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1951-09-06 第11回国会 参議院 法務委員会会社更生法案等に関する小委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年九月六日(木曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○会社更生法案内閣送付)   —————————————
  2. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それでは会社更生法案等に関する小委員会をこれより開会いたします。昨日に引続きまして、先ず説明員の第四章及び第五章の御説明をお願いいたします。
  3. 野木新一

    説明員野木新一君) 先ず第四章の御説明をいたします。本章は更生債権及び更生担保権の意義や、更生債権者更生担保権者及び株主権利及びその届出更生債権及び更生担保権の調査及び確定、代理委員の選任、相殺権等について規定いたしたものであります。  百二条は、更生債権の意義を定めたものでありまして、即ち更生債権は、会社に対して更生手続開始前の原因に基いて生じた財産上の請求権更生債権とするものであります。これは和議債権等の例に倣つたものであります。併しこれは原則的の規定でありまして、これ以外にも、あとの条文にところどころに出て来ますように、更生手続開始後に生じたものであつても、個々の規定更生債権といたしておるものもあります。次に第百三条及び百四条でございますが、これらの規定は、更生手続開始当時、当事者双方がまだ共に履行を完了していない双務契約について、解除権とその解除の効果を定めたのであります。これは同趣旨規定破産法にございますので、言葉の性質も同じでありますので、それに準じて定めたものであります。従いましてここで定めておりますのは、双務契約であります。ところが今問題になります第百三条、四項の労働協約、これが果して何も規定を置かないとどういうことになるだろうかという点がやや疑問になりますので、第四項におきまして、百三条一項乃至三項の規定労働協約には適用ないものとするということにいたしたわけであります。これは労働協約は果して双務契約に属するかどうかという点につきましては、いろいろ争いもあるようでありますが、労働協約性質上、普通の取引関係の契約と同じに見るのが適当でありますので、これは百三条一乃至三項の規定の適用はないものといたしたわけであります。  次に第百五条でありますが、本条第一項及び二項の規定破産法第五十七条と、本条第三項の規定破産法五十八条とそれぞれ同趣旨規定であります。以下この章の百六条乃至百十一条等はいずれも破産法規定に準じて作つた規定でありまして、言葉の性質破産法の場合と同様に取扱つてよいものと存ぜられますので、その規定の内容を借りて来ておるわけであります。或いは準用という言葉を用いれば、或いはこの辺は破産法のそれぞれの規定を準用するということで間に合うものが多いかとも存ぜられる次第であります。即ち百六条の規定破産法の第六十三条、第百七条の規定破産法の第六十六条、第百八条の規定破産法の第二十四条、第百九条の規定破産法第二十五条、第百十条の規定破産法第二十六条、第百十一条の規定破産法第二十七条といずれも同趣旨規定であります。  次に第百十二条でございますが、本条は更生債権及び更生担保権弁済規定等について定めたものでありまして、同趣旨規定破産法にございまして、破産法第十六条がこれに相当するものであります。即ち「破産債権破産手続ニ依ルニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス」ということに破産法になつておりますので、それと同様にして、百十二条を設けまして「更生債権については、更生手続によらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為をすることができない。」ということにいたしたわけであります。即ちこの規定を置かなければ、折角更正手続を開始いたしましても、我勝ちに弁済を受けたり、或いは弁済をしてしまつたりいたしまして、手続の実効が挙らないから、こういう規定を置いたわけであります。百十二条の但書は、これは税金についての特則でありまして、即ち国税徴収法、又は国税徴収の例によつて徴収することができる請求権につきましては、この一定の場合に、第三債務者徴収の権限を有する者に任意に給付する場合とか、管財人或いは管財人がないときは会社が裁判所の許可を受けて税金を支払う、そういう場合にはまあ更生手続によらなくてもいいということにいたしまして、税金につきましては特殊の取扱をいたしたわけであります。総じてこの更生手続におきましては税金につきまして普通の私法上の債権と異なりまして、一応これを更生手続に組み入れてはおりますが、必要な個所でいろいろの除外規定を設けまして、税務行政と個々の更生手続との調整を図つておりまして、この点は立案の当時大蔵当局とのいろいろ折衝に苦心をいたしたところでございます。  次に第百十三条でございますが、第一項は、更生債権者関係人集会において議決権を行使する更生手続に参加する権利を有することを規定したものであります。即ち更生債権者はその有する更生債権をもつて更生手続に参加することができる。これに参加することができるということは、一番重要な点は後に述べます関係人集会におきまして更生計画案を議決する。この議決権の存否及びその範囲という点に一番その重要性を現わして来るわけであります。第二項は、各更生債権者の有すべき議決権の基準を定めたものであります。更生手続が開始されましても、更生債権破産債権のようにすべてこれを客観的にと申しましようか、債権そのもの金銭債権に直してしまうというようなことをいたしませんで、単に議決権を算定する、議決権がどの程度の議決権を許すかというそういう議決権を算定する必要の限度において、百十四条以下の規定によつて、その金額を算定する、そういう立場をとつております。この点が破産の場合と非常に違う点でありまして、或いは後に一つの立案の過程におきまして論点になつたところでありまして、この立場につきましては、或いは若干の議論があるかも知れないと存ずる次第であります、即ち破産法におきましては、第三章破産債権のところにおきまして、例えばいろいろの債権の種類とありますが、そのいろいろの債権につきまして、これを全部金銭化してしまつてあるわけでありますが、この更生手続におきましては、単に議決権関係においてだけ金銭化する、債権実体そのものは元のままに存する、そういうような考え方をとつておるわけであります。これは破産が結局総財産を公平に各債権者に分配して、それで手続を終つてしまうというものでありまするから、或る時点においてその債権を換算してしまつてもいいわけでありますが、この更生手続におきましては、将来会社が生きて行くという立場にありますので、債権自体をそのまま変えてしまうまでのこともなかろう、単に債権者集会等において議決権を行使する、どれだけの議決権を有するか、そういう範囲をきめる限度金額に換算して行けばいいではないか、そういう立場においてとつておるわけでありまして、これは更生上の一つの大きなポイントになつておるわけであります。  次に第百十四条以下は、この百十四条から百十八条までにつきましては、更生債権者更生債権議決権の範囲をきめるために、その金額を算定する方法を定めたものであります。即ち百十四条は、期限附債権無利息であつて、その期限更生手続開始後に到来すべき場合におきましては、更生手続開始のときから期限に至るまでの債権に対する法定利息債権額から控除して、そういう控除した額を以て更生債権者更生手続に参加し、議決権を行使することができる、そういう建前にいたしておるわけであります。以下の考え方も大体同じであります。  百十五条は、金額及び存続期間が確定している定期金債権につきまして、議決権の額の算定方法規定したものでありまして、破産法の十九条の規定方法と同じようなものであります。百十六条は、期限が不確定な無利息債権及び金額又は存続期間が不確定な定期金債権について議決権の額の算定方法規定したもので、その方法破産法第二十条に規定する方法と同趣旨のものであります。百十七条は、非金銭債権等につきまして、議決権の額の算定方法規定したものでありまして、破産法二十二条の規定方法と同様のものであります。百十八条は、条件附債権及び将来の請求権について議決権の額の算定方法規定したものであります。条件附債権は無条件の債権と同等に取扱うことは適当でありませんので、評価額によることといたしたわけであります。将来の請求権につきましては、破産法二十三条第二項に規定する方法と同様の方法になつております。いずれにせよ、この百十三条から百十八条までにつきましては、その算定の方法破産法と殆んど同趣旨になつておりますが、根本的の考え方といたしましては、先ほど申上げましたように、破産法債権そのものを現実に変えてしまうという立場をとつておるのに対しまして、この更生手続のほうにおきましては、単に債権議決権関係において、即ち議決権を算定するという角度から、こういう金額に直して考えて行くという立場をとつておりまして、その点が一つの根本的に違う点であります。  次に第百十九条でございますが、更生手続開始前に生じた租税債権は、第百二条の規定によりまして、一旦更生債権となるのが原則でありますが、租税のうち本条に掲げるようなものにつきましては、取戻権に準ずる取扱をするのが適当でありますので、これを共益債権とすることにいたしたわけであります。即ち「源泉徴収に係る所得税通行税、酒税、物品税砂糖消費税揮発油税及び特別徴収義務者徴収して納入すべき地方税で、更生手続開始当時まだ納期限の到来していないものは、共益債権として請求することができる。」といたしたわけでありまするが、これらはほかの税と違いまして、非常に特殊な性質を有するものでありまするので、この限度で特別の扱いをいたしたわけであります。即ちこれも百二条の、「会社に対し更生手続開始前の原因に基いて生じた財産上の請求権」という点から申しますれば、更生債権に入るわけでありまするが、例えば源泉徴収に係る所得税というようなものは、源泉徴収者がすでに徴収しておるというようなものにもなりますし、非常に税のうちでも特殊であるということで、この特例を認めることにいたしたわけであります。これと同様に、「更正手続開始前六月間の会社使用人の給料並びに更生手続開始前の原因に基いて生じた会社使用人預り金及び身元保証金返還請求権も、また同様である。」といたしまして、これも共益債権として請求することができることにいたしたわけであります。共益債権と申しますのは、二百十六条にその規定がございますが、なお二百十七条の規定によりまして、普通の更生債権と違いまして、更生手続によらないで随時弁済するという性質のものでありまして、従つて只今述べました百十九条にかかるものは、共益債権として随時弁済できるという形になつておりますので、非常に強力なものになつておるのであります。  次に百二十条でございますが、本条は破産法第四十一条と同趣旨規定でありまして、特段に説明すべきこともございません。次に百二十一条でございますが、本条は、第一項に掲げる請求権を一般の他の更生債権に遅れる劣後順位更生債権とすべきことを定めたものであります。即ち更生手続開始後の利息とか、更生手続開始後の不履行による損害賠償とか、以下ここに掲げてあるようなものは更生債権といたしましても、他の更生債権よりも不利益な地位に置く、即ち他の更生債権を先ず弁済その他整理方法をきめて、なお余りがあつたならば、これらも更生債権と考える、そういうような関係になつております。このうち第五項の罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金及び過料は劣後的更生債権になつておりますが、これはすでに破産法におきましても、こういう債権は普通の破産債権よりも遅れて、普通の破産債権支払つて、あとに余りがあつたならば、こういう債権に廻るということになつておりますので、この更生手続も同様にこれを取扱つたわけでございます。次に第百二十一条で、第二項但書を設けましたのは、第一項に掲げる請求権中に包含せられる利子税等請求権は、劣後の順位に置くのが不適当だから、この但書を置いたわけであります。又第三項は、第一項第五号及び第六号の請求権は、非常免責債権といたしたわけであります。今ちよつと説明が逆になりましたが、第三項は、第一項第五号の請求権性質上、これは当然のことでありますが、即ちこの罰金、科料等は刑罰でありますので、恩赦等によつてならば、その減刑、免除ということは考えますが、普通の更生手続におきまして、これが減免を考えることは、恩赦等関係から見て適切でありませんので、第三項におきまして、罰金等請求権については、「更生計画において減免その他権利に影響を及ぼす定をすることができない。」といたしたわけでございます。併しながら、これらの請求権は先ほど申上げましたように劣後的になつておりますので、減免されることはないが、位置としては普通の更生債権よりも後の順位で取扱われる、そういう考え方になつておるわけであります。なおこの第五号の罰金等債権及び第六号に掲げる請求権は非免責債権となつておりまして、この更生手続における免責の関係につきましては、あとのほうに出て来ますので、なおそのときに詳しく御説明いたしたいと思います。  次に第百二十二条は更生債権又は更生担保権のうち、国税徴収法又は国税徴収の例によつて徴収することのできる租税等請求権につきましては、徴収の権限を有する者、例えば税務署長の同意がなければ、その権利に影響を及ぼす定をすることができないことを定めたものであります。これらの請求権は国又は地方公共団体等の財政の基礎をなすものでありまして、非常に公共性が強いから、普通の私法上の債権と異なる取扱いをいたしたわけでありまして、先ほど申上げましたように、税につきましては更生手続に組入れるに必要な場所において例外規定を設けると申しましたその一つの重要な例外でございます。  次に第百二十三条以下の若干の規定更生担保権関係するものであります。第百二十三条は、更生担保権意義等について定めを置きました。第一項は、会社債務者である場合のほか、会社以外の者が債務者である場合、即ち会社がいわゆる物上保証をしておる場合も含む趣旨であります。第二項は、更生債権に関する規定を準用しておるわけであります。この更生担保権と申しましても、普通の場合は会社に対して更生債権があつて、この更生債権担保しておるという場合が普通でありますが、先ほど申上げましたように、会社に対して何ら債権を持つてない場合でも、会社物上保証をしておる場合も特殊の場合としてこれが含まれるわけでありますが、後の場合はともかくとして、前の更生債権があつて、それを担保しておるという場合につきましては、更生債権と一緒に考えられないか、別に更生担保権という概念を設ける必要がないのではないかという議論も一応出ると存じますが、担保権の附いておるものにつきましては、普通の担保権なり、債権の場合と非常にその価値が違いまして、これはやはり更生手続におきましては、別途の取扱いをいたしまして、普通の更生債権よりも一層更生担保権につきましては強く保護するのが適当であると存ぜられますので、特に更生担保権という概念を設けまして、種々の点で普通の更生債権と異なり、一層保護を厚くいたしておる次第であります。  次に第百二十四条は、更生担保権者更生手続参加権利について規定いたしたものでありまして、即ち「更生担保権者は、その有する更生担保権をもつて更生手続に参加することができる。」といたしたわけであります。併しながら更生担保権といつても、その範囲等について問題がありますので、なお二項以下に詳しくそれを規定いたしたわけであります。即ち第二項は、和議法等の例に準じて定めたものでありまして、第三項、第四項は更生担保権議決権について定めたものであります。例えば会社に対して、債権一千万円持つておる。そうして会社の工場を担保にとつておる。その担保にとつておる工場の価額が例えば八百万円というような場合には、そのものは八百万円の限度において更生担保権者として更生手続に参加いたし、一千万円と八百万円の差額の二百万円につきましては普通の更生債権者として更生手続に参加する。そういう組立になるわけであります。  次に第百二十五条と第百二十六条でございまするが、これらの規定破産法第二百二十八条、和議法第四十五条等の規定に準じて定めたものでありまして、更生債権及び更生担保権届出に関する規定であります。このうち百二十五条第二項は、便宜上別に届出をすべきものと規定いたしたものであります。