○
三浦法制局参事 それでは私から、今まで小委員会で協議のととのいました点あるいは問題になつております点等につきまして大体のことを御説明申し上げたいと思います。
お手元に差上げてございます
公職選挙法改正案要綱は三十六項目にわかれておりまして、その中の未決の分等につきましても、最後の方に書いてございます。それらはあとでお話することにいたしたいと思つておりますが、ただいま委員長からもお話がありました改正に伴いまする法律案の
新旧対照表は六十七項目にわたりまして、一応お手元に配付いたしてあるわけでございます。なお罰則、それから要綱が固まりました場合におきまする附則における
経過措置等につきましては、まだ法案化して、ございませんので、それらを入れますと、法律案の改正はさらに広汎になるかと考えております。
新旧対照表との関係は、それぞれの項目ごとに
参照條文を
括弧書きで入れてございますから、それでお照し合せを願いまするとたいへんありがたいと思つております。
一、選挙権につきましては、「
都道府県の選挙においては、
選挙権者である者が同一
都道府県の区域(選挙区があるものについては、その
同一選挙区内の他の市町村に住所を移したときはその市町村において住所を有する期間がまだ三箇月に達しなくても、本人の申出により、新住所地において
当該都道府県の選挙権を付與するようにすること」ということでありまして、
都道府県の選挙においては、同一
都道府県の区域内の移動あるいは
同一選挙区内の移動につきましては、
住所要件が三箇月に足りないでも、選挙権を付與しようというようなことであります。
それから二は、選挙に関する区域でありまするが、選挙に関する区域のうちで、町村長及び町村の
教育委員の選挙についても特別の事情、たとえば町村の合併等がある場合には、町村の区域をわけまして、開票区を設定し得るようにすること。現在は市町村の
議会議員等につきましては、市町村をわけまして、開票区を設けるようになつておりますが、町村長あるいは町村の
教育委員の場合につきましてはそれがございませんので、特別の事情がある場合には、開票区を設けるという事務上の必要からこういうふうにしたいということでございます。
それから三は
補充選挙人名簿は(1)「
国会議員の選挙におては、引き続き三箇月以来市町村の区域内に住所を有していた者が同一選挙区
参議院全国選出議員の選挙にあつては同一
都道府県の区域」内の他の市町村に住所を移したときは、その市町村において住所を有する期間がまだ三箇月に達しなくても、本人の申出により、新住所地において別に調製する
当該選挙の
補充選挙人名簿に登録するものとすること」(2)は「
都道府県の選挙においては、前記一により選挙権を取得した者についても
国会議員の選挙の場合と同様、
補充選挙人名簿に登録するものとすること」これは、
国会議員の選挙につきましては、住所は選挙権の要件ではございませんで、
選挙人名簿登録の要件になつております。従いまして
国会議員の選挙につきまして、三箇月の
住所要件に欠ける場合、つまり特別の場合、たとえば
同一選挙区内の場合、それから
参議院全国選出議員の選挙にありましては同一
都道府県の区域というような範囲に限定いたしまして、その中の移動については、
住所要件が足りない場合におきましても、
補充選挙人名簿に登録いたしまして、その投票権の行使を認めようということが(1)であります。それから(2)の方は、先ほど一の選挙権のところで申し上げました、
都道府県の選挙の場合におきまして、それを
補充選挙人名簿に登録する場合の事柄をあげてあるわけであります。
それから次は四でありますが、
選挙期日の公示または告示、これは従来の
選挙期日の公示または告示を、従来の期間よりも短かくしようというわけであります。「
選挙期日の公示又は告示は、次のように行うこと」、(1)の、
衆議院議員につきましては
選挙期日前二十五日、それから(2)
参議院議員につきましては
選挙期日前三十日、それから(3)知事、
都道府県教育委員につきましては二十五日、それから
都道府県議員、五大市の長、議員及び
教育委員については二十日、五大市を除きました市の長、議員及び
教育委員につきましては十五日、それから町村の長、議員及び
教育委員につきましては十日ということにするわけでございます。
衆議院議員の選挙につきましては、この案によりますると、現行三十日でありますのが、五日間短縮されまして二十五日前に公示をする、こういうことになります。
参議院議員につきましては、
全国選出、
地方選出と一応わけまして、小委員会におきましてお考えを願つておきましたが、同一の選挙でありまして、
全国選出と
地方選出と区別いたしまして告示をいたしますことはどうかと考えまするので、やはりこれは従来通り三十日ということに委員長の了解を得て改めることにしたい、従いましてそれは
