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1951-09-06 第11回国会 参議院 通商産業委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年九月六日(木曜日)    午後一時三十二分開会   —————————————   委員の異動 八月二十二日委員林屋亀次郎君辞任に つき、その補欠として油井賢太郎君を 議長において指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○通商及び産業一般に関する調査の件  (肥料需給調整制度に関する件)   —————————————
  2. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 只今から通産委員会を開会いたします。  委員のかたに御報告申上げたいことがございますので御報告申上げます。通産委員の渡米問題につきまして御報告申上げます。先般の委員会で渡米のできるよう努力せよとの御意見が出まして、委員長におきましてはできるだけその実現方について奔走して見ました。委員各位の御熱心な御努力もあつて、この問題は必ずしも不可能ではないとの見通しもつきましたので、ともかく委員長名で外務省を通じまして正式の書面政府宛に提出して見ようという段階に参りまして、衆参両院委員長名書面を出すことについて御了解を得たいと思いますが、如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) ではさように取計らいます。  本日の議題はあらかじめ公報を以て御通知申上げた通り肥料需給調整制度についてでございます。申すまでもなく肥料工業は戦後重要産業一つでありまして、且つ農業面に対する化学肥料の効用と価値を通じまして、一般国民生活に影響するところ大なる点に鑑みまして、政府は昨年まで厳重なる統制と助長を図つて来ましたのであります。然るところ政府及び業界努力によりまして化学肥料生産は飛躍的に増大いたし、戦前の最高生産量を凌駕するところまで参りまして、需給のバランスがほぼ安定する見通しを得ましたので、政府は昨年八月一日より硫安及び石灰窒素を、本年八月一日より、過燐酸石灰統制を全面的に撤廃するに至つたことは周知の事実であります。然るに化学肥料需給特異性として需要期という時期的問題、或いは地域的アンバランス等の問題があるのであります。この一つ解決策といたしまして、不需要期における輸出という方策官民各界において検討されたのでありますが、それが諸般の事情から行き悩みになつておる現在、今回農林省においては一定量肥料を計画的に操作することにより肥料需給の時期的及び地域的調整を行い、以て肥料流通の円滑と価格の公正なる安定を図ることを目的として、一種の間接統制方策としての肥料需給調整制度準備中であり、すでに当該制度に必要なる補正予算も構成されておるように見、且つ聞いておるのであります。而も当該制度に対しまして生産業界販売業界からは全面的に反対の声が上つております。且つ化学肥料行政の一端を所管しております通商産業省におきましても批判的であつて、これに代るに化学肥料増産対策立案しておるやに仄聞しておるのであります。若し本制度が近く予定されておりまする臨時国会に法案として提出された場合には、当然農林委員会に対し付託されるのでありますが、当通産委員会といたしましては肥料工業、或いは肥料生産面に関する限り所管事項であります。且つ第十国会におきまする森林法の例もありますので、当該制度に対しまする限りについて前以て十分に研究して参りたいと存ずるものであります。そこで本日は政府側といたしましては農林通産安本、大蔵の各関係政府委員及び参考人といたしまして日本硫安工業協会会長大仲齋太郎さん、燐酸肥料協会常務理事吉田一男さん、石灰窒素工業協会理事野村與曾市さん、全国肥料商工業組合連合会会長鷲見保佑さんをお招きしおり、おのおのの立場から御意見開陳を求め、問題の所在点を明確にいたしたいと存ずるのであります。なお全購連代表者もお招きしてあつたのでありますが、全購連としてはその性格当該制度に対しましては複雑微妙なる関係にあり、明確にその態度を表明できないとの理由で、昨日出席かたを辞退するとの申出がございましたので、本日はお見えになつておりませんから、その点お含み置き下さいまするようお願いいたします。  この際参考人に申上げます。本日は御多忙中にもかかわりませず、当委員会に御出席下さいまして誠に有難うございます。御発言に際しましては忌憚のない御意見の御開陳を願います。御発言の時間でございますが、時間がございませんので約十分程度にして頂きたいと存じます。なお時間がありますれば、補足的に御説明お願いいたします。委員のかたから質問がありましたときに又お願いいたします。  それでは会議の順序につきましてお諮りいたします。先ず肥料需給調整制度について立案当局者でありまする農林省側説明を聴取いたしまして、次に参考人各位の御意見伺つて後、質疑に入つたら如何かと存じます。御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 御異議ないものと認めます。さよう取計らいます。それでは先ず肥料需給調整制度に関しまして農林当局の御説明を願いたいと存じます。
  5. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 私農林省農政局長でございます。お手許にお配りいたしました肥料需給調整制度要網(案)、第八次の二と書いてあるのと、それから実施要領の第八次案の三というのをお配りいたしたと思います。本要綱は未だ政府の実は決定を経たものではございません。農林省としては一応きめておりますけれども、本日は農政局長試案、こういう意味でお聞き取り願いたいと思います。  肥料需給調整制度というものを立案いたしました理由等につきましては若干申上げて見たいと考えます。  昨年の八月、肥料配給公団が解散をいたしました当時、肥料配給公団は八十万トン程度の実はストツクを持ちまして、清算をいたしておつたのであります。昨年の春肥等におきましても相当量の放出をいたしまして、一面肥料需給調整、或いは価格の安定に資したのでありますけれども、当時農林事務当局のほうにおきましては、米麦というものがやはり一つ供出制であり、或いは一つ価格政策の上に乗つておりまする以上、農民の最も必要な肥料につきましてこの価格を安定し、需給を安定するということが農林省としましては最も大事な施策一つでありますために、何らかの需給調整制度が必要であるというようなことも考えておつたのでありますが、関係方面等意見等もありまして、そのこと自体ができなかつた次第であります。我々といたしましては、肥料根本はやはり肥料増産であるということにつきましては、農林省といたしましても勿論異見がありませんし、重大な関心を持つております。ただ所管が、事肥料生産というものは挙げて通産省にありますために、我々といたしましては通産省のほうにこれをお願いをいたしまして、生産関係の面を御努力つておる次第であります。農林省といたしましては、肥料事農民の最も重要な物資であり、米と裏腹をなす貴重な商品でありますために、この量的な需給であるとか、或いは価格が安定するということが最も重要な農政一つであることは御了承願えると思うのであります。ただ肥料農民消費でありまする故に、非常に季節的に消費が片寄る物資でございます。春秋二期の大体大きな需要期があるわけであります。又地域的にも米は大体半分が商品化されるのでありますけれども、化学肥料はもう全部農民が買わざるを得ない。北のほうから九州の南まで全部の農民がこれを購入するものでありますために、生産工場というものと肥料需要者という者は必ずしも円滑に行かない点があるのであります。従いまして今日の段階におきまして肥料はやはり時期的な、季節的な需給というものと、地域的な需給を必要とする一つ商品であるということが言えると考えます。不需要期というものは、これはそのときどきによつて若干時期が異ります。いろいろな価格関係でありますとか、いろいろな客観的な現象等によりまして若干時間的に変りますけれども、或る時期におきましてはどうしても市場在庫が多くなつておる、或る時期においては非常に在庫が不足しておるという商品である性格のものでございます。我々といたしましては通産省生産関係十分連絡をいたしまして、年間の一応需要計画という目途を実は持つております。需要量ということになりますと或る程度弾力性が要るということは一つ御了承願いたいと考えます。農家の所得の事情でありますとか、或いは天候関係でありますとか、いろいろな関係等によりまして若干の需要弾力性というものは生産資材でありますからつきまとうものであります。供給面におきましては電力、石炭いろいろの事情によつて殖えたり減つたりするのでありまして、年間の一応需給計画によりまして、我々は需給量というものを見ておるのでありますけれども、或る時期におきまして在庫ができる。そこで農民の最も大事な、国内消費というものをどうしても我々としましては先ず肥料におきましては第一に考えるということは、農林省としましては当然でございますが、余剰分というものが、果して一年間を通じて国内消費に充て得る分とか、絶対量の余剰として輸出に向け得るものであるという量の問題になつて参りますと、そこに一応の見通しというものがございまして……何らの措置ない場合におきましては、これは年間一つ見通しの問題になり、或いは季節的な需要の問題になりまして、若干の意見相違が出て来るものなのであります。需要主管官庁であり、六百五十万の農家の最も重要な商品を扱つております農林省といたしましては、そこにどうしても慎重な態度というものが良心的にもとられ、そこで輸出量を決定いたします場合におきまして、そこに五万トンなり十万トンの幅というものをどう見るかということが実は問題になるのであります。我々といたしましては、そこに非常に国全体の肥料行政を眺めまして、或いは肥料の将来の輸出産業としての伸びる方向を考え生産関係の状態というもの等につきましても十分考慮いたしましても、そこにはどうしても若干の不安定感があるのであります。不安定感というものがややもすると農家思惑等を誘致いたしまして、市場の仮需要その他が殖えますることは、これは決して肥料政策として万全なものとは実は考えていないのでありまして、何らかそこに一年を通じて農家が安心するということがどうしても必要になつて参るのであります。若し我々としましては肥料消費というものなり価格の絶対の安定というものができますれば、いわゆる一年を経た余剰分というものは、農林省といたしましては有効にこれを輸出できる。輸出産業として伸びる一つの基盤として、日本農家需要というものの或る程度安心感価格安定感を得ますれば、我々といたしましても輸出そのものについてはもつと明瞭に積極的にできるのじやないかというように実は考えておる次度でありますが、現在のところ実は公団廃止後というものは、そこに何らの政策というものがないわけであります。そこで我々といたしましては、何らかこの肥料需給なり価格というものを或る程度安定をさせて、資源の少いとき、電力の不足なときに余剰なものを無理に農林省としましては国内消費するつもりはございません。完全に一つ利用して大いに国全体の富を増すことは我々としましては非常に賛成すること勿論でありますので、何らかの安定措置というものをいろいろ実は考え行つたのでありまするが、その方式につきましていろいろ実は考える余地はあると思うのであります。根本はやはり価格の安定であるということになりますと、現在の独占禁止法その他のいろいろな制度の下におきましては、どうしてもこの需給調整特別会計というものにならざるを得ないというのが結論だつたのであります。従いましてここに政府としては最小限度価格安定政策として需給調整特別会計を設けまして、いわゆる不需要期に非常に在庫が殖えましたときに、これを政府で一部買上げまして、需要最盛期におきましてこれを救出するということによりまして、いわゆる間接的な肥料統制をやりたいというのが本案の骨子で実はございます。  ただ政府が或る値段肥料を買いましたり、或る値段で放出するということを政府官吏自体の任意な恣意的な行動でやつてはならないということを我々十分実は考えまして、何らかの形で価格というものの一つの決定なり、その方式というものについて各界、各官庁意見を十分織込んで行きたいというのが考えられる点であります。同時に肥料生産というものはこれは近代的な大きな工場でやつておられますため、我々はその工業そのもの発展というものと、農家肥料の安定というものとは、これは不可分な問題でありまして、農民だけを考えてやりますれば、肥料は成るたけ安いほうがいいということでございますが、そこに一つ肥料工業の健全な発展という問題と肥料流通過程円滑化という問題はこの案が農民のために考えられなければならない制度でありますために、当然この運用につきましても肥料流通円滑化という問題と肥料工業発展というものを考え価格政策をやらなければならないというので、実はこの運用等において考え立案いたしておるのであります。問題は価格の問題でありますけれども、我々といたしましては政府が買います場合、売ります場合に、やはり方式といたしましては入札方法もあるし、指名入札方法もありますし、随意契約等方式もあります。そういう方式を如何なる場合においてやるかという問題は、これは更に又細かい法律の問題に実はなるのでありますが、そういうことをいたします場合におきましても、ここに何らかの一つ基準というものを設けたいというので、政府が買いましたり売りますときの予定価格一つ基準価格というものを民主的な機関にかけて審議して頂いて公表しまして、その公表した一つの幅の間で政府運用をしてはどうかということで肥料審議会等を設けまして、その審議会委員にお諮りをいたしまして、一つ予定価格政府が作る場合における基礎になる基本価格ですか、予定価格標準価格というものをきめて頂きまして、それを売る場合においても買う場合においても公表いたしまして、政府の意図する肥料価格の将来の見通しというものにつきましてもはつきりいたしたいというのが、売り買いをやります場合における考え方根本をなしておる点でございます。どういう肥料を買うかという問題等につきましては、農林省といたしましては窒素燐酸石灰窒素加里塩というものも只今のところでは考えております。これを買う資金といたしましては、いわゆるインントリーフアイナンスといいますか、四月に持ち越します分だけはこれはやはりどうしても財政支出を願いまして、あとの資金というものは挙げて預金部資金からの一時借入金でやろうという考えでありまして、大体その所要資金が百三十億程度、若干の相違はなんぼか出ておりますけれども、先ず百三十億前後程度資金を借りる。その中から財政で一応二十五億程度インントリーフアイナンスをいたすという考え方立案を進めておる次第であります。大体買上げます量は、これはいろいろ研究いたしました結果、実際の需要期の大体三割程度という考え方を持つておりまして、各事業によりまして若干違いますけれども、平均いたしまして需要期需要量の三割程度政府が買う。買う時期は不需要期市場相当量在庫が生じた場合、こういうように実は考えておる次第であります。  もう一つこの制度自由経済肥料自由流通で、政府が不需要期における若干の肥料在庫というものを財政で持つて只今発表いたしました価格の幅で物を操作する。こういう制度でありますが故に、一切の強制権等はこれは持つておりません。ただ不需要期に或る在庫ができました場合に、年間を通じまして農林省といたしますとなかなか輸出ができない。併し市場在庫ができ、そこでどれだけの輸出を出すかどうかということは、挙げて実は官庁といいますか、通産安本農林省が協議をいたしまして、農林大臣としてもこれは許可権という一つ権限を持つておりますが、その間事務的な析衝に時間のかかります場合があります。併し現実には市場在庫が多い、果してそれが輸出されるものなりや、国内で将来のために政府が買うものなりや、どうも不明確な点等がありました場合に業界にいろいろ御迷惑をかける場合がある。そういう場合等におきましては政府が仮に或る価格肥料を買いまして、将来これを輸出するということになりますれば、或る条件の下にこれを輸出等のために売戻すという制度等も実は設けている次第であります。その他は別段取立てて言うほどのこともございませんが、政府といたしましては、売買だけはこれはどうしても政府自体がやりたい。売買の実務というものはどうしても政府自体がやりたいが、そのほかの例えば倉庫業務でありますとか輸送等につきましては、それは民間のほうに一つ成るたけお願いをいたしまして、仕事の能率を図つて参りたい。売買のことだけはこれはどうしても政府で持つたほうが、この際はよかろうというように実は考えておる次第でありまして、肥料需給調整政策というものは今の通産農林省の二つの権限の中で、農林省に与えられました一つ配給関係仕事の枠内におきましてやる一つの実は制度でございまして、国全体の肥料施策といいますと、これはその実は一部であります。通産省その他にもやはり根本的な増産施策というものがない場合におきましては、輸出等もこれは、我々としてもなかなか困難でありますし、或る程度国内農家消費を安定させる、肥料を安定いたしますことは、米麦等のまだまだ価格政策というものが今後続けられます場合におきましては、農民自体を安定させることがますます必要な場合におきまして或る程度財政支出をやりまして、政府自体がやりますことは農林省としてはどうしても必要である、こういうように実は考えるのであります。本案はこれを以て我々といたしましては決して新らしい統制を課するのだという考えは毛頭ございませんし、官吏がなします仕事についての非難をよく甘受いたしまして、極く最小の人で、政府のやる最小限度においてこの特別会計運用して実は参りたい。今日いろいろな制度等がありまして、やはり価格を安定し需給を安定するにはこういう需給会計によらざるを得ないというための最小限度需給調整である。こういうように実は考えた次第であります。  本案等につきまして各方面の御意見も十分実はお聞きいたしておるのであります。我々としましてはみずから考えまして反省すべきことは大いに実は反省をいたしつつあるのであります。今後の肥料政策というものは、農林省におきましては、米麦とからみまして最も基本政策でありますために、我我としては最も重要な案として熱意を持つて検討をいたしております。まだまだ政府案として実は決定いたしておりませんので、本日は農政局長試案という意味で十分御意見を伺いたいというように考えております。
  6. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 次に参考人のかたからの御意見を伺いたいと思います。先ず第一に日本硫安工業協会会長大仲齋太郎君にお願いいたします。
  7. 大仲齊太郎

