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1951-11-10 第12回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十日(土曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 竹尾  弌君    理事 山本 利壽君       青木 孝義君    植原悦二郎君       尾関 義一君    菊池 義郎君       栗山長次郎君    仲内 憲治君       福田 篤泰君    小川 半次君       並木 芳雄君    林  百郎君       高倉 定助君    黒田 寿男君  出席国務大臣         農 林 大 臣 根本龍太郎君  出席政府委員         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         労働事務官         (大臣官房国際         労働課長)   橘 善四郎君  委員外出席者         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 十一月九日  委員林百郎君及び小平忠辞任につき、その補  欠として今野武雄君及び高倉定助君が議長の指  名で委員に選任された。 同月十日  委員大村清一君、佐々木盛雄君及び今野武雄君、  辞任につき、その補欠として尾関義一君、青木  孝義君、及び林百郎君が議長の指名で委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際小麦協定への加入について承認を求めるの  件(條約第三号)  国際労働機関憲章の受諾について承認を求める  の件(條約第四号)  公衆衛生国際事務局に関する議定書を受諾する  ことについて承認を求めるの件(條約第六号)     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  まず国際小麦協定べの加入について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑を許します。並木君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 不信任案を提出した農林大臣に対して質問するのはちよつとおかしいのですけれども、残念ながら多数の横車によつて不信任案が否決をされて、純情可憐なる大臣は居すわることになりましたから、万やむを得ず質問をするここといたします。  実はこの国際小麦協定は、非常に重要な協定でありますが、これを受諾するかどうかについて、どうしても農林大臣所見を伺つておかなければならないことがあるのです。その第一は、これは今後の食糧政策と非常に関係があるのでありますが、先般来、政府食糧政策というものは非常にぐらついております。昨今もまた、私どもにはよくわからないのですけれども、伝えられるところによると、米の統制は来年十月まで続ける、そういうことらしいのですけれども、その点はそうなのですか。
  4. 根本龍太郎

    根本国務大臣 二十七米穀年度、すなわち来年の十月末日までは配給は続けるのであります。
  5. 並木芳雄

    並木委員 そのあとはどうなりますか。
  6. 根本龍太郎

    根本国務大臣 現在問題になつておりまするのは、二十七米穀年度についてでありまするので二十七米穀年度については配給は続けます。二十七年産米については、これは政府が六日の声明に出しましたごとくに、主食統制撤廃につきましては、廃止するという方針を堅持しておりまするので、二十七年産米においてはこれが実現できるものと考えております。
  7. 並木芳雄

    並木委員 それは必ずやるというふうに了解してもいいのですか。そういうところがなかなかぐらぐらするので、私ども国民も非常に困るわけです。
  8. 根本龍太郎

    根本国務大臣 必ず実施するという方針のもとに進んでおります。
  9. 並木芳雄

    並木委員 麦の統制の点についてはどうですか。
  10. 根本龍太郎

    根本国務大臣 麦につきましては、明年一月一日以降準備が整い次第に実施する方針でございます。
  11. 並木芳雄

    並木委員 そこでお伺いしたいのですけれども、米と麦、主食は総合して考うべきものであつて、離ればなれに考えては、日本食糧政策は樹立できないと思うのです。いやしくも統制撤廃しようという以上は、ある場合においては、国内産米麦需要を超過することもあり得る、こういう状態でないと、これはちよつとりくつが許さないと思うのです。今のところ米麦合せて絶対量において不足があるのですから、その不足がある限度内において、統制をはずすことがそもそも矛盾しておると思うのですけれども、この点に対する基本的な考えはいかがですか。
  12. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘通り、現在の日本国民主食は、食糧事情が緩和されました結果、従来のような雑穀、いも類をはずしまして、米と麦になつたのであります。その意味におきまして、食糧政策、特に主食の問題については、米、麦と合せて考えることは事実でございます。しかしながら麦につきましては、御承知のように輸入関係も米と比べて非常に供給源が潤沢であり、かつまたただいま上程御審議になつておる小麦協定への参加の結果非常に有利になつておることも事実であります。国内産の麦の状況も現在おおむね良好でありまして、その結果から現在いわゆるやみ価格マル公価格の間はほとんど差がない。生産地においてはむしろ麦の価格が安いという状況であります。従いましてその観点からいたしますれば、現在配給をやめましても、国民生活には何らの影響を及ぼさない、経済上の影響もない。こういう観点からいたしまして、輸入食糧内地産麦と合せまして供給は十分である。こういう観点から内地米の絶対量の少いのとは比較にならない緩和の状態でありますので、これは切り離して統制撤廃しても、国民生活に何らの支障がない、かように考えております。
  13. 並木芳雄

    並木委員 今は米麦合せて配給の制度をとつておりますから、麦というものの需要も維持されるのですけれども、ただいまの大臣答弁によりましても、麦がすでに相当供給量がある。そこへ持つて来て、今度は麦の統制撤廃し米の統制撤廃しますと、麦よりも米をほしい人の方が多いのですから、勢い麦から米に重点が移つて行く思うのです。そうするとますます麦の方が余つて来るじやないか。現在政府が予定しておるくらいの数量は、外国から輸入しなくても済むようになるのではないか。今の楽観的な答弁によつても、当然輸入小麦というものを勘定に入れて供給が十分になるというような言葉でしたけれども、そうでなくて輸入小麦を考慮に入れなくても、十分になつてしまうじやないか。その辺の計算はできておりますかどうか。
  14. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいまの並木さんのお話は、米麦とも統制撤廃した場合におきましては、国民食嗜好関係上から、内地米需要が殺到する、従つてその意味におきましては、内地米値段が高騰して行くではないか、こういう観点から御心配のようでありますが、御承知のように国民経済にはいわゆる心理的な需要というものはありますけれども、それが現実経済上の需要となるためには、いわゆる有効需要として形成されなければ出て来ないと思います。ところで国民生活が大体現在の標準において定まつておるとしますれば、いくら米がほしいといいましても、米をすべての人間が欲するだけ買うだけの金がなくなりますれば、いわゆる心理的な需要がその有効需要として現われなくなつて来ると思います。なおまたわれわれは自由にいたしましても、いわゆる自由放任ではなくして、需給調整をいたし、また価格調整をいたそうという考え方を持つているのであります。この意味におきまして、今の麦は輸入しなくてもいいじやないかということにはならないのでありまして、麦の量とその価格調整において米価をある程度まで引下げる。こういうことで均衡をとるという観点でありますので、まだ絶対量として十分でありませんから、麦の輸入をやらなくてもいいという段階にはならないと考えております。
  15. 並木芳雄

    並木委員 需給統制をしたり価格統制をするのであるならば、これはやはり自由経済ではない、統制撤廃ではないわけなんです。そうすると来年十一月以降実施するという米の統制撤廃について、需給統制価格維持をする計画、その具体的なものはどういうふうな方法によつてやられるのですか。
  16. 根本龍太郎

    根本国務大臣 私の申し上げましたのは、需給統制ではなく、需給調整をいたすということであります。これについてはしばしば本会議あるいは農林委員会等で申し上げたところでございますが、今までのいわゆる直接統制ではないのであります。従いまして生産者に対しましては、農民がもし売りに出た場合には一定価格をもつて無制限にこれを買い入れて、価格支持政策をとるということが一つであり、他面におきましては、消費者保護のために、価格が暴騰することを押えるために、外国輸入食糧を比較的対米比価において安く供給することによつて、米の値段の暴騰を防ぐ。これが基本的な構想でございます。なおまた現在御承知のように、外国食糧は、小麦協定参加のものは別でありまするが、全般を通じまして、外米におきましても、外麦におきましても、現在の日本内地米麦よりは高いのであります。この間いわゆる輸入補給金をもつてその価格調整しておるのでありまするが、これは現在の通り輸入補給金をつけて行く。また日本食糧事情現実にかんがみまして、輸入食糧については従前通り政府がこれを管理するという構想が、われわれの今持つておる主食需給調整に関する基本的な線でございます。
  17. 並木芳雄

    並木委員 それでは厳格な意味における統制撤廃でもなければ、自由経済でもないというふうに私は承つたのです。できることならば小麦協定などに参加しないで、輸入食糧というものをなくすことが日本としては望ましいのじやないか。ただでもらうわけじやなし、貴重な外貨を使わなければなりませんので、なるべくならば輸入食糧はゼロになることが望ましい。そういう点について政府はどういうふうに考えおりますか。しばしば経済復興貿易まつというような答弁をしておられますが、この貿易という中に、当然食糧輸入というものが含まれておるのかどうか。食糧の場合には貿易を重視はするけれども、できるならばはずしてみたいという気持を持つているのかどうか。なぜ私が聞くかというと、廣川農林大臣時代にはしきりに国内食糧増産という声を聞いたのであります。ところが最近はその国内食糧増産という声も衰えたし、その施策も微々たるものであつて、むしろ貿易一点張りであります。私どもは現内閣は重農政策というものを忘れたのではないかと思われますので、この点を確かめておきたいのです。
  18. 根本龍太郎