現行通りということになるわけであります。それから、知事、
都道府県の
教育委員は、三十日が二十五日になりますから、五日間ほど縮まることになります。それから
都道府県議員と五大市の長、議員及び
教育委員は
現行通り二十日になります。それから五大市を除きました市の長、議員及び
教育委員につきましては、現行二十日でございますのが五日間縮まりまして十五日、それから町村長、町村の議員及び
教育委員等につきましては、現行二十日でありますのが、十日縮まりまして十日ということになります。
選挙期日の告示はあとでまた申し上げますが、
選挙期日の告示あるいは公示を短縮することによりまして、
選挙運動の期間が縮まつて参るということになつて参ります。
五は
代理投票であります。(1)は「
代理投票においては、補助者二人を選任し、その一人に選挙人が指示する候補者の氏名を記載させ、他の一人をこれに立ち合わせなければならない旨の規定を法律に設けること」、(2)は「右の補助者の不正行為に対して
詐偽投票と同程度の罰則を設けること」、これは過般の選挙等の実情に照しまして、
代理投票というものに不正が行われたような事態も現われておりますので、その点を法律の上に、特に
代理投票の場合の
代理記載等につきまして明確にいたしまして、これに違反した者について新しく罰則を設けようということでございます。
それから次の六は
不在者投票であります。「疾病等のため歩行が著しく困難であるべきことを事由とする
不在者投票(
所謂左宅投票)はこれを廃止し、
不在者投票管理者が管理する一定の
投票記載所においてする場合に限り認めることとすること」従いまして
在宅投票の廃止に伴いまして、医師の
証明書制度等は不必要になりますし、また
在宅投票の場合の
代理投票ということも認められない結果になるわけであります。
不在者投票は、これも過般の選挙等におきまして、病気というようなことの事由によりまして、非常に多くの医師の
証明書等が出されまして、その意味による
不在者投票が行われまして、結果において非常な弊害を伴つたという実例等もございますので、それらの弊害が伴いますような
在宅投票の制度を廃止いたすことにしようというわけでございます。しかしながら
不在者投票の制度は、
制度自体といたしましては、そういう弊害が除かれ得るならば必要な制度でもありますので、これはいかして行く、こういうことでこの六が要綱としてあげられておるわけであります。
七は
開票立会人及び
選挙立会人についてでありますが
開票立会人又は
選挙立会人として届出のあつた者が十人の定数を超えた場合その互選制を廃止してくじによつてその立会人を定めることとすることこれは事務上の問題でありますが、
開票立会人、
選挙立会人を、従来は届出者が十人の定数を越える場合におきましては互選によつてきめるということになつておりますが、それぞれの
利害関係のある代表者でありますので、互選によつてきめかねるような場合が実際問題としてあるわけでございますので、これを実情に即するようにくじによつて公平にやるということに改めるわけでございます。
八、投票の効力「
同一氏名又は同一氏の候補者に対する投票において、その氏名又は氏のみを記載した者については、これを有効とし、その投票は、開票区ごとにこれらの者の
有効投票数に比例して按分すること」これは投票におきまして、
立候補岩が
同一氏名の方または同一の氏の方である場合におきまして、投票する人が完全にその氏名を記載したり、あるいはまた
同一氏名でありますと、どちらの立候補者に自分が投票したかということがわかるようなことが現われておればいいのでありますが、そういうことが明瞭でない場合におきましては、従来
無効投票という取扱いを受けておりますので、この程度までの投票については、これを有効とすることが投票者の意思にも合致いたしますし、それほどの弊害もないだろうということで、それを
有効扱いにする措置をとりたいということでございます。そうしてその投票は、開票区ごとにそれらの
有効投票の数に比例して按分して行くということにするわけであります。
九、
立候補届出、「立候補の届出は、
選挙期日の公示又は告示の日から次の期限までとすること」
衆議院議員につきましては
選挙期日前十五日、それから
参議院議員につきましては、
全国選出議員は二十日でありますが、
地方選出議員もやはり二十日といたしております。次に知事、
都道府県教育委員につきましては十五日、それから
都道府県議員、五大市の長、議員及び
教育委員につきましては十日、それから五大市を除いた市の長、議員及び
教育委員については十日、それから町村の長、議員及び
教育委員については五日ということに届出の期間をいたしたい、こういうことになつておるわけであります。それで
