてさようとりはからいます。   それでは暫休時憩いたします。午後二時再開いたします。     午後零時三十三分休憩      ————◇—————     午後二時二十二分開議
  87. 守島伍郎

    ○守島委員長 休憩前に引続き委員会を再開いたします。  国際情勢等に関する件について質疑を行うことといたします。林君。
  88. 林百郎

    ○林(百)委員 中国、ソ同盟との貿易のことについて、主として事務上のことをお聞きしたいと思います。事務当局の方ですから、政治的な見解とか、いろいろお聞きするのは無理だと思いますし、また答える筋合いでもないと思いますから、主とて事務的なことをお聞きしたいと思いますが、できるだけ詳しく答えていただきたいと思います。  今、中国、ソ同盟と日本と貿易をする場合、適用を受ける規定というのは、どういうような規定がありますか、まずそれからお聞きしたいと思います。
  89. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 現在、貿易為替管理法に基きまして、輸出貿易管理令それから輸入貿易管理令という二つの政令がありまして、その二つの輸出入の政令に基きまして——これは別段ソ連と中国だけというわけではありませんが、全般的に、輸出入の統制と申しますか、管理を受ける建前になつておるわけであります。特に中国につきましては、輸出承認品目というのがございまして、輸出するものは輸出の承認を受けなければならぬという品目が、他の地域よりも中国方面に対しましては、やや範囲が広いという程度なのでございます。それから輸入の方につきましても別段中国についてどうこうということはないわけでありますが、諸般の情勢から若干他の地域と異なつたやり方をいたしておるというわけであります。  現在の実際の手続状況を申し上げますと、まずソ連でありますが、ソ連につきましては、戦後は政府間の貿易というふうなかつこうで行われて参つてつたのであります。その政府間貿易も、現実の代金の決済は現金で決済をいたしませんで、清算勘定というものを通じて、双方相殺して決済して参つて今日まで来ておつたのでありますが、本年の四月にいわゆる政府貿易をいたしますところの貿易特別会計が廃止をせられましたので、当然の結果といたしまして、政府間貿易というものはこの三月で一応終息しているかつこうであります。今日実際問題といたしまして、ソ連との貿易は実際は行われておらないのでありますけれども政府といたしましては、一応輸入先行によるバーター取引を條件とした民間貿易ならば、ある程度ケース・バイ・ケースに考えるという方針で進んでおるわけでありまして、先般も八月ごろだつたかと思いますが、樺太炭を輸入するということになりまして、そういう申入れをいたしたのでありますけれども、諸般の情勢から、向う側から断られまして、今日に至つております。従いまして、今日のところは、実際問題といたしまして対ソ貿易は動いておらないようなかつこうになつております。ただ昨年までの取引におきまして、現在のところ、ちよつと数字を忘れましたが、たしか十数万ドル以上の日本側の貸しになつております。受取るべきものがその程度に相なつております。これを現金で受けますか、あるいは物で受けますか、今後の問題でありますが、そういうような状況になつております。  それから対中共の貿易でありますが、これも戦後は輸入先行によりますバーター方式ということで進んで参つてつたのでありますが、最近に至りまして、中共側も輸入先行方式をとられたという関係上、日本側が輸入先行によるバーター方式をとりましても、実際問題として取引ができなく相なつております。もつとも今の取扱上は、中国はドル地域でございますので、ドルでもつてお買いになる場合におきましては、もちろんストレート輸出もいいわけでありますが、そういう場合は実際考えられませんので、実際はバーターということに相なるわけであります。従いまして、いわゆる戦略物資以外の物資につきましては、バツク・ツー・バツクを原則としたといいますか、ある程度日本側の輸出先行を認めたバーター取引を、現在細々ながら行つているという現状になつております。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 アメリカのケム條項とか、バトル法、この影響はやはり今日本で受けておりますか。それからこういうことから入つてつて私の方は、要許可品目の中で、戦略物資としてとうてい許可が受けられそうもないもの、あるいは條件によつては許可が受けられるもの、あるいは全然許可なくして自由に向うと取引できるもの、そういうものを具体的にだんだん聞いて行きたいと思いますが、アメリカ側では、御存じの通りバトル法によつて社会主義圏との取引が大分制限されているようでありますが、そういう影響が日本の貿易にもあるかどうか、それを率直にお聞きしたいと思います。先ほどの御説明によると、別にそういう政治的な考慮がないというようなお答えのようでしたが、やはり何らかの影響を受けているので、特に社会主義圏との取引については、普通のドル地域との取引と異なる制限があるのではないかと思うのですが、その辺はどうでしようか。