    根本国務大臣 質問の第一点は需給調整をやるということ、これは統制撤廃ではなくして、いわゆる統制ではないかというお考えのようでありまするが、民主党の修正資本主義におきましてもある程度まで、これは御承知のように従前のあなた方がよく使うところのアダム・スミス時代におけるまつたく自由放任だけが自由であるとは考えないと思います。ここでいうところのものは、いわゆる資本主義の原則に従つて経済を運営するのでありますけれども、一面におきましては資本主義そのものの内蔵するところの矛盾調整するということは、資本主義発展過程においてもいずれも起ることであります。すなわちその意味におきまして、これはいずれの国におきましても何らの制限、何らの調整もない自由というものはないのでありまして、われわれはその意味におきまして、いわゆる現在におけるような完全に官僚統制だけが統制ではない。私はこの官僚統制をなくすることによつて大きく自由の部面の道を開くということが施策でありますので、この点については意見の相違でありますからこれ以上お答えはいたしません。  それからあなたが御指摘になりました輸入にのみ依存しておつて内地食糧増産を忘れておるということでありまするが、これは少し行き過ぎだと思います。あなたの理想は、今でもすぐに外国食糧一つもなくして行つた方がいいといつても、それは希望としてはそうでしようが、現実において約二千万石の食糧の足らないのを、外貨節約のためだといつて全部これをやめたならば、日本国民は飢えてしまうのであります。その意味において当分の間輸入食糧は続けなければならぬものと存じます。なお農業基本政策といたしまして、増産が第一重点であることは事実でございます。しかしながら農業増産はいくら重点を入れましても、一年でもつて二千万石、三千万石の増産はできないのであります。増産をいたしつつ漸次輸入食糧を軽減し、外貨節約並びに補給金の減少をはかる、これがすなわちわが党政府がとつておる政策でありまして、この間あなたの理想と同じでありますが、あなたはすぐに輸入食糧をやめてしまつて増産だけやれというような、少し飛躍した考えのようでありまして、その点はわれわれはとつていないのでございます。
  19. 並木芳雄

    並木委員 私は要するに重点をどつちへ置くのだということをお尋ねしたわけです。重点が薄れて来たようですから、その点を確かめたわけであります。そこで国際小麦協定加入しておる国々輸入に仰がねばならないおもな国、かりに三十万トン以上の食糧輸入する国々で、国内食糧統制をしていない国はどことどこでしようか。
  20. 根本龍太郎

    根本国務大臣 その点は私まだ調べておりませんので……。
  21. 並木芳雄

    並木委員 ほかの政府委員でけつこうです。——それじやその答弁を得る前に根本農林大臣質問したいと思います。国際情勢が相当緊迫しているようです。こういう情勢に、私ども食糧輸入に仰がねばやつて行けないという状態に置くことは、非帶に不安なんです。ですから私の先ほどの質問も出たわけであつて、これは国内食糧増産従つて農政策を非常に急ぎ、かつ重点的にやつて行かなければならないと思う。輸入食糧などについても、当然これは輸入できるときにはできるだけ多く輸入しておく、これが私ども考えなんです。これを政府はむしろ管理して備蓄しておくべきじやないか、万一に備えるために備蓄をして行くほどの状態ではないかと思うのです。そういうような点について、政府統制撤廃して行こうという行き方とかなり違つて来るのですが、大臣所見はいかがですか。
  22. 根本龍太郎

    根本国務大臣 先ほどから申し上げましたように、農業政策としましては、できるだけ増産をいたす、そうして輸入食糧を減らすということは、しばしば申した通りでございます。なお現在の国際情勢にかんがみて、できるだけ備蓄をしておくべきだ、その点も確かにそうでございます。現在までのところ、昨年においては三百万トン程度でありましたが、今年はさらに三百二十万トンにふやし、年々大体米穀年度の切りかえ当時の米麦を合せて約二千万石、実は手持ちを持ち越しておる状態であります。これは二千万石でございますので、本年の供出米が二千五百五十万石としますれば、ほとんど十箇月近いところの食糧を常に米麦年度末において持つておるのでありまして、これはある意味における備蓄考えてさしつかえないのじやないかと考えておる次第であります。
  23. 守島伍郎

    ○守島委員長 次は林君。
  24. 林百郎

    ○林(百)委員 農林大臣にお尋ねしたいのです。あまりむずかしいことは聞かないから、安心して答えてください。(笑声)  アメリカ小麦生産状況は、大体生産過剰の状態にある。要するに手持ちが豊富で、これをどう処分するか、アメリカ小麦価格をどう維持するかということが、アメリカ農業政策中心になつていると考えますそう解釈していいですか。
  25. 根本龍太郎

    根本国務大臣 世界食糧事情は、御承知のように第二次世界大戦後は非常に少かつたのでありますが、全体を通じまして、おおむね戦前の四%以上出まわつているというように承知しております。そのうち特に生産状況のよくなつておるのは、アメリカ、特に北米、南米のようでありまして、欧州関係はまだ回復が十分でないようであります。その意味におきまして、アメリカが他の国に比較して小麦が特に増産されていることは事実であります。なお他面におきまして小麦増産されたために、私が承知しておるのは的確な数字ではありませんけれども戦前に比べて約四〇%くらい消費量もふえておる、こういう事情のようであります。一時非常に豊作の場合においては、アメリカにおいて価格支持政策をとつておることは事実であるようでありますが、林さんの言うがごとくに、安くなるからこれをできるだけ外国に押しつけるというような考え方であるとは考えられません。むしろ欧州その他のまだ増産のできないところにおいて非常に要求されるので、これをいかに配分して、それらの食糧の足りない国々を安定せしめるかというところに、問題があるように承知しておる次第でございます。
  26. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと国際小麦協定ソ連加入を申し込んだとき、ソ連側では七千五百万ブッシェルかの輸出割当を申し込んだところが、五千万ブッシェル割当しかない。十分余力があるのにその余力を認めない。そうしてアメリカカナダだけが非常な割当のパーセンテージの高率を保持して主導権を握ろうとした。それに対してソ連が反対して脱退したわけです。もしそのように国際的に小麦状況が悪いというならば、十分余力のあるソ連から割当を七千五百万ブッシェル出したいというならば、なぜ国際小麦協定にそれを認めて出させなかつたか。
  27. 根本龍太郎

    根本国務大臣 私当時の小麦協定割当のところに入つておりませんので、その点については私から申し上げる筋じやないと思います。
  28. 林百郎

    ○林(百)委員 私は要するに何かアメリカから小麦をもらうような、恩恵でも受けるようなことを、日本農林大臣自身が言うから——アメリカつて小麦が相当過剰でこれをどうやつてはけさして、そうして価格を維持するかということが今問題になつているじやないのですか。率直に言つてもらいたいと思う。それとも小麦協定にわれわれが入つて小麦をもらうのは、非常に恩恵をこうむることになるのでありますか。
  29. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御承知のように、現在普通の協定によつて買う場合には、小麦が約百ドル平均、小麦協定に入つておれば八十ドルないし八十二ドル五十セントという程度であります。従つて小麦協定参加による買付の方が非常に有利でございます。有利であるものは一つ恩恵と見ても、これはさしつかえないじやないだろうかと常識的に考えます。
  30. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、政府がそれほど恩恵を受けるというならば、今言つたようトンあたり百ドルぐらいでコマシャールベースで入れている。そのためにあなたの御承知のように、大体本年度の補給金が二百二十五億円、この二百二十五億円を日本農家の五百万戸で割りますと、大体二戸当り四千五百円、もし一つ農村で、七百の農家のある農村補給金一戸当り四千五百円を入れますと大体三百十五万円、外国から入れる食糧のための補給金を、一農村に三百十五万円農業増産の費用としてまわしたら、今よりもう三割の増産は可能だということを百姓言つている。三百万トンの輸入食糧石数にして千八百万石、六千万石の日本農業生産量ですから、もう三割増産してくれれば外国から米や小麦を買わなくも間に合う。二百二十五億円を日本農村にまわしたら増産可能である。あなたが日本農家をどうするというけれども、御承知のことしの麦の対米価比率を下げているでしよう。だからあなたは、外国輸入食糧をどうまかなうかということが、あなたの頭の中心であつて日本百姓をどう保護して、食糧増産させることを考えていないように私は思う。だからこの補給金を出してこんな高いコマーシャルベース外国小麦を買うのだ、その補給金をなぜ日本農家にまわさないのか、それをあなたにお聞きしたい。
  31. 根本龍太郎