衆議院議員につきましては、その結果
選挙期日前の十五日までに届出をし、それで締め切るということになります。現行は十日ということになつております。
参議院議員につきましては
全国選出は
現行通りでありますが、
地方選出が現行十日でありますのが二十日にかわることになります。知事、
都道府県の
教育委員につきましては、現行十日が十五日、その他地方の選挙等につきまして多少かわつて来るわけであります。それから(二)「
補充立候補制度は、候補者の死亡又は辞退により、議員及び委員の場合にあつては、その候補者がその定数を欠くに至つたとき、長の場合にあつては、その候補者が一人となつたときに限り、認めることとせること」
補充立候補につきまして、候補者の死亡または辞退による場合の取扱いを多少整理するということになるわけであります。
それから次は、十の立候補のための公務員の退職でありまして、「立候補の制限を受けている公務員が立候補した場合には、その届出と同時に、何らの手続を要せず当然に退職したものと見なすこととすること」これは現行におきましては、退職の申出をいたしまして、五日目に退職の取扱いをしたり、退職したものとみなすということになつておりますが、いろいろな点で事実上支障を来す場合もありますので、立候補の届出をした場合におきましては、その人が持つておる他の公務員の地位は当然にそれをやめたものとみなす取扱いをすることにいたしたのであります。これは往々にして自分が他のある公務員を兼ねておるというような場合に、それをやめる手続をうつかり怠つておりますと、当選いたしました後に、それを兼ねておつたという理由によりまして当選が無効になつたりすることもありますので、それを明瞭にするためにこういう規定を置くというわけであります。
それから十一、供託金の没収「
選挙期日前十日以内に立候補を辞任した場合に限らず、それ以前に立候補を辞任した場合においても、常に供託金を没収すること」供託金の没収は、
選挙期日前十日以内にやめました場合にだけ没収ということにしてありまして、それ以前に早い機会にやめましたものにつきましては没収しないことになつておるのでありますが、これは一旦立候補いたしました場合におきましては、公営その他におきまして特別の
取扱い等を受けますので、期間のいかんにかかわらず、辞退の場合におきましては供託金を没収する措置をとる、こういうことであります。
それから十二、
地方議会の議員の再選挙及び
補欠選挙「議員の欠員が一定数に達しない場合、
地方公共団体の他の選挙があるときはこれと同時に再選挙又は
補欠選挙を行うべきこととなつているが、その場合の「他の選挙の範囲を同一
地方公共団体の選挙に限定すること」
これは
地方議会の議員の再選挙または
補欠選挙の場合におきまして、一定数、たとえば欠員が二人以上の場合でなければ
補欠選挙をやらないということになつておるのでありますが、そういう場合におきまして、ほかの選挙があります場合におきましては、同一
地方公共団体の選挙でなくしても、縦の同一選挙等が行われます場合におきましては、その際に、その議会の議員の再
選挙補欠選挙を行つてもいいというような
特別措置があるわけであります。しかしながらこれは、いろいろ手続上の点等におきましても再検討を要するというような、地方等からの意見もありましたので、そういう他の選挙が行われます場合には、同一
地方公共団体の選挙に限つて、これと合せまして
補欠選挙等が二人以上の欠員になつてない場合におきましても、一定の要件に該当していない場合でも、行うとすることに制限するわけでございます。
それから十三、在任期間を異にする
教育委員の選挙の場合の当選人「新設の
教育委員会の委員の
合併選挙の場合における当選人の決定について本法の
適用関係を明らかにすること」これは事務上の整理でありまして、
教育委員が
公職選挙法制定後に新設されたような場合におきまして、その
教育委員の
合併選挙についての取扱いについて、
本法適用関係を明瞭にするために、ある字句を整理するわけであります。
それから十四、長の
決選投票でありますが、長の
決選投票の制度を廃止するとともに、
法定得票数、現行八分の三でありますのを引下げ、四分の一といたしまして、これに達するもののないときは再選挙を行うものとすること、長の
決選投票は
公職選挙法におきまして括弧書で掲げておりますように、相当広汎な條項にまたがつて関係しているわけでございますが、過般の選挙等の結果にかんがみまして、地方の
決選投票は廃止した方がいいということで、従いましてそれを廃止することにいたしまして、かわりに得票数は、現在ほかの選挙の得票数よりも高くなつておりますので、これを四分の一に引下げます。衆議院の選挙も四分の一でありますが、そういうふうにいたしまして、もしそれでもなおこれに達しない人がある場合におきましては再選挙を行う、こういうことにするわけでございます。これは過般のいわゆる知事の