    参考人大仲齊太郎君) 私大仲でございます。農林省では只今農政局長の御説明のごとく、肥料需給調整制度立法化考えられておりますが、当業界ではこれについて慎重に検討の結果、お手許に差上げました意見書のようにこれに対しては賛成できないのであります。この理由につきましては、意見書に詳細述べておりますが、要約してここにその主なる点について述べることにいたしたいと思います。  昨年の七月に肥料配給統制を廃止するよう政府からお話があつたのですが、業界としましては十数年に亘つて肥料統制があつたので、その間昔の肥料商は全く仕事を停止していたので、急に自由販売に移行した場合に不測の混乱が起きないよう、流通機構ができるまでの準備期間考えて、その実施の延期をお願いしたのでありますが、その希望も容れられないで、八月から自由経済に入つたのであります。ところが幸いにして全購連販売業者努力によつて大過なく一年間送ることができ、数量、時期の点のみならず、価格についても自由経済最初の一年としては、農民に対して余り迷惑をかけなかつたものと信じております。そのように昨年八月に業界希望押切つてまで自由経済の中に入つたのも、政府統制から自由への大きな政策推進であると考えていたのですが、今頃になつて同じ政府の下において経済の非常な変動も予想されないときに、この大きな政策と逆行するようなことをしようとすることには、この一年間自由経済に即応した体制を苦心して整えて来た業界としてはどうしても賛成しかねるのであります。今回の案によりますと、政府官吏商売をすることになつていますが、統制経済をやつておる時代ならばまだしも、現在の自由経済の中で、すべて官吏商売をすることは原則的に不賛成であります。自由市場という、非常に把握のしにくい、絶えず動いておる経済活動の中では、不馴れな官吏市場操作というようなことは、却て流通過程混乱を起すことが多くて、その目的を果し得ることは極めて困難であると私は信じております。又買上げ、売渡しの際にいろいろないまわしい問題も起きないとは断じて言い切れないのではないかと思われます。而も行政機構簡素化をやろうとしておる政府が、こうした仕事、而も政府の従来の経済政策をとるために、新らしい機構と人員の増加を考えることは我々としても納得できないのであります。  以上のような点から見て、農林省考えておる需給調整制度には賛成しかねるのでありますが、私は現在の肥料需要生産状況考えて、政府はこうした流通の中における調整などを考えないで、もつと根本的な肥料生産の面における政策推進したらいいのではないかと思うのであります。硫安昭和二十六年度の生産能力としては、現在のところとして約二百三十七万トンあるのですが、政府考えておる生産予想はその八〇%くらいの操業度の稼働となつておりますので、アンモニア系製品を差引いて考え、その上に副産の硫安を加えましても百七十万トンぐらいになつておるのであります。なお石灰窒素は四十四万トンぐらいのようで、窒素肥料としましては二百十四万トン前後です。ところが窒素肥料需要としましては、国内として二百千万トン前後ですが、最近の海外からの輸出要請は極めて旺盛なもので、特に日本と最も関係の多い朝鮮、台湾、沖縄、フィリピンだけを見ましても、すでに五十万トンを超えるような大きなもので、而もこれらの国と日本との関係は単なる貿易の面だけでなく、過去の歴史から見ても、又今後の講和成立後の日本立場から見ても、これらの国の熱烈な要求を、国内需要状況が悪いという理由だけで拒否することは絶対にできないのではないかと信じておる者でありますので、現在のような政府生産に対する態度や、又農林省国内だけを考え政策推進をやつて行くようでは、必ず後悔するときが来ることを心から憂えておるのであります。従つて業界としましては、至急に先ず国内海外両方需要と、国内生産とが均衡がとれることに全力を注ぎまして、国内農業の大切な生産資材である肥料が、又重要なる国際商品でもあることに十分留意して、農林省の現在考えておられるような国内だけを考えた消極的な需給調整法は必要でないようにすることに努力しておるのでありますので、業界ではお手許に差上げました緊急増産対策に関する要望を政府に出して、その実現努力しておるのでありますから、当通産委員会としましても、何とぞ御協力を下さるようにお願いいたします。
  8. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 御苦労様でした。次に燐酸肥料協会常務理事吉田一男君にお願いいたします。
  9. 吉田一男

    参考人吉田一男君) 吉田でございます。本日は岩村理事長が病中でございますので、私が代りまして参りましたことを御了承お願いいたします。  このたび農林省から発表されました肥料需給調整制度案についていろいろ検討いたしました結果、燐酸肥料協会といたしましてもこれが実施につきましては反対をいたします。その理由は、只今硫安の大仲さんから縷々述べられた通りであり、従つて私が重複して申述べることを成るべく避けたいと思いますが、燐酸肥料の独自の立場から、反対理由はお手許に配付の意見書にある通りで、これに基きまして二、三申上げて見たいと思うのであります。  先ずこれは無用の再統制である。即ち昨年の八月、肥料配給公団の廃止以来、自由経済への移行が漸く軌道に乗り、更に米麦統制の廃止、行政機構の整備が伝えられておる折から、ひとり肥料のみが一般の趨勢に逆行してかかる統制方式を採用せんとすることは理解しがたい点でございます。先ほど大仲さんから申されました通り、特に昨年八月、肥料配給公団の廃止の際に我々業者は、もう半年これを延ばしてもらいたいという要望をいたしましたにかかわらず、廃止をいたしまして自由になつたのでありまして、今更かかる統制方式をとるということは理解しがたいと存するのであります。過燐酸におきましては、主要原料でありますところの燐鉱石はことごとくこれを海外に仰いでおりまして、海上運賃の変動によつて燐鉱石の価格は常に変動を来たしております。而もその他原料もすべて自由価格によつて購入をされておる現状におきまして、本案のごとき統制措置をとらんとする施策には賛成しがたいのであります。  次に金融上の影響でございますが、本制度在庫金融の効果の一端を荷うことを狙いとするがごとくでありますが、当業界におきましては、原料、特に燐鉱石のごとき輸入物資の引当金融並びに工場の補修、補強に多大の資金を仰ぎつつある現状においては、本制度によりまして却つて市中金融機関との緊密なる連繋を阻害せられる虞れが多分にあり、延いては生産に対する障害が生ずると思います。更に八月一日以降燐鉱石補給金廃止に伴う当業界の金融的逼迫は、今後生産に至大の影響を予想せられるのでありまして、本制度に代るにむしろ昨年の金融措置要領の主旨に基く金融の円滑化を図る措置を講ずべきであると考えるのであります。  次に輸出価格との関係でございますが、本制度は内需優先の建前をとりまして、余力がある場合に限り輸出を認めるという精神と解されるのでありますが、むしろ国策といたしましては過燐酸肥料輸出を奨励して増産の意慾の向上を図り、延いては操業度の上昇によるコストの切下げによりまして消費価格を低下させ、一面において時期的調節の役割をも図るような積極政策をとるべきであると考えるのであります。  次に御要求の資料のうち、二十六肥料年度の需給見込につきましては、お手許の資料の中にはありませんから、これは口頭で申上げますが、これは今申上げました生産率と関連がございますので、口頭で二十六肥料年度の需給見込について申上げて見たいと思います。昭和二十五肥料年度の総合需要量でありますが、即ち昭和二十五年の八月から二十六年の七月に至る一カ年の総合需要量でありますが、昭和二十五肥料年度の工場出荷の実績は百四十二万七千トン、これに肥料配給公団の手持ち二十三万トンが全量放出を見たのでありますから、合計百六十五万七千トンであつたのであります。次に昭和二十六肥料年度、即ち二十六年の八月から二十七年の七月に至る一カ年間の総合需要量の見込であります。二十六肥料年度の国内需要量は、政府におきましては百六十万トンを見込んでおられるのでありまして、昨年度、即ち二十五肥料年度の実績から見ましても、総合需要量は昨年度、即ち昭和二十五肥料年度と同程度と見ても百六十五万トンから百六十六万トンと推定せられるのであります。海外需要は現在台湾、沖縄及び韓国の需要数量は九万九千トンであり、戦前台湾、韓国の輸出は過燐酸だけでも昭和十年から十六年に至る年間平均は約十七万五千トンの実績を収めております。政府におかれましても年間十万トンの輸出を計画され、これの所要燐鉱石約六万トンの輸出向けの外貨資金を予定されておりますので、一応十万トンの輸出は可能であると思われます。従つて国内需要輸出向けを合せまして百七十五万トンから百七十六万トン程度になるものと思われるのであります。  次に供給量でありますが、供給対象となりますところの昭和二十六年の七月末の工場在庫は十四万三千トンが一応の供給対象ではありますが、昭和二十七年七月末に同程度在庫を持つといたしますればデツド・ストツクとみなせますから、本肥料年度、即ち昭和二十六肥料年度は需要全量を生産に待つよりほかないと思います。従つて入目を含めば約百七十七万余トンの生産を要するわけで、二十五肥料年度の生産実績百五十三万八千トンに対しましてその一割五分、即ち二十三万二千トンの増産となりますが、これから申上げるような点から見まして、これが供給は可能と思われるのであります。即ち生産能力は過燐酸だけでも年間二百四十七万トン以上の生産能力を持つております。それから原料、資材面でありますが、先ず燐鉱石は前肥料年度、即ち二十五肥料年度の入荷が、自由販売になりました結果、外貨資金等もおおむね適切に行われまして、買付も順調でありまして、約百万トンの輸入を見まして、本年度即ち二十六肥料年度の八月から十二月までの需給も本年の十二月末で二十万トン余の在庫は確実と思われますので、何ら支障がないと思われます。従つて今後の外貨不足による資金割当が問題となるのでありますが、これさえ所要量確保の、外貨割当さえ適切に行われれば問題はないと思います。次に硫化鉱でありますが、過燐酸といたしましては百七十七万トンのうち百六十万トン余の生産担当となるのであります。硫化鉱の現行需給バランスにおいては差支えないと思います。但し硫安が大増産の場合は競合の虞れはあると思います。電力使用は極めて少量でありますので支障がありませんけれども、熔成燐肥その他に電力を多量に使用する面で生産に支障を生ずれば過燐酸に皺寄せが来るのでありますが、電力はいいといたしましても、硫化鉱に若干の不足を生ずる懸念はあると思います。労務その他の条件は先ず支障がありません。昭和二十六肥料年度の需給見込については以上の通りであります。
  10. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 次に石灰窒素工業協会理事野村与曾市君。
  11. 野村與曾市

    参考人(野村與曾市君) 私は石灰窒素工業協会代表理事でございますが、我が業界におきましても硫安燐酸協会と同様、この需給調整法の法制化につきましては絶対反対の意思を持つております。去年の六月の末項かと思いますが、政府におかれましては八月一日から配給統制をやめて自由に入るんだといつたような話がございまして、当時業界におきましては直ちに八月一日からやるということにつきましては非常なる混乱を招くからして、もう少し余裕の期間を取つてもらいたいといつたような要望をいたしたのでありますが、そういつたことを元にしまして、自由党の政調会と存じますが、役所、業者等と何回も会合しましたが、最後の段階におきまして当時の政調会長の根本さんから、いろいろ業界意見も聞いたが、要はここで二、三百億円の金融措置を講ずればいいんだろう、それはわかつた、我々はこのことを政府に進言して、そうして金融の措置を講ずるということをするんだというようなことを大見得を切つて断言いたしましたので、我々は非常に当時意を強うしたのでありますが、結果たるや遂に何らの収穫なしで今日まで及んでおる次第でありまして、今なおこの金融措置ができていない。政府の手によつてつておらんということをここで申上げておきたいと存じます。  そこで大体最近この世界の化学窒素肥料の情勢を見まするに、戦争によつてドイツは壊滅してしまつた。代るべく立つたアメリカは戦後火薬に使つておつた窒素化合物をすべて化学肥料に転向しました。そのために一九四八、九年頃においては相当量輸出可能性ができて参つたのでありますが、そのために日本も非常な恩恵を受けました。ところで昨年の朝鮮事件を契機としまして、いわゆる非常事態宣言ということからしまして、アメリカは従来の肥料工業というものを、再びバターから大砲に変えたのでありまして、又火薬に用いるようになりまして、最近ではアメリカ自体が自給自足をやつとこさというところでありまして、これを輸出に向けるという可能性はないのでありまして、従つて最近この近東諸国へ来ておりますものは英国とかスペインが若干ありますが、その後は実は日本に出してもらいたいという要請が非常にきつくなつております。先ほど私はGHQのG4において責任者から聞きましたが、朝鮮でも四十万トン要る、それから台湾におきましては先年の日タイ協定といいますか、あれによつて二十五万トン出すといつたような約束も一旦できましたが、最近東南アジアの方面から日本に対して引続き要請が来ておるようでありますが、彼らは朝鮮とか台湾に出しておきながらなぜ東南アジアに出さんのか、それならば自分のほうにも覚悟がある。言換えると賠償を取るぞといつたような強い主張を持つて非常に要請をしておるようでありますが、かように考えますというと、私の目算でありますけれども、日本が今後近東、即ち台湾、朝鮮或いは東南アジア、インドネシア、濠洲、インド等へ出すべき数量を総合しますというと大体百万トンと推算されます。そこで我々は日本人として日本の食糧増産のために必要なものは二百十万トンと申しますが、二百万トンと押えましても三百万トンというものは今後生産しなければ、日本が国際経済に協力できないといつたようなことになりはしないかと存じます。かように考えますときにおいて、この化学肥料というものは現在では単なる日本国内政策のみによつて動くものではなくて、いわゆる国際商品として国際経済に協力しなければならんという重大なる使命を負うておるものであると存じます。このときにおきまして農林御当局におかれましては、需給調整制度なるものを立案されておりますが、これは私が考えまするに、要するに米は統制である、又低物価政策でやつている関係肥料もそれのつき合いをしなければならんというような気持で以て場所的又時期的に安定を期するというような御趣旨でありますが、これは現在の私の考えでは、これを実行する上においては逆な現象が起るということを確信するのであります。なぜかならば、生産というものは自由である、配給は統制だというようなことは、いわゆる半統制と申しますが、間接統制というものは、結局結果において何もできないということで、有名無実のことになるというふうに考えております。そこで私はどこまでもこの際日本人としましては、この一トンでも多く造るにはどうしたらよかろうといつたような観点から、いわゆる自由経済に立脚して自由にどんどん造らせるというような方針の下にこの国策を立てて行くことが必要と思います。農林省としましてはそういうお考えを出されますことは御所管上当然と存じますが、これは国家が法律を作る、政策をきめる場合においては十分慎重な御考察が必要と存じます。  簡単でありますが、これだけ申上げておきます。
  12. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 有難うございました。  次に全国肥料商工業組合連合会会長鷲見保佑君にお願いいたします。
  13. 鷲見保佑

