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1951-11-09 第12回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月九日(金曜日)     午後一時二十九分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 竹尾  弌君    理事 山本 利壽君       小川原政信君    菊池 義郎君       近藤 鶴代君    仲内 憲治君       中山 マサ君    福田 篤泰君       並木 芳雄君    林  百郎君       黒田 寿男君  出席国務大臣         労 働 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君  委員外出席者         外務事務官         (国際経済局次         長)      小田部謙一君         外務事務官         (条約局国際協         力課長)    須山 達夫君         厚生事務官   齋藤 勇一君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    細田茂三郎君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 十一月七日  平和条約及び日米安全保障条約批准反対に関す  る請願赤松勇君外一名紹介)(第七三四号)  平和条約及び日米安全保障条約批准反対等に関  する請願外一件(渡部義通紹介)(第七三五  号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際小麦協定への加入について承認を求めるの  件(條約第三号)  国際労働機関憲章の受諾について承認を求める  の件(條約第四号)  公衆衛生国際事務局に関する議定書を受諾する  ことについて承認を求めるの件(條約第六号)     —————————————
  2. 竹尾弌

    竹尾委員長代理 ただいまより外務委員会を開会いたします。  まず国際小麦協定べの加入について承認を求めるの件を議題といたします。  通告順により質疑を許します。北澤直吉君、
  3. 北澤直吉

    北澤委員 国際小麦協定につきましては、午前の外務農林連合審査会におきまして、いろいろ質疑があつたのでございますが、私はまず外務当局に対しまして質問したいと思うのであります。  この国際小麦協定につきましては、ことしの七月二十三日に正式の加入書米国政府に寄託したことによりまして、わが国は正式にこの協定加盟国なつたわけであります。従つて今回の国会に対する承認の要求は、事後承認ということになつておるわけでありますが、そうしますと、ことしの七月二十三日に日本加入書を寄託したことによりまして效力を発生している、こういう解釈でございますか、それとも今回の事後承認によつて效力が発生するのか、その点をひとつはつきり伺いたいと思います。
  4. 島津久大

    島津政府委員 效力が発生しておるという解釈でございます。
  5. 北澤直吉

    北澤委員 もし万が一事後承認を得られない場合には、その效力はどういうことになりますか。加入書を寄託したときにさかのぼつて效力がなくなる、こういうような解釈でありますか。
  6. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。かりに国会承認を得なかつた場合においても、日本加入そのものは引続いて有效であります。ただ政府の責任という問題は残るのでありますが、脱退の規定によりまして脱退するということになろうかと思います。
  7. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまお尋ねしたのは、将来こういうふうに條約について事後承認を求める場合があると思いますので、その点をひとつはつきりしておきたいと思つて伺つたわけであります。  それで伺いたいのでありますが、たとえば国会閉会中であつて国会承認を得ることができない。しかしながら国際関係で、どうしても早く條約の調印とか、あるいは加入をしなければならぬというわけで、事後承認を求める場合があるのであります。私はこれは実際問題として伺いたいのでありますが、実はこういうふうに條約に調印し、または加入をするということになりますと、それによつて效力を生ずるというわけでありますから、私はそういう場合には、国会常任委員会、参議院にも衆議院にも外務委員会という常任委員会がありますので、たとえば閉会中であつて国会には承認を求めることができない場合、非公式に国会常任委員会というものを通じて、一応国会の非公式の了解を得てから調印する、あるいは加入するというような手続をとつた方がいいと思います。現にアメリカではこういうふうな、條約に調印するというような場合には、事前に上院の外交委員会というものと連絡をとつて、実際的には国会連絡をとつて調印し、あるいは加入しておるということでありますが、私は日本におきましても事後国会承認を求めるような場合には、事前国会常任委員会を通じて、非公式に国会了解を求めるというふうなことにした方が、諸般の関係において円満に行くのじやないか、こういうふうに思うのでありますが、政府は将来こういう事後承認を求めるというような場合には、事前国会常任委員会を通じて、国会の方の非公式の了解を求めるというふうなことをお考えになつておるかどうか、伺いたいと思います。
  8. 島津久大

    島津政府委員 ただいま御意見の御趣旨は、政府側といたしましても、十分運用について研究いたしたいと考えております、常任委員会と條約審議の関係、その他ただいまのところ固まつた考えはまだ持つていないのでありますが、これは国会の方におかれましても十分御検討のあるここと存ずるのであります。ごく常識的に考えまして、その内容の重要なものについては、そういう場合も考慮されるべきではないかと考えております。
  9. 北澤直吉

    北澤委員 この問題につきましては、政府におかれてもいろいろ御研究のようでございますが、私は政府国会との関係というものから考えまして、将来事前国会承認を求め得ないような場合におきましては、せめて常任委員会を通じて、国会の方と非公式な連絡をとつてもらうというふうにしてもらいたいと思つております。  次に農林省当局にお尋ねしたいのでありますが、今回政府国際小麦協定に参加しまする理由は、現在の市場価格よりも安い値段小麦を買い入れるということによつて、七、八百万ドルの外貨を節約するということが、今回の小麦協定に参加するおもなる理由であろうと思うのでございまして、こういうふうな外貨節約という見地から申しますと、まことにこの協定に参加することは望ましいことでありまするが、けさども質問がありましたように、一面この小麦協定に参加しまして、安い外国小麦日本に入るということになりますと、これが日本におきます小麦生産農家に対しまして、相当影響を及ぼすということをわれわれは思うのであります、最近政府におかれましては、こういう食糧につきましては、漸次日本食糧価格をば国際的な食糧価格にだんだんとさや寄せをして行く、こういうふうな方針をとつておられるのでございますが、そうしますと、小麦につきまして、もし安い小麦が入つて来て、この国際価格に対して日本小麦値段さや寄せして行くというふうなことになると、これが日本におきまする小麦生産する農家相当影響を與える、ひいては、日本におきまする小麦生産にも影響して来る、こういうふうに考えるのであります。もちろんその場合においても、安い小麦が入りましても、輸入食糧は今後とも政府が管理するのでありますので、この政府操作によつて国内放出する場合には、ある程度の、国内小麦値段をくずさないような程度値段で、放出をするということもできるのでありますけれども、先ほど申しましたように、国際的な食糧値段さや寄せをするというふうな方針で行きますと、もし安い小麦が入つて来ると、これが自然日本小麦値段に非常に響いて来るというふうに私は思うのでありますが、将来政府は安い小麦が入つて来ましても、これは政府操作によつて国内小麦値段を、あまりくずさぬようにするという方針でありますかどうか、その点を伺つておきたいと思うのであります。
  10. 細田茂三郎