決選投票の得票数等を見ますと、こういう程度に
法定得票数を引き下げますならば、
決選投票を行わないでも長の当選者をきめ得るような状態になつております。
それから十五は「
同時選挙の場合の
選挙期日の告示でありますが、「縦の
同時選挙の場合においては、
選挙期日の告示期限は、それぞれ定めるところによるけれども、告示を行う者は、
都道府県の選挙管理委員会とすること」、これは前に申し上げましたように、
選挙期日の告示が従来と違いまして、それぞれの選挙に応じまして期間が違うということになつて参りますと、
同時選挙——ことに、いわゆる中央選挙も
同時選挙でありますが、その場合におきまして告示はどこがやるかということになりますが、それは
都道府県の選挙管理委員会がその告示をまとめてやる。そうして
同時選挙でありまするので、選挙の期日は同一日であります。ただ、告示をいたしまする日にちが、
同時選挙の場合においては早い場合とおそい場合とがある、こういうことになるわけであります。
それから十六は、
同時選挙の場合の立会人でありますが、「
同時選挙の場合の
開票立会人及び
選挙立会人は各選挙を通じて定めることとなつているのを改め、各選挙毎に定めるものとすること」、これは
同時選挙の場合の
開票立会人、
選挙立会人を各選挙を通じて適用することになつておりますけれども、こういたしますと、たとえば長の選挙と議員の選挙の場合の
同時選挙の場合におきましては、長の候補者の方が少いものでありますから、議員の候補者の方から選ばれました立会人等がほとんどその立会人になるというような結果になりまして、それは長の候補者の利益を代表することにならない場合がありますので、規定上こういうことに改めようというわけであります。
それから十七は、
選挙運動の期間であります。「
選挙運動の期間は次のように短縮すること」これは
選挙期日の告示、それから立候補の届出等につきまして申し上げましたのを要約して表に書きまして、
選挙運動の期間がどういうことになるかということを一表で明らかにいたしたわけでありまするが、この表でごらん願えばおわかり願えることを考えております。
選挙運動の期間だけについて申し上げまするならば、
衆議院議員の場合につきましては、公示と同時に届出をいたしますれば最大限の二十五日、それから締切りの最終日に届出をいたしますれば十五日ということになるわけであります。その他の選挙等につきましては、この表で明示してございまするので、これでごらんおきを願えればと思つております。
次は十八、選挙事務所。(1)は「
参議院全国選出議員の選挙事務所に関する届出は、当該事務所を設置した
都道府県選挙管理委員会にも届出を要するものとすること」、これは
参議院全国選出議員につきましては、
全国選挙管理委員会に届け出ることになつておりますが、地方の
都道府県選挙管理委員会にもこれを届けさせることにいたしまして、事務上の便宜をはかることにいたしたいというのでございます。(2)は「
衆議院議員、参議院(
地方選出)議員及び
都道府県知事の選挙における選挙事務所は、候補者一人につき原則として一箇所とすること」現行では二箇所になつておりますが、選挙事務所を一箇所減らすことにいたしたい。しかしながらこれは、その関係條文の但書のところにおきまして、特別の事情がある地域におきましては、最高五箇所まで置けるということは従来通りでございます。
それから十九、公務員の
選挙運動の禁止。(1)は「国又は
地方公共団体の公務員(第八十九條の規定により立候補が認められている公務員を除く)。について全面的に
選挙運動を禁止すること」、(2)は「知事、市町村長及び
教育委員は、当該長又は委員の選挙において自ら候補者となる場合を除き、在職中の
選挙運動を禁止すること」ということでありまして、(1)の方の公務員の
選挙運動の禁止につきましては、現行百三十六條におきまして、たとえば選挙管理委員会の委員及び職員、裁判官、検察官、会計検査官、公安委員会の委員、警察官及び警察吏員、収税官吏及び徴税の吏員等をあげてあるわけであります。これをこの際、国または
地方公共団体の公務員につきまして、原則といたしましては、広く一般的にその
選挙運動を禁止するということにいたすわけであります。ところが
公職選挙法八十九條におきましてそれぞれ立候補が認められているところの公務員、たとえば在職中の立候補が認められておる公務員としては、
衆議院議員、
参議院議員、その他