    根本国務大臣 林さんの御指摘の点とちよつと私は解釈を異にするのでありまして、輸入補給金は御承知のように、消費者保護のためにやつております。その間接のはね返りとして、生産者に対して一つ価格抑制の役割を演じているということは、これは認めなければならないと思うのであります。そこでわれわれは先般申し上げましたように、統制をやめるということによりまして、日本米麦がいわゆる国際価格にさや寄せして行く、そうしてその結果は補給金がなくなりまするので、その財政余裕を漸次国内増産に持つて行くというのが、われわれの食糧統制撤廃に対する基本的な考え方である。その意味においては林さんも賛成されているものとわれわれは解釈している。しかし現在のところ、たとい二百数十億の経費を投じてすぐに三割の増産になるかならぬかは、これは非常に技術的にむずかしい問題です。われわれは実は自由党政調会長当時に作成した技術的に裏づけされたところの計画によりますれば、大体十箇年に八千億円の経費を投じて、あらゆる施策をいたしまして約二千五百万石の増産可能ということになるのであります。林さんの言うごとくに、二百数十億でただちに三割増産ということには、ちよつと計算いたしかねると思います。  それからもう一つ、現在絶対量が少いのでありますから、どうしても国民生活の安定を期するためには、今輸入食糧を全廃してその補給金農村にまわしてやるというような、ちよつと手品のようなことはいたしかねるので、常にわれわれは増産重点を入れつつ、それによつて漸次輸入食糧を減らす、これによつて外貨並びに補給金を減らして行きたいという政策をとつている次第でございます。
  32. 林百郎

    ○林(百)委員 非常に農相の答弁矛盾があります。それではこういうことをお聞きいたします。来年度の食糧輸入計画はどういう計画を立つておりますか。今年よりも上まわるのですか、下まわるのですか、米と小麦大麦にわけて知らせてください。
  33. 根本龍太郎

    根本国務大臣 詳細の点は事務当局から御説明いたさせますが、大体において三百五、六十万トンの輸入が必要ではないかと思つております。これは本年の三百二十万トンに比較すれば、約三十万トンくらい多くなる計算になります。これは御承知のように、人口増あるいはまた食糧事情を緩和して行くという前提に立つからでございまして、その点において約三十万トン程度増加輸入が必要ではないかと考えております。
  34. 林百郎

    ○林(百)委員 だからあなたの言うことは矛盾しているのです。だんだん輸入食糧減つて日本小麦生産がふえて行くというならばわかりますが、あなたの政策は、だんだん輸入食糧をふやして行くじやないですか。そしてまた補給金をふやさなければならないでしよう。補給金を少しでも減らして日本農村にまわして、日本農村のみずからの生産量を増して、輸入食糧は年々減つて行くというならば、あなたの言うことはわかりますが、輸入食糧の方は年々ふえて行つて日本小麦の方はどんどん減つて行つています。ここに耕作反別の表がありますが、あなたが麦の統制撤廃すると言つてから、百姓小麦をどんどん違うものに転換していますから、耕作反別減つて行く。そうすれば、私の言うように、あなたの農業政策根本日本農民保護ではない。外国から押しつけられて来る輸入食糧をどうまかなうかということが、あなたの農業政策中心だと言われても、しかたがないと思うのです。  その次の題題としてお聞きしたいのですが、先ほど言いました通りに、日本農業保護するというならば、ここにもございますが、昨年は対米価比率小麦が八一・三%であつたのを六四%、大麦は七〇%を五四%にして、実質的に麦の値を下げたというのは、あなたのおつしやることを聞くと、消費者保護のためだということと、国際的な農産物価にさや寄せするという話ですが、御存じの通りに、アメリカのような大きな形態で農業経営をやつているところと、日本のような一反、二反の零細な農家生産規模のものと裸で太刀打ちできるとお考えになりますか。やはり何らかの保護政策をせずに、アメリカとかカナダとかああいうような大きな農業規模を持つている国と、日本一反二反の零細な農家を裸にして、そのまま国際物価にさや寄せするというのでは、日本農家がやつて行けないのは当然だと思うのです。日本農業が世界的な水準に行くまでは、政府保護政策をしてやらなければいかぬと思うのですが、その点あなたはどう考えますか。
  35. 根本龍太郎

    根本国務大臣 その点は、日本農村経営規模が小さい、そのためにこれを保護しなければならぬということは同感であります。しかし現在はむしろ外国食糧の方が高いのであります。それでわれわれとしては国際価格にまでだんだん高くして行きたいというような考え方でございます。
  36. 林百郎

    ○林(百)委員 高くするならば、なぜ小麦の対米価比率を下げるのですか。
  37. 根本龍太郎

    根本国務大臣 林さんも前から事情を御存じと思いますが、もとは米と麦との価格はもつと開いておつたのです。五〇%くらいであつたのであります。しかし食糧事情がこういうふうに緊迫して参りましたので、戦時中に、どうしても麦の増産を人為的にやることによつて食糧をできるだけ多くカバーするということで、対米比価をずつと上げまして、一時八十何パーセントの比価にいたしたのであります。しかし漸次食糧事情が緩和するということに相なりましたならば、やはり自然の価格形成の近くまで持つて行くのが価格体系としては正しい。こういう観点からいたしまして、実は対米比価が下つて来たということは、食糧事情が緩和されるに従つて、自然の価格形成に近寄つておるというだけでありまして、決してわれわれが麦を特別にいじめているというようなことではございません。
  38. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、そういうふうに戰前の対米価比率に下げるということは、戰前の日本農村状態に今日の農村を置くことになる。だから日本農業恐慌から一つは戰争というような状態が起きたわけですから、戦前に復帰させるということは、必ずしも農業政策の最善の方法ではないと思います。そうするとまた農業恐慌の時代に突きもどすことになるわけですから、ここではやはり私は保護政策をとるべきだと思うわけです。そこであなたはコマーシャル・ベースで輸入するとトン当り百ドルと言われますが、日本小麦はトン当りせいぜい八十四ドルです。そうすると来年度三百五、六十万トン輸入するとしますと、大体協定が入るのとコマーシャル・ベースで入るのと、どのくらいの割合になつておりますか、それから補給金はどのくらいふえるのですか、それをお聞きしたい。
  39. 根本龍太郎

    根本国務大臣 正確な数字を今持つておりませんから、事務当局からいずれ詳しく説明いたさせます。
  40. 林百郎

    ○林(百)委員 大体でいいです。
  41. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御承知のように、輸入計画を百七十万トンといたしまして、そのうち約八十万トン近くが外米として入るような形になるのではないかと思うのです。あとが小麦大麦で、小麦がおおむねその大宗を占めているということになると思います。補給金の問題は、今後の日本米麦価の決定の問題と相関連して参るのでありまするが、これはまた二十七年度の予算と関連して折衝中であります。
  42. 林百郎

    ○林(百)委員 ふえるのか、ふえないのか。
  43. 根本龍太郎

    根本国務大臣 それはふえることは当然でございます。
  44. 林百郎

    ○林(百)委員 そういうようにだんだん輸入をふやし、何とかかんとかりくつを言つて米価比率を下げて、そうしてここに統計も出ておりますが、もう小麦耕作反別はどんどん減つて行くわけなんです。これは私はあなたにも、党派を越えて、共産党だからというのじやなくて——あなたもおそらく本心は日本農家を守りたいと考えておる。しかし国際的ないろいろの関係で、まあ、御主人や何かいろいろあつて、今度のドツジさんの例もありますから、あなたの思う通り行かぬということは重々わかりますが、それは講和後ですから、一歩々々自主性を確保して、外国にやる補給金があつたら、日本農家にまわすような形にして、日本百姓が少しでも喜ぶような政策をぜひとつてもらいたい。  最後に私が申し上げたいのは、どうしても外国から小麦を入れなければならないというなら、ソ同盟や中国からでも入る。これは御存じの通りに、八十何ドルの小麦のうち船賃が十四、五ドルもかかつているわけですから、将来ソ同盟、中国、ことに中国は今年は一千万トンくらい余剰の小麦があります。あなたが中国から入れたいというなら、私たちもあなたに御協力して、遠い六千マイルの向うから持つて来なくても、すぐそこから持つて来るように御協力しますが、そういう点も考えているかどうか。現に今年はインドでは中国から五、六百万トン入れておりますが、土地改良や何かいろいろできましたから、一千万トン大増産しています。それからソ同盟でも、これは具体的にバーダーで日本からどういうものを入れるかということを考えてくれるなら、小麦考えましようということを、通商代表はほんとうに言つているわけです。ただ国際関係やその他いろいろの関係からいつて、中国やソ同盟との貿易が、政治的な意図でとめられているからできないので、これはあなたがほんとうに自主性を持つて来るならできるわけですから、将来小麦外国から入れなければならないというなら、もつと安い、船賃のかからないソ同即や中国から小麦を入れる努力をする意思があるかどうか、これを聞いて私の質問を終りたいと思います。
  45. 根本龍太郎