    参考人(鷲見保佑君) 私は流通過程を担当いたしております全国の肥料商工業協同組合連合会、並びに東京、大阪等にありまする大元売商が結成いたしております中央肥料懇話会の今日まで種々研究いたしました結果を申上げますが、結論におきましてメーカーの方々と同様に、この法案には絶対反対をいたすものでございます。その趣旨は、お手許に差上げておきました意見書の通りでありまするが、なおこれに附加えまして申上げたいと思います。  自由販売一カ年間を顧みまして、メーカーもデイラーも、農業組合の方々も消費者も、いずれもこの自由販売の方針については不満の声を表明しているようなことは耳にいたしておりません。これを見ましても、政府は昨年八月自由販売政策を切替えたことば確かに私は成功であつたと思つております。然るに今回この政策を僅か一カ年間の後において再び間接統制方式に変更せんとするのは、何かそこに大きな理由がなくてはならないと思うのでありまするが、我々の知る範囲におきましては、さような問題は現在見当つておらないわけであります。又業界の輿論は、この政策転換にいずれも大きなる反対を示しておるということは、この政策が現実にマツチしておらないのではないかと、かように感ずる次第であります。漸く自由販売が一カ年間の経験を得たのでありまするが、まだこの間には公団の残つておりました品物を放出したりして、真に自由販売の妙味というもの、或いは欠陥というものは過去一カ年間におきましては現われておりませんので、自由販売の批判、又は自由販売の対策を考えるにはあともう一、二年の経過を見なければ私はこの結論は出ないと、かように思つておる次第でありまするが、なぜに政府がこの臨時議会にこれを上程せんとするかについては理解に苦しむのであります。私はこの問題はもう少し練つて頂いて御研究願うのがいいのではないかと思つております。  次に国際貿易に復活いたしました日本におきまして、肥料輸出は非常に前途有望でありまして、これが我が国にもたらすプラスは多大なものであろうと思つておりまするが、この重要な商品輸出を抑えて、一に国内価格の抑制をせんとするような目的がこの法案にあるとするならば、この法案のごとき方法をとらずに、他の方法によつて価格の抑制又は需給の安定を図る途があるのではないかということを考える次第であります。  次にメーカーに対する金融業者の投資は、運転資金の場合相当厖大な固定投資が行われておりまするので、これが維持には金融業者の熱意ある金融操作が行われており、又ときにはいたし方なくメーカーに引きずられまして金融操作が行われておるのではないかと我々はそう想像いたしておるのでありまするが、若し政府の買上措置ということが行われることになりますれば、金融業者はこの熱意ある金融操作を肩替りし、又は転換的態度に出られ、従つて三割の買上以外にあります他の大量の部門の金融政策に相当悪影響を及ぼすのではないかということを憂える次第であります。  次にこの法案の御趣旨を承わりまするのに、赤字を出さない方針であると、かように漏れ承わつておりまするが、赤字を出さずにこの法案を実施されるという場合には、農家に高く物を売るか或いはメーカーから特に安い物を買上げない限り我々の経験においては不可能ではないかと思つております。従いまして経営の面において多々納得の行かない点がありまするので、この点について特に我々は研究をしなければ、この法案をお出しになつたかたがたが却つて逆効果を求められることになるのではないかという不満を持つておる次第であります。  次に政府が言つております需要期、不需要期というものは決して一定不変のものではございません。施肥期というものはきまつておりまするが、商品売買の行われる需要期、不需要期というものは、肥料界並びに肥料界を囲繞するあらゆる金融界、経済界、又は国際事情等によりまして絶えず激動しておりまするので、又は突発的事情等によつては一夜にして変革を来すのでありまするから、需要期、不需要期というものをあらかじめ定めて、このときに買上げをなし又は売出しをなさんというようなことを計画的に行うことは、その事業そのものを死物化して、自由経済の下においては非常な結滞を起す結果が来るのではないかと、かように思つておる次第であります。いずれにいたしましても、本法案は需要と供給の量の変革を来さしめず、一定量の枠の中において政府が中間需要需要並びに供給操作を行わんとするものでありますから、真にその目的を徹底するには、量を殖やすとか減らすとかしなければ私は目的が得られないだろうと、ここに不徹底なものがあるように考えられます。従いまして本法案の代りに生産量を増大する生産計画を立てる、かようなことによつてこの案を切換えてもらつたならば、むしろ政府の企図する点が手早に発見されるのではないかと、かように思つておる次第であります。又間接統制のごとき考えが起きますと、一面自由経済考え方と相反する思想が起きまして、統制と自由と相争うような状態が経済界に生れますれば、将来禍根が残るのではないかと思つております。かように私は考えるのでありまして、この法案をもう一遍よくお考え直しを願いまして、よく官も民も懇談し合つて、もつといいものを作つて頂いて、肥料業に携わる我々も、メーカーのかたがたも、農家も、政府も、監督なさる立場におきましても、これならやつて行けるであろうという案をもう一遍練り直して頂きたいと、かように私は思つておる次第であります。
  14. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) どうも御苦労様でございました。  次に通産当局からの御見解を御披露願いたいと思いますが、今本案に対する参考人のかたがたからのお話によりまして、非常に増産の問題が特に取上げられており、或いは一年やつてすぐと又再統制をするなんということはというようなお話の点になつておりますが、この点につきまして特に通産省では増産案はどんなふうにお考えなつているか、その内容その他につきまして御説明願いたいと思います。
  15. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 通産省といたしましては、只今農林省で御計画なさつておりまする肥料需給調整問題に対しましては重大な関心を持つておるのであります。未だ政府の案となつておりませんから、この法案の内容につきましては私からかれこれ申上げませんが、併し冷静に考えました場合、この動機は誠に御尤もでありますけれども、かような人為策を実行して、果して所期の目的を達し得るやいなやという点に若干の疑問を持つておるのであります。そこでこの際かような人為的操作を行うよりも、先ず増産第一主義をとりまして、以て原価をできる限り安くし、そうして国内需要を充足いたし、更に進んで東南アジア各地からの熾烈な要望による輸出をできる限り進めて見たいと、これが我々のとるべき対策ではないかという考え方の下にもろもろの施策検討いたしております。  只今我々が考えておりまするのは、大体過去の需要供給その他から考えまして、本年においてどうしても一割の増産を是非ともやりたい。すでにお手許に資料を差上げてありますから御了承願つておるかと存じまするが、昨年の窒素肥料の全生産量は二百七万トンであります。これは当初の生産計画は百七十万トンであつて消費の予想が二百十万トンであつたのであります。その不足分は公団の手持が四十五万トン前後あり、又輸入が五万トン、約束されておりましたので、十分これで間に合うという予想を立てておつたわけであります。然るにその後意外に供給が払底しておるということと、更に新らしく自由経済になりました結果生れたところの全国のデイラー、いわゆる問屋の手持というものが消費のほうに搬入されていないということがわかりましたので、生産計画の百七十万トンを百八十万トンに引上げました。更にその後台湾、朝鮮、或いは香港向けの輸出が相当強く要望されましたので、この百八十万トンの生産を百九十万トンに引上げて、以て最低限度の輸出を敢行したのであります。然るにメーカー方面の非常なる協力によりまして、先ほど申上げましたごとく、生産は二百七万トンという異常な数字に達したのであります。一方消費のほうは二百二十万トンの予想でありましたのが、実際は二百十万トンにとどまつて、更にその中には先ほど申上げましたごとく全国何万の問屋の手持ちがこの中に含まれておるというような状態になつておるわけであります。そこで本年の消費の予想でありまするが、大体過燐酸肥料その他の増産もありまするし、又問屋の手持も一応充足いたしておりまするので、昨年同様二百十万トン前後の消費を推定して置きましたならば、余り大差ない数字ではないかというふうに考えております。そこですでにこの程度消費でありまするならば、昨年の生産で十二分に間に合うのでありまするが、何と言つてもこの際輸出をできる限り進捗させまして、以て原価の引下げをやりたいという考え方から、実は一割の増産を実行いたしまして、そうしてこの増産分だけを輸出に振当てたいというような構想を持つておるのであります。そこでこの増産をやります場合に資材はどうなつておるかということでありまするが、幸いに資材は殆んど内地で充足できまする関係上、不足はないのでありまするが、ただ問題は電力が一番大きなネツクであります。併しながらこの電力も御承知のごとく他の産業はいろいろの国家的に大きな犠牲を払つて輸出の振興を促進いたしておりまするにもかかわらず、なお予想ほど伸びない産業が相当あります。然るに肥料は何ら国家的犠牲を払つて促進の施策をせなくても、強烈な各国の引合があります関係上、ただこれは生産さえすれば直ちにこれは輸出に振向けられるという状態になつておりますので、多少他の産業に圧迫を加えましても、肥料のほうに特に電力を増配すべきであるという考え方の下に、一応三億キロの電力を特に肥料のために特配しまして、そうしてこれを増産をいたしたいという計画を持ちまして、すでに省議ではこれを決定いたしまして、只今安本と折衝中でありまするが、これも安本のほうでもこの実情はよく御認識願つておりまするので、多分できるであろう。それならば今月からすぐに増産態勢に入つて行こうという実は決意を固めておるのであります。が御承知の通り本年は異常の渇水であります。特に電力会社によりましては石炭の手当も余り面白くない。特に関西はこの電力はよそ以上に欠乏しておるというようなことを承わりましたので、昨日公益事業委員会の松本委員長その他幹部に実は来て頂いて、通産省幹部と当面の電力問題並びに将来の電力問題ということにつきまして隔意なき意見の交換をいたし、できる限り通産省はこの石炭の確保に対して全面的協力をいたす。その代り公益事業委員会におきましても積極的に且つ熱意を持つて電力の増強確保、それについて邁進してもらいたいということを強く昨日要望いたした次第であります。これらの状態に相成つておりまするので、通産省といたしましては、この際いろいろの人為的操作をやるよりも、むしろ増産一本、これに全力を集中いたしまして、以て国内需要の充足、できる限りその余分を輸出に振り向けるという方針を対象といたしまして進んで参りたいという考え方を持つている次第であります。
  16. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 以上で一応説明は終りました。  これより質疑に入りたいと思います。質問の相手方をはつきりいたしまして御発言を願いたいと思います。御参考までに出席のかたがたを御紹介いたしますが、参考人のほかに通産省のほうの首藤政務次官、先ほどの農林省農政局長、それから通産省化学肥料部長さん、安定本部の産業局次長渡部さん。右のかたがたがおられますからどうぞ一つ
  17. 小野義夫

    ○小野義夫君 私の質問は或いは今日御出席のかたで御答弁のできない問題もあるかと思いますが、目的は、どなたでも結構なんですが、この問題のあるところを深く掘り下げて、この委員会各位並びに一般国民に、どこに問題があるかをもう少し詳しく説明して欲しいという考えから以下十数問に亘りまして御質疑申上げたいと思います。  先ず第一に政府の予想しておるところ百三十億のこの資金関係と、それから買上げ、売渡しに関する時期方法に関する問題でありますが、大体政府案によるというと、二割くらいの買上げをしたいということであるのでありますが、その二割ということは如何なる月も二割買上げるのではありませんから、或るときは五割、大割というものを買上げる必要が発生すると思う。平均毎月々々二割々々を十二カ月買つておればそれは非常に無事泰平であるけれども、これは何の効果も発しない。買う目的を達しない。従つて或るときは買う、或るときは過大に買うということになるが、かかる操作が、五割も六割も買うというようなことが市場を非常に刺戟する。買入れに対してこれは誰に相談するまでもなく、そういう急激の需要市場に打ち込んで来れぱ市場が暴騰することは、その原因が政府たると外来たると、或いは民間であるとを問わず、需給というものが物価を支配するのでありますから、非常にそこに刺戟を与えるのではないかという懸念がたくさんあるのであります。又この資金の利用率は、百三十億であるが、これをどういう廻転において行うのであるか。総計して百三十億なら、或るとき買つて或るとき売つて、廻転率というようなことがどういう計算数字になるのか。最高三十億であるときは、或るときは十億、或るときは零ということを意味しているのであるか、その資金廻転と、それからその月々における買入れ予想というようなものが細く表現せられない限りは、この需給調整というものはやはり一片の作文に過ぎないのでありまして、実効性が頗る乏しいと思うが、この点について詳細なる月別、その他の市場操作の具体的案があるならばお示しを願いたい。
  18. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 百三十億の資金でございますが、これは一応のまあ予定の計画でありまして、最後の決定したものでございませんが、我々の買方の細かい点等につきましては更に印刷等をいたしまして、お配りしたほうがいいと思いますので、ここに実は手持ちをいたしておりませんので、口頭で大体のことをお話したいと思います。先ほど申上げましたように、需要期、不需要期という観念でございますが、どうしても肥料消費が季節的に農家に非常に差があるために、或る時期を経ますると、必ず市場在庫が非常に多くなるという時期か過去の例等にあるのでございます。そのいわゆる市場在庫が非常に多い、或いは繰越が非常に多い時期をいわゆる不需要期と、こう申しておるのでありまして、実行の過程におきまして、客観的条件等においてこれがいつも若干変るということは予想しておるのでございます。年間を通じて見ますと、必ずそういう時期があるのであります。大きく見ますと春肥、秋肥、この二つがあるわけであります。それを除いた時期は先ず不需要期考えております。買方といたしましては先ず月二割を買うというようなことは当然考えなくてもいいじやないか、需要期におきまして平均しまして、各肥料によつて違いますけれども、先ず三割を買う。常識で申しますと二月、三月、四月の農家の総需要量の三割程度を、売り出すため不需要期買上げをいたしたい。こういう実は考えであります。従いまして市場相当量在庫ができますというときには、政府はこれを買入れる。いわゆる財政資金で持つ時期が来た場合に、それを発動して買おうと、こういう実は制度なつておりますために、月別に二割を買うということは考えておりません。大体月によつてこれは非常に違うと思うのでありますけれども、一応硫安であれば通年的に見れば十、十一、十二月というような時期、或いは時期によつてはこれが一カ月ずれるとか、いろいろなことがあると思いますが、その他大体三カ月程度で先ず二十五万トン程度つてやる、こういうように考えております。石灰窒素等におきましては、先ず我々といたしましては七万トン程度を買つてやる。それを三カ月程度で買うということになりますと、まあ二万、三万という程度であります。不需要期を仮に十月としますと、十、十一、十二で七万トンを買うという考え方を持つております。それは市場全体の在庫から言いますと、市場在庫の先ず半分、三分の一程度になるのじやないか、こういうように実は考えております。燐酸等におきましては、先ず二十万トン程度買上げをいたしたい。操作後の在庫といいますと、買上げをなした後にもなお同程度、或いはそれ以上の在庫市場にある。先ず半分以下ということになります。二十万トンを三カ月程度で買う、こういう計画をいたしております。従いまして月平均に買つて行くという考え方は、本制度そのものが取らないのでありまして、不需要期相当量の市中在庫財政が持とうと、こういう考え方であります。資金全体といたしましては、だから一番多く政府がストツクをしておる、いわゆる不需要期において、大体商品としては百三十億のものが買上げられる。こういう計画でございまして、大体だから二回転をいたしますということになるわけでございます。
  19. 小野義夫

    ○小野義夫君 そうしますと、若しそういう滞貨ができずに、まあ今までの例によるとお説の通りでありますけれども、今年などは非常に変調を呈しておることは御承知の通りでありますから、若し在庫がなかつた場合には買わないということもするつもりでありますが、在庫が減つてつてもなお且つ既定方針を遂行するという考えであるか。
  20. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 我々といたしましては、市中の在庫というものが、需要期、不需要期にかかわらず一定の量があるということは、これは当然だと考えております。従いまして、単に硫安で申上げますれば、大体七・八万トンのものが市中にある、それ以上例えば非常にストツクが殖えて参りますと、そういうものはこれは不需要、期というふうに考えております。現実に不需要期がないということは考え得るかという問題と思いますが、硫安消費が二百十万トンなりや、二百二十万トンなりやということは、十万トン程度の差というものは、これはいろいろ意見はあるのでありますけれども、その需要というものが、農家におきましては非常に季節的に片寄つておる。春肥、秋肥というようにはつきりと季節的であります。その途中におきまして、これをどこかの期間が在庫しておる、工業の生産でありますから、月別平均は不需要期にむしろ生産が多いという関係でありますから、その間の在庫というものが何時も一定であるということは、我々としては実は考えられないのであります。その在庫をどこが一体持つたら一番いいか、こういう問題だろうと思います。商業的の自由活動ということは我々は前提にいたしております。肥料工業のほうも若干のこうした在庫品はあるのも当然であります。そういうものが自由に活動した上に、なお且つ八万トン程度以上の在庫ができました場合は、これは相当のやはり市場在庫が出るのであります。これが非常に或るところに隠れました場合に、それは一つの或る程度の思惑的な需要を見ざるを得ない。そういう思惑的な需要というものは、決して我々としては歓迎をいたさないのでありまして、こういうものがありました場合は、それは当然或る程度買上げまして、国自身が持つておるということが必要になつて来るじやないか、こういうふうに実は考えております。仮に需要というものが旺盛でございまして、輸出年間の枠以上に出さない場合におきましても、市中在庫というものを全然なくするということは、非常に農家自身の或る程度の思惑的なものになるのじやないか。農家が、例えば肥料が先のほうが高いであろうということによつて農家自身の消費というものが月別平均で参るということになりますと、恐らくそういう在庫ができない。そういうこと自体がいいかどうかという問題は、農林省としては更に慎重にこれは検討しなくてはならん問題だと思います。我々は肥料そのものの性格上、やはり在庫が或る時期において固まつて出るということは、肥料そのものの性格上当然ではないか。それが輸出に向けない、いわゆる先の需要を予想した在庫であるというふうに実は考えておる次第であります。
  21. 小野義夫

    ○小野義夫君 なおその価格の問題につきましては、いろいろ問題があると思いますが、例えば政府が買いに出る、およそ何万トン買いに出るということは、これは秘密ということは審議会その他に懸けるから相当大きな問題でありますが、その場合において業者が怪しからんと言つたところで、およそ利慾を持たない業者はあり得ないから、業者は買いに出るならば、ここで一つこうしようということになつて、不自然に業者を刺激して、市場混乱若しくは高騰を見るような虞れが多分にあると思いますが、只今の点はお互い見解の相違になると思いますから、又他のときにお尋ねすることにいたしまして、第二の点は、これをやるために今計画されておるところの人員及び肥料備蓄等、これに要する人件費、それからこれは勿論政府の金でも特別会計に金利を見るか見ないかは問題でありますけれども、若し金利を見ないということになれば、これは一種の補助政策になるのでありますから、金利を見ると思うが、それの利率及び総金額、倉敷料が要ると思います。業者も或る程度持ちましようけれども、まあ引取らなければならん場合が起ります。それの倉敷料、保管料、それから当然自然に起るところの、これはいわゆる化学肥料でありますから変化を来たす。それによつて生ずるロス、それからそうでなくても普通に取扱うごとに目減りが生ずるのであります。それからよく肥料によつては固くなつて、長く貯蔵しますというと、これはもう一遍粉砕その他のことをしないと使用に堪えないというものもある。その他旅費、交際費、会合費等の諸経費というものは一体この百三十八億の中には内容がはつきりいたしておらんようでありますが、これがどういうふうな金額に上り、各肥料に対してトン当りおよそ何%ぐらいになるか。これは大いにこの農協その他の面から研究しておく必要があるのでありまして、農協はすでに商人にかなわないなどと言つている。農協が非常にやはり肥料が高くなつている、農協の組織及びその運営が当を得ないというか、組織上止むを得んといいますか、商人は尤も報酬なしに利潤一点張りで飛び走るものだから採算が易いが、農協のほうはそうは行かん。そういう点は農協を圧迫するようなことになりますから、私はそういう点について具体的な検討をしているかどうかということを一つお伺いしたいのです。
  22. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 一応資金関係につきましては、二十五億だけはこれは財政資金の要求を実は今いたしておりますから、この金は勿論金利が付かない金であります。その他の金は預金部資金から借入れるということになりますので、当然これは金利を払う金になつております。全体の予算の、御質問になりました保管料或いは金利、運搬費、ロス、その他の人件費等の詳細の点は実はまだ予算等が固まりませんので、農林省としましてもまだここで申上げる段階に実は至らないことは甚だ残念に考えるのでありまして、いずれ詳細は又印刷等にいたして御説明を申上げたいと考えますが、管理等をしますものにつきましては、先ほどから各業者のかたからも役人が商売をすることはけしからんじやないかという痛い御批判がございました。私としましてもそれはまあ重々よくわかつております。我々といたしましては、この案は或る時期において備蓄をして、或るきめられた幅において売出して、すべて明朗な一つあれをやりたい。ただ入札等をいたします場合には、どうしてもこれは予定価格というものだけは政府は発表できないが、予定価格をどうしてきめるかという一つ基準というものははつきりしたい。こういう実は考えでおります。決して商売をする……配給統制をするという考えは毛頭ないので、自由市場において或る時期においてストツクをして、或る時期にこれを放出いたしまして、或る幅で肥料価格を安定する方式を取つたわけであります。従いまして管理の費用等も他の特別会計等から見まして非常に少いので、ただ経理の面、経理の事務というものは、これは飽くまで嚴正でなければいかんということを以ちまして、そういう人だけは立派な訓練をした人を出さなければならんというので、今予算の折衝をいたしております。事務所等も大都市中心に置くというので、五カ所程度を今頭に考えております。それにからむ人間の数というものを百二、三十名程度、或いは百四、五十各程度になりますか、その辺がまだはつきりいたしておりませんが、極く僅かな人間で、経理面、帳簿その他をはつきりしたいという人を置くのであります。徒らに官吏自由市場に出まして市場の操作をするという考えは実はないので、自由市場においていわゆる不需要期における、硫安にしますれば二十五万トン程度のものを一つストツクいたしたいという考えを持つております。従いまして管理等の人件費等は、ほかの特別会計と御比較になればわかるのでありますが、極く僅かのものになると、こう考えておるのであります。はつきりいたしました場合におきましては印刷いたしまして御説明をいたします。
  23. 小野義夫