    細田説明員 ただいまの小麦協定最高価格でありまする一ドル八十セントというものでありますと、大体内地到着価格に直しますれば、トン当り八十二ドル見当ということでありますが、これは現在の生産者価格から計算をしてみますと、大体とんとんになる価格であります。一方小麦協定に参加をしたい国が非常にたくさんありますのと、過去の実例を見ましても、小麦協定取引される量というものは、年々ふえて来ておりまして、しかもこれにつきましては、供給国はやはり市価との開き相当分は、財政支出をしなければならない関係がありまして、この一ドル八十セントというものも、あるいは明年あたりはむしろ引上げられる可能性があるのではないかというような状態であります。従いまして内地の麦価を、このままかりに放出しましても、圧迫するような価格にはとうていならないと考えられます。それからかりにそういう事態が起きました場合におきましても、御承知のように政府は買入れた値段そのままで、裸で放出はいたさないのでありまして、現状ではむしろ国際価格の方が高いものですから、御承知補給金をつけて安く出しておるというような状態でありますので、御懸念小麦協定加入関係から起つて来るようなことは、まずまず考えられないと思います。
  11. 北澤直吉

    北澤委員 次に伺いたいのは、けさども同僚の委員から世界小麦市場価格が、この小麦協定価格を下まわることがありはせぬかという質問があつたのでありまして、これに対しまして、政府の方では、そういうことは大体ないだろうというふうな答弁があつたのであります。この政府から配られました国際小麦協定説明書によりますと、その理由としまして「朝鮮動乱後の国際情勢において、諸外国小麦需要増加の傾向が急変するとは思われないこと、」それからまた「小麦供給量の一時的過剰が起つても、世界における小麦取引量の約七割がこの協定によつて取引されているから、この分についての小麦価格が安定していること、」第三として、「世界小麦市場を左右する米国において支持価格制度が行われていることのためた、世界小麦市場価格がこの協定最低価格を下まわる公算は少いであろう。」こういう三つの例をあげておるのであります。この最後の点でありますが、アメリカ食糧に対しまして支持価格制度、プライ・サポート・システムをやつておる、これは今の民主党政府政策であります。来年の秋になりますと大統領選挙がありまして、これがあるいは民主党が勝つか、共和党が勝つかわかりませんが、少くも来年の秋までは、現状のままで支持価格制度というものがあると思います。しかし、もし来年秋におきまして共和党が勝つて、今の民主党政権がかわるということになりますと、この支持価格制度も私は相当かわつて来はせぬかというふうに実は考えておるわけであります。従いましてこの第三の理由アメリカにおきまして価格支持制度があるから、一般の市場価格協定価格を下まわることがないという理由につきましては、やはり来年秋のアメリカ選挙の結果を見る必要があるというふうに私は考えておるのでありますが、その点について政府考えを伺いたいと思います。
  12. 細田茂三郎

    細田説明員 アメリカの政党がかわりましたときにどういうふうになるか、われわれは全然わかりませんが、かりにこういうことがなくなつた場合にどうかということでありますけれども、御承知のように日本食糧事情としましては、大体平年の需給関係でありますと、三百二十万トン内外のものは、どうしてもここ数年ぐらいのことを考えてみましても、やはり輸入は不可欠だと思います。そういたしますと、御承知のように、戰前のように東南アジアからどんどん米がほしいだけ買えるという状態でありますれば別でありますけれども、現在米の世界事情から申しますと、日本が買い得る米の量の限度は、大体百万トン内外であります。従いまして三百万トン内外のものがどうしても必要であるということになりますれば、二百万トン内外のものは、どうしても小麦なり大麦なり麦に依存しなければならない、こういう前提でございます。従いまして五十万トンくらいというものをかわに義務づけられましても、あとのやはり百何十万トンというものは、どうしても自由市場から買わなければならぬということになるわけでありまして、かりにアメリカでサポート・プライスをやめたら、それじやすぐカナダでありますとか、オーストラリアあたり小麦値段が下るかという問題でありますけれども、これは世界各国需要供給関係を見ましても、これが急に供給過剰になるというふうには考えられないのでありまして、支持価格制度がなくなれば、ただちに今世界小麦市場価格が非常に落ちて来るというようなことは豫想されないのであります。従いましてアメリカ政権がかわることによつて、どういう政策変化が行われるかはわかりませんけれども、この三に書いてあるようなことだけが理由ではないのでありまして、むしろ(イ)、(ロ)に書いてあるような情勢から判断をいたしますと、決してこの最低価格をさらに下まわるような小麦価格が現出するということは、まずまず予想されないというように考えております。
  13. 北澤直吉

    北澤委員 今の点は大体了承いたしました。そこで伺いたいのでありますが、先ほどどなたでありますか、現在のところではこの小麦協定価格によつて小麦を入れる場合におきましては、大体国内小麦値段とんとんである、こういうふうなお話であつたのでございますが、これは大体今の一ドル三百六十円の為替相場基準になつておると思うのであります。一ドル三百六十円という為替相場によつて見るなら、小麦協定価格によつたものが国内とんとんですが、もちろん政府におきましては、今の三百六十円のレートは堅持する方針であろうと思うのでありますが、しかしながら国際為替問題、特に最近ではイギリスのポンドの問題、あるいはフランスのフランの問題、いろいろそういう為替レートの問題が、今後の国際経済の動きによつ、相当動くということも予想しなければならぬ問題であります。そういうふうな国際的な為替レート変化によつて相当動きがある場合には、こういうふうな外国から入れたものと、日本国内の麦との間の値段の比較というものにも、いろいろ変化が生じて来るわけでありますが、政府におきましては、今の一ドル三百六十円のレート基準とすればとんとんである、こういうふうな解釈だと思うのでありますが、念のために伺つておきます。
  14. 細田茂三郎

