運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-09-12 第11回国会 衆議院 地方行政委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年九月十二日(水曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長代理 理事 野村專太郎君    理事 河原伊三郎君 理事 藤田 義光君    理事 門司  亮君       大泉 寛三君    尾関 義一君       角田 幸吉君    門脇勝太郎君       中島 守利君    吉田吉太郎君       鈴木 幹雄君    山手 滿男君       大矢 省三君    久保田鶴松君       立花 敏男君    中西伊之助君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  委員外出席者         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  加藤 陽三君         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         専  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 本日の会議に付した事件  警察に関する件     —————————————
  2. 野村專太郎

    野村委員長代理 これより会議を開きます。  昨日に引続き私が委員長の職務を行います。  それではこれより警察に関することにつきまして審査することにいたします。  この際お諮りをいたしますが、都下治安状況に関しまして、警視総監田中榮一君より参考人として実情を聴取いたしたいと思いますが、御異議、ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野村專太郎

    野村委員長代理 御異議ないと認め、さよう決します。それではまず田中参考人より都下治安状況に関し説明を聴取いたします。田中警視総監
  4. 田中榮一

    田中参考人 ただいま委員長からの御指名によりまして、最近における首都治安状況について御説明申し上げたいと思います。  本年に入りましてから現在までの治安情勢は、昨年に比較して、表面的には非常に平穏に推移したといつてさしつかえないと思うのでありますが、ただ内面的には昨年よりも相当複雑な事情が存在いたしておるのであります。  試みに警視庁管下に今までに起りました警備事象としてあぐべき事件を申し上げますと、まず春季労働攻勢における二月七日よりの炭鉱ストが起つたのでありますが、これについては直接事業場首都にあるわけではないのでありますが、これらを中心にしてのいろいろな動き相当活発に行われたのでありまして、警備相当注意を要する事象として、警戒を厳にいたしたのであります。  その次に電気事業分断反対の電産電源ストが、三月三十日から発生いたしました。これに対しましては発電所なり配電所その他について、相当厳重に警戒をいたしまして、幸いにして何ら事故なく済んだのであります。  それから昨年三月上旬に朝鮮人の会館を接収いたしたのであります。これに伴いその後一箇年を経過いたし、これに対しまして三月七日王子朝鮮人学校における未許可集会強行事件が発生いたしたのであります。これは明らかに三月七日ちようど自治体警察一周年記念日にあたりまして、警視庁側といたしましても、各警察署から一箇所に警備力を集中いたしておりまして、その虚をついて未許可集会を敢行せんとするような企てがありまして、その状況は前からわかつておりましたので、その裏をかいてある程度他へ集中いたしておきました。ところが大体におきまして、これは大した事故もなく終了いたしたのであります。  それから五月一日のメーデー会場としまして、総評側から皇居広場をぜひ使わせろというようないろいろ要求があつたのでありますが、御承知のように皇居広場国民公園規則建前から、一切政治運動等にはこれを使用を禁止いたしておりまする関係上、できれば他の場所で——あるいは明治神宮外苑であるとか、芝公園であるとか、あるいは上野公園であるとか、そういうところで、できればひとつメーデーを敢行してもらいたいということをいろいろ総評側折衝をいたしたのでありますが、総評側としましては、あくまで皇居広場においてメーデーを実施するというようなことでありまして、いろいろ折衝いたしましたが、散歩により大衆が皇居広場に集合するいわゆる散歩メーデーを敢行しようといたしたのであります。これに対しましては、警視庁側としましても、法の裏をくぐる一つメーデーのやり方であると、いろいろ折衝いたしましたが、敢行するというような情報でありましたので、警視庁側としましては警備上万全の措置を講じたのであります。大体において総評メーデーを禁止いたしまして、統一メーデー促進会芝公園大森駅前におけるメーデーを実施いたしまして、大体これはことなく終了いたしたのであります。  越えて五月三日、憲法記念式典における会場におきまして、デモを敢行するといううわさがあつたのであります。これは皇居広場におけるメーデーを禁止いたしました関係上、総評側としましては、ぜひ憲法施行記念式国民の一員として参加して、そこでデモを敢行したい、こういうような情報もございましたので、十分に警戒をいたしておつたのでありまするが、不幸にしまして総評幹部の中で若干デモを取行いたしまして、やむを得ずこれは公安条側の規定の上からはつきり違反でございますので、責任者検挙いたしまして、間もなく解決いたしたのであります。  それから七月二十三日と三十日に東武鉄道のストがございましたが、これも会社側労組側との折衝の結果、一応解決をいたしたのであります。それから六月の二十五日におきまして、左派朝鮮人反戦反米ビラ事件がございまして、これはそれぞれ政令三百二十五号の違反といたしまして検挙いたしております。それから八月の十五日、いわゆる終戦記念日を卜しまして、左派朝鮮人王子朝鮮人中学校に集合いたしまして、無許可集会を強行しようという計画がございましたので、これに対しまして厳重事前に警告を発したのでありますが、若干集合いたしましたので、これに対しましてはただちに解散を命じ、何ら集会の事実なくこれは終了いたしたのであります。  それから最近におきましては、サンフランシスコにおきまする講和会議中心にいたしまして、平和擁護闘争を展開いたしまして、これにつきまして去る九月一日に日本平和国民推進会議、これは総評宗教者団体が合流いたしまして、平和闘争をやる、こういう計画がありまして、これは合法的に集会をいたしまして、そして後に示威行進を行いたい。かような趣旨でありますので、主催者側折衝いたしましてはつきり一線を画しまして、できれば自衛的に主催者側において、一切のトラブルの起ることを防ぐということを条件にいたしまして、開催を許したのであります。その前から、いろいろこの平和国民推進会議の主催する大会に、左派より共同闘争申込みがありまして、あるいはこれに参画して、場合によつてはその会合をある程度混乱に陥し入れる——これは情報でありますが、こういう情報も入つておりましたので、その点は主催者側と十分に連絡をとりまして、主催者側としましても、この点に対し一切の防衛対策を講じましたので、その施行許可いたしたのであります。当日は大会そのものはきわめて平穏に終了いたしました。また集団示威行進も若干のトラブルはあつたのでありまするが、これも大体平穏に終了いたしておるのであります。一応形の上においては、こうしたものは大体において、きわめて平穏裡に終了いたしておるのでありまするが、今後やはり講和会議後の日本のいろいろな諸情勢から勘案いたしまして、現在といたしまして、いろいろなことが予想されるわけであります。今後たとえば九月四日における共産党幹部検挙に対する反対闘争、あるいは公安条例撤廃運動を展開する、あるいはまた労組中心とする賃上げ要求闘争、また行政整理反対闘争、これらのものが最近逐次現実に運動を展開されるようないろいろな萌芽がちらちら散見するのであります。この点につきましても十分治安維持対策につきましては最善の注意をいたしまして、絶対事件発生のなきよう細心の注意を払いまして、今後の取締りに万全を期したい、かように考えておる次第であります。
  5. 野村專太郎

    野村委員長代理 これよりただいまの田中警視総監の御説明に対して質疑がございますれば、これを許します。
  6. 藤田義光

    藤田委員 ただいま田中警視総監から最近の情勢報告を拝聴いたしまして二、三お伺いしておきたいと思います。ただいまの御報告にもありました通り、昨今の警視庁としての大事件はほとんど思想的、政治的犯罪がその中心を占めております。何と申しましても今まで総司令部存在ということが、犯罪を間接抑制するということに非常な力があつたことは、これは常識でございます。いよいよ講和条約も調印されまして、新聞報道でありますが、外国の権威ある報道によりますと、近く東京から総司令部引揚げるということが確定的になつてつております。従いまして講和条約効力発生後三箇月立ちましたならば、条約によりましていやおうなしに全外国軍隊は一応東京から姿を消すということが想像されます。その際におきまして、現在の陣容、装備機構警視庁で、完璧を期し得るかどうか、占領軍存在という支柱を失つた場合に混乱が起きないかということを、これはおそらく全国民心配しておると思いますが、この点に関して何か所見がありましたらお伺いしておきたい。
  7. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。総司令部その他連合軍軍事施設首都から撤退されましたあかつきにおける首都治安状況でございますが、まずこれに対しましてわれわれといたしましては、でき得る限り装備施設の改善を十分にいたしまして、これによつてその取締りの万全を期したい、かように考えております。あるいは通信施設あるいは輸送施設、その他一切の犯罪防止のための、あるいは犯罪検挙のための鑑識施設、こういつたものをわれわれといたしましては、ただいま逐次整備いたしておるような次第でございます。それからさらに今後連合軍当局が、首都から撤退された後における一切の外国人第三国人に対するいろいろな警備警戒並びに取締りということにつきましては、これは現在の警視庁機構ではあるいはこれをそのまま適用することは不適当であるかもしれない、かような観点からいたしまして、この外国人保護警戒並びに密入国者取締り、それからまたこれら外国人に対するいろいろな警察上の警備計画、かようなものにつきましてはある程度現在の首都警察機構を若干改正いたしまして、そうしてこれに対応するような一つ機構をつくりまして、これによりましてできる限り警備警戒を十分にいたしまして万全を期したい、かように考えておる次第であります。そのほか治安対策上最も必要なことは、警察官全体に対する志気高揚とそれから綱紀粛正並びに教養徹底でありまして、この点につきましては今後さらに一層努力をいたしまして、志気高揚綱紀粛正並びに教養徹底、こうしたものをさらに徹底いたしまして、いろいろ起り得る各種の事故に対して、十分に警戒をなし得るような措置を講じたい、かように考えている次第であります。はなはだ抽象的で恐縮でありますが、まだいろいい具体的にここで発表する段階に至つておりませんので、一応抽象的に御説明いたしまして御了承願いたいと思います。
  8. 藤田義光