    ○小野義夫君 これは……。
  24. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) ちよつと小野さん、実施要領の細部の質問に入ると……、もう少し総括的の質問をやりたいというので、総括的に成るべく……。
  25. 小野義夫

    ○小野義夫君 私雑然とメモに書いて来たから、或いは総括的或いは部分的になるかも知れませんが、問題は今業者の説明も非常に抽象論に亘つておるので、あれでは論議の是非を決定する参考にはならんと思います。それで問題を少し掘り下げて……。実利のあることならば、国家がなしていることは個人がなしているのとは違うから、もう少し成るべく適当にやられたいと思います。こういうことをお尋ねすることは、甚だこういう公的の席上不適当かと思うのですけれども、私は過日大阪に行つておつた。ところが突如として或る人が参りまして、最近農林省肥料課長の名義を以ちまして、都道府県経済部長宛に法案の要旨並びにその他の説明を書いて、これが実現協力方を要請せられたということを言つて、これは甚だどうもその意が了解しかねるということを言つて来た者があるのでありますが、これは農林省の省議で決定し、或いは大臣以下のそれぞれの手順を経て、かかる文書を都道府県に配付されたものであるか。或いは肥料課長一個の御意見で、私的見解においてやられたものでありますか。こういうまだ未定稿の……新聞その他でもうすでに出しておるのでありますから、或いはそれを一般に、府県知事会議経済部長会議の席上に案の説明をする等はいいけれども、文書を配付するということになると、これは又業界の対立的な一つの政治問題を醸成するの虞れが多分にあるので、政府は国民と対立、若しくはそれの何の中に入るというようなことは厳に値しまなければ、今後諸問題を解決する上について、甚だ私は円満を欠くのではないかと、こういう見解でありますが、御見解はどうでありますか。
  26. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 肥料課長からといたしますれば通牒のことだと思います。肥料課長がやりましたことは農政局長の責任であります。省議で決定したものでもなし、全部農政局長の問題だと思います。別段官民が対立しようというような悪意でやつたこととは思いません。ただいろいろ需給調整等につきまして何ら農林省といたしましては発表いたしておりませんのであります。業界のかた、或いは議会等ではたびたび実はお話をしておるのであります。県の経済部長等でも重要な実は関心を持つております。民間のかたにも相当説明しておるにもかかわらず、現に何らできないじやないかという非難が相当実はあつたのであります。そういうために一応きまらない案でも、こういうことになつておるのだという恐らく経過報告をしたのだろうという意味で、官民離間策等を農政局みずからやるということじやなしに、むしろ業界のかたに説明の足らざるところを、もつと我々としましては誠意を持つて説明を今後ますますしたいという、こういう熱意に実は燃えておるのであります。そういう結果が悪ければそれはおよそ意図に反したことであります。当然これは慎しむべきことだと思います。やりました以上は、これは農政局長の全部責任であると御了承願いたい。
  27. 小野義夫

    ○小野義夫君 それならばその点は私はよく了承いたしましたが、次にその論旨というわけじやなく、新聞その他に出ておるところのそれを演繹した論旨によりますというと、輸入や原価高を理由として不当な価格の吊上げの危険があると、これがために農民は他の生産資材、或いは消費資材を犠牲とする虞れが多分にあるというのでありますが、これは一つの想像的な仮定であります。若しこれを立証するがためには、最近における農民経済における例えば被服料であるとか、或いは電力料その他生計費の支出、教育費その他の支出費の中に肥料代の占めるコスト、何%肥料代が農家支出に占めておつて、これが若し一割上るか、五%上れば他の消費資材に対してこれだけの圧迫を加え得るというような確たる数字を捉えての論議であるか、或いはただそういう抽象論であるか、それを承わりたい。
  28. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 実は新聞に載りました内容について、ちよつと私了承しておらないのでありまして、その点についてはどういう行き方か、ちよつとわかりかねるのでありますが、肥料価格そのものが農家にとりまして非常な重要な影響があることは、これは私から御説明するまでもないことと思います。だから我々としましては、輸出に対しましても、ここにおいでになります大仲さんその他に来て頂きまして御協力をお願いいたしまして、本年の六月まで無事肥料価格が安定をいたしまして輸出等も円満に出ましたことにつきましては、実は感謝をしておる次第であります。ただこれはそういう主観的なことじやなしに、肥料そのものが安定をするということが最も大事であります。安定価格は一体どの線で求めるかという点であります。勿論硫安、過燐酸石灰窒素等の生産そのものを阻害すること自体は安定でないのであります。そういう一つ生産費といいますものを年間を通じて維持して行くということについては、これは農林省といたしましては当然であります。従いまして電力料等が上りました場合には、これは跳ね返つて参りますのは当然だと思います。農家に対しましても、肥料は成るたけこれは安いほうが無論いいのであります。パリテイ等で米価等に反映いたされまして、何らパリテイ的な価格の恩恵を受けない農民というものが相当あります。又いろいろな農作物は全部肥料を使う、その価格そのものが必ずしも肥料の値上りを吸収し得ないという農家も相当あるのであります。我々といたしましては全体の平均をとりまして、或る程度のパリテイ価格に反映するものだけで、今我慢を実はいたしておるのであります。肥料生産の増加というものと、農家価格の安定というものの間に処しまして、どういう価格計数が一番いいかという問題、この問題は政府基準価格のきめ方であろうと思います。その基準価格等につきましては、具体的に幾らにするかという問題等につきましては、肥料審議会等で十分に一つつて行きたいというようにしておるのであります。消費者的な農民、これが全体としてどのくらいが好ましいかどうか、生産者側はどのくらいが好ましいかということは、肥料審議会で十分審議して頂きまして、政府価格操作の基準一つきめて頂きたいと、こういうように実は考えておるわけであります。
  29. 小野義夫

    ○小野義夫君 その次にこの市価の安定、これは非常に結構だと思うのです。米麦を安定するのでありますから、肥料審議会の市価の安定はいいのでありますが、併し他の諸条件が非常に動揺するのでありますから、肥料のみの安定が必ずしも米価の安定の唯一の原因とはならない。先ほどの数字をよく御検討になるとわかると思うが、今日の農村の総収入というものは、例えばお茶であるとか、或いは蚕のいわゆる桑園であるとか、果実であるとか、まだ農林省の統計でも、正確にならざるもので収入のあるものも相当あると思うのであります。例えば蚕糸を当つて見ると、桑葉というものについて何貫目幾らということは、私の承わつたところでは余りはつきりわからんように思うのであります。併しわかつておるかも知れん。いずれにしても一兆になんなんとするところの中で、化学肥料七百億で約七%になります。これの操作による市価に及ぼす最大の効果的な計数というものは万分以下に落ちてしまうと思う。大体が七%、七、八百億にしましても、一千億にしても七%、その又何%という計数では一割も二割も市価を抑制するということは到底不可能でありますから、肥料の万分台の市価の安定に過ぎないと思う。次に本案が偏在を阻止するということはいたしましても、農家の最近の報告によると、相当収支において黒字を出ておると言います。私は決して農村経済が楽観すべき状態ではない、地方においては甚だ悲観すべき状態であるということは信じます。従つて最も重要なことは貧農に対する肥料資金の貸与という一点にあると思うのです。むしろその偏在のひどいものは金持ちの農家で、今から要りもしない肥料を多分に買つておるということを聞くのであります。でありますから貧農に対する資金の供給がなければ偏在を阻止することができない。そのときに貧農だけに売つてやると言つても金がなければ貧農は依然として買えない、そうすると無肥料状態である。こういうことになつて、貧農に対する資金供給の面を考えることが、農村のいわゆる農業政策としてもその点が少しも見るべきものがないではないか。そして一方に非常に大きな金を一般会計その他からこのほうへ移すところの理由が甚だわからんように思うのですけれども、この点を別に何か考えるのですか。
  30. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 主要食糧は所得の大小にかかわりませず或る程度絶対的に必要なものであります。従いまして所得の大小によりまして主要食糧の値上りの影響というものが非常に違うというのが我々勤労者であります。と同様に農民はいろいろな物資を購入いたすわけであります。併し肥料というものは生産の一番やはり重要な物資であります。殊に化学肥料は全農民の絶対に買う品物であります。従いまして小野さんの言われましたように、小さい経営の農家、大きい経営の農家というものでおのおの所得が違う。所得が違えば肥料の買う時期、或いは買う量というものも勿論違うと思うあのでありますけれども、そういう貧しい農家ですらこれは絶対欠くべからざる生産財でありまして、如何なる農家といえども化学肥料を買わない農家というものは今日の日本の農業では考えられない。そこでそういう貧しい農家に金融をつけたらいいじやないかというお話でありますが、勿論そういう農家生産資材を買う購買資金というものをつける方法を研究すべきであります。コンマーシヤルベースのリストではなかなかこれが困難でありまして、どうしてもそういう農家、これは実は非常に多いのでありますが、そういう農家はやむなく植付け前に肥料の購入をなすと、従つてそこに肥料需要に季節的な繁閑ができる、こういう結果になると思います。農林省といたしましては、勿論そういうことにつきまして努力をいたさなくちやならんのでありますが、先ず第一番に大事なものそのものを或る程度安定さす。その安定は決して我々は価格抑制とは考えておらないのでありますけれども、安定さすこと自体が或る程度そういう恵まれざる農家のためにも絶体必要ではないかということを実は考えておる次第であります。
  31. 小野義夫

    ○小野義夫君 それではまだたくさん問題はありますけれども、それは他のかたもたくさんの質問を持つておられるようでありますから、最後の一問を以て私の質問は打切りまして、あとは又適当のときにお尋ねしたいと思いますが、この肥料の年度の棚下し勘定関係であります。例えば次年度に持越すというようなことになりますと、次年度というのは肥料年度と一般会計年度とはこれはもう仕方がないことでありますが、肥料年度の次年度に多大の在庫品を持越すというようなことになるといろいろそこに弊害が起る。一年持越すならば、三年持越しても四年持越しても同じような勘定で、だんだん持越すようになり、最後のときに欠損が行つて非常にものがない。今まで特別会計、例えば石炭会計においても、その他薪炭会計においても、最後の土壇場になつて非常に大きな赤字を出して、その間を損益がないようなことで糊塗しておると、ごまかしておるというようなことが多い。前例においてあるのですが、これはどうしても私はこの棚下し勘定を厳格に、品物も年度内に払つてしまうということと、そのときのいわゆる金銭会計も同時に結末をつけてしまうというようなことにやつて行くと、すべて明瞭になりまして、その会計の本質をみんな国民が納得することになると思うのですが、繰越し繰越しと言つて実はなかなか棚下しがつかないのです。事実測量するようなことになる。これは何ぼの測量で幾らという測量が出るようになつて或いは甚しきは目見当でやるというような棚下しになつて非常に面白くないと思いますが、その点どうでしよう。
  32. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 会計法で参りますと、先ほど御説明いたしましたように、インベントリーとして一応二十五億程度のものを繰越すということは、肥料需給上やむを得ないと思いますが、あとは肥料年度等で申しますと、七月が不需要期に入るかどうかという問題だと考えております。我々常識的に申しますと、七月がどうしても不需要期として在庫量が非常に殖えるときであり、こうなりますと、そこでどうしても硫安にいたしましても、過燐酸にいたしましても、買上げなければならないということになる。そうしますと、八月に若干の星を秋肥料に持越すということは、肥料そのものの消費、供給の形上やむを得ないのじやないかというように実は常識的には考えられる。不需要期がずれました場合におきましては、これは又別段でございます。
  33. 小野義夫

    ○小野義夫君 今の質問ですが、これは必ずしも肥料年度というと少し語弊があるのですが、例えば政府が放出して、もう放出するときにまだ多少は残つて持越すということになる。さつきのように三年も五年もものは変つても、これは肥料というものはどんどん繰越し繰越しが行われて来るとしまして、どこかに棚下し勘定をするということが、一年の間に必ず棚下し勘定をする、品物を極度に減すということで制約されないと、私はそこに非常に間違いが起るのではないかと考えるのですが、これは意見ですが、局長のお考えは如何ですか。
  34. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 小野さんの御意見も御尤もだと思います。ちよつと誤解をいたしまして答弁いたしたのでありますが、我々としましては、輸出等の問題があります。その年間需給調整をいたすのでありまして、或る需要期における必要量というものを買上げるのであります。これが三年も四年も繰越すということは実は考えられない。そういう場合は勿論これは輸出によつて解決する問題であります。従いまして或る時期を見ますると、年間の或る時期を見ますると、政府の棚下しが当然できるというふうなことは考えております。肥料年度或いは会計年度で財政の面で遅れますと、そこに繰越しというものが若干起らざるを得ない、こういうふうに考えております。
  35. 西田隆男

    ○西田隆男君 農政局長一つ二つお尋ねいたします。農政局長はさつき御説明なすつたうちに、硫安が二十五万トン、石灰が七万トン、過燐酸が二十万トンを買上げるという御説明があつたようですが、この数量は日本生産される数量のストツクされる数量の何割という意味合いですか。或いはこれだけの数量を買上げて行かなければ日本国内肥料消費が完全に行われないという観点からの数量ですか。それを一つ先ずお伺いしたい。
  36. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 肥料農家消費が、需要期と不需要期と実は違うのでありまして、二十五万トンと申上げましたのは、いわゆる不需要期買上げ総量でありますが、その量が大体二月三月四月という需要最盛期と言いますか、需要最盛期の三割程度になる。だからそれの三倍程度というものが全体の需要である。これは三カ月の需要である、こういうふうに考えております。即ち三、四の総需要量の大体三割程度のものを政府が持つ、こういう計画になつているわけであります。
  37. 西田隆男

    ○西田隆男君 三割程度を持つということは、それだけ持つていなければ肥料国内消費の面から殖えることを来たすという観点から、そう考えられておられるのか。或いは生産される数量がそうだから数量的にきめられているのかということを私はお聞きしているのです。
  38. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) これは両方の見地に立つているのであります。一つ農家需要期に相当の需要が殺到いたしますために、地域的にも或る程度ストツクをしながら、例えば北海道でありますとか九州でありますとか、いろいろな地点の代表的な地域にストツクいたしまして、地域的調整もやり、同時に全体としての価格安定のための買付保護、この点もありますが、同時に肥料生産が月々大体そう大きな変動がないわけであります。その生産消費とがアンバランスである時期に、市中の在庫量というものを大体平均して商業的活動、メーカーのかたの負担を軽くするということも考慮した結論が、こういう数になるだろう、こういうことになるわけであります。
  39. 西田隆男

    ○西田隆男君 それでは更に聞きますが、若し政府はこの数量を買上げしなかつた場合、反対にいつたならばメーカー及び全国の肥料組合或いは卸売市場等々によつてこの数量が保持されておつた場合、肥料消費面或いは価格面にどういう弊害があると農政局長はお考えなつておりますか。
  40. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) ストツクする意味だと考えます。何故にそういうストツクが行われ、それをどこで持つてつたのが一番生産者のためにも需要家である農民のためにも最も合理的であるかという一つの点であろうと思います。今日或る程度のストツク的な金融というものは、なかなか実はつけにくい点でありますから、そういうものがどんどん市中活動において確保できる、それが価格安定にも効果があるという制度が立ち得ますれば、こういう特別会計を作る必要は毫もないわけであります。今日の段階におきまして、我々としましてはいろいろ実は考えて、先ず財政によつてこういうストツクを作つて操作することが、価格安定にも又資金面から言つても一番いいのじやないかという結論がここに出たのであります。
  41. 西田隆男