地方議会の議員等もありますが、それ以外に国務大臣等、あるいは政令で指定いたしますところの委員、顧問、参與、その他いろいろの範囲に属します公務員がありますが、それらの人たちにつきましては、その制限を禁止するわけではございません。「第八十九條の規定により立候補が認められている公務員を除く」。というのはその意味であります。これは條文の
新旧対照表百三十六條のところをごらん願えればと思つております。それから(2)の方は知事、市町村長及び
教育委員は、自分がその候補者となる場合以外に在職中に知事のままで、あるいは市町村長のままで、あるいは
教育委員のままで
選挙運動をしてはいかぬということであります。これはほかの議員等につきましてはこういう規定を置いてないわけでありますが、知事、市町村長及び
教育委員は公選による代表者でありまするけれども、その職務の性質がいわゆる議決機関的な議員の職務と違いまして、執行機関たる性質を持つておりますので、その行政執行同等に関しまする職務の性質上日ごろの事務が
選挙運動等と非常に密接な関係を持ちやすいのでありまして、それらの例外が起ることを防がんとするがために、それらの影響力等を考慮いたしましてこういう規定を置こう、こういうわけであります。
それから二十は未成年者の
選挙運動の禁止でありまして、「未成年者が
選挙運動をなし又は未成年者を使用して
選挙運動をすることを禁止する旨の規定を設けること」、これは新たに設けるわけであります。これは前にはこういう規定が選挙法におきまして認められた時代もあるわけでありますが、これは過般の選挙等の実情に照しまして、こういうことを制限した方がよいという意見が地方におきましてはほとんど大部分であります。そういう意向を取入れましてこういうことにしようというわけであります。條文は新しい百三十七の二というところに入れてあります。
次の二十一は戸別訪問でありますが(1)は「戸別訪問は、候補者と雖も全面的に禁止すること」、(2)は「
選挙期日後の挨拶行為としての戸別訪問も、右と同様禁止すること」、戸別訪問につきしまては先般の
公職選挙法制定の際にいろいろ議論の末百三十八條の但書というものが置かれましたのでありまして、その但書の意味も相当の理由があつたわけでありまするが、いろいろその後の選挙の結果に照しますと、どうもその但書のような規定、すなわち「公職の候補者が親族、平素親交の間柄にある知己その他密接な間柄にある者を訪問する」場合の戸別訪問はよいというような規定を置いておきますことは、かえつてその弊害を伴いやすいというようなこと等も勘案せられまして、この際そういう但書を削除いたしまして、全面的に戸別訪門は禁止することにしよう、こういうわけであります。それから(2)の方は
選挙期日後の挨拶行為でありまして、これは
公職選挙法の百七十八條に規定してありまして、(1)の方は選挙期間中の戸別訪問の問題でありますが、期日後の戸別訪問も許してありますので、ただいまの問題と関連してこれも禁止しようというわけであります。
それから二十二、選挙に関する署名運動、「選挙に関し、投票を得る等の目的をもつて署名運動をすることを禁止すること」、これは新設するわけでありまして、百三十八條の二として入れることになつております。これは
選挙運動の期間中、投票を得る目的で選挙人の署名を求めて行くというようなことが行われた実例等もあるようでありまして、これは文書をもつていたしますれば文書図画の頒布禁止等の項にひつかかるのでありますが、それらの適用條項が明確を欠くというようなきらいがありますので、はつきりそういうことを禁止することにしようというわけであります。これはたとえば特に平和運動の署名というようなことが純粋な形において行われる場合におきまして、それを禁止しようという趣旨ではございません。
二十三、自動車、拡声機及び船舶の使用、(1)は「自動車、拡声機及び船舶の使用については、次のようにすること」ということで、衆議院、参議院の
地方選出議員の選挙、
都道府県、五大市の選挙につきましては、自動車または船舶いずれか一台または一隻ということになるわけであります。現行法では、自動車一台と船舶一隻、自動車、船舶おのおの一つずつよいということになつておりますが、どちらか一つということになるわけであります。拡声機は現在二そろいになつておりますのを一つに減らすことになります。それから参議院の
全国選出議員の選挙につき出しては、自動車または船舶は、現行法では自動車三台、船舶二隻となつておりますが、これを改めまして、通じて三台または三隻ということにするわけであります。それから五大市を除いた市及び町村の選挙につきましては、自動車と船舶は禁止いたしまして、拡声機を一そろい認めるということにする。現行法では、自動車につきましては市は一台で、町村は制限はございません。拡声機は市が二そろいで町村は制限なし、船舶も市一隻、町村には制限されておりませんが、これらの点をはつきりここで制限するわけであります。(2)は「自動車又は船舶について、両者に共通する証明書及び表示を用いるものとすること」、それから(3)は「