  91. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 今お尋ねの対中共貿易についての制限は、ちよつと私の説明が悪かつたかもしれませんが、かなり制限があるわけであります。ただケム・アクトとかあるいはバトル法との関係ということになりますと、御存じの通り、ケム・アクトというものがもうすでに五一年の六月施行の法律であります。法律と申しますよりは、予算法の中の一條文にすぎないのでありますが、これはことしの六月以降の問題であります。またバトル法の方はことしの十一月の二十五日から施行されます。これはケム・アクトというものが、最初に一九五一年の第三次追加予算法の一條文としまして、そういう條項が入つたのであります。その後その條項が、暫定的な性質のものであるというので、それを単独の法律にするということでバトル法が起草されたようであります。従つてケム・アクトあるいはバトル法というものの精神とするところは、大体そういうソ連圏に対する戦略物資の輸出を禁止するということでありまして、そういう戦略物資の輸出をする諸国に対しては、アメリカのいろいろな援助を停止するという法律なのであります。従つてもちろん現在の日本の輸出貿易管理令の運用というものは、このバトル法の精神でもつて動いているというよりも維持をしておるわけであります。バトル法がケム・アクトよりもあとでございますが、朝鮮動乱が昨年の半ばに起りまして、中共軍が朝鮮動乱に介入された結果といたしまして、国連におきましていろいろの措置がとられた。その一環として昨年の暮れから日本の方もおおむね国連のやり方に歩調を合せるということで、対中共輸出に非常に統制がされるようなことになつたわけであります。精神とするところは大体同じような方向に動いておるわけでありますけれども、今日本の法制がバトル法なりケム・アクトによつて直接影響を受けているかどうかということになりますと、少し理論的にはむずかしいのであります。ただ偶然といいますか、そういうような方向になつているというだけであります。かなり時間的なずれもありますが、そういうような状況なのであります。  それで今お尋ねの現実の物資でございますが、輸出貿易管理令の別表の第一に多数の許可品目を掲げておるわけであります。その許可品目には、いわゆる戦略物資といわれるものと、それから日本側の輸出物資の価格をある程度調整をしようというふうな目的、あるいは需給の調節をしようというふうな目的でもつて掲げておるものとが一緒になつて別表の中に入つておりますので、この物資全部が中共向けに輸出を禁止されているとか、あるいは非常に特殊な取扱いがされているというようなことは言えないのでありますけれども、大きな分類にいたしまして三十二品目の輸出物資が許可を要することになつております。そのうちで司令部のいわゆるヴアリデーシヨンを要する品目がほんとうの戦略物資になつております。司令部のヴアリデーシヨンを得ない日本政府だけで輸出許可のできる物資が若干あるわけであります。これは別段戦略物資でないわけでありますので、もしドルでもつて買われるとか、あるいは先ほど申しましたようなバーターでもつてある程度の輸出ができるということであります。もちろんバーターということになりますと、これはやや法律的な説明になりますけれども、標準外決済ということになりまして、その標準外決済としての許可もまた必要となるという制約はございますが、今申しましたように戦略物資以外のもの、いわゆるスキャツプのヴアリデーシヨンを得ない物資につきましては、そうむずかしい制約はないというふうに御了解願いたいと思います。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると二つの面で解決しなければならない問題が、やはり具体的に取引をしようとする場合には出て来ると思います。一つは、輸出入物資について許可品目の場合は許可を要することが必要だ、それは司令部の許可を得る場合と日本政府の許可権限内のものと二色あるということ。もう一つは、決済の方法外国為替の関係になつて来ると、これはやはり為替の面で許可の問題が出て来る。この二つの面に解決しなければならない問題が出て来ると思います。こういう点でお聞きいたしますが、との別表の中で司令部の許可をどうしても得なければならないものと日本政府で許可されるものと、一々品物を言つていただかなくても、この表のどこのどれと言つていただけばけつこうですからお示し願いたい。
  93. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 それはしるしを入れましたものを持つておりますから差上げます。その中でマルのついておりますのが司令部の認証を受ける物資でありまして、マルのついていないのが日本政府だけで処理できる、こういう物資でございます。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 輸出貿易管理令のうちの、別表第一のマルをつけてあるのはこれは司令部の許可を要するもの、というのは、率直に言うと、中国、ソ同盟、こういうものを入れるということは不可能と見るべきですか、それとも許可される可能性があるでしようか。鉄だとか非鉄金属等は問題があるにしても、たとえば繊維で、原綿、落綿だとか、それから、合成繊維だとか、こういうものも司令部の許可がいるわけですか、ちよつとお聞きしておきたいと思います。