    ○西田隆男君 肥料のストツクによるメーカーの金融を助けるという意味に対しては、私は不賛成ではありません。不賛成ではありませんが、今あなたがおつしやつたような適当な場所に政府がストツクして、適当に配給して売るのだという考え方は、むしろ何カ所かに政府がストツクをまとめて置いておくよりも、全国の利用商工組合が各地の需給関係を御存じのはずだし、政府がストツクして重ねておくよりも商工組合のほうの金融さえつくならば、そうしておくほうがより以上に末端に肥料の配給が徹底して行くと考えますから、そういう意味であればそういうことは意味をなさないと思います。これは滞貨金融をするという意味であれば一応成案ができるわけですが、それともう一つの問題はこのストツクの数量をメーカーなり肥料組合が持つてつて需要期に際して売出す場合と、政府がこの数量をストツクしておいて需要期に際して売渡す場合と、価格の差がどれくらいつく、こうやつておらなければ、肥料のメーカーや組合だけに委しておつたのでは、非常に需要期肥料価格が上るというお見通しを持つておられて考えておられるかとも考えますが、政府のこれをストツクすることによつて肥料価格というものはどういうふうに操作されるか、今まで不需要期肥料価格需要期肥料価格と、どういう差がついて消費者に売られておつたかということを一つ説明願いたい。
  42. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 肥料につきまして自由経済であつたというのは昭和の初めから実はないわけであります。昭和の初めから以後というものはすべてカルテル統制をやり、直接統制をやり、政府統制をやり、昨年も公団は廃止になりましたけれども、なお八十万トンの清算法人がストツクを持ちまして、操作をいたしたわけであります。実は自由経済時代は昭和の初めでありまして、このときの肥料生産消費関係というものは今日とはまるつきり実は違うのであります。どうなるかという一つの問題につきましてはなかなかむずかしい実は問題でありますけれども、自由経済時代における需要期、不需要期価格差というものは一割五分から二割以上に実はなつております。不需要期においては非常に下る、需要期においては非常に上るのであります。ただ不需要期においてこれを輸出に振向けます場合においては相当の価格安定政策ができると考えます。そういうことをいたします場合におきましては実は非常に暴騰をいたすわけであります。そこで農林省といたしましては、いわゆる需要期における需要というものは大体想像がつくわけであります。その量というものは或る程度どこかで持つておらなければならん。輸出すべきものは勿論輸出しますけれども、その不需要期における量というものをどこかで持つことが必要であります。そういう意味では機関として今日滞貨金融、ストツク金融等がつきません場合において、これを持とうというのが実は結論でありまして、そのコスト等はこれはいずれ予算等がきまりますればはつきりと実はいたしたいと思うのであります。自由経済時代は先ず一割五分から二割程度価格差がある、非常に安い場合と高い場合の差であります。それを我々はこの特別会計を持ちますれば、もつと狭い範囲で安定する自信があるわけであります。勿論この買付量が小さい場合におきましては、元来実は効果がないのであります。或る程度の買付がありますれば、もう少し狭い幅で安定ができるのであります。これは決して肥料生産者の場合、肥料の取扱者の場合におきまして、決して不利なことではないのであります。そういう不当な暴騰、暴落だけを安定したい、こういうのがこの案の実は狙いであります。
  43. 西田隆男

    ○西田隆男君 通産政務次官にお伺いしますが、只今農政局長のお話を聞いておりますと、輸出に関連して不需要期需要期とは非常に価格差が起きて来る。結局国内商品だけを確保して輸出をしない限り肥料価格の安定は期し得られないという結論のように思います。首藤政務次官は通産省としては肥料増産を計画中である。昨年は二百七万トン、本年は一割増産して二百三十万トン近い生産をする。これは輸出肥料一つの部門でしようが、そういう部門のようですが、輸出と見合わしてそれだけ国内消費が各肥料別に確保できるかどうかという問題について通産省の御見解を一つ伺いたい。
  44. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 先ほど申上げましたごとく大体昨年の消費が二百十万トンでありまして、今年も二百十万トン前後を推定しても大体大差ないと考えております。昨年実は二十五万トンの輸出を遂行いたしたのでありまして、本年も二十五万トン前後は最低輸出いたしたいという実は考え方を持つておるのであります。そこでこの輸出をした場合、需要期に供給が足りないという現象を生じはせんかという御質問かと思いますが、この点は肥料需給の実態の趨勢をよく見まして、そうしてこの最盛期に対しましては輸出は控える。そうしてこのいわゆる不需要期と言いますか、比較的需要の少いストツクのある場合を以て輸出をいたしたい。そうしてこの最盛期の供給に万支障のない方法を講じて行きたいというふうに実は考えておるのであります。尤も昨年来実は需要期と不需要期の区別は非常に何と言いますか、はつきりしないような趨勢を辿つております。これは一つは朝鮮事変によつてあらゆる原材料が月々上つて参る。そこで不需要期でありましても先高の気構えの農家、或いは問屋連中が手当を焦つていたということが、不需要期需要期相違を招来したのではないかというふうにも考えておるのでありまするが、併し実際問題として極めてこの間は不明確であつたのであります。従つて昨年から輸出を遂行した場合は、需要期とか不需要期という観念よりも、現実に現在の状態では輸出の数量が獲得できるという実態をつかみまして、そのときに農林省と御協議を申上げて、そうして輸出をしたいということになつておるのであります。
  45. 西田隆男

    ○西田隆男君 参考人のかたにお答え願つて結構ですが、今農政局長の最後の御答弁を伺つておりますと、需要期と不需要期肥料価格は騰貴時期には一割五分以上も高騰する。だから農林省としては適当な価格に落着けるためにこういうふうなこともやらなければならんというふうに私は答弁をとつたのですが、どういうわけで需要期と不需要期にそんな肥料値段の差がつくのか、或いは実際に生産コストを割るようなことで不需要期には販売し、需要期生産コストをカバーするために一割五分以上の値上りを以て販売をするというような考え方を持つておられるのか。或いは不需要期にはバランスがとれておる、需要期には利潤を上げるためにそうするのだ。需給関係だけで肥料まで上るのだから需要期には価格差がついておらなければ損だという考え方で、一割以上の値開きを以て需要期には販売しておられるのか、これについて参考人のかたどなたでも結構ですから一つ意見を承わりたい。
  46. 大仲齋太郎

    参考人(大仲齋太郎君) 只今の西田さんのお問合せですが、需要期に高くて不需要期に安いという問題ですが、生産は先ほど農政局長から御説明申上げた通りに大体においてコンスタントに数量が生産されております。併し需要というものは春と秋と固まつて需要がある。只今卑近な例から申上げますれば、この秋の肥料、大体全体の三〇%が秋の肥料でありますが、この秋の肥料は要するに麦の肥でありまして、関東ならば十月、関西ならば十一月が施肥期であります。その一カ月前、関東ならば九月、関西ならば十月、これが商売の時期である。それが我々の言う需要期であります。併し施肥期はその一カ月後が施肥期であります。然るに先ほど農政局長の申上げましたように、大分この頃の施肥期と需要期が違つて来まして、今日では、例えば米の追加払いがある、又麦の代金が入つて来る。そうするとその金を何に使うかというのが農民考えであります。それをやはり最近の電気の事情、その他から見て高騰するのが必至だから、肥料を買つておくことが最もいいというので、我々は今までいわゆる不需要期であるというその七月に、又今の八月にもどんどんその商売が成立して、又実際に荷物が送られて行くのであります。普通今までの考えでは、この七、八というのは不需要期でありますから、これは売れない、売れないから自分でストツクして置かなければならない。ストツクすればいわゆる金利がかかる、火災保険料がかかる、又時と場合によつては、品物によつては包装替えもしなければならないという出費があるのであります。それを今度は需要期まで持つ二カ月の出費をたとえ安くしてでも、不需要期に売つたほうがとんとんでありますから、それはメーカーとしましては安くても不需要期に売るのであります。そうしてそれが、今度は需要期にはやはり人気というものがありまして、これは商売の常道でありまして、買いたいときにはほうぼうから固まつてつて来ます。それだから実際の金利、倉敷、目減り、その他の費用よりもやはり多少上廻つた値段市場売買値段になることは、これはどの商売にも通有の現象であります。それだけの問題、いわゆる変動だけであつて、大きな農林省考えているように不需要期に買つて、そうして需要期に全部売渡さなければ流通過程がよくいかんとか、或いは農民が非常に高い値段で買うというようなことは、今までは私は特殊の事柄で、ともかくも大体においてないように私は思うのであります。若しも農林省考えているように、不需要期に買つて、それを或るストツク・ポイントに送つて、それを今度は地域的なり或いは貧農なりに売るというようなことになれば、金利、倉敷をかける関係上、むしろ生産者が直接に送つて来るよりも高く売らなければペーしないのだろうと思います。そのペーしないというのは、赤字を出すことであつて、我々は却つて農民に高い肥料を与えることになるのじやないか。いわゆる需要期と不需要期との値段の高低、それ以外のものは要するに原料に支配されるとか、或いは原料の値段とか、その他にありますけれども、大体において社会の経済事情によつて上下するのであつて、必ずしも需要期には値段が上るというのではなく、却つて需要期よりも需要期のほうが値段が下ることも、これは経済の原則として止むを得ないのであります。今まで農林省考えておるように、前に輸送をして、それを貧農に与える、時期的にそれを配給すると言えば、恐らく私は相当な高い費用をかけなければならない、こう思つております。
  47. 西田隆男

    ○西田隆男君 農政局長にお尋ねします。只今参考人意見を聞いておりますと、農政局長意見とは対立しておるように考えられますが、こういう需給調整規則を作られる上から農林省としては赤字を絶対に出さないという考え方でお考えなつておるかのように、本日私承わつたのでありますが、今のお話を聞いてどうも赤字が出そうに考えられる。参考人のかたがたは極めて良心的に御答弁になつておるようですが、農政局長、どうお考えなつておりますか。
  48. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 私の崇拝しまする大仲さんと比べると、私は全く月とすつぽん程度のものであります。大仲さんからもいろいろ意見を聞いておる点も多いのであります。我々特別会計を作ります以上、国民の税金で二十五億のインベントリー・フアイナンスを作る、いわゆる預金部資金を借りる以上赤字を出すということは考えられないことだと思います。極力やつて、赤字を出さないという案でやつておるのでありますが、それ以上は運用の問題で、別の問題になりますが、ただ一つ申上げておきたいのは、農林省立場の辛い点を一つ申上げたいと思います。この四月から私は農政局長なつておるのでありますが、いわゆる不需要期という時期になりますと、どうしても輸出の問題が起ります。全国の六百五十万の農家輸出問題につきまして非常に関心を持つておる、輸出をいたしますことによる価格の値上りということを実は非常に恐れておる。そこで輸出をします場合における需要量の算定という問題がいつも問題になる。農林省需要量を出しますと、それは恐らく率直に申上げますと水掛論になるのじやないかという御批判がある。それがいつも十万トン多く出す、或いは十万トン減らすというような問題が出て、農政局長孤軍奮闘いたしましても、実需期における需要量農家の米価の問題、或いは季節の問題、いろいろな関係において非常に弾力性があることを御承知願いたいと思います。供給面においても三割強の電力増配は双手を挙げて喜んでおる。併し具体的なことになりますと、過燐酸でありますと燐鉱石の輸入の問題、その他電力需要、その他若干変動がありますので、そういう不安定のときに我々は農林省としては、輸出は大いに増進をしたいのでありますけれども、何らここに安心できる施策がありません。どうしても消極的にならざるを得ないという苦衷をお察し願いたいと思います。そこで今言われました需給調整以外に、この資源の少い……貴重な電力等で作つた肥料を我々は仮需要とか、贅沢な需要のために受けたくない。農民自身が何らかここに安心をいたしますればそう厖大な変動はない。それはやはりいろいろな制度、或いは今日におきましては、やはり官吏商売するなという御非難は受けつつも、政府特別会計が何らかここにストツクをいたしまして、農林省において極力農家肥料消費を安定させる、半年先の肥料安心感を与えるということ自体が、我我が積極的に輸出問題に対して肥料工業輸出産業として伸ばすことになるのではないか。これは私が長い農林省生活から得た経験であります。こういう制度があつたほうが私は輸出量がもつとスムースに多く出て、これが日本全体のためになるというように考えるのでありまして、ただ特別会計自体運用は厳重にやりまして、又今後も諸先輩、諸経験者の意見を十分取入れまして、こういう時代でありますから、合理的にいたしますればそう赤字は私は出ないのじやないかというように考えておる次第であります。
  49. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) ちよつと御紹介申上げます。只今大蔵省の石原主計局長が出席されましたから念のため申上げておきます。
  50. 西田隆男

    ○西田隆男君 私は本日の委員会農政局長の話を聞き、参考人意見も聞きました。農政局長意見も尤もな点がありますし、参考人の御意見も御尤もな点があります。ただこれは農政局長にも政務次官にも、参考人の諸君にも聞いてもらいたいことは、日本が講和条約を批准しました後におきまして、外国の貿易物資国内における生産並びに消費という問題は、常にこういう問題が自由経済の下においては生じて来ると思うのです。そこで自由経済のあり方について、これは管理庁も生産業者の諸君も、一つ悪い点を是正するように考えてもらわなければならん。今農政局長意見を聞いておりますと、理窟通りに行けば問題はないのでありますが、実際農林省の現状を察してくれ、事実はそういうふうに行かないのだ、だからやむを得ずこういうことをやらなければいけないのだ。又政務次官の今の意見生産者の意見を聞きますと、自由経済のためのこういう統制をやり、半端な統制をやつたつて目的は達せられないのじやないかという純粋な自由経済理論に則つての御意見のようであります。従つて将来の日本の貿易物資国内における生産並びに消費という問題に関連しては、業者も管理庁も納得の行くように話合つて、極めて良心的にその運行を図られないというと、統制がだんだんと強化されるという方向を辿らざるを得ないような結果に私はなりはしないかということを非常に懸念しております。どうぞ一つ、この問題についても業者と農林省通産省関係官庁は本当に肚を割つて、本当に日本の国民生活のために寄与できるような、基礎的な考え方に基いて、一つ肚を割つた結論を出されることを私は希望いたしておきます。
  51. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私はこの問題については、我が党のほうもまだ態度を決定していないはずでありますので、内容についてとやかくの意見を申上げることは差控えたいと、こう思うのでありますが、ただ問題が非常に重要でありますので、主として農政局長にその手続関係の点について伺つて参りたいと思います。  先ほど農政局長は、この要綱は局長の試案である、省議の決定にも至つていないということをおつしやつたのでありますが、まあ公式的にはそうでありましようが、農林省としましてはこの案に対して意見が大臣以下一致されているのか、その点をお伺いいたしたい。
  52. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 政府として決定いたさないものを説明しておりますので、農政局長試案と申したのでありますので、農林省としては大臣にも勿論申上げて許可を得て作つておりますので……、これは農林大臣意見考えております。
  53. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 何故私がそういうことを申上げるかと申しますと、実はこの前電力料金の値上げのときに、安定本部でも当時四月、六割二分の値上案が公表されましたので、公表というわけではありませんが、とにかく設けた。そうして後ほどになつて二割の案を堅持されましたので、私はその間の矛盾を追及したのでありますが、当時安定本部の長官としてはそれは物価庁が作つたのであつて、長官としてはあずかり知らないことである。こう言つて逃げられたのでありますので、その点のところを明確にして置きたいということが一つ。そこで私が更に附け加えて見たいのは、農林省としましては一致しておると、省として一致しておるということでありますが、この問題は大きく言えば只今西田君が指摘されたように、日本の基礎産業に対する産業政策を決定する問題でもあろうかと思います。又農業政策、特に米価政策に対する重要な政策を決定する問題でもあると思います。従いましてこういう問題こそ経済安定本部の意見というものが最も私は今の段階では尊重されるのではないかと思うのであります。従いまして経済安定本部としてはどういうような御折衝を農林省となさつておるか。そして経済安定本部はどういう意向を持つておられるか。又大蔵省といたしましては資金措置を要しますので、大蔵省と御折衝になつた結果、大蔵省はどういう関係をお持ちになつておるか、この点を明らかにされたいと思います。それから更に、政府と申せばその与党であるところの自由党のお考えについては、農政局長として御相談になつたことがあるかどうか、そういうような点について御説明を頂きたいと思います。
  54. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 私立案責任者でありまして、農林省といたしましても、先ずこういう問題は予算に関係がありますので、大蔵事務当局とはよく折衝をいたしておりますけれども、予算が補正予算等に関係いたしまして、まだ最終決定に至つておりませんので、まだ予算的な決定をいたさないということであります。それから安定本部、通産省のほうの事務当局のほうにも内々実はお話をいたしております。通産省の御意見只今通産政務次官のお述べになつ意見を私聞いております。安定本部等におきましては農林通産、大蔵、各省の実は関係でありますので、まだ最終的な意見が承知できないのでありまして、従いましてまだ最終決定ではなしに、農林省農政試案であるという段階で申上げておる次第であります。
  55. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) ちよつと栗山君に申しますが、今安定本部や大蔵省のかたからの御返事を頂かなければならないのですか。
  56. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ええ続けて行きたいのですが……。大体通産省は、今首藤政務次官が内容の賛否については政府が決定していない問題であるので発言を憚るという前置きを以て、大体反対の御意向を私は挙げられたと思います。これは若し差支えなかつたならば政務次官に甚だ申訳ないのでありますが、(笑声)まあそうであろうと思います。でありますから、通産省の御意向を私は大体了承しましたが、大蔵省のほうは予算が決定していないという御答弁がありましたが、こういう要綱を実施する趣旨につきましては賛成になつておるのかどうか。公式的に補正予算の決定云々ではなくて、先ほど申しましたように、この法案が性格的に非常に重要なものを持つておりますので、そういう趣旨について大蔵省は賛成しておられるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  57. 石原周夫