都道府県の議員、五大市の議員及び
教育委員の選挙に使用する所定の
選挙運動用自動車の費用は、
選挙運動の法定費用に加算しないこととすること」、これは
公職選挙法の第百九十七條で選挙費用の加算の範囲をきめてございますが、そこのところで新たに
都道府県の議員とか、五大市の議員及び
教育委員の選挙に使用しますものは法定制限額から除外しようというものであります。
次は二十四、文書図画の掲示であります。(1)は、「文書図画のうち
選挙運動用ポスターの掲示は、
参議院全国選出議員の選挙の場合を除き、全面的に禁止すること」、(2)は、「
参議院全国選出議員の
選挙運動用ポスターについては、原則として
現行通りとするが、公共施設に対する掲示の禁止はこれを緩和し、橋梁、電柱、公営住宅等に掲示しうるようにすること」、(3)は、「前記(1)による
選挙運動用ポスターり廃止に伴い、現行の公営による候補者の氏名等の掲示制度を活用し、掲示箇所、掲示方法、掲示期間等に改善を加えること」、(4)は、「公営施設使用の個人演説会を開催する場合においては、候補者一人につき同一施設ごとに一回を限り、公営により、候補者の氏名、日時及び演説会場を表示する立札(一箇)を演説会開催当日その会場前の公衆の見易い場所に見易い方法をもつて掲示すること(会場内については今までと同様個人の自由とする。)(右の場合以外の個人演説会については、前記(1)により
選挙運動用ポスターの掲示は、禁止されることとなる。)」ということでありまして、文書図画の掲示は、いわゆるこの中で
選挙運動用ポスターと称されるものは、
参議院全国選出議員の選挙の場合に使用される以外一切禁止するというのがこの案であります。参議院の
全国選出議員につきましては、その選挙地域の広汎性にかんがみまして、ポスターは残しておかなければ実際上困るであろうというようなことから、それだけは残しておくことになります。さようにいたしまして、その他の選挙について
選挙運動用ポスターを禁止いたしますが、それにかわりまして、公営施設の個人演説会、無料使用ができます。建物等におきまして個人演説会を開催いたす場合におきましては、その表の見易い場所に立札を公営によつて一回だけ掲示して行くということになるわけであります。個人演説会の会場内につきましては、もちろん従来通り個人の自由ということになるのであります。そういう
選挙運動用ポスターが廃止されます結果、それにかわるものといたしましては、候補者の氏名等の掲示ということを公営によつて行うことにしようということになつておるのでありまして、二十四の(3)に書いてございまするように、従来投票所の入口等に候補者の氏名等を掲示いたしておつたのでありますが、それを拡充発展いたしまして、候補者の氏名等をその投票区の適当な箇所に掲示して行く、こういうことにして行くわけであります。現在投票区につきましては、たとえば
衆議院議員等の場合においては一投票区に三箇所から五箇所以内ということになつておりますので、市町村についてはその数だけ掲示することになるのであります。そういうふうに掲示して、ポスターを廃止することにかえるわけであります。それから投票所の中の氏名の掲示というものはさらに別個に考えてあるわけであります。それからこういうポスターを廃止します結果、演説会の告知等につきましては、連合掲示等によりまして、それを補つて行く、こういうことになつております。
二十五の新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由、「新聞紙及び雑誌が選挙に関し行う人気投票は、これを禁止すること」、新聞雑誌の報道、評論の自由については、これも
公職選挙法の制定の際いろいろの経過を経まして、現行の百四十八條の規定となつたのでありますが、どうも新聞紙、雑誌が選挙に関しまして人気投票を行いますことは、投票類似行為とも認められ、ことにまた選挙に立候補いたしまする人の価値判断をあらかじめ予定するというような結果にもなりがちでありますので、それらの弊害等にかんがみましてこれを禁止しようということであります。しかしながら報道及び評論の自由の点にかんがみましてこれが選挙の公正を害したり、虚偽の事実を公表するというようなことの違反に該当しない限りにおきましては、当落等の予想とか、候補者に対する新聞としての意見というものを記載したり、報道いたしましたりすることは、従来通りと一応なつております。
二十六、任意制公営立会演説会、「任意制公営立会演説会の制度を
都道府県及び五大市の議員の選挙の場合にも拡張することとすること」、現行は市町村長の場合に限つておりますが、これをこのように拡げるというわけであります。これをさらに