    細田説明員 三百六十円で換算をしますれば、大体とんとんということであります。このレートがかわつて来れば、当然かわつて来るわけであります。あるいはそれがすぐ内地の麦作に影響するのじやないかというもし御懸念でありますれば、これは政府輸入食糧については、かりに統制をある程度緩和いたしましても、輸入物についてはあくまで政府買つて管理をするという現在の態勢は、そのまま続けて行こうということになつておりますので、その点は懸念がないと思います。
  15. 北澤直吉

    北澤委員 それでは先に進みましてこの協定の第六條によりますと、「輸出国及び輸入国が、国内農業政策及び価格政策の決定及び運用について完全な行動の自由を留保するが、これらの政策の結果として、損害をこうむつた国は、その苦情について理事会調査報告を受ける権限を有する」というふうになつておるわけであります。たとえばアメリカにおきまして、農業政策もしくは価格政策について、ある措置をとつた場合におきまして、その結果、日本が買い入れる小麦について損害を受けた、たとえばアメリカにおきまして、小麦値段を非常に上げるような政策とつたために、日本がそれについて損害をこうむつた場合には、その苦情について理事会調査報告を求めることができるということになつておるのでありますが、これは單に調査報告を求めるというだけであつて、それ以上のことは一体できないのかどうか。この第六條第八項の規定は一体何を意味するのかということを伺いたいと思いま。
  16. 島津久大

    島津政府委員 ただいま御質問の、第六條の第八項の苦情調査の結果によりまして、それが紛争になれば、第十九條の「紛争及び苦情」この條文によりまして処理されることになつております。
  17. 北澤直吉

    北澤委員 それではこの問題はその程度にしましてその次に移ります。  第七條によると「十分な小麦供給を確保し及び価格の安定を維持するために、輸出国輸入国ともに常に十分な在庫量を維持する義務がある。」こうなつております。そうしますと、輸入国である日本におきましても、いつも十分な在庫量を維持して価格を安定するようにしなければいかぬ、こういうことになるわけでありますが、そういうような十分な在庫量の維持ということになりますと、相当国家資金がいるわけであります。その十分な在庫量というのは一体どの程度をさしておるのか、その点を念のために伺つておきたいと思います。
  18. 細田茂三郎

    細田説明員 御承知のように、ことしの十月末現在の政府の麦の手持ちが一千百万石程度になつております。この程度ありますれば、日本食糧需給操作としては十分なものである、こういうふうに考えております。
  19. 北澤直吉

    北澤委員 そういいますと、これは食糧全体についてでなくて、小麦について十分な在庫量であつて小麦についてある程度の十分な在庫量を維持する義務がある、こういうことでございますか。
  20. 細田茂三郎

    細田説明員 われわれはそういうふうに解釈しております。
  21. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点伺いまして私の質問を終ります。  これは小麦関係しないのでありますが、食糧輸入について伺いたいのであります。今の状態で進んで参りますと、今年度から明年度に持ち越す食糧の量は、昨年から今年に持ち越した量に比べて、大体五十万トン不足であるというふうにわれわれは聞いております。従いまして昨年程度持越量を維持するためには、五十万トンの輸入をする必要がある。さらにその上に食糧操件のために、相当程度食糧輸入しなければいかぬ、こういうふうになるわけであります。新聞などによりますと、大体三百七十万トンくらいをこれから輸入しなければいかぬというふうなことになつておるわけであります。将来政府食糧統制撤廃をするという見地から参りましても、ぜひともこれはそういう方法によつて食糧を確保しなければいかぬということでございますが、三百七十万トンの食糧輸入するというためには、相当外貨がいると思うのであります。その外貨の手当につきまして、政府は一体どういう見通しを持つておりますか、その点を伺つて私の質問を終ります。
  22. 細田茂三郎

    細田説明員 この統制撤廃の問題が起ります前は、われわれとしましては日本会計年度で大体三百二十万トン入れなければならぬということで考えておりまして、三百二十万トンの外貨につきましては、すでに関係当局においても大体了解がついておるのであります。それで今お話のように、今年の米が不作であつたために、供出も多少減るということで、その米が不作であつたということと、それからあと人口増に伴います当然の需要増、さらに統制撤廃にでもかりになれば、えさでありますとか菓子でありますとか、その他いろいろな用途においても、相当需要増もあるであろうというようなことを検討してみますと、安全をとればさらに五十万トンくらいは追加をいたしまして、三百七十万トン程度輸入をいたしたいというふうに考えられるわけでありまして、かりに五十万トン程度輸入するということになりますれば、しかもそれは米を主として考えるということで考えて参りますと、外貨の増としては——これはまだ確定的な数字が出ておるわけでありませんで、われわれの試算によれば、やはり六、七千万ドルの増加になると考えます。それじやこれがはたして今すぐ出せるか出せないかということは、目下安本当局がいろいろな検討をしておる最中でございますので、私から百パーセント確実なお答えをするわけに行きませんけれども、しかし日本政府の内部としては、そのくらいのものは何とかやりくりがつくのじやないか、こういうふうな現在は見通しであります。
  23. 竹尾弌

  24. 黒田寿男

    黒田委員 私は少し根本問題について農林大臣にお尋ねしたいと思つたのでありますが、きよう御出席がないようでありますから事務的な問題だけを二、三お尋ねしてみたいと思います。  政府の方から私どもに渡されました「国際小麦協定説明書」というものがありますので、その記述の順序に従いまして、事務的な問題をお尋ねしたいと思います。説明書の第一にある国際小麦協定に調印しなかつたアルゼンチン及びソ連のことについてでありますが、先ほどどなたかある委員からの質問に対しまして、政府委員が御説明なつたようでありますけれども、もう一度お尋ねします。この説明書によりますと「アルゼンチン及びソ連は、それぞれ最高価格過小及び保証数量過小理由としてこの協定に調印しなかつた。」こう書いてあります。そうしますと最高価格不満である、それからまた保証数量がこの程度では不満であるということだと思いますが、ソ連の場合につきましても、やはり同様な理由があつたのでありましようか。  「アルゼンチン及びソ連」の両方に「最高価格過小及び保証数量過小」という理由がかかるものでありましようか。
  25. 島津久大