ここで一言申上げておきますことは、更生債権にせよ、更生担保権にせよ、単に更生債権者更生担保権者というだけでは直ちに更生手続に参加することができるわけでない。即ち議決権を行使することができるわけではないのでありまして、その議決権を行使する前提といたしましては必ずこの更生債権届出とか、更生担保権届出と、こういう手続を前以てして置く必要があるわけであります。逆に申上げますれば、更生債権として届出でない者は更生手続から除外されるということになつておるわけであります。従いまして債権者といたしましては、更生手続開始決定がありましたならば、是非とも更生債権届出をいたし、会社更生に参加する熱意を示すことが期待されておるわけでありまして、更生債権届出をしない者は、会社更生手続に参加して会社更生にあずかる熱意が一応ないものと認められるわけでありまして、その結果は単に議決権を行使することができないこととなるばかりでなく、後に免責等の場合に申上げますように、失権の効果を賦与せられておりますので、この届出という点は単に議決権を現実的に行使するという意味合において非常に重要であるばかりでなく、場合によつて実体権をなくしてしまわれるという失権の効果を伴う点におきまして非常に重要な効果を伴うことになつておるわけであります。  次に第百二十七条でございますが、第一項は更生債権及び更生担保権届出の追完を認めたものであります。これは更生債権者又は更生担保権者がその責に帰することができない事由によつて一定届出期間内に届出ができなかつた場合におきましては、只今申上げましたように失権の効果を伴うことになりますので、その事由の止んだ後一定の期間内に限つて届出の追完も許すことにいたしまして、その間の調整を図つたものであります。第二項は届出期間経過後に生じた更生債権及び更生担保権届出期間規定いたしたものであります。これは先ほどもちよつと触れましたが、更生債権は原則は更生手続開始前の原因に基いて生じた財産上の請求権でございますが、例外的に個々の規定におきまして、その後生じたものも更生債権として取扱う場合がありますので、この第二項の規定が必要になつて来るわけであります。第三項は前二項の届出の許される最終の時期を限つたものであり、第四項はその責に帰することのできない事由によつて一旦届出た事項に変更を加える場合の規定であります。  次に第百二十八条でございますが、本条は一旦届出のあつた権利がその後移転した場合における届出名義変更を定めた規定であります。更生債権又は更生担保権はこの手続でその存否が確定されるものでありまするから、届後、特に届出期間経過後の名義変更を認めなければ非常に不都合を生じますので、この届出名義変更という手続を認めたものであります。次に第百二十九条以下若干の規定が、株主権利に関し只今更生債権者等について申上げましたのと相対応する規定を持つておるわけであります。即ち第百二十九条は株主が有するその株式を以て更生手続に参加することができるといたしたわけであります。そうして第二項におきまして株主議決権はその株式の数に応じてこれを有するといたしました。なお第三項において、「会社破産原因たる事実があるときは、株主は、議決権を有しない。」といたしましたが、これは会社破産原因たる事実があることが認められる場合におきましては、会社の総財産会社債権者等に分配してもなお足りないというような状態でありまして、即ち株主残余財産として戻つて来るものは皆無で何にもございませんので、そういうような場合には、株主会社について何ら発言力はないものといたすのが適当でありますので、この百二十九条の第三項の規定を設けたわけであります。この思想はこの更生手続に一貫する一つの基本的な思想でありまして、のちに出て来る条文のところどころにこの思想に出た規定が現われておるわけであります。なおこの会社破産原因たる事実がある場合におきましても、議決権以外の点におきましては、株主として若干の発言力はあるわけであります。即ち株主更生計画案に対して株主として意見を述べたり、或いは他の権利者議決権に対して、或いは議決権がないとかいつたような異議を述べる等の権利はこれを失うことはないわけでありまして、その限度におきましては、株主はやはり株主としての一種の発言権は持つておるわけであります。  次に第百三十条でありますが、これは株式届出に関する規定でありまして、株式につきましても、この更生債権更生担保権と同様に届出という制度を設けまして、株主もこの株式届出をすることによつて更生手続に参加して来ることができるという手段を考えてとつたのであります。即ち株主でも届出をしない株主更生計画案を議決する際に議決権を有しないということになつておるわけであります。この点につきましては、いろいろ立て方といたしましては考え方があるものと思うわけであります。即ち株主は何も会社債権者違つて株主名簿があつて誰が株主だということははつきりしているから、届出などをすることが必要がなくて、株主名簿にある株主は当然参加することができるというようにしてはどうかという考え方も一方に考えられるわけでありますが、この案はそういう考え方をとつておりません。それは何故かと申しますと、どうせ会社更生手続に参加するような、更生手続を申立てるような会社につきましては、会社の事業が必ずしもうまく行つていない場合が多いのでありまして、株主といたしましては、会社事業が非常にうまく行つている場合には大いに会社に関心を持つて積極的にやりますが、会社のほうがうまく行かないような場合、殊に非常に苦境に陥つているような場合につきましては、会社に対して余り関心を持たない株主も相当考えられるわけであります。従いまして株主名簿に載つておる株主を集めようと思つてもなかなか十分に集まらないというような場合も考えられますし、むしろこの手続といたしましては、真に会社更生利害関係を感じ、その更生に熱心なものを糾合して、会社更生計画を立てて行つたほうが会社更生計画を成立せしめる上において、より効果的であるという考えから、こういう手段をとつたのであります。但し株式につきましては、会社債権者の場合と異なりまして、届出をするということは議決権を行使するための要件でありまして、失権の効果という点から論じますと、株主につきましては、届出をしなくても株式のあるということはもうはつきりした事実でありまするから、それを失権させるのは少し行過ぎであるという点で、失権の効果だけは株式については認めておらない点が更生債権の場合と非常に異なるのであります。  次に第百三十一条でありますが、株主については届出名義変更を許さないで、届出期間後に株式の移転が多かつたようなときには、関係人集会において一部株主の意思だけしか反映しないことになりますから、これを避けるために第百三十一条の規定を設けたわけであります。この点も更生債権の場合とちよつと立て方が異なつておるわけでありまして、更生債権のほうにおきましては、百二十八条ですでに届出をして更生債権をあとに取得したものは更生手続届出期間が経過しても届出名義変更を受けることができるということにいたしまして、届出名義変更手続を認めたのでありますが、株式につきましては、この手続を認めておりません。なぜこういうように区別いたしたかと申しますと、一つは、更生債権につきましては失権という効果が伴いますので、このような名義変更手続を認める必要があることと、他面株式につきましては失権の効果が伴わないからということや、又株式更生債権とは移転する度合が非常に違う。即ち株式のほうは相当転々することが考えられるが、更生債権につきましては、そう甲から乙、乙から丙と展転とすることは考えられませんので、大体届出名義変更を認めて置けばよろしい。ところが株式は非常に展転することが考えられますので、届出株式が実際に議決権を行使する段取りになると全く別の人になつてしまつているということになりましては、会社更生手続を決定するものはその当時の株主立場と異なるというような状態に至りましては甚だ面白くありませんので、この百三十一条を設けまして、どうも株式の移転が相当多かつたというようなことがいろいろな事情で裁判所にわかるというような場合には、裁判所で適宜追加届出という百三十一条の規定を活用いたしまして、その間の調整を図ることができるということにいたしたわけであります。  次に第百三十二条でありますが、本条破産手続における債権者表の例に做つたものでありまして、更生債権者表、更生担保権者表、株主表、こういう表を作成すべきことを定めたものであります、そうしてこれらの表には更生債権の調査の結果とその経緯に関する重要な事項を記載させて、後に出て来ますように、これに一定の効力を認めることにいたしているわけであります。例えば百四十五条におきまして、確定した更生債権等につきましては、この更生債権者表の記載は確定判決と同一の効力を有するといつたようなところに響いて来るわけであります。次に百三十三条でありますが、これは破産法二百九十二条第二項と同趣旨規定で、謄本の交付を定めたものであります。第百三十四条も破産法第二百三十条と同趣旨規定でありまして、各種の権利届出の書類等を裁判所に備えて置かなければならないという規定であります。次に第百三十五条も破産法第二百三十一条と同趣旨規定でありまして、これは更生債権及び更生担保権調査の期日について定めたものであります。即ち百三十五条以下が手続の次の段階に入るわけであります。昨日説明いたしました第四十六条におきまして、裁判所は更生手続開始の決定と同時に、管財人を選任して、更に一定の事項を定めるわけでありますが、その中に更生債権及び更生担保権調査の期日というものを定めることになつております。この更生債権及び更生担保権の調査の期日というのが、この第百三十五条に出て来るわけでありまして、この期日におきましては、百三十二条に掲げる事項、即ち更生債権につきまして見ますれば、更生債権の内容、原因とか、どれだけの議決権があるのかというようなこと、そしてその更生債権が優先権のあるものであるか、或いは劣後的債権であるか、例えばそういうようなものをここで調査する、そういう段取りになつているわけであります。  次に、第百三十六条は、やはり破産法第二百三十二条と同趣旨規定でありまして、この調査の期日には、会社の代表者が出頭して意見を述べなければならないということや、第二項はこの届出をした更生債権者等は、この期日に出頭して他の更生債権又は更生担保権について異議を述べることができるというような規定を定めてあるわけであります。  次に第百三十七条は、破産法第二百三十三条と同趣旨規定であります。この更生債権等の調査は管財人があるときは管財人更生債権及び更生担保権の調査を行う審査人のあるときは審査人、こういうものがないときには会社の代表者又はその代理人の出頭がなければ、この調査の期日を行うことができないという、その調査の期日の手続要件等を定めたものであります。次に第百三十八条は、破産法第二百三十四条と同じ趣旨規定でありますが、第一項後段の更生債権又は更生担保権につきましては、特別期日を定めることを要しないことになつております。即ち第百二十七条の規定によりまして、更生債権更生担保権につきましては、これらの権利者が不可抗力によつて一定届出期間内に届出ができなかつた場合には、あとで届出の追完をするわけであります。これが初めきめた調査期日との関係その他につきまして問題となりますので、百三十八条の規定を置きまして、そういうものにつきましても、一定の場合には一般の更生債権更生担保権の調査の期日において調査をすることができるということにいたしているわけであります。ただ一定の関係人からその日に行われては、どうも自分たちが準備をする余裕がなかつたら困るとかいつたような異議が出たときには、裁判所は特別期日を定めて調査しなければならないということにいたしているわけであります。  次に第百三十九条も破産法第二百三十五条に同趣旨規定がありますが、これは届出事項の変更があつたような場合についての処置を定めた規定であります。次に第百四十条、これも破産法第二百三十六条に同趣旨規定がありますが、これも一般期日、債権調査の一般期日後に届出の追完をした更生債権等の調査についての規定であります。次に、第百四十一条も破産法第二百三十七条に準じて定めた規定であります。即ち更生債権及び更生担保権調査の特別期日に関する規定でありまして、この期日につきましては、公告はいたしませず、送達は略式の方法によることにいたしまして、手続の簡易化を図つた点に特異点があるわけであります。次に第百四十二条は、これも破産法第二百三十八条に同趣旨規定がありまして、期日の変更、延期、続行につきましては、百四十一条の規定を準用いたしまして、手続の簡易化を図つているわけであります。次に第百四十三条は、これは更生債権及び更生担保権等の確定のことに関する規定でありまして、破産法第二百四十条の第一項と同趣旨規定であります。会社を相手方とする訴訟の受継は手続の簡易化のため認めないことになつております。即ち百四十三条におきまして、更生債権及び更生担保権調査の期日において管財人とか、その他ここに掲ぐるものの異議がなかつたときには、更生債権更生担保権は、その内容、議決権の額及び優先権のある債権または劣後的債権につきましては、その優先権のあること又は劣後的であることが確定いたすわけであります。即ちこの調査期日におきまして、例えば一千万円の更生担保権につきまして、誰も異議を言う人がなかつた場合には、その更生債権は一千万円とその内容を確定し、又議決権の額も一千万円として確定する。そういうことになるわけであります。  次に第百四十四条は、破産法第百四十一条と同趣旨規定でありまして、更生債権者表及び更生担保権者表に調査の結果を記載するという手続きであります。第百四十五条は破産法第二百四十二条と同趣旨規定でありまして、これは先ほど申上げましたように、関係人に異議がなくて確定した更生債権及び更生担保権について、これを更生債権者等に記載すれば、それは更生債権者更生担保権者及び株主の全員に対して確定判決と同一の効力を有し、これらのものは争えなくなるという効力を認めたものでございます。次に第百四十六条は、これも破産法第二百四十三条と同趣旨規定でありまして、例えば或る更生債権者が調査の期日に出頭しない場合において、他の更生債権者なりが、その出頭をしない者の更生債権について、あれは誤まりがあるとか、何とかいつたような異議を述べた場合には、裁判所はその異議を述べられた、即ちその調査の期日に出頭しなかつた債権者にこれを通知する、そういうような手続を定めまして、以下の更生債権又は更生担保権確定の手続を出す基にいたしておるわけであります。第百四十七条は、これも又破産法第二百四十四条と同趣旨規定であります。即ち債権調査の期日におきまして、異議を述べられた更生債権者更生担保権者は、その異議を言つた者に対して訴えを起して、その権利の存否とか、範囲とかを確定する、そういう手続を定めたものでありまして、第百四十八条は、その訴えの管轄を更生裁判所の管轄に専属するものといたしまして、更生手続を現に取扱つている裁判所がこの訴えをも管轄いたしまして、全部を見て手続の促進が図られるというような考え方をいたしておるわけであります。第百四十九条は、破産法第二百四十六条と同趣旨規定でありまして、これは訴訟の受継に関する規定であります。  第百五十条は、これも破産法第二百四十七条と同趣旨規定でありまして、請求原因の制限をいたしたものであります。即ち更生債権者又は更生担保権者は、第百四十四条の規定によつて更生債権者表又は更生担保権者表に記載した事項についてだけ権利確定の訴を起し、又は前条の規定によつて訴訟を受け継ぐことができることにいたしまして、あとからこれ以外の点についていろいろ文句を言つて来て、そのためにこの確定手続が無用に遅延するということがないように論点を限定いたしまして、確定手続が迅速に終了いたし、延いては更生手続が全体として円滑に運び得るように考えたものであります。次に第百五十一条でありますが、これは更生債権者等のみの異議の主張を規定したものであります。更生債権又は更生担保権につきまして、管財人管財人がいないときは会社、但し更生債権及び更生担保権の調査を行う審査人があるときはその審査人、こういう者から異議がなくて、更生債権者更生担保権者又は株主だけの異議があるときには、百四十七条の場合と逆にこの異議者が訴の方法によらなければ異議の主張の効力はないことを規定いたしたものであります。異議権の行使を慎重にさせる趣旨であります。この場合に異議者が数人あるときは共同原告となることを要することになります。即ち百五十一条は、管財人と申しますか、要するに会社側からは別に異議がなくて、単に更生債権者同士、更生担保権者同士、株主同士、そういう仲間だけからのみ異議があるというものにつきましては、一つの特別の取扱いをいたしまして、異議を述べられたほうから、その異議者を相手にして確定訴訟を起すような建前にいたしておきますと、単に異議の言放して、それで相手方の訴訟を起すのを待つというような形になりますので、異議を言うのに慎重を欠くというようなことになりまして、手続が非常に紛争する虞れがありますので、こういうものにつきましては、異議を言う側、即ち文句を付ける側から必要があれば訴訟手続を訴えて異議を主張しなければならないといたして、第百四十七条と逆の立て方にいたしたわけであります。  