    藤田委員 ただいまの御答弁は、一般論としてわれわれ了承できるのでありますが、ロンドン警視庁その他首都警察特異性ということは、世界各国共通点になつております。今の警察法建前から参りますと、大体警視庁もいわゆる自治体警察でございますが、私たちは、この際アジアにおける特殊な立場を占める日本首都治安を守る警視庁としては、何かここで性格的にも一応検討してみる必要があるのではないか、機構あるいは装備という技術的な問題のほかに、強力な性格を持つた新しい構想を、ここで練り直す必要はないかというふうにも考えております。特に警視庁の現在の情報警察関係が非常に微力であるというふうにも考えております。従来通り自治体警察の一部としての警視庁でよいかどうか、この点に関しては、よほど真剣に考えてみる必要がありはしないかと思います。この点に関して警視総監の御所見があれば伺いたいと思います。特にこれと関連して、これはいつかの委員会でも発言しましたが、どうしても全国的に一本化した組織、これに対抗するためには警察の方でも一本化した組織をもつて対処せねば、たとえば共産党幹部検挙等に見るような結果が、今後盛んに起きて来はしないかということを、われわれは憂慮するのであります。この点からしまして、自警連の会長でもあります田中総監に、警察一元化、特に民主化立場に立てる一元化ということをお考えになりませんかどうか、この点お伺いしておきたいと思います。
  9. 田中榮一

    田中参考人 お答えします。ただいまの御質問に対して私の答えられる範囲においてお答えいたしますが、ただ問題は、相当政策の問題に及ぶと考えておりますので、むしろこうした問題につきましては、私からお答えするよりも、政府を代表されております大橋法務総裁からお答え願つた方が適切ではないかと考えております。  まず首都警察性格でございますが、お話のように現在警視庁は、形の上におきましては自治体警察になつております。ただ一応組織の上におきましては自治体警察になつておりますが、われわれの現在実施いたしております警察活動の実態につきましては、これは国の取扱うべき事柄も、また自治体固有事柄も、一切これを実施いたしております。現在自治体警察が今度の警察法で一部改正になつておりますが、自治体警察が、だから国としての性格を持つた事柄を軽く見て、むしろ自治体だけの仕事をやる、そういうことはないのでありまして、自治体警察といえども同様に国の固有仕事もいたしますし、また自治体固有事柄も取扱つているのでありまして、従つて警視庁自治体であるから、ただちに今の首都警備上に非常に遺憾があるということは、私は絶対にないと思います。それはただ形の上の問題でありまして、実際において取扱われる事柄については、ほとんど国の治安関係するようなことがおもなものでありまして、現在は自治体警察でありますが、さようなことを実施いたしております。従つて首都警察自治体警察であるから、今後の治安上万全を期し得ないということは、私は絶対なかろうと思います。ただかような情勢でありますので、特殊の事柄について、国との関係においてどういうように関連性を持たせ、どういうような運営をして行くかということにつきましては、今後大いに研究を要することがあろうかと考えております。なお本問題につきましては、警視総監という考えではなくして、国民の一人として首都警察をどういうふうにしたらよいかということにつきましては、われわれも十分ひとつそれを研究いたして、今後どういうふうに運営して参るかということにつきましては研究させていただきたい、かように考えております。  それからなお情報の問題でありますが、警察は、建前といたしましては現在情報はとらぬことにしております。警察は、警備上必要なる情報と申しますか、いわゆる警備情報的なものは必要によつてこれをとる場合もございますが、警察建前といたしましては、警察情報というものは現在とらない建前になつております。従つてこれを全国統一化して情報網組織するということは、現在の警察本質から申しますと、一応できないことに相なつておる次第であります。  なお現在は、全国国家地方警察、それから自治体警察とわかれておりますが、一切の犯罪予防並びに犯罪検挙につきましては、たといその組織自警国警にわかれておりますものの、実質的には何らその間に区別がなく、相互にきわめて緊密な連絡をとつて参りましたし、現在も一切の犯罪予防並びに犯罪検挙につきまして、十分緊密な連絡をとつて、十分にその効果を上げている次第であります。ただこれを統一的にどうするか、こうするかという問題になりますと、これは警察を将来いかに取扱うかという、一つ政策の問題になつて参りますので、この点につきましては、私といたしましてはここで意見を申すことは差控えたい、かように考える次第であります。
  10. 藤田義光

    藤田委員 現在の警視庁立場からしまして、苦しい地方財政のまつただ中にあります都政の影響を少し強く受け過ぎるのではないか、予算的に都知事の立場によつて相当影響を受けるという点が今後禍根を残すのではないか、こういう面からしましても、警視庁自主性と申しますか、こういうものを財政面からも考え直す必要があるのではないかと思つております。そのためには政策の問題まで考える必要があるのではないかという意味で、先ほどお尋ねしたのでございますが、政策的な問題になりますと、総監として御答弁しにくい点もあると思いますから、いずれ後日に譲りたいと思います。それからわれわれが教わりました行政法野村さんや宮沢さんの非常に古い講義でございますから、あるいは間違つておるかもしれませんが、警察権の限界として、防犯の建前からある程度の情報ということは、絶対必須条件ではないか、むしろ警察権本質ではないか、その一部ではないかというふうに私は考えております。いろいろ過去の特高警察等の思い出があるために、この点に関しまして必要以上に警戒されておるのではないかというような感じを受けております。それから警察一元化に関する総監の御答弁は、私と大分立場が違うようでございまして、私は民主警察立場に立てる一元化ということによつて、現在よりも能率は飛躍的に向上するのではないかというふうに確信しておりますが、この点は専門家総監と多少意見の食い違いがあるようでございます。私たちはそういう建前から今後立法措置を早急に考えるべきではないかというふうに思つております。  具体的な問題になりますが、先般一部の新聞報道されました台東区役所汚職事件に関連いたしまして密入国の問題を簡単にお伺いいたしたいと思います。現在相当数密入国があるようでございますが、この中には、かつてわれわれの先輩と一緒に懸命に仕事をした中国人等相当含まれております。思想的に日本の国憲を紊乱するというような危険なる入国者と違いまして日本をほんとうにたよりにして密入国する人も多数あるようでございますが、この点に関しまして、先ほどもちよつと総監から御説明はありましたが、密入国者取扱いに関しまして、警視庁としてはどういう心構えでおられますか。台東区役所浅草支所の問題だと思いますが、先般ちよつと新聞に出ておりましたので、これに関連してお伺いしておきたいと思います。
  11. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。ただいまの台東区役所入国者登録証偽造事件でございますが、この問題は実はただいままだ事件といたしまして全部片づいておりません。これはただいまさらに捜査を継続いたしておりますので、従つて具体的にここで申し上げるのは、ちよつと差控えたいと思うのでありますが、本問題の概要は、台東区役所のある課長が第三国人登録証偽造いたしまして、一枚数万円でこれを売却いたしまして、この偽造登録証を入国いたしました第三国人に対して交付して適法なる入国者としてこれを取扱わせたというような事件でございます。この問題は表面はきわめて簡単な問題であるのでありまするが、しかしこうしたことがかりに今後行われるといたしますると、この入国者の中には、もちろん今仰せのごとく、真に世界の平和を希望し、そしてまたアジア人の福利を増進するというりつぱな人々もあると考えておりまするが、中にはいわゆる国内の情勢を探知して、またこれを他に通報するといつたようなスパイ的な人間も相当つて来ておる疑いもあるのでありまして、かような点から考えますると、この問題は表面はきわめて簡単な一種の文書偽造事件でございまするが、本事件をこのまま看過することはできませんので、警視庁といたしましてはさらにメスメスを入れまして、厳重にその範囲を現在も追究いたしておるのであります。ただ承知のように登録証を購入した者は第三国人でありまして、もちろんこの第三国人に対する取扱いといたしましては、身柄を拘留する場合にも、またいろいろな容疑者としての取扱いにつきましても、いやしくも取扱い上において日本警察が他からいろいろと批判を受ける、非難をされるということのないように十分注意をいたします。また今お申出のような中には、かつて中国における相当りつばな将官であり、またりつぱな実業家であつたというような方もあつたので、これらに対しましては、さらに取扱いについて十分注意をいたしましてまた身柄を留置する必要のない者につきましては、なるべくこれを釈放いたしまして、いわゆる在宅調べというようなことで、身柄は自由にしておいて、そして一応犯罪の事実だけを調査するというような措置を一方において講じ、現在も取締りをいたしておる次第であります。現在のところはまだはつきり全貌は承知いたしておりませんけれども、これを購入したと認められる中国人あるいは第三国人は少くも百名以上に上るであろうということが考えられるのであります。ただ、今のところ全体についてこれを調査いたしておりませんので、まだ具体的な数字等は申し上げられませんが、相当な広い範囲においてこれが濫発されておるということが現在発覚いたしまして、なお追究中でございますから御了承を願います。
  12. 藤田義光