    島津政府委員 アルゼンチンにつきましては最高価格過小ソ連につきましては保証数量過小、それぞれ別の理由があつたのであります、
  26. 黒田寿男

    黒田委員 それではつきりいたしました。そこでお尋ねいたしますが、そうしますと、ソ連については別に最高価格の方に不満があつたというわけでなくて、保証数量の方に不満があつた、こう見られるわけですが、これをもう少し具体的に申しますれば、ソ連としては、この協定によつて決定されました数量よりも、もつと多くの数量を輸出したいという不満があつたということになるのでありましようか。
  27. 小田部謙一

    小田部説明員 今お述べになつた通りソ連に関しましては、売渡し保証数量が少いという理由でございます。これは一つは輸入大国の方はよけい輸入したいのでございますが、輸出国の方では、小麦をこの協定に入つて出す数量というものに関しましていろいろ問題がありますので、輸出国の方でも必ずしも足並がそろわない、こういうような立場でもつてソ連の方は入らなかつた、こういうふうに了解しでおります。
  28. 黒田寿男

    黒田委員 そうしますと、平たく申しますれば、ソ連の方は協定数量よりも、もつと多く輸出したい、こういう考えがあつたのだけれども、それより下の数字で押えられたからこれに調印しなかつた、具体的にはそうなるわけですか。
  29. 小田部謙一

    小田部説明員 そうです。このときの情勢は、他の輸出国は全部ソ連に五千万ブツシエルを出すようにといつたのに、ソ連は七千五百万ブツシエルを主張して入らなかつた、こういう事情であります。
  30. 黒田寿男

    黒田委員 私は政府はよく御存じであると思いますからお聞きしたいと思いますが、そうなりますと、ソ連の側については最高価格に関する不服はない。そうしてしかも数量はよけいに出したい、輸出したい、こうだとすれば、今わが国ソ連とは、貿易関係において私どもには望ましからぬ関係になつておりますけれども、もしソ連通商関係が開始せられるようになつて参りまして、協定価格よりも安い価格で、日本ソ連から小麦輸入することができるようになるという見込みはないのでありましようか、私はこまかいことはよく知りませんので、これは政府の方ではよく御研究であろうと思いますから、承つておきたいと思います。     〔竹尾委員長代理退席委員長着席
  31. 細田茂三郎

    細田説明員 現状ではソ連から小麦をとるということは、ほとんど不可能だと思います。
  32. 黒田寿男

    黒田委員 現状では小麦だけではなくて、すべてのものが不可能で、漁業協定もできていないのですから、一般的にいえばそうでありますが、私が申しましたのは、これは大きな政策の問題に関連いたしますけれども、かりに通商関係が再開せられ、円満な取引ができるようになれば、協定価格よりも安く日本に輸出してくれるようになる可能性があるのではないか、これを私は質問してみたのであります。これはしかし事務当局としては、あるいはお答えにくいところがあるかとも思いますから、無理な質問であるというようにお考えになりましたら、お答え願わなくてもけつこうであります。要するに協定参加国以外の国の中で、小麦価格不満がなくて、数量はよけい出そうという国があるのですから、これと取引することは、わが国の利益になるのではなかろうか、こう思つて質問してみたのであります。しかしこの点はお答えにくいところであるかもしれませんから、私はこれ以上は質問はいたしません。林君がお帰りになりましたから、それでは林君の方に質問を譲ります。
  33. 守島伍郎

    ○守島委員長 林百郎君。
  34. 林百郎

    ○林(百)委員 今の黒田さんの御質問ですが、そうすると、私途中へ入つて来たのですが、この説明書の中にある「この会議中アルゼンチン及びソ連は、それぞれ最高価格過小及び保証数量過小理由としてこの協定に調印しなかつた。」この最高価格過小理由としたのは、アルゼンチンと見ていいわけですか。ソ連はこの点は異議がなかつたと見ていいわけですね。
  35. 細田茂三郎

    細田説明員 ええ。
  36. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、今ソ連は大体どのくらいの値段でどこへどの程度小麦を出しておるか、わかりませんか。
  37. 細田茂三郎

    細田説明員 実は私どもは、ソ連の穀物関係は、現在どの程度取引されているかというようなことがよくわからないのです。
  38. 林百郎

    ○林(百)委員 この協定価格より上まわつておりますか、下まわつておりますか、それもおわかりになりませんか。
  39. 細田茂三郎

    細田説明員 わかりません。
  40. 林百郎

    ○林(百)委員 今あなたがソ連から穀物を取引するのが不可能だというのは、どういう事情で不可能になつておりますか。何か事務的な点で、大きな政策の点は別として、どういう点に険路がるのか、またわれわれも隘路があるなら大いに打開するように協力いたしますが、どういう点ですか。
  41. 細田茂三郎

    細田説明員 小麦のことは、私直接取引をしたことがありませんので、わかりませんが、実は中共関係の大豆が昨年の初めころまでは香港勘定、香港スルーというやつで輸入をしておつたわけです。それすら今日ではできない。大豆につきましても、もつぱらアメリカから輸入をしておる、こういうふうな現状です。従いましてそれに似たような小麦ソ連あたりから来るということは、現状ではちよつと考えられないことであると思います。
  42. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、それはこちらからバーターで品物が出ておるにもかかわらず、向うから来ないのですか。こちらからバーターで出す品物が戰略物資だとか、あるいは通産省のチエツクで出せなくて、従つて向うからバーターとしての物資が出て来ないのですか、その辺はどうなんですか。
  43. 細田茂三郎

    細田説明員 私は政治的な関係はよくわかりませんから、全然申し上げられませんが、たとえば大豆等につきましては、これはソ連ではありませんけれども、いわゆる満州大豆をバーターで取引をしたいという努力は、今でもインポーターがやつております。現実の問題として、ただできないだけであります。しかし満州には御承知のように小麦はあるわけですけれども小麦についてそういう努力は、現状においてインポーターそれ自体すらもやつておりません。
  44. 林百郎

    ○林(百)委員 中国の小麦がよそへ輸出されている例がありますか。
  45. 細田茂三郎

    細田説明員 私はそういう事例を聞いたこがありません。
  46. 林百郎

    ○林(百)委員 インドと中共との間に、小麦取引の話が成立しておることは御存じないのですか。
  47. 細田茂三郎

    細田説明員 私は新聞紙上等で見たことはありますけれども、確実な、こういうところで、こういうことでありますというふうに申し上げるようなデータをいまだかつて見たことはありません。
  48. 林百郎

