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説明員(
野木新一君) 先ず第四章の御
説明をいたします。本章は
更生債権及び
更生担保権の意義や、
更生債権者、
更生担保権者及び
株主の
権利及びその
届出、
更生債権及び
更生担保権の調査及び確定、
代理委員の選任、
相殺権等について
規定いたしたものであります。
百二条は、
更生債権の意義を定めたものでありまして、即ち
更生債権は、
会社に対して
更生手続開始前の
原因に基いて生じた
財産上の
請求権を
更生債権とするものであります。これは
和議債権等の例に倣つたものであります。併しこれは原則的の
規定でありまして、これ以外にも、あとの条文にところどころに出て来ますように、
更生手続開始後に生じたものであ
つても、個々の
規定で
更生債権といたしておるものもあります。次に第百三条及び百四条でございますが、これらの
規定は、
更生手続開始当時、
当事者双方がまだ共に履行を完了していない
双務契約について、
解除権とその解除の
効果を定めたのであります。これは同
趣旨の
規定が
破産法にございますので、言葉の
性質も同じでありますので、それに準じて定めたものであります。従いましてここで定めておりますのは、
双務契約であります。ところが今問題になります第百三条、四項の
労働協約、これが果して何も
規定を置かないとどういうことになるだろうかという点がやや疑問になりますので、第四項におきまして、百三条一項乃至三項の
規定は
労働協約には適用ないものとするということにいたしたわけであります。これは
労働協約は果して
双務契約に属するかどうかという点につきましては、いろいろ争いもあるようでありますが、
労働協約の
性質上、普通の
取引関係の契約と同じに見るのが適当でありますので、これは百三条一乃至三項の
規定の適用はないものといたしたわけであります。
次に第百五条でありますが、
本条第一項及び二項の
規定は
破産法第五十七条と、
本条第三項の
規定は
破産法五十八条とそれぞれ同
趣旨の
規定であります。以下この章の百六条乃至百十一条等はいずれも
破産法の
規定に準じて
作つた規定でありまして、言葉の
性質上
破産法の場合と同様に取扱
つてよいものと存ぜられますので、その
規定の内容を借りて来ておるわけであります。或いは準用という言葉を用いれば、或いはこの辺は
破産法のそれぞれの
規定を準用するということで間に合うものが多いかとも存ぜられる次第であります。即ち百六条の
規定は
破産法の第六十三条、第百七条の
規定は
破産法の第六十六条、第百八条の
規定は
破産法の第二十四条、第百九条の
規定は
破産法第二十五条、第百十条の
規定は
破産法第二十六条、第百十一条の
規定は
破産法第二十七条といずれも同
趣旨の
規定であります。
次に第百十二条でございますが、本
条は更生債権及び
更生担保権の
弁済の
規定等について定めたものでありまして、同
趣旨の
規定が
破産法にございまして、
破産法第十六条がこれに相当するものであります。即ち「
破産債権ハ
破産手続ニ依ルニ非サレハ之ヲ
行フコトヲ得ス」ということに
破産法にな
つておりますので、それと同様にして、百十二条を設けまして「
更生債権については、
更生手続によらなければ、
弁済をし、
弁済を受け、その他これを消滅させる行為をすることができない。」ということにいたしたわけであります。即ちこの
規定を置かなければ、折角
更正手続を開始いたしましても、我勝ちに
弁済を受けたり、或いは
弁済をしてしまつたりいたしまして、
手続の実効が挙らないから、こういう
規定を置いたわけであります。百十二条の但書は、これは税金についての特則でありまして、即ち
国税徴収法、又は
国税徴収の例によ
つて徴収することができる
請求権につきましては、この一定の場合に、第三
債務者が
徴収の権限を有する者に任意に給付する場合とか、
管財人或いは
管財人がないときは
会社が裁判所の許可を受けて税金を支払う、そういう場合にはまあ
更生手続によらなくてもいいということにいたしまして、税金につきましては特殊の取扱をいたしたわけであります。総じてこの
更生手続におきましては税金につきまして普通の私法上の
債権と異なりまして、一応これを
更生手続に組み入れてはおりますが、必要な個所でいろいろの
除外規定を設けまして、
税務行政と個々の
更生手続との調整を図
つておりまして、この点は立案の当時
大蔵当局との
いろいろ折衝に苦心をいたしたところでございます。
次に第百十三条でございますが、第一項は、
更生債権者が
関係人集会において
議決権を行使する
更生手続に参加する
権利を有することを
規定したものであります。即ち
更生債権者はその有する
更生債権をも
つて更生手続に参加することができる。これに参加することができるということは、一番重要な点は後に述べます
関係人集会におきまして
更生計画案を議決する。この
議決権の存否及びその範囲という点に一番その
重要性を現わして来るわけであります。第二項は、各
更生債権者の有すべき
議決権の基準を定めたものであります。
更生手続が開始されましても、
更生債権は
破産債権のようにすべてこれを客観的にと申しましようか、
債権そのものを
金銭債権に直してしまうというようなことをいたしませんで、単に
議決権を算定する、
議決権がどの程度の
議決権を許すかというそういう
議決権を算定する必要の
限度において、百十四条以下の
規定によ
つて、その
金額を算定する、そういう
立場をと
つております。この点が
破産の場合と非常に違う点でありまして、或いは後に
一つの立案の過程におきまして論点に
なつたところでありまして、この
立場につきましては、或いは若干の議論があるかも知れないと存ずる次第であります、即ち
破産法におきましては、第三章
破産債権のところにおきまして、例えばいろいろの
債権の種類とありますが、そのいろいろの
債権につきまして、これを全部金銭化して
しまつてあるわけでありますが、この
更生手続におきましては、単に
議決権の
関係においてだけ金銭化する、
債権の
実体そのものは元のままに存する、そういうような
考え方をと
つておるわけであります。これは
破産が結局総
財産を公平に各
債権者に分配して、それで
手続を終
つてしまうというものでありまするから、或る時点においてその
債権を換算して