  95. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 司令部のヴアリデーシヨンを要しない品目の方を申し上げた方がおわかりが早いと思いますが、たとえば陶磁器、それから琺瑯鉄器です。こういうものは通産省限りでやつておりますので問題はございません。それから繊維のうちでも、たとえば綿紡、綿織物のうちにおきまして航空機用とかあるいは気球用の布とか、それから船の帆にする布、帆布、そういうようなものはだめなわけでありますが、普通の綿糸、綿織物ならば問題はないわけであります。それから人絹糸あるいは人絹織物、あるいはステーブル糸とかあるいはステープルフアイバーの織物の中におきましても、今申し上げましたような、たとえばタイヤ用だとか、特殊の戦略物資であるものがたくさんあるわけですが、大体普通の観念における人絹糸、人絹織物あるいはスフ糸、スフ織物、綿紡、綿織物というようなものは、さしつかえがないわけであります。またみかんとかカン詰類とかいうふうなものはさしつかえないわけであります。ただ通産省限りの承認でいいのでありますが、中共地区、それから北鮮、香港、澳門向けだけに限りまして、司令部のヴアリデーシヨンを得なければならぬという品目がごくわずかあります。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 それはソ連も入つておりますか。
  97. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 ソ連は現在のところ入つておりません。中共地区、北鮮、香港、澳門向けだけに限つて、司令部のヴアリデーシヨンを得なければならぬ物資が若干ございます。これらはいずれも通産省公報をもつて発表いたしておりまして、別段うそ隠しはしておりませんので、公報をごらんになればおわかり願えると思います。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 大体そうした物資のことについてはわかりました。  そこで具体的に取引をするとしまして、ソ連の場合ですが、ソ連の通商代表と日本の民間業者との間に大体話がまとまつた場合は、やはり一応通産省へ許可の申請をして、通産省の許可を得るわけですか、まずその手続からお聞きしたい。
  99. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 御存じのように、ソ連とは現在決済の協定等は全然ございませんので、従つて、いわゆる非協定地域ということになりまして、ドル地域に相なるわけであります。従つて、ソ連側がドルで今言われたような綿糸布を買われる場合とか、バーターで買われる場合とか、いろいろな場合が起つて来るわけでありますが、綿糸布をドルでお買いになるようなことは、われわれは万々なかろうと思つておりますが、理論的にはそういうことが想像されるわけであります。中共の場合もそういうことが想像されるわけであります。そういうことは事実問題としてはなくとも理論的にはあり得るわけであります。その場合は、標準外決済ではございませんで、標準決済でありますから許可はいらぬわけでありますが、品目は綿糸布ということでありまして、司令部のヴアリデーシヨンを要しない、要するに通産省限りで許可できるわけでありますので、そのときの収支の状況を見て許可し得る場合があろうと思うのであります。しかし大部分の場合は、おそらく中共にしましても、ソ連の場合にしましても、直接米ドルをもつてお買いになるということは、金融機関の利用上から行きましても、米系銀行は凍結措置をとつておるようでありますので、事実上はできない。実際上はバーターであろうと思います。バーターであるならば、向うから持つて来られる物資の価値と、こちらから行く物資の価値を比較判断して許可することになろうと思います。従いまして、今申しますように、ソ連につきましても、実際は、先般も国会ヘソ連の通商使節、ミツシヨンが見えて、いろいろお話があつたということを間接に伺いましたが、われわれとしては、樺太の石炭を買いたいという申入れをして断られた経験がございますので、はたしてほんとうにそういうことを言われているかいないかについて、われわれ事務当局としては率直なところ相当疑義を持つております。が、今後もし木材にしましても、石炭にしましても、あるいは石油類にしましても、ほんとうに向うがお出しになるという腹であるならば、われわれとしては別段拒むべきものでございません。他の物資は、戦略物資ということになるとぐあいが悪いのでありますが、通産省の許可し得る物資であるならば、そのときそれによつて考え得る余裕があるというふうに考えております。