次に百五十二条でございますが、これは破産法第二百四十八条と同趣旨規定でありまして、執行力ある債務名義又は終局判決のあるような更生債権等につきましては、普通の更生債権違つて特別の取扱いをすることが適当でありますので、こういう場合には異議者は会社がすることができる訴訟手続においてのみその異議を主張することができるというようにいたして、特別の取扱いをいたしたわけであります。これは破産法の場合と同趣旨であります。次に百五十三条、これも破産法第二百四十九条の規定と同趣旨でありまして、確定訴訟の結果を更生債権者表等に記載する手続を定めたものであります。次に第百五十四条も破産法第二百五十条と同趣旨規定でありまして、確定訴訟についてした判決の効力について定めたものであります。次に第百五十五条も破産法第二百五十一条と同趣旨規定でありまして、訴訟費用の償還を請求することができる場合を定めたものであります。次に百五十六条、これも破産法第二百五十二条と同趣旨規定でありまして、確定訴訟の目的の価額の算定についての規定であります。  次に第百五十七条も、これも破産法第二百五十四条と同趣旨規定でありまして、先ほど申上げました百二十一条第五号、罰金等請求権、それから百二十二条に掲げてあります租税等請求権、これにつきましては国又は公共団体も更生手続に協力するという意味におきまして、遅滞なくその額とか、原因及び担保権の内容を裁判所に届出なければならないということにいたしたわけであります。これらの請求権は他の更生債権と違いまして、或いはこれを減額したりするのにつきましては、或いは不可能であり、或いは相手の同意を要するというようなことになつておりまして、更生手続自体においてこれを左右するということは、或いは不可能であり、或いは非常に至難であります。併しながらこういうものは一体どの程度であるかということがわかつておらなければ、全体としての更生計画は成立ちませんので、こういうものにつきましても届出をして頂いて、全体の計画を立てるのに参考にしようというわけであります。尤も普通の更生債権等と違いまして、この届出につきましては期間の定めは別にいたしませず、ただ遅滞なく届けなければならないということにいたしまして、一定の期間が経過した後の届出は受理しないというような規定はなく、国又は公共団体の誠意ある協力に待つという建前をとつております。次に第百五十八条でありますが、これも破産法第二百五十五条と大体同趣旨規定でありますが、管財人に対して通知を要しないことにいたしてあります。即ち管財人等はこの百五十七条の規定によつて届出があつた請求権原因が訴願、訴訟その他の不服の申立を許す処分であるときはその請求権について会社がすることのできる方法で不服を申立てることができる、国又は公共団体で裁判所に届出があつたといたしましても、その届出が確定的なものとして取扱うということにいたしませんで、会社がそれに対して何らかの方法で不服を申立ることができるという場合には、管財人等が更生手続になつてもこれをすることができるというふうにして調整を図つておるわけであります。  次に第百五十九条でありますが、この百五十九条の規定は、この更生手続規定中最も重要な規定一つになるわけであります。百五十九条は更生債権者、更生担保権者及び株主の分類について規定しております。これらの権利者はそれぞれその権利性質及び利害の関係が異なつておりますので、これを組に分けて更生計画案について決議させることにしたわけでありますが、その決議のため及び計画案作成の便宜のためにこの分類をすることにいたしたのであります。この分類は権利者の利害及び決議の成否に影響を及ぼすことが非常に大きいので極めて重要なものであります。即ち更生手続におきましては更生計画を立てて、その計画に従つて会社更生させて行くということになるわけでありますが、この更生計画を立てるにつきましては危殆に瀕した会社でありますので、会社債権者担保権者、株主その他いろいろの利害関係が非常に錯綜しておるわけでありますので、各方面の利害を調整し、各方面の納得の行くような計画を立てなければ、計画自体が法律に定めた数の同意を得て可決になるということになりませんので、その計画を立てることが非常に大事になるわけでありますが、その計画を立てるにつきましては、大体各方面の利害を調整する必要があるわけであります。その利害調整につきましては、大体利害関係を同じくするもの、利害関係を同じくするものと申しますのは、事実上利害関係を同じくするというものと、法律的に大体利害関係が同じと認められるというもの、そういうようなもので組を作つて、その組の中でいろいろの折衝をして、その組のものはその組の中で、多数決の法理を働かせて議決をして、そして各組で全部更生計画案に賛成したならば、その更生計画案は成立というふうにいたしますと、錯綜した利害関係を調整するのに便宜でありますし、又多数決の法理を働かせる上につきましても合理的でありますので、この更生手続はそういう技術的方法を採用したわけでありす。即ち更生債権者更生担保者及び株主は、更生計画案の作成及び決議のために、左の組に分類されるものとする。第百二十一条第一項第五号、これは罰金等であります。第百二十二条に掲げる請求権、これは税金等であります。但し第百二十一条第一項第五号及び第百二十二条に掲げる請求権を有する者はこの限りでないとあります。罰金や税金等につきましては、この組に分類させるという場合、組の観念に入れておりませんが、その他のものにつきましては全部組に分類させるということにいたしたわけであります。その組と申しますのは、大体第一号から六号に掲げられておりますように、先ず更生担保権者の組、それから一般の先取特権その他一般の優先権のある債権を有する更生債権者、それからいわば普通の更生債権者の組、次に四号の劣後的債権を有する更生債権者、次にこの残余財産の分配に関し優先的内容を有する種類の株式を有する株主の組、六に前号に掲げる以外の普通の株主、大体定義としてはこんなような六種のグループが考えられるわけであります。ここに一号から六号に番号を付してありますこの番号の順序は、大体この権利の何と言いましようか、尊重すべき度合に従つて番号を付してあるのでありまして、やはり更生担保権者は普通の債権者よりも優位の地位に立ち、債権者株主よりも優位の地位に立つというのが根本の思想でありまして、それに若干の更に小さい差別を付けてこういうような順序に並へたわけであります。一応こういうような組に分けるものといたしましたが、百五十九条の第二項におきまして、「裁判所は、前項各号に掲げる者の有する権利性質及び利害の関係を考慮して、二以上の組の者を一の組とし、又は一の組の者を二以上の組として分類することができる。」といたして、実情に応じた措置がとり得るようにいたしてあるわけであります。併しながら裁判所は如何なる場合でも更生債権者更生担保権者及び株主と、みんなつまり三つを一緒の組にしたり、或いは更生債権者株主を一緒の組にしたりすることはできないのでありまして、少くとも更生債権者更生担保権者株主は、これは別々の組にしなければならないといたしておるわけであります。と言いますのは、更生債権者更生担保権者株主というのは、その権利性質、利害が一応根本的に違うと見ておるわけであります。この組分けは裁判所がするわけでありますが、この管財人とか、あとに述べる審査人、会社並びに届出をした更生債権者更生担保権者株主、こういうものは勿論裁判所に対して意見を述べることができることになりまして、裁判所は実際の運用におきましては、みずからの調査したところと、これらのものの具申する意見とを総合して、最も合理的に分類を定めるということになるかと思います。而うしてこの分類を如何にするかによつて計画の案が非常に合理的にまとまるかどうかということに重大な関係がありますので、この組分けというものは、この更生手続における一つの大きな眼目になつておるわけであります。なお裁判所は一旦組分けをしても、その後いろいろの事情によりまして、合理的と認めた場合には、計画案を決議に付するまでは、いつでもこの分類を変更することができるということにいたしております。要するにこの分類につきましては、百五十九条二項但書の更生債権者更生担保権者及び株主、これは別々の組としなければならないという大きな枠を置いてあるほかは、大体広く裁判所に合理的な裁量権を認めているわけでありまして、この辺に具体的事情に応じて裁判所とか、管財人などの識見、能率等が働く余地が多いものと存ぜられる次第であります。  次に第百六十条でありますが、本条更生計画から除外できる更生債権者及び株主について定めたものであります。会社財産を事業の継続を前提として評価して清算したものと仮定した場合に、債権弁済又は残余財産の分配を受けることができないような債権者又は株主は、更生手続に参加して正当な利益を有さないものということができますので、これを更生計画から除外できることにいたしたわけであります。このようなものは、仮に届出がしてあつて更生計画の議決には加わり得ない。そういうことになるわけであります。と申しますのは、更生手続は真に会社に利害の関係を持つ者が集まつて会社更生させようというものでありまするから、会社に対して何ら財産上の持分と申しましようか、権限を実質的に持たないものは、この計画から除外するほうが手続を円滑に進める上から便宜である。のみならず、又除外いたしましても、そういうものの実質的権利を害することになりませんので、このようにいたしたわけであります。  次に第百六十一条は、代理委員の選任について定めたものであります。この代理委員の制度も新らしい考え方でありまして、これは更生手続には多数の利害関係の異なる権利者が参加して、而も更生計画案の作成及び決議等のために、相互に折衝を行うようなことが多いので、このような代理委員という制度を設けて手続の円滑迅速な進行を図ることができるようにする必要があるから、このような制度を設けたのであるのでありまして、要するに集団的な、大量な手続を簡易に合理的に運ぼうという一つの技術的な要請に基いているわけであります。即ち更生債権者更生担保権者、又は株主はそれぞれ共同して、又は各別に、一人又は数人の代理委員を選任することができることにいたしましたが、これにつきましては、裁判所の許可を条件といたしました。これは例えば俗に言う三百などというものが中に入つて更生手続を撹乱し、或いは不当な利益をむさぼつたりすることのないように、裁判所の許可にかからしめて、そのような弊害を防ぐ趣旨もあるわけであります。こういう選任せられた代理委員は、更生手続に属する一切の行為、仕事ができることになつておるわけでありまして、又代理委員の代理権の権限の行使が著るしく不公正であると認めるときは、裁判所はその許可を取消すということができることにいたしまして、代理委員の制度が悪いほうに用いられるようなことを防ぐ手段を考えておるわけであります。  次に第百六十二条でありますが、これは社債権者に関する特則を定めたものであります。第一項の規定を設けましたのは、この更生手続におきましては、社債権者を通常の場合と同様に集団的に取扱うということは必ずしも適当でありませんので、第一項の規定を置きまして、社債権者集会というものは更生手続における社債権者権利の行使については決議することができないというふうにいたしましたわけであります。従いまして社債権者集会というものは、社債権者更生手続における権利の行使について決議いたしましても、その決議は無効でありまして、社債権者はこれに拘束されることがないことになるわけであります。第二項は社債権者の利益の保護のために設けた規定であります。これは社債権者というものは割合零細な債権者でありまして、而も多数で各方面に散らばつておるというような関係にある場合がありますので、そういう場合に社債募集の委託を受けた会社とか、又は担保附社債信託法の受託会社というものがありますれば、そういう会社が社債権者のために更生債権届出とか、議決権の行使とか、その他更生手続に属する一切の行為をすることができることとするのが、こういう会社の仕事としてもふさわしいものであり、又社債権者の保護にもなりますので、第二項の規定を置いたわけでありまするが、併しこの場合におきましても、更生債権更生担保権届出をした社債権者がある場合におきましては、そういう社債権者の独自の行動を認めることにいたす意味におきまして、第二項の但書を設けたわけであります。第三項は手続を簡略にするための規定でありまして、担保附社債信託法第九十条の例に倣つたものであります。次に第四項は、第二項の会社に対して更生手続に属する行為を行うことを任せることが適当でないと考えるに至つた未届けの社債権者のための規定でありまして、社債権者といえども、更生手続におきましては、ばらばらにこれに参加するという思想がここに出ておるわけであります。第五項は、同一の社債権について二重に更生手続上の権利行使が行われることを防ぐための規定であります。要するにこの第百六十二条は、先ほどまでに申上げて来ました更生債権更生担保権の範疇に一応入るものでありますが、こういうような社債権というものの特異性を考え、その特異性と普通の更生債権届出或いは更生債権者等の利害との調整を図つた特則でありまして、例えば若しこの場合に、社債権者というものは、社債権者集会というものがあるから、そちらで行動を決して一団として更生手続に入つて来てもよいではないかというような考えも一応議論として言えるとは思いますが、そういたしますと、例えば届出ない普通の更生債権者議決権を行使することができず、而も失権の効果が附せられる、ところが社債権者というものをそういうふうにまとめて行動させますと、届出ない社債権者につきましても、或る程度の発言力ができ、即ち議決権が生ずるというようなことになりまして、議決権の分配におきまして、普通の債権者との間に非常に不公平が生ずるではないかというようなことも考えられ、又もともとこの更生手続株主につきましても既存の株主総会という会社法上の機関ではなくて、一応これをばらばらにばらして、個々の株主、個々の債権者としてこの手続に関与させ、真に熱意のあるものを中心として会社更生させようという考え方に出ておりますので、社債権者につきましても、やはりこれを原則としてはばらばらに権利を行使し得るような仕組にしておきまして、ただ特別の場合に社債権者の特異性を考えて、例えば百六十二条第二項のような規定を置きまして、その保護を図り、その間の調整を図つておるということにいたしたわけであります。この社債権の取扱もこの会社更生法立案の途上におきましては、いろいろ議論した点でありまして、問題点の一つなつたわけでございます。  次に第百六十三条でありますが、これは相殺権の規定であります。相殺権は破産法で相殺権を認めたものと同趣旨で認めたものでありまするが、会社更生手続会社事業の維持更生を目的とする手続でありまして、破産の場合のように平等分配を目的とするものではありませんから、条件附債権等につきましては相殺を認めないで、又更生計画案作成の都合等から相殺権行使の時期に一定の制限を加えることにいたしました。そういう点で破産法に多少変更を加えておるわけであります。第百六十四条は破産法百四条と同趣旨規定でありまして、特段に説明いたすこともありません。
  4. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それでは丁度切りがよろしうございますから、この程度で休憩いたしまして、午後一時半から再開いたします。    午後零時十分休憩    —————・—————    午後一時四十四分開会
  5. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 午前に引続きまして委員会を開会いたします。  昨日及び今日午前中までの政府の説明に対する質疑をいたしたいと思います。別になければ、私から質疑をいたしたいと思います。よろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 御異議ないと認めます。先ず第五条の更生手続参加とあるのですが、この参加の意義ですね、これをお伺いしたいと思いますが、いわゆる更生手続を申立した者も含むのか、或いは届出した者だけを言うのか、参加の内容の意義を明らかにして頂きたいと思います。破産法の場合において、破産の申立した場合には、時効中断の効力があるかどうかという問題になると思います。この場合にはそういう問題が起るかどうか。
  7. 野木新一

