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説明員(
岡田修一君) 私
海運局の
岡田でございます。
講和条約締結後の
海運事情という、今
委員長からの御指示でございますが、一般的に現在の
海運事情、今後の
見通し、それから
平和条約に関連して問題になるであろうという事柄を
説明さして頂きたいと思います。
一般的な
世界の
海運事情について簡単に触れますると、御
承知のように昨年の暮以降、本年の初頭にかけまして、
世界の
海運市場は急激なる
上昇を示し、
船舶は非常なる逼迫を示したのでございます。併し丁度六月に入りまして、
朝鮮の戦乱の休戦問題が起
つて、同時に
アメリカにおける
石炭の、まあ
夏枯期に入
つたというような
事情からいたしまして、七月、八月には相当
運賃も下
つて来ておるのでございます。例えば
日本関係の
運賃について見ますると、バンクーバー、
日本のグレインの
運賃が二月から五月にかけまして十七ドルから十六ドルいたしておりましたのが、六月には十五ドルになりました。七月にはそれが十四ドル七十五、八月にはそれが十三ドル七十五というふうに下
つて来ておるのであります。ところで九月以降更にそれが
反撥気味に
なつております。これは大西洋における
欧洲への
石炭の荷動きが、
夏枯期を経過いたしますと共に非常に増加して、これが今後相当大量に増加して継続するであろうという見越があるわけでございます。それからインドヘの
穀物援助が出て来たというふうなことから、非常に
市場が強く
なつて来ました。一般的に
言つてまあ
海運界はこの冬は相当
運賃が高騰するのじやないかという観測を持
つておるわけでございます。油の、タンカーの
運賃にいたしましても同様でございまして、一時六月頃非常なる低下を見ましたが、その後
漸次上
つて参りまして、この冬場の
需要期に入れば一層これまでにない高いレートを示すのじやないかということが見られておるのでございます。併しこれに対しまして一方
運賃の急激なる
上昇を抑制する作用が
アメリカ政府のほうで行われておるのでございす。それは御
承知と思いまするが、本年の三月の末に
アメリカの
海事当局、マイタム・アドミニストレイシヨンの外局といたしましてナシヨナル・シツピング・オーソリテイ、何と訳しましようか、
国家船舶局とでも訳しましようか、丁度
戦争中に
アメリカ政府が持
つておりました
戦時船舶局と同様の組織を以ちまして、従来
アメリカ政府が繋船いたしましたリバテイ、ビクトリー型の船を
漸次就船させて、船腹の供給を図ることによ
つて運賃を抑制しようという手段に出ておるのでございます。当初その
運航船舶が五月頃には六十隻余りでございましたが、現在はそれがまあ二百五十隻くらいに
なつておる。近く三百隻くらいになろうとしておる。こういう
政府が自分の所有船を自分で動かしてそうして
政府の
欧洲或いはインド方面への
援助物資の
輸送をやるということによ
つて、
運賃の急激なる
上昇といいまするか、……むしろ
運賃の低下を企図しておるような次第でございます。従いまして一般貨物
運賃につきましては非常なる強気でございまするが、そう大きな暴騰はしないのではないかということが考えられるのでございます。そのような
状況下にありまして、
日本の海運業といたしましても四月五月頃のような好況を満喫するようなわけには参
つていないのであります。六月以降の
運賃のやや軟調を示した結果一時ほどよくございませんが、それでもなお相当よい
状態が続いておると見ておるのであります。更に今申しましたように、今後この
市場が強くなりまする場合にはなおよくなるのではないか、かように見ておる次第でございます。
この外航に就航いたします船腹でございますが、本年初頭以来買船、新造等に鋭意努力いたしました結果、更に戦標船の改造による
外国船級取得等に努力いたしました結果、本年三月末におきましてはこのクラス・ボートが貨物船、タンカーを含めまして七十四万総トンございましたが、これがこの九月末には百二十万総トンに
なつております。これが来年の三月
末日になりますると約百八十万総トンになる予定でございます。買船も当初約二十隻を予定しておりましたが、現在までに
計画では二十万総トンかちよつとはつきりいたしませんが、現在までに
許可いたしました隻数は四十六隻、二十五万総トンに相成ります。そのうち九月末で引渡しを受けましたものが二十六隻、十四万総トンに相成
