○
説明員(
渡辺武君) 只今御
紹介にあずかりました
渡辺でございます。この六月一日に
日本を出まして、約四カ月ばかり
向うへ参りまして、そのうち初めの三カ月は主として
ワシントンにおりまして、その間
ニューヨークに二度ほど
旅行に参りました。九月になりましてからサンフランシスコの
会議に参りまして、それが済むなり、
ワシントンのほうで開かれました
国際通貨基金の
会合に出席いたしたのであります。これは
日本が初めて
国際通貨基金に
オブザーバーを出すことを認められまして、その
機会に
オブザーバーとしてその
会合に出席する
機会を得たわけであります。それが済みまして間もなく、こちらへ
帰つて参つたわけであります。非常にあわただしい
旅行でございますし、又いろいろ今後
向うに落着く関係がありますので、家を探しますとかその他雑用も
相当ありまして、まとま
つた調査その他をいたしておりませんので、組織立
つたアメリカの
経済事情の御
報告を申上げるような
準備もございませんので、
経済問題に関連した雑談としてお聞き願いたいと思うのであります。私が
向うで見聞きしましたことを取りまとめまして、最初に極く
一般的な
経済状況というようなことに申上げまして、そのあと私が出席いたしました
国際通貨基金の
会議及び
日本の
国際通貨基金への
加入の問題、或いは今後
アメリカとの交渉を要する各種の問題、これは外債の問題でありますか、その他いろいろたくさんあるのでありますが、そういう問題に触れて申上げたいと思います。
一般的に
アメリカの
経済の状況は申すまでもなく、
国防中心の
経済でありまして、
国防費の
支出というようなものが、非常に殖えて来ておることは御
承知の
通りでありまして、今年の六月には大体一日一億ドルの
国防費の
支出をしておりまして、即ち一週間にいたしますると、七億ドルの金を出しておる。これが今年の暮になりますと、大体一週間で以て十億ドル、来年の七月には十二億ドルくらいの
割合で以て
国防費を
支出するという
計画にな
つておりまして、非常に大きな
国防費の
支出をするわけです。これが
アメリカの
経済の一番大きな
要素でありまして、この問題を中心にいろいろの
経済問題が発展しております。今の
国防生産というようなものがどのくらいの
割合にな
つておるかということを申上げますと、全体の
アメリカの
生産額の中で、
国防生産が占める
割合というものが、
朝鮮事変の前に大体六%であ
つたのであります。これが今年の六月頃の
数字でありますが、一一%くらいになり、これが今年の末にはたしか一五%くらいになると思います。来年の七月頃にこれは二〇%くらいにまで上るということを
政府の
説明でいたしております。従いまして全体の
生産の中の約二割というものが、今度の
国防生産の
ピークにおいて使われるということになるわけでありまして、これは一見非常に大きいようでもありますが、
併しながら第二次
世界大戦の一番の
ピークでありました一九四四年の
数字を見ますと、約四二%に達してお
つたんでありまして、即ち一番の
ピークで四二%にまで達した
国防生産というものが、今度の
計画で一番の
ピークが二〇%であるということは、
アメリカの
経済に全体としてはまだ非常に余力があるということをここで示しておると思うのであります。こういうふうに私どもが
日本の国内のいろいろの
経済問題を見ておりまして
アメリカの
経済を見ますと、そこに非常に大きな
相違があると思いますが、その一番大きい
相違はこの
経済の底の深さと申しますか、非常に民間の
経済というものの大きなものがあ
つて、そこに
国防生産をや
つておるので、それが
影響はなかなかありますけれども、
併しなお
日本の戦争中の
経済というようなものから見ますと、
ゆとりの多い
経済のように思われます。
日本の場合には、戦後におきましても
ちよつとした
経済現象が非常に大きく響きまして忽ち物が
不足すると物が暴騰いたしまして又輸入をたくさんしたと急に下落すると、又上がるとか、非常に上がり下がりの大きい
波瀾の多い
経済でありまして、
周期の短い
波長において非常に
経済が動揺するように思われるのでありますが、
向うにはもう少し長い
周期の、いろいろの
経済の動向というものが常に非常に大きな問題にな
つておりますが、この小さな
波瀾というものが
日本ほど深刻ではないのでありまして、これは
余談でありますが、私は
アメリカ人が
日本の
経済を判断する際に、この小さな
波瀾というものが
日本のような底の浅い
経済において非常に大きな重点を持
つておるという、これは
アメリカのような場合にはそれほどでない場合にも、
日本ではそれが死活の問題にもなるし、非常に深刻な
影響を与えるということに対して
アメリカ人は十分の理解がしにくいのであるというふうに思われるのであります。これに反して逆に申せば、
我我としてはとかく
目前の小さい
波長の
周期に対して非常に敏感であり、又それに没頭しておるために、長い
波長の
経済の運行というものに対して、ややもすれば目を蔽いがちであるというようなことも言えるかと思います。
多少
余談になりましたが、今のような
アメリカの非常に大きな
経済の中でこの
国防生産をや
つておるのでありますが、
国防生産にやはりいろいろの
隘路がありまして、その
一つの
隘路は
工作機械、この
工作機械がここ一、二年の間は
相当の
不足を告げる、殊にジェット、エンジンでありますとか、或いは何と申しますか、無人の
飛行機のようなものを作
つておりますが、そういうような種類のものがあるために、非常に大きな分量の
工作機械、これがここ一、二年
不足するということが言われております。又もう
一つの
隘路は、これは労力でありまして、この
労働力が、現在の
失業者というものは、この夏の
数字で約二百万、この二百万と申しますのは、夏休みの間多少学生の
アルバイト等がありまして、必要以上に大きいわけでありますが、普通の場合でありますれば百数十万というような
数字であります。従いましてこの
労働力の
ゆとりというものはその辺のところであるのでありますが、今度の
国防生産のために
追加労働力としてどのくらい要るかというような
計画をいたしておりますが、これがやはり百五十万から二百万ぐらいの
追加労働力が要るということが言われておるのであります。そういたしますと、例えば
失業者を殆んど全部駆り出すというような勘定になるわけでありまして、或いは
相当普通の場合なら使わないような
労働力も駆り出して使わなければならんというような情勢に追込まれる
可能性があります。
従つてこの
労働力というものがやはり
一つの大きな問題にな
つている、こういうように
隘路がありまして、これがためにはいろいろの
