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1951-05-18 第10回国会 参議院 労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十八日(金曜日)    午後一時四十八分開会   —————————————   委員の異動 三月三十一日委員片岡文重辞任につ き、その補欠として吉田法晴君を議長 において指名した。 五月九日委員吉田法晴辞任につき、 その補欠として片岡文重君を議長にお いて指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○派遣議員報告   —————————————
  2. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 只今から労働委員会を開きます。  先般地方公営企業関係労働事情調査のため大阪府下視察に参りました片岡委員及び私ども一行を代表いたしまして、その視察報告片岡委員にお願いいたします。
  3. 片岡文重

    片岡文重君 張る三月四日より六日間に亘り赤松委員長と共に、大阪府下における労働事情視察して参りましたので、その御報告を簡単に申上げます。  今回の視察は主として地方公営企業職員及び地方公共団体業務に従事する単純労務職員労務状況並びに労働環境に関するものでありますが、視察に参りました理由はこれら職員身分並びに労働関係取扱について、現在政府において新らしい法律を準備しつつありますので、国会においても早晩論議の対象になつて来ることは明らかでありますから、その際の準備として実情視察しておくことが必要ではないかと考えたからであります。  視察いたして参りました事業場は、公営企業関係では交通並びに上水道の諸施設でありまして、地下鉄路面電車、車庫、車輌修理工場、貯水池、水質試験場等であります。又単純労務関係では屠場、塵埃焼却場、港湾、下水道改修工事現場等が主なものであります。これらの事業性質労務内容等につきましてはすでに御存知のことと思いますので、その詳細は省略させて頂きまして、視察の結果特に感じました点を二、三申上げて見たいと存じます。  先ず地方公共団体の経営する交通、ガス、電気、水道の企業に従事する職員関係についてであります。御承知通りこれらの地方公営企業に従事する職員身分取扱に関しましては、地方公務員法附則第二十項におきまして、これら地方公営企業組織会計経理に関する面と共に別に法律が制定実施されるまでの間はなお従前の例によるということが明らかにされておるのであります。従いまして、現在これらの地方公営企業に従事する職員諸君地方公務員法適用を受けておらないのは勿論、各地方々々の条例等によつてさまざまな取扱を受けておる実状にありますが、ただ一点共通しておることは政令二百一号によつて争議行為禁止されているということであります。この労働基本権禁止につきましては、当時その不当を鳴らす世論のごうごうたる非難に徴して見まするも、これが如何に反動的暴挙であつたかが窺われるのでありますが、今回の視察によつてこの争議行為禁止の暴政が内包する不合理と矛盾とを一層はつきりと感じた次第であります。例えば東京都の中心地下を走つている地下鉄には争議行為を完全に認めておるのでありますが、大阪中心地下を走る地下鉄には全然争議権が認められておらないのであります。而もこのような矛盾といいましようか、不合理な事例はひとり大阪のみに限らず至る所に見出すことができるのであります。業務性質、態様、利用者に対するサービス等の点において寸分の相違もないにもかかわらず、単に経営主体性格が異るというだけの理由にまつて、憲法の認める労働基本権を剥奪するということは誠に納得できないことであります。組合諸君事業社会的重要性を十分認識しており、法が容認して居るからといつて不当にこれを濫用するなどとは毛頭考えてはおられないのでありまして、組合が民主的に成長し、発展した今日においては、是非ともこの点を根本的に検討し直す必要があると痛感いたした次第であります。この問題は、単純労務職員の場合も同様でありまして、清掃とか塵埃焼却のような純肉体労働に携つている従業員に対して、身分上の種々なる拘束を設けて取締るということは、全く労務性質労働実情を無視したものであることは余りにも明瞭でありますので、この際是非善処を熱望いたすものであります。勿論独立採算制を建前とする地方公営企業体と然らざるものとの間には取扱を異にするについて相当の理由もあるかとも考えられますが、私は労務状況の実際を視察して、なお且つかように考えるものであります。  今回の派遣におきましては、事業場視察と共に組合代表者等懇談会を持ちまして、種々なる御意見、御要望を承わつたのでありますが、次に席上問題となりました二、三の点を拾つて報告申上げます。  先づ地方公営企業に従事する職員労働関係法を作る場合、どんな形式乃至構成にしたらよいかということから申上げますと、私たちが旅行に参つた頃は丁度地方公営企業職員労働関係を、企業組織会計経理等に関する法律から切離して別個法律とするか、又はすべてを含めた一本の法律で行くかということが問題となつておりまして、行政事務当局においては一応別個法律即ち二本建で行くことが決定されておつたようであります。これは法律構成という単なる形式上の問題と異りまして、行政庁所管従つて又各省の所管事項相違から来る考え方の違いなどによつて法律案の作成、運用等に至大な影響を待つものでありまして、組合側においても非常に関心を抱いておつたのであります。今申上げましたように、事務当局では二本建にすることに意見の一致を見ましたが、公営企業関係従業員諸君もこれに賛成でありまして、今後もこの方向で推進して頂きたいと切に要望いたしておりました。けだし法律の第一条には、当該法律制定の趣旨並びに目的が掲げられるのが常でありますが、組織会計等のごとく企業経営基準となる問題と企業推進主体となる労働関係とを同じ法律の中に規定されることは、企業中心目的が強く規制される半面、労働関係の規定が軽視され或いは主客混乱を招く等幾多の不利益を生ずるということも、二本建を主張する重要な理由の一つとなつておるようでありました。  