中共につきましても大体同じことでありまして、現に綿糸布をバーターとして石炭なり塩なりその他のものを若干ずつわれわれの方は許可いたしておるわけであつて、ときどき中共貿易について非常に不熱心だという議論を聞きますが、実際問題としては向う側の輸入方式がむずかしいので、われわれはそれに対して非常にむずかしくしているとは考えていないのであります。ただ戦略物資について司令部のヴアリデーシヨンがいる、それは実際問題として許可がいるという根本的な点はございますけれども、その他の通産省限りでやれるものにつきましては、実際の貿易の効果という点から判断して、全体として処理をして行くような現状にあります。ややその辺のところは誤解があろうと思いまして、蛇足でありますが、つけ加えておきます。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 大分わかつて来ました。ことしですか、樺太炭が断られたといいますが、私たちソ連の通商代表部の意向を打診してみたところが、日本としてはやはり国内の産業上どうしても必要なものの輸入を求めている。たとえば今あなたの言われた石炭とか、鉄鉱石とか、木材だとか、そういうものに対しまして、日本の業者がソ連にどういうものを送つてくれるかという誠意が欠けている。あなたの方で木材、石炭、鉄鉱石がほしいというのに対し、ソ連の通商代表部の言うには、私の方では歯ブラシだとか、りんご、歯みがき粉というようなものでは、国内に責任をもつて照会することができないので、問題はあなたの方でどういうものを出してくれるかということの誠実さが認められないと、私の方も責任をもつて向うへ照会することができないというような話があつて、そこに一つの隘路があるように向う側が言つている。そこで先ほどあなたの出されました樺太炭の問題について断られたという、そのときこちら側ではどういうものを出すというような條件が出たのですか。
  101. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 もちろん戦略物資は——今申しますような司令部の承認を得る戦略物資は、含んではおらなかつたわけでございますが、ちよつと資料を持つて参りませんでしたが、相当広汎に二十品目くらい従来非公式にこういうものはどうだろうかというような話合いがあつた品目を並べまして、これだけならば行けるであろうというような話があつたものですから、そういう品目を並べて、それならばこういう品目はどうだろうということでわれわれは出したわけです。ところが私が察しますのに、こちらの代表部では大体了承されておつたかと思うのでありますが、実はモスクワに連絡しなければならない、しばらく待つてくれということでありましたが、一週間、二週間待ちましてまだ最終的なものがないというような話で、結局今年の八月の末ごろだつたかもしれませんが、現在の政治情勢下において、こういうあれは認められないということで、きつばりだめだという返事がありまして、そこでわれわれはあきらめたのであります。御存じのように、樺太から炭を出しますのには、少くとも十月の半ばくらいまででないと、いろいろ船に積む関係上むずかしい。われわれの方も急ぎまして、何とか八月中に話がつけば、九月中には船の四、五はいくらいは動かせるということで、船の方もほぼ手配をしたが、結局だめになつたというような実情であります。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方も、あなたのおつしやることとそつくりなことを聞いております。ただそのとき私の方の聞いているのと違うのは、日本側から何を出してくれるかということについて、ソ連の方で納得するような物が出せなかつた。それは許可品目やいろいろあることは向うも承知しているはずだと思いますが、その点でどうもソ連の方の話が合わなかつたようなことを言つているわけですが、あなたの言うように、八月にそういう話があつたということ、それから十月になればちよつと船が出せない、しかし無理をすれば出せる方法はまだあるということを言つておりました。あなたのおつしやることとそつくりなことを私たちも聞いておつたのです。そこであなたの言われた二十品目ほどのものを向うに照会したというのですが、どんなものですか、おわかりですか。
  103. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 ここに資料を持つて参らなかつたのでありますが、たしかそういう品目、りんごだとか、歯みがき粉というふうなものばかりではございませんで、繊維類を中心としまして、いわゆるむずかしい機械類はだめでありますけれども、今のところでもたとえば計算器とか、ミシンとか、自転車というようなものが、これは自由品目になつておりますので、そういうようなものも掲げ、相当われわれとしては最善のアトラクティヴの案を出したと記憶しております。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 そこでもう少し具体的な点をお聞きしたいのですが、業者と通商代表部で話があつて通産省に行くのには、許可をとるとかとらないというような問題は、あなたのところに行けばいいのですか。