方策をと
つております。まあ
労働力の対策としては、一方でいわゆる
労働者の
生産性の向上というようなことで、一人
当りの
生産力の
増加、これはまあ
アメリカは
日本に比べて非常に大きいが、それにしてもこれをもつと殖やして行こう、これは現実にも労働省の
統計なんか見ましたが、最近の
調査によ
つて、一人
当りの
生産量は大分殖えて来ております。こういうようにや
つてはおりますが、なお
労働力は依然として問題として残
つております。こういうようにや
つて行きまして、大体これは
政府の発表した
数字でありますが、再来年、一九五三年の二月には、今年の六月に比較いたしまして
飛行機が三倍、タンクが四倍くらい
生産できるというような
計算を立てております。
相当大きな規模のものができるわけでありましよう。
こういうような大きな
国防生産をや
つてお
つたら、一体この
アメリカの
経済が非常に大きな
インフレになるのではないかということは次の問題であります。この
インフレになるか、或いは
インフレにならないかというような
議論が
アメリカの
議会においてもしばしば論議されておるところであります。このような大きな
国防費を一方で
支出して、急速に
生産を上げるわけでありますが、その間にやはり
民需生産というものが或る
程度抑制される、その
程度は勿論戦時中の
日本の場合とは比較にならないほど軽微なものでありますが、それにしてもあちこちの
生産が少くな
つて行きます。
従つて政府の
説明としては、ここ一、二年の間はどうしても
物資及び
労働力の
供給力のほうが
需要に追付かない、
従つてインフレになる危険があるから、もつと強い
統制の
方策をとらなければいかんということを主張しております。その
説明といたしましては、大体、例えば今年の例をとりますと、暦年の、本年の
数字として、大体
可処分所得、つまり
所得の中から
税金等を取りまして処分し得る
所得が、これが大体二千八十億ドルある、この二千八十億ドルの
可処分所得に対しまして、一方で
物資及び
労働力の提供し得るもの、これが千九百十億ドルしかない。百七十億ドルくらいのものが
不足するというような
計算をしております。この百七十億ドルというものの全部が
貯蓄に若し廻るならば
インフレにはなりませんけれども、百七十億ドルの
貯蓄というものは
ちよつと期待できないような次第で、
従つてこれだけの余剰の
購買力と言いますか、
需要というものがある以上は、
物価が上
つて行く、これをどうかして抑えて行かなければならん。現にいろいろ断片的には物の
値段が上
つております。例えば
郵便料を今
議会で審議しておりましたが、はがきを一セントのものを二セントに上げます。封書はそのまま据置きでありますが、
定期刊行物は
相当大幅に
引上げるというような案が出ておりました。又
労働賃金につきましても、これが昨年の一月に比べてたしか一〇%まで上げていいという基準を設けたのが、更にそれを
ゆとりを設けるというような処置がとられた。それから
鉄道運賃が二回に
亘つて今年
引上げられた。
自動車の
消費者価格が、たしか今年あたりは八%先般上げることを
物価安定局のほうで認めまして、すでに
上つたのであります。こういうふうにあつちこつち
物価を
引上げているものがありますけれども、併し全般的に見ますと、昨年の
朝鮮事変以来の、つまり昨年下半期の非常に急速な
物価の上昇というものを追つかけてあとで修正しておるという
感じでありまして、今年になりましてからはむしろ落着いたと言いますか、物によ
つては少し下
つて来ております。
卸売物価なども最近下落の傾向にありまして、
目前のところはむしろ下
つて来ている傾向にあります。
政府がそういうような
インフレの危険を特に強調しまして、野党その他の方面から、これは
政府が
統制を欲するが故に必要以上に大袈裟に言うのだ、実際はそれほどでないというような
議論もなされております。それでそういうほうの
議論の
一つの大きな根拠は、非常に
手持ち商品が多いのでありまして、例えば
百貨店の
手持ちの
商品というものは、この六月で去年に比べまして約三割殖えております。これは
値段にして三割上
つておりますが、この間の
消費者物価の値上りは九%くらいでありますから、これを差引きましても、
相当の
手持品の
増加でありまして、これが今年の初め頃、夏の前に例の
メイシー百貨店と、隣にありますギンベルスという
百貨店が
ニューヨークで以て非常に値上げの競争をや
つたというような事態を起したわけであります。街を歩いておりましても、その街の至る所に
電気冷蔵庫とか、
掃除機とか、或いはテレヴィジョンとかというようなものが山のように置いてあります。方々で大売出しをや
つている、
従つてちよつと見たところ何も
物資の
不足という
感じはとてもありませんで、まあ途方もなく
商品がたくさん街にあるという
感じを受けるのであります。現に
数字から見ても、
消費物資の
供給量というものは非常に大きなものであります。その上に最近は
農産物の大豊作でありまして、これが
綿花を初め、その他のものが非常に大きな予想以上の
生産を上げたわけでありまして、
農産物一般としては歴史始ま
つて二番目とか言
つております。
綿花も三番目とかということを言
つております。千七百万俵、非常な大きなものでありまして、
綿花も
相当大きなものを
海外に輸出しなければならないというようなことが
一般に言われておりまして、御
承知のように
綿花の
値段もずつと下
つて参りました。殆んど例の
支持価格に近いところまで落ちて来た。やはりこの三月頃がそういうものの
ピークであ
つて、それが六月頃までは
日本と大体同じでありますが、急速に下
つて来たのであります。こういうふうに極く最近のところを見ますと
物価がどんどん下落しております。どんどんというほどでもありませんが、
相当下落しております。
従つて政府の言うような
インフレが来るというのは、
目前の問題としてそれほど激しいものが来るようには思われない。長い目で見て、この
生産全体の
計画を遂行する上で大きな金が出ることは確かでありますから、これが
影響を与えずにはおかないということは思われますけれども、併し
一般的に
相当の
インフレ対策というようなことは行われておりますから、少くとも
目前において非常に激しいことにはならんと思います。今後これがどういうふうに発展するだろうか、これはいろんな問題に勿論関連しておりますから一概に申せませんけれども、例えば
世界情勢、これがどうな
つて来るか、
朝鮮事変、或いはイランの紛争その他の
発展如何によ
つて、このために厖大な
追加予算が出るかどうかというようなことが勿論言うまでもなく