しまつてもいいわけでありますが、この
更生手続におきましては、将来
会社が生きて行くという
立場にありますので、
債権自体をそのまま変えてしまうまでのこともなかろう、単に
債権者集会等において
議決権を行使する、どれだけの
議決権を有するか、そういう範囲をきめる
限度で
金額に換算して行けばいいではないか、そういう
立場においてと
つておるわけでありまして、これは
更生上の
一つの大きなポイントにな
つておるわけであります。
次に第百十四条以下は、この百十四条から百十八条までにつきましては、
更生債権者の
更生債権の
議決権の範囲をきめるために、その
金額を算定する
方法を定めたものであります。即ち百十四条は、
期限附債権が
無利息であ
つて、その
期限が
更生手続開始後に到来すべき場合におきましては、
更生手続開始のときから
期限に至るまでの
債権に対する
法定利息を
債権額から控除して、そういう控除した額を以て
更生債権者は
更生手続に参加し、
議決権を行使することができる、そういう建前にいたしておるわけであります。以下の
考え方も大体同じであります。
百十五条は、
金額及び
存続期間が確定している
定期金債権につきまして、
議決権の額の
算定方法を
規定したものでありまして、
破産法の十九条の
規定の
方法と同じようなものであります。百十六条は、
期限が不確定な
無利息債権及び
金額又は
存続期間が不確定な
定期金債権について
議決権の額の
算定方法を
規定したもので、その
方法は
破産法第二十条に
規定する
方法と同
趣旨のものであります。百十七条は、非
金銭債権等につきまして、
議決権の額の
算定方法を
規定したものでありまして、
破産法二十二条の
規定の
方法と同様のものであります。百十八条は、
条件附債権及び将来の
請求権について
議決権の額の
算定方法を
規定したものであります。
条件附債権は無条件の
債権と同等に取扱うことは適当でありませんので、
評価額によることといたしたわけであります。将来の
請求権につきましては、
破産法二十三条第二項に
規定する
方法と同様の
方法にな
つております。いずれにせよ、この百十三条から百十八条までにつきましては、その算定の
方法は
破産法と殆んど同
趣旨にな
つておりますが、根本的の
考え方といたしましては、先ほど申上げましたように、
破産法は
債権そのものを現実に変えてしまうという
立場をと
つておるのに対しまして、この
更生手続のほうにおきましては、単に
債権を
議決権の
関係において、即ち
議決権を算定するという角度から、こういう
金額に直して考えて行くという
立場をと
つておりまして、その点が
一つの根本的に違う点であります。
次に第百十九条でございますが、
更生手続開始前に生じた
租税債権は、第百二条の
規定によりまして、一旦
更生債権となるのが原則でありますが、租税のうち
本条に掲げるようなものにつきましては、取戻権に準ずる取扱をするのが適当でありますので、これを
共益債権とすることにいたしたわけであります。即ち「
源泉徴収に係る
所得税、
通行税、酒税、
物品税、
砂糖消費税、
揮発油税及び
特別徴収義務者が
徴収して納入すべき
地方税で、
更生手続開始当時まだ
納期限の到来していないものは、
共益債権として請求することができる。」といたしたわけでありまするが、これらはほかの税と違いまして、非常に特殊な
性質を有するものでありまするので、この
限度で特別の扱いをいたしたわけであります。即ちこれも百二条の、「
会社に対し
更生手続開始前の
原因に基いて生じた
財産上の
請求権」という点から申しますれば、
更生債権に入るわけでありまするが、例えば
源泉徴収に係る
所得税というようなものは、
源泉徴収者がすでに
徴収しておるというようなものにもなりますし、非常に税のうちでも特殊であるということで、この特例を認めることにいたしたわけであります。これと同様に、「
更正手続開始前六月間の
会社の
使用人の給料並びに
更生手続開始前の
原因に基いて生じた
会社の
使用人の
預り金及び
身元保証金の
返還請求権も、また同様である。」といたしまして、これも
共益債権として請求することができることにいたしたわけであります。
共益債権と申しますのは、二百十六条にその
規定がございますが、なお二百十七条の
規定によりまして、普通の
更生債権と違いまして、
更生手続によらないで随時
弁済するという
性質のものでありまして、従
つて只今述べました百十九条にかかるものは、
共益債権として随時
弁済できるという形にな
つておりますので、非常に強力なものにな
つておるのであります。
次に百二十条でございますが、本
条は破産法第四十一条と同
趣旨の
規定でありまして、特段に
説明すべきこともございません。次に百二十一条でございますが、
本条は、第一項に掲げる
請求権を一般の他の
更生債権に遅れる
劣後順位の
更生債権とすべきことを定めたものであります。即ち
更生手続開始後の利息とか、
更生手続開始後の不履行による
損害賠償とか、以下ここに掲げてあるようなものは
更生債権といたしましても、他の
更生債権よりも不利益な地位に置く、即ち他の
更生債権を先ず
弁済その他
整理方法をきめて、なお余りがあつたならば、これらも
更生債権と考える、そういうような
関係にな
つております。このうち第五項の罰金、科料、
刑事訴訟費用、追徴金及び過料は
劣後的更生債権にな
つておりますが、これはすでに
破産法におきましても、こういう
債権は普通の
破産債権よりも遅れて、普通の
破産債権を
支払つて、あとに余りがあつたならば、こういう
債権に廻るということにな
つておりますので、この
更生手続も同様にこれを取扱つたわけでございます。次に第百二十一条で、第二項但書を設けましたのは、第一項に掲げる
請求権中に包含せられる
利子税等の
請求権は、劣後の順位に置くのが不適当だから、この但書を置いたわけであります。又第三項は、第一項第五号及び第六号の
請求権は、
非常免責債権といたしたわけであります。今ちよつと
説明が逆になりましたが、第三項は、第一項第五号の
請求権の
性質上、これは当然のことでありますが、即ちこの罰金、
科料等は刑罰でありますので、
恩赦等によ
つてならば、その減刑、免除ということは考えますが、普通の
更生手続におきまして、これが減免を考えることは、
恩赦等の
関係から見て適切でありませんので、第三項におきまして、
罰金等の