  105. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 さようでございます。通商局の方に……。
  106. 守島伍郎

    ○守島委員長 林君、しきりに向うから催促が参りますから、林君の質疑に関連いたしまして議員江崎一治君より発言を求められておりますので、これを許します。江崎君。
  107. 江崎一治

    ○江崎一治君 このケム修正條項並びにバトル法が十一月から施行される。それと国内法との関係はないというようなお話であつたのですが、われわれの聞くところによりますと、総司令部から日本政府に対して、これに関する覚書が来ておるのだということを聞いておりますが、そういうことはありませんか。
  108. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 関係がないと申し上げましたのは、今の輸出貿易管理令の品目を掲げるときに、そういうバトル法とか、ケム・アクトというようなことをお考え出したのではなく、たまたまそれより半年かしてそういうものがあつたということなのでありますが、日本の現在置かれておる立場からいいまして、運用は、あくまでもいわゆるケム・アクトとバトル・アクトと運用が一致しておることは、だれも認めざるを得ぬと思います。要するにそういう戦略物資をソ連の方に出せば援助をとめる、こういうことでありまして、先般の国家安全保障法の決定におきましても、日本がソ連圏に戦略物資を出したかどうかということが問題になつて、いろいろ審議の結果おおむね輸出はしておらぬ、しかしながら一部は輸出をした疑いがある。従つて理論的には全然輸出をしなかつたということは言えない、従つて厳密にケム・アクトなり、バトル法の精神から行くと、援助を停止しなければならぬということで、いろいろデイスカツスが重ねられた結果、現在日本アメリカとの諸般の情勢から見て、そういう援助を打切ることはまずいということで、一応ケム・アクトの千三百二條というこの條項を日本に適用しないということがあつたわけです。しかしソ連との貿易を厳重に監視するという條件が入つておるということでありますので、何も品目の掲げ方自身は、そういうことがあつたから、そういうケム・アクトとか、バトル法があるからということでやつたのではないのでありますが、実際問題として運用は今の段階においては、そういう法律を前提に置いて運用せざるを得ぬということなのです。
  109. 江崎一治

    ○江崎一治君 一九四八年のアメリカの対外復興援助に関連してのケム・アクトというのは、参加国に対する制限條項であつたと思うのです。その参加国の條件に対して日本は該当しないと思う。従つてケム・アクトその他を日本に適用するということについて法的な疑義があると思うのですが、その点はどうですか。
  110. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 その辺の詳細はわかりません。そしてまだそれを適用がある、ないということについてはいろいろ問題もあろうかと思いますが、ともかく一応適用はあるということで、向うの安全保障委員会の方で議論をされておることは間違いのないことでありまして、従つてそれを適用すべきかいなかについていろいろ議論がかわされ、結局今の諸般の情勢から見て、援助を停止するという罰則の適用をしないということであつて、従つて日本は当然法律の適用下にあるということは、私はこちらがいかに解釈しようと、援助する側の方で解釈することでありますので、議論をしてもしようがないのではないのではないか、こういうふうに思つております。
  111. 江崎一治

    ○江崎一治君 ただいま資料をいただきました輸出貿易管理令附則の第一表にあります項目と、われわれがここに持つております前の法律すなわち二十四年に成立した管理令の中の附則の第一表と、項目が大分違うのですが、これは途中で第一表についての変更があつたのですか。
  112. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 輸出貿易管理令の施行されましたのは、ちよどもう二年ほど前になるわけであります。その後相情当勢の変化もあり、こういう朝鮮動乱というふうな、その当時およそ考えられなかつたような事態もありまして、これは相当というか、非常な変更をいたしております。
  113. 江崎一治

    ○江崎一治君 前の管理会によりますと、二十一項の第十六に無線受信機但しラジオ受信機を除く、こう書いてあるのですが、ラジオ受信機はこの許可品目に入つていないということなのですか、その点についてはどうなのですか、明確でないと思います。
  114. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 この品目の書き方が非常に複雑でありますので、ここではつきり入る、入らぬの論議はちよつとできないので、商品担当官に聞かないと、わかりませんが、私は多分許可品目に現在では入つておると思います。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 時間が来ましたから、あまり無理なお願いできないと思いますが、そこで先ほどお話になつた通産省の公報と、それからあなたの方からソ連側に提唱した二十品目というものはどんなものですか。それをひとつ明日でもいいですが、参考資料としていただきたいと思います。具体的に私の方ではあなたの方へ申請したいと思いますから、今後も何かといろいろお聞きしたいことがありますので、きようはその資料をいただいて、一応私の方の質問を後日に留保して打切りたいと思います。その資整はいただけましようか。
