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日向参考人 ただいま御
指名を受けました
参考人の
日向でございます。ただいまから
関西方面における
鉄鋼業の各社の意向を代表いたしまして、
電力不足の
実情並びにそれに対する
所見等を申し上げて御
参考に供したいと思います。
去る九月六日の
電力規制以来、
電力規制はすでに第五週にわたりまして、その
影響はきわめて甚大であります。しかしながら、現下の
電力不足の
原因が異常なる
渇水にある点も
考えまして、われわれ業者といたしましては、全力をあげてその
制限に協力いたして参
つたのであります。その
実績を見ましても、大体において、その
制限内で
操業しておるのでございます。しかしながら、その
影響はきわめて甚大で、ございまして、
工場の
操業度は約半減いたしておるのであります。この間におきまして、われわれも極力
発電量の
増加をはかる目的をもちまして、先日われわれの血の出るような
石炭五千トんを無
條件に供出いたしまして、
火力発電の
増加をはか
つたりしているのでございますが、その後
電力の
状況は刻々悪いように聞いておるのでありまして、仄耳するところによりますと、近くさらに五割の
制限になるというような
うわさも聞きます。またその
制限はここ一週間、二週間という問題ではなく、おそらく来年の
豊水期まで続くのではないかというような観測が持たれるので、これではどうにもなりませんので、ここに
関係当局に
陳情するとともに、
行政官庁の
監督者であられる
国会に対しましても、直接
実情を申し上げたく、上
つて来た次第でございます。
まずこの
制限の実況でございますが、お配りいたしました「
関西地区鉄鋼業電力制限による
影響」という表で、ごらんいただきますと、その二ページの下から
二つ目の欄に、七月の
電力の
使用実績と、この
制限後との
電力の比率が出てございます。一番上に七月
実績を一〇〇%としてあります。その次に現在の
制限量でございますが、その結果といたしまして、六二%に下
つております。それから近く実施せられるという
うわさの五〇%
制限になりますと、その下の四三・五%になります。またその
制限を、一部に言われるごとく、十月の仮
わくに対して五〇%
制限になりますと、実に三一%に下るのでございます。それからかかる
制限量による
操業状態を申し上げますと、たとえば第一ページの一番上にあります神戸製鋼の例をと
つてみますと、七月の
実績が週六日
操業で、ございますと、この現在の
制限量によりますと、その次の三・五日
操業、というのは、これは
保安電力等にとられてしまいますから、実際
操業するのは非常に小くなるのであります。その次は五%
制限になりますと一週間二日ということになります。さらに十月仮
わくによる五〇%になると、〇・五日という計算になるのであります。今回の
制限がいかに大きな
影響を與えるかということはこれでもわかるのであります。現在も
操業を中止いたしました日に対しましては、
従業員に約六割の
賃金を拂
つておりますが、こういうことは今後永続することは困難でございます。従いまして
生産の減少はもとより、
企業の
基礎を危うくし、さらにひいては、
従業員の生活を危うくし、一般社会問題になりつつあるのであります。現に
中小企業におきましては、
賃金の遅
拂いは続出いたしまするし、このままで参りますると、
企業的に崩壊するものも続々現われると思うのであります。この
制電の
実情につきまして特に申し上げておきたいことは、
制電の
基礎でありますところの
基準をどこに置くかということであります。ただいまの
基準で申しますと、五〇%
制電によりました場合に、四三・五%の
電力量になる。現在は三〇%
制電で六二%ということになる。少くともこの
様式を採用いたしていただきたいのでありましてその下にあります十月の仮
わくに対して五〇%というようなことになりますと、これは全然問題にならなくなりまして、
工場は全部とめざるを得なくなります。また現在の
様式による五〇%
制電、いわゆる四三・五の
電力量下におきましても、事実
工場の
操業を継続することは不可能になるのでございます。まず第一は、この
基準の
割当を少くとも現状の行き方にしていただかなければならぬ、十月の仮
わくでやることは、全然問題にならぬということが
一つ。それから五%
制電ということは事実実行不可能であろうかと思います。現在の三〇%