    藤田委員 最後に一言お伺いしたいのでありますが、講和条約並びに安全保障条約に対する不平不満を利用いたしまして、右翼、特に極右の動きが活発化するおそれが非常にございます。すでにそういう動き表面化しているという実例も二、三拝聴いたしておりますが、この点に関しまして、治安上将来重大な影響を及ぼすような危険を、総監としては何か予想されておりますかどうか。この点に関しましては、過去のわれわれの苦しい経験がありますので、ひとつ簡単にお伺いしておきたいと思います。
  13. 田中榮一

    田中参考人 旧右翼団体に属しておつたような人々で、今回追放解除なつたような方々もありますし、また追放にならないような人々でも、その言動等につきましては、今までいろいろの場合においてわれわれも十分注意をいたしておりまするが、ただいままでのところは、都内におきましては、きわめて不穏な言動というものは見当りません。ただ右翼の中でも特にひどいものは、いわゆる最右翼といいまするか、いろいろな神がかり的な右翼でありまして、こういうものはややもいたしますれば、最後において実力行使を行うというようなきわめて危険な分子が中にないとも言えないのでありまして、今後これらの点について、注意すべきことは十分注意したいと考えております。そのほか右翼として注意しなければならぬのは、いろいろその中で何々組であるとか、あるいは親分子分関係で、いわゆる恐喝的な組織相当、ございまして、これらは終戦直後団体等規正令その他に上りまして、それぞれ解散を命じ、その解散を命ぜられた団体団体員の動向につきましては、特審局また所在の警察署におきまして十分監視し、注意を怠らないのであります。今後これらの残存分子が、いかなる行動に出るかということにつきましても、十分注意をいたして行くつもりであります。  それからなお右翼の中にも、軍人の中で相当極端なる右翼の思想を持つた者もありまして、これらも都内に若干おりまして、これらがいろいろな行動をなすようにも聞いておるのであります。これらにつきましては十分今後注意をいたして、警備上遺憾ないようにして行きたいと思います。
  14. 角田幸吉

    角田委員 田中警視総監に承りたいのでありますが、先ほど東京警視庁において、都の治安と国の治安とを双方取扱つておる、こういうお答えでありました。事実その通りであろうと思います。そこで承りたいのは、国の治安と、都の治安とをどういう観念のもとにこれをわけておるかということが一点。  もう一つは、取扱つておる警察事務治安のうちで、国の分量がどれくらい、都の分量がどれくらいということにお考えになつておるか、これをひとつ承りたいのであります。
  15. 田中榮一

    田中参考人 先ほど私が都の治安、国の治安と申し上げましたのは、私は治安におきまして都の治安とか、国の治安とかいうものはおそらくわけられないと思います。都の治安は直接これは国の治安であり、同時に国の治安はまた都の治安である、かように考えまして、両者は不可分一体であると考えております。ただ取扱う事柄によりまして、これが国の性質のものであり、またこれが都の性格のものであるということが一応言えるのであります。たとえば一例を申し上げますれば、現在警視庁におきまして、最高司令官等のお出ましのときに、十分交通その他の警戒を実施いたしております。これは都の治安ではないのでありまして、ある意味においては国の治安ということが言えると思います。それからまた区役所等におきまして、いろいろな問題が起つたときに、区役所を警戒するということはあるいは区の治安であると言えるかもしれません。しかしながらこれはただ観念上の言い方でありまして、国の治安であるとか、区の治安であるとかいうことはないのでありまして、ただ事柄の性質上、もし区において争議が起つたときは、一応部内の自治体自体の取締りの対象である、そうでないものは国の取締りの対象である。たとえば国会議事堂を警視庁警戒申し上げております。この国会議事堂というものは国の施設でありまして、その施設を警視庁が現在警戒申し上げておるのでありまして、これはある意味においては国の仕事であると言えるかもしれません。しかしながら現在の警察法建前からは地域管轄をしております。その地域を管轄する警察が国の警備対象物であろうが、自治体警備対象であろうが、これは一切含めて警備する建前になつておりますので、私の申しましたのは、治安には国とか地方とか区別はなかろう、ただ警備対象物の上から一応その区別がある、こういう意味で申し上げたのでありますから、誤解のないようにしていただきたいと思います。
  16. 角田幸吉

    角田委員 私は観念論を分析しようとしているものではありません。ただ都で守るべき治安であれば、都の財政で負担すべきものである、国家の治安的なものであるならば、国家の財政で負担すべきものである、こういう考えからこの問題をただいま論じているのであります。そういう意味におきまして、都の分量がどういうふうであるかということを伺いたい。
  17. 田中榮一

    田中参考人 仕事分量で、一〇〇%のうちで何パーセントが国の仕事であるか、何パーセントが都の仕事であるかということを、分量的に区別することは非常に困難であります。ただ分量でなくして、しからば仕事の面においてまず国の仕事と目される仕事で、どの程度の経費がかかつているか、また都自体の警備警戒その他の関係で、どの程度の経費がかかつているかということを一応考えてみますると、警視庁の予算が現在約六十億程度のものがございます。そのうちにまず国の仕事に要する経費と認められるもの、これは人件費であるとか、その他取締り警戒に要する諸費用を合算いたしまして、大体三億五、六千万円が注がれているのではないか、こういうふうに一応計算できるわけであります。この経費につきましては、計算のいかんによつてはあるいは一億になり、四億になる場合がありまするが、一応たとえば国会の警戒に要する警察官の派遣の人員、それに対する日当であるとか、その諸費用、またその他総理大臣官邸における警戒に要する経費であるとか、並びに国の所管に属する警備対象物を警戒する経費、こうしたものをいろいろ合算いたしますれば、大体三億五、六千万円程度が一応計算できるのであります。従つてただ仕事分量からパーセンテージを出すことは非常に困であります。一応われわれの方としては経費の点からは、そういうふうなパーセンテージが出るのであります。
  18. 門司亮

    ○門司委員 自警連の会長としての建前から、自治警察の廃止に関する各町村の状況について、もし田中総監のところで今おわかりなら、この機会に御発表願いたいと思います。
  19. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。警察法の一部が改正されましてから、地方自治体におきまする廃止の状況でありますが、国警長官からもまだお答えがあると思いますが、私のところにはまだ正確な数字が届いておりません。自治体警察側は、若干事務がおそくなりますので、正確に申し上げることはできないのでありますが、大体全国の自治体警察の数は千三百十四でありまして、そのうちで住民投票を行い、または行う町村が千二十八となつております。これは国警でお調べになつたものでありますが、大体全体の数の七八%になつております。この自治体警察が廃止になりました理由につきましては、私どもとしましてもいろいろ原因を調べておるのでありますが、やはりおもなる理由は、財政的に非常に負担がかかるということ。平衡交付金は警察官一人当り平均十六万三千円というような数でありまして、小さな町村における警察官一人当りの実際の予算計上額が大体十九万五千円でございますから、一人三万円の差が出るわけであります。従つて六人としますれば、年間十八万円の持出しをせねばならぬ。こういう点で、非常に小さな町村としては、負担がかかるということが一つであります。それからまた今回の九月三十日に住民投棄を行わないと、来年になつたら、国警側の警察官の受入れが非常に困難となるというような心配がありまして、これにつきましては国警側からも、自治体警察側からも、かりに九月三十日に遅れても、また次年度においても受入れができるということで、その点は心配いらぬということをいろいろ言つておるのでありますが、やはり全体の空気といたしましては、九月三十日より遅れた場合においては、警察官の受入れが非常にむずかしくなるのではないかということが一つ。  それからもう一つは、警察内部の事柄であるのでありますが、御承知のように最近人事の交流というものが非常にむずかしくなりまして、国警自警の人事の交流もむずかしくなつております。それから自治体同士の人事の交流ということも、いろいろの点からうまく行きませんで、こうした点も今回の自治体警察廃止の機運を醸成した一つの原因ではないかと思います。小さな町村で財政的に実際に困るというようなところは、これはどうもやむを得ないというふうに考えておる次第であります。
  20. 門司亮