新旧対照表に書いてございますように、地方の條例によりまして、議会の議決を経ましてやりたいという場合におきまして、それを認めるということにいたしまして、その実情に即するように考えてあるわけであります。二十七は街頭演説であります。(1)「
選挙運動のためにする街頭演説については、一定の証明書及び標旗を所持する場合でなければ、これを行うことはできないものとすること」(2)は「右の証明書及び標旗は、
当該選挙管理委員会が候補者一人につき各一(
参議院全国選出議員については各十五)を交付すること」、街頭演説を行いまする場合におきましては、証明書を出すことにいたしますし、同時に一定の標識のある旗を渡すわけでありまして、その両方を持つている場合でなければ街頭演説は行えないことにしようというわけであります。必ずしも候補者がそこにいることは必要の條件ではありませんが、そういうものがなければできないことになります。従いまして結局同時には一箇所ということにおのずから限られることになるわけであります。それからこれらの証明書と標旗は、普通の選挙につきましては、おのおの一つずつ、証明書一、標旗一でありますが、
参議院全国選出議員については選挙事務所が十五箇所まで認められており、選挙事務所は
選挙運動の母体でもありまするので、これは各十五まで認めよう、こういうわけであります。
次は二十八日の連呼行為でありますが、「連呼行為については、街頭演説用の標旗を掲げて街頭において又は
選挙運動用自動車若しくは船舶の上において、
選挙運動用拡声機を使用してする場合でなければこれを行うことができないものとすること」、連呼行為については、過般の選挙におきまして非常に弊害がありまして、これをやめたがいい、禁止したがいいという意見が圧倒的多数のようであります。この小委員会におきましてもいろいろ御検討の結果、連呼行為につきましては、先ほど申しました標旗を掲げましてやる場合と、あるいはまた標旗のない場合におきましても、
選挙運動用自動車あるいはこの法律で認められまする船舶の上において、しかも両方の場合とも
選挙運動用の拡声機を使用してする場合であれば連呼行為を認めよう、それ以外は一切連呼行為を禁止しようということになつたのであります。拡声機は、先ほど申し上げましたように、大体
全国選出議員を除きましては一そろいということになりますので、それを使つてやる場合でなければ連呼行為はできない、しかしながらこれは車上でもよいし、おりてやつてもいいということになるわけであります。さようなことによつて連呼行為を制限するとともに、演説会の告示等はこれをもつて行うことになるわけであります。二十七の街頭演説、二十八の連呼行為等につきましては、新しく條項を設けまして、百六十四の二、百六十四の三というところに規定してございます。
それから二十九、選挙公報でありますが、(1)は「條例の定めるところによりすべての地方選挙についても選挙公報を発し得るようにすること」これは現在は五大市長に限つておりますが、それを條例の定めるところによつて、地方選挙まで広げ得るようにして実情に即するようにしたわけであります。(2)「選挙公報は、
選挙期日前五日(現行三日)までに配付するものとすること」選挙公報は、現行法では三日前までに配付することになつておりまするのを、選挙の期日五日前に配付するこということにいたしまして、有権者に選挙公報が早く届きまして、候補者の政見等を早く周知せしめるようにしようという目的であります。
三十は、投票所内の氏名等の掲示についてであります。「選挙当日、投票所内の
投票記載所のボックスごとに、その適当な箇所に、候補者の氏名等を公営により掲示すること」これは先ほどちよつと申し上げましたが、現在の投票所の入口等に掲げてありまする候補者の氏名等を、投票所内の
投票記載所のボックスの適当なところにこれを印刷かなんかにしまして掲げさせまして、選挙人が投票いたします際に、候補者の名前を忘れましたような場合におきましても、これを見まして、思い出して正確な氏名を書き得るように処置をしようということから、この規定を置こうというわけであります。
次は三十一でありまして、
選挙運動の収支報告書の提出、「
選挙運動の収支報告は、中間報告を廃止し、
選挙期日から十五日以内に精算の上一回報告させることとすること(精算後のものについては
現行通りその都度報告させること)」でありますが、これは従来二回
選挙運動の収支報告をやつておりますのを一回に改めました。精算後のものにつきましては従来通り、こういうことにいたしまして、簡便にしたわけであります。
三十二、法定
選挙運動費用、「
選挙運動費用は、経済の実情に即するように定むべき旨の規定を特に法律に設けること」これは