    根本国務大臣 どうも林さんの宣伝を聞いたような気がいたします。その前提で、通商協定ができる前に、実はソ連、中国と日本が平和條約を結ぶことをわれわれは希望しているのでありまして、それができますれば、そういう林さんの努力も実になるだろうと思いますが、それができないうちは、この問題はなかなかむずかしいと存じております。
  46. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君。
  47. 黒田寿男

    ○黒田委員 最初に私は食糧対策の根本方針について、これはわかきつたことのようでありますけれども農林大臣に御意見を伺つておきたいと思います。  最近たとえば統制撤廃の問題につきましても、農林省と大蔵省との間に意見の対立があるように見受けましたし、それかららまた与党の内部でも、いろいろとこの問題ついて対立があつたように、私ども外部から見ておつたのであります。一体こういう対立はどうして起るか。それは、この対立の真の原因がどこにあるかということを考えてみれば、わかると思うのであります。そこで農林大臣としての食糧対策の根本方針を最初に伺つておきたいと思います。  先に私の考え方を申しますと、私どもは、食糧の問題につきましては、国内の供給力を増大する自給自足を目標として強力な政策を推進する、このことを絶えず念頭に置いた食糧政策でなければならぬ、私はこういうふうに考えておるのでありまして、ややもすれば誘惑されやすい安価な外国食糧依存政策に堕するようなことがあつてはならぬ、わが国の農業のことを考えながら食糧対策を立てて行かなければならぬ、こういうのが私ども考え方であります。従つて、こういう見地からいたしますと、大蔵大臣と意見が違うごとになつて来る。もし財政支出という点からだけ見ますならば、多少問題があるような場合でも、なおかつ農業に対する保護ということを考えて、政策を立てなければならぬ、こういうことになると思うのであります。従つてどももとより、現在輸入を絶対に避けようというような、もののわからないことを申すのではありません。しかしながら私どもの見地から行けば、輸入食糧の数量は、国内供給により不足する必要の最小限度にとどめて、あくまで国内供給力の増大に向つて、強力な政策を推し進めて行かなければならぬ、こう思うのであります。おそらく農林大臣は私と同様な御見解であろうと考えますけれども政府部内の大蔵大臣政策を見ると、そうではないと私は思う。大蔵大臣食糧政策は、一面から見ますと、当面の財政政策という狭い範囲に極限せられた立場から立てられておるとも言うことができますし、また他の見方からしますれば、資本家的立場からする低米価政策、それと結びついた外国食糧依存策、その本資はこういうものではないかと思う。従つてこのような大蔵大臣方針から行けば、やがて、安くさえあればというだけの理由で、外国食糧輸入ということに重点を置いて、そのために国内農業の受ける打撃をあえて意に介しないというような方伺に落ちて行く危険があるのであります。私は以上の二つの政策の大きな対立が現内閣の中にもあつて、あるいはまた自由党の議員諸君の中にもあつて、あの統制撤廃問題の不始末という現象が現われたのではないかと私は考えるのであります。大蔵大臣方針は国家百年の大計ではない。やはり私ども農村関係の立場から物事を考える者が、考えておりますような先ほど申しましたような政策が、全体から見ても、わが国の食糧対策の根本方針でなければならぬと私は考えるのであります。ここにも農村と資本主罪との立場の相違が現われて来ておるように思われます。念のためにお聞きいたしますが、農林大臣はおそらく私どもと同意見だと思いますけれども、この点を簡単でよろしゆうございますから、お聞かせを願いたいと思います。
  48. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま黒田さんから言われた通り、あなたの御意見と私はまつたく同様であります。そうして、この自給度を高めるための農業増産ということが、日本の政治経済の安定の一番の基盤である、かように存じております。なお、党内のいざこざのことについては、これはあなたの御観測でありますから、これに対しては答弁は差控えます。
  49. 黒田寿男

    ○黒田委員 そこで次にお尋ねしたいと思いますが、農林大臣は、私と同意見であるとおつしやる。同意見であるということは、従来のどの農林大臣もいつもそう言われて来たのでありますが、しかも現実日本における農業生産の傾向を見ると、反対の方向に行つていると私は思う。今日は小麦協定の問題でありますから、私は麦の問題だけを取上げてみたいと思いますが、たとえば麦類生産の傾向を最近の状態について調べてみますと、これは農林省御自身の御発表になつたものでありますけれども大麦も裸麦も小麦も、年度をあげますと、昭和二十四年度から五年度六年度へと、次第にその生産が低下しておるのであります。農林省のお示しになりました数字によれば、たとえば大麦にいたしましても、昭和二十四年度に八百七十七万六千石が、二十五年度になりまして七百九十万七千石に落ちている。裸麦も、七百五十四万四千石から七百五十万石に落ちておりますし、小麦も、九百五十二万八千石から九百四十九万石にと落ちている。合計いたしまして、麦類が、二千五百八十四万八千石から二千四百八十九万七千石というふうに、約百万石近く二十四年度と二十五年度の間に、開きが出て来ておるのであります。これだけ生産が落ちている。そうして農林省当局の観測によりますと、二十六年度も前年を下まわるという見方になつておるのであります。そうしますと、食糧のうちの相当重要な部分を占めております小麦は、農林大臣の御方針に反して、事実上は生産が低下しているということを私どもは見ているのでありますが、この事実はお認めになりますかどうか。
  50. 根本龍太郎

    根本国務大臣 数字は客観的に出たものでありますから、その通りだと存じます。但しこれについては黒田さんも御存じだと思いますが、戦争中から終戦後当分の間作付転換を許さない、実は非常に強い統制をしておつたのであります。しかも価格関係は、御承知のように他の物価よりも、非常に安く押えられている傾向があるのであります。この強制作付がとられたために比較的金銭収入の多い野菜とか、その他の金銭収入の多いものにかわつたということが一つの現われだと存ずるのであります。これは農業政策重点を入れなかつたためではなく、現在の価格自身が安いということがやはり大きく原因したことと、他のものに転換し得る余地を与えたということが、こういうことになつたのだろうと存じます。これは、戦時中並びに終戰直後においては、強制作付ともいわれるべきであつたものが、若干自由になつたために、こういうふうに転化したのだろうと思いまして、私はその点については、この事実は認めまするけれども政府施策がその当を得ざるがゆえに減産したというような解釈はいたしていないわけでございます。
  51. 黒田寿男

    ○黒田委員 多少議論の域に入ると思いますが、私どもこの減産の大きな理由は、やはり価格日問題にあると思う。その価格問題は政府政策に基いておる、こう私ども考えておるのであります。この減産の傾向は政府政策と関連しておる、こういうふうに私ども考えないわけに行かない。根本方針といたしまして、国内の食糧増産する、それによつてできるだけ外国からの食糧輸入を少くして行くという方針を持ちながら、現実には国内の小麦生産がかくのごとく低下しておるということは、政府としても、黙つて見ておるわけには行かぬことだと考えますが、こういう傾向に対して、小麦増産政策ということについて、どうお考えになつておるか、また何かお考えになつておいでになりますれば、どういう方法で、この減産傾向をとめて、小麦内地増産の目的を達成することができるか、この点について御意見を伺いたいと存じます。
  52. 根本龍太郎