    ○門司委員 大体今の総監の御答弁は、私どもの持つている資料とほとんど、一致しておるのでありますが、ただ私次に聞いておきたいと思いますことは、自治体警察を廃止するかしないかということについて、これは一々名前をあげてもよいのでありますが、全国で一府九県は、その県内の町村が全部廃止を決議いたしております。今総監が言われた全国の八割に相当する千二十八の町村が一応決議いたしまして、三十町村が大体住民投票を終つておるという資料を私持つておるのでありますが、こういう状態になぜなつたかという原因が、先ほど総監のお話の中にありましたように、九月三十日までにやつてしまわぬと、あとやるということは多小困難になるからということが、この自治体警察廃止に対して非常に強く国内に宣伝されて、そうして、とにかく一年くらいは何とかやつてみようじやないかというような町村も、そういうものに刺激されて、一応村会あるいは町会ではこれを存続するということに決定を見ておつたが、急に再審議をして廃止することに決定したというような町村があるということを、事実上聞いておるのでありますが、これは総監のお話では、至つて都合のいいような、九月三十日までにしなくてもいいということは話したということでありますが、これは逆じやないかと考えておる。九月までにどうしてもしなければ廃止が困難になるということで、一応やつてみてもいいという見通しをつけておつた町村を、あわてて決議を取消さなければならないような状態に追い込んだのじやないかと思う。そうなつて参りますと、日本警察民主化することのために——自治体警察の現在の状態がいいか悪いかということは別にいたしまして、これが自発的に返上するという形でなくして、ある程度の国警の圧力が加わつておるようなことが考えられはしないかと思う。こういうことになつて参りますと、非常に私ども将来の日本警察民主化のために、また昔のようなことになりはしないかということで、今杞憂を持たざるを得ないのでありまするが、この点の消息をもう少し、今のようなことでなく、はつきり自警連の会長として——隣に斎藤さんや法務総裁がおるので話しにくいかもしれませんが、自警連の会長としての立場から、そういう圧力は全然なかつたのかどうかお聞かせを願いたい。どうも私は聞いておりますと、そういう気がするのであります。そうして急にこういう大きな数字になつて、年度内に、九月三十日までにほとんど住民投票が行われるということで、各町村は相当やはりごたごたしていると私は考える。これが単に費用の問題だけなら、大した問題ではないと思います。自治体警察をどうしても廃止しなければならないというのが、財政的にいけないからというなら、平衡交付金の増額を要求すればいいことである。当然いるものはいるのである。財政的に困難だからという理由だけで、こういうことがなされておるとはわれわれには考えられないのであります。ひとつ総監、もうちよとつつ込んで、ほんとうのことを言つておいてもらいたいと思います。
  21. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。ただいまの、九月三十日までに議決をしないと、バスに乗り遅れてしまうというような声が、実は地方にございまして、それによつて相当議決を急いだというような傾向もないではないのであります。従いまして、この点につきましては、私どもも自警連という立場において、本警察法改正の経過にかんがみて国警側においても今後、かりに九月三十日以降においても、もちろん受入れはしてくれるであろう、われわれ話合いの上でそういうことにとりきめてあるから心配しないようにということを、自警連側としましては、一応各自治体警察に流したのであります。それからなお私の方からも国警側に申入れをしまして、国警側も同様な事柄を地方に流していただいておるはずであります。ただ承知のように、これは斎藤国警長官が答弁されるのが当然だと思うのでありまするが、かりに自治体警察から国警に受入れいたしましても、結局人が入るのでありますから予算がいるわけであります。この予算を審議することは別であります。予算は当然審議されるであろうという予想のもとに、受入れするという態勢になつておりますから、国警側としまして、よろしい、大丈夫だということは、国会の関係その他においてはつきり言えないことは事実だろうと思います。従つてわれわれもその間の事情はよくわかつておりますから、大体において受入れされるであろう、心配せぬようにということは、われわれも言つておるのであります。しかし町村側としましては、やはり自治体警察警察官の立場を十分に考えてやつて、むしろ早いうちに国警側に渡してしまつた方が、警察官の身分の上において安全だというような、善意にとつて急いでおるところも中にはあるのであります。また中には、今のうちにやつてしまわなければこれはたいへんだ、町村の経費がこれで少しでも浮くからというような、打算的な考えから全廃したところもあると思います。私はそういうところもあると思いますが、町村長の中には、ほんとうに警察官の立場考えて、将来若い警察官を、どんどん上進させるような道を講ずることが必要である、町村長がそういう考えからやつておるところも相当ある、私はかように考えております。
  22. 野村專太郎

    野村委員長代理 それでは田中警視総監に対しまする質疑は、これで終りたいと思います。  これより大橋法務総裁、斎藤国警長官が御出席でございますので、皆様から御質疑を願いたいと思います。  まず先ほどのと関連しておるようでありますから、角田幸吉君。
  23. 角田幸吉

    角田委員 これは大橋国務大臣にお尋ね申し上げたいのでございますが、先ほどこれは都の仕事と見るか、国の仕事と見るかという、治安維持ということについての限界が非常にむずかしい。けれどもどうしても都の仕事と見られないという部分で、三億五千万ほどここで使つている。この点につきまして国の財政負担はどういうふうになつておりまするか、大橋国務大臣の見解をお尋ねいたしたいと思います。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察が地方的な治安を維持いたしまするのみならず、国家全体の立場に立ちまして、大きな意味において国の治安の維持の機関であるということは、ひとり東京警視庁ばかりではないのでありまして、山間僻地の小自治体警察といえども、また同様なのであります。これは現在の警察法建前というものが、自治体にして、ある規模を持つたものは自治体警察を維持するということが、自治体として当然の責任であるという考えに立ちまして、そしてその警察というものは、自治体のために存在するにあらずして、国全体の警察の、その地区における一切の活動を担任するという建前で、その自治体警察ができておるわけでございます。従いましていかなる小自治体警察といえども、考え方によりましてはこれはその自治体のものでなく、国家の重大な治安関係があるという仕事があるわけであります。ただ特に警視庁といたしましては、国の首府でありまする関係上、ここに国の多数の営造物が存在いたしており、そしてこの国の営造物の警備ということは、要求があれば国家地方警察においてこれに当り得る法制の建前になつておりますが、しかし現状におきましては、自治体警察が国家地方警察要求をすることなく、みずからの責任において当つておるという実情であるわけでございます。今要求と申し上げましたが、これは私の誤解であります。当然その地区内におきまするあらゆる国家の施設についても、やはり警備の責任が自治体警察にあるわけでありまするが、政府におきまして特に国家地方警察をして警備せしむることが適当であると認めました場合においては、政府が特に国家地方警察に対して要求をいたしまして、そして国家地方警察警備を担当させる、こういうことにいたす建前になつておるのであります。現実の問題といたしましては、政府は、警視庁において十分に責任を果し得る、かように考えておりまするので、国家地方警察に対して特に警備要求を出した例はありません。
  25. 角田幸吉

    角田委員 少し財政上の細かい話になりましたので、また別の機会にお聞きしたし方がいいと思うのですが、私の大橋国務大臣にお尋ねせんとするところは、こういう意味なのであります。地方に参りますと、国警警察署と自治警の警察署と双方ある。そういうところにおきましての職務権限の範囲は、自治警察はやはり固有の自治的な治安を守り、そして国警は別な、やはり国家的な立場治安維持をやつておるのであります。ところが自治警察に対しての経費は、平衡交付金のような形において国が負担し、不足分を町村の財政でまかなつている。ところが警視庁におきましては、そういうことじやなしに、国家警察署がなくて、警視庁だけがあるということになるので、その負担分は一般の地方警察警視庁というものは違うじやないか、今言つたような部分は、平衡交付金として交付する部分と、国の財政負担として負担すべきものとがあるのじやないか、こういうことを今気がついたのでお尋ね申し上げたいのであります。もし御用意がありませんならば、あとの議会でもさしつかえありませんが、気がついたのでお尋ね申し上げたのであります。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まことにごもつともな御質問でございまして、警視庁の管内には現在警察署がございません。これは警察署を置いていけないというわけではないのでございまして、国家地方警察といたしましては、警視庁の管内に警察署を置く必要がないと認めて置かないだけでございます。法律の建前といたしましては、警視庁の管轄区域内に警察署を置いても一向さしつかえないわけでございます。現に警察署はございませんが、東京都の警察本部というものは警視庁の管轄地区内に置かれておるのでございます。この点は東京都が非常に地域が広大でありまするために、非常に目立つておりまするが、国家地方警察といたしましては、必要なる地に警察署を置いておるのでございまして、現実警視庁管内に警察署を置く必要がどうしてもあるというようなことになりますれば、当然置き得ることと考えるわけであります。従つてこの点は特に他の自治体警察警視庁との間において、格別な違いがあるというふうには考えておりません。現実の問題としましては、警視庁が国家地方警察に協力を要求するというようなことは 今日までほとんどないわけでありまして、これは警視庁が多数の警察力をみずから準備しているその結果、十分に帝都の治安を自力によつて保持できるという状態にあるからであろうと考えております。この点は将来の必要に応じて、警視庁が国家地方警察の援助を求めるということを何ら妨げるものではない、この点におきましても、特に警視庁が他の自治体警察建前上違つておるというふうには考えておりません。
  27. 門司亮