    説明員野木新一君) 第五条の更生手続参加は、更生債権者について申しますと、百十三条、「更生債権者は、その有する更生債権をもつて更生手続に参加することができる。」、更生担保者につきましては、百二十四条におきまして更生に参加することができるというこの参加と大体同じような考え方でありまして、即ち同趣旨でありまして、これは破産法の場合と同様でありまして、文字の上からでは申立は一応含まないことになつておりますが、解釈上破産法の場合もたしか破産手続の参加は時効中断の効力を生ずるということにいたしまして、この破産手続参加のうちに破産の申立の場合も含むという趣旨で解釈しておりますので、この場合も破産法の場合と同様に解釈されるものと考えておるような次第であります。
  8. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 破産の場合の申立が時効中断の効力を生ずるという判例はどうなつておりますか。
  9. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 確か民法第百五十二条におきまして「破産手続参加ハ債権者カ之ヲ取消シ又ハ其ノ請求カ却下セラレタルトキ」とありまして、破産手続の参加という言葉だけを使つております。この手続の参加というのは、破産法の字句から見ましても申立を含むということは現実には申せないと考えるのでありますが、判例上申立の時効中断の効力を生ずるというふうになつておると存じております。本件の場合でも同様な解釈で行けるものと、こういうふうに考えております。
  10. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 次にこの第七条ですね。更生事件の移送の決定について、第五十条で即時抗告が認められるのか。若し認められないとすれば非常に支障を生ずるのではないかと思われるのですが、この点はどうですか。
  11. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この第五十条にあります更生手続開始の申立についての裁判と申しますのは、開始の申立を棄却する、或いはそれを援用いたしまして更生手続を開始するというふうな裁判のことを申したのでございまして、第七条に申しますこの移送の決定、第七条に規定しておりまする移送の決定の裁利、これは含まない趣旨でございます。で、この裁判に対しましては、第十一条の原則によりまして、この法律に特別の規定がない場合に該当するので、抗告ができないという建前にいたしてあります。これはどこで裁判をするかというふうなことについて、当事者の不服の申立を許して、その裁判に力をとられるということでは手続が遅れるということで、不服の申立を認めないほうが適当ではないかということで、こういうことにいたしたわけであります。
  12. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 第七条の後段にあるところの「他の営業所」と、こういう表現の中には支店も含むのですか。
  13. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 支店も含む趣旨でございます。
  14. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 今御説明の中にちよつとありましたが、第十一条に限定された以外には抗告を許さないというような御趣旨の御説明がありましたが、一般の民訴の規定によつて即時抗告は許されるかどうか、それは排他的になるのですか。
  15. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 民訴の規定特則をなすのでございまして、本条におきまして、この決定に対しては即時抗告を許すということが特に謳われない限りは、不服の申立を許さないというのが第十一条でございます。
  16. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 第十三条ですが、「管轄区域内の市町村の事務所」、こういうふうに書かれてあるのですが、そうすると、関係市町村には全部これを掲示せしめることになるのですか。
  17. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この第十三条の第一項の「簡易裁判所又はその管轄区域内の市町村」と申しますのは、その本店の所在地の市町村の一カ所で足りるという趣旨でございます。
  18. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それからその一カ所はどこでも、例えば今日の場合においては事務所とか、出張所とか、そういうものがありますが、その場合において主たる一カ所を指すのか、或いはどこでもいいという意味か……。
  19. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 本店の所在地、即ちその市町村の区域内に設ける本店のあるその市町村……。
  20. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それはわかりますが、本店のある市町村及びこれに準ずべき区ですね、ということはわかりますが、その市町村の事務所ですよ、掲示するほうの側です。掲示するほうの市町村の事務所が一カ所あれば問題はないのですけれども、数カ所ある場合は、今日多く見受けられるのですが、その場合にどこにしたらばいいということは、この法律が予想するのですか。市役所なら市役所一本でいいのか、市役所の出張所、支所というものは全部せんならんのか、或いは市役所にせなくても支所だけでいいのか、どういう意味になるのですか。
  21. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) その点は、これは通常その市町村におきまして公示する方法といたしまして、一定の場所に掲示をすべき場所などをきめまして、そこで通常のほかの公告もやつていて、一般に公示すべき掲示の方法をとつていれば、その方法でなければならんということで、特にこの法律といたしましては細かいところまでは規定いたさなかつたので、そういう一般の方法に従つてやればいい、こういうふうな考え方でございます。
  22. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) その考え方はわかりますが、受ける側としては、市役所のほうで公示するといつても、市役所の前の公示場でするのか、或いは市役所が受けたらば自分の管轄区域内で全部出張所へ皆しなくちや効力がないというのか。効力の公示が完全に行われたか、行われないかという法律問題が生ずるわけですか、一カ所でするとかというふうに明らかにせんでもいいのですか。
  23. 野木新一