制電といいましても、用意くふうを重ねまして、どうやら維持しておりますが、さらに五〇%
制電ということになりますると、事実上
工場の
操業は経済的に不可能になりますので、それを維持するということは、事実問題として不可能だと思います。このことをぜひお含み願いまして、今後の
対策を樹立願いたいと思うのであります。
その次に
対策につきまして、少しく
私見を申述べさしていただきますと、もちろん労働問題とか、あるいは資金の問題とか、いろいろの面にわたるのでありまして、それぞれ
担当をわけて研究しておりますが、一番手取り早い、かつ即刻必要な問題は、申すまでもなく
石炭の
確保であると思うのであります。この点につきましても、別にここに
陳情書が出ておりますので、それを、ごらんいただきたいと思います。要するに
関西地区におきましては、
火力発電の
石炭さえありますれば、それを十分にたぎさえすれば、現在におきましても少しも停電の必要はないのであります。その
発電余力はあるのであります。それに対しまして、その二枚目の一番
うしろにありますように、
関西配電の
会社からは、
電力会社の
希望案として、六箇月百四十二万トンを要求しておるのであります。これに対しまして、
公益事業委員会は百十五万トンを
割当てる
計画に
なつておるようであります。われわれの面からいいますと、大体月二十万トン、六箇月百二十万トンは絶対ほしいのであります。そういたしまして
発電量が最悪の場合におきましても、百万キロ出すことができますれば、大体
関西の方は一割、あるいはそれ以上の
制限でありましても、しんぼういたしまして、どうやら行けるのであります。いわゆる二十万トン、百万キロがおおよその見当でありますが、これに対しまして
公益事業委員会は百十五万トンという
割当でありますが、これまたわれわれといたしましては、もしこの通り
調達できるならば、何とかこれでしんぼうして行きたいと思うのであります。どうかひとつこの百十五万トンを確実に、また時期も間に合うように
調達できるように願いたいと思うのであります。
それにつきましてここにわれわれといたしまして、三つほどあげておるのでありますが、その
一つは、要するに
大手筋に
依存度を持つことをもう少しふやしていただきたいという点で、ございます。
関西配電の
石炭の
調達がなかなか困難な
一つの
原因といたしましては、
大手筋に依存する度が他の
地区よりも非常に少いということが、今日に
なつて一番
石炭を
調達する困難な
原因に
なつておるのであります。このことにはいろいろ前から
原因があるのでありますが、ともかくもひとつよそ並に、大口に依存させていただきたい。そうして確実に
石炭を入れていただきたいと思
つておるのであります。
その次の第二
項目は、
中小炭砿からの
石炭の供給を確実にしてもらいたい。そこにありますように、第二・
四半期におきまして、
平均月十二万トンを契約いたしたのでありますが、それが実際に入
つたのは実に二割
程度であります。その炭が一体どこへ流れておるかというのが、われわれの最も聞きたい点でございます。どうか議会におきましても、一体どうして
中小の炭がどこへ流れて行
つておるのか、
関西電力で契約したものが、いかなる
原因でよそへ流れて行
つたか、それをよくお確かめ願いたい。と同時に、それらの炭、今後約十二万トンの
中小企業に対する炭と、それからまた前に契約の引取り未済である炭、これをぜひひとつ
関西電力に
確保願いたいと思うのであります。
それから第三
項目といたしまして、
重油の混焼でございます。これにつきましてもすでに
資源庁の方でお
考えのようでありますが、ぜひこれも実行していただきたいと思います。また
重油混焼設備等につきまして問題があるなら、あるいは
製鋼会社に
重油をまわし、それから代替として
石炭を出すというようなことを
考えていただいてもいいと思うのであります。なおインドの炭の
輸入等についても
お話を聞いておるのでありますが、これまた確実に入手いただきたいと思うのであります。なおまたここには差控えましたが、聞くところによりますと、
朝鮮方面に
相当量の炭が出るような
お話もあります。これまたいろいろ
事情があるかと思いますが、
関西におきまして現在すでに
操業度が五〇%に
なつておる。さらに五〇%
制電になりますと、三割ぐらいに
操業が下り、
一般従業員が職を失うというようなことになりますので、何とかこれまた一時なりとも延ばしていただくことができたらと思うのでございます。