    説明員(石原周夫君) 只今農林省のほうから申上げましたように、目下のところ補正予算は決定いたしておりませんので、大蔵省は賛成いたしておるのか、反対いたしておるのかというお話でありますと、何とも申上げようがございません。ただ費用の持つておる重要性から考えまして従来過燐酸の補給金を外す外さぬという議論などにも関連して、実はこの問題は長い開議論いたしておるのであります。又仮に、この会計を作るといたしまして、どういうようなやり方がよろしいか。それから先ほど来御議論がありましたように、これをやるとして政府が赤字を背負うことはないであろうか。なかんずく政府商売を余りしないほうがいいじやないかという一般的な議論がありまして、そういうような見地から検討をいたしておるわけであります。従いまして今日それではこれをどういうような程度において認めるか、或いはどういうようなやり方において賛成をするかということにつきましては、まだちよつと申上げるのは早いと思います。
  58. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでは安定本部のほうの御意見一つ伺いたいと思います。
  59. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 経済安定本部としましても、先ほど東畑局長のお話がありましたように、肥料課長からその案を持つて来て、まだ未定稿であるという途中の段階でありまして、最後の案としてはまだ聞いていないのであります。その未定稿の問題につきまして、今部内で相談を、研究を進めておるような状態であります。これがいずれにしましても、先ほど首藤政務次官からもお話がありましたように、国内需要と非常に旺盛な海外の、而も非常に有利な価格の引合いがあるわけでありまして、この国内需要海外の有利な市場との調整を何とかして調整して、両方に都合のいいようなことを考えて行かなければいかんのでありまして、相当にこれは慎重に研究する必要があるというので、まあ申せば通産省意見農林省意見がもう少しコンクリートになつて出て来るのを待つておる、こういうふうな恰好であります
  60. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでは農政局長に重ねて伺いますが、恐らく局長が試案をお作りになり、而も農林省としては一致した意見にまでまとめ上げられておりますることは、関係筋に対してもそれぞれ御折衝になつておることと思いますが、そちらのほうの御意見はどういうことになつておりますか。
  61. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 農政局長といたしましては、政府で決定したもの以外に関しましては一切関係方面と連絡をいたさないという私は信念を以ちまして、本問題につきましては未だ一度も関係方面との連絡をいたしておりません。関係方面の意向等につきましては、私が農政局長なつて以後はわかりません。
  62. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますと、大体関係各省のお考えなり、進み方がわかりました。問題は最後にこの法案は至急に脱稿されると思うのでありますが、次の臨時国会に提出することを予定して進められておるのですか、或いはこの次の通常国会でありますか、その辺の時期的の問題を一つ
  63. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 農林省といたしましては、次の臨時国会に提案の熱意を以て努力をいたしておる次第でございます。
  64. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これはちよつとほかの問題でありますが、実は消費物資が非常に安ければいいということは、私どもも全く同感でありまして、そういうように産業政策がとられなければならんのでありますが、必ずしもそうは参つておらない。この前電力料金の値上げのときは私どもは党としても反対いたしましたが、その反対の中心は、いろいろな鉄鋼以下の諸物価の値上りのはね返りが電気料金に来たのでありまして、そういう意味における事情を私どもが全然認めないで、そうして反対をしたのではないのでありまして、こういうような非常に経済力の弱い日本経済においては、やはり基礎産業というものは鉄鋼或いは石炭とか肥料とか、こういうようなものはもつと別な施策を総合的に行いまして、そうしてその一環として行なつて行かなければならない。ただ一つ一つを抜き出して政策を進めても決して満足すべき結果は出て来ない。そういうことを中心にして反対をしたわけであります。現に昨年の朝鮮事変以後におけるいろいろの施策がそういう欠陥を現実に露呈したのではないかということを指摘したのであります。従つて今度のこの肥料の問題においても、やはり肥料生産工程にあるところのいろいろな建設費なり、経費なり、そういうものの基礎産業的な投資或いは経費の部面に対するもつと強力な施策を行わないで、こういう一ポイントだけをつかまえて行なつてもなかなか思うような結果は出て来ない。即ち悪性の腫物の上に膏薬を貼つておるようなことになりはしないかと、私は考えるのであります。その点はどういう工合でありますか。
  65. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 農林省は実は全体の経済政策をやつていない関係で、我々事務当局から答弁すべく余りに実は大きな問題だと存じます。ただ我々としましては日本の農業に関連する肥料というものが、通産省関係の大きな生産向上に触れ、従つてそれが全体の経済に触れる問題でありますから、やはり肥料政策そのものが農林省だけの政策では、これはできないということは重々承知いたしております。従いまして通産省で立てられますような生産政策というものについて、我々も十分一つ協力をいたし、又輸出等の問題についても通産省と、農林省、安定本部を通じまして、成るべく円滑に行くということは、農林省としても当然望む点であり、それがこういう又農民関係の深い重要な政策に関連いたしますために、その一環としてこういう問題を立案したのでありまして、総合的な行政政策なり、又国の全体の生産政策に関連することは当然でありまして、そういうものと矛盾なくこれを運営して行かなければならんことは、当然考えておる次第であります。
  66. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この問題につきまして、安定本部のほうからの御見解を承わつて置きたいと思います。成るほど農家経済に対しましてはこの肥料の問題が非常に大きなウエイトを占めておることは、私は否定しませんけれども、今申上げましたような一般的物価の高騰によつて肥料よりももつと激しい値上げの状態であつて農家生産物資に圧迫を加えておることは御承知の通りであります。従いまして本当に日本の農業政策根本的に立直しまして、そうして低物価というものをそこへ持つて来ようとすれば、ああいうような生産の状態をもつと狭めて行くような、根本的な施策がなければ意味がないじやないか。農林省として自分の所管事項について熱心にお考えになることは、これは私はわからないでもないわけですが、経済安定本部としてはもつと大きな日本経済全体の形において、こういう問題をお考えになるのが本当じやないかと思いますが、その点如何でありますか。
  67. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 御質問の点は非常に御尤もであります。安定本部としても日本経済の全体につきましていろいろな産業部面の生産能力、或いはどういうふうに持つて行つたらいいかということをいろいろ研究し、統計的な資料を整備して、先の長い計画を一つの案として立てておつたのであります。これが御承知のような経済自立三カ年計画というものであります。併しながらその計画に基いて、日本経済全体の方向がスタートしようという矢先に朝鮮動乱が起りまして、非常に擾乱的なフアクターが出て来ているのであります。その後日米経済協力の問題、日米経済協力の見地から日本生産力を更にもつと上げなければならない。或いは南方未開発地域に対する援助のために日本の産業をもつと上げなければならん。それには成るほど能力はあるが、電気であるとか、石炭であるとか、基礎産業物資が不足する。その関係をどういうふうに調整するか。又極く最近の講和条約を控えまして、賠償問題でありますとか、いろいろな関係で次々に新らしいフアクターが出て来まして、それらを勘案しまして、日本経済がバランスがとれて伸びて行くように計画を研究中であります。従いましてこれは経済安定本部で計画を作りましても、更にこれを実施に移すことになりますれば、各省とよく打合せて実施することになりますので、今後できるだけ早い期間に具体化されるものと考えております。  なお、それ以上の大きな国の方針につきましては、私のお答えする範囲外でございますので、この程度で……。
  68. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私はこれで質問を打切りますが、お願いして置きたいのは、例えば肥料を作るのには電気が要る三億キロワツト・アワー増配しろといつておられますが、本年度の計画で六百五十万トン割当てることになつておる。数字の上ではそういうことになつておりますが、関西では明日焚く三千トンの石炭にも困つて緊急停電をやつておる。九月においてそういうことをやつておるのですが、今年の十一月先の本当の冬期渇水期になつたら、果して、私は電気が水の渇水量だけを天引した量、渇水が来れば止むを得ませんからそれは天引して、予定計画生産ができるかどうかも非常な疑問だと思うのです。そういうような状態にありながら、石炭の、電力用炭の入手というとについては何ら国は手を打つていない。そういう状態にして置いてこういうものだけをやる、ということでしたら、経済全体の考え方から行けば全くちぐはぐで以て、何をやつておるのかわからんということになるんじやないかと思うのですね。従いましてこの問題から経済全体の問題の話までも拡げてしまつた意味はそこにあるわけです。従つて私はこういう問題を扱うにしても、すぐイデオロギイが何だかんだということが飛び出しますが、そういう偏見にとらわれないで、とにかく経済安定本部としてはもつと毅然たる態度経済の実態を把握して、そうして農林省がこういうことをおやりになる前に、経済安定本部が中心になつて私は推進をされるべきではないか。そう考えるのであります。その点について一つ……。
  69. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) お説御尤もであります。只今の電気の今日あすに控えた石炭不足の問題、全然手を打たなかつたわけではないのであります。昨年からの配電会社の分割、その後の切替の関係で多少電力会社等におきまして石炭の価格の問題であるとか、或いは先の見込であるかといろいろ行き違いがあつたと思います。この点はむしろ具体的の問題になりますれば、通産政務次官がおられますので、そちらのお答えのほうがよりよいのではないかと思いますが、(笑声)決してそういう点を忘れてやつておるわけではありませんから御了承願います。
  70. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 通産次官にいいですか、栗山さん……。
  71. 結城安次

    ○結城安次君 ちよつと農政局長にお伺いしますが、価格の安定を求める、これは尤もの話ですが、大体需要期と不需要期では五分や七分の差は普通の商品でもあるので、それで硫安石灰窒素等の昨年八月から今年の五月までの差は五分乃至七分です。これは今後非常にこの差がひどくなるというお見込みでこういう案をお立てになつたのかということが第一。  それから第二は役人の商売、これはもう大体失敗するにきまつておるのです。過去の実績がもう示しておりますが、それをなお赤字を出さずにやり得るという確信まで行くのはよほど御苦心のことと思いますが、先ほど西田さんの御質問の中に、輸出のトン数で、やれ十万トンがいい、もつと少くするがいい、多くするがいいというようなことで農民に非常に不安を与えた。だから役所の手において相当数量を保持して置きたいというような御意見と伺いましたが、若し農民輸出のために不安を感ずるというのならば、それだけむしろ逆に金融して、先ず役所はその品物に手を触れないということが第一に考えられるはずだと思いますが、こういうお考えをなさつたことがありますか、この二つをお伺いいたします。
  72. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 実は昨年八月から自由経済になつたのでありますけれども、先ほどから申上げましたように昨年はやはり公団が解散当時において八十万トンのストツク、昨肥料年度において四十数万トンの放出を実はいたしておる、事実上相当の量になるのでありまして、そのストツクの中の非常に大きな部分がやはり輸入肥料であります。二十何万トンの輸出をいたしたのでありますけれども、国内生産がそれだけの輸出余力が出たのではありませんので、相当の輸入不足があつた。そういう条件において価格形成という問題は、これはなかなか本年のように何らそういうストツクのない場合における価格形成と又逆ではないかという一つの懸念がございます。もう一つは昨年は朝鮮事変というものが勃発いたしまして、相当諸物資が値上りをいたしました。従いまして農家自体でも相当先買いをいたした。そういうことにおいて或る意味で金融難等も切抜け得られるということがあつたのであります。肥料そのものが米と同じ意味において非常に重要な物資である、農林省といたしましては、米価政策と同じ意味において肥料価格政策というものは相当重要な関心があつたのであります。或る程度の安定施策というものは事前にとつたほうがいいという結論がここに立つたのであります。  もう一つは、こういうストツクを金融でやつてはどうかという案があります。この案は業界のかたからも相当お聞きいたしております。各方面からもそういう御意見のあることも十分お聞きいたしておるのでありまけれども、この考え一つの滞貨ストツクという観念に基くのであります。農民自体需要期、不需要期にかかわらず計画的に消費をさせるということが可能でありますれば、これは別でありますれけども、今日の農民自体におきましては、勿論不需要期でも買う資力のある農家もありますけれども、半分以上の農家というものはどうしても肥料は実需期の間際に入手するという関係上、又農家に六百五十万トンの肥料購入資金を与えるということは、なかなかこれは容易ではありません。従いまして何らかの機関が肥料のストツクをする金融を持たなければならん。ところが滞貨の金融というものは実はなかなか困難であります。殊に農林省自体がそういう金融をつける、特別会計からそういう金融をするということはこれはなかなか不可能であります。若し金融をやりますれば、仮にそういうことが可能でありましても、同時にそういう金融した金で果して肥料を買つたかどうかという帳簿の検査からストツクの検査までやらなければならん。これは官吏の直接統制性格を帯びて来るのじやないかということになる。そこで或る機関にこれを委託して管理をやる場合におきましては、滯貨的な金融というものは今日の段階においてはなかなかストツク金融というものを民間的なものにやらすことは困難じやないかというような結論から、止むなくどうしてもこれは需給特別会計でストツクをするということにならざるを得なかつたのであります。ただ政府が売つたり買つたりするという現象は、これは確かに商業的機能でありますが、政府は投機をするつもりはなくて、或る与えられた枠内で物を売つて買うというストツクであります。我々は商売をする気はございません。従いまして赤字が出るじやないかという危険性は、問題は売掛代金の問題であると思います。曾て木炭が非常な六十何億の赤字を出して、国民経済に非常な御迷惑をかけたのでありますが、木炭は山から出してどこにストツクするか、なかなかむずかしい問題でありますけれども、肥料は立派な生産工場からはつきりと買い得る商品です。又売る場合におきましても、売掛代金を作つて徒らに資金に枯渇を来すということにつきまして、相当の延納等を見ましても、注意をいたしますれば……、あとは価格で損をするかどうか、こういう問題でありますけれども、我々の極く少数な官吏でいえば、又必要なものはこれを代行さして行くということをいたしますれば、そういう今日の段階において十分監督、注意をいたしますれば、赤字が出るという危険性はそう憂えなくてもいいじやないかというように実は考えておる次第であります。
  73. 結城安次

    ○結城安次君 私のお話したのは代行、金融というものでなく、百五十億も出すならば、それを政府の所有に移して、その保管を会社に委託して置いて、政府はそれには触れない。何十何万トンは、これは政府の所有なりと言えば、つまりいわばあなたのほうの考えは、その品物を肥料会社から引取つて、大きな都市の銀行に置くという代りに、管理を肥料会社に任して行けば、これは頗る簡単に、それで必要なときには政府のあれを、ほれというようなことで行つたら簡単に行きはせんかというような気がするが、そういうことはお考えになりましたかということです。
  74. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 若干質問の御趣旨を取違えまして申訳けなかつたのでありますが、売買だけはこれはどうしても政府がやりたいと思いますが、あと輸送でございますとか保管等は、これは政府自身も倉庫を持つておりません。こういうものは一つ民間の倉庫をお借りして、これをやつて頂くということになろうかと考えております。ただ肥料工場における在庫等につきましては、我々としましては、地域的調整ということを考えますと、これは実需地帶における倉庫等に一つつて頂き、そこで買上げをいたしたい。ただ石灰窒素等倉庫等に十分注意をしなくちやならんようなものにつきましては、これは場合によりましては倉庫買上をいたしましたほうがより確実であるというようなものにつきましては、在庫買上等も考えたいと思います。輸送、保管その他につきましては、成るべくこれは代行をしたほうがより経費も少くて済むじやないかというように実は考えておる次第であります。
  75. 結城安次

    ○結城安次君 もう一つお伺いして置きたいのは、需要、不需要という関係がありまするので、硫安石灰窒素もそれぞれの製造能力はまだ非常に多いようですが、そうすると通産省と連絡して、できるだけ増産して需要期消費に賄い得るまでにも能力を上げて、不需要期輸出に持つて行くというようなことでもお考えになり、且つ通産省と御交渉なすつたことがありますか。
  76. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 農家の季節的消費というものに適合した生産計画というものはなかなか実は今の工場能力から、いい、又実需全期間、丁度一、二、三月は電力としても非常に苦しい時代でありますために、そういうことは現実の問題としてなかなかむずかしいのじやないか。不需要期のものを全部輸出し、実需期に農家消費のものを全部生産するということは、今の肥料工業生産農家消費から申しまして、なかなかむずかしい問題じやないかというように実は考えまして、そういうことまでは農林省としては商工省とは連絡いたしてないのでありまして、年間を通じて大いに増産をやつて頂きたいということを申上げておるのであります。
  77. 結城安次