    ○門司委員 この機会にひとつ大橋国務大臣に伺つておきたいと思いますことは、講和条約ができて、その後の日本治安を維持することのために、組織の上にも現在の警察法と何らか異なつた形が現われて来ることが必然ではないかということが、一応考えられるのであります。そこで私は、率直に聞いておきますが、今までうわさされておりました治安省のようなものを、一体政府は設置する意思があるかどうかということです。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 治安省ということは、一部に伝えられてはおりますが、今日なお政府といたしまして、正式にこの問題を取上げて討議をする段階にはなつておりません。
  29. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ聞いておきたいと思いますことは、現在の警察予備隊の性格について、これはしばしば私ここで議論をいたしておりますので、大橋さんもよく御存じだと思いますが、今のままの、法律によらざる一つの政令で、ああいう警察予備隊というものができておる。これが一体講和後においてそのまま日本に存続されていいかどうかということです。これは私法律家でありませんからよくわかりませんが、これらについても、私はやはり速急に何らかの措置をして、これの性格を明確にする必要がこの際あるのではなかろうかと考えておりますが、この点についてひとつ総裁の御意見を承つておきたいと存じます。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊につきましては、創設以来鋭意その内容の強化ということに努力をいたして参り、また現在におきましても、今後の必要に備えまして一段と内容の強化をはかつて参りたいということは、考えておるわけでございます。しかしながら、その性格というものにつきましては、創設当時と今日何ら変化いたしておらないのであります。また今後においてもにわかに変化するであろう、あるいは変化すべきものであるというふうには考えておりません。そこで問題は、御指摘になりました予備隊の創立の根拠となつておりまするものがポツダム政令でありまして、これは本来から申しますと、日本国憲法のもとにおきまして、法律をもつて定むべき事柄がその内容となつておる。これにつきまして、講和後においてはたして現状のポツダム政令のままでよいか、それとも今後法律化する必要があるかという問題があつたわけでございまするが、これはひとり警察予備隊令ばかりでなく、ポツダム政令全体に関係する問題として、現に部内において各種の法律上、実際上の点を考慮いたしまして検討をいたしておるのでございまして今なお確といたしましたる結論に到達いたしておりません。
  31. 門司亮

    ○門司委員 大体御意見だけは承つたのでありまするが、われわれが心配しておりますのは、この法律によらざる、政令で定められた現在の警察予備隊の責任の所在というものが、法律によらないと非常に不明確じやないか、いわゆる警察予備隊を主管している人はだれであるかということです。それは、今の治安関係から大橋さんが持つているのだというような解釈も、ちよつとしにくいような点があるのでありまして、治安の責任はもとより内閣総理大臣が持つていると言われればそれまでのような気もいたしますけれども、この性格というものがほとんどはつきりしておらない。従つて警察予備隊はたれが責任を持たれるかというようなことも、ポツダム政令の際は一応やむを得ないといたしましても、主権が回復いたしました以上は、やはりこれらのものを明確に定め、責任の所在を明かにしてもらうことは、国民の一人として当然でありまして、今の御答弁ではまだ研究中だというお話でございますので、これ以上追究はいたしませんが、しかし独立した国家の治安ということは、きわめて重大な問題でありまして、これを取扱う警察予備隊があいまいな規定の上に置かれて、その責任の所在あるいは主管者すら、はつきりしないというようなことは非常に困るのであります。この点についてはなるたけ近い機会に政府はぜひはつきりした態度をとつてただきたいと思います。  それから、先ほどの答弁では、治安省については、話はあつた考えていないというお話であります。ことに今日自治体警察を廃止する所が非常にふえて参りまして、国家警察の所管するものがだんだんふえて来るということは、警察法制定当時の建前の上から——いろいろ議論すると長くなりますから議論はいたしませんが、とにかく警察が、少くとも形の上においては中央集権化されるということは、いなめない事実であると思います。戦争以前日本警察国家と言われておつたが、民主警察なつたということについては、先ほどのトルーマンの演説の中においてもそういうことを言つておるので、それほどやはり外国では日本警察国家というものを将来に対しても警戒をしているではないかと私は考える。ところが日本の状態は、先ほどから田中総監のお話のように、大体全国の町村の八割くらいは、すでにおのおのの議決機関で国警に委譲するようになつて来ておる。これらの人員のすべでをかりに統合するとすると、非常に大きな数になつて、これの予算措置もまたむずかしい問題と思いますが、それらの問題は別にして、何といつて警察の中央集権化ということが、現実の問題として行われておるこういう際に、現在のままでいいか悪いかということについては、警察当局は、当然責任を持つて処置をさるべきである。従つてこの警察行政に関する、あるいは治安行政に関する警察予備隊をも含めた一つ措置が、当然講ぜられなければならぬと考えるが、お話ができるなら、もう一応その点についての御答弁を願いたいと思います。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まず第一に警察予備隊に対しまする責任の点でございますが、この点はすでに警察予備隊令におきまして、明確に相なつておるわけでございまして、内閣総理大臣が警察予備隊については全責任を負うことに相なつております。ただ内閣総理大臣がその責任におきまして、他の国務大臣を指名いたしまして、その者に自己の責任に属します事務の一部を代行せしむる場合がございます。しかしその場合におきましても、終局の責任は常に内閣総理大臣自身にあることは申すまでもないところであります。しこうして、この警察予備隊令というものは、すでに法律の根拠に基きまして、法律と同等の効力を持つことに相なつておるのでございまして、この点は今日一点疑いないのでございます。問題は、このポツダム政令によつて今日明確にされている事柄を、講和条約発効の際におきまして、法律化する必要があるかないかという点だけを、政府といたしましては問題といたしておるわけでございます。  第二に、警察の中央集権というお話がございましたが、今回の警察制度の改正によりまして、自治体警察千幾らというものが解消することに相なります。それでこれによりまして約一万三千ばかりの警察官が、国警に移つて来ることに相なるわけでありますが、現在の国警はすでに三万の定員を持つているのでございまして、国警全体の勢力から見ますると、今回の改正によりまして国警の人員が膨脹するということは、これは天下の大勢から見ますと、大した問題ではないわけであります。特にこれがために一省を設けなければならないというようなことは考えておらないわけであります。特に今回の自治体警察の廃止という問題も、これは決してそれ自身警察の中央集権化を意味するものとはわれわれは考えておりません。何となれば、中央集権ということは、結局警察を国の一個の指導のもとに完全にコントロールするということがなければ、真の中央集権ということはあり得ないと思うのであります。それにはどうしても隷下に属しておりまするすべての警察力を命令一下これを運用するという力がなければ、中央集権とは言い得ないと思うのであります。今日の国家地方警察というものの仕組みそれ自体が、すでに警察の地方分権ということを目的としてできておるものでございまして、国家公安委員会に與えられたる権限は、単なる警察の行政管理面のみでありまして権力の発動でありまするところの運営管理の面は、現在国家公安委員会より完全に独立いたしておりまする都道府県公安委員会にゆだねられておるわけでありまして、この体制は今日におきましても、また地方自治体警察廃止の後におきましても、引続き持続せらるべきものでございます。すなわち国家地方警察の権力の運営に当るものは、これは都道府県の公安委員会であり、その公安委員というものは、府県会の同意を得て府県知事によつて推薦された人が任命されるということに相なつております。これは中央政府並びに国家公安委員会より完全に独立をした機関でありまするから、決して国家地方警察といえども、警察の中央集権化を意味するものではないということを、お答え申し上げる次第でございます。
  33. 野村專太郎

    野村委員長代理 門司さんにちよつと、御了承願いたいのですが、中西さんが通告をいたしておりますし、関連をいたしますから、どうかその点を御了承いただいて、御質疑を続行していただきたいと思います。
  34. 門司亮