請求権については、「
更生計画において減免その他
権利に影響を及ぼす定をすることができない。」といたしたわけでございます。併しながら、これらの
請求権は先ほど申上げましたように劣後的にな
つておりますので、減免されることはないが、位置としては普通の
更生債権よりも後の順位で取扱われる、そういう
考え方にな
つておるわけであります。なおこの第五号の
罰金等の
債権及び第六号に掲げる
請求権は非
免責債権とな
つておりまして、この
更生手続における免責の
関係につきましては、あとのほうに出て来ますので、なおそのときに詳しく御
説明いたしたいと思います。
次に第百二十二
条は更生債権又は
更生担保権のうち、
国税徴収法又は
国税徴収の例によ
つて徴収することのできる
租税等の
請求権につきましては、
徴収の権限を有する者、例えば
税務署長の同意がなければ、その
権利に影響を及ぼす定をすることができないことを定めたものであります。これらの
請求権は国又は
地方公共団体等の財政の基礎をなすものでありまして、非常に
公共性が強いから、普通の私法上の
債権と異なる
取扱いをいたしたわけでありまして、先ほど申上げましたように、税につきましては
更生手続に組入れるに必要な場所において
例外規定を設けると申しましたその
一つの重要な例外でございます。
次に第百二十三条以下の若干の
規定が
更生担保権に
関係するものであります。第百二十三条は、
更生担保権の
意義等について定めを置きました。第一項は、
会社が
債務者である場合のほか、
会社以外の者が
債務者である場合、即ち
会社がいわゆる
物上保証をしておる場合も含む
趣旨であります。第二項は、
更生債権に関する
規定を準用しておるわけであります。この
更生担保権と申しましても、普通の場合は
会社に対して
更生債権があ
つて、この
更生債権を
担保しておるという場合が普通でありますが、先ほど申上げましたように、
会社に対して何ら
債権を持
つてない場合でも、
会社が
物上保証をしておる場合も特殊の場合としてこれが含まれるわけでありますが、後の場合はともかくとして、前の
更生債権があ
つて、それを
担保しておるという場合につきましては、
更生債権と一緒に考えられないか、別に
更生担保権という概念を設ける必要がないのではないかという議論も一応出ると存じますが、
担保権の附いておるものにつきましては、普通の
担保権なり、
債権の場合と非常にその価値が違いまして、これはやはり
更生手続におきましては、別途の
取扱いをいたしまして、普通の
更生債権よりも一層
更生担保権につきましては強く保護するのが適当であると存ぜられますので、特に
更生担保権という概念を設けまして、種々の点で普通の
更生債権と異なり、一層保護を厚くいたしておる次第であります。
次に第百二十四条は、
更生担保権者の
更生手続参加の
権利について
規定いたしたものでありまして、即ち「
更生担保権者は、その有する
更生担保権をも
つて更生手続に参加することができる。」といたしたわけであります。併しながら
更生担保権といつても、その
範囲等について問題がありますので、なお二項以下に詳しくそれを
規定いたしたわけであります。即ち第二項は、
和議法等の例に準じて定めたものでありまして、第三項、第四項は
更生担保権の
議決権について定めたものであります。例えば
会社に対して、
債権一千万円持
つておる。そうして
会社の工場を
担保にと
つておる。その
担保にと
つておる工場の価額が例えば八百万円というような場合には、
そのものは八百万円の
限度において
更生担保権者として
更生手続に参加いたし、一千万円と八百万円の差額の二百万円につきましては普通の
更生債権者として
更生手続に参加する。そういう組立になるわけであります。
次に第百二十五条と第百二十六条でございまするが、これらの
規定は
破産法第二百二十八条、
和議法第四十五条等の
規定に準じて定めたものでありまして、
更生債権及び
更生担保権の
届出に関する
規定であります。このうち百二十五条第二項は、便宜上別に
届出をすべきものと
規定いたしたものであります。ここで一言申上げておきますことは、
更生債権にせよ、
更生担保権にせよ、単に
更生債権者、
更生担保権者というだけでは直ちに
更生手続に参加することができるわけでない。即ち
議決権を行使することができるわけではないのでありまして、その
議決権を行使する前提といたしましては必ずこの
更生債権の
届出とか、
更生担保権の
届出と、こういう
手続を前以てして置く必要があるわけであります。逆に申上げますれば、
更生債権として
届出でない者は
更生手続から除外されるということにな
つておるわけであります。従いまして
債権者といたしましては、
更生手続の
開始決定がありましたならば、是非とも
更生債権を
届出をいたし、
会社の
更生に参加する熱意を示すことが期待されておるわけでありまして、
更生債権の
届出をしない者は、
会社更生手続に参加して
会社の
更生にあずかる熱意が一応ないものと認められるわけでありまして、その結果は単に
議決権を行使することができないこととなるばかりでなく、後に
免責等の場合に申上げますように、失権の
効果を賦与せられておりますので、この
届出という点は単に
議決権を現実的に行使するという
意味合において非常に重要であるばかりでなく、場合によ
つては
実体権をなくしてしまわれるという失権の
効果を伴う点におきまして非常に重要な
効果を伴うことにな
つておるわけであります。
次に第百二十七条でございますが、第一項は
更生債権及び
更生担保権の
届出の追完を認めたものであります。これは
更生債権者又は
更生担保権者がその責に帰することができない事由によ
つて一定の
届出期間内に
届出ができなかつた場合におきましては、只今申上げましたように失権の
効果を伴うことになりますので、その事由の止んだ後一定の
期間内に
限つて届出の追完も許すことにいたしまして、その間の調整を図つたものであります。第二項は
届出期間経過後に生じた
更生債権及び
更生担保権の
届出期間を
規定いたしたものであります。これは先ほどもちよつと触れましたが、
更生債権は原則は
更生手続開始前の
原因に基いて生じた
財産上の
請求権でございますが、例外的に個々の
規定におきまして、その後生じたものも
更生債権として取扱う場合がありますので、この第二項の
規定が必要にな