    ○結城安次君 私の申上げたのは電力事情その他もありますし、いろいろの点からつまりその月に要るものをその月に作るということは不可能ですが、併しできるだけ増産する。それでもう農家には全然心配を与えずにやるというようなことで、今まであなたのほうと安定本部と相談して、自主的に案をお立てになつたことがありますかというわけです。
  78. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 農林省といたしましては、そういうことができないという前提でやつておりました。
  79. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いろいろ聞いていて、二、三まだはつきりわからないところがあるのでありますが、この調整制度要綱によりますると、肥料流通の円滑を図るのだということが、目的一つに挙げてあるのですが、昨年肥料配給公団が廃止されたのち現在に至るまで、事実としては流通は円滑だつたとお考えになるのか、不円滑だつたとお考えになるのか、先ずそれを……。
  80. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) これは程度問題だと思いますが、昨年は公団に相当のストツクがありまして、春肥の需要以後地域的にも放出いたしましたために、比較的咋肥料年度は輸出等もいたしましたけれども円滑に行つたのであります。本年はそういう操作をするストツクというものが全然ございませんから、その点が非常に心配をいたしておる点であります。
  81. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこで次の問題になりますが、今後はそういうふうな流通の円滑を期せないであろうという懸念から、こういう問題が出て来たと思うのであります。その流通の円滑を期し得ないだろうという数字的な見込ですね、それらについてはどうお考えなつているのか、それをもう一遍農林省考え方を……、農政局長のお見通しを……。
  82. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) それは肥料需給計画と、実需期の需要量如何という問題にかかつてくると思います。先ほどからたびたび申上げますように、消費を二百十万トンか、二百二十万トンとれるとかということよつては、非常に変ると思うのであります。通産省でも、輸出用のためには同時に相当の電力増配を考えなければならんというお考えがありましたように、我々は今後アジアヘの輸出という問題を考えました場合に、今日の生産計画ではそう昨年のような大きな輸出計画はちよつとできないというふうに考えておるのであります。
  83. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 じやもつと具体的に申上げますが、今のそういう予想、二百十万トンというのは、通産政務次官のお話では、去年は二百十万トンだつたが、今年も大体二百十万トンの見込だということをおつしやつたのだが、農林省はそれでいいとお考えなつておりますか。
  84. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 昨年の実績は実は二百十万トン以上でございます。ただ需要というものが、末端における実需という問題と、途中における需要と、いろいろございます。そこで安定した場合における需要をどう見るかという問題につきましては、なかなか困難な問題であります。我々は今大体二百二十万トン程度の実は需要考えておるのであります。この点は安定本部等で通産省のほうとよく調整をして頂かなければならないと思うのであります。農林省需要を二百二十万トン程度考えておる次第であります。
  85. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その二百二十万トンというのは、二十六年度の消費予想ですか、それとも二十五年度の消費実績自体がすでに二百二十万トンだつたという……。
  86. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 昨年の需要実績の数字でございまして、昭和二十五肥料年度でございます。
  87. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると二十六年度も同じものでいいというふうにお考えになるか、二十六年度は更に若干殖えるとお考えになるか、その点はどうなんでありますか。
  88. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 量的算定になりますとなかなかむずかしい点がございます。肥料そのものが非常に先高である、不安定であるということになりますと、需要は非常に多くなります。非常に安定いたしますれば昨年程度で収まる、今後の施策如何によつて若干の弾力性の出る点を御了承願いたいと思います。
  89. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう先高見越等の仮需要でなしに、実需として農民立場から見て絶対必要だとお考えになる最低限は、来二十六年度はどれくらいとお見込になるのでありますか。
  90. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 農林省といた、しましては先ほど申上げましたように、一応普通需要は二百二十万トン程度ではないかというように考えておるのであります。これはやはり政府全体で決定をして頂いたほうがより公正に行くんじやないかというふうに考えております。
  91. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 政府全体で決定して頂きたいのですが、そこに先ず十万トンの開きがある。一体流通の円滑を期せられるかどうかという要因の一つがそこにあるんじやないかと思うのですが、その意味において農林省或いは通産省の両方の見方をはつきりして置きたいという意味でお尋ねしているのですが、それでは政務次官のほうにお尋ねしますが、今のその食い違いはただ計算上取り方の相違で、実質上は違わないのだというふうにお考えになるのか、その辺の食い違いはどういうふうにお考えになりますか。
  92. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 非常にむずかしい御質問でありまするが、農林省はやはり消費の主管庁でありまする関係上、十二分な数量を確保いたしたいという強い御要望があると思うのであります。従つて消費に対するところの推定数量も、我々の生産官庁から見た数字よりも若干多くなる、これは止むを得ないことじやないかというふうに考えておるのでありまするが、ただ我々は一昨年からの持越し、更に昨年の公団の手持量並びに昨年の生産量、それから本年に対するところの持越量等々から計算した場合に、先ほど申上げましたような数字は大体妥当じやないかというふうに考えておりますが、併し何分にも大きな数量でありまするから、五万トン、十万トンくらいの食い違いは止むを得ないかとも考えておるのであります。
  93. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その五万トン、十万トンの問題が実は円滑であるか円滑でないかという問題の分れ目だと思うのであります。そこは一つ政府のほうでもう少し意見を統一して、少くとも数字に関する限りは一致したことでお話を願わないと、どうも判断に私たちは苦しむのですが、その問題、一応十万トンの開きは別にして、次の問題に入りますが、それでは生産については先ほど政務次官のお話では一割増産の二百三十万トンを見込めるというお話なんですが、これについては農林省はどういうふうにお考えなつておりますか。
  94. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 農林省といたしましては、生産関係につきましては一切通産省にお任せをいたしておるのであります。又その責任官庁でもありませんので、むしろ通産省生産のほうのこういつたことをお願いをする官庁であります。我々は幾ら生産されたということは結果としてわかるのでありまして、挙げて通産省にお任せをいたしております。通産省の言われることをそのまま信用いたしておる次第であります。
  95. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それでは安本にお尋ねいたしますが、安本はどういうお考えですか。
  96. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 二十六年度の生産につきましては、先ほど通産省の政務次官からお話がありました。現在の電力の割当を基にしますると、窒素肥料としまして硫安に換算して二百十四万トンを予定しております。これを約三億の電力の増配によつて更に今の石灰窒素合せて硫安に換算して二十万トン増産しようという案を通産省が立てられまして、目下安定本部におきましてこれは要するに電気を余計食う鉄或いはアルミニウムそのほかの産業との調整、或いは又増産に要する石炭、硫化鉱等の関係等々がありますので検討を加えておるのであります。まだ最後的結論には到達しておりませんけれども、是非それを実現したいという考え方で今検討しております。
  97. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと一応生産については三者完全に一致しておると了解するんですが、そうしますとあとは在庫の問題その他があると思います。これは余り細かくなりますのでそれを飛ばしまして、それではそういう前提の下に輸出可能力をどれくらいとお考えなつておるのか、先ず通産省のほうからお聞きいたしたいと思います。
  98. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 先ほど申上げましたごとく昨年の輸出量が大体二十五万トンであります。然もその後朝鮮、台湾或いは仏印、タイ、フイリピン、東南アジア各国から熾烈な引合いが実は参つております。かたがた輸出の振興という建前からも、最低本年も二十五万トンぐらいは輸出をいたしたいというふうに考えておるのであります。
  99. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 問題はこの需要のほうに十万トンの差がありますが、農林省はその差を見てなお且つ二十五万トンの輸出余力ありとお考えになるかどうか。
  100. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 大分具体的な数字になりまして、輸出力の算定等につきましては時期的需要という問題がもう一つ問題になるのであります。年間を通じた全体の需要量という問題と、時期的需要という問題であります。或る時期において非常に余りましても、その次の時期において非常に赤がある場合におきましては足りないという結論になるのでありまして、生産がまだ三億キロワツトの点はわかりませんので、仮に二百十四万トンの生産計画でありました場合においては、なかなかこれは輸出余力は二百十四万トンと考える場合には出ない。今後の需要量を更にもう少し政府全体でよく相談をいたしました上で結論を出したいと思つております。
  101. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこで輸出が二十五万トンできるかできないかということで問題の食い違いが出て来るし、従つてその制度に対する替否の問題は具体的にどの数字の算定にかかるかということになるんじやないかと思いますが、もう少しお聞きして置きたいのは、在庫について一体通常在庫としてはどれくらい持つておるのが流通の円滑、或いは価格の公正な安定のために必要だと農林省のほうではお考えなつておりますか。
  102. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 窒素肥料等につきましては先ず十万トン弱といいますか、大体その程度年間需要量の一割程度というふうに考えております。
  103. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点は通産省のほうはどうお考えになりますか。
  104. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 通産省としても農林省のお考えと同一程度は適当だろうと考えております。ただ先ほどちよつと申上げましたが、昨年の消費量の中には当初計算に入れてありませなんだ、要するに統制撤廃によつて新たに生れた非常にたくさんな問屋の仮需要、これが一応昨年当初の消費の推定に入つていなかつたと考えておるのであります。従つて朝鮮事変の勃発もありましたが、この計算に入れてなかつたところの何千かの問屋の仮需要というものが新らしく需要として加わりました関係上、昨年の需給関係を予想よりも窮屈にしたということが相当影響しておると考えております。但し現在におきましてはこの問屋の仮需要というものは一応行渡つておると考えまするが、併し本年の消費予想に対しましては、大体前年の数量を見ますれば、むしろ実際の数字よりも多くなりはせんかというような考え方を一応持つておるのであります。
  105. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 十万トンのストツクが必要だということになると、さつきお話のような二百二十万トン消費を基礎にすれば、二百三十万トン生産が仮に可能でも、需給のバランスはとれなくなつて、流通の円滑を欠くというような結論になるのではないかと思うのですが、そこで通産省のほうではどういうふうに考えておりますか。
  106. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) これは前年からの繰越のストツクが相当残つておりますから、常時十万トンのストツクを必要としましても、或いは二十万トンのストツクを必要といたしましても、今後の需給関係には何ら影響がないことに相成つておるのであります。現に二十三年の肥料年度におきましても、二十二万トン余の持越ストツクがあります。又二十四年度は二十七万何ぼ、それから二十五年度には、五十万トン以上の持越ストツクがあるのであります。二十六年度に対しましても、相当量の持越ストツクがありますから、それらを除外した新らしい今後の需給数字が先ほど申上げておる数字であります。
  107. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうするとストツクの問題は繰越になつて、差引零にして増量を考える必要はないのだというお考えですね。従つて需要のほうには増になつて来ない、繰越、繰越でいいのだという御意見ですか。
  108. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 先ほど来申上げましたように、適当と思われるストツクは今年も持越されておる。従つて今後の需給数字は新らしい数量を対象として考えても間違いではないというふうに考えております。
  109. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 農政局長のほうでは適当なストツクを、而も政府が持たなければ円滑な流通なり、或いは価格安定なりができないというような御意見だと思うのですが、その見地からいつてそういうストツクは今年度新たに増に見込む必要はないのかどうか、その点はどういうふうにお考えですか。
  110. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 先ほど申上げました工場在庫的なことを言つたのであります。流用過程等にはまだ若干ストツクが残つております。繰越というものは時期があると思いますが、或る年間における繰越量と、年間の途中における在庫というものは大分変ると思います。年間在庫を平均的にしようと思いますれば、工場における在庫、市中の在庫以上のものが或る時期には季節的に出るのであります。その出る量が肥料性格上相当出る。そういうものは政府在庫いたしておる。或る時期が来ればこれを放出する、こういう考えであります。肥料年度でいいました場合における繰越量はそう差がない。年間途中においての市中在庫には相当滞貨ができる。こういう考え方を持つている次第であります。
  111. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点でなおはつきりしない点がありますが、それは他日に譲りまして、価格の問題に移りますが、価格の公正な安定ということは肥料配給公団が廃止されて過去一年間においては大体公正な安定が得られたというふうにお考えなんですか。すでに今までに価格の安定は公正でなかつたというふうにお考えになりますか。
  112. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 肥料統制撤廃に際しまして、相当価格につきまして各業界のかたに御協力を願いましていわゆる七割アツプ、何割アツプという一つの線で御協力を願つたのであります。又公団にも相当のストツクがございます。これが生産面上に或る程度需要に放出がありましたことを以ちまして、比較的硫安におきましても、ほかの肥料におきましても安定をいたしております。その後八月以後というものは過燐酸におきましては補給金の撤廃等にからみまして、相当値上りをいたしております。硫安等におきましても勿論値上りをいたしておるのであります。何を以て合理的であるかといいましても、なかなかむずかしい問題でありまして、昨年の条件というものは我々は業界の御協力を得まして相当比較的好ましい状態であつたというふうに実は考えておるのであります。併しその背後に相当需給調整的機能を持ちました公団が清算公団として残つておつたという前提は、是非お考えを願いたいというふうに考えている次第であります。
  113. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると若しこの調整制度をないものにすると、今後の価格はどういうふうに変化するというふうに見通されているのですか。
  114. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 非常に短期的な問題と、もう少し長期に見た場合と、なかなかむずかしい問題だと思います。我々は肥料需給調整という一つの間接的な調整機能で全体の物価体系というものを変革をするということは到底できないと思います。例えば補給金が撤廃されましたり、電力が上りました際に、こういう間接調整というものは、こういうものに対しては純粋に考えれば効果はないと考えます。ただそういうことを機会にいろいろな仮需要が起つて暴騰いたし、或いは暴落をいたします。いろいろな関係におきましてはこの制度が私は効果が出て来ると実は考えます。今後の見通しというものがなかなか実はむずかしい問題でありまして、我々といたしましては、国全体がインフレを抑制するという一つの強力な施策をとられつつある過程におきましては、肥料そのものを純粋に考えました場合に、肥料そのものの性格上どうしても需要期と不需要期との間に相当の差ができるということを考えております。その差をこの機関が調整いたしますことが非常に肥料生産においても、配給におきましても、農家消費においても円滑に行くのではないかというように実は考えておる次第であります。
  115. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 この相当の差というのが問題なのだと思いますが、一体価格の公正な安定をするために、そういう制度が必要かどうかということは、この制度を持たなければ、どのくらいに上ることが必然だと見通されるから、それが必要かどうかという問題もおのずから出て来るのであります。ただ傾向として放つて置けば上るだろうから、それを阻止するために必要だというのでは、具体的な判断の基礎にならないと思うのでありますが、もう少しこの点を具体的に……、こういうものを放つて置けばどのくらいと見通されるか。短期、長期、いろいろのどういうお見通しの下に、従つてこういうものが必要だということになつたのか、こういうことをもう少し詳しくお伺いしたい。
  116. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 一つの固定しました物価指数等で考えました場合に、過去のこういう条件というものが一番これは実証的で立証できると考えます。遺憾ながら肥料が完全に自由であつた時代というものは先ほど来申上げましたように、昭和の初めだけであります。それ以後は直接統制をやり、あらゆる統制をやつた条件の下における価格形式でありますから、こういうものは立証材料にならないと思います。昭和の初めは今と大分条件は違うのでありますから、そのときにおける肥料価格形成というものは、やはり一割五分から二割程度最低と最高の差があつたということがいえる。その最高の場合は必ず実需期である。実需期は購入総量が必ず多いというために、農家としても何らかの安定が欲しいという要望があつたのであります。今日の段階におきまして、この肥料そのものを我々はこうなるということを言うのは非常に非科学的とも考えますけれども、一つの参考といたしまして、この制度立案いたしました場合におきまして、この制度における価格の安定は、これは基準価格をおきめ願う、これは肥料審議会でおきめ願うのであります。その基準価格のきめ方如何と考えますけれども、我々のほうの予算その他と睨み合せまして考えますのは、それよりかずつと安い形において安定する、或る価格において安定するという幅はもう少し低くなり得るのではないかというように実は考えておる次第であります。
  117. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その価格変動の予想についてですが、通産省ではそれに対してどういうふうな御見解ですか。
  118. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 御承知のごとく昨年朝鮮事変勃発以来日本経済様相は一変いたしまして、爾来殆んど押し目なしの上昇を続けておるのが日本経済の実態でありまして、特に先々月は電力の三割値上げというような、原価を相当引上げる事情も出て来たのであります。これがありませんでも、物価指数を見ますると、大体平均いたしまして、昨年の七月に比較して本年は五割乃至五割五分の上昇を見ておるのであります。然るに肥料に関しましてどのくらいの値上りをいたしておるかといいますると、お手許に資料を差上げてあると存じますけれども、硫安につきましては一割五分、それから石灰窒素が二割四分、過燐酸が六割五分、これはまあ最近補給金を打切りましたので、これに一番大きな影響をいたしておるのであります。かように硫安石灰窒素は客観情勢が非常に値上りをしなければならん事情にあつたのにもかかわらず、一割五分乃至二割四分程度にとどまつておるのであります。従つて農林省の御要望されるところのいわゆる公正な価格……、これは不公正な価格ということは、少くとも業者が供給の少いのに乗じて不当な利益を取る場合、これが要するに不公正な価格だと指摘されると思います。併しこの昨年来の客観情勢並びに一般の物価指数に比較しまして、硫安窒素肥料の値上りを見た場合、むしろ他の商品に比較しまして値上りの率は非常に低い、これを別の言葉から申上げれば、これこそ本当の公正価格ではないか。この公正価格でありまするものをこういう対策をとつたことによつてここにどういう変化を生じて来るか、恐らく何らの変化を生じて来ないのじやないか、むしろ大量に買上げること、或いは又大量に売捌くこと、これによつて市価を撹乱する虞れなきにしもあらず、かような見解から、先ほど申しました通りに、非常に御尤もな御計画でありまするけれども、前途に対する見通しがつきかねるから御同意をいたしかねておるという結論に達しておるのであります。
  119. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう政策をとつた結果どうなるかということについての御判断はもう少しあとでお聞きすることにして、そういう政策をとらなかつた場合になお今後どういうふうに価格が推移すると通産省では見通しておられるか、それを先ず伺いたい。
  120. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 先ほど来申上げますごとく、どうしても本年は一割の増産を確保いたしたいというふうに考えておりまするから、これは併しここではつきり申上げようといたしましても、情勢の変化によつてその相場は違いまするから、ここで断定はいたしかねまするが、少くとも肥料が食糧の増産用として確保しなければならん重要産業であるということは、通産省といたしましてもよく認識しておりまするし、又業者のほうもこの点はよく認識しまして、自粛いたしておるのであります。従つて情勢が甚だしく変化のない以上は、やはり今後も従来同様の適正な価格で販売されて行くであろう。従つてそれがためには、先ほど申しましたように、増産を飽くまでも遂行する必要ありという考えであります。
  121. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 何が適正かということを具体的に判断しなければならないので、一体通産省はこういう措置がなされないとして今後どれくらいになるというふうにお見通しなつておるのか、それをもつと具体的に聞きたい。
  122. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 甚だ簡単な御質問でありまするが、なかなか困難な問題でありまして、これは全く情勢の変化如何にかかつておるのでありまして、どういう状態になるということは申上げかねまするが、ただ結論的には、需給のバランスをはつきり合わせる、これをやりますればおのずから、そこに適正な価格というものは生まれて来るであろうというふうに考えておるのであります。
  123. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 需給のバランスを合わせることも必要ですが、需給のバランスを合わすことは大体さつき数字的にお述べになつたのですから、そういう需給の状態において、それからその他の物価の傾向等々は、一応のお見通しがあるはずなんです。それらと照応して肥料自体はどういうふうになるか、従つてどういう推移と思うから、こういうものが必要ないとか必要だとかいうことがおのずから具体的に出て来ると思うので、それを具体的にお示しにならなければ、これが心要か必要でないかということはわからんじやないかということでお聞きしておるのです。
  124. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) まあこれがこの案に対するお考えのキイ・ポイントになるかと考えますが、実際問題として甚だ困難な問題であるのであります。ただ併し一般物価の趨勢に対しましても、これは見る人によつて皆異なると思います。ただ私個人といたしましては、アメリカの厖大な軍事計画、軍拡の遂行、或いは世界的政治情勢の緊迫等々から考えまして、現在は中だるみ的な傾向になつておりまするけれども、近いうちに再び日本経済は……、日本経済というよりも世界的経済が活況を呈するのではないかというふうな考え方を持つております。従つてその線から行きますれば、もう少し上るのではないかとも考えまするが、併し幸いに過燐酸肥料以外の石灰窒素にいたしましても、或いは又硫安にいたしましても、その主要材料がことごとく国内で確保されまするから、従つて他の商品、いわゆる原料を輸入しておりまする商品に比較しますれば、硫安並びに石灰窒素のごときは安定した市況が続けられるであろうというふうに考えておるのであります。
  125. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 外国原料に依存するものに比べればそれほどでもないけれども、併し世界の大勢なり或いは日本の今後の物価情勢を見れば相当な値上りは……、若干のと言つたほうがいいと思いますが、若干の値上りは免かれんだろうというふうに若しお見通しだとすれば、それはまあコスト高によるといえば止むを得ないのかも知れないが、同時にそういう傾向であるとすれば、今のままに放擲しておけば、さつき農政局長が御心配になつたような買進み、思惑買等々のいろいろな問題が出て来て、需要は今算定されておるよりもつと大きなものになるのではないか。そうでなくても需給のバランスが見方によつては破れておるのだから、ひどい需要増による価格増が見舞つて来て、農民に対する非常な不安を与えるという結論にしかならないように思いますが、それらの点はそういう傾向にあるにかかわらずなお且つ農民に対しては安心のできるような価格を保持するような見通しが立つとお考えになるのでありますか。
  126. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) これは私は要するに趨勢の変化と、かような制度によつて買上げることによつてそれを安定できるかということは、私は不可能だと考えておるのであります。仮に農林省がこの案によつて買上げましても、大勢が高い趨勢にありまするならば、やはり高いものを買つて行かなければならんということにもなりまするから、こういう制度をとつたかといつて安定は困難ではないか。又これを仮に逆な場合を考えますると、殊に現在は異常経済であります。従つて、今日の考え方からいたしますれば、もう少し前途は高いのではないかという考えがありまするけれども、併し何といつても異常経済でありまするから、いつ如何なる事情によつて客観情勢が非常な値下りをするような場合もなきにしもあらずと考えるのであります。さような場合に、農林省がこの需給調整法によつて買上げたものを損なくして販売できるかどうか。メーカーのほうではその場合の情勢によりまして適当な価格で販売する、従つてこういう場合が考慮してあるといたしますれば非常に安い価格で売るべきはずの調整法によつて買上げたものが非常に高いものになるとも限らん。殊に先ほど申上げましたごとく相当の人員或いは倉敷或いはその他の費用を必要とするので、これがこのままでありましたならば、恐らくメーカーの倉庫に保管されまして倉敷というようなものも要らんのじやないか、又別に二百人の人員ということも必要としないのでありまするから、それだけは原価が、むしろ販売価格が安くなる、これは常識的にそう考えられると思うのであります。ただ形勢が非常に一本調子によくなり、そうしてそれを当初にこの方法によつて買上げた。そうして販売する場合に各メーカーの販売価格は非常に上つておつた、にもかかわらずこの調整法によつて買上げたものがいろいろな費用を差引きましてもなお且つ損なくして販売できるという場合には、或いは効果はあるかと思いまするが、併し経済の情勢はそう必ずしも考え通りに行くものではない。或いは逆転する場合もなきにしもあらず、特に今日の経済は全く異常経済でありまして動いております。これは安定した経済ならばこういうことも考えられまするが、非常に急激な変化を繰返しておる現下の経済情勢から見た場合、農林省のお考えなつておるような欠損を見ずしてスムースな運営ができるかどうかという点に、いささか疑問を持つておるのであります。
  127. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう結論の問題は私自身も別に意見を持つているのでもう少し後にお尋ね申したい、議論もしたいと思う。もつとその前にいろいろな技術的な政治的な問題をお尋ねしたいと思いますが、それは長くなりますから別の機会に譲ります。ただここではつきりすることは、どうも価格の推移の問題に対してはもう少しはつきりした具体的な見通しを御検討つて、それによつて議論をして頂きたい。これをもう一回改めて別の機会に更に御質問したいと思いますが、その準備一つして頂きたいと思います。  それからもう一つ金融措置要領、去年非常に問題になりました金融措置要領の問題でありますが、業者のかたがたのお話を聞くと、これさえうまくやつてくれればこんなような問題は起らなかつたはずなのに、これをやつてくれないからこういう問題が起つたというお話がさつきからたびたびあるようですが、一体金融措置要領をどういうように実施されたか、どういうことになつたか、今までの経過を少し詳しく御説明願いたいと思います。
  128. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 昨年統制を撤廃いたします場合に見通しが不十分でありまして、従つて各メーカーとも相当巨額の金融を必要とするということで通産省といたしましてもあらかじめその準備をいたし、又各銀行に対する了解を求めたのであります。然るに先ほど申上げましたが、朝鮮事変が勃発いたしまして先高の気がまえから全国的に買気が連続して非常に熾烈であつた。同時にもう一つは新らしい分野がたくさんできまして、その方面の仮需要も行われた。従つて需要期でありながら需要期と同様の契約ができ、出荷ができた。従つて爾来今日までメーカーといたしましてはさほど金融に苦しむような、不足はなかつたというふうな事態になつたのであります。
  129. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならばですね、あのときにあんなに騒動をして金融措置要領というものを閣議でおきめになるはずはないと思うのですが、閣議ではあのときにおきめになつたけれども、その後事情が非常に変化して、金融もうまくついて、ちつとも困つていないという政府の認識なんでしようか。
  130. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 或る程度は金融いたしましたが、計画通りの金融は必要なかつたということなのであります。
  131. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 計画としてはどれくらいを計画されたのか、実績としてどれくらいの実績を挙げられたのか、それをお示し願いたい。
  132. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 当初の計画は二百億円の金融を予定いたしたのでありますが、実際金融のできた額ははつきりいたしておりませんが、その後における各銀行並びにメーカーの通産省に対するいろいろのお話合いからみると、大体五十億前後で済んだのじやないかと考えております。
  133. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこが非常に大事な点なんです。閣議で二百億程度のものは貸出しするというふうにおきめになつたのは、それは確かですか。どうも数字が多過ぎるように思うのですがね。当時必要だと言われたのは百五十億ぐらいで、閣議で決定された場合には、それよりはるかに削られておるんじやないかと思うのです。今その点私自身もはつきりしないので、もう少し詳しく聞きたい。
  134. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 閣議ではつきりした金額はきめてなかつたのでありまして、通産省といたしまして推計した金額は大体二百億円内外じやないかというふうに考えております。
  135. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 実績は……。
  136. 首藤新八