つております。あとの二十隻はあと三、四カ月或いは半年内に引取ることに相成
つておるのでございます。
これによりまして
日本船の運びまする外航貨物、いわゆる輸出入の貨物を見ますると、輸出入合計の
日本船で運びましたものが四月には約五十万トン、五月には五十四万、六月には五十七万、それが七月も大体同じでございますが、八月は六十万トン近くに上
つております。これを前年度に対比いたしますると、前年度は大体二十五万トン平均、前年度の四月初めには僅かに二十一、二万トンという
状況でございました。本年三月にはそれが四十三万トンくらいまで上
つております。平均いたしまして二十五万トン程度の増額に
なつておりますが、先ほど申しました船腹の増加に伴
つて、
日本船の運ぶ貨物の量も倍以上になるということが言えるわけであります。
なお船腹
増強といたしましては、本年度第七次造船
計画として、四十万トン建造する
計画を年度当初に立てまして、そのうち二十万トンは本年度の初めに着手する運びに
至つたのであります。あとの二十万トンは目下これに要する見返資金の放出によ
つて政府部内で打合中でございましてまだ結論までは至
つておりません。私どもの推定では来年度における荷動き、それに定期
航路への配船
状況等を睨み合せまする場合、相当大量の船腹
不足が出て来る。タンカーを除きまして一般貨物船においても明年度平均百万重量トン以上の
不足が出て来る、これを補いまするためには、どうしても新造を既定
計画より進めなければならない、かように考えておるのであります。而もその百万重量トンの
不足は殆んどが遠洋方面の就航船の
不足によるものであります。この近海方面の配船については、戦標船の改造型、それから買船いたしましたものがおおむね型が小さく、或いは
石炭焚き、或いは速力が遅いということで、近海方面に配船されておりまして、近海方面は相当
日本船腹が出廻
つておるのであります。併し今申しました百万重量トンの
不足は主として遠洋方面にかか
つておる。従
つてこの遠洋方面の百万重量トンの
不足を補いまするためにはどうしても新造による以外に方法がない、かように考えておるのであります。
今日の買船
市場を見ましても現在ではもういい船は余り出廻
つておりません。相当年令も古く速力の遅い船が多いのであります。遠洋方面に配船可能のよい船をつかまえようといたしますとそれは極めて寥々である。今申しましたような大量の船腹
不足を補う対象としては考えられない。かように考えておるのであります。なお新買船につきましても新造と併行して質のよいもの、少くとも船令二十五年以内の船につきましてはこれを
許可して行くようにいたしたい。かように考えておる次第でありますが、そう多くを期待できないのではないか、かように考えております。
外航につきましてはそのほか定期
航路の
状況でございますが、今まで
関係方面から
許可に
なつてすでに開始いたしておりますのが
日本・琉球、
日本・南米、
日本・バンコツク、
日本・インド・パキスタン、それからフイリピン、インドネシア、それに北米、それから
朝鮮、北米西岸・ラングーン、カルカツタ、こういうものが
許可に相成
つております。尤も
朝鮮の定期
航路と申しましてもこれは週に一回ずつ
日本船を入れるということでございまして、純粋の定期
航路とはやや趣きの違う定期配船を週一回ずつ
計画的に行うという性質のものであります。その外
日本側としては今後フイリピンとか香港とか或いは台湾、濠洲、こういう方面の定期
航路の希望があるのでありますが、未だ
許可の
段階に至
つていないのであります。
なお
日本船の入港に対する各国の
許可の
状況でございますが、殆んど主要な所はブランケツト、クリアランスを出しておるのでございます。ただ英領
関係におきましては特別の貨物の荷揚だけをその都度認めるというふうな制限的な
許可に相成
つております。英領
関係、それとインドネシア共和国も同様の
状況でございます。併し大多数の
世界の各国が
日本船に対して自由なる入港を認める
段階まで至
つておるのでございます。この点誠に喜ばしい次第と考えております。大体外航につきましては以上の
状況でございます。
内航につきましてはMS、TSの傭船が減りました等によりまして、やや船腹が余裕ある
状況でございます。従いまして
運賃等も余り変動なく横這い
状況を呈しております。大体毎月百六十万トンぐらいが汽船で動いております。これは昨年の四月頃に内航の
輸送量が百万トンを割る