    ○林(百)委員 事務当局の方にいろいろ事務的なことだけお聞きしておきたいと思いますが、日本小麦生産量は昭和二十四米穀年度に総計どのくらいあつたのですか。
  49. 細田茂三郎

    細田説明員 今、二十四年度の資料というものは持たないのですが…。
  50. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると趨勢だけお聞きしますが、日本小麦は麦全体として増産の傾向にあるのですか、それとも逓減の趨勢をたどつておりますか、どちらでありますか。
  51. 細田茂三郎

    細田説明員 大体の傾向を申しますれば、むしろ停滞ぎみだと思います。
  52. 林百郎

    ○林(百)委員 停滞する理由はどこにあるとお考えになつておりますか。それから、もし停滞ぎみだというなら、どの程度に停滞しておりますか、数字がおわかりだつたらお知らせ願います。
  53. 細田茂三郎

    細田説明員 今ちよつとここに古い統計を持つてつておりませんので、はなはだ申訳ないのですが、数字は申し上げかねますけれども、その理由はやはわほかにいろいろな競合する作物、有利な作物があるということではないかと思います。
  54. 林百郎

    ○林(百)委員 有利な作物があるということは、小麦をつくつていたのでは採算が合わないということなのですか。
  55. 細田茂三郎

    細田説明員 これは相対的な問題じやないかと思うのですが、たとえば麦と競合しましてどんどん伸びて来ておりますものに、菜種のようなものがあります。これは戰後非常な勢いで伸びておりまして、これは一つには菜種の採算が比較的麦よりいいという面があるのと、もう一つは品種改良が非常に進みまして、非常に反当收量がふえておる、こういうこともあります。そういうわけで菜種だとか雑穀とかいうようなものの統制がはずれまして、そういうものが相当的に麦よわは有利になつておる。それで麦の方は御承知のように長い統制下にあつて供出制度にありますので、やはりどうしても生産者価格が押えられぎみであるということは言えるのじやないかと思います。
  56. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう日本小麦生産者が、今の小麦値段では採算が合わないというので、むしろ増産の意欲を失つているというときに、昭和二十五年度の予算を見ますと、麦の対米価比率を下げたのですが、これはどういうわけです。
  57. 細田茂三郎

    細田説明員 これは午前中食糧庁長官からるる御説明しましたように、麦の配給辞退という現象を見ますと、これは嗜好の問題もございますけれども、やはり価格が米価に比すれば割高である。そう判断します理由は、いわゆる戰前の自由時代におきます麦価の対米比価というものが、かつてつておりました七十何パーセントというような高いものではなくて、もつと低かつたので、自由になつた場合には、当然そういうふうに米価と麦価は開くであろう、こういうことが考えられるわけでありまして、それで配給辞退という現象は、要するに米価を元にして考えれば、麦価が少し高過ぎるのだ、こういうふうな主張で、そういう配給辞退ということからそれを価格面で調整したい、こういう考えで引下げたのであります。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 私はあなたが政策の責任者でありませんから、別にあなたをどうこうという意味で質問しているわけではありませんが、先ほどのあなたの御答弁では、日本の麦の生産者が、麦の値段生産の意欲を刺激するだけのものに値しないというので、だんだんよその作物に転換しておる。その際にさらにまた麦の値段がまだ高過ぎるからといつて、対米価比率を下げるということは、一体どういうわけなのですか。そうすると、日本の麦の生産はもう減退してもこれはしかたがないのだ、日本の麦の生産者のつくる麦はもう減つてもかまわぬ。しかし外国小麦でこれをまかなうというのが、この小麦協定に入つた精神な院のですか。
  59. 細田茂三郎

    細田説明員 農林省の事務当局として麦が減つていいという結論は絶対にありません。これはどうしても増産をするという方向に持つて行かなければならぬということであります。従いまして今後の問題としては、これは私が申し上げるのは不適当かもしれませんけれども、今度の統制撤廃の問題に関連しましても、麦価についてはやはり二重価格制というものを主張せざるを得ないということだと思います。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 大体政策的には保護政策をとらなければいかぬというあなたの見解も私も同じなのですが、それが実際行われるかどうかという問題で、そこで日本の現在の小麦生産者価格は、トン当りにして何ドルになるわけですか。私の方の計算では八十四ドルくらいになりますが、そう見てよいのですか。ブツシエルだの、石だの、トンだの、いろいろ出て来ますから。
  61. 細田茂三郎

    細田説明員 大体これはいつの価格を押えるかですが、現状で行きますれば大体八十三ドル幾らというような数字になるのではないかと思います。
  62. 林百郎

    ○林(百)委員 協定価格の幅は最低最高どのくらいになりますか、比例するためにトン当りで…。
  63. 細田茂三郎

    細田説明員 トン当りで参りますと、一ドル八十セントで参りますと、大体CIFで八十二ドルです。それから最低価格の——これは年によつて違いますが、一ドル五十セントをとれば七十一ドルです。
  64. 林百郎

    ○林(百)委員 七十一ドルから八十二ドルですか。
  65. 細田茂三郎

    細田説明員 最低価格を一ドル五十セントの場合をとれば、CIFで七十一ドルです。
  66. 林百郎

    ○林(百)委員 現実に本年度はこのうちの幾らの値段で入つて来ますか。これに加盟すると、どういう値段で入つて来ますか。
  67. 細田茂三郎

    細田説明員 現在は最高価格で全部入ります。
  68. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方の計算ですと最高八十四ドルになつていますが、これは違いましようか。
  69. 細田茂三郎

    細田説明員 これはけさほど申し上げたのですけれども、一ドル八十セントというのは、向うの倉庫渡しの価格であります。それで倉庫がいろいろなところにありますから、チヤージが一件一件全部違つて来るわけです。
  70. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなたの言う一ドル八十セントはFOBになるわけですか。向うの倉庫渡しですか。
  71. 細田茂三郎

    細田説明員 向うの倉庫渡しです。
  72. 林百郎

    ○林(百)委員 こちらへ入つて来て、こちらでは幾らになるのですか、運賃とかいろいろ込めて……。
  73. 細田茂三郎

    細田説明員 それが先ほど申し上げた八十二ドルです。大体の平均です。     —————————————
  74. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいま労働大臣がお見えになりましたから、国際労働機関憲章の受諾について承諾を求めるの件について並木君の質疑を許しますが、労働大臣は非常にお忙しいので、たつた五分というお約束でございますから、そのつもりでどうぞ……。
  75. 並木芳雄