つて来るわけであります。第三項は前二項の
届出の許される最終の時期を限つたものであり、第四項はその責に帰することのできない事由によ
つて一旦
届出た事項に
変更を加える場合の
規定であります。
次に第百二十八条でございますが、
本条は一旦
届出のあつた
権利がその後移転した場合における
届出名義の
変更を定めた
規定であります。
更生債権又は
更生担保権はこの
手続でその存否が確定されるものでありまするから、届後、特に
届出期間経過後の
名義変更を認めなければ非常に不都合を生じますので、この
届出名義の
変更という
手続を認めたものであります。次に第百二十九条以下若干の
規定が、
株主の
権利に関し
只今更生債権者等について申上げましたのと相対応する
規定を持
つておるわけであります。即ち第百二十九条は
株主が有するその
株式を以て
更生手続に参加することができるといたしたわけであります。そうして第二項におきまして
株主の
議決権はその
株式の数に応じてこれを有するといたしました。なお第三項において、「
会社に
破産の
原因たる事実があるときは、
株主は、
議決権を有しない。」といたしましたが、これは
会社に
破産の
原因たる事実があることが認められる場合におきましては、
会社の総
財産は
会社の
債権者等に分配してもなお足りないというような状態でありまして、即ち
株主に
残余財産として戻
つて来るものは皆無で何にもございませんので、そういうような場合には、
株主は
会社について何ら
発言力はないものといたすのが適当でありますので、この百二十九条の第三項の
規定を設けたわけであります。この思想はこの
更生手続に一貫する
一つの基本的な思想でありまして、のちに出て来る条文のところどころにこの思想に出た
規定が現われておるわけであります。なおこの
会社に
破産の
原因たる事実がある場合におきましても、
議決権以外の点におきましては、
株主として若干の
発言力はあるわけであります。即ち
株主が
更生計画案に対して
株主として意見を述べたり、或いは他の
権利者の
議決権に対して、或いは
議決権がないとかいつたような異議を述べる等の
権利はこれを失うことはないわけでありまして、その
限度におきましては、
株主はやはり
株主としての一種の
発言権は持
つておるわけであります。
次に第百三十条でありますが、これは
株式の
届出に関する
規定でありまして、
株式につきましても、この
更生債権、
更生担保権と同様に
届出という制度を設けまして、
株主もこの
株式の
届出をすることによ
つて更生手続に参加して来ることができるという手段を考えて
とつたのであります。即ち
株主でも
届出をしない
株主は
更生計画案を議決する際に
議決権を有しないということにな
つておるわけであります。この点につきましては、いろいろ立て方といたしましては
考え方があるものと思うわけであります。即ち
株主は何も
会社債権者と
違つて、
株主名簿があ
つて誰が
株主だということははつきりしているから、
届出などをすることが必要がなくて、
株主名簿にある
株主は当然参加することができるというようにしてはどうかという
考え方も一方に考えられるわけでありますが、この案はそういう
考え方をと
つておりません。それは何故かと申しますと、どうせ
会社更生手続に参加するような、
更生手続を申立てるような
会社につきましては、
会社の事業が必ずしもうまく行
つていない場合が多いのでありまして、
株主といたしましては、
会社事業が非常にうまく行
つている場合には大いに
会社に関心を持
つて積極的にやりますが、
会社のほうがうまく行かないような場合、殊に非常に苦境に陥
つているような場合につきましては、
会社に対して余り関心を持たない
株主も相当考えられるわけであります。従いまして
株主名簿に載
つておる
株主を集めようと
思つてもなかなか十分に集まらないというような場合も考えられますし、むしろこの
手続といたしましては、真に
会社の
更生に
利害関係を感じ、その
更生に熱心なものを糾合して、
会社の
更生計画を立てて行つたほうが
会社更生計画を成立せしめる上において、より
効果的であるという考えから、こういう手段を
とつたのであります。但し
株式につきましては、
会社債権者の場合と異なりまして、
届出をするということは
議決権を行使するための要件でありまして、失権の
効果という点から論じますと、
株主につきましては、
届出をしなくても
株式のあるということはもうはつきりした事実でありまするから、それを失権させるのは少し行過ぎであるという点で、失権の
効果だけは
株式については認めておらない点が
更生債権の場合と非常に異なるのであります。
次に第百三十一条でありますが、
株主については
届出名義の
変更を許さないで、
届出期間後に
株式の移転が多かつたようなときには、
関係人集会において一部
株主の意思だけしか反映しないことになりますから、これを避けるために第百三十一条の
規定を設けたわけであります。この点も
更生債権の場合とちよつと立て方が異な
つておるわけでありまして、
更生債権のほうにおきましては、百二十八条ですでに
届出をして
更生債権をあとに取得したものは
更生手続届出期間が経過しても
届出名義の
変更を受けることができるということにいたしまして、
届出名義の
変更手続を認めたのでありますが、
株式につきましては、この
手続を認めておりません。なぜこういうように区別いたしたかと申しますと、
一つは、
更生債権につきましては失権という
効果が伴いますので、このような
名義変更の
手続を認める必要があることと、他面
株式につきましては失権の
効果が伴わないからということや、又
株式と
更生債権とは移転する度合が非常に違う。即ち
株式のほうは相当転々することが考えられるが、
更生債権につきましては、そう甲から乙、乙から丙と展転とすることは考えられませんので、大体
届出名義の
変更を認めて置けばよろしい。ところが
株式は非常に展転することが考えられますので、
届出た
株式が実際に
議決権を行使する段取りになると全く別の人にな
つてしまつているということになりましては、
会社の
更生手続を決定するものはその当時の
株主の
立場と異なるというような状態に至りましては甚だ面白くありませんので、この百三十一条を設けまして、どうも
株式の移転が相当多かつたというようなことがいろいろな事情で裁判所にわかるというような場合には、裁判所で適宜追加