状況に対比いたしまして相当の増加を示しておるのであります。併し一般的に船腹がなお余裕を示して、大体八十万重量トンぐらいの汽船が内航に動いておる、かように行
つておるのであります。それに対して百六十万トンのもの。これは夏場
回転率が非常にいいということにも起因しておるのであります。これが冬場になりまして、
回転率が落ちました場合にやや窮屈に
なつて来るんじやないか、かように考えられます。
それから機帆船につきましては御
承知の
通り、この四月以降重油のほうも相当潤沢に出廻
つて参りまして、大体現在一四半期に四万五千キロぐらいの油を割当てております。それによ
つて約三百二、三十万の貨物の
輸送量を毎月確保しておる次第でございます。機帆船につきましては
戦争中相当船を酷使したこと、それから戦後におきましてごく最近の事実でございますが、油の配給が非常に少か
つた。その結果相当の機帆船を繋いでお
つたために非常に船をいためてしま
つたというふうなこと、それから機帆船の
経営状態が、これはいつもながらのことですが、非常によくないということで、機帆船業自体が相当悲惨な
状況に陥りつつある次第であります。これに対しまして何らか保護助長の施策を講ずる必要があるというふうに痛感するのでございまして、これにつきしては近い将来何らか具体案を持ちまして議会の御
援助を仰ぎたい、かように考えて、目下鋭意検討中でございます。
平和条約が締結になりまして、いろいろ海運
関係につきましても問題があるわけでございます。例えば今度の講和条約で、この条約に加盟しない国があるわけであります。そういう非調印国と、この
日本の
船舶との
関係がどういうふうになるかというなかなか厄介な問題があるわけであります。私どもとしましては、この講和条約が効力を発生いたしました場合、この非調印国との間においても何ら紛争が起らないで、
日本船が自由に
世界の各港を航行できるようにしなければならぬと、まあ鋭意
日本国内並びに
関係方面とも
折衝している次第でございます。或いはその他外地置籍船の処理をどうするか、或いは
日本船で略奪されて
朝鮮、その他に持
つて行かれた船をどうするか、或いはこれは講和条約で請求権を放棄することに
なつておりますが、フイリピン或いは南方
地域で戦後接収された船について
関係業者におきましてはなおこれを諦め切れないでいろいろ
政府に要請をしているのでございます。これについてどういうふうにそれらの
業者に対して措置をとるかという問題、これは国際的においては或いは問題にし得ないかも知れません。なお一層研究を要することと考えている次第でございます。
それからもう
一つ、なおその他技術
関係におきましては海運
関係では非常にたくさんな国際条約があるのでございます。これの復帰の問題がまあ事務的、技術的問題として相当多く起
つて来るわけであります。なおこの
講和条約締結に伴
つて海運協定ということが非常に心配して取上げられているのでございます。この海運協定につきまして事実私ども一体どういう海運協定を結ぼうという意図があるのか、その
アメリカ側の意図がはつきりしないわけでございます。これは山県
委員から御
説明もあるかと思いまするが、私
アメリカのほうに行
つておりまして、先方の
政府筋といろいろ
意見を交換し、向うの考え方を徴しましたところ、当地におきましては
政府筋は海運協定について何らの構想も考え方もなか
つたように認められるのでございます。ただ先般
日本に来朝されましたマグナソン上院
議員がこの海運協定の必要性をいろいろな機械に協調してお
つたようでございます。まあ
関係の
アメリカの
業者がどの程度この海運協定を希望し、又この締結のために動いているかということはちよつとはつきりいたしかねる次第であります。この海運の性質からいたしまして相当この協定の内容というものがむずかしいのじやないか、質的に技術的に考えて相当むずかしいものであるというふうに考えるのでございます。
政府筋のそういう考え、その海運協定を本当に考えてみた場合に起る困難性ということからいたしまして、それほど気にする必要はないのじやないか。仮に海運協定というものが問題になるにしても何ら
日本側としては心配を要することはないであろう。かように考えているのでございます。この点につきましては山県
委員が特に御検討に相成
つたようでございまするので更に山県
委員から詳しく御
説明があるかと思います。簡単でございまするが、以上で
説明を了えさして頂きまして御質問によりましてお答えをいたします。