    ○門司委員 今大橋さんの言われたことは非常に奇怪に存ずるのですが、そうなると国家公安委員や、斎藤さんの地位というものは一体どうなるか。なるほど県内における警察行政の面の運営管理については、都道府県の公安委員が当つておるということは、これは事実ですが、命令の系統というものは必ずしもそうではないと思う。国家警察に対しましてはちやんと斎藤さんがおいでになるし、自治体警察については何もそういう者はいないのであります。田中さんは自治警の会長で、別に命令系統をお持ちにならない。国警が今日あつて、さらに国警の形というものは、御存じのように斎藤長官という長官をいただいておつて、そうしてそれが法律上の問題は別といたしまして、現実の問題としてやはり閣議の諮問をお受けになつておることは事実だと思う。そうすれば日本警察行政というものは、一体だれに相談してやられるか。斎藤長官が閣議の諮問を受ける、あるいは閣議に出席されるかどうか知りませんが、少くとも次官会議には出られるかもしれない。国家公安委員が閣議に招請されて意見を聞かれたということは、ほとんど今まで聞いていない。現実の問題として、日本警察行政というものは、今の大橋法務総裁答弁のように事実上なつていないと思う。もし大橋法務総裁がそういう御意見なら、斎藤さんの地位というものはなくなる。自治体警察と同じような建前にすればよろしいということになる。国家警察の持つておりまする一つのものは、そういう国家全体の関連の上において、あるいは騒擾事件その他のことも考えられますので、それらの面をやはりいろいろな観点から考慮されて、ここに斎藤長官の地位があり、あるいはまた国家公安委員というものは、国全体の治安を見ることのためにあるのであります。従つて非常時の宣言が行われまする場合には、やはりその指揮権というものは、国家警察の方に委譲されることが当然だと考える。またそうなつておる。それが現実の問題として、組織の上において国警にだんだん集中されて行くということは、これはやはり何といつても権力が中央に委譲されつつあるという一つの大きな実例だと考えておる。今日警察の分権問題を唱えておりますが、これは自治警察ができたから権力がわかれた。これがまた国家警察に集中されれば、一本になるにきまつておる。私はそういう大橋法務総裁のお考えでは、将来の警察問題に対する考え方を、少しかえて行かなければならぬ。その点はもう少しお考えをかえていただきたい。私どもはむちやに中央集権化することがけしからぬといつて組織の上でできないものを、どうしても分権して弱めるということを考えておるのではない。できてわずか三年か四年しかたたない日本警察行政が、単に経済上の問題で、これが再び中央集権化するということになれば、あまりに権威がなさ過ぎるように考えられますし、同時に十分民主的訓練の届いていないと思われる現在の警察行政の上では、再び昔のようなことが繰返されてはならぬと考えておりますので、一応お聞きいたしたのです。国の治安責任者が総理大臣であることは、これは間違いないのでありまして、私はそういうことを聞いておるのではありません。どうかひとつその点大橋さんは、質問しておりまする趣旨を誤解のないように、お答え願いたいと思います。
  35. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在の警察法を国会に提案せられまして、これを施行せられましたる当時の内閣を支持しておられる政党に属しておられまする門司君から、国家地方警察機構が本来中央集権的なものであるかのごとき説明を聞こうとは、実は私は予期いたしておらなかつたのでありまして、この点は今日の警察法のできまする際の、責任者の御一人といたしまして、私はむしろ門司さん自身が今日の警察を、もつと了解していただきたいということをお願いする次第であります。もとより非常事態におきまする際の国家警察が全体の指揮をする、これは警察法の規定で明らかであります。しかしながらこれはただ国家非常事態におきまして、特に内閣総理大臣にさようなる権限が与えられる、そうしてそれに基いてかような規定ができておるのでありまして、これは非常の際におきまする非常の措置である。しかも国会に必ずかような事態は報告されるというような大切な手続をも経ることに相なつておるのでありまして、これは非常の際の必要に応ずる特別の措置でありますから、これをもつて平生の国家地方警察が中央集権なりという結論を出されることは、私はこの警察法の本来の精神ではなかろうと考えておるのであります。警察法の正常のあり方といたしましては、ただいま申し述べたるごとく、国家地方警察の運営の面におきましては、都道府県の公安委員会責任者であります。そうして単に行政管理の面におきましてのみ、国家公安委員会がその権限を持つておるのであります。そうして国家地方警察本部というものは、行政管理のための国家公安委員会の職務を補佐するための機関であります。その権限というものはおのずから明らかであろうと存ずるのであります。非常時の際の非常の措置ということをもつて警察の本来のあり方と混同せずに、これを明確に区別してわれわれは理解し、運用すべきものである、こういう根本的な考えを持つております。
  36. 門司亮

    ○門司委員 それで私は事実について質問しておきたいと思いますが、警察法の改正その他の問題について、国家公安委員の意見を、一体どの程度閣議において聴取されたか、閣議においてこの警察法の改正にあたつて、自治警察——私は責任者はおそらく法律の上ではないのであるが、田中さんが自警連の会長であるということでありますが、これらのものから政府は正式の機関においてどのように意見を聴取されたか、国警の長官の斎藤さんの御意見を、どれだけ閣議がお聞きになつたのか、その実実を明らかにしていただきたいと私は考えでおる。私が今日まで聞いております場合において、行政面である、あるいはその運営面であるという言葉をお使いになつておりますが、少くとも警察法を改正する場合に、その運営、管理に当り、公安委員の意見というものが入れられないで、ただ行政面のみの国警の長官である斎藤さんの意見が入れられるということになると、非常に大きな誤りであると思う。国の警察行政の建前から行きますれば、責任の所在というものは当然公安委員になければならないように考えられる。その公安委員が警察法改正にあたつて、ほとんど意見が聴取せられない。そうして行政面の直接のことをやられる形になつておりまする斎藤さんの意見が、ここに入れられておるということが、これが警察法改正にあたりましても、自治警察と国家警察との間の、大橋さんも御存じのように、いろいろな確執をもたらした原因だと私は思います。そういうことを考えて参りますので、今の斎藤さんの御答弁によりますと、これは後日でもよろしゆうございますが、一体どの程度辻公安委員長が内閣の諮問を受けたか、斎藤さんがどの程度閣議の諮問を受けられ、あるいは閣議に出られておつたかもしれないと私は考えておる。一体それはどういうことになつておるのか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  37. 大橋武夫

    大橋国務大臣 閣議におましては閣僚以外の者で出席いたしまする者は官房長官、官房副長官以外にはございません。従いまして政府部内におきまする各種の意見は、ことごと所管大臣あるいは担当大臣から閣議に紹介するのが、現在までの閣議運営の方式と相なつているのであります。  そこでこの警察法改正の際において、国家公安委員会意見あるいは国家地方警察意見というものが、どの程度まで閣議で紹介されておるかという事柄でございまするが、これははなはだ恐縮でございまするが、内閣の方針といたしまして、閣議におきまする論議は他に発表を差控えることにしているので、御容赦願います。ただこの法案は政府の責任において国会に提案はいたしておりまするが、国家地方警察並びに自治警察その他各方面の意向をいろいろ参酌いたしまして政府の責任において決定したものであるということをお答え申し上げます。
  38. 門司亮

    ○門司委員 もう一言だけ、これは明確にしておきたいと思います。この運営管理はさつき大橋さんのお話では、法律にむしろはつきり書いてあることで、府県の公安委員がやりますが、国家警察に対する行政面の指揮命令というようなことは、だれがこれを立てておるかということであります。その責任者は一体どなたであるか、その点明らかにしていただきたい。
  39. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 便宜私からお答えいたします。責任は国家公安委員会で、国家公安委員会の方針のもとに、私が事務を担当いたしております。
  40. 門司亮

    ○門司委員 それでよろしゆうございます。
  41. 野村專太郎

  42. 中西伊之助

    ○中西委員 大橋法務総裁にお尋ねいたしたいと思います。これは他にいろいろ議題もありますから簡単にお尋ねいたします。  それでこの九月七日の朝日新聞に、非合法の行動隊ということを、総裁が参議院の委員会で大野幸一議員の質疑に答えておられますが、これはその通りでありますか。
  43. 大橋武夫

    大橋国務大臣 九月七日でありましたか、参議院のある委員会におきまして、共産党に関連したところの報告をいたしたことは事実でございます
  44. 中西伊之助

    ○中西委員 そこでお尋ねいたしたいのですが、今これは新聞記事でありますから、責任のある答弁ができない、こういうふうにおつしやられればいずれ速記録の完成を待つてお尋ねしたいと思うのでありますが、しかしこれは総裁もこの記事をお読みになつたと思うのでありますが、その内容に関して別に大した相違はないかどうか。
  45. 大橋武夫

    大橋国務大臣 新聞記事でどういうように書いてありましたか、私は記憶はいたしておりませんが、当時新聞記者の諸君も、委員会の委員室の中に入つて来られまして、直接私の答弁を耳にして、それを記事にされたものと存じまするが、原則的には、そう大して相違なかろう、こう考えております。
  46. 中西伊之助

    ○中西委員 大した相違はない……。そこで大体この記事によつてお尋ねいたしたいと思うのですが、これは私の党ばかりでなく、公党として重大なる問題だろうと存じまするが、総裁は公然の面と非公然の面とがあり、合法、非合法の両面を巧みに織り込んでおる、こういうような御意見であります。それは見方によつて、そういうふうにあるいは解釈されておると思いますが、現在は非合法組織は一応完成されたと推定される、こういうふうに言われておる、これは推定と申されますが。これはどんな推定でありますか。
  47. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その通りの推定でございます。
  48. 中西伊之助

    ○中西委員 この通りの推定……。そうすると、非合法に一応何かの確かな資料があるのでありますか。
  49. 大橋武夫

    大橋国務大臣 推定はすべて状況または資料によつていたすことにいたしております。
  50. 中西伊之助

    ○中西委員 その推定は資料によるとすると、その資料というものは、まあ官庁の取扱う資料でありますから、いろいろありますが、しかしただ推定ということになれば、かつて吉田総理が仮定あるいは推定にお答えしないというふうなことを言つて、非常に現実的であつた。その場合に、いやしくも責任のある法務総裁が、そういう推定によつて非合法の組織が一応完成したというような大胆なことを平気で、ことに公の新聞紙上に放言されるということは、不謹慎でないかと私は考えますが、総裁のお考えを伺いたいと思います。
  51. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは委員会要求により、お答えをいたしたわけでございます。
  52. 中西伊之助