    説明員野木新一君) この点御指摘のように市町村の事務所とありますので、市町村の事務所が数カ所あれば全部にしなければならないのではないかという疑問が一応生ずるかとも存じますが、立案趣旨といたしましては、市町村の大体主たる事務所の通常掲示場に一カ所にすれば、まあそれで足りるというふうに考えておる次第であります。
  24. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) その次にこれに準ずる公署というのはどういうものを指すのですか。
  25. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) これは東京都におきまする特別区のようなものであります。地方自治法上特別区と申すのでございます。
  26. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 東京、大阪、名古屋のごとき……。
  27. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) いや、東京だけでございます。ほかの都市はやや性質違つております。
  28. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 東京におけるところの区を指すのですか。
  29. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) さようでございます。
  30. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) このずつと条文を読んでいると大したことはないようですが、「又は」、「若しくは」、「及び」と、こういうふうな用語が、繋ぎ文字が入つておるのですがね、これはどういうような意味でこういうような繋ぎになるのですか。ただ運び方だけなんですか。
  31. 野木新一

    説明員野木新一君) この最初の「裁判所及び」の「及び」は裁判所と或いは会社の本店所在地を管轄する簡易裁判所の掲示場は両方するという趣旨の「及び」であります。今度は「会社の本店の所在地を管轄する簡易裁判所又はその管轄区域内の市町村の事務所」と申しますのは、この更生裁判所のほかに今一カ所掲示しなければならないが、それはその本店所在地を管轄する簡易裁判所の掲示場に掲示してもいいし、又はその簡易裁判所の管轄区域内の市町村の事務所若しくは市町村の事務所に準ずる公署の掲示場に掲示してもいい、そういう意味で「及び」、「又は」、「若しくは」を使い分けておるわけでございます。
  32. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 先ほどの御質問のちよつと補足をいたしますと、市町村の事務所という観念でございますが、先ほどちよつと失念いたしておりましたが、この事務所というのは、地方自治法第四条の事務所の規定がございますが、この規定に対応いたしたものでございます。ほかにこの市町村が支所等を設けております場合はこれに含まない支所、これは支所等のことにつきましては、地方自治法第百五十五条に規定がございます。こちらのほうは事務所と申しておりますが、第十三条におきまする事務所というのは、従いまして主たる事務所と申しますか、中央的な事務を行いまする中心的な事務所のみを指すわけであります。
  33. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) この次の二十条の三項ですね。「登記所は、更生手続開始決定取消の登記をする場合において、前項の規定によつてまつ消した登記があるときは、職権で、その登記を回復しなければならない。」、こうあるのですが、本来この嘱託登記は廃止決定が確定してから登記するのではないですか、すると、この三項のような場合は起らないけれども……。
  34. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この点につきましては、昨日もちよつと御質問で問題になつた点でございますが、更生手続開始決定は決定と同時に直ちに効力を生ずる、その確定を待たないで効力を生ずるということになつております。その結果開始決定がございますと、和議手続、整理手続及び特別清算手続はその効力を失うということが第六十七条の第一項で規定せられているわけであります。従いましてその後開始決定が取消されるということになりますと、同時に先になされた和議手続、整理手続及び特別清算手続の効力も、これを復活させることになるわけであります。そのために第三項におきまして、手続開始決定取消の登記をする場合には、同時に和議手続、和議開始の登記等の登記も同時に職権で抹消させる、そうしてこの和議手続等との関係を登記簿上明瞭ならしめるということにいたしております。
  35. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 更に二十条の四項の場合も同じような問題が生ずるのでありますが、これは確定後に登記させるということにしては、どうしても整理は付かないのですかね。
  36. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) そういうふうに一旦なされた登記が又回復させられなければならないという事態の生ずることは好ましくないことではございますが、更生手続開始決定は破産手続等と同じような理由によりまして、迅速に効力を発生させる必要があるということで、特に確定を待たずに効力を生ぜしむることといたしました以上は、すでに効力を生じておるにかかわらず、登記簿上は何ら表示されていないという事態を生ずるということは好ましくないと考えられますので、効力に従つて登記簿上も記載を即応させるというのが適当じやないかと考えた次第であります。
  37. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 次に二十三条と二十五条に更生手続開始決定の取消の確定の場合を入れなかつた理由をお伺いしたいのですが。
  38. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この更生手続開始決定取消決定と申しますのは、実際上更生手続開始決定を取消ししまして、更に更生手続開始の申立はこれを棄却するという裁判になるわけであります。個々更生手続開始申立という場合は、この場合も含めた、取消の場合も含めたシステムでございます。
  39. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 取消の場合も含めておるのですか。それから昨日これはちよつと伺いましたが、三十一条の場合、昨日お伺いした趣旨はわかりますが、この場合ですね、昨日聞き漏らしたのですが、この場合の申立者として株主又は債権者、そういうものもできるのですか。
  40. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) できる趣旨でございます。
  41. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 三十二条の二項の要件として書かれておる一乃至八のうちに、支店の所在地も書くべきじやないでしようか、そうすることが実体を把握する上においてもいいのじやないでしようか。
  42. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 支店の所在地、所在物所も記載することは好ましいということは考えられるのでございますが、手続は成るべく簡略にいたしまして形式的な要件を備えないために申立者を不適当として排斥する場合を少なく最小限の要件を書いたわけであります。支店の活動或いは所在場所なんかが、この更生手続におきまして非常に意味を持つという場合におきましては、第五号会社の目的及び業務の状況、そういうような場所で適宜必要な記載をさせても目的を達し得るのではなかろうかというふうに考えまして、そこに要件としては掲げなかつた次第であります。三十四条の手続の費用の内容ですが、主なる項目はどういうのですか。又これに関して何かルールでも作るという予定があるのですか。破産法と同じく国家から支弁の制度を入れるとか、或いは更生手続に要する費用は会社の負担にするということですか、又は会社に対して事業のいろいろな費用の予納を命ずるような規定をするとか、そういうようなことをどこで賄うつもりですか。
  43. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 更生手続の費用といたしまして考えられるものといたしましては、先ずこの公告の費用或いは当事者に対する送達の費用、当事者及び関係人に対する送達の費用、それから管財人、審査人、調査委員、法律顧問等に対する報酬というようなものが考えられるわけでございます。それからなおこの会社の業務及び財産の管理に要する費用、これも広い意味におきまして、手続上のうちに含むというふうに考えております。これらの費用は誰が負担するかというふうなことにつきましては、これは民事訴訟法の一般規定に従いまして、それぞれ決定する仕組になつております。
  44. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、その業務及び財産の管理の費用というのは限度はわかりますが、業務の管理ということになると、相当な額が予納されるのですが、これをも含む趣旨というと、これは厖大なもので予納に堪えないのではないかと思う。又そんなに予納できるならば会社は確固として運営できて行くはずです。だからここに言うのはいわゆる裁判上に必要な費用、若しくは手続進行上必要の費用、いわゆる破産法の場合のようなそういうものを予想しているのではないでしようか。
  45. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) ここの考え方としては、やはり更生手続開始決定後の会社財産及び業務の管理の費用、これも手続の進行の上におきまして欠くべからざる費用ということを考えておるわけでございまして、例えば管財人が業務の管理に必要な借財をするというふうな場合に、これをまあ手続費用として考えるのが適当じやないかと考えております。そういうこともあるので、この第三十四条の第二項におきましては、「更生手続開始後の費用については、会社財産から支払うことのできる金額をも考慮して定めなければならない。」といたしまして、そういうものは会社から原則として支弁できるという場合には会社から当然支払うべきものであるから、そういうものまでも予め予納させるということになると莫大な予納を要するので、そういうものは予納させないようにというのがこの二項の趣旨でございます。
  46. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 併し現に、生産会社とすれば、いわゆる職員及び工員の給料の遅配、欠配ということが現実にある。そういう場合において製品は相当先行き見通しを立てなければできて来ない。或いはできた製品はストツクしておつても金融の対象に現在としてはなり得ないというような場合において、業務管理をして行く上においては、前から遅配、欠配を賄つて行かなくちやならない。それは会社財産においてはすぐはできないという見通しは、それはそういう例のほうが多いが、そういう場合も含めておるということになりますと、相当な金額になるのですがね。事実上到底この申立ということはできなくなつて来るのです。この点において、いわゆる金の制約においてあなたたちのお考え方破産手続の場合において通常取行われるところの裁判手続進行上、必要な最小限度を予納させるという趣旨から、あなたの今の御説明のように業務管理まで含めるというお考え方だとちよつと申立する者はなくなつてしまうのじやないですか。
  47. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この会社がすでに債務を負担しておる、で、債務の穴埋めまでもしなければならないと、而も……。
  48. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 穴埋めではない、これは管理して行くのに要る金です。例えば今決定があれば……、従来といえども遅配、欠配しておる、今月はまだ払わなければ継続できないという、業務管理をするのに管財人が選任せれれば、当然支払わなければならないと予想される金です。それをも含めるという、いわめる業務管理のための費用として含めるということになると大きな問題になつて来るじやないですか。遅配、欠配したのはこれは債権ですから、これは適当に各条で整備すればよろしい。
  49. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) その点は、この仰せのようにそこまでも常に営業の業務管理の費用までも予納させるということになりますと、非常に手続の費用はかかつて困ることになりますが、この通常の場合には、そういうものは会社財産から支弁できると、支弁できないような見込が確実なような場合には、これは更生手続を開始すべきじやない。
  50. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 若しそんなことになつておれば、この法律は使えないですよ。
  51. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 若し更生手続……。
  52. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 業務費用は支弁できない。できないから更生手続をするのです。
  53. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 当分それは……。
  54. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 当分できないことはわかつておる。
  55. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 予納を賄えれば……。
  56. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 予納を賄えると言つたつて、月に工員、職員の費用の人件費というものは、どんな会社つて一千万円以上の会社ならば少くとも月に三百万円見なければならない。ちよつと業態をやつておれば四百万円要る。大体に人件費は三三%である、業態としては……。理想としては二五%にしておる。それだけ諸井やまでの多額の金額を予納しておれば、更生手続の申立をするものはあり得ないのです。若しそれができるとすれば、それは更生手続でなくてもいいのです。だから問題は結局費用という中に、そういう広範囲のものまで含むかどうかということです。法文の見方からずつと見れば、従来の破産手続の場合におけるところの訴訟手続進行上必要な費用の予納を命ずる、こういうふうに解釈できるのですから、立法者の御趣旨が、そうでない業務管理まで含むということになると、それは由々しい問題になつて来る。事実上この法律は運営できない状態に陥つて来ると思うのです。
  57. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) まあ、そういう場合がないようにするために第二項を謳つたのじやないかというふうに……。
  58. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それじやまあ御説明は御説明として伺つておきましよう。そこは考慮して頂きたいですね。ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  59. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 速記を始めて……。
  60. 野木新一