届出という百三十一条の
規定を活用いたしまして、その間の調整を図ることができるということにいたしたわけであります。
次に第百三十二条でありますが、
本条は
破産手続における
債権者表の例に做つたものでありまして、
更生債権者表、
更生担保権者表、
株主表、こういう表を作成すべきことを定めたものであります、そうしてこれらの表には
更生債権の調査の結果とその経緯に関する重要な事項を記載させて、後に出て来ますように、これに一定の効力を認めることにいたしているわけであります。例えば百四十五条におきまして、確定した
更生債権等につきましては、この
更生債権者表の記載は確定判決と同一の効力を有するといつたようなところに響いて来るわけであります。次に百三十三条でありますが、これは
破産法二百九十二条第二項と同
趣旨の
規定で、謄本の交付を定めたものであります。第百三十四条も
破産法第二百三十条と同
趣旨の
規定でありまして、各種の
権利、
届出の書類等を裁判所に備えて置かなければならないという
規定であります。次に第百三十五条も
破産法第二百三十一条と同
趣旨の
規定でありまして、これは
更生債権及び
更生担保権調査の期日について定めたものであります。即ち百三十五条以下が
手続の次の段階に入るわけであります。昨日
説明いたしました第四十六条におきまして、裁判所は
更生手続開始の決定と同時に、
管財人を選任して、更に一定の事項を定めるわけでありますが、その中に
更生債権及び
更生担保権調査の期日というものを定めることにな
つております。この
更生債権及び
更生担保権の調査の期日というのが、この第百三十五条に出て来るわけでありまして、この期日におきましては、百三十二条に掲げる事項、即ち
更生債権につきまして見ますれば、
更生債権の内容、
原因とか、どれだけの
議決権があるのかというようなこと、そしてその
更生債権が優先権のあるものであるか、或いは劣後的
債権であるか、例えばそういうようなものをここで調査する、そういう段取りにな
つているわけであります。
次に、第百三十六条は、やはり
破産法第二百三十二条と同
趣旨の
規定でありまして、この調査の期日には、
会社の代表者が出頭して意見を述べなければならないということや、第二項はこの
届出をした
更生債権者等は、この期日に出頭して他の
更生債権又は
更生担保権について異議を述べることができるというような
規定を定めてあるわけであります。
次に第百三十七条は、
破産法第二百三十三条と同
趣旨の
規定であります。この
更生債権等の調査は
管財人があるときは
管財人、
更生債権及び
更生担保権の調査を行う審査人のあるときは審査人、こういうものがないときには
会社の代表者又はその代理人の出頭がなければ、この調査の期日を行うことができないという、その調査の期日の
手続要件等を定めたものであります。次に第百三十八条は、
破産法第二百三十四条と同じ
趣旨の
規定でありますが、第一項後段の
更生債権又は
更生担保権につきましては、特別期日を定めることを要しないことにな
つております。即ち第百二十七条の
規定によりまして、
更生債権、
更生担保権につきましては、これらの
権利者が不可抗力によ
つて一定の
届出期間内に
届出ができなかつた場合には、あとで
届出の追完をするわけであります。これが初めきめた調査期日との
関係その他につきまして問題となりますので、百三十八条の
規定を置きまして、そういうものにつきましても、一定の場合には一般の
更生債権、
更生担保権の調査の期日において調査をすることができるということにいたしているわけであります。ただ一定の
関係人からその日に行われては、どうも自分たちが準備をする余裕がなかつたら困るとかいつたような異議が出たときには、裁判所は特別期日を定めて調査しなければならないということにいたしているわけであります。
次に第百三十九条も
破産法第二百三十五条に同
趣旨の
規定がありますが、これは
届出事項の
変更があつたような場合についての処置を定めた
規定であります。次に第百四十条、これも
破産法第二百三十六条に同
趣旨の
規定がありますが、これも一般期日、
債権調査の一般期日後に
届出の追完をした
更生債権等の調査についての
規定であります。次に、第百四十一条も
破産法第二百三十七条に準じて定めた
規定であります。即ち
更生債権及び
更生担保権調査の特別期日に関する
規定でありまして、この期日につきましては、公告はいたしませず、送達は略式の
方法によることにいたしまして、
手続の簡易化を図つた点に特異点があるわけであります。次に第百四十二条は、これも
破産法第二百三十八条に同
趣旨の
規定がありまして、期日の
変更、延期、続行につきましては、百四十一条の
規定を準用いたしまして、
手続の簡易化を図
つているわけであります。次に第百四十三条は、これは
更生債権及び
更生担保権等の確定のことに関する
規定でありまして、
破産法第二百四十条の第一項と同
趣旨の
規定であります。
会社を相手方とする訴訟の受継は
手続の簡易化のため認めないことにな
つております。即ち百四十三条におきまして、
更生債権及び
更生担保権調査の期日において
管財人とか、その他ここに掲ぐるものの異議がなかつたときには、
更生債権や
更生担保権は、その内容、
議決権の額及び優先権のある
債権または劣後的
債権につきましては、その優先権のあること又は劣後的であることが確定いたすわけであります。即ちこの調査期日におきまして、例えば一千万円の
更生担保権につきまして、誰も異議を言う人がなかつた場合には、その
更生債権は一千万円とその内容を確定し、又
議決権の額も一千万円として確定する。そういうことになるわけであります。
次に第百四十四条は、
破産法第百四十一条と同
趣旨の
規定でありまして、
更生債権者表及び
更生担保権者表に調査の結果を記載するという
手続きであります。第百四十五
条は破産法第二百四十二条と同
趣旨の
規定でありまして、これは先ほど申上げましたように、
関係人に異議がなくて確定した
更生債権及び
更生担保権について、これを
更生債権者等に記載すれば、それは
更生債権者、
更生担保権者及び
株主の全員に対して確定判決と同一の効力を有し、これらのものは争えなくなるという効力を認めたものでございます。次に第百四十六条は、これも
破産法第二百四十三条と同
趣旨の
規定でありまして、例えば或る