その次に申し上げたいことは、実はわれわれの方もここまで来ますと、もはや
工場をとめるかどうか、いわゆる生死の関頭に立
つているのでありまして、われわれといたしましては、このまま
拱手傍観、座視するに忍びないのでございます。そこでわれわれの
考えておりますことは、せめて現在の
送電量を維持するために、これ以下に
送電を
制限するならば、たとえば五〇%になるならば、現在の七〇%と五〇%との差の二〇%を
確保するために、
自分たちで
石炭を
調達する。そうしてこれを
配電会社に供給するから、その見返りとして
電力をわれわれに還元してもらいたい、かように思うのであります。と申しますのは、現在の
電力会社の
石炭調達能力は実は頼りないのでございます。もちろん社長以下幹部は懸命に努力を続けておりますが、これはスタッフの問題でありまして、長年お
役所仕事をしてお
つた現在の
電力会社には、なかなか
調達することが困難な面があるのであります。なおまた
電力会社と
石炭との
関連が、非常に
事業的にもなかなか行き届いてなか
つた点と、従来も感情的にもおもしろくない点がありまして、おいそれと炭が集まるとはどうしても思えないのでございます。しかるにわれわれの方は実は長年
石炭とタイアップいたしまして資材的にも
関連がありますし、なおまた
担当者もしよつちゆう山をまわ
つておるのであります。一例を申し上げますと、この
緊急事態になりましても、
配電会社から
石炭山へまわる数よりも、われわれの
担当者が
石炭山をまわる数の方がはるかに多い。これは
石炭山の方でも、実は
鉄鋼会社から来る方がはるかにまだ多い、こういうことを言うのであります。これは現在の
配電会社の
担当者を責めても急には行かないのであります。そこでわれわれが
調達すれば、何とか少しの炭ができるという
自信を持
つておるのであります。しかもその炭を供給して発電したものを、全部が全部われわれに還元してくれとは申しません。こういう際でありますから、ある
程度のものは、他の
産業にまわすことを、決してやぶさかに思わないのであります。われわれといたしましては、何とか
自分たちにも
電力をまわしてもらい、また他の
産業にも少しでもプラスして行きたいと思うのであります。かりにわれわれのこの提案を入れなければどうなるかといいますと、結局炭が集まらなくて、
制電中
火力発電があいてしまうということになるのであります。現に
関西の今津の
発電所はあいておるのであります。これを
一つ貸してもら
つても、必ず動かす
自信がある、こういうことを公言してはばからぬのであります。もつともこれにつきましては、私どもは
公益事業委員会の方へも申し上げまして、現地の方は割合に賛成でありますが、
中央の方はまだ当
つておりませんが、こういう懸念をお持ちのようであります。そうすると、実力のあるところだけがいいことをする。こういうふうにお
考えになるかもしれませんが、こういう
意味からいいますと、
自家発電を持
つている
会社は、いまだに
制電を受けずにやつおるのであります。たまたま
自分が設備を持
つておるからというて、国家の炭を百パーセント活用しているのに、われわれだけが利用できないということはないように思うのであります。なおまたわれわれがやれば、全部われわれにくれというふうには言わない、他の
産業にも必ず幾らかまわすというふうに
考えるのでございます。この点も
規則とかいろいろあると思いますが、この際
規則の末にとらわれずに、何とかして
産業のために少しでも
電力がよけいになるように、われわれの創意くふうもぜひひとつ喜んでいれていただきまして、何とか打開していただきたいと思うのであります。
第三は、各
地区にもう少し
自主性を持たしていただきたいと思うのであります。
電力の
送電につきまして各
地区にはそれぞれの
特殊事情がありまして、
各地方々々で
事情が違うのであります。これを一々
中央のこまかい
規則に縛られておりますと、こういう火急の際になかなか実効が上らぬのでございます。今の
石炭の
委託加工のような問題にいたしましても、現にある
地区にはそういうようなことをしておる
地区がある。そして実際に
配電量を増し、それを受けている
会社もあるのでございます。これは
中央で認めているかどうか知りません。そういうことを行うにいたしましても、ある
程度各地に
自主性を持たすということが一番肝要なように思うのであります。その
意味におきまして、
電力規制に対して各
地区に