    説明員野木新一君) 第三十四条の費用の予納の点につきまして、若干疑義が生ずる虞れがあるように思えますが、やはり第三十四条の費用の予納の規定を置いた目的、即ち規定の目的から考えて見まして、この第三十四条第一項の手続の費用というのは、やはり公告や送達の費用乃至管財人の費用、そういうようなものを一応予定して、差当つて手続を開始し、進行せしめるに必要な程度の金を積まして行くということに考えるのは規定趣旨に合致するものと存ずる次第であります。なお三十四条二項につきまして、この費用は裁判所が事件の大小等を考慮して定める、即ち事件が大きな事件で関係人が多数ならば費用もたくさん必要だろうということになりますので、注意的にこの規定を置いたわけでございます。第二項後段におきましては、特に会社以外のものが申立をする場合には、特別に費用の予納という点におきまして、申立が非常に害されるということがないように、例えば管財人の費用等につきましても、のちに会社財産から支払うことができるというような場合には手続を開始して、あと管財人の費用は会社財産から逐次払えばいいのでありますから、あらかじめそう多額を予納せしめる必要はないという考えで、注意的にそういう趣旨を明らかにしたものであります。大体この点はそのように解しまして、会社事業を経営して行く上の職工の将来の、例えば資金等までも初めから全部予納して置かなければ更生手続が開始できないというようなものまで、そこまではここで考えているわけではございません。
  61. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、前の御説明はそういうふうに御訂正になるわけでありますか。
  62. 野木新一

    説明員野木新一君) そういうような趣旨に訂正して御了解願いたいと存じます。
  63. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) この三十五条は、公共団体の長及び税務署長に報告すべきものとしているのですが、若し税だけのためとするならば、御承知の通り税というものは本店ばかりでなくして、支店は支店で独立してとられる、不動産は不動産の所在地でとられるのですが、そういうものに報告しなければ本条の目的を達しないのじやないですか。
  64. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 御質問の通り、会社税金はその本店の所在地以外でも徴収されるわけでございますが、開始決定がありましたとき、如何なる税務署に会社租税の納付義務があるかということは調査困難だと思います。而も全国各地に散らばつているということでございますから、これを必ず通知しなければならないと法定いたしますことは困難でございます。それで本店の所在地の税務署長が最小限度通知いたしまして、あとは内部的な措置によりまして、その税務署のほうから適宜連絡をとつてもらうということにいたした次第でございます。ただ第二項におきましては「第百二十二条に掲げる請求権につき徴収権限を有する者」といたしまして、本店の所在地以外の税務署の長も適宜意見を述べることができるというふうにいたしたわけであります。
  65. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 昨日ちよつとお伺いしたのですが、この第四十条の「調査委員」というのは、実際問題としてどういう範囲から選ばれるのですか。それに伴つてあとで出て来るのですが、二百九十三条で調査委員に対して報酬を出すことになつておりますが、開始決定前の調査のための費用というふうな問題は、裁判所の補助機関としてやる場合もあるのですから、そういう場合には本質的には訴訟費用というふうになつて来るのじやないのですか。その二点について……。
  66. 野木新一