    ○並木委員 ばかにもつたいをつけますけれども、労働大臣としても国際労働機関加入は熱望しておるところだと思う。ですからこちらから呼び出すのはおかしいので、大臣の方から来て十分御審議を願つて、至急加盟ができるようにというのがあたりまえだと思うのですけれども、その点はなはだ残念でございます。  そこで私はただいま労働憲章が目標としておるところの理想というものがなかなかむづかしいことはわかりますけれども、この理想に向つて邁進して行かなければいけない’そういう見地から、労働大臣として完全雇用に対する構想をどういうふうに持つておられるか。これは反面から見れば、失業対策いかんということになりますが、労働憲章の趣旨に沿つて完全雇用を実現する必要があるのでありますけれども、保利労働大臣の構想をお聞きしたいと思います。
  76. 保利茂

    ○保利国務大臣 完全雇用というのは、用語につきましても、学者間には相当の意見があるようであります。一人の失業者がないという状態をさして完全雇用と言つている場合が、私の承知しているところではございません。ともあれ失業問題の根本的、基本的なねらいは、一人でも失業者を少くするということ、これがねらいでなければならぬわけであります。そこでわが国の実際の事情からいたしまして、どういう方法によつてこの失業問題に対処して行こうとするのか。これは総理大臣あるいは大蔵大臣の演説等においても、しばしば申し述べておりまするように、結局今日の日本の深刻な失業問題というものは、日本の産業状態と、過剰な人口のアンバランスから生じておるわけでございますから、従つてその一人でも多くの労働力を吸收し得るように産業力を培養して行くということ、これが根本でなければならぬことは申すまでもない。その点において御異論はないと思います。従いまして政府の一番大きな根本の方針といたしましては、産業規模の発展、充実による雇用量の増大を期して参る。しこうしてその間に処しての臨時応急の失業対策を講じて参る、こういう以外にはなかろうと私は思つております、ともかくも、理想といたしましては、ILO憲章においても申しておりますように、諸国が完全雇用の理想を目ざし、労務状況の改善を目ざして努力して行くということは、私どもつたくその通りだと思います。とういうふうに髪えております。
  77. 並木芳雄

    ○並木委員 時間がありませんのでそれに対する問答ができないのが残念です。  次にこの憲章の目標とする、最低賃金制というものでございますけれども、これに対して保利労働大臣はどういうふうな構想をもつて、この憲章の趣旨に沿つて行きたいと思つておられるか、最低賃金制に対する構想についてであります。
  78. 保利茂

    ○保利国務大臣 最低賃金制の問題については、並木さんの同僚川崎さんからも、国会において熱心な御意見を伺つておるわけであります。私どもといたしましても、今まで日本に最低賃金制をとつておらない、従いまして最低賃金制を実施するについては、相当愼重な準備がいるのであるということから、昨年の十一月に賃金審議会を設置いたしまして、毎月熱心に審議会をお開きいただいて、ただいま各国における賃金制度の実情及びわが国における各種の賃金態様の実態について調査を進められておるわけでありまして、どういうふうな構想で最低賃金制を実施するか、アメリカ流の行き方になるか、イギリス流の行き方になるか、まだ審議会においても結論が出ておりませんけれども調査審議は相当進捗いたしておりますことを申し上げておきます。
  79. 並木芳雄

    ○並木委員 賃金に関連して、今度の主食の統制撤廃などというものは、非常な影響をもたらすものでありますが、所管大臣として、労働者のためにサービスをする大臣でありますから、主食の統制撤廃に対するコメントくらいは出て来るべきはずであると思つて期待しておつたのであります。ところがノー・コメントです。保利大臣としては、主食の統制撤廃などが賃金に及ぼす影響について、当然考慮せられておつたと思うのでありますけれども、御所見はいかがですか。
  80. 保利茂

    ○保利国務大臣 おしやべりをしないからどうかと言われることについては、これは御批判にまつほかないと思いますが、主食統制撤廃を閣議で決定いたしますにつきましては、まず直接関連を持つて参りますのは労務加配の問題でございます。これは撤廃後における価格のいかんによりましては、相当大きい影響を持ちますから、この撤廃によつて生計費に著しい高騰を来すような価格政策をもしとるならば、私は賛同いたしかねる。もし生計費に大した影響のない価格政策を強力に一方においてとるならば、かような不自然な状態から脱却することには私もむろん賛成で、そういう意味において閣議の方針は決定せられておるわけであります。むろん統制撤廃後における価格が生計費に著しい影響を及ぼさざるように万全の措置をとらなければならぬが、もしそれができない、考え方としてはそれであつても、実際問題としてたいへんな価格の変動を生じたような場合については、労務加配については当然別途の考慮を加えて行かなければならぬという基本的な考えを持つております。
  81. 並木芳雄

    ○並木委員 それではもう一点だけでとどめておきます。国際労働憲章の目途するところの重要項目の中に、もう一つ労使協調ということがございます。この労使協調は、保利大臣はかつてはわが民主党に籍を置かれて、労使協調を主張した人の一人でありますから、もとより反対される理由はないと思います。そこでどういうふうに今後労使協調というものを具体化して行くか、この構想はおありであろうと思います。今度の炭労ストのごときは、やはり労使協調という点で欠けるところがあるのではないか。政府のこういうことに対する指導が、必ずしも妥当でなかつたということも、一つの原因をなしておるのではないかと思うのですけれども、労使協調ということをいかように実現して行くか、最後にこの構想をお伺いして私の質問を終ります。
  82. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいま行われております炭労争議が、労使協調の精神からどうであるか、これは私は必ずしも、基本的に労使協調の精神を欠いてかようなストライキが起きておるとは思いません。と申しますのは労使双方とも、みずからの自主的な判断と努力によつて解決したいという希望は、相当強いようでございます。その目ざすところはやはりそういう上に立つてのことであるわけであります。労働組合のあり方等につきまして政府が一々とやかく干渉、介入することは、私どもは極力避けなければならない。従つて労使の関係というものは、日本の実際の産業の実情、労働事情の上に立ち、労使双方がその深い認識の上に立つて初めてできるわけでございます。さような認識を深め、そして労使安定のあるべき方向を強く認識していただき、その上に立つて労働運動を展開せられていただくようにすることについては、これまでとてそういう方針で来ておりますが、今後ともそういう方針で進んで参りたい。こういうふうに考えております。
  83. 守島伍郎