次に組合関係者は如何なる内容法律を希望しているかということにつきまして申上げて見たいと思います。労働省におきましては、労政局試案として、昨年末地方公営企業労働関係法要綱を作成し、公聴会を開いて各方面の意見を質しておつたようでありますが、爾来事務的に種々なる試案を作つておられると聞いております。併しその基一本的な構想は大体要綱の線と同じものではないかと考えられまして、組合側もこのような行政部内の動きに対しましては深い関心を抱いており、法案に対するかなりはつきりした態度をきめておるようであります。以下要綱に即して組合側代表的意見を簡単に御説明申上げます。  先ず罷業権の問題ですが、これは労働者基本的権利でありまするから、是非とも認めて頂きたいとのことでありました。この点については、すでに先ほども申上げましたところですから、ここでは省略いたしまして、ここでは地方条例に対する労働協約仲裁裁定の効力の確立という点について述べて見たいと思います。公共企業体労働関係法の第三十五条、第十六条等の問題が一昨年末来国会において論議され、法改正の問題として今日に至るまで未解決のまま残されていることは御承知のところでありますが、そのような経験にも鑑み、この点は特に組合側関心の的になつておるようであります。地方条例を常に協約裁定に優先せしめるという要綱考え方団体交渉によつて妥結し、又は仲裁裁定によつて最後的に到達した労働関係条例によつて破壊することとなり、当事者の折角の努力が根本的にくつがえされるということになるのでありますから、結局は協約裁定もなきに等しい結果を招来するようなことも考えられるわけであります。協約裁定の権威を尊重し、その実効性を確保することは、労資の円満な調整のためにも是非必要でありますから、十分検討を要する点であります。団体交渉権範囲につきましては、要綱では地方公営企業管理運営に関する事項団体交渉対象とすることができないということになつておりますが、これは正常な団体交渉を阻害するものであるから、是非削除してもらいたいということであります。  次に全業法と労働関係法との関係でありますが、両者は密接に結び付いておりまして、労働法が如何に立派なものであつても、企業法が悪ければその労働法は骨抜きになり、役に立たなくなつてしまつて組合の発展は妨げられ、組合員利益は圧迫されることになります。従つて将来国会において地方公営企業労働関係法を審議される場合は、それと表裏の関係にある企業法にも十分留意されて総合的に御検討を願いたいとのことでありました。  次に単純労務関係について申上げたいと思いますが、このほうは法案内容等も未だ具体化しておらないので、組合側意見も抽象的なものが多く、又基本的な考え方にも組合側で若干の相違も見られるようでありますから、極く簡単に気の付いた点を取上げて見たいと思います。  第一は単純労務範囲を考える場合いろいろな基準があるのでありますが、横割りに考えないで縦割りに考え、その事業公営企業的性格を持たして労働関係を規律して行くのが妥当であるとの見解がありました。この考え方を敷衍して参りますと、地方公営企業労働関係法をつくる場合、その適用範囲を四大事業に限定せず、他の事業をも加えて同じ法律の規制をうけたいということになるのでありますが、又一方にはこのような見解は非現実的なりとして、別の考えを持つておられる方もおられるようでありました。  次は地方公共団体職員組合単純労務者労働組合との関係でありますが、単純労務者組織化が十分でない現在においては一般職職員組合に加入できないとすることは、これら労務者利益を害するものであるから、立法に際しては十分気を付けて欲しいとのことでありました。現在単純労務者範囲は去る二月の政令によつて一応決定をみておるのでありますが、この政令の解釈に当つて当局側は厳格に極めて狭く解釈し、常識的には当然単純労務に入ると考えられるものも枠から除外しようとする傾向があるとのことであります。これは立法上の問題と直接関係はありませんが、このような当局側態度を改めるよう善処されたいと要望されると共に、この辺の事情を考慮され、将来適切な立法措置を講ぜられたいとのことでありました。  以上で一応御報告を終りますが、最後に一言申上げておきたいことは、民間の企業と何らえらぶところのない業務又は純肉体的労務に従事している従業員に対しては、労働関係は私企業労働者と同様な法的取扱をするのが当然であり、労働基本権はこれを全面的に認むべきであるということであります。労働組合法労働関係調整法に対する特例法を作つて種々なる身分上の拘束力を設け、束縛するという考え方そのものは非常に誤りであります。従つてこの種の労務者地方公務員としての枠から除外し、一般労働者と同様に取扱い、組合運動については勿論、争議権の行使も又政治活動もできるようにいたすべきであると強く感じた次第であります。  終りに臨み、本議員派遣に当つて調査のため絶大な御援助を頂きました関係者各位に心から感謝の意を表明いたしたいと思います。なお詳細は御質問に応じて御説明いたすこととして、一応この辺で打切りたいと思います。
  4. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 一寸速記をやめて下さい。    午後二時速記中止    ——————————    午後三時二十七分速記開始
  5. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それでは速記を始めて下さい。本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     赤松 常子君    理事            一松 政二君            原  虎一君            波多野林一君    委員            中村 正雄君            山花 秀雄君            早川 愼一君            片岡 文重君            堀木 鎌三君   政府委員    労働基準局長  亀井  光君   事務局側    常任委員会専門    員       高戸義太郎