自主性を持たしていただきたい、かように思うのであります。さりとてわれわれは全然各
地区で自由にやれという
意味ではないのであります。こういう際に、たとえば
関西だけがいいことをしようとか、そういうような
考えはないのでありまして、むしろ全国的に共通の悩みを受けて行きたいというのが、われわれの年来の
希望であります。
従つて大きな
わくにつきましては、全国的の統制は、現在よりももつとや
つていただきたいのであります。しかしながらその
わく内における活用については、各
地区にもう少し
自主性を持たしていただきたい、かように思うのでございます。
さらにこれは
私見でありますが、現実の
対策もさりながら、根本的な
対策というものをぜひ
政府においてお取上げ願いたいと思うのであります。なるほどいろいろな
事情はありましようが、月々四百万トンの
石炭が出る
日本において、わずか二十万トンの炭が
関西全
産業のためにどうしてわけられないか。その二十万トンの炭のために、
関西の全
産業が五〇%
操業を停止するというようなことは、いかにも知恵がないように思うのであります。それではどこが無いか、いろいろあると思うのでありますが、根本は異常な
渇水にはよりますが、また
石炭山なども大いに協力する意思はあるようでありますから、何とかこれを
政府の力によ
つて動員して、わずか二十万トンの炭が
関西の全
産業のためにさいてもらえぬか、その点がどうしてもわからないのでございます。これほど炭がなく
なつたといいましても、極端なことを言いますと、列車一本減
つたわけでもないし、どこに炭がどう
行つたのかわからぬのであります。そうかと思うと、
朝鮮方面に持
つて行かれるとか、いろいろなことを聞きますと、どうもわれわれは
納得が行かない。そうしてこのままで
関西の
産業をとめるということは、絶対に
納得ができません。従いましていかにきつい
規制をなされましても、このままで
制限を出したら、絶対服従できないことになると思うのであります。この点もひとつお
考え願いたいと思います。また
電力の
需給計画にいたしましても、ついこの間まで銀座にネオン・サインが輝いておるときに、われわれの
工場は四〇%とまるという矛盾はどういうわけです。絶対にわれわれにはわからぬ。近郊の
遊覧電車はいまなお一本だ
つて減
つておらぬ。そういうときに
日本の
基幹産業である
鉄鋼が、半分とまるというばかなことがどうしてあり得ましようか、この点もわれわれはわからぬのであります。
もう
一つは、これは
対策ではありませんが、どうも
陳情や何かをしているときに、われわれの
担当者の方から、どうもこれはか
つて電力値上げに少し反対したしつ
ぺ返しではないかということをよく言われるのであります。われわれはそう思いたくありませんし、そう思いませんが、往々にして
電力料金の解決が不徹底であ
つたがために、こういう
事態に
なつたかのごときことを
相当の
責任者の口から聞くのは、はなはだも
つて不愉快でございます。われわれはあの問題も、われわれの
事業のために言うだけではなくて、
日本全体の
産業の
価格政策をどうするかという大きな見地から、ああいうところで妥協したと思うのでありまして、今日の
電力規制とは全然
関係がない、別の問題であると思うのであります。もちろん長い目において、わが国の
電力問題を解決するためには、
電力料金の問題も
関係があるかと思うのでありますが、少くとも現在の
電力の
規制には
関係がない。しかもわれわれが
陳情に行
つたときに、そういうことが
責任者の口から出るということは、はなはだ不愉快であります。この点特に申し上げておきます。
なおまた
関西におきましては、私もたいへん激越なことを申し上げたようでありますが、日々
陳情が繰返されておりまして、現に
関西電力では、ハンストの
陳情団が押しかけているような
状況であります。そういたしまして、
中小企業等は現に刻々弱りつつあるのでありまして、これを
政府といたしましてこのままにしておくということは、まことに重大なことになると思うのであります。
関西は
電力九分轄以来、いろいろの面におきまし
電力問題には絶えざる不満を持
つておるのでありますが、今回もこういう
事情におきまして、
関西の全
産業が逐次圧縮されて行くような気持を持
つているのであります。どうか
政府御
当局を鞭撻せらるる
国会におきましては、現
政局に対しまして十分御
監督を願いまして、
関西の
電力問題打開のために、
国会の職能を十分お盡し願います。