    ○守島委員長 速記をとめて     〔速記中止〕
  84. 守島伍郎

    ○守島委員長 速記を始めて。     —————————————
  85. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に公衆衛生国際事務局に関する議定書を受諾することについて承諾を求めるの件を議題といたします。  質疑を許します。林百郎君。
  86. 林百郎

    ○林(百)委員 この議定書を批准しますと、結局どういうことをやるのですか。ローマ協定が廃止になつて、それからそれへ入るとどういうことになるのですか。
  87. 島津久大

    島津政府委員 わが国として権利義務の引継ぎを正式に認めるというにとになるわけです。
  88. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう形式的なことはわかりますが、実際は公衆衛生のことについてどういうことをやるわけなのですか。国際的にこういう義務があつて、それで国内的には、具体的に公衆衛生についてはこういうことをやるのだということを聞かしてもらいたい。
  89. 島津久大

    島津政府委員 これはただいま御説明申し上げました世界保健機関、これにわが国加入しておりますので、これに従いまして行動することになつております。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 それへ入りますと、国内的にはどういうことをするのかということを聞いているわけです。国際法上の手続のことはわかりました。
  91. 須山達夫

    ○須山説明員 この議定書に入りまして国内的な措置といたしましては、何もいらないわけでございます。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 議定書に加盟することを受諾するについての手続はそうですが、国内的の衛生措置として何かするのですか、しないのですかと言うのです。
  93. 須山達夫

    ○須山説明員 世界保健機関憲章に入りましたことによつて国内との関係はもうすつかりそちらで行くわけでございまして、この議定書に入ることは、国内的な関係とは何ら関係はございません。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 すると国内的に何も影響がないのですか。公衆衛生について何も得もないし、損もないのですか。ただ機関に入るだけですか。
  95. 並木芳雄

    ○並木委員 関連して政府委員が答弁に困つておるようですから、私からあらためてお伺いしますが、この前保健憲章の承認を與えてから今日までどういう実績を示しているか、政府はあの趣旨に沿つて、どんなことをしたか、目ぼしいことがあるかどうか、それを報告していただきたい。
  96. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 厚生省から御説明申し上げます。世界保健機関にこの五月加盟したわけでございますが、この主要目的は国際的に流行する伝染病を防止するということが一つの大きな主眼になつております。この点に関しましては、旧来の、ここで問題になつておりますパリの公衆衛生国際事務局が、在来はペスト、コレラ、黄熱、この三つを主といたしまして、各国間に検疫情報の交換その他をいたしておりましたけれども、その業務がWHOに引継がれまして、シンガポールに流行病情報局というものがございまして、これに密に連絡いたして各海港における伝染病の発生状況、各海港に到達します船舶、航空機の検疫、伝染病の発生状況、その他国内における伝染病の発生状況を報告しております。これが一つの業務でありまして、その他WHO自体といたしまして、大きな研究機関を持つておりまして、各国の專門家が集まつております。マラリアでありますとか、結核でありますとか、各国の專門家を網羅いたしました委員会がございまして、日本も現在関與いたしております。そのうちのトラコーマの委員会日本からも出ております。最近は寄生虫病学の委員会委員を推薦してくれという依頼がありまして、これをいたした次第であります。そのほか技術援助という仕事をWHOがいたしておりまして、それは主として未開発国に対しまして、資材を提供しましたり、技術專門家を派遣しましたり、あるいはそういう国から奨学金によりまして視察、留学、研究せしめたり、このような業務が開始されております。大体以上であります。
  97. 林百郎

    ○林(百)委員 すると、そういう情報の交換、技術の交換、そういうものですか。そういうことをやるわけですか。
  98. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 情報の交換が一つの大きな仕事になつております。
  99. 竹尾弌

    竹尾委員 今の御説明によりますと、伝染病の発生に対して処置をするというようなことでありましたが、これは幼稚なお尋ねのようですけれども、伝染病と流行病、これは伝染病だけでございますか。あるいはいわゆる流行病も入るわけでし上うか。
  100. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 伝染病その他すべて疾病を問題といたしますけれども、さしあたりまして、在来の国際衛生條約に基きまして交換しております情報は、流行病を主とした伝染病の情報であります。
  101. 竹尾弌

    竹尾委員 そうしますと、当然今世界的に問題になつておる結核ももちろん入るわけですね。
  102. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 結核も入ります。
  103. 竹尾弌