    ○中西委員 これはむろん要求に違いない……。
  53. 野村專太郎

    野村委員長代理 中西君、恐縮ですが、なるべく連続して御質疑を願いたいと思います。
  54. 中西伊之助

    ○中西委員 それでは小刻みになつてはなはだ恐縮ですが、そういうふうな大胆な推定、公党、ことに合法政党に対するそういうふうな推定は、われわれ党員といたしましても非常に意外な感じがしている。お前は党の陣笠だからこれを知らないだろうというふうに、総裁は言われるかも存じませんが、これはあまり詳しくは申し上げません。次々と行動隊ができた、独身の行動隊ができて、これがすべて軍隊の組織をとつて、そうしてその実力的行動隊となり、これが人民政府樹立の最前線の行動隊であるというふうな、まるつきり大衆読物のごときことを、いやしくもその責任の位置にある人が放言されている。この点について強力な中央集権の統一組織、こういうふうな総裁のお話は、われわれとして非常に意外な感じがする。これが商業新聞の大衆読物的にいろいろ書かれますものなら、それなら別に罪がなくてよい。大衆読物では、かつて朝日新聞が伊藤律の大衆読物をつくり上げてみそをつけた。しかしながら総裁自身が、いかにもそういう大衆読物を裏書きする、ごとき放言をなされるということはどういうわけか。これを一々私お聞きしたいと思いますが、こういつた推定だけでものを言うことは非常に危険である。政府の責任の地位にある人が、これが行動となり報道なつた、こう言つている。行動があればこれは法律で取締るべきなんです。こういうことを宣伝するよりも先に、どうして国の法によつて厳固として逮捕をしないか。そういうふうな行動隊というようなものが、何万人というようなことを書かれております。これも総裁がそういうことを発表されたらしいが、それならば、なぜそういうふうな、あの不穏な人民政府を樹立するというふうな、吉田総理から言えば不退のたくらみ、なぜそれを単なる宣伝に終らせないで、断固として権力をもつて逮捕されないか、そういう事実があるならば、この点どうでございますか。
  55. 大橋武夫

    大橋国務大臣 内偵が済みまして検挙の必要ありと認めますれば、仮借なく逮捕いたします。今後の取調べによりまして確証があがれば、仮借なく検挙をいたしたいと思つております。
  56. 中西伊之助

    ○中西委員 確証があがらないのに、そういう推定で報道を発表されるのはどうでございますか。いやしくも合法政党にこうした行動があるというふうなことを、公に発表されるならば、そういうことを発表される前に、その事実を正確に把握して、そうしてその法の発動をすればよいので、こういうふうな無責任な放言をされるということは、いかにもわれわれとしては不謹慎であるというふうに考えるのです。もし事実があるならばというふうな、今の総裁の御答弁だが、あるならばということは、大体まだないということにも考えられるのですが、ないものをこういうふうに言われる。これは総裁に説明するまでもなく、まず犯罪は着手によつてこれを犯罪とするのであつて、単なる想像では、逮捕も何も今の段階ではできない。今の段階というよりもむしろそういうふうな臆測、推定によつてもうすでに犯罪が成立しているような放言をなされるが、それに対する御責任はお感じになりませんか。
  57. 大橋武夫

    大橋国務大臣 推定と申し上げましたのは、委員会の御要求によりまして答弁をいたしたわけであります。  それから現実においてさような事実があるのかないのかということについては、われわれはあると推定をいたしているわけであります。
  58. 立花敏男

    ○立花委員 関連して……。確証があがればやる、ただいまのところは推定にすぎないとおつしやるのですが、これは重要な問題だと思う。御承知通り共産党の国会議員が多数逮捕されております。しかもその後ただちに追放されております。国会議員に対する逮捕、追放というようなことは、いまだ確証のあがらざる推定にすぎざるものによつてやられてよいのかどうか、これは重大な問題だと思います。日本の民主主義の根本的な問題なんで、その点をどういうふうに総裁はお考えになりますか。
  59. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先般の検挙につきましては、すでに確実なる証拠がありましたので、これによりまして検挙をいたしたわけであります。  ただいまの中西君の御質問は、これ以上の事柄についても推定を下しているようであるが、それらについて、何ゆえすみやかに検挙をしないかという御質問でございますので、それについては、まだ検挙に着手するほどの確証を、十分に持つておらぬということを申し上げたわけであります。すでに検挙いたしたものにつきましては、確証ありという考えのもとに検挙いたしたわけであります。
  60. 立花敏男

    ○立花委員 確実な証拠とおつしやいますが、それをひとつ明らかにしていただきたい。逮捕の理由は、共産党の指導部とかいうふうな理由で逮捕しておるのですが、指導部であるか指導部でないか、私ども共産党が一番よく知つておりますので、まつたくこれはでたらめな逮捕だ。総裁はどういう確実な証拠に基いて指導部と認定されていたか、それをひとつ明確にしていただきたい。
  61. 大橋武夫

    大橋国務大臣 具体的な証拠につきましては、ただいま発表いたすことを差控えさせていただきます。
  62. 中西伊之助

    ○中西委員 そこでもう少し……。あまりしつこくやりませんが、「革命拠点の設置につとめ、拠点となる工場をロシヤ革命の発火点云々」、これは非常に具体的な、われわれからいえばゆめにも知らないことで、前にも申しましたように、こういうものを読んで、むしろ驚いているくらいなんです。しかしながら法務総裁は、国会において堂々と、そういうふうな拠点さえ、あるいはことにプチロフ工場と命名し、その拠点は山岳地帯にまで及んでいるというふうなことを言つておられますが、こういうこともやはり推定ですか。
  63. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その通りでございます。
  64. 中西伊之助

    ○中西委員 そうすると、これは党に対する重大なる誹謗だと私は思う。確証も得ないで、そうして堂々と公開の席で、いやしくも法務総裁の位置にある人が、こういうでたらめを言う。あなたは推定だと言うが、私はでたらめだと思う。これは物の考え方によつて違うと、あなたは言われるかもしれないが、しかし推定とでたらめの放言とはよく似ている。兄弟分である。いやしくもわれわれは合法政党として、憲法の条章に従つている堂々たる公党である。われわれは断じて非合法的な行動はやらないという確信を持つておる。にもかかわらず、いやしくも政治の局に当る人が、推定であると言う。今も申します通り推定とでたらめの放言とはよく似ている。そういう放言を公党に対してやつて、そうして民衆に対していかにもそれを信じさせようとするがごときこの行動、これは自由党内閣のデマだと私は思う。ためにする政治的デマだと私は断定します。事実も何もない。ただの推定である。ただの臆測である。でたらめな推定をして、そうして自分に対立するところの人を誹謗るなどというのは、とんでもないことである。むしろこれは政治的責任云々というよりも、もう少し法理的に研究すれば、刑書責任をわれわれは大橋法務総裁に課さなければならぬと思う。名誉毀損罪というものもあるし、誣告罪というものもあるし、いろいろわれわれの公益は保護されておる。こういうところからも、公党に対してこういう不謹慎きわまりない放言をなすということは、法務総裁御自身は政治的あるいは道徳的良心に訴えてやましくありませんか。その点をお答え願いたい。
  65. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は国会に対しまする政府の関係者の立場といたしまして、でき得る限り真実を語つたつもりでありまして、これにつきましては、やましいとか、そういうことには何ら関係のない事柄であると思います。私は自己の職務を忠実に果しておる、かように確信いたしておる次第であります。
  66. 中西伊之助

    ○中西委員 真実を語ると今言われたが、真ということと実ということは、間違いのないことだということなんです。推定とは違う。それを真実であるというならば、それが単なる宣伝ばかりではなしに、初めからわかつておるならば、堂々とあなたが法律によつてやればよい。それをやりもしないで、ただこういうことをするのは、その実体がないのに宣伝をして、対立党に対するデマを飛ばしておるというふうに、私どもは解せざるを得ない。何回も申しますが、こういう事実については、私はばかばかしくて驚いておる。私どもの選挙区に津久井というところがあるが、ここには糧食、弾薬を貯蔵して何とかというようなことを、これは東京新聞か何かであつたが、かつて書いてあつた。こういう大衆読物ならばよい。私はこれを大衆読物と言つておる。しかしあなたが国会でこの大衆読物を裏書きするようなことを言われるのは驚くべきデマであると私は考えておる。あなたは真実だと言われるが、真実と言われるならば、その真実をわれわれの前にはつきり具体的に、事実をもつて今すぐ証明してもらいたい。
  67. 大橋武夫

    大橋国務大臣 自由党の方針といたしましては、一切政治の上にデマは用いないことになつておりまして、この点は共産党とまつたく反対の政策をとつております。  次に私の真実を申し上げたというのは、かような推定を私がいたしておるということは、これは真実さような推定を下しておるということでありますから、この推定をいたしておるということを、真実申し上げたわけであります。
  68. 野村專太郎

    野村委員長代理 中西君に申し上げますが、まだあとに立花君の御質問がございますから簡単に願います。
  69. 中西伊之助

    ○中西委員 真実だと言われますが、こういうふうな支離滅裂な矛盾した答弁に対しては、私が水かけ論をやつておるよりも、第三者の公平なる判断があると思いますから、この点速記録に十分に記載しておいてもらいたい。推定ということは臆測ということなんだ。ところが真実だと言う。こういう矛盾した答弁というものはあるものじやない。いかに大橋法務総裁がでたらめな放言をやつておるかということがはつきりしている。私がこういうことを言うよりも、ひとつこれを速記録によつて公平に社会に公表してもらいたいと思う。私は断じて誹謗主義者ではない。徹底した合法主義者だ。だから合法の範囲内ではあらゆる活動をいたしますが、こういうことは知りもしないし、やりもしない。そんな私のことは言う必要はないが、党が合法政党である限り、皆私と同じ考えを持つております。こういう点において、法務総裁がいかにでたらめな放言をやつたかということを、今後のこともありますから、速記録にとどめておいてもらいたい。私の質疑はこれで打切ります。
  70. 野村專太郎

