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参考人(千葉千代世君) 私も又前発言者と同様に、現在の
婦人少年局は絶対に必要であるし、なお拡充して行かなければならない、更に発展いたしまして、独立した国家機関さえも持ちたいと念願するものでございます。私はこの念願を更に明らかにするために、私
ども労働組合の婦人部がどのように
婦人少年局の労働課と接触し、或いは年少労働課とお話合いを持
つて来たか、具体的についてお話したいと思います。日本の民主化のバロメーターというものは、その国の婦人の立上りにあると、これは異論のないところでございます。そこでこの本当の日本を民主化するために、私
どもはいろいろの分野において最善の努力を払
つて来たのでございます。それはやはり敗戦後の新らしい歴史を我々もとも
どもに造
つて行くと、こういう責任においてでございます。そういう観点から私
ども労働組合におきましては、先ず婦人部が経済の独立がなければ婦人の解放はあり得ない、いろいろの封建の鉄鎖は我々自体の手から断ち切れと、こういう二つのスローガンを掲げまして、各労働組合は闘
つて参つたのでございます。その結果、私
どもの組合の例をとりますというと、今までの運動なり、今までの女というものの能力、こういう点について非常に低い評価をされてお
つた、これを同一労働、同一賃金の原則に従いまして、全国四十六都道府県のうちですでに四十一県が男女差の撤廃を認めてございます。そういう場合になかなか県の
財政、或いは周囲の封建的の事情によ
つてまだとり得ないという宮崎とか、滋賀とか、そういう県の実情を中央の
婦人少年局から地方の職員室に連絡をと
つて、そうしていろいろのお話の結果これがとれた、こういう実例があるのでございます。なお労働条件の改善につきましては、あの労働基準法の完全実施、こういう点については婦人労働課は血眼にな
つて闘
つていらつしやいました。例を挙げますならば、大変恐縮ですが、谷野婦人労働課長さんなどは日曜日の日にわざわざ各地方の労働組合の講座においでに
なつたり、或いは地方の職員室におきましては、先般も私は滋賀県に参りましたが、あの滋賀県の延暦寺という所は女人禁制でありまして、女は穢れたものと、こういう観点からあの延暦寺に上げなか
つた。併し時代の波はあすこにも押寄せまして、延暦寺の講堂には滋賀県の女のかたがどつかり坐
つて、そうして新らしい時代の波を入れている。そこへ滋賀県の武部静枝さんという職員室のかたが日曜日を割いて一緒に講座にお出でにな
つて、とも
どもによい日本を造ろうというために努力を払
つていらつしやる、こういう例は鹿児島県においても、栃木県においても、埼玉県においてもたくさんの実を結ばせつつあります。ですから今回の
婦人少年局廃止というような噂が拡がりますというと、各県の労働組合の婦人部のかたがたは中央に向
つて、埼玉県の二万名の署名を筆頭に、電報なり或いは手紙なり続々と
是非とも存置して欲しい、何故にこのような弱い婦人層にばかり整理の鉈をふる
つて来るのであろうか、こういう疑問をたくさん持
つているのでございます。なおこの問題につきまして私
どもの立場から申しますならば、生理休暇或いは産前産後の休養、こういう点の
実現を図ることが一般の婦人にどのような影響を及ぼすか、こういう点については婦人課との提携も誠に有意義なものであ
つたと思うのでございます。で私は中央の婦人問題の
審議会の委員といたしまして、単に労働だけではなくて、多くの農村婦人の立場、こういう点を地方に廻りましたときによく見て参りました。そういうときに、現在の日教組がこの問題について
要求をしてかち取ることは、結局農村の婦人の低い健康を守る観念、こういう乏しい中にある農村婦人を立上らせるきつかけを作る、こういうことを
考えております。例えて申しますならば、農村に行きますというと、もう女は子供を生むもの、こういう観点から赤ちやんを生んで一週間くらいで、労働力の足りない農家の
一つの大きな労働力としまして、稲束をかついでいる、或いは又生理中でも真夏の暑い日には殆んど一日も休まずに田の草を取
つている、これは私
どもの教える子供の母親である、こういう点から
考えまするときに、労働基準法の実施されている労働組合は幾らかいいのでございますが、一般の農村婦人にはこれは適用されない、この労働基準法を適用させる御主人そのものがいた
つてこれに対してうとい、今日こういう点で日本の農村或いは一般の男性の頭の切替えを百八十度に転回させない限りは、あの農村の婦人も救われないし、労働条件も改善されない、こういう点でいろいろの例があるのでございますが、十分という時間で大変残念でございます。
そうしてこの私
どもの労働組合のいろいろの働きが官公労組、例えば
国鉄さん、全逓さん、私
ども、こういうものと民間の労組というもの、こういうものの一種の共通な点を取上げる、そういう意味で民主的な労働組合の結集体でございます労働組合総評議会の婦人対策専門