    根本国務大臣 麦類の生産を増強するということは、われわれも大いに力を注いでいるところであります。価格の問題については、先ほど触れたのでございまするが、一面におきましては、現在土地改良あるいは土地造成という問題が、やはり増産の一番の前提條件をなすものであると存ずるのであります。それが実は人口の増に比較しまして、土地造成並びに土地改良の度合いが進んで行かない、割合に停滞しているという現状が、内地生産米麦と比較して漸次輸入食糧がふえて行くという現状にありまするような結果になるのでありまして、その意味におきまして、われわれは従来以上にこの土地改良なり、あるいは農業改良に経費を注がなければ、御指摘のような結果になることをおそれているのであります。その意味におきまして、われわれはすでに、これは麦類だけとは限つておりませんけれども、東北、北海道方面における単作地帶、これらのところは、二毛作になりますれば麦作が非常に可能であります。ところが土地改良がほとんどできていない。そのためにこれが遅れておるので、本年から皆さんの御協賛を経て、この予算ができますれば、漸次この方面に転化することができる。それからもう一つは、こういうような麦作地、畑作の問題について今後大いに研究しなければならぬと思いますのは、実は畑作地灌漑であります。従来土地改良、そういう方面は主として水田に重点を入れられまして、麦類については若干そのままに放任されている傾向があるのでございます。この麦作で一番大きな問題は、旱害によるところの減収、これが非常に多うございますので、私どもといたしましては、本年試験的に相模原に灌漑をやらしてみたところ、非常な成果があがつており、そして経費も水田のごとき経費がかからないで行けるということになりますので、この畑作灌漑についてひとつぜひ重点を入れてみたい。それからもう一つは、麦類関係で従来病虫害にやられるケースがかなり多いのでございまするが、これが従来はほとんどそのまま放置されておつたのを、本年からは農薬の備蓄をいたしまして、これで防ぐようにいたしたのでありますが、そういう積極、消極の両面から、重点を入れて参りたいと存じております。
  53. 黒田寿男

    ○黒田委員 農林大臣のただいまの御答弁でございますが、むろん価格の面も考えなければなりませんけれども、より根本的には農業生産の近代化のために、政府が十分な財政的支出をして、安い生産費でつくれる、こういう方向へ持つて行かなければならぬ。しかしこの考え方については、ただいま農林大臣のおつしやつたことと決して私ども考えと反していないと思います。要するに問題は、いかにその政策を強力にやるかというところにあるので、現実を見ておると、私が今数字をあげて申しましたように、次第に生産は低下しておるのであります。これはただいま農林大臣の申されました御方針と、現実に現われて来る事実との間に大きな開きがある、このことを十分にお考え願いたいと思います。この問題はこの程度にしておきます。  それから次の問題でありますが、国際小麦協定の性格について、私は多少疑問を持つております。それはこの国際小麦協定の成立の歴史を見ると、先ほど林君も触れられましたが、輸出国のためにできた協定ではないかと思われる節が多分にあるのであります。すなわち国際小麦協定の成立後から今日までの歴史を振り返つてみますと、遠くは一九三三年ごろからこれが問題になつておる。しかしそのときにはいろいろと問題があつて協定を破棄するという国もできたりいたしまして、成功しなかつた。それから一九四二年にカナダアメリカ、アルゼンチン、オーストラリア等の輸出国とイギリスとの間に、中間協定ができたのでありますが、これもほとんど実質的な効果は見られなかつた。それからその後一九四七年にやはりこのことが問題になつて国際小麦協定の草案ができたのでありますけれども、これも結局草案のままで終つた。こういうような経過を経て、一九四八年、一九四九年と次第に現在の時期に近づくに従い、この協定成立の機が熟するということになつたのであります。なぜ成立したかというと、要するに輸出国において過剰生産の傾向が次第に強くなつて来た、同時に経済の法則として、小麦価格が次第に低下して来た。こういう客観的條件があつて、初めて国際小麦協定が成立した。こういう私は歴史上の事実を見るのであります。だから、これは輸出国の生産過剰による価格の低下、それを防ぐためにできたのではないかという疑問が起るのであります。そういう條件があつて、初めて小麦協定ができた。歴史的事実を見ると、こうなつておりますから、そういう事情から、一つの性格が出て来るというように見るのであります。そこで私はこの性格を見て、どうもこの小麦協定には、一種の国際的なカルテルの性格が含まれておるというふうに見ないわけに行かない。農林大臣はこの点については、どういう考えを持つておいでになりますか。食糧不足な国を救つてやるのだ、ありがたいことだというように、私ども簡単には考えられぬ。やはり一種の国際カルテルの性格を持つておりはしないか、露骨には現われておりませんけれども、私はその性格がひそんでおるように思いますが、この点について農林大臣のお考えを伺つておきたいと思います。
  54. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これはどうも性格についての見方の問題でありまして、共産党やそちらの方が見れば、これはカルテルの傾向を持つておるというふうに見られますけれども、やはりこれは生産国と消費国との間における均等なるお互いの利益が認められたために、こういうものができておると考えるのであります。一方的な利益のために他が犠牲になるというような形においては、こういう自由に参加できるような協定にはならないと思うのであります。私はその意味においては、両方とも、いわゆるお互いが利益なりと信じて、これができたものと考えておる次第であります。
  55. 守島伍郎

    ○守島委員長 もう時間がございません。次に竹尾君に質問を許しますが、農林大臣はもう時間が来ておりますから、簡単に願います。
  56. 竹尾弌

    ○竹尾委員 今農林大臣のわが国の食糧政策に対する御抱負を承りまして、まことにその通りであります。そこでこれは繰返すようですが、それをいかにして実行していただけるかということにつきましては、私個人的にはずいぶん農林大臣にいろいろお願いしておることもございますけれども、こういうことを強力にひとつ実行していただきたい。特に畑地灌漑のことに言及されましたが、私どものところでは、畑地灌漑の適作地がたくさんございますので、これも実はあらためてお願いに参ろうと思つてつたのですが、この席上からそういう増産については強力にひとつ実施していただけるということを御答弁願えるかどうか、さつそくそういう問題にぶつかりますから、それをひとつ答弁願いたいと思います。
  57. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは私は全力を注いで増産のためでありますので、特に与党の皆さんからは大いなる御支援をお願いしたいと思います。具体的な個々の事業について約束することは、今適当なる時期ではないと存じます。
  58. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは私からちよつと申し上げますが、栗山委員からの要求でございます。     一、国際小麦協定ソ連から七千五百トン云々の事実につき調査報告されたし。     二、中国の過剰小麦について調査し得ればデータを報告されたし。以上は重要な食糧問題につき、国際共産勢力がただ宣伝のみをしているのではないかいなかを確めるためであるということであります。  それでは本件につきましては質疑は終了いたしました。この際五分間休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩      —————・—————     午後零時二十二分開議
  59. 守島伍郎

    ○守島委員長 休憩前に引続きまして会議を再開いたします。  国際小麦協定への加入について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑を終了しておりまするから、ただちに討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。北澤君。
  60. 北澤直吉

    ○北澤委員 私は自由党を代表しまして、ただいま議題となりました国際小麦協定への加入について承認を求めるの件に賛成の意を表したいと思います。  この協定の目的は、公正な安定した価格で、小麦輸出国には市場を与え、また小麦輸入国には供給を確保することであります。わが国といたしましては、毎年百五十万トン以上の小麦輸入しなければならぬ現状でありますので、この協定加入しまして、協定によつて保証された数量の小麦輸入を確保すること、及び安い価格による小麦輸入によりまして、年間約七、八百万ドルの外貨節約を期待することができるわけであります。この点は日本にとりまして非常に利益であります。こういう見地からいたしまして、わが党はこの国際小麦協定への加入について承認を求めるの件につきまして、賛成の意を表する次第であります。
  61. 守島伍郎

    ○守島委員長 次は山本君。
  62. 山本利壽

    ○山本(利)委員 わが国における食糧の絶対量が不足して、年額百五十万トン以上の輸入を必要とする現状から見て、国際小麦協定加入し、本年度五十万トンの小麦輸入できるという大局的な意味から、国民民主党は賛成するものであります。  但しわが国の食糧問題は、国際情勢が今日のごとき不安定である限り、国内増産をはかることが根本でなければなりません。そこで外国より小麦輸入されることによつて日本大麦小麦またはその他食糧品の増産が圧迫されないように、十分な注意を要するのであります。この点に関しましては、先ほど農林大臣からも同趣旨の言明があつたのでありますけれども、事実の問題として明年度においても輸入量はさらに増加し、日本食糧の自給度は低下し、補給金また増加するということも事実でありますから、私ども考えますのには、ただ原則としていろいろなことが論議せられ、承認されるのみでなしに、この日本食糧品の増産というものをいかに圧迫しないで済むか、あるいは増産をさらに続けて行くのにはいかなる方法があるか、ということを具体的にお示しを願いたかつたのでありますが、そのために要するところの時間が与えられなかつたことは遺憾であります。たとえば輸入食糧が無関税であるとか、あるいは低度の関税しかかけないような場合には、これに応じて内地の農産物の生産に対して補給金が与えらるべきであると考えるのであります。そしてその結果年々輸入量が実際に減少するように努力していただきたいのであります。今回の米の統制撤廃問題に関する現内閣のお手ぎわ等から考えてみても、この輸入食糧のことに対しては国民は、はなはだ不安を感ずるのでありますから、以上の諸点をさらに希望いたしまして、賛成の言葉にかえます。
  63. 守島伍郎