    竹尾委員 そこでTBの問題ですが、これについては最近患者が非常にふえて参りまして、これは何らか日本も処置しなければならぬと思いますが、この保健機関に入つて以後、TBに対する何か、今もいろいろ問題になつておりますけれども、特別に厚生当局におきましてこれと思われるようなことをされておるかどうか、保健機関に関連してお伺いいたします。
  104. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 WHOはコペンハーゲンに結核研究所を持つておりまして、そこでは主として学術的な結核の研究をいたしております。また技術援助の面におきましては、BCG接種を熱心に取上げまして、これは主として北欧でつくられました液状のBCGワクチンを飛行機でインドその他へ、冷凍しまして運びまして、これを大量に使用いたしております。これに関連しましてわが国との関係は、去る九月末にラングーンでBCG專門家委員会の会議が開催されまして、わが国からも一名代表が出席いたしました。そこで日本でこしらえております真空冷凍によります乾燥ワクチン、これの製造法に非常に着目されまして、いろいろその後輸出可能性等についての問合せが到着いたしております。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 公衆衛生いわゆるコレラ、ペスト、黄熱とありますが、これはコレラ、ペスト、黄熱その他どんなものがあるのですか。今竹尾委員から御質問があつたように、結核性の病気、それから最近では性病なんかも非常に多いようですが、これもやはり日本の植民地的な状況の一特色だと思いますが、大分国際的な色彩を持つて来て、こういう病気も非常に多い。これはちやんと報告してありますかな。どういう病気かということをお聞きしまして、さらにそれに対して日本政府が特に事務局へ報告したことがあるなら、知らしてもらいたい。それから日本政府として非常に参考になつた報告がどこかからあつて、これを日本の国として取入れた、そういうのがありましたら、聞かしてもらいたい。
  106. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 先ほど私のお答え申し上げましたことを、一部訂正させていただきたいと存じますが、結核、性病その他あらゆる疾病に関して、お互いに情報を交換いたしておるわけでありますが、差迫りまして流行病防止という見地から——その見地からは結核は入つておりませんが、流行病の中には、コレラ、ペスト、黄熱、腸チフス、発診チフス、そういうものが入つておりますが、その他の伝染病についても情報の交換をし、ことに検疫伝染病が発生しました場合は、電報で情報を出している次第でありますが、一般的な、それほど急を要しない情報交換あるいは研究交換をいたします疾病といたしましては、あらゆる疾病が入りまして、寄生虫病もありますれば、性病、トラコーマ、各種の皮膚病、いろいろの疾病が取上げられております。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、今竹尾委員が言われた結核とか性病とか、そういうものについての情報交換はないのですか。大体植民地の特色としては、性病が非常に蔓延するのが植民地的な特色だといわれておりますが、日本の国もだんだんそういう傾向を帯びて来ることは、非常に憂慮すべきことだと思います。そういうことについて、何か日本の方から報告をしたとか、あるいは向うの方からそういう情報を受げるなりして、実質上の効果があつたのですか、なかつたのですか。
  108. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 性病についてお答えいたします。性病につきましては、日本においては性病予防法に基きまして、民主的な建前のもとに性病予防対策をいたしておりますけれども、最近軍人がある港とか町とかに多数入りましたあと、その軍人の間に性病の罹患者が急にふえるような傾向からいたしまして、軍関係におきましては、日本の性病対策はまだなまぬるい、もう少ししつかりやつてくれというような要望がございまして、これに対しては、その関係地区のブロツク会議等をいたしまして、現在軍においても相当満足をしておられるような対策が施行せられております。これに関連いたしまして、この九月にマニラで世界保健機関の地域委員会というものがございまして、わが国からも三名の代表が出席いたしました際、米国から非常に好意的な申出がありまして、性病に関して、世界保健機関が日本をもつと援助すべきであるという申出がありましたが、わが国はこれをお断りいたしました。
  109. 竹尾弌

    竹尾委員 私はあまり性病には関係がありませんが、今林委員からのお話で、植民地的特色として性病が多くなるというお話ですが、それは日本に進駐軍の駐屯や何かいろいろ関係がございましようけれども、具体的にお尋ねいたしたいのは、いわゆる町の女と申しましようか、ああいうものに対する処置、そういう点について世界保健機関あたりとやはり情報を交換しているのでしようか。そうしたパンパンというか、そういうものに対する取締り等について、私全然知識がございませんから、ひとつ教えていただきたいと思います。
  110. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 現在は、世界保健機関に対しまして、日本における性病対策の対象となつたものの数であるとかその方法について、具体的な報告をいたしておりません。ただいかなる法律があり、いかなる保健衛生機関があるかという、一般的な報告を提出いたしております。
  111. 竹尾弌

    竹尾委員 そういう報告はされなくとも、そういう点についての厚生省の調査というものは、ずつとしておられるのでしようか。
  112. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 私の所管でございませんので、あるいは当らないかとも存じますが、調査はいたしております。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 私たちがこれをお聞きしているのは、実はじようだんにお聞きしているのじやなくて、ある国が植民地になつたときの特色としては、性病が非常に多くなるということ、それから生活が苦しくなるから、法律問題がいろいろと起きて来て、弁護士とか裁判所とかこういうものが繁昌する、これが植民地になつた国の大きな特色だといわれております。ところが最近の日本の趨勢を見ますと、町には御存じの通り、かつてわれわれが例を見ないようなパンパンが氾濫しております。それを通じて青少年が非常に性病にかかつて、道義的にも頽廃するということは、これは憂慮すべき事態だと思います。そういうことについては、やはり進駐軍の人たちにも、日本に来たときの行動を十分愼んでもらわなければならないし、またそれを誘発するような夜の女が町に氾濫しておるということも注意しなければいかぬ。そういう点で、率直に日本の国の性病の罹病率の高まつているこことか、それに対しての対策とか、あるいは日本の国の意見などを、こういう国際機関に報告すべきだと私は思うわけです。先ほど竹尾委員の御質問に対して、調査はなさつているということですが、そういう性病なんかに対する罹病率はどうなつておるのですか。
  114. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 私ここにその数字を持つておりませんので、申し上げかねます。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 それはやはり非常にふえているわけですか。それで国家としても愼重に対策を講じなければならないような事態になつておると私は思うのですが、どうでしよう。
  116. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 ふえておるというふうに承つておりますが、專門でございませんので、明確な回答はできませんことを残念に思います。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう情勢については、国際事務局へ報告はしているのですか、その実際の日本の国のそういう罹病率が高まつていることやいろいろなことを……。それから先ほどマニラの地域委員会で、アメリカの方の好意があつたが、それを日本が拒絶したということですが、その拒絶した理由は、どういういきさつで拒絶したか、それも聞いておきたいと思います。
  118. 齋藤勇一

    ○齋藤説明員 性病に関しての報告は義務づけられておりません。先ほど申しました検疫伝染病、流行病に関しましては、條約によつて義務づけられておりますけれども、性病に関しては他の疾病と同じく、一般情報として概括的な報告で、極端にいいますと年報程度であります。それからマニラにおきまして、性病に関してWHOが援助したいというような意向が示されましたときに、こちらがお断りしました理由は、こちらとしては性病に関しては一応手が打てている、それよりもほかの面で援助してもらいたいというので、その際当局が特に要望いたしましたのは、環境衛生方面でございます。下水、上水その他の環境衛生の面について援助を申請しておつたけれども、それが削られまして、こちらで要求しない性病を要求せられたので、断つたような次第であります。
  119. 守島伍郎

    ○守島委員長 ほかに御質疑はございませんか。——別に御質疑がないようでございますから、これで本件に関する質疑は終了いたしました。  それでは本日は散会いたします。次会は明十日午前十時より開会いたします。     午後三時一分散会