影響をするわけでありますし、それから又更に一方で、来年の選挙を控えまして
相当政治的に金が使われる。例えば
農産物の価格の維持その他のために大きな金が若し使われるようなことがありますと、これがやはり
相当インフレ的な作用を持つということがあろうかと思います。それから一方で今のような大きな
歳出のために
増税案を
政府は提案していることは御
承知の
通りであります。総額で百億ドルの
増税案を出している。これは或いはもうきま
つているかと思いますが、私の出ます頃には上院と下院とでまだ
意見がきまりません。これを
相当削減するような提案が
両院からそれぞれ出まして、
両院協議会の審議というような形にな
つておりました。このように
予算の上で大きな
歳出があ
つて、而も
増税案をできるだけ減らすということになりますと、どこかで
歳出を削らない限り
インフレ的な
影響が出て来る。そこでどこを削ろうかということで
議論をします。やはり
国防費はなかなか大きくこれを削減することも困難でありますし、その他、政治的な
意味の
歳出が
相当多いわけであります。例の
在郷軍人に関する経費でありますとか、或いは
農産物に関する経費というようなものは切りにくいので、やはり
対外援助というようなものがとかく問題になるわけであります。この
対外援助の
政府の八十五億ドルの
予算は、やはり
相当問題で、十億ドルくらいは切られそうな形勢であります。幾らぐらいに最後にきまりますか、これも私の出るときまではきま
つておりませんで、これも
両院の
協議会の問題にな
つておりました。これが更に機構をどういうふうにして使うかというような機構問題とからんでもめておりましたが、その後十分最近の電報をフォローしておりません。極く最近のところは存じませんが、私の出発のときはそういう
状態であります。こういうような
状態で、
政府の
説明によりますると、
予算はやはり
赤字がここ一両年はどうしても続く、来年度は百億、来年度と申しますと、来年の七月から再来年の六月に至る
会計年度、これが百億乃至は百五十億がどうしても
赤字になる、その次の年度がやはり五十億ドルぐらいがどうしても
赤字になる、その次の年にな
つて、一九五四、五五
会計年度ぐらいに
行つて漸くバランスがとれるというようなことを
政府委員も答弁しておるわけです。そういう
状態で
予算のほうが
赤字にな
つておりますが、ただ
日本の場合の
予算の
赤字ということと
ちよつと違いまして、さつき申上げましたように、
経済全体が非常に大きいのでありますから、それが
日本ほどに敏感に
一般には響かない。又信用の方面でのこの
信用抑制の
政策は、これも皆様御
承知の
通りでありますが
連邦準備当局その他が
相当厳しい
政策をと
つておりまして、いろいろ
準備率の
引上げでありますとか、或いは
取引所におけるマージン、リクアイアメントの
引上げでありますとか、いろいろな
政策をと
つております。
従つて金融のほうも
相当引締め
政策が行われてお
つて、まあ将来の
インフレというものが進展するという見方と、或いは進展しないでそれほどひどいことにはならんという見方と両方があります。私は一応長い目で見てやはり
相当インフレ的な
要素を持
つていることは確実でありますし、又
アメリカのこういうような大きな
軍需生産というものが
海外に
相当依存する結果、
海外諸国に
相当大きな注文が出れば
海外諸国の
物価騰貴を招く。この
海外諸国の
物価騰貴が又はね返
つてアメリカに来ることも考えられますし、長い目で見れば
相当インフレ的な
要素を予想し得ると思いますが、ただ
目前の
状態において
アメリカがそれほど急速に
物価が騰貴するとは考えにくいのであります。例えば、
ちよつと
数字だけを見ますと、表面だけで見ますと、
アメリカの
自動車の
生産を制限したとか、
自動車に割当てる
金属類を減らしたというようなことで、何か非常に激しいことが行われているように思われますが、事実は非常にストックが多くて、困
つている頃に、丁度
生産制限をしたことにな
つておりまして、
従つてその表面に
ちよつと出たところを見るよりは、安定しているように見られるのでありまして、短期の予想としてはれほど急速に上らないように思います。
経済の問題はこの
程度にいたしまして、あと私の出席いたしました
国際通貨基金及び
世界銀行の問題を申上げます。この間開かれましたのは、
国際通貨基金及び
世界銀行、これは正確に申しますと
国際復興開発銀行と申すのでありますが、
俗称世界銀行と言
つております。この銀行と
基金、この
二つのものは
国際連合の一
機関でありますけれども、実は
国際連合よりも歴史が古いわけで、あとから
国際連合に吸収されたような形にな
つておりますが、この
機関は
二つの別の
機関でありますが、まあいわば双生児のようなもので、大きな
会合などは一緒に開いております。建物も同じ建物であります。いわば二
身一体のものであります。この間開かれました
会合に私が出席いたしましたのは、これは
オブザーバーとして
年次大会に出たわけでありましてこの
国際通貨基金には
二つの
機関がございまして、その
一つは
最高機関であります
ボード・オブ・ガヴアナーズというのでありまして、何と申しますか、
最高の
重役会でありましてこのメンバーにな
つておりますのは
参加国、これは現在五十カ国
参加しておりますが、その国の
大蔵大臣その他
中央銀行の総裁というようなものが、その国の事情によ
つていろいろありますが、大体ガヴァナーにな
つておりまして、それぞれの国の
ワシントン駐在の
財務官というものがその
代理者というようなことにな
つております。これが
最高の
機関を形作
つておりまして、それが年に一回だけ
会合するわけであります。その下にいわば
理事会というようなものがございまして、これがエクセキュテイヴ・デイレクタースとい
つておりますが、
執行委員と申しますか、
理事会と申しますか、そういう
執行機関であります。その
執行機関の一番の頭にな
つておりますのは、先般までは
ベルギー出身のカミュギュットという元の
ベルギーの
大蔵大臣で、
通貨の切下げをしまして非常に名声を博した人でありますが、この人がやめまして、最近の
中央銀行の総裁でありますイバールルースという人でございますが、この人が代りにそこの
理事長と申しますか、マネージング・ディレクターといいますか、それにな
つたのであります。その下に各国から
常任理事というものが出ております。この
常任理事は
参加国の中から選ばれるわけであります。この中に又
二つありまして、いわば大株主の五ヵ国は当然に
常任理事を出すことができるわけでありまして、そのほかに
ちよつと今数を覚えておりませんが、九カ国ぐらいでありましたが、これは何ヵ国かのものが互選によ