更生債権者が調査の期日に出頭しない場合において、他の
更生債権者なりが、その出頭をしない者の
更生債権について、あれは誤まりがあるとか、何とかいつたような異議を述べた場合には、裁判所はその異議を述べられた、即ちその調査の期日に出頭しなかつた
債権者にこれを通知する、そういうような
手続を定めまして、以下の
更生債権又は
更生担保権確定の
手続を出す基にいたしておるわけであります。第百四十七条は、これも又
破産法第二百四十四条と同
趣旨の
規定であります。即ち
債権調査の期日におきまして、異議を述べられた
更生債権者、
更生担保権者は、その異議を言つた者に対して訴えを起して、その
権利の存否とか、範囲とかを確定する、そういう
手続を定めたものでありまして、第百四十八条は、その訴えの管轄を
更生裁判所の管轄に専属するものといたしまして、
更生手続を現に取扱
つている裁判所がこの訴えをも管轄いたしまして、全部を見て
手続の促進が図られるというような
考え方をいたしておるわけであります。第百四十九条は、
破産法第二百四十六条と同
趣旨の
規定でありまして、これは訴訟の受継に関する
規定であります。
第百五十条は、これも
破産法第二百四十七条と同
趣旨の
規定でありまして、請求
原因の制限をいたしたものであります。即ち
更生債権者又は
更生担保権者は、第百四十四条の
規定によ
つて更生債権者表又は
更生担保権者表に記載した事項についてだけ
権利確定の訴を起し、又は前条の
規定によ
つて訴訟を受け継ぐことができることにいたしまして、あとからこれ以外の点についていろいろ文句を言
つて来て、そのためにこの確定
手続が無用に遅延するということがないように論点を限定いたしまして、確定
手続が迅速に終了いたし、延いては
更生手続が全体として円滑に運び得るように考えたものであります。次に第百五十一条でありますが、これは
更生債権者等のみの異議の主張を
規定したものであります。
更生債権又は
更生担保権につきまして、
管財人、
管財人がいないときは
会社、但し
更生債権及び
更生担保権の調査を行う審査人があるときはその審査人、こういう者から異議がなくて、
更生債権者、
更生担保権者又は
株主だけの異議があるときには、百四十七条の場合と逆にこの異議者が訴の
方法によらなければ異議の主張の効力はないことを
規定いたしたものであります。異議権の行使を慎重にさせる
趣旨であります。この場合に異議者が数人あるときは共同原告となることを要することになります。即ち百五十一条は、
管財人と申しますか、要するに
会社側からは別に異議がなくて、単に
更生債権者同士、
更生担保権者同士、
株主同士、そういう仲間だけからのみ異議があるというものにつきましては、
一つの特別の
取扱いをいたしまして、異議を述べられたほうから、その異議者を相手にして確定訴訟を起すような建前にいたしておきますと、単に異議の言放して、それで相手方の訴訟を起すのを待つというような形になりますので、異議を言うのに慎重を欠くというようなことになりまして、
手続が非常に紛争する虞れがありますので、こういうものにつきましては、異議を言う側、即ち文句を付ける側から必要があれば訴訟
手続を訴えて異議を主張しなければならないといたして、第百四十七条と逆の立て方にいたしたわけであります。
次に百五十二条でございますが、これは
破産法第二百四十八条と同
趣旨の
規定でありまして、執行力ある債務名義又は終局判決のあるような
更生債権等につきましては、普通の
更生債権と
違つて特別の
取扱いをすることが適当でありますので、こういう場合には異議者は
会社がすることができる訴訟
手続においてのみその異議を主張することができるというようにいたして、特別の
取扱いをいたしたわけであります。これは
破産法の場合と同
趣旨であります。次に百五十三条、これも
破産法第二百四十九条の
規定と同
趣旨でありまして、確定訴訟の結果を
更生債権者表等に記載する
手続を定めたものであります。次に第百五十四条も
破産法第二百五十条と同
趣旨の
規定でありまして、確定訴訟についてした判決の効力について定めたものであります。次に第百五十五条も
破産法第二百五十一条と同
趣旨の
規定でありまして、訴訟費用の償還を請求することができる場合を定めたものであります。次に百五十六条、これも
破産法第二百五十二条と同
趣旨の
規定でありまして、確定訴訟の目的の価額の算定についての
規定であります。
次に第百五十七条も、これも
破産法第二百五十四条と同
趣旨の
規定でありまして、先ほど申上げました百二十一条第五号、
罰金等の
請求権、それから百二十二条に掲げてあります
租税等の
請求権、これにつきましては国又は公共団体も
更生手続に協力するという意味におきまして、遅滞なくその額とか、
原因及び
担保権の内容を裁判所に
届出なければならないということにいたしたわけであります。これらの
請求権は他の
更生債権と違いまして、或いはこれを減額したりするのにつきましては、或いは不可能であり、或いは相手の同意を要するというようなことにな
つておりまして、
更生手続自体においてこれを左右するということは、或いは不可能であり、或いは非常に至難であります。併しながらこういうものは一体どの程度であるかということがわか
つておらなければ、全体としての
更生計画は成立ちませんので、こういうものにつきましても
届出をして頂いて、全体の計画を立てるのに参考にしようというわけであります。尤も普通の
更生債権等と違いまして、この
届出につきましては
期間の定めは別にいたしませず、ただ遅滞なく届けなければならないということにいたしまして、一定の
期間が経過した後の
届出は受理しないというような
規定はなく、国又は公共団体の誠意ある協力に待つという建前をと
つております。次に第百五十八条でありますが、これも
破産法第二百五十五条と大体同
趣旨の
規定でありますが、
管財人に対して通知を要しないことにいたしてあります。即ち
管財人等はこの百五十七条の
規定によ
つて届出があつた
請求権の
原因が訴願、訴訟その他の不服の申立を許す処分であるときはその
請求権について
会社がすることのできる
方法で不服を申立てることができる、国又は公共団体で裁判所に
届出があつたといたしましても、その
届出が確定的なものとして取扱うということにいたしませんで、
会社がそれに対して何らかの
方法で不服を申立ることができるという場合には、
管財人等が