    ○守島委員長 林君。
  64. 林百郎

    ○林(百)委員 わが党はこの国際小麦協定加入については、反対を表明したいと思うのであります。  第一には、この小麦協定のできました経過にかんがみまして、アメリカ小麦が非常に生産過剰になりまして、一九四七年第二回の国際小麦協定会議の際には、せいぜい一ドルの価格を維持することができるならば、アメリカ農民としては採算が合う、何としても一ドルを維持しなければならないという結果が生じまして、その結果要するに今後起きて来る農業恐慌、アメリカ小麦生産過剰に対する対策としてできたのでありまして、これはアメリカ小麦価格の暴落を維持することのためにできたのが根本だと思うのであります。ところがそれが輸入されますについては、御承知通りにこの小麦協定で投票権を圧倒的に持つているのはアメリカ並びにカナダでありまして、このために小麦協定につれていろいろの政治的な條件がつけられて来たということは、インドの例を見てもはつきりするのでありまして、もしインドが対日講和條約に署名をしない場合には、国際小麦協定小麦の輸出を考慮しなければならないというような事態を宣告された例から見てもわかるのでありまして、そうした政治的な條件がかけられるというのが第一であります。  第二は、この小麦協定に基いて小麦を入れるための日本農業についての影響でありますが、こうして外国輸入小麦を入れるために、日本小麦の耕作に対する地ならしといたしましては、日本小麦価格を、国際的な小麦協定価格と比較して、安くしなければならないというような事態が来まして、日本の耕作農民に対しては、本年度の予算におきましては、対米価比率を非常に下げまして、御承知通りに従来対米価比率小麦八一%を六四%に、大麦七〇%を五四%に下げるというような形で、日本小麦値段を非常に切り下げまして、日本農民生産意欲を非常に減退している。そういう形の上、だから小麦不足する、外国小麦を入れなければならないという形で地ならしをされているということ。要するに日本の耕作農民の犠牲の上に、外国小麦が入れられている形になつているのであります。またこの小麦協定以外の外国輸入食糧が、目下トン当り百ドル以上で入つて来ているのでありますが、この百ドル以上で入つて来るコマーシャル・べースの小麦に対する補給金は、本年度二百二十五億円に達しているのであります。先ほどの農林大臣の説明によりますと、来年度はさらに外国からの輸入食糧は本年度三百二十万トンを上まわつて三百七十万トンになり、従つて輸入補給金も非常にふえるということが答弁の中にあつたのであります。こうなりますと、われわれが日本農民として考えるべき基本的な方針であるところの、年々日本の農産物の増産をはかつて輸入食糧は年々減少するという方向へ努力すべきものが、かえつて逆な方向をたどつている。輸入食糧はだんだんふえて行きまして、日本農民のつくる主要食糧はだんだん減退の方向をたどつている。耕作反別などを見ましても、小麦値段が安くなるということのために、小麦の耕作地を他のもう少し有利な野菜あるいはそのほかの耕作物に切りかえて行きまして、耕作反別も漸次減少の方向をたどつております。また小麦生産量からいつても、漸減の方向をたどつているのであります。従つてこの国際小麦協定に基く輸入小麦も、一切のコマーシャル・ベースの輸入も入れまして、一切合せて外国からの輸入食糧が、日本の耕作農民に非常に大きな圧力を加えているということは否定できないと思うであります。こういう一国の食糧外国に依存し、国の食糧中心外国にたよらなければならないということは、その国の自主権をそこなうこと非常に大だと思うのであります。ことにこの国際小麦協定で入つて来ました小麦には砂糖を抱き合せて配給するというような條件を入れまして、なるべく外国から入つて来た小麦を優先的に配給させるというような形をとつているのであります。こうして日本農業を破壊した上で、外国食糧を入れるような形をとるこの農業政策に基く国際小麦協定加入の問題については、わが党は賛成できないのであります。  それから次にもう一つぜひ考慮していただきたいことは、昨日の政府委員答弁にもありました通りに、やはり中国だとかソ同盟からの小麦輸入ということも、これは真剣に考えるべきであります。ソ同盟、中国の小麦が相当余剰がありまして、アジアの近国、インドだとか、ビルマに中国からの小麦が入つていることは明らかであります。小麦協定で入つて来る麦の値段が、トン当り八十二ドルか八十四ドルでありますが、このうちで船賃が十四、五ドルもかかつているということは、これはゆゆしい問題であります。できるならば財政支出を軽減する意味においても、こういう高い船賃をかけて持つて来なければならない小麦から、日本の隣国からこれを入れるという方向へ真剣に考えるべきだと思うのであります。そういう努力なくして、安易にただアメリカ主導権を握つているこの小麦協定にたよるという日本農業政策には、この点からも私は賛成できないのであります。以上の点から申しまして日本農業増産をはかり、日本食糧日本農民がこれをまかなうという、日本の国の自主性を守る大きな根本精神からいいましても、この国際小麦協定に入ることについては、賛成することができないのであります。  以上わが党の反対の討論の要約であります。
  65. 守島伍郎