    説明員(首藤新八君) 実際の貸出額ははつきりいたしておりません。大体いろいろの情勢から推定いたしまして五十億前後にとどまつておるのじやないかと思います。
  137. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点は後ほど資料で当時どれだけ不足とお考えなつたか。それからその後どれくらいの措置ができたかということを資料で詳しく御提出を願いたい。それから業者のかたがたにお聞きしますが、金融措置要領は大体のところはうまく行つたので、そんなに支障がないというような政府の認識だと思うのですが、先ほどどうも業者のかたがたからは反対の意見が述べられていたように記憶しますが、その点をもう少し御説明願いたいと思います。
  138. 野村與曾市

    参考人(野村與曾市君) この金融措置の問題につきましては、あの当時は生産すれば生産したものは直ぐ公団に取つてもらつて金になるといつたような状態であつたのが、急に業者のほうでストツク金融を見なければならん、又取引金融を見なければならん、といつた関係で、どうしても二、三百要る、であるからしてそれを政府資金を出して金融措置を講じてもらいたいというような要望でありましたが、それはいわゆる自由党の政調会では取上げて政府と交渉してこれをやらせるということを断言されましたが、結果においては、私の記憶する範囲におきましては、一銭も見ていないのであります。(笑声)それで今年の七月を迎えたときにおきましても、やはり金融措置が必要であるというので、各業者団体からこの要請をしたように思いますが、たまたまその要請をしたことが今回の需給調整要領に入つておるように思つておりますが、我々はここで先刻局長の説明のごとく百三十億の国家資金を出されるならば、自由経済時代の時期におきましては、できることならばそれを業者団体にお預け下さいまして、業者統制によつて自由に使う、有効に使うというような方向に持つてつてもらうのが一番有効な方法じやないか。是非どうしても百三十億は業者のほうにお願いいたします。
  139. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 金融の問題は又一遍やつたらどうですか。ここら辺で一つお願いいたします。
  140. 小野義夫

    ○小野義夫君 この問題は政府部内においても明らかに、つまり通産省農林省と、安本はまだ両方にどちらに行司を上げるかというように非常にずるい立場に立つておられるようにも拝見するのですが、これは同じく自由党内閣の、かく申す私も自由党の一員でありますが、自由党の中にも賛否両論こもごもありまして、そこでこの案を押し進めるについて、結果において重要なる二つの点をオミツトしているのではないか。  第一点は、政府も強気で暴騰するという建前ですが、又業者も同じ見解です。先高々々で、抑えられては困る。農林省は先になつている。ところが我々の多年の肥料関係者の経験から見て、近頃では綿糸のごとき意外な事件によつて意外な暴落が来るということをあなたがたはどう考えておられるか。私の考えるところによれば、これは若し非常にソ連の行動がうまく行つて平和になれば、船賃が暴落します。そうすれば過燐酸なども殆んど三分の二に暴落します。かかる場合硫安においても、又その他の事情が発生する理由は多々あります。例えば雨が降つてだんだん電力が豊富になるとか、そういうことになつた場合にどうなるかというと、第一今見込み買いしている農村が絶対買い控える。それからその次に業者が気早く転換する。又メーカーも早く売らなければと、ここに大きな暴落が来て、次に金融逼迫が来たときには、業者のほうから案をあのときに通して置けば、この際うんと政府買上げをさせるのにというような臍を噛むような問題が起る。そういうことは農林省にも大きな悲劇を与えるものである。(笑声)例えば百三十億の中の何割、何十億という莫大な赤字が出るということは当然であります。お役人は商売の転換の見込みを付ける目がない。ぐずぐずしているうちに三カ月、四カ月経つて大きな損が出る。そうすると業者も、農林省も自殺の法案と言つて過言でないかも知れない。弱気のほうから見て、ものはすべて高いときに強気に出るのが商売の常道だが、強気のときに弱気を出すのが本当だ。そこに商業才能が、甚だ失礼だけれども諸君はない。こういうふうにどんどん上るときは、頗る消極的に出るという私の考えとあなたがたの見解とは別です。業者も持つておられるし、或いは農林省も強気に出るが、ところがそれは外ずれる虞れが多分にある。  それから第二点は、二十六年度の補正予算にしろ、二十七年度予算にいたしましても、非常に窮屈なものである。鉄、石炭、その他船舶、或いは電力、幾ら金があつても足りない。実に窮屈な金融が訴えられている。幸いに伝家の宝刀でこれを押えるというのだけれども、これがどうも少し怪しげなものだということになりますと、大蔵省がこれを査定する場合において一般会計の五十億或いは七十億、又特別融資から何十億の金を出すほど緊急逼迫な状態であるかという点に非常に大蔵省は冷静に出るだろう。これは超党派的な問題だと思うのです私は、本問題は……。ですからこの点について、予算数字の割振り、いずれ補正予算案が出れば我々はいやでも賛成しなければならないことになるから、(笑声)一つ是非とも御配慮を仰ぎたい。これだけ申して置きます。
  141. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は農林省農政局長にちよつとお尋ねしますが、米麦統制撤廃ということは、農林省としては御賛成ですか、反対ですか。
  142. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 私農政局長でございまして、所管長官でございませんので、いろいろ聞いておりますけれども、責任のある答弁は差控えたいと思いますが、統制といい、撤廃といい、米麦というものは国民経済に重要な影響のある商品であります。価格政策につきましては、如何なる場合におきましても安定させるということについて変りはない。その方式は時代と時によつて変るのでありますが、米麦価の統制というものを完全に撤廃するというようなことは到底考えられないかと思います。
  143. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると巷間伝えられるように米麦統制が撤廃になつても、価格統制は行うということですか。
  144. 東畑四郎

    説明員東畑四郎君) 米麦というような重要な商品につきましては、当然のことだと農林省としては考えております。
  145. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうしますと、農林省としてお考えなつており、この措置要綱も農林省としての考えの範囲ですから、その点は私は議論の余地を封じられた恰好になりますが、これは委員長にもお願いして置きますが、只今措置要綱の態度を決定するには米麦統制のあり方ですね、これが私は最も真剣に論議して結論を出さないと、態度の決定ができない。例えば只今説明を伺いますと、農家経済を安定するために行うとこういうことです。肥料価格の安定をするために行う、ところが統制撤廃が行われたときに米麦価格が自由に放任せられるかどうかということ、又仮に放任せられたときには、その見通しとして米麦値段統制当時よりも上るのか下るのか、そういうような見通しがはつきりしないことにおいては、なかなか以てこの結論を出すことはむずかしい。この点はいずれ又の機会に私は資料をお願いいたしまして納得の行く御説明を頂きたい、こう思うのであります。
  146. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 栗山さんにお答えいたしますが、栗山さんや佐多さんからの資料の問題は私のほうから各官庁のほうへお願いいたします。  だんだん長くなりましたが、本日は参考人といたされましては、非常にお忙しいところ御出席下さいまして誠に有難うございました。委員のかたも暑いところ非常に御熱心にやつて頂きまして有難うございました。  これを以ちまして本日の委員会を終りたいと思います。    午後五時二十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     竹中 七郎君    理事            古池 信三君            栗山 良夫君            結城 安次君    委員            上原 正吉君            小野 義夫君            片岡 文重君            佐多 忠隆君            島   清君            西田 隆男君   事務局側    常任委員会専門    員       山本友太郎君   説明員    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    農林省農政局長 東畑 四郎君    通商産業政務次    官       首藤 新八君    経済安定本部産    業局次長    渡部 伍良君   参考人    日本硫安工業協    会副会長    大仲齊太郎君    燐酸肥料協会常    務理事     吉田 一男君    石灰窒素工業協    会理事     野村與曾市君    全国肥料商工業   組合連合会会長  鷲見 保佑君