つて選ばれて出ておる。昔の
貴族院で申せば
公侯爵のような伯、子、男のようなものがあるわけでありまして、その
公侯爵に
当りますのは、現在では英、米とそれからフランス、インド、中華民国であります。それだけが現在当然
常任理事にな
つております。そのほかに互選で数人のものが出ておるわけであります。この
常任理事というのが実体をなしておりまして、常務をや
つておるわけであります。そうして年に一回
大会を開いて、今度はその上の
最高機関の
会合を開く、現在
日本の
参加の問題があるのでありますが、今度の
大会にはこの
参加はただ
日本からそういう
申入れがあ
つたということが
報告をされましたけれども、何分にも
参加申込を
日本からいたしましたのが八月のたしか九日附の
申入れをしたわけでありまして、通常なかなかいろいろ手続がありまして、その
大会までに
加入という
段取りまでにならなか
つた。最近入りました
スエーデンの例を見ましても、これは
スエーデンが申込をいたしましてから、これに
ボード・オブ・ガヴアナーズの
通貨基金の
最高機関が承認をいたしますまでに九ヵ月かか
つております。更にその後に
スエーデンが金の払込をして調印をいたしますまでその後更に三カ月、合せて一年かか
つております。これが最後の
段取りのときが、若し
丁度年次大会に近いときには、
年次大会で議題として決議がされることもありますが、若し
年次大会から離れた時期であれば、これは電報で以て各国の
意見を問合せて、それによ
つてやる場合もあるわけであります。
従つて日本の場合は恐らくこの後者の場合になるだろうと思います。来年の
年次大会までにきまらんということは恐らくないだろうと思います。と申しますのは、
日本の場合には
相当前以て
向うのほうで研究をいたして詰りましていろいろ
占領下にある
日本が
参加するということについては、法律上の問題もあ
つたわけでありますが、その辺の研究もいたしておりますし、又その後
日本が入りますとこれは
相当の大株主であります。それはどのくらいになるかということについてはまだ見通しがはつきり立ちませんが、いずれにしても
公侯爵とまで行かなぐとも、その次の
相当上のほうに行くという見当でありまして、
従つて日本の
参加ということについていろいろ内部の
勢力関係にも
影響するところでありますが、いろいろな
意見も出るかと思います。この辺のところの審議というのがまだ今後に残された問題であります。ただ或る
程度その
準備的な
調査というものは今までもなされております。
従つてスエーデンの例ほどに時間は恐らくかかるまいと思
つております。そこで私が今度こちらに参ります前、
向うのほうからいろいろ資料の要求がありまして、
日本の
国際収支の見込がどうなるかということを判断する資料というようなものをいろいろ検討しておるのでありますが、まあこれは勿論
日本の
国際収支というようなものはわからない。何年の輸出入の
統計はどうな
つておるかということをいろいろ集めておりますが、こういうような
数字を集めていろいろ
計算をするわけであります。然らばその場合の
割当額が
日本の場合にはどうなるかということについて、これは当初に
加入をした
諸国、これについては一定の算式があ
つたわけであります。ところがこれは当初
加入の
諸国に対して適用する算式であ
つて必ずしも途中から
加入する国に適用するとは限らない。普通途中から
加入する国は、そういう元の算式で
計算をして見た上でいろろ考えるというような例にな
つております。例を申上げますと、最近インドが
二つの国に分かれまして、インドの
割当額がさつき申上げましたように多くてこれが、四億ドルであ
つたのであります。この四億ドルを両方の国に分けたらどうかという話が出たら、インドのほうはそれは真平御免だ、おれのほうはどこまでも四億ドルだという主張をしたわけであります。そうしたところがパキスタンはインドが四億ドルなら、おれのほうももう少し四億ドルに近いものをよこしたらどうかという話があ
つていろいろ折衝があ
つた末、今の算式の
数字がより大きいところにパキスタンがきま
つてインドが四億ドル据置きということにきま
つた例があります。この
計算というものは、必ずしも非常に正確に算術で出るものではないのであります。又国々によ
つてはいろいろな場合がありまして、中華民国の場合には五億五千万ドルという非常に大きなボーダーを持
つております、
割当額を持
つております。この五億五千万ドルでありますが、実際上それに基く金の払込は殆んどありません。たしか六万ドルぐらいのほんの僅かなものを払込んでおります。これは特殊の条項がありまして、その国が敵国に占領されておるという
状態において
通貨の統一ができない場合に、その金の払込を延ばすことができるというような条項があ
つて、金のほうは殆んど払込んでいない。併し
割当額が非常に大きいという例があるのであります。
従つてこの
割当額を幾らにするかということが先ず第一の問題、その次に問題になりますのは、今度はそのうちどのくらい金を払込むかという問題でありまして、これはこれも
加入の当初からの
参加国の場合には、この全体の
割当額の二五%か、或いはその国の持
つております外貨金又は米ドルでありますが、その一〇%か、いずれか少いほうの金額ということにな
つてお
つたのであります。それだけを金で払込むということにな
つてお
つたのでありますが、併しこれも途中から
参加する国は必ずしもその原則によりません。実際のところでも最近入りましたパキスタンの場合には、たしか三・五%くらいしか金を払込んでおりません。これは要するに
最高割当額の二五%ということにな
つておりまして、二五%以下で然るべく決定するということにな
つております。その場合勿論保有金が幾らあるかということが参考に供せられるのでありまして、それによ
つて幾らの金を払込むかということはいろいろ折衝の問題になるわけでありますが、これは国々の事情によ
つて非常に違いますが、インドネシアの場合には二五%のものを初めに払うようにということを要求されておりますし、又イラクの場合は、金は払わなくてもいいのであります。そういうようなことが言われたという例があります。まあいろいろの例がありますが、ただこういう規定がありまして二五%以下の払込をしておりました場合には、若しその国の将来の貿易が非常に順調でありまして、外貨が年々殖えて行くという場合には、その殖えた額の半額の金の払込をしなければなりません。払込をして
行つて今の金の払込が
割当額の二五%に達するまで払込をして行かなければならんという趣旨の規定がありますが、初めに非常に少い払込をしておきますと、あとから毎年少しずつ払込をしなければならん、これは複雑ないろいろのケースがありますから、いろいろ研究をしなければならん問題だと思います。こういような
