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国務大臣(
大橋武夫君) 先ほどの御
質問の御趣旨は、最近におきまする共産党の活動
状況について説明を求められた、こういう趣旨に了解いたします。法務府といたしまして承知いたしておりまするところによりまして
お答えをいたしたいと存じます。
先ず申上げたいのは、今日の
日本共産党の実勢力でございますが、私
どもは今日届出によりまして本日現在におきまして約五万六千人ということに承知いたしております。併しこれには若干の届出漏れもあり得ることでありますので、実質上は七万乃至八万くらいの党員がいるのではなかろうか、こう
考えております。この七万乃至八万の党員というものが、その党員としての意識並びに決心におきましては、これは
相当なものである、こういうふうに見ております。御承知のように戦前の共産党には、いわゆる転両者というものが続出をいたしたのでありまするが、今日の共産党には、国際共産主義勢力を妄信いたしましたり、或いは日本革命の到来近いというような
考えを持ちまして、曾
つての転両者のごときは殆んど実際には出ておらないというのが、最近の特徴であります。目下かの平
事件の公判が開廷せられておるのでございまするが、法廷におきまする共産党員の革命近しとの妄信に基きまする
態度というものは、誠に常軌を逸しておりまして、言語に絶するものもある次第でございます。この約八万の日本の党員の外側には、約二十五万程度のシンパがあるのではなかろうか、そうして更にその外側には約六十五万程度の同調者と目すべき人たちがある。以上を合計いたしますると、約百万が共産主義者或いは同調者ということになるのではなかろうかと
思つております。勿論これらのシンパ或いは同調者におきましては、その意識或いは決心の度合というものについては、極めて稀薄な人々も多数入
つておると存じます。今日これらの意識的な共産分子の実数というものは、曾
つてのごとき著しい増加の趨勢は示しつつない、むしろ増加の勢いは、一時より見ますと非常に衰えてはおりまするが、併しながら共産党といたしましては、依然として増加の傾向にあるということを申しております。終戦直後におきまする我が国の共産主義者の実数を御参考に申上げますると約千人と推定せられておりまするが、これが今日においてはかような多数に上
つておるということは、これは注目すべき
事柄であろうと存じます。
次に御説明いたしたい点は、かような人的な結合を持
つておりまする共産党が、
如何なる組織によ
つて活動をいたしておるかという点であります。本来共産党の組織と、活動には公然の面と非公然の面とがあるのでありますが、これは又合法面又は非合法面と言うこともできると思います。要するに随時随所、臨機応変に合法、非合法の組織と活動を巧みに織込みまして、その目的実現に狂奔するというのが、今日の活動
状況であります。この共産党の非合法の組織と活動は、昨年六月六日連合軍司令官の書簡によりまして、徳田球一ほか二十三名の幹部が追放処分になりましたときから、本格的に
計画されたのでありまするが、今日まで約一年の歳月を経まして、一応非合法組織も完成されたもののように推定をいたしております。この非合法組織と申しますのは、要するに取締官憲や一般公衆に祕匿いたしまして、すべてを密行して行くという組織でございます。彼の徳田球一ほか潜行八幹部を今日に至るもなお検挙し得ないごときことは、特別審査局といたしまして、又法務府といたしまして、その責任を痛感いたしておるところでありまするが、これもやはり非合法組織が
如何に深く且つ広いかということを示しておる
一つの事例とも
考えております。今日におきまして、この非合法の組織と活動に関与いたしておりまする者は、およそ二万乃至三万という推定をいたしております。主要分子におきましては、数個の祕密アジトを持ち、多数のレポ及び護衛を使用いたしまして相互に連絡し、秘密文書は特別の祕密アジトに蔵匿いたし、相互に偽名、暗号を用い、変装をいたすなど、文字通り暗躍をいたしておるのであります。そうしてこの合法、非合法の全体組織は、潜行八幹部その他で構成いたしております最高指導部の下に、従来の中央地方県区の
委員会細胞、これを基盤としたる、又はこれと別個の祕密組織より成
つておるのでありまして、この組織網において近時最も危険性を露呈いたしておりまするのは、行動隊というものでございます。この行動隊は、朝鮮人及び日本人でありまして独身の実行力ある共産主義妄信者を以て構成いたしておりまするが、半年ほど前からその編成に着手し、今日におきましては、すでに
相当数の組織を終つたものと推定をいたしております。この行動隊の使命は、日常闘争において突破口の打開、各種闘争への参加協力をなすことにありますると共に、終局的には、人民
政府樹立の際の最前線の実行行動
部隊たる役割を果すことにあるのでございまして、すべて軍隊組織を持ち、各地に分駐いたし、最近におきましては、従前の各地分立
方針を一擲いたしまして、強固なる中央集権の統制態勢を確立し、日夜不逞な訓練を画策実施いたしておる模様があるのでございます。なお
日本共産党の態勢の確立の上から注意いたすべきことは、この八月に入りましてコミンフオルムの批判を受けまして、いわゆる主流派と国際派の分派抗争が反省せられ、その統一は全く時日の問題であり、而も極めて急速に行われると推定されることであります。
講和条約の締結、その
効力の発生に伴いまして、
日本共産党も今や一段と態勢を確立整備し、恐るべき破壊活動を展開せんと企図しておる、かような推定をいたしておるのであります。なおここで
日本共産党の態勢の確立に関連いたしまして御説明いたしたい点は、最近におきまする共産党の平和闘争というものでございますが、これは主として合法面に現われて来る闘争でございまするが、共産党みずからは表面に立たずに、平和擁護日本
委員会、又は全面
講和愛国運動協議会等を表面に出しまして、共産党員自身は背後にあ
つてこれを操縦し、或いは五大国平和条約締結、全面
講和、再軍備反対等の標語を掲げまして、一千万の署名を獲得しよう、或いは一万の
委員会を結成しようというようなことを目標といたしまして、現に日夜執拗、果敢な新運動を展開いたしておるのであります。この運動は要するに平和と申しまするところの何人にも受入れられる言語の持つ魔術を
利用いたしまして、一般大衆を共産主義の陣営に引入れようとするものでございます。かような平和運動のほかに、革命の拠点の設置を営々として推し進めておるのであります。革命の拠点には、先ず多数の近代的プロレタリアを擁しまする大工場を、ロシア革命の発火点でありましたところの工場の名を借りまして、プチロフ工場という指定をいたしまして、殊更に細胞の設置とその構成員の指導訓練とに努めますると共に、今や山岳地帯にまで革命拠点の設営を企てておるという情報も得ておる次第でございます。
今日共産党の党員の行動につきましてはいろいろの
事柄を指摘し得ると存じまするが、最近の共産党の勢力、並びに活動といたしまして簡単に申上げておく次第であります。