選挙運動の法定額が、経済の刻々変化して行きます実情に即してないきらいがありまして、実際の費用が法定額ではどうもまかない切れないというような声がしばしば起きますので、それらの点にかんがみまして、法律の上で一々その選挙ごとに法定額をきめるということはたいへんでもありますので、現在の
公職選挙法では政令に讓つて、ある一定の単価に選挙区における有権者数を議員定数で割りましたものをかけ合せましたものが
選挙運動費用になつておりますが、法律の中では政令できめるということになつておりますので、選挙の実情に即して政令できめるようにという、そういう現実的な規定を置いたにとどまるわけであります。そういうことをとにかく明らにしようということであります。
三十三、罰則「(1)
詐偽投票罪の未遂を罰する旨の規定を設けること、(2)禁止規定等の新設に伴い、所要の罰則を設けること、(3)その他罰則体系について再検討すること」この
新旧対照表には罰則についてはまだ載つておりません。これはほかのものが固まりましてから、それらを整理いたしますし、さらにここに書いてございますような新しい罰則を設けるようにしたいと考えておるわけであります。
三十四、補則「(1)選挙管理費用、選挙公営に関する規定の改正に伴い、選挙管理費用につき所要の改正を加えること」これはたとえば新しく公営等をいたしたり、あるいは公営を廃止したりするに伴いまして、選挙の費用を国で負担いたします場合、
地方公共団体で負担します場合、一般選挙管理費用の規定がございますが、そこのところを明らかにしたわけであります。これは
新旧対照表に載つております。(2)「特別市、特別区及び特定の市の特例、選挙権、
補充選挙人名簿等の規定の整備に伴い、読替規定を整理すること」これも関係條項のところに整理して入れてあります。(3)「期間の計算、選挙法上の期間の計算については、当日起算制を原則とすること、但し遡及計算の場合には、初日を算入しないこと」これは選挙法におきます期間計算について、従来は民法等の原則によりまして、その翌日から起算するというようなことになつておりますが、公法上の期間計算につきましては、国会法等でもそうでありますが、大体当日起算ということが原則でありまして、そういうふうに改めたいというので、その点を一條項設けまして明瞭にしたわけであります。但し遡及の場合は、従来の慣習等によりまして、当日を入れないで、従来通り前日ということになつております。
三十五、附則「(1)施行期日、(2)経過措置、本改正に伴い、所要の経過措置を定めること」ここに所要の規定が必要でありますし、ここに経過措置もきめる必要があります。これは
公職選挙法のできましたときに相当広汎な経過措置を置いたのでありますが、それと同様な事項を経過措置として置かなければならぬと思つております。これはまだ
新旧対照表には入れてありません。
それから三十六以下につきましては、小委員会におきましていろいろ意見がございまして、まだ決定を見ない事項でございますので、項目だけについて将来の審議の資にしたいというわけで、事柄だけをあげてあります。
三十六、その他、「(1)選挙管理委員会制度(五、全選法、自法一八一—一九四)選挙管理委員会を強化するため、組織、権限等に改正を加え、単行の統一法を別途に制定するかどうか研究すること(2)選挙区(一三、別表第一、施行法二六)(イ)選挙区制、選挙区制について改正を加えるかどうか研究すること、選挙区制と議員定数。(ロ)最近の国勢調査(昭和二五年一〇月一日)の結果に基く人口の異動に応じて別表第一の各選挙区の議員定数につき改正を加えるかどうか研究すること。(ハ)選挙区と郡の区域の変更等(A)別表第一の郡の区域に変更があつても選挙区の所属は、その異動前の区域によることとなつているために、実際の行政区画としての郡と一致しないものを生じているが、これを現状に即するように改正するかどうか研究すること。(B)
公職選挙法制定以後の市の新設、郡の名称の変更等のあつたものについては、現状に即するように別表第一を整理するかどうか研究すること。(3)供託金及び公営納付金(九二—九四)供託金及び公営「分担金の額を引上げるかどうか研究すること」そこに現行があげてあります。「(4)政党その他政治団体の
選挙運動、(4)政党その他の政治団体の行う政治活動と
選挙運動との関係を規正する必要があるかどうか研究すること、(ロ)組合等の組織を通じて行う
選挙運動が選挙における個人の自由を害すると認められるような行為に対して立法上の措置を講ずることとするかどうか研究すること、(5)選挙執行経費の基準、
国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律による経費配分の基準等に関し改正を加えるかどうか研究すること」大体以上でございます。