    ○守島委員長 高倉君。
  66. 高倉定助

    高倉委員 わが党はこの国際小麦協定につきましては、米麦統制撤廃せられる場合は相当に考えなければならないと思いますが、やはり統制が継続されることに決定いたしました今日におきましては、現下のわが国の食糧事情におきまして、また国際情勢を勘案いたしまして、賛成するものであります。ただわが国が今後独立国家として立つ以上、国民生活の安定及び経済自立の立場より見まして、産業及び経済の根幹をなす食糧政策、ことに農業政策はきわめて重要であると思うのであります。この観点よりいたしまして、国の政策の樹立によりまして食糧増産政策を強力に推進いたしまして、これによつて輸入食糧を漸次減ずるよう努力せられんことを要望いたしまして賛成するものであります。
  67. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君。
  68. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は国際小麦協定参加承認の件につきまして、いろいろと問題はあると思いますけれども、これを当面の問題としては承認すべきであるという態度を表明いたします。  これに加入する利益が当面外貨節約であり、輸入食糧補給金の減少であるということは、現実の問題といたしましては否定することができない問題であります。この協定の有効期間の間に、はたして自由価格がこの協定価格の最低線を下まわる可能性があるかどうかということは、これを考えなければならないことでありますか、その点につきましては、大体この有効期間内におきましてそのようなことはなかろう、今のところ見通しを一応認めなければならぬと考えます。そういう点から考えまして、かつまた現実の問題としまして、わが国は小麦輸入しなければならぬという実情にあるのでありますから、私ども協定の有効期間内におけるこの協定への参加ということは、これを認めたいと考えます。ただし、この協定参加しまして得られる外貨節約、その節約部分をどう使うかという問題が当面起つて来るのでありますし、それから先ほど私が農林大臣質問いたしましたときに申し述べましたように、根本の問題は、わが国の食糧の自給自足をはかるというところに、重点を置いた食糧政策が立てられなければならぬというところにあると考えますが、そういう点から考えて参りますと、率直に申しまして、私は現在の内閣のもとでは、農林大臣がどう申されようとも、この目的を達成することはできない、私はそう考えます。これは先ほども申しましたように、農林大臣がいくら農業増産をやらなければならぬと言われましても、小麦増産をやらなければならぬと言われましても、現実には小麦生産はどんどん減つている。これが現内閣の政策現実の帰結だと考えますので、私どもはその意味におきまして、とうてい現内閣の農業政策を信用することはできないということを付言しておきたいと思うのであります。  なお本協定根本的性格についてでありますが先ほども私が農林大臣質問いたしましたときに申し述べましたように、この協定の第六條第八項には、参加国の農業政策に対して、及びまた価格政策の決定に対して「完全な行動の自由を留保する」とは書いてありますけれども、これは形式上で自由が認められておるだけで、実際の上ではやはりこの協定参加国、ことに輸出国からの政策上の圧迫を受けておると考えないわけには行かないのであります。何と申しましても、アメリカ等の輸出国の小麦生産の過剰状態が発生し、そこから価格低落の情勢が生起し、これをいかにして防ぎとめて、一定の価格を維持しながら外国に売りつけるかというところに、この協定の真のねらいがある。もしこの協定がなかつたならば、もつと安い自由価格で買えたのではないかということも考えられないことでもない、そういう見解もあり得ると私は考えるのでおります。しかしここれについてはいろいろ議論の存するところでありましようけれども、とにかく、一種のカルテル的性格を持つこと、すなわち一定の値段で押しつけ的に売りつけるという性格が、多分にこの協定の中に含まれているということは、私ども見ないわけには行かない。ただ現実の問題といたしまして、今ただちにそれをどうすることもできないということと、いま一つは、現実にはこの価格によつて輸入する方が、現在の自由価格によるよりも安いという実情になつておりますから、とりあえずこの協定を利用しようということ、私ども協定参加問題をこれ以外の角度から考えてはならぬと思うのであります。  そこでなお一言申しておきたいと思いますことは、この価格により食糧輸入いたします場合に、現政府価格政策とあわせてこれを検討してみる必要がある。政府内地農民生産する農産物の価格の決定にあたりまして、その生産費に対する十分な考慮を拂わず、いたずらに諸物価の面だけを中心といたしまして、すなわち生産費という面からは十分な考慮を加えないで、片寄つた価格政策行つておることであります。この線によつて農産物価格が決定せられている。それは低価格政策として農民に対する圧迫となつておる。政府のこの政策は、この協定参加することによつて、さらに拍車を加えられる、こういう危険性が十分に考えられるのであります。この点はつきりと意識しておかなければならぬことであると私ども考えます。  それからなお、今申しました国際カルテルの性格を持つておりますこの小麦協定に、アルゼンチン及びソ連参加していない。その理由について私が昨日政府にお尋ねいたしましたところ、アルゼンチンの方は最高価格に不満があるし、ソ連の方では輸出の保証数量に不満があるというお答えであつたのであります。こういう見地から見ると、アルゼンチンの場合はわが国の利益になる理由ではありません。けれどもソ連の場合でいえば、もつと多ぐ輸出したいと思うのであるけれども、この協定参加することによつてそれが制限されるのだという事情があるとすれば、私どもソ連小麦というものを考えないわけには行かない。これは、政体がどうであろうと、日本経済ということを考える場合に、このような理由で参加していない国があるということを、私ども考えないわけにに行きません。これは私ども日本国の経済的見地からする当然の目のつけどころであると考えるのであります。そこで私どもは、こういう点からいたしましても、やはり全面講和をやらなければならぬ、ソ連とも通商関係が正式に復活されるように早くならなければならない、このことを従来から主張して来たのであります。このカルテルを打破る一つの方法はやはりそこにあるのであり産して、こういう点からしても、ソ連食糧日本輸入するという問題について、真剣に考えなければならぬと私は思うのでありますが、この考慮も、しかし、現政府によりましてはおそらくなされないだろうと考えます。こういう面からも、現内閣によりましては、わが日本食糧問題が、真にわが国の国民大衆の利益になるような方向で解決せられる見込みはあり得ないというふうに私ども考えております。私どもは、このように、現内閣の政策に対し、根本的に批判しなければならぬ点をいろいろと持つておりますけれども、先ほども申しましたような現実の問題といたしまして、この協定の有効期間の間にこれに参加するということが、一定の利益を伴うというようにも考えますので、私は、今申しましたような考えを持ちながら、この小麦協定には参加承認するという態度を表明したいと思うのであります。  最後に政府に警告を発しておきたいと思いますことは、政府は、国会の承認を経ない前に、すでにこの條約に参加してしまつておることについてであります。事後の国会の承認ということになつて、おるように私は考える。こういうことが将来たびたびあつてはいけない。どんな條約につきましても、こういうことが将来断じてないように、このことは特に政府に警告を発しておきたいと思います。
  69. 守島伍郎

    ○守島委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。国際小麦協定への加入について承認を求めるの件を、承認すべきものと議決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  70. 守島伍郎

    ○守島委員長 起立多数。よつて本件は承認すべきものと決しました。 (拍手)
  71. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に、国際労働機関憲章の受諾について承認を求めるの件を議題といたします。  本件につきましては質疑は終了しておりますので、ただちに討論に入ります。北澤君。
  72. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいま議題となつておりまする国際労働機関憲章の受諾について承認を求めるの件について、私は自由党を代ましまして賛成の意を表するものであります。  この国際労働機関憲章の目的は、各国におきまする労働條件を、国際的協力によつて改善して行くということを目的としているわけであります。わが国のこの機関への加盟が実現いたしますれば、これによつてわが国労働者の福祉が増進されるばかりでなく、さらに進んでは労使間の関係が円滑化され、産業の平和が招来されまして、よつてわが国の発展に寄与することが少くないと確信するわけであります。ことに従来とも日本に対しましては、ソーシャル・ダンピングをしているというふうな誤解があつたのでありますが、日本がこの機関に加入することによりまして、日本の労働條件が国際的水準に達しているということが明らかになりますれば、こういうふうなソーシヤル・ダピングに対する誤解も一掃されるあけであります。いよいよ日本が講和條約を締結し、国際社会に出発するというときにあたりましては、日本がこの憲章に参加しましてそうして経済発に公正な競争による日本経済の発展をはかるということになるわけでありますので、そういうふうな諸般の点を考えて、われわれは国際労働機関憲章に賛意を表するわけであります。  ただ一点だけ希望を申し述べたいのは、国際労働機関の総会におきまして、いろいろの労働に関する條約、もしくは勧告を作成するわけでありますが、そういう場合には、この憲章の規定にもありますように、日本の国の特殊の事情をひとつ十分考えて、そういう條約ないしは勧告を作成してもらいたい。その場合には常に日本の特殊事情を十分考慮してもらいたいということを希望するわけであります。  以上をもちまして、私は自由党を代表しまして、本件に対して賛成の意を表するものであります。
  73. 守島伍郎

    ○守島委員長 山本君。
  74. 山本利壽

    ○山本(利)委員 私は国民民主党を代表いたしまして、本件に賛成するものであります。  国際労働機関憲章は、世界平和は社会正義を基礎として確立し、社会正義は労働條件の改善によつてでき、しかも労働條件の改善は、国際的協力が必要であるという認識に基いてできておるようであります。でありますから、わが国はこの憲章を承認するからには、わが国の労働條件というものをいま少しく向上せしめねばならないと考えるのであります。先般来の審議におきまして、わが国の労働條件は世界水準を上まわつておる、世界水準に劣つておるものではないというふうな御答弁があつたようでありますけれども、実際問題としては、多くの欠陥を暴露しているようであります。現在日本の労働界を安定させるためには、最低賃金制の設定であるとか、あるいは完全雇用への努力であるとか、その他現実の問題としては、失業救済に対する施策であるとか、さらに進んでは、労使協調に対して、いま一段の政府の研究と努力とを必要とすると私ども考えるのであります。このようにしてわが国の労働條件を国際的な水準に引上げた後には、今度のこの憲章受諾によつて得られるところの多くの国際的な協力を、強く求めなければならぬと思うのであります。外務委員としての観点から申しましても、この憲章受諾から受けるところの事業の中には、技術者の交流であるとか、ちるいは移民の国際的調節であるとか、あるいはアジアの地域的な問題であるとかいうことがあげられておるのでありますが、今後日本が独立した後、アジアの問題——アジアの各国が政治的にあるいは経済的に安定するということは、わが国の独立に非常なる関係を持つものでありますから、この国際労働機関を通じてでも、アジア地域における労働、その他あらゆる問題についての安全のためのわれわれからの発言、あるいは協力を惜しんではならぬと考えるのであります。さらに先般も申しましたが、わが国の経済的な安定、あるいは国家的の独立ということは、人口問題が非常に影響するものでありますから、この機関において取上げられるところの移民の国際的調節という点に着眼して、わが政府は十分の努力をしていただきたいと考えるのであります。  これらの諸点を簡單に希望いたしまして、賛成いたすものであります。
  75. 守島伍郎