更生手続にな
つてもこれをすることができるというふうにして調整を図
つておるわけであります。
次に第百五十九条でありますが、この百五十九条の
規定は、この
更生手続の
規定中最も重要な
規定の
一つになるわけであります。百五十九
条は更生債権者、
更生担保権者及び
株主の分類について
規定しております。これらの
権利者はそれぞれその
権利の
性質及び利害の
関係が異な
つておりますので、これを組に分けて
更生計画案について決議させることにしたわけでありますが、その決議のため及び計画案作成の便宜のためにこの分類をすることにいたしたのであります。この分類は
権利者の利害及び決議の成否に影響を及ぼすことが非常に大きいので極めて重要なものであります。即ち
更生手続におきましては
更生計画を立てて、その計画に従
つて会社を
更生させて行くということになるわけでありますが、この
更生計画を立てるにつきましては危殆に瀕した
会社でありますので、
会社債権者、
担保権者、
株主その他いろいろの
利害関係が非常に錯綜しておるわけでありますので、各方面の利害を調整し、各方面の納得の行くような計画を立てなければ、計画自体が法律に定めた数の同意を得て可決になるということになりませんので、その計画を立てることが非常に大事になるわけでありますが、その計画を立てるにつきましては、大体各方面の利害を調整する必要があるわけであります。その利害調整につきましては、大体
利害関係を同じくするもの、
利害関係を同じくするものと申しますのは、事実上
利害関係を同じくするというものと、法律的に大体
利害関係が同じと認められるというもの、そういうようなもので組を作
つて、その組の中でいろいろの折衝をして、その組のものはその組の中で、多数決の法理を働かせて議決をして、そして各組で全部
更生計画案に賛成したならば、その
更生計画案は成立というふうにいたしますと、錯綜した
利害関係を調整するのに便宜でありますし、又多数決の法理を働かせる上につきましても合理的でありますので、この
更生手続はそういう技術的
方法を採用したわけでありす。即ち
更生債権者、
更生担保者及び
株主は、
更生計画案の作成及び決議のために、左の組に分類されるものとする。第百二十一条第一項第五号、これは
罰金等であります。第百二十二条に掲げる
請求権、これは税金等であります。但し第百二十一条第一項第五号及び第百二十二条に掲げる
請求権を有する者はこの限りでないとあります。罰金や税金等につきましては、この組に分類させるという場合、組の観念に入れておりませんが、その他のものにつきましては全部組に分類させるということにいたしたわけであります。その組と申しますのは、大体第一号から六号に掲げられておりますように、先ず
更生担保権者の組、それから一般の先取特権その他一般の優先権のある
債権を有する
更生債権者、それからいわば普通の
更生債権者の組、次に四号の劣後的
債権を有する
更生債権者、次にこの
残余財産の分配に関し優先的内容を有する種類の
株式を有する
株主の組、六に前号に掲げる以外の普通の
株主、大体定義としてはこんなような六種のグループが考えられるわけであります。ここに一号から六号に番号を付してありますこの番号の順序は、大体この
権利の何と言いましようか、尊重すべき度合に従
つて番号を付してあるのでありまして、やはり
更生担保権者は普通の
債権者よりも優位の地位に立ち、
債権者は
株主よりも優位の地位に立つというのが根本の思想でありまして、それに若干の更に小さい差別を付けてこういうような順序に並へたわけであります。一応こういうような組に分けるものといたしましたが、百五十九条の第二項におきまして、「裁判所は、前項各号に掲げる者の有する
権利の
性質及び利害の
関係を考慮して、二以上の組の者を一の組とし、又は一の組の者を二以上の組として分類することができる。」といたして、実情に応じた措置がとり得るようにいたしてあるわけであります。併しながら裁判所は如何なる場合でも
更生債権者、
更生担保権者及び
株主と、みん
なつまり三つを一緒の組にしたり、或いは
更生債権者と
株主を一緒の組にしたりすることはできないのでありまして、少くとも
更生債権者と
更生担保権者と
株主は、これは別々の組にしなければならないといたしておるわけであります。と言いますのは、
更生債権者、
更生担保権者、
株主というのは、その
権利の
性質、利害が一応根本的に違うと見ておるわけであります。この組分けは裁判所がするわけでありますが、この
管財人とか、あとに述べる審査人、
会社並びに
届出をした
更生債権者、
更生担保権者、
株主、こういうものは勿論裁判所に対して意見を述べることができることになりまして、裁判所は実際の運用におきましては、みずからの調査したところと、これらのものの具申する意見とを総合して、最も合理的に分類を定めるということになるかと思います。而うしてこの分類を如何にするかによ
つて計画の案が非常に合理的にまとまるかどうかということに重大な
関係がありますので、この組分けというものは、この
更生手続における
一つの大きな眼目にな
つておるわけであります。なお裁判所は一旦組分けをしても、その後いろいろの事情によりまして、合理的と認めた場合には、計画案を決議に付するまでは、いつでもこの分類を
変更することができるということにいたしております。要するにこの分類につきましては、百五十九条二項但書の
更生債権者、
更生担保権者及び
株主、これは別々の組としなければならないという大きな枠を置いてあるほかは、大体広く裁判所に合理的な裁量権を認めているわけでありまして、この辺に具体的事情に応じて裁判所とか、
管財人などの識見、能率等が働く余地が多いものと存ぜられる次第であります。
次に第百六十条でありますが、
本条は
更生計画から除外できる
更生債権者及び
株主について定めたものであります。
会社の
財産を事業の継続を前提として評価して清算したものと仮定した場合に、
債権の
弁済又は
残余財産の分配を受けることができないような
債権者又は
株主は、
更生手続に参加して正当な利益を有さないものということができますので、これを
更生計画から除外できることにいたしたわけであります。このようなものは、仮に
届出がしてあ
つても
更生計画の議決には加わり得ない。そういうことになるわけであります。と申しますのは、
更生手続は真に
会社に利害の
関係を持つ者が集ま
つて会社を