委員会においては、こういう点を特に強調しているのでございます。そういう際にも中央の
労働省の
婦人少年局の労働課あたりといろいろの点について
資料を提供し合い、我々の要望も出すし、又
婦人少年局としては、私
どものいろいろ挙げた成果を更に一般の婦人に普及しようと、こういうふうに非常に緊密な連携を持
つて参りました。それから最も私
どもの
考えておる中で、一般の婦人もそうでございますが、我々婦人団体或いはあらゆる会、組合においても本当のデモクラシーが確立され切れない現状におきまして、先ずこの組合のデモクラシーをかち取るために私
どもはいろいろの御助力を頂いておるのでございます。例えば役員の中に半数の婦人を出せとか、或いは決議機関に女が入らなければ駄目だ、こういう具体的な提携もあ
つたのでございます。そうして又年少者の労働問題に対しましては、
審議会を中心に、街頭に花を売る子供たち、或いは靴を磨く子供たち、こういう年少の労働者を守
つて、本当に健全な社会人として発足させるための努力を惜しまなか
つたのでございます。これに関連いたしまして去る五月に児童憲章というものができました。私
どもの念願しておりましたこの児童憲章の
内容、これを本当に政治の上に反映させるために
政府が十二分の努力を払
つていられない、それがために大変意地悪い新聞の批評欄には、あの児童憲章は資本主義のすすり泣き、こういう皮肉があ
つたのでございます。私
どもはこの児童憲章を十二分に実施させるための努力を払
つて参りましたけれ
ども、今度の国家
予算の中には、給食費は全部削られるし、或いは教育
財政の中でいろいろの子供を守る点が削られております。こういうふうに、大変言い方が失礼でありますならばお許し願いたいと思うのですが、国家の
予算の編成の途上においては、最も弱いといわれる省が槍玉に上
つて続々と首を切られる、こういう例がないではないということを現実に見ているのでございます。先ほど
労働大臣は新聞はどこから出たか知らないと言うけれ
ども、惜しいことに読むのは国民全体が新聞を読むのでございます。そうしてあれを大体信用する傾向がある、そうしますというと、あの今日の毎日新聞にありました
労働省の地方事務官三百八十九名というこの
数字は、私はどこから出たかは知らないけれ
ども、併しながら火のない所に煙が立つはずはないと思うのです。こういう点から
考えて行きますと、地方の職員室にいらつしやいますあの事務官のかたが悲痛な叫びを挙げまして、私
ども地方の職場はどうなるのでしよう、こういう不安の中に毎日の仕事をしていらつしやるということについては、同じ働く私
どもの立場としてはもう見逃しのできないことであるのでございます。更に
最後に私はこの
婦人少年局廃止という評判が拡まり拡ま
つて行
つたことが一般に及ぼす影響ということを
考えるのでございます。これは今まで観念的には、憲法の上では法文上はつきりと男女の同権がございますが、これを実際の場合に当嵌めました場合にはなかなかそのようには行
つていない、こういうときに
婦人少年局は廃止になるのだから、これはわざわざ女のためのいろいろな係を作
つたり、或いは女のための特別の便宜を図る必要はない、こういう観念で一網打尽にやられる傾向があります。徳島におきましては、徳島の知事さんが選挙公約として婦人課設置を言
つた。それを実際に現わして徳島では婦人課が今度できました。ところが中央の
婦人少年局はなくなるでは、今更婦人課を作
つてどうするのだという気持が男の中にも先ずありました。そうすると大体
人員を縮小するという気持が、中央の命令や或いは命令かのように宣伝されるあの官僚機構の中にありまして、余分なものを今更作る必要はないではないか、こういう反撃を食
つて孤軍奮闘しておる県もございます。こういうふうに
考えて行きました場合に、私
どもは
婦人少年局の拡充を叫ぶと共に、この及ぼす影響を十二分に
考えまして、何としても現在の国状の中において、先ほど大臣は国力にふさわしいとおつしやいました、私
どもは労働法規の改悪に際しまして、中労委のかた、いろいろのかたにお話合いしますと、
最後には日本の国状に即してという言葉に逃げられてしまうのでございます。正当な要望の真実を把握することなく、本当の愛情のある政治を行う意欲に欠けたかたは、往々にして国状に即さないからということの逃げ口上によ
つて私
ども婦人の権利かだんだん縮小されるという傾向にあることは身を以て体験しているのでございます。
そういう観点から大変強い言葉で申上げましたが、要は少くとも中央において
婦人少年局が厳然として現状のまま維持され、そうして少くとも一歩進んだ形において増員の傾向が得られるならば、これは日本の人口の半数を占める多くの婦人に対する大きな希望であり、新らしい日本の発展の上に共に新らしい歴史を作
つて国力を充実して行くという
一つの希望ではなかろうかと思うのでございます。大変失礼いたしました。