  116. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 この公報でありますが、変な言い方でありますが、実は相当前からの公報のとじ込みを必要とするために、最近のものを一、二部ひつばり出しましても、それでまとまつたものができるか、できないかわかりません。今お手許に差上げておりますのが最新の品目でございますので、そしてまた公報は予算の関係がありまして、役所で無料配付ができぬので、実は有料配付にして、ある団体に出版をさせておるような関係がありますので、古いものを全部集めるということは事実上むずかしかろうと思いますが、品目はそれがほんとうのうそ隠しのない全品目でございますから、ひとつそれでごかんべん願いたいと思います。それから品目は、これはわれわれの方の許可方針としてきめておるわけでありまして、従つてちよつと今公表するということになると、疑問がありますが、しかしこれは、ソ連の大使館の方には、こういうことでどうだろうというようなことを多分持ち込んでおるはずと思いますので、もし何なら向う側からお聞き願いたいと思います。われわれの方は許可方針としまして、こういう品目とこういう品目ということでつくつたわけでありますので、ちよつとこれを今お上げするという約束はむずかしかろうと私は思います。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 われわれは日本人ですから、ソ連に聞かなくて、あなたの方にお聞きしたい。それは察してもらいたいと思うのです。ですから、そういう形式が悪かつたらどういう形ででもいいですから、こういうものなら可能性があるのじやないか、また日本政府としても扱えるのではないかというようなものでけつこうです。今言つたソ連側に通報したというようなものになると、四角ばるし、あなたの方もいろいろな場合があるでしようから、そういうものがわかるようなものでけつこうですから、その二十品目というのはどういうものを考えているか、参考までに聞かしてもらいたいと思います。どういう形式でもけつこうですから、さしさわりのない形で私の方に通報してもらいたいと思います。
  118. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 なおお上げできるかできないか、一ぺん帰りまして、相談をしてみたいと思います。しかしこれは許可方針となりますと、国会で言われましても、それはできませんし、品目は御希望でありましたら、大体お扱いになる専門なり、あるいはお取引先なりの関係から、こういう品目とこういう品目はどうだろうかという品目を並へて御照会願えば、この品目は大体よかろう、これはいけないというようなことで、われわれは受身でお答えができるのじやないかと思いますが、積極的にこの品目はよろしいということはちよつと申し上げにくいと思います。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 それはどういう形でもいいですが、こういうようなものなら可能性があるじやないかという、あなた方の方で考えておるものを出してもらいたい。私の方もあなたの言う通りにしたいと思います。
  120. 竹尾弌

    ○竹尾委員 これも今林委員のお尋ねに関連して、私のところなどにも対ソ貿易に関していろいろ問合せが盛んにあります。そこで一つお尋ねするのですが、戦前こちらからの輸出で大量を占めておりました漁網の方はどうなつておりましようか。
  121. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 漁網はその中に入つてつたか入つておらなかつたか、ちよつと今よく私覚えておらぬのでありますが、私今個人的に申し上げてはなはだ失礼ですが、別段さしつかえないのじやないかと思つております。
  122. 竹尾弌

    ○竹尾委員 もしさしつかえないとすれば、ただいまのような方法で取引ができると考えてよろしゆうございますか。
  123. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 そういう輸入先行のバーターというか、あるいはドルでお売りになるという場合ならば、さしつかえなかろうかと思います。
  124. 守島伍郎

    ○守島委員長 実は松尾君はもう時間がありませんから、いずれまた次の機会をつくることができようかと思います。  次会は公報をもつてお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。     午後三時七分散会