    説明員野木新一君) 先ず調査委員はどのような範囲乃至は階層のものから、これを選任することを予想しておるかという点でございますが、法律といたしましては、四十条第二項に書いてありますように、「調査に必要な学識経験のある者」であるということと、「利害関係のないもの」という二つの限定を置いているだけでありまして、あとは事柄の性質に従つて、即ち三十八条に掲げる事由の有無、会社の業務及び財産の状況、こういうような号に定められておる事項に必要な調査をするのに適当な人であるような人は、大都会におきましては比較的求められるかも知れませんが、地方の小都会におきましては非常に限定されて来ると存じますが、それは和議とか、整理委員なども類似の仕事をいたしておりますので、その運用の経験等からして大体裁判所の判断に任してもよろしいのではないかと思つて余り細かい規定をいたさなかつたわけてあります。実際の運用の問題といたしましては、或いは弁護士のかたとか、或いは会計等に堪能なかたがた、その他会社経営に熟達したかたとか、そういうようなものから求められて来るようになるかと存ぜられますが、法律上は必ずしも限定しておらずに、裁判所の和議等の運用の経験及びこの法律を運用した実際の経験等に任しておる次第であります。なお次にこの二百九十三条に関連いたしまして、調査委員の報酬でございますが、調査委員は或る意味で裁判所の補助機関のようなものでありまして、その点におきましては、後に申します策財人、審査人等も同様の性質になるものと存ぜられますが、これらにつきましても、同様にこの報酬の規定を置いておるわけでございます。特にこの報酬の規定を置きましたのは、この調査委員とか、管財人等にその人を得るためにはやはり然るべき報酬を払わなければなかなか適当な人を得られない。而もこの更生手続を円滑に成功させるためには、例えば管財人とか、調査委員等に、その適当な人を得るということは最も大事なことでありますので、特にこういうような報酬の規定を設けて、その標準等をはつきり法律で規定いたしまして、その人が得られるように工夫した次第であります。
  67. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 次に四十三条ですが、「調査委員は、裁判所の監督に属する。」とありますが、これは「監督」という文字の範囲ですね。指揮、命令をも含むのですか、どうですか。ただ身分上の監督だけでございますか。
  68. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この「監督」は身分上の監督の意味でございまして、職務の内容に亘りまして、こういうふうな方法の報告をしろ、或いは意見を出せというようなことまでも監督する、監督をして指示するということは含めていないのであります。
  69. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 四十六条の第一号と第二号の対照ですね。一号の場合は非常に長い期間を設けて、二号の場合は一カ月と、こう制約しておるんですが、これはもう少し幅広くとつておく必要はないのですか。二号の場合……。
  70. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 第二号の「第一回の関係人集会」と申しますのは、更生手続開始決定がありました後、できるだけ早い機会におきまして、更生手続開始後の会社の管理の方針、管財人の選任等につきまして関係人の意見を聞く、そうして今後の会社の運営の根本方針を決定するというために招集するものでございますから、これは一月以内という期限を附するのが相当でないかと考えた次第であります。第一号の「届出期間。」でございますが、これは場合によりまして一月とか、二月では非常に困難な場合が多い、非常に多数の株主債権者に周知して、そうしてやはりその人たちが一定の書類を備えて届出しなければならないということでございますから、余りに短かくいたしますことは適当でないと考えまして、二週間以上四月以下といたしたわけでございます。
  71. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) この第一号の但書によりますれば、「その期間は、決定の日から二週間以上四月以下でなければならない。」と、こうなつておるのですが、第二号の場合は、これは決定の日から一カ月以内でなければならないということになつております。すると、この比較から行きますると、四カ月という期限が第一号ではなされているのですが、そうすると、届出中に第一回の関係人集会というものを催すことになるのですね、必然的に……。その矛盾ですね。
  72. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) そういうふうな場合がございます。まだ届出期間が経過していない前に第一回の関係人集会が開かれる、併しながらこれは止むを得ないのじやないか。第一回の関係人集会を成るべく早く開くという必要があれば、そちらのほうを守る。そちらのほうの原則を貫く以上は、これは止むを得ないのじやないか。ただその日までに届出のあつた人、それが集まつて意見を述べるということになるわけです。それですから第一回の関係人集会の期日というものは、それほど本質的な権利の得喪を起すものでもございませんから、その程度でも権利をそれほど侵害するということはないのじやないかと考えております。
  73. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) これは第一回の集会日によつて、すべてのことが決定されるようなことはあり得ないですか。
  74. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 第一回の関係人集会はこの会社の業務及び財産の管理、管財人の選任等に関する方針を決定するだけでございますから、それほど本質的な権利には影響しないのじやないかと思います。
  75. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、第一回の集会によつては未届者の権利を害することはないというわけですね。
  76. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 全然害することはないということは言えないかも知れませんですが、やはり成るべく早く開くという趣旨を貫く以上は止むを得ないのじやないかと考えております。若しその期日において権利を行使しようと思えば、それまでに届出をすればよろしいというふうなことを考えております。
  77. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 第一回は早く開くという趣旨はいいですけれども、それによつて重要事項がどんどん決定されるということになると、未届者は第一号によつて四カ月の期間の余裕が認められているにかかわらず、第二号によつてはそれをすぐ制約される、手の裏を返すように制約されるということになるのですから、法律の建前としては、第一号で四カ月の権利を与えておるのに、第二号で事実上制約されているという不公平が如実に文字の上に現われて来るのじやないですか。
  78. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この第一回の関係人集会は、先ほど申しましたような会社の業務及び財産の管理等について意見を述べるというだけでございまして、裁判所はそれに拘束されて、何か決議をしてそれに拘束されるというふうな性質のものでもございません。それから業務管理の方法が、ここで一応方法なり、方針なりが決定いたしましたといたしましても、その方針は別に将来永続的に拘束的なものではございませんので、裁判所はその後適宜状況によりましてその方針を変更することができることになつておりますので、その後の届出した債権者の意向によりまして、適当にその管理の方法変更して、その債権者たちの意向に副うようにすれば、それほど権利を侵害するということは心配しなくてもいいのではないかと考える次第であります。
  79. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 次に四十七条の一項の二号に審査人を加える必要があるのじやないでしようか。
  80. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 四十七条は更生手続開始決定と同時に決定された事項を公告するという定めでありまして、管財人は四十六条によりまして、更生手続開始と同時に選任するわけでございますが、審査人のほうは原則として同時にということは考えられておらない。それからもう一つの理由といたしましては、管財人は業務及び財産の管理をするという非常に大きな権限を持つておりますが、審査人のほうはそういう権限はなくても、ただ計画を立てる、会社の業務の監督をする、裁判所に命ぜられた事項を行うというだけでございますので、特に公告をするまでの必要もないのじやないかと考えております。
  81. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) こういうことと関連して、この百九十一条の審査人の規定ですね。この配列はもつと前へ来るのじやないでしようかね。ここでいいのですかね。ここよりか置く場所がないのですか。
  82. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 百九十一条の審査人の規定の位置は、この位置が最も適当ということは必らずしも言えないかと思います。まあ考え方によりまして、管財人の第三章の規定、これを更生手続の機関というふうなことにいたしまして、そこに管財人ほか審査人、法律顧問なんかも固めて規定するというふうな方法も考えられると思います。併しながらここのこの法案でとつております考え方は、そういうふうにいたしませんで、この管財人だけを最も重要なる機関として取出しまして、一章を置くことになつたものでありますが、ほかのものは手続の順序に従いまして、調査委員は開始決定前のところの審理の段階に必要だというので、その該当部分に挿入し、又審査人は更生手続開始後の管財人の業務と言いますか、司るべき職務ですね、司るべき職務の補充的な機関として、この位置に規定いたしたのであります。なおより適当なる場所がありますれば、これはもう少し考慮してもいい、或いは考慮する余地はあるかも知れません。
  83. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) もう一つ四十七条でお伺いしたいのは、この第四項は届出を怠つた者のみの損害賠償規定しているのですが、若し第一項第四号に反して弁済又は交付を受けておるそれによつて損害を生じた場合、その場合賠償を求めることはどうするのですか。それは放任するという意味ですか。この第四項は、届出を怠つた者に対しては損害を賠償しなくてはならないと規定しておりますね。若しその第一項第四号の場合ですね、それに反して弁済又は交付を受けたというような者に対しては損害を生じた、そういう考に対してはこういう規定をしなくてもいいのですか。この第四項の場合と第一項の四号の場合との権衡ですね。怠つただけでも賠償を命ずるという、一項四号に違反してなした行為に対して何らこれに対する請求はないというのはおかしいじやないですか。
  84. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 若し会社債務者会社財産の所持者が本来この弁済をし、或いは財産を所持するにかかわらず、その行為を、とるべき行為をとらなかつたというふうな場合におきましては、これは不法行為というふうな条件に合致いたしますというふうな場合には、これは会社からそういうふうな請求ができるものじやないか。若しそういうふうな条件に合致いたしませんような場合には、これは本来の弁済すべからざるものを弁済したという状態、あるべき状態、弁済する場合に弁済したという場合には、そのあるべき状態に一致させるということで足りるのじやないかと考えます。
  85. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) どうもその権衡上納得できんですな。
  86. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この四項は若しこういう規定……四項は第一項の四号によりまして、そういうふうな義務を課した、その義務の制裁として規定したものであると考えますので、或いはこれはまあそういう場合との権衡は失しないというふうにも考えられるのじやないか、まあ破産法も同様の規定になつておるので、それに倣つた次第であります。そういうふうに考えております。
  87. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 四十八条で法務総裁に通知しろというのですが、証券取引委員会に通知するということは、ちよつと関連するが、法務総裁に通知するという関連性はどうですか、必要性ですが。
  88. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この法務総裁と申しますのは、公益の立場を代表させるという趣旨で、この手続について常に発言を認める機会を与えるという趣旨で通知することにいたしたのであります。
  89. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 法務総裁は、この手続に対しては発言する機会があるのですか。
  90. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 例えば二百二条の第三項におきまして、法務総裁は更生計画案に対して意見を述べるということができることになつております。
  91. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) この五十条の規定による即時抗告は民訴の四百十八条によつて執行停止の効力があるのですか、ないのですかね。
  92. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この即時抗告については執行停止の効力はないと考えております。
  93. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 第二条のこれは特別規定になるのですか。
  94. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 第二条の規定趣旨から執行停止の効力はないというふうになるかと思います。
  95. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、第二条の趣旨から来るわけですか。
  96. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) さようであります。
  97. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、この四十七条の第四号の命令があつた後に即時抗告をなされた場合の命令の効力はどうですか。
  98. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 四十七条の命令ですか。
  99. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 四十七条の第四号ですね。
  100. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) さようでございます。
  101. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) この五十一条の場合は即時抗告を許す趣旨ですか。
  102. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 五十一条は五十条の規定によりまして、即時抗告があつて、その結果取消決定があつた場合、その取消決定に対しては、これは特別抗告はできますが、確定いたしましては普通の抗告はできないことになつております。
  103. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 特別抗告を許す趣旨ですか。
  104. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) さようでございます。
  105. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 五十一条の第三項の場合ですね、「異議のあるもの」という表現が用いられておる、これはどういうものを指すのですか。
  106. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この第三項の「異議のあるもの」と申しますのは、その債権に疑いのあるもの、或いはその額について争いがあるもの、そういうものは、管財人手続終了の際に、まだ払える段階に来ておりませんので、供託をするということになつております。
  107. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 異議あるものに対して供託を求めるということは少し酷に過ぎはしないのですか、必要性があるのですか。
  108. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 異議のあるものに対して、管財人のほうから抗告をいたすことになつております。これは破産法及び和議法の例に従つたものであります。これは止むを得ないのじやないかと思います。
  109. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 破産法規定していることは必ずしもいいとは限らないのですがね、新らしく作られるものに対しては……。
  110. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 手続が遅延いたしますと、費用がかかりますので、成るべく早く手続を終結いたしたい。併しながら二三の同一債権弁済がどうも争いがあつてうまく運ばないという場合には、何らかのその間の適当な措置を講じて、手続を早く終らせるというふうにする必要があるのじやないか、それでこの供託の制度を認めた、こういうふうに考えておるわけであります。
  111. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 次に五十三条の「管財人が置かれたときは、会社事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利は、管財人に専属する。」とこう規定されておるのですが、そうすると、取締役はどういう範囲において仕事ができるのか。全然取締役は経営その他から一切排斥されるのですか。例えば株主総会を招集するというようなことはできるのですか。そういう点まで取締役はできるということになりますか。又監査役、いわゆる会社のそうした機関はですね。
  112. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 管財人が選任されました際には、従前の取締役は依然としてその地位を保有いたしますが、事業の経営並びに財産の管理や処分をする権限は、管財人に専属いたします関係上、これらの権利は、取締役はもはや行使することができないわけです。併しながら会社の身分上の地位と言いますか、それに関連する職務、これは依然として残つておる。財産関係のない会社の人格自体に関する部分の職務は依然として残つておるという意味に考えておるのであります。従いまして例えば若し必要がありまして、取締役の改選をするというふうなことが必要なために株主総会を招集する必要がどうしても起きたというふうな場合には、これはその権限を認めざるを得ない、こういうふうに考えております。
  113. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、総会の招集権は誰に移るんですか。取締役にあるのですか、ないのですか。
  114. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 取締役に依然としてあるというふうに考えます。
  115. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、管財人の名を以て総会を招集せんでもよろしいのですか。
  116. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) さようでございます。
  117. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、取締役は総会の決議によつていろんなことを兼務されることはあり得ると思いますが、事業上のことはできないけれども、身分上のことだけできると、こういう意味ですか。
  118. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) さようでございます。
  119. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、取締役でも直接現場重役というものがあるのですが、そういう者は取締役として現場重役をやることになるのですか、或いは職員としてやることになるのですか。工場長が取締役になつたという場合において……。
  120. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 工場長が取締役になつたというふうな場合には、職員としての地位はございますが、取締役としての権限はもはや行使できないという状態にありますから、財産上の事項につきましては、取締役としての権限の行使はできない、単に使用人としての立場からその職務を行えるに過ぎないというふうに考えております。
  121. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、財産上に影響のある定時株主総会は誰が招集するんですか。
  122. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 更生手続開始後は、財産上の管理権は管財人に移ります。それから又利益の配当とか、利息の配当、こういうものはできないことになつておりますので、もはや定時総会を招集する必要がないというふうに考えております。
  123. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 定時総会が必要ないということは法律上の根拠があるのですか、商法では定時総会を開くことを要求しておるのですが、定時総会を開かないという法律上の根拠がどこかに与えられておるのですか。
  124. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 定時総会を開かなくてもよいという明文は書き上げてありませんが、第五十二条に、この一項において利益若しくは利息の配当をすることができないというふうな規定を持つております。この定時総会というものは決算をいたしまして、利益があれば利益の配当をするというふうなことをするものでありますが、そういうふうなこの利益配当等が禁止されております以上は、この定時総会も当然やらなくてもいいということをば含めて、そういう趣旨が窺われると考えております。更にこの管財人が置かれますと、会社財産の管理の権限は全部管財人に移りますから、そういう観点からも、もはや定時総会は開く余地がないというふうに解釈できるという考えから、特に明文を置きませんで来たわけでございますが、解釈としてはそういう考え方ができるのじやないかと考えております。
  125. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、商法の要求するところの定時総会、取締役の義務、監査役の義務というものはこの場合は尽さなくてもいいわけですね。
  126. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この定時株主総会を招集するというような義務はないわけであります。
  127. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、一面において旧理事者は事業を運営して行けるのでしようか。それは挙げてやはり管財人が運営して行くのですか。
  128. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 旧理事者は事業の運営はできないと思います。これはその権限管財人に専属してあるわけでありますから当然であります。管財人のみが運営権を持つておると思います。
  129. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、大会社の場合においては技術重役というものがありまして、その技術重役がすべて運営しておるわけですね。例えば造船の場合においては殊にそうですね。そうすると、これは造船技術というものが直接その事業に及ぼす影響というものは会社の興廃に関するような場合があるのですが、こういう現場重役に対してやはりその権限行使が許されないということになると、事実上会社事業というものが運営が阻止される、停止されるというようなことになりはしませんか。
  130. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) その点は非常な問題でございまして、事業の経営という点から考えますと、従前の理事者が経営を存続したほうが便利な場合が多いかと存じますが、一面管理の公正を期するという建前から申しますと、従前の経営者に依然としてその権限を委ねられるということは、これは好ましくないということが考えられます。その点の調整をとる必要があるわけであります。只今申されたような技術重役というふうなものが若しどうしても必要である、事業の経営の上において欠くべからざるものであるということでありますれば、これは会社使用人の地位において大いにその技倆を奮つて頂くということは決して差支えないわけでありまして、そういう方面で協力してもらう。併しながらどうしても管財人としての地位を与えなければうまく行かないというふうな場合には、これは数人の管財人を置きまして、そのうちの一人としてそのような技術重役を管財人にする、そうして全体としては手続が公正に運べる、而も事業の経営には差支えないというふうな措置も図れるようにということを考えております。
  131. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、もうこの手続が開始されますと管財人に一切移つて、従来の理事者というものは全く空名を維持するだけになつてしまうのですね。
  132. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 事実上はそういうふうなことになります。
  133. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 他にもこれはあるのですか。この五十四条の第三号ですね。借財という非常な平易な言葉を使つてあるのですが。
  134. 野木新一