加入に関するいろいろな、手続は、今後私が
向うに、
ワシントンに赴任をいたしましてから問題がだんだんと、
向うと交渉するような
段取りになると思います。で、今のような
国際通貨基金の
会議自身の場所では、この間開かれました
会議自身は、何と申しますか、その場で以て
意見のやり取りをして結論を、
議論をまとめて行くと申しますよりも、むしろ一年間において各国で
議論したようなところを、その場で立場を闡明するというような場面が多いのでありまして、イギリスのゲィツケル蔵相が来まして、イギリスの立場としては
通貨基金の言
つておるような非常な自由な国際間の交易というようなことは、今の
状態では直ちには実行できない。現実の問題として
相当統制をむしろ強化して行く方向に行かなければならんというような、イギリスの立場を主張しまして、これに対して
基金、及び
アメリカがその立場をと
つて、どこまでも方向としては国際間のいろいろの通商の障害を除去するという方向に持
つて行かなければならないというようなことを述べたというような、
一つの典型的のものでありますが、各国の事情に応じまして各国の
大蔵大臣、或いは
中央銀行の総裁というものが、その場でいろいろ
意見を述べたわけであります。開会式にトルーマン大統領が出ました。それから開会式の直後、サンフランシスコでやりましたと同じように、チエツコスロバキアの代表が国民
政府を追い出せというような一幕がありまして、これが否決されるというような場面もあ
つたのでありますが、大体において
会議のほうは儀式的のものが多か
つたのであります。五日間の
会議であ
つて、ただその間に
会議外にいろいろ社交的な集りが非常に多いのであります。これを目指して全米から、主な銀行の首脳者がみんな集
つて来ました。その場で以ていろいろ世界中の財界の首脳部の人がお互いに話をする、非公式な話をする
機会ができるということがこの
会合のむしろ実体的な大きな
意味でありまして、その場で私も非常に多くのいろいろの世界中の人に
紹介され、知合いを作ることができました。そういう
意味で非常に役に立
つたと思います。
国際通貨基金のことはその
程度にいたしまして、次に今後の
日本の平和条約に続く問題としていろいろの障害、債権債務の問題があります。これはなかなか微妙な問題でありますが、これが今後私が
向うへ参りまして、外債の問題とか、その他ついていろいろ話が出て来ると思いますが、これについて概要申上げたいと思います。さつき私にざつくばらんにというお話がございましたので、私は身柄としては大蔵省の役人でもございませんから、ただ思
つていることをそのまま申上げますが、平和条約で従来
相当の
程度まで
経済問題がはつきりきまるというふうに予想してお
つたのでありますが、実際のところでは政治的に
日本の戦争関係を終結するというその目的のために、
経済問題の多くのものが後に延ばされた形にな
つておりまして、従いまして当初に私どもが考えておりましたよりもいろいろの問題が後に延ばされておる。例えば賠償の問題にいたしましても、平和条約そのものが具体的にきまりませんで、更に今後交渉をいろいろしなきやならんという
状態にあるわけでありますし、又それ以外の、例えばガリオア対日援助資金をその後にどうするかというような問題も、従来私ども聞いておりましたことは、この金がどうなるかということは平和条約で大体きめるというふうに聞かされてお
つたのでありまして、又私どももそう期待してお
つたのでありますが、これもきま
つておりません。
従つてこの問題も未だに未決であるわけであります。それから又国防分担の問題も、これも講和条約そのものではまだ何もきま
つておりません。これはむしろ
日本とすれば或る
程度の外貨の取得になるわけでありますが、これもきま
つておりません。このように
日本の将来の
国際収支に関連する非常に大きな問題が幾多未解決のまま平和条約において残されておるということでありまして、
従つて日本の外債の問題について、これは
日本が戦前一回も外債の支払を怠
つたことがないという非常に輝かしい歴史を持
つておりまして、
ニューヨークの方面でも
日本の外債に対する信頼というものが非常に今でも高いのでありまして、然るが故にこれで
日本としてもできるだけ早く手を打ちたい、何らかの満足な解決案を計りたいということをまあ私どもも
感じますし、誰でもそういうふうな気持を持
つておるわけでありますが、ただ今のようにほかの問題が大きく未解決のまま残されておりますので、外債の問題を大体切り離して、これを別途にきめてしまうということが非常に困難な
状態にな
つておるのでありまして、この点は私ども
ニューヨークで銀行家に会います場合の
感じと、又
ワシントンにおいて
政府の方面の人と話をしますときの
感じとは多少違うのでありまして、
政府方面の人はそのような事態を非常によく知
つておりますが故に、なかなか外債の問題を今すぐにどうするというわけには行くまいという気持を持
つておるのでありまして、むしろそれ以外の問題の解決を先ず考えて、これに対していろいろ交渉しなきやならんというようなことを言うわけでありますが、
ニューヨークのほうではその間の細かい事情を十分知らないこともありますし、又
日本の外債が過去において非常に信用を持
つてお
つたのでありますから、是非自分のほうの銀行においてこれは扱いたいという希望が、
アメリカの各銀行にあるわけでありまして、殆んど非常な大きな競争
状態にな
つておりまして、私ども参りますと自分のほうで
一つ是非やらしてもらいたい、或いは自分のほうではこういう弁護士があるからその人に相談したらどうか、或いは自分のほうで解決案を……、
一つこういう案があるがどうだというようなことで、いろいろと
向う側から接近して参るわけでありますが、こちらとしてはそういういろいろの忠告に対してはこれ有難く聞いてはおるのですが、なかなか現在のところではこれに対して何らの約束を与えることができない
状態にあるわけであります。で
ニューヨークではそういう問題が非常に
向う側かち積極的に乗り出して来ておりますから、まあ私どもとしてそちらに対してできるだけ早く何らかの返事のできるような
状態を作り出したいというふうに思うのでありますが、今のような事情で
目前これをすぐ取上げて、私が例えば今度帰りましてすぐに
ニューヨークとそういうような交渉をするという段階にはなるまいと思います。
従つて私はここ暫らくはやはり本拠としては
ワシントンにおりまして、
政府関係の交渉のほうが主になりまして、それが或る
程度の段階に達して適当な時期にニユーヨークといろいろ話をするということになろうと思います。ここで