    ○守島委員長 次は林百郎君。
  76. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方はこの加盟に反対いたします。反対の理由は、先ほど北澤委員の賛成の意見の中にありました通りに、わが国がソーシャル・ダンピングの疑いを国際的に受けておる。これを避けなければならないということが、これに加盟する大きな理由の一つであつたのであります。この提案理由の説明を見ますと、日本がこれに加盟することによつて「労使間の関係の円滑化、産業の高度化が促進され、もつてわが国の発展に寄与するところは、はなはだ大なるものがあると考えます。さらにこれによりまして日本の労働條件が、法制上、完全に国際的水準に達していることを示すことが可能となり、日本が決して低い労働條件により、いわゆるソーシャル・ダンピングを行うものではないという事実を広く世界に理解せしめることができるでありましよう。」ということでありまして、これに入ることによつて、法制上日本の労働條件が世界的水準に産しておることを示すことが可能だ。これによつてソーシャル・ダンピングを行うものじやないということを広く世界に理解せしめるということであるようであります。しかし問題は、この法制上、日本の労働條件が世界的水準に達しておるかどうかということではなくして、日本の労働者が置かれておる現実の條件がどうかということによつて、国際的なソーシャル・ダンピングのそしりを免れるようにしなければならないということが、ほんとうの責任のある政治家の行うべきことだと思うのであります。ところが御承知通りに、日本の労働者の労働條件は、アメリカの平均賃金の二十分の一から、いいところでも十分の一——アメリカは週給六十ドルといいますから、これを月に直しますと大体二百四十ドルくらいになりまして、大体十万円平均になると思うのであります。日本の労働者の平均賃金は、いいところ一万二、三千円、実際は五、六千円のところがあるのでありまして、これは明らかに国際的な水準からいつたら、アメリカの例が高過ぎるにしても、そのほかの国の例にとりましても、問題にならないような低條件であるのでちります。しかも失業者、半失業者を入れますと、大体一千万人近くの半失業者的な労働者がちまたにあふれておるのでありまして、工場では通常の本雇いの労働者から臨時工雇いにどんどん切りかえれて、いつでも首切りあるいは低賃金で雇うことのできるような産業予備軍が町にあふれておる。そのために日本の労働者一般に及ぼす劣悪な條件というものは、およそ国際的に比を見ないような、さんたんたる状態だと思うのであります。問題は、こういうさんたんたる日本の労働者の労働條件を率直に国際的に訴えて国際的な輿論のもとに、日本の労働者の労働條件を改善して行くということが、むしろ日本の姿をありのままに示すことであつて、こうした劣悪な労働條件をそのままにしておいて、法制上だけ国際的な水準のもとに入るということは、私は欺瞞ではないかと思うのであります。この点がこれに反対する第一の理由であります。  それから第二の理由は、御承知通りに今占領下でありまして、PD工場あるいはLR工場では、アメリカからの注文は非常なわくの狭い状態で注文が来る。たとえば日立のごときは一時間四十八セントの比率で注文を受けるというような形で、四十八セントの注文を受けますと、材料代が四十セントかかりますから、労働者の賃金はどうしても八セント。八セントということになりますと、月平均五、六千円の労賃しか拂えない。そういうような條件で特需あるいは新特需の注文が来るという状態でありまして、こういう占領下のもとで、いかに国際的水準の高い法制上の措置をとりましても、現実の問題としては、日本の労働者の労働條件を改善することは不可能であります。資本家の利潤すら非常な幅の狭いものにならざるを得ないという状態でありまして、こういう條件のもとでこの国際労働機関憲章に入つても、これは無意味であるとわれわれは考えるのであります。ことにPD工場、LR工場では、自由に従業員を馘首することができまして、これは工場主に言わせすと、注文側つまりアメリカ側の監視のもとで仕事をしておるのだから、この監視する人たちから、あの労働者は不適格だと言われれば、首を切らざるを得ないのであつて、こういう占領下では、労働協約も労働三法も適用するわけに行かないというような説明を聞いておるのでありまして、こういうことではとうてい労働者の基本的人権あるいは労働條件を十分守ることができないのであります。むしろこれは率直に国際的に訴えることの方が、私は日本の労働者のために利益になると思うのであります。  それから第三は、こういう劣悪な労働者の労働條件のもとでありますから、労働法規の改悪だとかゼネスト禁止法だとか、いろいろの取締法が吉田内閣のもとでは考慮されておるのでありまして、この国際労働憲章の宣言の中にあるような、労働は商品ではないとか、表現及び結社の自由は、不断の進歩のために欠くことができないとか、すべての人間は、人種、信條または性によつて、物質的精神的に福祉を受ける條件に差異を付されてはならないというようなことは、まつたく空文にすぎないと思うのであります。こういう條件のもとで、この美しい言葉だけで入るということは、一種の欺瞞であるというように私は考えるのであります。この点からいつても、要するに労働者に対する強圧的な政策をとつていながら、こういう労働者の基本的人権を守らなければならないというような労働憲章に入ることは賛成できないのであります。  それから第四としましては、この国際労働機関憲章に入ることによつて、保利労働大臣の意見によりますと、さらに労働基準法を、行き過ぎたものは改悪するというようなことも言われておるのでありまして、吉田内閣が労働基準法だけは世界的な水準だと言つておきながら、これは労働憲章よりもまた行き過ぎているからこれを直さなければいけない、たとえば婦女子の生理休暇あるいは十八歳未満の未成年者に対する労働條件というようなことは、労働憲章に照しても行き過ぎておるから将来改悪するということをほのめかしておるのでありまして、将来これに入ることによつて、むしろ日本の労働三法を改悪する口実になる、この点から私たちはこれに入ることに賛成できないのであります。  第五としまして、先ほど北澤委員の賛成討論の中にもありましたごとく、この国際労働機関に入つても、日本の特殊事情からいつて、適しないものは考慮すべきだという逃道も張つておるのであります。一方において逃道をつくつておきながら、法制上だけは完備した国際的水準に達しようということは、いささか欺瞞であるといわざるを得ない。かかる理由から、私はむしろ、日本の労働者の置かれておる現実の劣要な條件を国際的に訴えて、国際的な協力のもとに日本の労働者の労働條件を改善するということが率直な態度であつて、法制上りつばなものに入ることによつて——現実の劣要なる日本の労働者の労働條件を隠そうとする意図には、どうしても賛意を表することができないのであります。  こういう意味で、わが党はこの憲章を受諾することについては反対するものであります。
  77. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に黒田君。
  78. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は世界労働機関憲章に参加することを承認する一人であります。もとより私どもは従来の経験にかんがみまして、これに参加することに、正直に申しまして、大きな期待を持つものではありません。しかしながら、これをボイコツトするか、それとも、わが国の労働者の利益のために、何らかの意味においてこれを利用する努力をしてみるという意味参加するか、という選択の前に立たされますときに、私は現在といたしましては、後者をとるべきだというふうに考えるのであります。もとより私はこれに参加する政府の代表により、あるいは同時に参加する資本家の代表によりまして、労働者が利益を受けるところがある、そういう期待を持つてもおりませんし、また労働階級がこれを持つてはならぬと思います。下手にすると、労働代表が買収されたりするおそれさえないことはないのであります。しかしながら、他面労働階級といたしましては、いかなる機会をも利用し、いかなる会議にも出席いたしまして、その主張を訴え、その要求の貫徹のために努力するという方針を放棄すべきではない。私どもこの国際労働機関の場合をも、そういうものの一つとして利用できれば利用するという積極的な態度を、持つ方がいいのではなかろうかと考えるのであります。いろいろとこれによりまして、林君の言われましたような欺瞞的な政策も、ここから発生し得る可能性は十分あります。可能性があるばかりでなく、過去において国際労働機関に参加した実績等も、私ども考えてみる必要がありますけれども、しかしそれをそういう欺瞞的なものにされてしまうか、労働代表が買収されてしまうようなことになるか等の問題は、結局わが国の労働者の運動方針と実力が、解決すべきものであると私は考えるのであります。また、現在といたしましては労働組合の大多数が、これに参加することを肯定しておるという実情も、私ども無視することはできないのであります。こういう事情考えながら、私どもいろいろと積極消極両面を考慮した上で、この際はやはり参加しておくべきだ、こら考えておる次第であります。  簡單でありますが、これで私の討論を終ります。
  79. 守島伍郎

    ○守島委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。国際労働機関憲章の受諾について承認を求めるの件を、承認すべきものと議決するに御賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  80. 守島伍郎

    ○守島委員長 起立多数。よつて本件は承認すべきものと決しました。
  81. 守島伍郎

    ○守島委員長 次は、公衆衛生国際事務局に関する議定書を受諾することについて承認を求めるの件を議題といたします。  本件に関する質疑は終了しておりますが、討論もございませんから、これよりただちに採決いたします。  公衆衛生国際事務局に関する議定書を受諾することについて承認を求めるの件を、承認すべきものと議決することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは本件は承認すべきものと決じました。  なお本日議決いたしました三件についての報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なしと認めます。さようとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時九分散会