    野村委員長代理 立花君。
  71. 立花敏男

    ○立花委員 今度の共産党に対する検挙が、九月四日、講和会議の始まる日にやられたということは、非常に意味があると思う。前の、昨年六月六日の共産党中央委員の追放、またこれに引続くアカハタの弾圧、これが六月二十五日の朝鮮の戦争直前に行われたということも、大きな政治的意味があつたということは、今一年たちますと明らかでありますが、今度の九月四日の共産党の弾圧も、まつたく政治的な意味がありまして、これはやはり全面講和派に対する弾圧であるというように私どもは見るのです。その裏づけといたしまして、社会党の鈴木茂三郎委員長、和田博雄氏、あるいは勝間田氏、こういう全面講和を強く主張しておられる方々に対する最近の検察庁の干渉がある。あるいは民主党左派の人たちに対して、同じく検察庁の弾圧がある。こうなつて参りますと、今回の共産党の議員に対するめちやくちやな弾圧、今中西委員が明らかにされたような、まつたくデマ、推定に基くところの国会議員の身分の剥奪、こういうものはあえて共産党の議員だけではなしに、全国会議員の問題になつて来るだろうと思う。そういう意味で私どもは今回の共産党に対する弾圧を非常に重視しているのですが、大橋法務総裁は検察庁の主管大臣として、今言つたような全面講和派に対する弾圧をお考えになつているのかどうか。また検察当局による弾圧の準備をお進めになつているのかどうか。これをひとつ聞いておきたい。
  72. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法務府といたしましては、特に共産党を弾圧するなどということは考えたこともございません。私どもは、公正なる司法当局の立場から、現在の法律に違反した事件がありまするならば、これを純然たる刑事行政の立場から検挙するだけでございます。従つてただいま仰せられましたるがごとく、これが講和運動に関連する政治的意図を持つてなされたものであるというふうにお考えになること、それは事実に反するばかりでなく、さようなことを放言されることは、これこそデマである、こう申し上げたいのであります。
  73. 立花敏男

    ○立花委員 これはデマではないので、客観的に明らかにそうなつておるわけなんです。九月四日という日は、暦の上で偶然一致しておるのではなしに、日本に起つた共産党の弾圧と、サンフランシスコ会議で行われました日本を植民地化する単独講和と、日が一致しておりますのは、これはまつたく客観的に見て、日本に起つた弾圧はサンフランシスコの単独講和に通じておると言わざるを得ないと思う。その証拠は、前年の六月六日、六月十七日における共産党の弾圧の後に、六月二十五日に朝鮮事変が勃発しているということで、最も明白に私たちは類推できると思う。あなた方の言いのがれの弁明にかかわらず、今度の弾圧は全面講和に対する弾圧であると見ざるを得ない。何となれば今度のサンフランシスコ会議の結果といたしまして、わが国は非常に重大なる独立の危機に見舞われております。たとえばさいぜんから問題になつております警察の問題にいたしましても、これは駐屯軍の指揮下に入るというようなことが、あの条文から予想されるのですが、そういうことに国民は非常に大きな疑念を持つておるのです。大橋法務総裁は駐屯軍と日本警察との関係日本の客観情勢の変化に応じまして、駐屯軍の指揮下に日本警察が入る場合がないということを保証できるか、それをお聞きしておきたい。
  74. 大橋武夫

    大橋国務大臣 重ねて申し上げますが、先般の検挙は単なる犯罪検挙でございまして、何ら政治とかかわりある事柄ではございません。犯罪検挙は必要があれば、そのときに実施するのであります。政治上の問題とかかわりなく厳格に法律を執行いたしておるわけであります。  次に御質問になりました将来の防衛軍と警察との関係がどうなるかという事柄でございますが、これは今後行政的とりきめによつて、わが国がこの防衛軍に対しまして、いかなる協力をするかということはきまるわけでありまして、ただいまその内容を予想して申し上げるわけには参らないと思うのであります。
  75. 立花敏男

    ○立花委員 今度の処置はまつた犯罪に対する検察的な処置であつて、政治的なものではないとおつしやるのですが、それなら一体共産党に対する弾圧というのは何ですか。共産党の中央指導部と目せられる者を一括いたしまして、これを全部逮捕し、全部追放する、これが共産党に対する政治的な弾圧でなくて何でありましようか。
  76. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これはまことに共産党に対しましては、私は同情にたえないところでありまして、共産党の中央指導部と伝えられておりまする十八名の方々は、偶然にもある犯罪につきまして関連性濃厚なりという容疑があつたわけでございまして、これがために検察権を発動いたしたわけでございます。何ら政治にかかわりある事柄ではございません。
  77. 立花敏男

    ○立花委員 伝えられる中央指導部というようなことで、一体今回の逮捕をされたのか、それをお聞きしておきたい。
  78. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもはただいまこの事件はなお捜査中でございまして、証拠その他の関係もありまするので、これ以上のことは申し上げかねます。
  79. 立花敏男

    ○立花委員 いやしくも国会議員である者につきまして、単に中央指導部と伝えられるというようなあいまいなことによりまして、あるいは単なる犯罪に関連するという容疑によりまして、ただちに逮捕いたしまして、身柄を拘束するというようなことがはたして妥当かどうか。しかもその容疑なり、あるいは伝えられると申されている犯罪の事実の確証も待たないで、ただちに公職を追放するというやり方がはたして妥当かどうか、こうなりますと国会議員の身分の保障は、まつたく一片のかけらもないわけである。われわれは安んじて国民の代表として、その職責を尽すことができないわけであります。単なる風説によつて、単なるある犯罪に関連するという容疑によりまして、ただちに逮捕され、ただちに追放される、これは一体民主国家として許さるべきことであるか。
  80. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は平生民主国家ということを看板にしておられる共産党の諸君が、かような非民主的なことを言われようとは思わなかつた。御承知通り会議員といえども犯罪検挙に対しては、何ら特権を持つているものではございません。ただ会議員というものは国会の構成分子でございまするからして、国会の会期中におきましては、逮捕について身分の保障をされているだけでございまして、国会議員なるがゆえに、国民と違つた何らかの特権があるというような考え方は、共産党の諸君といえども、今日ただいまからやめて、もつと民主的な今日の憲法の精神をよく理解していただきたい。
  81. 立花敏男

    ○立花委員 ━━━━━━━━━━
  82. 野村專太郎

    野村委員長代理 立花君に御注意しますが、今の言辞は少し不穏当だと思います。
  83. 立花敏男

    ○立花委員 どうぞ委員長において適当に……。  とにかく今度の検挙に際しまして、あなたは今証拠もまだ不十分である、取調べ中であるから詳しい返答はできないとおつしやつて逃げておられるが、私どもは今度の検挙は、まつたくでたらめであるという確証を握つている。あなたは、共産党は民主主義だと言いながら、非民主的なことを言うとおつしやいますが、あなたのやつたことは、まつたくでたらめな根拠に基いて、単なる風説に基いて、国会議員あるいは一般国民を逮捕追放している。こういうことがはたして許されていいのかどうか。しかも追放というようなことは、はつきりした確実な証拠に基かなければやれないと思うのだが、その刑事事件そのものがまだ捜査中であるとはつきりあなたは言われる。捜査中にもかかわらず、なぜ追放というような政治的な処分をなさるか、単なる推定や、単なる風説によつて追放していいのかどうか。それが民主主義か。それに私どもが反対いたしまして、根拠を明らかにしよう、証拠を明らかにしよう、それはまつたくでたらめであると追究することが非民主的であるのか。鬼面人をおどかすようなことを言わないで、率直におつしやつてただきたい。この場が公開の席上でまずければ、非公開の委員会でもけつこうである。どういう具体的な根拠に基いて今度の検挙をやつたか、どういう具体的な事実に基いて、共産党の国会議員の追放をやつたのか、あなたに誠意があれば、秘密会議にしてもいいから、事実を明らかにされる必要があると思う。
  84. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほどの立花君の放言は、私に対しまする重大なる侮辱であると考えまして、私はこの問題につきまして、委員会において適当な処置がとられるまでは、国会の権威に関するかような質問に対しまして、答弁することは適当でないと考えます。
  85. 立花敏男

    ○立花委員 今の態度は私は非常に遺憾である。私は委員長注意がありましたので、委員長に適当におとりはからい願いたいと言つている。そういう処置をしたにかかわらず、委員会が何らかの処置をするまでは、答弁しないというようなことは、事の本質をごまかすものだと思う。この問題は私は委員長に一任してあるので、あなたが問題の真相を明らかにするという誠意があるなれば、あなた自身も問題を委員長にまかして、そういうわき道へそれるのでなしに、問題の本質に、はつきりと御答弁をなさるのが紳士的な態度であろうと私は思う。
  86. 野村專太郎

    野村委員長代理 お諮りをいたしたいと思います。時間も何ですから、この委員会は暫時休憩をいたしまして、一時半から再開いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 野村專太郎

    野村委員長代理 それでは暫時休憩いたします。     午後一時十一分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた