○
山下義信君
遺族援護に関する小
委員会の
経過につきまして御
報告申上げます。小
委員会は本月六日に
開会いたしまして、
政府の
担当事務当局、
田辺援護局長、
松本厚生省更生課長、並びに
関係官から
意見を聴取し、種々
委員との間に
質疑応答を交したのでございますが、
委員会におきましてこの問題に関しまする討議の
中心となりまする問題といたしましては、第一点は本
対策は如何なる
理念を持つて行わんとするかという問題でございます。即ち
遺族の
援護ということは
戦争犠牲者に対して
国家がその
損害に対して補償するという
考え方で行くか、或いは
戦争犠牲者の
遺族の
生活を
保障するという
考え方で行くか、或いは又極端に申しますと
遺族の
生活の困難な人々に対して国の
保護を与えるというのであるかという、
遺族援護に対しまする
理念は如何なる
理念に立つかという問題でございます。
国家が生命、
身体の
損害に対して補償するという
考え方になりますると
保護の
内容が自然変つて参るのであります。
生活の
保障をして行こうという
考え方になりますると、おのずからその他の
生活保障の諸般の
制度とバランスの
関係がございます。又
生活困難の
遺族を
保護するという
理念に立つということになりますれば、これは恐らく
一般の
遺族の
方々が到底受入れることのできない
考え方であろう、こういうことでございまして、本
対策に対しまする
理念というものをどういうふうに持つて行くかということはこれは
対策の全般を通じての
構想に
影響があるのでありますから、
十分検討を必要とする次第でございます。
なお第二点といたしましては、本
対策の
対象の
範囲はどうするかということでございまして結局問題の
中心は軍人、軍属に限るか、
一般人をこの
対象に包含するかという問題になると思います。又
戦争犠牲者、即ち
戦傷病死というものを
場所、或いは時期、或いは如何なる状態のもとに
犠牲に
なつたかとふうような
点等をどういう
範囲で規定するかということによりまして、
対象の
範囲が増減をして参るわけでございます。
第三点といたしましてはその
援護の
内容をどういう程度にするかという点でございまして、いろいろこれに関しましても
考え方が種々あるのではないかと考えられるのでございます。
第四点といたしましては、本
対策を
実施して参りまする上におきまして、その目的を達成いたしまするために必然的に生じて参りまする技術的な
実施上の問題でございますが、例えば
生活困窮者世帯の
取扱をどうするか、
現行の諸
法規との
関連性をどう持つて行くかという点でございます。現に
療養中の者はどういうふうな
扱い方にして行くか、或いは又すでに治癒して一定の
傷害を持つているところの
身体傷害者の
戦傷病者に対してはその
取扱をどうして行くかというような
現行法規との調整の問題でございます。
第五点といたしましては、本
対策の
管理機構というものは、
中央地方を通じてどういうふうにして行くか、なお本
対策の
運営等につきましても種々問題があろうかと考えるのでございます。これらの
遺族援護の
対策につきましては、すでに
衆参両院とも前
国会以来
厚生委員会或いは小
委員会等におきまして、
論議検討を加えられて参つておるのでございますが、なお
政府におきましては、本問題につきまして相当の熱意を持つて今日まで
研究調査を重ねて参つておるのでありますが、併しながら今日なお我々に対しましても
政府の原案ともいうべきものを
説明いたしまする
段階には至つておりません。
政府はこの問題の
取扱は極めて
国際関係に微妙な
影響を与えるので、慎重なる
取扱をなさなければならんと主張いたして参つておりまして、私どもも全く同感でございまして、本問題の
取扱につきましては、
政府の意に副いまして我々といたしましても、対外的に不測の
影響を与えないように慎重な
取扱をして参
つたのでございます。例えば
賠償関係等にも微妙な
影響を与えることを慎重に考慮いたして参
つたのでございます。併しながら最近におきましては、すでに
講和条約の調印以来
政府におきましても或いは公式、非公式にかなり具体的な
意見を発表する向があるやに見受けられるのでございます。最近の
新聞紙上におきましては
厚生当局の談といたしまして、かなり具体的な
政府の
構想を
新聞紙上に発表いたしております
模様でございます。果してそれらの考えが
政府案としてまとまつたものか、或いは
政府が公式に
報道機関に発表いたしまたものか、これを未だ
確めるいとまはございませんけれども、そういうようなふうにだんだん
なつておりますことは事実でございます。又一面内閣に設置せられてありまする
社会保障制度審議会におきましては、
遺族援護に関しまする
特別委員会を持たれまして御
研究の
模様でございまするので、本問題につきましては漸次各方面ども具体的な
意見が発表せられる時期が
迫つて参つておりまする
模様でございます。すでに
政府におきましては本
年度補正予算に一億円を計上いたしまして、
援護に関する
調査を
実施する
計画の
模様でございます。従いまして小
委員会といたしましては、殊に
委員会の中にはこの方面につきまして従来非常に密接な
関係をお持ちに
なつておられる
委員の方もお出になりまして、いろいろ本問題の進捗につきましては非常に御尽力のことであろうと存じておりまするので、そういう
委員の
方々の御
意見等も十分重視いたしまして、参議院の
厚生委員会といたしましては、
遺族援護に対しまするこの問題に関する具体的な所見のとりまとめをいたさなければならん
段階ではないかと考えるのでございます。たまたまそういう
段階になりましたときに
国会が
終了期と相成りましたので、いずれ
次期国会に継続いたしまして、本問題の
調査に当るべきではないかと考えております。従いまして本小
委員会といたしましては未だ
結論には到達いたさなか
つたのでございます。
以上御
報告申上げる次第でございます。
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