ニューヨークと申しますのは、各債券の所有者との交渉ということになるわけでありますが、その代表的な
一つの団体としまして外債所持人保護委員会と申しますか、フォーリンボンド・ホルダース・プロテクテイヴ・カウンシルという名前の委員会ができておりまして、この委員会、これは私のものでありますが、ここが非常に信用を得ておりまして、前に国務次官補をした人がそこの一番の頭にな
つておりまして、そこと結局交渉をする
段取りになるわけであります。先般もそこを訪ねましていろいろ事情を話し、又
向うとの
段取りの打合せ、その他をいたしましたが、まだすぐにはそこと交渉してどうというわけに行かんのでありますが、これが
向うの債権者側の立場を実質的に代表する
機関であります。形式的に申しますと、外債の所持人一人々々が相手でありまして、どういう提案をいたしましても、一人々々の債権を持
つている人がおれは嫌だと言えば、これはそれを強制する途はないのでありまして、皆の大勢の人がこれに対してそれならば持
つて行こうということになれば、それで話が解決して来るのであります。今のところただ委員会はそこが裏書きをすれば大勢の人たちがくつついて来るという実質的な力を持
つておるのであります。形式的にはそこが強制することができかい。同様の
機関が又イギリスにもあります。フランスにもありまして、この問題はなかなか複雑であります。現在戦争の始まります直前の
状態におきまして、米貨債が七千六百万ドルありまして英貨債が六千百万ポンド、それから仏貨債が三億八千万フランありました。これを米貨に直しまして、約二億九千万ドルくらいのものがあるわけであります。その後は十年間利息を払
つておりませんから、この利息を払うものまで入れますと、全体として、従来の利息
通りで払いますと、全体として四億四千万ドルくらいのものが総体の負債、
日本の債務になるわけであります。これをどうするかという問題でありまして、
従つて今申上げた
数字でもおわかりのように
相当ポンド債があるわけであります。ただこのポンド債のうちで
相当の部分は一定換算率がありまして、ドルで払うことが認められておりますから、実質的にはドル貨債になるものが
相当ありますが、いずれにしてもイギリスの債券所持者の煮見というものも
相当尊重しなければならん。それから又フランスの立場も嵐ります。まあこういう国際間のあちらこちらの
意見をやはり参酌をするということが
一つありますし、又
政府的に、さつき申上げましたような民間の立場以外に、
政府との交渉の問題がありますし、まだ
相当複雑な経緯を辿らなければ結論まで到達しないと思います。併し同時に、できるだけ早い
機会にこれについての満足すべき解決案を出す必要があるということを
感じておるわけであります。従来これと同じようなことをやりました先例としましては、イタリアの外債がありますが、このイタリアの外債は非常にイタリアの
政府にと
つて有利であ
つて、債権者にと
つてやや不利な条件で解決されたわけでありまして、このイタリアの外債の先例
通り行な
つてもら
つたのじや困るという
意見も
相当あります。このイタリアの外債の例は、これは途中からイタリアが連合国のほうに加盟したというような特殊な事態の下にあ
つたこともあります。従来の債券所有者に対しまして非常に低利な新らしい債券を提供して、これと交換することをまあ申出たわけでありまして、債券の所有者としては従来のままでいつ解決されるかわからない債券を持
つている代りに、まあこういう条件ならどうかという、そういう提案をされたわけでありますから、まあそれに乗替えたというものが多く、結局九〇%以上の債券所有者は新規の利息の低いものに乗替えたわけであります。ただここで考えなければなりませんことは、勿論
政府にと
つて非常に有利な条件ということは望ましいことでありますけれども、長きに
亘つて将来又更に
ニューヨークの市場その他において若し借入れをするというような場合がありますと、将来に
亘つての
日本の信用というものをやはり確保しておきませんと、
日本の外債を買
つて見ても、又将来非常な債券所有者にと
つて不利な条件で借り替えられてしまうのじやないかというような心配を持
つたのではやはりいけない。そういう点でまあ債権者の信用というものを得る必要もありますし、そういう範囲内において
日本が、できるだけ
日本政府にと
つて有利なことの解決案を出さなければならんということだと思うのであります。殊に
日本は従来から非常にそういう点については几帳面な国であ
つて、その点が
日本の非常に大きなプラスにな
つておる。このことは私ども
ニューヨークに参りまして我々の先輩が曾
つてこういうふうに
日本の外債について一回も怠
つたことがないという輝かしい歴史を作
つておいて頂いたということが、どのくらい今仕事をやりやすくしているかわからないということを非常に痛感するのでありまして、こういう過去においてそれだけや
つたということが非常に長い間に
亘つて日本の国際信用を高めておるのでありまして、まあこういう点を害することのないように、再びこの信用を世界に確立するということが必要だろうと思います。その点も又十分に考える必要があると思います。ただ現在のところさつき申上げましたように未解決の問題が
相当ありますために、今すぐに結論が出せない。併しその出せない中で、勿論だんだんと
準備をいたして行きまして、適当な
機会にこの問題が解決されるように私として
向うでできますことは、東京の指示を得た上で万全を尽したいと思
つております。
いろいろ取りとめなく申上げましたが、或いは全体として
日本の今後の
経済がどうだろうというようなことの
一般論として、
向うの人といろいろ話をした際の
感じを最後に一言申上げたいと思います。まあ
日本の
経済問題について
向うの人の関心というものが非常に大きくな
つて来ております。
日本に対して投資しようかとか、或いはいろいろの気持もぼつぼつ動いてはいる。そういう点で最近
海外投資というようなことが、つまり
日本側から言えば外資導入というようなことがよく言われておりまして、又具体的に技術の提携とかその他の形で現実にそれが現われております。こういう点がどうな
つて行くだろうかということでありますが、これは今申上げましたように、民間の投資というものが非常に大きく出ますためには、外債の問題が未解決である以上は非常に大規模の長期の投資というものがなかなか困難であり、それで民間の資金というむのは、これを引つぱり出すためには先ず従来の借金のほうの話を付けておかないと……新らしい借金をするのに先ずこれが大切なことだということが言えると思いますし、又、もう
一つ向うで似て
相当いい利廻りで以て現在の金が廻せるのであります。廻せるのでありまして