更生させようというものでありまするから、
会社に対して何ら
財産上の持分と申しましようか、権限を実質的に持たないものは、この計画から除外するほうが
手続を円滑に進める上から便宜である。のみならず、又除外いたしましても、そういうものの実質的
権利を害することになりませんので、このようにいたしたわけであります。
次に第百六十一条は、
代理委員の選任について定めたものであります。この
代理委員の制度も新らしい
考え方でありまして、これは
更生手続には多数の
利害関係の異なる
権利者が参加して、而も
更生計画案の作成及び決議等のために、相互に折衝を行うようなことが多いので、このような
代理委員という制度を設けて
手続の円滑迅速な進行を図ることができるようにする必要があるから、このような制度を設けたのであるのでありまして、要するに集団的な、大量な
手続を簡易に合理的に運ぼうという
一つの技術的な要請に基いているわけであります。即ち
更生債権者や
更生担保権者、又は
株主はそれぞれ共同して、又は各別に、一人又は数人の
代理委員を選任することができることにいたしましたが、これにつきましては、裁判所の許可を条件といたしました。これは例えば俗に言う三百などというものが中に入
つて、
更生手続を撹乱し、或いは不当な利益をむさぼつたりすることのないように、裁判所の許可にかからしめて、そのような弊害を防ぐ
趣旨もあるわけであります。こういう選任せられた
代理委員は、
更生手続に属する一切の行為、仕事ができることにな
つておるわけでありまして、又
代理委員の代理権の権限の行使が著るしく不公正であると認めるときは、裁判所はその許可を取消すということができることにいたしまして、
代理委員の制度が悪いほうに用いられるようなことを防ぐ手段を考えておるわけであります。
次に第百六十二条でありますが、これは社
債権者に関する特則を定めたものであります。第一項の
規定を設けましたのは、この
更生手続におきましては、社
債権者を通常の場合と同様に集団的に取扱うということは必ずしも適当でありませんので、第一項の
規定を置きまして、社
債権者集会というものは
更生手続における社
債権者の
権利の行使については決議することができないというふうにいたしましたわけであります。従いまして社
債権者集会というものは、社
債権者の
更生手続における
権利の行使について決議いたしましても、その決議は無効でありまして、社
債権者はこれに拘束されることがないことになるわけであります。第二項は社
債権者の利益の保護のために設けた
規定であります。これは社
債権者というものは割合零細な
債権者でありまして、而も多数で各方面に散らば
つておるというような
関係にある場合がありますので、そういう場合に社債募集の委託を受けた
会社とか、又は
担保附社債信託法の受託
会社というものがありますれば、そういう
会社が社
債権者のために
更生債権の
届出とか、
議決権の行使とか、その他
更生手続に属する一切の行為をすることができることとするのが、こういう
会社の仕事としてもふさわしいものであり、又社
債権者の保護にもなりますので、第二項の
規定を置いたわけでありまするが、併しこの場合におきましても、
更生債権や
更生担保権の
届出をした社
債権者がある場合におきましては、そういう社
債権者の独自の行動を認めることにいたす意味におきまして、第二項の但書を設けたわけであります。第三項は
手続を簡略にするための
規定でありまして、
担保附社債信託法第九十条の例に倣つたものであります。次に第四項は、第二項の
会社に対して
更生手続に属する行為を行うことを任せることが適当でないと考えるに至つた未届けの社
債権者のための
規定でありまして、社
債権者といえども、
更生手続におきましては、ばらばらにこれに参加するという思想がここに出ておるわけであります。第五項は、同一の社
債権について二重に
更生手続上の
権利行使が行われることを防ぐための
規定であります。要するにこの第百六十二条は、先ほどまでに申上げて来ました
更生債権、
更生担保権の範疇に一応入るものでありますが、こういうような社
債権というものの特異性を考え、その特異性と普通の
更生債権の
届出或いは
更生債権者等の利害との調整を図つた特則でありまして、例えば若しこの場合に、社
債権者というものは、社
債権者集会というものがあるから、そちらで行動を決して一団として
更生手続に入
つて来てもよいではないかというような考えも一応議論として言えるとは思いますが、そういたしますと、例えば
届出ない普通の
更生債権者は
議決権を行使することができず、而も失権の
効果が附せられる、ところが社
債権者というものをそういうふうにまとめて行動させますと、
届出ない社
債権者につきましても、或る程度の
発言力ができ、即ち
議決権が生ずるというようなことになりまして、
議決権の分配におきまして、普通の
債権者との間に非常に不公平が生ずるではないかというようなことも考えられ、又もともとこの
更生手続は
株主につきましても既存の
株主総会という
会社法上の機関ではなくて、一応これをばらばらにばらして、個々の
株主、個々の
債権者としてこの
手続に関与させ、真に熱意のあるものを中心として
会社を
更生させようという
考え方に出ておりますので、社
債権者につきましても、やはりこれを原則としてはばらばらに
権利を行使し得るような仕組にしておきまして、ただ特別の場合に社
債権者の特異性を考えて、例えば百六十二条第二項のような
規定を置きまして、その保護を図り、その間の調整を図
つておるということにいたしたわけであります。この社
債権の取扱もこの
会社更生法立案の途上におきましては、いろいろ議論した点でありまして、問題点の
一つに
なつたわけでございます。
次に第百六十三条でありますが、これは相殺権の
規定であります。相殺権は
破産法で相殺権を認めたものと同
趣旨で認めたものでありまするが、
会社更生手続は
会社事業の維持
更生を目的とする
手続でありまして、
破産の場合のように平等分配を目的とするものではありませんから、
条件附債権等につきましては相殺を認めないで、又
更生計画案作成の都合等から相殺権行使の時期に一定の制限を加えることにいたしました。そういう点で
破産法に多少
変更を加えておるわけであります。第百六十四
条は破産法百四条と同
趣旨の
規定でありまして、特段に
説明いたすこともありません。