    説明員野木新一君) これは実は破産法百九十七条にこの五十四条と同じような趣旨規定がありまして、その第五号にいわゆる借財という文字が出ておりますので、これを借りて来たものであります。
  135. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 併し我々の法律観念として、余り平易過ぎてちよつとわかつたようなわからんような言葉になつてしまうのですね。
  136. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 仰せのように少し借財という言葉破産法時代の言葉としては或いは適当だつたかも知れませんが、現存としては或いは古いのじやないかという考えも、或いは常識的過ぎるのじやないかと考えますが、商法の四百四十五条特別清算、これは比較的新らしいものでありますが、これも借財というふうな言葉があります。まあ他に適当な言葉も見当りませんでしたので、これらの例に従つたわけであります。
  137. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、この中には保証であるとか、債務の引受、手形の裏書、そういうふうなものは入るのですか。
  138. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この借財という言葉自身から見ますと、狭いようにも見えますが、保証、債務の引受、手形の引受も含むというふうに考えております。
  139. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 手形は入るのですか。
  140. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 入ります。手形振出の裏書でしよう。
  141. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 裏書です。
  142. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 裏書も含みます。
  143. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 保証も……。
  144. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 保証も含みます。
  145. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 債務引受も含むのですか。
  146. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 含みます。
  147. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) この会社財産の処分と一号にありますが、処分と言えば広い意味に見られるのですが、そうすると、現金の処分を含むのですかね。
  148. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 含む趣旨であります。
  149. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、弁済をも含むことになつているんですね。
  150. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) さようでございます。但し少額の場合については第一項の例外によりまして除外されております。第一項の但書によりまして、少額の財産の処分法につきましては裁判所の許可を得なくてもいいという場合が認められております。
  151. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、百十二条との関係はどうなるんですか。
  152. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 百十二条は更生債権、即ち更生手続開始前の原因に基いて生じた債権弁済について規定したものでありまして、これは更生手続によらなければ弁済をすることが原則として禁じられておりますが、五十四条のほうは、例えば更生手続開始後に、必要によつて業務に関連して財産を処分する、そういうふうな場合に許可を得るということを認めたものであります。
  153. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると、ぽつぽつ鼠が引くように処分して行くというと、結局それによつて目的を達しやしませんか。初めからそういうふうに計画的にやれば別ですがね、そういう方法もあるのですが、善意にぽつぽつなしくずしにして行つて、そこに税金が来たからと言つて少しずつやつたらどうするのですか。
  154. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) これは共益債権についての弁済方法です。今申しましたのは共益債権ですから、更生債権について弁済するということを原則として、更生債権につきましては、例外の場合を除いて弁済することはできませんので、五十四条は主として共益債権弁済というふうな点で適用があるわけであります。
  155. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 共益債権という言葉がはつきりここに出ておりますか、そういう区別できるのですか、五十四条から……。
  156. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この五十四条の規定自体からは共益債権などいう言葉はございませんが、更生債権につきましては、百十二条でありましたか、そういう他の規定によりまして弁済の禁止が規定されております。そういうふうな弁済の禁止等が規定されてなくて、管財人が適当に処分できるような権限のある場合、その制限として設けたのがこの五十四条でございます。
  157. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) だから私のお聞きしておるのは、一面において百十二条において禁止してあるにもかかわらず、五十四条の第一号を利用する、利用するという言葉を使つて何ですが、利用してやれば任意に金銭の処分という形において弁済ができるというのですが、そういう方法によつて弁済するということは適法行為になつてしまうのじやないですか。殊に何ら枠が嵌めてないのですから……。
  158. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 弁済と申しますのは更生債権に対して弁済するということですか。
  159. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 更生債権というのはここには出ていないのです、ここには……。先ほどの御答弁では、ただ金銭の処分も入るのかと言つたら、入ると言うのです。そうすると、弁済も含むんですね。そうしてそれは適法行為でやればいいのですよ。けれども悪意にこれを使うという場合に、悪い考えで使うという場合においては、それが適法行為ということになれば、それによつて抜けて行つてしまうのじやないかと、こういうのです。
  160. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) 更生債権につきましては、百十二条の規定でぼつぼつ弁済をするということができない、ただ共益債権とか、弁済し得る、手続中でも弁済し得るものについての弁済は、これはできる。それでこの五十四条の制限を附するというわけでございます。この五十四条の規定によりまして、裁判所の許可を受けて共益債権弁済する。そうしてぼつぼつ弁済して、結局全財産弁済するということでありますれば、これは共益債権も入る。共益債権弁済である。而も裁判所はこれを許可するという条件が備わりました以上は、これは認めてもいいのじやないかと思います。
  161. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 併し裁判所は許可をするとおつしやるけれども、但書後段のほうによりますれば許可を要しない面もあるのですから、その面から抜けて行く虞れはないのですか。今それに枠を嵌めんでもいいのですかと、こういうのです。
  162. 野木新一

    説明員野木新一君) 多分お尋ねの点は主として更生債権弁済に関連したものじやないかと拝察いたしますが、即ち若し五十四条第一号の会社財産の処分の中に金銭の支払も入るとすれば、第一項但書によりまして、裁判所の許可を受けないで或る範囲ができるということになりますと、ぼつぼつこれによつて更生債権弁済をして行つて、なしくずしに結局弁済してしまうというようなことが生じて、非常に不公平な場合ができるのではないかというような御疑問ではないかと、こう思いますが、若しそういう趣旨の御疑問でございましたならば、これは結論はそういう結果にはなりませんので、即ち先ず更生債権につきましては、百十二条の規定一つ大きくありまして、更生債権については更生手続によらなければ弁済をすることはできないということになつておるわけであります。ただ五十四条のほうの規定は、管財人等が或いはほかの規定で禁止されていない会社財産を処分し、或いは財産を譲り受けるいろいろな行為が管財行為として予想されるわけでありますが、五十四条の規定がなければ、管財人はその管財行為としてここに挙げてあるような行為を自由にできるわけであります。併しながら更生債権弁済ということに至りましては、百十二条の規定がありまするから、管財人といえども、百十二条の規定によつて更生債権弁済はできないわけであります。五十四条はそれ以外の場合のことを考えておるのでありまして、例えば管財人会社の事務を経営して行く上に、職工にたくさんの金を払う、賃金を払わなければならない、そのためには、或る財産担保に入れたり、或いは処分して金を借りなければならないといつた場合に、それを全く自由に放任しておきますと、非常に弊害も生ずる虞れもありますので、裁判所の監督権を働かせまして、その多額なもの、即ちその会社に重大な影響を与えるようなものにつきましては、一々裁判所の許可を得なければならないわけであります。併しながら普通の小さい日常の事柄とか、一定の以下の少額のものにつきましては、一々許可を受けさせるのも煩瑣でありますから、五十四条但書で、これは管財人の公正な判断に任せるということにいたしたのが五十四条の規定でありまして、従いまして五十四条の規定があるからといつて、この規定を利用して、更生債権更生担保権等につき、なしくずし的に弁済がなされて行くということにはならない仕組にしてあるのが立案趣旨でございます。
  163. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 只今御説明の中で、小さい支出金額とおつしやつたけれども、これは又国民があとでその御説明を考え違いすることがあると思いますから、明らかにしておきたいのですが、例えば企業の大小によつて大きい小さいということはきまると思う。造船会社のような場合においては、いわゆる造船に要する鉄板を買うというような日常経費、こういうものもその事業性質によつてその金額の大小というものはきまると思う。小さいというものは個人の家の日常生活費の経常費というような意味ではない。事業によつてその大小は決定されると思いますが。
  164. 野木新一

    説明員野木新一君) その点は誠に御趣旨のように考えております。
  165. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 五十七条の場合において、「更生債権又は更生担保権につき」と、こうあるのですが、これはどういう意味か、それが破産法の五十四条より狭い意味ですか、どうですか。
  166. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) この五十七条の字句は非常にわかりにくいと思いますが、この「更生債権又は更生担保権につき」権利を取得したという意味は、更生債権又は更生担保権、例えば商事留置権というふうな場合、この条文破産法の五十四条の条文に従いまして設けたものでございますが、この五十四条の条文自体は実は解釈上いろいろ争いがあるようでありまして、必ずしも明確な条文とは申せない、併しながら、この規定趣旨は当然この更生手続においても取入れらるべきものと考えまして、その趣旨規定を設けたのでございます。その範囲は字句も違いますので「更生債権又は更生担保権につき」という字句の加わりました点等におきまして、五十七条のほうは備わつておるというふうに考えております。
  167. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 五十八条の場合、不動産の売買の買主の権利更生債権と思われるのですが、それはどうですか。若し入るとすればどの部類に入るのですか。更生債権は……。
  168. 野木新一

    説明員野木新一君) この不動産の買主の権利、而もその登記原因更生手続開始前に生じたもの、即ち例えば売買の例をとりますと、不動産の売買契約更生手続開始前に生じたならば、その売買契約から生じました不動産に関する権利は、やはり更生手続開始前に生じた権利という意味で更生債権になるものと考えております。
  169. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それはどの部類に入るのですか。種類は……。
  170. 野木新一

    説明員野木新一君) 更生債権の種類といたしましても、金銭債権ではありませんので、如何なる範囲で、例えば議決権の行使をすることができるというその計算につきましては、その価格を評価して、その価格によつて議決権を行使する、そういうような仕組みにいたしております。
  171. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 会社物上保証をした場合に、その債権者更生手続関係では全然効力を有していないのですか。
  172. 野木新一

    説明員野木新一君) 会社が単に物上保証をしたような場合におきましては、物上保証をせられた債権、これは別に更生債権でも何でもないわけであります。
  173. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 五十九条はわかつたようでわからないのですが、「更生手続開始後その事実を知らないで会社にした弁済は、更生手続関係においても、」とあるのですが、どういう意味ですか。特に「おいても」という字句を付けたのは……。
  174. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) これは「更生手続関係においても」という字句は入れても入れなくても同じであります。ただ五十六条、五十七条あたりで「更生手続関係においては、その効力を主張することができない。」というような規定がありますので、その規定との対照上、そういう字句を入れたわけであります。
  175. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 「更生手続関係においては、」と、こういうふうに読んでもいいのですか。
  176. 野木新一

    説明員野木新一君) 「更生手続関係においては」と申しますと、それ以外の関係においては効力を主張することができないように見えますが、そういうことは必ずしも適当じやないと考えます。ただこの字句がなくてもその効力を主張することができるわけで、この字句だけでも意味は同じだと考えます。
  177. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 更生手続関係においてもというと、他の場合も何か有効のように受取れますが。
  178. 野木新一

    説明員野木新一君) さようです。更生手続関係でない部面についても有効であるということも言外に含んでおるわけであります。
  179. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 他の場合も含むということですか。
  180. 野木新一

    説明員野木新一君) そうです。そういうことです。
  181. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 第五十九条の第二項に「会社財産が受けた利益の限度においてのみ更生手続関係においてその効力を主張することができる。」、受けた利益の限度というのはどういう趣旨ですか。
  182. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) これは例えばその弁済した財産がなお会社財産中に現存しておるというふうな場合には、それを返してくれという主張ができる。そういう場合を指すと思います。
  183. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 受けた限度で足りない場合には、その会社から任意に弁済を受けることができるのですか。限度ということで制約されておるが……。それが必ずしも当事者の意思と合致しない場合があり得ると思います。制約されるのですから……。十のうち八というものが受けた限度で、あと残つた二というものは後日会社から弁済を受けることができるのか、それとも全然消滅してしまうのですか。
  184. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) その限度を超えた分は更生手続外の関係においては主張ができる。即ち後になつて会社からその返還を求めるという余地はあるものと考えております。
  185. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 限度以外のものは死なないのですか。
  186. 位野木益雄

    説明員(位野木益雄君) さようです。
  187. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 本日はこの程度にいたしまして、明日は午前十時から続行いたします。散会いたします。    午後三時五十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    委員            山田 佐一君            齋  武雄君            岡部  常君   事務局側    常任委員会専門    員       長谷川 宏君    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務府法制意見    第四局長    野木 新一君    法務府法制意見    第四局参事官  位野木益雄君