アメリカの国内の株を買いましても利廻りが六分以上に廻ります。上手に廻せばもつと高い利廻りで廻わるわけであります。
海外に危険を冒してまで金を出そうというのには、
相当思い切りが必要なのでありまして殊に
アメリカでは、
日本の場合にはさつき申上げましたように、幸いにして非常に従来、戦争の始まるまではいい条件であ
つたのでありますが、ほかの国で随分ひどい目に会
つた。
従つてもう
海外投資は懲りごりだという気持が
相当強いのでありまして、民間の人は
海外へ危険を冒かして出すよりはむしろ国内へ廻せば十分安全に金を廻せるという気持は
相当強いのであります。
従つて民間の人が自分のリスクで以て大きな金を長期に
亘つて貸すということは、やはりもう
ちよつと地ならしをしないと、なかなか出て来ないような気がいたします。勿論中には特殊な関係で金を出す人がありましようし、又技術の提携とか或いは株を買うとかというような、いろいろな形でいろいろあるだろうと思いますが、今のような外債、従来の外債のような大規模なものはなかなかそうすぐには出て来ない。そこで現在考えられますことは、
政府の
機関の金を借りることでありまして
政府の
機関として
日本に金を出す
可能性のありますのは、
ワシントンにあります輸出入銀行であります。この輸出入銀行は、これは
政府が全額出資をした
政府の銀行でありますが、この銀行は
日本に対して
相当の興味を持
つております。現に、従来も
綿花の回転
基金の中に
参加しておりましてもう
日本の短期の金でありますが、貸してあります。長期の金でもここが興味を持
つたことは事実であります。ただ長期の金をここから借りますことについて
一つ問題になりますことは、輸出入銀行という名前が示しております
通り、
アメリカの輸出を増進する、或いは輸入の場合は殆んど問題にな
つておらないのでありますが、主として
アメリカの輸出を増進するための
機関でありまして、
従つて海外に金を貸して、その金で
アメリカから物を買う、つまり
アメリカ側としての輸出を増進するために、
海外に金を貸すのが目的でできた銀行でありまして定款にそういうことがきめられております。
従つてその頭取とも、総裁とも何回か会いましたが、原則としてはとにかく
アメリカから物を買うことを中心とした案でなければ持
つて行けないというのであります。例外的にまあ或る一部のものをその地方の
通貨……つまり
日本に金を貸した場合に、一部のものを労賃のために
日本の国内に落すという金があ
つてもいい。或いは第三国から一部の物を買うということがあ
つてもいいけれども、原則としてはどこまでも
アメリカから物を買
つてもらわなければならない。
従つて現在今後の案がどういうものがあるかわかりませんが、過去の電力債のようなものは、あれは
日本で円が必要であ
つたのでありまして、あの場合にはドルは必ずしも、国全体としては必要でありますが、会社がそのドルで以て
アメリカから機械を買
つたわけでもなか
つたのであります。そういうような性質のものであれば輸出入銀行には
ちよつと乗りにくい恰好にな
つております。その点が今後も
ちよつと問題があると思います。つまり
アメリカから物を買うのではなくして、外債を出してその見返り円で以て国内で
物資を調達して、それで事の済むような種類の金は輸出入銀行の借金としては乗りにくい。このほうはむしろ
世界銀行、これは今申上げますが、さつきの
国際通貨基金と一心同体であります。
世界銀行のほうは、これは電力などは
相当各国に出しております。こちらのほうにはそういう制約はありませんが、今の輸出入銀行のほうはいずれにしましても、
アメリカの物を買うことを中心とした案でなければ困るということが
一つの大きな制約にな
つておりまして、
日本はいろいろの産業が、
相当機械産業その他が発達しておりますから、いろいろなプロジエクトにおいて
アメリカから必ずしも物を買わなくともいいというものがあるのであります。そういうものは
ちよつと輸出入銀行には乗りにくい。併し
アメリカから若し物を買うことを含めたものでありますれば、これは
相当関心を持
つておりま。殊にもう
一つ注意を要しますと思いますことは、極く最近の輸出入銀行の貸出しを見ますと、殆んど大部分がいわゆる緊要
物資の開発の資金でありまして、ウラニウムでありますとか、マンガンでありますとか、亜鉛でありますとか、硫黄でありますとか、
アメリカの必要とするそういう緊要
物資のための開発、そのために金を出してできた物を
アメリカが買う、それでその代金で借金を返す。そのための開発機械を
アメリカから買う。そのための資金を出すというような種類が非常に多いのでありまして、殆んど九割以上がそういう種類のものであります。そういう点も又考慮に入れる必要があろうか思います。こういういろいろの制約がありますけれども、輸出入銀行では
日本の問題をいろいろ研究しております。或いは平和条約の発効するまでに金を貸すということはできないかも知れないけれども、その前でも話を十分聞いておいて、いい案があれば貸す
準備はあるように思われます。今までのことを率直に申しますと、どうもいろいろのかたが見えまして話をするけれども、何かふわふわした話が多く、具体的なきちんとした話を以て、この案ならいつまでには幾ら返る、それからどれだけ
生産が殖える、どれだけ機械を買うというきちんとした
計画を以て、而もその銀行の方針に乗り易いものを持
つて来る人が余りなくて、まあ非常にお客が多く、
日本人が非常に多く来て、どうでしようかね、金を借してくれませんかという話を漠然とする人が多い。どうも時間ばかり取られて一向進歩しないということを申しております。これは露骨に申上げますが、ほかのところもそうでありまして、
国際通貨基金あたりでもどうも非常に
日本人のお客が多い。世界中のお客の中で一番
日本人が多くてそれで会
つて見ると、天気がいいとか何とか言
つてなかなか本論に入らない。而も何しに来たのかはつきりわからない。どうしてああたくさん人が来るだろうと言
つておりました。
日本には
国際通貨基金が非常に多くて関心が深いから多く行くのだと言
つてごまかしておきましたが、そういうこともあるようであります。
それから
余談になりましたが、もう
一つ世界銀行でありますが、このほうは国際的な
機関でありますから、
一つ欠点を申上げれば、動きが鈍いのでありまして、輸出入銀行のほうは
アメリカだけの
機関でありまして、そのほうが動きは早い。ただ国際銀行のほうは今のように、輸出に限るというような制約がありません。基礎産業的のものに多く出しておるのです。そういう
意味で、
日本の場合にも
相当の
可能性が将来あろうと思う。ただ、入
つたからとい
つて、右から左に金を貸してくれるわけでありません。やはり
調査団を派遣するとか、なかなか手数がかか
つて、一年ぐらいかかる場合があるのであります。なかなか右から左にすぐ動くものではありません。ただ、ここでも非常に
日本に対して好意を持
つております。この首脳部の人も、
日本の問題をいろいろ研究しております。
従つて将来加盟してからいろいろと問題は出て来ると思いますが、
国際通貨基金、或いは
世界銀行に
加入をしたという場合は、何かすぐにいいことがあるかというような期待をしておるかたが若しありますれば、それほどすぐにいいことはないかも知れない。これはやはり国際的な
経済の仲間入りをするという、
一つのクラブに入
つたようなもので、その入会金を出してクラブに入
つて、それからだんだんと発展があるということと思われます。そこでまあ
日本の
経済が将来どういうふうになるか、
向うでも非常に同情を持
つてお
つて、
日本に対していろいろ金を出そう、これは民間の金がさつき申上げましたように、すぐには出ませんので、
政府的に何かやろうという気持があり、又、従来援助ということもや
つてお
つたわけでありますから、又、更にいろいろの
日本の、いわゆる日米
経済協力、これが具体的にどういうことを指して
日本で言
つておるのか私よくわかりませんが、いずれにいたしましても、いろいろな形において
経済の協力をして行くという気分が
一般にあるのであります。そのためには、例えば先般の動員局の総裁のチャールズ・ウイルソンが
日本の問題に言及いたしまして、いろいろと関心を示しております。
従つてここ暫らくの間、
日本に対する関心というものは
アメリカは非常に大きいと思いますから、私は
日本の
国際収支の将来を見通しましても、ここ近い将来は僅かに有利な
状態があり得ると思います。殊に朝鮮関係、これは仮に戦争が終りまして、復興という
段取りになりましても、或る
程度の金がありましようし、これは先般国務次官補の証言では、二億五千万ドルという
政府の案があるようであります。復興のために、いずれにしましても
相当の金がそういうことからも期待できますし、又
日本に軍隊がおります間、その落す金もありましようし、近い将来における
国際収支は比較的いいのでありますが、長い目で以て一体どうなるか、これは又別問題でありまして、普通の、通常の
日本の輸出によ
つて輸入を賄い得るか、これが今後の一番大きな問題だと思うのであります。臨時的な収入をここ暫らくの間期待できますから、近い将来はそれほど困らないにしましても、長い目に
亘つて日本の国際
経済における競争力というものが十分維持されて、その輸出力によ
つて日本の必要とする原料なり食糧なりを入れることができるかどうか。これが非常に大きな問題だろうかと思うのでありまして、私は
日本の、さつき申上げました
日本の
経済の問題でいろいろ小さい
波瀾がある。それと同時に大きな波があるということを申上げたのでありますが、大きな波の問題としては、この将来に
亘つての
日本の国際
経済における生活力を維持するという問題が一番大きな問題で、これがための対策ということは、又これまでの安定
計画というような国内におけるやり方だけでは解決しない。私はドツジ氏に会いました際に、ドツジ氏が第一回に来たときと、現在の
状態とは非常に違いがあることを認めるが、この前のときには国内の財政的に金が放出された、又復金を通じて財政資金が出たと、この
二つによ
つてインフレが起
つたということで、これの対策を講ずれば問題が解決したのです。併し現在の
日本の
物価が
朝鮮事変以来上
つたということは、これは国内の原因じやなくて、むしろ国際的な原因であ
つて、
海外からの原料の値が上
つた、殊に運賃が上
つたために非常に不利に
なつた、又朝鮮、中共と交易するのでなくて、遠いところから物を運ばなけりやならん。原材料の値上り、又この狭いマーケットに対していろいろ特需その他の注文が一度に出たというようなことによ
つて引上げられた。まあつまり外的の原因によるものであ
つて、この解決を図らずして国内の安定
政策だけで今度の
経済状態を解決できないと思うが、その点は一等初めにお前さんが来たときとは根本的に違うだろうというようなことを申しました。それに対してはその
通りだと彼はそれを認めております。ただそれなるが故に別に国内の安定
計画をこわしていいと彼は決して言いませんけれども、併し同時にそれだけで解決しない大きな面があるということを証明しておるわけであります。そういう点につきまして私は
ニューヨークでこういうことを申したんであります。これは銀行側その他からよく
日本の
経済の将来のことを言われましたが、そういうときのまあ座興に申したのでありますが、ダレス特使が
日本に来たときに非常に面白いことを言
つた。ダレス氏は、
日本が八千万も人間が狭いところに住んで、非常に人口過剰で困るということを言
つておるけれども、自分も非常に小さな島から来た。その島には何百万の人が住んでおる。而もそれは非常に繁栄した島である。その島の名はマンハッタンという島で、これは
ニューヨークのことでありますが、
ニューヨークの島というものは非常に人口がたくさんあ
つて、而も世界一繁栄しているじやないかということをダレス氏が言
つた。私はそれは非常に面白いことで、世界の中で侵略に訴えずして、而も非常に大勢の人間が狭い地域で以て繁栄し得るということに非常に我々として勇気付けられたことも事実である。併し同時に私はそれに附加えて言いたいことは、マンハッタンの島の周りに何十とあるあの橋を
日本にもらいたい。あの橋を全部
日本に提供してもらいたい、あの橋は何であるかというと船である。
日本が
海外から物を入れ、或いは物を出すその橋或いはトンネルを
日本に与えて、これによ
つて日本が
海外と自由に交易することができるようになり、そういう
機会が与えられれば
日本の八千万の人間が平和裡に狭い島の中でも繁栄し得るのだ、それがなければ別な解決方法に走らざるを得なくなる。そこで
日本にマンハッタンの周りの橋をもらいたいのだと、こういう話をほうぼうでいたしたのであります。これに対してまあ非常にみんな共鳴してくれまして、例えばニュース・ウイークの論説委員など非常に喜んで、すぐにそれを雑誌にそういう趣旨で船をどうしてもやらなけりやならんということを書いておりました。まあそういうふうなことで、私はそういうような解決策、つまり世界的規模における
日本の
経済をどうして行くかという解決策がこの際必要であ
つて、
日本の国内の安定
計画ということは勿論必要でありますけれども、まあそれだけで解決し得る世の中ではなく
なつたということを痛感しておるわけであります。大体お約束の時間も近付きましたのでこれくらいにいたします。